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監督・編集:中野裕之
撮影:佐藤 宏 音楽:木下伸司
東京"真"宝島
巨樹、滝、イルカが作り出す御蔵島独特の美しさ。
御蔵島は、しっとりと濡れていました。
地中で濾過された水はあちこちから溢れ出し、ときには滝となって流れ出しています。伊豆諸島の多くは水はけの良い火山灰性の土壌で水が非常に貴重だったことを思えば、御蔵島独特の美しさといえるでしょう。
山に目を移してみても、御蔵島の魅力が見つかります。それは深い山と、そこに悠然と立つ巨樹です。御蔵島には幹周り5mを越える巨樹が、650本以上あるといわれています。この木々は手つかずのまま、どれほどの時代を越えてきたのか。悠久の歴史を思わせる圧倒的な景観です。
そして海にはイルカがいます。御蔵島沿岸域に生息するミナミハンドウイルカは、およそ150頭。これは世界的に見ても高い生息密度だといわれています。
水、森、山、海、イルカ。御蔵島の個性を織りなすそれぞれの要素は、もちろん独立して存在しているわけではありません。森が水を守り、水が山の栄養を海に運び、山の栄養で海が豊かになる。自然が自然のままで成り立つサイクルが、きっとこの小さな島の周囲にできあがっているのでしょう。
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東京"真"宝島見守るのではなく、共存することで守る自然。
お椀を伏せたような形で、周囲を急峻な崖に囲まれる御蔵島は、定期船の就航率は夏で8割、冬で3割強。かつては「月より遠い御蔵島」などと言われた時代もあったそうです。いつでも、誰でも簡単に行けるわけではないことが、自然を守ることに繋がったのかもしれません。
今回、映像に収められたのは、そんな御蔵島の自然。
約300人の島民たちにとってその自然はごく身近なものであり、自然保護を声高に主張せずとも、当たり前のように守るべき存在。だから御蔵島では人々の生活のすぐ近くでも、自然を感じることができるのです。
険しい道を抜けて、限られた人だけが出会える光景ではなく、人の生活の近くで共存している自然。山を歩けば巨樹があり、海に潜ればイルカがいる。それこそが御蔵島らしさなのでしょう。
「人との距離が近く、時間帯により刻々と姿を変える御蔵島の自然。映像に収められなかった時間にも、さまざまな素晴らしい景色がありました。」