三和酒類「宇佐神宮」御鎮座1300年に迎えた、「三和酒類」の節目。
「いいちこ」、はたまた「iichiko」と聞き、お酒を嗜んでいる人であれば、知らない人はいないでしょう。それほどまでに社会に認知されていることは、偉業と呼ぶにふさわしい。
加えて、昭和54年(1979年)の誕生以来、実にユニークな広告も話題に欠かせない。ブランドと直結しないビジュアルとコピーは、まるで世間へのテーゼのよう。当時、時代を先ゆく、いや、先ゆき過ぎたそれは、今見ても心に響くものがあります。
そんな画期を創出した主は、「三和酒類」。そして令和7年(2025年)、新たな戦いに挑む。日本伝統の麹のうまみを最大限に表現した本格麦焼酎「iichiko彩天」を誕生させ、世界を目指します。
その祈願のために訪れたのは、御鎮座1300年を迎える「宇佐神宮」。共に節目を迎える両者は、過去にない御奉納へと結実してゆきます。
今回、その御奉納を祝し、「三和酒類」の面々と限られた人のみ参列。後者は証人となるべく、企業理念や哲学を学ぶだけでなく、精神を清めるため、事前プログラムを経て当日に臨みます。
「いいちこ日田蒸留所」、「辛島 虚空乃蔵」を巡り、酒造りや利き酒、地産地消の料理とのマリアージュなどを体験し、酒造りだけでなく、風土や食文化の知見も深めます。
今回、注視した行程は、「宇佐神宮」に向かう前、「両子寺」からの時間。御奉納祭に向け、五感を研ぎ澄まします。
三和酒類身息心(しんそくしん)を整え、仏の世界から神の世界へ。
「両子寺」での体験の主は、座禅。では、座禅の目指すものは何か。それは、意識を集中させることです。
現代社会においては、マルチタスクのような身のこなしが美徳とされてしまいますが、果たしてそれが正しいのか。座禅はその真逆。ひとつのことに集中し、今ここに决する。その手法が呼吸です。
かのスティーブ・ジョブス氏もまた、禅の思想に触れ、その哲学を自身の生活と仕事に取り入れ、ビジョンと革新的なアイデアを追求し続けたひとり。
散漫となる意識を呼吸に集中し、身息心(しんそくしん)を整える。ゆっくりと口から息を吐き、ゆっくりと鼻から息を吸う。しかし、その反復は、簡単ではない。字のごとく、自の心が研ぎ澄まされてゆく。
実は、「両子寺」は「宇佐神宮」との関係が深く、寺の名はそれに由来しています。「宇佐八幡」には、5人の子がおり、その中の2番目と3番目は、大葉枝、小葉枝という男女の双子の神様。その双子は、「宇佐八幡」からこの地に下りたと伝えられ、山は「両子山」と呼ばれるようになり、その山にある寺ゆえ、「両子寺」に。
江戸時代には、「六郷満山」を統括する寺となり、「宇佐神宮」の庇護を受けながら、国東半島では「両子寺」を中心に神仏習合の信仰と寺院文化が発展。「六郷満山仏教文化」として根付いていったのです。
心身を整え、歴史を学び、一同は、仏の世界から神の世界へ。「宇佐神宮」に向かいます。
三和酒類鈴の音のごとく、清く鳴り響くシェイカー音。カクテル御奉納の儀。
全国には4万社以上あると言われている「八幡社」。その総本宮でもある「宇佐神宮」の始まりは、奈良時代まで遡ります。現在の場所に社殿を建立し、八幡大神を祀った神亀2年(725年)から数え、令和7年(2025年)、御鎮座1300年を迎えます。そんな「宇佐神宮」は、「三和酒類」にとって特別な存在でもあります。なぜなら、昭和53年(1978年)、創業20周年を迎える節目に本格麦焼酎「いいちこ」の命名披露を行った地だったのです。
「上宮」へ。清く凛と静寂な空気の中、「iichiko彩天」の祈願奉納祭が始まります。太鼓の音が鳴り響き、起立。「宇佐神宮」の古儀、二拝四拍手一拝。着座の時間においても、程よい緊張感が身体中を巡る。刹那、先ほど体験した座禅のような感覚が蘇る。ゆっくりと口から息を吐き、ゆっくりと鼻から息を吸う。体内から心音が響き、血液の循環すら感じる。身息心を整え、その時を待つ。
今回、特異な点は、カクテル御奉納という儀であること。シェイカーを振るのは、一般社団法人日本バーテンダー協会 会長であり、「BAR HIGH FIVE」の上野秀嗣氏。その音は、まるで鈴の音のごとく、場を清め、邪気を払うようです。
宮司の小野崇之氏もまた、「バーテンダーの方がシェイカーを振る音が、これほどまでに神々しいものか」という言葉を残しています。
そして、「本年は初物尽くし、100年に一度のことばかりでした。カクテルを御奉納いただくことは、宇佐神宮始まって以来。iichiko彩天が世界に向けて発信され、皆様方に親しまれるお酒になりますよう、衷心より祈念を致しております」と続け、滞りなく御神事を終えました。
三和酒類運命の連鎖。カクテル御奉納の意義。
今回、ひとつの疑問が生まれました。なぜ、「iichiko彩天」の御奉納だけではなく、カクテルの御奉納だったのか。これには、世界をキーワードにした「iichiko彩天」ならでは理由が潜んでいました。
実は、「三和酒類」が世界を目指し始めたのは、平成25年(2013年)。今回が初めてではありませんでした。しかし、良い結果を得ることができず、徹底的に市場調査。まず、米国を中心に浮き彫りになったことは、食文化の違いでした。
例えば日本の場合、飲食店において、食事と焼酎などの蒸留酒を楽しむことは一般的ですが、米国の場合、食事と合わせることはほぼなく、大きくスピリッツという市場展開はバー。加えて、日本の國酒でもある本格焼酎の認知度も低い。レストラン市場からバー市場へシフトする必要がある仮説を立てたのです。
そこから、バーテンダーや関係者にヒアリングを重ねます。「パシフィック・カクテル・ヘブン」のケビン・ディードリッチ氏やバーコンサルタントのジャクウォス・ベズイデンハウト氏などは、そのメンバーの一員。バー業界のトップランナーたちと協議し、「iichiko彩天」の骨格を形成していきました。
そこで、まずひとつ、大きな舵を切ります。アルコール度数です。一般的な焼酎の場合、度数は、20度〜25度が主流ですが、カクテルとして使用するのであれば、他の素材に負けてしまう。つまり、ウォッカ、ジン、テキーラ、ラムといった世界の蒸留酒と肩を並べる必要があったのです。「iichiko彩天」の度数は、43度。これは戦うための決断ではなく、勝つための決断ではないでしょうか。
しかし、ただ度数を上げれば良いわけではありません。日本の酒税法上、45度を超えると焼酎でなくなってしまいます。あえて、この度数に設定したのは、冒頭における、「日本伝統の麹のうまみを最大限に表現した本格焼酎」に対する、並並ならぬ想いも感じられます。あくまでも、焼酎として世界と勝負することに、「三和酒類」の意義があるのです。
「iichiko彩天」は米国市場での発売以降、ニューヨークやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどで活躍するバーテンダーから支持されるだけなく、BARのアカデミー賞と称される「Tales of the cocktail(2020年)」では、アジアの伝統的蒸留酒として初となるトップ10入りを果たします。そして、世界三大スピリッツコンペティション、英国「インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)(2022年)」ではトロフィー受賞、「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(2025年)」ではダブルゴールド受賞。そして、世界最大の蒸留酒品評会、米国の「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション(SFWSC)(2025年)」では、3年連続で最高金賞を獲得した銘柄のみ贈られるプラチナ賞も受賞。ようやく世界への扉を開いたのです。同時に、多くの専門家たちからも絶賛の声も寄せられました。
「アルコール自体が造り手の意図を反映している ※一部抜粋」ジョージ・ハリソン氏(ライター・IWSCスピリッツ審査会委員)
「iichiko彩天はアメリカ人にも好まれる。常にトップ3に入る人気メニュー ※一部抜粋」キャメロン・ウィンケルマン氏(Manhatta ヘッドバーテンダー)
「麹由来の旨味やアロマなどが生む複雑なレイヤーの豊かさは、カクテル作りに新たな風を起こすだろう ※一部抜粋」アダム・バーシック氏(シャングリ・ラ ホテル シンガポールOrigin Barバーテンダー)
日本展開より一足早く、世界に羽ばたいた「iichiko彩天」は、いわば、カクテル用焼酎スピリッツ。カクテル御奉納に結実した背景には、このような物語があったのです。そして、今回を皮切りに、さらなる高みを目指します。
「世界四大スピリッツと並ぶ焼酎の場を作りたい。そして、iichiko 彩天と共に、大分県宇佐市の文化を含め、世界に広めていきたい。それを、今日、この場からスタートさせることを誓います」と、御奉納を終えた「三和酒類」代表取締役社長の西 和紀氏は話します。
「宇佐神宮」にて行われた「いいちこ」の命名披露から約47年後、「宇佐神宮」御鎮座1300年の節目に行われた「iichiko彩天」カクテル御奉納の儀。まるで導かれるように重なり合った運命の連鎖。
天=世界に新たな彩りを加える本格焼酎。「iichiko彩天」の名にはそんな想いが込められています。
狼煙は上がった。本格的に天を彩るのはこれからだ。
Text:YUICHI KURAMOCHI
