今年も世界最大のテクノロジーカンファレンス、CESがラスベガスで開催された。 かなり遅いタイミングとなってしまったが、現地に参加したレポートをお届けする。 主要メディアを中心に多くの方々がかなり包括的な記事を書かれているので、僕自身は自分が感じたバイアス満載のぶっちゃけな「裏CES」という文脈でこの記事をお届けする。 メディアは教えてくれない裏CES そう。多くのメディアはどれだけ「凄い」テクノロジーやプロダクトが発表されたかに焦点を絞り、やや “盛った” 感じのレポートに終始している。 そうするのがメディアの役割であるためだからだが、場合によっては参加したレポーターの正直な感想が書きにくくなっているのではないだろうか。 実際に参加したメディア系の方々に聞いても「ぶっちゃけはこうなんだけど、建前上はこのように書いておかないと…。」という意見も実際にあった。 今回、この記事では、実際に参加して感じた、あくまで率直で個人的な感想をお伝えする。 規模は例年の2/3ぐらいかな? 今年の最終来場者数は11万人ちょっとで、去年の1.5倍から2倍ぐらいの規模らしい。 とはいうものの、コロナ前の状況から比べるとこれでも少し少ない印象を受けた。 実際に2019年まで利用されていたラスベガスコンベンションセンターのSouthとWestgateホテルは利用されておらず、フルスケール開催は来年かなー、という感じだ。 勿論、とはいえそれでもかなりの規模のイベントであることは間違いない。 猫も杓子もサステナかよ! 今回も一般展示が始まる2日前より始まるメディアセッションから参加させていただいた。 これらのセッションでは、プレスカンファレンスを通じて複数の企業がそのビジョンや新規プロダクトの「初お披露目」を行う。 セッションの直前キャンセルが相次いだ去年と比べて、今年は多くの企業がしっかりとメディア発表を行った。 参加したのは、Bosh, LG, Samsung, Panasonic, Canon, Hisense, TCL, Valeo, HD Hyundai, Omron Healthcare, SONY, AMD, BMW, そしてCES主催者がプレゼンする2023 Trends to Watch。 上記のセッションに共通しているのが 「サステイナブルへの取り組み」だ。 自然豊かな緑や地球の映像を投影しながら、我々はどれだけ環境に良いことをしているのかの説明が相次いだ。本当にそればかりで、後半は感覚が麻痺してくるレベル。 特にイベント主催者のCTAによるサステナ押しはすごかった。 というか、そもそも環境保護が重要なのであれば、ラスベガスで大量のエネルギーを消費し、世界中から飛行機に乗って10万人以上の来場者を集めるCESというイベントを開催すること自体がかなり非環境的な気もするが…。 優しくするのは人、社会、環境 では、具体的にサステナは何に対しての姿勢なのか?SDGsと同じく、あまりにぼんやり&ざっくりとしたコンセプトな上に、皆が語っているので、いまいちピンとこない。 でも今回はSamsung社がそれをわかりやすく説明してくれた。 サステナブル = 優しさであり、その対象は3つ。人、社会、環境である。 なるほど、会社の存在目的とビジョンをプロダクトを通じて表現していく。その対象は人であり、社会であり、環境であると。 デジタルツインだらけ 展示ブースを周っていてひときわ多かったのが、デジタルツインをコンセプトにしたもの。 自動車の車体や都市だけではなく、人間の体や脳の中身まで、あらゆるもののデジタルコピーを作成し、クラウド上に保管する。そして、その状況や内容を逐一管理できるという仕組みだ。 実際、どのような役割を果たすかはまだまだ未知数であるが、これからはリアルに存在すると同時にデジタル空間でも同じような存在が保持されていく時代になるかもしれない。 メタバースはまだまだ入り口 数年前より注目されているメタバースであるが、CES 2023ではもう新しいコンセプトのMoT (Metaverse of Things) が発表されていた。 これは、メタバースをより身近にするために、専用のVRゴーグル等のデバイスがなくても、家庭やオフィス、車の中でメタバースを体験できる仕組み。 一瞬何のこっちゃと思ったが、おそらく言いたかったのは、まだまだメタバースどっぷりの生活にはならないが、日々の中でメタバース的な体験に触れる瞬間は増えてくるよ、ということだろう。しかし、だからと言って完全に腑に落ちたかと言われると、まだやはり「何のこっちゃ感」は残った。 日本は世界のイノベーションチャンピオン「◯◯位」 今回のCESのキーノートでは、CTAによる世界のイノベーション先進国の発表が行われた。そのなもグローバルイノベーションチャンピオン。 さて日本は何位だっただろう? 正解は、25位。ランキングに入ったのは良いが、微妙な位置だ。経済規模や技術力を考えると少し低いのではと感じた。 日本が採点で特に低かったのは実に「ダイバーシティー」の項目だったそう。 AからEのグレードの中でなんと 「Dマイナス」の評価で、 これはかなり低い。 男女の格差や多様性に関しての課題が大きかったとのことだ。 みんな同じもの作ってるよね プレスカンファレンスや展示場を周って、気づいたことがある。 それは、「どの企業も近い領域で勝負している」ということ。言葉を変えると、カバーしている領域がどんどん被ってきている。 例えば、もともと家電をやっていたメーカーは自動車やヘルスケアの領域まで進出していたり、自動車ブランドが家電領域でサービスを提供し始めたり、といったものだ。 最もそれを象徴的に表現してたのがSONYのプレスカンファレンスにて発表された 、SONY Honda Mobility の自動車ブランドAFEELAだろう。 家電のSONYと自動車のHONDAがタッグを組んで作り出したハイブリッドモビリティーな感じのブランドである。 やっぱコンテンツがあると強い そんな感じで、みんな同じ領域に進出してる中で何が差別化要因になってくるのか? その一つが「コンテンツ」だろうと思う。 例えばFacebookは社運をかけてメタバース事業に乗り出し、社名もMetaに変更した。 しかし苦戦している。これは恐らく彼らがもともとコンテンツをほとんど持っていなかったからだろう。 デバイスやシステムがあっても、そこにキラーコンテンツが存在しなければ、ユーザーに利用する価値をあまり感じてもらえない。 その一方で、例えばSONYのような会社は、新しいデバイスをリリースしても、ゲームや映画といったコンテンツがあるので、一気に人気を集めやすい。 もしかしたら車の中でコンテンツをガンガン提供すれば上記のAFEELAも人気ブランドになっていくかもしれない。(運転していない時にグランツーリスモ用のレーシングシュミレーターとして利用できるとか…。) ブランド力が大きな武器になる時代 そしてもう一つの差別化要因はブランド力。 これだけ多くのテクノロジーが発達し、デバイスやパーツがコモディティー化していく中では、多くの企業が類似したプロダクトをリリースしていくことは避けられない。 例えばSamsungなんかは、日常家電からキッチン周り、ベッドルーム、バスルーム、ワークスペース、ベビーケア、シニアケア、ヘルスケア、スマート家電、モビリティーまで、本当に全部乗せである。 では消費者はどのような基準で興味を持ち、購入を検討するのだろうか?それは恐らくブランド力に違いない。 「何を作っているのか」よりも、「誰がなぜ作っているのか」が重要な差別化要素になってくると思われる。 「水」に関してのプロダクトが多い 去年まではあまり目立たなかったが、今年複数見られたのが「水」を作り出すデバイス。 これもやはりサステナビリティ文脈からくる環境保護への取り組みの一つだと思われる。 それらは空気中の水分を集め、飲料水を生み出す仕組み。軽く見ただけでもフランス、アメリカ、韓国の企業が同じようなデバイスを製造・販売している。 やっぱ韓国めっちゃ強いよね 数年前まではCESといえば中国企業満載のイベントだった。 しかし3年ほど前の華為をきっかけにアメリカと中国の関係性が微妙になっていくにつれ、一気に中国企業の展示数も減った。 それに代わって激増したのが韓国企業。 もちろん以前よりSamsung, LG, Hyundaiのような大企業は展示していたが、それ以外のスタートアップや中堅企業、そしてそれぞれの地域や産業を代表する団体まで、至る所で韓国企業発の展示が見られた。 これには米国市場に対して、国としての強い覚悟と勢いを感じた。 日本企業は視察だけで展示しない! それに対して、日本企業で展示しているところは多くなかった。 […]