投稿者アーカイブ: Brandon K. Hill

【今さら聞けない】デザインがビジネスにこれほど重要な理由

経営におけるデザインの重要性が叫ばれるが具体的な成果があまり出ていない デザインがもたらす7つのメリットとは? なぜデザインがイノベーションに不可欠なのか? 企業内にデザインを浸透させるための7つのポイント グローバル規模でデザイン的競争力をあげるには デザイン思考やデザイン経営などのバズワードが巷にあふれ、オープンイノベーションやデジタルトランスフォーメーションなどのカタカタキーワードが羅列される。そんな状況で実際に結果としてどのようなアウトプットが生み出されているのか?おそらく、日本国内で働いている人たちのその多くが、上記のようなトレンドとに関する取り組みに少なからず関わったことがあることだろう。 その一方で、デザインがプロダクトや企業経営に対して具体的な結果として効果を生み出した事例は、日本国内で見渡してみると驚くほどに少なく感じる。その一方で、グローバル規模で考えてみると、デザインのビジネスに対する利点は具体的な数字としてクリアになってきている、 参考: 統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ そのギャップを少しでも埋められないかと思い、我々btraxでもfreshtraxのようなメディア、DESIGN for Innovationに代表されるイベント、そして、デザインサービスを通じて、日本企業の国際的デザイン競争力の向上に寄与できないかと試みている。 今回は、先日開催されたイベント、DESIGN for Innovationの総括として、最も基本的な事柄である、なぜデザインが企業の経営やビジネス全体に重要な役割を果たしているのかを今一度まとめてみることにした。 デザインがもたらす7つのメリット “良い”デザインが大切な理由を考える際に、そこからどのようなメリットを得るかがわかると理解しやすい。大きく分けると恐らく下記の7つに集約されるだろう。 1. ユーザビリティー向上 直接的な効果として、商品やソフトウェアなどの使いやすさが向上する。例えば、リモコン1つとってみても、ボタンの数が少ない方が使いやすい。デザインの質を上げれば、単純により使いやすいプロダクトになる。 参考: 優れたユーザビリティを実現する25の基本概念 2. 効率性の向上 ソフトウェアが使いにくいために、作業効率が下がってしまった経験はないだろうか?特に業務用システムの場合、どうしてもセキュリティーや安全性を優先することで、使いやすさが犠牲になってしまうことも多い。その一方で、シリコンバレーの企業を中心に、最近では、効率性を高めるデザインに注目が集まってきている。 日本でも働きかた改革などの影響で、労働時間を減らす傾向にある。その一方で、求められる結果は同じであることも多い。少ない時間で同じ結果を得るには、より効率化を進める必要が出てくる。そこで必要になってくるのが、より優れたデザインを採用したツールや環境だったり、プロセスだったりする。 参考: 【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは 3. 安全性の向上 デザインの品質が悪いと、時に人の命も奪う結果につながってしまう。2016年の夏にロサンゼルスの郊外の自宅の入り口付近で、27歳の俳優が死亡した。それも、自身が運転していた車に押しつぶされて。どうやら、彼は一度自動車を停め、自宅のゲートを開けようとしていたところだったと推測された。 なぜこんなことが起こったのか?調査によると、彼の2015モデルのジープはリコール対象になっていた。原因はそのシフトレバーのデザイン。パッと見では”P (パーキング) “に入れていることがわかりにくい事で、それまでにも100件ほどの事故が発生していたという。間違ったデザインが安全性を下げてしまった例である。 参考: UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – 4. 競争力の向上 現代において、多くの企業が脅威を感じるライバル的存在に共通しているものは何か?おそらく、そのデザイン性の高さだろう。例えば、テクノロジー業界で考えてみると、世界的にユーザー数の多いTop 7社 (Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft, Salesforce, Oracle) のすべての会社には専属のデザインチームが存在しており、ブランディングからプロダクトのユーザー体験までを横断的に管理している。そうすることで、より多くのユーザーを集め、最終的な企業競争力を高めている。 そうなってくると、デザイン性の高さそのものが企業にとっての武器となる。一昔前は、Appleのプロダクトを愛していたのは一部の強烈なファン層だけだったが、いつの間にかマジョリティーの消費者がiPhoneを利用するようになった。高いデザイン性を提供するプロダクトでないと利用されなくなってきている例だ。 参考: 【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか 5. 利益率の向上 優れたデザインやユーザー体験を施したプロダクトづくりができれば、多くのユーザーを獲得する事ができる。自ずと結果として、売り上げや利益の向上に繋がる。特に利益率については、Appleの製品が競合のものよりも割高であ事から考えてみても、高い利幅を獲得していることは想像に難くない。 実際のリサーチ統計を見てみても、デザインへの投資は具体的な数字として表れ始めている。 製品デザインへの投資が1%増えるごとに、売り上げと利益は平均して3-4%増加する。(ロンドン・ビジネススクール) デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっている。 (マッキンゼー) デザイン的アプローチを経営の戦略に積極的に取り入れている状況企業の株価の伸び率が、S&P 500全体平均と比べ10年間で228%高くなっている。(Design Value Index Results) 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 6. ウェルネス向上 デザインの意外な役割として、人々の心に対してのポジティブな効果もある。特に最近は、デジタルデバイスとソーシャルメディアの普及で、人と接する時間よりも、デバイスと過ごす時間の方が多くってきており、精神的に疲れている人が増えている。それを癒すのもデザインの役割りだ。 シリコンバレーの企業の中には、「自分たちのサービスは、果たしてユーザーの人生にポジティブな影響を与えているのか?」と疑問を感じるところも出てきている。特にデザイナーたちからは、「お金儲けのために、ユーザーの人生を台無しにしてしまっていないか?」との意見もある。 特にUXデザイナーの間では、エシカル (倫理的な) デザインの概念が議論され、すでにプロダクトに採用しているケースもある。 そしてすでにAppleのScreen TimeやGoogleのFocus Modeなど、ユーザーのより良い人生 (ウェルビーイング) のためのデザインが進んでいる。 参考: デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは? 7. クオリティーオブライフ、クオリティーオブワークの向上 そして最終的に優れたデザインは、日々の生活の品質や仕事をしている時間の価値の向上にもつながる。住環境やオフィス環境のデザイン要素を改善することで、より充実した日常生活を送ることができる。昨今話題のWeWorkがそのデザインにこだわりまくっている理由も理解できるだろう。 最近我々btraxも、コミュニケーションがより促進されるデザインへとオフィスの一部をリニューアルした。   View this post on Instagram   参考: ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法 デザインとイノベーションとの関係 そして、今回の本題である昨今叫ばれているビジネスにおけるデザインの重要性であるが、その背景にはテクノロジーの進歩と、ユーザーの期待値の上昇があると考えられる。 時代が進むにつれ、テクノロジーが進化し、ムーアの定義で説明されているように、どんどん新しく優れたテクノロジーが普及する。それに伴い、ユーザーの日常生活にテクノロジーが入り込み、特別なことではなくなってくる。言い換えると、加速するテクノロジーのコモディティー化が急速に加速していく。 結果として、商品やサービスから提供されるユーザー体験に対する消費者のの期待値はどんどん高まる。企業側は、その期待値にどのように対応できるか = デザイン的な熟成が進むかが、向こう5年以内の勝負の分かれ目となってくると考えられる。 ユーザーが求める体験を提供できる企業は勝ち残り、そうでないところは衰退していくのは明白だ。そのためには、いち早く、企業内にデザインを”インストール”する必要が出てくる。 企業にデザインをインストールための7つのポイント では、実際に社内にデザイン的考え方を浸透させるためにはどのようにな方法があるだろうか?おそらく下記の7つが必要とされると思われる。 […]

こんまりから学ぶグローバル進出3つのポイント

今週サンフランシスコの中心部に位置する大規模なイベント会場で、楽天が毎年主宰しているカンファレンス、Rakuten Optimismが開催された。代表の三木谷さんに加え、目玉ゲストとして、こんまりこと、近藤 麻理恵さんが出演した。
アメリカにおけるこんまりの人気は異常で、CBSの人気番組、The Late Show with Stephen Colbertをはじめとして、全国ネットのテレビ番組に複数出演したり、自身のNetflixチャンネルを提供したりもしている。そして、このイベントで最もオーディエ…

【インスタ、エアビー、Slack等】人気サービスの初期ユーザー獲得方法

現在では世界中で数100万人以上のユーザーから絶大なる人気を誇っているサービスにも、必ず初期ユーザーがいたはず。多くのサービスがユーザー獲得に苦しむ中で、人気サービスはどのようにして無名の頃にユーザーを集めていったのだろうか? それぞれのサービス内容や時代背景によって、そのユーザー獲得方法は異なるが、全てに共通しているのは、かなりユニークな方法を取っているという事。今回は現在人気になっている下記の32サービス企業のユーザー獲得方法を紹介する。 Airbnb Alibaba Amazon Apple DoorDash Dropbox Facebook Firefox GitHub Groupon Gumroad Hotmail Instagram Intercom Microsoft Mixpanel Paypal Pinterest ProductHunt Reddit Salesforce Skype Slack Stripe Tinder Trello Twitch Twitter Whatsapp WordPress Zapier Zoom Airbnb 初期ユーザー獲得方法: ブロガーへのコンタクト サンフランシスコ市内でデザインカンファレンスが開催された際に、市内のホテルがソールドアウト状態に目をつけたファウンダーの3人が、一緒に住んでいたアパートの家賃を稼ぐために3つのエアベッドを貸し出したのがきっかけ。 そのデザインカンファレンスの来場者に知ってもらうために、デザイン関連のブログにかたっぱしからメールを出し、記事にしてもらった。直後に最初の宿泊者を獲得。まだ具体的なサービスができていない状態であったが、その時のアイディアをその後AirbedandBreakfastというサービスに進化させ、カンファレンス参加者たちをターゲットとして広がっていった。 ちなみに、初期の段階はではホスト側のユーザーが実際にエアベッドを設置することが義務付けられていたという。 参考: デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス Alibaba 初期ユーザー獲得方法: 電話営業&対人での対応 ネットがビジネスに使われ始め、Eコマース黎明期の時代に、ジャック・マーが大学の友人と共にオンラインマーケットプレイスを作るべく始めたのが、Alibabaである。彼らは片っ端から店舗ユーザーに電話営業を行った。初期の頃は、店舗側が直接メーカーに訪問をしてからアカウント作成をしていた。その際には、Alibabaのスタッフがプラットフォーム上に商品の掲載する方法を教えていた。 こうすることで、初期ユーザーからのフィードバックを得たり、システムの不具合や使いにくい点を目の当たりにすることができたことで、サービスの改善につながっていった。 参考: アリババ創業者 ジャック・マー 成功への10の秘訣 Amazon 初期ユーザー獲得方法: 口コミ オンラインで書籍を売るモデルでスタートしたAmazon.comであるが、その頃にはすでに世の中にはいくつかの類似サービスが存在していた。開発に関わった人々全員が、サイトのURLを家族や友人に送ることで、その存在を知らせた。それが、初期の売り上げにつながった。 Amazonで一番最初に買い物をしたのは、John Wainwrightという名前の男性。実は当時のスタッフの元同僚であるJohnにAmazonを紹介したことで、1995年の4月3日に科学系の本を購入。最初の顧客ということで、現在でもシアトルのAmazon本社には彼の名前のついたビルが存在している。 参考: Amazonを成功に導いたユーザーを夢中にさせる4つのUXデザイン要素 Apple 初期ユーザー獲得方法: 地元の展示会で発表 ファウンダーのジョブズとヴォズニアックがDIYで作成したサーキットボードをHomebrew Computer Clubと呼ばれる地元の展示会で発表したことで、パソコン販売店を営んでいたPaul Tellerと出会う。そこで、単価$500×50ユニットの受注を受ける。 当時パーツを仕入れるお金が無かった二人は、大手製造業者に納品30日後の支払い条件での部品提供契約を取り付ける。それにより、30日以内に50台のサーキットボードを作り上げ、納品時に売り上げを受け取ることで資金を繋いだ。 参考: Apple, Google, ディズニーも最初はこんな小さなガレージからスタートした DoorDash 初期ユーザー獲得方法: ローカルSEO 出前代行サービスとして急成長を続けるDoorDashは当初小さなデリバリー会社だった。しかし、アメリカではレストランが出前をすることが一般的では無かったことに目をつけたファウンダーが、シンプルなLPを作成し、そこに地元 (Palo Alto) のレストランのメニューに彼らの電話番後を記載したPDFをアップした。 同じ地域のユーザーがレストラン名で検索すると、彼らのサイトがヒットすることが増え、ユーザーが集まった。また、当時はデリバリーも自社スタッフが行っており、直接ユーザーと対話することで、サービス改善につなげた。 Dropbox 初期ユーザー獲得方法: 動画マーケティング+ウェイティングリスト 初期のベータユーザー向けに、ウェイティングリストを掲載したLPを作成。そこにユーザーを集めるために、Dropboxのサービスコンセプト動画を作成し、多くのスタートアップ関係者やエンジニアがチェックするHackerNewsに動画リンクを貼ることで、5,000ユーザーがリストに申し込んだ。 その後、動画+ウェイティングリストの戦略を繰り返すことで、より多くのユーザーを獲得した。 Facebook 初期ユーザー獲得方法: 個人的な招待+口コミ 有名な話であるが、初期のFacebookはザッカーバーグの通っていたスタンフォード大学の学生向けのサービスとして開始した。初期の頃はThe Phoenixと呼ばれるサークル内を中心に、ファウンダー達のクラスメイトや友人がユーザーとなり広がっていった。 2004年の2月のリリースから1ヶ月以内で、ハーバード学生の約半分が利用を開始し、その後スタンフォードやコロンビア、イェールといった大学にも広がっていった。 参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは Firefox 初期ユーザー獲得方法: 既存のコミュニティーへのシェア Firefoxがリリースされた当初は、Mozillaプロジェクトの1つのサービス的位置付けだった。彼らは、ブラウザーのダウンローダブルリンクをFTPサイトに掲載した。当時、FTPサイトは、ファイルをダウンロードするためのディレクトリ的役割を果たしており、既存のユーザーに対していち早くプロダクトの存在を知らせることができた。 その後、多くのブログやニュースに取り上げてもらうことで、一気にユーザー数を増やした。 GitHub 初期ユーザー獲得方法: 口コミ+公開プロフィール GitHubが2008年にリリースされる頃には、すでに6,000人ほどのベータユーザーを獲得してた。デベロッパー向けのオープンプラットフォームであるGitHubは、その性質上、デベロッパー同士で、コードの共有リンクをシェアし合うようになり、リンクを受け取ったユーザーがベータユーザーとして登録し始め、募集開始から約二ヶ月あまりで、6,000人のベータユーザーを獲得した。 参考: CEOが自ら語った「イノベーションを起こすためのGithubの哲学」 Groupon 初期ユーザー獲得方法: フライヤー ファウンダーのAndrew Masonは、元々政治関係のプラットフォームを作成していたが。投資家の一人がAndrewにお金を設ける方法を学ぶ必要があると考えた。Andrewは入居者向けに、同じオフィスビルのピザ屋さんの半額フライヤーを配ったところ、フライヤーに掲載していたLPのアドレスから複数のユーザーがサインアップしたことで、Grouponの原型となるサービスの初期ユーザーを獲得した、 […]

デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説

デザイン思考は基本的なマインドセットであり、イノベーション創出のための万能な方法論ではない デザイン思考を学んで終わりにしない。「当たり前」にし、そのあとの行動に移してやっと価値が出てくる デザイン思考に倣うだけでは心に響くプロダクトは生まれない イノベーションに必要な要素 = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション みんな頑張ってデザイン思考を会得しようとしている デザイン思考の重要性が一般的に浸透し、多くの企業が何らかの方法でその手法を社内に取り入れようとしている。有望な若手を1日のデザイン思考ワークショップに参加させたり、経営陣自らがデザインの重要性を学ぶためのセミナーを受けたりなど、それなりの活動を進めていることが多い。 やってみたけど結果が出ない? しかしここに来て、多くの企業の方々から聞こえてくるのは、「それなりにやってはみたものの、イマイチ結果につながっていない」と言う課題。そもそも、ここでの”結果”とは何を意味するのか? よくよく聞いてみるとそれは、「デザイン思考を活用した画期的な事業の創出」だと言う。おそらく彼らは、デザイン思考を取得すれば、今まで不可能だったようなアイディアや、ビジネスモデルが生まれると考えているのだろう。 実はそれは大きな間違いなのかもしれない。「ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決」でも説明されている通り、そもそもデザイン思考は基本的なマインドセットであり、万能なメソッドではない。と言うことは、デザイン思考自体は、あくまでイノベーションを生み出すための”下地”であり、方法論ではない。 言い換えると、デザイン思考を学んだだけでは期待する結果を得るのは難しい。実際に活用しながら試行錯誤していく必要がある。我々が提供しているデザイン思考をベースとしたワークショップでも、数ヶ月にわたり実際にスタートアップサービスを作りながら、やっとヒットするサービスの糸口を掴みかけるような状態なのである。 グローバル的には多くの成功事例が生まれている その一方で、「統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ」を見てもわかる通り、デザインを経営に導入することのメリットがあるのは明白なのである。 具体的な経営的な数字でデザインの重要性が明確になればなるほど、世の中の多くの企業たちが、ビジネスにおけるデザインの重要性に着目し、自分たちも乗り遅れないように何らかの試作をしなければ、と考え始めるのは当然の流れだろう。 そもそも何がデザイン思考なのかがわかりにくい そんな世の中の流れもあり、最近の日本では、猫も杓子もデザイン思考を叫び、本屋さんには関連した本が平積みされている。コンビニでも思わず「デザイン思考ください」と言ってしまいそうになる。 その一方で、何がデザイン思考なのか?それはどのようなメリットがあるのか、に関しては明確かつ統一した理解がない。そもそも、その概念自体が広すぎて、人によって解釈が違うし、利用方法も違う。そして、デザイン思考という概念自体が本来そうあるべきである。 なぜなら、デザイン思考は厳密なプロセスやルールなのではなく、参考程度に活用するべき考え方であるから。なので、「デザイン思考とは?」と聞くこと自体が愚問である。 ↑ 数多く出版されているデザイン思考関連の書籍 実は一番困惑しているのは現場のデザイナー達 デザイン思考って何?と言う質問に一番困惑するのは、もしかしたらデザイナー達だろう。そもそも、自分たちが今まで情熱を持って、長い年月を費やしてやってきた事が1つのブームになり、デザインの”デ”の字もわからないお偉いさんが、知ったかぶりで「やっぱデザイン思考だよねー」って擦り寄ってきても、「は?」と思ってしまうこともある。 それだけデザインは奥が深く、一朝一夕で身につくものでもない。それを、昨今のトレンドにより、誰でも簡単に学ぶことができ、ビジネスに即効性があると思われると、かなりしんどい。そして、昨今の社内デザイナー達は、他のスタッフにデザイン思考を教えることに毎日奔走し始めている。そうなってくると、本来やりたかったデザインの仕事がなかなかできなくなり、モチベーション低下にも繋がりかねない。 また、経営の現場に単純にデザイナーを突っ込めば全てが解決するわけではない。なのに、成功している会社の多くはデザインを経営に活用している、と言う理由だけで、なぜかデザインは万能な魔法のような捉え方をしているケースも見受けられる。 社内にしっかりとデザインを浸透させたければ、まずはスタッフのマインドセット、次にカルチャー変革が求められる。 そもそも、デザイン思考を社内に浸透させたければ、デザイナーよりもファシリテーター的な役割の人が行う方がよっぽど効果が高い。我々、btraxでも、デザイン思考ワークショップを提供する際には、ファシリテーターがメインで進めていくようにしている。 ↑ ファシリテーターがリードするbtraxでのデザイン思考ワークショップの様子 スタートアップ業界ではすでに”母国語”化している ちなみに、サンフランシスコやシリコンバレーのスタートアップ界隈では、今更デザイン思考を学んだりはしない。自分を含め、ここに長く住んでいる人たちにとってみると、デザイン思考的な流れでサービスを作るのがあまりにも当たり前のやり方すぎて、いまさら体系立てて学ぶことはあまりしない。 サービスを考えるときに、特定のユーザーのニーズにフォーカスを当てるのは当たり前だし、短いスパンでプロトタイプを作成し、ユーザーテストをするのも当たり前。アイディア段階でカフェに行って横に座ってる人からフィードバックをもらいながら改善したい、よりふさわしいユーザーを紹介してもらったりするのも日常茶飯事である。 それはまるでデザイン思考がすでに我々にとっては”母国語”になっており、努力して会得するものでない感じなのだ。例えると、英語を学んでいる人は、その文法から発音までを論理的に身につけようとするが、生まれつき喋れる人は、逆にそんなややこしい部分は気にも止めない。 海で生まれた魚は、泳ぐことを一から学ばないのに似ている。「Fishes can swim」ではなく、「Fishes swim」となる。同様に、スティーブ・ジョブズが一からデザイン思考を学んだとは想像しづらい。 デザイン思考を会得してやっとスタートラインに立てるレベル ここで気付いた方もいるかもしれないが、「英語が喋れる = グローバル」ではない。それは単純に海外の人とのやりとりをしやすくなっただけであり、そのスキル自体はコミュニケーションの第一歩でしかない。これは、「デザイン思考 = イノベーション」ではないのに似ている。 イノベーションを生み出している企業がデザイン思考を活用してるのは間違いない。しかし、それはあくまで基本中の基本ができているだけであり、万能ではない。デザイン思考プラス何かがなければ、求める結果を得ることは非常に難しい。 デザイン思考は”思考”ではなく、”行動”であるべき これはその呼び方が大きな問題がるのかもしれないが、デザイン”思考”を通じて結果を出したければ、早い段階で、考えることよりも、行動に移す必要がある。下記のダイアグラムを見てもわかる通り、デザイン思考のプロセスにおいては、多くの箇所で行動が求められる。そして、それを短いサイクルとして、グルグル回す必要がある。ちなみに、デザイナーに求められる能力の1つが、短時間でどれだけ多くの量のアウトプットを出せるかである。 以前にアメリカで被験者を2つのグループに分け、一定時間内に陶芸を作る実験を行った。Aのグループには、「最も優れた作品を作ってください」と伝え、Bのグループには、「作品の質ではなく、使った粘土の量が多さで評価します」と伝えた。すると、Bグループの方が最終的には、より優れた作品を作った結果となった。トライアルアンドエラーを多く繰り返した方が良いものが出来上がりやすかった。 デザイン思考でも、どれだけの量の失敗を繰り返せるかが重要で、座学よりもアウトプット重視するべきである。 しかし、デザイン思考を”思考”のままで終わらせているケースが後を絶たない。優れたプロダクトを生み出したければ、頭で考えるより、まず行動。習うより慣れよ、が求められる。なのに、デザイン”思考”と名付けてしまったのが誤解を生み出す1つの原因になってると思われる。 ↑ 思考よりも行動が重視されるデザイン思考のプロセス 実際の現場はかなりカオス 実際のところ、デザイン思考を活用しても、その成功率は必ずしも高くは無い。しかし、プロダクトが生み出されるのに要するコストと時間が短縮されるので、長期的にみると良い結果につながる。 そして、議論よりも行動重視でプロダクト作りを進めている現場は、想像ができないぐらいに、はちゃめちゃであり、またそうあるべきである。プロセスの行ったり来たり、コンセプトの練り直し、ニーズの再認識は日常茶飯事で、チーム内のいざこざや、感情のぶつかり合い、仲間割れも珍しく無い。 それが本当に良いものを生み出すためのクリエイティブなプロセスなのであるが、和を大切にする日本の文化や、大企業のエリート経営陣にはなかなか理解のしづらい部分でもある。 会社がカオスな状況を許容してくれない限り、良いものは生まれづらい。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞってできたプロダクトは面白味がない これはとても主観的な感想になるが、デザイン思考の教科書に従って、お勉強した内容を元に、そのプロセスを丁寧になぞって作り上げらたプロダクトは、妙に”のっぺり”としている。そして世の中にある他のサービスにかなり類似したものが出来上がる。何か一味足りない。スパイスが効いていない感じがする。 なぜか?多くの場合、作っている人たちが本当に作りたいものを作っていない場合があるから。教科書に書いてあるやり方をしっかりと踏まえ、間違えの無いように1つ1つしっかりと検証して作ったとしても、そこに強い情熱や想いが無ければ、なんかつまらない物が出来上がる。 作る側に強い愛情が無いと、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、”つじつまのあう”プロダクトは作れるかもしれないが、なぜか心に響かないものになりがち。単純にデザイン思考のプロセスを踏まえ、ユーザーが欲しいと言ったものを作ったところで、それは単なる御用聞きプロダクトになってしまいがちである。 参考: お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い デザイン思考は音楽におけるカノン進行みたいなもの この感覚、何かに似ているなー?と思って考えてみた。そうそう、それはまるでカノン進行を活用したヒットソングっぽい。カノン進行とは、パフェルベルのカノンと言うクラシックの名曲に利用されているコード進行。それが、日本人の耳に妙に心地よく聞こえることから、そのコード進行をベースに作曲するとヒットソングを生み出しやすいと言うことで、多用されている。 ミュージシャンの間でも、「ヒットを生み出したければ、カノン進行を使えばなんとかなる」とされるが、同時にそれは禁断の果実でもあり、妙にどっかで聞いたことのあるJ-Popソングになりがちで、イマイチ面白味がない作品になってしまう。 うまくいかないケースに欠如しているのは何か? では、本題に戻って、なぜデザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれないのか?おそらく、ここで重要なのが、そこに強い情熱があるか無いか。企業の新規サービスを作る際には、もちろん最終的な売り上げが重要になってくるのだから、ヒットを狙って物づくりをする必要が出てくる。それにデザイン思考が用いられる。 その一方で、本能的にデザイン思考を取り入れているスタートアップの多くは、初めから売り上げを意識しない。むしろ特定のユーザーや社会、そして作っている人たち自身が強烈に感じている課題を解決するための手段として、プロダクト作りをする。そこには、他の人ではなかなか持つことのできないレベルのパッションがあり、それが大きな原動力となる。 強いパッションがあれば、物凄い勢いでニーズの深掘りを行い、素早く試作品を作り上げ、テストを繰り返す。そして、その結果に合わせて、どんどん改善やピボットを行う。それはまるでアーティストの自己表現にも通じるものがあり、ヒットソングを狙った理詰な作業とは異なる。 イノベーションに必要な要素とは デザイン思考だけではイノベーションが生み出されないとしたら、他にどんな要素が必要になってくるのだろうか?おそらく、それには、下記の要素が求められると思われる。 マインドセット: デザイン思考自体がそもそもプロセスというよりは、基本的に理解しておくべきマインドセットである。それぞれのメンバーが、ユーザー視点の考え方をしっかりと理解し、会社の利益の前に課題解決のためのマインドセットをしっかりと共有しておく必要がある。 カルチャー: 次に、チームや組織におけるカルチャー的要素。自由に発言しやすい心理的安全性と、失敗を許容する考え方。そして、机上の空論よりも、速いスピードでアウトプットを評価するカルチャーが求められる。 パッション: 最も重要な要素になってくるのが、プロダクトやサービスに対する情熱。自分たちが本当に解決したい課題に対してのソリューションの具現化としてのプロダクトであること。そして、そこに他の人たちよりも強い情熱を注ぐ必要がある。 アクション: そして、上記の3つの要素をしっかりとアクションに移すこと。アクションの部分が無ければ、全てがゼロになってしまう。どれだけ強い情熱を持っていても、検討の結果、見送ることにした場合、アウトプットはゼロである。 結論として、イノベーションを生み出すためには、下記の方程式が必要になってくるのでは無いかと思う。 イノベーション = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション デザイン思考を上手に活用している秘訣を学ぶイベント もちろん、実際にうまくいっているケースも多数ある。その1つを紹介するのが、11月5日に東京で開催されるDESIGN for Innovationでの下記のセッション。詳細は公式サイトにて紹介されている。 『デザイン思考を利用したグローバルイノベーション創出方法』 日本が世界に誇るモビリティー企業であるHONDA、YAMAHAの2社が急激に変化をしている市場にて、どのような方法で生き残り、成長を続けるのか。デザイン思考的アプローチや、社外のスタートアップとのコラボレーションなど、最先端の取り組みを紹介。 日本国外のユーザーの心を掴むプロダクトの秘訣とは。それぞれの企業にて、従来とは異なるアプローチからイノベーションに取り組んでいる2名が、どのようにこれからのユーザーに受け入れられるプロダクト作りをしていくのかを語る。 杉本 直樹氏 / CEO、 本田R&Dイノベーションズ / 執行役員 統括機能本部 オープンイノベーション戦略担当、 株式会社 本田技術研究所 長屋 明浩氏 / 執行役員デザイン本部長、ヤマハ発動機株式会社 […]

最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾

最近になってYahoo本社のロゴがまたアップデートされた。Yahoo! Japanのロゴはかなり長い間変更されていないのに。これはいかにも、変化スピードの速いシリコンバレーを象徴するようだ。なるべくゆっくり進むことが多い日本文化と比べてみても、企業の平均生存率が15%であるアメリカでは、”変化しない=死”を意味することもあり、ロゴのアップデートもかなり頻繁に行われる。

↑ 最近アップデートされたYahooのロゴ
時代の変化に合わせてロゴもアップデート
ではなぜロゴを変える必…

統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ

ここ数年で経営に対するデザインの重要性に注目が集まっている。デザインを経営に活用している企業の株価の伸びが平均値の2倍以上であったり、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているなど、その結果が具体的な数字に表れ始めている。 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザインと経営に関する最新のリサーチ結果 そんな中でも、デザイナー向けのプロトタイピングツールを提供するInVisionが、これまでにないレベルの世界規模でのデザインに関するリサーチを発表した。The New Design Frontierと名付けられたこのレポートでは、世界中のさまざまな規模の企業や団体をリサーチを実施した。 リサーチ対象の内訳は、大企業:71%、エージェンシー:25%、非営利団体:2%、行政:1%で、金融や教育、エンタメなどの異なる24の業界から2,200を超える団体。 70%の企業が積極的に経営に対してデザインを活用してる その結果、全体の2/3以上が、デザインを機能や見た目以外にも活用しているという事がわかった。全体の70%の企業が商品の開発や企業経営のプロセスにデザイン的考えを導入していると答えている。 デザインの浸透に関する主なアンケート結果: 商品開発プロセスに組み込まれている: 66% デザインリーダーが商品開発やエンジニアリーダーと連動している: 53% 従業員がデザインプロセスに参加している: 51% 重役がデザインプロセスに関わっている: 49% 従業員がユーザーや顧客リサーチに関わっている: 48% デザインが経営に与えるインパクトが理解できる統計 また下記の通り、デザインの経営に対する効果としては、効率、利益、ポジショニングなどに加え、3/4近くの企業がデザインを通じて顧客の満足度とユーザービリティが改善されたと答えている。(サンプル数:2,229団体) 商品のクオリティに対するインパクト ユーザビリティ改善: 81% 顧客満足度向上: 71% 業務に与えるインパクト 社員の作業効率の向上: 33% 商品の市場リリーススピードの向上: 29% 会社の利益に対するインパクト 売り上げの向上: 42% コンバージョン率の向上: 35% コスト削減: 30% マーケットポジショニングに関してのインパクト ブランド価値向上: 39% 新しい市場参入への効果: 25% デザインパテントや知的財産権への効果: 13% 評価額や株価への効果: 10% 組織内におけるデザイン熟成度と経営へのインパクトにおけるデザインレベルとその効果 このレポートでは、企業や組織がどれだけデザインを業務や経営に活かしているかによって、会社自体のデザインレベルを5段階に分けている。その結果、経営に対してデザインのポテンシャルを最大限に引き出しているLevel 5に入るのは、全体のわずか5%にとどまった。 全体の80%の企業が常にデザインを企業内の何かしらのプロセスに導入している中で、実に95%はまだまだデザインを活用する余地が残っている。 デザインの活用度合いレベルと全体での割合 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% Level 2 – 定期的にデザインワークショップを実施している: 21% Level 3 – 業務プロセスにデザインが導入されている: 21% Level 4 – 絶え間ない仮説検証が行われている: 12% Level 5 – デザインこそがビジネスの根幹になっている: 5% 組織が大きくなるほど経営戦略へのデザイン導入難易度が上がる 組織の規模が大きくなればなるほど、デザインを経営に浸透させる難易度が高まる。例えば、大企業と比較した場合、最高レベルであるLevel 5の比率は、中小企業で2倍、小規模企業で3倍ほどの開きが見られる。 多くの大企業は、組織構造やプロセスが複雑化しており、経営に対してのデザインの導入に時間がかかる結果となっている。 デザインチームの大きさと経営へのインパクトは必ずしも比例しない 上記のデザインレベルにて、高い数字を達成している = 経営へのインパクトが大きい企業におけるデザインチームが必ずしも大きいとは限らない。 重要なのは、組織内でどのような影響力を持ち、経営陣からのサポート受けているかであり、デザイナーの数や大きさだけではそのインパクトを測ることはできないと言う結果が出ている。 言い換えると、むやみに多くのデザイナーを採用したとしても、そこにしっかりとしたプロセスとカルチャーがない場合は、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあるのだ。逆にたとえデザイナーの数が少なくても、経営に有効活用することが十分可能と言うことである。 デザイン経営に遅れを取るアジア諸国 企業に対するデザインの浸透度合いを地域ごとに見てみると、大きな違いは見られないが、主に北アメリカとヨーロッパが経営戦略にデザインを活用しているLevel 5の率が他の地域と比べ比較的高い。 その一方で、南米とアジア地域は、中間レベルのLevel 2, 3はそれなりの比率となっているが、Level 5はそれぞれ1%、 3%と低い数字となっている。 それぞれのデザインレベルのメリットと改善点 では、それぞれのデザインレベルごとに、ユーザーや企業にとってどのようなメリットがあるのか、そして、次のレベルに上がるにはどのような点が課題となっているかの詳細を紹介する。また、それぞれのレベルにおける平均デザイナー数の調査結果も掲載してみた。 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% デザインを活用することで、主にUIなどの画面やプロダクトの見た目の改善を行っている。一昔前は、デザインレベルが低い=デザイナーが足りない、といのが一般的な理由であった。 しかし、レベル1に属する組織のデザイナーの数は平均30人。これは最高レベルであるレベル5組織のそれの倍であり、デザイナーの数がデザインレベルに比例するわけではないことがわかる。 Level 1では、デザイナーの影響範囲はかなり狭く、主にスクリーン上などでの”見た目のデザイン”にとどまっているケースが多い。 平均的なデザイナー数: […]

ロゴにおけるデザインの重要性がわかるマッシュアップ例

以前に「君の名は」がテレビ放送された際に、そのストーリーに合わせて、提供企業のロゴが入れ替わるという演出がされていた。ロゴの色やデザインをそのままに、文字の部分だけを入れ替えている。一見すると入れ替わっていることすら気づかないぐらいのナチュラルさである。
これは、人間の目が「読む」ということよりも「見る」ことを優先していることから、デザインを「なんとなく」の雰囲気で受け取り、脳が理解していることがわかる。

↑ 「君の名は」でのスポンサー表示画面
このロゴを入れ替えは、デザイナーたちの間で「マッシュ…

ブランド価値を下げてしまう7つの落とし穴

最近活躍している企業やプロダクトは共通してブランディングを重要視している。
ブランディングの最終目的は「価値の向上」である。価値を上げる対象は、商品であったり、サービスであったり、企業だったり、人だったりもする。
ブランド資産は目に財務資料に載らない大きな価値
強いブランドは模倣不可能な「見えない価値」を得ることが可能となる。そしてそれは数字では計りにくいこの価値が実は大きな差別化要素となり、競争で優位に立つことで長期的に成功するためには欠かせない重要な資産となるのだ。
参考: 今さら人には聞きにく…

【クレジットカード革命】Apple Cardから学ぶ革新的UXデザインのポイント

もしAppleがクレジットカードを作ったら? シンプル、クール、使いやすい。こんな形容詞が思い浮かぶAppleというブランドが、もしクレジットカードを作ったらどんなものになるだろうか? 今年の初めに発表されたAppleが提供するクレジットカード、Apple Cardが北米ユーザー向けに限定的提供を開始した。これにより、現在のところ、アメリカ在住の特定のユーザーがApple Cardを手にすることができる。*米国時間8月20日に他のアメリカの全ユーザー向けにリリース開始 選ばれたユーザーにはメールにて案内が届き、iPhoneのWalletアプリ内から申し込む。ラッキーなことに自分も選ばれたようなので、早速申し込み、使ってみた。 ↑ Appleから特定のユーザーだけに送られてくる招待メール これまでのクレジットカードの常識を覆す体験満載 では、Apple Cardは何が特別なのか? 実は、そのカード自体から利用体験、アプリとの連動性など、すべてのタッチポイントにおいて、デジタルな現代に最適な体験がデザインされている。 特に、これまでのクレジットカードは、銀行などの金融機関が発行しているものがほとんどで、顧客体験もその延長線上にあった。しかし、以前の「銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は?」を読んでも分かる通り、金融機関が提供する体験はお世辞にも良いものではない。 今回、その体験をAppleが思いっきりリ・デザインすることで、これまでの常識を覆すようなスムーズな利用体験をユーザーに提供している。そのいくつかのポイントを紹介する。 アプリ上から一瞬で申請、数秒後から利用可能 通常アメリカでクレジットカードを申請する際には、銀行の店舗やオンラインで必要事項を入力し送信する。その数週間後に審査結果が郵送され、承認された場合はカードが同封され、却下の際にはお詫びの手紙が添えられている。そのプロセスに要する時間は少なくても数週間。 これがApple Cardの場合、Walletアプリにクレジットカードを追加する要領でできてしまう。Appleから選ばれたユーザーは、Wallet内の➕アイコンをクリックすると、申請プロセスに進むことができる。 必要事項を記入し、その数秒後に承認か否かが表示され、承認された場合、Apple Pay経由で即座に利用可能となる。そして、物理的なカードは、その数日後に送られてくる。これにより、プロセスに要する時間の大幅短縮と、カードが届くまで待っている時間がなくなった。 ↑ カードの申請はWalletアプリ内から行う 番号が記載されていないチタン製のカード 自分の場合は、アプリで申請してから5日後にFedExにてカードが送られてきた。ちなみにカードの発送状況もアプリから確認ができる。 中心にAppleのロゴが刻印された真っ白なパッケージを開けると、中はインスタを思わせるカラフルなデザインが施されている。そしてその真ん中に真っ白なカードが同封されている。 驚くべきことに、このカードには通常のクレジットカードにはあまり見られない工夫がされている。まず、どこにもカード番号も有効期限も記載されていない。表面にAppleのロゴと所有者の名前、裏面には発行銀行のGoldman SachsのロゴとMasterCardのロゴだけだ。 これはカード番号が無いというわけではなく、実はアプリ内でカード番号と有効期限などの情報を確認することができるようになっている。オンラインショッピングなので番号が必要な際には、その方法で情報が獲得可能。 ↑ パッケージに同封されたカードには番号も有効期限も記載されていない 卓越した開封体験とソーシャルシェア性を提供 最初はなぜ番号が記載されていないのか?と思ったが、物理カードに番号を記載しないことで、落としてもセキュリティー的な部分での優位性が保たれるし、何よりもインスタなどのSNS経由で、ゲットしたことを友達に自慢しやすくなることに気づいた。 まさにAppleらしい逆転の発想とシンプルさの追求がされている。 また、カードの素材はチタンで、一般的なプラスチックのものよりもかなりの重厚感がある。ちなみに、CompareCards社のリサーチによると、アメリカ国内のクレジットカード利用者の38%が、素材でカードを選ぶと答えており、ミレニアルになるとその割合は53%にまでアップするという。 チタンのカードは消費者の所有欲を掻き立てる。加えて、容易に切ったりすることができないため、内蔵されているチップを切り取ることが難しく、セキュリティー向上の役割を果たしているとも言える。 開けてびっくりの演出と、手で持った時の満足感がしっかりと設計されている。ユーザーとカードとの最初の接点である、開封体験も総合的に上手にデザインされているのもさすがAppleと感じた。 参考: D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン View this post on Instagram Quite happy so far. #applecard #applecreditcard A post shared by brandonkhill (@brandonkhill) on Aug 19, 2019 at 4:32pm PDT 革新的なアクティベーション方法 そして、Apple Cardの最も革新的な体験の1つが、そのアクティベーション方法だろう。通常の場合、新しいクレジットカードを利用する前に、カードに記載されている電話番号に電話するか、サイトに行って番号を入力する。 これは、手間がかかるだけでなく、セキュリティ的に甘い。なぜなら、本人ではない人がもしそのカードを受け取り、アクティベーションしたとしても、本人確認される事は稀であるから。 これがApple Cardの場合はどうなっているのか。驚くべきことに、カードを登録したWalletアプリが入っているiPhoneをパッケージの下の部分に当て、画面に表示されたボタンをたっぷするだけ。そのプロセスに要する時間はおよそ5秒。 それもパッケージがそれぞのユーザーのWalletアプリと紐づいているため、他のユーザーのiPhoneを当てた場合は、アクティベーションができないようになっている。 カード所有者本人のiPhoneを利用しない限りカードを使うことができないため、かなり安全な設計が施されている。そして何より、電話したりサイトにログインしたりせずに一瞬でアクティベーションできるのが最高だ。 ↑ ユーザーのiPhoneをパッケージ部分に当てるだけで一瞬でカードがアクティベートされる ユーザー体験のコアはWalletアプリとの連動性にあり そして、ここからがApple Cardが提供するユーザー体験が最も大きな価値を生み出している要因。Walletアプリとの連動性である。 もともとWalletアプリは、他のクレジットカードなどを登録することで、Apple Payを通じてキャッシュレス決済を可能にする役割としてiPhoneにインストールされている。しかし、自分を含め、アメリカでApple Payを使う機会は意外と少なく、Walletアプリもほとんど使ったことがなかった。Apple Cardに出会う前までは。 実際にApple Cardを店舗で使ってみる。そうするとその直後に利用履歴が自動的にWalletアプリに表示される。それも、金額だけではなく、利用した場所の写真とロケーション情報のマップも。 また、利用した商品のジャンルによってカードとグラフがカラフルに色分けされることで、どのような内容に利用しているのかが一目でわかるようになっている。また、それぞれの利用金額に対するキャッシュバックの額も表示される。 ちなみに、物理カードは1%、Apple Payを使うと2%、Uber、UberEats、およびAppleで買い物をすると3%のキャッシュバックとなっている。 このように、利用状況を即座に可視化することで、リアルタイム性と透明性を高め、ユーザーの安心感とセキュリティ向上を達成している。 ↑ 利用状況とそれぞれの詳細が一目でわかるWalletアプリ Less-is-moreを体現した”無い無い尽くし”が体験の質を高める 生前よりスティーブ・ジョブスもAppleのデザイン哲学の1つとして掲げている”Less-is-more (少ない方がより多くを得られる) “ は、このApple Cardにもしっかりと受け継がれているように感じる。 参考: Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 そこには、ミニマルなデザインの裏に、大きなメリットがいくつも隠されている。例えば、カード自体に番号が表示されていないのは、上記の理由に加え、もし番号が漏れた際の対策にもメリットを生み出す。 カードの番号はWalletアプリ内でいつでも変えることができるため、万が一番号を変えたいときは、アプリ経由でリクエストすれば良い。また、その際新しい番号が既存のカードにクラウド上で紐づけられるため、物理的なカードを取得し直す必要がない。 こうすることで、カード会社に電話をする手間、カード再発行の手間とコストを抑えることに成功しているのだろう。また、カードメンバー規約等もデジタル化されているため、通常であればカードに同封される分厚い書類が存在していないのも良い。 Apple Cardが改善した体験 カードの申請: Walletアプリ内から → 手間が減る 利用開始までの待ち時間: Walletアプリ内からすぐに利用 → 待ち時間無し […]

世界一競争が激しいシリコンバレーで15年生き残れた最大の秘訣とは

2019年8月9日、btraxは創立15周年を迎えた。 アメリカでは新しい企業が10年以上生き残れる確率は5%に満たないと言われる。おそらく、これが15年ともなるとその生存率は数パーセントに満たないだろう。 例えそれがトップの大企業でも、その半分以上が15年以内にその姿を消す。そもそも、アメリカの企業全体の平均寿命が15年なのである。そして、その場所がシリコンバレーになってくると、スタートアップ企業をはじめ、短いスパンで結果を求められるので、よりその生存率は下がる。 参考: 現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション 難易度Maxの状態からの船出 そして、もしそれが世界有数の激戦区にて、ビジネスを全く勉強した事のない人が、僅かな資本金で始めたとしたらどうなるだろうか? この会社の創設者にはビジネスのバックグラウンドがほとんど無く、サンフランシスコという強烈な街で大学卒業直後に$5,000の資金だけを頼りに会社をスタートした。 そう、これが僕がこの会社、btraxを始めた時の状況である。その後、外部からの投資を受けた事はない。ちなみに、The Ultimate Startup Failure Rate Reportによると、毎日123,300のビジネスがその姿を消しているという。 海が荒れているのに出航するのは単なるアホと言われたのに… 会社を始めようと思っていた頃にシリコンバレーで投資家をしている友人に相談した事があった。彼からのアドバイスは ”最高のコンディションだと思って船を出しても途中で遭難するのがビジネス。まして、海が荒れている状態なのに出航するのは単なるアホだよ” と。 至極当然なアドバイスだろう。シリコンバレーという地域では、世界有数の天才たちが多くの資金を元にしのぎを削っている。そんな場所で経営の事を全く知らず、僅かな資金だけでビジネスを始めれば99.9%の確率で秒殺される。 それでも初めて、続けてしまった。今振り返ってみても、なぜそんな事が出来たのか。大きな謎である。良いタイミングなので、その秘訣を自問自答してみたところ、生き残るために重要な1つのポイントが見えてきた。 自分たちにしかできない”ズルい”アドバンテージに着目 それは、会社を初めて数年後に、他の会社が簡単真似のしにくいユニークさ、言い換えると、ズルいアドベンテージに焦点を当てた事だと思っている。 恐らく日本の社会で生活していると意外と気付きにくい事なのであるが、実はビジネスの世界においては、どれだけユニークな存在になれるか、もっと言うと、”ズルい” やり方ができるかが、その会社の大きな武器となる。 ちなみに、英語ではこの武器の事を”アンフェア・アドバンテージ (Unfair Advantage) “と呼ぶ。 では、どのようなきっかけでそのズルさにたどり着いたかを振り返ってみたい。 当初はデザイン力だけで勝ち残るつもりだった 元々大学でデザインしか勉強してこなかった自分としては、せっかくデザイン会社を始めるのだから、デザイン力だけで世界と勝負したかった。 言い換えると、それ以外の部分を”売り”にするのは、いささか邪道な気がしていて、デザイン以外のバックグラウンドを活用する気は全くなかった。振り返ってみると、実はこの”こだわり”は非常に危険で、恐らくそのまま進んでいたら今頃会社は存在していないと思う。 参考: アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由 先輩起業家の一言が視野を広げた 会社を始めてからしばらくした頃、漠然とした行き詰まりを感じ始めていた。優秀なデザイナーも揃い、ちゃんとしたオフィスも構えた。しかし、なかなか大きな規模の仕事を見つける事が出来ない。 その一方で、サンフランシスコにはIDEO、frogをはじめとした世界有数のデザイン会社がいくつかあり、彼らの存在がロールモデルとなっていた。 自分たちもどうにか一流のデザイン会社の仲間入りが出来ないか。そんな想いを先輩に話した。 それに対して彼は一言、”自分だったら競合が上がれない土俵で戦うけどな” と答えた。 そう、同じデザインという漠然としたフィールドで戦うと競争が激しすぎて、経営者としては賢くない。自分が最も優位に立てるフィールドを見つけるべきという事である。 デザイナーとしてのこだわりがデザイン会社を潰してしまう 世界最高のデザイン力でトップを目指す こんなビジョンを掲げるデザイン会社は少なくない。しかし、これは多くのデザイナーやデザイン会社が陥りやすいトラップでもある事に気付く事は難しい。 何を言いたいかというと、デザイン会社を経営するにあたり、デザインのクオリティー “だけ” で生き残るのは、無駄に難易度が高くなり、生存率が急激に下がってしまうという事。 自分たちのユニークさを見つける大切さ 質の高いデザインをする事に加えて、果たしてどんな事がbtraxにとってユニークな価値となるのだろうか?この問いを始めた時から「他にマネのしにくい事をする」という経営における1つの重要な指針が決まった。 ビジネスにおいて競合は少なければ少ないほど良いし、そもそも、ほぼいない状態を見つける事が出来れば、他と争う必要もなくなる。 結果的に、サンフランシスコという場所、日本のバックグラウンド、スタートアップのカルチャーや手法をデザインに掛け合わせる事で、現在のbtraxのユニークな遺伝子が定まっていった。そしてそれがのちに自分たちが持つズルさ=アンフェアアドバンテージになっていった。 ビジネスではズルさが最大の武器になる ズルいという言葉自体は、ネガティブな響きがあるかもしれない。しかし、それをビジネスで上手に活用すればユニークな長所にもなり得る。 もちろん法を犯したりすることや、人を傷つける事は許されないが、それ以外の部分では、自分たちが持つユニークなアドバンテージを最大限活用する事で、競合にはマネができにくい価値が提供できるようになる。 アメリカでは美徳とされるアンフェア・アドバンテージ こちらアメリカでは、通常何かを決める際にはそれが”フェア”であるかが重要視される。一方で、これが経営のフィールドになると、逆の論理が良しとされる事が多い。 例えばスタートアップのピッチにおける質疑の際に「君たちのアンフェア・アドバンテージは?」と聞かれているシーンをよく見かける。これは、そのチームが、自分たちにしか出来ないような”ずるい優位性”や”裏技”を持っているのか?という意味。 どれだけ素晴らしいサービスを作ったとしても、簡単に真似されたりする場合、その会社の競争優位性が下がってしまうため、何かしらマネのできないようなズルいアドバンテージを持ち合わせている必要がある。 シリコンバレーが評価するのは優秀よりユニークな人 なぜシリコンバレーの地域がここまで長い期間で世界から注目されているのか?恐らくその1つの理由は、この地域にしかいないようなユニークな人材が世界中から集まってくるからだろう。 世の中には、いわゆる優秀な人はいくらでもいるが、ユニークな人は少ない。そもそも少ないからユニークと定義されている。こと、会社の経営者となると、ジョブス然り、ザッカーバーグ然り、イーロン・マスク然り、彼らの武器はそのユニークさにある。 彼らは、他の人には持ち合わせていない視点や、強烈なファンベース、PayPalマフィアに代表される独自のネットワークを上手に活用する事で、マネのしづらいユニーク性を確保した。 そして、そのユニークさを活用して優秀なスタッフを束ねる事で、自分たちにしか持てないアンフェア・アドバンテージを作り出している。 ズルい作戦でのし上がった織田信長 実は日本でもこのズルい戦略で運命を切り開いた人がいる。織田信長はまだ弱小大名だった頃、拡大勢力の今川義元を奇襲攻撃で討ち取った。総勢2万5千の今川軍に対して織田軍は数千の規模。誰の目から見てもどちらが勝つかは明白だった。そんな完全状況でも織田信長が勝った。 どのようにして?今川の兵を散らせて、義元を横から奇襲するという、ズルい作戦を取ったらからである。でも、戦いの場ではそれもアリな戦略。その後信長は一気にその勢力を全国へと広げていった。これはビジネスという戦場でも同じ事が言える。 意外なところに転がっているアンフェア・アドバンテージ ちなみにこのアンフェア・アドバンテージは、決して難しい事である必要はなかったりもする。例えば、重要な人物へのコネを持っていたり、すでに多くのファンを抱えていたり、父親が大統領だったり、ルックスの良い社員を入れて営業成績を上げたり、などの方法がある。 また、シリコンバレーの多くのスタートアップはかなりの赤字を出しながらも成長を続ける。Uberだって、WeWorkだって、年間数千億円規模の赤字だったりする。これは、大規模な投資を受けているので、無理に日銭稼ぎに走る必要がない。そうなってくると、赤字でもなんでも、思いっきりユーザー獲得にぶっこむ事が可能になる。これもかなりのズルいアドバンテージである。 重要なのは、コネでも家柄でも、バックグラウンドでも、資金力でも、特殊能力でも、戦わなくてもすむこと。もしくは、”こいつにとは戦ってもしかたがない”と思わせる事。言い換えると、どれだけ”不戦勝”で勝っていけるかが生き残りのポイントとなってくる。 ズルいと言われる回数がバロメーターになる もしかしたら、このアンフェア = “ズルい”アドバンテージをどれだけ持てるかが、その会社の寿命や成長に深く関わってくるのではないかと思う。特に差別化が難しくなってきている現代においては、常にユニークであり続ける事が大きなアドバンテージになってくる。 そのためには、定期的に “これを他の人がやったらどうなるか?” や、 ”今やっていることは他の会社でも出来てしまうだろうか?” を考える。そして、もし少しでも戦いになりそうであれば、やり方やサービス自体をアップデートしていく。それも、自身が持つアンフェア・アドバンテージを最大活用して。 ビジネスや仕事ではどれだけ”アンフェア”なアドバンテージを見つけ、それを活用出来るかが勝負になる。そのバロメーターの1つが、周りの人たちにどれだけ「それ、ズルいよ」と言われるかだと思っている。 横並び主義の日本だと気付きづらい自分のアドバンテージ ここアメリカでは当たり前のズルさの活用が、日本の社会だと意外と気づきづらい。もしくはあまり良いとされてない事が多い。 人と違う事をする人をあまり評価しない風潮の日本の中では、無意識のうちに”フェア”な戦い方をしようとし、なぜか同じ領域でビジネスを展開しようとする会社が後を絶たない。 例えば、ガラケーが一般的だった時代は、日本の各メーカー、キャリアが似たり寄ったりの商品とサービスを提供していた。そんな頃、Appleは全く異なるタイプの携帯電話の開発に注力していた。自分たちのアンフェア・アドバンテージである、iTunesのインフラを最大活用して。 これもまた優れたものを作る前に、まずユニークな視点を重要視するシリコンバレー的な発想だと感じる。 逆にアンフェア・アドバンテージを見つけるないと、企業は競合他社との激しい競争に巻き込まれる。その結果として、長時間重労働を強いられる事になってしまう。 日本のバックグラウンドをアンフェア・アドバンテージにしたショー・コスギ 「君もPerfect Body」でお馴染みのケイン・コスギの父親であり、ハリウッドスターのショー・コスギは、生まれ育った日本で会得した空手の経験を活かした事で、他の俳優にはマネのできない忍者という役柄で大人気を集めた。 これが日本国内であれば、空手ができる人は多くいるし、忍者の役もそこまで特別ではない。しかし、その当時、ハリウッドで空手の動きを使って忍者役ができる人はわずかで、ショー・コスギは自身のアンフェア・アドバンテージを最大限活用したと言えるだろう。 それまでの彼は他の俳優と同じオーディションを受け、英語のハンデもあり、ことごとく落ちていたという。一時は生活にも困窮していたが、自分しかできない忍者というキャラクターを確立した事で大成功を収めた。 優秀である必要は無いが、ユニークである必要はある ダーウィンの進化論によると、最も強いものが生き残るのではなく、最も環境に順応した種族が生き残る。言い換えると「強い者」が残るのではなく、「適した者」が残るという事。 これは、ビジネスの世界でも同じで、モノが溢れ、テクノロジーが発達した現代においては、よりユニークな価値が出せる企業や人材が生き残るのではないかと感じてる。 そういった意味だと、平均値の中にいるよりも、アウトライヤー=ハズレ値である方が、よりサバイバル能力が高いのかもしれない。この概念は、以前の「世界を変えているのは頭の良い不良たちだ」で紹介されている概念にも通じるところがある気がする。 信頼できるスタッフを揃えてユニークなビジョンを語れ こうなってくると、起業家にとって重要な役割は、自分たちのアンフェア・アドバンテージを定め、優秀なスタッフを集め、ビジョンを語ることになってくる。 以前、長年経営コンサルティングを提供している、とあるメンターの方から下記のようなアドバイスを頂いた。 “私には君の会社の社長はできない。なぜなら私は優秀かもしれないが、君は唯一無二の存在であり、ビジョナリーであるからだ。お金儲けの事は信頼出来るスタッフに任せて、自分自身はひたすら自分たちが実現したいビジョンを叫び続けろ。” ちなみに、自分はまだまだこれが出来ていないので、今後の大きな課題でもある。 自己分析: btraxのアンフェア・アドバンテージ では、サンフランシスコという、世界でトップレベルにコストと競争が激しい街で生き残るためのbtraxのアンフェア・アドバンテージは何であるのか? これを機会に少し冷静に自己分析してみた。 1. ロケーション まずは、ロケーション的なアドバンテージ。もともとサンフランシスコでスタートした会社であり、その当時は現在ほど地価が高騰していなかったこともあり、2006年の時点より現在のオフィスビルに入居している。 ここはSOMAと呼ばれるスタートアップの中心地であり、これ以上ないぐらいの立地。もし今から借りようとしてもなかなか物件が見つかりにくいのではないかと思う。 […]

お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

デザイン思考のゴールの1つが、顧客の視点に立って物事を考え、そのニーズに即した商品やサービスをデザインすることになる。
しかし、これを聞いた多くの人々が「そんなの以前からやっているよ」と言う。そう、世の中の多くの企業は、すでにお客様からの意見を最優先し、それに即したサービス作りや改善を日々行なっている。
では、なぜ今さらデザイン思考が特筆すべき存在になっているのだろうか?おそらくその理由は、いわゆる ”User Centered Design (ユーザー中心デザイン) ”と呼ばれる概念を通じて、ユー…

Youはなぜ面倒な起業家なんかに?

とある時にオフィスで学生バイトのエンジニアの男の子から聞かれた質問。
なぜわざわざ面倒な起業家になったんですか?
そう、今の時代、就職や起業なんてしなくても、フリーランスや、副業、パラレルキャリア、アフィリエイト、インフルエンサー、YouTuber、そしてUberドライバーまで、生きてく方法はいくらでもある。
主に個人で複数のプロジェクトを請け負っている彼からしてみると、毎日のように人やお金をはじめ、多くの課題に直面し、対応していかなければならない経営者という仕事は割りに合わないように感じたらしい。…

プロダクトのサービス化を実現するための3つの方法

最近ニュースで、”なんとか・アズ・ア・サービス”という言葉を聞くことが多くなってきている。これは、もともと”サービス”ではない商品の提供の仕方を変えることで、サービス化した方でユーザーに提供するビジネスモデルの事を指す。
その根底には、稼働率の低い商品を購入するよりも、必要な時にだけ使うことで、コスパの高いライフスタイルを望むユーザーと、デジタル化が進んだことにより、新しい方法でのプロダクトの提供が可能になった時代背景がある。
それぞを別々に獲得するの…

これらの時代にヒットするのはサービス化されたプロダクトだ

シェア、サブスク、オンデマンド。最近耳にすることの多いフレーズであるが、これまでは、全て「所有」が中心であった商品との、全く新しい接し方である。簡単にいうと、所有することなく必要な時にだけ「利用」するのが、ユーザーとプロダクトを繋げる新しい体験になってきている。
その背景にはインターネットとモバイルテクノロジーの発達があり、現代のインフラで育ったような世代にとっては、むしろ所有しない方が一般的にもなりつつある。
時代と共に変化するライフスタイル
例えば、これまでは頑張ってローンを組んで買うのが一般的…

数字で証明されたデザイン経営の重要性

ここ数年で日本でもデザイン思考やデザイン経営などの概念が浸透し、ビジネスにおけるデザインの重要性がなんとなく認知され始めている感じがする。
その一方で、実際にはどのくらいの効果が表れているかを可視化するのは意外と難しい。というのも、デザインの組織や経営に対しての効果をこれまでの財務資料等の仕組みで測るのには限界がある。加えて、目に見える結果が現れるにはそれなりの時間もかかる。
企業経営におけるデザインの重要性が具体的な結果として表れ始めた
そんな中、以前の「【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッ…

日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント

先日、日経新聞オンライン版にて「スタートアップ倍増へ 政府、拠点都市で規制緩和」という記事を読んだ。こちらによると、日本政府は
企業価値が10億ドルを超える未上場企業「ユニコーン」を各拠点都市に5社以上つくる目標も掲げる。
という。
これには漠然とした違和感を感じた。というのも、多くのユニコーンがひしめき合うサンフランシスコやシリコンバレーの感覚だと、ユニコーンは産もうと思って産まれるものではない、からである。
それはまるで、最初は馬だったと思って頑張ってたら、いつの間にかツノが生えてきた感覚に近い…

デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは?

デジタルテクノロジーの進化に合わせて、こちらシリコンバレーの企業の勢いがより加速しているように感じる。大型M&AやIPOのニュースが毎日のように流れ、時価総額や評価額の最高記録更新も続いている。
その大きなファクターの1つとなっているのが、ユーザー数とそこから獲得しているユーザーデータ、そして優れたユーザー体験だろう。(参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは)
ユーザーの時間をお金に変換してる現代の企業
GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) に…

日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由

Webやモバイルアプリを中心に、現在世界で利用されてるサービスの中に”日本製”のものはほとんどない。GAFAを中心とした、アメリカ西海岸発のものや、BeautyPlusやTikTokなどの中国系のプロダクトが多い。
そして実は日本国内で多く使われているプロダクトも、世界的に見るとほとんど使われていないケースも少なくはないのである。
SNSを例にとってみよう。下記の表は、人気のSNSのリストであるが、日本国内シェア60%を超えているLINEでも、実は世界的に見るとそのシェアは2.8%にしか及ばず、他の…

【インスタ, ツイッター, エアビー等】サイドプロジェクトから生まれたプロダクトたち

今では誰もが知る有名なサービスであっても、本来作ろうとしていたものではなく、空いた時間に趣味の延長線上、いわゆる”課外活動”で生み出されたケースが意外と多いことがある。 特にスタートアップ企業などは、最初はなにをやるかがはっきり決まっていない事も多く、途中で方向転換 (ピボット) する事も珍しくない。その結果、当初予定していたプロダクトとは全く別のものが大ヒットを生み出した事例も多々存在する。 参考: 小さく始める事の重要さ【Amazon, Facebook, YouTube等】大人気サービスの初期バージョンとは メインよりヒット率の高い!? サイドプロジェクト そんな事もあり、シリコンバレーのアクセレレーターの代表的存在の、Y Combinatorでは、応募チームに対して、メインのプロダクトに加え、サイドプロジェクトの内容も聞くようにしている。実際にサイドプロジェクトが評価され、合格したスタートアップもあるという。 我々が日本企業向けに提供しているプログラムでも、メインの事業プランとは別に参加者の一人が”勝手に”作っていたサービスが注目を集め、新規事業に結びついたケースも存在する。 今回は、実際の事例を交えながらそのプロダクトが生み出された経緯や、なぜサイドプロジェクトの方が上手く行く可能性が高いかなどを説明する。今回紹介するサイドプロジェクトから生み出されたプロダクトは下記の通り。 Twitter Airbnb Instagram Slack GitHub Groupon Twitch WeWork Unsplash Fond Basecamp Lamborghini Miura 任天堂ゲームボーイ 元々はサイドプロジェクトから始まった著名サービス では、実際にどのようなサービスやプロダクトが課外活動から生み出されたのかを紹介する。 twitter 今では誰もが知っている存在になったtwitterは、ポッドキャスティング系のサービスを提供していたOdeoというスタートアップの社内スタッフ向けプラットフォームとして始まった。 Odeoの創立時に入社したJack Dorsey (現Twitter CEO) が社内ハッカソンで生み出したアイディアを、CEOであるEvan WilliamsとCo-FounderのBiz Stoneが気に入り正式にプロジェクトを進め、リリース。従業員同士のつぶやきを中心に利用され始めた。 記念すべき初のツイートは2006年3月21日にJack自身による”setting up a twttr.”というもの。その当時はtwttrと呼ばれてた。彼はその日の午後に”Inviting coworkers”とツイートし、従業員への利用を促した。 ↑ Jack Dorseyによる記念すべき初ツイート しかし、肝心のOdeoの人気が伸びない状況下でのサイドプロジェクトリリースに対し、当時のTechCrunchには下記 (和訳) のように書いている。 ”メインのプロダクトであるOdeoはデザインが良い事以外は魅力が全くない。それなのにそれを改善もせずに、サイドでtwttrなるサービスを作るなんて、この会社の株主はどう感じているのだろうか?” その後、2007年のSXSWでの紹介がきっかけでtwitterの人気に火が付き、最終的にはOdeoを捨て、twitterをメインのサービスにし、上場までたどり着いた。 参考:【インタビュー】Biz Stone – Twitter, Co-founder Airbnb 2007年、サンフランシスコのアパートに住む2人の若者が、スタートアップとして何をやってもうまくいかないので、家賃が払えない状態におちいっていた。Joeが、当時ルームメイトであったBrianに送った一通のメールがAirbnbを生み出すきっかけとなった。 その内容は、近いうちに大きな規模のデザインカンファレンスが市内で開催される。それを狙って、家賃を稼ぐためにそれに参加するデザイナーを安い値段で下宿させてあげたらどうだろうか、というもの。それもアパート内の空いているスペースにエアマットレスを置くだけというカジュアルさ。 結果、2名を一人$80づつで滞在させた。他のサービスを作りながら、家賃を捻出するための苦肉の索であったが、その際の体験がきっかけで、これをサービスにすることにしたのがAirbnbの原型。その後、SXSW向けにサービスをリリースするがユーザーはわずか2名、その一人はBrian自身であった。 そんな事もあり、数々の投資家に投資を断られ、収益もない中、大統領選挙に合わせた候補者のイラスト入りのシリアルを販売。そっちの方が売れてしまい、迷走が続く。 しかし、その後根気よくユーザーと対話をし、サイトとコンテンツの改善を続け、現在では世界トップレベルのユニコーン企業までに成長した。 参考: シリコンバレーのキーパーソン3人が語る、次世代イノベーションとは Instagram インスタは元々Burbn (バーボン) というHTML5をベースにしたチェックイン型ソーシャルアプリとしてリリースされた。その当時はチェックインアプリとしてFour squareが人気を集めており、人気を集めるのに苦戦をしていた。 同社のファウンダーでもあり、元Odeoでインターンをした事もあるKevin Systromは、ユーザーのアプリの利用方法に1つの特殊な点があることに気がついた。それは、チェックインアプリにも関わらず、チェックインもせずに写真だけアップしているユーザーが多いということ。 それも、どうやら写真をアップする際のフィルターに人気の秘密があると突き止め、勇気を持ってBurbnを終了させ、Instagramとして作り変えた。当時は写真を保管するアプリとソーシャルアプリは多く存在していたが、その2つを上手に掛け合わせ、それもユーザーがフィルターを選んでいる最中にアップを行うことで、スムーズな利用体験を提供した。 それにより、多くのユーザーからの支持を集め、最終的にスタッフがまだ12人、収益がほとんど上がっていない状態にも関わらず、Facebookによって$10億ドルで買収されることとなった。 ちなみに、その当時のInstagramが入っていたオフィスは、元twitterのオフィス。そこに引っ越す前、はDogpatch labsというサンフランシスコ湾に面したコワーキングスペースだった。このコワーキングスペースに当時のbtraxインターンである土屋尚史と一緒に訪問したことがきっかけとなり、彼はのちにGoodpatchを創業した。 参考:「サンフランシスコへの出発が1日おくれていたら、Goodpatchはなかった。」【インタビュー】Goodpatch Inc. CEO 土屋尚史氏 ↑ 初期の頃のInstagramチーム Slack 写真共有サービスのFlickrのファウンダーでもあるStewart Butterfieldが、その後オンラインゲームのスタートアップを立ち上げた。数年たっても45人程度のユーザーにしか利用してもらえず、失敗。しかし、その当時社内のチーム向けに自社開発したコミュニケーションツールを正式プロダクトとしてリリースしたのが、現在のSlackにつながる。 2013年8月に招待制プレビュー版をリリースし、初日だけで8,000の招待リクエストを獲得。2週間でその数は15,000まで膨れ上がった。その後、プレビュー版に登録したユーザーを順次サービスに招待し、行動を観察してサービスを改善した。それを何度も繰り返すことで、多くのユーザーに愛されるプロダクトに成長した。 参考: Slack成長物語 〜世界のユーザーに愛されるプロダクト舞台裏〜 GitHub エンジニア向けソフトウェア開発のプラットフォームであるGitHubも、元々はサイドプロジェクトとしてスタートした。ファウンダーであるChris WanstrathとPJ Hyettはその当時、テクノロジー系プロダクトのレビューサイト、CNET向けのページ作成をメインの仕事としていた。 その際、オープンソースのコードアップデートのしにくさに大きな不便を感じ、仕事の後や週末を利用して自分たちの使いやすいリポジトリを開発。のちに一般公開することで、GitHubが生まれた。 その後GitHubはエンジニアを中心に人気を集め、2017年の6月にMicrosoftによって20億ドルで買収されることとなった。 参考: CEOが自ら語った「イノベーションを起こすためのGithubの哲学」 Groupon ファウンダーのAndrew Masonが、携帯電話の通話プランの解約に手こずっていた事をヒントに、同じ目的のユーザーを集め、目標達成のために一緒に活動を行うためのソーシャルプラットフォーム, “The Point”を立ち上げた。 複数のユーザーが集まれば一人ではできないことが達成できるのではないかというのがコンセプトであったが、とあるユーザーグループが、集団で商品のバルク購入をすることで割引を受ける活動をしているのに気づく。 そこから、共同購入クーポンサイトを作り、地元のシカゴを中心にリリース。2008年のリーマンショックの影響で、多くの消費者が節約傾向にあったタイミングも手伝い、大きな成功を成し遂げた。 Twitch ゲーム実況プラットフォームのTwitchは、元々Justin.tvというスタートアップのサイドプロジェクトとして始まった。Justin.tvは、ユーザー同士がストリーミング動画をアップするプラットフォームで、YouTubeとUstreamを掛け合わせたようなサービスであった。 当時はWebで動画を見ることがまだまだ一般的ではなかったため、配信側のユーザーがなかなか集まらなかった。そこで、ファウンダーのJustin自身が私生活の様子や、体を張った突撃取材動画を流したりしていた。 そんな中で、オンラインゲーム好きのJustin.tvのスタッフは課外活動として、週末にオフィスでスタートアップ対抗World of Warcraftを定期的に開催していた。そして、その様子をストリーム中継したところ一気にアクセスが集まり、それをヒントにユーザーがゲーム中継をストリームすることに特化したTwitchを考案した。 […]

現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは

現代のスタートアップにおいて、どのようなチーム編成を行うのが良いのだろうか?組織と業務プロセスがしっかりと形成されている大企業と比べて、スタートアップのチームはかなり特殊である。
全員が攻めに徹する完全ぶっこみ型カミカゼチーム
そもそも、スタートアップとは「新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体」である。急成長を達成するには、じっくりと組織を醸成する余裕はない。
特に立ち上げ時からしばらくは、いわゆる「仕組み」というものはほ…

寿司職人から学ぶ究極のUXデザイン6つの極意とは

ユーザー体験のデザイン、いわゆるUXデザインのフィールドは、どうしても欧米が進んでいると思われがちである。しかし、実は、日本的なおもてなし精神こそが、最も優れたUXデザインに直結しているのではないかという説がある。まあ、その説は自分自身が提唱しているのであるが。
こちらアメリカ西海岸では、寿司レストランがかなり定着しており、食事自体だけではなく、最近ではそこで得られる体験に注目が集まっている。特にカウンターに座り、板さんとのやりとりをしながらゆっくりディナーを楽しむ仕組みは、アメリカでもかなり評価さ…

紙のコーヒーカップが教えてくれる大切なこと

もしコーヒーを飲むのなら、紙コップが良いか?それとも陶器のカップの方が良いか?
最近であれば、スタバのようなお持ち帰り型のカフェが増えた事もあり、紙コップで飲む事に抵抗はあまりないだろう。
しかしこれが、これがVIPや重要な取引先などの、大切な相手をおもてなしする場合、やっぱり素敵なコーヒーカップでいただきたいと感じる。
とあるカンファレンスでのエピソード
以前にアメリカで開催されたとあるカンファレンスで、元国防副長官がゲストスピーカーとして呼ばれた。壇上に立った彼は、紙コップに入った小さなコーヒー…

優れたデザイナーになりたければダヴィンチから学ぼう

どのようにしてデザインを学べば良いのか?今まで聞かれた質問の中で最も多いのがこれ。特に、どこでUXデザインを学べが良いか?という質問は、答えに困ることが多い。なぜなら、デザインは奥が深く、最近様々な分野で求められるUXデザインになると、その幅もとても広くなり、異なる領域の理解と、デザインだけではなく、エンジニアリングの知識も求められることも少なくない。
例えば、「【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる」で紹介されているように、自分が設計したものは自分が動かす時代になって…

【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか

物が溢れている現代の市場の中では単純に正確に動く、壊れない、だけではヒット商品を生み出す事が難しくなってきている。消費者の心を引き付けるためには、美しい見た目や共感、遊び心などの「デザイン的要素」が重要になり、デザインの重要性を理解し、実践する事が、企業の業績に直接反映され始めている。
数字で証明された経営に対するデザインの重要性
2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという…

ユニコーンとシマウマの違いを知っていますか?【スタートアップ】

最近になって日本でも随分と「ユニコーン」という言葉がと聞かれるようになってきた。ユニコーンとは、スタートアップ界隈で用いられる表現で、俗に未上場で企業評価額が10億ドル以上の会社を示す。(参考: 未上場で評価額10億ドル以上のユニコーンTop10)
そもそも上場していないので、企業の価値が10億ドル以上に評価されること自体が、通常珍しい事、そしてそのビジネスモデルのユニークさから「実存しないぐらいユニークな存在」という意味で架空の動物であるユニコーンを名称として採用されている。
代表的な例には、Ub…

主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント

これまでに複数のメディア経由でご存知だと思うが、今年のCESでは、5G, AI, VR, AR、MaaSなどなどの最新のテクノロジーと、それらを活用した商品やサービスが展示さた。
CESは毎年ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジーカンファレンスで、世界中の企業が最新テクノロジーを活用したプロダクトの発表を行う。その中には、家電だけではなく、自動車やヘルスケア、そして各国からのスタートアップなどのエリアもあり、大変エキサイティングなイベントでもある。
このイベントに毎年参加することで、テクノロジ…

2019年からデザインが提供する3つの新しい価値

先日書いた「2019年デザインと経営に関する5つのトレンド予測」に多くの反響をいただいたと同時に、腑に落ちないところやよく理解できない部分があるとのご指摘もあったので、補足も兼ねてこれまでにはあまり取りだたされることのなかった、デザインの新しい価値についてもう少し具体的に説明したいと思う。
そもそも、デザイン思考に代表される、デザイナー的考え方とはどのようなものなのであろうか?それを理解するところから始め、それがどのような価値を生み出すのかを検証する。
デザイナー的マインドセットとは
デザイナーの人…

CES 2019 チェックポイント パーティー編

今年は1月6日から12日まで開催される世界最大のテクノロジーカンファレンス。4000を超える出展企業、150カ国から18万人を超える来場者が訪問します。 メインの日中のイベントの見どころなどに関しては、電通の森さんがこちらの記事にてまとめていますので、僕の方は自分用に夜のパーティーに関するリストを作成してみました。行かれる方は活用いただければ幸いです。 1月6日 CES Unveiled Las Vegas 5:00-8:30 PM Shorelines Exhibit Hall, Mandalay Bay NVIDIA News Conference 8:00-10:00 pm MGM Grand Hotel & Casino Level 1 Grand Ballroom CoinAgenda Showcase 8:00 pm – 11:00 pm Cromwell Pay Per Callers Party 6:30 pm – 9:00 pm Alexxa’s Bar @ Paris 1月7日 Conversation and Cocktail Party 4:30 pm – 6:30 pm Piero’s Italian Cuisine Caller Meetup West 2019 5:00 pm – 8:00 pm Marquee Nightclub & Dayclub Cocktail reception at CES, hosted by The NPD Group 7:00 pm – 9:30 pm 1OAK at the Mirage Digital Experience 7:00 pm – 10:30 pm Mirage Game Changer Cocktail Reception 7:00 pm – 9:30 pm […]

2019年デザインと経営の関する5つのトレンド予測

Good design is good business.
これはかつてのIBMのCEOが行った宣言である。
そしてついにそれが現実になってきている。それもかなり急速に。
数字で表される経営に対するデザインの力
米国のコンサルティング会社Motiv Strategiesによると、デザイン的考え方を経営に積極的に取り入れている状況企業16社は、その株価の伸びがS&P 500全体と比べ2003年から2013年の10年間で228%高くなっているという統計を発表した。
また、2018年10月のマッキ…

【2018年】デザインに関する流れをカテゴリー別にふりかえる

2018年、デザインを取り巻く環境はどのように変化したのであろうか? おそらくここ10年の中で、最も世の中の注目が高まった一年であると言える。実際、経済産業省は「『デザイン経営』宣言」としての報告書を発表し、日本企業に対して経営におけるデザインの重要性を提唱。
また、マッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果になっている。
では、異なるデザイン分野において今年はどのような動きがあったかを総…

2018年はイーロン・マスクにとって地獄のような一年だった

今から一年ほど前の2017年中頃にイーロン・マスクは下記のようなツイートをしていた。 If you buy a ticket to hell, it isn’t fair to blame hell … — Elon Musk (@elonmusk) July 30, 2017 日本語にするのであれば、 「みずから地獄行きのチケットを買ったのであれば、それに対して文句を言うべきではない」 と言う感じ。起業家になるって決めたのであれば、地獄をくぐり抜ける覚悟をしろ、といったところだろうか。 そして、翌年の2018年は、彼にとってまさに地獄とも言える一年になった。数々の困難が降りかかり、それをくぐり抜けていく様子は、下手なハリウッド映画よりもエキサイティング。 しかし、恐らく本人にとってはとても辛く苦しい道のりであった道のりであっただろう。もしくは、こんな困難も冷静に乗り越えられるぐらいに、稀代のアイアンマン起業家はタフなのかもしれない。 同じ起業家として、そしてシリコンバレーのイノベーターとして、最も尊敬する一人でもある彼の2018年の出来事を振り返ってみたい。 数々の困難に直面したイーロン・マスクの2018年 では、2018年だけで彼はどれほどのチャレンジを経験しているのかを紹介する。壮絶に見えるが、これらはたった1年間だけでの出来事である。 2月: バッテリー関係の問題が生じ、Model 3のリリースが (再度) 遅れる 2017年の7月に発表したTeslaの最新モデルであるModel 3は、当初年内のデリバリーを予定していた。しかし、何度となく生産が遅れ、今年の2月には、バッテリーモジュールの開発に関する致命的な問題が見つかり、またも遅れが生じた。 それに対して、事前に予約していたユーザーからは「また遅れてるのかよ!」といった辛辣なツイートを受けている。 Holy cow! Pushed back again, @Tesla?!? pic.twitter.com/g7yN8OViHe — Zach Honig (@ZachHonig) February 8, 2018 4月: Model 3が生産目標に追いつかず工場で寝泊りをする日々が続く Model 3の生産に関しての遅れを取り戻し、生産目標に追いつくために一時は元Appleで働いていたスタッフを主任に抜擢するが、状況は改善されなかった。事態を深刻に見たイーロン・マスクは、その原因を過剰な自動化と説明。 About a year ago, I asked Doug to manage both engineering & production. He agreed that Tesla needed eng & prod better aligned, so we don’t design cars that are crazy hard to build. Right now, tho, better to divide & conquer, so I’m back to sleeping at factory. Car biz is hell […]

2018年に終了したスタートアップサービスとその失敗理由

その9割以上が失敗するとされるスタートアップ企業であるが、今年も多くのサービスが終了した。その中から、40のスタートアップをピックアップし、その失敗理由を探ってみる。 先日の「2018年に消滅したメガスタートアップ25社」を見てもわかる通り、たとえ大きな資金を調達したとしても、成功が保証されているわけではない。 そもそも、スタートアップの定義を、”新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを通じ一獲千金を狙う人々の一時的な集合体“ とするのであれば、まさにハイリスクハイリターン。(参照: ベンチャー企業とスタートアップの違い) スタートアップは、ある意味新しいビジネスモデルの実験室でもあるのだ。そうなってくると、成功した理由よりも失敗の理由を知ることから学べることは多い。 では、2018年に終了したスタートアップとそこから学べる教訓を紹介する。 Airware 業種: ドローン向け飛行データプラットフォーム 合計調達額: 1.180億ドル 失敗の理由: ドローンに関する市場の成長スピードが意外と遅く、大きなニーズが生まれる前に資金が尽きた Alta Motors 業種: 電動バイク 合計調達額: 4380万ドル 失敗の理由: ハードウェアの製作のコストがかさみ、資金繰りやパートナーシップがうまくいかず、資金が尽きた Apprenda 業種: エンタープライズ向けPaaS型ソフトウェアプラットフォーム 合計調達額: 5600万ドル 失敗の理由: 競合サービスとの差別化に失敗 Baroo 業種: ハイエンド顧客向けオンデマンド型ペットケアサービス 合計調達額: 360万ドル 失敗の理由: 巨額の資金調達を成功させた競合に対抗できなくなった Bluesmart 業種: スマートスーツケース 合計調達額: 2560万ドル 失敗の理由: 航空法の更新によりバッテリーを内包するスマートスーツケースの利用が禁止になった Cambridge Analytica 業種: 政治活動向けデータ解析プラットフォーム 合計調達額: 1500万ドル 失敗の理由: Facebook経由の個人情報をユーザーの許可なしにビジネスに利用していた CanadaDrugs.com 業種: 医薬品のオンライン販売 合計調達額: 不明 失敗の理由: 15年以上にわたり米国政府の認可を得ずに非正規の薬をオンラインで販売していたことが発覚した CareSync 業種: 医療患者向けソフトウェアプラットフォーム 合計調達額: 4900万ドル 失敗の理由: 売却戦略に失敗した Chef’d 業種: 自炊むけミールキットサービス 合計調達額: 4050万ドル 失敗の理由: 資金調達に失敗した Chorus 業種: フィットネスアプリ 合計調達額: 不明 失敗の理由: ユーザーがエクササイズをサボり出し、それを隠そうとするためにアクティブ率が下がった Coinprism 業種: 色付け可能なビットコインワレット 合計調達額: 不明 失敗の理由: 仮想通貨に関する法規制の急激な変化によりビジネスとして成り立たないと判断した CloudMine 業種: ヘルスケア向けデータプラットフォーム 合計調達額: 1650万ドル 失敗の理由: 600万ドルほどの負債に対しての資金調達に苦しみ、破産した DASH Stores 業種: アクセサリー販売ブティック 合計調達額: 不明 失敗の理由: セレブ創設者であるカーダシアンの興味が他に移ったため DaWanda 業種: ハンドメイドのクラフトを売買するオンラインプラットフォーム 合計調達額: 1030万ドル 失敗の理由: 会社の規模の成長に対して売り上げの伸びが鈍化したため Defy Media […]

2018年に消滅したメガスタートアップ25社

今年も多くのスタートアップが生まれ消えていった。倒産した企業の中でも企業の評価額 (バリュエーション)と資金の調達学が大きい25社をPitchBook提供のデータをもとにリストアップしてみた。 その中の3社は創立から20年以上も経っている企業や、一時は優良スタートアップとしてかなりの注目を集めたサービスもある。 特に今年は、ハッタリ系スタートアップとして有名になったセラノスをはじめに、ヘルスケア系が目立っており、リスト内では実に7社を数える。 それでは、評価額と調達額の規模をベースに、2018に消滅したスタートアップ25社をカウントダウン形式でお届けする。 25. SDCmaterials 業種: 自動車産業向けナノテクノロジー 設立年: 2004 評価額 (max時): 4800万ドル 合計調達額: 2600万ドル 24. Senzari 業種: 音楽/エンタメ系データテクノロジー 設立年: 2010 評価額 (max時): 5200万ドル 合計調達額: 1300万ドル 23. Industrial Origami 業種: 産業用マテリアル製造 設立年: 2003 評価額 (max時): 5800万ドル 合計調達額: 4100万ドル 22. Claritas Genomics 業種: 遺伝子テスト 設立年: 2013 評価額 (max時): 6000万ドル 合計調達額: 3900万ドル 21. Apprenda 業種: クラウド型ディベロッパー向けソフトウェア 設立年: 2007 評価額 (max時): 9000万ドル 合計調達額: 5600万ドル 20. Innovari 業種: エネルギープラットフォーム 設立年: 2011 評価額 (max時): 9400万ドル 合計調達額: 1200万ドル 19. DataTorrent 業種: ストリーミング用データフォーム 設立年: 2012 評価額 (max時): 9600万ドル 合計調達額: 2400万ドル 18. Rennovia 業種: バイオテクノロジー/化学 設立年: 2009 評価額 (max時): 9900万ドル 合計調達額: 6900万ドル 17. Navdy 業種: 自動車向けヘッドアップディスプレイ 設立年: 2012 評価額 (max時): 1億ドル 合計調達額: 8000万ドル 16. EZhome 業種: サブスクリプション型雑草処理サービス […]

ユーザーフローから学ぶミスコミニュケーションの発生原因と対処方法

UXデザインのプロセスの一つとして「ユーザーフロー作成」というものがある。これは、特定の目的を果たすために、ターゲットとなるユーザーがどのようなプロセスを経るのかを明確にすることで、そこにたどり着くまでの「流れ」を設計するもの。
例えばアプリのデザインをする際には、下記のようなユーザーフローが設計される。

このプロセスの中では、それぞれのタスクごとにフローを作成し、よりユーザーにとって使いやすく、加えて、サービス提供側のゴールをスムーズに達成できる「流れ」に対しての導線をデザインする。

しかし、…

ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは

ユーザーに優れた体験を提供し、提供側の利益も生み出す。これがUXデザインにおける一つの究極のゴールである。この2つのゴールを達成している最高の例の一つがディズニーランドであろう。実際に行ったことのある人であれば、その体験の素晴らしさと、躊躇なくお金をどんどん使ってしまうその雰囲気は、まさにマジックとも言える。実は、そのマジックの裏には、UXデザイン的観点で見ても卓越した設計が施されている。
UXデザインの価値を図る際には「UXハニカム」や「UXピラミッド」が使われることが多いが、おそらくディズニーラ…

イノベーションの効果測定方法

現代の企業にとって、新しい事業を生み出したり、仕組みを変えたり、革新的なサービス提供方法を考えたりなど、いわゆるイノベーションの重要性が高まっていることは間違いないだろう。世界の企業時価総額を見てみても、トップにランキン […]

現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション

アメリカの大企業500社のうち過半数が15年以内に消滅している あなたはこの事実をどう感じるであろうか? 日本でも企業の倒産は日常茶飯事かもしれないが、大企業の倒産はあまり多くはない。その一方で、こちらアメリカでは、スタ […]

デザインと経営を融合するために知っておくべき15のポイント

『「デザイン経営」宣言を宣言で終わらせないための3つの提言』でも触れられている通り、日本でもデザインと経営の融合が叫ばれ始めた。これは、世界的なビジネストレンドみるとその重要性は明白で、企業の時価総額を見ても、Apppl […]

コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性

コンコルドという飛行機をご存知だろうか?おそらくある一定以上の世代であれば、知ってる、聞いたことある、見たことある。そして、もしかしたら乗った事がある方もいるかもしれない。 この飛行機は、イギリスとフランスが共同開発した […]

なぜ日本ではオープンイノベーションが生まれにくいのか

以前の記事「【オープンイノベーション】 大企業がスタートアップとの協業を成功させる為の3つの方法」を読んでもわかる通り、語り尽くされたかのようにも感じられるこのトピック。それでもいまいちど、自分なりの見解を書いてみようと […]

日本企業がシリコンバレー的スピードを身につける方法

先日福岡にて開催されたグローバルスタートアップイベント、Waraku SummitにてWiLのパートナーである琴 章憲氏との対談をする機会をいただいた。スタートアップをはじめとして、日本企業のグローバル展開に関するトピックにてのディスカッションを行った。 そこで、彼が日本企業がシリコンバレーの企業に勝てない一つの大きな理由として挙げていたのが、決断と実行スピードの違いだ。例えば彼が前職で出向していたTwitter社でのエピソード。 それまではプログラミング言語としてRubyを利用していたが、ユーザー数の増加と今後のスケールを念頭に、ある日突然エンジニアリングトップよりScalaに切り替えることが決定された。これでTwitterのエンジニアは問答無用で翌日からScalaを利用しなければならない。さもなければ会社に残れないからだ。 これがもし日本企業で似たような事があったとしたら、内部調整とエンジニアたちのスキル獲得期間などを考慮し、最低でも数ヶ月は猶予期間を設けるだろう。シリコンバレーではそんなゆっくりはしてられない。即決定、即実行が基本である。 ↑上記のセッション動画 シリコンバレーの企業と日本企業の決断スピードの差は100倍 以前にも紹介したが、シリコンバレーの企業が世界的に凄いとされている理由の一つがそのスピードの速さであろう。特にデジタルが主流になってきている現代では、これがかなり強力な武器となる。 日本企業が完璧なプロダクトを1つ出す間に、シリコンバレーの競合は20%の完成度のものを5つ出し、ヒットしたものだけを残し改善すると言われるほど、決断、実行、リリースのスピードが速い。 一説によると、日本企業とシリコンバレーの企業を比較すると、その決断スピードには100倍の差があると言う。これは、例えると時速3kmで進むカメと、時速300kmのF1カーぐらい異なると言う事だ。ある意味、全くカテゴリーが異なる。 参考: 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事 スピードが大きな競争優位性となる3つの理由 現代のビジネスにおいては、時間をかけるのが一番のリスクとなりえるだろう。スピードが遅いのは命取りにもなりえる。 特に急激な成長を一つのゴールとしているスタートアップにおいては、”速すぎる” と言うことはほとんどない。「今さら聞けないリーンスタートアップの基本」でも紹介されている通り、できるだけ早い段階でリリースをし、改善するのがシリコンバレーのスタンダードにもなりつつある。 急いで決断、行動することのリスクよりも、得られるメリットの方が大きい。もしそれが原因で失敗したとしても、取り返しのつかないことは少なくなってきていると感じる。スピードが速いことで得られるメリットを3つ紹介したい。 1. チャンスは長居してくれない 時代が激しく変化する現代において、ビジネスチャンスを掴みたければ、タイミングが重要になる。例えば、スマホ普及に合わせたLINE, FacebookによるInstagramの買収、リーマンショック後の不況で大人気になったシェアリングエコノミー系サービス、ブロードバンドの普及が整った時期に一気に普及したYouTubeなど、上手にチャンスを掴み取ったサービスは少なくない。 また、「世界を変えられなかった12のサービス ~第一次ドットコム時代のアイディア~」で紹介されているように、タイミングがずれているとどんな良いサービスでもヒットしないケースもある。 2. 顧客ニーズの高速化 スピードが求められるのはビジネス機会のタイミングだけではない。顧客やニーズへの対応スピードも、その企業の価値を左右する大きなファクターとなってくる。ユーザーニーズに合わせ、プロダクトをどれだけの頻度でアップデートできるか、顧客の問い合わせにリアルタイムに対応できるかも顧客満足度を大きく左右するだろう。 3. 競合に対する防御策 決断と行動のスピードが速ければ、競合の動きにもうまく対応する事ができる。逆にその対応が遅れると致命的な結果にもなり得る。例えば、Netflixに駆逐されたビデオレンタルのBlockbusterや、Amazon対応が遅れたBordersなど、動きが遅すぎて、新規参入のライバルに対し完全に後手にまわってしまって滅んだ企業も多い。 参考: 近い将来テクノロジーが葬る10の産業 実例: GAFAのスピードに対しての意識の高さ 冒頭のTwitter社でのエピソードに加え、世界のトップを牽引するテクノロジー企業であるGAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon) におけるスピードに関しての実例も紹介したい。 失敗の数だけ評価の対象になるGoogle X 前回の「日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事」にて、平均で約10日間の間に1つの会社を買収することからも、その動きの速さが理解できたGoogle. その新規事業を生み出すためのラボ的組織のGoogle Xでは、失敗を恐れずに、新しいことにどんどんチャレンジできるように、ユニークな人事評価規準を設けている。 失敗の数の多さが、評価の対象になると言うのだ。イノベーションに失敗はつきもので、恐る恐る一つのことをじっくりやるよりも、速いスピードでガンガン進め、その中のわずかでも大ヒットを出す事が出来れば大成功である。 それを実現するために、Google Xでは、一つのプロジェクトを成功させたスタッフよりも、100の失敗を経験したスタッフの方が高い評価を得られるような仕組みを導入している。 Appleでの象徴的な出来事 現時点で世界一の時価総額を誇るAppleもスピードを重要視していることがわかるエピソードを紹介したい。2008年にプロダクトマネージャーの一人がミーティングにて、CEOのTim Cookに対して中国の工場での生産に大きな問題が発生している事を伝えた。するとCookは「それはまずい。誰か出向いてどうにかしなければ」と言った。 そのミーティングは継続し、30分ほどが経った時点でそのプロダクトマネージャーに対しCookが「あれ、なんで君はまだここにいるんだ?」と言うと、彼は急いでサンフランシスコ空港に直行し、服も着替えずにその足で中国行きの便に飛び乗った。 Amazonは平均で11.6秒に一回の頻度でデプロイしている Appleに迫る勢いで時価総額記録を更新し続けているAmazonも、スピードに関しての意識はかなり高い。その一例として、彼らは実に平均で11.6秒に一回ソフトウェアの更新を行なっているとい言うだ。 もちろんこれは平日だけでのケースではあるが、常に最善の体験をユーザーに届けるため、そして競合に勝つために、新しい仕様リリースしまくっていると言うことになる。 スピード優先を社訓にしているFacebook シリコンバレーの企業の中でも、の動きの速さを武器にしていることで有名な企業がFacebookだろう。オフィスのいたるところに社訓である”Move fast, and break things. “ や “Done is better than perfect.”と書かれた表札が飾られていることからもわかる通り、彼らのモットーはとりあえず作り、リリースし、そこから改善をしよう、と言うもの。 ソフトウェア、特にWebやアプリなどのプロダクトの場合、リリースしてからいくらでも変更が効くので、完璧を目指す必要はない。ある程度の精度が得られた時点でとりあえずリリース。ユーザーの反応を見ながら改善をすることができる。それも、特定のユーザーだけを対象にすることも可能なので、速く動く事のメリットは大きい。 ↑Facebook社の壁に飾られた社訓 日本企業は「礼儀正しく時間を奪う」 それではなぜ日本企業はスピードが遅いのだろうか?その理由は実はその「礼儀正しさ」に隠されている。これは、企業のワークスタイルの改善を進めている日本マイクロソフト株式会社 テクノロジーセンター センター長の澤 円氏による分析で、彼によると日本企業は「礼儀正しく時間を奪う」事で、生産性を極端に下げていると言う。 これは言い換えると、多くの時間を費やしている割りには、アプトプット量が極端に少ない。時間をかけるべきところと、そうで無いところの分類がズレているとも考えられるだろう。 例えば、見るだけで済む結果のレポートに関しては、わざわざ会議をしなくても、メールやチャットで送っておき、各々が空いた時間に確認すれば良いはず。なのに、日本企業は「礼儀正しく」するために、わざわざ忙しい人たちの時間を割いて「報告会議を」行う。 加えて下記のような点も日本企業のスピードを遅くしている要因であると思われる。 スタート時間にシビアで終わり時間には無頓着 日本企業は、出勤時間や会議の開始時間には神経質であるが、なぜか終わり時間には全く無頓着である事が多い気がする。スタートには少しでも遅れれば警告されるが、仕事も会議もなぜか終わり時間をシビアに管理しているケースはまだまだ少ないように感じられる。 何も決まらない会議が多い そして、1日の仕事時間の大部分を割かれる肝心の会議でも、報告と議論はされども、何一つ決定しない、もしくは決定できる人がそもそも最初から参加してない事で「前向きに検討」することしかできないケースが後を絶たない。こんな単純な決定をするだけなのに何時間かけてんだ?と思うこともしばしばある。 決断を先送りしてもペナルティー無し そもそも決定がされない理由の一つとして、決裁権のある役職の人が決断を先送りしても、何のペナルティーも受けない事が理由だろう。これがアメリカの企業の場合、会議で発言しない人や決断をできないマネージャーは会社にとって必要のない人材だとみなされ、最悪首になるケースだってある。 参考: 海外から見た日本式ミーティングの謎 ちなみに、上記で紹介した澤 円氏は、10月11日に東京で開催されるDESIGN for innovation 2018にも下記のトピックで登壇していただく予定。 『イノベーションを生み出すために日本企業が変えるべき習慣』 DESIGN for innovation 2018 開催日程: 2018年10月11日(木)13:30〜20:00 (懇親会含) 会場名: FiNC有楽町 >> イベント詳細はこちらから << シリコンバレーではどのように企業スピードを上げているのか? では、シリコンバレーの企業はいかなる方法でスピードアップを図っているのだろうか?”Move fast or die”と言われるほど、スピードが遅い事が命取りになるこの地域では、徹底的な効率化が進められ、急成長のための素早い行動が推奨されている。 アメリカではメールは短いほど良い […]

人生を何に捧げるべきかを見つける方法

日常生活の中でどのように自分が好きなこと、やりたいことを見つけることができるのか?「やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法」ではそんな多くの人々が感じる疑問に対して、下記の4つの方法で情熱とモチベーションを見つける方法を説明している。
やりたい事を見つける4つの方法

やっていて楽しいことをやる (What)
なぜやるかにフォーカスする (Why)
どうやるかにこだわる (How)
誰のためにやるかを考えてみる (Who)

では、これが「人生…

レガシー金融機関がフィンテック企業と上手に付き合う方法 (金融革命 Part 2)

日本国内でフィンテック企業とコラボしているレガシー金融機関はまだわずか30%にすぎない。これは先進国のスタンダードでいうと最低のレベルになっている。他の国の、ドイツが70%, シンガポール62%, アメリカの54%と比較してもかなり低いと言えるだろう。
テクノロジー活用に遅れをとる既存金融機関
セキュリティーとプライバシー、そして法規コンプライアンスを最優先するその特性上、既存の金融機関はどうしても新規テクノロジーの導入に対して慎重にならざるを得ない。スタートアップのような”実験的”な取り組みを…

銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1)

銀行での楽しい体験をしたことのある人は一体どのくらいいるであろうか? 様々なビジネスにおけるユーザー体験が改善される現代において、おそらく銀行は最も質の低い体験を提供していると言わざるを得ないだろう。

確かに、入り口にいる紳士が整理券を丁寧に手渡ししてくれるところまでは良い。しかし、そのあとの待ち時間、面倒な書類、短い営業時間、いちいち発生する手数料、融通の利かない担当者など、顧客がそこで体験する時間のクオリティーは非常に低いと感じる人も多いはず。

そして、その訪問が融資目的だったとした…

やりたい事が見つからない本当の理由 – そして見つけるための4つの方法

どうしたら好きなことが見つかりますか?
これまでの経験上、起業を目指している人や、これからの進路を考えている学生に聞かれる質問で一番多いのがおそらくこれだろう。自分自身の場合、子供の頃からの物作りに対する興味と、大学生時代に強烈に好きになった「デザイン」という世界を知ることができたため、そこまで悩む必要がなかった。

それもそのはずで、高校生になる頃には自分が興味のない事を学ぶことに対してエネルギーを注ぐ事を諦めてしまったから。それ故日本の大学に入ることは出来なかったが…。

関連: 文系…

Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学

2018年8月2日, Appleの時価総額がアメリカ企業として初めて1兆ドル(約110兆円)を突破した。1990年代には倒産も危ぶまれたが、スティーブ・ジョブス復帰後、デザインに対してのこだわり、そしてイ革命的なプロダクトを作り出すことにフォーカスをさだめ、iMac, iPod, iPhoneなど、次々に世の中を変える製品をリリース。

その後の躍進も加速し、世界一の時価総額と驚異の利益率を達成している。その一番の要因が「デザイン」にあることは明白で、プロダクトのデザイン性から経営に対してのデザ…

文系、理系、オレ何系?

タイトルのフレーズは先日、後輩の起業家でGoodpatchのCEOでもある土屋尚史とのPodcast対談で思わず口走ってしまった一言。

日本の高校に行っていた頃、いわゆる進路を決める際に自分が文系か理系かのどちらかを選択し、それに合わせて受験する学部を決めるわけだが、その当時の自分といえば、まさに「で、オレ何系?」という感じだった。

そもそも興味があるのは音楽。得意なのは美術。誰よりも優れていたのが自由研究と、入試には全く関係のない科目ばかり。特に苦手だったのが選択問題で、事前に答えが決…

ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素

インターネットやスマホに代表されるテクノロジーの出現により、様々な業界においてよりユーザーメリットの高いサービスが生み出され、既存のプレイヤーたちを脅かしている。これを”Disruptive Innovation”と呼ばれれ、日本語では「破壊的イノベーション」と訳される。

たとえこれまで数十年以上も続いているようなサービスであったとしても、大きな変革の波に乗り遅れると、いともたやすく「破壊」されることがある。
新規サービスが原因じゃない。ユーザーが正しい選択をしているだけだ
下記の例を見て…

ピクサーのデザインチームが重要視する4つのプロセス

トイストーリ、ファインディング・ニモ、カーズなど、次々とヒット作品を生み出すピクサー。サンフランシスコ近郊にあるこのスタジオでは非ハリウッド的な手法を用いてオリジナル作品を生み出している。それも、3Dアニメという新しいジャンルを確立させ、その世界観をどんどん広げている。

そしてピクサーは、クリエイティブの質とビジネス結果の両立を実現させた稀有な存在の会社でもある。ワクワクを生み出すための独特なカルチャーや、それをしっかりとしたビジネスとして成り立たせるためのプロセスには学ぶべき部分が非常に多い…

スタートアップと中小企業との違い

以前に日本で会社を経営する友人から、

「この前のセミナーを聞いてスタートアップっていうのが理解できたつもりなのですが、ぶっちゃけ自分の会社がスタートアップなのか中小企業なのかイマイチわかってません」

と言われた。これは今年の年初に開催された、第2回Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKAの最終報告会における孫 泰蔵さんとの対談セッションの中で触れられた下記のポイントについての質問であった。
ベンチャー企業だからと言って、スタートアップであるとは限らな…

サンフランシスコのデザイン会社まとめ

スタートアップに加え、サンフランシスコは世界でも有数のデザイン会社が多くある事で有名である。市内の複数の著名デザインスクールが輩出する豊富なデザイナーに加え、世界中から多くの優秀なデザイナーも集まって来ており、ユーザーにとって使いやすく優れたプロダクトづくりの屋台骨を支えている。

古くはAppleのMacintoshのデザインをfrogが、マウスの設計をIDEOが行った。最近ではAirbnbやUberなどのユーザー体験を追求したスタートアップとのコラボも盛んである。また、ここ数年で、サービスデ…

日本の新規サービス規制に思う事

先日、日本国内の民泊に対する規制強化でAirbnbの足元の登録件数が約8割減の1万3800件まで減ったというニュースを見た。

関連: エアビーが日本で予約をキャンセル-民泊施設への規制強化で

自分でも頻繁に利用しているサービスでもあり、これには大変大きなショックを受けた。この動きは、これは「ユーザーのためになる = 正義」の概念が強いサンフランシスコに住んでいると、大きな謎である。

正直、今回の規制は、ユーザーに素晴らしい体験を広めるのを全力で阻止しているようにしか感じられなかった…

【給与差1.4倍】グラフィックデザイナーがUXデザイナーになる方法

ビジネスにおけるデザインの重要性が高まるにつれて、デザイナーに求められるスキルに変化が生まれている。これまで”デザイナー”と言うと、見た目の綺麗にしたり、開発がある程度完了したプロダクトの見た目を綺麗にしたり、広告のクリエイティブを作成する、いわゆる”絵を描く”作業を行う職業と思われきた。

しかし、デザイン思考やサービスデザインなどの新たなプロセスを通じ、企画の段階からデザイナーが関わるケースや、デザイナー出身の経営者のいる企業の活躍などでデザインがよりプロダクトやビジネスの根本に影響を与え始…

日本の働き方改革を阻む5つの悪習慣

日本でのワークスタイルの改善はやはりまだまだ大きな課題がありそうだ。先日のポスト「【ワークライフバランスはもう古い】新しい働き方、ワークライフインテグレーションとは」に対しNewspicksでは2,000近いPicksと数多くのコメントをいただいたこともあり、現在の日本における大きな課題の一つだと実感させられた。

同時に下記のコメントに代表されるように、今の日本では実施したくてもそんなに簡単に現状を変えることのできない”制度的な問題”もあることが浮き彫りになってきている。
めちゃめちゃ共感し…

時代の岐路に立つ自動車業界を大きく変革させる9つのスタートアップ

ここ数年で最も大きな変化が訪れる産業の一つが自動車業界だろう。btraxでも複数の自動車ブランドに対して次世代のユーザー体験の設計や、新たな事業づくりに関する取り組みを提供させていただいているが、今後数年は自動車産業にとって、今までにない規模でのパラダイムシフトが起こることに確信を得ている。
業界を取り巻く3つの大きな変化
20世紀の代表的な産業とも言える自動車はしばらくリニアな成長が続いていたが、ここにきて下記の3つのファクターにより、かなり大きな変革が訪れようとしている。

自動運転テ…

Amazonを成功に導いたユーザーを夢中にさせる4つのUXデザイン要素

世界を制覇し始めているGAFAの一角であるAmazonの凄さは下記の数字を見ただけでも伝わってくる。

44% – アメリカのeコマース市場におけるAmazonのシェア
1億人 – Amazon Primeのメンバー数
3人に1人 – アメリカの成人でAmazon Primeに加入している割合
95% – Primeメンバーシップを更新したいと思う率

この成功の要因は何であろうか?確かに安さはあるだろう。しかし、見落としがちなのが、デザイン的要因である。

実は私、デザイ…