Brandon K. Hill

UIやUXにパクリの概念はあるのか?

“優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む “という言葉を聞いたことがあるかもしれない。ピカソが言ったとか、スティーブ・ジョブスが引用したとかで、デザインの世界では一つの基準にもなっている。 模倣は良くないが、アイディアを盗むのはアリということか? これに関して、以前にインスパイアとパクリの違いをまとめた。クリエイティブな世界では誰もが何らかの理由で誰かに影響を受けており、100%オリジナルはかなり稀であるという話。ざっくりと考えてみると下記の感じなのかなと思う。 パクリ: バレたら困る インスパイア: バレた時の言い訳として使う オマージュ: わかる人にだけにわかってもらいたい リスペクト: 他のクリエイターに気づいて欲しい パロディー: バレなきゃ困る どこからがアウト?インスパイアとパクリの境界線とは そして最近ふと思った。アートや音楽、ロゴやイラストのパクリはあるが、UIやUXにもパクリという概念は存在しているのだろうか?と。 UIトレースとパクリの違いは? デザインを学ぶ際に最も効果的な “パクる”, いや “トレース” する手法がある。これは既存の人気サービスのUIやUXをベースにして、その上を文字通りなぞり、インタラクションも真似をしてみることで、ユーザーに喜ばれるサービスのデザイン要素を身につける事ができる。 これは、現に多くのデザインスクールやワークショップでも推奨されている手法である。トレースする経験を積み、それを消化し、自分のもにできれば、デザインスキルになる。 クリエイティブな事がそんなにも凄いのか 最近のUI/UXは似たり寄ったり おそらく皆様もご存じのように、世の中のアプリのその多くは似たり寄ったりなUI/UXを実装している。 丸みを帯びたサンセリフ書体の大きく太い見出し、ネガティブスペースを多用した最小限の白黒インターフェース、ほとんど色を使わないなど、一見してどのアプリか見分けがつかないことも多い。 そして人気のアプリになればなるほどUIは “透明” になっていき、UXも記憶に残らないくらいナチュラルだ。 例えば、最近のソーシャル系のサービスにおけるショート動画のUIはどれもかなり似ている。使っているうちに「あれ、これどのサービスだっけ?」と思うことも多々ある。 この例の様に、多くのアプリのUIが似ているのは、ユーザビリティーを追求したら同じものになったかもしれないし、アプリ全体に共通するユニバーサルなUIを追求した結果なのかもしれない。 コンテンツを見せることを最優先したり、ユーザーテスト、グロースハックなどの過程で、自然と似たユーザー体験にたどり着くのだろう。 どちらにせよ、ユーザー視点から考えるとより直感的に使えるサービスになっているのには変わりない。これは、「けもの道」が作り出されている状況に似ている。 UXデザインにおける「けもの道」現象を考える どんどん透明になっていくUI 実はユーザーが気づかないうちに、人気アプリのその多くのUIが “透明” になってきている。 初期の頃のデザインはかなり工夫され、ブランド色が強かったものも、バージョンアップを重ねていくにつれ、UIにおける装飾要素がどんどんなくなっていき、最終的にたのアプリとの違いがほとんどなくなっていっている。 それもそのはずで、UXという言葉を作ったことで知られるドン・ノーマンは、「インターフェイスの本当の問題は、それがインターフェイスであることだ」という名言を残している。「インターフェイスは邪魔になる。ユーザーはインターフェイスにエネルギーを集中させたくはない。理目的達成に集中したいのだ。」と。 実はユーザーから見るとUIや似ている方がありがたい 世の中のアプリのその多くが似通ったユーザー体験を提供しているのには意味がある。ユーザーにとってそのほうがありがたいのだ。 多くのユーザーが毎日複数のアプリを行き来することで、アプリ疲れが生まれ始めている。新しいアプリをダウンロードするたびに、異なるインターフェイスやユーザー体験を学び直すのに疲れてしまっている。 ということは、既存のUIやUXを踏襲した上で、新しい価値を提供してくれるサービスの方が自ずと使いやすくなる。当然だろう。ECサイトでショッピングカードのアイコンを右上に表示していない “ユニーク” なUIを喜ぶユーザーがどれだけいるだろうか? UIデザインのスタンダードを逸脱するサービスを人間の脳は喜んでくれない。 実際。以前にSnapchatが機能をごちゃ混ぜにしたり、ナビゲーションのパターンを変えたりといった型破りなデザインをリリースしてみた結果、ユーザーのセンチメントをほぼ73%低下させ、アプリのユーザー数も株価も大きく下落させた。 この例からも分かる通り、斬新なデザインはリスクを伴う。逆に他のアプリと似ていたとしても、一貫したデザインはユーザーを動揺・混乱させる可能性を低くすることができる。 【注意!】以前にはUI/UXのパクリ疑惑訴訟も しかし、UI/UXのパクリ疑惑に関して意義を唱えたケースもあり、実際に2018年に訴訟が起こっている。マッチングアプリ大手のTinderが同種サービスのBumbleに対して”スワイプ機能” をパクったとして訴えた。正確にはデザインパテント侵害の疑い。 このスワイプ式UIは、通称Tinder UIとも言われ、アプリをデザインする際にはよく利用されるスタンダードな動きではある。 実は後発のBumbleのCEOが元々Tinderの社員で、社内で個人的なゴタゴタが発生。その後独立し類似サービスを開始した。そして、Tinderの親会社がBumbleに買収の打診をしたが断られた事実もある。なので、この訴訟の背景はかなりドロドロしてるっぽい。 Tinder側としては、BumbleのCEOおよび共同創業者がTinder在籍中に学んだ独特のUXを参考に、ライバルアプリを開発したとし、「Tinderを成功させるために、これまで多大な資源と創造的専門知識を投入してきた。これらの権利を侵害する同業他社に対しては、特許およびその他の知的財産権を行使する。」というのが彼らの主張。 一方で、ユーザー側からしてみるとこのUI/UXはマッチング系アプリの定番であり、Tinderが元祖だったにせよ、他のアプリが採用することに対しての違和感は無いように感じる。 ちなみにこの訴訟は2020年の6月に和解した模様。 あえて知的所有権を行使しないTwitter Tinder vs Bumbleとは逆の例がTwitterアプリである。現在では一般的になっている画面を下に引っ張ってコンテンツをリロードするUX (Pull to Refresh) を最初にデザインしたのがTwitter。 このユーザー体験は、Instagram, Gmail, Facebookなどなどに「盗用」され、ユーザーは無意識に利用できるほど一般的になっている。 元々はTwitter用のアプリ、Tweetieが最初に開発した。そして、Twitter社はこのパテントを所有している。しかし、他のアプリがそれを盗んだとしても、その権利を行使することはない。 そこには二つの理由があると考えられる。まず一つ目は、他のアプリがそれを採用することを阻止したところでTwitterにはメリットがない。そしてもっと重要なのが、そのUXがより一般的になればなるほど、多くのユーザーがTwitterアプリを使いやすく感じてくれるから。 従って、逆にパクってもらってもOK。というのがTwitterのUXデザインポリシーになっている。 パクリあいながら成長するiOSとAndroid 最も一般的な類似UI/UXはスマホだろう。 2007年の初代iPhoneの発表から少し遅れてGoogleがAndroidがを発表した時、多くの人々が「あ、iPhoneのパクリだ」と感じた。でも実は、その後のアップデートを重ねるにつれ、お互いがお互いのUIデザインやUXに “インスパイア” され、それぞれの精度を上げてきている。 例えば、アプリ内のコンテンツをホーム画面に表示できるウィジェットなど、iOS14 (2020年リリース) に初めて実装された機能のその多くは、すでにAndroidに実装されている。その中でも、ピクチャーインピクチャーは2017年にリリースされたAndroid 8の一部としてリリースされていた。 この例のように、iOSの機能の多くが、何らかの形でまずAndroidに実装されていることが多い。しかしAppleは、他のデバイスとの連動や、より洗練されたUXの作り込み、そして絶大なるブランド力を通じて差別化を図っている。 おそらく少なくともスマホOSにおいては、パクリ、パクられの流れは切磋琢磨になっているように感じる。そして、ユーザーからすると、それはかなりありがたい状態である。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは スクラッチからデザインしない方が良い理由 誤解を恐れずにいうと、UIやUXの領域になってくると、無理にスクラッチからデザインしない方が良い。 まず、今までに存在していない利用体験をユーザーに提供すると、ユーザーがその利用方法を学ばなければならなくなり、使いにくくなる。 一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つという理論。 これはヤコブの法則とも言われている。詳しくは下記のポストを参考に。 UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則 これは日常生活にも適用される。例えばホテルに泊まった時、シャワーの使い方に悩んだことはないだろうか?無駄におしゃれにデザインされすぎてて、冷水を浴びた経験のある人も少なくない。 なので、デザイナーのエゴで “クリエイティブ” なUIをデザインするのは、必ずしもユーザーのメリットに直結しない。 ユーザーは、製品の使い方を覚えるのに、できるだけ労力をかけたくないと思ってる。ニールセンが「ユーザーが慣れ親しんでいるパターンでデザインしなさい」と提唱しているのはこれが理由。 現在の世の中で愛されているデザインパターンは、全て優れたデザイナーが長い年月を掛けて生み出されたものであり、それを利用しないのは勿体無い。 確立されたパターンは優れたユーザーエクスペリエンスの基本であり、それを活用することは現代のUXデザイナーの仕事として欠かせないものである。 問題に対する解決策がすでに存在するのであれば、それを利用すれば良い。パクリと言われても、ユーザーは気にしないし、ステークホルダーも気にしない。ただ、誰がみても安易な丸パクリはバレバレでダサいのでやめておこう。 なぜプロダクトから機能を削るのが難しいのか? UIにおける一般的な要素 そもそも現代において、モバイルでもWebでも、UIデザインを行う際に全くのスクラッチから作ることはほぼ無い。作業の効率化とユーザビリティーを優先させるために、既存の素材の組み合わせで行うことがほとんど。 よっぽどユニークなサービスでない限り、全くのゼロからデザインする理由が見つからない。言い換えると、どこにも存在していないUIをデザインしてしまうと、ユーザーが混乱することも多い。これは、カレーの具がどこの家庭も大体同じなのと一緒な感じ。 一般的なUI要素例: ログインボタン ハンバーガーメニュー チェックボックス ドロップダウン カレンダー モーダル […]

デザイナーが知っておくべき10の認知バイアス

認知バイアスとは、思考のプロセスにおける系統的な間違いのこと。簡単に言い換えると、思い込み。意思決定や判断を行う際の精神的な近道として機能するが、間違った判断を生み出すこともある。 年齢、性別、文化的背景に関係なく、誰もが認知バイアスの影響を受けていると言われる。 これを理解しておくことは、デザインを生業にする我々にとってはとても重要だと思う。なぜなら、人間である以上は、そこに認知バイアスがあり、それを熟知しておくことで、より適切なデザインをすることができるようになるから。 ユーザーエンゲージメントを向上させる7つの要素 認知バイアスが存在する理由 我々の脳は、日々信じられないほどの量の情報を取り込んでいる。同時に、できるだけ思考エネルギーを節約したいとも思っている。そのため、難しい判断を迅速に行うために、一般論や経験則(ヒューリスティックとも呼ばれる)に頼っている。 脳がより効率良く判断を下すための、一つの “チート” に近い。 また、認知バイアスは、情報に対するフィルター的役割を果たす。しかし、コーヒーの粉と水がコーヒーに変わるように、情報がフィルターにかかることで、その姿や味が変わってしまうことも多々ある。 人々の行動を変える行動心理学の力【ビヘイビアデザイン】 知っておきたい認知バイアス Top 10 人間の脳は、感情的になっているとき、決断を急いでいるとき、社会的なプレッシャーを感じているときなどに、認知バイアスに頼りがちになる。しかし、日常の思考や意思決定にも、認知バイアスは存在している。 数ある認知バイアスの中でも、よくある10の認知バイアスと、それらを理解し、デザインにおいて正しい判断を下すための手法を説明する。 情動ヒューリスティック ハロー効果 集団浅慮 サンクコストの誤謬 自信過剰バイアス 確証バイアス ドッペルゲンガー 楽観バイアス 後知恵バイアス キャッシュレス効果 1. 情動ヒューリスティック (Affect Heuristic) 人が感情的な状態に基づいて意思決定を行うという傾向のこと。例えば、イノベーションという概念にポジティブなものを連想すると、新しいプロジェクトはリスクが低いと判断しやすくなる。 具体例: 好ましい感情を持っているときには高いメリットがあり、リスクは少ないと判断する 嫌な感情を持っているときにはメリットは低く、リスクは高いと判断する このバイアスを避けるための問い: 特定のデザインに対して主観的な愛着が湧きすぎてないか? 感情が理性より優っていないかどうか? 感情に流された決断をしていないか? 2. ハロー効果 (Halo Effect) 外見が良ければ良いほど中身も良いと捉えてしまう傾向のこと。例えば、同じ犯罪を犯したのにもかかわらず、外見がいい人の方が外見が良くない人よりも罪が軽くなるという研究結果が出ている 具体例: 美しいデザインのプロダクトは性能も良い 見た目が劣っている自動車は性能が悪い このバイアスを避けるための問い: この【人/場所/アイディア】のどこが本当に好きなのか? この【人/場所/アイディア】の外見が異なっていても同じ感想を持つか? 3. 集団浅慮 (Groupthink) 英語ではグループシンク。日本語で“集団思考”または“集団浅慮 (せんりょ)” と呼ばれる。集団の中にいる人は、意思決定について議論して反対意見のレッテルを貼られるリスクを冒すよりも、集団に同調した方が良いので、不合理な決定を下す傾向がある。 具体例: 会議の際に多数の人が自分の意見と違う場合は発言しない 世の中の多くの人が使ってるのでスマホはiPhoneが一番性能が良い このバイアスを避けるための問い: チームメンバーと仲良くするためにこのアイディアを選んでいないか? 自分が正しいと思う選択より、周りからどう思われるかを重視していないだろうか? 4. サンクコストの誤謬 (Sunk Cost Fallacy) 悪いアイデアに投資した時間とお金を惜しむことで、それ以降の投資をやめることができない心理効果。 例としては、コンコルドという飛行機を作るプロジェクトにおいて、途中で採算が合わないかもしれないという状態にもなったのにも関わらず、巨額の予算と人員を投入していた為に後に引けない状態になっていた状態 (コンコルド効果) が挙げられる。 具体例: パチンコですでに3万円使っているが、ここで止めると損するので出るまで注ぎ込む もう少し掘れば出るのではないかと温泉を掘り続ける このバイアスを避けるための問い: ここまで費やした仕事とはいえ、感情移入しすぎていないだろうか? もし自分が外部の人間で、今このプロジェクトを観察しているとしたら、このプロジェクトを止めることを提案するだろうか、それとも続けることを提案するだろうか? もしプロジェクトを途中放棄した場合、起こりうる最悪の事態は何だろうか? 5. 自信過剰バイアス (Overconfidence Bias) 自分の知識や経験は非常に優れていると過信することにより、状況の正確な判断や対応ができなくなる傾向。特に馴染みのないテーマではこの傾向が強い。このバイアスに関してコペルニクスは “知っていることを知り、知らないことを知らないと知ること、それが真の知識である。” と表現している。 具体例: 自分のデザインは他のデザインより優れている ターゲットユーザーへの理解が浅くても大丈夫だと考える このバイアスを避けるための問い: 自分はこの分野にどの程度精通しているのか? 0%から100%の範囲で、自分が正しいとどの程度確信しているか? もし、この選択に対する確信が20%低かったら、同じ決断をするだろうか? 6. 確証バイアス (Confirmation Bias) 自分がすでに持っている先入観や仮説を肯定するため、自分にとって都合のよい情報ばかりを集める傾向性のこと。Googleバイアスともいう。事件が起こった際にSNSなどで自分の意見と同じコンテンツを優先して探しがちなのもこれ/。 具体例: 「高齢者の運転は危険だ」という先入観から、そうした情報ばかりを検索する ロゴの色は青が良いと思ったら、青に関してのポジティブな意見を検索する このバイアスを避けるための問い: 自分の信念について、相反する情報を探したことがあるか? 自分の立場を守るために感情的になっていないか、それとも理性的な視点を持っているか? 7. ダニングクルーガー効果 (Dunning-Kruger Effect) 未熟な人が自分の能力を過大評価しがちな傾向。自分の能力を客観的に正しく自己評価ができず、過大評価してしまう傾向。 具体例: 同期よりも自分が優秀だと思い込んで、能力を超えた仕事を請け負う 周囲の評価に耳を傾けず、自分のデザインを非常に良いものだと思い込み修正しない […]

日本で生き続ける3つの消滅した米国ブランド

先日、アメリカ・サンフランシスコ発の体験型ストア、b8taが全米の全店舗をクローズした。事実上の倒産であるが、興味深いことに日本法人であるb8ta Japanは継続される予定。 代表の北川さんによるエントリーによると “日本事業はお陰様で大変好調” とのこと。おそらく本国のアメリカよりも、日本の商習慣やユーザー体験、消費者の購買パターンとの相性が良かったと思われる。 海外ブランドにセカンドチャンスを与えてくれる日本市場 今回のb8taの例のように、発祥地のアメリカではうまくいかなかったが、日本ではヒットしている。そんなボン・ジョビ的 (失礼) な “Big in Japan” ブランドは他にもいくつかあり、それらストーリーも興味深いのでご紹介。 ローソン 国内コンビニTop3に入るローソンは、元々オハイオ州が発祥。1939年に酪農家のJ・J・ローソンが乳製品工場で、ミルクを販売するための店を始めた。当時の名前はローソンズ・ミルク・カンパニー。 当時はミルクを家庭に配達するのが一般的だったのを、お店で売り始めたのが新しかった。ちなみに、ローソンのロゴに牛乳の瓶が描かれているのも、ミルクストアから始まったのが由来。 その後順調に店舗を増やし、食品や日用品を販売するコンビニエンスストアに成長。オハイオ州外を含め、700店舗まで拡大した。 しかし、オーナーが交通事故によって他界したり、親会社によってローソンの身売りなどにより、アメリカにおけるローソンブランドは1985年に消滅した。 しかし、1975年から日本においてダイエーの100%子会社として、ダイエーローソン株式会社を設立したことから、日本でのビジネス展開が開始され、現在では誰もが知るコンビニチェーンの一つにまで成長した。ちなみに、現在の国内ローソンの店舗数は、アメリカとカナダのセブンイレブンの合計店舗数よりも多い。 TOWER RECORDS 本国では10年以上も前に既に倒産し、消滅してしまったと聞いて驚くブランドがある。レコードチェーンのタワーレコードである。創始者がいまだに日本でビジネスが継続しているのを目の当たりにし、信じられない表情を浮かべているのだから。 タワーレコードは、1960年にラッセル・ソロモンが故郷のカリフォルニア州サクラメントにオープンしたのが最初である。その後、1967年にサンフランシスコ、1970年にロサンゼルスに出店し、成功を収めた。1980年には子会社タワーレコード・ジャパンが設立され、札幌に日本1号店をオープンした。 元々音楽好きの連中が集まって、自分の好きなレコードの売買をすることから始め、映画館の建物を店舗にしたことがきっかけにTOWER RECORDSと名付けられた。その後、地元を中心に口コミでその存在が広がり、時代の波に乗って全米に店舗を拡大した。 そんな時期に、どうやら札幌に “勝手” にTOWER RECORDと表記したレコード屋さんがあるらしいとの噂を聞きつけ、どうせなら一緒にやろうということになり、日本1号店が札幌にオープンした。ちなみにその店舗は、本物の「TOWER RECORDS」ではなく、「TOWER RECORD」と誤って使用していた。 かの有名な、タワーレコードのコーポレート・ボイスである「NO MUSIC, NO LIFE.」は、まず日本支社で開発、使用され、その後アメリカ国内や海外でも採用されるようになった。 その後、1990年代後半にはタワーレコードは隆盛を極め、世界中に店舗を拡大し、HMVやヴァージン・メガストアなどの追随するブランドが生まれるほどになった。 しかし、2000年代に入り量販店でのCDの安売りや、ネットでの販売、そしてダウンロード共有などの急激な普及が進み、時代の変化に対応しきれず、2006年に倒産・全店舗が消滅した。 その一方で、タワーレコードのブランド自体は日本でも生き続け、渋谷店を中心に一般的に知られている。その様子は、2015年にはコリン・ハンクス監督による、ドキュメンタリー映画「オール・シングズ・マスト・パス(All things must pass)」によって紹介されている。 最後の方で、創始者のラッセル・ソロモンが渋谷のタワーレコードに訪れ、社員全員から拍手で迎えられるシーンは感動せざるにはいられない。 ミスタードーナッツ ドーナッツの本場であるアメリカに住んでいる日本人に「アメリカにあったら嬉しいもの」と聞いて、「ミスド」との答えが返ってきた。 そう、日本のミスドは、アメリカのドーナッツと少し異なっている。でも実はミスドも元々はアメリカが発祥。 てっきり日本のブランドっぽいが、ミスドは1956年にボストンでスタート。創業者はハリー・ウィノカーで、義兄のウィリアム・ローゼンバーグと共に始めた。その後、ローゼンバーグはフランチャイズを売りたかったが、ウィノカーは反対したため、ローゼンバーグは自分の道を歩むことになった。それが現在のダンキンドーナツである。 しかしながら、ウィノカーはミスタードーナッツ1号店の成功によって、その後フランチャイズモデルを導入。1970年までに、ミスタードーナツは北米で275店舗にまで拡大。1980年代のピーク時には、北米で550店舗を展開していた。 ウィノカーとローゼンバーグは、1970年にダンキンドーナツが日本1号店をオープンすると、1年後にミスタードーナツも大阪府箕面市に出店するなど、互いにしのぎを削っていた。 ミスタードーナツは、ウィノカーと株式会社ダスキンの創業者である鈴木清一氏とのパートナーシップにより日本に上陸。鈴木氏はアメリカに渡ってビジネスを学び、ウィノカーと出会ってから、ドーナツ屋を日本に持ち込むことを決意したのである。 当初、日本市場を狙う他の企業と同様、ミスタードーナツも米国での事業をそのままコピーしたものであったが、ダスキンは独自の路線を展開することを模索し始めた。 ダスキンの倉庫の中に、アメリカのミスタードーナツ店の実物大模型を密かに作って、市場をテストしたのだ。ダスキンの営業マンにドーナツを試食してもらい、内装についてコメントをもらった。しかし、彼らはあまりいい顔をしなかった。 カウンターが高すぎる、椅子が広すぎる、コーヒーカップが重すぎる、ドーナツが大きすぎて味がおかしいと。日本人の味覚にはナツメグが多すぎるなどのフィードバックが寄せられた。 そこで、メニューも含めてすべてを変更した。高級感あふれる雰囲気に生まれ変わった。日本ではドーナツは子供のおやつというイメージが強かったので、値段を上げ、シアトルのおしゃれなコーヒーショップをイメージした店舗にした。それによって成功を収めた。 広告には人気芸人を起用し、子供向けのキャンペーンを行い、バブル崩壊後は値下げを行うなど、国内の状況に合わせ、臨機応変な経営を進めた。 一方本国のアメリカでは、スターバックスやダンキンドーナツが1990年にミスタードーナツブランドを買収し、自社店舗に転換したことで、ミスタードーナツはアメリカ市場から追い出されることになった。 重要なのはブランドローカリゼーション これら3つの例が示すように、元々の発祥の地では消滅 or かなり縮小しているようなブランドでも、日本で花開いているケースもある。 【ローカライゼーションの第1歩】アメリカのキャッチコピーの特徴 特に欧米のブランドは日本でも受け入れられやすく、上手にローカライズすることができれば、日本市場は海外ブランドの救いの地になってくれるのかもしれない。 カルチャーの違いを考慮したデザインのポイント

アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由

先日サンフランシスコ市内にある丸亀製麺 (アメリカだとMarugame Udon) に行った。コロナの期間は閉店していたが、今年に入ってからは営業を再開している。地元の人たちにも大人気の繁盛店。 入口でトレイを取り、列に並んで、カウンター越しにオーダーを行う仕組み。 そこであることに気づいた。 「めっちゃ人多くない?」と。それも、お客さんだけではなくて、従業員の数が。 従業員がめっちゃいる。列に並んでいる客と同じぐらいに。そして、それぞれのスタッフが “一つ” の作業しかしていない。 実際、オーダー内容に関しての質問をしてみても、 「私は漬け汁担当ではないのでわからない」 「トッピングに関しては横の人に聞いてくれ」 「私は天ぷらを作るだけの役割だから」 などの答えが返ってくる。まあ、これはアメリカのレストランだと日常的な会話。 一杯のうどんに12人 そう、それぞれの工程がきっちりと分業されており、それぞれの “担当者” が決まっている。言い換えると、一人につき一つの作業が割り当てられているのだ。 ざっと見ただけでも下記が担当で分かれてる。 オーダーを取る人 麺を準備する人 麺を茹でる人 茹でた麺を渡す人 麺を冷やす人 麺をお椀に入れる人 お椀に汁を入れる人 お椀にトッピングを入れる人 お椀をお客さんに渡す人 天ぷらを揚げる人 揚げた天ぷらを並べる人 会計をする人 これだけでも12人。 つまり、一杯のうどんがお客さんの手元に渡るまでに12人のスタッフが関わっていることになる。これは凄い。F1のピットストップを彷彿とさせる超分業スタイルだ。 これに加え、テーブルを片付ける人や後ろのキッチン、マネージャーなどを含めると相当の従業員数になるだろう。 従業員が多いと値段も高くなる これだけの従業員がいるということは、もちろんお店へのコストも掛かってくる。そしてその結果として、値段も高くなる。 ちなみに、メニューに記載されているアイテムの数は必ずしも多くない。なのにめっちゃ従業員が多い。 時給が低いと複雑な作業は任せない ちなみに、ここのアルバイトの時給は2,000円ちょっと。これでもこっちだと最低賃金に近い。 働いている方からすると「こんな安い時給なんだから、一つのことしか出来ない」と感じる金額であるため、アメリカでは、飲食店のバイトに複雑なオペレーションを任せることは稀である。 アメリカはチームプレーが結構苦手 また、それぞれのプロセスを分業にすることによって、うどん一杯を作るという比較的単純そうなタスクでも、チームワークが求められる。 しかし、アメリカの職場は結構ソロプレイが多いため、その作業を見ていると結構ぎこちなく感じる。 シングルタスクのアメリカとマルチタスクの日本 これが日本だとどうだろう?例え決して時給の高くないコンビニのバイトであったとしても、少人数で超マルチタスクが求められる。 レジ業務はもちろん、棚卸しや各種支払い、宅配便の手配、簡単な調理、清掃などなど、数十種類のタスクを、一人のバイトがまかなうことも少なくはない。 言い換えると、コンビニは一人の人間が超マルチタスクで運営している。 参考: コンビニアルバイト仕事内容21個の業務。経験者が教えます! これがアメリカの場合、アルバイトはシングルタスクが基本になるため、属人的なオペレーションに頼ることが出来ない。一人のバイトにつき、一つの業務が基本である。 日本は従業員やバイトが優秀すぎる これを考えてみても、やっぱり日本の人たちはすごいと思う。そこまで高い報酬を受け取っていなくても、しっかりと業務をこなす。それも、結構複雑な内容を。 これがアメリカだと「そこまでの給料もらってません」の一言で断られる。そもそも、採用する際に “Job Descriptions” という業務内容を書いた書面で、役割がここからここまでとクリアに定義され、それ以外は任せられないことが多い。 関連記事: 【カルチャーショック】日本人スタッフがアメリカの職場で感じた10の企業文化の違い 自動化 vs 運用でカバー この状況を考えてみると、一つの結論に行き着く。そう、シングルタスクの単純作業は、テクノロジーの発展とともに、デジタルや機械、ロボットに置き換えやすい。アメリカは単純作業を自動化する動きが加速している理由にもつながる。 逆に、属人的なマルチタスクによるオペレーションの場合、人間による運用でカバーしようとする。むしろ、テクノロジーで置き換えるハードルが高くなってくる。 安い時給でマルチタスクできちゃうとなると、DXを進める理由が薄れてくるのかもしれない。日本では、無理やりデジタルにしなくても「究極のアナログ = 人間による作業 」が最強なのだから。 アメリカ: シングルタスク = 自動化しやすい 日本: マルチタスク = 自動化しにくい 関連記事: これから失われる仕事と求められ続ける3つの能力 日本はDXを推進する理由が薄い DXの重要な目的は、これまでのアナログなやり方や属人的なプロセスから、デジタルテクノロジーを活用して、より自動化、効率化を進めること。 しかし、日本の場合は、品質の高い労働力を比較的安いコストで獲得できるし、これまでは、多くの業務を人的オペレーションでなんとかなってしまったこともあり、DXに対する “焦り” が少ないのかもしれない。 業務のデジタル化や自動化を進める長期的コストよりも、人を雇う短期的コストの方が低い場合は、どうしてもDX導入への腰が重くなりがち。 また、すでに正社員が多い会社は、簡単に解雇しにくいため、どうにか既存の社員の雇用を守るためにあまりDXに前向きではない可能性も考えられる。 関連記事: DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革 アメリカは人的コストが高い = 人を減らしたい そもそもアメリカだと、アルバイトだったとしても、かなり人的コスト高&コスパが良くないため、どうにかしてテクノロジーによる置き換えを考える。テクノロジー企業の多くが電話によるサポートを提供していない理由も理解できる。 また、労働力の品質も日本のように高水準で安定していないため、属人的なオペレーションだとヒューマンエラーが多発する。 ということは、コストが高い割には業務の品質が低くなるため、経営者としてはできるだけ機械による代替え案を探すことになる。 その象徴的な例が、ロボットがハンバーガーを作るファーストフードのThe Creatorだろう。なるべく人的リソースを減らすことで、コストとエラーを下げるのが目的。 関連記事: ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点 業務的なペインが少ないと、DXのゲインも感じにくい ここ数年で日本国内ではDXが叫ばれているが、そもそも「なぜ」DXが必要なのか? 究極的には、人がやりたがらないこと、人間が苦手な業務をテクノロジーに変換することで、ヒューマンエラーを減らし、より豊かな生活を実現するのが目的だろう。 しかし、世界的に見ても賃金が安く、平均的な教育レベルの高い日本では、わざわざテクノロジーに頼らなくても人を増やせば良い。低い賃金でもあまり文句を言わず、しっかりと仕事をしてくれる。結果的に、今のところ頑張って人力による運用でカバーしてもコスパは悪くない。 でも、もちろんこれには限界もある。これから深刻になってくる労働人口の低下や、長時間の過剰な業務により体力・気力の限界。そして、従業員のメンタル的な問題もどんどん増えていくだろう。 ここで経営者として今一度「どのようにDXを進めるか」の前に「なぜDXが必要なのか」をしっかりと考えてみたいところ。 アメリカのレストランが高いのは、材料とか家賃の値段もあるけど、従業員の効率が悪くて、日本よりも数倍の人数を雇ってるからかもな。この写真は丸亀うどんの例。 pic.twitter.com/sL2B3iP93V — Brandon K. Hill | […]

なぜプロダクトから機能を削るのが難しいのか?

足すより削る方が難しい。これはデザインをした者であれば誰もが直面したことのあるチャレンジだろう。現在のサービスデザインでは、足し算よりも引き算の方が何倍も重要である。 事実、現在ヒットしている商品やサービスのその多くが、機能の多さよりも必要最小限の機能でユーザーの目的を果たすことで人気を集めている。 リリース当初、Snapchatは、しばらくすると消えてしまう画像をユーザー同士で送り合うだけのアプリだった。Uberでは、タクシーの事前予約はできなかったし、Amazonは本だけを売っていた。Googleは検索エンジンに過ぎなかったし、マクドナルドはフォークとナイフを提供していなかった。 たくさんのことがそれなりにできるよりも、ある一つのことを最高レベルの洗練された体験で提供することにフォーカスしているプロダクトに人々は熱狂する。それなのに、我々プロダクトチームの多くは、成功する製品には多くの機能が必要だと考えがち。 でも現実は逆である。 機能を削ったことでヒットしたプロダクト例 (主に初期バージョン): iPhone – 物理ボタンを極力排除 MacBook – DVDドライブ排除 Google – 検索ボックスのみ Twitter – 140文字まで Instagram – 画像のみ Tiktok – 60秒までの制限 Snapchat – 消える Medium – 記事を読むことだけにフォーカス Amazon Go – レジ会計が無い GoPro – カメラから液晶を排除 Kindle – 本を読むだけのデバイス Uber – 降車時の支払いが無い Clubhouse – 音だけ、録音機能なし これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる 1つの機能に絞り込むMVPの価値 例えば、スタートアップの初期においては、必要最小限の機能だけを実装し、そのサービスの価値をユーザーに問うためにMVPと呼ばれる初期バージョンが作り出される。 多くの初期バージョンがそうであるように、機能は限定されているが、その目的が分かりやすく、使いやすい。 ユーザー検証の後にサービスがリリースされ、そのシンプルさが喜ばれ、ユーザーも順調に増え始める。 しかし、ここで一つの問題が持ち上がる。 ユーザーを増やす ≠ 機能を増やす より多くのユーザーを集め、彼らをより喜ばせる?為には、新しいユースケースを想定した機能を追加する必要があるという議論がチーム内で広がり始める。 その主な理由として考えられるのは: プロダクトのレビューやアンケートなどを通じて、一部のユーザーから機能追加のリクエストが来る プロダクトチームは、そのような新機能を追加することで、それまで獲得できなかったタイプのユーザーや、他のカテゴリーに進出することが可能だと考える。それにより、競合他社から市場シェアを奪うことによる、ビジネスを拡大を狙う プロダクト提供側は「機能が増える = より多くのユーザーニーズに対応できる」と勘違いしてしまい、顧客層を広げるために機能追加を進めてしまう このようにしてどんどん機能が追加され、それに合わせてUIもどんどん複雑になっていく。 多機能の弊害 UIが使いにくい ブランド価値を想起させにくい 利用方法を学ばなければならない 選択肢が多すぎて行動が起こせない 機能を削りにくい主な理由 ほとんどのプロダクトチームは素晴らしい製品を作り、顧客を喜ばせたいと考えている。機能追加はそれを実現する最も一般的な方法だと考えがち。しかしそれは、「短期的」そして「人工的」なドーピング手法でしかない。 その一方で、機能を削る判断をするのはかなり難しい。その主な理由は: ユーザーから「使いにくい」という苦情はあるが、「機能を削ってくれ」というリクエストはほぼないので、機能削除の正当化しにくい 機能を削ったことによる効果を測定するのが難しい 機能を削ったら既存ユーザーから文句が出るのではないかという不安 もしかしたらその機能をまだ使っているユーザーがいるかもしれない その機能が目的で使い始めたユーザーがいるかもしれない 機能追加と機能削除のアイディアが出た場合は、本能的に機能追加が優先されがち おそらく、機能の削除を検討し始める唯一のきっかけは、より洗練された競合サービスが出現し、自社プロダクトの複雑さゆえの使いにくさが露呈し始めてからだろう。まあ、その頃にはほとんどの場合は手遅れであるが…。 シンプルにデザインする事の難しさ 日本国内向けのサービスは特に要注意 この議論は特に日本国内向けにしかビジネスを展開していない場合に起こりがち。 というのも、想定ユーザーが日本人だけになってしまうと、どうしても小さなパイからのユーザー獲得になってくるため、プロダクトに機能をどんどん追加することで、より多くのユーザーをカバーするしかない。 結果として、プロダクトのフォーカスがブレ、体験の品質も下げざるを得なくなる。 どんなに頑張ってもお前がカバーできるのは世界の2% ところで、リンスインシャンプーを使っている人いる? ここで機能を増やしたのに、なぜかうまく行ってなさそうな例を紹介する。まずはリンスインシャンプー。元々リンスとシャンプーという2つの異なる機能を1つで実現した夢のような商品。中には、3in1 と呼ばれるボディーシャンプーまで含む3つの機能を実装しているものまである。 でも世の中からシャンプーとリンスは無くならない。というか、リンスインシャンプーの方がマイナーな商品だと感じる。銭湯とかにはあったりもするけれども…。 同じコンセプトで、ボールペンとシャーペンの両方の機能を実装したシャーボという商品もあるが、あまり見かけない。 極め付けは、超多機能の筆箱。小学男子の心をくすぐるこの多機能商品も実用性は必ずしも高くない。 アップデートで機能を削除するのは稀 多くのプロダクトは、初期バージョンはシンプルで使いやすく、その目的が明確だが、バージョンアップを繰り返すにつれ、どんどん多機能になっていく。そしていつの間にか当初の存在価値が存在価値がぼやけはじめていく。 しかし、新バージョンが前バージョンよりも機能が少ないわけにいかない。新バージョンは常に前バージョンよりも「さらに美味しくなりました」でなければならないのだ。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 より少なく、しかしより良く (Do less, but better) 冒頭でも紹介した通り、皆さんが日常で利用している商品やサービスのその多くが一つのことを他よりも良い体験を通じて提供している。 それらのプロダクトは必ずしも単純にデザインされているわけではないが、ユーザーに対しては単一の価値を届けるように設計されている。デザイナーは、機能、アーキテクチャ、インタラクション、ユーザビリティ、ブランディング、コミュニケーションなどの製品を取り巻く要素を上手に “隠し”、あくまで一つの価値を生み出している。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 優れたデザインは可能な限りデザインをしない より少なく、しかしより良くというコンセプトは、決して新しいものではない。 1932年生まれのドイツ人工業デザイナー、ディーター・ラムスは、20世紀を代表するデザイナーのひとりとして知られ、大きな影響力を持っている。機能主義の信奉者である彼のデザインに対する合理的なヴィジョンは、「Less, but […]

内向的な人はデザイナーに向いていないのか?

デザイナーという役割にはどうしてもキラキラしているイメージを持たれる。特に、イベントに登壇したり、メディアのインタビューを受けたり、ファシリテーションをバリバリこなしている「カリスマデザイナー」は、話すのが上手で、コミュニケーションに長けている。 しかし、実際の現場においては、ほぼほぼコミュ障に近いレベルのデザイナーもいる。そんな内向的な人たちは、果たしてデザイナーに向いていないのだろうか? これまでのデザイナー経験、デザインチームのリーダーとしての経験、そしてデザイン会社経営の経験を元に、内向的なデザイナーに関しての考察をまとめてみた。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル デザイナーの仕事の2/3はコミュニケーション デザインの世界では、コミュニケーションは大きなカギを握っている。恐らくデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 デザイナーの役割とその意外な仕事内容とは なので… 自分は内向的だからデザイナーに向いてないと思っている方。安心してください。向いてますよ。 そもそも内向的って? 内向型の人間とは何なのか?実は、かなり誤解されやすい。多くの人は、内向的な気質な人に対して「社会性がない」「話しかけにくい」「人付き合いが悪い」「オタク気質」といったイメージを持ちがち。この定義は外れてはいないが、実はかなり間違っている。 内向的な人と外向的な人の本当の違いは、エネルギーをどこで消費し、どこで得るかということで、スキルとはあまり関係がない。 しかし多くの人は: 外向的な人は陽気でコミュニケーション上手 内向的な人は内気でコミュ障 って考えがち。でもそれは大きな間違い。 違いはエネルギー源 従って、内向的か外向的かについては、スキルとは関係なく、エネルギー源がどこにあるか、そしてどこでエネルギーを消費するかの違いである。 内向型と外向型は、どこからエネルギーを得ているかに関係している。 内向的な人 : 一人で過ごすことでエネルギーを補給する傾向がある長時間、人と一緒にいること、特に大勢でいることでエネルギーを失ってしまう 外向的な人: 他の人からエネルギーを得る。一人でいる時間が長いとエネルギーが枯渇してしまう。社交的であることがエネルギーチャージになる なので、究極的には一人でいるのが楽か、大勢と一緒にいるのが楽かの違いである。なので社交的かどうかとか、コミニュケーションが得意かどうかは直接関係ない。 言い方を変えると、内向的な人でも問題なく高いプレゼン力や、コミュニケーション能力を獲得することができる。ただ、意味なく大勢の人の中にいると疲れてしまうというだけだ。 どちらのタイプの人も、スキル次第で社会的な場において重要な役割を果たすことができる。 また、多くの心理学的構成要素のように、内向性か外向性かの特性はグデーションで測られ、100%内向的、100%外向的であることは非常に稀。一人の人間に両方が混在していることも珍しくない。 業界のクリエーターやリーダーの多くが内向的 世界人口の25~40%が内向的であるとの調査結果がある。なので決して珍しくはない。むしろ、現在ビジネスで活躍している人の多くが内向的な特性を持っている。例えば、 内向的な著名人: ティム・クック – Apple CEO マーク・ザッカーバーグ – Meta CEO イーロン・マスク – Tesla, Space-X 創業者 ビル・ゲイツ – Microsoft 創業者 ジェフ・ベゾス – Amazon 創業者 ピーター・ティール – PayPal 創業者 セルゲイ・ブリン – Google 創業者 マリッサ・メイヤー – Yahoo 元CEO ウォーレン・バフェット – バークシャー・ハサウェイ CEO スティーブ・ウォズニアック – Apple 創業者 ちなみに、日本国内のデザイン系の会社の創業者や代表、チーフデザイナーなどの多くも内向型の人が多いと思われる。実際、後輩のGoodpatchの土屋くんやIN FOCUSの井口くんも意外と内向的だったりする。 レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした デザイナーは外向的な方が良いという誤解の原因 デザインを正しく行うには、毎日人と話し、関係を築いていく必要がある。時には交渉が必要になってくる。また、自分のアイディアを採用してもらえるように理路整然としたプレゼンも求められる。 社内的にも、ユーザーとの対話に数日費やすことが、なぜビジネスの利益につながるのかを説明し、プロダクトマネージャーを説得しなければならない。 エンジニアには、なぜそのスタイルを修正したり、インタラクションやアニメーションを追加することでユーザーエクスペリエンスが向上するのかを理解してもらう必要がある。 このように、複数のシーンでデザイナーはデザインの品質を上げることがビジネスの利益につながる理由を説明し、プレゼンし、場合によっては活発な議論をする。 そのような仕事内容を考えると、相当なコミュニケーション能力が求められるし、聞く人を惹きつけるぐらいのカリスマ性が必要だと誤解されるのも無理がないだろう。 しかし、現在活躍している多くのデザイナーの気質は真逆であることも少なくない。 デザイナーに向いている (かもしれない) 7つの気質 内向的な人の主な特性 内向的な人はデザインリサーチや、ユーザー理解のエリアで強みを発揮すると考えられる。具体的に内向的なタイプの人のどのような特性がデザイナーに向いているのだろうか? 聞き上手 物事を深く考える 観察するのが好き 周りの意見に流されにくい 己をしっかりと理解している 詳細に対してのこだわりがある 内に秘めた情熱を持っている 個別または少人数の会話を好む 人間関係に量よりも質を重要視する 一人で複数のアイデアを検討してから共有する 感情やアイデアについて静かに語り合うのが好き 考えてみれば、これらはすべて優れたデザイナーの特徴である。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである 優秀なデザイナーが内向的である5つの理由 次にこれら上記の内向的な特性が、デザインにおいて不利になるどころか、優秀なデザイナーになり得る理由を考察してみる。 1. デザインは少人数で行われることが多い デザインプロセスのほとんどは、一緒に仕事をする少人数のグループやチームで行われる。最も効果的なリデザインサーチは、個人で行われる。 内向的な人は人間関係に深く投資する傾向があり、少人数で の交流からエネルギーを得ることができるため、このすべてが内向的な人 […]

日本が元気だった頃… かなり凄かったらしい

資生堂150周年CMが素晴らしかった。過去から現在、そして未来までの時間軸をそれぞれの時代を反映する映像と共に表現する内容。 個人的には、安藤サクラがオープンカーに乗っているシーンは、そのカラフルさとメイクの印象の強さで、ワクワクするビジュアルだった。 でも、ふと気づいた。このシーンは現代ではない。いわゆる日本がバブル期に差し掛かる1982年春の頃に放送されたCMのオマージュだ。その瞬間、漠然とした寂しさを感じた。 過去を振り返る映像が増えてきた 同じく、レトロな時代にタイムスリップしたもう一つがマクドナルドのCM。マックが日本に上陸し、第一号店が銀座にオープンしたのが、高度経済成長期の1970年代前半。その頃の雰囲気を現在の技術で蘇らせている。 これらのCMや、NETFLIXで配信されている「浅草キッド」や「全裸監督」など、ここ数年で昭和の頃の日本を舞台にした映像を目にすることが増えてきている。 バブル期のキラキラが凄い では、実際にその頃のCMはどんな感じだったのか?YouTubeにアップされている中で、コカ・コーラの映像を見てみよう。 爽やかすぎる。未来への希望に満ち溢れており、映像からは、どんどん良くなる希望しか感じない時代の輝きがほとばしってくる様だ。 本当にバブル期の日本は凄まじかった それもそのはずで、当時 (80年代後半) の日本の経済は現在と比べても想像できないぐらい右肩上がりで、世界的に見ても、アメリカを抜き去る勢いがあった。その一つの象徴が、企業の時価総額ランキングだろう。 これを見ても分かる通り、バブル経済絶頂期の1989年 (平成元年) の頃は、企業の時価総額における世界ランキング Top 20 の過半数が日本企業、そしてTop 5 も全て日本企業という凄まじさ。日本が世界の株式時価総額の4割を占めたこともあった。(現在は5%以下) 現代で考えると、GAFAとかGAFAMとか、FANGとかMAAMAとかで表現される世界が憧れる企業の全てが日本企業でるような感じだろうか。 だったとすれば、世界のビジネスニュースは、連日「シリコンバレー速報」ではなく「東京速報」みたいな感じのコンテンツ満載だったのかもしれない。 日本が凄かった時代を象徴する6つのエピソード その頃の状況を調べていくうちに、世界全体な視点でも日本がかなり凄い国だったことが分かるエピソードがいくつかみつかった。その中でも象徴的な5つを紹介する。 多くのテレビCMにハリウッドスターが起用されまくっていた まずはこれ。当時のテレビCMでは、数多くの日本企業が海外ロケを行い、ハリウッドスターを積極的に出演させていた。 マイケル・ジャクソン、マドンナ、ブラット・ピット、マイケル J フォックス、ジェームス・ブラウン、ボンジョビ、スティービー・ワンダー、シュワルツネッガーなど、本国では絶対にCMに出演しないような面子がこぞって日本企業のCMに出演。 おそらくギャラはとんでもない額だったに違いない。 F1スポンサーの多くが日本企業だった スポーツの世界を見ても、多くの日本企業がスポンサーをしていた。お金がかかるスポーツの代表的がF1。その予算は年間数百億円で、複数のスポンサーによってまかなわれる。 現在でも何社かの日本企業がF1スポンサーをしているが、その当時は桁違いにその数が多かった。その中には週刊少年ジャンプも含まれる。 そして、1990年頃のシーズンにはなんと、日本企業が所有するF1チームが3つも参戦していた。(ラルース、フットワーク、レイトンハウス)。そして、HONDA以外にもYAMAHAやSubaruなどの企業もエンジンを提供していた。 ニューヨークのビル複数が日本企業に買収されていた その当時の日本経済の勢いを世界に知らしめたのが、三菱地所によるニューヨークのロックフェラー・センターの買収。当時のレートで約2200億円というから凄まじい。 また、同じくニューヨークの超高層ビル、エンパイア・ステート・ビルも一時期日本人オーナー所有だった。その後にドナルド・トランプ経営の企業が買い取ったらしい。 この2つのビルはアメリカの富と栄光の象徴であり、例えるなら東京タワーと六本木ヒルズを海外企業が所有するような感覚。それを日本企業が手に入れたという事実を現在は想像するのも難しい。 世界一のゴルフコースが日本企業の所有だった 日本企業が買収していたのはニューヨークのビルだけではない。カリフォルニア州のモントレーにある名門ゴルフ場、ペブルビーチも住友銀行系の企業が経営会社を約1200億円で買収し、所有していた。 このゴルフコースは、太平洋に面しており、高級リゾート地としても有名。これまで全米オープンが5回開催されており、世界一のゴルフコースと呼ぶ人も多い。 30分のクイズ番組で総額100万円の商品が「毎日」提供されていた 現在でもクイズ番組で優勝すると豪華な商品や賞金が与えられる。しかし、1981年から1993年まで放送されていた「100万円クイズハンター」では、午前中の30分の放送にも関わらず、優勝商品のハワイ旅行6日間をはじめ、多くの豪華商品がスポンサーから提供されていた。それも月曜日から金曜日の毎日。ということは、単純に計算しても番組予算は最低でも2,000万円は掛かる。 他に商品は、価格がはっきりと表示された貴金属類の高額賞品や温泉宿泊券・食事券などがあり、一般参加者が横取りできるシステムを通じて、かなりエグい骨肉の争いが繰り広げられていた。好景気と物質主義の象徴のような番組だった。 SONY がスティーブ・ジョブスの憧れの存在だった スティーブ・ジョブスがAppleを創業した頃、彼にとっての一番の憧れ的存在が SONY だっというのは有名な話。その洗練されたプロダクトのデザインから、イノベーティブなアプローチまで、彼にとって日本企業の SONY に近づくことが最初の目標でもあった。 iPod は明らかにソニーウォークマンにインスパイアされているし、初期の頃の Mac のデザインを依頼した際にも「もしSONYがパソコンを作ったとしたら?」がデザインテーマだったと言われる。 世界を舞台に戦っていたジャパニーズビジネスマン こんな感じで日本を世界一の経済大国に成長させたのは、世界中を飛び回り、各国で24時間戦っていた日本のビジネスマンたちの存在だろう。 もちろん現代でも頑張っている人はたくさんいると思うが、このエナジードリンクのCM動画を見ると、当時は「ブラック企業」という言葉すら思いつかないほどにハードワークだったんだろうと想像できる。 なぜ日本企業は勢いを失ってきているのか こんな凄まじい勢いで世界の注目を集めていた日本企業も、バブル崩壊後からどんどん守りの姿勢に入り始め、その後失われた20年、30年と呼ばれる時代に突入した。 その理由はいくつか考えられるが、もしかしたら社内にイノベーターが居なくなってきている。もしくは、イノベーターを育てるメソッドが枯渇してきているからではないか。そもそも、イノベーションを経験した世代がリタイアしてしまったとも考えられる。 下記の図はドリーム・インキュベータ執行役員・未明孝之氏作成によるものをベースにしている。これを見ると、時代の変化と共に、日本企業組織における意識の変化と、その課題が理解できる。 良いものを作って営業をガンガンが通用しない 日本企業の組織的な推移に加え、もう一つの時代的に要因。ものづくりを中心に、良いものを作って愚直に売りまくる20世紀型のビジネスモデルの終焉がきている。21世紀になり、よりユーザーニーズを理解し、デザインにこだわり、ブランドとしてのポジションも考える、総合的な戦略が求められている。 そんな中で、多くの日本企業は過去の成功体験から抜けきれず、いまだに作ることと、売ることにどうしても注力しがちなのかもしれない。 日本企業からまたイノベーションを生み出すために 時代が大きく変化したため、もちろん高度成長期やバブル期のような状況を期待するのは難しいかもしれないが、やはりこのまま日本経済が衰退していくのは勿体無い。まだまだ素晴らしい技術はあるし、人材のクオリティーも世界トップレベルだろう。 ただ、ユーザー視点が欠けていたり、マーケティング戦略に乏しかったり、デジタルを通じたグローバルブランド構築への正しい手法が提供されていない事が原因で、もったいない状態が多く見られる。 我々としても、どうにかこの状況を打破するために尽力できればと、日々取り組んでいる。 現代の日本企業に必要なのはクリエイティブな組織だ   筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

世界のブランドロゴに隠されたメッセージ第二弾

ブランドにはストーリーがあり、そのストーリーを表現するのがロゴの役割である。それも上手にビジュアルデザインに入れ込むことで、そのメッセージがさりげなく消費者に届く。
以前にも紹介したロゴに隠されたメッセージの第二弾として、よりさりげない12の例を紹介する。
有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

Starbucks
あまりにも有名すぎるスタバのロゴ。ツインテールの人魚、セイレーンををモチーフとしたもの。ギリシャ神話では、セイレーンが船乗りを誘い、スターバック諸島とも呼ばれる南太平洋のある島…

なぜ「まずは日本でヒットしてから海外へ」がダメなのか

とある起業家は言った。 「成功のスケールが小さすぎるし、どうせアメリカの真似事のようなサービスばっかりなんで」 彼は日本の大学を出た後にサンフランシスコに来て、起業した。世界トップレベルの才能が集まるこの街は、スタートアップの中心地でもある。それゆえにとてつもなく競争は激しく、コストも高い。 だったら、日本で起業して上場を目指す方がより高い確率で成功できるのではないか?それも、比較的コストを下げながら品質の高いチームを構成して。 でもその選択肢を選ばなかった。最初から世界に勝負して、グローバルに通用するサービスを生み出したい。その気持ちが現在の彼を動かしている。 まずは国内で成功してから海外進出はNG その一方で、多くの企業がまずは日本国内でサービスを展開し、その後でグローバル展開を進めようとするケースが多い。これは一見ロジカルで、理に適っているように思われる。 国内でしっかりとした顧客と経営基盤を整え、黒字化し、そこから得られる資金をもとに次のステップとして海外進出を行う。 でも実はこのやり方、変化のスピードが速い現代においては、かなり難しい。これまでにも実際にそうしようとして失敗したり、いつまで経っても国外への進出ができずにいるケースをたくさん見てきた。 では、それが良くないと思われる理由をいくつか説明する。 日本向けのガラパゴスなプロダクトが生まれる まず日本市場向けに展開していくデメリットがこれ。世界的に見ても日本のユーザーはかなりユニークな特性を持っており、そのニーズに対応するプロダクトのその多くが、海外ユーザーには使ってもらいにくい。 例えば、B2C系のサービスであれば、日本だとある程度複雑な利用体験でも教育レベルの高いユーザーがちゃんと理解して使ってくれたり、B2Bであれば、それぞれの企業に対してカスタマイズした機能が求められたりなど。 総じて、日本国内のユーザー向けプロダクトのその多くが海外ユーザーからすると、かなり使いにくいものになりがち。楽天市場やLINEが良い例だろう。 LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク 営業ヘビーな集客方法 日本国内向けの商品やサービスを展開する際には多くの場合、営業手法が重要になってくる。販路開拓やユーザー獲得を営業と広告をメインに行うのがまだまだ一般的だ。 その一方で、海外向けに展開する際には、そのエリアの広さとチャンネルの多さが理由で、地道な営業をするのとマスでの広告を打つのが難しい。そのため、プロダクト自体のクオリティーをあげたり、ブランドをしっかりと構築したり、デジタルマーケティングを上手に活用したり、イベント出店で派手に目立ったりする必要がある。 しかし、一回国内での顧客獲得手法に慣れてしまうと、その武器を使わずに顧客を獲得する手法がわからなくなってしまう。特にプロダクト自体の品質を高めることに意識が行かなくなり、世界的に見ても商品の競争力が低くなりがちになる。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか チームメンバーが日本人だけになる 日本の企業なんだから、スタッフが日本人であることに違和感はないだろう。まずは日本国内市場向けの商品を作るのだから、日本人のニーズをしっかりと把握しているスタッフである必要がある。 そして、同じバックグラウンドを持つスタッフ同士は共通点も多く、意思疎通が取りやすいし、仕事の効率も上げやすい。でもこれが実は海外展開をしようとした際の日本企業にとっては大きなハンデとなる。 現代の世界市場において、異なる地域の異なるユーザーの気持ちを理解し、それに適したプロダクトを作り出すには、チームメンバーも多種多様である方が有利になる。逆に異なる文化や考え方を持たない人たちだけで構成させたチームは、創造力やアイディアの面で限界値が低くなりがち。 カルチャーの違いを考慮したデザインのポイント 日本語のサービスができてしまう これは本当に当たり前すぎる話なのだが、日本国内向けの商品やサービスは自ずとそこに記載される言語は日本語である。でもこれ、日本国外のユーザーにはほぼほぼ理解してもらえない言語。 世界の人口が70-80億人、日本の人口が1.2億人程度と考えれば、単純計算で、世界中で日本語を理解する人たちの数は全体の1.7%ほどだろう。 もしこれを最初から英語にしていたとすれば、おそらく世界の半分以上の人たちが、どうにか利用することが出来る。それを考えてみても、日本国内向けに日本語だけが記載されているプロダクトを一回作っちゃうと、英語化させるのはあまり効率が良くないと感じる。 【対談】孫泰蔵氏 x Brandon Hill -スタートアップがグローバルに展開するための5つの秘訣- いずれは黒船にやられる その昔、Mixiというサービスが存在していた。日本国内でトップのユーザー数を誇るSNSだった。しかし、時間が経つにつれ後発のFacebookにユーザーが移行。最終的に「マイミク登録して良いですか?」と聞く人はほぼほぼいなくなった。 そう。サービスの内容によっては、最初のうちは日本でヒットしていても、しばらくすると海外、特にシリコンバレー系のスタートアップが進出してきて駆逐される可能性もある。 メルカリは創業当初からアメリカ市場も同時に展開をスタートしていたが、その一番の理由が、最初からMixiのように類似の海外サービスと同じタイムラインで、互角に勝負できるようになっているためだった。 日本の企業が海外進出するべき3つの理由 最適なタイミングを逃してしまう 変化のスピードが飛躍的に上がっているここ数年において、プロダクトがヒットするかどうかは、市場への参入タイミングによることが多い。一旦日本マーケットヒットしてから海外に出すのは、既にタイミングがずれている可能性が高い。 また、もし日本国内で大ヒットしている製品があったとする。しかし、後発だったとしても先に世界マーケットをつかんだ方が成功しやすい。 例えば、オロナミンCやリポビタンDはレッドブルよりも、よっぽど前から国内で発売された。しかし、レッドブルは、世界市場向けのブランディングとマーケティングで、後発ながら一気にエナジードリンクの代名詞になった。 日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント “本場” の下手なこだわりが出てきてしまう 海外でヒットしやすいプロダクトの一つとして「日本っぽさ」を売りにしたものがある。以前からあるのが寿司、マンガ、ゲーム。最近だとラーメンとかだろうか。 その多くが、海外市場に合わせて結構ローカライズされており、生粋の日本人からすると少し「邪道」な感じのものもある。例えばカリフォルニアロールなどが挙げられる。 でも、それは決して邪道ではなく、海外の消費者が求める内容を追求し、臨機応変に対応した結果である。これが日本国内でじっくりと成長させすぎて、オーセンティックすぎる状態だと、海外で融通が効かない商品になってしまうかもしれない。 日本文化から学ぶ海外進出のポイント 〜アメリカで寿司が人気を博し、アイドルが拒絶されるのはなぜか?〜 国内の株主/投資家からのプレッシャーが続く これは日本でスタートアップをやっている友人から聞いた話なのだが、国内の投資家向けに、資金調達の際に海外市場を視野に入れているという説明をすると、投資家から良い顔をされないという。場合によっては、そのスライドを削除するように依頼されたことも。 そう。経営を安定させるためにはなるべくリスク要因を減らしたい。となってくると、ある程度やり方が見えている国内市場でしっかりと売上と利益を上げて欲しいと思うのは当然で、投資家としてもそれを望むだろう。 最初から海外市場を狙うとなれば、そこにそれなりのコストと不確定要素が発生し、リスク要因が高まる。確実にリターンを出したいと思う投資家からすると、夢を語るのは良いが、その前にしっかりと結果を求めるのは理解できる。 でも、ここには落とし穴がある。一回国内向けにビジネス展開すると投資家にコミットしてしまったら、その後は、ほぼ半永久的に海外展開はしにくくなる。彼らが求めるのは着実なリターンであって、世界制覇ではない。 スタートアップが資金調達を行わない方が良い7つの理由 まずは国内上場を目指してしまうことのハンデ もし会社が未上場のベンチャー企業だったとすると、まず直近の目標は国内での上場だろう。そうなってくると多くの場合、なるべくコストを下げて黒字化を目指すことになる。 以前にシリコンバレーに進出し、海外展開をおこなっている数々の日本のベンチャー企業の方々にお会いしたことがあるが、その中で結構な数の人たちが予定より早めに日本に戻っていた。 その理由が、日本国内での業績が高まっていて、上場準備をするため。よりコストを下げ、利益率をアップし、IPOの価格を上げるために海外拠点をクローズするという。 まあ、上場したらまたチャレンジするとは言っていたが、その後も音沙汰がない。おそらく、上場してからはそれ以前よりももっとやりにくくなっているはず。やっぱ株価が重要だし、短期間で利益の出ない活動に株主からのメスが入りがちだから。 そして何より上場したあとは、完全に国内市場にオプティマイズされた経営戦略に集中せざるを得なくなる。 日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント 安易な逃げ場ができてしまう やっぱり海外で勝負するのはかなりしんどい。時間もコストも国内とは比べ物にならないほどかかるし、何より誰も知らない土地で、一からスタートしないければならないことも多い。 そんな時に居心地の良い日本で安定した経営をおこなっているなら、どうしても戻りたくなってしまう。それが人間の本能だと思う。 でももし最初から海外向けに展開していて、戻る場所がなければどうだろうか?おそらく背水の陣で頑張れるはず。 一体何組の大物アーティストが海外展開を試みたものの、うまくいかずにこっそり日本に戻ってきていることだろうか…。 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由 まとめ: 君が狙うのは世界の2%以下で良いのか? 国内にそれなりの市場と需要がある日本の場合、無理に海外進出をする必要はないと感じるかもしれない。今のところは。でも今後の変化を考えると、国内にとどまっているのは必ずしも正しい判断とは言えない気もする。 消費が萎み、物価は上がらず、労働力も減る。その上、海外からの類似商品がどんどんやってくる。そんな中で、ユニクロやTreasure Dataのような企業はグローバルで消費者を獲得し、世界のブランドとしての展開を着実に進めている。 これからは最初から世界を目指す企業が増えることを切に願う。 我々も微力ながら少しでも多くの日本企業が世界で活躍できるためのサポートができればと思っている。世界人口の98%を逃さないために。 筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax どんなに頑張ってもお前がカバーできるのは世界の2%

主要メディアが伝えないCES 2022の裏側

今年も世界最大のテクノロジーカンファレンス、CESがラスベガスで開催された。と、いうよりも今年こそはリアルで開催された。去年はバーチャルのみでの開催だったから。 直前に感染拡大のニュースが広がり、複数の大企業が直前で出展取りやめの発表があったため、開催自体が危ぶまれたが、結局予定通りに開催することに。 注目されている展示内容などはおそらく多くのメディアによって既に伝えられていると思うので、今回はあくまで個人的な感覚で「裏CES」をお伝えする。 感染対策? ほとんどしてない まずは、このコロナ禍、それも開催の一週間ぐらい前に急激に感染者数が増えた状況で、一体どんな感じで感染対策をするのかな?と思ったが、結論は「ほとんどしていない」。 これはものすごく意外だった。 もちろん、参加するにはワクチン証明書の提示が必須。そしてイベントのパスに加え検査キットが渡されるが、これはあくまで参加者の自主性に委ねられている。 会場に行ってみると、入場制限もないし、感染を防ぐためのこれといったチェックや消毒等もなかった。逆に考えるとそれぐらい心配する必要がないということなのか? 本当に規制があまりなかったおかげで、入場や移動はかなりスムーズ。その代わり会場はかなりの密状態ではあった。 メディアの扱いがめっちゃ良い 今回もいつものように一般開催の2日前から行われるMedia Dayと呼ばれるメディア専用のカンファレンスと、メディア向けに新規プロダクトが展示されるUnveiledのイベントから参加。 これまでとの違いは、メディア枠で参加する人も減ったせいか、待遇と対応がものすごくよくなっていた。展示企業関係者のその多くが「メディアの方々、ありがとうございます!」といった声がけをし、ノベルティーも豊富。 そしていくつかの企業は、個別にメディア関係者をホテルのスイートルームに招待し、プライベート取材をおこなってくれた。なかなかVIPな気分になれる体験だった。 けどドタキャンもめっちゃ多い その一方で、元々はリアルセッションを予定していた企業のいくつかは途中でバーチャルセッションになったため、メディア参加者にとってはドタキャンされた感じになった。 元々予定されていた会場が急遽ビューイングルームとなり、大きな画面に映されたセッションを見るだけ。臨場感もほとんどなく、オーディエンスはわずか数名。売れないインディーズバンドの初ライブを彷彿とさせた。 主催の運営がかなり後手後手 これは実際に展示している友人に聞いた話だが、主催者の対応がかなり後手に回っており、出展者にとっては、とてもしんどい状態だったという。対応もかなり悪く、出展者としてはストレスの溜まる経験だった。 通常であれば、開催の数日前から仕込みを行うのだが、今回は本当にリアルで開催するのか、開催する場合の展示場所は等々、直前まで決まってないことが多く、展示の前日の夜でも設置作業が終わってない事態も少なくはなかった様子。 テクノロジー自体への注目は大幅低下 CES自体はテクノロジーカンファレンスなのだが、今年は一つ大きな変化があったかのように思える。それは、テクノロジー自体のアピールよりも、それを利用したプロダクトや体験の展示が多かったところ。 これが数年前だったら、IoTやウェアラブル、5GやAIなど、要素となるコアテクノロジーやデバイスのバズワードが羅列していたが、今年はそれを活用し、ユーザーへの価値として届けるケースが多かったように思える。 パーツサプライヤーが自動車を作る時代? これは数年前のCESから少しずつ見えてきたトレンドなのだが、自動車メーカーと部品のサプライヤーの関係が徐々に逆転しはじめている。というのも、現代の自動車は、各種センサーやカメラなどのデジタルデバイスとそれを制御するソフトウェアで構成された巨大なデジタルデバイスになってきている。 すなわち従来の自動車の製造技術とは全く異なる仕組みが必要になってきており、巨大サプライヤーがそれを提供している。ということは、そもそもサプライヤーが自動車の重要な部分をほぼほぼ作っちゃてるわけで、それがEVになれば、自動車ブランドの役割は、企画・デザイン・販売・ブランディングぐらいで、その「中身」はサプライヤーが提供するのも納得ができる。 今回はその究極として、巨大サプライヤーのBOSCHが各種センサーをフレームに埋め込んだデジタルシャーシを発表。自動車メーカーはそこに “ガワ” をつければ、はい完成。という仕組み。また、チップメーカー大手のクアルコムも自動車向けのチップを発表していた。 自動車向けのカメラパーツを提供しているSONYが、自動車産業への進出を正式に発表するなど、近いうちに、自動車産業の構造自体が逆転していくのは明らかだろう。そもそも、CES自体が半分オートショーになってきている。 社会的な課題を解決するためのテクノロジー活用 今回のメディア向けセッションの中で最も感銘を受けたのが、アメリカのトラクターブランドのJohn Deere。世界的な食糧危機が叫ばれる中で、アメリカでのメイン産業の一つである農業における課題を説明。このままのやり方だと、世界の飢餓問題に対応できない。 そこでより農家の人たちが効率よく作業をし、農作物の量と質共に向上させるために自動運転テクノロジーをトラクターに実装する。それにより、無人のトラクターが、最も効率良い農作業を24時間おこなってくれる。これまで1日平均10-12時間働いていた農家の人たちが、スマホ一つでトラクターを管理し、家族との時間を増やすことができる。 これまで飛び道具的な利用のされ方の多かったテクノロジーが、人々と環境に対してしっかりと活用されていく例の一つだろう。 韓国勢の勢いがすごい 滞在先から会場に向かう際にUberに乗った。その直後にドライバーから「今回のCESで韓国人じゃないお客さんは君が初めてだよ」と言われた。 聞くところによると、どうやら韓国から参加する方がかなり多いという。確かに、LG, サムソン, Hyndaiなどの大企業をはじめ、スタートアップ系も韓国勢がかなり多い。 そしてオーディエンス側も韓国からこられたと思われる方々を多く見かけた。実際に話してみると、やはり韓国から来られた方々だった。 少ないけど日本勢も結構良いよ 仕事の関係者や友人経由で、日本から来る予定だった企業や参加者のその多くが直前でキャンセルしたという連絡が入った。通常であれば、アメリカ以外で最も参加者の多い国の一つであるが、さすがに現在の帰国時の強制隔離を考えると、来るのが難しくなる。 その一方で、日本企業のプレス発表やJ-Startupの展示はかなり興味深いものも多かった。特にSONYの自動車事業への本格進出の発表や、Canonのプレス向けのマジックショー的なプレゼン、実物大のSkydriveのドローン、岩佐さんの体を張ったShiftfallのデモなんかは結構なインパクトがあった。 まさかのハイパーループ体験 CESのメイン会場はとてつもなく大きい。それも4つの建物で構成されており、それぞれを行き来するだけでも相当な距離がある。なので、より効率の良い移動方法を関係者に聞いたところ「テスラトンネルを利用すれば良いよ」と謎の答え。 会場の前に一昨年まではなかった地下鉄の駅のような入り口がある。そこを下ると、なんと大量のテスラが停まっており、タクシー代わりに無料で送迎してくれるとのこと。 実際に乗ってみて度肝を抜かれた。というのも、イーロン・マスクが以前より構想しているハイパーループの短い版が作成されており、そこをテスラの車両が行き来する仕組み。これにはめっちゃ興奮した。 サステイナブルはすでに特別なことじゃない CES 2022におけるメディアキーノートのその全てにおいて、何かしらサステイナブル文脈のコンテンツが発表された。テクノロジー企業としてイノベーションの追求に加え、地球環境や人々の生活の豊かさを守っていくのが最も重要な責務の一つになっている表れだろう。 数年前までは「うちらもサステイナブルはじめました!」とドヤ顔で発表していたような企業も、現在となってはそれが当たり前であり、サステイナブルなしのイノベーションはあり得ないというノリ。今後はどの企業にも必ず求められる社会的責任だろう。 最もイノベーティブ?な展示 – LG 毎年CESでは多くの企業がとんでもない規模の展示を巨額の予算を投じて行う。その中でも、LGは入り口近くの最も大きなスペースを確保し、一面に広がる巨大スクリーンで度肝を抜くのが例年の流れだった。 それが今年はどんでもないことになっていた。というのも、全く何も展示されていない。いや、いつもと同じ巨大スペースは確保しているのだが、そこにあるのは剥き出しのベニヤの床と、木でできた簡素な椅子。そして、等間隔で貼られているQRコードのみ。 そう、お察しの通り、LGはリアルな展示は諦め、潔く全てを「続きはWebで」に投げてしまったのだ。まあこれも、一つのサステイナブルな展示方法だろう。ある意味。今回の一般展示で最もインパクトがあるイノベーティブな展示だったのかもしれない。 優れた技術は魔法と見分けがつかない その一方で、実際の発表や展示内容はかなり素晴らしいものも多かった。特に最新テクノロジーをプロダクトに落とし込み、上手に見せている企業が多く、一瞬ではどのような技術が使われているかもわからないレベルも多かった。 例えば、ボタン一つで色が変わるBMWの車両、完全自動運転で動くレーシングカー、リアルターミネーターっぽいロボット、など。 まとめ: 結局これくらいがちょうど良い 今回のCESは、結局予定より1日短く終了した。感覚的にいうと、通常の60-70%の展示数、50-60%の参加者数っていう感じだった。 でもそれがなぜか少し安心する部分もあった。おそらくCESはここ数年で注目されすぎて、膨らみすぎていたんだろう。 あまりにも多くの展示企業と参加者が世界中から訪れ、数日をかけても全てを回るのは不可能だし、何よりも人混みがとんでもなくすごく、とても疲れてしまうイベントだった。 それが今年は、少し規模を縮小しての開催になったことで逆に居心地が良かった。初めて参加した5-6年前を思い出させてくれる感じて、来年以降もこのぐらいで良いな、と思った。

2022年注目のブランディングトレンド

2020年から2年近くのパンデミックの影響により、旅行業を中心に多くの業種が業種が生き残りのために大きな変化を強いられた。その中には、ブランド価値を最大で20%も失ったところもある。 その一方で、なかなかリアルな体験を提供しにくい時代に、デジタルを中心に上手なブランディングを成功させた例もある。消費者の行動が変化したことに合わせ、新しいブランド戦略を進める必要性が高まっている。 ブランディングの重要性は以前に比べ、何倍にも増していると言えるだろう。 ブランディングとは? ブランディングとは、企業が消費者やユーザーと信頼関係を構築するためのプロセスである。代表的なのがロゴであるが、これはブランディング全体の一部でしかない。 そのブランドのビジョン、ミッション、目的を正確に伝えるための手段として、ビジュアル・アイデンティティやデザインから、メッセージングや声のトーンまで、すべてを包含するのがブランディングである。 今さら聞けないブランディングとは なぜブランディングが重要なのか? ものが溢れ、デジタルチャンネルがここまで普及した現代において企業が競合との差別化を実現する方法はどんどん少なくなってきている。 製品の性能や価格だけで勝負するにはあまりにもしんどくなるし、かといって営業やマーケティングだけに頼るのもコストがかかりすぎる。 そんな時にこれまでは何かと遠回りだと思われていたブランディングの重要性に着目する企業がどんどん増えている。 優れたブランドはユーザーからの第一印象から長期的なファン構築まで「なぜこの企業の商品を買いたいか」という理由づけを行ってくれる。逆にそれがないと買う理由も見当たらず、素通りされてしまう。 意外と知らないマーケティングとブランディングの違い 2022に注目すべき大きなブランドトレンドをご紹介 そんなブランディングが今までにないほど重要になった時代に合わせ、2022年の最新トレンドをいくつか紹介していこうと思う。 どんどんミニマルなデザインに ファッションブランドのロゴを中心に、ミニマルなロゴデザインを採用し始めている。 ミニマリズムはこの10年のデザイントレンドであり、ビジュアルアイデンティティやメッセージングなど、ブランディングも適用されている。 デジタル世代のユーザーは直接的なコミュニケーションを求め、ブランドを理解するための両力を最小限に抑えたいというニーズがある。 ブランド側もこうした顧客動向を踏まえ、曖昧さを排除し、明快なコミュニケーションを実現するために、多くの企業のビジュアル・アイデンティティが非常にシンプルな表現を採用する傾向が見られる。 筆記体のフォントやその他の視覚的な要素を廃し、強くシンプルな書体を使ったロゴタイプを採用したロゴが多くなってきている。 これによって、ロゴの適用が容易になり、顧客もブランドにとってもコミュニケーションコストが軽減される。 ミニマルデザインのススメ – 基本知識と7つのヒント レトロスタイルの採用 ミニマルなスタイルと共にトレンドとなっているのがレトロスタイル。立体的なデザインスタイルから、フラットなスタイルを採用するブランドが増えてきている。 そして70年代風レトロや、バウハウス調のビジュアルデザインを通じて、グラデーションでゴテゴテになった現代の多くのブランドとの差別化を図るのが狙い。 また、バーガーキングのリブランディング事例に見られるように、ロゴをあえて過去のものに戻すなど、少し心が休まるようなブランドデザインを採用する企業も出てきている。 2021年にロゴをリデザインした7のブランド ブランディングの核はストーリー 消費者は、ブランドの価値観や信念が自身のライフスタイルにどのように「フィット」するかによって、そのブランドを購入するかどうかが決まると言っても過言ではない。 特に本質を見抜くスキルの高いZ世代は、誇大広告や “修正された” メッセージに不信感を抱く。特に広告のメッセージングと実際の行動がずれている場合は、一瞬にして信頼を失ってしまう。 それ故にブランドのミッションやバリューを可視化し、そこに一貫性のある活動をし、それをストーリーとしてクリアに見せていく必要がある。 それには、ポジティブな変化をもたらすというコミットメントを伝えること、そしてそれを実行に移すことが重要になってくる。 そして、なるべくプロモーション広告よりも、社会へのメッセージや信念をストーリーとして発信する方が効果が高い。 例えばこのNETFLIXのビルボード。 広告の掲示に利用されるパネルに表示されたのは「夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!」の文章。 今でこそオンラインで動画を視ることが一般的だが、NETFLIXが創業した1997年当時はオンラインでDVDをオーダー、郵送するサービスを提供していた。 この創業ストーリーは、どんな広告よりもパワフルに人々の心に響く。特に力強いメッセージを添えると。 人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント 正しくて透明なブランド この1年、社会的な問題がクローズアップされ、さまざまなソーシャルメディア上で人々がよりオープンに意見を述べたり、強い立場を取ったりするになった。 それに合わせ、消費者は、ブランドの「社会意識」やブランドが支持する価値観に積極的に目を向けるようになった。 マッキンゼーが行った調査では、消費者の61%が、危機の際にブランドがどのように対応するかによって、危機が去った後もそのブランドを買い続けるかどうかが決まると答えている。 消費者は今、ブランドが社会的な問題に対しての正しい対応を求め、その活動内容を透明化することを期待している。 社会に配慮し、責任を持っているブランドは、消費者の信頼をより早く得ることができ、その結果、ブランド価値の上昇を見ることができるだろう。 パタゴニアは、「言うこと」と「やること」を一致させたブランドの好例だろう。 パタゴニアのウェブサイトは、環境への影響を最小限に抑えるために同社がとっているステップをブログ記事、ビデオ、統計などで明確に紹介し、同社のプログラムと進捗状況を説明している。 このコンテンツとメッセージは、パタゴニアの価値観と変化への真正なコミットメントを強く反映している。 アイコン化していく企業ブランド 企業のDXげ進むにつれ、消費者への接点とサービスのデジタル化が進んでいる。これは同時に、多くの企業がパソコンやスマホの中にその存在を移し始めているということでもある。 言い換えると、企業の ”アプリ化” が進み、同時にブランドがどんどん “アイコン化” していくということでもある。 それに合わせ、多くのブランドロゴが通常のデザインに合わせ、アイコンバージョンも準備している。 このように、最近のブランドロゴは、複数のデバイス向けに可変し、ユーザーにとってアイコンとして認識されている。 既存ブランドも新規ブランドも、アイデンティティを作成する際には、アイコンバージョンも忘れずに準備したい。 ロゴもレスポンシブの時代へ ハイパーモダン・ブランディング そして最後に冒頭のレトロスタイルの真逆を行くトレンド。2021年後半から話題になり始めたメタバースやWeb3の登場で、ブランドデザインにも少なからず影響を与え始めている。 NTFやCryptoなど、かなり近未来的な概念が適用されていることもあり、そのブランドデザインもかなり未来的。 80年代に流行した原色のネオンカラーや、映画トロンを彷彿とさせるデザインスタイルで、これから始まる大きな革命を予感させるイメージが彩られている。 “Web3っぽい” デザインの特徴としては、紫外線で浮かび上がるイメージや、デジタルネットワークや、神経パルスを思わせるダイナミックなパターン、神秘的なシンボルや有機的ななラインを採用する。 Web3っぽいデザインの特徴: カラフルなグラデーション 3D要素 可視化されたリアルタイムデータ インタラクティブなコンテンツ 宇宙っぽさ フワッとしたローディング要素 有機的な曲線 2022年 UXデザインに訪れる変化予測 まとめ: 2022年はブランディングにとっての変革年 パンデミックの危機は世界経済を低迷させ、この2年間はほとんどすべての企業が生き残りをかけて奮闘しなければならなかった。そして2022年はそこからの回復&飛躍が期待される。 ブランディングのトレンドは常に変化し続けるのが常だが、2022年は特に大きな転換期となりそう。 2022年を迎える今、ブランドは、消費者行動の変化に対応し、より良い関連性を保つためにブランディング戦略を再考することが重要になってくる。 今回紹介したカラフルで魅力的なブランディングデザインのトレンドは、2022年が活気に満ちたものになることを強く示唆していると感じる。我々btraxもブランディングサービスの内容を大幅改善し、社会にポジティブな影響を与えられるように邁進していきます。

2022年 UXデザインに訪れる変化予測

世界的なパンデミックの流行が我々の生活を一変させてからすでに2年近く経っている。この2年間でインターネットと技術的なデバイスの使用量が増加し、仕事とプライベートでの交流方法を大きくシフトさせた。 それに伴い、オンライン・オフライン共にユーザーニーズも変化し、新しいユーザー体験の設計が求められている。 また、あらゆる業界でユーザー体験の重要性が急激に高まったこともあり、2022年はUXデザインにおける大きな変革の年となりそうだと感じる。 そんな変化を7つほど考えてみた。 “UXデザイン” の概念が再定義される 目的ごとのデザインプロセス デザインでストーリーを届ける時代 ユーザー体験がブランド形成の主軸 インクルーシブデザインの重要性 B2B向けのAR & VRニーズが高まる Web3っぽいデザインが広がり始める “UXデザイン” の概念が再定義される ユーザー体験 (UX) を設計 (Design) することを、UX Designと表現される。その主なゴールは、主にユーザーに商品やサービスを購入してもらい、使ってもらい、使い続けてもらうことを目的により良い体験を作り出すこと。 現代における、ユーザーへのタッチポイントの増加や、モノよりもコトへのフォーカスのシフトにより、この”体験”と”デザイン”の幅がここ数年で格段に広がってきている。 いわゆる見た目をよくすることから使いやすさの改善に始まり、使っていてなんとなく心地よい、楽しい、面白い、の演出まで、あまりにも多くのシーンで「UXデザイン」が施されるようになってきている。 UXデザインにおけるデザインの役割はあくまで、最適なユーザー体験を通じビジネスゴールを達成するための手段であり、デザインがある意味 “黒子” の役割である。 それを考えると、この「UXデザイン」の重要性は「特定の人々=デザイナーたち」だけが請け負うにはあまりにも広く深すぎる。かつての「マーケティング」という言葉のカバーする領域があまりにも大きくなりすぎた故に、その単語自体があまり意味をなさなくなった。 UXデザインも、そろそろその定義と役割分担を整理し直すべき時期にきているのかもしれない。 「UXデザイン」という言葉が含む要素を分解すると「リサーチ」「プロダクト」「データ分析」に分けられるだろう。そしてそれぞれのカテゴリーに含まれる要素は主に下記になる。 ざっと考えてみるだけでも、UXデザインの役割はこれだけある。明らかに、一人の「UXデザイナー」がこの全てを請け負うのは到底難しい。むしろプロジェクトメンバーのほぼ全員が「UXデザイナー」的考え方と役割を担う必要すら出てくる。 UXデザインチームは、それぞれのフォーカスポイントに合わせ、例えば「UXリサーチャー」「プロダクトUXデザイナー」「UXストラテジスト」など、UXチームにおけるさらなる役割分担が必要になってくると考えられる。 UXデザイナーになるために不可欠な10のスキル 目的ごとのデザインプロセス UXデザインの役割が再定義されるのに合わせ、これまで定義されていたデザインのプロセスにおいても見直しが必要になってくる可能性が高い。 そもそも、デザインの究極の役割とは何か?それは恐らく、「与えられた制限の中で求められる最大の結果を出すためのプロセスの作成」であろう。そして多くのデザイナーの仕事における最終的なゴールは、デザインを通じて世の中の様々な問題を解決することにある。 これは非常に喜ばしいことなのだが、それと同時にそこに求められるプロセスを今一度冷静に考えてみる必要性も出てきている。自ずと、プロダクトのサービス化を実現するプロセスや、ビジネスにおけるイノベーションを生み出すプロセスなど、それぞれの役割に合わせてデザインのプロセスが調整されている必要がある。 これが例えば、よりクリエイティブな発想が生み出される組織にしたい。会議をより効率的なものにしたい。スタッフの遅刻が減るカルチャーの会社にしたい。などのそれぞれの目的に合わせてデザインのプロセスを再定義する必要がある。 その点においては「時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職」で紹介されているプロセスデザイナーという役職が今後より注目を集めるかもしれない。 デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説 デザインでストーリーを届ける時代 デザインの主な役割は、問題解決におけるプロセスである。が、実はこれも時代が進むにつれ、変化してきているかもしれない。というのも、多くの問題がすでに解決され、どんどん便利になっていく世の中では、解決するべき問題が少なくなってきている。 その一方で、ユーザーを正しい方向に導いたり、心に響く体験を提供したりなど、いわゆる「ストーリー」を通じて体験を提供する事で、ユーザーの満足度と企業の業績をアップさせる目的でのデザインの役割が注目される。 例えば、Airbnbのサービスはまさにストーリーテリングをユーザー体験の核としており、新しい機能やサービスを考えるときには必ずストーリーボードを使って説明するようにしているという。Airbnbのアプリを使ってみると綺麗にストーリーが届けられているのがわかる。 また、ディズニーランドはUXのお手本であり、顧客に対してサービスのストーリーをしっかりと体験として落とし込んでいるところが成功の鍵となっていると思われる。ここでのUXデザインの役割は問題解決よりも、ストーリーテリングの役割を提供している。 こう考えてみると、以前に「デザインとアートは全く違う」と説明したこともあったが、これも若干怪しくなる。デザインを通じてストーリーを体験としてユーザーに届ける。 そこの裏には多少なりともアートの領域も隠されているかもしれない。今後デザイナーにはより広い視点と、多種多様な文化的背景への理解が求められるかもしれない。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 ユーザー体験がブランド形成の主軸 これまでは、企業のロゴやコーポレートI.D.、広告やマーケティングキャンペーンなどを通じて、消費者やユーザーに対してのブランド形成が一般的であった。 しかし、ふと考えてみると「うちのブランドはこれを強みとしており、貴方にこんな価値を届けます」とブランドプロミスで表現するだけでは、あまり意味がない。 企業が自社のブランディングを行う際にも、ユーザー体験の重要性が非常に高まっている。一方的に発信する「ブランドメッセージ」というものはすでに時代に適合しておらず、過去の異物になり始めている。 というのも、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 その際には、ユーザー体験 (UX)  に加えて、顧客体験 (CX) を通じてブランドを体感してもらうのが効果的。 また、デジタルチャンネルが発達した、現代のブランド構築においては透明性の高さが重要になってくる。消費者に対して率直で正直であること。 過度な広告や自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢が求められる。自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 特にアメリカでは今後のメイン消費者となってくるZ世代は “修正画像” を見て育ってきているため、本物と偽物の見分けスキルが非常に高い。なので、非常に上手にブランドが本物かどうかを見極める。 企業やサービス提供側からしてみると、ユーザーに対する全ての接点=タッチポイントがそのブランドを形成する要素になり得る訳で、そこに一貫した定義と方向付けが不可欠になってくる。 その意味でも、UXデザインは、プロダクトやサービスのユーザーの体験だけではなく、ブランド構築においても重要な役割を果たし始める。 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 インクルーシブデザインの重要性 UXデザインにおける領域の広がりはタッチポイントの多様化だけではない。使ってもらうユーザー自体の多様化もしっかりと理解、対応していく必要がある。 日本と比べても、実に多種多様な人種が集まっているアメリカでも、まだまだ多くの商品の体験が画一的なデモグラフィーを中心に考えられており、マイノリティーと言われるユーザーを考慮していないケースが少なくない。 その一方で、サンフランシスコを中心とした都心部では、ダイバーシティ (多様性) を受け入れ、それを考慮することで、より多くの人々のためのプロダクト作りが進んでいる。インクルーシブデザインは、多様なユーザーに利用してもらうための手法。 異なるタイプのユーザーとは、そのニーズの違いや価値観の違いを理解し、それに最適な体験をデザインすることが重要になってくる。具体的には、ユーザーリサーチやフォーカスグループ、エスノグラフィーリサーチなどの手法を通じ、ユーザー理解を深める。 その一方で、世の中の多種多様なユーザーの考え方を理解するのにもっとも重要なのは、そのチーム自体に多様性があること。 ここは実は日本企業がもっとも苦手とするところで、いわゆる「日本人的価値観」で考えれば一目瞭然な事柄でも、世界のユーザーからは全く理解されないケースも少なくはない。 より良い体験を作りたければ、多様性のあるチーム作りから。これは多くの企業における、今後の一つのテーマとなるかもしれない。 インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 B2B向けのAR & VRニーズが高まる ARやVRは、そのテクノロジーが登場してからかなりの年数がったっているが、一般消費者にはまだまだ馴染みが低い。その利用用途は、せいぜいIKEAの家具アプリのような便利系アプリか、Oculusに代表されるゲームが中心。 その一方で、2022年にはB2B向けのAR/VRが拡大すると思われる。 というのも、世界的に広がっているリモートワークのトレンドは、ARやVRを使ったリモート研修やバーチャル会議などの大規模なビジネスチャンスを生み出し始めている。 今後パンデミックの大流行から徐々に回復するにつれ、より多くの企業が従業員にリモートワークのオプションを提供し続け、AR/VR技術の利用をさらに増幅させていくと考えられる。 ロイターの報道によると、会計・コンサルティング会社のPwCは、米国のクライアントサービスの全従業員4万人がバーチャルで働き、永久に好きな場所に住めるようにすることを確認し、永久リモートワークを取り入れていると報じている。 また、シリコンバレーを中心とした大手テクノロジー企業のそのほとんどが、ノーマルに戻った後も、リモートワークを何かしらの形で継続することを発表しており、新しい働き方に対するソリューションへのニーズが急速に高まってくるのは間違いない。 その点において、ここにきてARとVRのニーズが高まり、それに対するUXデザインのニーズも比例して急拡大していくのは間違いがないと考えられる。 不動産業界におけるAR/VR活用:メリットと6つのサービス事例 Web3っぽいデザインが広がり始める 2021年における最も大きなテクノロジー系ニュースの一つがFacebookの社名変更だろう。社名をMetaに変更することで、ソーシャルメディア企業からメタバース企業にになることを “正式” に宣言した。これは新しい時代の幕開けを予感させる。 そのメタバースを含む新しい概念がWeb3である。 現状、メタバースに加えブロックチェーン、NFT, DAO, DeFiなど、Web3を取り巻く技術的な概念が雪崩のように押し寄せてきており、それを理解するだけでもかなりの労力を要する。 それらを全て理解していなくても、今後、Web3の技術を活用した新しいタイプのサービスがどんどん生み出されることは間違いない。 ということは、そこに圧倒的な速度でUXデザインが求められるは確実。エンジニアだけではなく、デザイナーもしっかりと理解を進める必要があるだろう。 “Web3っぽい” デザインの特徴としては、紫外線で浮かび上がるイメージや、デジタルネットワークや、神経パルスを思わせるダイナミックなパターン、神秘的なシンボルや有機的ななラインを採用する。 Web3っぽいデザインの特徴: カラフルなグラデーション 3D要素 可視化されたリアルタイムデータ インタラクティブなコンテンツ 宇宙っぽさ フワッとしたローディング要素 有機的な曲線 などが挙げられる。例えばこのサイトなんかはかなりWeb3っぽいデザインを採用している。 おそらく実際の現場でWeb3に対応するUXデザインスキルが活用されるのはあと数年後になるかもしれないが、今から習得しておいて損はない。 というのも、Web3は本当に奥が深く、その概念、利点、弱点をちゃんと理解するだけでも数ヶ月はかかる。そして、恐ろしいことに毎日のように新しい情報が発信されている。 […]

2022年に注目のスタートアップトレンドとサービス

2022年がスタートした。アフターコロナなのか、まだまだコロナ中なのかも微妙な状態だが、人々の生活と働き方が大幅に変化したことで、世の中には解決しなければならない課題が数多くある。 特にテクノロジーを活用して課題解決を進めるスタートアップにとってみると、今年こそはより良い一年にするために、その存在価値が問われてくる。 2021年に終了した21のスタートアップとその理由 今年も、成長する可能性があると思われるトレンドを5つにまとめてみることにした。 今回紹介するこれらの分野とサービスは、世の中の新しい課題に対するサービスと、テクノロジーの発展がもたらす機会を兼ね備えている。 2022年に注目したいトレンドとサービス 分散型チームに対応するサービス ミールキット系サービス ローコード/ノーコード系サービス メタバースがやってくる ネオバンク/カード系 分散型チームに対応するサービス 世界的なパンデミックの拡大により、2020年ごろより多くの企業がリモートワークを採用している。その流れは現在でも続いており、MicrosoftやAmazon, Facebookなど、アメリカの大手テクノロジー企業の多くが、半永久的にリモートワークを許可している。 そんな中で、コスト削減やより最適なライフスタイルを求め、勤務地と異なる地域に引っ越すスタッフも多い。アメリカでは、本社と異なる州に従業員が一人でもいると、その州に対しての法人登記と税務処理が求められ、かなり面倒な手続きになる。 また、リモートワークの仕組みを逆手にとって、世界の各地にスタッフを抱えるような分散型の組織を進めている企業も増えてきている。それぞれの国で労働法も税法も異なってくるため、給与の支払い、税務処理、法人手続きは困難を極める。 そんなニーズに合わせ、分散型組織向けのソリューションを提供するスタートアップに注目が集まってきている。 注目のサービス deel remote Gather また、オンラインミーティングをより活性化させるために、多くの企業がリモートワークショップや、ゲームを利用してチームビルディングを行っている。そんなニーズに対して、ミーティング自体をゲームにするGatherというサービスも注目。 ミールキット系サービス ステイホームになって日常生活が最も変化したのが、外食率の低下だろう。日本だと夜空いているレストランが減り、アメリカの多くの都市では、そもそもレストラン内で食事すること自体に規制がかかったりした。 それも現在は少しは緩和されているが、まだまだ大勢で外食をする雰囲気は戻っていない。そうなってくると当然、代替手段が求められる。主にレストランでテイクアウトをするか、UberEatsなどのフードデリバリー系サービスを利用するか、自炊するかになってくる。 レストランに行ってテイクアウトするのは少し面倒だし、フードデリバリーは割高になりがち。そして普段から料理をしていない人にとって自炊は結構ハードルが高い。 そんなニーズにぴったりなのがミールキット系サービス。ホームシェフやホームクッキングとも呼ばれる。オンラインで好きなメニューを選ぶと、その材料が調理法と合わせて人数分送られてくる。 それも軽く調理するだけの状態で準備されているため、普段料理しない人にも人気が高まっている。 注目のサービス Daily Harvest Blue Apron Homechef HelloFresh 主にアメリカの都心部に住む一人暮らしのユーザーに人気が高まっているミールキット系サービスは、月々のサブスクが基本。その料金に応じた回数の準備済みの食材が送られてくる。 元々は忙しい人向けのお手軽調理セットだったのだが、ステイホーム需要に相まって、爆発的に普及し始めている。 ローコード/ノーコード系サービス 非エンジニアや技術バックグラウンドがない人でも各種アプリケーションが作成可能な仕組みとして、簡単なコーディングが求められるローコード系、そして全くコーディングが必要とされないノーコード系のサービスがここに来て注目を集めている。 この分野の定義は難しいが、Pitchbookでは「最小限のコーディング要件で新しいアプリケーションの作成を迅速化し、非プログラマーのためのツールを提供する」ツールと定義している。 そもそも比較的使いやすいローコードやノーコード系のサービスは、すでに10年前からあるにもかかわらず、その普及は限定的だった。 例えば、近い概念のWixやInstapageはWebサイト向け、ShopifyやBASEはECサイト向けでそれなりのユーザーを獲得しているが、本格的なアプリケーションではなかった。 ここに来て、最近多くのローコード/ノーコード系サービスを提供するスタートアップが巨額の資金調達を行い、成長フェーズに入り始めている。 注目のサービス Webflow Bubble Zapier Kintone このトレンドを牽引する要因の一つが、いわゆる “DXブーム” だと考えられる。これまではテクノロジー利用にあまり積極的ではなかった分野の企業も、今後は効率アップや新規サービス創出のためにデジタル化を進める必要性が急激に高まっている。 その一方で、テクノロジーバックグラウンドの無い組織がいきなりDXを行おうとしても、何から始めて良いかわからないのが実情。そこでまずはローコード/ノーコード系サービスを活用することからスタートするケースも多いと考えられる。 実際、Googleで “Low Code ” の検索数は2017年から376%増加。2018年夏に関心が爆発的に高まり、その後も高水準で推移している。 メタバースがやってくる! はい。やっぱり来ましたメタバース。2021年の下半期スタートアップ流行語大賞にも選ばれそうなこのキラーワード。でもぶっちゃけその実態に関してはよくわからないというのが多くの人の感想。 では、2022年にこのバズワードはどんな感じになっていくのだろうか? 元々メタバースは、ゲーム業界ではすでに一般的な概念だった。仮想現実の世界を再現しようとしたゲームは2000年代前半からあったし、ユーザーアバターを投影するタイプもいくつか存在してた。 しかし、それまでは一部のファン向けの世界観だったものが、テクノロジーとデバイスの進化、そしてパンデミックの影響により、オンライン世界での交流が急激に進んだことで、一気にメインストリームになりそうな気配がある。 2021年にメタバースに投資された104億ドルのうち、72%以上にあたる75億ドルはゲーム会社に流れている。しかし、FacebookがMetaに生まれ変わったことで、このトレンドはより多くの人の目に触れるようなった。 注目のサービス Crucible Varjo Powder Madeium また、メタバースがゲーム業界以外の産業からも注目が集まるにつれ、さまざまな活用方法の模索が始まっている。例えば、リテール大手は、今後のコミュニケーションや販売戦略においてメタバースをどのように活用できるか考え始めている。 これは、ブロックチェーン、NFT、AR、その他の拡張現実技術の分野でソリューションを開発するスタートアップとのコラボが進む可能性を示している。 特に、ファッションや化粧品などの小売ブランドは、メタバースとWeb3ソリューションの早期採用者になる可能性が高い。 Nikeが2020年1月に設立した、NFTとしてバーチャルシューズを製造するスタートアップ、RTFKT Studiosを最近買収したことも一つのバロメーターだろう。 ネオバンク/カード系 コロナの影響であまり外に出なくなると、銀行の店舗に行くことも少なくなっている。加えて、キャッシュレス支払いが進んだおかげで、ATMにお世話になる機会もかなり減った。そうなってくると「そもそも銀行の価値ってなんだっけ?」という気持ちになってくる。 というのも、レガシーサービスの代表と言っても良い銀行やクレジットカードの利用体験はお世辞にも良いとは言えない。オンラインバンキングはかなり使いにくいし、クレジットカードの申し込みから支払いに関する体験もかなり煩雑だ。 そんな時に例えば、Appleがめちゃくちゃスムーズな体験と、アプリを通じた透明性の高い情報表示を行ってくれたとしたら、一気に好きになってしまう。 いや、実はアメリカではすでに数年前からApple Cardと呼ばれる、見た目も体験も素晴らしいデザインが施されたクレジットカードが存在する。 一度その別次元の体験をしてみると、既存の銀行系カードの体験があまりにもポンコツすぎて戻れなくなってしまう人が続出している。 【クレジットカードにDX革命】Apple Cardに学ぶ革新的UXデザインのポイント そしてその流れを汲むのがネオバンク系のスタートアップサービス。ネオバンクとは、その銀行業務を全てオンラインだけで行う、非店舗型の銀行サービス。 それも、スムーズなデジタル体験を最優先し、まるでSNSアプリを利用しているような感覚で気軽に利用できるようなアプリを提供している。 具体的なメリットは、煩わしい手続きながない。店舗に行く必要がない。わかりやすいアプリで24時間リアルタイム情報が表示される。多くのサービスが無料。といった、非常にユーザー視点でのサービス設計がされている。 プラス見た目もかなり洗練されているクレジットカードを、煩わしい手続きなしでアプリ経由で一瞬で獲得できる。そして、多くの場合、ほとんどのサービスが無料で提供される、夢のようなタイプの金融サービスとなっている。 注目のサービス Chime Neon Revolt Varo B/43 日本ではまだまだ知名度が低いかもしれないが、アメリカでは若者を中心に既存の銀行離れ & ネオバンクへのシフトが進んでいる。特にユーザー体験を最優先するZ世代には絶大なる指示を得ている。 これも最新テクノロジーを最大活用し、UXデザインに注力したことで生み出された新しいトレンドだろう。 多くの銀行がその生き残りに必死になる中で、よりユーザーとの距離の近いスタートアップが、そのデジタルサービスを武器に金融革命を生み出しているのも非常に2022年っぽいなと感じる。 まとめ: スタートアップサービスがより我々の生活を良くする こんな感じで2022年のスタートアップトレンドをまとめたが、その多くがユーザーの日常生活にかなり密接に関連している。それも、大きな課題を解決してくれるサービスが多い。 2022年はかなりワクワクする一年になりそうだ。今年もbtraxをよろしくお願いします。 みなさまにとって、2022年が素敵な年となりますように!

2021年に終了した21のスタートアップとその理由

スタートアップの90%は5年以内に無くなると言われている。新陳代謝の激しいスタートアップ業界では、派手な成功ストーリーの裏では、連日新しい企業が生まれては消えている。 ある意味、スタートアップは失敗するのが当たり前。そこから得るものがあれば、今後の成功へのプロセスに繋がる。 2021年も後わずかということで、毎年恒例、その年に無くなってしまったスタートアップ特集。 その失敗理由やサービス内容を知るだけでも今後の大きな学びになる。 ベンチャー企業とスタートアップの違い それでは2021年に生き残れなかったスタートアップを紹介する。 1520 事業エリア: 食料品デリバリー メイン拠点: ニューヨーク 失敗理由: 資金繰り悪化 15分から20分で食料品のデリバリーを行うスタートアップ 1520が2021年12月に閉鎖された。今年1月に立ち上げられた同社は、20分以内の食料品配達サービスを手数料無料で提供することを目指し、当初は成功を収めていた。 4月に投資家から780万ドルのシード資金を調達し、マンハッタン全域にダークストアの新店舗をオープンし、9月にはシカゴにもサービスを拡大した。 しかし、JokrやGopuffといった資金力のある競合に追いつくのに苦労し、最終的には顧客獲得コストがかかりすぎて閉鎖に追い込まれた。また、この新しい領域に対して十分な投資家からの出資を集められなかったのも原因となっている。 https://www.1520min.com/ Abundant Robotics 事業エリア: ロボテック メイン拠点: シリコンバレー 失敗理由: 資金繰り悪化とパンデミックの影響 ロボット式リンゴ収穫機の開発会社であるAbundant Roboticsは、7月上旬に同社を閉鎖すると発表した。ベンチャーキャピタルから1,000万ドルの出資を受け、ワシントン州果樹研究委員会から追加資金を得たものの、パンデミックの中で生き残るために必要な市場牽引力を身につけることができなかったと主張している。 この発表に先立ち、同社はすべての知的財産と資産を売りに出したが、その中には、コンピュータ・ビジョンを搭載した果実収穫用ロボットの開発に不可欠な特許が多数含まれていた。Abundant CEOのDan Steereは次のようにコメントしている。 「リンゴ収穫機のプロトタイプで有望な商業試験を重ねた後、開発を継続し生産システムを立ち上げるための十分な投資資金を調達することができませんでした。」 Aerion Corporation 事業エリア: 航空テック メイン拠点: ネバダ州 失敗理由: 資金繰りの悪化 航空工学のスタートアップ企業であるエアリオンは、2021年5月末に突然の閉鎖を発表した。同社は、超音速ジェット機「AS2」をソニックブームを発生させずに飛行させる特許技術を開発し、注目を集めていた。 ボーイング社、ゼネラル・エレクトリック社、ネットジェッツ社とのパートナーシップを育み、2024年までに最初のジェット機を飛ばし、2026年までに商業サービスを開始する計画を報告していたが、結局、必要な資本の確保に伴う課題に屈した形となった。 Apervita 事業エリア: ヘルステック メイン拠点: シカゴ 失敗理由: 資金繰り悪化 ヘルスアナリティクスのスタートアップであるApervitaが、2021年10月に閉鎖された。同社は近年、バリューベース契約と代替支払管理ソリューションのプロバイダーであるQcentiveを買収し、MayoやCleveland Clinicといった組織とのパートナーシップを確立するなど勢いを増していたが、事業を維持するのに十分な資金を調達することができなかったとされる。 元Apervitaの最高情報技術・イノベーション責任者のBlackford Middletonによると、第2回目の資金調達で困難にぶつかり、資金が底をついてしまったとのこと。 Aura Financial 事業エリア: フィンテック メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: パンデミックによる資金繰りの悪化 ヒスパニック系向け消費者金融のオーラ・ファイナンシャルは、スーパーマーケットなどを通じて300ドルから4,000ドルのローンを顧客に提供していたが、財務上の問題が深刻化したため、1月上旬に事業を停止した。 同社の共同創業者であるJames Gutierrez氏は、同社の消滅をパンデミックと資金不足が原因と説明した。 パンデミック発生当初、黒字化に向けて最後の一歩を踏み出し、新規融資を完了させる寸前だった。しかし、突然、すべての資金が枯渇した。低所得で、ほとんどがヒスパニック系の顧客層が、仕事、健康、財政に不釣り合いな影響を与えるパンデミックからどのように回復するかという不確実性が、投資家からの追加投資を阻んだ。 Beam 事業エリア: フィンテック メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: 資金繰りに失敗 モバイル貯蓄アプリBeamが、連邦取引委員会との和解に基づき停止された。2019年に登場したこのアプリは当初、「99%のための初のモバイル高金利貯蓄口座」と銘打ち、7%という高金利を提供しながら、預金への「24時間アクセス」を可能としていた。 しかし、2020年のCNBCの調査により、数十人の顧客が口座からお金を引き出せなかったことが明らかになり、最終的にFTCはこれを閉鎖し、今後同様の事業を行うことを禁止することになった。 https://www.meetbeam.com/ Clickety 事業エリア: 業務改善系SaaS メイン拠点: ポートランド 失敗理由: 不明 2021年8月末、プロジェクト管理ツールClicketyがサービス終了を発表した。顧客には、「グループメンバー、マニュアルコメント、人物メモ、マージされたエイリアス」に関するデータを含むファイルを入手するために同社に連絡するよう伝えられ、さもなければ10月1日に永久に削除されるとのことだった。 創業者のルーク・ケイニーズ氏は、閉鎖の具体的な理由を示さず、ただこう述べた「私たちは、自分たちが作り上げたものを非常に誇りに思っています。自分たちで使うことができなくなるのは寂しいことです。そして、私たちが作ってきたもの、つまり、人を中心とした仕事をしている人たちを助ける強力なツールが、今なお必要とされていることを、これまでと同様に確信しているのです。しかし、私たちはその努力を継続することができません。」 Hey Tiger 事業エリア: エシカルチョコレート メイン拠点: オーストラリア 失敗理由: 利益確保が難しいビジネスモデルだった エシカルチョコレートブランド “Hey TIger” が、オープンから3年後の2021年5月上旬に閉店を発表した。同社のミッションは、高品質のチョコレート製品を生産すると同時に、カカオ産業における不公平を認識し、対処するという2つの側面を持っていた。 原料の倫理的な調達を約束しただけでなく、カカオ農家の児童労働や貧困を撲滅するための慈善寄付も行った。同社は熱狂的なファンを獲得したが、社会的な目標に沿った形で事業を拡大し、利益を確保することが困難であった。 https://heytiger.com.au/ Houseparty 事業エリア: ビデオチャットアプリ メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: マネタイズが難しかった 2021年9月初旬、Epic Gamesは10月にHousepartyを廃止することを発表した。EpicはFortniteのゲーマーにライブビデオチャット機能を提供するため、2019年に$35Mでこのビデオチャットアプリを買収した。同社は閉鎖の明確な理由を挙げていないが、財政的に持続不可能であることが証明されたのだと推測している。 Epicはブログの投稿で、Housepartyの従業員を他のチームに再配分し、「メタバース規模」でのソーシャル機能の開発に注力すると述べ、Epicがより大規模な仮想環境の開発に移行することを示唆している。 https://houseparty.com/ Hubba […]

2021年に終了した21のスタートアップとその理由

スタートアップの90%は5年以内に無くなると言われている。新陳代謝の激しいスタートアップ業界では、派手な成功ストーリーの裏では、連日新しい企業が生まれては消えている。 ある意味、スタートアップは失敗するのが当たり前。そこから得るものがあれば、今後の成功へのプロセスに繋がる。 2021年も後わずかということで、毎年恒例、その年に無くなってしまったスタートアップ特集。 その失敗理由やサービス内容を知るだけでも今後の大きな学びになる。 ベンチャー企業とスタートアップの違い それでは2021年に生き残れなかったスタートアップを紹介する。 1520 事業エリア: 食料品デリバリー メイン拠点: ニューヨーク 失敗理由: 資金繰り悪化 15分から20分で食料品のデリバリーを行うスタートアップ 1520が2021年12月に閉鎖された。今年1月に立ち上げられた同社は、20分以内の食料品配達サービスを手数料無料で提供することを目指し、当初は成功を収めていた。 4月に投資家から780万ドルのシード資金を調達し、マンハッタン全域にダークストアの新店舗をオープンし、9月にはシカゴにもサービスを拡大した。 しかし、JokrやGopuffといった資金力のある競合に追いつくのに苦労し、最終的には顧客獲得コストがかかりすぎて閉鎖に追い込まれた。また、この新しい領域に対して十分な投資家からの出資を集められなかったのも原因となっている。 https://www.1520min.com/ Abundant Robotics 事業エリア: ロボテック メイン拠点: シリコンバレー 失敗理由: 資金繰り悪化とパンデミックの影響 ロボット式リンゴ収穫機の開発会社であるAbundant Roboticsは、7月上旬に同社を閉鎖すると発表した。ベンチャーキャピタルから1,000万ドルの出資を受け、ワシントン州果樹研究委員会から追加資金を得たものの、パンデミックの中で生き残るために必要な市場牽引力を身につけることができなかったと主張している。 この発表に先立ち、同社はすべての知的財産と資産を売りに出したが、その中には、コンピュータ・ビジョンを搭載した果実収穫用ロボットの開発に不可欠な特許が多数含まれていた。Abundant CEOのDan Steereは次のようにコメントしている。 「リンゴ収穫機のプロトタイプで有望な商業試験を重ねた後、開発を継続し生産システムを立ち上げるための十分な投資資金を調達することができませんでした。」 Aerion Corporation 事業エリア: 航空テック メイン拠点: ネバダ州 失敗理由: 資金繰りの悪化 航空工学のスタートアップ企業であるエアリオンは、2021年5月末に突然の閉鎖を発表した。同社は、超音速ジェット機「AS2」をソニックブームを発生させずに飛行させる特許技術を開発し、注目を集めていた。 ボーイング社、ゼネラル・エレクトリック社、ネットジェッツ社とのパートナーシップを育み、2024年までに最初のジェット機を飛ばし、2026年までに商業サービスを開始する計画を報告していたが、結局、必要な資本の確保に伴う課題に屈した形となった。 Apervita 事業エリア: ヘルステック メイン拠点: シカゴ 失敗理由: 資金繰り悪化 ヘルスアナリティクスのスタートアップであるApervitaが、2021年10月に閉鎖された。同社は近年、バリューベース契約と代替支払管理ソリューションのプロバイダーであるQcentiveを買収し、MayoやCleveland Clinicといった組織とのパートナーシップを確立するなど勢いを増していたが、事業を維持するのに十分な資金を調達することができなかったとされる。 元Apervitaの最高情報技術・イノベーション責任者のBlackford Middletonによると、第2回目の資金調達で困難にぶつかり、資金が底をついてしまったとのこと。 Aura Financial 事業エリア: フィンテック メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: パンデミックによる資金繰りの悪化 ヒスパニック系向け消費者金融のオーラ・ファイナンシャルは、スーパーマーケットなどを通じて300ドルから4,000ドルのローンを顧客に提供していたが、財務上の問題が深刻化したため、1月上旬に事業を停止した。 同社の共同創業者であるJames Gutierrez氏は、同社の消滅をパンデミックと資金不足が原因と説明した。 パンデミック発生当初、黒字化に向けて最後の一歩を踏み出し、新規融資を完了させる寸前だった。しかし、突然、すべての資金が枯渇した。低所得で、ほとんどがヒスパニック系の顧客層が、仕事、健康、財政に不釣り合いな影響を与えるパンデミックからどのように回復するかという不確実性が、投資家からの追加投資を阻んだ。 Beam 事業エリア: フィンテック メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: 資金繰りに失敗 モバイル貯蓄アプリBeamが、連邦取引委員会との和解に基づき停止された。2019年に登場したこのアプリは当初、「99%のための初のモバイル高金利貯蓄口座」と銘打ち、7%という高金利を提供しながら、預金への「24時間アクセス」を可能としていた。 しかし、2020年のCNBCの調査により、数十人の顧客が口座からお金を引き出せなかったことが明らかになり、最終的にFTCはこれを閉鎖し、今後同様の事業を行うことを禁止することになった。 https://www.meetbeam.com/ Clickety 事業エリア: 業務改善系SaaS メイン拠点: ポートランド 失敗理由: 不明 2021年8月末、プロジェクト管理ツールClicketyがサービス終了を発表した。顧客には、「グループメンバー、マニュアルコメント、人物メモ、マージされたエイリアス」に関するデータを含むファイルを入手するために同社に連絡するよう伝えられ、さもなければ10月1日に永久に削除されるとのことだった。 創業者のルーク・ケイニーズ氏は、閉鎖の具体的な理由を示さず、ただこう述べた「私たちは、自分たちが作り上げたものを非常に誇りに思っています。自分たちで使うことができなくなるのは寂しいことです。そして、私たちが作ってきたもの、つまり、人を中心とした仕事をしている人たちを助ける強力なツールが、今なお必要とされていることを、これまでと同様に確信しているのです。しかし、私たちはその努力を継続することができません。」 Hey Tiger 事業エリア: エシカルチョコレート メイン拠点: オーストラリア 失敗理由: 利益確保が難しいビジネスモデルだった エシカルチョコレートブランド “Hey TIger” が、オープンから3年後の2021年5月上旬に閉店を発表した。同社のミッションは、高品質のチョコレート製品を生産すると同時に、カカオ産業における不公平を認識し、対処するという2つの側面を持っていた。 原料の倫理的な調達を約束しただけでなく、カカオ農家の児童労働や貧困を撲滅するための慈善寄付も行った。同社は熱狂的なファンを獲得したが、社会的な目標に沿った形で事業を拡大し、利益を確保することが困難であった。 https://heytiger.com.au/ Houseparty 事業エリア: ビデオチャットアプリ メイン拠点: サンフランシスコ 失敗理由: マネタイズが難しかった 2021年9月初旬、Epic Gamesは10月にHousepartyを廃止することを発表した。EpicはFortniteのゲーマーにライブビデオチャット機能を提供するため、2019年に$35Mでこのビデオチャットアプリを買収した。同社は閉鎖の明確な理由を挙げていないが、財政的に持続不可能であることが証明されたのだと推測している。 Epicはブログの投稿で、Housepartyの従業員を他のチームに再配分し、「メタバース規模」でのソーシャル機能の開発に注力すると述べ、Epicがより大規模な仮想環境の開発に移行することを示唆している。 https://houseparty.com/ Hubba […]

2021年にロゴをリデザインした7のブランド

社会的プレッシャー, リセットボタン, プロダクト拡大、イメージ変革など、企業がリブランディングを行う理由は複数考えられる。社会的に見て2021年はかなり変化の大きな一年だった。それに合わせてか、今年リブランドやロゴのリデザインを行った企業が複数存在する。 ロゴをアップデートする主な理由 ではなぜロゴを変える必要があるのだろうか?主に下記の理由が挙げられるだろう。 デジタルデバイス普及などの時代の変化 ブランドやサービス価値の変化 ターゲットユーザーの変化 世の中のトレンドの変化 会社のフェーズの変化 主要プロダクトの変化 予算が余ったから 2021年の7つの代表的なリブランド事例を、その内容や狙いを含めて紹介する。 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 1. GM 1964年よりこれまで長い間基本的なデザインを変えずにいたアメリカ自動車ブランド大手のGMは、2021年に大胆なリブランディングを行った。 これまでの大文字のGMと下線を採用した、重厚なイメージを捨て、新ロゴには小文字のgmとグラデーションを採用。デジタルなイメージと若返りを図った感じがするが、正直少し古臭い感じも否めない。 2. KIA 韓国の自動車ブランド、KIAもかなり大胆なリブランドを敢行。アメリカでは実際に掲載された車両を見かけることもあるが、一瞬どこの車かわからないくらいに大幅な変更が施されている。 こちらもデジタルなイメージを前面に出した幾何学的なデザインであるが、文字として読みにくくなったため、定着するまでにはしばらく時間がかかりそう。   3. Burger King 今年リブランディングを行った企業の中で最も話題になった一つがアメリカのハンバーガー大手のバーガーキング。 というのも、1999年より10年以上利用しきたロゴをリデザインしたのだが、新しいロゴが以前のものに多少手を洗練させたものになっている。このレトロなスタイルが現代では逆に新鮮に感じられる。 4. Pfizer コロナワクチンで一気に知名度が上がった米国医療大手のファイザー社もその勢いに乗って約70年ぶりの大幅なブランド刷新を行った。これには新しいロゴも含まれ、青い錠剤の形を廃止し、同社のワクチンを生み出した科学を想起させる二重らせんをモチーフにしたシンボルが採用された。 これは、同社が2019年に始めたシフトの最終ステップであり、多様な消費者ブランドの集合体から、処方薬とワクチンを生み出すより科学的な課題へと移行を表現している。 5. Renault フランスの自動車ブランドのルノーもこれまでの立体的なシンボルから、フラットなタイプのロゴに変更を行った。そして、メインのロゴからは文字部分を取り除き、よりアイコンとしてのロゴの位置付けとなった。 また、実際に車両に掲載する際にもLEDで光らせ、次世代のEVブランドとしてのイメージ作りを進めている。 6. Volvo Volvoのロゴのリデザインは、2020年にリブランディングを行った自動車3ブランド、NISSAN, VW, BMWのスタイルを完全踏襲している。以前の3D+メタルっぽいタイプのロゴから、白黒のフラットラインで構成されるものに大幅変更。 最近リブランディングを行った複数の自動車会社と同じく、次世代EVへの注力、モビリティーカンパニーへの転換、デジタルチャンネル強化のためのスタイルをシフトしたことが伺える。 自動車メーカーのリブランディング分析: Nissan, VW, BMW 7. Facebook / Meta 厳密にはロゴのリデザインやリブランディングではないが、時代を象徴する例としてFacebookがMetaに社名変更、およびロゴの変更を行ったのも2021年の大きな変革のシンボルと言える。 これまでソーシャルメディアサービスの代表的な企業であったFacebook社が、その社運を掛けてメタバースにシフト。それに合わせて、リブランディングではなく、社名自体を変え、勝負に打って出た。 ロゴがアップデートされるたびにシンプルになる理由 今回のロゴのリデザイン事例を見ても、その多くが以前のものよりもシンプルなデザインになっている。それは偶然ではなく、しっかりとした理由がある。ちなみに”シンプル”にすることは、複雑なデザインよりも数倍難しく、より”洗練”されたと考えて間違いない。レオナルド・ダ・ヴィンチも、”シンプルである事は究極の洗練だ” と定義している。 スターバックスのロゴ遍歴を見てみても、どんどんシンプルになってきているのがわかる。ロゴに利用される構成要素を少なくし、利用される色も少なくすることで、環境に配慮しているというメッセージにもつながる。消費・廃棄するマテリアルを減らすことで、より地球に優しいブランドイメージを与えている。 シンプルにすることの利点 汎用性の高さ: そのブランドの認知度が高まるにつれ、そのロゴは多くの場所で利用し始める。新聞に掲載される白黒の小さな広告から、道路脇の巨大なビルボードまで、様々なサイズや媒体、印刷方法に対応する必要が出てくる。そのために、細かなラインやグラデーションなどの装飾要素を排除する。 より幅広いユーザーに訴求: ユニークで個性的なロゴは一部の人々には好まれるが、一般的には好まれないことも多い。サービスの普及や会社の熟成度合いに合わせて、より多くのユーザーに受け入れられるために、より洗練されたデザインを採用する事が一般的である。 記憶に残りやすい: 人々の記憶に残るのがロゴの1つの大きな役割である。以前に、街頭インタビューでブランドのロゴを描いてもらうテストをしてみた。結果として、実物に近く描けていたのは、Nike、 McDonald’s、Appleなどのシンプルなロゴで、複雑なロゴは印象に残りづらいだけでなく、思い出しづらいという事も判明した。良いロゴの1つの基準は、誰にでも簡単にスケッチが描ける事。 コスト削減: 多種多様な場所でロゴが利用される場合、そこに利用されている線の数や色が少ない方がファイルのサイズやメモリー、インクの量を節約する事に繋がる。ケチな話の様に感じるかもしれないが、ビジネスの規模が大きくなれば、細かな差が大きな利益を生み出す事も多い。上記のスターバックスの最新ロゴも、利用されているのが一色になり、銭の数も減った。世界中に存在する複数の店舗の看板と膨大な数のカップへのロゴの印刷コストを考えてみると、ロゴのデザインをシンプルにするだけでかなりのコスト削減にも繋がっている。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則

日本で起業家が生まれにくい3つの理由

以前読んだ日経新聞の記事にて、日本では起業家が生まれにくいという統計が発表されていた。それが掲載された記事には下記のように記載されている。 グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の調査によると、18~64歳で「起業の機会がある」と答えた人は10.6%にとどまった。中国人の74.9%、米国人の67.2%を大きく下回るばかりか、調査対象の50カ国で最下位だった。 日本は世界的に見ても起業家精神が低いらしい 上記の統計からもわかる通り、どうやら世界的にみると日本で起業意識を持つ人の割合は全体の10.6%と、かなり低いらしい。これは結構意外。というのも、日本ではここ数年でスタートアップが盛り上がり、我々が提供している起業家プログラムにもそれなりの人数の方々が参加している。 でもやはり世界全体的には起業家になりたい人たちの割合はかなり低いことが伺われる。これがアメリカだと優秀な人ほど起業する事が多い。 米中では有名大学の最優秀の卒業生は自ら起業するか、スタートアップで働くことを志す。中国では「国も若者の起業を奨励しており、若くして巨万の富を得る起業家は社会から尊敬される。失敗しても大企業に就職してやり直せる」(アジア経済研究所の丁可氏)。 関連: なぜアメリカの優秀な若者は大企業で働かないのか なぜ日本の人たちは起業家になりたがらないのか? 実はこれ「なぜ日本では起業家が少ないんでしょうか?」は btrax がこれまで提供してきた起業家育成プログラム内でも何度か聞かれた質問でもある。 おそらくロジカルな説明としては、南場智子さんが提出された資料にも記載されている下記の状況に起因する部分が大きいと考えられる。 まあ、みんながみんな起業家になるべきとは思わないが、夢を叶えるために起業家になるのも選択肢の一つとして感じられる状態もあっても良いのかなと感じる。 関連: 僕は君が起業家になることをオススメしない 日本で起業家になりたいと思う人が少ない3つの理由 さて、ここからは個人的な見解&本題。日本に行って感じたり、日本の方々とお話して気づいた下記の「3つの事柄」も起業をすることが選択肢になりにくい理由なのかなと思っている。 1. 解決するべき社会課題が少ない これは日本以外に行ったことのない人にはなかなか気づきにくい点なのであるが、日本はかなりさまざまな部分で恵まれていて、日常生活で不便を感じることが少ない。 例えば、日本で「普通」だと思われている、電気・水道が来る、コンビニがある、バス・電車が時間通り、携帯電波が入る、銀行がある、などなどの社会的インフラは他の国に行くと全く状況が異なる。 こちらアメリカでは99%のエリアで公共交通機関がないし、結構停電になるし、都心から1時間もドライブすれば携帯電波が途切れてしまう。これが東南アジアとかになってくると解決するべき社会的課題は山ほど出てくる。 最近では発展途上国を中心に、それらの改題を解決すべく。リープフロッグ型のサービスを作るべく起業する人も増えてきている。 関連: サンフランシスコのUXデザイナーが体験した日本から学ぶべきUXとは これが日本だとどうだろうか?あまりにも全てが整いすぎていて、起業する際のアイディアを考える時も “わざわざ” SDGs をテーマに、半ば無理やり頭を捻らなければならない。それも自分自身が体験したことのないような課題を。 そして、国内にはそんな課題はないもんだから、ポテンシャル顧客も少ない。グローバルに展開しない限りは金銭的に大きな結果は望めない。しかし、スタートアップをする際には投資家への還元としてエクジットを見据える必要が出てくるため、自ずと人材紹介系、デジタルマーケティング系、業務系SaaS系、ゲーム系などの「確実に利益が出せる系」のサービスに絞られてくる。 もちろんグローバル展開はしにくくなるし、まだ存在していないタイプのサービスを作る際の独特の興奮も得られない。だから起業するモチベーションも上がりにくくなる。VCからのプレッシャーもあり、結果的に収益重視のつまらないサービスが増えがちになる。 関連: アジアの中心から見た日本の危うさ 2. 憧れのロールモデルの欠如 先日、グローバル起業家育成プログラムにて、サンフランシスコの日本人起業家の方にゲスト出演をいただいた。そもそも彼がアメリカに来た理由が「憧れの起業家が住んでいる街だから。」だった。 これは一見アホらしいと思われるが、意外と重要なポイント。 そう、サンフランシスコとかシリコンバレーで起業家が多い一番の理由がこれだと思う。それはまるで十代の少年がロックスターに憧れてギターを手に取るように、ここではジョブスに憧れ、ザッカーバーグに憧れ、イーロン・マスクに憧れ、ジャック・ドーシーに憧れて起業家を目指す若者が後を絶たない。 この街には、憧れのかっこ良い存在がいる。それも自分の近くに。同じ街で同じ生活をして、Tシャツ&ジーンズで地元のカフェに行っている彼らが高卒で成り上がり、世界を大きく変えている。そんな思いが少年の心を揺さぶる。 起業家のスタートはそんなシンプルな勘違いから始まることも少なくはない。 そう、起業家にとって「もしかしたら、自分もできるかも?」って思わせてくれる憧れロールモデルの存在はとても重要。 それが日本だとどうなるのか?成功した起業家は雲の上の人となり、ビジネス系のメディアやイベントの高い壇上を下から「俺には無理だなー」って思いながら眺めるしかない。 成功した起業家も、一時的にメディアにてはやされるが、妬まれることも多い。それゆえ、少しでも綻びが見えると、失敗者として徹底的に叩かれたり、偉いおじさまたちに目をつけられる。最悪の場合、イチャモンを付けられ、懲役を食らったりする。そんな報道がされると、親からも「起業家?あんたもあんなんになっちゃうよ」と言われて、やっぱやめとこ、ってなってしまう。 関連: 日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント 3. 学校教育の問題 最後は最も真面目かつ、根深い教育の問題。一般的に日本の学校教育では、模範解答があることしか教えない。発言するのは答えに自信がある時のみ。テストの多くは選択式。そして成績の良し悪しは周りとの相対的な偏差値で決められる。少なくとも自分の場合はそうだった。 この教え方が起業家マインドとは真逆なのである。 特にスタートアップは、まだ誰もやったことのない内容を通じて世の中の社会課題に取り組むことが多い。それも結構な未来軸で。そうなってくると誰も答えを知らないし、模範解答なんて存在するわけない。もはやマークシートで回答できる内容なんて一つもない。お利口さんでは全く歯が立たない世界である。 一方、日本教育における減点方式、副教科軽視、偏差値、エリート大学至上主義は、オペレーション業務を主軸とした、これまでの大企業にはかなり最適化された人材を生み出す。でも、起業家には最も適していない価値観を植え付けている。 起業家に求められるのは、人と違う視点で、間違いを恐れずに、今までに存在していないようなサービスを作り出し、かなりしょぼい状態でも人々の前に立ちプレゼンする。そして、失敗しても何度もチャレンジするマインドセットだ。これは日本の学校教育で評価される真逆の価値観。 何も、人類を火星に移住させるような壮大な野望を持たせる必要はないが、現在の日本式学校教育が誰も答えを知らない未知の課題に対して、クリエイティブな視点から何かを生み出す起業家を育ててあげることはかなり難しいんじゃないかな、と感じている。 関連: 文系, 理系, オレ何系? – 日本教育の限界とそのリスク 人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える。- 大前研一 ps. 僕も日本にもっと起業家が増えれば良いと思っているので、反論、解決案はWelcomeです。@BrandonKHill

ロゴもレスポンシブの時代へ

これまでのロゴの基本は、どのようなサイズにも対応できるデザインを施すことだった。例えば、高速道路脇の巨大なビルボードから、新聞に小さく掲載される白黒のバージョンまで、さまざまな利用用途に対応したロゴをデザインするのが基本。 自ずと複雑だったり要素が多すぎるロゴは汎用性が低くなるため、なるべく少ない構成要素でシンプルなデザインがロゴデザインにおける王道のディレクションとされてきた。 優れたロゴを構成する5つの要素 時代と共に変化するデザイン手法 しかしながら、ここ数年でデジタルチャンネルが一気に普及したため、デザインに対する考え方やメソッドが大きく変化し始めている。 具体的には、以前までは紙媒体が主なチャンネルであったグラフィックデザインも、現代ではスクリーンメディアの方がメインになり、表示される解像度から色のプロファイルまで全く異なる技法が用いられている。 それに合わせ、ブランディングやロゴデザインの概念も革新的に変化が進んでいる。そこではこれまで正しいとされてきたルールが適用されにくくなってきている。 意外と知らないデザインとブランディングの関係性 現代のブランドデザインはロゴもレスポンシブ スマホの普及が進み始めた2010年代ごろからWebサイトのデザインに “レスポンシブデザイン” の手法が取り入られ始めた。レスポンシブデザインとは、ユーザーが利用している画面のサイズに合わせ、サイトのレイアウトやコンテンツが可変式に表示されるデザイン。 それまではPC向けのサイトとモバイル向けのサイトをそれぞれ別にデザインすることが一般的だったが、スマホのブラウザーがよりPCに近い画像表示が可能になったり、タブレットやウェアラブル、画面の大きいモニターからVRなど、異なるサイズのスクリーンの利用が普及した。 それに対応するべく、ユーザーの利用環境に合わせ、サイト表示がスムーズに変化していくデザイン、コンテンツ作成、およびコーディングが施され始めた。このデジタルデバイスの多様化や、スタートアップを中心に、ロゴの「アイコン化」が進んだために、最近ではロゴもレスポンシブにする動きが進んでいる。 これまでの存在していたロゴバリエーション これまでのブランディングプロセスにおいても、その利用用途に合わせて複数のバリエーションをデザインするのが一般的だった。具体的には、ロゴタイプとロゴシンボルの扱いやレイアウト、そして色を反転したバージョンなどが挙げられる。 それらは主に異なる紙媒体や誌面掲載を念頭においたデザイン施策である。 レスポンシブロゴの基本 グラフィックデザインのロゴバリエーションを一歩進め、現代のデジタルデバイスに対応した、レスポンシブに対応したロゴ = レスポンシブロゴとは、想定される利用用途に合わせて、いくつかのバリエーションを準備した「ロゴのセット」である。 これは単純に異なるサイズを準備しておくだけでなく、サイズに応じてロゴを構成する要素も変化させる。可視性を重視し、ブランド認知度を上げるための新しい手法である。これまでの一つのロゴで全ての用途に対応できなくなったのが原因。 それまでブランディング理論では、ご法度でもあった「ロゴをいじる」ことを逆手にとり、むしろ積極的に異なる要素を含むバリエーションを準備しておこうという考え方。 レスポンシブロゴの事例紹介 それでは著名なブランドロゴを中心に、最新のレスポンシブロゴの例を見ていこう。 その他の事例はこちらのサイトで確認可能 レスポンシブロゴをデザインする際の5つのポイント 最後に実際にレスポンシブなロゴをデザインする場合のポイントを5つほど紹介する。このポイントを抑えれば、新規ロゴでも既存のロゴのレスポンシブ化にも対応することが可能になる。 1. 最低4つのバリエーションを準備する その利用用途で異なる要素を含むロゴのバリエーションを作成するのだが、その際は最低でも4つほどデザインしておくのがおすすめ。目安としては、パソコン、タブレット、スマホ、アイコン用に作っていくイメージ。 例: NewsPicks 2. そのスケールに合わせて構成要素の足し引きを行う これまでのロゴバリエーションとレスポンシブロゴの一番の違いは、サイズによってロゴの要素が変化するかどうかだろう。一昔前はサイズによってロゴの掲載要素を変えるのはルール違反だったが、レスポンシブロゴではそれが特徴にもなっている。 一般的に大きめのサイズにはスローガンや設立日などの優先度の低い要素も掲載し、小さくなるにつれ、重要な要素だけに削られていく。 例: Kodak 3. 全てのバリエーションで統一性を持たせる レスポンシブロゴに関する最大の誤解として、それぞれのバージョンがすべて異なるロゴでなければならないとされる点。しかし実際には、レスポンシブロゴは同じオリジナルロゴの異なるバージョンである。 従って、異なるバージョンでもフォントや配色、シェイプといった統一の要素が求められる。これらの要素は、ロゴだけではなく、ブランディング全体に直結する。 例: Guiness 4. 小さいサイズの場合は “形” だけを表示するのも効果的 ロゴの縮小版をデザインする際に、オリジナルの要素が失われてしまうという壁にぶつかることがある。そのような場合は、ロゴのシンボル部分の形を活用し “アイコン化” させる。 そしてそのアイコンの形が一般的になってくれば、ブランド資産としてロゴの価値が上がっていく。例えばAmazonの矢印やGoogleのGの文字などが挙げられる。 例: Heinz 5. サイズによってシンボルとタイプのスタック方法を変えてみる レスポンシブロゴは、必ずしも大きいか小さいかではない。レスポンシブロゴの役割は、さまざまな状況に「対応」することであり、通常はサイズだけでなく、周囲との調和も考慮する必要がある。 ロゴによっては、テキストなどの要素をどのように重ねるかで、より柔軟な対応が可能。要素を完全に削除するのではなく、配置を変えるだけで同じような省スペース効果を得ることができる。 レスポンシブロゴをデザインする際には、単に要素を削除するだけでなく、再配置することも選択肢に入れたい。場合によっては、小さいサイズでもロゴの重要な部分を残すことができるので、一石二鳥とも言える。 例: btrax ボーナス: 異なるロゴバリエーションを活用したアニメーションを作成する それまでデザインしたレスポンシブロゴのバリエーションを使い、デジタルメディア向けにアニメーションを作成する。そうすることで、ユーザーに対して一目で全てのタイプを見せることができ、ロゴの認知度が上がる。 例: Huffington Post

UXデザインにおける「けもの道」現象を考える

先日サンフランシスコ市内の公園を歩いていたら、ふとあることに気づいた。本来設計されている道とは異なるルートが作られているのだ。そう、アスファルトで舗装されている通行用ルートではなく、芝生になっている箇所を複数の人が通ったことによる近道、いわゆる「けもの道」が生成されている。 これはデザイナー的観点から見るとかなり興味深い。というのも、ユーザーに対して元々設計されていた「導線」とは異なるルートをユーザーが選択した結果、いつの間にかそのルートの方を他のユーザーも利用するようになった。これは明らかにデザインミスでは無いのか?と。 けもの道 (Desire Paths) について 英語ではこの現象をDesire Pathsと呼び、Wikipediaには下記のような説明がされている。 公認されていない自転車道や歩道のことで、定期的に自転車や人間が通ることによって時間をかけて作られた道のことを指す。多くの場合、道端の草地の中に現れたもので、公式ルートの近道になる。 多くの人々や自転車が公式ルートの近道をするために、それぞれ独自に同じルートを同じような方法で通行することによって現れる。一旦その痕跡が見られるとさらに多くの人がそこを通るようになり、道が生成されていく。 駅前のTSUTAYA現象 このような「けもの道」が生成されるのは芝生だけではない。大都会の東京でも多くの人が近道を探し、本来の設計とは異なる導線を作り出している。 以前に我々btraxの東京オフィスが六本木にあった頃、地下鉄の駅を出て通常ルートを通ると階段と坂道があり、かなり面倒だった。そこでスタッフの一人が「駅前のTSUTAYAの店内を抜ければかなりの近道になりますよ」と革新的なアイディアを発見。 それ以来スタッフ全員がTSUTAYA経由で通勤をしていた。奇しくもTSUTAYAの店舗がけもの道の役割を果たした事例であるが、都会の多くの店舗がそれを見越してロケーションを決めている可能性もあるだろう。 デザイン的観点からDesire Path現象について考える これをデザイン的観点から考えてみよう。この現象は、デザインの意図とユーザー体験が相反する場合に生まれる状態。デザイナーがユーザーがこう使うだろうという想定と、実際のユーザーが望む利用方法がズレている場合、最終的にはユーザーの解釈が正となる。 言い換えると、けもの道はデザイナーの設計とユーザーニーズが相反した際に生成され、最終的にはプロダクトやサービス、UXデザインの正しい利用方法はユーザーが決めることになる状態に似ている。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ この現象をUXデザインに当てはめてみる このように設計者の意図と、ユーザーの行動が異なる状況はUXデザインの現場でもかなり頻繁におこている。例えば、Webページのナビゲーションではなく、毎回サイトマップページに行き、そのリストからページにたどり着くなど、デザイナーが本来想定していた導線をユーザーが理解してくれない事が往々にして発生する。 言い換えると、ユーザーはデザイナーが用意したまどろっこしいルートではなく、手っ取り早く僕的にたどり着ける、より直線的な近道が欲しいのだ。 この状況は、UIにおけるボタンの位置や、ページのレイアウト、ボタンの名称、コンテンツ文章、デザインヒエラルキーなどが不適切の場合に起こりやすい。それを避けるためには、事前にどこにけもの道ができそうかを理解しておくか、リリース後のユーザーの動きを観察し、改善していく必要がある。 けもの道を見つけるのがユーザーリサーチの役割 これを避けるために行うのがユーザーリサーチである。ユーザーリサーチでは、ユーザーが何を求めているかと同時に、どのような利用方法が最も適切であるかを探る。 言い換えると、ユーザビリティーテストやヒートマップなどを活用したユーザーリサーチは、本来のデザインの意図とは異なる「けもの道」がどこに隠されているかを特定するためにも、重要なプロセスになってくる。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ けもの道理論を活用したディズニーランド 世界初のUXデザイナーとも言われているウォルト・ディズニーは、ディズニーランドを設計する際にこの理論を採用している。彼はチームのデザイナーやエンジニアに対し、ディズニーランド来客者の「動き」に注目するように指示をした。 そして、オープン直後からユーザーがどのようなルートを通ってアトラクションにたどり着くかを観察。多くの人々は舗装された道ではなく、より短距離で移動可能な芝生を通っていった。それを目の当たりにしたエンジニアは芝生の周りに柵を設置することを提案したが、彼は逆に芝生内に道を作るよう伝えたという。 ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは 検索エンジンはネットユーザーにとっての「けもの道」 現在ではあまりにもナチュラルすぎて気づかなないかもしれないが、パソコンのブラウザーを開いて最初にYahooやGoogleが表示されているのも、ユーザーが求めるけもの道を提供している。 いきなりアドレスバーにURLを入れるよりも、検索ワードを入れた方がよっぽど使いやすい。しかし、ネットが普及し始めた当時にサイトにアクセスするには、URLを入力する必要があった。 従って、当時のブラウザーはアドレスバーが本来想定されていたユーザー導線で、それに対してより楽な近道を提供した検索エンジンがけもの道となり、現在の状態に辿り着いている。 ユーザーのけもの道によって淘汰されたiTunesのCover Flow View iPodとiTunesがリリースしてからしばらくはレコード店でジャッケットを見るかのように、曲のカバーアートをフリップできる”Cover Flow”という機能が存在していた。その見た目の美しさとインパクトでスティーブ・ジョブスのプレゼンではオーディエンスから歓喜の声が上がった。 しかし、実際に使い始めるといちいち画面上で一曲ずつフリップしていくよりも、手っ取り早くリストから選んだ方が早いし楽だった事で多くのユーザーは見た目的にはインパクトの少ないリストビューから曲を選んでプレイし始めた。これも、デザイナーのこだわりが速攻ユーザーのけもの道によって使われなくなった例だろう。 けもの道で成長したTwitter この「けもの道現象」を上手に利用し、成長させたサービスがある。Twitterだ。 現在はTwitterの正式機能になっている@や#, RT などはサービスリリース当時は実装されていなかった。そこでユーザーは他のユーザーに対して返信する際に”at”と記入し始めた。その後下記のツイートで初めて “@” を使うユーザーが出現し、その後、正式な機能になった。 @ buzz – you broke your thumb and youre still twittering? that’s some serious devotion — rsa (@rsa) November 3, 2006 同じく、#もユーザーが勝手に利用し始め、最初は “Channel” や “Pound”などと呼ばれていたが、最終的にハッシュタグの名でサービスに実装。下記が初めて#を使ったツイート。 how do you feel about using # (pound) for groups. As in #barcamp [msg]? — Chris Messina ᵍᵐ (📜,🕯️) (@chrismessina) August 23, 2007 RTも正式な機能ではなかったが、とあるユーザーがReTweetと記入し、その概念が広がることとなり、正式な機能になった。ちなみにその方のプロフィールには「偶然RTを発明した」と記載されている。 ReTweet: jmalthus @spin Yes! Web2.0 is about social media, and guess what people […]

デザイナー消滅の危機?専門職の概念がなくなる時代

ビジネスにおけるデザインの重要性が高まるにつれ、自ずとデザイナーの重要性も高まっている。 同時にデザイナーの守備範囲も広がり、見た目を装飾するだけではなく、プロダクトの体験設計、組織仕組みづくりや経営判断に関わる部分まで、デザイナーの役割が及び始めている。 業績にインパクトを与える企業のデザイン性 それに伴い、デザイン思考などのメソッドを利用して非デザイナーでもデザイナー的なマインドセットを身につけることに注目が集まっている。 というのも、世界的に見ても企業の業績とデザインの関連性がデータとして示されている。例えば、マッキンゼーの調査でも、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が発表されている。 それもあり、経営者も投資家も、デザインオリエンテッドな企業に変換していくことが急務なのである デザインオリエンテッドな会社とは、会社の経営からプロダクトの開発に至るまで、”デザイナー”的感覚を中心に行なうという考え方。Appleのスティーブ・ジョブスは厳密にはデザイナーではないが、デザイナー的感覚を武器に、見た目や体験に至るまで細部にこだわり、Appleを成功に導いた。 今さら聞けないデザインがビジネスにこれほど重要な理由 海外スタートアップではデザイナー出身の経営者も多い その流れもあり、ジョブスに憧れ、優れたプロダクトを武器に会社を成長させている、ジョブスチルドレンとも呼ばれるサンフランシスコ界隈のスタートアップの経営者の多くがデザイナー出身だったり、何かしらのデザインバックグラウンドを持ち合わせている。 デジタルプロダクトを通じたユーザー体験が重要になってきている現代においては、商品の差別化要因はどんどん少なくなり、最後に残されたのがデザイン性とブランド力になってきているのが理由だろう。 この流れはアメリカだけではなく、取締役の多くがデザイン経験を持つサムスンや、海外から多くのデザイナーを採用しているアリババなど、韓国や中国の会社の多くもその流れを踏襲してる。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか そもそもデザインって? ではなぜそんなに”デザイン”や”デザイナー”という言葉をもてはやすのか?そもそも”デザイン”にはどのような意味が含まれているのであろうか? 恐らくその定義は時代と共に大きく変化し、冒頭の図のように、最近では見た目を美しくする役割のDesignからデザイン思考を活用してビジネスやプロダクト領域までを大きくカバーする広義のDESIGNにその定義が広がっている。 それを踏まえてデザインとは?を一言で表現すると… DESIGNとは問題解決を行なうためのメソッドであり、ユーザー視点から「どう見えるか」よりも「どう機能するか」を主軸にしたプロセス。 そう。デザインは結果的アウトプットよりもそのプロセスに比重がおかれるべきである。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである 増え続ける多様なデザイナー職 そんな中で、さまざまな役職に “デザイナー” のキーワードが取り付けられ始めている。 例えば、人事担当者はキャリアデザイン。経営企画はビジネスデザイン。顧客サポートはカスタマーサクセスデザイナーなど、いろんなデザイン、なんでもデザインがどんどん広がっているイメージ。 新しいデザイナー職例: 組織デザイナー ビジネスデザイナー サービスデザイナー デザインエンジニア ビヘイビアデザイナー カスタマーサクセスデザイナー ブランドエクスペリエンスデザイナー ここまで来ると、デザインが重要になったことで、その概念を幅広いフィールドで活用している。あらゆる役割でデザイナー的感覚が求められているのかな?と感じる。 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職 デザイナーとエンジニアの境目もなくなってきている ちなみに、これは数年前から始まっていることだが、デジタルプロダクトにおいては、デザイナーとエンジニアの境目がかなり薄くなってきている。 どう見せるかに加え、どう動くか、そしてどのような体験を提供するかが重要になっている時代においては、自分がデザインしたものを動かすところまでが一つの役割として捉えるチームも増えている。 ちなみに、2010年の時点で、元Adobe Type KitのクリエイティブディレクターのElliot Jay Stocksは下記のようなツイートを行った。 “2010年にもなって、自分のデザインをコード出来ないWebデザイナーがいるのにはビビった” 上記の内容で彼が言いたかったのは、デザイナーたるもの自分でデザインした内容は自分で動かしてこそ仕事だろ、という事。ページのレイアウトや色づけだけをして、”あとはコーダーまかせ”はあまりにも身勝手過ぎる。 静止画だけ描いてWebデザイナー気取るなよ、動かすとこまでが遠足だろ、と言いたいのだろう。 そうなってくるとデザイナーとエンジニアの境目がどんどんなくなっていくのは当然だろう。デザイナーは動かすし、エンジニアは設計もする。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる デザイナーの役割が重要になり過ぎて… ここまでデザイナーの役割が重要になり、組織全体に広がり始めてくるると、もしかしたら、デザイナーが専門職という概念自体が変化する可能性も高いと考えられる。 逆にいうと、スタッフみんなにデザイナー的視点とマインドセットが求められる時代になってくるのかもしれない。また、スピードとアウトプットの変化を考えると、どんな役職でもサクッとスケッチをしたり、ビジュアルで説明するスキルは避けて通れない。 まさに、全員野球ならぬ、全員デザインの感じになり、ポジションや役職にかかわらず、デザインの下地があることが全ての仕事の必須事項になってくる。これはまるでデザイン技術が特別なものではなく、どんどん「普通」になってきているからかもしれない。 そうなると、もしかしたらデザイナーという専門的役職が消滅する可能性すら出てくる。タイピスト、エレベーダーガール、電話オペレーターなど、時代と共に一般の人がこなせるようになったために無くなった職種の様に。 フリーランスWebデザイナーという職業も無くなる4つの理由 Web制作会社はそろそろ存続するのが厳しくなる デザインの重要性が高まり、誰もが基本的なデザインスキルを身につけようとし始めた結果、デザイン会社の優位性も自ずと下がってくる。これはアメリカだと数年前から既に始まっており、多くのWeb制作会社が廃業を余儀なくされている。 運が良ければ大手に買収され、さもなければ大幅縮小やフリーランス型にその体系を変化させる。もしくは、それ以外のユニークさを備えることで、Web制作会社からの脱皮を図り、生き残りをかけている会社も多い。 デザインがコモディティー化されてきた一つの結果だろう。 アメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由 さまざまなシーンで役立つデザインスキル では、なぜそこまでデザイナー的マインドセットや基本的なデザインスキルがここまで重要になってきているのだろうか?おそらく、役職にかかわらず、基本的なデザインスキルを身につけるだけで、実に多くのシーンにおいてアドバンテージがある。例えば: 思考がクリアになる 第一印象が良くなる 仕事のスピードが上がる SNSでフォロワーが増える 相手の気持ちが理解できる 未来予想ができる様になる 新しい発想をしやすくなる コミュニケーション上手になる などなど。実際に、我々が提供しているワークショップでも、新規事業を作ったり、既存事業の成長を達成させるための「下地」として、最低限のデザインに関して学んでいただいている。 みんなデザインマインドセットを身につけよう! そんな感じでデザイナーという職種は専門的な役割だけではなく、異なる役職にもどんどん溶けていくようになるだろう。逆に考えると、どんな仕事や役割があっても、今後はデザイナー的マインドセットが求められる。 それは全く特殊なことではなく、その考え方とプロセスを身につけることさえできれば、仕事や生活の中でどんどん活用することができる様になる。 今後は、読み、書き、デザインが一般的なスキルセットになっていく可能性もある。自分は営業だから、経理だから、主婦だから、という言い訳は捨てて、皆さんもぜひデザイナーとしての一歩を踏み出してほしい。 We Are All Designers – btraxのカルチャーバリュー なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか?

君のプロダクトはビタミン剤か?鎮痛剤か?それとも治療薬か?

プロダクトやサービスのアイディアを考える際に最も重要とされているのが「ユーザーの課題解決に繋がるか」という点。これは、どう考えても正しい考え方な気がする。だって、そもそも課題を解決してくれないサービスなんていらないし、お金も払う気にもならない。 と、思いがち。でも現実は大きく異なる。 意外と課題を解決していないヒットサービスが多い 現在大ヒットしているプロダクトのその多くが、実は元々あった課題の解決をしていないのだ。まさかと思うが、下記のようなサービスは、ユーザーのどんな課題を解決したのだろうか? Facebook YouTube TikTok そう。どうしても解決してほしい課題があったわけではない。でも、使い始めたらなぜか使い続けてしまう。これらのサービスは、課題を解決していないのに、新たな習慣を通じ、ユーザーに大きな価値を生み出した。 これこそがプロダクトやサービスを考える際の大きな盲点。 特にデザイン思考のプロセスでは「まずはユーザーのペイン (課題) を見つけよ」とされるので、ついつい課題解決型一択でサービスを考えようとしてしまう。でもそうじゃ無くて良いことも多々ある。 誰にでもわかるデザイン思考の基本 スタートアップ界隈ではビタミン剤、鎮痛剤、治療薬と呼ばれることも この、具体的な課題を解決しないタイプのプロダクトの種類を「ビタミン剤」と呼ぶことがある。特にスタートアップ系の人たちには馴染みのある表現。 それに対してユーザーの具体的な課題解決に繋がるサービスを「鎮痛剤」。問題自体を無くしてしまうようなプロダクトの種類を「治療薬」と表現されたりする。 では、それぞれの特徴を見ていこう。 Vitamin – ビタミン剤 これといった課題は解決してくれないけど、あれば嬉しい。でも無くても困らない (はず) のサービスの種類。 スマホに代表されるように、電話さえできれば事足りたと思われていた携帯に対して、今までに無かった習慣を生み出すことで大きな価値が生まれる。 その特性上、利用初期にはあまり大きな対価は払いたくはないと思うが、長期で使っていると手放せなくなることもある。 ビタミン剤型プロダクト例: YouTube Facebook Instagram TikTok Netflix Painkiller – 鎮痛剤 ユーザーが感じている具体的な課題 (ペイン) を解決してくれるプロダクト。多くの場合、提供側が普段から感じている不都合や不便を解決するために始めることも多い。 以前より感じていた課題が比較的短期間で解決されやすいので、プロダクトスの具体的な価値が伝わりやすく、ユーザーの獲得もしやすい。そして、解決する課題の大きさに比例した対価が見込める。 その一方で、同じ課題を解決しようとするサービスが乱立しやすく、競争が激化したり、すでに類似サービスが存在してたりしがち。 鎮痛剤型プロダクト例: Slack Uber Eats Zoom Salesforce Cure – 治療薬 問題の存在自体を無くすようなプロダクトは治療薬型と呼ばれる。痛みを和らげたり、感じなくさせるわけではなく、痛みの原因を消し去ってくれる素晴らしいタイプ。 根本的な解決になるので、かなり説得力が高いプロダクト。その一方で、そんなに凄いことはなかなか作れない。また、特殊なニーズを解決することも多く、ニッチになりがちでもある。 そして、一回解決してしまうと必要がなくなるので、継続的なビジネスモデルとしてスケールしづらい事もある。 治療薬型プロダクト例: レーシック手術 結婚相談所 どこでもドア 「鎮痛剤はビタミン剤よりもヒットしやすい」は大きな間違い 冒頭でも触れたが、感覚的にどう考えても鎮痛剤型の方がビタミン剤型よりもわかりやすく、ヒットしやすいと感じる。 健康状態を少し改善してくれそうなビタミン剤やサプリよりも、現在感じている大きな痛みを消し去ってくれる鎮痛剤の方がニーズが大きい、という理論だ。 実際に、“Sell painkillers, not vitamins” (ビタミン剤ではなく鎮痛剤を売れ) という表現があるぐらい、ビジネスにおいては、顧客の課題解決を行うのがセオリー。 しかし、実はこの理論と現実には、大きなギャップがある。 ヒットサービスに重要なのは “革新的アイディア” ではない!? 鎮痛剤からビタミン剤に移行したNetflixの事例 むしろ、鎮痛剤から始まって現在はビタミン剤的な存在になり、ユーザーを夢中にしているようなサービスすら存在する。例えばNetflix. 創業当初は郵送によるDVDレンタルを提供するサービスだった Netflix. 既存のレンタル店によるレンタル期間と延滞料に不満 (ペイン) を持つユーザーのために、レンタル期間と延滞料なしのサービスを提供。一回に借りられるDVDの枚数を制限することで実現したモデル。 まさにユーザーの課題を和らげるペインキラーだった。 その後ストリーミング型のサービスを追加し、少しずつオリジナルコンテンツを増やし、現在のモデルに進化した。そして、元々あったビデオレンタル店のほとんどが倒産してしまったため、当初のユーザーの課題自体が消滅。 現在のNetflix は完全にビタミン剤的存在になっている。 人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント ちなみにゲーム系は? では、ヒット作品が多く存在しているゲーム系のサービスはどのタイプなのだろうか?実は、上記のどれでもなく「キャンディー」と呼ばれたりする。 そう、体に良い効果はないが、甘くて美味しい。ついつい食べちゃう感じ。 意外と多いアイディア出しの落とし穴 このように、一見ロジカルだと思われる「課題解決型」サービスであるが、必ずしもそれだけに固執する必要はない。たとえそれが既存の課題を解決していなかったとしても、ユーザーに新しい習慣を提案し、夢中になる内容であれば、大ヒットも十分に見込むことが可能である。 また、似たようなサービスであっても、後発で成功している例もあることからもわかる通り、サービス作りにおけるアイディア出しは実に奥が深い。 後発サービスが勝つための5つのポイント 無料起業家育成プログラムを提供中! btraxでは、今回紹介したスタートアップ型のプロダクト作りを含む起業家育成プログラムを福岡市と共に提供しています。 参加は完全無料。参加資格は、福岡市に住んでる、働いている、もしくは今後福岡市に移住する可能性のある人たち。プログラム自体はオンラインで行うので、どこからでも参加可能です。 こんな素敵なプログラム – Global Challenge Startup Team Fukuoka – の詳細はこちらから。

人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント

物が溢れている現代において、プロダクトの魅力だけで差別化を図るのはかなり難しくなってきている。見た目や性能の良さだけでは、消費者の心を掴むことはできない。 それは同時に良いものを作れば売れる時代の終焉であり、品質以外の “何か” がないと企業は生き残っていけない時代の始まりでもある。 その “何か” はブランド力であり、ストーリーであると考えられる。ネット上に偽物が氾濫している今日では、広告やキャンペーンなどの “売るため” のブランド戦略よりも、よりリアルな物語を包み隠さず伝え、ユーザーに共感してもらう方法が求められる。 ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由 自分たちのルーツを語り夢を与えるNETFLIX 先日、有料ネット配信サービスの大手であるNETFLIXがとあるビルボードを展示した。通常は広告の掲示に利用されるビルボードに表示されたのは「夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!」の文章。 そう、今でこそオンラインで動画を視ることが一般的だが、NETFLIXが創業した1997年当時はネット回線スピードの問題もあり、多くの人々はDVDをレンタルして観ていた。そこでNETFLIXはオンラインでDVDをオーダー、郵送するサービスを開始。 今から考えるとかなりベタなビジネスだが、その後少しずつストリーム配信を開始し、現在のモデルに辿り着いた。その過程で、米国DVDレンタル大手のBlockbusterに買収されそうになるが、最終的にはBlockbusterの方が倒産した。 このストーリーは、どんな広告よりもパワフルに人々の心に響く。特に力強いメッセージを添えると。 正しいブランドストーリーの伝え方 どのようにしたらこんなにも素晴らしいストーリーを伝え、ブランディングにつなげることができるのだろうか? コンテンツを作成したからといって、効果的にストーリーを伝えられているとは限らない。そこには必ず外してはいけないポイントがある。 しかし、まだまだ多くのブランドは「質より量」という考え方に陥っており、製品・性能中心のコンテンツを作っても、実際には結びつかないのが現状である。 我々はこれまで数百社のグローバルブランドに対してブランディングサービスを提供してきた。その経験を元に、今回は、インパクトのあるブランドストーリーを伝えるためのヒントを紹介する。 下記のプロセスを活用して、より興味深く、魅力的で、記憶に残るストーリーを伝えてみよう。 優れたブランドストーリーの5つのポイント まずは、心に響くブランドストーリーを作り出すためのポイントを紹介する。受け取り手がそのストーリーを通じて共感したり、感銘を受けたりする内容には、下記のポイントがいくつか含まれていることが多い。 1. 受け手とって意義がある内容である: 現代の世の中はコンテンツで溢れかえっている。それも、SNSなどを通じた自己満足系の物が多い。そんな状況で、本当に自分の生活に意義がある情報は意外と少ない。 これはブランドメッセージでも同じで、多くが消費者のメリットよりも「私はこんなに素晴らしい」という自己中な内容ばかり。 優れたブランドストーリーの第一歩は、相手のメリットを最優先に考えた意義のある内容を考えることから始まる。 2. パーソナルな内容である: ブランドストーリーには複数の種類がある。有益な情報を配信したり、ビジュアルでインパクトを与えたり。そんな中でも、より受け手の共感を得やすいのが、パーソナルな内容。 言い換えると、それを受け取った人が自分を投影できるようなタイプのストーリーである。例えば、大成功しているような企業の創始者が実は自分以上に苦労していたと知ったらどうだろう?自分ももっと頑張んなきゃ、と共感してしまう。 アリババ創始者ジャック・マーの例: 高校受験に2回失敗 3回目の受験でやっと大学に合格 卒業後30回も就職活動に失敗 警官になろうとしたが、5人の応募者中、彼だけが断られる KFCが中国に来た際に24人がスタッフに応募し、23人が合格。彼だけが断られる ハーバード大学に10回入学を断られる アリババで成功するまで40社以上の企業を興し、いずれも失敗 アリババ創業者 ジャック・マー 成功への10の秘訣 3. エモーショナルである 人間はロジックよりも感情で判断する生き物。素晴らしいブランドストーリーは心に響く。当然だがストーリー自体がかなりエモい。 これが得意なのがNikeだろう。去年のBLMムーブメントよりもかなり前に、人種差別とそれに立ち向かう選手を起用したストーリーを発信した。直後にはかなり物議を醸し、炎上もしたが、長期的には売り上げも株価も上昇し、ファンの獲得に成功した。 一人の男が4年前に放ったメッセージが今、世界を動かし始めた 4. 出来るだけシンプルにわかりやすく ブランドストーリーを考える際に最も陥りがちな間違いが、複雑にしすぎること。デザインと同じく、メッセージもシンプルな方が伝わりやすい。 ストーリーの場合は、可能な限り登場人物は一人に絞り、提示する課題も一つ。そうすることで短時間で物語が伝わりやすくなる。 例えばこの写真を見るだけでもAmazonのストーリーが伝わってくる。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 5. オリジナルであること ありがちなブランドキャンペーンの問題点は、それが他のブランドであっても違和感がないこと。そう、受け手を感動させるストーリーはよく考えられている分、どうしても「ありがち」な内容になりがち。 そこで、ぜひ自分のブランドにしかないオリジナルな内容の追求をしてもらいたい。 自動車を販売したことのない会社がF1に挑戦し、見事に優勝を成し遂げた。それだけでもHONDAのThe Power of Dreamsの凄さが伝わってくる。どんな作り込まれたキャンペーンよりも説得力がある。 スーパーカブとコンコルドから学ぶイノベーションの真髄とは 複数の要素を含めるとよりパワフルに さて冒頭のNETFLIX のビルボードであるが、これが素晴らしいのは上記の五つのポイントを全て網羅しているから。自ずと下記のツイートも多くの人々の心を掴んでいる。 “夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!” っていうNETFLIXのビルボード。最高だね。 pic.twitter.com/Sm8UmlcHZd — Brandon K. Hill | CEO of btrax (@BrandonKHill) September 30, 2021 この続きはオンラインイベントで さて、ブランドストーリーに関しての、ほんの「入り口」部分を紹介したが、実際のブランド作りに関しての詳しい内容や、事例を下記のイベントにてYAMAHA クリエイティブ本部長 / ブランド委員会委員長の長屋さんとお話しします。 参加無料なのでぜひ登録ください。

ブランドストーリーが日本企業にとって重要な理由

先日、総務省のキャリア官僚を辞してAmazonのシアトル本社で働いている竹崎孝二さんのインタビュー記事「日本は技術があっても、ビジネスで負けてしまう」元官僚が米Amazon社員になった理由 を読んだ。 そこで最も印象的だったのが下記の内容: “日本の大企業の大量生産技術などはすごく良いという評価を得ていても、意思決定のスピードが遅いことや「何を考えているのか分からない」ところ、言葉の問題など、技術の価値とは違うところで負けてしまうんです。” 引用元:「日本は技術があっても、ビジネスで負けてしまう」元官僚が米Amazon社員になった理由 – ITmediaビジネスOnline 日本企業は意思決定スピードが恐ろしく遅い そう。これまで何度も指摘されているが、日本の大企業は意思決定のスピードの遅さが現代においてはかなり致命的になっている。 一説には、実にそのスピードはシリコンバレーの企業の1/100. 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事 もう一つとても重要な指摘 そしてもう一つの大きな弱点が「何を考えているのか分からない」という部分。 これはコミュニケーションが苦手という部分と、恐らく「良い物さえ作っていれば売れる」という20世紀な考えで、ブランドやプロダクトの後ろにあるビジョンやストーリーを伝えるのが苦手であるということだろうと思う。 ストーリーが無いと誰も興味を持たない これだけネットやソーシャルメディアが普及した現代においては、企業が圧倒的な存在になるためには、プロダクトの魅力だけでは限界がある。 というか、むしろプロダクトの品質はビジネスを成功させるために最低限の要因でしかなく、ブランドの存在意義や、なぜそのプロダクトを作り出したかなどのビジョンをユーザーに理解しやすいストーリーで伝えていく必要がある。 さもなければ、他の企業が作っているプロダクトとの差別化は難しく、一気に価格競争に巻き込まれてしまう。 【日本からグローバルブランドを Part 2.】ストーリーこそがブランド価値の源泉である 正確さよりもわかりやすさを重視する時代 現代の戦略に求められるのは、正確さよりも、わかりやすさとスピード。スタッフや関係者がちゃんと理解し、速いスピードで実戦に対応しなければならないためである。 そのためには、複雑なエクセルや、コンテンツ満載のパワポよりも、ストーリーを重視した動画やピッチの方が伝わりやすい。スタートアップでデモ動画が重宝されているのもこれが理由。 シリコンバレーのテクノロジー企業では、プレゼンの際にスライドを禁止しているところも増えてきている。(もちろんエクセルは厳禁!) AppleやGoogleなどのカンファレンスでは物語を重視したプレゼンが主軸になってきている。 今さら聞けないスタートアップピッチの基本 「カタログスペック」の終焉 これがひと昔前であれば、カタログスペックの魅力である程度の人気を担保できたかもしれない。 カタログスペックとは、主に数字で表現できる商品の性能のこと。例えば、車であれば馬力とか燃費。スマホならCPUのスピードやHDのサイズ。カメラなら画素数など。 商品やサービスの魅力を語るときに、そのスペックを誇っていた時代があった。 しかし、多くのプロダクトが必要十分なスペックを実装した現代では、それらの数字の重要性が下がり、それよりも「で、結局ユーザーに何を提供してくれるの?」という部分の方が購入する際の重要なファクターになっている。 でも、日本企業が販売しているプロダクト、特にハードウェア系になってくるとスペック、ソフトウェアだと機能の多さを全面に打ち出しているケースが少なくない。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 むしろ機能は少ない方が良い場合も 少し余談になるが、そもそも機能が多いことやスペックが高いことイコール、良いプロダクトなのだろうか? 利用するユーザーが使いこなせないレベルのスペックや、利用できる機能が多くなってくると、脳が処理しなければならない情報が増えてしまう。そうなるとハイスペックなのに使いにくいプロダクトが生まれてしまう危険性がある。 実際、ここ数年でヒットしているプロダクトやサービスのその多くが機能を “削る” 事を大きな魅力の一つとしている。 これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる ブランドにとってブランドストーリーが重要な理由 企業にとってこれまでに無いほどにブランドストーリーが重要になってきている主な理由は 広告の衰退 SNSの発展 オンライン動画の普及 スペックのピークアウト などが挙げられる。プロダクトの性能で差別化が難しくなった時代に、ブランドに残された数少ない武器の一つがストーリーだろう。 その状態を逆手にとり、優れたストーリーを通じてブランドの本質を世界に発信することができれば、後発であってもユーザーの心を掴むことが可能になる。 ストーリーの重要さが理解できる統計 Origin and Hill Holidayによる研究 によると、商品や宣伝がストーリーとセットになっている場合、消費者ははホテルの部屋から絵画まで、あらゆるタイプの商品にに多くのお金を費やすことがわかった。 同様に、ニューロエコノミストのPaul Zak氏による2014年の研究では、キャラクターを中心としたストーリーがあると、消費者は56%も多くのお金をチャリティに寄付するというデータがある。 ストーリーはブランドと消費者をつなげる架け橋 人々の “つながり” がどんどん曖昧に広がっていく現代において、ブランド消費者の関係性もどんどん変化している。 そんな時代に企業が消費者と真に繋がるためには、ブランドストーリーを語るのが効果的。 ストーリーを通じて、ブランドを効果的に人間味溢れるものとし、どんな目的で世の中に貢献するのか、どのような方法でユーザーを助けるのかを伝えることができる。 ブランドストーリーを上手に伝えることができれば、市場での優位な地位を確立することができる。 ストーリーを最重要視するApple ストーリーテリング力で世界を制したのが、Apple。時価総額2兆ドルを超えて、世界トップ企業になったAppleは、そのブランド作りにおいてストーリーテリングを最大の武器としている。 生前スティーブ・ジョブスは下記のように語っている: “世界で最も偉大な存在はストーリーテラーだろう。 ストーリーテラーはこれからの世代の人たち全体のビジョン、価値観、そして進むべき方向を示す存在である。” 確かに、ジョブスのプレゼンを前にすると10万円以上するiPhoneもなぜか安いな、と感じるし、Appleというブランド、ひいては企業の価値を何十倍にも魅力的に伝える威力があった。 一方、現在の日本企業でストーリーを世界に発することができるトップ経営者はかなり限られている気がする。 Appleを2兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 ストーリーだけで魅力を伝えるアップルウォッチのPV このストーリーを重視するジョブスのスタイルはその後のAppleにも踏襲され、先日のイベントで公開された新型アップルウォッチの動画にも体現されている。 この動画では、アップルウォッチがさまざまなライフスタイルに寄り添い、ユーザーをサポートする役割を、シーンごとにストーリーで表現。 宇宙のモチーフから始まり、心の中の小宇宙で完結する。最後のAppleのロゴとWATCHを表示することで、プロダクトとユーザーを繋げている。そこにはスペックの話は一切出てきていない。 でも、観終わる頃には防水であること、音声認識ができること、衝撃に強いことなどの機能的な魅力も自然と理解されている。 グローバル市場ではブランドストーリーが必須 我々はこれまで15年以上、数百社にグローバル市場向けのブランディングサービスを提供してきた。 その経験からすると、日本市場はもとより、海外市場においては、製品や業界にかかわらず、優れたブランドストーリーを伝えることが成功の重要な鍵であると自信を持って言える。 もし、コンテンツがうまくいっていない、あるいは、もっとうまくいくはずだと思っているなら、ストーリーを面白くするものは何か、そしてなぜそれが効果的なのかを考えてみる。 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由 何故ストーリーは理解しやすいのか? そもそも、なぜストーリーにすると伝わりやすいのか? その秘密を探っていこう。 我々は小さい頃から、昔話や童話など、何かしらの物語を聞いて育ってきた。大人になっても映画やドラマ、アニメなどを通じて情報を獲得し続けている。 それにより人間の脳は無味簡素な数字やデータよりも、物語の方が理解しやすいし、記憶に残りやすい。 人間の脳は良いストーリーに物理的に反応するという研究結果もある。 優れた物語は、脳を刺激してコルチゾール(ストレス化学物質)やオキシトシン(快感化学物質)を放出させる。ホラー映画を見ているときに不安になったり、本の最後に恋人たちがやっと結ばれたときに嬉しくなったりするのはこのため。 脳にとってストーリーは大好物なのだ。 SNS系のサービスがここまで大ヒットした理由もそこにあるだろう。文章でも、画像でも、動画でも、世界中の人たちが自分たちのストーリーをアップし、閲覧している。実際、インスタの人気機能は”ストーリー”と名付けられている。 みんな大好きディズニーにも「アイディアをストーリーにせよ」という社内戒律があるらしい。 ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは 大切なのはブランドのコアストーリー まず重要になってくるのは、動画や画像といったコンテンツを作る前に、一度ブランドのコアストーリーをしっかりと押さえておくこと。 自分たちがなぜ存在しているのか?その役割は?どんな存在でいたいのか?どんなキャラなのか?などなど、ブランドコアを作り出すために、さまざまな角度からコアストーリーを紡ぎ出していく。 優れたブランドストーリー事例 それでは具体的にストーリーを上手に活用し、ブランド構築を行った事例をいくつかみてみよう。 The Northface: 過酷なチャレンジへのサポート ノースフェイスは、カリフォルニア州サンフランシスコ発のアウトドアブランドである。日本でも人気の高いこのブランドの名前は、ヨセミテ国立公園にあるハーフドームの “北側” を意味し、ロゴもその形をモチーフにしている。 ブランドコンセプトの裏には、ハーフドームを登る際に最も過酷とされる北側ルートにちなみ、どんな過酷な状況でも果敢にチャレンジする人たちをサポートする存在である。というストーリーが存在する。 そしてブランドコピーは “Never Stop Exploring (冒険をやめるな)” […]

UXデザイナーが持つべき7つのソフトスキル

UXデザイナーを採用・評価する際に、コアとなるデザインスキルだけではなく、それ以外のソフトスキルが非常に重要だと感じることが多い。
というのも、現代のデザイナー職においては、職人的に一人で作業をすることよりも、チームの一員としてプロジェクトを成功に導くために、”デザインをする” 以外の役割が増えている。だから自ずと、デザイン以外のスキルも求められる。
現代のデザイナーの仕事とは?
そう。デザイナーという仕事の内容は時代とともに変化し、ここ数年ではビジネスとの連動、エンジニアと…

UXデザイナーが持つべき7つのソフトスキル

UXデザイナーを採用・評価する際に、コアとなるデザインスキルだけではなく、それ以外のソフトスキルが非常に重要だと感じることが多い。
というのも、現代のデザイナー職においては、職人的に一人で作業をすることよりも、チームの一員としてプロジェクトを成功に導くために、”デザインをする” 以外の役割が増えている。だから自ずと、デザイン以外のスキルも求められる。
現代のデザイナーの仕事とは?
そう。デザイナーという仕事の内容は時代とともに変化し、ここ数年ではビジネスとの連動、エンジニアと…

初心者でもわかるスタートアップの基本

「スタートアップ」という言葉が日本でも随分と浸透してきた。スタートアップ企業のテレビCMや起業家のメディア露出も広がったことで、一般的な認知度も高まっているだろう。ただ、そこが問題だ。よくわからないのに知ったかで語る人が増えてるから。 意外と知られていないスタートアップの現状 特に日本では、“ベンチャー企業”と混合されたり、その成長モデルに関しての誤解、投資と融資の違い、起業家に対しての誤ったイメージなど、基本的な内容が理解されていないことも多い。 今回は、スタートアップに関する基本的な内容を一気にまとめてみた。これを読めば今日からスタートアップに関しての話にドヤ顔で参加することができるだろう。 スタートアップとは? そもそもスタートアップってどんな企業?という基本中の基本のような問いから始めてみよう。何かカッコ良い響きがあって、テクノロジーっぽい雰囲気もあるが、実際の定義は? スタートアップを一言で表現すると、 新しいビジネスモデルを開発し、ごく短時間のうちに急激な成長とエクジットを狙う事で一獲千金を狙う人々の一時的な集合体 である。 参考: ベンチャー企業とスタートアップの違い スタートアップとベンチャーは同じ? そもそも、日本で長らく利用されてきた “ベンチャー企業” の定義と、上記のスタートアップの定義を照らし合わせてみると、スタートアップ型のベンチャー企業もあれば、そうでないタイプのベンチャー企業があることがわかる。 無理に急成長を目指さずに、しっかりと利益を出しながら成長する企業はベンチャー企業の中でもスタートアップの定義には該当しない。 参考: スタートアップと中小企業 (スモールビジネス) との違い スタートアップ 成功への主なプロセス スタートアップの定義がはっきりしたところで、どのようにスタートアップが始まり、最終的な成功 = エクジットに辿り着くのかのプロセスをみてみよう。 1. 現在の状況への課題感と未来への構想を立てる 現状の課題を解決し、より良い未来を生み出すサービスを思いつくためには、まずは課題の発見と、未来への構想をすることから始める。 参考: 未来のビジネスを創出するための「未来予測」のすすめ 2. 現状と未来へのギャップが何かを明確にする 次にするべきは、構想したより良い未来と現在の状況にどのようなギャップがあるかを明確にすること。言い換えると、未来予想と現状課題の明確化。 参考: なぜアメリカの優秀な若者は大企業で働かないのか 3. ギャップを埋める商品・サービスを言語化する そのギャップを埋めるために必要とされる商品やサービスを構想し始める。大切なのは、その商品やサービスが課題解決と未来実現にしっかりと繋がっていること。 参考: プロダクトのサービス化を実現するための3つの方法 4. プロトタイプを作成する 机上の空論で終わらないように、できるだけ早い段階でプロトタイプを作り始める。ビジネスプランはいらないから、とりあえずユーザー向けに利用感がわかるプロトタイプを作成する。 参考: デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 5. プロトタイプを合計100人にプレゼンする どんな商品・サービスかが伝わるプロトタイプができたら、可能な限り多くの人たちに見せ、フィードバックをもらう。具体的な目標値としては100人ぐらいが妥当だろう。 参考: 今さら聞けないスタートアップピッチの基本 6. フィードバックを元に納得するまで改善する 最も重要なステップの一つがこれ。自分が愛情を込めまくったプロダクトであっても、ユーザーが愛してくれるかどうかは別問題。プレゼンやテストユーザーからのフィードバックを素直に受け止め、改善を繰り返すことでプロダクトの質が上がっていく。 参考: デザイン思考を学ぶ Part 6 – Test 効果的なフィードバックを出す秘訣 7. 共同創業者を探す ここまで来たらそろそろ一緒に夢を追いかけてくれるパートナーを探し始めよう。その際に大切なのは、同じビジョンを持っていながらも、自分には無い強みを持っているということ。Airbnbの創業者3人も、それぞれ全く異なる性格だったそう。 参考: シリコンバレーのキーパーソン3人が語る、次世代イノベーションとは 8. 法人登記を行う 実はスタートアップのプロセスにおいては、最初から法人登記をする必要はない。まずはプロダクトを作り、ユーザーからの反応を見て、ビジネスになりそうだと実感を得てから初めて行うことが多い。Appleも法人登記を行ったのは最初のプロダクトを作ってから一年以上も先のことである。 参考: Apple, Google, ディズニーも最初はこんな小さなガレージからスタートした 9. エンジェル投資家から資金調達を試みる 法人登録を行う理由の一つが外部からの投資を受けるため。しかし、通常はユーザーや顧客がいない状態では投資・融資を実現するのはかなり難易度が高い。そんな時は、ビジョンとアイディア、情熱に対して個人投資をしてくれるエンジェル投資家を狙うのが良いとされる。 参考: エンジェル投資家の裏側教えます【インタビュー】シリコンバレーのスーパーエンジェル投資家: ロン・コンウェイ 10. サービスを一般公開する ユーザーフィードバック→改善を繰り返し、プロダクトの品質がある程度高まった時点で世の中へのリリースを行う。その際には、フィードバックをくれたユーザーに対してお礼のメッセージを添えた告知を行う。 参考: 後発サービスが勝つための5つのポイント 11. 初期ユーザーに感想を聞きまくる リリースしたら、やはりユーザーからの感想を集め、プロダクトの改善につなげる。ただし、その全てを実現するのは不可能なので、自分たちのビジョンにより貢献する内容を精査しながら改善を進める。 参考: お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い <継続して使ってくれない場合> 12a. ユーザーに納得してもらえるまで改善を繰り返す 多くの場合、初期リリース直後は少し注目されたとしても、しばらくするとユーザーの伸びが鈍化する。でも焦ってはいけない。少なくても使ってくれるユーザーに連絡して、どうしたらより良いプロダクトになるかを聞きまくる。 参考: ヒットサービスに重要なのは “革新的アイディア” ではない!? <継続して使ってくれる場合> 12b. 初期ユーザーを1,000人集める プロダクトを継続的に使ってくれるユーザーが増えてきたなら、その人数が1,000になるまで頑張って増やす。1,000までユーザーが増えればネットワーク効果やクチコミを通じてよりユーザーが増えるフェーズに入ることができる。 参考: 〜企業の成長を最大化させる〜 最近話題のグロースハッカー(Growth Hacker)とは 13. […]

スーパーカブとコンコルドから学ぶイノベーションの真髄とは

突然ですが「コンコルドという飛行機を知っていますか?」 数多くのオーディエンスの前でこの質問をしてきた。そろそろこのネタも古くなってきているので、封印しようかとも思っているが…。 そして、これまで聞いた人の2/3ほどが知っていると答えた。 「では、実際に乗ったことある方はいらっしゃいますか?」 の質問に対しては累計1,000人以上に聞いた結果、たったの一人だった。これはどういうことか?そう、知名度はあっても実際のユーザーがかなり少ないということ。 ちなみに、実際に乗ったのは年配の方で、以前にIBMで働かれている時にNYからロンドンへの出張で会社が予約してくれたとのこと。 現代の旅客機の倍のスピードが出る夢の飛行機 そもそもコンコルドとは、世界最高峰の技術を集めた超音速ジェット機である。何がすごいかって、40年以上前の1976年から飛び始めたにもかかわらず、そのスピードは音速の倍のマッハ2.0。これは、現在の一般的な旅客機の2倍のスピードが出ていたことになる。 ということは、単純に考えると移動時間も半分になる。片道約10時間も掛かるサンフランシスコ – 東京が5時間程度で移動できるのだ。これは乗りたい… 飛んでさえいれば。 誰もが乗りたくなる世界最高のジェット機 コンコルドがすごいのはスピードだけではない。世界の忙しいエリートビジネスマンをターゲットに設計されたその機内は、なんと全席がファーストクラス。 専用のラウンジに加え、専属シェフによる機内食メニューや飲み物が提供される。まさに全てが世界最高。誰もが一度は乗ってみたいと思う、最高の飛行機である。いやー、乗ってみたい。 デザインもめっちゃカッコ良い そして、機体のデザインもかなり美しい。鋭いクチバシが斜めに伸びて、翼は流れるような流線型。左右のエンジンは箱型のハウジングに収められ、まさに未来的な雰囲気を醸し出している。 さぞ空力を極限まで考慮してデザインされたんだろうなー、とデザイナー目線でも憧れるプロダクトになっている。見た目も最高。 誰も求めない世界最高のプロダクト この最高で素晴らしい飛行機は、イギリスとフランスが共同開発。両国からの大きな期待と優秀な人員、そして多額の予算がつぎ込まれた。 そして世界最高の技術とデザイン、顧客サービスを提供するコンコルドは… 失敗した。 そう、これだけ最高だらけの、みんなが乗りたくなる、夢のような旅客機飛行機が今は飛んでいない。非常に残念。 なぜか? 複数の要因があったようだが、最も深刻だった理由は、 「人気がなくて、採算が合わないから」 である。 250機生産すれば採算が取れるはずだったのが、実際は20機しか製造されなかったのだ。そもそも、航空会社からのオーダー量が絶対的に少なすぎた。簡単にいうと、十分な需要がなかった。 それにより、全く採算が合わず、巨額の損失を生み出し、2003年をもって全ての路線が終了した。 誰もが利用したい夢のようなプロダクトなのになぜ?と思うかもしれない。 では、こう聞かれたらどう思うだろうか? 「航空券の値段が通常の10倍」 そう。それを聞いた瞬間、乗りたい!、って言ってたくせに実際に乗る人はごく僅か。ちなみに、僕も同じ反応。 言い換えると、そこまでの十分なユーザーニーズがなかったことで、失敗に終わった。 デザインも技術もサービスも世界最高レベル。でも誰も求めない。そんなプロダクトを作ってしまった教訓として、「コンコルド現象」は今日でも、プロダクト開発、ビジネス戦略、そして、サービスデザインにおける重要な教訓が隠されている。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 世界で最も売れた乗り物とは? このコンコルドと全く”逆” の運命をたどったプロダクトがある。日本が世界に誇る「スーパーカブ」がそれである。1958年の販売開始以来、世界中で愛されまくってる。 これまでの累計販売台数は一億台以上。世界で最も売れた乗り物としてギネスブックにも載っている。ミスチルのCD総売り上げ枚数が6,000万枚であることを考えても、その凄さは理解できるだろう。 そして、スーパーカブに関しても冒頭と同じ質問を1,000人以上に投げかけたところ、ほぼ100%の人がその存在を知っており、過半数の人が実際に乗ったことがあると答えた。 知名度、ユーザー数ともにバツグンに高い。 コンコルドと真逆のプロダクト スーパーカブが何がすごいかって、テクノロジー的には全然すごくないところ。エンジンは50ccで非力だし、速いスピードが出るわけでもない。特筆すべき斬新なデザインが施されているわけでもない。 でもそこが良い。 むしろコンコルドが達成しようとしていた「世界最高峰のなになに」を追い求めなかったことが素晴らしい。 それにもかかわらず世界最高レベルでユーザーに愛されている。 その素晴らしさは、ディスカバリーチャンネルの番組「Greatest Ever Motorcycles」でも他のバイクを差し置いて、堂々第一位を達成している。 みんなが求めるローテクモビリティ スーパーカブは技術的に先進的なわけでもないし、高級感もない。しかし、そのローテクさには訳がある。 スーパーカブの凄さ 安い 軽い 壊れにくい 燃費が良い 片手で運転できる 扱いやすい 誰でも乗れる 構造がシンプル 長持ちする そう、全てはユーザーのニーズを最優先した結果、生み出されたスペックなのだ。言い換えると、技術やデザインよりもユーザーに喜んでもらうことを最優先した。 その結果、世界で最もユーザーフレンドリーな乗り物が生み出され、現代でも世界で売れ続けている。 テクノロジーがすごいわけではないのに、世界一革新的なバイクなのだ。 ユーザーに喜んでもらうことだけを追求 このスーパーカブの広告を見ていただきたい。発売当時のもので、左側が日本国内向け、右がアメリカ向けになる。どちらもユーザーが喜ぶプロダクトであることが伝わってくるだろう。 ソバの配達員である息子が元気で仕事をしている。おしゃれしてヨットハーバーを愛しの恋人と走り抜ける。 これをみてもわかる通り、常に主役はユーザーであり、プロダクトは主役に喜んでもらうための役割に徹している。決してスペック自慢はしない。 ちなみに、アメリカの広告には “You meet the nicest people on a Honda” のキャッチが採用されている。それまで不良のイメージの強かったバイクに対し、スーパーカブは老若男女が乗りたくなる、フレンドリーな乗り物として、バイクの概念すら塗り替えてしまったのだ。 イノベーションとはこういうことだ。 本田技術研究所が本当に研究しているのは? どのようにしたら、こんなにも素晴らしいプロダクトを生み出すことができるのだろうか? その秘密はこのプロダクトの生みの親の一言に隠されている。 スーパーカブを開発、製造したHondaの正式な社名は本田技術研究所。本田技研と呼ばれることも多い。その名前からして、さぞ技術力を追求しているんだろうと感じる。 しかし、創業者の本田 宗一郎氏は生前下記のように語っている。 「研究所は技術を研究しているのではない。”どういうものが人に好かれるか” を研究しているのです。」 え?という感じがするが、納得できる。ユーザーのニーズをとことん追求し、そのニーズに合致したプロダクトを作り出した。そして、”日本を世界へ” の夢を実現した。 デザイン思考の元ネタはIDEOでもd.schoolでもない そう、その考え方こそがデザイン思考の真髄であり、ユーザー中心デザインそのものである。 最近スタートアップを中心に持てはやされているこれらのデザイン手法の多くは、ここ数十年の間にアメリカ西海岸中心に生み出されたような雰囲気があるが、実はそれよりもっと以前から日本に存在している。 というかむしろ、戦後の日本企業のほとんどがそのマインドセットでものづくりをしてきた。 Hondaだけではなく、SONYも松下もTOYOTAも他の企業も全て、世界で大ヒットを生み出した当時の日本企業は、戦後に暮らす人々の不便の解決を最優先に、より良い生活を届けるために、デザイン思考を、ユーザー中心デザインを、リーンスタートアップを無意識のうちに採用していた。 現代のシリコンバレーで採用されているメソッドのそのほとんどが、日本企業のノウハウを体系化し、見栄え良くパッケージ化たものにすぎない。 イノベーションを生み出すマインドセットは、我々日本人のDNAに深く刻み込まれているのだ。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

スーパーカブとコンコルドから学ぶイノベーションの真髄とは

突然ですが「コンコルドという飛行機を知っていますか?」 数多くのオーディエンスの前でこの質問をしてきた。そろそろこのネタも古くなってきているので、封印しようかとも思っているが…。 そして、これまで聞いた人の2/3ほどが知っていると答えた。 「では、実際に乗ったことある方はいらっしゃいますか?」 の質問に対しては累計1,000人以上に聞いた結果、たったの一人だった。これはどういうことか?そう、知名度はあっても実際のユーザーがかなり少ないということ。 ちなみに、実際に乗ったのは年配の方で、以前にIBMで働かれている時にNYからロンドンへの出張で会社が予約してくれたとのこと。 現代の旅客機の倍のスピードが出る夢の飛行機 そもそもコンコルドとは、世界最高峰の技術を集めた超音速ジェット機である。何がすごいかって、40年以上前の1976年から飛び始めたにもかかわらず、そのスピードは音速の倍のマッハ2.0。これは、現在の一般的な旅客機の2倍のスピードが出ていたことになる。 ということは、単純に考えると移動時間も半分になる。片道約10時間も掛かるサンフランシスコ – 東京が5時間程度で移動できるのだ。これは乗りたい… 飛んでさえいれば。 誰もが乗りたくなる世界最高のジェット機 コンコルドがすごいのはスピードだけではない。世界の忙しいエリートビジネスマンをターゲットに設計されたその機内は、なんと全席がファーストクラス。 専用のラウンジに加え、専属シェフによる機内食メニューや飲み物が提供される。まさに全てが世界最高。誰もが一度は乗ってみたいと思う、最高の飛行機である。いやー、乗ってみたい。 デザインもめっちゃカッコ良い そして、機体のデザインもかなり美しい。鋭いクチバシが斜めに伸びて、翼は流れるような流線型。左右のエンジンは箱型のハウジングに収められ、まさに未来的な雰囲気を醸し出している。 さぞ空力を極限まで考慮してデザインされたんだろうなー、とデザイナー目線でも憧れるプロダクトになっている。見た目も最高。 誰も求めない世界最高のプロダクト この最高で素晴らしい飛行機は、イギリスとフランスが共同開発。両国からの大きな期待と優秀な人員、そして多額の予算がつぎ込まれた。 そして世界最高の技術とデザイン、顧客サービスを提供するコンコルドは… 失敗した。 そう、これだけ最高だらけの、みんなが乗りたくなる、夢のような旅客機飛行機が今は飛んでいない。非常に残念。 なぜか? 複数の要因があったようだが、最も深刻だった理由は、 「人気がなくて、採算が合わないから」 である。 250機生産すれば採算が取れるはずだったのが、実際は20機しか製造されなかったのだ。そもそも、航空会社からのオーダー量が絶対的に少なすぎた。簡単にいうと、十分な需要がなかった。 それにより、全く採算が合わず、巨額の損失を生み出し、2003年をもって全ての路線が終了した。 誰もが利用したい夢のようなプロダクトなのになぜ?と思うかもしれない。 では、こう聞かれたらどう思うだろうか? 「航空券の値段が通常の10倍」 そう。それを聞いた瞬間、乗りたい!、って言ってたくせに実際に乗る人はごく僅か。ちなみに、僕も同じ反応。 言い換えると、そこまでの十分なユーザーニーズがなかったことで、失敗に終わった。 デザインも技術もサービスも世界最高レベル。でも誰も求めない。そんなプロダクトを作ってしまった教訓として、「コンコルド現象」は今日でも、プロダクト開発、ビジネス戦略、そして、サービスデザインにおける重要な教訓が隠されている。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 世界で最も売れた乗り物とは? このコンコルドと全く”逆” の運命をたどったプロダクトがある。日本が世界に誇る「スーパーカブ」がそれである。1958年の販売開始以来、世界中で愛されまくってる。 これまでの累計販売台数は一億台以上。世界で最も売れた乗り物としてギネスブックにも載っている。ミスチルのCD総売り上げ枚数が6,000万枚であることを考えても、その凄さは理解できるだろう。 そして、スーパーカブに関しても冒頭と同じ質問を1,000人以上に投げかけたところ、ほぼ100%の人がその存在を知っており、過半数の人が実際に乗ったことがあると答えた。 知名度、ユーザー数ともにバツグンに高い。 コンコルドと真逆のプロダクト スーパーカブが何がすごいかって、テクノロジー的には全然すごくないところ。エンジンは50ccで非力だし、速いスピードが出るわけでもない。特筆すべき斬新なデザインが施されているわけでもない。 でもそこが良い。 むしろコンコルドが達成しようとしていた「世界最高峰のなになに」を追い求めなかったことが素晴らしい。 それにもかかわらず世界最高レベルでユーザーに愛されている。 その素晴らしさは、ディスカバリーチャンネルの番組「Greatest Ever Motorcycles」でも他のバイクを差し置いて、堂々第一位を達成している。 みんなが求めるローテクモビリティ スーパーカブは技術的に先進的なわけでもないし、高級感もない。しかし、そのローテクさには訳がある。 スーパーカブの凄さ 安い 軽い 壊れにくい 燃費が良い 片手で運転できる 扱いやすい 誰でも乗れる 構造がシンプル 長持ちする そう、全てはユーザーのニーズを最優先した結果、生み出されたスペックなのだ。言い換えると、技術やデザインよりもユーザーに喜んでもらうことを最優先した。 その結果、世界で最もユーザーフレンドリーな乗り物が生み出され、現代でも世界で売れ続けている。 テクノロジーがすごいわけではないのに、世界一革新的なバイクなのだ。 ユーザーに喜んでもらうことだけを追求 このスーパーカブの広告を見ていただきたい。発売当時のもので、左側が日本国内向け、右がアメリカ向けになる。どちらもユーザーが喜ぶプロダクトであることが伝わってくるだろう。 ソバの配達員である息子が元気で仕事をしている。おしゃれしてヨットハーバーを愛しの恋人と走り抜ける。 これをみてもわかる通り、常に主役はユーザーであり、プロダクトは主役に喜んでもらうための役割に徹している。決してスペック自慢はしない。 ちなみに、アメリカの広告には “You meet the nicest people on a Honda” のキャッチが採用されている。それまで不良のイメージの強かったバイクに対し、スーパーカブは老若男女が乗りたくなる、フレンドリーな乗り物として、バイクの概念すら塗り替えてしまったのだ。 イノベーションとはこういうことだ。 本田技術研究所が本当に研究しているのは? どのようにしたら、こんなにも素晴らしいプロダクトを生み出すことができるのだろうか? その秘密はこのプロダクトの生みの親の一言に隠されている。 スーパーカブを開発、製造したHondaの正式な社名は本田技術研究所。本田技研と呼ばれることも多い。その名前からして、さぞ技術力を追求しているんだろうと感じる。 しかし、創業者の本田 宗一郎氏は生前下記のように語っている。 「研究所は技術を研究しているのではない。”どういうものが人に好かれるか” を研究しているのです。」 え?という感じがするが、納得できる。ユーザーのニーズをとことん追求し、そのニーズに合致したプロダクトを作り出した。そして、”日本を世界へ” の夢を実現した。 デザイン思考の元ネタはIDEOでもd.schoolでもない そう、その考え方こそがデザイン思考の真髄であり、ユーザー中心デザインそのものである。 最近スタートアップを中心に持てはやされているこれらのデザイン手法の多くは、ここ数十年の間にアメリカ西海岸中心に生み出されたような雰囲気があるが、実はそれよりもっと以前から日本に存在している。 というかむしろ、戦後の日本企業のほとんどがそのマインドセットでものづくりをしてきた。 Hondaだけではなく、SONYも松下もTOYOTAも他の企業も全て、世界で大ヒットを生み出した当時の日本企業は、戦後に暮らす人々の不便の解決を最優先に、より良い生活を届けるために、デザイン思考を、ユーザー中心デザインを、リーンスタートアップを無意識のうちに採用していた。 現代のシリコンバレーで採用されているメソッドのそのほとんどが、日本企業のノウハウを体系化し、見栄え良くパッケージ化たものにすぎない。 イノベーションを生み出すマインドセットは、我々日本人のDNAに深く刻み込まれているのだ。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

消費者の目線で表現したブランドコピー

ブランディングに於いてキャッチコピーは非常に重要な要素の一つである。適切なキャッチコピーやスローガンを通じて、そのブランドステイトメントを端的な言葉でつたえる事が出来れば、正しいブランドイメージ構築に繋がる。
その一方で、必ずしもブランド側から発信するメッセージと、消費者が感じる実際のイメージが合致しない場合も多い。そんなブランドを集めて、消費者が持つイメージを正直におもしろおかしく紹介したサイト”Honest Slogans“を発見。
消費者目線でぶっちゃけキャッチコピー
実際のロゴに対して、消費…

海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由

年間10億枚。 これは日本国内で新品のアパレル商品が廃棄される量である。実に4枚に1枚の割合。賞味期限の切れた食品のごとく、多くの商品が誰にも着られないまま、廃棄されていく。 世界全体を見るとそのスケールは甚大で、年間1,700万トン以上に及ぶ繊維製品が廃棄されている。これは、平均で消費者一人につき年間で合計31.75kgの服を捨てている換算。そしてその廃棄量は年々増えている。 2兆5千億ドル規模のファッション業界の闇 この結果は、利益を追求したことによる弊害によるもの。大量に生産することでユニット単位の生産コストを下げ、なるべく安く消費者に届ける。その一方で、大量に売れ残った商品は廃棄するしかないという状況。 また、速いスピードで多くの製品を生産するために、劣悪な労働環境と自然環境や動物に対して大きな犠牲を払っている。そのような状況に対して、よりサステイナブルな仕組みに注目が集まってきている。 安いものを大量に生産する = 大きな犠牲が発生 安い労働力の酷使 大量廃棄 環境破壊 明るみに出たファッション業界における非人道的な労働環境 サステイナビリティ―への関心を高めたきっかけとなった事件がある。2013年4月24日、バングラディッシュ。グローバルファッションブランドの生産を請け負っている多数の工場が入居していた『Rana Plaza』が倒壊した。 倒壊の数日前に建物に亀裂が入っていたことが確認されていながらも、工場の経営者たちは従業員に労働を強要。その結果、1,100人以上が命を落とし、2,500人以上が怪我を負うという、ファッション業界最悪の事故となった。 商品を低価格で提供するため、または企業の利益を拡大するため、多くのファッションブランドが開発途上国の工場にて生産を行っている。 下請け工場で働く労働者の多くは、若い女性や子どもたちで、彼女たちは驚くほど低賃金で、長時間、危険で暴力が蔓延る非人道的な労働環境で働いていることが、この事故によって明るみに出た。 いまブランドが捉えるべきは“ユーザーの意識変化” – サステナビリティーが重要視される理由とは 現状を3つの打開する方法 この状況は、大量廃棄による膨大な無駄を生み出してるだけではなく、過酷な労働環境による人権侵害、水や化学薬品の大量使用による環境破壊などを生み出している。そろそろ限界が訪れている。言い換えると、これまでのアパレル業界の仕組みは、持続不可能 (アンサステイナブル) なビジネスモデルだ。 そんな状況を打開する方法として、海外を中心に下記の動きが進み始めている。 必要以上に買わない 一つのアイテムを長く使い続ける リユーズ (中古) 市場を活用する より多くの人々がモノを買わない方向に そのようなファンション業界を取り巻く多くの”負”の要素がどんどん表面化してきていることもあり、消費者の意識にも変化が起こり始めている。 GlobeScan社が2020年10月に実施した27,000人を対象としたグローバル調査によると、77%の消費者が耐久性の高い製品に興味を持ち、53%が購入した製品のリユース、修理、リサイクルをブランドに依頼することに興味を持っていることがわかった。 これは、半数以上の人がモノをあまり買わないことに関心があるという結果になってる。 これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる あえて新品よりもユーズド (中古品) を買う人が増加 そんな状況下で、ジェフリーズ社のレポートによると、米国では中古市場が年間300億ドル近くの売上を生み出しており、オンライン再販が牽引し、今後10年間で米国のアパレル市場全体に占める中古市場の割合が、10%台半ばにまで拡大すると予想している。 Z世代の消費者はすでにこのレベルに達しているとのこと。 アパレル市場全体と比較しても、リセールの成長は驚異的。この市場は、多様性、価値、持続可能性を求める消費者の嗜好に対応しており、今後も高い成長が見込まれている。 Z世代も注目する新しい購買パターン 環境への配慮を重視するZ世代の間では、「節約」の人気が高まってる。 パイパー・サンドラーが年2回発表するこの世代の消費動向に関するレポートによると、今年の春に行った10代の若者が好きなブランドのランキングでは、スリフトショップ系や委託販売系が10位内にランクインしてる。この結果は、10代の若者が中古市場に慣れ親しんでいるためで、前年の23位から上昇した結果となった。 18〜24歳の3人に1人が毎年中古品を購入すると予想されており、リセール業界で最も重要な世代なっている。 Z世代の購買意識の変化 使い捨て → 再利用可能 Z世代は、服を買う前に再販価値を考慮する割合が、団塊世代に比べて165%高い。 単独ユーザー → 複数オーナー Z世代は、「アパレルの所有権は一時的なものである」と強く認識している割合が団塊世代に比べて、83%高い。 廃棄 → 再販 Z世代は、アパレル製品を再販する率が33%高い。 世界が注目するミレニアル・Z世代の最新トレンド 大量消費にNOを叫び出した3つのブランド そんな結果を意識してか、いくつかのアパレルブランドが、消費者に対して、よりものを「買わないで」のメッセージを発信し始めている。同時に、物を増やしたくないミニマリスト向けのビジネスモデルの構築も模索し始めている。 現時点で、すでにいくつかの著名ブランドがサステイナブルな仕組みへの取り組みを開始している。その中で今回は3つ紹介する。 パタゴニア リーバイス ルルレモン 中古アイテムを推奨するパタゴニア アメリカではクリスマスシーズンのBlack Fridayと呼ばれる日が、年間で最も商品が売れる時期とされている。自ずと多くのブランドが全力でキャンペーンを走らせるのだが、2011年のBlack Fridayでは、パタゴニアは大胆なキャンペーンを行った。 ニューヨーク・タイムズ紙に 「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買うな)」という広告を掲載したのだ。 これは、自分たちが作っている製品がオーガニックやリサイクル素材を使用しているかどうかにかかわらず、パタゴニアのウェアはその重量の数倍の温室効果ガスを排出し、少なくともウェアの半分に相当する廃棄物を発生させ、地球上のあらゆる場所で不足しつつある大量の真水を汲み上げている事実への認知度を広げ、人々の意識を改革するのが狙い。 2016年には、ブラックフライデーの売上の100%を環境保護の非営利団体に寄付。 さらに2019年には、ブランドの草の根活動プラットフォームである「パタゴニア・アクション・ワークス」を通じて、全寄付金と同額を環境保護団体へ寄付した。 そして2020年、パタゴニアが環境に配慮し「Buy Less, Demand More」キャンペーンを展開。このキャンペーンのコンセプトはシンプルで、下記の2つの原則に基づいている。 まず1つは、顧客になるべく購入を控えてもらうこと。そして、もう1つは、リサイクル素材や再生可能なオーガニックコットン、フェアトレードの生産方法を用いた持続可能な製品の購入を推奨すること。 このキャンペーンで最も注目すべきは、パタゴニアがウェブサイトに設置したボタンで、買い物客が新製品と中古品を簡単に比較できるようにした点。新しい「中古品を見る」ボタンをクリックすると、パタゴニアが運営する中古品のマーケットプレイス「Worn Wear」に移動する仕組みになっている。 過剰消費に警鐘を鳴らすリーバイス アメリカの大手デニムブランドのLevi Strauss & Co.は、消費者に対してできるだけ「少なく」ジーンズを買って欲しいとメッセージを発信している。 該当するリーバイスの広告キャンペーンのテーマは、 “Buy Better, Wear Longer (賢く買って、長く着よう) “ このキャンペーンでは、世界で合計80億人の消費者のために、毎年1,000億枚以上の衣服を生産しているファッション業界の過剰消費に焦点を当てている。一つの商品をなるべく長く着ることで、消費を減らすことが狙い。 リーバイス自身も、毎年60億本ものジーンズを製造している。その製造過程では、何百万リットルもの水を使用し、化学物質や温室効果ガスを環境中に放出している。自ブランドと、ファッション業界全体に対しての警鐘を鳴らしている。 リーバイス社はこれまでも、よりサステイナブルなジーンズの生産に取り組んできたが、それだけでは劇的に地球環境の改善を実現することは難しいこともあり、今回のキャンペーンは、根本的な解決策として「なるべく少なく買い、長く着る事」を消費者に提案する形になった。 上場企業として、リーバイスのこの動きが株主に対してどのように捉えられるかが注目されている。 大量生産、大量消費、大量消費を行わずに売り上げを確保するためには、製品を修理、再販し、最終的にはリサイクルするのがファッション業界の新しいビジネスモデルになるかもしれない。 リーバイスでも、以前よりこの循環的な仕組みへのシフトが進んでいる。2015年には、顧客が製品のカスタマイズや修理を行うことができる「Levi’s Tailor Shop」を立ち上げた。また、昨年10月には、顧客が中古ジーンズを売買できる再販サイト「Secondhand」を開設。 今のところ、全体の収益に占める割合はわずかだが、リーバイスはこのモデルを急速に成長させ、新製品を駆逐することを目指している。 これらの新しいアプローチは、リーバイスが過去10年間にわたって行ってきた環境負荷低減の取り組みと連動している。水の消費量が少ない素材や製造方法の開発に加えて、需要に合わせて生産時間を短縮し、過剰在庫を回避を行っている。 リセールプログラムを提供するヨガアパレルブランドのルルレモン アメリカのヨガウェアブランドであるルルレモンは、2021年5月より、店頭または郵送で使用済みのルルレモン製品を下取りに出し、ギフトカードと交換することができるプログラムを開始した。 回収した中古品は、オンラインで販売し、より安い価格で多少の着用感を気にしない人たちに提供している。下取りされた商品はすべてクリーニングされ、品質基準に満たない商品はリサイクルされる。 “Like […]

プロダクトの未来対応を実現するフューチャー・プルーフという概念

「フューチャー・プルーフ」という言葉を聞いてことはあろうだろうか?英語圏では結構頻繁に利用される単語である。意味としては、将来を予測し、将来の出来事による悪影響を最小限に抑えるための方法をデザイン・開発するプロセスのことを指す。 言い換えると、遠い将来まで価値を持ち続けることができること、つまり、そのプロダクトやビジネスモデルが陳腐化しないようにすることを意味する。 サービスデザインの領域においては、作り出すサービスやプロダクトが時代と共に消滅するのを防ぐための考え方。現時点でイノベーティブだと考えられているプロダクトでも、結構近い未来に陳腐化してしまう可能性が高いものも少なくはない。 なぜフューチャー・プルーフが重要なのか? サービスをデザインする時、ビジネスモデルを考える時、このフューチャープルーフの概念をしっかり理解し、未来対応することがとても重要になってくる。 その理由は、生み出されたサービスやプロダクトの寿命をなるべく長くし、ビジネスとしての価値を保護するのが目的である。 逆に、現時点のみ、もしくは短い時間軸だけで考えていると、リリースしても短時間で “死亡” してしまう可能性もある。 未来のビジネスを創出するための「未来予測」のすすめ ほぼ消滅したプロダクトとそろそろ消滅しそうなプロダクト 実際に時間の経過と共に陳腐化が進み、ほぼほぼその存在価値が無くなった、もしくはなくなりつつなるプロダクトを考えてみよう。 下記のプロダクトやサービスは、一時は多大なる人気がありながらも、現代では、他のソリューションの台頭により、絶滅寸前になっている。 ほぼ消滅したプロダクト ワープロ カセットテープ CDラジカセ 電報 今後なくなる可能性の高いプロダクト Fax タクシー テレビ番組 フィルムカメラ 現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション 事例1) 未来対応が全くできていなかったガラケー では、フューチャープルーフに失敗して例をいくつか見てみよう。一つ目はガラケー。恐らく多くの方が一度は使ったことがあるプロダクトだと思う。 スマホが普及し出す2010年代前までは、日本国内の携帯電話のほとんどがガラケーで、圧倒的なシェアを獲得していた。それに合わせ、各種家電メーカーがデバイスを製造、販売し、大きなモデルとなっていた。 同時に、ガラケーを取り巻く、imodeやEZ Webなどの携帯向けコンテンツや、ストラップに代表される周辺アクセサリーからの売り上げも多く、一大エコシステムが構成されていた。スマホが根こそぎ市場を破壊するまでは…。 そして、皆さんもご存知の通り、iPhoneとAndroidを中心としたスマホの普及に伴い、ガラケーのハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、周辺アクセサリーなどの業界は破壊的なダメージを受け、衰退していった。 これは、未来対応を怠った一つの良い例だろう。 iPhoneを完全否定していた日本のユーザー達 現在で60%以上のシェアを誇るiPhoneが発表された際の日本の消費者の反応がある。当時は、ガラケーが標準的な携帯電話として利用されていた時代であり、ユーザーもガラケーとiPhoneを比べたことで、全く的外れな予想をしていた。 “ほとんどiPodに電話が付いただけじゃねぇかwwwww” “これは何をするための道具なの? 音楽を聴くため?電話をするためのもの? よく分からんな” “今触ってみたけどデカすぎワロタw これ片手操作してたら落とすだろうな GPSはいいわw 持て余しそうで欲しいとは思わないが” “正直インフラ整ってる日本じゃiPhoneなんて意味無いだろ 普通に国産携帯の方が性能良い。これ買うのなんてタッチにひかれた人間か音楽ケータイ(笑)大好き 人間だけだろうねwwww” “これを持つメリットが感じられない 音楽聴きたいならiPodでいいし電話メールは携帯でいいしWEBサイトにしても最近の携帯なら見れるだろ” “文字の打ちづらさがTouch並なら絶対買わない あれで携帯として使うのは無理あるだろ” “スイーツはデコ電出来ない機種には興味なさそう” “指で操作するから斬新に見えるけど 画像を任意の方向へズリズリと動かすのってグラブ&スクロールだし、 指でスッと弾いて次の画像を表示するのはスライドショーだし、 指を開いて画像をアップにするのって単なる拡大表示だから 普通のPDAで普通にできる作業なんだよな。” 出典: iPhoneが初めて発売された時の日本の反応 しかし、日本でのiPhoneのシェアは約70%で世界1位の普及率になっている事からもわかる通り、彼らの予想は大幅に外れ、ガラケーは消滅した。 ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素 事例2) パソコンの普及で消滅したワープロ ユーザーが未来対応を教えてくれないのに加え、実はプロダクトの提供側も、しばし盲点になりがちであるのがかなり厄介。 数十年前までワープロと言われるデバイスが存在していた。正式名称はワードプロセッサーで、文字を打つことに特化したプロダクト。 パソコンが主流になってきた現在において、ワープロはアプリケーションとして取り込まれ、ワープロ自体の存在価値はほぼなくなっている。ワープロが未来の変化に対応していたかったというもう一つの例。 しかしながら、ワープロが主流の当時においては、それを予想することが難しかったようだ。そして、多くの家電メーカーが当時絶好調のワープロの生産を続けていた。その様子は、1989年に行われた下記の雑誌の関連インタビューを見てもわかる。 一般ユーザーは未来予測をしてくれない フューチャー・プルーフを実現することが難しい理由の一つが、既存のプロダクトが基準となるため、ユーザーは未来を教えてくれないところにある。これは、iPhoneに対する当初の日本ユーザーの反応を見てもわかるだろう。 ヘンリー・フォードが自動車を発明した際にも、下記のように語っている。 「もし人々に何が欲しいかと聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。」 したがって、未来に対応できるプロダクトを作るには、デザイナー達がじっくりと考えるしかない。 未来に起こる可能性のある主な変化 フューチャー・プルーフを行う際に気をつけておくべき未来に起こる可能性のある変化の種類を考えてみよう。簡単にリストしたでも、下記のような変化が考えられる。 テクノロジーの進化 (例: スマホ登場) 人々の生活の変化 (例: リーモーとワーク) デザイントレンドの変化 (例: モバイルファースト) 他企業のサービスの台頭 (例: 携帯メール vs LINE) 海外サービスの進出 (例: mixi vs Facebook) 規制の変化 (例: ガソリン車禁止) 安価な代替商品の登場 (例: ユニクロ登場) AppleやGoogleなどの有力企業が参入 (例: iTunes) これからのデザイナーが知っておくべき7つの変化 変化のスピードがどんどん速くなっている 現代においては、上記で紹介されている変化が複数が同時に発生することも少なくはない。また、恐ろしいことに、その変化のスピードはどんどん速くなっている。 こ異なる時代のプロダクトが、5,000万ユーザーを獲得するのに要した時間を紹介したい。例えば、飛行機の場合、5,000万人が利用するのには68年掛かった。自動車なら62年、電話なら50年だ。電力が5,000万人に行き渡るのにも50年かかっている。 それが、21世紀に入り、その大量のユーザーが利用するまでに掛かる時間 = […]

デザインのプロが選ぶ歴代オリンピックロゴ

数多くのチャレンジを乗り越え、2020東京オリンピックが一年遅れで開幕。 本来オリンピックは開催都市が自らの希望や発展を世界に向けて発信するのが目的。そこで造り出されるデザイン作品やアート表現も、その開催国と時代を象徴するものである。その最たるものがオリンピックのエンブレムであり、これまでの作品は素晴らしいものが多い。 しかしながら、今から思えば東京2020は、当初のエンブレムに関する盗作騒動から始まり、あまりにも沢山の出来事がありすぎた。 それらの細かい内容は一旦忘れて、今回はこれまでの歴代オリンピックの中でも、7人のデザインプロフェッショナルが選ぶ、デザインの美しいオリンピックのエンブレム・ロゴを紹介する。 1968年東京オリンピック MoMaにも展示されている亀倉 雄策氏デザインによる作品。国際的なイベントには欠かせない、一目でわかる、記憶に残る大会のシンボルである。 ゴールドで彩られた五輪の上にデザインされた大きな日の丸は、日本が大戦からの復活し、希望と革新を手に入れたことを象徴しているように感じる。 その一方で、亀倉 雄策氏によると「この大きな赤い円は、日の丸を表していると思われるかもしれませんが、実際には太陽を表現しています。大きな赤丸と五輪マークのバランスで、新鮮で鮮やかなイメージを表現したいと思いました。」とのこと。 また、このデザインは、締め切りの数時間前に作られたという伝説もある。できるだけ速いタイムで金メダルを獲得するオリンピックに相応しいストーリーだろう。 選出者: Hamish Smyth, partner, Order 1968年メキシコシティーオリンピックオリンピック アメリカ人デザイナー、ランス・ワイマンによりデザインされたのが1968年に開催されたメキシコシティー五輪。当時ワイマンはまだ29歳で、妻のネイラ、パートナーのピーター・マードックとともにニューヨークから片道切符でメキシコに飛び、2週間のコンペに参加した。 この卓越したデザインは、オリンピックの輪が数字の6と8の下側の円に有機的に融合している。モチーフには、大胆なラインや幾何学的な形、鮮やかな色を使ったメキシコの古代アートを採用。同時期にニューヨークで流行っていた、オプティカルアートを融合した。 60年代のサイケブームと古代メキシコのラインを合わせることで美しい曲線を生み出した。そして、時間がたった現代でも色褪せることのない作品が生み出された。 このロゴは、50年以上経った今でも、メキシコシティのいたるところで見ることができる。68年のオリンピックはメキシコにとって大きなイベントだったが、ワイマンのロゴはその瞬間をとらえ、その後、メキシコの愛国心を表す永遠のシンボルとなった。 選出者: Gary Hustwit – filmmaker and founder: Oh You Pretty Things, Lisa Smith – executive creative director: Jones Knowles Ritchie 1972年ミュンヘンオリンピック オトル・アイヒャーによるモダンで洗練されたデザイン。驚くべきことに当時の評判はあまり良くなく、ドイツのメディアからも批判されていた。 実はアイヒャーはこのロゴのデザインを個人的な趣味の一環でデザインしており、当初はコンペには参加しない予定だったとのこと。 このロゴは、動き、ダイナミズム、高揚感に加えて、他の多くのオリンピックデザインにはないユニークさを持っている。 オリンピックのロゴをデザインする際に重要なのは、常に周りにあるカラフルな五輪シンボルとの関係。 しかし、アイヒャーのロゴは、カラフルではなく、モノトーンで、直線と鋭角で構成されている。リングとのコントラストが卓越している。ミュンヘン市のマークは円形の中心から放射状に広がっているので、両方のデザインが見事に共鳴し合っている。 このバランスをとることは非常に難しく、アイヒャーはそれを実現することで、後のアイデンティティデザインにおける多くの革新を予見させる立体的な視覚的イリュージョンをも生み出したのである。 アイヒャーは若い頃に反ナチスの活動を行い、何人もの仲間が処刑されるのを目の当たりにし、最終的には第二次世界大戦の晩年を潜伏生活で過ごした経験を持つ。 それもあり、1972年の大会は、彼にとってもドイツにとっても、ナチスの汚点を克服するために必要なステップだった。そのため、大会のテーマは「The Happy Games」という極めて楽観的なものとなっている。 このテーマを具現化したのが、彼の表現力豊かなモダニズムを象徴するような、抽象的なマークである。ダイナミックな動きとエネルギーを持つ放射状のスパイラルロゴは、新しいドイツの国を照らし、進歩、調和、そして新たな始まりを意味していた。 選出者: Eddie Opara – partner: Pentagram, Sagi Haviv – partner: Chermayeff & Geismar & Haviv 1984年ロサンゼルスオリンピック 一見タミヤっぽく見えるこのロゴは、1984年にロサンゼルスで開催されたオリンピック向けにデザインされた。80年代のアメリカが持つ楽観的で明るいイメージが動きのある二つの星から伝わってくるこのロゴはデボラ・サスマンによる作品。 このロゴは、国の誇り、そして不屈のパワーを持つモーションラインを連想させる。 また、ロサンゼルスの空から噴射装置を背負った「ロケット人間」がスタジアムに降り立つ演出や、マスコットキャラ、ホイットニー・ヒューストンによる国歌斉唱、ジョン・ウィリアムズによるテーマソングなど、世界を驚かせたド派手な開会式の演出はこのオリンピックから始まった。 まさに「商業五輪」の原点でもある。ちなみに、2028年には再びLAでオリンピックが開催される予定である。 選出者: Jennifer Kinon – partner: Champions Design 1988年カルガリーオリンピック クリーン、アイキャッチ、シンボリック。ゲイリー・W・パンプがデザインしたこの1988年のカルガリーのロゴには多くの素晴らしいポイントが隠されている。 まず、特筆するべきしたいのが、シンボル部分。下棒の部分以外は、全て赤い円だけで構成されている。五輪のモチーフにも利用されている円形を巧みにレイアウトすることで、新しいシンボルを生み出す。これはシンプルながら、かなり考えられたデザインでもある。 その円で構成されるモチーフをエッジ部分を大胆に直線でカットし、カミソリのようなシャープなラインが形状を実現。複雑さを断ち切ることで、ダイナミックで印象深いロゴになっている。 また、今回紹介するオリンピックロゴの中で唯一の冬季五輪ということもあり、シンボル部分が雪の結晶を連想させるのも素晴らしい演出。また、クラシックな赤の色と形は、カナダの伝統的なカエデの葉のエンブレムも連想させる。 80年代とは思ないぐらいにタイムレスなデザインを実現したこのロゴにぜひ金メダルを! 選出者: Brandon K. HIll – Founder & CEO: btrax

誰にでもわかるデザイン思考の基本

デザイン思考(英: Design Thinking)とは、一言で表現すると ユーザー視点でヒットする商品やサービスを作り出すためのマインドセット である。 目的はユーザーに愛され、ヒットするプロダクトを生み出すこと。それに対する考え方とアプローチになる。それ以上でも、それ以下でもない。 なので、デザイン思考の詳細を熟知していなくても、難しい理論がわかっていなくても、その目的が果たせればOK。 初心者でもデザイン思考が一瞬で理解できる もうすでに世の中には、デザイン思考に関する本や記事が多数溢れている。でも、ここはあえて初心者にも簡単にわかりやすく、今さら知りたくなるデザイン思考の基本を短時間で理解できるように解説してみたいと思う。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決 なぜデザイン思考が注目されているのか? ヒットするサービスを生み出すのが目的であれば、必ずしもデザイン思考でなくても良いのではないか?むしろ、これまでもたくさんのヒット商品が世の中にあり、その全てがこのプロセスを活用したとは思えない。 その一方で、デジタル中心になり、時代の変化が速くなった現代においては、いち早くユーザーの潜在的ニーズを捉え、形にできた企業が成長しているのも事実。 サービスを作り出す際には、下記の図に表せられる3つのポイントの重なる部分を見つける。 以前までは、1. 技術的にできること, 2. ビジネス的に成り立つこと, 3. ユーザーが求める内容、の順番で検証していたが、技術的なハードルが下がり、多種多様なビジネスモデルが生み出されている現代では、その順番を逆に進める方がヒット商品に繋がりやすい。 それもあり、まずはユーザーの潜在ニーズを掴むことから始めるデザイン思考に注目が集まった。 デザイン思考を世界一シンプルに説明 であれば、可能な限り簡単に、短い時間で理解し、実践に移行した方が良い。理解するのに要する時間を減らし、実行する時間を増やしてもらいたい。 デザイン思考の全体像 一般的にデザイン思考として知られているのが、下記の図で表されるプロセス。 ちなみにこのプロセスは厳守する必要はなく、現場ではしょっちゅう行ったり来たりや、ステップをスキップしたりもする。なので、このプロセスはあくまで「意識する」程度で構わない。 では、それぞれのステップを紹介する。 1. Empathize: 共感・理解 デザイン思考の最初のプロセスである「Empathize (理解と共感)」では、実際にサービス・プロダクトを受け取るユーザーを理解・共感することを経て潜在的なニーズを掘り起こすことが目的。 ユーザーを客観的に見て「同情」するのではなく、深層心理をしっかり理解して共感するのが重要。 デザイン思考を学ぶ Part 2 – Empathize 理解と共感 2. Define: 定義・明確化 「Define(問題定義)」ではどのようなニーズがあるのかといった事を選定するプロセスで解決するニーズをクリアにするというのが目標。 そのニーズを考える際には、単純にユーザーが「これが欲しい」といったソリューションではなく、「この問題を解決したい」というニーズにフォーカスを当てるのが重要。例) 速い馬車ではなく、速く移動する手段 = 自動車 デザイン思考を学ぶ Part 3 – Define 問題定義 3. Ideate: アイディア発想 アイディエーションとは決して良いアイデアを出すことではなく、新しいアイデアを生み出していくクリエイティブなプロセスそのものを指す。「Ideate(アイディア発想)」の段階では、出来るだけ沢山のアイディアを出すことが最も重要になってくる。 アイディアを出すために、一般的にHMWと呼ばれる「私たちはどのようにしたら ____ を解決できるか」の提携文を利用することが多い。 アイディエーションとは?効率的に行うための5つのポイント 4. Prototype: プロトタイプ アイディアを形にすることで、文字や言葉で説明するよりも単純に、そして感覚的に理解しやすいものになる。それにより、これまで気付けなかった点に対する改善策を打ち立てやすくなる。 プロトタイプの種類は検証したい内容やメンバーの能力で様々で、ポストイットに書いたスケッチから、スライド、LP, 動くアプリ、寸劇まで、ユーザーテストに利用できれば形にこだわる必要はない。 デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 5. Test: テスト 「Test(テスト)」では、ユーザーから出来るだけ多く、そして細かいところまでフィードバックをもらうことが重要になってくる。その内容に応じて、根本的なアイディア自体や、詳細を調整していく。 ここで重要なのは、テストの目的は素直な反応を得ることで、反応がよくなかったからといって、サービスアイディアを必要とするユーザーを探し続けるのは間違い。テストの結果がかんばしくなければ、数ステップ前からやり直したり、サービスをボツにするのも全然アリ。 デザイン思考を学ぶ Part 6 – Test 効果的なフィードバックを出す秘訣 まとめ: デザイン思考をアクションに ヒット商品を生み出すためには、これまで説明してきたデザイン思考はあくまで参考として、アクションに移すこと。 アクションの部分が無ければ、全てがゼロになってしまう。どれだけ強い情熱を持っていても、検討の結果、見送ることにした場合、貴重な失敗する要因データも集まらない。 デザイン思考の利点は、うまくいかないアイディアを事前に察知することで、膨大なダメージを事前に防ぐことができる。実際の手痛い失敗例としては「コンコルドの事例」が挙げられる。 デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説

これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる

先日、WAGYUMAFIAの浜田さん (@wagyumafia) による「無意味なサービスを増やしまくる日本人」というタイトルのエントリーを読んだ。 おもてなしの国だからなのか、日本のサービスは結構色々な機能が搭載されているイメージが強い。本当にそれらは必要なのか? もしくは、”念の為” として一応搭載させたのだろうか? 自分自身は常々、現代のサービスにおいては、機能が少なければ少ないほどユーザーから長く愛される傾向になると思っている。 最高の贅沢は何もしないこと イタリアには “何もしない贅沢” という概念がある。 フィレンツェやトスカーナ地方には、気ままな日々を何もせずにゆっくりと過ごす意味の “Il Dolce Far Niente” (英語: The sweetness of doing nothing) のフレーズがある。 甘美な怠惰をゆったりと楽しむことが、最高の贅沢であるという意味。 シリコンバレー流何もしない週末 日本の100倍のスピードで、どんどん新しいものが生み出されるシリコンバレー。そこに住む人たちはどのようなライフスタイルを送っているのだろうか?さぞ毎日忙しく、分単位でスケジュールが埋まっているのだろうか? 実は、スタートアップやGAFAなどのビッグテック企業で働く人々のその多くが、週末を中心に “何もしない” 時間を確保している。 サンフランシスコ市内にある Dolores Park と呼ばれる公園は週末になると、多くの人々が集まり、一日中 “何もしていない”。 そう、何もしていない。 芝生の上に寝転がり、カリフォルニアの青空を見上げながら、ただただ、ぼーっとしている。そうすると、ココナッツの実にラム酒を入れたどリングが、どこからともなくふるまわれる。 そして、ほろ酔いのまま、また、何もしない。 そんな週末を過ごすことで、平日から始まる秒速でのプロダクト作りに集中できたりする。 人間とよりもデバイスと過ごす時間が多い時代 しかし、忙しい日々を過ごす人々にとって、何もしない時間は意外と少ない。 そこに、スマホなどのデジタルデバイスが追加され、人間の脳は限界に近いほど常にフル回転している。 Mary Meekerによる2019 Internet Trends Reportによると、平均的な大人が1日でデジタルメディアに費やす時間は、2009年の3時間から、6.3時間と2倍以上に増えている。 直接人間と接している時間が削られ、1日の大半がデバイスによって占有され始めている。 テクノロジー中毒の危険性? 人間よりもデバイスと過ごす時間が多い時代に 機能を追加する = プロダクトの価値低下 こうなってくると、ユーザー (人間) にとっては、機能がどんどん増えていくのは迷惑でしかない。なぜなら、脳が処理しなければならない情報が増えてしまうから。 一昔前なら、プランをアップグレードすればするほど機能が豊富になっていくのが当然とされていたが、現代では逆効果。 むしろ、機能が少ない方がユーザーにとってはありがたいし、価値が高いものになる。自分の時間の最大化してくれるサービスが最高、ということになる。 逆に機能が増えれば増えるほどユーザーの脳にとっては仕事が増える分、迷惑で、プロダクトとしての価値も低く感じ始める。 機能を削ったことでヒットしたプロダクト例 実際に、結構多くの商品やサービスが機能を削ったり、制限したことでより大きな価値を生み出し、ヒットしている。 iPhone – 物理ボタンを極力排除 MacBook Air – DVDドライブ排除 Google – 検索ボックスのみ Twitter – 140文字まで Instagram – 画像のみ Tiktok – 60秒までの制限 Snapchat – 消える Medium – 記事を読むことだけにフォーカス Amazon Go – レジ会計が無い GoPro – カメラから液晶を排除 Kindle – 本を読むだけのデバイス Uber – 降車時の支払いが無い 既存の自動車の機能の多くの削減したTesla Teslaがヒットしている一番の理由は、自動車としての機能の “少なさ” だろう。ユーザー視点から考えると、これまで行ってきた様々な作業が簡略化されている。 車に近づけば自動的にドアが開くし、降りて離れれば自動的に鍵が閉まる。駐車した時もパーキングブレーキを引く必要もないし、出発するのもアクセルを踏むだけ。運転が終わったら、ドアを閉めるだけ。 何かをし忘れることが極端に少ないし、パーツも減らすことができている。とにかく煩わしさが少なくなり、これは最終的に心理的安全性にも繋がる。 Teslaはスマートカーであると同時に、禅カーでもある。 Teslaにないもの: 鍵 鍵穴 エンジン 物理ボタン […]

本当に日本のブランドロゴは文字だらけなのか?

先週、各国のブランドロゴの考察として下記のポストをリリースした。主に、日本企業の多くのロゴが、数十年前から普遍的に ”文字ベース” のスタイルを利用していることが多いという内容だ。 なぜ日本のブランドは文字ベースのロゴが多いのか? ありがたいことに、この内容に関して、大変多くの反響をいただいた。その中でも、下記のような多少の批判も見られた。 前回のポストに対する暖かいご意見   日本にはシンボルマークがないかのような誤った印象操作にも腹が立つ   選び方が恣意的すぎる!たとえば Fortune 500 (からB向け企業を抜いたとしても) 基準に沿って挙げるとこういう偏りにはならないはず   恣意的な抽出そのものだよな。   タイガー魔法瓶と象印に謝れ!   なので、ロジカルに検証してみた 上記のほとんどが、それなりの真実味があると考えられる。ということで、フォローアップとして、本当にそうなのかを今回はあくまでロジカルに検証してみることにした。 ブランドランキングTopを調査 まずは日本の “代表的” なブランドということで、Interbrandが発表している Best Japan Brands 2020 Rankings におけるロゴの中から、文字ベースのもの、シンボルと文字、シンボルっぽい文字のもの、シンボルだけのもの、それぞれの数の統計を調査することから始めてみたい。 文字ベースのもの: 49% 文字とシンボルのもの: 39% シンボルっぽい文字のもの: 11% シンボルだけのもの: 1% 文字ベースのもの代表例: まずは、ロゴタイプ = 文字要素がメインになっているロゴ。100のブランド中、半分近い49%がこれに該当する。 文字とシンボルのもの代表例: 次に、ロゴシンボルとロゴタイプの両方を並べて利用しているパターン。それぞれ独立して利用することもあるが、基本的には両方並べるのが原則になっているもの。全体の39%がこれ。 シンボルっぽい文字のもの代表例: もう一つのタイプとして、基本は文字なんだけど、少しデザイン要素を入れることで、少しシンボルっぽくアレンジされているロゴ。全体の11%が該当する。 シンボル “だけ” のものはたった一個 そして最後にシンボルだけで、文字要素を一切利用していないタイプ。これは、100うち、たった一つだった。そして、このロゴはニューヨーク近代美術館 (MoMA) にも展示されているほど、世界的に有名である。 タイガーと象印は? ちなみに、冒頭の指摘の一つである “タイガー魔法瓶と象印に謝れ!” に関しても調べてみたところ、残念ながら両社とも公式ロゴはロゴシンボルとロゴタイプの両方を合わせたものなっていた。残念! 結論: やっぱ文字要素が多い 上記のデータからもわかるとおり、やはり日本企業、それも創業年数が多い企業は、共通して文字要素がメインになっているロゴを利用していることが多い。その一方で、クロネコのように、シンボルだけでも世界的に知名度が高いブランドも存在する。 例えば、味の素なんかは最近アメリカのデザイン会社と一緒にリブランディングを行い、文字ベースのものから、よりシンボルに近いロゴのスタイルに変更を行った。 また、デジタルチャンネル対応という意味で考えれば、メルカリのように、アイコンがロゴよりも知名度が高くなってきているケースも増えてきている。 参考: ロゴにおけるデザインの重要性がわかるマッシュアップ例 シンボル “だけ” のアメリカブランド では、一方でアメリカのブランドで、文字要素を廃し、シンボルだけで突き進むロゴを利用している代表例を見てみよう。その多くが、元々は文字とシンボルの両方を利用したが、ブランド認知度が高まった時点で、文字要素を外したロゴにリデザインしている。 シンボルだけになっていく理由 そもそも、文字要素を外して、シンボルだけのロゴになっていく理由をいくつか考えてみよう。 自信がある: ロゴテキストがなくても、そのブランド名を認識してもらえる自信があるから 定着している: シンボルだけで認識してもらえるほどにブランド認知度が高まったので、文字要素をドロップした デジタル対応: サイトやアプリ上で表示する際に、より可視性が高く、サイズ的にもフィットしやすいシンボルを採用した グローバルを視野に: アルファベットを読めないユーザーにも一眼で認識してもらえるようにした ユニバーサルな存在を目指す: ブランド自体が名前ではなく “記号” になることにより、より普遍的な存在になるため シンボルロゴのルーツ: 家紋 最後に、日本のブランドはシンボルだけのロゴが少ないという結果だったが、そもそもロゴシンボルのルーツの一つが日本に古くからある “家紋” である。 昔は、異なるバックグラウンドにより、文字が読めない人々も多かった。そういう人でも一眼でわかるシンボルとして家紋が発達した。また、戦での旗印としても、敵味方が一瞬でわかるといった役割もあった。 この美しい日本の家紋は、ルイヴィトンも影響を受け、ホログラムの元ネタにもなっている。そして、我々、ビートラックスのロゴも家紋から大きなインスパイアを受けている。 ブランドのシンボル化はデジタルとグローバルに対応するため 今後の世の中の流れと日本企業の成長を考えるのであれば、少しずつロゴタイプ中心のブランドロゴから、シンボルへの以降をしていくのが正しい方向だと考えられる。 近い将来、全ての企業がテクノロジー企業にならなければ生き残れないことを考えても、デジタル対応とグローバル対応は、企業のブランディングにおいても重要な要素になってくると考えられる。 参考: ライフスタイルブランドとは – その代表事例と構築方法 –

なぜ日本のブランドは文字ベースのロゴが多いのか?

ロゴデザインに関して調べていたところ、日本の大手企業のロゴのその多くが、文字ベースであることに気が付いた。 というよりも、国外のブランドの多くが、ロゴのリデザインを通じてシンボルやアイコンっぽいものに変革している。 世界的に見ると、ロゴもDXしている この大きな理由としては、デジタルサービスの普及がどんどん進むにつれて、ロゴが利用されるシーンが、紙媒体よりも、スマホやパソコンを中心としたデバイスの画面の中に移ってきているから。 もしくは、逆にTwitterやSlackのようなスタートアップなどは、フルスケールのロゴよりもアイコンだけの方が認知度が高くなっているケースも少なくない。 最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾 国別ブランドロゴの傾向【アメリカ, 日本, 中国】 リサーチを進めていくと、ブランドロゴは国によって特徴があることがわかった。そして、日本企業のロゴはアメリカや中国の企業のものと比べても、特に文字文字している。 それでは、ぞれぞれの国の代表的な企業ロゴを見てみよう。 代表的なアメリカ企業のブランドロゴ 多くの企業のロゴが事態とともにリニューアルされ、現在その多くがシンボル部分をメインに利用されている。 スターバックス、Nike, Appleに代表されるように、元々はシンボルと文字ので構成されていたロゴから、文字部分を外したケースも少なくない。 シンボルマークが中心になっている理由として、多くの企業が最初からグローバル市場をターゲットにしており、アルファベットが読めないユーザーも考慮しているからだと考えられる。 参考: これからのブランドはどんどん透明になっていく 代表的な日本企業のブランドロゴ 次に、代表的な日本企業のロゴを見てみる。多くのロゴが文字のみで構成されており、色も赤、青、黒が主流だと見て取れる。 利用フォントとしては、Panasonic, Hitachi, Toshibaに代表されるように、Helveticaのケースが多いのがわかる。 文字ベースが多い理由として考えられるのは、創業年数の長いトラディショナルな企業であること、古き良きCI (Corporate Identity) の概念が強く、ロゴのリデザインをあまり行っていないこと。 それに加え、アナログな商品を展開している企業において、ブランドのデジタルシフトが進んでいないことなどだろう。 参考: DX化の真の狙いはライフスタイルブランドへの変革にあり 代表的な中国企業のブランドロゴ もう一つの面白い観点として、中国企業のロゴの多くに動物をモチーフとしたマスコットキャラクターが利用されていることが挙げられる。 多くの場合、動物のキャラ+社名の文字になっているが、その文字は中国語である。 このスタイルが採用されている理由としては、新しい企業が多い、親しみやすさ重視、デジタルサービスが中心、国内需要をメインターゲットにしていることなどが考えられる。 参考: サンフランシスコのデザイン会社から見た中国企業の優位性 国ごとで異なるロゴのスタイル どんな企業でも今後は “アプリ化” していく このように、それぞれの企業の “出身国” によってブランドロゴのスタイルが異なることがわかる。ブランディング自体が企業のビジョンやストーリーの具現化であることからも、多くの企業が時代に合わせてロゴのリデザインを進めている。 日本でも多くの企業がDXを推進しているが、今後はどのような企業でもテクノロジー企業になっていく必要がある。極端に言うと、全ての企業がユーザーにとって “アプリ化” することが求められるだろう。 リブランディングを行う際は、その辺りの変革も加味して進めたいところだ。 最近のアイコンが似通ってきている問題

世界で活躍する女性起業家たちと、取り巻く環境への課題

さまざまな業界における男女格差が叫ばれる中で、スタートアップ起業家における女性の比率と、彼女たちを取り巻く環境にも。いまだに大きなギャップが存在する。 完全に男性社会のスタートアップ界隈 例えば、2020年におけるアメリカのスタートアップ投資の実に96%が男性CEOの会社に対して行われている*。 スタートアップ投資は圧倒的な男性優位の業界 この男女不均等は投資する側にも見られ、VCの中で決定権のある女性の割合はわずか12%*。投資会社の65%が女性パートナー (責任者) 数がゼロ* であり、また、創業パートナーが女性のVCはわずか2.4%* だ。 関連: VCに関してもっと早く知っておきたかったリアルな実態 女性も利用するサービスをおじさんだけで作る気持ち悪さ 最も重要なポイントとして、世の中の商品やサービスのその多くが男性にも、女性にも利用されるということ。もちろん女性用下着やコスメ製品のメインターゲットは女性であるが…。 なのに、デジタルサービスを中心に、多くの企業の経営陣やスタッフの大部分が男性で構成される。女性にも利用されるサービスを、男の人たちだけで考えて作り出そうとしているのは、単純に考えて非効率である。そして、多少の気持ち悪さも感じる。 ビジネスにおける女性のパフォーマンスの高さ その一方で、実はあまり知られていない事実として、経営陣に女性が30%以上いる企業は、そうではない企業よりも業績が良い*。 また、創業チームに女性がいるスタートアップはエクジットが平均1年早い。女性創業者の会社は業績が倍になる* というデータもある。 関連: シリコンバレーが注力する女性活用施策の中身とは ー時代は徹底的能力主義へ 世界的に大活躍する女性起業家を紹介 このように、シリコンバレーを中心に、起業家も投資家もスタートアップに関わる人たちは圧倒的に男性が多いと言わざるを得ないだろう。そんな状況の中でも、世界的に活躍し、ヒットサービスを生み出している女性起業家も少しずつ増えてきているので紹介したい。 Brynn Jinnett Putnam: Founder & CEO at MIRROR 学歴: Harvard University 純資産: $130m ロケーション: New York 創業年: 2016 バレリーナ出身。ジムオーナーをしている際に出産を経験し、自身が自宅でエクササイズを可能にするために考案したサービスがMIRROR。 MIRRORは、レスポンシブ・ディスプレイを活用し、ライブおよびオンデマンドのレッスンを家庭内のユーザーにストリーミングする、世界初のコネクテッド・フィットネス・システムを提供している。$1,495の導入費用プラス月々$39のサブスクリプション費用。2020年7月にルルレモンによって$500mで買収された。 関連: 米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」 Jennifer Hyman: CEO at Rent the Runway 学歴:  Harvard Business School 純資産: $300m ロケーション: New York 創業年: 2008 お姉さんが結婚式で高価なドレスを購入しなければいけないことに腹を立てていたのを見て、ハーバードビジネススクールで、当時の同級生だったJennifer Fleissと共に、Rent the Runwayのアイディアを思いつく。 同サービスでは、ユーザーが小売価格の10%でデザイナーアパレルを4-8日間レンタルをすることができる。それに加え、月々のサブスクリプションで、最大4着のアイテムをレンタルすることが可能。直近の年間売り上げは1億ドル。 関連: ヒットサービスを生み出すための3つの秘訣とそれぞれの実例 Yunha Kim: CEO & Founder of Simple Habit 学歴:  Stanford University Graduate School of Business ロケーション: San Francisco 創業年: 2016 スタンフォード在学中に国連やマッキンゼーでインターン。その後2013年に就職していた投資銀行を辞め、スマートフォンのロック画面用のアプリサービスのLocketを立ち上げ、2015年にEコマースサービスのWishに売却。その後2016年に、忙しい人のために5分間の瞑想セッションを提供するウェルネスアプリ Simple Habit をスタート。 睡眠、朝の不安、集中力の欠如などの状況に基づいた1,500以上のセッションを提供するSimple Habitは、現代のライフスタイルに合った実用的なソリューションを提供。日々のストレスを軽減するために、世界的な専門家による短い瞑想やオーディオセラピーセッションを活用している。 関連: コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 Mariya Nurislamova: CEO & Co-Founder at Scentbird 学歴:  City University of New York-Baruch College – Zicklin School of Business ロケーション: […]

ブランドの透明性を高めるための3つのステップ

ブランドがどんどん透明になっていく。これは、既存のブランディングの概念から考えてみると、かなり特殊な流れだろう。 これまでは、消費者に持って欲しいイメージを考え、それを具現化するのがブランディングプロセスにおける王道だった。 そして、ブランドイメージを確立するために、ロゴに代表されるようなビジュアル要素の作り込みと、展開が本来ブランディングの中心である。 ロゴの表示すらも控えめになってきた しかし、情報過多社会に慣れた現代人は、情報の取捨選択がうまくなった。今後はそれらしいデザインやロゴがついているだけの商品は売れなくなる。 最近ではAppleやパタゴニア、New Balanceなどの、多くの著名ブランドがロゴの表記を控えめにし始めてきた。 これは、よりブランドの透明性を高めようとする流れの一つのアウトプット結果だと考えられる。 これからのブランドはどんどん透明になっていく 現代の消費者がブランドに求める透明性の高さ なぜ消費者は透明性が高いブランドを求めるのだろうのか?その大きな理由は、現代の消費者はこれまでにないぐらいに、膨大な情報を得ているということだろう。 テレビコマーシャルに影響されてブランドの製品を購入する時代は完全に終わったと言えるだろう。一つのブランドの製品を購入する際には、ネットを通じ、その会社を積極的に調べ、共感できる場合にだけ興味を持ってもらえるようになる。 ブランドとの透明性の高さに対する消費者調査 (アメリカ) 86%の消費者が企業の透明性が以前にも増して重要になっていると感じている 85%の消費者がブランド危機の際に、その企業が透明性を保ってきた歴史があれば、その企業を支持する可能性が高いと考えている 81%の消費者がソーシャルメディアによって企業の説明責任が高まったと感じている 73%の消費者が完全な透明性が保証されている製品に対して、より高い金額を支払うと答えた 70%の消費者が購入前にブランドの活動内容を積極的に調べている * 調査元: Sproutsocial これは、ミレニアルやZ世代の若者の間で顕著で、彼らのマーケット規模が全体の40%を超えるアメリカでは、ブランディングにおける重要な戦略の一つになっている。 世界が注目するミレニアル・Z世代の最新トレンド なぜブランドは透明性を高めるのか? 多種多様なチャンネルが氾濫している現代においては、消費者に強烈なブランドイメージを与えるのが難しくなってきている。 それにより、これまでの広告やキャンペーンを通じた、ブランド発信が中心のブランディング手法では十分ではなくなった。 ブランディングもより本質的なものに そんな中で、より人々の心に残るブランドを目指し、多くのブランドが、自分たちが信じている世界観や、フィロソフィーを実際の活動やストーリーを通じて表現することで、透明性を高め、信頼を獲得する手法を取り始めている。 今後は、商品の価値を伝える本質的なブランディングが必要な時代になりつつある。 ストーリーこそがブランド価値の源泉である【日本からグローバルブランドを Part 2.】 ブランド「イメージ」→「バリュー」へ この変化を一言で表現すると、ブランドイメージからブランドバリューへの移行だろう。これまでは雰囲気重視でそのイメージを構築していたブランディング手法が、より本物志向になってきたとも言える。 表面だけを “まやかし” で取り繕うよりも、中身を見せることで、嘘偽りのない信頼性の高いブランドとしてのポジションを得ることができる。 具体的には、ブランドが持つ “コア” にある考え方と、それに紐づく活動をより消費者に共有し、共感してもらうことで、ブランドの価値 = バリューを生み出す方向にシフトし始めている。 ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 ブランドの透明性と信頼性を高めるための3つのステップ それでは、ブランドの透明性を高めるための方法を紹介する。透明性が高まれば、消費者からの信頼性も高まるので、長期的なビジネス的効果は絶大になるはず。 1. ブランド価値 (バリュー) を具現化する ブランドの透明性をより高める第一歩は、そのブランドが提供する価値 = バリューを定義することから始まる。 ブランドのバリューは、顧客に対してのメッセージングだけではなく、そこで働く人たちの行動規範や、社会に対しての存在意義の定義にもなる。 また、ブランドバリューは企業の信念でもあり、製品はその“信念”を伝えるためのツールとして考える。 例えば、Appleは、商品を売るためにMacやiPodを作ったというよりも、“伝えたいことを伝えるためにMacやiPodが必要だった” と言う方が適切なのかもしれない。 著名ブランドのバリュー例: 2. 透明性をビジュアルでデザインで体現化する 透明性を高めるブランディング手法では、最終アウトプットのビジュアルにおいても、過剰な表現を避け、より素直なデザインを採用することで、より本質的なメッセージが伝わる。 例えば、広告やサイトに掲載されている写真がストックフォトを利用している場合、「誠実」なイメージを壊している可能性もある。 少し安直な例かもしれないが、ブランドの透明性を高めたければ、パッケージングにも透明性を高さを連想させるデザインを施すのが良い。 透明性を高めたパッケージデザイン例 by Antrepo  3. 日々の活動を通じて人間味のあるストーリーを伝える そして、透明性を高めるために最も重要な最後のステップがこれ。 カスタマー・ロイヤリティーを獲得したいのであれば、本物の信頼を得るために必要な時間、努力、誠実さを積極的に行動で示す必要がある。 ブランドの社会的活動としては、CRSが真っ先に思いつくかもしれないが、実はそれだけでは十分ではない。 ブランドの歴史や、商品の製造工程、スタッフの日々の生活、ファウンダーの思いなどをできる限り正直な形で伝えていく。 そして、ブランドが社会的にどこような活動をしているのかを下記のようなチャンネルを通じて可視化する。 ソーシャルメディア 新規サービス スタッフの活動 イベント 動画 例: ハイネケン: 価値観の違う人と一緒にビールを飲もう 数あるブランドストーリーの中でも、理念を具現化し、ブランドの透明性を高めた内容の一つが、ハイネケンが作成した動画。 日本の常識だと通常ビールのCMでは、芸能人が「ゴクゴク」と音を立てながら美味しそうにビールを飲み干すというのが一般的ではないだろうか。 しかし、オランダのビール製造会社であるハイネケンは、自分たちの考えをそのまま動画として配信した。 “World’s Apart”と名付けられたこの動画広告に登場するのは3組の2人組。それぞれフェミニストと反フェミニスト、環境活動家と温暖化懐疑者、そしてトランスジェンダーとトランスフォビアといったというように、正反対の思想を持っている者同士。 最初はお互いの思想について一切知らされることなく、2人はスピーカーからの指示に従い共同作業を行っていく。次第に打ち解けていき会話が弾むようになってきた2人であったが、あるタイミングでお互いの思想がVTRによって明かされる。 先ほどまで仲良く作業をしていた相方が自分と正反対の思想を持っていると知り、困惑する2人。そこで最後の司令としてアナウンスされるのが、「この場を退場するか、ビールを飲みながら話し合いをするか、どちらかを選んでください」というもの。 最後に彼らが下した決断は話し合いをし、お互いの意見を聞き合うことだった。 まとめ: 透明性を上げるのには勇気がいる おそらく、現代はこれまでのどんな時代よりも、ブランドと消費者の関係が、人と人との関係に近づいている。自ずと、お互いの信頼関係を築く方法も、人間関係の構築と似ている。 その点において、ブランドの透明性は企業が目指すべきものというだけでなく、ビジネスの成功のための重要な要素となっている。 信頼を得ることがますます難しくなる中、ブランドは絶対的な透明性を約束することで差別化を図ることもできる。 一方で、ブランドの透明性を高めるプロセスは、表面を取り繕い、綺麗なパッケージングで包み隠すよりも、よほど勇気が求められる。 でも恐れることはない。消費者がブランドの成功や失敗を知れば知るほど、ブランドとの関係は強くなる。 企業と同様に人も同じで、ストーリーに共感したり価値を感じたりするから心が動く。心が動くからそのブランドの商品を購入したくなる。 非常に苦い薬だったが、私には必要な経験だった。- Steve Jobs

世界が注目するミレニアル・Z世代の最新トレンド

先週、日経アメリカ社主催によるオンラインイベントが開催された。タイトルは「アメリカ若年層の行動・志向特性」 このイベントでは、我々ビートラックスのUXリサーチャー、Tiffanyがゲストスピーカーとして登壇し、ミレニアル・Z世代と呼ばれる30代以下の若年層の行動パターンや価値観などについてのプレゼンを行った。 今回は、その内容を中心に、これからの消費の中心になる若者世代に関しての情報をまとめてみた。 ミレニアル・Z世代とは? 主に若者の代名詞として利用されるのが、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる名称。 それぞれの具体的な年齢層に関しては、情報元によって多少異なるものの、ここでは、ミレニアルは1981年から1991年生まれ、Z世代は、1997年から2012年生まれの世代を指す。 なぜ注目すべきなのか? この2つの世代を足すと、アメリカ全体の約42%、日本全体の30%の人口規模になり、今後の最も重要な消費者セグメントになっていくことが予想される。 したがって、企業としても、いち早くこの世代の動向を理解し、商品やサービス、そして企業のブランディングの参考にしていく必要がある。 ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 ミレミアル世代 ケーブルテレビやインターネット、携帯などと共に育った世代であり、この世代の特性として、テクノロジーへの適応能力の高さ (24%), 音楽/ポップカルチャー (11%), 自由性の高さ (7%), 賢さ (6%)が挙げられる。 ミレニアル世代は、日常生活においても、テクノロジーを上手に活用しており、74%がテクノロジーは生活を改善に役立つ、54%が友達や家族との距離を縮める事に貢献していると答えている。 また、リーマンショックと昨今のCOVID-19による2度の社会的危機を経験しているため、消費に対しては慎重になっているとの調査結果もある。 ミレニアル世代に効果的なブランド構築方法 Z世代の特徴 この世代は、真のデジタル・ネイティブと言える。これらのデジタル体験のメインターゲットとなる。アメリカにおけるZ世代の実に70%が、1日平均2時間YouTubeを視聴している。 2021年現在、Z世代は世界人口の35〜40%、近いうちに、アメリカ市場の40%以上を占める世代になると予想されている。 若い頃からインターネットやソーシャルシステム、オンラインコミュニケーションに広く触れてきた世代である。 アメリカの総消費40%を占めるZ世代について押さえるべき5つの特徴 番外編: サブカテゴリー 実は上記のミレニアルとZ世代のまたその中にも、細かな区分をする事もある。 例えば、1980-85年の間に生まれた人たちをジェリアトリック・ミレニアルと呼んだり、Z世代の中でも、90年代後半から2000年代前半に生まれた世代を、ズーマーズと呼んだりするが、ややこしくなってくるので、ここでは割愛する。 世代別人気アプリ では、それぞれの世代でどのようなアプリが人気なのだろうか?下記に紹介するのは、App Annie Intelligenceによる調査結果。 注: 対象はAndroidユーザー。Z世代は16〜24歳、ミレニアル世代は25〜44歳、X世代・ベビーブーマーは45歳以上。プリインストールアプリを除くゲームおよびゲーム以外の平均MAUでのトップ25アプリ。全人口と比較して該当デモグラフィックで最も利用される可能性が高いアプリ。 具体的な行動・志向は? では、もう少し掘り下げて、デジタルネイティブである彼らの考え方や、価値観、志向を具体的に見てみよう。そうすることで、どのような商品やサービスを好むかがわかってくる。 デジタルが生活の一部 デジタルの世界に生まれた彼らにとっては、テクノロジーは生活の一部となってる。テクノロジーはもはや、上の世代のように独立したものではなく、完全に “母国語” になっている。 新しいテクノロジーにも順応に対応する 新しいデバイスや新機能などに対しても柔軟に吸収し、試す傾向にある。 それまでの世代が驚愕していたようなイノベーションが、Z世代にとってはスタンダードになっている。 したがって、新規プロダクトや機能を真っ先に利用してもらう対象としては最適である。 オンラインでのソーシャル性の高さ ジェネレーションZは、非常にソーシャルで協調的な性格を持っている。ネットを介しての繋がりが常にあるため、もはや孤立して生活することはほとんどない。 したがって、利用するサービスに対しても、友達や家族と共有したり、招待したり、協力したり、競争する機能が実装されているタイプのものを好む傾向にある。 利用サービスの移り変わりが激しい デジタルサービスへの接触時間が長く、新しいテクノロジーやサービスへの順応性が高い反面、利用サービスの移り変わりも激しいことが知られている。 多くのユーザーがすでにメインのSNSを、FacebookからInstagramへ移行し、TickTokの利用開始も非常に早かったことからも、アーリーアダプター層が多く存在する世代とも言える。 8秒しか保たない集中力 若者世代のもう一つの特徴が、集中力の継続時間の短さだろう。UXデザイナーなどの間で俗に “8秒ルール” と呼ばれる、8秒以内で理解、消費ができないコンテンツやサービスに対しては、一気に興味が下がるという法則がある。この辺りは、以前に紹介したアテンションエコノミーにも通じる部分だ。 アテンション・エコノミーの時代に求められるUXデザインとは リッチなコンテンツを求める 日頃からゲームに接しているので、より感覚を刺激するようなリッチなデザインやコンテンツを好む傾向にある。例えば、派手なグラフィックやアニメーションやインタラクションなどの要素。 共通のUIに慣れ親しんでいる 幼い頃からアプリなどのUIに触れて育ってきているので、使い方に戸惑うことがほとんどない。特に、一般的となってきているインターフェイスの要素に関しては、本能的に使いこなす。 UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則 ブランドイメージよりもブランドの活動内容を重視 若者層にアピールしたいブランド側としては、今後の戦略をしっかりと考えた方が良い。既存の広告やマーケティング手法はそろそろ厳しくなってきている。 というのも、この世代は、表面的なブランドイメージよりも、実際にそのブランドが社会に対してどのようなポジティブな活動をしているか、もしくはしていないかに非常に敏感で、いち早く察知する能力が高い。 したがって、例えば、利益優先主義で、劣悪な労働環境のブランドは、どれだけ広告でとりつくろっても、訴求することは難しい。 これからのブランドはどんどん透明になっていく 高い社会貢献に対しての意識 この世代の興味深いところとしては、社会に対する考え方だろう。全体の60%が仕事を通じて社会貢献を達成したいと考えており、26%がボランティア活動に参加、30%が寄付をした経験があると答えている。 社会への問題提起を行ったブランドプロモーション4選 環境に対しての意識も高い 環境意識も高く、全体の75%が地球に関しての何かしらの危機感を感じている。ブランドの活動に関しても、環境やエコに関しての考え方と活動内容を重要視していると答えている。 商品のパッケージひとつとっても、より少ない資源で、地球に優しい手法をしているブランドを好む傾向になる。 仕事に関しては会社の将来性と自分のスキルが高められる場所を優先 企業にとって、若者世代は重要なターゲット消費者としてだけではない。働いてくれるスタッフとしても、彼女たちの心をしっかりと掴む重要性はかなり高い。 この世代は、働くという概念に関しても、それまでの世代とは少し違う価値観を持っているようだ。具体的には、自己の価値観をしっかりと持っており、よりスキルアップに繋がる職場や、新しいことにチャレンジさせてくれる会社に魅力を感じてる。 また、下記のリサーチの通り、日本の国内学生、海外留学生ともに、会社の将来性を重視していることが分かる。 まとめ: まずは相手を理解をすることから このように、それまでの世代と比べても、ミレニアル世代とZ世代は、かなりユニークな価値観を持っている。 我々、ビートラックスがクライアントの米国向けのブランド戦略を進める際にも、まず初めに行うのが、若者世代に対しての意識調査。個別のインタビューやフォーカスグループを通じて、ターゲット層がどのような志向を持ち合わせているのかをしっかりと理解することから始める。 より若者世代に訴求する商品やサービスを作る上でも、採用戦略においても、この世代をしっかり理解しておく必要性はかなり高いと思われる。

これからのブランドはどんどん透明になっていく

皆さんは、最近のApple製品に “とある” 共通点があることに気づいただろうか? そう、あのロゴがかなり目立たなくなってきているのだ。例えば、以前は必ず画面の下の真ん中の目立つ場所にあったAppleのロゴが、最新のiMacにはない。なんか変な感じがする。 ステータスシンボルのAppleロゴが無い! 同様に、ヘッドフォンのAirPods Maxにもロゴが無い。 これまでのAppleであれば、Mac, iPhoneなどの製品には必ず目立つ箇所にロゴが掲載されていたり、場合によっては、ロゴが光る仕様にまでなっていた。 スタバでドヤリングと呼ばれるくらい、Appleのロゴがついた製品を持っていることが一つのステータスシンボルになっていた。 しかし、新しく発表される製品にはなぜか、あの美しいロゴが隠されている。結構なお値段の商品なのに。 ちなみに、Appleが買収したBeatsのヘッドフォンなどは、左右に大きく掲載されているロゴが人気を集め、その商品の大きな魅力になっていた。 パタゴニアもロゴの掲載を控え始めた 実は、商品に目立つようにロゴを表示しなくなったのは、Appleだけではない。人気アパレルブランドのパタゴニアも製品上のロゴ掲載を控えるようにし始めている。 よりサステイナブルなブランドを目指しているのが理由。 パタゴニアの発表によると、一つの製品をより長く着てもらうこよで、より環境に配慮した結果につなげる狙いがあるという。 同ブランドの調査では、ロゴが入ったシャツやコートは、他の人に譲る可能性が低くなったり、部屋着としてきる頻度も下がるという。結果として、製品をきてもらえる “寿命” が短くなってしまいがちだという。 ライフサイクルの長い服を着てもらうことは、持続可能な世の中を実現する第一歩になると考えた。 ロゴを掲載しなくなったことで、パタゴニアは、ある程度の経済的損失を被ることになるだろう。 この変化は、パタゴニアが短期の商業的な結果よりも、より長期的に社会に貢献できるブランドを目指している決意表明でもある。 全てのデザイナーが知っておくべきエシカルデザインとは ニューバランスもロゴなしスニーカーを発表 スティーブ・ジョブスが愛用したことで知られるスニーカーブランドのニューバランスも、最新のコレクションでトレードマークの “N” のロゴを取り除いたスニーカーを発表した。 同ブランドは、1906年のブランド誕生から1世紀以上となる歴史と伝統を祝し、毎年5月15日を「Grey Day」とし、「グレー」をモチーフにした商品を展開。 今年発表された「Grey Day Collection」のうち、限定モデルの “574 Un-N-Ding” には、両サイドに “N” のロゴが掲載されていない。 多くのD2Cブランドもロゴの表記が最小限 そういえば、新規参入が多いD2C系のブランドのその多くも、ロゴの表記がかなり控えめになっていることに気づく。EverlaneやAllbirdsのほとんどのプロダクトにはロゴが表記されていないし、メガネのWarby Parkerもかなり控えめな扱い。これらのD2Cブランドも、かなり “透明性” の高いブランドといえるだろう。 ロゴを掲載しない本当の狙い Appleやパタゴニアなどのトップブランドがロゴの掲載を控え始めている背景には、ブランドとしての透明性を高めたいという狙いがあると考えられる。 ネットを通じてさまざまな情報が直に得られる現代においては、ブランディングを行う際にも、より消費者に対して正直で、透明性の高い存在になる必要がある。 以前までは、”ブランドイメージ” を重視し、ロゴやデザインを通じてそのイメージづくりを行うのがブランディングの主な役割だったが、現在においては、それはもはや”まやかし”に近く、あまり通用しなくなってきた。 であれば、表面を取り繕うよりも、自分たちのバリューがより伝わるブランディングを行うことが、よりファンを増やすための正しい戦略になってくる。 言い換えると、より透明で、可視性の高いブランドが求められる。 ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために – 透明性の高いブランドとは? 透明性の高いブランドとは、一言で言えば、消費者に対して率直で正直であること。過度な広告や、自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢のあるブランドである。 自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 また、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 例えば、社会的な問題に対して、自社の姿勢をしっかりと示し、より良い世の中のために自分たちがどのように貢献できるかを、ブランドとして体現する必要もある。 以前にNikeがBLMや人種問題に対してかなり積極的なメッセージングを発信したのも、透明性を上げる活動の一つである。 一人の男が4年前に放ったメッセージが今、世界を動かし始めた 完璧な人はいない。完璧なブランドもない。 ブランド施策を提供する際に、多くのクライアントはより “完璧” なイメージの構築を求める。しかし、実はそれは逆効果になることの方が多い。 というのも、現代においては企業のブランドも一人の人間のような存在で、顧客とブランドの関係もそれに近い。 完璧な人間が存在しないように、完璧なブランドも存在しない。むしろ、そのブランドの裏にある生々しいストーリーこそが、ユニークな価値になる。 自分の会社を追い出されたこと、倒産しかけたこと、短い余命を感じ、必死にイノベーションを生み出したこと。そんなストーリーがAppleを世界一のブランドに成長させた大きな要因だと思う。

シリコンバレーの未来と日本企業への影響

変化の激しいシリコンバレーでも、ここ1年間ほどの変化は、これまででも最大級だったのではないだろうか、と個人的に感じる。 というのも、2010年ぐらいから2020年の初頭までの10年間は、多くの方々が日本からこの地を訪れ、GAFAやユニコーンを “視察” していた。 同様に、シリコンバレーにオフィスを出したり、駐在員を派遣する日本企業も多く、”シリコンバレーバブル”が半端なかった。 パンデミックで全てが一変 それが、新型コロナウィルスの広がりで、大きく変化した。まるで時間が止まったように、訪問が激減した。 それだけではなく、リモートワークが基本になり、日本に戻られる駐在されていた方も少なくはなくはない。明らかに日本企業とシリコンバレーとの関係性に大きな変化が訪れた。 地元の企業に与えた影響 このパンデミックによる影響は、地元のテクノロジー系の企業やスタートアップにも少なからず出ている。 まず、オフィスにほとんど来なくてもよくなったために、リモートワークの仕組みが急激に進んだ。それまでも充実していたツールが、より一層充実し、時間に加え、場所的にも自由な働き方により拍車がかかった。 その一方で、シェアリングエコノミーやコワーキングスペースなど、リアルとテクノロジーをつなげるサービスが一気に苦戦を強いられた。それに伴ってレイオフも結構発生した。 コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか 人々の生活に与えた影響 この変化は、ビジネスだけではなく、地元の人々にも少なからず影響を与えた。 まず良かったのが、家賃がかなり下がったこと。それまでは、一極集中型で、サンフランシスコ市内を中心に、1LDKの平均家賃が35万円と、世界トップレベルの家賃になっていた。 それが、1年間ほどで25-30%下がったとのデータもある。これは、リモートワークの普及で、近郊の街や他の州に引っ越すことが可能になったため。 また、通勤や通学が極端に減ったために、苦痛だった交通渋滞がほぼ無くなった。なので、自動運転もあんまり必要ないかな?とも感じる。 ニューノーマルが生み出す4つの意外な社会課題 これからのシリコンバレーはどうなっていく? さて、こんな激動の中でも、最近は良いニュースが増えてきている。なるべく群れない生活スタイルと、ワクチンの普及によって、パンデミックが収束し始めているのだ。 オフィスは再開し始め、街には人が増え、レストランのテラスが陽気な雰囲気で溢れかえっている。 では、このような状況の中が進む中で、シリコンバレーは今後どんな感じになっていくのだろうか? そもそもシリコンバレーって? 未来を考える前に、そもそも、ここ10年ぐらいでバズっていた”シリコンバレー”は何だったのか?おそらくそれは、地域の名称よりも、カルチャーやビジネスモデルだったんだろうと思う。 具体的には、世の中は必ず良くなる。自分たちが良くする。未来への期待に対して投資をする。皆んなから愛されるモノを作り出し、魔法を使ってお金を儲ける。 そんな感覚。 GAFAやユニコーンに代表される仕組み そのようなモデルが、GAFAやユニコーンと呼ばれるキーワードだろう。具体的には、テクノロジーを最大活用し、ユーザーにとことん喜んでもらえるサービスを作り出す。 とてつもなく多くのお金を集め、ユーザーを大量に獲得し、会社を急成長させる。その過程で巨額の赤字を出すが、未来への大きな期待を寄せた人々からの投資によってバイアウトかIPOまで駆け抜けるモデル。 ユニコーンの次はデカコーン エコシステムと呼ばれる巨大なマネーゲーム 実はこの仕組み、冷静に見てみるとかなり強烈。 というのも、IPO (上場) したテクノロジー系スタートアップのその多くが、それまでに利益を出していないからだ。しかしその一方で、その期待値に合わせ、評価額や株価がグングン上昇している。 実際、2020年のハイテクIPOのうち、利益が出たのは16%に過ぎない。 例えば、シリコンバレーの代表的なユニコーン企業だった、パランティアは2020年初頭のIPOの前年の売上は7億4300万ドル。それに対して5億7600万ドルの損失を計上していた。 Uberは2019年に上場したが、当時110億ドルの売上に対して30億ドル以上の営業損失を出していた。 同様に、DoorDashが上場したときは、末尾9カ月の収益が19億2,000万ドルで、それに対して1億4,900万ドルの純損失を計上ていた。 これらの企業の評価額はいずれも数百億ドルで、創業者や投資家は、会社の業績としては儲かっていないにも関わらず、企業価値の上昇に合わせ、大金持ちになっている。 ベンチャー企業とスタートアップの違い: スタートアップ企業と呼ばれる理由とは なんちゃってスタートアップも続出 そんな巨大なマネーマシーンとなったシリコンバレーでは、やったもん勝ちのノリで、多くのスタートアップが生み出され、そこに巨額の資金が投入された。 そんな中で、いくつかのスタートアップには、その実態が怪しいものあり、セラノスに代表されるような、いわゆる”なんちゃって系”もいくつか出てきたりもしていた。 それでも、結構な評価額を獲得し、上手に儲けた人も少なくはない。 ハッタリ系スタートアップ大賞 シリコンバレー 4.0? 実は、シリコンバレーでこのような仕組みが活発になったのは、2009年頃からのことで、そこに辿り着くには、何度かの”バージョンアップ”を重ねている。 軽く振り替えてってみると、 シリコンバレー1.0は、インテルに代表される半導体産業の時代 シリコンバレー2.0は、Apple, HPに代表される家庭用ハードウェア産業の時代 シリコンバレー3.0は、ドットコムバブルに代表されるWebサービス黎明期 そして、2009年から2019年の10年間が、スマホとソーシャルメディアに代表される、一攫千金型のシリコンバレー4.0である。 そして今、次の大きな変革がまた訪れようとしている。 世界を変えられなかった12のサービス ~第一次ドットコム時代のアイディア~ シリコンバレー 5.0 と日本企業への影響 やっとここで本題。これらのシリコンバレーに関する未来予測と、日本企業にとってどのような存在になっていくのかの話題だ。 “シリコンバレー”的カルチャーの変貌 注目される業界のシフト 優秀な人材獲得が加速する 日本との時差が広がる M&Aしやすくなる 1. “シリコンバレー”的カルチャーの変貌 これまで説明したように、ここ10年間ぐらいに見られたシリコンバレーのマネーゲーム型カルチャーがひと段落する。 GAFAに代表されるような、儲かりまくりのビッグテック企業や力を持ちすぎたプラットフォームも、プライバシーや法令遵守、そしてエシカルやウェルビーイングへの取り組みが進められ、利益第一主義からの脱却に進むかもしれない。 スタートアップで言えば、ユニコーンという言葉に代表されるような企業価値至上主義に陰りが見え始めている。未来への期待値をMAXまで高め、大量の資金調達を通じ、大赤字を出しながらも、半ば反則技でユーザーを集めまくるタイプのビジネスモデルはそろそろキツくなってくるだろう。 また、新しくスタートする企業の数は減るかもしれないが、中身がしっかりとある内容が増えると思われる。 デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは? 2. 注目される業界のシフト 世の中の変化に合わせ、ユーザーニーズも変わる。これからの時代は、両極端な二つのタイプの業界に注目が集まると考えられる。 まず一つ目は、オンラインでの人々の交流がより活発になることで、ゲームとコミュニケーションの融合が進む。それに合わせ、複数の人が同時に遊びながらコミュニケーションを行うことのできるサービスの人気がどんどん高まるだろう。 具体的には、Roblox, Among us, Discordなどがあげられる。 もう一つは、より人々の実生活の課題解決を目指した “地に足の着いた” サービス。具体的には、バイオテクノロジー、サプライチェーン・ロジスティクス、生産性、通信などの分野は、これまでのクラウド、ゲーム、輸送、暗号通貨などと同じような勢いで普及していく可能性がある。 それに連動し、レガシービジネスへのチャンスも広がる。デジタルだけではなく、物理的な世界で事業を展開する方法を知っていること、ブランドを構築・維持する方法を知っているマーケティングチームがいること、そして何より、法律の範囲内で複数のテリトリーで収益を上げる方法を知っているという企業には、大きな優位点がある。 これは皮肉にも、猫も杓子も”DX”を叫んでいる日本とは逆のベクトル。もともとデジタル中心だったのに対し、どのように物理的なビジネスモデルを補完できるかが重要になってくる。 【DX,リモート, メンタルケア】ニューノーマル時代に注目のスタートアップ25選 3. 優秀な人材獲得が加速する これまでは、シリコンバレーの会社で働くために、世界中の多くの優秀な人材がこの地に集まってきた。しかし、パンデミックの影響で、リモートでの勤務が可能になったため、異なる場所に住んでいる人でも、シリコンバレーの会社で働くことが可能になる。 特にアーリーステージのスタートアップは、高い住宅費用や物価をカバーできる賃金で、若くて優秀な人材を入社させることは不可能に近かった。 それが、より物価の安い都市や、場合によっては異なる国に住んでいる人でも働けるようになるのであれば、より優秀な人材を現実的なコストで獲得し、チームを編成することが可能になる。 奇しくも、パンデミックの広がりが逆説的にシリコンバレーを強くする結果となる。これにより、シリコンバレーの規模を地理的なクラスターではなく、ネットワーク的上に広がる、同じミッションをもった人たちの集まりになってくる。 Facebook、Twitterに学ぶ、DX時代の組織戦略・人材マネジメント 4. 日本との時差が広がる 冒頭の話の通り、現在までのところ、日本からシリコンバレーに来るハードルは高い状態。そうなってくると、現地が実際にどのような状況になっているのかを把握するのが、少し難しくなる。 これは、サービスのトレンドやテクノロジーに関する内部情報へのアクセスが下がるため、日本とシリコンバレーの”時差”が広がる結果に繋がる。 逆に考えると、現地にいるアドバンテージが今まで以上に高まり、1990年代後半のドットコムバブルのような、タイムマシーン型ビジネスモデルもバカにできない状態になるかもしれない。 シリコンバレーに来るならスーツは着ない事 5. M&Aしやすくなる そんな現地にいるからこそわかる事情の一つに、M&Aに関する変化がある。最近日本で会社を経営する友人が、アメリカの企業とのM&Aの話を進めている。 それまでも数年間模索していたが、コロナ前まではなかなか相手にしてくれなかったという。それが、パンデミックの広がりで、変化を求める企業も増えてきたのか、ここ一年ほどは、結構 […]

サービス開発における リーン | アジャイル | デザイン思考の使い分け方

新しいサービスをより速い速度で開発する手法として、リーン、アジャイル、そしてデザイン思考のキーワードが巷で飛び交っている。 これら横文字のバズワードは、スタートアップっぽく、使うだけでそれっぽく聞こえると思う人もいる。それもあって、あまり意味もしっかりと理解しないまま乱用されているケースもあるだろう。 しかし、それぞれに内容は異なり、利用するべき最適なシーンも違う。今回は、混合されがちなリーン、アジャイル、デザイン思考のそれぞれの役割と、利用するべき目的などについてまとめてみた。 “イノベーション“や”DX”をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと それぞれのプロセス自体は結構近しい まず初めに、これらの手法が混合されがちな一番の理由として、それらのプロセスに共通点が多いからというのがあげられる。ざっと見てみると、どれも下記のようなプロセスを踏んでいる。 課題を定義する 課題を理解する 解決策としての仮説を立てる 解決策のテスト用にアプトプットする (スケッチ、モックアップ、プロトタイプ、MVP等) アウトプットを元にテストを行う 結果を分析する 結果によって今後の方針 (テストを繰り返す、調整する、方向転換する) を決める これら全てに共通するのは、なるべく簡単な方法で、迅速に課題解決案のテストを可能にしようという考え方である。ここで重要になってくるのが、何をどのような手法で検証しようとしているかだ。 一つめの違いはアウトプット手法 リーン、アジャイル、デザイン思考の違いの一つは、どのような手法でアウトプットを生み出していくかのプロセス部分だと考えられる。 まずは、それぞれのプロセスで生み出される最も一般的なアウトプットを見てみよう。 リーン: サービスLPやオンライン広告など、テストマーケに繋がるもの アジャイル: 操作可能なソフトウェアやMVP デザイン思考: スケッチ、UIモックアップなど、見た目的にイメージが伝わるもの なぜアウトプットが異なるのか? なぜそもそも3つのプロセスでアウトプットの種類が異なるのだろうか?その理由は、それらのプロセスが生み出された背景にある。それぞれが検証するべき課題や利用シーンが異なることが多いからだと考えられる。 リーン: スタートアップ起業家を中心に、ビジネス的課題や消費者ニーズの実証測定を行うためのプロセスとして生み出された アジャイル: ソフトウェアエンジニアを中心に、エンジニアリングに関する課題を解決するためのプロセスとして生み出された デザイン思考: デザイナーを中心に、一般的なユーザーにおける課題を検証するためのプロセスとして生み出され ちなみに、補足として、デザイン思考はユーザーのニーズ、テクノロジーの可能性、ビジネスの成功に必要な要件を統合すすることによって、人々に求められる実現可能なイノベーションを生み出すためのプロセスとなっている。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決 解決したい課題に応じてプロセスを選ぶのが基本 したがって、リーン、アジャイル、デザイン思考のどのプロセスを選ぶかは、何を検証したいか、そして解決しようとしている問題の種類で決めるのが良いだろう。 慣れているプロセスを採用するのもアリ また、チームメンバーの構成によってどのプロセスを採用するかを選ぶ時もある。(例: エンジニア中心のチームはアジャイル型で進める等) これは意外と理にかなっている。というのも、新規サービスは多くの場合、不明瞭な点が多く、慣れない方法で進めようとすることで、よりリスク要因が高まる。 普段利用していないプロセスを採用したことで物事を複雑にし、余計に時間がかかってしまい、結果が見えにくくなる可能性もある。 それよりも過去にやったこのあるプロセスを適用した方が、より効率的にプロジェクトを進めることができたりもする。 起業家がリーンを好むのも、エンジニアがアジャイルを好むのも、デザイナーがデザイン思考を好むのも、すべては彼らのバックグラウンドと、彼らがすでに慣れ親しんだ手法を利用して課題解決を検証しようとしているからでもある。 参考: 現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは それぞれのプロセスで価値測定のフォーカスも異なる リーン、アジャイル、デザイン思考は全てサービスの検証に利用されるプロセスだが、3つの方法は、それぞれ異なるタイプの価値に焦点を当てている。 リーン: 市場におけるバリデーションに焦点を当てている。つまり、自分たちのアイデアに対して十分な市場があるかどうかを判断する アジャイル: 製品の利用価値の検証に焦点を当てている。つまり、お客様がすぐに使用し、メリットを得られるような実用的な製品であるかを検証する デザイン思考: ユーザーにとってのサービス価値の発見に焦点を当てている。つまり、人々が実際に望んでいることを読み解く 現代においては重複するエリアも多い 上記の説明では、それぞれの検証ゴールがキッパリと分かれているように見えるかもしれない。しかし、実際のサービス開発の現場では、この3つはかなりの重なりがある。 例えば、自分のアイデアにお金を払ってくれる市場があるかどうかを判断するためにリーンのプロセスを使ったとしても、その市場にいるそれぞれの人が具体的に、何を求めているのかを明らかにし、それを理解するためには、デザイン思考のプロセスが必要となる。 また、サービスコンセプト的に受け入れられそうでも、実際に利用してもらえるか、そしてそれ以上に利用し続けてもらえるかを検証するには、アジャイル型で開発したサービスに触れてもらうことも必要になるかもしれない。 サービスデザインにおける下記の図においては、Desirebilityをデザイン思考が、Viabilityをリーンで、Feasibilityをアジャイルで検証することが一般的。その一方で、重複エリアはそれらを複合して利用するのが良い。 形にこだわらずに臨機応変に利用するのがオススメ どのプロセスを活用してサービスの価値を検証していけば良いか迷うケースもある。でも実は、どのプロセスを選択するかは大きな問題ではない。 いずれにしても、自分のスキルや経験に合ったプロセスをまずは選ぶのが良いだろう。 ソフトウェアの新機能を実現するためにアジャイルを使用し、それを潜在的な顧客が購入するかどうかを測定するためにリーンの手法で市場の検証を行う。など、組み合わせて使うこともアリ。 また、その逆のやり方もありえる。例えば、サービスができる前にまずはオンライン広告を走らせ、消費者の反応をみる。その中で反応のよかったもののプロトタイプを作ってユーザーテストを行うなど。 重要なのは、適材適所で臨機応変に対応できる仕組みだろう。 参考: デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説 組織のカルチャー変革が求められる事も 我々、ビートラックスがデザイン思考のプロセスをクライアントに提供する際の多くは、組織のカルチャー変革もセットで行うことが多い。 というのも、例えば、従業員が顧客と直接話すことを嫌がったり、できなかったりするような組織では、顧客から直接フィードバックを得ることが重要な要素であるため、デザイン思考を導入しようとしてもうまくいかないから。 したがって、3つのプロセスのどれを採用するかは、会社や組織の状況によることもある。言い換えると、自分たちの強みや組織文化に合致していないプロセスを採用してもうまくいかない。 DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革 まとめ: 重要なのはどのプロセスかよりも最終的な結果 リーン、アジャイル、デザイン思考は、実は全て速いスピードでサービスの価値を検証するためのプロセスである。 その一方で、それぞれ検証するエリアが少しづつ異なるため、何を測定したいかで使い分けるのが良い。 ユーザーの潜在的なニーズを理解し、アイデアを視覚的に伝え、ユーザーの反応を得たい時はデザイン思考を サービスに対して十分な市場があり、サービスのビジネスポテンシャルを測りたい時はリーンを 動く製品を段階的にユーザーの手に渡し、実際に使い始めてもらう必要があるなら、アジャイルを このように、それぞれの目的と、検証するために作り出すアウトプットが異なるので、何を検証したいかによって使い分ける。スタッフの経験値や組織のカルチャーに合わせて。どれにするかを選択する。そして多くの場合は、その3つを複合して使うことが最も有益な結果が得られるだろう。

宅配のDX – Shypはなぜ失敗したのか? カスタマーファーストの盲点

2018年にとあるサービスがひっそりと終了した。それはとても便利で、革命的とも思える内容だった。そのサービス名はShyp。 多くのユーザーに愛される素晴らしいサービスでもなぜ終了してしまうのか?今回は、Shypのケースをもとに学んでいこう。 モバイルアプリから簡単発送 Shypのキャッチコピーは”We’ll take it from here (あとはお任せ)”、面倒な発送のプロセスを代行してくれるサービスである。 何かを発送したい時に、アイテムの写真を撮ってモバイルアプリ経由でアップするだけで、20分以内にピックアップに来てくれる。 それも、送る物の大きさや重さ、形に応じて最適なパッケージングを施し、各種ある配達業者から最も安い方法を自動的に選んでくれる。そしてなんと、梱包までもしてくれるのだ。 発送後はアプリ経由でトラッキング情報が表示され、完了通知まで届く。もしもの時のためは$1,000までの保険も自動的にカバーされる。 革新的に便利で、お得なサービス。まさに宅配における理想的なDXの完成形である。 実際にShypを利用してみた 以前にオンラインオークションのeBayで売ったときに利用してみたところ、本当に便利だった。 写真をアップするだけで発送料金が表示され、リクエストすると、Uberのような画面から、ピックアップに来る配達員のアイコンが表示され、到着したらアイテムをそのまま渡すだけ。 後日アプリ経由で発送完了の通知が届けられた。本当に”あとはお任せ”を実現する究極のユーザー体験を提供してくれた。 ラストワンマイルならぬ、ファーストワンマイルの課題を解決したサービスだった。 たった$5で発送時の手間を大幅改善 一回使っただけで、Shypの魅力に取り憑かれた。今までもオンラインで物を売ったことが何度かあるが、とにかく発送のプロセスが超めんどくさい。通常、考えられるステップは: 既存の発送プロセス: アイテムを入れる箱を探す 箱のサイズを図る アイテムの重さを図る 複数の配達業者から料金を調べる 荷物を梱包する 発送する荷物を業者の窓口に持っていく 料金を払う トラッキング番号をもらう トラッキング番号を買い手に送る ざっと考えただけでも上記の9つのプロセスが必要になる。それもあって、売りたいものがあっても、どうしても面倒な気持ちが勝ってしまい、放置することが多くなってしまう。 それをShypは下記のように簡易化することに成功した。 Shypを使ったプロセス: アイテムの写真をアプリにアップ 支払いと発送に関する情報を入力 配達員がピックアップにくる トラッキングが自動的に送られてくる 当時はデリバリー版Uberと期待されていた そんな発送における煩わしさ、いわゆるユーザーペインを解消したのがShypだった。ユーザーとしても、この手間がなくなるのなら、手数料の$5は安いと感じた。 これはまさに、タクシーの煩わしさを解決して、一気にユーザーを集めたUberっぽいサービス。現にShypは「デリバリー版Uber」と称された。 始まりはリーンなスタート Shypは2013年に2人のファウンダーによって、サンフランシスコでスタートした。 Kevin Gibbonは、それまでのeBayでの販売経験や、ShopAroundというローカル店舗の価格比較サービスを作り、アプリランキングのTop 100に入ったこともある。 もう一人のJack Smithは、スタートアップでのリードデザイナーの経験や、大企業でのデザインコンサルタントの経験を持っていた。 Shypの立ち上げ当初は、ガレージをオフィスにして、$2,000の予算でサイトを作り、ピックアップ業務も、ファウンダー自身がカーシェアを利用して行っていた。テスト的にまずはサンフランシスコ市内の一部の地域だけのサービス提供だった。 いわゆるリーンスタートアップの手法で始まった。 ゴールはユーザーの手間を省くこと Shypが目指したのは、究極の便利さ。それまでにもeBayがショッピング革命、PayPalが支払い革命を生み出し、Shypは配送革命を起こし、200年間あまり進歩していない業界のDisrupt (破壊) を狙った。 当時は、UberやAirbnbに代表されるオンデマンド型サービスが人気を集め始めていた。いかにしてユーザー体験をシンプルにしたサービスが作れるか。それこそが、サンフランシスコのスタートアップにおける共通のゴールになっていた。 その後も複雑な体験の改善は、破壊的イノベーションを生み出す要因の一つであり、現在でもあらゆる業界に求められている。 ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素 著名エンジェル投資家から210万ドルを調達し加速 サービスリリースと同年に、Shypの将来性に注目したTim FerrisとDavid Marcus、2名の著名エンジェル投資家から、合計210万ドルを調達した。 それをもとに、Shypはスタッフの採用を進める。 興味深いことに、優先した人材は宅配業界での経験の無い人たち。というのも、業界での経験が下手にあると、新しい発想に対して否定的になるだろうと、彼らは考えたのだ。 これまでの経験値よりも、課題解決に対するの情熱とポテンシャルを優先して人材採用を行った。 同時期にはTechCrunch, NY Timesなどのメジャーなメディアにも取り上げられ、大きな注目を集めた。 翌年には1,000万ドルをVCから調達。その後もKPCBから5,000万ドルの投資を受け、合計投資額は6,210万ドルにまで拡大。ニューヨークやシカゴにもサービス拡大するなど、全てが順風満帆かのように思えた。 潤沢な資金で成長フェーズへ突入し、大胆な決断を 2013年のスタートから2年後、着実に成長してしていた2015年、Shypより急激な成長を狙うためにいくつかの大きな決断を行った。 まずは、配達員を業務委託型から、正式な従業員に変更した。 通常、Uberに代表されるオンディマンド型サービスにおいては、配達員などのサービスを提供するスタッフは従業員ではなく、業務委託の形を取ることが多い。 福利厚生や失業手当、社会保障などの支払い義務が生じないため、従業員よりもコストが軽減できるのが理由である。 その点、Shypは配達員の待遇を改善し、業務委託型では提供できない研修にも参加してもらう意図があった。これは、オンデマンド系サービスとしては異例の判断だった。 この時点で、配達員以外の従業員数も245人になり、5倍の規模まで膨れ上がった。 ちなみにこのような急成長は、シリコンバレー界隈のスタートアップでは珍しくなく、綺麗なホッケースティックを実現していたとも言える。 ベンチャー企業とスタートアップの違い: スタートアップ企業と呼ばれる理由とは デザインにも力を入れ、リブランディングも行った この成長戦略の一つが、アプリのUIの継続的な改善と、リブランディングである。 Shypは、デザインが優れているサンフランシスコのスタートアップの中でも、デザイン性の高いサービスだった。そして、オンラインを中心とした広告キャンペーンも積極的に行っていた。 卓越したサービスには致命的な盲点が しかし実は、Shypには大きな盲点があった。 $5である。 そう、ユーザーから手数料として取っていた$5。$5をもらう代わりに、多くの手間が発生してた。 ユーザーによりシンプルな体験を提供するために、Shypはかなり多くのプロセスを行っていた。 まず、サイクリストやバンなどの配達員による物流ネットワークの確保。Shyp独自の段ボールカット機を使った梱包工程。そして、UPSやFedExといった配送業者への出荷。 これらをたったの$5で提供していた。それも、発送するアイテムの種類に関わらずにだ。消しゴムひとつでも、大型テレビでもも一律$5のお得な費用設定。 これはコストとして全く見合わないと、投資家も指摘していたらしい。 その一方で、最初のうちは殺到していたユーザーも、2年目に入り、その熱も少しずつ冷め始めた。 それでも、CEOはカスタマーファーストの視点から、拡大を続けた。 急成長を狙ったその矢先に… 強気の成長戦略とユーザー視点を推し進めていたShypだったが、当初予定していたマイアミへの進出を断念。その後、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスのオフィスを立て続けにクローズし、サンフランシスコのみのオペレーションに戻った。 その甲斐もあり、2017年の終わりには、利益率は1.5倍になった。それにも関わらず、3ヶ月後、ファウンダーのKevin GibbonはLinkedIn上でShypが終了することを投稿した。 そして、惜しまれながらも2018年の3月末にサービスを終了することとなった。 その後、Kevin Gibbonは、その失敗理由を下記のように分析している。 Shypが失敗した5つの要因 1. ターゲットユーザーを誤った スモールビジネス向けに展開した方が良いという投資家からのアドバイスがあったが、Shypは最後まで一般消費者向けにサービスを拡大していった。しかし、平均的な消費者は企業に比べてあまり物を出荷しないので、BtoCにおけるShypの成長には自ずと限界が訪れた。 打開策として、2016年にeBayとのコラボを始めたが、時すでに遅しだった。 2. 手数料が低すぎた 上記でもご紹介した通り、複数のプロセスと膨大な手間を掛けているにも関わらず、ユーザーへの手数料はたったの$5。当初は、FedEXやUPSなどの配送業者と値段を交渉し、マージンを稼ぐつもりだったが、あまり上手くいかなかった模様。 それに伴い、2016年にはアイテムの大きさに応じて手数料を変動させる仕組みを導入したが、こちらも時すでに遅し。 3. ユーザーを優先しすぎた […]

なぜ制約があった方が人はクリエイティブになれるのか?

一番仕事が “はかどる” のはどんな時?と聞かれたら、トップ3に必ず入るのが「移動中」と「滞在先」。飛行機や新幹線の中で仕事をしている時がもっとも効率が良い。また、設備が整っているオフィスよりも、出張先のホテルでの方が仕事がサクサク進むことも多い。 これは恐らく時間や場所の制約や、日常と異なる刺激があることで、集中力や創造力が高まってるからではないかと思う。 ブログは無理だけど、Twitterならサクサク書けちゃう現象 また、ブログは全然書く気にならないけど、Twitterぐらいならいつでも気楽に書ける気がする。 ブログは文字数の制限がない分、気後れしてしまう。その点Twitterは140文字の制限があるため、短い文章でも良いというルールのもと、文章を書くモチベーションが上がる。 これも、制約があるからこそモチベーションが上がるという、似たような状況なのではないか? 自由度が高すぎると動けなる 全く自由な状態に置かれると、無限の可能性に圧倒されてしまって、何もしないという状況も多い。 例えば、A4の紙を渡されて「何か作って」と言われても何から初めて良いかわからない。しかし、紙とクレヨンとハサミを渡して、「これを使って空を飛べるものを作って」とリクエストされれば、紙飛行機や、折り鶴や、蝶々など、いくつかのアイディアを思いつくことができる。 ある程度お題が決まっていて、制約がある方が動き出しやすく、発想しやすいのではないかと感じる。夏休みの宿題を直前までやらなくて良いのにも共通するだろう。また、選択肢が多いと、どれを選んで良いか分からず、選べなくなる状態にも通じる。 制約を与えると脳が活性化する どうやらこれは科学的にも実証されているらしく、一定の制約は脳力を高める効果があるという。 というのも、脳はなるべく少ないエネルギーで稼働するように作られており、通常はすぐに省エネで運用しようとする。そして、強制されない限り、ほとんど何も考えないことが多くなりがちとか。 言い換えると、放っておくと脳はすぐにだらける。ということらしい。それを刺激してあげるのが、何かしらの制約である。 そうすることで、はじめの一歩を踏み出し、そして頭をひねってユニークな発想を絞り出すようになる。制約があるからこそ、考えざるを得ない状態になって初めて脳は本気で動き始める。 制約と創造性の関係は、プレッシャーと動機の相関関係を示したヤーキーズ・ドットソン法則にも通じるところがあるだろう。 関連: ニュートンのイノベーションは隔離体験から生まれた テクノロジーに制限があるとスキルが高くなる そういえば、技術者で能力の高い人の多くは、制約の多い状態での下積みが重要な経験になっているという説がある。 例えば、パソコンのスペックが低かったり、ネットのスピードが遅かった時代のプログラマーは、プログラムの実行スピードを少しでも速くするために、一行でも少なくコードを書く方法を必死に生み出していた。 それにより、現代の恵まれた環境で書かれるプログラムよりも、よっぽどクリーンで効率的なプログラムが書けるという。その昔、メモ帳でHTMLコードを書いていた人は、スキルが高かったのも覚えている。 同じように、パソコンのHD容量の少なかった時代のデザイナーは、ファイルサイズを小さくするために、できるだけアンカーポイントを減らすデザイン手法や、少ない色数で表現する手法を編み出した。それが転じて、表現の幅が広がったという説がある。と、デザインスクールの先生が語っていた。 参考: ミニマルデザインのススメ – 基本知識と7つのヒント 制約こそがクリエイティビティーの起爆剤 そう、どうやら制約が多い方が、よりユニークな発想や手法を編み出しやすいようだ。言い換えると、クリエイティブなアイディアは制約が無いとなかなか出てこない。 意外かもしれないが、創造力を高めるには制約が不可欠になる。 成功しているクリエイティブな人たちは、制約は自分の努力を制限するものではなく、むしろ逆手にとり、飛躍させる原動力に変換させている。 参考: やりたいことが見つからない人にセルフ鎖国のススメ 制約があった方が良い理由 始めやすい スピードを上げられる 型にはまらない発想が思いつく 発想のリフレームをするようになる 与えられたものの最大活用方法を思いつく 関連: リフレーミングとは? – イノベーションの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある 事例: 多くのイノベーションは制約から生み出されている 実際に新しい製品を発明や型破りな表現は多くの場合、数々の制約から生まれている。制約はさまざまな創造的な領域で役割を果たしていて、現代の最も革新的な創造的製品の多くに見られる。 では、実際に制約あったからこそ生み出された事例をいくつか見てみよう。 海外から来た人が仰天 – 機械式立体駐車場とカプセルホテル 日本にはかなりユニークな仕組みがいくつかあるが、海外から来た人がびっくりするのが、カプセルホテルと機械式立体駐車場。 これらは、場所の制限がある日本だからこそ生み出された仕組み。だだっ広いアメリカでは絶対に思いつかない発想である。 CGでは青春の空気感は伝わらないから – ポカリスエット 最近話題になったポカリスエットのCM。一見すると、かなり特殊なCGを使ってるのかな?と感じる。しかし、メイキング動画を見ると、極力物理的なセットと、リアルな動きでメッセージを伝えている。 技術的にも予算的にも利用でできただろうCGと特殊効果を最低限に抑えることで、青春の空気感がダイレクトに伝わってくる。 一部のグリーンスクリーンを除き、CGの利用を極力抑えたCM シンセサイザーは一切使っておりません – Queen ボヘミアン・ラプソディでお馴染みのQueenは、綺麗なメロディーラインとハーモニーで人気を集めたバンド。 彼らのサウンドは、同じ時代の他のロックバンドと比べてかなりユニーク。その秘密の一つが、とある制約にある。 デビュー初期の頃はその当時に普及していたシンセサイザーを利用する余裕がなかった。その代わり、ギターのサウンドや、コーラスを駆使することで、きらびやかな音色を実現した。 実際、Queenの初期の頃のアルバムの裏には”No Synthesizers! (シンセは使ってない)”と明記されている。 安易にシンセに頼らなかったことで、ブライアン・メイのユニークなギターサウンドと、唯一無二のコーラスハーモニーが生み出された。 スコッチの原材料が取れないことで発明されたお酒 – バーボン アメリカで作られるウィスキーの多くが、バーボンと呼ばれる。その起源は、ウイスキーの祖国であるスコットランドやアイルランドからアメリカに移住してきた人たちが、アメリカでも同様のお酒を作ろうとしていた事から始まる。 そこで、一つ大きな制約に直面することになった。アメリカでは、母国のウィスキーの主な原料である大麦があまり取れないのだ。 そこで頭をひねり、発想を転換した。そこから生み出されたのが、移民した地域の特産品であるトウモロコシを主原料としたウイスキー、バーボンである。現在では、スコッチと人気を二分するほどの存在になっている。 制約を逆手に取ったアーティスト – Phil Hansen 制限を最大のクリエイティビティーに変換したアーティストもいる。Phil Hansenは、自身の身体的ハンデを逆手に取り、ユニークな作品を数多く生み出している。 空手チョップだけで描いたブルース・リーの肖像画や、スタバのカップを利用した作品など。彼のTED Talkは一見の価値あり。 自身のハンデを活用してクリエイティブな作品を作り出すPhil Hansen ある意味本物よりもカッコ良い – ダンボルギーニ 高級スポーツカーとしてフェラーリと肩を並べるのがランボルギーニ。価格が数千万円もする事から、簡単には手が届かない。 これを宮城県の段ボール加工会社の6名が、仕事の合間をぬって段ボールで作ってしまった。もともとランボルギーニ好きの社長による「買えないなら、作っちゃえば?」という発想だ。 その完成度の高さが世界で話題になり、ついに本家のランボルギーニ社から連絡が届き、本物の車両と一緒に展示されるまでに。現在では、震災復興のシンボルとなっている。 関連: 社内イノベーションはこのように生まれた – ランボルギーニ ミウラ誕生秘話 コマ撮りがCGよりも不気味 – 初代ターミネーター 今でこそ大人気シリーズとなっているターミネーターだが、その第一作はかなり低予算のB級映画だった。しかし、初代の人気はシリーズの中でもトップレベル。 大きな理由の一つが、その映像のリアルさからくる怖さ。 予算の関係で、CGや特殊効果の利用が制限されていたため、ターミネーターの動きをコマ撮りで表現した。そのぎこちない動きが逆にロボットっぽく、独特の不気味さを実現した。 英語を”話さない”ことが強い個性に – こんまり アメリカで大人気のこんまりも、制約を上手に変換している。 彼女は以前は英語を話していたが、現在は、日本語+通訳で話すことが通例となっている。そして、それが意外と良い。日本語特有のキュート表現とトーンが、彼女らしさが前面に押し出し、ユニークな雰囲気を醸し出している。 苦手なことを無理してどうにかしようとするのではなく、自身のユニークさにフォーカスした良い例。 こんまりから学ぶグローバル進出3つのポイント 限られた文字数で複数のメッセージを込める […]

デザイナーとアーティスト3つの大きな違い

何かと混合されがちなデザインとアート。両方のアウトプットがビジュアルになりがちなことや、日本の場合だと、美大出身のデザイナーも多いことから、この二つの領域が混ざっているケースが結構多い。
しかし、実際の現場の仕事内容はかなり異なる。デザインとアートの違いは、それぞれ一言で表現するとわかりやすい。
デザインとは
“与えられた制限内でユーザー視点に立ち、最大の結果を出すためのプロセス”
アートとは
“できるだけ制限を排除し、受け取る者にインパクトを与えるための自己表現…

僕は君が起業家になることをオススメしない

最近の日本は以前にも増して、行政レベルでスタートアップを育成する動きが多く見られる。実際自分も、いくつかのプログラムでメンターをさせていただいている。 専門はデザインであるが、もともと起業家とスタートアップが多いサンフランシスコ地域で経営していることもあり、スタートアップサービスの作り方や育て方もそれなりに理解しているつもり。 そんなこともあって、以前より学生向けのピッチコンテストからグローバル起業家育成プログラムまで、多くのスタートアップ育成に関わる事業に関わってきた。 メンタリングの際には、自分自身の経験をもとに、日本の起業家志望の方々に対して、まず伝えるようにするのは、 僕は君が起業家になることをオススメしない である。 何言っちゃてんの?と感じるかもしれないが、これにはいくつか理由がある。 心が壊れてしまった十代の子達 複数のスタートアップ系イベントの中でも、高校生や大学生を対象とした起業家育成プログラム的なものも幾つかかある。このようなプログラムでは、起業家になることが素晴らしいという雰囲気が作られ、参加者に起業家を目指すことを期待する。 そんなプログラムに参加した十代の何名かが実際にサービスを作り起業をした。そして周りからは賞賛され、いくつかのイベントでも表彰され、メディアでも派手に祭り立てられた。 その後ビジネスを進めていく上で、お金の事やチーム作り、人間関係での困難に直面し、悩み、苦しみ、そして続けられなくなっていった姿を何度か目の当たりにもした。 これらの試練は起業家としては誰もが通るが、感受性が高い十代の若者にはかなり酷な状況だっただろうと想像ができる。 最初は周りの大人におだてられ、サービスが評価され、起業したことで注目を浴び、自己肯定感はMaxになる。 しかし、いざ上手くいかなくなった場合は、聞かされていたキラキラ世界とのギャップと、チームメンバーを含めた周りの人たちの態度の変化に当惑するだろう。そして、起業家という特性上、一人孤独に悩み苦しみ、諦めることになる。 失敗した際のサポートが提供されていない状態で十代の若者がこのような状態に陥ると、最悪の場合、心が壊れてしまう危険性がある。 起業 or 就職? いくつかの日本の学生向けのプログラムに支援側として協力したことがあるが、その内容が色々な意味で、結構ガチなのである。参加者が自己紹介する時に、今後の進路として起業するか就職するかを宣言させるものもあった。 「僕は起業します。」「私は就職します。」と、まるで「ビーフ or チキン?」の勢いで宣言してるのは少し違和感を感じる。 まだまだ将来何をしたいかが決まっていない段階で進路を決めるのは、はっきり言って難しい。その段階で起業家になるというプレッシャーをかけ、選択肢を狭め、自分を追い込む必要はない。 やりたいことが見えてきて、それを達成するための手段としてスタートアップを始めるのがよければそうすれば良いだけで、そのタイミングはいつ来るかもわからない。 いたずらに起業家をヒーロー扱いする危険性 起業家を増やそうとする取り組み自体は非常にすらばらしいと思うし、国の将来にとってもポジティブな影響があるだろう。 しかし、場合によっては、少し起業家を美化しすぎているきらいもある。これは、起業家が少なかった日本における”よりもどし”なのかもしれないが、スタートアップや起業家にきらびやかなイメージを与え、誰でも起業しろ、などとあおるのは危険だと思う。 最近流行りの「誰でも起業しろ」はかなり無責任に感じる。若くて起業しただけで注目が集まる。しかしその後、祭り上げるだけ祭り上げて、上手くいかなかったらストンと落とす文化においては、起業家の精神的リスクもかなり高いだろう。 多くのスタートアップは、外から見えるグラマラスなイメージとは裏腹に、その中身はかなりドロドロとしている。成功率が10%以下と言われるかなり厳しい世界では、上手くいく方が珍しい。 それだけ覚悟と理解が必要だろう。もしくは、多少失敗してもあまり気にしないお気楽さを持ち合わせているとか。だから、誰でも起業するべきではないし、起業しただけで安易に持ち上げるのも良くない。 起業家には向き不向きがある そもそも起業家はとても特殊な仕事内容で、誰にでも向いているわけではない。実際、全人口の起業家率はわずか8%である。 起業家に向いている人は、やはり少し変わったところがあるし、一般的な価値観を持ち合わせていない人も多いように感じる。言い換えると、それほど珍しい存在。なので、周りとは感覚が合わず、自ずと孤独になる可能性が高い。 イノベーターと呼ばれる人たちは物事を違う角度から見る。スティーブ・ジョブスの言葉を借りると、クレイジー、反逆者、変わり者なのである。 シリコンバレーの著名投資家であるロン・コンウェイも下記のように語っている。 起業家には生まれつきの向き不向きがあると思っている。僕が思うに起業家に向いている人は起業家の遺伝子を持っており、一生起業家として生きていくだろう。一度起業してその後大企業に普通に勤められるケースはとても少ない。 エンジェル投資家の裏側教えます【インタビュー】シリコンバレーのスーパーエンジェル投資家: ロン・コンウェイ 起業家はメンタル的にもかなりタフな仕事 実際のリサーチ結果を見てみても、起業家がどれだけメンタルにキツい仕事かがわかる。 米国国立精神衛生研究所の調査によると、起業家の72%がメンタルヘルスの問題から直接的または間接的な影響を受けている。これは、非起業家の48%と比べると非常に高い数字である。 また、カリフォルニア大学が行った調査によると、起業家の49%がADD、ADHD、双極性障害、依存症、うつ病、不安症のどれか一つを患っており、約1/3がこの2つ以上を患っているとの結果が出ている。これは、アメリカにおける全体の割合から見ても高い数字だ。 また、同大学バークレー校のマイケル・フリーマン教授によると「エネルギッシュでモチベーションが高く、クリエイティブな面を持つ人は、起業家になる可能性が高いと同時に、強い感情を持つ可能性も高い」とのこと。その結果、メンタルがやられる人も少なくない。 起業家はその立場上、誰にも相談できないことも多く、一人で乗り越えなければならないことばかりである。スタッフには常にポジティブな態度でいなければならないし、日々の仕事ぶりをこまめに褒めてくれる存在も少ない。なのに、上手くいかない場合は、全て自分が責任を負わなければならない。 経営者が孤独と言われるのも理解できるだろう。 リーダーは本当に孤独なのか? 日本での起業家の扱いに疑問を感じる 10数年前と比べると、日本もスタートアップを取り巻く環境がかなり改善されてきている。投資家やサポーターも増えたし、上場する会社の数も右肩上がりだ。起業家のイメージも爆上がりだろう。 その一方で、上手くいかなかった場合のセーフティーネットはまだまだ足りない気がする。場合によるが、敗者としてレッテルを貼られたり、借金を背負わされたり、就職先がなかったり、社会的に葬られたりすることもまだある。 東京でスタートアップイベントに参加して感じた事 日本とシリコンバレーにおけるスタートアップを取り巻く状況 もう一つ考えなければいけないのは、スタートアップを取り巻く状況だ。特に日本だと、まだまだその状況は良いとは言えない。もちろん以前よりは改善されているが、決して恵まれているとは言い難い。 下記は、経団連副会長の南場智子氏による資料の抜粋になる。 これを見てもわかる通り、サポートは少なく、リスクとリターンの割りが良くないことから、依然として負の循環が起こっている。 一方でこれがシリコンバレーの場合は、下記のようなポジティブサイクルが生まれていると考えられる。 起業家に対する3つの勘違いと、たった1つの真実 そもそも、ここで基本的なポイントとして、”なぜ”起業するかを考えてみよう。というのも、実は多くの人が誤った目的で起業しているからだ。 起業目的として、よく聞くのが 1. お金を儲けたい、2. 決定権が欲しい、3. 自由な時間に仕事をしたい。である。しかし、これはらすべて間違っている。 勘違い1: お金を儲けたい 起業する目的の中でも最も多い理由の1つ。特に最近だと、ユニコーン企業や大型IPOでファウンダーが大金持ちになるニュースを見る事もあり「自分も一発当ててやろう」という思いで会社を興すケースもある。 しかし、もしそれが目的なのであれば、やめた方が良い。そもそも自分で会社を始めるのはワリに合わない。新しいビジネスの実に、95%から99%が失敗すると言われる中で、金儲けを目的に起業するのは、単純にROIとしての計算が合わない。 そもそも、計算が苦手なら起業するのにはあまり向いていないし、もっとお金が欲しいという理由なのであれば、待遇の良い仕事に就いたの方がよっぽど目的が達成されやすい。 勘違い2: 決定権が欲しい 企業のいち従業員として働いていると、上司の指示に従わなければならないことも多く、自分で決められることにも限界あると感じる事も多いかもしれない。 これがもし自分の会社であれば、最高責任者として自分で決断ができる。そう感じて自分の会社を始めたいと思っている人もいるかもしれない。 しかし、CEOになればあらゆる決定権が持てるのであろうか? もちろん、会社のトップになるわけだから、そう思うかもしれない。 でも現実は全く違う。上司を持ちたくないという理由で起業しても、実はスタッフや、お客様、そして投資家、株主の方々が上司になってしまう。常に自分の周りの人々に根気よく説明をし、理解を獲得することに相当のエネルギーを費やす。起業家は、周りの人たちのサーバントとして仕事をすることになるだろう。 勘違い3: 自由な時間に仕事をしたい 自分の会社なのだから、自分のスケジュールは自分で決められる。これも起業家の醍醐味のように感じるかもしれない。まあ、間違っていない。誰からも指示を受ける事なく、自由に働くことが可能になる。 そう、一日20時間、自分の好きな時にね。 起業家になるたった1つの正しい目的 では、どんな目的があれば起業家になるべきなのか。実はその理由は1つしかいない。その答えは” – 世界を変えたい – そう。起業家という身体的にも精神的にも大きな負担がかかり、その割にはリスクが非常に高く、リターンもかなり少ない。 そんなワリに合わない立場になる唯一の目的は、素晴らしいチームを作り、優れたプロダクトやサービスを通じて世の中を変えたい。実はそれしか無い。逆に、そうでなければ起業する意味なんてない。 Youはなぜ面倒な起業家なんかに? だったら君もやる方に入ったら? ここまで説明して、僕が本当に伝えたいのは、“僕は君が起業家になることをオススメしない”と言われても、それでもやる人でないと続けられない世界であるということ。 これは、どの世界でもそうだと思うが、トップレベルで成功した人のその多くが、最低でも一度や二度は「そんなの無理だ、やめとけ」と言われた経験を持っている。 でも、それでもどうしてもやりたいぐらいの強い熱意がある人だけが一流として生き残れる。特にビジネスの世界は、孤独で、厳しく、理不尽である。それでも、どうしても起業家になりたい人だけがなったほうが良い。と僕は思う。    

UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則

UXデザインを行う際には、感覚ではなく複数のロジックを活用することで、より精度の高いプロダクトを創り出すことができる。そのプロダクトを人間が利用する場合、ユーザーの視覚や行動心理学などをしっかりと理解し、活用すればUXデザイナーとしての能力が一段と高まるはず。 今回紹介するのは、複数あるUXデザインにおける法則のうち、ビートラックスのデザインチームでも頻繁に利用される代表的な10の法則。プロのデザイナーなら、これは押さえておきたい。 全てのUXデザイナーが知っておくべき10の法則 ヤコブの法則 ヒックの法則 80/20の法則 パーキンソンの法則 フィッツの法則 ミラーの法則 テスラーの法則 FBMモデル ドハティのしきい値 3対1の法則 ヤコブの法則 ユーザービリティーの父であるヤコブ・ニールセンが提唱する法則。一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つというものだ。 既存のメンタルモデルを活用することで、ジェスチャー、視覚的な合図、スクロールなど、慣れ親しんだ動作でタスクに集中できるような、優れたユーザー体験を実現することができる。それにより、ユーザーが新しいモデルの学習をしなくとも良いため、体験価値が高まる。 デザイナーはついついクリエイティブなUIをデザインしようとしがちだが、今までにないような真新しい体験は、ユーザーを混乱させるだけである。最近のソーシャルメディア系のUIがどれも似たものになっていることにも、この法則を活用していると言える。 ヒックの法則 ユーザーが決断に要する時間は、選択肢の数や複雑さに応じて長くなるというもの。これにより、「選択肢が多いほど迷う」や「選択肢が多すぎると何も選ばなくなる」という現象を生み出す法則。 選択肢が多過ぎるとユーザーは迷ってしまい、こちらが望む行動を起こさないという好例と言える。一般的には選択肢を多く提示した方がユーザーが喜ぶと思われがちであるが、エンゲージメントを高めたいのであれば間違いになりうる。 彼らは選択肢が多過ぎると精神的プレッシャーを感じ、行動を起こさなくなってしまう。“選ぶ” という行動自体がハードルになってしまうのが理由。従って、商品やコンテンツが沢山ある場合は、なるべく小出しにしてユーザーに無駄なプレッシャーを与えないようにする方が良い。 コンバージョン率を向上させる7つの方法【UXデザイン】 80/20の法則 結果の80%は、たった20%の原因から生み出されているという法則。「パレートの法則」「ばらつきの法則」「働きアリの法則」などとも呼ばれている。一般的には、売上の80%は、20%のチャンネルから生み出されている。10ページのスライドのうち、最も重要な2ページで全体の80%が伝わる、など。 元々は経済学における法則として考えられたが、UXデザインにでも重要な法則となっている。 例えば、ユーザーは全体の機能のうち、20%しか使わず、その20%で80%の目標は達成される。UXデザインにおいては、ユーザー体験の中で最も重要な20%が何かを特定するのが重要になると言い換えることもできる。 パーキンソンの法則 正式には「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と表現される法則。一言で表現すると「先延ばしの法則」。時間に余裕があるとわかると、脳がリラックスする。 逆に、締め切りのプレッシャーを感じると、重要なことをすることや、時間内に終わらせなければならないことに集中する効果を与えられる。 この法則をUXデザインに当てはめると、コンバージョンを高めるためにユーザーに制限時間を設けるテクニックがある。Amazonで表示される「いつまでにオーダーすると明日中に届く」や、ワンタイムパスワードにカウントダウン時計が表示されるのもこの手法を活用している。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 フィッツの法則 人間の行動をモデル化する方程式で、「対象の大きさ」と「対象までの距離」と「対象の選択しづらさ」との相関関係を説明する法則である。 画面上で、マウスなどの入力装置を使ってものを指し示すときにかかる時間を計測するモデルで、ユーザーインターフェース設計における普遍的な法則とされている。 現在のポインターからの距離が小さくターゲット面の奥行きが大きいものほど短い時間で済み、ポインターからの距離が大きくターゲット面の奥行きが小さいものほど長い時間がかかる。つまり近くて大きいものほどポイントしやすく、遠くて小さいものほどポイントしにくい。 UXデザインへの具体的な活用例としては、モバイルアプリのボタンは大きく親指に近い方が利用体験が高まる。 ミラーの法則 平均的なユーザーがいっぺんに覚えられるのは最大で7つ (±2)であるという法則。プリンストン大学教授、ジョージ・ミラーによる研修では、即時記憶と絶対判断のスパンは、ともに7個程度の情報に限られるとの結果がでている。例えば、電話番号やパスワードで短期的に記憶できる桁数は平均的に7つになる。 この法則に従い、画面に表示されるオブジェクトを7つ以下、もしくは5つまでに抑えると、ユーザーが覚えやすかったり、選択肢を7つ以内に設定することで、ユーザーにストレスを与えないようにしたりするUXデザインのテクニックがある。 優れたユーザビリティを実現する25のUXデザイン基本概念 テスラーの法則 シリコンバレーの研究者、ラリー・テスラーによる「複雑さの保存の法則」とも呼ばれる法則。どんなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在するというもの。 ユーザー体験においても、それ以上単純化できない「臨界点」があり、それ以降は本来備わっている複雑性を移動できるだけだという考え方である。 この法則によると、どれだけシンプルなユーザー体験を実現しようとしても、そこには限界点が生じる。そこで、なるべく最後の複雑さをサービスやプロダクト側に寄せ、ユーザーにはできるだけスムーズな体験を実現することに注力するべきである。 優れたデザインは、複雑さの負担がユーザーではなくサービス側で処理する必要がある。 FBMモデル スタンフォード大教授のBJ Foggが唱えたビヘイビアモデルだ。人の行動や習慣というものは、3つの要因により構成されており、それを上手く活用することで人の行動や習慣をある程度思い通りにすることが出来るという法則。 ユーザーの習慣や行動を作り出すためには3つの不可欠な要因がある。その3つの要因とは “モチベーション、能力、引き金” である。これらの要因は互いに関連しており、プロダクトやサービスが3つの要因すべてを満たさなければ、ユーザーはそれを自分の行動や習慣の中に取り入れない。 行動心理学を利用したデザイン – ビヘイビアデザイン Part1~【UXデザイン】 ドハティのしきい値 システムのフィードバック時間が0.4秒以下になると、ユーザーの体験が“苦痛”から“中毒性”に変わるという法則。これは、1982年にウォルター・J・ドハティとアラビンド・J・タダーニによる研究を元にしている。 その研究によると、人間が認識→判断→処理→反応する際のスピードが、平均で0.4秒であることから、UXにおけるスピードを0.4秒以内に納めることで、ユーザーへのストレスを下げ、ユーザビリティをあげることにつながる。例えば、ページのロードスピード、ボタンが反応するまでの時間、メニューが開くまでの時間などの基準として利用される。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは 3対1の法則 ポジティブな感情がネガティブな感情を上回るには3つのポジティブな感情が必要であるという理論。これはGoogleも採用している、ユーザーが受け取るポジティブな感情とネガティブな感情を“瓶”の中に入れ、その“重さ”を天秤にかけるという方法。 このポジティブ3に対してネガティブ1を基準にデザインを行えば、ユーザーが喜ぶ体験を届けることができる。 Googleも採用するめっちゃ使えるUXデザイン手法

新規サービスを検証する際に確認するべき15の項目

我々ビートラックスは、これ前に多くの企業やスタートアップ起業家に対して、サービス開発に対するコンサルティングを提供している。
その中でも、現在進行中の福岡市主催のグローバルチャレンジ、内閣府アクセレレーションプログラム、経産省による始動 Next Innovator、大企業向けサービスデザインワークショップなど、世界規模での展開を想定したサービスに対するセッションを通じ、累計250以上のサービスへのサポートを通じて、社内起業家やスタートアップが新規サービスを生み出す際に外したくないポイントを抑えるよ…

プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル

デザイン会社の経営者として、これまで数多くのデザイナーと接してきた。その中で、どのようなデザイナーが活躍するのか、成長するのか、そして成功できるかのパターンが分かってきた。 デザイナーの価値を左右するのは非デザインスキルだ! 実は、重要なのは、”デザイン能力” だけではない。むしろ、デザイナーが成功するには、デザイン能力と同じぐらい、もしかしたらそれ以上に大切なスキルがある。 逆にデザイン力がめっちゃ高いのに、非常に残念な状態にハマっているデザイナーも見てきた。それらを踏まえ、デザイナーに求められる8つの非デザインスキルを紹介する。 なぜ日本ではデザイナーの地位が上がらないのか? デザイナーとして成功するために必要なデザイン以外の8つのスキル では、どのようなスキルがデザイナーにとって重要になってくるのか。これまでの経験とこれからの時代の変化を考えると、下記の8つのスキルになると考えられる。 では、デザイナーにとって、このレモンダイアグラムに表記されている、それぞれのスキルがなぜ重要なのかを考えてみよう。 共感力 「Empathy = 共感」は、デザインをする際の基本になる。デザイン思考の第1歩は「ユーザーに対する共感と深い理解」から始まる。作ったもの使ってくれる人の気持ちに共感できないと、どれほどデザイン力が高くても、自分が作りたいものを作るだけの、傲慢なアーティストと変わらない。 デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法 スピード GoodなデザイナーとGreatなデザイナーを分ける一つの境界線が仕事におけるスピードの差。同じクオリティーのデザインアウトプットを行うにしても、スピードが高いほどその仕事の価値が上がる。 これを式にすると「デザイン力 = デザインクオリティー x スピード」で表現される。どんなに素晴らしいデザインを作れても、プロの現場でスピードが遅いのは命取りになる。 シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? リサーチ能力 適切なデザインを行う際には、適切なリサーチが求められる。一般的に、デザイナーの仕事の先には使ってくれる人たちがいるので、その人々に最適なデザインを生み出すには、ユーザーの価値観や彼らが置かれた環境、状況といったコンテキストをしっかりと理解することが必要不可欠である。 また、社会の変化やビジネス的なトレンドに関しても事前にリサーチしておけば、デザインの精度が高まる。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のき ビジネスセンス 日本ではいまだにデザインとビジネスは結構遠い位置にいるように考えられている。現に、企業においてデザイナーが重要なポストにつくことはまだまだ少ないし、デザイナー出身の起業家も少ない。 しかし、海外に目を向けてみると、デザインの最も重要な役割がビジネスにおける利益の最大化で、デザイン力を活用して企業を成長させている事例に事欠かない。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか コーディング能力 絵を描くのがデザイナーの仕事、コーディングするのがエンジニアの仕事。そんな時代はとっくに終わっている。 現代では、デザイナーと言えども、自分の作り出したデザインをテスト用に動かしたり、エンジニアとのやりとりを円滑にしたり、プロトタイプ作成のためなど、コーディング能力が求められるシーンがもの凄く多い。特にデジタルサービスであれば、サクッとコーディングできるデザイナーの需要は非常に高い。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる マネージされ力 世界中で最もマネージしにくい人種がデザイナーである。これは多くのデザイナーをマネージしてきた感想。その仕事柄、自己承認欲求は強いし、ダメ出しに弱い。そして、一癖も二癖もある人が多いのがデザイナー。 逆に言うと、素直にフィードバックを受け止め、それを忠実にデザインに反映できる能力があるだけでも、デザイナーとしての評価が爆上がりする。 デザイナーを目指す前に知っておいてほしいこと: 【対談】上杉周作 x Brandon K. Hill – デザインの裏側 コンテンツ作成力 「デザインが先か、コンテンツが先か、それが問題だ。」これはWebデザインの現場でよく聞かれるフレーズ。特にデザインが装飾プラスアルファ程度にしか考えていないデザイナーは、コンテンツがないとデザインが行えないと思っている。もし自分でコンテンツが作れればそんな問題はすぐに解決する。 また、文字や画像、音などのコンテンツで世の中に情報を発信できるようになれば、よりデザイナーとての説得力も高まる。 Airbnbの創設者に学ぶストーリーボードの必要性 コミュニケーション能力 デザイナーの仕事の三分の一はコミュニケーションに関するものである。これは意外と知られていないが、プロの現場では間違いなくそう。むしろ、デザイン作業はアウトプット作成としての全体の仕事のごく一部であり、その多くが顧客やユーザーとのやりとり、メンバーとのディスカッション、そして作り出したものに対してのプレゼンテーションに費やされる。 それを考えると、デザイン力が高くてもコミュ力が低いでデザイナーの価値は格段に低い。 デザイナーの役割とその意外な仕事内容とは ボーナス: 性格の良さ 上記の8つのスキルに加えて、性格が良いのもプラスになる。これはデザイナーに限ったことではないが、やっぱり誰でも一緒に仕事をしてて心地よい人と時間を過ごしたいと感じる。 デザイナーとは職種ではなくマインドセットである まとめ: デザイナーとして活躍できるかは非デザインスキルが左右する よりデザイナーの重要性が高まるにつれて、デザイナーに求められるスキルセットも変化している。それと同時に、非デザインスキルもとてもプロデザイナーにとっては、重要なファクターになっている。これは結構盲点で、デザインに関してのスキルばかり求め続けてもなかなか仕事が増えなかったり、キャリアアップできなかったりする。その一番の理由は、非デザインスキルが伴っていないから。 そもそも、非デザイナーからしてみると、専門的な能力よりも、一緒に仕事がしやすい、楽しい、プロジェクトがうまくいく事の方が重要だったりする。この辺も、一度ユーザー視点で考えてみると新たな発見があるかもしれない。 デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ

AIにおけるジェンダー・バイアス問題を考える

日常生活だけではなく、さまざまな産業においてもジェンダー・バイアスが存在している。 例えば、多くの自動車のエアバッグやシートベルトといった安全装置は、クラッシュテストから得られるデータを元にデザインされているが、そこで利用されるダミー人形の多くが男性の体型を元にしてろ、女性の体格や妊婦は想定されていない事が多い。その結果、女性は同じような事故に遭った男性に比べて、重傷を負う可能性が47%、死亡する可能性が17%高い。 AIにおいてもジェンダー・バイアスの懸念が データにおけるジェンダーギャップは必ずしも生命を脅かすものではないが、さまざまな業界での人工知能モデルの設計や使用は、女性の生活に大きな不利益をもたらす可能性がある。 ガートナーの調査によると、2022年までに、AIプロジェクトの85%が、データ、アルゴリズム、またはそれらを管理するチームの偏りが原因で、誤った結果をもたらすことになると発表されている。 音声アシスタントのほとんどが女性 ちなみに、よく考えてみるとAlexaやSiriなどの音声アシスタントのその多くが女性である。まあ、女性というか名前が女性的だったり、声のトーンが女性っぽかったり、返答内容が女性を前提としている。 よく考えると、Google Mapの音声ナビも女性の声だ。細かい話になるが、これももしかしたら「アシスタント=女性」というバイアスからきてるのかもしれない。 女性であることが多い音声アシスタント: Siri, Alexa, Google Assistant, Cortana 参考: AI音声アシスタントってなんで女性なの?【クラーク志織のハロー!フェミニズム】 データが偏ると、結果にバイアスが掛かる バイアスを生み出す最初の原因がデータの偏りだろう。人工知能に不可欠なデータ収集プロセスにおいて「正しい」質問がされていない場合、ビジネスや経済にも悪影響を及ぼしてしまう。 例えば、何十年も前から循環器疾患は男性の病気と考えられていた。それにより、主に男性から収集したデータを元にしたオンラインアプリが、女性ユーザーに「左腕や腰が痛い」という症状を「うつ病のせいかもしれない」と提案することがあるという。 この場合、同じアプリを利用したとしても、男性ユーザーには、心臓発作の可能性があるという診断に基づいて、すぐに医師に連絡するようにアドバイスするのに対し、女性には数日後に医師の診察を受けるように表示するかもしれない。これは元となるデータの性別に偏りがあることが原因になるが、女性も心臓発作の被害に遭う可能性があることは明らかである。 AIによる顔認証の元データにも偏りがある このような問題は性別だけにとどまらない。人種的なデータの偏りも見られる。例えば、さまざな顔認識アルゴリズムの入力画像データのうち、白人の画像が80%、男性の顔が75%の割合を占めている。その結果、男性の顔認識精度は99%と高精度であるのに対し、黒人女性を認識する能力は65%にとどまっており、その精度に差が出ている。 言語データに潜む潜在的なジェンダー・バイアス ここで、AIが利用する”言語”に関してのジェンダー・バイアスを見てみよう。 近年の自然言語処理(NLP)の進歩により、機械はますます高度な単語表現を生成できるようになった。最近発表されたGPT-3、M2M 100、MT-5のように、複雑な論文を書いたり、テキストを複数の言語に翻訳したりすることができ、以前の反復よりも優れた精度を持つ強力な言語モデルが毎年、研究グループから発表されている。 しかし、機械学習アルゴリズムは摂取した訓練データに基づいて機能するため、どうしても必然的に、言語データ自体に存在する人間のバイアスを拾ってしまう。 明らかになったGPT-3におけるバイアス 去年の夏、GPT-3の研究者は、性別、人種、宗教に関連したモデルの結果の中に、固有のバイアスを発見した。その中でも、ジェンダー・バイアスに関連して、性別と職業の関係や、ジェンダー化された記述語が含まれていた。 例えば、アルゴリズムは388の職業のうち83%が男性の仕事である可能性が高いと予測した。また、「美しい」や「ゴージャス」などの外見に関連する記述語は、女性に関連する可能性が高くなっている。 AI時代のUXデザイン、GPT-3から考えるこれから必要なマインドセット AIが学んだ人間界の職業に対するジェンダー・バイアス 王様や女王様のような、一部の表現や用語が本質的にジェンダー化されている一方で、多くの職業に関連する用語は、本質的にジェンダー化されるべきではない。 しかし、上に引用したGPT-3の研究例では、機械は、銀行員や名誉教授などのより高いレベルの教育を示す職業は男性に傾いており、助産師、看護師、受付嬢、家政婦などの職業は女性に傾いていると推測している。 また、「有能」と認められた職業は、男性の傾向が強かった。このような結果は、GPT-3だけではなく、異なる機械学習モデルやアルゴリズムの中で何度も何度も起こっていることがわかった。 AIが男性寄りと認識した職業 銀行員 名誉教授 医者 パイロット AIが女性寄りと認識した職業 助産師 看護師 受付嬢 家政婦 AIがジェンダー・バイアスを持つ危険性 では、AIにおけるジェンダー・バイアスは、実際にどのような弊害を生み出すのであろうか? おそらくそれは、AIを活用するシステムやアプリが、知らず知らずのうちにユーザーに対して不公平な判断をすることになる地雷だろう。 例えば、今後AIによって、多くのサービスの自動化が進むことで、雇用慣行からローン申請、刑事司法制度に至るまで、AIを活用したあらゆるサービスが偏ったアルゴリズムの影響を受ける可能性がある。そして、その結果がユーザーの性別によって大きく変わると予想される。それも、目に見えにくい場所で。 人間からAIに引き継がれる言語バイアス 上記のように、ジェンダーをはじめとする多くのバイアスが我々の使う言語に横行し、そして長い年月をかけて蓄積されている。 では、どのようにすればそれを自然言語処理を利用する機械や人工知能に永続させないようにできるのだろうか? それが今大きな課題となってきている。 AIにおける公平性はデータそのものの公平性に左右される AIが人間からジェンダー・バイアスを引き継ぐのは、明らかに理想的な結果ではない。しかし、機械学習システムは、処理するデータよりも優れたものになることは難しい。 私たちの社会に予め存在するバイアスは、私たちの話し方や書き方に無意識のうちに影響を与えている。その影響下で書かれた文章や、話されている言葉は最終的に機械学習システムを訓練するために使用される。 そのため、そのバイアスのかかったデータを使ってモデルを訓練すると、それがモデルに組み込まれ、既存のバイアスが保存されてしまう結果となる。 Web上のデータ自体がバイアスだらけ? 一般的には、機械が人間の言葉を学習する際には、データが多ければ多いほど性能の良いモデルが得られるとされる。そして多くの場合、より多くのデータを取得するための最善の方法は、大規模なウェブクロールを通じて膨大なデータを獲得することである。 もちろん、インターネットやその他のコンテンツは、実際の人間の言語で構成されているため、データは当然人間と同じバイアスを持つことになる。残念ながら、これらのウェブクロールされたデータセットの中のコンテンツには十分な注意が払われていない。 機械学習におけるジェンダー・バイアスを減らす方法は? 自然言語処理を活用した機械学習システムにおけるジェンダー・バイアスを減らし、より正確で公正ものにするための第一歩は、そのプロセスにおいて人間が積極的に関わっていくことだろう。 AIがデータからバイアスを学習することがわかっているのであれば、データのバイアスを取り除くことが最善のアプローチになる。そのような手法の一つが「ジェンダー・スワッピング」である。 ここでは、学習データを拡張して、ジェンダーのある文ごとに代名詞やジェンダーのある単語を反対のジェンダーのものに置き換え、名前を実体のプレースホルダで置き換えることで、追加の文が作成される。 例えば、”花子は彼女の弟の太郎をハグした “には、”NAME-1は彼の妹のNAME-2をハグした “も生成する。 この方法では、学習データはジェンダーバランスのとれたものになる。また、名前に関連付けられたジェンダー特性を学習しない。例えば、このアプローチは、男性と女性のコンテクストを同じ回数見たことになるので、”ハグする”という行動に対してのジェンダー・バイアスが生まれなくなる。 言語によって難易度が格段に異なってくる 上記のアプローチは英語や日本語では簡単だが、他の言語でははるかに困難であることに注意する必要がある。 例えば、フランス語、ポルトガル語、スペイン語などのロマンス諸語では、文法的に中立的な性別は存在しない。これらの言語では、形容詞や他の修飾語も同様に性別を表現する。その結果、異なるアプローチが必要になってくる。 具体的には、主語の性別を格納するメタデータを文に追加する方法。例えば、”You are very nice “という文は英語では性別が曖昧だが、並行するポルトガル語の文が “Tu és muito simpática “であれば、英語の文の最初にタグを追加して、モデルが正しい翻訳を学習できるようにする。 ジェンダー・バイアスを取り除くには手間と時間がかかる これらの方法は自然言語処理モデルのジェンダー・バイアスを減らすことができるかもしれないが、実装には時間がかかることが容易に想像できる。 また、それぞれの国の言語によって特性が変化し、マイナー言語も含めるとかなりのケースに対応しなければならなくなるため、かなりの手間になる。 世界各地で進む自然言語処理におけるジェンダーニュートラルの動き 例えば、2018年にGoogleは、Google翻訳が4つの言語の単一単語の翻訳を女性形と男性形の両方で英語に返すことを発表した。 また、ブルームバーグの研究者たちは最近、言語ベースのモデルを人間が補足記入するための最善の方法について共同研究を行っている。 ブルッキングス研究所のような多くの研究機関は、偏ったアルゴリズムに起因する消費者被害を軽減する方法に注目しており、最近では音声やチャットボットを活用している。 テクノロジー業界の女性率も重要なファクター 女性の技術者を増やしたり、テクノロジー企業における助成率を高め、思想の多様性を高めることとで、AIにおけるジェンダー・バイアスの増幅をおさえる方法の一つになりえる。 世界経済フォーラムによると、世界のAI専門家のうち女性はわずか22%であるのに対し、男性は78%である。 また、ブルームバーグによると、大手テクノロジー企業8社では、技術職のうち女性が占める割合は20%にとどまっているという。技術系企業は、男性よりも女性の採用数が少ないだけでなく、女性の離職率も早い。 ボストン・コンサルティング・グループによると、世界的に見て、科学、技術、工学、数学(STEM)分野で働く人のうち女性は25%にすぎませんが、これらの分野のリーダーのうち女性は9%しか占めていない。 現在見られる、この偏りは今後のAIにおけるジェンダー・バイアスを生み出す一つの要因になるかもしれない。 シリコンバレーでは教育が始まっている“STEAM人材“とは? AIにおけるジェンダー・バイアスを減らす5つのステップ Step 1: AIの開発に関わる女性を増やす 上記の通り、テクノロジー関連、特にAIの領域における女性の割合がかなり低い。ジェンダー・バイアスを減らすための第一歩としては、女性と女性の経験をAIと自動化システムの設計、開発、応用に関連するすべての段階で適切に統合されるのが良いだろう。 テクノロジー企業におけるあらゆるの役職でより多くの女性を積極的に雇用することに加えて、AIを開発と活用する企業は、初期の時点からジェンダーの専門家からのアドバイスと、女性の意見やデータを積極的に活用するのも良いと考えられる。 Step 2: データの男女バランスを整える 次に、アルゴリズム、AI、自動化に情報を提供するデータは男女別に集計する。そうしなければ、女性が経験はこれらの技術ツールに情報を提供することができず、女性に対する既存のジェンダー・バイアスを内在化し続ける可能性がある。その際には、女性に関するデータであっても、内在するジェンダー・バイアスには気をつける必要はあるだろう。 Step 3: AIを利用した仕組みを多様な人々によって検証する 言語処理の項目でも紹介した通り、ジェンダーニュートラルな仕組みを作るのにはどうしても手間が掛かる。AIと同義語のように利用されている「自動化」というフレーズから、全て機械が自動的に処理してくれるように感じるが、バイアスを取り除くには、複数の異なるバックグラウンドを持った人々による検証と、微調整が必要になってくる。 […]

ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】

なぜアメリカではコロナの検診スピードが格段に速いのか? その秘密の一つが、デジタル技術を活用したテストプロセスに隠されている。今回UX分析の対象として試してみたのは、ヘルステック系のスタートアップ、Carbon Healthが提供するサービス。
このスタートアップは元々、遠隔医療に関する仕組みを提供していたが、新型コロナウィルスの拡大により、現在ではそれら加えて、サイト、アプリ、そして検査用のポップアップステーションを活用した検査を迅速に行っている。
アメリカでは誰でも無料でコロナ検査が可能
現在ア…

有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

ブランドのロゴをデザインする際にいくつかのポイントがある。可能な限りシンプルにすること。普遍的であること。複数の媒体で利用できることなど。それに加え、ワインポイント隠されたメッセージを埋め込むのも、デザイナーの腕の見せ所になる。
優れたロゴに隠し味あり
世の中で知られている著名な露の語の中には、一見気づかないようなメッセージやトリックが隠されているものある。そのようロゴは普段気づかずに無意識に見ていても、いつの間にかブランドが伝えたいメッセージを消費者の脳裏に焼き付けている。
もしくは、単純にデザイ…

有名ブランドロゴの中に隠された秀逸なメッセージ

ブランドのロゴをデザインする際にいくつかのポイントがある。可能な限りシンプルにすること。普遍的であること。複数の媒体で利用できることなど。それに加え、ワインポイント隠されたメッセージを埋め込むのも、デザイナーの腕の見せ所になる。
優れたロゴに隠し味あり
世の中で知られている著名な露の語の中には、一見気づかないようなメッセージやトリックが隠されているものある。そのようロゴは普段気づかずに無意識に見ていても、いつの間にかブランドが伝えたいメッセージを消費者の脳裏に焼き付けている。
もしくは、単純にデザイ…

テスラの成功確率は10%だった – イーロン・マスクが語る無謀なビジネスを成功に導く5つの秘訣

ここ一年で最も躍進した企業の一つがTeslaだろう。2021年1月25日の時点で同社の株価は一年前の800%超を達成し、時価総額も8,000億ドル超えた。世界の企業全体でもFacebookの時価総額を抜き、現在世界7位の企業にまで成長している。それに伴い、同社CEOのイーロン・マスクは世界一の富豪となった。
1年間で急進したテスラの株価

Teslaの時価総額はTOYOTAの約3倍で自動車メーカーとしては世界一位。TOYOTA, VW, ダイムラー、GM, BMW, Volvo, Honda, Hy…

音によるブランディング – サウンドロゴとは

人間が情報を得る際に最も利用しているのが視覚。実に全体の87%もの多くの情報を視覚から得ている。それが理由で、ブランディングにおける最重要要素はビジュアルデザインだ。 その一方で、最近は音声に利用したサービスの人気が高まっていることもあり、“音”の重要性にも着目したい。 感情を動かす音の力 実は、音には、特定の感覚を呼び起こす効果がある。時にはビジュアル以上に。例えば、皆様もお馴染みのこの音を聞いてほしい。 もちろん、これはiPhoneのアラーム音。これを聞くとなぜか胸騒ぎがして、落ち着かなくなる感じがする。それもそのはずで、この音、そのように“デザイン”されているから。 そう、音もビジュアルと同じく、ユーザーに特定のメッセージを伝えるためにデザインされる。そして、それが上手にできればかなり強力な武器にもなり得る。 音は世界共通の言語 よく音楽に国境はないと言われる。音の素晴らしさは、文字やビジュアルと比べても人間の感情に直接的に訴えかける力があり、文化や言語の壁を超えやすい。心地よい音と不快な音は、世界共通なのだ。 と、いうことは、このメディアを上手に利用することができれば、かなりかなりパワフルなブランディング要素ともなり得るのだ。 サウンドロゴとは そして、その音を使ったブランドアイデンティティーが、通称「ブランドロゴ」と呼ばれるもの。ブランドロゴとは、テレビのCMの最初や最後に数秒だけ流れる音。最近だと、動画向けにロゴのアニメーションと共に表示されることも増えた。 視聴者は何度も聞いているうちに、その音を聞いただけでどのブランドかがわかるようになる効果がある。 では、いくつか有名なブランドロゴを紹介していこう。 McDonald’s おそらく最も有名なサウンドロゴの一つが、マクドナルドの“I’m loving it”だろう。2003年から始まった広告キャンペーンで採用されたこの曲は、フルバージョンをアイドル歌手のJustin Timberlakeが歌い、その後サウンドロゴとしても利用され、世界中で広い認知度を獲得した。 Intel もう一つ、日本でもかなり有名なサウンドロゴがインテル。”Intel Inside”を「インテル入ってる」としたキャッチコピーも秀逸だが、このサウンドロゴもかなりブランドのイメージを上手に音で体現している。 Netflix オンラインサービスでもサウンドロゴを活用してるケースが出てきた。その代表格がネットフリックス。画面を立ち上げた際に出てくるインパクトのある音は、いつの間にか脳に刷り込まれている。 FamilyMart 恐らく日本で最も有名なサウンドロゴの一つがFamilyMartだろう。この音を聞くだけでお店に入った際の香りや色合いが蘇ってくる。それぐらい刷り込みがされている音になった。 PlayStation もう一つ日本のブランドで世界的に知られているユニークなサウンドロゴがPlayStation。あの、女性の声でカタカナ英語で「プレイステーション」と言っているのが国外でも利用されて、ユニークなシンボルになっている。 業種別サウンドロゴ 上記のような著名なサウンドロゴ以外にも、多くのブランドが音でそのイメージを体現しているので紹介したい。それぞれの業界ごとに特徴があるので面白い。 自動車関係 スピード感と鼓動感を感じさせるものが多い。 Mazda Porsche Audi BMW VW コンピューター関係 未来的な印象を与える。 Apple Macintosh WIndows 98 Windows XP Windows 7 ゲーム関係 簡潔で明るいタイプの音。 PlayStaion Nintendo Wii Nintendo Switch XBOX 360 家電関係 電気的な感じに少し優しいトーンを組み合わせている。 SONY LG SAMSUNG 航空会社関係 大空と空港の壮大さを感じさせる。 Lufthansa これからは音も大切なブランド要素になる 以前に最近の企業ロゴが似通ってきていて、どんどんアイコン化が進んでいるという話からもわかる通り、ブランディングにおけるアイデンティティの形は時代と共に変化する。 デジタルメディアの普及が進むにつれ、ブランド施策もアップデートしてく必要があるだろう。その中で、音を利用したブランディングも考えてみても良いかもしれない。 最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾

Clubhouseで明確になった後発サービスが勝つための5つのポイントとは

2週間ほど前から日本では音声SNSサービス、Clubhouseの人気が急激に高まってきている。この現象に関して、アメリカ側の視点から書かれた記事「Demystify the Clubhouse Craze in Japan」にも記載されている、ある一つの点に関して考えたい。 それは、サービスの形態自体は特に斬新ではないということ。音声を利用したサービスはPodcastをはじめ、以前より多く存在していたし、それにSNS要素を追加させたタイプもStand.fmやDabelなどの先発サービスがリリースされていた。 それなのに、かなり後発のClubhouseがなぜそんなにも爆発的な話題を集めているのか?おそらく、その謎を解くことがサービスデザインにおける大きなヒントになると考えられる。 後発でもヒットしたプロダクト例 この謎を解くために、まずは今までに他の商品やサービスで後発なのにヒットした例や、先発なのに失敗した例を見てみることにする。というのも成功しているサービスの多くが結構後発である。逆に真っ先に動いた企業は、タイミングが早すぎたり、市場の準備ができる前に資金が尽きてしまうことも多い。 ■ Gmail リリース日: 2004年4月 先発サービス: Hotmail, AOL, Yahoo Mail 現在ではEメールの代名詞になっているGmailも、実はかなり後発のサービス。ネットの普及が進み、Webメールサービスが提供されていたのが90年代中盤。HotmailやAOL, そしてYahoo Mailなのが代表的なサービスになっていった。 しかし、Googleによる、よりクリーンで使いやすいメールとして”Email that doesn’t suck (イケてるメールサービス)”をキャッチコピーとしたGmailの人気が一気に高まり、後発ながらも、現在最も多くのユーザーを獲得しているメールサービスとなった。 Gmailの前に人気の高かったHotmail。スパムがめっちゃ多かった ■ Zoom リリース日: 2012年9月 先発サービス: Skype, Google Meet, WhatsApp リモートワークが進んだことで、最もユーザーを増加させたサービスの一つがZoomだろう。それまでもSkypeやGoogle Meetなど、ビデオコールのサービスが多く存在しており、完全にレッドオーシャンだと思われた市場に彗星のごとく登場した。 それも、それまでの多くのサービスが無料だったのに対して、Zoomは無料プランに制限をかけ、多くのユーザーが有料プランを利用している。それにより、売り上げもうなぎ登りになり、上場も果たした。 Zoom以前にも無料のビデオコールのサービスが存在していた ■ Slack リリース日: 2013年7月 先発サービス: HipChat, Yammer, Chatwork ビジネスチャットツールとして、現在では堂々たる地位にあるSlackも、実はそのカテゴリーにおいては、結構な後発のサービス。 Slackが出る前にも、HipChatやYammer, そして日本発のChatworkなど、複数のビジネスチャットツールが存在していた。しかし、Slackはそれらを大外からことごとくぶち抜いてしまった。 Slackよりも前にリリースされていたHipChat(左)とYammar(右) ■ Facebook リリース日: 2004年2月 先発サービス: Friendster, MySpace Facebookが元祖SNSサービスだと思っている人も少なくないだろう。しかし実は、Facebookの前にもFriendsterやMySpaceといった類似のサービスが存在してた。 日本にもmixiがあったが、現在では「マイミク申請していいですか?」と聞いて理解してくれる人は少ないか、笑いをこらえるのに必死になる人もいるだろう。 Friendster(左)とMySpace(右)はFacebookの数年前にリリースされていた ■ Google リリース日: 1997年1月 先発サービス: Friendster, MySpace ネットが普及し始めて最も初期のサービスが検索エンジン。その中でGoogle Seachは最も後にリリースされたサービスになる。 Googleが出てくる前までは、Yahoo, Excite, Lycos, AltaVista, Infoseekなど、複数の検索エンジンが乱立しており、毎月のように利用者ランキングが入れ替わる検索エンジン戦国時代だった。そんな中で天下布武を成し遂げたのが、後発のGoogleだった。 ■ iPhone リリース日: 1997年1月 先発サービス: Palm, Blackberry, ザウルス, ガラケー 世界初のスマホはiPhone出ることは間違いない。そういった意味では先発のように思うかもしれないが、実はその前にもいくつか類似のデバイスは存在していた。 Palmやザウルスに代表されるPDAやBlackberryだ。ネットに繋がる携帯という意味では、日本のガラケーが十年以上も前にすでに存在していた。 スマホの前身であるPDAやBlackberry ■ Tesla リリース日: 2010年5月 (Model S) 先発サービス: GM EV1, シボレー Volt 自動車会社として世界一の時価総額を達成したTeslaは、もちろん自動車会社としてはめちゃくちゃ後発。むしろ21世紀にできた数少ない自動車メーカーだろう。 そして、EV車両としても、すでにGMやシボレーがTeslaよりも前にリリースしていた。しかし、それらがことごとく大失敗をしたEV焼け野原の中から、真打としてTeslaがリリースした初の量産モデルのModel Sが大成功した。 アメリカ初の量産EVであるGMのEV1は派手に失敗した ■ Instacart リリース日: 2013年6月 先発サービス: Webvan […]

DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革

日本では企業のDX推進が急務とされているようだが、いまいちうまくできている感じがしない。それもそのはずで、DXの第一歩はテクノロジー導入ではなくて、カルチャー変革であるから。
例えば、まずは成功しているテクノロジー系スタートアップに共通している企業カルチャーを参考にし、実践するなどの取り組みがなければ、最近流行りのDXなんちゃらを実現するのは無理だろう。
イノベーティブな企業になるための5つのカルチャー変革
これまで日米の複数の大企業やスタートアップと仕事をしてみた結果、デジタルテクノロジーを活用し…

btrax CEOによる2021年のイノベーショントレンド予想

毎年行っているイノベーション予測の中で、おそらく今年が最も難しいだろう。というのも、2020年初に想定していた未来はパンデミックの襲来でその起動が大きく変わってしまったから。変化と混乱の中で、時代は大きく変化している。
この急速な変化と不確実性の中で、新しいニーズがどんどんと生み出され、それに対して求められるソリューションも山積み。この非現実的とも言える新しい日常生活で、今年こそは、今までにないほどイノベーションが求められる年になってくるだろう。
リモートワーク採用の加速から消費者の行動の変化まで、…

【2021年予想】5のスタートアップトレンドと注目サービス25選

2020年がスタートアップにとってジェットコースターのような年にだったことは間違いない。パンデミックの影響で一部のテクノロジー系スタートアップは閉鎖を余儀なくされたが、多くのスタートアップが成功したのは、時代の変化に合わせて事業戦略や製品をピボットしたからだ。 人々の生活としても、リモートでの仕事、ショッピング、ソーシャルなどへの大規模なシフトが伴った。それに合わせ、多くのデジタルサービスへの需要が高まった。ある意味、パンデミックが多くのサービスに対してのストレステストとなった。 2020年に消滅した18のスタートアップとその理由 大型IPOと資金調達 2020年はLemonade, Snowflake, Airbnb, Unity, DoorDashに代表される大型IPOが達成された年でもある。また、世界の混乱の陰で着々と資金調達を行なったスタートアップも少なくない。その総調達額の合計は136億ドルにも達する。 2020年のスタートアップ資金調達額ランキング Yuanfudao (中国) – 教育系: 32億ドル Ke.com (中国) – 不動産系: 24億ドル WM Motor (中国) – モビリティ: 15億ドル Gojek (シンガポール) – 教育系: 12億ドル Ryaen Holding (シンガポール) – 投資系: 10億ドル MGI Tech (中国) – ヘルスケア系: 10億ドル Wandian Yunwang (中国) – eコマース系: 9億ドル Grab (シンガポール) – ライドシェア系: 8.56億ドル JD Health (中国) – ヘルスケア系: 8.3億ドル Resilience (アメリカ) – バイオ医薬品製造系: 7.5億ドル 2021年からのスタートアップトレンド予想 2020年に引き続き2021年もスタートアップに対しては、さらなる変革が求められている。ほとんどの企業は、既存のテクノロジーと将来のテクノロジーを吟味し、生き残るための方法を模索している。その一方で、ニューノーマルにおける新しいニーズに対して参入するサービスもどんどん出てくると考えられる。 2021年も確実に繁栄を続けるであろうスタートアップ業界のトレンドをいくつか紹介する。このトレンドをもとに商品やサービス開発の参考になれば幸いである。 リモートワーク関連 デリバリーロボット系 遠隔医療関連 オンライン教育関連 5Gを活用したスタートアップサービス 1. リモートワーク関連 パンデミックで話題になった新しいワークスタイルには、まだまだ大きな成長の余地がある。2020年に多くの企業がリモートワーキングモデルに移行する中でも、多くの課題が見えてきた。そして、現在のサービスやツールでリモートワークが完全に解決したとは言えない。 もちろん、セキュリティは大きな課題となるが(例:Zoomのセキュリティ懸念)、それ以外にも、オフィスで働いている人たちとのコラボレーションや、個人のリモートプロセスの自動化などの機会も十分残されている。 パンデミックが落ち着いてからも引き続きリモートワークを続けると答える企業は多く、この市場はまだまだ黎明期で、スタートアップがこれらの問題に取り組むための大きなチャンスがあることを意味している。多くのスタートアップは、2021年に向けてリモートワークツールの分野での成長が期待されている。 リモートワーク関連で注目のスタートアップは: Spatial: ARを活用したコラボサービス Abodoo: ノマドワーカーのためのプラットフォーム Miro: バーチャルホワイトボードツール Figma: コラボレーション型デザインツール Bluescape: 大企業向けコラボツール Spatial: ARを活用したコラボサービス リモートワークが進む中で、ホワイトボードや付箋を利用したコラボやディスカッション、ワークショップの必要性も高まっている。その相反する2つのニーズをARと3Dテクノロジーを活用して実現するサービスを提供しているところが注目ポイント。 https://spatial.is/ Abodoo: ノマドワーカーのためのプラットフォーム リモートワークやフレキシブルな仕事を探している人が、無料でスキルプロフィールを作成してチャンスにマッチするようにするためのプラットフォーム。新しいワークスタイルに求められるタイプのサービスである。 https://www.abodoo.com/ Miro: バーチャルホワイトボードツール リモートワークの最大のデメリットである、複数でのコラボレーションワークをオンラインで再現したサービス。ビートラックスでも、2020年よりオンラインワークショップの際に利用している。付箋機能も充実しているため、ワークショップ向けだ。 https://miro.com/ Figma: コラボレーション型デザインツール 2015年にリリースされ、すでにデザイン業界ではよく知られているFigmaは、リモートワークを中心としたワークスタイルに最適なツールになった。多くの場合、UIのデザインやプロトタイプ作成に利用されるが、一般的なドキュメント作成などでも利用可能。現在、ビートラックス社内でもメインのデザインツールの一つになっている。 https://www.figma.com/ Bluescape: 大企業向けコラボツール コラボレーション系ツールを提供するSaaS企業の中でも、Bluescapeはより視覚的に理解しやすいツールを充実している。複数のチームメンバーで作成するコンテンツや、会話内容をオンラインの仮想ワークスペースで一元管理できるようになっている。また、大企業向けにセキュリティーにも力を入れている。 https://www.bluescape.com/ リモートワークで企業カルチャーを醸成する方法 […]

これから失われる仕事と求められ続ける3つの能力

2020年が百年に一回あるかないかの時代の変還期であったことは間違い無いだろう。それまでのテクノロジーの進化で生活スタイルに少しずつ変化は訪れていたが、今回のパンデミックの影響はそれまでの10年以上の大きなシフトを世の中に生み出した。 1年間で10年分成長したEC市場 例えば、eコマースひとつとってみても、Stay homeでオンラインでオーダーする機会が増えたことにより、全体の買い物におけるECの占める率が格段に増大した。 アメリカ国内に関する統計を見てみると、新型コロナウィルスが広がり、人々の生活に影響が出始めた2020年4月までの統計だけでも、実にその成長率は10%を超えている。それまでの年間成長率が2%以下であったことを考えると、驚異的な伸びである。 2020年だけでeコマースは10年分の成長を成し遂げた コロナの影響で時代の変化が加速 今年に入って、おそらく多くの方々がリモートワークを経験したと思われる。また、感染予防のために、ミーティングをオンラインで行ったり、出張を控えたりするのが一般的になってきている。 また、これまでの業務形態に対して何らかの変化を強いられたケースや、業務そのものが消滅したケース、場合によっては会社ごと無くなってしまうこともあっただろう。 仕事内容にも大きなシフトが これまでもネットやAIの発達などでさまざまな職業に変化が生まれていた。それに加えDXの普及もあり、今年1年間だけでも相当な種類の仕事に影響が生まれた。また、今後の影響も考えて、コロナの影響、時代の変化、テクノロジーの進化のキラーコンボによって多くの仕事に影響が出ると考えられる。 米国労働省による失業保険に関する統計によると、下記の業界に大きな影響が出ている。 コロナの影響で失われた仕事の割合 宿泊業: 42.3%↓ スポーツ・芸能: 45.5%↓ 家具屋: 46.3%↓ レストラン・バー: 48.1%↓ 映画撮影・サウンド収録: 48.3%↓ 歯科医院: 53.3%↓ ランドリー・クリーニング: 53.5%↓ アパレル店舗: 58.9%↓ 遊園地・カジノ: 59.9%↓ 観光に関する搬送業: 62.1%↓ おそらく下記のような仕事はしばらくの間必要とされないか、ニーズが格段に低下する。もしくは、今後存在しなくなっているかもしれない。 レジ係 銀行の窓口 飛び込み営業 旅行エージェント イベントプランナー アパレルショップ店員 ウェイトレス・ウェイター 15年後にあなたの職業が存在している可能性 ここで紹介した調査データがある。アメリカの調査期間が、既存の職業の20年後における生存率を割り出した。その結果による職業と15年後のに機械に奪われる可能性に関する調査結果を幾つか紹介する。 現在の職業が15年後に機械に奪われる可能性: プログラマー: 48.1% ソフトウェアエンジニア: 4.2% 家政婦: 68.8% ウェイター/ウェイトレス: 93.7% バーテン: 76.8% 調理師: 96.3% シェフ: 10.1% 経理: 97.6% 経理部長: 6.9% 単純作業の仕事内容は消える可能性が高い これをみてもわかる通り、その仕事内容によって20年後もその職業が存在するかどうかが大きく異なる。例えば、機械化率96.3%の調理師と93.7%のウェイターが示すのは、15年後の世の中の多くのレストランが全自動になっていると言う事である。その一方で、メニューを考案したり、調理方法を決めるシェフは自動化される可能性が低い。 同じく単純作業が仕事の経理の仕事は97.6%の確率で機械に奪われると予想されているのに対し、経理部長という人とのコミュニケーションを必要とされるマネージャー職を機械が行える可能性は7%も無い。これは、人間だからこそ出来るタイプの仕事だからであろう。 ユーザーの立場に立って設計や仕様決めを行うソフトウェアエンジニアの仕事はほぼ機械に奪われる可能性が無い (4.2%)に対して,ある程度単純作業となるプログラマーの仕事は50%弱の可能性で今後自動化が進む。 新しく生み出される仕事も 自動化に関するテクノロジーが進む事で無くなる仕事があると同時に、新しい仕事も生み出されると予測される。 マッキンゼーの調査によると、新たに創出される仕事の7割は「人間的な仕事」が占めている。直感的な意思決定、創造的な成果、芸術的なデザイン、顧客や取引先との複雑な交渉。企業にとって多くの価値創造は人間にしかできない仕事によって支えられている。 時代の変化でこれから生まれる8のデザイナー職 今後も普遍的に必要とされる3つの能力 では、どのようなスキルを身につければこれからも人工知能等の機械に仕事を奪われないのであろうか。現在の企業内での仕事内容は、管理された組織の中で正しい答えに辿り着く為の正確な単純作業や、精密な作業が求められて来たタスクが多く存在する。 しかし、そのような仕事は上記のデータを見ても分かる通り、近い将来ほぼ確実に賃金の安い地域にアウトソースされるか、機械にとってかわられることで消滅してしまう可能性が非常に高い。 その一方で、これから紹介する3つのスキルはどれだけテクノロジーが進化し、時代が変化してても人間にしか出来ない内容であると思う。 1. クリエイティブ 0から1を作り出すこと。これは機械には出来ない。AIは過去のデータを元に未来を予測することは出来るが、全く新しいものを作り出すのは人間にしか出来ない。デザイナーやエンジニア等のクリエイティブな仕事はこれからもどんどん必要とされていく一方であろう。特に今回のコロナに代表されるようなVUCAの時代においてはクリエイティブは最も重要なスキルの一つになってくる。 0から1を生み出すクリエイティブな能力の構成要素は Curiosity(探求心) Empathy(共感) Imagine(発想) Create(創作) Play(遊び) Share(共有) Reflect(内省) 関連記事: 2020年から最大の企業資産はクリエイティブ人材になる 2. リーダーシップ 優れたビジョンを掲げ、卓越したコミニュケーション能力で人々を導いて行く存在。相手の気持ちに共感し、人間との心の通じたやりとりができるそのスキルは自動化が進む現代こそ一層求められている。人間がロボットのリーダーに従って心が一つになる時代は恐らくしばらくは来ないだろう。 人々を正しい方向に進めるリーダーの存在価値としては: 相手に共感する 何よりもまず方向性を決める ビジョンを共有する 相手のために尽くす 周りをインスパイアする 心の支えとなる 関連記事: 偉大なリーダーによる100の名言から読み取った5つの「コミュニケーションの秘訣」 3. 起業家精神 機械は基本的には起業しない。むしろ絶対にしないだろう。交渉力、ビジネスセンス、問題解決能力が求められるのが起業的スキルである。その点においてはテクノロジーがどんなに進化しても、新しいプロダクトやビジネスを通じ社会を変えて行く起業家は世の中にとって今後もより一層必要とされるだろう。 挑戦を恐れない ユーザー視点で物事を考える 長期的なスパンと大きなスケールで考える すぐに諦めないしぶとさ 暖かいハートと冷酷な判断 壮大な夢と現実的な実行プラン 関連記事: Youはなぜ面倒な起業家なんかに? […]