イノベーション

見えるから、ひらめく。イノベーションを加速する「ビジュアル思考」の力

「みんなの意見を集めるだけでは、何も生まれない。」新規事業開発やアイデア出しの場面で、そんな風に感じたことはないだろうか。 どんなアイデアも、最初は曖昧でつかみどころがないものだ。チームで話し合っているとき、どこかで「あれ?これってどういうこと?」と感じる瞬間がある。 その曖昧さをスッキリと整理し、みんなで共有できる形にする手法が、「ビジュアル思考(ビジュアルシンキング)」だ。問題を解決するために視覚的に思考を整理すると、チームの共感が生まれ、新しい発想が生まれやすくなる。これこそが、イノベーションを生み出すカギである。 今回のブログでは、日本とサンフランシスコで実際に「ビジュアル化」の力を用いて何度もデザイン思考研修をファシリテートした経験を持つサービスデザイナーである筆者が、新規事業やイノベーションの創出にビジュアル化がどのように寄与するのか、どう活用していけばいいのかを紐解いていく。 ビジュアル思考(ビジュアルシンキング)とは ビジュアル思考とは、複雑で抽象的なアイデアを視覚的に表現することで、思考を整理し、他者との理解を深めるための手法である。図やスケッチ、アイコン、マップなどを用いて、言葉だけでは捉えきれない情報を「見える化」することで、チームの共通認識を生み出し、対話や創造を促進する。このようなビジュアル化の手法や考え方は、デザイン思考の各プロセスで、様々な形で用いられる。 ビジュアル思考は、単なる情報整理に留まらない。この手法は、デザイン思考や新規事業開発のプロセスとも非常に相性が良い。例えば、不確実性が高く、前例のないテーマに挑む場面において、ホワイトボードや付箋にアイデアを描き出すことで、抽象的な議論でもチームで共通認識を持ったうえで仮説を立てやすくなったり、新たな視点に気づいたり、発想が広がったりする。だからこそ、今、ビジネスの最前線でも注目されているのである。 グローバル企業のイノベーション部門では、創造的なコラボレーションを生み出す手段としてビジュアル思考が積極的に活用されている。 例えばオランダのメーカーPHILIPSが新しいシェーバーを開発した際にも、アイデアがイラストと文字で視覚的にまとめられながら議論が進められた。このように視覚を通じた共創が、イノベーションのスピードと質を大きく左右する時代になっているのである。 ビジュアル思考と聞くと、「絵がうまくないとできないのではないか」と感じる人も多い。しかし、必要なのは芸術的なスキルではなく、伝えたい情報や構造をシンプルに表現しようとする意志である。 図や記号、棒人間や矢印のような簡単な要素だけでも、十分に思考を可視化し、対話の助けとなる。重要なのは「うまさ」ではなく、「伝わること」なのである。 具体的にどのように可視化すればいいのかのテクニックについては、下記の記事も参考にしてほしい。 感覚に訴えるビジュアルファシリテーションのすすめ ビジュアル思考の実践例 ここからは、実際にビジュアル思考がどのように使われているのか、代表的な手法を3つ紹介したい。どれも、言葉だけでは共有しにくいアイデアや構造を、目に見える形にすることでチームの理解を深め、創造性を引き出すことを目的としている。 実践例1: スケッチ・シンセシス(Sketch Synthesis) デザイン思考を提唱するIDEOでは、リサーチのフェーズで「スケッチ・シンセシス」という手法を実践している。これは、インタビューや観察で得た情報を、そのまま文章でまとめるのではなく、印象的なエピソードや行動をスケッチに描き出し、共通のテーマごとにグループ化して要約・構造化していくプロセスである。 IDEOのブログ記事「To Make Sense of Messy Research, Get Visual」では、以下のようにそのプロセスが紹介されている。 Step 1: Pare it down(情報を削ぎ落とし、要点を抽出する) まず、インタビューやフィールドリサーチでの観察の結果を大きなポスターボードや壁に付箋などで書いてまとめ、その中から最も印象的なエピソードや行動を4〜5点選ぶ。そして、それぞれを要約して、簡単なスケッチにして付箋に描き表す。 Step 2: Cluster it up(共通点を探し、グルーピングする) 次に行うのは、各ポスターボードから抽出したスケッチを、共通のキーワードやテーマごとに一枚のスケッチにまとめなおすステップである。この作業は、マインドマップをつくるような感覚に近い。 このステップの目的は、学びやインサイトを見極め、整理することにある。今は重要でないと感じる要素は、思い切って除外して構わない。スケッチは情報を整理する“フィルター”として機能し、重要なテーマだけを浮かび上がらせる役割を果たす。 Step 3: Talk it through(チームで話し、解釈を共有する) キーワードやテーマごとにグルーピングしたスケッチが完成したら、次は可視化された情報をもとに、チーム全員でレビューを行い、そこに含まれる意味や可能性をすり合わせていく。 この議論を通じて、スケッチの内容はより具体的な「誰の何の課題を解決するか」などの「デザインの問い」に変換される。 このステップのゴールは、リサーチで得た情報の解釈が的を射ているかどうかを、チーム内で対話によって検証することだ。もしどこかで解釈がずれていたり、重要な糸口を見落としていた場合は、再びStep1の情報に立ち返り、見落としたつながりを探す必要がある。 このようなプロセスを経て、解釈の深度と精度が高まり、新たなサービス開発への確かな土台が築かれていくのである。 btraxでも新規サービス開発のワークショップ内で、得た情報をさまざまな切り口でビジュアルに整理し、共通点や関連性を全体像をチーム全体で把握できるようにしている。そのプロセスは、下記の記事にもまとめられているのでぜひご覧いただきたい。 Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア […]

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LEGOを倒産の危機から救った「ボロボロのスニーカー」~ データ偏重を乗り越えた挑戦と逆転劇 ~

商品開発やマーケティングにおいて、データや数字の重要さは誰もが認めるところだろう。ビジネス戦略についてもそうだ。 しかしながら、我々がこれまで数多くのプロジェクトを通じて得た経験からいうと、数字ほど当てにならないものはない。デザイン思考のワークショップでは、クライアントさんと共に、顧客の「生の声」を聞きに行くたびにそう痛感させられる。 今回は、レゴブロックが会社の倒産の危機に陥っていた時期に、データではなく顧客の声を重視したことで、倒産の危機を逃れたストーリーを通じて、その本質を掘り下げたいと思う。 2003年、LEGOは崖っぷちに立っていた 今の姿からは想像もできないかもしれないが、ブロック玩具の代名詞とも言われるLEGO (レゴ) は、2003年ごろ、倒産寸前まで追いやられていた。 その当時のLEGOは、売上30%減、1日あたり100万ドルの損失という未曾有の危機を迎え、瀕死の状態だった。その理由は「データを重要視しすぎた」こと。 具体的には、「子どもは集中力が続かない」「シンプルを好む」という市場データを盲信し、簡単で短時間で組めるセットへ舵を切ったことだった。 結果、販売は低迷。LEGO本来の魅力である、“作り上げる達成感” が失われたからだ。 11歳のスケーター少年が示した真実 窮地のLEGOが行ったのは、久々の “顧客との対話” だった。11歳の少年に「一番大切なモノは?」と尋ねると、彼はボロボロのシューズを差し出した。理由は「難しい技を習得した証だから」と。 この瞬間、LEGOは気づいたのだ 子どもは挑戦を求めている 難関を突破した“証”を誇りたい 「成長の勲章」こそ価値 ということに。これは数字やデータからだけでは決して得ることのできないインサイトだった。 そして、戦略を180度転換した その少年から得られたインサイトを元に、LEGOは大幅に製品の方向展開を行った。彼らが具体的に行ったのは パーツ数を増やし、構造も複雑化 完成まで時間を要する “やりごたえ” を演出 完成品が「自慢できる勲章」になる設計へ ⠀結果、売上は急回復し、今日の世界No.1トイブランドへと上り詰めた。 データとインサイトのバランスを取る 市場データは「潮流」を示すが、人間の動機や感情までは写し取れない。LEGOの失敗はデータを絶対視し、顧客の声を置き去りにしたこと。逆に、成功は顧客の深層心理を拾い上げ、プロダクトへ反映したことだ。 僕らが学ぶべき3つのポイント このLEGOのストーリーから得られることは3つあり、我々が提供しているデザイン思考ワークショップを通じた新規事業創造プログラムでも、大切にしているポイントでもある。 仮説より先にヒアリング: データ分析前に顧客へ直接あたり、生の課題を抽出する “証拠”をデザインする: 顧客が努力や情熱を誇示できる要素を組み込む KPIに“感情指標”を入れる: 完成度やNPSだけでなく、達成感・熱中度を測定する この教訓をbtraxのデザイン現場でどう活かしているのか? 僕ら btrax がプロジェクト毎に行っているのは、「数字 → 仮説」ではなく「声 → 洞察 → 数字」という逆転プロセスだ。具体的には次のようなサイクルを徹底している。 1. フィールドインタビューを最初に組み込む 事前にデスクリサーチで得た数字はあくまで “問いを立てるための材料”。初日の午前中にクライアントと一緒にユーザー宅や店舗に出向き、最低5件のインタビューを実施する。これで “肌感覚” を全員にインストールする。 2. […]

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btraxリサーチャーが本音で語る!アメリカでゲリラインタビューをやってみた

少し前にゲリラでインタビューをする機会があり、気付きも多かったため、今までに行ってきた他のインタビューの違いとともに紹介する。 筆者は普段UXデザイナーとしてリサーチ案件がある際にはユーザーインタビューを行っている。 リサーチの手段は様々あるが、定性調査をしたい際に最も王道なのは、1対1で話を聞くことで、Zoom等のオンラインでインタビューをセットすることが多い。   ゲリラインタビューとは ゲリラインタビューとは、外にいる人にその場で声をかけて話を聞くインタビュー形式のこと。普段行うユーザーインタビューとは全く違う形式で、よりスピード感を持って初期段階の仮説を検証したいときなどに便利な手法である。今回は北米展開を検討している日系企業がクライアントだったためアメリカでインタビューを実施した。 誰にインタビューするか 普段のオンラインインタビューの場合は、ユーザーを探すために事前にスクリーナーをかけるので話を聞きたい人にピンポイントに狙いに行くことが可能だ。 しかし、ゲリラインタビューでは当然だがまず人を捕まえなければならない。 急いでいるからと断られてしまったり、2-3分なら良いけどそれ以上は無理と言われてしまうことはよくある。もっと言うと、せっかく立ち止まってくれた人がぴったりのインタビュー対象者でない可能性もある。 ある程度インタビュイー対象であるかを確認するためには、声をかける最初のタイミングでキーとなる質問を聞くことがポイントだ。そしてインタビューにかかるおおよその時間を相手に伝えてあげると親切だ。   いかに聞き出すか そして今回ゲリラインタビューを実施して特に大変だったこととして挙げられるのが、1人あたりに深く話を聞くことである。 想像できると思うが、事前の約束も無しにいきなり話をするのだから、長い間立ち止まってもらって根掘り葉掘り話をするのはハードルが高い。おしゃべりが好きなアメリカ人も多いが、それでも普段のユーザーインタビューで得られる情報量との差は出てしまう。そのため、ある程度聞きたい質問の優先度をつけて聞くことが大事になってくる。 また、インタビュー環境を整えることも大切だ。今回は会話を録音しつつ、インタビュースクリプトを見ながら、同時に商品サンプルも相手に見せて話した。普段デスクでインタビューをすることに慣れてしまっていると立ち話に不便さを感じる。 工夫の余地の例としては、すぐ近くのカフェに誘導するということが挙げられる。カフェへ行く提案をすると話が長くなってしまうのではと人によっては警戒されてしまうのが厄介だが、これができるとインタビューもスムーズである。 また、天候に左右されてしまう点にも注意が必要である。別プロジェクトで、悪天の中、外に出てインタビュイー探しをしたこともあったが、そもそも外にいる人が少なくなることが多いのと、みんな立ち止まりたがらなくなってしまう。 ゲリラインタビューの利点 色々と大変な側面の話をしてしまったが、良い点もある。 ゲリラインタビューの特徴は、リアルな声を聞けることだ。その場にいる人にその場で話してもらうため、属性関係なくサービスに対してのリアルなフィードバックを得られる。最初にも書いた通り、クイック且つカジュアルにサービスに対するフィードバックを得たいときには有効な手段である。 また、通常のユーザーインタビューは1人あたり1時間〜1時間半程度のものが多く、たくさんの人数に聞くには時間がかかる。インタビューのトピックがすごくニッチなものでなければ、フットワーク軽くより多くの人に話を聞くことができる。   他にはどんなユーザーリサーチ方式があるのか ゲリラインタビューについて色々とお話しをしたが、他のインタビュー体験で言うと、筆者は今までにホームビジット形式のインタビューを行ったこともある。これもユーザーインタビューの類に含まれるが、オンラインでのインタビューが最も多い中でホームビジットはまた全然違った経験だ。   一番の特徴は、ユーザーの家の中でインタビューするため、その人の生活の雰囲気がわかりやすいことだ。以前瞑想サービスについてのインタビューを行った際には、実際に瞑想をするときの部屋でインタビューをさせてもらったことで、よりリアルにユーザーのサービスの使い方を知ることができた。 インタビュー中に出てくる話題も、「あれのことだよ」とその場で教えてもらえることもあるのでよりユーザーの理解がしやすい。 ユーザーの家にお邪魔することで、言葉では出てこない情報がたくさん散りばめられているのがホームビジット形式のメリットであり楽しいところだ。部屋の雰囲気やインテリアからユーザーの価値観が垣間見えたり、ユーザーの表情やリアクションから細かいニュアンスが伝わる。 普段のオンラインのユーザーインタビューでは相手が映った画面しか視覚情報はないため、得られる情報量はかなり違う。   一方でホームビジット形式は、ユーザーからすれば他人(インタビュアー)を家に入れるため、ユーザーにとってはハードルが高い可能性はある。通常インタビューする際にはリードとアシスタントの2人体制で行うのだが、加えてクライアントも同行したいという要望もあれば人数は増えるので、ユーザーからすると少し緊張してしまって本音を引き出しづらくなる可能性もある。事前にインタビュイーへの同行者確認は大事だ。この点オンラインインタビューは双方にとって気楽ではある。 まとめ ゲリラインタビューは不特定多数をクイックに調査したいときにはおすすめだが、1人あたりにじっくり話しを聞くことが目的のときには使い方を工夫する必要がありそうである。例えば、サービス開発の初期段階等で立てた仮説に対してざっくりとしたフィードバックが欲しい際にはゲリラインタビューも選択肢となりうる。 筆者は個人的には、一番生活者のリアルを覗けるという観点でホームビジットが好きである。リサーチャーとして得られる情報が多く、ライフスタイルと密接なサービスを作っているときには相性の良い形式だ。 リサーチしたい内容やプロジェクトによって形式の向き不向きがあるので使い分けることが大事だ。   ビートラックスではブランディングやマーケティング、新規事業創出の基盤となるユーザーリサーチを手掛けている。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ ユーザーインタビューやユーザーリサーチにご興味ある方はぜひお問合せいただきたい。

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売れる商品はこうして作る!プロが教えるペルソナの描き方

「この商品なら絶対に売れるはず…」 そう確信して開発した新商品や新規事業が、市場で思うような反応を得られない。多くの企業が直面するこの課題に、あなたも心当たりはないだろうか。 実は、商品開発の成否を分けるポイントは、開発の最初の段階にある。それは「誰のための商品なのか」を具体的に描き切れているかどうかだ。 「20-30代の女性向け」「子育て世帯」—こうした曖昧なターゲット設定では、もはや競争の激しい現代市場では通用しない。 では、実際にヒット商品を生み出している企業は、どのようにしてターゲットユーザーを描いているのか? その答えが「ペルソナ」だ。 今回は、筆者のサービスデザイナーとしての経験をもとに、売れる商品を作るための具体的なペルソナの描き方と、その活用方法を解説していく。 「全ての人に愛される商品」はもはや作れない時代に かつては、ターゲット層を「女性」「ファミリー層」など大まかに捉えたとしても、商品を大量生産することで売上を伸ばすことができた。 しかし、現代の社会では消費者のニーズは多様化し、モノが溢れた社会では差別化が必須だ。「全ての人に愛される商品」はもはや作れなくなっている。 実際の失敗事例を見てみよう。例えばMicrosoftが2006年に発売した音楽プレイヤーZuneは、音楽愛好者を広くターゲットにして開発されたが、市場シェアが2%未満にとどまり、2012年には販売終了となっている。 失敗の原因の一つは、「ターゲットを幅広く設定しすぎて、皆を少しずつ喜ばせることはできるが、誰にも深く愛されないものになっていたから」とも言われている。 Zuneは幅広いユーザーをターゲットにしており、他の音楽プレイヤーやiPodに対抗する「オールインワン」デバイスとして開発された。 異なるサイズや容量のモデルを展開し、映画やテレビ番組のレンタル、オーディオブックも楽しめる、まさに「いろいろできる」商品だった。しかしその分マーケティングメッセージが明確でなく、市場での立ち位置が曖昧になったとされている。 現代のユーザーは、自分自身の価値観や特定のライフスタイルにぴったりと合致した商品を求めている。情報がインターネットを通じて広がり、世界中の人々があらゆる選択肢にアクセスできる今、単に「どんな人にも少しずつ役立つ」だけの商品では、ユーザーの関心を引くことは難しい。「たったひとり」でも泣いて喜ぶような、具体的なニーズに応える商品こそが選ばれる時代なのだ。 なぜ「全ての人を対象にした商品」は売れないのか?イノベーター理論で学ぶターゲット戦略 そのためにユーザーを深く理解し「たったひとり」を具体的に描き出す手法が、「ペルソナ」の作成だ。 ペルソナを作成するには ペルソナとは、特定の価値観や目標を持つ架空の人物像であり、ターゲットとなるユーザー像を具現化するためのツールである。 ペルソナを作成するときには、ターゲットユーザーを象徴する人物のプロフィールを詳細化する必要がある。代表的な項目として、最低限、下記のような要素をまとめてみるとよい。 顔写真 デモグラフィック情報 ソシオグラフィック情報 そのペルソナを端的に表す一言 ユーザーのゴール 生き生きとしたストーリー これらを一枚の紙にまとめたものの例がこちらだ。一つずつ詳細を説明していこう。 1 . 顔写真 顔写真は、商品を作るチームメンバーにとってペルソナがまるで実在しているかのように感じさせ、深く共感するために必要だ。リアリティを持ってペルソナを扱えるよう、イラストや有名人の写真ではなく、写真素材サイトなどから個人の顔写真を探して用いるのがおすすめだ。 2. デモグラフィック情報 デモグラフィック情報とは、主に年齢、性別、職業、収入、学歴など、人の基本的なプロフィールや人口統計に基づく情報だ。 例えば「大卒の30代の会社員」といったものがデモグラフィック情報にあたる。これらは数値や属性で表しやすく、設定を考えるのも比較的簡単だ。ステレオタイプに注意しながら「このターゲットユーザーなら、こんな属性が代表的といえそう」というものを設定しよう。 3. ソシオグラフィック情報 一方、ソシオグラフィック情報は、価値観やライフスタイル、趣味、行動パターンなど、個人の性格や心理的な側面に関する情報である。データで数値化しにくい部分も多く、より深いレベルでの理解を求められることが特徴である。 例えば、「環境に配慮する生活を心がける人」や「健康を大切にする人」といった情報がソシオグラフィック情報にあたる。このようにソシオグラフィック情報は「その人がどのように考え、行動するか」を表すものである。 4. そのペルソナを端的に表す一言 「そのペルソナを端的に表す一言」とは、その人物を一言でイメージできるキャッチフレーズのようなものである。 例えば「新しいことに挑戦するのが楽しくてたまらない都会の若手ビジネスマン」というプロフィール説明のようなものや、「失敗も含めてすべてが成長の糧」といったユーザーの特徴的なセリフがこれにあたる。この一言があると、ペルソナの特徴や価値観が瞬時に伝わり、チーム全体で共通のイメージを持ちやすくなる。 5. ユーザーのゴール 「ユーザーのゴール」は、ペルソナが達成したい目標や望んでいる結果を示すものである。このゴールが明確になることで、その人がプロダクトやサービスに対してどのような期待を持っているのかが理解しやすくなる。 例えば「仕事と家庭を両立しながら自己成長も続けたい」「毎日の生活を便利にして、自由な時間を増やしたい」などが、ユーザーのゴールの例である。このゴールを設定することで、製品がどのようにユーザーの役に立つべきかがはっきりする。 6. 生き生きとしたストーリー 「生き生きとしたストーリー」は、ペルソナの一日の生活や日常の中でどのように感じたり行動したりするかを具体的に描いたものである。このストーリーがあると、ペルソナがただのデータではなく、リアルな人物像として伝わりやすくなる。 btraxのデザイン思考研修では画像のようなテンプレートの形にして、右上「プロフィール」欄を穴埋めすることで、このストーリーを初心者でも簡単に作れるようにしている。こうしたテンプレートも活用しながら、必要に応じて要素を足したり、絞り込んだりしながら作成してみよう。 ペルソナの作成・活用プロセス ペルソナを作るには、ユーザーインタビューなどのリサーチで得られたデータに基づいて、特徴ある共通点をまとめ上げるようにするとよい。これにより実際のユーザーの行動や価値観に即したリアリティのあるペルソナが生まれる。 また、リサーチ結果が十分に集まる前でも、「仮のペルソナ」を作成することは有効だ。想像で作成した仮のペルソナは、実際のユーザー像を完全に反映するわけではないが、プロジェクト初期の段階でチーム全体が共通のイメージを持ち、方向性を揃えるための手助けとなる。 仮ペルソナを作成する際は、まずプロジェクトの目標や目的に沿って、ターゲットとする人物像を仮説として立てるところから始める。その後、インタビューで得た新しい気づきをペルソナに反映させ、精度を高めていくことが重要だ。 また、ペルソナが出来上がった時点で「完成」ではなく、継続的にインタビューなどでフィードバックを得て、適宜ペルソナを見直し、より正確でリアルなものにしていくプロセスが必要である。まるで自分の家族や親友を紹介するかのように、ユーザーを代弁して語れるぐらいに解像度を上げることを目標にしよう。 ユーザーインタビューの進め方については、下記の記事も参考にしてほしい。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ ペルソナとセグメンテーションの違い 「たったひとりのユーザー」をターゲットにするペルソナの考え方に対し、「ビジネス規模が小さすぎるのでは」と懸念する企業もいるだろう。 そのために、セグメンテーションの考え方、つまり特定の属性や条件で市場を切り分けて、それぞれのグループに最も適したターゲットユーザーを設定するという方法を採用する企業も多い。 しかし、実はペルソナは異なるセグメントを超えて共通の価値観や目標を持ったユーザー像を描く手法なので、結果的にセグメンテーションでの考え方よりも広い市場にアプローチできる可能性がある。 セグメンテーションは属性を切り分けて「違い」に焦点を当て分類するのに対し、ペルソナは価値観や体験の「共通性」に注目する。 例えば、あるコーヒーメーカーが、単に「コーヒーを飲む20代男性」ではなく、「リラックスした朝の時間を大切にする人」をペルソナとして設定したとしよう。この場合、商品が単なる属性(性別や年齢)に依存せず、より多くの人々の共感を得やすくなる。 これにより、異なる年齢や職業、居住地に属する人々にも喜ばれる商品を作り出すことができる。 ペルソナの活用による効果 企業でペルソナの手法を採用することで、さまざまな効果が期待できる。 まず、ペルソナを活用することで、チーム内外でターゲットユーザーのイメージが直感的に共有され、効率的にプロジェクトを進めることができる。それにより、開発やマーケティングにおける戦略立案もより効果的になる。 また、ユーザーが持つ課題や目標を解像度高く理解できるようになるため、企業はより深くユーザーに共感し、ユーザーに響くサービスを生み出しやすくなる。 ペルソナの活用事例:Philips 実際に、ユーザーに愛されるヒット商品を次々生み出している企業でもこの手法が用いられている。オランダに本社を置くヨーロッパ最大の電機メーカーのフィリップス(Philips)がその例だ。フィリップスの電動シェーバー、“OneBlade”の事例を見てみよう。 この商品のペルソナは18歳の男の子、ブライアンだ。彼は、両親と暮らしながら忙しい生活を送っている。清潔感に強いこだわりがあり、身だしなみにも常に気を配っている。そんな彼が求めているのは、実用的でありながらもスタイリッシュでかっこいいシェービングツールだ。 このペルソナをもとに開発されたのが、OneBladeだ。このシェーバーは、摩擦の少ない刃と肌を保護できる機構を採用しており、切り傷やかみそり負けを防ぐ。そのため、ブライアンのような若いシェービング初心者でも安心して使える​。 さらに、OneBladeは濡れた状態や乾いた状態でも使用でき、刃のカット速度も速いため、従来のカミソリよりも効率的に使用できる。そのため、忙しいスケジュールに合わせた実用的なシェービングツールを求めるブライアンにとって理想的である。 この商品は大ヒットし、2016年の発売以来、世界中で約2,700万のユーザーを獲得し、100万枚目の替え刃を生産するという大きなマイルストーンを達成している。 まとめ このように、企業はペルソナを作成し、ユーザーリサーチを通じて解像度を高め続けることで、ユーザーに愛されるサービスを作り出すことが可能となる。 ペルソナを活用することで、企業はターゲットユーザーの深層心理を深く理解し、彼らに響く新規事業や商品開発、マーケティングを実現できる。 btraxでは、企業がターゲットユーザーを深く理解するためのユーザーリサーチの支援や、リサーチを基にした新サービス開発やマーケティング戦略の立案、実行までの伴走を行っている。 ユーザー理解を深めたい、効果的なペルソナを活用したいと考えている担当者の方々は、ぜひbtraxにぜひお気軽にお問い合わせください。

CES 2025で注目したい日本企業による6つのプロダクト

1月7日よりラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジーイベント、CES 2025。 今年もテクノロジー業界の最前線をリードする企業やスタートアップが集結し、世界中から注目を集める場である。このイベントでは、AI、IoT、ロボティクス、自動車技術、ヘルスケア、スマートホームなど、多岐にわたる分野の最先端技術やプロダクトが披露される。 CESでは、出展された数多くのイノベーティブなプロダクトの中から、特に優れたものに「イノベーションアワード」と呼ばれる賞を授与する。 この賞は、デザイン、機能性、技術的進歩、社会的影響など、さまざまな観点から評価されるものであり、業界内外で大きな注目を集める指標である。 世界で高く評価される日本のプロダクト 今年も多くのプロダクトが事前選出される中、日本企業が手掛けた技術やデザインが特に目立っている。日本の精密技術や独創的なデザイン力、そしてユニークな発想は、毎年高い評価を得ている。日本企業の創造性と技術力がいかに世界で評価されているかがわかるだろう。 今回は、事前選出されたプロダクトを中心に、テクノロジー、デザイン、イノベーションのそれぞれの項目を解説しながら、注目すべき日本企業による6つのプロダクトを紹介する。 マイクロ e-モビリティ コンセプト by Suzuki Suzukiの多用途型マイクロeモビリティプラットフォームは、長年培ってきた電動車椅子の技術を活用し、さまざまなロボットの足回りを提供するコンセプト。 自動運転やAIなどの技術と組み合わせることで、パートナー企業と共に多様な分野の課題をロボットで解決することを目指している。 テクノロジー 自動運転やAI技術を統合することで、精密で柔軟な動作を実現し、多様な環境での適応性を高めている。 デザイン コンパクトで堅牢なデザインが特徴的。黄色と黒のコントラストを活用したモダンな外観は、視認性を高めるだけでなく、機能性とスタイリッシュさを両立している。 イノベーション パートナー企業との協業により、物流、農業、災害対応など、多岐にわたる分野の課題をロボットで解決する可能性を提案。単なる移動手段に留まらず、多用途で持続可能な社会の実現を目指すプラットフォームとして、新たなロボティクスの標準を示している。 Mixed Reality Makeup – 0 min try-on studio by Kose コスメブランドのKoseが提供するMixed Reality Makeupは、高速プロジェクションマッピング技術に基づき、全く新しいメイク試着体験を提供するシステム。 リアルなメイクを直接顔に投影し、顔の動きにも追随する。顧客は現実の3D空間で無数のメイクデザインを試すことができるため、従来の試着方法やARメイクフィルターと比べて、より迅速に、確信を持って、そして楽しく製品を選ぶことが可能になる。 テクノロジー 高速プロジェクションマッピング技術を採用。リアルタイムで顔にメイクを直接投影し、顔の動きに応じて精密に追随することで、臨場感あふれる体験を提供。 デザイン スタイリッシュで直感的なインターフェースにより、簡単かつ楽しく操作できる設計。幅広い顧客層に対応するために、色鮮やかなビジュアルとモダンなデザインを融合。 イノベーション 現実世界の3D空間で無数のメイクデザインを試せる仕組みを提供。従来の試着方法やARメイクフィルターを超え、迅速かつ楽しい意思決定を可能にする新しい標準を確立。 Bio Leg 日本初のスタートアップ、Bio Legが提供するのは、切断によって失われた脚の力を補う電動式の義足膝。電動アシストを活用することでユーザーの身体的負担を軽減し、よりスムーズな歩行体験を提供する。 さらに、バイオニックマッスル技術により、異なる姿勢や地形間での移行を容易にする設計となっている。また、自然なシルエットを持つことでバランスを促進し、視覚的な調和も実現している。 テクノロジー 電動モーターと複数のセンサーを統合し、動作をサポートするとともに、不快感を軽減し、移動性を向上させる技術。 デザイン ふくらはぎの筋肉の膨らみを活かし、黒いカーボン素材を使用することで自然な外見を強調し、人間の膝に似たデザインを実現。自己表現をサポートする。 イノベーション 人間の膝の動きの特徴を模倣し、柔軟性と力強さを提供。単なる補助器具としてではなく、自信とスタイルの象徴へと変貌させている。 Sony XR Head-Mounted Display SRH-S1 MetaやAppleも参入するVR/XR領域に対して、SONYが提供する「高品質な片目4K対応XRヘッドマウントディスプレイと3Dオブジェクト操作専用コントローラー」はかなり期待できる内容。主な特徴としては 多様な空間コンテンツのニーズに応えるXRヘッドマウントディスプレイ 4KマイクロOLEDパネルにより鮮やかでリアルな映像を実現 ビデオシースルー機能でミックスドリアリティの作成を可能に Qualcommの最新XRプロセッサ「Snapdragon® XR2+ Gen 2 Platform」を搭載 最適な重量配分と素材により、長時間使用時の快適さと安定性を提供 フリップアップ機構により、物理空間と仮想空間の簡単な切り替えが可能 テクノロジー 片目4K解像度を提供するXRヘッドセットと、3Dオブジェクトとのインタラクションに最適化された専用コントローラーにより、超高精細で没入感のある体験を実現。 デザイン 快適性を追求した人間工学に基づく設計とモダンな外観で、ユーザーの利便性を最大化。 イノベーション 新しいXRインターフェースを採用し、3Dオブジェクトとの正確な操作を可能にすることで、拡張現実技術の新しい基準を提示。 Qolo Rehabilitation つくば市の産学リエゾン共同研究センター初のハードウェアスタートアップ、Qoloが開発したリハビリテーション用デバイス、Qolo Rehabilitationは、下肢障害を持つ患者向けの世界初・業界初の立位補助装置であり、リハビリテーションの現場を革新するプロダクト。 このシステムは、セラピストの介入を最小限に抑えながら、転倒防止と定量的な治療データの提供を実現する。支援デバイス、内蔵センサー、データ可視化用のタブレットを含む構成で、特に重度障害患者の早期トレーニングに不可欠な動的立位運動をサポートする。また、ユニークな無動力メカニズムを採用し、リアルタイムのデータ収集と傾向分析が可能である。 コンパクトかつ持ち運びやすい設計により、リハビリ室や患者の居室、ラウンジなど、さまざまな環境での利用が容易である。 テクノロジー 内蔵センサーとデータ可視化用タブレットにより、転倒防止を実現するとともに、治療の進捗を定量的に把握できるシステムを提供。無動力メカニズムを採用し、リアルタイムでデータを収集・分析することで、治療の効率化を可能にする。 デザイン コンパクトで持ち運びが容易な設計は、リハビリ室だけでなく、患者の居室やラウンジなど、多様な環境での利用を想定。シンプルながら機能性を重視したデザインが、患者と医療従事者の双方にとって使いやすいプロダクトを実現している。 イノベーション 下肢障害患者向けの世界初・業界初の立位補助装置として、セラピストの介入を最小限に抑えながら、動的立位運動のサポートを提供。リハビリテーションの早期段階から利用可能で、患者の回復プロセスを加速させるだけでなく、治療の質を向上させる新しい標準を確立している。 Romi by Mixi ミクシーが提供するRomiは、手のひらサイズの感情支援AIロボット。複雑なリアルタイム会話が可能な次世代モデルを実装している。このロボットは発話の順番を待つ必要がなく、ユーザーが話している最中にも素早く介入し、聞こえた内容や会話履歴、さらにはその場で「見た」情報に基づいてコメントを生成する。 この機能を実現するため、深層学習モデルを開発し、日本国内で多くの人々が不安や孤独を和らげるために使用しているオリジナルのRomiロボットをさらに「人間らしく」進化させた。 また、クラウドシステムにより、Romiの音声、物理的動作(揺れや回転)、視覚的表現(LCDディスプレイによる「表情」)を統合的にコントロールし、対面での会話体験を最適にシミュレーションすることを可能にしている。 テクノロジー 会話中に聞こえた内容や履歴、視覚的な情報を即座に処理して適切なコメントを生成する。クラウドシステムによる音声、動作、表情の統合制御が、対面での自然なコミュニケーションを実現。 デザイン 手のひらサイズのコンパクトなデザインに、親しみやすい丸みを帯びたフォルムを採用。LCDディスプレイによるかわいらしい「表情」が、ユーザーとの感情的なつながりを強化。現代的で洗練された外観は、家庭や職場など、どのような環境にも調和する。 イノベーション 孤独感や不安を軽減するための感情支援デバイスとして、日本国内で多くのユーザーに愛用されている。これまでのモデルから進化し、さらに人間らしい応答性と感情表現を提供。会話を通じてユーザーの心の健康を支える新しい形のAIロボットとして、日常生活における新しい価値を創出している。 2025年に期待したい日本発のイノベーション 失われた30年なんて言われ方をしたりもするが、CES 2025においては、これら6つの日本のイノベーションは、創造性と最先端技術の融合を象徴しており、技術革新における日本の世界的リーダーとしての地位を改めて期待したいと思う。

無人タクシーの未来がここに!【完全解説】Zooxの驚きの技術とAmazonの野望

未来がもう来てた! これは、2022年に日本から来た友人がサンフランシスコにて、無人・自動運転タクシー、通称ロボタクシーのCruiseに乗った際の言葉。当時は、一般車両を利用していました。 それから約半年後。Google傘下のWaymoが実用化され、そして最近はもう一つの自動運転タクシーのZooxがついにサンフランシスコの街を走り出した! ついに見つけた!サンフランシスコの道を走る無人タクシーのZoox. 一般車両を使うWaymoに対して、こちらは完全に運転席の無い専用デザイン。そしてめっちゃ可愛い。 pic.twitter.com/uyVadQ0x91 — Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) December 26, 2024 それでは、革新的なデザインと先進技術を備えた『Zoox』が、どのように未来のモビリティを形作ろうとしているのか。最新情報をもとに、その全貌に迫ります。 Zooxとは? Zooxは、Waymoと同様に自動運転タクシーの最前線を走る革新的な企業の1つです。「個人の移動手段を誰にとってもより安全に、よりクリーンに、そしてより快適なものにすること」を使命に2014年に設立され、2020年にAmazonと合併契約を結び、Amazonの完全子会社になりました。 従来の自動車メーカーとは異なり、Zooxは完全自律走行を前提とした車両をゼロから設計しています。高性能なセンサー、先進的なソフトウェア、厳密なテストにより、自動運転車両はこのような交通事故の94パーセントの原因となっているヒューマンエラーの影響を大幅に減少させ、最終的には排除することが可能となるとZooxは発表しています。 この独自のアプローチにより、Zooxは安全性、効率性、そして乗客の快適性を最大限に追求し、現在サンフランシスコやラスベガスなどの都市部でサービス展開を進めており、都市モビリティの革命を目指しています。 Zooxの自動運転車両の特徴 Zooxの車両は、従来の自動車の概念を覆す以下の4つの革新的なデザインを採用しています。 ①双方向デザイン 前後対称の「錠剤型」デザインにより、Uターンやバックが不要で、小回りが利くため狭い都市空間でも効率的な移動が可能です。 ②乗客快適性 ハンドルやブレーキは一切なく、4人乗りの広々とした室内空間を実現。各座席にタッチスクリーンを設置し、温度調整や音楽再生などの個別制御が可能です。カップホルダーやワイヤレス充電ポイントなども設置されています。 ③長時間稼働 133kWhの大容量バッテリーを搭載し、一回の充電で長距離走行が可能です。これにより、24時間稼働のサービス提供を目指しています。 ④革新的な内装 「車輪付きのリビングルーム」をコンセプトに、昼間は大きな天窓から自然光を取り入れ、夜間は星空のような照明で室内を演出します。 この独自設計により、Zooxは単なる移動手段を超えた、新しい都市生活体験を提供しようとしています。 先進的な安全技術 Zooxは安全性を最優先に設計されており、100以上の新しい安全技術を搭載しています。部品の1つが故障したとしても、システムの残りの部分は安全に動作し続けるように設計されており、航空業界からヒントを得て自動車の設計に取り組んでいるとのこと。 例えば以下の4つ。 ①エアバッグシステム 全方向から乗客を保護する独自のエアバッグシステムを開発。Zoox車両の独特な対面式シート配置により、乗員保護システムの抜本的な見直しが必要となりました。 それにより誕生した新しいエアバッグシステムは、エアバッグ制御ユニット(ACU)によって制御され、車両の進行方向や速度、衝突の程度を検知するセンサーデータを活用します。Zoox車両は双方向走行が可能なため、ACUは両方向の衝突を検知します。 従来のステアリングホイールやダッシュボードがない車両内装に適した新世代のエアバッグを開発しました。システムは以下の5つの異なるタイプのエアバッグで構成されています ● 馬蹄型カーテンエアバッグ:車両の両端での衝突時に、乗員が接触する前面エアバッグの反力面(安定した表面)を提供します。 ● フロントエアバッグ:天井から展開し、各座席の前に降下します。くぼみのあるポケットで2つのセクションに分かれており、乗員の頭部、首、胸部をより効果的に保護します。 ● リアエアバッグ:衝突した側の乗員ヘッドレスト後方から展開し、破片の客室内侵入を防ぎます。 ● サイドヘッドエアバッグ:側面衝突時に天井から展開し、座席と窓の間に降下して乗員の頭部と首を保護します。 ● シートサイドエアバッグ:各座席の側面に組み込まれており、高速での側面衝突時に展開します。シート内側に押し出されることで、シート表面が乗員の体に近づき、より安全に乗員を固定します。 また、窓側に向いたエアバッグシステムの表面には、救急隊員向けの指示が明確に表示されており、事故後の車両進入方法や乗員救助の手順が記載されています。 ②360度視野センサー LIDAR、レーダー、カメラを組み合わせた高性能センサーシステムにより、周囲150m以上を認識可能。 センサーによりすでに認識によって識別および分類されている他の「エージェント」(たとえば、車、歩行者、自転車)による潜在的な行動結果を予測します。その次に、車両が取るべき最適なルートを決定します。 ③補完システム 航空機産業にインスパイアされた設計で、システム障害時にも安全運行が継続可能。 ④シートベルト監視システム センサー、スイッチ、カメラを組み合わせた安全システムにより、全乗客のシートベルト着用を確認するまで走行を開始しません。 また、自動運転システムが衝突の可能性や差し迫った危険を検知した場合、シートベルトシステムは事前にベルトを引き締め、エアバッグの展開と保護に最適な姿勢に乗員を保持します。この機能により、常時すべての乗客に対して最高レベルのシートベルト安全性能を提供します。 これらの技術により、Zooxは自動運転車の安全基準を新たなレベルに引き上げています。 高度な自動運転システム Zooxの自動運転システムは、最先端のAI技術と豊富な実地テストデータに基づいています。 ①リアルタイム環境認識 高性能センサーとAIの組み合わせにより、車両は周囲の状況を即座に分析し、安全かつ効率的な判断を実行します。 Zooxは、新しいシナリオに遭遇すると、人間のドライバーと同じように慎重に近づきます。当社の車両は、地図にない工事現場など、一時的な環境の変化も理解します。 ②テレガイダンス 複雑な状況(例:工事現場)では、リモートオペレーターによる遠隔支援が可能です。これにより、AIの学習も促進されます。 ③シミュレーションテスト 現実世界では稀なケースも、仮想環境で徹底的に検証しています。 ④高速走行能力 最高速度は時速75マイル(約120km/h)に達し、高速道路での走行も可能です。 このようにZooxは7年以上にわたり、複数の都市で厳密なテストと検証を重ね、高度な自動運転システムの信頼性を支えています。 サービス展開状況 Zooxは2024年12月現在、以下のように段階的にサービスを拡大しています。 サンフランシスコ 2024年11月からSoMa地区で自社従業員向けのテスト運行を開始。今後、一般向けサービスへの拡大を計画しています。 ラスベガス ラスベガス・ストリップ周辺でテスト運行を実施中。商用サービス開始に向けて準備を進めています。 フォスターシティ カリフォルニア州DMVから許可を得て、本社周辺で時速35マイルまでの公道テストを実施しています。 2024年2月には、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から一般向け無料乗車サービスの許可を取得し、4,000人以上のゲストが自動運転を体験しました。 法規制への対応 Zooxは、自動運転車の安全性と信頼性を確保するため、厳格な法規制に積極的に対応しています。 ① FMVSS認証 2022年7月、Zooxは連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠した世界初の完全自動運転車両として認証を受けました。 ② カリフォルニア州許可 カリフォルニア州とネバダ州で無人運転テスト許可を取得。カリフォルニア州では2018年に自動運転車の公道テスト許可を取得した最初の企業となりました。 ③ CPUC許可 2024年2月、カリフォルニア州の公共サービスを監督し、規制する機関であるカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から一般向け無料乗車サービスの許可を取得。 Zooxは「驚きなし、完全な透明性」の哲学に基づき、規制当局や地域コミュニティとの緊密な連携を重視しています。 Waymo, Cruiseとの比較 Zooxは、WaymoやCruiseといった競合他社とは異なるアプローチを採用しています。 既存の車両を改良するのではなく、ゼロから新しい車両を設計・開発することで、都市モビリティの未来を見据えた革新的なビジョンを実現しようとしています。この独自のアプローチにより、安全性を最優先にした設計が可能になっています。 現状の課題 ① 規模拡大 現在は数十台規模ですが、商用サービスの本格展開に向けて大量生産体制への移行が今後必要となります。 ② 公共受容性 自動運転車への不安や懸念を解消し、社会的受容を高めることが重要です。新しい設計による車尾を向いて座ることに対して乗客が不快感を感じる可能性や、見知らぬ人との相乗りによる社会的な不快感への対応が必要になる可能性があります。 ③ 技術的課題 2024年5月にNHTSAが調査を開始した後部衝突事故など、技術面での改善も継続的に必要です。 その他、複雑な都市環境での運用に関して高精度地図の事前作成や、予測困難な状況への対応など、複雑な都市環境での安全かつ効率的な運用に関する技術的課題があります。 […]

CES 2025 ガイド  世界最大のテックカンファレンスの基本情報と注目したい10のテクノロジートレンド

2025年もテクノロジーの最前線を知る絶好の機会として、世界中のテクノロジー企業が一堂に会する「CES(Consumer Electronics Show)」がラスベガスで開催される。 毎年、次々と発表される革新的な製品やサービスが注目を集め、未来のテクノロジーを垣間見ることができる。CES 2025では、どんな画期的な技術や製品が登場するのだろうか。 CES 2024の様子 CESの歩き方と2025年のテクノロジー予測 本記事では、CES 2025で期待されるトップ10の技術とトレンドを紹介し、どのようなイノベーションが私たちの生活を変えるのかを予測する。 要注意!会場がデカすぎる! 現場での発表や展示エリアが東京ドーム4個分と膨大すぎて何から見て良いかわからくなりがち。 CES 2025の基本情報 開催時期: 2025年1月7-10日 (Media Dayは5, 6日) 開催場所: ラスベガスコンベンションセンター、Venetian Expo. Venetian, Aria, Mandaley Bay等 出店社数: 3,500以上 (見込) 来場者数: 13万人以上 (見込) 公式サイト: https://www.ces.tech/ イベント・展示エリア CESでは、LVCCだけではなく、ストリップと呼ばれるラスベガスの中心エリアに複数のイベント・展示エリアを設置する。それらは大きく分けて3のエリアに分布し、それぞれのエリアの複数の建物の中で開催される。 時間節約のコツ3選 これだけ膨大なエリアを回らなければならないので、時間がいくらあっても足りない。なので本題に入る前に時間を節約するためのコツ3つほど紹介する。 1. スケジュール管理は公式アプリで まずはどこに行ってどの展示やセッションを見るかを事前に決めておくのが良い。というのも、現地に到着してからだとあまりにもバタバタしすぎてて、それどころでは無いから。 ここで問題になるのが、同じ時間に複数のセッション・展示が同時に行われていおり、それも前後の予定の場所とかなり離れている可能性もあるということ。 一つずつのセッションをWebで確認して、カレンダーに入れていくのは気が遠くなるレベルの作業になる。 ここで便利なのが、公式アプリ CES App。こちらをダウンロードしてログインすれば、日時に合わせたスケジュールが表示され、”Add to Agenda” をタップしておくだけで、 事前に、そして自動的にスケジュールが生成される。 2. 入場バッジのピックアップは空港で イベント会場に到着してまず最初の難関は入場バッジの引き換えプロセスだろう。事前にメールやアプリ経由で受け取ったQRコードを紙の入場バッジに変えるのだが、かなりの列になっていることが多い。 そこで便利になるのが、空港に設置された引換所だ。 飛行機を降りて荷物を受け取るエリアの駐車用に近い側、エスカレーター横に設置されており、フライトごとに到着時間が異なるので、大きな混雑になることが少ない。 また、開催日の前日や、結構夜遅くまで開いているので、かなり便利で時間の短縮につながる。 3. LVCCの建物間移動は無料のTeslaタクシー (Vegas LOOP) で イベントの会場が複数の建物に点在しているため、建物間の移動だけでもかなりの時間を要する。また、タクシーやUberなどのライドシェアを捕まえようとも、なかなか時間がかかってしまう。 加えて、交通渋滞も予想されるので、予定していたセッションに間に合わないケースが多発する。 それを解決してくれるのが、通称 Teslaタクシーと呼ばれるVegas LOOPだ。これは3つあるLVCC間をトンネルを通じてつないだルートをスムーズに移動してくれる便利な乗り物。それも完全無料!事前予約も要らないし、待ち時間もほぼ無い、かなり画期的な移動手段である。 では、CESの基本をカバーしたところで、本題の見どころをいくつか紹介する。 CES 2025で注目したいテクノロジートレンド CESで、テクノロジーのさまざまな分野を議論する幅広いセッション複数ある。 ざっと考えても、デジタルヘルス、AI、サステナビリティ、ゲーム、自動車テクノロジー、サイバーセキュリティ、フィンテック、さらには宇宙テクノロジーなどが含まれる。 そんな中でも、今回特に注目したいセッションはこちら。 CES 2025の注目セッションの一部をご紹介: AI搭載デバイスとソフトウェア 革新的な複合現実(MR)体験 ウェアラブル技術の突破口 携帯型ゲーム機 スマートホームの革新 ヘルステクノロジーの進展 持続可能な技術とグリーンソリューション 次世代電気自動車(EV) 量子コンピュータの進展 ロボティクスと自律システム 1. AI搭載デバイスとソフトウェア 人工知能(AI)は消費者向け電子機器にますます統合されており、CES 2025では個人アシスタントからゲーム用ハードウェアに至るまで、さまざまな分野でAIの可能性が示されるだろう。 注目すべきポイントは、効率性を高め、ユーザー体験を向上させるために特別に設計されたチップを搭載したAI搭載ノートパソコンである。 例えば、AIは使用パターンに基づいてバッテリー寿命を最適化したり、写真やビデオ編集をAI支援で改善することが考えられる。 具体例: 起死回生を狙うIntelの「プロジェクトアテナ」は、バッテリー管理をAIで強化し、システムの反応性を改善することで、ユーザーの使用状況に基づいた電力管理を予測する Microsoftの「Surface」シリーズは、AIを活用してタッチ操作を予測し、パフォーマンスを向上させるデバイスを登場させる AIを搭載したスマートフォンのカメラは、ユーザーの好みに合わせて自動で色合いや明るさを調整し、より鮮明な写真を撮影できるように進化している 2. 革新的な複合現実(MR)体験 複合現実(MR)はCES 2025で大きな進展が期待されており、Microsoft、SONY、Metaなどの企業がリーダーとして登場する 次世代のヘッドセットが発表され、より快適で軽量なデザイン、解像度の向上、視野角の拡大、さらにAI技術を駆使したインタラクションが可能になる また、ビジネスでのリモートコラボレーションやエンターテイメントで新しいMRアプリケーションが登場する 具体例: Metaは、ARアプリとの統合が強化されたQuest Proの後継機を発表し、エンターテイメントやビジネス向けの新しいプラットフォームを提供する Microsoftは、HoloLensの新しいバージョンを発表し、製造業や医療業界向けにMR技術を活用したソリューションを提供する SONYは、PSVR 2の後継機を発表し、VRゲームの体験を一層リアルに進化させる 3. ウェアラブル技術の突破口 CES 2025では、ウェアラブル技術の進化が大きな注目を集めるだろう。 […]

ラウンドワンの米国展開成功から考えるアメリカでウケる「マイルドヤンキー」型ビジネスモデル

どんなビジネスがアメリカでウケそうでしょうか? 日本企業の方々と話をする中で、最も多く聞かれる質問がこれだ。 多くの起業家たちがシリコンバレーに来るが、その多くはテクノロジー系のスタートアップ企業を立ち上げる。しかし、これまでアメリカで「大成功」を収めた日本人スタートアップ起業家は、ほとんどいないのが現状だ。 ラーメンが大ブーム 一方で、ここ数年、アメリカではラーメンが大ブームとなり、一杯20ドルもするラーメンに多くのアメリカ人が列をなしている。寿司も依然として人気で、回転寿司などの新しい形態の店舗が増加中だ。 さらに、丸亀製麺に代表されるうどんなど、他の日本料理も着実に知名度を上げている。 アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由 自動車、家電、寿司、ラーメンの次にアメリカで流行るのは? そんな中、現在アメリカで大ヒットしているMade-in-Japanの商材がある。それは自動車でも寿司でもラーメンでもなく、総合アミューズメント施設だ。日本語で言うところの「ゲーセン」とボウリング、カラオケなどを一体化した施設で展開しているラウンドワンがその代表だ。 公式サイトによると、ラウンドワンの米国市場における営業利益は100億円規模に成長しているという。 日本のアイテムがゲットできるクレーンゲームが人気 中でも特に人気が高まっているのが、クレーンゲーム、通称UFOキャッチャーだ。景品として手に入るのは日本のアニメグッズやキャラクター系のぬいぐるみで、アニメ人気の上昇に伴い、その需要も急増している。 全米に50店舗以上。破竹の勢いで展開 ラウンドワンは、2010年にロサンゼルス郊外のプエンテヒルズ・モールに初の海外店舗をオープンして以来、10年余りで全米50店舗以上を展開している。都市部に限らず、郊外や内陸部の人口密度が低い地域にも進出している点が特徴だ。 郊外のモールに出現した総合アミューズメント施設 上記の写真を見ても分かる通り、ラウンドワンは日本からアメリカ市場に展開した企業としては珍しく、日系やアジア系が多く住む都心部だけではなく、その多くが郊外のモールや、内陸地域のかなり人口密度の低い州や街に出店している。 また、カリフォルニアやニューヨーク、シカゴといった地域でも、店舗自体は都心部から離れた郊外のモール内に位置することが多い。 ラウンドワン・サンフランシスコ店を訪れてみた 2024年11月下旬、サンフランシスコ店が新たにオープンしたとのことで実際に訪問してみた。店舗は市内郊外に位置する「ストーンズタウン・ショッピングモール」の地下にあり、アクセスは裏手の駐車場から直結という、自動車社会のアメリカらしい作りになっている。 店内は広大なアーケードエリアが中心で、ボウリングやフードコートも併設されている。 アーケードは全てプリペイドカード式 中に入ると、真っ先に目に入るのがアーケードエリア。そしてその真ん中にカード購入マシーンが置いてある。そう、アーケードで遊ぶには現金やクレジットカードではなく、プリペイド式のカードを購入する必要がある。 このカードを各機種にスライドすることでプレイが開始する。必要なクレジット数は機種によって異なり、例えばクレーンゲームは小さいもので9クレジット、大きなものでは14クレジット必要だった。 店舗によって異なる提供サービス ラウンドワンの米国店舗では、地域や店舗サイズによって提供されるサービスが異なる。例えば、ポートランド店では、アーケードやボウリングに加え、ビリヤードやカラオケなども楽しめる。 US公式サイトによると、以下のようなエリアが提供されている店舗もある。 アーケードゲーム ボウリング カラオケ ダーツ ビリヤード 卓球 スポッチャ キッズプレイゾーン 食事とドリンク 全米でラウンドワンがバカウケしている10の理由 では、なぜここまでアメリカでラウンドワンがヒットしているのか。 実際に行ってみた感想と、現在のアメリカが抱える社会的状況、ライフスタイルの変化、地理的なファクター、そしてあまり知られていない若者たちに広がる”とある闇” など、その理由を考察してみよう。 1. 田舎すぎて遊ぶところがない メディア等でアメリカの様子が取り上げられる際、その多くはニューヨークやLAといった都心のエリアである。その一方で、国土の90%以上が非都心部であるアメリカは、実は巨大な田舎なのだ。 世界のテクノロジーの中心のように語られるシリコンバレーですら、実際に来てみると、その「何もなさ」に驚愕する人が続出する。 そんな感じだから、若者にとっては超退屈なエリアがほとんどで、遊び場が極端に少ない。頑張っても映画館やボーリング、下手するとショッピングモールやウォールマートが限界だ。もちろん、パチンコも違法なので存在していない。 そんな状況に、ワンストップで遊べる複合アミューズメント施設が出来た。それも深夜まで営業している。多くの若者がこぞって集まってくるのが理解できる。 2. デートする場所が無い 遊ぶ場所が少ないということは、デートをする場所にも困るということだ。 特に21歳未満はお酒が飲めないだけではなく、バーやクラブに入ることすら許されない。その一方で、自動車の免許は16歳から取れるので、少々の距離があっても等ですることは可能。 日本ではあまりおしゃれと思われないようなアーケードやボーリングは、アメリカの若者にとっては貴重なデートスポットになる。 3. ダウンタウン地域の治安悪化と郊外の発展 日本でも頻繁にニュースに取り上げられているが、パンデミック以降、都心部の治安が悪化したことで、多くの店舗が閉店に追い込まれている。 その一方で、郊外の地域は以前よりも発展してきており、ダウンタウンのゴースト化とショッピングモールの隆盛のコントラストが強くなってきている。 4. 外食が高すぎる 昨今のインフレで様々なものが高騰しているが、アメリカでは特に外食にかかるコストが爆あがりしている。食べ物の値段が上がっているだけではなく、それに連動したウェイターやウェイトレスに払うチップ額も割高で加算される上に、その率もかつての15%ぐらいから、18-20%にするのが一般的になりつつある。 その点、ラウンドワンのフォードエリアは全てカウンターオーダーなのでチップはかからない。予算に限りのある若者にとっても、これは嬉しい。 5. インバウンド客が戻っても日本のB級グルメが気軽に楽しめる ラウンドワンのフードエリアではピザやハンバーガー、フライドチキンなどの格安のファストフードに加え、たこ焼きや餃子、ラーメンといった日本のB食うグルメも提供される。 インバウンド需要で盛り上がる日本だが、一度日本に行き、その食文化の素晴らしさを知ったアメリカ人たちにとっては、また日本の食事が楽しめるのはとても嬉しい。それも、アメリカ基準ではかなりお手頃な価格で。 6. リモートワーク普及による田舎への移住 都心部の衰退の背景の一つがリモートワークの普及であることは間違いない。そして、アメリカは都会と田舎の家賃や不動産価格が極端に異なるため、ここ数年で都会から郊外や田舎に引っ越す人が増えている。 例えば、2023年一年だけで9万人以上がカリフォルニア州を去っているが、テキサス州は40万人も人口を増やしている。郊外はもちろんファミリー層も多く、家族で行ける場所としてもラウンドワンが重宝している。 7. 空きテナントの多い郊外のモール ここ数年のリモートワークに伴ったオンラインショッピングの発展で、多くのショッピングモールに空き店舗が増えている。 そこを狙ったラウンドワンは、経営難に陥っているショッピングモール内の空きスペースを活用して出店している。これにより、モール全体の集客力を高める効果があり、モール側からの出店オファーも増加している。 8. 日本のアニメ&レトロゲームブーム アメリカのラウンドワンに行って驚くのが、アーケードエリアに設置されているゲームの「古さ」。日本では十数年ぐらい前に流行ったような機種がいまだに喜ばれている。 実際、いまだにガンダムのような古いアニメや、ストリートファイター2のようなレトロゲームがいまだに人気で、日本で飽きられたコンテンツであっても、アメリカに持って来ればまだまだ稼ぐことのできる可能性がある。 9. 日本のキャラクター人気の上昇 以前よりアジア系を中心に日本のアニメ人気の上昇にあわせ、関連キャラクターアイテムやフィギュアも人気になってきている。 ラウンドワンで人気の高いクレーンゲーム系の景品がそれらのキャラクターアイテムになっており、他では手に入りにくいアイテムをゲットできる。 10. 若者のお酒離れと教会離れ。そしてドラッグ問題 「最近の若者は酒を飲まない。」これは日本でも聞かれるトレンドであるが、アメリカでも若者のお酒離れが進んでいる。実際、ここ数年における米国市場でのノンアルコール系飲料の売り上げが毎年上昇している。 また、アメリカの地方都市の定番であった「教会に集まる」習慣も、多様化が進んだことで、一般的ではなくなってきた。言い換えると、よりコミュニティ形成の難易度が上がる。それとともに、周りの目の届かないホームパーティーやクラブなどの場所で違法ドラッグを利用する可能性も高まってきている。 そんな中、より安全が担保されているラウンドワンは、明るく清潔な店舗環境で、安心して “健全に” 遊べる場所でもあるのだ。 ラウンドワンデリシャス – アメリカ市場に全振り 今回の記事作成にあたり、日本のラウンドワン公式サイトを訪れてみると、トップページに「実質年収1,500万円」というバナーが目を引いた。 海外に活動の場を移したことで、収入が大幅にアップした日本人料理人のニュースを目にしたことがあるが、ラウンドワンもその流れに乗り、今後アメリカに出店予定の本格和食店舗で働く人材を募集しているようだ。しかも、英語力は問わないという。 さらに、2025年には「ラウンドワンデリシャス」と呼ばれる和食店を集めたエリアのオープンを計画中とのこと。エンターテインメント施設に和食文化を融合させる新たな挑戦だ。アミューズメントに加え、クオリティの高い和食を提供することで、ラウンドワンは今後もアメリカ市場への注力を一層強めていくようだ。 まとめ: 下手なテック系よりもマイルドヤンキー向けビジネス 日本で熟成、もしくは廃れ始めた内容のビジネスであっても、アメリカでは希少価値があり、日本の2-3倍の値段で売っても安く思ってくれるケースもある。 言い換えると、日本でこれまでやってきて、レッドオーシャンになったタイプのビジネスでも、そのやり方をそのままアメリカに持ってきただけで、美味しい商売になる可能性がある。 アメリカはデジタル系やテクノロジーは発達しているが、都市環境は整っておらず、日本のど田舎よりもかなり閑散としている。 アメリカの若者の多くが郊外や地方土地に住み、自動車を所有。可処分所得と娯楽施設が限られている。日本でいうところのいわゆる “マイルドヤンキー” 型ライフスタイルを送っている。そこに日本で熟成した「マイルドヤンキー型ビジネス」が郊外ライフスタイルと合致し、大ヒットを生み出した。 ラウンドワンの米国展開は、名付けて「ヤンキー文化の逆輸入」なのだ。 でもバカにしてはいけない。下手なキラキラ系スタートアップ起業家なんかよりも、よっぽど米国ユーザーの心を掴み、大金を稼ぎ、大成功するポテンシャルを秘めているのだから。

【ウェブサイトリニューアル】btraxデザインメンバーが明かす舞台裏ストーリーとは?

ウェブサイトの大規模リニューアルに大切な要素は何しょう? btraxはホームページを刷新しました。 この記事では、btraxのデジタルプレゼンスの変革を主導した主要チームメンバーの想いや制作過程で感じた生の声をお伝えします。 リブランディングの取り組みや、課題と解決策、プロジェクトを導いたビジョンはどのようなものだったのでしょうか。 鮮やかな色使いや、遊び心のあるインタラクティブ機能は、btraxのアイデンティティと創造性の進化を反映したものです。限界に挑戦しながら、デザインと機能性のバランスを取ることに興味がある方は、ぜひご一読ください。 ウェブサイトをリニューアルした主な理由は? Brandon(Founder and CEO, btrax):今回のウェブサイトリニューアルは、btrax全体のリブランディングの一環です。AI等による社会の革新が起こる中でクライアントに寄り添うデザイン会社であることを表し、また、サンフランシスコと東京のチームをより普遍的なブランドアイデンティティで統一したいと考えました。 Jared(UI Desinger, btrax):クライアントとの絆を強化し、さらに新しい訪問者を惹きつけるため、ウェブサイトに新しさを打ち出す必要がありました。btraxには若いメンバーが多く、活気に満ちており、新しいデザインはそんな我々の姿と進化を表現しています。 Suzy(Associate UI/UX Designer, btrax):btraxのサービスはクリエイティブサポート以外にも拡大しており、会社が向かっている方向性の大胆さとインパクトを反映するためにウェブサイトを更新する必要があると感じました。   リニューアル中に直面した最大の課題は? Brandon:最大の課題の1つは、テキストの可読性を維持しながら鮮やかな色を使用することでした。btraxの文化を反映するためにより明るい色調を使いたかったのですが、デザインを視覚的に魅力的かつ読みやすくすることは簡単ではなかったです。 Jared:当初は、よりアーティスティックなデザインを目指していました。しかし、ユーザーへのヒアリングの結果、機能性もより強化する必要があることがわかりました。デザインの良さと使いやすさのバランスを取るのは大変でした。 Suzy:新しくノーコードツールFramerを採用しましたが、私にとっては初めての部分もあり、時間とリソースの管理が課題でした。いくつかの障壁はあったものの、ウェブデザイン自体は楽しみました。 新しいデザインはbtraxのブランドアイデンティティをどのように反映していますか? Brandon:新デザインのテーマは「ダイナミックでありながらスムーズ」です。遊び心がありながらエレガントなウェブサイトを目指し、それをインタラクティブな要素と全体的なデザインに反映させました。 Suzy:ニュートラルでクリーンな美学から離れ、より大胆なカラーパレットとタイポグラフィを採用して、自信と創造性を表現しました。これはbtraxのブランドの進化と一致しています。 Hiro (UI/UX Design Specialist, btrax):大きな画像、丸みを帯びた角、冒頭のリール動画で強いファーストインプレッションを与えることに注力しました。これらの要素が現代的で進歩的なイメージを醸し出しています。 ユーザーフィードバックはデザインにどのような影響を与えましたか? Jared:ユーザーのヒアリングを踏まえた修正により、アーティスティックだけでなく、機能性も担保したウェブサイトを実現することができました。明確なCTA、ホバーインタラクション、より使いやすいレイアウトを追加しました。 Suzy:より多くのインタラクティブな要素を取り入れて、楽しく魅力的な体験を作り出しました。使いやすさを損なうことなく、視覚的な喜びをユーザーに提供することが目標でした。 リニューアルで最も重要な視覚的な変更点は? Jared:より明るい色を導入し、モダンな印象を与えるためにコンデンスドサンセリフフォントでタイポグラフィを更新しました。より生き生きとして魅力的になりました。 Suzy:カラーパレットはより大胆になり、タイポグラフィーは自信と革新性を伝え、新しいブランドアイデンティティと一致しています。 Hiro:丸みを帯びた角を持つ大きな画像と冒頭のリール動画で、新しいウェブサイトに進歩的でモダンな雰囲気を与えています。視覚的な要素は、誇張しすぎない範囲で可能な限り大胆にしました。 新しいウェブサイトから訪問者に何を感じ取ってほしいですか? Brandon:不必要なテキストを減らし、ビジュアルとインタラクションでbtraxのストーリーを語ることに注力しました。訪問者がデザインを通してbtraxの本質を感じ取ってくれることを願っています。 Jared:訪問者が、btraxを先進的な企業であり、クライアントニーズを理解し、デザインのトレンドを把握している会社だと感じてくれることを願っています。 Suzy:訪問者にサイトの探索を楽しんでもらいたいと思います。大胆なビジュアルとインタラクティブな機能は訪問者を惹きつけるためのものであり、今後も改善を続けるにあたって、フィードバックをお待ちしています。 イノベーションの最前線へ。​​btraxの新たな挑戦にご注目ください。 今回のウェブサイトリニューアルは、印象的なデザインとユーザーフレンドリーな機能性を融合させ、会社のダイナミックな進化を体現しています。btraxの創造性とイノベーションへの取り組みを示すだけでなく、様々な仕掛けでブランドの本質をあらわす魅力的な体験へとみなさんをご案内します。 新しいウェブサイトによりみなさまとの繋がりを深め、将来何かでコラボレーションできることを願っています。

【Luupの台頭で再燃】なぜeスクーターはここまで批判されるのか?

最近日本では電動キックスクーター、別名eスクーターの話題が絶えない。特にスタートアップのLuupによる資金調達など、新たな電動マイクロモビリティとしてその勢いはどんどん増している感じがする。 後を経たない反対派の意見 その一方で、SNS上では「危なすぎる」「廃止すべきだ」「海外では禁止している街が多い」などの意見も散見され、かなり炎上気味な状態。 そんな中で、東京に加え、世界の他の街のeスクーターを取り巻く状況も踏まえ、個人的な考察をしてみたいと思う。 乗り物としてのeスクーターの危険性 そもそもなぜこんなにも反対論が多いのだろうか? それはおそらく、その車輪の小ささと重心の高さだろう。こちらのスクーターレースの動画を見てもわかるとおおり、細かなコーナーでは転倒する人が多発しており、その操作には一定の技術が必要とされる。 反対派の中には、この不安定さを指摘する人も少なくない。 eスクーターレースの様子 pic.twitter.com/OotayXHDUT — Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) March 12, 2024 東京でもeスクーターを日常で見かけることの多くなった その一方で、ここ一年ほどで東京都内でeスクーターに乗る人たちを見ることが多くなったように感じる。 また、駅前や商業施設などにLuupのステーション設置を目にすることも少なくない。 サンフランシスコでの事情 では、世界の他の街ではどうなっているのであろうか。 まずはbtraxの本社のあるサンフランシスコでは、市民の日常の足としてかなり重宝している。市内のいたる所にBirdやLimeなど、複数のシェアリングeスクーターが置かれ、アプリ経由で気軽に利用することが可能。 ちなみに、btraxのオフィスにも二台ほどeスクーターが常備されており、スタッフがいつでも利用できるようになっている。 バルセロナでの事情 先日訪問したバルセロナではどうだろうか? こちらでも、多くの人たちが徒歩や自転車、メトロに合わせ、eスクーターでの移動を行なっていた。 ニューヨーク、パリ、マドリッド、メルボルンでは禁止 サンフランシスコやバルセロナで普及する一方で、eスクーターを禁止する都市も少なくない。 例えば、ニューヨーク市やパリ、マドリッドやメルボルンでは、その危険性からeスクーターの利用を禁止している。 なぜここまで都市によって事情が異なるのか? Eスクーターが日常的に普及している都市と、完全に禁止する都市。 なぜここまでの差が出ているのだろうか?それは、それぞれの都市の構造によるところが大きい。例えば、サンフランシスコの市街地の道は、車道と歩道に加え、”Bike lane” と呼ばれるかなり広めの自転車専用レーンがあり、eスクーターもそこを走ることが可能。 それにより、車道を走りながらも、安心して自動車との “共存” が可能なのだ。 バルセロナ市街地には自動車が侵入禁止の道が多くあたり、時間によりバリケードが設置され、自動車が入れないようにしている。これにより、安全にeスクーターが利用可能になる。 歩道で乗るのは結構危険 ちなみに、車道でeスクーターを乗るのは少し怖い感じがするが、歩道を走るのは、歩行者を危険にさらす可能性が高く、禁止されているので、絶対にやめた方が良い。 こちらの動画のように、出会い頭でぶつかり、歩行者へ多大なる被害を与えてしまうことになる。 日本でも電動キックスクーターが随分と普及してると思うけど、ぜひお気をつけください。先日、ロスアンゼルスで歩道を走るキックスクーターが道を横切る男性に衝突。事を荒げたくないと思った男性は病院に行かなかった。しかし、頭部に受けたダメージが原因でその後に亡くなっている。 pic.twitter.com/EjDGcQ0r3C — Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) September 24, 2024 保守派 vs イノベーターの二元論ではない こんな感じで、それぞれの都市によってeスクーターへの法規対応が大きく異なる。 そんな中、日本国内ではLuupに代表される、シェアリングスクーターに対しての強い批判をする保守派と、新しいモビリティへの期待が高まる確信派との間での激しいぶつかり合いが定期的に見られる。 しかし、それはeスクーターという乗り物自体だけにフォーカスを当てているうちは、かなり的外れな気もする。 そんなビジネスの正しさとかの話じゃなくて、単純に「Luupあぶねーだろ」って言ってんの。 pic.twitter.com/wGj1OfQDfw — まことぴ (@makotopic) October 22, 2024 結論: eスクーターが安全に普及するには都市インフラが不可欠 Eスクーターが危ない乗り物なのか、東京をはじめとする日本の都市で普及させるべきかどうかに関しては、都市のインフラと併せて考える必要があるだろう。 例えば、上記で紹介したサンフランシスコの場合、自転車専用レーンのおかげでかなり安全に感じる。 その一方で、パリのような道が狭く、歩道と車道の距離が近いような都市においては、危なかっかしすぎて乗る気にもならない。 今後、東京でeスクーターを安全に普及させるには、まずは都市のインフラの整備から行う必要があるように思われる。

【デザイン進化の20年を祝して】btrax 20周年記念イベントハイライト、業界のトップランナーが集結

btraxは今年、創業20周年を迎えました。この20年間、私たちは日本だけでなく世界中の企業に革新的なデザインとマーケティングソリューションを提供し、その成功を支援してきました。 この達成を記念して、サンフランシスコのLyft本社で「20/20 VISION:  The Evolution of Design」をテーマに特別イベントを開催しました。このイベントでは、デザイン界の有力なリーダーたちが一堂に会し、デザインの進化とこれからの課題や機会について深い洞察を得られるパネルディスカッションが行われました。 パネルには、以下のメンバーが登壇しました: – Dan Harden氏:WhipsawのCEO、創設者であり、主任デザイナーとして1,000以上の製品を市場に送り出した実績を持つ。 – Gadi Amit氏:NewDealDesignの代表兼主任デザイナーであり、過去20年間の象徴的な製品を手掛けたクリエイティブの賢者。 – Brandon Ramos氏:Lyftのシニアプロダクトデザインマネージャーであり、MetaやWeight Watchersなど数々の大企業で20年以上チームを率いた経験がある。 – Jessica Leitch氏:frog North Americaのマネージングディレクターであり、15年にわたってサービスデザインに専念してきた。 パネルの進行役は、btraxの創設者兼CEOであるBrandon K. Hillが務めました。 デザイナーの役割の変遷 参加者たちは、デザイナーの役割がこの20年間で劇的に変化したことに共通の理解を示しました。かつては美しいものを創り出す職人と見なされていたデザイナーが、今や体験やライフスタイル、そしてビジネス戦略そのものを形作る重要な役割を担っています。 デザインは単なる製品開発の一部を超えて、意思決定の原動力となっています。デザインが戦略的資産としての価値を増したことで、デザイナーは企業の中核的な決定に深く関与しています。 以前は美しいものをデザインしていましたが、今ではライフスタイルや体験そのものをデザインしています。デザインはもはや名詞ではなく、動詞のような存在です。– Dan Harden さらに、デザインプロセスそのものも変化してきました。現在のデザインはより動的で協力的であり、単なる製品作成にとどまらず、複雑で多層的な問題に対処することに焦点を当てています。 AIがデザインにもたらす影響 ディスカッションでは自然と人工知能(AI)の話題も浮かびました。AIがデザイン分野で担う役割はまだ始まったばかりですが、参加者たちはその業界への影響について様々な見解を述べました。 AIは人間の創造性や直感を代替するものではありませんが、デザインプロセスの一部を効率化する強力なツールになる可能性があることに意見が一致しました。 「私たちはAIツールのキュレーターや管理者になるでしょう。」– Brandon Ramos 一部の参加者は、AIの創造力における限界や、文化的価値を損なう可能性についての懸念を示しました。しかし、AIを用いてブレインストーミングやプロトタイピングを迅速化し、最終的にはAIの生成物を導き洗練させることができれば、デザイナーにとって進化の大きな機会となるだろうと考える意見もありました。 若手デザイナーへのアドバイス パネル参加者は、これからデザインのキャリアを始める若手デザイナーへの有益なアドバイスを提供しました。重要なポイントの一つとして、創造性とビジネス感覚のバランスを取ることの重要性が挙げられました。 「AIは優れたデザインや創造性の代替にはなりません。システム思考を学び、SFを読んで視野を広げてください。」– Jessica Leitch デザイナーは美にとどまらず、企業の広範な経済的・戦略的目標を考慮することが求められます。システム思考の強固な基盤を築き、創造的な視野を広げ続けることが次世代のデザイナーにとって欠かせないスキルとされています。 さらに、AIが進化を遂げるとしても、パネル参加者たちは人間の創造性や批判的思考の価値を完全に置き換えることにはならないと強調しました。デザイナーは自分自身の独自のスタイルや問題解決能力を磨きつつ、AIを競争相手として恐れるのではなく、創造的なツールとして活用することに集中すべきです。 未来への挑戦と機会 パネルは、デザイン業界が今後直面する課題についてディスカッションの締めくくりを行いました。デジタル化が進む中で、技術の負の側面、例えば画面依存症やデジタルの過剰依存に取り組むことが主要な課題として浮かび上がってきました。 「技術や画面依存に対抗する必要があります。私たちはこれまで人々にアプリを使うよう促してきましたが、今度はその問題を解決することが求められています。」– Gadi Amit 技術の進歩と人間の幸福の調和が必要であることが繰り返し言及され、デザイナーには、思慮深くユーザー中心のデザインを通じて人々の生活を向上させる責任があると認識されています。 未来を見据えると、パネル参加者はデザインがこれからも世界の課題解決の最前線に立ち続ける未来を描きました。社会的・環境的課題に対処し、より持続可能で影響力のある製品を創出するために、次の20年間、デザイナーは批判的に考え、急速に進化する技術に適応する必要があります。 ビートラックスのこれから デザインイノベーションの20年を祝う今、ビートラックスは進化し続けるデザイン業界の最前線でリーダーシップを発揮することに引き続き全力を注いでまいります。私たちの20周年記念イベントは、業界が遂げた驚くべき進歩を振り返るだけでなく、未来への胸躍る可能性を垣間見る機会ともなりました。 過去20年間のデザイン革命の一翼を担ってきたことを誇りに思うと同時に、これからの新たな章に大きな期待を寄せています。 創造性、テクノロジー、そして人間中心の思考が世界を形作り続ける未来に向けて、ビートラックスは更なる挑戦を続けてまいります。私たちは、この先も革新的なデザインソリューションを通じて、企業や社会に価値を提供し続けることをお約束いたします。

なぜ「全ての人を対象にした商品」は売れないのか?イノベーター理論で学ぶターゲット戦略

この商品のターゲットユーザーは、全ての人です あなたの企業では、このようなターゲット設定をしていないだろうか。 私自身、過去に大企業で新規事業を推進していた際に「ニッチ市場すぎるのでもっとマス市場にターゲット層を広げるべき」という指示を受けたことがある。 このように起業では事業として成り立たせるためにできるだけ多く、広いユーザーを狙うことが求められるが、実はほとんどの初期フェーズにおいてはもっとユーザーを狭めるべきケースの方が多い。 ターゲットユーザーの定義を広げて、多くの人が喜ぶ商品を作ったつもりでも、実際はなかなか売れずに苦戦してしまうケースが多いのだ。 今回の記事では、新規事業や新商品を生み出す企業にとって、どのようにターゲットユーザーを考えていけばいいのかといった、新規事業担当者としておさえるべき基本を、過去に大企業内で新規事業に携わっていた筆者の視点から改めて紹介する。 ニーズが多様化し、「全ての人に愛される商品」がそもそも作れない時代に これまでの商品開発やマーケティングにおいては、可能な限り広い層を対象者と捉えて、広範囲にアピールすることが重要だとされてきた。しかし、そこから時代は大きく変化しており、今やそのようなアプローチが通用しなくなっていることを感じている企業も多い。 なぜ、「できるだけ多くの人に愛される商品を作る」が難しくなったのだろうか。 近年、人々の嗜好や価値観はますます多様化している。インターネットやソーシャルメディアが普及し、あらゆる情報に誰もがアクセスできるようになったことで、消費者は個々に好きなコンテンツやモノを消費することが当たり前になった。その結果、消費者のニーズや価値観が細分化されるようになったのである。 このような多様な価値観やニーズにさまざまな企業が応えていった結果、今日の市場はかつてないほどあらゆる商品で溢れている。また、消費者も無数の選択肢を前に、何を選ぶべきか吟味するようになった。 ここで、「あらゆる消費者のニーズに応えるために、さまざまな機能を詰め込んで全員のニーズをカバーしたらよい」と考える方もいるかもしれない。しかし、さまざまなことができるが自分の課題を少しだけしか解決できない「万能」な商品は選ばれなくなってきている傾向にある。 なぜなら、無数の商品がある時代において、特定のニーズに深く応える「専門」の商品も代替手段として存在していることが多く、一つの課題をできるだけ深いレベルで解決する商品のほうが、浅いレベルでしか解決できない商品よりも消費者にとって価値を感じるからだ。 消費者の目に留まり、価値を感じてもらうためには、商品は明確に差別化されなければならない時代になっている。 「誰にも使われない機能を持つ製品」が生まれてしまう2つの理由 普及する「順序」を見極める 「では、多くの人に広くあまねく商品を届けるのは無理で、ニッチな層にしか売ってはいけないのか?」と思われる方もいるかもしれないが、安心してほしい。絞り込んだターゲットユーザー以外へのアプローチを諦める必要はない。 重要なのは、商品がどのように市場に受け入れられ普及していくのか、その「順序」を深く理解した上で戦略を立てることだ。 ここで注目すべきなのが「イノベーター理論」だ。 イノベーター理論とは イノベーター理論(Diffusion of Innovation Theory)とは、スタンフォード大学の教授エベレット・M・ロジャーズ氏によって1962年に提唱された、新しい製品やサービスがどのように市場に浸透していくかを説明したものだ。 この理論を理解することで、商品がどのようにして広がっていくのかを体系的に捉え、適切な戦略を立てることができる。 イノベーター理論は、ある商品に対する全体の顧客セグメントを普及の段階別に5つに分けて考える方法で、それぞれのグループは製品やサービスに対する受け入れ方が異なるとされている。 新商品が普及していくのは、一般的にイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの順であると考えられる。 イノベーター(2.5%): イノベーターは、新しいものを積極的に「とにかくまず試したい」という強い欲求を持つ人々だ。この層の人々はリスクを厭わず、新しい技術や商品に対して早くから関心を示す。また、商品が市場に出た直後に真っ先に手を出す人々でもあり、この顧客層からのフィードバックは商品やサービスをよりよい形にブラッシュアップし、次の市場を拡大するための重要な情報源となる。 アーリーアダプター(13.5%): アーリーアダプターは、新しいものを吟味し、前向きに購入を検討する人々だ。この層はイノベーターほど冒険心が強いわけではないが、新しい技術やトレンドに対して敏感であり、自分自身の評価に基づいて購入を決定する。 アーリーマジョリティ(34%): アーリーマジョリティは、自分自身で判断するよりも、「流行っている」または「他の人が使っている」ものを重視して購入する層だ。この層は一般的にはやや購買行動に慎重で、商品がある程度の人気や信頼を得た後に購入を決断する。 この層の人々は、例えば利用者から多くの高い評価がレビューにつかないと新しい商品を買わなかったり、人気の最新テック商品はセールのときだけ購入したりという行動をとる傾向にある。 レイトマジョリティ(34%): レイトマジョリティは基本的に購入には消極的で、周囲のほとんどの人が使い始めて初めて、ようやく使用を検討する顧客層だ。この層の人々はリスクを避け、安全性や確実性を重視する。例えば、現金での支払いにこだわってカードやQR決済を避けたり、オンラインでは買い物をせず店頭でのみ買い物をしたりという慎重な行動をとる。 ラガード(16%): ラガードは、どんなリスクも負いたくないと考えるような、最も保守的な層だ。この層の人々は新しい技術や商品に対して非常に慎重であり、それが大多数に普及し当たり前の伝統となって初めて購入を考え始め、腰を上げる。 新商品が普及する顧客層の「順序」に応じた戦略構築 では、イノベーター理論を活用して、どのように戦略を立てていけばいいのだろうか。 新商品は各顧客層に段階的に普及していくものであり、一段飛ばしに普及させることは極めて難しい。まずはその商品がどの普及フェーズなのかを見極めて、その段階に応じて顧客層のフォーカスを定めた、適切な戦略を適用していくことが必要だ。 ターゲットユーザーを考えるときは、まずはざっくりと新商品が最初に普及する層と、一定普及した後に届けるマス層に分けて考えるのがよいだろう。 それぞれのグループは、初期市場、メインストリーム層と呼ばれる。一般的には、イノベーターやアーリーアダプターが「初期市場」を形成し、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、そしてラガードが「メインストリーム市場」と言われる。 既にローンチしている商品の拡大戦略を考える場合は、その商品の顧客層が初期市場なのかメインストリーム市場なのか、どちらに該当するのか現在地をまず考えてみるとよい。新規事業・新商品の場合はまずは初期市場に集中しよう。 初期市場(イノベーター、アーリーアダプター) 初期市場にいるイノベーターとアーリーアダプターにアプローチするには、まず「真っ先に使ってくれて、泣いて喜んでくれる顧客は誰か?」を考えるとよい。こうした考えを整理し、チームで認識を合わせるためには具体的なペルソナを作ることがおすすめだ。 ペルソナを作成するためのリサーチや書き方の例については、下記の記事も参考にしてほしい。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 自身の過去の新規事業においても、初期市場のターゲット層をぐっと絞り込んだことで支持が得られた経験がある。 ある防犯系のプロダクトを考えていた当初、ターゲット層は小学生や中高生、20〜30代の大人と広く定義しており、さらにBtoBで塾や予備校、学校などにも購入してもらうビジネスモデルを考え、複数のユーザー層と同時に対峙していた。 しかし、この層の人々の価値観や不安度はまちまちで、求める機能や価値もユーザーによって差がある状況だった。 このとき、チームで「真っ先に使ってくれて、泣いて喜んでくれる顧客は誰か?」を改めて考え、都市部に住む20代の女性で、ペインの強い人をペルソナに設定してプロダクトの機能を絞り込んで設定していった。 その結果、ターゲットユーザーから熱い支持を得て、商品ローンチ前にもかかわらず複数の購入予約を得ることができた。 メインストリーム市場(アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード) 商品が初期市場で成功し広まった後、次にメインストリーム市場に進むためには、アーリーマジョリティとレイトマジョリティにアプローチする必要がある。これらの層は、商品の安定性や信頼性、そして周囲の評判を重視する。 新規事業においては、初期のうちは品質よりスピード重視で商品を作るというのが定石だが、このフェーズからは品質を上げることが求められるだろう。例えば、初期市場で得たフィードバックを反映して商品を改善し、体験の品質や製品の信頼性を向上させるというのも有効だ。 また、マーケティング戦略においても、例えばユーザーレビューを積極的に集めて公開することでメインストリーム市場の顧客からの信頼を獲得し、商品の価値を証明するというのも効果的と考えられる。 ターゲットを段階的に捉えて成功した事例:Uber Uberを例に、段階的にターゲットを捉えてビジネスを拡大する考え方を見てみよう。(出典をもとに翻訳・編集) Uberは現在約70か国、10,000以上の都市に展開するライドシェアリングサービスだ。乗客のユーザー層も様々で、高齢者や身体障がい者にもサービスを提供している。 また、電気自動車を選んで乗車できるUber Green、ペットと乗車できるUber Petなどのオプションもあり、多様なニーズに対応している。 まさに「全ての人々をターゲットにした、全ての人に愛されるサービス」に見えるが、現在のサービスになるまでにさまざまなステップを経て、現在のサービスに仕上がっているということを無視してはいけない。Uberははじめ、ターゲットを限定的にしてスタートしている。 2010年にサービスをスタートした当初、Uberの初期顧客は、タクシー代を払う余裕がある、自分の街の交通業界の現状に満足していないサンフランシスコのプロフェッショナルワーカーだった。 当時のサンフランシスコではタクシーの需要と供給の差が大きく、「乗りたいのにタクシーが捕まらない」ことに人々がうんざりしていた。プロフェッショナルワーカーたちは確実に移動をするために、既にプライベートハイヤーやリムジンサービスなどの代替案も試してきたので、問題を解決する新たな方法を試す意欲も強かったのだ。 このフェーズにおいてUberははじめ、一般人のドライバーが自分の車を使う現在のUber Xのような形態ではなく、プロのドライバーが運転する黒塗りの車が呼べるサービスからスタートした。 プロフェッショナルワーカーのニーズに合わせて、質の高い体験を提供することでその体験を口コミで顧客が広めてくれるようにするためだ。 口コミ戦略は非常に成功し、友人にサービスを紹介することで自分自身も割引を獲得できるというマーケティング戦略と組み合わせたことで一気に広まった。 ここから、利用シーンやターゲットユーザーも徐々に広まっていく。プロフェッショナルワーカーに限らず、カンファレンスイベントや休日の夜のパーティーの帰りなど、需要の高い時間を狙って割引コードを駅で配るなどしてプロモーションを行い、大量の顧客を獲得していった。 利用目的も普段の通勤や、食料品の買い物などにシフトしていき、サービス提供地域もタクシードライバーが不足しているニューヨークや、パリなどへと拡大していった。 今や様々な国や地域であらゆる人々に利用され、多くのオプションも用意されているサービスも、最初は非常にターゲットを絞って、段階的に戦略を変えて今があるということがわかる。 まとめ ここまで見てきたように、商品は一気に市場の全ての人々に広がるわけではなく、各フェーズで適切な戦略を採用し、段階的に広げていくことが求められる。イノベーター理論を理解し、正しい「順序」で顧客を捉えていけば、最終的には多くの人々に愛される商品となっていくだろう。 そのためには、まず商品がどの普及段階に今いるのかを見極めることが重要だ。新商品や新規事業の場合は、抽象的な「誰も」が愛する商品を作ることを狙うのではなく、まずはフォーカスを絞ったターゲットに対して、深く刺さる商品を生み出し、段階を進んでいきながら広く遍く普及させていくというマインドを持っておくことが大切だ。 ビートラックスでは各フェーズでの顧客の解像度を上げていくためのユーザーリサーチや、そのデータを用いた新規事業・新商品開発、マーケティング戦略の立案・実行の伴走支援をしている。 ビートラックスのサービスや過去のプロジェクト事例にご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせ頂きたい。 弊社サービス紹介ページ お問い合わせページ

デザイン思考は何が問題なのか?その限界と先にある可能性

「デザイン思考を導入してみんですけど、これといった結果が出てないんですが…」 日本企業にデザイン思考ブームが到来して、数年経ち、効果について検証し始める時期になってきてるのだろう。 デザイン思考は現代のビジネスにおいて、重要な役割を果たすが、同時にその限界と課題についても多くの議論がされている。 その辺に関して、掘り下げてみたいと思う。 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス デザイン思考の誤解とその限界 そもそも、企業がこの手法を取り入れようとする背景には、イノベーションの創出を期待していることが多い。 しかし最近では、デザイン思考を導入してみたものの、それだけでは十分ではないという現実に直面する企業も少なくない。 これは、デザイン思考を万能なツールと過信し、そのプロセスさえ踏めば、何かしら新しいイノベーションや、ヒットサービスが生み出されると勘違いしている部分が大きい。 では、どのようにしてデザイン思考を超えて、真のイノベーションを実現することができるのだろうか? “イノベーション“ や ”DX” をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと デザイン思考の現状と課題 デザイン思考は、その名の通り、ユーザー中心の視点から問題を解決し、新しい価値を創造するための方法論だ。 しかし、実際には、単にデザイン思考を導入するだけでは、企業が期待するような革新的な成果を得ることは難しい。 多くの企業がデザイン思考を実践しているものの、結果が伴わないことが多く、その理由としては、デザイン思考がプロセスとしては万能ではなく、他の要素と組み合わせる必要があることが挙げられる。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞったプロダクトは面白味がない これは非常に主観的な意見だが、デザイン思考のロジックに従い、プロセスを丁寧に進めて作られたプロダクトは、妙に「平坦」に感じられることがある。 世の中にある他のサービスと似通ったものになりがちで、何かが足りないような感覚を覚える。まるで。いまひとつスパイスが効いていないような印象。 その理由は、多くの場合、作り手が本当に作りたいものを作っていないから。 たとえプロセスをしっかりと踏み、1つ1つ検証を行ったとしても、そこに強い情熱や思いがなければ、出来上がるものはなんとなく退屈なものになってしまう。 作り手に強い愛情がなければ、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、論理的にはまとまったプロダクトを作れるかもしれないが、なぜか心には響かないものになりがち。 単にデザイン思考のプロセスを踏んで、ユーザーが欲しいと言ったものを作っただけでは、それは単なる「御用聞き」のプロダクトになってしまう可能性が高い。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは デザイン思考 ≠ イノベーション デザイン思考を取り入れる際に多くの企業が抱える誤解は、デザイン思考そのものがイノベーションの創出に直結するというもの。 しかし、実際にはデザイン思考はあくまで一つのフレームワークであり、単独で革新をもたらすものではない。重要なのは、デザイン思考をどのように実践し、他の要素とどのように組み合わせるかだ。 特に日本企業においては、表層的な部分ではそのプロセスをなぞりながらも、デザイン思考の本当の意味での実践が難しいとされており、その理由として文化的な背景や組織のマインドセットが影響している。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは イノベーションを生むためのマインドセット では、何が欠如しているのだろうか? イノベーションを生み出すためには、単なるデザイン思考の実践だけでなく、組織全体のマインドセットの変革が不可欠だ。 いくらスタートアップの真似事のようなやり方をしても、その組織の根底にある考え方や文化が、旧態依然としたレガシー企業だったとすれば、「なんちゃってデザイン思考」でしかいないのだ。 必要なのは、企業の売り上げや利益、そして自分たちの組織内でのポジションや出世よりも、ユーザー視点での問題解決を最優先に考え、失敗を恐れずに挑戦する文化を醸成すること。 全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること 行動としてのデザイン思考 個人的には「デザイン思考」の最も大きな欠陥は、その名称にあると思っている。 そう、この「思考」という単語がよくない。そもそも、考えているだけで実現できる結果など、エスパーでない限り、ほぼ不可能だからだ。 デザイン思考を実践する上で重要なのは、そのプロセスを単に形式的に行うのではなく、実際の行動に移すこと。 考えてばかりじゃなく、短期間で多くのプロトタイプを作成し、フィードバックを得、そしてダメならピボットして、ガンガン改善する。そんな姿勢がない限り、世の中に愛されるプロダクトは生み出されない。 そう。デザイン思考は、単なる思考プロセスではなく、実際の行動を伴うものであるべきだ。 企業がイノベーションを生み出すためには、議論よりも行動に重きを置き、短期間での実験と検証を繰り返す必要がある。これは、企業が変化のスピードに対応し、競争力を維持するために不可欠なアプローチである。 イノベーションを生み出すために -空想者から行動者に変革する5つの方法- 始動プログラムより カオスから生まれるクリエイティブなプロセス 実際のデザイン思考のプロセスは、想像以上にカオスであり、その中でこそ真のイノベーションが生まれる。 計画通りに進まないプロジェクト、突発的な問題や感情のぶつかり合いが頻繁に発生することもあるが、これらはすべてクリエイティブなプロセスの一部。 このような環境を許容し、支持する企業文化があって初めて、革新的なプロダクトやサービスが生まれる。 一言で表現すると「お利口さんからの脱却」が求められる。 結論: 最も重要なのはデザイン思考を超えた要素 デザイン思考だけではイノベーションを実現するのに十分ではない。 組織全体でユーザー中心のアプローチを根付かせ、失敗を恐れず挑戦する文化を醸成することが不可欠。これには、トップダウンでのリーダーシップと、現場レベルでの自主性が融合したカルチャー変革が求められる。 デザイン思考を超えて、マインドセット、カルチャー、パッション、アクションといった要素を組み合わせることで、初めて企業は真のイノベーションを生み出すことが可能になる。 イノベーションを生み出すための要素: ユーザー視点 未来志向 柔軟な組織マインドセット 失敗を許容するカルチャー 当事者たちのパッション 強いリーダーシップ 早い段階でのアクション これらの要素を実現し、日々の業務に反映させることで、初めて未来の成功につながっていくと思う。 では、実際にどうすればそんな状況が生み出せるのか。詳しくは下記のイベントにて事例を含め、そのノウハウを伝授します。

大企業のジレンマ打破!イノベーションを起こす組織づくりの秘訣

どの会社にも新しいことを生み出すカルチャーが求められている AI登場でビジネス環境は産業革命級に変化しており、昨日の製品、サービス、技術が今日は通じない、ということが起こっている。 そのような中、各企業は新しい環境を捉え、それを踏まえての新しいニーズに応えようと必死にもがいている。 しかし、そこに立ちはだかるのが既存のカルチャー。 昨今立ち上げたスタートアップであれば、最新の状況を踏まえたカルチャーを一から立ち上げれば良いとも言えるが、歴史ある大企業、成功してきた企業だからこそ、長年培われてきたカルチャーが根を張り、図体も大きく、変革が難しい。 日本の老舗企業とまで行かずとも、例えば、テクノロジー企業であるマイクロソフト社は、90年代、2000年代に覇者となった後、モバイル革命に乗り遅れ、停滞。ナデラCEOの改革による復活を待つこととなった。 では、大企業のカルチャーはどのようにすれば変えることができるのだろうか? 1. グローバルで成果を出し続ける大企業の事例紹介 まずは、グローバルで成果を出し続ける大企業の事例を参考に、目指す姿を探ってみよう。 事例1:3M 100年以上の歴史を持ち、従業員8~9万人、グローバル売上高が約350億ドル、世界的な化学・電気素材メーカーである3Mは、毎年数千の新たな特許を取得し続けている。 Googleも真似したと言われる新規アイディア創出のための代表的な仕掛けが、1948年より運用し続けている「15%ルール」。社員は15%の時間を通常業務とは異なるサイドプロジェクトに時間を費やすことができる。単に時間の設定だけでなく、ここでの成果は正式な年次評価の対象となり、また、昇進やボーナスなどの要件としても定義されている。 新しいことを生み出し続けられるよう、カルチャーという漠としたものにとどめることなく、個人や組織に定着するような制度(人事制度、メンター制度、予算制度、等)や仕組み(社内ネットワーキング、勉強会や展示会、KPIなど)を作り上げ、時代や人員の入れ替わりがあっても廃れることのない確固たるものとしている。 事例2:ユニリーバ ユニリーバも、売上高524億ユーロ、世界に約15万人の従業員をかかえる歴史あるグローバル企業。これまでに4万を超す特許技術を生み出している。 消費財業界は、競争やニーズの変化がとりわけ激しく、その市場環境から必然的に変化に敏感なカルチャーが形成されてきたとも言えるが、その歴史を紐解くと、買収に買収を重ね巨大化してきた経緯があり、常に新しい血が入ってきたことが企業文化を作りあげる大きな要素であったと想像される。 また、製品軸、リージョン軸などで、時代や市場にあわせて柔軟に組織再編を行っていることも社内のコラボレーションや新陳代謝を促してきた要素であろう。 次々と新しい企業を吸収し、それを1つの会社として成り立たせ成功し続けるには、カルチャーの統合がとりわけ重要となる。管理職の育成プログラムや内部向けのブランディング活動を徹底してきたことも、ユニリーバのカルチャー強化に貢献していると思われる。 会社全体として「イノベーション」を第1のキーメッセージとしているわけではないものの、例えば以下のようなことから最先端で成果を出していくイメージが社内で共有されていると思われる。 イノベーション組織「Unilever Foundry」の設立(2014) CEOポール・ポールマンによる「Connect 4 Growth Programme」の発表・推進(2016年) CEOポール・ポールマン時代の2010年、当時として新しいサステナブル経営の推進を発表 会社ウェブサイトのニュース記事にはイノベーション関連のトピックが多数並ぶ R&D部門のページでイノベーションを強調 R&Dからマーケティングまで各部門のリーダーたちが常に革新や創造、実験文化、勇気、などのメッセージを発信 その結果として、例えばMITの調査では、ユニリーバ社員による自社カルチャーのイメージとして、「Agility」や「Innovation」が高い評価で挙がっている。 事例3:Google Googleは変革カルチャーのお手本であった。しかし、AI登場に伴う業界の変化の中で、自身の収益の主軸であった検索サービスをどう変えていくのか、まさに変革を問われている。 また、世界で18万人(2023年時点)を抱え、大企業ならではの限界があったり、ここ2年ほどはリストラを決行しなければならないなどの時期にもある。時間を積み重ねる中で、カルチャーや制度にどのような変化があったのか見ておきたい。 Googleのイノベーションカルチャーとしてよく紹介されるのが下記3つ。 ◆活発・オープンなコミュニケーション 前提として、Google社員にはそもそもコミュニケーション能力の高さが求められており、採用時点で厳しいふるいにかけられる他、仕事の進め方やその結果としての評価にもコミュニケーション力が必須である。 週次のスタンドアップミーティング、マネジャーとチームメンバーとの1on1ミーティング、などの他、仕事に関係するトピックからそうでないものまで社員の興味に応じたコミュニケーショングループ内で情報が交換されていたりする。 Googleは、全従業員が自分の意見を共有することを奨励している。昨今はフォーラムなどの方式に変わったようであるが、かつては、リーダーが最新情報を共有し全社員で活発なQ&Aを行う「TGIF」(Thank God It’s Friday)会議を実施していた。 ◆イノベーションを奨励 Googleには不確実性や失敗を許し、リスクをとることを推奨するカルチャーがあるとされる。その象徴的エピソードは、ラリー・ペイジがプロジェクトに失敗した管理統括者に対し、リスクを恐れて何もしない会社よりも、やってみて失敗することのほうが素晴らしいとコメントした、というもの。 また、勤務時間の 20% を自ら選択したプロジェクトに費やすことが認める「20%時間」ポリシーは2004年のIPOの際に発表され有名になった(現在は許可制などの制約あり)。 その他、「10x思考」(10%でなく10倍の成果を目指すために何を達成するか考えるというもの)を推進することにより、常識にとらわれずどうしたら飛躍すればよいかを考える癖をつけさせるなどしている。 ◆仕事のワクワク感、楽しさ、心理的安全を追及 ご存知の通り、Googleplex(本社)の遊び心ある内装、無料のランチ/ディナー、ジム、プール、キッチン、仮眠施設、などは全て楽しく仕事してイノベーションを生み出すための仕掛けである。 また、社員が安心して働き、帰属意識を高めるよう、心理的安全性を高めるためのカルチャー(相手への理解、意見の受入れ、等)を促進している。 最新状況はどのようなものだろうか。 例えば、前述の通り、TGIFについては、会社の巨大化に伴い、この会議のデメリット(社員の意見に対して経営陣が何も行動を起こしていないと捉えられたり、企業内部の情報が外部に流出するなど)を考慮し、2019年に大幅に縮小されることとなった。 また、20%時間ポリシーにより、大きな収益につながるサービスが生まれていたのはごく初期のみ、と言った評価もある。 オフィス環境については、オフィスで働くことを絶賛する古参の社員がいたり、実際に人に接して仕事をしたいという若い社員がいる一方、パンデミックを経てリモートワークにすっかり慣れ、リモートワークのほうが生産性があがる、なぜリモートではイノベーションを起こせないのか、と主張する社員もいる状況のようだ。 また、口コミや元従業員の情報なので部分的な見方ではあるかもしれないが、以下のようなことが言われている。 初期のGoogleには突出したスキルを持つオタクの技術者や起業家精神を持つメンバーが集まっていたが、昨今は高い給与を求めるオーソドックスなエリートの集まりとなってしまった 組織が大きくなるにつれ、中間管理職や内部のコントロールが強くなった ミッションやユーザーを最重要視せず、上司の言うことを優先 社員はプロジェクトの遂行よりも、週3日勤務や高い報酬・評価ばかり求めるようになった 過去の成功に基づき、今のやり方が完璧・唯一の方法である、これがGoogle Wayだということに固執し、より良い方法を考えないようになった 変革のスピードに対する認識が甘くなった 日本のどこかの企業の内部から聞こえてくるような声である。 しかしなお、Googleは成長し続けていることは事実(2023年、過去最高額3,056億3千米ドル)であり、以前と比べて革新的に見えなくなったとしても、これだけの大規模で世界各オフィスでイノベーションカルチャーを維持・継続できていることは賞賛に値する。 やっていることはそう特別ではない グローバル大手3社の事例を見てどう感じられただろうか。 やっていること自体はそこまで奇抜でないかもしれない。Googleのオフィス環境や労働環境は初期の頃には珍しく、ここまでやる企業があるのか、と驚きをもって語られたが、いまや、日系企業も遊び心あふれるオフィスを作ったり、「1on1」という用語がすっかり広まったりと、Google風取り組みに着手している企業も多い。 しかし、日本の企業の皆さまと話してみると、いろいろやっているがカルチャーはなかなか変わらない、そういった取り組みに社員がしらけている、といった声が聞こえてくる。 環境の変化に対応できる組織を実現する、もしくは、そのような会社に変わるには何がポイントとなるのだろうか。 2. 継続の仕組みとコミュニケーションが肝 変革カルチャーを内在させている企業のポイントとして言えるのは、①カルチャーを定着させるための仕組み、②カルチャーを浸透させるためのコミュニケーションの徹底・継続、である。 ①仕組み カルチャーを定着させるための仕組みとは例えば下記のようなものである。 ◆組織: 変革カルチャーを推進する専門チームを設置し、プログラムを推進し、PDCAサイクルをまわしていく 会社の組織デザインへの反映(新しいテクノロジーを取り入れることをミッションとした組織やタスクフォースの設置、プロジェクトチーム制の採用、市場動向やユーザーの動きを身近に感じることのできる組織構造、部門間のコミュニケーションがしやすい組織構造、等) 業務部門ごとのゴール設定にイノベーションに関連する項目を盛り込む 部門サイロ化や官僚的なオペレーションを防ぐため、一定頻度での組織改編 ◆人事: 人材採用基準として変革カルチャーへの適性を重視 新しい視点やこれまでの人材と異なるバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用 社員の評価項目やフィードバック項目、社内の表彰制度に、新しいことにチャレンジする姿勢や成果に関する項目を入れる 研修プログラム(入社時研修、昇進時の研修、管理職向け研修、など)に変革マインドセットを強化する内容を組み込む 人材の新陳代謝を促すことのできる評価・待遇ルール ◆業務ルール: 一定のコントロールや判断基準を入れつつも、新しいことへのチャレンジ・失敗・軌道修正を許容する投資ルールや業務ルール 会議や報告のための時間を最小限にするための効率化や、変革を阻害する既存ルールを廃止、自由に考える時間を創出 相互作用によるアイディア創出を促すブレインストーミングやハッカソン等の活用 会議の際は、提案を促し、「Yes and」 ルールを適用 ピンポイントでこれらの中のどれか1つをやる、ということでなく、実直にあらゆる視点で着実にやっていくことが必要である。 ②コミュニケーション 2番目、「カルチャーを浸透させるためのコミュニケーションの徹底・継続」とはどのようなものであろうか? これは、インターナルブランディングとも呼ばれる(日本ではインナーブランディングと呼ぶ人もいる)施策の数々である。 経営トップより変革カルチャーを促すメッセージを定期的な全社会議の場で発信 社内イントラや社内報などで、変革カルチャーに関するトピックやキーワードを繰り返し繰り返し継続的に発信 社員の目につく場所(社内グッズやオフィスの壁など)にスローガンやキーワードを掲載 概念的なスローガンやキーワードについてより詳しく説明するガイドラインを作成。また、変革がなぜ重要なのかも説明 採用ページでも変革カルチャーを強調 特に、スローガンやキーワードだけでは伝わりにくいのであれば丁寧に説明する必要がある。 例えば、エヌビディアは行動指針「NVIDIA’s Core Values」の一番最初に「Dream big, start small. Take […]

イノベーションを生み出す思考法、第一原理思考 とは? – イーロン・マスクのフレームワーク

皆さんは、スタートアップや新規事業部門などで新しい発想やイノベーション、​​効率的かつ革新的なソリューションを生み出すためのアプローチといえば、何を思い浮かべるだろうか。 弊社btraxをご存知の方は、「デザイン思考」と言うかもしれない。 しかし、イノベーション創出のための思考法・発想法はデザイン思考に限らない。 SpaceXやTeslaのファウンダーであるイーロン・マスク。 現実世界のトニー・スタークと呼ばれる彼がイノベーションを生むために実践していることで有名な「第一原理思考」(英語:First Principles Thinking)。 本記事では、第一原理思考とは何かを事例とともに解説したのち、実践に移すためのプロセス、またどのようにこの思考をUXデザインに活かせるかを解説していく。 第一原理思考とは? まず、「第一原理思考」とは何か。 冒頭でも書いたが、この思考を現代に広めた人の一人が、イーロン・マスクだ。 しかし、この思考自体はどうやら2,000年前にすでに哲学者 アリストテレスによって唱えられたようだ。 一言で説明すると、第一原理思考とは、物事や問題をその“根本的な”部分まで分解し、最も基本的な原理や真理を見つけ出すことで、それを基に新たなアイディアや解決策を生み出す問題解決のアプローチである。 この方法により「従来の前提や固定概念に囚われずに新しい視点で考えることができる」というものだ。 スタートアップでの適用例として、SpaceXのロケット発射台のイノベーションが良い例だろう。 マスクは、従来の非常に高コストなロケット発射に対し、第一原理思考を用いたアプローチを取り、ロケットの発射コストを劇的に削減することに成功した。 彼がまず一番に彼自身に問うた質問は、「どうしたらロケットのコストを削減できるのか」ではなく、「ロケットは何でできているのか」だった。 彼は材料のコスト構造を最も基本的な要素にまで分解する工程から始めた。 市場での既製品の価格ではなく、アルミニウム、チタン、カーボンファイバーなどの原材料の純粋なコストに注目をしたのだ。 マスクはその構成材料の価格を一つ一つ検討し、独自に部品を製造することでコストを削減できることを発見した。 次に、ロケットの再利用がコスト削減に大きく寄与することに気付いた。これも第一原理思考に基づく発想であると言える。 「なぜロケットは一度きりしか使えないのか?」 この根本的な問いから、マスクはロケットの第一段を地球に帰還させて再利用するというアイデアにたどり着いた。 そこから彼は、ロケットの帰還と着陸を可能にするための技術的な課題をひとつひとつ解決していき、再利用できるファルコン9ロケットの開発に成功した。 実践へ移すための3つのステップ では次に、実際にこの思考を使って問題解決をするときに取る3つのステップをご紹介する。 イーロン・マスクは第一原理思考において以下の3つのステップを取る: Identify and define current assumptions. / 現在の仮定を特定し、定義する。 Breakdown the problem into fundamental principles. / 問題を基本的な原理に分解する。 Create new solutions from scratch. / ゼロから新しい解決策を創造する。 (参考:”Elon Musks’ “3-Step” First Principles Thinking: How to Think and Solve Difficult Problems Like a Genius”) UXデザインにどう活かせる? 著者はデザイナーであるため、どのようにこの思考法をデザインに活かせるかについても少し触れていこうと思う。 デザインの本質は課題解決だ。 故に、第一原理思考のアプローチを活用することはもちろん可能である。 上記の3つのステップを通して現在の仮定を特定し、基本原理に分解し、新しい解決策を創造することでユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させることができる。 ① 現在の仮定を特定し、定義する 第一歩は、既存のUXデザインにおける仮定や前提を見直すことから始める。例えば、一般的なUI要素やユーザーフローがどのように構成されているかを再評価する。 これは、ユーザビリティテストやヒューリスティック評価を通じて、ユーザーがどのような問題に直面しているのかを具体的に把握することが重要だ。 例: 現在のデザインがユーザーにとって直感的でない場合、その原因が何かを特定する。例えば、ユーザージャーニーが複雑すぎる、情報の配置が不適切など。 ② 問題を基本的な原理に分解する 次に、問題を最も基本的な要素に分解する。これにより、現状のデザインがなぜそのようになっているのか、その根底にある理由を明らかにすることができる。 例: ユーザーが特定の機能を見つけにくい場合、その機能の発見性を妨げている要素を分解する。ナビゲーションの構造、視覚的な手がかり、ユーザーフィードバックなどを細分化して分析する。 ③ ゼロから新しい解決策を創造する 最後に、最も基本的な原理から新しい解決策を創造する。このプロセスでは、従来のデザインパターンや慣習にとらわれず、ユーザーの基本的なニーズに直接応える新しいアプローチを模索する。 例: もしユーザーが特定のタスクを達成するのに複数のステップが必要であれば、そのタスクを1ステップで完了できるように設計を再構築する。これには、AIや機械学習を利用したパーソナライズされたエクスペリエンスや、自動化されたプロセスが含まれるかもしれない。 実際のUXデザインへの応用例 ナビゲーションの再設計 仮定: ユーザーは既存のナビゲーションメニューを理解している。 分解: ナビゲーションの各要素をユーザー行動データに基づいて分析し、ユーザーがよく利用する機能やページを特定。 新しい解決策: 最も頻繁に使用される機能やページへのショートカットを追加するなどし、ドロップダウンメニューやハンバーガーメニューの構造をシンプルに再設計。 フォームデザインの改善 仮定: ユーザーは長いフォームに対しても抵抗がない。 分解: フォームの各フィールドを分析し、入力の負担がかかる部分を特定。ユーザーが途中で離脱するポイントを確認。 新しい解決策: フォームをステップごとに分割し、必要最小限の情報だけを求めるように設計。オートコンプリートやプログレッシブディスクロージャーを活用して入力負担を軽減。 ユーザーフィードバックの収集 仮定: ユーザーは自発的にフィードバックを提供する。 分解: フィードバックを提供するプロセスを分析し、ユーザーがフィードバックを提供する際の障壁を特定。 新しい解決策: 文字で書き込まずとも数値的に簡単に評価できるようにする。インタラクティブなフィードバックウィジェットを導入し、ユーザーが簡単に意見を共有できるようにする。ポップアップやツールチップでフィードバックを促進。 まとめ […]

未来を創るAI・ロボット系スタートアップ5選 – マーケティングから物流まで

AIの進化が私たちの生活やビジネスに影響を与えており、ここ数年でのAIを活用した新たなサービスの出現には私自身驚きと興奮を感じています。 特に米国はサンフランシスコ・ベイエリアを中心にAIテクノロジーの発展においても中心地の一つ。 この数年でも多数のAI活用スタートアップが輩出されていて、こうしたAIスタートアップの新たなサービスは、私たちの社会や生活そのものを変革する力を持っています。 「これらのサービスがいかに私たちの日常を豊かにし、新たな価値を創出しているかを知って頂きたい!」 そのような想いで今回は特に『マーケティング・データ分析・自動運転』の分野での革新的なAIスタートアップ企業5社ご紹介します。 ①マーケティング Jasper – AIコピーライターでマーケティングを強化 Jasperは、米国テキサス州オースティンに拠点をおく2021年に設立され、AIコンテンツプラットフォームを提供。 Jasperが提供するAIコピーライターは、マーケティングコンテンツをAIによりテキスト生成するコピーライティングサービス。 企業のマーケティング担当者がJasperを使って、SEOに最適化されたブログ記事や広告文を自動生成し、SEOに最適化されたコンテンツを短時間で作成することができるようになります。 これにより、マーケティング担当者は効率よく広告効果を最大化するツールとして重宝されているのです。 ウェブサイト、Google広告、Facebook広告、ソーシャルメディアキャプション、Eメールなどのコンバージョンを重視させたい際のマーケティングコピーライティングに強い文章を作成することが出来きます。 ChatGPTとの大きな違いは、SEOに最適化された文章を生成する事ができることにあります。 ②データ分析 Scale AI – 高品質データでAIモデルの信頼性を向上 Scale AIは、2016年に設立され、サンフランシスコが拠点。AI技術の進化を支えるための高品質なデータ提供が専門。主なサービスは、行政、自動車等企業向けに、データラベリング、モデルの微調整、強化学習、AI評価を提供。 例えば、自動運転車の開発を行っている企業がScale AIのサービスを利用して、道路状況や歩行者の動きを正確に捉えたデータを収集し、AIモデルの精度を向上させています。 未来への一歩!Waymo無人タクシーがもたらす驚きの実乗車体験 Scale AIの提供する高品質なデータにより、自動運転技術の信頼性が高まり、安全性の向上が図られています。 また、AIモデルが必要とする大量かつ高品質なデータの生成と管理における課題を解決しています。 特に、データの偏りや不正確さを最小限に抑えることで、AIシステムの信頼性と効果を高めるサポートがされているのです。 Labelbox – AI開発の学習データ生成支援 Labelboxは、AIデータ管理・データラベリングプラットフォームを提供。2018年に設立されサンフランシスコが拠点。 AI研究者がLabelboxを使って大量の画像データに効率的に注釈を付け、短期間で高精度なAIモデルを生成するシーンでは、データ管理の複雑さが軽減され、迅速に高品質なAIモデルの開発が可能に。 例えば、医療分野では、研究者がLabelboxを使用して膨大な数の医療画像に注釈を付け、AIモデルを学習させています。これにより、疾病の早期発見や診断の精度向上に貢献しているのです。 AI開発では大量の学習データ生成が非常に重要である一方で学習に時間がかかる課題もあります。 生成AIを支えるテクノロジー【生成AI Vol. 3】 Labelboxのサービスは、画像、動画、テキストなどのデータに対する効率的な注釈付けを可能にし、AIモデルの精度を向上させることを目的としています。 本プラットフォームを使用することで、データ管理の複雑さが軽減され、迅速に高品質なAIモデルを開発することが可能になります。 ③自動運転 Kiwibot – 自律走行ロボットによる未来型デリバリー Kiwibotは、バークレイを拠点に2017年に設立され、最先端のロボット技術を利用した自律走行ロボットデリバリーサービスを提供。 Kiwibotのロボットは、最新のセンサー技術とAIを駆使して、自律的にルートを選び、障害物を回避し、安全に目的地まで商品を輸送。 利用シーンとしては、大学キャンパス内でKiwibotのロボットがキャンパス内を走り回り、学生や教職員の食事や飲み物を配達しています。 注文から配達までの過程をスマートフォンでリアルタイムに追跡でき、ロボットのフロントディスプレイには可愛い表情が表示されるため、学生たちに親しみを持たれています。 配送ロボットはコンパクトで軽量なデザインが特徴的です。歩道やキャンパス内での利用を想定しており、最新のセンサーとAI技術を搭載して障害物を回避。飲食物の配達に特化しており、大学キャンパスや都市部のレストランからの注文に対応しています。 配達の過程はリアルタイムで追跡可能で、利用者はスマートフォンアプリを通じて配達状況を確認できます。配送ロボットのフロントディスプレイに表情を表現できるようになっており、小型サイズも相まって、配送サービスにかわいく親近感を持つことができます。 Nuro – 人を運ばない、自動運転配送車でラストワンマイル配送 Nuroは、2016年にマウンテンビューで設立されたAIロボティクス企業。利用シーンとしては、Nuroは自動運転配送車により地元のスーパーから顧客の自宅まで食品を配送。 これにより、顧客は買い物に行く手間を省けるだけでなく、店舗側も配達効率を大幅に向上させることができます。 人の移動ではなく貨物配送用に特化した自動運転配送車を開発し、最終マイル配送の効率化を目指しています。 一般車両サイズの自動運転車を使用して大型商品の配送に最適です。 現在、カルフォルニアとテキサスの公道でこの完全自動運転車を走らせています。 また、同社の無人自動運転車両”Nuro Driver”は、UberやFedexといったグローバル企業の配送の無人自動運転車両としても活用されています。 まとめ 本記事では、米国でAIを活用して先進的なサービスを提供しているスタートアップを紹介しました。 今回の記事の中で紹介したサービスは、技術的な革新性だけでなく、その技術をどのように実際のサービスや製品に応用しているかが非常に興味深いと感じています。 例えば、Nuroの自動運転配送車が地元のスーパーから顧客の自宅まで食品を届ける姿を見て、技術が私たちの生活をどれほど楽にし、便利にしているかを強く実感します。 弊社では上記のような新規事業開発支援、プロダクト立ち上げのためのグローバル・ユーザー視点での市場リサーチからマーケティング・ブランディング戦略立案、サービス・プロダクトのUI/UXデザインなどをサポートしております。 ぜひ弊社のサービスや過去のプロジェクト事例をご覧ください。

クリエイティブエージェンシーの独自性:コンサルティングファームとの違い

「ユーザー中心デザインって、私たちが日々やっていることと同じじゃない?単に見せ方が違うだけでしょう?」 私はbtrax Inc.のビジネスプロデューサー/アカウントマネージャーです。 この仕事につく前は東京の大手外資コンサルファームで「人・組織」のコンサルタントとして働いていました。 現在、シリコンバレーで定期的に日本企業さまの社員に対してデザイン思考のワークショップを実施しています。   あるクライアントさんとは毎年2回サンフランシスコで10週間に渡り開催していますが、 そのワークショップで必ず1回はこのような質問が出ます: 「デザイン思考って、私たちが日々の業務で当たり前に行っていることと何が違うの? 私達も日々顧客にヒアリングを行いニーズを理解し、 解決策を提供するけれども?」   確かに表面的な類似点は否定できません。 しかし、私たちクリエイティブエージェンシーとの違いにはより深いレイヤーがあり、それを求めて我々の顧客とお仕事させていただいています。 特にコンサルタントの仕事を経験している私から言える違いをこの記事で紹介できればと思います。   核心的な違い:柔軟性と創造性 クリエイティブエイジェンシーと他のビジネスアドバイザリーを行う会社との核心的な違いとは何でしょう。 我々は固定されたサービス提供を持つ企業とは異なり、私たちのようなクリエイティブエージェンシーは自由でオリジナルな発想が可能です。 特定の製品に縛られることなく、高度な創造力をうまく活用して問題に寄り添うことができ、ユーザーのニーズに合わせて本当に革新的な解決策を提供します。 では、クリエイティブエージェンシーの考え方や文化とは具体的にはどのようなものでしょうか? ここでは3つの重要な要素を紹介します:   1. 深い共感と感情的洞察 従来のビジネスが単に問題解決に焦点を当てるのに対し、クリエイティブエージェンシーは共感と感情の共鳴を重視しています。 解決策を出す前に、問題を細かく分析し、その感情的な核心を探求し、ユーザーの根本的なニーズを理解します。 例えば、btraxのクライアントには日本の大手飲料メーカーやアメリカの健康サプリメントメーカー等がいます。このようなクライアントと実施するプロジェクトでは、製品の機能的側面だけでなく、消費者に喚起される感情的なつながりを理解することが目標とします。 感情の機微を理解することは、ターゲットオーディエンスと本当に共感する戦略を開発するのに役立ちます。   私は、コンサルティング業界では主に人事コンサルティングの領域に従事していました。 具体的には、クライアント組織のカルチャー改革を目的とした戦略案件に携わっていました。 通常、これらのプロジェクトでは、わずか3人程度のコンサルタントが割り当てられ、数千人規模のクライアント組織について、限られた情報に基づき戦略が提案されていました。 熟練したコンサルタントが考案した戦略は論理的には優れていましたが、実際の組織文化や従業員の声を反映できず、教科書のような形になることがしばしばでした。 2年半にわたるコンサルタントとしての経験で、現場の人々と直接話す機会がほとんどない立場にいることに大きな違和感を覚えました。 すべてのコンサルタントがこのように働いているわけではありませんが、私が所属していた大手コンサルティング会社では、クライアントの従業員と協力して何かを共同で作るよりも、解決策を提供することが重視されていました。 その反面、btraxは、ユーザーを中心に据えたクリエイティブエージェンシーとして、クライアントとの契約段階でユーザーリサーチを前提としたアプローチを定めます。 クライアントが契約時にすでにユーザー理解の難しさとその重要性を理解していることが多いため、我々も時間とエネルギーをリサーチに充てることができます。 リサーチは主にインタビュー形式で行われますが、場合によっては実際に参加者が日常生活を送っている場所を訪れ、エスノグラフィー調査も行うことがあります。 その後、リサーチから得られたインサイトを熟考し、次の段階であるブランド戦略やマーケティング戦略の構築に取り掛かります。 リサーチによって、純粋な論理では気づけない人々の感情やその時々の状況の影響など、貴重な情報を得ることができます。 これにより、高品質で豊かな情報をもとに、ユニークで他に類を見ない戦略を構築することが可能となります。   2. 失敗をチャンスと捉える 日本企業は他の世界の企業と比較して、失敗を恐れる文化が根強いです。 しかし、どれだけ入念に準備しても、一度試してみたら全然違う結果が出たことはありませんか。 リスクを回避して保守的になりがちな一般的な企業とは異なり、btraxのようなクリエイティブエージェンシーは、失敗や試行錯誤を革新の一部として受け入れます。 積極的にフィードバックを求め、アイデアを改善し、必要に応じて軌道修正を行い、真にユーザーのニーズに合う解決策を提供します。 このアプローチは、完璧を追求することに慣れているクライアントにとって初めは衝撃的かもしれませんが、最終的には継続的な改善と革新のカルチャーを理解し、btraxと共に一緒に実現します。 また、btraxの案件の進め方やbtraxを選んでいただくクライアントには、コンサルティング会社で実施する案件の場合とは大きく違う特徴があります。 大手コンサルティングファームの案件では、クライアントとコンサルタントが共同で作業するというよりも、クライアントが自社の内部で不足している部分をコンサルティング会社に委託するという形式が一般的でした。 クライアントは日常業務に忙殺されている間にコンサルタントが最終的な完成品を提供してくれることを期待していました。このような関係性では、コンサルタント側から提案する失敗や挑戦のための余裕があまりありませんでした。     一方、btraxでは、クライアントとの共創を前提にし、また、積極的にユーザーテスト実施を提案します。 例えば、あるプロジェクトでは、ユーザーリサーチからサービスのプロトタイプを作成し、さらに、サービス構築後、ユーザーテストまでサポートしました。 どのビジネスでも仮説検証は当たり前ですが、btraxの強みは、社内のUI・UXデザイナーが簡単にプロトタイプを作成できることです。 この簡易的なプロトタイプを使って迅速にテストを行うことで、クライアントやサービス提供者が予想していなかった結果を早い段階で把握し、最終的なサービスや製品に反映させることができるのです。   3. 画期的な思考 クリエイティブエージェンシーは特定の製品に拘束されることなく幅広い可能性を探求する自由があります。 私たちは従来の枠組みを超えたところにフォーカスを定め、斬新な戦略を追求します。 視野を広げ、多様な視点を取り入れることで、従来のビジネスモデルでは見過ごされていたアプローチを導き出し、ユーザーの真のニーズをもとにソリューションを定義します。 さらに、その実現のために社内外の幅広いネットワークから最高のチームを作り上げます。そうすることで、ユーザーのニーズにあったソルーションを最高のクオリティで提供することができます。 コンサルティング業界では、仕事が忙しく、1分1秒も無駄にすることができませんでした。 また、コンサルタントの文化として、ロジカルに話すことが重視され、必要ない余談をゆっくりすることは難しい環境でした。 このような仕事形態では、「余白の時間」を取ることが難しく、自分の知識の限界を感じました。 一方、クリエイティブエージェンシーで働く人々は、この「余白の時間」を心から信じています。 我々はアジェンダのない1on1やチームビルディングなど、日常的に業務以外の趣味を共有する機会を作っています。 例えば、CEOのBrandonはTechnology DirectorのTakaとお酒を飲みながら、1−2時間未来を妄想する時間を毎週のように設けています。 また、現在支援させていただいているヤンマー社とのアニメ制作の少しぶっ飛んだアイデアも、机に向かって黙々と仕事しているだけでは実現しなかったでしょう。 日々の情報交換や会話によって、このような奇抜なアイデアが実現しています。   まとめ クリエイティブエージェンシーは共感、柔軟性、創造性をブレンドさせ、従来のコンサルティングファームとの違いを際立たせています。 ユーザーのニーズに深く立ち入り、試行錯誤を受け入れ、制限ない思考をはぐくませることで、問題を解決するだけでなく、ターゲットオーディエンスとの深いつながりを築き上げます。 今後もし、複雑な課題に対する革新的な解決策を求める際は、我々のようなクリエイティブエージェンシーとの協業をぜひ検討してみてください。 我々と一緒に顧客が心を深く響かせる体験を創造しましょう。    

【事例編】全ての企業に今こそ「サービスデザイン」が必要な理由

「サービスデザイン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。 一般的にはあまり知られておらず、一見すると接客サービスや、専門的なデザイン領域の話だと思われがちだ。 しかし、実は全ての企業がサービスデザインに関連があるといえる。 デザインが担う役割や領域は、実に大きく拡張してきているのだ。 今回の記事では、前回に続き、サービスデザインがなぜ企業にとって重要なのか、そして実際にサービスデザインを活用し、リサーチからサービスローンチまでした例にはどのようなものがあるのか、サービスデザイナーである筆者の視点から紐解いていく。 全ての企業に今こそ「サービスデザイン」が必要な理由   アメリカ金融大手Capital Oneでのサービスデザイン活用事例 具体的にサービスデザインは企業でどのように活用されているのだろうか。 ここで、アメリカ金融大手Capital Oneでの具体的な活用事例を紹介しよう。 Capital Oneの課題 Capital Oneはアメリカの最大手の銀行の1つだ。彼らは、銀行の価値の差別化に行き詰まりを感じていた。 テクノロジーが進化するにつれ、人々にとっての銀行の価値は「効率的に金融取引ができること」へと変化してきた。 しかし、Capital Oneは効率性だけでは差別化に限界があり、長期的な価値提供に繋がらないという危機感があった。そこで彼らは、新たな銀行体験を設計することにした。 フェーズ1: リサーチと課題発見 チームは、アメリカ人の65%が家計のことで眠れなくなっているという調査データに着目した。 これらを解決するために、そして、どうすれば人々がお金の感情的な面をナビゲートできるよう、より良い手助けができるだろうか?という問いを起点に、サービスデザインを行った。 まず彼らは、ファイナンスに関する人々の行動や価値観を探るためのユーザーリサーチやエキスパートインタビューを行った。 すると「人々はファイナンスのガイダンスを求めているが、一体どこに向かえばいいのかわからない」という課題があるとわかった。 フェーズ2: アイディア検証 この解決策として、人々がお金との関係に自信を持てるようするための1:1の金融コーチングサービスを考案した。 これはストレスのないカフェのような環境で、お金にまつわる意思決定と感情について自己理解を深めるためのコーチングを提供するというアイディアだ。 チームは、このアイディアが人々に価値を感じてもらえるかを検証することにした。 社内のコンプライアンスグループと連携して実証実験の承認を取得し、社外パートナーとプロトタイプを作成して、サンフランシスコの中心地ユニオンスクエアにあるCapital One Caféで3週間の実証実験を行った。 Capital One Caféとは、同社が展開しているカフェで、誰でも自由に作業やコワーキングができるスペースとして提供されている。 銀行 ✕ カフェという新しい体験も、デザイン思考から生まれたサービスである。Capital One Caféの詳細は下記の記事も参照してほしい。 関連記事:ブランドパーソナリティとは?米国企業の注目活用事例2選 ブランドパーソナリティとは?米国企業の注目活用事例2選 ここでは100人を対象に2人のコーチと4つのコーチング・ツールを用意し、サービスコンセプト検証が実施された。 参加者からの評価は高く、「このサービスのおかげで、生活の質が高まった」」「このサービスをこれからもずっとやってほしい」といった声が寄せられた。 手応えを感じたことで、続いてサービス開発チームはCapital One Cafeチーム内のシニアリーダーや幹部に対して動画や実演を通してサービスコンセプトの売り込みを行った。 こうした活動を経て、実現に向けて投資を得られることが決定し、本格的なサービス立ち上げを行うことになった。 フェーズ3: 完全版プロトタイプの作成 Capital Oneチームは、ビジネス上の制約にも対応できる形でサービスの全体設計を行うために、サービスを反復しながら検証、改善していった。 例えば、より幅広いユースケースに対応できるようコーチングツールの種類を増やしたり、グループコーチングの選択肢を増やしたりとサービス構成を改善していった。これらのプロトタイプも作成し、3週間かけて25人にそれぞれ3回のコーチングセッションを実施し、価値を検証していった。 また、実際の日々の業務に組み込むため、社内組織体制とオペレーションのデザインも行われた。アンバサダー採用や、サービスデザイナーをCapital One Caféのビジネスチームにアサインするなど、組織体制を整えていった。 フェーズ4: サービスローンチ 2016年11月、テキサス州オースティンにてコーチングサービスを正式に開始した。 ローンチ後には、Webサイトやコーチング用の資料、トレーニング資料、Capital One Caféスタッフへのオンボーディングなど、ユーザーの目に触れる接点と、従業員側の接点の双方でサービスを提供していった。 フェーズ5: サービス規模の拡大 持続可能なものになるよう改善しながら他地域へ展開し、2024年4月現在はサンフランシスコ、ロサンゼルス、ボストン、オースティンを含む45を超える拠点でこのサービスが提供されている。 ここからわかるように、Capital Oneの事例ではアイディア企画に留まらず、 その実装に向けての組織体制、オペレーション設計、従業員の体験デザインまで扱われている。 サービスデザインでは、まさにこうした組織内の変革やビジネス設計を含めて、ユーザー起点での体験作りを行っていくのだ。   まとめ このように、サービスデザインが扱える分野は想像以上に広く、独自の価値による差別化が求められるこれからの時代において、企業に不可欠な要素であることがわかる。 サービスデザインの力を用いることで、人々に愛されるサービスを生み出して、組織のカルチャーを変革し、持続的なビジネスとして価値を提供し続ける仕組みを構築できるはずだ。   btraxではこうしたサービスデザインの手法を用いながら、大企業内イノベーションや新規事業・新サービス創出、既存事業の改善、組織改革などに伴走しています。 btraxのサービスや過去のプロジェクト事例にご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

全ての企業に今こそ「サービスデザイン」が必要な理由

「サービスデザイン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。 一般的にはあまり知られておらず、一見すると接客サービスや、専門的なデザイン領域の話だと思われがちだ。 しかし、実は全ての企業がサービスデザインに関連があるといえる。 デザインが担う役割や領域は、実に大きく拡張してきているのだ。 今回の記事では、サービスデザインがなぜ企業にとって重要なのか、どのように活用すべきなのか、 サービスデザイナーである筆者の視点からその理由を紐解いていく。   全てのビジネスが「サービス」となる時代の到来 高度経済成長期以降、日本はモノづくり大国となり、各企業が技術力を強みにあらゆる製品を世に送り届けてきた。 しかし、技術が発達するにつれ人々の生活はモノであふれてしまい、「モノを作れば売れる」時代は終わってしまった。 「モノはもうほしくない」となり、多くの企業にとって自社製品の差別化は課題となっている。 この潮流の中で、人々の欲求も「形を持つモノから、形を持たないコト(体験)へ」重心が変化してきている。この潮流の中で再定義されてきたのが「サービス」の考え方だ。「コト」や「サービス」と聞くと一般的には接客サービス、カスタマーサポートなどを連想しがちだが、これらは定義の中のごく一部だ。実際には、全てのモノや商品に付随する一連の体験を指す。 関連記事: これからはプロダクトのサービス化の時代 その背景と基本とは 例えば、車を例に挙げてみよう。自分の車を所有することは、高度経済成長期の庶民の憧れだった。 しかし、次第に車が当たり前になると、価値に変化が生じてくる。 車に乗って移動するだけでも、ルートや道路状況を調べて、車に乗って運転し、ガソリンを給油し、渋滞も我慢し、駐車場を探して停める…という一連のアクションが必要だ。 人々が達成したい結果が「目的地に早く着くこと」だとすると、果たしてこの一連の体験は「良い体験価値がある」といえるだろうか。 また、こうした問いを考えるとき、車の接客サービスやカスタマーサポートだけが体験の向上につながるといえるだろうか。 「目的地に早く着くこと」をもたらすサービスとして新たな移動体験を提供している代表例が、Uberだ。 Uberを使えばアプリから街の自動車をタクシーのように呼び、人に運転してもらいながら快適に目的地まで移動することができる。 その手軽さから人々の間で広がっていき、今や世界一のライドシェアサービス会社となっている。 一連の優れた移動体験を提供することによって大きなビジネスの価値を生み出したのだ。 ユーザーにとってある商品を買うということは、そのモノを所有することが目的なのではなく、そのモノを使用して得られる結果のために対価を支払うことだといえる。 つまりサービスとは、単に接客やアフターケアなどを意味するのではなく、 モノの使用やその前後の体験、企業と顧客の各接点を含めた一連の経験としての価値を指す。 ユーザーの一連の体験を向上させるためにはもはや売り切り型では通用せず、サービスを継続的に提供し、価値をアップデートし続けることが求められる。 サービスとはもはや「サービス業」のみに関係する話ではない。 また、工場での業務や医療、公共分野など、必ずしもモノの購入を伴わない全ての体験にも適用できる。 このように定義すると、サービスデザインはまさに全ての企業や組織に関係する話だといえる。 では、ビジネスの中でどのようにユーザーの体験を考えていけばいいのだろうか。 その鍵となる手法が「サービスデザイン」だ。 サービスデザインとは サービスデザインとは、顧客が体験する「サービス」と、それを持続的に実現する組織と仕組み全体を設計するプロセスや手法のことで、新たな価値を生み出すための方法論である。 繰り返しになるが、サービスデザインにおける「サービス」とは「店頭での接客」「アフターサポート」など特定の接点におけるサービスに留まらない。 複数のタッチポイントを連続した一つの体験として捉えて、体験の価値を高めることを目指すものである。 サービスデザインには、単なるモノや商品を作る際の考え方と異なるいくつかの特徴がある。 1.ユーザー体験だけでなく組織と仕組みまでデザインするため、社内カルチャー変革をもたらせる サービスデザインの対象には顧客体験だけでなく、提供者側の「オペレーションや仕組み、組織、働く人の体験のデザイン」も含まれる。 なぜなら、顧客のユーザー体験を改善していく過程で、ネックになっていた縦割り組織の打破などといった組織改革も迫られることがあり、提供者側の組織デザインも必然的に必要となるからだ。   例えば、イギリスの公的サービスの手続きの申請がオンラインで行える「GOV.UK」というWebサイトのサービスデザインが行われた際、「組織の壁」が課題となり、何年もの時間をかけて組織の再編と最適化が行われたという事例がある。 これまでは結婚や税務などの手続きは、種類に応じて各省庁や部局に個別に行わなければならなかった。 しかし、これがオンラインでできるようになると、ユーザーからは例えば結婚の申請をネット上で行ったら、社会保険や税務の手続きも自動連携してほしいなど、シームレスで快適な体験の期待が高まる。 こうした要望に応えようとすると、これまでの縦割りで分断的な対応では扱いきれなくなり、ユーザーを中心にしてサービス提供者側の組織を変えて全体をデザインする必要が生じたのだ。   コトとしての価値を提供するためには、たとえユーザーには直接見えなくとも、 組織体制や業務のあり方まで変えなければ実現できない。 絵に描いた餅に終わらないためには、提供側のオペレーションも最適化する必要もあるだろう。 そのため、サービスデザインでは体験価値を生み出す際に付随して発生するこうした提供者側の変革も、スコープに含めて扱っていくことになるのだ。   こうした取り組みにより、社内コミュニケーションの活性化や、社内の意思統一が期待できる。   さらに、サービスデザインのプロセスに則って進行していくことで、 正解のない不明瞭な状況でも前進していくというデザイン思考のアプローチとマインドを社内に浸透させて、 カルチャーを変革していくことも目指せる。 つまり、サービスデザインとは、顧客に愛されるサービスを作れるというだけでなく、 社内組織やカルチャーをもデザインし、変革する手法なのだ。 2. 継続的に価値を提供でき、時間が経つにつれユーザーにとって価値が上がる体験を作り出せる手法である サービスの価値をデザインしていく上で、今までの「モノ(=プロダクト)」との決定的な価値の違いは何だろうか。 それは、サービスとは継続して価値を提供し続けるものであり、 しかもその価値は利用開始から時間と共にどんどん上がっていくものであるということだ。 サービスデザインは、こうしたものを生み出すことに特化している。 冒頭に挙げた車を例に考えてみよう。 プロダクトとしての車は、購入する際に「人が運転して、目的地に早く移動できる」という価値は決定しており、 使い続けた後もその価値はあまり変わらない。 その一方で、サービスは購入する時点でその内容と価値が決定していない。 Uberについて考えてみると、このサービスはリリース当初よりも現在の方がユーザーにとってその価値は高いはずだ。 なぜなら、ドライバーの数や種類(高級車や、ペット可の車も呼べる)も増え、提供地域も現在世界80カ国にまで増え、 空港でもUber用の乗車場所が設置されるなど、ユーザーが求める体験や価値がどんどん実装されているからである。   サービスデザインでは「売って終わり」ではない、繋がり続けることによる価値のアップデートまで扱う。 そのためデジタルやソフトウェア化、DXの観点はサービスデザインにおいて必須だ。 IoTやアプリ、ネットワークなどを効果的に用いて、長期的に常に高い価値を提供するための仕組みやビジネスモデルを構築することも、サービスデザインの対象に含まれる。 こうした特徴を活かして、既存事業の改善から新商品の開発、新規事業創出、あるいは企業のDXにも幅広く活用が可能だ。 UXデザイン、CXデザインと何が違うのか? 似た概念にUXデザインやCXデザインがあるが、 サービスデザインはUX / CX の領域を網羅したうえでさらに業務運用や組織体制、組織風土、ビジネスとの橋渡しまでを考えるもので、取り扱う領域はより包括的だ。 どのようにサービスデザインを実践するのか サービスデザインにおける基本的なプロセスを挙げると、 例えば以下のような流れを何度も繰り返し反復してサービスを作っていくことが一般的だ。 問題を洗い出し課題を探索するためのユーザーインタビューを実施 得た情報を分析してアプローチすべき課題を定義 課題に対してのソリューションのアイディアを発想 ソリューションを体験できる形にしてプロトタイプを作成 再度ユーザーに当てて仮説を検証 この過程では、サービスに関わる全てのユーザーを考慮して、多様なステークホルダーと協働で取り組む。リアルな視点を持って実際に体験できる形あるプロトタイプに落とし込んで、実験を何度も繰り返しながら、断片的な接点ではなく体験全体を設計していく。 プロセスの詳細は下記の記事も参照してほしい。   関連記事:誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス さて、次回は、実際にサービスデザインを活用し、リサーチからサービスローンチまでした、アメリカ最大手銀行Capital Oneの事例を取り上げてご紹介したい。 btraxではこうしたサービスデザインの手法を用いながら、大企業内イノベーションや新規事業・新サービス創出、既存事業の改善、組織改革などに伴走しています。 btraxのサービスや過去のプロジェクト事例にご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

ピボットとは? スタートアップサービスにおける方向転換の美学

失敗率が80%とも90%とも言われるスタートアップにおいては、最初のアイディア通りにうまくいくことの方が少ない。 プロダクトを作っているその過程や、資金調達のプロセス中、そしてリリースした後も、周りの反応を見ながら「方向転換」を行うのが一般的。 逆に考えると、いつまで経ってもポジティブな反応が得られないプロダクトやビジネスモデルを進めていてたとしても、良い結果が出ずに失敗してしまう可能性が高い ピボットは最高の「失敗回避策」 日本はアメリカに比べて起業家やスタートアップの数が少ない。 その理由として、日本は失敗に厳しく、アメリカは寛容である。本当にそうなのか? 実はそんな事はない。アメリカだろうが、シリコンバレーだろうが、失敗に対して良いイメージはないし、本人も嬉しいわけはない。 そんな時に便利なのが「ピボット」という言葉。 例えば、始めたサービスのユーザー数の伸びが芳しくない時にも、「サービスを終了しました」と言うよりも、「ピボットすることにしました」と言う方が、ダメージが少なく感じる。 そう、あくまで方向転換であって、失敗ではないと。 シリコンバレーの起業家が失敗した後はどうなるの? ピボットの種類 では、具体的にビボットとはどんなものなのか? 実は、その内容に応じて、Plan AからZまで、いくつか種類があるので見ていこう。 Plan A: 現状維持 当初のアイディアそのままに進められるケース。厳密にはピボットではない。 ターゲットとしたユーザー層の伸びが想定通りか、それ以上で、ビジネスモデルとしても成立する見込みがあるため、方向転換をしなくてよかった状態。 例: Google Search Plan B: ターゲットを変える Plan Bは、サービスの名前と内容をあまり変えずに、ターゲットとなるユーザー層を変えるケース。自分たちの想定していないユーザーたちからの人気や、ニーズに合致した際に行う。 ライドシェアの代表であるUberは、2009年のリリース時には、リムジンの時間貸しサービスとしてスタートした。 アメリアでのリムジンは、基本的に1日ごとのチャーター。かなりのコストになる。しかし、VIP客の送迎などで、その時だけでも高級車両と優れたサービスを利用したいと言うニーズに対応したサービス。 当然、価格もタクシーよりも割高で、富裕層向けの存在だった。 そしてUberはリリース後、数年経った2011年にピボットを行い、一般ユーザー向けにライドシェアという概念でのサービスをスタート。それが軌道に乗り、現在に至る。 例: Uber Plan C: サービス価値を変える 同じようなサービスでも、それぞれによって少しずつユーザーが受け取るサービスかちが異なる。もし自分たちが提供しようとしている価値がユーザーが求めるものと異なる場合は、その提供価値自体をピボットする必要が出てくる。 日本でもおそらく多くの方々に利用されているフォトシェアリングアプリのインスタグラムもまた大きくピボットしたサービスの一つ。 初期バージョンは “Burbn” と呼ばれるチェックイン機能をメインの価値とした、SNSアプリとしてリリースされた。 その後、ユーザーの利用パターンを分析したところ、チェックイン機能よりも、写真をアップロードするケースの多いことが判明。そこでピボットを決断し、一度サービスを停止してから、インスタグラムと言う名前で再リリースし、現在に至る。 同じようなサービスでも、その価値を変えることで、一気に人気が得られることもある例だ。 例: インスタグラム 参考: インスタ12周年 – パクリサービスから世界一のSNSへの道 Plan Z: 勇気ある撤退 ターゲットを変えても、サービス価値を変えても、サービス自体を変えても、どうしても求められる結果が得られなさそうだった場合はどうしたら良いのか? そんな時は Plan Z を適用しよう。 Plan Zとは、勇気を持って一度事業を撤退する作戦。でも失敗ではない。何がうまくいかないかを学ぶことができた事自体に価値があるし、今後の展開に役立てるための「一時的な」終了でしかない。場合によっては、姿形を変えて再リリースされることもある。 このタイプのピボットの例としては、Google Glass が挙げられる。 Google Glassは、2013年にリリースされた AR グラス。ファウンダーのセルゲイ・ブリンが常時着用してたこともあり、その当時はかなりの話題となっていた。 しかし、思ったほどのトラクション獲得が出来ず、2015年に一般販売を終了した。 その後、2017年にパイロットや医療従事者向けなど、産業用デバイスとして利用されることが発表された。 参考: アメリカのトップVC: リード・ホフマンに聞いた起業家としての心得 事業内容をピボットして成功した企業 5選 さて、上記の事例で紹介したサービス、プロダクト以外にも多くの著名企業が、創業当時は現在とは全く異なる内容の事業を展開していた。その後、時代の変化に合わせ、見事にピボットをし、成功している。 おそらく多くの方々も知らないであろう、事業ピボットで成功した5つの企業を紹介する。 YouTube: マッチングサービス 皆さんもご存知、世界最大の動画サイトのYouTube。実は最初はマッチングサービスとしてスタートしている。ユーザーが自身の動画をアップ・視聴して、好みの相手にメッセージを送り、デートに繋げるのがコンセプト それも当初は「Tune In, Hook Up」という、かなりチャラいコンセプトで展開していた。 このサービス自体は成功しなかったものの、そこで得られた優れた動画とアップロードプラットフォームをもとに、現在の動画シェアリングサービスとしてピボットした。 TOYOTA: 紡績業 世界のTOYOTAは、豊田自動織機製作所としてスタートし、その後自動車製造に業務をピボットしている。 その歴史は、豊田自動織機製作所の創業から始まる。 当初は豊田紡織として1918年に設立され、自動織機を利用して綿製品の製造・販売を行っていた。1923年の関東大震災を契機に、自動車が実用品としての価値を認識され始め、それまで贅沢品と見られていた自動車の公共性と利便性が再評価される。 この背景を受け、1933年9月1日には豊田自動織機製作所内に「自動車部」を新設し、自動車製造へと業務を拡大。自動車製造への本格的な参入は、1936年に「トヨダ・AA型乗用車」を発売することで現実のものとなり、翌1937年にはこれを更に推し進める形でトヨタ自動車工業が設立された。 こうして、元々は織機製造からスタートした企業が、自動車産業へと事業を転換し、現在では世界的な自動車メーカーとして知られるトヨタ自動車の礎が築かれていった。 ローソン: ミルク販売店 国内コンビニTop3に入るローソンは、元々オハイオ州が発祥。1939年に酪農家のJ・J・ローソンが乳製品工場で、ミルクを販売するための店を始めた。当時の名前はローソンズ・ミルク・カンパニー。 当時はミルクを家庭に配達するのが一般的だったのを、お店で売り始めたのが新しかった。ちなみに、ローソンのロゴに牛乳の瓶が描かれているのも、ミルクストアから始まったのが由来。 その後順調に店舗を増やし、食品や日用品を販売するコンビニエンスストアに成長。オハイオ州外を含め、700店舗まで拡大した。 その後、本国では消滅したが、日本でのビジネス展開が開始され、現在では誰もが知るコンビニチェーンの一つにまで成長した。   参考: 日本で生き続ける3つの消滅した米国ブランド  アバクロ: アウトドア器具ブランド アバクロンビー&フィッチ、日本では親しみを込めて「アバクロ」と呼ばれるこのブランドは、スポーツショップとしてその歴史をスタートした。 創業当初からキャンプ用品、釣り具、その他アウトドアグッズの製造販売を手掛け、冒険心あふれる男性たちに必要な無骨な商品を提供していた。実際、冒険家であり作家であるアーネスト・ヘミングウェイが顧客の一人であり、洋服や釣り具を購入していたことはよく知られている。 この時代のアバクロは、男性客が全顧客の85%を占めるなど、明らかに男性向けのブランドとしてのアイデンティティを確立していた。女性客は主に男性に同伴する形で店を訪れ、女性自身が自分のために何かを選ぶというよりは、男性の購入を支える役割が主であった。 しかし、1988年に買収された後、ブランドは一新され、若者向けのヴィンテージ風カジュアルファッションブランドへと変身を遂げた 特に20代前半の若者をターゲットに設定し、これまでのアウトドアやスポーツ用品のイメージから、よりファッショナブルで若々しいスタイルを提案するブランドへと生まれ変わった。 任天堂: 花札製造 現在は誰もが知るゲーム機メーカーの任天堂であるが、元々は花札やカルタを製造する企業であった。1889年の創業時には、カルタや花札を製造する企業としてスタートした。その後、タクシー、食品、ラブホテル、玩具など多岐にわたる事業を経てゲーム業界に参入した。 […]

【3ヶ月間のインターン中に気づいた】全日本人がサンフランシスコに来るべき5つの理由

誰もが1度は耳にしたことがある都市「サンフランシスコ」。毎年10万人前後の日本人がこの街に訪れている。なぜこの街は日本人に限らず世界中の人を惹きつけるのか。実際にサンフランシスコに来るメリットや魅力とは何か?筆者が実際にサンフランシスコに3ヶ月滞在して感じたことを5つ共有する。

生成AIがこれからのデザインに与える4つの大きな影響

生成AIが世の中で注目されてから約一年ほどが経過した。 去年の今頃はChatGPTの威力に驚き、画像生成の面白さに狂喜乱舞した人たちが、頻繁にそのノウハウや出力した “作品” を自慢げにSNSポストしていた。 そして現在はどうだろう? 恐らく少し落ち着いてきたかな?と感じる。それとも皆少し食傷気味になってるのか、生成AIによる画像でドヤできる感じではなくなってきた。 その一方で、確実に時代は進んでおり、各種業務でのAI活用は着実に進んでいる。 そんな中でも今回はデザイン領域にフォーカスを当てた、生成AIの活用方法、よりカッコよく言うと「生成AIがデザイン業界に与えるインパクト」をまとめてみた。 大きな変化として考えられるのは下記の4つ。 ワークショップでの活用 サービスデザインのプロセス変化 動画生成に活用 ブランドエンジンを生成・活用 1. ワークショップでの活用 恐らくみなさんの中でもデザインワークショップに参加された方もいると思う。 新しいアイディアを出したり、既存の企画の可視化、およびプロトタイプを利用したユーザーテストなど、現在のデザインの現場では、ワークショップ活用が一般的になってきている。 我々btraxでも、新規商品の企画出しのためのデザインスプリントや、既存サービスの海外展開におけるフォーカスグループなどなど、多様な場面でワークショップ活用をしている。 その中でも、アイディアの可視化、コミュニケーションの補助、そしてブランドイメージ構築のための方向性を決めるための手法として、様々なビジュアリゼーションを行う。 しかし、慣れていない参加者の場合、それが難しい。もちろんbtraxのデザイナーが一緒になって可視化を行うのであるが、出力できる量には限りがある。 そこで生成AIの出番となる。 例えば、下記の例のように、考えたサービスアイディアの粒度を上げるために、ストーリーボードを生成AIを活用してアウトプットする。これはAirbnbの例であるが、よりそのサービスイメージを得やすい結果となっている。 2. サービスデザインのプロセス変化 AIの威力はサービスデザインのプロセスにも大きな影響を与え始めている。 というのも、これから作り出される商品やサービスは、よりユーザーが使いやすいものにするため、その多くにAIが実装される。 例えば、これまではアプリ経由で餃子のデリバリーを頼む場合、Uber Eatsや出前館のアプリを開き、その中で最もお手頃な食べ物を選んで、オーダーをしていた。 しかし、近い将来はAIソフトや、AIエージェント、そしてスマホ自体にAIが実装された場合、ユーザーは「一番早く、安く餃子が届くようにオーダーして」とだけ言えば、残りのプロセスはAIがやってくれる。 ということは、全体のユーザー体験 (UX) プロセスが大幅に変わる。そして、UIの量も格段に少なくなっていく。 サービスデザイナーとしてみれば、それを考慮したサービス設計が必要になってくるのだ。 実はこの「AIエージェント」というコンセプトは、実際のハードウェアとしても発表されている。 Rabbitのr1や、SoftBankが投資するHumane のAI Pinなどである。 今後これらのプロダクトが普及すればするほど、ヒトとテクノロジーの関係性がどんどん変化し、そこに必要とされるUXデザインやサービスデザインの概念が大幅に変化していくだろう。 3. 動画生成に活用 恐らく生成AIで、現在最も注目を集めているのが動画作成での利用だろう。 これまでもStable DiffusionやMidjourneyなどの画像生成系AIツール経由で画像を生成し。それを動画に変化する方法で “ハック” しながら動画作成を行ってるケースは見られた。 しかし、先日のOpenAIによる動画生成サービス Soraの発表で、この領域への注目が一気に高まった。そのリアルな表現で、動画作成に対するAIの威力がどんどん高まり、次の次元に進んだ感があるからだ。 Soraに加えて注目したいのがPikaだ。 サンフランシスコで定期的に開催されているAIイベント「AI for Designers」で会ったPikaのファウンダーの一人であるMatanによると、Soraが映画クオリティーの動画作成を目指しているのに対し、Pikaはよりカジュアルな動画生成にターゲットを絞っている。 特にアニメ調のショートムービーや、CM, ミュージックビデオの生成などはPikaが得意とするところ。 例えばこの動画を見てほしい。元々約1,200万円ほどの予算で撮影・編集されたサボンのCMを、元の動画を一歳利用せず、プロンプトと商品画像だけを利用して、AIによって1日で再現したもの。 恐らくこのくらいの長さであれば、ほぼ全てAIで生成し、編集してしまえば、かなりコスパの高い方法でアウトプットが得られるだろう。 4. ブランドエンジンを生成・活用 もう一つ生成AIが活躍しそうなフィールドがブランディングである。 これまでの一般的なブランディングは、下記の様に、調査からアウトプットまで、全て「人力」で行う、かなり属人的で地道なプロセスだった。 そこで、より効率を上げ、ブランドの統一性を保持するた目的で、今後は生成AIの活用に注目したい。 ChatGPTsなどの生成AIツールでは、個々のユーザーによってチューニングが可能。AIが出力する内容を、それぞれの好みに合わせて「味付け」が出来るのだ。 ブランドのトーンやバリュー、パーソナリティーなどをAIに教え込むことで、それぞれのブランドに合わせた「AIブランドエンジン」が生み出される。 一度AIブランドエンジンをセットアップしてしまえば「うちのブランドっぽい広告生成して」とか「今度の商品のリリース文章をうちのブランドのトーンで書いて」などの指示をするだけで、AIが生成してくれるという仕組み。 これはではかなり手間のかかる「ブランディング」領域でも生成AIを導入することで、効率化と精度アップが見込まれる。 この続きは3月7日のイベントにて さてこんな感じで、今後デザインの業界にどんどん活用されるであろう生成AIだが、より詳しい話や、ここでは書けない内容などは、3月7日に開催されるイベント「生成AIが企業活動に与えるインパクト」にて、お話しします。 みなさんのご参加をお待ちしております!

リテールテックの革新:アメリカ主要小売店の最新テクノロジーが描く顧客体験の未来

リテールテックがもたらす小売業界の革新 近年、急速に進化するデジタル技術は、小売業界において大きな変革をもたらしている。これにより、顧客体験の向上や業務効率化が実現され、小売店は新たな競争力を獲得することが可能となっている。 本記事では、アメリカの主要小売店で展開されている最新のリテールテックを紹介し、その効果について探っていく。 リテールテックの概要 リテールテックは、小売業界における最新のテクノロジーの活用を指す。このテクノロジーは、さまざまなカテゴリーに分類することができますが、特に注目されるのは以下のような分野である。 新しい決済方法 小売業界では、顧客の支払い体験を向上させるために新しい決済方法が導入されている。これにより、レジ待ち時間の短縮や支払いのスムーズ化が図られ、顧客はよりストレスフリーなショッピング体験を享受することができる。 Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた ロボット ロボット技術の進化により、小売店では在庫管理が大幅に効率化されている。自動化されたロボットが品揃えの確認や商品の位置の更新などの作業を行い、従来の手作業に比べて迅速かつ正確な在庫管理が実現されている。 ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点 ドローン配達 ドローンを活用した配達サービスは、小売店の配送プロセスを革新し、顧客により迅速かつ柔軟な配送オプションを提供している。遠隔地や交通の混雑する地域への配送も容易になり、顧客満足度の向上につながっている。 ドローン産業に起こるであろう4つの変革 Virtual Care(遠隔医療) 小売店では、オンライン上で医療相談や診断を受けることができるVirtual Careサービスも提供されている。顧客は店舗を訪れることなく、自宅から医療サポートを受けることができ、健康管理における利便性が向上している。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 これらのカテゴリーにおける最新のリテールテックの導入により、小売業界はますます革新され、顧客体験の向上や業務効率化が実現されている。 事例紹介: アメリカ主要小売店が導入しているリテールテック 【新しい決済方法】 Whole Foods Market アメリカの大手スーパーマーケットチェーンWhole Foods Marketは、Amazonに買収されて以降Amazonが持つテクノロジーとWhole Foods Marketが持つ様々なデータを上手く掛け合わせたサービスを提供している。 手のひら決済 そのうちの一つに、Amazon oneというサービスを用いた「手のひら決済」という革新的な支払い方法がある。このシステムでは、顧客の手のひらをスキャンすることで支払いが完了し、レジ待ち時間を大幅に短縮することができる。 ちなみに、Amazon oneへの登録は非常に簡単である。順序は以下の4つで1分ほどで完了する。 ①Whole foods店舗内にある「Amazon One」の機械で登録開始 ②クレジットカードを差し込み登録する→ここまではオンラインで登録可能 ③両方の手のひらを機械にかざして登録する ④最後に電話番号を登録して終了 Amazon Dash Cart さらにWhole foods Marketは「Amazon Dash Cart」の機能を用いて、手に取った商品をカート内でスキャンするだけで支払いを行う事ができ、チェックアウトの列に並ぶ必要がない便利なサービスも提供している。 【ロボット】 Walmartの清掃ロボット 世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartは、店内の清掃作業を自動化するためにロボットを導入している。それだけでなく移動しながら清掃すると同時に、棚の在庫状況をチェックも同時並行で行う。 これにより、店舗スタッフはより効率的に在庫管理や顧客サービスに集中することができ、店内の清潔さと品質を維持することができている。 Krogerの在庫管理ロボット 全米最大のスーパーマーケットチェーンKrogerは、店内の在庫管理をロボットを利用して行っている。既に800機以上のロボットにより、毎日20,000件以上のオンラインオーダーに対応している。 このシステムにより、商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、顧客が欲しい商品を素早く的確に提供することができる。また、従来の手作業に比べて効率が大幅に向上し、顧客満足度を高めている。 Krogerの無人トラック また、Krogerは自動運転車を提供しているGatik社と提携し、無人トラックによる配送業務の自動化&高速化を目指し試験運用している。 店舗受け取りや店内での買い物体験に加えて、新しいテクノロジーを用いた『ロボットによる在庫管理と自動運転による配送』を組み合わせることで、顧客にシームレスな体験の提供、それに伴う顧客満足度の向上とリピーターの増加を目指している。 Lowe’sの案内、警備、配達ロボット アメリカの大手ホームセンターLowe’sは、店内での在庫管理&案内、警備、配達の主に3つの作業にロボットを活用している。これにより、顧客は迅速かつ正確なサービスを受けることができ、店舗スタッフの負担を軽減することができている。 在庫管理&案内ロボット 高度な人工知能と3Dマッピング ソフトウェアを搭載したNAViiを利用している。NAViiは店舗内を歩き回り、正確にどの場所のどの商品を補充する必要があるかを知らせるだけでなく、価格が間違っていたり、間違った場所にある商品も識別することができる。 さらに、NAViiは顧客のサポート業務としても機能しており直接話しかけたり、NAViiに搭載されたディスプレイを用いて、特定の製品や部門の場所を尋ねると適切な場所に直接案内してくれる。 警備ロボット Lowe’sは盗難の防止や店舗の安全性向上のために自律型セキュリティロボットをテスト導入している。 このロボットは、周囲を移動しながら潜在的な問題を特定し、懸念事項を監視チームに報告する。また、顔認識機能はないが、熱異常検出及び人物検出センサーを装備しており、望ましくない侵入者をオペレーターに警告するなどの働きをしている。 移動中はヒューヒューという音を発することで視覚障害のある顧客への配慮もしている。また、ロボットを使用して助けを呼ぶことができるなど双方向通信システムを備えている。 配達ロボット Lowe’sは輸送サービスを提供している米国大手のFedExと提携し「SameDay Bot」という自律型ロボットを利用した同日配送サービスを試みている。 このボットは、歩道や道路脇で動作し、安定した状態を維持して障害物を回避しながら、縁石、未舗装路面、急カーブを通過できるように開発されており、段差も難なく進む事ができる。 このように米国ではロボット技術を用いた顧客体験の向上施策がどんどん進んでいる。 【ドローン】 Walmartのドローン配達 Walmartはスピード、安全性、持続可能性を重視するWingやZiplineなどの専門家と緊密に連携することによって、過去2年間でドローン配送をテキサスで試験的に実施し、20,000件を超える安全な配送を完了した。 ドローン配送により、顧客は今まで以上に迅速な配送オプションを利用できるようになり、商品は30分以内に届けられ、場合によっては10分ほどで届くこともある。利用料は無料であることも大きい。 これまで「忘れた食材や市販の風邪薬など急遽必要になったものや午後の甘いもの、カフェインの欲求を満たすスナックや飲み物、卵などの壊れやすい品物」など様々なジャンルの品物がオーダーされている。 その結果を受け、Walmartや提携先の企業は ”ドローン配送の需要は本物だという事が明らかになり、2024年がドローン配達の年になると信じている”と述べている。 Krogerのドローン配達 Krogerは2021年にドローン配送のPilot Testを実施したが、バッテリー、技術面、制限面などの問題から2024年2月時点ではドローン配送サービスの提供を停止している。 Pilot Test時のサービス内容は重さは5ポンド(2.26kg)まで&配達範囲は半径1マイル(約1.6km)などの制限があったものの、配送は無料で1時間以内に到着することを保証していた。 現在サービスは停止しているが、2023年にKrogerのドローンパートナーであるDrone Expressが資金調達を実施し、Krogerの顧客へのドローンサービスの再開と拡大に向け動いていると報道されたため、サービスの再開の日は近いかもしれない。 【Virtual Care(遠隔医療)】 Walmartのオンライン診断サービス Walmartは「Walmart Health Virtula Care」という遠隔医療サービスを一般会員に向けて提供している。そのサービスでは、電話またはビデオによる、資格のある認可を受けた医療提供者への24時間365日のアクセスを提供し、質の高いケアへのアクセスを増やすことで会員の満足度向上を目指している。 「緊急処置、男性&女性のプライベートな健康上の懸念、トークセラピー、ティーンセラピー、精神科」など様々なジャンルに対応したサービスがある。 さらに、ビジネス向けの遠隔医療サービスも提供しており、企業と協力して医療コストを削減し、遠隔プライマリケアなどの既存及び将来の従業員に特典を提供する遠隔医療ソリューションを開発&提供している。 Amazon Clinic Amazonもアメリカ国内で「Amazon Clinic」遠隔医療サービスを展開しており、顧客は24時間365日オンライン上で医師との面談や処方箋の受け取りを行うことができる。 これにより、顧客は緊急時の医療サポートを迅速に受けることができ、健康管理がより身近になっている。Amazon Pharmacyを選択することで処方箋も配送可能となり、診断から処方箋の受け取りまで一連の作業をVirtualで行うことも可能になっている。 Costcoの遠隔医療サービス Costcoはオンライン医療プロバイダーのSesameと提携することで会員に遠隔医療サービスを提供している。 […]

未来への一歩!Waymo無人タクシーがもたらす驚きの実乗車体験

未来の交通手段に一石を投じる革新が既に始まっている。 2023年8月10日、カリフォルニア州が承認した終日有料の無人タクシーサービスが、サンフランシスコ市内で驚きと期待を巻き起こしている。 この新しいタクシーサービスでは、運転手が一切必要なく、ライドシェアサービスですら必要ない。自動運転技術の進化がもたらす未来の一端に迫るこのサービス、一体どのような魅力があるのか。実体験を踏まえた詳細なレビューを通じて、その新しい交通手段の魅力に迫っていこう。 無人タクシー(Driverless taxi)とは? TechTargetの記事を参考にすると、”Driverless carとはセンサー、カメラ、レーダー、人工知能(AI)を組み合わせて使用し、人間のオペレーターなしで目的地間を移動する車両”とある。 実際にこれまでアウディ、BMW、フォード、グーグル、ゼネラルモーターズ、テスラ、ファルクスワーゲン、ボルボなどの企業が自動運転車を開発またはテストしている。 老舗自動車メーカー VS 自動運転時代 〜メルセデス, BMW, GMが起こす改革とは 2024年1月時点、サンフランシスコで代表的な無人タクシーは『Waymo』と『Cruise』だ。 Waymo  Waymoはカリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く自動運転技術企業。Googleの親会社Alphabetの子会社であり、2009年よりGoogleの自動運転車プロジェクトとしてスタートした。 サンフランシスコやフェニックスなどの地域で24/7/365 完全自動運転タクシーサービスを展開中。 Cruise Cruiseは、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く自動運転車の会社。General Motorsの子会社であり、SoftBank, Honda, Microsoftなどの投資家から92.5億ドル(1兆3000億円ほど)を調達し、自動運転車の技術をテスト及び開発している。 Cruise carには、360度見ることができる40以上のセンサーが搭載されており、数百フィート先やダブルパークされた車の周りなどを感知することができる。 話題の無人タクシー Cruiseをサンフランシスコで乗ってみた。その驚愕のユーザー体験とは! さっそく無人タクシーWaymoを使ってみた! サンフランシスコに来る前から無人タクシーの存在を知っていたので、到着した翌日にさっそく利用してみた。 その乗車体験があまりに驚くもので感動したので、乗車した際に得た知見を1つずつ紹介する。  手軽さが魅力!無人タクシーの使い方 何よりまずWaymoを利用して驚いたのは、アプリでWaymoを呼ぶところから目的地に到着するまでの必要とされる動作が明確かつ簡易であったこと。 当日の動作としてはスマホアプリでWaymoを呼び、乗車し目的地に着いたら降車するだけであった。初めて利用したが、利用方法で全く迷う場面がなかった。 退屈知らず!移動中の楽しみ方 乗車中も退屈しないように前席と後席にそれぞれ画像のようなタブレットがあり、各ジャンルの音楽を聴いたり、実際にどのようなルートを進んでいるのか、残りの乗車時間などを確認することができた。 タブレットには、人、車、オートバイなどが異なる大きさ、形で表示されておりしっかりと認知しているのだとわかった。 安全対策は万全! 無人タクシーということで、UberやLyftなどのサービスのように直接運転手に連絡できないため何か問題が生じた際にどうしようかと少し懸念していたが、杞憂に過ぎなかった。 万が一乗車中に問題が生じた際は画像のタブレットよりリアルタイムでサポートチームに連絡することができる。 さらに、何がしかの理由で早めに降車したい場合もタブレット上のボタンを押すことで近くて安全な場所に降車することができる。 プライバシー保護とストレスフリーな体験 個人的には、無人であることによるプライバシーが保たれていることやストレスフリーである点が非常に大きな利点であると感じた。 UberやLiftなどのサービスも非常に便利であるが、これまでドライバーとの会話であったり、時には車内の匂い、チップ制度などによって必要のないストレスを感じる瞬間が幾度もあった。 そのため、今回Waymoのサービスを利用し以上のストレスが一切なく、初めて利用したためテンションが上がり友達と車内で騒いでも誰にも迷惑をかけることがなく楽しく乗車することができた。 スムーズな移動体験! Waymoを利用して感じたのは、非常にスムーズであること。 機械が運転すると聞くと、勝手に時に不器用な動きなどが発生するのではないかと感じていたが街中で道が入り組んでいるサンフランシスコ市内でもスムーズに右折や停車をしていた。 それだけでなく、乗車、降車の際には並列駐車を避けたり、出発地付近のパーキング可能な場所に停まるなど他の歩行者や車の迷惑にならないように停車していたことも印象的であった。 急停止や急発進は一度もないのに加えて、予め推定時間は提示されているので特別遅いと感じることはなく推定時間よりも3分ほど早く到着した。 料金は格安!? Waymoの利用料金がどのくらいかを調べるためにUber、Liftとサンフランシスコ&東京のタクシー料金と比べてみた。(Cruiseはサービスを一時停止しているので比較できず) 条件は土曜日の18時で、東京のタクシーは距離をもとに料金を計算した。(参照記事 : 東洋経済ONLINE , taxisite) すると、意外なことにWaymoはちょうど中間の料金であることがわかった。サンフランシスコのタクシーを除いて他のライドシェアサービスと相場はほとんど同じであることがわかる。(Waymoは実際に乗車した際の料金でその他は諸費用が加算されるので、実質一番安価ではないかと思われる。) Waymoの進化は止まらない! Waymoはどんどん進化を遂げ、現在5th generation。 10 年以上にわたる公道での2,000万マイル(約3,218万km)の自動運転と100億マイル(約160億km)を超えるシミュレーションから得られた情報を分析し、多様で複雑な運転環境に取り組みように設計されている。 5th generationを構成する最新技術は以下の3つ。 Lidars : 車体のトップにあり、300メートルを超える範囲で360度の視野全体に渡る高解像度を提供。周囲の3D画像を描画し、車両の周囲にある物体のサイズと距離を正確に測定する。 Cameras : 500メートル以上離れた歩行者や一時停止標識などの重要な詳細を識別できる長距離カメラ+車体のPerimeter Lidarと連携して動作し、車両近くの物体を正確に検出し死角を減らすのに役立つ。 Radars : 雨、霧、雪などの厳しい気象条件でも物体の速度を瞬時に測定でき、数百メートル離れたところからバイク運転者を検出するなど遠く離れた物体も見ることができる。 結論 : Uberやタクシーよりも利便性が高い!非の打ちどころ無し。 非常に利用方法が明快であることに加えてタクシーなどを利用する際の無駄なストレスも感じることがなかったのが印象的であった。 そのため日本でタクシーを利用する人たちの需要(例えば早く移動したい、移動時間を有効活用したい、電車などの騒音から離れたいなど)を大きく捉えているのではないかと感じた。 値段もUberやタクシーよりも安いのに加えて、ストレスフリーで非の打ち所がない。ベータ版でこのクオリティなら将来どのように進化していくのか非常に楽しみになった。 なんと既にCruiseはHondaとJoint Ventureを作成して2026年度を目安に東京などの日本各地での自動運転車の商用化 を計画している。 日本でもこのような新しく素晴らしいサービスの解禁がされることを願うとともに、これからもサンフランシスコにいるからこそ体験できる最新のサービスを皆さんに共有していく。 補足 : 事故時の補償と責任の所在 最後に無人タクシーに関して疑問としてあるのが、事故が生じた際に誰が補償したり、責任を取るのか?という問題である。 そこで実際に以下のような質問文をCruiseとWaymoのカスタマーサポートに直接送ってみた。 すると、1週間も経たずに以下のようなメッセージを受け取った。 こちらの返信を読み取る限り、残念ながら将来的により内容をシェアするのを楽しみにしているというような曖昧な回答しか受け取ることができなかった。(Waymoは未だに返信なし) 恐らく特定の事象に関して言及するのは法的なリスクがあるため回答が難しいためではないかと思う。 ご参考までに以下にWaymo、Cruiseそれぞれの利用規約などを記載しておく。こちらに補償や責任に関して大きな概要が記載されている。 Waymo利用規約 Cruise 利用規約 参考までに安全性などに関してWaymoのCheif Product Officerが実際にWaymoに乗車しながら話している動画がこちら👇

生成AIが切り開くブランディング戦略の新境地

生成AIの急速な進化は、ブランディング戦略に革命的な変化をもたらしている。ただの技術ツールを超えたこの進化は、マーケティングのアプローチやブランドの物語作りに深い影響を与えている。 生成AIは、ブランドのアイデンティティを再定義し、顧客との関係構築に新たな次元を加えている。この急速な変化は、多くのブランディング、マーケティングに従事する多くの人を置き去りにしているというのが現状だろう。 生成AIをブランディングにどう活かして行けば良いのだろう。本記事では、実際の事例を交えて、生成AIがブランディングにどのように活用されているか、その深い影響と可能性について探求する。 生成AIを活用したブランディング戦略 生成AIによるブランディング戦略は、革新的なコンテンツ生成によって顧客とのコミュニケーションを強化する。生成AIは、テキスト、画像、動画、3D、音声、音楽、マップなど、あらゆるフォーマットに対応し、豊富な選択肢を与えている。そのような中、生成AIをどのように活用することができるだろうか。 この記事では、生成AIをどう使いこなし、ブランディングに反映できるかという可能性を探るヒントを事例を交えて紹介したい。 【事例①】生成AIと現実のギャップを活かした、Heinzの生成AIキャンペーン トマトケチャップのグローバルブランドであるHeinzは生成AIを活用して、何が「ケチャップ」かを生成AIに解釈させ、その結果をビジュアル化したキャンペーンを実施。この斬新なアプローチは、生成AIが日常の製品をどう解釈するかを示し、ブランド戦略におけるAIの可能性を探るものだった。そのメッセージは、あらゆるプロンプトを与えてもHeinzのトマトケチャップのイメージを生成しようと試みても、本物のHeinzに辿り着くことはできないとのこと。   過去の記事でも取り上げたことがあるが、Heinz のブランディング戦略の巧みさには驚愕するばかりである。 デザインの力でケチャップ詐称を見抜け!ハインツのキャンペーンが面白い 【事例②】まるで本物?Baskin Robbinsの生成AIキャンペーン 日本ではアイスクリームの31でお馴染みのアメリカ発のグローバルチェーン、Baskin Robbinsは、新しいフレーバーの発表に際して、AI画像生成プログラム「Midjourney」によるAIアーティストTapan Aslotが生成した一連の画像を使用したキャンペーンを展開した。 これらの画像はソーシャルメディアで注目を集め、生成AIのマーケティングへの応用を示した例である。生成AIで作られたかもはや分からないほど完成度が高いビジュアルを提示したこのキャンペーンは、生成AIを活用したクリエイティブ制作に大きな影響を与えたことだろう。 また、まだ生成AIの作り出すクリエイティブが目新しかったタイミングで、このようなキャンペーンを展開し、生成AIが作り出すクリエイティブの本物感を世に知らしめたことは、このキャンペーンが先進的な取り組みと認知された大きな理由の一つだろう。 【事例③】生成AIの機能を統合し、魔法のような体験を提供 Canvaは、自社のデザインプラットフォームに最新のAIテキストおよび画像生成技術を統合している。Magic Write、Magic Edit、Magic Presentationなどの機能を通じて、ユーザーはプロンプトからテキスト、画像、スライドデッキを生成できる。これは生成AIがコンテンツ作成において実用的に活用されている例である。 生成AI機能をサービスに実装することで、よりユーザー側からの多様なニーズ、インプットに対して柔軟に対応可能なインタラクティブかつ革新的なユーザー体験を提供することが可能になる。 例えば、ノートを取るためのサービスであれば、議事録や講義の内容のサマリーを音声機能をオンにするだけで作成してくれたり、旅行系のサービスであれば、フライトの情報を入力すると行き先での最適な旅行プランを提示してくれるなど、その可能性は存在する。 2024年は、あらゆるサービスに生成AIを用いた機能が組み込まれてくる年になることは間違いないだろう。 「生成AIで作ったコンテンツは安っぽいのか」 生成AIによるコンテンツが安っぽいという懸念、世の中での認識について、もはや時間が解決する問題であると考えられる。認識はさておき、現実では既にこの問題は既に解決されている。 Baskin Robbinsのキャンペーンが物語るように、AI生成コンテンツの質は飛躍的に向上している。適切に設計されたAIは、人間の創造性を補完し、時にはそれを超える結果を生み出すこともあるだろう。 生成AIで作られるコンテンツは、単なる人間が作るコンテンツの「模倣」ではなく、「模倣」とは異なるベクトルで進化し、これまで人間が思いつかなった、もしくは時間が掛かりすぎてできなかったことを可能にし、様々な表現のバリエーションを我々に提示してくれることだろう。 まとめ 生成AIの活用は、ブランド戦略における革新的な表現と効率化をもたらす。この技術をうまく活用することで、ブランドは新たな顧客体験を提供し、ブランドイメージを高めることができる。 3つの事例を通して、共通して言えることは、「生成AIで作ったコンテンツは安っぽいのか」という問いを超えて、生成AIとどのように付き合うのか、生成AIでどのようなインタラクションを生み出すのか、つまり「What」ではなく、「How」の部分をブランディング戦略に組み込むことが重要である。 今後も、多くの企業が生成AIを活用した新しいブランディング戦略を展開していくことが期待される。

主催イベントBtrax Design Day で最も注目を集めたセッションをご紹介!「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」

2023年12月6日、東京・渋谷にて開催された「Btrax Design Day」は、デザイン業界における次世代のトレンドと革新を探求する一大イベントであった。
中でも特に注目されたセッションの一つが、「マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力」だ。このセッションでは、Audio Metaverse, Inc.の創業者である井口尊仁氏と、株式会社圓窓の代表取締役、澤円氏が、「インクルーシブデザイン」の概念を深く掘り下げた。

インクルーシブデザインのビジネスへの影響
井口…

思い込みを解消して斬新なアイディアを引き出す「聞く」技術とは

AIが発展するにつれて、筆者のようなデザイナーは「手を動かす」部分が減り、「戦略」を考えることが増えていく傾向にあると考えている。 というのも、AI技術によって、ビジュアルデザインや開発が自動化されていくからだ。 もちろん、現状としてクオリティを高めていく際にはデザイナーの最終調整が必要だが、今後よりAIの精度が高まれば、必要でないケースが増えてくるのではないか。 そうなった時に、デザイナーが真価を発揮するのはアイディアを生み出す時だと筆者は考えている。つまり、他者とは違ったユニークなアイディアを発想することが求められる。 この斬新なアイディアを生み出す上で重要なことは、「他者とは違った角度で物事を見ること」であると考える。 つまり、無意識に感じているバイアスを見つけて、そのバイアスをなくすことで、独創性の高いアイディアを生み出すことができる。しかし、バイアスをなくすことはかなり難しい。というのも、そもそも自分が持つ前提や思い込みに気づきにくいからだ。 本記事では、デザインの活動に限らずビジネスの現場においても簡単に取り入れられる、思い込みを解消するための効果的なアプローチの一つ、「聞く」技術を紹介する。 バイアスや思い込みを解消する簡単な方法「聞く」 思い込みを解消する方法として、最も簡単な方法は他者に意見を求め、その意見を「聞く」ことである。 人間は自分のことを把握しているようで把握できていないものだ。 例えば、自分が映った動画を撮って見返すと、想定したものと違っていたという経験はないだろうか。このように、「自分で自分を知る」ことは案外難しい行為なのだ。 それに対して、他者の視点は自分のことを客観的に把握する助けになる。というのも、他者は自身に関する前提情報が少ないため、よりフラットに自身の情報を把握することができるからである。 これが、他者に聞くことで思い込みを解消できる簡単な仕組みである。 特に関係性が遠い人間ほど思い込みの解消度合いは大きくなる。例えば、短い期間で会っている人に比べてあまり会っていない友人や知人と再会した方が「変わった」と感じることが多いのではないだろうか。 このように、現在の自分から遠い人ほど新しいことに気づきやすいく、思い込みを解消できる可能性を秘めている。 「聞く」技術で得られる3つの発見 「聞く」技術を駆使して思い込みの解消を行うことで3つの発見が得られる。 聞く技術で得られる3つの発見 1. 新しい糸口の発見 「聞く」技術を駆使して思い込みを解消することで新しい糸口の発見をすることができる。 つまり、他者の意見や経験に耳を傾けることで、自分の視点では思いつかない、新たな解決策やインサイトを発見することができるのだ。 特にバッググラウンドが違う異業種/異文化の方に話を伺うと違った角度から物事を見つめ直すことができ、新たな発見を得られる可能性を高めることができるだろう。 「新しい糸口の発見」における聞く時のポイント 相手の言動に注意する: 人は話していることが全てではない。 そのため、言葉だけでなく、表情やボディランゲージにも注意を払い、相手の意図や感情を読み取ることで、本人が自覚していない発見をすることができる。 共感とエンパシーを示す: 相手の意見や感情に対して共感し、エンパシーを示すことで、信頼関係の構築を容易にし、より相手が自分の考えや感情を言葉にしやすい状況を作ることができる。 2. リスクの早期発見 「聞く」技術を活用して思い込みを解消することでミスやエラーを早期に発見できる。 もし、自身の思い込みや偏見に気づかずに行動してしまうと、コミュニケーションの齟齬によりミスやエラーの原因となる。 そのため、他者の意見やフィードバックを積極的に聞くことで、自身の思い込みや誤った認識を早期に発見してリスクを回避することができる。 「リスクの早期発見」における聞く時のポイント 正しい情報をクリアに伝える:「主張」「根拠」「事例」に分けて正しい情報をクリアに伝え、フィードバックをもらうことで、自分のミスやエラーを客観的に捉えることが可能となる。 あなたの行動に関わっている人を把握する:ミスやエラーはステークホルダーとの意識の違いによって生じる。そのため、あなたの行動に関わっている人を把握して積極的にコミュニケーションを取ることで、ミスやエラーを早期に発見することが可能になる。 3. 新しい価値観の発見 「聞く」技術を駆使して他者の意見や価値観に耳を傾けることで、自身の価値観をアップデートする機会が得られる。 思い込みを解消し、異なる視点や経験に敏感になることで、より包括的で開かれた価値観を持つことができるのだ。 例えば、最近筆者は「聞く」技術を用いて幸せの定義をアップデートできた。 具体的には、以前までは、努力した結果成功することをを幸せと考えていた。しかし、ビジネスメディアでとある書道家の話を聞いたことによりリフレーミングすることができた。 番組の中で彼は「成功は資本主義が生み出した一時的な幸せであり、変わりやすいものだ(色即是空)」と述べていた。 それから、幸せの価値観が変化し、日々の小さな出来事に感謝する重要性に気づくことができた。 このように「聞く」技術によって、あなたの生活が豊かになることもあるだろう。 「新しい価値観の発見」における聞く時のポイント 関心と興味を示す: 相手の話に対して関心を持ち、興味を示すことでより多くの情報や洞察を得ることが可能になる。 オープンマインドを持つ:相手の視点や背景を尊重し、新しい情報や考え方に対して受容する姿勢を持つことで、自分の固定観念にとらわれずに新しい概念を受け入れやすくなる。 まとめ 本記事では簡単なバイアスをなくす方法として「聞く」技術を活用することで得られる3つの発見とその際のポイントを整理した。 AIが発達している中で、一人で解決できる問題が増え、人と話す機会が昔より減ってきているのではないだろうか。 ぜひ、外に出てあまり合っていない友人や知人と「聞く」技術を用いて会話をしてみてほしい。そこで生まれる新たな気づきは仕事だけでなく人生を豊かにしてくれるに違いない。 Written by Ryusei Anzai, btrax Japan UI/UX Designer, Innovation Researcher

SAP人事ソリューション2023H1最新機能アップデートfrom SAP Sapphire Orlando

SAPグループ全体の最新ソリューションを紹介するSAPPHIREが、2023年5月16日~17日の日程でアメリカ合衆国のOrlandで開催され、盛況を博しました。
人事領域のセッションでは、人事業務の高度化と効率化についてAI関連ソリューションの紹介や事例発表が行われました。
こちらのブログでは、人事領域の発表内容を3つのポイントでサマリーしてまいります。
The post SAP人事ソリューション2023H1最新機能アップデートfrom SAP Sapphire Orlando first app…

大企業で優れた新規事業が「空中分解」するワケ 社内組織の限界を超える事業切り出し戦略

「優れたアイディアでも実現に至らない」。 このもどかしさは、新規事業に携わる方なら、少なからず感じたことがあるのではないだろうか。 実は筆者は、btraxに入社する前、大企業で新規事業開発に取り組んでいた。自身で新規事業を推進したこともあれば、新規事業に挑戦する社員向けの研修プログラムを主催したこともあった。 そして、その過程でたびたび、冒頭の「もどかしさ」を感じていた。 近年、変化する時代に対応し、新たな事業の柱を作るために、大企業内で新規事業を生み出す活動が盛んに行われている。 これまで大企業内の新規事業は、人材育成や風土改革戦略の一環として、あるいはどのような事業領域に可能性があるかを探るための「探索」的要素が強かったといえる。 しかし、最近はそれだけではなく、本格的な事業化やグロースを狙う動きが活発になっている。 具体的には、社員が上層部に起案して推進するボトムアップ方式や、上層部にて事業領域や内容が定められ、下層部の社員が実行するトップダウン方式など、さまざまな手法で試行錯誤されている。 しかしながら、せっかく優れた事業アイディアが生まれても、大企業内ではルールや規制、組織の仕組みによって、事業化に至らずに空中分解することがしばしばある。 大企業では、既存事業のプロダクトやサービスの品質を担保する必要があるため、こうしたルールや規制を撤廃したり、例外を認めたりすることが難しい傾向も見られる。 ただ、新規事業を生み出すには、優れたアイディアや人材だけでなく、事業が育つための仕組みや環境が必要だ。 組織の環境やルールを変えるには、新規事業の推進者だけの力では困難で、周囲の人を巻き込んだり、組織全体で環境を変えていくための工夫が必要となる。 では、大企業内の新規事業を阻む「仕組み」の課題や制約について、どのようなものがあるのか、またそれらを乗り越えるためにはどうすべきなのか。 筆者自身が大企業内で新規事業に取り組んだ経験をもとに、「新規事業は組織のどこで実施するべきか」「組織はどうあるべきか」という観点から本記事を書いていく。 社内新規事業組織の利点と課題 どのような組織形態が新規事業の推進に向いているのかを考えてみよう。 従来の典型的な方法は、完全に社内の既存事業部門や新規事業部門で推進することだ。 例えば新規事業部門は、社内から事業アイディアや推進者を選び、ある程度アイディアを磨き上げたのち、その部門内で継続して推進するか、既存事業部門に活動場所や予算の出所を移して推進する。 この方法のメリットは、社内既存事業のリソース(人、技術、資金、販売ネットワークなど)を活用できることだ。 上層部のコミットが得られた場合は、社内の各部門を動かしやすく、これらのリソースをフル活用しながら有利に事業を進めることができる。 また、実証実験やヒアリングを行う際には、既存事業で培った知名度によって、関係者が快く話を聞いてくれたり、メディアに注目されたりすることもある。これにより、特に事業のローンチ後の10→100フェーズで大きく事業が成長する可能性を高めることができる。 そのほか、会計上・労務上の事務的な基盤は既に大企業内にあるため、新たに別会社で用意する必要がなく、こうした労力やコストを削減してコア業務に集中できることもメリットとして挙げられる。 しかし一方で、この方法にはいくつかのデメリットがある。 課題1:社内ルールに阻まれ検証・開発が止まる 新規事業を社内の一部門のプロジェクトとして進める場合、通常は社内のルールやプロセスに従う必要がある。既存事業と同様の品質基準や社内決裁、各種申請をクリアしながら、ゴールに向かってまっすぐ進むことが要求され、途中での方向転換は難しい。 そのため、クイックな試作品開発や顧客への検証ができないことがある。コンセプトの決裁、開発の決裁といったステージをひとつずつ順に経て、企画からローンチまで5年かかったケースも耳にしたこともある。 このような障壁がある理由は、既存事業で築き上げてきた品質やブランドがあり、それに対する顧客からの信頼や期待を裏切らないようにする必要があるためだ。 品質やブランドを維持することは重要だが、新規事業においては事業化を遅らせる足かせとなることが多い。 具体的には、「品質基準を守るとプロトタイプをスピーディーに作れず、市場性の検証を行うことができない」「顧客情報取得のハードルが高く、ユーザー調査ができない」「一度決めた目標や仕様を変更できない」などの問題が起こる。 時間をかけすぎてしまうことで、他社が先に類似商品を出してきたり、市場環境が変わりビジネスの前提が崩れたりすることもある。 失敗しないようにひとつずつプロセスをクリアしていくことが結果的には速い上に確実だという声もあるが、新規事業は不確実なことが多く、手戻りをゼロにすることは困難だ。そのため、「失敗しないように」というステップの踏み方は、失敗時の金銭的、時間的損失をかえって大きくしてしまいがちだ。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 このような問題を回避するために、「ブランドをつけない」ことで対処する方法もある。大企業の社名やブランドを背負うと、顧客からの期待が大きくなり、それを裏切らないための品質基準やルールが適用される。 しかし、これをすり抜ける方法として、企業の持つ既存ブランドとは「別物」としてブランドをつけずにスピーディーに商品を出すというアイディアもある。ただし、この手法でも全ての社内プロセスを回避できるとは限らず、絶対的な解決策とはならない。 面白アイディアが日本企業によって殺される12のステップ 課題2:新規事業を的確にジャッジでするノウハウが不足している 社内で事業を推進する場合、通常は社内の上層部が事業の継続可否や方向性を審議することが多い。 しかし、既存事業しか経験していない意思決定者がいる場合、「既存事業に適用してきた評価基準」で新規事業が評価される傾向にあり、結果適切な評価やフィードバックがされないことがある。 例えば、「初年度から黒字化必須」など短期的な成果を求めたり、「少数へのヒアリングは恣意的なため、多くの人を調査してマスに刺さる商品を作るべき」として、個別ヒアリングよりもマスへのアンケート調査や検証を強いたりすることがある。 既存事業の目線で「事業計画の確実性」を求めるあまり、あれもこれも検証すべき事柄として挙げられてしまい、新規事業推進者が「PoC地獄」に陥ることもある。 また、意思決定者としてどのように事業性を判断すべきかがわからず、新規事業推進者との間で基準となる目標やKPI・KGIについて合意できないケースもある。 課題3:新規事業推進者の評価制度・インセンティブが整っていない 大企業においては、新規事業開発の推進者に対して、金銭面や権利面でのインセンティブが少ないことが一般的である。 例えば、事業開発段階では成果が出ていないため人事評価が低くなったり、成功しても給与が変わらなかったりすることがある。場合によっては、失敗した事業が原因で低い評価を受け、その後の社内異動やキャリア形成にも悪影響を及ぼすこともある。 既存組織の中で、新規事業の推進者に対してインセンティブ制度を設計しようとすると、既存ルールとは異なる「特別扱い」せざるを得ないため、人事制度の差が社内での不満を引き起こす原因にもなる。 もちろん、新規事業は個人の評価や給与のためだけに行うものではない。自己資金ではなく会社の投資を得ているため、自分自身でモチベーションを管理していく覚悟が必要だ。 しかし、挑戦を評価されない仕組みや、事業が失敗した際に人を切り捨てる仕組みでは、会社の中で持続的に事業を生み出すことは難しいだろう。 大企業におけるイノベーションラボのリアル −パナソニックとライオンの事例より−【DFI 2019】 解決策としての「新規事業の社外切り出し」 では、こうした課題に対してどう対処していけばいいのか。組織の仕組みの観点から見ると、「新規事業の切り出し」が処方箋になりうる。これは、部分的にでも社外に新規事業組織を出してしまうという考え方だ。 具体的には、社外に別会社を設立する方法が主流だ。これには、別会社をどのように置くか、どのように出資するかによっていくつかの種類に分けられる。 事業切り出しの種類 子会社: 親会社からの出資を受けて、新しい会社を立ち上げる方法。子会社は親会社から独立して経営できるため、事業運営や経営判断を柔軟に行える利点がある。親会社は株式を保有することで子会社を経営上支配することができ、最終的な意思決定権を握ることができる。 ジョイントベンチャー: 複数の企業が一緒に出資し、新しい会社を立ち上げる方法。企業にとっては、一社で全額を出すのではなく複数社で共同出資することでリスクを低減、分散できるメリットがある。互いの企業のノウハウや、ネームバリューを活かして事業を進められる。 カーブアウト: 事業を親会社から切り離し、親会社以外の投資家からの投資を促し、新会社として独立させる手法。親会社は株式上場やM&Aによるリターンの獲得を目指す。 また、カーブアウトの一種として、最近では「出向起業」という選択肢も登場した。社員が、企業に所属したまま社内外からの資金調達や自己資金により起業し、元の企業から起業して作った会社へ「出向」するという仕組みだ。 「出向」扱いにすることで、大企業を辞めずに起業でき、出向元の企業から給与を得ることも可能になるため、起業する個人の経済的・キャリア的リスクを抑えることができる。 経済産業省は、出向起業のための補助金を用意しており、社内では資金調達や事業継続が難しい場合でも利用しやすくなっている。 スピンオフ: 親会社が持っている事業を新しい会社へと分割して立ち上げる手法。元の会社との資本関係が継続される場合もある。 スピンアウト: 元の会社との資本関係を切り、独立した企業として新しい会社を立ち上げること。スピンオフとは異なり、元の会社と元の従業員との関係は断たれる。 以上が新会社を設立する際の主な切り出し手法だ。そのほか、社外に組織を置くやり方として「代理出産モデル」と呼ばれる手法もある。 これは、いきなり法人を設立するのではなく、別会社の一事業として立ち上げる方法だ。この手法を提供する新規事業関連のコンサルティング会社もある。 例えば、ある大企業の新規事業を、別のコンサル会社の商品としてローンチし、うまくいけば再度大企業側に事業を移管したり、コンサル会社から切り離して会社を設立したりする。 「社外に切り出す」効果 このように、上記のモデルのような「社外に出す」方法を取ることで、先ほど挙げた社内推進での3つの課題を解決し、以下のような効果を期待できる。 効果1:社内ルールに縛られず、スピード感を持って進められる 社外に出すことで、別会社として独自ルールを適用することができる。そのため、事業の方向性を都度審議にかけたり、親会社の品質ルールを全て遵守したりする必要がなく、スピード感を持って事業化を目指すことができる。 効果2:多角的な視点から事業判断ができるようになる 外部資本を導入すると、親会社以外の投資家の視点が加わることになる。これにより、親会社が持つ既存事業の判断軸だけでなく、他のベンチャーキャピタルによる評価も取り入れることができる。 すると、KPI・KGIの判断方法や市場規模の見方、新規事業目線でのより客観的なフィードバックなどが得られる。 新規事業を社内組織で推進する場合でも、社外投資家を審議者として呼び、審議の場に加えることで、これに近い効果を得ることができるかもしれない。 効果3:事業推進者のインセンティブ設定がしやすくなる 外部資本を入れるとき、事業推進者のインセンティブ設計が不十分だと、「事業を頑張っても推進者にメリットが薄く、事業成功までやり切れないのでは」という懸念が投資家から出て、投資を受けられないことがある。よって、インセンティブは資金調達のために重要な要素となる。 このように、インセンティブ設計は決して軽視できない項目だが、事業を別会社として設立することで、人事制度や評価を既存ルールとは異なるものに設定することができる。これによって、新規事業組織と既存事業組織の間で、人事面の差異に関する不満が発生しにくくなる。 効果4:事業終了時にも、起死回生の一手となる さらに、「会社の外に出す」発想があれば、新規事業を企業内で終了した場合でも、事業推進のチャンスを創ることができる。 大企業においては、あらゆる社内外の事情により新規事業が終了してしまうことがある。しかし、母体となる大企業から切り離して新規事業を推進することが可能であれば、新規事業が終了してしまった場合でも、まだ選択肢が残る。 例えば、大企業から事業案や関連する調査データ、技術データを「ライセンス契約」という形で借り、合法的に社外に持ち出せる仕組みを作れば、事業推進者は社外で挑戦を続けることができる。 この方法は、大企業側が契約を受け入れることが前提だ。しかし、社内でアイディアやデータを眠らせるよりも、事業化したら利益の一定割合を親会社に還元するなどの条件でライセンスを付与する方が、親会社にとっても利益創出のチャンスが残るため、長期的にはメリットとなる。 通常、事業終了後には、親会社の出資が得られなければアイディアやデータも会社の所有物となってしまうが、社外で推進する視点を持つことで生き残りの可能性を残すことができる。 まとめ せっかく優れた新規事業案ができても、既存事業に最適化された従来の社内環境では事業化が難しいことがある。しかし、さまざまな方法で社外に切り出すことで、壁を打破できる可能性がある。 事業アイディアの創出と仕組みづくりを両輪として同時に検討していくことが、大企業での新規事業成功の秘訣である。 難易度は高いが、こうして選択肢をリストアップすると、新規事業が本当に「できない」ということはないように思える。道はあるため、工夫して壁を乗り越えるために、組織一丸となって考え、活路を切り開くことが重要だと感じる。 また、事業の性質や状況によって、どこで事業を進めるのがベストかは異なる。社内にある強みやリソースに応じて選ぶのが良いだろう。 時には完全に社内で進める方が良い場合もある。大企業の弱点を回避し、うまく強みを活かせるような仕組みを選ぶことがベストだ。 これまで組織の課題や仕組みの話をしてきたが、もちろん優れた事業アイディアができることが前提である。btraxではユーザーリサーチから、サービスデザインまでを一気通貫して大企業内イノベーションや新規事業・新サービス創出に伴走している btraxのサービスや過去のプロジェクト事例にご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

SAPリサーチブログ Vol.4 従業員エクスペリエンスを向上する”ダイナミックチーム” 後編

前回から2回にわたり、ダイナミックチームをテーマにしています。前回は、ダイナミックチームがこれまでの組織とどう異なるのか、導入済みの企業では実際にどのように運営されているのかを紹介しました。また、ダイナミックチームに参画することで従業員のエクスペリエンスが様々な側面で向上しているという結果も見てまいりました。
今回は、ダイナミックチーム運営の課題を確認した上で、その価値を最大限引き出すためのベストプラクティスに迫りたいと思います。
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サイモン・シネックから学ぶリーダーシップ 12の極意

TEDで大人気になったトークや、著書『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』で有名なサイモン・シネック。成功する会社とそうでない会社の違いや、ビジョンやパーパスの重要性を説く彼は、アメリカをはじめ世界中でリーダーシップを学ぶ多くの人々から支持を得ている。
彼の提唱するスタイルは「サーバントリーダーシップ」と呼ばれるもので、21世紀のリーダー手法として取り入れている企業も多い。
今回は冒頭のトーク以外にも数多くの素晴らしいスピーチを行っているサイモン・シネックから、リーダーシップに関…

SAPリサーチブログ Vol.3 従業員エクスペリエンスを向上する”ダイナミックチーム” 前編

第三回のテーマはダイナミックチームです。ダイナミックチームは日本ではまだあまり耳にしない言葉ですが、近年アメリカの企業で特に顕著に増加がみられるチーム組成の形式です。1,400名以上のアンケート結果から得られたインサイトとダイナミックチームの価値をサイ高するためのベストプラクティスを2回にわたってご紹介します。
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UXリサーチャーが見る、スマートシティ先駆者バルセロナのゴミ捨て事情

筆者はbtraxでUXリサーチャーとして勤めている。今回、私用でスペインのバルセロナに1ヶ月滞在する機会を得た。 住宅地で1ヶ月生活をする中で、美しい街並みだけではなく、都市設計の素晴らしさに感動する場面が多々あった。 その中でも、ひときわ印象に残ったのが街中にある公共のゴミ箱や、頻繁に行き交うゴミ収集車、ビビッドな制服を着た清掃員など、クリーンな街を保つための仕組みだ。今回の記事では、UXリサーチャーから見たバルセロナのゴミ回収事情を紹介していきたい。 歴史的な街並みとスマートシティが共存するバルセロナ 本題に入る前に、バルセロナという街の概要をご紹介する。 バルセロナはスペインの東側に位置し、カタルーニャ州の州都である。人口はマドリードに次いでスペインで第2位。国際的な観光都市であると同時に、国際会議が多く開かれる都市であり、街中にはスペイン人のみならず多様な人種の人々が暮らし、様々な言語が飛び交っている。 btraxオフィスのある東京、サンフランシスコと比較してみると、面積は東京やサンフランシスコよりも小さい。しかし人口密度ではバルセロナがずば抜けている。 そんなバルセロナで、誰もが知っている歴史的建造物といえば、アントニ・ガウディによって設計され、現在でも建築工事が続いているサグラダ・ファミリア。街の中央に位置しており、美しいランドマークとなっている。 余談となるが、サグラダファミリアの内部は柱が木のように並ぶ森のような構造で、バイオミミクリー的な設計となっている。バルセロナ市内には、他にもガウディの手がけた建築物が随所にあり、平日も多くの観光客で賑わっている。 バナナは最高のUX – 自然界に学ぶデザイン【バイオミミクリー 】 そんな歴史的な建物が多く残るクラシカルな景観とは裏腹に、利便性の面では、公共の場の整備や管理が非常によく行き届いてる。筆者は今回が初めてのスペイン滞在だったのだが、言語の壁や文化的な違いが気にならないほど生活しやすいことに驚いた。 調べてみたところ、バルセロナはスマートシティ化を始めてからすでに20年以上が経っている都市計画の最先端都市だった。 今回の記事では、現地で撮った写真や実際に生活する中で起きた実体験のエピソードなども交えて事例を紹介していきたい。 そもそも「良いUXデザイン」とは? 具体例の紹介に入っていく前に、この記事における「良いUXデザイン」の判断軸に関して明確にしたい。 UX(ユーザー体験)の定義は広く、設計する対象のサービスや媒体、コンテクストなどによってもさまざまな定義がある。今回は、デジタルではなくフィジカルのサービス、かつ公共物の設計ということで下記のようなポイントを見ていく。 ユーザー中心:ユーザーのニーズや要望を優先し、使いやすく、直感的で、快適な使い心地になるよう設計されているか。 シンプルさ:無駄のないシンプルな設計で、ユーザーが迷わずに簡単に操作できるか。 一貫性:視覚的なデザインや情報の表記のパターンなどの一貫性が保たれており、ユーザーが迷わずに求めている情報やアクションに素早くアクセスできるか。 エンゲージメント:ユーザーの感情に働きかけ、興味喚起して継続的に利用してもらえる仕組みができているか。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは 人間の本質を捉えた「つい捨てたくなる」ゴミ箱 犬も歩けばゴミ箱にあたる!と言いたくなるくらいにバルセロナの街中にはゴミ箱がたくさんある。 前述のような圧倒的な人口密度を誇り、なおかつ、常時多くの観光客が行き交う街にも関わらず、どこを歩いていても比較的きれいな通りばかりなのは、このゴミ箱が大きな役割を果たしている。 徹底されたシンプルさ 公共のゴミ箱の種類は大きく分けると2つあり、1つ目は下の写真のような縦型の小型のゴミ箱。 エリアにもよるが、このタイプのゴミ箱の設置間隔は、おおよそ50メートルから100メートル程度。通りに沿って定期的にゴミ箱が設置されているので、ゴミを捨てるために長い距離を歩く必要がない。 これは裏返すと、ゴミが出てもポイ捨てしたいと感じる前にゴミを捨てる機会が先にやってくるような感じで、非常に合理的かつユーザーフレンドリーであると感じた。 東京では、テロ防止などの理由から街中にゴミ箱はほとんどない。街の景観が保たれているのは、多くの住民がマナーを守り、自分のゴミは持ち帰る習慣が身についているからだろう。 それに加え、他人の目があるところでポイ捨てするのは憚られるという文化的な要因もありそうだ。しかし、これはユーザー側がゴミを捨てたい時に捨てられず、長時間ゴミを我慢して持っていなければならないため、ユーザー中心の設計であるとは言い難いだろう。 これに対し、サンフランシスコでは街中にゴミ箱は設置されているものの、人口や街の大きさに対して数が足りておらず、ゴミ箱が慢性的に不足している状態で、行き場のないゴミが街中に溢れて問題となっている。 バルセロナの場合、街を歩いていると至る所にゴミ箱があるため、例えば犬の散歩をしていてゴミが出た場合も、少し歩けばすぐに捨てる場所を見つけられる。 これをUXの観点から見ると、ユーザーの「ゴミを長時間持っているのが嫌だ」という心理に対して、「ゴミが出たらすぐ近くのゴミ箱に捨てられる」というソリューションを多くの場所に・短い間隔で・同じ形のゴミ箱を設置することで実現していると言える。 これはあまりにも単純に聞こえるかもしれないが、実際にはこのゴミ捨ての習慣化を促すシンプルな設計こそが、誰もが使う公共物のデザインにおいて効果を発揮していると感じた。 また、この小型ゴミ箱は口が上向きに空いており、高さもちょうど人が手に持ったものを投げ入れるのに適した設計になっている。ゴミを持ちながら歩いている時、つい放り投げてしまいたくなるようなビジュアル、サイズ感、そしてそれに適した位置に設置されているのだ。 これらはUXデザインにおける「アフォーダンス」と「シグニファイア」の観点からも適切な設計であると感じた。 アフォーダンス*:プロダクトやサービスに施された視覚的・物理的な表示で、どのように利用するかを、わかりやすく感じさせるためのデザインの要素。 シグニファイア*:「このように動きますよ」というシグナルを送ってくれる設計のこと。ユーザーに適切な行動を伝えるための印や音、認識可能な指標を指す。 *参照:スタバのスリーブから学ぶ、アフォーダンスとシグニファイア【UXデザイン】 視覚的なわかりやすさ もう1種類のゴミ箱は下の写真のような大型でカラフルなタイプのもの。通常、ごみ収集車が巡回するルートに沿って、おおよそ300メートルから500メートルごとに設置されている。 これは、一般的な家庭やビジネスから出る大型ごみやリサイクル可能な資源を捨てる場合に使用され、それぞれの箱に入れるべきゴミの種類が色とピクトグラムでわかるようになっている。例えば、青色のゴミ箱は紙やカードボードを、緑色のゴミ箱はガラスを収集するために使用される。 箱の形も、入るゴミのタイプに合わせて口の形が異なっている。蓋を開けて入れるタイプの場合は、足元のレバーを踏むと蓋が開く設計となっている。 両手が持ち物で塞がっていても開けられ、且つゴミ箱に触れずに捨てられるので衛生的である。 ゴミ箱の配色は、基本的にバルセロナ市内で一貫されており、ユーザーはどこへ行っても同じ色のゴミ箱を利用することで、正しい分別方法でゴミを捨てられる。 以上のように大型のゴミ箱は、視覚的に向かうべきゴミ箱が判断できるようにすることで、ユーザーの認知負荷を最小限に抑えている。 ユーザーが「面倒だな」と感じやすい「一度ゴミを置いて、手で蓋をあける」アクションを、「足で踏めば開く」というように最小限の努力で実現できるように設計されている。 これらは視覚的・物理的な情報でユーザーに必要なアクションを促しており、前述のシグニファイアとアフォーダンスの観点から見ても優れている。 実際に日常的に使う中でも、ユーザーがゴミ箱に合わせるのではなく、ゴミ箱がユーザーに合わせて設計されていると感じた。 ちなみに、収集の際は、各ゴミ箱にセンサーがついており、自動で重量などを検出して、必要なゴミ箱にのみ収集車が向かう仕組みになっているそうだ。 忘れてはいけない「エモーション」 最後に言及しておきたいのが、全ての大型ゴミ箱、ゴミ収集車、また、街中を歩く清掃員の方の制服にも印刷されている下のロゴだ。 これは、「バルセロナのゴミの面倒を見ています (Take care of Barcelona’s waste)」というような意味なのだが、バルセロナのスペルの“O”がスマイルマークになっている。 1ヶ月の生活を通して、ゴミを捨てる度、またゴミの処理をしてくれている収集車や清掃員の人を目にするたびに、毎回このスマイルマークが目に飛び込んでいるのは、意外と見る側の深層心理へ影響を及ぼしていると感じた。ゴミに関わる場面に出会う度、同時に笑顔も脳の中で認識されるためだ。 UXデザインにおいて忘れてはならないのが、ユーザーが「どう感じるか」。機能面だけではなく、このようなエモーショナルな設計への配慮も行き届いていた。 これについては、具体的なエピソードもひとつ。ある日、小さなゴミを手に持って路上を歩いていたところ、向かいから清掃員の方が歩いてきたため道を譲ろうとしたら、「そのゴミもらうよ!」と笑顔で持っていたゴミを回収してくれたのだ。 このように、ゴミ捨てにポジティブな気持ちを持たせるメッセージングやコミュニケーションが公共サービスの中で一貫して実現されていた。ユーザーのエンゲージメントを高めるために長期的な良い効果を発揮している要素だと感じた。 まとめ UXデザインは私たちの生活のあらゆるところに見出せるが、都市設計や公共政策も例外ではない。どの国の住民でも共通して経験する「ゴミ回収」も、デザインの方法によって、ユーザーの負荷を減らしながら分別のミスやポイ捨てを減らすことが可能である。 また、ゴミ捨てという体験を「面倒なもの」、「汚い」というネガティブなものから、ポジティブなものへ変換することすらできる。 今回のバルセロナでのゴミ捨ての経験を通して、改めて優れたデザインは、サービスの提供側も利用者側も幸せにするものだと実感した。 *図表参照元 <面積> Barcelona Tokyo San Francisco <人口> Barcelona Tokyo San Francisco

いまさら聞けないジェネレーティブAIの基本【生成系AI vol.1】

ここ数週間でジェネレーティブAI (生成系AI) がネットを中心に大旋風を巻き起こしている。 SNSを見ればタイムラインに次から次へとChatGPTの上手な使い方やアウトプット画面。そしてAIによって生成されたリアルな画像がシェアされている。 そして一週間でものすごい数のAI系のサービスがリリースされている。 生成系AIの進化が爆速すぎる あまりにもいきなりすぎる。あまりにも進化スピードが速すぎる感じがする。昨日できなかったことが今日できるようになったりしてる。 まるで今までの1年間におけるテクノロジーの進化がまるで1日で一気に達成されてる感覚。 そんな爆速なスピードで生成系AIが普及し始めたものだから、ついていくのがやっとな感じがする。僕自身も会社のテクノロジー主任に教えてもらいながらなんとか知識を保っているレベルだ。 生成系AIのウェビナーに登壇することに そんな状態だったのにも関わらず先日「世界に衝撃!Generative AIとは?」というタイトルのウェビナーで登壇した。 元々は友人でもあるTomorrow Accessの傍島さんから一ヶ月ほど前に依頼をいただき、その際には快諾した。しかし、それからイベント開催するまでの間にとんでもなく進化してしまった。 GPT-4がリリースされ、ChatGPTもアップデートされ、Midjourneyもv5になった。というか、ここで自分で書いていても正直よくわからないくらいだ。 デザイナー目線で説明する生成系AI そのため、僕が行ったウェビナーの内容は極力誰にでもわかるように心がけた。そしてできる限りデザイナー目線でのお話をした。 今回はその内容を元に誰にでもわかる生成系AIの基本をウェビナーで利用したスライドを活用しながらまとめることにした。 この記事はその第一弾である基本編である。 生成系 (ジェネレーティブ) AIとは? まずは基本中の基本。そもそも「生成系AI」って何?というところから。 これは生成を意味する英語の “Generate” と人工知能である “AI” を合わせた “Generative AI” の日本語表記で「AIで何かを生成する」という意味。 簡単に表現すると2つ以上の入力に対してAIが “いい感じ” に出力を生成してくれるのが生成系AIのサービスだったりする。 例えば、「サンフランシスコの風景写真とモネの画風を合わせて」とAIにお願いするとこんな感じになる。 また、ChatGPTのように何かを聞いたらそれに対して答えてくれる仕組みと、音声を再現する仕組みを合わせて、故スティーブ・ジョブズを再現できたりもする。AIがジョブズの声を学んだことで実現した結果がこれ。 ということで、おさらいになってしまうが、生成系AIは一言で表現すると、”文字 や 画像等を等入力しAIに生成させる” 仕組み、である。 何が生成できるの? じゃあ、そんなすごいAIだったらどんなものが生成できるのか? 全てを想定することは永遠に難しいが、今のところは: 文章 画像 動画 ゲーム Webサイト アプリ 音声 はアウトプットとして確実に生成することが可能。 文字から画像、画像から文字、画像から画像も可能 生成系AIの使い方で最も一般的なのは、文字を入力して文字を出力してもらう手法。ChatGPTはまさにそうで、指示に従ってメールの本文を書いてくれたりする。 次に一般的なのは、文字を入力してそれに応じた画像を生成する使い方。たとえばこんな感じ。 また、画像から文字を生成することも可能で、AIが画像に写っている物体を分析してユーザーからの指示に応じた内容を生成してくれる。 あと、複数の画像を提供して、それを元にAIが画像を生成することも可能になっている。例えばこの例のような感じで。 ここまで読めば、難しいことがわからなくても、とりあえず生成系AIがかなり便利なのがお分かりいただけたと思う。 なぜ革命的なの? こんなにも凄いことができるのだからかなり革命的。 でも、何がそんなに騒がれるほど凄いのかというと、インターネットがこの世に生まれてから、恐らくこのテクノロジーによって時代が “第三期” 情報革命に入ろうとしているからだ。 第一期はWebが普及し、ハイパーリンクで情報が得られるようになった時代。初期の頃のYahooやWikipediaなどが良い例。 第二期はネット上の情報が増えすぎて、リンクだけでは追えなくなったことで “検索” テクノロジーを活用して情報を獲得するようになった時代。まさにGoogleが世界一になった理由がそれ。 そして、第三期が対話と生成で情報が獲得できる時代。まさに我々は生成系AIの登場によって第三期情報革命を目の当たりにしようとしているのだ。 続きは来週… 次回は生成系AIを操る際に重要になってくる「プロンプト」に関してできるだけ簡単に、わかりやすくまとめる予定です。

デザイン思考のリスキリングのためにファシリテーターが意識している3つのポイント

2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされたリスキリング(Reskilling)というワード、まだあまり馴染みのない方もいるのではないだろうか? リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」を指す。日本国内でも、企業が従業員に対して職業能力の再開発を行うため、導入を開始または検討し始めている。 btraxでは、「リスキリング」という言葉が流行する以前から、企業向けに技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために効果的なデザイン思考のワークショップを提供してきた。 今回はその一例として、今年1月からサンフランシスコにて実施した滞在型の研修プログラムを題材に、ワークショップ運営側のファシリテーターが意識していることを紹介したい。 デザイン思考とスタートアップカルチャーにどっぷり浸かる10週間 今回行われた研修は、大手日本企業にて入社から数年経った30代前後の中堅社員の方を対象として、「スタートアップの聖地」とも呼ばれるサンフランシスコで、「デザイン思考」やスタートアップカルチャー、UXデザインの特徴を、講義と実践を通じて学ぶ約10週間のワークショップだ。 プログラムの主たる目的は、この研修を通して「参加者一人一人が新しいマインドセットを自分のものにすること」。 そのために、レクチャーを通して考え方を理解していただくだけではなく、実際に手を動かして学んだ考え方を実践し、振り返りを言語化・可視化することで学びを深めるというサイクルを繰り返す。 本研修は、参加者全員にサンフランシスコでスタートアップを起業するつもりで、それぞれの関心をベースに少人数でチームを組んでもらい、それぞれ社名を決めるところからスタート。 現地に住む人々が抱えている問題や隠れたニーズをリサーチし、サービス・プロダクトのコンセプトを練り、実際に住民の方々へインタビューなどをしながら仮説を検証。プロトタイプの作成からサービスアイディアのピッチまでを実践していただく。 デザイン思考のリスキリングのために、ファシリテーターが意識している3つのこと 上記の研修内容を踏まえ、前述のゴール達成のために、今回の研修全体を通してファシリテーターが意識していたことの中から主要な3つのポイントをご紹介したい。 1. 「失敗しても大丈夫!」思い切って挑戦し、トライアンドエラーを繰り返すことを奨励する 日本では文化的に「失敗はしない方がベター」という考え方が根強いため、突飛なアイディアを口にしたり、成功するかもわからないプランを共有することに最初は抵抗がある参加者も多い。 真摯な方ほどこのような傾向が強いのだが、デザイン思考ではトライアンドエラーを繰り返しながらコンセプトを練り上げていくため、最初から正解に一発で辿り着くということはほぼない。 むしろトライした数だけ失敗も増え、そこから学びやデータが得られるため、特にアメリカのスタートアップ業界では「失敗しても、成功するまで止めなければそれは失敗とは呼ばない」という考え方が主流である。今回のような研修において、ベースとなるこのマインドセットへのシフトが最初の超えなければならないハードルとなる。 これは英語での会話についても言えることだ。今回の研修では、リサーチの段階で現地のアメリカ在住の人々へインタビューを実施するフェーズがあり、参加者は英語で全てのコミュニケーションを行う必要がある。 参加者のほとんどは英語圏の国に住んだ経験がないため、「うまく話せないかもしれない」という不安から、最初は英語で話すことに抵抗を感じている人も多かった。 これに対してファシリテーター側からは、「失敗をしても大丈夫」「間違うことや想定通りに進まないことは避けられないものである」ことを定期的にリマインドし、その過程を楽しんでほしい旨を積極的にお伝えするようにしている。 失敗に対する恐怖心を取り除くことで、限られた時間内で試行錯誤を繰り返し、最初に出たアイディアやプロトタイプを踏み台にしながら、さらに良いものを生み出すというサイクルへ進んでいけるようになるためだ。 また小さな成功を喜ぶことや、異なる意見・視点を持っていることを肯定し合う時間を持つことも重要である。そのため研修中は、毎日1日のはじめと終わりにチェックインの時間を設け、参加者一人一人の感じていることや気づきなどを共有する時間を取るようにしている。 感じたことや学びに正解や不正解はないという前提を確認し合い、それぞれの発見をチームで共有し認め合う時間を毎日意識的に取ることで、それぞれが自分の考えを素直に発信できるような雰囲気作りを心がけている。 最初は、なかなか終わりの見えない議論や英語でのコミュニケーションに戸惑う場面もあった。しかし、場数を踏んでいくうちに、それぞれの参加者の顔に自信が浮かび、活発な議論や英語の会話が広がっていったところが印象深かった。 自転車の乗り方を覚えるように、最初は転んだり、恥ずかしい思いをしたりするため、社会人になって数年経ったタイミングで新しいマインドセットやメソッドを実践するには勇気がいる。しかし、思い切って新たな環境へ飛び込み、短期間でみるみる変化していく参加者の姿には運営側である私たちがハッとさせられる場面、学びをいただく機会も多い。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ 2. 「正解は一つではない!」答えを与える代わりに問いを投げかける   今回のようなワークショップで運営側として非常に難しい、しかし重要だと思っていることが「正解をこちらから投げかけない」ことだ。 デザイン思考のプロセスにおいては、問題設定の段階から自由度が高く、実際に先へ進んでみるまで何が正解なのか誰にもわからない類の問いに立ち向かっていくことになる。 正解は1つではないし、ファシリテーターがすでに正解を知っているわけでもない。文字通りファシリテーターと参加者の二人三脚で一緒に進んでいくのだ。 しかし、研修をリードさせていただく立場である以上、チームが迷子状態に陥ってしまった時にはサポートをする必要があるし、「こういうときはどうしたらいいんですか?」という質問も頻繁にいただく。 私たちとしては、ファシリテーターの発言が彼らにとっての正解となってしまったり、それに引っ張られてしまうことは避けたい。 そのため、こちらから声をかけたり質問へ応答する際には、具体的な答えや解決法を示す代わりに、「この時ユーザーはどんなことを感じていたと思いますか?」「一度、現在出てきたアイディアをホワイトボードに書き出してみるのはどうですか?」など、問いやアウトプットの機会を提起するようにしている。 これと並行して意識していることが、できる限り参加者のアイディアや意思を尊重し、自分たちのサービスやプロダクトを自分事として責任感を持ってもらえるようにサポートすることだ。 極端な例を出すと、今回の研修では参加者が合計8名だったのだが、チーム決めの段階で関心ごとに分かれてみたところ人数比が3人と5人になった。全体での議論の結果、無理に半々に分けるよりも、それぞれの関心を優先し、そのままの組み分けで進もうという結論に至った。 参加者からは「数合わせのために誰かが移動になるのではないかと思っていた」との声もあったが、運営側としては10週間かけて取り組むコンセプトに納得感と責任感を思って取組んでほしいという思いから少しイレギュラーなチーム編成を採用した。 その結果、それぞれのチームの個性が際立ち、小さいチームだからこそ意思決定が速かったり、大きいチームだからこそ助け合える幅が広かったりと、「彼らなりのチームのあり方の正解」を模索してもらえたように思う。 さまざまな正解の形があると認めることは、何通りもある正解の中から自分たちなりの正解を見つける決心をすることであり、自由と責任が伴う。それだけ多くの議論や、考えを裏付けるためのリサーチ、検証が必要となり、手間や思考の負荷は増えるものだ。 しかし、このようなプロセスを通して、既存の考え方や慣習にとらわれない、ユーザーに寄り添ったオリジナリティのあるサービス・プロダクトの設計に繋がると私たちは考えている。 3. 「クリエイティブは一夜にしてならず」適度な気分転換・視点の切り替えをおすすめする 前述の通り、正解が決まっていないデザイン思考のプロセスにおいては、チーム内でのディスカッションに非常に多くの時間を費やすことになる。 アイディア出しから、意見のすり合わせ、フィードバックの交換など、お互いの意見を尊重し合いながらもアイディアをブラッシュアップしていく過程は、インタラクティブで楽しそうに聞こえるかもしれない。 しかし、実際にやってみるとかなりの思考力と忍耐を使う。長時間議論が続くと、チーム全員が頭を抱えて悶々としてしまうような場面もしばしば。 課題の締め切り時間や、1日の終わりが近づくにつれて、どんどん空気が重くなり、一生懸命取り組んでいるからこそ、焦りや苛立ちの表情が見えてくるメンバーが現れる。 そんなタイミングに運営側から積極的に働きかけることは、「無理に進めようとしない」ことである。 クリエイティブな発想やひらめきは、ぐるぐるとひたすら考え続ければ降りてくるものではない。むしろ議論が煮詰まって、脳が疲れてくると、私たちは短絡的で安易な解決策に走りがちになってしまう。 それではこれまでの議論や努力が無駄になってしまうため、メンバーの顔が曇ってきたり、議論が行き止まった際には、ファシリテーターが介入し、場所を変えてみたり、休憩を入れてコーヒーを飲んだり、思い切って散歩に出てみたりすることをおすすめする。 創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由 研修が進むにつれて、参加者の間でも気分転換の取り入れ方が自然と身についていき、「議論が煮詰まったタイミングで、オフィスの外の公園に場を移して話をしてみたら、これまで考えつかなかった良いアイディアが出てきました!」といった声も聞こえるようになった。 遠回りに感じられるかもしれないが、焦りが出てきた時こそリラックスして、自分たちなりの解を見つけるまでのプロセスを楽しむことで、新たな視点で問題を捉え直せたり、よりよいアイディアが閃いたりするので、「休憩」の効果を侮ってはいけない。 まとめ 今回のワークショップは、日頃大企業で活躍されている参加者の方々に、実践を通してデザイン思考の考え方を体感していただき、それを言語化できるところまで腹落ちさせ、次のアクションへ繋げていただくことを主眼においている。 これまでの会社での定石からかけ離れたやり方で課題に取り組んでいただくため、特に最初の方は新しい考え方や方法に戸惑う様子の参加者も少なくない。 研修の振り返りのタイミングでは、参加者に下記のような感情曲線を描いてもらい、実践のプロセスで感じたことや学んだことをリフレクションしていただくのだが、参加者の誰もがどこかしらで小さな挫折や戸惑いを経験する。 しかし全てをやり切った時、達成感と共にデザイン思考への理解も深まり、グラフが上向くケースがほとんどだ。 ちなみにこの感情曲線は、感情の上がり下がりを可視化することで、自分の性質や癖、得意・不得意などの理解を深め、次に曲線が下がるような状況になった場合の打開策や対応策を練っていただく機会として実施している。 運営側としても、決まった正解がない中で、アイディアの芽を潰さずに方向性を示していく難しさを感じることも多い。 しかし、参加者の皆さんの中でブレイクスルーがあったり、自分たちなりのアイディアが固まった時の自信に満ちた表情が垣間見える時が、とても喜ばしい瞬間である。 今回は、そんな研修の運営においてファシリテーターが意識している3つのポイントについてご紹介した。btraxでは今回の研修のように、デザイン思考のマインドセットやメソッドをワークショップを通して学べる機会をご提供している。 ご興味のある方は、ぜひ弊社コーポレートサイトよりお問い合わせください。

面白アイディアが日本企業によって殺される12のステップ

今年も経産省によるイノベーター創出のためのプログラム「始動 Next Innovator」の選抜グループがシリコンバレーに訪問している。彼らはこの地のスタートアップカルチャーを吸収し、自分たちの新たなビジネス作りに繋げる。
このプログラムの第一期から僕はメンターとして協力させていだだき、メンタリングを通じて、これまでに100名以上の起業家たちに対してビジネス、マーケティング、デザイン面を中心にアドバイスを提供してきた。
イノベーションを生み出すために -空想者から行動者に変革する5つの方法- 始動プ…

アメリカの回転寿司から学ぶフルオートメーションの未来

以前に「アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由」でアメリカでの飲食の労働現場についてお伝えした。 アメリカの飲食店は完全分業スタイル 高いバイト料 (2,000円以上) にも関わらず、シングルタスクしか出来ず、いっぱいのうどんに下記の12人が必要とされる。 オーダーを取る人 麺を準備する人 麺を茹でる人 茹でた麺を渡す人 麺を冷やす人 麺をお椀に入れる人 お椀に汁を入れる人 お椀にトッピングを入れる人 お椀をお客さんに渡す人 天ぷらを揚げる人 揚げた天ぷらを並べる人 会計をする人 それぞれの工程がきっちりと分業されており、それぞれの “担当者” が決まっている。言い換えると、一人につき一つの作業が割り当てられているのだ。 高騰する人件費 これだけの従業員が必要ということは、もちろんお店へのコストも掛かってくる。そしてその結果として、値段も高くなる。 加えて、昨今のインフレでお店への負担はどんどん高まるばかり。そこで必要になってくるのが自動化やデジタル化だ。 全自動のくら寿司に行ってみた 面白いことに、上記で紹介されている丸亀うどんサンフランシスコ店があるのと同じショッピングセンター内に、これも日本から上陸したくら寿司がある。 丸亀とは対照的にくら寿司はほぼ完全オートメーションで運営されている。その手法やセキュリティーに対しての配慮などが興味深かったのでレポートする。 店内は日本の回転寿司と同じ くら寿司はアメリカでも日本の回転寿司とほぼ変わらないサービスを提供している。レーンにお寿司が流れ、個別オーダーも可能。 座席はブース型 座席の感じもおそらく日本と一緒。ブースがいくつか並んでおり、そこに4-6人のグループで座る形になる。 オーダーはタブレットから もちろん個別オーダーはタブレットから可能。メニュー内容は多少ローカライズされているものの、この辺も上手にアメリカに上陸した感じがする。 飲み物はロボットが持ってくる お寿司はレーンに回っているものをとるか、個別オーダーしたものが高速で流れてくる。 飲み物に関しては専用のロボットが客席まで運んでくれる。ここでも人間がいらなくなっている仕組み。 お皿は食べる度に流し込む仕組み 日本の回転寿司だと食べた分だけお皿を積み上げ、最後にお会計になるが、アメリカのくら寿司は食べ終わったお皿を専用の受け口に流し込む。 そしてシステムが自動的にお皿をカウントし、お会計に加算される仕組み。 ちなみにお茶は有料 これは全くの余談だが、アメリカだとお寿司屋さんでもお茶は有料になる。くら寿司サンフランシスコ店のお茶は$3.5 (400円) だった。 ガラス張りの店舗は外から丸見え 最近の日本では回転寿司などの飲食店でのイタズラが横行しているようだが、アメリカの店舗は周りがガラス張りになっていることもあり、お客さんの状況が丸見え。 もしかしたらそうすることで逆にセキュリティー的な利点があるのかもしれない。 お会計もタブレットで行う お食事が終わったらタブレットの右下の “Check Out” ボタンを押し、お会計に進む。 アメリカの場合、ほとんどのお客さんがクレジットカードかキャッシュレスで支払うため、全てのプロセスが座席で、無人で進む。ちなみに値段は日本の2-3倍。 人がいるのは主にキッチンの中 では、アメリカのくら寿司には従業員が全くいないのか?そんなことはない。キッチンの中でオーダーごとにお寿司を作る板さんと、たまにテーブルを見回ってくる定員、というかセキュリティー担当はいる。 でも、お店のサイズに対してはかなりの少人数で回しているイメージだ。 アメリカで進むレストランの無人化 このように、以前紹介した丸亀うどんとは対照的に、くら寿司はかなりのオートメーション化を進めている。 この流れは全米の他のレストランにも進んでおり、マクドナルドなどのファーストフードなどでもオーダーはタッチスクリーンで行うことで人件費の削減を進めている。 近いうちに日本にも訪れる問題 日本ではまだまだ安価で高品質な人材がいるかもしれない。しかし、それも労働人口の低下で数年もすると厳しくなってくる可能性が高い。 その一方で、自動化や効率化を進めたことで、昨今に見られるような問題が発生するリスクも高まるので、どのように対処していくのかが注目される。   筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

「サステナ」推しでお腹いっぱい – 主要メディアが伝えないCES 2023の裏側

今年も世界最大のテクノロジーカンファレンス、CESがラスベガスで開催された。 かなり遅いタイミングとなってしまったが、現地に参加したレポートをお届けする。 主要メディアを中心に多くの方々がかなり包括的な記事を書かれているので、僕自身は自分が感じたバイアス満載のぶっちゃけな「裏CES」という文脈でこの記事をお届けする。 メディアは教えてくれない裏CES そう。多くのメディアはどれだけ「凄い」テクノロジーやプロダクトが発表されたかに焦点を絞り、やや “盛った” 感じのレポートに終始している。 そうするのがメディアの役割であるためだからだが、場合によっては参加したレポーターの正直な感想が書きにくくなっているのではないだろうか。 実際に参加したメディア系の方々に聞いても「ぶっちゃけはこうなんだけど、建前上はこのように書いておかないと…。」という意見も実際にあった。 今回、この記事では、実際に参加して感じた、あくまで率直で個人的な感想をお伝えする。 規模は例年の2/3ぐらいかな? 今年の最終来場者数は11万人ちょっとで、去年の1.5倍から2倍ぐらいの規模らしい。 とはいうものの、コロナ前の状況から比べるとこれでも少し少ない印象を受けた。 実際に2019年まで利用されていたラスベガスコンベンションセンターのSouthとWestgateホテルは利用されておらず、フルスケール開催は来年かなー、という感じだ。 勿論、とはいえそれでもかなりの規模のイベントであることは間違いない。 猫も杓子もサステナかよ! 今回も一般展示が始まる2日前より始まるメディアセッションから参加させていただいた。 これらのセッションでは、プレスカンファレンスを通じて複数の企業がそのビジョンや新規プロダクトの「初お披露目」を行う。 セッションの直前キャンセルが相次いだ去年と比べて、今年は多くの企業がしっかりとメディア発表を行った。 参加したのは、Bosh, LG, Samsung, Panasonic, Canon, Hisense, TCL, Valeo, HD Hyundai, Omron Healthcare, SONY, AMD, BMW, そしてCES主催者がプレゼンする2023 Trends to Watch。 上記のセッションに共通しているのが 「サステイナブルへの取り組み」だ。 自然豊かな緑や地球の映像を投影しながら、我々はどれだけ環境に良いことをしているのかの説明が相次いだ。本当にそればかりで、後半は感覚が麻痺してくるレベル。 特にイベント主催者のCTAによるサステナ押しはすごかった。 というか、そもそも環境保護が重要なのであれば、ラスベガスで大量のエネルギーを消費し、世界中から飛行機に乗って10万人以上の来場者を集めるCESというイベントを開催すること自体がかなり非環境的な気もするが…。 優しくするのは人、社会、環境 では、具体的にサステナは何に対しての姿勢なのか?SDGsと同じく、あまりにぼんやり&ざっくりとしたコンセプトな上に、皆が語っているので、いまいちピンとこない。 でも今回はSamsung社がそれをわかりやすく説明してくれた。 サステナブル = 優しさであり、その対象は3つ。人、社会、環境である。 なるほど、会社の存在目的とビジョンをプロダクトを通じて表現していく。その対象は人であり、社会であり、環境であると。 デジタルツインだらけ 展示ブースを周っていてひときわ多かったのが、デジタルツインをコンセプトにしたもの。 自動車の車体や都市だけではなく、人間の体や脳の中身まで、あらゆるもののデジタルコピーを作成し、クラウド上に保管する。そして、その状況や内容を逐一管理できるという仕組みだ。 実際、どのような役割を果たすかはまだまだ未知数であるが、これからはリアルに存在すると同時にデジタル空間でも同じような存在が保持されていく時代になるかもしれない。 メタバースはまだまだ入り口 数年前より注目されているメタバースであるが、CES 2023ではもう新しいコンセプトのMoT (Metaverse of Things) が発表されていた。 これは、メタバースをより身近にするために、専用のVRゴーグル等のデバイスがなくても、家庭やオフィス、車の中でメタバースを体験できる仕組み。 一瞬何のこっちゃと思ったが、おそらく言いたかったのは、まだまだメタバースどっぷりの生活にはならないが、日々の中でメタバース的な体験に触れる瞬間は増えてくるよ、ということだろう。しかし、だからと言って完全に腑に落ちたかと言われると、まだやはり「何のこっちゃ感」は残った。 日本は世界のイノベーションチャンピオン「◯◯位」 今回のCESのキーノートでは、CTAによる世界のイノベーション先進国の発表が行われた。そのなもグローバルイノベーションチャンピオン。 さて日本は何位だっただろう? 正解は、25位。ランキングに入ったのは良いが、微妙な位置だ。経済規模や技術力を考えると少し低いのではと感じた。 日本が採点で特に低かったのは実に「ダイバーシティー」の項目だったそう。 AからEのグレードの中でなんと 「Dマイナス」の評価で、 これはかなり低い。 男女の格差や多様性に関しての課題が大きかったとのことだ。 みんな同じもの作ってるよね プレスカンファレンスや展示場を周って、気づいたことがある。 それは、「どの企業も近い領域で勝負している」ということ。言葉を変えると、カバーしている領域がどんどん被ってきている。 例えば、もともと家電をやっていたメーカーは自動車やヘルスケアの領域まで進出していたり、自動車ブランドが家電領域でサービスを提供し始めたり、といったものだ。 最もそれを象徴的に表現してたのがSONYのプレスカンファレンスにて発表された 、SONY Honda Mobility の自動車ブランドAFEELAだろう。 家電のSONYと自動車のHONDAがタッグを組んで作り出したハイブリッドモビリティーな感じのブランドである。 やっぱコンテンツがあると強い そんな感じで、みんな同じ領域に進出してる中で何が差別化要因になってくるのか? その一つが「コンテンツ」だろうと思う。 例えばFacebookは社運をかけてメタバース事業に乗り出し、社名もMetaに変更した。 しかし苦戦している。これは恐らく彼らがもともとコンテンツをほとんど持っていなかったからだろう。 デバイスやシステムがあっても、そこにキラーコンテンツが存在しなければ、ユーザーに利用する価値をあまり感じてもらえない。 その一方で、例えばSONYのような会社は、新しいデバイスをリリースしても、ゲームや映画といったコンテンツがあるので、一気に人気を集めやすい。 もしかしたら車の中でコンテンツをガンガン提供すれば上記のAFEELAも人気ブランドになっていくかもしれない。(運転していない時にグランツーリスモ用のレーシングシュミレーターとして利用できるとか…。) ブランド力が大きな武器になる時代 そしてもう一つの差別化要因はブランド力。 これだけ多くのテクノロジーが発達し、デバイスやパーツがコモディティー化していく中では、多くの企業が類似したプロダクトをリリースしていくことは避けられない。 例えばSamsungなんかは、日常家電からキッチン周り、ベッドルーム、バスルーム、ワークスペース、ベビーケア、シニアケア、ヘルスケア、スマート家電、モビリティーまで、本当に全部乗せである。 では消費者はどのような基準で興味を持ち、購入を検討するのだろうか?それは恐らくブランド力に違いない。 「何を作っているのか」よりも、「誰がなぜ作っているのか」が重要な差別化要素になってくると思われる。 「水」に関してのプロダクトが多い 去年まではあまり目立たなかったが、今年複数見られたのが「水」を作り出すデバイス。 これもやはりサステナビリティ文脈からくる環境保護への取り組みの一つだと思われる。 それらは空気中の水分を集め、飲料水を生み出す仕組み。軽く見ただけでもフランス、アメリカ、韓国の企業が同じようなデバイスを製造・販売している。 やっぱ韓国めっちゃ強いよね 数年前まではCESといえば中国企業満載のイベントだった。 しかし3年ほど前の華為をきっかけにアメリカと中国の関係性が微妙になっていくにつれ、一気に中国企業の展示数も減った。 それに代わって激増したのが韓国企業。 もちろん以前よりSamsung, LG, Hyundaiのような大企業は展示していたが、それ以外のスタートアップや中堅企業、そしてそれぞれの地域や産業を代表する団体まで、至る所で韓国企業発の展示が見られた。 これには米国市場に対して、国としての強い覚悟と勢いを感じた。 日本企業は視察だけで展示しない! それに対して、日本企業で展示しているところは多くなかった。 […]

2023年に世界を変えるイノベーション予測 10選

2022年は世界の多くの地域でパンデミック規制が緩和されたことで、やっとコロナが収束に向かっているかなと感じられ始めたと思ったら、記録的なインフレ、ロシアのウクライナ侵攻、気候変動の影響による異常気象など、経済的にも環境的にも、かなり変化の大きい一年だった。 おそらくこの流れは2023年にも継続され、人々の生活も、社会環境も、仕事の仕方に対しても新しいアプローチが求められてくると思われる。言い換えると、これまでよりも一層イノベーションが求められる時代になってきた。 では、2023年にどのような変化、そしてそれに対するイノベーションが生み出されるのかについて、10の予想をしてみる。 1. SNSの利用率が下がり始める 2010年代から破竹の勢いでユーザーを増やし続けてきたSNS。しかし、今年は転換期になりそうな予感がする。 若者のFacebook離れから、イーロンマスクがTwitterを買収した事によるサービスの変化。そして、米国におけるTikTokの禁止の可能性などなど、そろそろ右肩上がりのSNSにもかげりが見え始めているのではないだろうか。 SNS上の誹謗中傷やプライバシー問題などの懸念もあり、多くのユーザーがSNSに対しての不満や不安を感じている。 また、ユーザーの行動を追いかけるSNSのアルゴリズムの危険性を不安視する声も出ている。 それもあり、不特定多数のユーザーが集まる大型SNSチャンネルから、Discord、Mastodon、Geneva、Substack、Patreonといったプライベートな空間でのコミュニティ形成を重視するサービスへの人気が移行し始めている。 これらのニッチなプラットフォームの中には、従来のSNSサービスを模倣したものもあるが、多くはスクロールに何時間も費やしたくない、短時間の利用を好むユーザーに対応している。 例えば、BeRealは、日に1枚しか写真を撮れない。WeAre8では、1日にスクロールが8分間に限定されている。 これらの新しいサービスの人気は定量的にも実証され始めている。例えば、BeRealの会員数は、2022年の1月から4月までの間になんと315%増加している。 TwitterやFacebook, Instagramがすぐに無くなるようなことはないだろう。 しかし、ユーザーはより安全で快適なコミュニティを求めるようになり、SNSの勢力図が大きく変わっていく可能性が高い。 ~Facebook離れは本当なのか~ 米国若者ソーシャルメディア最新実情 2. VCはユニコーン企業よりも黒字化企業への投資を優先する 2013年、ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーが、10億ドル以上の評価額を得た非上場スタートアップを「ユニコーン」と定義した。「ユニコーン」と名付けられたのは、そんなスタートアップは神話上の生物と同じくらい珍しいものだったからだ。 当時はUberやAirbnb, WeWorkなどのユニコーンに対して、猫も杓子も投資をしたがる「ユニコーンバブル」が広がり始めていた。 しかし、2010年代半ばになると、サンフランシスコやシリコンバレーを中心に、「ユニコーン」だらけになり、日本の国民的スナック菓子とんがりコーンと同じくらい一般的な存在になってきた。 それがエスカレートし、多くのVCが必ずしもその評価額に値しない企業に対しても巨額の資金を投じた。 その後、ユニコーンバブルが弾け、WeWork、Theranos、FTXといったユニコーンは、数百億ドルの価値を消し去り、見事に崩壊した。 加えて、ここ数年の景気の不透明感から多くの投資家がソフトバンクのヴィジョンファンドに代表されるように投資基準を格段に厳しくし、ユニコーンだからといって安易に投資しなくなってきている。 実際に、スタートアップへの投資とユニコーン出現率の鈍化は顕著で、CB Insightsによると、2022年第3四半期に誕生したユニコーン企業はわずか25社で、2021年の同時期と比べても5倍も少ないというデータがある。 言い換えると、投資家たちはスタートアップや起業家に対してこれまでのような幻想的な賭けに出ることを躊躇し始めている。 これからは巨大な評価額よりも、堅実に売上と利益を出せるスタートアップへの投資を優先していくだろう。 スタートアップとしても、1、2年での一攫千金を狙うのではなく、長期的に利益の確保が可能になる企業を目指す必要が出てくるだろう。 ユニコーン企業の次はゼブラ企業? ゼブラ企業の特徴と可能性とは? 3. リモートワークからハイブリッドワークへ パンデミックの影響で2021年中は完全リモートワークを許容していた企業も、少しずつではあるが “Back to Office” を始めている。TwitterやAppleに代表されるシリコンバレーのテック系企業のいくつかも社員のオフィス出社を義務付けている。 やはりリモートだけでは不可能なタイプの仕事や、対面の方がより良い結果が出せるタスクも多いことがその理由。 また、家で一人で仕事をすることで孤独を感じ、メンタルに影響が出ているケースも増えてきている。オフィスに出社するメリットも少なからずあるようだ。 おそらくそれが理由で、LinkedIn Economic Graphの分析によると、リモートワークの求人広告が減少していることがわかった。10月にLinkedInに掲載された求人情報のうち、リモートワークの選択肢を提供していたのは7件のうち1件だけだった。 今後はリモートワークとオフィスワークを混合させた、ハイブリッドなワークスタイルを採用する企業が増えてくるだろう。 ハイブリッドワークではリモートワークの柔軟性を確保しながらも、時折対面してのメンタリングや交流の場を設けることができる。 スタンフォード大学の経済学者であるニック・ブルームもオフィスでのコラボレーションが重要であると唱える。 マイクロソフト社の調査によると、ハイブリッドワークは短期的な生産性を高めるが、長期的なコミュニティや創造性を低下させる可能性もあるという。 ブルーム氏によると、企業は従業員のニーズに合わせて、会社全体で1つのスケジュールを作成するか、チームに決定させるかを決める必要があるとのこと。 2023年はハイブリッドワークがより正式なものになり、会社が出勤日を指定したり、スタッフが事前にオフィス に出勤する日を調整するようになってくるだろう。 新しい時代に広がる10のワークスタイル変革 4. AIの実用化が加速する これまでもずっと「AIがヤバい!」と言われてきたが、いまいちその凄さが実感できなかった。 しかし、2022年後半ぐらいからStable Diffusionによる画像生成や、ChatGPTによる文章作成など、リアルにAIの「ヤバさ」を見せつけられている。 そして、我々の目に付く範囲だけではなく、さまざまな産業において我々はAIの恩恵を受けている。 看護師はAIを利用して健康状態が悪化しそうな患者を見守り、投資家はAIを利用して投資ポートフォリオを調整する。モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンの開発でも、AIは重要な役割を果たした。 これからAIはより直感的になり、複数の「感覚」を同時に使うことが増えていくだろう。マルチモーダルAIアプリケーションにより、AIシステムは音声、視覚、言語データを組み合わせて、また互いに関連づけながら処理することができるようになってくる。 例えば、テキストプロンプトに基づいてオリジナルアートを生成できるDALL-Eのようなツールは、このアプローチの初期の例と言えるだろう。 マルチモーダルAIは、AIシステムが高度に洗練されたニュアンスでデータや環境を分析できるようになるため、今後数年のうちに新しいアプリケーションで飛躍することが期待されている。 医療分野では、マルチモーダルAIが患者の画像や履歴、バイオセンサーからのデータを組み合わせて検査し、診断や治療法の提案を行なえるようになる可能性がある。 また恐ろしいことに、マルチモーダルシステムへの移行により、AIは現在よりもさらに創造的な力を持つようになる。 例えば、Netflixがユーザーごとに単にお薦めを表示させるのではなく、それぞれのユーザーの好みに基づいて全く新しい映画を創り出すことも、近い将来起こっていくかもしれない。 5. 医療従事者の人手不足をテクノロジーが解決する 世界では、医師や看護師などの医療従事者が不足している。 WHOの保健医療人材ディレクターであるジム・キャンベルによると、医療従事者は人口の3倍の速さで増加すると予想されているが、それでも2030年までにさらに1000万人の臨床医が必要になるとのこと。 この状況に対処するために、2023年には、世界中の病院、ハイテク企業、政府機関が団結して、2つの重要な方法を取ることが予想される。 それは、手元にある限られた人材資源を共有することと、患者への対応と新しい医療従事者の育成のために新しいテクノロジーを導入すること。 アマゾンウェブサービスの国際公共部門健康担当最高医療責任者であるローランド・イリングは、「こうしたニーズを補うため、バーチャルケア、遠隔モニタリング、在宅医療などの動きが活発になっています」と述べている。 「また、将来の医療従事者を育成する必要性もあり、デジタルヘルス教育の新しい方法に焦点を当てた製品が増えている」とも語る。 WSは、シアトルに拠点を置くHurone AIなどのスタートアップに資金を提供していく予定。 Hurone AIは、ルワンダでアプリをテストしており、人口1300万人の国全体で、20人足らずの腫瘍医の治療を支援する。 また、米国心臓病学会は、バーチャルリアリティ手術トレーニング会社のOsso VRと提携し、特定の心臓手術のためのグローバルカリキュラムを作成しようとしている。 このように、医療従事者の人手不足を補うために、急ピッチでテクノロジーによる解決策が進んできている、 【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 6. サステイナブルファッションが注目される 国連によると、我々が衣料品に使用する素材の約60%はプラスチックで、毎年約50万トンのプラスチック製マイクロファイバーが海に放出されていると言われている。 この環境負荷を軽減するため、デザイナーやメーカーは、藻類、パイナップルの皮、キノコなどの新素材から衣服を作るなど、植物由来のソリューションにますます注目するようになっている。 これはアパレル業界においても、よりサステイナブルな素材に注目が集まっているということだ。 例えば、畜産業が環境に与える影響を考えると、植物由来の生地はレザーの代用品として特に魅力的と言われている。 デンマークのブランドGanniは、2023年までにレザーを使用しないことを計画しており、ブドウの皮、植物油、水性ポリウレタンでできたVEGEAのような代替品を使用する予定。 キノコやその他の菌類の糸状の根である「菌糸」は、いくつかのレザー代替品の基礎となっており、実はエルメスやStella McCartneyが早くから着目し、採用している素材だ。 ココナッツとコルクを使った完全プラスチックフリーの生地「Mirum」は、BMWを含む投資家から8500万ドルの資金提供を獲得している。 藻類と海藻は、テクニカルファブリックの分野にも進出していくだろう。 英国の生地会社Pangaiaは、海藻パウダーを使ったレジャーウェアを作っており、藻類を使った吸汗速乾素材の研究にも着手している。 サステナビリティ・コンサルタントのソーニャ・パレンティは、植物由来の布地の多く、特に完全にプラスチックフリーのものは、まだまだ実験段階であると述べている。 一方で、より分解しやすいバイオベースの素材の比率を高めた新しい生地が登場することを期待している。 「ファッション界のプラスチック危機を解決することはできませんが、化石燃料から完全に脱却するための解決策の一部になる可能性があります」と彼女は語っている。 海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由 7. 都市部を中心にヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)が広がる 2022年に世界人口は80億人を超えた。それに合わせ、世界的な食糧難が危惧されている。 加えて、今世紀半ばには65億人もの人々が都市部に住むと推測されている。都心部に屋内農場を設けることで、急増する都心部の人口の食糧を賄うのに役立つと考えられている。 これはヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)と呼ばれる仕組みで、倉庫を改造して、葉物野菜からハーブ、イチゴに至るまでさまざまな作物の栽培スペースにするというものである。 2022年上半期、投資家は8億ドル以上を垂直農場系の企業に投じた。2030年までにこの屋内農業ビジネスは、330億ドル規模になる可能性があるとされる。 気候管理された屋内農場には、従来の農場と比較して重要な利点があるとされる。 年間を通じて栽培が可能で、植物を積み重ねることができるため、より少ない土地でより多くの食料を生産でき、害虫や異常気象の影響を受けにくいのだ。 また、農場を消費者に近づけることで、輸送や冷蔵の必要性も少なくなる。 この業界では、毎月のように新しい垂直型農場が誕生している。 AeroFarmsは最近、バージニア州ダンビルに150,000平方フィートの施設をオープンさせた。 […]

北米の事例に見るファンマーケティング② ファンを巻き込むサブカルチャー・エンタメの成功事例

今回の記事では、これからのエンタメ業界のマーケティングの可能性を、海外でのファンマーケティングの観点から考察していく。 前編に引き続き、btraxのマーケターのAyaka、ビジネスプロデューサーのManaの2人の対談形式でお届けする。(前編の記事はこちらから) アメリカの最近の「ファンづくり」のトレンドに注目しながら、日本と北米のどちらの文化にも精通した、Dual CultureのbtraxビジネスプロデューサーのManaの解説と併せてご共有する。 マーケティングにおける「ファン」や「推し活」の可能性 MANA: マーケティング施策ではよく「ファンづくり」のための施策が多いですが、また、「ファンであること」や「推し活」はそのファンベースが出来上がってからの次のアクションのことを指しています。 すでに出来上がっているファンコミュニティに対してプロモーションを行うことで新しいサービスを知ってもらい、そのサービスのユーザーになってもらう可能性があると思います。 AYAKA: そうなんですよ。このように、人の「これが好き」という感情をうまくサービスやプロダクトのプロモーションに結びつけて、新たな顧客を開拓する事例がありますよね。 例えば最近、世界的に有名な高級ブランドのLOEWEがスタジオジブリのアニメとコラボしたり、BURBERRYが漫画の「ブルーピリオド」とコラボしています。 また、フードデリバリーサービスの出前館が、ゲームのFINAL FANTASY内で使えるアイテムを提供するなどと、ファンベースとサービスの意外な組み合わせを見かけます。 これは、日本にサブカルチャーやオタクのカルチャーが昔から根付いているからだと思うのですが、日本とカナダで生活されたことのあるManaさんから見て、北米の傾向を教えていただけますか? 北米でのサブカルチャーのトレンド動向 MANA: そうですね。面白いことに、このエンタメやサブカルチャー領域でのファンとの新しいエンゲージメント方法は北米で特に最近強まっている傾向であると感じます。 少し北米での今までのファンエンゲージメントやファン活動は、大きく「スポーツ」と「エンタメ」という2つの業界で分かれていると考えています。 アメリカはスポーツ大国なので、スポーツファンに対するエンゲージメントのためには昔から大きな額が投資されてきていました。 例えばSuper Bowlなどの大きなスポーツイベントに向けてのキャンペーンやバーゲンだったり、豪華なパフォーマーによるハーフタイムショーなどが印象的です。 その反面、エンタメやサブカルチャーへの投資や盛り上がりは比較的少ない印象でした。 一昔前には、特にアジア人の印象が強い日本のアニメやアジア出身のボーイズバンドはマス向けのメディアに出演することはとても想像しにくい状況でした。 しかし、社会学のバックグランドを持つ私の個人的な視点からすると、昨今のダイバーシティの文脈で、エンタメやサブカルチャーへの注目が増しているのではないかと感じています。 データからもその実績が示されており、2020年から2021年の間ではアジア人のUSメディアへの露出が約2倍になっているというデータ(参考)もあります。 アメリカの人口の人種の多様性を鑑みて、アジア人をはじめとしたさまざまな国の人種や文化をモデルに起用することで、白人以外の消費者にもブランドへの親近感を感じてもらうことが狙いと言われています。 サブカルチャーのファンを取り込む、北米でのマーケティング・ブランディング事例 その社会的背景からか、最近はエンタメやサブカルチャーにフォーカスしたマーケティングやブランディング施策が目立つと感じています。 例えば、K-POPアーティストのBTSは、アメリカでの爆発的なK-POPの人気に伴って、様々な大企業や団体とのコラボが目立ちます。 企業の例だと、アメリカ発のファストフードチェーンであるMcDonald’sがパッケージや商品をBTSとのコラボを実施しました。 その時に、コラボ仕様になった、使用済みの紙のパッケージがeBayで売られたりしてSNS上でもとても話題になりました。 企業の他、国際機関も、このファンの原動力を活用しながら、組織の目的を達成しようとしています。その事例として、BTSが国連でSDGsについて若者に呼びかけを行いましたことは記憶に新しいですよね。 国境を渡った、カナダでもとても似たような事例で、カナダでの国民的に愛されている、有名ドーナッツチェーン店Tim Hortonsと、アーティストのJustin Bieberがコラボし、話題を呼びました。 BTSやJustin Bieberの事例から、これだけ、このファン層の投資による経済効果や発信力が期待されているということだと思います。 BTSの事例は特に、幼少期に北米で過ごした私からすると、北米の価値観の大きな変化を感じています。 アジア人が行っている活動に対して、これだけのマーケティング予算がつくのは、20年前だと想像もつかないことでしたので、世の中がかなり変化したと感じています。 AYAKA: 確かにそうですね!また、これだけの拡散がされていることも今までの歴史的にも珍しいですよね。 MANA: 少し話題が変わってきてしまいますが、最近このファン文化を活用したサービスで「なるほど!」と思わされた事例を、もう1つ事例紹介していいですか? 私は動画配信サービスNetflixの「ストレンジャー・シングス」というドラマの大ファンなのですが、先日サンフランシスコに出張に行った際に、なんとストレンジャーシングズの世界観を体験できる期間限定のアトラクション(参考)を体験することができました。 ネタバレになるので、具体的な内容は共有できないのですが、最後には写真撮影とグッズが購入できるものすごく充実したエリアが用意されていました。 また、90年代に流行った「フレンズ」というドラマの体験アトラクション(参考)も発表されました。 現在流行っているからではなく、昔からのファンへのアプローチと考えると、これもまた、ファンの熱量を活用して、サービス化に成功した事例として考えられるのではないでしょうか。 サブカルチャーをマーケティングに活用する相乗効果とは AYAKA: コラボのキャンペーンをすることで、ブランド側とアーティスト側双方にメリットがあることも注目すべきポイントですよね。 MANA: 確かにそうですね。詳しく教えてもらってもいいですか? AYAKA: まずブランド側のメリットは、やはり新規顧客拡大が大きいと思います。 宣伝する商品が、目新しいものやまだ使ったことのないものだったとしても、「好きなアーティストとコラボしているから」という理由で商品を手に取ってもらえたり、ブランド名を覚えてもらえたりすることが起こるからです。 また、有名人が起用されているキャンペーン自体は話題性もありますので、消費者間での口コミやSNSなどでの拡散も期待できると思います。 MANA: 確かに、そうですね!また違う側面でいうと、消費者に親近感を感じてもらうことにより、距離を縮める、または共感してもらえることを期待できますよね。 例えば、今回注目しているアニメやK-POPの話は、アメリカでは特にサブカルチャー扱いとされ、マスメディアに蔑ろにされてきましたが、有名なブランドがその文化を取り上げることは、文化を受容することと同義だと思います。 その文化が好きな人からすると、そのブランドがさらに「センスがあるブランド」という印象を持つことにつながります。 また、ブランドのメッセージや起用するアニメやインフルエンサーに親近感や共感できることは、近年の消費者にとってとても重要な価値となっているので、ここを押さえることができるブランドは利益拡大も見込めそうですね。 Z世代の心を掴むインクルーシブ・サステナブルブランドとそのコミュニケーション事例3選 まとめ 前編・後編に渡り、世の中の「ファン」たちに秘められた、マーケティングとブランディングにおける可能性をお伝えしてきた。その中で今回は特に北米圏でのファンマーケティングのトレンドや活用事例をご紹介した。 btraxは日米にオフィスを構え、アメリカ市場への展開を目指す日本の企業さまに対し、北米ターゲットへのユーザーインタビューや市場調査を行い、今後のビジネスへ活用していたくためのマーケティングやブランドストラテジー立案をサポートさせていただいている。 弊社の提供するサービスに関してより詳細を知りたい方は是非、弊社サービスサイトをご覧ください。

北米の事例から理解するファンマーケティングの現状と可能性① ユーザーリサーチから見えた、これからの企業が取り組むべき「ファンづくり」の重要性とは

btraxでは、北米のターゲットへのユーザーインタビューを通してニーズを可視化しサービスの最適化を導くユーザーインタビューを実施している。 今回は北米でのユーザーインタビューからマーケティング戦略を行ったプロジェクトの事例を取り上げ、異なる文化背景の地域でのリサーチがサービスもたらすメリットを、プロジェクトに携わったビジネスプロデューサーと、マーケターの視点からご紹介する。 マーケットリサーチだけでは分からない、ユーザーインタビューを行う価値とは MANA(ビジネスプロデューサー): btraxでは今年、ある日本のエンタメ企業さまからの案件で、アメリカでのユーザーリサーチを実施しました。その支援の内容を可能な範囲で具体的に教えていただけますか?その時の支援の内容のゴールも併せて教えてもらえると嬉しいです。 AYAKA(マーケター): そうですね、このプロジェクトのゴールは北米での新たなユーザーの獲得でした。 そのために、btraxとしては現状の北米でのユーザー層とサービスの強みを把握することと、北米でのさらなるユーザー獲得のため、将来のマーケティング施策の足がかりをご提案しました。 背景として、この企業さまが世界に向けに展開しているサービスが、北米で爆発的に流行していたのですが、なぜ北米のユーザー間で流行っているのか、そして、北米でこのサービスを使っているユーザーはどんな人かということがあまり見えていないという課題をお持ちでした。 そのために北米ユーザーへのユーザーインタビューと、インタビューに基づいたペルソナの策定、そして、それぞれのペルソナへ向けたマーケティング施策のご提案をしました。 「北米ユーザー」も一括りにするのではなく、今回の調査のゴールに合わせて、セグメントを分けて、質問を各セグメントの人に最適化しながらインタビューを行いました。 インタビューの中では、そのサービスのユーザーの日常生活の中での位置づけや、そのサービスがユーザーにとってどんな存在であったかということを聞き、サービスに対する印象から、ユーザー像を明確にしていくよう努めました。 MANA: そのインタビューからペルソナを設定したのですね。インタビューする中で見えた特徴をどのようにペルソナに落とし込んだのですか? AYAKA: はい。ユーザーリサーチを行う中で、ペルソナを作成するにあたってどんな切り口が良いかいくつか検討していたのですが、チームで議論を重ねる中で、何のためにこのサービスを利用したいかと、このサービスを利用するモチベーションに相関関係があることを発見しました。 曖昧な表現になってしまいますが、Aという目的のために利用したいと考えている人は利用するモチベーションがそれほど高くないけれど、Bという目的のために利用したいと考えている人は、利用するモチベーションがすごく高い、といったようにです。 この相関関係をもとに、それぞれのユーザーがこのサービスをどんな目的で利用したいかによってペルソナを作成しました。 それぞれのペルソナには、今後ターゲティングするために押さえるべきポイントやヒントをできるだけ入れるように意識しました。 具体的には、最初の認知獲得のタッチポイントとなりうるSNSや口コミ含め、サービスを知る情報源はどこか。 サービスを知ったとして、何がトリガーになってサービスを利用しようと思うのか、利用を始めたとしたら、何があったら継続して利用しようと思ってくれるのか、という観点を念頭に置いていました。 できるだけユーザーの生活の中にそのサービスが自然に入り込むなら?という視点を常に意識して考えました。 インタビューをする中で印象的だったのは、インタビュイーのほぼ全員が、サービスに対して口をそろえて同じ感想を述べていたことです。それが北米で人気になり、拡大している理由だとはっきりとわかるようになったので、インタビューを行った大きな収穫だったと思っています。 予想外の発見ができることもユーザーインタビューの価値 AYAKA: また、SNSの使い方にも顕著な特徴がありました。 北米圏では、コミュニティへの参加やコミュニティでのコミュニケーションのためにDiscord(オンラインコミュニティツール)が主に活用されており、一方で情報を収集するのはTwitterなどの公式アカウントで行っている、という特徴です。 実はチームでは当初、10-20代のユーザーはTikTokを利用してサービスを認知しているのではないか?と仮説を立てていたのですが、全くTikTokは出てこずでした笑 こういったバイアスが解けることも、ユーザーインタビューをする大きな価値だと思いました。 ペルソナを作成した後は、そのペルソナにとって響くメッセージは何か、そのペルソナにとって、他の競合サービスと比較して強みといえるポイントをどのように訴求したらより魅力的に見えるのかを探りました。 具体的には、今回調査の対象になったサービスとユーザーインタビューで言及された競合サービスとをマッピングし、どのペルソナに属している人がどのサービスに惹かれていたかを洗い出しました。その発見をもとに、マーケティング施策を立案しました。 MANA: ありがとうございます。色々と日本のユーザーとは傾向が違いそうで、興味深いですね。 AYAKAさんは特に日本市場やユーザーにお詳しいと思いますが、今回米国ユーザー向けの施策となりましたよね。その場合は何か工夫されたことなどありましたか? AYAKA: そうですね、自分のカルチャーや考え方と異なるユーザーに対しての施策を考えるのはぐっと難易度が上がるなと感じています。 その上で、今回工夫したことを挙げるとするならば、できるだけ現地に住む人の意見を参考にすることと、ユーザー像に近い人から施策のフィードバックをもらうことです。 その点、btraxは日米のオフィスが完全にシームレスに連携しながら業務を行なっているので、チーム内のアメリカ人メンバーに、アメリカ向けの施策の壁打ちやメッセージングのアドバイスをいただくよう相談したり、実際に似たようなサービスを使っているデザインチームのメンバーに、使う側としてフィードバックを求めたりということを徹底し、施策を随時ブラッシュアップしていきました。 この連携の強みは、ユーザーインタビューの時も感じていましたね。特に今回は北米ユーザーがインタビューの対象だったので、日米どちらのオフィスのスタッフもいながらユーザーインタビューができたことは大変心強かったです。 MANA: なるほど。それはbtraxならではの強みですね。先程では、以外とTikTokを使っていないなど、仮説外の気づきがあったかと思いますが、今回のプロジェクトで予想外の気づきは他にありましたか? 今後一層企業が注力したい「ファンづくり」の重要性 AYAKA: 今回のサービスは実はアニメのファンがユーザーに多いサービスだったのですが、人を「ファン」にさせることがビジネスにとっていかにポジティブに働くかを痛感しました。特に今回のユーザーインタビューを通してたくさん意見を聞き、感じたことが2点あります。 1つ目はこのアニメを見て感動したから、このキャラクターが大好きだから自分も二次創作をする、といった、認知拡大となる施策を消費者側が自ら行っていることです。 二次創作は日本のアニメだと少しグレーゾーンですが、ファンの間で(消費者側で)作成されたコンテンツは、消費者の理想だったり、「こうあったらいいな」が体現されているものも多く、他のファンにとっても有益なコンテンツになると思います。 企業へのエンゲージメントを高める上でも、より広く認知拡大される上でもプラスなのではと思います。 先ほど二次創作は著作権的にグレーゾーンと言いましたが、SPY×FAMILYは逆に二次創作(ファンアート)をむしろ促して、さらなる認知拡大やファンの定着に成功しているように思えます。 アニメのキャラクターの塗り絵をTwitter上で配布してファンに作ってもらうようにしていたり、公式に二次創作物のコンテストを行っていたりしました。(参考) / 夏休み企画実施中🏖️🎆 \ 8月31日(水)までの間、毎日WEBコンテンツをSNSで公開🎉👏 本日はアーニャの塗り絵企画です🖍🖍ぜひ塗って遊んでくださいね🎊 DLはこちら🔽https://t.co/xYrdPIh6FA#SPY_FAMILY #スパイファミリー pic.twitter.com/W6abkcVBJP — 『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』アニメ公式 (@spyfamily_anime) August 3, 2022 日本のアニメがアメリカで爆発的な人気を集める理由と事例3選 2点目は、その対象が好きであるがゆえ、思わず投資をしたくなる点です。 「好きだから」「応援したいから」という気持ちはとてもポジティブで、何かに投資するときの抑制を解放するような感情だと思います。アニメだけでなく、アイドルの「推し活」でも似たものを感じます。 コロナ禍で、新たに家にいながら楽しめる趣味として推し活市場は拡大を見せているようで、中でも特に20代の40%が、アニメやアイドルの中で新たな「推し」を発見したというデータもあります(2020年4月時点)。 上記のビジネス的な側面やトレンドから見ても、企業にとっては「ファン」を作ることが今後ますます強みになりうるなということを痛感しました。 それらのファンと企業がどのようにコミュニケーションをとっていくかが、情報網の発達した現代で、より重要になっていくのかなと思います。 まとめ 今回はアメリカのユーザーを対象としたユーザーインタビューとマーケティング施策立案の実際の事例をご紹介した。 btraxは上記の例に挙げているように、日米にオフィスを持ち、日本からアメリカ市場への展開を目指す企業さまに対し、北米のターゲットへのユーザーインタビューを通してニーズを可視化しサービスの最適化を導くユーザーインタビューを実施している。 さらにそのターゲットに対しての最適なコミュニケーション方法を実現するため、マーケティング戦略立案から実行までを担当するコミュニケーションデザインを提供している。 弊社の提供するサービスに関してより詳細を知りたい方は是非、弊社サービスサイトをご覧ください。 後編では、日米市場における「ファンづくり」にフォーカスしてお伝えする。後編の記事も是非お楽しみに。

「地方創生エンタメ企画 ― 日本酒を盛り上げて地方創生に貢献しよう!」開催

2022年5月30日(月)に「日本酒を盛り上げて地方創生に貢献しよう!」が開催されました。本イベントの目的は、日本酒をきっかけに社会課題や地方創生に対する意識を高めてもらい、具体的な活動に繋げることです。日本酒に興味のある方々がカジュアルな環境で学び合い、繋がり、思いを共有する場所づくりを目指しました。
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10億人が”エネルギー貧困”から抜け出すために~Bboxxの挑戦~

Bboxxは、アフリカにおいてエネルギー貧困問題を本気で解決したいという純粋な想いから、まさに持続可能なビジネスモデルを構築し、最新テクノロジーを活用して短期間でアフリカの国々に展開することで、人々の生活を向上させた。
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10億人が”エネルギー貧困”から抜け出すために~Bboxxの挑戦~

Bboxxは、アフリカにおいてエネルギー貧困問題を本気で解決したいという純粋な想いから、まさに持続可能なビジネスモデルを構築し、最新テクノロジーを活用して短期間でアフリカの国々に展開することで、人々の生活を向上させた。
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Arpa Indastriale – 事実に基づく変革のためのインテリジェントファクトリー

これほどの変革を進める企業には、どのような哲学があるのだろうか。イタリア語で「山の麓」を意味するピエモンテ州は、ブラに本社を置くArpa Industriale (以降、Arpa)が取り組んだ「サステイナビリティとクオリティを両立する次世代ファクトリー」(以降、次世代ファクトリー)を読んだ後、沸き上がったのは、純粋な興味だった。
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転ばぬ先の杖! カナダ航空に学ぶ、コロナ禍でも効果を出し続けた理由!

ここでは、「転ばぬ先の杖」としてレジリエンス強化に向けてバックオフィス改革に果敢に挑んだカナダ航空の取り組みを、「転んだ“後”の杖?!」として、ぜひ多くの企業に参考にしていただきたい。
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【実例あり】サンフランシスコのレストランにおけるDXサービス 導入事例と今後の課題

人手不足や人件費問題に苦しむレストラン業界において、DXの重要性が叫ばれるようになって久しい。 またコロナ禍での生活の変化はこの動きを間違いなく加速させたといえる。 オンラインオーダーやテイクアウトといった事業形態の拡大によって、多くのレストランはオンラインツールの導入を検討しただろう。 さらに、コロナ禍前の勢いを取り戻しつつある外食需要、そして、即戦力となる学生アルバイトの激減やそれに伴う人件費増大は深刻な問題となっている。(参考) こういった背景もあり、業務効率化や売上向上を目的としたサービスは日本に限らず、アメリカのレストラン業界でも注目を集めている。 TK bankの調査によるとレストラン経営者は、2022年に最も投資したい分野として、モバイル注文(54%)、宅配サービス(47%)、新しいPOSデジタルサイネージやその他の店内技術(45%)、代替支払方法(37%)を挙げている。 そこでテクノロジーの最先端とされるサンフランシスコの実態を知るべく、サンフランシスコにあるとあるレストランでのオペレーションを観察してみた。 本記事では、飲食店で導入されているサービスと今後の展望についてご紹介する。 アメリカの丸亀製麺から考える日本でDXが進まない本当の理由 サンフランシスコのレストランにおけるDXサービス5選 Wix:ノーコードのホームページ作成ツール Yelp:レストランを中心としたローカルビジネスの口コミ情報サイト Toast:クラウドベースのテクノロジープラットフォーム Gusto:中小企業向けの一元管理型HRプラットフォーム MarketMan:レストランやサプライヤーのクラウドベースの在庫・供給管理システム まずは来店者の視点から、3つのサービスを紹介する。 1: Wix 最初に取り上げるのは、レストランと来店者を繋ぐ窓口となるホームページだ。 世界に2億人以上のユーザーを抱えるWixは、ノーコードのホームページ作成ツールである。 2019年に日本法人を設立したことで日本でも存在感を増しているため、既に利用されている方もいらっしゃるかもしれない。 アメリカでは、ノーコードツールの枠を越えて、様々なサービスへのリンクが盛り込まれたプラットフォームとしての役割も担うようになっている。 企業情報やメニューの紹介を目的とした本来のホームページ作成機能に加え、デリバリー注文、ピックアップ予約、来店予約などの幅広い選択肢が用意されている。 Wix内のサービスと、以下のような外部サービスの連携を組み合わせて、自社の好みに合わせたホームページを作ることができる。 ちなみにこれからご紹介する来店者向けサービスはいずれも、Wixで作成されたホームページからアクセスが可能である。 2: Yelp ホームページを訪れたユーザーが次に取る行動として、他のユーザーからのレビューや写真の閲覧が挙げられるだろう。 その際に使用されるのが、飲食店を中心としたローカルビジネスの口コミ情報サイトYelpである。イメージとしてはアメリカ版食べログといったところだろうか。 2004年に誕生したこのサービスは、2012年に上場を果たし、その2年後には日本にも展開を始めている。 このサービスの最大の特徴はやはり、その規模の大きさとそれに伴うレビューの豊富さである。 2021年のデータによると、アプリのユニークユーザーが3,300万人に達しているほか、累積レビュー数は2億4千万件以上に上る。 またこのサービスは、信頼性と有用性を保つよう心がけているそうだ。 ユーザー調査の結果を元に、実名、写真付きのプロフィールを設定しているユーザーのコメントや、比較的長い文章で細かく書かれたレビューを推奨している。 投稿されたレビューは自動化されたソフトウェアによって分析され、不当と判断されたレビューは平均評価に反映しないなどの措置が取られる。 さらにYelpは、店舗検索や席予約、ウェイトリストなど幅広くサービスを展開している。 今回取り上げているレストランでは、Yelpは、席予約とウェイトリスト登録のためのツールとしてホームページ内に埋め込まれている。 またサンフランシスコで生活をしていると、意外な利用シーンを目にすることがある。 それは、メニューを補足する役割としてYelpが機能している場面だ。 来店者は店内で着席してメニューを受け取ってから、Yelpのアプリで店名を検索する。 来店者は、メニューにある商品名とアプリ内の画像を見比べながら、どの商品を頼むか決めているのだ。 これにはアメリカの文化が影響を与えているかもしれない。というのもアメリカでは、訴訟問題を避けるためか、メニューに商品画像を掲載しない店舗が多い。 メニューや広告の写真が実際の商品と異なっていると、来店者に訴えられてしまうことがあるからだ。(参考) また様々な文化・言語が入り混じるサンフランシスコでは、メニュー名だけでは商品の想像がつかない場合も多い。 そのため、Yelpはメニューのイメージをより具体的に掴むことにも一役買っているのだ。ちなみに筆者も、アメリカに来てYelpを使い始めたユーザーの1人である。 アメリカで大人気のクチコミサイト-Yelpとは? 3: Toast 次に紹介するToastはフロア管理やPOS、セルフオーダーなどのサービスを提供するクラウドベースのテクノロジープラットフォームだ。 基本的にはレストラン側が様々な設定を行い、ユーザーは支払いの際にPOS端末にてサービスに触れる。 アメリカでは席で支払いをすることが主流のため、従業員が明細とPOS端末を席まで持っていくことが多い。 支払い、チップの登録、サイン、レシートの有無の設定が全てPOS端末上で行える。 画面上には無駄な要素がなく、選択肢や指示がシンプルに表示されるため、初めてサービスに触れる場合でもストレスフリーに操作できるように感じられる。 このサービスは“All-in-1 restaurant POS”を自称するだけあってサービスの幅が非常に広く、自社に必要なものを自由に選択し登録することができる。 また、このレストランではToastは、フロア管理、決済サービス、売上管理に利用されている。従業員がタブレットで注文を入力すると、その場でキッチン、POS端末に情報が共有される。 また、来店者がPOS端末を用いて支払い手続きを済ませるとチップの情報も残すことができる。 この他にも、テイクアウトやデリバリー、メールマーケティングなどの機能も付いている。 Uber EatsやDoorDashといったデリバリーサービスを通した注文を自動で反映するオプショナルプランもあるという。 このサービスの競合としてはCloverやSquareなどが挙げられるが、これらと比較すると機能が非常に多くカスタマイズの幅が広い。 ここまで、レストランを利用する来客者の目線でDXサービスについて解説した。 ユーザーの目線に立って設計されたものが多く、優れたユーザー体験を提供できているように感じられる。 では続いて、普段は来店者の目に触れることのない、主にレストランの運営者向けのサービスを2つ解説する。 4: Gusto 2012年にサンフランシスコでリリースされたGustoは、中小企業向けの一元管理型HRプラットフォームである。 今まで紙媒体で行われてきた、人事や経理に関する作業を全てオンラインで一括管理できる。Gustoは中小企業向けのサービスを展開しており、数々の賞を受賞している。 今回のレストランでは主に2つの機能が利用されていた。1つは従業員の勤怠管理、そしてもう1つは給与管理である。 従業員はGusto Walletというスマホアプリを使って操作している。 勤怠管理としては、出勤時、退勤時、休憩の際などに従業員が自身のアプリで記録を残し、それが管理者側にクラウド共有されるという仕組みだ。 また、給与管理においては、毎月の支払い額とその内訳が閲覧できる。収入、税金、チップ、等の項目に分かれておりそれぞれの数値を確認することができる。 さらにアプリ内で給与明細のPDFが発行され、もちろんダウンロードも可能である。 自身の銀行口座と紐づけておくと自動で振込情報が管理できるだけでなく、複数の口座に分けて受け取ることもできる。 Gustoにはこれらの機能が全て入っていながら、非常に分かりやすくシンプルなデザインと操作性で、従業員からの評判はかなり高いようだ。(参考記事) 5: Marketman 最後にご紹介するのは2013年にニューヨークで設立されたMarketManだ。 このサービスはレストランや食材サプライヤー向けのクラウドベースの在庫・供給管理システムである。 予算管理、購買、サプライヤー管理といった、在庫・供給管理に関わる作業を効率化している。 スマートフォン等のモバイル端末での請求書スキャンやデータ抽出ツールを備えており、いつでもどこでもプラットフォームにアクセスできる。 常にラップトップのようなデバイスを開いておくことが難しい在庫管理業務のようなシーンでも、片手でアクセスできるように作られている。 また、ダッシュボードで財務面の概要を一覧することができ、非常に理解しやすい設計となっている。 一方でやはり、サービス展開が幅広いため初期設定は複雑化しており、導入には時間がかかってしまうという声も聞かれているようだ。 しかし、様々なサービスを一括で管理できるため、他に同類のサービスを利用する必要が少ない。 そう考えると長期的にはやはり便利なサービスであると考えられる。 ここまで、レストランで働くスタッフからの目線でサービスを紹介した。 それぞれのフィールドでDXが進んで便利に見える一方で、サービスの複雑化・乱立化により従業員の管理する部分が増え、負担も大きくなっているというのが実態かもしれない。 実際、今回取り上げているレストランでは、従業員が同時に扱うタブレットが6台あり、忙しい時間帯にはかなりオペレーションが大変そうな印象を受けた。 まとめ 本記事では、サンフランシスコのレストランで導入されているDXサービスを紹介した。今回ご紹介したサービスの特徴は、いずれもオールインワン型のサービスであることだ。以下の表では、今回取り上げたサービスの展開状況についてまとめてみた。 このように、今回解説したものはどれも、従業員が1度に管理すべきサービスの数を減らし、負担を軽くすることを目標にしているように感じられる。 一方、レストランの運営に必要なツールの全てが1つで完結するサービスは、筆者の知る限りではまだ見つかっていない。 複数サービスの連携、ビルトイン設定などを駆使して、自社に必要なサービスを組み合わせて使用している現状がある。 スタッフの目線では、使用する端末が増えるなど従来とはまた違った課題も出てきているように思われた。 今後はこういった課題にアプローチできるかどうかが、レストラン向けのソリューション提供において大きな鍵となるかもしれない。 筆者: Miyu Okubo

「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ

「1日のワークが始まる前にやるチェックイン、良いですね!」 「今後自分がワークショップを企画するときは、チェックインをプログラムに取り入れてみたいです!」 ビートラックスで提供しているワークショップの参加者から、何度かこのような声をいただいたことがある。 私たちが設計するワークショップには、数週間のあいだ毎日、朝から夕方まで専念して取り組んでもらうものから、週に一度のペースで2〜3時間のワークを繰り返すものまで様々なものがあるが、1日のワークのはじめには「チェックイン」の時間をとることが多い。 しかし、ただ時間を組み込めばいいものでもなく、また、いつも同じ内容、同じペースでやればいいものでもない。 実践する上で意識すべきことや、ファシリテーターとして状況に応じた工夫が必要になる。 今回は、ワークショップで行うチェックインについて、なぜやるのか、実践する際にはどのようなことを意識したら良いのかを、ワークショップを設計する側の目線から紹介してみたい。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ チェックインとは ワークショップで行うチェックインとは、メインのワークが始まる前に、参加者が互いの状況を把握しあったり、ワークに臨むための気持ちを整えたりする時間だ。 日常生活では、ホテルでの宿泊手続きや、空港での搭乗手続きの際に馴染みのある言葉だろう。 カウンターでチケット等を見せながら、スタッフの方へ「チェックインします」と伝える。 「今からこの場に入ります」あるいは「今から私はこの空間ですごすメンバーです」ということを、互いに認識するためのやりとりだ。 ワークショップでのチェックインも同様、メインのワークに入る前に、ファシリテーターから参加者全員へ「これから今日のワークが始まります」と言う合図を送るために行われることが一般的である。 チェックインでは何をするのか チェックインで行う内容は、とても単純だ。 「今の気持ちは?」あるいは「今日のワークに期待してることは?」などのお題を提示し、1人ずつ1分程度で紹介してもらう。 時間は10-15分程度のことが多いが、参加者にはこの時間を通じて「参加者としての気持ちの準備をして欲しい」と考えている。 これらのお題の他、市民参加のワークショップなど多様な方々が参加する場では「参加のきっかけ」や「最も関心のあること」を交えて紹介してもらうこともある。 チェックアウトも忘れずに また、ワークショップの終了時には「チェックアウト」も可能な限り組み込むようにしている。 1日のワークの内容・成果を振り返り、得られた学びを1人1つずつ言葉にしたり、その時点で感じている気持ち、ワークではうまく言えなかった発言を受け入れる時間だ。 盛り上がったワークを“やったまま”にせず、数分でも振り返りの時間を持つことで、次回以降につながる学びが得られる。 では、ファシリテーターは、チェックインではどんなことを心掛けて、どのようなことを達成できるように行うべきなのか。 なぜやるのか、チェックインの狙い 大きな狙いは「その日のワークや議論に適した『場』を準備するため」だ。 様々な人がある場所に集まっただけでは、ワークショップやプロジェクトの最終的なゴールである良いアウトプットにはなかなか辿り着けない。 人々が集う場を、より良い気づきやアイデアが生まれる場所、そう感じられるような場所に整えていくための心がけや工夫が、チェックインの設計・実践には必要である。 そうした場を準備するために、私たちが設計するチェックインでは次の3つのことを意識している。 ①1人ひとりの気持ちを「参加者モード」に切り替える 初対面の人が多い中では、自分の意見を切り出すのに難しさを感じる人もいる。 特に、オンラインのワークショップでは、つい数分前まで別のオンライン会議に参加しており、今から始まるワークに取り組む姿勢に頭と体をうまく切り替えられていない人もいる。 そんな時、チェックインの時間を使って自分のその時の思いを声に出してみたり、他の参加者の考えに耳を傾けられる時間をとることで、自らを「参加者としてのモード」へと切り替えていくことができる。 その場に参加している他の人のことを知らないまま、第一声で重大なテーマについての意見を求められた場合、発言のしづらさを感じる人は多いだろう。 まずは、全員が正解不正解を意識することなく自由に発言できる時間、そしてそれを他の参加者に聞いてもらえる時間をはさむことで、発言のための心理的ハードルを下げることができる。 参加者1人ひとりをその場で発言しやすい気持ちにさせることで、自発的な発言が増え、活発なディスカッションにつながりやすい。 ②進行上、配慮すべきことがないかを汲み取る 参加者の中には、何らかの理由で万全の状態でワークショップに臨むことが難しい人もいる。 実は体調が優れないまま少し無理をして参加していたり、オンラインワークショップの場合だと、使用するアプリやネットワーク環境にトラブルが生じていたりなど、ファシリテーターに見えている範囲からは把握しきれないことがどうしてもある。 そうした時、チェックインの時間があると、ワークショップの途中では言い出しにくい、参加者のネガティブな心情や、配慮が必要な状況を汲み取りやすくなる。 特別な事情を早い段階で他の参加者へ伝えられると、当事者はその後の気持ちが少し楽になるだろう。 日本語を母国語としない参加者から「日本語のワークには不安がありますが、がんばりたいです」との発言があった際には「今日は、みんなが聞き取りやすいペースでの発言を心掛けてみましょう」など、ワークショップの進行に関わる提案もしやすくなる。 ファシリテーターにとってチェックインは、参加者1人ひとりが、その日のワークにいかに前向きに参加できるようになるか、その後のワークショップの進め方を判断するための貴重な時間でもあるのだ。 ③ディスカッションのペースを作る ワークショップに慣れている人もいれば、慣れていない人もいる。 様々な人が集まる場では、その日のワークショップのリズムや議論の進め方を早い段階で共有しておいた方が、本題のワークにおいても序盤からスムーズに進めやすい。 ワークショップでは、ある人の意見に対する他者のリアクションを期待することが多くある。 似た意見を紹介してもらい、グループを作りながら全体像を把握したり、アイディアに便乗しながら新たな切り口を見出したり、その多くの場合は、1人で考えているだけでは到達できない視点・発想へ辿り着くことを目指しているからだ。 そのためのウォームアップを兼ねて、チェックインでは参加者とファシリテーターの間のやりとりだけでなく、参加者同士の会話が喚起される仕掛けを取り入れることも良い。 特にオンラインの場合、初対面の相手との距離を縮めるのに時間がかかるため、例えば「チェックインした人は、次の人を指名する」あるいは「次の人に必ず1つ質問をする」など、半ば強制的に他の人の名前を呼ぶ機会を作るなどの工夫も取り入れている。 また、複数の日に分けてワークを進める場合は、回数や内容に応じてチェックインのリズムを変えることを意識するのも良い。 初回はゆっくりめのペースで進め、なるべく和やかな場の温度を維持しながら参加者のモチベーションを高めていくことに注力する。 一方、中盤から後半にかけて、集中して議論することにより多くの時間を割きたい場合はチェックインは速いペースで回していく、など。 チェックインのリズムに差をつけることで、その日のワークの進め方をより好ましい状態に導くことができるという面もある。 その日のワークのペースメイクのような役割も果たしているのだ。 より上手に行うための工夫 こうした目的を達成するために実践できる工夫を、事例を交えながら紹介したい。 ①トップバッター選び – 慣れている仲間に最初に事例を見せてもらう – 時間的に余裕のあるチェックインでは「準備ができた方から順番に」と、参加者からの自発的な発言を促すようにしている。 しかし、初対面の人が多い場合や、自分から手を挙げることにためらいが生じがちなオンラインのワークショップでは、慣れているアシスタントファシリテーターに1人目をお願いするのも良い。 アシスタントがいない場合でも、何度か一緒にワークショップを進行しているメンバーがチーム内にいれば、「今日のチェックイン、1人目に振ることになると思うので。気持ちの準備お願いね。」と依頼しておけば、以降の人は1人目を参考に発言すれば良い。 他の参加者のハードルを下げつつも、全体のペース管理もしやすくなる。 なお、自分がメインファシリテーターを務める際は、チェックインのなかで発言する順番は終盤にまわることが多い。 それまでに多くの参加者の声を聞いた上で、その日に自分がどのようなことを意識してファシリテーションをしたいかを合わせて伝えられる時間でもあるからだ。 ②気持ちを教えてもらう ビートラックスが行うチェックインでは、感情が書かれた8マスのシートを使うことが多い。 ポジティブなものとネガティブなもの、それぞれ複数を予め用意しておき、また余白として自由に書き込めるスペースも作っている。 参加者には「今の自分の気持ちに当てはまるところに人形を置いてください(あるいは、自分の名前を書いてください)」というお題を出す。 すると、自分の素直な感情を共有しながら、なぜそういう気持ちなのか、自分の体験したエピソードや、その日の意気込みと紐付いた会話が自然に誘発される。 「最近自分が体験したこと」を紹介してもらうだけでは、相手がどのような人なのかまでは、よく分からないままだ。 一方、「自分は今こういう気持ちです。なぜならこんなことが起こったので」というように、事象と感情(気持ちの状態)をセットで話してもらえると、初対面の関係だとしても、相手との心理的な距離が縮まる感覚が味わえるはずだ。 ③受け入れる、否定しない、焦らない ワークショップ参加者が「自分の素直な考えを発言しやすい」と思える場を作ることが重要だ。 そのために、チェックインの時間を使い、全員に発言の機会があること、そして、どのような発言でも受け入れられる場であるということを示していく必要がある。そのために、何か特別に準備をして臨む必要はない。 チェックインで参加者が発言している際は、その相手の方に顔を向け、うなずくくらいがちょうど良い。「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢を示すだけで十分とも言える。 また、数週間にわたってデザインの考え方を学ぶワークショップでは、中盤に差し掛かるとチェックアウトの時間に、ネガティブな感情や意見が出ることがある。 ただ、そうした時でもファシリテーターは、その場がどんな発言でも受け入れられる場であることを示していくことを意識したい。 ワークが思うように行っていないと感じていることを内に秘めながら進めるよりも、少しずつでも口に出してもらう方が、その後の進め方を改善しやすくなったり、ワークの注力ポイントを選定しやすくなるからだ。 否定的な意見を排除するのではなく、「教えてくれてありがとう」「今後の工夫、ぜひ一緒に考えていきましょう」などの言葉と共に、参加者1人ひとりと同じ視点から物事を捉えていく姿勢を推奨したい。 ④慣れてきたら変化を加える 何度か同じメンバーでチェックインを繰り返していると、徐々に慣れが生じてくる。 「その場に入る」「気持ちを切り替える」という意味合いが薄れてくることがある。 そうした時には、参加者の表情を見ながら、状況に応じた工夫を加えていくこともファシリテーターは判断していくことが重要だ。 思い切ってスキップする判断も もちろん、状況によってはチェックイン自体をスキップすることもあって良い。 既に何度か顔を合わせている仲間同士で、参加者が集まった時点で既に自然と会話が生まれている場合や、限られた時間の中でメインのワークに多くの時間を割きたい時などは、あえてチェックインの時間を省くことも必要な判断だ。 毎朝のチェックインに慣れてきた人にとっては、「今日はチェックインを省きますね」という発言が、参加者にとっての切り替えスイッチになることもある。 あくまでチェックインはその日のワークや議論に適した『場』を準備するための手段の一つであり、タイミングや参加者の表情、場の温度を感じ取り、より適切な方法を選択していくことがとても重要となる。 チェックインの時間によって場の緊張感が極度に失われたり、その後のワークの進行に支障がでることのないよう、状況に応じてチェックインの有無や方法を判断することもファシリテーターの大事な役割なのだ。 おわりに 今回は、ワークショップや会議の冒頭で行われることの多い「チェックイン」について取り上げてみた。 メインのワークに比べて「ちょっとしたこと」のように思える時間でも、そこにはワークショップの設計者からの意図が込められている。 ワークショップ参加者としてチェックインを行ったことがある方や、これから実践してみたいと思っている方は、その時間や問いの狙いは何かを振り返ったり、それによって得られる効果などを考えてみるのも良いだろう。 そして今後、自分がワークショップを設計する側の立場になった際には「その日の議論に適した場づくり」のためにはどのような時間を取り入れたら良いか、考えながら設計することをおすすめしたい。 また、参加者と一緒に時間を過ごしながら自分が感じたことから、どのような工夫ができるのかを考えること、試行錯誤を繰り返しながらも、ぜひ柔軟な姿勢で場を設計していくことにも挑戦していただけたらと思う。 ビートラックスでは、新たなサービスづくりの過程において、事業者とデザイン会社のメンバーが「共に調べ、共に考え、共に設計する」メニューを提供している。 デザイナーたちと一緒に新たなサービス開発を進めたい、ワークショップを活用しながら新たなサービスを設計していきたいなど、ご興味をお持ちの方はぜひこちらからお問い合わせを。

銀行業務における顧客体験 (CX) 6つのトレンド

2020年のパンデミック。 2022年のロシア・ウクライナ危機。 からのインフレと景気後退。 そんなこんなで銀行業界を取り巻く状況は、かなり前から危ういものになってきている。以前よりハーバードレビューによると、旧態依然とした銀行業務だけを今後も提供し続けた場合、現在の銀行の92% は10年以内に消滅すると予想されている。 フィンテックの影響で銀行の92%は10年以内に消滅する? 2021年からフィンテックへの投資も拡大 こういった状況を打破するために、2022年からは本気で世界中の金融機関の変革に焦点が当てられ、フィンテックや新しいタイプの金融サービスに対しての投資もかなり盛んになってきている。 銀行業務もデジタルが主戦場 世界中の銀行にとって、デジタルチャンネルへの移行は優先事項となっている。こうした取り組みは、進化する顧客の期待に応えることで、顧客体験を向上させたいという思いが主な動機である。 具体的には、デジタルアプリ、パーソナライゼーションツール、金融教育リソースを組み込んだデジタルサービスを提供することを目標にしている。 フォレスター社の調査を見てみてもそれは顕著で、世界の金融業界の意思決定者へのインタビューにて、全体の85%がDXを推進していると答えている。そして、組織変革の主な推進力は、「顧客体験の向上」がトップ(33%)次いで「収益の拡大」(32%)「コストの削減」(32%)となっている。 Unbluの調査でも、DXにおける最優先課題はモバイルアプリとオムニチャネルおよびパーソナライゼーションツールにおける顧客体験になっている。 銀行業務のDXにおいて、最も重要なフィールドは、デジタルアプリ体験、パーソナライゼーション、金融教育である。 最も重要なのが顧客エクスペリエンス (CX) DX推進が急速に進んだこともあり、銀行を中心とした金融業界にとって、今後最も重要になってくる差別化要因は顧客体験だろう。 顧客体験はカスタマーエクスペリエンス (CX) とも表現される。その名の通り、顧客が受け取る体験のこと。 例えば銀行であれば支店の窓口での体験や、オンラインバンキング、サポートセンターの対応まで、さまざまなタッチポイントにおいて、顧客が感じる体験の質を指す。 CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 金融機関にとってCXこそが差別化要因 ガートナーの調査によると、金融機関の81%が競争要因がCXになっており、特に2021年以降はCXこそが不可欠な差別化要因になっていると回答している。 さらに、76%以上の顧客が、企業が自分たちのニーズや期待を予測し、理解することを期待している。そして、企業はこれらの期待に応えるべく、迅速かつ果敢に対応する必要があるという。 これは、金融機関が提供するサービスのその内容がどれも似通っており、顧客にとっては受け取る体験以外は違いが感じられにくくなっているということでもある。 なぜCXがビジネスにとって重要なのか? 顧客体験が重要なのは金融機関だけではない。その他のあらゆる種類のビジネスにとっても、最重要事項になってきている。その証拠に下記の統計を紹介する。 86%の顧客がより良いカスタマーサービスを受けられるのであれば、より多くの金額を払っても良いと思っている 世界中の96%の顧客が、ブランドロイヤリティの決め手として顧客体験を挙げている 76%以上の顧客がより良い顧客体験のためにブランドを切り替えるのは簡単だと考えている 39%の顧客が顧客体験の悪い企業とは取引をしたくないと答えた データ元: SupperOffice, State of Global Customer Service by Microsoft, State of the Connected Customer. Dimensional Research これらのデータからも分かる通り、優れた顧客体験は、ブランドの評判を高め、企業の収益に影響を与えるだけでなく、顧客維持に直接的な役割を果たす。また、クロスセリングやアップセリングの機会の増加にも貢献する。 CXが優れている銀行の5つの例 世界的に顧客満足度の高い代表的な銀行による優れた顧客体験の具体例を5つほど紹介する。 Capital One 2020年度のJ.D. Powerランキングで顧客満足度1位に輝いたCapital Oneの成功の秘訣は、デジタルバンキング体験の継続的な改善への取り組みである。 デジタルウォレットや非接触型決済オプションの提供、AIアシスタントへの自然言語処理機能の追加、デジタル預金の実現など、Capital Oneは常にCXを最適化するための革新的な方法を模索している。 また、同行は最近、ウォルマートやアマゾンとのリワードプログラムの提携により、顧客がお気に入りのeコマース小売業者との支出をより効率的に活用できるようになったことでも注目を集めている。 JPMorgan Chase ランキング2位は米国最大の資産シェアを誇るChase。包括的で使いやすいモバイルバンキングアプリ、迅速なカスタマーサービス、無料のオンライン請求書支払いシステム、無料の金融教育ウェブキャスト「Chase Chats」などで高い評価を受けている。 Chaseは優れたデジタル体験を通じ、顧客満足度ランキングで常にトップまたはそれに近い位置を獲得している。 PNC PNCは以前より、ハイブリッド・バンキング、広大な支店網(正確には2,400店)、モバイルアプリ「バーチャルウォレット」によるデジタルマネー管理サービスの提供が強み。支店をデジタルツールのトレーニングセンターと兼用するなど、物理とデジタルを融合させ、銀行業務における顧客体験を最適化する方法を常に模索している。 また、PNCは、小さなことにも気を配っている点も評価できる。例えば、18,000台あるATMでは、顧客が好きな額面を選んで引き出しができるようになっており、小銭を用意する手間が省けるようになっている。 TD Bank TD銀行が自らを「アメリカで最も便利な銀行」と称している。1,200以上の支店を持ち、その多くが競合他社よりも早くから営業し、遅くまで営業しているため、顧客は自分のスケジュールに合わせて必要なサービスを簡単に受けることがきる。 この優れた顧客体験をTD Bankはデジタルチャンネルにも反映している。データ分析を活用し、デジタルサービスやオムニチャネル体験の向上にも努めている。 Ally Bank 店舗を持たないオンラインバンクであるAlly Bankは、24時間対応の迅速なカスタマーサービス、最低預金額や月々の維持手数料の無料化、対話型AIデジタルバンキングアシスタント「アリーアシスト」により、2009年の創業以来、オンラインリテールバンキングの分野でリーダー的地位を獲得している。 TD Bankと同様に、よりリアルなAIインタラクションを提供するためのコグニティブコンピューティングへの投資や、超個性化のための顧客360度ビューの開発など、データの活用による顧客体験の充実を図る継続的な取り組みについての情報発信も行っている。 CXを構成する5つの要素 では、優れた顧客体験を生み出すにはどのようなポイントを押さえておく必要があるのだろうか?一度、CXを構成する5つの要素を見てみよう。 現在の状況と制約に対する理解 全てのタッチポイントにおいて顧客に対してのコミットメント 組織全体とスタッフ一人ひとりのCXに対する理解 データを活用した意思決定 グローバルな視点とローカルレベルでの柔軟な対応 金融機関が提供しているCXの品質を高めるには上記のポイントを理解する必要がある。当然であるが、経営レベルでのコミットメントが不可欠となる。 金融における顧客体験に求められるポイント 2022年以降、顧客は従来の顧客体験では喜ばなくなる。 顧客は複数のブランドを使い分けることができ、選択肢に事欠くことはない。このような顧客を維持し、エンゲージするためには、これまでの金融業界における習慣、慣行、方法を一度捨て切る必要が不可欠である。 その代わりに、以下のような新時代の顧客の期待の根源に迫ることで、有意義な体験を提供することに注力したいところ。 情報への即時アクセスの提供 タッチポイントを越えたレスポンスの良いサービスの提供 オンデマンドサービスのための新しいツールや技術の採用 顧客がいつでもどこでも企業と対話できるようにする パーソナライズされた情報共有 銀行業務におけるUXおよびCXの最新トレンド では本題の銀行をはじめとした金融業界に求められる最新の顧客体験に関するポイントを6つ紹介する。 1. なるべく “人間” っぽい体験を 日本でもDXが叫ばれているが、顧客はAIでも機械でもない。従って、体験がデジタルになりすぎるのは良くない。 どんなにテクノロジーが進んでも、生身の人間はパーソナルな体験とリアルタイムでのやりとりを求める。機械よりも人間とのやりとりを望んでいる。 例えば、ドイツのコメルツ銀行は、スピード、セキュリティ、シンプルな体験を実現するためにDXを進めている。この銀行のモデルは、支店の3分の1を閉鎖し、銀行員、アドバイザー、従来のコールセンターをのスタッフをオンライン経由のバンキングセンターに集約した。そうすることで、スムーズなデジタル体験を提供しながらも、顧客は生身の人間とのやりとりが可能になっている。 チャットボットはどのように企業で活用されているのか? 2. 素早い対応を提供する ほとんどの顧客は、リクエストに対してすぐに結果が出ることを期待している。 顧客が解決策を待つ時間を1秒でも失うことは、顧客の忠誠心を失うことに一歩近づくことになる。 例えばファイナンシャル・アドバイザーとの対話を素早く実現するために、人工知能(AI)、機械学習(ML)、自動化を活用した、パーソナライズされた、状況に応じた、より現代的なソリューションを提供することが求められる。 […]

新しい時代に広がる10のワークスタイル変革

リモートワークやDXが進んだことにより、働き方も急速に変化し始めている。場所や時間に縛られない働き方や、半永久的にリモートワークを承認する仕組みを導入した例もある。
その変化に伴い、企業側も生産性の向上や、採用戦略の一つとして新しいワークスタイルを導入する必要性が高まっている。
求められる10のワークスタイル変革
これから紹介するJacob Morganによる10の新しい時代のワークスタイル変革は、すでに多くの欧米企業で採用されている。
その生産性の高さと従業員満足度の高さを考えてみると、どうしても…

米国有名テック企業 CEOがこぞってスライドを嫌う6つの理由

2022年4月にTwitterを買収して話題になったイーロン・マスク。そんな彼の他に、ジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブスなどの米国有名テック企業CEOがこぞって嫌うものがある。 それが、会議におけるスライドのプレゼンだ。 ジョブズは 「“とりあえず” スライドを用いてプレゼンをすることは嫌いだ。 人はプレゼンを作り発表することで問題に立ち向かおうとするが、私はスライドを何枚も見せるのではなくテーブルに意見を全て出した状態で議論してほしい。 自分の考えていることと伝えたいことがクリアであればスライドなんていらないのだから。」 とまで言い切っている。(参照) スティーブ・ジョブズに学ぶ7つのメディアPR戦略 今回はなぜ米国有名テック企業のCEOたちがそれほどまでに会議でのスライドを用いてのプレゼンを嫌うのか、その理由を6つにまとめてお伝えする。 もちろんプレゼンをすべきではないとお伝えするつもりはない。それよりは、ビジネスにおいて相手に意見を伝える手段はたくさんあることを、改めてご認識いただけたらと思う。 米国有名テック企業CEOたちがスライドを用いたプレゼンを嫌う6つの理由 1. プレゼンが時に視聴者の望むスピードで進まないから 3ページ程度の正式な文章であれば、少し時間をとれば一通り読んで理解することができるだろう。 しかし、同じ情報をプレゼンテーションとして提供する場合、プレゼンターの話のスピード次第で自分が読んで理解するよりも時間がかかるかもしれない。 さらに、自分が理解できているところでも、視聴者の他の人が初見だった場合、逐一説明が入ることになる。 ゆえに、聴衆一人一人の議題に対しての理解度が異なる場合は、初めて会議に参加する人にとっては新たな情報をインプットするための必要な時間かもしれない。 しかし、一方で理解できている人にとっては、他の業務の時間を削って、すでに知っていることを繰り返す時間となり、非効率的になってしまう可能性がある。 Google, Apple, Teslaなどの世界トップ経営者が行う9つの会議の秘訣 2. 図式と最低限の文章だけで構成されているプレゼンは、後から自分で見直すことが難しいから プレゼンテーションは、発表者の口頭での発言なしには成立しない。 プレゼンテーションを見直すには、レコーディングなどをしておいて聞き直すか、議事録を取るしかない。 ミーティングなどに出ない人にも共有する内容の場合、プレゼンスライドではなく内容を記載した文書を見直す方が、改めて説明をする手間もかからないし、齟齬がないだろう。 また、別の人に内容を聞かなければいけないということは、時間も人的なリソースも余分にかかってしまうということ。 経営者としても、スタッフの効率を低下させているという意味で、プレゼンスライドの使用を避けたい意図があるのかもしれない。 3. プレゼンスライドには不確実性の高いアイディアも含まれていることがあるから プレゼンスライドは図を多く入れ、できるだけ文字を少なくした方が良いというセオリーもあったりすることから、時にアウトラインのような未完成の思考が書かれていることもある。 特に重要な意思決定をする場合には、ポイントだけでなく前後の文脈まで明示されていた方が、聴衆も安心して聴ける場合もある。その際にはプレゼンの形式以外を用いた方が良いかもしれない。 Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア Design Sprintのファシリテーターとしての学び 4. プレゼンススライドに用いられる図式は、ときに誤解を招いてしまうから 前述した通り、プレゼンスライドではいうまでもなく文書よりも図を多く用いる。 しかし、理解を助けるための図式のはずが、そもそも図の色や形によって誤解を招く場合がある。 特に多国籍のチームでコンテクストが異なる場合はなおさらだ。正しく伝えるべきことを伝えられなくなってしまう可能性がある。 例えば、筆者は良い結果となった数字を強調すべく、赤色で記載してプレゼンした際、弊社のアメリカ人のスタッフから「これは悪い傾向なのか?」と聞かれたことがある。 これは、アメリカにおいては赤色は良くない結果を表すことに用い、良い結果の場合は青色や緑色を用いるからである。 このように、文化間でコンテクストが異なるため、図式が誤解を招く可能性もある。 発表者の意見、意図を伝わりやすくするはずのプレゼンが、逆効果になってしまうことがあるのだ。 【こんなにも凄い】色が人の心理と行動に与える影響とは 5. プレゼンテーションでは核心をつかない議論に終始する可能性があるから 多くのスライドには要点しか書かれていないことが多く、そのためプレゼンターはその場その場で話すことを変更できる。 しかし、臨機応変に対応できることは良い点ではあるが、一方で核心をつかない議論に終始してしまう可能性も孕んでいる。 この記事を書くにあたって参考にした原文の記事には、“You can’t pin Jell-O to the wall.” (ゼリーを壁に貼り付けることはできない)という例え話が使われていた。 これは、「何かをしても何の手ごたえもない、まったく効き目がないこと」の例えとなるアメリカの諺だが、まさに議題の核心をつかずに、物事が前に進んだ「手応えのない」時間になってしまう危険性があるということだ。 ムダだらけの会議 – 海外から見た日本式ミーティングの謎 6. アイディアの良し悪しがプレゼンターの話の上手さやプレゼンスライドの作成能力に依存する可能性があるから 話し手のプレゼン力や、プレゼンスライドの作成能力によって、悪いアイディアであっても、良いアイデアのように見えて高く評価されたり、反対に素晴らしいアイディアが悪いアイディアのように見えて、そぐわない評価をされる可能性がある。 もちろん話の上手さやプレゼンスライドの完成度も含めて、プレゼン全が評価されるべきであることは言うまでもない。 しかし、純粋にアイディアそのものの良し悪しを判断する際には、プレゼンテーションではなく、ドキュメントを読む方が、よりフラットにアイデアの比較ができる場合もあるだろう。 英語でのプレゼンをクオリティを格段にアップさせる8つの方法 スライドを使うメリットは? もちろん、スライドを使ったプレゼンテーションは必ずしも悪いことではない。 事実、意見をわかりやすく伝達することを目的に、多くの人がスライドを使っているし、それがずっと続いているということは、メリットも間違いなくあるはずだ。 1. プレゼンテーションは、その場の状況に合わせて、使う言葉を変更できる 主語述語の完全な文章は、一度作成しドキュメントに載ったら、書いてあるその通りにしか読み取れない。 しかし一方、スライドを用いたプレゼンテーションの場合は、聴衆の態度を見極め、表現を変えたり、聴衆が理解ができていそうであれば基本を説明するスライドを飛ばしたりして、途中で軌道修正することができる。 2. プレゼンのほうが「完璧な文章を書く」工程は少ない 文章は文法的に正しく、読みやすいことが理想で、そのような文章を書くには言うまでもなく文章力が必要とされる。 代わりに、プレゼンスライドでは、スライドに文字を多くしすぎないために、キーワードを含めた上で、言いたいことを絞って記載することが求められる。 ゆえに、完全な文章を書くこととは違うベクトルの文章力が必要だ。 しかし、言いたいことを要約して考え、伝えることが得意な方にとっては、プレゼンスライドの文章を作成してプレゼンの練習をする方が、完全な文章を書くよりも時間がかからないだろう。 シーン別 スライドを使わない際の代替案3つ では最後に、有名テック企業のCEOたちは、プレゼンスライドの代わりにどのようにして相手に意見を伝えるのが良いと考えているのだろうか。「プレゼンスライドの代替案」に関して、場合に分けて3つ紹介する。 1. 議論して意思決定をする場合:「認識合わせ」のための情報は会議の前に共有する。 認識の齟齬があってはならない場面、例えば、意思決定や合意形成の場面では、会議に入る前に理解しておいてほしい事項まで、端的な文章にまとめ、会議に参加するメンバーに、読んでもらってから議論に入る。 この場合は認識の齟齬がないようにするため、要点をまとめたスライドよりも、完全な文章のドキュメントを作成する方が良いだろう。 そうすることで、会議において認識の確認のための時間を削減することができる。 その結果、全員の時間を使って行う、会議の限りある時間を「前提の共有」より重要な「意思決定」や「今後の方針の議論」といったことに割くことができるだろう。 例えばAmazonでは、会議の議論の密度を高めるため、プレゼンスライドの代わりに「6ページのメモ」を用意し、議論する前に黙読しているという。 また、LinkedInのCEOであるJeff Weinerは次のように述べている。 「もし、プレゼンテーションをするのであれば、ミーティング前に、現状の立ち位置 、目標到達地点、そこにたどり着く方法、そのためのネクストアクションというシンプルな内容で1枚のドキュメントを用意しておくと、セールスに成功する可能性が高くなる。」 社内へのプレゼンだけでなく、顧客に自分たちのプロダクトを理解してもらうことが商談成功の鍵となる、セールスでも役に立つテクニックだ。 どんな場合でも「いかにしたら相手に伝わりやすくなるか」を考えて、工夫することが、成功の鍵となるだろう。 シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 2. 指導やトレーニングの場合:一方的なプレゼンをするのではなく、参加者とインタラクティブに交流する 研修の場合は、一方的に話し手が話すプレゼンではなく、聴衆が参加できるような体験を作ることに注力すべきだ。 プレゼンテーションはどうしても受け身で聞いて理解する形式になりがちだ。 聴衆が発言したり、メモを取らない限り、ほとんどの人の話は耳で聞いて理解することになるが、ただ話を聞いているだけでは、後になってほとんど何も覚えていないのが人間というもの。 研修の内容を覚えてもらうためには、聴衆を受動的な視聴者にするのではなく、聴衆に能動的に参加してもらう必要がある。 話し手は「伝える」工夫も大切だが、いかに「伝わる」、そして「覚えてもらう」ようにするかに注意を払い、状況に応じて使うツールを工夫する必要がある。 ワークショップをするべきか?会議をするべきか? […]

SOCIAL INNOVATION CONNECT Vol.3 ―ピッチセッションからみえたソーシャルイノベーションー

SOCIAL INNOVATION CONNECT Vol.3
―SDGs Pitch powered by Social Innovation Japanー
National Agenda編集部の藤田です。
第三弾の私からはソーシャルイノベーションをリードする6組の社会起業家によるピッチセッションのレポートをします。
The post SOCIAL INNOVATION CONNECT Vol.3 ―ピッチセッションからみえたソーシャルイノベーションー first appeared on SAP…

Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア ~Design Sprintのファシリテーターとしての学び~

btraxではサンフランシスコオフィスにて10週間かけてデザイン思考を学ぶ研修サービスを提供している。 筆者は2022年1月〜3月までその研修のファシリテーターとして参加し、クライアントと共にグローバルにも通用するサービスの案のアイディエーションをサポートしてきた。 当研修に参加したクライアントは、日系企業に向けてIT業務コンサルティングを遂行する方々だった。 今回の研修では、普段の業務とは異なり、ベイエリア在住ユーザーと共に普段の思考方法と異なるデザイン思考をベースとして課題発見とサービス案を考えていただいた。 研修を遂行していく中で「ピンとした案が出てこない」などと、クライアントの議論が煮詰まって、会話がループする瞬間を度々目撃した。 真新しいサービスや社内で新しい施策を考えようとする時、こういった「アイディアが思い浮かばない!」という状況はみなさまも経験したことがあるのではないだろうか。 そこで、今回はその10週間の研修中で、筆者がファシリテーターとして活用した、いくつかのツールや手法を「アイディアのためのアイディア」として4つ共有する。 業務をパソコン一台で実現できるようになったこの世の中では色々なメリットがある。例えば、文章やチャートを作成して業務を管理し、利便性が大幅に上がった。 その一方で、パソコン上の曲線に制限され、実は自由な発想がしづらくなっていることや創造性の表現を規制してしまっているところもある。 創造性を語る時に、英語の表現で、”Thinking Outside the Box”とあるが、これに則り、もし用意されている定義を超えたことが「創造性」として求められるのであれば、よりパソコンでは実現できない、より柔軟なツールが必要なのではないかと感じる。 それを可能とするのが、紙と鉛筆である。シンプルではあるが、究極のツールがこの2つである。 これを使って何をするか。それが、マインドマッピングとグラフィックレコーディングである。 1. マインドマッピング アイディアを生み出すにはまず明確な課題設定が必要だったりする。目の前の現状を深ぼって、課題を整理できた段階で、本当に解決するべき課題が見えてくる。 実際に向き合う課題は複雑で、1つの観点や切り口だけでは解決の糸口が見えないこともしばしばある。 そういった時に、さまざまな切り口で整理し、共通点や関連性を全体像を把握するために便利なのが、マインドマップである。 マインドマップの作成方法は簡単だ。 まず、用紙の中央にメインとなるテーマを記載する。そして、そこからテーマやデータが枝分かれしていくように情報を細分化させて書いていく。 メインテーマに関連する情報を全て記載したタイミングでマインドマップが完成する。 ここから、さらに課題の深堀をするためにおすすめするのが、サブテーマとサブテーマの関連性を表現することである。 一般的に我々は普段、上から下、右から左と情報を捉えているが、斜めの関係や粒度の違う情報の関連性を考えることがないが、マインドマップではこれが可能となる。 網羅的に情報をまとめながら、新しい発見を見つけることができるのが、マインドマップの特徴とメリットである。 問題解決に役立つ“思考の可視化”とは – ビジュアルファシリテーションのすすめ Part 2 – 2. グラフィックレコーディング、グラフィックファシリテーション また、紙と鉛筆の別の使い方として挙げられるのが、グラフィックレコーディング(グラレコ)・グラフィックファシリテーションである。 例えば、チームと課題に関して議論しているなかで、「なんだか議論が噛み合っていないかも?」という違和感を持ったことはないだろうか。 そういった場面で活躍するのがグラレコである。 グラレコやグラフィックファシリテーションとは、議論の内容をテキストではなく、絵を書きながら記録していく手法である。 状況を打開するために、互いの意見を口頭で共有し続けるのではなく、紙に脳内に想像している通りに描いてみて、まず互いの世界観を知ってみることから始めるのがおすすめだ。 また、グラレコが最も活用できるのは、抽象度の高い議論の内容を、様々なステークホルダーと目線合わせする場である。 上記の動画のように、瞬時に議論の内容を美しい絵に起こすことを本業とする人もいるが、非デザイナーにとってはこれは非常にハードルが高い。 だが、グラレコとグラフィックファシリテーションの入門文献を読むと、非デザイナーでも、棒人間などの簡単な図で問題ない、と記載されており、基礎的なメソッドは真似できるところがある。 絵に全く自信がない著者も、過去にこのようなグラレコで、どの課題に対して議論しているのか目線合わせを行った。 具体的なシーンを用いてご説明しよう。全体の状況としては、大人の友達作りにおけるサービス作成の課題整理をしていた。 それまでの議論で、自然な友達作りに欠かせないのは、あるグループやコミュニティに所属すること、また、それが鉄則であるとわかっていても、さまざまな理由でコミュニティへの所属ができていない大人たちがいることが現状であることもわかっていた。 そこで、その「さまざまな課題」に対してサービスを提供するにあたり、チーム内でもどこの課題に着目しているのかを明確にする必要があった。 話が抽象的に飛び交う中で、どの課題に着目し、サービス内容を深めていくのかを議論するために作成した絵が以下になる。 特にサービスのアイディエーションを進める中で、着目する課題によっては、個人の先入観から、同じことに関して話していると思ったら、実は違ったといった場面がある。 そういった齟齬を避けるためにも、このようにグラレコを通じて、どこに着目するのかを可視化させ、チームの目線合わせを行うことは効果的である。 ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド 3. 五感の刺激 アイディアとは、目の前のパソコンの画面を見ているだけではなかなか生まれないものだ。 集中して一つのことに向かう時間も必要だが、その作り上げたものを客観的に見て、また別の角度で見て、別の可能性を考えることで斬新なアイディアが生まれることが多い。 ただ、「別の角度で見る」と簡単に言うが、実際に行うのはそう簡単ではない。 周りの環境は変わっていないのに、別の「角度」で物事を見るのは実はかなり難しい。 そういった時には、実際に体を動かし、五感を刺激しながら体現してみるのが効果的だ。 例えば、ランニングしている時やお風呂やシャワーに入った時に、今まで曇っていた考えが急に晴れて、ひらめきが起こったという経験をしたことはあるのではないだろうか。 また、休憩の一時の際に飲むコーヒーの匂いを嗅ぐことで、一気に肩の力が抜け、心が落ち着いた状態で考えを進めることができるという方もいるかもしれない。 違う環境に自身を置き、客観的に今までのアイディアを振り返ることで、今まで積み上げてきた考えやアイディアの活かし方などが思いつくかもしれない。 実際、五感を刺激するためにオフィスにさまざまな仕掛けを施す企業も多い。 例えばあのGoogleでは、食堂やビリヤードテーブルなど、オフィスデスク以外のアメニティを用意している。 それは、デスクに向かっている以外の時間で浮かんださまざまなアイディアを、オフィスにいる社内のメンバーにすぐに共有できるようにするためだ。 同僚とご飯食べている時、ちょっとしたビリヤードゲームをしてリラックスした瞬間に浮かび上がったアイディアがすぐにその場にいる同僚やチームに共有できるよう、そしてそれが会社の新しいイノベーションとして育てられるように会社がその環境を提供している。 著者も実際にファシリテーターとしてアイディエーションに携わった時には、クライアントにソファーやクッションが多い部屋を使うように提案した。 それまで机と椅子と座っていたチームだったが、靴を脱ぎ、体制を崩しながら議論を進めていく中で、より腹を割った議論ができたように見受けられた。着用している洋服や姿勢などで議論の質が変わったことを実感した。 コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 4. 自分のスタイルに合った時間管理 これまで、さまざまなツールや方法を紹介したが、最後の方法として、その中で筆者が強調したいのは、自分に合ったタイミングで、かつその状況に合うツールと使うタイミングをよく理解することである。 例えば、自分は朝型なのであれば、重要な作業は朝に行う時間を事前に押さえておく。 また、その内容がさまざまな新しい案を考え出すような「発散系」の内容の場合は、自身のスケジュールにランニングをする時間も予定として設定しておく。 反対に、もし夜型なのであれば、無理して朝起きずに、自身の集中が最も保たれる時間を考慮して夜に進める、などだ。 自分のスタイルと、それゆえ自分では変えられないところを理解しておき、スケジュールに組み込んでおくと良い。 ちなみに、研究によると、右脳寄りの人間と左脳寄りの人間で、朝型か夜型かが異なることも証明されているそうだ。 選んだ時間にその時の集中したい業務に応じて、これまでご紹介してきた紙や鉛筆を使ったアイディアの可視化、五感を刺激するために場所を変えるなど、柔軟に対応していくスキルは欠かせないだろう。 まとめ Design Thinkingという言葉が聞かれて久しいが、実はその本質は考えること以上に、実践することにある。 btraxでも、アイディアを考えるだけでなく、手を動かし、実践や実装まで行うことで今までにない発想やクリエイティブなアウトプットが形にされていくことの重要性を強調している。 実際に研修やその中で行ったワークショップに参加して、筆者は、とにかく実践してみることがまた新たなアイディアや可能性を見出してくれるのではないかと考え、上記の4つの「アイディアのためのアイディア」を紹介した。 これを読むみなさんにもアイディアに煮詰まった時に、是非いつもとは違うやり方で課題に向き合ってみていただきたい。

大手町新オフィスプロジェクト「KARUGAMO」 ―SAPジャパンの成長を加速させ、社員の声が結実した新たなコラボレーション環境とは

ニッポンの「未来」を現実にするために、SAPジャパンの社員が取り組んでいるさまざまな変革プロジェクトをご紹介する本連載。10回目の今回は「大手町新オフィスプロジェクト(KARUGAMOプロジェクト)」について取り上げます。コロナ禍によるリモートワークへの移行を背景に、多くの企業がオフィスのあり方を見直す中、SAPジャパン自身の新たな働き方を追求する機会とするべくスタートした本プロジェクト。2022年8月に迫った正式オープンに向けて、今まさに佳境を迎えている新オフィスへの移転に込められた狙いについて、…

スタートアップの「実現するまでハッタリかませ」文化について

先日、こちらのツイートに対して多くの反響をいただいた。 この動画に出演されている女性は実際には存在していない。AIによって生成されたCG女優だそうです。最新テクノロジーはすでにこんなことまで実現できるようになってる。モデルさんキラー。 pic.twitter.com/VfMEPTrFf9 — Brandon K. Hill | CEO of btrax (@BrandonKHill) May 15, 2022 その中でも “これは本当にできているのか?本当のフェイクではないのではないか?顔だけではないか。前から似たようなものもあった。” といった内容のコメントもいただいた。 ちなみに、この動画は香港のパンテオンラボというスタートアップが自分達の技術のプロモーション用に製作した技術デモである。 その技術レベルの真偽は謎のままであるが、それがかなりスタートアップっぽいなと思った。 “Fake it till you make it” というのも、実は多くのスタートアップは初期段階で “出来ている風” の動画やプロトタイプをリリースすることが多い。 「AIによる完全自動化」や「独自のアルゴリズム」などのフレーズが飛び交うが、実はその裏では人力で動かしていたり、全く技術開発が追いついていないケースも実は少なくない。 しかし一方で、シリコンバレーを中心に、スタートアップの人たちの間では “Fake it till you make it (実現するまでハッタリをかませ)” という言葉があるほど、ある意味日常茶飯事でもある。 例えば、表面的にはAIによるチャットボットのように見せていて、実際は裏で人間が動いてる。なんていうことも頻繁に聞く話である。 これまでにもFake itフェーズを経験しているスタートアップがいくつもある。そんな中でも代表的な例を紹介する。 注: 我々がハッタリを推奨しているということではなく、あくまで、スタートアップを成功に導くための考え方の一例として、過去の事例から学べるエッセンスを参考にしていただければ幸いだ。 パソコンがないのに開発案件を受注したマイクロソフト ”一生を砂糖水を売るか世界を変えるチャンスに賭けるか” めっちゃクールなデザインの指輪でピッチ大会優勝 ストアの全てのパソコンにPinterestを表示 海賊版配信から正規ライセンス配信で大成功したクランチーロール 筋金入りのハッタリだったセラノス 運営チームがサクラだったマッチングアプリ 存在しないサービスをLP+PPCで市場テスト 身に付けたい技術を履歴書に羅列した某CEO パソコンがないのに開発案件を受注したマイクロソフト 世の中にパソコンというものが普及すると考えていたファウンダーのビル・ゲイツとポール・アレンは、パソコン製造メーカーのMITS社に営業電話をかけ、ソフトウェアの重要性を売り込んだ。 その当時、彼らはMITS社のパソコンを所有しておらず、ソフトも全くできていなかったにも関わらず。 結果的にその後2人は大学のPCを利用し、8週間でBASICを作り上げ納品に成功した。 ギリギリで帳尻を合わせた有名な事例だ。 ”一生を砂糖水を売るか世界を変えるチャンスに賭けるか” Appleがスタートしてまだ5年しか経っていないにも関わらず、ペプシコの敏腕CEOを引き抜いたジョブス。 その時に彼に言ったのが “このまま一生、砂糖水を売り続けるのか、それとも世界を変えるチャンスを見たいですか?” まだまだ小さな会社だったのにも関わらず、ビジネス界の大先輩にこんな大口を叩いたのも、なかなかだ。 世界を変えているのは頭の良い不良たちだ めっちゃクールなデザインの指輪でピッチ大会優勝 我々ビートラックスは以前、日本のスタートアップ向けにサンフランシスコでピッチイベント (SF Japan Night) を開催していた。 その際に日本で予選会を行っていたのだが、第5回大会では、指輪型のIoTデバイスをクールにプレゼンしたRingが優勝した。 ファウンダーの吉田くんが、洗練されたデザインの指輪を振りかざすだけで、メッセージを送れたり、改札を通れたりするデモを披露。そのクールさゆえに、会場が大いに盛り上がった。 しかし優勝後にわかったことが、実はそのデバイスはピッチ当時 “がわ” だけであり、テクノロジー自体はまだまだ開発中であったということ。 そして、製品化したプロダクトもデモ版とはかなり違うものがリリースされた。 ただ、スタートアップではピボットやデザインの変更は日常茶飯事。むしろユーザーに向き合い、改善を進めている印でもあることは、この場で改めてお伝えしておきたい。 ストアの全てのパソコンにPinterestを表示 ハッタリを一番活用しがちなのが、スタートアップの立ち上げ時期。それぞれがユニークな手法でユーザー獲得をする中でも、Pinterestが行った施策が面白い。 最初は、ファウンダーのベンがサービスを友人や家族に知らせ、彼らがユーザーとなった。そしてその後、連日複数のパソコンストアに通い、置いてあるパソコンのブラウザーにPinterest.comを開いたままにしたことで、知名度を上げたのだ。 主要スタートアップサービスの初期ユーザー獲得方法 海賊版配信から正規ライセンス配信で大成功したクランチーロール 次は、カリフォルニア州立大学、バークレー校に通うアニメ好きの若者たちが投稿サイトを立ち上げたクランチーロールの事例。 当時は日本アニメのファンサブが中心に投稿され、その多くが法的には著作権を侵害する内容であったが、サイトは急成長を遂げていった。 その後、日本法人を設立し、アニメ会社と提携について交渉を開始。自サイトの違法動画を削除、動画投稿サイトにおける違法投稿の検出ソフトの提供などを行い、テレビ東京や、GDH、東映などとも契約を結ぶまでに至った。 その後も成長を続け、現在ではソニーグループの傘下に入り、世界ユーザー数は1億2000万人(有料会員500万人)を誇っている。 筋金入りのハッタリだったセラノス おそらく今まで最も壮大なハッタリスタートアップといえば、セラノスだろう。 セラノスのサービスは、たった数滴の血液検査を通じて手軽にユーザーに対して30項目の検査を可能にするというコンセプト。当時19歳だった女性起業家、エリザベス・ホームズにより2003年に創業した。 彼女は、女性版ジョブスと言われるほどのカリスマ性を武器に、多くの著名人とのコネクションを構築。そしてそれを活用することで世の中に”夢を見させる”ことを可能にした。 セラノスは、医療業界や投資家から大きな注目を集め、シリコンバレーの大手VCの数社をはじめ、オラクルの創業者からも投資を受けた。最終的には会社は90億ドルの評価額となり、7億ドル以上もの資金を集めた。 そして社外取締役にも元国務長官、元国防長官、労働省長官、国務長官、海軍提督や上院議員などを揃え、でアメリカのドラッグストア大手ともパートナーシップを結んだ。 しかし、内部からのタレコミもあり、実はハッタリだらけの内情をウォール・ストリート・ジャーナル紙にバラされてしまった。 その結果彼女は刑事告訴を受け、裁判で有罪になったのだ。 ハッタリ系スタートアップ大賞 運営チームがサクラだったマッチングアプリ 以前に我々が日本のマッチング系アプリに対する支援を行っていた頃、出来たばかりのサービスをテストしてみようと思い、使ってみた。 そのアプリは相手とメッセージを送り合い、マッチして初めて写真と名前が表示される仕組みだった。 マッチしたユーザーが見つかった!と思った束の間、その相手がまさにそのスタートアップの運営スタッフだったのだ。その時はお互いかなり気まずい雰囲気になった。 存在しないサービスをLP+PPCで市場テスト 実はハッタリ作戦は、プロダクトの方向性が決まってない時にも利用可能。 シリコンバレー界隈のスタートアップでは定番となっているのが、その実現性は一旦無視して、複数のプロダクトコンセプトを出すこと。 それぞれに対しての理想的なキャッチコピーとビジュアルを掲載したLPを作成し、それに連動するWeb広告を走らせる。 その結果を見て、最も反応の良かったコンセプトを採用することで、プロダクトの成功率を上げるという手法だ。 身に付けたい技術を履歴書に羅列した某CEO 最後は自分自身の体験。学生で駆け出しデザイナーだった頃、どうしてもプロのデザイナーになりたかったため、必要とされるスキルを片っ端から履歴書に書いた。 もちろん、複数のプロジェクトを受注できたのだが、できるふりをしていたため、それがバレないように必死にスキルを身につけた。 また、どうしても自分だけでは解決できない場合は、大学の先生に手伝ってもらったりもしていた。 なぜたまにはハッタリもありな5つの理由 このような感じで、何かを始めた直後は特にハッタリが必要になる。 […]

ASIMOの誕生から引退まで 日米の人型ロボットの歩み

2022年3月31日にHondaが開発した人型ロボット「ASIMO」が引退した。ASIMOは2000年に初期モデルが登場した。人間さながらに二足歩行する様子は大きな話題になり、二足歩行ロボットのアイコン的な存在として、日本のロボット開発史の新たなるステージを切り拓いた。 その一方で、ほぼ同時期の4月初頭にTeslaは開発中の人型ロボット「Tesla Bot」の最新動画を公開した。その様子は、自然すぎてロボットだと思えないほどだ。全身タイツを着た人間が歩いているだけにしか見えない。 excited to try out the @Tesla bot! comment what you guys want me to test out with it! pic.twitter.com/o299JbUYkT — Shelby Church (@shelbychurch) April 2, 2022 人型ロボットの歴史を振り返ると日本とアメリカが大きく関わっている。「最初のロボット」が何かということは諸説あるが、アメリカでは1926年に「Televox」が、日本ではほぼ同時期の1928年に「学天則」が開発され、ロボット開発の歴史がスタートしている。 現在では様々なロボットが我々の生活を支えている。工場などで使われる産業用のロボットやインフラの点検用のロボット、ロボット掃除機、配送業の人手不足を解消するデリバリーロボットなどなど。 これらのロボットはその専門分野に特化した形状をしており、人型ではない。しかし一般的にロボットと言われて想像するのは、やはりASIMOのような人型ロボットだろう。 シリコンバレー発、人の課題を解決する未来のロボットたち ASIMOが登場した2000年前後は、日本のロボット開発が大きく躍進した時期であった。そのASIMOが引退した時期に、新たな人型ロボットが登場したのは象徴的な出来事だろう。 そこで本記事では主に日米の人型ロボットを比較しながら、ASIMOの登場から引退までのロボット史を振り返ってみよう。 1990年代後半〜2000年代前半 ロボット開発の黎明期 この時代は、日本でロボットが流行し多くのロボットが登場した。前述のASIMO以外にもSONYのペット犬ロボット「AIBO」や二足歩行ロボットの「QRIO」、産総研の「HRP-2」、現在も続く世界的なロボットの競技大会としての「RoboCup」の開催などが話題に上った。 また小型の二足歩行ロボットによる格闘技競技の「RoboOne」をテーマにしたテレビ番組が放映されるなどロボットブームがおきていた。 アメリカではiRobot社のロボット掃除機「Roomba」が発売され、日本でも話題になった。また同社の軍用ロボット「PackBot」など、軍用ロボットの開発もこの時期から本格的に始まっており実際にアフガニスタンなどに投入されている。 このように、アメリカでは人型ロボットよりも実用性を重視したロボットのニュースが多かった印象だ。現在、PackBotはワシントンDCの国立アメリカ歴史博物館で歴史的な発明品の一つとして、任天堂のゲームボーイ等とともに展示されている。 歩行・コミュニケーション共に「自然さ」への挑戦 歩行機能に注目してみると、前述の通りASIMOをはじめとして、HRP-2のような等身大のものからQRIO等の小型のものまで多種多様な二足歩行ロボットが開発されていたが、その動きはゆっくりしており、すり足のように歩く能力しかなかったり、歩行中にバランスを崩して転倒するロボットも多かった。 一方でアメリカのBoston Dynamics社が軍用の四足歩行ロボット「BigDog」を開発し、その非常にリアルで、実在の動物のような歩行能力で人々を驚かせた。 重い荷物を背負いながら斜面や荒れた地面を難なく歩き、横から蹴りを入れられてもバランスを保つなど、その性能の高さで世間を驚かせた。 ↑ボストン・ダイナミクス社のBigDog また、人間とコミュニケーションするための能力として、人間そっくりの外観や自然な会話の実現、表情の変化などに注目したロボットも研究・開発が進められている。 その一例として大阪大学と株式会社ココロが共同で開発した「アクトロイド」が挙げられる。 ↑初期型のアクトロイド 人間そっくりな外観のロボットで、表情も変えながら人間と対話できるロボットだ。しかしその様子はどこか不自然さを感じる人も多かった。 一般的に、人間は人間に近いリアルなロボットやCGを見ると違和感や嫌悪感を抱く「不気味の谷」現象が発生すると言われており、アクトロイドはそれを実証した形となった。 この不気味の谷をいかに解消するかが、ロボット開発における現在まで続く課題となっている。その後もアクトロイドはバージョンアップを繰り返し、その違和感は徐々に少なくなってきている。 2000年代の集大成とも言えるロボットとして、2009年に、産総研とココロが共同で開発した「HRP-4C」があるだろう。二足歩行の機能と人間そっくりの頭部を持ち、その表情も自然な感じだ。歌やダンスを披露したりファッションショーに参加するなども行っていた。 ↑HRP-4Cがファッションショーに登場 2010年代 災害現場におけるロボットの有用性 2011年にASIMOの新型が公開され、歩行機能のアップデートなどに加え、ボトルを開けて飲み物を注ぐというような、人間に近い作業も可能になった。 ↑新型ASIMOのデモンストレーション 同年3月11日に東日本大震災が発生し、その対応にロボットも投入されていた。例えば、福島第一原子力発電所の内部調査のために、前述の米iRobot社のPackBotが使用された。 また、日本のロボットとしては、国際的なレスキューロボット競技である「ロボカップレスキュー」で培った技術を元に高い踏破性能を持った災害ロボット「Quince」も投入された。Quinceは放射能汚染により人間の入れない内部状況の把握に一役買った。 ASIMOを原発作業に活用できないか、という意見もあったが、そもそも災害地での活動を想定しておらず、作業現場への投入は行われなかった。こういった災害地域では、がれきや段差を越えて進める踏破能力が重要となるため、当時の二足歩行ロボットには難しいミッションであった。 実用性を重視して進化していく日本のロボット 2013年にアメリカ国防高等研究計画局 (DARPA) は災害救援ロボットのコンテストとして「DARPA Robotics Challenge」を開催した。そこの予選で最高得点を叩き出したのが東大発ベンチャー企業の「SCHAFT」の二足歩行ロボットだ。 SCHAFTは国内ではあまり注目されなかったようだがGoogleに買収され、「日本企業として初めてGoogleに買収された企業」としても話題になった。 また、2010年後半、日本では産総研がHRPシリーズの最新型として、「HRP-5P」を開発した。これは重労働が可能なロボットとして、石膏ボードをビス打ちするデモ動画を公開し、歩行だけでなく物を掴んで運び、工具を使ってビス打ちをするという作業まで可能になっている。 ↑HRP-5Pが作業する様子 また、トヨタもマスター操縦システムで人間が遠隔操作を行う「T-HR3」を開発した。人間による操縦ではあるが、二足歩行だけでなく両手を使って様々な作業も可能だ。 バーテンダーのようにカクテルを作るデモンストレーションの実演など、人間と同じ仕事をこなす能力を示している。 一方、アメリカでの状況として、2013年にBoston DynamicsがDARPAと共同で開発した人型ロボット「Atlas」の動画を公開した。スムーズな二足歩行だけでなく、片足立ちでバランスをとる様子の動画を公開し、二足歩行技術の高さが話題になった。 Atlasはアップデートを続けており、現在でも最先端の二足歩行ロボットの一つと言える。また、Boston DynamicsはGoogle、Softbankに買収された後、2021年6月に韓国ヒュンダイ自動車に買収された。 ↑Atlasの初期型。動画後半で高度な二足歩行機能を見ることが出来る 人工知能技術によるロボットのコミュニケーション能力の向上 さて、この年代のコミニュケーション機能に注目してみると、人工知能技術の向上によってロボットの能力も飛躍的に上がっていた。 例えば、2015年に囲碁プログラム「AlphaGo」が初めて人間のプロ棋士を破るなど、人間に迫る能力を持つことが証明された。 こういった人工知能の発展は歩行機能やロボットの目となる画像認識など多くの機能で活用されており、人間とロボットの対話能力に関してもその能力向上に大きく関与している。 2014年、Aldebaran Roboticsを買収したSoftbankは「ペッパー」を発表した。 ペッパーは人間と自然に会話できる能力をもち、話している相手を目線で追うなどの仕草も違和感がなく、楽しく会話できるロボットとして日本各地で受付、案内ロボットとして活躍した。身近なロボットとしてその姿を見た人も多いだろう。 しかし、残念ながらペッパーは2020年に生産が終了している。また2022年4月にAldebaran Roboticsを前身とするSoftbank Roboticsのヨーロッパ子会社はドイツのUnited Robotics Groupによって買収された。 前述のアクトロイドも機能がアップデートされ、ホテルの受付をこなすなどの活躍が話題になっている。他の例としては、東芝がコミュニケーションロボット「地平アイこ」を開発し、日本橋三越で受付嬢を努めた。 こういったコミュニケーションロボットの中で注目すべきは、香港のHanson Robotics社が開発した「Sophia」だ。 Sophiaは高度な対話AIを持ち、さらに人間同様に自然に表情を変えながら会話する。その表情は少しぎこちなく見えるが、会話中に冗談めかしく微笑むなど、感情を持っているかのような仕草は人間が話しているのではないかと感じさせる。 Sophiaはテレビ番組に出演したり、インタビューを受けたりとその会話能力が大きく注目され、なんとFuture Investment Initiativeの開催に先立ち、サウジアラビアの市民権を取得するなど、多くのニュースになった。 ↑Sophiaのインタビューの様子 2020年代〜現在まで ロボットの身体能力の飛躍的な進歩 改めて過去のロボットを見てから現在の最新ロボットを見てみると、ASIMOの登場から大きく技術が進歩していることを実感できるだろう。 歩行能力については、ASIMOが誕生した時代ではきれいな平面など限定された足場で、ゆっくりと歩くのが精一杯で、激しく動くとすぐに転倒してしまっていた。現在では、屋内外の環境でも走る、階段を上る、ジャンプするなどが可能になっており、その移動能力は大きく向上している。 Boston DynamicsのAtlasは機能アップデートが続けられ、最新動画ではアスレチックのようなコースでパルクールを行いながら進んでいく様子を見ることができる。歩行だけでなく障害物をジャンプしながら進んだり、バク転など人間以上の動きを実現している。 ↑Atlasの最新パルクール動画 2021年にTeslaがTesla botの動画を初公開した。本記事の冒頭で触れた歩行の様子と同様に、全身タイツの人間が踊っているのではと疑いたくなるようなあまりにも自然な動きで、かえって不気味に感じるほどだ。 ↑Tesla botのダンス アメリカオレゴン州のAgility […]

SOCIAL INNOVATION CONNECT Vol.1 ―ソーシャルイノベーションの注目度の高まりー

社会にとって良いことをしたいという思いを持っていましたが、具体的にどのようなことをすればいいのかがはっきりせず、行動までに結び付いていませんでした。しかし、日常の業務の中で感じた違和感を解決することによって、自分なりのソーシャルイノベーションを生み出すことができると感じました。
「三人寄れば文殊の知恵」と言われますが、よりよい社会を一人でも多くの方々の力で作っていきましょう。
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