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「人間中心のアプローチ」で従業員のウェルビーイングを高め、持続可能なビジネスを創出するNetze BW

Next Industry 4.0で注目されるテーマの一つが「人間中心のアプローチ」である。2022年のSAP Innovation Awards でWinnerに輝いたNetze BWの取り組みは「人間中心のアプローチ」の好例だ。如何に企業は従業員に貢献し、ウェルビーングを高めるのか。そのヒントがNetze BW事例に潜んでいる。
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米国有名テック企業 CEOがこぞってスライドを嫌う6つの理由

2022年4月にTwitterを買収して話題になったイーロン・マスク。そんな彼の他に、ジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブスなどの米国有名テック企業CEOがこぞって嫌うものがある。 それが、会議におけるスライドのプレゼンだ。 ジョブズは 「“とりあえず” スライドを用いてプレゼンをすることは嫌いだ。 人はプレゼンを作り発表することで問題に立ち向かおうとするが、私はスライドを何枚も見せるのではなくテーブルに意見を全て出した状態で議論してほしい。 自分の考えていることと伝えたいことがクリアであればスライドなんていらないのだから。」 とまで言い切っている。(参照) スティーブ・ジョブズに学ぶ7つのメディアPR戦略 今回はなぜ米国有名テック企業のCEOたちがそれほどまでに会議でのスライドを用いてのプレゼンを嫌うのか、その理由を6つにまとめてお伝えする。 もちろんプレゼンをすべきではないとお伝えするつもりはない。それよりは、ビジネスにおいて相手に意見を伝える手段はたくさんあることを、改めてご認識いただけたらと思う。 米国有名テック企業CEOたちがスライドを用いたプレゼンを嫌う6つの理由 1. プレゼンが時に視聴者の望むスピードで進まないから 3ページ程度の正式な文章であれば、少し時間をとれば一通り読んで理解することができるだろう。 しかし、同じ情報をプレゼンテーションとして提供する場合、プレゼンターの話のスピード次第で自分が読んで理解するよりも時間がかかるかもしれない。 さらに、自分が理解できているところでも、視聴者の他の人が初見だった場合、逐一説明が入ることになる。 ゆえに、聴衆一人一人の議題に対しての理解度が異なる場合は、初めて会議に参加する人にとっては新たな情報をインプットするための必要な時間かもしれない。 しかし、一方で理解できている人にとっては、他の業務の時間を削って、すでに知っていることを繰り返す時間となり、非効率的になってしまう可能性がある。 Google, Apple, Teslaなどの世界トップ経営者が行う9つの会議の秘訣 2. 図式と最低限の文章だけで構成されているプレゼンは、後から自分で見直すことが難しいから プレゼンテーションは、発表者の口頭での発言なしには成立しない。 プレゼンテーションを見直すには、レコーディングなどをしておいて聞き直すか、議事録を取るしかない。 ミーティングなどに出ない人にも共有する内容の場合、プレゼンスライドではなく内容を記載した文書を見直す方が、改めて説明をする手間もかからないし、齟齬がないだろう。 また、別の人に内容を聞かなければいけないということは、時間も人的なリソースも余分にかかってしまうということ。 経営者としても、スタッフの効率を低下させているという意味で、プレゼンスライドの使用を避けたい意図があるのかもしれない。 3. プレゼンスライドには不確実性の高いアイディアも含まれていることがあるから プレゼンスライドは図を多く入れ、できるだけ文字を少なくした方が良いというセオリーもあったりすることから、時にアウトラインのような未完成の思考が書かれていることもある。 特に重要な意思決定をする場合には、ポイントだけでなく前後の文脈まで明示されていた方が、聴衆も安心して聴ける場合もある。その際にはプレゼンの形式以外を用いた方が良いかもしれない。 Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア Design Sprintのファシリテーターとしての学び 4. プレゼンススライドに用いられる図式は、ときに誤解を招いてしまうから 前述した通り、プレゼンスライドではいうまでもなく文書よりも図を多く用いる。 しかし、理解を助けるための図式のはずが、そもそも図の色や形によって誤解を招く場合がある。 特に多国籍のチームでコンテクストが異なる場合はなおさらだ。正しく伝えるべきことを伝えられなくなってしまう可能性がある。 例えば、筆者は良い結果となった数字を強調すべく、赤色で記載してプレゼンした際、弊社のアメリカ人のスタッフから「これは悪い傾向なのか?」と聞かれたことがある。 これは、アメリカにおいては赤色は良くない結果を表すことに用い、良い結果の場合は青色や緑色を用いるからである。 このように、文化間でコンテクストが異なるため、図式が誤解を招く可能性もある。 発表者の意見、意図を伝わりやすくするはずのプレゼンが、逆効果になってしまうことがあるのだ。 【こんなにも凄い】色が人の心理と行動に与える影響とは 5. プレゼンテーションでは核心をつかない議論に終始する可能性があるから 多くのスライドには要点しか書かれていないことが多く、そのためプレゼンターはその場その場で話すことを変更できる。 しかし、臨機応変に対応できることは良い点ではあるが、一方で核心をつかない議論に終始してしまう可能性も孕んでいる。 この記事を書くにあたって参考にした原文の記事には、“You can’t pin Jell-O to the wall.” (ゼリーを壁に貼り付けることはできない)という例え話が使われていた。 これは、「何かをしても何の手ごたえもない、まったく効き目がないこと」の例えとなるアメリカの諺だが、まさに議題の核心をつかずに、物事が前に進んだ「手応えのない」時間になってしまう危険性があるということだ。 ムダだらけの会議 – 海外から見た日本式ミーティングの謎 6. アイディアの良し悪しがプレゼンターの話の上手さやプレゼンスライドの作成能力に依存する可能性があるから 話し手のプレゼン力や、プレゼンスライドの作成能力によって、悪いアイディアであっても、良いアイデアのように見えて高く評価されたり、反対に素晴らしいアイディアが悪いアイディアのように見えて、そぐわない評価をされる可能性がある。 もちろん話の上手さやプレゼンスライドの完成度も含めて、プレゼン全が評価されるべきであることは言うまでもない。 しかし、純粋にアイディアそのものの良し悪しを判断する際には、プレゼンテーションではなく、ドキュメントを読む方が、よりフラットにアイデアの比較ができる場合もあるだろう。 英語でのプレゼンをクオリティを格段にアップさせる8つの方法 スライドを使うメリットは? もちろん、スライドを使ったプレゼンテーションは必ずしも悪いことではない。 事実、意見をわかりやすく伝達することを目的に、多くの人がスライドを使っているし、それがずっと続いているということは、メリットも間違いなくあるはずだ。 1. プレゼンテーションは、その場の状況に合わせて、使う言葉を変更できる 主語述語の完全な文章は、一度作成しドキュメントに載ったら、書いてあるその通りにしか読み取れない。 しかし一方、スライドを用いたプレゼンテーションの場合は、聴衆の態度を見極め、表現を変えたり、聴衆が理解ができていそうであれば基本を説明するスライドを飛ばしたりして、途中で軌道修正することができる。 2. プレゼンのほうが「完璧な文章を書く」工程は少ない 文章は文法的に正しく、読みやすいことが理想で、そのような文章を書くには言うまでもなく文章力が必要とされる。 代わりに、プレゼンスライドでは、スライドに文字を多くしすぎないために、キーワードを含めた上で、言いたいことを絞って記載することが求められる。 ゆえに、完全な文章を書くこととは違うベクトルの文章力が必要だ。 しかし、言いたいことを要約して考え、伝えることが得意な方にとっては、プレゼンスライドの文章を作成してプレゼンの練習をする方が、完全な文章を書くよりも時間がかからないだろう。 シーン別 スライドを使わない際の代替案3つ では最後に、有名テック企業のCEOたちは、プレゼンスライドの代わりにどのようにして相手に意見を伝えるのが良いと考えているのだろうか。「プレゼンスライドの代替案」に関して、場合に分けて3つ紹介する。 1. 議論して意思決定をする場合:「認識合わせ」のための情報は会議の前に共有する。 認識の齟齬があってはならない場面、例えば、意思決定や合意形成の場面では、会議に入る前に理解しておいてほしい事項まで、端的な文章にまとめ、会議に参加するメンバーに、読んでもらってから議論に入る。 この場合は認識の齟齬がないようにするため、要点をまとめたスライドよりも、完全な文章のドキュメントを作成する方が良いだろう。 そうすることで、会議において認識の確認のための時間を削減することができる。 その結果、全員の時間を使って行う、会議の限りある時間を「前提の共有」より重要な「意思決定」や「今後の方針の議論」といったことに割くことができるだろう。 例えばAmazonでは、会議の議論の密度を高めるため、プレゼンスライドの代わりに「6ページのメモ」を用意し、議論する前に黙読しているという。 また、LinkedInのCEOであるJeff Weinerは次のように述べている。 「もし、プレゼンテーションをするのであれば、ミーティング前に、現状の立ち位置 、目標到達地点、そこにたどり着く方法、そのためのネクストアクションというシンプルな内容で1枚のドキュメントを用意しておくと、セールスに成功する可能性が高くなる。」 社内へのプレゼンだけでなく、顧客に自分たちのプロダクトを理解してもらうことが商談成功の鍵となる、セールスでも役に立つテクニックだ。 どんな場合でも「いかにしたら相手に伝わりやすくなるか」を考えて、工夫することが、成功の鍵となるだろう。 シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 2. 指導やトレーニングの場合:一方的なプレゼンをするのではなく、参加者とインタラクティブに交流する 研修の場合は、一方的に話し手が話すプレゼンではなく、聴衆が参加できるような体験を作ることに注力すべきだ。 プレゼンテーションはどうしても受け身で聞いて理解する形式になりがちだ。 聴衆が発言したり、メモを取らない限り、ほとんどの人の話は耳で聞いて理解することになるが、ただ話を聞いているだけでは、後になってほとんど何も覚えていないのが人間というもの。 研修の内容を覚えてもらうためには、聴衆を受動的な視聴者にするのではなく、聴衆に能動的に参加してもらう必要がある。 話し手は「伝える」工夫も大切だが、いかに「伝わる」、そして「覚えてもらう」ようにするかに注意を払い、状況に応じて使うツールを工夫する必要がある。 ワークショップをするべきか?会議をするべきか? […]

これからのブランドはどんどん透明になっていく

皆さんは、最近のApple製品に “とある” 共通点があることに気づいただろうか? そう、あのロゴがかなり目立たなくなってきているのだ。例えば、以前は必ず画面の下の真ん中の目立つ場所にあったAppleのロゴが、最新のiMacにはない。なんか変な感じがする。 ステータスシンボルのAppleロゴが無い! 同様に、ヘッドフォンのAirPods Maxにもロゴが無い。 これまでのAppleであれば、Mac, iPhoneなどの製品には必ず目立つ箇所にロゴが掲載されていたり、場合によっては、ロゴが光る仕様にまでなっていた。 スタバでドヤリングと呼ばれるくらい、Appleのロゴがついた製品を持っていることが一つのステータスシンボルになっていた。 しかし、新しく発表される製品にはなぜか、あの美しいロゴが隠されている。結構なお値段の商品なのに。 ちなみに、Appleが買収したBeatsのヘッドフォンなどは、左右に大きく掲載されているロゴが人気を集め、その商品の大きな魅力になっていた。 パタゴニアもロゴの掲載を控え始めた 実は、商品に目立つようにロゴを表示しなくなったのは、Appleだけではない。人気アパレルブランドのパタゴニアも製品上のロゴ掲載を控えるようにし始めている。 よりサステイナブルなブランドを目指しているのが理由。 パタゴニアの発表によると、一つの製品をより長く着てもらうこよで、より環境に配慮した結果につなげる狙いがあるという。 同ブランドの調査では、ロゴが入ったシャツやコートは、他の人に譲る可能性が低くなったり、部屋着としてきる頻度も下がるという。結果として、製品をきてもらえる “寿命” が短くなってしまいがちだという。 ライフサイクルの長い服を着てもらうことは、持続可能な世の中を実現する第一歩になると考えた。 ロゴを掲載しなくなったことで、パタゴニアは、ある程度の経済的損失を被ることになるだろう。 この変化は、パタゴニアが短期の商業的な結果よりも、より長期的に社会に貢献できるブランドを目指している決意表明でもある。 全てのデザイナーが知っておくべきエシカルデザインとは ニューバランスもロゴなしスニーカーを発表 スティーブ・ジョブスが愛用したことで知られるスニーカーブランドのニューバランスも、最新のコレクションでトレードマークの “N” のロゴを取り除いたスニーカーを発表した。 同ブランドは、1906年のブランド誕生から1世紀以上となる歴史と伝統を祝し、毎年5月15日を「Grey Day」とし、「グレー」をモチーフにした商品を展開。 今年発表された「Grey Day Collection」のうち、限定モデルの “574 Un-N-Ding” には、両サイドに “N” のロゴが掲載されていない。 多くのD2Cブランドもロゴの表記が最小限 そういえば、新規参入が多いD2C系のブランドのその多くも、ロゴの表記がかなり控えめになっていることに気づく。EverlaneやAllbirdsのほとんどのプロダクトにはロゴが表記されていないし、メガネのWarby Parkerもかなり控えめな扱い。これらのD2Cブランドも、かなり “透明性” の高いブランドといえるだろう。 ロゴを掲載しない本当の狙い Appleやパタゴニアなどのトップブランドがロゴの掲載を控え始めている背景には、ブランドとしての透明性を高めたいという狙いがあると考えられる。 ネットを通じてさまざまな情報が直に得られる現代においては、ブランディングを行う際にも、より消費者に対して正直で、透明性の高い存在になる必要がある。 以前までは、”ブランドイメージ” を重視し、ロゴやデザインを通じてそのイメージづくりを行うのがブランディングの主な役割だったが、現在においては、それはもはや”まやかし”に近く、あまり通用しなくなってきた。 であれば、表面を取り繕うよりも、自分たちのバリューがより伝わるブランディングを行うことが、よりファンを増やすための正しい戦略になってくる。 言い換えると、より透明で、可視性の高いブランドが求められる。 ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために – 透明性の高いブランドとは? 透明性の高いブランドとは、一言で言えば、消費者に対して率直で正直であること。過度な広告や、自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢のあるブランドである。 自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 また、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 例えば、社会的な問題に対して、自社の姿勢をしっかりと示し、より良い世の中のために自分たちがどのように貢献できるかを、ブランドとして体現する必要もある。 以前にNikeがBLMや人種問題に対してかなり積極的なメッセージングを発信したのも、透明性を上げる活動の一つである。 一人の男が4年前に放ったメッセージが今、世界を動かし始めた 完璧な人はいない。完璧なブランドもない。 ブランド施策を提供する際に、多くのクライアントはより “完璧” なイメージの構築を求める。しかし、実はそれは逆効果になることの方が多い。 というのも、現代においては企業のブランドも一人の人間のような存在で、顧客とブランドの関係もそれに近い。 完璧な人間が存在しないように、完璧なブランドも存在しない。むしろ、そのブランドの裏にある生々しいストーリーこそが、ユニークな価値になる。 自分の会社を追い出されたこと、倒産しかけたこと、短い余命を感じ、必死にイノベーションを生み出したこと。そんなストーリーがAppleを世界一のブランドに成長させた大きな要因だと思う。

GoogleとAppleの違いを画像で表現してみた

スマホ、スマートホーム、クラウドサービスなど、多くの分野で覇権を競っているのがシリコンバレーの巨大テクノロジー企業、Google, Apple。
時価総額ランキングでも常に上位にランキングし、ビジネスモデルの側面ではかなり共通点がありそうなこの2社。しかし実はさまざまな側面でかなり異なる戦略を取っている。
GoogleとAppleのデザイン、組織、カルチャー、マーケティングなど10の項目に対してのアプローチの違いを画像で表現してみた。

Google: ユーザーが欲しいと思っているものを作る
Ap…

Appleの復活と躍進のシンボル iMacの進化をデザイン視点で振り返る

iMacはデザイン・イノベーションのシンボル 初代・2代目iMac:“パソコンっぽくない”デザインで世界に流行を巻き起こした 3代目iMac:Appleの姿勢の現れ、デザインの重要性を追究したプロダクト 4代目・5代目iMac:Appleのスタイルを確立したエレガントでシンプルなデザイン 6代目iMac:プラスチックからアルミニウムへ、持続可能性も考慮したデザインに 圧倒的な先進性と変わらぬデザイン哲学、iMacにはタイムレスな魅力がある Appleは史上初の時価総額2兆ドルを超えた企業になった。もちろん同時にその時点で世界で最も価値のある企業になったということである。グローバルブランドランキングでも堂々第一位を獲得。名実ともに世界一の会社になっている。 一時期は倒産寸前まで追い込まれていた企業とは思えないぐらいの大躍進をしたことになる。 そのAppleを復活させたのはティーブ・ジョブスであることは間違いない。一時は会社を去った彼が復帰したことで、Appleは「救済」された。 そして起死回生を支えたプロダクトが紛れもなくiMacである。 20数年前に瀕死の状態だったAppleはジョブスが復帰しiMacをリリースしたことで息を吹き返し、今日に続く大きな成長を成し遂げた。 iMacの歴史はデザイン・イノベーションの歴史 デザイナーにとってiMacのデザインストーリーから学べることは多い。色、形、素材、小型化の探求は、リリースされるごとに大きなブレークスルーをもたらした。 また、iMacというプロダクト自体がイノベーション、ビジネス戦略、ハードウェアデザイン、ソフトウェア開発、ユーザー体験全てにおいてイノベーションの本筋を学ぶ優れた教材にもなっている。 Apple復活、そして躍進の象徴でもあるiMacのデザインの進化を見てみよう。 初代iMac (1998): Appleを倒産から救った革命児 1985年にAppleを去ったスティーブ・ジョブズが同社に復帰したのが1997年。その際に真っ先に手をつけたのが、プロダクトラインの一新である。 ジョブスがいなくなった後のApple製品は数が多すぎたし、何よりもデザインがどんどんダサくなっていった。それに対してジョブスは大胆にほとんどのプロダクトを廃止。 限られたリソースを「一つのプロダクト」にフォーカスした。そして、急ピッチでデザイン・開発され、復帰第1弾としてリリースされたのが初代のiMacである。 ジョブズがアップルに復帰して最初にメジャーリリースされた初代iMacは、当時インダストリアルデザインのVPを務めていたジョナサン・アイブを世に送り出したコンピュータであると同時に、Appleが復活の道を歩むことを発表したマシンでもある。 申し訳ありませんが、ベージュはありません。 iMacのデザインは、ベージュの四角い箱に入っていたそれまでのパソコンの常識を全て覆した。ブルーのな半透明の筐体に全てが入れられ、CPUとディスプレイが一体型。 ちなみにこの色の正式名称は”ボンダイブルー”で、ジョブスがオーストラリアのボンダイビーチの海の色からインスパイアされてつけた。 この半透明のデザインスキームは、キーボード、マウス、そしてUSBケーブルに至るまで細部にまで採用された。その後、キャッチーな5つのカラーオプションも追加した。 そしてその色の名前自体がおしゃれ。 ボンダイブルー ブルーベリー グレープ タンジェリン ライム ストロベリー 初代iMacの全てが“パソコンっぽく”なかった。それはまさに“レトロフューチャリズム”を体現したデザイン。 当時はことキャンディカラー&スケルトンのデザインスキームをパクる企業が続出するほど大流行した。 ちなみに、このiMacの鮮やかな色合いは、1960年代のオリベッティ・タイプライターからインスパイアされたと言われている。 初期のボンダイブルーに追加された5つのカラーオプション デザインの可愛らしさに人気が集まり、教室やリビングルームに置くパソコンとしても大人気。Macというプロダクトを一部のマニアックなファン向けから、学校や家庭で使えるみんなのパソコンに成長させた。 また、多くのWindowsユーザーが初めてMacに乗り換えるきっかけにもなったプロダクトでもある。 そして、性能も当時にしては十分。インターネット時代のために作られたApple初のコンピュータでもあった(“i”はインターネットの意味)。 ただ、こだわって”まん丸”にデザインされたマウスは手首が痛くなるほどめっちゃ使い難かった。 2000年にリリースされた2代目ではデザインと性能の改善をするとともに、インディゴブルーをはじめとした、13色の豊富なカラースキームを提供した。 2代目iMacに採用された13色のカラースキーム 3代目iMac (2002): フラットスクリーンを採用した通称 ランプiMac 初代および2代目iMacの大きなプレッシャーを受け、次にリリースされるiMacに世の中の注目は集まった。しかし、結果としてそれは良い意味で期待を大きく裏切る結果となった。 2002年のMacworld San Franciscoにて、iMacのデザインの話題は色から形へと移った。ここで発表された3代目のiMac、正式名称 iMac G4はその形を大きく変化させ、カラーバリエーションは白だけになった。 そのシェイプは再びパソコンの常識を覆すものであった。むしろその形は家電に近く、動く姿はまるでピクサーのオープニングアニメーションに登場するLUXO Jrランプのアニメーションを彷彿とさせ、このモデルは通称ランプiMacやiLampと呼ばれた。 実際、ピクサーはAppleと協力してiMacを題材にした2つの短編アニメーションを制作した。 ピクサーからインスパイアされたiMacのCM この世代のiMacからディスプレイがCRTから液晶フラットパネルに移行した。その裏にはジョナサン・アイブによる「重力に逆らっているように見える」デザインを実現する狙いがあった。 磨き上げられたネックに吊るされた15インチの液晶パネルは、iMacの部品を収納するドーム型のベースに固定されている。コンピューターの筐体とディスプレイを区別することで、LCDパネルを薄く動かしやすいデザインを実現した。 この設計により、ディスプレイを360°縦横無尽に動かすことを可能にした。キーボードもマウスも透明感を残しながらも進化させた。 その当時ジョナサン・アイヴは、彼のこだわりが凝縮されたモデルだと説明。与えられた制約を生かし、限りなくエレガントなデザインを生み出した。 確かにそれは初代iMacにも劣らない革命的なデザインであり、シンプルさの追求でもあった。そして、無機質なプロダクトに「可愛らしさ」を追加することでより親しみやすさをアップさせた。 この斬新なデザインが評価され、現在、近代美術館の建築デザイン部門にも展示されている。 Appleではデザインが最も重要であり、テクノロジーはそのデザインを実現する手段として極限まで追及されていることを体現したプロダクトでもある。 ソフトウェア面を見ても、iTunes, iMovie, iPhotoなど、現在も利用されているアプリの源流であるiLifeシリーズのソフトウェアがプリインストールされたのもこのモデルからである。 しかし、この世代のiMacに弱点がないわけではない。デザイン性を追及した結果、スピーカーを内蔵することができず、外付けにせざるをえなくなった。 外付けスピーカーを余儀なくされた3代目iMac 4代目iMac (2004): iPodのデザインモチーフをパソコンに採用 次世代iMacのキャッチコピーはシンプルだった。それは、”From the creators of iPod(iPodの生みの親たちから)”だ。 これは、Appleのビジネスが音楽プレーヤーによって急速に変貌を遂げたことを端的に表している。 かつては単目的のアクセサリーだったiPodは、この時点で現代の多くのユーザーのデジタルライフスタイルに欠かせない存在となり、iMacにもデザインにも直接影響を与えている。 このモデルの正式名称はiMac G5。デザイン面では、これまでの奇抜なシェイプや素材ではなく、よりシンプルに洗練されたスタイルを追及。フラットパネルディスプレイに本体のパーツ全てを格納することで、究極のエレガントさを生み出した。 ディスプレイの厚みは2インチ弱。アルミニウム製の台座に吊るされたiMac G5は、当時世界で最も薄いデスクトップコンピュータだったとAppleは主張していた。 先代に引き続き、カラーは白のみでディスプレイサイズは17インチと20インチの2種類。全体のシェイプ、雰囲気、プラスチックの質感の全てがiPodとのデザイン的共通項となっていた。 このデザインを踏襲した第5世代では、より薄く、性能をよりパワフルに、そしてiSightカメラを標準装備することでオンラインコミュニケーションに動画の概念を導入した。 2006年にはそれまでで最も大きなスクリーンを持つ24インチのモデルを追加した。この辺からが現在のiMacに直結したデザインスキームが始まっている。 iPodのデザインスキームを採用した4代目iMac 6代目iMac (2007): プラスチックからアルミニウムへ、時代が変わる iPodがiMac G5のデザインに影響を与えたように、iPhoneも次世代iMacにインスピレーションを与えた。 この世代からそれまで一貫して採用してきたデザインスキームである透明感から、新しいデザインスキームである”メタル感”への移行を進めた。これは同じ年に発表された初代iPhoneと同じ。 プラスチックはほとんど使われず、黒いガラスのベゼルとアルミニウムの筐体に囲まれた大きくて光沢のあるディスプレイは、iMacを一瞬にしてよりモダンな印象にした。 外側のケーシングには、RAMアップグレード用のスロットにアクセスするために、目に見える一本のネジが使われている。同様のスタイルは、AppleのCinema DisplayやユニボディのMacBookにも採用された。 スティーブ・ジョブズは、プロのユーザーは新しいデザインが従来のモデルよりもプロ用のコンピュータに似ていると感じ、消費者はさらにハイエンドのコンシューマー向け製品に似ていると感じていると説明。 このユーザーフィードバックをもとに、MacBookやディスプレイもそれまでプラスチックから、アルミやチタン合成をメイン素材として採用し始めている。 アルミをメイン素材としたMac Proとディスプレイ また、この時期から世の中ではテクノロジー企業やデジタルデバイスの環境に対する影響が叫ばれ始めていた。 それはAppleに対しても例外ではなく、20インチや24インチのディスプレイへの移行は、すべてのパーツにおいてさらに多くの材料が使われることを意味していた。 プラスチックに比べ、アルミニウムとガラス素材はリサイクル性にも優れてる。プラスチックからアルミニウムとガラスに切り替えたことは、持続可能性の面で大きな飛躍を実現した。 その後、よりシンプルさを追及するために、マウスもキーボードもワイヤレスを採用した。2009年の7代目ではUnibodyを、2014年にはRatina 5Kのディスプレイを実現した。 その後もiMacはシンプルさと性能の追及は続けられ、エレガントなデザインとカテゴリー最高レベルの性能の両立を達成し続けている。 まとめ: iMacはそれぞれの時代における最高峰のデザインの体現 このようにiMacは時代とともに進化を続け、現在の姿にたどり着いている。新しいモデルがリリースされるたびに「その手があったか!」という感を受ける。 それはAppleが常にデザインの限界を推し進め、与えられた制限の中で最大限のデザインを成し遂げることで常に時代の最先端を進んでいることがわかる。 […]