南アフリカ出身の新鋭デザイナーが語る 貧困問題・奴隷制の歴史から見るサステナビリティ

 南アフリカ出身でケープタウンを拠点とするデザイナー、シンディソ・クマロ(Sindiso Khumalo)は、自身の名を冠したブランドを通したサステナビリティへの取り組みについて語った。クマロは2月に2020年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストにも選ばれており、10月にもサステナブルなブランドに贈られる「グリーン・カーペット・ファッション・アワーズ(GREEN CARPET FASHION AWARDS)」で最優秀デザイナー賞を獲得した。

 クマロは、オーガニックコットンや麻といった素材で作られたテキスタイルを使用し、少量しか生産しない。さらにその取り組みを社会的な影響やエンパワーメントに焦点を当てたものに拡大している。「私が思うに、このトピックは主に欧米で環境問題について語られる一方通行的なものとなっている。それも本当に大切なことだと思うけれど、サステナビリティについて話すとき、私は貧困問題を解消するという側面から見るようにしている。ムンバイでもケープタウンでも、世界の貧しい地域を見てみると米ミシガン州フリントの水道汚染のような環境問題が常にある。私にとって環境問題と貧困問題は密接に関連しているもの」と述べた。

 「サステナブルでいるためには多くの方法がある」と彼女は語る。ミラノ・ファッション・ウイーク期間中の9月24日には、アメリカの奴隷解放運動家のハリエット・タブマン(Harriet Tubman)にあてた21年初春夏コレクションを同氏のニックネームから「ミンティ」と題してオンライン披露した。同コレクションでは、タブマンもその功績を称えられている黒人奴隷をひそかに逃がした地下鉄道の指導者の制服に見られるシルエットを使用したり、奴隷の多くがコットンのプランテーションのために連れられてきたことから全体に綿花をプリントしたドレスも制作した。

 「奴隷制度があった頃これらのプランテーションは美しく見え、女性は綺麗な洋服を着ていた。一方で、その美しさのそばでどれほど非人道的で暗いことが起こっていたかは誰もが直接認めなかった。私も綿花がプリントされた美しいドレスを通して同じような緊張感を作りたかった。この綿花は6歳の子どもが摘んでいたもの。私の息子は6歳で、息子が毎日綿花を摘んで鞭で打たれているのを想像したとき、それを表現したいと思った」。

 「黒人女性に対する暴力はタブマンの時代からずっと続いている。このトピックについて話すこと自体も重要だが、人々を引きつける説得力のある方法で話すことも大切。私たちが象徴的な黒人女性の話をしていかないと、忘れ去られてしまう。このような女性についての話しを通して教育し、ファッションを黒人の歴史と文化について伝えていくツールとして使用することが大切だ」と述べた。

 また、同コレクションではブルキナファソ(西アフリカの国)にあるブランドの工房で手織りしたダファニコットンを使用し、搾取的な性産業から逃れるのを支援するケープタウンのNGOを通して女性を雇用して、手編みのポケットや刺しゅうを施した。クマロは「セックスワーカーにトレーニングを提供しながら共に仕事し、性産業に戻らないようにすることは私にとってサステナビリティの一部。オーガニックコットンをたくさん使用することで、サステナブルなデザイナーになれるとは思わない。それ以上のことをしなければならないような気がする。素材に限ったことでなく、価値観や人に関連したものでなければならないことを理解する必要がある」と語った。

 クマロがサステナビリティについて深く考えることになった背景には人種における多様性と包括性も大きく関連しており、「他の黒人がサステナビリティについて話しているのを見るまで、自分がこの話題に含まれていると感じなかった」と言う。「私にインスピレーションを与えてくれたのはオーロラ・ジェームズ(Aurora James)だった。彼女が自身をサステナブルデザイナーと呼び始めたとき、『ああ、私もサステナブルデザイナーになれるわ』と思った」とコメント。

 アフリカの伝統や文化をインスピレーションとし、現地の技術を活かしたバッグやシューズを生産するブランド「ブラザー ベリーズ(BROTHER VELLIES)」の創業者であるオーロラは6月に「15パーセントプレッジ(15 Percent Pledge)」を立ち上げ、米国人の約15%を黒人が占めるとされていることから主要リテーラーに対し棚の15%を黒人所有の企業に与える誓約を呼びかけた。自身のブランドも参加したクマロは、「オーロラの働きかけで多くの人々が目覚め、有色人種のデザイナーを見つけるよう動き出した。ジョージ・フロイド(George Floyd)氏の白人警官による暴行死事件以降、現状を変え始めているポジティブな動きがたくさんあると本当に実感している」と述べた。

 クマロはファッション業界にあるサステナビリティへの課題に多角的な視点を加える存在だ。「ビジネスを成長させ、それと共に多くの人と一緒に成長していきたい」と言う。

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「ユニクロ」と「無印良品」の明暗を分けたコロナ禍決算 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。大手専門店の2020年3〜8月期決算が出そろった。日本発のグローバルSPA(製造小売り)として存在感を強める「ユニクロ」のファーストリテイリングと、「無印良品」の良品計画の業績比較から分かったこととは?

 10月8日の良品計画(6カ月変則決算)に続いて15日にはファーストリテイリングも2020年8月決算を発表したが、コロナ禍の両社の業績は明暗を分けた。国内事業とアジア事業の早期回復にECの拡大も加わってダメージを最小限に抑えたファーストリテイリングと、欧米事業の悪化とコロナ前からの過剰在庫で深手を負った良品計画の格差が一段と広がった。

コロナ禍でも国内ユニクロとジーユーが健闘

 ファーストリテイリングの2020年8月期連結決算は、コロナ禍の下半期も売上収益が前期比(以下、同)21.8%減、営業利益も126億円の黒字に踏みとどまり、通期の売上収益は12.3%減の2兆88億4600万円と大台を堅持した。売上総利益率も48.6%と0.3ポイント減に抑え販管費を5.7%削減し、コロナ禍による店舗や商標権(「ヘルムート ラング」「Jブランド」)の減損230億7400万円を計上しても、通期の営業利益は1493億4700万円(42.0%減)を確保。当期利益は903億9800万円と前期から半減したが、純資産は9960億7900万円と125億4500万円増加し、有利子負債は757億2800万円も減少した。

 国内ユニクロ事業の売上収益は上期が暖冬で5.7%減、コロナ禍で店舗の休業が広がった3〜5月(第3四半期)こそ35.5%減と落ち込んだが、店舗営業が再開した6〜8月(第4四半期)は20.2%と大幅増収に転じ、通期で7.6%減の8068億8700万円と健闘。営業利益も1046億8600万円と2.2%増加した。

 国内ユニクロのECも下期は54.7%も伸び、通期でも29.3%増の1076億円と事業売り上げの13.3%に達したが、コロナ禍で大手アパレルのEC比率が3割、4割と跳ね上がる中では今ひとつ勢いを欠き、店在庫引き当てによるローカルC&C※1.の遅れが指摘される。ジーユー事業も売上収益が上期12.9%増・下期6.4%減、通期で3.1%増の2460億9100万円、営業利益も22.5%増の218億3500万円と健闘したが、足を引っ張ったのが海外ユニクロ事業とグローバルブランド事業だった。

※1.ローカルC&C(クリック&コレクト)…EC受注に顧客の近隣店舗の在庫を引き当て、店渡しやローカル直行宅配で最速かつ送料なしで届けるローカルOMO(店舗とECの融合)体制

足を引っ張った海外ユニクロとグローバルブランド

 海外ユニクロ事業は売上収益が17.7%減の8439億3700万円、営業利益が63.8%減の502億3400万円と、国内ユニクロ事業やジーユー事業に比べると落ち込みが大きかった。

 グレーターチャイナ地区はコロナ禍からの回復が早く売上収益が9.3%減の4560億円、営業利益が26.3%減の656億円と落ち込みが軽微だったが、その他アジア・オセアニア地区は売上収益が33.3%減の2045億円、営業利益は4割減と大きく落ち込んだ。コロナの勢いが衰えない北米・欧州の売上収益は1843億円と15.5%減少し、北米は大幅減収で赤字が大幅に拡大、欧州も減収で若干の赤字となった。反日にコロナ禍も加わった韓国は閉店が相次ぎ、落ち込みの激しい米国での店舗使用権の減損もかさみ、海外ユニクロ事業で158億円の減損損失を計上している。

 グローバルブランド事業は欧米のコロナ感染拡大でコントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業、Jブランド事業が赤字を継続、セオリー事業が赤字に転落、プラステ事業も減収・赤字になり、営業収益は26.9%減の1096億3300万円、営業利益は127億300万円の赤字に転落した。

 結果、連結売上収益に占める国内ユニクロのシェアは2.1ポイント上がって40.2%、ジーユー事業は1.9ポイント上がって12.3%、計52.5%と前期の48.5%から4.0ポイント上がって過半割れから逆転。グレーターチャイナ・ユニクロは0.8ポイント上がって22.7%、その他アジア・オセアニアは3.2ポイント下がって10.2%、北米・欧州は0.4ポイント下がって9.1%、グローバルブランドは1.0ポイント下がって5.5%となった。営業利益に占めるシェアも、前期は海外ユニクロ事業が50.8%と過半を占め、国内ユニクロ事業(37.5%)とジーユー事業(10.3%)の合計47.8%を凌駕していたが、今期は30.6%に落ち、単独でも63.8%に上昇した国内ユニクロ事業に逆転された。

 売上収益では海外ユニクロ事業が3期連続で国内ユニクロ事業を上回ったが、営業利益では19年8月期の一期天下に終わった。

在庫処分と欧米事業の損失で疲弊した良品計画

 良品計画の20年8月期連結決算(6カ月変則)は、営業収益が前年同期比(以下、同)17.1%減の1793億9200万円、売上高が17.2%減の1789億3300万円、営業利益が95.8%減の8億7200万円と大幅な減収・減益となった。

 コロナ禍で休業店舗が広がった3〜5月期は売り上げが30%も落ち込んで売上総利益率が46.6%と前期から3.5ポイント低下し、28億9900万円の営業赤字に転落。店舗営業が再開した6〜8月期は売り上げが3.3%減まで回復したが、値引き処分がかさんで売上総利益率は46.4%と前期比5.3ポイント低下し、営業赤字が37億7200万円に拡大した。

 MUJI USAなど海外事業に関わる減損損失91億3700万円、国内店舗の減損損失51億2800万円、固定資産除却損11億6900万円、リース解約損32億3600万円など計186億7700万円の特別損失を計上して当期純損失は186億1400万円に達し、純資産は前期末から255億円減少。在庫が積み上がって棚資産回転も悪化し、有利子負債は前期末の50億7300万円から768億500万円に急増した。

 国内事業の営業収益は前年同期比7.8%減の1224億2800万円と減少率は国内ユニクロの下期(10.0%減)より軽かったが、セグメント利益は70.1%減の39億7400万円と減少率は国内ユニクロの下期(4.8%減)をケタ違いに上回り、値引き処分による収益面のダメージが大きかった。国内直営店の売り上げも882億3400万円と13.7%減少したが、ウェブ(EC)売り上げが161億8900万円と37.9%増加して国内直営事業売り上げに占める比率も前期の7.0%から11.5%に上昇し、国内直営事業売り上げは1068億900万円と9.1%の減少に収まった。

 海外事業の営業収益は31.9%減の596億9100万円、セグメント利益は96.2%減の2億5700万円と大きく落ち込んだが、コロナ禍からの回復が早かった東アジア事業の落ち込みが軽かったのに対し、欧米事業と西南アジア・オセアニア事業のダメージは大きかった。

 東アジア事業は営業収益が27.5%減の453億9500万円、セグメント利益が31.0%減の59億9000万円と利益の落ち込みが小さかったのに対し、西南アジア・オセアニア事業は営業収益が41.2%減の49億8100万円、セグメント利益が3億9600万円の赤字と前期から赤字が9倍に肥大。欧米事業は営業収益が47.3%減の65億8500万円、セグメント利益が53億3700万円の赤字と前期から赤字が3倍近くにかさみ、売り上げ対比の赤字が81%にも達して事業の継続が難しくなった。

 MUJI USAについては20年3月31日段階で貸付金46億9400万円、その他債権11億1200万円の損失が予想されていたが、その他に撤退店舗の残存期間賃借料32億2000万円、リース解約損32億3600万円が今期決算に計上され、計122億6200万円の損失が生じた。連邦破産法11条申請によって翌連結会計年度以降に少なくとも26億1300万円の債務免除益が見込まれるとはいえ、100億円もの損失は海外展開リスクの大きさを露呈した。

格差が広がったファーストリテイリングと良品計画

 ファーストリテイリングはコロナ禍の20年8月期でも大きく売り上げを落とすことなく回復も欧米を除いて早く、在庫もほとんど積み上がらず値引きロスも抑制され、営業利益の落ち込みも4割強に収まった。対して良品計画はコロナ前からの不振在庫の積み上がりに売り上げ低下が加わって値引きロスがかさみ、営業利益が96%も落ち込んだ。

 ファーストリテイリングは20年8月期も在庫回転が2.50回と前期の2.68回から大きく減速せず、棚資産回転も20日弱の長期化に抑え、運転資金回転日数も7.5日しか伸びず、必要運転資金は4%軽減された。純資産対比運転資金比率も18年8月期の60.5%から19年8月期49.6%、20年8月期47.1%と改善が進み、コロナ禍でも借入金を11.4%、757億2800万円圧縮して、純資産対比負債比率も同様に75.5%から67.7%、59.2%と、どんどん改善されている。

 対して良品計画は在庫回転が前期(20年2月期)の2.28回から今期(20年8月期)は1.87回転と大きく減速し、棚資産回転も前期の174.0日から今期は202.4日と1カ月近く長期化して、運転資金回転日数も145.6日から186.6日へ41日も伸び、売り上げが前年同期から17.2%減少したのに必要運転資金は同20.6%も肥大した。純資産対比運転資金比率は前期の83.7%から今期は99.2%に悪化。有利子負債が717億3200万円も増えて前期の15倍に膨らみ、純資産対比負債比率は前期の2.4%から42.0%と劇的に悪化した。

 国内事業の効率指標を見ても、両者の格差は一段と広がった。国内ユニクロ直営店が平均982平方メートルの店舗を前期から1.87人減の29.11人で運営して前期から9.1%減の8億7875万円を売り上げ、1人当たり売り上げも3019万円と前期から3.2%減にとどめたのに対し、良品計画国内直営店は平均865平方メートルの店舗を前期から1.52人減の20.38人で運営して前期から14.5%減の4億8968万円(年換算。以下、同)を売り上げ、1人当たり売り上げは2402.4万円と前期から8.2%減少した。平均店舗面積はユニクロの88%なのに平均店舗売り上げはユニクロの55.7%と前期の59.3%から格差が開き、1人当たり売り上げもユニクロの79.6%と前期の89.3%から差が開いた。

 坪販売効率もユニクロが前期から11.3%減の298.7万円に踏みとどまったのに対し、良品計画は同20.0%減の186.2万円と62.3%の水準に甘んじ、前期の69.1%から格差が開いた。ユニクロの坪在庫が64.0万円と前期の64.5万円からほとんど変わらず、販売効率の11.3%低下で在庫回転が2.38回と前期から0.40回減速したのに対し、良品計画の坪在庫は57.1万円(国内本部在庫含む。以下、同)と前期の53.7万円から6.3%積み上がり、販売効率が20.0%低下して在庫回転は1.99回と前期の2.67回から0.68回転も減速した。

優劣を分ける4つの格差

 ユニクロと良品計画の格差はコロナ禍で一段と広がったが、それ以前からじりじりと開いていた。その要因は以下の4点だと思われるが、全ては仕組みの差に起因している。

(1)アイテムの絞り込みと調達ロットの格差

 良品計画(単体)のアイテム数は18年2月期で7600、19年2月期で7411、20年2月期で7829と膨大で、「ユニクロ」と比較すべき衣服・雑貨アイテムも同1671、1727、1854と絞り込みが進んでおらず、春夏期と秋冬期でアイテム数が3.33倍(19年2月期)〜6.63倍(20年2月期)と振れが大きく、MDが確立できていない。MDが流動すれば販売消化データの積み上げもできず、消化予測精度も低位にとどまらざるを得ない。

 衣服・雑貨アイテムの売り上げシェアは36.2%(18年2月期)、37.2%(19年2月期)、40.6%(20年2月期)と増加傾向にあり、直近通年の40.6%を基準とすれば年2シーズンとして平均106.4坪に927アイテムで、坪あたり8.7アイテムになる。細かい雑貨アイテムが多いので、衣料品は、坪あたり春夏は2アイテム、秋冬は4アイテムぐらいと推察する。「ユニクロ」のアイテム数は公表されていないが、坪あたり2アイテムの「ジーユー」の倍はフェイシング量があるから、雑貨を含めても坪あたり1アイテムで、全店展開アイテムはシーズン300品目程度と見る。

 良品計画(単体)の衣料・雑貨売り上げは直近通期の20年2月期で1334億6900万円と19年8月期の国内ユニクロの8729億5700万円の15.3%に過ぎず、アイテム数も倍以上違うから、「無印良品」の調達ロットは国内ユニクロの10分の1以下と推察される。ならば同品質品の調達コストは一回り高くなってしまうから、同じ価格なら素材を1ランク落とし、同じ素材ランクなら価格を1ライン高くせざるを得ない。そこに「わけあって、安い」という「無印良品」のアイロニーがあり、価格を下げるために素材や生産仕様・工程を切り詰めて商品力を落とす隘路にハマりがちだ。

(注)海外展開はフィットや仕様が異なるため必ずしも同一ロットで生産できないから、国内事業で比較した。

(2)アイテム単位の消化管理体制の格差

 ユニクロはロードサイド時代からアイテム単位の週サイクル消化進行管理体制を確立しており、計画進行が未達のアイテムは台帳陳列※2.から切り出して出前訴求※3.したり、チラシ掲載してキックオフ(期間限定値引き)を仕掛けたりして、計画通りの消化進行を図るが、良品計画は数値管理しても台帳陳列のままで出前訴求を欠き、チラシ掲載でキックオフを仕掛けるという商売の仕組みもない。MDが流動的で年々積み上げた精密なシナリオも欠き、消化進行管理はアルゴリズム以前の状態にあると思われる。

※2.台帳陳列…アイテム/SKUの配置を固定した「台帳フェイス」を組んで一定期間補充する陳列で、MDを面展開して販売期間も長い
※3.出前訴求…台帳陳列から特定のアイテムやカラーを切り出したり、他の陳列ユニットから切り出したアイテムとルックを組んでインパクトある出前ユニットを店内通路面に島構築し、販売訴求するVMD運用手法

(3)単品量販出前VMD運用スキルの格差

 ユニクロは定番アイテムの継続補給が基本でアイテムごとに台帳フェイスを設定しているが、販売消化状況に即して単品量販や定型ルックの出前ユニットを構築したり解体再編したり、期末は残在庫を大型店に集約して量販と売り切り消化を図るなど、在庫運用のスキルに長けている。台帳ユニットに比べて島に構築した出前ユニットは販売効率が倍以上高く、多数の出前ユニットを仕掛けられる大型店ほど販売効率が高くなる。

 良品計画は、小型店はコンビニ型の台帳ユニットばかり、大型店も台帳ユニットを大型化するばかりで、単品量販や定型ルックの出前を機動的に仕掛ける運用体制もスキルも欠いている。ゆえに店舗を大型化しても販売効率が上がらず、ユニクロとの効率格差が開いていく。

(4)生産地在庫の管理・運用体制の格差

 ユニクロは店頭の量販陳列に加えて後方ストックにパッキンを山と積み上げ、さらに国内数カ所の倉庫にパッキンで大量の在庫を積んで万全の補給体制を組んでいる。近年の決算公表値から、店舗に40%、倉庫に60%の比率だと分かっているが、アジアの生産地にも出荷待ちの製品在庫を大量に積んでいる。

 良品計画(単体)は在庫の配置比率を公表しているが、国内在庫の店舗配置比率は18年2月期の40.7%から年々低下し、20年2月期は33.0%、20年8月期は27.4%まで落ちた。良品計画もユニクロ同様な定番アイテムの継続補給型だから店舗在庫比率は40%前後が適正のはずで、それを大きく割り込んでいくのは過年の不振在庫が倉庫に積み上がっていると推察される。

 ユニクロも良品計画も調達コストを抑えるべく実売期のかなり前からアジアの工場で大ロット生産するから、アイテムによっては1年近く前から、多くは半年前後前から生産して製品在庫を現地倉庫に積み上げていく。シーズンの1カ月前ぐらいになってコンテナで国内倉庫に移送するが、その間の在庫管理と出荷・物流を誰が負担するかでサプライチェーンの効率は天と地ほども違う。

 生産地在庫はシーズン前では全在庫の6割にも達するが、実需期に入れば国内倉庫に移送されて減っていく。通年平均で見れば、生産地倉庫33、国内倉庫40、店舗27ぐらいではなかろうか。ユニクロの場合は生産地在庫をそれぞれのアイテムや地域に通じた商社が担っているが、良品計画の場合は100%出資のソーシング子会社が担っており、連結すれば在庫が1.4倍(20年2月期)ほどに膨れ上がる。その在庫と資金の負担が良品計画の経営効率に深い影を落としている。

ユニクロと無印の格差は仕組みが9割

 ユニクロは素材では東レ、ホールガーメントニットでは島精機、生産地在庫管理・物流では三菱商事など複数の商社と戦略同盟を結んで外部の知恵や技術、設備や資本力を有効に活用し、自社の負担を軽減して商品開発と店舗運営・販売に戦力を集中しているが、良品計画は自社グループ内で完結しており、その一方でアイテムによっては商品開発を外部に依存するなど、サプライチェーン戦略が徹底されていない。加えて、前述した4つの実務的格差が経営効率を圧迫している。

 かつて良品計画の社長・会長を務めた松井忠三氏は「無印良品は、仕組みが9割」と良品計画立て直しの体験を著作に表したが、その当時から無印良品を取り巻く経営環境は大きく変わった。今やもう一度、ゼロから仕組みを組み直すときが来たのではなかろうか。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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ファッショニスタに学ぶジャケット着こなし術 ポイントは“ずらし”ミックス

 紳士服に由来する本格仕立てのテーラードジャケットは、意外にも着こなしの幅が広いアイテムです。最近のおすすめはデイリーウエアとのミックス。コロナ禍で普段着とお仕事ルックの境目がなくなったこともあり、“カッチリ×リラックス”のムード違いのミックスコーデが試しやすくなりました。

 正統派ジャケットで合わせれば、パーカにもデニムにもきれいめなイメージや“きちんと感”が備わります。手持ちのウエアから別の表情を引き出せるので、“ジャケットオン”はメリット大。今回はカジュアルミックスの上手なジャケット術をファッショニスタの着こなしから探ってみました。

ミニワンピースと合わせても甘くなりすぎない

 

 ガーリーに見えがちなミニ丈ワンピースも品格ジャケットを重ねれば、大人顔に様変わり。かえって適度な“ずれ感”が生まれてウィットフルに着こなせます。

 ビビッドカラーのバルーンシルエットが目を引くミニワンピースにマニッシュなジャケットを羽織りました。若々しいミニワンピにジャケットを合わせることで品格が備わり、またオータムカラーが全体を落ち着いた雰囲気に。ノーブルなバッグと色鮮やかなパンプスも、甘さを抑える効果を発揮しています。

ロングワンピースをトラッド寄りの“フェミニン×マスキュリン”に

 小花モチーフをあしらった総柄のロングワンピースはロマンティックなムードが漂うアイテム。そこにメンズ風ジャケットを羽織れば、程よいスパイスが加わって“フェミニン×マスキュリン”のジェンダーミックスに仕上がります。

 着こなしのポイントは、ワンピース以外のアイテムで少しトラッド寄りのシックなモチーフを選ぶところ。チェック系の柄を選べば、お仕事ルックにも対応できそうな“柄×柄”コーデにまとまります。ジャケットの前を開けてワンピースをしっかり露出するのがこなれ感を印象づける上手な着方です。

パーカに合わせて、“きちんと感”をアップ

 カジュアル寄りの装いにもジャケットならではの正統派なイメージを合わせれば、“きちんと感”が備わります。絶好の相棒アイテムは、のどかな雰囲気が持ち味のスウェットパーカです。

 ストリート気分を宿したスウェットパーカの上にジャケットをオン。クラシックなたたずまいのジャケットとカジュアルの代表選手であるパーカがクロスオーバーして、モード感が高まります。フードをジャケットの上から出すと、バックショットもミックステイストに。またオーバーサイズのジャケットは、ボディラインを華奢見えさせる効果も発揮してくれます。

見慣れた“ジーンズ×スニーカー”を一気に格上げ

 ジャケットの投入で一気に雰囲気を変えやすいアイテムの筆頭はデニムパンツです。普段着のシンボル的な存在だからこそ、ジャケットが発揮する“ずらし”の効果が期待できます。

 スタイリングのコツは、ジャケットの本格感とパンツのユーズド感をぶつけるところにあります。見慣れたデニムパンツ×スニーカーのコンビネーションも、ジャケットをまとうだけで一気に格上げ。英国やイタリアの伝統的なテーラリングを生かしたタイプなら、トレンドのクラシックムードを呼び込めます。

スポーティーと好相性、“こなれジェンダーミックス”に変身

 本格ジャケットは、カジュアルのほかに“スポーティー”とも意外な好相性を発揮してくれます。ポロシャツのような軽快なアイテムに重ねてラフに着こなすのがおすすめ。ジャケットの出番を増やしやすいミックスコーデです。

 ポロシャツの上から、ウエストに絞りを利かせたスレンダーなジャケットをオン。ボウリングバッグを添えて、スポーツテイストをもう一段上乗せ。メンズライクなトラウザーをチョイスし、“こなれジェンダーミックス”の装いに仕上げました。

 ジャケットが品格をもたらしてくれる点を生かして、ワンマイルウエアやスポーティー、アウトドアなど、ムードが相反するアイテムと合わせるのがファッショニスタ流。カジュアル系を着ていても全体がゆるく映るのを防いでくれるので、この秋はジャケットの“1点投入”で着回し力をアップしてみては!

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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「一切廃棄はしない」 H&Mの在庫問題と循環型シフトへの取り組みをサステナビリティ責任者が語る(後編)

 H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)は、販売、使用、またはリサイクルできる製品については一切廃棄をしないという厳格なポリシーを設けているが、世界で約5000店舗を運営する中でどのようにして実現しているのか。また、循環型デザインへのシフトを推進する同社が注目しているテクノロジーは何か。アナ・ゲッダ(Anna Gedda)=サステナビリティ責任者に聞く。

WWD:H&Mグループでは販売、使用、またはリサイクルできる製品については一切廃棄をしないという厳格なポリシーを設けていますが、実際在庫ゼロにするのは難しいのでは?

アナ・ゲッダ=サステナビリティ責任者(以下ゲッダ):当然のことですが、私たちはいかなる余剰在庫も避けたいと思っており、製造したものはすべて売り尽くすことを目指しています。廃棄物および余剰在庫の削減に向けて最も重要なのは、AIの技術を使って、お客さまが求めているものを理解してそれだけを生産することです。私たちはこの分野ですでに多くの取り組みを進めており、お客さまが求めているものを予測する精度を上げていますし、さらにそれをどの程度の量を生産すべきかという点でも予測精度を上げています。そしてそれら製品をどの国や地域、店舗にどう配分するべきか、どのタイミングが適切か、という点を把握するためのシステムも構築しています。お客さまの需要に応えるという点では継続して正確性を高めており、廃棄物や余剰在庫の削減につながっています。まだ完全に達成できているわけではなく、完璧にできているとは言えませんが、お客さまが本当に求めているのはどういうものなのかを把握し、それだけを生産するということを目指すにあたって、このテクノロジーが素晴らしい可能性をもたらすことを確信しています。

WWD:AI予測の精度はどの程度向上しているのですか。

ゲッダ:具体的な数字や計測値をお伝えするのは難しいですが、時を経るごとに精度が上がっているということは言えます。情報が多ければ多いほど機械学習によるアルゴリズムを継続して発展させていくことができ、さらに精度の高い予測が可能となります。すでに良い結果が出ており、もちろん売り上げにつながるという利点もありますが、在庫を減らすことにもつながっています。つまり、私たちはお客さまが求めているものをより多く売ることができているのです。もちろんまだこの取り組みに関する道のりは続きますし、特に今年のように新型コロナウイルスの感染拡大があった場合、AIを活用していたとしても在庫管理は難しいです。

WWD:それでも売れ残った製品はどうしていますか。

ゲッダ:展開した商品のほとんどを店舗またはオンラインで売り切っています。時にはセールやその他の販促キャンペーンを通して、お客さまにとって非常にお得な価格で提供することもありますが。他の販売活動の例としては、マーケットによっては期間限定のポップアップ・アウトレット店舗で、値引きした衣服を提供することもあります。また、H&Mグループではより需要の高い店舗に積極的に在庫を移送したり、在庫が薄くなった他国に輸送したりすることもあります。シーズンが終わっても売れずに残ってしまった衣類は、来シーズンまで保管することを検討します。

WWD:生産工程における廃棄量ゼロも目指しています。

ゲッダ:はい、将来的にはゼロを目指しています。生産工程で発生する残布などの廃棄物や、安全衛生上廃棄せざるを得ない製品などの廃棄物をゼロにするためにさまざまなアプローチがあります。重要なのは循環型のデザインを採用すること。循環型のデザインとは、デザインの段階で、洋服のパターンニングを調整するなどして、そもそも廃棄物がでないようなデザインを取り入れることを指します。

WWD:循環性を確立するときに鍵になるテクノロジーは?

ゲッダ:循環性は私たちのビジネスの中で最も重要な要素であり、1つのテクノロジーに絞り込むことは難しいので3つ紹介したいと思います。1つ目はサステナブルに調達された新素材です。私たちはその研究開発に継続的に投資していますが、廃棄された生地から作られる素材“サーキュロス(Circulose)”がその一例です。“サーキュロス”は、起業当初からH&Mグループが自信を持って支援してきた企業リニューセル(re:newcell)が開発しました。森林原料の代替となり、品質を妥協することなく商業レベルで必要な量が確保可能という点で、他に類を見ない革新的な素材だと考えます。

2つ目はレンタルや二次流通など、新たな循環型ビジネスモデルについての研究です。グループ傘下の「コス(COS)」では、COSの古着の売買を行うデジタルプラットフォーム「リセル(Resell)」を立ち上げました。また、スウェーデンにあるH&Mセルゲルトルグ店では、“コンシャス・エクスクルーシヴ・コレクション”でスカートやドレスのレンタルサービスを始めました。

そして3つ目はエネルギーです。H&Mの循環型への取り組みは、商品やサービスの展開に留まりません。テクノロジーが非常に重要な役割を担う気候変動の分野において、H&Mグループは2040年までにクライメット・ポジティブとなることを表明しています。100%再生可能な電力の実現に向けた協調的で国際的な取り組みや、再生可能エネルギーの大きな需要の増加と供給に主眼を置いた活動を行っているRE100に加入し、影響力を持つ他のビジネス組織と協働しています。

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高校のバイトからジーンズ専門店一筋、きっかけは上野店で父に買ってもらった「リーバイス」 ライトオン秋葉美咲

「ライトオン」は1987年にロードサイド型専門店としてスタートし、北関東を中心に店舗を拡大。現在ではシッピングセンターや駅ビルなどにも出店し、2020年9月末時点で全国に431店舗を展開している。ジーンズを買う店の一つとして、多くの人に認知されていると言っても過言ではない。その「ライトオン」がコロナ禍でデジタル施策を強化している。全国のショップスタッフがスタッフコーデを発信し、公式ユーチューブチャンネルも開設して、情報発信を行っている。その第一線で活躍しているのがライトオン アリオ葛西店の秋葉美咲店長である。

―ライトオンの公式サイトをチェックしたら、全国のショップスタッフさんたちのスナップが見られるようになって、ユーチューブチャンネルも開設していて驚きました。

秋葉美咲さん(以下、秋葉):そうなんです!今、全社を上げた取り組みでSNSなどを使って、情報発信を強化しているんです。オンラインストアでショップスタッフのコーディネートがチェックできるようになったのですが、その中から積極的にスナップをアップしてきたスタッフを中心に全国から60人のスタッフが選ばれて、個人のインスタグラムアカウントを通して発信をしています。私もその一人に選ばれまして、ライトオンの新作や自分のライフスタイルを発信しています。個人的には他社に比べて出遅れているように感じていますが、どう思います?

―私的には各社も小手先ではSNSをやってはいましたが、本腰を入れ始めたのはコロナ禍の後から。そんなに出遅れたようには思いませんよ。

秋葉:会社としては新しい取り組みですが、個人的には「遅い!」と思っていたので心配だったんです。でも、その一方で個人で情報発信するようになって、改めて情報発信することの難しさを痛感しているところです。

―そう思うとインスタグラマーはすごいですよね。写真の撮り方、ハッシュタグの付け方、どれ一つとっても『どうしたらバズるか』を常に研究していて、簡単に真似できないです。

秋葉:本当にそうなんです!今は店頭に立っていても一日中スマホをにぎりっぱなしで、少し時間があったらユーザーの反応をチェックしています。それまでは、こんなにSNSに張り付いてはいなかったので、まだまだ分からないことだらけ(苦笑)。最近は若いスタッフに「どうやったらウケるかな?」と聞いたり、インスタの本を読んで勉強したり、人気アカウントを見て研究しています。

―ところで販売の仕事を始めた経緯は?

秋葉:高校3年生のときにライトオン上野店でアルバイトをはじめました。卒業後もそのままアルバイトを継続し、社員に昇格し、今に至ります。社員になりたての頃は店長になることをとても迷いましたが、当時の上野店の店長の仕事ぶりにあこがれて、5年前に店長になると決心をして、4年前に店長に昇格しました。

―上野店の店長とはどんな方?

秋葉:リーダーシップがあり、販売力もあって、しかもスタッフからの信頼も厚くて、とても尊敬されていました。例えば、全店での強化商品があるすると、上野店を売上1位にするためにまずは店長自身が率先して販売するんです。さらに自分だけが売るだけでなく、この商品を強化している理由やこの商品のすごいところ、良いところを丁寧に教えてくれるので、私含めスタッフたちも「この商品はこんなにすごいんだ!これはお客さまに伝えないと!」という気持ちが湧くんですよね。そういう姿を見て、私もそうなりたいと思いました。不安もありましたが、社員として働いていく以上、少しでも憧れの存在に近づきたいなと。

―素晴らしい店長ですね。とはいえ、高校生でアパレルのアルバイトは少ないのでは?とりあえず飲食店から初めてみるイメージがあるのですが。

秋葉:確かにアパレルで働けるところは少ないですが、強い憧れがありまして。中学生の頃から友達に「働けるようになったらアパレルで働きたい!」とずっと話していたくらい、この仕事をしてみたかったんです。

―ファッションに興味を持ったきっかけは?

秋葉:父がジーンズ好きで、子供の頃からよく一緒にライトオン上野店に行っていたんです。その頃に買ってもらった「リーバイス」のブーツカットデニムがずっと印象的な思い出として残っていて。中学生の頃はマルキュー全盛期で、カリスマ店員にも憧れていました。でも、マルキューブランドだと高校生のアルバイトはなくて…。それに販売員として働くのなら、専門的な知識を必要とするような商品を扱うショップもいいなと考えていたので、高校生でもバイトができるライトオンで働き始めました。

―確かにジーンズが好きな方はこだわりが強そうで、専門的知識も問われそうですね。

秋葉:特にアメ横のすぐ側にある上野店は土地柄、こだわりの強い競合他社が多いですし、訪れるお客さまもジーンズに詳しい年配の方が多くて、私よりも皆さん詳しかったです。私が生まれる前からジーンズをはいてきた方々に知識では負けたくないとまではいきませんが、商品を提供する立場として伝えられることもあるのではないかと考えながら店頭に立っていました。

―それにしても子供の頃から慣れ親しんだライトオンに深い縁を感じますね(笑)。そこで、秋葉さんにとってジーンズの魅力とは?

秋葉:基本はジーンズカジュアルが好きなんですけど、今日はキレイ目にしたいと思ったときや大人っぽいスタイルをしなくてはならない時にでも、実はジーンズって合うんですよ。それこそTシャツと合わせてシンプルに着こなすとカッコいいし、意外と万能で色んなコーディネートに合うアイテムなんです。だから、つい新しいシルエットが出てくると欲しくなります。
それ5ポケットでも、ストレートやスキニー、ブーツカット、テーパードなどの様々なシルエットがありますし、オーバーオールやショートパンツ、スカートなど、デザインも豊富にあって、毎日でも違うものが着られるくらい、無限にアイテムが広がっていくのも楽しいです。

―ジーンズ愛ですね。でも、意外とジーンズを一度も履いたことがないという方も結構いると思うのですが。

秋葉:実際に初めてのジーンズを買いに来られるお客さまも意外と多いですよ。

―どういった理由が多いのですか?

秋葉:ある方はお母さまの影響で買いに来たと話していました。ちょっと前に両親が若い頃に着ていた服をおしゃれに着るのがブームになった時です。お母さまの当時のジーンズをはいたら興味が湧いて、自分用を買いに来たとおっしゃっていました。ジーンズって、素材が固いとか、はきにくい、ブランドによっては高価というイメージがあるようですが、新しい素材もどんどん出てきてはきやすくなっているので、ぜひ一度は手に取ってもらいたいんです。はいたら良さがきっとわかるはず!

―私もジーンズ好きなので、“はかず嫌い”はしないでほしいと思います。ですが、今シーズンからトレンド寄りの商品がぐっと増えましたよね。

秋葉:そうなんです!トップスというと、今まではTシャツやスウェットなど、ベーシックなカットソーばかりでしたが、今シーズンからトレンド性の強いアイテムも増えているんですよ。今までのライトオンでは考えられない商品が入ってきて、私もびっくりしています。これから入荷される商品もすごく楽しみです。今まで通り、手の出しやすい価格帯のジーンズもありますが、キレイな目アイテムも増えているので、これを機会にライトオンの商品をたくさんの方に知ってもらいたいです。

―ジーンズ専門店として知名度はあるものの、逆に「ジーンズしか売ってないんでしょ?」的な見方をされることも多いですよね。

秋葉:初めて会う方に「どこで働いてるの?」と聞かれて、「ライトオン」と答えるとご存知な方が多いんですけど、知名度の割には商品のことが知られていないように感じました。どんな商品を売っているか分かれば、必ずお客さまも増えると確信しているので、今はSNSを使って自分が情報を発信していこうと動いています。実は先日はユーチューブチャンネルの撮影をしてきたんです。

―今度はユーチューブデビューですか!頑張ってますね。

秋葉:今回はコーディネート企画の撮影でしたが、今後もエンタメ性のある企画も上がっているようです。スナップやインスタだけでなく、色んなツールを使ってライトオンの魅力を発信しているところです。商品だけでなく、情報発信したり、ユーチューブにも力を入れはじめ、ライトオンを知っている方からしたら「変わった」と思われると思います。「これがライトオン!?」と良い意味で裏切っていきたいですし、ライトオンを知らない若い世代のお客さまにも知っていただきたいです。今は色んなことに挑戦する新しいライトオンを見てもらいたいなって思います。

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高校のバイトからジーンズ専門店一筋、きっかけは上野店で父に買ってもらった「リーバイス」 ライトオン秋葉美咲

「ライトオン」は1987年にロードサイド型専門店としてスタートし、北関東を中心に店舗を拡大。現在ではシッピングセンターや駅ビルなどにも出店し、2020年9月末時点で全国に431店舗を展開している。ジーンズを買う店の一つとして、多くの人に認知されていると言っても過言ではない。その「ライトオン」がコロナ禍でデジタル施策を強化している。全国のショップスタッフがスタッフコーデを発信し、公式ユーチューブチャンネルも開設して、情報発信を行っている。その第一線で活躍しているのがライトオン アリオ葛西店の秋葉美咲店長である。

―ライトオンの公式サイトをチェックしたら、全国のショップスタッフさんたちのスナップが見られるようになって、ユーチューブチャンネルも開設していて驚きました。

秋葉美咲さん(以下、秋葉):そうなんです!今、全社を上げた取り組みでSNSなどを使って、情報発信を強化しているんです。オンラインストアでショップスタッフのコーディネートがチェックできるようになったのですが、その中から積極的にスナップをアップしてきたスタッフを中心に全国から60人のスタッフが選ばれて、個人のインスタグラムアカウントを通して発信をしています。私もその一人に選ばれまして、ライトオンの新作や自分のライフスタイルを発信しています。個人的には他社に比べて出遅れているように感じていますが、どう思います?

―私的には各社も小手先ではSNSをやってはいましたが、本腰を入れ始めたのはコロナ禍の後から。そんなに出遅れたようには思いませんよ。

秋葉:会社としては新しい取り組みですが、個人的には「遅い!」と思っていたので心配だったんです。でも、その一方で個人で情報発信するようになって、改めて情報発信することの難しさを痛感しているところです。

―そう思うとインスタグラマーはすごいですよね。写真の撮り方、ハッシュタグの付け方、どれ一つとっても『どうしたらバズるか』を常に研究していて、簡単に真似できないです。

秋葉:本当にそうなんです!今は店頭に立っていても一日中スマホをにぎりっぱなしで、少し時間があったらユーザーの反応をチェックしています。それまでは、こんなにSNSに張り付いてはいなかったので、まだまだ分からないことだらけ(苦笑)。最近は若いスタッフに「どうやったらウケるかな?」と聞いたり、インスタの本を読んで勉強したり、人気アカウントを見て研究しています。

―ところで販売の仕事を始めた経緯は?

秋葉:高校3年生のときにライトオン上野店でアルバイトをはじめました。卒業後もそのままアルバイトを継続し、社員に昇格し、今に至ります。社員になりたての頃は店長になることをとても迷いましたが、当時の上野店の店長の仕事ぶりにあこがれて、5年前に店長になると決心をして、4年前に店長に昇格しました。

―上野店の店長とはどんな方?

秋葉:リーダーシップがあり、販売力もあって、しかもスタッフからの信頼も厚くて、とても尊敬されていました。例えば、全店での強化商品があるすると、上野店を売上1位にするためにまずは店長自身が率先して販売するんです。さらに自分だけが売るだけでなく、この商品を強化している理由やこの商品のすごいところ、良いところを丁寧に教えてくれるので、私含めスタッフたちも「この商品はこんなにすごいんだ!これはお客さまに伝えないと!」という気持ちが湧くんですよね。そういう姿を見て、私もそうなりたいと思いました。不安もありましたが、社員として働いていく以上、少しでも憧れの存在に近づきたいなと。

―素晴らしい店長ですね。とはいえ、高校生でアパレルのアルバイトは少ないのでは?とりあえず飲食店から初めてみるイメージがあるのですが。

秋葉:確かにアパレルで働けるところは少ないですが、強い憧れがありまして。中学生の頃から友達に「働けるようになったらアパレルで働きたい!」とずっと話していたくらい、この仕事をしてみたかったんです。

―ファッションに興味を持ったきっかけは?

秋葉:父がジーンズ好きで、子供の頃からよく一緒にライトオン上野店に行っていたんです。その頃に買ってもらった「リーバイス」のブーツカットデニムがずっと印象的な思い出として残っていて。中学生の頃はマルキュー全盛期で、カリスマ店員にも憧れていました。でも、マルキューブランドだと高校生のアルバイトはなくて…。それに販売員として働くのなら、専門的な知識を必要とするような商品を扱うショップもいいなと考えていたので、高校生でもバイトができるライトオンで働き始めました。

―確かにジーンズが好きな方はこだわりが強そうで、専門的知識も問われそうですね。

秋葉:特にアメ横のすぐ側にある上野店は土地柄、こだわりの強い競合他社が多いですし、訪れるお客さまもジーンズに詳しい年配の方が多くて、私よりも皆さん詳しかったです。私が生まれる前からジーンズをはいてきた方々に知識では負けたくないとまではいきませんが、商品を提供する立場として伝えられることもあるのではないかと考えながら店頭に立っていました。

―それにしても子供の頃から慣れ親しんだライトオンに深い縁を感じますね(笑)。そこで、秋葉さんにとってジーンズの魅力とは?

秋葉:基本はジーンズカジュアルが好きなんですけど、今日はキレイ目にしたいと思ったときや大人っぽいスタイルをしなくてはならない時にでも、実はジーンズって合うんですよ。それこそTシャツと合わせてシンプルに着こなすとカッコいいし、意外と万能で色んなコーディネートに合うアイテムなんです。だから、つい新しいシルエットが出てくると欲しくなります。
それ5ポケットでも、ストレートやスキニー、ブーツカット、テーパードなどの様々なシルエットがありますし、オーバーオールやショートパンツ、スカートなど、デザインも豊富にあって、毎日でも違うものが着られるくらい、無限にアイテムが広がっていくのも楽しいです。

―ジーンズ愛ですね。でも、意外とジーンズを一度も履いたことがないという方も結構いると思うのですが。

秋葉:実際に初めてのジーンズを買いに来られるお客さまも意外と多いですよ。

―どういった理由が多いのですか?

秋葉:ある方はお母さまの影響で買いに来たと話していました。ちょっと前に両親が若い頃に着ていた服をおしゃれに着るのがブームになった時です。お母さまの当時のジーンズをはいたら興味が湧いて、自分用を買いに来たとおっしゃっていました。ジーンズって、素材が固いとか、はきにくい、ブランドによっては高価というイメージがあるようですが、新しい素材もどんどん出てきてはきやすくなっているので、ぜひ一度は手に取ってもらいたいんです。はいたら良さがきっとわかるはず!

―私もジーンズ好きなので、“はかず嫌い”はしないでほしいと思います。ですが、今シーズンからトレンド寄りの商品がぐっと増えましたよね。

秋葉:そうなんです!トップスというと、今まではTシャツやスウェットなど、ベーシックなカットソーばかりでしたが、今シーズンからトレンド性の強いアイテムも増えているんですよ。今までのライトオンでは考えられない商品が入ってきて、私もびっくりしています。これから入荷される商品もすごく楽しみです。今まで通り、手の出しやすい価格帯のジーンズもありますが、キレイな目アイテムも増えているので、これを機会にライトオンの商品をたくさんの方に知ってもらいたいです。

―ジーンズ専門店として知名度はあるものの、逆に「ジーンズしか売ってないんでしょ?」的な見方をされることも多いですよね。

秋葉:初めて会う方に「どこで働いてるの?」と聞かれて、「ライトオン」と答えるとご存知な方が多いんですけど、知名度の割には商品のことが知られていないように感じました。どんな商品を売っているか分かれば、必ずお客さまも増えると確信しているので、今はSNSを使って自分が情報を発信していこうと動いています。実は先日はユーチューブチャンネルの撮影をしてきたんです。

―今度はユーチューブデビューですか!頑張ってますね。

秋葉:今回はコーディネート企画の撮影でしたが、今後もエンタメ性のある企画も上がっているようです。スナップやインスタだけでなく、色んなツールを使ってライトオンの魅力を発信しているところです。商品だけでなく、情報発信したり、ユーチューブにも力を入れはじめ、ライトオンを知っている方からしたら「変わった」と思われると思います。「これがライトオン!?」と良い意味で裏切っていきたいですし、ライトオンを知らない若い世代のお客さまにも知っていただきたいです。今は色んなことに挑戦する新しいライトオンを見てもらいたいなって思います。

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ナチュラルコスメの宝庫、ベルリンの自然派商品専門デパートメント「ナトゥーア・カウフ・ハウス」 海外ビューティ通信ベルリン編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」ではパリやニューヨーク、ソウル、シンガポールの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。(本文中の円換算レート:1ドル=105円)

 ベルリンでは街の至るところにあるドラッグストアやスーパーでオーガニックコスメやナチュナルコスメを購入できるが種類は少ない。オーガニック専用のビオスーパーでも全種類そろっていることはまずない。ヘアコンディショナーやトリートメントがなくシャンプーしか置いていない、といった事態が日常茶飯事だ。

 そんな中、今年で25周年を迎えた自然派商品専門のデパートメントストア「ナトゥーア・カウフ・ハウス(NATURKAUHAUS)」は定番から話題のブランドまでをそろえ、主要ブランドについては全商品をそろえるほど充実している。売切れ以外、ほぼ全てのアイテムが入手可能といっても過言ではない。コスメ以外も含めて全商品にフェアトレードまたはエコマークが付いており、100%オーガニックではないが持続可能なモノ作りを行なっているブランドのみを取り扱っている。環境先進国といわれるドイツでも自然派商品だけを扱う専門デパートは「ナトゥーア・カウフ・ハウス」以外になく唯一無二の存在だ。

 同ストアはベルリン市内のシュテーグリッツ地区とベルナウ・バイ・ベルリンにも店舗を構える。ベルリンの一号店は4000平方メートルの敷地面積に建つガラス張りの5階ビルの中に衣料品、インテリア雑貨、食品、文具、本、コスメなどのカテゴリー別に8つの売り場に分かれている。4階のコスメ、スキンケア、ボディーケア、ヘアケア売り場はベルリン随一の豊富な品ぞろえを誇る。お世辞にも洗練されているとは言えない飾り気のないフロアの3分の2をコスメが占める。

 ドイツブランドはオーガニックコスメ認証機関「ネイトゥルー(NATRUE)」を共同設立した「ロゴナ(LOGONA)」「ラヴェーラ(LAVERA)」「ヴェレダ(WELEDA)」「サンタベルデ(SANTAVERDE)」「ドクターハウシュカ(DR.HAUSCHKA)」「プリマヴェーラ(PRIMAVERA)」といった定番の人気ブランドを筆頭に、「アンネマリー・ボーリンド(ANNEMARIE BORLIND)」「オーシャンウェル(OCEANWELL)」「スピンラド(SPINNRAD)」「ヒルデガルド・ブラウクマン(HILDEGARD BRAUKMAN)」といった有名ブランドが顔をそろえる。ドイツブランド以外ではイタリアの「レルボラリオ(L’ERBOLARIO)」や「ネスティ・ダンテ(NESTI DANTE)」、フランスの「ロクシタン(L’OCCITANE)」、デンマークの「ウルテクラム(URTEKRAM)」のほか、オーストリアやイギリスなどヨーロッパ各地のオーガニックコスメやナチュラルコスメを取り扱う。

 注目はヘアケア製品の民族的なグラフィックパターンのパッケージデザインが話題の「ビオトゥルム(BIOTURM)」で、ビオスーパーでも特設コーナーが設置されているほどの人気ブランドだ。ヘアケア製品はオイリーヘア、薄毛、ボリューム不足、ダメージヘアなど、髪質や用途別に9種類のシャンプーと6種類のトリートメントがある。そのほか日本でも注目を集めているデリケートゾーン専用のケア製品がウオッシュジェルやクリームなど10種類をそろえる。同ブランドはオーガニックの食品や化粧品に精通しているマルティン・エヴァース(Martin Evers)創設者によって2001年に設立。乾燥肌、アレルギー肌、神経皮膚炎、乾癬、ニキビなどの肌トラブルを抱える人たちに向けて、乳清から得られる有機ホエイを主成分に使った医療発想のオーガニックコスメを展開している。

宮沢香奈:フリーランスライター兼コラムニスト。プレス、ブランドディレクターなどを経て、フリーランスとしてPR事業をスタート。その後、ライターとして執筆活動を開始。2014年に東京からベルリンに拠点を移し、ヨーロッパを中心に現地情報を多数の媒体で執筆中

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「バルミューダ」の掃除が楽しくなるクリーナー誕生秘話 社長自ら掃除好きに

 「バルミューダ(BALMUDA)」は11月17日、新製品“バルミューダ ザ・クリーナー(以下、クリーナー)”を発売する。同ブランドは予約受付を開始した10月15日に、東京・代官山で体験会を開催。新製品のプレゼンテーションは、いつも通り寺尾玄バルミューダ社長が行った。冒頭に寺尾社長は、「新型コロナウイルス感染拡大の中で、実際に発表会を行うことに対していろいろと考えたが、できるだけ予防をして経済活動をするべきだと思った」と語った。ベント開催を決定したのは9月中ごろ。まだ、対面の展示会や発表会は少ない時期だった。会場内の20人全スタッフはPCR検査を受けて陰性という結果を確認後にこのイベント開催に踏み切ったそうだ。

 このクリーナーが誕生するきっかけは社内スタッフの声から。今までの「バルミューダ」の製品は全て寺尾社長のアイデアから生まれた。 2003年にブランド設立後、空調、キッチン家電などジャンルを少しずつ増やしてきた。寺尾社長は「15年には、そろそろ次のジャンルへ移行しなければ」と考えていたそうだ。社内の声とは反対に、同社長は掃除に関しては、花王の“くるくるワイパー”派。さっと使えてしまえる便利さが理由だった。「自分が欲しいと思わないモノを開発するもどかしさもあり悩んだが、事業の都合上仕方ない。仕事だと割り切ってプロジェクトをスタートした」と言う。掃除機といえば、ロボット掃除機以外は、前後に動かしてゴミを吸い込むタイプがほとんど。可動域が前後という道具は掃除機くらい。しかも、掃除機は部屋の片隅にあると不自然なので、しまって出すという作業が必要。これらが、掃除が不便、面倒と思わせる理由だ」。同社長は、社内の開発チームと行きつけの蕎麦屋で作戦会議を開催し、3種類のプロトタイプが生まれた。悩みながらも寺尾社長が理想の掃除機としてイメージしたのはホバークラフト。雪、水などの上を浮かびながら移動する乗りものだ。「ホバークラフトは私にとってはユニコーンのような夢の存在。少し浮きながら滑るように動く掃除機があればいいなと思った」という。そこから、「バルミューダ」独自のホバーテクノロジーが開発された。

 通常の掃除機のブラシは1本だが、“クリーナー”には2本ブラシがあり、内側に回転し、床面から浮いている状態を可能にする。ヘッドは360度回転するスワイプ構造で、縦にも横にも斜めにも自由自在に動くようになっている。四隅にはローラーが付いており、壁の隅や階段などの狭いスペースの隅々まで吸いつくように掃除が可能だ。ハンディータイプとしても使え、サッシやソファなどの掃除にも使える。パーツは水洗いが可能なので清潔に保てる。デザインは立てかけられた1本のほうきのようにシンプル。「美しさをあえて追求せず、部屋の片隅や廊下にも自然に馴染むシンプルでクリーンなデザインにした」。

滑るように動く操作性抜群の“バルミューダ ザ・クリーナー”

 この“クリーナー”の開発にかかった期間は約2年。寺尾社長は、「自分が欲しいと思わず製品化したのは初めて。最初は悩んだが、事業における責務と思って取り組んだ。滑るように浮く掃除機だったら欲しいと思い、悩みから欲しさに変わった。欲しさにたどり着かなかったら製品化しなかった」と話す。「バルミューダ」としては初めてのクリーナー製品だが、クリーナー事業だけでゆくゆくは売り上げ100億円を目指すという。「掃除体験はこうあるべきということを考えて開発した製品だ。今まで開発してきたトースターなども同じコンセプト。時短とか効率とかスペックのようなものではなく、人々の生活において、どれだけ良質で楽しい体験を提供できるかということが一番重要だ」。トースターはいまだに最高出荷数を更新する製品になった。コロナの状況下においてもビジネスは予想以上に好調だという。「今まで変更せずやってきたことが正しかったと実感している。製品開発する基準は、基本、全て自分が欲しいモノ。開発は、スケジュールや予算など色々な制約があり辛いプロセスだ。しかし、今作れなくても、数年後には作れるようになるべきというもモチベーションに溢れている。開発においては、どれだけ夢を見られるかということが大切だ。一見無駄と思われる時間がそうじゃない場合もある」。試行錯誤しながら開発することにより大当たりが出ることがあるというのが寺尾社長の考えだ。5万4000円という価格設定に関しては、「自分が製品を試してこの価格だったら買うと思う値段にしている。他社製品の価格等は気にしない。大切なのは消費者がどう思うか、どう感じるかということだ」ときっぱり。来年には、想像を絶するようなノズルパッケージが登場するという。

 時代に左右されず、独自路線で邁進する「バルミューダ」。今後もファンはさらに増えていくことだろう。

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H&Mが商品の生産国や工場を開示する理由 トレーサビリティー実現の先をサステナビリティ責任者が語る(前編)

 「H&M」は2013年からサプライヤーリストの公開をはじめ、19年から製品の素材や生産国、サプライヤー名のほか、製造工場名と所在地、従業員数などの情報の公開も始めた。オンラインで購入できる、ホームを含めたH&Mブランド全ての商品が対象だ。実店舗でも消費のタグをスキャンすればその場で情報が確認できるという消費者フレンドリーな仕組みでもある。システム構築まで3~4年かかったというが、なぜ、商品情報の開示に至ったのか。またそれを今後どのように発展させるのか。アナ・ゲッダ(Anna Gedda)=サステナビリティ責任者にオンラインインタビューを行った。

WWD:なぜ一つ一つの商品情報を開示しようと思い立ちましたか。

アナ・ゲッダ=サステナビリティ責任者(以下ゲッダ):理由は2つあります。1つ目は、透明性、そしてトレーサビリティー(追跡可能性)は私たちのサステナビリティへの取り組みの基盤になっているからです。責任を果たす企業でありたいならば、取り扱う製品がどこで、誰によって作られたかを知っておく必要があります。ファッション産業のサプライチェーンは複雑なので、「オーガニックコットンを使用している」や「良質なリサイクルポリエステルを使用している」といったことを保証するには、サプライチェーン内のトレーサビリティーは欠かせません。信頼性を保つためにはとても重要なのです。

2つ目は、多くのお客さまがサステナビリティへの高い関心を持っている中で、私たちは必要な情報を届けなければいけないと考えるからです。多くのお客さまは関心があるものの、どのようにサステナブルな選択を行えばいいのかが分かっていないのが現状です。それは世の中にはさまざまな企業や団体によるラベルや情報共有するためのモノが溢れ返っているからです。ゆえに、お客さまから信頼され、そしてお客さまにとって何が良い選択で何がそうでないのかを理解してもらうための唯一の方法は透明性を保持することだと私たちは考えます。

私たちも開発に関わっている環境負荷の計測ツールのヒグ・インデックス(Higg Index)もそうですが、多くの企業がそれぞれにサステナビリティに取り組んでいる中で、まずは業界全体の底上げを行いたいと私たちは考え、製品レベル、工場レベル、そしてブランドレベルで各々のサステナビリティのパフォーマンスを計測できる統一された基準があれば、お客さまにとっても第三者機関を通じての比較が可能で有益だと考えました。

WWD:情報を開示するにあたって重視した点は?

ゲッダ:私たちがトレーサビリティーに取り組む理由の一つにもつながりますが、私たちはお客様がより良い選択ができるようにしたいと思っています。そのためにはただデータを提供するのではなく、お客さまにとってわかりやすい形であることが重要です。その点に関して段階的に取り組みを進めています。

興味深いのは、お客さまが興味を持つトピックが市場や地域によって異なることです。例えば、北ヨーロッパに住むお客さまは社会問題についての関心がより高く、アジアのお客さまは環境問題、特に化学物質関連の問題について関心が高いということがわかっています。

この点は透明性の機能を築く際に重要視しました。今後さらに多くのデータを回収することができれば、現在開示している情報に加え、お客さまがそれぞれ知りたいと思うものに応じた情報を提供できるようになります。人によっては工場の労働環境や衣料品従事者にいくら賃金が支払われているかを知りたい人もいるでしょうし、一方でこの素材がどこから来たものか、安全な地域から調達したものなのかなどの点に興味がある人もいるでしょう。つまりお客さまが重要だと思うことや、知りたいことは人によってさまざまなのです。将来的には、より広範なデータをお客さまにわかりやすく提供することを目指しています。

WWD:製品がトレーサブルでないと売れない時代が来ると思いますか?どれくらいの消費者が実際にモノを選ぶ基準にしていると思いますか?

ゲッタ:お客さまのサステナビリティへの関心は確実に高まっており、特にこの2~3年で加速しています。ただ、関心が高いだけでなく、懐疑的であったり、好奇的であったりすることもあるので、信用性が非常に重要な要素となります。お客さまによって関心のレベルはさまざまなので、すべての人に当てはまるわけではありませんが、多くの人々が自分が買うものが安全であることを求めています。商品がどこで作られ、何が含まれていて、何が良く何が悪いのかについて開示することで、信用と信頼を提供することが大事だと思っています。

将来、製品がトレーサブルでないと消費者が実際に購入しないのかということは、現状ではわからないですが、サステナビリティとは何かを理解して、消費者として自分の行動がどう影響し、実際に何ができるかを考えることにつながればと思っています。

WWD:今までに製品がどこでどのように作られたかなどの問い合わせはありましたか?

ゲッタ:もちろんです。まさにお客さまの関心が高まっている良い例です。これまでにも社員への教育は行っていましたが、最近、新たに店舗の社員向けにサステナビリティに関するガイドブックを発行し、お客さまからのお問い合わせに答えられるようにしています。「この繊維の由来はどこか」「誰がこの製品を縫製したか」などについて非常に興味を持っている場合もあります。そのような中で、すべてではなくとも大多数の質問に答えられるように取り組んでいるところで、将来的にはトレーサビリティーについてもこの中に導入したいと思っています。

ちなみに、トレーサビリティーは、循環型へのシフトにおいても大きな役割を果たします。なぜなら製品のさまざまな部分で活用することができるからです。例えばとある製品をリサイクルする場合に、どのような素材がその製品に紐づけられているかを把握していれば、生産工程で取り除く必要のある化学物質はないか、どのように繊維をリサイクルするのが最適かなどを正確に判断することができます。そういった意味では透明性やトレーサビリティーは私たちのリサイクルへの取り組みの土台にもなっています。

WWD:トレーサビリティーのサービス構築の中で直面した困難は?

ゲッタ:システム構築よりも、サービスを提供するためのプロセスや、それをどう発展させるか、どういうサービスが適しているかを決定していくプロセスに時間がかかりました。特に難しかった点は、お客さまにとって重要なことは何か、お客さまは何を知りたいと思っているのかをいかに理解し、どのような情報を提供するのかを定めることが難しかったです。そして、実際にデータを集めることも難しかったです。社内で運用しているさまざまなシステムをどう連携させて、そこから得た情報をどのようにお客さまにとってわかりやすいものに転換させるかに時間がかかりました。

今後の課題としては、さらなるトレーサビリティーが挙げられます。サプライチェーンのさらに前の段階へとさかのぼり、原材料がどこで取れたものなのか、リサイクルポリエステルでは元のペットボトルがどこのどういうものなのかなど詳細な情報が必要になります。そこで私たちは各素材や製品のトレーサビリティーに取り組んでいるのですが、やはりサプライチェーンの複雑性を考えるとそれは簡単なことではありません。
WWD:実現するにはサプライヤーの協力が不可欠ですが、サプライヤーに対してどのようなサポートを提供していますか?

ゲッタ:私たちは1997年にサプライヤーの評価などに取り組み初めて以来、長年サプライヤーと協働してきました。サプライヤーからデータを集めるだけでなく、彼らのパフォーマンスを向上するためのサポートも長きに渡って取り組んできています。この透明性のサービスを提供するにあたっては、それらをどうお客さま視点につなげるか、どのように変換してお客さまにとってわかりやすいものにするか、という点に取り組みました。このように私たちはサプライヤーと長年かけてパートナーシップを構築しており、その多くと15~20年近く共に取り組んできています。その間共に成長し、発展していく中で、信頼も築きましたし、とても良いビジネスパートナシップを構築することができています。

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新型コロナとレンタル エディターズレター(2020年8月27日配信分)

※この記事は2020年8月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

新型コロナとレンタル

 「レンタル」「サブスク」「リセール」はこの10年で消費を変えてきたと思いますが、新型コロナウイルス感染拡大の猛威は、米ファッション業界きってのユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業)にも大きなダメージを与えていますね。

 ファッションレンタルのサブスク市場を切り開いてきたレント・ザ・ランウェイが全店舗撤退です(1番目の記事参照)。会員が選んだ4アイテムが月に1度送られてきて、気に入らなければ1回交換可がベース。「マルニ」や「3.1フィリップ リム」などのデザイナーズブランドも扱い、“ランウエイで発表されるようなドレスやアクセサリーが安価で気軽に楽しめる!”と2009年の創業以来、米国の都心に住む女性たちの心をつかんで急成長してきました。

 基本的にオンラインで完結できるサービスなので、試着や実物を確認するための店舗はなくても成立します。とはいえ3月中旬の休業要請とイベント自粛要請は、特にパーティー需要が高かったレント・ザ・ランウェイにとって大きな打撃になりました。彼らにとって明らかに苦しい環境ですが、“全ての女性のクローゼットをクラウド化する”という野心ある企業なので、これを糧にさらに成長してほしいと思います。

 また、同じく波に乗っていたファッションレンタルのサブスク企業ル・トートは、老舗百貨店ロード&テイラーを買ってしまったために破綻するという皮肉な結果になりました(2番目の記事参照)。リアル店舗38店を運営することでさらに事業とサービスを拡大しようという挑戦が、まさにアダとなってしまいました。ただでさえ結構チャレンジングだったのに、タイミングが悪すぎました……。

 そんな中、「おぉ、新しい!」と思ったのが、「リーバイス」とデンマーク発のファッションブランド「ガニー」が協業したデニムコレクションをレンタルのみで扱うというニュースです(3番目の記事参照)。“多くの人に着られ、誰にも所有されない。デニムへの愛を皆でシェアしよう”というコンセプトのもと、「リーバイス」のビンテージデニムや再利用デニムを「ガニー」がアップサイクル。レンタルで多くの人が着ることでデニムを“育てて”、その履歴も含めて次の利用者にシェアすることでデニムへの愛も引き継ごうというものです。レンタルの特性を最大限に生かしたプロジェクトで、思わず「これ、レンタルなの!」と周囲に明かしたくなりますよね。

 小さいながらも今を象徴するようなこうした試み、ピックアップしていきたいと思います。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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新型コロナとレンタル エディターズレター(2020年8月27日配信分)

※この記事は2020年8月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

新型コロナとレンタル

 「レンタル」「サブスク」「リセール」はこの10年で消費を変えてきたと思いますが、新型コロナウイルス感染拡大の猛威は、米ファッション業界きってのユニコーン企業(評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業)にも大きなダメージを与えていますね。

 ファッションレンタルのサブスク市場を切り開いてきたレント・ザ・ランウェイが全店舗撤退です(1番目の記事参照)。会員が選んだ4アイテムが月に1度送られてきて、気に入らなければ1回交換可がベース。「マルニ」や「3.1フィリップ リム」などのデザイナーズブランドも扱い、“ランウエイで発表されるようなドレスやアクセサリーが安価で気軽に楽しめる!”と2009年の創業以来、米国の都心に住む女性たちの心をつかんで急成長してきました。

 基本的にオンラインで完結できるサービスなので、試着や実物を確認するための店舗はなくても成立します。とはいえ3月中旬の休業要請とイベント自粛要請は、特にパーティー需要が高かったレント・ザ・ランウェイにとって大きな打撃になりました。彼らにとって明らかに苦しい環境ですが、“全ての女性のクローゼットをクラウド化する”という野心ある企業なので、これを糧にさらに成長してほしいと思います。

 また、同じく波に乗っていたファッションレンタルのサブスク企業ル・トートは、老舗百貨店ロード&テイラーを買ってしまったために破綻するという皮肉な結果になりました(2番目の記事参照)。リアル店舗38店を運営することでさらに事業とサービスを拡大しようという挑戦が、まさにアダとなってしまいました。ただでさえ結構チャレンジングだったのに、タイミングが悪すぎました……。

 そんな中、「おぉ、新しい!」と思ったのが、「リーバイス」とデンマーク発のファッションブランド「ガニー」が協業したデニムコレクションをレンタルのみで扱うというニュースです(3番目の記事参照)。“多くの人に着られ、誰にも所有されない。デニムへの愛を皆でシェアしよう”というコンセプトのもと、「リーバイス」のビンテージデニムや再利用デニムを「ガニー」がアップサイクル。レンタルで多くの人が着ることでデニムを“育てて”、その履歴も含めて次の利用者にシェアすることでデニムへの愛も引き継ごうというものです。レンタルの特性を最大限に生かしたプロジェクトで、思わず「これ、レンタルなの!」と周囲に明かしたくなりますよね。

 小さいながらも今を象徴するようなこうした試み、ピックアップしていきたいと思います。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

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東コレに帰ってきた「ファセッタズム」とハイテクを駆使した「ケイタマルヤマ」がベスト 21年春夏・東コレトーク!後編

 6日間に渡って開催された2021年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が10月17日に閉幕しました。約40のブランドが、リアルショーやデジタルプレゼンテーションなど工夫を凝らして最新コレクションを披露。ここでは「RTFW」の取材班が“東コレトーク”と題して印象に残ったブランドをざっくりプレイバックします。参加するのは、東京ファッション・ウィークの取材経験者である2人の先輩記者と、今シーズンから取材班に加わった新米記者の計3人。今回は、4日目から最終日までをお届けします!

デザイナーの強さがにじむ「ヒロココシノ」

美濃島匡「WWDジャパン」記者:「RTFW」が幕を閉じました。今回は後半3日間の中から印象に残った3ブランドをあげて、ざっくり振り返っていきましょう!

大杉真心「WWDジャパン」記者:まず私が好感を持ったのは「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」です。ヒロコ先生が外出自粛期間に描いた“シュールな住人たち”という絵がモチーフとなったコレクションで、ファンタジーで優しく、少し滑稽な生き物たちが世界の圧力に屈しない物語をイメージしたそう。コロナ禍でもポジティブに“何事にも負けない”という先生の思いと、芸術的にブランドの世界観に盛り込むクリエイションが素敵でした。

大塚千践「WWDジャパン」ニュースデスク:アートをクリエイションに取り入れている姿勢がビンビン伝わってきたね。映像は10分という長尺だったけど、カメラの画質や撮り方を含めてコレクションを丁寧に見せたい姿勢は見て取れたな。

美濃島:厚底のサンダルやスイムショーツなど、スポーティなアイテムも用意していましたね。

大杉:コロナ禍での健康意識の高まりを反映しているのかもしれません。ヒロコ先生といえば、建築家の安藤忠雄が手掛けたアトリエで制作活動を続けてきましたが、映像でもコンクリートの壁が特徴的で、そのロケーションの選び方も先生らしさを感じました。

映像クオリティに度肝を抜かれた「ケイタマルヤマ」

美濃島:「ケイタマルヤマ(KEITA MARUYAMA)」は、マスクとファッションの融合を目指した“クチュールマスク”にフォーカスした映像。グリーンバックにCGを合成する最新技術を使って、デジタルでしか表現できない世界観を作り出すことに成功していました。

大塚:めっちゃよかったね。いい意味で予想を裏切られた。背景の合成は他ブランドでもあったけど、ここまで楽しく見られてハイクオリティーなものは無かったな。

大杉:映像としてもすごく面白いですし、「マスクを変えるだけでこれだけポジティブになれるんだよ」というメッセージも伝わって来ます。ブランドのファンタジーなムードとデジタル表現の相性がいいんでしょう。

美濃島:洋服はこれまでのアーカイブをリミックスしたもの。キャリアがあるのに新たなチャレンジから逃げず、むしろ若手以上にガンガン挑戦するスタンスが本当にすごいなと思いました。

大塚:「丸山邸」で実施された上映会には丸山敬太デザイナーとムービーに出演した福士リナさんが登壇したんだよね。

美濃島:はい。撮影の裏話を和やかな雰囲気で語ってくれました。作り手の話が聞ける場を設けるだけでもデジタルコンテンツの伝わり方は全然違いますね。

時代を超えて着想してしまう「アポクリファ」

大塚:「アポクリファ(APOCRUPHA.)」はレースをたっぷり使って、3シーズン目にして方向性をガラッと変えてきた。市場に受けるかどうかは未知数だけど、チャレンジしたシーズンだと思う。

美濃島:モノトーンなのでレースがかなり目立ってましたね。着るのに勇気がいるかもしれません。

大杉:ジェンダーを超えたレース使いの挑戦に共感しますが、使用していたのが女性のドレスや下着に使用されるような柄がはっきりしているラッセルレースだったので、フェミニンな印象が勝っていたように思います。もう少し柄が小さいものだったらニュートラルで、リアリティーを感じられかも。

大塚:面白いのは、着想源が1870年代にまで遡っていること。当時の服装はジェンダーレスで、そのムードをブランドの軸であるテーラリングに落とし込んでる。最近のメンズって1980年代のカルチャーや90年代のストリートウエアから着想するのが王道のやり方なのだけど、100年遡るっていうある種の文学的アプローチはほかではあまり見ない個性だね。

大杉:マスクを着けた一般人を映像として記録しているのも面白いと思います。時代をそのまま切り取ってるから、何年か後に見たとき、「そうそう、こんな感じだったよね」ってなりそう。ここも上映会を行ったんですよね?

大塚:そうそう。少人数を呼んで上映会を実施して、会場には洋服も用意されていたから実際に見ることもできた。そこまではよかったんだけど、上映後はあっさりと終了しっちゃったから、少し物足りなかった。その後が天王洲アイルで「ファセッタズム」のショーだったからというのもあったとは思うのだけど、「ケイタマルヤマ」みたいにデザイナーが少しでも思いを伝える時間をつくれば、わざわざ足を運んできた人たちの理解もより深まったのではないかな。

「タエ アシダ」は自然の美しさをデジタルに込める

大杉:「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」の芦田多恵デザイナーは自粛期間中にアトリエが休業した際、クリエイティブな脳がストップしないように毎日散歩しながら、公園に咲く花や自宅周りの植物などを写真に収めていたそう。その中で、身近な自然の美しさに気が付いて、それを全面に押し出したクリエイションになっています。植物のフォトプリントは全て芦田デザイナー本人の撮影した写真なんです。自然の美しさに気づいたため、それを全面に押し出したクリエイションになっています。

美濃島:モデルを複製させたり、背景を変えたりとデジタルならではのギミックが光りますね。「ケイタマルヤマ」に通ずるものを感じます。

大塚:両者ともこのキャリアにして、変化を恐れない前のめりな姿勢が素晴らしいよね。服自体が強いから直球のショー形式の動画でも十分に伝わりそうなのに、あえて変化球で見せてる。モデルが5体ぐらいに分身するだけでも驚きなのに、終盤に登場したマットさんは9体に分裂して思わずのけぞりました(笑)。ユーモアを盛り込んでくれると動画も楽しく見られるね。

大杉:芦田デザイナーは、「無観客ショーを長々と映す映像は長くなってしまい、皆さんに飽きられるものは作りたくない」と、工夫されたと言います。動画はテレビCMやミュージックビデオなどを長年撮影されている武藤眞志監督との協業。短い時間で効果的に映像を見せることを特にするプロと一緒に取り組むことで、飽きずに41ルックを最後まで見ることができます。

「ファセッタ」でリアルショーの価値を再認識

大塚:「ファセッタズム(FACETASM)」のリアルショーが良かったね。ここ数シーズンは和やかなムードでの発表が続いてたんだけど、今回久しぶりにバッキバキなストリートが戻ってきた感じ。

大杉:パリコレデビュー前は、東コレの目玉ブランドとして”東京で最も勢いのあるブランド”というイメージでした。「WWDジャパン」でも毎シーズン表紙候補で、ベストブランドとして紹介することも多かったです。その時の興奮を今回のショーで感じました。

大塚:コレクションは6月のパリメンズに合わせて作られた映像で事前に公開されていたし、展示会にも行ったんだけど、モデルが着て実際に歩くところを見ると受ける印象がかなり違った。強い。段差を力強く踏みつけたり、ジャンプしたりする動線の面白さも良かった。リアルショーを全肯定するわけではないけど、現場ならではのエネルギーが一番伝わってきたブランドかも。
美濃島:僕はトレンチコートとかファイヤーマンジャケットとか、純粋にアイテムが格好良いなと思いました。冠スポンサーの楽天による支援プロジェクト「バイアール(by R)」のもとで発表したショーということも踏まえて、今シーズンのハイライトの一つです。

大塚:座席にはかわいいイラスト入りのマスクが置いてあってショーの演出として着用を促されたんだけど、業界の重鎮クラスまでちゃんと着けていて和みました。

東コレの幅を広げる「リコール」

大塚:「リコール(RE:QUAL≡)」は去年の「東京ファッションアワード 2020(TOKYO FASHION AWARD 2020)」に選出されたブランド。この賞ってビジネスの成功が審査基準の一つだったはずなんだけど、「リコール」はそこまで拡大してる印象が無かったから個人的に驚いたんだよね。世界観を突き詰めた洋服でショーにはハマりそうだなとは思ってたから、実際にショーが見られてうれしかった。こういうブランドが東コレに入ってくるのは大事だよね。

美濃島:絶対に着られないものばかりでしたが、後ろ身頃から肩へ布を引っ張って着たジャケットなど、個人的に着てみたいと思うアイテムも2〜3ありました。

大杉:私も「リコール」のように独自のクリエイションを強く押し出したブランドが東コレ出ることは賛成です。五感を使ってブランドの世界観をしっかり伝えられるのはショーの価値の一つ。例えば、「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」や「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」のように量産可能なアイテム以外の領域で勝負できるデザイナーは、企業とのコラボレーションを手掛けたり、美術館で作品が展示されるなど異なるフィールドで活躍しています。世界観を突き詰めて、世の中にメッセージを発信していくようなデザイナーの在り方も肯定したいです。

美濃島:なるほど。今までアートのような洋服を発表するだけのショーにあまり価値を見出せていなかったんですか、今やっと腑に落ちました。

大塚:ロンドンの有名校なんかはそこを前提に教育していると聞くよね。「服を綺麗に作るだけなら人を雇えばいい」という考え方が浸透してる。

大雨の中で野外ショー開催の「ミキオサカベ」

大杉:「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」は坂部三樹郎デザイナーが手掛ける透明ソールの「グラウンズ(GROUNDS)」というスニーカーを軸にしたコレクション。スカートに白いニーハイソックスを合わせたり、ギャザーを寄せたハーフパンツで下半身にボリュームを出すなど、足元に目がいくコーディネートを目指していました。デザインは極力削ぎ落とし、足元の色と調和するパステルカラーを基調にした透明感のある素材使いも美しかったです。坂部三樹郎デザイナーはこのシューズビジネスを軌道に乗せていく考えです。

美濃島:「宮下パーク」の屋上で野外ショーを実施しましたが、残念ながら雨でした。色が明るくてシューズのソールも半透明だから、晴天だったらかなり気持ちいいショーになっていたと思います。

大塚:東京は雨が多いから、東コレのショーを屋外でやるのはけっこう勇気がいるなと改めて。「ミキオサカベ」にしては服がシンプルでちょっとびっくり。でも大杉さんが言うように、靴を目立たせたいという意図を聞いて納得した。

大杉:「ナカ アキラ(NAKA AKIRA)」のナカアキラ・デザイナーも好んで履いてると聞きました。ナカさんはデザイナーズブランドのスニーカーを数多く試してきたそうですが、「グラウンズ」の履き心地とコストパフォーマスを高評価しています。2万円台でデザイナーズスニーカーに挑戦できるのはお手頃ですよね。

「パーミニット」がリアルクローズの可能性を見せた

美濃島:「パーミニット(PERMINUIT)」はこれまでお人形さんのようなルックが並ぶコレクションで、街で着るイメージが全く湧かなかったのですが、今回初めてリアルの近づいた気がしました。

大塚:僕は動画で見たけれど、リアルだとは感じなかった。これまでと比較しての感想だと思うけど、現時点ではまだファンタジーな世界だと思う。

大杉:実験的なアプローチはそのままですが、ウエストポーチやリュックなどリアリティーを感じるものがプラスされて、一歩先に行った印象を受けました。

美濃島:これまでショーピースをプレゼン形式で披露することが多く、ロケーションを踏まえた服作りはしてこなかったそう。今回は「ミキオサカベ」同様に「宮下パーク」での野外ショーで、渋谷という街をイメージしてナイロン素材を多用したと説明していて、この素材使いが僕の受け取ったリアルさのだったのかもしれません。

大塚:かなり強い雨だったから、サンプルの風合いが変わっちゃうんじゃないかと心配になりました。ショーはもちろん大事だけど、悪天候の場合のプランBも用意しておくといいかもね。

大トリ「シュープ」はラストルックも注目

美濃島:大トリを飾った「シュープ(SHOOP)」はストリートとテーラリングを組み合わせたいつも通りのクリエイションでしたが、マルチポケットや着脱可能なアームなどギア感のあるクリエイションもありました。

大塚:ワークやテーラリングというメンズの王道に、ギミックを加えたディテールで変化させる手法はロンドンっぽいクリエイションという印象でした。「リコール」と同じく「東京ファッションアワード」組なんだけど、「シュープ」はビジネスも意識したクリエイションという感じで対照的だったから面白かったな。

大杉:全体の20%にアーカイブのストック素材を使用しているとのことでした。古着リメイクはよく聞きますが、メンズでこのような情報を開示するブランドは少ないので、好感が持てます。「アシックス(ASICS)」とのコラボがあったり、トリを飾ってることからも注目度は高いんですね。

美濃島:ラッパーのIOさんや女優の小松菜奈さんが出てたりとキャスティングでも楽しませてくれました。あとはスモークを炊いた空間にゴリゴリのテクノミュージックというアングラな演出も良かったです。

大塚:ちなみにフィナーレの最後を歩いたのは、ブランドのセールス担当しているワンダーラストの茶原さん。「え!」って3度見しちゃいました。(笑)。

後半のベストルック&東コレへの思い

美濃島:僕の後半ベストは「ケイタマルヤマ」です。デジタル表現とその発表形式含め、すごく心に残りました。

大塚:僕は「ファセッタズム」だな。

大杉:私も「ファセッタズム」です。

美濃島:2度目の「RFWT」ですが、もっと盛り上げるためにどうなってほしいですか?

大塚:「バイアール」はぜひ続けてほしい。現場で松村さん(楽天の松村亮執行役員。同社のファッション事業を率いる)に聞いたけど、あくまで東コレの一つのコンテンツというのを意識しながら、かつ際立たせようとしている姿勢がよかった。「ファセッタズム」のショー終了後、いつも冷静な松村さんがシンプルに「かっこよかった」と感想を言ってくれたのもグッときたよ。今回は第1弾で試行錯誤だったはずだから、今後は楽天の強みであるECを絡めたり、デジタルでの発信をどう強化していくのか。ひとまず継続していただきつつ、今後は支援ブランドの枠をもっと増やせば「RFWT」自体の盛り上がりにつながるのではないでしょうか。

大杉:コロナ禍でしたが、今回はパリコレへの参加を見送った「サカイ」や「コム デ ギャルソン」が日本でショーを行うことになっていたので、もしこの「楽天ファッション・ウイーク」に巻き込むことができたら、もっと盛り上がりを感じたのかなと思いました。まだ「東コレがやっている」ということが、なかなか周知できていない課題がありますが、もしかしたらデジタルがその鍵になるかもしれません。

美濃島:今シーズンいろんなデジタル・ファッション・ウィークを取材しましたが、東京はデジタルとの相性がかなりいいと思いました。あとは、ベテラン勢の凄みをまざまざと見せつけられたシーズンだったと思います。

大塚:ベテランが思いの丈を正直に話していたのが印象的だったよね。2年ぶりにコレクションを製作した「ジン カトー(ZIN KATO)」は、フィナーレで「コロナで月間の過去最低売り上げを記録した」と赤裸々に明かした上で、「引退しようかと思っていたけど、コレクションをやりたくなった。きつかったけど完成させて本当によかった」と話してくれました。若手や中堅デザイナーってつい格好つけてきれいなだけの言葉を並べがちだけど、不器用でも正直な気持ちから出た言葉の方が共感できます。これだけ取材していると、本音と表層的なコメントの違いってやっぱり分かっちゃうので。後者だと心に響かないからね。

美濃島:あとは、全体を通してもっと若い人を巻き込んでいいと思います。取材する人もベテランばかりだし、客席も若い人が全然いない。それでは若年層にリーチするのは難しいですよね。

大塚:課題はまだまだあるけれど、未来につながるポイントも見つけられたシーズンだったと思います。皆さん、6日間お疲れ様でした!

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問題です、「design」の日本語訳はなんでしょう? エディターズレター(2020年8月26日配信分)

※この記事は2020年8月26日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

問題です、「design」の日本語訳はなんでしょう?

 英語の勉強を細々と続けていますが、単語アプリがランダムに出題してくる英単語には時々「そんな意味があるのね」とハッとさせられることがあります。

 そこで突然ですが問題です。英語の「nature」の日本語訳は何でしょう?正答のひとつはもちろん山や川を指す「自然」ですが、私が使っているアプリが最初に提示した答はそうではなく「本質」でした。なるほど、確かに。ハッとして納得しました。そこから派生する「natural」も、人間や動物などの「本質・性質」といった意味があり、だから「ナチュラルメイク」は「何もしない」のとは違いますものね。ほかにも「fashion」の答えが「やり方・流儀」であり、その例文に「in one’s fashion=自分のやり方で」と見つけたときも、「ナイス例文!」と心の中で思いました。オシャレです(笑)。

 そして、このニュースを読んだときは、「design=設計」という言葉が浮かびました。

ヤマトの制服を「ホワイトマウンテニアリング」の相澤陽介がデザイン 20年ぶりのリニューアル

 「design」は幅広く使われている言葉で正解が一つではないうえに、今日では解釈の幅が広がっていますが、少なくとも私の愛用アプリによれば(笑)代表的な答えは「設計」です。そしてこの日本語訳は本質を突いていると思います。日本語で使うときの「デザイン」って、感覚的なもの、直感的なものとして認知されることが多い気がします。それだからか、洋服のデザイナーは感性勝負と思われがちです。もちろん、感覚・感性も大切ですが、活躍しているデザイナーたちの仕事を見ると、より大切なのはロジックと感覚の両方を持つ「デザイン=設計」の視点だなと思います。

 「ホワイトマウンテニアリング」のデザイナーである相澤陽介さんが手掛けたヤマトホールディングスの新しい制服は、誕生までにたくさんの試行錯誤があったようです。制服のデザインにはさまざまな制約がありますが、記事からは相澤さんが制約それ自体を発想の源にしていたことが分かります。制服の本来の役割を第一に、年齢も体形も幅広い着る人の視点でとことん考え、仮説と検証と改良を繰り返したとのこと。そして配送業者のスタッフの制服がもはや街の景色の一部であることも意識していたそうです。日常着と制服は役割が違うからデザインプロセスも異なりますが、デザイナーは設計者である……の言葉がしっくりくる記事でした。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

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ツイッターで活躍するメイクレシピプランナーちこえが支持される理由とは? 「メイクや美容がもっと自由になればいい」

 コロナ禍の影響で百貨店のコスメカウンターやバラエティーストアなど、店頭で製品を試すことが難しいなか、SNSやユーチューブなどで実際の使用感や発色、メイクアップ方法などを伝えるインフルエンサーの存在がこれまで以上に重要になっている。メイクレシピプランナーとしてツイッターを中心に活動しているちこえは、クオリティーの高いメイクと分かりやすい写真、トレンドやユーザーのニーズを捉えた投稿で人気を集めているインフルエンサーだ。フォロワーは12万を超え、熱心なファンも多い。数多くのインフルエンサー達の中で彼女はなぜ支持を集めているのか。その理由に迫る。

WWD:メイクレシピプランナーとして現在どういった情報を発信している?
ちこえ:主にメイクについて発信しています。そのほか、スキンケア、コスメ、メイク道具などについても投稿しています。

WWD:SNSでメイクの情報を発信するようになったきっかけは?
ちこえ:活動を始める前から化粧品やメイクに興味がありました。でもそれは、肌荒れを隠すためのものだったので、周りの人に言いづらかったのです。そのような中で唯一話せるのがコスメカウンターの美容部員さんでした。化粧品やメイクの話をする友人がいないと相談すると「SNSをやってみたら?同じ趣味の人とつながれると楽しいよ」とアドバイスを受けたのがSNSを始めたきっかけです。

WWD:メイクレシピプランナーという肩書きは珍しいですね。
ちこえ:最初は自分の悩みやスキンケアのことを中心に発信していたのですが、フォロワーが増えていく中で特に需要のあるメイクの情報に絞っていきました。そこで、何か肩書きがあったほうが初見の人にも伝わりやすいのでは?と考えました。でも私は美容家ではないし、メイクアップアーティストでもない……、私自身メイクを考えることが一番楽しくて、そのメイクで自分と皆さんの生活を少しでも明るく楽しくするお手伝いができたらいいなと思い、“メイクレシピプランナー”という肩書きを付けることにしました。SNSにおいて新しいポジションを築くことで、メイクや美容がもっと自由になればいいという思いもありました。

WWD:投稿を行う際に気を付けていること、意識していることは?
ちこえ:購入品でも企業からの提供品でも、手に取って使わなければわからないことを画像もしくは文章で入れることを意識しています。外装やパッケージなど、公式サイトを見れば分かることを投稿するのではなく、実際に買って封を切って、化粧品のふたを開けたところからの意見や感想が大切だと考えています。それが企業や見てくださっている方への誠意と答えだと思って取り組んでいます。

WWD:現在ツイッターのフォロワーは12万を超えているが、フォロワーが増えたきっかけは?WWD:投稿を行う際に気を付けていること、意識していることは?
ちこえ:2017年にツイッターを始めて、7カ月ほどで1万フォロワーになり、19年頃には5万フォロワーまで増えました。そこから一気にフォロワーが増えたきっかけは、青をメインにした夏のライブにおすすめのメイクを提案した投稿を指原莉乃さんが引用リツイートしてくださったことです。本当に忘れられないできごとになりました。このことをきっかけに私の代名詞とも言える「#推しメイク」が生まれました。

WWD:「#推しメイク」とは?
ちこえ:アイドルグループのメンバーカラーに限らず、芸能人やゲーム・アニメのキャラクターなど個々が自身のイメージカラーを持っていたり、ファンの人が思うイメージカラーが存在することが多いです。その中でも特に、推し(最も応援しているメンバー)の担当カラーをメインにしたメイクのことを「#推しメイク」と言います(諸説あり)。指原さんが引用リツイートしてくださった投稿をきっかけに、「自分の推しのカラーのメイクもやってほしい」などたくさんのリクエストや反響がありました。こんなチャンスは二度とないと思いリクエストを受けて13色分投稿し続けたことを覚えています。メイクを1日に何度もやり直したため目周りの皮膚は傷みましたが、こんなにもフォロワーさんが喜んでいると実感できたことがなかったので夢中になって「#推しメイク」をつくりました。

私自身長く応援しているアイドルがいてその人たちへの思いも込めて作ったのが良かったのかもしれません。コロナ禍でコンサートが次々と中止や延期になり推しメイクをしていく場所が激減したため、せめて手元を華やかにと企画した「#推しネイル」や「#ワンカラーネイルやさん」も好評です。

WWD:「#推しメイク」はもちろんですが、毎日豊富なバリエーションのメイクを紹介しているが、着想源や参考にしているものは?
ちこえ:いろいろな方のSNSを見たりはしますが、特に何かを意識したり、参考にしているということはないです。基本は私の毎日のメイクです。その中で季節やシーン、トレンド、メインのアイテムなどを決めて楽しんでいます。疲れが残る朝の簡単なメイクも考え方を変えれば“時短メイク”になります。想定とは違うメイクもあえて投稿します。そういうリアルが参考になると思いますし、メイクはうまくやる必要はないからです。きちんと完璧にしよう、ルールから外れないようにやろうという考えはメイクにおいては不要です。メイクに正解はないですし、もしあったとしてもそれは人の数だけあります。

WWD:コロナ禍の影響で、店頭でメイク製品を試しにくくなりSNSなどで製品のレビューを投稿しているアカウントの需要が高まっていると感じているが、ユーザーの反応の変化はあった?
ちこえ:緊急事態宣言解除後、私自身も何度か百貨店のコスメカウンターに行きました。テスターにカバーがかかっていたり、美容部員さんが全員マスクをしているなど、知らない場所になってしまったと感じるくらい様子が変わっていました。美容部員さんのリップに一目惚れしておそろいを購入することができなくなったのが寂しいですね。ユーザーの反応が変わったということはありませんでしたが、参考になるようにスウォッチ(化粧品の発色を手などで試した写真)を増やし、色や質感が伝わりやすいよう工夫しています。

コロナ禍で変化も 投稿に対するこだわり

WWD:企業からのPR案件などにも変化があった?
ちこえ:4〜5月は減りましたが、6月頃からまた増え始めました。案件の内容がガラリと変化したわけではありませんが、メイクの方法を詳しく紹介してほしいというリクエストは増えた印象です。

WWD:企業からのPRを行う際は、どういったことを意識、工夫している?
ちこえ:PR以外の投稿にも共通していますが、「買わなければ分からないことを画像もしくは文章でひとつは入れること」をPR投稿でも意識しています。店頭でパッケージを手に取り購入するか迷ったときの判断材料にしてほしいからです。購入前の商品を開けて手触りや香り、キャップの形状、プッシュ式かスポイト式か持ち運べるほどの重さなのか強度はあるのかを確認することはできないからです。また、美容部員さんを介してのタッチアップが難しいなかで、SNSで質感や色みを伝えることも私の役割だと考えます。

あと、この商品のPRを任されているのが私だけなのか複数のインフルエンサーが紹介しているのか分からないので、PR投稿を終えたあとはハッシュタグ等で検索し、必ずほかのインフルエンサーの投稿内容やRT数、いいね数を確認してフィードバックするようにしています。ひとりで作業していると自分本位な投稿になりがちなので、どのような投稿に皆さんが興味を持っているのかを見るようにしています。ほかのインフルエンサーの投稿は写真の撮り方や文章表現等、情報の宝庫なのでいつも学びがあります。

WWD:今後の目標は?
ちこえ:メイクをもっと自由にしたいです。たまには、らしくない色を使いたいですし、それが似合わなくてもいいと思います。この色(化粧品)が自分の感性で素敵だと思って購入しているので、似合う似合わない以前に化粧品を手に取って最初に感じたときめきを忘れたくないのです。化粧品を購入する人たちのそういう思いを存分にメイクで表現できるようなお手伝いがしたいです。この仕事は、企画はもちろん撮影も全て私一人で行っているためいつか限界がくるかもしれません。もちろん年齢も重ねていきます。ですが、そういう等身大の姿こそお会いしたことのないフォロワーさんの生活に寄り添えるのかもしれないと考えます。可能な限りメイクや美容に関する情報の発信をしていきたいです。

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循環型ファッションを実現する注目の最新テクノロジー、「サーキュラーID」とは?

 アメリカのスタートアップ企業イオンはこのほど、衣服にマイクロチップを織り込んで追跡を可能にする「サーキュラーID(CircularID)」をマイクロソフトやH&Mグループなどの協力を得て開発した。「サーキュラーID」をスキャナーで読み込むと、ブランド名、素材、原産地、価格といった服の“出生証明書”の役割を果たす基礎情報と、購入後の移動歴などの“パスポート”の役割を果たす情報を確認することができ、ライフサイクル全体を通したトレーサビリティーを可能にする。

 創業者のナターシャ・フランク(Natasha Franck)最高経営責任者(CEO)は「現在、ブランドと顧客の関係は販売時点で終了します。ブランドが製造から廃棄までのライフサイクルを通して商品を管理し循環させることで、その商品の価値を最大限化できるのです」と語る。

 フランクCEOはかつてアメリカのテック企業デロスでIoT技術を活用したスマートシティに関わるプロジェクトに従事していた。「以前から循環型経済に興味がありました。循環型に向けてリセールやリサイクルサービスが多数存在しますが、これらの取り組みをIoT技術を用いて連携させ、効率化できないか、スケールを拡大するためには何が必要かを考えていた時に思いついたのが、個別の製品を特定するためのデジタル上のIDでした」。2017年にH&Mファウンデーションの「グローバル・チェンジ・アワード」を受賞したことをきっかけに事業化を決めた。さらにH&MグループやPVHコープ(PVH CORP)、米スーパーマーケットチェーンのターゲット(TARGET)、マイクロソフト(MICROSOFT)などを巻き込んだ「サーキュラーIDイニシアチブ(CircularID Initiatie)」を設立し、同ネットワークの知見を活かして開発を進めた。

 ブランドがすでに商品管理のために活用するRFIDやバーコードなどに入力されている商品情報を「サーキュラーID」と連携させると、同社が提供するオンライン上のプラットフォームでその情報を確認することができるという仕組みだ。「製品のライフサイクルに関わる全ての人がそれらの情報にアクセスできるようにすることでさまざまなメリットが生まれます。まずブランドは消費者とより継続的な関係性を構築することができるでしょう。例えば商品を購入したお客さまがどれくらいの期間その服を着用し、着用後にどのように処理をしたかなど顧客の行動データを蓄積することができます。時期に合わせて別の商品を組み合わせたスタイリングの提案や『着用しなくなったアイテムはここで回収しています』といったリサイクルキャンペーンを実施し、リサイクルに協力してくれたお客さまにクーポンを配布するなど方法はさまざまです。またリセーラーが商品を販売する際にはその商品が本物であるかどうかを確かめたり、正規の販売価格を調べたり、商品画像を再撮影したりという作業が発生しますが、『サーキュラーID』をスキャンすればそれらの作業は不要になります。さらにリサイクル業者にとって一番の壁は素材の特定ですが、『サーキュラーID』を用いて素材の構成情報にも簡単にアクセスすることができます」。

 2019年11月よりベータ版の使用を開始し、正式版のローンチは2021年9月を予定している。

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最終回目前 ドラマ「スーツ」で鈴木保奈美が演じる雪村チカのファッションを自身が解説、裏話も!

 毎週月曜21時放送のドラマ「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)が10月19日にいよいよ最終回を迎えます。織田裕二さん演じる敏腕弁護士の甲斐正午と、その相棒役の中島裕翔さん演じる鈴木大輔の小気味良いやりとりや、弁護士同士や検事との頭脳戦、スマートで知的、かつユーモアも加えながらテンポよく進んでいくストーリー展開に毎回釘づけです。

 甲斐と鈴木の上司であり、「幸村・上杉法律事務所」の代表を務めるのが、鈴木保奈美さん演じる幸村チカです。敏腕で頭の切れる雪村チカですが、上品かつ華やかな衣装も毎回楽しみの一つ。「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」「セリーヌ(CELINE)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」といったバイブランドを颯爽と着こなしているのが印象的です。

 視聴者から雪村チカのファッションについて詳しく知りたいといった反響があったことから、「SUITS/スーツ2」の公式アカウントとは別に、雪村チカの秘書「さやかゴールドマン」という架空の存在が雪村チカのファッションについて語っているアカウントを作ったそうなのですが、実は鈴木保奈美さん自身が考えた設定で、ご自身でコメントを考えているそうなのです(この事実はこれまで明かしておらず、本邦初公開です!)。

 ということで、最終回を目前に鈴木保奈美さんと今作の保奈美さんの専属スタイリストである犬走比佐乃さんに雪村チカのファッションや、さやかゴールドマンのアカウント裏話を聞いてみました。

WWD:さやかゴールドマンという、幸村チカの秘書の設定でチカのファッションスタイルを紹介しているアカウントは鈴木保奈美さんご本人が考えられたとのことですが、始めることになったきっかけは?

鈴木保奈美(以下、鈴木):視聴者の皆様から、幸村チカのファッションについてもっと知りたい、コーディネートのポイントや具体的なブランド名も知りたいという声が届いていると聞き、「SUITS」の世界観を壊さずに情報をお届けするには?と考えたのがきっかけです。ドラマには登場しない雪村代表の秘書、さやかゴールドマンという架空の存在が勝手にまとめている記録という設定にすることで、ブランドリストだけでなく、どのような場面に合わせたファッションなのか、そのコーディネートを選んだチカの心情、また撮影の裏話的なこともかなり自由にお伝えしています。もちろんこれは初めての試みです。

WWD:さやかゴールドマンという名前もご自身で考えられたのですか?イメージする人物像がありましたらお聞かせください。

鈴木:公表はしていませんが、さやかのキャラクターも設定しています。母は横浜生まれの日本人、父はハーバード大学で教えているアメリカ人で、父の教え子であるチカと当時中学生のさやかはボストンで出会っています。さやかは成人して日本人男性と結婚し、日本で暮らしていたのですが、結婚生活が破綻してボストンへ帰ろうかと悩んでいたところをチカに一緒に働かないかとスカウトされたのです。

WWD:今回の幸村チカのファッションのポイントやこだわりは?スタイリストの犬走比佐乃さんとはどのようなやりとりをしていましたか?

鈴木:実際に犬走さんと相談して決めているチカの衣装は、まずファーム内の男性陣のスーツ姿に負けないボリューム、インパクトがあること。リアリティーにとらわれず、着る人も見る人も楽しめるものであること。体型的な長所をいかし、着ることでパフォーマンスを上げられるようなファッションであること。ですから心情的に弱っているシーンで、敢えて華やかな色を選んだりしています。

犬走比佐乃スタイリスト(以下、犬走):大事なシーンなどは事前に教えてもらい、それに合わせた衣装を用意して、保奈美さんと最終的にどんなスタイルにするか決めていきました。ファームの中において男性と対等でありながら、華のあるスタイルを心掛けました。結果的にパンツスタイルは1回しか登場しなかったのではないでしょうか。タイトスカートに華やかなブラウス、足元は8.5cmのヒールを合わせるのが雪村チカの基本スタイルです。記者会見の際はセットアップを着用したり、時にはドレスアップスタイルにしたりするなどTPOに合わせたスタイルでも登場します。

WWD:ジュエリーや時計などのアクセサリーも「ティファニー(TIFFANY)」「ブシュロン(BOUCHERON)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ピアジェ(PIAGET)」といったハイブランドを身に着けているのも印象的でした。

犬走:ハイブランドのジュエリーを身に着けることでインパクトもあり、さらにラグジュアリーな印象になりますよね。「ティファニー」の“ハードウエア”シリーズのジュエリーも反響は大きかったです。

WWD:幸村チカのような女性エクゼクティブへ向けて、ファッションにおけるアドバイスはありますか?

犬走:部下の女性が「素敵だな」と思うようなスタイルを心掛けるといいかもしれないですね。色を取り入れてみたり、シルクのブラウスを取り入れてみたり、“華やかだけどシック”な印象になるとよいのではと思います。ここ数シーズン、ボウタイやシルクのブラウスが多く登場しているので、これからのシーズンはコートの下にそのようなブラウスを合わせるのもおすすめです。あとは大前提として仕事をする上ではサイズが合っていて、着心地が良いということはもちろん大切ですね。

――このようなドラマのキャラクターに合わせた衣装の裏話をお伺いすると、さらにまた違ったドラマの楽しみ方ができますね。そして印象的だったのは「心情的に弱っているシーンで、敢えて華やかな色を選んだりしています」という鈴木保奈美さんの言葉です。ファッションとは着る人を勇気づけたり、鼓舞したり、時には自らを優しく包み込んでくれるものでもあると改めて再認識しました。いよいよ「スーツ2」も最終回、ストーリーもさることながら、雪村チカのファッションも楽しみにしたいと思います。

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国内縫製工場の労務問題は改善している? 人権団体ASSCに聞く人権問題に取り組む重要性

 昨今、持続可能な事業活動に向けてサステナビリティ戦略を打ち出す国内アパレル企業が増えてきた。リサイクル素材の活用など製品の環境負荷の軽減に向けて取り組む例が多いが、見落とされがちなのがサプライチェーンにおける労働人権問題だ。

 2017年に放送された「ガイアの夜明け」で、国内の縫製工場における外国人技能実習生の労務問題が大きく報道されたことなどをきっかけに、国内にも労働搾取の現状があることが広く認知された。

 特に日本のアパレルビジネスはサプライチェーンが細かく分断されており、商社が介在するケースも多いために現場の実態を把握することが難しいとされる。しかし、「商社に任せているから何も知らないというのではブランドホルダーとして失格だ」と話すのは、国内企業の労働人権問題に関する取り組みをサポートする一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・ サステイナブル・サプライチェーン(The Global Alliance for Sustainable Supply Chain、以下ASSC)の杉本泰樹シニア・オフィサーだ。現在アパレル業界ではファーストリテイリングやアシックス、帝人、アダストリア、三井物産アイファッションなどがASSCの会員となっている。自身も国内アパレル関連企業に20年以上務め、CSR調達(企業が調達先の選定や調達条件を設定する際に、社会的責任の観点から基準を設定すること。また、調達先に社会的責任を果たすよう要求すること)に従事してきた経歴を持つ杉本氏に日本のアパレルビジネスの労働人権問題について聞いた。

WWD:外国人技能実習生(以下、実習生)が国内縫製工場で最低賃金以下で長時間働かされていたり、狭い部屋で何人も暮らすような環境を強いられていたりといった問題がここ数年で広く知られるようになった。こうした労務問題はいつ頃からあったのか?

杉本泰樹シニア・オフィサー(以下、杉本):外国人技能実習生制度は1993年に制度化されました。2000年代以降、労働人権問題は発生していたと推測します。本来同制度は技術の海外移転を目的とし、実習生は技術を習得してお金を稼ぐことができ、人手不足の日本は労働力を確保できるというウィンウィンの関係が成り立つべきものでした。しかし、10年に法改正が行われ、それまでは3年間の実習期間のうち1年目は研修代として最低賃金を払う必要がなかった部分が1年目から最低賃金を払わなければいけなくなりました。それをうまく導入できなかったところから労務問題が起き始め、地方紙などでは当時からよく取り上げられていました。

WWD:具体的にどんな問題がある?

杉本:特に深刻なのが、実習生に入国の際に膨大な手数料を支払わせることによって起きる債務労働です。国を出る時の手数料や航空運賃が監理団体を経由することでどんどん大きくなっていき、実習生は来た時から借金を抱えた状態になるわけです。もともとは実習実施機関である日本の縫製工場だった企業が、監理団体を運営した方が手数料等でもうかるということで、縫製工場をやめて監理団体になったといった事例も聞きました。ただ、(縫製工場だけが悪いというのではなく)実習生の側が工場に最低賃金を払わなくても良いから土日も働きたいと申し出るケースもある。そのほか実習生が宿泊する寮の設備が整っていないなどの労働環境の問題もあります。

WWD:コロナ禍で実習生にはどんな影響があった?

杉本:出身国への帰国ができないなか、特別措置で延長して働くことは可能ですが、仕事がなくて寮で待機していたという可能性も考えられます。本来であればその際の日本での生活費は監理団体や受け入れ先工場が保証するべきですが、そうなっていたかどうかは分かりません。

WWD:実習生は農業や漁業、工業など他産業も受け入れているのに、特にアパレル分野で法令違反が多数報告されているのはなぜ?

杉本:アパレルは労働集約型産業であるということと、できるだけコストを抑えるコスト至上主義の体制が起因しているでしょう。工場は慢性的な人手不足や高齢化を抱えているのが実態で、苦しい胸の内を聞くこともよくあります。

WWD:問題が広く知られるようになって以降、状況は改善しているのか?

杉本:改善は見られます。企業によっては実習生が日本に来るために払う手数料を負担するところも出てきました。しかし、まだ一部の企業です。もちろん、当初からしっかりとした受け入れ体制をとっていた工場も存在します。実習生を受け入れるにあたり、寮の建て直しをしたり、1人部屋を設けたりしたといった工場の話も聞きました。ある工場では実習生の能力を適正に評価し、工場内で一番高い給料がその実習生に支払われていました。監理団体側も適正な運営を行うところが増えている印象です。

WWD:国際社会からは日本はどんな評価をされている?

杉本:日本でも実際に工場を視察して、労務問題の有無や実態を調査している企業があるにも関わらず、調査した内容をきちんと世の中に公表しているところが少ない。今年6月に米国務省が世界の人身売買防止への取り組みを評価した報告書を発表しましたが、日本は昨年から評価が1段階下がっています。その時も外国人の技能実習制度については「強制労働の告発が続いているにもかかわらず、人身取引事案を1件も認知しなかった」と指摘されています。調査した結果を公に出すことで信頼を得られるということの理解がまだまだ進んでいないようです。

WWD:アパレル産業は細かく分断されているという構造上、サプライチェーン全体の把握が難しいが企業はどんな対策を取るべきか?

杉本:問題が発覚した時に「あそこの工場のことは商社に任せています」という回答はブランドホルダーとして失格です。自分たちが消費者に対して商品を提供している以上、自社で工場を持っている企業はもちろん、下請け工場の現場にまで足を運ぶ必要があります。アパレルに限らず日本はESG(環境・社会・ガバナンス)のうち、環境に対する取り組みはできていても人権の部分が弱いと言われています。島国の日本では、欧米と比較して人権に関する意識が醸成されてこなかった。だからこそ、現場に行って労働者の声を聞く努力を怠ってはいけないと思います。

WWD:日本の縫製企業は日々工場を稼働させることに精一杯で、CSR調達まで手が回らないところも多い。

杉本:中小、もしくは零細企業こそCSR調達の重要性を理解することが大切です。例えば認定団体の監査に費用をかけるくらいなら、オーダーは取らなくて良いという工場もありますが、実際にはそういう監査を受けて正しい運用をすることが将来性につながります。CSR調達とは環境や社会問題を解決するだけでなく、生産計画、品質やコストの改善につながるものです。

WWD:経済的にもCSR調達に取り組むメリットは大きい?

杉本:はい。例えば中国であれば旧正月前にオーダーが集中し、現場では残業が出てきて残業代を払わなければいけない。繁忙期に重ならないように生産計画を組めば、実際には残業の割増賃金を払う必要がなくコストが落ち着く。きちんと管理された労働時間で適正な賃金をもらえれば、働く側も生活が安定し、良いものを作ろうというやる気が出て品質も上がる、という理論です。そこまで見据えて取り組めている企業はまだ少ない印象です。

WWD:ASSCではどんな取り組みを行っている?

杉本:アパレルのみならず幅広い業界の企業活動をサポートしています。サプライチェーンの労務問題についてASSC主催のウェビナーや会員企業用のセミナーなどを実施したり、会員企業が取り引きしている工場の実態調査も手伝います。また企業の意見交換を目的とした「外国人労働者ラウンドテーブル」はASSCの正会員に限らず参加が可能です。さらに11月16日に、ラウンドテーブルから発展して国際協力機構(JICA)とASSCが事務局となり「責任ある外国人労働者の受け入れプラットフォーム」を立ち上げます。そこでは行政や企業を巻き込んできちんとした情報提供をしていきます。改善には個別の企業だけでは難しいこともありますのでASSCの専門性を活かしながらNGOや市民団体とも連携して適正なサプライチェーンの構築のために活用してほしいです。

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クラウドファンディングで計4477万円を調達 渋谷区公認キャリー品ECサイト仕掛け人に聞く

 10月18日、“渋谷区公認のキャリー品ECサイト”として、「シブヤ・ファミリーセール」がスタートする。アーバンリサーチ、シップス、トゥモローランド、アダストリアなど有力セレクトショップ、SPA企業が参加予定で、今後も引き続き出店企業やブランドを募集。「2021年3月末までに100ブランド・店の出店を目指す」と、同企画のプロデューサーの一人である久保田夏彦・渋谷未来デザインプロジェクトデザイナーは話す。同ECはコロナ休業に苦しんだ事業者の支援という側面を持つが、キャリー品や売れ残り商品の大量廃棄は、コロナ禍以前からファッション業界で課題となっていた。同ECを手掛ける2人に、その目的を聞いた。

WWD:自治体公認のファッションECサイトというもの自体、非常に珍しい存在だ。どんな経緯で企画がスタートしたのか。
久保田夏彦・渋谷未来デザインプロジェクトデザイナー(以下、久保田):4~5月にコロナ禍による緊急事態宣言が出て、渋谷カルチャーを形作ってきた飲食、ファッション、エンタテインメントといった業種が苦境に立たされた。そうした事業者を渋谷区としてもサポートしたいという気持ちはあっても、区の予算は基本的に住民のために使うもの。住民以外で渋谷カルチャーを支えてきた事業者をサポートするために、「YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング」を、渋谷区、渋谷区商店会連合会、渋谷区観光協会、渋谷未来デザインで7月に立ち上げた。9月までに約1300人から4470万円を集めたが、その一部と区の予算でECサイトを立ち上げている。

松井智則ワンオー社長(以下、松井):クラウドファンディングの動きとは別に、休業明けの6月に長谷部健・渋谷区長に面会して、ファッション業界の窮状を伝えていた。区長には、「(人が店に集まることが難しくなっている以上)ECなどで渋谷区のファッション事業者を盛り上げる手法を考えてほしい」と言われた。それで、(渋谷の産官学民連携組織である渋谷未来デザインでプロジェクトデザイナーを務めていて)ECに詳しい久保田さんと一緒に動くことになった。

WWD:ワンオーは「シブヤ・ファミリーセール」にどのような形で関わっているのか。
松井:われわれは渋谷区の街をあげたファッションイベントとして、「SHIBUYA HARAJUKU FASHION FESTIVAL(以下、シブハラフェス)」を前身イベントを含め10年近く行ってきた。今回のシブハラフェスではこれまでのように街に人を集めることができない。それで、渋谷の街のファッションを購入体験も含めてデジタル上で表現することを構想していたが、当初は自社で協賛を集めるなどして“街のEC”を行うことを模索していた。クラウドファンディングと連携することになったのは7月半ばだ。

久保田:クラウドファンディングで集まった資金の使途として、最初からファッションECという案はあった。しかし、そのために大手EC企業と組むのでは渋谷カルチャーを支えるファッション事業者から理解は得られないと思った。その点、ワンオーはこれまでのシブハラフェスで区内のファッション事業者と関係性を築いてきている。ECサイトへの出店には初期費用などはかからないが、正直煩雑な作業をお願いする部分は多い。立ち上げすぐは、売上高も大手のセレクトショップやSPAにとっては小さなものだと思う。それでも各社に協力してもらえたのは、シブハラフェスでの関係性があったからだと思う。

WWD:クラウドファンディングを立ち上げた当初は、コロナ禍で消失したインバウンド(訪日外国人客)消費を取り戻すべく、越境ECを行うことを目指していたが?
久保田:どういったECサイトにしていくか、そのコンセプトはファッション事業者にヒアリングをしながら、走りながら決めていった。“街のEC”をやるということと、渋谷区が掲げているSDGsの考え方の両方満たすものとして、(越境ECではなく)キャリー品のECという形に落ち着いた。ただ、僕自身もこれまでブランドビジネスをやってきた経験から、キャリー品をネットで売るというあまりイメージのよくない取り組みに、ブランドや企業がどこまで協力してくれるだろうかと不安に思う部分もあった。しかし、結果的には渋谷区公認のECサイトとして、「区がファッション事業者を支援したいと思っている」という点に共感いただけたんだと思う。

松井:毎回、シブハラフェスの開催前には協力いただいている大手セレクトショップなどの社長に挨拶して回っている。今回は「キャリー品をわれわれのサイトに回してください」と伝えなければいけなかったので、いつになく緊張した。大手セレクトショップやSPAは、自社ECサイトや「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」などで通常の商品を販売している。そこと差別化するために、「渋谷区は、捨てない」といった考え方を「シブヤ・ファミリーセール」では裏テーマにしているといったことを各社社長に伝えたら、非常に盛り上がった。実は1年前の19年10月のシブハラフェスでも、各社の在庫を少しずつ集めて、会場内で販売することも行っていた。考え方としては同様だ。

WWD:サイトで販売する商品は、4~5月の休業中に各社で膨らんだ20年春物の在庫がメインになるのか。
松井:10月18日にサイトをローンチするため、春夏物ではなく秋冬物が中心になる。つまり、19-20年秋冬物やそれ以前のアイテムだ。セレクトショップのオリジナルやSPAのアイテムだけでなく、一部インポートブランドなども含まれる予定だ。

久保田:もちろん、休業中の20年春物のキャリー品は多くの企業が抱えてはいる。ただ、大手企業は自社ECで消化を促したり、アウトレットにまわしたりといった策を取っていることもあり、「シブヤ・ファミリーセール」に立ち上げのタイミングで20年春物が大量に集まるという感じではない。

WWD:参加企業として現時点で名前があがっているのは、有力セレクトショップなど比較的大手の企業が中心だ。それらよりも、自社でECを整える体力のない中小のブランドの方が、問題は切実のようにも感じる。中小ブランドにはどうサポートを広げていくのか。
久保田:サイトが立ち上がっても、注目ブランドやショップが出店していなければ集客ができない。大手企業や有力ショップにまずは集客の目玉として参加していただき、今後徐々に中小のブランドにも出店していただければと思っている。渋谷区内に実店舗を持っているか、区内に本社がある、もしくは事業者が区内に住んでいるといった企業やブランドなら、どこでも出店いただくことが可能だ。

松井:現在、約650ブランド・店に出店の誘いをかけている。3~4カ月で50ブランド・店は出店していただけると見ているが、目標は100ブランド・店だ。

WWD:「シブヤ・ファミリーセール」とも通じる考え方のオフプライスストア業態は、コロナ禍以降、実店舗での催事でもEC上でも影響力を増している。それらとはどう差別化するのか。
松井:立ち上げに合わせて、中井彩乃さんなどのスタイリスト6人がブランドミックスで商品をスタイリングし、それらをセット売りする企画を考えている。もちろん、ブランドミックスで提案することは出店企業には事前に伝えている。ステイホーム期間中には、スタイリストやフリーランスのエディターなどからも仕事がなくなったという話をよく聞いた。彼らにも売り上げが循環するような仕組みにしていきたいと考えて組んだ企画だ。今後も、定期的に同様のスタイリスト企画は行っていきたい。

久保田:そういったさまざまなプレーヤーが関わって作ってきたのが渋谷のカルチャーだ。ブランドミックスで商品を提案できるという点が消費者にとっては他のECサイトとは異なる点だと思う。クラウドファンディングで集まった資金を充てていることで、初期出店費用がかからないことが出店者にとってはメリットだろう。

WWD:今後、このサイトをどのように育てていくのか。
久保田:初年度の取扱高は3億円を目標にしている。出店企業やブランドとは委託販売契約で、売り上げの一部をわれわれに手数料として支払っていただく形だ。このECサイトは期間限定で行うものではなく、通年で運営していこうと思っている。事業を持続可能にしていくために売り上げ実績を作って、既に出店している企業からはさらにキャリー品をまわしてもらえるようにしていきたいし、同時に新規の出店者も集めていきたい。

松井:不可能な理想論かもしれないが、数年後には(ファッション業界を取り巻く余剰在庫の問題がなくなって)こうしたサイト自体が不要になっていけばいいなと思っている。消費者が住んでいる場所の近くなどでは人出が戻っているという報道があるが、渋谷や原宿などの都心の店舗は引き続き客は少ない。地域で括ったファッションECサイトという考え方自体が他にはなかなかない。ファッションやカルチャーの街という、渋谷区ならではの特色があってこそ成り立つ企画だと思っている。

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 人間関係がテーマのてんびん座の新月(10月17日)

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第21回は10月17日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(10月17日)はてんびん座

 てんびん座のテーマはズバリ“人間関係”。私がいて、あなたがいて、2人の間には距離感があるけれども関係性を築いていきながら自分が成長する。相手がいるから“他者から見られる自分”や“客観性”の感覚が磨かれる。そんなストーリーをてんびん座は持っています。会社でいうならまさに人事部というイメージなのですが、他者とか変わる時に押し引きが上手なのもてんびん座の特徴です。バランス感覚に優れるといわれるのもここがゆえんなのかもしれません。

 てんびん座のキーワードとしてよく挙げられるのがセンス、バランス、美意識、などなど。てんびん座の考える美しさとは、“調和的である”という事がキーワードかなと思うのですが、今日はそんな事をテーマに新月コスメをご紹介したいと思います。

今回の新月コスメ

 てんびん座のキーワードでもあるバランス、という言葉から連想するのはやっぱり香りの調合。数種類の香りがブレンドされているアイテムなら、香りを嗅いだ時の気分や体調によって香りの感じ方が変わることもあれば、興奮しすぎた時には鎮静作用のある精油を、反対に体が重たいなと感じる時にはスパイスフルな香り……など、自分自身を整えるサポートをしてくれます。

 最近もたくさん優秀なアロマグッズが売られていますが秋の夜長ということで、夜に嗅ぎたい香りをセレクト。「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」の睡眠ディフューザー“スーパーディープナイト ホリスティック精油ディフューザー フォールアスリープ”は、ヒノキやシダーウッドなどの樹木系の香りが特徴。秋も深まる夜長タイムに取り入れてもらうと、木の香りが落ち着きやスムーズな入眠をもたらします。


 もうひとつ、てんびん座のキーワードとして気にかけたいのが「笑顔」。人当たりの良さや印象づけにはやっぱり笑顔が一番の武器であり潤滑剤ですよね。相手に見せる自分の表情や空気感などもてんびん座には大切な要素です。そんな笑顔の底上げといえば歯のメンテナンス。今年、自粛期間の影響で思うようにクリニックに行けなかった方もいらっしゃるのでは、と思いますが「ニューパール(NUPEARL)」“ スターティングキット”は、自宅で簡単にできる歯のホームホワイトニングアイテムです。しかも、特許技術により99%以上ナチュラル&約92%オーガニック処方という画期的なプロダクト。専用の器具にジェルを塗布してLEDライトをあてるだけなので簡単で、朝晩10分のケアで手軽にメンテナンスができます。

 自分のメンテナンスも忘れずに外の世界ともうまくバランスを取っていきましょう!

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

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ファッション業界人は「財テク」下手!? “ゴールド”から資産運用を考えてみた 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.9 ファッション編

 これまで「業務効率化」「便利なECサイト」などをテーマにしてきた、ママ連載(ファッション編)。でも本当に気になるのは「お金のコト」という人も多いのでは?今回は、そんな「財テク」をテーマに鼎談。田中貴金属が手掛けるジュエリーブランド「ギンザタナカ(GINZA TANAKA)」銀座本店の山口大介副店長を訪ね、「財テク」初心者の現・元「WWDジャパン」記者ママ2人が、ファッション業界人には一番身近(!?)で、身に付けることもできる“ゴールド”から資産運用を考えてみました。

「袖を通すことも勉強!」が散財の免罪符

村上杏理(以下、あんり):突然だけど、カモちゃん。「財テク」って何かやってる?

鴨井里枝(以下、カモちゃん):何もやってないよ。でも取材で日々良いモノに触れているおかげで、目だけは肥えていく。「節約」は大切だけど、ちょっとしたモノが高めだから、そろそろ何かやらなきゃと思ってるよ。

あんり:それは耳が痛い。私も娘が生まれて、お金の大切さがやっと自分事化した。過去を振り返ると、展示会でオーダーした洋服が、オンシーズン数カ月前から届き始めて生活が徐々にカツカツに。ボーナスが出る時期に、サンプルセールもタイミングよく開催されるから、さらに洋服を買い込む。で、半期で収支が「±ゼロ」という生活を10年くらい続けてた(笑)。これはファッション業界で働く人“あるある”だと思う。

カモちゃん:展示会オーダーの罪悪感を解消するのは「袖を通して、良さを体感するのも(良い記事を書くための)勉強」という言葉(笑)。

あんり:それを免罪符に買いまくってたなぁ(遠い目)。でも、今は子どものためにもお金を役立てたいと思うようになった。それで「ギンザタナカ」を訪ねる今回の鼎談には、現「WWDジャパン」でママのカモちゃんを誘ったよ。会社員だと、フリーランスとは違った視点があると思うから。

カモちゃん:私もこれを機に色々勉強したい。前置きはこの位にして本題に。

「財テク」って何から始めればいいの!?

あんり:早速ですが山口副店長。「財テク」を始める上で、まず何から始めたらよいでしょうか。IDECO、積み立てNISA、株、FX……。種類がたくさんあって悩んでいます。

山口大介「ギンザタナカ」銀座本店・副店長(以下、山口副店長):「これ!」というのは言えませんが、まず明確な違いでいうと「IDECO」や「積み立てNISA」は、節税のメリットがあります。その他の多くの取引には利益に税金がかかります。

「金」を使った資産運用のひとつには「純金積立」がありますが、これはお客さまからお預かりした月3000円からの資金を元に、毎日少しずつ「金」を購入するという仕組み。価格の高い日は少なく、低い日は多く購入する“ドル・コスト平均法を導入することで、価格変動のリスクを抑える効果があります。ちなみに田中貴金属の「金」税込小売価格は、1gあたり7101円(10月1日時点)です。

「金」は「安全資産」と呼ばれていて、「バイ&フォーゲット(買ったら忘れろ)」なんて格言も。価値が安定しているので、資産保全が期待できます。

あんり: “ドル・コスト平均法”は、「IDECO」「積み立てNISA」にも採用されています。特に「純金積立」が優れているところは?

山口副店長:やはり積み立てる対象が「金」であることです。その理由のひとつは、希少性。これまで世界中で採掘された「金」は、国際基準の50mプール4杯分程。貯金や株式、債券などに加えて資産分散のひとつとして、購入されるお客さまが多いですね。

カモちゃん:がっつり儲けたいという人より、長く安全に資産形成したい人に向いているということですね。

「純金積立」は忙しいママにこそおすすめ?

山口副店長:はい。僕の妻を例に上げると、朝起きてから子どもの支度、幼稚園の送り迎え、習い事の付き添い……、それだけで目まぐるしく1日が終わってしまいます。「純金積立」はそんな「日々マーケット情報を見る時間の余裕はない」という方に多くご利用いただいているので、ママ世代に相性が良いのでは?と思います。逆に、すぐにリターンを求める方は「金」じゃない方がいいでしょう。

あんり:なるほど。株取り引きは9~15時がコアタイム。わが家は夫が株をやっていて、いつも15時過ぎまでは他のコトが片手間。株にも興味がありますが、私までスマートフォンで相場チェックしながら育児をするのは、さすがに罪悪感が。でも今は「普通預金」の金利が低いので、漠然と現金を貯めることにもリスクを感じています。

カモちゃん:物価は年々上がり続けているしね。ちなみに山口副店長の「金」に関する成功事例はありますか?

山口副店長:毎年子どもたちの誕生日にコインを贈っているのですが、5年前に長女に購入した約16万円の金貨が、今約21万円に値上がりしています。ただ2歳になる下の子には、金が値上がりした関係で、予算的にプラチナコインを贈っています。希少性はプラチナの方が高いですが、現在は価格が逆転しており(2020年10月時点)、「金」よりもプラチナの方がお求めやすいです。将来、自分で何かやりたいときは、これを資金にしてもらえたらな、と考えています。

カモちゃん:将来、姉弟喧嘩にならないといいですね(笑)。もちろん失敗エピソードも?

“「純金積立」を切り崩してご祝儀代に(笑)”

山口副店長:失敗事例でいうと、一時期お給料の全額を「純金積立」で「金」に換えていたのですが、友人の結婚式が重なって、ご祝儀に充てる現金が足りなくなる事態に。泣く泣く積み立てた「金」を売ったら、1gあたり5000円で購入したものが4500円に下がっていたタイミングでした。「金」の価値はゼロになることはありませんが「資産運用は余裕資金ですべし」の大切さを肌で感じた瞬間です(笑)。

あんり:確かに、余裕資金であれば「今は売らないでおこう」の選択もできますしね。でも、お子さんの誕生日に金貨を贈るなんて、素敵な習慣です。

カモちゃん:身に付けるジュエリーでも資産性はあるのでしょうか?

山口副店長:もちろんです。「金」は毎日使っても重量は減りません。「金」のネックレスや食器など、日々の生活を豊かにしながら、資産として持つことができます。

カモちゃん:金のジュエリーは「お金があれば使っちゃう」ファッション業界人と相性がよさそう。紙幣を「資産」に変えただけと思えば、買い物の罪悪感が減りそうです(笑)。

山口副店長:もし換金を希望される場合は、24金で1グラム7000円、18金で5000円ほどになります。ルビーやサファイアなどの宝石は、明確な評価基準を持たないので(2020年10月時点)、「ギンザタナカ」は宝石をお返しして「金」のみの重さで価格を決定します。

あんり:ダイヤモンドは“4C”で表現される評価基準がありますが?

山口副店長:ダイヤモンドには評価基準がありますが、「ギンザタナカ」では買い取りを行っていません。主に再販目的でダイヤモンドを買取る業者もありますが、基準は各社さまざまです。

カモちゃん:コロナ禍で30〜40代の女性、ママ世代からの問い合わせは増えていますか?

山口副店長:子どもの名義で「純金積立」を始めたい、というお問い合わせは増えています。お客さまに共通するのは「子どものために何かしてあげたい」という思い。そうなると値動きの激しいモノより、紀元前から“価値あるモノ”とされている「金」を託したい。という想いがあるのかもしれません。

人気はコインチャーム

カモちゃん:なるほど、奧が深い。特にオススメのアイテムは?

山口副店長:楽器の絵柄が入っている“ウィーン金貨ハーモニー”を筆頭に、コインやコインバーなどのチャームが人気です。

カモちゃん:メダイやコインチャームを使ったアクセサリーのレイヤードは流行っているし、ファッション性もあるので素敵に取り入れられそうです。

あんり:私はジュエリーを「資産価値」で選ぶという考えが今までなかったので新鮮。そして本当に失礼ですが、デザインも意外にかわいいです。今までもっと古風なデザインをイメージしていたので。

山口副店長:一般的には、デザインからジュエリーを選ぶ方が多いと思いますが、「ギンザタナカ」では「資産価値」を念頭に、+αでデザインを選ぶという逆の流れで購入される方が多いかもしれません。でも皆さんには、「金」は特別なモノではなくて、もっと身近なモノだと感じてもらいたいですね。

カモちゃん:「資産性」という価値観があれば、購入するアクセサリーも変わっていたかも。

あんり:散財していた20代も贅沢な時間だったけど、私たち30代中盤。まずはこのジュエリーを買えるように、より一層働かなきゃ!だね(笑)。

村上杏理/(むらかみ・あんり):1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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百貨店「閉店ラッシュ」の夏 エディターズレター(2020年8月20日配信分)

※この記事は2020年8月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

百貨店「閉店ラッシュ」の夏

 今年の8月は百貨店の閉店が相次いでいます。

 16日に高島屋港南台店(神奈川県)、17日に井筒屋黒崎店(福岡県)が営業を終了しました。31日にはそごう・西武が運営する西武岡崎店(愛知県)、西武大津店(滋賀県)、そごう西神店(兵庫県)、そごう徳島店(徳島店)が一斉に閉まります。同日、福島県の地場の百貨店である中合福島店も146年の歴史に幕を下ろす。ちょっと毛色は違うけれど、名古屋駅前の中規模店であるイセタンハウス、東京駅の赤レンガ駅舎に入る松屋の小型店も31日に営業を終えます。

 百貨店の閉店ラッシュは今に始まったことではありません。しかし1カ月でこれだけ重なるのは、おそらく初めてでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大の影響というよりも、大半はコロナが発生する前に決まっていた案件です。コロナの打撃によって、来年以降、さらに閉店が加速する可能性が高いと思われます。

 私はこれまで多くの百貨店の閉店の現場を取材してきました。最終日の店内は、多くの地元客でごった返します。閉店セールが目的というよりも、長年世話になった百貨店の最後を見届けたいという人が圧倒的に多いのです。

 声をかけると、みなさんが百貨店との思い出について堰を切ったように話してくれます。子どもの頃、休日に家族で訪れてレストランで食事するのが楽しみだった。店内の写真館で娘の七五三や入学式、卒業式、成人式の記念写真を撮った。中元・歳暮の時期にバイトをしていた。初任給で初めて両親へのプレゼントを買った。クリスマスや誕生日のケーキを毎年予約していた。親子2代でなじみの販売員さんがいる――。

 何十年、あるいは100年以上も地域に根ざして営業してきた百貨店は、地域にとって掛け替えのない存在だと思い知らされます。もちろん客離れが進んだから閉店に追い込まれるわけですが、買い物をする人、働く人、膨大な人々の人生の記憶が積み重なっているのが百貨店です。「業績低迷で閉店」の一言で片付けられない重みがあります。

 営業最終日は別れを惜しむ人が殺到し、店内でなじみの販売員と記念撮影したり、最後の閉店セレモニーを見届けようとしたりするのですが、今年はコロナのため出来るだけ密を作らないような対応が求められています。閉店セレモニーは行わず、静かに営業を終える百貨店が多いようです。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDジャパン」のビジネス担当記者がコンパクトに解説するメールマガジン。ニュースを読み解くヒントを提供します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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秋デニムは脱カジュアル! アウターでクラシックに格上げ

 最も身近なウエアの一つであるデニムパンツに異変が起きています。2020-21年秋冬シーズンのランウエイではクラシックなテイストが台頭。ジェンダーレスな風潮も追い風になり、デニムパンツを“タイムレス&ジェンダーレス”な方向でアレンジする動きが目立っています。

 たとえば、「セリーヌ(CELINE)」は、貴婦人風フリルをあしらったブラウスで、デニムルックをフォーマルに格上げ。さらにテーラードジャケットを羽織って、凜々しさもプラス。ユーズド感を漂わせるデニムパンツに、品格を寄り添わせました。今秋冬のデニムコーデではこういった、クラシックなアイテムを使った“脱カジュアル”のムードづくりがポイントになります。

ダンディーなジャケットでクールな“デニム紳士”に

 ダンディーなダブルブレストのジャケットをキーピースに選び、英国紳士風のスタイリングに仕上げたのは、「バルマン(BALMAIN)」のデニムルック。タキシードライクな襟とつやめいた風合いはウォッシュ加工のデニムパンツと好対照。真っ赤なタートルネックセーターを差し色に、いっそうコントラストを際立たせました。

 ダークカラーでまとまりがちな冬コーデでは、このようなつやのある素材や鮮やかな色使いが重宝します。クシュクシュとたるませたロングブーツで足元に抜け感を添えて。

優雅なマントをまとって貴婦人風コーデ

 古風な装いの代表的なウエアにマントがあります。英国紳士も貴婦人も愛用してきたという点では歴史的なジェンダーレスアイテムと言えるでしょう。「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」は、クラシックなマントでボディーをくるみました。丸みを帯びた優雅なシルエットが装いにヨーロピアンな品格をもたらしています。

 羽織るだけで印象がガラリと変わり、コーディネートにボリュームが出るので、着痩せ効果も期待できそう。ボリューム袖やふんわりニットの上から楽に羽織れるところも便利です。

スーツ風なデニムonデニムで“脱カジュアル”

 おしゃれ上級者が好む装いの一つに“デニムonデニム”があります。しかし難易度が高めなうえ、上手に着こなさないとかえって野暮ったく見えがち。「ディオール(DIOR)」が提案したのは色落ちタイプのデニムベストとパンツのセットアップ。いかにもデニムらしい濃いインディゴブルーよりも色を工夫したタイプのほうが“脱カジュアル”向きです。

 効果をさらに高めてくれるのが、シャツとネクタイ。正統派のVゾーン演出のおかげでデニムがスーツ風に。クラシックなバッグでレディー気分を添えて、さらにオーソドックス感を高めています。

レザーブルゾンでパワールックに

 素材でデニムに上質感を添えるなら、レザー(合皮含む)が効果的。秋冬ルックに不足しがちなつやめきも補えるので、アウターでのレザー投入は選択肢に加えるメリット大です。「クロエ(CHLOE)」はハイウエストのデニムパンツに、レザーブルゾンを合わせました。

 革ならではの光沢感と襟周りのボアがリュクス感をプラス。デニムルックに大人っぽさや凜々しさを上乗せしました。ブルゾン丈を選んだおかげでハイウエストの持ち味が強まり、レッグラインがきれいに決まっています。

 クラシックな雰囲気のジャケットやマント、ベスト、ブルゾンで合わせれば、デニムルックに変化をもたらせます。単に古風なアイテムを取り入れるのではなく、ジェンダーレスを軸にミックスするのが今シーズンらしいスタイリングと言えるでしょう。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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島崎遥香が今、こだわることとは? コスメブランド「ミラー」でリップをディレクション

 元AKB48でタレントの島崎遥香がクリエイティブディレクターを務めるコスメブランド「ミラー(MIRROR)」が10月1日にデビューした。市場トレンドの艶感のあるセミマットではなく、マットリップをディレクション。最近ではユーチューブも開設し、メイク動画もアップする。島崎がマットリップにこだわる理由や、ターニングポイントは「今」と語るその心境についても聞いた。

元々マットが好き。流行っているのは嫌

WWD:今回、「ミラー」のリップスティック“マットリップシリーズ”(全3色、各1900円)のクリエイティブディレクターに就任した。その経緯は?

島崎遥香(以下、島崎):ブランドを手掛けるemy productsさんからお声掛けいただきました。そもそもですが、そこまで化粧品に詳しくなくて、こだわりもなかったんです。だから自分に何ができるんだろう?と思ったんですが、なんでもチャレンジだと思ってやることにしました。

WWD:コスメにこだわりがないということは、敏感肌ではないんですか?

島崎:いえ、敏感ではあるんです。新しいアイシャドウを使ったら痒くなったりとか……。

WWD:そうなんですね。今回のリップもそういったところも意識しつつだとは思いますが、どう作っていったのですか?

島崎:リップという商材は決まっていました。何百種類とかいただいて、ウル艶にするのか、マットにするのか。市場には無限にリップがあります。その中で、何が出せるか?と考えたんです。

まずはマットがいい、というのはすぐに決まりました。流行っているモノは嫌で。そもそもグロスが好きじゃなくて、すぐ飲み物に付いちゃうから。今だとマスクにも付いちゃうし。好きなように考えてくださいって言っていただいたので、自分で付けて気分が良いもの。香りもそうだし、塗り心地もそうですね。

WWD:大変だったところは?

島崎:私が理想とする塗り心地を再現するのは難しかったみたいで。理想は、サラッと付けられるマットで落ちにくいものだったんです。何度も何度も試して、半年以上時間を費やし、できる範囲で理想のリップが出来上がったと思います。

WWD:カラーの名前付けがとても印象的ですね。レッドが「あの子と違う日」、オレンジが「魔法が解けた日」、ベージュが「何かが変わる日」です。なぜこういった名前を付けたのですか?

島崎:以前、渡辺直美さんがカラーコンタクトのプロデュースをされていて、その商品の一つ一つに食べ物の名前が付けられていて、なおみさんらしいなあと思ったんです。いいなあって。私らしさが出せたらと思って提案しました。

WWD:なるほど。例えば「何かが変わる日」というのは、それを使ったら気分が変わる、上がるよ、というのがあればいいと思われたのですか?

島崎:それは逆で。私的には、「リップを付けたら、変わります」みたいな良くある謳い文句ではないリップにしたかったんです。

簡単にいうと、量産型女子ではない、みんな一緒じゃない、自分らしさがある。何に関してもですが、みんなと一緒というのはどうかなあ。せっかくコスメもファッションもヘアもですけど、自分らしさが出せるものが溢れているのに、みんな一緒なのはつまらないじゃないかなあ。

付けたことのなかったベージュが一番好きなカラーに

WWD:3色の中でもベージュが一番好きとか。なぜ?

島崎:今までベージュを付けたことがなくて……。オシャレ過ぎ、モード過ぎてるイメージだったんですけど、意外と使いやすくて嬉しかったんです。なじむというか。オススメしたい色です。

WWD:パッケージやビジュアルにも思入れがあると聞きました。

島崎:ブランド名「ミラー」をはじめ、「今なら、何色にもなれる。」といったタグライン。これが出ればいいなと思って。水色は好きで、水色を使ってうまく表現できていると思います。ビジュアルの衣装は、これまでもお付き合いのある、「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」さんにお願いしました。

WWD:普段のコスメについてお聞きしたいのですが。どんなコスメが好きですか?

島崎:韓国コスメが好きですね。美容成分がたっぷり入っていたり、肌に良さそうなイメージがあります。固定観念ですけど(笑)。普段はネットで買ったり、韓国で買ったりもします。ユーチューブでも多く紹介しています。チーク、シャドウも今は、オレンジブラウンが好きかなあ。メイクは、自己流ですね。ユーチューブは楽しいですし、これからも続けていきます。

WWD:コスメをテーマにしたドラマにも出演されていましたね。

島崎:お話いただいて嬉しかったです。今回の役はどこか自分に通じる部分があったんです。たとえば、それこそ今は艶感がでる肌が流行っているのに、ドラマの中の私は「セミマットでいく」というんです。

ただコスメのブランド名や商品名はカタカナが多いじゃないですか。それが大変でした。発音がうまくいかなくて……何度も言い直しました(笑)

ターニングポイントの「今」、なんでもやってみよう

WWD:人生における転機、ターニングポイントはありましたか?

島崎:“今”ですね。楽しくなってきました。少しずつ、自分がやりたいことだったり、いろんな興味がわいてきて。そのために勉強しよう!って。

WWD:例えば何を勉強されているのですか?

島崎:今、アジアの作品に出たくて、韓国語を勉強しています。独学で教科書を使っているんですが、集中して覚えたら、次は中国語を学びたい。時間とお金があれば、現地に行って覚えたいですね。

WWD:自分の中の信念はありますか?

島崎:仕事では、最近ですが楽しむようにしています。楽しむ90%、残りの10%が冒険です。これまで自分が、それはどうかなあ?と思うことに対しては後ろ向きで絶対できないと思っていたんです。でも、やってみる、経験する、勉強する、など、ちょっと勇気をだしてみようと。

元々自分の中で苦手意識があったことにも積極的に挑戦してみよう。せっかくお話いただいたんだから、やれることは全部やってみようと。昨年まではバラエティーもあまり出てなかったんですが、今年から挑戦しています。今回のコスメもその一つだと思います。

WWD:それは何か心境の変化があったのですか?

島崎:昨年1年間、自分は何がしたいのか、考える時間だったんです。(26歳という)年齢的にもこれから何をしていきたいのか自問自答していく中で、「アジア」というのはすぐにあったんですが、それ以外で、日本でというのが見当たらなくて……。ならば求められていること全部やってみて、それでさらに求められることをやれたらと。

WWD:なるほど。そういったやれることを続けていく中で、将来の夢は?

島崎:ネットフリックスとか映画、世界で見られるような作品に出たいなあと思っています。

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ショーに熱狂した「ターク」とホラーな「ダブレット」がベスト 21年春夏・東コレトーク!前編

 2021年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が10月12日に開幕しました。17日までの6日間、約40のブランドがリアルショーやデジタルプレゼンテーションなど工夫を凝らした方法で最新コレクションを披露します。ここでは「RTFW」の取材班が“東コレトーク”と題して、印象に残ったブランドをざっくりプレイバック。東京ファッション・ウィークの取材経験者である2人の先輩記者と、今シーズンから取材班に加わった新米記者が、面白かったブランドについて語り合います。今回は初日から3日目までをお届け!

冬景色から真夏の海に切り替わる「タクタク」で爽快に

大塚千践「WWDジャパン」デスク:さあ、1年ぶりの東京ファッション・ウイークがいよいよ始まったよ。今回は10月12~14日の前半3日間を振り返りたいと思います。それぞれが印象に残った3ブランドを中心に話していましょうか。まずは僕から一つ。初日で開幕を飾った「タクタク(TAC:TAC)」がめちゃよくなかった?コレクションテーマと直結する演出で、爽やかな気分になる映像だった。

美濃島匡「WWDジャパン」記者:春夏なのに雪が降る冬景色にびっくりしましたが、パネルが外れて画面いっぱいに海が広がる演出が爽快でした。

大杉真心「WWDジャパン」記者:プレスノートには「Under the winter sky, everyone longed for their seaside」というタイトルがあり、“冬空の下では誰もが夏の海辺が恋しくなる”というようなメッセージが添えられていましたね。普段からレイヤードはベースにありますが、今シーズンはいつもと違う違和感を覚えました。なんでだろう?

大塚:重衣料に軽い素材を、逆に軽衣料に思い素材を使っていたのがその違和感の正体かも。このコートなんか重そうだけど、よく見るとスケスケだし。

大杉:なるほど!そうかもしれません。あとはグラデーションが綺麗だった。デニムかと思ったら先がどんどん薄くなっていくパンツなど、爽やかだけど、どこか冬の寂しさを連想させる洋服が好みでした。

「リト」は服よりも美術に目がいっちゃう?

大杉:表現の面白さで言えば「リト(RITO)」も印象的でした。白い背景に木のオブジェを置いたナチュラルなロケーションだけど、アクリル製のボックスなど人工的な美術もあって、アート感がにじんでいました。

大塚:そもそも木のオブジェがすごい存在感だったよね。ルックも同じシチュエーションで撮影されていたけど、オブジェの強さの方に目がいってしまうのもいくつかあった。

美濃島:映像は途中に白黒のシーンを織り交ぜるなど、細かいギミックも効いていました。尺は4分と長くないですが、ストーリー性が無い分こういった工夫が必要ですよね。

大塚:これはムービーありきのルックで連動性があったけど、逆に「ルックのおまけで撮影しました」って感じ映像って結構バレバレだよね。デジタル表現に慣れてきたから、視聴者の目も確実に肥えてきてる。今後もデジタル表現はある程度継続していくものだと思うけど、構想を練った映像でないと見てもらえないかも。

大杉:嶋川美也子デザイナーは、長年ラグジュアリーブランドに向けてテキスタイルデザインを手掛けてきた人。上質な素材へのこだわりが強く、映像からでも素材のよさ、軽やかさが伝わってきたました。

リアルショー1発目の「ターク」がすごかった

美濃島:僕が感動したのは「ターク(TAAKK)」です。初日の16時に、リアルショー1発目として新宿御苑の大温室でコレクションを披露したのですが、花のグラフィックやミントグレーのカラーリングなど、ボタニカルなモチーフが映える抜群のロケーションで、見ていてとても気分が上がりました。特に目立っていたユリのグラフィックは、外出自粛中に自宅のプリンターでプリントしたものだそうです。

大塚:「ターク」は20年春夏の“地球を着る”で手応えをつかんで、森川拓野デザイナーが環境を意識したクリエイションに独自のアプローチで取り組んでいるんだけど、花の転写プリントなんかはまさにそれだね。

大杉:すごくいいロケーションでしたよね。東京でも、こんな素敵な場所でショーが開けるんだ!という驚きがありました。森川デザイナーは前シーズンにも新宿御苑でショーを開きたいという思いがあったと聞いていたので実現して良かったですね。

大塚:音楽もディズニーランドのジャンクルクルーズっぽくて、場所にマッチしてた。森川デザイナーは自粛中にブランドの強さを改めて考えて、「素材こそが強みだ」と再認識したみたい。だけどこれ見よがしにアピールするんじゃなくて、見た目のインパクトだけに頼らず、よく見るとすごくヘンタイなバランスを重視してる。今回はそのバランスの良さが際立ったコレクションだったね。

弩級ロックにしびれた「リンシュウ」

美濃島:普段はパリ・メンズに参加する「リンシュウ(RYNSHU)」は初めて見ましたけど、超ロックなスタイルでインパクトありました。

大杉:タイトシルエットのテーラードジャケットやブルゾンをラメ入りのパイソン柄や黒いスパンコールなどで彩った洋服は、舞台衣装のようにキラキラでギラギラですね。

美濃島:でもその存在感に違和感はなくて、すんなり心に入ってくるんです。会場となった白金台の結婚式場「八芳園」の大広間という豪華なロケーションも良かったのかも。会場には20-21年秋冬で発表した香水“RYNSHU 1217”の香りが漂っていました。

大塚:衣装っぽいけど、それで一時代を築いてるからね。いつもと変わらず超ロックでシャープなスタイルなんだけど、少しカジュアルになったというか、ちょっと今っぽくなった印象でした。東京で見られるのは本当にレアだから、フロントローで見られた美濃島くんはいい経験をしたね。

「ダブレット」はゾンビだけじゃなくアーカイブも“復活”させていた

大塚:ホラー映画のような演出とルックで話題をさらった「ダブレット(DOUBLET)」も外せない。あの映像、実はその日に撮影・編集したもので鬼のスケジュールだったんだけど、特殊メイクや演出にこだわりすぎて、撮影も押せ押せだったんだよね(笑)。

美濃島:あれ当日に作られた映像だったんですね!現場はピリついたんじゃないですか?

大塚:むしろ、そのギリギリ感をスタッフ全員が楽しんでいて、モデルたちもずっと明るい表情だった。リアルイベントが久しぶりで、その喜びに浸っていたのかも。

大杉:どのルックもすごく怖かったんですが、メイクはどなたが担当されたんですか?

大塚:本格的なゾンビメイクも手掛ける特殊メイクチームが担当していました。「悪魔のいけにえ」や「シャイニング」、「ストレンジャーシングス」といったホラー映画や作品をオマージュしていたんだって。

大杉:コレクションでは、過去のシーズンのアイテムもリミックスしてましたよね?胸元にナプキンが入ったシャツは20年秋冬でも見たような気がします。あと韓国のブランド「ロク(ROKH)」とのコラボアイテムも出てて気になりました。

大塚:そうそう、よく気づいたね!コレクションを作るとき、「数シーズンで古くなっちゃうクリエイションって今っぽくないよね」ということで、新作を7割、アーカイブを3割組み合わせたコレクションになったそう。

美濃島:ゾンビとかけて、アーカイブもランウエイに“復活”させちゃったんですね!最後の井野将之デザイナーが襲われるシーンと、ブルーのシャツを着たモデルのやけにリアルな動きには少しギョっとしました。

大塚:ブルーのシャツの彼は唯一の役者さんで、その場にいたスタッフもそのときだけは笑顔がひきつるぐらい怖かったよ(笑)。

削ぎ落とされた上質さ 「ザ・リラクス」に変化

大杉:上質な素材と綺麗なシルエットが光る「ザ・リラクス(THE RERACS)」は、無観客ショーで洋服をストレートに見せる映像がよかったですね。

美濃島:アイテムのクオリティの低いブランドがこれをやると事故しちゃう危険性もありますが、「ザ・リラクス」にはぴったりのアプローチでしたね。海外コレクションでは「ルメール(LEMAIRE)」などがこの手法で披露していました。大杉さんと大塚さんは後日展示会にも行っていましたが、いかがでしたか?

大塚:ルックは削ぎ落とされすぎててプロダクトっぽい固さを感じたんだけど、展示会でみると1点1点に抜け感があって、柔らかい。そのギャップが面白かったです。

美濃島:へー。プロダクト感をスタイリングで打ち消した「ミーンズワイル」とは真逆ですね。いつもはブランドロゴをあしらったピンバッジが付いていますが、今回は見当たりませんでした。

大杉:実はこのシーズンからロゴを刷新して、服に付けてきたピンバッジもなくしたそうです。ブランド11年目に突入するということで、変化のシーズンなんです。裏テーマはトランスフォーメーションを意味する“X”になっているそう。バッグも初めて登場しました。

見せ方のセンスが光る「カイキ」

大杉:「カイキ(KAIKI)」は1分にも満たないムービーでしたが、すごく引き込まれました。ルックのついでに撮影したような裏舞台感を感じましたが、それもよかったです。

大塚:僕はしっかりと作り込んだ映像だなという印象を受けました。シャッターを切るシーンで始まったり、最後にロゴに寄って終わったり。ありがちかもしれないけど、テンポがよくてすごく楽しく見られた。

美濃島:ルックも含め、見せ方がうまいデザイナーさんですね。リアルショーへの意欲もあるとのことなので、開催する際はぜひ見てみたいです。

大杉:今シーズンは、これまでさまざまな理由で使用しなかった素材やアイデアを採用していて、一見プリーツにも見えるシワ加工や縮率の違う糸を使用して立体的にしたジャカードなど、クシャっとなる素材を多く使用したそう。デザイナーの飯尾開毅さんが自分自身で着たいと思うメンズを数型作っていて、彼の柔らかなキャラクターをそのまま投影した洋服に親近感を覚えました。

大塚:デザイナー自身が着たいと思う服って、やっぱりいいんだよね。今後のメンズの動向も気になります。

「ユウキハシモト」がDHLとの入念な仕掛けで魅せる

美濃島:「ユウキハシモト(YUKI HASHIMOTO)」は若い世代が好きそうなグラフィックやロゴ使いが光りました。DHLとコラボしていて、黄色と赤のコーポレートカラーを多用していたり、ロゴを効果的に差し込んだりしてよりキャッチーなコレクションになっていました。

大杉:大杉:ショーが行われたのは表参道ヒルズのイベントスペース「スペース オー」。ショーの運営スタッフがDHLとのコラボTシャツを着用していたり、ショー後には同じ館のショップでこのTシャツを販売したりと、立体的なプロモーションを行っていたのが面白かった。DHLデザイナーアワードを受賞していたそうで、3月に実現できなかった企画をこうして深みを出しているのがいいと思いました。DHLもデザイナーとの取り組みに柔軟に対応しているところが素晴らしい。

大塚:カルチャー好きな若い子がたくさん来場していて、そこにリーチできるのは強みだなと思った。でも、もうちょっと引き算を覚えたら、より洗練されていくポテンシャルはあるかも。

美濃島:大塚さんはどんなクリエイションを期待してるんですか?

大塚:例えばモチーフやディテール使いに今っぽさはあるんだけど、ややトゥーマッチかなと思った。デ全体的にミニマルな方向性が好きそうだから、余計にそこが際立ったのかも。もっと要素を絞ったクリエイションも見てみたいです。

美濃島:なるほど。さらなる進化に期待が高まりますね。

ショーの醍醐味が詰まった「ミーンズワイル」

大塚:3日目ラストの「ミーンズワイル(MEANSWHILE)」はアスレチックのようなセットとアーバンアウトドアなコレクションの空気感がぴったりで、地力の高さを感じた。

大杉:もともとアウトドアやミリタリーがベースのブランドですが、時代の空気を反映してかいつもよりプロテクト感が強かったです。“服は衣装ではなく、道具である”というブランドコンセプトの通り、部分使いできるアームウォーマーやレッグウォーマー、ポンチョのように着られるラグなど、ギア感のあるアイテムが目を引きました。

大塚:似たテイストのブランドって少なくないんだけど、服部昌孝さんのスタイリングの妙なのか、ルックがすごく格好良くて頭一つ抜けた感じがあった。トップスをスーパーレイヤードしてボリュームを出したり、インナーの絶妙な覗かせ方だったりと、よく見ないと気づかないような技がたくさん散りばめられてた。

美濃島:演出含めてかっこよかったのですが、個人的には色が暗いなと思いました。ルックも多かったですがほとんど無地だったので、色や柄で春夏らしい軽さを出してくれたらぐっと奥行きが生まれそうだなと思いました。

大塚:3月のショーが中止になったこともあって、秋冬のアイテムも混ぜてたのかもしれないね。セットにモデル、スタイリスト、音楽との合わせ技で、道具っぽい服とスタイルとして見せられるショーならではの醍醐味が詰まってました。

鼎談を終えて

美濃島:リアルからデジタルまで幅広いブランドが出ました。個人的なベストは「ターク」ですが、お二人はいかがですか?

大塚:僕は「ダブレット」かな。

大杉:私もその二つが強く残ってますね。

美濃島:ベストの意味がないじゃないですか(笑)。

大塚:あと「タクタク」もよかった。デジタルで短い映像なんだけど、リアルに負けない印象を与えてくれてたし、とにかく演出が気持ち良かった。

美濃島:難しく考えなくても「これ、いいな」と思える映像でしたね。その気持ち良さを喚起できるかどうかが重要で、リアルショーもデジタルもあくまでそのツール。そこに垣根はないんだなと痛感させられました。

大杉:リアルに固執するだけでは新しさを生み出せないし、デジタルも上手く活用すればリアル以上にメッセージを伝えられる。面白いですね。東コレ後半も、デジタルとリアル両方をカバーしながら取材を進めていきましょう!

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ショーに熱狂した「ターク」とホラーな「ダブレット」がベスト 21年春夏・東コレトーク!前編

 2021年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が10月12日に開幕しました。17日までの6日間、約40のブランドがリアルショーやデジタルプレゼンテーションなど工夫を凝らした方法で最新コレクションを披露します。ここでは「RTFW」の取材班が“東コレトーク”と題して、印象に残ったブランドをざっくりプレイバック。東京ファッション・ウィークの取材経験者である2人の先輩記者と、今シーズンから取材班に加わった新米記者が、面白かったブランドについて語り合います。今回は初日から3日目までをお届け!

冬景色から真夏の海に切り替わる「タクタク」で爽快に

大塚千践「WWDジャパン」デスク:さあ、1年ぶりの東京ファッション・ウイークがいよいよ始まったよ。今回は10月12~14日の前半3日間を振り返りたいと思います。それぞれが印象に残った3ブランドを中心に話していましょうか。まずは僕から一つ。初日で開幕を飾った「タクタク(TAC:TAC)」がめちゃよくなかった?コレクションテーマと直結する演出で、爽やかな気分になる映像だった。

美濃島匡「WWDジャパン」記者:春夏なのに雪が降る冬景色にびっくりしましたが、パネルが外れて画面いっぱいに海が広がる演出が爽快でした。

大杉真心「WWDジャパン」記者:プレスノートには「Under the winter sky, everyone longed for their seaside」というタイトルがあり、“冬空の下では誰もが夏の海辺が恋しくなる”というようなメッセージが添えられていましたね。普段からレイヤードはベースにありますが、今シーズンはいつもと違う違和感を覚えました。なんでだろう?

大塚:重衣料に軽い素材を、逆に軽衣料に思い素材を使っていたのがその違和感の正体かも。このコートなんか重そうだけど、よく見るとスケスケだし。

大杉:なるほど!そうかもしれません。あとはグラデーションが綺麗だった。デニムかと思ったら先がどんどん薄くなっていくパンツなど、爽やかだけど、どこか冬の寂しさを連想させる洋服が好みでした。

「リト」は服よりも美術に目がいっちゃう?

大杉:表現の面白さで言えば「リト(RITO)」も印象的でした。白い背景に木のオブジェを置いたナチュラルなロケーションだけど、アクリル製のボックスなど人工的な美術もあって、アート感がにじんでいました。

大塚:そもそも木のオブジェがすごい存在感だったよね。ルックも同じシチュエーションで撮影されていたけど、オブジェの強さの方に目がいってしまうのもいくつかあった。

美濃島:映像は途中に白黒のシーンを織り交ぜるなど、細かいギミックも効いていました。尺は4分と長くないですが、ストーリー性が無い分こういった工夫が必要ですよね。

大塚:これはムービーありきのルックで連動性があったけど、逆に「ルックのおまけで撮影しました」って感じ映像って結構バレバレだよね。デジタル表現に慣れてきたから、視聴者の目も確実に肥えてきてる。今後もデジタル表現はある程度継続していくものだと思うけど、構想を練った映像でないと見てもらえないかも。

大杉:嶋川美也子デザイナーは、長年ラグジュアリーブランドに向けてテキスタイルデザインを手掛けてきた人。上質な素材へのこだわりが強く、映像からでも素材のよさ、軽やかさが伝わってきたました。

リアルショー1発目の「ターク」がすごかった

美濃島:僕が感動したのは「ターク(TAAKK)」です。初日の16時に、リアルショー1発目として新宿御苑の大温室でコレクションを披露したのですが、花のグラフィックやミントグレーのカラーリングなど、ボタニカルなモチーフが映える抜群のロケーションで、見ていてとても気分が上がりました。特に目立っていたユリのグラフィックは、外出自粛中に自宅のプリンターでプリントしたものだそうです。

大塚:「ターク」は20年春夏の“地球を着る”で手応えをつかんで、森川拓野デザイナーが環境を意識したクリエイションに独自のアプローチで取り組んでいるんだけど、花の転写プリントなんかはまさにそれだね。

大杉:すごくいいロケーションでしたよね。東京でも、こんな素敵な場所でショーが開けるんだ!という驚きがありました。森川デザイナーは前シーズンにも新宿御苑でショーを開きたいという思いがあったと聞いていたので実現して良かったですね。

大塚:音楽もディズニーランドのジャンクルクルーズっぽくて、場所にマッチしてた。森川デザイナーは自粛中にブランドの強さを改めて考えて、「素材こそが強みだ」と再認識したみたい。だけどこれ見よがしにアピールするんじゃなくて、見た目のインパクトだけに頼らず、よく見るとすごくヘンタイなバランスを重視してる。今回はそのバランスの良さが際立ったコレクションだったね。

弩級ロックにしびれた「リンシュウ」

美濃島:普段はパリ・メンズに参加する「リンシュウ(RYNSHU)」は初めて見ましたけど、超ロックなスタイルでインパクトありました。

大杉:タイトシルエットのテーラードジャケットやブルゾンをラメ入りのパイソン柄や黒いスパンコールなどで彩った洋服は、舞台衣装のようにキラキラでギラギラですね。

美濃島:でもその存在感に違和感はなくて、すんなり心に入ってくるんです。会場となった白金台の結婚式場「八芳園」の大広間という豪華なロケーションも良かったのかも。会場には20-21年秋冬で発表した香水“RYNSHU 1217”の香りが漂っていました。

大塚:衣装っぽいけど、それで一時代を築いてるからね。いつもと変わらず超ロックでシャープなスタイルなんだけど、少しカジュアルになったというか、ちょっと今っぽくなった印象でした。東京で見られるのは本当にレアだから、フロントローで見られた美濃島くんはいい経験をしたね。

「ダブレット」はゾンビだけじゃなくアーカイブも“復活”させていた

大塚:ホラー映画のような演出とルックで話題をさらった「ダブレット(DOUBLET)」も外せない。あの映像、実はその日に撮影・編集したもので鬼のスケジュールだったんだけど、特殊メイクや演出にこだわりすぎて、撮影も押せ押せだったんだよね(笑)。

美濃島:あれ当日に作られた映像だったんですね!現場はピリついたんじゃないですか?

大塚:むしろ、そのギリギリ感をスタッフ全員が楽しんでいて、モデルたちもずっと明るい表情だった。リアルイベントが久しぶりで、その喜びに浸っていたのかも。

大杉:どのルックもすごく怖かったんですが、メイクはどなたが担当されたんですか?

大塚:本格的なゾンビメイクも手掛ける特殊メイクチームが担当していました。「悪魔のいけにえ」や「シャイニング」、「ストレンジャーシングス」といったホラー映画や作品をオマージュしていたんだって。

大杉:コレクションでは、過去のシーズンのアイテムもリミックスしてましたよね?胸元にナプキンが入ったシャツは20年秋冬でも見たような気がします。あと韓国のブランド「ロク(ROKH)」とのコラボアイテムも出てて気になりました。

大塚:そうそう、よく気づいたね!コレクションを作るとき、「数シーズンで古くなっちゃうクリエイションって今っぽくないよね」ということで、新作を7割、アーカイブを3割組み合わせたコレクションになったそう。

美濃島:ゾンビとかけて、アーカイブもランウエイに“復活”させちゃったんですね!最後の井野将之デザイナーが襲われるシーンと、ブルーのシャツを着たモデルのやけにリアルな動きには少しギョっとしました。

大塚:ブルーのシャツの彼は唯一の役者さんで、その場にいたスタッフもそのときだけは笑顔がひきつるぐらい怖かったよ(笑)。

削ぎ落とされた上質さ 「ザ・リラクス」に変化

大杉:上質な素材と綺麗なシルエットが光る「ザ・リラクス(THE RERACS)」は、無観客ショーで洋服をストレートに見せる映像がよかったですね。

美濃島:アイテムのクオリティの低いブランドがこれをやると事故しちゃう危険性もありますが、「ザ・リラクス」にはぴったりのアプローチでしたね。海外コレクションでは「ルメール(LEMAIRE)」などがこの手法で披露していました。大杉さんと大塚さんは後日展示会にも行っていましたが、いかがでしたか?

大塚:ルックは削ぎ落とされすぎててプロダクトっぽい固さを感じたんだけど、展示会でみると1点1点に抜け感があって、柔らかい。そのギャップが面白かったです。

美濃島:へー。プロダクト感をスタイリングで打ち消した「ミーンズワイル」とは真逆ですね。いつもはブランドロゴをあしらったピンバッジが付いていますが、今回は見当たりませんでした。

大杉:実はこのシーズンからロゴを刷新して、服に付けてきたピンバッジもなくしたそうです。ブランド11年目に突入するということで、変化のシーズンなんです。裏テーマはトランスフォーメーションを意味する“X”になっているそう。バッグも初めて登場しました。

見せ方のセンスが光る「カイキ」

大杉:「カイキ(KAIKI)」は1分にも満たないムービーでしたが、すごく引き込まれました。ルックのついでに撮影したような裏舞台感を感じましたが、それもよかったです。

大塚:僕はしっかりと作り込んだ映像だなという印象を受けました。シャッターを切るシーンで始まったり、最後にロゴに寄って終わったり。ありがちかもしれないけど、テンポがよくてすごく楽しく見られた。

美濃島:ルックも含め、見せ方がうまいデザイナーさんですね。リアルショーへの意欲もあるとのことなので、開催する際はぜひ見てみたいです。

大杉:今シーズンは、これまでさまざまな理由で使用しなかった素材やアイデアを採用していて、一見プリーツにも見えるシワ加工や縮率の違う糸を使用して立体的にしたジャカードなど、クシャっとなる素材を多く使用したそう。デザイナーの飯尾開毅さんが自分自身で着たいと思うメンズを数型作っていて、彼の柔らかなキャラクターをそのまま投影した洋服に親近感を覚えました。

大塚:デザイナー自身が着たいと思う服って、やっぱりいいんだよね。今後のメンズの動向も気になります。

「ユウキハシモト」がDHLとの入念な仕掛けで魅せる

美濃島:「ユウキハシモト(YUKI HASHIMOTO)」は若い世代が好きそうなグラフィックやロゴ使いが光りました。DHLとコラボしていて、黄色と赤のコーポレートカラーを多用していたり、ロゴを効果的に差し込んだりしてよりキャッチーなコレクションになっていました。

大杉:大杉:ショーが行われたのは表参道ヒルズのイベントスペース「スペース オー」。ショーの運営スタッフがDHLとのコラボTシャツを着用していたり、ショー後には同じ館のショップでこのTシャツを販売したりと、立体的なプロモーションを行っていたのが面白かった。DHLデザイナーアワードを受賞していたそうで、3月に実現できなかった企画をこうして深みを出しているのがいいと思いました。DHLもデザイナーとの取り組みに柔軟に対応しているところが素晴らしい。

大塚:カルチャー好きな若い子がたくさん来場していて、そこにリーチできるのは強みだなと思った。でも、もうちょっと引き算を覚えたら、より洗練されていくポテンシャルはあるかも。

美濃島:大塚さんはどんなクリエイションを期待してるんですか?

大塚:例えばモチーフやディテール使いに今っぽさはあるんだけど、ややトゥーマッチかなと思った。デ全体的にミニマルな方向性が好きそうだから、余計にそこが際立ったのかも。もっと要素を絞ったクリエイションも見てみたいです。

美濃島:なるほど。さらなる進化に期待が高まりますね。

ショーの醍醐味が詰まった「ミーンズワイル」

大塚:3日目ラストの「ミーンズワイル(MEANSWHILE)」はアスレチックのようなセットとアーバンアウトドアなコレクションの空気感がぴったりで、地力の高さを感じた。

大杉:もともとアウトドアやミリタリーがベースのブランドですが、時代の空気を反映してかいつもよりプロテクト感が強かったです。“服は衣装ではなく、道具である”というブランドコンセプトの通り、部分使いできるアームウォーマーやレッグウォーマー、ポンチョのように着られるラグなど、ギア感のあるアイテムが目を引きました。

大塚:似たテイストのブランドって少なくないんだけど、服部昌孝さんのスタイリングの妙なのか、ルックがすごく格好良くて頭一つ抜けた感じがあった。トップスをスーパーレイヤードしてボリュームを出したり、インナーの絶妙な覗かせ方だったりと、よく見ないと気づかないような技がたくさん散りばめられてた。

美濃島:演出含めてかっこよかったのですが、個人的には色が暗いなと思いました。ルックも多かったですがほとんど無地だったので、色や柄で春夏らしい軽さを出してくれたらぐっと奥行きが生まれそうだなと思いました。

大塚:3月のショーが中止になったこともあって、秋冬のアイテムも混ぜてたのかもしれないね。セットにモデル、スタイリスト、音楽との合わせ技で、道具っぽい服とスタイルとして見せられるショーならではの醍醐味が詰まってました。

鼎談を終えて

美濃島:リアルからデジタルまで幅広いブランドが出ました。個人的なベストは「ターク」ですが、お二人はいかがですか?

大塚:僕は「ダブレット」かな。

大杉:私もその二つが強く残ってますね。

美濃島:ベストの意味がないじゃないですか(笑)。

大塚:あと「タクタク」もよかった。デジタルで短い映像なんだけど、リアルに負けない印象を与えてくれてたし、とにかく演出が気持ち良かった。

美濃島:難しく考えなくても「これ、いいな」と思える映像でしたね。その気持ち良さを喚起できるかどうかが重要で、リアルショーもデジタルもあくまでそのツール。そこに垣根はないんだなと痛感させられました。

大杉:リアルに固執するだけでは新しさを生み出せないし、デジタルも上手く活用すればリアル以上にメッセージを伝えられる。面白いですね。東コレ後半も、デジタルとリアル両方をカバーしながら取材を進めていきましょう!

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温風で髪の毛をスタイリングするダイソンの“エアラップ”を編集部がお試し 使いこなすコツは?

 ビューティにまつわるニュースを編集部員が語り合う「WWDビューティポッドキャスト」は、「WWD JAPAN.com」の記事や編集部で話題になったトピックスをピックアップし解説と共にお届けします。

 今回は特別編として、ダイソン(DYSON)のスタイリングツール“ダイソン エアラップ スタイラー”(5万4000円 編集部調べ)を編集部で試してみました。

 “エアラップ”は、アタッチメントを付け替えることでドライヤーもカールもヘアブラシも1台でまかなうことができるダイソンが2018年に発売したアイテム。ケア意識の高まりなどから高価格帯のドライヤーやアイロンはヘアサロンを中心に近年話題になるアイテムを多く世に出してきました。

 コロナ禍でセルフスタイリングにも注目が高まる中、ダイソンはヘアビューティ キャンペーンを8〜9月に実施し、“エアラップ”を訴求しました。美容室での“エアラップ”を使ったスタイリング提案や、すでに持っている人やレンタルサービスを行うことで自宅で受けれるオンラインサロンを開催し、トレンドスタイリングや悩み別スタイリングなどを人気美容師たちがレクチャーしました。

 “風の力でスタイリングする” という“エアラップ”最大の特徴を試してみるべく、「WWD JAPAN.com」デジタルデスクの福崎明子と記者の米山奈津美が、ダイソン ヘアビューティ キャンペーンに参加し、トレンドのスタイリングや髪の悩み別スタイリングなどエアラップを使ったオンラインセミナーで使い方を学びました。実際に使ってみた感想や、使い方のコツなどを語り合います。

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逆風でもリアルショーにかける「ターク」 「こんな時代だからこそ業界を盛り上げる1発をかましたい」

 2021年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が10月12日に幕を開けた。同日16時には森川拓野デザイナーが手掛ける「ターク(TAAKK)」が新宿御苑の大温室でリアルショーを開催。独特の素材使いや技法、クセの強いデザインなど、持ち味のクリエイションが光るコレクションで来場者に鮮烈なインパクトを残した。

既存アイテムを新しく
画家に着想した違和感

 リネン生地からコットンのシャツ生地へと織りが変わり、裾をタックインして着られるジャケット。裾や袖先をシアー素材で仕上げたトレンチコート。コレクションには、見慣れたアイテムの生地を大胆に変化させることで新しく見せるピースが多くそろった。シュルレアリズムをけん引した画家のルネ・マグリット(Rene Magritte)に着想し、「上半身が魚、下半身が人間になった“共同発明”という作品から大きなインスピレーションを得ました。見慣れたものをちょっとした工夫で新しく見せるのが超面白いと思うんです」と森川デザイナーは説明する。花のグラフィックや自然に着想したような明るいカラーリングなど、「ターク」には珍しく軽やかな色・柄を多用したことも今シーズンの特徴と言えるが、これについては「好きな写真家のアーヴィング・ペン(Irving Penn)の世界観を僕なりに表現しました。ユリのグラフィックは外出自粛期間中に家のプリンターで写したんですよ」と背景を話す。                                                       

念願のリアルショー
「デジタルで熱量は生めない」

 「ターク」も参加予定だった今年3月の20-21年秋冬RFWTは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて開幕直前に中止が決定。ようやく開催された今シーズンも未だ感染症の脅威は拭えず、約40の参加ブランドのうちリアル・ショーを行うのはわずか3割だ。ブランドは日本ファッション・ウィーク推進機構と厚生労働省が協働で策定したガイドラインに沿って、スタッフ・観客を含む動員数を会場キャパシテイの半分まで減らすなど徹底した管理下でショーを実施しなければならない。

 そんな逆風の中、リアルショーにこだわった理由を森川デザイナーに聞くと「生み出す熱量の大きさの違い」と答えた。「今の時代、“SNSで拡散する”という形式は変わらないかもしれない。それでも、単純にルックだけを見ていいなと感じるのか、ショーを見て感動したのかによって発信する側の熱量は絶対に違うし、伝わり方にも差が出る。その熱量を生み出すには、やっぱりリアルじゃなきゃダメだと思う。それに、業界の人もワクワクする場所を求めてるはず。こんな時代だからこそ、業界を盛り上げる一発をかましたい」。

 森川デザイナーの言葉通り、会場には東コレ常連のバイヤーやメディア関係者だけでなく、雑誌ブームを牽引した出版界の大御所やセレクトショップの重鎮まで、普段は見られない面々を含む約140人が来場。それぞれがSNSでショーの様子を発信し、「ターク」の公式インスタグラムアカウントが共有したストーリーズには、「やっぱりショーが一番」「デザイナーの笑顔が印象的だった」など、出席者のリアルな言葉が添えられた動画が多く投稿されていた。

 高画質の映像でも服の細部は見せられるが、会場の一体感や熱気は共有できない。コレクションのムードは伝わるが、五感で浸ることはできない。画面越しで誰もがショーを見られるようになった今でも、新たなトレンドとファッションの熱狂を生み出す場として、リアルの存在意義を強く認識させるショーだった。

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インテリア業界の永遠の憧れ、ライフスタイルの先駆者コンラン卿を偲ぶ

 ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP以下、コンランショップ)やロンドンのデザインミュージアムの設立者で知られるテレンス・コンラン(Terrence Conran)卿が9月、イギリス・ロンドンの自宅で死去した。今、業界を問わずライフスタイルがキーワードになっているが、コンラン卿は半世紀以上も前からシンプルで美しいライフスタイルを提唱した先駆者だった。今でこそ、世界中でイケア(IKEA)や無印良品(MUJI)などのライフスタイルショップが人気だが、コンラン卿は1960年代に既にライフスタイルに軸を置いたビジネスをスタートさせ大成功を収めた。インテリアだけでなくレストランやホテル業にも進出。著書も多く、コンランの名前は世界中で知られるようになった。

 私自身、新宿のコンランショップはもちろん、パリやロンドンを訪れた際には必ず立ち寄る場所だ。コンランショップの家具はなかなか手がでないが、お小遣いで買える世界中から集めた珍しいテーブルウエアやステーショナリー、雑貨がたくさん。行くたびにワクワクし発見がある、そんなショップなのだ。自宅にはチュニジア製のストールやイタリア製のハンドメードのバッグ、インド製のキャンドルホルダー、アフリカ製のトレーなど、コンランショップで出合ったものが数多くある。それらは価格に関係なく、いつ、どこで出合えるか分からないものばかりだ。それらを所有することで、まるで自分がその地に旅したような気分になれるものも。コンラン卿が提唱するシンプルで美しいライフスタイルには、時代や国を超越する普遍的な魅力がある。ラグジュアリーと謳わず、コマーシャルでもない。デザイン好きなら誰でも気軽に入れるといった気さくな点も多くの人に支持される理由だろう。コンランショップのブランドカラーでもあるブルーのシャツに身を包むことの多かったコンラン卿。イギリスの写真家であった初代スノードン伯爵(Lord Snowdon)もブルーのシャツを好み、「スノードン・ブルー(SNOWDON BLUE)」という書籍があるが、コンランショップのブランドカラーは“コンラン・ブルー”と呼ばれるべきだと思う。

 コンラン卿について、日本でコンランショップを運営する森康弘コンランショップ ジャパン社長と大野賢二コンランショップ ジャパン執行役員 商品部長に話を聞いた。

暗いイギリスに洗練とポップさをもたらした

森 康洋 / ザ・コンランショップ ジャパン社長

 今はライフスタイルという言葉がどの業界でも溢れているが、恐るべきことにコンラン卿は、そんな言葉さえ存在しない50数年前には、コンランショップの原型となるハビタ(HABITAT)の1号店を英ロンドンにオープンした。そして、1970代初頭にはコンランショップを出店。家具だけでなく、バスやキッチン、照明、アート、ファッション、グリーン、アウトドア家具 小物などをそろえたショップは、まさに今あるライフスタイルショップの先駆けであり、驚き以外のなにものでもない。日本に初めてコンランショップが登場した26年前の衝撃は家具業界だけではなくアパレル業界にも大きく影響を与えたのではないだろうか。私自身は当時まだアパレル業界にいたが、あの衝撃は今なお覚えている。コンラン卿の最大の功績は、イギリス人の生活様式を激変させたことだと思う。暗いイギリスの生活様式、どこも同じ家具のデザイン、美味しくない英国料理、今の華やかなロンドンからは想像できないくらい50年前は暗い街だった。彼が始めたインテリアをはじめ、レストランやホテルなどのビジネスのおかげで、イギリス人の生活が洗練されたポップなライフスタイルに変わったと思う。ホテルもおしゃれになったし、素敵なレストランが増えて食事も格段においしくなったと思う。コンラン卿は自身の著書の中で「優れたデザインは、人々の暮らしの質を向上させる」というシンプルな信念を語っていたが、その通りだと思う。彼がインテリア業界に与えた影響は計り知れないものだ。コンラン卿の残したレガシーは、これからもコンランショップの中で生き続ける。

全てにおいてどの時代も心躍らされる人

大野賢二 / コンランショップ ジャパン執行役員 商品部長

 コンランショップ・ジャパンに入社してから20年近く立つが、コンラン卿は、私にとっては教科書であり永遠の憧れの存在だ。ショップ事業は彼がよく言う“デザインと生活の質の本質的な関係性を見つける”場であり、コンラン卿が手掛けていたほかの多くのデザイン事業とは異なり、一般の消費者との接点を持てる場だった。優れたデザインが満足度の高い暮らしをもたらす、それを日常生活レベルで実現させるという、コンラン卿の至ってシンプルな信念、それを世界中に浸透させるための発信基地がコンランショップだ。一緒に仕事をするという経験はあまり無く、コンラン卿の審美眼によりセレクトされたものを彼の信念とともに表現するのが私たちの仕事だった。またデザイナーであり、レストランやホテル経営者、作家などさまざまな事業で成功を収めた偉大な人であるが、”どの時代も心を躍らせる人”であったと改めて思う。20年前に初めてロンドン・フルハムの本店を訪れたとき、キングスロードのブルーバード・チェルシー(BLUEBIRD CHELSEA)のレストランで食事をしたとき、ショーディッチのホテル「バウンダリー・ロンドン(BOUNDERY LONDON)」に泊まったとき、最近では彼が設立し、移転した新しいデザインミュジーアムを訪問したとき。その全てにおいて私の心を躍らせてくれ、新鮮な驚きと幸福感をもたらしてくれる存在だった。“プレーン、シンプル、ユースフル”というコンラン卿の哲学にはどの時代にも通じる、真の心地よさと豊かな暮らしの本質がある。


 ファッション・デザイナーのジャスパー・コンラン(Jasper Conran)は、コンラン卿の息子で、12年からコンランショップの会長兼クリエイティブ・ディレクターを務めている。また、16年からモロッコ・マラケシュでブティックホテルの「ロテル マラケシュ(L’HOTEL MARRAKECH)」を運営しており、昨年にはモロッコ・タンジェにある元イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)とパートナーのピエール・ベルジェ(Pierre Berget)が所有していた別荘“ヴィラ・マブロカ(VILLA MABROUKA)”を購入した。妹のソフィー・コンラン(Sophie Conran)は自身のライフスタイルブランドを運営。兄のセバスチャン・コンラン(Sebastian Conran)はプロダクトデザイナーで、日本の飛騨産業をはじめ世界中の企業とコラボレーションしている。ジャスパーは自身のインスタグラムで、「父親はまるで眠るかのように安らかに亡くなった。多くの方々からのメッセージに感謝している」とコメントしている。コンラン卿の美意識はこれらの子孫によって引き継がれていくことだろう。

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“女性疾患のリテラシーを向上する”ファムメディコが設立 子宮、大腸、乳房を対象にした女性向けの検診を啓発

 女性の就労率はこの30年間で右肩上がりに伸び、現在は就労者の 4 割を女性が占めている。そういった環境の中で、日本の企業健診の検査内容は1970年から変わっておらず、女性の疾患率・死亡率の高い子宮がんや大腸がん、乳がんの検診は十分に備わっていないのが現状だ。

 9月に設立された現代女性の健康問題解決を目的にする医療コンサルティング会社、ファムメディコ(FEMMES MEDICAUX)は、子宮、大腸、乳房を対象にした新しい女性向けの検診「YOU検診」の啓発活動を開始した。“YOU”とは子宮、大腸、乳房それぞれの部位の形をアルファベットになぞらえた言葉。子宮がん、大腸がん、乳がんの3つのがん検診に加えて、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患を総合的に検診できる内容になっている。

“女性疾患に対する、女性のリテラシーは低い”

 ファムメディコを設立したのは薬剤師で、医療コンサルタントとしてのキャリアを持つ佐々木彩華・社長。佐々木社長は月経困難症やPMSを経験し、女性医療の分野に興味を持ち立ち上げた。社名はフランス語で女性医療を意味する。佐々木社長は「(女性疾患に対する)女性の知識が足りないと感じていた。現在の一般的な企業健診では、オプションで子宮頸がん、マンモグラフィーが受けられる場合はあるが、子宮筋腫・卵巣腫瘍などの疾患を発見するための経膣超音波や、大腸がんの内視鏡検査はオプションにすら入っていないことがほとんど。企業検診に入っていないことから“子宮頸がん検査で異常がなかったら、自分の子宮に異常がない”と思っている人は多い」と指摘する。

 ファムメディコでは、企業を対象に社内で働く女性に向けたセミナーを行い、女性特有の疾患について啓発活動を行っていく。「まずは女性自身が知って、個人で検診を受けてもらうことがファーストステップ。企業に検診の仕組みを取り入れてもらうハードルは高く、判断には時間がかかるが、女性たち個人のリテラシーが高まることで底上げ式に、企業の人事、自治体へと伝わって変わっていくはず」と佐々木社長。

女性疾患のケアを浸透させる一助になりたい

 また、「これまでも市場では厚労省や経産省が“メタボ”を啓蒙しきた中で、疾患に対する意識が高まった。今厚労省や経産省でも『多くの女性が働く社会で、女性疾患もしっかりケアしなければならない』という空気になってきたが、まだ企業には根付いていない。それをどう浸透させられるかが課題であり、私たちも一企業としてその一助になりたい」と語った。

 ファムメディコでは社内セミナーに加え、企業に向けた健康経営のサポート、クリニックへの医療コンサルティング、女性特有の疾患に向けた商品の企画開発、調査・研究サポートを行っていく。賛同医師には、細胞診専門医・医学博士の上坊敏子(相模野病院婦人科腫瘍センター顧問)、国際アンチエイジング医学会 米国抗加齢医学会専門医の浜中聡子(Dクリニック東京ウィメンズ院長)、産婦人科医師・医学博士公衆衛生学修士の吉田穂波(神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーション研究科 教授)らが名を連ねる。賛同医師たちと共に企業向けのセミナーなどで「YOU検診」の啓発活動を行っていくほか、2021年春には東京・丸の内にレディースクリニックを開く予定だ。

 これまでファムメディコは10月に三越伊勢丹ホールディングスの社員・スタッフに向けて女性疾患についての知識を学ぶセミナーを開催したほか、11月からは三菱治所の「まるのうち保健室」と取り組み、丸の内で勤める女性たちに向けた研修を行っていく予定。今後も働く女性の環境や制度を整えて「YOU検診」を推進する参加企業を募っていく。

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コロナ決算に見るオンワードと三陽商会の瀬戸際と再生 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。大手アパレルの2020年3〜8月期決算が発表された。コロナ禍で再建を進めるオンワードホールディングスと三陽商会に焦点をあてる。

 三陽商会は10月6日、オンワードホールディングス(HD)は9日、2021年2月期の中間(第2四半期)決算と通期見通しを発表したが、そこには軽視できない経営リスクが現れていた。レナウンなき後、大手アパレルが追い詰められ百貨店離れが加速すれば、百貨店の閉店も加速して百貨店業界も共倒れするという最悪のシナリオが現実味を帯びてきた。両社の中間決算と通期見通しを検証し、再生への道筋を投げかけてみたい。

四重苦ですり減ったオンワードの財力

 オンワードHDの2021年2月期第2四半期(3〜8月)決算はコロナ禍の百貨店長期休業と営業再開後の売り上げ回復の鈍さに直撃され、売り上げは805億8500万円と前年同期から32.0%減少して114億8700万円の営業赤字、151億8800万円の純損失を計上。純資産は20年2月期末の940億3600万円から677億8700万円と262億4900万円も減少し、ピークだった15年2月期の1853億1500万円の46.1%まで目減りしてしまった。

 純資産の減少要因は親会社株主に帰属する四半期純損失151億8800万円に加え、配当金32億4000万円、会計方針変更による期首剰余金の減少100億1100万円を有価証券評価差益の増加21億9100万円が相殺した結果と説明しているが、前期までの会計処理で持ち越された損失も加わったと推察される。

 決算書を見る限り、ピークの15年2月期から今中間期までに失われた純資産1175億2800万円のうちコロナ禍によるものは129億3000万円(営業損失114億8700万円+臨時休業損失32億5400万円−雇用調整助成金18億1100万円)ほどで、百貨店販路の衰退による営業損失と店舗撤退減損がその倍強、あとは「ジル サンダー(JIL SANDER)」など欧米アパレルの買収や投資に関わるのれんや投資有価証券の減損と営業損失、自己株式の評価損失だったと推察される。オンワードHDは百貨店が衰退する中も積極的な投資や営業活動で業績を維持してきたが、リスクの大きい海外投資で資産をすり減らした。
百貨店からECへの転身にしても、18年3月の機構改革で支店在庫を全廃してECと一体の関東支店に在庫を集中するなど、後戻り困難なルビコンを渡っており、良くも悪くも自ら退路を断つ大胆さが指摘される。その決断で地方百貨店の命運が決まったことを思うと、百貨店に対する衣の下の鎧の極端な裏表には驚くほかはない。

オンワードHDの通期見通しと課題

 コロナ禍の上期売り上げでは、中核子会社オンワード樫山の百貨店が57.8%も減少してシェアが35.3%に落ち、EC売り上げが44.2%も伸びて39.3%とシェアが逆転。国内事業全体でも38%伸びて196億円9400万円に達したECが28.6%を占めてSCその他店舗販売の28.1%を僅差で上回り、百貨店は24.4%まで落ちた。とりわけ第1四半期(3〜5月)では瞬間風速とはいえ、百貨店売り上げが前年同期から71%、SCや駅ビルの売り上げが40%も落ち込む中、ECは50%も伸びて全社売り上げの45%に達し、オンワード樫山単体では45.8%に達した。コロナ禍の特殊事態とはいえ、ECと百貨店のシェアが逆転し、まだ何年もかかると見ていた「半分はECで売る」という目標がほぼ実現したインパクトは大きかった。

 下期は国内売り上げが前年比83.8%まで回復して855億6000万円、通期は同76.6%の1497億9400万円を予想。営業利益も下期は85億8100万円の黒字、通期でも5億6500万円の黒字になると見込んでいる。しかるに海外売り上げは下期も前年比77.2%の213億5500万円、通期も同71.5%の377億0600万円と回復が鈍く、営業利益は下期も55億3100万円の赤字予想で、通期は赤字が86億5100万円(連結営業赤字の96.7%!)に肥大する。結果、国内・海外合わせての通期連結売り上げは前期比75.5%の1875億円、89億4500万円の営業損失、86億円の当期純損失を予想している。ならば、単純計算では純資産は591億8700万円と600億円を割り込むことになる。

 国内事業は営業黒字に浮上しても海外事業の営業赤字が足を引っ張って連結損益が営業赤字になるという構図で、地域の明暗はあっても海外事業が業績回復のネックになりそうだ。失われた純資産1175億2800万円の恐らく半分近くは海外事業に起因するもので、今後も減損が発生するリスクを否定できない。

 前期と今期で百貨店内ショップを中心に1400店舗を撤退し、不採算の「23区 オム」を休止、「CKカルバン・クライン(CK CALVIN KLEIN)」の契約を終了するが、オンワード樫山の百貨店売り上げ比率は09年2月期の74.7%から20年2月期でも62.3%と大きくは下がっておらず、ECだけで大量退店による百貨店売り上げの急激な減少を埋めきれるものではない。21年2月期通期の国内EC売り上げは500億円を予想しておりECへの転換が加速するだろうが、百貨店顧客のEC取り込みはいずれ一巡するから、D2C※1.ブランドやショールーミングサロンによる新規顧客の獲得が急がれる。

 下期から出店を始め22年2月期中に数十店舗を布陣するというEC連動のブランド複合店舗「オンワード・クローゼット」は、主力百貨店ブランドに加えてD2Cブランドもそろえ、「お取り寄せ・お試し・受け取り」のC&C※2.利便を提供するショールーミングサロン業態と推察される。ならば、店在庫引き当てや店出荷、修理加工も出来る迅速かつ低コストなローカル物流体制が問われることになる。

 支店物流を切り捨ててEC軸で関東に集約した物流拠点だけでは全国各地の顧客に迅速なC&Cサービスは提供できないし、主力ブランドもいずれD2Cプライス(百貨店ブランドと同品質で5〜6掛け)に切り替えないと郊外やローカルで顧客を広げることはできない。百貨店内ショップも「オンワード・クローゼット」に集約して定期借家契約に切り替えれば、賃料負担を半減してお値打ちなD2Cプライスに統一できる。顧客の側に立った柔軟なOMO※3.マーケティングとローカル物流の確立が急がれるのではないか。

※1.D2C(Direct to Consumer)…ブランドメーカーが店舗やネットの小売業者を通さず、自社のサイトやショールーム、ポップアップストアで直販する販売形態
※2.C&C(Click&Collect)…ECから店舗に取り寄せて試したり受け取ったりする顧客利便サービス。一括配送の店舗物流を使うから送料無料で、店在庫を引き当てれば倉庫から出荷するより受け取りも早くなる。売り手にとっては顧客利便と在庫効率を高め物流費を抑制するOMO(ネットと店舗の融合)戦略
※3.OMO(Online Merges with Offline)…ネットと店舗の垣根を越えた融合を意味し、スマートフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略

コロナ禍のダメージが大きかった三陽商会

 三陽商会の21年2月期上半期(3〜8月)の売り上げは153億2800万円と前年同期から48.5%も減少して57億1200万円の営業赤字、66億4800万円の純損失を計上。純資産は20年2月期末の388億2200万円から313億7900万円と74億4300万円も減少し、15年2月期の651億4700万円の48.2%まで目減りした。

 コロナ禍でEC・通販売り上げが18.4%伸び、全社売り上げにおけるシェアも前期の12.7%から24.4%に伸びたが百貨店売り上げの4掛け強に過ぎず、ECが38%も伸びてシェアが28.6%に達し百貨店売り上げ(24.4%)逆転したオンワード(国内)とは比較すべくもない。長期休業で売り上げが半減したにもかかわらず百貨店売り上げシェアも前期の62.3%から56.9%にしか落ちておらず、コロナ禍に振り回されただけで販路の再構築は進まなかった。

 第1四半期(3〜5月)は百貨店の長期休業に直撃されて在庫が積み上がり、棚資産回転が469日と壊滅的に悪化したが、通常店舗のセールに加えてアウトレット店舗を9店舗増やすなどして在庫処分を進め、第2四半期では251日まで改善した。下期は新規調達を抑えて旧品(持ち越し品)40%、新規品60%の品ぞろえとし、建値消化率を45%から55%に、総消化率を70%から85%に高めて在庫処分を進め、今期中に160の不採算売り場を撤退して販売員500人を削減する。

 前期では建値消化率45%、総消化率70%だったということになり、期末に期中投入商品の30%が売れ残ったと受け取れる。三陽商会のように単価の高い重衣料中心の百貨店アパレルでは異例とはいえず、紳士既製服では30%前後が期末に売れ残って持ち越すのが常態化している。今や「正価」対比原価率が20%を切った百貨店アパレル商品にはお値打ち感は期待すべくもなく、重衣料比率が高く原価率の切り下げを進める三陽商会の原価率はさらに低いはずで、半年前後も前からの計画生産がほとんどでは需給対応もできないから、消化率はそんなものだろう。そんな実態のまま新規品の生産・投入を抑えても、消化率が大きく改善できるとは到底思えない。

三陽商会の通期見通しと課題

 21年2月期の通期連結業績は売り上げを380億円(前期は14カ月変則で688億6800万円)、営業損益を85億円の赤字、経常損益を96億円の赤字と予想し、旗艦店「ギンザ・タイムレス・エイト」の売却益67億円を補填して純損失を35億円にとどめるとしているが、これで5期連続の営業・経常赤字決算となる。在庫処分も終わるわけではなく、22年2月期へも在庫を持ち越して旧品20%、新規品80%の構成とし、在庫処分を続ける。

 重衣料比率の高い三陽商会は18年12月期でも174日と棚資産回転が異様に遅く、運転資金回転日数も112日と長く、年間売り上げ590億円にして運転資金を181億円も要していた。それがコロナ禍の20年3〜8月期では棚資産回転が251日(第1四半期では469日)、運転資金回転日数も231日(同334日)に伸び、必要運転資金は192億4000万円(同208億8000万円)まで肥大。純資産対比運転資金比率が61%を超え、有利子負債を40億円積み増している。

 三陽商会はそこまで商品財務が逼迫しても、純資産対比負債比率は41.4%と財務はまだ健全な範囲にあり、オンワードHDの129.4%(20年3〜8月期)、ワールドの119.0%(20年4〜6月期)よりは格段にゆとりがある。ワールドの買掛債務回転日数など200日に迫るから過剰在庫の処分を急ぐしかないが、コロナ禍の過剰在庫下でも買掛債務回転日数を前期の76.4日から56.6日へ短縮した三陽商会がそんなに在庫処分を急ぐ必要があるのだろうか。

 三陽商会の財務的余裕が「バーバリー(BURBERRY)」を失った後の戦略を手緩いものにして今日の苦境を招いたにしても、コロナ禍で後がない瀬戸際まで追い詰められたのだから、ようやく必死の巻き返しに転ずるかもしれない。それには上から目線の数値管理ではなく、自社の顧客と流通・販売、調達・生産背景の赤裸々な実態をつぶさに掌握する必要がある。三陽商会の本当の資産は高品質な国内自社生産体制とこれまで評価してくれた寛大な顧客であり、負債は無策な経営陣とコストに見合わない百貨店販路だった。この資産と負債の関係をリセットすれば三陽商会の未来は開ける。

お値打ちの復活以外に生き残る策はない

 オンワードも三陽商会もいかにECを拡大しても、法外な割高価格のままベタープライスブランドを販売するのは限界があり、お値打ちなD2Cプライスを実現して顧客を広げるしか生き残る術はない。その方策はただ一つ、百貨店内ショップを全て自社ブランド複合の大型店に統合し、定期借家契約に切り替えて賃料負担を半減し、その分、価格を切り下げてお値打ちを取り戻すことだ。百貨店側とて、主要な大手アパレルブランドにことごとく退店されては、地方店はもちろん都心店も営業の継続が難しくなるから、「ハイブリッド化」の一環として受け入れるしかないはずだ。定期借家テナントなら販売も在庫運用も自在だから、EC連携のO2O※4.もC&Cも堂々と進められる。

 加えて、三陽商会は財務的にまだ余裕があるのだから在庫処分を焦ってたたき売らず、通常店舗の品ぞろえに旧シーズン品をそのまま組み込む、あるいはリメイクして組み込むアーカイブMDを常套化することを提案したい。三陽商会の国内自社工場製品(に限る)は世界に誇れるラグジュアリー級の品質だから旧品もアーカイブ価値があり、たたき売らなくても売り続けられる。ライセンス契約が終わって市場から消えた「サンヨーバーバリー」や「バーバリー ブルーレーベル」がユーズドショップで人気アーカイブ商品になっていることを三陽商会の経営陣は知っているのだろうか。

 百貨店アパレル流通が長年にわたってロスとコストを価格と品質に転化してお値打ちを損ね顧客に離反され、コロナ禍でとことん行き詰まったのだから、商売のやり方もものづくりも価格設定も全部、ご破算にして組み直すしかない。何もかもが崩れてしまうならゼロから新たな秩序を組み上げても良いはずで、大手アパレルも百貨店も焦土からの再生を決意すべきだ。

※4.O2O(Online to Offline)…ネットで店舗や商品を選んで取り置いたりしてから店舗に行くのがウェブルーミング。店舗で商品を見てネットで情報を調べたりECで購入するのがショールーミング。両方を行き来するショッピング行動をO2Oという

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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ファッション通信簿Vol.58 ネットフリックスで話題!「ラチェッド」主演女優のレッドカーペットファッションを米「WWD」が辛口チェック!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットに至るまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。評価を絵文字でお伝えするとともに、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第58回は、ネットフリックス(NETFLIX)の人気ドラマ「ラチェッド(Ratched)」で主演を務めるサラ・ポールソン(Sarah Paulson)が登場。スターのファッションに興味津々とあれば、パンデミックの影響でプレスツアーが行われないことを残念に感じているだろう。しかし、ポールソンの歴代レッドカーペット・ファッションは期待を裏切らない。どんなファッションも着こなしてしまうポールソンへの評価はいかに!?

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コロナ太り?7キロ、10キロ減のママたちが挑戦したダイエットとは? 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.8 ビューティ編

 この秋、周囲のママたちの間では「ダイエットしました!」なんて話がちらほら。育児をしながら7~10キロ痩せたという声も。ママたちはどうやってダイエットに成功したの? 娘が今年七五三を迎える3児の母と、腕白盛りで日々「鬼滅の刃」の技をかけてくる5歳児と格闘している一人っ子母、2人のライターが実践&語ります。

「ファスティング」「月曜断食」でママたちが変身!していた

野島一美(以下ひとみ):最近、ダイエット成功したお母さんがやたらと多いのが気になってるの。久しぶりに会ったママ友が痩せてきれいになっていて。コロナ禍でランチの機会なんかも減って、ダイエットに集中しやすかったんだって。

高田翔子(以下しょうこ):私のまわりも「痩せました!」という人が増えていて、うらやましい。取材中に「月曜断食」で2カ月で8キロとか、3カ月で9キロ痩せましたなんて話をちらほら聞いて。取材テーマそっちのけで「ど、どうやってやるんですか?」って聞いちゃった。「月曜断食」はきちっとやると効果が早いから人気があるけれど、育児中は誘惑も多いんだよね。家族のごはんは作らなきゃいけないし。夕方までは我慢できても家族が帰ってからが大変。

ひとみ:そうそう。子どもの食べ残しももったいないし(笑)。私はパン好きだから糖質制限もつらいなあ。でもね、中には短期間でかなり痩せたけれど生理が止まってしまったというママもいてそれはちょっと心配!ダイエットしたいけれど、健康第一だよね。

しょうこ:ひとみさんは夫婦でウォーキングを続けているんだよね?

ひとみ:春の休校期間中は息子も運動不足で太ってきちゃって(笑)。親子でウォーキングしていたの。さすがに子どもは代謝がいいのか、学校がはじまったら一気にシュッとした。うらやましいよ。私はついついつま先でちょこちょこ歩くクセがついてしまいがちだから、地面にしっかり足裏をつけるグラウンディングを意識しながら歩いてる。上のお兄ちゃんはもうすぐ中学受験だけれど、下の子はまだ3歳の幼稚園児。子どもたちが大きくなるまではなるべく元気でいたいものね。

3日間酵素ファスティングで体が変わるのを実感

しょうこ:私の周りは、酵素ドリンクを使ったファスティング(断食)も人気があるよ。

ひとみ:私の友人も、ちょっと前まで産後太りを気にしてたのに、全体的にすっきりして健康的でいい感じなの。彼女もファスティングとダイエットサプリで痩せたそう。2週間ぶりくらいに会ったら見た目もすっきりしていてびっくり。

しょうこ:私もこの前、ファスティングしたよ。普段コワーキングスペースを借りて仕事をすることが多いんだけど、昼時は利用者同士でラーメン屋の話になったり、ランチどうします?出前頼みます?なんて話になりがちだから3日間ちょっとつらかった!私が使ったのは「ニールズヤードレメディーズ(NEAL'S YARD REMEDIES)」の酵素ドリンク。甘酸っぱくておいしいから続けやすかった。炭酸水で割るとお酒風に楽しめるから夜も乗り切りやすかったよ。

ひとみ:結果はどう?

しょうこ:3日間やって3キロ減くらい。食べ過ぎで弱った胃を休めるのにもファスティングはいいみたい。やったのは一度だけだけど、そのあとは便秘が改善されたみたいで、毎朝快調なの。ドカ食いせず何をどれくらい食べるか、考えるようになったから、食生活をいったんリセットするにはすごくいい気がする。でも、子どもの誕生日とかイベント続きでこのところ戻りつつある!

ひとみ:もうひとりのママ友は、10キロ!痩せたそうなの。彼女の場合は糖質制限。一日一食にして、午後から夕方までの時間に野菜やお肉、魚は我慢せずたっぷり食べる。ごはんやパンはやめる。これで3カ月で10キロ痩せたんだって。コンビニのスティック野菜が便利と言っていたよ。久しぶりに会って私も驚いちゃった。

しょうこ:すごいね!試したい。次回はいい報告をしたいなあ!

子どもと一緒にできる「セルフエステ」

しょうこ:前、息子と一緒だとなかなかゆっくりお風呂入れないって愚痴っていたけれど最近、ひらめいたの。

ひとみ:なになに?

しょうこ:独身時代や子どもがいないころは、長風呂もお風呂上りにゆっくりマッサージしたりすることもできたけれど、子どもが生まれてからはそういう余裕がなくて。息子は「早くお風呂出たい」ってすぐ言うから、「ママだってゆっくりお風呂に入りたいのに!」なんてついつい言ってしまったり。でも、「あ、そうだ、息子にやってもらえばいいんだ!」って思ったの。もともとお店屋さんごっこが大好きだからそのノリでやってくれる。しかもけっこう上手なんだよね。パックを塗ったりマッサージしたりするのが。「すみません。ここマッサージ屋さんですか?」なんて聞くと「はい。そうですよ~」ってノリノリで対応してくれる。まだ保育園児だけれど力が強いから圧もちょうどいい(笑)。むくみがちな足のマッサージを頼んでるよ。今使っているのは、そのままボディーソープ代わりに体を洗える「アクアギフト(AQUA GIFT)」のエプソムソルトのスクラブ。同じシリーズの入浴剤は子どもと一緒に使えるし、短い時間の入浴でも発汗効果が。夫は「これ、汗がすごく出るね」って驚いてる。本当はゆっくり半身浴とかしたいんだけれど、なかなかゆっくり湯舟につかれないから秋冬はとくにありがたい。アマゾン(Amazon)ですぐ買えるし。

ひとみ:できることからコツコツがいちばんかもね。私の母親は70代だけれど、いまだにダイエット関心大で「夜8時~朝10時は食べない」生活を実践しているの。これだけでも見た目がスッキリしてびっくり。水分はきちんと摂るけれど、固形物は12時間以上食べないようにして、胃をちゃんと休める時間を作るのが大切みたいね。

しょうこ:やってみたい!今年もあとわずかだもんね。年内に変身できますように!

髙田翔子(たかだしょうこ):1982年東京都東村山市生まれ。大学卒業後、ビジネス・実用書出版社勤務を経てフリーライターに。主に女性誌、書籍、WEBでインタビュー、読み物記事などを執筆。肌年齢だけは20代の診断。旅と読書とお酒が好き。電車好き1男の母

野島一美(のじまひとみ):1976年東京都杉並区生まれ。幼少期を香港、NYで過ごす。大学卒業後はテレビ制作会社で報道映像資料編集等に携わった後、東京大学生産技術研究所で教授秘書に。結婚後はフリーのライターとして雑誌VERY(光文社)で育児・早期教育について等執筆。和太鼓にはまる2男1女の母

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パリコレ現地リポートVol.6 リアルのトリはやっぱり「ルイ・ヴィトン」!リアルとデジタルの異なる演出に感嘆

 こんにちは、ヨーロッパ通信員の藪野です。ついにパリコレ現地リポートも最終回を迎えます。今シーズンは外食を一切せずにほぼずっと自炊で、ホテルとショー会場やショールームの行き来のみだったので、なんだか寂しい出張でした。ただ、この状況下でも現地に行けて本当に良かった。いつもより多くのデザイナーと話すことができましたし、リアルなショーは印象に残るものが多かったので、親密&濃密な体験になりました。それでは、「シャネル(CHANEL)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のショーを含む8日目と9日目のダイジェストをお届けします!

10月5日(月)
12:30 「ミチノ」の新ショールームでほっこりティータイム

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」の展示会でひたすら写真を撮った後(詳しくは現地リポートVol.5をご覧ください)に向かったのは、パリ在住日本人デザイナーのヤス・ミチノさんが手掛けるバッグブランド「ミチノ(MICHINO)」。移転した新しいショールームで2021年春夏コレクションを見せてもらいました。と言いつつ、実際はミチノさんとPRのオードさんと久々の再会だったので、日本茶をいただきながらほっこりティータイム。フランスの状況や最近のバッグ事情、近況などを話し合いました。
  
 「今までブランドの中で決めたルールに縛られていたけど、今季は本当にやりたかったことができた」とミチノさんが語るコレクションは、アイコンバッグ“スクウェアイット(SQUARIT)”や“クラフト バッグ(CRAFT BAG)”などをシボのあるレザーでアップデート。ベージュ、ブラック、ホワイト、ピンク、レッドというタイムレスな人気色で提案しています。一方、“SALUT”や“HELLO”とプリントされたミニバッグや財布には、ビビッドカラーを採用。次の春夏には明るい色を持ちたい気分になるように!という思いが込められているそう。
 

13:30 ケイト・モスが手掛けた初のハイジュエリーとは?

 お次はラグジュアリーなホテル・ド・クリヨン(Hotel de Crillon)で開かれていたジュエリーブランド「メシカ(MESSIKA)」のプレゼンテーションへ。今回発表したのは、スーパーモデルのケイト・モスとのコラボレーションで制作したハイジュエリー。ケイト自身のジュエリーボックスを出発点に、“ボヘミアン”や“アールデコ”など彼女の好きなスタイルを反映したコレクションに仕上がっていました。ダイヤモンドで知られる「メシカ」ですが、今回はマラカイトやターコイズ、マザー・オブ・パールをダイヤモンドと組み合わせたネックレスやイヤリングを提案しているのが新鮮です。
 

14:00 ドーバーの展示会で最強のソーシャル・ディスタンシング・ハットを発見

 その後は、ヴァンドーム広場にあるドーバー ストリート マーケット パリ(DOVER STREET MARKET PARIS以下、DSMP)のショールームに新進ブランドの2021年春夏コレクションを見に行ってきました。今回展示されていたのは、人気DJのハニー・ディジョン(Honey Dijon)による「ハニー ファッキング ディジョン(HONEY FUCKING DIJON)」、そしてDSMPが今年提携を始めた「ヴァケラ(VAQUERA)」と「ウェインサント(WEINSANTO)」。ブランド育成プラットフォームとして、取り組むブランドが増えています。
 
 「ハニー ファッキング ディジョン」は2シーズン目を迎え、レザージャケットやはっ水性のあるアウターなどバリエーションが広がりました。今回は90年代ニューヨークのクラブシーンから着想を得ていて、伝説的ディスコ「パラダイス ガレージ(Paradise Garage)」ともコラボ。1万円以下で買えるアイテムもあり、インクルーシブなブランドとして成長中です。「ヴァケラ」はランジェリーをアレンジしたウエアがずらり。大胆なデザインがある一方で、ランジェリーのプリントやパーツをあしらった手ごろなオーバーサイズTシャツもあり、このバランスはエイドリアンさん(コム デ ギャルソン インターナショナルCEO兼ドーバー ストリート マーケットCEO)のアドバイスが入っているのかなと感じました。そして、まだ荒削りでアンダーグラウンド感あふれる「ウェインサント」では、最強のソーシャル・ディスタンシング・ハットを発見。これを被ったら、誰も近寄れないですね(笑)。
 

16:30 「ズリー ベット」は今季もハッピームード満点

 ファッション・ウイーク期間中のショーは、郵便番号が「75」から始まるパリ市内でほとんど開催されるのですが、「ズリー ベット(XULY BET)」のインビテーションを見ると「94200」。これはどこ?と思いつつ、雨の中、南の郊外にある会場にやってきました。ショーには、個性豊かな一般人をモデルとして起用。階段を下りるモデルをデザイナー自身がリズムに乗りながらエスコートしたり、自分の娘がモデルとしてランウエイを歩いてきたら前まで写真を撮りにきちゃうお母さんもいたり、学芸会的なノリはありますが……ハッピームードあふれる楽しいショーでした。
 

10月6日(火)
10:30 「シャネル」の会場に“HOLLYWOOD”サインならぬ“CHANEL”サインが出現!

 最終日のハイライト1つ目は「シャネル」です。招待状は丘の上にある“HOLLYWOOD”サイン風の「CHANEL」の文字が飛び出るカードだったので期待していたのですが、セキュリティーチェックを終えて会場に入ると、ありました!巨大な“CHANEL”サイン!!そしてよく見ると、客席にもブランド名のアルファベットやロゴを象った椅子が混じっていて、テンションの上がる可愛いセットです。
 
 そんな会場からも分かるように今シーズンは、ブランドのミューズである女優たちへのオマージュ。「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は、映画や現実の世界で、数多くの女優たちの衣装を手掛けました。そのような私たちを夢中にさせる女優たちのことを思い描いたのです。でもそれは、単に再現したいと考えたのではなく、ビンテージ風に再解釈したわけでもありません。喜びにあふれ、 カラフルで活気に満ちたコレクションを追求しました」とヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=ファッション・コレクション・アーティスティック・ディレクターは語ります。
 
 その言葉通り、コレクションはミニスカートやバミューダパンツ、ブルゾン、デニム、ネオンサインのようなグラフィックを取り入れることで、若々しくアクティブな印象に。アイコニックなファンシーツイードをはじめとするセットアップスタイルもライダーススタイルのジャケットやドロップショルダーのシルエット、深いスリットの入ったスカートでアレンジしています。一方、ディテールではレッドカーペットドレスの華やかなイメージにつながるフェザーやボウ、スパンコール刺しゅうなども見られました。バッグは超ミニサイズが中心。アクセサリー感覚なネックレスタイプのバッグもありました。


 

16:30 今季も締めは「ルイ・ヴィトン」。リアルとデジタルの異なる演出はあっぱれ!

 もう一つのハイライトは、毎回パリコレのトリを飾っている「ルイ・ヴィトン」です。ライブ配信は現地時間15時からということで「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のデジタル発表の前だったのですが、「ルイ・ヴィトン」は今季、15時と16時半の2回ショーを開催。会場での第一印象や体験を楽しみにしていたので、15時前からSNSは全てシャットダウンして16時半からのショーを待ちました。
 
 今回の会場は、LVMHが大規模な改修を進めている老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)。来年複合施設としての再オープンを前に、ガラス天井と孔雀のフレスコ画が象徴的な最上階をショーに使いました。パリコレではルーブル美術館の内外でウィメンズのショーを開催することの多い「ルイ・ヴィトン」ですが、これまでもヴァンドーム広場の旗艦店や美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)」をオープン前に会場として使用しており、ショーはLVMHにとって重要な新ロケーションを世界に披露するメディア的な役割も果たしているのです。
 
 コレクションは、メンズ・ウィメンズという枠組みに当てはまらない“ノンバイナリー(nonbinary)”な服。振り返れば、ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、20年春夏のショー演出にもトランスジェンダーのアーティストであるソフィー(Sophie)を起用していましたよね。ショーで披露されたのは、彼が「マスキュリンであると同時にフェミニンである」と語るジャケットをはじめ、風をまとう軽やかでゆったりしたロングコート、タックを入れて丸みのあるシルエットに仕上げたスラックス風ワイドパンツ、オーバーサイズTシャツとも捉えられるドレスなど。女性でも男性でも楽しめそうなアイテムがそろいます。ニコラのコレクションでここまで全体的にビッグシルエット&ストリートムードなのは新鮮。カジュアルな太いベルトでハイウエストをマークしたスタイリングやポップなタイポグラフィがいいアクセントになっています。
 
 「あ〜、締めにエネルギッシュなショーが見られてよかった!」と思いながらホテルに帰ってデジタルでの配信をチェックすると、別の体験が待っていました。会場では緑の壁や椅子になっていたところに映像が合成され、モデルが映像の中を歩いているような不思議な世界に。リアルな空間の中にいるからこそ湧き立つ感情や視点を動かしながら見るからこそ分かる質感やディテールはもちろんあるのですが、それをデジタルでできる限り再現することを目指すのではなく、全く異なる体験を用意するとはあっぱれ!会場では緑色を背景にモデルが歩いていたので、その点ではデジタルで見ている方が面白いと感じられたのではないでしょうか。そして合成されていた映像は、ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督による映画「ベルリン・天使の詩」。ベルリンつながりということで、勝手に親近感が湧きました(笑)。


 

10月8日(木)
14:00 初のPCR検査にドキドキ

 現在、ドイツではリスク地域(もちろんパリも対象)からの入国者全員にPCR検査が義務付けられています。空港にも検査センターがあるのですが、ベルリンに戻った7日夜はすでにクローズしていたので、8日に近所の診療所に行ってきました。ベルリンでは市内に新型コロナウイルス関連の検査や診察のみを行う病院がいくつも設けられていて、今回行ったところは事前にオンライン予約もできたのでとてもスムーズ。待ち時間もなく、鼻と喉から検体を取って5分もかからずに終了しました。そして結果はウェブサイトに個人番号を入れると表示されるシステムになっていて、通常2日以内に分かるとのこと。翌日の夕方にチェックしてみたら、「陰性」と表示されました〜!症状は全くなかったとはいえ気になっていたので一安心。これにて、無事パリコレ出張終了です!

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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パリコレ現地リポートVol.6 リアルのトリはやっぱり「ルイ・ヴィトン」!リアルとデジタルの異なる演出に感嘆

 こんにちは、ヨーロッパ通信員の藪野です。ついにパリコレ現地リポートも最終回を迎えます。今シーズンは外食を一切せずにほぼずっと自炊で、ホテルとショー会場やショールームの行き来のみだったので、なんだか寂しい出張でした。ただ、この状況下でも現地に行けて本当に良かった。いつもより多くのデザイナーと話すことができましたし、リアルなショーは印象に残るものが多かったので、親密&濃密な体験になりました。それでは、「シャネル(CHANEL)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のショーを含む8日目と9日目のダイジェストをお届けします!

10月5日(月)
12:30 「ミチノ」の新ショールームでほっこりティータイム

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」の展示会でひたすら写真を撮った後(詳しくは現地リポートVol.5をご覧ください)に向かったのは、パリ在住日本人デザイナーのヤス・ミチノさんが手掛けるバッグブランド「ミチノ(MICHINO)」。移転した新しいショールームで2021年春夏コレクションを見せてもらいました。と言いつつ、実際はミチノさんとPRのオードさんと久々の再会だったので、日本茶をいただきながらほっこりティータイム。フランスの状況や最近のバッグ事情、近況などを話し合いました。
  
 「今までブランドの中で決めたルールに縛られていたけど、今季は本当にやりたかったことができた」とミチノさんが語るコレクションは、アイコンバッグ“スクウェアイット(SQUARIT)”や“クラフト バッグ(CRAFT BAG)”などをシボのあるレザーでアップデート。ベージュ、ブラック、ホワイト、ピンク、レッドというタイムレスな人気色で提案しています。一方、“SALUT”や“HELLO”とプリントされたミニバッグや財布には、ビビッドカラーを採用。次の春夏には明るい色を持ちたい気分になるように!という思いが込められているそう。
 

13:30 ケイト・モスが手掛けた初のハイジュエリーとは?

 お次はラグジュアリーなホテル・ド・クリヨン(Hotel de Crillon)で開かれていたジュエリーブランド「メシカ(MESSIKA)」のプレゼンテーションへ。今回発表したのは、スーパーモデルのケイト・モスとのコラボレーションで制作したハイジュエリー。ケイト自身のジュエリーボックスを出発点に、“ボヘミアン”や“アールデコ”など彼女の好きなスタイルを反映したコレクションに仕上がっていました。ダイヤモンドで知られる「メシカ」ですが、今回はマラカイトやターコイズ、マザー・オブ・パールをダイヤモンドと組み合わせたネックレスやイヤリングを提案しているのが新鮮です。
 

14:00 ドーバーの展示会で最強のソーシャル・ディスタンシング・ハットを発見

 その後は、ヴァンドーム広場にあるドーバー ストリート マーケット パリ(DOVER STREET MARKET PARIS以下、DSMP)のショールームに新進ブランドの2021年春夏コレクションを見に行ってきました。今回展示されていたのは、人気DJのハニー・ディジョン(Honey Dijon)による「ハニー ファッキング ディジョン(HONEY FUCKING DIJON)」、そしてDSMPが今年提携を始めた「ヴァケラ(VAQUERA)」と「ウェインサント(WEINSANTO)」。ブランド育成プラットフォームとして、取り組むブランドが増えています。
 
 「ハニー ファッキング ディジョン」は2シーズン目を迎え、レザージャケットやはっ水性のあるアウターなどバリエーションが広がりました。今回は90年代ニューヨークのクラブシーンから着想を得ていて、伝説的ディスコ「パラダイス ガレージ(Paradise Garage)」ともコラボ。1万円以下で買えるアイテムもあり、インクルーシブなブランドとして成長中です。「ヴァケラ」はランジェリーをアレンジしたウエアがずらり。大胆なデザインがある一方で、ランジェリーのプリントやパーツをあしらった手ごろなオーバーサイズTシャツもあり、このバランスはエイドリアンさん(コム デ ギャルソン インターナショナルCEO兼ドーバー ストリート マーケットCEO)のアドバイスが入っているのかなと感じました。そして、まだ荒削りでアンダーグラウンド感あふれる「ウェインサント」では、最強のソーシャル・ディスタンシング・ハットを発見。これを被ったら、誰も近寄れないですね(笑)。
 

16:30 「ズリー ベット」は今季もハッピームード満点

 ファッション・ウイーク期間中のショーは、郵便番号が「75」から始まるパリ市内でほとんど開催されるのですが、「ズリー ベット(XULY BET)」のインビテーションを見ると「94200」。これはどこ?と思いつつ、雨の中、南の郊外にある会場にやってきました。ショーには、個性豊かな一般人をモデルとして起用。階段を下りるモデルをデザイナー自身がリズムに乗りながらエスコートしたり、自分の娘がモデルとしてランウエイを歩いてきたら前まで写真を撮りにきちゃうお母さんもいたり、学芸会的なノリはありますが……ハッピームードあふれる楽しいショーでした。
 

10月6日(火)
10:30 「シャネル」の会場に“HOLLYWOOD”サインならぬ“CHANEL”サインが出現!

 最終日のハイライト1つ目は「シャネル」です。招待状は丘の上にある“HOLLYWOOD”サイン風の「CHANEL」の文字が飛び出るカードだったので期待していたのですが、セキュリティーチェックを終えて会場に入ると、ありました!巨大な“CHANEL”サイン!!そしてよく見ると、客席にもブランド名のアルファベットやロゴを象った椅子が混じっていて、テンションの上がる可愛いセットです。
 
 そんな会場からも分かるように今シーズンは、ブランドのミューズである女優たちへのオマージュ。「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)とカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は、映画や現実の世界で、数多くの女優たちの衣装を手掛けました。そのような私たちを夢中にさせる女優たちのことを思い描いたのです。でもそれは、単に再現したいと考えたのではなく、ビンテージ風に再解釈したわけでもありません。喜びにあふれ、 カラフルで活気に満ちたコレクションを追求しました」とヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=ファッション・コレクション・アーティスティック・ディレクターは語ります。
 
 その言葉通り、コレクションはミニスカートやバミューダパンツ、ブルゾン、デニム、ネオンサインのようなグラフィックを取り入れることで、若々しくアクティブな印象に。アイコニックなファンシーツイードをはじめとするセットアップスタイルもライダーススタイルのジャケットやドロップショルダーのシルエット、深いスリットの入ったスカートでアレンジしています。一方、ディテールではレッドカーペットドレスの華やかなイメージにつながるフェザーやボウ、スパンコール刺しゅうなども見られました。バッグは超ミニサイズが中心。アクセサリー感覚なネックレスタイプのバッグもありました。


 

16:30 今季も締めは「ルイ・ヴィトン」。リアルとデジタルの異なる演出はあっぱれ!

 もう一つのハイライトは、毎回パリコレのトリを飾っている「ルイ・ヴィトン」です。ライブ配信は現地時間15時からということで「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」のデジタル発表の前だったのですが、「ルイ・ヴィトン」は今季、15時と16時半の2回ショーを開催。会場での第一印象や体験を楽しみにしていたので、15時前からSNSは全てシャットダウンして16時半からのショーを待ちました。
 
 今回の会場は、LVMHが大規模な改修を進めている老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)。来年複合施設としての再オープンを前に、ガラス天井と孔雀のフレスコ画が象徴的な最上階をショーに使いました。パリコレではルーブル美術館の内外でウィメンズのショーを開催することの多い「ルイ・ヴィトン」ですが、これまでもヴァンドーム広場の旗艦店や美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)」をオープン前に会場として使用しており、ショーはLVMHにとって重要な新ロケーションを世界に披露するメディア的な役割も果たしているのです。
 
 コレクションは、メンズ・ウィメンズという枠組みに当てはまらない“ノンバイナリー(nonbinary)”な服。振り返れば、ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、20年春夏のショー演出にもトランスジェンダーのアーティストであるソフィー(Sophie)を起用していましたよね。ショーで披露されたのは、彼が「マスキュリンであると同時にフェミニンである」と語るジャケットをはじめ、風をまとう軽やかでゆったりしたロングコート、タックを入れて丸みのあるシルエットに仕上げたスラックス風ワイドパンツ、オーバーサイズTシャツとも捉えられるドレスなど。女性でも男性でも楽しめそうなアイテムがそろいます。ニコラのコレクションでここまで全体的にビッグシルエット&ストリートムードなのは新鮮。カジュアルな太いベルトでハイウエストをマークしたスタイリングやポップなタイポグラフィがいいアクセントになっています。
 
 「あ〜、締めにエネルギッシュなショーが見られてよかった!」と思いながらホテルに帰ってデジタルでの配信をチェックすると、別の体験が待っていました。会場では緑の壁や椅子になっていたところに映像が合成され、モデルが映像の中を歩いているような不思議な世界に。リアルな空間の中にいるからこそ湧き立つ感情や視点を動かしながら見るからこそ分かる質感やディテールはもちろんあるのですが、それをデジタルでできる限り再現することを目指すのではなく、全く異なる体験を用意するとはあっぱれ!会場では緑色を背景にモデルが歩いていたので、その点ではデジタルで見ている方が面白いと感じられたのではないでしょうか。そして合成されていた映像は、ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督による映画「ベルリン・天使の詩」。ベルリンつながりということで、勝手に親近感が湧きました(笑)。


 

10月8日(木)
14:00 初のPCR検査にドキドキ

 現在、ドイツではリスク地域(もちろんパリも対象)からの入国者全員にPCR検査が義務付けられています。空港にも検査センターがあるのですが、ベルリンに戻った7日夜はすでにクローズしていたので、8日に近所の診療所に行ってきました。ベルリンでは市内に新型コロナウイルス関連の検査や診察のみを行う病院がいくつも設けられていて、今回行ったところは事前にオンライン予約もできたのでとてもスムーズ。待ち時間もなく、鼻と喉から検体を取って5分もかからずに終了しました。そして結果はウェブサイトに個人番号を入れると表示されるシステムになっていて、通常2日以内に分かるとのこと。翌日の夕方にチェックしてみたら、「陰性」と表示されました〜!症状は全くなかったとはいえ気になっていたので一安心。これにて、無事パリコレ出張終了です!

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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GO TO トラベルの地域共通クーポン ファッション小売店も登録すれば使用対象店舗に

 国土交通省、観光庁のGO TO トラベル事業で、10月1日から地域共通クーポンの配布が始まっています。同クーポンは旅行先の土産物店、飲食店、観光施設、交通機関などで利用でき、コロナ禍で打撃を受けた国内需要の盛り上げを狙っています。客の同クーポン使用を受け付けるためにはGO TO トラベル事務局に登録する必要がありますが、登録をすればファッションの小売店もクーポンの使用対象店舗となります。ファッション業界内でも意外と知らない人が多いようなので、あらためて記事にまとめました。

 そもそもGO TO トラベル事業では、旅行代金の半額相当(1泊あたり最大で2万円、日帰りなら同1万円)が補助されます。そのうちの70%は旅行代金(宿泊費など)の割引として補助されますが、残りの30%(旅行代金全体の15%)は同クーポンとして支給されます。クーポンの最大額は1泊あたり6000円、日帰りの場合は3000円です。

 同クーポンは宿泊予約サイトや旅行業者などが配布し、宿泊地(日帰りの場合は主目的の観光地)のある都道府県やそれに隣接する都道府県で使用が可能。つまり、地方から東京や大阪へ旅行して、渋谷や原宿、梅田で服を買った際にも使用できます。東京の人が都心のホテルに泊まってリラックスする、というケースでもGO TO トラベルキャンペーンは適用されます。

 ファッションに関係する小売業では、例えば伊勢丹新宿本店、阪急うめだ本店などの百貨店や、大型SCなどで同クーポンが使用可能になっています(百貨店は日本百貨店協会の公式サイト上で使用可能店がリスト化されています。またGO TO トラベル事業の公式サイト上でも使用可能店舗や施設が検索できます)。そのような大手資本の施設や店ではない個人経営のブティックなども、登録さえすればクーポンの使用対象となります。登録はGO TO トラベル公式サイトから行えます。

 5月に緊急事態宣言が延長された際に、シューズブランド「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長や、セールスレップのイーストランド島田昌彦社長などが発起人となって、休業要請対象業種から外れたファッションビジネスの現状を訴える署名活動を行いました。その活動では、槇原秀樹経済産業副大臣や自民党議員、経済産業省の担当者などにも面会、「業種を限らない経済活性化策」の必要性を伝えていましたが、今回同クーポンでファッション小売業も補助の対象となったきっかけの一つには、そうした動きも関係しています。コロナによる影響はまだまだ続いていますが、今後も自分たちで動いて自分たちの業界を前進させていくという姿勢が、ファッション業界には求められていますね。

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「コスト」が大きいモノこそサブスクに エディターズレター(2020年8月20日配信分)

※この記事は2020年8月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「コスト」が大きいモノこそサブスクに

 もう一種類のメルマガでは昨日、「自転車通勤始めました」と近況報告しましたが、“自転車ツーキニスト”になって改めて気づくのはシェアサイクルの普及の度合いです。特に毎週土曜日、横浜から豊洲にある「アシックス」の低酸素ジムまでチャリで移動する時は(笑)、道中、数えきれないくらいのシェアサイクルに出合います。ママチャリに乗るママ&買ったばかりの自転車に乗る子どもと一緒にツーリングするパパはシェアサイクル、なんてケースが一般的でしょうか?シェアサイクルに乗るUber Eatsのドライバーも多いのですが、彼らはマネタイズできているのでしょうか?そんなコトを考えながら、週末は片道25kmの距離を爆走し、着いた先でバーベルを持ち上げ、帰宅前にはご近所のジムでもう一回有酸素という、アディクト以外の何物でもない時間を過ごしています。

 調べるとシェアサイクルの月額利用料金、つまりサブスク料は2000円程度のようです。これを高いと捉えるか?それとも安いと考えるかは個々人によるでしょうが、10万円くらいの電動自転車が毎月乗り放題で2000円なら、悪くありません。自転車って、導入時に強いられるコスト、案外高いですからね。10万円の自転車代はもちろん、駐輪場問題とか、盗難防止のチェーン問題、「盗まれないかしら?」というストレス、そして使わなくなった時の処分まで含め、一連のコストは自転車代をしのぐかもしれません。それまでひっくるめて、月額2000円で解決できるなら、です。

 以前、家具のサブスク事業を手がける「CLAS」の久保裕丈・社長が、全く同じコトをおっしゃっていました。家具こそ買うにしても、買い換えるにしても、「困りごと」があまりに多いからサブスクが良いそうです。彼は社会人になって2、3回目の引っ越しを経験する人、つまり、生活にこだわる余裕が生まれてきた人をメーンターゲットに「CLAS」を手がけていますが、それでも、いやそうなるとそれこそ「困りごと」は数え切れません。「こだわりの家具は高すぎる問題」「空間全体を整えるには数年かかっちゃう問題」「運搬が面倒問題」「組み立てが大変問題」「古い家具の処分には時間がかかる問題」etc…。それを解決するのがサブスクと聞いた時、「なるほど」と思いました。「メデュラ」から「D2Cは、お客様の悩みに寄り添うビジネス」と聞いた時以来の“開眼”でした(笑)。

 実は今、私たちもサブスク事業に挑戦しようとしています。オンラインをメーンに、学びのコンテンツをサブスクで提供できないか?そんなコトを空想し、ワクワクしている今日この頃です。その時に考えるべきは、「現在、ユーザーが直面しているコスト」なのですね。商品やサービスの単価のみならず、そこに至るまで、その後の「コスト」。これが大きく、冷静に考えれば理不尽なモノほど、サブスクにピッタリなのでしょう。ファッション&ビューティ業界の「学び」をサブスクするには、「コスト」の面から考えた時、ポテンシャルがあるのでしょうか?現状のサービスは1回数千~数万円と割高だし、決して数も多くない。特にリアルなセミナーは首都圏や関西圏ばかりで地方の皆さんに「コスト」を強いています。成功できそうな気がするのですが……。皆さん、どんな「学び」のコンテンツがあれば、サブスクしてくれるでしょう?教えてください。

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次世代のコンテンツメーカーが考える「企業とユーチューブの付き合い方」とは?

 動画のプラットフォームとして成長を続けているユーチューブ(YouTube)。そんなユーチューブと存在感を増し続けるユーチューバーに対して、ファッション&ビューティ企業はどのように向き合っていくべきなのか。映像を軸に、さまざまな次世代型コンテンツを世に生み出している“コンテンツスタジオ”、チョコレイトの栗林和明=執行役員兼チーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO)にユーチューブの傾向やコンテンツの作り方、そしてユーチューバーとの関係の築き方について話を聞いた。(この記事は「WWDジャパン」10月5日号の記事を加筆したものです)

WWD:チョコレイトとは、どのような会社なのか?

栗林和明チョコレイト執行役員兼CCO(以下、栗林):一言で言うと、コンテンツスタジオです。映像を軸にしつつ、雑貨やボードゲーム、アニメ、映画などいろいろな分野のコンテンツを作っています。とはいえ、コンテンツメーカーには、ピクサー(PIXAR)だったり、任天堂だったりと、そうそうたる先行者たちがいる。じゃあ僕らは何が違うのかというと、分野を超えて越境できるということ。編集者には編集者の知恵があるし、映画監督には映画監督の知恵がありますが、普段は縦割りで分かれている。僕らはそういった縦割りを横断して、さまざまな分野の人たちが知恵を持ち寄り、横並びでアイデアを出し合っています。さらにはアイデアを出して終わりではなく、形にしたり、ビジネスにしたりしてこそ、初めて意味がある。なので僕らはプロデューサーやマネジメントの人たちも一緒になって、ワンストップでコンテンツを作り上げています。

WWD:さまざまなコンテンツを企画・制作してきたと思うが、ユーチューブが他のソーシャルメディアと異なる点は?

栗林:一つはツイッター(twitter)やティックトック(tiktok)が瞬発型のメディアであるのに対して、ユーチューブは蓄積型のメディアなのかなと考えています。瞬発型のメディアの場合、1つの投稿がバズると一気にフォロワーが増えることがありますが、蓄積型はジワジワと育てていき、ファンを付けていくことが大切です。もう一点が、ユーチューブは理解が必要なメディアであるということ。ユーチューブはアルゴリズムが非常に強く、どんなに面白い動画を作っても、関連動画やオススメ動画に上がってこなければほとんど伸びない。どんなモノが出てくるのかをちゃんとひもといて、コンテンツを作っていくことが重要だと思っています。

WWD:影響力という観点では、ユーチューブはほかのソーシャルメディアと比べてどれだけ強いのか?

栗林:どのメディアも押し並べて影響力は強いですが、ユーチューブがほかのメディアと比べて圧倒的に違うのはマネタイズシステムです。いいコンテンツを作れば作るほど、ユーチューバーにお金が入るというシステムは強い。ただ、ティックトックも海外ではEC機能を付けたように、今後は各ソーシャルメディアがさまざまなマネタイズ方法を導入していくだろうなと考えています。どこまでうまくマネタイズシステムを取り入れられるかで、ユーザーやコンテンツの質に変化が起きていくはずです。もう一点、ユーチューブならではの特性として、動画に対する視聴態度があります。他のメディアだと動画は秒単位で見る、といった形ですが、ユーチューブは数分は見るということが前提で、離脱障壁が全然違う。そういった意味で、メッセージや世界観をしっかりと伝えたいときには、ユーチューブの方が向いているのかなとは思います。

WWD:企業はどのようにユーチューブを使えば良いのか?

栗林:メディア企業はいろいろとやり方があるのかな、と思うのですが、そのほかの企業がチャンネルを作り、マネタイズをしようと考えると非常に大変だと思います。そんな中で、企業のチャンネルがうまくいく方法は、今のところ2つ。1つは、専属の担当者がユーチューバーのように、楽しんでユーチューブで活動しつつ、企業情報や製品の紹介などを自然と織り混ぜていく方法です。サントリーのチャンネルはその進化系のような形で、「燦鳥ノム(さんとりのむ)」というvTuberを作り、発信しています。もう一つが、1つのフォーマットのもと、コンテンツを発信し続けるという方法。「ザ・ファースト・テイク(THE FIRT TAKE)」という音楽チャンネルがいい例で、アーティストのパフォーマンスの一発撮りというフォーマットで同じことをやり続けて再生数・登録者数を伸ばしています。メディアだと「ヴォーグ(VOGUE)」でも「73の質問」というフォーマットで、さまざまな著名人に出てもらっていますよね。

WWD:ユーチューブ上で、いい動画を作るために必要な要素は?

栗林:個人的にはニーズ&ギャップと独自のアプローチ、サムネイル力、人間味、継続性の5つの要素の掛け算が必要だと思っています。ニーズ&ギャップはコンテンツの内容として需要が高く、かつまだ供給が少ないカテゴリーを狙うということ。独自のアプローチは文字通り、ニーズとギャップの把握で見つけた領域に自分なりにアプローチできるか否かです。サムネイル力は、いかにみんなが見過ごせないようなサムネイルを作ることができるか。人間味の部分では、配信者の素直な感情がどこまで出ているのか。継続性に関しては、大型の企画を一つ作ってドン!と出して終わりではなく、とにかく負荷を下げて、継続的に出し続けていくということが大切です。特に継続性は、企業が見落としがちな部分ではあります。

WWD:中でもファッションやビューティ業界の企業は、ユーチューブでどのようなコンテンツを作れば良いと思うか?

栗林:すごく難しいんですが・・・・・・、端的に言えば、先ほど言った「ザ・ファースト・テイク」のファッション版がいいんじゃないかなと思っています。ブランドの人が自分が作った服の着回しコーデとかを作り続けつつ、服を作った経緯やアイデア、物語を語るといったような、非常にシンプルなトーク型のコーデチャンネルとかがいいんじゃないかなと。そのくらい負荷が低く、ワンルールでやった方がいいと思います。

WWD:企業がユーチューバーと仕事をするときに気を付けた方がいい点は?

栗林:まずユーチューブというものを理解することと、その中でユーチューバーがどのようなものを培い、成長してきたかを理解する必要があります。僕自身、広告代理店にいたので「面白い企画ならやってくれるでしょ?」と当初は思っていたのですが、彼・彼女たちは「なぜ自分がその企画をするのか」といった部分をちゃんと考えています。トップクラスのユーチューバーならなおさらで、ブランドを立ち上げたり、テレビに出たり、マスに向けてアプローチしたりと、自身が次にどういう展開をしていくのかを考えています。そういった考えにしっかりとフィットした案件を提案できると、いい関係が築けるのかなと思っています。

WWD:企業とユーチューバーの協業において、良い事例はあるか?

栗林:自社の企画にはなってしまいますが、僕らが“熱海動画”と呼んでいる、ユーチューバーでチョコレイトのプランナーでもあるあさぎーにょさん主演の「ハロー!ブランニューワールド!」は良かったなと思っています。あさぎーにょさんの、ファンとの大事なコミュニケーションの場であるユーチューブで新しいモノ、ワクワクするモノを届けたい、いう意思を踏まえ、“vlog映画”という新しい形の映画を作ることができました。

WWD:昨年末にユーチューブで公開された「ハロー!ブランニューワールド」は、20分とかなり長尺の動画でありながら、500万回近くの再生数を誇っている。長尺でも見られる動画を作るために、どんなことを意識したのか?

栗林:あの動画は正直、かなりの賭けで、不安でしょうがなかったんです(笑)。ただ、いくつかの仕掛けは用意しています。まず雷が落ちる演出があり、ある程度動画が作られた物語だと見ている人が気付く。そこまではvlogの体を取りつつも、サムネイルをはじめ、落ちたお椀をキャッチする、知らない町なのに流暢にしゃべられるなど「何だコレ?」ポイントを10個くらい盛り込んでいます。その謎の答えを知りたいという気持ちを盛り上げて、後半がスタートするような構成になっています。あとは実際に公開してから分かったのが、泣き顔のサムネイルの部分で、見てくれた人たちがシェアする際につけてくれていた「感動した」「素晴らしかった」といったコメントとのギャップが、まだ見ていない人の気持ちを刺激したな、と。ユーチューブはツイッターなどと比べて、シェアする障壁が少し高いので、どうシェアされるのかをしっかりと考えてサムネイルも作り込むことができれば、尚良いなと感じました。

WWD:今後、ユーチューブやソーシャルメディアはどこに向かっていくのか?

栗林:正直、あまり考えていないんです(笑)。というのも、社会人になってからずっとソーシャルメディア研究を続けてきましたが、予測しても意味がないな、と思うようになって。ただ、マネタイズができるところであったり、ライブ配信で人がたくさん集められるプラットフォームが強くなっていくのかなとは思っています。ライブ配信は最低限の負荷でエンゲージできるし、見てくれる人が多いフォーマットでもある。

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ミヤシタパークに見る日本のストリートカルチャーの新展開 エディターズレター(2020年8月18日配信分)

※この記事は2020年8月18日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ミヤシタパークに見る日本のストリートカルチャーの新展開

 開業したミヤシタパークを偵察中、弊社も関わる「TOKION」のショッパーを持った男性2人とすれ違い、ビビッと来たので声をかけてスナップ写真を撮らせてもらいました。“ビビッと来たらスナップ”は私の取材の基本姿勢です。記者というハンターは自分の直感を信じるべし。ためらっている間に素敵な人との出会いというチャンスを逃す方がもったいないですからね。以前パリで、「コム デ ギャルソン」のキルトスカートと白シャツに「ルイ・ヴィトン」のボストンバッグというおしゃれな男性の後ろ姿にビビッと来て声をかけたら、マーク・ジェイコブスだったということがありました(自慢)。声をかけて大正解でした。

 話を戻すと、冒頭に触れたビビッと来た男性はミヤシタパークに出店もしている「ミノトール インスト」のディレクター、泉栄一さんとそのご子息でした。写真を撮らせてもらって名刺交換をし、その後の約3分間、泉さんがダーッと話してくれた内容が面白くて……。声をかけてよかったと思ったのでした。

 福岡とパリを拠点にストリートファッションの世界で特に有名な泉さんに関する基礎知識はこちらからぜひ。

 で、泉さんの話で何が面白かったかというと、裏原を起点とする日本発のストリートファッション&カルチャーに関する新しい視点です。「ミヤシタパークをどう評価していますか?」という私の質問に対する泉さんの答えは、「ストリートファッションが世代を超えて伝わり、楽しめる場がようやくできたと思う」とのことでした。確かにミヤシタパークにはストリート系メンズブランドがずらりとそろい、見応えがあります。そしてストリート第1世代と言える40代以上から10代まで楽しめる“ストリートワンダーランド”的な魅力があります。

 1990年代以降のストリートファッションを知り尽くす泉さんの横には“あの頃”の泉さんと同年齢くらいと思われる息子さんの姿が。親子で「ミノトール インスト」を着こなしていてお似合いで、それぞれにその場を楽しんでいました。

 カルチャーって一過性の部分もありますが、受け継がれてゆくことでより深く豊かになる側面もありますよね。海外のメンズデザイナーからも評価が高い日本のストリートファッションの新展開のきっかけをミヤシタパークがつくったのであれば面白いです。

 この話、まだうまく言葉にできないのでストリートファッション好きの人と話し込んで考察を深めたいですが、とにかくスナップをきっかけに泉さんには大切な視点を教えてもらったことは間違いなしでした。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
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SNSは、イヤなら自由に離れれば良い エディターズレター(2020年8月6日配信分)

※この記事は2020年8月6日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

SNSは、イヤなら自由に離れれば良い

 「WWDビューティ」編集部でSNSをパトロールしている浅野記者がほぼ毎週提供してくれる、「SNSでバズってること」レポートを毎回楽しく聞いています。普段は編集会議で教えてくれるのですが、部員がみんな「ヤバい!!それ、みんなに教えたい!!」とテンションを上げると、リンク1本目の記事の通り、追加取材をして、さまざまな形でアップされるのでご期待ください。

 で今週、そんな浅野記者が教えてくれたのは、「『ポカリスエット』のCMに違和感を覚える人たち」の存在。私は、「集団ダンス」に変わる「集団リモート合唱」にも薄い感動を覚えたくらいですが、「青春の押し売り」とか「あんな青春送ってない」みたいなコメントが目立っているというのです。

 早速、ツイッターをチェックしましょう。「申し訳ないけど、大っっっっっ嫌いだから、二度と私のTwitterに広告も流して欲しくないしテレビで流されても見ない」とか「俺たち青春してます!みたいな感じがほんとに無理や。あんなキラキラしとらんわボケ!」だそうです。いやぁ、厳しい。私だって、学生時代は決してキラキラしてなかったですけれどね(苦笑)。浅野記者は、「みんな、ちょっとずつストレスを貯め込んでいるんでしょうね」と分析します。みんな、そんなにストレスを蓄積しているのですね。最近は、嫌われることもある程度覚悟して意志を発信するコミュニケーションが増えていますが、今“腹をくくる”なら、「みんな、いつもより怒りの沸点が低いかもしれないこと」を意識した方がいいのかもしれません。

 とは言え、へそ曲がりな私はこんな投稿に出合うと、「一体、どういう人なんだろう?」とアカウントを辿ってしまいます。大抵、自分に対するネガティブコメントに対して、「~~だから、気にしない気にしない!!」って思考に切り替えるためなんですけれどね(苦笑)。例えばそのアカウントが、フォロー数もフォロワー数も十数くらいの「捨て垢」なら、気にしない。投稿全般がネガティブだったら、やっぱり気にしない(笑)。名前も、姿・形もわからないアカウントなら、それだってもちろん気にしない。となると、気にすべき投稿って実はそんなに多くないし、なぜか気にすべき意見は真摯に受け止められるようになります。無論、反省したり、意見を改めたりするのは、また別の話です。上述の「ポカリスエット」の話に戻ると、「ポカリ」「ウザい」なんて検索で出てくるツイートの大半は、私には「そんなに悩まなくていいかもしれない」程度のものでした。

 最近は、「お嫌いなら、お互いのために離れましょう」って思っています。例えば上述の投稿には、「アルゴリズムとかの影響で流れちゃうんでしょうから、ターゲティングされない属性のアカウントに変えちゃうとか?フォローしてる人・フォローされている人を入れ替えるのもアリかも。TVは、チャンネル変えるか、消すしかない」なんて真剣に思うし、提案したくなっています。心の底から、それが、お互いのためだと思うんです。無論、人生の中では逃れられない場面や、対峙せざるを得ない人がいるものです。でもSNSって、それとは違う。だから気に入らなければ、付き合わないのが一番ですよね?

 それってSNSのみならず、私たちメディアとユーザーの皆さんとの付き合い方も同じです。もちろん、嫌われるより、好かれた方が嬉しいです。好かれるために最善を尽くしているつもりです。でも、嫌われたら、仕方ない。「また、好きになってくれそうな時、お待ちしています」。そんな風に、結構真剣に思っています。

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パリコレ現地リポートVol.5 「ジバンシィ」のショールームでマシューと対面!新たなバッグ、シューズ、アクセサリーを一挙公開

 こんにちは、ヨーロッパ通信員の藪野です。10月6日でパリコレが終了しました。開幕時点では最終日までできるのかと心配でしたが、無事終わりホッとしています。紙面の入稿などでちょっとタイムラグが出てしまいましたが、あと2回現地からのリポートをお届けしますので、お付き合いくださいませ。それでは、今季の目玉である新生「ジバンシィ(GIVENCHY)」のデビューや、「エルメス(HERMES)」「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」のリアルショーなどを取材した6日目と7日目のダイジェストをどうぞ!
 

10月3日(土)

15:00 リアルでもデジタルでも観客を魅了した「エルメス」劇場

 西部の16区にあるテニスクラブ ド パリで開かれた「エルメス」のショーは、なだらかなスロープ状になったステージを眺めるという劇場型のセットでした。客席はおそらく150席程度。なんとも贅沢な空間の使い方です。ショースタートとともにライトアップされると、すでにモデル全員が等間隔で立ちスタンバイした状態。これは、デジタルでの見え方も考慮した演出かと思われますが、現場での迫力も満点でした。メンズのデジタル発表も素晴らしかったし、「エルメス」はリアルでもデジタルでも“魅せる”ことに長けていると感じます。

 “自由の再発見”をテーマにしたコレクションは、クリーンなカットが印象的。そこにレザーのステッチやタブ、 “クルー ド セル”のボタンなどシルバーの金具を加えたスタイルが中心になっています。新鮮だったのは、背中から腰までが露わになったニットのボディースーツやブランケットから着想を得たというロールした襟。ベージュやダークブラウン、白黒をベースにしたワントーンスタイルに淡いブルー、赤、オレンジのアクセントが効いていて、爽やかでした。足元のクロッグスタイルのシューズも上品かつリラックス感があり◎。
 

20:00 セーヌ川に浮かぶ船から見る「アミ」のショー。ところが……。

 実はウィメンズ・ファッッション・ウイークは初参加となる「アミ アレクサンドル マテュッシ」は、セーヌ川沿いの遊歩道を会場に男女合同ショーを開催しました。観客は船に乗り込み、リバークルーズとカクテルを楽しみながらショーを見るという素敵な演出だったのですが、いかんせん船と岸の距離が遠過ぎて、モデルはミニチュア状態!色やシルエットが辛うじて分かるくらいで、リアルなショーとしては残念な結果に……。船内にもライブ配信の映像が流れているスクリーンはあり、そっちの方が断然分かりやすかったのですが、現地に来ているのにスクリーンを眺めるのも違うなぁと思い、純粋にクルーズを楽しませていただきました(笑)。もちろんホテルに帰った後、デジタルで配信されたショー映像はチェックしましたよ!コレクションはベーシックなワードローブを軸に、同系色やツートーンでまとめたスタイルが基本。ハーフジップのニットやクロップドのベストが可愛かったです。

 船を降りた後、アレクサンドルに話を聞くために待っていたら、若いセレブやインフルエンサーが続々と下りてきました。「アミ」はショーのルック自体も結構ウエアラブルですが、モデル体型ではないセレブやインフルエンサーが着るリアルなスタイルは、エフォートレスだけど品があって好印象です。そして、個人的にうれしかったのは、人気急上昇中のイタリア人シンガー・ソングライターのマムード(Mahmood)を生で見られたこと。すでに「バーバリー(BURBERRY)」の広告キャンペーンなどにも起用されている彼ですが、次のファッションアイコンとして、これからさらに注目を集めること間違いなしです。
 

10月4日(日)

13:00 「ジバンシィ」のショールームでマシューと対面!

 今回のパリコレで個人的に最も楽しみにしていたのは、マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)による新たな「ジバンシィ」のお披露目。今回はランウエイショーではなくオンラインでルックを公開するという控えめな幕開けとなりました。が、なんとも嬉しいことにマシューから改装したばかりのショールームで直接コレクションのプレビューをしてもらえることに。ご本人はとても穏やかでフランクな方でした。説明を聞きながら感じたのは、ハードウエア、ディテール、テクスチャーへの並々ならぬこだわり。コレクションの詳細は別途リポートしていますので、こちらの記事をご覧ください!

 そして、翌日の展示会でバッグ、シューズ、アクセサリーの写真をたっぷり撮ってきました。バッグは“アンティゴナ”のアレンジが豊富で、個人的にはチェーン付きのミニバッグとボディーバッグが気になりました。ゴツいチェーンや南京錠がついたバッグは現状結構重かったのですが、商品化までに改良されることに期待です。
 

14:00 「ロンシャン」でパリジェンヌ気分に浸る

 「ロンシャン(LONGCHAMP)」はサントノレ通り近くの広場にあるオシャレ高級食材店「メゾン プリッソン(MAISON PLISSON)」でプレゼンテーションを開催しました。今シーズンのインスピレーションは現代のパリジェンヌ。黒やベージュにフランス国旗をイメージさせるトリコロールカラーを加えた若々しく活動的なスタイルがそろいます。会場ですぐ目に入ったのは、アイコンバッグ“ル・プリアージュ”のボディーがネットのようになったデザイン。なんでも食料品や日用品のショッピングに使うネットバッグで知られるフランスのメーカー「フィルト(FILT)」とのコラボレーションで制作したものだそう。中にスカーフや風呂敷く、巾着などを入れてアレンジを楽しめますし、ネットバッグは来春夏のトレンドとしても注目アイテムです。

 レザーバッグの新作はフワフワした触感の“ブリオッシュ”。その名の通り、菓子パンのブリオッシュから着想を得たクロスボディバッグです。お土産を「フィルト」とのコラボバッグにパリジェンヌが買い物をするかのようにいろいろ詰めてくれたのですが、その中には本物のブリオッシュも!もちろん翌日の朝食に美味しくいただきました。こういう時にキッチン付きのホテルだといいですよね。
 

15:00 ブランド流のリアルを考えた「パコ ラバンヌ」

 「パコ ラバンヌ(PACO RABANNUE)」は今回、若手デザイナーのショーが行われることの多いマレ地区の小さなイベントスペースでショーを行いました。先シーズンのショー会場となったコンシェルジュリーにある高い天井と太い柱が特徴的なゴシック建築の空間とは随分と違う印象です。しかもソーシャル・ディスタンシングのルールを守るため、座席は全部で70人ほどしかなく、さすがに少なすぎるだろ〜と思ったら、計3回ショーをやるとのこと。今シーズン、デザイナーと話していてよく聞いた言葉といえば「intimate」なのですが、その意味通り“親密な”雰囲気なショーでした。

 今季のコレクションは、「パコ ラバンヌ」流のリアル。胸を強調したランジェリーのようなトップスやドレス、アイコンのメタルメッシュを使ったウエアといったクセの強いアイテムに、蚤の市で見つけたようなファーライニングのコートやテーラードジャケット、ウオッシュドジーンズなどをミックスしました。その背景にあるジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)の考えは、“パリのストリート”。マレに住むジュリアンはロックダウン中、近所の通りで個性豊かな女性たちが行き交う姿を眺めることが恋しくなり、彼女たちの自由な着こなしに着目したそう。近くで見るとかなり手の凝ったアイテムも多く、万人受けはしないけれど、エッジの効いたものが好きな層にはがっちりハマる服だと感じます。


 

17:00 半年前にお会いした賢三さんの訃報

 この日は早めに終わったので、アジアスーパーで買い出しをしてホテルに。ちょっと休憩しようと思っていたら、高田賢三さんの訃報が飛び込んできました。正直「ケンゾー」を手掛けられていた頃のことは写真でしか見たことないのですが、4年前にはそごう・西武との協業でコレクションを作られた際にはパリのアトリエでインタビューをしましたし、先シーズンの「ケンゾー」のショーでお会いした時も元気そうだったので、衝撃でした。パリ、そして海外で活躍する日本人デザイナーの先駆けであった賢三さんは、数え切れないほどの勇気や希望を与えてきた存在であり、その功績は計り知れません。ご冥福をお祈りします。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「オルビス」のオンライン接客を体験してみた! ちょっと意地悪?な質問にも笑顔で回答

 「オルビス」が行なっているオンラインカウンセリングを体験してみた。最大30分間のオンライン接客は、1対1の空間で最初は緊張したものの、時間が過ぎるにつれ誰にも邪魔されないことからもリラックスしていろいろ気になることを質問できた。ちょっと意地悪?とも取れる質問にも笑顔で答えてくれ、30分はあっという間に終わった。今回は30代のオンラインカウンセリング専任の敏腕BAさんが対応してくれた。

オルビスビューティアドバイザー(以下、BA):この時間はお客さまのお肌のお悩みというだけではなく、今気になっていることとか、普段疑問に思っていることを解消できるお時間になればと思っております。何かございましたらお聞かせいただけますでしょうか?

福崎明子「WWDJAPAN.com」デジタルデスク(以下、福崎):肌で気になっているのは、ちょっと乾燥しがちで、毛穴が気になったり、たるみも……。全体的に年齢に伴うものが気になっています。

BA:お見受けする限り、フェイスラインがシュッとされているので、そういったお悩みがあるようには全く思わなかったですよ。

福崎:そうですか?とはいえ何にもしてなくて。基礎というか、洗顔して、導入美容液、化粧水、美容液、乳液、そして下地でしょうか。普通ですよね?

BA:いや、普通だとは思うんですが、手順と工程がしっかりされていますよね。バッチリです。シンプルなお手入れが毎日できているというのが一番大事だと思います。

福崎:と言いながら、やらないときもあるんですけどね。疲れて化粧落とさず寝てしまったり、オールインワンですませたりとか(笑)。

BA:そうなんですね。実際にご愛用されている基礎化粧品は、お悩みに対してアプローチができる美容成分でしたり、お手入れ効果があるようなスキンケアをご利用ですか?

福崎:そう言われたら、お悩みに対して使うというより、その時々で新しい製品を使っていますね。

BA:一つのモノを長く使うというのは難しかったりするのですか?

福崎:あ、それで聞きたいことがあったんです。長く使うと肌が慣れてしまうからたまに変えた方がいいという話もあると思うんですけど、実際はどうなんだろう?と思って。でも多くのブランドさんが出している調査結果などでは、長く使い続けている人の肌は美しいですよね。

BA:そうですねえ。ブランドさんによって違ったりするとは思いますが、「オルビス」では、お悩みに合わせてのシリーズ展開になっているので、できればそのときのお肌状態や目指したいお肌に向けて同じものを継続してご使用いただくのがベストだと思います。

福崎:時々で悩みが変わったりとか、こういう肌になりたいも気分で変わったりするじゃないですか?そういうときはどうなんですか?

BA:毎日のスキンケアって目的に合わせて使うのが肌にとってはベストだとは思うんです。でも毎日のお手入れなので、気持ちが大事です。お好みのテクスチャーでしたり、違う美容成分をご使用いただくというのも可能で、それによって今までのお手入れがなしになるわけでもないですし、半減するわけでも全くございません。

福崎:でもやっぱり継続の方がいいですか?

BA:継続の方が、本来の目的に沿っての結果は出ると思います。お肌が慣れてしまって、そのタイミングで変えた方がいいのではないか、というのも一理あると思うんですけども、毎日肌と向き合って慣れ親しんだものを使っていく中で、お肌の変化を感じるとか、お悩みが増えていないという段階ですでに結果が出始めていると思っていいと思います。

福崎:なるほど。分かりました。

BA:お悩みに対してなんですが、スキンケアを足したり、変えたりすると思うのですが。お悩みに対して、根本からしっかりと潤いを生み出しやすくしてあげたり、内側からふっくらと湧き上がらせてあげることが大事です。そうできるシンプルな基礎化粧があるので少しご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?

福崎:はい。お願いします。

BA:ステップはもっとシンプルになります。この「オルビス ユードット」ですが、洗顔料と化粧水と、あとは「オルビス」で初めてのバームクリームがあります。朝晩、このスリーステップのお手入れになります。

ただ必要なものを与えてあげるのではなくて、お客さまの元々持っている本来の肌の力を高めます。肌には本来、潤いを生み出す力があり栄養を入れてあげることで環境を整えてあげます。こうすることで、気になる乾燥や、毛穴周りも改善に導きます。お悩みも軽減できて艶感が出てくる。全体的にクッと上向きの印象になります。特に大事なのが洗顔で、マイルドピーリング効果があり、1回洗顔で本来の明るさが戻ってくることが期待でき、洗顔の時間が楽しくなってきます。このバームリームですが手に出してお見せしてもいいですか?

福崎:もちろんです。

BA:「オルビス」は今まで全てオイルカットのスキンケアで、化粧水の後は保湿液といったジェル状だったのですが、初めてこっくりしたバームを用意していて、伸ばしていくと肌にじわっとなじんでいく。朝使ってもお肌にピタッと密着するのでファンデーションも寄れないですし、メイクも崩れにくいです。

福崎:それはその上からファンデーションを塗ってもいいんですか?

BA:もちろん大丈夫ですし、よりもちをよくしたいのであれば、こちらはUVカット効果は入っていないので、日焼け止めが入った下地などをご使用いただくのがベストだと思います。つけるときにこのバームでフェイスラインから頬にかけて、くっと持ち上げるようにつけていただくとハリをすぐに感じられると思います。仕様は朝晩なんですが、先ほどおっしゃっていた、夜疲れて帰ると丹念にお手入れできないと思うんです。このスキンケアは機能面だけではなくて、洗顔料のもちもちの泡と、化粧水、バームクリーム、それぞれテクスチャーが気持ちを満たされるような心地よさがあるんです。このスキンケアをするために、早くメイクを落として、スキンケアタイムをしたい。やらなきゃいけないというよりも、スキンケアしたくなるテクスチャーにこだわっているので、楽しくご自分の肌に向き合える時間が作れるかなあと思います。

福崎:今、現代社会ではストレスが増えていますよね。

BA:そうですね。加えて今は外出するときにマスクをしますよね。その中で、みなさまのお悩みの中で増えているのは、マスクで顔の多くが隠れていて表情を作らなくなり、全体的に前よりイキイキした表情がなくなったような気がする。ということなんです。

福崎:それもちょっと聞きたいんですけど、マスクをするようになってお手入れも手抜きだし表情を作らないので、たるみが気になるとお友達からも聞くんです。でも一方で、ほうれい線は表情が豊かだからできやすいような気がしていて、あんまり表情を作らないのは逆に効果的なのかなと思ったりしたんですが。

BA:ほうれい線というピンポイントで考えていくと、場合によっては気にならなくなるという可能性もありますが。根本的に考えると、表情を作らなくなると表情筋が衰えていく可能性があります。フェイスラインがくっきりしないとか、口角が下がってきた、とか全体的なボリュームの低下を感じて、お悩みは深くなってくると思います。

福崎:なるほど。ほかにも食生活とかも肌には影響があるんですよね?

BA:そうですね。ターンオーバーを正常にすることでお悩みの改善はしやすくなりますよね。食べ物ではビタミンB群は必須です。緑葉色野菜、卵、豚肉もいいと思います。あとはタンパク質ですね。タンパク質が不足すると、疲労回復ができにくく、免疫が低下する可能性もあります。

福崎:がんばって取りたいと思います。あ、肌の悩みに戻りますが、首のシワが気になっているんです。シワ改善美容液とかありますが、ほか何かした方がいいことなどありますか?

BA:アイテムとしては、「オルビス」としては“リンクルホワイトエッセンス”というのがあるんですけど。製品を使う時は、首までも顔だと思っていただいてデコルテ、肩までお手入れをしていくことが大事です。

福崎:なるほど、首までが顔ですね。分かりました!いろいろと教えていただきありがとうございました。がんばります!

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繊維商社の豊島によるEMSスーツの出来栄えは? 2年前からの進化にビックリ

 編集部員さえ驚く(!?)ファッション・ヴィクティムで、ここ数年は、これまた呆(あき)れられるくらい(!!)ジムホリック(ジム中毒)な「WWDJAPAN.com」編集長ムラカミが、オシャレに変貌するエクササイズ業界に潜入!カラダを張って最新エクササイズを体験レポートし、長年の経験からオシャレ度をジャッジします。

 新型コロナウイルスにより、ジムやエクササイズ業界も様変わりしましたね。私は、感染予防のためにスタジオレッスンを削減したフィットネスクラブの1つを退会し、現在通っているジムは2つ(笑)。代わりに通勤を自転車に切り替えました。約1時間を費やして片道16kmをチャリで通うと、何を食べても太らないですね〜。オススメです!!ということでこの日も、EMSスーツを着用してのパーソナルトレーニングを体験すべく、東京・新橋の「Atem personal GYM」に横浜から自転車で馳せ参じました。

 EMSスーツを着用してのパーソナルトレーニングは、今回が2回目です。前回は、あの「シックスパッド」の新業態に潜入。地味な運動も、電気刺激が流れるとめちゃくちゃキツかったのを覚えています。なのに「なぜ、再挑戦するのか?」と聞かれれば、今回はEMSスーツの開発に繊維商社の豊島が関わっているから。「豊島によるEMSスーツは何かが違って、エクササイズも快適になって、効果実感も高まっているのでは?」と思い、体感してみたくなったのです。

2年前との違いにビックリ!! EMSスーツが日常着に近づいた

評価★★★★★

 というワケで早速説明を伺いながら、EMSスーツに腕を通してみましょう。予防医療を開発、提供する企業のZenomaと共同開発したEMSスーツは、2年前に着用したEMSスーツとは全然違います。振り返れば2年前のEMSスーツは、ダイビングの時に着用するウエットスーツのような厚みと質感。その上に着用する電気刺激を発する機器は、プロテクターのようでした。一方、今回のスーツの着用感はコンプレッションウエアと大差なく、しかも合わせて24の電気刺激を発するパッドは、すでに内臓されています。小さなバッテリーをお尻の脇に取り付けるだけ。2年前のEMSスーツと比べると、なんて軽くて、動きやすいんでしょう!豊島の担当者は、「体にフィットしつつ、伸縮性に優れた素材」を選んだと言います。

 「動きやすさ」は、本当に重要です。フィットした素材をまとうと、いろんな部位が動かしやすい。ゆえに従来は使いづらかった筋肉も動かせるようになるそうです。もちろん、着脱も簡単。このEMSスーツは、たった1人で簡単に脱ぎ着できます。さらにEMSスーツは薄手ゆえ家庭用の洗濯機で丸洗いOK!!衛生面もバッチリです。これだと筋トレはもちろん、ヨガやピラティスにも使えそうだし、屋内のみならず屋外でも使えそうですね。EMSトレーニングの可能性が広がります。

運動は2年前同様にキツい!!周りは共感してくれないので、なおさら(笑)

評価★★★★

 肝心のエクササイズは、2年前のEMSトレーニング同様にハードでした(笑)。2年前と同じカメラマンに撮影してもらいましたが、彼曰く、「EMSトレーニングは、何が大変なのか全然わからない」そうです(笑)。そうなんです。EMSトレーニングって、電気刺激を流すからベーシックな運動でも大変なのですが、当然、その刺激はスーツを着ている本人にしかわかりません。ので今回も、僕一人が「うわぁ」とか「くぅ」と悶絶。現場の皆さんは「何が大変なのか?」よくわからないまま、20分のトレーニングはあっという間に終了です。いやぁ、EMSスーツが薄手で、体が動かしやすいと言っても、トレーニングは変わらず過酷。毎日40kmの自転車通勤で下半身には自信があったのですが、翌日お尻は筋肉痛になりました。

 EMSパーソナルトレーニングは、20分で3300円。シャワーを浴びても、チェックインからチェックアウトまで1時間で終わりそうです。忙しい人にはピッタリですね。業界の皆様、EMSスーツを着用して、繊維商社の実力を体感してみるのはいかがでしょうか?

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環境にいいデザインとは何か 循環型デザインを推進するティンバーランドに聞く(後編)

 サステナビリティ先進企業のティンバーランド(TIMBERLAND)は、2030年までに全ての製品作りにおいて自然から消費したもの以上に自然に還元する“ネット・ポジティブ”な製品作りを目指す。そのために鍵となるのが“循環型”のデザインだ。具体的にどのように推進していくのか。同社で環境に配慮した素材調達や製品作りの改革に取り組むザック・アンジェリーニ(Zack Angelini)環境スチュワードシップ マネジャーに聞く。

WWD:2030年までに全ての商品で“ネット・ポジティブ”になるという目標はとても意欲的だ。すでに取り組んでいる循環型デザインについて教えてほしい。

ザック・アンジェリーニ環境スチュワードシップ マネジャー(以下、アンジェリーニ):当社は長きにわたって再生材料を使ってきた歴史があり、循環型デザインに関するビジョンもそれに基づいている。今日に至るまで、「ティンバーランド」は3億8000万本相当のペットボトルをリサイクルし、アパレルやフットウエアとして生まれ変わらせた。今秋には初めてリサイクルレザーのブーツを発売するほか、再生コットンや再生ウールの使用もさらに拡大していく。完全な循環性を目指して、再生材料の使用を引き続き増やしていく予定だ。将来的には、当社の商品について完全な循環性を実現したいと考えており、そのために革新的な実験をしたり試作品作りを行ったりしている。

WWD:再生素材を用いることが循環型のデザインの一歩とすると、その先にあるのは?完全な循環性とは?

アンジェリーニ:再生材料を使うだけではなく、それらの循環性が維持されるように、商品にうまく組み込まれるようにデザインすることが重要だ。つまり再生材料+リサイクル可能=循環性、ということだ。そのためには、商品が長く愛用されてその役割を終えた後、分解できるように作られていなければならない。これは“分解可能なデザイン(Design for Disassembly以下、DFD)”と呼ばれている。

WWD:機能性を求められるアウトドア商品では難易度が高そうだ。

アンジェリーニ:荒天に耐えられるフットウエアという複雑な構造をした物を、強度や耐用性、機能性を維持しつつ、分解可能であるように作るのは難しい面もあったが実現できている。10年には「ティンバーランド」初となるDFDブーツ、“アースキーパーズ 2.0(Earthkeepers 2.0)”を発表した。当時は時代にやや先んじていた商品だったが、次世代の循環型商品を開発するに当たり、このブーツからは多くのことを学んでいる。

WWD:循環性を実現するときのデザインのポイントは?

アンジェリーニ:商品として長く使われた後にその材料を再びリサイクルできるように、容易に分解できるシンプルな素材を使うこと。そうすれば、ライフサイクルを終えた商品を分解し、それぞれリサイクルして再利用するべくサプライヤーに送り返すことができる。

今秋、「ティンバーランド」は初めてリサイクルレザーを使用した商品を発売するが、これは当ブランドと業界の両方にとって記念すべきマイルストーンだ。一般に、天然素材よりも合成素材のほうがリサイクルしやすい。しかし主に天然素材(レザー、コットン、天然ゴムなど)を使用するブランドとして、それらを大規模かつ効率的にリサイクルできるようにするのは非常に重要なことだった。

WWD:天然素材のリサイクルは耐久性が落ちるなどの問題点も多いと聞く。

アンジェリーニ:当社が手掛けたこの新たなリサイクルレザーは、当社が定める機能性や耐用性の高い基準を満たす、初めてのリサイクルレザー素材だ。「ティンバーランド」は多くの皮革製品を販売しているので、将来に向けて循環性のある商品をデザインするに当たってレザーがリサイクル可能であることは不可欠であり、この革新的な新リサイクルレザーのおかげでそれが可能となった。

「ティンバーランド」のアパレルで最も多く使用している素材はコットンなので、コットンをリサイクルする技術もさらに向上させたい。来春には、レンチング・グループ(LENZING GROUP)が提案する“リフィブラ(Refibra)”という持続可能なように管理された森林から供給された木材パルプと再生コットンを混ぜ合わせた素材を使用した、初めての商品を発表する。

また混紡素材(コットンとポリエステルの混紡など)はリサイクルが難しいのだが、それを可能にする開発初期段階の技術についても調査を進めている。

WWD:アウトドアのための機能素材は石油由来の合成繊維が多く、撥水などの加工も化学物質の使用は避けられない。環境負荷は高いといえるのではないか。ネット・ポジティブのために、現在開発している素材や加工は?

アンジェリーニ:「ティンバーランド」の全商品カテゴリーにおいて、最も多く使用されているのは天然素材(レザー、コットン、天然ゴムなど)だ。これらを環境再生型農業を通じて調達することで、環境にポジティブな影響を与えたいと考えている。

環境再生型農業には、輪換放牧、被覆栽培、間作、不耕起栽培などが含まれる。こうした手法は、CO2を大気中(CO2がないほうがよい場所)から吸収し、土壌(CO2があるべき場所)に蓄積するように設計されている。CO2が増加した土壌はより健康的なものとなるので、生物の多様性や水の循環性が向上し、結果として作物の収穫量も増加する。

「ティンバーランド」でも多少の合成素材を使っているが、できる限りリサイクルされたものを使用することで、石油への依存度を下げている。今日にいたるまで、「ティンバーランド」は3億8000万本相当のペットボトルをリサイクルしており、石油ベースのバージンプラスチック(再生されたものではない未使用のプラスチック)の代替として使っている。

耐久性のある撥水剤(Durable water repellants以下、DWR)について、当社は数年前からポリフッ素化合物(PFC)ベースのものを段階的に廃止している。19年には、アパレル製品の99%およびアクセサリー製品の100%がPFCベースではないDWRの使用に切り替わった。フットウエアも、17年(当社にある最新の資料)の段階ですでに91%が最終仕上げにPFSベースのDWRを使用していない。

まだPFCベースのDWRを使用している製品もあるが、それは特定の機能性(ワークウエア素材における撥油性など)が必要なもので、現在のところPFCベースの薬品でしかその効果を得られないからだ。同様の効果があり、そうした製品の機能性を損なわないPFCベースではない薬品を見つけるため、化学薬品のサプライヤーと提携して積極的に調査を行っている。

WWD:ネット・ポジティブを実現に向けて注目している素材やテクノロジーは?

アンジェリーニ:当社では循環性に関するイノベーションを通じて環境に対するマイナスの影響を削減し、最終的には影響ゼロ・廃棄物ゼロを目指している。この目標を達成することをサポートしてくれる素材や技術には、再生された天然素材(レザー、コットン、天然ゴム)、再生された合成素材(ポリエステルやナイロン)、混紡素材(コットンとポリエステルの混紡など)のリサイクルを可能にする画期的な技術、「ティンバーランド」の製品として役割を終えた後に素材としてリサイクルできるように分解が容易なデザインなどがある。

また、天然素材を環境再生型農業を通じて調達することも、ゼロ影響のさらに先、つまり環境に対してプラスの効果を生む“ネット・ポジティブ”につながるのではないか。

現在、地球環境は非常に悪化しているので、今日のまま維持するのではなく、改善する必要がある。当社は、環境再生型農業や循環性にはマイナスの影響を削減するだけでなく、実際に自然を癒やして回復させていく大きな機会があると確信している。自然とファッションが手を取り合い、ともに前進している感じだ。

WWD:生分解性素材が改めて注目を集めているが、素材の未来を見据えたときに、どうなっていくと思うか?

アンジェリーニ:現在、生分解性に関する技術については、研究不足だったり、その効果を測定する試験やその手順の基準が設けられていなかったりという問題がある。基本的に、当社としては廃棄すること(生分解性があるものを含む)より、製品や素材をできる限り長く使用することを優先すべきだと考えている。全ての製品や素材にはエネルギーがあるが、再利用やリサイクルされないとそれが失われてしまうからだ。

生分解性については今後も技術の進化を注視して、再利用、修理、リサイクルが可能ではない部分にのみ採用することを検討したい。もちろん、生分解性のない素材が埋め立て地に送られるよりはいいが、リサイクルすることでそもそも埋め立て地やごみ処理場に送られるものを減らすことが最良の選択肢だと思う。

WWD:環境再生型農業の推進を掲げているが、実現のために足かせになっていることは?

アンジェリーニ:当社が最も多く使用する天然素材のサプライチェーン内で、新たな環境再生型農業のサプライチェーンを実験的に行っている。小規模なものではあるが、いろいろと試して学ぶ機会にするという戦略だ。こうすることで、どうやってスケール化するかのカギを見つけ、将来的には主要な商品ラインに組み込んでいくことができる。

現在のところ、環境再生型農業によるサプライチェーンは、レザーについてはアメリカとオーストラリアで、天然ゴムはタイで、コットンはインドとハイチで、そしてサトウキビはブラジルで行っている。

新しく革新的なものが全てそうであるように、この新たなサプライチェーンにも多くの課題がある。そもそも、こうした環境再生型農業によるサプライチェーンはこれまでファッション業界にはなかったものなので、一から構築していかなければならない。例えば、アメリカでの環境再生型農業によるレザーについては、パートナー企業と共にこの手法をいち早く導入した牧場を探し集め、当社と提携している大規模なタナリーに紹介している。再生可能な農業を行っているサプライヤーの多くは小規模なので、彼らをまとめる方法を見つけ、スケール化することで効率性を高めることがカギとなる。

WWD:ネット・ポジティブを目指すと、さらなる投資が必要になるのではないか。商品の価格は高くなる可能性はあるか?

アンジェリーニ:新しく革新的なものや技術に伴うコストについては、当社が負担することが多い。そうした新たな素材や技術で作られた商品は製造コストがかかるので利益率に影響するが、環境保護を意識した商品の需要が高まるにつれて、より多くの商品にそうした素材や技術を使うなどスケール化できるようになり、コストは下がっていく。再生PETがそうだったように、いずれは従来の素材と同レベルのコストとなったり、再生ゴムのように従来よりもコストが低くなったりする。
環境再生型農業によって、農家はより利益を上げられるようになって逆境に強くなるが、それだけでなく素材の価格を下げられるようになる可能性がある。当初はコストがかかるかもしれないけれども、イノベーションのため、そして目標を達成するため、「ティンバーランド」はリーダーとしての役割を喜んで引き受ける。当社は、何かを始めるときにかかるコストを埋没費用(回収できないコスト)ではなく、未来への投資だと考えているからだ。

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環境にいいデザインとは何か 循環型デザインを推進するティンバーランドに聞く(後編)

 サステナビリティ先進企業のティンバーランド(TIMBERLAND)は、2030年までに全ての製品作りにおいて自然から消費したもの以上に自然に還元する“ネット・ポジティブ”な製品作りを目指す。そのために鍵となるのが“循環型”のデザインだ。具体的にどのように推進していくのか。同社で環境に配慮した素材調達や製品作りの改革に取り組むザック・アンジェリーニ(Zack Angelini)環境スチュワードシップ マネジャーに聞く。

WWD:2030年までに全ての商品で“ネット・ポジティブ”になるという目標はとても意欲的だ。すでに取り組んでいる循環型デザインについて教えてほしい。

ザック・アンジェリーニ環境スチュワードシップ マネジャー(以下、アンジェリーニ):当社は長きにわたって再生材料を使ってきた歴史があり、循環型デザインに関するビジョンもそれに基づいている。今日に至るまで、「ティンバーランド」は3億8000万本相当のペットボトルをリサイクルし、アパレルやフットウエアとして生まれ変わらせた。今秋には初めてリサイクルレザーのブーツを発売するほか、再生コットンや再生ウールの使用もさらに拡大していく。完全な循環性を目指して、再生材料の使用を引き続き増やしていく予定だ。将来的には、当社の商品について完全な循環性を実現したいと考えており、そのために革新的な実験をしたり試作品作りを行ったりしている。

WWD:再生素材を用いることが循環型のデザインの一歩とすると、その先にあるのは?完全な循環性とは?

アンジェリーニ:再生材料を使うだけではなく、それらの循環性が維持されるように、商品にうまく組み込まれるようにデザインすることが重要だ。つまり再生材料+リサイクル可能=循環性、ということだ。そのためには、商品が長く愛用されてその役割を終えた後、分解できるように作られていなければならない。これは“分解可能なデザイン(Design for Disassembly以下、DFD)”と呼ばれている。

WWD:機能性を求められるアウトドア商品では難易度が高そうだ。

アンジェリーニ:荒天に耐えられるフットウエアという複雑な構造をした物を、強度や耐用性、機能性を維持しつつ、分解可能であるように作るのは難しい面もあったが実現できている。10年には「ティンバーランド」初となるDFDブーツ、“アースキーパーズ 2.0(Earthkeepers 2.0)”を発表した。当時は時代にやや先んじていた商品だったが、次世代の循環型商品を開発するに当たり、このブーツからは多くのことを学んでいる。

WWD:循環性を実現するときのデザインのポイントは?

アンジェリーニ:商品として長く使われた後にその材料を再びリサイクルできるように、容易に分解できるシンプルな素材を使うこと。そうすれば、ライフサイクルを終えた商品を分解し、それぞれリサイクルして再利用するべくサプライヤーに送り返すことができる。

今秋、「ティンバーランド」は初めてリサイクルレザーを使用した商品を発売するが、これは当ブランドと業界の両方にとって記念すべきマイルストーンだ。一般に、天然素材よりも合成素材のほうがリサイクルしやすい。しかし主に天然素材(レザー、コットン、天然ゴムなど)を使用するブランドとして、それらを大規模かつ効率的にリサイクルできるようにするのは非常に重要なことだった。

WWD:天然素材のリサイクルは耐久性が落ちるなどの問題点も多いと聞く。

アンジェリーニ:当社が手掛けたこの新たなリサイクルレザーは、当社が定める機能性や耐用性の高い基準を満たす、初めてのリサイクルレザー素材だ。「ティンバーランド」は多くの皮革製品を販売しているので、将来に向けて循環性のある商品をデザインするに当たってレザーがリサイクル可能であることは不可欠であり、この革新的な新リサイクルレザーのおかげでそれが可能となった。

「ティンバーランド」のアパレルで最も多く使用している素材はコットンなので、コットンをリサイクルする技術もさらに向上させたい。来春には、レンチング・グループ(LENZING GROUP)が提案する“リフィブラ(Refibra)”という持続可能なように管理された森林から供給された木材パルプと再生コットンを混ぜ合わせた素材を使用した、初めての商品を発表する。

また混紡素材(コットンとポリエステルの混紡など)はリサイクルが難しいのだが、それを可能にする開発初期段階の技術についても調査を進めている。

WWD:アウトドアのための機能素材は石油由来の合成繊維が多く、撥水などの加工も化学物質の使用は避けられない。環境負荷は高いといえるのではないか。ネット・ポジティブのために、現在開発している素材や加工は?

アンジェリーニ:「ティンバーランド」の全商品カテゴリーにおいて、最も多く使用されているのは天然素材(レザー、コットン、天然ゴムなど)だ。これらを環境再生型農業を通じて調達することで、環境にポジティブな影響を与えたいと考えている。

環境再生型農業には、輪換放牧、被覆栽培、間作、不耕起栽培などが含まれる。こうした手法は、CO2を大気中(CO2がないほうがよい場所)から吸収し、土壌(CO2があるべき場所)に蓄積するように設計されている。CO2が増加した土壌はより健康的なものとなるので、生物の多様性や水の循環性が向上し、結果として作物の収穫量も増加する。

「ティンバーランド」でも多少の合成素材を使っているが、できる限りリサイクルされたものを使用することで、石油への依存度を下げている。今日にいたるまで、「ティンバーランド」は3億8000万本相当のペットボトルをリサイクルしており、石油ベースのバージンプラスチック(再生されたものではない未使用のプラスチック)の代替として使っている。

耐久性のある撥水剤(Durable water repellants以下、DWR)について、当社は数年前からポリフッ素化合物(PFC)ベースのものを段階的に廃止している。19年には、アパレル製品の99%およびアクセサリー製品の100%がPFCベースではないDWRの使用に切り替わった。フットウエアも、17年(当社にある最新の資料)の段階ですでに91%が最終仕上げにPFSベースのDWRを使用していない。

まだPFCベースのDWRを使用している製品もあるが、それは特定の機能性(ワークウエア素材における撥油性など)が必要なもので、現在のところPFCベースの薬品でしかその効果を得られないからだ。同様の効果があり、そうした製品の機能性を損なわないPFCベースではない薬品を見つけるため、化学薬品のサプライヤーと提携して積極的に調査を行っている。

WWD:ネット・ポジティブを実現に向けて注目している素材やテクノロジーは?

アンジェリーニ:当社では循環性に関するイノベーションを通じて環境に対するマイナスの影響を削減し、最終的には影響ゼロ・廃棄物ゼロを目指している。この目標を達成することをサポートしてくれる素材や技術には、再生された天然素材(レザー、コットン、天然ゴム)、再生された合成素材(ポリエステルやナイロン)、混紡素材(コットンとポリエステルの混紡など)のリサイクルを可能にする画期的な技術、「ティンバーランド」の製品として役割を終えた後に素材としてリサイクルできるように分解が容易なデザインなどがある。

また、天然素材を環境再生型農業を通じて調達することも、ゼロ影響のさらに先、つまり環境に対してプラスの効果を生む“ネット・ポジティブ”につながるのではないか。

現在、地球環境は非常に悪化しているので、今日のまま維持するのではなく、改善する必要がある。当社は、環境再生型農業や循環性にはマイナスの影響を削減するだけでなく、実際に自然を癒やして回復させていく大きな機会があると確信している。自然とファッションが手を取り合い、ともに前進している感じだ。

WWD:生分解性素材が改めて注目を集めているが、素材の未来を見据えたときに、どうなっていくと思うか?

アンジェリーニ:現在、生分解性に関する技術については、研究不足だったり、その効果を測定する試験やその手順の基準が設けられていなかったりという問題がある。基本的に、当社としては廃棄すること(生分解性があるものを含む)より、製品や素材をできる限り長く使用することを優先すべきだと考えている。全ての製品や素材にはエネルギーがあるが、再利用やリサイクルされないとそれが失われてしまうからだ。

生分解性については今後も技術の進化を注視して、再利用、修理、リサイクルが可能ではない部分にのみ採用することを検討したい。もちろん、生分解性のない素材が埋め立て地に送られるよりはいいが、リサイクルすることでそもそも埋め立て地やごみ処理場に送られるものを減らすことが最良の選択肢だと思う。

WWD:環境再生型農業の推進を掲げているが、実現のために足かせになっていることは?

アンジェリーニ:当社が最も多く使用する天然素材のサプライチェーン内で、新たな環境再生型農業のサプライチェーンを実験的に行っている。小規模なものではあるが、いろいろと試して学ぶ機会にするという戦略だ。こうすることで、どうやってスケール化するかのカギを見つけ、将来的には主要な商品ラインに組み込んでいくことができる。

現在のところ、環境再生型農業によるサプライチェーンは、レザーについてはアメリカとオーストラリアで、天然ゴムはタイで、コットンはインドとハイチで、そしてサトウキビはブラジルで行っている。

新しく革新的なものが全てそうであるように、この新たなサプライチェーンにも多くの課題がある。そもそも、こうした環境再生型農業によるサプライチェーンはこれまでファッション業界にはなかったものなので、一から構築していかなければならない。例えば、アメリカでの環境再生型農業によるレザーについては、パートナー企業と共にこの手法をいち早く導入した牧場を探し集め、当社と提携している大規模なタナリーに紹介している。再生可能な農業を行っているサプライヤーの多くは小規模なので、彼らをまとめる方法を見つけ、スケール化することで効率性を高めることがカギとなる。

WWD:ネット・ポジティブを目指すと、さらなる投資が必要になるのではないか。商品の価格は高くなる可能性はあるか?

アンジェリーニ:新しく革新的なものや技術に伴うコストについては、当社が負担することが多い。そうした新たな素材や技術で作られた商品は製造コストがかかるので利益率に影響するが、環境保護を意識した商品の需要が高まるにつれて、より多くの商品にそうした素材や技術を使うなどスケール化できるようになり、コストは下がっていく。再生PETがそうだったように、いずれは従来の素材と同レベルのコストとなったり、再生ゴムのように従来よりもコストが低くなったりする。
環境再生型農業によって、農家はより利益を上げられるようになって逆境に強くなるが、それだけでなく素材の価格を下げられるようになる可能性がある。当初はコストがかかるかもしれないけれども、イノベーションのため、そして目標を達成するため、「ティンバーランド」はリーダーとしての役割を喜んで引き受ける。当社は、何かを始めるときにかかるコストを埋没費用(回収できないコスト)ではなく、未来への投資だと考えているからだ。

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インフルエンサー名鑑Vol.4 ストーリーズ作品が話題のせとりょうが制作のコツやデザインヒントなどの質問に回答

 インスタグラムを筆頭とするSNSの普及で、「憧れの人」「なりたい人」が細分化している。今は、誰もが、それぞれの「なりたい人」を持っている時代。ならば、そんな身の回りの人を改めて知るべきではないか?そこで「WWD JAPAN.com」は、インフルエンサーをはじめとするソーシャルリレーション マーケティング事業を手がけるリデルの協力を得て、身近な新世代インフルエンサー名鑑を作成する。

 今回は、インスタグラムのストーリーズ機能だけで驚くべき動画を作成してカフェやフード&ドリンクなどを紹介するストーリーズクリエイター、せとりょうこと瀬戸口諒。フォロワーからは、ストーリーズ投稿のきっかけやデザインのインスピレーション源など作品への興味・関心が高かった。本人のパーソナルな背景も含めた質問と回答を一挙に公開する(2020年10月12日号の「WWDジャパン」には、彼が現在に至るまでの経緯などを聞いたインタビュー記事を掲載します)。

制作の背景

Q.1:何故、ここまでのクオリティのストーリーズを作ろうと思ったのですか?

A.1:大学4年の進級前、ニュージーランドに1年間留学しました。当時はカフェ巡りが好きで、現地のカフェ情報をなんらかの形で発信しようと考えていた時、ストーリーズでもクリエイティブができることに気づきました。作品をツイッターで発信すると大きな反響があり、見てくれる方も増えたので、「もっと高度なクリエイティブを見せたい!」とクオリティがだんだん上がっていきました。

Q.2:ストーリーズを作る時のアイデアはどのように思いつくの?

A.2:雑誌の構図や電車の広告などを見る機会を増やして、デザインの引き出しを増やしている部分が大きいと思います。それをアウトプットする練習を続けていると、自然に構図がひらめく瞬間があります。

Q.3:デザインで参考にしている本や雑誌はありますか?

A.3:本はありませんが、雑誌のレイアウトはよく見ます。後は電車に乗っている時に広告を見ながら「なんでこういう構図なんだろう?」と考えています。それらがデザインの引き出しとして作品に反映される部分は大きいです。

Q.4:デザインする時のラフはどうしていますか?

A.4:ラフはありません。実際にストーリーズを触りながら構図を考えています。自分の納得する構図ができたら、そのまま投稿します。ストーリーズ画面を開いたままだと、たまに強制終了することがあるので、そのときはまた作り直しです(笑)。

Q.5:ストーリーズを生かすコツや、作るのにかかる時間が知りたいです。

A.5:生かすコツは「●(丸)」や「■(四角)」、「▲(三角)」といった記号を使用したり、GIFを活用したりすることです。例えばカフェの作品でいうと「●」の記号にテキスト入力で出てくるコーヒーの記号を重ねてコンテンツのタイトルを作っています。作るのにかかる時間は作品にもよりますが、構図を考える時間と作成する時間を合わせると30分〜1時間ほど。たまにそれ以上かかる時もあります。

Q.6:ストーリーズの編集は専用のペン等を使っていますか?それとも指でやっていますか?

A.6:専用のペンは持っておらず、全て指でやっています。ペン機能を使う時はなかなか思うように書けないので、消しては書いてを繰り返しています。使用している機種はiPhone7です。

Q.7:自信作はありますか?

A.7:自信作は富士山のストーリーズです。山の表面に影をつけることでより立体的に見せているのがポイントです。作品のハウツー動画も反響があり、リールス投稿で150万回再生されました!

Q.8:一番苦労した作品は?

A.8:苦労した作品はclaquepot(クラックポット)さんの「pointless」という曲のリリックビデオです。曲とストーリーズ動画の歌詞を合わせるのにかなり時間がかかりました(笑)。

過去・現在・未来について

Q.9:ストーリーズ作品を始める前は他の会社で働いていたんですか?

A.9:いえ、始める前は普通の大学生でした。工学部でデザインの学校などには行ってませんでした。

Q.10:デザインや色彩系の資格は持っていますか?

A.10:何も持っていません。全くの素人からデザインを始めました。

Q.11:好きな色はありますか?

A.11:モノトーンです!

Q.12:お仕事はなにをされていますか?

A.12:クリエイティブに携わる仕事をしています。

Q.13:当初からデザインやコンセプトは変化していますか?

A.13:作り始めた当初はテキストだけの作品でしたが、今ではペン機能やGIF機能を活用した作品など、シンプルなものから徐々に動きのあるクリエイティブに変化していると思います。

Q.14:将来の夢は何ですか?

A.14:将来の夢はまだありませんが、上記で紹介したリリックビデオのような新しいストーリーズの活用をもっと開拓して、発信したいと思っています。

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インフルエンサー名鑑Vol.4 ストーリーズ作品が話題のせとりょうが制作のコツやデザインヒントなどの質問に回答

 インスタグラムを筆頭とするSNSの普及で、「憧れの人」「なりたい人」が細分化している。今は、誰もが、それぞれの「なりたい人」を持っている時代。ならば、そんな身の回りの人を改めて知るべきではないか?そこで「WWD JAPAN.com」は、インフルエンサーをはじめとするソーシャルリレーション マーケティング事業を手がけるリデルの協力を得て、身近な新世代インフルエンサー名鑑を作成する。

 今回は、インスタグラムのストーリーズ機能だけで驚くべき動画を作成してカフェやフード&ドリンクなどを紹介するストーリーズクリエイター、せとりょうこと瀬戸口諒。フォロワーからは、ストーリーズ投稿のきっかけやデザインのインスピレーション源など作品への興味・関心が高かった。本人のパーソナルな背景も含めた質問と回答を一挙に公開する(2020年10月12日号の「WWDジャパン」には、彼が現在に至るまでの経緯などを聞いたインタビュー記事を掲載します)。

制作の背景

Q.1:何故、ここまでのクオリティのストーリーズを作ろうと思ったのですか?

A.1:大学4年の進級前、ニュージーランドに1年間留学しました。当時はカフェ巡りが好きで、現地のカフェ情報をなんらかの形で発信しようと考えていた時、ストーリーズでもクリエイティブができることに気づきました。作品をツイッターで発信すると大きな反響があり、見てくれる方も増えたので、「もっと高度なクリエイティブを見せたい!」とクオリティがだんだん上がっていきました。

Q.2:ストーリーズを作る時のアイデアはどのように思いつくの?

A.2:雑誌の構図や電車の広告などを見る機会を増やして、デザインの引き出しを増やしている部分が大きいと思います。それをアウトプットする練習を続けていると、自然に構図がひらめく瞬間があります。

Q.3:デザインで参考にしている本や雑誌はありますか?

A.3:本はありませんが、雑誌のレイアウトはよく見ます。後は電車に乗っている時に広告を見ながら「なんでこういう構図なんだろう?」と考えています。それらがデザインの引き出しとして作品に反映される部分は大きいです。

Q.4:デザインする時のラフはどうしていますか?

A.4:ラフはありません。実際にストーリーズを触りながら構図を考えています。自分の納得する構図ができたら、そのまま投稿します。ストーリーズ画面を開いたままだと、たまに強制終了することがあるので、そのときはまた作り直しです(笑)。

Q.5:ストーリーズを生かすコツや、作るのにかかる時間が知りたいです。

A.5:生かすコツは「●(丸)」や「■(四角)」、「▲(三角)」といった記号を使用したり、GIFを活用したりすることです。例えばカフェの作品でいうと「●」の記号にテキスト入力で出てくるコーヒーの記号を重ねてコンテンツのタイトルを作っています。作るのにかかる時間は作品にもよりますが、構図を考える時間と作成する時間を合わせると30分〜1時間ほど。たまにそれ以上かかる時もあります。

Q.6:ストーリーズの編集は専用のペン等を使っていますか?それとも指でやっていますか?

A.6:専用のペンは持っておらず、全て指でやっています。ペン機能を使う時はなかなか思うように書けないので、消しては書いてを繰り返しています。使用している機種はiPhone7です。

Q.7:自信作はありますか?

A.7:自信作は富士山のストーリーズです。山の表面に影をつけることでより立体的に見せているのがポイントです。作品のハウツー動画も反響があり、リールス投稿で150万回再生されました!

Q.8:一番苦労した作品は?

A.8:苦労した作品はclaquepot(クラックポット)さんの「pointless」という曲のリリックビデオです。曲とストーリーズ動画の歌詞を合わせるのにかなり時間がかかりました(笑)。

過去・現在・未来について

Q.9:ストーリーズ作品を始める前は他の会社で働いていたんですか?

A.9:いえ、始める前は普通の大学生でした。工学部でデザインの学校などには行ってませんでした。

Q.10:デザインや色彩系の資格は持っていますか?

A.10:何も持っていません。全くの素人からデザインを始めました。

Q.11:好きな色はありますか?

A.11:モノトーンです!

Q.12:お仕事はなにをされていますか?

A.12:クリエイティブに携わる仕事をしています。

Q.13:当初からデザインやコンセプトは変化していますか?

A.13:作り始めた当初はテキストだけの作品でしたが、今ではペン機能やGIF機能を活用した作品など、シンプルなものから徐々に動きのあるクリエイティブに変化していると思います。

Q.14:将来の夢は何ですか?

A.14:将来の夢はまだありませんが、上記で紹介したリリックビデオのような新しいストーリーズの活用をもっと開拓して、発信したいと思っています。

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“韓国っぽい”ブランドは日本に数あれど…… アダストリアが「エーランド」と契約した理由

 アダストリアは10月8日に、国内でライセンス展開する韓国発のセレクトショップ「エーランド(ALAND)」の日本1号店を東京・渋谷にオープンした。ファッションをはじめとした韓国カルチャーは10~20代女性を中心に支持が強く、彼女らを狙って“韓国風”のブランドを自社で手掛ける日本のアパレルメーカーは数多い。わざわざライセンス契約するよりも、その方が手軽そうで利ざやも大きそうに感じるが、アダストリアが「エーランド」と契約するに至った経緯とは?樋口和之エーランド事業部長に聞いた。

――「エーランド」とライセンス契約を結んだ背景は?

樋口和之事業部長(以下、樋口):韓国は自国の市場が小さいこともあって、さまざまなカルチャーコンテンツが海外に標準を合わせている。ファッションも欧米で受けそうなブランドが多いとリサーチをする中で感じていた。そうした面白い韓国ブランドを日本で集積して見せることができたらいいなと社内で話していたが、日本にも“韓国っぽい”ブランドなら今はたくさんある。ただ、韓国カルチャーのファンは“韓国っぽい”ものではなくて“韓国ドンズバ”なブランドがほしいのだと思う。それで、絶大な支持を集める「エーランド」と取り組むことにした。

――アダストリアは日本国内での出店や店舗運営を担うが、日本の店で売る商品はどのように決めているのか。

樋口:商品ラインアップは全て韓国側が決めており、日本では商品をいくつ発注するかを決める。日本側から、「こういったブランドを入れてほしい」といった要請は極力行わない。それをしてはせっかく「エーランド」と組んだ魅力が薄れてしまう。今後、韓国と日本とで若干のマーケットの誤差は出てくる可能性があるが、その際には「エーランド」のオリジナルレーベルで日本向けの商品を企画する可能性はある。しかし、大幅に日本企画を作るようなことは考えていない。

――韓国側から提案される商品ラインアップを見てどんな発見があったか。

樋口:日本のブランドは、「こういう商品を売りたい」「これが売れるだろう」と考えて品ぞろえするから、どこも同質化しているのだと思う。韓国側から提案される商品の中には、「本当にこれが売れるのか?」と感じるものも含まれているが、それを(SNSや店頭に)出してみて、「実はこんなニーズがあったのか」と気付かされるケースもある。売り上げという実利を得るよりも、次なる売れ筋や潜在ニーズにつながる情報、店舗運営のノウハウなどを「エーランド」で培って、それを社内で横展開することができれば、会社全体として価値につながるはずだ。商品は本国と同様に毎週投入し、売り切り御免でどんどん店頭フェイスを変え、鮮度を保っていく。ライブ配信などでリクエストが多かった商品については、追加投入を考えることもあるかもしれない。

――アパレル商品のうち、7割がトップスという商品構成に驚いた。日本のファッションビジネスで当たり前とされている品ぞろえの考え方とは違うようだ。

樋口:「トータルコーディネートを組まねばならない」という考え方がわれわれの中には刷り込まれているが、トータルコーディネートの考え方は今の10~20代にはあまり必要ないのかもしれない。単品を買って、その後自分でボトムスにはどんなものを組み合わせるか考えるという単品志向になっているように感じる。どう着るかはお客さまが考える時代だ。セット率向上を目指すにしても、トップスとボトムスではなく、トップスとトップスとか、トップスと雑貨といったような組み合わせでもいい。同様に、「冬は防寒アイテムを売らねばならない」「夏はビビッドカラー、冬は落ち着いたカラーを提案する」といった考え方もわれわれにとっては当たり前になっているが、そういうものに捕らわれていてはいけないと気付かされた。

――日本のファッションのMDは固定化してしまっているということか。

樋口:そういう部分はあると思う。正直僕も、日本ブランドと韓国ブランドの提案がそう変わらないように感じる部分もある。そういう時に「これなら日本のブランドでいいじゃないか」「日本のブランドじゃダメなの?」と韓国ファンの若い子たちに聞くと、「全然違う!」と返ってくる。恐らく感覚的なことなんだと思うが、そうした違いの1つがユニセックスのブランド。メンズのサイズ感なのに色使いはファンシーだったりするので、僕ら世代は「男にはちょっと着づらい」と感じるものが、今の若い女の子や男の子には支持される。日本ではターゲットである10~20代と作り手が同世代というブランドが減っていて、それでややデザインがコンサバになってきているんじゃないかと感じる。

――1号店はアルバイトに総計900人の応募があったことも話題になった。人材不足が課題となっている販売員でこの数字は驚きだ。そこから30人を採用したそうだが、選考はどのように進めたのか。

樋口:応募者のSNSのフォロワー数は確認したが、もちろんそれだけではない。投稿しているファッションや美容情報、ライフスタイル、韓国情報などを見て、「エーランド」と親和性があるかを重視した。実際にフォロワーが数百人規模と少なめだったスタッフも採用している。オープンに先駆けてSNSでのライブ配信を始めてからは、そのスタッフのフォロワー数もぐんぐん伸びている。

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「ブルガリ」が時計で藤原ヒロシと初コラボ 「タグ・ホイヤー」との違いは?

 「ブルガリ(BVLGARI)」が、藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」と時計で初コラボレーションする。「ブルガリ」のアイコンである“ブルガリ・ブルガリ”をベースに藤原がアレンジを加えたもので、11月に250本限定で発売する。価格は50万円。サンドブラスト加工を施したステンレススチール製ベゼルの上部に“BVLGARI”、下部に“FRGMT”の刻印が入り、ブラックラッカー仕上げのダイヤルには「フラグメント デザイン」のロゴをあしらった。10月5日にスタートした「ブルガリ」のLINE公式アカウントで予約を受け付けており、15日から公式オンラインショップでも予約を始める。藤原に、コラボにおけるこだわりやコレクションするビンテージ時計に対する考え方などを聞いた。

WWD:これまで「ゼニス(ZENITH)」や「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」といった時計ブランドとコラボレーションしてきた。

藤原ヒロシ(以下、藤原):「ゼニス」に関しては、英国のカスタム時計ブランド「バンフォード ウォッチ デパートメント(BAMFORD WATCH DEPARTMENT)」の求めに応じた形でカラーオーダーに近かった。本格的に時計でコラボしたのは、一昨年の「タグ・ホイヤー」だ。ヘリテージモデルを現代的に“復刻”した。

WWD:それを踏まえ、今回のコラボレーションでは何を心掛けた?

藤原:「ブルガリ」の持つ高級なイメージを“壊す”、というと言い過ぎかもしれないが“変える”ことを心掛けた。僕はコレクションしている時計のベルトをミルスペック(軍用調達規格)をクリアしたNATOベルトに変えることがよくあるのだが、今回発売するモデルにおいても提案した。それに対する「ブルガリ」の答えが、このオリジナルNATOベルトだった。軍モノとは違う「ブルガリ」らしさがあり、僕のアイデアに対するブルガリの素晴らしいアンサーだった。自分1人の力だけではなし得ないものが実現するのがコラボの魅力であり、今回の時計は理想的と言える。

WWD:時計と他のアイテム作りとの違いは?

藤原:ウエアに比べて時間がかかることだろうか。

WWD:最もこだわった点は?

藤原:「ブルガリ」的には世界最薄の機械式時計“オクト”でコラボしてほしいのかな?と思わないでもなかったが(笑)、 “ブルガリ・ブルガリ”でお願いした。バブル期にディスコのVIPルームにいた先輩たちが着けていたイメージで、それをストリート風に、というか僕らしくアレンジした。

WWD:ビンテージ時計好きとしても知られる。“ブルガリ・ブルガリ”は今から約50年前にデビューしており、広義の意味ではビンテージと言えなくもない。ビンテージ時計の魅力とは?

藤原:今、世の中にある=残っているアイテムを掘り下げると必ずビンテージにたどり着く。つまりはルーツであり、それゆえの必然性や強さがある。機械式時計には、時間と手間をかけて研究・開発された多くの機能が盛り込まれているが、一般人が実生活の中でそれらを使うことは決して多くはない。でも、それが時計ファンを引き付ける。“大いなる無駄”と呼んでもいいと思う。個人的にそれが好きだし、服でも“邪魔!”ってくらいにたくさんのファスナーが付いた服が気になるし、フリースの方が軽くて温かいのに革ジャンを選んでしまう(笑)。少し大げさに言えば、“無駄が文化を活性化させる”のだと思う。そして“文化は心を耕す”。

WWD:SLG(革小物)、時計に続く「ブルガリ」における次のプロジェクトは決定している?

藤原:現状何も決まっていないが、今回の“ブルガリ・ブルガリ”の出来にとても満足しているので、もう一度時計に挑戦してみたい。ケースをゴールドに変えてみてもいいし、逆に“オクト”をプラスチックのようなキッチュな素材に置き換えて、おもちゃっぽく提案してみるのも面白そう。その場合、もはや時計としての機能は要らないのかもしれない。あくまで“時計型のブレスレット”にしてしまうとか。そんな風に無駄を追求してみたい。

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ユナイテッドアローズの“売ろうとしない”オウンドメディア「ヒトとモノとウツワ」とは?

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下UA)のオウンドメディア「ヒトとモノとウツワ」が密かに話題を集めている。同メディアは、ヒト、モノ、ウツワの3つのカテゴリーを軸にUAの魅力を多角的に発信しており、PV数は非公開としながらも順調にファンを獲得。今では社内外から記事掲載・取材の売り込みを受けるほどだ。同業他社も似たようなオウンドメディアを持つが、それらとUAの「ヒトとモノとウツワ」の違いとはーー。同サイトの運営を担当する、玉井奈緒サステナビリティ推進部副部長、吉田淳志・経営企画部全社PR統括、永井美智子・同全社PRチームに話を聞いた。

 「ヒトとモノとウツワ」は同社のCSR事業を発信する目的で2015年に設立されて以来、月3本ペースで更新を続けている。玉井担当は「どうしても固い内容になりがちなCSRの取り組みを、わかりやすくユーモアや物語性を持たせて広く発信したいという思いで立ち上げました。UAがモノ作りを行う上で大切にしていることはたくさんあるので、コンテンツのアップペースは自然と維持できています」と話す。例えば同社が支援する乳がん検診の早期受診を推進するピンクリボンキャンペーンに合わせた記事では、乳がんのセルフケアの方法を具体的に紹介するなど、実用的なコンテンツに落とし込む。そのほか、副業制度を生かしてさまざまなフィールドで活躍する社員のライフストーリーなど、誰でも楽しめる身近な切り口が読者の共感を呼び、徐々に認知が拡大した。“売ろうとしないこと”を意識したシンプルで読みやすい構成が特徴だが、実は購買につながるケースも多い。

 また同メディアは、ビームスやベイクルーズ グループの販売員、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の企画担当者など、横のつながりを生かし同業他社、ライバル社の人物が多く登場するのも特徴だ。吉田担当は「あくまで、われわれが取り扱っている商品に込められた思いや社の取り組みを伝えることが目的ですが、UAの活動に限らず読者にとってファッションそのものに興味を持つきっかけになってほしい」という。社内や社外といった枠を超え、業界全体の活性化も考えてのことだろう。

 そのほか例えば、老舗シューズメーカー「ハルタ」とUAの「オデット エ オディール(ODETTE E ODILE)」のシューズデザイナーによる対談など、担当者の思いがつながったコラボ事例も同サイトから発信する。永井担当は「『ハルタ』はこれまで他のブランドと別注などの取り組みはありましたが、デザインからのコラボは今回が初めてだったようなのでデザイナー2人にその背景を語っていただきました。『オデット エ オディール』のデザイナーが“普遍的なもの”をキーワードにより正統派な一足を改めてお客様に提案したいという思いから、お声かけさせていただき実現したものです。実際に『ハルタ』の現場を訪れ、丁寧なモノづくりを見ることができ大変貴重な経験でした」と振り返る。

 UAのさまざまな側面を語る同サイトは社員同士のコミュニケーションツールの役割も担う。「社員同士が同サイトの記事を読んでお互いに刺激しあったり、商品背景について学びを深めたりなど、メリットは多いです。自分が担当した商品を取り上げてくれてありがとうという反響をもらうこともあり、モチベーションにつながっています」と吉田担当。

 今後は今年開始した連載企画「PRODUCT」を筆頭にサステナビリティのテーマも強化していく。玉井担当は「ファッションのエモーショナルな部分と乖離させずに、今、社会全体で考えていくべき課題であるサステナビリティをいかに読者に自分ごと化してもらうかが課題です。お客さまに気持ちよく購入していただく語り方や表現を探っていきます」と語る。

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「シャネル」「ルイ・ヴィトン」「ミュウミュウ」「メゾン マルジェラ」が競演!! デジコレでドタバタ対談パリ最終日

 2021年春夏のコレクションサーキットのラストとなるパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も6日目となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも日本の記者たちが対談レビューという形で、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。最終回は、2人の編集長対談。「WWDジャパン」の向千鶴編集長と、「WWDJAPAN.com」の村上要編集長が語り合います。

ヴィルジニーの「遺産をモダンに」の挑戦続く「シャネル」

:インスタグラムなどで発表されたティザーにはロミー・シュナイダー(Romy Schneider)、アンナ・カリーナ(Anna Karina)、そしてジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)ら、ハリウッドで活躍した往年のフランス人女優がたくさん出てきていたので、ショー会場の大きくて真っ白な「CHANEL」のボードを見て納得。ハリウッドの世界とパリが出会った、まさにそんなイメージのショーでした。ちなみに、引用された映画は、ジャック・ドレー(Jacques Deray)監督の 「太陽が知っている」や‎ジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督の「勝手にしやがれ」「女は女である」「軽蔑」「気狂いピエロ」など、いずれも1960年代の映画です。

村上:着想源の1つは、そんな女優がフォトコール、カメラマンに囲まれてフラッシュを浴びる瞬間の姿みたいですよ。美しいドレスに身をまとっているけれど、やっぱり緊張して、ちょっぴりぎこちない。そんな生身の姿が美しいと感じたそうです。今ではジャンヌ・モローが緊張していたなんて想像できませんが、60年代は、まだ30代。レッドカーペットを歩いた時は、緊張していたかもしれませんね(笑)。ゲストの数はいつもより少ないようですが、グラン・パレに巨大なオブジェ!!「シャネル」健在!!パリコレ健在!!を誇示しているかのようで、頼もしく思えました。

:スカートの丈が短く、素足を見せるあたりも60年代の女優風。ヴィルジニー ・ヴィアール(Virginie Viard)がファッション・コレクション・アーティスティック・ディレクターに就任してから「シャネル(」の服はぐっと親しみやすく、リラックスしたものになったよね。フィナーレの先頭で見せたライダースジャケットが象徴的。ライダースだけどゆったり目で、ざっくり羽織れる感じ。これまでの「シャネル」にはなかったムードです。バッグはぐっと小さくなってほぼネックレス、でした!

村上:ブラックやエクリュ、ホワイトに、ペールからショッキングまでのピンクを合わせるカラーコンビネーションが新鮮ですね。しかもピンクのセットアップにブラックやグレーのインナーを合わせるコーディネイトから、ブラックとピンクの糸をミックしたツイードまで、色の合わせ方が多面的です。ココ・シャネル(Coco Chanel)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の遺産を継承しながら歩みを進める、ヴィルジニーの重責と決意を象徴しているように感じました。そして、その決意をとってもポップに表現しているのが、今っぽいなぁとも。ラグランでオーバーサイズ気味のブルゾン、カプリパンツ、ミニスカート、フラットシューズ、スマホだけ入れば十分くらいのミニバッグ、いずれも現代のライフスタイルとマッチしていますね。今シーズンは、ロゴドリブンなスタイルも印象的です。ほんの1年前までは、「キャッチーなロゴではなく、王道のエレガンスへ」という流れでしたが、コロナによってデジタルトランスフォーメーションが進む中、「画面上でも魅力が伝わる」ロゴや原色の価値も見直されている印象があります。その流れも意識しているのかな?

みんなでキャピる“違和感”あるガーリー路線の「ミュウミュウ」

:最初に確認しておくと、「ミュウミュウ(MIU MIU)」にラフ・シモンズ(Raf Simons)は関わっておらず、引き続きミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)によるデザインです。ので、安定のガーリー路線。今回はそこにスポーツの要素を加え「そうだ、2021年は仕切り直しの五輪イヤーじゃないか」と思い出しました。その割には、他ではあまりスポーツの要素は見かけなかったですよね。

村上:「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のコレクションの舞台はオリンピックスタジアムでしたが、洋服はいつも通りのフォーマルでしたからね(笑)。個人的には、「プラダ」にラフが加わった分、ミウッチャは「ミュウミュウ」に全力投球では?と思い期待しています。そして期待通り!!カワイイ路線は色濃いものの、ミニマルやインダストリアルも融合した、“違和感”のあるスポーツスタイルでした。ミウッチャは、こうじゃなくっちゃ。

:「プラダ(PRADA)」同様、各都市で先行視聴会が開かれ、東京は東京・表参道のジャイル(GYRE)4階のレストランで行われました。画面の中にはZoomのようなスクリーンがたくさん並んでおり、フロントローの常連とおぼしき女性が映し出され、彼女たちが見守る中でショーが進みます。スポーツの無観客試合をファンが遠方から盛り上げる感じですね。この皆でキャピキャピ盛り上がる感じそのものが「ミュウミュウ」の世界観。うっかりお酒がすすみました。

「ルイ・ヴィトン」が大統領選直前に「VOTE」トップスの意味は?

:最終日、リアルなショーのトリは、今回も「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」でした。会場は、セーヌ川沿いに建つ建物で、あれは確か老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)の跡地ですね。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が保有しているのになかなか進展がなかったけれど、いよいよ来年春に複合施設としてオープンするそうです。

村上:パリのど真ん中にあるのに“お化け屋敷”みたいでしたから、サマリテーヌのオープンは、本当に良いニュースですね。百貨店やホテル、レストランなどの複合施設になるそうです。

:ところで要さんは何でショーを見ましたか?私はユーチューブ、インスタグラム、ティックトック、さらに「ルイ・ヴィトン」から送られてきた“自分専用カメラ”を行ったりきたりしてみて、途中で迷子になりました(笑)。ソーシャルディスタンシングを設けた客席の間に棒状のカメラがたくさん立っていましたが、あれが“自分専用カメラ”ですね。新しい体験で面白かったけれど、結果は大画面のユーチューブで見るのが一番迫力があってよかったかな。カメラ席から撮った映像が一番きれいで見やすいからね。

村上:僕は“自分専用カメラ”にアクセスしました。隣は、米「WWD」の大御所マイルズ・ソーシャ(Miles Socha)でした(笑)。コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)社のショーで隣になることが多いのですが、“自分専用カメラ”も、そのあたりに配慮してくれてたのしょうか(笑)?“自分専用カメラ”は、360度、上にも下にも自由にスクロールできて、サマリテーヌの屋根なんかもちゃんと見えました。とは言え、YouTubeでもちゃんとサマリテーヌの内観は大画面で映りましたけれどね。

:スポーティー×クラシック、そこにアニメチックなプリントや色を合わせるのがウィメンズ・アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)が得意とする世界観。ヴァーチャルの世界は、相性が良いよね。この感じでどんどんデジタルの世界に投資して、新しいファッションショーの姿を創ってほしいな。それにしてもきになるのが「VOTE(投票しよう)」のTシャツ 。シー・ナウ・バイ・ナウで、アメリカ大統領選の前に発売するのかな?

村上:え~、あと1カ月もありませんよ(笑)。ただ、アメリカ大統領選「VOTE」して欲しいですね。ニコラ、ワンピースは安定のミニ丈ですね。シルバーやメタルパーツも盛りだくさんで、アクセサリーを中心に未来的なムードはいつも通り色濃かったものの、オーバーサイズのジャケットやコートなど、クラシックなメンズウエアに刺激を得たムードも垣間見え、性差に関係なく、より大勢が楽しめるスタイルに進化した印象です。実際、メンズモデルも登場していますね。クロップド丈のグラフィティトップスに、ショートパンツ、そしてモコモコブーティのスタイルが、ベリー可愛かったです。大好物!!

今回もガリアーノがたくさんおしゃべりの「マルジェラ」

:オートクチュールに続いて、今回もジョン・ガリアーノ(John Galliano)はよくしゃべった。本当に楽しそうにコレクションのインスピレーションからモノづくりのテクニックまで隅々まで話してくれて、間に物語も差し込まれるから一ファンの私としては嬉しいけれど、深夜に取材として見ると長く感じそう。このフィルムプロジェクトは今回がラストだそうです。全部話してくれてありがとうジョン。

村上:背中の4本ステッチ以外多くを語らない、それが美学というイメージだった「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」とジョンが、メチャクチャ喋ってくれたことに驚きを禁じ得なかったのが、前回のオートクチュールですね(笑)。デジタル・ファッション・ウイークの大トリを飾ったのは、「スイマセン、ウチのムービー44分もあるので、後ろのブランドの影響しないよう、最後にしてください!!」なんて考えがあったのかもしれません。

:コレクションは、アルゼンチンのタンゴとそのステップがインスピレーションでした。リリースには、「人々が離れ離れの生活を余儀なくされている今こそ、人との繋がりに新たな価値が見出されます。人が誰かに頼る時、直感と信頼を頼りに二人で踏むステップが不可欠」とある。だからイメージ映像の中ではモデル同士が情熱的にぶつかりあうシーンが何度も出てきます。体に吸い付くようなタンゴのドレスは、ジョンが元来好きなスタイルですしね。

村上:「カワイイ!」&「エラい!!」って思ったのは、ジョンもちゃんとステップを学んで、パートナーと支え合い完成するタンゴの真髄を体感したこと。あえて体感する、って、コロナでデジタルトランスフォームが進んでいる今だからこそ、さらに価値を増している気がします。伊達男が着るジャケットが切り裂かれて合間からフリルがのぞくトップスは、ライナーを解体するというアプローチが「マルジェラ」らしいし、男と女というパートナーが融合して1つになるタンゴの表現でもあるし、ジェンダーレスという価値観の象徴でもあるような気がしますね。ステップに欠かせないシューズは、ポインテッド。パートナーのシューズは、やっぱりメリー・ジェーンですね!

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「サカイ」が日本で見せたのは、原点のハイブリッドで手に入れた普遍性

 「サカイ(SACAI)」は10月7日、神奈川県小田原市の江の浦測候所で、2021年春夏のウィメンズ・コレクションを発表した。美しい夕焼けを狙って午後5時に開催したが、あいにくの雨模様。ゲストは約200人。アクリル製の1人用ブースを設けた。

 先立って夏に発表した21年春夏メンズと21年プレスプリングのウィメンズは、これまでの総決算のように、アーカイブの生地までハイブリッド。続く21年春夏は新章の幕開けの如く、再び「サカイ」のアイデンティティ、言い換えれば原点に立ち返った印象だ。「サカイ」を物語る、原点的スタイルはミリタリー。ファッション界の原点的アイテムは、白シャツとスーツ。そして柄の原点は、ボーダー。それらの王道を「サカイ」らしく自由奔放、大胆不敵にハイブリッドしてコレクションを作り上げる。ミリタリースタイルのスカートは、MA-1を上下ひっくり返して袖をもぎ取ってしまったよう。白シャツはクロップド丈のケープのように仕上げ、胸元から下だけ残したトレンチコートとドッキング。ボーダーは、模様に沿って大胆に切り刻み、新しい形を手に入れる。他のスタイルは多くない。色も柄も絞り込んだ。以前も見せたスタイルの、その時より前に進んだ「現在地」を見せようとしているかのようだ。

 ハイブリッドの手法と複雑さはいつもどおりだが、原点を思わせるシンプルなスタイル、アイテム、そして柄の中に取り入れるから、今季のコレクションからは「ベーシック」という印象さえ感じられる。原点のハイブリッドだから、ファッション業界がどんなに変わっても、「サカイ」がどう進化しても、変わることなく、愛し続けられる洋服だろう。ウィズコロナの時代には、そんな洋服がちょうど良い。フィナーレに流れたシャーデー(SADE)の「キス・オブ・ライフ」が、毎回、特別変わったことをし続けなくても良いことを訴えるかのようなクリエイションに心地よさを加えた。

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「サカイ」が日本で見せたのは、原点のハイブリッドで手に入れた普遍性

 「サカイ(SACAI)」は10月7日、神奈川県小田原市の江の浦測候所で、2021年春夏のウィメンズ・コレクションを発表した。美しい夕焼けを狙って午後5時に開催したが、あいにくの雨模様。ゲストは約200人。アクリル製の1人用ブースを設けた。

 先立って夏に発表した21年春夏メンズと21年プレスプリングのウィメンズは、これまでの総決算のように、アーカイブの生地までハイブリッド。続く21年春夏は新章の幕開けの如く、再び「サカイ」のアイデンティティ、言い換えれば原点に立ち返った印象だ。「サカイ」を物語る、原点的スタイルはミリタリー。ファッション界の原点的アイテムは、白シャツとスーツ。そして柄の原点は、ボーダー。それらの王道を「サカイ」らしく自由奔放、大胆不敵にハイブリッドしてコレクションを作り上げる。ミリタリースタイルのスカートは、MA-1を上下ひっくり返して袖をもぎ取ってしまったよう。白シャツはクロップド丈のケープのように仕上げ、胸元から下だけ残したトレンチコートとドッキング。ボーダーは、模様に沿って大胆に切り刻み、新しい形を手に入れる。他のスタイルは多くない。色も柄も絞り込んだ。以前も見せたスタイルの、その時より前に進んだ「現在地」を見せようとしているかのようだ。

 ハイブリッドの手法と複雑さはいつもどおりだが、原点を思わせるシンプルなスタイル、アイテム、そして柄の中に取り入れるから、今季のコレクションからは「ベーシック」という印象さえ感じられる。原点のハイブリッドだから、ファッション業界がどんなに変わっても、「サカイ」がどう進化しても、変わることなく、愛し続けられる洋服だろう。ウィズコロナの時代には、そんな洋服がちょうど良い。フィナーレに流れたシャーデー(SADE)の「キス・オブ・ライフ」が、毎回、特別変わったことをし続けなくても良いことを訴えるかのようなクリエイションに心地よさを加えた。

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アーティストとコラボの「アクリス」に、期待を裏切らない注目「ロク」 デジコレでドタバタ対談パリ8日目

 2021年春夏パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も残すところ2日となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも引き続き、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。パリコレ8日目は、海外コレクション取材歴4年の北坂映梨「WWD Japan.com」編集部 ビューティデスクと、皆合友紀子記者がお届けします。

フラットシューズが気になる「ジャンバティスタ ヴァリ」

北坂:オートクチュールデザイナーでもあるジャンバティスタ・ヴァリ(Giambattista Valli)はフェミニンなテイストを得意とする人ですが、今シーズンもリボンのモチーフやフリルディテールなどが満載でガーリーなアイテムを連発していました。フローラルなモチーフも鉄板ですが、今シーズンは花だけでなく葉っぱや植物なども入れ、ボタニカルによったプリントも目立ちましたね。モデルのルックとともに植物の映像も流したりして、“リゾート”や“自然”を連想させました。森の中で発表した「バーバリー(BURBERRY)」然り、今シーズンはネイチャーに思いを馳せたブランドも多い印象です。

皆合:こういう状況で人々の癒されたいという気持ちを汲み取ってなのか、ネイチャーを取り入れたブランドが多く見られますね。ルックは今シーズンもフリルやリボン、スパンコールを使ったガーリー感満載で軽やかなデザインでした。色も白や黒などベーシックカラーに加え、パステル系のグリーンやピンク、オレンジなど柔らかな印象を与えるものが多かったですね。

北坂:見るだけで心が和らぐような優しいパステルカラーや、着やすさを重視したTシャツやリラックスシルエットも今のムードをまさに捉えていて、ポイントだったかと思います。それは足元にも及び、見事にローヒールだらけでしたね。キトゥンヒールからスリッパまで、履きやすいシューズが目立ちました。ラフ・シモンズ(Raf Simons)による「プラダ(PRADA)」もキトゥンヒールがたくさん出てきましたよね……!

皆合:「ディオール(DIOR)」もフラットなサンダルを連発していた記憶。やはりリラックスしたムードが多い今シーズン、足元も無理なく履けるデザインのものが多く打ち出されていますね。

北坂:そしてここ数シーズンはあまりランウエイで見なかったミニスカートやパンツも多かったですね!ミニ丈ボトムスは復活するのでしょうか。そういえば、不況の時は「ミニスカートが売れる」なんて話を聞いたことありますが、アフターコロナでもそういうことは起きるんですかね......。

セーヌ川の上で発表した「アニエスベー」

北坂:「アニエスべー(AGNES B)」はセーヌ川の上に浮かべた船上での発表でした。動画やビジュアルは、アニエスご自身が撮影したそうです。ちょっと天気が悪かったり、川沿いの工事の様子を見せたり、船上のアナウンスもそのまま生かしたり、なんだかリアルな光景でしたね。それはそれでよかったと思いますが。

皆合:マリンや水着のルックもあったので、天候が優れずグレーな空の下での撮影はモデルさん寒そうだな……と少し心配してしまいました(笑)ですが、モデル同士が談話していたり、すれ違う船の人に手を降っていたりと終始リラックスしたムードがコレクションともマッチしていたように思います。

北坂:そして今回はメンズとウィメンズの両方を披露。ボーダー柄のアイテムや定番のカーディガンなど、フレンチカジュアルなスタイルはもちろん、ブラトップや野球のユニホームを連想させるセットアップなど、スポーティーなものもありましたね。いつの時代も愛される定番品が多いイメージですが、今回もまさにそうでした。ジャケットには動きやすそうなドレスもあったりして、ここでも“着心地のよさ”というのを感じましたね。

皆合:メンズモデルが着ていたデニムのローネックのジャンプスーツは、女性でもローヒールと合わせてマニッシュに着こなせそうだなと。白地にリゾートのイラストがワンポイントに描かれたプリーツスカートやパンツなど、遊び心のあるデザインも印象的でした。ペアルックのコーディネートもかわいかった!

独アーティストとコラボした「アクリス」

北坂:「アクリス(AKRIS)」はカラフルでグラフィカルなアートを手掛けるドイツのアーティスト、イミ・クネーベル(Imi Knoebel)とコラボしたようですね。パンデミック下はいつも以上にピグメント(色)にインスパイアされたそうで、今シーズンのアイテムには鮮やかなブルーやレッドなど原色が多く登場しました。モダンなキャリアウーマンに愛される、クリーンなイメージが強いブランドでしたので、今シーズンは特に新鮮に写りました。中でも注目は、燐光(暗闇の中で発色する)スーツやセットアップではないでしょうか?

皆合:イミ・クネーベルはシンプルでありながら色彩の美しさと鮮やかさ、パーツの組み合わせが印象的なアーティストですが、デザインに見事にハマっていましたね。まさに着るアート!同じ作品でも立体感を持つとまたイメージが変わり、新たな芸術鑑賞をしている気分になりました。燐光シリーズはインパクトありましたね。目立つので夜も安心です(笑)。暗闇の中で発色するテキスタイルは「アンリアレイジ(ANREALAGE)」でも使用されていましたね。

北坂:あと、さまざまな色のライトを洋服にリズミカルに当てる演出もエネルギッシュで、面白かったですね。

皆合:モデルの動きもユニークで、ライティングの手法など映像そのものがひとつのモダンアートといった印象で、見ていて飽きませんでした。

今シーズンも期待を裏切らなかった「ロク」

北坂:「ロク(ROKH)」は数シーズン前から個人的にも注目していたブランド。トレンチコートやシャツなどのトラディッショナルなモノを解体・再構築し、シルエットで遊ぶのがとっても得意!日常的なアイテムをうまく組み合わせたスタイリングもいつも秀悦で、とても可愛いですよね。日本人も好きそうですよね。

皆合:アツイ想いが伝わりました(笑)。シルエットに遊び心を取り入れながらもデイリー使いできるデザインも多いので、確かに日本人受け良さそう。ルックはフリルやパフスリーブ、特大カラー(襟)など女性らしい要素を打ち出しながらも、上からハーネスやチェーンを付けたりと甘辛ミックスなスタイリングが目立ちましたね。そして何より、どこかの惑星のようなセットが気になりました。今シーズンのテーマは“NIGHT WANDERER”だそうです。

北坂:毎シーズン幼少期の思い出をインスピレーション源にしているようですが、今シーズンも子どもの時によくしていた、夜中の散歩が出発点みたいです。冒険心、夜中のスリル、ミステリアスな夜の空気などを表現しているそう。煙の中をモデルが歩く演出で、一瞬火星だと思いました(笑)。肝心のアイテムも、レースのカラー(襟)とレザーハーネスなど相反するものの組み合わせは相変わらず多かったですね。そのほかドレスに仕立てたロックなレザージャケット、スタッズをあしらったベルベットドレス、チェーンをつけたコレルセットドレスなど、クールやグランジの中に少し甘さがあるスタイルでした。

皆合:個人的には最近シャツを前より着るようになったので、バリエーション豊富なレースの美しい襟元に目がいきました。ほかには、やっぱりトレンチシリーズ! パフスリーブで裾にスリットを大胆に入れたアイテムが気になりました。テーラリングが美しい〜。

北坂:肩を落としたトレンチコート、スーツジャケットとトレンチをドッキングしたセットアップなど、今シーズンもトレンチアイテムが多かったですね〜。トレンチ好きとしてはテンションが上がりました(笑)。いずれも厚底のミリタリーブーツを合わせていましたね。やっぱり、フラットシューズは大きなトレンドとなりそうです。

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CO2計測ツールを開発・提供するティンバーランドに聞くCO2排出量削減に必要なこと

 米国屈指のサステナビリティ先進企業のティンバーランド(TIMBERLAND)は、2005年からCO2排出量の計測をはじめ、15年までに自社および自社運営施設での排出量の絶対値を06年と比較して半分にするという目標を設定し、事業拡大の中でも達成した。独自開発したCO2計測ツールは、他社も活用できるようにとサステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)とアウトドア産業協会(Outdoor Industry Association)に無償で提供している。CO2排出量削減をリードする同社のザック・アンジェリーニ(Zack Angelini)環境スチュワードシップ マネジャーにCO2排出量削減のために必要なことを聞く。

WWD:ティンバーランドは「環境負荷を測る」ことを自社および運営施設における温室効果ガスの測定から始めているが、なぜCO2からだったのか。

ザック・アンジェリーニ環境スチュワードシップ マネジャー(以下、アンジェリーニ):地球温暖化は、私たちの社会が現在直面している最も差し迫った問題の一つだからだ。アパレルおよびフットウエアブランドである「ティンバーランド」は、そうした問題が発生する責任の一端を負っているので、解決するために尽力する責任も負っている。

最初に温室効果ガス(および廃棄物など)の排出量削減に取り組んだのには理由がある。バリューチェーンの取引先企業にそうした排出量の削減について責任ある行動を求める前に、まずティンバーランドがそれを実行しているということを、自社や消費者に、そしてベンダーやサプライヤーなどの取引先に示したかったからだ。

当社は温室効果ガスの排出量を2005年から計測しており、自社が所有もしくは運営している全ての施設と、従業員の出張などによる排出量を15年までに06年の50%とする目標を設定した。これは絶対値での目標だったので、その後の事業の成長やそれに伴う人員の増加や施設の拡大は計算に入れていなかったが、それにもかかわらずこの目標を達成できて大変うれしく思っている。結果として、事業を大きく成長させながらも温室効果ガスの排出量を50%以上削減することができた。

WWD:具体的な運用方法は?

アンジェリーニ:08年に、個別の商品が環境に与える影響を測定する「グリーンインデックス」という自社開発の指標を発表した。10年までは当社でのみ使用していたが、環境への影響を測定するツールであるヒグ・インデックス・プロダクト・モジュール(Higg Index Product Module)で使用できるようにするため、サステナブル・アパレル連合とアウトドア産業協会に無償で提供した。

個別の商品が環境に与える影響を測定する方法が開発されたことで、商品開発部門やデザイナーは大きな学びの機会を得ることができた。素材や製造方法の違いによって、地球環境にどのようないい影響が、もしくは悪い影響があるのかが分かるようになったからだ。測定ツールがあることで商品カテゴリー別に目標値を設定できるようになった。

WWD:苦労した点は?

アンジェリーニ:同じ商品であっても、複数の仕入先や生産国から素材を調達していたり、異なる場所で最終仕上げをしていたりと、世界にまたがる複雑なサプライチェーンであることから、同一の商品に対して複数のシナリオを組め、それらを考慮してスコアを出せるようにする必要があった。また当社だけで取り組んでも、ベンダーやサプライヤーにとっては当社からの発注は彼らが請け負う全体量の数パーセントにしか過ぎないので、スコアを改善しようというインセンティブにならないことが分かった。

こうした高いレベルでの透明性は現在の消費者の関心を引いたし、「ティンバーランド」の顧客はそうした情報に基づいて商品を選ぶことが可能となったが、業界全体として進化するには、ほかのブランドにも同様の取り組みをしてもらう必要があることに気づいた。

アウトドア産業協会とサステナブル・アパレル連合に「グリーンインデックス」を無償で提供したのはこうした理由からだ。「グリーンインデックス」は現在、デザイナーや商品開発者がよりサステナブルな素材や製造方法を選ぶためのツールとして業界全体で使われているヒグ・プロダクト・モジュールに、その他のブランド測定ツールと共に組み込まれている。

WWD:気候変動対策、すなわちCO2排出量の削減は今すぐ取り組みたいテーマだが、CO2削減に取り組んできたティンバーランドのノウハウのシェアをしてほしい。CO2削減のために企業がまず取り組むべきことは何か?

アンジェリーニ:業界として、私たちは互いから学び、協力しあって、地球温暖化の解決に取り組んでいく必要がある。ブランドの温室効果ガス排出量の削減に関する目標値を設定するに当たっては、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求める、サイエンスベース・ターゲット・イニシアチブ(Science-Based Targets Initiative以下、SBTI)と提携することを推奨したい。目標値を設定する過程では、地球温暖化を防ぐために自社の排出量をどの程度削減する必要があるのかに加えて、事業のどの部分で努力すれば最も効果的かなども明らかになるからだ。19年には、ティンバーランドの親会社であるVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFコープ)も科学的な根拠に基づいた目標値を設定している。

当社もこの過程を経ることで、温暖化への影響を最大限減らすにはどこに注力すればいいのかを理解することができた。当社の場合、排出量の大半はサプライチェーンにおける生産段階、特に原材料の選択に関係していた。アパレルやフットウエアブランドの多くも同様だと思われたので、素材の持続可能な調達と製造の循環性に注力することにした。その後、「ティンバーランド」ではVFコープが設定したSBTをさらに推し進め、CO2排出量を削減するだけでなく、排出量よりも吸収量が上回る“クライメート・ポジティブ”となるように目標を設定している。

WWD:環境負荷の計測ツール、ヒグ・インデックスを用いているか?

アンジェリーニ:ヒグ・インデックスは、企業の事業、サプライヤー、商品が環境に与える影響を測定するさまざまなツールで構成されている。分野別にモジュール(ツール)があって、それぞれの影響を測定するという仕組みだ。当社では毎年、ヒグ・ブランド・アンド・リテーラー・モジュール(Higg Brand and Retailer Module)を完了しているが、これはブランドおよび小売業として環境負荷の削減に関してどれぐらい努力したか、また消費者にもそうするように啓発したかを評価する指標となっている。

ほかにも、当社では生産工場の環境保護に対する取り組みを評価するヒグ・ファシリティー・モジュール(Higg Facilities Module)を導入している。また「ティンバーランド」は環境保護に関する基準を全商品に設けているが、それを裏付けるに当たってどの素材を使用するべきかを比較するために、ヒグ・プロダクト・モジュール(Higg Product Module)や、マテリアル・サステナビリティ・インデックス(Materials Sustainability Index)を使用している。

WWD:環境負荷に関してCO2排出量はもちろん、水使用量や土地利用、化学物質の削減、廃棄量などさまざまな指標があるが、注力して取り組んでいることは?

アンジェリーニ:カーボン・アカウンティング(炭素会計。ある事業活動が、どれだけ温室効果ガスの排出あるいは削減に寄与したかを算定し集計する取り組み)や、自然なCO2吸収源(再生可能な農業など)は、まだ発展途上にある分野だ。当社とその親会社であるVFコープは、再生可能な農業における吸収量を測定するガイドラインを策定する、複数の業界にまたがった取り組みに積極的に携わっている。これによって、「ティンバーランド」やその他のブランドはクライメート・ポジティブの実現に向けて(排出量や吸収量を)より正しく測定し、進捗を報告できるようになるだろう。

また当社は、生物の多様性や水などの分野においても、測定基準や戦略をさらに開発する機会を模索している。気候温暖化だけではなく、環境に影響を与えるほかの分野の測定手続きなどに関する業界グループ、サイエンスベース・ターゲット・ネットワーク(Science-Based Targets Network)にも携わっている。

循環性に関しては、業界のコンサルタントと協業し、さまざまな循環型ソリューションの環境に対する影響を測定するプロトコルを開発したり、パイロット版を試したりしている。現在は循環型および再生型の両方における社内的なマイルストーンを設定している段階で、ほかのサステナビリティに関する取り組みと同じく定期的に報告していく予定だ。

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おしゃれなあの人のビューティライフを拝見! 「トーネ」ネイリスト・宮田周子編

 世界的な新型コロナウイルスの流行によって私たちの生活は一変し、今までにない習慣や行動を余儀なくされている。日々刻々と変わる状況の中でこれまでとは異なる“新たな日常”を理解し、共に過ごしていく毎日が始まっている。そんなガラリと変化した暮らしの中でも、ポジティブに自分らしい生活を心がけているファッション業界人のビューティ事情、ライフスタイルにフォーカス。

 今回は、素材のよさを生かしたデザイン性の高いネイルに定評があるネイルサロン「トーネ(TOHNE)」のオーナー・宮田周子さん。好感度の高いショップやレストランが多く集まる奥渋谷に今年5月にサロンをオープンし、ファッション関係者をはじめとするトレンドに敏感な女性たちの間で瞬く間に話題となった。白を基調とするシンプルな店内は彼女が手掛けるモードなネイルのごとく、クリーンでモダンなオーラを放っている。また、オーナー自身がセレクトしたジュエリーも取り扱うなど、まさにファッションからビューティまでをカバーする彼女に毎日のビューティライフを聞いた。

【SKINCARE】

肌状態に合わせた
スキンケア方法が肝

【FOOD】

体にもうれしいオーガニックな
食材を取り入れて

 最近はナッツにはまっていて、いろいろなナッツ屋さんを巡っています。そのなかでも、代々木上原に店を構える「ヌークスフーズ(NOOKS FOODS)」が大好き。可能な限りオーガニックな材料を使用したフレーバーナッツやグラノーラ、ドライフルーツなどを扱うお店です。私の一番のオススメはローストピスタチオ味のナッツ。家にいる時間が増えて、ついついスナックに手を出してしまったりしていたのですが、その前に少しナッツを摘むことでスナックの防止対策にもなります(笑)。一緒にグラノーラを購入することも多く、きな粉味がお気に入りです。朝ごはんはあまり多く食べないのですが、グラノーラとヨーグルト、フルーツは取るようにしています。

【GOODS】

おうち時間中は思い切り
好きなものに触れる

 自宅での時間が増えてからは気になっていた本を買ったり、家にあるたくさんの本を読み返したり、主人の本を借りたりなど、とにかく読書に時間を費やしました。特にアート系の本や写真集はネイルのデザインのインスピレーションにも繋がるのが楽しいですね。また、「トーネ」でも取り扱っているように無類のシルバーアクセサリー好きでよく集めているので、時間があるとついついオンラインショップでポチってしまうことも多かったです(笑)。なかなか普段はいそがしくて時間が取れないことも多いのですが、こうしてゆっくりと家で過ごせる日はシルバーアクセサリーのお手入れもするようにしています。

【BODY & SLEEP】

入浴中は絶好の
ボディーケアタイム!

【MAKEUP&NAIL】

カラーメイクで
目元から気分を明るく

「WWD JAPAN.com」ビューティ担当からのコメント

「コスメデコルテ」の“モイスチュアリポソーム(コスメデコルテ美容液)”は発売から25年以上経つロングセラーアイテムで、「WWDビューティ」が行う全国の主要百貨店化粧品フロアで売上高ベースのヒット商品ランキングの常連。コロナ禍でスキンケアへの注目が増す中、国内外で支持を集め続けています。またドクターズコスメ「エンビロン」は長年の愛用者が多く、昨年は初のホームケア用美顔器を発売し、6万3000円と高額ながらも初回入荷分が即日完売となったほど。信頼の厚いアイテムを軸に、ご自身の肌質に合わせてスキンケアを楽しんでいることがうかがえます。軸となるスキンケアアイテムにプラスして、その日の気分や肌質によって取り入れるアイテムの組み合わせは、みなさんの参考になるのではないでしょうか。(N.Y)

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「トモ コイズミ」×「エミリオ プッチ」誕生の裏側 現地の心をつかんだ夢と職人技の融合

 「エミリオ プッチ(EMILIO PUCCI)」は9月25日、2021年春夏コレクションをミラノで発表した。同ブランドは、20-21年秋冬シーズンからブランドの歴史やDNAを再解釈するゲストデザイナーを招へいする態勢へと移行し、デザインチームが制作するメインコレクションとはほかに「コシェ(KOCHE)」のクリステル・コシェール(Christelle Kocher)=デザイナーを迎えてカプセルコレクションを発表した。第2弾となる今季は「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴デザイナーがカプセルコレクションを手掛け、デジタルで披露した。ミラノでは関係者向けに展示会が開かれ、小泉デザイナーが現地で来場者を迎えた。

 カプセルコレクションは「エミリオ プッチ」の鮮やかなプリントを「トモ コイズミ」らしい幻想的なフリルで表現した11型だ。同コレクションは受注生産される予定で、夢のような世界観と丁寧な手仕事の融合に現地での反応も上々だという。さらにコマーシャルラインとしてポーチやサンダル、Tシャツも並ぶ。展示会場で小泉デザイナーに、ゲストデザイナーに招へいされた経緯やコロナ禍に取り組んだコレクション制作について聞いた。

「迷いは一切なかった」

——ゲストデザイナーとして参加することになった経緯は?

小泉智貴デザイナー(以下、小泉デザイナー):昨年末、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のタレントスカウトの方から連絡があり、同プロジェクトの提案を受けた。本来なら2月に「エミリオ プッチ」のチームと打ち合わせする予定が、新型コロナウイルスの影響でイタリアからフランスへ渡航することができず、全てビデオ通話で始動した。オンライン上でのやり取りと、日本からイタリアへサンプルを配送する方法で制作が進んだ。顔を直接合わせたのは一昨日が初めてだった。

——制作期間はどれくらいを要した?

小泉デザイナー:3月ごろからスタートしたので、イタリアはロックダウン真っ只中だった。工場などが閉鎖している状況の中でも、なんとか2〜3カ月で完成できた。

——オンラインだとイメージの共有やサンプルの修正などが困難だったのでは?

小泉デザイナー:本来ならミラノ本社や工場があるボローニャへ行って、直接打ち合わせを重ねてサンプルを制作するはずだった。でもそれが不可能だったからこそ、チームは僕のことを信じて自由に取り組ませてくれたので、アーカイブからのインスピレーションをもとに「トモ コイズミ」の世界観を作ることができた。「エミリオ プッチ」のクリエーションを尊敬しているし、昔から好きなブランドだったので制作面での迷いは一切なかった。

——印象的だったアーカイブのプリントは?

小泉デザイナー:1960年代にデザインされたプリントにインスピレーションを受けることが多かった。ヴェトラーテ(Vetrate)というプリントがフリルで表現することで一層映えると考えて今回の要にした。フリルのほかにも白いドレスの裏地に使用したり、デザインチームのメインコレクションでも取り入れたりしている。プリントは完全に同じものを用いるのではなく、インスピレーション源として新たに描き直した。

楽しい色使いと精巧な手仕事が好反応

——ドレスのデザインでこだわった点は?

小泉デザイナー:プリントが映えるように白いドレスにしたかった。「トモ コイズミ」らしいフェミニンなスタイルを強く出すことで、結果的にウェディングドレスとしてオーダーが入るかもしれないと思っている。最もボリュームのある白いドレスは、生地を約130m使用した。また「エミリオ プッチ」の歴史をたどるとビーチやリゾートという原点があった。アーカイブのスイムウエアやブラトップ、ショーツの形状をそのまま生かして型を作り、そこにフリルを乗せて制作する過程だった。

——コマーシャルラインの制作は初めて?

小泉デザイナー:初めてだ。ニューヨークでの初めてのショーでTシャツにフリルを乗せるデザインを制作したことはあったが、生産はしなかった。シューズやポーチというアクセサリー、ロゴ物を手掛けるのも初めての経験。「エミリオ プッチ」のチームと相談しながらカプセルコレクションの世界観をコマーシャルに落とし込み、可愛い商品を届けたいという思いでつくった。

——生地へのこだわりは?

小泉デザイナー:自身のブランドでも普段使っている日本製のポリエステルオーガンジーを使用している。3年ほど前に東京・日暮里で見つけて以来ずっと使っているもの。世界的にも高品質と有名で、170色と種類が多く、洗えて丈夫で扱いやすい。

——数日間の展示会を終えて、イタリア現地の反応は?

小泉デザイナー:イタリアで作品を見せることは初めてだったが、現地メディアの方々がたくさん足を運んでくれてポジティブな感想をもらえた。ハンドメイドや職人技への尊敬を感じながら、カラフルで楽しげな世界観を喜んでもらえたようだった。イタリアまで来られるのかどうか不安だったが、無事に作品を披露して反応を直接受け取ることができて今はとにかくほっとしている。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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