「エルメス」のメイクアップライン第2弾は“ローズ・エルメス” 初のチークや専用ポーチが登場

 エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)は4月14日に、昨年3月に発売したメイクアップライン第1弾“ルージュ・エルメス”に続く第2弾“ローズ・エルメス”を発売する。製品はパウダーチーク、メイクブラシ、チーク専用ポーチ、リップスティックをそろえる。伊勢丹新宿本店、ジェイアール名古屋タカシマヤ、阪急うめだ本店のポップアップのほか、「エルメス」のビューティ製品取り扱い店などで販売する。
 
 新たに登場するチーク“ローズ・エルメス ファー ア ジュ プードル ソワユーズ”(全8色、各8200円)は、シルクのようなきめ細やかで滑らかなテクスチャーが特徴で、透明感のある美しい仕上がりをかなえる。カラーはローズをテーマにした全8色をそろえ、香りは“ルージュ・エルメス”の香りも手掛けた調香師のクリスティーヌ・ナジェルが、アルニカとサンダルウッドの香調にグリーンティーをきかせた香りを新コレクションのために生み出した。ホワイトとゴールドを基調としたケースは、チークを収めた円をあえて中心からずらしたデザインで遊び心を加え、曲線で女性らしさを表現。ケースは繰り返し使用でき、チークはリフィル(各4500円)交換可能となっている。そのほか、チークブラシ“ローズ・エルメス パンソー ファー ア ジュ”(1万100円)、トラベル用チークブラシ“ローズ・エルメス パンソー ファー ア ジュ ノマド”(5500円)、チークとチークブラシを収めるために特別にデザインしたポーチ“チークケース〈ポメット〉”(46万7000円)をラインアップする。

 さらに、レザーの手触りから着想を得たリップスティック“ローズ・エルメス ローズ ア レーヴル”(全3色、各7800円)も登場する。滑らかなテスクチャーは体温で溶けてしっとりとなじみ、唇を保湿しながら柔らかなマットな仕上がりをかなえる。

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赤楚衛二主演、おやすみ3分前の“キュン”を提供する「アモスタイル」のSNSドラマ

 トリンプ・インターナショナル・ジャパンは3月10日、「アモスタイル(AMOSTYLE)の公式インスタグラムでSNSドラマ「AM0:00 夢みるドラマ」を配信する。出演は若手俳優の赤楚衛二。同ブランドの人気アイテム“夢みるブラ”から派生したドラマは全16シーンで構成されており4月28日まで毎週水曜日AM0:00に2シーズンごと配信する。

 このドラマは「アモスタイル」の店頭で配布されている公式ビジュアルブック「アモスタイル ガールズジン」が着想源で、2021年のブランドのスローガンである“明日も、キュンとハッピーだ”を体現したもので、さりげない日常の中の女性目線の“キュン”を擬似体験できる。赤楚は、「日常の小さな幸せや優しさを表現したいと思ったので、演じるのではなく、“そこにいる”を心掛け、相手を思う気持ちを大事にした」とコメントしている。

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鏡の中のトレーナーと自宅で24時間オンラインフィットネス ヤギがへルスケア事業をパワーアップ

 繊維商社のヤギは、東京都や神奈川県でフィットネスクラブ「ワンサードフィットネス(ONE THIRD FITNESS)」の運営などを手掛けるワンサードレジデンス(ONE THIRD RESIDENCE)と「フィットネスミラー(FITNESS MIRROR)」事業における販売代理店契約を締結した。

 ワンサードレジデンスが開発した「フィットネスミラー」はミラー型のオンライントレーニング用デバイスで、鏡に映った自分の姿をモニターしながら、鏡の中のトレーナーの指示に従ってトレーニングできるというもの。筋力トレーニング、ヨガ、ピラティス、ダンス、ボクササイズなど多くのコンテンツが収録されており、「ワンサードフィットネス」の全店舗に導入されている。仕事や家事が忙しくてジムに通えない人、コロナ禍のステイホームにおけるオンライントレーニングなどの需要に対応する。価格は、月額1万2000円(24回分割プラン)など。

 ヤギのグループ会社でフィットネスブランドの販売やパーソナル健康管理アプリ開発などを手掛けるドリーム ボックス(DREAM BOX)との戦略的パートナーシップにより、「フィットネスミラー」を法人、個人に対して販売、レンタルの事業を展開するほか、新しいサービスやコンテンツの共同開発、イベントの開催も計画している。

 ヤギは先の中期経営計画で“新領域への挑戦”を掲げ、積極的なM&A(合併と買収)により繊維事業だけではなく異分野へ業容を拡大してきた。その1つが、2019年に全株式を取得してグループ会社化したドリーム ボックスだ。同社は、EMS(筋電気刺激)テクノロジーを取り入れた家庭用トレーニングウエア「アクティブ(ACTIVE)」などを手掛けており、ワンサードレジデンスとの相乗効果でウエルネス、ヘルスケア事業をパワーアップさせる考えだ。

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鏡の中のトレーナーと自宅で24時間オンラインフィットネス ヤギがへルスケア事業をパワーアップ

 繊維商社のヤギは、東京都や神奈川県でフィットネスクラブ「ワンサードフィットネス(ONE THIRD FITNESS)」の運営などを手掛けるワンサードレジデンス(ONE THIRD RESIDENCE)と「フィットネスミラー(FITNESS MIRROR)」事業における販売代理店契約を締結した。

 ワンサードレジデンスが開発した「フィットネスミラー」はミラー型のオンライントレーニング用デバイスで、鏡に映った自分の姿をモニターしながら、鏡の中のトレーナーの指示に従ってトレーニングできるというもの。筋力トレーニング、ヨガ、ピラティス、ダンス、ボクササイズなど多くのコンテンツが収録されており、「ワンサードフィットネス」の全店舗に導入されている。仕事や家事が忙しくてジムに通えない人、コロナ禍のステイホームにおけるオンライントレーニングなどの需要に対応する。価格は、月額1万2000円(24回分割プラン)など。

 ヤギのグループ会社でフィットネスブランドの販売やパーソナル健康管理アプリ開発などを手掛けるドリーム ボックス(DREAM BOX)との戦略的パートナーシップにより、「フィットネスミラー」を法人、個人に対して販売、レンタルの事業を展開するほか、新しいサービスやコンテンツの共同開発、イベントの開催も計画している。

 ヤギは先の中期経営計画で“新領域への挑戦”を掲げ、積極的なM&A(合併と買収)により繊維事業だけではなく異分野へ業容を拡大してきた。その1つが、2019年に全株式を取得してグループ会社化したドリーム ボックスだ。同社は、EMS(筋電気刺激)テクノロジーを取り入れた家庭用トレーニングウエア「アクティブ(ACTIVE)」などを手掛けており、ワンサードレジデンスとの相乗効果でウエルネス、ヘルスケア事業をパワーアップさせる考えだ。

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2020年商標出願件数ランキング 資生堂が3位にランクイン

 世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization、以下WIPO)の調査による2020年商標出願件数ランキングで、資生堂が3位にランクインした。出願件数は前年から70件増加の130件で5つ順位を伸ばした。前年(19年)のランキングで1位だったロレアル(L‘OREAL)は、前年から78件数を減らし115件を出願し5位だった。

 新型コロナウイルスに反して「イノベーションは立ち直りが早い傾向にある」とWIPOのダレン・タン(Daren Tang)ジェネラル・ディレクターは記者会見で見解を示した。ファッション・ビューティ企業は世界的にみても積極的に商標出願を行っているという。

 ファッション・ビューティ企業の商標出願件数の推移の一例は以下の通り。

【前年から出願件数が増加した企業】
・アバクロンビー&フィッチ ヨーロッパ(ABERCROMBIE & FITCH EUROPE SA):48件(前年38件)
・ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI):21件(前年10件)
・リシュモン インターナショナル(RICHEMONT INTERNATIONAL S.A.):17件(前年14件)
・モンクレール(MONCLER S.P.A.):16件(前年15件)
・ファーストリテイリング(FAST RETAILING):14件(前年13件)

【前年から出願件数が減少した企業】
・LVMH フレグランス ブランズ(LVMH FREGRANCE BRANDS):13件(前年25件)
・エルメス インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL):16件(22件)
・シャネル(CHANEL SARL):15件(前年21件)

 20年の国別出願件数は、米国が1万5件(前年1万90件)でトップを維持した。このうちアパレルおよびアクセサリー分野が8.8%のシェアを占めるという。これにドイツ(7334件)、中国(7075件)、フランス(3716件)、英国(3679件)が続く形となった。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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マシューの「ジバンシィ」は充実のバッグとチェーンアクセに注目 2021-22年秋冬展示会速報

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」が、メンズとウィメンズの2021-22年秋冬コレクションを3月7日にデジタルで発表しました。マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)=クリエイティブ・ディレクターのデビューシーズンとなった前季はルック写真の公開のみだったため、映像で披露したのは初です。内容は、パリ郊外の大きなスタジアムで撮影されたランウエイショーでした。マシューは「精密さ、優雅さ、ぜいたくさと共に現実味のあるリアルな服を作りたかった」という思いのもと、実用性とぜいたく感、快適性とプロテクト感を軸にして制作に取り組んでいます。ルックでは武装するようにレイヤーを重ね、グローブやネックウオーマーで体をプロテクトし、合成ゴムの未来的なシューズで足を完全に覆っています。そこに合わせるのが、ゴツいチェーンや南京錠がついたアクセサリーです。

 展示会場では、メンズのバッグが豊富に並んでいました。消防士のユニフォームやバッグから着想を得てデザインしたという数種類の新型バックパックは、実用性を重視した作りとのこと。ファーのキャップやバンダナが付いたハットもメンズアイテムでした。ウィメンズは、マシューが再解釈したアイコンバッグ“アンティゴナ”の素材や色違いがラインナップ。ほかにもミニバッグのカラーバリエーションを増やし、クラシックなショルダーバッグも登場しました。ショルダーストラップは、ジュエリーのようなチェーンか、安定感のあるレザーかを選ぶことができます。“V”の形状が印象的なハンドバッグ“カットアウト”はユニセックスでの提案です。ブランドの頭文字“G”をいくつも重ねたチェーンはマシュー得意のアイテムで、ネックレスやチョーカー、ピアスと存在感のあるジュエリーが豊富にそろいます。ちなみに、チェーンや南京錠、バッグに付いたバックルは結構重さがありました。個人的には、”G”の文字を半分に切ったクラッチバッグに心惹かれました。オブジェのように自宅に飾れたら、最高のぜいたくです!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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渋谷スクランブルスクエアがスプリングフェア開催 春を感じるトレンド商品多数

 渋谷スクランブルスクエアは、スプリングフェア「スクランブル スプリング2021(SCRAMBLE SPRING2021」を開催中だ。「SPRING IS HERE. 今と、私と、HUGしよう。」をテーマに、新しい自分に出会えるファッションアイテムやライフスタイルグッズ、春の食卓を彩るスイーツ・デリなどを多数そろえた。期間は3月17日まで。

 「ナージー(NERGY)」はアクティブなライフスタイルをスタートする人たちに向けてロゴを刺しゅうしたフーディーやフラワープリントのタイツとブラトップのセットアップを、「パブリックトウキョウ(PUBLIC TOKYO)」は新生活に彩りを添えるファッションアイテムをバリエーション豊かに提案する。そのほか「ルコント(A.LECOMTE)」や「アースカフェ(URTH CAFE)」は、家族や友達と楽しみたい春らしいスイーツやデリ商品を販売する。レストランフロアでは、各レストランが旬の食材を豊富に使ったメニューを提供する。

 スペシャルコンテンツとして、モデルの佐田真由美とスタイリストの新居由梨がお互いにプレゼントしたいトレンドアイテムを探すショッピング動画を公式ウェブサイトで配信中だ。

■SCRAMBLE SPRING2021
日程:2月25日〜3月17日
場所:渋谷スクランブルスクエア
住所:東京都渋谷区渋谷2-24-12

問い合わせ先
渋谷スクランブルスクエア
03-4221-4280

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「クリスチャン ルブタン」株24%をフェラーリオーナー一族が約700億円で取得

 イタリアの財閥でフェラーリ(FERRARI)社のオーナーとしても知られるアニェッリ(Agnelli)家の投資会社エクソール(EXOR)は、5億4100万ユーロ(約697億円)を投じてクリスチャン ルブタン社の株式の24%を取得した。

 両社は「この提携は(クリスチャン ルブタンの)次のフェーズへの進化を加速させる」と共同で声明を発表。中国でのプレゼンス向上とデジタルおよびEC強化に取り組むという。

 株式取得は21年6月までに完了する見込みで、取締役7人のうち2人をエクソール側から任命する予定だ。ルブタン本人とビジネスパートナーのブルーノ・シャンベラン(Bruno Chambelland)は引き続き過半数株式を保有する。

 ルブタンはアニェッリ家とは数十年来の親交があると話す。アニェッリ家出身の母をもつジョン・エルカン(John Elkann)=エクソール会長兼最高経営責任者(CEO)とは20年ほど前に中国に出張した際に出会い、エルカン会長兼CEOの妹の映画プロデューサー兼ディレクターのジネブラ・エルカン(Ginevra Elkann)とは親友だという。

 エクソールは、2020年12月にエルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)が保有する中国発ライフスタイルブランドの「シャンシア(SHANG XIA)」に約8000万ユーロ(約100億円)を投資したばかりで、今後ファッション業界に進出する可能性があるとみられている。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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ミウッチャとラフはマークやレム・コールハースと何を話した? 「プラダ」2021-22年秋冬コレクション発表後の対話イベントで

 新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、各ブランドがさまざまな趣向を凝らしたデジテル形式のコレクション発表に力を注ぐ中で、「プラダ(PRADA)」は2月25日に2021-22年秋冬コレクションショーをデジタル形式で開催した。ショーの後にはユーチューブ(YOUTUBE)のファッションおよびビューティ部門トップのデレク・ブラスバーグ(Derek Blasberg)が司会を務めるパネルディスカッションが行われ、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)のほかにラフ・シモンズ(Raf Simons)、デザイナーのマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、アカデミー賞のノミネート経験を持つ映像監督で作家、プロデューサー業もこなすリー・ダニエルズ(Lee Daniels)、ショーの音楽を手掛けたプラスティックマン(Plastikman)ことリッチー・ホゥティン(Richie Hawtin)、建築家のレム・コールハース(Rem Koolhaas)、トランスジェンダーモデルのハンター・シェーファー(Hunter Schafer)がそれぞれリモートで参加した。

 ミウッチャは、「オーディエンスがいないとなれば、発言内容により一層意識を向けて雰囲気を作っていく必要がある。人がいないところで話をするのはいつも以上に難しいし、筋が通った見せ方や編集を行うのも以前と違って簡単ではない。そのうちリアルショーに戻ると思うが、デジタルショーで学んだことを無駄にしてはいけないし、両方の要素を組み合わせたら面白くなるだろう」と語った。

 ラフは、「リアルショーに慣れきっていたこともあり、コールハースとはライブ感のあるデジタルショーを作る方法や、空間と洋服を物理的にも心理的にもどのように結びつけるのかについてたくさん話をした。私たちはただショーの動画を撮影していたわけではない」とコメントした。

 「プラダ」は2021-22年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークで、コールハースと彼の建築設計事務所OMAの研究機関であるAMOが考案した、色鮮やかなエコファーと大理石を部屋の床や壁に施した、1月のメンズショーと同じ空間演出でウィメンズ・コレクションを発表した。これに対してコールハースは、「ショーは前もって計画できるが、アドリブも強く求められる。常にオリジナリティーのあるアイデアで挑戦できる」と語った。

 ジャズシンガーのビリー・ホリデイ(Billie Holiday)の伝記映画、「The United States vs. Billie Holiday(邦題未定)」を監督したダニエルズは、主役を演じるグラミー賞ノミネート経験もあるシンガーソングライター、アンドラ・デイ(Andra Day)が劇中で着用する衣装を「プラダ」に依頼した。ダニエルズは、「無観客のファッションショーではフロントローのセレブなどほかに目を向ける存在がいないため、コレクションから目を離さずにひたすら集中することになる」と指摘した。

 ラフは21年春夏シーズンからミウッチャと共同でコレクションを手掛けているが、ランウエイショーの構成や映像化については、以前よりも簡単に決定を下せるようになったという。

 一方でコールハースは、「動画を用いたデジタルショーでは“服を背後から写すシーンで始まり、遠くに消えていきながら終わる”といった、さまざまな視覚的要素を取り入れられる」と述べた。

 ホゥティンは、「音楽はファッションやそのディテールと深く関わっており、リアルショーの時より親しみが増した気がする。デジタルショーと音楽は共生している。コールハースの建築と同じように、音楽はショーをサポートするための枠組みのようなものだ」と語った。

 これに対してラフは、「音楽は映像にエネルギーをもたらし、最終的な結果に大きく貢献する」とした。

 ダニエルズはビリー・ホリデイの映画で「プラダ」と協業したことについて尋ねられると、「ミウッチャの素晴らしい仕事を抜きにしても、ミウッチャはビリーと同じく強い女性だ。彼女に衣装を依頼するのは緊張したが、アーティストとしてとても真剣に取り組んでくれた。当初から彼女が100%の力で取り組んでくれると思っていたし、ビリーの命を衣装に吹き込むことができる人はミウッチャ以外に思いつかなかった」と話した。

 シェーファーは、「ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA(Euphoria)』に出演したことで、衣装やメイクによってさまざまなシーンが強調されたり、クールな効果を付けたり、何かを引き出せたりすることを実感して、大きな学びを得た」とコメントした。

 また、ミウッチャが映画や文学に関心を持っていることから、ほかのパネリスト達がどういった分野に関心を持っているのかを尋ねるシーンもあった。

 ホゥティンは空間や彫刻と答え、コールハースは「お互いが別の惑星から来た者同士だと想定して、仕事相手が目指しているものや彼らの習慣、文化、美学などを理解し、自分の視点やそれが意味するものを解釈するのに役立てている。また、スピード感のあるファッション業界とのコラボは楽しかった。たった15秒で何かすごいものを作り上げることができる。人類学の細かな部分とファッションの直感的なひらめきを掛け合わせるのは非常に素晴らしい」と述べた。

 マークは、「映画、芸術、音楽に加えて“人生のアート”にも関心がある。生きている以上、あらゆるレベルでの人生経験が必要だ。私たちが実践していることは、“綺麗なインテリア”といった類いの、生活を彩るための美的要素に過ぎない」と語った。

マークやレム・コールハースが語る“プラダらしさ”

 また司会者のブラスバーグがパネリストに“プラダネス(Pradaness、プラダらしさ)”の定義を訊ねると、ミウッチャが苦笑する場面もあった。

 マークは「“プラダネス”とは、ミウッチャ自身のことさ。ミウッチャとラフは共同でコレクションを手掛けているが、やはりミウッチャの類いまれなるセンスや着眼点、文化、知性、ファッションへの愛には感銘を受ける。“プラダネス”と、イタリア人映画監督のミケランジェロ・アントニオーニ(Michelangelo Antonioni)、フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)、ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)らが手掛けた映画には、“何でも受け入れる懐の深さ”という点において通ずるものがある。はっきりと言い表せないが、そうした要素を随所に感じる」とコメントした。

 ミウッチャや彼女の夫でプラダ共同最高経営責任者でもあるパトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)とも長年にわたって仕事をしてきたコールハースは、「ミウッチャは何かを嫌いに思うとき、ただ普通に嫌ったり拒絶したりするのではなく、対象のあらゆる側面を検討して、そこから得たエネルギーをほかの何かに生かしている。とても素晴らしいと思う」とコメントし、これに同意するラフの傍らでミウッチャが笑っている、というシーンもあった。

 ミウッチャは、「マークが言ったように、ファッションはインスピレーションと人生に深く根ざしている分野だ。私たちは基本的に、建築や音楽、そしてそのパフォーマーたちと関わりながら物語を伝えていかなければならない。突き詰めていくとファッションは人生なので、他者の介入が必要になる」とコメントした。

 マークは、「こうしたやりとりは興味深くて勉強にもなるし、クリエイティブな方向性を感じる。確かに以前は忙しいスケジュールに文句を言っていたが、実際に休みを取るのは変な気がしたし、難しくもあった。まさにハムスターが車輪の中で走っているように、休むことができない感じがしていた。しかし今季はまだショーを開催しておらず、今は休みがあることで文句を言っている。休めなかった日々が恋しい。私は尊敬する人びとにかなり関心があるため、今回のパネルディスカッションは非常に興味深い」と語った。

 するとコールハースは、「緊急性のある地球温暖化やサステナビリティの分野では科学者との協力関係も必要だが、そこには美学や忍耐がほとんどないため、一般的にテンポが遅いと言われる建築業界のスピードは加速し、結果的にはかなり思い切った変化を引き起こしている。突如として緊急性のある事態に直面したことで、すべての優先事項を無視しなければならなくなった。新鮮だし、みんなで協力する必要がある」と話した。

 ミウッチャは、「私もそう思う。今回のパネルディスカッションでは気軽な問題について話をしたが、今現在、多くの政治的問題や業界としての正しい行動に対する責任、変化に貢献すること、そして多様性、ジェンダー、生態系といった問題に真剣に取り組むことが求められている。すべてを解決することはできないが、責任を持って積極的に行動することが大切だ。こうした問題を取り上げて、正しい方向に一歩踏み出していくことが重要だ」と述べた。

 今回で3度目の開催となる対話形式のイベント、“プラダ・インターセクションズ(Prada Intersections)”は、ミウッチャとラフがよりダイナミックな創造性を求めてファッション業界以外の人びとコミュニケーションを図り、新しい意見に触れることを目的としている。2人は1月に開催された2021-22年秋冬シーズンのメンズショー終了後にも、世界の大学やカレッジから選ばれた学生たちとリモート形式で対話する機会を設けた。また20年9月には、ショーに先駆けて公式ウェブサイトで両者への質問を募り、2人の対談のライブ配信も行った。

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アレキサンダー・ワン、告発内容を認める声明を発表 性的暴行被害者らに謝罪

 アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)は、一連のセクシャルハラスメント疑惑に対し、再び自身のインスタグラム上で声明を発表した。

 ワンは3月9日、「最近、私の過去の行いについて複数人から告発を受けた。私は彼らが声を上げる権利を支持しており、その意見に注意深く耳を傾けた。体験を語るのは容易ではなかっただろうし、彼らに苦痛を与えるような行動をしてしまったことを後悔している。こうした個人的なやりとりについていくつか意見が相違する点はあるものの、今後はよりよい手本となるべく、私の知名度や影響力を使って有害な行為に対する認識を広めていきたい。人生とは学びと成長の場であり、今回学びを得たからには、より向上したいと思う」と投稿。1月5日付の声明では疑惑を全面的に否定していたが、今回は告発の内容を認めたと受け取れるものとなっている。

 事の発端は、2020年12月28日にモデル兼グラフィックデザイナーのオーウェン・ムーニー(Owen Mooney)が、17年にニューヨークのクラブで有名な男性デザイナーに局部などを触られたと告発する動画を投稿したことだ。その際、加害者の名前は伏せられていたが、「ワンに対する同様の告発を見たことがある。ワンではないか?」とのコメントが寄せられ、ムーニーは次の投稿で相手がワンだったことを公表した。ワンはこれを否定したものの、その後も同様の告発が相次いでいた。

 被害者らの代理人を務めているリサ・ブルーム(Lisa Bloom)弁護士は、2月24日の時点では「訴訟を起こすかどうかについてはまだ明らかにできない」と述べていた。しかし3月9日に、「被害者の方々はアレキサンダー・ワン本人と会い、彼らが体験したことや、その痛みや苦しみを伝える機会を得た。われわれは同氏の謝罪を受け入れ、前進することにした」と、やはり自身のインスタグラムに投稿している。

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「リック・オウエンス」2021-22年秋冬コレクション

 「リック・オウエンス(RICK OWENS)」が2021-22年秋冬コレクションを発表した。

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「ショーメ」がドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」とコラボ 大地真央が億越えジュエリー着用 

 フランス・パリ発ジュエラー「ショーメ(CHAUMET)」は4月10日にスタートするドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」とコラボレーションする。このドラマは、東海テレビ・フジテレビ全国ネットの「オトナの土ドラ」シリーズ第33弾だ。主演は大地真央で、助演が松本まりか。ポスターで大地はパリから取り寄せた「ショーメ」の2億8000万円相当のジュエリーまとっており、ドラマ全話で同ブランドのジュエリーやウオッチを着用する。大地はポスター撮影後に「ものすごいジュエリー。2億円以上の重さだった」とコメント。

 原作は林真理子の小説で東村アキコによりマンガ化されている。大地は高価なファッションやジュエリーをまとう美容クリニックの敏腕経営者の中島を演じる。松本は編集者兼ライターである菊池いづみ役。名古屋出身の還暦を迎える中島の嵐のようなエネルギーに翻弄されながらも成長するアラフォー女性を演じる。

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エドウインがジーンズ回収プロジェクト“コア”を始動

 エドウインはこのほど、自社工場で生地の裁断時に生まれるくずや客がはかなくなったジーンズを回収して、デニム生地やジーンズにリサイクルする“コア(CO:RE)”プロジェクトをスタートした。回収期間は3月1日から31日までで、「状態は不問。エドウインの製品でなくてもよい」(プレス担当者)という。“コア(CO:RE)”とはCOtton:REcycleを略した造語で、「ジーンズを資源として活用し、環境負荷を減らす循環型プロジェクトだ」と説明する。

 ステップは以下の通りで、エドウインの自社工場および協力工場で行う。①客のはかなくなったジーンズを「回収」、②回収したジーンズを用途ごとに選別して加工しやすい状態にする「選別・前処理」、③ジーンズを綿(わた)の状態に戻して新たな綿とブレンドして糸にする「反毛・紡糸」、④糸を染色してデニム生地を織る「染色・織布」、⑤「縫製・加工」、⑥完成した商品を新たな客に届ける「販売」。

 “コア”プロジェクトに参加するためには、はかなくなったジーンズを「エドウイン(EDWIN)」や「リー(LEE)」「サムシング(SOMETHING)」の直営店などに持参するか、発送する。発送の場合は、まずエドウインの公式サイトから返却キットを申し込む。指定の住所に返却キット(専用袋、佐川急便の着払い伝票、返却の手引書)が届いたら、専用袋にジーンズを入れて送る仕組みだ。返却キットには、エドウイン傘下の直営店やオンラインストアで使える1000円分のクーポンが同封され、店舗への持参者にも同じものがプレゼントされる。

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被災地に仕事を生んできた気仙沼ニッティングが語る地方発ビジネスの未来 #あれから10年

 気仙沼ニッティング(御手洗瑞子社長)は、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市を拠点にする手編みニットメーカーだ。被災した人々が誇りを持って働ける仕事を地域に作り出すという意図で、2012年にプロジェクトがスタート。13年に法人化した。気仙沼の編み手たちが一つ一つ丁寧に編むセーターは熱烈なファンを集め、14万円のフルオーダーのカーディガンは現在も1年半待ち。クリスマスなどの季節ごとに、編み手のもとにはファンから多くのメッセージカードが届くという。震災をきっかけに始まったビジネスが、地方やファッション小売りの未来を切り開いている。

WWD:立ち上げ当初から、地域に根づいた産業を作る、働く人が誇りを持てる仕事を生み出す、ということを掲げてきた。
御手洗瑞子社長(以下、御手洗):われわれは最初から、復興支援のための1~2年のプロジェクトではなく、地域でずっと続く産業を作ろうという考え方でした。震災直後は仮設住宅での孤独や喪失感を紛らわせるために、ミサンガを編むプロジェクトや千羽鶴を折るプロジェクトなどがいくつもあって、それとわれわれの編み物のワークショップを同一視していた人もいたと思います。でも、地域の人たちからのそういった受け止められ方も徐々に変わってきました。あのころ多数あった復興支援のプロジェクトは、今は町の中からほぼなくなっています。気仙沼ニッティングの編み手も、自分の行っていることはプロフェッショナルな職人の仕事なんだと自負していると思います。

WWD:地域の中で編み手を組織し、商品を途切れず作っていく仕組みを整えるのは大変な部分も多かったのでは。
御手洗:技術を持った編み手が増えたことは、立ち上げからの9年間で大きな手応えを感じている部分です。技術の向上は手仕事では一番時間のかかる部分であり、同時にこの事業にとってのコア。編み手の登録者数は現在50人ほどで、50~60代の女性が中心です。地方の女性は家の仕事の大半を担っているケースが多く、家族や自身の体調不安などもあって、毎日毎月同じ時間働けるというものではありません。コロナ禍の影響でみなで集まって編む活動も中止しています。家族のためにセーターを編むのではなく販売する商品なので、設計図の細部まで完璧に再現できないといけない。料理人にとっての大根の桂むきと同じで、手が慣れて、細かい図面まで編めるようになるには時間がかかります。

 編みの技術が習熟するように、1人の編み手が一定期間は同じ型を編み続けるようにしていますが、1型しか編めないと、その年にその商品が売れないと編み手の仕事が減ってしまう。商品の販売状況だけでなく、そういった編み手のキャリアプランも同時に考えて仕事を割り振っていかないといけない。編み手それぞれの力量や仕事に割ける時間などを考慮しつつ、会社としてどんな状況でも商品を作れる仕組みを作ってきました。編み手が習熟する中で生産のキャパシティーも徐々に大きくなっていて、フルオーダーのカーディガン“MM01”のウィメンズは2年前はお届けまで2年半待ちでしたが、今は1年半にまで短縮できています。セミオーダーや既製品など、フルオーダー以外の商品もそろえています。

WWD:この1~2年の間に、ファッションの世界でもSDGs(持続可能な開発目標)が強く意識されるようになってきた。考えてみると、気仙沼ニッティングは立ち上げ当初からそうした考え方を持っていた。
御手洗:気仙沼ニッティングを立ち上げたときは国連サミットでSDGsが提唱される前でしたし、会社としてそれをポリシーとして前面に打ち出していたわけでもありません。ただ、時間をかけて手編みで作る以上は、普遍的で古くならず、長く使える商品を提案したいという考え方が自然だった。必要だと思ってやってきたことが、気付いたら世の中全体の標語(SDGs)になっていた、という感じです。

 「いいものを長く使いたい」という価値観が見直されてきていることは強く感じますし、世の中が一旦そこに気付いた以上、こうした考え方は不可逆なものだと思います。いま、購入から5~6年たった商品をメンテナンスのために気仙沼に送ってきてくれるお客さまが非常に増えています。1着作るのに時間をかけている分、編み手や私は売れた後も「サイズは合っていたかな?」「気に入っていただけたかな?」とすごく気にしている。そんなふうに送り出した商品が大事に着られていて、「これからも着続けたいから直してほしい」と言われるんです。これほど作り手冥利に尽きることってありません。戻ってきた商品を見て、「こんなに着ていただけたんだ!」って感じられるのは、9年続けてきたからこそだと思います。

「地方には、個々の力では生めない歴史や文化がある」

WWD:ファンとの間に強いコミュニティーができているのを感じる。コミュニティーをいかに作り出すかは、これからの時代のブランドビジネスに欠かせない視点だ。
御手洗:確かにリピーターのお客さまは非常に多くて、日頃からお礼のメールもたくさんいただきますし、クリスマスなどには編み手宛てにメッセージカードも大量にいただきます。ただ、コロナ禍の前までは、東京・北参道で直営店も運営していて、そこでは“ニットオーナーズデー”と題した顧客向けイベントなども開いていたので、よりコミュニティー感が強かったかもしれません。コロナ禍で気仙沼との行き来が難しくなり、東京店は20年8月に閉めました。売り手とお客さまとのコミュニケーションが直営店の目的だったので、それができないなら直営店を運営していても意味がないなと思って。

 幸い卸販売の形に切り替えることができ、ふるさと納税の返礼品にもなったことで、これまで気仙沼ニッティングの名前は知っていても、買ったことはなかったという新規のお客さまを取り込むことにつながっています。コロナ禍で身動きは取れなくなりましたが、新しいことに挑戦し、新規のお客さまやパートナーとつながることができ、手応えを感じています。

WWD:気仙沼ニッティングは地方発ビジネスの成功例だ。地方の活性化は日本全体の課題でもある。
御手洗:コロナ禍であらゆる打ち合わせや会議がオンラインで可能になり、地方でビジネスをすることの不利な点はかなり減ったと思います。地方を拠点にしつつ、マーケットとしては日本全体、もしくは世界を狙うということができるようになりました。地域に紐づいているブランドの方が個性やキャラクターは濃くなるから、むしろ地方発のブランドの方がこれからは有利になると思う。浮ついた言葉で「うちのブランドにはこういうストーリーがあります」と説明するのとは違って、地域に根付いた技術や素材を使い、地域の歴史の延長線上にあるブランドなら、時間軸の長い個性を持てますから。歴史や文化という、個々の力では生み出せないものが地方にはあります。

 うちの編み手も、「小さい頃に漁師だった父親が編んでくれたセーターを着ていた」といった話を何でもないことのように話します。気仙沼のような漁師町は、漁網を繕うために編み物が盛んだったという話は多くの人にとっては知らないこと。こういった地域の物語を背景にしながらモノ作りをして、商品として届けていくことは、まるで現代の民俗学みたいです。知らなかったことを知って「面白い」と思ってもらえることは、「かわいい」「かっこいい」といったことと共に大切だと思っています。

WWD:これから地方で起業しようと考えている人に、先輩としてひと言を。
御手洗:気仙沼では待機児童問題も聞きません。子どもを連れて出勤しても、私が手が離せない間は子育てのベテランである編み手の誰かが子どもを見てくれる。東京では妊娠して満員電車に乗るのも大変そうですが、こちらはそういった問題とも無縁で、そんな点でもやはり地方は東京よりも有利だと感じます。経理や労務などの担当者を地方で探すのは確かに大変だと思いますが、今ならその部分だけを東京の企業や個人にアウトソーシングすることもできる。自分の経験から言って、若い時に地方で起業するというのはとてもいいと思います。

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「午後の紅茶」発売35周年でリニューアル ロングセラー商品に学ぶ「愛され続ける」秘訣

 今年発売35周年を迎えるキリンビバレッジの「午後の紅茶」は、フラッグシップ商品である「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」をリニューアルし、3月9日に全国発売する。飲料市場における紅茶カテゴリーの売上シェア50%※1を占め、全清涼飲料において好意度第2位※2を誇るブランドは、35年でどのような商品開発やコミュニケーション戦略を行ってきたのか。「午後ティー」の愛称で親しまれる国民的紅茶ブランドのリニューアルから、ロングセラーであり続ける秘訣を探る。

「幸せなときめきを届ける」
味わいとパッケージ

「午後の紅茶」は、1986年に日本初※3のペットボトル入り紅茶として誕生した、市場のパイオニアだ。多くのロングセラー商品がそうであるように、消費者の嗜好に合わせてマイナーチェンジされる味わいや発信されるキャッチコピーは、時代の合わせ鏡として「売れ続ける商品」作りのヒントが隠されている。
 35年目のリニューアルでは、「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」というブランド・パーパス(社会的存在意義)を軸に、健康意識の高まりや、紅茶を飲むと“少し気持ちが上がる”ベネフィット(商品から得られる良い効果)に応えた施策を、商品とキャンペーンの双方から訴求する。
 まず味覚では、茶葉のブレンドを見直した。フレーバーごとに相性の良いスリランカ産の品種を使用して、「すっきり感」と「茶葉の香り」を高めることで「午後ティー史上最高おいしい!」を実現したという。パッケージでは、背景をダイヤ柄に変更して、ティーポットのイラストを大きく配置。おいしさと上品な可愛いらしさを同時に連想させるデザインにすることで、正統派で上質なイメージを強めた。

絶え間ない商品開発の努力で
ペットボトル紅茶を日本の“文化”に

 今でこそ、日本において「午後の紅茶」を知らない人は極わずかだろうが、商品が誕生した1986年は紅茶といえば本場・英国と同じく、家庭で淹れるホットティーが主流だった。「それから35年の間に、私たちの『午後の紅茶』が、ペットボトルで紅茶を飲むという今では当たり前の習慣を作ってきたという自負がある」と加藤麻里子シニアブランドマネジャー。ただ当時の商品開発に当たっては超えるべきハードルも数々あった。その一つが、「紅茶は冷やすと濁る」という性質で、当時は“おいしそうな透明感”をアイスティーで出すのは困難だった。この課題を解決したのが、キリンビバレッジの独自技術「クリアアイスティー製法」で、日本初のペットボトル入り紅茶の商品化を可能にした。
 発売から徐々に売上を伸ばしていった「午後の紅茶」は、1996年の小型ペットボトルの発売をターニングポイントに、紅茶を日常的に飲む習慣をさらに普及させていく。無糖茶市場が盛り上がる2006年には、“紅茶=甘い・高いカロリー”の固定概念を払拭するために、「20年目の新提案。実はヘルシー」のキャッチコピーで、「午後の紅茶」から遠のいていたユーザーの再トライアル化に成功。10年に発売した「エスプレッソティー」は男性の缶コーヒーユーザーを捉え、11年に登場した「おいしい無糖」は「おにぎり公式飲料!?」という意外性のあるキャッチコピーと新たな飲用シーンの提案で、無糖紅茶の市場定着に貢献した。19年に発売した、甘くない・微糖の“午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー”は大人層の気分転換のシーンにマッチして、大ヒット商品へとつながっている。

 時代に合わせて、さまざまなフレーバーや企画商品を柔軟に打ち出す「午後の紅茶」だが、「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」は「ブランドイメージを形成するフラッグシップ商品。嗜好品としてのおいしさを追求している」と話す。リニューアルの商品開発では、通常の10倍となる約3000人の意見を参考にした。常温テストも行い、飲み切るまでの味わいにも徹底的にこだわった。「『午後の紅茶』を飲む人だけでなく、飲まない人にも『おいしい』と言っていただける商品を作るのに苦労した」と振り返る。
 徹底した市場調査から導き出される「午後の紅茶」流のマーケティングだが、過去のリニューアルでは苦戦もある。商品パッケージからブランドのアイコン、アンナ・マリア婦人の似顔絵を消したときに「約3年間、売り上げが低迷した。ブランドは無形資産と言われるように、「午後の紅茶」の明朝体のフォントだけでなく、婦人とセットで見ると直感的に『午後の紅茶』だと認識されていたことが分かり、何かが無くなったり加わったりするだけで、ブランド価値が揺らぐことに気付かされた」と話す。
 「午後の紅茶」は、今後さらに半世紀愛されるブランドを目指して「まずは今年1年、お客さまに支えられた感謝をさまざまなかたちで伝えていく」。リニューアル商品発売の3月以降も、やさしさ・おいしさ・ときめきをコンセプトにしたキャンペーンを続々と予定している。ビジネス面では「清涼飲料全体で紅茶市場のシェアは約5%※4と低く、まだ伸びしろがある。NO.1ブランド※5として、さらに多くの人に紅茶を飲んでいただけるきっかけを作っていきたい」と展望を語る。

茶葉から広がるCSV活動

 「午後の紅茶」は、商品と親和性のある地域や国でCSV活動を続けてきたが、今年はその取り組みを強化して、社外にも発信していく。日本に輸入される紅茶葉の46%※6占め、「午後の紅茶」にも使用するスリランカ紅茶葉の産地支援プロジェクト「キリン スリランカフレンドシップ」 の一環では、07年に農園の子どもたちが通う学校へ図書を寄贈する「キリンライブラリー」をスタート。13年からは、農園従事者の生活と労働環境の向上を目指して「レインフォレスト・アライアンス認証」取得の支援プログラムも続けている。茶葉をフックにした社会貢献からも、「午後の紅茶」のおいしさを伝えることを推進していく。

※1 ※4 2019年「清涼飲料関係統計資料」全国清涼飲料工業会調べ
※2 2020年3月 キリンビバレッジ調べ
※3 株式会社食品マーケティング研究所調べ(1986年当時の主要飲料販売メーカー及び製罐メーカーを対象としたヒアリング調査による)
※5 株式会社食品マーケティング研究所調べ(2020年実績)
※6 財務省「貿易統計」

のんだあとはリサイクル。
PHOTO:SHUHEI SHINE

問い合わせ先
キリンビバレッジお客様相談室
0120-595955

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新聞を発行した「ロエベ」と、映像でも余韻を感じさせる「ヨウジ ヤマモト」 パリコレ対談Vol.2

 2021-22年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)が3月10日までオンライン上で開催中です。ここでは4〜6日に発表された中から厳選した9ブランドをご紹介。過去8年間パリコレやミラノコレを取材してきたベルリン在住の藪野淳ヨーロッパ通信員と、ウィメンズ・コレクションを担当する大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

「ビューティフル ピープル」で冨永愛が熱演!鏡に映るもう一人の姿

大杉:「ビューティフル ピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」は2021年秋コレクションで発表した新たなパターンテクニック「ダブルエンド(double-end)」を発展させたコレクションでした。「ダブルエンド」は単なる2ウエイではなく、上下をひっくり返すことで新しい形の服になるアイデアです。動画では、日本を代表するモデルの冨永愛さんを起用していましたね!鏡のような演出で、鏡面に映った姿と同じ服を着ていても、別の着方をしているという表現でした。愛さんが鏡の向こうの自分に笑いかけたり、にらみ合ったりする演技が強く、別人格がいるようでドラマチック。引き込まれました。

藪野:パンツも上下逆にできるのには驚きでした。ちなみに「ビューティフル ピープル」の後に披露された「ヴィクトリア/トマス(VICTORIA/TOMAS)」も先シーズンからコンセプトを変えていて、今季も全てのウエアがリバーシブル仕様のコレクション。実際のところ、リバーシブルや2ウエイってどちらかの着方の方が好みだったり素敵だったりして、結局1パターンでしか着ないということも多いですよね。両方を高い完成度に持っていくのはなかなかチャレンジングですが、こういう“一着で二度おいしい“的な提案は増えてくるんですかね?

大杉:そう言えば、ミラノで発表した「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」も、インサイドアウト(裏返し)、アップサイドダウン(逆さま)など、リバーシブルで2パターンの着こなしができる提案をしていました。「ビューティフル ピープル」は3月15日に東京でファッションショーを開催予定で、その内容は今回のパリコレ動画の続編となるそうなので、来週の発表も楽しみです!

風が吹き荒れる海辺を舞台にした「リック・オウエンス」

藪野:「リック・オウエンス(RICK OWENS)」はライブショーの配信でしたが、今回も舞台はパリではなくイタリア・ベネチアの南にあるリド島です。かつてはカジノだったという歴史ある建物をバックに開催した21年春夏シーズンに対し、今季のランウエイはビーチにあるコンクリートの桟橋。冬の海と曇り空という背景が、どこか物悲しい雰囲気を漂わせます。

大杉:風が吹き荒れる海辺で、冬の厳しい寒さが伝わってきました。バックステージも映し出され、リック本人もモデルへ着せ付けをしていましたね。今季のファッション・ウイークも終盤ですが、モデル全員がマスクを着用していた唯一のショーだったと思います。ただ普通のマスクではなく、黒やグレーで首元まで垂れ下がるロング丈で、ファッションとして提案されていたのがよかったです。

藪野:コレクションは1月に披露されたメンズ・コレクションと同じく「ゲッセマネ(Gethsemane)」という題名で、これはキリストが磔の前夜に祈りを捧げた庭のことだそう。メンズに通じる地面を引きずるほど長いコートやパワーショルダーのボンバージャケット、袖が取り外せるダウンジャケットなどが登場しました。ウィメンズではほぼ全てのモデルがレザーのボディースーツを着用。マーメイドラインのロングドレスも印象的でしたね。

「ロエベ」は新聞でコレクション発表

大杉:「ロエベ(LOEWE)」は前シーズン、ファッションショーが開催できない代わりに壁紙をプレス関係者に送って原寸大のルックを見せるという試みをしていましたが、今回は新聞を作っちゃいましたね!“【特報】ロエベ ファッションショーを中止”という見出しが入った“ロエベ新聞”は、朝日新聞の折り込みで都内一部の定期購読者に配布したそうですね。フランスでは「ル・フィガロ(Le Figaro)」 、イギリスでは「タイムズ(The Times)」、アメリカでは「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」と取り組んだそう。クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の発想には驚かされます。

藪野:ジョナサンは毎朝、新聞を読むのが好きだそう。新聞を使った理由については、「多くの観客にショーを届けるためにメディアを手段として使うことを考えた。自分たちがやろうとしていることに対して、より多くの人に興味を持ってもらえるように広く配信したかった」と話していました。ちゃんと発行される国の言語に翻訳もされているというところから彼の本気度が伺えます。コレクションは視覚的に訴える鮮やかな色と幾何学なモチーフが印象的でしたが、ジョナサンはカラーセラピーについて考え、気持ちを明るくしてくれる色を取り入れたとのこと。ここ数シーズン顕著なドラマチックなボリュームやドレープの使い方も見られる一方で、1920年代の乗馬用ジャケットなどからヒントを得たという縦長シルエットのテーラリングやドレスのようにまとうレザーコートなどもあり、充実したラインアップで着飾ることの楽しさを伝えているように感じました。「ロエベ」と言えばレザーグッズも重要ですが、その辺りはどうでしょう?

大杉:弊紙が全国百貨店を対象に行った取材によると「ロエベ」は今、日本でとても好調です。映画「となりのトトロ」とのコラボレーションも話題になりまし、SNSで露出が多く、幅広い世代から支持を得ています。動画の中でジョナサンが「新しいアイコンとしてタイムレスで、ジュエリーのようなバックを目指した」と話していたショルダーバッグの“ゴーヤ(GOYA)”バッグに一目惚れ。個人的にも欲しいと思っています。

藪野:価格が気になるところですね。また、ブランドを代表する定番バッグ”アマソナ(AMAZONA)”も久々にコレクションでフューチャーされていました。オリジナルの南京錠付きデザインですが、より上質なレザーや進歩した技術力を駆使して、より洗練されたアイテムに仕上げたとのことです。形状は横長の長方形に加え、新たに正方形に近いものが登場。カラフルなレザーとアナグラムのジャカード生地で提案されています。

「イッセイ ミヤケ」の“静かだけど堂々としている服”

藪野:「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」のテーマは、“As the Way It Comes to Be -生まれたままで-“。是枝裕和監督の映画作品「そして父になる」や「海街diary」で撮影監督を務めた瀧本幹也さんがディレクションした映像を通して、コレクションを発表しました。無機質なビルと自然の中で、有機的なフォルムと色が際立っていましたね。特にしなやかな曲線を描くプリーツが目を引きました。大杉さんは、東京で実際のアイテムも見てきたんですよね?

大杉:はい。普段、展示会を行っているホールが上映室になっていて、編集長の向と私の2人で事前に映像を拝聴するという贅沢な機会をいただきました。その後、デザイナーの近藤悟史さんに説明を受けながら、実際のアイテムに袖を通してきました。今季は自然の普遍的な美しさに着目して、「静かだけど堂々としている服を作りたかった」という近藤さんの言葉が印象に残りました。特殊な素材加工を強みとする「イッセイ ミヤケ」には珍しく、無染色のウールやオーガニックコットンのそのままの色と風合いを生かしたウエアシリーズもありました。ウールコートは柔らかく、軽くて、細部まで近藤さんのこだわりが詰まっています。詳しいレポートも書いたので是非合わせて読んでいただけたら嬉しいです。

「ニナ リッチ」の無観客ショー(仮)

大杉:「ニナ リッチ(NINA RICCI)」は青い椅子を並べたランウエイをモデルが歩く、無観客ショーの映像でした。ルシェミー・ボッタ―(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)のデュオによる「ニナ リッチ」は透明感があって、近未来的な印象です。ジャケットのセットアップとスポーツウエアのようなパーカのレイヤードや、膝上丈のコートと千鳥格子のカラータイツの組み合せたスタイリングは、軽やかでフレッシュ。多数のモデルが被っていたクラウンの高い帽子もカラフルで目を引きました。藪野さんはZoom上で取材もしましたが、ルシェミーとリジーはどのようなことを話していましたか?

藪野:僕が取材したのは映像の公開前で「先シーズンよりもランウエイショーに近い形にしたけれど、普通とは違うクリエイティブな映像を目指した」とリジーが話していたのですが、実際に見て納得しました。確かに普通のショーのように始まりますが、スーパースローモーションや逆再生、合成を取り入れることで不思議な映像になっていましたね。コレクションはというと、2人は「クチュールメゾンとしてのヘリテージを大切にしながらも日常の中で着られるものを作りたい」という思いを持っていて、今季から価格帯を見直してより手の届きやすいブランドを目指すようです。コレクションも「アイテムの型数を絞ってより色と形にフォーカスした」と言います。デザインは、得意とするテーラリングにユーティリティーやスポーツウエアの要素、そしてクチュール由来の形状をミックス。細長いシルエットのスーツは、1940年代のアーカイブから着想を得たもので、ガーメントダイのナイロンやウールを使ったワークジャケットや取り外しできるスカーフ付きのダッフルコートは後ろが少しふくらんだコクーンシェイプが特徴になっています。遊び心のあるアクセサリーも彼らの魅力ですが、イヤリングはメゾンを代表する香水“レールデュタン(L’AIR DU TEMPS)”の瓶の蓋からヒントを得た鳥のデザイン。そして大杉さんが気になった帽子は、ファーストコレクションで披露したハットを作る時に使った木型の形を再現したそうですよ。

動きの余韻を感じさせる「ヨウジ ヤマモト」

藪野:「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」は、昨年9月のパリコレで見たリアルショーの中でも特に心に残っているブランドなのですが、やっぱりリアルで見たいな〜と思いました。というのも、「ヨウジ ヤマモト」のショーにはモデルが歩いた後に余韻が漂うような独特な雰囲気があるから。今回の映像では、モデルがゆっくりと歩く動画に、白黒の動画や写真を重ねるように織り交ぜることで、そんな余韻の表現を試みているようにも感じました。

大杉:そうですね。映像でもドレープが美しいカーテンのかかった会場と、少しさみしい女性の歌声の演出がエモーションに訴えかけてきて、ブランドの世界観が感じられました。大きな安全ピンがボタンになったロングジャケット、紐やチェーンを大胆に垂らしたロングドレスなどは、今の不安定な世の中や、脆さを表しているようで、世の中の心境とリンクしているように思います。ラストには「リミフゥ(LIMI FEU)」のコレクションも登場しましたね。

3都市をつないだ「エルメス」のパフォーマンス

藪野:「エルメス(HERMES)」は、「Triptych(三部作)」と題して、ニューヨーク、パリ、上海の世界3都市をつないだ壮大なコレクション発表でした。最初の舞台はニューヨークで、振付師のマドリーヌ・オランダー(Madeline Hollander)演出によるウォーキングとダンスを組み合わせたような生き生きとしたパフォーマンスを7人の女性ダンサーが披露。そこからパリでのランウエイショーへと移り、上海での振付師グ・ジャニ(Gu Jiani)監修による中国の伝統舞踊の動きを取り入れた女性ダンサー5人のパフォーマンスで締めくくられるというものでした。全体を通して、女性の力強さが表現されているように感じましたね。

大杉:オンタイムで映像を見ていたのですが、ちょうど音声SNS「クラブハウス」で「マルタン・マルジェラとパリで仕事をして着たカナコさんに当時の話をお聞きする」というトークルームが立ち上がって、副音声にして聞いていました。パリでスタイリストとして活動されている日本人女性のカナコ・コガさんは、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)がウィメンズ・アーティスティック・ディレクター時代の「エルメス」のデザインチームに所属されていた方。現「エルメス」のウィメンズのアーティスティック・ディレクターを務めるナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)は当時、マルタンの元で「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」が「女性のためのワードローブ」を提案する“4”ラインのデザインを担当していたという話をしていました。今回のコレクションを見ていると、ナデージュは師匠であるマルタンのデザインを継承しているのが分かります。マルタンがかつて「エルメス」でデザインしたレザーストラップをコートの留め具に施したり、ブランケットのようなコートがあったり、腕には二重巻きの時計ストラップ “ドゥブルトゥール(Double Tour)”を付けたアップルウオッチ(Apple Watch)の新作もありました。とてもマニアックですが(笑)、そんな発見も面白いですよね。

藪野:なるほど。「クラブハウス」ではそんな貴重な裏話が聞けることもあるんですね。コレクションでは、多くのモデルがデニムやレザー、ギャバジン、ダブルフェイスカシミアのハリのあるコートやジャケットの下に、セカンドスキンのような透け感のあるハイネックニットを着用。ミディ丈のプリーツドレスやポルカドット柄のドレスもハイネックで、首元とウエストにスモッキングが施されているのが印象的でした。ショーに先駆けて公開されたドキュメンタリーの中で、ナデージュは「今回のコレクションは出かけたい、この服を着たいという気持ちを掻き立てることが重要だった。技巧や動き、センシュアリティーを忘れることなく、心地良さやプロテクションを表現できる素材にこだわった」と話していましたね。

大杉:アクセサリーでは、メゾンを代表するバッグの“バーキン(BIRKIN)”が登場しました。ネイビーのカーフレザーとデニムを合わせた異素材ミックスのデザインが新鮮です。また、スマートフォンを収納できるミニバッグや、口紅を入れて首から下げられるリップスティックケースもあり、売れそうですね。

独自のデザインコードを再考した「ロク」

藪野:「ロク(ROKH)」は毎シーズン、デザイナーであるロク・ファン(Rok Hwang)自身の思い出が出発点になっていますが、今季はブランドの歩みを振り返ったそう。そして、「ロク」のデザインコードとは何かを再考。トレンチコートやジーンズ、テーラリング、イブニングドレスといったカテゴリーごとに分析するとともに再構築し、折衷的に組み合わせたといいます。

大杉:いつもよりギラギラした雰囲気がありましたね。薄暗いコンクリート打ちっ放しの空間を歩くモデルたちは、黒い総レースのビスチェにデニムスカートを合わせ、レオパード柄のコートの上から太ベルトでウエストマークをするなど、ボディコンスタイルです。派手なデザインでも下品にならず、洗練された雰囲気を保てているのは「ロク」の絶妙な丈感や、装飾のバランスなのだと思いました。2ピースに分かれる変形トレンチコートや、ワンショルダーのテーラードジャケットなど、ギミックを入れたアイテムは“「ロク」らしさ”を確立していると思います。

藪野:これまでと比べてよりセンシュアルでフェティッシュな雰囲気でしたが、「ロク」らしいを感じるコレクションに仕上げていていましたね。「WWD」NY版には、「スタイルの衝突が新鮮で刺激的だと感じた。人々は社交的なアティチュードを持ったフェミニンなものを求めている」とアフターコロナのファッションについて話していましたが、まさにそれを形にしたコレクションでした。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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元エンジニアの学生からアントワープを代表する若手デザイナーに 気鋭ブランド「ナマチェコ」の深みを増す服作り

 2015年に始動した気鋭ブランド「ナマチェコ(NAMACHEKO)」が、メンズ市場で存在感を強めている。デビュー直後は10万円のシャツや30万円のコートなど上顧客向けのコレクションだったが、最近は3万円代のデニムなどリーズナブルなアイテムも増やして若年層の支持を拡大。現在、国内で約20、海外で約40のアカウントを持つまでに成長している。

 デザイナーのディラン・ルー(Dilan Lurr)は、大学で土木工学を専攻していた元エンジニア。服飾学校に通っていたわけではなく、プライベートワークで制作した映像作品の衣装がパリの有力ショップ「ザ・ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)」に買い付けられ、ブランドを設立した。以降、18年春夏シーズンからパリ・メンズ・コレクションに参加し、19年には若手デザイナーの登竜門「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE)」のファイナリストに選出されるなど、着実にキャリアを伸ばす。デビューから5年、「最初はデザイナーを続けるつもりはなかった」と語る彼に、深みを増す服作りの哲学を聞いた。

WWD:2021-22年秋冬コレクションはいつもよりもダークな印象を受けたが、テーマは?

ディラン・ルー(以下、ディラン):ドイツの映像作家ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー(Rainer Werner Fassbinder)から着想を得て、社会に抗う若いアウトサイダーをテーマにした。ファッションは時代をリフレクトすることが重要で、10年後にコレクションを見た時に「あの時の服だ」と分からないといけないと思う。今回は不透明な世の中を映しているから、ダークに見えるのは当然。でも、シリアスな面だけを切り取っているわけではないんだ。僕は若者たちから大きなインスピレーションを受けていて、彼らは気候変動やサステビリティなど、社会問題に向き合い、ずっと行動し続けてきた“闘争する世代”。コロナを悲観するだけじゃなく、世の中が変わるきっかけだとポジティブに捉えているから、そのエネルギーも感じ取ってくれたらうれしい。

WWD:時代のムードは具体的にどこに落とし込んだ?

ディラン:これまでは、外出するときにシーンに合わせたドレスアップが必要だった。でも今はほとんど家にいて、「快適な服を着ること」が命題になっている。家で快適に着られて、そのまま外出してもきちんとして見える服が作りたかったから、柔らかさと耐久性を備えるモヘアを、ニットやパンツ、コートなど多くのアイテムに使ってみた。モヘアは大好きだけどここまで多用したことはなかったし、リラックスし過ぎないよう毛を短くするなど、素材の特徴と向き合う良い機会にもなったよ。

WWD:コロナで服作りのプロセスは変わった?

ディラン:リモートでできる仕事じゃないから、実際それほど変わっていない。ブランドに携わる人たちの仕事を無くしたくないから、生産ラインもほとんど変えていない。昨日は車でニット工場とアーカイブの保管工場に行って、最新コレクションの打ち合わせをしてきた。オンラインのコミュニケーションが増えたけど、服は実物を見ないと分からないからね。

デザイナーとしての決意
土木工学で培った「実用性」

WWD:服作りの技術はどうやって習得している?

ディラン:コレクションを作りながら毎日勉強している。大学では土木工学を専攻していて、ファッションデザイナーになることが目標ではなかったんだ。でも服には興味があって、学生時代からドーバーストリートマーケット(DOVER STREET MARKET)をはじめいろんなブティックに通っていた。未経験からここまでブランドを拡大できたのは、パターンや生産、ディストリビューション、ニットプログラマーなど、素晴らしいチームとクリエイターに出会えたおかげ。でも、全工程が僕のシグネチャーでないとコレクションがブレてしまうから、デザイン以外もきちんとディレクションするように意識しているよ。

WWD:ブランドスタートから5年が経ち、服作りの姿勢は変化した?

ディラン:完全に変わった。正直に言うと、最初はファッションデザイナーを続ける明確なビジョンを持っていなかったんだ。ブランドを続けるうちにデザイナーとしての自覚が徐々に芽生えてきて、今季のコレクション制作中に「僕はデザイナーだ」と受け入れることができた。加えて、「アントワープを拠点とする新世代のデザイナー」という自覚も生まれた。アントワープシックスやマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)など、ここから生まれた素晴らしいブランドに恥じないよう、本気でコレクションに向き合う覚悟ができた。

WWD:逆に変わらないことは?

ディラン:自分が興味のあることをそのまま表現すること。アイデアは毎回異なっても、「僕」という軸があるからブランドに一貫性を持たせられる。あとは、土木工学で学んだ“実用性のあるデザイン”を服作りにも応用すること。例えば、一見難しく見えるコレクションでも、オーディエンスが「日常に取り入れてみたい」と思う絶妙なラインに挑戦し続けている。服である以上、毎日着られないと意味がないからね。“実用性”はサステナビリティにもつながる。廃棄を最小限まで減らし、100年使える建築物を作る姿勢は、建築業界の前提条件だから。

WWD:3万円代のデニムジャケットなど手ごろなアイテムを増やしているのも“実用性”を強化しているから?

ディラン:言われてみればそうかもしれない。こだわり抜いたカシミアニットも7000ドルでは一部の人しか着られない。最初はそれでいいと思っていたけど、今はもっと多くの人に繋がりたいと思っている。予算を考えず自由に作るのも面白いけど、手にとれる価格に自分のアイデアを最大限詰め込むのも腕の見せ所だし、若い世代にも手にとって欲しいからね。

WWD:「ナマチェコ」らしさをどう定義する?

ディラン:自分の存在の延長だから、特定のものはない。僕は毎日30~40のオークションサイトを開いて、気鋭ブランドの洋服から誰かが捨てた古いカーペットまで、自分が面白いと思うモノをくまなくチェックする。1日3本見るほど映画好きで、昨日は(ミケランジェロ・)アントニオーニ、(ピエル・パオロ・)パゾリーニ、黒沢(明)の作品を鑑賞した。それらの経験が全て絡み合って、一つのコレクションに帰着している。特徴を強いて言うなら、映画作りに近いことかな。コレクションを作るとき、ルックごとに明確なキャラクターを思い浮かべて、それらを組み合わせるように服を作って行くから、映画作りに似ていると思う。

WWD:今後の展望は?

ディラン:より多くの人に自分の服を届けるために、淡々と準備を進めるだけ。好きなことを突き詰めているから、今もフレッシュにデザインができている。ありがたいことにビジネスも好調で、「デザイナーは間違った道じゃないよ」と背中を押されてるみたいだ。落ち着いたらショーをやりたい。ショーのフィナーレに、モデル全員がランウエイに向かって行く瞬間が一番幸せだから。

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GOD BLESS YOUの期間限定ストアを開催!

こんにちは。

バーニーズ ニューヨーク六本木店・福岡店では、3月13日(土)・14日(日)の2日間限定で、クリエイティブディレクターBB LIONさんが手がける人気ブランド<ゴッド ブレス ユー>の期間限定ストアを開催。2021年春夏シーズンの新作コレクションを、他店に先駆けてご紹介します!

 GOD BLESS YOUの期間限定ストアを開催!

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今シーズンは、リゾートのアクアブルーの海からインスパイアされたコレクションとなります。

バッファローチェックのロングスリーブシャツが新たに登場するほか、アクアブルーが映えるTシャツやロングスリーブTシャツ・ジップフーディをご用意。

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もちろん、サコッシュやトートバッグ・ハットなどのアクセサリーも取り揃え、充実のラインナップでご紹介します。

女性も着られるユニセックスデザインなので、カップルや家族でコーディネートを楽しんだり、プレゼントにもおすすめです。

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新作コレクションを一堂にご覧いただけるこの機会を、ぜひお楽しみください。

 

【注意事項】 

・混雑状況により整理券を配布する場合がございます。

・商品は数に限りがございます。ご入店の際に商品が完売している場合がございますので予めご了承ください。

・深夜や早朝からのお並びはご遠慮ください。また近隣の店舗にご迷惑がかかる場合、トラブルなどが発生した場合には急遽販売を中止させていただく場合がございます。

・販売方法は、状況によりやむをえず変更となる可能性もございますので予めご了承ください。

・店舗内外に関わらず、スタッフの指示に従っていただけない場合や、金品の受け渡し、キャッチ行為、迷惑行為などトラブルが見受けられた際には販売をお断りさせていただく場合がございます。

・お車でご来店されるお客様は駐車場に止めてからご来店いただきますようお願いいたします。近隣は路上駐車禁止区域になりますので、駐車違反となりましても当店は一切関与いたしません。

また駐車の関係で販売時間に遅れましても権利は無効となりますので、予めご了承ください。

・当日の状況により、お会計にお時間をいただく場合がございます。お時間に余裕を持ってお越しください。

・ご配送は承っておりませんので予めご了承ください。

 

感染拡大防止へのお願いと安全・安心への取組みについて>>>

 

POP UP STORE:

GOD BLESS YOU

3/13 SAT.・3/14 SUN. 六本木店2F / 福岡店B1

 

2020年統計に見る悲しい現実 日本は貧乏になり衣料消費は20年間で半減した 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。アパレル市場の低迷が叫ばれるようになって久しいが、コロナ禍の2020年を経てアパレル消費はどう推移したのだろうか。

 コロナに蹂躙された2020年の消費統計が出そろったが、アパレル消費は業界の実感通り大幅に落ち込んだ。それ以上にシリアスだったのが、00年からの20年で日本人が本当に貧しくなり、不要不急の支出、とりわけ衣料消費が半減したことだ。コロナ禍のカタストロフィからのアパレル再生は、まず現実を直視することから始まるのではないか。

20年の衣料消費は8掛け弱に落ち込んだ

総務省の家計調査では消費支出総体が前年から5.3%減少し、「食料」支出が1.6%、「保険医療」支出が2.0%伸びる中、「被服・履物」支出は18.4%、「アパレル」(洋服・シャツ・セーター)支出は20.2%も落ち込んだ。経済産業省の商業動態統計でも小売業売り上げ全体(自動車・機械・燃料小売業を除く)が0.8%、スーパーの飲食料品が6.7%伸びる中、「織物・衣服・身の回り品」小売業売り上げは21.4%、百貨店+スーパーの衣料品売り上げも26.4%も減少しているから、アパレル消費は8掛け弱に落ち込んだと推計される。

米国商務省発表の小売統計(自動車・機械・燃料小売業、飲食サービスを除く)でも、食品スーパーなどエッセンシャル小売業が伸びて小売売り上げ全体が6.9%、無店舗小売業(大半がEC)が22.1%も伸びる中、衣料品・アクセサリー小売業は26.4%も売り上げを落としているから、わが国のアパレル消費が8掛け弱に落ち込んだのも不思議はない。日本百貨店協会の発表した20年の衣料品売り上げは前年から31.1%、身の回り品売り上げは27.1%も落ち込んだから、高価格帯ほど落ち込みが大きかったと推察される。

 そんな中でもユニクロやワークマン、しまむらや西松屋など低価格で定番商品や機能商品に強いチェーンは堅調だったから、アパレルでもエッセンシャルシフト(生活必需品志向)は確実に進んでいる。コロナ禍で表面化したとはいえ、実はコロナのはるか以前からエッセンシャルシフトは始まっていた。00年からの20年間で家計のアパレル消費支出は45.7%減とほぼ半減したが、世界の先進国で唯一、賃下げで所得水準が落ち込む一方、社会保障負担の肥大と度重なる増税で日本人はすっかり貧乏になり、不要不急のアパレル支出が真っ先に切り詰められていったのではないか。

経済の停滞と国民負担増で貧乏になった日本人

 家計調査の消費支出はコロナ禍で前年から5.3%減少したが、00年からは12.4%も減少している。どうしてこんなに消費支出が細ってしまったのだろうか。

 国税庁発表の国民平均給与は00年の461.0万円から20年は431.2万円と6.5%の減少だが、この間の社会保険料や所得税、消費税の増税で国民負担率は00年の36.0%から20年は44.6%と8.6ポイントも上昇しており、それを差し引いた実質消費支出力は00年の295.0万円が20年には238.9万円と19.0%も減少している。家計調査の消費支出は支払った消費税を含んでおり、それを差し引いた実質消費支出は00年の362.7万円が20年には303.2万円と16.4%も減少しているから、実質消費支出力の19.0%減少に近い。

 国税庁の平均給与は個人単位、家計調査の収入と支出は家族単位なので後者の方が大きくなるが、家計調査の勤労収入にはシリアスな変化が見られる。家計名目勤労収入は00年から20年に1.7%(10万8756円)しか増加しておらず、国民負担を差し引けば実質17.3%(109万5750円)も減少しており、この間に世帯主勤労収入が6.2%(34万0644円)も減少したのを64.1%(42万1068円)も増加した配偶者勤労収入が補った構図が見て取れる。女性の社会進出といえば聞こえは良いが、勤労戦士となって家計を支える必要に迫られたのが現実ではなかったか。

沈みゆく落日の日本

 少子高齢化に伴う社会負担増もともかく、異次元緩和による過剰な資本供給が株価と不動産価格を押し上げ企業の内部留保を肥大させてマネーゲームに走らせる一方、労働生産性の停滞と労働分配率の低下が勤労収入を低下させて来たことは否めない。

 19年の日本の人時生産性は47.9ドルと米国の6掛け強に過ぎずOECD37ヶ国中21位まで落ち、一人当たり生産性は81,183ドルとOECD主要37カ国中26位まで滑り落ちた。90年には15位、00年には21位だったから、まさに釣瓶落としの転落だった。これでは賃金は上がらず、97年を基準とした賃金指数は16年段階でスウェーデンが138.4、オーストラリアが131.8、フランスが126.4、イギリスが125.3、ドイツが116.3、米国も115.3と伸びたのに日本だけ89.7と賃下げで、97年にはOECD加盟国中11位だったのが15年には17位、OECD平均水準の86.7%まで落ちている。

 一人当たりGDPも96年には6位まで上昇したのに、19年は4万3279ドルとOECD平均4万6691ドルの93%ほどに甘んじ、OECD37カ国中21位、主要7カ国の最下位に落ち込んだ。GDP規模も00年までは米国に次ぐ世界第2位の経済大国を誇っていたのに10年には中国に抜かれ、19年は米国の4分の1、中国の36%ほどに過ぎない極東の小国に転落している。00年から19年のGDP成長率はわずか5.4%と、2.09倍に伸びた米国、11.64倍に爆発的成長を遂げた中国とは比較すべくもない(日本生産性本部、全労連の発表などから要約)。

 今日の日本には、もはやコロナを克服してオリンピックを強行する国力など残っておらず、東日本大震災の復興費用にコロナ対策の際限なき財政支出とオリンピックの清算が加わり、遠からず消費税率を15%に上げて財政赤字の圧縮を急がざるを得ない。そうなれば社会保険料の上昇と合わせて国民負担率は50%を超えるから、消費は凍り付いてしまう。極東の軍事情勢は日に日に緊張を増しているから国家と国民の安寧を守るべく軍備の増強にも財政支出が必要で、国民生活はますます貧しくなる。そんな非常事態下で華やいだおしゃれが復活すると期待するのは無理がありすぎる。もはや現実を正視するしかない。

アパレルの過剰供給は解消されたのか

 過半が売れ残る過剰供給に陥っていたアパレル需給はコロナ禍のカタストロフィでリセットされたのだろうか。結論からいうと売り上げの激減ほどには供給量は圧縮されず、コロナ禍で2次流通に放出されたり持ち越された在庫が積み上がったことに加え、巣ごもり生活での断捨離と収入減による換金で消費者のタンス在庫が大量に放出されたから、新古品と中古品に圧迫されて新作品の販売はさらに苦しくなる。

 衣料品供給量のピークは18年の38億8932万点で、19年は38億1672万点、コロナ禍の20年は34億1005万点と前年より10.7%減少した。これには下着やナイティ、手袋やストールなども含まれるから、貿易統計の品目ごとにアパレル(外衣)を選別して集計する必要がある。キャミソールやTシャツ、ルームウエアやエクササイズウエアなど判定の難しい品目が増えて誤差は避けられないが、今回、17年までさかのぼって再集計を試み、選別した品目の輸入数量に国内生産の外衣数量を合わせてアパレルの総供給数量とした。

 アパレル供給量のピークは18年の25億8810万点で、19年は1.6%減の25億4630万点、コロナ禍で発注が絞られた20年は10.3%減の22億8340万点だったと推計される。金額ベースの販売統計とはそのまま比較すべきでないが、20%強の販売減に対して10.3%の供給減では過剰供給はむしろ酷くなる。家計調査のアパレル平均購入点数も年間21.18点と19年から14.0%減少し、総世帯数を掛けたアパレル総購入点数も12億1970万点と19年から13.2%減少しているから、10.3%の供給減では在庫が積み上がったはずだ。

 家計調査の購入は20年中だが輸入数量は21年の春物も含んでおり統計的精度は問えないが、消化率は19年の55.2%(旧集計基準では48.2%)から20年は53.4%に1.8ポイント低下したと推計される。発注時点ではコロナ禍が21年春夏まで続くと想定しない発注も少なからずあっただろうから、昨年からの持ち越し品も加わって21年春夏も過剰供給が続くと見る。

非常時体制の手綱を緩めるな

 コロナ禍にも懲りずに過剰供給が解消されず、格段に安価な持ち越し流通在庫や消費者放出の中古衣料が市場に氾濫するから、割高な新作品の販売は圧迫され価格も通らない。ワクチンの供給が遅れてコロナの収束も遅れ、オリンピックの開催も困難になるのは明々白々で、国民の生計も国家財政も窮乏し日本が斜陽の坂を転げ落ちていく中、何が起きても事業と雇用の継続を守り抜く非常時体制を徹底するべきだ。

 いつかコロナが収束しても日本の凋落と国民の貧困化は止まらず、かつてのようなおしゃれ消費が戻るとはとうてい期待できない。ならば手堅い予算でリスクを避け、浮ついたトレンドを追うより質実なエッセンシャルアイテムの開発とサプライの継続に注力するべきではないか。

 ECやSNSによる顧客直結のD2C、DX(デジタルトランスフォーメーション)で受注生産するC2M※1.や製販同盟のVMI※2.など流通のコストとロスを最小化する事業革新、店舗発信のライブコマースやリモートオーダー、C&C(クイック&コレクト)やテザリング※3.など地に足が着いた販売努力を推し進め、価格とお値打ち、事業規模をわきまえるならファッションビジネスには生き残る余地があるが、その前に業界の過剰供給体質を徹底して潰しておく必要がある。加えて、現実を正視しようとせず見たい虚像だけを追う多幸症的ギャンブル体質、ものづくりを過信して販売現場を軽視し使い捨てるクリエイション至上体質も根底から是正する必要がある。

 3月12日から実施されるユニクロとジーユーの「税抜き価格」表示特例措置終了に伴う同一価格での「税込価格」移行は9.1%の実質一斉値下げで、アパレルのエッセンシャルシフトと低価格化が一段と加速し、アパレル事業者の淘汰が進んで業界の過剰供給体質と多幸症的ギャンブル体質も強制的にリセットされるかもしれない。アパレル業界は勝者による掃討戦の段階に入ったと腹をくくるべきだろう。

※1.C2M(Customer to Manufactory)…ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法

※2.VMI(Vendor Managed Inventory)…あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給(補充生産も含む)を委任する取引形態

※3.テザリング…店舗間で在庫を融通して在庫効率を高めるローカル・ディストリビューション手法で、修理加工の集約やC&Cの店出荷と連携される

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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「評価が曖昧」そんな組織には、一体どう働きかけたら? 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.1

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 初回の「心に火をつけたい」と願う相談者は、国内の大手アパレルメーカーで長年現場を経験した後に昇進し、現在はセールストレーナーを務める女性Aさん。「私は、マネジャーに向いているのか?」「ブランドとして、何を目指したら良いのか?」「ブランドや組織は、変わることができるのか?」ーー。神保“隊長”は、絡み合う複数の悩みを紐解きながら、彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯してくれました。

「店頭にいた頃から『評価基準が曖昧』と感じている」

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):Aさん、こんにちは。ではまず、私のトーチングを受けようと思ったきっかけを教えてください。

Aさん:「ユニクロ(UNIQLO)」のスタッフの心に火を灯すまでを紹介した、「WWDJAPAN.com」の記事を見て、「ビビッ」と来ました。(ごくごく普通の「ユニクロ」の店舗をサポートしていた当時の神保“隊長”には)私と共通するところがあったんです。私は今、店舗向けのセールストレーナーとして、現場の士気やショップの想いを引き上げられないか?と思っています。でも現職での経験は浅く、私一人がアツくなってもダメ。自分のチカラも蓄えたいんです。記事を読んで、感動しました。「私が店長だった時にこんな人がいたら、もっと良い経験ができたのかな?」と思ったし、自分は熱量高く仕事に臨んでいると自覚もできました。でも心の火は、頻繁にくすぶります。火を灯し続けられるようになりたいんです。

神保“隊長”:セールストレーナーとしてのキャリアはどれくらいでしょうか?

Aさん:就任して2年半です。直近は、エリアトレーナー。その前は、店長を17年間務めました。

神保“隊長”:今の仕事は、自分に向いていると思いますか?

Aさん:正直、「プレイヤー向きなのでは?」とも思っています。もちろんアドバイスが結果に繋がったり、店長から「成果が出た」と報告を受けたり、うれしいこともあります。でも、成功体験を積むまでには至っていません。

神保“隊長”:一人のトレーナーが担当する店舗の数は、いくつくらいですか?

Aさん:今は5店舗。直営店を含む、関東近郊20の店舗を3人で分担しています。

神保“隊長”:私の前職では、店長の上司にあたるスーパーバイザーは教育のほか、エリアの売り上げについても責任を負っていましたが、Aさんの組織も同様ですか?

Aさん:同じです。売り上げは、評価の対象の1つです。ただ、数字責任は営業も負っています。

神保“隊長”:数字は、どこまで追いかけていますか?

Aさん:週明けには「何がよかったのか?悪かったのか?」を電話で聞いた後、「今週はどうする?どうやって戦う?」という店長の想いを聞き、アドバイスしています。また店舗では、オペレーションがうまく機能しているか?を確認しながら、店内美化も含めて総合的にアドバイス。自分が接客して聞いた、消費者の声をフィードバックすることもあります。

神保“隊長”:現在、最も悩んでいることを教えてください。組織の悩みでしょうか?それとも、自分が役目を果たし切れていないという悩みになるでしょうか?

Aさん:両方だと思います。会社の仕組みについては店頭にいた頃から、「評価基準が曖昧」と感じていました。もちろん個人の売り上げ、店舗の売り上げ、お客さまに対するサービスなどを評価してもらいましたが、試験があるワケではなく、何をもって昇格なのかは明確ではありません。上司によってバラバラで、ブランドして、会社として「ふわっとしている」と思います。「1つの基準を設けて欲しい」、上司にそう話しましたが、はぐらかされてしまいました。年間の予算に対して何%達成すれば評価してもらえるのか?インバウンドがない今は、国内のお客さまで予算の何%を達成したら良いのか?個人の目標なのか?店舗の目標なのか?SNSはどう評価するのか?曖昧なんです。

神保“隊長”:現場の悩みを吸い上げる仕組みがないから「暖簾に腕押し」なのかもしれません。会社で改革を担うのは、どの部署ですか?

Aさん:おそらく、経営企画がその権限を持っているんだと思います。

神保“隊長”:あいまいですね(笑)。

Aさん:あいまいですね(苦笑)。おそらく、経営企画とブランドの長が話をしているんだと思います。今の上司は割と「君なら、どうしたい?」と聞いてくれるのですが、「その声は、生かしてくれるのかな?」って思っています。

神保“隊長”:Aさんの周りに、「この会社、ブランドをもっと良くしたい」と思っている人は、どのくらいいるでしょうか?

Aさん:店長で言えば、20人中5人は間違いないと思います。セールストレーナーは、3人とも同じ意見です。販売部長は、話せばわかる人。販売課長は、私に近い人。営業も3人のうち1人は、かな?

「あるべき」論は、飲み会で気持ちよくなれるけれど……

神保“隊長”:安心しました。仲間になってくれそうなメンバーは少なくありませんね。だから、話を続けますね。本当に組織を変えたいのなら、正解や「あるべき」論を言っている場合じゃありません。今の話は、おそらく大勢の方が「そうだそうだ」と納得するし、理解している人がいて報われる想いの同僚もいるでしょう。飲み会で話をすれば、きっと盛り上がるし、気持ちよくなれるでしょう。でも変革者の仕事は、ここから。変革を山登りに例えたら、Aさんはまだ1合目にたどり着いただけです。歩みを進めないと。このままでは、何も変わりません。変わらない原因に目を向けないと、組織は変わらないんです。“変革者もどき”がハマるワナは、「あるべき」論を作っただけで世の中が変わると期待してしまうこと。普通の人は、これで終わりかもしれません。でも、変革者の仕事はここから。変えるためのボトルネックを見つけ、握りつぶされないために仕掛け、1人じゃダメなら仲間を募る。こういうコトに脳みそを使うんです。変わるときは、誰かが、面倒な役割を実行しないと。会社の経営が悪くなるのは、経営者の怠慢です。でも、変革者が現れなかったのも要因の1つです。面倒でもAさんは、「私がやるか」と立ち上がる“バッドコップ”にならないと。その役割を担う人は、シンドいだけです。なのに給料は変わらない。会社のことを思っているのに、嫌われてしまうかもしれない。矛盾との戦いです。でも、それをやる人しか、変革者にはなれません。

Aさん:私は、変革者なのでしょうか?

神保“隊長”:ここにいることが、変革者の資質があることの証明です。私に相談したいほど組織を救いたいと思っていて、頼まれてもいないのに今ここにいる。その時点で、周りから頭一つ抜きん出ているんです。Aさんは、自分の“守備範囲”を超えて、心に火を灯そうとしているんです。方法は、2つあると思います。まず1つは、「あるべき」論を考えるのは一休みして、押さなきゃいけないスイートスポットを見つけること。そして2つ目は、仲間づくりです。孤軍奮闘するだけでは、組織は変えられません。変革者は強引にでも仲間を作らないと、自分の心が折れてしまいます。僕も、自分の組織では同志を作ってきました。僕の心だってすぐにくすぶって消えちゃうし、「登るべき山」だって下山したいって思っちゃう(笑)。それでも前に進めるのは、僕がスゴいのではなく、へこたれた時でも前に進める環境づくりを頑張っているから。その代わり、旗を振るのは自分です。変革は、「なんで私が、こんなことまで?」と思ってからが変革です。そこで「やめた」と思うのなら、会社や組織を憂うこともやめるべきです。

Aさん:具体的には、どうすれば?

神保“隊長”:仲間を作るには、最初の1人を作ることです。まずは「あるべき」論を叫ぶのをやめ、誰に、どんな状況で、どう切り出せばいいのか?を考えましょう。自分が思っていることを別の人が話し始めると、「この人も、私と同じ想いなんだ」とその人の胸はざわつくものです。そうなれば、勝ちパターンです。できない話じゃないでしょう?もう、頭に候補は思い浮かんでいるはずです。

Aさん:そう言えば最近、優秀な方が経営企画に異動しました。

会社のゴミを拾う人は、重宝がられるに違いない

神保“隊長”:戦うべきものがわからないまま戦ってきたこれまでは、きっとシンドかったと思います。でも、組織の構図が見えていることは、大きなプラスです。僕の前職は、何か特別なことをやっていたわけではなく、地道に3足990円のソックスを積み重ねて年間で2兆円(神保“隊長”が勤務していた当時)を達成した会社です。現場で頑張った経験を持つ人が、例えば本部でマーケティングも頑張っています。そんな人は、店舗をないがしろにはしないんです。一方、そういう経験がない人は「マーケ最適」で考え、部分最適・部署最適に陥ってしまう。構図が見えてからが勝負なんです。面倒かもしれませんが、会社のゴミを拾いましょう。ゴミや落ち葉を拾ってくれる人がキライな人は、いないハズ。みんな、「どうして、そんな面倒なことをやってくれるの?」って思うでしょう。すると、悩みは向こうから寄ってきます。「あの人なら、やってくれるんじゃないかな?」というムードが醸成されます。そして色々話すと勘が良くなり、ゴミのたまりやすい場所、組織のガンがわかってきて、ガンの温床になっている仕組みの問題に気づきます。そんな人は、会社から重宝がられるに決まっていますよね?事実とともに、「人」を憎まず、「仕組み」を憎むことができるんですから。「あるべき」論を言って誰かのせいにしている人とは、全然違うんです。説得力が、ハンパじゃないんです。変革とは、そういうものです。変わることはシンドいけれど、変わらずに死を待つよりはシンドくない。僕にこう言わせているのは、変革者候補のAさんの想いです。きっと、変われるし、組織も変えられると思います。応援しています。

【心に火がついたAさんの感想】
 あの日の相談は、「評価制度を変えたい」がメーンでした。会社に長く勤めてはいるものの、現場で育ってきた私にとって「本部に入る」は転職に近いことでした。今まで店頭でやってきた職務やルーティーンは、ほぼ役に立たず、まして詳しい仕組みや問題は誰に言ったら解決するのか?未だにわからないのが現状です。

 神保さんが私に言ってくださった、「仲間を作ること」と「会社のガンは、どこにあるのかを知ること。『誰が悪いのか?』ではなく、『そうさせている仕組みは、何なのか?』を知ること」の2つは、私にとって新しい気づきとなりました。こんな風に教えてくれる上司は今までにいなかったし、仕事において大切なことを教えていただきました。本当にありがとうございました。


お知らせ:販売員のES(従業員満足)とCS(顧客満足)の改善を図るクラウド「SEEP(シープ)」と、人の心に火をつける“トーチング”を手掛けるトーチリレー、そして「WWDジャパン」は今春、DXやOMO時代におけるリアル店舗のあり方を考える大型セミナーを開催します。セミナーの申し込みはコチラ


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「評価が曖昧」そんな組織には、一体どう働きかけたら? 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.1

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 初回の「心に火をつけたい」と願う相談者は、国内の大手アパレルメーカーで長年現場を経験した後に昇進し、現在はセールストレーナーを務める女性Aさん。「私は、マネジャーに向いているのか?」「ブランドとして、何を目指したら良いのか?」「ブランドや組織は、変わることができるのか?」ーー。神保“隊長”は、絡み合う複数の悩みを紐解きながら、彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯してくれました。

「店頭にいた頃から『評価基準が曖昧』と感じている」

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):Aさん、こんにちは。ではまず、私のトーチングを受けようと思ったきっかけを教えてください。

Aさん:「ユニクロ(UNIQLO)」のスタッフの心に火を灯すまでを紹介した、「WWDJAPAN.com」の記事を見て、「ビビッ」と来ました。(ごくごく普通の「ユニクロ」の店舗をサポートしていた当時の神保“隊長”には)私と共通するところがあったんです。私は今、店舗向けのセールストレーナーとして、現場の士気やショップの想いを引き上げられないか?と思っています。でも現職での経験は浅く、私一人がアツくなってもダメ。自分のチカラも蓄えたいんです。記事を読んで、感動しました。「私が店長だった時にこんな人がいたら、もっと良い経験ができたのかな?」と思ったし、自分は熱量高く仕事に臨んでいると自覚もできました。でも心の火は、頻繁にくすぶります。火を灯し続けられるようになりたいんです。

神保“隊長”:セールストレーナーとしてのキャリアはどれくらいでしょうか?

Aさん:就任して2年半です。直近は、エリアトレーナー。その前は、店長を17年間務めました。

神保“隊長”:今の仕事は、自分に向いていると思いますか?

Aさん:正直、「プレイヤー向きなのでは?」とも思っています。もちろんアドバイスが結果に繋がったり、店長から「成果が出た」と報告を受けたり、うれしいこともあります。でも、成功体験を積むまでには至っていません。

神保“隊長”:一人のトレーナーが担当する店舗の数は、いくつくらいですか?

Aさん:今は5店舗。直営店を含む、関東近郊20の店舗を3人で分担しています。

神保“隊長”:私の前職では、店長の上司にあたるスーパーバイザーは教育のほか、エリアの売り上げについても責任を負っていましたが、Aさんの組織も同様ですか?

Aさん:同じです。売り上げは、評価の対象の1つです。ただ、数字責任は営業も負っています。

神保“隊長”:数字は、どこまで追いかけていますか?

Aさん:週明けには「何がよかったのか?悪かったのか?」を電話で聞いた後、「今週はどうする?どうやって戦う?」という店長の想いを聞き、アドバイスしています。また店舗では、オペレーションがうまく機能しているか?を確認しながら、店内美化も含めて総合的にアドバイス。自分が接客して聞いた、消費者の声をフィードバックすることもあります。

神保“隊長”:現在、最も悩んでいることを教えてください。組織の悩みでしょうか?それとも、自分が役目を果たし切れていないという悩みになるでしょうか?

Aさん:両方だと思います。会社の仕組みについては店頭にいた頃から、「評価基準が曖昧」と感じていました。もちろん個人の売り上げ、店舗の売り上げ、お客さまに対するサービスなどを評価してもらいましたが、試験があるワケではなく、何をもって昇格なのかは明確ではありません。上司によってバラバラで、ブランドして、会社として「ふわっとしている」と思います。「1つの基準を設けて欲しい」、上司にそう話しましたが、はぐらかされてしまいました。年間の予算に対して何%達成すれば評価してもらえるのか?インバウンドがない今は、国内のお客さまで予算の何%を達成したら良いのか?個人の目標なのか?店舗の目標なのか?SNSはどう評価するのか?曖昧なんです。

神保“隊長”:現場の悩みを吸い上げる仕組みがないから「暖簾に腕押し」なのかもしれません。会社で改革を担うのは、どの部署ですか?

Aさん:おそらく、経営企画がその権限を持っているんだと思います。

神保“隊長”:あいまいですね(笑)。

Aさん:あいまいですね(苦笑)。おそらく、経営企画とブランドの長が話をしているんだと思います。今の上司は割と「君なら、どうしたい?」と聞いてくれるのですが、「その声は、生かしてくれるのかな?」って思っています。

神保“隊長”:Aさんの周りに、「この会社、ブランドをもっと良くしたい」と思っている人は、どのくらいいるでしょうか?

Aさん:店長で言えば、20人中5人は間違いないと思います。セールストレーナーは、3人とも同じ意見です。販売部長は、話せばわかる人。販売課長は、私に近い人。営業も3人のうち1人は、かな?

「あるべき」論は、飲み会で気持ちよくなれるけれど……

神保“隊長”:安心しました。仲間になってくれそうなメンバーは少なくありませんね。だから、話を続けますね。本当に組織を変えたいのなら、正解や「あるべき」論を言っている場合じゃありません。今の話は、おそらく大勢の方が「そうだそうだ」と納得するし、理解している人がいて報われる想いの同僚もいるでしょう。飲み会で話をすれば、きっと盛り上がるし、気持ちよくなれるでしょう。でも変革者の仕事は、ここから。変革を山登りに例えたら、Aさんはまだ1合目にたどり着いただけです。歩みを進めないと。このままでは、何も変わりません。変わらない原因に目を向けないと、組織は変わらないんです。“変革者もどき”がハマるワナは、「あるべき」論を作っただけで世の中が変わると期待してしまうこと。普通の人は、これで終わりかもしれません。でも、変革者の仕事はここから。変えるためのボトルネックを見つけ、握りつぶされないために仕掛け、1人じゃダメなら仲間を募る。こういうコトに脳みそを使うんです。変わるときは、誰かが、面倒な役割を実行しないと。会社の経営が悪くなるのは、経営者の怠慢です。でも、変革者が現れなかったのも要因の1つです。面倒でもAさんは、「私がやるか」と立ち上がる“バッドコップ”にならないと。その役割を担う人は、シンドいだけです。なのに給料は変わらない。会社のことを思っているのに、嫌われてしまうかもしれない。矛盾との戦いです。でも、それをやる人しか、変革者にはなれません。

Aさん:私は、変革者なのでしょうか?

神保“隊長”:ここにいることが、変革者の資質があることの証明です。私に相談したいほど組織を救いたいと思っていて、頼まれてもいないのに今ここにいる。その時点で、周りから頭一つ抜きん出ているんです。Aさんは、自分の“守備範囲”を超えて、心に火を灯そうとしているんです。方法は、2つあると思います。まず1つは、「あるべき」論を考えるのは一休みして、押さなきゃいけないスイートスポットを見つけること。そして2つ目は、仲間づくりです。孤軍奮闘するだけでは、組織は変えられません。変革者は強引にでも仲間を作らないと、自分の心が折れてしまいます。僕も、自分の組織では同志を作ってきました。僕の心だってすぐにくすぶって消えちゃうし、「登るべき山」だって下山したいって思っちゃう(笑)。それでも前に進めるのは、僕がスゴいのではなく、へこたれた時でも前に進める環境づくりを頑張っているから。その代わり、旗を振るのは自分です。変革は、「なんで私が、こんなことまで?」と思ってからが変革です。そこで「やめた」と思うのなら、会社や組織を憂うこともやめるべきです。

Aさん:具体的には、どうすれば?

神保“隊長”:仲間を作るには、最初の1人を作ることです。まずは「あるべき」論を叫ぶのをやめ、誰に、どんな状況で、どう切り出せばいいのか?を考えましょう。自分が思っていることを別の人が話し始めると、「この人も、私と同じ想いなんだ」とその人の胸はざわつくものです。そうなれば、勝ちパターンです。できない話じゃないでしょう?もう、頭に候補は思い浮かんでいるはずです。

Aさん:そう言えば最近、優秀な方が経営企画に異動しました。

会社のゴミを拾う人は、重宝がられるに違いない

神保“隊長”:戦うべきものがわからないまま戦ってきたこれまでは、きっとシンドかったと思います。でも、組織の構図が見えていることは、大きなプラスです。僕の前職は、何か特別なことをやっていたわけではなく、地道に3足990円のソックスを積み重ねて年間で2兆円(神保“隊長”が勤務していた当時)を達成した会社です。現場で頑張った経験を持つ人が、例えば本部でマーケティングも頑張っています。そんな人は、店舗をないがしろにはしないんです。一方、そういう経験がない人は「マーケ最適」で考え、部分最適・部署最適に陥ってしまう。構図が見えてからが勝負なんです。面倒かもしれませんが、会社のゴミを拾いましょう。ゴミや落ち葉を拾ってくれる人がキライな人は、いないハズ。みんな、「どうして、そんな面倒なことをやってくれるの?」って思うでしょう。すると、悩みは向こうから寄ってきます。「あの人なら、やってくれるんじゃないかな?」というムードが醸成されます。そして色々話すと勘が良くなり、ゴミのたまりやすい場所、組織のガンがわかってきて、ガンの温床になっている仕組みの問題に気づきます。そんな人は、会社から重宝がられるに決まっていますよね?事実とともに、「人」を憎まず、「仕組み」を憎むことができるんですから。「あるべき」論を言って誰かのせいにしている人とは、全然違うんです。説得力が、ハンパじゃないんです。変革とは、そういうものです。変わることはシンドいけれど、変わらずに死を待つよりはシンドくない。僕にこう言わせているのは、変革者候補のAさんの想いです。きっと、変われるし、組織も変えられると思います。応援しています。

【心に火がついたAさんの感想】
 あの日の相談は、「評価制度を変えたい」がメーンでした。会社に長く勤めてはいるものの、現場で育ってきた私にとって「本部に入る」は転職に近いことでした。今まで店頭でやってきた職務やルーティーンは、ほぼ役に立たず、まして詳しい仕組みや問題は誰に言ったら解決するのか?未だにわからないのが現状です。

 神保さんが私に言ってくださった、「仲間を作ること」と「会社のガンは、どこにあるのかを知ること。『誰が悪いのか?』ではなく、『そうさせている仕組みは、何なのか?』を知ること」の2つは、私にとって新しい気づきとなりました。こんな風に教えてくれる上司は今までにいなかったし、仕事において大切なことを教えていただきました。本当にありがとうございました。


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