コロナ禍で1日10万個のクッションファンデを販売する「ビオール」から新作登場

 グレイプラスは4月13日、クッションファンデーションが主力の「ビオール オーガニクス(BIOR ORGANICS)」から、“エアレスクッション オーガニック アクア 美容液ファンデーション”(SPF50+・PA++++、全2色、税込各5940円)を伊勢丹新宿店ビューティーアポセカリーとビープル バイ コスメキッチンで先行発売した。

 同社が2020年に発売した天然由来100%のクッションファンデは、コロナ禍でファンデーションが売れないといわれる中、「マスクに付きにくい」「汗に強いのに石けんで落ちる」などの口コミが広がり、7月にテレビショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」で販売したところ1日で10万個を売り上げた。

 そこで、マスク生活での利便性を向上すべく、“べたつきを抑えつつ保湿はしっかり”をテーマに、主要成分の水を全て、エコサートコスモス認証を取得した国産オーガニックダマスローズ水に変更。エイジングケア成分として、産官学で開発した先進成分プラントリンを配合し、保湿しながらハリや艶のある肌へと導く。さらに、メイク崩れなどを防ぐ皮脂吸着のミネラルパウダーや、国産のパールパウダーとシルクパウダーをぜいたくに配合し、マスクに付着しにくく艶のある肌を演出する。

 そのほか、顔全体からデコルテまで使えるローラ型の美容液“バイオサイエンス サスティナブル ローラーセラム”(40mL、同1万1000円)と泡クレンジングソープの“サスティナブル ホイップクリーム クレンジングソープ”(200mL、同4950円)をラインアップする。

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「ナイキ」の定番ランシュー“ペガサス”が新たなラスト&メッシュ構造で進化

 「ナイキ(NIKE)」は、定番のランニングシューズ“ペガサス”シリーズの38代目となる“エア ズーム ペガサス 38(AIR ZOOM PEGASUS 38)”を4月22日にメンバー限定で先行発売する。4月29日から公式アプリやオンラインストア、一部店舗で扱う。同シリーズは“あらゆるランナーのためのシューズ”として1983年に誕生し、幅広いランナーに支持されてきた。

 アッパーには、前作より柔らかく通気性に優れた新構造のメッシュ素材を採用。ラストはつまさきにゆとりを持たせた新型で、安定感を高めた。中足部には独立した4つのシューレースパーツを付け、靴ひもの締め方によって好みのフィット感に調整できる。ミッドソールは前作同様、高い反発性とクッション性を持つ“リアクトフォーム”を用いた。

 通常バージョンのほか、ファスナー開閉で簡単に着脱できる“フライイーズ(FLYEASE)”バージョンも用意する。価格はいずれも1万4300円(税込)。

 発売に先駆けて実施したメディア説明会には、東京オリンピック男子マラソン代表の中村匠吾選手が登壇。「7年近く“ペガサス”シリーズを履いてきた」という中村選手は、新作について「ひもを締めた時のフィット感と足を入れた時の安定感が上がったように思う。反発力とクッション性も向上し、スムーズに前に進む。軽量で反発力もあるので、スピードを上げた練習にも対応できる」とコメントした。

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J.フロントが新中計 不動産事業へ投資シフト、非商業の開発も

 J.フロント リテイリングは13日、2024年2月期を最終年度とする新中期経営計画を発表した。新型コロナウイルスの影響で本業の百貨店事業が不振に苦しむ中、不動産事業に成長投資をシフト。非商業用途の施設開発・運営にも乗り出し、新たな成長のドライバーとする。同期末において営業利益403億円、ROE(自己資本利益率)は7%を目指す。

 不動産開発においても事業子会社の大丸松坂屋百貨店、パルコのリソースを最大限に生かす。「商業コンテンツのプロデュース能力」「取引先やクリエイターをパートナーとした開発」「百貨店外商客を含む強い顧客基盤」などを強みとした大型複合施設の開発に取り組む。既存施設の再開発では、百貨店とパルコの規模を適正化する一方、ここでも非商業用途を高めて不動産関連収益の割合を増やす。

 戦略の中心となるのは、百貨店とパルコが隣接する大阪・心斎橋エリアや名古屋・栄エリアなどの都市部だ。大丸心斎橋店と一体となる形で20年11月オープンした心斎橋パルコは、両店の顧客層の幅が拡大し、1〜2階のラグジュアリーや6階カルチャーフロアが好調に推移するなどすでにシナジーが生まれている。栄地区では大丸松坂屋百貨店が取得した駅前一等地の再開発構想が進む。
 
 20年11月にはパルコを完全子会社化し、大丸松坂屋百貨店の不動産事業をパルコに移管・一元化して、商業用不動産の開発に向けて体制を整えた。「今後は(不動産開発において)商業用途以外のジャンルにも領域を伸ばして取り組んでいく」と好本達也社長。地域一帯の魅力創出によりシナジーを生み出す「アーバンドミナント戦略」を加速する考えだ。「われわれが最も得意とする都心エリアをベースに、周辺にある不動産をどう活用するかを考えていきたい」。

 既存のリアルの売り場では、強化カテゴリーを中心にメリハリのついた面積配分やコンテンツ強化が課題となる。百貨店では「自主編集売り場の面積半減」「ライフスタイル型コンテンツの拡充」「体験型コンテンツの導入」を推進。パルコでは女性のためのウェルネスサービスやコミュニティ型ワーキングスペースの設置などを進める。

 同時に、オンラインチャネルを活用する「OMO戦略」にも注力する。3月にスタートした衣料品のサブスク「アナザーアドレス」はレンタルを間口として店舗への集客をもたらすウェブ完結型のサービスで、4月13日現在までで会員登録人数が約3700人と計画以上で推移する。年度内にはビューティーアドバイザーのオンライン接客機能などを備えたコスメECの開設も予定する。「われわれのデジタル戦略は、単にECの売り上げを増やすことを目指すものではない。大事なのはデジタル上で販売員とお客さまのコミュニケーションが生まれること。あくまで(百貨店の強みである)『ヒト』が中心のサービスになる」.

 コスト構造改革では効率的な運営による人員削減、販促費の削減により、100億円以上の固定費削減を目指す。

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「オールバーズ」の2号店が東京・丸の内にオープン 持続可能な製品とビジョンを発信

 サンフランシスコ発のサステナブルブランド「オールバーズ(ALLBIRDS)」は6月3日、国内2店舗目となるオールバーズ 丸の内を東京・丸の内にオープンする。

 丸の内の仲通りに面した約220平方メートルの同店では、シューズからアンダーウエア、昨年始動したアパレルラインまでの全商品を取り扱う。またオープンを記念した限定アイテムも発売予定。店内の電力は再生エネルギーを使用するなど、環境への取り組みもさらに強化していく。

 同ブランドは自然由来の素材を使用したミニマルなデザインが日本の顧客から共感を呼び、国内1号店の原宿店は2020年の世界中の「オールバーズ」店舗で最も高い販売実績を記録した。

 ジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zwillinger)共同創業者は「20年に小売業が直面した難題に備えることは誰もできなかったと思うが、そのような中で原宿店が大きな成功を収められたのは大きな幸運だった。日本の消費者の皆さまがわれわれの製品のシンプルなデザインとサステイナビリティを重視したモノ作りに熱心に共感してくれているのを実感し、日本に2号店をオープンするのは理にかなっていると感じた。東京の丸の内から日本全国の皆さまに持続可能な製品とビジョンを発信していくのがとても楽しみだ」とコメントした。

■オールバーズ 丸の内
オープン日:6月3日
時間:11:00〜19:00 不定休
住所:東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階 105区

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「シャネル」の2021年サマーコレクションのテーマは“夏の陽の光” 人気アイシャドウパレットやリップスティックの新色が登場

 「シャネル(CHANEL)」は5月21日に、2021年サマーコレクション“レ ベージュ サマー ライト コレクション”を発売する。

 同コレクションは“サマー ライト ―夏の陽の光―”をテーマに、アイシャドウパレット、リップスティック、ネイルをランアップする。マルチに使用できる5色をセットしたアイシャドウパレット“レ ベージュ パレット ルガール”は、ローズカラーの“テンダー”と、カーキとベージュブラウン系のカラーにゴールドをプラスした“インテンス”の新2種(税込各8250円)を展開する。シアーな発色と艶やかな仕上がりが特徴のリップスティック“ルージュ ココ フラッシュ”は新2色(税込各4730円)、“ヴェルニ ロング トゥニュ”からはパール感のあるベージュやコッパーブラウンなど、新4色(うち限定2色、税込各3520円)が登場する。

 さらに、軽やかなジェルテクスチャーのファンデーション“レ ベージュ トゥシュ ドゥ タン ベル ミン CE(SPF 25・PA++)”(全3色、税込各8250円)の特別限定コンパクトを公式オンラインショップで発売する。コンパクトの表面にはヨットのロープ模様で象られたダブルCのロゴを施したデザインが特徴だ。

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J.フロント最終赤字286億円 21年2月期で百貨店35%減収

 J.フロント リテイリングの2021年2月期連結業績(国際会計基準)は、純損益が286億円の赤字(前期は371億円の黒字)だった。コロナによる大幅減収に加えて、昨年春の緊急事態宣言に伴う休業に伴う固定費の振替、津田沼パルコや所沢パルコの閉店決定に関する費用などがかさんだため、営業損益が242億円の赤字(同402億円の黒字)だった。

 一般的な小売業の売上高に相当する総額売上高は、同32.4%減の7662億円に落ち込んだ。主力の百貨店事業(大丸・松坂屋)の総額売上高は34.7%減だった。百貨店は下期に回復基調を見せたが、コロナの第3波の影響で年末以降も足踏みが続いた。百貨店の免税売上高が同96.1%減の23億円とほぼ消失したことも痛手になった。昨年11月に開業した心斎橋パルコは想定を上回る売り上げ推移を見せた。

 22年2月期は総額売上高が前期比30.6%増の1兆50億円、営業利益が110億円、純利益が40億円を見込む。総額売上高はコロナが本格化する前の20年2月期との比較で9割に満たない回復と予想する。

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「グッチ」が「バレンシアガ」とコラボか 15日発表の最新コレクションで

 「グッチ(GUCCI)」が15日に発表する最新コレクションについて、業界ではアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターが「バレンシアガ(BALENCIAGA)」とコラボレーションをするのではないかと噂が立っている。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける「バレンシアガ」と「グッチ」は共にケリング(KERING)傘下だ。「グッチ」広報は噂へのコメントを拒否し、「バレンシアガ」広報からは返答が得られなかった。

 「グッチ」は2021年1月に米「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ドラえもん」とのコラボコレクションを発表し、3月26日からEXOのKAI(カイ)とコラボレーションしたカプセルコレクションの販売している。数々の話題のコラボレーションを打ち出す同ブランドは、ファッションECの検索プラットフォーム、リスト(LYST)によるデータでは21年1〜3月の検索ランキングでトップだったという。「バレンシアガ」は20年12月、2021年秋コレクション(2021-22年秋冬に相当)をオンラインゲーム形式で発表したことで話題を集め、2位となった。

 「グッチ」最新コレクションは、オペラやクラシックなどで歌われる旋律的な独唱曲を指す“アリア(Aria)”と題した短編動画を通して発表する。創業100周年を迎える同ブランドの21年初めてのコレクション発表だ。

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ユニクロの子ども向けサッカープログラム キャプテンに内田篤人が就任

 ユニクロと日本サッカー協会(JFA)は、JFAが主催し、ユニクロが特別協賛する6歳以下の未就学児に向けたプログラム「JFA ユニクロサッカーキッズ」のキャプテンに、元サッカー日本代表選手の内田篤人氏が就任したと発表した。同プログラムにはこれまで約28万人が参加。2021年度は、6月27日の新潟開催を皮切りに全国15の都道府県で実施予定といい、スポーツを通じた子どもたちの教育、地域社会への貢献を進める。

 同プログラムは、少人数制のサッカーを通し、子どもたちがスポーツを楽しみながら、自立心やチームワークを身に付けることを目指したもの。03年からユニクロの特別協賛のもと行っている。

 内田氏は「僕自身、子どものころからサッカーを通じて、思いやりや目標に向かって共に進むことの大切さを学んだ。全国の子どもたちにチームプレーの楽しさを伝えていきたい」とコメント。「長年、ユニクロが協賛を続けてきたこの事業を通し、内田さんと共に地域コミュニティとのつながりをより一層深め、多くの子どもたちがスポーツを楽しめる場を提供していく」と、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。

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「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来

 「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、より丈夫でリサイクルが可能な“循環型”ジーンズを限られた店舗とECで発売した。商品は、サステナブルなジーンズ開発をリードするエレン・マッカーサー財団ジーンズ・リデザイン(Ellen MacArthur Foundation Jeans Redesign)プロジェクトへの参加により実現した。

 ジーンズ5型とデニムジャケット2型で、耐久性や素材にこだわり、リサイクル可能であることや、商品の生産から廃棄までを開示するトレーサビリティー(追跡可能性)を考慮して作られた。100%オーガニックの生地の使用に加えて、ボタンは取り外しが可能で、一般的に金属が使われるリベット(留め具)は補強ステッチで代用。金属ファスナーやレザーパッチも取り除いてよりリサイクル・再利用しやすく設計した。各アイテムのポケットには洗濯や手入れに関する説明を明記し、アイテムの修理や寄付、リサイクル方法へのアドバイスも加えた。

 マーティン・ハーグマン(Martijn Hagman)=トミー ヒルフィガー グローバル・PVHヨーロッパ最高経営責任者は、「われわれには大手ファッションブランドの一つとして、循環型経済への移行を推進する責任がある。循環型ファッションを実現するには、バリューチェーン(価値連鎖)の再考が必要だ。今回生まれたアイテムのそれぞれは、デザインと製造の両チームによる高い専門知識と技術があってのもの。完全な循環型ファッションに向けた一歩だ」と語った。

 フランソワ・ソシェ(Francois Souchet)=エレン・マッカーサー財団 循環型繊維イニシアチブ リードは、「『トミー ヒルフィガー』はデニム業界のリーダー的存在で、当初から『ジーンズ・リデザイン』プロジェクトに賛同していた。今回実際にプロジェクトに沿って商品開発を手掛け、業界全体にファッションの向かうべき方向を提示した。好きな洋服をただ廃棄しないで済む循環型ファッションの実現に向けて動き出したことにワクワクする」と述べた。

 「トミー ヒルフィガー」はほかにも、デザイナーの80%以上に循環型デザインについて教育しており、消費者から使用済みの商品を受け取って新品同様に整え再販する循環型ビジネスモデル「トミー フォー ライフ(Tommy For Life)」も立ち上げている。大手企業の中でいち早く100%リサイクルコットンを取り入れ、使用する水とエネルギーを削減。環境負担が少ないとされるジーンズをこれまでに200万枚以上生産している。

 2020年8月には「メイク イット ポッシブル(Make It Possible)」プログラムを立ち上げ、30年に向けた循環性と包括性に関する24の目標を設定した。“何も捨てず、何でも受け入れる(Wastes Nothing and Welcomes All)”ことをミッションに、環境と社会の両方の観点からサステナビリティに取り組んでいる。

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「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来

 「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、より丈夫でリサイクルが可能な“循環型”ジーンズを限られた店舗とECで発売した。商品は、サステナブルなジーンズ開発をリードするエレン・マッカーサー財団ジーンズ・リデザイン(Ellen MacArthur Foundation Jeans Redesign)プロジェクトへの参加により実現した。

 ジーンズ5型とデニムジャケット2型で、耐久性や素材にこだわり、リサイクル可能であることや、商品の生産から廃棄までを開示するトレーサビリティー(追跡可能性)を考慮して作られた。100%オーガニックの生地の使用に加えて、ボタンは取り外しが可能で、一般的に金属が使われるリベット(留め具)は補強ステッチで代用。金属ファスナーやレザーパッチも取り除いてよりリサイクル・再利用しやすく設計した。各アイテムのポケットには洗濯や手入れに関する説明を明記し、アイテムの修理や寄付、リサイクル方法へのアドバイスも加えた。

 マーティン・ハーグマン(Martijn Hagman)=トミー ヒルフィガー グローバル・PVHヨーロッパ最高経営責任者は、「われわれには大手ファッションブランドの一つとして、循環型経済への移行を推進する責任がある。循環型ファッションを実現するには、バリューチェーン(価値連鎖)の再考が必要だ。今回生まれたアイテムのそれぞれは、デザインと製造の両チームによる高い専門知識と技術があってのもの。完全な循環型ファッションに向けた一歩だ」と語った。

 フランソワ・ソシェ(Francois Souchet)=エレン・マッカーサー財団 循環型繊維イニシアチブ リードは、「『トミー ヒルフィガー』はデニム業界のリーダー的存在で、当初から『ジーンズ・リデザイン』プロジェクトに賛同していた。今回実際にプロジェクトに沿って商品開発を手掛け、業界全体にファッションの向かうべき方向を提示した。好きな洋服をただ廃棄しないで済む循環型ファッションの実現に向けて動き出したことにワクワクする」と述べた。

 「トミー ヒルフィガー」はほかにも、デザイナーの80%以上に循環型デザインについて教育しており、消費者から使用済みの商品を受け取って新品同様に整え再販する循環型ビジネスモデル「トミー フォー ライフ(Tommy For Life)」も立ち上げている。大手企業の中でいち早く100%リサイクルコットンを取り入れ、使用する水とエネルギーを削減。環境負担が少ないとされるジーンズをこれまでに200万枚以上生産している。

 2020年8月には「メイク イット ポッシブル(Make It Possible)」プログラムを立ち上げ、30年に向けた循環性と包括性に関する24の目標を設定した。“何も捨てず、何でも受け入れる(Wastes Nothing and Welcomes All)”ことをミッションに、環境と社会の両方の観点からサステナビリティに取り組んでいる。

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TSIの中期経営計画 「パーリーゲイツ」「ハフ」など高収益事業に投資集中

 TSIホールディングスは、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「TSI INNOVATION PROGRAM 2024」を発表した。新型コロナの影響長期化を受け、高収益事業への重点投資とデジタルを軸とした経営改革に舵を切り、再生を急ぐ。同期末までに営業利益率10%を目指す。

 22年2月期からは高収益事業に投資を集中する。対象となるのはコロナ禍でも業績の堅調な「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」「ハフ(HUF)」などのスポーツ、アスレチック、ストリートウエアブランドが中心。「(好調事業は)シンプルにいい立地にいい商品、いい接客があれば売れる」(下地毅TSIホールディングス社長)との考えから、店舗立地や商品量、人員配置などを見直す。これらのブランドの都心の一等地にある店舗では、先駆けてデジタル化も進める。EC上で店舗試着やスタイリストの接客予約ができる仕組みや、アプリを使って顧客を識別するチェックインスタンドなどを導入する。
 
 一方、低収益事業に関しては店舗撤退やブランドの廃止も視野に、ECシフトを進める。春にリニューアルした「ミックスドットトーキョー(MIX.TOKYO)」は3月、販売スタッフコーディネートをテーマとしたECサイトとしてリニューアルした。販売員のオンライン上での評価制度の整備にも着手している。

 不振が続く基幹の百貨店ブランド、セレクトショップブランドは、商品企画の面から抜本的にテコ入れする。「ナノ・ユニバース(NANO・UNIVERSE)」ではクリエイティブディレクター制を導入し、独自の商品デザインや世界観を強める。

 データ活用においても、グループ全体でさらに連携を強める。TSIホールディングスは今年3月からグループの段階的な再編を進めており、22年3月期末までに事業子会社制を解消、持株会社TSIが各ブランド事業を運営する体制となる。「コロナ禍で経営の高速化の必要を痛感している。これまで事業会社ごとにバラバラだったデータを一元管理し、経営をダイナミックで迅速なものにしていく」。生産面でも、一元管理したデータをSCM(サプライチェーンマネジメント)に活用する。3Dによるサンプル製作なども駆使して機敏な生産・物流体制を構築し、適時・適量・適価の商品投入で収益最大化を図る。

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逆風の中で未来への希望を説き続ける、名門紡績の若き5代目 長谷享治【ネクストリーダー2021】

 1887年創業の長谷虎紡績は、日本の毛織物の産地である尾州の名門企業の一つだ。規模は決して大きくないものの、スパイバーの人工タンパク質素材や、同社が世界で唯一生産し宇宙ロケット「H2ロケット」に採用されている超耐熱性素材のフェノール繊維など、数々の革新的な素材を糸に紡いできた。素材が革新的であればあるほど、最初に糸に変えるのはとても難しい。同社は表にこそ出ないものの、そうしたハイテク素材が世に出る重要な一歩を支えてきたスペシャリストなのだ。2019年12月に5代目として就任した長谷享治(たかはる)社長は「日本の繊維には輝かしい未来がある」と咆哮(ほうこう)する、日本の繊維産地企業の“若き虎”だ。

WWDジャパン(以下、WWD):「日本の繊維には世界を変えられる力がある。未来のある輝かしい産業だ」が持論だ。

長谷享治(以下、長谷):だってそうでしょ?繊維以外に、お風呂に入る時などのごく一部の時間を除き24時間365日、人間が触れているものってありますか?つまり、それだけ人間に身近でありふれたものであるからこそ、繊維を変えれば本当の意味で世界を変えられる。当社はフェノール繊維やスパイバーの「ブリュードプロテイン」など、さまざまな繊維を手掛けているが、それでもごく一部に過ぎない。われわれが知らないだけで素晴らしい素材はまだまだある。それだけ可能性を秘めているのに、繊維産業に関わっている人たちこそがその可能性に気付いていない。

WWD:しかし日本の繊維産業はこの数十年、縮小を続けてきた。希望を捨てないのは大事だが、あまりにも楽観的に過ぎるのでは?

長谷:実家はすぐ工場の隣りにあって、物心ついたときから繊維業が身近にあった。特にここ羽鳥市は、紡績から織り・編み、染色加工、縫製までさまざまな工程に関わる中小企業が集積する“産地”。産業の縮小はそのまま、僕らのすぐ身近にあった企業の廃業や倒産に直結していて、閉塞感はずっと感じてきた。同業者や取引先と会っても、メディアでも「繊維はダメだダメだ」とそればかり。僕もほんのつい最近まで、そう思っていた。それを変えたのがゴールドウインの渡辺(貴生)社長とスパイバーの関山(和秀)社長という2人との出会いだった。

WWD:お二人との出会いをもっと詳しく。

長谷:2014年3月ごろに当社の桂川(誠也・取締役)がすごいスタートアップがあるといううわさを聞いて、翌月には私も含め、山形県鶴岡市のスパイバーさんの本社に行って「これはすごい、とんでもない素材だ」と。

WWD:当時のスパイバーはまだ、立ち上がったばかりのスタートアップ企業で、極端なことを言えば、海の物とも山の物とも判断がつかないようなステージだったと思うが。

長谷:関山社長を筆頭に、スパイバーの経営陣は僕よりも年下で、そんな若者たちがとんでもない革新的な繊維を通じて本気で世界を変えようとしている。その姿勢は衝撃的だった。さらに、当社とは長いお付き合いのあった、恩人とも呼べるゴールドウインの渡辺社長もそうした思いに共感して加わっていた。そこで僕も思ったんです。「繊維は世界を本当に変えられるんだ」と。

WWD:15年9月には、ゴールドウインと同じタイミングでスパイバーの第三者割当増資を引き受け、20年にはベンチャーのエム・テックスと共同でナノファイバー製品を開発するスピタージュを立ち上げた。

長谷:当社の紡績工場は小規模ながら、多種多彩な機械をそろえており、ずっと「どんな素材でも紡績してみせる」という自負があった。ただ、それではまだ受け身。ゴールドウインの渡辺社長とスパイバー関山社長に触発され、こちらの方から画期的な素材を主体的に掘り起こして世の中に出していこう、という考え方だ。

WWD:長谷虎紡績の業績は?

長谷:フェノール繊維や「ブリュード・プロテイン」などの最先端素材などを扱う紡績事業、衣料向けの糸や製品を製造する繊維製品事業、法人向けのタイルカーペットの3つが主要事業で、従業員数はグループ全体で195人。19年10月期の売上高は74億円(単体)、営業利益が2億円。ただ、コロナで20年10月期は苦しかった。赤字です。

WWD:原点は?

長谷:新卒で入って配属された大阪支店で上司になった、当時の支店長の教えだ。当時ですでに70歳になっていたその支店長はだれよりも早く6時半には出社し、トイレなどオフィスの清掃を行っていた。決して新しい建物ではなかったが、常にトイレはピカピカだった。ビジネスにしろ、人の生き方にしろ、入り口と出口が大事なんだ、ということを叩き込まれた。今になって思えば、社員の、そして会社自体が荒んでくればトイレに現れるというのは、ある種の真理だと感じている。

【推薦理由】
日本の繊維産業はピークをとっくに過ぎており、この30年縮小を続けてきた。繊維産地には紡績から織り・編み、染色・加工まで各工程の中小企業が集積しており、産地企業は外側にいるわれわれの想像を超えた閉塞感の中にいる。それらを裏側に秘めつつ、なお発する希望の言葉は強く深い輝きを持つ。

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花王が楽天の新設ページでテストマーケティング “へそごま除去パック”と“足用せっけん”を販売

 花王は、楽天グループが運営するインターネットショッピングモール「楽天市場」に新設されたページ「新商品コレクション」に店舗「ファンテック Lab&Biz」を出店した。第1弾商品として“へそごま除去パック”と“足用せっけん”の2製品を4月12日から4カ月間限定で発売する。同商品はオフラインの接点として、5月9日まで最新ガジェットの体験型ストア「ベータ(b8ta)」有楽町店にも出品。販売中に寄せられたお客の声や購買行動を収集・検討し、本発売を目指す。

 今回の新商品は、2018年に発足したオープンイノベーション・プラットフォーム組織「ファンテック Lab&Biz」が企画・開発。社内でアイデアや技術を公募し、個の深い悩みに焦点を当てた “N=1(1人の顧客)起点のサービス開発”として、“スポット ジェリー(SPOT JELLY)へそごまパック”と“アルギニスタ(ARGINISTA)足ラボせっけん”を商品化した。

 4月12日に新設された「新商品コレクション」は、「一般新商品」「楽天市場 限定商品」「楽天 先行販売商品」に加え、テストマーケティング段階の商品を紹介する「クリエイターズ商品」に分かれており、花王の2商品は「クリエイターズ商品」として限定販売。花王コンシューマープロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター ECビジネス推進部の生井秀一部長は、「『ファンテック Lab&Biz』では、従来の枠に囚われずにこれまで目を向けられなかった個の悩みに着目した商品を開発。しかし少数派の悩みに向けたものは商品やサービス化が難しい。そこで同社初の、小売店を介さずに『新商品コレクション』内に出店してテスト販売をスタートした。またベータ有楽町店でもリアル体験でき、オンラインとオフラインの接点の場を持たせている。楽天とベータでの購入者データや購買行動などを商品作りに反映させ、本発売を目指す。そして今後も他企業とともに商品作りを行う機会を設けていきたい」と述べた。

 楽天グループ コマースカンパニー アカウントイノベーションオフィスの森部隼シニアマネージャーは、「『新商品コレクション』を、メーカーには新商品を仕掛けるなら楽天市場という認知を高めていく。そしてユーザーにはここでしか買えない商品や新商品がそろっている場所として楽天市場の魅力向上につなげていく。4月12日から『クリエイターズ商品』に花王の2商品、『一般新商品』に約80アイテムを紹介しているが、今後も掲載商品を拡充し、『楽天市場 限定商品』『楽天 先行販売商品』は6月ごろに掲載する予定」と語った。

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TSI最終黒字38億円 21年2月期、不動産売却が寄与

 TSIホールディングスの2021年2月期連結業績は、純利益が前期比77.0%増の38億円だった。コロナの打撃で本業のもうけを示す営業損益は118億円の赤字(前期は7000万円の黒字)に沈んだ。構造改革費用として店舗閉鎖や希望退職募集などに伴う特別損失86億円を計上したが、港区と新宿区で保有するビルの不動産売却益など特別利益248億円で埋め合わせたため、最終損益は黒字を確保した。

 売上高は同21.2%減の1340億円。昨年春の緊急事態宣言による店舗休業とその後のアパレル消費の低迷が響いた。「ナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)」「アドア(ADORE)」「ナチュラルビューティベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC)」といった都心立地で通勤などの場面で選ばれるブランドが大幅な減収になった。一方で、「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」「アンディフィーテッド(UNDEFEATED)」「アンドワンダー(AND WANDER)」といったスポーツ系やストリート系のブランドは前期実績を上回った。国内EC(ネット通販)売上高は同12.0%増の406億円になった。

 22年2月期の業績は売上高1524億円(前期比13.7%増)、営業利益11億円、純利益16億円(同57.0%減)を予想する。売上高はコロナが本格化する前の20年2月期との比較で10.4%減になる。上期(3〜8月)はコロナの影響によって5億円の営業赤字、下期は一定の回復を見込んで16億円の営業黒字を見込む。

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有名ブランドに楽曲提供するサウンドデザイナーが謝罪 人種差別的なお面で騒ぐ動画を投稿して炎上

 「シャネル(CHANEL)」や「フェンディ(FENDI)」「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」などに楽曲を提供しているフランス人DJでサウンドデザイナーのミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)が、人種差別的なお面をSNSに投稿したことで謝罪する事態に発展した。

 問題となったお面は目の部分が東洋人を想起させる切れ長な形にくりぬかれていた。これをプライベートな夕食会の席で参加者8人が顔に当てて「ウーハンガールズ、ワフー(Wuhan girls, wahoo、Wuhanは中国武漢市のこと)」と叫ぶ動画を投稿した。

 この動画を受けてスージー・ロウ(Susanna Lau)や“ブライアンボーイ”の名で知られるブライアン・グレイ・ヤンバオ(Bryan Grey Yambao)、「ダイエット プラダ(Diet Prada)」など業界のインフルエンサーらがすぐさま反発。ロウは、「どこから始めればいいやら・・・斜めにカットされた目の、明らかに差別的な紙製のマスクはアジア版ブラックフェイスだ」などとインスタグラムに投稿した。ブライアンボーイも、「食事会の参加者が誰もこの行為が適切ではないということ、そしてこれをソーシャルメディアに投稿することが賢いことではないことに気づかなかったことに驚いた」とコメントしている。

 ゴベールは動画を投稿した翌日にインスタグラムに謝罪のコメントを掲載し、問題となった動画を削除した。「私の思いやりのない愚かな投稿で傷つけた方に改めてお詫びを申し上げます。とりわけこのような時期にこのような品格に書ける行為をしてしまったことを申し訳なく思います。アジア人に対するヘイトは許容されるものではなく、他のヘイトと同様に私は非難します」「われわれは皆、毎日何かを学んでいますがそれは十分ではないと実感しました。私は全員が調和して生きるべきであり、あらゆる形の人種差別と一丸となって戦うべきだと確信したため、私は自分自身に責任を持ち、より良い人間になることを約束します」とコメントした。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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子会社立ち上げは本気の証 アダストリアが環境負荷の“見える化”から進めるサステナビリティ

 アダストリアグループは、3月31日にEC専業ブランド「オー・ゼロ・ユー(O0U)」の販売を開始した。同ブランドはファッションにおける循環型ビジネスを目指し、さまざまな切り口で既存の商習慣とは異なるサステナブルなあり方を模索。それらの取り組みを機動的に進めるために、アダストリア本体ではなく子会社アドアーリンクを昨年11月に立ち上げ、「オー・ゼロ・ユー」を運営する。

 同ブランドが環境や社会に与える負荷を測定するアパレル業界共通のツール「ヒグ・インデックス(HIGG INDEX)」を導入し、各商品の環境負荷を分かりやすいマークで表示しているのもそうした取り組みの中の一つ。負荷を計測して“見える化”することは、負荷低減に向けた第一歩だ。ただし、消費者はもちろんアパレル業界人でも、「ヒグ・インデックス」と言われてピンとくる人はまだまだ少ない。ここでは、同インデックス導入の意図や「オー・ゼロ・ユー」が描くサステナビリティ実現の道筋を、アダストリアのサステナビリティ責任者である福田泰己取締役と、タッグを組んでいるコンサルティング企業ローランド・ベルガーの福田稔パートナーに聞いた。

※「ヒグ・インデックス」とは=アパレルの世界的な業界団体であるサステナブル・アパレル連合(SAC)が2012年に開発した環境・社会負荷の測定ツール。SACには36カ国250超の企業やNPOなどが加盟しており、「ヒグ・インデックス」は約1万8000社が活用している。各企業が独自の指標や数値でサステナブルをうたうのではなく、共通ツールを用いることで「何がどれだけサステナブルか」の客観比較を可能にし、負荷低減を目指せるのが同インデックスのポイント。「オー・ゼロ・ユー」では同インデックス内の素材についての環境負荷測定ツール、「ヒグ・マテリアルズ・サステナビリティ・インデックス(HIGG MSI)」を現時点で活用している。

「いかに分かりやすく伝えるかが重要」

WWD:「オー・ゼロ・ユー」で「ヒグ・インデックス」のスコアを公開することにした意図は。

福田泰己アダストリア取締役(以下、福田泰):コロナ禍もあるし、日本政府は2050年にカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)を実現すると宣言した。世界中で脱炭素への注目がいっそう高まる中で、アパレルは二酸化炭素(CO2)排出量の大きな産業と言われている。環境負荷低減に取り組むためには何らかの指標が必要であり、それでグローバルで共通の指標となっている「ヒグ・インデックス」に注目した。ただし、日本の消費者には馴染みが薄く、分かりにくい部分もある。それをいかに分かりやすく表現するか、お客さま1人1人が自分ごとできるようにするかという点で、ローランドベルガーとタッグを組んだ。

福田稔ローランド・ベルガーパートナー(以下、福田稔):ローランド・ベルガーでは以前から、「ヒグ・インデックス」を日本に広められないかと独自で研究していた。「オー・ゼロ・ユー」には戦略策定から関わっており、各商品で行っている使用素材の環境負荷のスコア算出はSACが提供しているロジック(計算式)にしっかり則って行っている。商品1点1点の素材について、どんな原料をどれだけの量使っているか、混紡率はどれくらいか、加工や製法はどんなものかといった細かな要素を掛け合わせてスコアを算出していく。入力項目が非常に多岐にわたるため、情報を全て集めて管理するのはものすごく煩雑だ。その入力の仕組み化をローランドベルガーが担った。算出ロジックはSACが打ち出しているものから変えていないが、スコアの見せ方だけは日本の消費者が受け入れやすいように変えている。温暖化、水不足、資源枯渇、水質汚染に対し、どれだけ配慮できているかを数字そのままではなく、3段階のスマイルマークで示すようにした点などがそれだ。分かりやすく伝えるためのデザインについては、クリエイティブエージェンシーのKESHIKIに担当してもらった。

WWD:日本の消費者には、欧米の消費者ほどサステナビリティの考え方がまだ浸透していないともよく言われるが。

福田稔:われわれも当初は、世界水準のサステナビリティの取り組みを日本の消費者に打ち出しても、付いてきてもらえないのではないかと思っていた。しかし、昨年春に消費者インタビューを実施したら、コロナ禍の影響もあって消費者の意識が加速度的に変わっていくのを実感した。このままいけば、3〜5年後には世の中は大きく変わる。それで、やはり世界水準のサステナビリティに取り組むべきと考えて、「ヒグ・インデックス」の実装に取り組んだ。

福田泰:私がその消費者インタビューで印象的だったのは、サステナビリティの意識が高まっている一方で、「価格の許容性はゼロ」だった点。つまり、1円でも価格が高いなら環境負荷の低い商品を選ばないという結果だった。ただ、これをポジティブに考えれば、同じ価格で提案すれば環境負荷の低い商品を選んでもらえるということになる。アダストリア本体ではECが成長してはいるものの、まだまだ実店舗の売り上げが商売全体の8割を占める。だから、(コスト構造を変えるべく)子会社のアドアーリンクとして切り離し、EC専業で新ブランドを立ち上げた。それによって価格を抑えることができれば、環境負荷の低い商品を手に取っていただけるはず、という考えだ。

今後は取り組み先の工場も公開

WWD:環境負荷についての3段階のマークは、具体的にどのように商品を3分類して付けているのか。

福田稔:各アイテムにおいて、一般的な素材や製法で作るならCO2排出量はこれくらい、水使用はこれくらいといったように値を出して、それを基準としている。基準をもとに環境負荷の小ささが上位3分の1、中位3分の1、下位3分の1というに分けた、相対的な分類だ。基準となる値は、“生産管理ひと筋30年”というような生産畑に精通した社員が、今そのアイテムを作る場合の最も一般的な素材や製法を指定し、算出している。

福田泰:企業が環境負荷低減のために動くことはもちろん必要だが、お客さま自身にも取り組もうと思っていただかないと負荷は減らせない。企業と生活者がそれぞれ本気で取り組むことが大切だ。お客さまにとって分かりやすくするために今回は3段階のマークを採用したが、今後例えば「ヒグ・インデックス」のスコアを商品ごとにそのまま公表していく形が日本でも広がり、お客さまにもそれで伝わるようになるのなら、われわれもその手法に合わせていく考えだ。今回採用した手法に固執するつもりはない。

WWD:「ヒグ・インデックス」実装に取り組んでみて、困難だった点はあるか。

福田泰:現時点では素材から商品ができるまでの環境負荷を“見える化”したが、海外の工場から日本に届くまで、日本での物流過程での負荷についてはまだ手付かずだ。ただし、素材から商品ができるまでの過程でのCO2排出量が、サプライチェーン全体での排出量の9割を占めるというデータもある。そういう意味で、まずは一手として価値があったと思っている。今期(22年2月期)を終えた段階でサステナビリティレポートを作成し、環境負荷改善のために達成したこと、まだできていないことを公表し、取り組み先工場も公開していきたい。今後は期末ごとに同様のレポートを発表していく考えだ。

福田稔:「オー・ゼロ・ユー」は、毎シーズン40型ほどを企画する。一般的なブランドよりも型数が絞られているからこそ、スコア算出のためのデータ入力が可能となっている面はある。これで型数が増えれば、それだけデータ収集・管理は大変になる。「ヒグ・インデックス」の実装を「オー・ゼロ・ユー」だけでなく、アダストリアグループ全体に広めたり、業界内で横展開したりするとなると、データの管理や入力は課題になっていくだろう。

WWD:アダストリアグループの他ブランドにも「ヒグ・インデックス」や、その他の環境負荷低減に向けた取り組みを導入する考えはあるのか。

福田泰:可能性はある。先ほども説明したが、アダストリア本体で循環型ファッションに取り組もうとすると、規模が大きいため横串を通すことが難しい。それでアドアーリンクを立ち上げた。「オー・ゼロ・ユー」が環境負荷低減を目指していく中で、お客さまの共感を得られる取り組みもあれば、労力やコストとお客さまの反応が見合わないものも出てくるだろう。もちろん、お客さまの反応が鈍いからといって「オー・ゼロ・ユー」では改善をやめることはないが、アダストリア全体には好反応が得られた部分を還元していくのがいいだろう。もちろん、「ヒグ・インデックス」導入のためにわれわれの仕組みが使いたいという企業があれば、手法は開示していく。自社がどうするかというより、業界全体としてどう改善していくか、そのために他社とどう協力するかという考え方が今の世の中の主流だ。アドアーリンク、ローランドベルガー、そして参加したい他社とで、コンソーシアムのような形を組んでいくのがいいのではないか。

環境負荷の低減とファッションのワクワクの両立を追求

WWD:商品を企画する上で、デザインと価格のバランスという従来の制約に、サステナビリティという新たな制約が加わった。それはデザインの発想や企画プロセスにどのような変化をもたらしているか。

福田稔:素材の段階で環境負荷のスコアがある程度分かるので、再生素材などの負荷の低い素材からデザインを考えていくことになる。デザイナーにとっては企画をする上で1つ制約が増えることになり、(使いたい素材と環境意識の)バランスを取ることは難しいだろう。何を優先するのかは、生産、MD、デザイナーといった各担当者が日々議論しながら進めている。

福田泰:最終的に判断するのはお客さまだ。お客さまは素材が環境にいいから商品を買うわけではない。ときめきや肌触りのよさで商品を選んだら、結果的に環境によかったという形にしないとだめだ。アドアーリンクは社員数も12人なので、生産、MD、デザイナーらのデスクも隣り合っており、日々コミュニケーションして企画を進めている。(使いたい素材や環境負荷の低さなどの中で)何を優先するかは、意見がぶつかりあっていい。最終的にお客さまにどういう価値を届けたいのかをすり合わせ、そこに向かってブランドをディレクションしていくことが大切だ。ブランドお披露目の展示会では、来場者からプラスとマイナスの両方の反応があった。マイナスは、「真面目すぎる」といった声。柄の提案もなかったし、アダストリアが強みとしている“Play fashion!”の部分、つまりファッションのもたらすワクワク感がやや薄かった。それをどこまで反映させていくかもこれからだ。

WWD:売上高追求による作り過ぎがアパレルの大量廃棄につながってきた。環境負荷低減を目指すブランドとして、売上高はもう評価指標にはならないのか。

福田泰:ブランドは大きくなることで少しずつ世の中に影響を与えていくと信じている。そういう意味で売り上げを作ることは大切だ。「赤字でもいい」というのでは事業として続かず、それこそサステナブルではない。きちんと利益を出していくことが求められている。目標とする利益率などはアダストリア本体のブランドとは異なるが、アダストリア内でもブランドごとに異なっている。ただ、「オー・ゼロ・ユー」はEC専業のため、原価率は50%を超える。特に、例えば、120双糸を使ったブロードシャツは一般的には1万4000〜5000円はするものだ。それをわれわれは8900円(税込)で販売している。

福田稔:「オー・ゼロ・ユー」は全商品が環境負荷の3段階マークで上位3分の1となることを目指している。そんな「オー・ゼロ・ユー」の売り上げが伸びていくのなら、環境負荷の低い服が世の中に広がることになる。負荷の低い服を世の中に広げることを指標にしていきたい。

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ドトール、大豆ミート第2弾。バルサミコクリーム仕立てベーグルサンド。

株式会社ドトールコーヒー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:星野 正則)が、全国のエクセルシオール カフェで4月22日(木)から、植物由来*¹の食材を使用したベーグルサンド 「大豆ミート ~バルサミコクリーム仕立て~」(店内 570円税込、テイクアウト560円税込)を発売する。
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上場企業を狙う「金なしベンチャー」。グルメサイトRettyがはまった落とし穴

 実名型のグルメサイト「Retty」を運営する株式会社Retty(本社:東京都港区、代表取締役:武田 和也)が貸付を行った株式会社ジンユウ(本社:東京都港区、代表取締役兼CEO:早野 允)が破産手続きを開始し、取り立て不能の恐れがあると発表した。Rettyは、2020年10月に上場したばかり。思わぬ落とし穴にはまった形だ。
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上場企業を狙う「金なしベンチャー」。グルメサイトRettyがはまった落とし穴

 実名型のグルメサイト「Retty」を運営する株式会社Retty(本社:東京都港区、代表取締役:武田 和也)が貸付を行った株式会社ジンユウ(本社:東京都港区、代表取締役兼CEO:早野 允)が破産手続きを開始し、取り立て不能の恐れがあると発表した。Rettyは、2020年10月に上場したばかり。思わぬ落とし穴にはまった形だ。
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しまむらの復活は本物か 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナ禍でアパレル市場が低迷する中、しまむらのV字回復に注目が集まっている。このたび発表された2021年2月期の財務諸表を細かく分析して、復活の背景と今後の課題を整理してみた。

 しまむらが4月5日に発表した2021年2月期連結決算はコロナ禍のエッセンシャルシフトや順調な天候推移を追い風に、商品調達の短サイクル化やPB(プライベートブランド)とTB(タイアップブランド)の再構築なども寄与して売り上げが上向き、粗利益率も販管費率も改善して4期ぶりに営業増益に転じて純利益は倍増した。この勢いはコロナが収束しても続く「実力」なのだろうか。

業績を押し上げたのは内因か外因か

 21年2月期の売り上げは第1四半期(3〜5月)こそ緊急事態宣言に直撃されて前年同期の8掛けに落ち込んだが、第2四半期(6〜8月)は全国民に一律10万円が支給された「特別定額給付金」が寄与して12.6%増と急浮上し、第3四半期(9〜11月)もコロナの季節的収束と順調な天候推移に恵まれて15.6%増と好調が続いた。第4四半期(12〜2月)こそ再度の緊急事態宣言や勤労収入の減少(賞与や残業手当の減少、非正規就業者の失業やシフト減など)で8.2%増と減速したが、通期では5426億円と前期から4%近く増加した。

 粗利益率も第1四半期こそ30.6%と前年同期から1.6ポイント低下したが、第2四半期は35.5%と同1.1ポイント改善し、第3四半期は35.3%と天候不順と消費増税で不調だった前年から2.6ポイントも上積み、売り上げの伸びが鈍った第4四半期も33.4%と消費増税と暖冬に直撃された前年から2.5ポイント上積んだ。その一方、販管費率は第1四半期こそ32.0%と前年同期から3.8ポイントも上昇したが、第2四半期は24.0%と前年から3.9ポイントも抑制され、第3四半期も25.3%と前年から3.8ポイント抑制されたが、第4四半期は28.6%と前年より0.8ポイントかさんだ。

 結果の営業利益は第1四半期こそ売上対比12%もの赤字に転落したが、第2四半期は11.7%の黒字に浮上。第3四半期も10.1%の黒字と収益性を維持したが、第4四半期は5.0%(前年は3.2%)と大きく減速した。そんな四半期ごとの流れを見る限り、商品内容やサプライ体制の革新という内因ではなく、前年と比較しての消費環境の好転という外因が大きかったと推察される。

長期的には下げ止まりでしかない

 4期ぶりの好転とはいえ、長期的に見れば成長の鈍化は否めず、営業利益率も7.0%と4%台に落ち込んだ過去2期からは回復したものの、9%台だった11年2月期〜13年2月期には及ばない。

 商品政策や天候による好不調で上下はあるものの、粗利益率はPB(自社開発ブランド)やTB(サプライヤーとのタイアップブランド)の拡大で上昇基調が続いており、21年2月期は33.9%と06年2月期の30.7%からは3.2ポイント上昇しているが、販管費率の上昇の方が速く、06年2月期の22.7%から20年2月期の28.3%まで5.6ポイントも上昇して収益を圧迫していた。02年2月期には粗利益率27.6%、販管費率21.5%だったことを思えば、随分と非効率になってしまったものだ。

 在庫回転は07年2月期の12.43回転がピークで、以降は減速基調が続いて20年2月期は6.89回転と7回を割り込み、業績が浮揚した21年2月期も7.01回転と根本的な在庫フローは変わっていない。年間坪効率も06年2月期の95.6万円からじりじりと低下が続いており、20年2月期は76.4万円まで落ち込んだ。21年2月期は79.8万円とやや戻したとはいえ、19年2月期の81.1万円にも届かないから、品ぞろえや店舗の魅力が目に見えて高まったとは言い難い。直近の売り場を見ても商品も陳列も代わり映えしないから、売り場の印象と結果数字は一致している。

 主力業態の「ファッションセンターしまむら」(全社売り上げの76.8%を占める)の21年2月期部門別売り上げを見ても、伸びたのはインテリア(18.6%増)、ベビー・子供服(10.3%増)、寝装具(9.2%増)、洋品小物(6.6%増)、肌着(3.1%増)であって、肝心の婦人服は2.2%減と前年を割り、シューズは13.5%減と落ち込んだ。商品の魅力が回復しているなら婦人服が一番に伸びるはずではないのか。

 西松屋チェーン同様、エッセンシャルシフトに押し上げられた子供服業態「バースデイ」こそ16.0%増と好調だったが、トレンド志向の強い「アベイル」は1.1%減と前年を割っている。事業構造や運営体系が改革されたのなら全業態が上向くはずで、やはり内因より外因による浮揚が大きかったと見るべきだろう。

陳腐化・非効率化したマーチャンダイジング

 「ファッションセンターしまむら」業態の21年2月期は浮揚したとはいえ売り上げは4120億9500万円と2.6%しか伸びず、客数は1.6%減少しているから人気が復活したわけではない。年間坪効率も91.2万円と前期の88.7万円からは回復したが、18年2月期の100.7万円には遠い。

 前年より値引き率が2.3ポイント抑制され8.4%に収まったと開示しているから、33.1%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は41.5%(調達原価率58.5%)だったと受け取れる。値引き率を5%弱に抑えていた02年頃に比べれば直近は10%を超え、当時は68%ほどだった調達原価率も10ポイント近く切り下げられたから、お買い得感は相応に薄れたのではないか。

 店頭の品ぞろえも、ティーンズはともかくヤング・OLとミセスのメリハリがなくなり、似たような商品が重複して色調もベタになり、その分、テイストとアイテムのバラエティーを損なって魅力のない店になってしまった。かつての稼ぎ頭からお荷物部門に転落したイトーヨーカ堂の衣料部門同様、POSを過信して売れ筋に絞り込んで類似品を広げると、こんな売り場になってしまう。消費環境の好転で売り上げこそ回復したが、客数は3期連続して減少している。品ぞろえの魅力が高まったのなら客数が一番に上向くはずで、「ファッションセンターしまむら」の退化には歯止めが掛かっていない。

 「アベイル」はもっと厳しく売り上げも1.1%減の494億8000万円と浮揚せず、客数も6.3%減と前期の2.6%減より悪化している。年間坪効率も52.3万円と主力3業態では最も低く、これでは在庫を消化できず滞貨してしまう。値引き率は前期から3.4ポイント抑制されたとは言え17.0%(前期は20.4%!)と販売消化が滞っており、商売になっていない。

 38.0%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は55.0%(調達原価率45.0%)になるから、魅力的なブランドがそろうはずもない。かつてのテイスト・ブランド別編成を崩して「ファッションセンターしまむら」同様に似たようなテイストとアイテムが重複するメリハリとバラエティーの欠けた売り場になっており、エッセンシャルシフトでオシャレ離れが進む現況では立て直しは容易ではないだろう。

 唯一「バースデイ」だけは売り上げが626億5400万円と16.0%増で、客数も5.4%伸びており、値引き率も前期から2.6ポイント抑制されて5.6%と販売消化も順調だが、年間販売効率は前期から15%伸びても74.5万円と「ファッションセンターしまむら」の8掛け強に留まる。売り場を見る限り「ファッションセンターしまむら」や「アベイル」よりバラエティーとメリハリがあり育児関連のアイテムも多少はそろっているから、まだまだ伸ばせるはずだ。

ブレイクスルーなき成長はない

 業績が回復したとはいえ再成長に転ずるほどの勢いはなく、21年2月期末店舗数も2199店と前期末から15店減少している。「中期経営計画2023」も今期から3年間に100店舗を新規出店して売り上げを5950億円と9.7%伸ばし、営業利益を493億円と29.6%伸ばす構想で、ブレイクスルーな勢いはもとより想定していない。

 EC(ネット通販)にしても、客注アプリ活用のお取り寄せ「しまコレ」に始まり、「ゾゾタウン」での1年足らずという短期間のトライアルを経て20年10月にようやく公式オンラインサイトを立ち上げたばかりで、21年2月期の売り上げは「しまコレ」を合わせて17億円(EC比率0.3%)に過ぎない。インフルエンサー企画のEC専用商品をSNS発信し、全国2200店舗で業態を超えた店受け取り実現して2024年2月期でEC比率2%(120億円)を計画するが、国内ユニクロが20年8月期で1076億円(EC比率13.3%)を売り、多くのアパレルチェーンがコロナ禍でECを急拡大してEC比率2ケタが当たり前になり、中には過半を超えるチェーンもある中では遅きに失する感がある。

 21年2月期でEC商品の「店受け取り」が9割を占めると言っても店舗在庫を引き当てるわけではなく、EC専用倉庫から店舗物流のルート便を使って店舗に配送するだけで、店舗在庫の消化回転を高め機会ロスを減す効果も顧客の受け取りを早める効果もなく、C&C(クリック&コレクト)は初歩的な段階にある。ライトオンさえECから店舗在庫を引き当てて取り置き、店舗でお試しして決済するC&Cで顧客の利便に応えているのに、ひと時代もふた時代も出遅れた感を否めない。

 しまむら自身が決算短信の「次期の見通し」で明記しているように、「政府による財政支援の段階的縮小、非正規社員の厳しい雇用情勢、旅行業や飲食業を中心に引き続き厳しい状況が継続」する中、しまむら顧客の生計はさらに窮していく。テクニカルな改善の積み上げだけでは、顧客層の消費減退で売り上げが伸び悩み、効率低下とコスト上昇で収益が細るのは目に見えている。従前の事業構造のまま改善するだけでなく、事業構造を一変させるブレイクスルーが必要ではないか。

同じ事業構造ではコスト上昇に飲み込まれる

 販管費率は02年2月期の21.5%から20年2月期は28.3%まで上昇したが、その中身を検証しておきたい。02年2月期の人件費率は9.8%だったが、20年2月期も21年2月期も13.4%と3.6ポイント肥大している。店舗コストを反映する賃借料率も10年2月期は4.9%に収まっていたが、年々上昇して20年2月期は6.5%と1.6ポイント、売り上げが上向いた21年2月期も6.1%と1.2ポイント肥大している。

 主婦のパート中心に運営するしまむらはマニュアル化で店舗作業を標準化・省力化してきたが、アドレス管理と棚割指示を徹底しても什器システムと陳列方式自体はほとんど進化しておらず、定番比率が低く季節商品が多頻度に入れ替わり、TC(トランスファーセンター)※1.に在庫を残さず店舗に撒き切るから店間移動のピッキングも多く、作業量を圧縮できないでいる。

 RFIDタグも未導入だからマテハン作業の圧縮も在庫管理やレジ精算の効率化も進まない。RFIDタグが導入済みならスマホのレーダー探索アプリでピッキングも手間取らず、店間移動や客注、EC受注に店舗在庫を引き当てる多数のピッキングもこなせるが、未導入では汗だくの人海戦術になってしまう。

 しまむらでは最新の店舗でもセルフレジさえ入っておらず、1点ごとにビニール袋から取り出してハンガーに掛け、タグに記載されたコードを見て指定什器に陳列する、という20年前と大差ない品出し陳列作業が黙々と続けられている(開店直後に行って作業プロセスを実見した)。ユニクロやジーユーが早々とRFIDタグを全面導入して在庫管理やマテハンの効率化、セルフレジ化を進めて着々と運営人時量を圧縮しているのに比べれば、一時代どころでなく出遅れた感がある。中期計画ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を挙げているが、ならばRFIDタグの全面導入が先決ではないのか。

 店舗の大型化も全く進んでおらず近年は1000平方メートル強で停滞しており、大型化による運営効率の改善も期待できない。店舗が大型化しないまま販売効率がじりじりと下がっていけば、売上対比の人件費負担も賃借料負担も年々かさんでいく。決算業績の推移を見れば、その隘路は明らかだ。ユニクロが年々、着々と店舗規模を大型化し運営効率を改善しているのとは好対照に見える。

※1.TC(トランスファーセンター)…入荷商品を棚入れすることなく自動ソーターで高速仕分けして出荷する方式の物流センター

米コールズにみるブレイクスルー

 「米国のしまむら」と比喩したくなるほど立地も客層も似ているのが米国の大衆デパートチェーンのコールズ(KOHL’S)で、郊外の賃貸アパート地区につながる生活幹線道路では必ずと言ってよいほど目につく。中低所得女性勤労者とその家族を対象としているのも似ているが、店舗規模は標準店で8175平方メートルと1000平方メートル強の「ファッションセンターしまむら」と比べれば8倍大きい。21年1月期末で49州に1162店舗を展開し、159億5500万ドルを売り上げている。

 立地はロードサイドのストリップセンター※2.が82%、フリースタンディング(独立店舗)が13%、モール内が5%の構成になる。出店形態は所有店舗が35%、定期借地店舗(建物は自前)が21%、賃借店舗が44%という布陣で、コロナ前の20年1月期で売上対比賃借料率は1.57%、減価償却費を加えて6.16%という負担率は一昔前のしまむらに近い。コロナ禍の米国ではパーキングアクセスに手間取り人混みも避けられないモールが疎まれ、ダイレクトパーキングが可能なストリップセンターやフリースタンディングが好まれている。

 ウィメンズを中心にメンズ、ティーンズ、キッズの衣料と服飾雑貨、化粧品、ホームグッズの構成で、拡大している化粧品では今秋から「セフォラ」の導入が始まる。衣料品では「ナイキ」や「アディダス」「アンダーアーマー」「ニューバランス」「バンズ」「スケッチャーズ」、「リーバイス」「チャップス」などのNB(ナショナルブランド)に加え、独自開発のPBやブランドメーカーとタイアップしたEXB(エクスクルーシブブランド)で構成される。「ファッションセンターしまむら」に比べれば店舗が広くデパートメント構成になっており、大衆デパート風に小綺麗なVMDが組まれている。「しまむら」と大きく違うのは大衆的なNBがそろっていることとジュエリーや化粧品の売場が大きいことで、近年はカフェを併設する店舗も増え、昔に比べれば華やぎも加わってきた。

 中低所得層を顧客とするコールズは、しまむら同様に近年は伸び悩んでおり、ECを拡大して自社在庫だけでなくサプライヤー在庫も自社サイトに掲載してドロップシッピング※3.で売り上げを稼ぎ、近隣顧客の注文に店舗在庫を引き当てて最速で店渡し・店出荷し(EC売り上げの43%)、EC売り上げは59億ドルと総売り上げの40%に達している。加えて19年からアマゾンの返品も受け付けて全店に広げ、アマゾンのデバイスも販売して来店客を増やしている。

 コールズも業績は好調とはいえないが、ECを拡大してサプライヤーまで取り込み、C&Cを実践して店舗をOMO(オンラインとオフラインの融合)の拠点とし、アマゾンとも提携して新規客の取り込みを図っている。全社売上の40%に達する59億ドルものEC売り上げは間違いなくブレイクスルーで、しまむらはもっとコールズに学ぶ必要がある。ならば、しまむらが大手ECプラットフォーマーと戦略提携して、店舗受け取りと返品の拠点となっても驚きはしない。それで受け取る手数料は知れているだろうが、これまで「ファッションセンターしまむら」に来なかった客層が大挙して訪れる効果は想像以上のものになるだろう。

※2.ストリップセンター…店舗棟が並列あるいはコの字状に駐車場を囲んで各店舗にダイレクトパーキングできるロードサイドの自由営業型商業施設
※3.ドロップシッピング…サイトを運営する会社は在庫を抱えず、受注した商品はサプライヤーが直接、顧客に発送するECの仕組み

巨額の余剰資金が革新を妨げている

 しまむらは独立店舗が大半だから商業施設デベロッパーに売上金を預託する必要がなく、売上債権回転日数は20年2月期で4.18日、21年2月期も4.47日と日銭が回っている。棚資産回転日数は20年で53.51日、21年で51.67日と昔に比べれば遅くなったが、買掛債務回転日数は20年で19.33日、21年も24.53日と支払いが速く、20年は38.36日で548億5800万円、21年は31.61日で468億7300万円の運転資金負担が発生している。それは純資産対比で20年15.0%、21年12.2%に過ぎず、無借金経営どころか20年2月期末で1520億円、21年2月期末で1930億円の余剰資金が遊んでいる(NCD 譲渡性定期預金)。

 「遊んでいる」というのは適切でなく「運用されている」のだが、企業が手持ちの巨額余剰資金を事業に投ぜず低金利の譲渡性定期預金に寝かせているのは決して健全な状態ではない。ファーストリテイリングだって純資産9961億円に対して5900億円の有利子負債を借り入れ、事業の拡大に投資している(20年8月期)。それが成長を志向して事業構造を変えていく健全な経営であり、巨額の余剰資金を寝かせたままでは経営判断が保守的になり、未来への扉を開けなくなる。

 21年2月期のしまむらは4期ぶりに浮上したが、はっきりいえば大した改革もせず、時代の追い風に乗ってテクニカル得点しただけなのではないか。事業構造を変えていかないと収益性は確実に劣化し、いずれ不採算に陥ってしまう。それはレナウンや三陽商会など大手アパレル、三越伊勢丹など大手百貨店で実証されたことではないのか。あまりに余剰資金があると危機感が欠け、何もかもが不徹底で後手に回って時代に置いていかれ、果てはゆでガエルのごとき結末に至る。

 しまむらが最も急ぐべきは余剰資金の前向きな投資であり、開発力あるサプライヤーの買収で商品力を高め、ECプラットフォーマーの買収や資本提携で一気呵成なEC拡大を図るべきだ。それに踏み切れないのなら、自社株式の買い入れで減資するべきではないか。身を引き締め危機感ある経営に転ずるにはそれが必要だと思う。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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しまむらの復活は本物か 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナ禍でアパレル市場が低迷する中、しまむらのV字回復に注目が集まっている。このたび発表された2021年2月期の財務諸表を細かく分析して、復活の背景と今後の課題を整理してみた。

 しまむらが4月5日に発表した2021年2月期連結決算はコロナ禍のエッセンシャルシフトや順調な天候推移を追い風に、商品調達の短サイクル化やPB(プライベートブランド)とTB(タイアップブランド)の再構築なども寄与して売り上げが上向き、粗利益率も販管費率も改善して4期ぶりに営業増益に転じて純利益は倍増した。この勢いはコロナが収束しても続く「実力」なのだろうか。

業績を押し上げたのは内因か外因か

 21年2月期の売り上げは第1四半期(3〜5月)こそ緊急事態宣言に直撃されて前年同期の8掛けに落ち込んだが、第2四半期(6〜8月)は全国民に一律10万円が支給された「特別定額給付金」が寄与して12.6%増と急浮上し、第3四半期(9〜11月)もコロナの季節的収束と順調な天候推移に恵まれて15.6%増と好調が続いた。第4四半期(12〜2月)こそ再度の緊急事態宣言や勤労収入の減少(賞与や残業手当の減少、非正規就業者の失業やシフト減など)で8.2%増と減速したが、通期では5426億円と前期から4%近く増加した。

 粗利益率も第1四半期こそ30.6%と前年同期から1.6ポイント低下したが、第2四半期は35.5%と同1.1ポイント改善し、第3四半期は35.3%と天候不順と消費増税で不調だった前年から2.6ポイントも上積み、売り上げの伸びが鈍った第4四半期も33.4%と消費増税と暖冬に直撃された前年から2.5ポイント上積んだ。その一方、販管費率は第1四半期こそ32.0%と前年同期から3.8ポイントも上昇したが、第2四半期は24.0%と前年から3.9ポイントも抑制され、第3四半期も25.3%と前年から3.8ポイント抑制されたが、第4四半期は28.6%と前年より0.8ポイントかさんだ。

 結果の営業利益は第1四半期こそ売上対比12%もの赤字に転落したが、第2四半期は11.7%の黒字に浮上。第3四半期も10.1%の黒字と収益性を維持したが、第4四半期は5.0%(前年は3.2%)と大きく減速した。そんな四半期ごとの流れを見る限り、商品内容やサプライ体制の革新という内因ではなく、前年と比較しての消費環境の好転という外因が大きかったと推察される。

長期的には下げ止まりでしかない

 4期ぶりの好転とはいえ、長期的に見れば成長の鈍化は否めず、営業利益率も7.0%と4%台に落ち込んだ過去2期からは回復したものの、9%台だった11年2月期〜13年2月期には及ばない。

 商品政策や天候による好不調で上下はあるものの、粗利益率はPB(自社開発ブランド)やTB(サプライヤーとのタイアップブランド)の拡大で上昇基調が続いており、21年2月期は33.9%と06年2月期の30.7%からは3.2ポイント上昇しているが、販管費率の上昇の方が速く、06年2月期の22.7%から20年2月期の28.3%まで5.6ポイントも上昇して収益を圧迫していた。02年2月期には粗利益率27.6%、販管費率21.5%だったことを思えば、随分と非効率になってしまったものだ。

 在庫回転は07年2月期の12.43回転がピークで、以降は減速基調が続いて20年2月期は6.89回転と7回を割り込み、業績が浮揚した21年2月期も7.01回転と根本的な在庫フローは変わっていない。年間坪効率も06年2月期の95.6万円からじりじりと低下が続いており、20年2月期は76.4万円まで落ち込んだ。21年2月期は79.8万円とやや戻したとはいえ、19年2月期の81.1万円にも届かないから、品ぞろえや店舗の魅力が目に見えて高まったとは言い難い。直近の売り場を見ても商品も陳列も代わり映えしないから、売り場の印象と結果数字は一致している。

 主力業態の「ファッションセンターしまむら」(全社売り上げの76.8%を占める)の21年2月期部門別売り上げを見ても、伸びたのはインテリア(18.6%増)、ベビー・子供服(10.3%増)、寝装具(9.2%増)、洋品小物(6.6%増)、肌着(3.1%増)であって、肝心の婦人服は2.2%減と前年を割り、シューズは13.5%減と落ち込んだ。商品の魅力が回復しているなら婦人服が一番に伸びるはずではないのか。

 西松屋チェーン同様、エッセンシャルシフトに押し上げられた子供服業態「バースデイ」こそ16.0%増と好調だったが、トレンド志向の強い「アベイル」は1.1%減と前年を割っている。事業構造や運営体系が改革されたのなら全業態が上向くはずで、やはり内因より外因による浮揚が大きかったと見るべきだろう。

陳腐化・非効率化したマーチャンダイジング

 「ファッションセンターしまむら」業態の21年2月期は浮揚したとはいえ売り上げは4120億9500万円と2.6%しか伸びず、客数は1.6%減少しているから人気が復活したわけではない。年間坪効率も91.2万円と前期の88.7万円からは回復したが、18年2月期の100.7万円には遠い。

 前年より値引き率が2.3ポイント抑制され8.4%に収まったと開示しているから、33.1%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は41.5%(調達原価率58.5%)だったと受け取れる。値引き率を5%弱に抑えていた02年頃に比べれば直近は10%を超え、当時は68%ほどだった調達原価率も10ポイント近く切り下げられたから、お買い得感は相応に薄れたのではないか。

 店頭の品ぞろえも、ティーンズはともかくヤング・OLとミセスのメリハリがなくなり、似たような商品が重複して色調もベタになり、その分、テイストとアイテムのバラエティーを損なって魅力のない店になってしまった。かつての稼ぎ頭からお荷物部門に転落したイトーヨーカ堂の衣料部門同様、POSを過信して売れ筋に絞り込んで類似品を広げると、こんな売り場になってしまう。消費環境の好転で売り上げこそ回復したが、客数は3期連続して減少している。品ぞろえの魅力が高まったのなら客数が一番に上向くはずで、「ファッションセンターしまむら」の退化には歯止めが掛かっていない。

 「アベイル」はもっと厳しく売り上げも1.1%減の494億8000万円と浮揚せず、客数も6.3%減と前期の2.6%減より悪化している。年間坪効率も52.3万円と主力3業態では最も低く、これでは在庫を消化できず滞貨してしまう。値引き率は前期から3.4ポイント抑制されたとは言え17.0%(前期は20.4%!)と販売消化が滞っており、商売になっていない。

 38.0%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は55.0%(調達原価率45.0%)になるから、魅力的なブランドがそろうはずもない。かつてのテイスト・ブランド別編成を崩して「ファッションセンターしまむら」同様に似たようなテイストとアイテムが重複するメリハリとバラエティーの欠けた売り場になっており、エッセンシャルシフトでオシャレ離れが進む現況では立て直しは容易ではないだろう。

 唯一「バースデイ」だけは売り上げが626億5400万円と16.0%増で、客数も5.4%伸びており、値引き率も前期から2.6ポイント抑制されて5.6%と販売消化も順調だが、年間販売効率は前期から15%伸びても74.5万円と「ファッションセンターしまむら」の8掛け強に留まる。売り場を見る限り「ファッションセンターしまむら」や「アベイル」よりバラエティーとメリハリがあり育児関連のアイテムも多少はそろっているから、まだまだ伸ばせるはずだ。

ブレイクスルーなき成長はない

 業績が回復したとはいえ再成長に転ずるほどの勢いはなく、21年2月期末店舗数も2199店と前期末から15店減少している。「中期経営計画2023」も今期から3年間に100店舗を新規出店して売り上げを5950億円と9.7%伸ばし、営業利益を493億円と29.6%伸ばす構想で、ブレイクスルーな勢いはもとより想定していない。

 EC(ネット通販)にしても、客注アプリ活用のお取り寄せ「しまコレ」に始まり、「ゾゾタウン」での1年足らずという短期間のトライアルを経て20年10月にようやく公式オンラインサイトを立ち上げたばかりで、21年2月期の売り上げは「しまコレ」を合わせて17億円(EC比率0.3%)に過ぎない。インフルエンサー企画のEC専用商品をSNS発信し、全国2200店舗で業態を超えた店受け取り実現して2024年2月期でEC比率2%(120億円)を計画するが、国内ユニクロが20年8月期で1076億円(EC比率13.3%)を売り、多くのアパレルチェーンがコロナ禍でECを急拡大してEC比率2ケタが当たり前になり、中には過半を超えるチェーンもある中では遅きに失する感がある。

 21年2月期でEC商品の「店受け取り」が9割を占めると言っても店舗在庫を引き当てるわけではなく、EC専用倉庫から店舗物流のルート便を使って店舗に配送するだけで、店舗在庫の消化回転を高め機会ロスを減す効果も顧客の受け取りを早める効果もなく、C&C(クリック&コレクト)は初歩的な段階にある。ライトオンさえECから店舗在庫を引き当てて取り置き、店舗でお試しして決済するC&Cで顧客の利便に応えているのに、ひと時代もふた時代も出遅れた感を否めない。

 しまむら自身が決算短信の「次期の見通し」で明記しているように、「政府による財政支援の段階的縮小、非正規社員の厳しい雇用情勢、旅行業や飲食業を中心に引き続き厳しい状況が継続」する中、しまむら顧客の生計はさらに窮していく。テクニカルな改善の積み上げだけでは、顧客層の消費減退で売り上げが伸び悩み、効率低下とコスト上昇で収益が細るのは目に見えている。従前の事業構造のまま改善するだけでなく、事業構造を一変させるブレイクスルーが必要ではないか。

同じ事業構造ではコスト上昇に飲み込まれる

 販管費率は02年2月期の21.5%から20年2月期は28.3%まで上昇したが、その中身を検証しておきたい。02年2月期の人件費率は9.8%だったが、20年2月期も21年2月期も13.4%と3.6ポイント肥大している。店舗コストを反映する賃借料率も10年2月期は4.9%に収まっていたが、年々上昇して20年2月期は6.5%と1.6ポイント、売り上げが上向いた21年2月期も6.1%と1.2ポイント肥大している。

 主婦のパート中心に運営するしまむらはマニュアル化で店舗作業を標準化・省力化してきたが、アドレス管理と棚割指示を徹底しても什器システムと陳列方式自体はほとんど進化しておらず、定番比率が低く季節商品が多頻度に入れ替わり、TC(トランスファーセンター)※1.に在庫を残さず店舗に撒き切るから店間移動のピッキングも多く、作業量を圧縮できないでいる。

 RFIDタグも未導入だからマテハン作業の圧縮も在庫管理やレジ精算の効率化も進まない。RFIDタグが導入済みならスマホのレーダー探索アプリでピッキングも手間取らず、店間移動や客注、EC受注に店舗在庫を引き当てる多数のピッキングもこなせるが、未導入では汗だくの人海戦術になってしまう。

 しまむらでは最新の店舗でもセルフレジさえ入っておらず、1点ごとにビニール袋から取り出してハンガーに掛け、タグに記載されたコードを見て指定什器に陳列する、という20年前と大差ない品出し陳列作業が黙々と続けられている(開店直後に行って作業プロセスを実見した)。ユニクロやジーユーが早々とRFIDタグを全面導入して在庫管理やマテハンの効率化、セルフレジ化を進めて着々と運営人時量を圧縮しているのに比べれば、一時代どころでなく出遅れた感がある。中期計画ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を挙げているが、ならばRFIDタグの全面導入が先決ではないのか。

 店舗の大型化も全く進んでおらず近年は1000平方メートル強で停滞しており、大型化による運営効率の改善も期待できない。店舗が大型化しないまま販売効率がじりじりと下がっていけば、売上対比の人件費負担も賃借料負担も年々かさんでいく。決算業績の推移を見れば、その隘路は明らかだ。ユニクロが年々、着々と店舗規模を大型化し運営効率を改善しているのとは好対照に見える。

※1.TC(トランスファーセンター)…入荷商品を棚入れすることなく自動ソーターで高速仕分けして出荷する方式の物流センター

米コールズにみるブレイクスルー

 「米国のしまむら」と比喩したくなるほど立地も客層も似ているのが米国の大衆デパートチェーンのコールズ(KOHL’S)で、郊外の賃貸アパート地区につながる生活幹線道路では必ずと言ってよいほど目につく。中低所得女性勤労者とその家族を対象としているのも似ているが、店舗規模は標準店で8175平方メートルと1000平方メートル強の「ファッションセンターしまむら」と比べれば8倍大きい。21年1月期末で49州に1162店舗を展開し、159億5500万ドルを売り上げている。

 立地はロードサイドのストリップセンター※2.が82%、フリースタンディング(独立店舗)が13%、モール内が5%の構成になる。出店形態は所有店舗が35%、定期借地店舗(建物は自前)が21%、賃借店舗が44%という布陣で、コロナ前の20年1月期で売上対比賃借料率は1.57%、減価償却費を加えて6.16%という負担率は一昔前のしまむらに近い。コロナ禍の米国ではパーキングアクセスに手間取り人混みも避けられないモールが疎まれ、ダイレクトパーキングが可能なストリップセンターやフリースタンディングが好まれている。

 ウィメンズを中心にメンズ、ティーンズ、キッズの衣料と服飾雑貨、化粧品、ホームグッズの構成で、拡大している化粧品では今秋から「セフォラ」の導入が始まる。衣料品では「ナイキ」や「アディダス」「アンダーアーマー」「ニューバランス」「バンズ」「スケッチャーズ」、「リーバイス」「チャップス」などのNB(ナショナルブランド)に加え、独自開発のPBやブランドメーカーとタイアップしたEXB(エクスクルーシブブランド)で構成される。「ファッションセンターしまむら」に比べれば店舗が広くデパートメント構成になっており、大衆デパート風に小綺麗なVMDが組まれている。「しまむら」と大きく違うのは大衆的なNBがそろっていることとジュエリーや化粧品の売場が大きいことで、近年はカフェを併設する店舗も増え、昔に比べれば華やぎも加わってきた。

 中低所得層を顧客とするコールズは、しまむら同様に近年は伸び悩んでおり、ECを拡大して自社在庫だけでなくサプライヤー在庫も自社サイトに掲載してドロップシッピング※3.で売り上げを稼ぎ、近隣顧客の注文に店舗在庫を引き当てて最速で店渡し・店出荷し(EC売り上げの43%)、EC売り上げは59億ドルと総売り上げの40%に達している。加えて19年からアマゾンの返品も受け付けて全店に広げ、アマゾンのデバイスも販売して来店客を増やしている。

 コールズも業績は好調とはいえないが、ECを拡大してサプライヤーまで取り込み、C&Cを実践して店舗をOMO(オンラインとオフラインの融合)の拠点とし、アマゾンとも提携して新規客の取り込みを図っている。全社売上の40%に達する59億ドルものEC売り上げは間違いなくブレイクスルーで、しまむらはもっとコールズに学ぶ必要がある。ならば、しまむらが大手ECプラットフォーマーと戦略提携して、店舗受け取りと返品の拠点となっても驚きはしない。それで受け取る手数料は知れているだろうが、これまで「ファッションセンターしまむら」に来なかった客層が大挙して訪れる効果は想像以上のものになるだろう。

※2.ストリップセンター…店舗棟が並列あるいはコの字状に駐車場を囲んで各店舗にダイレクトパーキングできるロードサイドの自由営業型商業施設
※3.ドロップシッピング…サイトを運営する会社は在庫を抱えず、受注した商品はサプライヤーが直接、顧客に発送するECの仕組み

巨額の余剰資金が革新を妨げている

 しまむらは独立店舗が大半だから商業施設デベロッパーに売上金を預託する必要がなく、売上債権回転日数は20年2月期で4.18日、21年2月期も4.47日と日銭が回っている。棚資産回転日数は20年で53.51日、21年で51.67日と昔に比べれば遅くなったが、買掛債務回転日数は20年で19.33日、21年も24.53日と支払いが速く、20年は38.36日で548億5800万円、21年は31.61日で468億7300万円の運転資金負担が発生している。それは純資産対比で20年15.0%、21年12.2%に過ぎず、無借金経営どころか20年2月期末で1520億円、21年2月期末で1930億円の余剰資金が遊んでいる(NCD 譲渡性定期預金)。

 「遊んでいる」というのは適切でなく「運用されている」のだが、企業が手持ちの巨額余剰資金を事業に投ぜず低金利の譲渡性定期預金に寝かせているのは決して健全な状態ではない。ファーストリテイリングだって純資産9961億円に対して5900億円の有利子負債を借り入れ、事業の拡大に投資している(20年8月期)。それが成長を志向して事業構造を変えていく健全な経営であり、巨額の余剰資金を寝かせたままでは経営判断が保守的になり、未来への扉を開けなくなる。

 21年2月期のしまむらは4期ぶりに浮上したが、はっきりいえば大した改革もせず、時代の追い風に乗ってテクニカル得点しただけなのではないか。事業構造を変えていかないと収益性は確実に劣化し、いずれ不採算に陥ってしまう。それはレナウンや三陽商会など大手アパレル、三越伊勢丹など大手百貨店で実証されたことではないのか。あまりに余剰資金があると危機感が欠け、何もかもが不徹底で後手に回って時代に置いていかれ、果てはゆでガエルのごとき結末に至る。

 しまむらが最も急ぐべきは余剰資金の前向きな投資であり、開発力あるサプライヤーの買収で商品力を高め、ECプラットフォーマーの買収や資本提携で一気呵成なEC拡大を図るべきだ。それに踏み切れないのなら、自社株式の買い入れで減資するべきではないか。身を引き締め危機感ある経営に転ずるにはそれが必要だと思う。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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