写真家の濱村健誉が世田谷ものづくり学校のIID Galleryで個展開催

 写真家の濱村健誉の個展「Mars」が4月20~25日まで、世田谷ものづくり学校のIID Galleryで開催される。入場は無料。会期中、濱村は常に在廊する。会場では、アメリカ版アマゾンのみで販売している同展の作品を収録した写真集の購入が可能だ。

 濱村は1986年生まれ。20歳でロンドンに渡英し、ドキュメンタリー撮影を中心に活動後、帰国してからはイイノスタジオに勤務。その後、ニューヨークに渡米。自身のアートワークに加え、マグナム・フォトのインターンを経て現在、東京を拠点に活動する。「ゼム マガジン(Them magazine)」「ブルータス(BRUTUS)」「ハーパスバザー(Harper's BAZAAR)」などのファッション誌をはじめ、「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」「ユニクロ(UNIQLO)」「ビームス(BEAMS)」などの広告でも活躍する。

◾️「Mars」
日程:2021年4月20~25日、会期中無休
時間:11:00~18:00 (最終日は17時まで)
場所:IID Gallery
住所:東京都世田谷区池尻 2-4-5 IID Gallery 世田谷ものづくり学校
※入場には人数制限あり。満員の場合は整理券を配布

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人間の血液を詰めた“サタン シューズ”を巡り「ナイキ」と「MSCHF」が和解 問題のシューズは自主回収へ

 「MSCHF」とラッパーのリル ナズX(Lil Nas X)がコラボアイテムとして発売したスニーカー“サタン シューズ(Satan Shoes)”が、「ナイキ(NIKE)」の“Air Max 97”を無許可でカスタマイズしたものだったとして、「ナイキ」が「MSCHF」を相手取り商標権侵害などで提訴していた件で、両者の和解が成立した。

 「ナイキ」によると、「MSCHF」が「“サタン シューズ”および“ジーザス シューズ(Jesus Shoes)”を自主回収し、購入者から正規の販売価格で買い戻すこと」で和解に合意したという。“ジーザス シューズ”は、“サタン シューズ”同様、「MSCHF」が2020年に「ナイキ」のスニーカーにヨルダン川の聖なる水を詰めてカスタマイズしたスニーカーだ。

 今回問題の発端となった“サタン シューズ”は、「ナイキ」の“エアマックス 97”をベースに、五芒星のモチーフや、「LUKE 10:18(ルカによる福音書10章18節)」という文字が付されている。10章18節には、悪魔が天から落ちる描写が含まれている。また、赤いソールには、赤いインクと「MSCHF」のデザインスタッフの血液1滴が詰められているという。666足限定で製作したうちの665足を1018ドル(約11万円)で販売したところ、即時完売した。

 聖書の内容を着想源とした“サタン シューズ”はSNS上で賛否両論を巻き起こし、無関係の「ナイキ」に批判のコメントが寄せられた。それを受け、「ナイキ」は「リル ナズ Xおよび『MSCHF』とは無関係だ。『ナイキ』がこのスニーカーをデザインおよび販売した事実はなく、このスニーカーを支持していない」とコメント。“サタン シューズ”の発売の翌日には商標権侵害や虚偽の原産地表示、不正競争防止法違反などで提訴した。これを受けて「MSCHF」は「白壁のギャラリーに守られるのではなく、批判されるシステムの中で生きるアート作品を作っている」と声明を発表。「これまで一貫して報道機関に説明してきたように、われわれは『ナイキ』と関係がない。今回の『ナイキ』が取った行動に非常に驚いている。『ナイキ』の代理人から書状を受領してすぐに連絡を取ったが返答はなかった。『MSCHF』は表現の自由を強く信じており、私たちや私たちのような他のアーティストが今後も活動を続けていくこと以上に重要なものはない」とコメントした。

 和解について「MSCHF」の代理人は、「1分足らずで完売した“サタン シューズ”によって、一部のブランドで見られるコラボレーション文化のばかばかしさや不寛容に対する悪質さを指摘することを意図していた。666足のシューズは個別に番号が付されている芸術作品で、どこに飾られようとも、平等とインクルージョンの理想を表現し続けるだろう」とコメント。今回の一件で「すでに芸術的な目的は達成された」とし、「この訴訟を終わらせて新たな芸術的・表現的プロジェクトに時間を割くための最善の方法」と認識していると続けた。

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チャコットがコスメ刷新 ステージ用の品質を日常生活へ

 ダンス用品のチャコットは、化粧品を4月16日から刷新した。名称を「チャコット フォー プロフェッショナルズ(CHACOTT FOR PROFESSIONALS)」から「チャコット・コスメティクス(CHACOTT COSMETICS)」の改称し、パッケージも中身も新しくする。舞台用の化粧品として培ってきた品質や機能を生かしつつ、バラエティストアやEC(ネット通販)で一般消費者への訴求を強める。3年後に売上高を20年2月期に比べて約2倍となる50億円に増やす。

 刷新したのはフィニッシングパウダー(税込1320〜1980円)、クリームファンデーション(同1100〜2970円)、パワーフィットマスカラ(同2200円)など39アイテム。品目数では全体の1割ほどだが、売り上げシェアでは7割を占める主力商品となる。保湿性や発色などを高めるとともに、オーガニック認証原料やフェアトレード原料の採用も増やすなど環境にも配慮した。刷新を機にOEM(相手先ブランドの生産)から自社開発に切り替える。

 同社はバレリーナやダンサーなどステージメイク用として1997年から化粧品に参入した。激しく動きや強い照明など舞台の過酷の状況下でも、汗に強く、子供の肌にも優しいと口コミで評判になり、2000年代前半から一般の女性にも使われるようになった。現在ではステージメイク以外の用途が過半になっている。販路はチャコット直営店や一部バラエティストア、ECなど限られるものの、同社の売上高105億円(20年2月期)の約2割を占める柱の一つに育っている。

 親会社であるオンワードホールディングスは4月8日に発表した中長期ビジョンで非アパレル分野の大幅な拡充を掲げており、化粧品は戦略的部門と位置づけられている。チャコットの馬場昭典社長は「70年以上にわたってダンスで培ってきた当社の資産は、生活のさまざまな場面で活躍するポテンシャルを秘めている。中でもコスメは海外も含めてもっと多くのお客さまにその良さが評価されるだろう」と話す。

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除菌洗浄スプレーブランド「アスピダ」誕生 消臭力と洗浄力も兼ね備える

 アパレルブランドをプロデュースするファイブ トウキョウ(PHIVE TOKYO)はこのほど、除菌洗浄スプレーブランド「アスピダ(ASPIDA)」を立ち上げた。製品は、持ち運びに便利で約450回使用できるモバイルボトル(税込、以下同50ml、1210円)やスタンダードタイプのトリガーボトル(300ml、1980円)、自宅やオフィス用に最適なポンプボトル(500ml、2475円)、リフィルパック(500ml、1980円)をそろえる。ライフスタイルショップのダブルティー(WTW)や全国のセレクトショップで扱う。

 製品の主成分には植物由来の非イオン系界面活性剤を使用し、あるゆる環境に左右されにくい安定性でウイルスや細菌を99.9%以上不活性化するという。臭いのもとの有機物を分解する消臭力や、落ちにくい油汚れを落とす洗浄力も兼ね備える。さらに世界基準の検査をクリアした経口安全性で、幼児やペットのいる環境でも使いやすい。

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ユナイテッドアローズ初のアウトドアレーベル「コティ」の立ち上げに400人の行列

 ユナイテッドアローズ(UA)のビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)は今春夏シーズンから、初のアウトドアレーベル「コティ ビューティ&ユース(KOTI BEAUTY&YOUTH、以下コティ)」をスタートした。急速に拡大するアウトドアブームを背景に、ファッション同様、UAの編集力を生かしたキャンプ用品を提案する。

 レーベル名の“koti”とはフィンランド語で家を意味する。自然の中で開放的かつリラックスした時間を過ごすキャンプを、“定住ではない旅する家”と捉えた。7〜8年前から月に2回程度のペースでキャンプをしているという「コティ」の中島小太郎ディレクターは「コロナを機に、急激にキャンプの需要が拡大した。その盛り上がりを目の当たりにして、UAでもコアな提案ができるのではないかと考えた」と立ち上げの経緯を話す。

 「UAらしい高感度なキャンプスタイルを提案したい」と、“上質・品格・本物”にこだわった商品をセレクトするという。8割が仕入れで、「ヘリノックス(HELINOX)」や「ベアボーンズ(BAREBONES)」「カーミットチェア(KERMIT CHAIR)」「ソト(SOTO)」などのキャンパー定番のブランドから、小規模ながらコアなファンを持つ「ロックフィールドエクイップメント(LOCKFIELD EQUIPMENT)」や「バリスティックス(BALLISTICS)」「ネルデザインワークス(NERU DESIGN WORKS)」なども取り扱う。こういった小規模なブランドをガレージブランドと呼ぶが、生産数が限られるため、注文しても“数年待ち”になるほど。都内でも取扱店が無いなど入手困難なことから、二次流通でも人気が高い。例えば、「ネルデザインワークス」の斧(2万3100円)は定価の3倍ほどで取り引きされるほど高騰している。

 常設コーナーを設ける東京・南青山の「エイチ ビューティ&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」には、立ち上げの4月16日に約400人の行列ができた。お目当ての中心はガレージブランドだが、客は男女問わず、年齢もさまざま。「キャンプ需要の拡大でキャンプ場で何を使っているかがキャンパーのステータスになっている。予想以上の並びの多さに驚いた。今後も行列を作れるような商品を定期的に仕込んでいきたい」と中島ディレクター。

 「コティ」は「エイチ ビューティ&ユース」のほかに公式オンラインストアで取り扱っている。今後はポップアップイベントなどを行いながら認知向上を図り、新規顧客の開拓を目指す。

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「推し時計、燃ゆ」 平成生まれの女性クリニック経営者は“青”にご執心

 「推し時計、燃ゆ」3回目のゲストは、都内でクリニックを経営する平成生まれの女性、ぽーちゃん。前回のゆうさん同様、メンズライクな時計を好んで身に着けている。そのわけとは?

WWD:ぽーちゃんのツイッター(TWITTER、@poetamupopopo)には、美食と高級時計が並んでいますね。今日はお気に入りだという、アマン東京の「ザ・ラウンジ by アマン」にお邪魔しました。

ぽーちゃん:お酒も好きなので、仕事帰りに一人で来ることもありますし、“時計友達”とここで時計談義することもあります。

WWD:ちなみに今日の相棒は?

ぽーちゃん:「A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)」の“ランゲ1 25thアニバーサリー”です。ブランドのアイコンである“ランゲ1”の25周年を記念して発売されたモデルで、ホワイトゴールド製です。ネットでひと目ぼれして、1年ほど前に約600万円で購入しました。ここ2年ほどクリニックの業績が良く、自身の年収が上がったこともあって奮発しました。買ってすぐのころは、うれしくて毎日着けていました(笑)。ファッションはモノトーンが多いんですが、時計はブルーがマイブームで、ついつい触手が動いてしまいます。ツイッターで時計について発信し始めた1年ほど前からは、購入のペースも大幅にアップしてしまって……。最近も「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」のブルーの“アクアノート”を購入しました。

WWD:時計は仕事中も身に着けるのでしょうか?

ぽーちゃん:カジュアルなものを着けることはあります。例えば「ロレックス(ROLEX)」とか。なんと言っても剛健な時計なので。「ロレックス」は10代後半のころ、父から「そろそろちゃんとした時計を着けては?」とプレゼントされた、私にとってのファーストウオッチなんです。“デイトジャスト”で、今でも大事にしています。

WWD:その後の時計遍歴について教えてください。

ぽーちゃん:ファーストウオッチの影響もあってか、自分で初めて購入した時計は「ロレックス」の“デイトナ”でした。120万円くらいでした。その後は、年に1本くらいのペースで、100万円前後の時計を自分へのご褒美として買うようになりました。「カルティエ(CARTIER)」「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」など、当時はピンクのモデルばかり買っていましたね。ダイヤモンドなどが付く宝飾系の時計ってクオーツムーブメントが多いんですが、ツイッターで時計コレクターの方の投稿を見ているうちに、だんだん“本格派”の機械式時計に引かれるようになりました。

WWD:通勤時に着用していたのも機械式でしたね。

ぽーちゃん:「パテック フィリップ」の“5205G”です。私、ブルーの時計も好きですが、ムーンフェイズも好きなんです。こちらもホワイトゴールド製で、やはり1年ほど前に百貨店で約600万円で購入しました。

WWD:時計は何本くらい持っているんですか?

ぽーちゃん:20本くらいです。買った時計は売らない主義なので、増える一方なんです(笑)。でも、いいんです。ゆくゆくは子どもに譲ろうと思っているので。

WWD:休日でも時計はする?

ぽーちゃん:はい。休みの日もツイッター用の写真を撮るので、時計をしない日はありません。場所でも食べ物でも青があると、時計を主役に写真を撮りたくなるんです。これからの季節は海なんかもいいですよね。

WWD:次に狙っている時計は?

ぽーちゃん:「パテック フィリップ」の“ノーチラス”。もちろんブルーです(笑)。すでに予約済みで、順番待ちです。「パテック フィリップ」「A.ランゲ&ゾーネ」「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の3ブランドが最近のお気に入りです。

WWD:ぽーちゃんにとって時計とは?

ぽーちゃん:私の“全て”、活力の源です。時計があると毎日楽しいし、仕事をする意味と言ってもいいかもしれません。

<「推し時計、燃ゆ」とは?>
「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し、“推し活”が豊かな生き方につながるとの認識が広まっている。そこで元来、推しの要素が強い時計の世界で、さまざまな人に“推し時計があることで得られる幸福感”や“そもそも、なぜ推しているのか?”などを聞き、時計の持つ“時間を知る”以上の価値について探る企画。

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ユニクロ、ザラ、ZOZOの成長を探る 決算書から読み解くトップ企業の底力【齊藤孝浩ビジネスセミナー第2弾】

 「WWDJAPAN」はこの度、ディマンドワークス代表の齊藤孝浩氏を迎えたビジネスセミナー第2弾を開催いたします。今回は、「ユニクロ(UNIQLO)「GU」などを擁するファーストリテイリングや、「ザラ(ZARA)」のインディテックス、ファッションECモール大手ZOZOなどの決算報告書から、成功している企業がどのように利益を生み出しているか、強みや課題はどこにあるかについて、ファッション専門店の在庫最適化コンサルタントで、グローバルファッションチェーンの動向に詳しい齊藤氏にお話しいただきます。

 企業は生き物であり、決算書に経営の意思や健康状態が表れるもの。企業の特性や課題を知る上で、決算報告内容や財務諸表を読み解くことは欠かせません。国内外のアパレル企業の決算書を読み解く齋藤氏による「WWDJAPAN」での連載「業界のミカタ」からエッセンスを抽出しながら、ユニクロの総額表示に伴う値下げやゾゾコスメなど最新動向への見解も交えて、分かりやすく解説いたします。

 ファーストリテイリングやインディテックスのビジネスモデルや動向に興味のある方、これからECを拡大して行くにあたっての課題について知りたい方に向けたメディアの報道よりも一歩踏み込んだ内容だけでなく、売上高、粗利高、販売管理費、営業利益などの基本用語は知っているものの、実際に財務諸表の数字をどう捉えたらよいかが分からないという方や、アパレル小売業の特性に即して、具体的な読み解き方を知りたいという方にもビジネスの理解がさらに深まります。役員や経営企画として会社経営に携わっている方、営業部や商品部など商売の現場から抜擢、昇進されたものの、決算書の見方があまり得意でなかった企業幹部の方にも、決算書から業界の企業戦略を読む面白さを感じていただける内容です。

 なお今回は、5月28日から隔週にわたる計4回の短期集中セミナーとして開催。全講義の受講に加えて、ご希望の講義を選んでいただくことも可能です。


【日時・受講内容】
<第1回> 
5月28日(金)13:30~15:00
アパレルチェーンの代表的な3つの収益モデル
もうかる仕組みを3社のビジネスモデルを例に解説

<第2回>
6月11日(金)13:30~15:00
決算にみる「ザラ」(インディテックス)の強さ
オムニチャネル化完了?コロナ禍でも発揮された強さとは

<第3回>
6月25日(金)13:30~15:00
決算にみる「ユニクロ」の強さと課題
夏商戦を克服した「ユニクロ」国内事業の凄みと今後について

<第4回>
7月9日(金)13:30~15:00
ECの損益を考える
ZOZOの決算に見るEC事業の採算性

※講義時間60分、質疑応答30分となります

【実施方法】
オンライン
※前日を目処に視聴用URLをお送りいたします。その際メールアドレスの受信設定にかかわらずご連絡しますことをご了承ください。
※講義終了後、一定期間のアーカイブ視聴をご案内いたします。

【受講料】
・定期購読者
全受講:4万4000円/1名(税込)※定期購読者割引クーポンをご利用時
選択受講(1講義につき):1万3200円/1名(税込)※定期購読者割引クーポンをご利用時

・非定期購読者
全受講:6万6000円/1名(税込)
選択受講(1講義につき):1万6500円/1名(税込)

【講師プロフィール】
齊藤 孝浩(さいとう たかひろ)
ディマンドワークス代表/ファッション流通企業の在庫最適化コンサルタント
1965年東京生まれ。総合商社のアパレル部門でOEM生産営業やヨーロッパブランドの日本法人立ち上げを経験した後、98年に政府の留学プログラムで渡米。新興ブランドの輸出代行を手がける。帰国後大手アパレルにてバイヤー、取締役営業本部長、経営企画室長を歴任し、2004年有限会社ディマンドワークス設立。ファッション流通コンサルタントとして、これまでに20社以上の業界注目企業を支援し、うち6事業の年商100億円突破に携わっている。著書に「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞出版)、「ユニクロ対ZARA」(日経ビジネス文庫)、「人気店はバーゲンに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識」(中公新書ラクレ)


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「ワランス」が新コンセプトでリニューアル 自然な色の変化を楽しむ草木染めアイテム提案

 WANOVA(ワノバ・旧神戸ドリーム)は、婦人服ブランド「ワランス(WALANCE)」を2021年春夏シーズンからリニューアルした。ブランドリニューアルに伴い、神戸ドリームは社名をWANOVAに変更。持続可能なモノ作りに注力する方向性を固めた。

 同ブランドは“あなたに、世界に調和する。気のいいふく”を新コンセプトに掲げ、自然との繋がりを感じさせる草木染めのアイテムを中心に提案する。世界51カ国を旅した中村法子クリエイティブ・ディレクターが、バリのウブドで出合った草木染め工場と連携し、旅先からインスピレーションを得た世界観を色鮮やかに表現した。

 中村クリエイティブ・ディレクターは「草木染めの気持ちの良い色を見たときに、自分の中で停滞気味だったクリエーションへの気持ちが再び動き出すのを感じた。草木染めは光に弱く色落ちしやすいが、自然な色の変化を楽しむことを提案したい」と話す。素材はGOTS認証取得済みのオーガニックコットンや、RWS(Responsible Wool Standard)認証取得済みのウールなどで、価格帯はワンピースで2万5000〜3万円。自社ECをはじめ、ロンハーマン、ドゥーズィエム クラスなどで順次取り扱いを開始する。

 現在、ロンハーマン千駄ヶ谷店や二子玉川店などでは、ポップアップイベントを開催中。セチャンとマホガニーで染めたトップス(2万3100円)やイージーパンツ2万8600円などの別注アイテムも販売する。

■WALANCE “NATURAL DYE COLLECTION”ポップアップストア
日程:4月17日〜5月9日
場所:ロンハーマン千駄ヶ谷店、二子玉川店、辻堂店、六本木店、福岡店

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サイバーエージェント藤田社長が出資を即決 新生「スタイルヴォイス」の展望

 マッシュホールディングス、ジュンが出資して運営するECモール「スタイルヴォイス ドットコム(STYLEVOICE.COM)」は4月26日、D2Cブランドプロデュースを主軸としてリニューアルする。これに合わせて、インターネット広告大手のサイバーエージェントが出資する。

 同ECモールを運営するスタイルヴォイスは19年10月、マッシュホールディングス(HD)、ジュン、デイトナ・インターナショナルの3社の合同出資により発足し、「メディア並みの発信力を備えるEC」として、オウンドメディアを併設するECモールとして運営してきた。20年末にはマッシュHD、ジュン2社の出資構成に変更となった。

 サイバーエージェントの藤田晋社長は出資の背景について「ここ数年、D2Cのアパレル分野には大きな可能性を感じていた」と話す。同社は創業間もない1999年、子会社を通じてECモール事業への参入を試みたこともあり、関心の高さがうかがえる。「消費において、人々の憧れの対象がモノではなく『人』にシフトする中、『スタイルヴォイス』には新しい道を切り拓くポテンシャルを感じた」と期待を口にする。サイバーエージェントとともに、フィギュアの「ベアブリック」などを企画・販売するメディコム・トイも出資メンバーに加わる。出資は話し合いのその場で即決したという。

 同ECの展望について、スタイルヴォイスの片山裕美社長、マッシュHDの近藤広幸社長、ジュンの佐々木進社長、メディコム・トイの赤司竜彦社長に聞いた。

※サイバーエージェントの藤田晋社長は都合により座談会には不参加

WWDジャパン(以下、WWD):19年10月のスタートから現在までの、「スタイルヴォイス ドットコム」の進捗は?

片山裕美スタイルヴォイス社長(以下、片山):ECモールとしては後発で、これまでは知名度をじわじわと広げていく期間だったと思うが、同時にコロナ禍の中、昨年春ごろから自分たちの強みがはっきりと見えてきた。影響力のあるモデルやキーインフルエンサーの熱量のある発信から、その人たちの周りに集まるインフルエンサーへと情報が広がり、認知度・注目度も急速に高まったという手応えがあった。そのような“種まき”があった上で、20年初夏には、サイト内特集として「ワンマイルウェア」を打ち出し、その中でもデザイナー川島幸美さんが企画した商品は、インフルエンサーたちが自発的にSNSで紹介してくれたことで大ヒットにつながった。この事例を手本に、秋には女優の剛力彩芽さんやインフルエンサーの中村麻美さんらを起用した商品企画や既存のD2Cブランドとの連携企画にチャレンジし、バズにつながった。

 この辺りから、「ここでしか買えないオリジナルのD2Cブランド」を主軸とした事業展開の構想が固まっていった。企業やブランド数は立ち上げ時(約45ブランド)の半数以下にしぼるが、リニューアル後は自社企画を中心としたD2Cブランドが中心になる。足元では、すでにたくさんのブランドがローンチに向けた準備に入っている。インフルエンサーたちの熱量も非常に高く、外からコラボやイベント出店の相談もいただいている。「スタイルヴォイス」の中で次々に新しい企画が生まれ始めている状況だ。単純にブランド数や会員数を増やすことで成長するのとはまた違う、ユニークな成長路線が見えてきた。

生産から発信面までチームとして動く
「心を動かす」インフルエンサーを育てる

WWD: D2Cブランドを作っていく上で大事になるのは?

片山:軸になるインフルエンサーの思いをしっかりくみ取ること。そして商品企画から発信コンテンツまでを通じて、熱量高く伝えていくこと。それができればお客さまの心を動かし、今までにない買い物の楽しさを体験していただけるはずだ。バックにはモノづくりのプロであるマッシュHD、ジュンがおり、マッシュグループの生産背景を活用することで高品質な商品を実現できる。先行して4月に販売した商品は、企画したブランドディレクターの元に届くと、彼女たち自身がそのクオリティーに驚き、心から喜んでくれた。作り手が満足できる仕事ができれば、お客さまにも必ず幸せになっていただける。お客さまの心を動かすインフルエンサーを発見し、育てることからチャレンジする。

佐々木進ジュン社長(以下、佐々木):今、このタイミングでフィーチャーすべき人選、その先にいるファンの興味に対して知見が深いのは、雑誌編集の経験もある片山さんの最大の強みだと思う。よくあるECモールではなく、“ここでしか買えない”を突き詰める上では大きな武器になっていると感じる。

近藤広幸マッシュHD社長(以下、近藤):これまでの事例で面白いと思ったのが、フォロワー数が多いからといって、その人の監修した商品が必ずしも売れるわけではないこと。フォロワーが少なくても、売れる人はいる。インスタの写真の撮り方など、さまざまな点で商品を売るためのコンサルティングが重要。片山社長をはじめとした編集部のプロデュース能力で、「スタイルヴォイス」が「モノが売れる」インフルエンサーを輩出するプラットフォームになることも期待したい。

WWD:一方で、イチからブランドを立ち上げるのは、これまでの既存ブランドを中心に扱うビジネスに比べてリスクも大きい。

近藤:リスクに関しては(スタイルヴォイス社の)大株主となったマッシュHDが、連結子会社として、責任と覚悟を持って背負っていくつもりだ。成長するまでは、マッシュグループの社員がサポートしたり、経営のバックオフィスなども支援する。今後の運営フェーズでは、意思決定のスピード感やモノ作りへの支援体制を一社に集約する重要性、そして明確なリーダーシップが必要になると考え、デイトナ(・インターナショナル)さんに株式を譲っていただくことにした。今後も良好な関係性でお付き合いしていくことは変わらない。

「ノイズ」を混ぜることで
ビジネスがより面白くなる

WWD:新たにサイバーエージェントとメディコム・トイが出資者になった背景は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):(出資の話は)年始に突然聞いて、突然決めた(笑)。ビジネスとして結果を求めることはもちろん大事だが、投資の決定打になったのは片山さんの人を見る目や人格。その他の出資者も何か面白いことが起こりそうなすごいメンバーだし、出資者として参画することで、モノ作りにもより深くコミットするなどシナジーを強められると考えた。

佐々木:D2Cブランドの開発をする上で、より面白みのあるモノ作りのためには、われわれのようなアパレル製造小売業とは違う視点が必要であると考えていたことも一つ。(サイバーエージェントの)藤田晋社長は、グループにさまざまな企業を有しているし、今後は「スタイルヴォイス」においてメディアやコンテンツなど絡め、ECの枠組みだけで売る以外の手法も出てくるはずで、そういった面でも強力な手助けになる。(メディコム・トイの)赤司社長はクリエイティビティーや人脈などはもちろん、テクノロジーにも詳しく、そういった知見やアイデアをぜひお借りしたい。

近藤:お二人(藤田社長と赤司社長)はモノ作りやコンテンツ制作の大変さを理解している方々だ。赤司さんは「スタイルヴォイス」立ち上げの当初から出店者として関わっていただいている。報道陣へのお披露目の際にお願いしたスピーチに心を奪われ、いつか一緒により深い部分でお仕事をしたいと思っていた。われわれのプレゼンを聞いて参画を即決してくれたのは素直に嬉しかった。

赤司:「D2C」はアパレル業界で最近何かとフィーチャーされている言葉だが、そもそも、さまざまな表現者やブランドとコラボし、コミュニティー単位でのバズを起こし続けてきたわれわれのビジネスモデルは、実は(創業した)25年前からD2C的だったのではないかと思っている。(「スタイルヴォイス」での)メディコム・トイの役割は、アパレルのど真ん中でやっている人たちが美しいシンフォニーを奏でている中に、どれだけ「ノイズ」を混ぜていけるか。美しい曲に少しのノイズが混ざることで、時によってはとても素晴らしい音楽になる。新しいビジネスを生むための刺激を提供していく立場として、いつか(「メディコム・トイ」を)入れておいてよかったねと言われたい。

片山:赤司さんからはすでに常に新しいアイデアや刺激をいただいていて、早く実現にこぎ着けたい。いろんな人がいろんなアイデアを持ち寄って、可能性があればそれをどんどん大きくしたり、あるいは他のものとミックスさせてみたりと、「スタイルヴォイス」を実験室のような場にしていく。

WWD:「スタイルヴォイス」はスタート時から上場も視野に入れていた。今後の展望は?

近藤:上場すること自体が目的ではないものの、藤田さんという上場の経験者がいるし、選択肢としては念頭に置き続ける。ただ規模をいたずらに求めるより、他業界にも真似したいと思われる取り組み、新商品などを生み出し、小さくても尊敬される企業を目指していきたい。

片山:話題性の発信としてブランドを生み出し続けることも必要だが、数億円レベルまで成長するような、大きな柱となるブランドを育てることも必要だ。すでに「スタイルヴォイス」ではモデルや著名人たち同士が直接コラボしたいねという会話があったりと、ワクワクするような状況を作り出せている。ブランドディレクターたちの熱量を見てみると、それが可能だという確信めいたものがある。

佐々木:視野を広げてみると、「スタイルヴォイス」は今後、モノを売ることだけでなく、ブランドコンサルティングでも力を発揮していくことができるだろう。「スタイルヴォイス」で積み重ねた経験を活かして企業のコンサルができるかもしれないし、ここで作り上げた人脈そのものが他のビジネスの種になるかもしれない。

近藤社長:これまではECモールとしてあるべき形を探る準備期間だったが、今は熱量のある人たちを巻き込みながら、大変ながらも前向きでワクワクしながら仕事ができている。そんなクリエイティブに集中できる環境こそが、ビジネスとして成功する秘けつだと思う。

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コシノヒロコが女子サッカー強豪INAC神戸のユニホームをデザイン

 スポーツブランド「ヒュンメル(HUMMEL)」は、デザイナーのコシノヒロコが手掛けたサッカー・WEリーグ所属のINAC神戸の新ユニホームを発表した。デザインはフィールドプレイヤーとゴールキーパーそれぞれのホーム用とアウェイ用の2種類ずつで、4月24日の試合で披露する。ホーム用デザインは同チームの公式サイトで販売中(税込2万900円〜)だ。

 デザインの着想源は「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」2020年春夏コレクションで、音楽をイメージした多彩なモチーフを絵画のように重ねている。コシノは「女性ならではの美しさを特に気にかけました。スポンサーロゴとのカラーバランスが成り立つアート性を意識しています。サッカーは走っている姿を横から見るイメージなので、靴下もよく目立ちます。パンツの横のラインとつながるようにして、ファッション性を高めました」とコメントした。

 コシノはこれまで、体操競技やトランポリンの日本代表ユニーホームや、プロ野球の近鉄バファローズのユニホームなど、さまざまなスポーツウエアのデザインは手掛けてきた。

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コシノヒロコが女子サッカー強豪INAC神戸のユニホームをデザイン

 スポーツブランド「ヒュンメル(HUMMEL)」は、デザイナーのコシノヒロコが手掛けたサッカー・WEリーグ所属のINAC神戸の新ユニホームを発表した。デザインはフィールドプレイヤーとゴールキーパーそれぞれのホーム用とアウェイ用の2種類ずつで、4月24日の試合で披露する。ホーム用デザインは同チームの公式サイトで販売中(税込2万900円〜)だ。

 デザインの着想源は「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」2020年春夏コレクションで、音楽をイメージした多彩なモチーフを絵画のように重ねている。コシノは「女性ならではの美しさを特に気にかけました。スポンサーロゴとのカラーバランスが成り立つアート性を意識しています。サッカーは走っている姿を横から見るイメージなので、靴下もよく目立ちます。パンツの横のラインとつながるようにして、ファッション性を高めました」とコメントした。

 コシノはこれまで、体操競技やトランポリンの日本代表ユニーホームや、プロ野球の近鉄バファローズのユニホームなど、さまざまなスポーツウエアのデザインは手掛けてきた。

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「寧波阪急」はこれまでの日系百貨店とは全く違う 周到に練られた中国戦略

  阪急阪神百貨店を中核にするエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)が中国1号店「阪急寧波」を4月8日にオープンした。沿岸部の港湾都市である寧波市(人口850万人)に開業した同店は、大阪の阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)を上回る売り場面積11万7000平方メートルの巨大店舗だ。生き馬の目を抜く中国市場で成功できるのか。上海在住のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)コンサルタントの内田文雄氏が報告する。

 寧波阪急は寧波市の中心部から車で約20分程度の東部に位置します。周りは開発地域で、多くの銀行などが集まる金融街、大きな会議や展示会が開催されるコンベンションセンター、富裕層が居住する高層マンションに囲まれています。

 現地を訪れて、まず驚いたのが低層で横に長い建物です。百貨店というと縦に長いという固定概念があるけれど、ここはまるでモールのような印象を受けました。日本の旗艦店である阪急うめだ本店が15フロア(地上13階・地下2階)なのに対して、売り場面積で上回る寧波阪急は7フロア(地上6階・地下1階)。1フロアの広さが分かるでしょう。コンセプトの「百貨店とSC(ショッピングセンター)を融合させた”体験型デパートメンモール”」を体現しています。

 1階は全てラグジュアリーブランドが並び、それぞれが華やかさを演出しています。消費者視点で見ると高級感が溢れ過ぎていて、入店を躊躇する感覚もある。でも寧波にはほぼなかったラグジュアリーブランドを集積させた商業施設を見てみたいという期待感をあおる仕掛けになっています。

百貨店の定石を破るフロア構成

 7フロアの売り場は日本や中国の百貨店のフロア構成とかなり違っています。”体験型デパートメントモール”を具現化させるには、他競合とは完全に差別化させる必要があったからでしょう。私は過去30年間にわたって上海やその他地域に出店して成功、失敗した国内外の百貨店、SC、スーパーマーケットを見てきました。今回はお世辞ではなく「さすが阪急さん、素晴らしい」と感心しました。

 全館では380店舗の吟味されたさまざまなテナントが入っています。日系の食やファッションの品ぞろえは全体の2割の70店舗ほど。それ以外は欧米のラグジュアリーブランドをはじめ、中国のテナントで構成されています。是が非でも日本のブランドを集めたいという、これまで中国に進出してきた日系百貨店が陥る「あるべき姿」とは一線を画した姿が新鮮に映りました。

 ターゲットのミレニアル世代やその下のZ世代の嗜好や購買力を鑑みた場合、どのようなブランドで構成するべきかが、今回のテナント構成につながっています。例えば中国市場で人気の大手アパレル、PEACE BIRD(本社寧波市)の全4ブランドも入っています。中国ローカルブランドだからどうのではなく、ファッションに関心が高い顧客に向けて躊躇なく品ぞろえしている。商品戦略が明確なのです。

上海でも勝負できるリーシングと品ぞろえ

 私が訪れた4月10日は、残念ながら1階(ラグジュアリーブランド)、2階(化粧品、靴、バッグ、グローバルファッション)はまだ施工中で、完全な状態を見ることができませんでしたが、関係者にお願いして売り場を少しだけ見せてもらえました。

 1階のラグジュアリーブランド集積は圧巻の一言です。男館、女館で分けられたゾーイング、広い通路で動線や回遊性もよく考えられています。よくぞここまでの名だたるブランドの寧波初ローンチを実現させたものです。中国ではセレクトショップでの取り扱いにとどまった「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」のフラッグショップもあります。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のポップアップショップも人気になりそうです。1階、2階がオープンした16日のSNSを見ていると、前夜に催されたVIP向けのレセプションパーティで、KOL(キーオピニオンリーダー、中国のインフルエンサー)や招待客たちがラグジュアリーブランドで買い物をする様子を投稿していました。

 2階は化粧品、靴、グローバルファッションなどです。化粧品売り場はあえて通路幅を若干狭めに設定し、にぎわい感を演出している様に見えました。女性にとっては1階のラグジュアリーブランドとこの化粧品と靴売り場は圧倒的に魅力的な品ぞろえで話題になると思います。

 3階は婦人服、ランジェリー、宝飾雑貨などが並びます。ここの特徴は広い通路幅でゆったりと買い回りができ、十分な休憩空間もあります。

 4階はインドアライフスタイル(携帯電話、雑貨系)、アウトドア(スポーツブランド、スケートボードリンク)など、Z世代にフォーカスしたテナントが目立ちます。また阪急うめだ本店の「祝祭広場」の中国版である巨大な吹き抜け空間「慶典広場」もあります。こけら落としとして中国でも人気の日本の漫画「ONE PIECE」のイベントが開催されていました。今後もさまざまなイベントが行われ、集客装置として機能することになるでしょう。

 5階は約40店もの人気のレストランが並びます。ミシュラン認定店も2店舗。日本食フードコートも人気を博しそうです。

 6階はエンターテインメント、つまり非物販フロア。シネコンやペット用品、ドッグラン、ゴルフ打ちっぱなしなど、下のフロアとは全く違う雰囲気です。買い物に疲れたお客さんが休憩したり、リフレッシュしたりする空間になっています。

 地下1階はH2O傘下のスーパーであるイズミヤ、軽食中心のフードホール、フードエクスプレス、子供服、デイリー雑貨です。寧波初の人気の「ピーツコーヒー(PEET’S COFFEE、2階にもあり)も出店。中国では一般的に子供服や子供関連は上層階が一般的なのですが、ここではあえて飲食フロアに子供関連をリーシングしていて、食+子供関連の買い回りという組合せをアピールしているのだと思います。この珍しい試みは要チェックです。

 以上、各フロアーのポイントを書き出しましたが、文字だけでは伝わりづらいですよね。まとめると寧波エリアで競合する商業施設とは明らかな差別化ができているのは言うまでもなく、上海で繁盛してもおかしくないレベルの品ぞろえ、フロアー構成です。

 私見ですが、寧波だからこのような品ぞろえ、リーシングにしたのではなく、阪急阪神百貨店として中国に出店するからには「こういうモデルであるべき」というフィロソフィーを具現化したのではないかと感じました。

中国のハイスペック人材を招へい

 日本でも中国でもラグジュアリーブランドを集積させることは簡単ではありません。寧波阪急は1階に圧倒的な数のラグジュアリーブランドを集めています。阪急阪神百貨店のネットワークと交渉力が結実したといえるでしょう。

 しかし商業施設として成功するにはラグジュアリーブランドを誘致して終わりではありません。開業後にいかに運営維持させていくか。そのためには中国の高級商業施設で運営実績を持ち、有力ブランドとの強いパイプを築いたハイスペック人材が誘致を手助けし、運営していくことが不可欠になります。固有名詞は伏せますが、中国で相当な実績を持った人材をヘッドハンティングしたようです。

 この取り組み一つとっても、過去に中国に進出した日系百貨店とは明らかに組み立て方が違います。ラグジュアリーブランドを中核にすると決めたからには、まずは人材ありき。非常に戦略的だと思いました。

 寧波初登場のラグジュアリーブランドを多く擁するため、おのずと攻めの商売が必要となってきます。日本の百貨店には外商という機能があります。富裕層や法人を対象に手厚いサービスを施す外商は、中国では存在しない概念です。しかし寧波阪急では、ターゲットの若い富裕層や企業に対して、積極的に外商を仕掛けていくようです。

 また会員対策として阪急会員制倶楽部があります。5つのランク(ダイアモンド、プラチナ、ゴールド、貴賓、準会員)に分け、年間お買い上げ累計額でさまざまなサービスを受けることができます。ちなみに最上級のダイアモンド会員は、年間累計お買い上げ額30万元(500万円弱)が条件。館内専用ラウンジの利用、一般商品の12%割引、通常ポイント2・5倍、誕生日月のポイント5倍、専用駐車場利用などの特典がつきます。

 2つのVIPラウンジ(ダイアモンド、プラチナ)に入ったところ、まるで空港にあるマイレージラウンジ以上の豪華さでした。こんなVIPラウンジを擁している百貨店は日本でも見たことがない。おそらく中国でも初ではないでしょうか。中国人の「メンツを重んじる」気質をうまく活用したこの豪華なVIPラウンジは富裕層の心をくすぐることは間違いありません。過去の日系百貨店の進出でよく見られた「日本式サービスを取り入れました!」というステレオタイプのやり方はもう通用しない。日本以上の特別なおもてなしが必要なのです。

 寧波阪急は当初計画から2年半ほど開業時期が延びました。その間、阪急阪神百貨店の担当者の方々は日本や中国の各都市、その他海外の百貨店、SCなどの商業施設の品ぞろえ、フロアー構成、客動線、顧客サービス、エンターテインメント手法などを念入りに研究しました。開業延期が結果として館の完成度を高める時間になったようです。

 百貨店が中国でいかに勝つのか――このシナリオを磨きに磨き上げたのが寧波阪急なのだと思います。これまでの日系百貨店、SCとは全く違う。大いに期待したいですね。

内田文雄(うちだ・ふみお):福岡県福岡市生まれ。ワールドで22年間のVMD経験、1993年に上海交通大学留学、上海駐在を経て、その後はアジア事業で海外を飛び回る。2005年ユニクロへ転じ、海外の大型店などのVMDを手がける。2011年、独立して上海に拠点を移す。中国のアパレル、小売企業に対しての実務指導、セミナー講演を行う

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ミルボンが取り組むサロン業界のDX 美容室の課題解決をサポートする【ネクストリーダー2021】

 美容室向けヘア化粧品メーカーのミルボンは2020年6月にBtoBtoC型のECプラットフォーム「milbon:iD」を開設した。「オージュア」や「ヴィラロドラ」など4ブランドを扱う美容室が出店し、消費者は利用している美容室の専用コードを入力してヘアケア商品を購入することができ、美容室の負担になるサイト運営・受注・物流作業は同社が担うというもの。美容室専売品のEC販売がご法度とされてきたヘアサロン業界で、最大手である同社が着手したことは大きな話題になった。美容室専売品を購入しやすい環境を整えることで、サロンも消費者もハッピーな関係を築く同プロジェクトのかじを取ったのが「WWD NEXT LEADERS 2021」に選出された坂下秀憲部長だ。

WWD:美容室専売品のEC販売に着手したきっかけは。

坂下秀憲ミルボン経営戦略部部長(以下、坂下):発端は2003年までさかのぼる。現社長である佐藤(龍二)が店販(美容室でヘアケア商品などを利用客に販売すること)の継続購入に課題を感じ、当社から消費者にヘアケア商品を発送する“ホームデリバリーサービス”を検討したことだ。当時はECもなく、システム投資をしたものの採算が合わず実現することができなかったが、店販の継続購入という課題意識は社内で脈々と受け継がれていた。

WWD:店販の継続購入における課題とはどんなことがあげられるか。

坂下:美容室でヘアケア商品を購入した人が、1年後も継続購入しているのは約40%というデータがある。裏を返せば約60%の人が離脱しているということで、離脱要因の約30%は「シャンプーがなくなったタイミングが美容室に行くタイミングではなかったから」という理由だった。一方で当社独自のサロン経営指数調査を15年前まで振り返ったところ、店販購入比率は常に15%前後で停滞していることが分かった。つまり新規購入客は毎年いるが、約60%が離脱しているということ。これでは穴の開いたバケツにずっと水を注いでいるようなものだと、課題意識が加速した。

WWD:実際にプロジェクトを進める中で困難だったことは。

坂下:ECビジネスを進める上で、佐藤から「美容室の売り上げになること」を条件として出された。われわれがECを立ち上げて後から利益を還元するのではなく、美容室の経営に寄り添い生産性を上げるためには、美容室の売り上げになることが重要だった。この仕組みづくりにとても苦労した。また、それまで“対面カウンセリング販売”と“EC販売”はトレードオフでありご法度とされていた。そこで“美容室専売品”とはそもそも何かというところに立ち返った。対面カウンセリング販売の目的は、消費者が適切な商品の選択をできるように情報を提供することであるから、紹介の仕方さえ対面カウンセリング販売であれば、購入方法はネットでも良いのではないかと考えた。販売方法と購入方法を分けて考えることで、美容室専売品かつネットで購入という世界が作れた。当社がネットビジネスを始めることへのざわつきは感じたが、「なんだか大義が通っているぞ」とこのビジネスモデルに反対する人はいなかった。

美容室をとりまくメーカーや代理店が
サポートして課題解決へと導く

WWD:ヘアサロン業界には慣習が多く、なかなかDXが進みにくいともいわれている。

坂下:美容師はリアルなサービスで鏡に向き合うことに集中している。美容室1店1店が環境を整えるために投資するのは非常に難しいことだ。美容室の課題というよりも、周囲にいるメーカーや代理店が、美容室がデジタルを活用できるようにどこまで寄り添えるかだと考えている。

WWD:今後ヘアサロン業界の課題をどう乗り越えていくべきだと考えているか。

坂下:1.リアルサービス2.顧客担当制3.定期的な来店という3つの条件がそろっている美容室は特別なチャネルだと考えている。顧客層も老若男女幅広い。この3つの特徴を最大限に生かしたビジネスモデルであれば美容室は勝てる。髪の毛を切ることがきっかけかもしれないが、もっといろいろなことが提供できるようになるだろう。そうすると今まで課題だったことが違うアプローチによって解決されるはずだ。われわれの目標は美容室のビジネス領域を広げること。「milbon:iD」は単なるプラットフォームではなく、名前の通り“美容室と顧客をIDでつなげる”ものとして、サービスを増やし顧客体験のプラットフォームへと進化させる。

【推薦理由】
 ヘアサロン業界ではメーカーは商品をディーラーに卸し、そこから美容室が仕入れて消費者に販売するという仕組みがある。その関係性ゆえにEC化が進みづらいと言われてきたが「milbon:iD」の設立で美容室、ディーラー、メーカー全員がウィンウィンなECソリューションを実現した。今後さらに「milbon:iD」をECだけでなくサービスを追加し顧客体験のプラットフォームとして進化させていく計画で、ヘアサロン業界全体のDXを推進する存在として注目だ。

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アダストリア木村新社長が語る経営展望 「第2、第3の僕がどんどん出てくるような組織に」

 アダストリアは5月27日付で、木村治副社長が社長に昇格し、福田三千男会長兼社長は会長に専念するという人事を発表した。1953年に紳士服テーラーの福田屋洋服店として創業した同社は、時代に合わせて業容を変え、2000年代以降はショッピングセンター(SC)に出店を重ねて急成長してきた。その間、組織体制も福田屋洋服店、ポイント、アダストリアホールディングス(HD)、アダストリアと何度も変わり、福田会長のオーナーシップのもとで社長交代が何度もあった。福田屋洋服店時代からの生え抜きである木村新社長は、同社を今後どう導くのか。

WWD:社長昇格について、福田会長からはいつ打診があったのか。

木村治アダストリア社長(以下、木村):2020年の年末だ。会長と自宅が近く、普段からよく会長の家に招かれて飲んだり仕事の話をしたりしているが、昨年末に呼ばれた際に「自分は今期(21年2月期)で社長を辞めるから、次はお前がやれ」という感じで言われた。他社との会食の場などでは、会長が「次は木村です」といったことを口にすることはあったが、いつも言っていたので年末も「また会長は酔っ払って言っているな」ぐらいに受け止めていた。そうしたら、今回は本当だった。

WWD:18年から副社長を務めており、われわれを含めて外部は木村さんが後継候補の筆頭だと思っていた。

木村:僕の中では自分が社長候補とは思っていなかった。僕はこれまで会長の隣にずっといる感じだったし、僕以外に取締役は3人いる(金銅雅之氏、北村嘉輝氏、福田泰己氏)ので僕ではないなと。だから準備もしていなかった。ただ、会長が次の世代に経営をバトンタッチしたいと思っているんだろうなということは(取締役メンバーは)皆感じていたと思う。とは言え、今回バトンタッチすると言っても、僕は代表権を持たず、副社長の“副”が取れただけ。代表取締役会長として引き続き福田がおり、金銅、北村も同じタイミングで取締役から常務に昇格する。だから、僕の中では経営体制はあまり変わらないという意識もあるし、取引先や業界にとっても安心感のある人事だと思う。ただ、会長は今年で75歳。今後は少しずつわれわれの世代に、より権限委譲を進めていくのかなと思う。

WWD:福田会長や他の取締役メンバーとの役割分担はどのようになるのか。

木村:コロナ禍でバトンタッチのタイミングがやや遅れた部分はあったと思うが、会長はこの数年間かけて、(社長交代を見据えて)今の取締役体制を作ってきていた。取締役にはそれぞれ得意分野がある。金銅は引き続き財務・人事・デジタルトランスフォーメーション(DX)を担当し、北村は国内外の営業をトップとして指揮していく、福田(泰己)はガバナンス・サステナビリティの部分を担う。僕は(デベロッパーとの)外交など、対外的なことを副社長としてずっとやってきたが、社長として特に国内既存事業をもう一度見ていきながら、全体の経営をしていく。COO(最高執行責任者)という肩書は付いていないが、執行の責任者が僕で、会長はCEO(最高経営責任者)的な役割だ。

WWD:国内既存事業をもう一度見るということだが、具体的にどうしていくのか。

木村:アダストリアはSCに出店して大きくなってきた過去がある。現在はその次の段階として、ECの存在感が市場で増す中で自社ECモールの「ドットエスティ(.ST)」に戦略的に取り組み、成長させている。実店舗だけのビジネスモデルからは徐々に変わりつつある最中だ。こうした変化を鑑み、マーケット全体が拡大する時代から縮小する時代へと移り変わる中での経営や、実店舗前提のビジネスから実店舗+ECへと移り変わる中での経営が何かを考えないといけない。今後はアパレル以外にも領域を広げていくしかない。僕自身、過去にトリニティアーツの社長として、「ニコアンド(NIKO AND…)」「ベイフロー(BAYFLOW)」などのライフスタイル業態を成長させてきた経験がある。アダストリアとしても(ライフスタイルなど)次の領域が必要になる。

WWD:木村さんはトリニティアーツでライフスタイル市場を開拓した立役者、というイメージが強い。

木村:トリニティアーツは、「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」などを手掛けていたアパレル主体のポイントと同じことはやるなと(福田会長に)言われて立ち上げたようなものだ。今はライフスタイルと一口に言っても、食、ウエルネス、スポーツなどを含めてかつてよりも領域が広がっているし、小売り以外の可能性も大きい。会長も、「アダストリアは昔はアパレルの会社だったと言われたい」とずっと言っている。そういうふうに会社を“チェンジ”していかないといけない。アダストリアは福田屋洋服店時代から含めると、4回の(業容変換などの)”チェンジ“があった。僕らも新しい世代として会社を“チェンジ”していく。具体的にどのタイミングで何をどう“チェンジ”するかについては、今経営陣で成長戦略を練っているところだ。

※1953年に紳士服テーラーとして創業した後、73年にメンズカジュアルショップに業態転換(1回目のチェンジ)。84年にジーンズカジュアルショップとしてチェーン展開を開始(2回目のチェンジ)。96年に「ローリーズファーム」を品ぞろえ専門店からストアブランド化し、レディスカジュアルに進出(3回目のチェンジ)。13年にトリニティアーツ、生産機能のナチュラルナインと経営統合し、SPA化を推進。それに先立って10年には、社内外に向けて、生産・販売の垂直統合を進める「チェンジ宣言」を発表していた(4回目のチェンジ)

WWD:新社長として現状の課題と感じている点は何か。

木村:アダストリアはコロナ禍においてもある程度成長できている。去年も新ブランドを5つほどスタートし、過去数年で立ち上げた子会社のBUZZWIT、エレメントルールなども少しずつ成長してきた。こんな時代でも新しいことは他社に比べてできているが、課題はグローバル化だ。北村(取締役)が中国に赴任し、上海の「ニコアンド」2店など中国事業を率いているが、かつては中国本土の全店を一旦閉め、撤退した過去がある。今後は、中国でもファッション領域を飛び出した事業を行うかもしれない。東南アジア開拓に向けた準備室もようやく立ち上げた。このようにいろんな取り組みを進める中で、海外の人材も含めてこの間さまざまな人が当社に集まってきている点にも手応えを感じている。アパレル領域の人材はもちろん、IT関連人材なども増えてきた。

福田会長に教えられた「経営者は夢を語れ」

WWD:木村さんのように、福田屋洋服店時代を知るメンバーは他にも社内にいるのか。

木村:経営陣にはもういないので、会長が昔話をして分かるのは僕しかいない。僕が入社したのは、まだ福田屋洋服店が全10店ほどカジュアルチェーンだったころ。当時は会長の先代(福田哲三氏)が指揮していて、入社の際の面接官は当時常務を務めていた現会長だった。高崎(群馬)、長野などさまざまな店舗に販売員や店長として勤めたが、ジーパンの裾上げをする際に裁ちばさみをよく落とし、刃こぼれして本部に送ると、哲三さんから「またお前か!」と電話で何度も怒られたのを覚えている。

WWD:それから30年以上が経ち、アダストリアは東証一部上場の大企業になった。振り返ってみて、ターニングポイントのようなものはあるか。

木村:自分の中では、11年からトリニティアーツの社長をやらせてもらえた経験が大きい。当時はまだ40代。社長として、「売上高500億円企業を目指す」「業界の中で(一定以上の)ポジションを取りにいく」と打ち出した。トリニティアーツは上場企業としての縛りがなく、ポイントとはオフィスも別で、すごく自由にやらせてもらえた。その経験がその後に生きている。当時は毎週、会長に経営報告をし、売上高500億円と掲げた以上はどうやってそれを達成するのか、しっかり教え込まれた。「このままだと、お前たちは会社を潰すぞ」ともよく言われた。通常、出店を重ねれば売り上げは伸びるが、資金繰りは苦しくなる。その点ではポイントの力が絶大だった。ポイントの仕組みを使えたことで、あのときトリニティアーツは一気に成長できた。

WWD:そのように自由にやっていたが、13年にはアダストリアHDがトリニティアーツをグループ化した。

木村:正直、あの時は少しモチベーションが下がった(笑)。同時に、自分が次はどういうポジションでいなければならないのかについて、悩んだ時期でもある。一番辛かったのはアダストリアHD時代の15年。遠藤洋一社長(当時)と宮本英範取締役(同)が同時に辞め、すごく悩んだ。4人体制だった取締役が会長と僕の2人だけになってしまい、僕自身も辛かったし、会長も精神的にかなりきつかったと思う。結果的には、会長と共に次への道筋や会社のベースの部分を作ることができた。今となっては、あの時会長と一緒にやれてよかったと思う。

WWD:福田会長からは何を学んできたか。

木村:会長からずっと言われてきたのは、経営者として目線をどんどん変えていけということ。取締役、副社長と立場が変わっていく中で、どんどん目線を変えろと。「夢を語れ」ということも言われ続けてきた。「(財務などの面は他の得意なメンバーに任せているのだから)お前は会社としての夢を語れ」「大きな志を持て」と。そういうスタイルを叩き込まれた。実際に夢は語ってきたし、今も語っているつもりだ。僕は権限移譲型のリーダーで、(財務、営業、IT分野などそれぞれを)やれる人、得意な人がどんどん表に出てやっていけばいいと思っている。じゃあ僕は何をするのかというと、これまで子会社をいくつか立ち上げてきたが、アダストリアの社風について(子会社社員に)話しつつ、「また違う会社をここから作って行こう、大きくしていこう」というように夢を語っている。

WWD:アダストリアの社風とは。

木村:トリニティアーツの社長に就いたとき、一番最初に会長に言われたのが「社風を作れ」だった。社風とかノリというものは、実は作るのがとても難しい。お祭りっぽくてイベント好きというのがトリニティアーツの社風だったと思うし、結果的にそれはポイントの社風とは異なるものだった。働くことが楽しくなければ社員は皆辞めてしまう。現場を盛り上げてモチベーションを上げること、楽しませることを当時も今も意識していて、それがトリニティアーツの社風につながった。社風や場の雰囲気を作れない人には社長職は難しいと思う。例えば、会長は朝礼の際にすごく派手なスカジャンを着てきたりする。そうすることで社員を和ませることを心得ている。そういう雰囲気作りの大切さは、僕もトリニティアーツ時代から強く感じていた。反対意見も含め、社員誰もが意見を言いやすい雰囲気を作れる社長になりたい。

上場企業の枠にはまらない組織に

WWD:自由にやっていたトリニティアーツ時代から、アダストリアという大企業に移り変わっていく中では、自身もとまどう部分があったのでは。

木村:トリニティアーツがアダストリアHDにグループ化されてからは、コンプライアンスなどの面もより気をつけなければならなくなった。上場企業としての枠や制限のようなものが無意識ながらできてしまって、このままではマズいと強く感じた。それで意識したのが、枠にはまらないようにすること。小さなことだが、会社が統合したことでトリニティアーツ時代のようにショートパンツをはいての出社がしづらくなってもはき続けたのはその一例。ファッションの会社なんだから、それでいいじゃないかと伝えたかった。今では夏場にはみんなショートパンツをはいて出社するようになっている。服装だけでなく、モノの考え方についても同様だ。「別にそれでいいじゃないか」「何でダメなの?」ということはあえて口にするようにしてきた。それが、統合してからの新しい社風作りだったんだと思う。そういう流れから「新しいブランドをどんどんやろう」というアダストリアの社風ができてきたし、「失敗してもいい」という雰囲気にもつながっている。僕自身もいろいろ失敗してきている。


WWD:木村さん自身がそうだったように、新しいブランドや事業を立ち上げて、仕事を任せる中で新しいリーダーも育ってくる。

木村:今は社員からどんどんアイデアが上がってくるようになっていて、成功するかどうかに関わらず、まずやってみようというムードが社内にある。企業はどうしても徐々に頭が固くなるものだが、ファッションの会社としてはどんどん新しいことをやらなきゃいけない。上場企業ではそれがなかなか難しいと思うが、それができるのがオーナー企業であるアダストリアの強み。オーナー企業だからジャッジが早い。僕もやりたいことにいろいろと挑戦させてもらってきた。第2、第3の僕みたいな人が出てきて、次々と新しいことに挑戦していってほしい。

WWD:改めて、新社長としての抱負を。

木村:5年後、10年後を見据えて、今後の経営体制を作っていくのが僕の仕事。生産本部を作る、他社と協業する、雑貨に注力する、といったように、会長が過去数年間に進めてきたことは、その時々には批判もあったが、振り返ってみると全て正しかったと思う。あれがあったから、アダストリアはコロナの中でも銀行から借り入れをせず、実績を残すことができた。次は、僕や取締役、執行役員でものごとを決めて進められる体制にしていかなければならない。オーナーである会長に判断をあおいでしまうというのは、一種の大企業病だ。会長に頼らずとも次のあり方を決めていけるような、リーダーシップを執れる人間を何人育てることができるか。子会社の経営を担わせてみたり、中国や東南アジアなどの海外事業の指揮を任せたりする中で、アパレル以外の領域も含めて多角的に次の世代の経営人材を育てていきたい。そうすれば、アダストリアにとって大きな強みになる。集まってきているさまざまな人材をどうリーダーに育てあげるかが、僕の仕事だ。

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ECモール「スタイルヴォイス」がオリジナルD2Cブランド主軸に刷新 サイバーエージェント、メディコム・トイも出資

 ECモール「スタイルヴォイス ドットコム(STYLEVOICE.COM)」が4月26日にリニューアルオープンする。これまでの出資企業(マッシュホールディングス、ジュン、デイトナ・インターナショナル)を中心とした出店構成から刷新。インフルエンサーやタレントをディレクターに据えたオリジナルのD2Cブランドやコラボ企画を事業の主軸としたECサイトとして再始動する。またリニューアルと合わせて合弁企業スタイルヴォイスの資本構成も変更する。マッシュHDはデイトナ・インターナショナルの全株式を取得したことで全体の過半数の株式を保有する形となり、新たにサイバーエージェント、メディコム・トイが3月31日付で加わった。

 2019年11月にマッシュHD、ジュン、デイトナ・インターナショナルの3社が合弁会社スタイルヴォイスを設立し、同ECをスタートした。出資3社のブランドを中心に、ファッションやビューティ、グルメ、雑貨に渡る約45ブランドをそろえた。大きな特徴が、オウンドメディア「SVマガジン」を併設したこと。スタイリストの大草直子氏や白幡啓氏、ファッションフォトグラファーのシトウレイ氏らインフルエンサーや人気モデルをキュレーターに起用し、記事コンテンツを頻度高く投下するなど、情報発信とのシナジーを重視した運営を行ってきた。

 今回のリニューアルを境に、スタイルヴォイス社プロデュースのD2Cブランドを含めて、オリジナル企画の構成比を売り上げ全体の8割まで引き上げる計画だ。女性ファッション誌の編集長を歴任した片山裕美スタイルヴォイス社長ら編集企画チームが、D2Cブランドの立ち上げから商品企画、生産、運営などを含めディレクターと二人三脚で進めていく。生産背景はマッシュHDがバックアップする。

 新たなサイトの方向性を見出すきっかけになったのが、20年春の「ワンマイルウエア企画」。デザイナー川島幸美氏が「スタイルヴォイス ドットコム」限定で開発・販売した商品が1週間で完売したほか、秋には剛力彩芽やインフルエンサーの中村麻美を起用した企画もヒット。「SVマガジン」のコンテンツとSNSを駆使した立体的な発信も効果的に働いた。4月1日からリニューアルオープンに先行して、ファッションインフルエンサー3人をディレクターユニットにしたブランドをスタート。リニューアル翌日の27日には、モデル・女優の山田優とのルームウェア企画、8月には黒田知永子との企画など、年内に全10ブランドを発表する予定だ。また、リアルの場でのポップアップストア出店にも力を入れる。5月24日からはルミネ新宿2に「スタイルヴォイス ドットコム」の屋号で出店し、オリジナルD2Cブランドなどのアイテムを販売予定。「『スタイルヴォイス ドットコム』のECサイトに限らず、リアルでもオンラインでも販路を広げていきたい。また新たに出資に加わっていただいた2社を含め、生産、流通、メディア、企画などでマルチに連携し、お客さまに向けて熱量ある発信を続けていきたい」と片山氏。

 サイバーエージェント、メディコム・トイの出資により、発信面とコンテンツ面の双方で厚みを出す。年始にマッシュHDの近藤広幸社長からサイバーエージェント藤田晋社長、メディコム・トイの赤司竜彦社長それぞれとの話し合いの場が設けられ、その場で投資が決まった。サイバーエージェントには「メディア運営や発信にまつわる豊富な知見」を、メディコム・トイには「バズを生むコンテンツの起爆剤」としての相乗効果を期待する。「出店者と運営側がアイデアを持ち寄って、独自のブランドや商品企画や出店者同士のコラボなどの化学反応が次々と起こる、今までにないECメディアにしていきたい」(片山社長)。

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大丸松坂屋「DXで百貨店は宝の山に化ける」 澤田社長とサブスク仕掛け人・田端氏に聞く

 大丸松坂屋百貨店は婦人服レンタルのサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHER ADDRESS)」を3月に開始した。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA」「マルニ(MARNI)」など50ブランドの服を月額1万1880円(税込)で3着まで借りられる。5年後に売上高55億円、アクティブ会員3万人、在庫は20万着の規模を目指す。同社の澤田太郎社長と、キーマンである田端竜也・DX推進部マネージャーに新規事業の背景を聞いた。

WWD:サブスクはいつから準備してきたのか。

澤田太郎・大丸松坂屋百貨店社長(以下、澤田):5年ほど前に(親会社の)J.フロント リテイリング(JFR)が米スタートアップ企業でファッションレンタルのル・トート(LE TOTE)に出資したことから始まっている。その頃からJFRとして服のサブスク事業に関心を持っていた。ル・トートは19年に百貨店のロード&テーラー(LORD & TAYLOR)を買収している。JFRは当時、シリコンバレーの企業に若手社員を派遣してデジタルビジネスの勉強をさせていた。私がシリコンバレーを視察した際、百貨店のニーマンマーカス(NEIMAN MARCUS)の中にファッションレンタルのレント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)が大きな店を構えているのを見てショックを受けた。百貨店の顧客が利用し、気軽にラグジュアリーブランドに触れられる入り口になり、最終的にはブランドのファンになっていることを知った。百貨店とシェアリングは相対するのではなく、相乗効果を生める可能性を知った。

WWD:まず米国の事例に触発されたと。

澤田:しばらくしてエアークローゼットの天沼(聰社長)さんに話を聞きに行った。まだエアクロが現在のようにメジャーになる前だった。彼の話を聞いたり、出資したル・トートなど海外の事例を研究したりする中で、JFRの新規事業として直接参入すべきか、スタートアップ企業への出資を通じて参入するか、検討してきた。社内にも慎重論もあった。そもそも百貨店はストック(在庫)商売の経験がない。でも新しいチャレンジすべきという流れができ、百貨店の新規事業として始めることになった。で、ここにいる田端に事業プランを出すように指示した。

田端竜也・大丸松坂屋百貨店DX推進部マネージャー(以下、田端):でも最初に作った事業プランは上からふくろ叩きにあった(笑)。練り直した事業プランにゴーサインが出たのは19年12月。そこから大丸松坂屋百貨店の営業本部の力を借りて、ファッションブランドへの営業活動が始まった。難航するかと思ったら、外資ブランドはレント・ザ・ランウェイと取引があるので話は早かった。

澤田:昨年5月に私が大丸松坂屋百貨店の社長に就任したので、社長直轄のプロジェクトに位置付けた。当時、最大の壁はシステムだと考えていた。

田端:JFRや大丸松坂屋はいわゆるレガシーシステムなので、これに組み込むとかなりややこしい話になる。諸々の調整で1年くらいかかってしまうかもしれない。ならば、イチから在庫や顧客とのリレーションのシステムを作った方が迅速に臨機応変に動けると考えた。百貨店とのポイント連携などは一旦棚上げし、とにかくスタートを切ることにした。

WWD:「アナザーアドレス」に続くデジタルの新規事業も計画しているのか。

澤田:もちろん、そのつもりだ。いずれは事業利益5億円を稼げる事業を10個くらい作りたい。それで百貨店の1店舗くらいの収益になる。とにかくトライ&エラーを重ねる。若い人には失敗を恐れないでどんどんチャレンジしてほしい。経営側は腹をくくっている。

WWD:デジタル関連の新事業を進めるには社内体制や人材は?

澤田:3月1日付で新設したDX推進部が中心になる。分かれていたデジタル関連の部署を統合した70数人のチームだ。「アナザーアドレス」もここの管轄になる。部長には当社を退社してIT企業で働いていた岡崎路易に復帰してもらった。百貨店は保守的なので、いきなりIT のプロパー人材がリーダーになると萎縮してしまう。彼はITの知見だけでなく、百貨店の強みも弱みも知り尽くしている。

私は社長就任後、全員の部長と面談した。そこで分かったのは既存事業でもDXを用いれば宝の山になるということ。「アナザーアドレス」のような新規事業ではなくても、化粧品や美術品だってDXによって大化けできる。化粧品ではオウンドメディア「デパコ」とECとリアル店舗を三位一体にする改革に乗り出している。百貨店のOMO(オンラインとオフラインの融合)は人の魅力がキーポイントになる。大手のECモールとは異なり、●●さんが勧める商品、●●さんが接客する商品を買いたくなるといった差別化ができる。当社が得意とする美術品もバーチャル画廊のような機能によって、アーティストやキュレーターとの双方向コミュニケーションが体感できるものになるだろう。

WWD:「アナザーアドレス」の反響は?

田端:会員数は当初の計画通りで、まずは順調な滑り出し。特定のブランドや商品に人気が集中してしまうのではないかと心配していたが、海外のハイーブランドもドメスティックブランドもけっこう広く利用されている。ウィメンズで開始したが、メンズを望むお客さまの声も届いている。秋に向けて新しいブランドも増えるだろう。

澤田:田端はまだ32歳。百貨店の常識に染まりきっていない彼らの世代にとても期待している。

WWD:百貨店の新規事業の責任者としては若い。これまでどんなキャリアを重ねてきたのか。

田端:実は百貨店事業の経験は少ない。11年に新卒で大丸札幌店に赴任してワイン担当として売り場運営に従事した。ソムリエの資格を取ったりもしたが、すぐにJFRの新規事業開発部門に映って、ITやスタートアップ企業の案件に携わった。この間、シリコンバレーを頻繁に行き来したり、マレーシアに短期留学したりして外の世界を見てきた。

澤田:田端は百貨店の流儀に染まっておらず、広い視野でマーケットを俯瞰できる。彼に限らず、そんなマインドを持った若い社員が増えているので、とても頼もしく思っている。
田端:長くお客さまに信頼されてきた百貨店を持つ当社だからこそ、できることがたくさんある。大丸松坂屋やパルコなどJFRグループの顧客基盤も生かし、アナザーアドレスを手始めに新しいことをどんどんやっていきたい。

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