NFTとは何か?誰が買うのか?ファッションはどう参入できるのか? 業界が知っておくべきトピックス

 NFTが熱狂と共に急速に注目を集めている。この領域に価値を見出している人々の間では何百万ドルという巨額の取引が行われており、ファッション界からもこの取引に参加している人々がいる。ここではNFTの基本概念から注目の取引、課題、ファッションにおけるキープレーヤーなどを紹介する。

NFTとは?

 NFTは“Non-Fungible Token”の略で、非代替性トークンと訳される。その文字通り、代替や交換されることのないデータのことで、資産のデジタル鑑定書と所有証明書としての役割を持つ。ブロックチェーン上で発行・流通されるのでコピーやハッキングが不可能で、それがNFTの価値をより高めている。

 NFTのほか、ビットコイン(Bitcoin)などの仮想通貨を支えているブロックチェーンは、“分散型台帳技術”とも呼ばれている。取引のデータを記録した“台帳”をネットワークに接続した複数のコンピュータで共有し、偽造できないような形で保存・管理するので、透明性が高くデータの改ざんが非常に困難だ。

 この技術で特に魅力なのは、どんなコピーが生まれようとも音楽ファイル、動画、画像といったデジタル上の資産をそれが本物であることを証明できることだ。デジタル上では現実に存在するものと違って簡単にレプリカを作ることができてしまい、コピーを判別するのも困難だが、もしラグジュアリーブランドがバーチャル上のNFTコレクションを作れば、買い手はそれがコピーではなく本物だとわかる。この特徴は長年コピー商品や偽物に悩まされてきたアートとファッション業界には特に魅力的に見え、2021年初めから注目を集めている要因となっているようだ。

アート界の熱狂

 アート界では、イーロン・マスク(Elon Musk)との交際でも知られるミュージシャンでアーティストのグライムス(Grimes)が、画像や音楽を含む10個のNFTデジタルアートを20分以内に580万ドル(約6億2640万円)で売却した。アーティストのビープル(Beeple)は動画のNFTアートを660万ドル(約7億1280万円)で売却。さらにクリスティーズ(CHRISTIES)のオークションで“Everydays: The First 5000 Days,”と題した作品を6900万ドル(約74億5200万円)で売却し、世界に衝撃を与えた。この作品はビープルが13年半かけて制作した5000のアート作品をコラージュしたものだった。

 3月にはスーパーチーフ ギャラリー(SUPERCHIEF GALLERY)が世界初のNFT専門のアートギャラリーをニューヨークにオープン。NFTとブロックチェーンを使った投資プラットフォーム「アートセルス(ARTCELS)」は、アートコレクションの共同所有権をNFTで提供している。4月にはバンクシー(Banksy)や奈良美智といった著名アーティストの作品を“ミレニアルズ”コレクションと題して最低投資額約1000ドル(約10万円)からの共同所有権を提供した。

ファッション界の熱狂

 一方ファッション界では、バーチャルブランド「RTFKT」と10代のアーティスト、フュウオシャス(Fewocious)がコラボレーションした「スナップチャット(SnapChat)」のARレンズを通して見えるNFTスニーカーコレクションが、たったの7分で310万ドル(約3億3480万円)で落札され、コレクターたちに衝撃を与えた。

 さらに「RTFKT」は4月にデジタルクチュールブランド「ザ・ファブリカント(THE FABRICANT)」とのコラボレーションを発表した。「ザ・ファブリカント」はファッションブランドとして初めてNFTをリリースしたブランドで、その虹色に光るドレスは19年3月に9500ドル(約102万円)で落札された。“ルネッサンス(RenaiXance)”と題されたNFTのコラボコレクションはイヤリングやコルセットなど7つのアイテムで構成。招待制のマーケットプレイス「ザ・ディマテリアライズド(The Dematerialised)」で48時間限定で販売された。

 同マーケットプレイスによれば、3000人ものユーザーがこのイベントのために新たに登録した。初日には18〜9000ユーロ(約2000〜11万8000円)の価格帯の213のNFTアイテムが販売されたが、わずか11分で売り切れた。2日目にサプライズでドロップされた10のNFTスニーカーは11秒で完売した。3分の1のオークション参加者が少なくとも一つのNFTアイテムを買ったという。

 この熱狂の中心にあるのは設立間もないスタートアップ企業が多いため見落とされやすいかもしれないが、ファッションのトップ企業も参入を決めた。LVMH モエ ヘネシー·ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下にある「リモワ(RIMOWA)」は、デザインスタジオのヌオヴァ(NUOVA)とコラボレーションしたNFTコレクションのオークションを5月18日に開始した。LVMHは「プラダ(PRADA)」「カルティエ(CARTIER)」と共同で、ラグジュアリーアイテムのトレーサビリティーと鑑定の証明になるブロックチェーンコンソーシアム「アウラ(AURA)」も設立している。さらに、ケリング(KERING)が擁する「グッチ(GUCCI)」も以前からゲームやARといった領域に積極的に挑戦している。デジタルオンリーのスニーカーも発表しており、今後ファッションのNFTを発表しても不思議ではない。

 NFTはアートとファッション領域だけでなく、レブロン・ジェームズ(LeBron James)がジャンプする動画から、「タコベル(TACO BELL)」のメニューをアニメーション化したファイル、「ピザハット(PIZZA HUT)」のバーチャルピザまで市場にはありとあらゆるものがある。ツイッター(TWITTER)のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)共同創設者兼最高経営責任者(CEO)は、自身によるツイッターサービス史上初めてのツイートを290万ドル(約3億1300万円)で売却した。このニュースは多くのメディアのヘッドラインを飾ることになり、NFT市場にさらなる熱狂をもたらした。

誰が買っているのか?

 この熱狂は最高潮に達しているようだが、では一体誰が買っているのか?暗号資産データ企業のノミクス(NOMICS)のクレイ・コリンズ(Clay Collins)共同創設者兼CEOは「多くの場合、ブロックチェーンが持つ最新のテクノロジーに非常に興味を持っている人たちか、エンジニアだ」と明かす。同氏は彼らは仮想通貨に早期参入した人々だと考えている。「ブロックチェーン投資によって多額の利益を得た人々だろう。ビットコインは過去10年で最もパフォーマンスがよい資産だ。もし2013年に数百ドル(約2万〜3万円)で1ビットコイン(BTC)を買っていたら、今や4万ドル(約440万円)に相当するのだから」。

 同氏はさらにこのトレンドは米サンフランシスコ・ベイエリアのIT企業の新規株式公開(IPO)によって生まれた多額の資金が関係していると考えている。またそうした投資家たちのほかに、実際に着ることはないバーチャルスニーカーや服にお金をかけることも厭わないデジタルに詳しいZ世代もNFTに惹かれていると同氏は語る。「買っても着ない」という心理はスニーカーのコレクターは理解しやすいかもしれない。大金をかけて手に入れたスニーカーは自慢したいが、それが部屋のトロフィーケースから出ることはない。だが画像や動画となってSNS上に存在しているのだ。

 IDCのジェームズ・ウェスター(James Wester)世界ブロックチェーン戦略リサーチ・ディレクターは「スニーカーのコレクターたちは、レアスニーカーをひたすら手に入れる。だがそれを一度も履きたいとは思わないのだ。なぜ履かないスニーカーのためにクローゼットスペースを割く必要があるのか?」と疑問を投げかける。同じ疑問はラグジュアリー企業も考えることだろう。デジタル上に存在すれば現実世界の場所を取らない。サプライチェーンも倉庫も必要ない。

バブルは続くのか?

 だがこの熱狂はいつまで続くのか?クリスティーズのNFTオークションで世界に衝撃を与えたビープルことマイク・ヴィンケルマン(Mike Winkelmann)でさえも、バブルだと見ている。同氏はオークション直後に行われたコインデスクTV(COINDESK TV)の取材に対し「これはバブルだと思う。もし今がバブルでないなら、いずれバブルになるだろうと信じている。あまりに多くの人が急いでこの領域に参入してきているからね」と語っている。

 NFTのトラッキングサイト、「ノンファンジブルドットコム(NonFungible.com)」によれば、21年1〜3月の間にNFTの売り上げは2100%も増加し20億ドル(約2160億円)に達したが、その後落ち込んだ。NFTの価格はピークだった2月中旬からおよそ70%減少し、それまで平均4000ドル(約43万円)だったのが4月初旬には平均1500ドル(約16万円)以下に落ち込んでいる。

 同サイトは価格変動率の高さは「安定化現象でクラッシュする兆候ではない」とし、「このグラフの変化は予想の範疇で、むしろ今後“市場調整”が起こりうることが分かり安心だ」4月中旬にコメント。この後、さらに売り上げは減少している。これはNFTのトレンド終焉への不安を示しているのか、もしくはただ単に価格変動が起こりやすい仮想通貨市場の延長線上にあるというだけかもしれない。

NFTマーケットの課題

 NFTの普及の大きな障壁となっているのは、NFTを購入するのが簡単ではないということだ。大抵の場合、まず仮想通貨を購入し、さらに仮想通貨専用のウォレットをセットアップする手間がかかる。

 中には参入をより簡単にしようと努力しているプラットフォームもある。例えばシンガポールのブロックチェーンをベースにしたデジタル広告企業ヴィディ(VIDY)は、シンガポール版「ヴォーグ(VOGUE)」の出版社であるメディア パブリッシャーズ(MEDIA PUBLISHARES)と提携して7〜9月に新たにNFTプラットフォームを立ち上げる。同プラットフォームでは、ファッション、アート、音楽、デザインを360度のバーチャル空間で展示するほか、NFTのミンティング(鋳造)、売買、オークションといった取引や社会との関連性について取り上げる。「ファッション、アート、音楽コミュニティーからの参加を円滑にすることで、NFTの世界をブーストさせるプラットフォームにする自信がある」とヴィディのマシュー・リム(Matthew Lim)共同創業者は意気込む。

NFTは現実の物の認証にも使える

 NFTの多くの要素がデジタルのファッションを盛り上げているが、NFTは建物やダイヤモンド、そしてファッションなど現実世界の物とデジタルを結ぶ架け橋にもなりうる。例えば、ブランドはNFTで認証した服をこの世にたった一つしかない服として売ることができる。それを購入してくれた人にはオンライン上でシェアできるように認証された同じ服の3Dデータを渡してもいいかもしれない。特に後者は現実の服の価値を薄めることなく売り上げを何倍にもする可能性を秘めている。

 NFTの認証ビジネスに早期参入したアリナニー(ARINANEE)は、高級品の“デジタル上の双子”を制作している。自らを「貴重品のデジタルパスポートプラットフォーム」と称す同社はシードラウンドですでに950万ドル(約10億2600万円)を調達している。

The post NFTとは何か?誰が買うのか?ファッションはどう参入できるのか? 業界が知っておくべきトピックス appeared first on WWDJAPAN.

「モノカブ」が実店舗オープンとCM放映開始「多くの偽物が流通するスニーカー二次流通市場でより安心なサービスを」

 モノカブ(東京、濵田航平代表)は5月21日、同社が運営する国内最大級のスニーカーとストリートウエアのオンライン商品取引所「モノカブ(MONOKABU)」の2号店となる実店舗を、大阪・心斎橋に開設した。住所は大阪府大阪市中央区西心斎橋2-13-16。1号店は東京・原宿に構えており、さらなるユーザー体験の向上を目指す。
 
 「モノカブ」は通常のフリーマーケットサービスとは異なり、偽物の流入を徹底排除すべく専任の鑑定士を介して取引商品の鑑定を行っているほか、“板寄せ”という証券取引所の売買成立方式を採用し、出品者・購入者双方に対して円滑な取引をサポートするサービスを提供している。スニーカーやストリートウエアを軸に、最近はトレーディングカードやゲーム機器などの取り扱いも開始した。実店舗には、「モノカブ」で取引成立後の商品を送料無料、梱包不要で直接持ち込み可能。店内にスタッフがセレクトしたスニーカーも展示する。

 また22日からテレビCM「『新品未使用・本物保証のスニーカー取引所』篇」の放映を開始する。CMは箱詰めされた新品未使用・本物のスニーカーが近未来的なマシンによって次々と運び込まれるところから始まり、「モノカブ」の提供する開封・真贋鑑定・梱包・発送の一連の流れを端的に表現する。

 濵田航平モノカブ代表は「近年のスニーカーやファッションを取り巻く二次流通市場には、いまだに多くの偽物が流通しており、大きな社会課題の一つだと認識している。CMを放映することで『モノカブ』の存在を知らない方や、まだご利用いただけていない方にもわれわれのサービスを知ってもらい、今まで以上に多くの方々の安全安心なスニーカー・ファッションライフをサポートしていきたい。これからも“あらゆるモノの取引所を目指し、商品の価値を再定義する”ことを使命に、事業拡大を目指す」とコメントしている。 

The post 「モノカブ」が実店舗オープンとCM放映開始「多くの偽物が流通するスニーカー二次流通市場でより安心なサービスを」 appeared first on WWDJAPAN.

【動画】J.Y.パークの人生を変えたスキンケア 本人に直撃インタビュー

 韓国のオーガニックスキンケアブランド「シオリス(SIORIS)」が昨年末に日本上陸を果たし、今年3月には「TWICE(トゥワイス)」「NiziU(ニジュー)」をプロデュースするJ.Y.パーク(パク・ジニョン)氏による出資を発表した。パク氏は製品開発にも携わり、3月10日に日本でも発売した新製品“マイ ファースト エッセナー”(100mL、税込3850円)と“エンリッチド バイ ネイチャークリーム”(50mL、税込4400円)の開発にも参画した。出資した経緯や製品へのこだわりについて、本人に独占インタビューした。

The post 【動画】J.Y.パークの人生を変えたスキンケア 本人に直撃インタビュー appeared first on WWDJAPAN.

アイヴァンが5月26日、新業態「ジ・アイヴァン」を京都・祇園にオープン

 眼鏡企業アイヴァンは、オリジナルブランド「アイヴァン(EYEVAN)」「アイヴァン7285」「10アイヴァン」「アイヴォル(EYEVOL)」のみで構成する新業態「ジ・アイヴァン」を5月26日、京都・祇園にオープンする。広報担当者は、「『アイヴァン』は1972年のブランド設立以来、一貫して日本(鯖江)製の高品質なアイウエアを作り続け、海外にも積極的に進出してきた。日本を象徴し、古来の文化が色濃く残る京都は新業態の一号店の出店地にふさわしい」と話す。

 外装は祇園らしい町屋風のデザインで、内装をインテリアデザイナーの森田恭通が手掛ける。中央の吹き抜けには、京扇子を用いたオブジェを設置するという。スタッフが着用するユニフォームは、京都発のブランド「レインメーカー(RAINMAKER)」によるもので、着物を思わせる和風なデザイン。今後、専門スタッフによるコンシェルジュサービスも行う予定だ。

 オープン記念のアイテムとして、べっこう製の眼鏡を作る東京・千駄木の大澤鼈甲に特注した“アイヴァン トータス”シリーズを先行発売する。「アイヴァン」の代表的モデルである“E-0504”“E-0505”“ウェブ”を放送作家・小山薫堂の監修により、べっこうでそれぞれ33万円~、55万円~、99万円~で製作した。また元禄元年(1688年)の創業で、京都の地場産業である西陣織の老舗、細尾と協業した眼鏡ケース(小1万6500円、大1万8700円)も発売する。

■ジ・アイヴァン京都祇園
オープン日:5月26日
時間:11:00~19:00
定休日:水曜日
住所:京都府京都市東山区祇園町南側570-125

The post アイヴァンが5月26日、新業態「ジ・アイヴァン」を京都・祇園にオープン appeared first on WWDJAPAN.

三越伊勢丹と松屋も「高級ブランド」再び休業 都からブランド側にも要請

 三越伊勢丹は都内4店舗のラグジュアリーブランドの売り場を5月23日から再び休業する。松屋も24日からラグジュアリーブランドを休業する。東京都が直接ラグジュアリーブランド側に休業要請を求めたことを受け、ブランド各社と協議して決めた。今週に入って都はラグジュアリーブランド側に対し、路面店の休業要請の働きかけを始めた。これまで事実上、百貨店やショッピングセンター(SC)に限られてきた休業要請がラグジュアリーブランドの大型旗艦店などに波及する可能性がある。

 伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店、伊勢丹立川店で休業対象となるブランドはあす22日までに正式にアナウンスされる見通し。大丸松坂屋百貨店、高島屋は「現時点(21日18時)では決まっていない」としている。

 百貨店と東京都は「高級品」を巡る解釈でせめぎ合いを続けている。緊急事態宣言が延長された12日以降、百貨店各社は営業エリアを拡大した。休業要請の対象外である「生活必需品」の範囲を広げることで、衣料品やラグジュアリーブランドを含めた売り場の大部分の営業を再開していた。

 東京都は、ラグジュアリーブランドを生活必需品に入れた百貨店の対応を問題視した。都が日本百貨店協会に対して12日に提出した要望書では「豪奢品(ごうしゃひん=並外れてぜいたくな品)」の販売をやり玉にあげ、14日には小池百合子知事が会見で「高級衣料品は生活必需品に当たらない」と釘をさした。さらに都の担当者は百貨店やラグジュアリーブランドを直接訪ねて休業を求めた。

 都の強硬な姿勢を受け、そごう・西武は20日からラグジュアリーブランドを再休業している。三越伊勢丹は営業継続するものの、19 日からブランドと協議した上で豪奢品に相当する商品を売り場から下げていた。ブランド側が休業したいと申し出れば、他の都内百貨店やSCにも休業が広がることが予想される。また都が直接ブランド各社に働きかけたことで、大型旗艦店の休業に発展することも考えられる。緊急事態宣言は5月末以降も延長される公算が高く、影響は大きくなりそうだ。

 ある百貨店の関係者は「ラグジュアリーブランドはそれほど混雑しないし、人流の抑制にさほど効果があるとは思えない。東京都は営業エリアを拡大した百貨店に対し、意地になっているのではないか」と述べた。

The post 三越伊勢丹と松屋も「高級ブランド」再び休業 都からブランド側にも要請 appeared first on WWDJAPAN.

背水の三陽商会 大江社長「悲観はしていない。打つべき手は打った」

 昨年5月に三陽商会の社長に就任した大江伸治氏は、73歳と高齢ながら三井物産の商社マンとしてファッションビジネスの裏も表も知り尽くし、業績不振だったゴールドウインの副社長に転じてV字回復に導いた実力者である。屋台骨のバーバリー事業を失ってから5年連続の営業赤字に沈む三陽商会の乗り込み、人員整理や不採算店の撤退などの荒療治を断行した。徹底したリアリストである大江氏は、名門アパレルを復活に導けるのか。

WWD:3度目の緊急事態宣言に伴う商業施設の休業要請は、三陽商会の再建にどんな影響を及ぼしているのか。

大江伸治社長(以下、大江):3月の売上高は19年比69%で、計画よりも改善した。粗利益が上振れ、販管費は下振れしたので、単月の営業損益は黒字になった。だが、4月は商業施設の休業要請のため売上高は59%で終わり、3月の上振れ分が消えてしまった。5月は(東京都や大阪府など)ゴールデンウイークの商戦が丸ごと消えた。5月半ばから東京の百貨店は営業再開したものの、回復にはほど遠い状態だ。

WWD:緊急事態宣言前の4月14日に行われた決算説明会では、今期(22年2月期)の最終損益をトントンにすると発表した。見通しに変わりはないか。

大江:変わりない。自治体の雇用調整助成金なども活用し、なんとかバッファの範囲内で抑えるよう努める。ただ、今の感染状況で5月末に宣言が解除される可能性は低い。一部の休業は継続されるかもしれないが、百貨店も背に腹は変えられないということで、おそらく大半は営業を続けるだろう。その前提で対策を講じ、数字を確保していくしかない。ワクチン接種で出口が見えるまでは、非常に難しい舵取りになる。

それでも僕はあまり悲観はしていない。打つべき手はすでに打っているからだ。前期の構造改革の成果が歴然と出くる。例えば販管費の削減は計画以上に進んだ。3月単月の売上高は37億円くらいだが、営業損益は黒字化している。今期は売上高440億円の予想なので、単純に単月売上高を40億円前後と考えれば、(3月のように)37億円の売り上げを取れれば損益分岐をクリアできる。40億円なら確実に黒字だ。

これまでは在庫の消化を優先し、かなり荒っぽい売り方をしていた。セールを連発して売り上げを確保する。今期からはプロパー(正価)を守るようガラッと変えた。だからコロナで売上高が下がっても、粗利率が上がっているので利益が出る体質になっている。

セール会場だった自社ECを刷新

WWD:コロナが収束しても三陽商会が得意としてきた百貨店の市場はさらに厳しくなると思われる。新常態で消費者が求める服も変わってきた。

大江:市場には一過性の変化と構造的な変化がある。マスコミは一過性の変化をあたかも構造的な変化のように喧伝する場合も多く見受けられる。カジュアルウエアが有望で、フォーマルが駄目になるとか、そんな単純は話ではない。当社の主戦場はアッパーミドル市場。ラグジュアリーブランドほどではない価格で、デザインと品質を両立した商品を提供していく。2極化ばかりが叫ばれるが、確実に存在する市場だ。

例えば、オケージョン(冠婚葬祭や入卒式、パーティーなど)対応の服。コロナ禍でオケージョンが中止になったので、当然落ち込んではいるが、これも回復が見込める。実際、(緊急事態宣言前の)3月まではけっこうスーツが動いていた。リモートワークはある程度定着する。在宅でもきちんと見えて、リラックスできる服のニーズは高まる。消費者は1年以上、がまんを重ねている。ファッションへの潜在需要はマグマのように溜まっている。リベンジ消費だってあるだろう。

WWD:ECのニーズに対応できるか。

大江:これが一番の変化かもしれない。デジタルに疎かったシニアのお客さまもECを利用するようになった。当社は中高年のお客さまが多く、また高価格の製品が多いため、直接ECにお客を奪われることは少なかった。でも今は店舗とECの両方を回遊する導線を作ることが不可欠だ。デジタルを通じてお客さまの情報量が格段増えている。

低価格のカジュアルブランドはどんどんECに移行するだろう。ECがメインだと主張するアパレルも出てきた。でも当社は違う。お客さまの声を聞くと「ECだけは味気ない」「お店で品定めしたい」「顔見知りの販売員さんにアドバイスしてほしい」という声が多い。店舗の空気感や販売員の接客を含めたブランドビジネスなので、三陽商会のEC戦略の軸足はあくまで店舗にあることは変わらない。

WWD:前期のEC売上高は16%増の約82億円。売上高のうちのEC化率は22.5%に上昇した。

大江:喜べる内容ではない。自社ECサイト「サンヨー・アイストア」は、セール会場みたいになっていた。昨年はECでの値引き販売に頼らざるを得なかった。今年3月からは刷新し、プロパーで売る姿勢を明確にした。昨年に比べて売り上げは苦戦しているが、粗利益率はぐっと改善している。プロパーで売れないと本当の実力にはならない。お客さまに対して店舗とECを通じたブランディングを行うために、プロパー強化は避けて通れない。

WWD:EC支援サービスの子会社ルビー・グループを3月に売却した。これは三陽商会のEC事業の後退にならないのか。

大江:売却したけれど、引き続き戦略的パートナーであることに変わりない。僕は当時いなかったが、(18年に)ルビーを子会社にしたのは、おそらくグループとしての相乗効果を得る目的だったのだろう。でも三陽商会にはもともとルビーに提供できるようなリソースはない。本業が苦しくてルビーの経営に関わるどころではなかった。今回の売却がデジタル戦略の後退なることは全くない。子会社ゆえにハードな条件闘争すらできなかった。是々非々のビジネスパートナーである方が健全だ。

「僕は情緒的な判断はしない」

WWD:構造改革によって止血にメドがついたとして、今後の成長戦略をどう描くのか。

大江:成長戦略の概略は先月発表した通りだ。25年2月期に売上高520億円、粗利益率55%、販管費率45%、営業利益率10%の達成を目指す。構造改革はこの先も継続して、粗利益率を毎年1ポイント改善させる。無理なくトップライン(売上高)を確保すれば、着実に利益が出せる。僕がゴールドウイン時代にやったことと基本は変わらない。収益構造を抜本的に変えた上で、「ブランドバリュー再定義」「デジタルマーケティング強化」「ECプラットフォーム再構築」「直営店出店強化」といった成長戦略を強力に進める。この辺りは今まさに喧々諤々の議論を行なっている最中で、今期中に具体的プランを発表する。

WWD:15年6月に屋台骨だった「バーバリー」のライセンス事業を失ってから何度も再建プランを推進しきたが、うまく行かなかった。

大江:幹がひょろひょろしているのに、無理やり枝葉を接ぎ木して繕おうとしたから失敗した。構造改革と成長戦略、アクセルとブレーキを一緒に踏もうとした根本の考え方が間違っている。まず構造改革によって幹を太く健康な状態にしないいけないのに、全てが中途半端だった。

WWD:ポスト・バーバリーと見込んだ「マッキントッシュロンドン(MACKINTOSH LONDON)」も穴埋めにならなかった。

大江:ポストなんとか考えるから失敗した。「バーバリー」の跡地の売り場を「マッキントッシュロンドン」で埋めて、結果として膨大な在庫だけが残った。売り場と売り上げを失う強迫観念によって、ブランドを育てる本質を忘れたとしか僕には思えない。

WWD:今後の成長戦略の柱になるブランドは?

大江:当社でいう基幹4ブランド、つまり「マッキントッシュ」シリーズ(「マッキントッシュ ロンドン」「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」)、「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ(BLUE LABEL/BLACK LABEL CRESTBRIDGE)」、「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」、「エポカ(EPOCA)への投資を強める。旗艦店を含めた直営店の出店を強化していく。

WWD:米国ブランド「ポール・スチュアート」の国内商標権を取得した。

大江:メリットが大きい。まずロイヤリティーの負担がなくなる。企画・MDの裁量権が大きくなり、子供服やスポーツ、サブライセンス事業などマルチカテゴリーで展開できるようになる。契約更改リスクもなくなるので、長期戦略に基づいた投資ができる。

WWD:若い顧客の獲得も重要なテーマだ。

大江:ファッションビル向けの「マッキントッシュ フィロソフィー」の“グレーラベル”はポテンシャルがある。3月に出店した新宿ルミネで良いときは月坪70万くらいの売上高だった。今も引き合いが多い。もともと“MPストア”としてストアブランドにしていたが、店舗を作ると商品を広げないといけない。そうなると、どうしても効率の悪い商品が出てしまう。滑り出しの好調は、MDを集約していることも幸いしている。

WWD:低迷していたセレクトショップ業態「ラブレス(LOVELESS)」と婦人服「キャスト(CAST)」は期中に事業継続の可否を判断すると、決算説明会では説明していた。

大江:両事業とも、まだ(存続か否かの)結論を出していない。「キャスト」は苦労して、ようやく焦点が定まってきた。「ラブレス」のエッジの効いた店舗は、好きな人はものすごく好き。今期の黒字化は無理としても、収益の見通しが立つのであれば将来の成長エンジンの一つとして考えていいのかなと思っている。メジャーな基幹ブランドだけでなく、ファッション企業としては新しい挑戦もミッションだと思っている。

WWD:「ラブレス」の不振について、メディアのインタビューで「素人の遊びの結果」と一刀両断していた。あんまり厳しいと、担当者が寝込んでしまわないか。

広報担当:大江はこう見えて、社内では意外とフォローしているんですよ。

大江:仕入れが遊びになっていたのは事実だ。1匹の魚を取るために、こんなに大きな網を仕掛けるなんて採算が合うわけない。ファッションに余裕と遊びが大切なのは承知しているが、そこにフィロソフィーはあるのか。商品編集はセレクトショップ運営の肝なのに、おざなりになっていないか。

辛辣なつもりはない。事実を指摘し、事実に即して改革を進めないと、展望が見えてこないからだ。僕は情緒的な判断はしない。

The post 背水の三陽商会 大江社長「悲観はしていない。打つべき手は打った」 appeared first on WWDJAPAN.

「過去の習慣に戻ってしまわないことが大切」 マリーン・セルが考えるファッションの今と未来

 マリーン・セル(Marine Serre)は、アップサイクルやリサイクルを駆使したクリエイションでファッションの在り方を探求する若手デザイナーの代表格だ。2016年に自身の名を冠したブランドをスタートし、その翌年にはLVMHヤング ファッション デザイナープライズでグランプリを受賞。初期から「循環性(circularity)」「気候中立(climate neutrality)」「困難な状況から立ち直る力(resilience)」を柱にしたコンセプト“エコフューチャリズム”を掲げ、未来を見据えたものづくりに取り組んでいる。18-19年秋冬からはパリ・ファッション・ウイークにも参加し、世界の終焉を感じさせるようなショーで気候変動への警鐘を鳴らしてきた。しかし、3月に発表された21-22年秋冬コレクションはアプローチを一転。身近な人の日常を切り取ったような親密な映像やさまざまな素材が製品になるまでのドキュメンタリーを通して、コアアイテムを中心とした新作を見せた。そこには、どんな心境の変化があったのか?コレクションと映像作品に込められた思いやこれからについて聞いた。

――2021-22年秋冬コレクションでは、どのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか?また、その理由や背景を教えてください。

マリーン・セル「マリーン セル」デザイナー(以下、セル):今シーズンに向けてドキュメンタリーと本を制作することを決めたのは、ブランド初のショートムービー「AMOR FAI」を通して21年春夏コレクションを発表した後。16年にブランドを始めてから4周年になるアニバーサリーを祝いたいという気持ちがあり、今シーズンは「CORE」と名付けました。
そして、全世界が自問自答しているような困難な1年を経て、かつて(地球温暖化の)防止や警鐘、そして最終的には切迫した黙示録までを表現していた私たちの物語を続けていくことも重要だと感じました。今では、誰もがこの緊迫感を真剣に受け止めていますからね。そこで、私たちは「マリーン セル」が誕生した当時を振り返り、持続可能性と再生に基づいたブランドの根幹を見直すことにしました。具体的に時間をかけたのは、シルエットと環境に配慮したプロセスにあらためて取り組むこと。設立当初から一貫している“エコフューチャリスティック”なアプローチを際立たせるとともに、(アップサイクルやリサイクルを駆使して)再生されたアイテムを着心地と価格面でより身近なものにすることを目指しました。
この野心的なプロジェクトを成功させるために欠かせなかったのは、デザインやアトリエから開発、経理、PR、マーケティング、セールスまですべてのチームが、各ステップの重要性に対する共通認識を持つこと。今は製品についての伝えることも重要ですが、それと同じように、どのようにデザインしたり作ったりするか、どうやって工場に説明するか、いかに材料を調達するかということも重要です。そのためには、すべてのチームを同じレベルにするのが鍵だと考え、スタートしました。

――今シーズン発表した映像は、何気ない日常の中にある幸せが描かれていました。これまでのショーとは大きく異なるアプローチでしたが、このような表現を選んだ理由は?

セル:私たちはブランドを始めた頃から友人や家族と一緒に取り組み、同じ未来を信じる仲間を増やしてきました。共に働き、歩み、そして創造する人々と誠実な関係を築くのは、私が大切にしていること。「CORE」はある意味、私たちを支え、エネルギーを与えてくれるとともに、時間を共有し、仲間になってくれたミューズや友人たちへのオマージュです。そして同時に、私たちを信頼し、彼らの家や私生活に迎え入れてくれたことへのオマージュでもありますね。

――21-22年秋冬から三日月プリントのシリーズなどアイコニックなアイテムをそろえるホワイトラインの価格帯を見直したそうですが、なぜ価格を下げる必要があると感じたのですか?

セル:今季の大きな目的は、サイズやフィットの改善といった着やすさと価格面で、商品をより手に取りやすくすることでした。そこで価格に関しては、古着などをアップサイクルした再生アイテムとリサイクル繊維で作ったウエアで構成するホワイトラインに焦点を当てることにしました。私は、消費者が「マリーン セル」のアイテムを購入する際に直面するハードルの高さを懸念しています。(アップサイクルやリサイクルなどの)新たな方法で作られた服を着たいと思っていても経済的な理由で購入が難しいこともあるでしょう。なので、手仕事を必要とする生産にかかる時間に対してフェアであり、ブランドを続けるために必要なマージンを意識しながらも、価格を下げる努力をしなければならないと感じました。上質かつユニークであることを維持しつつ実現するには生産工程を簡素化しなければならず、ベストな方法を見つけるために工場との密なコミュニケーションが必要でした。それでも、私たちは“エコフューチャリズム”をストリートにもたらしたいと考えています。

――「マリーン セル」は設立時からずっとサステナビリティと向き合っていますが、最近はより多くのブランドや消費者がサステナビリティについて話し合ったり、取り組んだりするようになりました。ファッション業界の現状をどのように捉えていますか?

セル:ファッション業界は、生産や流通の方法、そして生き方において、もう“サステイナブルではない”という選択肢がないことに気付いていると思います。これは、私たちの未来の話です。

――この1年で、人々の価値観は大きく変わりました。ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?

セル:私の考え方や価値観は、まったく変わっていません。ただ、パンデミックによって変化のための動きは加速し、扉が開かれたと思います。

――パンデミックが明けたら、まず何をしたいですか?
セル:今の状況は終わるわけではなく、形を変えていくでしょう。だからこそ不安が軽くなった時に、過去の習慣に戻ってしまわないようにすることが大切だと思います。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

The post 「過去の習慣に戻ってしまわないことが大切」 マリーン・セルが考えるファッションの今と未来 appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロが東京五輪スウェーデン代表選手団に公式ウエアを提供

 ユニクロは、東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)に向けて、スウェーデン代表選手団に大会公式ウエアを提供する。対象となるのは、バドミントン、卓球、テニス、ボート、カヌー、水泳など20種目。競技だけでなく移動やセレモニー、トレーニングなど、あらゆるシーンでも着用する。

 ユニクロは2019年1月、スウェーデンオリンピック・パラリンピックチームとメイン・オリンピック・パートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナー契約を締結。契約は4年間で、スウェーデンの代表選手団と大会関係者にユニクロ商品を提供してきた。

 「クオリティ」「イノベーション」「サステナビリティ」を掲げ、選手やユニクロアンバサダーからのフィードバックなどを元にウエアを開発した。“ドライ EX”や“ウルトラストレッチ”といったユニクロの機能性素材を使い、ペットボトルから生まれた再生ポリエステルのリサイクル素材を一部に採用した。

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「スウェーデン代表選手団を服の力でサポートできることを大変うれしく思います。グローバルブランドアンバサダーにウエア提供を行ってきたユニクロの服作りのノウハウに、サステナビリティ先進国であるスウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会の知見が加わり、より持続可能で、高品質で、新しいLifeWearコレクションを完成させることができました。ユニクロのウエアを着た選手団が大会で活躍する姿を見るのが今から楽しみです」と語った。

The post ユニクロが東京五輪スウェーデン代表選手団に公式ウエアを提供 appeared first on WWDJAPAN.

ヴァージルにとってデザインは「新たなストーリーを紡ぐこと」 シェーバーのブラウンのイベントに登場

 ドイツの小型電気器具メーカーの「ブラウン(BRAUN)」が創業100周年を記念したプレスカンファレンスを開き、アンバサダーとしてヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が登場した。過去に「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」とのコラボプロジェクト “OFF-WHITE c/o BRAUN”で、目覚まし時計“BC02”や、1965年の壁掛けオーディオを復刻した“ワンダンラージ(WANDANLARGE)”を発表。“機能的アート(Functional Art)”と“機能主義”をコンセプトに掲げて、両者はプロダクトを制作している。またヴァージルはこれまでスイスの家具「ヴィトラ(VITRA)」や「イケア(IKEA)」とのコラボレーションを行うなど、アパレル以外でも独創的なデザインを生み出してきた。あらゆるジャンルのクリエイティブを横断する同氏に、アイデアの根幹や制作のプロセスについて聞いた。

WWD:あなたがデザインする際のインスピレーションは?

ヴァージル・アブロー(以下、ヴァージル):人との対話です。今はインターネットでたくさんの人とつながれますし、さまざまな人との会話が入り口になっています。デザイナーになることを夢見るたくさんの若者からも刺激を受けています。彼らのようなデザインコミュニティーの中から、新時代のエッシャー(Escher)のような才能が登場するかもしれませんよ。

WWD:対話からどうデザインに発展させている?

ヴァージル:私のデザインプロセスは、世界全体を理解することから始まります。対話から生まれたいくつものアイデアが世界全体とどのように共鳴するのかを考えて、徐々にデザインへと発展させています。

WWD:形にする上で最も重要なことは?

ヴァージル:一番大切なのは、可能性を理解することです。生み出したデザインが人類にどのように貢献し、何を生み出すのか、その可能性について常に考えています。例えばブラウンの壁掛けオーディオを復刻した“ワンダンラージ”は、過去の名作を通して新世代の若者に歴史を伝えることができる。素晴らしいデザインとは、時間の経過とともにデザインそのものが持つ意味を更新することができるのです。

WWD:ブラウンの製品は、“機能的なアート”になり得る?

ヴァージル:もちろん。卓越したデザインはアートだけを指すものではなく、椅子や音楽機器などの機能美を追求した製品もアート作品になり得ます。ブラウンの製品にプロダクトデザイナーとして関わってきたディーター・ラムス(Dieter Rams)が生み出したデザインは、ほかのブランドにはない特別な何かを感じます。

WWD:あなたにとってデザインとは?

ヴァージル:私にとってデザインとは、人々に概念を提案することです。デザインは時間のように一定のペースで流れていくもの。継続的にデザインすることとは、新たなストーリーを紡いでいくことなのです。

WWD:日本のファンにメッセージをお願いします。

ヴァージル:日本は素晴らしいインスピレーション源です。ファッションが素晴らしいだけでなく、芸術と文化からも刺激を受けています。早く日本に行ける日が来ること願っています。

The post ヴァージルにとってデザインは「新たなストーリーを紡ぐこと」 シェーバーのブラウンのイベントに登場 appeared first on WWDJAPAN.

「#FR2DOKO?」がBiSHとコラボ 全国ワンマンライブの各会場で“移動販売”

 「エフアールツー(#FR2)」の移動販売「エフアールツードコ?(#FR2DOKO?以下、ドコ?)」は、“楽器を持たないパンクバンド”BiSHとコラボする。「ドコ?」は全国各地を地図コミュニケーションアプリ「ゼンリー(ZENLY)」を使って移動販売車で売り歩き、各所で行列を作っている「エフアールツー」の新しい試み。今回は今月からスタートするBiSHの全国ワンマンライブの各会場に「ドコ?」の移動販売車が出向き、コラボTシャツを販売する。

 コラボTシャツは、BiSHのメンバーをヒップホップTシャツ風に描いたグラフィックが特徴で、価格は7700円(税込み)。SNSでBiSHのメンバーが着用したビジュアルが公開されるやいなや、ものすごい勢いで拡散され、早くも争奪戦が繰り広げられそうだ。

 5月25日に愛知・日本ガイシホールで行われる「BiSH SPARKS “This is not BiSH except BiSH” EPiSODE 4」で発売し、その後、6月19、20日の「BiSH SPARKS "Encounter with Aliens" EPiSODE 5」(沖縄・沖縄アリーナ)、7月20、21日の「BiSH SPARKS "My BiSH Forever" EPiSODE 6」(大阪・大阪城ホール)でも販売する。

 なお、5月25日のみラフォーレ原宿のGR8(グレイト)の店舗とオンラインストアでも取り扱う。

The post 「#FR2DOKO?」がBiSHとコラボ 全国ワンマンライブの各会場で“移動販売” appeared first on WWDJAPAN.

「ディオール」の人気リップバーム“ディオール アディクト リップ グロウ”がリニューアル 97%自然由来成分の新処方

 「ディオール(DIOR)」は6月4日、ティント リップ バーム“ディオール アディクト リップ グロウ”をリニューアル発売する。公式オンラインサイトでは5月21日から先行販売する。価格は税込4290円。

 同製品はナチュラルな発色と高い保湿力が特徴のリップアイテムで、「ディオール」の定番品として人気を集めている。今回のリニューアルでは処方とパッケージを一新し、新3色を加えた全10色(うち限定2色)の豊富なカラーバリエーションで展開する。新配合のチェリー オイルなど、97%自然由来成分配合で24時間持続する潤いと6時間持続する輝きをかなえ、独自のカラー リバイバル テクノロジーで一人一人の唇の水分量に反応し、その人だけのナチュラルな血色感を作り出す。

 同製品のイメージビジュアルには5月17日に「ディオール ビューティー」のアンバサダー就任を発表したミュージシャン・俳優の山下智久が登場。山下は「“ディオール アディクト リップ グロウ”は唇の保湿もしてくれるのが気に入っています。“020マホガニー”はしっくりなじんで印象的でした」とコメントした。

The post 「ディオール」の人気リップバーム“ディオール アディクト リップ グロウ”がリニューアル 97%自然由来成分の新処方 appeared first on WWDJAPAN.

「ヴェレダ」が創業100周年 1世紀に渡り人と自然をつなげる取り組みに注力

 スイス発のオーガニックコスメブランド「ヴェレダ(WELEDA)」は今年創業100周年を迎えた。創業から生物多様性やサステナビリティ、生産者とのパートナーシップを大切にし、植物のパワーを生かした製品作りに励んできた。100周年を記念し、特設サイトや限定品などを通じてこれまでのサステナビリティの取り組みを改めて発信する。

 「ヴェレダ」はモノづくりにおいて、創業時からさまざまなサステナブルなこだわりを持っている。製品は国際オーガニック認証「ネイトゥルー(NATRUE)」を取得し、製造方法・環境保護・動物保護などに関して厳しい基準を設定※1。放射線処理をせず、遺伝子組み換え植物も使わない。100%天然由来成分にこだわり、合成保存料やシリコーン、マイクロプラスチックなど不使用で動物実験も行わない。合成保存料を含まない分、品質保持機能の高い容器を採用しているだけでなく、輸送時の環境負荷なども考慮したパッケージを選定。現在、2022年までに65%リサイクル原料で容器を用意する取り組みも進めている。

 製品はもちろん、製造工程においてもさまざまな取り組みが見られる。世界中のパートナー農家から適正な条件で植物原料を調達するフェアトレードだけでなく、栽培技術などの教育支援や安定的な取引保証などを通して、長期的な信頼関係を結んでいる。また原料の栽培を通して、生物多様性を守ることも大切にしている。土壌や植物のエネルギーを最大限引き出すバイオダイナミック有機栽培農法を導入し、化学肥料や農薬は一切使わず、天体の運行に沿って種まきや収穫を行っている。さらに事業活動におけるエネルギーは100%グリーンエネルギーを使用※2。自社ビルおよび製造施設においては、天然かつ枯渇しないエネルギー源を用いた再生可能エネルギーの使用を、22年までに80%まで引き上げる目標を掲げる。

 今回アニバーサリーイヤーを記念し、これらの取り組みについて詳しく学べる特設サイトを開設した。特設ページでは、ドイツに実在するガーデンを再現したバーチャル植物園「THE OPEN GARDEN」が登場。360度ビューでまるでガーデンの中を回るような体験ができるようになっている。また、生産者のインタビューが見られたり、ガーデンを満たす鳥や生物の声を聞いたりすることもできる。ガーデン以外にも、イラストレーターとコラボレーションしたコンテンツ「YOU ARE NATURE. CONNECT」が登場。温室効果ガスや海の保全など、サステナビリティのトピックスを分かりやすくイラストに仕立てて解説している。最後までスクロールすると、消費者ができるアクションを呼びかけ、自然と人とをつなげる(=CONNECT)取り組みを行っている。

 100周年を記念し、さまざまな限定アイテムもラインアップ。6月7日には巡りの能力に優れた植物「ホワイトバーチ」を配合したボディーオイルとかっさとしても使えるブラシをセットにした“ホワイトバーチ フローイング ボディセット”(税込5060円)を発売する。さらに今後、洗剤で有名なドイツのサステナブルハウスケアブランド「フロッシュ®(FROSCH)」など、未来へ同じ想いを持つブランドとSNSを中心にコラボレーション予定だ。

 これまで100年に渡りサステナブルな活動を続けてきた「ヴェレダ」だが、未来に向けて「-YOU ARE NATURE. わたしたちは、ひとつだ-」というメッセージを発信。人と自然をつなげてきたこれまでの100年を、この先も続けられるよう取り組む。命ある全てのものが美しく、健やかに広がる未来を作り続ける。

※1 トラブルケア製品を除く
※2 ドイツ、フランス、スイスの事業所において

問い合わせ先
「ヴェレダ」
0120-070601

The post 「ヴェレダ」が創業100周年 1世紀に渡り人と自然をつなげる取り組みに注力 appeared first on WWDJAPAN.

三陽商会が描く復活の道筋 “百貨店品質”は若い世代に届くか

 三陽商会は今期(2022年2月期)、ブランド事業の再構築に本腰を入れる。前期は160店を閉鎖し、180人が希望退職する構造改革を実施したが、「痛みを伴う改革には一定のメドがついた」と大江伸治社長。今後は成長戦略のフェーズに移行し、「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ(BLUE LABEL/BLACK LABEL CRESTBRIDGE)」「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」「エポカ(EPOCA)」など戦略ブランドに集中投資。期中に各ブランドの具体的な戦略方針を盛り込んだ3カ年計画中期計画を発表する。

 大江伸治社長は「われわれの強みはあくまでアッパーミドル市場。ラグジュアリーブランドほどではない価格で、デザインと品質を両立した商品を提供していく。ここにはまだまだ開拓の余地がある」と語る。「コロナが終息すれば需要は一定程度元に戻るだろうし、リバウンド消費も見込めるだろう」。前期は百貨店向けブランドに偏重した事業構成があだとなり、コロナによる休業・客足減で大きな痛手を負った。5期連続の最終赤字となるも、構造改革によるコスト削減で「着実に黒字化を見込める体質に変わりつつある」。

 だが長い目で展望すると、20〜30代の消費者を取り込めなければ売り上げは確実に萎んでいく。2021年春夏には「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」から派生した、20〜30代向けの新業態“グレーラベル(GRAY LABEL)”をスタート。新宿ルミネ2と二子玉川ライズに3月出店した。同社が主販路としてきた百貨店ではなく、「都市型の高感度な商業施設」(同社企画担当者)を中心に、3年以内に10店舗弱の出店を計画する。

若年層のトレンドデザインと
既存ブランドにはない発信手法

 オーセンティックなブリティッシュスタイルのメインラインと比較すると、ゆったりと体のラインを拾わない、若年層のトレンドを捉えたシルエットのものが多い。ユニセックス着用できるアウターを基軸に、ニュアンスカラーで上品なムードを漂わせる。価格(税込)はコートで3万9600円〜7万9200円、ジャケットやブルゾンが3万7400円〜4万8400円、トップスが8800円〜2万4200円、ボトムスが1万7600円〜2万6400円、ワンピースが2万4200円〜2万6400円と、メインラインよりもおしなべて1割ほど安い価格設定だ。

 ユニセックス提案のアウター類は、メンズ・ウィメンズでデザインは共通だが、それぞれ別のサイズ展開を用意し、パターンも微妙に変えている。「近年は市場にユニセックス提案のブランドが増えているが、やはり男女で似合うパターンは違う。当社らしい、きちんとしたモノ作りで差別化していきたい」。21-22年秋冬はウールリネンのツイードコート(7万9200円)が目玉アイテム。ビンテージのゴム引きコートから着想したクラシカルなデザインをモダンなシルエットに落とし込んだ。

 メインラインとは別ブランドのような雰囲気も漂う。それでも「マッキントッシュ フィロソフィー」の冠を被せたのは、顧客の高齢化が進むブランドの新たなファンを育てるため。すでに出店している2店舗では、購入客のうち20〜30代が6割。同ブランドの企画チームも同年代の若い社員を中心に構成しており、発信面でもインスタグラマーのkinokoを起用してユーチューブやインスタグラムで宣伝するなど、既存ブランドにはない手法を取り入れる。3月はブランド単体の売り上げ計画に対し3%上振れする好調だった。「メインラインとのシナジーを出すには、(“グレーラベル”の現在の客層は)やや若すぎる」(大江社長)ものの、新たな客層の開拓には一定の手応えを得ている。

 比較的若い層へ向けたブランドでは、19年秋にスタートした20代後半の働く女性がターゲットの「キャストコロン(CAST:)」がある。出店拡大による在庫過多に苦しみ、「事業存続ができるかどうかのまな板に上がっていた」が、前期に店舗数を29から13まで絞ることで「黒字化が見えてきた」。初シーズンは、自社制作の短編映画に商品を登場させる“シネマコマース”をコマーシャル手法として打ち出したが、目立った成果は得られなかったようで以降は制作されていない。だが同シーズンの商品展示会では、異素材使いで大胆に切り替えたコートなどを筆頭に、同社の企画力が光っていた。

 新型コロナにより百貨店の集客力は急速に衰えた。いい立地に店を構え、いいものを並べていれば売れる時代は終わった。百貨店ブランドで築き上げてきた同社の確かな商品力は、これからを戦う上でも大きな強みになるものの、その魅力を知らない若い客に、どう伝え届けていくかが問われることになる。

The post 三陽商会が描く復活の道筋 “百貨店品質”は若い世代に届くか appeared first on WWDJAPAN.

「グサッと刺さる信念がないと事業は長続きしない」 流通総額7割増「クリーマ」社長の突破力

 ハンドメイドマーケットプレイス「クリーマ(CREEMA)」が好調だ。個人や工房などの約21万人のクリエイターが作る服、アクセサリー、インテリア、生活雑貨、アートなどをEC(ネット通販)で展開し、2021年2月期の流通総額は前期比1.7倍の154億円に達した。運営するクリーマは昨年11月、創業10年にして東証マザーズに上場した。元ミュージシャンという異例の経歴を持つ丸林耕太郎社長は、マーケットプレイスにとどまらない事業の拡大を目指している。

WWD:前期(21年2月期)は大きな成長を記録した。ハンドメイド市場はコロナ禍の巣ごもり習慣の影響をどう受けているのか。

丸林耕太郎社長(以下、丸林):「クリーマ」はハンドメイドを謳っているけれど、あくまでクリエイターのためのマーケットプレイスという位置付けだ。ハンドメイドという言葉にとらわれると、本質とかけ離れてしまう。音楽でいえば、メジャーでもインディーズでも音楽であることに変わりない。それと同じ。取り扱うのは個人のクリエイターや小さな工房の商品が中心だが、大手企業の量産品とトレンドは地続きになる。昨年のコロナ禍ではマスクを筆頭に、ワンマイルウエア、エコバッグ、リモートワークやキャンプ関連のグッズなど一般的な市場のヒット商品と同じものがよく売れた。

WWD:昨年の第1四半期(20年3〜5月)にはマスクだけで30億円を販売した。

丸林:当時はマスク不足だったため、政府が転売や高価格販売に注意を呼びかけていた。マスク不足に乗じて儲けてやろうとは思わないけど、マスクが足りなくて困る人が多いのなら供給するのが僕たちの責任だと考えた。「クリーマ」に出品するクリエーターの皆さんに呼びかけたら、1カ月くらいで日本最大のマスク屋さんになったのかと思うくらいにマスクが並んだ。デザインも個性的で楽しい。クリエイターの力で社会の課題に取り組めることがわかった。

WWD:今年はそのマスク特需はなくなる。

丸林:マスク特需を除いても流通総額は20%増くらいで推移している。コロナを契機に新規のお客さまが増えただけでなく、新しい出品者も増えた。オンライン販売が身近ではなかった伝統工芸品、たとえば家具、陶器、七宝焼き、鍋ややかんなどの生活用品の分野だ。伝統工芸品は観光地や百貨店などで販売されてきたが、コロナで限界を感じ、「クリーマ」のプラットフォームに魅力を感じてくださっている。

クリエイターの期待を裏切らない

WWD:出店の誘致も軌道に乗っている?

丸林:今は営業活動をしていない。おかげさまで、この領域では知られた存在になり、個人のクリエイターから地場産業を盛り上げたい自治体まで幅広い方々が「クリーマ」で売りたいとおっしゃるようになった。

WWD:客単価は5000円前後と大型のECモールとしてはけっこう高価格だ。

丸林:月に2千数百万人のお客さまが集まる。大手ECモールのように「少しでも安く買いたい」「ポイントを貯めたい」ではなく、クリエーションやモノ作りへの関心が高いお客さまなのだから本当に有り難い。「クリーマ」はマーケットプレイスであると同時にメディアでもある。伝統工芸品にとって、背景のストーリーを丁寧に伝え、それを評価するお客さまが集まる場は貴重なはずだ。

まず思想・哲学があって、そこから戦略とアクションプランに落とし込む。クリーマの基本となる思想・哲学は、頑張っているクリエイターがきちんと評価される場所を作ることだ。せめて食べていける場を提供する。

創業からしばらくは、個展を開いているようなクリエイターに直接声をかけてきた。大手企業がテレビCMで攻勢をかける中、僕らは地道な活動を通してクリエイターの皆さんに熱意を伝え、他が真似できないサイトを作ってきたと自負している。テレビCMで有名女優にサイト名を言わせれば認知は上がるかもしれない。でもこだわりを持ってモノ作りしているクリエイターの共感が得られるのか。出店者の数を競うのではなく、クリエイターから一番信頼されるコミュニティーを作るため時間と手間をかけてきた。

WWD:マーケットプレイスなどのITサービスは先行企業が総取りする。スピード感も大切では。

丸林:「クリーマ」が軌道に乗る前、テレビの情報番組から初めて取材の依頼があり、これで認知が一気に進むとみんなで喜んだ。でも、内容をよくよく聞いてみると「主婦のプチ稼ぎ」というテーマで、ヤフオクと僕たちを紹介したいと言う。これには悩んだ。番組には出れば認知は一気に上がる。でも「主婦のプチ稼ぎ」では、僕たちの思想・哲学を信じてくれたクリエイターの皆さんを裏切ることにならないか。結局お断りした。今では正解だったと思っている。スピード感も大事だけど、それ以上にブレないことも大切だ。

WWD:個人を含めた発信したいクリエイターの市場はまだまだ成長するのか。

丸林:米国のハンドメイトの大手マーケットプレイスであるエッシー(ETSY)は英語圏だけで流通総額が1兆円、時価総額は2兆円もある。日本でもまだ発展途上だろう。ハンドメイドではなく、クリエイターのためのプラットフォームと考えれば制限はない。実力のあるクリエイターを集め、便利なサービスを追求する。少しおこがましいけど、家具やインテリアの領域で「無印良品」や「フランフラン」と競い、ファッションで「ゾゾタウン」と比較されるような存在を目指したい。

ミュージシャン時代の原体験が創業のきっかけ

WWD:昨年11月に上場(東証マザーズ)した目的は?

丸林:自分たちがやりたいことの理想を考えると上場は欠かせない。創業から10年以内に上場する目標をメンバーと共有してきた。上場まで漕ぎ着ける事業でなければやる意味がないと思って「クリーマ」を始めた。社内体制も整い、持続的な成長の見通しもついたタイミングで勝負をかけることにした。

先ほども言ったように、マーケットプレスの「クリーマ」は頑張っているクリエイターが正当に評価される場所を作るために創設した。でも起業したのは、このためだけではない。当社のテーマは「世の中の最大多数の人を幸せにできるか」だ。

実はマーケットプレイスの「クリーマ」の前に撤退した事業もある。それは多世代型のシェアハウス。身寄りのないお年寄りやシングルマザー、地域とつながりを持ちたい学生などが緩やかに連携するコミュニティーマンションを広めようとした。人と人との豊かな関係が持てれば、日本はハッピーになる。デンマークでは多世代型のシェアハウスが普及している。でもハードルが高くて半年で撤退せざるをえなくなった。

WWD:マーケットプレイスの「クリーマ」にしても、まず人の幸せが先にあると。

丸林:人を幸せにした数で決まるのが売り上げ、そこから自分たちが知恵を絞って出すのが利益だと考えている。多くの人を幸せにすることが先で、お金は後からついて来ると思って仕事をしてきた。

マーケットプレイスに限らず、人を幸せにする事業にいろいろな領域で挑戦したい。すでにクリエーターを応援するためのクラウドファンディングを始めているし、フルフィルメントサービス(ECの写真撮影から発送代行までを受託する)もやっている。このほど買収したFANTISTはアーティストによるレッスン動画を配信するプラットフォームだ。キャンドルやフラワーアレンジメントをはじめ、さまざまな作り手がレッスン動画を販売している。クリーマに参加する21万人のクリエイターとの親和性が抜群に高い。

WWD:新規領域を広げるために上場で調達した資金を当てる。

丸林:やりたいことがたくさんある。大胆に事業を展開して、最終的に日本を代表する一大企業グループに発展させたい。僕が80歳になるまでコツコツ頑張れば実現できるかもしれないが、若くフレッシュな感覚とエネルギーを持ち合わせているうちに挑みたい。財務基盤を整えて一気に勝負をかけるには上場がベストの手段になる。お金がないと勝負できないことが世の中にはたくさんある。

WWD:丸林社長はもともとミュージシャンだった。

丸林:あまりたいしたことないけど、慶応大学に通いながらプロとして活動していた。15歳のときにDJを始めて、リミックスや楽曲制作などを手掛けるようになった。今はユーチューブやスポティファイなど個人が発信できるプラットフォームがあるけれど、昔はレコード会社に認められないと世に出られなかった。実力はあるのに日の目を見ないミュージシャンがいる一方で、かわいいだけの女の子がデビューできたりする。実力のある人が表舞台に立てないのは健全じゃないし、長い目で見たら音楽文化が育たなくなる。一企業の評価ではなく、大勢の人の目に触れて正当に評価される仕組みができないだろうか。端くれのミュージシャンとしてそんな問題意識を持った。

WWD:それが原体験になり、クリーマの創業に発展した。

丸林:クリーマは8年も赤字が続き、社員にも負担をかけてきた。それでもあきらめずに続けられたのは、僕の中に強い信念があり、回りもそれに共感してくれたからだ。物事は1、2年なら頑張れる。でも長期戦でいろんな壁を超えなくちゃいけないとき、グサッと刺さる信念がないと人の共感は得られないし、事業は長続きしない。将来有望な市場だからという理由で事業を立ち上げがちだけど、働く人たちがそれぞれの人生を賭ける意味を見いだせるか。そこが肝だと思う。

The post 「グサッと刺さる信念がないと事業は長続きしない」 流通総額7割増「クリーマ」社長の突破力 appeared first on WWDJAPAN.

【家飲み】「名物の”鉄鍋棒餃子”が売っていないよ」。際コーポの通販サイト「キワネットショップ」

 外食チェーンで通販サイトを展開する企業が増えている。自社ブランドの名物料理を軸に、長期保存可能な冷凍食品を中心に販売している。「紅虎餃子房」、「虎萬元」などの中華からイタリアン、和食など、マルチに業態を展開する際コーポレーションの通販サイト「キワネットショップ」もマルチにブランド展開をしている。しかし、際コーポの代名詞とも言える「鉄鍋棒餃子」が売っていない。
Posted in 未分類

「まいどおおきに食堂」フジオフード、FCジーなどが支援。タルト専門店に投資。

「まいどおおきに食堂」などの株式会社フジオフードグループ本社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:藤尾政弘)が、フランチャイジーの豊田産業株式会社(本社:愛知県刈谷市、代表取締役社長:豊田 貴久)とケイマン島のファンド2社に自己保有株式を8億51百万円で売却する。
Posted in 未分類

「お客も我慢の限界なんだよな」。「宣言解除後、飲み放題0円予約」が想定以上のヒット、スパイスW。”ぶっちぎり営業”のホンネも

 株式会社スパイスワークスホールディングス(本社:東京都台東区、代表取締役:下遠野 亘)が、飲み放題60分0円で緊急事態宣言解除後の予約を募っている。"鬼才"下遠野社長らしいアイデア企画だが、想定以上の予約が入っている。見えてくるのは、飲食店や業者だけでなく、お客も「禁酒令」に飽き飽きしてきているということだ。宣言延長下、「要請」文書を受け取った中での苦しい営業状況についても聞いた。
Posted in 未分類