地元デザイナーの服で開催を祝福 2022年春夏ロンドン・ファッション・ウイークスナップ

 2022年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(ロンドンコレ)が9月17〜21日に開催された。今季は「バーバリー(BURBERRY)」などロンドンを代表するブランドが不在だったが、来場者は「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「ユハン ワン(YUHAN WANG)」などロンドンコレに参加する地元の若手デザイナーのコレクションをまとい、久々のリアルショー開催を祝福したようだ。

 スナップフォトグラファーがカメラに捉えた来場者の間で人気だったのは、セカンドスキンのように身体にフィットするがストリングスやギャザーで肌見せさせるトップスやワンピース。今季初めてロンドンコレで単独ショーを行った「ネンシ ドジョカ(NENSI DOJAKA)」などのスタイルにも共通するアイテムだ。スタイリングでは同色で合わせたテーラードスーツのセットアップが多く見られた。

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「ドクターマーチン」が新作ブーツを発売 スニーカー感覚で履けて手頃な価格

 「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」は新作ブーツ“TARIK(タリック)”を10月22日に発売する。全国の店舗と公式オンラインストアで取り扱う。

 価格は税込1万7600円で、同ブランドのブーツの中では手頃な価格。「カジュアルにスニーカー感覚で履けるのが魅力」とブランドはコメントしている。

 しなやかなアウトソールと弾力性のあるインソールで快適さを追求し、素材は牛革やリサイクルのポリエステルなどを使用した。ユニセックスのサイズ展開で、“ブラック”と“ガンメタル”の2色を用意する。

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ビリー・アイリッシュが香水を発売 自身の“共感覚”から着想

 歌手のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)はフレグランスメーカーのパーラックス(PARLUX)と共に、初のフレグランス“アイリッシュ”を発売する。米国で11月にD2Cで販売し、価格は68ドル(約7700円)。処方はビーガンかつクルエルティーフリーだ。

 “アイリッシュ”は、ビリー自身のシナスタジア(共感覚。1つの刺激に対して、通常の感覚に加え異なる種類の感覚も生じる知覚現象)から着想した。嗅覚が特に敏感というビリーは「ファッションであれ、髪の毛であれ、音楽に関しても、全て香りにこだわっている。私の人生のあらゆることに関して、香りは特別なもの」と説明する。

 香りはトップノートにシュガーペタルやマンダリン、レッドベリーを、ハートノートにはソフトなスパイスやココア、バニラを、ベースノートにはムスクやトンカビーンズなどを組み合わせた。

 ロリ・シンガー(Lori Singer)=パーラックス社長は「初めて香水をズーム上で作ったのだが、ビリーとは画面上でインスピレーション源などについて話し合った。数多くあるセレブリティフレグランスの中で、(ビリーのように)セレブ自身がクリエイティブプロセスに密に関わっているものが成功する」と明かした。「ビリーは香水を100種類以上持っており、フレグランス愛用者だ。フレグランスに対する熱意は新作も伝わると思う」と期待を込める。

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NIGO®や岩田剛典、NAOTOらが「ルイ・ヴィトン」渋谷メンズ店に登場 “LVスクエアード コレクション”第2弾発売を祝して

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、NIGO®と協業した“ルイ・ヴィトン LVスクエアード コレクション”第2弾の先行発売に先駆けて東京・神宮前のルイ・ヴィトン 渋谷メンズ店でプレビューを20日に開催し、NIGO®やブランドアンバサダーの岩田剛典らが来場した。

 同店は、11月中旬までコレクションに合わせてタイガーやドラゴンを配置した特別仕様のディスプレーで、来場者たちは遊び心溢れる空間を楽しんだ。ほかにもEXILE NAOTOやNissyこと西島隆弘、岩橋玄樹、佐野玲於、川村壱馬、大平修蔵らも登場した。

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NIGO®や岩田剛典、NAOTOらが「ルイ・ヴィトン」渋谷メンズ店に登場 “LVスクエアード コレクション”第2弾発売を祝して

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、NIGO®と協業した“ルイ・ヴィトン LVスクエアード コレクション”第2弾の先行発売に先駆けて東京・神宮前のルイ・ヴィトン 渋谷メンズ店でプレビューを20日に開催し、NIGO®やブランドアンバサダーの岩田剛典らが来場した。

 同店は、11月中旬までコレクションに合わせてタイガーやドラゴンを配置した特別仕様のディスプレーで、来場者たちは遊び心溢れる空間を楽しんだ。ほかにもEXILE NAOTOやNissyこと西島隆弘、岩橋玄樹、佐野玲於、川村壱馬、大平修蔵らも登場した。

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D2Cの代表格 眼鏡の「ワービーパーカー」が支持される理由 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。D2Cの代表格として日本でも知られる眼鏡の「ワービーパーカー」だが、支持を集める理由を理解している人は案外少ない。改めてどんなブランドなのかおさらいしよう。

 眼鏡のD2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)のワービーパーカー(WARBY PARKER)」が9月末に上場した。当日の株価は0.8%増で1日を終えて、2週間後の今もほぼ同じ株価を維持している。時価総額はこれを書いている時点でおよそ54億ドル(110円換算で6000億円弱)、昨年の秋に2億4500万ドルを調達したときの評価額は30億ドルだったので、1年間で20億ドル近く評価が上がったことになる。

 上場したD2Cブランドとして知名度の高い企業はもう1社、マットレスのキャスパー(CASPER)が昨年初頭に公開しているのだが、こちらは52週の安値近くまで株価が落ちている。D2Cブランドは星の数ほど存在するが、上場まで持ち込める企業は当然のことながら希少で、さらに上場後も株価を高く維持できる企業はさらに希少だ。

 創業は2010年で、ECからスタートするデジタルネイティブなブランドのはしりといえる。またECからスタートし、その後リアル店舗へと進出するビジネスモデルとして、既述のキャスパー、ボノボス(BONOBOS)、アンタックイット(UNTUCKIT)といった企業群の中で、今回の上場の成功で1社飛び抜けた企業になったといえるだろう。

若者に「自分たちのブランド」と思わせる

 この企業は純粋なD2Cではなくてリアル店舗への進出が早く、創業間もない13年にニューヨークのソーホーに1号店を開店し、その後急速に店舗を増やして18年には100店舗を超えていた。

 ちょうどその頃に私が住んでいるロサンゼルスにも店舗ができ始めて、当時高校生だった娘たちと買い物中に店を見つけて、「こんなところに出店しているのか」と声を上げたところ、「なんで知っているの?」と驚かれたことがある。私たちしか知らないはずのブランドを何で親が知っているのだろう、という反応だ。

 ついでなので「この店はどう思うの?」と聞いたところ、「すごくクールだ」と答えが返ってきたのであった。かっこいいというわけだ。

 この会話で私は2つの事実を確認させられたのであった。ワービーパーカーは親世代がまだ知らない企業で“自分たちのブランド”だと認識していることと、若年層はこの企業にクールだというイメージを抱いているということである。おそらく親世代が使い始めると彼らは逃げていくのだろう。アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)やフェイスブック(FACEBOOK)と同じである。

 このクールさを作るのがマーケティングやブランディングなのだが、伸びるD2Cには必ず創業者たちが発信するユニークな物語があり、それをメッセージとして伝える手段が今はSNSということになる。

 この物語のテーマとして今の時代は必ずサステナビリティ、エコ、インクルーシビティが含まれていなければならず、そしてメッセージの背景には彼らのパッションが感じられなければならない。また必ず求められるのがAuthenticity(本物感)で、少しでも宣伝臭くなると若年層は逃げていってしまう。

 この本物感がもっとも重要なのだが容易ではない。大手メーカーや小売企業がD2Cブランドを開発してもすぐに見破られてしまうのだ。だから自ら開発するよりも買収する方が効率が良く、傘下に収めてリソースを提供しながら、しかし自分たちの存在は外にあまり出さないという戦略を取るわけである。資生堂が買収したビューティD2Cブランドのドランクエレファント(DRUNK ELEPHANT)がその好例である。

 ワービーパーカーは当初から眼鏡が1つ売れたら途上国に1つ寄付することをスローガンとして掲げている。この社会貢献イメージがなければ今の時代の若年層には響かない。またブログを眺めると分かるが、眼鏡を売るのではなくて、読書などメガネ周辺のライフスタイルをブランドメッセージとして伝えてきている。こういった秀逸なブランディング技術がクールなイメージを作り、この企業をして成功に導いたのである。

アメリカ人が眼鏡市場に抱く不満を解消

 試着が不可欠な眼鏡をD2Cで売るのはアパレルと同じように簡単ではない。成功した理由の一つは手元で眼鏡を試すことができる無料プロセスを作り上げたことにある。まずお客はサイトでクイズ形式の質問で検索し、商品を絞り込み、最終的に5つを選択することからスタートする。無料で送られてきた5つの眼鏡を5日間限定で試着し、同梱されている箱で送料無料で返品する。この5日間にユーザーは自撮りし、SNSにアップして友人に見栄えをチェックしてもらう人が増えて、口コミによる拡散の追い風ともなった。

 もう一つの理由は米国の眼鏡小売業界の寡占による高価格である。イタリア本拠のエシロールルックスオティカ(ESSILORLUXOTTICA以下、ルックスオティカ)がサングラスハット(SUNGLASS HUT)やレンズクラフターズ(LENS CRAFTERS)といったチェーンのほとんどを傘下に収めており、これが200~300ドル程度と売価を高止まりさせているという指摘はもはや周知の事実となっている。できあがりまで1~2週間かかることはざらで、さらに古い店も多く正直言ってトレンディではまったくない。アメリカ人の多くが不満を持っていて、ここで全品95~145ドルという低価格とデジタルネイティブという新しさが受けたのである。

 一方、検眼という大きなハードルもある。日本と異なりアメリカは度付き眼鏡を買うときは検眼医による処方せんが必要となり、100%デジタルで買い物が終了しない。ウォルマート(WALMART)やコストコ(COSTCO)はレジの外側に検眼医常駐型のメガネ売り場を持っているが、対面なので目的来店性が100%となり集客力が強い。

 ワービーパーカーで買おうにも、検眼目的でまずウォルマートやレンズクラフターズに行かざるを得ないという状況になる。そのため検眼医が常駐するリアル店舗を増やさざるを得ず、これが今後同社のビジネスモデルにどう影響を及ぼすのか未知数だ。

 リアル小売企業がECへと参入するのではなく、その逆のデジタルネイティブな企業がリアルへと本格参入する時代がやってきた。ワービーパーカーはその代表プレーヤーとして注目したい。

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「セルヴォーク」5周年記念コフレにブランド初のネイルが登場

 「セルヴォーク(CELVOKE)」は11月3日、設立5周年を記念した“フィフス アニバーサリー キット”(税込1万4850円)を数量限定で発売する。唇の水分量で色が変化するティントタイプのリップや、ブランド初となるネイルポリッシュ、デビュー時から人気でリピート率が高い“コンセントレートオイル”のミニボトルをセット。ボックスはFSC認証紙を採用し、1枚1枚表情が異なるラベルをあしらっている。10月27日から予約を受け付ける。

 アニバーサリーを祝した同キットでは“シースルーブラック”に着目したアイテムを展開する。“サジェスティヴ リップス”は、黒から赤へと変化するティントタイプのリップ。唇の水分量に反応してカラー濃度が変化し、リップバームのように潤いを与える。“サジェスティヴ ネイルポリッシュ”は、透け感のあるシースルーブラックカラーで、偏光ピンクパールを配合。一度塗りで自爪の色が透ける艶やかな指先に、二度塗りでモードな印象に仕上げる。ブランドを象徴する“コンセントレートオイル”はミニボトル(18mL)で登場する。

 「セルヴォーク」は、2016年にマッシュビューティーラボから誕生。デビュー時はスキンケアからスタートし、希少性が高く国際特許申請中の天然成分”アナツバメ巣発酵液”を世界で初めてスキンケアに配合したことでも話題を集めた。翌年、菊地美香子メイクアップアーティストをクリエイティブアドバイザーに迎え、メイクアップラインを投入。素肌が透けるような艶と自然の生命力、芯の強さをイメージした“透黒(シースルーブラック)”をブランドカラーとして容器の色にも採用している。

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奥が深くて懐も深い「着物販売員の世界」 40年のベテランに聞く 三松 青木良子

 明治時代に洋装文化が日本に入り、和装文化は徐々に衰退の一途をたどる。着物を着る機会といえば七五三、成人式、冠婚葬祭など、かしこまった場面でしかないというイメージも定着しつつあるため、きっちりルールを守った着方をしていないとダメだと指摘する『着物警察』の存在が話題になることも。一方で、ポップな柄の着物や着物コーデをした若者たちによる積極的なSNS発信も増えている。最近では“代々受け継いでいくもの”という観点から“サステナブル”であると再認識され、着なくなった着物をリメイクするブランドも登場。老舗の着物専門店「三松」ルミネ立川店の青木良子さんは、約40年に渡り着物の歴史を販売員の立場で見てきた。

―着物の販売員になったきっかけを教えてください。

青木良子さん(以下、青木):うちの家系はみんな代々、結婚前に和裁を習う習慣があったのです。行儀見習いのような感じで叔母たちも和裁教室に通っていましたので、私も行くことになりました。

―手に職をつけるというかんじでしょうか?

青木:そんな感じです。それに昔は、結婚したらご主人の浴衣ぐらい縫えるように針仕事くらいできないといけない時代でもありましたね。年齢の離れた姉は洋裁学校に行っていたので、中学生の頃は姉に服を縫ってもらっていました。当時は「次はコレにする?」なんて言いながら、雑誌を見ていましたね。私は和裁教室に行きましたが、そこで同い年のお友達に誘われて、着付け教室にも行くようになりました。和裁と着付けを3年半も習っていたので、折角だからと着物業界へ入ったのが昭和54年(1979年)の12月。ボーナス支給日に入社して、あの日はとても忙しかったからよく覚えているのです(笑)。さすがにその時は「私、続けていけるかしら…」と思いましたけど、「“三日三月三年”という言葉もあるし、ま、大丈夫か」と思い直しました。研修を受けても実際に店頭に出るとちょっと違いますでしょ。だから先輩の接客を見様見真似で覚えて、最初はお客さまに「外はいいお天気ですか?」なんて話しかけることができただけで喜んでいました。本当に毎日一歩ずつ成長していった感じですね。

―先輩の姿を見て仕事を覚えるというのは今も昔も変わらない上達の近道ですよね。

青木:そうです。要は「人の振り見て我が振り直せ」じゃないですが、そんな気持ちで仕事もしています。例えば、和裁教室の時はみんな進行具合も違うし、作っているものも違うから、先生が一人ひとり教えていくことは大変なんですよ。他の生徒さんが注意されている姿を見て、自分も「あの部分は雑だったかな」と思い、縫い直したことがありました。

―故事、ことわざってよくできていますよね。

青木:そう、とても的を射ていますよ。例えば「泣き面に蜂」ってありますけど、めげている時はどんどんめげて、良いことが起こらなくなります。誰かのせいにしたくなりますが、すべての原因は自分から発しているんですよね。まずは自分で反省しない限り、前には進めないと思います。

―今の社会的状況にも通じるものを感じます。新宿店にはいつまで?

青木:新宿には3年半いて、1984年に渋谷パルコ店に異動しました。渋谷店は99年に一旦クローズして「ふりふ」になったのです。私が入社当時に三松が掲げていた企業理念に「伝統と新しさに微笑みながらこれが三松の個性」というのがありまして、まさにそれを体現するようなブランドでした。古いことも守りつつ、新しいことにもチャレンジするって素晴らしいことだと思いました。「ふりふ」のような斬新な着物にも挑戦しているのは三松の強みですね。

―斬新でかわいい着物を展開していますよね。私も、成人式を迎えた頃に「ふりふ」があったらよかったのに…と思います。昭和から平成にかけての渋谷は活気があったと思いますが、当時の様子は?

青木:私が84年に渋谷に異動したころの渋谷は勢いがあって、若者がどんどん街に集まってきていました。在籍期間も長く、楽しい時代でした。でも、はじめのころは競合店が揃っていたのに、少しずつ撤退していって、結局は最後の一軒になりました。一店舗だけになると結構大変で、やはり競合店がある方が店は運営しやすいし、お客さまも呼びやすいんです。お客さまもお店が近くにあることで、各店を比較検討できますからね。そんな低迷の続く着物の状況を打破しようと、若者が集まるパルコで「ふりふ」が誕生したのです。最初は本当に大変で、顧客様にもたくさん声をかけました。普通なら数カ月かかるお仕立てを数日で仕立ててもらったこともありました。当時はお客様にも職人さんにもたくさん協力してもらいました。

―青木さんだから協力してくれたのではないでしょうか?

青木:そんなことはないですよ。新しいブランドは多くの人の協力なくしては成り立ちません。会社も頑張っていたから、私たち販売員も頑張っていろいろなことをしました。例えば、ディスプレイをこまめに変更してみたり、店に一日中立っているだけだと疲れるからスタッフに「着物を着たままでいいから館内や渋谷の街中を周ってきて」とお願いしたり。

―渋谷の街を「ふりふ」の着物で歩いたら目立ちそうですね。

青木:歩いているだけではもったいないので、「外で写真でも撮ってきたら?」といって、スタッフ数人で撮影会をしたこともありました。

―イマ風に言うと、インスタ映えのようなものですね!

青木:渋谷はロケーションが良いですからね。歩いてもらうだけで宣伝になりました。当時の渋谷は、若者が街を歩き回って服を探し、それをちょっと高かったとしても思い切って買う、そんな時代でした。今は世の中に物が溢れて選択肢が広がる一方で、余計なものは要らないという時代になり、インターネットを使って下調べするのが当たり前。買い物の仕方は大きく変わったと感じています。

―自由に着物を着ている若い方もいますが、一方で着物警察なんて呼ばれる方もいます。青木さんは着物の着方には何かルールや思うことはありますか?

青木:着物は本来、日常着だったのですから、自由に着ればいいと思いますよ。私は普段から着物を着ていますけど、洋服よりコーディネートを考えなくていいから楽(笑)。形は一律だし、後は小物や帯の色でどうか飾るか考えればいい。それも自分の好みで自由に合わせればいいんです。私なんか着物で卓球とかボウリングもやりましたよ(笑)。

―え!着崩れませんか?それに暑そう。

青木:着物は一つに繋がっているから、出てきたら引っ張れば直るんですよ(笑)。それに着物は意外と暑くないんですよ。わきの下が開いているから洋服よりも熱が逃げるんです。歌舞伎役者さんが扇子で顔の方ではなく、下の方、袖口の方を仰いでいるのも、風が袖から入って体の方へ通るからなんです。品が良いですよね。

―もっと気軽に考えればいいんですね。

青木:そう。強いて言えば、最近の子は補正をしてきれいに着ているでしょ。でも、昔の人は補正なしで自分の体型を生かして楽に着るものだったんですよ。その方が人間らしいじゃないですか。って、私はきれいに着られないからそう言うだけ(笑)。キチンと着られる方がうらやましいとは思います。

―着物のお店は何となく敷居が高いイメージがあるのですが……。

青木:そんなことないですよ。夏は浴衣が着たいからと見に来られる方もいらっしゃいます。振袖になると七五三で着て以来という方も多いですけどね。

―40年以上販売を続けてこられた秘訣は何でしょうか?

青木:やっぱりお客様に育てていただいているということだと思います。勤め始めて間もないころ、私の失敗で間違えて商品をお渡しした親子のお客様がいまして、何とか事無きを得たのですが、それをきっかけに顧客としてずっとついてきてくださいました。着物は洋服のように流行が変わって買い替えるものではない分、お客様とのお付き合いも自然と長くなりやすいんです。ご自宅にお電話すると旦那さんが出られて「青木さん、いつもお世話になってありがとう。今、代わるね」と奥様につないでくださることもあって、家族ぐるみのお付き合いになります。

―青木さんの接客のモットーは。

青木:お客様のお好み発見器みたいな感じですね。例えば、振袖はどれを選んだらいいか分からない人もいますが、話すうちに徐々に着てみたいイメージが浮かんできます。そういうのを引き出せることができたら良いですね。着てみたいイメージがある方でも、これが似合いそうだと思った小物を入れ替えてみて、さらに新しい発見ができたらいいなと思います。でも、私の販売スタイルは“カリスマ”ではないんです。

―いらっしゃいますね。「あなたにはコレ」みたいな決める方。確かに似合うかもとは思いますが(笑)。

青木:私はそれができませんが、迷っている方は「これが似合うと思うけど、こういうのは好き?」と聞いてから、合わせてもらいます。ダメだったら引っ込める(笑)。自分が買う立場になった時にあんまりしつこくされると嫌じゃないですか。特に考えているときに一生懸命勧められても困るなと思うのです。あまりにも悩むのであれば「また来てください」とか帰すこともありますよ。

―その見極めは難しいですね。

青木:そうですね。商品とお店の雰囲気を気に入ってくださっていれば、その時にご縁がなくても、ふと思い出して来店されます。その辺は洋服の販売の方と変わらないですよ。

―そうですね。では、最後に今後の目標は。

青木:誰かのお役に立てる限りは仕事を続けたいですね。私のような年配が店に立つ方が「重みが出る」とはいわれますが、そんな時代じゃないとも思っています。でも、必要とされる限りはお店に立ちたいですね。

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「ケラスターゼ」最高峰シリーズ「クロノロジスト」のミューズに鈴木えみが就任

 仏発・プロフェッショナル向けラグジュアリーヘアケアブランド「ケラスターゼ(KERASTASE)」は、最高峰シリーズ「クロノロジスト」のミューズにモデルの鈴木えみを起用した。日本市場向けのキャンペーンで順次コンテンツを公開する。

 「クロノロジスト」は髪ダメージの要因となる頭皮と髪のエイジングに包括的にアプローチして、しなやかで艶のある質感へと導く「ケラスターゼ」の最高峰シリーズ。コンセプト“Live Beyone Time(時を超える普遍的な美しさ”)”を誰よりも体現していることから、鈴木えみの起用に至った。

 ミューズ就任に際して鈴木えみは、「ケラスターゼの中でも『クロノロジスト』は最高傑作だと思います。こんなぜいたくなヘアケアは今までなかったのではないかと。私自身、使い始めてから髪が美しくなったと実感していますし、ぜいたくなフレグランスやテクスチャーにも使う度に癒されます。美しい髪を目指す女性全員に使ってほしいですね」とコメントを寄せている。

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バーバリーの新CEOはヴェルサーチェから 2022年4月に就任

 バーバリー(BURBERRY)は、新たな最高経営責任者(CEO)として、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」を運営するジャンニ・ヴェルサーチェ(GIANNI VERSACE)のジョナサン・アクロイド(Jonathan Akeroyd)CEOを任命した。2022年4月1日付で就任する。同氏は21年12月末でバーバリーを離れるマルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)CEOの後任となる。今回の人事に伴い、ジャンニ・ヴェルサーチェでは新たなCEOの選定をこれから行うという。

 アクロイド新CEOは、英老舗百貨店ハロッズ(HARRODS)でファッション部門の要職を経験した後、04年から16年までアレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)のCEOを務めた。16年5月にジャンニ・ヴェルサーチェのCEOに就任し、現在に至る。同氏は、「以前から『バーバリー』の豊かなヘリテージに深い愛情を感じていた。才能あふれるチームと共に、同ブランドのさらなる成長に向けて尽力できることを楽しみにしている」と語った。

 ジェラルド・マーフィー(Gerard Murphy)=バーバリー会長は、「ジョナサンは経験豊富なリーダーであり、グローバルなラグジュアリーブランドの収益性を高めてさらに成長させる手腕に長けている。彼は当社と価値観が一致しており、英国のクリエイティビティー豊かなブランドである『バーバリー』をさらに進化させてくれるだろう」と述べた。なお、ゴベッティCEOの退任からアクロイド新CEOが就任するまでの期間、バーバリーの経営会議の議長はマーフィー会長が務めるという。

 バーバリーを4年以上にわたって率いてきたゴベッティCEOは、1993年から2004年までモスキーノ(MOSCHINO)のCEOを、その後はジバンシィ(GIVENCHY)の会長兼CEOを務めた。08年から16年までセリーヌ(CELINE)の会長兼CEOとして指揮を執った後、17年7月から現職。業績が芳しくなかった「バーバリー」を成功に導いた立役者であり、その経営手腕は高く評価されている。21年6月に、バーバリーを離れてサルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)のCEO兼ジェネラル・ディレクターに就任することを発表した。

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ユニクロ「+J」、11月12日に発売する21-22年秋冬を公開 コラボ“第2章”はこれで終了

 「ユニクロ(UNIQLO)」は、デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏とのコラボレーションライン「+J」の2021-22年秋冬物を11月12日に発売すると発表した。商品ラインアップはウィメンズ42型、メンズ32型。併せて、同氏とのコラボ「第2章」は21-22年秋冬をもって終了するとも発表した。「+J」は09年秋冬〜11年秋冬に販売した後、休止して20年秋冬に復活販売していた。「第2章」と呼んでいるのはその経緯ゆえ。

 ウィメンズ、メンズの全商品は国内234店と公式ECで販売し、一部商品は国内全店舗で扱う。スーピマ綿のボタンダウンシャツやカシミヤセーター、カシミヤ混のラップコート、構築的なダウンアウターやMA-1ブルゾンなど、「+J」らしさの詰まった商品がそろう。引き続き、リラックス感のあるスエットセットアップなども充実。色合いは定番の黒やネイビー、ダークグレー、カーキに加え、鮮やかな赤や白を差してポイントにする。

 価格帯はアウター9900円〜2万9900円(税込)、シャツ3990円〜1万4900円、ニット4990円〜1万7900円、カットソー1500円〜5990円、パンツ4990円〜9990円、スカート7990円、ドレス5990円〜7990円、雑貨2990円〜1万5900円。

 サンダー氏は「このコレクションでは、あらゆる人にソフィスティケーション(洗練)をもたらすことを目指している。そのために新しい快適さを感じさせる特徴的なシルエット、センシュアルなテクスチャー(素材の質感)、贅沢なテーラリングに集中した。日常が戻りつつある中でも誰もが守られていたいと感じている。そこで、ほどよいフィット感のある新しいオーバーサイズシルエットと、冬にふさわしい最高水準の豊かな(商品)ラインアップを追求した」とコメントしている。

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コロナで観光需要減、ストライプに出向するはとバスのガイド職 今の率直な気持ちは?

 コロナ禍による観光需要減を受け、航空会社や観光関連業などの社員が、コールセンターや小売りなど他企業に出向し、雇用を維持する取り組みが昨年から広がっている。その一環として、ストライプインターナショナル(以下、ストライプ)の首都圏の店舗で11月1日から、はとバスのバスガイド職26人が働くことになった。出向期間は5カ月間。販売員とバスガイド職は同じ接客業だが、目的意識を持って参加してくるバスツアー客と、通りすがりの客も多い店頭接客とでは、求められるスキルで異なる部分は大きい。バスガイド職の研修を取材した。

 10月19日午後、東京・銀座のストライプ本社を訪れると、バスガイド職13人がレクチャーを受けていた。ストライプの人事スタッフが、接客の声掛けや商品の畳み方などについて説明。どういった店なら客が入りやすいかといったことについては、グループワークを行なっていた。13人の内訳は、はとバスの新卒入社1年目が6人、2年目が7人。午前中にも入社1、2年目の13人に同様の研修を行なったという。

 研修を受けていた1人が戸頃紀花さん。短大を卒業後、はとバスに入社して2年目の22歳で、11月からは「アース ミュージック&エコロジー(EARTHE MUSIC & ECOLOGY)」の千葉県内の店舗で働く。20年3月の入社だが、コロナ禍による休業もあってガイド職として観光バスに乗車できたのは2年間で8回のみだという。

 短大でも旅行関連を学んでいたという戸頃さんにとって、はとバスのバスガイド職は夢がかなったと言えるキャリア。ガイド職へのモチベーションも高い。それがアパレル企業に出向することになり、「最初に話を聞いたときはやはり驚きました」と話す。「アパレルは私にとって未知の領域で何が分からないのかが分からない。でも、違った職場で働くこともいい経験になるんじゃないかと思うようになりました」と前向きに続ける。

 ガイド職、特に戸頃さんら若手が担当している都内を巡る1時間ほどのツアーでは、客と1対1で話す機会はほぼないという。「店頭では、1人1人のお客さまに対する応対の仕方が学べるんじゃないかと期待しています。店頭接客の経験も生かして、ゆくゆくは地方をまわる長時間ツアーで、お客さまに楽しんでいただけるガイド職になりたい」。ファッションについては「知識に自信はないですが、ユーチューブを見て色合わせやスタイリングを考えています。ワンピースが好きなので、ワンピースを着て接客するのが楽しみ」。

はとバスに代表電話からアプローチ

 はとバスがバスガイド職を出向させるのは今回が初めて。現在の同社のバスガイド職は119人という。バスガイド職に先んじて、事務職の一部はコールセンターなどに出向させている。ストライプも7月から2022年6月までの期間で、はとバスの事務職15人を受け入れている。

 「コロナ禍以降、休業して雇用調整助成金などで雇用を維持してきた」と話すのは、はとバスの岩脇明宏広報室長。今年は東京・大手町のワクチン大規模接種会場と東京駅間の輸送や、東京五輪会場の輸送などを受託し、観光需要減の中でもやってきたが、感染状況は落ち着きつつあるものの、引き続き需要の戻りは見通せない部分が大きい。「GO TO トラベル」キャンペーンの再開も不透明だ。そんな経緯から、バスガイド職の出向を決めたという。「22年春、特に5月の大型連休には、一定の需要が戻ってくると想定している」。それに間に合うように、バスガイド職は5カ月間(22年3月末まで)の出向にした。

 アパレル企業にとっては、販売員の採用難はコロナ禍以前から各社共通の課題になっている。「採用難、アパレル不況と言われる中で、店頭で客と接する販売職の楽しさを世の中に伝えていきたい」と、ストライプの川島学人事部長は今回の取り組みの狙いを話す。そもそも、今回の出向は川島部長が代表電話からはとバスにアプローチしたことがきっかけという。「(ストライプ本社のある)歌舞伎座タワーの周辺を、コロナ前ははとバスのツアーがよく回遊していた。40〜50人の客の注目を引きつけているバスガイド職の接客スキルやホスピタリティを見て、常々すごいと思っていた」。

 今後は人事交流として、ストライプの販売員がバスガイド職の研修に参加し、スキルを高めることなども考えているという。ストライプは、はとバス以外の企業からの出向受け入れの予定はないが、「観光関連企業などで話をしているところはある」という。

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「ユニクロ」最高益決算の死角 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの2021年8月期連結決算が発表された。コロナ禍でも最高益を達成する強さを見せつけたが、細かく分析すると課題も見えてくる。

 10月14日に公表されたファーストリテイリングの2021年8月期決算は、国内とグレーターチャイナのユニクロが復調し、売上収益、営業利益こそ19年8月期に及ばなかったものの、為替差益192億円も寄与して税引き前利益は過去最高益を更新した。したたかに復調したかに見えるファーストリテイリングだが、2つの死角が指摘される。

コロナを克服して最高益を計上した21年8月期連結決算

 売上収益は前期比6.2%増の2兆1329億9200万円とコロナ前の19年8月期には1575億5600万円、営業利益も2490億1100万円と同じく86億円2500万円、当期利益も1756億8400万円とわずかに届かなかったが、税引き前利益は前期から73.9%伸びて2658億7200万円と過去最高を更新し、したたかな立ち直りを見せた。

 回復をけん引したのは売上収益が16.7%(763億円)伸びたグレーターチャイナ(中国本土、香港、台湾)・ユニクロと4.4%(357.4億円)伸びた国内ユニクロで、GUは1.4%(33.5億円)の微増に留まり、グローバルブランドは1.3%(14.3億円)減少した。営業利益でも52.7%(346億円)も伸びたグレーターチャイナ・ユニクロと17.7%(185.6億円)伸びた国内ユニクロが貢献し、GUは7.6%(16.6億円)減益、グローバルブランドは赤字を8分の1近くまで圧縮したが黒字転換はならなかった。

 22年8月期は国内ユニクロが反動で減収減益(既存店11%減、EC微増)、グレーターチャイナ・ユニクロも上期は減収減益(通期は小幅な増収増益)、GUも減収・利益横ばい、欧州ユニクロは増収増益、北米ユニクロは大幅増収で黒字化、グローバルブランドも黒字化すると見て、営業収益を3.1%増の2兆2000億円、営業利益を8.4%増の2700億円、親会社所有者に帰属する当期利益を3.0%増の1750億円と見込んでいる。

したたかなマネジメントスキル

 コロナ禍が長引く中では売り上げの回復は一進一退となったが、粗利益率を19年8月期の48.9%からコロナ禍の20年8月期でも48.6%と0.3ポイントの低下に留め、21年8月期には50.3%と15年8月期(50.5%)の水準に引き上げた在庫運用とサプライのマネジメントスキルは、商社との製販同盟を割り引いても突出した力量と評価するべきだろう。「無印良品」の良品計画が18年9月〜19年8月の51.3%から19年9月〜20年8月は47.%と3.9ポイントも落とし、21年8月期も48.9%と回復しきれなかったのと比較すれば、マネジメントスキルの格差は歴然だ。

 販管費率も然りで、19年8月期の37.3%から20年8月期には40.1%と2.8ポイントかさんだが、21年8月期では38.4%まで抑制しており、14年の40.0%、15〜16年の39%台に比べれば格段に効率化されている。販管費の中身を19年8月期と比較すると、切り下げられたのは広告宣伝費率(3.25%→3.12%)だけで、不動産費率 (注1)は0.51ポイント、人件費率は0.56ポイント、ECの拡大(約47%増の3800億円)で物流費も0.19ポイント上昇しているが、コロナ禍が長引いて販売効率が低下した中では抑制が効いている。

 コロナ禍の20年8月期、国内ユニクロ直営店の販売効率は11.3%低下したが、1人当たり保守面積を19年8期の30.55平方メートルから33.36平方メートルに拡大して1人当たり売上高を3119.2万円から3019.0万円への低下に留めている。この間に国内ユニクロの常勤雇用者 (注2)が1万3621人から1万3259人と2.66%減少、パート・アルバイトの平均在籍数も3万535人から2万9562人と3.19%の減少に留まって極端なシフト削減は確認できないが、海外も含む全社ではパート・アルバイトの平均在籍数が8万758人から7万765人と12.37%も減少しているから、売上減少に伴って相応の運営人時量が削減されたと推察される。

 21年8月期では国内ユニクロの販売効率はさらに1.24%低下したが人時量はほとんど削減されず、1人当たり保守面積も32.61平方メートルと若干縮小したが、全社では常勤雇用者数が3.7%、パート・アルバイトの平均在籍数はさらに10.78%も減少しているから、売り上げは回復しても運営人時量抑制の手綱は緩めなかったようだ。

 運営人時量の圧縮はRFIDタグとセルフレジの導入によるところも大きい。棚卸しや棚戻しの人時量削減に加えてセルフレジの本格導入は効果絶大で、RFIDレーダーを使えばEC受注への店在庫引き当てで生じるピッキングも格段に効率化できる。国内ユニクロは10月8日からECで注文してから最短2時間で店舗の商品を受け取れる「オーダー&ピック」を全国750店舗で始めたが、そんな裏付けもあったと思われる。

 店舗物流が絡む荷受け・品出しは改善の余地が大きいものの、デジタル装備が進むユニクロの店舗運営は急ピッチで効率化している。その基盤となっているのが店舗資産の入れ替えによる大型化だ。

 (注1)不動産費率はIFRS会計適用で比較が難しいが、単純に地代家賃と減価償却費の合計で見れば10.76%から11.27%に上昇している。人件費は委託費と合算して15.18%から15.74%に上昇している

 (注2)ファーストトリテイリングでは18年以降、正社員とフルタイム勤務者を「常勤雇用者」とし、パート・アルバイトも8時間労働の常勤雇用者に換算せず、平均在籍者数を開示している

店舗資産の継続的入れ替えによる大型化と効率化

 販管費の2大項目は不動産費と人件費だが、ファーストリテイリングはコロナ禍のはるか以前から着々と抑制策を積み上げてきた。店舗物件の継続的入れ替えによる店舗規模の拡大、デジタル投資による運営人時量の圧縮がその要と思われる。

 21年8月期は全社で230店舗を出店して333店舗を退店しているが(103店純減)、20年8月期までの5年間では1357店舗を出店して705店舗を退店している(652店純増)。ユニクロ業態では21年8月期までの6年間で1028店を出店して383店を退店している(645店純増)。効率指標がそろう国内ユニクロは同期間に164店を出店して197店を退店しているが(33店純減)、この間に平均店舗面積が917平方メートルから1001平方メートルに拡大する一方、平均運営人員は30.50人から30.70人とほとんど変わっておらず、1人当たり保守面積は30.06平方メートルから32.61平方メートルに拡大している。

 坪当り売上高はこの間に322.7万円から18年8月期には343.5万円のピークに達したが、コロナ禍を経て21年8月期は295.0万円まで落ちている。1人当たり売上高も16年の2940万円から19年には3119.2万円まで上昇したが21年には2915.4万円に落ちており、保守面積拡大効果を相殺している。逆にいえば、保守面積拡大効果がなかったら、人件費負担は相応に上昇して収益を圧迫したはずだ。

 もっと長い目で見れば、08年は平均688平方メートルの店舗を20.34人で運営して6億円強(1人当たり2995万円)を売り上げていたのが、18年のピークでは平均938平方メートルの店舗を31.99人で運営して9億7240万円(1人当たり3052万円)を売り上げ、コロナ禍を経て21年は平均1001平方メートルの店舗を30.70人で運営して8億8594万円(1人当たり2915万円)を売り上げている。

 店舗面積拡大の効果は運営人件費の抑制だけではない。集客力と絶対売上額で商業施設デベロッパーに「準核店舗」と認めさせ、破格の家賃条件(推定家賃負担率8%)と売上金の直接収納、キャッシュレス決済の直接契約(2.0%未満)という優位をもたらしている。

第一の死角 チャンスとリスクは裏表

 コロナ後を見据え「情報製造小売業化してグローバルNo.1へと成長を加速する」とうたうファーストリテイリングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を軸に「適品の適時・適量生産・適地販売」「店舗とEC一体の購買利便向上」「サステナビリティと正しい経営の追求」を経営課題に挙げているが、今回の決算発表で注目を集めたのは「人権侵害を絶対に容認しない」という決断だった。

 新疆綿問題に直接、言及するものではなく、原材料の生産者まで自社で直接確認する体制を構築するというものだが、中国の政府や消費者がこれをどう受け取るかは予断を許さない。15年8月期には18.13%だったグレーターチャイナ売上依存度が21年8月期では24.98%と4分の1に迫り、営業利益依存度は同22.05%から39.61%と4割に迫ったが、今期見通しではさらに高まりそうだ。そんな中、「人権侵害を絶対に容認しない」という文言が中国での不買運動や行政による抑圧を招くとしたら、カントリーリスクは急激に高まる。

 コロナ禍では逸早く立ち直ったグレーターチャイナ市場に助けられ、欧米市場に依存するインディテックス(INDITEX、「ザラ」を運営)やH&Mとの差を詰めたファーストリテイリングだが、一歩間違えばチャンスがリスクとなって牙をむきかねない。「グローバル化の流れは変わらない」とするが、世界は分断と対立を深めサプライチェーンのブロック化へ急転している。とりわけ中国は独自の経済圏を力ずくで広げ、人民も「1984」※1.的情報操作で国粋主義に染まり、急激に進化する自国ブランドを愛顧して外国ブランドの排除へと動き出している。

 H&Mは新疆綿排除をうたって標的になり、インディテックスは中国市場を見切って大量退店に転じている。ユニクロもいつ標的となるやも知れず、カントリーリスクを圧縮するにはグレーターチャイナ依存度を下げるしかない。国内市場は飽和に近く大きな成長は望めないし、欧米市場はようやく黒字化した段階で急激な拡大は難しく、ロシアや東欧、南アジアやオセアニアを拡大するには時間がかかる。

 セルフレジ訴訟は力ずくでゴリ押しする一方、パラアスリートには1億円も報奨金を出す感覚は世間の理解には遠いから、柳井正社長の思う「正しい経営」も黒白鮮明ではない。ならばあえて旗色を鮮明にするより、投資家や従業員、取引先のためにも、カントリーリスクを避ける外交的スキルを尽くすべきだろう。さもなければ中国撤退という最終決断を迫られることになる。

 ※1.「1984」……ジョージ・オーウェルが国家権力による監視社会を描いたディストピアSF小説。作品名にちなんで1984年に英国で映画化され、当時のアップルがマッキントッシュコンピュータ発売を記念してリドニー・スコット監督による「1984」をイメージしたテレビCMを「第18回スーパーボール」の際に一度だけ放送した

第二の死角 「シーイン」が問う化石化ビジネスモデルの限界

 中国といえば「1984」を彷彿させるデジタル先進国で、ファッション業界ではAI&DX武装越境ECファストファッションの「シーイン(SHEIN)」が注目を集めており、「ユニクロ」など前世紀の旧式ビジネスモデルだと喧伝されている。そんな中、10月17日の日本経済新聞の一面コラム「春秋」でも「シーイン」が取り上げられるに及び、Z世代の若者や業界人のみならずビジネスマンにも広く知れわたるに至った。

 「シーイン」については多くの識者が紹介しているので私なりの解釈に止めるが、欧米やオーストラリア、中東諸国やアジアのみならず日本のZ世代も魅了して、20年の売り上げは7500億円に急伸し、21年は1兆円を大きく上回る勢いで、企業価値も150億ドルを超えてデカコーン企業の仲間入りし、インディテックスやH&M、ユニクロの牙城を脅かすAI武装のファッションベンチャーだ。

 連日3000点以上を新規投入しながら在庫リスクを最小に抑えるAI仕掛けのオートマチックな商品企画と需要予測、DX仕掛けの小ロット超高速反復生産システムはAI仕掛けのADAS(自動運転)に近い。

 ADASでは複数のカメラやミリ波レーダーの情報をAIが1秒間に数十回も判断してブレーキやハンドルを速攻で操作するが、人間の判断速度は格段に遅いし、決断してからブレーキやハンドルを操作するまで秒近く要し、高速運転ではその間に車は数十メートルも移動してしまう。AIの判断にズレがあっても毎秒数十回も修正されれば人間の判断より高精度に収斂し、遥かに速く状況に対応できるから安全性も高くなる。

 これをアパレルの企画から生産までのプロセスに置き換えてみると、DX以前では企画からスクリーニング、仕様設計とコスト計算、販売数量予測、サンプル検討と修正の繰り返しで何週間も要した。そこからバイオーダーの素材を確保して副資材を手当てし、マーキングや編み図設計して生産に仕掛かると、企画開始から製品化まで数カ月、大量かつ低コストな生産を図れば半年以上を要してしまう。デジタル企画が生産ラインのCAD/CAMと連携する最新のDX生産でも、人の組織が勘案する企画プロセスを短縮するのは限界があり、3DモデリングとCGを駆使して4週間を1週間に短縮できても1日や1時間に短縮できるはずもない。

 「シーイン」ではベンチマークしたECサイト群やSNSをAI制御のクローラが巡回し自動解析して合成したデザインを3Dパターンに落として3Dモデリングで企画を決定し、DX連携した小規模工場がCAD/CAMで100点程度のミニマムロットを数日で生産。初期ロット商品をインフルエンサーがSNSで紹介してECサイトに誘導し(いずれ3DモデリングサンプルをCGモデルが着ることになる)、日々の受注やレビューからAIが受注数量の推移を予測して誤差を収斂しながら100点単位の小ロット生産を反復していく。ADASのように1秒に数十回とまではいかないが、週サイクルあるいは週2サイクルで反復生産を繰り返し、「売れる要素」を引き継いで類似デザインを素材を変え柄を変えバリエーションを広げ、リレーして拡充していると思われる(一部は私の推測です)。「シーイン」の創業者・許仰天氏はSEOから入ったネットエンジニアだと伝えられるから、そんなSFチックな仕掛けもごく自然な発想だったのではないか。

 「Redcollar」(DX仕掛け1週間パターンオーダーの元祖)が扉を開き、「シーイン」でSFの域に到達した中国先進アパレル企業のDXとAIサプライマネジメントは、もはやアナログな業界人の理解を超えたフューチャーエンジニアリングの領域だ。そんな「シーイン」のADAS的超高速サプライを前にしては、企画から市場投入まで数カ月から半年以上も要する「ユニクロ」のダム型サプライは「ジャストサイズ」のようなQR補正生産を組み合わせても限界がある。

「ユニクロ」は化石から脱却できるか

 「ユニクロ」も3Dモデリングで企画を検討しDX連携したCAD/CAM生産でリードタイムの短縮に勤めているが、人の組織が検討して決定し低コストで大量一括生産する限りは週サイクルどころか月サイクルの実現も難しい。直近の21年8月期でも在庫回転(国内直営店)は2.5回に留まっており、食品スーパーやコンビニ並みの25〜30回転には程遠い。

 すでにコンビニの弁当や惣菜では日サイクルどころか日2回サイクルのオンデマンド生産が一般化しており、アパレル分野でもローカル対応(弁当や惣菜も然り)して小ロット多頻度生産すれば週サイクルまでは実現できる。ギャルファッションの黎明期にはソウル・東大門で即席生産した商品を毎週、ハンドキャリーするブティックも珍しくなかったし、垂直統合によるトヨタの看板システムや水平分業によるデルのBTO(受注生産)も確立されて久しい。なんでアパレルだけがリードタイムがリスクを増幅するギャンブルサプライに留まっているのだろうか。

 「ユニクロ」が真の「LifeWear」(究極の普段着)を目指すなら、弁当や惣菜とまでは行かなくても、日配食品のようにローカルな生活者に寄り添ったオンデマンド生産を実現すべきではないか。

 「シーイン」のAI仕掛けオートマチック大量商品企画は特異でも、週サイクルのDX反復生産は「低コスト大量一括生産で売れ残るより高コスト(とは限らない)少量反復生産で完全消化」と割り切ればすぐにでも実現できる。「ユニクロ」のような大量生産の定番的商品でも、素材備蓄を背景に生産仕様と生産工程を抜本から組み直せば、週サイクルどころか週2サイクルも容易に実現できるはずで、初期投入は低コスト大ロットの計画生産でも型・色・サイズの補正生産を高速高頻度化する余地は十分にある。25回転はともかく、現在の倍速強の6回転や12回転は十分に実現可能なのではないか。

 さすれば在庫マネジメントも店舗運営もOMO運用も飛躍的に効率化し、物流やキャッシュフローの感覚も異次元の域に達すると期待される。資金力と経営意志で突出するファーストリテイリングなら、何世代も新しいAIファッションベンチャーを一気に追い越す革命劇を見せてくれるかも知れない。

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「ユニクロ」最高益決算の死角 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの2021年8月期連結決算が発表された。コロナ禍でも最高益を達成する強さを見せつけたが、細かく分析すると課題も見えてくる。

 10月14日に公表されたファーストリテイリングの2021年8月期決算は、国内とグレーターチャイナのユニクロが復調し、売上収益、営業利益こそ19年8月期に及ばなかったものの、為替差益192億円も寄与して税引き前利益は過去最高益を更新した。したたかに復調したかに見えるファーストリテイリングだが、2つの死角が指摘される。

コロナを克服して最高益を計上した21年8月期連結決算

 売上収益は前期比6.2%増の2兆1329億9200万円とコロナ前の19年8月期には1575億5600万円、営業利益も2490億1100万円と同じく86億円2500万円、当期利益も1756億8400万円とわずかに届かなかったが、税引き前利益は前期から73.9%伸びて2658億7200万円と過去最高を更新し、したたかな立ち直りを見せた。

 回復をけん引したのは売上収益が16.7%(763億円)伸びたグレーターチャイナ(中国本土、香港、台湾)・ユニクロと4.4%(357.4億円)伸びた国内ユニクロで、GUは1.4%(33.5億円)の微増に留まり、グローバルブランドは1.3%(14.3億円)減少した。営業利益でも52.7%(346億円)も伸びたグレーターチャイナ・ユニクロと17.7%(185.6億円)伸びた国内ユニクロが貢献し、GUは7.6%(16.6億円)減益、グローバルブランドは赤字を8分の1近くまで圧縮したが黒字転換はならなかった。

 22年8月期は国内ユニクロが反動で減収減益(既存店11%減、EC微増)、グレーターチャイナ・ユニクロも上期は減収減益(通期は小幅な増収増益)、GUも減収・利益横ばい、欧州ユニクロは増収増益、北米ユニクロは大幅増収で黒字化、グローバルブランドも黒字化すると見て、営業収益を3.1%増の2兆2000億円、営業利益を8.4%増の2700億円、親会社所有者に帰属する当期利益を3.0%増の1750億円と見込んでいる。

したたかなマネジメントスキル

 コロナ禍が長引く中では売り上げの回復は一進一退となったが、粗利益率を19年8月期の48.9%からコロナ禍の20年8月期でも48.6%と0.3ポイントの低下に留め、21年8月期には50.3%と15年8月期(50.5%)の水準に引き上げた在庫運用とサプライのマネジメントスキルは、商社との製販同盟を割り引いても突出した力量と評価するべきだろう。「無印良品」の良品計画が18年9月〜19年8月の51.3%から19年9月〜20年8月は47.%と3.9ポイントも落とし、21年8月期も48.9%と回復しきれなかったのと比較すれば、マネジメントスキルの格差は歴然だ。

 販管費率も然りで、19年8月期の37.3%から20年8月期には40.1%と2.8ポイントかさんだが、21年8月期では38.4%まで抑制しており、14年の40.0%、15〜16年の39%台に比べれば格段に効率化されている。販管費の中身を19年8月期と比較すると、切り下げられたのは広告宣伝費率(3.25%→3.12%)だけで、不動産費率 (注1)は0.51ポイント、人件費率は0.56ポイント、ECの拡大(約47%増の3800億円)で物流費も0.19ポイント上昇しているが、コロナ禍が長引いて販売効率が低下した中では抑制が効いている。

 コロナ禍の20年8月期、国内ユニクロ直営店の販売効率は11.3%低下したが、1人当たり保守面積を19年8期の30.55平方メートルから33.36平方メートルに拡大して1人当たり売上高を3119.2万円から3019.0万円への低下に留めている。この間に国内ユニクロの常勤雇用者 (注2)が1万3621人から1万3259人と2.66%減少、パート・アルバイトの平均在籍数も3万535人から2万9562人と3.19%の減少に留まって極端なシフト削減は確認できないが、海外も含む全社ではパート・アルバイトの平均在籍数が8万758人から7万765人と12.37%も減少しているから、売上減少に伴って相応の運営人時量が削減されたと推察される。

 21年8月期では国内ユニクロの販売効率はさらに1.24%低下したが人時量はほとんど削減されず、1人当たり保守面積も32.61平方メートルと若干縮小したが、全社では常勤雇用者数が3.7%、パート・アルバイトの平均在籍数はさらに10.78%も減少しているから、売り上げは回復しても運営人時量抑制の手綱は緩めなかったようだ。

 運営人時量の圧縮はRFIDタグとセルフレジの導入によるところも大きい。棚卸しや棚戻しの人時量削減に加えてセルフレジの本格導入は効果絶大で、RFIDレーダーを使えばEC受注への店在庫引き当てで生じるピッキングも格段に効率化できる。国内ユニクロは10月8日からECで注文してから最短2時間で店舗の商品を受け取れる「オーダー&ピック」を全国750店舗で始めたが、そんな裏付けもあったと思われる。

 店舗物流が絡む荷受け・品出しは改善の余地が大きいものの、デジタル装備が進むユニクロの店舗運営は急ピッチで効率化している。その基盤となっているのが店舗資産の入れ替えによる大型化だ。

 (注1)不動産費率はIFRS会計適用で比較が難しいが、単純に地代家賃と減価償却費の合計で見れば10.76%から11.27%に上昇している。人件費は委託費と合算して15.18%から15.74%に上昇している

 (注2)ファーストトリテイリングでは18年以降、正社員とフルタイム勤務者を「常勤雇用者」とし、パート・アルバイトも8時間労働の常勤雇用者に換算せず、平均在籍者数を開示している

店舗資産の継続的入れ替えによる大型化と効率化

 販管費の2大項目は不動産費と人件費だが、ファーストリテイリングはコロナ禍のはるか以前から着々と抑制策を積み上げてきた。店舗物件の継続的入れ替えによる店舗規模の拡大、デジタル投資による運営人時量の圧縮がその要と思われる。

 21年8月期は全社で230店舗を出店して333店舗を退店しているが(103店純減)、20年8月期までの5年間では1357店舗を出店して705店舗を退店している(652店純増)。ユニクロ業態では21年8月期までの6年間で1028店を出店して383店を退店している(645店純増)。効率指標がそろう国内ユニクロは同期間に164店を出店して197店を退店しているが(33店純減)、この間に平均店舗面積が917平方メートルから1001平方メートルに拡大する一方、平均運営人員は30.50人から30.70人とほとんど変わっておらず、1人当たり保守面積は30.06平方メートルから32.61平方メートルに拡大している。

 坪当り売上高はこの間に322.7万円から18年8月期には343.5万円のピークに達したが、コロナ禍を経て21年8月期は295.0万円まで落ちている。1人当たり売上高も16年の2940万円から19年には3119.2万円まで上昇したが21年には2915.4万円に落ちており、保守面積拡大効果を相殺している。逆にいえば、保守面積拡大効果がなかったら、人件費負担は相応に上昇して収益を圧迫したはずだ。

 もっと長い目で見れば、08年は平均688平方メートルの店舗を20.34人で運営して6億円強(1人当たり2995万円)を売り上げていたのが、18年のピークでは平均938平方メートルの店舗を31.99人で運営して9億7240万円(1人当たり3052万円)を売り上げ、コロナ禍を経て21年は平均1001平方メートルの店舗を30.70人で運営して8億8594万円(1人当たり2915万円)を売り上げている。

 店舗面積拡大の効果は運営人件費の抑制だけではない。集客力と絶対売上額で商業施設デベロッパーに「準核店舗」と認めさせ、破格の家賃条件(推定家賃負担率8%)と売上金の直接収納、キャッシュレス決済の直接契約(2.0%未満)という優位をもたらしている。

第一の死角 チャンスとリスクは裏表

 コロナ後を見据え「情報製造小売業化してグローバルNo.1へと成長を加速する」とうたうファーストリテイリングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を軸に「適品の適時・適量生産・適地販売」「店舗とEC一体の購買利便向上」「サステナビリティと正しい経営の追求」を経営課題に挙げているが、今回の決算発表で注目を集めたのは「人権侵害を絶対に容認しない」という決断だった。

 新疆綿問題に直接、言及するものではなく、原材料の生産者まで自社で直接確認する体制を構築するというものだが、中国の政府や消費者がこれをどう受け取るかは予断を許さない。15年8月期には18.13%だったグレーターチャイナ売上依存度が21年8月期では24.98%と4分の1に迫り、営業利益依存度は同22.05%から39.61%と4割に迫ったが、今期見通しではさらに高まりそうだ。そんな中、「人権侵害を絶対に容認しない」という文言が中国での不買運動や行政による抑圧を招くとしたら、カントリーリスクは急激に高まる。

 コロナ禍では逸早く立ち直ったグレーターチャイナ市場に助けられ、欧米市場に依存するインディテックス(INDITEX、「ザラ」を運営)やH&Mとの差を詰めたファーストリテイリングだが、一歩間違えばチャンスがリスクとなって牙をむきかねない。「グローバル化の流れは変わらない」とするが、世界は分断と対立を深めサプライチェーンのブロック化へ急転している。とりわけ中国は独自の経済圏を力ずくで広げ、人民も「1984」※1.的情報操作で国粋主義に染まり、急激に進化する自国ブランドを愛顧して外国ブランドの排除へと動き出している。

 H&Mは新疆綿排除をうたって標的になり、インディテックスは中国市場を見切って大量退店に転じている。ユニクロもいつ標的となるやも知れず、カントリーリスクを圧縮するにはグレーターチャイナ依存度を下げるしかない。国内市場は飽和に近く大きな成長は望めないし、欧米市場はようやく黒字化した段階で急激な拡大は難しく、ロシアや東欧、南アジアやオセアニアを拡大するには時間がかかる。

 セルフレジ訴訟は力ずくでゴリ押しする一方、パラアスリートには1億円も報奨金を出す感覚は世間の理解には遠いから、柳井正社長の思う「正しい経営」も黒白鮮明ではない。ならばあえて旗色を鮮明にするより、投資家や従業員、取引先のためにも、カントリーリスクを避ける外交的スキルを尽くすべきだろう。さもなければ中国撤退という最終決断を迫られることになる。

 ※1.「1984」……ジョージ・オーウェルが国家権力による監視社会を描いたディストピアSF小説。作品名にちなんで1984年に英国で映画化され、当時のアップルがマッキントッシュコンピュータ発売を記念してリドニー・スコット監督による「1984」をイメージしたテレビCMを「第18回スーパーボール」の際に一度だけ放送した

第二の死角 「シーイン」が問う化石化ビジネスモデルの限界

 中国といえば「1984」を彷彿させるデジタル先進国で、ファッション業界ではAI&DX武装越境ECファストファッションの「シーイン(SHEIN)」が注目を集めており、「ユニクロ」など前世紀の旧式ビジネスモデルだと喧伝されている。そんな中、10月17日の日本経済新聞の一面コラム「春秋」でも「シーイン」が取り上げられるに及び、Z世代の若者や業界人のみならずビジネスマンにも広く知れわたるに至った。

 「シーイン」については多くの識者が紹介しているので私なりの解釈に止めるが、欧米やオーストラリア、中東諸国やアジアのみならず日本のZ世代も魅了して、20年の売り上げは7500億円に急伸し、21年は1兆円を大きく上回る勢いで、企業価値も150億ドルを超えてデカコーン企業の仲間入りし、インディテックスやH&M、ユニクロの牙城を脅かすAI武装のファッションベンチャーだ。

 連日3000点以上を新規投入しながら在庫リスクを最小に抑えるAI仕掛けのオートマチックな商品企画と需要予測、DX仕掛けの小ロット超高速反復生産システムはAI仕掛けのADAS(自動運転)に近い。

 ADASでは複数のカメラやミリ波レーダーの情報をAIが1秒間に数十回も判断してブレーキやハンドルを速攻で操作するが、人間の判断速度は格段に遅いし、決断してからブレーキやハンドルを操作するまで秒近く要し、高速運転ではその間に車は数十メートルも移動してしまう。AIの判断にズレがあっても毎秒数十回も修正されれば人間の判断より高精度に収斂し、遥かに速く状況に対応できるから安全性も高くなる。

 これをアパレルの企画から生産までのプロセスに置き換えてみると、DX以前では企画からスクリーニング、仕様設計とコスト計算、販売数量予測、サンプル検討と修正の繰り返しで何週間も要した。そこからバイオーダーの素材を確保して副資材を手当てし、マーキングや編み図設計して生産に仕掛かると、企画開始から製品化まで数カ月、大量かつ低コストな生産を図れば半年以上を要してしまう。デジタル企画が生産ラインのCAD/CAMと連携する最新のDX生産でも、人の組織が勘案する企画プロセスを短縮するのは限界があり、3DモデリングとCGを駆使して4週間を1週間に短縮できても1日や1時間に短縮できるはずもない。

 「シーイン」ではベンチマークしたECサイト群やSNSをAI制御のクローラが巡回し自動解析して合成したデザインを3Dパターンに落として3Dモデリングで企画を決定し、DX連携した小規模工場がCAD/CAMで100点程度のミニマムロットを数日で生産。初期ロット商品をインフルエンサーがSNSで紹介してECサイトに誘導し(いずれ3DモデリングサンプルをCGモデルが着ることになる)、日々の受注やレビューからAIが受注数量の推移を予測して誤差を収斂しながら100点単位の小ロット生産を反復していく。ADASのように1秒に数十回とまではいかないが、週サイクルあるいは週2サイクルで反復生産を繰り返し、「売れる要素」を引き継いで類似デザインを素材を変え柄を変えバリエーションを広げ、リレーして拡充していると思われる(一部は私の推測です)。「シーイン」の創業者・許仰天氏はSEOから入ったネットエンジニアだと伝えられるから、そんなSFチックな仕掛けもごく自然な発想だったのではないか。

 「Redcollar」(DX仕掛け1週間パターンオーダーの元祖)が扉を開き、「シーイン」でSFの域に到達した中国先進アパレル企業のDXとAIサプライマネジメントは、もはやアナログな業界人の理解を超えたフューチャーエンジニアリングの領域だ。そんな「シーイン」のADAS的超高速サプライを前にしては、企画から市場投入まで数カ月から半年以上も要する「ユニクロ」のダム型サプライは「ジャストサイズ」のようなQR補正生産を組み合わせても限界がある。

「ユニクロ」は化石から脱却できるか

 「ユニクロ」も3Dモデリングで企画を検討しDX連携したCAD/CAM生産でリードタイムの短縮に勤めているが、人の組織が検討して決定し低コストで大量一括生産する限りは週サイクルどころか月サイクルの実現も難しい。直近の21年8月期でも在庫回転(国内直営店)は2.5回に留まっており、食品スーパーやコンビニ並みの25〜30回転には程遠い。

 すでにコンビニの弁当や惣菜では日サイクルどころか日2回サイクルのオンデマンド生産が一般化しており、アパレル分野でもローカル対応(弁当や惣菜も然り)して小ロット多頻度生産すれば週サイクルまでは実現できる。ギャルファッションの黎明期にはソウル・東大門で即席生産した商品を毎週、ハンドキャリーするブティックも珍しくなかったし、垂直統合によるトヨタの看板システムや水平分業によるデルのBTO(受注生産)も確立されて久しい。なんでアパレルだけがリードタイムがリスクを増幅するギャンブルサプライに留まっているのだろうか。

 「ユニクロ」が真の「LifeWear」(究極の普段着)を目指すなら、弁当や惣菜とまでは行かなくても、日配食品のようにローカルな生活者に寄り添ったオンデマンド生産を実現すべきではないか。

 「シーイン」のAI仕掛けオートマチック大量商品企画は特異でも、週サイクルのDX反復生産は「低コスト大量一括生産で売れ残るより高コスト(とは限らない)少量反復生産で完全消化」と割り切ればすぐにでも実現できる。「ユニクロ」のような大量生産の定番的商品でも、素材備蓄を背景に生産仕様と生産工程を抜本から組み直せば、週サイクルどころか週2サイクルも容易に実現できるはずで、初期投入は低コスト大ロットの計画生産でも型・色・サイズの補正生産を高速高頻度化する余地は十分にある。25回転はともかく、現在の倍速強の6回転や12回転は十分に実現可能なのではないか。

 さすれば在庫マネジメントも店舗運営もOMO運用も飛躍的に効率化し、物流やキャッシュフローの感覚も異次元の域に達すると期待される。資金力と経営意志で突出するファーストリテイリングなら、何世代も新しいAIファッションベンチャーを一気に追い越す革命劇を見せてくれるかも知れない。

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