「振り切った方がオモロイやん」 日本文化を蘇らせる「ヨシオクボ」22-23年秋冬リアルショー

 「ヨシオクボ(YOSHIO KUBO)」は、2022-23年秋冬コレクションを東京・中目黒の本社で発表した。パリ・メンズ・ファッション・ウイークでは、ショー映像を組み込んだデジタルコレクションを公開した。

 今シーズンは「エンターテインメントに振り切った」と語る久保嘉男デザイナー。「周りから『もっと思い切った方がいい』って言われてたし、自分でもその方がオモロイやろなと思ってました。だから、動きのあるフォルムを取り入れたり、ウィメンズのルックを3日で10体作ったり、『おっ!』と思わせる要素を盛り込んでます」。音楽は昨シーズンに続き、DJのLicaxxxが担当。風と太鼓、子どもの遊び声など、古き良き正月を思わせる音とテクノが融合したBGMでショーが開幕した。

凧、メンコ、花札
スポーツ&アウトドアに日本文化を融合

 同ブランドは“忍び”や“僧兵”など、日本を掘り下げたクリエイションを数シーズン続けており、今シーズのテーマは“いかのぼり”だ。いかのぼりとは、現代でいう“凧揚げ”である。「僕も昔はよくやっていたけど、今はほとんどの人が興味を示さんし、日用品がなんでもそろう百均にさえ売ってない。消えつつある日本の文化やスポーツに目を当てたかったんです」。凧揚げと呼ばれ始めたのは、江戸時代のころ。いかのぼりが大流行して事故が多発し、幕府が禁止令を出したところ、市民が「これは“たこ”だ」と反論したことに由来するという。

 ウエアは、スポーツとアウトドアテイストを軸に、凧やメンコ、花札などの日本文化に着想したデザインを組み込んだ。花札の絵柄をペイズリー風にアレンジしたニットやスカート、凧紐のように動きに合わせてなびくテープをつけたジャケット、メンコの絵柄をイメージした背中の竜のグラフィックなど、ぱっと見で伝わるモチーフを連打した。一方で、西洋で盛んに行われる、色鮮やかで左右対称なデザインが特徴の“スポーツカイト”を生地の切り替えで表現したフリースジャケットや、花札のモチーフとして使われる藤とホトトギスを繰り返した総柄、袖と身頃を複数枚重ねてよろいのような立体感を出したマルチポケットのアウトドアジャケットなど、着想源を読み解く面白さのあるウエアもあった。ベージュやカーキ、ネイビーの定番色に、白と赤の縁起のいいカラーパレットを加え、テーマをストレートに反映した。

 色・柄以上に印象に残ったのが、ボーンで構築したダイナミックなフォルムだ。インナーの裾にボーンを通して円を作ったり、それを両脇に挟んで前後に飛び出たせたりして、リアルクローズにはない形を提案する。「ちっちゃいころ、ワンタッチで大きくなる帽子をオカンが見せてくれて、楽しかったことを思い出したんです。凧の骨組みもインスピレーションになってます」。ワイヤーは手の平サイズに小さく折りたためて、取り外しも可能だ。

ジェンダーに対する心境の変化
これまでは「固定観念でガチガチだった」

 2006年にウィメンズ「ミュラーオブヨシオクボ(MULLER OF YOSHIOKUBO)」を始動し、メンズとウィメンズを分けてきたが、ここ数シーズンでジェンダーの境界線は薄まっている。今シーズンは全30ルックのうち12ルックに女性モデルを起用し、男女どちらも着られるように、着丈やボタンの数、シルエットを調整したという3型のロングシャツなどを用意した。背景には、海外を中心に「ヨシオ クボ」を着る女性客が増えたことと、久保デザイナー自身の心境の変化がある。「以前は“男性向け”“女性向け”っていう仕切りが、着る人のアイデンティティーを確立すると考えてました。でも、メンズ服を女性が着てもええし、スタイルの幅も広がる。若い人に『常識にとらわれるな』と言ってたのに、固定観念でガチガチになっていたのは自分やった」。

 久保デザイナーは「オモロさを追求した」と説明したが、ショーを見て、ただシンプルに「かっこいい」と思った。音楽も含めて、日本文化を現代に蘇らせるコレクションが純粋に心に響いたし、ベテランと呼ばれる今でも自分の考えを見直し、新たな表現に挑み続ける久保デザイナーの姿勢もかっこよかった。次はどんなコレクションを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

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もう「ダブレット」では簡単に驚かないと思っていたのに 22-23年秋冬は“最驚”の手作りメタバース

 「『ダブレット(DOUBLET)』がパリ・メンズ・ファッション・ウイーク参加にともない、1月21日にフィジカルショーを行います。今回は会場までのバス移動があるため“拘束時間が大変長くなってしまいます”」――1月11日に届いたメールには、こう綴られていました。丁寧に、拘束時間の箇所は文字の色が変わっています。詳細を見ると、13時45分に代々木公園集合、16時30分に会場到着、20時代々木公園到着後解散だそうです。さらに、ブランドの意向で行き先は教えられないと。

 でも、もう驚きません。だって、「ダブレット」には今までさんざん驚かされてきましたから。パリメンズに初参加しファミレス風演出のショー、東京・南青山ではゾンビのお化け屋敷ショー、横浜では逆再生ショー、三鷹の農園では爆音パンクのショーと、シーズンごとにサプライズと笑いを届けてくれました。だから、拘束時間ぐらいでは「はい、きたきた」と感じたぐらいでしたし、並大抵のことでは驚かない自信があります。

13:45 代々木公園に集合

 ショー当日、集合時間ぴったりに代々木公園に到着しました。PRから前日に「まあ、バスの中でテレワークもできる時代になりましたしね」とさらっと言われたのでその気になり、酔い止めを薬を購入してバスに乗り込みます。果たしてこの半日コースには、どんな人が来ているだろうとバス内を見渡すと、まあまあ忙しいであろう業界人が30人以上乗り込んでいます。みなさま、お仕事は大丈夫なのでしょうか。心の中でふとPRの「まあ、バスの中でテレワークもできる時代になりましたしね」が響きます。観光バスで仕事はできるのか。

15:30 パサール羽生で休憩

 しばらくすると、バスが事故渋滞に巻き込まれました。ゆっくりゆっくり進み、ようやく休憩スポットのパサール 羽生に到着です。きっと予定より遅れているのでしょうが、タイムスケジュールも知らされていないので、とりあえずどら焼きを購入してホッとひと息。あれ?自分は今何をしているんだっけ?と目的を一瞬見失いそうになりましたが、仕事です。コレクション取材です。iPhoneをチェックすると、メールが30通ほどたまっています。危うく遠足気分になりかけました。

16:15 渡良瀬川を渡る

 再び渋滞を抜けたあたりで地図アプリを見ると、どうやら群馬か栃木に向かっているのだと予想できました。群馬は「ダブレット」の井野将之デザイナーの地元です。まさかこのタイミングで凱旋ショーなんて企画しているのかと胸が躍ります。いや、ちょっと待て。バスは栃木の方に向かっているようです。どこに連れていかれるのだろう。

17:00 ショー会場到着

 高速道路を出て街中をしばらく走ると、目的地が見えました。3時間の移動の末にたどり着いたのは、足利スクランブルシティスタジオです。ここは渋谷スクランブル交差点を再現した撮影スタジオで、さまざまな映画やドラマの撮影に使われています。バスの中からは「ここ私が毎日通ってるとこなんだけど」「改札までちゃんとあるじゃん」と驚きの声。そして、渋谷っぽいファッションの人たちがすでに外にたくさんいます。見た目は渋谷、でも気温は栃木。めちゃくちゃ寒いです。バスを降りると、すぐにショーがスタートしました。渋滞での到着遅れで、日没は間近。きっと裏ではヒヤヒヤだったのかもしれません。

異様な光景に困惑

 爆音BGMが鳴り響くと、渋谷っぽい人たちはすぐにエキストラだと分かりました。交差点の信号が青になった瞬間、約70人の若者たちが入り乱れます。そして“ハチ公口改札”から、ピンクヘアのモデルが登場しました。遠くからこちらに徐々に近寄ってくると、どこかで見覚えのある顔です。誰かが言いました。「あれ、immaちゃんだよね?」――そう、バーチャルモデルのimmaが渋谷スクランブル交差点のセットを歩いているんです。immaって実在する設定だっけ?これが中の人?どういうこと?と頭が混乱します。そして次のモデルが歩いてくると、これもまたimma、次もimma、最後までずーっとimmaなんです。さらに体格のいいimma、車椅子のimma、義足のimmaなど、さまざまな個性のimmaが登場します。すみません、コレクション取材を約5年続けていますが、こんな状況では服どころではありません。こういうときはただ見届けるのみ。

 コレクションはショッキングピンクをキーカラーに、渋谷を意識した“コギャル”風のスクールガールからストリート仕様のダボダボスーツまで、多彩なスタイルが交差します。環境に配慮した素材使いは、独自の視点で継続。毛皮工場に眠っていた何十ものファーをつなぎ合わせた巨大なジャケット、リアルファーとリサイクルウール、リサイクルナイロンを混ぜたフェイクファーや縮絨メルトンのコート、キノコレザーとリサイクルカシミアのボアで作ったボンバージャケットが登場。さらにダウンの代わりにフェイクファーを入れてオーガンジーで包んだジャケット、生分解性が高いサトウキビ由来のポリ乳酸100%で作ったアンダーウエアには、“Made for Disposal(捨てるために作った)”というメッセージをあしらいます。

 スタイルはまるで本当の渋谷のようにバラバラですが、一つだけ共通していることがありました。それは、サイズ感がアンバランスなこと。例えば肩が大きく張り出したテーラードジャケットは丈が極端に短かかったり、逆にチェスターコートは過剰なほど巨大だったり。“アイ ラブ ストレッチ”と描かれたTシャツは縦にビローンと伸び、“アイ ラブ シュリンク”と描かれたTシャツは腹出しするほど縮んだようなサイズ感です。ほかにも、300cmもあるルーズソックス風のタイツや、火山岩から作った糸で織る生地を用いたMA-1は、キッズサイズのようにコンパクト。有松絞りの応用で作ったという伸縮性のあるポップコーンニットのウエアは、デニムや迷彩柄が登場するなど、サイズ感に何かしらのメッセージを込めているのが分かりました。

 25人のimmaが交差点を横断し終えると、フィナーレには全員集合。次の瞬間、全員がいっせいにマスクを脱いで素顔があらわになりました。そこにはメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂さんや、車椅子に乗るファッションジャーナリストの徳永啓太さんの姿も見えます。素顔の25人がハッピーな雰囲気で通り過ぎていくと、immaのマスクを被った井野デザイナーが登場し、ショーは幕を閉じました。その規模に圧倒されっぱなしで、コレクションについてメモする余裕がゼロ。浅草のすしや通りをジャックした「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」のショーに続き、今シーズン2回目の取材用ノート真っ白です。

手作りメタバースで多様性を表現

 ショー終了後に“ハチ公口改札前”で井野デザイナーが取材に応じました。「昨年の東京2020パラリンピック競技大会に感動して、自分なりに多様性について考えたんです。それで、多種多様なアバターがいるメタバースの世界こそ、多様性を体現しているんじゃなかという考えにたどり着きました。だから今回のショーでは、アナログなメタバースを作りたかったんです」。なるほど、それでアウ(Aww)と協業しバーチャルヒューマンのimmaをリアルに歩かせる演出だったのか。

 12月上旬まではパリでのショーを予定したものの、パンデミックにより渡航を諦め、このスタジオを使うアイデアに切り替えたそうです。そして、サイズ感についてはこう説明します。「例えば、ファッション業界で“Mサイズ”と当たり前のように使っていますよね。でも、そもそもMの基準って何なのだろう、人によってMの基準は違うんじゃないのか。そういうひねくれた考えをもとに、服を再構築しました。伸縮性のあるデニムやフーディーは、同じサイズで誰でも着られるようにしています」。そうか、ショーを見てサイズがアンバランスだと感じた視点も、固定観念なのかもしれません。そしてサイズ感だけではなく、車椅子の徳永さんが肩にかけていたピンクのライダースジャケットは、肩がけしても落ちづらい仕様になっているのだとか。

 先ほどまでのお祭り騒ぎは何だったのでしょう。井野デザイナーのめちゃくちゃ真面目でまっすぐなメッセージに感動してしまいました。この日出演したエキストラ約70人は、東京モード学園やバンタンの専門学生だそうです。さらに、井野デザイナーが愛する奥さまもパンダ風のダウンジャケットでこっそり登場しており、奇抜な演出の裏側には「ダブレット」チームの優しさがさまざまな角度からにじみます。行きのバスでは遠足ムードで賑やかだった車内が、帰りはみなさんぐっすりでした。それだけ笑って、感動して、驚いて、感情が縦横無尽に揺さぶられた、あっという間の6時間。今回も予想のはるか斜め上をいく「ダブレット」劇場に、過去最高に驚かされてしまいました。

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蛍光灯付きヘルメットの「リック」に仰天しロマンチックな「ディオール」にうっとり 22-23年秋冬メンズコレ現地突撃リポートVol.6

 ボンジュール!いや、日本でアップされる時間ではボンソワール!でしょうか。欧州通信員の藪野です。最高気温6〜7度のどんよりとした曇りの日ばかりですが、元気に取材を続けています。今シーズン、リアルショーは1日に3ブランドほど。その間に展示会やプレゼンテーションもありますが、夜のイベントやパーティーはほとんどなく、随分ゆったりとしたスケジュールです。そんなパリ・メンズももう中盤戦。今回は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「ディオール(DIOR)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」などのショーが行われた3、4日目のダイジェストをお届けします!

1/20
14:30 LOUIS VUITTON

 3日目のメーンイベントは、なんといっても「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」!14:30と17:00に2回ショーを行い、生前のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が手掛けた最後のコレクションを発表しました。コロナ禍に入ってから、上海や東京などショーを行ったり、デジタルで発表したりしていたので、パリでのメンズショーは2年ぶりになります。その場にヴァージルがもういないと思うと、やっぱり寂しいですね……。

 コレクションは、彼が大切にしていた“子どものような純粋な視点”を生かした、先入観やルールにとらわれないもの。その自由な発想や遊び心を受け入れ、洗練されたものに仕上げるメゾンの懐の深さと技術を感じました。すでに速報をアップしていますので、詳細はこちらからご覧ください!

16:00 SULVAM

 日本ブランドの「サルバム(SULVAM)」はデジタル発表だけでなく、現地でもプレゼンテーションを開催すると聞き、会場へ。なんとデザイナーの藤田さんも渡仏されていました!聞くと、今回の会場はアトリエとして新たに借りた場所で、フランスの現地法人も設立したそう。パリをコレクション発表の場に選ぶブランドは多いですが、ビッグブランド以外では拠点まで構えているところは多くありません。リスクを背負ってでもフランスで勝負するという姿勢や意気込みは素晴らしく、応援したくなります。初対面だったのですが、その思いに心打たれて色々と聞かせてもらったので、後日、別途記事化します!

 そして、話は前後しますが、「サルバム」のアトリエ前ではティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy)さんとバッタリ。先日、「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」のヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント就任が発表されて、驚いた方も多いのではないでしょうか?彼女が手掛ける新生「ヴォーグ ジャパン」も楽しみですね!

20:00 RICK OWENS

 一度ホテルに戻り、部屋で晩御飯にカレーうどんを作って食べた後、向かったのは「リック・オウエンス(RICK OWENS)」。”ストロボ(STOROBE)”と題したコレクションは、まさにフラッシュのような眩しい光が点滅し続ける中で披露されました。正直、目眩しにあったようでディテールまでハッキリとは見えませんでしたが(苦笑)、そんな中でも際立ったのはパワフルなフォーム!背中のスリットから被るとポンチョのような丸みのあるシェイプを描くコート、体を覆うボリューミーなパファーアイテム、ゴートヘアのトリミングをあしらったパーカ、肩を極端に誇張したテーラリングなどがそろいます。威嚇的とも見えるそのシルエットですが、プレスリリースには「誇張した肩は男性らしさのパロディとして始めたが、結果的にそれを着ることを楽しんでいる。そして、自分の周りのスペースをより広く取るための口実にもなる。キャンプ(人工的で誇張され、皮肉的で大げさはファッション)は、常に真剣で純粋な衝動を誇張するものだ」と書かれていて、ちょっとお茶目にも感じました。そして、頭には蛍光灯が付いたヘルメット風のヘッドピース。よく見ると、モデルは手にバッテリーを携えていてシュールですが、これは昨年10月に訪れたエジプトの神殿や墓地で見た王冠の形状から着想を得たそう。今季もリック様はワン&オンリーの強さを放っています。

1/21
10:30 COURREGES

 「クレージュ(COURREGES)」は、ニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)による2シーズン目となるメンズ、そしてウィメンズのプレ・フォール・コレクションを本社ビルで披露。前回はショーを開催しましたが、今後はウィメンズのメーン・コレクションのみショーで披露するそうです。

 彼が「クレージュ」で描いているは“クラブに集うクールな若者”という印象でしたが、今季はまさに“ナイトライフ”が着想源。昨年9月のウィメンズショー後にクラブイベント“クレージュ・クラブ”を開催したことがきっかけになっているようで、今後も開催を続けていくそうです。公開された映像とルックは、クラブの外のようなグラフィティだらけの壁の前で撮影されたもの。ニコラスの友人やお気に入りのモデルが着こなすルックは、まさにクラバーといった雰囲気です。

 デザインは、ファーストシーズンから一貫しているミニマルでモダンなスタイルに、“スワローシェイプ”というネックラインなどの新たなディテールや、ストレッチサテンとコーティングジャージーを取り入れてアップデート。ニコラスが「メンズもウィメンズも同じアプローチで手掛けている」というコレクションは共通点も多く、コーチジャケットやシアリングの襟を付け外しできるレザージャケットなどジェンダーを問わないアイテムもあります。今季は、彼が「ラベンダー」と呼ぶ青みがかったパステルカラー(いわゆる紫っぽいラベンダーは好きじゃないそう)と、創業者アンドレ・クレージュ(Andre Courreges)が1960代に多用していたことから名付けられたという「ヘリテージレッド」という朱赤が印象的。今回は実際にいくつか試着し、そのシルエットの美しさや意外なほどの動きやすさは、彼が特にこだわるカッティングの賜物だと感じました。

 ニコラスは就任から1年半、アンドレのアーカイブのディテールに着目し、それをいかに現代に向けて再考しながらコレクション制作に取り組んできました。そして今、ブランドのヘリテージやDNAだけでなく、もっと自分の個性やヘリテージを表現する準備ができたと感じているそう。3月2日に予定する次のウィメンズショーは、「とても『クレージュ』らしくありながらも、これまでに見たことないような大胆なコレクションになるよ」と教えてくれました。今後にも期待です!

12:00 HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE

 自然の中で過ごすキャンプの人気は年々高まっていますが、「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」のプレゼンテーションでも最初に目に入ったのは、デザインチームがテントを張ってキャンプをする姿やテントそのものの写真でした。というのも、今季はテントのような布と骨組みでできた構造物を研究し、その造形やラインを服に応用。プリーツに弧の要素を加えることで、新たな立体造形を目指したそうです。結果、でき上がったアイテムは、テントのポールのような湾曲するラインを背中から袖口にかけて加えたトップスや、タープに見られる自然なたわみを、プリーツ生地を折り畳むように重ねてボタンで留めることで表現したパンツなど。会場では、コレクションの映像だけでなく、その制作風景の映像も見ることができて、興味をそそられました。ものづくりの過程を見るのって、やっぱり面白いですね。

14:30 DIOR

 お次は「ディオール(DIOR)」です。コンコルド広場に建てられた細長い特設テントの中に入ると、そこにはアレクサンドル3世橋。彫刻や装飾からランプまでがリアルサイズで再現されていて、迫力満点です。その背景に映し出されるのは、早朝のパリの街。少し靄(もや)がかかり、朝日がきらめくその風景は、とても幻想的です。

 キム・ジョーンズ(Kim Jones)はこれまでさまざまなアーティストとのコラボレーションを通してコレクションを制作してきましたが、今季フォーカスしたのは、今は亡き創業者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)との対話。今年はメゾンの創設75周年でもあり、「アーカイブを見て、メゾンの初期の純粋さ、当時の衝動を見つめたかった。そして、私たちは当時のコレクションを見て、 その建築的な美しさにフォーカス。クリスチャン・ディオールによる洋服の根底にある“JOIE DE VIVRE (生きる喜び)”のスピリットは常に保ちつつアーカイブの要素を取り入れ、ほぼ直感的に、今日に向けたマスキュリンな形に再解釈した」と述べています。

 そんなコレクションを象徴するのは、キムによるメンズで初めて登場した“バー”ジャケット。しつけ糸のような白いステッチなどラフなディテールをあしらうことで、アイコニックなカーブシルエットを取り入れながらも、男性にふさわしいジャケットやコートに仕上げています。そして、バッグ”レディ ディオール”などに見られる”カナージュ”パターンはパテントのコートやシアリングジャケットに採用。ムッシュがラッキーチャームとして用いたスズランをはじめとする花々が、クチュールメゾンらしい華やかな刺しゅうでセーターやジップアップブルゾンを彩ります。黒から始まり、グレーやパステルといったニュアンスカラーへと変わるカラーパレットは、夜が明け、朝日に照らされるパリの街にリンク。今年同メゾンのハットデザイナーに就任してから25周年になるというスティーブン・ジョーンズ(Stephan Jones)によるベレー帽や、バラの花束を包むバッグもパリジャンのイメージにつながります。

 分かりやすい“派手さ”はないけれど、繊細でロマンチックなコレクションには、うっとり。端正なテーラリングに軸足を置きつつも、ボトムはスエットパンツのようだったり、シャツとポロニットをレイヤードしたり、足元に「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」との初のコラボサンダルを合わせたりと、カジュアルや実用的な要素を取り入れて現代的かつエフォートレスに仕上げているのもさすがです。

16:30 JIL SANDER

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」は昨年9月にミラノで行ったウィメンズショーに続き、メンズでもついにショーを再開。ウィメンズでは会場は薄いパープルで統一されていましたが、こちらは暖かなオレンジ一色。カーペットの上に同様の起毛素材の椅子が並び、頭上には巨大なバルーンのような球体が浮かんでいます。

 パンダ・ベア (Panda Bear)やアニマル・コレクティブ(Animal Collective)の楽曲が流れる中、足早に歩くモデルがまとうのは、オーバーサイズのボクシーなテーラードジャケットやロングコートを軸にしたスタイル。そこに、今季はウィメンズにも見られるクロシェ(かぎ針編み)の装飾やネックアクセサリーを加えたり、星座モチーフのイラストを取り入れたり。ボトムスのテーラードパンツはウエストからももまでをレザーで切り替えたデザインもあり、シャープなポインテッドトーのアンクルブーツにインするのがポイントになっています。スカーフを細く丸めてベルトとして用いているのも新鮮でした。

 ここまでのメンズを振り返ってみると、テーラリングの新たな着こなし提案する流れは継続。「ジル サンダー」のルークとルーシー・メイヤー(Luke & Lucie Meier)も米「WWD」に「個をたたえたかった」と話していたようですが、ユニフォーム的ではなく個を主張・表現するためのテーラリングが広がっている印象です。

おまけ:本日のワンコ

 20日朝に、元コレットのサラ・アンデルマンが手掛けるプロジェクト「ジャスト アン アイデア ブックス(Just an Idea Books)」のポップアップストアのプレビューで、ワンちゃんを大量に発見!どの子もかわいくて、朝から癒されました〜。

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「ジル サンダー」2022-23年秋冬パリ・メンズ・コレクション

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」が2022-23年秋冬メンズ・コレクションをパリで発表した。

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「ディオール」2022-23年秋冬パリ・メンズ・コレクション

 「ディオール」が2022-23年秋冬メンズ・コレクションをパリで発表した。

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「エコストア」がプラスチックフリーの固形シャンプー&コンディショナーを発売

 ニュージーランド発ナチュラルデイリーケアブランド「エコストア(ECOSTORE)」は、固形タイプのシャンプー&コンディショナーを2月15日に発売する。3種のシャンプーバー“スムース&モイスト”、“ボリュームアップ”、“ドライ&ダメージ”(いずれも100g、税込11540円)と、“ナリッシング コンディショナーバー”(80g、税込1760円)をそろえる。

 今回発売するシャンプーバーとコンディショナーバーは、植物・ミネラル由来の成分を採用し、香りには天然のエッセンシャルオイルを配合。石けん成分不使用で、シャンプー&コンディショナー成分をそのまま濃縮しているため、1個でそれぞれ約60回の洗髪が可能だ。弱酸性で髪や肌を優しくいたわり、ノンシリコン処方で軽やかな髪へと導く。また、全てビーガン対応でクルエルティーフリーの認証を取得している。

 「エコストア」は以前からプラスチック削減に取り組んでいるが、シャンプーバー・コンディショナーバーはリサイクル可能な紙のパッケージに包まれたプラスチックフリーであることも特徴だ。液体タイプのシャンプー&コンディショナー(各350mL)に比べて、1.5〜2.5倍多く使用することができ、環境にも家計にも優しくすぐに実践できるサステナブルなアクションとして注目されている。

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