“エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る

 毎年、アメリカのヒップホップファンたちが発表を待ち望んでいる「XXL・マガジン(XXL Magazine)」の企画“XXL・フレッシュマン・クラス(XXL Freshman Class)”をご存知だろうか。同企画は、アップカミングな若手ラッパー約10人を紹介する企画で、これまでケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)やマック・ミラー(Mac Miller)、トラヴィス・スコット(Travis Scott)らが選出されてきた“新人の登竜門”である。その2021年版に選ばれたのが“エモラップ界のニューヒーロー”と称されるイアン・ディオール(Iann Dior)だ。

 エモラップとは、感傷的なリリックとロックのエッセンスを取り入れたジャンルである。故XXXテンタシオン(XXXTentacion)や故リル・ピープ(Lil Peep)らの影響で10年代後半から市場が拡大した。イアンは、高校生の頃に自主制作した楽曲が口コミで広まると、19年に若干20歳で「サウンドクラウド(SoundCloud)」で発表した「Cutthroat」が1300万再生以上を記録。さらに20年、旧友24k・ゴールデン(24kGoldn)とのコラボ楽曲「Mood」が「ビルボード(Billboard)」史に残るヒットソングとなり、21年には「フォーブス(FORBES)」の 「30アンダー30(30 UNDER 30、フォーブスが選ぶ30歳未満の30人)」にも名を連ねた。わずか数年で時の人となったイアン・ディオールとは、一体どんな人物なのか。あどけなさの残る23歳の彼にオンラインインタビューを実施し、ラッパーになった経緯や新作アルバムについて、大好きだというアニメやファッションなどの日本のカルチャーについても語ってもらった。

——プエルトリコで生まれテキサスで育ったそうですが、どのような環境でしたか?また、振り返ってどんな子どもでしたか?

イアン・ディオール:いつもヘッドフォンをしてフードを被って、あまり人と話さないような子どもだったね。でも結構早い頃からユーチューバーみたいなことをしていて、高校ではいつもカメラを手に持って歩いていたんだ。最初は周りから変なやつだって思われたけど、動画を投稿するようになってからは好評だったよ。

——ラップをするようになったきっかけは?友人から楽曲を作ってほしいと頼まれたことが原因と耳にしたことがあります。

イアン:16~17歳くらいの頃だったと思うけど、曲を作ってほしいと頼まれたんじゃなくて、友人のRJ・ボーイ(RJ BOY)に「レコーディングをやらないか」って声を掛けられたんだ。ちょうどビートのない状態でノートに書き留めていた「Where You At」という楽曲があったから、チャレンジしてみることにした。彼は自分の部屋をスタジオ仕様にしていたんだけど、レコーディングの直前にバスルームに駆け込んだことをよく覚えているよ(笑)。実はビートを用意していなくて、急いで曲に合うビートをユーチューブで探したんだ。偶然いいビートが見つかったからメロディも少し変えて、彼の部屋に戻ってレコーディングをした。これがきっかけで楽曲制作が好きになったんだよ。

あと、別の友達のハーフタイム(Halftime)も同じように部屋をスタジオ仕様にしていたから、彼とは毎日のように曲をレコーディングしていたね。平日の午前3時に「マジで今録らないとヤバい曲がある」って電話したら、彼が母親の車ですぐに迎えに来てくれて、朝までレコーディングをし、そのまま学校に行ったこともあったね。

——インターネット・マネー(Internet Money、LAを拠点とするプロデューサー集団)に発掘されたことがデビューのきっかけのひとつだそうですが、この経緯は?

イアン:インターネット・マネーと契約はしなかったんだけど、ある日、俺の楽曲をたまたま聴いた創設者のタズ・テイラー(Taz Taylor)から楽曲制作の連絡があったんだ。すぐにロサンゼルスに飛んで2曲を制作したらそれが高く評価されて、レーベル12社とのミーティングが決まった。そんな感じで、短期間の間にとんとん拍子に事が運んでいったのさ。

——先ほど、初めてレコーディングをした時に楽曲をノートに書き留めていたと話していましたが、昔からラッパーになることを意識していたからでしょうか?

イアン:もともと詩やリリックを書くことが好きで、いつもノートに書き溜めていたんだ。だから最初にレコーディングに誘われたとき、ノートにはリリックが出来上がった状態の「Where You At」がすでにあって、あとはビートを見つけて微調整するだけでよかったってこと。

——ネガティブな表現の多いリリックは実体験が多いそうですね。書く際に意識していることは?

イアン:昔と違って、今はビートを聴いてからリリックを書くようになったね。ビートから何かを感じ取って、そこに自分が綴りたい内容を乗せる感じ。

——ビートを聴いて、まずはテーマを決めるのか、それとも思いついたフレーズから広げていく感じですか?

イアン:スタジオに入ってから2~3通りのメロディーを歌ってみて、そこから作り上げていく流れかな。気に入ったメロディーを軸に、「これはフックがいい」や「これは曲の終わりに使おう」とか考えながら構成していく。こうやって大枠が決まったところで、リリックを書き始めるんだ。リリックのテーマは例えば、ビートを聴いて「高校時代を思い出す」って感じたら「当時はこんなことを考えて生活していたな」ってイメージを広げ、当時抱えていた気持ちについて綴ってみるんだ。

——1月に2ndアルバム『on to better things』をリリースしました。タイトルに込めた思いは?

イアン:これまで自分がやってきたバカなことを断つ、という宣誓のようなもの。アルバム制作前までは何も考えていなかったけど、これをきっかけに「自分の健康を考え、より良い生き方をする」って誓いたかったんだ。

——アルバムはどのようなプロセスで制作を進めましたか?また、コロナ禍の影響はありましたか?

イアン:この数年は自分に限ったことではなくて、世間にとっても異常な時期だったと思う。コロナのせいで精神的にやられて、ネガティブなことばかり考えるようになった。しかも、コーヒーを買いに外に出ることすらもできない。マスクで鼻を覆っていないだけで怒鳴られることもあった。もう違和感だらけで、外に出るのも嫌になったよ。

アルバムには、家族の問題だったり、自分自身を好きになれずにいたことだったり、そこからありのままの自分を受け入れるまでの道のりだったり、その時々で抱えていた感情を反映している。「自分自身を愛せなければ人を愛せない」ってみんな言うけど、自分がまさにそうで、全てが嫌になっていた。夢に描いていた全てを手に入れたのに、なぜ自分はこんなにも満たされないのかーーこのアルバムを作ることで、少しずつその答えを見つけていったね。

——リードシングルでもある収録曲「let you」について、何かエピソードはありますか?

イアン:この曲とビデオのコンセプトはサーカスで、自分にとってのロサンゼルスを例えているんだ。みんな衣装を着てカッコ良く見せようとして、ショービズで仕事していることに特権を感じている。あと、当時めちゃくちゃ大好きだった女の子がいたんだけど、その子も俺もこの世界にいて、2人とも衣装を着て大見栄を張っていた。俺にとって「let you」は、彼女との関係を断つと同時に、ショーオフな生き方も断ち切ることを意味しているんだよ。心の底から愛している相手だったから、その人が何をしようと許せたんだけど、「もう限界だ。さようなら」って最後のきっかけに制作したのさ。

——コンセプトにサーカスを選んだのは、“いかに自分をよく見せるか”という最近のSNSの体質も意味していますか?

イアン:SNSにもそういった側面はあるけど、俺からするととにかくロサンゼルスが普通じゃないんだよ。世界のほかのどの場所とも違う。「へえ、その服ブランドものじゃないんだ」って感じで、見た目で物差しを測ってくる。普通じゃダメで、普通の人だと受け入れられない。正直、あまり好きじゃないね。

——収録曲「complicate it」でも女の子に関してラップしていますね。

イアン:そうだね。「どうしたらいいんだ。全て完璧なはずなのに、ものすごく面倒臭い」っていう女の子。ちょっとしたことで口論になり、最終的に彼女が「大嫌い」と言い出して、俺が「嘘だ。愛しているだろ。何を言ってるんだ」って返す。この曲は、「大変だけど、絶対に諦めない。君を愛しているから」という俺の気持ちを楽曲にしているんだ。

——今作ではさまざまなラッパーをフィーチャーし、一方でこれまで数々フィーチャーもされてきました。特に気の合う人は?

イアン:今1番好きなのは、断然リル・ウージー・ヴァート(Lil Uzi Vert)。彼の音楽が大好きだからね。あとはガンナ(Gunna)とリル・ベイビー(Lil Baby)。この3人が、俺にとってのトップ3だ。

——では、一緒に楽曲を作りたい人は?

イアン:ヤング・サグ(Young Thug)と組んでみたいし、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)とポスト・マローン(Post Malone)とも仕事をしてみたい。

——ジャンルの垣根を超えたコラボが多いのは意図的?

イアン:もちろん!「On To Better Things」の前に1stミックステープ「Nothings Ever Good Enough」と1stアルバム「Industry Plant」をリリースしてるけど、どちらの時も完成させた瞬間に「何か違う。記憶から消したい」と納得していなかった。でも今回は出来た時に「これはいい。気に入った。すぐに出したい」って思ったね。実際、自分の納得がいく作品にするために500曲は用意したよ。

——少し過去の話をすると、2020年にリリースした24k・ゴールデンとの「Mood」は日本でも人気ですが、何かエピソードはありますか?

イアン:「Mood」は、アパートのベッドルームで仲間とつるんでいた時にできた曲なんだ。みんなでシューティングゲームの「コール オブ デューティ(Call Of Duty)」をプレイしている最中に、「曲を作ろうぜ」って話になったらすぐに完成して、また「コール オブ デューティ」をプレイした(笑)。当時は、そんなにイカした曲だって自覚は全くなくて、リリースする直前に「これ、マジでいい曲じゃん」って気付いたくらい。何週にもわたって全米1位を獲るとは思っていなかったよ。

——シングル「Shots In The Dark」のアートワークは、日本人アーティストのSora Aota(K2)がデザインしています。そのきっかけを教えてください。

イアン:彼から「何かデザインしたい」とインスタグラムでDMをもらったのがきっかけだね。彼の投稿を見たらすぐに才能を感じ、「『Shots In The Dark』のために何か作ってみてよ」と頼んだらアートワークを送ってきてくれて、とても気に入ったから採用することにしたんだ。

アーティスト名は「ディオール」が由来

——名前のディオールは、ファッションブランドの「ディオール(DIOR)」と関係がありますか?

イアン:そうだね。ロサンゼルスに移住した時に自分のことが嫌いで、チャンスを目の前にして生まれ変わった新しい自分としてスタートを切りたかったから、名前をイアン・ディオールに変えた。これは、自分のミドルネームと絶対に手の届かないブランド名の組み合わせ。あまり時間をかけずにパッと思い付くままに決めたのもあって、いい名前かどうか自分でも分からなかったし、「みんなきっと嫌いだろうな」とさえ思ったよ。でも、そのまま使い続けてるうちに定着したね。

——数あるブランドの中から、なぜ「ディオール」を?

イアン:1番お気に入りのブランドだったから。今でもそうだね。上品だし、プリント使いがとにかく好きなんだ。「ディオール」と「ゴヤール(GOYARD)」のプリント柄が好きだね。

——ほかにお気に入りのブランドはありますか?

イアン:挙げ出したらキリがないけど、「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」と「リック・オウエンス(RICK OWENS)」は最高。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」と「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」「ミキモト(MIKIMOTO)」も好き。アメリカと比べて、日本のファッションはすごく進んでいると思う。ロサンゼルスにエイチ・ロレンゾ(H. Lorenzo)ってセレクトショップがあるんだけど、そこは日本のブランドばかり取り扱っていて、店のオーナーに「俺に見せるまで日本のブランドのアイテムは誰にも売らないでくれ」って冗談を言うくらい気に入ってる。いま履いているパンツもエイチ・ロレンゾで買った日本のブランド。名前は忘れちゃったけど(笑)。

——ほかにアメリカでお気に入りのショップは?

イアン:またロサンゼルスなんだけど、セレクトショップのマックスフィールド(MAXFIELD)や、ランウエイのアイテムも取り扱っているデパータメント(Departamento)によく行くね。あとは、アーカイブをたくさん持っている子たちとインスタグラムでつながっていて、彼らから買うことが多いね。というのも、俺は自分と全く同じものを着ている人を見かけることが1番ムカつくんだ(笑)。1990~2000年代のアーカイブを着ている人は、なかなかロサンゼルスにはいないからね。

——ロサンゼルスにはアーカイブを取り扱うショップは少ないんですか?

イアン:ウェイストランド(Wasteland)ってショップがあるけど、数は少ないしリサイクルに近いね。インスタグラムで繋がった子たちの家に行くと、めちゃくちゃ良いアーカイブがラック単位で置いてあるから、大抵の欲しいものが見つかるんだ。最近だと「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のデニムを手に入れたよ。

——では、日本で行きたいショップは?

イアン:エイチ・ロレンゾで働いているマックって仲良いスタッフの父親がセレクトショップのオーナーで、オススメの日本のショップをたくさんリストにしてくれたんだ。だから今度日本に行ったときは、1週間くらい滞在してリストを制覇するつもり。「スーパー・ニンテンドー・ワールド(SUPER NINTENDO WORLD)」にも行きたいね(笑)。あとは、村上隆が1番お気に入りのアーティストだから彼の洋服や作品が欲しいし、日本には俺が1番好きな日産のスカイラインGT-Rもあるらしいから、マジで早く行きたいよ。

——ファッションにおいて、何かを参考にすることはありますか?

イアン:子どもの頃からファッションが好きで、自分のお金で買えるようになってからはショップに足を運び、試着を繰り返して変わったスタイルを見つける。それが自分流のこだわり。例えば、お金が入って最初に買ったのはパールのネックレス。その頃は誰もパールなんて着けてなくて、それだけでひどいことも言われた。それが今では、みんながパールを着けるようになった。笑っちゃうよね。昔からファンキーな洋服を着ていると父親に笑われたけど、最近は彼も少し分かってきたみたいで、そんなに笑わなくなった。誰かを参考にしているというよりも、昔から興味があって今につながったって感じかな。

——ヘアスタイルもアイコニックですが、どんなこだわりが?

イアン:なぜドレッドを前に垂らしてるかっていうと、昔はきれいドレッドだったんだけど、母親にブラシでほぐされちゃったんだ(笑)。ドレッドは頭皮に負担がかかるから痛くて、ある日、その痛みに耐えられなくなって母親にほぐしてもらうことにした。でも、それすら痛すぎて途中で止めてシャワーを浴びたら今の髪型になっていて、意外と気に入ったから続けてる。最近ブロンドに染めたよ。

——ネイルもよくしていますね。

イアン:清潔でいることは大事だと思っているから、ネイル、フェイス、ヘアの手入れは怠らないね。女の子なら特に共感してくれるはずさ。

「ヒロアカ」が1番好きなアニメの理由とは?

——2019年にマイアミで開催されたヒップホップフェス「ローリングラウド(Rolling Loud)」では、ヒトカゲのバックパックを背負っていましたね。日本のアニメや漫画が好きになったきっかけは?

イアン:子どもの頃から当たり前のようにテレビでたくさんのアニメを見てきたけど、それが日本のものだって知らなかったんだ(※アメリカでは、2000年代前半から日本のアニメ専門チャンネルが人気)。際どい表現も結構あって、母親によく怒られたよ(笑)。小さい頃に好きだったアニメは「ソウルイーター」で、「寄生獣」にもハマってたね。

——1番好きなアニメは?

イアン:「僕のヒーローアカデミア」さ!主人公の緑谷出久に自分を重ね合わせちゃうんだ。

——日本人で会いたい人はいますか?

イアン:誰だろう。村上隆はもちろん会いたいけど、実際に行ったら俺がまだ知らないクールな人たちと出会えるんじゃないかな。アメリカにいると、入ってくる情報が限られてしまっているからね。かっこいいビジュアル・アーティストやミュージシャンに会ってみたいな。

——スケートボード好きとして、日本で開催された「Xゲーム(X Games)」は注目していましたか?

イアン:12歳の頃からスケートボードをやっていて、「Xゲーム」に出場するのが夢だったこともある。それに毎年父親と欠かさず観ているから、日本で開催されるのに観に行けないのがめちゃくちゃ悲しい。スノーボードやダートバイクも昔から好きで、いろんなエクストリーム・スポーツを父親と一緒に見て育ったから、「Xゲーム」は2人の絆を深める時間だったんだ。堀米雄斗は、自国で開催されたオリンピックも「Xゲーム」も優勝してすごいよ。

The post “エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る appeared first on WWDJAPAN.

中国の若き富裕層に人気のウエディングドレスとは? 注目の4ブランドを紹介

 中国のブライダル業界では、民族衣装をモダンに再解釈したデザインのウエディングドレスが次世代の富裕層を中心に盛り上がりを見せている。伝統的に着用されてきた白いウエディングドレスから脱却し、カラフルで金のドラゴンやフェニックスの柄が入ったものなどが人気だという。注目の中国ブライダルコレクションを紹介する。

 中国本土のみならず、香港やシンガポールにもクライアントを抱える「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」。デザイナーのザンは、新型コロナウイルスのパンデミックから2年余りが経った今、結婚式を挙げるカップルが急増し、ウエディングドレスを手掛けてほしいと望む声が多くなったという。「ブライダルコレクションを開始してから、既存の顧客だけでなく、新しい客層にもリーチできるようになった。需要は確実にあったので、思い切ってブライダルのみのコレクションを発表した。羽やスパンコールがついたウエディングドレスを着たお客様を見るのはとても楽しい。中国では自身のスタイルに合わせたドレスが選べるからか、ブライダルに特化したブランドより、既製服も手掛けるブランドのドレスが特に人気だ。中国の結婚式ではお色直しを何度もするので、特に色やスタイルに工夫があるデザインが好まれている」と語る。

 シアー素材やビーズを使った幻想的でエアリーなデザインが特徴の「スーザン ファング(SUSAN FANG)」は、セルフリッジ(SELFRIDGES)やドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、ブラウンズ(BROWNS)といった欧米のセレクトストアにも出店する。デザイナーのファングは、「自分の好みや求めるものを把握している人が多く、オーソドックスなトレンドを真似するのではなく、どこかユニークで作り手の愛が詰まった一着を探している。当ブランドのドレスは自然に着想を得ており、楽しさとともに優美さや幽玄的な雰囲気を表現している。特別な機会や、ウエディングにもマッチするドレスだ」と語った。中でも人気なのは、レイヤーと刺繍を加えたオーガンザ素材のドレス。カラフルな羽を刺繍し、水彩画のようなデザインに仕上げたものだ。

 キャロライン・フウ(Caroline Hu)は、スモッキング刺繍を巧みに使って水彩画のタッチを再現し、フェアリーな雰囲気をまとったドレスを手掛ける。22年現在、オーダーの半分はウエディング関連だという。オーダーのほとんどは白いドレスを「キャロライン・フウ」風にアレンジしたものが占めるが、中にはより大胆なカラーを注文する顧客も増えている。

 22年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリストに選ばれているユキィ・キィ(Yueqi Qi)。友人でインフルエンサーのクリスティン・サン(Christine Sun)のために、刺繍デザインを施した黒いウエディングドレスを手掛けたことをきっかけにブライダル関連の需要の高さを実感しているという。「サンは暗い色で、中国文化の要素があり、夫と自分の名前があしらわれたドレスを希望した。王道のウエディングブランドも試してみたものの、ほとんどが伝統的な西洋スタイルの白いドレスで気に入らなかったようだ。もっと特別な一着を探して、私に声をかけてくれた」と語る。

The post 中国の若き富裕層に人気のウエディングドレスとは? 注目の4ブランドを紹介 appeared first on WWDJAPAN.

中国の若き富裕層に人気のウエディングドレスとは? 注目の4ブランドを紹介

 中国のブライダル業界では、民族衣装をモダンに再解釈したデザインのウエディングドレスが次世代の富裕層を中心に盛り上がりを見せている。伝統的に着用されてきた白いウエディングドレスから脱却し、カラフルで金のドラゴンやフェニックスの柄が入ったものなどが人気だという。注目の中国ブライダルコレクションを紹介する。

 中国本土のみならず、香港やシンガポールにもクライアントを抱える「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」。デザイナーのザンは、新型コロナウイルスのパンデミックから2年余りが経った今、結婚式を挙げるカップルが急増し、ウエディングドレスを手掛けてほしいと望む声が多くなったという。「ブライダルコレクションを開始してから、既存の顧客だけでなく、新しい客層にもリーチできるようになった。需要は確実にあったので、思い切ってブライダルのみのコレクションを発表した。羽やスパンコールがついたウエディングドレスを着たお客様を見るのはとても楽しい。中国では自身のスタイルに合わせたドレスが選べるからか、ブライダルに特化したブランドより、既製服も手掛けるブランドのドレスが特に人気だ。中国の結婚式ではお色直しを何度もするので、特に色やスタイルに工夫があるデザインが好まれている」と語る。

 シアー素材やビーズを使った幻想的でエアリーなデザインが特徴の「スーザン ファング(SUSAN FANG)」は、セルフリッジ(SELFRIDGES)やドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)、ブラウンズ(BROWNS)といった欧米のセレクトストアにも出店する。デザイナーのファングは、「自分の好みや求めるものを把握している人が多く、オーソドックスなトレンドを真似するのではなく、どこかユニークで作り手の愛が詰まった一着を探している。当ブランドのドレスは自然に着想を得ており、楽しさとともに優美さや幽玄的な雰囲気を表現している。特別な機会や、ウエディングにもマッチするドレスだ」と語った。中でも人気なのは、レイヤーと刺繍を加えたオーガンザ素材のドレス。カラフルな羽を刺繍し、水彩画のようなデザインに仕上げたものだ。

 キャロライン・フウ(Caroline Hu)は、スモッキング刺繍を巧みに使って水彩画のタッチを再現し、フェアリーな雰囲気をまとったドレスを手掛ける。22年現在、オーダーの半分はウエディング関連だという。オーダーのほとんどは白いドレスを「キャロライン・フウ」風にアレンジしたものが占めるが、中にはより大胆なカラーを注文する顧客も増えている。

 22年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリストに選ばれているユキィ・キィ(Yueqi Qi)。友人でインフルエンサーのクリスティン・サン(Christine Sun)のために、刺繍デザインを施した黒いウエディングドレスを手掛けたことをきっかけにブライダル関連の需要の高さを実感しているという。「サンは暗い色で、中国文化の要素があり、夫と自分の名前があしらわれたドレスを希望した。王道のウエディングブランドも試してみたものの、ほとんどが伝統的な西洋スタイルの白いドレスで気に入らなかったようだ。もっと特別な一着を探して、私に声をかけてくれた」と語る。

The post 中国の若き富裕層に人気のウエディングドレスとは? 注目の4ブランドを紹介 appeared first on WWDJAPAN.

パールはサステナブルなジュエリー エジソンも驚いた「ミキモト」のパール養殖発明、そして、ゼロ・エミッション養殖

 日本におけるジュエリーの代表格といえば、パールネックレスだろう。冠婚葬祭には欠かせないもので、誰もが目にしたことがあるものだ。最近では、ジュエラー「ミキモト(MIKIMOTO)」と「コム デ ギャルソン(COMMES DES GARCON以下、ギャルソン)」がコラボレーションし、パールのネックレスへの注目度が急上昇。同コラボにより、パールネックレスは女性だけのものでなく、男性へも広がった。そして、パールが、ミレニアル世代をはじめとする環境に配慮する世代が“サステナブル”と認識するジュエリーになっている。エンゲージメントリングというとダイヤモンドが一般的。だが、ミレニアル世代などは、パールを選ぶ人が増えているそうだ。

エジソンが驚いた真珠養殖、そして、真珠を育む海を守る「貝リンガル」

 現在、市場で販売されているパールのほぼ100% は養殖によるものだ。「ミキモト」の創業者である御木本幸吉は、1893年に世界で初の真珠の養殖に成功。発明王のトーマス・エジソン(Thomas Edison)は、「真珠の養殖発明は世界の驚異だ」と感嘆したという。御木本の「多くの女性をパールで飾りたいという思い」が発明につながり、真珠王と呼ばれるようになった。彼は1900年初頭に、真珠の研究のためにミキモト真珠研究所を開設。そこでは、パールに関する総合的な研究および生産に関する研究が行われている。

 ミキモト真珠研究所は2004年に、九州大学と東京測器研究所とともに、2枚貝の生体反応を利用した世界初の水質環境観測システム「貝リンガル」を共同開発。「貝リンガル」とは、2枚貝が生息環境の異常を察知すると、通常とは異なる貝殻の開閉運動をすることに着目し、貝殻にセンサーと小型磁石を取り付けて水中の貝の開閉運動のデータをパソコンへ送り、24時間監視するというものだ。「貝リンガル」の開発により、真珠養殖海域で発生する赤潮などの環境異変を早期発見し、アコヤガイへの被害を防ぐことができるようになった。また、「貝リンガル」は、環境への負荷・貝への負担を減らすことを念頭に置いて開発されており、養殖海域だけでなく、二枚貝が生息する場所であれば、海、淡水湖、河川など、どのような環境でも監視ができる。ミキモト真珠研究所では、「貝リンガル」をバロメータとして真珠を育む海を守るための研究を行っている。

無駄なものはないパール養殖

 「ミキモト」では、ゼロ・エミッション型の真珠養殖実現に向けた取り組みを行っている。ゼロ・エミッションとは、産業廃棄物の排出をゼロにするシステムのことで、環境保全の観点からさまざまな製造現場で取り入れられている。真珠の養殖過程では、真珠収穫後に化粧品原料や貝柱(食用)の他に、貝殻と貝肉が出る。それらにはカルシウムやタンパク質(コンキリオン)、コラーゲンなどの有用物質が含まれており、化粧品や健康食品へ利用されている。ミキモト真珠研究所では、今まで廃棄されていた貝肉も、一部がコンポスト(堆肥)の原料として再利用できることを実証した。貝殻は、土壌改良剤として野菜畑へ散布されるそうだ。

 「ミキモト」といえばパールだが、オリジナルのコスメを開発製造する姉妹企業のミキモト コスメティックスがある。同社では、真珠養殖のバイプロダクトである真珠層・真珠貝由来成分を配合した独自の処方のコスメを製造販売している。

The post パールはサステナブルなジュエリー エジソンも驚いた「ミキモト」のパール養殖発明、そして、ゼロ・エミッション養殖 appeared first on WWDJAPAN.

「ローブス アンド コンフェクションズ オム」2022-23年秋冬メンズ・コレクション

 「ローブス アンド コンフェクションズ オム(ROBES & CONFECTIONS HOMME)」が2022-23年秋冬メンズ・コレクションを発表した。

The post 「ローブス アンド コンフェクションズ オム」2022-23年秋冬メンズ・コレクション appeared first on WWDJAPAN.

「ローブス アンド コンフェクションズ オム」2022-23年秋冬メンズ・コレクション

 「ローブス アンド コンフェクションズ オム(ROBES & CONFECTIONS HOMME)」が2022-23年秋冬メンズ・コレクションを発表した。

The post 「ローブス アンド コンフェクションズ オム」2022-23年秋冬メンズ・コレクション appeared first on WWDJAPAN.

資生堂の進化したパーソナルサービスを体験 新しい自分を発見!

 資生堂は店頭で受けたカウセリングサービスをスマートフォンなどからいつでも振り返ることができるデジタルサービス「パーソナルビューティープラン」を2月にスタートした。店頭外でも美容体験がシームレスにできるという同サービスを試したところ、デジタル上でも美容スタッフ(以下、BC)の温かみを感じられるものだった。

 「パーソナルビューティープラン」は、BCとデジタルの利便性をつなぎ、充実した美容体験を提供するサービスだ。まずは店頭に用意してある端末でスキンケアとメイクアップのどちらかを選択(今回はメイクアップを選んだ)。顔を撮影してもらうと、肌測定や眉の太さ、アイラインの入れ方などが表示される。パーソナルカラーも分かるので、それらを総合してBCのアドバイスが受けられる。

 ただ、ここまでは他社でも同様のサービスはある。異なる部分は、自分が日常的に使用しているアイテム(他社製品を含む)を打ち込むことで、最適な使用順も表示されること。また、BCからのアドバイスをあえて手書きで書き込める仕様にもなっているため印象に残りやすい。これは「パーソナルな付き合いを進化させた形」(開発担当者)という。「AIで一人一人の適正製品を推奨するのは簡単だが、BCのアドバイスを反映し組み合わせるシステム開発に苦労した」と述べた。

 画面上では、自分がなりたいイメージ(例えばかわいい、ゴージャスなど)を選ぶと、その雰囲気を演出できるアイテムが同社の製品の中でブランド横断で表示される。画面上でバーチャルメイクも試せるため、視覚的にも理解しやすい。気に入った色は実際に試すこともできるため「お客さまが求める接客(非接触、接触)が可能で、人とデジタルが融合することで新しい付加価値を提供する」ことができるようになった。ちなみにナチュラルメイクが基本の中で、なりたいイメージにゴージャスを選んでみたところ、目元がゴールドで彩られ新しい自分を知ることができた。トータルの所要時間は25分程度。時間の確保が難しい人には5分程度で対応することも可能だ。

 一連の応対の記録は2次元コード(QRコード)を自分のスマートフォンで読み取ることで、いつでも振り返ることができる。自分の顔が表示され、そこにアイシャドウやアイラインの入れ方が手書きで記録されているため、印象に残るし理解もしやすい。そのほか、肌状態に合わせた効果的なお手入れ方法やURL添付機能によるおすすめ製品情報、ブランド情報、使い方動画などのコンテンツ視聴やウェブカウンセリング予約などにも対応。店頭外でもパーソナルな美容情報の体験ができるのがポイントだ。

 同サービスは、同社がBCを派遣する全国の百貨店やGMS、ドラッグストア、化粧品専門店約3300店舗で導入中だ。同サービスで蓄積したパーソナルデータは、2020年から順次導入する店頭顧客管理システム(S-CORE)と連携し、将来的には化粧品だけでなく、インナーケアや睡眠、運動、ストレス、ホルモン変化などを加味し、パーソナルサービスの充実を図るという。

The post 資生堂の進化したパーソナルサービスを体験 新しい自分を発見! appeared first on WWDJAPAN.

資生堂の進化したパーソナルサービスを体験 新しい自分を発見!

 資生堂は店頭で受けたカウセリングサービスをスマートフォンなどからいつでも振り返ることができるデジタルサービス「パーソナルビューティープラン」を2月にスタートした。店頭外でも美容体験がシームレスにできるという同サービスを試したところ、デジタル上でも美容スタッフ(以下、BC)の温かみを感じられるものだった。

 「パーソナルビューティープラン」は、BCとデジタルの利便性をつなぎ、充実した美容体験を提供するサービスだ。まずは店頭に用意してある端末でスキンケアとメイクアップのどちらかを選択(今回はメイクアップを選んだ)。顔を撮影してもらうと、肌測定や眉の太さ、アイラインの入れ方などが表示される。パーソナルカラーも分かるので、それらを総合してBCのアドバイスが受けられる。

 ただ、ここまでは他社でも同様のサービスはある。異なる部分は、自分が日常的に使用しているアイテム(他社製品を含む)を打ち込むことで、最適な使用順も表示されること。また、BCからのアドバイスをあえて手書きで書き込める仕様にもなっているため印象に残りやすい。これは「パーソナルな付き合いを進化させた形」(開発担当者)という。「AIで一人一人の適正製品を推奨するのは簡単だが、BCのアドバイスを反映し組み合わせるシステム開発に苦労した」と述べた。

 画面上では、自分がなりたいイメージ(例えばかわいい、ゴージャスなど)を選ぶと、その雰囲気を演出できるアイテムが同社の製品の中でブランド横断で表示される。画面上でバーチャルメイクも試せるため、視覚的にも理解しやすい。気に入った色は実際に試すこともできるため「お客さまが求める接客(非接触、接触)が可能で、人とデジタルが融合することで新しい付加価値を提供する」ことができるようになった。ちなみにナチュラルメイクが基本の中で、なりたいイメージにゴージャスを選んでみたところ、目元がゴールドで彩られ新しい自分を知ることができた。トータルの所要時間は25分程度。時間の確保が難しい人には5分程度で対応することも可能だ。

 一連の応対の記録は2次元コード(QRコード)を自分のスマートフォンで読み取ることで、いつでも振り返ることができる。自分の顔が表示され、そこにアイシャドウやアイラインの入れ方が手書きで記録されているため、印象に残るし理解もしやすい。そのほか、肌状態に合わせた効果的なお手入れ方法やURL添付機能によるおすすめ製品情報、ブランド情報、使い方動画などのコンテンツ視聴やウェブカウンセリング予約などにも対応。店頭外でもパーソナルな美容情報の体験ができるのがポイントだ。

 同サービスは、同社がBCを派遣する全国の百貨店やGMS、ドラッグストア、化粧品専門店約3300店舗で導入中だ。同サービスで蓄積したパーソナルデータは、2020年から順次導入する店頭顧客管理システム(S-CORE)と連携し、将来的には化粧品だけでなく、インナーケアや睡眠、運動、ストレス、ホルモン変化などを加味し、パーソナルサービスの充実を図るという。

The post 資生堂の進化したパーソナルサービスを体験 新しい自分を発見! appeared first on WWDJAPAN.

「ローブス アンド コンフェクションズ」2022-23年秋冬コレクション

 「ローブス アンド コンフェクションズ(ROBES & CONFECTIONS)」が2022-23年秋冬コレクションを発表した。

The post 「ローブス アンド コンフェクションズ」2022-23年秋冬コレクション appeared first on WWDJAPAN.

米国小売業のダイナミズムを描く「アマゾンVSウォルマート」

 WWDJAPAN.comの「鈴木敏仁USリポート」でおなじみのロサンザルス在住の著者が、米国小売業を代表する2社に肉薄した「アマゾンVSウォルマート〜ネットの巨人とリアルの王者が描く『小売』の未来〜」(ダイヤモンド社)は、ファッションやビューティにかかわる業界人にとっても必読の一冊だ。まったく出自の異なる2社を比較することで、その思想と戦略の違いを鮮明する。そして意外な共通点も見えてくる。

 全産業を対象にした米国企業売上高ランキング(2020年)によると、ウォルマートが5591億ドルで1位、アマゾンが3860億ドルで2位だった。過去20年で売上高を倍増させたウォルマートを、2ケタ成長のアマゾンが猛追している。米国の小売業界は、2社を軸に動いているといっても過言ではない。そして両社の動向は、人々の暮らしを変える影響力を持っている。

 本書ではメディアで断片的に報じられてきた両社の動きを、時系列に、筋立てて、ディテール豊かに分析することで、ビジネスの本質を浮き彫りにした。

 鈴木氏がアマゾンを理解するきっかけになった元幹部の「アマゾンはEC企業ではない、データ企業だ」という言葉の意味を、たくさんの事例を通して追体験できる。そして大型店舗を持つウォルマートのDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功が、半世紀前から脈々と続くテクノロジー経営の延長線上にあることに驚くだろう。「小売業は変化対応業」という格言があるが、この2社はそれを体現してきた。

 鈴木氏はエピローグでこうつづる。「日本の自動車業界のように、どこの国にも世界に誇ることができる業界があるもので、アメリカにとっては小売業界がそれにあたるのだろう」

 シリコンバレーのIT業界にばかりに目を奪われがちだが、アメリカはいつの時代も革新的な小売業のガリバーを生み出してきた。日本の高度経済成長期にダイエー、イトーヨーカ堂、ジャスコは徹底的にシアーズを、1980年代以降のアパレル各社もSPA(製造小売り)を生み出したギャップを徹底的に研究した。
 
本書には、ECの枠を超えて世界の人々の生活を変える存在になったアマゾン、老舗小売業でありながらDXの先端を走るウォルマートの事例を通じて、小売業を考えるヒントが散りばめられている。

The post 米国小売業のダイナミズムを描く「アマゾンVSウォルマート」 appeared first on WWDJAPAN.