小原亦聡(おはら・いそう) / ブリジャール社長:2007年に京都大学経済学部卒業。09年に京都大学経営管理大学院でMBAを取得後、モルガン・スタンレー証券に入社し、法人営業として活躍。14年にメリルリンチ日本証券入社し、債券部でヴァイスプレジデントに就任。17年12月にブリジャールを設立。3児の母
ダイヤモンドの代わりにラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)を使用したジュエリーブランドが増えつつある。ラボグロウンとはダイヤモンドと同じ組成を持つ工業製品。ダイヤモンドよりエシカルかつ安価ということで、手に取りやすくファッション感覚で日常使いできるジュエリーを中心に存在感が高くなっている。ダイヤモンドの代替品はラボグロウンだけではない。組成は違うが、ダイヤモンドより光の屈折率が高く、耐熱性も高い。そして、1カラット10万円程度と、ラボグロウンよりさらに安価だ。モアサナイト専門ジュエリーのパイオニアである「ブリジャール(BRILLAR)」の小原亦聡社長に商況について聞いた。
WWD:ブランド立ち上げ以降の売上高の推移は?
小原亦聡ブリジャール社長(以下、小原): 2017年1月に創業して、売上高は毎年前年比2割増だった。ブランド設立5周年だった昨年の売上高は同10%増で、伸長率が落ち着いた。伊勢丹新宿本店(以下、伊勢丹)のバイヤーから声がかかり昨年9月、伊勢丹2階で5周年記念のポップアップショップを開催した所、過去最高の単月売上高を記録。半分以上が新規顧客で、初めて見るモアサナイトを即日オーダーする人もいた。地方の百貨店でもポップアップを開催し、認知度アップを図りたい。モアサナイトを見てみたいという消費者には、オフラインアプローチが大切だ。
WWD:ブランドのコンセプトは?
小原: 耐久性はダイヤモンドと変わらない、後世に引き継げるジュエリー。多彩なデザインがあるので、実際に使って楽しめる。
WWD:現在の型数や売れ筋は?
「ブリジャール」のエンゲージメントリング。左から、税込 4万7000円(1.5CT、18KYG)、16万6000円(2CT、18KWG)、13万2000円(1.5CT、18KYG)、15万2000円(1.5CT、18KWG)、18万9000円(2CT、18KYG)
鍛造のリング。左から、税込10万円(0.6CT、PT)、9万3000円(0.1CT、PT)、10万3000円(0.005CT、PT)
小原: デザインは900以上で、在庫があるのは100型。他は受注生産だ。全てのデザインを公式ECで見ることができる。売れ筋は、リング、ネックレス、ピアス、ブレスレットの順。モアサナイトの認知度がアップして、高額品の動きが良い。ダイヤモンドに憧れはあるが、買えない層に響いている。ブライダルでは、エンゲージとマリッジを同じ所で購入したいという要望が多く、マリッジとして、鍛造(金属を叩いて強度を高め目的の形状に成形すること)とモアサナイトを組み合わせた商材を導入したところヒット。中心価格帯はエンゲージが10万〜20万円台前半、マリッジは、10万円程度だ。日常使い用にエンゲージ風リングを購入するキャリア層もいる。ネックレスは11万程度、ピアスはペアで14万円程度、ブレスレットはステーションタイプが9万円程度、テニスブレスレットで22万程度のものが好評だ。
WWD:顧客の年齢層は?
小原: ブライダルは20〜30代のカップルで、自家需要は30〜40代の女性が中心。親子で購入するケースもある。
原材料の製造特許も取得し、環境に優しく低コストで
WWD:他のモアサナイトのブランドとの差別化は?
小原: モアサナイトを取り扱うブランドが増えるのは、認知度がアップするので嬉しい。パイオニアのブランドとして、品質やデザイン、サービス、提案力の高さで差別化を図る。一生使えるジュエリーとしてアフターサービスにも力を入れていく。
また、原材料のモアサナイトの製造方法について、国内および中国で特許を取得した。モアサナイトは炭化ケイ素の結晶で化学式ではSiCと表記される。通常琥珀色をしている結晶体を無色透明化する方法だ。それにより、低コスト、環境負荷が少なくモアサナイトを製造できる。現在、米国でも、日本貿易振興機構(JETRO)の助成をうけ、取得手続き中だ。
WWD:ブランドとモアサナイトの認知度アップに行っていることは?
チャリティージュエリー。左から、6万3000円(0.48CT)、6万3000円(0.59CT)
小原: SNS発信の強化はもちろんだが、今後は「インスタグラム」に頼りすぎず、LINEなどさまざまな方法で情報発信する。オフラインでは、百貨店のポップアップを行う。また、チャリティー活動がブランドに共感を持ってもらえる場になればと思う。
WWD:今後のモアサナイト市場の見通しと、戦略は?
小原: 天然ダイヤモンドにこだわらない層が増えるはずだ。コスパ、耐久性、エシカルという点でモアサナイトを“ハレの日”のジュエリーとしてアピールしたい。長く使えるジュエリーとしてのメンテナンス強化を図るとともに、チャリティーなど、ワクワクすることをしていきたい。
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