旅の質が重視される今、そのときの気分や目的に寄り添うホテルが求められている。伝統的な温泉旅館も日々進化し、より機能的でモダンにリニューアルされるように。絶景と貸切風呂、開放的なラウンジに癒される「はつはな」は、おこもり旅に最適な温泉宿だ。この冬、がんばった自分へのご褒美に、湯治気分で滞在するのもいい。冬ごもりの贅沢を満喫しよう。
箱根湯本駅から送迎車で約10分の奥湯本は
駅チカなのに、静謐な時間が流れる隠れ宿
今回、私が全力で推したいのは、箱根の奥湯本で2022年9月にリニューアルした進化系温泉宿「はつはな」だ。都心から最もアクセスがいい温泉街といっても過言ではない箱根。奥湯本は箱根の玄関口、箱根湯本の駅前から、強羅や芦ノ湖に抜ける箱根登山鉄道の沿線とは別の、枝分かれした方角なので、観光客もまばらで驚くほど静かだ。1年頑張った自分へのご褒美旅、現実からの逃避行旅にもちょうどいいこの距離感と静けさ。新宿から小田急線特急ロマンスカーで約90分、特急料金込みでも片道2420円と運賃もお手頃だ。
箱根湯本の駅から送迎車で約10分でロビーに到着。1階に見えるけれど、ここは6階の最上階なのだ。窓は向かいの山肌に向かって解放され、外からの眺めは緑一色。これが春には桜色、紅葉の時期は鮮やかに、そして冬が深まると白く染まることもあり、四季折々の景観となる。客室も露天風呂も山へと開き、これだけ開放的でも、外からの視線がまったく気にならないのもこの立地の豊かさだ。
チェックインまでの時間をラウンジで過ごす。またこのラウンジが心地いい。珈琲やハーブティーだけではなく、この時間からワインや生ビールが並び、ゆるりと夕方から飲める。暖炉の炎を眺めながら過ごすソファ席、アート作品を楽しむギャラリー空間など、ラウンジにはさまざまな空間があるので、用途に合わせて使い分けられる。山肌が迫ってくる展望テラスも見逃せないフォトスポットだ。ここは夕暮れには夕暮れの、明け方には明け方の美しさがあるので、何度でも足を運んでほしい。
別宅感覚でくつろげる露天風呂付客室
女子旅にも心地いい距離感を保った間取り
全ての客室が温泉露天風呂付きになり、よりプライベートな時間を過ごせるようになったのも今回のリニューアルポイント。35室という規模はスモールラグジュアリーホテルといってもよく、温泉旅館ならではの心の通ったおもてなしが受けられるのも魅力。
さらに全客室が湯坂山と須雲川に面しており、なんとも開放的。13タイプの客室は花びらのピンクゴールドをイメージした「宙(そら)」、清らかさをアイボリーで表現した「白」、シックなアースカラーの「地」などコンセプトごとに調和している。今回は白木調をベースとした和の雰囲気のプレミアムCtypeに滞在した。最大4人まで宿泊できるグループ旅行にもおすすめの間取りで、クローゼットもゆったり。
ルーフバルコニーには露天風呂があり、コの字型に囲むようにリビング、ベッドルーム、洗面や洗い場があり、機能的。客室のどこからも山の景色が目に入るのにも癒される。半月型の湯舟は3人でも入浴できる余裕があり、リビングはそのまま寝たくなるような心地よいソファが。畳敷きなので床座もできるのだ。気の置けない仲間とゆるりと過ごすのにはちょうどいい間取りで、推し映像を鑑賞しながら忘年会もしくは新年会、なんて滞在にもいい。
冷蔵庫にあるクラフトビールやジュースも料金に含まれ、湯上りに楽しみながら外気浴で整うことも。もちろん、客室内のプライベートな露天風呂は滞在中いつでも入浴できる。夜明けの露天風呂もなかなかに幻想的だ。女子旅ならではのこの気ままさ、極楽!
探検気分で館内の温泉巡り
ユニークな貸切風呂にもわくわく
まずは客室の露天風呂で全脱力。それから館内の大浴場を探検してみた。今回、取材として各種貸切風呂も見学したが、それぞれが個性的でサプライズに満ちていた。これはワクワクする!まずはスロープカーと呼ばれるエレベーターとケーブルカーの中間のような乗り物で温泉棟の1階へ。大浴場「竹の葉」は3つの露天風呂と内湯、湯上りラウンジが併設された癒しの空間。文字通り、竹林に囲まれて、身も心もほぐれていくような感覚に。露天風呂はそれぞれアングルが違い、さまざまな角度での竹林を眺められるのが興味深い。ライトアップされた漆黒の中の竹林も格別だった。
大浴場は入れ替え制で、同じく温泉棟2階の「山の端」が朝の女性用お風呂となる。こちらは朝の光が清々しく、露天岩風呂で自然と一体化。ドライサウナや水風呂も併設され、段差が少なめという特徴も。奥湯本の泉質は無色透明のアルカリ単純温泉。濁りや匂いがないせいか、何度入っても疲れない、優しいお湯だった。
そして「はつはな」の自慢が趣向を凝らした貸切風呂!1回45分間、滞在しているゲストは無料で利用することができるのだ。初めての滞在なら、とおすすめされたのがインフィニティスタイルの露天風呂「川音の湯(かわとのゆ)」。せせらぎや鳥の声に癒される露天風呂で、森の景色に溶け込むような開放感だった。ほかにも幻想的な「明灯の湯(あかりのゆ)」、静けさが心地良い「静寂の湯(しじまのゆ)」、車いすでの利用にも配慮した「水面の湯(みなものゆ)」など、それぞれががらりとちがう表情。うーむ。リピーターが多いのもうなずける。いつか、全ての貸切風呂を制覇したくなる!
温泉との相乗効果のトリートメントで
人生最上の美肌を手に入れるプランも
温泉を満喫しているうちに「Toji Wellness & SPA まほろみ」の予約の時間に。ここは温泉地ならではの「湯治セラピー」を提唱。30万人以上の臨床経験から生まれたクリニカルゾーンセラピーの技術と 湯治を知り尽くした温泉ソムリエの知恵を融合して生まれ、奥湯本温泉に入浴することで、浄化、調律、循環を促すというもの。発酵甘酒(ノンアルコール)をいただき、内側からも潤って、施術がスタート。自然本来の力が内側から活性化されるようで心地いい。温泉・発酵・甘酒の三位一体で、心も体もふわりとほぐれていくことを実感できる、冬の贅沢な美容体験だ。
「冬季限定 温泉×発酵スキンケアトリートメント付き」という1泊2食付き宿泊プランもあり、こちらも女子旅にはぴったり。デラックスtype大人2名 1室で税・サービス料込で1名あたり9万5150円~。ボディ&フェイシャルのフルケア90分のSPAトリートメントが付き、柚子やクロモジなど、冬ならではの和精油の香りに癒される。このプランだと、通常15時が14時のアーリーチェックインに。かつ、貸切風呂も14時15~45分間の『昼風呂』が確約される。「まほろみ」おすすめ3種のアロマオイルを貸し出し、ホテルオリジナル「ファブリックミスト」をプレゼントなどの特典も。冬の乾燥で疲れた肌に、温泉のミネラルで全身をやさしく包み込み、米の発酵エキス入りホホバオイルで肌を整えるという、まさにご褒美旅にふさわしいプランとなっている。
神奈川の旬の食材によるモダン懐石で
人生最上の美肌を手に入れるプランも
温泉と同じくらい、食事を目的としたリピーターが「はつはな」には多い。地産の旬の食材を生かしたコースは、先付、八寸から始まり、煮物椀、造里(つくり)、焼肴、肉料理、炊き合わせと続く本格的なモダン懐石。味覚でも、器や盛り付けでも、四季を感じられ、懐石料理の枠にとらわれない自由な発想の懐石だ。
神奈川県南足柄で放牧飼育された「相州牛」のロース炭火焼きなど、フレンチスタイルの肉料理も。近隣港からの魚介、富士山麓で育った神奈川野菜など、地場の食材を味わいます。訪れた時期には一貫のお寿司(楚蟹とキャビアの握り!)から始まり、秋鮭といくらのご飯まで続く構成に。季節ごとに旬の食材を堪能できる(現在は冬のコースを提供)。味覚だけではなく、視覚、聴覚、触覚など五感をフルに生かして季節を味わう。思えば、あわただしい日々でゆっくりお料理を味わう機会が減っていた。1年を振り返りながら、新年に夢を抱きながら、一皿一皿と向き合うのはなんて贅沢。
朝ごはんもまた全卓個室仕様の「はなゑみ」で。周りの目を気にせず、自分のペースで食事が楽しめるのがうれしい。絶景が楽しめる窓際のカウンター席は、車いすでも移動しやすいなど、バリアフリーの席や動線などの配慮があるのもこの宿の特徴。モダンなデザインと機能性が見事に両立しているのだ。
インクルーシブという安心感で
心も体も開放する極上おこもり旅を
食事はもちろん、貸切風呂などの施設使用料や、ラウンジでの軽食や飲み物代なども含まれているので、滞在中はお財布を手にする機会はほぼなし。食事での飲み物は別料金だが、ペアリングなどのコースを選べば予算も把握しやすい。お部屋の冷蔵庫に備わった飲み物や、湯上りどころのミニビール缶やコーヒー牛乳ももちろん滞在費に含まれている。そんなインクルーシブな設定であることも、心身ともにリラックスできるおこもり旅の条件だろう。
ゲストが自由にくつろげるラウンジは深夜10時までオープン。 暖炉の炎を眺めながら、癒し・ 美肌効果を意識したオーガニック・デトックスのお茶を楽しむ。このお茶にウォッカやテキーラをプラスしたカクテルを楽しむのも通なのだとか。19~22時の間には、ホテルオリジナルのプティフールも提供される。 もちろんナッツなどのつまみも並び、ウィスキー&日本酒党も大満足。ここでゆったりと過ごす夜の時間は至福の時だった。
チェックアウトは遅めの11時。私はぎりぎりまで客室の露天風呂でまったりしていた。早朝に予約した貸切風呂のインフィニティ露天風呂もすがすがしく、何度も訪れたことのある箱根、そしてこれからもまた来る機会がありそうなので、観光は駅前でおみやげを探すくらいで十分だ。めいっぱい宿での滞在時間を利用し、施設内でゆったりと過ごす。これぞご褒美おこもり旅。1年の棚卸しをするような感覚で、すっきりと新年を迎え、新たなスタートを切るためにも、年末年始には温泉に浄化されよう。
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