ZOZOの元COOが再エネの新会社、風力+IoT蓄電池で世界に送電

 ZOZOのテクノロジー部門を率いて「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」や「ゾゾマット(ZOZOMAT)」「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」などを仕掛け、今年6月に退任したZOZO元取締役COOの伊藤正裕氏が渾身の新事業立ち上げを発表した。8月18日にオンライン事業説明会に登壇し、新会社パワーエックス(PowerX)の発足と、再生エネルギー事業に賭ける思いやその可能性について語った。

 「船で電気を輸送。洋上風力発電の爆発的普及を実現する」をミッションに掲げるパワーエックスは、洋上風力でつくられたクリーンな電力を直接バッテリーに蓄電し、電気運搬用に自社開発する船舶「パワー・アーク(Power ARK)」で、海上から世界中の変電設備まで無人で電気を運搬する送電事業を行うもの。それに先駆け、国内に大型電池工場を設け、「電気をつくる、溜める、運ぶ」のサプライチェーンを設計・構築することで、自然エネルギーの爆発的普及を狙う。

 設立の背景について、「世界的な脱炭素の動きや、EV車の急増などを踏まえて、再生エネルギーの普及のためにはは、さまざまな拠点をつなぐ新たな送電問や系統の拡充が重要課題だ。日本のエネルギー拡大促進のために、新しいテクノロジーを開発し、電気の蓄電と送電にイノベーションを起こしたい」「グローバル展開も構想している。送電をさらに遠距離化することで、国境を超えた大陸間のクリーンエネルギー輸送なども実現が可能になる」と伊藤パワーエックス社長兼CEO。

 海洋発電は、有力な再生エネルギーの一つとして注目を集めている。ただし、従来型の海底ケーブル方式では、海底の掘削による環境負荷が大きく、大規模な敷設工事が必要となる。また、洋上風力施設は建設時間やコストなどの観点から海岸から15~20キロメートル程度に設置することが一般的だ。一方、エネルギーをそのまま船舶で運べるようにすることで、「環境や自然に著しく優しくなる」ことや、海洋ケーブルから解放されることで「風力の強い沖合に設置できる」など設置場所の自由度が向上するなどの利点がある。「海で囲まれた日本の豊富な自然エネルギーのポテンシャルをより活かすことが可能となる」。地震や津波、集中豪雨などの自然災害の多い日本において、有事の際に現地に速やかに航行し、「非常用電源としてそのまま使用することで、命を救うことにもつながる」という。

 船舶の自主開発や、エネルギー輸送の実現は10年越しの事業となる。また、電気運搬船には大型蓄電池を大量に、低コストで積載する必要がある。そこで、まずは国内に大型電池自社工場を建設し、船舶用電池、電気自動車(EV)急速充電器用電池、グリッド電池などの大型蓄電池の製造・販売を行う。では、セルを製造するのではなく、電池のパッケージングをオートメーション化する。

 「再生エネルギーには必ずカタリスト(媒介者、促進者)が必要で、サプライチェーンが必要だ」。脱炭素社会、自然エネルギーの普及にともない、大型蓄電池の需要が飛躍的に伸びることも大きなポテンシャルだ。パワーマックス(Pawer MAX)事業で「電池を大量に製造することでコストを下げ、今後拡大する蓄電池需要に対応する。まずはこれを収益源として売り上げを稼ぎ、長期ビジョンの実現を目指したい」。工場には100億円前後を投資予定。来年建築を開始し、23年にはテスト生産、24年に本生産を開始予定だ。

 最近、ガソリンスタンドやコインパーキング、商業施設の駐車場などにEV車用のチャージャーが設置されるケースが増えているが、従来では高圧電線を引いてきて固定チャージャーを作る時間とコストがかかっていた。一方、パワーマックスの再生エネルギー畜電池は軽自動車程度のコンテナ型を想定しており、「スーパーやコンビニ、小売店、レストランの駐車場などにポンと置くだけ。コンビニで買い物をしている10分間で急速充電できる」と、日常生活の導線上での利活用を提案。さらに、「IoTで、すべての使用状況と寿命を把握できる。据え置き型ではないので、使われていない場所のものはすぐに移動させられるため、消費者の欲しいところにかならずある状況が作れる」という。

 共同創業者で取締役会長を務める鍵本忠氏は医師で、再生医療事業を行う東証マザーズ上場企業のヘリオスの創業社長。社外取締役には、ルノーや日産自動車、テスラモーターズ出身で、現在は電池ベンチャー世界大手のノースボルト(Northvolt)の創設者兼 COO のパオロ・セルッティ(Paolo Cerruti)氏や、元 Google 幹部のシーザー・セングプタ(Caesar Sengupta)氏、米国 Goldman Sachs 元パートナーで、2008 年から世界最大規模の環境系 NGO「ザ・ネイチャー・コンサーバンシー」のCEOを務めてきた、金融と環境問題の専門家であるマーク・ターセク(Mark Tercek)氏ら、国内外の大物が就任するなど、世界的なプロフェッショナル人材で固めている。

 具体的な構想からは1年ほどだが、伊藤社長兼CEOは「イノベーションやテクノロジーに挑戦することが大好き」で、長年、「『テクノロジーを通して日本や世界の課題を解決し、社会に貢献したい』と考えてきた。もともと海や船が大好きで、海洋国家である日本で、海洋エネルギーの普及に貢献できると考えた」とも明かす。生涯を賭け、電気の燃料を運ぶ時代から、電気そのものを運ぶ未来へとイノベーションを起こし、クリーンエネルギーの爆発的普及を目指す。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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細尾が考える西陣織の継承 伝統工芸×最新技術で織物の未来を映す 【前編】

 西陣織で知られる細尾は、伝統工芸の西陣織に先端テクノロジーを用いて新しい織物を表現して、注目を集めている。3月22日~6月27日にHOSOO GALLERYで開催した「Ambient Weaving 環境と織物」展では、東京大学の筧康明研究室とZOZOテクノロジーズ(以下もカードも)と協働して“環境情報を表現する織物”“環境そのものが織り込まれた織物”を展示した。12代目の細尾真孝代表取締役社長が考える西陣織を継承することとは何かを聞いた。

WWD:西陣織を継承するためにテクノロジーを用いてさまざまなことに取り組まれていますが、その意図を教えてください。

細尾真孝代表取締役社長(以下、細尾):まずその前に、西陣織の歴史から話をさせてください。西陣織は1200年間ずっと、美を上位の概念に置いてきました。特に京都が都だった1000年の間は、天皇、将軍、神社仏閣に向けて、お金に糸目をつけないオーダーメードのものを作り続けてきました。オーダー元と対等な関係だったことも西陣の特徴のひとつで、すごく面白いですよね。

WWD:クライアントと対等とは。素晴らしいですね。

細尾:また、西陣は組織ではあったけれど、所属などは関係なく、あくまでフラットに職人たちが協業してきました。西陣と呼ばれる半径5km圏内のエリアに代々、染めをする職人さん、糸の準備をする職人さん、箔を織る職人さん、箔を切るスペシャリストであるカッターさんと呼ばれる職人さんがいる。これは、効率化のための分業ではなくて、究極の美を追い求めた結果での分業なんです。

WWD:美を追求した結果の分業は、いわゆる現代の効率化を求めた分業とは異なりますね。

細尾:はい。産業革命以降の大量生産・大量消費の中で、多くの物を多くの人に届けていくことで、恩恵を受けた部分もありますが一方で、人が幸せに、豊かになるために突き進んだ結果、物を作り過ぎて売れなくなって――ドーピングのようにマーケティングして、人々の欲望をかき立てて、どんどん捨てさせて。でもこれって限界ですよね。これからは“調和”が重要になってくると思うんです。

WWD:調和とは?

細尾:いろんな調和があります。例えば環境との調和。環境といっても何が環境なのか、何が自然なのかをもう一度捉え直すタイミングにきていると思います。つまり、東京生まれ東京育ちの現代っ子にとっては、都市やコンクリートの方が自然でしょう。じゃあ里山ってどうなの?人の手を入れないとできないですよね。手付かずの自然は果たして日本にどれだけあるのか――織物の歴史は9000年前に始まっていて、常に人とともにありました。ちなみにガラスは6000年前に始まっているので、織物はガラスよりも古いわけです。織物は常に、体と自然との間にあったものなんです。

織物で面白いと思うのは、ただ暖をとるだけだったら、毛皮や木の皮を巻いていればいいんですが、人は木を繊維状に分解して、撚糸して、糸にして、次に、それを織った。最初は体を織機にしながら織ってくわけです。美を求めていたんですよ。機能だけを求めたら必要ないことですよね。つまり、常に美を求めていくというところが人間たらしめているところで、その過程でテクノロジーが生まれています。

WWD:西陣織もジャカード機を導入して大きく変わりました。

細尾:はい。西陣織の転換期は150年前です。もともと西陣において紋織物は、経(たて)糸を上げ下げする中で緯(よこ)糸を入れて柄を展開しながらストラクチャーも織り込んでいた。そもそも西陣は1200年前、5〜6世紀に中国で発明された空引機(そらひきばた)が日本にやってきたことから始まりました。経糸の上げ下げに、高機(たかばた)の上に人が上がり、綜絖(そうこう)という経糸を上げ下げする操り人形のようなものを上げ、経糸が上がるとその間に下の人が織るという、人力で息を合わせながら紋織物を織っていました。上の人と下の人の息が合わなかったら全然織れないし、1日で織れるのが数mm程度。1年かけてようやく1反を織って、それを納めていた。それでも買い上げてくれるクライアントがいました。

150年前の明治の遷都で、国の体制ががらっと変わった。クライアントだった将軍はいなくなり、同じくクライアントの天皇家も東京に移った。誰もそんな高い織物が買えなくなったわけです。

そのときに西陣の命運を懸けて当時の最先端の織物の技術があるといわれていたフランスのリヨンに、3人の若い職人を船で派遣した。リヨンで何が起きていたか——1801年に1人の天才、ジョゼフ・マリー・ジャカール(Joseph Marie Jacquard)さんがジャカード織機を発明していた。パンチカードという穴が開いたボール紙を用いて、この穴が開いているところだけ縦糸が上がる仕組みを作った。人力で上げていた動きをプログラム化したわけですよね。これを何百枚も重ねて、人が一つ一つやっていたことが自動化されました。技術革新を起こすことによって、今まで1日数mmしか織れなかったものが1m、2mと織れるようになった。100年後には一般の高級帯として買えるようになり、一気にマスに広がりました。

WWD:機械化したことで効率化できました。

細尾:この話のポイントは、普通はマスに機械化・自動化したり、複雑な織物はやめて簡単に早く織れるようにしたりする方向に進むのですが、西陣は、美はそのままに、テクノロジーを新しく持ち込むことによって美をキープしつつ新しい社会の代謝に合わせたところです。

ご存じのとおり、ジャカード織機が発明されて、その後にジャカード織機にインスピレーションを受けて発明されたのがコンピューターです。初期のコンピューターはパンチカードですよね。だから、織物とコンピューターの相性はめちゃめちゃいいわけです。縦糸が上がるか下がるかが、コンピューターのバイナリーコードのゼロ・イチの世界ですし、当然、織物の縦横がビットマップの世界にもなった。何が言いたかったかというと、美を生み出すために人はテクノロジーを生み出していったということです。トヨタももともとは織機メーカーで織機を造っていましたが、動力の織機を造っていた技術を用いて車を造るようになりました。

WWD:先端テクノロジーを導入することが美や新しい技術の追求につながる、ということでしょうか。

細尾:そうです。織物の文脈で考えると、美が一番上位の概念にあって、その過程で、さまざまなテクノロジーを生み出しているんじゃないかなと思ったわけです。そういうこともあり、2017年から3人のコンピュータープログラマーと1人の数学者と、織物から生み出されたコンピューターの最先端の技術を使って、今まで人類が誰も生み出すことのできなかった織物を開発しようと試みています。

WWD:具体的にこれまでどういう織物を開発されましたか?

細尾:織物は平織り、綾織り、朱子織り、捩り織りとあります。平織り、綾織り、朱子織りは三原組織といわれていますが、この三原組織を一切使わない組織を作りました。また、織物はリピートして織られることが多いのですが、リピートがなく、斜めにも走っているような織物を作りました。普通ならばできないのですがそれをぎりぎりのところでコンピューターで計算しながら美しい織物を展開するというアプローチを試みました。おそらく9000年の人類の歴史の中で誰も生み出せなかった組織を、美の中に生み出したと思います。

WWD:なるほど。その後、「Ambient Weaving環境と織物」というタイトルでHOSOO GALLERYで環境と織物を表現しました。

細尾:環境情報を織り込もうというプロジェクトです。例えば、温度によって柄が変化していく織物。温度は目に見えない環境情報ですが、それとテキスタイルが連動していくものだったり、目に見えない紫外線によって硬化する織物など。あとは、植物が下から上に水を吸い上げる様子を糸化して可視化したものなどです。

WWD:イメージするのが難しいですね。

細尾:ぜひ見ていただきたいです。3日ぐらいかけて変わるんです。あれ、こないだ黄色だったのが変わった、みたいな変化も楽しめます。

WWD:言葉で表現するのが難しいですね。

細尾:そうですね。あとは、織物をコンピューター化したものもあります。一つは、PDLCという素材。弁護士事務所とかでボタンを押したらスモークがかかったりするあれです。あれを糸化しました。それを箔と織り、電気を通すとスモークが透明になり、オフにするとまたスモークがかかります。一本一本が基盤につながっていて、全部コンピューター制御しています。

WWD:突然透明になるってことですよね。

細尾:ちょっと変態チックになりますけど、いきなりヌードになったり、もできます。

WWD:つまるところ織物と環境で表現したかったことは?

細尾:先ほどお話ししたように、織物は常に人と自然の間にありました。今の電子制御の世界って実は、結構今の自然に近いと感じたというか。そういう意味で、これからの?現代の?自然や環境は何なのかっていうのを問いかけるような展覧会になっています。

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LVMH、サステナビリティの新たな研究施設を2025年にオープン

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」などを擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、サステナビリティに関する研究施設をパリ近郊のサクレーに建設する。完成は2024〜25年半ばの予定。

 ジャン・バチスト・ヴォアザン(Jean Baptiste Voisin)LVMH最高戦略責任者(CSO)は、「大型の研究施設になるが、正確な規模は未定だ」としているものの、科学者やリサーチ担当者などを含め300人程度の人材が集められるようだ。建設費など設備投資額は明らかになっていないが、情報筋によれば、3000万〜7500万ユーロ(約39億〜98億円)だと見られている。

 同施設では、より環境に優しい新素材の開発やバイオテクノロジー関連の研究のほか、データソリューションなどのデジタル分野にも注力する。ヴォアザンCSOによれば、スタートアップなどから提案される“サステナブルな新素材”はプラスチックに別の原料を追加したものであることが多いため、この施設ではプラスチックを使用しない新素材の開発を目指す。また、研究成果を実際のプロダクトや試作品として展開することも目標にしているという。

 LVMHは、サステナビリティに関する具体的な行動計画を示す“ライフ360(LIFE 360)”プログラムを推進しており、今回の研究施設もその一環として開設する。同施設を含めると、LVMHでは約1000人が調査や研究に従事することとなる。そのうち400人程度は、フランス中部オルレアン近郊にある、香水&コスメティクス部門の研究開発センターで働いている。

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生地の専門家に聞くサステナビリティ(下) 環境に優しいテキスタイルを選ぶ10のポイント

 アパレルメーカーがサステナビリティなモノづくりへシフトするとき、最初にぶつかる課題がテキスタイルの選び方だ。そもそも何がサステナブルなのか、何を選んだらよいのか悩ましい。そこでテキスタイルのプロである梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表に、テキスタイルとサステナビリティの関係について、基本の考え方と最新事情を2回に分けて聞いた。後半はサステナブルなテキスタイルを選ぶ10のポイントの具体例について。

 

WWDJAPAN(以下、WWD):インタビュー前半でお伺いした「サステナブルなテキスタイルを選ぶ10のポイント」について具体例を教えてください。

梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表(以下、梶原):まず①「製品からのリサイクル循環システム」は、廃棄素材からのアップサイクルを指します。ポリエステル素材の循環が先行していますが、ここにきてコットン製の古着や木材パルプ、農業廃棄物、さらに段ボールなどから誕生する画期的なセルロース繊維が登場しています。「リフィブラ(REFIBRA)」「スピノバ(SPINNOVA)」「インフィナ(INFINNA)」などがそう。本格的な製品化はこれからですが、期待しています。ステイホーム時代では宅配用段ボールの需要が増えるでしょうから、段ボールから再生した繊維は夢がありますよね。羽毛の再利用を進める「グリーン ダウン プロジェクト(Green Down Project)」にも注目しています。

 ②「長く使える素材を開発する」は、機能性、防汚性、耐久性、修繕の促進を意味します。服のリペアシステムはもっと発展すべきだと考えます。③「リネン、ヘンプ、ペーパーヤーン」は、生育が早く、環境負荷がない素材群です。夏は涼しく冬は暖かく、抗菌性もある。特にペーパーヤーンは日本が古来使っている歴史があり、風合いも良いので、注目しています。日本の王子ファイバー、キュアテックス、備後撚糸などが展開しています。

WWD:技術革新がサステナブルな素材の広がりを進めているようですね。④「生分解性素材の開発」はその最たる例です。

梶原:はい、土に還る素材を指し、様々な企業が開発に取り組んでいます。例えば石灰石を原料にした新素材「ライメックス(LIMEX)」で知られるスタートアップ企業の子会社のバイオワークスは特殊な添加剤を加えて、ポリ乳酸の弱点である熱に強い糸を開発していますし、老舗のニット糸商社の三山は従来のポリエステルに比べ強度や耐熱性に優れていて、染色後の加工が可能な製品を開発しています。⑤「人工レザー」も先端技術と密接です。話題のマッシュルームレザーを始め、合皮の開発のことですね。写真は日本のウルトラファブリックス(ULTRAFABRICS、旧第一化成)のものでインディゴや炭を入れた合皮です。⑥「リサイクルコットン・ナイロン」は、コットンについては落ち綿、ガラ紡のリサイクル。ナイロンは漁網からのリサイクルした日本のリファインバース社の「リアミド(REAMIDE)」など海洋汚染の解決の一助となる素材が登場しています。

WWD:技術だけじゃない。サステナブルは「視点」「考え方」も重要です。

梶原:そうですね。⑦「ノンミュールジングウール」は、動物福祉を意識したときに選びたい素材ですが、羊の現状はもっと多くの人に知って欲しいと思っています。⑧「オーガニックコットン・ウール」についてはトレーサビリティーを重視しています。無農薬かどうかはもちろんですが、遺伝子組み替えの有無、有機綿か否か、農業や羊の飼育環境などを確認します。

 ⑨「水を使わないプリント」は、水質汚染をしないという理由から選びました。転写プリント、未染色、無水染色の開発などの方法があります。それと連動するのが⑩「草木染め」は、ご存じの通り天然染料を活用した環境に優しい染め方で岐阜の染工場、木曽川染絨の取り組みなどに注目しています。

アパレルはどこからサステナビリティ・シフトを始める?

WWD:アパレルメーカーはサステナビリティ・シフトをどこから始めたらよいでしょう?

梶原:いきなり出口の話になりますが、サステナビリティは「どうお客様に伝えるか」が大事です。何を作るかの前に、接客でどんな話をするかをイメージすることをお勧めします。その上で私は始め方について、6つのポイントがあると思います。①素材の背景を意識し、把握すること②無駄を出さない作り方や運営を考える③リサイクル素材、リサイクル企画の導入④土に還る素材や服飾資材の活用を推進⑤育成の良い素材を積極的に活用⑥水や電気使用を減らす技術に注目をする、です。
最新のテキスタイル開発は、理想段階のものも多数あり市場に降りてくるのはタイミング待ちです。だから新しいことだけではなく、長く製品を使う意識、長く使える製品を開発することも大事。キーワードはバランス。環境と経済活動のバランスをとりながら消費者に丁寧に伝えることが大切です。

WWD:出口の話は「オンワード クローゼット ストア(ONWARD CROSSET STORE)」のアドバイザーとして店頭で実践していますね。

梶原:「オンワード クローゼット ストア」では、“リライフカスタイマイズ”をテーマに、リサイクルやリペア&メンテナンス、カスタマイズなど含めたパーソナルケア型セレクトスタイルを発信しています。

WWD:①素材の背景を意識し、把握すること、と関連しますがこれまでのアパレルのモノづくりにはない知識が求められるから背景を知ることは重要です。

梶原:そうですね。認証ひとつにしても100%正しいか、正義かと言うかそうではない部分もあります。でも選択するにはまずは知らないと。知識は重要です。同時に私はやはり最後はデザインの力だとも思っています。

WWD:梶原さんは常々アートもチェックしていますがそれも関係していますか?

梶原:サステナビリティは明確な答えや定義がまだありません。だからこそ、最先端の開発コンセプトはアートとなりやすく、実験もアート的立ち位置から生まれます。生地の発想、きっかけもアートから生まれることも多いので、サステイナブルアートは常にリサーチしています。菌類を使ったデザインで知られるイタリア人、マウリツィオ・モンタルティ(Maurizio Montalti)や、2011年のミラノサローネで照明を発表して話題になったジョナータ・ガット(Gionata Gatto)とジョヴァンニ・インネラ(Giovanni Innella)の動きにも注目しています。

2020年春夏のテキスタイル市場のトレンド

WWD:最後に2020年春夏のテキスタイル市場の動向は?

梶原:テキスタイルデザインの全体傾向はナチュラル感です。オーガンジー系の薄地で透明感があり軽量なもの。細かなムラ感、シワ感があるもの。使い古したようなヴィンテージ感がある素材。スポーティーだけどエレガントなメッシュ、チュールは人気ですねナイロンも薄地で細デニール糸が主流です。デジタル社会の中で視覚的な発信に反応が集まりやすくなっており、視覚的効果が高いプリントや光沢感、特にシルバー素材のニーズが増えています。

 サステナビリティが先行した欧米ブランドを見ると2022年春夏では「サステナビリティは大事だがそれ以上に面白いものに立ち戻る」という姿勢が顕著です。「面白い生地があったらどんどん送って」というリクエストがあり、エモーショナルで刺激的なデザインが数多く出てきそうです。また新型コロナ境に販売先が中国に大きく振れており、中国が評価するもの、視覚的にもわかりやすいものが目立ちます。


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生地の専門家に聞くサステナビリティ(上) 環境に優しい素材ってそもそも何?

 アパレルメーカーがサステナビリティなモノづくりへシフトするとき、最初にぶつかる課題がテキスタイルの選び方だ。そもそも何がサステナブルなのか、何を選んだらよいのか悩ましい。そこでテキスタイルのプロである梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表に、テキスタイルとサステナビリティの関係について、基本の考え方と最新事情を2回に分けて聞いた。前半は市場動向について。世界と日本のマーケットは環境配慮型素材へどれほどシフトしているのだろうか?

WWDJAPAN(以下、WWD):テキスタイル市場全体傾向としてサステナビリティ・シフトは進んでいますか?

梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表(以下、梶原):新型コロナのパンデミック以降、日本市場が急速にサステナビリティにシフトしてきたと、日頃の仕事を通して感じています。私は欧米のラグジュアリーブランドに日本のテキスタイルを紹介する仕事をしていますが、彼らはコロナ以前からサステナビリティへシフトし始め、GOTS認証など認証された日本の素材が求められる状況でした。特にケリング傘下のブランドは熱心でした。パリの大型素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」も19年春夏からサステナビリティ素材の発信に力を入れており、フランス市場の意識の高さが展示会にも影響していましたね。その流れで海外向けに販売している日本の繊維メーカーは2018年頃からサステナビリティを積極的に学び、生地開発に生かしてきました。

 アメリカは産業側より一般社会の方が動きが早く、環境問題をディスカッションする世論が企業を動かしたように思います。商談中も企業人としてより個人的な思いからサステナビリティを熱く語る人が多かった印象です。紙ストローへの切り替えも米国が早かったですよね。

WWD:コロナ以前の日本の業界のムードは?

梶原:日本の小売りやアパレルからは、ネガティブな見方が多かったですね。サステナブル素材の価格が高いことへの懸念や直接的に売り上げにつながるかの不安感、消費者がまだ理解していない、求められていないといった声が多く聞かれました。主に日本向けに開発している会社は、サステナビリティについて前向きではなく、少し遠い出来事のような雰囲気でした。

WWD:それがコロナで変わったと。

梶原:はい。新型コロナウイルス感染症の拡大によって各国が外出自粛制限をおこない、経済活動が停滞したコロナ禍では、環境改善に関するさまざまな報告が世界中から発信されました。その影響が大きかったと思います。NASAは、人工衛星による大気汚染の観測結果を発表し、中国湖北省武漢市が封鎖された後は、中国での大気汚染物質の二酸化窒素の濃度が低下したことや、大気汚染が深刻なインド北部ではエアロゾルが減少したことが伝えられました。

 大気汚染問題が深刻なロサンゼルスでも、今まで見えなかった景色が見えると話題になりましたよね。ロックダウンで可視化された環境改善を通して、人間の活動が自然環境に大きな影響を与えており、サステナビリティを考えていく必要が現実にあることを実感した人が多いと思います。社会が積極的に考え始めたことに伴い、企業が行動し、小売りやアパレルも動き始めました。

コロナを機に日本市場が動き出した

WWD:日本の繊維メーカーにはどのような動きが見られますか?

梶原:ほとんどの繊維メーカーがサステナビリティの考え方を開発に反映し始めています。特にサステイナブルなコンセプトがある糸、後加工の工程や溶剤での工夫が進んでいます。また、移動に伴う二酸化炭素排出・大気汚染の改善策として地産地消への意識が前向きです。日本で作る、産地の近場で作るなど、物を大きく動かさない方法を考えることもよく話題になります。

 同時に廃棄物を減らす意識が高まっています。無駄を作らない、残っているものを活用でする方法を積極的に考える企業が増えています。私は「ジャパン・テキスタイル・コンテスト(JAPAN TEXTILE CONTEST)」というテキスタイルコンペの審査員長を務めていますが、2020年のコンテストでは、サステナビリティを意識した素材の応募が増えました。開発の方向性として、サステナビリティを学び、方法を選んで企画する人が産地でも増えていると思います。

WWD:そもそも“サステナビリティな素材”とは何でしょう?

梶原:多面的な視点で考えると判断は難しい。環境のためにと考えても、別の方向から見れば資源を無駄にしている矛盾が常にあります。そのため、現時点で私は“サステナビリティを考える”という姿勢でいます。言い切れるものはないけれど、地球の未来のために考え、学び、挑戦をしていくべきだと思うからです。人間活動と自然の共存バランスを考えて、 100%の答えがなくても行動してみる事が大事です。

WWD:梶原さんは生地開発の仕事もしていますが、ご自身が開発する際に心がけていることは?

梶原:トレーサビリティの意識です。トレーサビリティとは、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること。私たちがどのルート、方法で素材を作っていくのか。事実を知って方法を選んでいくことを強化しています。納期や価格やロットなどの条件と照らし合わせると、一番良い方法を採用できないときもあります。でも、できる事を考え、少しの側面でもサステナビリティの要素を取り入れるバランスを大切にしています。

テキスタイルを選ぶ際の10のポイント

WWD:テキスタイルを選ぶ際はどんな点をチェックしますか?

梶原:私が注目している順番は次の通りです。

①製品からのリサイクル循環システム
②長く使える素材の開発
③リネン、ヘンプ、ペーパーヤーン
④生分解性素材の開発
⑤人工レザーの開発
⑥リサイクルコットン&ナイロン
⑦ノンミュールジングウール
⑧オーガニックコットン・ウールのトレーサビリティー
⑨水を使わないプリント
⑩環境に優しい草木染め

WWD:ありがとうございます。次回はこの点を詳しくお伺いします。


梶原加奈子さんもご登壇!
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パリコレはサステナブルになれるか? 主催団体がエコデザイン支援ツールをブランドに提供

 本格的なファッションショーの再開にあたり、リアルイベントにおける環境問題への配慮が話題に上っている。そんな中、数年前からこの問題に取り組んできたフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)参加ブランドが環境への影響を測定するための2つの新たなデジタルツールを発表した。フランス服飾開発推進委員会(DEFI)の出資を受け、サンディカと共に開発を担当したのは世界的な会計コンサルティング企業のプライスウォーターハウスクーパース(PRICEWATERHOUSECOOPERS)。今年秋の本格ローンチを計画している。

 一つ目のツールは、ショーやプレゼンテーションなどのイベントに特化し、パリコレの環境的、社会的、経済的な影響を測るもの。ブランドが、制作会社との契約からキャスティングやフィッティング、デジタルコミュニケーションまでイベントの全段階を網羅する約120のKPI(重要業績評価指標)を設定するために役立てられる。このツールにより、参加ブランドはイベントの開催前に計算を行い、環境負荷の軽減や社会的影響の最適化のためにふさわしい選択ができるようになるという。またブランドは、その算出結果を非公開にしておくこともできるが、詳細を明かすことなく、パリコレ全体の負荷を計測するためにパフォーマンスのスコアを提供することも可能だ。同開発プロジェクトの運営員会は、「ディオール(DIOR)」や「クロエ(CHLOE)」のショーを手掛けるビュロー・べタック(BUREAU BETAK)、PR会社のDXL、パリコレの主要会場の一つである文化施設のパレ・ド・トーキョーで構成。ブランドやイベント制作会社からPR会社、モデルエージェンシー、関連機関まで、パリコレに携わる幅広いステークホルダーが開発に携わった。パスカル・モラン(Pascal Morand)=サンディカ会長は、同ツールについて「シンプルでちょっとした遊び心があるだけでなく、すぐに結果を算出できて、より良い取り組み方を提案できるようなものを目指した」とコメント。将来的には、パリだけでなく世界のファッションイベントの主催者にも提供される予定だ。

 もう一つは、企業が業界のバリューチェーン全体の環境的及び社会的影響を測定できるようにすることで、コレクションのエコデザインを支援する管理ツール。あらゆる規模のブランドがエコデザインのアプローチを全面的に取り入れられるようになるという。同ツールはフランス・モード研究所(Institut Francais de la Mode、IFM)と共同開発によるもので、ローンチ前にいくつかのメゾンが試験的に導入。技術委員会には、DEFIやフランス・ウィメンズプレタポルテ連合会(Federation Francaise du Pret a Porter Feminin)などの業界団体、素材見本市のプルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision)などが名を連ねる。まずはサンディカ加盟ブランド向けに提供されるが、将来的にはアパレル業界で幅広く利用される可能性もあるという。

 サンディカが環境問題に対する取り組みに着手したのは、19年のこと。現在はさまざまなブランドで利用できる公式会場の設置や、市内の会場を巡るシャトルや自動車の電動化、廃棄物のリサイクル、セットの再利用などに取り組んでいる。今回のツールも、19年9月に開発を確約していたものだ。モラン会長は、「私たちには世界的なリーダーシップを発揮する義務がある」と社会的・環境的側面におけるパリコレの役割について話す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「エルメス」と協業する注目の“マッシュルームレザー”新興企業 CEOがその優位性を語る

 サステナブルファッションかいわいで今、キノコの菌製の人工“マッシュルームレザー”が空前の盛り上がりを見せている。その新境地を開いたのが「エルメス(HERMES)」と協業する米スタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)だ。「エルメス」は、マイコワークスと開発したマッシュルームレザー「シルヴァニア(Sylvania)」を用いたバッグ“ヴィクトリア”を3月に発表、年末までに店頭に並べる予定だ。

 マイコワークスは2013年創業。サンフランシスコ近郊のエメリービルに本社と工場があり、生産量拡大のために新たな工場の建設も計画する。同社はきのこの菌糸体からレザーのような素材を作る技術“ファイン マイセリウム(Fine Mycelium)”を開発して特許を取得。ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)らが出資する注目企業でこれまでに累計6200万ドル(約67億円)を調達。“ファイン マイセリウム”素材は独自の細胞構造によって強度や耐久性が高く手触りもよく、本質的に再生利用が可能で生分解性があるという。

 「シルヴァニア」はその“ファイン マイセリウム”素材の強度と耐久性をさらに高めるため、フランスにある「エルメス」の工房でなめしなどの仕上げが施されている。また成形などの加工も「エルメス」の職人が行っているという。エルメスの職人技とマイコワークスの最新技術を融合することで、“マッシュルームレザー”初の商品化にこぎ着けた。

 4月には、アディダス(ADIDAS)が、米ボルトスレッズ(BOLT THREADS)が運用するマッシュルームレザー「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を12カ月以内に発売すると発表している。

 「本質的に再生利用が可能で生分解性があり」、環境負荷が著しく低い夢のような素材ではあるが、これまでになかった新素材“マッシュルームレザー”には謎も多い。マイコワークスのマシュー・L・スカルリン(Matthew L. Scullin)CEOにメールインタビューで疑問を投げ掛けた。

WWD:“マッシュルームレザー”に注目した理由を教えてほしい。

マシュー・L・スカルリン(Matthew L. Scullin)CEO(以下、スカルリン):ブランドや消費者は、サステナビリティのために機能性を犠牲にしたりしない。“ファイン マイセリウム”素材は品質の面で妥協していないので、成長が見込める独自のポジションにあり、結果として大きな変化を推進するものだ。

ブランドはいかにサステナブルに新素材を融合していくかを考えていると同時に、プロダクトデザインの新たな可能性も追求している。“ファイン マイセリウム”技術は、基本的にオーダーメードで素材を作る。何をどうやって作っているのかについては、完全な透明性があり、これによってより高いレベルでの品質管理や効率性を実現することができる。“ファイン マイセリウム”がなぜ“素材の未来”なのかについては、当社がブランドとどのように協業しているかが最良の事例だと思う。

WWD:“ファイン マイセリウム”とはどのような技術か。

スカルリン:“ファイン マイセリウム”技術は、材料科学とバイオテクノロジーにおける飛躍的な進化であり、当社の独占的なマテリアルクラスと独自の工程に基づいている。

“ファイン マイセリウム”は、ファッションやフットウエアで使用される高機能素材の先進的なプラットフォームだ。当社が特許を有するテクノロジーは、成長過程で細胞構造が連結するように菌糸体を拡張するため、素材に高い強度と耐久性をもたらす。素材は機能性や審美性など、提携先の要望に従ってオーダーメードで生産するため、ブランドはクリエイティブ面で完全にコントロールすることができる。

当社の代表的な商品である「レイシ(Reishi)」は、高級皮革を代替する高品質かつナチュラルな素材であり、当社独自の“ファイン マイセリウム”技術で作られている。生産規模が拡大するにつれて、「レイシ」をいろいろな価格帯で生産し、さまざまな分野や用途に向けて供給できるようになる。

WWD: “マッシュルームレザー”はどのように収穫され加工されるのか。現在の菌糸の育成となめし加工に関しての協力会社は?

スカルリン:マイコワークスは、垂直統合された唯一のバイオマテリアル企業だ。“ファイン マイセリウム”シートは、カリフォルニアにある当社の施設で生産されており、適切な状態を維持する独自のトレーで育てられている。成長の各工程でデータを取得して、各シートの構造や見た目を提携先の要望に合わせて改良するため、また一貫して安定した妥協のない品質を確保するためにそれを活用している。

「レイシ」は、提携している老舗タンナーのカルティドス・バディア(CURTIDOS BADIA)で、当社独自のなめしおよび染色技術を用いて仕上げられている。3月に発表した、「エルメス」との協業による素材「シルヴァニア」はこの工程が異なる。これも“ファイン マイセリウム”技術を用いて作られているが、素材の強度と耐久性をさらに高めるため、フランスにある「エルメス」の工房でなめしなどの仕上げが施されている。また成形などの加工も、「エルメス」の職人が行っている。

“ファイン マイセリウム”で作られた素材は、高級皮革と同様に扱われるべきだ。

WWD:スケールアップするに当たり、サプライチェーンをどう構築していくのか。

スカルリン:マイコワークス独自のトレーシステムは、無限にスケールできる。カリフォルニア州エメリービルにある当社の新施設では、トレーの運用管理が自動化されており、従来と比べて10倍の生産能力がある。今後数カ月で研究開発にさらに投資し、生産施設をもう一つ立ち上げる準備や、既存の生産施設の拡大に取り組んでいく。また社員数は現在100人を超えているが、引き続きチームを拡大していきたい。

WWD:ほかのマッシュルームレザーと比べて、“ファイン マイセリウム”素材の優位性は?

スカルリン:“ファイン マイセリウム”は全く新しいタイプの、高品質でナチュラルな素材だ。いわゆる“マッシュルームレザー”と異なり、当社が特許を有している技術で作られた“ファイン マイセリウム”素材は、独自の細胞構造によって強度や耐久性が高く、手触りもいい。当社の素材は基本的にオーダーメードで作られており、何をどうやって作っているのかについて完全な透明性がある。こうした画期的なトレーサビリティーによって、全体により高いレベルでの品質管理、一貫性、効率性が実現される。

WWD:現在の価格と今後の価格はどの程度を予定しているか。

スカルリン:当社のコスト構造は好ましいものであり、(価格帯は)ハイエンドの天然皮革と同程度となっている。

「エルメス」との協業で成し得たこと

WWD:「エルメス」と協業するに至った経緯は?

スカルリン:「シルヴァニア」は、「エルメス」との3年間にわたる協業の成果だ。両社は、強度があって長持ちする、審美性の高い素材を作るための天然の原材料を見つけたいという共通の関心があった。この協業によって、最高品質の素材をなめす専門技術と、バイオテクノロジーというツールが組み合わされた。

WWD:“マッシュルームレザー”は数週間という短いスパンで生産でき、畜産に比べても水の使用量や温室効果ガス排出が著しく抑えられる夢の素材だ。「シルヴァニア」製造における環境への負荷は?

スカルリン:“ファイン マイセリウム”素材は天然のものであり、成長過程も倹約型(時間や資源をあまり必要としない)のため、環境フットプリントが非常に低い。マイセリウムは、環境再生と炭素隔離において地球で最もパワフルな媒体の一つだ。なめし(タンニング)工程によって、その質、強度、耐久性を高めている。

WWD:「シルヴァニア」と「レイシ」の違いについて教えてほしい。量産化された場合、捨て方、リサイクル方法などどのように考えているか教えてほしい。

スカルリン:「シルヴァニア」と「レイシ」は、いずれも“ファイン マイセリウム”技術で作られている。当社の“ファイン マイセリウム”技術で作った素材を、エルメスが自社のタンナーでなめして仕上げたものが「シルヴァニア」だ。同じく当社の“ファイン マイセリウム”技術で作った素材を、当社と提携しているタンナーで仕上げたものが「レイシ」となっている。

また、“ファイン マイセリウム”素材は、本質的に再生利用が可能で生分解性がある。

WWD:現在の資金調達額は?

スカルリン:当社はシリーズBとなる資金調達で4500万ドル(約49億円)を調達した。このラウンドでは、ナタリー・ポートマンやジョン・レジェンド(John Legend)のほか、投資会社のWTTインベストメント(WTT INVESTMENT)、DCVCバイオ(DCVC BIO)、バロー・エクイティ・パートナーズ(VALOR EQUITY PARTNERS)、フンボルト・ファンド(HUMBOLDT FUND)、そして既存の投資家が出資している。なおシリーズAでは1700万ドル(約18億円)を調達しており、累計では6200万ドル(約67億円)となっている。

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「エルメス」と協業する注目の“マッシュルームレザー”新興企業 CEOがその優位性を語る

 サステナブルファッションかいわいで今、キノコの菌製の人工“マッシュルームレザー”が空前の盛り上がりを見せている。その新境地を開いたのが「エルメス(HERMES)」と協業する米スタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)だ。「エルメス」は、マイコワークスと開発したマッシュルームレザー「シルヴァニア(Sylvania)」を用いたバッグ“ヴィクトリア”を3月に発表、年末までに店頭に並べる予定だ。

 マイコワークスは2013年創業。サンフランシスコ近郊のエメリービルに本社と工場があり、生産量拡大のために新たな工場の建設も計画する。同社はきのこの菌糸体からレザーのような素材を作る技術“ファイン マイセリウム(Fine Mycelium)”を開発して特許を取得。ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)らが出資する注目企業でこれまでに累計6200万ドル(約67億円)を調達。“ファイン マイセリウム”素材は独自の細胞構造によって強度や耐久性が高く手触りもよく、本質的に再生利用が可能で生分解性があるという。

 「シルヴァニア」はその“ファイン マイセリウム”素材の強度と耐久性をさらに高めるため、フランスにある「エルメス」の工房でなめしなどの仕上げが施されている。また成形などの加工も「エルメス」の職人が行っているという。エルメスの職人技とマイコワークスの最新技術を融合することで、“マッシュルームレザー”初の商品化にこぎ着けた。

 4月には、アディダス(ADIDAS)が、米ボルトスレッズ(BOLT THREADS)が運用するマッシュルームレザー「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を12カ月以内に発売すると発表している。

 「本質的に再生利用が可能で生分解性があり」、環境負荷が著しく低い夢のような素材ではあるが、これまでになかった新素材“マッシュルームレザー”には謎も多い。マイコワークスのマシュー・L・スカルリン(Matthew L. Scullin)CEOにメールインタビューで疑問を投げ掛けた。

WWD:“マッシュルームレザー”に注目した理由を教えてほしい。

マシュー・L・スカルリン(Matthew L. Scullin)CEO(以下、スカルリン):ブランドや消費者は、サステナビリティのために機能性を犠牲にしたりしない。“ファイン マイセリウム”素材は品質の面で妥協していないので、成長が見込める独自のポジションにあり、結果として大きな変化を推進するものだ。

ブランドはいかにサステナブルに新素材を融合していくかを考えていると同時に、プロダクトデザインの新たな可能性も追求している。“ファイン マイセリウム”技術は、基本的にオーダーメードで素材を作る。何をどうやって作っているのかについては、完全な透明性があり、これによってより高いレベルでの品質管理や効率性を実現することができる。“ファイン マイセリウム”がなぜ“素材の未来”なのかについては、当社がブランドとどのように協業しているかが最良の事例だと思う。

WWD:“ファイン マイセリウム”とはどのような技術か。

スカルリン:“ファイン マイセリウム”技術は、材料科学とバイオテクノロジーにおける飛躍的な進化であり、当社の独占的なマテリアルクラスと独自の工程に基づいている。

“ファイン マイセリウム”は、ファッションやフットウエアで使用される高機能素材の先進的なプラットフォームだ。当社が特許を有するテクノロジーは、成長過程で細胞構造が連結するように菌糸体を拡張するため、素材に高い強度と耐久性をもたらす。素材は機能性や審美性など、提携先の要望に従ってオーダーメードで生産するため、ブランドはクリエイティブ面で完全にコントロールすることができる。

当社の代表的な商品である「レイシ(Reishi)」は、高級皮革を代替する高品質かつナチュラルな素材であり、当社独自の“ファイン マイセリウム”技術で作られている。生産規模が拡大するにつれて、「レイシ」をいろいろな価格帯で生産し、さまざまな分野や用途に向けて供給できるようになる。

WWD: “マッシュルームレザー”はどのように収穫され加工されるのか。現在の菌糸の育成となめし加工に関しての協力会社は?

スカルリン:マイコワークスは、垂直統合された唯一のバイオマテリアル企業だ。“ファイン マイセリウム”シートは、カリフォルニアにある当社の施設で生産されており、適切な状態を維持する独自のトレーで育てられている。成長の各工程でデータを取得して、各シートの構造や見た目を提携先の要望に合わせて改良するため、また一貫して安定した妥協のない品質を確保するためにそれを活用している。

「レイシ」は、提携している老舗タンナーのカルティドス・バディア(CURTIDOS BADIA)で、当社独自のなめしおよび染色技術を用いて仕上げられている。3月に発表した、「エルメス」との協業による素材「シルヴァニア」はこの工程が異なる。これも“ファイン マイセリウム”技術を用いて作られているが、素材の強度と耐久性をさらに高めるため、フランスにある「エルメス」の工房でなめしなどの仕上げが施されている。また成形などの加工も、「エルメス」の職人が行っている。

“ファイン マイセリウム”で作られた素材は、高級皮革と同様に扱われるべきだ。

WWD:スケールアップするに当たり、サプライチェーンをどう構築していくのか。

スカルリン:マイコワークス独自のトレーシステムは、無限にスケールできる。カリフォルニア州エメリービルにある当社の新施設では、トレーの運用管理が自動化されており、従来と比べて10倍の生産能力がある。今後数カ月で研究開発にさらに投資し、生産施設をもう一つ立ち上げる準備や、既存の生産施設の拡大に取り組んでいく。また社員数は現在100人を超えているが、引き続きチームを拡大していきたい。

WWD:ほかのマッシュルームレザーと比べて、“ファイン マイセリウム”素材の優位性は?

スカルリン:“ファイン マイセリウム”は全く新しいタイプの、高品質でナチュラルな素材だ。いわゆる“マッシュルームレザー”と異なり、当社が特許を有している技術で作られた“ファイン マイセリウム”素材は、独自の細胞構造によって強度や耐久性が高く、手触りもいい。当社の素材は基本的にオーダーメードで作られており、何をどうやって作っているのかについて完全な透明性がある。こうした画期的なトレーサビリティーによって、全体により高いレベルでの品質管理、一貫性、効率性が実現される。

WWD:現在の価格と今後の価格はどの程度を予定しているか。

スカルリン:当社のコスト構造は好ましいものであり、(価格帯は)ハイエンドの天然皮革と同程度となっている。

「エルメス」との協業で成し得たこと

WWD:「エルメス」と協業するに至った経緯は?

スカルリン:「シルヴァニア」は、「エルメス」との3年間にわたる協業の成果だ。両社は、強度があって長持ちする、審美性の高い素材を作るための天然の原材料を見つけたいという共通の関心があった。この協業によって、最高品質の素材をなめす専門技術と、バイオテクノロジーというツールが組み合わされた。

WWD:“マッシュルームレザー”は数週間という短いスパンで生産でき、畜産に比べても水の使用量や温室効果ガス排出が著しく抑えられる夢の素材だ。「シルヴァニア」製造における環境への負荷は?

スカルリン:“ファイン マイセリウム”素材は天然のものであり、成長過程も倹約型(時間や資源をあまり必要としない)のため、環境フットプリントが非常に低い。マイセリウムは、環境再生と炭素隔離において地球で最もパワフルな媒体の一つだ。なめし(タンニング)工程によって、その質、強度、耐久性を高めている。

WWD:「シルヴァニア」と「レイシ」の違いについて教えてほしい。量産化された場合、捨て方、リサイクル方法などどのように考えているか教えてほしい。

スカルリン:「シルヴァニア」と「レイシ」は、いずれも“ファイン マイセリウム”技術で作られている。当社の“ファイン マイセリウム”技術で作った素材を、エルメスが自社のタンナーでなめして仕上げたものが「シルヴァニア」だ。同じく当社の“ファイン マイセリウム”技術で作った素材を、当社と提携しているタンナーで仕上げたものが「レイシ」となっている。

また、“ファイン マイセリウム”素材は、本質的に再生利用が可能で生分解性がある。

WWD:現在の資金調達額は?

スカルリン:当社はシリーズBとなる資金調達で4500万ドル(約49億円)を調達した。このラウンドでは、ナタリー・ポートマンやジョン・レジェンド(John Legend)のほか、投資会社のWTTインベストメント(WTT INVESTMENT)、DCVCバイオ(DCVC BIO)、バロー・エクイティ・パートナーズ(VALOR EQUITY PARTNERS)、フンボルト・ファンド(HUMBOLDT FUND)、そして既存の投資家が出資している。なおシリーズAでは1700万ドル(約18億円)を調達しており、累計では6200万ドル(約67億円)となっている。

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東レ日覚社長「世界経済は2022年にコロナ前の水準に」

 東レの日覚昭廣社長は、「ワクチンの摂取が進み、コロナ禍は年内を目途に収束に向かう。2022年には世界経済はコロナ前の水準にまで戻すだろう」との見方を示した。昨年5月に発表した中期経営計画では2023年3月期に売上収益2兆6000億円、事業利益1800億円を掲げているが、「変更はない。むしろ22年3月期の期中に、上方修正の可能性すら期待している」という。都内で25日に開催した記者会見で明らかにした。

 2022年3月期(国際会計基準)の見通しは、売上収益が前期比17.4%増の2兆1200億円、事業利益は同32.9%増の1200億円、純利益は同74.7%増の800億円。「中経の数字達成のためのカギを握るのは繊維部門と炭素繊維部門」と日覚社長。ボーイングなどの大手航空機の主要部材である炭素繊維は、コロナ禍で大打撃を受け、低迷しているが、風力発電のブレードなどで需要が拡大しているという。繊維では、米国の大手アパレルからの足元の受注はコロナ前の水準に戻っているという。繊維事業のトップである三木憲一郎常務執行役員は、「地域やアイテムによって差はあるが、全般的に今年1年をかけてコロナ前の水準にまで戻っていくだろう」という。

 22年3月期の繊維部門の売上高は前期比13.4%増の8150億円、事業利益が同50.3%増の550億円の見通し。23年3月期の繊維事業の計画は売上収益が1兆300億円、事業収益が760億円を計画しており、売上高と営業利益は過去最高だった19年3月期の(売上高9743億円、営業利益729億円)を、それぞれ上回る計画になる。

 繊維の拡大の柱になるのが、リサイクルポリエステル「アンドプラス」などを柱としたサステナブル素材。「すでに縫い糸などではかなりの量を供給しており、グローバルに拡大できる余地がある。トレーサビリティー(追跡可能性)などがますます求められる中でも、こうしたリサイクルポリエステルや、植物由来のバイオポリエステルの開発を強化する。原料分野でのこうした差別化が、トレーサビリティにもつながる」という。

 一方、ウイグル問題などを始め、人権と政治の問題が経済にどう影響を与えるかという質問に対し、日覚社長は「我々としても非常に注視している。人権問題などは最終的には話し合って解決していくことになるだろう。ただ、米中間の貿易額を見ても、実際には伸びている。中国が現在も生産大国であることは現実で、一方米国も市場としての中国を注目している。大きな流れで見ると、マイナスにはならない」という見方を示した。

 新疆綿の調達に関しては、三木常務執行役員が「当社は合繊メーカーなので麺を使った製品を製造する場合は、綿花は購入しているが、原材料の調達はCSR調達基準に則って行っている」と語るにとどまった。

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「地球のために」3年がかりの開発情報を競合他社に無償公開 リシュモン傘下の時計「パネライ」CEOに聞く

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHMONT)傘下のイタリアの時計ブランド「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI以下、パネライ)」は、総重量に対して98.6%ものリサイクル素材を使うコンセプトウオッチ“サブマーシブル eLAB-ID”を発表した。布をメインとするアパレル製品に比べて、精密機器である時計はサステナビリティの分野で立ち遅れ、ベルトなどごく一部にエコフレンドリーな素材を使う例はあったものの、心臓部にタッチするのはもっと先のことだと考えられていた。「パネライ」がこれを一気に突破できた要因、さらにはその狙いについてジャンマルク・ポントルエ(Jean Marc Pontroue)最高経営責任者(CEO)に聞いた。

WWD:他ブランドに圧倒的に先んじて、過去に例のないリサイクル素材使用率の時計を発表した。

ジャンマルク・ポントルエ=パネライCEO(以下、ポントルエ):「パネライ」の研究・開発部門“ラボラトリオ ディ イデー(アイデアの工房)”は、時計業界以外の産業のリサーチを常に行っており、特に航空宇宙の最新テクノロジーを取り入れている。リサイクルベースの素材“エコチタン”をケースに用いたモデルを発表したのは2019年で、その時点ですでに他社よりサステナビリティで先んじていた。“時計産業にエコシステムを作る”という目標を掲げ、ムーブメントの開発に3年を要したものの、いち早く着手したことで大きな成果を上げることができた。

WWD:今回開発した技術や開拓したサプライヤーについて、競合他社のブランドに情報を無償公開すると聞いた。

ポントルエ:環境保護の問題には可及的速やか、かつ「パネライ」だけでなく時計業界全体で取り組むことが必要だ。時計は自動車などに比べれば、1つの商品に使う素材の量はごくわずか。しかし業界全体の総量で考えれば、新たな資源の採掘を減らすことに大きなインパクトを与えられる。

WWD:日本の時計ファンには、堅実な定番モデルに傾倒するコンサバ層も多い。そういった人たちに、新たな「パネライ」をどうアピールする?

ポントルエ:定番モデルには長く愛される理由があり、それを正しく理解する日本の時計ファンの審美眼は確かだと思う。「パネライ」も“ラジオミール”や“ルミノール”といった定番モデルを、デザインをほぼ変えずに機能・素材を進化させて継続している。そのため、日本の時計ファンに理解いただきやすいブランドと言える。20年には、“PAMCAST(パムキャスト)”という「パネライ」の歴史や世界観、最新トピックを伝えるデジタルコンテンツをスタートさせており、ここでも「パネライ」の魅力を発見してもらえるはずだ。

WWD:“変わるパネライ”を象徴する出来事としては、薄型モデルを集約した“ルミノール ドゥエ”の38mmをレディスコレクション化して“パネライ ピッコロ ドゥエ”とした。新たな女性ファン獲得のための指針についても聞きたい。

ポントルエ:機能を追求することによって完成された普遍的な美しさを持つ「パネライ」のデザインは、これまでも世界中の女性の心をつかんできた。しかし、“メンズの時計を着ける”という心理的ハードルがあったと思う。今回、女性のライフスタイルやフィッティングをいっそう意識してコレクション化したことで、女性が「パネライ」をワードローブに取り入れやすくなったことをアピールしていきたい。

WWD:次はどんなことでわれわれを驚かせてくれる?

ポントルエ:19年にはイタリア海軍での訓練体験をオプションしたモデルを、20年には70年保証を付けたモデルを、そして21年にはリサイクル素材使用率98.6%のコンセプトウオッチを発表した。チャレンジ&フロンティア精神を持って新たな挑戦を続けているので期待してほしい。

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アディダスのキーマンが語る “キノコの菌製”人工レザーの課題と可能性

 キノコの菌から作った“人工マッシュルームレザー”が注目を集めている。動物を犠牲にすることなく、環境への負荷も従来の動物の皮革と比較すると極めて低いことから、有力ブランドが新興企業と組んで開発を進めている。

 “マッシュルームレザー”は再生可能なキノコ類の菌糸体(マイセリウム)から作られており、約2週間で製造できる。一方、皮革1キログラムを生産するのに要する水の量は1万7000リットルにのぼり、畜産は、世界の温室効果ガス排出量の約18%を占めている。水リスクが高いエリアで行われていることも多く、現在アマゾンの森林伐採地域の70〜80%が家畜の牧草地として使用されているなど、生態系の破壊の要因のひとつになっている。また、一般的な合成皮革は布地をベースに合成樹脂を塗り、表面層を天然の革に似せているため石油由来だ。

 「エルメス(HERMES)」は米国のスタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)と開発した「シルヴァニア」を用いたバッグを3月に発表し、今年中に発売する。アディダス(ADIDAS)もまた4月15日に、米ボルトスレッズ(BOLTTHREADS)が運用する「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を発表し、今後12カ月以内に商品化する予定だ。しかし、革新的技術を用いた新素材だけに量産化に向けた課題は多い。スケールアップをどうするのか、強度をどのように担保するのか、均一性をどう保つのか、使用中のケアや廃棄はどうするのか、100%バイオベースが可能か――ちなみに「マイロ」は、強度を担保するために仕上げに石油化学製品を用いているため、ドイツ規格協会に60~85%がバイオベースと認定されているが生分解はしない。

 アディダスで「マイロ」に取り組む、デイヴィッド・カス(David Quass)ブランド サステナビリティ・グローバルディレクター、ダーラン・キル=フューチャーチーム テクノロジークリエイション シニアマネジャー、ニコラ・グルーネウェフ(Nicholas Groeneweg)フューチャー・シニアマネジャー、マーティン・ラヴ(Martin Love)オリジナルズ カテゴリーディレクター、4人のキーマンに「マイロ」運用への課題とその可能性を聞いた。

WWD:「マイロ」を用いたプロダクトの拡大をどのように進めるのか?

ニコラ・グルーネウェフ=フューチャー・シニアマネジャー:近い将来、「マイロ」素材の商業化の可能性が立証されることに期待を寄せている。今後12カ月以内に“マイロ スタンスミス”の限定版第1号モデルを発売できるよう取り組んでいる。価格帯は同じカテゴリーの類似プロダクトに合わせられるよう目指している。その後、少しずつ規模を拡大しながら種類を増やし、「マイロ」をほかのプロダクトやシリーズに導入していく予定だ。

デイヴィッド・カス=ブランド サステナビリティ・グローバルディレクター(以下、デイヴィッド):アスリートや消費者のニーズに合わせて革新的なコンセプトを生み出すことは、市場におけるポジションを高め、当社のビジネス戦略の重要な要素になっている。われわれは当社のバリューチェーン全体で、サステナビリティの実現につながること――画期的で新たなテクノロジーやプロセスを生み出す技術への投資を行っている。また、デジタル化の可能性を探りながら、われわれの革新的なコンセプトの源を確保することに努めている。

WWD:「マイロ」は「リサイクルを前提に開発された素材」とオンラインカンファレンスで話していた。将来、“スタンスミス マイロ”は“フューチャークラフト.ループ(Future Craft. Loop)”のようなモノマテリアル化/単一素材化を目指すのか?

デイヴィッド:今のところは“スタンスミス マイロ”はコンセプトフットウエアで、ケミカルリサイクル(使用済みの資源を科学的に分解して原料に戻し再度活用すること)に対応させる計画はない。

ダーラン・キル=フューチャーチーム テクノロジークリエイション シニアマネジャー:現時点で“スタンスミス マイロ”はコンセプトにすぎないが、そう遠くない未来に必要なテストを実施し、リサイクル可能か、まだその段階ではないかの判断ができるだろう。

われわれの目標は“END PLASTIC WASTE (廃棄プラスチックをなくす) ”だ。そのために、2024年までに全てのポリエステルをリサイクルポリエステルに切り替えることを目指している。また、30年までにCO2排出量を30%削減し、50年までにカーボンニュートラルを実現するという、壮大な目標を立てている。この目標を実現するために、成長を維持しながら、ビジネスの抜本的な見直しを図っている。そこでまず行っているのは、どんな素材をどのように活用するかを見直すこと。次に目を向けているのは、再生や再構築が可能な“Made with nature (自然とのコラボレーション)”のプロダクトを作ること。これが“END PLASTIC WASTE” に向けたイノベーションの長期戦略となっている。

新素材「マイロ」の導入は、“Made with nature”コンセプトのプロダクトを通じて未来を築くというアディダスの大きな目標において重要な進展だ。

当社が掲げるモノ作りのコンセプト“再生のループ(Regenerative Loop)”の最終目標は、天然由来の成分から開発された素材や、研究室で開発された細胞由来・タンパク質由来の素材を用いてプロダクトを作ることだ。

WWD:「マイロ」の優位性は?

デイヴィッド:「マイロ」には農業分野から見ても土地利用面積の削減につながり、しかも14日のリードタイムで収穫できるという2つの点で環境に利点がある。また、「マイロ」は汎用性が高く、多種多様な着色や仕上げ加工が可能なので、アディダスではゲームチェンジャーとなる最新素材を使用する初のモデルにクラシックな“スタンスミス”を選択した。

WWD:規模拡大に関して現在の課題は?

マーティン・ラヴ=オリジナルズ カテゴリーディレクター:規模拡大はそれほど困難ではない。むしろプロセスの方に手間がかかる。素材からフットウエアを生み出すために、12カ月かけて開発を進めてきた。開発が完了した現在、次のステップとして、段階的に量産化の試験を行いながら、大量生産への対応とその際の品質を分析する段階に入っている。1足のフットウエアなら多くの手間をかけて神経を注ぐことができるが、今後は数百足、数千足でも均一に作らなければいけない。当然、ある程度の時間がかかる。

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「ステラ マッカートニー」「シャネル」「アディダス」も続々導入 ビーガン素材のレザーってどんなもの?

 動物の権利や環境問題への関心の高まりに合わせて、動物に由来する成分を使用しないビーガン素材の人工レザーが増えている。

 一般的にビーガンとは動物性のものや、動物に害のある生産過程を経たものを可能な限り搾取せずに暮らすライフスタイルを指す。肉から魚、卵、乳製品、はちみつまで、動物由来のものを一切口にしないことに加えて、食だけに限定するのではなく、身の回りの製品から動物由来のものをできるだけ避ける考えとして浸透している。そんな考えをもとにしたビーガンレザーは、パイナップルの葉やサボテン、キノコなどを使用する。

 中には動物由来の成分への代わりとして、石油に由来する合成繊維が使用されるケースも多い。これらは生分解(微生物の働きによって無機物まで分解されること)もできないので環境問題へのアプローチとして疑問視されることもある。植物由来のビーガンレザーはその点、動物に害を及ぼさないだけでなく、プラスチックの使用量も抑えられる。これら次世代の皮革は、より人道的で、資源を大量消費せず、環境汚染に加担しない新たな素材として急成長している。

 アメリカに住む成人を対象としたマテリアル・イノベーション・イニシアチブ(Material Innovation Initiative)とノースマウンテン・コンサルティンググループ(North Mountain Consulting Group)による調査では、回答者の55%が動物性レザーより“ビーガンレザー”を好むと述べ、興味のある事柄には動物福祉(アニマルウェルフェア)やサステナビリティをあげた。動物性のレザーを好む人の80%も植物ベースの代替品を購入することに抵抗はなく、25%は前向きと答えている。

より良い植物由来のレザー開発に励む企業の取り組み

 21年2月には、100%植物由来の“プラントレザー”の開発に成功した注目のスタートアップ企業ナチュラル・ファイバー・ウェールディング(NATURAL FIBER WELDING、以下NFW)とサンフランシスコ発のスニーカーブランド「オールバーズ(ALLBIRDS)」が提携を結んだ。同ブランドはサステナブルなレザー開発のために、NFWが持つ技術「Mirumテクノロジー」に200万ドル(約2億1000万円)を投資すると発表した。「Mirum」はコルクパウダーやもみ殻、ココナッツの繊維など、植物ベースの廃棄物を活用する新素材だ。見た目や手触り感にこだわり、さまざまなアレンジが可能だという。

 ほかにもサンフランシスコのスタートアップ企業ボルトスレッズ(BOLT THREADS)は、キノコの菌から作った人工レザー「マイロ(MYLO)」を開発。牛皮では数年かかる皮の成長が、「マイロ」は2週間で完成する。生産時の温室効果ガスや、工程にかかる水とエネルギーを削減した。同社は実際の商品開発に向けて、「アディダス(ADIDAS)」やケリング(KERING)、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」、ルルレモン(LULULEMON)とパートナーシップを結んでいる。

 スー・レビン(Sue Levin)=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、「牛皮は食肉産業の副産物であり、本来なら廃棄するものを使っているという見方もあるが、ファッション業界の抱える問題の一つであることは間違いない。工業的な畜産は倫理及び環境的観点から衰退傾向にある。明らかに大きな変革の流れが起こっている」と述べた。牛皮メーカーはよりクリーンな生産環境に改善を試みているが、依然として有害ななめし工程や動物虐待の可能性、労働者の健康と安全への懸念があり、アマゾンの森林破壊に影響を与えていると指摘する。

 「ブランドが植物由来のレザーを長期的に定着させるためにできることは、毎年一定量の材料の買い付けを約束することだ」と、英国ロンドン発のアナナス・アナム(ANANAS ANAM)、メラニー・ブロワイエ・エンゲルケ(Melanie Broye-Engelkes)最高経営責任者(CEO)。買い付けを確約することで、材料メーカーはより正確に需要を把握でき、コストの削減につながる“好循環”を生むと説明する。アナナス・アナムは環境負荷が極めて低い天然由来素材“ピニャテックス(Pinatex)”の開発で脚光を浴び、以来「H&M」「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」「シャネル(CHANEL)」といったブランドが同素材を採用している。

 価格設定は、材料や調達を語る上で重要だ。牛皮とは異なり、“ピニャテックス”や他のビーガンレザーは単一のシートで販売されている。従来のレザーに多い穴や断片的な部分が少ないので廃棄物が削減でき、その結果コストの削減につながるという。エンゲルケCEOは「安価な合成レザーのポリウレタンやポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)と価格で競うことは難しい。しかしこれらビニール製の素材は、環境負担を考慮していないということに注意を払うべきだ。これらの材料はエンドユーザーやブランド、もしくは気候変動に対して規制を実施できる立場にある政府などの意識の変化に伴い段階的に衰退していくだろうから、われわれの使命は価格帯で争うことではない。より少なく、より賢い消費を訴えている」と語った。

“本当”のビーガンレザーの定着に向けて

 一方でアシュリー・ホールディング(Ashley Holding)循環イノベーション・コンサルタントは、“ビーガン”素材の多くは宣伝されるほどクリーンではなく、石油化学製品の使用量も高いのではないかと考えている。例えばブランドは特定の素材の使用をプロモートしても、実際の製品にはごく一部しか使用されていないケースや、強度と耐久性のために植物由来の成分をプラスチックポリマーと結合する場合もあると言う。これらはプラスチックとしてリサイクルも、自然成分として堆肥化もできないという最悪のケースで、“フランケンシュタイン”な物質になってしまっている。

 「“本当”の植物由来のレザーを見分けるには、成分を細かく調べることが大切だ。素材の一部か全体が生分解性かどうかで環境への影響は大きく変わる。一般的に、皮をなめす際に動物のレザーほど化学物質を使った処理はしないが、植物由来のレザーでもさまざまな結合剤や添加剤を使うことがあるため、注意が必要だ」という。柔らかさで評判の高い人工レザーの「マイロ」は、それでも仕上げにある程度の石油化学製品を使用しているため、ドイツのDIN-ゲプリューフト(DIN-Gepruft)規格に基づいて60〜85%がバイオベースと認定されている。

 完全に植物ベースでありながら、製品のクオリティーを維持することは非常に難しい。レビン=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、「100%がバイオベースになることが目標であるべきだと信じている。しかしこれらの素材がどれほど進化できるかは、新素材を取り入れるブランドや消費者の数による。消費者の多くは、サステナビリティのために品質に妥協しないこともわかっている。柔らかさや耐久性、しなやかさでブランドや消費者が満足するバイオベースのレザーはまだ出会ったことがない。しかし努力は続けていく」と言う。

 アナナス・アナムは、欧州連合(EU)による化学物質を管理する規則「リーチ(REACH)」に準拠した水性ポリウレタンコーティングを使用しており、“ピニャテックス“の成分の10%を占める。同社は21年、ポリウレタンの使用量を半分にするバイオベースの樹脂の使用を開始。これにより、製品の95%がバイオベースになる。エンゲルケCEOは「今後100%植物由来となる見通しはついている。近いうちに、より正しい“レシピ”で作られた製品が出るだろう」と述べた。

 素材の成分の表記や宣伝方法は時に混乱を招くケースも多いが、それでも動物性のものの代わりとして発展するビーガン素材への関心は高まり続けている。レビン=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、生物学に目を向けて政府を巻き込んだ規模の施策などが必要となると言う。NFWのルーク・ハヴェラール(Luke Haverhals)創業者兼CEOも「技術的な解決策を講じるには、まず問題を定義・認識することが大事」とし、業界全体でバイオテクノロジーの分野の透明性と、誇張表現を注視すべきだと語った。

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再生ポリエステルの最強タッグ結成、帝人と伊藤忠、日揮が国内外で技術ライセンス展開

 帝人と伊藤忠商事、エンジニアリング大手の日揮はこのほど、帝人の持つポリエステルのケミカルリサイクル技術の国内外のライセンス展開の共同協議書を締結した。帝人は2002年に世界で初めて、廃棄された繊維製品からポリエステル繊維を再生するケミカルリサイクル事業をスタートするなど、世界的にも先進的な技術を持つ。世界に幅広いネットワークを持つ伊藤忠、プラント製造に強い日揮と組むことで、国内外でケミカルリサイクル技術の拡大を目指す。「共同協議書という形なので、実際にどう展開するのかなど、具体的な取り決めはこれから。ただ、こうした取り組みに賛同いただける企業を募りたかった」という。

 帝人を筆頭に日本の大手繊維メーカーはかつて、中国や韓国、ASEANなどで合繊工場の技術許与を行ってきた過去があるが、今回の共同協議の狙いは、ケミカルリサイクル技術の普及・拡大にある。日揮は世界中でさまざまなプラントの建設を行なう一方、伊藤忠は自社でリサイクルポリエステル「レニュー」を展開するほか、再生ナイロン繊維「エコニール」を展開するのイタリアのアクアフィルとも提携し、ケミカルリサイクルのための世界規模での回収・生産システムの構築にも動いている。廃棄プラスチックによる海洋汚染やアパレル製品の大量廃棄が世界的な問題になる中で、3社が組むことで、コスト効率に優れ、かつ世界規模でスケール感のあるケミカルリサイクルシステムの確立に乗り出す。

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アディダスがキノコの菌から作った人工レザーの“スタンスミス”を発表 来年発売

 アディダス(ADIDAS)は4月15日、キノコの菌から作った人工レザー「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を発表した。来年には発売予定で、4月8日にオンラインで行ったプレスカンファレンスで明らかにした。

 「マイロ」は無限に再生可能なキノコ類の地下根系である菌糸体(マイセリウム)から作られており、約2週間で成長する素材。現在、米国カリフォルニア州エメリービル拠点のバイオテックベンチャーのボルトスレッズ(BOLT THREADS)が運用している。ボストスレッズによると、最先端分野の農業技術を活用したプロセスにより、1平方フィート(0.09平方メートル)単位で増産可能な空間効率の高いシステムでこの菌糸体を育てることができるという。

 アディダスは、カンファレンス終了直後に行った「WWDJAPAN」とのQ&Aセッションで、「マイロ」のケミカルリサイクル技術の研究も並行していることを明かしており、「アディダス」が掲げてきたモノ作りにおける“再生のループ”を自然由来の素材で実現する画期的な素材としても注目だ。

 また、アディダスによると「マイロ」は柔らかくてしなやかな素材で汎用性が高く、多種多様な着色や仕上げ、エンボス加工にも対応できるという。一方で、菌糸体から作られた人工レザーは強度への課題もあるが、それに対しては「可能性を広げるために現在幅広く調査していて、段階的に素材やその機能性を変化させていければと考えている」と話した。

 今回発表した“スタンスミス マイロ”は、アッパーの外側、パーフォレーション(穴飾り)を施したスリーストライプス、かかととベロ部分に「マイロ」を使用し、ミッドソールには天然素材のラバーを用いた。

 アディダスのエイミー・ジョンズ・ベテラウス(Amy Jones Vaterlaus)未来グローバル担当責任者「『マイロ』の登場は、プラスチック廃棄物をゼロにするという当社の大きな目標に向けた大きな一歩だ。この惑星の住人として、私たちが学ばなければならないのは、自然にあらがうのではなく、自然と手を携え、革新的なソリューションを見つけるために、あらゆる努力をして、資源が回復する持続可能なペースでモノ作りを行う責任があるということ。“マイロ スタンスミス”は地球の生態系との相乗効果をはかることできるようデザインした」と話した。

 一方、ボルトスレッズのジェイミー・バインブリッジ(Jamie Bainbridge)=バイスプレジデント・オブ・プロダクトディベロップメントは「アイコニックな“スタンスミス”のアッパーに『マイロ』を採用することにより、アディダスは、この革新的な素材の大きな可能性を示してくれた。イノベーションを実現するための開発パートナーシップを通じて、アディダスと提携していることに、私たちはとても興奮している。『マイロ』は現代に必要な実力と性能を兼ね備えている。これはフットウェアの開発を通じて、アディダスのチームからの助言や深い技術的な専門知識のおかげだ」とコメントを発表した。

 なお、3月には「エルメス(HERMES)」が米新興企業マイコワークス(MYCOWORKS)と協働開発した菌糸体から作られた人工レザー“シルヴァニア”を用いたバッグを発表。今年中に発売する予定だ。“シルヴァニア”はエルメスのなめし工房で仕上げることで、強度と耐久性を高めている。同じく3月にステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)も「マイロ」を用いた衣服を2型発表している。

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伊藤忠の仕掛ける次世代セルロース繊維の大本命 世界最速で日本で初お披露目

 伊藤忠商事は、フィンランド発の革新レーヨン繊維をいよいよ本格的に始動する。伊藤忠がフィンランドの木材パルプ世界最大手のメッツァグループ(METSA GROUP)と共同で展開するもので、これまで製造工程で有機溶剤などを使用し、環境負荷の高かった従来のレーヨン素材とは異なり、有機溶剤を使わず、環境負荷も小さく、しかもコストも従来とほぼ変わらない画期的な製法で製造するため、次世代セルロース繊維の大本命と言われている。ブランド名を「クーラ(KUURA)」と定め、3月16日には「楽天ファッションウィーク東京」の「ザ・リラクス(THE RERACS)」のショーで、世界で初めて服になった「クーラ」を披露した。

 伊藤忠はメッツァグループとともに2018年10月に、約4000万ユーロ(約51億円)を投じて、メッツァグループの中核会社メッツァ・ファイバーの工場内に年産350トンの生産能力を持つパイロットプラントを建設。メッツァ・ファイバーは主に紙やレーヨンの原料になるパルプの世界最大手企業で、「クーラ」は粗原料になる木材からパルプ、繊維の原料になる原綿まで一貫生産になる。

 レーヨンなどのパルプを原料とする一般的なセルロース系の繊維は、ポリエステルやナイロンのような合成繊維と異なり、石油を原料とせず、土に埋めれば分解する生分解性などの特徴を持つため、サステナビリティを打ち出す企業もある。ただ実際には生産工程で有機溶剤を使用するなど、環境負荷の高い部分もある。

 また、欧米のスタートアップ企業が相次いで革新的なセルロース繊維の開発を発表しているが、いずれも数トン〜数十トンクラス。「クーラ」はパイロットプラントでも年産350トンと、スケールは圧倒的で、かつ量産プラントになればレギュラーレーヨンとほぼ同等のコストパフォーマンスを発揮できる。

 「クーラ」は粗原料となる木材からパルプを生産する際にも、これまでは一般的だった有機溶剤を使う方法ではなく、安全性が高く、一本の木材から採取できるパルプの量も多い製法を使うなど、メッツァグループの有する先進的なサステナビリティ技術が盛り込まれており、工場自体が多数の認証も取得している。

 「クーラ」工場は、メッツァ・グループと伊藤忠が折半出資する合弁会社で運営しており、糸の原料となる原綿(げんめん)の開発と生産をメッツァが、紡績工程以降の糸や生地の生産・販売などを伊藤忠が独占的にコントロールする。「クーラ」事業を担当する下田祥郎・繊維原料課長は、「物性なども従来のレーヨンやセルロース素材とは異なるため、紡績糸の開発と生産は世界的にも技術力の高いクラボウと行っている。水面下で国内外の有力企業・ブランドとの商品化を進めているが、非常に大きな手応えを感じている」という。『クーラ』工場の立ち上がりは、コロナ禍で当初計画より遅れているものの、「来年度の後半にはパイロット工場をフル稼働にもっていく」(同)考え。

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サボテンから作るレザースニーカー“ブラッドリー カクタス”が発売

 アメリカ・ロサンゼルス発のスニーカーブランド「クレイ(CLAE)」は、アイコンモデルにサボテン由来のカクタスレザーを用いた新作“ブラッドリー カクタス”を全国の取扱店や公式オンラインストアなどで発売した。

 カクタスレザーは、メキシコのスタートアップ企業、デザート(DESSERTO®︎)が開発したサステナブルな新素材だ。雨水とミネラルのみで自生するサボテンの葉を、数日間天日干しして、化学薬品を一切使用しない特殊加工を施した合皮は、しなやかで、通気性や耐久性に優れている。2020年には、持続可能な製品やアイデアを表彰するドイツ・ベルリンの「グリーンプロダクトアワード」を受賞。「持続可能な素材のなかでも最も高品質」という評価を受けたことで、世界的に注目を集めている。

 新作“ブラッドリー カクタス”には、アッパーにカクタスレザーを採用。アウトソールには100%天然ゴム、インソールやライニングにはコットンキャンバス、シューレースにはプラスチック廃棄物からリサイクルしたナイロン素材を用いるなど、さまざまなパーツをサステナブルな素材でアップデートしている。さらに、パッケージのシューズケースにも、リサイクル段ボールを使用。カラーラインアップは、ブラック、グリーン、ホワイト×ネイビーの全3色で、ウィメンズ&メンズサイズを取り揃える。価格は1万9000円。

 また4月1日から、ポップアップイベントをエストネーション 六本木ヒルズ店で開催する。期間中は、“ブラッドリー カクタス”のほか、サステナブルな素材も使用したメンズスニーカーをバリエーション豊富に販売する。

 「クレイ」は2001年に創業したスニーカーブランド。“アフタースケートで履くレザーシューズ”をコンセプトにしたコレクションは、国際的な認証を得たタンナーが製造するフルグレインレザーや、海洋プラスチックゴミをアップサイクルしたテキスタイルなどを使用している。環境に配慮しながら、快適さとミニマルなデザイン性を兼ね備え、現在、世界50カ国に販路を持つ。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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「ステラ マッカートニー」もキノコの菌から作った人工レザーの服、「エルメス」も先日発表 

 ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)は3月18日、キノコ由来の人工レザー「マイロ(MYLO)」を用いた衣服を2型発表した。今回発表したアイテムは販売予定はないが、今後発表するコレクションに「マイロ」を取り入れていく予定だ。

 「マイロ」は無限に再生可能なキノコ類の地下根系である菌糸体(マイセリウム)から作られており、バイオテックベンチャーのボルトスレッズ(BOLT THTRADS)が開発し、かねてから注目を集めていた素材。ステラ マッカートニーは2017年7月にボルトスレッズとパートナーシップを締結し、18年には「マイロ」を用いたアイコンバッグ“ファラベラ”のプロトタイプを発表。同年ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で開催された「ファッションド フロム ネイチャー」展で展示していた。20年10月には、アディダス(ADIDAS)とケリング(KERING)、ルルレモン(LULULEMON)とともにボストスレッズと戦略的パートナーシップを結び、21年中の商品化を目指している。

 ステラ・マッカートニーは「私は『ステラ マッカートニー』のコミュニティーが、サステナビリティのためにラグジュアリーな魅力を妥協する必要は決してないと信じている。『マイロ』を採用することでその両立が実現する。今回発表する稀少でエクスクルーシブなアイテムには、ファッション業界を革新し、より思いやりのあるものにするというステラ マッカートニーとボルトスレッズ共通のコミットメントが具現化されている。これは、私たちの仲間である生き物や地球を犠牲にすることとは対照的なものとして、美しいラグジュアリー素材の誕生を見据えた取り組みだ」とコメントを発表。

 ボルトスレッズのダン・ウィドマイヤー(Dan Widmaier)共同創業者兼CEOは「新たな高品質のバイオマテリアル(生体材料)の開発は、重要な技術的課題であると同時に、人々と地球にとって非常に大きなチャンスでもある。ステラ、そして彼女のチームには、『マイロ』の存在を世界に発信するための長期的なパートナーシップとサポートをいただき、非常に感謝しており光栄だ。今回発表した2つのアイテムに『マイロ』が採用されたということは、バイオマテリアルの持つ美しい魅力と性能の両方における大きな前進であるばかりか、これらを衣料品の素材として採用する準備が整い、いよいよ市場への投入が始まりつつあることを意味するものでもある。これは、大規模な生産に向けた具体的な進歩であり、『マイロ』が地球にとって大きなプラスの影響を与えるチャンスなのだ」とコメントを発表した。

 今回発表した「マイロ」素材のアイテムは、ブラックのビスチェトップとパンツで、どちらも、リサイクルナイロンの上に菌糸体ベースの素材を重ねた素材でどちらもロンドンのスタジオで手作業で作られた。

 ボルトスレッズによると「マイロ」は、柔らかく、しっかりとした質感が特徴。バイオベース素材として認定された、自然界に存在する再生可能な成分を主に作られている。ボルトスレッズは、菌糸体が最もよく成長する林床の下で起こる仕組みを研究室で再現し、木くずやおがくず、空気、水を用いて「マイロ」を作成する方法を開発した。

 環境への影響を最小限に抑えるようにデザインされたプロセスで、「マイロ」は14日以内に製造できるという。通常、皮革1キログラムを生産するのに要する水の量は1万7000リットルにのぼり、また、畜産は、世界の温室効果ガス排出量の約18%を占めており、生態系の破壊の要因のひとつとなっている。現在、アマゾンの森林伐採地域の70〜80%が家畜の牧草地として使用されている。

 ボルトスレッズは、09年創業。カリフォルニア州エメリービル拠点。ベンチャー企業専門メディアのクランチベースによると、これまで累計2億1300万ドル(約230億円)を調達している。

 キノコの菌糸体から作られる人工レザーの課題の一つは強度と耐久性で、先日「エルメス」がマイコワークス(MYCOWORKS)と開発した菌糸体から作られた人工レザーは、エルメスのなめし工房で仕上げることで、強度と耐久性を高めている。「エルメス」が発表した商品は発売予定だ。なお、マイコワークスはボルトスレッズと同じくカリフォルニア州メリービル拠点。

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「エルメス」が“キノコ由来の人工レザー”を米国の新興企業と開発

 「エルメス(HERMES)」はパリで行った2021-22年秋冬向けの展示会で、米国のスタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)と開発した、きのこを原料にした人工レザー「シルヴァニア」を用いたバッグ“ヴィクトリア”を発表した。

 マイコワークスは13年創業で、サンフランシスコ近郊のエメリービルに本社と工場がある。菌糸体からレザーのような素材を作る技術“ファイン マイセリウム(Fine Mycelium)”を開発して特許を取得しており、女優のナタリー・ポートマン(Natalie Portman)や歌手のジョン・レジェンド(John Legend)らも出資している。昨年11月に4500万ドル(約48億円)を調達しており、ベンチャー企業専門メディアのクランチベースによると、これまで累計6200万ドル(約67億円)を調達している。

 エルメスで使用している素材は“ファイン マイセリウム”の技術を用いて作られた素材の強度と耐久性を高めるためにフランスにあるエルメスのなめし工房で仕上げを施した新素材だ。独自の艶があり、柔らかく、繊細なタッチ、琥珀色に輝く素材で、エルメスは「メゾンの特別な素材の一つとして新しく加わる」と発表している。“ヴィクトリア”は、マイコワークスにとっても自社のバイオテクノロジーを用いた初めての商品になる。

 菌から作られた人工レザーは動物福祉や環境への負荷軽減などの観点から注目を集めている。「マイロ(MYLO)」で知られるボルトスレッズ(BOLT THREADS)は、ケリング(KERING)、アディダス(ADIDAS)、ステラ・マッカートニー(STELLA McCARTNEY)、ルル・レモン(LULU LEMON)と戦略的パートナーシップを組み、今年中に商品化を目指している。

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オールバーズが“100%植物由来レザー”に投資、スタートアップ企業と共同で技術開発

 サンフランシスコ発のスタートアップでサステナブルファッションの提案で注目を集めるオールバーズ(ALLBIRDS)は、⽶国イリノイ州のナチュラル・ファイバー・ウェールディング(NATURAL FIBER WELDING、以下NFW)と提携し、同社が持つ技術「Mirumテクノロジー」に200万ドル(約2億1000万円)を投資すると発表した。NFWは100%植物由来の“プラントレザー”の開発に成功した注目のスタートアップ企業。今後、「Mirumテクノロジー」を用いた製品を開発し、またその技術をオープンソース化していく。

 “プラントレザー”は、植物油や天然ゴムなどのバイオ素材を原料としていて生分解し、従来の天然⽪⾰に⽐べ1/40、⽯油由来の合成⽪⾰と⽐べても1/17もカーボンインパクト(⼆酸化炭素による環境への影響)を軽減することに成功している。

 オールバーズは、“カーボンニュートラル”を目指すと宣言し、2020年4月から全商品にカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を表示。測定・削減・相殺することに取り組む。同社が問題視していたという、靴底フォームに用いるEVA(通常は石油由来)を100%植物由来で作ることに成功し、その技術をオープンソース化している。

 オールバーズのジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zwillinger)共同創業者は「多くのファッション企業は、環境より⽣産スピードとコストを優先させるために、環境に悪影響な⽯油由来の合成素材やサステナビリティに⽋けるレザーを⻑く使⽤し続けてきた。NFW社はスケーラブルかつサステナブルなプラントレザーを開発しており、これらの素材は⼆酸化炭素排出量を98%も抑えられるポテンシャルを秘めている。今回のパートナーシップ及びそのテクノロジーによって開発される“プラントレザー”は、ファッション業界から⽯油系素材を失くすための⼤きな⼀歩となる」とコメントを発表。

 NFWのルーク・ハヴェラール(Luke Haverhals)創業者も「今、社会に蔓延している⽋乏感――これはプラスティックや⽯油系製品に頼り続けてきた結果だ。しかしサステナブルで再⽣可能な⼿法に基づいた技術は、この問題を解決し、まったく新しい時代を切り開くだろう。新しい時代に向けた取り組みを牽引するオールバーズ社とパートナーシップを結ぶことは、私たちにとっても⼤きな意味があり、⼤変喜ばしいことである」とコメントした。

 NFWは2015年、ルーク・ハヴェラールが創業。中核技術は天然ポリマーのリフォーマットで、「Mirum」は天然由来の⽣分解性ポリマーで作られており、ポリウレタンでコーティングせず、合成接着剤も不使用で、⼿触り感の調整や複雑な構成など、さまざまなアレンジが可能な素材だという。

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レンチングがデニム染色のサステナブルな技術を開発 水・化学薬品・電力を大幅カット

 オーストリアのセルロース繊維最大手レンチング・グループ(LENZING GROUP)は、「テンセル」ブランドのモダール繊維とインディゴ技術の融合「テンセルモダール インディゴカラーテクノロジー」を開発した。ワンステップの原液着色プロセスにより、インディゴ色素を繊維に直接染着することで、大幅に少ない資源量で、通常のインディゴ着色より優れた染色安定性を達成する。

 この技術の導入により、水とエネルギーを大量に使用する従来のインディゴ染色と比較すると、インディゴ染色で使用する水、化学薬品、電力を大幅に節約できる。また、排水の量も少なくなり、熱エネルギーも使用しない。

 また、通常のインディゴ染色と比較して、クロッキングや摩擦に対しての乾湿堅牢度が優れているため、家庭用洗濯での色落ちを防ぎながら、工業用洗濯の技術下ではデニム製品特有のウォッシュダウン効果を実現できる。またこの技術は、幅広い用途に対応し、多様な種類の繊維との複合繊維としても使用できる。

 この製品は、EUエコラベル1認定(ライフサイクル全体にわたり高い環境基準に適合する製品に付与される)を取得。オーストリアで生産され、サステナブルに管理された木材資源のブナ材を主原料としており、米国農務省(USDA)からBioPreferred®の認定も受けている。

 レンチングは、「インディゴカラーテクノロジー」繊維の発売に向けて、デニム工場のカンディアーニ(CANDIANI)やコーン デニム(CONE DENIM)といった大手サプライチェーンパートナーと提携した。

 フロリアン・ヒュブランドナー(Florian Heubrandner)グローバルテキスタイル事業担当バイスプレジデントは「イノベーションは私たちの事業活動の中心的存在だ。サステナブルな繊維の使用から業界をリードする機能や生産プロセスまで、環境保護という目標を常に掲げている。従来の製造プロセスから脱却し、先進的な技術と再生可能な環境配慮型の原料を採用した『テンセルモダール インディゴカラーテクノロジー』は、デニム業界におけるインディゴの用途とサステイナビリティの新たなベンチマークとなる」とコメントを発表した。

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「パタゴニア」「H&M」が注目するスタートアップ、コットン古着でリサイクル繊維を実現

 フィンランド発のスタートアップ企業インフィニテッド ファイバー(INFINITED FIBER)は廃棄衣料や段ボール、稲や小麦のわらからコットンに近いセルロース繊維「インフィナ(Infinna)」を製造する技術を開発した。同社の技術は100%廃棄衣料を原料にしても新品のような品質を提供でき、綿やビスコースと比べて優れた染色性などを持つという。すでに「パタゴニア(PATAGONIA)」や「H&M」とも協働して試作品を製作したり、パートナー企業と工場を建設したりと、量産に向けた準備が着々と進む。これまで欧州委員会やフィンランド政府など公的資金を中心に660万ユーロ(約8億3000万円)を調達。今後は、さらに各地域のテキスタイルメーカーと組んで事業拡大を狙う。ペトリ・アラヴァ(Petri Alava)共同創業者兼最高経営責任者にオンラインインタビューを行った。

WWD:古着からセルロース繊維が作れるとか。

ペトリ・アラヴァ共同創業者兼最高経営責任者(以下、アラヴァ):私たちが開発した技術は、さまざまな原料からセルロース繊維「インフィナ」を生産できる。古着、廃棄段ボール、稲や小麦のわらなどから生産可能だ。現在は古着を原料に、ポリエルテルやスパンデックスなどを分離してセルロースを取り出して生産している。われわれの技術で製造するのは“セルロースカルバメート”で、人工繊維としては珍しく手触りや見た目はコットンに近くナチュラルだ。また、ビスコースやコットンに比べて染色しやすい点も特徴だ。

WWD:特に廃棄衣料を原料にすることに重きを置いているとか。

アラヴァ:われわれは、埋め立てたり焼却されたりしている繊維廃棄物に対して、価値のある循環型経済のソリューションを提供することができる。当社の技術は天然資源への圧迫を軽減することができる。もちろん、将来的にはわらや段ボールなどを原料に使用する可能性もある。

WWD:“セルロースカルバメート”は技術開発が進んでいるものの、さまざまな理由から量産化に至っていないと聞いたことがある。

アラヴァ:当社の技術の起源であるVTT(フィンランド技術研究センター)は何年もの歳月をかけて技術を磨き上げ完成させた。現在の技術にたどり着くまでにたくさんの研究開発作業とパイロットテストを行った。当社はまだパイロットスケールだが、商業生産にスケールアップする準備ができている。

WWD:強度も含めて、どれぐらいのクオリティーなのか?

アラヴァ:コットン古着から再生する場合、これまでの技術では繊維が10%程度減ってしまうので、品質が低下してピリングの問題が起こりやすかった。しかし、われわれは新品のような品質が提供できる。これまでとは異なる技術アプローチなので、リヨセルやテンセル、ビスコース繊維のテクノロジーとは違う。

WWD:ではレンチング・グループ(LENZING GROUP)や米国のエヴァニュー(EVRNU)、そして同じフィンランドVTT出身のスピノバ(SPINNOVA)とは違う技術ということ?

アラヴァ:そうだ。使用する技術も薬品も異なるので、できる繊維もかなり違う。競合他社の技術は明確には分からないが、レンチング・グループはリヨセルテクノロジーで、作られる繊維は全く異なる。スピノバの詳細情報を持っていないが、木材の機械処理に基づいていて、彼らの技術革新は原料の処理方法だけでなく、そのプロセスで生成される繊維の面でも異なる。

当社の技術は、セルロースを含む繊維廃棄物(ポリエステルやナイロン、エラスタンなどの物質を含む)をケミカルリサイクルして、カルバミン酸セルロースを粉末状に再生し、その後いろいろな用途で使用できる高品質なカルバミン酸セルロース繊維に生まれ変わらせることができる。また、繊維は非常に汎用性が高く、糸や織物の製造工程で優れた効果を発揮する。デニムから、シングルジャージー、フレンチテリー、シャーリング生地などファッション用途から不織布まで幅広く繊維を製造することができる。

WWD:特にどういった衣類に最適なのか?

アラヴァ:デニムが最も適している。プロトタイプで作ったデニムは、一般的なデニムと全く変わらないものができた。われわれの技術は安定性があると信じている。消費者が使用した後の衣類(ポストコンシューマー)を100%用いても質の高い素材を作ることに成功している。他社にはまだできていない技術だ。エラスタンを含む素材を分離することに問題があるようだ。

WWD:価格はどうなる?

アラヴァ:将来的には綿に対しても価格競争力のあるものにしたいと考えている。また現在、消費者がリサイクル素材や循環型のビジネスモデルに付加価値を見いすようになってきている。特に欧州で顕著で、米国でも広がりを見せている。つまり消費者は、安いかどうかではなく、企業がどのようにサステナビリティに取り組んでいるかなどに価値を置くようになっている。非常に励まされることだ。

WWD:使用する薬品はどういうものを使っているのか。

アラヴァ:薬品というと聞こえが悪く、私は当初ショックを受けた――だからこそ、われわれはクリーンな薬品を使っている。われわれが用いるのは、動物飼料グレードの尿素で、完全にリサイクルしている。LCA(ライフサイクルアセスメント)の評価も他の薬品に比べて高い。例えばビスコースは主に二硫化炭素が用いられているが、毒性が強く、吸い込むと脳に悪影響を及ぼす。

目指すは地産地消のモノ作り

WWD:現在の生産量と今後の計画は?

アラヴァ:フィンランドにパイロット工場が2つあり、今はプレコマーシャルの状態だ。生産量は年間150トンなので、この工場では商業生産はできないが、この工場には2つの目的がある。1つ目はテキスタイル業界に、この技術のスケールアップが可能であると示すこと。われわれはその準備ができている。2つ目は、ファッションブランドとのコラボレーションのため。すでにパタゴニアやPVH、H&Mと取り組み、彼らのサプライチェーンで試してデニムやTシャツ、セーターなどを商業的に生産できるかを検証している。そして、次のステップは、業界でのパートナーを作ることだ。日本はテキスタイル業界のリーダーの一つだから、とても興味がある市場だ。

WWD:今後は繊維メーカーなどと協業して事業を拡大する計画ということ?

アラヴァ:そうだ。われわれのビジネスの本質にあるのはコラボレーションだ。われわれはテクノロジーオタクであり、また、世界規模のメーカーになりたいと考えている。そのため、商業規模の工場をいくつか建て始めている。テクノロジーの規模がより大きくなってきている自信はある。

WWD: 各国にパートナーシップを持つのが次の段階?

アラヴァ:われわれは環境への負荷を低く抑えるためにできるだけ輸送を避けたいと考えている。そのため、その土地での原料調達を目指している。有望な顧客候補が2社アジア市場にあり、規模拡大に取り組んでいる。ヨーロッパにも2社ある。

WWD:服をリサイクルして新たな服を作ることがメインになるのか?

アラヴァ:何を原料にしても結果は全く同じだ。私たちの技術は、何を原料にしようが関係なく、ポイントはその地域で何が入手可能かということ。古着の収集方法は各国で異なる。ニューヨークでは改善されてきているし、EUでは廃棄テキスタイルを分別して収集している。段ボールにも興味をそそられる。オンラインショッピングが拡大していて、廃棄段ボールの量も増えている。要は、原料のコストや何が入手可能かということ。原料がなんであれ、常に同じ繊維を作ることができる。

WWD:さまざまな業界を見てきたあなたにとって、ファッションやテキスタイル業界はどう映る?

アラヴァ:われわれは、ファッションやテキスタイル業界を導く立場にはないが、われわれが確実にポジティブな傾向だと思うのは、ファストファッションでさえも、新しい素材を探している点だ。テキスタイル業界が母なる地球に与える影響が大きいのは原材料生産を見れば明らか。過去20年間、繊維はポリエステルが主流だったが、ポリエステル製の服は洗濯時にマイクロファイバーが海に流れ出て、最終的には食品に入り込む。綿花栽培も美しく見栄えはいいが、残念なことにサステナブルとは程遠いといえるだろう。綿はとても乾燥しやすく、さまざまな種類があるが、1キロの綿を育てるのに、1~2万リットルの淡水が必要だと言われているから。そういった綿花栽培の地域では、すでに20億人もの人が水不足に苦しんでいる。綿花畑は食料生産のために使われるべきだ。また、ブランドは以前にも増して、生分解性のある素材を使おうとしているのが見てとれる。

テキスタイル業界は遅れを取っているビジネスモデルだと言えるだろう。廃棄テキスタイルのほとんどは焼却されるか埋め立てられ、リサイクルされて新しいテキスタイルに生まれ変わるのはわずか1%。原料になり得るテキスタイルを焼却するのを避け、資源として再利用することは本当に大切なことだと思う。

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ロレアルがサステナブルなサロントリートメントデバイスを開発 水の消費量を80%抑える技術

 ロレアル(L'OREAL)はサロンでの水・エネルギーの消費量をおさえるサステナブルなシステム“ロレアル ウォーター セーバー(L'Oreal Water Saver)”をCES 2021(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー 2021)で発表した。サステナブルな技術を手掛けるスイスのスタートアップ、GJOSAとの共同開発だ。同デバイスにより、従来のシャンプー・トリートメント施術における水の使用量を最大80%削減できるという。

 “ロレアル ウォーター セーバー”は特殊な処方でミクロ化したヘアケア剤を(洗髪するための)水に直接注入し、ヘアケアの浸透性とすすぎやすさを向上させている。「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」と「ケラスターゼ(KERASTASE)」に対応し、流水に直接注入するシャンプーやコンディショナー、トリートメントなどのヘアケア製品を開発。サロンの施術台に設置するデバイスで、水滴を10分の1のサイズに圧縮することによって水圧を損なうことなく節水ができる。顧客のトリートメントをデータ化できるほか、水とエネルギーの消費量も表示してコスト削減を追跡することも可能だ。

 現在“ロレアル ウォーター セーバー”はニューヨークとパリの一部のロレアルサロンで導入しており、2021〜22 年にかけて世界展開する予定。同社はデバイスを今後数年のうちに数千サロンに提供し、年間約37億リットルの水を節約できると予想している。

 また、同様の技術を自宅用に応用したシャワーヘッドも開発。同じく水圧を損わずに節水が可能なデバイスで、約1年後に本格ローンチを控えている。

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スパイバーが250億円を調達、世界的にも稀な「事業価値証券化」で

 スパイバーはこのほど、250億円の資金調達を行った。「事業価値証券化」という珍しい資金調達手法で、金融関係者も「世界的に見ても成功事例は少なく珍しい」という。スパイバーが独自に開発を進めている人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン(BREWED PROTEIN)」は、まだ量産前で無形資産に近い。250億円という巨額の資金は、「人工タンパク質素材」の高いポテンシャルを投資家が認めた形で、スタートアップ企業の新しい資金調達の手法としても注目を集めそうだ。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券がアレンジャー(取りまとめ役)となり、国内の投資家が参画した。調達した資金は、米国の穀物メジャーであるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(Archer Daniels Midland以下、ADM)と共同で進めている人工タンパク質素材の原料プラントに投じる。

 米国のADMは売上高640億ドル(約6兆6560億円)の穀物メジャー2強の一つで、スパイバーにはこれまでに102億円を出資している。スパイバーと共同で、とうもろこしを主原料とした、年産数千トン規模の人工タンパク質素材の原料プラントの開発と建設を進めている。本格稼働は2023年以降の見通し。

 スパイバーの人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン」は、石油を使わずにクモの糸の遺伝子などをベースに強靭な合成繊維やプラスチックを製造でき、かつ省エネルギーで製造できる特徴がある。2019年には少量ながら、ゴールドウインと共同開発した高性能アウター「ムーンパーカ」の販売にもこぎつけていた。

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「グッチ」「プラダ」も採用するリサイクルナイロン 創業者に開発秘話を直撃

 イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)が開発したリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」に環境配慮型素材として世界中から注目が集まっている。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「H&M」などサステナビリティを推進するブランドがこぞって採用。特にインパクトが大きかったのは、環境意識の高まりを受けて、ナイロン製品を主力の一つとする「プラダ(PRADA)」が、21年までに使用するナイロンを全て「エコニール」に切り替えると発表したことだろう。

 「エコニール」は漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしたリサイクルナイロンで、アクアフィル社は廃棄物をナイロンの原料に戻す技術を4年かけて開発した。しかもこの過程で使う溶剤は無害なもので、これまでになかった画期的な技術で特許も取得している。実はアクアフィルはこの技術開発の10年以上も前から、リサイクルナイロンの開発に力を入れていた。なぜ、リサイクルナイロンなのか。ジュリオ・ボナッツィ(Giulio Bonazzi)会長にオンラインインタビューを行った。

WWD:「エコニール」を開発しようと思ったきっかけは?

ジュリオ・ボナッツィ会長(以下、ボナッツィ会長):人は「生きるか死ぬか」ではなく「どのように生きるか?」ということが大切で、私は“エコニール”で一つの答えを出したかった。合成繊維は石油からできていて、エネルギーをたくさん消費します。加えて、そうした石油から作られたものが海にたくさん捨てられていて地球にとって有害なものになっています。私たちは今、できることをやらなければならないのです。

WWD:あなた自身の中で環境への意識が高まったきっかけを教えてください。

ボナッツィ会長:まず、妻から学びました。私たちは結婚した当初、2000本のオリーブの木がある畑の中で暮らし始めました。私の家族所有の畑でしたが、ほぼ放置された状態。そこで妻は、有機栽培でオリーブオイルの生産を始めました。今ではビオロジック(有機栽培でブドウを育て自然酵母で発酵させる製法)のワインも生産しています。今でこそ、有機栽培やビオロジックは普通になっていますが、30年前はまだ珍しかったんです。

そして、1990年代半ばに本を読んで知った業界の改革者の2人から影響を受けました。一人目は、タイル型になった(四角い形の)カーペットを作ったレイ・アンダーソン(Ray Anderson:タイルカーペット世界シェアナンバーワンの米国インターフェイス〈Interface〉社の創業者。廃棄物ゼロ、環境に悪影響を与えない排出、再生可能エネルギーの利用、再利用材やバイオベース素材の利用などで2020年までに環境への負荷をゼロにすることに取り組む)。そして、もう一人は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「エスプリ(ESPRIT)」の創業者ダグ・トンプキンス(Douglas Tompkins:パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード〈Yvon Chouinard 〉と並んで環境保護活動家としても知られる)です。この2人が、“変えることができる”と教えてくれました。

WWD:もともとアクアフィルはレインコートの製造から始まり、そこからナイロンの糸やテキスタイルの製造を始めました。

ボナッツィ会長:まずは90年代に、プレコンシューマーの素材(製造工程などで出る端切れなど)からリサイクルナイロンを作ろうと技術開発を始めて、10年後の2007年に作れるようになりました。これが最初の「エコニール」でした。けれど、もっとポテンシャルが高い技術開発をしなければと、さらに開発を加速させることを決めました。

WWD:というと?

ボナッツィ会長:どんなタイプのナイロンでもリサイクルできる機械があればと思いませんか?そこで、当時ケミカルリサイクルで主流だったポリマー(重合によってできる高分子化合物のこと)にとどまらず、さらにさかのぼったモノマー(単量体。高分子であるポリマーの分子結合を分解した状態)に戻す技術開発に取り組み、ナイロンの原料であるカプロラクタムまで戻す技術“デポリマライゼーション”を4年かけて開発しました。11年に初めていろんなナイロンの廃棄物から、リサイクルナイロンが作れるようになりました。

WWD:「エコニール」の優位性を教えてください。

ボナッツィ会長:「エコニール」はマジカルな商品で、ポリエステルやポリプロピレンといった他のマテリアルを使っている部分の代替品になれます。そして、染色されたさまざまな廃棄物を再生できる技術は他にはありません。他社のリサイクルナイロンは自社の何も加工されていない廃棄物をリサイクルしていて、それは比較的簡単です。

エコニールの基本的な特徴は3つあります。100%廃棄物からできているので、地球の資源を使わずに無限に繰り返し利用ができます。そして、エンジニアやデザイナーが作りたいと思うものの可能性が無限です。通常のナイロンに比べてエネルギー消費量は60%削減できていて、われわれは自然エネルギーを用いているので、通常のナイロンに比べてCO2排出量は90%削減できます。

WWD:原料は全て漁網などの使い古した素材なのですか?

ボナッツィ会長:50%がポストコンシューマー(使用済み、使用できなくなった製品)からという規格を作っています。その多くは漁網かカーペットです。今、漁網は海を汚染していると問題になっているので漁網を用いることはとても重要です。私たちはNGOと組んで、破棄された漁網などの漂流ゴミを取り除くこともしています。そして、なぜカーペットか、というとわれわれはカーペット用の糸のサプライヤーとして世界でトップシェアを誇っています。ですので、カーペットの循環を作り上げることはとても大事です。もう半分の50%というのはプレコンシューマー素材です。われわれが再利用するまでは、誰もそれをリサイクルしなかった。重要なのは、今まで誰も扱っていなかった、リサイクルできなかったものをリサイクルするということです。

WWD:材料となる廃棄物はどのように回収するのですか?

ボナッツィ会長:プレコンシューマー素材は私たちの取引先から回収しています。例えば「グッチ」「ステラ マッカートニー」「スピード(SPEED)」などです。漁網の回収で一番簡単なのは養殖をしているところに取りに行くこと。漁網は世界各国のものを集めています。日本から届くものもありますよ。

WWD:回収するにあたり難しいことは?

ボナッツィ会長:今市場に出ているほとんどの商品は、最終の目的を考えずに生産されています。例えば魚網は、100%ナイロンでできていない場合もあるし、危険な物質が入っている場合もあります。

WWD:リサイクル前提にしたデザインが求められていますよね。

ボナッツィ会長:リサイクルしやすいモノを作ることを始めた企業も増えてきました。例えばVFコーポレーションの「ナパピリ(NAPAPIJRI)」は、ジャケットを100%ナイロン6(エコニール)で作ることを試みました。ライニングもファスナー全てナイロン6で作るので完成まで3年かかりました。

WWD:現在の「エコニール」の生産量は?

ボナッツィ会長:年間4万トンです。昨年大きな投資をして、機械を大きくして今年完成し、6万トンまで生産できるようになりました。昨年の当社の売上高の38%が「エコニール」です。目標は5~6年以内に商品を100%廃棄物から生産することです。

WWD:昨年の売上高と今年の見込みは?

ボナッツィ会長:昨年は5億4900万ユーロ(約675億円)でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響と原油の価格下落で20%減ぐらいになるでしょう。

WWD:技術開発のチームについて教えてください。

ボナッツィ会長:アクアフィルの内部だけでなく、いろんな大学の研究室やリサーチセンターと協力しています。イタリア、ドイツ、アメリカ、スロベニア4カ国のリサーチセンターと組んでいますが、研究のために年商の2%を投資しています。今現在、新型コロナウイルスの問題が起こっていますが、それにもかかわらず会社内部のリサーチ部の人数を増やしました。今世界中で起こっている問題を解決していくためには、リサーチが一番重要だと思うからです。

WWD:人数を増やすということはさらなる新技術の開発に取り込んでいるのですか?

ボナッツィ会長:はい。「エコニール」の旅は始まったばかりで、いろいろな問題があります。完全なものにするには研究が欠かせません。循環性を高めるために、簡単にリサイクルできるようにすることに取り組んでいます。方法は2つあります。モノマテリアルで作るか、分解しやすいものを作るか。

WWD:「エコニール」で資材も作っているということですか?

ボナッツィ会長:ファスナーや、ボタン、面ファスナーなどに取り組んでいます。そしてもう一つ、染料の原料に少し問題があります。今、化学染料を使っているのですが、より環境に配慮した染色ができないかも研究しています。大前提として商品は美しくなくてはいけません。そうじゃないと誰も買いませんから。

WWD:今、「エコニール」でどういうものが作れますか?

ボナッツィ会長:いろいろな種類の商品ができますよ。これは(画面で見せながら)私の「プラダ」のリュックですが、「グッチ」のスニーカーも持っています。妻は「ステラ マッカートニー」のリュックや「バーバリー」のレインコート、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のサングラスを持っています。

WWD:メーカーは今何kgから購入可能なのですか?

ボナッツィ会長:スタンダードのものであれば、50kgから可能ですが、商品のタイプにもよります。カーペットに関しては、カーペット用の材料として色を染めたもので100kgから可能です。

WWD:最後にボナッツィさんが考える環境に配慮した素材はどんなものだと思いますか?

ボナッツィ会長:環境に対してリスクのある物質を使わないもの、地球の資源を消耗しないもの。だからとても難しいんです。

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「グッチ」「プラダ」も採用するリサイクルナイロン 創業者に開発秘話を直撃

 イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)が開発したリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」に環境配慮型素材として世界中から注目が集まっている。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「H&M」などサステナビリティを推進するブランドがこぞって採用。特にインパクトが大きかったのは、環境意識の高まりを受けて、ナイロン製品を主力の一つとする「プラダ(PRADA)」が、21年までに使用するナイロンを全て「エコニール」に切り替えると発表したことだろう。

 「エコニール」は漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしたリサイクルナイロンで、アクアフィル社は廃棄物をナイロンの原料に戻す技術を4年かけて開発した。しかもこの過程で使う溶剤は無害なもので、これまでになかった画期的な技術で特許も取得している。実はアクアフィルはこの技術開発の10年以上も前から、リサイクルナイロンの開発に力を入れていた。なぜ、リサイクルナイロンなのか。ジュリオ・ボナッツィ(Giulio Bonazzi)会長にオンラインインタビューを行った。

WWD:「エコニール」を開発しようと思ったきっかけは?

ジュリオ・ボナッツィ会長(以下、ボナッツィ会長):人は「生きるか死ぬか」ではなく「どのように生きるか?」ということが大切で、私は“エコニール”で一つの答えを出したかった。合成繊維は石油からできていて、エネルギーをたくさん消費します。加えて、そうした石油から作られたものが海にたくさん捨てられていて地球にとって有害なものになっています。私たちは今、できることをやらなければならないのです。

WWD:あなた自身の中で環境への意識が高まったきっかけを教えてください。

ボナッツィ会長:まず、妻から学びました。私たちは結婚した当初、2000本のオリーブの木がある畑の中で暮らし始めました。私の家族所有の畑でしたが、ほぼ放置された状態。そこで妻は、有機栽培でオリーブオイルの生産を始めました。今ではビオロジック(有機栽培でブドウを育て自然酵母で発酵させる製法)のワインも生産しています。今でこそ、有機栽培やビオロジックは普通になっていますが、30年前はまだ珍しかったんです。

そして、1990年代半ばに本を読んで知った業界の改革者の2人から影響を受けました。一人目は、タイル型になった(四角い形の)カーペットを作ったレイ・アンダーソン(Ray Anderson:タイルカーペット世界シェアナンバーワンの米国インターフェイス〈Interface〉社の創業者。廃棄物ゼロ、環境に悪影響を与えない排出、再生可能エネルギーの利用、再利用材やバイオベース素材の利用などで2020年までに環境への負荷をゼロにすることに取り組む)。そして、もう一人は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「エスプリ(ESPRIT)」の創業者ダグ・トンプキンス(Douglas Tompkins:パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード〈Yvon Chouinard 〉と並んで環境保護活動家としても知られる)です。この2人が、“変えることができる”と教えてくれました。

WWD:もともとアクアフィルはレインコートの製造から始まり、そこからナイロンの糸やテキスタイルの製造を始めました。

ボナッツィ会長:まずは90年代に、プレコンシューマーの素材(製造工程などで出る端切れなど)からリサイクルナイロンを作ろうと技術開発を始めて、10年後の2007年に作れるようになりました。これが最初の「エコニール」でした。けれど、もっとポテンシャルが高い技術開発をしなければと、さらに開発を加速させることを決めました。

WWD:というと?

ボナッツィ会長:どんなタイプのナイロンでもリサイクルできる機械があればと思いませんか?そこで、当時ケミカルリサイクルで主流だったポリマー(重合によってできる高分子化合物のこと)にとどまらず、さらにさかのぼったモノマー(単量体。高分子であるポリマーの分子結合を分解した状態)に戻す技術開発に取り組み、ナイロンの原料であるカプロラクタムまで戻す技術“デポリマライゼーション”を4年かけて開発しました。11年に初めていろんなナイロンの廃棄物から、リサイクルナイロンが作れるようになりました。

WWD:「エコニール」の優位性を教えてください。

ボナッツィ会長:「エコニール」はマジカルな商品で、ポリエステルやポリプロピレンといった他のマテリアルを使っている部分の代替品になれます。そして、染色されたさまざまな廃棄物を再生できる技術は他にはありません。他社のリサイクルナイロンは自社の何も加工されていない廃棄物をリサイクルしていて、それは比較的簡単です。

エコニールの基本的な特徴は3つあります。100%廃棄物からできているので、地球の資源を使わずに無限に繰り返し利用ができます。そして、エンジニアやデザイナーが作りたいと思うものの可能性が無限です。通常のナイロンに比べてエネルギー消費量は60%削減できていて、われわれは自然エネルギーを用いているので、通常のナイロンに比べてCO2排出量は90%削減できます。

WWD:原料は全て漁網などの使い古した素材なのですか?

ボナッツィ会長:50%がポストコンシューマー(使用済み、使用できなくなった製品)からという規格を作っています。その多くは漁網かカーペットです。今、漁網は海を汚染していると問題になっているので漁網を用いることはとても重要です。私たちはNGOと組んで、破棄された漁網などの漂流ゴミを取り除くこともしています。そして、なぜカーペットか、というとわれわれはカーペット用の糸のサプライヤーとして世界でトップシェアを誇っています。ですので、カーペットの循環を作り上げることはとても大事です。もう半分の50%というのはプレコンシューマー素材です。われわれが再利用するまでは、誰もそれをリサイクルしなかった。重要なのは、今まで誰も扱っていなかった、リサイクルできなかったものをリサイクルするということです。

WWD:材料となる廃棄物はどのように回収するのですか?

ボナッツィ会長:プレコンシューマー素材は私たちの取引先から回収しています。例えば「グッチ」「ステラ マッカートニー」「スピード(SPEED)」などです。漁網の回収で一番簡単なのは養殖をしているところに取りに行くこと。漁網は世界各国のものを集めています。日本から届くものもありますよ。

WWD:回収するにあたり難しいことは?

ボナッツィ会長:今市場に出ているほとんどの商品は、最終の目的を考えずに生産されています。例えば魚網は、100%ナイロンでできていない場合もあるし、危険な物質が入っている場合もあります。

WWD:リサイクル前提にしたデザインが求められていますよね。

ボナッツィ会長:リサイクルしやすいモノを作ることを始めた企業も増えてきました。例えばVFコーポレーションの「ナパピリ(NAPAPIJRI)」は、ジャケットを100%ナイロン6(エコニール)で作ることを試みました。ライニングもファスナー全てナイロン6で作るので完成まで3年かかりました。

WWD:現在の「エコニール」の生産量は?

ボナッツィ会長:年間4万トンです。昨年大きな投資をして、機械を大きくして今年完成し、6万トンまで生産できるようになりました。昨年の当社の売上高の38%が「エコニール」です。目標は5~6年以内に商品を100%廃棄物から生産することです。

WWD:昨年の売上高と今年の見込みは?

ボナッツィ会長:昨年は5億4900万ユーロ(約675億円)でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響と原油の価格下落で20%減ぐらいになるでしょう。

WWD:技術開発のチームについて教えてください。

ボナッツィ会長:アクアフィルの内部だけでなく、いろんな大学の研究室やリサーチセンターと協力しています。イタリア、ドイツ、アメリカ、スロベニア4カ国のリサーチセンターと組んでいますが、研究のために年商の2%を投資しています。今現在、新型コロナウイルスの問題が起こっていますが、それにもかかわらず会社内部のリサーチ部の人数を増やしました。今世界中で起こっている問題を解決していくためには、リサーチが一番重要だと思うからです。

WWD:人数を増やすということはさらなる新技術の開発に取り込んでいるのですか?

ボナッツィ会長:はい。「エコニール」の旅は始まったばかりで、いろいろな問題があります。完全なものにするには研究が欠かせません。循環性を高めるために、簡単にリサイクルできるようにすることに取り組んでいます。方法は2つあります。モノマテリアルで作るか、分解しやすいものを作るか。

WWD:「エコニール」で資材も作っているということですか?

ボナッツィ会長:ファスナーや、ボタン、面ファスナーなどに取り組んでいます。そしてもう一つ、染料の原料に少し問題があります。今、化学染料を使っているのですが、より環境に配慮した染色ができないかも研究しています。大前提として商品は美しくなくてはいけません。そうじゃないと誰も買いませんから。

WWD:今、「エコニール」でどういうものが作れますか?

ボナッツィ会長:いろいろな種類の商品ができますよ。これは(画面で見せながら)私の「プラダ」のリュックですが、「グッチ」のスニーカーも持っています。妻は「ステラ マッカートニー」のリュックや「バーバリー」のレインコート、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のサングラスを持っています。

WWD:メーカーは今何kgから購入可能なのですか?

ボナッツィ会長:スタンダードのものであれば、50kgから可能ですが、商品のタイプにもよります。カーペットに関しては、カーペット用の材料として色を染めたもので100kgから可能です。

WWD:最後にボナッツィさんが考える環境に配慮した素材はどんなものだと思いますか?

ボナッツィ会長:環境に対してリスクのある物質を使わないもの、地球の資源を消耗しないもの。だからとても難しいんです。

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「パトゥ」CEOが語るトレーサビリティーへの取り組み 「ブランドビジネスで重要なのは生産背景の共有」

 2020年春夏シーズンにギョーム・アンリ(Guillaume Henry)=アーティスティック・ディレクターによって復活を遂げた「パトゥ(PATOU)」は、サステビリティに力を入れている。コレクション全体の10%は、“エッセンシャル”と呼ぶ定番アイテムで構成。シーズンを超えて使用できるアイテムとして提案している。またショッピングバッグや商品タグ、店内設備も環境に配慮し、リサイクル材料もしくはリサイクル可能な材料を100%使用している。さらに、トレーサビリティーに特化した製品追跡アプリを独自に開発。商品タグのQRコードを読み取ると、衣服や原材料の詳細だけでなく、サプライヤーのショートインタビューを再生することもできる。

 本アプリについてソフィー・ブロカール(Sophie Brocart)=「パトゥ」最高経営責任者(以下、ブロカールCEO)は、「トレーサビリティーの認証システムは大事だが、それ以上にブランドの透明性と生産情報の共有に重きを置いている。特に注力しているのが生産背景の可視化だ。私たちは早い段階から職人による手仕事やクリエーションプロセスの公開と説明、デザイナー以外のクリエーションに関わる全ての人々への敬意など、生産背景を消費者に共有することはブランドビジネスにとって重要だと考えてきた」と語る。近年加速するデジタル化や新型コロナウイルスのパンデミックも重なり、ブランドとしてその意識はさらに強まっているという。

 また透明性を高めるために、サプライヤーの選定にも慎重だ。「サプライヤーの選択は、LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)グループの他のメゾン同様、品質や技術的専門知識、サプライヤーの経験に基づいて慎重に判断している。長期にわたり建設的で信頼できる関係を築けるサプライヤーが理想」とブロカールCEO。特に原材料においては、ラグジュアリーブランドが求める品質を提供できるサプライヤーは限られていて、「そのほとんどがごく一部のイタリアの機織り職人だ」と説明する。

 サプライヤーの条件については、「パトゥ」とLVMHグループ双方の条件を満たす必要があるという。「独立機関の専門的な見解を得ながら、各サプライヤーを労働環境や条件に加えて環境活動も含めて監査している。サプライヤーは、われわれと契約を結ぶ際、LVMHグループが掲げる厳格な倫理およびコンプライアンス行動規範にも署名する必要がある」と語る。「もちろん監査を行ってもリスクはあるので完璧とは言えない。だが、トレーサビリティーを推進する上でこれらはブランドが優先すべき事項。強い関心を持ちながら可能な限り取り組んでいる」と、積極的な姿勢を示した。

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「パトゥ」CEOが語るトレーサビリティーへの取り組み 「ブランドビジネスで重要なのは生産背景の共有」

 2020年春夏シーズンにギョーム・アンリ(Guillaume Henry)=アーティスティック・ディレクターによって復活を遂げた「パトゥ(PATOU)」は、サステビリティに力を入れている。コレクション全体の10%は、“エッセンシャル”と呼ぶ定番アイテムで構成。シーズンを超えて使用できるアイテムとして提案している。またショッピングバッグや商品タグ、店内設備も環境に配慮し、リサイクル材料もしくはリサイクル可能な材料を100%使用している。さらに、トレーサビリティーに特化した製品追跡アプリを独自に開発。商品タグのQRコードを読み取ると、衣服や原材料の詳細だけでなく、サプライヤーのショートインタビューを再生することもできる。

 本アプリについてソフィー・ブロカール(Sophie Brocart)=「パトゥ」最高経営責任者(以下、ブロカールCEO)は、「トレーサビリティーの認証システムは大事だが、それ以上にブランドの透明性と生産情報の共有に重きを置いている。特に注力しているのが生産背景の可視化だ。私たちは早い段階から職人による手仕事やクリエーションプロセスの公開と説明、デザイナー以外のクリエーションに関わる全ての人々への敬意など、生産背景を消費者に共有することはブランドビジネスにとって重要だと考えてきた」と語る。近年加速するデジタル化や新型コロナウイルスのパンデミックも重なり、ブランドとしてその意識はさらに強まっているという。

 また透明性を高めるために、サプライヤーの選定にも慎重だ。「サプライヤーの選択は、LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)グループの他のメゾン同様、品質や技術的専門知識、サプライヤーの経験に基づいて慎重に判断している。長期にわたり建設的で信頼できる関係を築けるサプライヤーが理想」とブロカールCEO。特に原材料においては、ラグジュアリーブランドが求める品質を提供できるサプライヤーは限られていて、「そのほとんどがごく一部のイタリアの機織り職人だ」と説明する。

 サプライヤーの条件については、「パトゥ」とLVMHグループ双方の条件を満たす必要があるという。「独立機関の専門的な見解を得ながら、各サプライヤーを労働環境や条件に加えて環境活動も含めて監査している。サプライヤーは、われわれと契約を結ぶ際、LVMHグループが掲げる厳格な倫理およびコンプライアンス行動規範にも署名する必要がある」と語る。「もちろん監査を行ってもリスクはあるので完璧とは言えない。だが、トレーサビリティーを推進する上でこれらはブランドが優先すべき事項。強い関心を持ちながら可能な限り取り組んでいる」と、積極的な姿勢を示した。

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ゴールドウイン×スパイバー、新アイテム「ザ・セーター」発表

 ゴールドウインとスパイバーは6日、人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」を使った新アイテム“ザ・セーター(THE SWEATER)」を発表した。ゴールドウインのオリジナルブランド「ゴールドウイン(GOLDWIN)」で、10日から特設サイトを通じ、日本を含む世界11カ国・地域に販売する。スパイバーの関山和秀社長は「先に発売した『ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)』“ムーン・パーカ(MOON PARKA)”とはタイプが異なり、こちらは天然繊維ならではの風合いを追求した素材。100%『ブリュード・プロテイン』で作ることもできたが、あえて上質なウール素材と混紡して作ることで、自然との調和を提案したかった。この『ブリュード・プロテイン』素材は、ウールだけでは表現できなかった軽さや柔らかさといった着心地の良さを実現しつつも、製造工程のおいては既存の設備や染色などの生産プロセスをそのまま使える。われわれの一つの意思表示だ」と語る。

 価格は日本円で8万8000円、欧州では800ユーロ(9万6800円)、米国は800ドル(約8万3200円)。サイズはSMLの3サイズで、カラーはブラックのみ。特設サイト「ビジョンクエスト(VISION QUEST)」で、11月10日10時〜30日14時まで抽選を受け付け、数量限定で販売する。販売着数は非公表。

 ゴールドウインは今後、表地や裏地、ダウン、ファスナーなども含め、全アイテムの全素材を、この人工タンパク質素材に置き換えることも想定。さらに回収して原料に戻し、再生する仕組みづくりの視野に入れた循環型のスポーツ・アウトドアアパレルを目指すという。

 スパイバーは2021年の稼働を目指し、「ブリュード・プロテイン」の原料工場をタイに建設中で、10月にはその原料工場の10倍の生産能力を持つ工場の建設のため、米国の穀物メジャーであるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー(Archer Daniels Midland Company、以下ADM)との提携を発表している。

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ロレアルが世界で初めて工場から排出される炭素からシャンプーボトルを開発

 ロレアル(L'OREAL)は化学産業大手のトタル(TOTAL)とガス発酵技術開発ベンチャーのランザテック(LANZA TECH)と協業し、世界で初めて工場や施設から排出される産業炭素を再利用した化粧品用のプラスチックボトルを開発する。ランザテックが産業排出物の炭素をエタノールに変換し、そこからトータルが脱水処置でエチレンに変え、さらに化学重合させてポリエチレンに仕上げる。そのポリエチレンをロレアルがボトルやパッケージに用いるという。2024年までに自社のシャンプーとコンディショナーに導入する予定だ。

 ロレアルは「3社の協業により、サステナブルなサーキュラーエコノミーをかなえ、炭素排出量の削減や再利用に向けて多様な可能性をもたらす」とコメント。ジェニファー・ホルムグレン(Jennifer Holmgren)=ランザテック最高経営責任者は「よりクリーンな地球の実現という共通のゴールを目指して始動したコラボレーションだ。われわれはともに、炭素の再利用を可能にすることで使い捨ての炭素素材をなくし、カーボンフットプリントの削減を目指す」と話す。

 なお、ロレアルは6月にサステナビリティプログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー(L’Oreal For The Future)」を策定したばかりだ。2030年までには全ての製品パッケージのプラスチックをリサイクルもしくは植物性のものにすることを掲げ、さらに製品毎の温室効果ガスの排出量を16年の半分にすると宣言している。

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ロレアルが世界で初めて工場から排出される炭素からシャンプーボトルを開発

 ロレアル(L'OREAL)は化学産業大手のトタル(TOTAL)とガス発酵技術開発ベンチャーのランザテック(LANZA TECH)と協業し、世界で初めて工場や施設から排出される産業炭素を再利用した化粧品用のプラスチックボトルを開発する。ランザテックが産業排出物の炭素をエタノールに変換し、そこからトータルが脱水処置でエチレンに変え、さらに化学重合させてポリエチレンに仕上げる。そのポリエチレンをロレアルがボトルやパッケージに用いるという。2024年までに自社のシャンプーとコンディショナーに導入する予定だ。

 ロレアルは「3社の協業により、サステナブルなサーキュラーエコノミーをかなえ、炭素排出量の削減や再利用に向けて多様な可能性をもたらす」とコメント。ジェニファー・ホルムグレン(Jennifer Holmgren)=ランザテック最高経営責任者は「よりクリーンな地球の実現という共通のゴールを目指して始動したコラボレーションだ。われわれはともに、炭素の再利用を可能にすることで使い捨ての炭素素材をなくし、カーボンフットプリントの削減を目指す」と話す。

 なお、ロレアルは6月にサステナビリティプログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー(L’Oreal For The Future)」を策定したばかりだ。2030年までには全ての製品パッケージのプラスチックをリサイクルもしくは植物性のものにすることを掲げ、さらに製品毎の温室効果ガスの排出量を16年の半分にすると宣言している。

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「一切廃棄はしない」 H&Mの在庫問題と循環型シフトへの取り組みをサステナビリティ責任者が語る(後編)

 H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)は、販売、使用、またはリサイクルできる製品については一切廃棄をしないという厳格なポリシーを設けているが、世界で約5000店舗を運営する中でどのようにして実現しているのか。また、循環型デザインへのシフトを推進する同社が注目しているテクノロジーは何か。アナ・ゲッダ(Anna Gedda)=サステナビリティ責任者に聞く。

WWD:H&Mグループでは販売、使用、またはリサイクルできる製品については一切廃棄をしないという厳格なポリシーを設けていますが、実際在庫ゼロにするのは難しいのでは?

アナ・ゲッダ=サステナビリティ責任者(以下ゲッダ):当然のことですが、私たちはいかなる余剰在庫も避けたいと思っており、製造したものはすべて売り尽くすことを目指しています。廃棄物および余剰在庫の削減に向けて最も重要なのは、AIの技術を使って、お客さまが求めているものを理解してそれだけを生産することです。私たちはこの分野ですでに多くの取り組みを進めており、お客さまが求めているものを予測する精度を上げていますし、さらにそれをどの程度の量を生産すべきかという点でも予測精度を上げています。そしてそれら製品をどの国や地域、店舗にどう配分するべきか、どのタイミングが適切か、という点を把握するためのシステムも構築しています。お客さまの需要に応えるという点では継続して正確性を高めており、廃棄物や余剰在庫の削減につながっています。まだ完全に達成できているわけではなく、完璧にできているとは言えませんが、お客さまが本当に求めているのはどういうものなのかを把握し、それだけを生産するということを目指すにあたって、このテクノロジーが素晴らしい可能性をもたらすことを確信しています。

WWD:AI予測の精度はどの程度向上しているのですか。

ゲッダ:具体的な数字や計測値をお伝えするのは難しいですが、時を経るごとに精度が上がっているということは言えます。情報が多ければ多いほど機械学習によるアルゴリズムを継続して発展させていくことができ、さらに精度の高い予測が可能となります。すでに良い結果が出ており、もちろん売り上げにつながるという利点もありますが、在庫を減らすことにもつながっています。つまり、私たちはお客さまが求めているものをより多く売ることができているのです。もちろんまだこの取り組みに関する道のりは続きますし、特に今年のように新型コロナウイルスの感染拡大があった場合、AIを活用していたとしても在庫管理は難しいです。

WWD:それでも売れ残った製品はどうしていますか。

ゲッダ:展開した商品のほとんどを店舗またはオンラインで売り切っています。時にはセールやその他の販促キャンペーンを通して、お客さまにとって非常にお得な価格で提供することもありますが。他の販売活動の例としては、マーケットによっては期間限定のポップアップ・アウトレット店舗で、値引きした衣服を提供することもあります。また、H&Mグループではより需要の高い店舗に積極的に在庫を移送したり、在庫が薄くなった他国に輸送したりすることもあります。シーズンが終わっても売れずに残ってしまった衣類は、来シーズンまで保管することを検討します。

WWD:生産工程における廃棄量ゼロも目指しています。

ゲッダ:はい、将来的にはゼロを目指しています。生産工程で発生する残布などの廃棄物や、安全衛生上廃棄せざるを得ない製品などの廃棄物をゼロにするためにさまざまなアプローチがあります。重要なのは循環型のデザインを採用すること。循環型のデザインとは、デザインの段階で、洋服のパターンニングを調整するなどして、そもそも廃棄物がでないようなデザインを取り入れることを指します。

WWD:循環性を確立するときに鍵になるテクノロジーは?

ゲッダ:循環性は私たちのビジネスの中で最も重要な要素であり、1つのテクノロジーに絞り込むことは難しいので3つ紹介したいと思います。1つ目はサステナブルに調達された新素材です。私たちはその研究開発に継続的に投資していますが、廃棄された生地から作られる素材“サーキュロス(Circulose)”がその一例です。“サーキュロス”は、起業当初からH&Mグループが自信を持って支援してきた企業リニューセル(re:newcell)が開発しました。森林原料の代替となり、品質を妥協することなく商業レベルで必要な量が確保可能という点で、他に類を見ない革新的な素材だと考えます。

2つ目はレンタルや二次流通など、新たな循環型ビジネスモデルについての研究です。グループ傘下の「コス(COS)」では、COSの古着の売買を行うデジタルプラットフォーム「リセル(Resell)」を立ち上げました。また、スウェーデンにあるH&Mセルゲルトルグ店では、“コンシャス・エクスクルーシヴ・コレクション”でスカートやドレスのレンタルサービスを始めました。

そして3つ目はエネルギーです。H&Mの循環型への取り組みは、商品やサービスの展開に留まりません。テクノロジーが非常に重要な役割を担う気候変動の分野において、H&Mグループは2040年までにクライメット・ポジティブとなることを表明しています。100%再生可能な電力の実現に向けた協調的で国際的な取り組みや、再生可能エネルギーの大きな需要の増加と供給に主眼を置いた活動を行っているRE100に加入し、影響力を持つ他のビジネス組織と協働しています。

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循環型ファッションを実現する注目の最新テクノロジー、「サーキュラーID」とは?

 アメリカのスタートアップ企業イオンはこのほど、衣服にマイクロチップを織り込んで追跡を可能にする「サーキュラーID(CircularID)」をマイクロソフトやH&Mグループなどの協力を得て開発した。「サーキュラーID」をスキャナーで読み込むと、ブランド名、素材、原産地、価格といった服の“出生証明書”の役割を果たす基礎情報と、購入後の移動歴などの“パスポート”の役割を果たす情報を確認することができ、ライフサイクル全体を通したトレーサビリティーを可能にする。

 創業者のナターシャ・フランク(Natasha Franck)最高経営責任者(CEO)は「現在、ブランドと顧客の関係は販売時点で終了します。ブランドが製造から廃棄までのライフサイクルを通して商品を管理し循環させることで、その商品の価値を最大限化できるのです」と語る。

 フランクCEOはかつてアメリカのテック企業デロスでIoT技術を活用したスマートシティに関わるプロジェクトに従事していた。「以前から循環型経済に興味がありました。循環型に向けてリセールやリサイクルサービスが多数存在しますが、これらの取り組みをIoT技術を用いて連携させ、効率化できないか、スケールを拡大するためには何が必要かを考えていた時に思いついたのが、個別の製品を特定するためのデジタル上のIDでした」。2017年にH&Mファウンデーションの「グローバル・チェンジ・アワード」を受賞したことをきっかけに事業化を決めた。さらにH&MグループやPVHコープ(PVH CORP)、米スーパーマーケットチェーンのターゲット(TARGET)、マイクロソフト(MICROSOFT)などを巻き込んだ「サーキュラーIDイニシアチブ(CircularID Initiatie)」を設立し、同ネットワークの知見を活かして開発を進めた。

 ブランドがすでに商品管理のために活用するRFIDやバーコードなどに入力されている商品情報を「サーキュラーID」と連携させると、同社が提供するオンライン上のプラットフォームでその情報を確認することができるという仕組みだ。「製品のライフサイクルに関わる全ての人がそれらの情報にアクセスできるようにすることでさまざまなメリットが生まれます。まずブランドは消費者とより継続的な関係性を構築することができるでしょう。例えば商品を購入したお客さまがどれくらいの期間その服を着用し、着用後にどのように処理をしたかなど顧客の行動データを蓄積することができます。時期に合わせて別の商品を組み合わせたスタイリングの提案や『着用しなくなったアイテムはここで回収しています』といったリサイクルキャンペーンを実施し、リサイクルに協力してくれたお客さまにクーポンを配布するなど方法はさまざまです。またリセーラーが商品を販売する際にはその商品が本物であるかどうかを確かめたり、正規の販売価格を調べたり、商品画像を再撮影したりという作業が発生しますが、『サーキュラーID』をスキャンすればそれらの作業は不要になります。さらにリサイクル業者にとって一番の壁は素材の特定ですが、『サーキュラーID』を用いて素材の構成情報にも簡単にアクセスすることができます」。

 2019年11月よりベータ版の使用を開始し、正式版のローンチは2021年9月を予定している。

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いらない服を新しい服に H&Mがストックホルムの店頭に“ループ”設備を設置

 H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)は10月12日、服から服へのリサイクルシステム「ループ(Looop)」をスウェーデン・ストックホルムのドロットニンガータン店に導入した。「ループ」は不要になった衣類から、新しいファッションアイテム作り変えるサービス。ブランド不問で現在はニットアイテムからウィメンズのニットトップス、ベビーのブランケットおよびスカーフへの作り変えが可能だが、今後はアイテムの幅を広げていく予定だ。料金はH&Mのロイヤリティプログラムのメンバーは、100スウェーデン・クローナ(約1200円)で、メンバー登録をしていない場合は、150スウェーデン・クローナ(約1700円)。全ての収益は素材に関する研究費用にあてられる。

 H&Mはファッションの“ループを閉じる(closing the loop、ゴミや有害物質を外に出さない)”ことを目標に掲げてこれまで循環型の仕組み作りに取り組んできた。このサービスでは「古着にも価値があり、廃棄されるべきではないことを視覚的に訴求すること」が狙う。

 「ループ」は、コンテナに投入した服を洗浄し裁断した後に、新たな糸にして、それらを編んで新しいファッションアイテムにするというもの。所要時間は約5時間。新たに製造されるアイテムの強度を保つために、不要な衣類に加えてサステナブルに調達された純資源もある程度追加するというが、その使用量を最小限にすることを目指している。「ループ」では水も化学薬品も一切使用しないため、 ゼロから衣類を製造するよりも、 大幅に環境への負荷を抑えることができる。

 パスカル・ブルン(Pascal Brun)=サステナビリティ・マネージャーは「私たちはファッション産業の変革を目指し、純資源の使用量を削減すべく常に新しいテクノロジーやイノベーションを模索している。真の変化を実現するには、お客さまと共に取り組むことが鍵になる。『ループ』の導入がどうお客さまにインスピレーションをもたらすか、とても楽しみにしている」とコメントを発表した。
H&Mは2030年までにすべての使用素材を、リサイクルまたはサステナブルに調達された素材へと切り替えることを目標にしており、19年には57%を達成した。

 「ループ」は非営利財団のH&Mファウンデーション(H&M Foundation)とHKRITA(香港繊維アパレル研究開発センター)、香港の紡績会社ノヴェテック・テキスタイル(Novetex Textiles)が開発を進めていた。

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スパイバーが米国の穀物メジャーADMから新たに59億円調達、米国に原料工場

 人工タンパク質素材のスパイバー(山形県鶴岡市、関山和秀社長)は、米国の穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー(Archer Daniels Midland Company、以下ADM)と提携し、米国に人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン(Brewed Protein)」の原料の量産工場を建設する。原料プラントの年産能力は約数千トン規模になる。スパイバーは、米国の穀物メジャーの全面的なバックアップは、次世代素材の大本命とも言われる人工タンパク質素材の世界規模での拡大につながりそうだ。

 ADMはスパイバーの増資を引き受け、約59億円を出資する。スパイバーは今回の増資で資本金は35億円に、企業価値は1115億円になる。ADMは昨年12月にも43億円を出資しており、今回の増資でゴールドウインを抜き、合成樹脂材料大手のKISCOにつぐ第2位の株主(出資比率9.80%)になる。

 スパイバーは、同社が開発した人工タンパク質素材の原料として、数百トンレベルのタンパク質の製造工場の建設に着手しており、2021年の稼働を計画している。スパイバーが研究開発している人工タンパク質素材は石油を使わず、劇的な省エネプロセスで繊維やプラスチックを製造できるため、1953年に開発されたポリエステルを超える素材革命の本命素材として知られている。

 スパイバーはスポーツ大手のゴールドウインを筆頭に日本の繊維メーカーとも協力し、「ブリュードプロテイン」を使った高機能アウトドアアウター“ムーンパーカ”の発売にもこぎつけており、人工タンパク質素材を使った製品開発を着実に進めている。

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フランス貿易投資庁-ビジネスフランス @BFrance_Japan

RT @kyodonewsprwire: 世界三大建機展のひとつ「インターマット・パリ」が2018年4月に開催されます prw.kyodonews.jp/opn/release/20… #フランス見本市協会 #世界三大建機展 #ンターマット・パリ #テクノロジー #インターマット・イノベーション…