自社がどのような技術を持っているのか整理する方法

こんにちは、テクノポートの永井です。普段何気なく使っている技術ですが、あらためて整理するとなると意外と難しいものです。今回は、技術の洗い出し方法やMTFフレームワークなど、技術の整理方法についてまとめました。

技術とは何か?

技術を整理する前に、そもそも「技術」とは何でしょうか。広辞苑には、

  • 物事を巧みに行うわざ
  • 科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てるわ

とあります。

製造業の場合、後者の意味で使われることがほとんどですが、「技術がある」という場合の「技術」には「他社と比較して」という意味も含まれています。そのため、ここでは「技術は何かを作ることに必要なもの、特に他者よりも秀でているもの」として話を進めます。

技術にはレベルがある

技術にはレベルがあります。例えば、ものを削る技術の場合、0.1mmの精度で削れるよりも、0.01mmの精度で削れる技術のほうが技術が高いと言われます。技術をPRする場合、このレベルがとても重要です。

そのため、技術を整理するときは、自社がどんな技術を持っているのかに加えて、自社の技術がどのレベルにあるのかも押さえる必要があります。

人によって求める技術のレイヤーは異なる

探す人の立場によって、技術のレイヤーは異なります。例えば、自動車の燃費向上を検討している人の場合、

  • 全体を見ている技術者:自動車の燃費を向上させる技術を探している
  • エンジンを見ている技術者:燃焼効率を向上させる技術を探している
  • 燃焼を見ている技術者:空燃比を理論空燃比にする技術

など、技術者の立場によって探している技術の具体性は変わってきます。そのため、技術を整理するときは、自社の技術がどのようなところで、どのように使われているかも押さえておく必要があります。

技術の整理方法、3つのステップ

技術を整理する際には、以下の3つのステップを経ていきます。

  1. 自社の技術の洗い出しを行う
  2. その技術が他社と比べてどのレベルにあるのかを調査
  3. MFTフレームワークを使って技術の応用方法をまとめる

1つずつ詳しく見ていきましょう。

1.技術の洗い出し

まずは社内の技術の洗い出しから始めます。「技術は何かを作ることに必要なもの」になるため、自社で加工できるものの一覧を作ります。例えば以下のような項目など、社内で加工できるものはすべて確認します。

  • 加工できる素材
  • 精度
  • 大きさ
  • 質量

プレス加工を例にすると、

鉄 t=0.1~3mm 500×500 交差0.01mm 幾何交差◯ 0.1 ロット数

など、できるだけ細かくまとめるようにしましょう。加工技術の多くは「精度」を問われます。そのため、交差や幾何公差についても可能な範囲で記載しておくことをおすすめします。

2.他社との技術比較

自社技術の洗い出しが終わったら、次は技術レベルの確認をします。他社と比べる方法は、展示会やインターネット検索、交流会、お客様に聞くなどさまざまです。インターネット検索を使えば、手軽に技術を見ることはできます。しかし、掲載情報に具体性がなかったり、技術が高いと言われている企業ほどWebに力を入れていなかったりするため、比較は難しくなるでしょう。

一方、展示会は実際に会場に行く手間はかかりますが、実際にものを見られることはもちろん、加工者と直接話せたり、一度で複数の企業を比較できたりと、効率よく技術を知ることができます。

どちらも一長一短ですので、まずはインターネットで調査して、不足情報があれば展示会に行ってみるのはいかがでしょうか。他社より秀でた技術が見つかれば、それがPRできる技術になります。

3.MTFフレームで技術の応用まとめ

最後にMTFフレームワークを使って、自社の技術が何に利用されているのかをまとめる方法をご紹介します。

MFTフレームワークについては過去の記事でも紹介していますので、そちらも参考にしてみてください。
MFTフレームワーク活用によるWebサイト企画で他社と差をつける

MFTとは、Market(市場)・Function(機能)・Technology(技術)の頭文字を取ったものです。新しい市場に参入するときなど、自社に足りない技術の洗い出しを行う際にMFTフレームワークを使います。

このフレームワークの便利なところは、技術と市場の結びつきだけではなく、その間に機能が入っていることです。MFTフレームワークを使うことで、技術を使う機能と、機能が必要な市場との関係性を簡単にまとめることができます。

上図のMFTフレームワークは市場からスタートしていますが、技術からスタートすることで、自社の技術が必要な機能とその市場の関係性を見つけることができます。これまでに調査してきた自社技術のレイヤーがMFTフレームに合わない場合は、下図のように項目を追加するなど工夫してみてください。

技術の応用先がわかることで、誰に何を伝えればよいのかが明確になるでしょう。

まとめ

このように技術を整理することで、技術をPRしたときに「誰に・何を」伝えればよいのかで迷うことはなくなります。自社の技術が整理できると、技術をマーケティングしやすくなるので、ぜひ挑戦してみてください。

他にも、Webサイト制作時における企画手法をまとめた記事もございますので、こちらもご参照ください。

テクノポートでは、技術や製品の情報を広く発信したいとお考えの企業のWebマーケティングを行っています。技術の伝え方についてお困りの際は、ぜひ弊社にご相談ください。

オンライン時代の同業会社に埋もれない「選ばれる」ブランディング

こんにちは。企業の「技術」と「想い」を伝えるブランディングC-OILING代表の大後 裕子(だいご ひろこ)です。

先日、製造業の2代目社長さんからこんな相談が来ました。

「今までメインだった取引先からの受注が減って商品が売れないので、新規顧客の獲得をしたいんです。でも展示会などのイベントもなくなってしまって顧客接点が持てないので、取り急ぎホームページを新しくしたりInstagramも始めたんですよ。社員も楽しんで取り組んでいたのですが、結局お問い合わせが来なくて以前のように商品が売れずに参ってるんです。」

このような「商品が売れない」という悩みは地球上で商売が始まって以降続いている、古今東西過去から現在まで多くの会社にとっての最も大きな問題です。しかしこの「商品が売れない」理由、実は単純に「わかりにくいから」というケースが少なくありません。「わかりにくいという=顧客とうまくコミュニケーションが取れていない」という状態なのです。

特に技術を商品としている企業の場合、専門的になればなるほど相手にとってわかりにくいものです。それはまるで膨大な知識のある大学教授がランドセルを背負い始めた小学生と話をするようなものです。例えばその商品がどのような知識や作業、また想いの蓄積を経て出来上がっているかは、ボタンひとつでマシンが動いて、ピカピカに磨かれた製品が手元に届くだけではわからないのです。

では同業他社に埋もれることなく、新規営業をスムーズに進めるためにはどのようなことをしたら良いでしょう?

答えは、この2つです。

  1. 伝えるべき内容を見直す
  2. 伝えるべき場所を見直す

なぜこの2つを見直す必要があるのかというと、現代人が1日にスマホやパソコンから受け取る情報量は「江戸時代のヒトの1年分」に匹敵すると言われているほど、情報が溢れかえっているからです。その中で新規顧客はどの企業に頼めばいいのか判断基準を探しています。

だからこそ伝わりにくい技術を持った会社こそ、わかりやすく選ばれる会社になることで、この溢れ返る情報の中でも同業他社に埋もれない新規営業をスムーズにしていきましょう。

「わかりやすい」選ばれる会社のチェックリスト

新規顧客があなたの会社に対して「わかりやすい」と感じられるかどうか、簡単なチエックリストを用意しました。

【A】

  • 経営者が自社の強みが一言で言える
  • 今の取引先があなたの会社の強みを一言で言える
  • 経営者が自社の専門分野について小学生にも伝えることができる
  • 社員が自社の専門分野について小学生にも伝えることができる

【B】

  • 発信する内容のおおよその年間スケジュールを決めている
  • 閲覧者が順調に増えている
  • ホームページやSNSの更新が頻繁にされている
  • オンライン上でお問い合わせが来ている

いかがでしたか?

AとB両方に全てのチェックが入った会社はオンラインでのブランディングが問題なく進められていることでしょう。Aのチェックが少なかった場合はまず伝えるべき内容を見直すことから始めましょう。Aのチェックが多い場合は、次のステップである伝えるべき場所を見直しましょう。

伝えるべき内容を見直す

ブランディングにおいて伝える内容とはなんでしょう?新規顧客の知りたいことは大きく分けて2つあります。1つ目はあなたの会社の得意とする技術、2つ目はその技術によってどんな問題を解決してくれるのかです。この2点が新規顧客の視点で語れるように見直しましょう。

伝えるべき場所を見直す

伝えるべき場所はリアルからオンラインにどんどん移行しています。だからと言って闇雲にFacebookやInstagramを更新するのではありません。するべきことは、あなたの会社の伝えるべ技術や想いを、媒体の先にいる新規顧客が受け取りやすいコミュニケーションの発信をすることです。

伝わりにくい技術を持った会社こそ、コミュニケーションの取れる会社になることで、一時の付き合いだけではない新規顧客とつながることができます。

企業の技術と想いを伝えるブランディング
C-OILING 大後 裕子 (シーオイリング だいごひろこ)

【量産設計者編】新規取引のときに協力企業に求めること

こんにちは、テクノポートの永井です。

前回、基礎研究者や先行開発者をターゲットとした技術情報の書き方について紹介しました。今回は量産設計者が新規協力企業に求める情報、そして量産設計者に伝わる技術情報の書き方について紹介します。

製品開発の大まかな流れは基礎研究→先行開発→量産設計となり、各フェーズによって内容は異なります。基礎研究は製品のコア技術の探索、先行開発は製品の仕様の決定、そして量産設計は製造するために必要なすべてのものを準備します。私(※1)の経験から大手メーカーの量産設計がどのような仕事を行い、どのような情報を求めているのかを紹介し、それを伝えるための技術情報の書き方について説明します。

※1 この記事の執筆者である永井は以前にボッシュでディーゼルエンジンの燃料ポンプの量産設計をしていた技術者です。(あくまで私自身の経験やインタビューを基にしているので、全てが正しいわけではございません。)

量産設計者の仕事内容

まずは量産設計者の仕事内容について説明します。設計と聞くと「ゼロベースの新製品設計」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際には

  • 既存製品のマイナーチェンジのための設計
  • 既存製品の不具合対応(緊急性が高い)
  • 製造工程の改善
  • 原価の改善

がメインの仕事になります。もちろんフルモデルチェンジと呼ばれる新規製品の設計もありますが、私の経験では1割以下だと思います。

量産設計者の仕事は

  • フルモデルチェンジ:先行開発からの依頼
  • マイナーチェンジ(BtoC):先行開発からの依頼
  • マイナーチェンジ(BtoB):お客様からの依頼
  • 不具合対応:品質保証からの依頼orお客様からの依頼
  • 製造工程の改善:製造からの依頼
  • 原価の改善:購買からの依頼

から始まる事が多く、他部署との連携も求められます。

具体的な仕事は「図面値を決めること」です。機械設計の場合は、図面値を1mmの変えるために、最悪値の算出、強度計算、組み立て工程への影響、耐久性の確認、製造の可否、検査体制など既存工程に置いて起こる変化を全て確認し、設計変更の可否を判断します。変更が大きい場合は検討漏れが起きないように、DRBFMを行います。必要であれば耐久試験のやり直すなど、変更が危険事象につながらないように最新の注意を払っています。また、不具合対応の場合は、不具合の原因の調査、原因を解決するための手段の立案、その手段が製造やコストに与える影響について、あらゆる角度で検討し、解決策を導き出します。設計と聞くと華やかなイメージもありますが、実際の仕事は結構泥臭いことをやっています。

量産設計者の置かれている立場

製品に対する全ての責任を背負っていると言っていいほど、量産設計者は責任の重い立場です。例えば、

  • 設計が遅れるとすべての後工程に影響を与える
  • 設計ミスがあるとリコールや会社の信用が落ちる
  • 不具合対応が遅くなると会社に大きな損失を与える
  • 製造方法の変更が遅れると無駄な工数が出たり、歩留まりが悪い状態が続く
    (製造方法の変更には図面の修正が必要な場合があり、その変更の許可を出すのは設計)
  • 開発スケジュールの管理し、遅延が起きないようにする
  • 開発遅延時の他部署への協力依頼(特に製造)を行う

など、製品に対する責任の多くは設計にあります。一つのミスが多大な損失につながるため、十分に検討しなければなりませんが、設計が遅れると開発スケジュールに影響がでるため、時間に追われて仕事をしています。さらに、不具合対応など突発の仕事も入ってくるため、常に締め切りに追われながら仕事をコントロールしています。例えば、不具合対応のときは、不具合の製品の確認、測定、原因の調査を行い、解決策の提案、解決策の実施、解決品の測定、検証など、PDCAを回しながら、いち早く改善策を見つける努力をしていますが、その間で、不具合品が出て続けていれば、お客様や品質保証からは責められます。また、製造工程の変更の場合も同様に、図面値を本当に変更して良いのかを検討している間は製造から「早くしてほしい」と詰められたり、意外と厳しい立場にいます。

一方で、協力企業の選定は「購買」が決定権を持っているため、設計が協力企業を探すことはほとんどありません。しかし、設計が必要と判断すれば、購買を動かすことも可能です。特に、既存企業の技術で不具合の改善が行うことができない場合は、他の企業を探します。

量産設計者が協力企業に求める技術情報

本題の量産設計が協力企業に求める技術情報について説明します。前提は「量産性が確保できる」こと。いかに良い技術でも量産性がなければ、意味がありません。求める技術情報としては

  • 量産性の高い技術(個数、品質の安定性なども含めて)
  • 新しい技術というよりも不具合を改善する技術
  • 実績がある技術
  • PDCAを回す体制

が多く、既存の依頼先、購買、Web、展示会などで情報を集めています。

技術とは少し違いますが、開発体制が整っていることもチェックします。新規取引先で製造した製品は測定や評価、検討など行うため、測定機があることはもちろん、評価レポートを作ることができるなど、PDCAを回す体制があるかどうかも判断基準になります。

量産設計者は多数のプロジェクトに参加するため、全ての評価を自社で行っていたのではプロジェクトが回りません。そのため、協力企業に任せられるところは任せたいというスタンスで企業を探しています。

Webでわかりやすく伝えるためにできること

量産設計者は不具合を解決できる技術を探しています。技術を調査するときも、不具合内容や原因、またそれらを改善できる技術などを軸として協力企業を探し、生産設備から探すことはほとんどありません。そのため、Webへの掲載には不具合事象や解決技術を意識した書き方が重要になります。

例えば、不具合事象としては腐食、焼付、疲労、剥離、摩耗、詰まり、振動、蓄熱、ガタ、緩み、コンタミ、耐久、鋳巣、ボイド、割れ、音、共振などのキーワード。解決技術としては真円度、円筒度、摩擦係数、周波数、材質、めっき、弾性係数、熱膨張係数、硬度、塗装などキーワードを含めると目につきやすくなります。

センターレス加工の例

  • 悪い例:センターレス研磨加工ができます
  • 良い例:加工時の振動を抑えることで、真円度、円筒度の精度のを高めたセンターレス加工が可能

センターレス研磨加工は量産性が高い技術ですが、加工の振動の影響で真円度や円筒度が大きくなることがあります。ピストン運動においては、真円度や円筒度の精度が重要になってくるため、センターレス加工で高精度が出せることは魅力的な技術になります。実際、切削加工のような真円度を作ることは難しいのですが、センターレス加工でもある程度調整することができるため、そこを「技術」としてアピールすることができます。掲載するときは下記のような仕組みや測定結果も一緒にあると良いでしょう。


引用元:ミクロン精密株式会社

引用元:大石測器 株式会社

ニッケルメッキの例

  • 悪い例:無電解ニッケルめっきができます。
  • 良い例:最高グレードの無電解ニッケルめっきを行うことで、非常に高い耐食性を実現可能

耐食性の改善としてニッケルっめきを施す場合に、ニッケルめっきの溶液の質によって耐食性能が変わります。例えば、SK100というグレードの高いニッケルめっき液を使うと通常の2〜3倍程度腐食性能が上がるというデータもあります。高木特殊工業様は実験結果と共に画像も掲載することで、SK100の実力を数値以外に目でも見えるように工夫されています。

引用元:高木特殊工業株式会社

品質の例

  • 悪い例:高品質での製造が可能
  • 良い例:5ヵ月間で2110550品納品し、返却品は4品、不良率は2ppmの実績があります。

品質についても量産目線で実績を報告すると良いでしょう。外山製作所様は実績に加えて、お客様からの評価を掲載しています。内容についても、個数、返品数、返品率、不良率(ppm)と具体的な数値も掲載しています。

引用元:株式会社外山製作所

生産能力の伝え方について

最後に生産能力の掲載事例としてミツワ精機製作所様を紹介します。ミツワ精機製作所様は技術情報として、プレス加工可能厚さやロット数、実績業界、材質など生産能力について細かく情報を掲載しています。

一般的な設備一覧だけではどのような加工がどれくらいできるのか把握しづらいため、ミツワ精機製作所様のように生産能力がひと目でわかるように工夫されていると設計者の目に止まりやすいと思います。

引用元: 株式会ミツワ精機製作所

まとめ

量産設計者は量産性があり、かつ抱えている不具合を改善できる技術を求めています。量産設計者をターゲットとする場合は、この2点に注意して情報を掲載すると良いでしょう。また、技術や生産能力を伝えるためには、具体的な数値や実績を掲載し、かつそれらが製品にどのような改善を与えられるのかを具体例を含めて伝えると良いでしょう。

テクノポートは技術に特化したマーケティングを得意としています。技術をもっと広めたいとお考えでしたらぜひ弊社にご相談ください。

技術をわかりやすく相手に伝える方法について

テクノポートの永井です。

より多くの人に自社の技術を認知させて、特徴を理解してもらい、そして必要と感じてもらうためには伝えるための工夫が必要です。今回は「その技術の伝え方」についてまとめましたので、参考にしていただければと思います。

技術を伝える難しさ

技術の伝え方を紹介する前に、技術の伝えることの難しさについて共有したいと思います。

そもそも「技術を理解した」というのはどういう状態でしょうか?私は自分の立場(経営、設計、品質保証、購買など)において「その技術が使えるかどうかを判断できる状態」のことだと思います。ではなぜ相手に技術を伝え、理解してもらうことが難しいのでしょうか?その理由は大きく3つ考えられます。

1.相手の立場によって求める情報が異なる

例えば、経営者であれば技術を使って得られるベネフィットやメリットの情報を求め、設計者であれば具体的なスペックを知りたいと思っているため、伝えたい相手によって伝え方を変えないといけません。

2.相手が技術を理解するだけの基礎知識を持っていない場合がある

ほとんどの人が専門分野以外の技術については知識を持っていないため、技術を理解してもらうための道筋を立てなければなりません。

3.技術の細かな説明だけでは、技術によって得られる機能価値を想像してもらえない

相手はその技術を自社の製品に利用したときにの「機能価値」を知りたいと思っているにも関わらず、伝える側は専門用語を多用し、不必要なほどの詳細を伝えがちです。どれだけ高い技術でも、機能価値を想像できなければ、相手は聞く耳を持ってくれません。

以上のような理由で、技術を伝えることは難しくなってしまいます。だからこそ、わかりやすく伝えるためには工夫をしなければなりません。

技術をわかりやすく相手に伝えるために

ターゲットを決める

技術を伝えるときには、まずはターゲット(伝える相手)を決めましょう。ターゲットを決める時には仕事内容で分けることで「相手にどのような技術の基礎があり、どのような情報を求めているのか」を想像しやすくなります。

例えば下記の様な分け方です。

  • 同分野の開発者
  • 他分野の開発者
  • 品質管理担当者
  • 購買担当者
  • 生産技術担当者
  • 研究者
  • 一般の人

同分野の開発者であれば専門用語を多用して、自社の技術を高いレベルで伝えることができますし、他分野の開発者でれば基礎から伝える必要はありますが、大まかな説明でも理解してもらえます。

他にも、品質管理担当者であれば品質を改善するための情報、購買であればコストを削減するための情報、生産技術であれば工数を削減するための情報などを求めていることが想像できます。

伝える情報を整理する

ターゲットが決まったら次は「理解してもらいたい技術」の内容を整理します。ここでポイントになるのは、相手が求めているものは「現在の課題を解決するための情報」ということです。ターゲットによって技術の詳細を求めているのか、それとも技術によって得られるベネフィットなのかは異なるため、情報を整理する前にターゲットが抱える課題を洗い出してください。

例えば、ターゲットが抱える課題の一例として

  • 設計     :製品の小型化
  • 品質保証担当者:量産品の品質の改善
  • 購買担当者  :製造コストの削減
  • 生産技術担当者:製造工数の削減
  • 経営者    :自社のブランド力向上、販売数の拡大

などがあります。このような課題をもとに、自社の技術がターゲットに対してどのような恩恵をもたらすのかを整理してみてください。

技術の伝え方

技術を視覚化する

技術を伝える際に有効な手段の一つが技術を視覚化することです。視覚化方法は様々ありますが、

  • グラフ
  • 画像
  • 動画
  • 現物

が一般的です。

パラメータを変化させることで性能が変化する場合はグラフを、内部構造など視覚化することでわかりやすくなる場合は図を、技術を使用した事例を見せたい場合は画像や動画を使うなど、伝えたいターゲットや技術内容によって最適な方法を選んでください。

視覚化方法 向いている技術 注意点
グラフ 状況の変化において技術差が出る技術 条件を明確に示す
縦軸、横軸の単位を記載する
従来品と比較ができるようにする
どれほど効果があるのかの説明文を入れる
最高値、最低値などが物をいう技術 従来技術との差異も数値で示す。
内部構造など視覚化することでわかりやすくなる技術 図のクオリティを上げる
画像 色や表面のキレイさなどで技術差がわかる技術
肉眼では見ないものの可視化が必要な技術
画像のクオリティを上げる
画像の中に注釈など入れる
動画 動作や音などで技術差がわかる技術 短くまとめる
現物 画面では分からない触覚を感じるこで差異が分かる技術 その場で試せるように工夫する

技術を使って得られる機能価値を提案する

技術を使って何を得られるのかをこちらから具体的に提案することで、ベネフィットが伝わりやすくなります。

例えば、

  • 落としても割れないスマホを作れます。
  • 耐久年数を2倍にできます。
  • 製品の大きさを今の80%にできます。

などです。経営者や技術開発長などのスペックよりもベネフィットを重視する方に有効な手段です。

技術の根拠や実績を説明する

自社が技術を持っていることを誰が見ても理解できるように、技術の根拠を示すことも大切です。特許や論文などの第三者から評価された内容があればベストですが、取引のある企業や設備など一般的な情報でも構いません。

特に、量産技術を求めている大手企業は、相手企業が持っている技術の信憑性、品質管理能力、量産能力、不具合時の対応力などの総合的な力を見極めるために「大手企業との取引実績がある」ことを求める傾向にあります。

まとめ

技術を伝えることは思っている以上に難しいことですが、ターゲットを決め、情報を整理し、見せ方を工夫することで、伝えやすくすることは可能です。

技術を伝えるためには、試作品の製作費用、実験用のサンプル費用、資料作成に要する工数などのコストがかかります。それでも、新規顧客を開拓するためには技術をわかりやすく相手に伝えられることが必要になるため、ぜひチャレンジしてください。