エクスペリエンス

売れる商品はこうして作る!プロが教えるペルソナの描き方

「この商品なら絶対に売れるはず…」 そう確信して開発した新商品や新規事業が、市場で思うような反応を得られない。多くの企業が直面するこの課題に、あなたも心当たりはないだろうか。 実は、商品開発の成否を分けるポイントは、開発の最初の段階にある。それは「誰のための商品なのか」を具体的に描き切れているかどうかだ。 「20-30代の女性向け」「子育て世帯」—こうした曖昧なターゲット設定では、もはや競争の激しい現代市場では通用しない。 では、実際にヒット商品を生み出している企業は、どのようにしてターゲットユーザーを描いているのか? その答えが「ペルソナ」だ。 今回は、筆者のサービスデザイナーとしての経験をもとに、売れる商品を作るための具体的なペルソナの描き方と、その活用方法を解説していく。 「全ての人に愛される商品」はもはや作れない時代に かつては、ターゲット層を「女性」「ファミリー層」など大まかに捉えたとしても、商品を大量生産することで売上を伸ばすことができた。 しかし、現代の社会では消費者のニーズは多様化し、モノが溢れた社会では差別化が必須だ。「全ての人に愛される商品」はもはや作れなくなっている。 実際の失敗事例を見てみよう。例えばMicrosoftが2006年に発売した音楽プレイヤーZuneは、音楽愛好者を広くターゲットにして開発されたが、市場シェアが2%未満にとどまり、2012年には販売終了となっている。 失敗の原因の一つは、「ターゲットを幅広く設定しすぎて、皆を少しずつ喜ばせることはできるが、誰にも深く愛されないものになっていたから」とも言われている。 Zuneは幅広いユーザーをターゲットにしており、他の音楽プレイヤーやiPodに対抗する「オールインワン」デバイスとして開発された。 異なるサイズや容量のモデルを展開し、映画やテレビ番組のレンタル、オーディオブックも楽しめる、まさに「いろいろできる」商品だった。しかしその分マーケティングメッセージが明確でなく、市場での立ち位置が曖昧になったとされている。 現代のユーザーは、自分自身の価値観や特定のライフスタイルにぴったりと合致した商品を求めている。情報がインターネットを通じて広がり、世界中の人々があらゆる選択肢にアクセスできる今、単に「どんな人にも少しずつ役立つ」だけの商品では、ユーザーの関心を引くことは難しい。「たったひとり」でも泣いて喜ぶような、具体的なニーズに応える商品こそが選ばれる時代なのだ。 なぜ「全ての人を対象にした商品」は売れないのか?イノベーター理論で学ぶターゲット戦略 そのためにユーザーを深く理解し「たったひとり」を具体的に描き出す手法が、「ペルソナ」の作成だ。 ペルソナを作成するには ペルソナとは、特定の価値観や目標を持つ架空の人物像であり、ターゲットとなるユーザー像を具現化するためのツールである。 ペルソナを作成するときには、ターゲットユーザーを象徴する人物のプロフィールを詳細化する必要がある。代表的な項目として、最低限、下記のような要素をまとめてみるとよい。 顔写真 デモグラフィック情報 ソシオグラフィック情報 そのペルソナを端的に表す一言 ユーザーのゴール 生き生きとしたストーリー これらを一枚の紙にまとめたものの例がこちらだ。一つずつ詳細を説明していこう。 1 . 顔写真 顔写真は、商品を作るチームメンバーにとってペルソナがまるで実在しているかのように感じさせ、深く共感するために必要だ。リアリティを持ってペルソナを扱えるよう、イラストや有名人の写真ではなく、写真素材サイトなどから個人の顔写真を探して用いるのがおすすめだ。 2. デモグラフィック情報 デモグラフィック情報とは、主に年齢、性別、職業、収入、学歴など、人の基本的なプロフィールや人口統計に基づく情報だ。 例えば「大卒の30代の会社員」といったものがデモグラフィック情報にあたる。これらは数値や属性で表しやすく、設定を考えるのも比較的簡単だ。ステレオタイプに注意しながら「このターゲットユーザーなら、こんな属性が代表的といえそう」というものを設定しよう。 3. ソシオグラフィック情報 一方、ソシオグラフィック情報は、価値観やライフスタイル、趣味、行動パターンなど、個人の性格や心理的な側面に関する情報である。データで数値化しにくい部分も多く、より深いレベルでの理解を求められることが特徴である。 例えば、「環境に配慮する生活を心がける人」や「健康を大切にする人」といった情報がソシオグラフィック情報にあたる。このようにソシオグラフィック情報は「その人がどのように考え、行動するか」を表すものである。 4. そのペルソナを端的に表す一言 「そのペルソナを端的に表す一言」とは、その人物を一言でイメージできるキャッチフレーズのようなものである。 例えば「新しいことに挑戦するのが楽しくてたまらない都会の若手ビジネスマン」というプロフィール説明のようなものや、「失敗も含めてすべてが成長の糧」といったユーザーの特徴的なセリフがこれにあたる。この一言があると、ペルソナの特徴や価値観が瞬時に伝わり、チーム全体で共通のイメージを持ちやすくなる。 5. ユーザーのゴール 「ユーザーのゴール」は、ペルソナが達成したい目標や望んでいる結果を示すものである。このゴールが明確になることで、その人がプロダクトやサービスに対してどのような期待を持っているのかが理解しやすくなる。 例えば「仕事と家庭を両立しながら自己成長も続けたい」「毎日の生活を便利にして、自由な時間を増やしたい」などが、ユーザーのゴールの例である。このゴールを設定することで、製品がどのようにユーザーの役に立つべきかがはっきりする。 6. 生き生きとしたストーリー 「生き生きとしたストーリー」は、ペルソナの一日の生活や日常の中でどのように感じたり行動したりするかを具体的に描いたものである。このストーリーがあると、ペルソナがただのデータではなく、リアルな人物像として伝わりやすくなる。 btraxのデザイン思考研修では画像のようなテンプレートの形にして、右上「プロフィール」欄を穴埋めすることで、このストーリーを初心者でも簡単に作れるようにしている。こうしたテンプレートも活用しながら、必要に応じて要素を足したり、絞り込んだりしながら作成してみよう。 ペルソナの作成・活用プロセス ペルソナを作るには、ユーザーインタビューなどのリサーチで得られたデータに基づいて、特徴ある共通点をまとめ上げるようにするとよい。これにより実際のユーザーの行動や価値観に即したリアリティのあるペルソナが生まれる。 また、リサーチ結果が十分に集まる前でも、「仮のペルソナ」を作成することは有効だ。想像で作成した仮のペルソナは、実際のユーザー像を完全に反映するわけではないが、プロジェクト初期の段階でチーム全体が共通のイメージを持ち、方向性を揃えるための手助けとなる。 仮ペルソナを作成する際は、まずプロジェクトの目標や目的に沿って、ターゲットとする人物像を仮説として立てるところから始める。その後、インタビューで得た新しい気づきをペルソナに反映させ、精度を高めていくことが重要だ。 また、ペルソナが出来上がった時点で「完成」ではなく、継続的にインタビューなどでフィードバックを得て、適宜ペルソナを見直し、より正確でリアルなものにしていくプロセスが必要である。まるで自分の家族や親友を紹介するかのように、ユーザーを代弁して語れるぐらいに解像度を上げることを目標にしよう。 ユーザーインタビューの進め方については、下記の記事も参考にしてほしい。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ ペルソナとセグメンテーションの違い 「たったひとりのユーザー」をターゲットにするペルソナの考え方に対し、「ビジネス規模が小さすぎるのでは」と懸念する企業もいるだろう。 そのために、セグメンテーションの考え方、つまり特定の属性や条件で市場を切り分けて、それぞれのグループに最も適したターゲットユーザーを設定するという方法を採用する企業も多い。 しかし、実はペルソナは異なるセグメントを超えて共通の価値観や目標を持ったユーザー像を描く手法なので、結果的にセグメンテーションでの考え方よりも広い市場にアプローチできる可能性がある。 セグメンテーションは属性を切り分けて「違い」に焦点を当て分類するのに対し、ペルソナは価値観や体験の「共通性」に注目する。 例えば、あるコーヒーメーカーが、単に「コーヒーを飲む20代男性」ではなく、「リラックスした朝の時間を大切にする人」をペルソナとして設定したとしよう。この場合、商品が単なる属性(性別や年齢)に依存せず、より多くの人々の共感を得やすくなる。 これにより、異なる年齢や職業、居住地に属する人々にも喜ばれる商品を作り出すことができる。 ペルソナの活用による効果 企業でペルソナの手法を採用することで、さまざまな効果が期待できる。 まず、ペルソナを活用することで、チーム内外でターゲットユーザーのイメージが直感的に共有され、効率的にプロジェクトを進めることができる。それにより、開発やマーケティングにおける戦略立案もより効果的になる。 また、ユーザーが持つ課題や目標を解像度高く理解できるようになるため、企業はより深くユーザーに共感し、ユーザーに響くサービスを生み出しやすくなる。 ペルソナの活用事例:Philips 実際に、ユーザーに愛されるヒット商品を次々生み出している企業でもこの手法が用いられている。オランダに本社を置くヨーロッパ最大の電機メーカーのフィリップス(Philips)がその例だ。フィリップスの電動シェーバー、“OneBlade”の事例を見てみよう。 この商品のペルソナは18歳の男の子、ブライアンだ。彼は、両親と暮らしながら忙しい生活を送っている。清潔感に強いこだわりがあり、身だしなみにも常に気を配っている。そんな彼が求めているのは、実用的でありながらもスタイリッシュでかっこいいシェービングツールだ。 このペルソナをもとに開発されたのが、OneBladeだ。このシェーバーは、摩擦の少ない刃と肌を保護できる機構を採用しており、切り傷やかみそり負けを防ぐ。そのため、ブライアンのような若いシェービング初心者でも安心して使える​。 さらに、OneBladeは濡れた状態や乾いた状態でも使用でき、刃のカット速度も速いため、従来のカミソリよりも効率的に使用できる。そのため、忙しいスケジュールに合わせた実用的なシェービングツールを求めるブライアンにとって理想的である。 この商品は大ヒットし、2016年の発売以来、世界中で約2,700万のユーザーを獲得し、100万枚目の替え刃を生産するという大きなマイルストーンを達成している。 まとめ このように、企業はペルソナを作成し、ユーザーリサーチを通じて解像度を高め続けることで、ユーザーに愛されるサービスを作り出すことが可能となる。 ペルソナを活用することで、企業はターゲットユーザーの深層心理を深く理解し、彼らに響く新規事業や商品開発、マーケティングを実現できる。 btraxでは、企業がターゲットユーザーを深く理解するためのユーザーリサーチの支援や、リサーチを基にした新サービス開発やマーケティング戦略の立案、実行までの伴走を行っている。 ユーザー理解を深めたい、効果的なペルソナを活用したいと考えている担当者の方々は、ぜひbtraxにぜひお気軽にお問い合わせください。

【完全版】19種類のユーザーリサーチメソッドについて解説!

ユーザーリサーチとはUXデザインを行う際に必要となるユーザーのニーズ、行動、好み、課題を明らかにするための調査のこと。最近では「UXリサーチ」とも呼ばれている。 UXデザインプロセスの一部であり、ユーザー体験を向上させるために必要不可欠なプロセスとなっている。ユーザーのニーズや課題などを間違えて捉えてしまったり、十分に理解ができていない場合は、製品やサービスの失敗につながる可能性があるため、ユーザーリサーチは非常に重要な存在なのだ。 ユーザーリサーチの概要やなぜ必要なのかについては下記の記事で詳しく話している。ぜひそちらも合わせてチェックいただきたい。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 近年、ユーザーリサーチやUXリサーチという言葉が日本でも少しずつ浸透し始めているものの、ユーザーリサーチの手法がたくさんあって何をすればいいかわからないという相談をよく受ける。そこで今回は『19種類のUXリサーチメソッドのメリット、デメリットと活用場面』について解説していく。 どんなユーザーリサーチメソッドがあるの? まずはこのマトリクスの見方について解説していく。縦軸が意識調査(Attitudinal)か行動観察(Behavioral)で別れていて、横軸が質的調査(Qualitative)と量的調査(Quantitative)に別れている。 ・意識調査(Attitudinal):ユーザーが「どう思っているか」や「何を感じているか」を聞いて理解する ・行動観察(Behavioral):ユーザーが「実際に何をしているか」を観察して把握する ・質的調査(Qualitative):少数のユーザーから詳細情報を集めて「なぜ」「どのように」を深く理解する ・量的調査(Quantitative):多くのユーザーから数字で表せる情報を集めて傾向を把握する 4種類のマークのそれぞれの意味 🟢自然な製品使用 (Natural use of product):ユーザーが普段どおりに製品を使う様子を観察する 🔴脚本化された製品使用 (Scripted use of product):決められたタスクやシナリオに沿って製品を使ってもらい、その様子を観察する 🟡脱文脈化 (Decontextualized – not using product):製品を直接使用せずに、ユーザーの意見、態度、または知識を調査する 🔵限定的使用 (Limited use of a limited form of the product):製品の一部や簡易版を使って、特定の側面だけを調査する マトリクスの見方がわかると、それぞれのメソッドがどのような目的でどのような方法で行われるかが大まかに理解できるようになる。 それぞれのユーザーリサーチメソッドの解説 それではここからマトリクスにあるリサーチメソッドについて解説していく。 1 🟡インタビュー (Interviews) 一対一で詳細な質問を行い、ユーザーの意見や経験を深く掘り下げる手法 ・メリット: 詳細な情報が得られる、柔軟な質問が可能 (追加質問ができる) ・デメリット: 時間がかかる、サンプル数が限られる ・活用場面: 新製品の開発初期段階、ユーザーの行動や動機の深い理解が必要な時 2 🟡フォーカスグループ (Focus Groups) 少人数のグループでディスカッションを行い、意見や反応を収集する手法 ・メリット: 多様な意見が一度に得られる、参加者同士の相互作用を観察できる (意見の一致や対立、アイディアの発展過程など) ・デメリット: 特定の意見に引っ張られる可能性がある、個人の深い洞察が得にくい ・活用場面: 新しいコンセプトの初期評価、製品の改善点を探る時 3 🟡アンケート (Surveys) 多数のユーザーから定量的なデータを収集する手法 ・メリット: 大規模なデータ収集が可能、統計的分析に適している ・デメリット: 深い洞察が得にくい、質問の設計が結果の質に大きく影響する ・活用場面: 顧客満足度調査、市場動向の把握、大規模な意見収集が必要な時 4 🔵参加型デザイン (Participatory Design) ユーザーを設計プロセスに直接参加させる手法 (デザイナーやエンジニアと一緒に、ユーザーがアイデア出しや試作品の作成に関わる) ・メリット: ユーザーのニーズを直接反映できる、革新的なアイデアが生まれやすい ・デメリット: 時間とリソースがかかる、ユーザーの意見と専門家の知識のバランスを取るのが難しい場合がある ・活用場面: 新しいサービスの開発、既存製品の大幅な改善を行う時 5 🔵魅力度調査 (Desirability Studies) 複数のデザイン案をユーザーに提示し、好みや印象(魅力度)を評価してもらう手法 ・メリット: ユーザーの感情的な反応を把握できる、競合製品との比較が可能 ・デメリット: 主観的な評価になりがち、機能性の評価には適さない ・活用場面: 複数のデザイン案の中から最適なものを選ぶ時、ブランドイメージの評価をしたい時 6 🔵カードソーティング (Card Sorting) ユーザーに情報やカテゴリーをグループ分けしてもらう手法 ・メリット: 情報構造の最適化に役立つ、ユーザーの思考プロセスを理解できる ・デメリット: 結果の解釈に時間がかかる、コンテキストが失われる可能性がある ・活用場面: ウェブサイトの情報設計、アプリのメニュー構造の設計をする時 7 🔵ツリーテスト (Tree Testing) ユーザーにサイトの階層構造から特定の情報を探してもらい、サイト構造の分かりやすさを評価する手法 ・メリット: […]

【30億円を生み出したセルフオーダーレジ】マクドナルドの成功の裏側をUXデザインの観点から紐解く

マクドナルドは、セルフオーダーレジの導入により約30億円の追加利益を生み出した。 この増益は、主に顧客がセルフオーダーレジを使うことで平均客単価が上昇したためである。マクドナルドのCEOは、セルフオーダーシステムによって顧客が従来よりも多くの商品を注文する傾向があると述べている。(参照元) この記事では、セルフオーダーレジがどのようにして成功を生み出したのか、UXという観点からユーザー体験の向上と企業の利益の両面から探っていく。 セルフオーダーレジとは? セルフオーダーレジとは、レストランやファストフード店で、顧客が自分で注文を行うためのタッチパネル式の端末である。これにより、顧客は従業員を介さずにメニューを確認し、選択、注文、決済をスムーズに行うことができる。また、通常のレジに比べて、列に並ぶ時間が短縮され、待ち時間を減らす利点がある。 実際にマクドナルドでは、2008年にヨーロッパで初めてセルフオーダーレジを導入した。それ以降、バーガーキングやKFCなどの競合他社も追随して導入し、今では多くのファストフードチェーンで一般的な存在となっている。 それでは、セルフオーダーレジによるユーザーの体験価値の向上について見ていこう。 ユーザーの利益(UX)の向上 マクドナルドがセルフオーダー体験を向上させるために取り組んだことは主に4つある。 ①シンプルさ なるべくシンプルなUIにすることでユーザーが迅速に注文できるように設計されている。 ファストフードを利用する多くのユーザーは、食べたい商品がすぐに見つかり、オーダーできることを求めているため、非常に重要な要素となっている。マクドナルドのセルフオーダーレジでは、ハンバーガーやサイドメニューなどがセクションごとにわかりやすく分かれており、それぞれのアイテムは画像中心のUIとなっているため、直感的にオーダーできるUIとなっている。 ②カスタマイズ性 ユーザーの好みやアレルギーに合わせて注文をカスタマイズできるようになっている。 具体的には、ハンバーガーのトッピングやソースなどの追加や削除など、ユーザーが簡単に調整ができるようになっているため、より多くのユーザーが食事を楽しめるような工夫がされている。また、注文ミスを減らすために、最後に確認が表示されるような導線となっており、ユーザーも安心してオーダーできる設計となっている。 ③楽しい操作感 タッチスクリーンを利用することで直感的に指で操作できるUIになっている。画面のデザインもカラフルでポップな動きをするUIになっているため、ユーザーが楽しみながらオーダー体験できるように設計されている。 ④多言語対応 マクドナルドのセルフオーダーレジでは、複数言語から言語を選べるようになっている。日本では、日本語と英語などから選ぶことができるようになっている。日本語でオーダーができないユーザーでも英語表記に切り替えてオーダーすることが可能になっている。 企業利益の向上 マクドナルドが自社の利益を向上させるために使ったテクニックは主に6つある。 ①ナッジング ナッジングとは、ユーザーに選択の自由を与えつつ、人間の認知バイアスや思考の癖を理解した上でさりげない誘導を行うこと。 セルフオーダーレジの支払い画面では、クレジットカード支払いを推奨するようなUIになっている。クレジットカードでの支払いの方がキャッシュよりも支払い額が増えると言われているため、このようなUIを採用していると考えられる。 また、なるべく多くのセルフオーダーレジを配置することで、待ち時間を減らし、離脱防止に繋げている。7人以上並んでいる時は最大で70%の人が列に並ぶのをやめてしまうという研究結果もあるため、なるべくレジ待ちの列を短くすることが列からの離脱を減らし、オーダーの最大化に繋げている。 ②アップセリング アップセリングとは、ユーザーが当初検討していた単価の低い商品から単価の高い商品の購入を促すこと。 セルフオーダーレジ内のハンバーガーセクションでは単価の高いハンバーガーから順に表示されており、高いハンバーガーが目線の位置にある状態である。元々安価なチーズバーガーを頼もうと思っていたとしても、少し高くて美味しそうなビッグマックを選んでしまう仕掛けになっている。アップセリングのために、ナッジングも利用されていると考えられる。 ③バンドル販売 バンドル販売は、単価で購入するよりもお得な価格でセット商品を提供すること。 セルフオーダーレジでハンバーガーを選んだ後に、ポテトフライや飲み物が含まれたお得なセット商品が表示されるようになっている。ハンバーガーの利益率はそこまで高くないため、ポテトや飲み物などの利益率の高いサイドメニューを一緒に頼んでもらうことが利益率拡大につながる。 ④クロスセリング ユーザーが購入検討している商品に追加の商品を提案することをクロスセリングという。 セルフオーダーレジでは、ハンバーガーを選択した後にセット商品だけでなく、セット商品以外のナゲットやマックフルーリーなどがレコメンドされるような画面設計になっている。また、直感的で楽しいオーダー体験ができるUIが、通常よりも多くの商品を注文しやすい環境を作り出している。 ⑤ダークパターン ダークパターンは企業の利益を優先した結果になるよう、ユーザーが意図しない行動を取らせることを指す。 言い換えると、ユーザーの利益よりも企業の利益を優先させるずるいデザインである。セルフオーダーレジの画面では、トータルの金額がスクリーンの下に小さく表示されており、立っている状態だと視野に入らないデザインとなっている。そのため、ユーザーは合計金額が増えていても気づきにくい。 ⑥A/Bテスト 異なるバージョンを比較して、どちらが効率的かを統計的に検証することをA/Bテストという。 セルフオーダーレジのスクリーン上で、ランダムにコンポーネントの色やサイズ、表示テキスト、商品の並び順やレコメンド商品の表示を変えたりしている。A/Bテストを通して、マクドナルドは利益を最大化できるUI/UXを追求している。 結論:UXデザイナーはユーザーの利益と企業の利益のバランスを考えた設計が重要 マクドナルドのセルフオーダーレジの成功は、ユーザビリティの向上と収益増加の両立を示す好例だ。もちろんナッジングやダークパターンに関しては、ユーザーの信頼を失う可能性や倫理的な問題につながる可能性があるため、ベストな活用事例かどうかは判断が難しい。 しかし、この事例からユーザーと企業の利益の両方を意識することが重要だということがわかるだろう。UXデザイナーの役割は、この両者のバランスを取りながら、長期的な価値を創造することである。 以上のことから、UXデザイナーがユーザーと企業の利益の両方を考慮する上で重要なポイントは以下の3点である。 ①ビジネス目標の理解 企業の戦略や収益モデルを深く理解し、UXがそれらにどう貢献できるかを常に考えることが求められる。ユーザーの問題解決と企業の収益向上を同時に実現できることがベストケースである。 ②長期的価値の創造 短期的な利益だけでなく、長期的なユーザーロイヤリティと企業の持続可能性を考慮する。短期的な利益を追求しすぎることで、ユーザーが離れていってしまうリスクもあるため、長期的な目線を持ちながらプロジェクトを進める。 ③クロスファンクショナルなコラボレーション マーケティング、開発など、他部門と密接に連携することで、様々な意見を取り入れることが可能になる。総合的な視野を持ってプロジェクトを進めることがユーザーや企業のどちらかの利益に偏ることを防ぐ。 これらのポイントを踏まえることで、UXデザイナーはユーザーと企業の利益の双方を向上させるサービスやプロダクトを生み出すことができるだろう。

【btrax事例紹介】SUBARUとのブランド・エクスペリエンス・プロジェクト:顧客との新たなタッチポイントを創出

デジタル化が急速に進行し、他社との差別化がますます難しくなっている現代において、ブランド価値の向上は非常に重要です。 そんな中、SUBARUは従来の車両というハードウェア以上の価値をユーザーに提供し、新たなタッチポイントを創出することに成功しました。 この挑戦にbtraxがどのように貢献したのか、詳しくご紹介します。 *本記事は、日本ではなく全米で実施したプロジェクト事例になります。 Project Overview:時代や市場の変化に対応するために btraxは、SUBARUがデジタル化と競争激化する市場環境の中で、魅力的なブランドとして選ばれ続けるためのサポートを行いました。 具体的には、本プロジェクトで「ブランドコア」の定義から、新サービスのアイデア立案、プロトタイプ開発、そしてユーザーテストを通しての具現化までを包括的にサポートしました。 Brand Development:ブランドコアの言語化 SUBARUブランドの本質を理解し、ユーザーに提供すべき体験のビジョン(UXビジョン)を明確にするため、私たちは綿密なプロセスを踏みました。 まず、SUBARUを愛するユーザーに直接インタビューを行い、彼らがブランドのどこに魅力を感じているのかを深く掘り下げました。 「安全性」「走行性能」といった製品特性だけでなく、「outdoor」「family」「open-minded」など、SUBARUが提供する無形の価値についても丁寧に聴き取りました。 「安全性」「走行性能」といった製品特性だけでなく、「outdoor」「family」「open-minded」など、SUBARUが提供する無形の価値についても丁寧に聴き取り、インタビューを通してでたキーワードやポイントをまとめました。 そして、これらのユーザーインタビューやから得られたキーワードやポイントを慎重に分析し、SUBARUのコアブランド価値を抽出しました。 この過程で、「Versatile」「Open-minded」「Humble」といったSUBARUならではの特徴が浮かび上がり、SUBARUがこれから体現すべきブランド価値を明確にしました。 Service Design:ブランドコアに即した新たなサービスアイディア発想 次に、言語化されたブランドコアに基づいて、ワークショップ形式でサービスのアイディア発想を行いました。 日米双方のSUBARUユーザーへのヒアリングを通じてユーザーの声を聴き、その価値観を反映させながらアイディアを3案に絞り込みました。 Validation:ユーザーとの共創をベースにしたコンセプト立案 選定した3つのコンセプトについて、更なる具現化のためのインタビューをアメリカの生活者を対象に実施しました。 ユーザーのインサイトを分析し、最終コンセプトを1つに絞りました。その上で、ショートムービーやランディングページを作成し、コンセプトやサービス体験を視覚化しました。 Prototyping&User Testing:プロトタイプ開発とユーザーテストの実施 具体化したサービスアイディアを実体験できるよう、MVP(Minimum Viable Product)としてアプリのプロトタイプを開発しました。 この段階では、プロトタイプを用いて実際にユーザーテストを実施し、フィードバックを収集しました。これにより、ユーザー体験の向上に必要な調整を行いました。 Research:現地のイベントへの出展とアメリカ支社への提案​ SUBARUファンが多く集まるSubiefestに出展し、MVPを配布しました。それに加えて、対面でのフィードバックを集め、サービスの利便性や魅力をさらにブラッシュアップしました。 また、これまでの成果をSUBARU of Americaに提案し、新規サービス開発を通じた日米の協力を強化しました。 プロジェクトの成果と今後の展望 SUBARUとのブランド・エクスペリエンス・プロジェクトを通じて、btraxは「ブランドコア」の定義から、新サービスのアイデア立案、プロトタイプ開発、そしてユーザーテストまでを包括的にサポートしました。 このプロセスにより、SUBARUはユーザーとの新たな接点を創出し、ブランド体験の向上を実現しました。さらに、このプロジェクトは日米の組織間協業の架け橋となり、グローバルな視点でのブランド戦略構築に貢献しました。 この経験を活かし、btraxは今後も急速に変化する市場環境において、ブランドの本質を見つめ直し、ユーザーとの対話を重視した新しいサービス構築のアプローチを提供していきます。 btraxはこれまで多数のユーザーリサーチの実績を有し、ユーザーの本質的なニーズを理解するための知見を持っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。 今回のSUBARUの事例紹介ページはこちら。

【btrax事例紹介】SUBARUとのブランド・エクスペリエンス・プロジェクト:顧客との新たなタッチポイントを創出

デジタル化が急速に進行し、他社との差別化がますます難しくなっている現代において、ブランド価値の向上は非常に重要です。 そんな中、SUBARUは従来の車両というハードウェア以上の価値をユーザーに提供し、新たなタッチポイントを創出することに成功しました。 この挑戦にbtraxがどのように貢献したのか、詳しくご紹介します。 *本記事は、日本ではなく全米で実施したプロジェクト事例になります。 Project Overview:時代や市場の変化に対応するために btraxは、SUBARUがデジタル化と競争激化する市場環境の中で、魅力的なブランドとして選ばれ続けるためのサポートを行いました。 具体的には、本プロジェクトで「ブランドコア」の定義から、新サービスのアイデア立案、プロトタイプ開発、そしてユーザーテストを通しての具現化までを包括的にサポートしました。 Brand Development:ブランドコアの言語化 SUBARUブランドの本質を理解し、ユーザーに提供すべき体験のビジョン(UXビジョン)を明確にするため、私たちは綿密なプロセスを踏みました。 まず、SUBARUを愛するユーザーに直接インタビューを行い、彼らがブランドのどこに魅力を感じているのかを深く掘り下げました。 「安全性」「走行性能」といった製品特性だけでなく、「outdoor」「family」「open-minded」など、SUBARUが提供する無形の価値についても丁寧に聴き取りました。 「安全性」「走行性能」といった製品特性だけでなく、「outdoor」「family」「open-minded」など、SUBARUが提供する無形の価値についても丁寧に聴き取り、インタビューを通してでたキーワードやポイントをまとめました。 そして、これらのユーザーインタビューやから得られたキーワードやポイントを慎重に分析し、SUBARUのコアブランド価値を抽出しました。 この過程で、「Versatile」「Open-minded」「Humble」といったSUBARUならではの特徴が浮かび上がり、SUBARUがこれから体現すべきブランド価値を明確にしました。 Service Design:ブランドコアに即した新たなサービスアイディア発想 次に、言語化されたブランドコアに基づいて、ワークショップ形式でサービスのアイディア発想を行いました。 日米双方のSUBARUユーザーへのヒアリングを通じてユーザーの声を聴き、その価値観を反映させながらアイディアを3案に絞り込みました。 Validation:ユーザーとの共創をベースにしたコンセプト立案 選定した3つのコンセプトについて、更なる具現化のためのインタビューをアメリカの生活者を対象に実施しました。 ユーザーのインサイトを分析し、最終コンセプトを1つに絞りました。その上で、ショートムービーやランディングページを作成し、コンセプトやサービス体験を視覚化しました。 Prototyping&User Testing:プロトタイプ開発とユーザーテストの実施 具体化したサービスアイディアを実体験できるよう、MVP(Minimum Viable Product)としてアプリのプロトタイプを開発しました。 この段階では、プロトタイプを用いて実際にユーザーテストを実施し、フィードバックを収集しました。これにより、ユーザー体験の向上に必要な調整を行いました。 Research:現地のイベントへの出展とアメリカ支社への提案​ SUBARUファンが多く集まるSubiefestに出展し、MVPを配布しました。それに加えて、対面でのフィードバックを集め、サービスの利便性や魅力をさらにブラッシュアップしました。 また、これまでの成果をSUBARU of Americaに提案し、新規サービス開発を通じた日米の協力を強化しました。 プロジェクトの成果と今後の展望 SUBARUとのブランド・エクスペリエンス・プロジェクトを通じて、btraxは「ブランドコア」の定義から、新サービスのアイデア立案、プロトタイプ開発、そしてユーザーテストまでを包括的にサポートしました。 このプロセスにより、SUBARUはユーザーとの新たな接点を創出し、ブランド体験の向上を実現しました。さらに、このプロジェクトは日米の組織間協業の架け橋となり、グローバルな視点でのブランド戦略構築に貢献しました。 この経験を活かし、btraxは今後も急速に変化する市場環境において、ブランドの本質を見つめ直し、ユーザーとの対話を重視した新しいサービス構築のアプローチを提供していきます。 btraxはこれまで多数のユーザーリサーチの実績を有し、ユーザーの本質的なニーズを理解するための知見を持っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。 今回のSUBARUの事例紹介ページはこちら。

クリエイティブエージェンシーの独自性:コンサルティングファームとの違い

「ユーザー中心デザインって、私たちが日々やっていることと同じじゃない?単に見せ方が違うだけでしょう?」 私はbtrax Inc.のビジネスプロデューサー/アカウントマネージャーです。 この仕事につく前は東京の大手外資コンサルファームで「人・組織」のコンサルタントとして働いていました。 現在、シリコンバレーで定期的に日本企業さまの社員に対してデザイン思考のワークショップを実施しています。   あるクライアントさんとは毎年2回サンフランシスコで10週間に渡り開催していますが、 そのワークショップで必ず1回はこのような質問が出ます: 「デザイン思考って、私たちが日々の業務で当たり前に行っていることと何が違うの? 私達も日々顧客にヒアリングを行いニーズを理解し、 解決策を提供するけれども?」   確かに表面的な類似点は否定できません。 しかし、私たちクリエイティブエージェンシーとの違いにはより深いレイヤーがあり、それを求めて我々の顧客とお仕事させていただいています。 特にコンサルタントの仕事を経験している私から言える違いをこの記事で紹介できればと思います。   核心的な違い:柔軟性と創造性 クリエイティブエイジェンシーと他のビジネスアドバイザリーを行う会社との核心的な違いとは何でしょう。 我々は固定されたサービス提供を持つ企業とは異なり、私たちのようなクリエイティブエージェンシーは自由でオリジナルな発想が可能です。 特定の製品に縛られることなく、高度な創造力をうまく活用して問題に寄り添うことができ、ユーザーのニーズに合わせて本当に革新的な解決策を提供します。 では、クリエイティブエージェンシーの考え方や文化とは具体的にはどのようなものでしょうか? ここでは3つの重要な要素を紹介します:   1. 深い共感と感情的洞察 従来のビジネスが単に問題解決に焦点を当てるのに対し、クリエイティブエージェンシーは共感と感情の共鳴を重視しています。 解決策を出す前に、問題を細かく分析し、その感情的な核心を探求し、ユーザーの根本的なニーズを理解します。 例えば、btraxのクライアントには日本の大手飲料メーカーやアメリカの健康サプリメントメーカー等がいます。このようなクライアントと実施するプロジェクトでは、製品の機能的側面だけでなく、消費者に喚起される感情的なつながりを理解することが目標とします。 感情の機微を理解することは、ターゲットオーディエンスと本当に共感する戦略を開発するのに役立ちます。   私は、コンサルティング業界では主に人事コンサルティングの領域に従事していました。 具体的には、クライアント組織のカルチャー改革を目的とした戦略案件に携わっていました。 通常、これらのプロジェクトでは、わずか3人程度のコンサルタントが割り当てられ、数千人規模のクライアント組織について、限られた情報に基づき戦略が提案されていました。 熟練したコンサルタントが考案した戦略は論理的には優れていましたが、実際の組織文化や従業員の声を反映できず、教科書のような形になることがしばしばでした。 2年半にわたるコンサルタントとしての経験で、現場の人々と直接話す機会がほとんどない立場にいることに大きな違和感を覚えました。 すべてのコンサルタントがこのように働いているわけではありませんが、私が所属していた大手コンサルティング会社では、クライアントの従業員と協力して何かを共同で作るよりも、解決策を提供することが重視されていました。 その反面、btraxは、ユーザーを中心に据えたクリエイティブエージェンシーとして、クライアントとの契約段階でユーザーリサーチを前提としたアプローチを定めます。 クライアントが契約時にすでにユーザー理解の難しさとその重要性を理解していることが多いため、我々も時間とエネルギーをリサーチに充てることができます。 リサーチは主にインタビュー形式で行われますが、場合によっては実際に参加者が日常生活を送っている場所を訪れ、エスノグラフィー調査も行うことがあります。 その後、リサーチから得られたインサイトを熟考し、次の段階であるブランド戦略やマーケティング戦略の構築に取り掛かります。 リサーチによって、純粋な論理では気づけない人々の感情やその時々の状況の影響など、貴重な情報を得ることができます。 これにより、高品質で豊かな情報をもとに、ユニークで他に類を見ない戦略を構築することが可能となります。   2. 失敗をチャンスと捉える 日本企業は他の世界の企業と比較して、失敗を恐れる文化が根強いです。 しかし、どれだけ入念に準備しても、一度試してみたら全然違う結果が出たことはありませんか。 リスクを回避して保守的になりがちな一般的な企業とは異なり、btraxのようなクリエイティブエージェンシーは、失敗や試行錯誤を革新の一部として受け入れます。 積極的にフィードバックを求め、アイデアを改善し、必要に応じて軌道修正を行い、真にユーザーのニーズに合う解決策を提供します。 このアプローチは、完璧を追求することに慣れているクライアントにとって初めは衝撃的かもしれませんが、最終的には継続的な改善と革新のカルチャーを理解し、btraxと共に一緒に実現します。 また、btraxの案件の進め方やbtraxを選んでいただくクライアントには、コンサルティング会社で実施する案件の場合とは大きく違う特徴があります。 大手コンサルティングファームの案件では、クライアントとコンサルタントが共同で作業するというよりも、クライアントが自社の内部で不足している部分をコンサルティング会社に委託するという形式が一般的でした。 クライアントは日常業務に忙殺されている間にコンサルタントが最終的な完成品を提供してくれることを期待していました。このような関係性では、コンサルタント側から提案する失敗や挑戦のための余裕があまりありませんでした。     一方、btraxでは、クライアントとの共創を前提にし、また、積極的にユーザーテスト実施を提案します。 例えば、あるプロジェクトでは、ユーザーリサーチからサービスのプロトタイプを作成し、さらに、サービス構築後、ユーザーテストまでサポートしました。 どのビジネスでも仮説検証は当たり前ですが、btraxの強みは、社内のUI・UXデザイナーが簡単にプロトタイプを作成できることです。 この簡易的なプロトタイプを使って迅速にテストを行うことで、クライアントやサービス提供者が予想していなかった結果を早い段階で把握し、最終的なサービスや製品に反映させることができるのです。   3. 画期的な思考 クリエイティブエージェンシーは特定の製品に拘束されることなく幅広い可能性を探求する自由があります。 私たちは従来の枠組みを超えたところにフォーカスを定め、斬新な戦略を追求します。 視野を広げ、多様な視点を取り入れることで、従来のビジネスモデルでは見過ごされていたアプローチを導き出し、ユーザーの真のニーズをもとにソリューションを定義します。 さらに、その実現のために社内外の幅広いネットワークから最高のチームを作り上げます。そうすることで、ユーザーのニーズにあったソルーションを最高のクオリティで提供することができます。 コンサルティング業界では、仕事が忙しく、1分1秒も無駄にすることができませんでした。 また、コンサルタントの文化として、ロジカルに話すことが重視され、必要ない余談をゆっくりすることは難しい環境でした。 このような仕事形態では、「余白の時間」を取ることが難しく、自分の知識の限界を感じました。 一方、クリエイティブエージェンシーで働く人々は、この「余白の時間」を心から信じています。 我々はアジェンダのない1on1やチームビルディングなど、日常的に業務以外の趣味を共有する機会を作っています。 例えば、CEOのBrandonはTechnology DirectorのTakaとお酒を飲みながら、1−2時間未来を妄想する時間を毎週のように設けています。 また、現在支援させていただいているヤンマー社とのアニメ制作の少しぶっ飛んだアイデアも、机に向かって黙々と仕事しているだけでは実現しなかったでしょう。 日々の情報交換や会話によって、このような奇抜なアイデアが実現しています。   まとめ クリエイティブエージェンシーは共感、柔軟性、創造性をブレンドさせ、従来のコンサルティングファームとの違いを際立たせています。 ユーザーのニーズに深く立ち入り、試行錯誤を受け入れ、制限ない思考をはぐくませることで、問題を解決するだけでなく、ターゲットオーディエンスとの深いつながりを築き上げます。 今後もし、複雑な課題に対する革新的な解決策を求める際は、我々のようなクリエイティブエージェンシーとの協業をぜひ検討してみてください。 我々と一緒に顧客が心を深く響かせる体験を創造しましょう。    

【アメリカ進出を目指す企業は必読】今更聞けないウェブアクセシビリティとは?

これまで何度かFreshtraxでも取り上げてきた ウェブアクセシビリティ。 日本でも障害者差別解消法の改正施行に伴い、2024年6月から一般企業にも「合理的配慮」が義務化されることになり注目されています。 パンデミックを経て、行政手続きやビジネス、個人間のコミュニケーションまであらゆる領域でのデジタル化が進んだ結果、ウェブアクセシビリティの重要性はますます高まってきていると言えるでしょう。 アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント 欧米圏では、ウェブアクセシビリティは人権の一部であるという考えが広く普及し、法的にも取り締まりが強化されています。 アメリカへビジネス進出を検討する際には、 ウェブアクセシビリティへの配慮は今や避けては通れない道です。 今回の記事では、海外進出を検討している企業様の参考となるよう、ウェブアクセシビリティを理解する上でキーとなるWCAGと最新のウェブアクセシビリティチェックツールをご紹介します。 アメリカ進出の際に ウェブアクセシビリティが重要なのはなぜ? アメリカ進出において、ウェブアクセシビリティへの配慮がなぜ重要なのか? ビジネス的な観点から一言でいえば、アクセシビリティが確保できていないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反とみなされるリスクがあるためです。 人権意識の高いアメリカにおいては、1990年に成立した「障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 :以下、ADA)」が企業のウェブサイトへも適用されると解釈されています。 アクセシビリティへの配慮がないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反と見做されるリスクがあり、日本企業も訴訟の対象となりえます。 近年、ADA関連の訴訟は増加傾向にあるため、十分な注意が必要です。 アクセシビリティとは、アクセス(access)できる=製品やサービスなどが利用できること、また、利用できる状況の幅の広さを意味します。 ウェブアクセシビリティは、その名の通り、デジタル空間におけるウェブサイトの利用しやすさを表す概念です。 例えば、小さな文字ばかりが並び、視覚障害がある方や高齢者の方にとって読みづらいウェブサイトは、”アクセシビリティが低い”と形容されます。   アクセシビリティは、重度の障害を持った方など、限られた人のためのものなのでは?と思っている方もいるかも知れません。 しかし、老化による視力の低下や、年齢・世代による理解度のギャップなども含め、アクセシビリティは限定的というより、むしろ包括的な概念です。 デジタル庁が出しているウェブアクセシビリティ導入ガイドブックによれば、日本だけでもアクセシビリティの確保の恩恵を受ける人は428万人以上いると言われています。 どんな人でも、ある日思いがけず怪我をして片手が動かせなくなったり、歳を重ねるごとに耳が聞こえにくくなる可能性はあります。 アクセシビリティは他人事ではなく、いつかの自分や身近な人のためであるとも考えられます。 ウェブアクセシビリティについて理解する上で欠かせないWCAGとは何か? ウェブサイトのアクセシビリティの確保の重要性がわかったところで、アメリカ基準でコンプライアンスを遵守したウェブサイトを作るためには具体的にどうすれば良いのでしょうか? 実際のところADA自体には、ウェブサイトがADAに準拠しているかどうかを判断するための具体的なルールというのは定義されていません。 そこでウェブアクセシビティ確保のためのガイドラインとして普及しているのが”Web Content Accessibility Guidelines (通称 WCAG)”です。 このガイドラインは、ウェブに関わる技術の標準技術の開発と普及を行っている非営利団体であるワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(World Wide Web Consortium:W3C)によって作成されたもので、ADAに関わるウェブアクセシビリティに関する項目が網羅されています。 このガイドラインに従っている=ADAに準拠したウェブサイトであると言えます。 WCAGの概要 WCAGは、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、及びモバイルデバイス上のウェブコンテンツのアクセシビリティを扱っています。 このガイドラインに従うことで、ウェブサイト上のコンテンツが、視覚や聴覚、運動制限など、様々な障害のある人たちにとって、アクセス可能な状態となります。 これらは、一般のユーザーにとっての使いやすさと矛盾するものではないので、アクセシビリティを向上させることで、利用者全員にとってよりよいウェブサイトにすることができます。 ガイドラインの内容は、時代やテクノロジーの変化に応じてアップデートされており、2024年3月現在、最新版は2023年10月に公開された WCAG 2.2 です。 原文は英語ですが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の翻訳グループにより、日本語版のガイドラインも公開されています。 達成基準は3段階(A・AA・AAA)に分けられており、各レベルの定義は下記の通りです。  レベルA:ウェブアクセシビリティを確保するために最低限達成するべき状態 レベルAA:ウェブアクセシビリティが十分確保されている状態。日本でも公的機関に対して求められるレベル レベルAAA:非常に高いウェブアクセシビリティが確保できている状態 全体は大きく分けると、知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢の4パートで構成されています。 詳細については今回の記事では割愛しますが、WCAGガイドライン(日本語版 2.2)は無料で公開されていますので、興味のある方はぜひご一読ください。 アクセシビリティチェックに使える!無料のブラウザ拡張機能3選 アクセシビリティやWCAGについての概要をご紹介したところで、ここからは実践編として、ウェブサイトのアクセシビリティをチェックする際に無料で使えるブラウザ拡張機能3選をご紹介します。 なお注意事項として、アクセシビリティチェックツールはどれもサイトのアクセシビリティを100%保証するものではありません。 特にコンプライアンス遵守の観点からはマニュアルのチェックは必須ですし、場合によっては専門のベンダーによる監査が必要な場合もありますのでご留意ください。 ① はじめの一歩におすすめ!無料で使えるプラグイン:Google Lighhouse これまで全くアクセシビリティのことを考えたことがなかった!という方へ、はじめの一歩としておすすめしたいのが、Googleが提供しているウェブサイト診断ツールのLighthouseです。日本語にも対応しています。 サイトのパフォーマンスやSEOスコア、そしてアクセシビリティについて、自動でレポートを作成してくれます。 LighthouseはWCAGに特化しているわけではないのですが、基本的な事項は網羅されているので、アクセシビリティの観点からどんなところが問題になるのかの肌感を掴むには、データが見やすく気軽に使えるのでおすすめです。 ご自身の会社のサイトだけでなく、「このサイト、なんだか使いにくいな?」と思ったサイトを診断してみると、意外な発見があるかもしれません。 ② デベロッパーツール内で利用できる:axe Dev Tools ウェブサイトの開発フェーズで活用できるプラグインとしておすすめなのがaxe Dev Toolsです。デベロッパーツール内で使用するためのプラグインです。 チェックしたいページをスキャンすると、重症度ごとに問題を洗い出し、修正するための情報を表示してくれます。Tutorialの動画もわかりやすく、初心者にもわかりやすいです。 ウェブサイトの開発が進めば進むほど、問題が発覚した際に修正必要な箇所が増えるため、開発のなるべく早い段階からこの様なチェックツールを導入できると、アクセシビリティ関連の修正に必要な工数や費用を削減することができます。 拡張機能の設定で日本語も利用できます。 ③ 自動チェック機能に加え、マニュアルチェックリストあり!:Accessibility Insights  同じく開発フェーズでおすすめなのがAccessibility Insightsです。こちらは英語版のみの提供となっています。 ChromeのプラグインとWindowsのデスクトップアプリで利用可能です。 簡易チェック(FastPass)機能では瞬時にサイト内のアクセシビリティ関連の問題と修正方法などをまとめてリスト化してくれます。 また簡易チェックではカバーしきれない範囲は、マニュアルチェックができるように項目が自動でリスト化されます。細かくテスト方法や判断基準が示されるため、初めてチェックをする人にもわかりやすくなっています。 問題が解消されなかった際にはメモが残せる機能もついており便利です。 本記事ではウェブアクセシビリティのアメリカ進出へおける重要性、及び、関連ツールについてご紹介しました。 Btraxは、2004年設立以来、アメリカ進出を目指す日本企業の皆様へ、様々なサポートを提供して参りました。アメリカ進出へ向け、ウェブサイトのリデザインから、リスキリングワークショップ研修まで幅広く対応可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

リテールテックの革新:アメリカ主要小売店の最新テクノロジーが描く顧客体験の未来

リテールテックがもたらす小売業界の革新 近年、急速に進化するデジタル技術は、小売業界において大きな変革をもたらしている。これにより、顧客体験の向上や業務効率化が実現され、小売店は新たな競争力を獲得することが可能となっている。 本記事では、アメリカの主要小売店で展開されている最新のリテールテックを紹介し、その効果について探っていく。 リテールテックの概要 リテールテックは、小売業界における最新のテクノロジーの活用を指す。このテクノロジーは、さまざまなカテゴリーに分類することができますが、特に注目されるのは以下のような分野である。 新しい決済方法 小売業界では、顧客の支払い体験を向上させるために新しい決済方法が導入されている。これにより、レジ待ち時間の短縮や支払いのスムーズ化が図られ、顧客はよりストレスフリーなショッピング体験を享受することができる。 Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた ロボット ロボット技術の進化により、小売店では在庫管理が大幅に効率化されている。自動化されたロボットが品揃えの確認や商品の位置の更新などの作業を行い、従来の手作業に比べて迅速かつ正確な在庫管理が実現されている。 ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点 ドローン配達 ドローンを活用した配達サービスは、小売店の配送プロセスを革新し、顧客により迅速かつ柔軟な配送オプションを提供している。遠隔地や交通の混雑する地域への配送も容易になり、顧客満足度の向上につながっている。 ドローン産業に起こるであろう4つの変革 Virtual Care(遠隔医療) 小売店では、オンライン上で医療相談や診断を受けることができるVirtual Careサービスも提供されている。顧客は店舗を訪れることなく、自宅から医療サポートを受けることができ、健康管理における利便性が向上している。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 これらのカテゴリーにおける最新のリテールテックの導入により、小売業界はますます革新され、顧客体験の向上や業務効率化が実現されている。 事例紹介: アメリカ主要小売店が導入しているリテールテック 【新しい決済方法】 Whole Foods Market アメリカの大手スーパーマーケットチェーンWhole Foods Marketは、Amazonに買収されて以降Amazonが持つテクノロジーとWhole Foods Marketが持つ様々なデータを上手く掛け合わせたサービスを提供している。 手のひら決済 そのうちの一つに、Amazon oneというサービスを用いた「手のひら決済」という革新的な支払い方法がある。このシステムでは、顧客の手のひらをスキャンすることで支払いが完了し、レジ待ち時間を大幅に短縮することができる。 ちなみに、Amazon oneへの登録は非常に簡単である。順序は以下の4つで1分ほどで完了する。 ①Whole foods店舗内にある「Amazon One」の機械で登録開始 ②クレジットカードを差し込み登録する→ここまではオンラインで登録可能 ③両方の手のひらを機械にかざして登録する ④最後に電話番号を登録して終了 Amazon Dash Cart さらにWhole foods Marketは「Amazon Dash Cart」の機能を用いて、手に取った商品をカート内でスキャンするだけで支払いを行う事ができ、チェックアウトの列に並ぶ必要がない便利なサービスも提供している。 【ロボット】 Walmartの清掃ロボット 世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartは、店内の清掃作業を自動化するためにロボットを導入している。それだけでなく移動しながら清掃すると同時に、棚の在庫状況をチェックも同時並行で行う。 これにより、店舗スタッフはより効率的に在庫管理や顧客サービスに集中することができ、店内の清潔さと品質を維持することができている。 Krogerの在庫管理ロボット 全米最大のスーパーマーケットチェーンKrogerは、店内の在庫管理をロボットを利用して行っている。既に800機以上のロボットにより、毎日20,000件以上のオンラインオーダーに対応している。 このシステムにより、商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、顧客が欲しい商品を素早く的確に提供することができる。また、従来の手作業に比べて効率が大幅に向上し、顧客満足度を高めている。 Krogerの無人トラック また、Krogerは自動運転車を提供しているGatik社と提携し、無人トラックによる配送業務の自動化&高速化を目指し試験運用している。 店舗受け取りや店内での買い物体験に加えて、新しいテクノロジーを用いた『ロボットによる在庫管理と自動運転による配送』を組み合わせることで、顧客にシームレスな体験の提供、それに伴う顧客満足度の向上とリピーターの増加を目指している。 Lowe’sの案内、警備、配達ロボット アメリカの大手ホームセンターLowe’sは、店内での在庫管理&案内、警備、配達の主に3つの作業にロボットを活用している。これにより、顧客は迅速かつ正確なサービスを受けることができ、店舗スタッフの負担を軽減することができている。 在庫管理&案内ロボット 高度な人工知能と3Dマッピング ソフトウェアを搭載したNAViiを利用している。NAViiは店舗内を歩き回り、正確にどの場所のどの商品を補充する必要があるかを知らせるだけでなく、価格が間違っていたり、間違った場所にある商品も識別することができる。 さらに、NAViiは顧客のサポート業務としても機能しており直接話しかけたり、NAViiに搭載されたディスプレイを用いて、特定の製品や部門の場所を尋ねると適切な場所に直接案内してくれる。 警備ロボット Lowe’sは盗難の防止や店舗の安全性向上のために自律型セキュリティロボットをテスト導入している。 このロボットは、周囲を移動しながら潜在的な問題を特定し、懸念事項を監視チームに報告する。また、顔認識機能はないが、熱異常検出及び人物検出センサーを装備しており、望ましくない侵入者をオペレーターに警告するなどの働きをしている。 移動中はヒューヒューという音を発することで視覚障害のある顧客への配慮もしている。また、ロボットを使用して助けを呼ぶことができるなど双方向通信システムを備えている。 配達ロボット Lowe’sは輸送サービスを提供している米国大手のFedExと提携し「SameDay Bot」という自律型ロボットを利用した同日配送サービスを試みている。 このボットは、歩道や道路脇で動作し、安定した状態を維持して障害物を回避しながら、縁石、未舗装路面、急カーブを通過できるように開発されており、段差も難なく進む事ができる。 このように米国ではロボット技術を用いた顧客体験の向上施策がどんどん進んでいる。 【ドローン】 Walmartのドローン配達 Walmartはスピード、安全性、持続可能性を重視するWingやZiplineなどの専門家と緊密に連携することによって、過去2年間でドローン配送をテキサスで試験的に実施し、20,000件を超える安全な配送を完了した。 ドローン配送により、顧客は今まで以上に迅速な配送オプションを利用できるようになり、商品は30分以内に届けられ、場合によっては10分ほどで届くこともある。利用料は無料であることも大きい。 これまで「忘れた食材や市販の風邪薬など急遽必要になったものや午後の甘いもの、カフェインの欲求を満たすスナックや飲み物、卵などの壊れやすい品物」など様々なジャンルの品物がオーダーされている。 その結果を受け、Walmartや提携先の企業は ”ドローン配送の需要は本物だという事が明らかになり、2024年がドローン配達の年になると信じている”と述べている。 Krogerのドローン配達 Krogerは2021年にドローン配送のPilot Testを実施したが、バッテリー、技術面、制限面などの問題から2024年2月時点ではドローン配送サービスの提供を停止している。 Pilot Test時のサービス内容は重さは5ポンド(2.26kg)まで&配達範囲は半径1マイル(約1.6km)などの制限があったものの、配送は無料で1時間以内に到着することを保証していた。 現在サービスは停止しているが、2023年にKrogerのドローンパートナーであるDrone Expressが資金調達を実施し、Krogerの顧客へのドローンサービスの再開と拡大に向け動いていると報道されたため、サービスの再開の日は近いかもしれない。 【Virtual Care(遠隔医療)】 Walmartのオンライン診断サービス Walmartは「Walmart Health Virtula Care」という遠隔医療サービスを一般会員に向けて提供している。そのサービスでは、電話またはビデオによる、資格のある認可を受けた医療提供者への24時間365日のアクセスを提供し、質の高いケアへのアクセスを増やすことで会員の満足度向上を目指している。 「緊急処置、男性&女性のプライベートな健康上の懸念、トークセラピー、ティーンセラピー、精神科」など様々なジャンルに対応したサービスがある。 さらに、ビジネス向けの遠隔医療サービスも提供しており、企業と協力して医療コストを削減し、遠隔プライマリケアなどの既存及び将来の従業員に特典を提供する遠隔医療ソリューションを開発&提供している。 Amazon Clinic Amazonもアメリカ国内で「Amazon Clinic」遠隔医療サービスを展開しており、顧客は24時間365日オンライン上で医師との面談や処方箋の受け取りを行うことができる。 これにより、顧客は緊急時の医療サポートを迅速に受けることができ、健康管理がより身近になっている。Amazon Pharmacyを選択することで処方箋も配送可能となり、診断から処方箋の受け取りまで一連の作業をVirtualで行うことも可能になっている。 Costcoの遠隔医療サービス Costcoはオンライン医療プロバイダーのSesameと提携することで会員に遠隔医療サービスを提供している。 […]

全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること

デザインの役割のひとつに、課題解決がある。 実際、我々btraxとしてもデザインを通じて企業の課題を解決することを目指して、これまで20年にわたってサービスを提供してきた。 しかし筆者はそれ以上に、デザインはマインドセットそのものであると思う。 これまでFreshtraxでも度々取り上げてきたデザイン思考やデザイン経営といった言葉を代表に、デザインがデザイナーだけのものから、今やデザインは多くの人にひらかれたものとしての認知が広がりつつある。 全てのビジネスパーソンにデザインのマインドを 筆者はbtraxに所属し、その中のマーケティングチームのメンバーとして働いてきた。そして「非デザイナー」の立場でデザインの現場に携わってきて確実にわかることは一つ。 ” たとえ非デザイナーであっても、誰しもがデザインに触れるべきなんだ ” ということ。 これは、冒頭にも触れたデザイン経営、デザイン思考といったビジネス的なトレンドの上澄みを掬った話ではなく、実体験として感じたからこそ言えることである。 非デザイナーとしてデザインに多いに助けられることがあるとすれば、それは特にマインドの部分だろう。実際に手を動かすデザインワークこそしないかも知れないが、デザイナーのマインドを持つといいことずくめである。 この記事では、デザイン会社でマーケターをすることで得られたデザイン的なマインドセットと、実際に仕事の場においてデザイナーと協業する上で、気をつけてきたことをご紹介したい。 1. Yes and … デザイン的なマインドセットの形容として真っ先に出てくるのがこの言葉である。 これは、アイディアや提案に対し、まずは受け止め(Yes)、その上で「いいね、じゃあ◯◯しよう」とさらにアイディアを付け足して(And) で返答するマインドセットのこと。さらに別のアイディアを提案したり、新たな情報を付け足すことで、そのアイディアの広がりを生み出すことができる。 このマインドセットのメリットは、心理的安全性が高められ、コミュニケーションが円滑になるということだと実感している。誰しも真っ向から否定されてよい気分にはならないだろう。 発言をしても即座に否定されることを恐れてそもそも発言が少ない状況になると、議論自体が活性化せず、元も子もない状態になる。 かくいう筆者も、実はある時までは、たとえばデザインコンセプトの立案を依頼したデザイナーに対し、フィードバックをするなんて恐れ多い… などと、皮肉のような情けない尻込みをしている時期があった。「デザイナーに対して、デザインのフィードバックを、非デザイナーである自分がするのか?」という具合に。 しかし、「こういうアイディアもあるのでは?」とYes and 的なフィードバックをしたことで、そこからさらに様々な方向性を検討することができ、結果的にチームとしてよいものを作り上げることができた。 ちなみにPixer社では、Plussing (Plus + ing)というフィードバックの手法を取り入れている。Plussingとは、新たなアイディアを思いついた時、否定するのではなく、そのアイディアにさらにアイディアを足すことで、よりよくしようと努めるまさにYes andに基づく方法だ。 あっと驚くクリエイティブな世界を見せてくれる裏側にはこうしたオープンマインドでYes Andな姿勢があるのかもしれない。 なぜ優秀なデザイナーでも酷いデザインを生み出してしまうのか? 2. Start at the end 直訳すると「終わりから始めろ。」つまり「逆算思考を持って推進せよ」ということだ。筆者自身、入社後にデザイナーの同僚から教わって以来大切にしてきた言葉だ。 これはむしろ、ビジネスで一般的な考え方だろう。目標を先に決め、それに向かって戦略を組み立てていく。この過程で、終着点を見据えることで、途中の課題や妨げになる要素を予測し、それを乗り越えるための戦略を練ることができる。 しかし、デザインにおいても、結果や最終的な目的を先に想像し、それから逆算してプロセスを始めることが効果的だ。そもそもユーザーがどんな体験を求めるのかを探ることから始めるケースも非常に多いが、たとえば製品開発においては、まず最終的にユーザーが求める体験を考え、それを実現するためのデザインや機能を構築していく。 また、非デザイナーとしては、このStart at the endの考え方を持つと、たとえばクライアントプロジェクトにおける最終的な成果物は何になるのか。資料をまとめる上で、ドキュメントであるべきか、スライドの資料であるべきか…など、物事の「枠」を考える癖をつけることができる。 この癖をつけることで、根本的な勘違いや手戻りによるロスタイムを減らすことができ、効率的なプロジェクト推進につながると思っている。 3. Done is better than perfect デザインというよりはむしろシリコンバレー的なマインドにも重なる部分が大きいこちらは、Meta(旧Facebook)の創業者でありCEOであるマーク・ザッカーバーグの名言。意味は「完璧を目指すより、まず実行することに価値がある」。 こちらも、「デザイン会社である」に並ぶくらい重要な「サンフランシスコ・シリコンバレーに拠点がある」btraxで仕事をしていて日々その重要性を感じる言葉である。そしてこれもまた、スピード感が明暗を分けるさまざまなビジネスシーンにおいて言えることだと思う。 この考えを念頭に置くことで、時間とリソースの効率的な活用を促し、成果を生み出すための動き方に意識的になれる。特にデザインタスクでは、何度も修正や改善を重ねることがあるが、常に完璧を求めてしまうと、進捗が遅れたり、アイディアそのものの実現が難しくなることがある。 また、筆者のマーケティングのフィールドで言えば、早期の段階で実行に移し、リアルなデータやフィードバックを元に進化させていくことが重要になる。変化が速い現代において、柔軟性を持ってアクションを起こしていくことが必要だと思う。 シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? また、この言葉は特にデジタルサービスとの相性が良い。なぜなら、デジタルサービスは多くの場合、”完璧な状態になる日は来ない”から。 まずはリリースをし、その後小さなアップデートを繰り返してサービスの質を上げていくというスタイルが叶うデジタルサービスは、逆にいうと、リリースしないと何も始まらない。軽いフットワークで動くことの重要性を物語る言葉だと思う。 また、早めにリリースすることのメリットは、その分早くユーザーや周囲からのフィードバックを受けられることだろう。 「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、そのサービスに注がれる視線が多いほど、様々な角度からのフィードバックを得られることは明白だろう。その声を元にどんどん改善をしていった方が結果的により速く、よりユーザーニーズに沿ったサービスになるのではないかと思う。 デザイナーと働く上で意識すべきこと 次に非デザイナーとしてデザイナーと働く上で意識してきたことをご紹介する。実は、デザイナーの仕事の2/3はコミュニケーションであると言えるほど、コミュニケーションが重要なウェイトを占める。 これはつまり非デザイナーとしても、デザイナーと意思疎通をするシーンや時間が多いことを意味する。特に、新規事業や事業開発、コミュニケーション、ブランディングなどの部署にいらっしゃる方はデザイナーとのやりとりが日常的に発生するのではないだろうか。 下記は、デザイナーがクライアントワークにおいて往々にして遭遇する「しんどいシーン」をまとめているおもしろ切ない動画だ。 これを見て思うのは、決してクライアント側に悪気があるのではなく、デザイナーとの効果的なコミュニケーションの方法を知らないことも多いのではないかと思う。(非デザイナーとしてはぜひとも反面教師にしたい。) 以下にご紹介することが少しでもその助けになればと思う。 1. HOWではなく、WHYを伝える デザイナーに意図を伝えるのは必須だ。具体的な作業をお願いするのではなく、達成したいことを伝えることがポイントだ。 よくあるのが、非デザイナーからデザイナーへのフィードバックとして「ここの文字を赤にして」「ここの文字を大きくして」という具体的な作業指示 (HOW)。しかし、これでは本質的によいデザインになるとは限らない。 また、こういったHOWのみを伝えるコミュニケーションが常態化した場合、デザイナーは指示を受けてその通りに修正するだけの下請け的な動きを強いられることになり、モチベーションも落ちてしまうだろう。 そうではなく、理由や意図(WHY)を伝えるのだ。文字を目立つ赤色にしたいのも、サイズを大きくしたいのも、おそらくその情報を確実にユーザーに伝達する必要があるからではないだろうか。 したがってデザイナーに伝える時には、「この目的を達成するために、この情報をしっかりとターゲットのユーザーに届ける必要がある」という形で伝えるようにしたい。 目指す目的を達成するためには、必ずしも色を変えることだけが方法ではないこともありうるし、意図を達成するためのデザイン的なアプローチの引き出しは、きっとデザイナーの方が豊富であろう。非デザイナーにとっては、それを解決するための手段として、色やサイズを変えることしか思い浮かんでいないだけかもしれない。 このように伝えれば、デザイナーとは指示出しと御用聞き、という関係性ではなくむしろ、お互いにフラットに、目的を果たすための建設的なディスカッションを行うことが容易になるだろう。 2. 制約を設ける クリエイティブには制約が必要だ。ここでいう制約とはざっくりと、期限という時間的な制約と、進行する上で守るべき条件/項目といった発想や作業的な制約に大きく二分される。 非デザイナーは、デザイナーに対していわば「制約を設ける」側に立つことが多い。枠組みを作り、その中でデザイナーに躍動してもらうために制約を設けるのだ。 実際の仕事の中で制約を設けるときに作っているのが、「デザインブリーフ」である。 デザインブリーフとは、制作物の意図や目的、そして制約などをまとめたもので、デザイナーに明確なディレクションを伝え、彼らと目線を合わせた上で、作業に取り掛かってもらうために重要なアイテムである。筆者もデザイナーにタスクを依頼するときは必ずデザインブリーフを作成するようにしてきた。 デザインブリーフの作成方法に関する詳細はぜひ下記の記事を参照いただきたい。 デザインブリーフの役割とその作成方法 3. 効果を伝える 実際に効果を伝えることは非常に重要だ。これだけの効果を獲得できた、ということを数値と併せて示そう。客観的な数字を以って自分のデザインが評価された、うまくワークしたことが伝わるとよい。これはモチベーションに関わるトピックだ。 デザインそれ自体では定量的に評価をすることは難しいかもしれない。それでも、たとえばそれを用いたマーケティングキャンペーンの効果やパフォーマンスなど、デザイナーにとってはモチベーションをあげる有効な指標となる。 デザインの役割の一つに課題解決があるということは冒頭の通りだ。特にビジネスの文脈におけるデザインはこの役目を担うことが多い以上、実際に生み出されたデザインが、役割を果たせたのかどうかは適切にフィードバックをする必要があると感じている。 ここまでデザイナーとのコミュニケーションにおいて意識してきたことを3つをまとめて思うのは、非デザイナーができるのは、デザイナーが仕事をするために、適切なフィールドを用意し、適切なお伝えをすること、これに尽きるのではないかということだ。 デザインという大海を見ることのススメ デザインの世界はまさに大海であり、そこに漂う自分は井戸から出たばかりのカエルだと思う。 ますます広義化するデザインは、知れば知るほどわからなくなることさえある。でも、”ゆでガエル”にならないために、ぜひビジネスに活かせるデザイン、マインドセットとしてのデザインに興味を持って、学んでいただきたい。 自社のビジネスにデザインを取り入れたい経営者や外部デザイナーの活用に困っている方のBtraxへのお問い合わせはこちら

未来への一歩!Waymo無人タクシーがもたらす驚きの実乗車体験

未来の交通手段に一石を投じる革新が既に始まっている。 2023年8月10日、カリフォルニア州が承認した終日有料の無人タクシーサービスが、サンフランシスコ市内で驚きと期待を巻き起こしている。 この新しいタクシーサービスでは、運転手が一切必要なく、ライドシェアサービスですら必要ない。自動運転技術の進化がもたらす未来の一端に迫るこのサービス、一体どのような魅力があるのか。実体験を踏まえた詳細なレビューを通じて、その新しい交通手段の魅力に迫っていこう。 無人タクシー(Driverless taxi)とは? TechTargetの記事を参考にすると、”Driverless carとはセンサー、カメラ、レーダー、人工知能(AI)を組み合わせて使用し、人間のオペレーターなしで目的地間を移動する車両”とある。 実際にこれまでアウディ、BMW、フォード、グーグル、ゼネラルモーターズ、テスラ、ファルクスワーゲン、ボルボなどの企業が自動運転車を開発またはテストしている。 老舗自動車メーカー VS 自動運転時代 〜メルセデス, BMW, GMが起こす改革とは 2024年1月時点、サンフランシスコで代表的な無人タクシーは『Waymo』と『Cruise』だ。 Waymo  Waymoはカリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く自動運転技術企業。Googleの親会社Alphabetの子会社であり、2009年よりGoogleの自動運転車プロジェクトとしてスタートした。 サンフランシスコやフェニックスなどの地域で24/7/365 完全自動運転タクシーサービスを展開中。 Cruise Cruiseは、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く自動運転車の会社。General Motorsの子会社であり、SoftBank, Honda, Microsoftなどの投資家から92.5億ドル(1兆3000億円ほど)を調達し、自動運転車の技術をテスト及び開発している。 Cruise carには、360度見ることができる40以上のセンサーが搭載されており、数百フィート先やダブルパークされた車の周りなどを感知することができる。 話題の無人タクシー Cruiseをサンフランシスコで乗ってみた。その驚愕のユーザー体験とは! さっそく無人タクシーWaymoを使ってみた! サンフランシスコに来る前から無人タクシーの存在を知っていたので、到着した翌日にさっそく利用してみた。 その乗車体験があまりに驚くもので感動したので、乗車した際に得た知見を1つずつ紹介する。  手軽さが魅力!無人タクシーの使い方 何よりまずWaymoを利用して驚いたのは、アプリでWaymoを呼ぶところから目的地に到着するまでの必要とされる動作が明確かつ簡易であったこと。 当日の動作としてはスマホアプリでWaymoを呼び、乗車し目的地に着いたら降車するだけであった。初めて利用したが、利用方法で全く迷う場面がなかった。 退屈知らず!移動中の楽しみ方 乗車中も退屈しないように前席と後席にそれぞれ画像のようなタブレットがあり、各ジャンルの音楽を聴いたり、実際にどのようなルートを進んでいるのか、残りの乗車時間などを確認することができた。 タブレットには、人、車、オートバイなどが異なる大きさ、形で表示されておりしっかりと認知しているのだとわかった。 安全対策は万全! 無人タクシーということで、UberやLyftなどのサービスのように直接運転手に連絡できないため何か問題が生じた際にどうしようかと少し懸念していたが、杞憂に過ぎなかった。 万が一乗車中に問題が生じた際は画像のタブレットよりリアルタイムでサポートチームに連絡することができる。 さらに、何がしかの理由で早めに降車したい場合もタブレット上のボタンを押すことで近くて安全な場所に降車することができる。 プライバシー保護とストレスフリーな体験 個人的には、無人であることによるプライバシーが保たれていることやストレスフリーである点が非常に大きな利点であると感じた。 UberやLiftなどのサービスも非常に便利であるが、これまでドライバーとの会話であったり、時には車内の匂い、チップ制度などによって必要のないストレスを感じる瞬間が幾度もあった。 そのため、今回Waymoのサービスを利用し以上のストレスが一切なく、初めて利用したためテンションが上がり友達と車内で騒いでも誰にも迷惑をかけることがなく楽しく乗車することができた。 スムーズな移動体験! Waymoを利用して感じたのは、非常にスムーズであること。 機械が運転すると聞くと、勝手に時に不器用な動きなどが発生するのではないかと感じていたが街中で道が入り組んでいるサンフランシスコ市内でもスムーズに右折や停車をしていた。 それだけでなく、乗車、降車の際には並列駐車を避けたり、出発地付近のパーキング可能な場所に停まるなど他の歩行者や車の迷惑にならないように停車していたことも印象的であった。 急停止や急発進は一度もないのに加えて、予め推定時間は提示されているので特別遅いと感じることはなく推定時間よりも3分ほど早く到着した。 料金は格安!? Waymoの利用料金がどのくらいかを調べるためにUber、Liftとサンフランシスコ&東京のタクシー料金と比べてみた。(Cruiseはサービスを一時停止しているので比較できず) 条件は土曜日の18時で、東京のタクシーは距離をもとに料金を計算した。(参照記事 : 東洋経済ONLINE , taxisite) すると、意外なことにWaymoはちょうど中間の料金であることがわかった。サンフランシスコのタクシーを除いて他のライドシェアサービスと相場はほとんど同じであることがわかる。(Waymoは実際に乗車した際の料金でその他は諸費用が加算されるので、実質一番安価ではないかと思われる。) Waymoの進化は止まらない! Waymoはどんどん進化を遂げ、現在5th generation。 10 年以上にわたる公道での2,000万マイル(約3,218万km)の自動運転と100億マイル(約160億km)を超えるシミュレーションから得られた情報を分析し、多様で複雑な運転環境に取り組みように設計されている。 5th generationを構成する最新技術は以下の3つ。 Lidars : 車体のトップにあり、300メートルを超える範囲で360度の視野全体に渡る高解像度を提供。周囲の3D画像を描画し、車両の周囲にある物体のサイズと距離を正確に測定する。 Cameras : 500メートル以上離れた歩行者や一時停止標識などの重要な詳細を識別できる長距離カメラ+車体のPerimeter Lidarと連携して動作し、車両近くの物体を正確に検出し死角を減らすのに役立つ。 Radars : 雨、霧、雪などの厳しい気象条件でも物体の速度を瞬時に測定でき、数百メートル離れたところからバイク運転者を検出するなど遠く離れた物体も見ることができる。 結論 : Uberやタクシーよりも利便性が高い!非の打ちどころ無し。 非常に利用方法が明快であることに加えてタクシーなどを利用する際の無駄なストレスも感じることがなかったのが印象的であった。 そのため日本でタクシーを利用する人たちの需要(例えば早く移動したい、移動時間を有効活用したい、電車などの騒音から離れたいなど)を大きく捉えているのではないかと感じた。 値段もUberやタクシーよりも安いのに加えて、ストレスフリーで非の打ち所がない。ベータ版でこのクオリティなら将来どのように進化していくのか非常に楽しみになった。 なんと既にCruiseはHondaとJoint Ventureを作成して2026年度を目安に東京などの日本各地での自動運転車の商用化 を計画している。 日本でもこのような新しく素晴らしいサービスの解禁がされることを願うとともに、これからもサンフランシスコにいるからこそ体験できる最新のサービスを皆さんに共有していく。 補足 : 事故時の補償と責任の所在 最後に無人タクシーに関して疑問としてあるのが、事故が生じた際に誰が補償したり、責任を取るのか?という問題である。 そこで実際に以下のような質問文をCruiseとWaymoのカスタマーサポートに直接送ってみた。 すると、1週間も経たずに以下のようなメッセージを受け取った。 こちらの返信を読み取る限り、残念ながら将来的により内容をシェアするのを楽しみにしているというような曖昧な回答しか受け取ることができなかった。(Waymoは未だに返信なし) 恐らく特定の事象に関して言及するのは法的なリスクがあるため回答が難しいためではないかと思う。 ご参考までに以下にWaymo、Cruiseそれぞれの利用規約などを記載しておく。こちらに補償や責任に関して大きな概要が記載されている。 Waymo利用規約 Cruise 利用規約 参考までに安全性などに関してWaymoのCheif Product Officerが実際にWaymoに乗車しながら話している動画がこちら👇

SAPリサーチブログ Vol.1 人事業務でのAI活用、従業員はどう思っている? 前編

こちらのブログシリーズでは、の人事領域のリサーチチームである” SAP SuccessFactors Growth & Insights Team”が行っている、Future of Workに関連する心理学と市場動向を踏まえて、将来の人事のあるべき姿を描きだす参考にしていただける様々な研究レポートについてご紹介してまいります。
第一回はAI活用を検討している人事の方向けにAIなどに代表されるインテリジェントテクノロジー が従業員エクスペリエンスにどのようなインパクトを与えるのかについての調査…

スタバのスリーブから学ぶ、アフォーダンスとシグニファイア【UXデザイン】

とある午後、サンフランシスコのスタバでラテを買った際に気づいたことがある。 カップの外側に、熱い飲み物による火傷を防止するためにつける「スリーブ」が非常に上手にデザインされていることを。 そう、スタバロゴの顔がついている茶色い帯のような物体のことだ。 それをよく観察してみたところ、UXデザインにおける「アフォーダンス」と「シグニファイア」を上手に活用し、ユーザーにとって使いやすい設計になっていた。 ということで、今回は普段の日常生活で馴染みのあるアイテムを通じて、UXデザインに関する構成要素を学んでみたいと思う。 UXデザインにおける「アフォーダンス」と「シグニファイア」とは? そもそも普段聞き慣れない「アフォーダンス」と「シグニファイア」とは何か?これはデザイン用語、それもUXデザインで利用される単語だ。 専門的に深ぼるとかなり詳しい概念があると思うが、あえて簡単に説明すると: アフォーダンスとは プロダクトやサービスに施された視覚的・物理的な表示で、どのように利用するかを、わかりやすく感じさせるためのデザインの要素のこと。 アフォーダンスが優れていると、難しい説明をしなくてもユーザーは使いやすさを感じるし、実際にユーザーが使った際にもその役割を迷うことなく使うことができる。 例えば、角が丸い箱に「サインアップ」と書いてあればサインアップボタンだと直感的に理解できる。など。 シグニファイアとは 「このように動きますよ」というシグナルを送ってくれる設計のこと。ユーザーに適切な行動を伝えるための印や音、認識可能な指標を指す。 それによりユーザーが直感的に感じられる役割を果たす。 例えば、ボタンの上にマウスを持ってくると色が変わることで、押すと送信されるなどの何かしらのアクションが発生する。など。 (専門家の皆様、間違ってたらすみません。) スタバのスリーブのUXデザイン さて、本題のスタバのスリーブにおけるUXデザイン。それもアフォーダンスとシグニファイアについての役割を分析してみよう。 皆様にも馴染みの深いスタバのカップとスリーブだと思うが、そのスリーブの内側を観察したことはあるだろうか? よくみてみると、滑り止めのギザギザしたデザインの内側に無色透明の物体が付着している。これは実は接着剤で、高温に触れると接着剤が溶けて、スリーブがカップとくっつく仕組みになっている。 熱い飲み物を入れたカップにスリーブを装着すると、包み込まれたカップがずり落ちないように設計されているのだ。 アフォーダンス要素 スターバックスのスリーブには。アフォーダンスがしっかり定義されている。 カップにフィットし、その形状や外周はカップよりも大きく、コーヒーカップにフィットするように上と下は空洞になっている。 また、カップのロゴよりも大きめの顔が印刷されていることで、パズルのようにロゴとその外側に顔を合わせたくなる心理効果もある。 スリーブの形、色、内側のギザギザの設計、そして、この接着剤。これらの構成要素により、スリーブの役割を想像できやすいし、期待される実際の機能も担保されている。 シグニファイア要素 加えて、このスリーブには “ちょっとした” シグニファイア要素が隠されている。冒頭で説明した通り、シグニファイアはユーザーに  “さあ、このように使ってください” とシグナルを届ける仕組み。 スタバのスリーブは、カップを通すためにスリーブを広げた際に、「カチッ」とした音が出るようになっている。これは内側の接着剤が離れた音だと思われる。 この音が、音声信号としてのシグニファイアの役割を果たしている。この音がすることで下記の信号を送ってくれている。 スリーブが開いたので、カップを入れてください このスリーブには粘着性があります 熱くなった表面に触れると粘着性が復活します   View this post on Instagram   A post shared by Brandon K. Hill (@brandonkhill) まとめ こんな感じで、日常の身近にある製品でも、興味を持ってじっくりと観察してみると、どのような意図でデザインがされているかを学ぶことができる。 今回のスタバのスリーブでは、UXデザインにおけるアフォーダンスとシグニファイアに関して直感的に理解することができた。 アフォーダンスだけではプロダクトの目的を示すことはできない 明示的なアフォーダンスとともに、対象物の意図や目的を定義するシニフィエが必要である プロダクトデザインは、「どのように見えるか(デジタル、リアルを問わず)」ではなく、「マクロとミクロの相互作用」が適切に含まれていることが重要 粘着性のあるスリーブは、スターバックスがカップを持つ人に対して 「飲料はやけどする 」と警告しているため、不要な訴訟を回避するのにも役立つ。少なくとも、この粘着性のあるスリーブにより、ユーザーがカップを持っている間、不快になることなくラテを楽しむことができる プロダクトのデザインは、そのブランドのビジョンを体現する必要がある。今回のスタバの場合はその詳細までのUXデザインを通じ、同ブランドの「一度に一人、一杯、一地域から、感動体験を届ける」というビジョンを体現していると感じる UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – ぜひ皆さんも、日々の生活で興味を持った商品やサービスのUXデザイン要素を研究してみると面白いかも。 筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

ユーザーの感情に響くエモーショナルデザインとは?

最近のアプリはどれも非常に使いやすいのが当たり前になった。そのため、使いやすさ文脈でのUXデザインだけではユーザーのロイヤリティ獲得や他社との差別化が難しくなってきていると感じる。 差別化の要素としてブランディングを活用する手法もあるが、プロダクト自身の魅力を最大限発揮することで、ユーザーの心を掴み続ける方が持続性が高い。 80%のアプリは数日で使われなくなる 顧客から素早くフィードバックをもらうことで、本当に求められるサービスを作ることが重要となっていることはもう説明する必要はないだろう。 アプリのマーケットはすでに飽和状態に近づいており多数のアプリで溢れている。 ちょっと使いにくかったりデザインがイケていなかったりしてもユーザーが我慢してくれる時代はとっくに終わっており、インストールされても数日で使われないアプリは80%にも達する。 数日で忘れ去られないために。モバイルアプリの高速プロトタイプ開発法10選 使えるアプリは多いが、使い続けるものは少ない 例えば、近頃日本では、Uber Eatsや出前館などのフォードデリバリー系アプリが増えた。私は初めは複数のアプリをダウンロードしていた。しかし、最終的に残ったアプリはそのうちの1つである。 どれもUI的に十分使いやすく、サービス的にも大きな差はない。しかし、なぜかいつも使うアプリはその1つ。それを、とても気に入って使っている。 この気に入る原因の一つにエモーショナルデザインの影響があると気がついた。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 エモーショナルデザインとは? UX/UIデザイナーが色やマイクロコピー、レイアウトなどのインターフェース要素やデザインアウトプットを用いて、ユーザーにポジティブな感情(幸福感、快適さ、喜びなど)を与えるために用いるデザインアプローチのことである。 中には、ユーザーから注目してもらうために、UIデザインにネガティブな感情(悲しみ、後悔、嘆きなど)を盛り込み、プロダクトの購買につなげるデザイナーもいる。 ネガティブな感情の影響 さまざまな代替品がある現代においてネガティブな要素をユーザーに与えてしまえば、そのユーザーは簡単に他のプロダクトに乗り移ってしまう。それだけでなくそのプロダクトを提供する企業の信頼やイメージを落とすことになってしまう。 ポジティブな感情をデザインに取り入れる 逆に、ポジティブな感情をユーザーに与えることができれば、機能によってユーザーのニーズに答えることができるだけなく、より良いUXを提供することができる。 このポジティブな体験によってユーザーはそのプロダクトを気に入り、何度も使い続けてくれるようになる。 このようにエモーショナルデザインの基本は、ユーザーの強い感情を引き出し、その感情を利用してロイヤルティを高めたり、ユーザーに行動を起こしてもらうことができるという手法である。 ユーザー心理を掴むUXデザイン手法: 3対1の法則 感情を知る 単にネガティブ、ポジティブと言ってもさまざまな種類がある。そこで感情に関する研究を行なっている Robert Plutchik は人の感情の主な種類を基礎感情として8つに分類した。 怒り / 嫌悪感 / 恐怖 / 悲しみ / 予測 / 喜び / 驚き / 信頼 それぞれ対になるのは 悲しみ <> 喜び 予測 <> 驚き 怒り <> 恐怖 嫌悪感 <> 信頼 これらの基礎感情を組み合わせることもできる。 予測 + 喜び = 楽観 喜び + 信頼 = 愛 信頼 + 心配 = 従順 恐れ + 驚き = 畏敬 驚き + 悲しみ = 失望 悲しみ + 嫌悪感 = 自負の念 嫌悪感 + 怒り = 軽蔑 怒り + 予測 = 好戦 事例: Uber Eatsはどのようにエモーショナルデザインを活用しているのか? Uber Eatsでは、他のデリバリーアプリに比べ、愛着を持てるように「楽しい」や「信頼感」を得られるようなデザイン的な工夫がされている。 例えば、アプリを開いて大量に出てくる料理の写真自体に統一性を持たせている。 こういったアプリのサムネイル画像は見る人の注意を引くために、過度な装飾やユーザーを煽る文言を載せてるものをよく目にするが、Uber Eatsにはそういったストレスを感じる画像はほぼない。 それだけでなく、使われているバナーやイラストは彩度が低めのポップな雰囲気でまとまっている。全体的に清潔感があり、遊び心を感じるUIは若い人を中心に支持を集める要素の一つになった。 他にも注文をした後には料理を作っているイラストが動いていたり、配達中には予想到着時刻に加え配達員の場所も認識できるため、透明性が高く、ネガティブ要素である不安を取り除いている。 これらの工夫によって他のデリバリーアプリに比べて、気に入って使っている人が多いと考えられる。 食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選 […]

UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則

UXデザインを行う際には、感覚ではなく複数のロジックを活用することで、より精度の高いプロダクトを創り出すことができる。そのプロダクトを人間が利用する場合、ユーザーの視覚や行動心理学などをしっかりと理解し、活用すればUXデザイナーとしての能力が一段と高まるはず。 今回紹介するのは、複数あるUXデザインにおける法則のうち、ビートラックスのデザインチームでも頻繁に利用される代表的な10の法則。プロのデザイナーなら、これは押さえておきたい。 全てのUXデザイナーが知っておくべき10の法則 ヤコブの法則 ヒックの法則 80/20の法則 パーキンソンの法則 フィッツの法則 ミラーの法則 テスラーの法則 FBMモデル ドハティのしきい値 3対1の法則 ヤコブの法則 ユーザービリティーの父であるヤコブ・ニールセンが提唱する法則。一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つというものだ。 既存のメンタルモデルを活用することで、ジェスチャー、視覚的な合図、スクロールなど、慣れ親しんだ動作でタスクに集中できるような、優れたユーザー体験を実現することができる。それにより、ユーザーが新しいモデルの学習をしなくとも良いため、体験価値が高まる。 デザイナーはついついクリエイティブなUIをデザインしようとしがちだが、今までにないような真新しい体験は、ユーザーを混乱させるだけである。最近のソーシャルメディア系のUIがどれも似たものになっていることにも、この法則を活用していると言える。 ヒックの法則 ユーザーが決断に要する時間は、選択肢の数や複雑さに応じて長くなるというもの。これにより、「選択肢が多いほど迷う」や「選択肢が多すぎると何も選ばなくなる」という現象を生み出す法則。 選択肢が多過ぎるとユーザーは迷ってしまい、こちらが望む行動を起こさないという好例と言える。一般的には選択肢を多く提示した方がユーザーが喜ぶと思われがちであるが、エンゲージメントを高めたいのであれば間違いになりうる。 彼らは選択肢が多過ぎると精神的プレッシャーを感じ、行動を起こさなくなってしまう。“選ぶ” という行動自体がハードルになってしまうのが理由。従って、商品やコンテンツが沢山ある場合は、なるべく小出しにしてユーザーに無駄なプレッシャーを与えないようにする方が良い。 コンバージョン率を向上させる7つの方法【UXデザイン】 80/20の法則 結果の80%は、たった20%の原因から生み出されているという法則。「パレートの法則」「ばらつきの法則」「働きアリの法則」などとも呼ばれている。一般的には、売上の80%は、20%のチャンネルから生み出されている。10ページのスライドのうち、最も重要な2ページで全体の80%が伝わる、など。 元々は経済学における法則として考えられたが、UXデザインにでも重要な法則となっている。 例えば、ユーザーは全体の機能のうち、20%しか使わず、その20%で80%の目標は達成される。UXデザインにおいては、ユーザー体験の中で最も重要な20%が何かを特定するのが重要になると言い換えることもできる。 パーキンソンの法則 正式には「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と表現される法則。一言で表現すると「先延ばしの法則」。時間に余裕があるとわかると、脳がリラックスする。 逆に、締め切りのプレッシャーを感じると、重要なことをすることや、時間内に終わらせなければならないことに集中する効果を与えられる。 この法則をUXデザインに当てはめると、コンバージョンを高めるためにユーザーに制限時間を設けるテクニックがある。Amazonで表示される「いつまでにオーダーすると明日中に届く」や、ワンタイムパスワードにカウントダウン時計が表示されるのもこの手法を活用している。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 フィッツの法則 人間の行動をモデル化する方程式で、「対象の大きさ」と「対象までの距離」と「対象の選択しづらさ」との相関関係を説明する法則である。 画面上で、マウスなどの入力装置を使ってものを指し示すときにかかる時間を計測するモデルで、ユーザーインターフェース設計における普遍的な法則とされている。 現在のポインターからの距離が小さくターゲット面の奥行きが大きいものほど短い時間で済み、ポインターからの距離が大きくターゲット面の奥行きが小さいものほど長い時間がかかる。つまり近くて大きいものほどポイントしやすく、遠くて小さいものほどポイントしにくい。 UXデザインへの具体的な活用例としては、モバイルアプリのボタンは大きく親指に近い方が利用体験が高まる。 ミラーの法則 平均的なユーザーがいっぺんに覚えられるのは最大で7つ (±2)であるという法則。プリンストン大学教授、ジョージ・ミラーによる研修では、即時記憶と絶対判断のスパンは、ともに7個程度の情報に限られるとの結果がでている。例えば、電話番号やパスワードで短期的に記憶できる桁数は平均的に7つになる。 この法則に従い、画面に表示されるオブジェクトを7つ以下、もしくは5つまでに抑えると、ユーザーが覚えやすかったり、選択肢を7つ以内に設定することで、ユーザーにストレスを与えないようにしたりするUXデザインのテクニックがある。 優れたユーザビリティを実現する25のUXデザイン基本概念 テスラーの法則 シリコンバレーの研究者、ラリー・テスラーによる「複雑さの保存の法則」とも呼ばれる法則。どんなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在するというもの。 ユーザー体験においても、それ以上単純化できない「臨界点」があり、それ以降は本来備わっている複雑性を移動できるだけだという考え方である。 この法則によると、どれだけシンプルなユーザー体験を実現しようとしても、そこには限界点が生じる。そこで、なるべく最後の複雑さをサービスやプロダクト側に寄せ、ユーザーにはできるだけスムーズな体験を実現することに注力するべきである。 優れたデザインは、複雑さの負担がユーザーではなくサービス側で処理する必要がある。 FBMモデル スタンフォード大教授のBJ Foggが唱えたビヘイビアモデルだ。人の行動や習慣というものは、3つの要因により構成されており、それを上手く活用することで人の行動や習慣をある程度思い通りにすることが出来るという法則。 ユーザーの習慣や行動を作り出すためには3つの不可欠な要因がある。その3つの要因とは “モチベーション、能力、引き金” である。これらの要因は互いに関連しており、プロダクトやサービスが3つの要因すべてを満たさなければ、ユーザーはそれを自分の行動や習慣の中に取り入れない。 行動心理学を利用したデザイン – ビヘイビアデザイン Part1~【UXデザイン】 ドハティのしきい値 システムのフィードバック時間が0.4秒以下になると、ユーザーの体験が“苦痛”から“中毒性”に変わるという法則。これは、1982年にウォルター・J・ドハティとアラビンド・J・タダーニによる研究を元にしている。 その研究によると、人間が認識→判断→処理→反応する際のスピードが、平均で0.4秒であることから、UXにおけるスピードを0.4秒以内に納めることで、ユーザーへのストレスを下げ、ユーザビリティをあげることにつながる。例えば、ページのロードスピード、ボタンが反応するまでの時間、メニューが開くまでの時間などの基準として利用される。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは 3対1の法則 ポジティブな感情がネガティブな感情を上回るには3つのポジティブな感情が必要であるという理論。これはGoogleも採用している、ユーザーが受け取るポジティブな感情とネガティブな感情を“瓶”の中に入れ、その“重さ”を天秤にかけるという方法。 このポジティブ3に対してネガティブ1を基準にデザインを行えば、ユーザーが喜ぶ体験を届けることができる。 Googleも採用するめっちゃ使えるUXデザイン手法

ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】

なぜアメリカではコロナの検診スピードが格段に速いのか? その秘密の一つが、デジタル技術を活用したテストプロセスに隠されている。今回UX分析の対象として試してみたのは、ヘルステック系のスタートアップ、Carbon Healthが提供するサービス。
このスタートアップは元々、遠隔医療に関する仕組みを提供していたが、新型コロナウィルスの拡大により、現在ではそれら加えて、サイト、アプリ、そして検査用のポップアップステーションを活用した検査を迅速に行っている。
アメリカでは誰でも無料でコロナ検査が可能
現在ア…

UXデザイナー直伝!本当に機能するカスタマージャーニーマップの作るポイント

マーケターやデザイナーなどUXデザインに関係する誰もが当たり前に使うようになったカスタマージャーニーマップ。しかし、多くの場合は新規商品開発や新規サービスの提案フェーズのプロセスの一部として使われており、公表されることもないことから、我々が作っているマップは本当に効果的なのだろうか?と疑問を抱く人は少なくないだろう。
そこで今回はUXデザイナー視点からカスタマージャーニーマップを効果的に活用していくためのポイントをご紹介する。
UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ

カスタマージャーニー…

Clubhouseで明確になった後発サービスが勝つための5つのポイントとは

2週間ほど前から日本では音声SNSサービス、Clubhouseの人気が急激に高まってきている。この現象に関して、アメリカ側の視点から書かれた記事「Demystify the Clubhouse Craze in Japan」にも記載されている、ある一つの点に関して考えたい。 それは、サービスの形態自体は特に斬新ではないということ。音声を利用したサービスはPodcastをはじめ、以前より多く存在していたし、それにSNS要素を追加させたタイプもStand.fmやDabelなどの先発サービスがリリースされていた。 それなのに、かなり後発のClubhouseがなぜそんなにも爆発的な話題を集めているのか?おそらく、その謎を解くことがサービスデザインにおける大きなヒントになると考えられる。 後発でもヒットしたプロダクト例 この謎を解くために、まずは今までに他の商品やサービスで後発なのにヒットした例や、先発なのに失敗した例を見てみることにする。というのも成功しているサービスの多くが結構後発である。逆に真っ先に動いた企業は、タイミングが早すぎたり、市場の準備ができる前に資金が尽きてしまうことも多い。 ■ Gmail リリース日: 2004年4月 先発サービス: Hotmail, AOL, Yahoo Mail 現在ではEメールの代名詞になっているGmailも、実はかなり後発のサービス。ネットの普及が進み、Webメールサービスが提供されていたのが90年代中盤。HotmailやAOL, そしてYahoo Mailなのが代表的なサービスになっていった。 しかし、Googleによる、よりクリーンで使いやすいメールとして”Email that doesn’t suck (イケてるメールサービス)”をキャッチコピーとしたGmailの人気が一気に高まり、後発ながらも、現在最も多くのユーザーを獲得しているメールサービスとなった。 Gmailの前に人気の高かったHotmail。スパムがめっちゃ多かった ■ Zoom リリース日: 2012年9月 先発サービス: Skype, Google Meet, WhatsApp リモートワークが進んだことで、最もユーザーを増加させたサービスの一つがZoomだろう。それまでもSkypeやGoogle Meetなど、ビデオコールのサービスが多く存在しており、完全にレッドオーシャンだと思われた市場に彗星のごとく登場した。 それも、それまでの多くのサービスが無料だったのに対して、Zoomは無料プランに制限をかけ、多くのユーザーが有料プランを利用している。それにより、売り上げもうなぎ登りになり、上場も果たした。 Zoom以前にも無料のビデオコールのサービスが存在していた ■ Slack リリース日: 2013年7月 先発サービス: HipChat, Yammer, Chatwork ビジネスチャットツールとして、現在では堂々たる地位にあるSlackも、実はそのカテゴリーにおいては、結構な後発のサービス。 Slackが出る前にも、HipChatやYammer, そして日本発のChatworkなど、複数のビジネスチャットツールが存在していた。しかし、Slackはそれらを大外からことごとくぶち抜いてしまった。 Slackよりも前にリリースされていたHipChat(左)とYammar(右) ■ Facebook リリース日: 2004年2月 先発サービス: Friendster, MySpace Facebookが元祖SNSサービスだと思っている人も少なくないだろう。しかし実は、Facebookの前にもFriendsterやMySpaceといった類似のサービスが存在してた。 日本にもmixiがあったが、現在では「マイミク申請していいですか?」と聞いて理解してくれる人は少ないか、笑いをこらえるのに必死になる人もいるだろう。 Friendster(左)とMySpace(右)はFacebookの数年前にリリースされていた ■ Google リリース日: 1997年1月 先発サービス: Friendster, MySpace ネットが普及し始めて最も初期のサービスが検索エンジン。その中でGoogle Seachは最も後にリリースされたサービスになる。 Googleが出てくる前までは、Yahoo, Excite, Lycos, AltaVista, Infoseekなど、複数の検索エンジンが乱立しており、毎月のように利用者ランキングが入れ替わる検索エンジン戦国時代だった。そんな中で天下布武を成し遂げたのが、後発のGoogleだった。 ■ iPhone リリース日: 1997年1月 先発サービス: Palm, Blackberry, ザウルス, ガラケー 世界初のスマホはiPhone出ることは間違いない。そういった意味では先発のように思うかもしれないが、実はその前にもいくつか類似のデバイスは存在していた。 Palmやザウルスに代表されるPDAやBlackberryだ。ネットに繋がる携帯という意味では、日本のガラケーが十年以上も前にすでに存在していた。 スマホの前身であるPDAやBlackberry ■ Tesla リリース日: 2010年5月 (Model S) 先発サービス: GM EV1, シボレー Volt 自動車会社として世界一の時価総額を達成したTeslaは、もちろん自動車会社としてはめちゃくちゃ後発。むしろ21世紀にできた数少ない自動車メーカーだろう。 そして、EV車両としても、すでにGMやシボレーがTeslaよりも前にリリースしていた。しかし、それらがことごとく大失敗をしたEV焼け野原の中から、真打としてTeslaがリリースした初の量産モデルのModel Sが大成功した。 アメリカ初の量産EVであるGMのEV1は派手に失敗した ■ Instacart リリース日: 2013年6月 先発サービス: Webvan […]

ライフスタイルブランドとは – その代表事例と構築方法 –

物が売れなくなったと言われる現代において、消費者の購買意欲を訴求するにはどうしたら良いだろうか。品質や価格は限界まで追求され、他の製品との差別化も非常に難しくなってきている。 その一方で、ファンから強烈に愛され「一人勝ち」しているブランドがいくつかある。特に価格が安いわけでも、品質が極端に異なるわけでもない。それでも他のブランドを寄せ付けない魅力。それが、ライフスタイルブランドだ。 ライフスタイルブランドとは ライフスタイルブランドを簡潔に説明すると、 “提供する商品やサービスの裏にある信念やストーリーに共鳴した消費者が、自分自身の価値観、願望、生き方を具現化し、共通の意識をもったコミュニティーの一部になれると感じられるブランド。” だろう。 例えば、エルメス。ブランドの一番の魅力は、エルメスの商品を所有しているだけではなく、エルメスを所有している人のライフスタイルを生きていると感じられること、なのだ。 ライフスタイルブランドは、時に大きな憧れの存在にもなり、(まだ) 所有していなくてもインスタでフォローしているブランドになったりする。 ブランド側としては、消費者の生き方の定義に貢献する製品を目標に、人々を鼓舞し、導き、やる気を起こさせることをゴールとした活動通じてライフスタイルブランドとしての地位を確立する。 そうすることでブランドとしての大きな競争優位性を獲得することができる。 ライフスタイルブランドの5つの特徴 熱心なファンを獲得している ユーザーを感情的に訴求している ニッチなオーディエンスと繋がっている コミュニティ生成につながる活動を行なっている コンテンツには自社商品をフィーチャーしすぎない ライフスタイルブランドの強み では、実際にライフスタイルブランドになったらどのようなメリットがあるのだろうか。 1. プロダクトカテゴリーの代名詞になる まずはその存在がカテゴリーにおける代表的な名前になるということ。Red Bullがその代表だろう。 ユーザーは、“エナジードリンク”を飲むというよりも、“Red Bull”か”Red Bullっぽい他のドリンク”を飲む、と表現される。その時点でRed Bull以外のエナジードリンクブランドに差をつけていることになる。 2. 他のブランドと比べられなくなる 同じ商品の他のブランドと比べられることが少なくなり、消費者にとっての“一択”の対象になることができる。AppleのiPhoneが良い例。一度iPhoneを使い始めたら、次に買うスマホもiPhoneである可能性が非常に高く、他のブランドのスマホを検討することを行わなくなる。実際の統計でも、iPhoneにおける顧客リピート率は90%を超えている。 また、過剰な広告やセールス活動などで顧客を追いかけなくても、既存顧客が同じ価値観を持つ周りの人たちを呼び込んでくれる。そして自ずと売り上げと経営が安定する。 3. 高く売れる そう、一番わかりやすいメリットがこれ。ライフスタイルブランドは高く売れる。場合によってはめっちゃ高く売れる。AppleやSupremeが良い例だろう。他にはローレックスやフェラーリもそう。 そのブランドのロゴが記載されているか、そうでないかで値段が数倍から数十倍異なる。ある意味究極のメリットである。その理由は品質だけではなく、ブランドが提供するメッセージやストリーが重要な役割を果たしている。 代表的なライフスタイルブランド それでは、それぞれのカテゴリーで代名詞で呼ばれるレベルの、世界で愛されている代表的なライフスタイルブランドを紹介する。 Red Bull: 翼を授かりたい人たちのために Vespa: スーツでおしゃれにローマの街を Blue Bottle Coffee: 大衆とは一味違うこだわりのプレミアム感 Supreme: 赤い背景と白地のFuturaにクールなファンが集まる Nike: トップを狙うすべての挑戦者たちへ G-Shock: ストリートライフを楽しむための頼れるアイテム Lululemon: ヨガ愛好家を中心に、マインドフルネスを体現する Harley Davidson: 自由を愛する現代のカウボーイ達へ LaCroix: 健康志向の人たちがステータスとして飲む健康ソーダ Muji: ミニマルなライフスタイルを求める人たちへの究極の提案 Red Bull: 翼を授かりたい人たちのために 21世紀に入って最も躍進したライフスタイルブランドの一つがRed Bullだろう。商品カテゴリー的には、エナジードリンクだが、むしろRed Bullと呼ばれることの方が多いことからもわかるとおり、競合と比べても圧倒的なブランド的アドバンテージを誇っている。 Red Bullの提案するライフスタイルを一言で表現すると「アドレナリン出まくり」で、飲むだけで超人になれそうな感じ。身も心もパフォーマンスアップを求める人たちが共鳴している。 キャッチコピーの“Gives You Wings (翼を授ける) ” に始まり、F1をはじめとした様々なエクストリームスポーツへの協賛を通じて、一貫したのブランドイメージ構築に成功している。 それまでは、疲れたおっちゃんたちが飲むもの、というイメージが強かった栄養ドリンクを一気にスタイリッシュに変革させ、疲労回復よりも、強烈なパフォーマンスアップのイメージを与え、スリルや興奮を求める人たちに愛されるブランドになった。 ストーリーこそがブランド価値の源泉である【日本からグローバルブランドを Part 2.】 Vespa: スーツでおしゃれにローマの街を 原チャリの代表がスーパーカブなら、おしゃれなスクーターの代名詞がVespa。そのレトロなデザインが人気を集め、このイタリアブランドは、世界で多くのファンを魅了している。 そのきっかけとなったのが、映画、ローマの休日での二人の男女がローマの街をVespaで走り回るシーン。 そんなストーリーもあり、Vespaに乗れば、誰でもオードリー・ヘップバーンやグレゴリー・ペックの気分に、どんな場所でも一瞬にしてローマの街角に変えてしまう魔力を感じる。 小さめのヘルメットを被り、おしゃれなスカーフを身につけて乗るそのスタイルは一つのライフスタイルとして確立されている。Vespaの存在は、乗り物というよりも、むしろファッションアイテムの一つに近い。 パワーやスピードを追いかけるのではなく、可愛さやおしゃれさの追求は、その他のバイクやスクーターとは一線を画する存在になっている。 Blue Bottle Coffee: 大衆とは一味違うこだわりのプレミアム感 サードウェーブコーヒーの代名詞でもあるブルーボトルコーヒーは日本にインスパイアされた西海岸ブランドでもある。 お手軽にコーヒーを楽しめるスタバとは対照的に、時間をかけてじっくりとこだわってコーヒーを楽しむ。これは元々日本の喫茶店が提供していたコーヒーの楽しみ方。 この日本的コーヒー文化にアメリカ西海岸のスタートアップカルチャーを掛け合わせ、ミニマルで洗練されたブランドとして広がっていった。 ブルーボトルが追求する、禅にも通じるこの精神に共鳴したサンフランシスコ地域の起業家たちがサポートすることで、人と世の中に優しいライフスタイルブランドになった。 そして、日本に「逆輸入」された際にも一気にその人気が広がり、オープン日には行列ができるほどに。現在でも大衆とは一味違った雰囲気を好む人たちに愛され、毎日のようにそのロゴの入ったマグカップがインスタにアップされている。 それは本当に自分が好きな事ですか? – SNSが行動に与える影響 – Supreme: 赤い背景と白地のFuturaにクールなファンが群がる 話題性のあるコラボレーション、カルト的な支持者、そして売り切れ続出。シュプリームは今、世界で最も大きなブランドの一つだ。 1994年にニューヨークの小さなアンダーグラウンドスケートショップとしてスタートした同ブランドは、スケーターやストリートウェアファン、国際的なファッションフォロワーの間で、カルト的なフォロワーを生み出している。 真っ赤な背景にイタリックのFuturaを採用したロゴ。そのプロダクトは限定品だらけで、かなり割高とも思えるプレミアム価格で売買されている。それでも売れまくる。 その秘密は「クール」であること。 シュプリームはクールな人たちによって設立され、クールな場所で、クールな人たちと一緒に仕事をしている。 そして、クールな人たちが身につけているクールな商品で、クールな雑誌に取り上げられる。また、クールではない人たちがクールであると感じるための方法でもある。 消費者行動に革命を起こす3つのファッション系スタートアップ Nike: トップを狙うすべての挑戦者たちへ […]

最近のアイコンが似通ってきている問題

最近のスタートアップにおけるロゴトレンドでは、そのスタイルに多くの類似性があることがわかった。その中でも、特にスマホ向けのアプリの影響でアイコンの存在がそのブランドを強く印象づける役割を果たしている。
最近のロゴが似通ってきている問題 – 第2弾

多くのアイコンがどんどんカラフルに
限られたスペースに複数のアイコンが並ぶスマホのホーム画面で存在感を出すためなのか、最近のアイコンはどんどんカラフルになってきている。これは、画面の解像度が上がってきている恩恵でもあるが、どんどん没個性にもつ…

なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか

先週、日本デザイン学会主宰の「2020年度 日本デザイン学会 秋季企画大会」というイベントに登壇させていただいた。 セッションテーマは「チーム・クリエイション」。デザイナーを取り巻くチームとビジネスに関するトピックだったため、自分が感じている「海外から見た日本の状況」について触れさせていただいた。 というのも、最近ではビジネスにおけるデザインの重要さが叫ばれている。 マッキンゼーの調査でも、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出た。 その割には、日本企業におけるデザイナーの役割と立場がまだまだ地味で、ビジネスの根幹に入り込めていないように感じていたから。 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザイン責任者を配置している海外企業 一方で、海外、特にアメリカのスタートアップでは多くのデザイナー出身者が起業し、成功している。 また、大企業でも経営陣にCDO (Chief Design Officer) や CCO (Chief Creative Officer) を配置し、経営にデザインを積極的に取り入れている会社が増えている。 CDOやCCOのいる主な企業・団体 3M ピクサー ペプシコ DBS銀行 ロジテック フィリップス ヘルシンキ市 キアモーターズ ロスアンゼルス市 ウォルトデズニースタジオ * https://en.wikipedia.org/wiki/Chief_design_officer デザインドリブンな世界一の企業: Apple デザインバックグラウンドを持つ経営陣が多いことで知られる最も著名な企業がAppleだろう。 そもそもファウンダーのスティーブ・ジョブスは熱狂的なデザインオタクだったし、後期にAppleを復活させた彼の右腕、ジョナサン・アイブも世界最高峰のデザイナーである。 技術力が重要視されていた20世紀では倒産寸前までになっていたAppleは、デザイン力が重要になった21世紀になって強烈に成長し、名実ともに世界一の企業に君臨している。 Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 デザイナー出身の起業家たち: ジョブスチルドレンの功績 そして現代の起業家のその多くがデザイナー出身だったり、デザインバックグラウンドを持っている。そして、そのような人たちが経営陣にいる企業の成長率の高さは統計的にも実証されている。 デジタルプロダクトを通じたユーザー体験が重要になってきている現代においては、商品の差別化要因はどんどん少なくなり、最後に残されたのがデザイン性とブランド力になってきているのが理由だろう。 デザインバックグラウンドを持つ起業家のその多くがジョブスに憧れ、優れたプロダクトを武器に会社を成長させている、いわゆるジョブスチルドレンである。 この流れはアメリカだけではなく、取締役の多くがデザイン経験を持つサムスンや、海外から多くのデザイナーを採用しているアリババなど、韓国や中国の会社の多くもその流れを踏襲してる。 デザインバックグラウンドを持つ主な起業家: Jack Dorsey – Twitter, Square Brian Chesky – Airbnb Evan Sharp – Pinterest Chad Hurley – YouTube Stewart Butterfield – Slack David Karp – Tumblr Charles Adler – Kickstarter Dave Morin – Path 参照:【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 日本企業におけるデザイナーの役割って何? ここからが本題。そんな世界の潮流の中で、ではなぜ日本の企業の経営陣にデザイナー出身者があまりいないのか? そもそも日本企業の従業員で「デザイナー」という肩書を持つスタッフ自体が驚くほど少ない気がする。では、日本企業におけるデザイナーの役割とは、一体何なのだろうか? おそらくその仕事は、プロダクト制作における最終工程の装飾や、ブランディングにおけるビジュアルデザインの一部にとどまっているケースが少なくない。 とある日本の会社では、企画会議に出席したデザイナーに対して「なぜあなたが参加してるのですか?」と言われたという。 そうなってくると、どうしてもプロダクトが提供するユーザー体験の質は下がるし、ブランド資産も積み上がりにくくなってくるだろう。 なぜ日本ではデザイナー出身の経営者が少ないのか? 従業員にデザイナーが少なく、その役割も限定的なのであれば、経営陣にデザインがわかる人が少ないのもうなずける。しかし、デザインがビジネスにとても重要な時代に日本企業の経営陣にデザイナー出身者が極端に少ない場合、企業としての競争力は極端に下がってしまう。 それなのに、日本企業の経営陣にデザインバックグラウンドを持っている人はかなり少ない。 それはなぜなのか? この答えは、日本は経営において営業がとても重要であるから。 言い換えると、日本では営業力が企業にとってとても重要な役割を果たす。下手するとプロダクトの質以上に。自ずと営業畑出身の人間が経営者や取締役などに出世しやすい。 特に経営者が創業者ではない企業はこの傾向が顕著だ。 この理由は、以前に一緒に登壇したTakramの田川さんも、Goodpatchの土屋くんも、今回登壇したNOSIGNERの太刀川さんも、AIR Designの中平さんも一様に同意していただいた。 めっちゃ使いにくいプロダクトのなのに何故か売れている。その理由は営業力にあったりする。 最近ではメルカリのようにエンジニア出身の人が経営をしている会社も増えているが、デザイナー出身者はまだまだ少ないだろう。 結果として日本の多くの優秀なデザイナー達は、自分たちのフィールドだけにとどまり、ウンチクを語る日々を過ごしている。 日本と海外でなぜこんなにも違うのか? では逆に、アメリカをはじめとした海外ではデザイナー出身の経営者が多いのか?おそらくその秘密は、国土の広さにあると思われる。アメリカと日本の国土の違いをおさらいしてみよう。 ざっとこんな感じである。 アメリカの国土は日本の約26倍。 ニューヨークからサンフランシスコまでは飛行機で片道6時間。3時間の時差がある。近そうに思えるロサンゼルスからサンフランシスコまでも飛行機で1時間以上かかる。サンフランシスコ – シリコンバレー間だって、車で1時間以上かかる。 これはどういうことかというと、簡単に足で稼ぐ営業ができないということ。では、どのようにして顧客やユーザーを集めれば良いのか? そう。プロダクトの質、ブランド力、マーケティングにフォーカスするしかない。 足を使った営業力に頼れない分、他の方法でユーザーを集めてくるしかないのだ。 […]

ヒットサービスに重要なのは “革新的アイディア” ではない!?

「めっちゃ良いアイディアだね。今までにも同じようなの5回ぐらい聞いたことあるけど」
先日行われた起業家向けのメンタリングセッションで伝えた一言。画期的なアイディアだと思っても、すでに他の人も同じようなことを考えているケースは少なくない。
こんな感じで新規事業を考える際のアイディア出しに関してのアドバイスを聞かれることが多い。
特に、デザインスプリントなどのワークショップなどでは短時間に複数のアイディア出しをしなければならないので、行き詰まった際の打開策を知りたいという声も少なくない。
しかし、ぶっち…

“ニューノーマル” 時代を勝ち抜くための5つの対処策

銀行、保険業界などの金融機関でも、ここ数年で急速にデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を認識し、投資や新規サービスを推進されてきました。そのような中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に感染拡大する事態へ突入、このパンデミックの現状は、まさに企業のデジタル・レディネスを証明する機会となってしまいました。顧客訪問は必要最小限にとどめ、インターネットなどの情報ネットワークへのアクセスを活用し、顧客のニーズマッチするようにパーソナライズされたデジタルエクスペリエンスの提供が求…

ブランドの個性を定める – ブランドパーソナリティー【ブランディング入門#5】

世間にブランドの重要性が認知されていくのと同時に仕事をオファーするサービスも増え、デザイナーに仕事を依頼することが手軽になった。その結果、世の中にはクオリティの高いクリエイティブを持つブランドが多く存在するようになった。
そういった状況では、表面的なクオリティの高さだけでは他社との差別化や商品を顧客に選んでもらう理由にはならなくなってしまった。そこで、ブランドは見た目ではなく顧客が感じるイメージをうまく形成し顧客に伝える必要性が生まれた。
良いイメージが形成されてはじめてブランドのロゴやテーマカラー…

2020年が日本のデザイナー達に与える12のインパクト

2020年もすでに下半期に入っているが、すでにあまりにも多くの事柄が起きており、人々の生活、働き方、価値観もが大きく変化している。そこには新しい課題が生まれ、それを解決するためのソリューションが速いスピードで求められる。 デザインが問題解決に対する最適な方法を見つけるための手段であるならば、この時代がデザイナーに与える影響も少なくはない。これからの時代にデザイナーやデザイン会社、そして社会全体に求められるデザインに関するインパクトを考えてみた。 企業価値にデザイン力が大きく影響する 経営層にもデザイナーが参加し始める より広い視野でデザインを行わなければならない 他のスタッフの視点からものづくりを考えなければならない 行動心理学の理解が重要なデザインスキルになる ユーザー視点はお客様第一ではないことを理解する 人工知能 (AI) と仲良くデザイン作業を行う時代が近づいている デザイナーはデータを理解し活用しなければならない スクリーン以外のユーザーインターフェースをデザインする時代 よりコミュニケーションスキルが重要になってくる キャリアアップにはスキルアップとスキルチェンジの両方が必要になる グローバルに活躍できないデザイナーは頭打ちになる 一つの時代の節目ともなる2020年。これからデザイナーの役割とそれを取り巻く環境の変化に関して、我々ビートラックスが信じているデザイナーの未来をご紹介したい。 1. 企業価値にデザイン力が大きく影響する 2020年に入ってからもシリコンバレーを中心としたテクノロジー企業であるGAFAやTeslaの株価が大幅に上がり続けている。世界的に見ても企業価値が高い企業には一つの共通点がある。 それは、デザインをとても重要視している点。特にUXやCXデザインと言ったユーザーの直接のタッチポイントになるエリアに対する投資が非常に大きい。 スタートアップ企業の将来的価値を計る際にもデザインに関する知識やスタッフの能力、設備等の要素が評価の基準となるだろう。 一部のシリコンバレーのVCではいち早くデザイン業界経験のある人材獲得を進めている。また、Google Venturesも、スタートアップの価値を判断するときや成長ステージにおいてもデザイン力を非常に重要視していることで知られている。 ということは、世界的な視野で見ると、今後デザイナーの需要はどんどん高まると考えられる。 統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ 2. 経営層にもデザイナーが参加し始める デザインがビジネスに与える影響が大きくなるにつれてエクゼクティブチームにデザイナーを参加させている企業が増えてきている。 物事の捉え方や解釈の仕方、また判断を下すときなどにもデザイン的考察を入れることで結果に大きな差が生まれる。これは、変化のスピードがどんどん加速していく中でロジックだけでは説明のつかない状況がどんどん増えていくのが理由だ。 企業のトップも、言葉や数字だけでは説明しきれないけれど“どこか良いと思わせる”何かに気づくが一つの重要なスキルとなる。 これまでは、“センス”や“直感”などの言葉で認識されていたが、それこそがもしかしたらデザイン的な感覚ではないかと思う。判断に迷ったらデザイン理論的に優れた方を選べば間違いはない。 アメリカでは既にCDO (Chief Design Officer)や、CCO (Chief Creative Officer)などの役職のポジションも存在する。そう考えると、現在はデザイナーとして働いている人でもキャリアパスとして企業の役員や、場合によっては社長を目指すことも間違っていない選択なのかもしれない。 【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 3. より広い視野でデザインを行わなければならない 最近は日本でも知名度が高まってきている「ダイバーシティー」という単語。「多様性」を意味するが、具体的にはどのような要素が含まれているのだろうか?LGBTなどに代表される性別的な要素や人種はわかりやすい例であるが、それ以外にも複数のファクターが存在している。 世界中には様々なバックグラウンドを持つ人々がいるが、一つの場所で生活しているとどうしてもそれを忘れがちになる。特に日本国内に住む98%が「日本人」であることを考えると日本が相当ダイバーシティの低い国であるということになる。 日本と比べても実に多種多様な人種が集まっているアメリカでもまだまだ多くのデザインが画一的なデモグラフィーを中心に考えられており、マイノリティーと言われるユーザーを考慮していないケースが少なくない。 それを象徴するのがターゲットを性別と年齢だけで区切ってしまう手法。おそらくこの手法は日本国外へ出た瞬間に一瞬で通用しなくなる。 加えて、今後は日本にも海外からの移住者がどんどん増えていくことを考えると、日本企業も早い段階からダイバーシティーへの理解とインクルーシブデザインの採用を進めていく必要があるだろう。 インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例 4. 他のスタッフの視点からものづくりを考えなければならない デザイン思考の基本はユーザー視点でものづくりを進めることであるが、デザイナー職の人たちはどうしてもデザイナー的視点に終始しがちなところがある。 デザインの役割が広がってきている現代においては仕事上で関わる人の幅も広がる。これまではデザインチーム内で仕事をしてきた人も、エンジニアやビジネス、場合によっては人事系の役割の人たちとのコラボレーションも増えてくるだろう。 そうなった際に相手の気持ちを理解するために、相手の仕事内容に加え、技術面も多少は身につけておくとコミュニケーションが非常にスムーズに進む。 例えば、デザイナーとエンジニアは2つの異なる職業とされて来た。しかし、テクノロジーが進むにつれエンジニアの経験やバックグラウンドを持つデザイナーは非常に重要な人材となるだろう。 逆にデザイナーからエンジニアに転身することも珍しくはない。この2つの職業の境界線はどんどんなくなり始めている。今後は、僕はエンジニアだから…, 私はデザイナーだから… などの言い訳は出来なくなる。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる 5. 行動心理学の理解が重要なデザインスキルになる User Centered Design (ユーザー中心のデザイン) を行う歳には、利用する人の目的を最も正しい方法で達成するためのデザインが必要とされる。その目的を果たすために利用時のユーザーの心理を捉え、理解し、それに対して最適な施策を打ち出す必要がある。 例えばUXデザイナーでデザイン科卒ではなく心理学や人間工学、人類学を学んだ人も意外と多い。 逆に考えると、これまではデザインだけを学んで来た人も今後は上記のようなその他の幅広い学問の知識も必要とされるということだ。人間という生き物をより理解することでより最適なデザインを作り出せるようになる。 そういった意味では、脳科学を学ぶことで人間の脳がどのようなデザインにどう反応するかを理解することが出来たりもする。 人々の行動を変える行動心理学の力【ビヘイビアデザイン】 6. ユーザー視点はお客様第一ではないことを理解する 日本で古くから商習慣として根付いている「お客様第一主義」は素晴らしい。しかし、そこからはなぜか世の中を驚かせるようなソリューションが生まれにくい。おそらくその理由は、お客様第一主義とユーザー中心デザイン (UCD) が似て非なるものだからだろう。 ビジネスやプロダクトデザインにおいて、お客様の声を最優先することは一見当たり前のように感じる。しかし、お客様の声をそのまま商品に反映するのと、その潜在ニーズをより深く理解し、顧客の想像を超えるレベルのプロダクト作り出すのとでは、結果に大きな差が生まれる。 少し前に話題になった「ここがちゃうねんデザイン思考」にも紹介されている通り、ユーザー視点で物事を考えることは、顧客の言うことをすべてやることではない。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い 7. 人工知能 (AI) と仲良くデザイン作業を行う時代が近づいている ユーザーにとって最適な見た目のデザインや体験を、システムが自動的に生成することも理論的に不可能ではない。そうなってくるとデザイナーの仕事は無くなってしまうのか?いや、むしろ、そのAIを最大限活用することこそがデザイナーの仕事になってくる。 人工知能や機械学習などのシステムが得意とするところと、人間が得意な部分を掛け合わせシステムにもより良いクリエイティブ作成を教えることによって、最も効率的で効果的なデザインを行うのがデザイナーの仕事だ。まさに人と機械のハーモニーがゴールの仕事である。 機械に仕事が奪われるのではないか?と危惧する声もあるが、0から1を作り出すこと、これは機械には出来ない。AIは過去のデータを元に未来を予測することは出来るが、全く新しいものを作り出すのは人間にしか出来ない。デザイナーやエンジニア等のクリエイティブな仕事はこれからもどんどん必要とされていく一方であろう。 人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル 8. デザイナーはデータを理解し活用しなければならない デザイナーが感覚やデザイン理論だけをベースに仕事を行う時代は終わるだろう。何が本当に正しいデザインかの判断をある程度データから読み取る必要がある。そして、常にデータを分析しながらデザインの改善を行う。 それぞれの目的に沿った正しいデザインを行うためにはデータありきで仕事をしなければならない。特に、ユーザビリティやユーザーエクスペリエンスなど、利用するユーザーありきのデザインの結果はデータが全てである。 ユーザーとテクノロジーをつなぐのがデザイナーの仕事だとしたら、データをビジュアル化する役割としてのでデザイナーの存在価値がどんどん高まっていくだろう。 では、急激なスピードで増え続けている膨大なデータを今後どのように活用していけば良いのか。この課題を抱えていない企業は恐らくないだろう。 得られた数字を元にデザインを柔軟に変更し改善を進めて行くことが重要になっていく。これからはデザイナーとデータサイエンティストという、一見関係の薄そうな2つの職業が密接に関連してくるだろう。 デザインには直感とデータどちらを採用すべき? 9. スクリーン以外のユーザーインターフェースをデザインする時代 デザインが必要とされるデバイスの種類がどんどん広がっている。これまでは“紙かスクリーンか?”の2択だったアウトプット媒体も、AR/VR、ジェスチャー、ボイスコマンド、そして脳波まで様々なインターフェースを通じてユーザーとの対話が行われ始めている。 そんな中で、全く新しいジャンルのデザイナーの必要性が高まってきている。例えば、例えばリアルタイムで生成される3Dオブジェクトの表示方法や、人工知能 (AI) をベースとしたシステムを活用してVR環境内を動き回るアバターキャラクターのデザインなど、これまでには存在していなかったタイプのスキルが必要とされる。 また、感染を減らすための非接触インターフェイスのデザインや、リアルな画像/動画とバーチャルオブジェクトを組み合わせた形のいわゆるAR型インターフェースのデザインの出現も予想される。そこにはPCやスマホなどの既存のデバイスとは別次元の操作性とユーザー体験の設計が求められる。 目に見えない動きやインタラクションをデザインするには、新たな表現方法が必要とされてくる。 今さら聞けないユーザーインターフェイス (UI) の基本 10. よりコミュニケーションスキルが重要になってくる デザイナーと言うと、絵を描いて形だけを決める仕事だと勘違いしている人が多いのだが、実はそれらは最終アウトプットのごく一部。本来デザイナーの仕事というのは、与えられた制限の中で求められる最大限の結果を生み出すプロセスのその全てに関わる職業である。 […]

サービスをデザインする際に重要な「7つの大罪」とは

ヒットしているサービスには共通する「秘密」がある
サービス例とそれぞれの秘密を紹介
ユーザーの心をくすぐるデザインのコツ
キーワードは「探索」「学習」「表現」「承認」

「7つの大罪」という言葉を聞いたことがあるだろうか? キリスト教において罪の根源とされる7種類の悪しき感情、欲望などを指す語のことを指す。いくつかの説やバリエーションがあるが、下記の7つが現在一般的に広く知られており、映画の「Se7en」でも採用されているリストは以下だ。

憤怒 (Wrath)
強欲 (Greed)
傲慢 (Pr…

UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割

混乱しがちなUXとCXの違いを説明
そもそもUXってなんだっけ
最近出てきたCXの概念と企業へのメリット
UXデザイナーとCXデザイナーの役割
ブランディングにおけるCXの重要性

最近のデザイン界隈において、あまりにも多くの専門用語が飛び交っている。その中でも最もよく使われているバズワードが「UXデザイン」だろう。それなのに、その概念は時代と共に変化し、内容がイマイチわかりにくい部分もある。
UIとUXとの違いは何か?の問いから始まり、その守備範囲、UXデザイナーの役割など、異なる人やコンテキス…

UXデザインプロセス入門 – 基本的な6ステップ

Step1 – 理解: Understand Step 2 – 共感: Emphasize Step 3 – アイディエート: Ideate Step 4 – プロトタイプ: Prototype Step 5 – テスト: Test Step 6 – ローンチ&計測: Launch&Measure ユーザー体験を設計するUXデザインは、現代ではかなり高い認知度を獲得し、多くの企業が注目をしている。その一番の理由が、「スペック重視」から「体験重視」にビジネスもモデルが変換し始めたことだろう。 ユーザーのフォーカスが、所有することから利用することに移行したことで、プロダクト提供側も、より良い体験設計が求められている。 これからの時代にヒットするのはサービス化されたプロダクトだと言えるだろう。そこで最も重要な存在になってくるが、UXデザインであり、UXデザイナーである。 意外と知られていないUXデザインのプロセス その一方で、肝心のUXデザインのプロセスは意外と知られてない上に、多くのデザイナー達がUXを学ぶ方法を未だに模索しているケースが後を絶たない。 ビートラックスでもデザインチームを中心に、UXデザインのプロセスを社内全体に共有しているが、今回はそのUXデザインプロセスと、それぞれのステップで作り出される活動と成果物をまとめて紹介する。 UXデザインにおける6つのステップ ビートラックスによるUXデザインプロセス Step1 – 理解: Understand 最初のステップはユーザーの課題とビジネスのゴールを理解することから始まる。見た目を美しくするだけでは、ユーザーとビジネスの両方の課題を解決することは永遠に不可能である。 主な活動・成果物: ユーザーインタビュー 消費者アンケート マーケット調査 競合調査 ステークホルダーインタビュー お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い Step 2 – 共感: Emphasize 優れたデザインを生み出すために最も重要なプロセスがエンパサイズ。デザインを受け取る人たちへの共感をすることだ。彼らがが何を見て、何を感じて、何を経験しているかを理解しなければ、デザインは無意味な作業になってしまう。 主な活動・成果物: ペルソナ ユーザーストーリー ユーザーシナリオ エンパシーマップ カスタマージャーニーマップ デザイン思考入門 Part 2 – Empathize 理解と共感 Step 3 – アイディエート: Ideate アイディエートとは、アイディアを出すプロセスのことで、アイディエーションとも呼ばれる。アイディエーションとは、良いものも悪いものも含めて、可能性のあるすべての解決策を探り、どのようなアイデアで前進すべきかを絞り込んでいく。そのプロセスは対話的で共同作業的であるため、メンバーが一つの場所に集まり、一気に進めていくことが多い。 主な活動・成果物: ブレインストーミング スケッチ ムードボード リファレンス アイディエーションとは?効率的に行うための5つのポイント Step 4 – プロトタイプ: Prototype プロトタイプは、Webやアプリの場合、UIやコンテンツ構成などを確認し、その操作性を理解すること。ハードウェアなどでも、どのようなユーザー体験を提供できるかを理解するために制作される。その役割に合わせ、早い段階でラフなものを作ることもあれば、かなり作り込み、細部の確認に活用する場合もある。 主な活動・成果物: ユーザーフロー ペーパープロトタイプ ワイヤーフレーム インタラクティブプロトタイプ コンセプト動画 ロールプレイ デザイン思考入門 Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 Step 5 – テスト: Test アイディアやモックアップ、プロトタイプをユーザーにぶつけ、フィードバックを得ることでデザインを洗練させる段階だ。テストを行う時期が早ければ早いほど、変更が容易になり、デザインの制度を高めることが可能になる。 主な活動・成果物: ユーザビリティテスト ヒューリスティック評価 アクセシビリティ評価 フォーカスグループ オンライン調査 […]

不確実な時代にこそ企業がなすべきこと

先日、新型コロナウィルス流行の影響下で国内における過去最大規模のブロックトレードを非対面、在宅リモート環境で主導した金融機関のニュースが報じられました。電話、チャット、オンライン会議ツールなどデジタルツールのフル活用及び従来から築いてきた強力な国際営業力、海外投資家とのネットワーク網。さらに社内横断のワンチーム、組織力によって見事に顧客の期待値、要望に応えたとのこと。…

デザインの力で、新しい生活様式に安心と喜びを作るコツ:3事例

「新しい生活様式」の「身体的距離の確保」に関する制約は、特に我々の心を窮屈にするもの
人と人の間にそっと介在することで、心の穴を埋めてくれる体験のデザインがある
① 口の見えるマスク:口の動きや顔の表情はコミュニケーションの重要な情報である
② C’entro:物理サークルがマスクの代わりとなり、公共の場での心理的・身体的安心感をくれる
③ タイのレストラン:レストランと客、双方に嬉しい空間を作り出すのは、店内に居座るパンダ!?
我々の新しい生活を解決してくれるのは、ハイテクではなく、…

マスクを配るな!デザインを提供しろ!災害・緊急系スタートアップサービス5選

「便利・役立つ」に留まらない、緊急対策系スタートアップ・サービス JUDY:キットだけじゃない!ローカルに合わせた災害時必需品やコンテンツの提供 Preppi:安全とデザインを届ける災害用キット Nextdoor:ご近所さんとのオンラインコミュニケーションハブ WhatsApp:WHOとタッグを組み、チャットボット機能を開始 BioIntelliSense:ウェアラブルデバイスで正確なデータを用いた遠隔治療を提供 必要なモノだけを提供したのではなく、ユーザーとブランドの結びつきを構築し、サービス体験をデザインしている点にぜひ注目を! コロナウィルスの拡大を受け、今こそ、培ってきたテクノロジー、デザイン、クリエイティビティを発揮する必要が問われている。 特に防災や災害時の医療・サポート系のサービスは、緊急度が高く、多くの人が必要と感じるサービスだ。 本記事では、アメリカの緊急時にお役立ちサービス・プロダクトを紹介するが、「ただの便利グッズ」を羅列するわけではない。必要なモノを提供するに留まっていない点にも着目してほしい。詳しい解説はまとめで。 JUDY:キットだけじゃない!ローカルに合わせた災害時必需品やコンテンツの提供 JUDYは、2019年11月にローンチした防災グッズ・サービススタートアップ。アメリカでも山火事や洪水、竜巻などの自然災害が起こるが、6割の人は特にそれらに対して備えをしていないという。 実際に、共同創業者のSimon Huckは、アメリカ国内にいる友人たちが、各地での災害被害にあっている姿を目撃した。このことから(備えや正しい知識がないことからくる)不安や脆弱性はさらなるトラウマを引き起こしてしまう、これを免れる方法を見つけ出したい!と感じ、それがJUDYスタートのきっかけとなったのだ。 JUDYの防災キットはカバーする人数別に4つのパッケージになっている。 (公式HPより) 1番大きいものは、4人家族が緊急時に3日間は生活ができる必要最低限のグッズが含まれる。懐中電灯やラジオ、防寒系グッズ、手袋、ホイッスル、応急処置系キット、食べ物、飲み物など。 キットのケースやカバンは見失いづらいオレンジ(Safety Orange)と、防災セットには使われる色かもしれないが、どこかアウトドアブランドグッズのようなスタイリッシュさすら感じないだろうか。 さらにJUDYは知識や安全といったサービスも提供している。郵便番号と電話番号をJUDYに登録すると、その地域にあった災害系の知識や、災害アラート、災害時の状況連絡などがテキストで届く。 (公式サイトより。テキスト登録画面がポップアップメニューで出てくるが、背景は暗がりになり、マウスカーソルが懐中電灯のようになる:左側) また、テキストでは災害に関する質疑応答をやり取りすることもできる。 JUDYのキットによって、物理的に準備できた感じにするのではなく、情報提供による教育やサポートなどを含む包括的なサービスにより、精神的な準備までをコーディネートしているのだ。 ちなみにJUDYのソーシャルやコンテンツの戦略は、Rifinery29やMuseum of Ice Creamなどでの経験もあるMadison Utendahlが担当している。彼女は、JUDYローンチから数ヶ月(つまり昨今のコロナウィルスがすでに流行し始めていた頃)に、JUDYのストーリーテリングのピボットをした。 コロナウィルスについて執拗に触れて危機感を与えるのではなく、どちらかというと楽観的な人との繋がりをフィーチャーするようなメッセージングにしたのだ。 (JUDY公式Instagramより) 便利な道具を提供するだけでない、その背景にある思いやストーリーが伝わってくるブランドだ。 関連記事:【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 Preppi: 安全とデザインを届ける災害用キット PreppiもJUDY同様、緊急・災害向けキットのスタートアップだ。物置きの奥の方に隠したりする必要のないデザインの優れたプロダクトなのが売りだ。大手高級百貨店、NordStromでポップアップストアをやったり、アメリカのテレビ司会者・実業家のOprah Winfreyが選ぶお気に入り(2019年)にも選ばれたりと、注目のブランド。 (ケースもスタイリッシュ。Preppi公式Instagramより) ただスタイリッシュなだけではなく、キットの中身もアメリカ軍隊で使うレベルのものだ。5年は保存のきく水や食料、マッチ、懐中電灯、マスクなど3日以上は生活ができるセット内容となっている。ラインナップも豊富で、$100ほどの救急箱から、$5,000(約50万円)するフルセットなど。プロダクトはロサンゼルスで作られている。 また、ポッドキャストで災害、緊急関連のコンテンツも発信している。コロナウィルスの影響を受け、医療機関へN95のマスクを寄付しており、安全、コミュニティへのコミットメントが見られるブランドだ。 関連記事:2020年にヒットサービスを生み出す3つの秘訣 Nextdoor:ご近所さんとのオンラインコミュニケーションハブ Nextdoorは、近所の人とのプラットフォーム上で繋がり、それぞれの困りごとや手伝って欲しいことなどを持ち寄り、助け合うことができるサービス。2019年には、BenchmarkやTiger Global Managementなどから$123M調達して、企業評価額が$2.1Bとなり、ユニコーン企業としてサービス拡大中だ。 実際に、Nextdoorの本社はサンフランシスコだが、サービス提供範囲はアメリカだけでなく、イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国やオーストラリアなどに広がっている。 Nextdoorを使ってやりとりされる内容は、「ローカルエージェンシーから安全情報を受け取る」「使わなくなったものの販売」「いなくなってしまったペットの情報の拡散」「ただコーヒーチャットする仲間を探す」などがある。 (利用例。公式Google Playページより) 利用するには、名前と住所を登録が必要。認証システムや厳格なプライバシーポリシーのもと情報は管理されるため、信頼できる近所の人と繋がることができる。また、登録した情報も漏洩はもちろん、広告主に共有されることもないという。 昔ほど近所の人と繋がる機会が少なくなった現代で、ちょっとしたことを共有したり、オンラインでも繋がっておいたりすることで、緊急災害時にも助け合う信頼関係の構築が期待できるサービスだ。 Nextdoorはコロナ騒動を受け、3月の2週間で、ユーザーエンゲージメントが80%増加したという。地域によって若干異なる自宅隔離のルールの確認や、その地域にあるお店の情報の入手、買い物に行けない人のサポートや地元レストランの支援などの需要があるようだ。 一方で、間違った予防方法や間違った理解を発信してしまったり、鵜呑みにしてしまったりというケースもSNSなどで問題となってきた。大型インターネットサービス系は公共機関とタッグを組んで、情報の開示をするなどして対策を行ってきたが、Nextdoorもサイト内の情報パトロールは行って対策を打っている。 助け合いのツールではあるが、そこには豊富なユーザーがいるということだけでなく、信頼のもとこれが成り立っていることがわかる。便利なだけでなく、実際に安心・安全で、心理的にも信頼できるということが緊急特需という短期間の利用だけに留まらないサービスの鍵になりそうだ。 WhatsApp:WHOとタッグを組み、チャットボット機能を開始 WhatsAppは言わずと知れた、コミュニケーションツールだ。日本ではあまり使われていないが、デイリーアクティブユーザーは全世界で500万人と言われている巨大チャットアプリ。 そんなWhatsAppも全世界的なコロナ拡大に対して信頼のおける情報の提供、誤情報の取り締まり、最新情報のキュレートなどをするWHO(世界保健機関)の公式チャットボットをローンチした。 これはもちろんWHOの情報に基づいており、メッセージベースで何を知りたいかをリクエストしたり、質問したりすることができる。 FacebookやGoogleは誤情報を投稿させない、表示しないといった制御に取り組んでいるが、WhatsAppは個人間、企業のアカウントと個人間などのメッセージは暗号化されていて、WhatsApp側が制御できる範囲が限られている。 それでも身近なコミュニケーションツールとして使われているため、1度誤情報が流れると影響が大きいことが心配されていた。特にWhatsAppは発展途上国での利用も多いため、今回WHOとタッグを組み、正しいコロナウィルスに関する知識を提供するに至った。 さらにイスラエル、シンガポール、南アフリカなどの公共機関とも協力して、よりその地域にあった情報の提供をしてく方針だという。 ちなみにチャットボット関連では、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がMicrofsoft AzureのHealthcare botを使って、簡易ヘルスチェックのチャットボットを提供している。 軽い症状がみられる人はここで、確認をしたり、自宅治療のための情報を入手できるのと、チェック項目の結果によって次のアクションをどうするべきかの提示をしてくれる。 ※詳しい情報はリンク先のウェブサイトを参考ください。 世界的パンデミックに見舞われ、チャットボットのような遠隔かつ人工知能で人をサポートしてくれるようなテクノロジーがまさに重宝されているのだ。 BioIntelliSense:ウェアラブルデバイスで正確なデータを用いた遠隔治療を提供 BioIntelliScenseは医療向けモニタリング技術・遠隔治療テクノロジーを開発するコロラドのスタートアップ。Data as a Service(DaaS)プラットフォームとして、正確な症状の把握、遠隔治療の実現に貢献している。 BioIntelliScenseのBioSticker™はアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可された初めての医療用バイオモニタリングデバイスだ。 (BioSticker。公式サイトより) BioStickerは万歩計くらいのサイズで、使い捨てのデバイス。1つで30日まで使える。心臓のあたりに貼り付けることで、心拍数、呼吸、皮膚温、病状の兆候、歩き方などをトラッキングできるのだ。 データはBluetoothを使って専用ハブに送信。そこからBioIntelliSenseのバイオクラウド、Remote Patient Monitoring(RPM)に送る。それをドクターが参考にし、診察をする。これで、遠隔ながら予防治療、経過観測、自宅療法などが可能になるのだ。 今や3分の1アメリカ人がフィットネストラッキングデバイス使っていると言われている。ヘルスケア機能のあるウェアラブルデバイスからデータを収集することで、コロナ状況下では以下のような効果が期待される。 より正確な感染率などのトラッキング 体温や心拍数などの正確な情報を持って、遠隔にいるドクターによる診察、治療を受ける 感染してしまったドクターの素早い検知 など 今回のパンデミックでは、医者・床数が一部地域で足りなくなっている。こういった遠隔治療が一役買うだろう。そしてこういったサービスが一般的になれば、特殊なパンデミックの状況下だけでなく、日頃の健康管理ももっと便利でシンプルな体験となる。 関連記事:2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選 まとめ 便利なモノというだけではない、緊急系サービス・プロダクトを紹介した。「マスクがほしいと言われてただのマスクを提供した」のではないということがお分りいただけただろうか。 筆者も調べてみてわかった部分もあったのだが、今回紹介したサービスは緊急災害関連・医療関連でありながら、ユーザーとブランドの結びつき、関わりが高い。 通常、緊急災害関連・医療関連サービスは、人命に関わることでもあるので、正しく、深い専門性や技術が問われることが多々。そのため低関与型と分類されることがしばしばであったと思う(例:防災グッズ、薬など)。 しかしながら、今回紹介したサービスは高関与型に近いものだと捉えることができる。なぜなら専門性、便利さだけじゃないユーザーを考えた付加価値があるからだ。もう少し具体的にしてみると、以下のようなことができていることがポイントになっているのではと、筆者は考える。 今までのやり方、あり方を疑うこと(防災グッズはダサいもの。公共機関はテキストするような身近な存在ではない。治療は医者にあって病院で行うもの) 体験に基づいてサービスを作っていくこと(災害を恐れるくせに備えをあまりしていないという友人。デザイン的に隠さなくてもいいような防災グッズはないのかという問い) ユーザーの心理まで考えたデザインをしていくこと(隣人に頼るための安心感。信頼できる公共機関の情報が身近に分りやすく、その上親しみやすいコミュニケーションで入手できる) モノだけじゃない、コトを提供する(防災グッズ売って終わりではなく、正しい知識を学んで備える。健康状態を測るデバイスだけでなく、データ・遠隔技術を用いてより良いサービスを提供) こういった、高い専門性を備えている上に、高関与なサービスなのであれば、ロイヤルユーザーが長期につく(離れづらい)、まさに最強ブランドになるのではないだろうか。 我々btraxはまさにこのようなユーザーの心を引く、深く刺さるサービス開発・デザインのお手伝いをしている。また、こういったサービス作りに欠かせない、デザイン思考を中心としたマインドセットの布教活動もしている。さらにグローバルを意識したサービス作り、サービス拡大も掛け合わせてデザインできるのもbtraxの強みである。 筆者はマーケターではあるが、デザイン思考を用いたワークショップに参画したり、その考えをマーケティングにも応用したりしてきた。特に便利なもので溢れかえっている日本市場では、関与を作り出せるサービス・ブランドが選ばれるようになると考える。 ぜひ、どの業界・業種の方もこういった考え方や実際のサービス開発、ブランド作りを一緒にしていきましょう! お問い合わせはこちらよりどうぞ。 参考 ・Inside the New Tech-Savvy Emergency Kit JUDY: Everything You Need to Know […]

2020年から最大の企業資産はクリエイティブ人材になる

これから人間が最も価値を発揮できるのはクリエイティブな仕事
正確性やミスをしないことは、もはや強みではない
創造性を育む企業カルチャーをと仕組みの整備を

AIやロボットの発達で、人間の仕事がどんどん奪われていく。おそらく、暗記や、計算、データ分析などでは既にコンピューターにお任せした方が良い。単純作業系も、ロボティックスが発展するに合わせて、人間が行う部分は減っていくだろう。しかし、自動化に関するテクノロジーが進むことで無くなる仕事があると一方で、新しい仕事も生み出されると予測される。
マッキン…

2020年にヒットサービスを生み出す3つの秘訣

世界的にヒットしているサービスやブランドにはどのような共通点があるのだろうか?スペック重視の時代は随分前に終わりを告げ、プロダクトのサービス化が進んでいる。そのような状況に加え、シェアリングエコノミーやD2Cなど、ユーザーを取り巻く環境は急激に変化している。
世界に先駆けて、次のヒットを生み出すことにフォーカスを当てているシリコンバレーを始めとしたアメリカの企業は、2020年以降、どのような要素を含む商品やサービスがユーザーに喜ばれるかを日々研究している。
我々btraxも、日本企業向けにグローバル…

2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選

IoTは人の生活に密着しているもの。2019年に話題となった注目されているIoTを知ることで人の価値観の変化を探れる PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi:快適・便利なデジタル靴紐 Oculus Quest、Oculus Go:VRはここまで身近なものになってきている CasperのThe Glow Light:良い睡眠のための光を提供 Flic:様々な操作をボタン1個でシンプルに NorthのFocals:おしゃれが当たり前のスマートグラス 2020年を迎えるにあたり、ぜひ最新IoT情報をアップデートしていただきたい。IoTは人の生活により密着しており、ライフスタイルや嗜好、価値観がどのように変わっているかを垣間見ることができる。 さらに、ここ、サンフランシスコ・シリコンバレーにはb8taやTarget Open Houseといった、最新IoTガジェットをキューレートしてショールーム的な展示や販売をしているお店があり、最新IoTと触れ合う機会が多い。 アーリーアダプターも多いので、IoTに限らず常に最新テック系サービスを生み出し、育てていくエコシステムがあるのだ。 関連記事:世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力 そこで今回は、IoTやテック系サービスに関して日本より数年先を行くサンフランシスコ・シリコンバレーを中心に、2019年に話題となったIoTガジェットを紹介する。 PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi PUMA Fiはドイツの大手スポーツメーカー、PUMAが開発したスマートスニーカーだ。独自のFit Intelligence(Fi)技術を活かして、靴紐のない、『デジタル靴紐』なるものを生み出した。 下の動画を見ていただければわかる通り、コードのようなものはあるが、結ぶ必要のある靴紐はない。靴の甲の部分にあるセンサー部分を上下にスワイプすることで、『デジタル靴紐』のきつさを何段階かで調整できる。 また、スマートフォンやスマートウォッチからの調整も可能で、色々なシーンでの活用を想定したデザインになっている。例えば、旅行の際、飛行機に乗っている時は足の浮腫が気になった時、あるいはリラックスしたい時には靴紐は緩め、歩いて移動中の時は靴紐を絞める、といった調整が簡単にできるのだ。 実はPUMAは1986年にもコンピューターを搭載したスニーカーを開発していた。それ以来、テクノロジーを駆使したスマートスニーカーを追求してきた。今回のFit Intelligence技術は、よりスマートで、軽く、もっと一般に向けたものになっているという。 実際に、2019年4月から、応募によるベータ版の販売が地域限定でされており、すでに30,000人の登録があった。販売は2020年の春を予定しており、値段は330ドルとなっている。 こういったスマートスニーカーが出ると、映画バック・トゥー・ザ・フューチャーの世界が現実になっている!と騒がれる。このプロダクトは、映画が公開された1989年に、人々が想像していたということだ。 新しいトレンドの創出は人間の想像があってのことであり、この想像が現実となり、もう数万円でも手に入るような時代になっているということがPUMA Fiの例からもお分かりいただけるだろう。 VRゲームを格段に身近なものにしたOculus Quest、Oculus Go OculusはVRヘッドセットとそのソフトウェアの開発・販売を行うスタートアップだ。 2012年にカリフォルニア州アーバインで創業すると、ゲームコンソール用VRのメジャープレイヤーとして成長を続け、2014年には20億ドルでFacebookの傘下となった。 買収後3年ほどは売上増加に繋がらず、Oculus買収はFacebookの目の上のたんこぶか、とも思われたが、2019年、Oculusが起死回生の一打として貢献することとなる。 2019年第三四半期、Facebookの広告以外による売上が2億6900万ドル(約269億万円)に達し、前年比43%の増加となった。その主な要因がまさに、Oculus Questなのだという。 Oculus Questは、より気軽で、使いやすいVR体験を提供している。今までの本格的なVRゲームは、パソコンやケーブルの接続が必要だったが、Oculus Questはパソコンも、ケーブルも不要になった。しかも価格は399ドル〜。これは、今までのゲームコンソールと比べて大きく変わらないどころか、むしろその技術力の高さを考えると、リーズナブルなのではと思ってしまう。また、スターウォーズシリーズのゲームも人気の理由だ。 さらにQuestは2019年だけで、130万台売り上げるのではないかという予測も出ている。 また、Oculusはゲームだけでなく、映画や動画を楽しむためのVRヘッドセットも開発している。Oculus Goは、映画や動画などの視聴に特化した、より持ち運びがしやすいモデルだ。別のユーザーと同時に、バーチャルでVR視聴することもできるようになっている。価格は199ドル〜なので、VR初心者でも、より手を出しやすくなってきている。 2018年5月に発売してから販売出荷数が約100万を目前にしているという情報まである。 ちなみにOculusは、ソーシャルグッドのためのVR開発にも力を入れていて、車椅子の人がいろんなところに旅行できるようなVRや、アメリカの黒人に関する歴史についてよりリアリティを持って学べるようなVRコンテンツがある。Oculusの活躍の幅はゲームに留まらないようだ。 ところで、VRヘッドセットはIoTという認識はあまりされないのかもしれないが、インターネットに繋がっているもの(ゴークル)と考えれば含まれる、という解釈で追加した。2019年を通して注目のガジェットだったことは間違いない。 睡眠を考え抜いたCasperがデザインしたライト、The Glow Light CasperはマットレスのD2C(Direct-to-Consumer)ブランドのパイオニア的スタートアップだ。年に創業し、累計約3億3970万ドルの資金調達をしてきた。2019年にはユニコーン企業の仲間入りし、IPOも噂されている。 Casperは主力製品であるマットレス以外にも、枕、ベットフレーム、シーツなど商品ラインナップを拡大してきた。そして2019年に、The Glow Lightというポータブルスマートライトをローンチした。価格は129ドル。 The Glow Lightはベッドサイドテーブルなどにも置ける、小型のポータブルLEDライトだ。人の睡眠より快適にするための様々な特徴がある。まず、点灯・消灯はライトを上下にひっくり返すことで可能だ。ライトは眠い時でも簡単にひっくり返せるくらい軽いので、従来のボタンを押したり引いたりする動作よりも簡単だ。 また、リラックスして睡眠に入れるように、The Glow Lightの光は温かみのあるものになっている。光は徐々に弱くなり、眠りに誘ってくれる。 さらに、起床の時間を設定しておけば、その時間に優しい光によるアラーム機能も果たしてくれる。時間の設定は専用アプリからカスタマイズできるようになっており、就寝の時間も入れておけば、睡眠リズムに沿って光によるサポートをしてくれるのだ。 The Glow Lightのデザインも人の睡眠を徹底的に考え抜いたものになっている。どんなインテリアにも馴染むデザインでありながら、Casperの心地よさも感じるフォルム。子供でも持ち運べるサイズ感。 光の強さは、ライトを回して調整できるのがわかりやすく便利。夜中にちょっと起きて何かするときも、ライトを軽く振れば豆電球程度の光がつく。これは、ユーザー観察やプロトタイプを重ねて開発されたようだ。 Casperはただのマットレスブランドではなく、人の睡眠をデザインするブランドだ。また、D2Cビジネスの根幹には、ユーザーとより近い距離で、彼らのフィードバックを得られるというメリットがある。 ユーザー中心でプロダクトをつくってきたCasperだからこそマットレスという主力製品に留まることなく、ここまで考え抜かれたThe Glow Lightが生まれたのではないだろうか。 ボタン1個というデジタルデバイス、Flic Flicはスウェーデン、ストックホルム生まれのスタートアップ。2013年に創業した。累計調達金額は約110万ドル。従業員も100人にも満たない規模ではあるが、今までに20万個のFlicを110以上の国で販売してきた。スマートフォンアプリや家電用のスマートボタンというシンプルなデバイスなのに、ここまで拡大している。 FlicはBluetoothでスマートフォンと連動させて使う。Flicの専用アプリから、ワンクリック、ダブルクリック、長押しといったボタンを押す動作をトリガーに、どのアクションを起こすかのカスタマイズをする。例えば、かかってきた電話をとったり、音楽を再生したりと、設定次第で使い方の幅は様々だ。 Flicは複数個、いろんなところに設置するような使い方も想定されている。つまり部屋の中だけでなく、自転車や車のハンドルなど色々な場所にFlicをつけておけば、ボタンひとつでコントロールできるもの、シーンが増える。 現在は、スマートフォンのコントロールだけでなく、家にあるスマート家電などの操作もできるようになっている。スピーカーや照明、テレビなど、異なるメーカーのデバイスであっても、Flicをリモコンに、操作できるようになるのだ。 実は2019年のCES(Consumer Electronics Show)で、GoogleがスマートボタンによるGoogleアシスタントのデモがお披露目されていた。ボタンによるスマートライフの構想が徐々に拡大・浸透してきているのだ。 関連記事:主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント Flicにはワンクリック、ダブルクリック、長押しの3つの操作しかない。それをスマートフォンや、スマート家電と接続することで、シンプルでシームレスなスマート体験が生まれる。 ボタンが1つしかないと聞くと、不便さや不十分さを感じるかもしれないが、ユーザーがよく使う操作に絞ることで、リモコンより格段に便利に感じるのだろう。しかもFlicは色々なところに設置できる(設置しても気にならないデザイン)。 これは少し筆者の感覚の話になるが、Flicのボタンは、「今までのボタン」っぽい感じが残っている。押した時の「クリッ」という音と感覚は、どこか無限プチプチのような、「なくても問題はないが、なぜか押したくなる感じ」がある。このような定性的な要素も、昨今のIoTガジェット激戦の中で差別化を図るための特徴となってくれていることだろう。 おしゃれスマートグラス、NorthのFocals ウェアラブルデバイスとして、スマートグラスも開発が進められてきたが、そのほとんどが「技術的にはすごいけど、なんかダサい、サイボーグ感」がなかっただろうか。 NorthのFocalsは、スマートグラスのグラス(メガネ)の部分のデザインにこだわったウェアラブルデバイスである。ぱっと見た感じは、おしゃれなメガネという印象だ。Focalはホログラム技術により、スマートフォンと連動した通知や情報をメガネのガラス部分に映し出してくれる。メガネの度あり度なし、どちらでも可能だ。 Northは2012年にカナダで生まれたスタートアップ。2019年2月には150人の従業員を解雇したり、カナダ政府からの投資が中止となるなどのニュースがあったが、同年5月には4000万ドルの資金調達へと持ち直した。現在はAmazonやIntelからの資金調達を含め、累計額は1億1960万ドルとなっている。 Northのミッションの1つは、テクノロジーやデジタルコンテンツと現実世界の境目を無くすということだ。インターネットを使っていると、現実世界から遮断される。また逆も然り。このような状況に、なるべくグラデーションをもたらそうとしている。Focalはそのためのツールだ。 (ここサンフランシスコでもNorthのショールームトラックが来ていたので筆者も試してみた) 使い方も複雑なものではない。Northのスマートリングと専用アプリと連動させれば、細かい操作や設定も可能となる。スマートリングはコントローラーになり、アプリを開かなくても、レンズに表示された項目の選択が可能になる。 Google Mapのナビ機能、Uberの配車リクエスト、カレンダーやメッセージなどの通知、音声認識によってメッセージへの返信もできるようになっている。 もちろん、耐水性もあり、UV効果やサングラスに切り替えることもできるので、普段使いが前提にデザインされていると言える。 価格は599ドル〜(2019年12月現在生産がストップしている様子)。まだ身近で使っている人を見かけたことはないが(もしかすると普通のメガネっぽすぎて気づいていないだけかもしれない)、Apple Watchのメガネ版と言われているあたり、徐々に浸透してくることが期待されている。 まとめ:IoTを考え、人の価値観を考え、サービスを作ること IoTは私たちの生活に確実に入り込んできていて、IoTに人々の新しい価値観が詰まっている 『IoT』が2017年、2018年ごろ、多用されていたが、2019年は前ほど聞かなくなった。一方でApple Watchやスマートスピーカーなど、多くの商品が世に出て、使っている人も増えてきたと感じていないだろうか。 以下、Google Trendsを見ていただいてもわかる通り、IoTは2017-2018年あたりをピークに、2019年は減少傾向にある。一方で、Apple WatchはAppleの新製品発表会のたびに増加し、通年通しても徐々に増えてきていることがわかる。 つまり、IoTというより、Apple WatchやGoogle Homeといった、より具体的な製品としてIoTが生活に浸透してきていると考えられる。 IoTを考えることは人の価値観を考えること 多くのIoTガジェットは、エンドユーザーに直接接触するものであり、彼らの生活に密着している。スマートスピーカーなどは、声で指示を受けて家事をこなし、生活を豊かにしてきた。IoTは新たな価値観を作り出してきたものだ。それと同時に、注目されているIoTを知ることは、人の価値観がどう変わってきたかを知れるきっかけでもある。 そして、価値の創造や提供に欠かせないのが「体験」だ。今回紹介したブランドはどれもものに留まらないサービス・体験の提供をしている。 ただハイテクな靴を追い求めた訳ではない、ただ機能が優れたライトを作った訳ではない。そのベースに人を考えた考察があるから、人に深く刺さり、イノベーションの創造へと繋がっているのだ。 人を中心にサービスを考える、というのは頭でわかっていても、今まで培ってきた技術力や社内の組織的な課題、時に無意識的な価値観が邪魔して上手く実行できないことも多い。btraxではそのような目的を持ちつつも、自社だけでは解決しづらいという方々を多くサポートしてきた。 […]

エクスペリエンスエコノミーにおける小売業の最高の体験の提供

小売業にとって、商品やサービス自体の金銭的価値ではなく、あらゆるタッチポイントでの購入やインタラクションとその体験を通じて、消費者にポジティブな感覚・体験をいかに提供できるか283206_Thumbs_Up_R_purpleが、競合との差別化施策として考えられるようになりました。SNSやブログなどソーシャルメディアを通じて、消費者個人が情報を発信したり、いいね!を押したり、一瞬で多くの人に拡散され、企業と直接コミュニケーションを取ることも簡単になりました。…

【クレジットカード革命】Apple Cardから学ぶ革新的UXデザインのポイント

もしAppleがクレジットカードを作ったら? シンプル、クール、使いやすい。こんな形容詞が思い浮かぶAppleというブランドが、もしクレジットカードを作ったらどんなものになるだろうか? 今年の初めに発表されたAppleが提供するクレジットカード、Apple Cardが北米ユーザー向けに限定的提供を開始した。これにより、現在のところ、アメリカ在住の特定のユーザーがApple Cardを手にすることができる。*米国時間8月20日に他のアメリカの全ユーザー向けにリリース開始 選ばれたユーザーにはメールにて案内が届き、iPhoneのWalletアプリ内から申し込む。ラッキーなことに自分も選ばれたようなので、早速申し込み、使ってみた。 ↑ Appleから特定のユーザーだけに送られてくる招待メール これまでのクレジットカードの常識を覆す体験満載 では、Apple Cardは何が特別なのか? 実は、そのカード自体から利用体験、アプリとの連動性など、すべてのタッチポイントにおいて、デジタルな現代に最適な体験がデザインされている。 特に、これまでのクレジットカードは、銀行などの金融機関が発行しているものがほとんどで、顧客体験もその延長線上にあった。しかし、以前の「銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は?」を読んでも分かる通り、金融機関が提供する体験はお世辞にも良いものではない。 今回、その体験をAppleが思いっきりリ・デザインすることで、これまでの常識を覆すようなスムーズな利用体験をユーザーに提供している。そのいくつかのポイントを紹介する。 アプリ上から一瞬で申請、数秒後から利用可能 通常アメリカでクレジットカードを申請する際には、銀行の店舗やオンラインで必要事項を入力し送信する。その数週間後に審査結果が郵送され、承認された場合はカードが同封され、却下の際にはお詫びの手紙が添えられている。そのプロセスに要する時間は少なくても数週間。 これがApple Cardの場合、Walletアプリにクレジットカードを追加する要領でできてしまう。Appleから選ばれたユーザーは、Wallet内の➕アイコンをクリックすると、申請プロセスに進むことができる。 必要事項を記入し、その数秒後に承認か否かが表示され、承認された場合、Apple Pay経由で即座に利用可能となる。そして、物理的なカードは、その数日後に送られてくる。これにより、プロセスに要する時間の大幅短縮と、カードが届くまで待っている時間がなくなった。 ↑ カードの申請はWalletアプリ内から行う 番号が記載されていないチタン製のカード 自分の場合は、アプリで申請してから5日後にFedExにてカードが送られてきた。ちなみにカードの発送状況もアプリから確認ができる。 中心にAppleのロゴが刻印された真っ白なパッケージを開けると、中はインスタを思わせるカラフルなデザインが施されている。そしてその真ん中に真っ白なカードが同封されている。 驚くべきことに、このカードには通常のクレジットカードにはあまり見られない工夫がされている。まず、どこにもカード番号も有効期限も記載されていない。表面にAppleのロゴと所有者の名前、裏面には発行銀行のGoldman SachsのロゴとMasterCardのロゴだけだ。 これはカード番号が無いというわけではなく、実はアプリ内でカード番号と有効期限などの情報を確認することができるようになっている。オンラインショッピングなので番号が必要な際には、その方法で情報が獲得可能。 ↑ パッケージに同封されたカードには番号も有効期限も記載されていない 卓越した開封体験とソーシャルシェア性を提供 最初はなぜ番号が記載されていないのか?と思ったが、物理カードに番号を記載しないことで、落としてもセキュリティー的な部分での優位性が保たれるし、何よりもインスタなどのSNS経由で、ゲットしたことを友達に自慢しやすくなることに気づいた。 まさにAppleらしい逆転の発想とシンプルさの追求がされている。 また、カードの素材はチタンで、一般的なプラスチックのものよりもかなりの重厚感がある。ちなみに、CompareCards社のリサーチによると、アメリカ国内のクレジットカード利用者の38%が、素材でカードを選ぶと答えており、ミレニアルになるとその割合は53%にまでアップするという。 チタンのカードは消費者の所有欲を掻き立てる。加えて、容易に切ったりすることができないため、内蔵されているチップを切り取ることが難しく、セキュリティー向上の役割を果たしているとも言える。 開けてびっくりの演出と、手で持った時の満足感がしっかりと設計されている。ユーザーとカードとの最初の接点である、開封体験も総合的に上手にデザインされているのもさすがAppleと感じた。 参考: D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン View this post on Instagram Quite happy so far. #applecard #applecreditcard A post shared by brandonkhill (@brandonkhill) on Aug 19, 2019 at 4:32pm PDT 革新的なアクティベーション方法 そして、Apple Cardの最も革新的な体験の1つが、そのアクティベーション方法だろう。通常の場合、新しいクレジットカードを利用する前に、カードに記載されている電話番号に電話するか、サイトに行って番号を入力する。 これは、手間がかかるだけでなく、セキュリティ的に甘い。なぜなら、本人ではない人がもしそのカードを受け取り、アクティベーションしたとしても、本人確認される事は稀であるから。 これがApple Cardの場合はどうなっているのか。驚くべきことに、カードを登録したWalletアプリが入っているiPhoneをパッケージの下の部分に当て、画面に表示されたボタンをたっぷするだけ。そのプロセスに要する時間はおよそ5秒。 それもパッケージがそれぞのユーザーのWalletアプリと紐づいているため、他のユーザーのiPhoneを当てた場合は、アクティベーションができないようになっている。 カード所有者本人のiPhoneを利用しない限りカードを使うことができないため、かなり安全な設計が施されている。そして何より、電話したりサイトにログインしたりせずに一瞬でアクティベーションできるのが最高だ。 ↑ ユーザーのiPhoneをパッケージ部分に当てるだけで一瞬でカードがアクティベートされる ユーザー体験のコアはWalletアプリとの連動性にあり そして、ここからがApple Cardが提供するユーザー体験が最も大きな価値を生み出している要因。Walletアプリとの連動性である。 もともとWalletアプリは、他のクレジットカードなどを登録することで、Apple Payを通じてキャッシュレス決済を可能にする役割としてiPhoneにインストールされている。しかし、自分を含め、アメリカでApple Payを使う機会は意外と少なく、Walletアプリもほとんど使ったことがなかった。Apple Cardに出会う前までは。 実際にApple Cardを店舗で使ってみる。そうするとその直後に利用履歴が自動的にWalletアプリに表示される。それも、金額だけではなく、利用した場所の写真とロケーション情報のマップも。 また、利用した商品のジャンルによってカードとグラフがカラフルに色分けされることで、どのような内容に利用しているのかが一目でわかるようになっている。また、それぞれの利用金額に対するキャッシュバックの額も表示される。 ちなみに、物理カードは1%、Apple Payを使うと2%、Uber、UberEats、およびAppleで買い物をすると3%のキャッシュバックとなっている。 このように、利用状況を即座に可視化することで、リアルタイム性と透明性を高め、ユーザーの安心感とセキュリティ向上を達成している。 ↑ 利用状況とそれぞれの詳細が一目でわかるWalletアプリ Less-is-moreを体現した”無い無い尽くし”が体験の質を高める 生前よりスティーブ・ジョブスもAppleのデザイン哲学の1つとして掲げている”Less-is-more (少ない方がより多くを得られる) “ は、このApple Cardにもしっかりと受け継がれているように感じる。 参考: Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 そこには、ミニマルなデザインの裏に、大きなメリットがいくつも隠されている。例えば、カード自体に番号が表示されていないのは、上記の理由に加え、もし番号が漏れた際の対策にもメリットを生み出す。 カードの番号はWalletアプリ内でいつでも変えることができるため、万が一番号を変えたいときは、アプリ経由でリクエストすれば良い。また、その際新しい番号が既存のカードにクラウド上で紐づけられるため、物理的なカードを取得し直す必要がない。 こうすることで、カード会社に電話をする手間、カード再発行の手間とコストを抑えることに成功しているのだろう。また、カードメンバー規約等もデジタル化されているため、通常であればカードに同封される分厚い書類が存在していないのも良い。 Apple Cardが改善した体験 カードの申請: Walletアプリ内から → 手間が減る 利用開始までの待ち時間: Walletアプリ内からすぐに利用 → 待ち時間無し […]

15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと

日頃よりbtraxのオウンドメディアであるfreshtraxをご愛読いただき誠にありがとうございます! 我々btraxは2019年8月9日をもって、創立15周年となりました!シリコンバレー・サンフランシスコという、多くのスタートアップやビジネスが苦戦を強いられている環境で、15年という間、ビジネスをやってこれたのはいうまでもなく、日頃よりご支援をいただいているみなさまのおかげでございます。 感謝申し上げると共に、これからも日本とアメリカというグローバルな舞台で、みなさまのイノベーション創出やグローバルへの進出サポートに尽力してまいります! さて、今回はこんな節目の時ですから、「15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと」と題して、btraxのあんなことやこんなことについてご紹介いたします。 1. 創業当時のウェブサイトはこんな見た目 btraxの記念すべき最初のウェブサイトは2004年に公開されました。当時流行りのフルFlashのサイトです。UIはシンプルですが、スムーズなインタラクションを実現するために、その裏には複雑なプログラミングが書かれていました。 ぜひ現在のbtrax会社HPと比較してみてください。 2. btraxでの勤続年数がCEOの次に長い社員は、犬! 実はCEO ブランドンの愛犬、クーパーはbtrax創業時から社員(犬?)として参画しているメンバーです。エイプリルフールの時は、CEOに抜擢されたこともありました。 3. btrax東京オフィスは2013年に開設 btraxはアメリカ、サンフランシスコで創業した会社です。日本法人はそのあと、2013年にスタートしました。現在は青山にオフィスを構えております。 (東京オフィスには素敵なルーフトップも!) 4. btraxという会社名はCEOブランドンの音楽好きから 意外と知られていないbtraxという名前の由来。これは、ブランドンの音楽好きからきています。実際に彼は、デザインを勉強する前に音楽を勉強していたこともあるくらいです。 btraxのtraxは音楽のトラックから。bはレコードの「B面」に由来しています。A面がbtraxのクライアント、B面がそれを引き立てるbtraxを表しており、創立以来ずっとbtraxです!ロゴもレコードっぽくなっているのにお気づきいただけたでしょうか。 5. btrax卒業生の4名がスタートアップを始めている btraxは、決して大きい会社ではありません。なので社員全員が責任感と権限をもち、スタートアップ的スピード感を持ってビジネスを行っています。また、サンフランシスコ・シリコンバレーというお土地柄もあってか、btraxの元社員が、卒業後に起業するパターンも少なくないのです。 起業されたbtrax卒業生の方々には、過去、freshtraxでインタビューさせていただいたこともあります。これまでに少なくとも5名の元スタッフ/インターンが起業しています。今後もこんな”btraxマフィア”がどんどん増えていく予定です。 (右から現IN FOCUS CEO 井口忠正氏、ブランドン、現Goodpatch CEO 土屋尚史氏) 関連記事:デザイナーに必要なのはセンスか努力か – 井口忠正×Brandon 2人のデザイン会社CEOが語るデザイナーに必要な才能 関連記事: レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした 関連記事:2人のインターン生が与えてくれた事 6. 100名以上の海外アントレプレナーたちをサンフランシスコへと誘致 btraxは2010年より、Japan NightやAsian Nightといったスタートアップピッチイベントを企画、開催してきました。その主たる目的は、海外のアントレプレナーたちを、ここサンフランシスコへ誘致し、よりグローバルを意識したスタートアップの成長を支援するためです。 さらに、2016年からは福岡市とパートナーシップを組み、起業家育成プログラムを実施。日本での研修に加え、サンフランシスコでも現地でデザイン思考やピッチなどに関する理解を深めていただき、グローバルアントレプレナーへの道を支援しています。 詳しくは事例紹介もご覧ください。 7. freshtraxは日米通算1,263の記事を公開 2009年から始まったbtraxのオウンドメディアfreshtrax。お陰様で、freshtraxを通してbtraxを知っていただくことも非常に多いです。これからもみなさんに愛読していただけるように、サンフランシスコ・シリコンバレーから新鮮かつユニークな情報を発信し続けます! btraxのTwitterやFacebookアカウントではfreshtraxの最新情報をいち早くお届けしております。 8. btraxがこの1年で使ったポストイットの枚数は約43,720枚 btraxが提供するイノベーション・ブースタープログラム(グローバルイノベーション創出を習得することを目的とした、デザイン思考に基づくワークショップ型プログラム)では、ブレインストーミングやアイディエーションといった、ポストイットを使ってアウトプットをだすシーンが多々あります。 気がつけば約43,720枚のアイデアを出していました! 9. btraxの会議室にはフォントの名前がついている サンフランシスコ本社はサンフランシスコ市内でもスタートアップが軒を連ねるSOMA(ソーマ)と呼ばれるエリアにあります。執務エリアに加えて、6つの会議室があるのですが、その全てにタイポグラフィーの名前がついています。 その理由は「btraxはデザイン会社だから」。タイポグラフィーはデザインにおけるもっとも重要な要素の1つであります。また、btraxは「全ての社員が皆、デザイナーである」というフィロソフィーを持っています。会議室の名前からも、そのことを思い起こさせてくれるのです。 10. btraxのハロウィンは毎年ガチ度が増している btraxには非常にクリエイティブなメンバーがいます。そのスキルは仕事だけでなく、社内イベントでも発揮されており、恒例行事であるハロウィンパーティではコスチューム大会が激戦になっています。 11. 毎週カルチャーリーダーへの表彰がある btraxでは毎週、会社のコア・バリューに貢献した社員を表彰しています。これはCEOや人事が選ぶといったものではなく、社員が社員を選びます。もちろん、社員からCEO、人事が選ばれることもあります。 (btraxのコアバリューである「Empowered by Creativity」「Take Ownership」「Communicate and Collaaborate」「Be Playful」の観点で選ばれ、社員同士、上のカルチャーカードを送り合う。) 12. btraxはビジネスの軸を3度大きく変えてきた btraxはもともと、ウェブデザインの会社として創業しました。そのあと、よりグローバルを意識した、マーケティングやブランディングを行うようになります。そして、現在、デザインはより広義なもの になり、UXデザインを中心としたビジネスへと転換しました。 現在は、シリコンバレーと東京のネットワークを活かし、グローバルを意識したイノベーション創出への貢献を強みとするデザイン会社へと成長してまいりました! 13. 2014年からイノベーション・ブースターサービスを開始 btraxの中核サービスである、イノベーション・ブースターサービスは、3日間から2ヶ月でグローバル・イノベーションの創出プロセスを習得することを目的としたサンフランシスコで行うワークショップ型プログラムです。参加者は累計200名以上。 現在も株式会社野村総合研究所(NRI)様やSOMPOホールディングス株式会社様など、多くの企業様から参加いただいています。 詳しくは過去事例もご覧ください。 14. 2018年からデザインスプリントサービスを開始 Google Venturesが、サービス開発の高速手法として発表したデザインスプリント。btraxでも、デザイン思考をベースとした、デザインスプリントサービスを提供しています。 1〜2週間という短時間でプロダクトアイデアの検証やプロトタイプ作成、リサーチ、課題整理、ソリューション決定、プロトタイプ構築、ユーザーテスト等を実施していきます。 関連記事:【デザインスプリント入門】話題の高速サービス開発法とは 15. そして15周年の年、CEOブランドンの抱負はbtraxのビジョンステートメントを一新 15周年という節目の年に、btraxのビジョンステートメントもアップデートいたします! ビジョン:“Provide inspiring experiences” – ワクワクする体験を提供する ミッション:“Inspire innovation through the power of design” – デザインの力でイノベーション創出に貢献する タグライン: “Design to Inspire” これからもbtraxをどうぞよろしくお願いいたします!! btraxのサービスを詳しく知りたい方、サービスにご興味をお持ちの方、お気軽にこちらまでお問い合わせください。 また、btraxでは現在、一緒にイノベーション創出を担ってくれる仲間も募集しております♪

お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

デザイン思考のゴールの1つが、顧客の視点に立って物事を考え、そのニーズに即した商品やサービスをデザインすることになる。
しかし、これを聞いた多くの人々が「そんなの以前からやっているよ」と言う。そう、世の中の多くの企業は、すでにお客様からの意見を最優先し、それに即したサービス作りや改善を日々行なっている。
では、なぜ今さらデザイン思考が特筆すべき存在になっているのだろうか?おそらくその理由は、いわゆる ”User Centered Design (ユーザー中心デザイン) ”と呼ばれる概念を通じて、ユー…

シリコンバレーでは教育が始まっている“STEAM人材“とは?

STEM人材という言葉を聞くようになって久しいが、ここ最近、STEAM人材の重要性が高まっていることをご存知だろうか。
STEM人材は、情報社会において必要とされる人材を指す。産業革命等の変革を繰り返してきた世界経済では、テクノロジーの発展がもたらす情報に価値が置かれるようになり、情報を司るスキルが必要だと言われてきた。
関連記事:プログラミングが学べるサンフランシスコのスクール7選
しかし、いざ情報時代が到来すると、次に注目されたのは、人間らしさとテクノロジーの関係性であり、STEAM人材だ。例え…

ジェットブルー航空: XデータとOデータの統合によるエクスペリエンス革命

Why Experience Matters? なぜ エクスペリエンスが重要なのか
IT業界のみならずビジネスの現場においても、その重要性が活発に議論され始めてきたのが、ここ
10年ぐらいのことでしょうか。
最初サムネイルXdata Odata”カスタマー”エクスペリエンスや”ユーザー”エクスペリエンスというキーワードで、商品やサービス自体の金銭的価値ではなく、それらの購入や利用過程とその体験を通じて、消費者に対しポジティブな感覚的価値・体験をいかに提供できるかが、競合との差別化施策として…

デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは?

デジタルテクノロジーの進化に合わせて、こちらシリコンバレーの企業の勢いがより加速しているように感じる。大型M&AやIPOのニュースが毎日のように流れ、時価総額や評価額の最高記録更新も続いている。
その大きなファクターの1つとなっているのが、ユーザー数とそこから獲得しているユーザーデータ、そして優れたユーザー体験だろう。(参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは)
ユーザーの時間をお金に変換してる現代の企業
GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) に…

AI x 保険でユーザー体験を変えるフィンテックスタートアップ4選

AI(人工知能)の実用化が様々な分野で進められています。その中でも保険業界は特にAIとの相性が良く、AI導入に対する期待が大きくなっています。その理由の1つに、保険会社が抱える個人の体調情報や医事統計のデータをはじめとした、契約リスクを判断するための膨大な顧客情報データが関係しています。
AIは大量のデータを分析し、そこからデータに共通するパターンや傾向を導き出すことを得意としています。これにより、保険業界で扱われる大量のデータを人が管理して人が判断するという業務そのものが自動化されていくと考えられ…

寿司職人から学ぶ究極のUXデザイン6つの極意とは

ユーザー体験のデザイン、いわゆるUXデザインのフィールドは、どうしても欧米が進んでいると思われがちである。しかし、実は、日本的なおもてなし精神こそが、最も優れたUXデザインに直結しているのではないかという説がある。まあ、その説は自分自身が提唱しているのであるが。
こちらアメリカ西海岸では、寿司レストランがかなり定着しており、食事自体だけではなく、最近ではそこで得られる体験に注目が集まっている。特にカウンターに座り、板さんとのやりとりをしながらゆっくりディナーを楽しむ仕組みは、アメリカでもかなり評価さ…

多様なキャリアを持つUXデザイナーが語る「ユーザー中心デザインの重要性」【btrax voice #11 KJ Kim】

btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。
今回のインタビューは、UX DesignerのKJ Kim 。今回KJには、『ユーザー視点のデザインの重要性』というテーマで、ユニークなキャリアパスを歩んできたKJがどうしてUXデザイナーになったのか、また様々な環境でキャリアを積んできたからこそ気づいたユーザー視点の重要性について伺いました。
Who is KJ?

K.J. Kim (金匡宰)
btrax, Inc. UX Designer
Pratt Institute (…

アメリカの大手ブランドから学ぶビデオマーケティング事例3選

みなさんがネット上で最近見たコンテンツはどのようなものだっただろうか。YouTubeのゲームの実況やメイクアップ講座、SNSに流れてくるレシピ動画、Netflixでドラマや映画を見たり、ネットの記事に添付された動画広告を見たりと、オンライン上で動画を全く見ない日はないと言っても過言ではない程、私たちの周りにはすでに動画コンテンツが溢れている。 また、日本では2019年に本格導入が予定されている5Gの通信システムにより、動画を用いたコンテンツの広がりはさらに加速するとも言われている。 ほぼ毎日新しい動画がネットにアップロードされ、動画が溢れ返った近年、企業はただ動画コンテンツを作成・配信するだけでなく、動画を活用してどのような効果的なマーケティングを行えるかが鍵となる。以前【2019年】絶対おさえておくべき、4つのマーケティングトレンドでもご紹介した通り、2019年は動画を使ったマーケティングの中でも、「ユーザーとつながる」ための動画配信がトレンドとして注目だ。 そこで今回は、ユーザーと繋がるだけでなくユーザーの心を掴み、さらに関係性を構築/強化した動画マーケティングの事例を紹介する。この記事が今後の動画マーケティング戦略の参考になれば幸いだ。 関連記事:広告を超えたバイラル動画を活用 – 海外ブランドキャンペーン事例 海外最新動画マーケティングトレンド事例3選 1. リアルタイムのライブ配信動画で熱気を伝えて盛り上げる:Disney ライブ配信動画は、今この瞬間何が起こっているのかを伝えるには最適なコンテンツだ。 アメリカのザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(以下ディズニー)は、映画プレミアイベントのライブ情報をFacebook上で発信し、ファンの心を掴んだ。 この動画は2016年にディズニーが公開した当時の最新映画「ジャングルブック」のワールドプレミアの映像で、本来現場にいないとみられないようなキャストのレッドカーペットでの様子や、インタビューを映し、ファンがその様子をリアルタイムで視聴できる特別な体験を提供した。 レポーターの女性の後ろにはAirbnbの看板が見えるが、この映画プレミアはAirbnbとも提携していた。映画のような雰囲気を再現するため、会場がAirbnbの提供するツリーハウスで行われていたのだ。 このFacebookのライブストリームは1時間半ほどありの動画にも関わらず、現時点で9.8万回再生されていることからもおり、反響を得られたは大きかったことがわかる。 このように、リアルタイムで起こっているイベントをファンとシェアすることで、映画の公開を楽しみにするファンの心を掴んだ動画プロモーションであった。 2. 役立つ+楽しい+クリエイティブなInstagramストーリー:Lowe’s アメリカのホームセンターLowe’sは、自社の提供する住宅用品を用いたEdutainment(エデュケーション/教育とエンターテイメント/娯楽を掛け合わせた言葉で、「楽しくてためになる」という意味)動画を公開した。しかしただの動画配信ではなく、Instagramストーリーズの特徴を利用して、イノベーティブかつクリエイティブなやり方で顧客とのエンゲージを高めた。 ユーザーと繋がる動画マーケティングにおいてInstagramのストーリーズの重要度は増すばかりだ。InstagramストーリーズのDAU (1日当たりのアクティブユーザー)は、2019年で全世界5億人を突破し、リリースされた2016年から増え続けている。 (引用元:statista) ここでInstagramストーリーズの特徴をおさらいする。Instagramストーリーズとは1つの投稿につき最長15秒の動画、もしくは画像を24時間限定で流すことができる。投稿(ストーリー)をアーカイブ保存すれば、24時間たっても消えずに、プロフィール画面に残すことができる機能もついている。すぐに消えてしまうことから気軽に投稿できることや限定感のあるコンテンツをあげられることも人気の理由だ。 Lowe’sのInstagramストーリーズでは、小さな部屋の模様替えDIY(Do It Yourself:自分でモノを作ること)の手順をシェアしている。小さなスペースがどれだけ簡単に素敵で機能的な部屋にDIYできるかを見せるビデオだ。 この動画はInstagramストーリーズの特徴をいかし、今まで誰も見たことのないような工夫をした。それは、DIYをしている様子を、1秒に満たないほどの非常に短い動画に複数に分けて投稿した点だ。これにより、ストーリーをみる視聴者は短い動画の集まりを35秒ほどみるだけでDIYの手順が一通りわかってしまう。 また、通常なら早送り・巻き戻し機能のないInstagramストーリーだが、Lowe’sのシェアした動画はコマが多く一つ一つの動画が短いことで、DIYの過程の一部を確認したい時にわざわざ最初から動画をもう一度再生せずに、指で画面をタップして好きなところで動画を停止して確認できるようになっている。Lowe’sが行ったInstagramハックと言える。 使い方や完成のイメージがしにくい住宅用品も、テンポよく動画で見せることでLowe’sはオーディエンスとのエンゲージを高めたと言える(このストーリーを投稿したYoutube動画ですら約5万回の再生がされている)。もちろん、Lowe’sが提供するDIYハックの良さも楽しくわかりやすく伝えるということができた。 関連記事:ミレニアル世代を引きつける“SNSを駆使した分散型コンテンツ“とは 3. ファンの心をつかむ特別映像・舞台裏の公開:Netflix 映像ストリーミングサービスを提供するNetflixは、IGTVを用いてNetflixドラマのファンに特別感を与えるような映像を提供した。 IGTVは、先ほどの例にも出てきたInstagramの機能の1つで、ストーリーズと同様、モバイル視聴を前提とした縦長フォーマットのプラットフォームである。ストーリーズと異なるのはライブ視聴が可能で、最大60分の動画をアーカイブとして保存、表示できるという仕組みになっている。 動画のリンク こちらの動画はNetflixに登録していない人には全くわけのわからない動画だ。なんと、この男性が60分間ただただハンバーガーを食べる様子を写しただけの動画である。 この動画の何が特別かというと、実はこの男性、Netflixが配信する人気ミステリードラマ「リバーデイル」に出演する人気俳優Cole Sprouseなのだ。リバーデイルはアメリカのティーンエイジャーに大人気のドラマで、昨年度のティーンチョイスアワードでは12ノミネートを獲得し、主要な賞を総なめにしたほどである。 またColeは同アワードで”Choice Male Hottie”「ホットな男性賞」を獲得し、ドラマ内でも特に女性人気が高いキャラクターだ。さらに彼のキャリアは俳優、モデル、フォトグラファーなど多彩な才能を持ち合わせており女性人気が高い。 ハンバーガーを食べながらわざとカッコつけるような姿をみせるColeの動画は、ファンにとっては需要の高い動画で、かつドラマのファンが見ても、ドラマ内の出演者の本当の姿を見て好感を持てるような動画だ。 NetflixはColeがハンバーガーを60分間食べる映像の他にも、同ドラマの出演者たちによる特別映像や、他の人気ドラマの舞台裏もIGTV上で配信しており、ファンにはたまらない特別感のある映像で既存のファンとの関係性を強めようとした新しい動画の活用方法をした。 関連記事:【デジタル広告最新トレンド2018】今米国で起きている4つの現象 まとめ 2019年の5Gの導入により、一層加速するとされる動画を用いたマーケティング。しかしながら、だからと言ってとにかく動画を活用しようという安易な考えをするのではなく、すでに世の中は動画で溢れ、飽和状態になるという現状を捉え、何のために動画マーケティングを行うのかという目的をしっかりと認識することが必要だ。 この際に、ユーザーとのつながりを構築し、ユーザー視点になって作った動画がひとつ、鍵となる。 事業やブランドが海外展開を行う際も、動画マーケティングの最新のトレンドを活用し、提供する商品やサービスのユーザーを把握することで、より現地で効果的なプロモーション、マーケティングを行うことが可能になるだろう。 btraxでは、ユーザー視点を元にした海外展開におけるマーケティングノウハウを提供している。今回ご紹介したようなプロモーション活動だけではなく、プロダクトマーケットフィットの仮説・検証からウェブサイトの構築を含むブランド認知のためのマーケティング戦略立案も一貫して行っているので、ご興味をお持ちの方は、お気軽にこちらまでご連絡いただきたい。 参考 17 Brands Effectively Using Instagram Live & Facebook Live Lowe’s Hacked Instagram Stories With Fun Microvideos of DIY Jobs in Tiny Vertical Rooms Ten examples of brands already CRUSHING IT on IGTV with Vertical Video

デザイン思考の力を公共サービスへ!日本と世界の活用事例3選

2018年8月9日、特許庁は庁内にCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として統括責任者を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げることを発表した。これは、中央省庁が行政サービス向上のためにデザイン思考を本格的に取り入れた初の例である。
米国を起点として提唱されてきたデザイン思考は、日本においてもここ数年間でその認知度を高めてきたが、これまでその活用を積極的に行ってきたのは民間企業であったように感じられる。
2010年頃から日本においてもデザインコンサルティングファームの参入、も…

顧客体験を向上させる 次世代モバイル通信5Gの活用事例3選

CESやMobile World Congress等、世界的なITイベントやカンファレンスで5Gが注目を浴びていることは言うまでもない。
ここ米国においても、5Gへの投資は各国との経済競争における重要な役割を担うとして、国家をあげた優先事項になっており、徐々にそのサービス実現が具現化している。
今回は、米国大手通信事業者における5Gへの取り組みに触れながら、将来実現が期待されているその活用事例についてご紹介していきたい。
4G/LTEと何が違う?
そもそも、5Gは4G/LTEと何が異なるのだろうか。…

他のブースと差をつけろ!トレードショーでエンゲージを高めた成功事例3選

開発中の新しいサービスや商品を感度の高いユーザーに試してもらうための場として、トレードショーといった展示会に参加するという手段を検討してみてはいかがだろうか。トレードショーはターゲットになりうるユーザーにサービスを展示できる絶好の機会であり、また投資家による提案や企業同士のコラボレーションなども期待できる場だ。 サービス開発者にとってトレードショー出展のメリットとは 数あるトレードショーの中でも注目されているのが、間も無く開催を迎えるアメリカ最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル、SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)だ。開催地はテキサス州オースティンで、イベント期間中は街全体のいたるところで関連イベントが行われる。 「SXSWを新サービス発表の場として選ぶべき理由」でも紹介した通り、SXSW出店のメリットは以下の通りだ。 1. 感度の高いイノベーターやアーリーアダターからのフィードバック獲得 2. 見込み初期ユーザーの獲得 3. 世界各国からのパブリシティの獲得 当日は2,000以上のカンファレンスやセッションが行われるほか、7万5千人もの参加者が来場する。スタートアップや企業が新しいサービスやプロダクトを展示しており、新規事業開発者にとってサービスのマーケットテストやブランディングのためにも非常に効果的な場だ。 参考記事:【SXSW2017レポート】キーワードは「社会問題解決型」注目の最新テクノロジー5選 上記の効果を最大化するには、展示するコンテンツ(サービス)はもちろん、当日のエンゲージメントも重要になってくる。そこで今回の記事では、過去のSXSW出展企業が行ったエンゲージメント向上のための事例をご紹介する。 (画像はSXSWのホームページより) トレードショーでのエンゲージを高めた成功事例3選 1. VANS:24時間限定のSNSコンテンツをヒントにゲーム感覚で景品をプレゼント トレードショーにてSNSを活用することは欠かせなくなっている。参加者は参加企業のSNSを閲覧・フォローすることで、事前に展示内容を知ることができたり、当日の様子がわかったり、様々な情報を入手することができるのだ。 またハッシュタグを上手く使えば、来場者にもSNSでの投稿を促すことができる。さらには会場にきていない世界中の人々も巻き込んだプロモーションも可能になる。というのも、イベントに参加できなかった人でもテクノロジーや新しいサービス・プロダクトに興味があるSNSユーザーは、イベントのハッシュタグを用いて情報を集めることが多いからだ。そのため、SNSの活用によるプロモーション効果は絶大だ。 シューズメーカのVANSはSNSを用いてゲームっぽくプレゼントの提供をするプロモーションを実施した。 まずVANSは、ツイッターなどのSNSを通じて、#SXSWのハッシュタグとともに、VANSのカスタムメイドの靴を無料でプレゼントすることを告知。その後、その靴を手に入れるための手順をインスタグラムストーリーにて確認するように促した。 このプレゼントを手に入れるにはインスタグラムストーリーに投稿された動画を手がかりに、SXSWの会場内に隠されたカスタムコードを入手し、靴が配布される会場内の指定の場所までたどり着く必要がある。つまり、広い会場の中でカスタムコードの居場所を探し当てる、ゲームのような体験を提供したのだ。 この企画が参加者のエンゲージメントを高められた理由は、インスタグラムのストーリーが24時間の限定コンテンツであることだ。時間が限定されていることからヒントが消えてしまうという危機感を持たせ、短時間で多くの参加者からのエンゲージを得られた。 2. Gaterade:ブースデザインによりプロダクトの世界観を可視化 ブースデザインは、人を引き付けるという点で非常に重要である。ただ人目を引くポスターや演出で存在感を出すだけでなく、その製品・プロダクトの世界観を表現したり、参加者が満足できるような体験を提供することが、エンゲージ向上に繋がるのだ。 アメリカ発のスポーツドリンクブランドGatoradeは、2018年のSXSWにて体験型の展示を行った。一見そのブースはGatoradeの商品が陳列された普通のポップアップストアのように見えるが、実はある大きな仕掛けが隠されている。 商品が陳列されている棚を開くと、そこにはジムエリアが広がっているのだ。ジムエリアには、Gatoradeが開発したVRバスケットボールゲーム「Beat the Blitz」をはじめとしたVRトレーニングシステムが設置してあり、トレードショーの参加者は実際にVRゲームの体験ができるようになっている。 (写真はADWEEKから引用) Gatoradeは、従来のスポーツドリンクメーカーとしての存在感だけでなく、Gatoradeが力を入れるテクノロジーを活用したVRゲームを紹介することによって、今後のスポーツ分野におけるテクノロジー活用の可能性を提示し、その未来に貢献したいというGatoradeの立場を表明した。 Gatoradeはこのようにしてブースの入り口から、最新機能のゲームなどを通した一貫したブランディング体験を提供することでエンゲージメント向上を図っていた。 3. Tinder:アプリのダウンロード・利用と引き換えにフリーギフトを提供 参加者をブースに呼びつけるきっかけとして、小物やステッカーなどのフリーギフトをブースに置くことがある。持ち帰って「こんな展示があったな」と参加者に思い出してもらうことがもできる。 こういったフリーギフトは客を引きつけて、話を聞いてもらうなどのインタラクションのきっかけにもなるが、特別目新しい工夫ではない。しかし、このフリーギフトを有効に活用すると、ユーザーからのエンゲージメントを得られる絶好の機会になる。 オンラインデーティングアプリのTinderは、2018年のSXSWにて、アプリをダウンロードするとアイスクリームをもらえるフリーギフトの特典を用意した。 このキャンペーンの意図は、ただフリーでアイスクリームを配布してくれる素敵な企業だと思ってもらいたいという理由だけではない。無料のアイスクリームを手に入れるためには、Tinderのアプリをダウンロードしてから実際に使用し、”golden ticket”と書かれている画面をスワイプする必要がある。 これは、まず新規のユーザーにアプリをダウンロードするきっかけを与えるだけでなく、Tinderのサービスを実際に使う機会を提供している。ダウンロードで終わりになるのではなく、アプリを開き、スワイプするというところまでユーザーとアプリがエンゲージすることになる。 無料アイスクリーム配布というキャンペーンを通して、参加者にアプリを「使わせる」ことで、Tinderというサービスを知ってもらうのにより深いエンゲージが獲得できたのだ。 まとめ ユーザー中心のサービスをブラッシュアップする手段として、トレードショーは最適な場だ。トレードショーはマーケットテストという側面だけでなく、ユーザーにブランドの体験を提供し、エンゲージできる機会でもある。 筆者は先日東京ビッグサイトで行われたSlush Tokyoにも足を運んだ。そこで様々なスタートアップがピッチを行ったり、ブースを出展する様子を見て、客を引き付ける展示にも「ユーザー視点」があるということを強く感じた。 そしてSlush Tokyoの講演等でよく耳にしたフレーズがまさに「ユーザーエクスペリエンス」や「ユーザーセントリックアプローチ(ユーザー中心型アプローチ)」といったものであった。プロダクトやサービスそのものだけでなく、トレードショーでの出展でブースに客を引き付けるためには常にユーザーの視点に立って考えることが必要なのである。 btraxでは、展示の効果を最大限に引き出すためのサポートはもちろん、サービス開発からマーケティングまで一貫したサービスを行っている。まだ新規サービス開発中の方も、すでにトレードショー出展をご検討中の方も、是非btraxにご相談ください。お問い合わせはこちらから。

【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか

物が溢れている現代の市場の中では単純に正確に動く、壊れない、だけではヒット商品を生み出す事が難しくなってきている。消費者の心を引き付けるためには、美しい見た目や共感、遊び心などの「デザイン的要素」が重要になり、デザインの重要性を理解し、実践する事が、企業の業績に直接反映され始めている。
数字で証明された経営に対するデザインの重要性
2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという…

生き残りをかけた小売の挑戦〜メイシーズ、ダンキン、ウォルマート〜

インターネットやモバイルの普及、高速回線の登場などにより、消費者の購買行動は大きく変化してきたが、その変化の速度自体も早くなってきている。 例えば読者の皆さんは5年前、どのようにブランドを知り、購入まで至っただろうか。おそらく今のようにインスタグラムでブランドを知り、ショッパブルボタンから購入をしたという人はほぼいないだろう(そもそもショッパブル機能自体が2016年にリリースされたものだ)。 また、オンラインでの買い物が企業やユーザーにとってどれだけ標準になったかを考えることからもその変化を実感することができるのではないだろうか。 AmazonやeBayなどEコマースを中心としたサービスが台頭してくると、老舗の大手小売企業もビジネスをEコマースへと広げてきた。その結果、かつて実店舗を利用していた客がEコマースへ流れていくと、多くの実店舗が閉店へと追い込まれるようになった。 実際に、実店舗の閉店計画は以下の通り発表されている。 大手ラグジュアリーデパートのNeiman Marcusは2017年、アウトレットラインのthe Last Call38店舗のうち10店舗を閉店した。2018年時点で50億ドルの負債を抱えている。 創業100年以上の大手小売Searsは2019年に全国80の店舗を閉めることを発表している。2018年には経営破綻。2013年から2018年までの間に店舗数は2,000から700へ激減。 2017年経営破綻を発表した子供服Gymboreeは2019年に最高900となる店舗の閉鎖を計画している。 大手デパートのメイシーズも2019年に8店舗閉める計画がある。 この一方で、残った実店舗の買い物体験をよりよくするための新しい積極的な取り組みが見られるのも事実だ。特に大手小売企業は実店舗というチャネルの最適化のため試行錯誤を繰り返している。 そのチャレンジぶりはアマゾンやeBayといったデジタルネイティブ企業の勢いに追いつくためではなく、追い越そうという、どこか「スタートアップ」的な動きをしているようにも見える。 そこで今回は、店舗数を最小限にした大手小売企業が行っている、ユーザー志向の新しい購買体験を提供するための取り組みを紹介する。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 小売大手の新しい取り組み 1. メイシーズ: 社員をインフルエンサーにするプログラム 1858年から続く大手デパートのメイシーズも先に述べた通り、実店舗を中心とした経営に苦しんでいる小売企業の1つだ。 そんなメイシーズは昨今主流となってきたインフルエンサーを活用したマーケティングを独自の方法で取り入れるため、社内インフルエンサープログラムを開始した。 Style Crewと呼ばれるこのプログラムはレジ担当から幹部まで誰でも申し込むことができる。申し込みをしたインフルエンサーたちは、事前に受け取った制作費用予算から写真や動画などのコンテンツ作りを行う。 作成したコンテンツはインフルエンサーのSNS及びメイシーズStyle Crewの専用ページに投稿され、これらの活動が売上に繋がるとインセンティブが入るという仕組みだという。 (それぞれの従業員兼インフルエンサーのフォロワー数は1万〜千くらいで、いわゆるマイクロインフルエンサーが多い。インフルエンサーのひとりであるMichelle Kunzのインスラグラムより転載) インフルエンサー達はメイシーズで販売している商品を取り扱ったビデオコンテンツや写真コンテンツを作成し、インスタグラムやYouTubeに投稿している(下記ビデオリンク参照)。もちろんメイシーズのソーシャルアカウントやウェブサイトにも掲載されている。 もちろん投稿から商品情報を確認したり、メイシーズの販売ページへの導線も確保されている。インフルエンサーはデジタルでコンテンツを配信することで、ユーザーとのエンゲージメントやより親近感のあるコンテンツによるアピールにより、ファン拡大やEコマースへの流入も狙っていると考えられる。 さらに、デジタルだけでなく、実店舗への来店促進にも役立っているようだ。 インフルエンサーの中には店舗でスタイリストをしている人もいたり、働いている店舗を写していたりする人もいるので、本人に実際に会うことができたり、写っている商品を確実にお店で試すことができたりと、オンラインとオフライン融合の可能性が広がっている。 (インフルエンサープログラムのメンバーはメイシーズで買える商品を自分の興味や知識を活かして紹介する。公式サイトより転載) さらに企業としては、ソーシャルで活躍したい従業員(インフルエンサー)をサポートし、ブランドをさらに理解してもらうことで企業対従業員の良い関係作りにもなると前向きだ。 またそのコンテンツを通して、メイシーズはファッションとトレンドを押さえた小売であるという認知向上を狙っている。 このプログラムに参加しているインフルエンサーの数は、開始時2018年に約20人規模で始まってから、現在では400名ほどに増えている。 現在はアパレル商品や化粧品を中心に取り上げているが、2019年は家具や日用品など、メイシーズが扱う全てのカテゴリーに拡大する計画をしている。幅広いジャンルのインフルエンサーを育てる狙いだ。 関連記事:小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題 2. ダンキンドーナツ:リブランドと未来型店舗によるUX改善計画 ドーナツで有名なファストフード小売チェーンのダンキンドーナツ、改めダンキンは未来型店舗に向けた計画を2018年に発表した。名前の変更も今回のコンセプトにあったリブランディングの一部なのである。 ダンキンはこれらのコンセプトを店頭で試す前に、イノベーションラボでそのテクノロジーと体験を再現している。イノベーションラボでテストされている取り組みの一例は以下の通り。 従来のお店の窓に貼られた広告の代わりとして、ホログラムにより投影された広告。広告を掲載するのに壁、紙媒体はいらなくなる。 自動コーヒーマシンも試しているが、ラテアートを楽しめるコーヒーマシンの開発もしている(彼らはセルフィーニトロコーヒーと呼んでいる)。 他にも注文したものを受け取れる無人ロッカーや性別、年齢、気分を分析してそれに基づいたオススメメニューを提案してくれるAIシステムなどを開発している。 イノベーションラボを訪問した記事によるとまた精度が高くなかったり具体的な活用事例がまだなかったりするようだ。しかしながら、ダンキンのイノベーションラボには、昨今の競争の激しい小売業界で生き残るためにもとりあえず試してみて失敗からも学ぶといった姿勢があるのではないだろうか。 3. ウォルマート:小売最大手の最新テクノロジーを使った取り組み ウォルマートは日本の西友を子会社にもつ、売上額で世界最大の小売企業だ。そんなウォルマートも1位の座にあぐらをかくことなく、挑戦をし続けている。 彼らが2018年に発表した取り組みに、Flippy(フリッピー)というAIを搭載した揚げ物調理ロボットがある。このロボットは受けた注文数と揚げ時間を考慮して、最適なタイミングで出来立ての揚げ物を作ることができる。 フリッピーは揚げ物全ての調理をするわけではなく、人と手分けしながら作業の効率化やサービスの向上を目指す、協働ロボットだ。フリッピー自身が油に溜まったカスを掃除するのも可愛らしい。 (フリッピーを開発しているはMiso Roboticsというスタートアップ) また、ウォルマートもWalmart Labsと呼ばれるラボチームを持っており、ここでも様々な実験を行なっている。 例えば店舗を徘徊して管理する棚ロボット。店内を歩き回り、店内の不具合(ラベル・値札の間違いや陳列場所違いなど)や在庫をチェックしている。認識したデータを従業員に共有し、のちに従業員が直すことができるようになることを目指しているという。 現在はまだ開発段階で、まだフル活用には至っていない。今後、ウォルマートが開発しているツールとの連携ができれば、繰り返しのマニュアル作業をロボットが行い、人は顧客の対応に集中できるようになるというのが狙いという。 関連記事:Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業 まとめ ここサンフランシスコも、都市部とはいえ、実店舗が閉店しているところを見かけるし、デパートなどは閑散としていることも多々ある。実際の数字もお見せした通り、決して好調とは言えない状態だ。しかしながら、実店舗を”絞り”ながら、新しい体験の創出に注力している。そして店舗に新しい役割を持たせようとしている。 今回紹介した大手小売企業も逆境の中、もしかしたら失敗かもしれないけどやってみている姿が感じられるではないだろうか。やはりアジャイル的に試していくのが成功に導く道なのかもしれない。 ただ焦って立ち止まるのではなく、最高の体験イノベーションを創り出すために試行錯誤する小売業界はこれからも注目だ。そしてぜひ、彼らのようにできることからやり始めてみるのはどうだろうか。 参考: ・E-commerce share of total retail sales in United States from 2013 to 2021 ・Will There Be A Physical Retail Store In 10-20 Years? ・Inside Macy’s 300-employee influencer program ・How Macy’s is using its store employees and stylists as Instagram influencers to drive sales ・See […]

イノベーション=技術革新はもう古い!新たな価値を創造した9事例

会社の生き残りをかけてイノベーション担当部署があらゆる企業で創設されている。イノベーションの必要性が自社内でも議論し始められ、そもそもイノベーションとは?と改めて問い直している読者も多いかもしれない。
iPodやAirbnb、Facebookがイノベーションの事例として挙げられることも多いが、それらに匹敵するようなアイデアが生まれるとは思えないという声もクライアント企業からよく聞く。
関連記事:「馬鹿げた」アイデアから生まれた3つの世界的なサービス
しかし、これらのような社会のあり方を大きく変えるよ…

ユーザーフローから学ぶミスコミニュケーションの発生原因と対処方法

UXデザインのプロセスの一つとして「ユーザーフロー作成」というものがある。これは、特定の目的を果たすために、ターゲットとなるユーザーがどのようなプロセスを経るのかを明確にすることで、そこにたどり着くまでの「流れ」を設計するもの。
例えばアプリのデザインをする際には、下記のようなユーザーフローが設計される。

このプロセスの中では、それぞれのタスクごとにフローを作成し、よりユーザーにとって使いやすく、加えて、サービス提供側のゴールをスムーズに達成できる「流れ」に対しての導線をデザインする。

しかし、…

ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは

ユーザーに優れた体験を提供し、提供側の利益も生み出す。これがUXデザインにおける一つの究極のゴールである。この2つのゴールを達成している最高の例の一つがディズニーランドであろう。実際に行ったことのある人であれば、その体験の素晴らしさと、躊躇なくお金をどんどん使ってしまうその雰囲気は、まさにマジックとも言える。実は、そのマジックの裏には、UXデザイン的観点で見ても卓越した設計が施されている。
UXデザインの価値を図る際には「UXハニカム」や「UXピラミッド」が使われることが多いが、おそらくディズニーラ…

Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学

2018年8月2日, Appleの時価総額がアメリカ企業として初めて1兆ドル(約110兆円)を突破した。1990年代には倒産も危ぶまれたが、スティーブ・ジョブス復帰後、デザインに対してのこだわり、そしてイ革命的なプロダクトを作り出すことにフォーカスをさだめ、iMac, iPod, iPhoneなど、次々に世の中を変える製品をリリース。

その後の躍進も加速し、世界一の時価総額と驚異の利益率を達成している。その一番の要因が「デザイン」にあることは明白で、プロダクトのデザイン性から経営に対してのデザ…

海外のCINOに学ぶ、組織におけるイノベーション創出の場づくりとは

「我が社で何かイノベーションを起こしたい」こう考える経営者や新規ビジネス担当は少なくないのではないだろうか。まずは新規事業を任せられる積極的な人材を増やそう!と考えるものの、社内を見渡せば、言われた仕事だけを淡々こなす受動的な社員にあふれていて、イノベーションどころか、率先して業務の改善に関わろうとする社員もあまりいない。

最近、クライアントと接するなかで、そんな理想とは程遠い現実にため息をついているマネジメント層の声を直接耳にすることが多い。一方、世界を見渡すと、組織ぐるみでイノベーション創…

【2018年版】ウェブデザインの最新トレンド5選

Windows8が登場した2012年以降、ウェブデザインに関する話題においてフラットデザインという用語をよく耳にするようになった。

AppleもiOS7を発表した2013年からは、従来使われていたスキューモーフィズム、つまり物理的なアイテムに似せたデザインをやめ、フラットデザインを採用している。

iOS6, 7
これらにより多くのウェブサイトに影響を与えたフラットデザインは、現在多くのウェブサイトで見かけるようになったが、ウェブデザイン界ではこれに限らず毎年クリエイティブなデザイン…