デザイン思考

見えるから、ひらめく。イノベーションを加速する「ビジュアル思考」の力

「みんなの意見を集めるだけでは、何も生まれない。」新規事業開発やアイデア出しの場面で、そんな風に感じたことはないだろうか。 どんなアイデアも、最初は曖昧でつかみどころがないものだ。チームで話し合っているとき、どこかで「あれ?これってどういうこと?」と感じる瞬間がある。 その曖昧さをスッキリと整理し、みんなで共有できる形にする手法が、「ビジュアル思考(ビジュアルシンキング)」だ。問題を解決するために視覚的に思考を整理すると、チームの共感が生まれ、新しい発想が生まれやすくなる。これこそが、イノベーションを生み出すカギである。 今回のブログでは、日本とサンフランシスコで実際に「ビジュアル化」の力を用いて何度もデザイン思考研修をファシリテートした経験を持つサービスデザイナーである筆者が、新規事業やイノベーションの創出にビジュアル化がどのように寄与するのか、どう活用していけばいいのかを紐解いていく。 ビジュアル思考(ビジュアルシンキング)とは ビジュアル思考とは、複雑で抽象的なアイデアを視覚的に表現することで、思考を整理し、他者との理解を深めるための手法である。図やスケッチ、アイコン、マップなどを用いて、言葉だけでは捉えきれない情報を「見える化」することで、チームの共通認識を生み出し、対話や創造を促進する。このようなビジュアル化の手法や考え方は、デザイン思考の各プロセスで、様々な形で用いられる。 ビジュアル思考は、単なる情報整理に留まらない。この手法は、デザイン思考や新規事業開発のプロセスとも非常に相性が良い。例えば、不確実性が高く、前例のないテーマに挑む場面において、ホワイトボードや付箋にアイデアを描き出すことで、抽象的な議論でもチームで共通認識を持ったうえで仮説を立てやすくなったり、新たな視点に気づいたり、発想が広がったりする。だからこそ、今、ビジネスの最前線でも注目されているのである。 グローバル企業のイノベーション部門では、創造的なコラボレーションを生み出す手段としてビジュアル思考が積極的に活用されている。 例えばオランダのメーカーPHILIPSが新しいシェーバーを開発した際にも、アイデアがイラストと文字で視覚的にまとめられながら議論が進められた。このように視覚を通じた共創が、イノベーションのスピードと質を大きく左右する時代になっているのである。 ビジュアル思考と聞くと、「絵がうまくないとできないのではないか」と感じる人も多い。しかし、必要なのは芸術的なスキルではなく、伝えたい情報や構造をシンプルに表現しようとする意志である。 図や記号、棒人間や矢印のような簡単な要素だけでも、十分に思考を可視化し、対話の助けとなる。重要なのは「うまさ」ではなく、「伝わること」なのである。 具体的にどのように可視化すればいいのかのテクニックについては、下記の記事も参考にしてほしい。 感覚に訴えるビジュアルファシリテーションのすすめ ビジュアル思考の実践例 ここからは、実際にビジュアル思考がどのように使われているのか、代表的な手法を3つ紹介したい。どれも、言葉だけでは共有しにくいアイデアや構造を、目に見える形にすることでチームの理解を深め、創造性を引き出すことを目的としている。 実践例1: スケッチ・シンセシス(Sketch Synthesis) デザイン思考を提唱するIDEOでは、リサーチのフェーズで「スケッチ・シンセシス」という手法を実践している。これは、インタビューや観察で得た情報を、そのまま文章でまとめるのではなく、印象的なエピソードや行動をスケッチに描き出し、共通のテーマごとにグループ化して要約・構造化していくプロセスである。 IDEOのブログ記事「To Make Sense of Messy Research, Get Visual」では、以下のようにそのプロセスが紹介されている。 Step 1: Pare it down(情報を削ぎ落とし、要点を抽出する) まず、インタビューやフィールドリサーチでの観察の結果を大きなポスターボードや壁に付箋などで書いてまとめ、その中から最も印象的なエピソードや行動を4〜5点選ぶ。そして、それぞれを要約して、簡単なスケッチにして付箋に描き表す。 Step 2: Cluster it up(共通点を探し、グルーピングする) 次に行うのは、各ポスターボードから抽出したスケッチを、共通のキーワードやテーマごとに一枚のスケッチにまとめなおすステップである。この作業は、マインドマップをつくるような感覚に近い。 このステップの目的は、学びやインサイトを見極め、整理することにある。今は重要でないと感じる要素は、思い切って除外して構わない。スケッチは情報を整理する“フィルター”として機能し、重要なテーマだけを浮かび上がらせる役割を果たす。 Step 3: Talk it through(チームで話し、解釈を共有する) キーワードやテーマごとにグルーピングしたスケッチが完成したら、次は可視化された情報をもとに、チーム全員でレビューを行い、そこに含まれる意味や可能性をすり合わせていく。 この議論を通じて、スケッチの内容はより具体的な「誰の何の課題を解決するか」などの「デザインの問い」に変換される。 このステップのゴールは、リサーチで得た情報の解釈が的を射ているかどうかを、チーム内で対話によって検証することだ。もしどこかで解釈がずれていたり、重要な糸口を見落としていた場合は、再びStep1の情報に立ち返り、見落としたつながりを探す必要がある。 このようなプロセスを経て、解釈の深度と精度が高まり、新たなサービス開発への確かな土台が築かれていくのである。 btraxでも新規サービス開発のワークショップ内で、得た情報をさまざまな切り口でビジュアルに整理し、共通点や関連性を全体像をチーム全体で把握できるようにしている。そのプロセスは、下記の記事にもまとめられているのでぜひご覧いただきたい。 Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア […]

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LEGOを倒産の危機から救った「ボロボロのスニーカー」~ データ偏重を乗り越えた挑戦と逆転劇 ~

商品開発やマーケティングにおいて、データや数字の重要さは誰もが認めるところだろう。ビジネス戦略についてもそうだ。 しかしながら、我々がこれまで数多くのプロジェクトを通じて得た経験からいうと、数字ほど当てにならないものはない。デザイン思考のワークショップでは、クライアントさんと共に、顧客の「生の声」を聞きに行くたびにそう痛感させられる。 今回は、レゴブロックが会社の倒産の危機に陥っていた時期に、データではなく顧客の声を重視したことで、倒産の危機を逃れたストーリーを通じて、その本質を掘り下げたいと思う。 2003年、LEGOは崖っぷちに立っていた 今の姿からは想像もできないかもしれないが、ブロック玩具の代名詞とも言われるLEGO (レゴ) は、2003年ごろ、倒産寸前まで追いやられていた。 その当時のLEGOは、売上30%減、1日あたり100万ドルの損失という未曾有の危機を迎え、瀕死の状態だった。その理由は「データを重要視しすぎた」こと。 具体的には、「子どもは集中力が続かない」「シンプルを好む」という市場データを盲信し、簡単で短時間で組めるセットへ舵を切ったことだった。 結果、販売は低迷。LEGO本来の魅力である、“作り上げる達成感” が失われたからだ。 11歳のスケーター少年が示した真実 窮地のLEGOが行ったのは、久々の “顧客との対話” だった。11歳の少年に「一番大切なモノは?」と尋ねると、彼はボロボロのシューズを差し出した。理由は「難しい技を習得した証だから」と。 この瞬間、LEGOは気づいたのだ 子どもは挑戦を求めている 難関を突破した“証”を誇りたい 「成長の勲章」こそ価値 ということに。これは数字やデータからだけでは決して得ることのできないインサイトだった。 そして、戦略を180度転換した その少年から得られたインサイトを元に、LEGOは大幅に製品の方向展開を行った。彼らが具体的に行ったのは パーツ数を増やし、構造も複雑化 完成まで時間を要する “やりごたえ” を演出 完成品が「自慢できる勲章」になる設計へ ⠀結果、売上は急回復し、今日の世界No.1トイブランドへと上り詰めた。 データとインサイトのバランスを取る 市場データは「潮流」を示すが、人間の動機や感情までは写し取れない。LEGOの失敗はデータを絶対視し、顧客の声を置き去りにしたこと。逆に、成功は顧客の深層心理を拾い上げ、プロダクトへ反映したことだ。 僕らが学ぶべき3つのポイント このLEGOのストーリーから得られることは3つあり、我々が提供しているデザイン思考ワークショップを通じた新規事業創造プログラムでも、大切にしているポイントでもある。 仮説より先にヒアリング: データ分析前に顧客へ直接あたり、生の課題を抽出する “証拠”をデザインする: 顧客が努力や情熱を誇示できる要素を組み込む KPIに“感情指標”を入れる: 完成度やNPSだけでなく、達成感・熱中度を測定する この教訓をbtraxのデザイン現場でどう活かしているのか? 僕ら btrax がプロジェクト毎に行っているのは、「数字 → 仮説」ではなく「声 → 洞察 → 数字」という逆転プロセスだ。具体的には次のようなサイクルを徹底している。 1. フィールドインタビューを最初に組み込む 事前にデスクリサーチで得た数字はあくまで “問いを立てるための材料”。初日の午前中にクライアントと一緒にユーザー宅や店舗に出向き、最低5件のインタビューを実施する。これで “肌感覚” を全員にインストールする。 2. […]

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デザインの最適解は、必ずしも「シンプル」ではない?

デザインの方向性を決める際、「シンプル」という言葉がキーワードとして挙がることは少なくない。
一般的に、企画・コンセプトが定まった後、その言語化されたアイディアを可視化する・デザインに落とし込む最初の工程として、方向性を定めるためにムードボードやキーワードを並べていく。その作業の中で、どこか安全な選択肢として「シンプル」という言葉が加えられることは珍しくない。もしくは、クライアントとの打ち合わせやブレストで、よく耳にする——「もっとシンプルにできない?」
この「シンプル」、一体何を指しているのだろう…

デザインとは何なのか?いま一度考えてみよう。

デザインとは何か?
この問いは、古今東西のデザイナーたちによって繰り返し探求され、議論されてきた。
Apple創設者のスティーブ・ジョブズや、IDEOのティム・ブラウンといった著名なデザイナーたちの言葉には、デザインの本質が凝縮されている。
デザインはどう見えるか+どう機能するか
ジョブズは、「デザインは見た目のことではなく、どう機能するかだ」と述べている。このシンプルながら深遠な言葉は、デザインが単なる装飾以上のものであることを示している。
彼のリーダーシップのもとで開発されたApple製品は、機…

デザイン思考は何が問題なのか?その限界と先にある可能性

「デザイン思考を導入してみんですけど、これといった結果が出てないんですが…」 日本企業にデザイン思考ブームが到来して、数年経ち、効果について検証し始める時期になってきてるのだろう。 デザイン思考は現代のビジネスにおいて、重要な役割を果たすが、同時にその限界と課題についても多くの議論がされている。 その辺に関して、掘り下げてみたいと思う。 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス デザイン思考の誤解とその限界 そもそも、企業がこの手法を取り入れようとする背景には、イノベーションの創出を期待していることが多い。 しかし最近では、デザイン思考を導入してみたものの、それだけでは十分ではないという現実に直面する企業も少なくない。 これは、デザイン思考を万能なツールと過信し、そのプロセスさえ踏めば、何かしら新しいイノベーションや、ヒットサービスが生み出されると勘違いしている部分が大きい。 では、どのようにしてデザイン思考を超えて、真のイノベーションを実現することができるのだろうか? “イノベーション“ や ”DX” をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと デザイン思考の現状と課題 デザイン思考は、その名の通り、ユーザー中心の視点から問題を解決し、新しい価値を創造するための方法論だ。 しかし、実際には、単にデザイン思考を導入するだけでは、企業が期待するような革新的な成果を得ることは難しい。 多くの企業がデザイン思考を実践しているものの、結果が伴わないことが多く、その理由としては、デザイン思考がプロセスとしては万能ではなく、他の要素と組み合わせる必要があることが挙げられる。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞったプロダクトは面白味がない これは非常に主観的な意見だが、デザイン思考のロジックに従い、プロセスを丁寧に進めて作られたプロダクトは、妙に「平坦」に感じられることがある。 世の中にある他のサービスと似通ったものになりがちで、何かが足りないような感覚を覚える。まるで。いまひとつスパイスが効いていないような印象。 その理由は、多くの場合、作り手が本当に作りたいものを作っていないから。 たとえプロセスをしっかりと踏み、1つ1つ検証を行ったとしても、そこに強い情熱や思いがなければ、出来上がるものはなんとなく退屈なものになってしまう。 作り手に強い愛情がなければ、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、論理的にはまとまったプロダクトを作れるかもしれないが、なぜか心には響かないものになりがち。 単にデザイン思考のプロセスを踏んで、ユーザーが欲しいと言ったものを作っただけでは、それは単なる「御用聞き」のプロダクトになってしまう可能性が高い。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは デザイン思考 ≠ イノベーション デザイン思考を取り入れる際に多くの企業が抱える誤解は、デザイン思考そのものがイノベーションの創出に直結するというもの。 しかし、実際にはデザイン思考はあくまで一つのフレームワークであり、単独で革新をもたらすものではない。重要なのは、デザイン思考をどのように実践し、他の要素とどのように組み合わせるかだ。 特に日本企業においては、表層的な部分ではそのプロセスをなぞりながらも、デザイン思考の本当の意味での実践が難しいとされており、その理由として文化的な背景や組織のマインドセットが影響している。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは イノベーションを生むためのマインドセット では、何が欠如しているのだろうか? イノベーションを生み出すためには、単なるデザイン思考の実践だけでなく、組織全体のマインドセットの変革が不可欠だ。 いくらスタートアップの真似事のようなやり方をしても、その組織の根底にある考え方や文化が、旧態依然としたレガシー企業だったとすれば、「なんちゃってデザイン思考」でしかいないのだ。 必要なのは、企業の売り上げや利益、そして自分たちの組織内でのポジションや出世よりも、ユーザー視点での問題解決を最優先に考え、失敗を恐れずに挑戦する文化を醸成すること。 全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること 行動としてのデザイン思考 個人的には「デザイン思考」の最も大きな欠陥は、その名称にあると思っている。 そう、この「思考」という単語がよくない。そもそも、考えているだけで実現できる結果など、エスパーでない限り、ほぼ不可能だからだ。 デザイン思考を実践する上で重要なのは、そのプロセスを単に形式的に行うのではなく、実際の行動に移すこと。 考えてばかりじゃなく、短期間で多くのプロトタイプを作成し、フィードバックを得、そしてダメならピボットして、ガンガン改善する。そんな姿勢がない限り、世の中に愛されるプロダクトは生み出されない。 そう。デザイン思考は、単なる思考プロセスではなく、実際の行動を伴うものであるべきだ。 企業がイノベーションを生み出すためには、議論よりも行動に重きを置き、短期間での実験と検証を繰り返す必要がある。これは、企業が変化のスピードに対応し、競争力を維持するために不可欠なアプローチである。 イノベーションを生み出すために -空想者から行動者に変革する5つの方法- 始動プログラムより カオスから生まれるクリエイティブなプロセス 実際のデザイン思考のプロセスは、想像以上にカオスであり、その中でこそ真のイノベーションが生まれる。 計画通りに進まないプロジェクト、突発的な問題や感情のぶつかり合いが頻繁に発生することもあるが、これらはすべてクリエイティブなプロセスの一部。 このような環境を許容し、支持する企業文化があって初めて、革新的なプロダクトやサービスが生まれる。 一言で表現すると「お利口さんからの脱却」が求められる。 結論: 最も重要なのはデザイン思考を超えた要素 デザイン思考だけではイノベーションを実現するのに十分ではない。 組織全体でユーザー中心のアプローチを根付かせ、失敗を恐れず挑戦する文化を醸成することが不可欠。これには、トップダウンでのリーダーシップと、現場レベルでの自主性が融合したカルチャー変革が求められる。 デザイン思考を超えて、マインドセット、カルチャー、パッション、アクションといった要素を組み合わせることで、初めて企業は真のイノベーションを生み出すことが可能になる。 イノベーションを生み出すための要素: ユーザー視点 未来志向 柔軟な組織マインドセット 失敗を許容するカルチャー 当事者たちのパッション 強いリーダーシップ 早い段階でのアクション これらの要素を実現し、日々の業務に反映させることで、初めて未来の成功につながっていくと思う。 では、実際にどうすればそんな状況が生み出せるのか。詳しくは下記のイベントにて事例を含め、そのノウハウを伝授します。

全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること

デザインの役割のひとつに、課題解決がある。 実際、我々btraxとしてもデザインを通じて企業の課題を解決することを目指して、これまで20年にわたってサービスを提供してきた。 しかし筆者はそれ以上に、デザインはマインドセットそのものであると思う。 これまでFreshtraxでも度々取り上げてきたデザイン思考やデザイン経営といった言葉を代表に、デザインがデザイナーだけのものから、今やデザインは多くの人にひらかれたものとしての認知が広がりつつある。 全てのビジネスパーソンにデザインのマインドを 筆者はbtraxに所属し、その中のマーケティングチームのメンバーとして働いてきた。そして「非デザイナー」の立場でデザインの現場に携わってきて確実にわかることは一つ。 ” たとえ非デザイナーであっても、誰しもがデザインに触れるべきなんだ ” ということ。 これは、冒頭にも触れたデザイン経営、デザイン思考といったビジネス的なトレンドの上澄みを掬った話ではなく、実体験として感じたからこそ言えることである。 非デザイナーとしてデザインに多いに助けられることがあるとすれば、それは特にマインドの部分だろう。実際に手を動かすデザインワークこそしないかも知れないが、デザイナーのマインドを持つといいことずくめである。 この記事では、デザイン会社でマーケターをすることで得られたデザイン的なマインドセットと、実際に仕事の場においてデザイナーと協業する上で、気をつけてきたことをご紹介したい。 1. Yes and … デザイン的なマインドセットの形容として真っ先に出てくるのがこの言葉である。 これは、アイディアや提案に対し、まずは受け止め(Yes)、その上で「いいね、じゃあ◯◯しよう」とさらにアイディアを付け足して(And) で返答するマインドセットのこと。さらに別のアイディアを提案したり、新たな情報を付け足すことで、そのアイディアの広がりを生み出すことができる。 このマインドセットのメリットは、心理的安全性が高められ、コミュニケーションが円滑になるということだと実感している。誰しも真っ向から否定されてよい気分にはならないだろう。 発言をしても即座に否定されることを恐れてそもそも発言が少ない状況になると、議論自体が活性化せず、元も子もない状態になる。 かくいう筆者も、実はある時までは、たとえばデザインコンセプトの立案を依頼したデザイナーに対し、フィードバックをするなんて恐れ多い… などと、皮肉のような情けない尻込みをしている時期があった。「デザイナーに対して、デザインのフィードバックを、非デザイナーである自分がするのか?」という具合に。 しかし、「こういうアイディアもあるのでは?」とYes and 的なフィードバックをしたことで、そこからさらに様々な方向性を検討することができ、結果的にチームとしてよいものを作り上げることができた。 ちなみにPixer社では、Plussing (Plus + ing)というフィードバックの手法を取り入れている。Plussingとは、新たなアイディアを思いついた時、否定するのではなく、そのアイディアにさらにアイディアを足すことで、よりよくしようと努めるまさにYes andに基づく方法だ。 あっと驚くクリエイティブな世界を見せてくれる裏側にはこうしたオープンマインドでYes Andな姿勢があるのかもしれない。 なぜ優秀なデザイナーでも酷いデザインを生み出してしまうのか? 2. Start at the end 直訳すると「終わりから始めろ。」つまり「逆算思考を持って推進せよ」ということだ。筆者自身、入社後にデザイナーの同僚から教わって以来大切にしてきた言葉だ。 これはむしろ、ビジネスで一般的な考え方だろう。目標を先に決め、それに向かって戦略を組み立てていく。この過程で、終着点を見据えることで、途中の課題や妨げになる要素を予測し、それを乗り越えるための戦略を練ることができる。 しかし、デザインにおいても、結果や最終的な目的を先に想像し、それから逆算してプロセスを始めることが効果的だ。そもそもユーザーがどんな体験を求めるのかを探ることから始めるケースも非常に多いが、たとえば製品開発においては、まず最終的にユーザーが求める体験を考え、それを実現するためのデザインや機能を構築していく。 また、非デザイナーとしては、このStart at the endの考え方を持つと、たとえばクライアントプロジェクトにおける最終的な成果物は何になるのか。資料をまとめる上で、ドキュメントであるべきか、スライドの資料であるべきか…など、物事の「枠」を考える癖をつけることができる。 この癖をつけることで、根本的な勘違いや手戻りによるロスタイムを減らすことができ、効率的なプロジェクト推進につながると思っている。 3. Done is better than perfect デザインというよりはむしろシリコンバレー的なマインドにも重なる部分が大きいこちらは、Meta(旧Facebook)の創業者でありCEOであるマーク・ザッカーバーグの名言。意味は「完璧を目指すより、まず実行することに価値がある」。 こちらも、「デザイン会社である」に並ぶくらい重要な「サンフランシスコ・シリコンバレーに拠点がある」btraxで仕事をしていて日々その重要性を感じる言葉である。そしてこれもまた、スピード感が明暗を分けるさまざまなビジネスシーンにおいて言えることだと思う。 この考えを念頭に置くことで、時間とリソースの効率的な活用を促し、成果を生み出すための動き方に意識的になれる。特にデザインタスクでは、何度も修正や改善を重ねることがあるが、常に完璧を求めてしまうと、進捗が遅れたり、アイディアそのものの実現が難しくなることがある。 また、筆者のマーケティングのフィールドで言えば、早期の段階で実行に移し、リアルなデータやフィードバックを元に進化させていくことが重要になる。変化が速い現代において、柔軟性を持ってアクションを起こしていくことが必要だと思う。 シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? また、この言葉は特にデジタルサービスとの相性が良い。なぜなら、デジタルサービスは多くの場合、”完璧な状態になる日は来ない”から。 まずはリリースをし、その後小さなアップデートを繰り返してサービスの質を上げていくというスタイルが叶うデジタルサービスは、逆にいうと、リリースしないと何も始まらない。軽いフットワークで動くことの重要性を物語る言葉だと思う。 また、早めにリリースすることのメリットは、その分早くユーザーや周囲からのフィードバックを受けられることだろう。 「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、そのサービスに注がれる視線が多いほど、様々な角度からのフィードバックを得られることは明白だろう。その声を元にどんどん改善をしていった方が結果的により速く、よりユーザーニーズに沿ったサービスになるのではないかと思う。 デザイナーと働く上で意識すべきこと 次に非デザイナーとしてデザイナーと働く上で意識してきたことをご紹介する。実は、デザイナーの仕事の2/3はコミュニケーションであると言えるほど、コミュニケーションが重要なウェイトを占める。 これはつまり非デザイナーとしても、デザイナーと意思疎通をするシーンや時間が多いことを意味する。特に、新規事業や事業開発、コミュニケーション、ブランディングなどの部署にいらっしゃる方はデザイナーとのやりとりが日常的に発生するのではないだろうか。 下記は、デザイナーがクライアントワークにおいて往々にして遭遇する「しんどいシーン」をまとめているおもしろ切ない動画だ。 これを見て思うのは、決してクライアント側に悪気があるのではなく、デザイナーとの効果的なコミュニケーションの方法を知らないことも多いのではないかと思う。(非デザイナーとしてはぜひとも反面教師にしたい。) 以下にご紹介することが少しでもその助けになればと思う。 1. HOWではなく、WHYを伝える デザイナーに意図を伝えるのは必須だ。具体的な作業をお願いするのではなく、達成したいことを伝えることがポイントだ。 よくあるのが、非デザイナーからデザイナーへのフィードバックとして「ここの文字を赤にして」「ここの文字を大きくして」という具体的な作業指示 (HOW)。しかし、これでは本質的によいデザインになるとは限らない。 また、こういったHOWのみを伝えるコミュニケーションが常態化した場合、デザイナーは指示を受けてその通りに修正するだけの下請け的な動きを強いられることになり、モチベーションも落ちてしまうだろう。 そうではなく、理由や意図(WHY)を伝えるのだ。文字を目立つ赤色にしたいのも、サイズを大きくしたいのも、おそらくその情報を確実にユーザーに伝達する必要があるからではないだろうか。 したがってデザイナーに伝える時には、「この目的を達成するために、この情報をしっかりとターゲットのユーザーに届ける必要がある」という形で伝えるようにしたい。 目指す目的を達成するためには、必ずしも色を変えることだけが方法ではないこともありうるし、意図を達成するためのデザイン的なアプローチの引き出しは、きっとデザイナーの方が豊富であろう。非デザイナーにとっては、それを解決するための手段として、色やサイズを変えることしか思い浮かんでいないだけかもしれない。 このように伝えれば、デザイナーとは指示出しと御用聞き、という関係性ではなくむしろ、お互いにフラットに、目的を果たすための建設的なディスカッションを行うことが容易になるだろう。 2. 制約を設ける クリエイティブには制約が必要だ。ここでいう制約とはざっくりと、期限という時間的な制約と、進行する上で守るべき条件/項目といった発想や作業的な制約に大きく二分される。 非デザイナーは、デザイナーに対していわば「制約を設ける」側に立つことが多い。枠組みを作り、その中でデザイナーに躍動してもらうために制約を設けるのだ。 実際の仕事の中で制約を設けるときに作っているのが、「デザインブリーフ」である。 デザインブリーフとは、制作物の意図や目的、そして制約などをまとめたもので、デザイナーに明確なディレクションを伝え、彼らと目線を合わせた上で、作業に取り掛かってもらうために重要なアイテムである。筆者もデザイナーにタスクを依頼するときは必ずデザインブリーフを作成するようにしてきた。 デザインブリーフの作成方法に関する詳細はぜひ下記の記事を参照いただきたい。 デザインブリーフの役割とその作成方法 3. 効果を伝える 実際に効果を伝えることは非常に重要だ。これだけの効果を獲得できた、ということを数値と併せて示そう。客観的な数字を以って自分のデザインが評価された、うまくワークしたことが伝わるとよい。これはモチベーションに関わるトピックだ。 デザインそれ自体では定量的に評価をすることは難しいかもしれない。それでも、たとえばそれを用いたマーケティングキャンペーンの効果やパフォーマンスなど、デザイナーにとってはモチベーションをあげる有効な指標となる。 デザインの役割の一つに課題解決があるということは冒頭の通りだ。特にビジネスの文脈におけるデザインはこの役目を担うことが多い以上、実際に生み出されたデザインが、役割を果たせたのかどうかは適切にフィードバックをする必要があると感じている。 ここまでデザイナーとのコミュニケーションにおいて意識してきたことを3つをまとめて思うのは、非デザイナーができるのは、デザイナーが仕事をするために、適切なフィールドを用意し、適切なお伝えをすること、これに尽きるのではないかということだ。 デザインという大海を見ることのススメ デザインの世界はまさに大海であり、そこに漂う自分は井戸から出たばかりのカエルだと思う。 ますます広義化するデザインは、知れば知るほどわからなくなることさえある。でも、”ゆでガエル”にならないために、ぜひビジネスに活かせるデザイン、マインドセットとしてのデザインに興味を持って、学んでいただきたい。 自社のビジネスにデザインを取り入れたい経営者や外部デザイナーの活用に困っている方のBtraxへのお問い合わせはこちら

デザインの未来はどうなるのか?〜Btrax Design Dayに懸ける想い〜

WeWorkの倒産やIDEOの日本撤退など、近年、私たちデザイナーやスタートアップを取り巻く環境は大きく変化している。 2010年代に大流行した「シリコンバレー×デザイン」を中心としたデザインとスタートアップのブームは、日本企業のデザイン思考への関心を高めたり、自由なワークスタイルの許容を広げたりするなど、ある種の漠然とした憧れを抱かせることには成功したと言える。 デザインに対する過度な期待値 振り返ると、当時はデザインへの期待が過熱気味で 「デザイン思考を会得すればイノベーションが生まれる」と考える向きも多かった。 しかしその熱狂は裏付けとなる具体的成果を十分に生み出せず「やってる感」の域を出なかったプロジェクトも少なくなかった。 デザイン思考を学んだり、デザイナーの真似事をするだけでは、具体的な結果につながりにくいのも事実。我々もデザイン会社としてその誤解を解き、より正しい理解を広げるための情報を配信したり、定期的にデザインに関するイベントを開催している。 デザインをとりまく環境変化に影響した5つの要因 この短期間でデザインを取り巻く環境が激変した背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられる。主な5つの要因は次の通り。 1. ワークスタイルの変化 ここ数年間で最も大きな出来事といえば、世界的なパンデミックの拡大と、それに伴うリモートワークの普及だろう。対面を大好きな日本企業文化ですら、現在ではオンラインミーティングや、リモートワークが一般的である。 それまで「仕事」といえば社員がオフィスに出社するのが常識だった。それがモバイルデバイスの普及やクラウドツールの充実で、シリコンバレー型のコワーキングスペースが普及し、社内外コラボも加速した。WeWorkの台頭がそれを象徴している。 しかし、新型コロナウィルスの拡大で、今度は人と人が対面で会うことすらない状態での働き方が広がる。これは時間短縮や効率向上、フレキシビリティー的にはかなり有利だろう。 その一方で、雑談っぽいディスカッションから面白いアイディアを出したり、スケッチやホワイトボードなどでニュアンスを伝えるのにはかなり不向きになる。 特に新規事業作りやサービスデザインのプロセスでは、人と人が相手の温度を感じながら新らしいモノを生み出すプロセスが不可欠で、完全リモートになってしまった場合、「デザイン」をする方法が大きな課題となる。 2. “やってる感” の限界 シリコンバレーに拠点を置く日本企業は多い。その主な目的は “情報収集” と “新規事業づくり” だ。これは一見すると具体的に何をしているのかが理解されにくい。もしくは、本当に何もしていないのかもしれない。 多くの企業はシリコンバレー地域のコワーキングやアクセレレーターにメンバー登録をし、スタートアップを紹介してもらったり、VCに資金を預け、スタートアップとのコラボを期待する。しかし、多くのスタートアップは大企業とのコラボに興味がなく、その思惑は実現しないことが多い。 拠点を構えていない場合でも視察で訪れる企業も多く、オフィスの写真を撮って満足して帰って行かれる。 そのような活動がどのような結果に繋がったのか?その答えは、現時点ではかなり厳しいものだと言える。 だからこそ、短期間では周りや本社からはどうしても “やってる感” の演出にしか捉えられず、そろそろ売り上げにつながる具体的な結果を提示しないと、肩身が狭くなってくる。 そこで重要になってくるのが、新規事業作りにおけるデザインの重要性なのだが、デザイン思考を学ぶだけでは、やはりこの “やってる感” 以上の結果を生み出すことは容易ではない。思考だけではなく、実践が伴ってはじめて「本当の結果」につながることになる。 3. ユニコーンブームの終焉 ここ数年でスタートアップを取り巻く状況も一変した。その一つがユニコーンブームの終焉だろう。 ユニコーン企業というのは、未上場で評価額が10億ドル以上の企業を指す。上場前のUberやAirbnb, 最近だとOpenAIやSpaceXが該当する。数年前まではユニコーン企業になることが、スタートアップのステータスであり、成功のひとつのバロメーターであった。 しかし、そこには大きな落とし穴があった。評価額の概念が結構曖昧で、業界ブームで実態とかけ離れた高額評価がなされることも多い。冒頭のWeWorkも上場前の2019年時点での評価額は470億ドルにまで膨れ上がっていた。 同様に当時は実態が伴わないスタートアップでもユニコーンになる例が多かった。しかしその結果、AllbirdsやBirdといった新興企業は上場後株安に見舞われている。 そんなこともあり、世界の投資家たちは “ユニコーンであること” よりも、より堅実に売上を上げられるスタートアップに注目をシフトさせており、ユニコーンを目標にしているスタートアップも減少気味だ。そもそも、ユニコーンを目指すこと自体が少し時代遅れな響きさえある。 これは、デザインの側面から見ても大きな変化が求められる。 今までのようにユーザーニーズに対して最適な体験を設計するだけの仕事から、よりビジネス面でも結果の出せるプロダクト作りが求められる時代に入ったことを示している。 4. インフレと円安 ここ数年で一つ大きく変化したもの、それがインフレと円安の状況だ。 この世界経済を取り巻く環境変化は一見デザインにあまり関係ないように思われる。しかし、さまざまな影響がある。 まずポジティブな面。 円安は日本の製品が国外で価格競争力を持つことを意味する。そのため、海外での需要が増加すれば、日本製のプロダクトをより多くの海外ユーザーに使ってもらえる機会が生まれ、そこにおけるデザインの重要性が高まる。 一方でコスト上昇により、プロジェクト予算を圧迫されたり、消費低迷でデザイン需要そのものが変動したりするリスクもある。 人件費も上昇するため、海外からのデザイン人材の獲得の難易度は上がる。これまでのようにカジュアルに海外出張に行くのも難しくなっている。 今後は為替や経済の変動に対する適切な戦略や柔軟性を持つことが、デザイン業界においても重要になってくる。 5. AIの進化 そしてデザインに対する最も大きなインパクトがAIの進化だろう。 人工知能をはじめとする新しいテクノロジーが急速に台頭しており、デザイナーが手作業で行っていた業務の自動化が進んでいる。 例えば、UIデザイン領域では、FigmaやAdobe XDなどのツールがコンポーネント設計やスタイルガイドの自動反映といった機能を持ち、効率化を支援している。 一方で、DALL-EやMidjourneyなどの画像生成AIは、イメージ製作そのものを自動で行えるようになりつつある。この先数年でデザイナーの役割はこうしたツールの管理・活用を中心に移行していく可能性が高い。 これにより、近いうちにデザイナーの仕事内容やデザイン会社の役割が大きくシフトすることが予想される。 具体的にはデザインのアウトプット作業は今後人間が行うことは随分と減るだろう。これはまるで、そろばんを使いこなして計算してきた時代から、電卓で数字を叩き出す時代へ変化するようなものだ。 電卓が発明された後も経理や会計の仕事は残っているし、むしろ需要が高まっている。一方で「計算をすること」自体には価値がなく、それを利用して「どのような価値を生み出すか」に焦点が当てられる。 同じく「デザインをすること」自体の価値はこれからどんどん低下する。言い換えると、デザイン作業のコモディティ化が進む。 その一方で、デザインによって生み出されるビジネス的、そして社会的価値は今度より拡大するのは間違いない。 アウトプットする作業に費やしていた時間やエネルギーを今後はより目標に直結したデザインワークに向けることが可能になるだろう。 これからのデザインの未来はどうなるのか このような時代の変革期において、今後デザインの価値とその役割はどのように進んでいくのだろうか? そんなデザインの未来に関しては、来週12月6日のイベント「Btrax Design Day」にて下記のトピックを含むセッションを通じてお届けする。 1. キーノートスピーチ:Design for the Next Generation AI, インフレ, 円安など、近年稀に見る環境変化においてデザインはどのような価値を提供できるのだろうか?btraxのCEOがグローバル視点で社会と企業にとってより重要になるデザインの役割を具体的にご説明する。 2. 若者に愛されるブランドとは? アメリカと日本のZ世代の本音 生まれながらにテクノロジーやデジタルの世界に囲まれ、これまでの時代とは異なる価値観を持つ若者は今、何を考え、どう暮らしているのか?若者に愛されるブランドや企業とはどのようなものなのか。日本とアメリカのZ世代の生の声を聞きながら、リアルな価値観を紐解く。 3. BtoBレガシー企業が世界に仕掛ける、新たなブランドデザイン オリジナルアニメプロジェクトの本格始動を発表したYanmar。日本の伝統あるBtoB企業が今なぜ、ブランディングに力を入れているのだろうか?キャラクター・IPを活用した新しいブランドデザインの実例から、グローバルなブランド力を高めるために日本企業が活用できるアセットや、認知向上に留まらないブランドデザインの価値を考える。 4. ミニワークショップ 「Playable」をテーマに、アクティビティワークショップを実施。btraxのデザイン思考研修などで実践している内容をアレンジし、“本気で遊ぶ” ようにワクワクしながら仕事に取り組む状態を作るアクティビティを体感いただける。詳細は当日のお楽しみに! 5. AIと人間が共創する新時代のデザイン 生成系AIの登場により、デザインに求められる役割が変わりつつあることは先述の通りだ。生成系AIは、ビジネスやデザインの世界をどう変えたのか?今まさに世界中で法律や倫理面のリスクも論じられている中で、今後どのようにAIと共存していくべきなのだろうか? 6. アメリカ企業が語る、デザインドリブンなカルチャーの真髄とは 「カルチャー変革が急務」と言われる一方で、その価値や意味を理解しないままの取り組みが多いのも事実。実は、変革の鍵は、未来のユーザーに焦点を当てるデザインドリブンなカルチャーにある。デザインドリブンな経営を実践するアメリカ企業の生の声を聞きながら、サービスや意思決定、組織づくりにどのようにデザインの考え方を取り入れているのか、そのヒントを探る。 7. マイノリティ視点がイノベーションを起こす:インクルーシブデザインの力 新しいイノベーションの種として、これまで製品開発のターゲットから除外されがちだった多様な背景を持つ人たちの視点から新たな課題を見つける「インクルーシブデザイン」が注目されている。アメリカのIT企業で関心が高まる「ニューロダイバーシティ」などを切り口に、社会課題を解決するプロダクト創出の手法についてパネルディスカッションを行う。 8. ネットワーキングパーティー カンファレンスの後は、ご参加の皆さまや登壇者の方々、btraxメンバーと交流いただける時間も。ドリンクを片手に軽食をつまみながら、イベントの振り返りやアイディアの交換、新たなビジネスの可能性について語り合いましょう! またこのイベントに来ていただいた方には、btrax初の書籍である「発想から実践まで デザインの思考法図鑑」を筆者サイン入りで贈呈 (学割チケットを除く)。イベント詳細及びチケット購入は公式サイトより。

【btrax初書籍をチラ見せ】第4章 小さく始めるためのプロトタイプ・デザインメソッドまとめ

第1-3章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。
第4章のテーマは『サービス体験を設計する・プロトタイプを作成する』。特に「プロトタイプ」のフェーズでしっかりと、サービスやプロダクトがユーザーのニーズとあっているかを検証しながらプロトタイプを更新していくことが、サービス開発の近づく鍵になっている。
後半では認知バイアスもいくつかご紹介するため、コラムとして読んでいただけたら幸いだ。
第4章の内容はこんな方におすすめ:

デザイン思考のおさらいをした…

デザインとは何か?その4つの役割とは

「デザインとは何か?」 これはデザイナーにとっても、それ以外の人々にとっても永遠の問い。 人によって「デザイン」の概念が異なり、それが理由でミス・コミュニケーションがやちょっとした争いすら発生する原因にもなっているからだ。 同じく現代の「デザイナー」と呼ばれる人たちの役割も多種多様で、一言で表現するのはかなり難しい。 そして「デザイン」の担う領域がどんどん広がっている現代において「デザインとは?」という問いは、例えば「言葉とは何か?」といった問いに近いレベルだ。 英語のdesign, Design, DESIGN その違いを知っていますか? 結局デザインとは何なのか? さて、本題に戻ろう。 デザインとは何であるか?これを言い換えると「デザインの役割とは?」である。 人生をデザインに捧げてきた人間として自分なりにその答えをここに表記する。間違っているかもしれないが…。 大きく分けてデザインの役割は4つある。 デザインの役割: 可視化 課題解決 導き シンプル化 【デザインの役割1: 可視化】 デザインは思考の可視化である – ソール・バス おそらく「デザイン」と聞いて最も多くの人たちが想像するのがこの役割。 絵を描いたり色を塗ったり、いわゆる「装飾」的な役割としてのデザイン。 現代では時代遅れと思われがちな役割であるが、これもデザインの最も重要な定義のひとつ。 ここで重要になってくるのは、ではデザインは一体 “何” を可視化するのか? いくつかあるので紹介しよう。 デザインが可視化するもの – 情報 みなさんの日常に最も馴染みのあるデザインが可視化するもの。それは情報である。 世の中はさまざまな情報で溢れているが、それをより人間が直感的にわかりやすく表示するのがデザインの役割の一つ。 例えばこの画像のように、左の表から右のグラフに変換するだけでもかなり理解しやすくなる。結果として、より直感的に理解できるようになり、コミュニケーションに必要とされる時間の短縮にもつながっていく。 デザインが可視化するもの – アイディア 次にデザインが可視化するのはアイディア。 ビジネスのプレゼンやスタートアップのピッチをする際に利用するスライドやデモ動画などがその例だろう。 一人の頭の中にだけあるアイディアを言葉以上にわかりやすい形で可視化することで、その価値が伝わりやすくなる。 そして価値が認められることで、周りの人々を巻き込んだり、予算を獲得したり、投資を受けやすくなったりするメリットがある。 デザインが可視化するもの – ブランド デザイナーの役割の一つとして、ロゴやアイデンティティのデザインがある。これは、その企業やサービスなどのビジョンの可視化に他ならない。 世の中に対し、その存在価値をより視覚的にわかりやすく表現することにより、一目で認識しやすくするのがロゴの役割だ。 したがって「ロゴデザイン = ビジョンの可視化」である。 デザインが可視化するもの – 体験 デザインの役割のひとつが「目に見えないものの可視化」だとするならば「体験」も可視化するとより伝わるようになる。 そもそも体験の可視化なんて可能なの?と思うかもれしれないが、実は既にかなりさまざまなシーンでされている。 その代表的な例が広告。 テレビやウェブ、そして街角のビルボードまで、多くの広告は商品の紹介以上に、そこから得られる体験の可視化を通じたコミュニケーションこそが最も需要な役割である。 デザインをする際に利用するタイポグラフィ、色や形、レイアウト、スペースといった表層は、単なるビジュアルの要素でなく、人間の感情や心理的な影響を持ち、体験そのものの印象を形作る重要な要素なのである。 優れたデザインを通じることで、ビジュアルの要素が整合性を持って設計され、ユーザーの感情や認知に働きかけることで、より効果的なコミュニケーションが可能になる。 【デザインの役割2: 課題解決】 デザインは問題解決のプロセスであり、美しい解の追求である。 – ドン・ノーマン 次のデザインの役割、それは課題の解決。 自分も以前より「デザインの定義って何ですか?」って聞かれた際には、ほぼ毎回「課題を解決するための最も効率的なプロセス」と答えていた。 特に21世紀に入ってから注目されているデザインのフィールド、例えばデザイン思考やUXデザインにおいては、その目的がユーザーの課題解決に定められることが多い。 そして、現代の世の中にある多くのプロダクトは、消費者やユーザーの課題を解決するために生み出されたものである。 では実際にデザインが課題を解決した例をいくつか紹介する。必ずしも デザイン “だけ” で解決したわけではないが、デザインが課題解決という重要な役割の一端を担っていることをお伝えしたい。 デザインが課題解決した例: トースター レトロなタイプのトースター。その見た目も、焼けた時にポンッとパンが飛び出す感じもとても可愛い。 実はこのデザイン、とある課題を解決している。 それは、焼き過ぎを防ぐことと焼けたことを知らせること。 焼けた時にパンが飛び出してくれないといつ焼けたのかが分からないし、そのまま放置すると焦げてしまう。 それに対して飛び出すデザインにしたことで、その二つの課題をしっかりと解決している。 デザインが課題解決した例: カスタネット もうひとつ課題を色によってその課題を解決したプロダクトがある。 きっとみなさんの多くが触れたことがあるであろうカスタネット。 多くの場合、赤と青の2色で構成されている。実はその理由は、男子でも女子でも使えるようにするため。 もともとこれがデザインされた当時は、男の子向けには青、女の子向けには赤、というように性別で色が定められていた。 しかし、クラスによって男女比率が異なるケースがあることで、どちらかの数が足りない状態が頻発していた。そこで、両方の色を合わせて一つにすることで、誰でも使えるようにデザインにしたというもの。 デザインが課題解決した例: スタッキングできる椅子 複数の椅子を重ねて収納できるデザインも、省スペースによって課題解決をした例。 日本の小学校でも授業が終わった後に椅子を重ねて教室の後ろに置くことで掃除をしたりする。 当たり前のように思われがちだが、重ねられる椅子もしっかりとデザインとして工夫が施されているからこその機能である。 【デザインの役割3: 導き】 “デザイン” は見た目のことではなく“どう機能するか” だ – スティーブ・ジョブズ 以前にSNS上で “デザインの敗北” というキーワードがバズったことがある。 施したデザインがユーザーに対して有用な結果を生み出していなかったことから、「役割を果たしていない = 敗北した状態」と言われていた。 その例のひとつがこの公衆トイレのサイネージ。 性別を想起させる典型的なデザインをあえて排除した造形を採用している。おそらく性差別的な表現を避けるためのインクルーシブなデザインを目指したのだろう。 でも、これだと男性用と女性用の識別が難しく、かえってユーザーが混乱してしまう。 それに対応すべく、下の部分に手書きで「男性」「女性」が記載されたテープが後付けて貼らレルという誠に残念な応急処理がなされている。 […]

【btrax初書籍をチラ見せ】第2章 デザイン思考の肝!ユーザーへの共感から問いを立てるためのポイントとは?

第1章の解説に続き、今回もbtraxの書籍『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の各章の内容をご紹介していく。 第2章のテーマは『ユーザーに共感する・問いを立てる』。 デザイン思考の中でも基本となるが自分自身のバイアスが入りがちで工夫が必要である「共感・理解」のステップや、ユーザーリサーチで得たインサイトをサービス・プロダクト設計に活かす方法などをお伝えする。 第2章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の「共感・理解」「課題定義」に関してより深く理解したい方 ユーザーリサーチなどを行っているが、得たインサイトをサービス開発にどう活かすのかピンときていない方 ユーザーの感じる「不便さ」を言語化して、サービス設計に活かしたいデザイナーの方 第2章 ユーザーに共感する・問いを立てる 目次 デザイン思考:共感・理解 情報の収集・分析・統合 エンパシーマップの活用 デザイン思考:課題定義 ペルソナの作成 カスタマージャーニーマップの作成 カスタマージャーニーマップの活用 操作性ハードル:心理的ハードル① 認知的ハードル:心理的ハードル② 感情的ハードル:心理的ハードル③ デザイン思考:共感・理解 デザイン思考において「ユーザーに共感する」とは?そこからユーザーのことを理解するとは?トレーニングを交えて、「共感・理解」を実践するメソッドをご紹介する。 参考記事: デザイン思考における「共感」とは? – デザイン思考を学ぶ Part 2 情報の収集・分析・統合 ユーザーリサーチで収集した情報を統合・分析する手順を各ステップごとに解説。ユーザーリサーチでインサイトを抽出する方法から、情報分析、情報を組み合わせる時に効果的なダイヤグラム、エンパシーマップの効果と活用方法を見ていこう。 参考記事: 勘違いから見えたデザイン思考の本質とは?—ファシリテーターの経験を通して気づいたこと エンパシーマップの活用 第2項「情報の収集・分析・統合」で紹介したエンパシーマップをうまく活用し、運用していくコツをご紹介。エンパシーマップの運用において陥りがちな失敗と合わせてご紹介。 デザイン思考:課題定義 デザイン思考における「課題定義」は、ビジネス的な課題定義とどのように異なるのか?課題定義の際に抑えたいフレームワーク「POV」と「HMW」を実践しながら、デザイン思考の課題定義の考え方を学んでみよう。 参考記事: デザイン思考における課題定義のコツとは? – デザイン思考を学ぶ Part3 ペルソナの作成 デザインでもマーケティングでも、ビジネスにおけるさまざまなシーンにおいて重要なペルソナ。本項では、その役割や、ペルソナを定義する際の順序、方法をご紹介。「理想像」ではなく、地に足のついたペルソナを作るために重要なこととは? カスタマージャーニーマップの作成 ユーザーがプロダクトを利用するプロセスをマップ形式でまとめた「カスタマージャーニーマップ」。ペルソナと並んでしばしば「理想」を描きがちなものだろう。ここでは、改めてその作成の手順と、作成にあたって押さえるべき3つのポイントを解説。チームの全員で読み合わせたい内容だ。 参考記事: UXデザイナーが教える、本当に機能するカスタマージャーニーマップとは カスタマージャーニーマップの活用 カスタマージャーニーマップは一度作って終わりではない。むしろその後にどのように活用していくかが鍵となる。この項目では、カスタマージャーニーマップを活用し、チームで運用する際に気をつけるべきことをご紹介する。 操作性ハードル:心理的ハードル① サービスデザインにおいては、ユーザーに心地よくサービスを利用してもらうため、3つの心理的ハードル(操作性ハードル、認知的ハードル、感情的ハードル)を感じさせない工夫が必要だ。 心理的ハードルの中でも直接UXデザインやユーザーの「使い心地」に関係する「操作性ハードル」をピックアップして解説する。 認知的ハードル:心理的ハードル② ユーザーがUIを使用している時にダイレクトに感じる負担、それが2つ目の「認知的ハードル」。認知的ハードルの見つけ方と対処法をまとめて、事例とともにご紹介する。 感情的ハードル:心理的ハードル③ 最後にご紹介する感情的ハードルは「感情的ハードル」。ユーザーが感じやすいハードルでありながら、設計者が気付きづらく、対処も難しいとされているハードルだ。そんな感情的ハードルの発見方法と対処法を解説する。 参考記事: サービスデザインで考慮すべき3つの「心理的ハードル」とは まとめ 今回の記事では、『発想から実践まで デザインの思考法図鑑』の2章の内容の簡単にご紹介した。1章に引き続き、デザイナーの方やデザイン的マインドセットを仕事に活かしたいビジネスマンの皆様にとって有益な情報となっていれば幸いだ。 書籍は現在、Amazonにて予約販売を行っている。ぜひ予約して、内容を一足お先にご確認いただきたい。

【btrax初の書籍】第1章:本質的なユーザー理解のために必要なデザイナーのマインドセットとは?

サンフランシスコで創業したbtraxは19年間、デザインに軸足を置いてビジネスを展開してきた。 ビジネスに活かせるデザインに向き合い続けてきたbtrax。このブログFreshtraxも、2008年に解説して以降、15年間継続して投稿を続けており、実は日本語の記事だけでも10,000記事に上る本数を有するオウンドメディアとなっている。 そんなbtraxが、グローバルなクライアントさまと19年間プロジェクトを推進してきたナレッジや、それらを断片的に蓄積し続けたFreshtraxのエッセンスを凝縮した書籍が、btraxから出版される運びとなった。 書籍のタイトルは『デザインの思考法図鑑』。 DX、組織改革、新規事業開発など、ビジネスの新たな取り組みや事業成長にもデザイン的マインドセットが求められる現代。 しかし、部署間、役職間、企業間のギャップなどにより、社内外でスムーズに進行できないという課題が発生することも多々あるのではないだろうか。実際、我々が日々接しているクライアントさまもこうした課題感をお持ちのケースが多い。 こういった課題を解決する足掛かりとなればと、この書籍ではユーザーを理解する〜デザインをターゲットに伝えるまで、包括的なビジネスでのデザインの活用方法をカバーしている。 この一冊を読めば、デザインマインドセットをどのように組織に浸透させ、ビジネスに活かせるかまでわかるようにトピックをピックアップした。 デザイン的思考やマインドセットを社内外のプロジェクトや組織改革に適用したいと考えられているビジネスパーソンの皆さまや、これからのビジネスの現場で活躍できるデザイナーになりたいと考えている皆さまに是非手に取っていただきたい一冊となっている。 書籍の出版にあたり、このFreshtraxでは、今回の記事を皮切りとし、全6回にわたって本の内容を紹介していく。 今回は本の第1章『ユーザーを観る・理解する』の各項のポイントや、ぜひ読んでいただきたいところを皆さんにお見せする。もちろん記事で全てを語り切ることはできないため、より内容が気になった方は本を購入して続きを読んでいただきたい。 第1章の内容はこんな方におすすめ: デザイン思考の「定義・明確化」のステップの基礎を学びたい・おさらいしたい方 新規プロダクトやサービスのユーザーリサーチを効果的に行う上で、事前準備をしたい方 ユーザーインサイトの「核心」をつくことにもっと自信を持ちたい方 デザイナーを目指して勉強をされている方 第1章 ユーザーを観る・理解する 目次 デザイン思考:定義・明確化 デザインリサーチの考え方:生成的調査と評価的調査 デザインリサーチの手法 ユーザーリサーチの考え方:定量調査と定性調査 ユーザーリサーチの手法:ユーザーインタビュー ユーザー理解の本質 リフレーミング 内向的思考 デザイン思考:定義・明確化 デザイン思考。一言で表現すると「ユーザー視点でヒットする商品やサービスを作り出すためのマインドセット」である。今回はデザイン思考の主要5ステップのうち、「定義・明確化」に関して解説。課題定義のために明確にすべき3つのポイントとは? 参考記事: 誰にでもわかるデザイン思考の基本とプロセス ここがちゃうねんデザイン思考。5つの誤解とは デザインリサーチの考え方:生成的調査と評価的調査 この項では、デザインリサーチとはそもそも何か、なぜ必要で、どんな効果が得られるのかに関して解説する。デザインリサーチの基本となる生成的調査、評価的調査のポイント、そしてその調査を行うタイミングなど基礎の概念をおさらいしよう。 参考記事: 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ デザインリサーチの手法 この項では、デザインリサーチの代表的な手法、マーケットリサーチとデザインリサーチの違いを記載する。 「私情」を探るユーザーリサーチと「市場」を探るマーケットリサーチ。それぞれの調査手段の違いや、リサーチャーとしてぜひ心がけたいポイントなどをご紹介する。 ユーザーリサーチの考え方:定量調査と定性調査 この項では、ユーザーリサーチの基本となる定量調査と定性調査のデータの扱い方や仮説の立て方を解説する。定量調査と定性調査の使い分け方法とは? ユーザーリサーチの手法:ユーザーインタビュー この項は、より実践的なユーザーインタビューの方法をご紹介。インタビュー行う際により良いインサイトを引き出すためのマインドセットやポイントをお伝えする。 ユーザー理解の本質 この項では、ユーザー理解の本質に関して言及する。「ユーザー中心思考」のつもりが「ユーザーの御用聞き」になってしまう状況も実は珍しくない。そんな罠に陥らないために、実証実験をもとに分かった、人間の考え方の癖や、それを元にデザインに反映できることをご紹介。 参考記事: 「誰にも使われない機能を持つ製品」が生まれてしまう2つの理由 スーパーカブとコンコルドに学ぶイノベーションの本質とは リフレーミング この項では、リフレーミングの定義とその効果に関してお伝えする。 リフレーミングとは、解決策の変更ではなく問題自体の再定義に目を向け、全く新しい発想を生み出すこと。解決策に行き詰まったら思い出したい内容だ。リフレーミングから生まれた有名サービス事例とともに解説。 参考記事: リフレーミングとは? – ヒットの秘訣は問題へのアプローチの仕方にある 内向的思考 デザイナーの仕事にはコミュニケーションが大きな割合を占める。外向的なイメージを持たれがちなデザイナーだが、実はそうとは言い切れない。この章では、内向的思考の強みや、デザイナーとして活かせる部分に関してお伝えする。 参考記事: 内向的な人はデザイナーに向いていないのか? まとめ いかがだっただろうか。この記事を通して、少しでも本書の目的や内容の理解が深まれば幸いだ。 書籍は現在Amazonで予約販売を行っている。今回の記事を読んで気になった方は、ぜひ一足早くAmazonで予約購入し、書籍を手に取っていただけたら幸いだ。 書籍のAmazon予約ページはこちら

デザイン思考のリスキリングのためにファシリテーターが意識している3つのポイント

2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされたリスキリング(Reskilling)というワード、まだあまり馴染みのない方もいるのではないだろうか? リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」を指す。日本国内でも、企業が従業員に対して職業能力の再開発を行うため、導入を開始または検討し始めている。 btraxでは、「リスキリング」という言葉が流行する以前から、企業向けに技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために効果的なデザイン思考のワークショップを提供してきた。 今回はその一例として、今年1月からサンフランシスコにて実施した滞在型の研修プログラムを題材に、ワークショップ運営側のファシリテーターが意識していることを紹介したい。 デザイン思考とスタートアップカルチャーにどっぷり浸かる10週間 今回行われた研修は、大手日本企業にて入社から数年経った30代前後の中堅社員の方を対象として、「スタートアップの聖地」とも呼ばれるサンフランシスコで、「デザイン思考」やスタートアップカルチャー、UXデザインの特徴を、講義と実践を通じて学ぶ約10週間のワークショップだ。 プログラムの主たる目的は、この研修を通して「参加者一人一人が新しいマインドセットを自分のものにすること」。 そのために、レクチャーを通して考え方を理解していただくだけではなく、実際に手を動かして学んだ考え方を実践し、振り返りを言語化・可視化することで学びを深めるというサイクルを繰り返す。 本研修は、参加者全員にサンフランシスコでスタートアップを起業するつもりで、それぞれの関心をベースに少人数でチームを組んでもらい、それぞれ社名を決めるところからスタート。 現地に住む人々が抱えている問題や隠れたニーズをリサーチし、サービス・プロダクトのコンセプトを練り、実際に住民の方々へインタビューなどをしながら仮説を検証。プロトタイプの作成からサービスアイディアのピッチまでを実践していただく。 デザイン思考のリスキリングのために、ファシリテーターが意識している3つのこと 上記の研修内容を踏まえ、前述のゴール達成のために、今回の研修全体を通してファシリテーターが意識していたことの中から主要な3つのポイントをご紹介したい。 1. 「失敗しても大丈夫!」思い切って挑戦し、トライアンドエラーを繰り返すことを奨励する 日本では文化的に「失敗はしない方がベター」という考え方が根強いため、突飛なアイディアを口にしたり、成功するかもわからないプランを共有することに最初は抵抗がある参加者も多い。 真摯な方ほどこのような傾向が強いのだが、デザイン思考ではトライアンドエラーを繰り返しながらコンセプトを練り上げていくため、最初から正解に一発で辿り着くということはほぼない。 むしろトライした数だけ失敗も増え、そこから学びやデータが得られるため、特にアメリカのスタートアップ業界では「失敗しても、成功するまで止めなければそれは失敗とは呼ばない」という考え方が主流である。今回のような研修において、ベースとなるこのマインドセットへのシフトが最初の超えなければならないハードルとなる。 これは英語での会話についても言えることだ。今回の研修では、リサーチの段階で現地のアメリカ在住の人々へインタビューを実施するフェーズがあり、参加者は英語で全てのコミュニケーションを行う必要がある。 参加者のほとんどは英語圏の国に住んだ経験がないため、「うまく話せないかもしれない」という不安から、最初は英語で話すことに抵抗を感じている人も多かった。 これに対してファシリテーター側からは、「失敗をしても大丈夫」「間違うことや想定通りに進まないことは避けられないものである」ことを定期的にリマインドし、その過程を楽しんでほしい旨を積極的にお伝えするようにしている。 失敗に対する恐怖心を取り除くことで、限られた時間内で試行錯誤を繰り返し、最初に出たアイディアやプロトタイプを踏み台にしながら、さらに良いものを生み出すというサイクルへ進んでいけるようになるためだ。 また小さな成功を喜ぶことや、異なる意見・視点を持っていることを肯定し合う時間を持つことも重要である。そのため研修中は、毎日1日のはじめと終わりにチェックインの時間を設け、参加者一人一人の感じていることや気づきなどを共有する時間を取るようにしている。 感じたことや学びに正解や不正解はないという前提を確認し合い、それぞれの発見をチームで共有し認め合う時間を毎日意識的に取ることで、それぞれが自分の考えを素直に発信できるような雰囲気作りを心がけている。 最初は、なかなか終わりの見えない議論や英語でのコミュニケーションに戸惑う場面もあった。しかし、場数を踏んでいくうちに、それぞれの参加者の顔に自信が浮かび、活発な議論や英語の会話が広がっていったところが印象深かった。 自転車の乗り方を覚えるように、最初は転んだり、恥ずかしい思いをしたりするため、社会人になって数年経ったタイミングで新しいマインドセットやメソッドを実践するには勇気がいる。しかし、思い切って新たな環境へ飛び込み、短期間でみるみる変化していく参加者の姿には運営側である私たちがハッとさせられる場面、学びをいただく機会も多い。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ 2. 「正解は一つではない!」答えを与える代わりに問いを投げかける   今回のようなワークショップで運営側として非常に難しい、しかし重要だと思っていることが「正解をこちらから投げかけない」ことだ。 デザイン思考のプロセスにおいては、問題設定の段階から自由度が高く、実際に先へ進んでみるまで何が正解なのか誰にもわからない類の問いに立ち向かっていくことになる。 正解は1つではないし、ファシリテーターがすでに正解を知っているわけでもない。文字通りファシリテーターと参加者の二人三脚で一緒に進んでいくのだ。 しかし、研修をリードさせていただく立場である以上、チームが迷子状態に陥ってしまった時にはサポートをする必要があるし、「こういうときはどうしたらいいんですか?」という質問も頻繁にいただく。 私たちとしては、ファシリテーターの発言が彼らにとっての正解となってしまったり、それに引っ張られてしまうことは避けたい。 そのため、こちらから声をかけたり質問へ応答する際には、具体的な答えや解決法を示す代わりに、「この時ユーザーはどんなことを感じていたと思いますか?」「一度、現在出てきたアイディアをホワイトボードに書き出してみるのはどうですか?」など、問いやアウトプットの機会を提起するようにしている。 これと並行して意識していることが、できる限り参加者のアイディアや意思を尊重し、自分たちのサービスやプロダクトを自分事として責任感を持ってもらえるようにサポートすることだ。 極端な例を出すと、今回の研修では参加者が合計8名だったのだが、チーム決めの段階で関心ごとに分かれてみたところ人数比が3人と5人になった。全体での議論の結果、無理に半々に分けるよりも、それぞれの関心を優先し、そのままの組み分けで進もうという結論に至った。 参加者からは「数合わせのために誰かが移動になるのではないかと思っていた」との声もあったが、運営側としては10週間かけて取り組むコンセプトに納得感と責任感を思って取組んでほしいという思いから少しイレギュラーなチーム編成を採用した。 その結果、それぞれのチームの個性が際立ち、小さいチームだからこそ意思決定が速かったり、大きいチームだからこそ助け合える幅が広かったりと、「彼らなりのチームのあり方の正解」を模索してもらえたように思う。 さまざまな正解の形があると認めることは、何通りもある正解の中から自分たちなりの正解を見つける決心をすることであり、自由と責任が伴う。それだけ多くの議論や、考えを裏付けるためのリサーチ、検証が必要となり、手間や思考の負荷は増えるものだ。 しかし、このようなプロセスを通して、既存の考え方や慣習にとらわれない、ユーザーに寄り添ったオリジナリティのあるサービス・プロダクトの設計に繋がると私たちは考えている。 3. 「クリエイティブは一夜にしてならず」適度な気分転換・視点の切り替えをおすすめする 前述の通り、正解が決まっていないデザイン思考のプロセスにおいては、チーム内でのディスカッションに非常に多くの時間を費やすことになる。 アイディア出しから、意見のすり合わせ、フィードバックの交換など、お互いの意見を尊重し合いながらもアイディアをブラッシュアップしていく過程は、インタラクティブで楽しそうに聞こえるかもしれない。 しかし、実際にやってみるとかなりの思考力と忍耐を使う。長時間議論が続くと、チーム全員が頭を抱えて悶々としてしまうような場面もしばしば。 課題の締め切り時間や、1日の終わりが近づくにつれて、どんどん空気が重くなり、一生懸命取り組んでいるからこそ、焦りや苛立ちの表情が見えてくるメンバーが現れる。 そんなタイミングに運営側から積極的に働きかけることは、「無理に進めようとしない」ことである。 クリエイティブな発想やひらめきは、ぐるぐるとひたすら考え続ければ降りてくるものではない。むしろ議論が煮詰まって、脳が疲れてくると、私たちは短絡的で安易な解決策に走りがちになってしまう。 それではこれまでの議論や努力が無駄になってしまうため、メンバーの顔が曇ってきたり、議論が行き止まった際には、ファシリテーターが介入し、場所を変えてみたり、休憩を入れてコーヒーを飲んだり、思い切って散歩に出てみたりすることをおすすめする。 創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由 研修が進むにつれて、参加者の間でも気分転換の取り入れ方が自然と身についていき、「議論が煮詰まったタイミングで、オフィスの外の公園に場を移して話をしてみたら、これまで考えつかなかった良いアイディアが出てきました!」といった声も聞こえるようになった。 遠回りに感じられるかもしれないが、焦りが出てきた時こそリラックスして、自分たちなりの解を見つけるまでのプロセスを楽しむことで、新たな視点で問題を捉え直せたり、よりよいアイディアが閃いたりするので、「休憩」の効果を侮ってはいけない。 まとめ 今回のワークショップは、日頃大企業で活躍されている参加者の方々に、実践を通してデザイン思考の考え方を体感していただき、それを言語化できるところまで腹落ちさせ、次のアクションへ繋げていただくことを主眼においている。 これまでの会社での定石からかけ離れたやり方で課題に取り組んでいただくため、特に最初の方は新しい考え方や方法に戸惑う様子の参加者も少なくない。 研修の振り返りのタイミングでは、参加者に下記のような感情曲線を描いてもらい、実践のプロセスで感じたことや学んだことをリフレクションしていただくのだが、参加者の誰もがどこかしらで小さな挫折や戸惑いを経験する。 しかし全てをやり切った時、達成感と共にデザイン思考への理解も深まり、グラフが上向くケースがほとんどだ。 ちなみにこの感情曲線は、感情の上がり下がりを可視化することで、自分の性質や癖、得意・不得意などの理解を深め、次に曲線が下がるような状況になった場合の打開策や対応策を練っていただく機会として実施している。 運営側としても、決まった正解がない中で、アイディアの芽を潰さずに方向性を示していく難しさを感じることも多い。 しかし、参加者の皆さんの中でブレイクスルーがあったり、自分たちなりのアイディアが固まった時の自信に満ちた表情が垣間見える時が、とても喜ばしい瞬間である。 今回は、そんな研修の運営においてファシリテーターが意識している3つのポイントについてご紹介した。btraxでは今回の研修のように、デザイン思考のマインドセットやメソッドをワークショップを通して学べる機会をご提供している。 ご興味のある方は、ぜひ弊社コーポレートサイトよりお問い合わせください。

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由

この記事で伝えたいことは、すぐに行動するのではなくコーヒーを淹れて、自由に優雅に考える「余白」を作ってほしいということだ。
それは結果的に認知疲労を回復させて、多様な視点で考えることを可能にし、創造的なアイディアを生み出す可能性を高めてくれるだろう。
私は大学院で創造的なアイデアを生み出す方法論の研究をしている。というのも、自分自身が成長するにつれて斬新なアイディアを出しにくくなってきていたからだ。
子供の頃は斬新なアイディアが出せていたのに、なぜ今難しくなってしまったのか。
それを様々な論文を参考…

【ファシリテーションの裏側】円滑なワークショップ運営のためのツールと活用事例

btraxのサンフランシスコオフィスでは、10週間のデザイン思考ワークショップを提供している。 このワークショップの参加者は、サンフランシスコに滞在する間、スタートアップになりきってサービス開発を行う。 筆者は現在、ファシリテーションアシスタントとしてワークショップに携わっており、ワークショップ運営の実態を目にする機会があった。 そこで本記事では、ワークショップを円滑に進めるためのツールと活用方法について、実際の事例とともにまとめていく。 ちなみに今回のワークショップは、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講されている。 そのため本記事では、オンラインのみで開催するワークショップでも利用可能なツールをご紹介する。 Slack 最初にご紹介するのは、皆さんご存じのコミュニケーションツールSlackである。 Slackは、ワークショップ中のレクチャー資料共有、チーム内のコミュニケーション、健康管理などの用途で使用されている。 ここでは、4つのチャンネルとその活用方法をご紹介する。 ➀#interview まず最初にご紹介するのはインタビュー専用のチャンネルである。 本ワークショップでは、1対1のオンラインインタビューを通して、実際の生活者の声を聞く機会を設けている。 その際、インタビュー中にのみ活用されるチャンネルを用意している。このチャンネルには、主に2つの活用方法がある。 1つ目は追加質問を共有する場としての役割だ。 チームのメンバーやファシリテーターが、さらに深掘りしたい質問をSlackに投稿する。インタビュアーやアシスタントはそれを見て、臨機応変に追加質問を尋ねていく。 2つ目に英語力のサポートのための活用方法がある。 参加者の中には、海外在住や留学経験がある方から、全く英語に自信のない方まで、様々な方がいらっしゃる。 そこでスタッフは、英語力に不安のあるチームのために、英語表現の修正やインタビューのサポートを行う。 英語表現の面では、インタビュースクリプトやピッチ資料などの翻訳作業を行ったり、より伝わりやすい言葉選びを提案したり、といったサポートをしている。 またインタビューの際には、スタッフはインタビューの様子を見ながらユーザーの発言を同時通訳してSlackに打ち込む。 参加者はその訳を見て、相槌を打ったり、次の質問を考えることができる。 事前にチームとファシリテーターで相談し、インタビュー時に使用するチャンネルとその用途を共通認識として決めておくのだ。 それにより複数のチャンネルを行き来する必要がなくなり、インタビューに集中しやすい環境をつくっている。 ➁#health-check 次にご紹介するのは、「health-check」チャンネルである。 コロナ禍でも安全にワークショップを行うためには、事前のルール作り、そして関係者間での綿密なコミュニケーションが欠かせない。 私たちは、ワークショップの事前準備として、San Francisco Department of HealthやCDCを参考にoffice use protocol(オフィスの使用規則のようなもの)を作成している。 政府機関の規則には変更が多いため、毎回のワークショップで一から内容を見直す必要があるのだ。 オフィスの入口には、アルコールジェルと体温計を用意している。 ワークショップの期間、参加者は体温計で体温を測定し、毎朝Slackに報告する仕組みがある。 ➂#things_you_learned 3つめは、一日の学びや疑問を共有するチャンネル「things_you_learned」だ。 参加者は、一日のワークの終わりに[Fact] [Thought] [Question]の3項目を投稿する。 それを翌朝のチェックインで発表してもらい、各々の悩みや質問を全体で考える機会をつくっている。 これには参加者一人ひとりが一日の学びを振り返るだけでなく、互いの学びや感想を見ることで相互作用を生む狙いもある。 ④btrax_internal 次にご紹介するのは、スタッフ用の「btrax_internal」チャンネル。 ファシリテーションとは、やるべきことや手順が教科書のようにはっきりと決まっているものではない。 参加者一人一人の様子や、チームの雰囲気、議論の流れを見て、その場の状況に合わせた対応が必要となる。 そのため、ファシリテーターは、臨機応変な対応ができるよう、常に意識している。 柔軟な対応を可能にするには、ファシリテーター同士の綿密なコミュニケーションが不可欠だ。 このチャンネルはそのようなコミュニケーションの場として活用されている。 これらは、より実りあるワークショップを参加者に提供するべく行われている工夫なのだ。 FigJam 次にご紹介するのはFigJamだ。こちらもデザイン業界では良く知られている、コラボレーション型デザインツールである。 ワークショップ初日には「How to use FigJam」という時間が設けられている。 この時間では、参加者に自己紹介シートを作成するという課題を与え、実際に手を動かしながら使い方を覚えてもらう。 FigJamは、毎日のチェックイン・チェックアウトの他、宿題の提出やチームごとのオンラインホワイトボードとしての役割を担っている。それぞれ詳細に見ていこう。 ➀チェックイン・チェックアウト btraxでは、チェックイン、チェックアウトという時間を設けている。 これは、参加者が1日の始まりと終わりに集まり、自身の気分を共有する場だ。 この時間を取ることによって、参加者は「参加者としての気持ちの準備」をしたり、1日を振り返ったりする機会を得られるのだ。 対面のワークショップでは、気持ちの書かれた画用紙に人形やシールを置き、メンバーに共有する。 一方、オンラインでチェックインを行う際には、対面で行う際と変わらない環境を提供するため、シートをFigJam上に用意する。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ ➁宿題の提出・共有 続いての活用方法は、宿題の提出と共有である。 ワークショップを通しての目標や、フィールドワークでの発見など、参加者に宿題を出すことがしばしばある。 宿題には、シートや文章を穴埋めするスタイルのものが多い。 参加者はFigJam上のシートに自らの答えを書き込み、全体で発表する。 またこれらに加え、ワークショップ運営に欠かせない機能が2つある。 まずはFigJamのboardの右上から設定できる、タイマー機能である。 このタイマー機能によって、発言の持ち時間を管理したり、ブレインストーミングの時間を決めたりすることができる。 ワークショップにおいては、敢えて時間を決めて議論を前に進めてみることがある。この機能は、そういった時にも非常に役立つのである。 さらにFigJamには、チームのコミュニケーションを促す機能が多く含まれている。 そのなかでも今回はコメント機能とGoodスタンプの活用方法についてご説明する。 Goodスタンプは、チーム内での投票や、互いのアイディアに軽いリアクションをするときに非常に便利な機能である。 またファシリテーターが、議論の流れを止めずに助言をしたいときには、しばしばコメント機能が使われている。 この機能によって、会話を途切れさせることなく、それでいてメンバーの目に自然に入る場所に、文字を残しておくことができるのだ。 口頭の発言だと、直接細かなニュアンスが伝えられる代わりに、どうしても話の流れを止めてしまうことがある。 コメント機能は、それを補う形で活用できるアイテムでもあるのだ。 こういった活用方法によってbtraxでは、ワークショップの開催形態に囚われず、クオリティを維持することができている。 デザイナーがファシリテーションをしてみた btraxオフィス 最後にご紹介するのはズバリ、btraxのサンフランシスコオフィスである。 オフィスに常備されている備品はザっと以下のようなものだ。 消毒ジェル、スプレー、スナック、コーヒー、クッション、付箋、ペン、イーゼルパッド、ホワイトボード、アイディアペイント、マーカー デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム これらは、オフィスの利用者たちにクリエイティブな思考を促すアイテムたちである。 ワークショップの参加者はこういったアイテムを自由に使って議論を進めることができる。 これらの備品や食べ物の補充も、ファシリテーターの重要な仕事の1つだ。 またオフィスにはいくつかの部屋があるが、それぞれの部屋が個性を持っていて、雰囲気も異なる。 そのため議論に詰まった際には、気分転換のための部屋移動をファシリテーターから提案することもある。 15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと さらにワークショップの期間には、オフィスで毎朝30分のヨガ教室が開講される。 一日の始まりに心と身体を整え、気持ちよくワークに入ることができる。 このようにbtraxでは、オフィスそのものの環境づくりにもこだわっている。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか おわりに ここまで、ワークショップで使用されているツールとその活用事例をご紹介したが、いかがだっただろうか。 「デザイン思考」や「ワークショップ」と聞くと、捉えどころがなく抽象的な印象を受ける方は少なくないだろう。 本記事では、そんな実態の見えにくいワークショップの「知られざる一面」をお見せした。 btraxは、10週間のプログラムのみならず、新サービスの開発や、デザイン思考研修にてワークショッププログラムを設計し、提供している。 サービスにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ワークショップの目的・心得やファシリテーションのコツについては、以下の記事も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド Ideas […]

Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア ~Design Sprintのファシリテーターとしての学び~

btraxではサンフランシスコオフィスにて10週間かけてデザイン思考を学ぶ研修サービスを提供している。 筆者は2022年1月〜3月までその研修のファシリテーターとして参加し、クライアントと共にグローバルにも通用するサービスの案のアイディエーションをサポートしてきた。 当研修に参加したクライアントは、日系企業に向けてIT業務コンサルティングを遂行する方々だった。 今回の研修では、普段の業務とは異なり、ベイエリア在住ユーザーと共に普段の思考方法と異なるデザイン思考をベースとして課題発見とサービス案を考えていただいた。 研修を遂行していく中で「ピンとした案が出てこない」などと、クライアントの議論が煮詰まって、会話がループする瞬間を度々目撃した。 真新しいサービスや社内で新しい施策を考えようとする時、こういった「アイディアが思い浮かばない!」という状況はみなさまも経験したことがあるのではないだろうか。 そこで、今回はその10週間の研修中で、筆者がファシリテーターとして活用した、いくつかのツールや手法を「アイディアのためのアイディア」として4つ共有する。 業務をパソコン一台で実現できるようになったこの世の中では色々なメリットがある。例えば、文章やチャートを作成して業務を管理し、利便性が大幅に上がった。 その一方で、パソコン上の曲線に制限され、実は自由な発想がしづらくなっていることや創造性の表現を規制してしまっているところもある。 創造性を語る時に、英語の表現で、”Thinking Outside the Box”とあるが、これに則り、もし用意されている定義を超えたことが「創造性」として求められるのであれば、よりパソコンでは実現できない、より柔軟なツールが必要なのではないかと感じる。 それを可能とするのが、紙と鉛筆である。シンプルではあるが、究極のツールがこの2つである。 これを使って何をするか。それが、マインドマッピングとグラフィックレコーディングである。 1. マインドマッピング アイディアを生み出すにはまず明確な課題設定が必要だったりする。目の前の現状を深ぼって、課題を整理できた段階で、本当に解決するべき課題が見えてくる。 実際に向き合う課題は複雑で、1つの観点や切り口だけでは解決の糸口が見えないこともしばしばある。 そういった時に、さまざまな切り口で整理し、共通点や関連性を全体像を把握するために便利なのが、マインドマップである。 マインドマップの作成方法は簡単だ。 まず、用紙の中央にメインとなるテーマを記載する。そして、そこからテーマやデータが枝分かれしていくように情報を細分化させて書いていく。 メインテーマに関連する情報を全て記載したタイミングでマインドマップが完成する。 ここから、さらに課題の深堀をするためにおすすめするのが、サブテーマとサブテーマの関連性を表現することである。 一般的に我々は普段、上から下、右から左と情報を捉えているが、斜めの関係や粒度の違う情報の関連性を考えることがないが、マインドマップではこれが可能となる。 網羅的に情報をまとめながら、新しい発見を見つけることができるのが、マインドマップの特徴とメリットである。 問題解決に役立つ“思考の可視化”とは – ビジュアルファシリテーションのすすめ Part 2 – 2. グラフィックレコーディング、グラフィックファシリテーション また、紙と鉛筆の別の使い方として挙げられるのが、グラフィックレコーディング(グラレコ)・グラフィックファシリテーションである。 例えば、チームと課題に関して議論しているなかで、「なんだか議論が噛み合っていないかも?」という違和感を持ったことはないだろうか。 そういった場面で活躍するのがグラレコである。 グラレコやグラフィックファシリテーションとは、議論の内容をテキストではなく、絵を書きながら記録していく手法である。 状況を打開するために、互いの意見を口頭で共有し続けるのではなく、紙に脳内に想像している通りに描いてみて、まず互いの世界観を知ってみることから始めるのがおすすめだ。 また、グラレコが最も活用できるのは、抽象度の高い議論の内容を、様々なステークホルダーと目線合わせする場である。 上記の動画のように、瞬時に議論の内容を美しい絵に起こすことを本業とする人もいるが、非デザイナーにとってはこれは非常にハードルが高い。 だが、グラレコとグラフィックファシリテーションの入門文献を読むと、非デザイナーでも、棒人間などの簡単な図で問題ない、と記載されており、基礎的なメソッドは真似できるところがある。 絵に全く自信がない著者も、過去にこのようなグラレコで、どの課題に対して議論しているのか目線合わせを行った。 具体的なシーンを用いてご説明しよう。全体の状況としては、大人の友達作りにおけるサービス作成の課題整理をしていた。 それまでの議論で、自然な友達作りに欠かせないのは、あるグループやコミュニティに所属すること、また、それが鉄則であるとわかっていても、さまざまな理由でコミュニティへの所属ができていない大人たちがいることが現状であることもわかっていた。 そこで、その「さまざまな課題」に対してサービスを提供するにあたり、チーム内でもどこの課題に着目しているのかを明確にする必要があった。 話が抽象的に飛び交う中で、どの課題に着目し、サービス内容を深めていくのかを議論するために作成した絵が以下になる。 特にサービスのアイディエーションを進める中で、着目する課題によっては、個人の先入観から、同じことに関して話していると思ったら、実は違ったといった場面がある。 そういった齟齬を避けるためにも、このようにグラレコを通じて、どこに着目するのかを可視化させ、チームの目線合わせを行うことは効果的である。 ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド 3. 五感の刺激 アイディアとは、目の前のパソコンの画面を見ているだけではなかなか生まれないものだ。 集中して一つのことに向かう時間も必要だが、その作り上げたものを客観的に見て、また別の角度で見て、別の可能性を考えることで斬新なアイディアが生まれることが多い。 ただ、「別の角度で見る」と簡単に言うが、実際に行うのはそう簡単ではない。 周りの環境は変わっていないのに、別の「角度」で物事を見るのは実はかなり難しい。 そういった時には、実際に体を動かし、五感を刺激しながら体現してみるのが効果的だ。 例えば、ランニングしている時やお風呂やシャワーに入った時に、今まで曇っていた考えが急に晴れて、ひらめきが起こったという経験をしたことはあるのではないだろうか。 また、休憩の一時の際に飲むコーヒーの匂いを嗅ぐことで、一気に肩の力が抜け、心が落ち着いた状態で考えを進めることができるという方もいるかもしれない。 違う環境に自身を置き、客観的に今までのアイディアを振り返ることで、今まで積み上げてきた考えやアイディアの活かし方などが思いつくかもしれない。 実際、五感を刺激するためにオフィスにさまざまな仕掛けを施す企業も多い。 例えばあのGoogleでは、食堂やビリヤードテーブルなど、オフィスデスク以外のアメニティを用意している。 それは、デスクに向かっている以外の時間で浮かんださまざまなアイディアを、オフィスにいる社内のメンバーにすぐに共有できるようにするためだ。 同僚とご飯食べている時、ちょっとしたビリヤードゲームをしてリラックスした瞬間に浮かび上がったアイディアがすぐにその場にいる同僚やチームに共有できるよう、そしてそれが会社の新しいイノベーションとして育てられるように会社がその環境を提供している。 著者も実際にファシリテーターとしてアイディエーションに携わった時には、クライアントにソファーやクッションが多い部屋を使うように提案した。 それまで机と椅子と座っていたチームだったが、靴を脱ぎ、体制を崩しながら議論を進めていく中で、より腹を割った議論ができたように見受けられた。着用している洋服や姿勢などで議論の質が変わったことを実感した。 コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 4. 自分のスタイルに合った時間管理 これまで、さまざまなツールや方法を紹介したが、最後の方法として、その中で筆者が強調したいのは、自分に合ったタイミングで、かつその状況に合うツールと使うタイミングをよく理解することである。 例えば、自分は朝型なのであれば、重要な作業は朝に行う時間を事前に押さえておく。 また、その内容がさまざまな新しい案を考え出すような「発散系」の内容の場合は、自身のスケジュールにランニングをする時間も予定として設定しておく。 反対に、もし夜型なのであれば、無理して朝起きずに、自身の集中が最も保たれる時間を考慮して夜に進める、などだ。 自分のスタイルと、それゆえ自分では変えられないところを理解しておき、スケジュールに組み込んでおくと良い。 ちなみに、研究によると、右脳寄りの人間と左脳寄りの人間で、朝型か夜型かが異なることも証明されているそうだ。 選んだ時間にその時の集中したい業務に応じて、これまでご紹介してきた紙や鉛筆を使ったアイディアの可視化、五感を刺激するために場所を変えるなど、柔軟に対応していくスキルは欠かせないだろう。 まとめ Design Thinkingという言葉が聞かれて久しいが、実はその本質は考えること以上に、実践することにある。 btraxでも、アイディアを考えるだけでなく、手を動かし、実践や実装まで行うことで今までにない発想やクリエイティブなアウトプットが形にされていくことの重要性を強調している。 実際に研修やその中で行ったワークショップに参加して、筆者は、とにかく実践してみることがまた新たなアイディアや可能性を見出してくれるのではないかと考え、上記の4つの「アイディアのためのアイディア」を紹介した。 これを読むみなさんにもアイディアに煮詰まった時に、是非いつもとは違うやり方で課題に向き合ってみていただきたい。

日本が元気だった頃… かなり凄かったらしい

資生堂150周年CMが素晴らしかった。過去から現在、そして未来までの時間軸をそれぞれの時代を反映する映像と共に表現する内容。 個人的には、安藤サクラがオープンカーに乗っているシーンは、そのカラフルさとメイクの印象の強さで、ワクワクするビジュアルだった。 でも、ふと気づいた。このシーンは現代ではない。いわゆる日本がバブル期に差し掛かる1982年春の頃に放送されたCMのオマージュだ。その瞬間、漠然とした寂しさを感じた。 過去を振り返る映像が増えてきた 同じく、レトロな時代にタイムスリップしたもう一つがマクドナルドのCM。マックが日本に上陸し、第一号店が銀座にオープンしたのが、高度経済成長期の1970年代前半。その頃の雰囲気を現在の技術で蘇らせている。 これらのCMや、NETFLIXで配信されている「浅草キッド」や「全裸監督」など、ここ数年で昭和の頃の日本を舞台にした映像を目にすることが増えてきている。 バブル期のキラキラが凄い では、実際にその頃のCMはどんな感じだったのか?YouTubeにアップされている中で、コカ・コーラの映像を見てみよう。 爽やかすぎる。未来への希望に満ち溢れており、映像からは、どんどん良くなる希望しか感じない時代の輝きがほとばしってくる様だ。 本当にバブル期の日本は凄まじかった それもそのはずで、当時 (80年代後半) の日本の経済は現在と比べても想像できないぐらい右肩上がりで、世界的に見ても、アメリカを抜き去る勢いがあった。その一つの象徴が、企業の時価総額ランキングだろう。 これを見ても分かる通り、バブル経済絶頂期の1989年 (平成元年) の頃は、企業の時価総額における世界ランキング Top 20 の過半数が日本企業、そしてTop 5 も全て日本企業という凄まじさ。日本が世界の株式時価総額の4割を占めたこともあった。(現在は5%以下) 現代で考えると、GAFAとかGAFAMとか、FANGとかMAAMAとかで表現される世界が憧れる企業の全てが日本企業でるような感じだろうか。 だったとすれば、世界のビジネスニュースは、連日「シリコンバレー速報」ではなく「東京速報」みたいな感じのコンテンツ満載だったのかもしれない。 日本が凄かった時代を象徴する6つのエピソード その頃の状況を調べていくうちに、世界全体な視点でも日本がかなり凄い国だったことが分かるエピソードがいくつかみつかった。その中でも象徴的な5つを紹介する。 多くのテレビCMにハリウッドスターが起用されまくっていた まずはこれ。当時のテレビCMでは、数多くの日本企業が海外ロケを行い、ハリウッドスターを積極的に出演させていた。 マイケル・ジャクソン、マドンナ、ブラット・ピット、マイケル J フォックス、ジェームス・ブラウン、ボンジョビ、スティービー・ワンダー、シュワルツネッガーなど、本国では絶対にCMに出演しないような面子がこぞって日本企業のCMに出演。 おそらくギャラはとんでもない額だったに違いない。 F1スポンサーの多くが日本企業だった スポーツの世界を見ても、多くの日本企業がスポンサーをしていた。お金がかかるスポーツの代表的がF1。その予算は年間数百億円で、複数のスポンサーによってまかなわれる。 現在でも何社かの日本企業がF1スポンサーをしているが、その当時は桁違いにその数が多かった。その中には週刊少年ジャンプも含まれる。 そして、1990年頃のシーズンにはなんと、日本企業が所有するF1チームが3つも参戦していた。(ラルース、フットワーク、レイトンハウス)。そして、HONDA以外にもYAMAHAやSubaruなどの企業もエンジンを提供していた。 ニューヨークのビル複数が日本企業に買収されていた その当時の日本経済の勢いを世界に知らしめたのが、三菱地所によるニューヨークのロックフェラー・センターの買収。当時のレートで約2200億円というから凄まじい。 また、同じくニューヨークの超高層ビル、エンパイア・ステート・ビルも一時期日本人オーナー所有だった。その後にドナルド・トランプ経営の企業が買い取ったらしい。 この2つのビルはアメリカの富と栄光の象徴であり、例えるなら東京タワーと六本木ヒルズを海外企業が所有するような感覚。それを日本企業が手に入れたという事実を現在は想像するのも難しい。 世界一のゴルフコースが日本企業の所有だった 日本企業が買収していたのはニューヨークのビルだけではない。カリフォルニア州のモントレーにある名門ゴルフ場、ペブルビーチも住友銀行系の企業が経営会社を約1200億円で買収し、所有していた。 このゴルフコースは、太平洋に面しており、高級リゾート地としても有名。これまで全米オープンが5回開催されており、世界一のゴルフコースと呼ぶ人も多い。 30分のクイズ番組で総額100万円の商品が「毎日」提供されていた 現在でもクイズ番組で優勝すると豪華な商品や賞金が与えられる。しかし、1981年から1993年まで放送されていた「100万円クイズハンター」では、午前中の30分の放送にも関わらず、優勝商品のハワイ旅行6日間をはじめ、多くの豪華商品がスポンサーから提供されていた。それも月曜日から金曜日の毎日。ということは、単純に計算しても番組予算は最低でも2,000万円は掛かる。 他に商品は、価格がはっきりと表示された貴金属類の高額賞品や温泉宿泊券・食事券などがあり、一般参加者が横取りできるシステムを通じて、かなりエグい骨肉の争いが繰り広げられていた。好景気と物質主義の象徴のような番組だった。 SONY がスティーブ・ジョブスの憧れの存在だった スティーブ・ジョブスがAppleを創業した頃、彼にとっての一番の憧れ的存在が SONY だっというのは有名な話。その洗練されたプロダクトのデザインから、イノベーティブなアプローチまで、彼にとって日本企業の SONY に近づくことが最初の目標でもあった。 iPod は明らかにソニーウォークマンにインスパイアされているし、初期の頃の Mac のデザインを依頼した際にも「もしSONYがパソコンを作ったとしたら?」がデザインテーマだったと言われる。 世界を舞台に戦っていたジャパニーズビジネスマン こんな感じで日本を世界一の経済大国に成長させたのは、世界中を飛び回り、各国で24時間戦っていた日本のビジネスマンたちの存在だろう。 もちろん現代でも頑張っている人はたくさんいると思うが、このエナジードリンクのCM動画を見ると、当時は「ブラック企業」という言葉すら思いつかないほどにハードワークだったんだろうと想像できる。 なぜ日本企業は勢いを失ってきているのか こんな凄まじい勢いで世界の注目を集めていた日本企業も、バブル崩壊後からどんどん守りの姿勢に入り始め、その後失われた20年、30年と呼ばれる時代に突入した。 その理由はいくつか考えられるが、もしかしたら社内にイノベーターが居なくなってきている。もしくは、イノベーターを育てるメソッドが枯渇してきているからではないか。そもそも、イノベーションを経験した世代がリタイアしてしまったとも考えられる。 下記の図はドリーム・インキュベータ執行役員・未明孝之氏作成によるものをベースにしている。これを見ると、時代の変化と共に、日本企業組織における意識の変化と、その課題が理解できる。 良いものを作って営業をガンガンが通用しない 日本企業の組織的な推移に加え、もう一つの時代的に要因。ものづくりを中心に、良いものを作って愚直に売りまくる20世紀型のビジネスモデルの終焉がきている。21世紀になり、よりユーザーニーズを理解し、デザインにこだわり、ブランドとしてのポジションも考える、総合的な戦略が求められている。 そんな中で、多くの日本企業は過去の成功体験から抜けきれず、いまだに作ることと、売ることにどうしても注力しがちなのかもしれない。 日本企業からまたイノベーションを生み出すために 時代が大きく変化したため、もちろん高度成長期やバブル期のような状況を期待するのは難しいかもしれないが、やはりこのまま日本経済が衰退していくのは勿体無い。まだまだ素晴らしい技術はあるし、人材のクオリティーも世界トップレベルだろう。 ただ、ユーザー視点が欠けていたり、マーケティング戦略に乏しかったり、デジタルを通じたグローバルブランド構築への正しい手法が提供されていない事が原因で、もったいない状態が多く見られる。 我々としても、どうにかこの状況を打破するために尽力できればと、日々取り組んでいる。 現代の日本企業に必要なのはクリエイティブな組織だ   筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

デザインシンキングを通して考える「引退馬のキャリア支援」

SAPジャパンは、引退馬の行く末とTCCの取り組みを広く周知し、競走馬引退後のセカンドキャリア、サードキャリアの支援を広げるために、TCCジャパンと共同でデザインシンキングを開催した。
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デザイナーがファシリテーションをしてみた

デザイン思考ワークショップのファシリテーションをするというとても学びの多い機会があったため、気づいたことなど、体験についてをデザイナー視点でまとめてみた。 デザイン思考とは? デザイン思考の定義は、人によって様々な言葉で説明されると思うが、私はデザイン思考を、「デザインのプロセスを通じて課題解決をし、暮らしをより良くするための手段」と解釈している。より平たく表現すると、ユーザー本人も気づいていないような潜在的なニーズを探し出し、アイデアをテストして、解決することである。 このデザイン思考という言葉は、カリフォルニアに本社を構えるデザインスタジオIDEO社の創業者ティム・ブラウン氏によるもの。彼が2005年にハーバードビジネスレビュー誌において、「デザイナーの手法と感性はビジネスに応用可能である」と提唱したのがきっかけで有名になった。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと この考えは日本にも徐々に浸透してきており、デザインの発想や手法をビジネスの場で活用し、その価値を向上させることを目指す企業が増えてきた。そのため、組織内にデザインのマインドセットをインストールするために、ワークショップや研修形式でデザイン思考を習得するケースが増えた。 そして普段はデザイン業務を行っている筆者が、今回、とあるデザイン思考のワークショップにて、ファシリテーターとして参加した。いわゆるグラフィックデザインを行っており、色や素材を使い、ビジュアル(見た目で伝えられるもの)を作っているが、その領域を超えたファシリテーターとしての経験から見えてきたことをまとめていきたい。 似ている部分と異なる部分 デザイナーとファシリテーター、全く違うようで共通点もあるのが面白い。 ユーザーの気持ちを考えることはやはり非常に大切。 これはちても広い話だが、かなり大事かつデザイン業務と似ていると感じた部分だ。普段ポスターひとつ制作する際でも、どこに一番最初に視線が行くか、伝えたい情報がちゃんと正しく入ってくるようになっているかなど、考えながら制作をする。 それと同じようにデザイン思考では、あらゆる「ユーザーってこういうことを考えているのか?」を想定、把握する必要がある。つまり、ユーザーの気持ちになってみることが重要である。 そのために、ユーザーインタビューを行い、ユーザーの言葉からインサイトを抽出する。この人は実はこんな風に思っていたからこう言ったのか?というユーザーの気持ちを分析していくのだ。 ファシリテーターとして、ワークショップに参加している方が、よりターゲットユーザーの気持ちに寄り添えるようにサポートするということがとても重要なように感じた。 一方で、普段のデザイン制作と異なる点として、目的や最終のゴール地点が明確かどうかの違いがある。 一般的なデザイン制作は目的が決まっているため、プロセスがわかりやすいものが多い。例えば、ポスターを作る際は、いつに何をするか、何が行われるかを伝えるためのもの、と決まっている。そのため制作のプロセスはシンプルだ。 しかしデザイン思考では、ユーザー本人も気づいていないような部分を探っていかなければならない。本当に必要とされているニーズに辿り着くまでに紆余曲折するのが大体のパターンである。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル とりあえずひたすら手と口を動かしてみる 非常に基礎的なことであるが、デザイン思考のワークショップを行う際は、チームでひたすら手と口を動かすことが非常に大事であると実感した。とりあえず書き出してみたり、雑でも良いからアイディアをスケッチしてみたり、変かなと思うこともとりあえず言ってみたり。 これは簡単そうに見えて本当に難しい。特に私の場合なのか、デザイナーあるあるなのか、(おそらくデザイナーのみなさんは共感すると思うが)黙々と考えてしまいがちである。そして黙々と作業しがちなのである。 誰かに共有する際に、ある程度のクオリティにまで持っていったものしか共有したがらない傾向があるのかもしれない。 しかし、デザイン思考のワークショップでは、何より試行錯誤することが重要。どんな段階であれ、一旦チームで考えたことややってみたことを共有することが大事になってくる。 個人作業が多めなデザイン業務とは対照に、ワークショップはチームで進めるものであるため、まずは口に出して思ったことを言わないことには何も生まれない。 ファシリテーターはメンバーのちょっとして考えを引き出すサポーターでもあるため、普段黙々を作業してしまいがちな筆者も、これってこういうこと?というチームが考えを共有しやすい会話を心がけた。 自分の中途半端なアイデアもチームの人の考えによって思いもよらぬアイデアに化けたりするのが、ワークショップの面白いところでもある。 日本人は議論が苦手?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは ワークショップの新しい進め方 コロナ禍前までは、弊社でデザイン思考のワークショップを行う際はオフラインで行っていたが、今回は、オンラインと組み合わせてワークショップを実施した。オフラインとオンラインのハイブリッドで行うのは我々にとっても新しい挑戦で、普段の進め方と変わってきた。 ワークショップ中のアイディア出しやメモとして使用するツールは、オンラインが良いかオフラインが良いか?はたまたハイブリット型が良いか?という議題があるが、今回オフラインのワークショップ時でもオンラインツールを併用した。 今回ワークショップを行ったうちの全体の4割ほどはオンラインで行い、残りの6割はオフラインで行った。 もちろんオンラインでワークショップを行っている期間は、使用するツールも全てオンラインで、オフラインの期間でも、使用するツールの半分以上はオンラインのものだった。 オフライン時でも、とりあえずたくさん思いついたことを書き出す際や、ユーザーインタビューから得た事実を書き出す際にFigmaというオンラインツールを使用した形である。 オンラインツールとしてFigjam、オフラインツールとしてポストイットを使用 Figjamとは、オンライン上で使用できるホワイトボードで、主にチームでブレインストーミングをしたりマインドマップを作成する用途で使われるツールである。画面上に手書きができたり、付箋を貼ってテキスト入力をすることができる。 どう使い分けるべきかに対しては、結論を言うと、チームが円滑に進めやすい方であればどっちを使っても良いし、どう使い分けても良いと感じた。 Figmaもポストイットも、あくまで手段であり、ワークショップをスムーズに進めるためのサポートツールであることを忘れてはならない。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか そこで、ワークショップを行う中で個人的に感じた、おすすめの使い分けのポイントを紹介する。 とりあえずブレインストーミングをして少しでも多くのアイディアを出したいとき、それを書き出したいときはFigjam上で。大事なことやハイライトになるような内容は、ポストイットで。この使い分けである。 書き出して、グループワークを行う部屋に貼っておく。そうすることで常に論点がズレにくくなるとともに、チームのみんなが共通の理解をしやすくなる。 どうしても話が白熱して色んなところに話題が散ることがあるが、収束しやすくするためにも、常に視界に入るところに要点だけ書き出しておくのは効果がある。 オンラインツールのメリット 後から融通が効く その時に応じてパネルやブロックの並び替えや整理、複製がしやすい。 綺麗に記録できる 筆者は、自分の手書きを見返すのが嫌になってモチベーションが下がることがたまにあるが、オンラインツールではそのようなことはない。手書きで殴り書きしたものを後から見返し、これは何のことだっけ?となることも防ぐことができる。 お互いへリアクションしやすい Figjamにはスタンプ機能やいいね機能があり、バリエーション豊富なリアクションをリアルタイムで示せるので、オンラインでもインタラクションのあるワークショップになる。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ オフラインの良いところ 全体を俯瞰して見られるので、全体像を把握しやすい 誰が何を書いているのか、同じ空間にいることで把握がしやすい。また、PC上で行うのと違い、画面の大きさに制約がないためパッと全部のポストイットを見ることができる。 全体が見えるため、離れたそれぞれのトピックを併せて考えて、新しい発想が生まれることも。 オンラインでも離れたそれぞれのトピックがつながることもあるが、オフラインで実際にその場で見えることで、より簡単に全体を行き来することができアイデアに繋がりやすいように感じる。 デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム オンライン、オフラインどちらにも良さがあるので、自分にとって、チームにとって、よりクリエイティブな状態になりやすい方を使おう。 おわりに 今回の記事ではデザイナーがファシリテーションをしてみて感じたデザイナーとファシリテーターの役割として似ているところや違い、そしてワークショップをする上での具体的な進め方に言及した。 また、Figmaなどのオンラインツールはユーザーフレンドリーであり、今後のワークショップはオフライン実施であっても、ポストイットや紙を用いる代わりにオンラインツールを用いる場合が増えるかもしれない。 オンラインツールを使うこと自体が目的になってしまわないよう、オンラインでもオフラインでも、参加者同士、参加者とファシリテーターが心地よく意思疎通を図れる方法を模索することが大切だ。 btrax では、最適なユーザー体験の創出に軸足をおいたサービス開発をはじめ、目的に応じて様々なサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。

君のプロダクトはビタミン剤か?鎮痛剤か?それとも治療薬か?

プロダクトやサービスのアイディアを考える際に最も重要とされているのが「ユーザーの課題解決に繋がるか」という点。これは、どう考えても正しい考え方な気がする。だって、そもそも課題を解決してくれないサービスなんていらないし、お金も払う気にもならない。 と、思いがち。でも現実は大きく異なる。 意外と課題を解決していないヒットサービスが多い 現在大ヒットしているプロダクトのその多くが、実は元々あった課題の解決をしていないのだ。まさかと思うが、下記のようなサービスは、ユーザーのどんな課題を解決したのだろうか? Facebook YouTube TikTok そう。どうしても解決してほしい課題があったわけではない。でも、使い始めたらなぜか使い続けてしまう。これらのサービスは、課題を解決していないのに、新たな習慣を通じ、ユーザーに大きな価値を生み出した。 これこそがプロダクトやサービスを考える際の大きな盲点。 特にデザイン思考のプロセスでは「まずはユーザーのペイン (課題) を見つけよ」とされるので、ついつい課題解決型一択でサービスを考えようとしてしまう。でもそうじゃ無くて良いことも多々ある。 誰にでもわかるデザイン思考の基本 スタートアップ界隈ではビタミン剤、鎮痛剤、治療薬と呼ばれることも この、具体的な課題を解決しないタイプのプロダクトの種類を「ビタミン剤」と呼ぶことがある。特にスタートアップ系の人たちには馴染みのある表現。 それに対してユーザーの具体的な課題解決に繋がるサービスを「鎮痛剤」。問題自体を無くしてしまうようなプロダクトの種類を「治療薬」と表現されたりする。 では、それぞれの特徴を見ていこう。 Vitamin – ビタミン剤 これといった課題は解決してくれないけど、あれば嬉しい。でも無くても困らない (はず) のサービスの種類。 スマホに代表されるように、電話さえできれば事足りたと思われていた携帯に対して、今までに無かった習慣を生み出すことで大きな価値が生まれる。 その特性上、利用初期にはあまり大きな対価は払いたくはないと思うが、長期で使っていると手放せなくなることもある。 ビタミン剤型プロダクト例: YouTube Facebook Instagram TikTok Netflix Painkiller – 鎮痛剤 ユーザーが感じている具体的な課題 (ペイン) を解決してくれるプロダクト。多くの場合、提供側が普段から感じている不都合や不便を解決するために始めることも多い。 以前より感じていた課題が比較的短期間で解決されやすいので、プロダクトスの具体的な価値が伝わりやすく、ユーザーの獲得もしやすい。そして、解決する課題の大きさに比例した対価が見込める。 その一方で、同じ課題を解決しようとするサービスが乱立しやすく、競争が激化したり、すでに類似サービスが存在してたりしがち。 鎮痛剤型プロダクト例: Slack Uber Eats Zoom Salesforce Cure – 治療薬 問題の存在自体を無くすようなプロダクトは治療薬型と呼ばれる。痛みを和らげたり、感じなくさせるわけではなく、痛みの原因を消し去ってくれる素晴らしいタイプ。 根本的な解決になるので、かなり説得力が高いプロダクト。その一方で、そんなに凄いことはなかなか作れない。また、特殊なニーズを解決することも多く、ニッチになりがちでもある。 そして、一回解決してしまうと必要がなくなるので、継続的なビジネスモデルとしてスケールしづらい事もある。 治療薬型プロダクト例: レーシック手術 結婚相談所 どこでもドア 「鎮痛剤はビタミン剤よりもヒットしやすい」は大きな間違い 冒頭でも触れたが、感覚的にどう考えても鎮痛剤型の方がビタミン剤型よりもわかりやすく、ヒットしやすいと感じる。 健康状態を少し改善してくれそうなビタミン剤やサプリよりも、現在感じている大きな痛みを消し去ってくれる鎮痛剤の方がニーズが大きい、という理論だ。 実際に、“Sell painkillers, not vitamins” (ビタミン剤ではなく鎮痛剤を売れ) という表現があるぐらい、ビジネスにおいては、顧客の課題解決を行うのがセオリー。 しかし、実はこの理論と現実には、大きなギャップがある。 ヒットサービスに重要なのは “革新的アイディア” ではない!? 鎮痛剤からビタミン剤に移行したNetflixの事例 むしろ、鎮痛剤から始まって現在はビタミン剤的な存在になり、ユーザーを夢中にしているようなサービスすら存在する。例えばNetflix. 創業当初は郵送によるDVDレンタルを提供するサービスだった Netflix. 既存のレンタル店によるレンタル期間と延滞料に不満 (ペイン) を持つユーザーのために、レンタル期間と延滞料なしのサービスを提供。一回に借りられるDVDの枚数を制限することで実現したモデル。 まさにユーザーの課題を和らげるペインキラーだった。 その後ストリーミング型のサービスを追加し、少しずつオリジナルコンテンツを増やし、現在のモデルに進化した。そして、元々あったビデオレンタル店のほとんどが倒産してしまったため、当初のユーザーの課題自体が消滅。 現在のNetflix は完全にビタミン剤的存在になっている。 人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント ちなみにゲーム系は? では、ヒット作品が多く存在しているゲーム系のサービスはどのタイプなのだろうか?実は、上記のどれでもなく「キャンディー」と呼ばれたりする。 そう、体に良い効果はないが、甘くて美味しい。ついつい食べちゃう感じ。 意外と多いアイディア出しの落とし穴 このように、一見ロジカルだと思われる「課題解決型」サービスであるが、必ずしもそれだけに固執する必要はない。たとえそれが既存の課題を解決していなかったとしても、ユーザーに新しい習慣を提案し、夢中になる内容であれば、大ヒットも十分に見込むことが可能である。 また、似たようなサービスであっても、後発で成功している例もあることからもわかる通り、サービス作りにおけるアイディア出しは実に奥が深い。 後発サービスが勝つための5つのポイント 無料起業家育成プログラムを提供中! btraxでは、今回紹介したスタートアップ型のプロダクト作りを含む起業家育成プログラムを福岡市と共に提供しています。 参加は完全無料。参加資格は、福岡市に住んでる、働いている、もしくは今後福岡市に移住する可能性のある人たち。プログラム自体はオンラインで行うので、どこからでも参加可能です。 こんな素敵なプログラム – Global Challenge Startup Team Fukuoka – の詳細はこちらから。

スーパーカブとコンコルドから学ぶイノベーションの真髄とは

突然ですが「コンコルドという飛行機を知っていますか?」 数多くのオーディエンスの前でこの質問をしてきた。そろそろこのネタも古くなってきているので、封印しようかとも思っているが…。 そして、これまで聞いた人の2/3ほどが知っていると答えた。 「では、実際に乗ったことある方はいらっしゃいますか?」 の質問に対しては累計1,000人以上に聞いた結果、たったの一人だった。これはどういうことか?そう、知名度はあっても実際のユーザーがかなり少ないということ。 ちなみに、実際に乗ったのは年配の方で、以前にIBMで働かれている時にNYからロンドンへの出張で会社が予約してくれたとのこと。 現代の旅客機の倍のスピードが出る夢の飛行機 そもそもコンコルドとは、世界最高峰の技術を集めた超音速ジェット機である。何がすごいかって、40年以上前の1976年から飛び始めたにもかかわらず、そのスピードは音速の倍のマッハ2.0。これは、現在の一般的な旅客機の2倍のスピードが出ていたことになる。 ということは、単純に考えると移動時間も半分になる。片道約10時間も掛かるサンフランシスコ – 東京が5時間程度で移動できるのだ。これは乗りたい… 飛んでさえいれば。 誰もが乗りたくなる世界最高のジェット機 コンコルドがすごいのはスピードだけではない。世界の忙しいエリートビジネスマンをターゲットに設計されたその機内は、なんと全席がファーストクラス。 専用のラウンジに加え、専属シェフによる機内食メニューや飲み物が提供される。まさに全てが世界最高。誰もが一度は乗ってみたいと思う、最高の飛行機である。いやー、乗ってみたい。 デザインもめっちゃカッコ良い そして、機体のデザインもかなり美しい。鋭いクチバシが斜めに伸びて、翼は流れるような流線型。左右のエンジンは箱型のハウジングに収められ、まさに未来的な雰囲気を醸し出している。 さぞ空力を極限まで考慮してデザインされたんだろうなー、とデザイナー目線でも憧れるプロダクトになっている。見た目も最高。 誰も求めない世界最高のプロダクト この最高で素晴らしい飛行機は、イギリスとフランスが共同開発。両国からの大きな期待と優秀な人員、そして多額の予算がつぎ込まれた。 そして世界最高の技術とデザイン、顧客サービスを提供するコンコルドは… 失敗した。 そう、これだけ最高だらけの、みんなが乗りたくなる、夢のような旅客機飛行機が今は飛んでいない。非常に残念。 なぜか? 複数の要因があったようだが、最も深刻だった理由は、 「人気がなくて、採算が合わないから」 である。 250機生産すれば採算が取れるはずだったのが、実際は20機しか製造されなかったのだ。そもそも、航空会社からのオーダー量が絶対的に少なすぎた。簡単にいうと、十分な需要がなかった。 それにより、全く採算が合わず、巨額の損失を生み出し、2003年をもって全ての路線が終了した。 誰もが利用したい夢のようなプロダクトなのになぜ?と思うかもしれない。 では、こう聞かれたらどう思うだろうか? 「航空券の値段が通常の10倍」 そう。それを聞いた瞬間、乗りたい!、って言ってたくせに実際に乗る人はごく僅か。ちなみに、僕も同じ反応。 言い換えると、そこまでの十分なユーザーニーズがなかったことで、失敗に終わった。 デザインも技術もサービスも世界最高レベル。でも誰も求めない。そんなプロダクトを作ってしまった教訓として、「コンコルド現象」は今日でも、プロダクト開発、ビジネス戦略、そして、サービスデザインにおける重要な教訓が隠されている。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 世界で最も売れた乗り物とは? このコンコルドと全く”逆” の運命をたどったプロダクトがある。日本が世界に誇る「スーパーカブ」がそれである。1958年の販売開始以来、世界中で愛されまくってる。 これまでの累計販売台数は一億台以上。世界で最も売れた乗り物としてギネスブックにも載っている。ミスチルのCD総売り上げ枚数が6,000万枚であることを考えても、その凄さは理解できるだろう。 そして、スーパーカブに関しても冒頭と同じ質問を1,000人以上に投げかけたところ、ほぼ100%の人がその存在を知っており、過半数の人が実際に乗ったことがあると答えた。 知名度、ユーザー数ともにバツグンに高い。 コンコルドと真逆のプロダクト スーパーカブが何がすごいかって、テクノロジー的には全然すごくないところ。エンジンは50ccで非力だし、速いスピードが出るわけでもない。特筆すべき斬新なデザインが施されているわけでもない。 でもそこが良い。 むしろコンコルドが達成しようとしていた「世界最高峰のなになに」を追い求めなかったことが素晴らしい。 それにもかかわらず世界最高レベルでユーザーに愛されている。 その素晴らしさは、ディスカバリーチャンネルの番組「Greatest Ever Motorcycles」でも他のバイクを差し置いて、堂々第一位を達成している。 みんなが求めるローテクモビリティ スーパーカブは技術的に先進的なわけでもないし、高級感もない。しかし、そのローテクさには訳がある。 スーパーカブの凄さ 安い 軽い 壊れにくい 燃費が良い 片手で運転できる 扱いやすい 誰でも乗れる 構造がシンプル 長持ちする そう、全てはユーザーのニーズを最優先した結果、生み出されたスペックなのだ。言い換えると、技術やデザインよりもユーザーに喜んでもらうことを最優先した。 その結果、世界で最もユーザーフレンドリーな乗り物が生み出され、現代でも世界で売れ続けている。 テクノロジーがすごいわけではないのに、世界一革新的なバイクなのだ。 ユーザーに喜んでもらうことだけを追求 このスーパーカブの広告を見ていただきたい。発売当時のもので、左側が日本国内向け、右がアメリカ向けになる。どちらもユーザーが喜ぶプロダクトであることが伝わってくるだろう。 ソバの配達員である息子が元気で仕事をしている。おしゃれしてヨットハーバーを愛しの恋人と走り抜ける。 これをみてもわかる通り、常に主役はユーザーであり、プロダクトは主役に喜んでもらうための役割に徹している。決してスペック自慢はしない。 ちなみに、アメリカの広告には “You meet the nicest people on a Honda” のキャッチが採用されている。それまで不良のイメージの強かったバイクに対し、スーパーカブは老若男女が乗りたくなる、フレンドリーな乗り物として、バイクの概念すら塗り替えてしまったのだ。 イノベーションとはこういうことだ。 本田技術研究所が本当に研究しているのは? どのようにしたら、こんなにも素晴らしいプロダクトを生み出すことができるのだろうか? その秘密はこのプロダクトの生みの親の一言に隠されている。 スーパーカブを開発、製造したHondaの正式な社名は本田技術研究所。本田技研と呼ばれることも多い。その名前からして、さぞ技術力を追求しているんだろうと感じる。 しかし、創業者の本田 宗一郎氏は生前下記のように語っている。 「研究所は技術を研究しているのではない。”どういうものが人に好かれるか” を研究しているのです。」 え?という感じがするが、納得できる。ユーザーのニーズをとことん追求し、そのニーズに合致したプロダクトを作り出した。そして、”日本を世界へ” の夢を実現した。 デザイン思考の元ネタはIDEOでもd.schoolでもない そう、その考え方こそがデザイン思考の真髄であり、ユーザー中心デザインそのものである。 最近スタートアップを中心に持てはやされているこれらのデザイン手法の多くは、ここ数十年の間にアメリカ西海岸中心に生み出されたような雰囲気があるが、実はそれよりもっと以前から日本に存在している。 というかむしろ、戦後の日本企業のほとんどがそのマインドセットでものづくりをしてきた。 Hondaだけではなく、SONYも松下もTOYOTAも他の企業も全て、世界で大ヒットを生み出した当時の日本企業は、戦後に暮らす人々の不便の解決を最優先に、より良い生活を届けるために、デザイン思考を、ユーザー中心デザインを、リーンスタートアップを無意識のうちに採用していた。 現代のシリコンバレーで採用されているメソッドのそのほとんどが、日本企業のノウハウを体系化し、見栄え良くパッケージ化たものにすぎない。 イノベーションを生み出すマインドセットは、我々日本人のDNAに深く刻み込まれているのだ。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

スーパーカブとコンコルドから学ぶイノベーションの真髄とは

突然ですが「コンコルドという飛行機を知っていますか?」 数多くのオーディエンスの前でこの質問をしてきた。そろそろこのネタも古くなってきているので、封印しようかとも思っているが…。 そして、これまで聞いた人の2/3ほどが知っていると答えた。 「では、実際に乗ったことある方はいらっしゃいますか?」 の質問に対しては累計1,000人以上に聞いた結果、たったの一人だった。これはどういうことか?そう、知名度はあっても実際のユーザーがかなり少ないということ。 ちなみに、実際に乗ったのは年配の方で、以前にIBMで働かれている時にNYからロンドンへの出張で会社が予約してくれたとのこと。 現代の旅客機の倍のスピードが出る夢の飛行機 そもそもコンコルドとは、世界最高峰の技術を集めた超音速ジェット機である。何がすごいかって、40年以上前の1976年から飛び始めたにもかかわらず、そのスピードは音速の倍のマッハ2.0。これは、現在の一般的な旅客機の2倍のスピードが出ていたことになる。 ということは、単純に考えると移動時間も半分になる。片道約10時間も掛かるサンフランシスコ – 東京が5時間程度で移動できるのだ。これは乗りたい… 飛んでさえいれば。 誰もが乗りたくなる世界最高のジェット機 コンコルドがすごいのはスピードだけではない。世界の忙しいエリートビジネスマンをターゲットに設計されたその機内は、なんと全席がファーストクラス。 専用のラウンジに加え、専属シェフによる機内食メニューや飲み物が提供される。まさに全てが世界最高。誰もが一度は乗ってみたいと思う、最高の飛行機である。いやー、乗ってみたい。 デザインもめっちゃカッコ良い そして、機体のデザインもかなり美しい。鋭いクチバシが斜めに伸びて、翼は流れるような流線型。左右のエンジンは箱型のハウジングに収められ、まさに未来的な雰囲気を醸し出している。 さぞ空力を極限まで考慮してデザインされたんだろうなー、とデザイナー目線でも憧れるプロダクトになっている。見た目も最高。 誰も求めない世界最高のプロダクト この最高で素晴らしい飛行機は、イギリスとフランスが共同開発。両国からの大きな期待と優秀な人員、そして多額の予算がつぎ込まれた。 そして世界最高の技術とデザイン、顧客サービスを提供するコンコルドは… 失敗した。 そう、これだけ最高だらけの、みんなが乗りたくなる、夢のような旅客機飛行機が今は飛んでいない。非常に残念。 なぜか? 複数の要因があったようだが、最も深刻だった理由は、 「人気がなくて、採算が合わないから」 である。 250機生産すれば採算が取れるはずだったのが、実際は20機しか製造されなかったのだ。そもそも、航空会社からのオーダー量が絶対的に少なすぎた。簡単にいうと、十分な需要がなかった。 それにより、全く採算が合わず、巨額の損失を生み出し、2003年をもって全ての路線が終了した。 誰もが利用したい夢のようなプロダクトなのになぜ?と思うかもしれない。 では、こう聞かれたらどう思うだろうか? 「航空券の値段が通常の10倍」 そう。それを聞いた瞬間、乗りたい!、って言ってたくせに実際に乗る人はごく僅か。ちなみに、僕も同じ反応。 言い換えると、そこまでの十分なユーザーニーズがなかったことで、失敗に終わった。 デザインも技術もサービスも世界最高レベル。でも誰も求めない。そんなプロダクトを作ってしまった教訓として、「コンコルド現象」は今日でも、プロダクト開発、ビジネス戦略、そして、サービスデザインにおける重要な教訓が隠されている。 コンコルドの失敗から学ぶスペック至上主義の危険性 世界で最も売れた乗り物とは? このコンコルドと全く”逆” の運命をたどったプロダクトがある。日本が世界に誇る「スーパーカブ」がそれである。1958年の販売開始以来、世界中で愛されまくってる。 これまでの累計販売台数は一億台以上。世界で最も売れた乗り物としてギネスブックにも載っている。ミスチルのCD総売り上げ枚数が6,000万枚であることを考えても、その凄さは理解できるだろう。 そして、スーパーカブに関しても冒頭と同じ質問を1,000人以上に投げかけたところ、ほぼ100%の人がその存在を知っており、過半数の人が実際に乗ったことがあると答えた。 知名度、ユーザー数ともにバツグンに高い。 コンコルドと真逆のプロダクト スーパーカブが何がすごいかって、テクノロジー的には全然すごくないところ。エンジンは50ccで非力だし、速いスピードが出るわけでもない。特筆すべき斬新なデザインが施されているわけでもない。 でもそこが良い。 むしろコンコルドが達成しようとしていた「世界最高峰のなになに」を追い求めなかったことが素晴らしい。 それにもかかわらず世界最高レベルでユーザーに愛されている。 その素晴らしさは、ディスカバリーチャンネルの番組「Greatest Ever Motorcycles」でも他のバイクを差し置いて、堂々第一位を達成している。 みんなが求めるローテクモビリティ スーパーカブは技術的に先進的なわけでもないし、高級感もない。しかし、そのローテクさには訳がある。 スーパーカブの凄さ 安い 軽い 壊れにくい 燃費が良い 片手で運転できる 扱いやすい 誰でも乗れる 構造がシンプル 長持ちする そう、全てはユーザーのニーズを最優先した結果、生み出されたスペックなのだ。言い換えると、技術やデザインよりもユーザーに喜んでもらうことを最優先した。 その結果、世界で最もユーザーフレンドリーな乗り物が生み出され、現代でも世界で売れ続けている。 テクノロジーがすごいわけではないのに、世界一革新的なバイクなのだ。 ユーザーに喜んでもらうことだけを追求 このスーパーカブの広告を見ていただきたい。発売当時のもので、左側が日本国内向け、右がアメリカ向けになる。どちらもユーザーが喜ぶプロダクトであることが伝わってくるだろう。 ソバの配達員である息子が元気で仕事をしている。おしゃれしてヨットハーバーを愛しの恋人と走り抜ける。 これをみてもわかる通り、常に主役はユーザーであり、プロダクトは主役に喜んでもらうための役割に徹している。決してスペック自慢はしない。 ちなみに、アメリカの広告には “You meet the nicest people on a Honda” のキャッチが採用されている。それまで不良のイメージの強かったバイクに対し、スーパーカブは老若男女が乗りたくなる、フレンドリーな乗り物として、バイクの概念すら塗り替えてしまったのだ。 イノベーションとはこういうことだ。 本田技術研究所が本当に研究しているのは? どのようにしたら、こんなにも素晴らしいプロダクトを生み出すことができるのだろうか? その秘密はこのプロダクトの生みの親の一言に隠されている。 スーパーカブを開発、製造したHondaの正式な社名は本田技術研究所。本田技研と呼ばれることも多い。その名前からして、さぞ技術力を追求しているんだろうと感じる。 しかし、創業者の本田 宗一郎氏は生前下記のように語っている。 「研究所は技術を研究しているのではない。”どういうものが人に好かれるか” を研究しているのです。」 え?という感じがするが、納得できる。ユーザーのニーズをとことん追求し、そのニーズに合致したプロダクトを作り出した。そして、”日本を世界へ” の夢を実現した。 デザイン思考の元ネタはIDEOでもd.schoolでもない そう、その考え方こそがデザイン思考の真髄であり、ユーザー中心デザインそのものである。 最近スタートアップを中心に持てはやされているこれらのデザイン手法の多くは、ここ数十年の間にアメリカ西海岸中心に生み出されたような雰囲気があるが、実はそれよりもっと以前から日本に存在している。 というかむしろ、戦後の日本企業のほとんどがそのマインドセットでものづくりをしてきた。 Hondaだけではなく、SONYも松下もTOYOTAも他の企業も全て、世界で大ヒットを生み出した当時の日本企業は、戦後に暮らす人々の不便の解決を最優先に、より良い生活を届けるために、デザイン思考を、ユーザー中心デザインを、リーンスタートアップを無意識のうちに採用していた。 現代のシリコンバレーで採用されているメソッドのそのほとんどが、日本企業のノウハウを体系化し、見栄え良くパッケージ化たものにすぎない。 イノベーションを生み出すマインドセットは、我々日本人のDNAに深く刻み込まれているのだ。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

世界に映る日本を変えたい。イノベーションの種を育てるリーダーの姿とは|Life@SAP Japan vol.2

Life@SAP Japan vol.2 – 今回はSAPジャパンのトランスフォーメーションオフィス部長、尾崎太朗さんにお話を伺いました!シリコンバレーでの衝撃の体験、そして、未来を築く次世代型リーダーの姿とは?
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プロダクトの未来対応を実現するフューチャー・プルーフという概念

「フューチャー・プルーフ」という言葉を聞いてことはあろうだろうか?英語圏では結構頻繁に利用される単語である。意味としては、将来を予測し、将来の出来事による悪影響を最小限に抑えるための方法をデザイン・開発するプロセスのことを指す。 言い換えると、遠い将来まで価値を持ち続けることができること、つまり、そのプロダクトやビジネスモデルが陳腐化しないようにすることを意味する。 サービスデザインの領域においては、作り出すサービスやプロダクトが時代と共に消滅するのを防ぐための考え方。現時点でイノベーティブだと考えられているプロダクトでも、結構近い未来に陳腐化してしまう可能性が高いものも少なくはない。 なぜフューチャー・プルーフが重要なのか? サービスをデザインする時、ビジネスモデルを考える時、このフューチャープルーフの概念をしっかり理解し、未来対応することがとても重要になってくる。 その理由は、生み出されたサービスやプロダクトの寿命をなるべく長くし、ビジネスとしての価値を保護するのが目的である。 逆に、現時点のみ、もしくは短い時間軸だけで考えていると、リリースしても短時間で “死亡” してしまう可能性もある。 未来のビジネスを創出するための「未来予測」のすすめ ほぼ消滅したプロダクトとそろそろ消滅しそうなプロダクト 実際に時間の経過と共に陳腐化が進み、ほぼほぼその存在価値が無くなった、もしくはなくなりつつなるプロダクトを考えてみよう。 下記のプロダクトやサービスは、一時は多大なる人気がありながらも、現代では、他のソリューションの台頭により、絶滅寸前になっている。 ほぼ消滅したプロダクト ワープロ カセットテープ CDラジカセ 電報 今後なくなる可能性の高いプロダクト Fax タクシー テレビ番組 フィルムカメラ 現代における大企業の平均寿命は15年 – 生き残り戦略としてのイノベーション 事例1) 未来対応が全くできていなかったガラケー では、フューチャープルーフに失敗して例をいくつか見てみよう。一つ目はガラケー。恐らく多くの方が一度は使ったことがあるプロダクトだと思う。 スマホが普及し出す2010年代前までは、日本国内の携帯電話のほとんどがガラケーで、圧倒的なシェアを獲得していた。それに合わせ、各種家電メーカーがデバイスを製造、販売し、大きなモデルとなっていた。 同時に、ガラケーを取り巻く、imodeやEZ Webなどの携帯向けコンテンツや、ストラップに代表される周辺アクセサリーからの売り上げも多く、一大エコシステムが構成されていた。スマホが根こそぎ市場を破壊するまでは…。 そして、皆さんもご存知の通り、iPhoneとAndroidを中心としたスマホの普及に伴い、ガラケーのハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、周辺アクセサリーなどの業界は破壊的なダメージを受け、衰退していった。 これは、未来対応を怠った一つの良い例だろう。 iPhoneを完全否定していた日本のユーザー達 現在で60%以上のシェアを誇るiPhoneが発表された際の日本の消費者の反応がある。当時は、ガラケーが標準的な携帯電話として利用されていた時代であり、ユーザーもガラケーとiPhoneを比べたことで、全く的外れな予想をしていた。 “ほとんどiPodに電話が付いただけじゃねぇかwwwww” “これは何をするための道具なの? 音楽を聴くため?電話をするためのもの? よく分からんな” “今触ってみたけどデカすぎワロタw これ片手操作してたら落とすだろうな GPSはいいわw 持て余しそうで欲しいとは思わないが” “正直インフラ整ってる日本じゃiPhoneなんて意味無いだろ 普通に国産携帯の方が性能良い。これ買うのなんてタッチにひかれた人間か音楽ケータイ(笑)大好き 人間だけだろうねwwww” “これを持つメリットが感じられない 音楽聴きたいならiPodでいいし電話メールは携帯でいいしWEBサイトにしても最近の携帯なら見れるだろ” “文字の打ちづらさがTouch並なら絶対買わない あれで携帯として使うのは無理あるだろ” “スイーツはデコ電出来ない機種には興味なさそう” “指で操作するから斬新に見えるけど 画像を任意の方向へズリズリと動かすのってグラブ&スクロールだし、 指でスッと弾いて次の画像を表示するのはスライドショーだし、 指を開いて画像をアップにするのって単なる拡大表示だから 普通のPDAで普通にできる作業なんだよな。” 出典: iPhoneが初めて発売された時の日本の反応 しかし、日本でのiPhoneのシェアは約70%で世界1位の普及率になっている事からもわかる通り、彼らの予想は大幅に外れ、ガラケーは消滅した。 ディスラプト (破壊) されるサービスに共通する4つの不満要素 事例2) パソコンの普及で消滅したワープロ ユーザーが未来対応を教えてくれないのに加え、実はプロダクトの提供側も、しばし盲点になりがちであるのがかなり厄介。 数十年前までワープロと言われるデバイスが存在していた。正式名称はワードプロセッサーで、文字を打つことに特化したプロダクト。 パソコンが主流になってきた現在において、ワープロはアプリケーションとして取り込まれ、ワープロ自体の存在価値はほぼなくなっている。ワープロが未来の変化に対応していたかったというもう一つの例。 しかしながら、ワープロが主流の当時においては、それを予想することが難しかったようだ。そして、多くの家電メーカーが当時絶好調のワープロの生産を続けていた。その様子は、1989年に行われた下記の雑誌の関連インタビューを見てもわかる。 一般ユーザーは未来予測をしてくれない フューチャー・プルーフを実現することが難しい理由の一つが、既存のプロダクトが基準となるため、ユーザーは未来を教えてくれないところにある。これは、iPhoneに対する当初の日本ユーザーの反応を見てもわかるだろう。 ヘンリー・フォードが自動車を発明した際にも、下記のように語っている。 「もし人々に何が欲しいかと聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。」 したがって、未来に対応できるプロダクトを作るには、デザイナー達がじっくりと考えるしかない。 未来に起こる可能性のある主な変化 フューチャー・プルーフを行う際に気をつけておくべき未来に起こる可能性のある変化の種類を考えてみよう。簡単にリストしたでも、下記のような変化が考えられる。 テクノロジーの進化 (例: スマホ登場) 人々の生活の変化 (例: リーモーとワーク) デザイントレンドの変化 (例: モバイルファースト) 他企業のサービスの台頭 (例: 携帯メール vs LINE) 海外サービスの進出 (例: mixi vs Facebook) 規制の変化 (例: ガソリン車禁止) 安価な代替商品の登場 (例: ユニクロ登場) AppleやGoogleなどの有力企業が参入 (例: iTunes) これからのデザイナーが知っておくべき7つの変化 変化のスピードがどんどん速くなっている 現代においては、上記で紹介されている変化が複数が同時に発生することも少なくはない。また、恐ろしいことに、その変化のスピードはどんどん速くなっている。 こ異なる時代のプロダクトが、5,000万ユーザーを獲得するのに要した時間を紹介したい。例えば、飛行機の場合、5,000万人が利用するのには68年掛かった。自動車なら62年、電話なら50年だ。電力が5,000万人に行き渡るのにも50年かかっている。 それが、21世紀に入り、その大量のユーザーが利用するまでに掛かる時間 = […]

誰にでもわかるデザイン思考の基本

デザイン思考(英: Design Thinking)とは、一言で表現すると ユーザー視点でヒットする商品やサービスを作り出すためのマインドセット である。 目的はユーザーに愛され、ヒットするプロダクトを生み出すこと。それに対する考え方とアプローチになる。それ以上でも、それ以下でもない。 なので、デザイン思考の詳細を熟知していなくても、難しい理論がわかっていなくても、その目的が果たせればOK。 初心者でもデザイン思考が一瞬で理解できる もうすでに世の中には、デザイン思考に関する本や記事が多数溢れている。でも、ここはあえて初心者にも簡単にわかりやすく、今さら知りたくなるデザイン思考の基本を短時間で理解できるように解説してみたいと思う。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決 なぜデザイン思考が注目されているのか? ヒットするサービスを生み出すのが目的であれば、必ずしもデザイン思考でなくても良いのではないか?むしろ、これまでもたくさんのヒット商品が世の中にあり、その全てがこのプロセスを活用したとは思えない。 その一方で、デジタル中心になり、時代の変化が速くなった現代においては、いち早くユーザーの潜在的ニーズを捉え、形にできた企業が成長しているのも事実。 サービスを作り出す際には、下記の図に表せられる3つのポイントの重なる部分を見つける。 以前までは、1. 技術的にできること, 2. ビジネス的に成り立つこと, 3. ユーザーが求める内容、の順番で検証していたが、技術的なハードルが下がり、多種多様なビジネスモデルが生み出されている現代では、その順番を逆に進める方がヒット商品に繋がりやすい。 それもあり、まずはユーザーの潜在ニーズを掴むことから始めるデザイン思考に注目が集まった。 デザイン思考を世界一シンプルに説明 であれば、可能な限り簡単に、短い時間で理解し、実践に移行した方が良い。理解するのに要する時間を減らし、実行する時間を増やしてもらいたい。 デザイン思考の全体像 一般的にデザイン思考として知られているのが、下記の図で表されるプロセス。 ちなみにこのプロセスは厳守する必要はなく、現場ではしょっちゅう行ったり来たりや、ステップをスキップしたりもする。なので、このプロセスはあくまで「意識する」程度で構わない。 では、それぞれのステップを紹介する。 1. Empathize: 共感・理解 デザイン思考の最初のプロセスである「Empathize (理解と共感)」では、実際にサービス・プロダクトを受け取るユーザーを理解・共感することを経て潜在的なニーズを掘り起こすことが目的。 ユーザーを客観的に見て「同情」するのではなく、深層心理をしっかり理解して共感するのが重要。 デザイン思考を学ぶ Part 2 – Empathize 理解と共感 2. Define: 定義・明確化 「Define(問題定義)」ではどのようなニーズがあるのかといった事を選定するプロセスで解決するニーズをクリアにするというのが目標。 そのニーズを考える際には、単純にユーザーが「これが欲しい」といったソリューションではなく、「この問題を解決したい」というニーズにフォーカスを当てるのが重要。例) 速い馬車ではなく、速く移動する手段 = 自動車 デザイン思考を学ぶ Part 3 – Define 問題定義 3. Ideate: アイディア発想 アイディエーションとは決して良いアイデアを出すことではなく、新しいアイデアを生み出していくクリエイティブなプロセスそのものを指す。「Ideate(アイディア発想)」の段階では、出来るだけ沢山のアイディアを出すことが最も重要になってくる。 アイディアを出すために、一般的にHMWと呼ばれる「私たちはどのようにしたら ____ を解決できるか」の提携文を利用することが多い。 アイディエーションとは?効率的に行うための5つのポイント 4. Prototype: プロトタイプ アイディアを形にすることで、文字や言葉で説明するよりも単純に、そして感覚的に理解しやすいものになる。それにより、これまで気付けなかった点に対する改善策を打ち立てやすくなる。 プロトタイプの種類は検証したい内容やメンバーの能力で様々で、ポストイットに書いたスケッチから、スライド、LP, 動くアプリ、寸劇まで、ユーザーテストに利用できれば形にこだわる必要はない。 デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 5. Test: テスト 「Test(テスト)」では、ユーザーから出来るだけ多く、そして細かいところまでフィードバックをもらうことが重要になってくる。その内容に応じて、根本的なアイディア自体や、詳細を調整していく。 ここで重要なのは、テストの目的は素直な反応を得ることで、反応がよくなかったからといって、サービスアイディアを必要とするユーザーを探し続けるのは間違い。テストの結果がかんばしくなければ、数ステップ前からやり直したり、サービスをボツにするのも全然アリ。 デザイン思考を学ぶ Part 6 – Test 効果的なフィードバックを出す秘訣 まとめ: デザイン思考をアクションに ヒット商品を生み出すためには、これまで説明してきたデザイン思考はあくまで参考として、アクションに移すこと。 アクションの部分が無ければ、全てがゼロになってしまう。どれだけ強い情熱を持っていても、検討の結果、見送ることにした場合、貴重な失敗する要因データも集まらない。 デザイン思考の利点は、うまくいかないアイディアを事前に察知することで、膨大なダメージを事前に防ぐことができる。実際の手痛い失敗例としては「コンコルドの事例」が挙げられる。 デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説

サービス開発における リーン | アジャイル | デザイン思考の使い分け方

新しいサービスをより速い速度で開発する手法として、リーン、アジャイル、そしてデザイン思考のキーワードが巷で飛び交っている。 これら横文字のバズワードは、スタートアップっぽく、使うだけでそれっぽく聞こえると思う人もいる。それもあって、あまり意味もしっかりと理解しないまま乱用されているケースもあるだろう。 しかし、それぞれに内容は異なり、利用するべき最適なシーンも違う。今回は、混合されがちなリーン、アジャイル、デザイン思考のそれぞれの役割と、利用するべき目的などについてまとめてみた。 “イノベーション“や”DX”をバズワードで終わらせないために大切な2つのこと それぞれのプロセス自体は結構近しい まず初めに、これらの手法が混合されがちな一番の理由として、それらのプロセスに共通点が多いからというのがあげられる。ざっと見てみると、どれも下記のようなプロセスを踏んでいる。 課題を定義する 課題を理解する 解決策としての仮説を立てる 解決策のテスト用にアプトプットする (スケッチ、モックアップ、プロトタイプ、MVP等) アウトプットを元にテストを行う 結果を分析する 結果によって今後の方針 (テストを繰り返す、調整する、方向転換する) を決める これら全てに共通するのは、なるべく簡単な方法で、迅速に課題解決案のテストを可能にしようという考え方である。ここで重要になってくるのが、何をどのような手法で検証しようとしているかだ。 一つめの違いはアウトプット手法 リーン、アジャイル、デザイン思考の違いの一つは、どのような手法でアウトプットを生み出していくかのプロセス部分だと考えられる。 まずは、それぞれのプロセスで生み出される最も一般的なアウトプットを見てみよう。 リーン: サービスLPやオンライン広告など、テストマーケに繋がるもの アジャイル: 操作可能なソフトウェアやMVP デザイン思考: スケッチ、UIモックアップなど、見た目的にイメージが伝わるもの なぜアウトプットが異なるのか? なぜそもそも3つのプロセスでアウトプットの種類が異なるのだろうか?その理由は、それらのプロセスが生み出された背景にある。それぞれが検証するべき課題や利用シーンが異なることが多いからだと考えられる。 リーン: スタートアップ起業家を中心に、ビジネス的課題や消費者ニーズの実証測定を行うためのプロセスとして生み出された アジャイル: ソフトウェアエンジニアを中心に、エンジニアリングに関する課題を解決するためのプロセスとして生み出された デザイン思考: デザイナーを中心に、一般的なユーザーにおける課題を検証するためのプロセスとして生み出され ちなみに、補足として、デザイン思考はユーザーのニーズ、テクノロジーの可能性、ビジネスの成功に必要な要件を統合すすることによって、人々に求められる実現可能なイノベーションを生み出すためのプロセスとなっている。 ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決 解決したい課題に応じてプロセスを選ぶのが基本 したがって、リーン、アジャイル、デザイン思考のどのプロセスを選ぶかは、何を検証したいか、そして解決しようとしている問題の種類で決めるのが良いだろう。 慣れているプロセスを採用するのもアリ また、チームメンバーの構成によってどのプロセスを採用するかを選ぶ時もある。(例: エンジニア中心のチームはアジャイル型で進める等) これは意外と理にかなっている。というのも、新規サービスは多くの場合、不明瞭な点が多く、慣れない方法で進めようとすることで、よりリスク要因が高まる。 普段利用していないプロセスを採用したことで物事を複雑にし、余計に時間がかかってしまい、結果が見えにくくなる可能性もある。 それよりも過去にやったこのあるプロセスを適用した方が、より効率的にプロジェクトを進めることができたりもする。 起業家がリーンを好むのも、エンジニアがアジャイルを好むのも、デザイナーがデザイン思考を好むのも、すべては彼らのバックグラウンドと、彼らがすでに慣れ親しんだ手法を利用して課題解決を検証しようとしているからでもある。 参考: 現代のスタートアップチーム構成における6つの役割とは それぞれのプロセスで価値測定のフォーカスも異なる リーン、アジャイル、デザイン思考は全てサービスの検証に利用されるプロセスだが、3つの方法は、それぞれ異なるタイプの価値に焦点を当てている。 リーン: 市場におけるバリデーションに焦点を当てている。つまり、自分たちのアイデアに対して十分な市場があるかどうかを判断する アジャイル: 製品の利用価値の検証に焦点を当てている。つまり、お客様がすぐに使用し、メリットを得られるような実用的な製品であるかを検証する デザイン思考: ユーザーにとってのサービス価値の発見に焦点を当てている。つまり、人々が実際に望んでいることを読み解く 現代においては重複するエリアも多い 上記の説明では、それぞれの検証ゴールがキッパリと分かれているように見えるかもしれない。しかし、実際のサービス開発の現場では、この3つはかなりの重なりがある。 例えば、自分のアイデアにお金を払ってくれる市場があるかどうかを判断するためにリーンのプロセスを使ったとしても、その市場にいるそれぞれの人が具体的に、何を求めているのかを明らかにし、それを理解するためには、デザイン思考のプロセスが必要となる。 また、サービスコンセプト的に受け入れられそうでも、実際に利用してもらえるか、そしてそれ以上に利用し続けてもらえるかを検証するには、アジャイル型で開発したサービスに触れてもらうことも必要になるかもしれない。 サービスデザインにおける下記の図においては、Desirebilityをデザイン思考が、Viabilityをリーンで、Feasibilityをアジャイルで検証することが一般的。その一方で、重複エリアはそれらを複合して利用するのが良い。 形にこだわらずに臨機応変に利用するのがオススメ どのプロセスを活用してサービスの価値を検証していけば良いか迷うケースもある。でも実は、どのプロセスを選択するかは大きな問題ではない。 いずれにしても、自分のスキルや経験に合ったプロセスをまずは選ぶのが良いだろう。 ソフトウェアの新機能を実現するためにアジャイルを使用し、それを潜在的な顧客が購入するかどうかを測定するためにリーンの手法で市場の検証を行う。など、組み合わせて使うこともアリ。 また、その逆のやり方もありえる。例えば、サービスができる前にまずはオンライン広告を走らせ、消費者の反応をみる。その中で反応のよかったもののプロトタイプを作ってユーザーテストを行うなど。 重要なのは、適材適所で臨機応変に対応できる仕組みだろう。 参考: デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説 組織のカルチャー変革が求められる事も 我々、ビートラックスがデザイン思考のプロセスをクライアントに提供する際の多くは、組織のカルチャー変革もセットで行うことが多い。 というのも、例えば、従業員が顧客と直接話すことを嫌がったり、できなかったりするような組織では、顧客から直接フィードバックを得ることが重要な要素であるため、デザイン思考を導入しようとしてもうまくいかないから。 したがって、3つのプロセスのどれを採用するかは、会社や組織の状況によることもある。言い換えると、自分たちの強みや組織文化に合致していないプロセスを採用してもうまくいかない。 DXを推進する前に必要な5つのカルチャー変革 まとめ: 重要なのはどのプロセスかよりも最終的な結果 リーン、アジャイル、デザイン思考は、実は全て速いスピードでサービスの価値を検証するためのプロセスである。 その一方で、それぞれ検証するエリアが少しづつ異なるため、何を測定したいかで使い分けるのが良い。 ユーザーの潜在的なニーズを理解し、アイデアを視覚的に伝え、ユーザーの反応を得たい時はデザイン思考を サービスに対して十分な市場があり、サービスのビジネスポテンシャルを測りたい時はリーンを 動く製品を段階的にユーザーの手に渡し、実際に使い始めてもらう必要があるなら、アジャイルを このように、それぞれの目的と、検証するために作り出すアウトプットが異なるので、何を検証したいかによって使い分ける。スタッフの経験値や組織のカルチャーに合わせて。どれにするかを選択する。そして多くの場合は、その3つを複合して使うことが最も有益な結果が得られるだろう。

デザイナーとアーティスト3つの大きな違い

何かと混合されがちなデザインとアート。両方のアウトプットがビジュアルになりがちなことや、日本の場合だと、美大出身のデザイナーも多いことから、この二つの領域が混ざっているケースが結構多い。
しかし、実際の現場の仕事内容はかなり異なる。デザインとアートの違いは、それぞれ一言で表現するとわかりやすい。
デザインとは
“与えられた制限内でユーザー視点に立ち、最大の結果を出すためのプロセス”
アートとは
“できるだけ制限を排除し、受け取る者にインパクトを与えるための自己表現…

新規サービスを検証する際に確認するべき15の項目

我々ビートラックスは、これ前に多くの企業やスタートアップ起業家に対して、サービス開発に対するコンサルティングを提供している。
その中でも、現在進行中の福岡市主催のグローバルチャレンジ、内閣府アクセレレーションプログラム、経産省による始動 Next Innovator、大企業向けサービスデザインワークショップなど、世界規模での展開を想定したサービスに対するセッションを通じ、累計250以上のサービスへのサポートを通じて、社内起業家やスタートアップが新規サービスを生み出す際に外したくないポイントを抑えるよ…

非デザイナーのためのデザイン関連記事まとめ

非デザイナーでもデザインについて勉強し、その知識をつけていくことはビジネスにおいて非常にポジティブな影響をもたらす。
それは、昨今言われてきた「デザイン経営」に始まり、「UI/UX」という概念、または「DX (デジタル・トランスフォーメーション)」を推進していくためにも、経営やビジネス的な意味での「デザイン」を理解することが重要になってきたからである。
この記事では、本ブログ「Freshtrax」にて過去に公開してきた記事の中から、非デザイナーがデザインを勉強する上で、参考にしていただきたい記事をカ…

デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか

『デザイン思考のワークショップ』と聞くと、複数の大人たちが壁一面に並べられたポストイットに向き合う姿を想像する人は少なくないだろう。実際、btraxで実施する研修の様子を写真で振り返ろうとすると、思考の経緯を記録するために撮影した“ポストイットだらけの絵面”が大半を占める。
“design thinking workshop”とGoogleで画像検索すると、ポストイットを使用しているシーンがよく目につく.
しかし、なぜ『デザイン思考』のファシリテーターは、ワークショップの参加者にポストイットを使わせ…

デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法

“共感力”とは何だろうか。デザイン思考のファーストステップであり、IQの対比として使われるEQ(Emotional Intelligence Quotient = 自分と相手の感情を把握し、状況に応じて自分の感情をコントロールできる能力)の1つでもある共感力とは、相手の感情を知ることではなく、相手と同じ感情を疑似体験することである。
デザイン思考の最初のステップは「共感」
デザイン思考おける「共感」フェーズでは、リサーチャー自らがユーザーの代弁者となることで、実際にサービス・プロダクトを受け取るユー…

ワークショップをするべきか?会議をするべきか? それが問題だ

会議とワークショップ、効果的に使い分けできていますか? 「無駄な時間」にしないために気をつけるべきこと 会議とワークショップ、それぞれの目的・役割・構造の違い 多種多様な会議 / ワークショップ、目的に合わせた実施方法 「ミーティングにするか、ワークショップ形式にするか。」 現代の企業におけるディスカッションや意思決定の方法は多様になっている。特にオンラインで行うシーンも増え、企業としてもどのような進め方をするのが良いのか迷いがちだろう。 我々もデザインワークショップやデザインスプリント、フォーカスグループなどを通じてサービスのアイディアをディスカッションしたり、素早い意思決定を促したりしている。 でも実際の現場では、ワークショップっぽい会議もあるし、会議になってしまうワークショップもある。全く意味の無い時間になることもありえる。 そしてこの状況は、それぞれの定義や適切な使い方が曖昧な組織で起こりやすい。 会議とワークショップの用途の違い 一般的に、会議では情報共有や議論を行い、目標設定や意思決定を行うのが目的。一方で、ワークショップは問題を解決したり、実行可能な目標を達成するためのもの。 ワークショップと会議の違いを理解することで誰もが時間を節約し、グループコラボレーションを最大限に活用することができる。 では、具体的に無駄になってしまう会議とワークショップの特徴を洗い出した上で、ワークショップと会議の目的、範囲、長さ、構造、準備時間の違いを比較してみよう。 無駄な会議とは? まずは一つの結論として、どのようなミーティングや会議が無駄になってしまうのだろうかを考えてみる。通常、会議には複数人数のが参加するため、無駄な時間が発生してしまうと参加人数分の時間が失われてしまう。 そのこともあり、多くのアメリカ企業ではなるべく会議の数を少なく、時間を短く、参加人数を制限することが推奨されている。 無駄な会議になってしまう主な要素: はっきりとしたアジェンダがない 何も発言しない人が参加している 次のアクションが決まらない 10分で済む内容に60分かける 意思決定者が参加していない 無駄に参加人数が多い などが挙げられる。 ムダだらけの会議 – 海外から見た日本式ミーティングの謎 無駄になるワークショップとは? ワークショップさえ行えば会議での課題が簡単に解決すると思っている人もいる。しかしそれは大きな間違い。 ワークショップをやったからといって全てがうまくいくとは限らない。その最も大きな原因は、そもそも達成したいゴール (目的) と手段 (ワークショップ) が合致していないことだ。 具体的には、目標がはっきりしていなかったり、参加者が活動自体が無意味に思えたり、何も達成できていないような気がしたりなど。多くの場合、適切なファシリテーターが不在であることが原因だったりもする。 無駄なワークショップになってしまう主な要素: 達成すべきゴールが曖昧 プログラム内容が適切にデザインされていない ファシリテーター不在 ファシリテーターのスキル不足 参加者同士の信頼関係ができていない 他の業務に中断され、内容にフォーカスできていない 上司の顔色を伺いながらのアウトプット などが挙げられる。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと ワークショップは万能ではない ワークショップをやる目的でワークショップを開催する、手段の目的化が起きているケースもある。特に最近はデザイン系のワークショップが流行っていることもあり、とりあえずやってみたいという要望が後を絶たない。 長時間同じ部屋にみんなを集めれば魔法がかかると思っている人も少なくない。 しかし、我々のようにクライアントに対してワークショップを企画・実行するデザイン会社としては、とりあえずやってみる前に一度目的の設定や参加者の選定など、企画段階をしっかりと詰めることをオススメすることが多い。 これは、解決すべき問題があらかじめ定義されていない場合や、コラボレーションの必要性がない課題、または事前の十分な計画がない状態だとワークショップは時間の無駄になってしまうため、これらを未然に防ぐためである。 そして、内容が稚拙なため、意思決定者などの重役レベルの人もそのようなワークショップの招待を拒否することが多い。 会議とワークショップ: それぞれの目的と役割 会議は参加者が情報を交換し、ディスカッションをするための方法である。 それに比べてワークショップは問題を解決することが目的。アイデアを生み出すことに時間を割き、グループが実行可能なゴール達成するための実践的な活動である。 簡単に言えば、会議は物事を議論する場所で、ワークショップは物事を実行に移す場所である。 この違いから、会議では多くのトピックを浅くカバーするのに適しているが、ワークショップは問題を深く集中的にカバーするのに適している。 会議とミーティングのそれぞれの目的や方法 会議の目的と種類 出席者が情報を発信したり受け取ったりするための専用の時間と場所を設けるのが会議の主な目的となる。会議の中では、いくつかのトピックをカバーすることができる。 一方で、決定や行動項目は、必ずしも同じ集まりの中で定義されたり、その場で即座に行動に移されたりする必要はない。 会議の種類と目的には下記が挙げられる: プロジェクトキックオフ プロジェクトの概要や役割などの重要な情報を話し合うために、チームメンバーが一堂に会してプロジェクトに取り組む最初の集まり。 スタンドアップ 機能横断的なチームがプロジェクト全体の進捗状況や障害に関する最新情報を共有するために、毎日素早く(通常は15分程度)報告会を行う。 振り返り 定期的に行われるディスカッションで、チームがどのように連携して仕事をしているかを振り返り、プロセスを改善する方法を検討する。 1on1 リードやマネージャーが直属のメンバーと会い、プロジェクトや個人の成長、キャリアアップの機会について話し合うための時間。 リーダーチームミーティング 複数のサブチームにまたがる機能横断的なリーダーが集まり、進捗状況、学習内容、未解決のアクションアイテムについて議論する。 デザインチームミーティング UXやデザインチームのメンバーが一堂に会して、仕事や知識、インスピレーションの源を共有する機会。 デザインレビュー デザインチームのメンバーが進捗状況を発表し、デザインに対するフィードバックを受ける。 オフサイト チームメンバーがオフィス外の場所に集まり、ディスカッションを行う。普段と異なるセットアップのカジュアルな雰囲気の中で、気持ちのリフレッシュにもなり、新しいアイディアが出やすくなる。 オフィス外でのミーティングを行うのも効果的 ワークショップの目的と種類 複数のチームからのインプットと同意を必要とする状況や、同じタイミングでのディスカッションと深い考察、そして意思決定が求められる状況においては、共同作業の実践的なワークショップ形式に適している。 ビートラックスが企業向けに提供しているデザインスプリントも素早いスピードでの正しい意思決定を一番の目的としている。 ワークショップの種類と目的には下記が挙げられる: ディスカバリーワークショップ チームメンバーと主要な知識保有者が集まり、現状を理解した上で今後のプロジェクトのマイルストーンや計画の方向性を決めていく。 チームビルディング 業務にあまり関係ないテーマを元にチームごとに一つのゴールを達成するために競うゲームなどを通じてチームの連帯感をアップさせる。 ユーザー共感ワークショップ デザイナー、研究者、その他の関係者がサービスを設計する前に、ユーザーのニーズについての共通理解をするために行う。 デザインワークショップ 複数の部署から主要チームメンバーが集まり、様々な視点からのアイデアを迅速に生成し、議論する。 優先順位付けのワークショップ チームメンバーおよび他の主要な意思決定者がどの項目が最も重要であるかを決定し、それらに優先順位をつけるために一緒に集まり行う。 アイディエーションショップ ビジネスやサービスの内容をできるだけ多く出すことにフォーカスを当てたワークショップ。質より量を重要視する。 レビューワークショップ デザインプロセスに不可欠な役割を担うメンバーが協力して、目的に照らし合わせてデザインを分析・改善する。 ビートラックスで行われているワークショップの様子 会議とワークショップの構造的違い ワークショップと会議では基本的な目的が異なるため、それぞれの構造も異なるべきである。多くの場合、会議はワークショップよりも受動的なもので、参加者はほとんどの時間を話したり聞いたりしている。 しかし、最近の会議のトレンド、特にオンラインミーティングでは、より雑談を促進するためにあえて議題と異なる日常生活の話をしたり、クイズを出したり、普段無口なスタッフにあえて話を振ることで、チームワークを促進するケースも増えている。 もちろんワークショップでは、参加したメンバー全員からのフルコミットが求められる。話したり聞いたりだけではなく、スケッチをしたり、プロトタイプを作ったり、寸劇を通じてアイディアを発表することも多い。 会議における理想的なアジェンダ スタンドアップ会議や1on1の会議など、日常的に行われている会議であっても、アジェンダを作る利点は大きい。 時間の経過とともに変化する議論項目に柔軟に対応できるようなアジェンダを導入するための効果的な方法の一つとして、会議の前に自由形式の質問を短いリストにして投稿者に提供する方法がある。 オンライン会議の場合は、チャットシステムなどを活用してリアルタイムで質問を送ることも可能。 例えば、従来の日常的なスタンドアップでは対話が軌道に乗るように、決められた項目に沿って質疑を行う。それにより短時間で求められる情報共有が可能になる。 スタンドアップで利用される質問リスト […]

ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ

ワークショップもオンラインで実施する機会が増加
オンラインワークショップをより上手に実践するためのポイント
オンラインの利点① 参加における場所の制約を受けない
オンラインの利点② 保存・複製が簡単にできる
オンラインの利点③ 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
より質を高めるために① 参加者側の安定したインターネット環境、社内ルール等を確認する
より質を高めるために② インタラクションの機会を意識的に増やす
今後はオンラインとオフライン、双方の強みを意識した上で、使い分けていくことが…

ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ

ワークショップもオンラインで実施する機会が増加
オンラインワークショップをより上手に実践するためのポイント
オンラインの利点① 参加における場所の制約を受けない
オンラインの利点② 保存・複製が簡単にできる
オンラインの利点③ 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
より質を高めるために① 参加者側の安定したインターネット環境、社内ルール等を確認する
より質を高めるために② インタラクションの機会を意識的に増やす
今後はオンラインとオフライン、双方の強みを意識した上で、使い分けていくことが…

ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ

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オンラインの利点③ 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
より質を高めるために① 参加者側の安定したインターネット環境、社内ルール等を確認する
より質を高めるために② インタラクションの機会を意識的に増やす
今後はオンラインとオフライン、双方の強みを意識した上で、使い分けていくことが…

ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ

ワークショップもオンラインで実施する機会が増加
オンラインワークショップをより上手に実践するためのポイント
オンラインの利点① 参加における場所の制約を受けない
オンラインの利点② 保存・複製が簡単にできる
オンラインの利点③ 具体的な2次元のプロトタイプを素早く作りやすい
より質を高めるために① 参加者側の安定したインターネット環境、社内ルール等を確認する
より質を高めるために② インタラクションの機会を意識的に増やす
今後はオンラインとオフライン、双方の強みを意識した上で、使い分けていくことが…

【考察】アフターコロナ時代に備えて企業が今考えるべきこと

アフターコロナの消費行動、購買行動を4軸で分析 ①リアル X 生活必需品: 個人スペースを保つ移動ニーズ。サービス利用からモノ所有への揺り戻しか? ②リアル X 嗜好品: 五感を刺激するリッチな非日常空間の体験への注目。 ③オンライン X 生活必需品: シニア層もオンライン移行。新たなユーザー獲得のチャンス。 ④ オンライン X 嗜好品: “おうち時間”充実のためのサービス需要アップ。“お店が家に来る”という価値の転換。 コロナ前後の違和感や違いを好奇心を持って考えるマインドセットが重要 コロナウィルスが収束し、経済が再開したあとの消費者ニーズや購買行動はどう変わっていくのだろうか。 日経クロストレンドが発表したアンケート調査で、51.7%の人がコロナ収束後はお金の消費を減らすと回答しているが、そういった人たちに対して今後どのようにアプローチしていけばよいのだろうか。多くのビジネスマンがこうした課題について考え始めている。 徐々にお店や企業がオープンされつつある今日だが、With/Afterコロナと題されるように、今後もウィルスへの懸念は完全に消えることはなく、ユーザーの生活の一部であり続ける。 それに伴い、ユーザーの価値観や消費行動は劇的に変化を遂げ、それはコロナ以前に戻る可能性は限りなく低く、企業はユーザーが抱える課題・ニーズを再定義し、アプローチ方法を見直す必要がある。 例えば外食産業は、オンライン注文やデリバリーで対策し始めている。この迅速なピボットはコロナ禍により発生した自宅待機という短期的な課題とニーズにはマッチするが、ユーザーの価値観の変化を掴まず進められたソリューションは、長期的な意味での展開はなかなか望めなく、諸刃の剣になりかねない。 そこで今回は、コロナ収束後に人々の価値観や思考法にどのような変化が起こりうるのかを分析する。 また、これらを考察していくとともに、それを見据えて企業はどう対応していけば良いのか、アメリカ企業の具体例を中心に紹介していきたい。 With/Afterコロナによる社会変革はピンチではなく、新たに生まれた課題を解決するチャンスというマインドで取り組み、コロナ禍前以上のさらなるビジネス展開のきっかけに繋げてもらえると幸いだ。 ユーザーの視点別に分解する ユーザーを分析する視点は、彼らがどこにいるのか(リアル/オフラインなのかオンラインなのか)、何を求めているのか(必需品なのか嗜好品なのか)を2つの軸、4つのパターンに分ける。 軸1: リアルとオンライン 今回のパンデミックはまさにリアルでの接触が脅威になっており、ユーザーは自宅、もしくはオンラインに避難した。このこともあり空間の違いによって心配事・感心事が異なるので、空間別に分ける。 軸2: 必需品と嗜好品 パンデミック発生直後、人々の嗜好品に対する購買意欲は下がり、まずは生活必需品を揃えることに重きが置かれた。一方で、感染拡大が収まってきている中、嗜好品を求める余裕も出てきた。この2つのバランスの移り変わりも絡め、それぞれを見ていく。 ① 個人スペースを確保し安全に移動することに重視 (リアル X 生活必需品) 日本に比べると車通勤がはるかに多いアメリカだが、サンフランシスコやニューヨークなどの大都市では電車やバスを利用して移動している人も多く、ラッシュ時はかなりの乗車率だった。 通勤や通院など移動は生活において必要となる。この移動におけるユーザーのニーズにも変化が現れ始めている。 経済が活気を取り戻しつつある現在、公共交通機関の利用も徐々に増えてきているが、三密の代表格として認知されていることから、安全に利用することがままならない状況にあり、利用者の多くは不安を抱えながら移動している現状にある。 そのため、コロナ収束後の移動においては、密を避けることが求められる。つまり一番良いとされるのは個人スペースを保った移動なのだ。そのため、通勤、旅行、買い物時の移動シーンではできる限り個人スペースを確保したいとの考えが広がった結果、個人車所有の価値が見直されるのではないかと考える。 実際に、今まではタクシーの代替品として毎日のように使われていた、UberやLyftに代表されるライドシェアリングサービスは、経営的にダメージを大きく受けたビジネスモデルだ。 彼らのビジネスモデルは、他人と相席をするという、言わば三密を避けられない状態になるので不衛生、不摂生というイメージがあり、安心して利用することを躊躇っている人が多い。 そのため「コロナ危機でシェアリングエコノミーはどうなってしまうのか」でも紹介されているように、UberやLyftなどは主要事業のライドシェアリングから生活必需品をデリバリーするビジネスモデルの可能性を模索している。 またレンタカーに関しても同様に、誰がいつ何をしているか、本当に消毒されているのかなどの不安から利用者が激減し、先日、米国最大手のレンタルカー会社のHertzが倒産する事態にまで発展した。 他人とモノやスペースを共有し、リーズナブルかつ効率化を求めるトレンドは今後、個人のスペースを確保し、安全に移動することに移っていくのではないかと思う。 実際にアメリカの中古車市場は既に上昇傾向にあり、サービスの利用からモノの所有への揺り戻し需要が期待されている。 ② 非日常空間で五感を刺激しストレス解消することに重視 (リアル X 嗜好品) コロナ前は、当たり前のように、映画館で大スクリーン上に映し出される映画を観たり、ライブ会場で生演奏を聞いたり、お洒落なレストランで美味しいものを食べたりと、人は好きな時に五感を刺激し、ストレスを発散することができた。 それがコロナにより、容易にストレスを発散できなくなった現在、人々が抱えている課題は、その失われた五感をコロナ収束後にどのようにして回復させるかだ。 もちろん経済が再建すれば、映画館やレストランをストレス発散の場として利用することはできるが、コロナの懸念は完全には消えず、常に不安を抱えながら生活する必要がある。 せっかく遠出をし買い物をしに行ったとしても、現地で多くの人がいればそちらが気になって楽しめなかったり、映画館に行ってもコロナのことばかりが気になり、集中できずに体験として物足りないと思うかもしれない。 それは、再開していくレジャー系アクティビティも同様で、特にこれから真夏に向けて、例年の、夏祭りや子供連れでプールに行くなどの機会をいかに安全に体験することができるかに需要が向くと考えられる。安全にソーシャルディスタンスを取りながら、レジャーを体験することに期待が寄せられる。 現在、アメリカを中心に新たなシェアリングビジネスとして人気を集めているのが、プライベートでプールの貸し借りができるSwimplyというスタートアップ企業だ。 Swimplyレンタル画面 同社のビジネスモデルは、シェアリングハウスでお馴染みのAirbnbと類似している。しかし差別化ポイントとしては、家の貸し出しではなく、高級住宅に併設されているプールの貸し出しを行うという、あくまでもレジャーアクティビティ体験にフォーカスされているところにある。 プライベートで借りることができ、料金は場所により異なるが、安いところだと、$35/hourと良心的な価格設定になっている。時間は1時間からとホスト側も利用者の回転率を上げることができるという点でメリットが多い。コロナ後の売上は3月に比べて1,200%を達成したという。 長い自宅待機や外出先でもコロナの不安からくるストレス解消のために、高級住宅のプールを使うという非日常感を味わいながら、安全にソーシャルディスタンスも取れるという体験に今後も需要の期待が寄せられる。 ③ シニア層も生活必需品の買い物はオンラインに重視 (オンライン X 生活必需品) コロナ禍をきっかけにオンラインビジネスの成長がさらに顕著だ。TechCrunchの記事によると、食料品のオンライン注文が前月の3月に比べ、49%上昇したとある。 もちろん、コロナ前も小売分野を中心に、オンラインショッピングやデリバリーを利用していた人は多くいただろうが、コロナをきっかけにその加速がさらに進むと考えられる。 コロナにより様々な飲食店や食料品店はオンラインでの注文・デリバリーを強化し、サービスを展開を始めている。サンフランシスコ発祥の食料品即日配達で有名なInstacartは、コロナをきっかけに食料品のデリバリーによる売上が昨年同期比400%を達成しさらに勢いを増している。 また、同社は全米200店舗のCostcoと提携し、食料品だけでなく処方薬の配達を開始すると発表し、注目を集めている。 InstacartのアプリUI このような取り組みは、単にオンラインサービスを利用する人が増えるだけではなく、ターゲット層にも変化を与えると考えている。 今までオンラインサービスの利用者層は主に、インターネットにアレルギー反応がない若者をメインターゲットとしてサービス展開されていたケースが多いが、これからはシニア層のオンラインでの購入需要が高まると考えられる。 シニア層は若年層に比べ、オンラインよりも実店舗に出向き生活必需品を購入するケースは何かと多い印象だ。実店舗は彼らにとってただ単に買い物をする場ではなく、憩いの場だったり、ソーシャルな場だったりもする。 しかし、それは同時にコロナ感染リスクの上昇に繋がり、若者に比べ重症化するリスクが高いとされている不安から、外出を避けてオンラインでの買い物に移行するケースが増えると考えている。 Instacartの処方薬デリバリーの例は、こうした不安や懸念を抱えるシニア層を中心に利用ケースが増えると考えられる。 コロナによって引き起こされたユーザーの価値観や考え方の変化を捉え、ニーズの再定義をもとに作られたソリューションは、新たなターゲットへのリーチにも繋がり、さらなるサービス展開の起爆剤になり、そうしたマインドセットを持つことがコロナ収束以降も必要となる。 関連記事:ニュートンのイノベーションは隔離体験から生まれた ④ 趣味で自宅時間を充実させることに重視 (オンライン X 嗜好品) コロナ前は仕事や外出で忙しく、なかなかインドア系の趣味に対して重要性を見出せていなかった人も、パンデミックをきっかけにインドア系趣味を取り入れ、自宅時間を充実させるケースが増えたのではないだろうか。 人気なのは、料理やガーデニング、家具作りなどのDIYといったところだろうか。もしくは今まではわざわざ外出をして行っていた運動はジムではなく、自宅でできるように新たに器具を揃えたり、オンラインクラスを受講したりで対応していったケースもあるかもしれない。 今回のパンデミックで人々の購買意欲・行動意欲が下がったため、アウトドアの趣味で時間を充実させるよりは、自宅でできる趣味を取り入れることで時間を充実させたい欲が続いていくと考えられる。こうした需要に共感し、新たなサービスを始めた飲食店がある。 サンフランシスコやロサンゼルス 、ニューヨークで人気のタピオカ店Boba Guysは休業期間を利用して、ただ単にデリバリーやオンライン注文を受けるだけでなく、新たに半調理品の商品を開発し専用キットとしてオンライン販売する仕法で新規顧客を取り込んでいる。 Boba Guysメニューキット 専用キットの中には材料や調理器具の他、レシピも同封されており、自宅でもお店さながらの味が再現できる。 これはただ単にドリンクをデリバリー注文して飲むだけでは体験できない付加価値がプラスされていると同時に、今まではなかなかお店に足を運べなかった新たな層にもリーチでき、それが競合との差別化にも繋がり新規顧客の取り込みにも成功している。 飲食店の生命線ともいえるレシピを公開してしまうことは、競合にヒントを与えることになり、リスクにもなりかねないが、なぜ実行に至ったのか。 それはユーザー視点で、彼らが自宅時間で求めていることは何なのかをしっかりと考え、持てるリソースでそのニーズに答えるというマインドセットがあったからだと言える。 ③のポイントとも繋がるが、“お店に足を運ぶ”という従来の思考法から“お店が自宅に来る”という新たな発想の転換と“レシピ公開はリスク”という固定概念を払拭したことで生まれた、新しい可能性なのである。 おわりに コロナウイルスによって、人の価値観や思考法に変化がもたらされた現在、企業はユーザーのニーズや行動、欲求を再度見直し、サービスの改善や対策を行っていく必要がある。 上記で紹介したような事例はそのようなニーズをいち早く捉え、実行している例であるが、コロナによって引き起こされたユーザーが抱える不安や懸念は何なのかを考え、どのように安心感を与えるかを考えることが今後のカギとなりそうである。 そのためには、ユーザーへの共感と実体験から感じたコロナ前とコロナ後の違和感や違いを好奇心を持って考えるマインドセットを持つことが第一ステップになる。 コロナによるパンデミックはピンチではなく、新たな課題を解決するための源と捉えてさらなるビジネス展開に繋げて頂きたい。 btraxではユーザー中心視点からグローバルに通用するためのマインドセットを醸成するためのデザイン思考ワークショップを提供している。少しでも興味を持たれた方はお気軽にお問い合わせを。 参考記事: Hertz files for bankruptcy Uber lays off […]

日本人は議論が苦手?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは

ファシリテーターとは何者?基本をおさらい
ファシリテーション成功の極意は、「ラポールの形成」にあり!
入念な準備とチームへの共感が鍵
ワークショップ中、3つの「日本人あるある」と、ファシリテーターの打開策
ファシリテーションはチームで仕事する人全員が持つべきコラボレーションの姿勢・考え方

近年「ファシリテーション」というスキルがにわかに注目を集め始めている。多様な価値観や複雑で予測不可能な社会に対応すべく、チームで物事を作り上げていく「チームでのデザイン」に対する価値が浸透してきたことに起因する…

インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例

今こそ向き合うべき「インクルーシブ」という概念 様々な肌の色に対応。Band-Aidの絆創膏 まさにユニバーサルデザイン。スパイラル形式のお風呂 性別も体型も。あらゆる既成概念にとらわれないジェンダーニュートラルな下着 宗教の違いに合わせて。リデザインされたキューピーちゃん 赤ちゃんから大人になるまで。ずっと使える椅子 男性も女性も、さらには宇宙人まで。誰でも使えるニュートラルトイレ カラーリングの知られざる理由。青と赤のカスタネット ここから始めるインクルーシブデザイン入門 誰のためのデザインか?徹底的なユーザー視点で既成概念を崩す発想が競争優位性を勝ち取る ここ数週間アメリカでは、デモやネット上での熱い議論など、人種や考え方の違いによる様々な軋轢が表面化している。それに伴い、これまでは「普通」と考えられていた概念が見直され、より多様性を受け入れる動きが進んでいる。 日本と比べても、実に多種多様な人種が集まっているアメリカでも、まだまだ多くの商品やマーケティングメッセージが画一的なデモグラフィーを中心に考えられており、マイノリティーと言われるユーザーを考慮していないケースが少なくない。 その一方で、サンフランシスコを中心とした都心部では、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、それを考慮することで、より多くの人々のためのプロダクト作りやマーケティング手法が進んでいる。 関連記事: 令和に絶対押さえるべきインクルーシブマーケティングとは。事例6選 ダイバーシティーの主な構成要素 最近は日本でも知名度が高まってきている「ダイバーシティー」という単語。「多様性」を意味するが、具体的にはどのような要素が含まれているのだろうか?LGBTなどに代表される性別的な要素や人種はわかりやすい例であるが、それ以外にも複数のファクターが存在している。 性別 年齢 人種 言語 体型 肌の色 宗教 食習慣 障がい 収入 利き手 ライフスタイル 人々の多種多様な要素を包み込むのがインクルーシブ 世界中には上記のような様々なバックグラウンドを持つ人々がいるが、一つの場所で生活していると、どうしてもそれを忘れがちになる。特に日本国内に住む98%が「日本人」であることを考えると、日本が相当ダイバーシティの低い国であるということになる。 それを象徴するのが、ターゲットを性別と年齢だけで区切ってしまうマーケティング手法。おそらくこの手法は、日本国外へ出た瞬間に、一瞬で通用しなくなる。 加えて、今後は日本にも海外からの移住者がどんどん増えていくことを考えると、日本企業も、早い段階からダイバーシティーへの理解とインクルーシブデザインの採用を進めていく必要があるだろう。 インクルーシブデザインとは どんなデザインのプロセスにおいても、特定の顧客を除外してしまう可能性がある。インクルーシブデザインは、ユーザーの多様性を理解することで、意思決定の情報を提供し、できるだけ多くの人を取り込むことに貢献することをゴールとしたデザイン手法。ユーザーの多様性は、能力、ニーズ、願望などに様々なバリエーションがあり、インクルーシブデザインでは、それらを広範囲でカバーしている。 近いコンセプトとしては、ユーザー中心デザインや、ユニバーサルデザイン、そしてアクセシビリティーというものも存在する。 インクルーシブデザインは、一人でも多くの人に役立つ製品を作るのがゴールとなる。アクセシビリティはそれ自体がゴールとなるが、インクルージョンはそれ以上の意味を持つ。達成できれば、多様な特性を持った人が、様々な環境で自分の製品を使用することが可能になる。特に何百万人もの人々のためにデザインをする場合、人々が体験に参加するためのさまざまな方法を作ることが重要になってくる。 インクルーシブデザインが考慮するべき要素 多種多様な人々に寄り添うインクルーシブデザイン事例 では、具体的には世の中にはデザインを通じて、どの表に多種多様な人々に対応しているのだろうか。実際の例をいくつか見てみよう。 1. 異なる肌の色に対応したバンドエイド これまでは、形やサイズ、柄などの種類のバリエーションはいくつかあったが、より多くの肌の色の消費者に対応するべく、Band-Aidは複数の色味を持つ商品をリリースした。そして、公式のインスタグラムでは”We hear you. We see you. We’re listening to you.⁣” という、消費者のことを親身に考えているというブランドメッセージを発信している。 様々な肌の色に対応したバンドエイド 2. 車椅子の方でもスムーズに使えて、健常者にも違和感のないお風呂 デザインが解決すべき最も大きな多様性の一つが障がい者向けの施設だろう。特にトイレやお風呂は、日常での利用頻度も高いため、とても重要な場所になってくる。駅や総合施設などでは、車椅子の方でも利用できるトイレを見かけることはあるが、お風呂はあまり知られていないだろう。 今回紹介するお風呂は、静岡県のJIKKAというゲストハウスに設置されたスパイラル形式のお風呂。5mのスロープを設置することで、体の不自由な方や、お年寄りにも優しい設計を実現している。 身体の不自由な方も使いやすいJIKKAのお風呂 3. 性別や体型の既成概念にとらわれない下着 下着といえば、ついついヴィクトリアズシークレットのセクシー系や、トミーヒルフィガーのワイルド系など、どうしても型にはまったスタイルを想像しがちであるが、TomboyXでは、多様性の高いユーザー向けに、多種多様なアイテムを提案している。 トランクスやボクサーブリーフなどの男性的な下着を女性の体に合わせてアレンジしたり、男性の体向けにフェミニンなデザインを提供したりもしている。これはいわゆる、ジェンダーニュートラルのコンセプト。「男性っぽさ」や「女性っぽさ」からあえて離れることで、新しいニーズに対応している。 全ての性別・体型に対応しているTomboyXのオールニュートラル下着 4. 宗教の違いに合わせてキャラクターをリデザインしたキューピーマヨネーズ 日本でもお馴染みのキューピーちゃんであるが、実は販売されている地域で、そのキャラクターのデザインが一部変更されている。変更している地域は、東南アジアのマレーシア、インドネシア。オリジナルのキューピーの背中の羽をなくし、顔と手だけのデザインになってる。 この地域ではイスラム教徒の方々が多いのが理由。イスラム教では、偶像崇拝が禁じられており、オリジナルの羽のついたキューピーは、天使と受け止められる可能性を考慮したものなのだ。 オリジナル(左) とイスラム圏向け(右)のキューピーマヨネーズ 5. 赤ちゃんから大人までが使える椅子 赤ちゃんが生まれて、成長する過程では、身体がどんどん大きくなる。その度に家具を買い替えていると非常にコスト高になる。 この課題を解決すべく、北欧のデザイナー Peter Opsvikは、一生使える椅子をデザインした。TRIPP TRAPPと呼ばれるこの椅子は、生まれた直後から、大人になっても使える。全てのライフステージをインクルーシブにデザインされている。  成長に合わせて使い続けられるTRIPP TRAPPの椅子 6. 誰でも使えるニュートラルトイレ 海外では、男性でも女性でも利用できるトイレが増えてきているが、ヨーロッパなどでは文字通り「誰でも」使えるユニバーサルトイレが出現。 サイネージには、男性、女性、車椅子、老人、人魚、バッドマン、アンドロイド、そして宇宙人までが表記され、しっかりと点字も記載されている。まさに、全てを内包 (インクルード) するデザインとなっている。 ユーモアのあるインクルーシブトイレのサイン 7. 男の子でも女の子でも使えるカスタネット おそらくほとんどの人が学校で使ったことのあるカスタネット。多くの場合、赤と青の2色で構成されている。実は、その理由は男子でも女子でも使えるようにするため。もともとは、男の子向けの青と女の子向けの赤が別々に存在してた。 しかし、クラスによって男女比率が異なったりすることで、どちらかの数が足りない状態が発生していた。そこで、両方の色を合わせて一つにすることで、どちらでも使えるようにデザインをしたというもの。ちなみに現代では、青=男性、女性=赤、という概念自体がなくなり始めている。 男子でも女子でも使える赤と青が合わさったカスタネット インクルーシブデザイン入門 それでは、どのようにすれば、多様性に対応したデザインが実現できるのだろうか?我々btraxでは、世界の異なる地域の様々なニーズに合わせたプロダクトに対するデザインを提供するために、まずはユーザーを深く理解し、共感することからデザインのプロセスを始めている。 これは、デザイン思考のプロセスの第一歩である、エンパサイズのプロセスでもある。 そして、実際のデザインプロセスを進めるにあたり、下記のような命題を踏まえ、より多くの人々に受け入れられるようなプロダクト作りを進める。 デザインを始める前に自分たちにはどんなバイアスがかかっているのか? このデザインを良しとしないのはどのような人だろうか? 必要のない要素にこだわってはいないか? 自分のためだけのデザインになっていないか? 最終的に誰のためにデザインをしているのか? どんなデザインチームでも、これらのシンプルな質問を自問自答し、包括性について考え始めることが重要になってくる。 インクルーシブデザインを実現するための6つのステップ 実際にデザインプロセスを進めるにあたって、下記の6つのステップが有効になる。 1. 排除されているポイントとユーザーを理解する 排除のポイントを積極的に探し出し、それを利用して新しいアイデアを生み出し、新しい解決策を生み出す機会を模索する。人々がどのようにして、なぜ排除されているのかを正確に理解することで、よりインクルーシブになるための具体的なステップを確立することができる。例えば、動画作成をする場合に、耳の不自由なユーザーにもメッセージが届くかどうかを検証するために、音量がオフになっていても、内容が伝わるかの検証を行う。 2. 状況に応じた課題を特定する 排除は状況に応じて発生する可能性がある。ユーザーがプロダクトを利用している際の「特定」のポイントにてインプルーシブではない瞬間が発生していることを探る。今回の例の場合、通常は問題なく視聴できている動画コンテンツでも、空港やカフェなどの騒がしい場所では、音が聞こえなくなる瞬間がある。その場合、耳の不自由なユーザー向けにデザインされた要素がその課題を解決してくれる。 3. […]

グローバル市場でEコマースを成功させるための3つのマインドセット

コロナの影響でEコマースは成長中。Eコマース構築時に必要な3つのマインドセットをご紹介。

販売者視点ではなく、「ユーザー視点」の発想。常に、中心にあるのはユーザーの課題。
「まずは国内から精神」は捨てる。海外フレンドリーでパイを拡大。
Eコマースはあくまでも手段。オフラインも含めて総合的な購買行動のデザインを。

コロナウイルスをきっかけにさらなる注目が集まっているEコマース市場。トレンドに乗り、Eコマースというツールを活用してビジネスの拡大を考えている企業や個人事業者も多いのではないだろうか…

デザインの力で、新しい生活様式に安心と喜びを作るコツ:3事例

「新しい生活様式」の「身体的距離の確保」に関する制約は、特に我々の心を窮屈にするもの
人と人の間にそっと介在することで、心の穴を埋めてくれる体験のデザインがある
① 口の見えるマスク:口の動きや顔の表情はコミュニケーションの重要な情報である
② C’entro:物理サークルがマスクの代わりとなり、公共の場での心理的・身体的安心感をくれる
③ タイのレストラン:レストランと客、双方に嬉しい空間を作り出すのは、店内に居座るパンダ!?
我々の新しい生活を解決してくれるのは、ハイテクではなく、…

Withコロナの体験デザイン。世界の企業がとったアクションとは?

Withコロナ時代に対応するため、米国企業から新たな体験デザインが提供されている ①コミュニティとして支え合い、共存を目指すスモールビジネス応援募金系デザイン(MealPal、ClassPass ②StayHomeのためにできることを優先する、家にいようと啓発系デザイン(Netflix、Uber/UberEats) ③家にいてもひとりじゃない、コミュニティビルディング系デザイン(Instagram、Coffee Meets Bagel) ④インフォデミックを防止する情報共有系デザイン (Medium、Note、Google、Facebook など) Withコロナにおいて、企業がどういうスタンスをとり、人々の価値観に対してどう体験デザインを提供していくか、考え抜き、実行する必要がある   全く未知のウイルスの登場により、経済が停滞、数年先どころか、数ヶ月、数週間先の状況まで全く予測することができず、まさに世界中の人々が足踏み状態である。このことから、欧米では現在の状況を「Great Pause(大いなる停止)」と呼ぶようになってきた。 前例のない状況に困惑し、今後の仕事や生活に不安を抱える人の方が多いことだろう。一方で、環境問題の改善や交通渋滞や事故の減少が顕著に見られるなど、人々が経済活動を一時休止したことによるポジティブな側面も注目されている。それはまさに、この停止期間を我々がどう考え乗り越えていくかによって、この後の世界が大きく変わっていくことを示唆しているようだ。 そして、世界を新しく形作っていく上で大きな力を持つのが「企業」である。今、企業はどのようなアクションを取り、メッセージを社会に発信していくべきなのか。世界中が立ち止まっているこの状況こそ、社会に新たな価値や考え方を提案することができるチャンスと捉え、真剣に向き合っていくべきではないだろうか。 すでに米国では、各企業が自分たちが社会に提供できることを考え、迅速な動きを見せている。消費者を巻き込んだそれらの動きは、体験デザインの視点から見ても、非常に参考になるものが多い。この記事では、コロナ危機発生直後の状況に対応する米国企業の体験デザインを考察しながら、この歴史的な転換期に、企業としてどのような行動をしていくべきなのかを考えていく。 コロナ危機に対する企業の迅速な対応が活発に アメリカではこの世界的危機に対し、企業としてどのように貢献できるかを考えて、即時に行動する流れがとても顕著である。これらの動きは英語で『COVID-19 Corporate Responses』と呼ばれている。 その中でも目立っているのは、資金や物資の支援だ。例えば、Mastercardや、Wellcome、Bill&Mellida Foundationは、3月10日という大変早い段階でCOVID-19事態収束のためのスタートアップを支援するアクセラレーターを共同設立。 CocaColaはフェイスシールドを作る非営利団体の支援のためにリソースとロジスティクスを提供した。各国のマスクの不足に対しては、AlibabaやTrip.comのような企業が日本、アメリカ、ヨーロッパ等に大量寄贈したニュースを目にした読者も多いのではないだろうか。 また、PepsicoやChipotleをはじめとする食品企業やレストラン業が、ウイルスと最前線で戦う医療従事者や経済的に困窮する層に対して、無料で食事を提供する動きもアメリカでは目立った。 ZoomやWorkplaceなどのオフィスツールを提供する企業も、急な自宅勤務が導入された企業をサポートするために、期間限定でサービスの無料提供を行っている。 消費者を巻き込む企業のコロナ対応デザイン 上記のように、直接的に企業の資金や物資を無料提供するような企業活動が目立つ一方で、別の形でコロナ危機に対する企業活動を実践している企業が存在している。 彼らは、この前代未聞の危機の中で私たち消費者側が、お互い助け合い、賢く判断して生活できるようなデザインを提供している。 パンデミックの世の中で新たな社会生活の在り方の創造が求められる中、これらの企業は、他者と自分とのつながりの中で社会が存在することを消費者に再認識させ、新しい社会での行動の仕方をポジティブに提案してくれている。 1. スモールビジネス応援募金系(MealPal、ClassPass) コロナウイルスの感染拡大防止の自宅退避令により、多くの都市で必要最低限のビジネスが禁止される措置が取られている。サンフランシスコでも、レストランやカフェは宅配とお持ち帰りのみが許され、イートインスペースは閉鎖されてしまっている。 スポーツジムやヨガスタジオといった施設も未だ全て閉鎖されている状況だ(5/1現在)。2ヶ月以上もこのような状況が続くため、多くが従業員の解雇や廃業にまで追い込まれている。 このような状況に対して、MealPalやClassPassは、消費者たちが支援を必要とするスモールビジネスをサポートできるような仕組みを提供し始めた。 MealPal MealPalは街中のレストランと提携し、オフィス街で働く人向けに格安でランチを提供するサブスクリプションサービスだ。ユーザーはアプリから翌日のランチとピックアップ時間を選択し、その時間になったらレストランまでランチを受け取りに行く。 参加するレストラン側のメリットはMealPalプラットフォームに参加することでレストランを周知してもらえる点だ。また、MealPal用のランチメニューは数種類に限定することができるのと、事前にオーダー数がわかるのでロスも少なく効率的であるというのもメリットだ。ユーザーは通常より安価にランチを手に入れられるほか、お店で待たずに受け取れるのが嬉しい。     しかし、コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、ほぼ全てのオフィスワーカーが自宅勤務になった。ここサンフランシスコでも、MealPalを利用できるユーザーが激減してしまった。またレストラン自体が一時休業というケースも少なくない。 自分たちの経営すらも危ういであろうこの状況の中、MealPalが始めたのは、加盟店への募金のシステムだ。 今現在、ユーザーがアプリを起動すると、いまだにランチ提供を続けるお店にランチを予約するだけでなく、今日ランチを注文する代わりにその金額を提携レストランへの募金に回すというオプションも存在する。 また、このような状況の中、多くのユーザーがサービス利用の一時停止を考えるだろうが、お金に余裕のあるユーザーに向けて、1ヶ月分のサブスクリプション費用を全額募金に回すという選択肢も提案している。 関連記事:【UX分析】ランチの格安サブスクサービス MealPal ClassPass MealPalと似たビジネスモデルを持つClassPassは、MealPalのジム版とでも言うことができる。ClassPassのサブスクリプション(回数券)を使うと、ダンスやヨガ、ボクササイズなど、複数の異なるエクササイズジムを横断的に使うことができる。 ユーザーはオンデマンドで様々なクラスを予約、ドロップイン参加できるのだ。ユーザーは特定のジムに会費を払う必要はなく、様々なジムで異なったエクササイズを気軽に楽しめるのが魅力だ。 ClassPassのコロナウイルス対応は、とてもスピーディーだった。サンフランシスコでは自宅退避令が3月14日に発令されたが、ClassPassはその翌日15日には、該当地域に居住するユーザーのサブスクリプションを全て自動で一時停止した。現在ClassPassは、加盟するジムのオンラインストリーミングクラスをプラットフォーム上で提供している。 また、各エクササイズジムのClassPassプロフィールページには「サポート機能」を追加している。この機能を通じて、ユーザーはお気に入りのジムに対して、$5-$500の範囲で金額を設定して簡単に献金することができる。 さらに、エクササイズジムで働く人々に補助金を出すことを求めるオンライン署名活動を促す特設ページも一時期設けていた。   寄付文化が日本より浸透するアメリカであっても、先行きの不透明なこの状況で誰かに募金をしてサポートするというのは決して誰もができることではないはずだ。 しかし、いつも使うアプリからの募金の呼びかけは、普段ランチを手渡してくれる飲食店従業員や、エクササイズをサポートしてくれるジムのスタッフの笑顔がユーザーの頭をよぎらせるだろう。 そうしてユーザーは、コロナウイルスの影響で窮地に追いやられているコミュニティが、実は自分の属すコミュニティであることを実感し、募金という行動を選ぶ。そんな体験のデザインが、MealPalとClassPassの「サポート機能」には隠されているように筆者は考える。 このようにして、この2社は、自分の生活すらも不安な今、スモールビジネスを応援する意味を人々に考えさせ、コミュニティとして支え合い、共存してくという価値観を社会に醸成しているのである。 2. 家にいようと啓発系(Netflix、 Uber/UberEats) 次に紹介するのは、コロナウイルス感染のピークを抑え医療崩壊を防ごうとする「Stay Home」の動きを啓発する形で社会に貢献しようとする企業だ。 Netflix 動画配信サービスを提供するNetflixはもう日本でもお馴染み。彼らは街頭に、今一番人気のあるリアリティショーのネタバレ広告を出した。外出する消費者に「家に帰ってNetflixを観たい」という気持ちにさせることで、コロナウイルス感染拡大防止に貢献させるという秀逸な対応である。 このリアリティショーのファンであるbtraxスタッフも「ネタバレし過ぎない程度の絶妙なネタバレ具合で普段から視聴している人にとっては続きが気になって仕方ない」と絶賛していた。 ちなみにNetflixはサブスクリプションベースなので、新規ユーザー獲得でなく、既存ユーザー1人あたりの視聴時間が増えたからといって単純に利益が増えるわけではない。 Uber また、配車マッチングプラットフォームのUberは「A company that moves people is asking you not to move(人々の移動を生業にする会社が、動かないでとお願いしています)」と広告を出した。 現在、Uberをオーダーしようとアプリを開くと「それは本当に必要な外出ですか?」と確認メッセージが表示され、不要不急の外出を避けるように促される。 また、ドライバーたちにも社内のクリーニングキットを提供してたり、万が一ウイルスに感染してしまった場合には14日間の休業支援金を支払ったりしているようだ。 Thank you for not ridingというメッセージも動画広告で発信されている UberEats さらに、レストランのデリバリーに対応するUberEatsでは、現在デリバリー手数料を無料化し、金銭的な面で普段より利用ハードルを下げることで「Stay Home」を後押ししている。 ソーシャルディスタンスの実践をサポートするために、受け取り方法にも「Leave at the door(ドアの外に置く)」というオプションを素早く導入して対応した。 これらの企業は、自社のサービスがどのようにコロナの渦中にある社会で位置付けられるのか、その中で自分たちが取るべき行動はなんなのか考えて即座に行動している。 たとえその動きが自分たちの利益に直接繋がらなかったり、むしろ利益を下げてしまう場合であったとしても、潔く社会のためにその活動を決断している点に注目したい。 3. 家にいてもひとりじゃないーコミュニティビルディング系(Instagram、Coffee Meets Bagel) ソーシャルディスタンスの実施により、自宅退避を強いられ、多くの人々が友人知人と直接顔を合わることがほぼなくなってしまった。そのことから、強い孤独やストレスを感じている人も多いだろう。 そんな中、自宅にいながらも、人と人との繋がりや新たなコミュニケーションのきっかけをデザインしてくれている企業も存在する。 Instagram 日本を含め世界中にユーザーがいるInstagramもその1つだと筆者は考える。彼らは「Stay Home(おうち時間)」スタンプを作ることで、コロナ時代の孤独になりがちな「おうち時間」をサポートしている。 「Stayhome(おうち時間)」スタンプは、日本語、英語のみならず、ドイツ語やスペイン語など世界中の言葉に対応されているようだ。Instagramは、このスタンプを作ることで、ユーザーそれぞれが自宅での過ごし方を共有しあうことを促した。 自宅でも有意義な時間の使い方が可能であることを互いに共有しあったり、逆に「家で寂しい思いをしているのは自分だけじゃない」という同胞感を感じさせる体験デザインしているように見える。   この状況で実は大きな打撃を受けている業界は数えきれないが、オンラインデーティング業界も実はそのうちの1つだ。「オンラインデート」とは言うものの、ユーザーの多くがオンラインで「マッチ」した後に直接顔を合わせることを前提にサービスを利用している。 自宅退避令により、実際に顔を合わせるのがいつになるかわからないため、一旦活動を停止してしまうユーザーも多いようだ。 CoffeeMeetsBagel この状況に対し、Coffee Meets Bagel(以下CMB)は自宅退避令中も(バーチャルで)人々の出会いを支援するデザインを行っている。まずCMBの特徴の1つと言えばマッチした人とのメッセージ機能が7日間でクローズすること(それによって、実際に顔をあわせることを促す仕組み)だが、彼らはその機能を真っ先に「無制限」にした。 […]

サービスデザインの際に知っておきたいリープフロッグ現象とその本質

リープフロッグ現象:既存の社会インフラが整備されていない環境で、先進国が歩んできた「技術発展における通常の段階的変化」を経ずに、新たなサービス等が一気に広まること
リープフロッグ現象が起きる理由として、インフラが整っていない、既存・新規サービス間の摩擦がない、膨大な開発費用の必要がない、導入のペナルティがないという「4つのない」があるが、そこにはそもそものサービス開発心構えがある

生活者のそもそもの願望をまず捉える
技術的スペックは最新・最高である必要はない
伝達しやすいシンプルなサービス価値が…

【2019年】3つの業界に見る米国イノベーション事例まとめ

5Gの拡大でAR/VRや自動運転など「技術」が注目されがちだが、サービスの価値は「ユーザーが抱えている問題を解決することで初めて創造される」ということを忘れてはいけない
2019年ユーザーに価値を与えたイノベーション事例をリテール、ヘルスケア、ペットケア分野に分けて紹介

今年も残すところあと僅か。2019年のアメリカは第5世代移動通信システム、「5G」がついに解禁され、VR/AR市場の拡大、自動運転の可能性など、今までは想像もできなかった技術革新がさらに加速した年でもあった。
例えば、Alpha…

デザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれない?説

デザイン思考は基本的なマインドセットであり、イノベーション創出のための万能な方法論ではない デザイン思考を学んで終わりにしない。「当たり前」にし、そのあとの行動に移してやっと価値が出てくる デザイン思考に倣うだけでは心に響くプロダクトは生まれない イノベーションに必要な要素 = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション みんな頑張ってデザイン思考を会得しようとしている デザイン思考の重要性が一般的に浸透し、多くの企業が何らかの方法でその手法を社内に取り入れようとしている。有望な若手を1日のデザイン思考ワークショップに参加させたり、経営陣自らがデザインの重要性を学ぶためのセミナーを受けたりなど、それなりの活動を進めていることが多い。 やってみたけど結果が出ない? しかしここに来て、多くの企業の方々から聞こえてくるのは、「それなりにやってはみたものの、イマイチ結果につながっていない」と言う課題。そもそも、ここでの”結果”とは何を意味するのか? よくよく聞いてみるとそれは、「デザイン思考を活用した画期的な事業の創出」だと言う。おそらく彼らは、デザイン思考を取得すれば、今まで不可能だったようなアイディアや、ビジネスモデルが生まれると考えているのだろう。 実はそれは大きな間違いなのかもしれない。「ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決」でも説明されている通り、そもそもデザイン思考は基本的なマインドセットであり、万能なメソッドではない。と言うことは、デザイン思考自体は、あくまでイノベーションを生み出すための”下地”であり、方法論ではない。 言い換えると、デザイン思考を学んだだけでは期待する結果を得るのは難しい。実際に活用しながら試行錯誤していく必要がある。我々が提供しているデザイン思考をベースとしたワークショップでも、数ヶ月にわたり実際にスタートアップサービスを作りながら、やっとヒットするサービスの糸口を掴みかけるような状態なのである。 グローバル的には多くの成功事例が生まれている その一方で、「統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ」を見てもわかる通り、デザインを経営に導入することのメリットがあるのは明白なのである。 具体的な経営的な数字でデザインの重要性が明確になればなるほど、世の中の多くの企業たちが、ビジネスにおけるデザインの重要性に着目し、自分たちも乗り遅れないように何らかの試作をしなければ、と考え始めるのは当然の流れだろう。 そもそも何がデザイン思考なのかがわかりにくい そんな世の中の流れもあり、最近の日本では、猫も杓子もデザイン思考を叫び、本屋さんには関連した本が平積みされている。コンビニでも思わず「デザイン思考ください」と言ってしまいそうになる。 その一方で、何がデザイン思考なのか?それはどのようなメリットがあるのか、に関しては明確かつ統一した理解がない。そもそも、その概念自体が広すぎて、人によって解釈が違うし、利用方法も違う。そして、デザイン思考という概念自体が本来そうあるべきである。 なぜなら、デザイン思考は厳密なプロセスやルールなのではなく、参考程度に活用するべき考え方であるから。なので、「デザイン思考とは?」と聞くこと自体が愚問である。 ↑ 数多く出版されているデザイン思考関連の書籍 実は一番困惑しているのは現場のデザイナー達 デザイン思考って何?と言う質問に一番困惑するのは、もしかしたらデザイナー達だろう。そもそも、自分たちが今まで情熱を持って、長い年月を費やしてやってきた事が1つのブームになり、デザインの”デ”の字もわからないお偉いさんが、知ったかぶりで「やっぱデザイン思考だよねー」って擦り寄ってきても、「は?」と思ってしまうこともある。 それだけデザインは奥が深く、一朝一夕で身につくものでもない。それを、昨今のトレンドにより、誰でも簡単に学ぶことができ、ビジネスに即効性があると思われると、かなりしんどい。そして、昨今の社内デザイナー達は、他のスタッフにデザイン思考を教えることに毎日奔走し始めている。そうなってくると、本来やりたかったデザインの仕事がなかなかできなくなり、モチベーション低下にも繋がりかねない。 また、経営の現場に単純にデザイナーを突っ込めば全てが解決するわけではない。なのに、成功している会社の多くはデザインを経営に活用している、と言う理由だけで、なぜかデザインは万能な魔法のような捉え方をしているケースも見受けられる。 社内にしっかりとデザインを浸透させたければ、まずはスタッフのマインドセット、次にカルチャー変革が求められる。 そもそも、デザイン思考を社内に浸透させたければ、デザイナーよりもファシリテーター的な役割の人が行う方がよっぽど効果が高い。我々、btraxでも、デザイン思考ワークショップを提供する際には、ファシリテーターがメインで進めていくようにしている。 ↑ ファシリテーターがリードするbtraxでのデザイン思考ワークショップの様子 スタートアップ業界ではすでに”母国語”化している ちなみに、サンフランシスコやシリコンバレーのスタートアップ界隈では、今更デザイン思考を学んだりはしない。自分を含め、ここに長く住んでいる人たちにとってみると、デザイン思考的な流れでサービスを作るのがあまりにも当たり前のやり方すぎて、いまさら体系立てて学ぶことはあまりしない。 サービスを考えるときに、特定のユーザーのニーズにフォーカスを当てるのは当たり前だし、短いスパンでプロトタイプを作成し、ユーザーテストをするのも当たり前。アイディア段階でカフェに行って横に座ってる人からフィードバックをもらいながら改善したい、よりふさわしいユーザーを紹介してもらったりするのも日常茶飯事である。 それはまるでデザイン思考がすでに我々にとっては”母国語”になっており、努力して会得するものでない感じなのだ。例えると、英語を学んでいる人は、その文法から発音までを論理的に身につけようとするが、生まれつき喋れる人は、逆にそんなややこしい部分は気にも止めない。 海で生まれた魚は、泳ぐことを一から学ばないのに似ている。「Fishes can swim」ではなく、「Fishes swim」となる。同様に、スティーブ・ジョブズが一からデザイン思考を学んだとは想像しづらい。 デザイン思考を会得してやっとスタートラインに立てるレベル ここで気付いた方もいるかもしれないが、「英語が喋れる = グローバル」ではない。それは単純に海外の人とのやりとりをしやすくなっただけであり、そのスキル自体はコミュニケーションの第一歩でしかない。これは、「デザイン思考 = イノベーション」ではないのに似ている。 イノベーションを生み出している企業がデザイン思考を活用してるのは間違いない。しかし、それはあくまで基本中の基本ができているだけであり、万能ではない。デザイン思考プラス何かがなければ、求める結果を得ることは非常に難しい。 デザイン思考は”思考”ではなく、”行動”であるべき これはその呼び方が大きな問題がるのかもしれないが、デザイン”思考”を通じて結果を出したければ、早い段階で、考えることよりも、行動に移す必要がある。下記のダイアグラムを見てもわかる通り、デザイン思考のプロセスにおいては、多くの箇所で行動が求められる。そして、それを短いサイクルとして、グルグル回す必要がある。ちなみに、デザイナーに求められる能力の1つが、短時間でどれだけ多くの量のアウトプットを出せるかである。 以前にアメリカで被験者を2つのグループに分け、一定時間内に陶芸を作る実験を行った。Aのグループには、「最も優れた作品を作ってください」と伝え、Bのグループには、「作品の質ではなく、使った粘土の量が多さで評価します」と伝えた。すると、Bグループの方が最終的には、より優れた作品を作った結果となった。トライアルアンドエラーを多く繰り返した方が良いものが出来上がりやすかった。 デザイン思考でも、どれだけの量の失敗を繰り返せるかが重要で、座学よりもアウトプット重視するべきである。 しかし、デザイン思考を”思考”のままで終わらせているケースが後を絶たない。優れたプロダクトを生み出したければ、頭で考えるより、まず行動。習うより慣れよ、が求められる。なのに、デザイン”思考”と名付けてしまったのが誤解を生み出す1つの原因になってると思われる。 ↑ 思考よりも行動が重視されるデザイン思考のプロセス 実際の現場はかなりカオス 実際のところ、デザイン思考を活用しても、その成功率は必ずしも高くは無い。しかし、プロダクトが生み出されるのに要するコストと時間が短縮されるので、長期的にみると良い結果につながる。 そして、議論よりも行動重視でプロダクト作りを進めている現場は、想像ができないぐらいに、はちゃめちゃであり、またそうあるべきである。プロセスの行ったり来たり、コンセプトの練り直し、ニーズの再認識は日常茶飯事で、チーム内のいざこざや、感情のぶつかり合い、仲間割れも珍しく無い。 それが本当に良いものを生み出すためのクリエイティブなプロセスなのであるが、和を大切にする日本の文化や、大企業のエリート経営陣にはなかなか理解のしづらい部分でもある。 会社がカオスな状況を許容してくれない限り、良いものは生まれづらい。 デザイン思考プロセスを丁寧になぞってできたプロダクトは面白味がない これはとても主観的な感想になるが、デザイン思考の教科書に従って、お勉強した内容を元に、そのプロセスを丁寧になぞって作り上げらたプロダクトは、妙に”のっぺり”としている。そして世の中にある他のサービスにかなり類似したものが出来上がる。何か一味足りない。スパイスが効いていない感じがする。 なぜか?多くの場合、作っている人たちが本当に作りたいものを作っていない場合があるから。教科書に書いてあるやり方をしっかりと踏まえ、間違えの無いように1つ1つしっかりと検証して作ったとしても、そこに強い情熱や想いが無ければ、なんかつまらない物が出来上がる。 作る側に強い愛情が無いと、ユーザーにとっても魅力的なプロダクトにはならない。ユーザー検証を通じて、”つじつまのあう”プロダクトは作れるかもしれないが、なぜか心に響かないものになりがち。単純にデザイン思考のプロセスを踏まえ、ユーザーが欲しいと言ったものを作ったところで、それは単なる御用聞きプロダクトになってしまいがちである。 参考: お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い デザイン思考は音楽におけるカノン進行みたいなもの この感覚、何かに似ているなー?と思って考えてみた。そうそう、それはまるでカノン進行を活用したヒットソングっぽい。カノン進行とは、パフェルベルのカノンと言うクラシックの名曲に利用されているコード進行。それが、日本人の耳に妙に心地よく聞こえることから、そのコード進行をベースに作曲するとヒットソングを生み出しやすいと言うことで、多用されている。 ミュージシャンの間でも、「ヒットを生み出したければ、カノン進行を使えばなんとかなる」とされるが、同時にそれは禁断の果実でもあり、妙にどっかで聞いたことのあるJ-Popソングになりがちで、イマイチ面白味がない作品になってしまう。 うまくいかないケースに欠如しているのは何か? では、本題に戻って、なぜデザイン思考のプロセスだけでは革新的な製品が生まれないのか?おそらく、ここで重要なのが、そこに強い情熱があるか無いか。企業の新規サービスを作る際には、もちろん最終的な売り上げが重要になってくるのだから、ヒットを狙って物づくりをする必要が出てくる。それにデザイン思考が用いられる。 その一方で、本能的にデザイン思考を取り入れているスタートアップの多くは、初めから売り上げを意識しない。むしろ特定のユーザーや社会、そして作っている人たち自身が強烈に感じている課題を解決するための手段として、プロダクト作りをする。そこには、他の人ではなかなか持つことのできないレベルのパッションがあり、それが大きな原動力となる。 強いパッションがあれば、物凄い勢いでニーズの深掘りを行い、素早く試作品を作り上げ、テストを繰り返す。そして、その結果に合わせて、どんどん改善やピボットを行う。それはまるでアーティストの自己表現にも通じるものがあり、ヒットソングを狙った理詰な作業とは異なる。 イノベーションに必要な要素とは デザイン思考だけではイノベーションが生み出されないとしたら、他にどんな要素が必要になってくるのだろうか?おそらく、それには、下記の要素が求められると思われる。 マインドセット: デザイン思考自体がそもそもプロセスというよりは、基本的に理解しておくべきマインドセットである。それぞれのメンバーが、ユーザー視点の考え方をしっかりと理解し、会社の利益の前に課題解決のためのマインドセットをしっかりと共有しておく必要がある。 カルチャー: 次に、チームや組織におけるカルチャー的要素。自由に発言しやすい心理的安全性と、失敗を許容する考え方。そして、机上の空論よりも、速いスピードでアウトプットを評価するカルチャーが求められる。 パッション: 最も重要な要素になってくるのが、プロダクトやサービスに対する情熱。自分たちが本当に解決したい課題に対してのソリューションの具現化としてのプロダクトであること。そして、そこに他の人たちよりも強い情熱を注ぐ必要がある。 アクション: そして、上記の3つの要素をしっかりとアクションに移すこと。アクションの部分が無ければ、全てがゼロになってしまう。どれだけ強い情熱を持っていても、検討の結果、見送ることにした場合、アウトプットはゼロである。 結論として、イノベーションを生み出すためには、下記の方程式が必要になってくるのでは無いかと思う。 イノベーション = (マインドセット+カルチャー+パッション) x アクション デザイン思考を上手に活用している秘訣を学ぶイベント もちろん、実際にうまくいっているケースも多数ある。その1つを紹介するのが、11月5日に東京で開催されるDESIGN for Innovationでの下記のセッション。詳細は公式サイトにて紹介されている。 『デザイン思考を利用したグローバルイノベーション創出方法』 日本が世界に誇るモビリティー企業であるHONDA、YAMAHAの2社が急激に変化をしている市場にて、どのような方法で生き残り、成長を続けるのか。デザイン思考的アプローチや、社外のスタートアップとのコラボレーションなど、最先端の取り組みを紹介。 日本国外のユーザーの心を掴むプロダクトの秘訣とは。それぞれの企業にて、従来とは異なるアプローチからイノベーションに取り組んでいる2名が、どのようにこれからのユーザーに受け入れられるプロダクト作りをしていくのかを語る。 杉本 直樹氏 / CEO、 本田R&Dイノベーションズ / 執行役員 統括機能本部 オープンイノベーション戦略担当、 株式会社 本田技術研究所 長屋 明浩氏 / 執行役員デザイン本部長、ヤマハ発動機株式会社 […]

統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ

ここ数年で経営に対するデザインの重要性に注目が集まっている。デザインを経営に活用している企業の株価の伸びが平均値の2倍以上であったり、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているなど、その結果が具体的な数字に表れ始めている。 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザインと経営に関する最新のリサーチ結果 そんな中でも、デザイナー向けのプロトタイピングツールを提供するInVisionが、これまでにないレベルの世界規模でのデザインに関するリサーチを発表した。The New Design Frontierと名付けられたこのレポートでは、世界中のさまざまな規模の企業や団体をリサーチを実施した。 リサーチ対象の内訳は、大企業:71%、エージェンシー:25%、非営利団体:2%、行政:1%で、金融や教育、エンタメなどの異なる24の業界から2,200を超える団体。 70%の企業が積極的に経営に対してデザインを活用してる その結果、全体の2/3以上が、デザインを機能や見た目以外にも活用しているという事がわかった。全体の70%の企業が商品の開発や企業経営のプロセスにデザイン的考えを導入していると答えている。 デザインの浸透に関する主なアンケート結果: 商品開発プロセスに組み込まれている: 66% デザインリーダーが商品開発やエンジニアリーダーと連動している: 53% 従業員がデザインプロセスに参加している: 51% 重役がデザインプロセスに関わっている: 49% 従業員がユーザーや顧客リサーチに関わっている: 48% デザインが経営に与えるインパクトが理解できる統計 また下記の通り、デザインの経営に対する効果としては、効率、利益、ポジショニングなどに加え、3/4近くの企業がデザインを通じて顧客の満足度とユーザービリティが改善されたと答えている。(サンプル数:2,229団体) 商品のクオリティに対するインパクト ユーザビリティ改善: 81% 顧客満足度向上: 71% 業務に与えるインパクト 社員の作業効率の向上: 33% 商品の市場リリーススピードの向上: 29% 会社の利益に対するインパクト 売り上げの向上: 42% コンバージョン率の向上: 35% コスト削減: 30% マーケットポジショニングに関してのインパクト ブランド価値向上: 39% 新しい市場参入への効果: 25% デザインパテントや知的財産権への効果: 13% 評価額や株価への効果: 10% 組織内におけるデザイン熟成度と経営へのインパクトにおけるデザインレベルとその効果 このレポートでは、企業や組織がどれだけデザインを業務や経営に活かしているかによって、会社自体のデザインレベルを5段階に分けている。その結果、経営に対してデザインのポテンシャルを最大限に引き出しているLevel 5に入るのは、全体のわずか5%にとどまった。 全体の80%の企業が常にデザインを企業内の何かしらのプロセスに導入している中で、実に95%はまだまだデザインを活用する余地が残っている。 デザインの活用度合いレベルと全体での割合 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% Level 2 – 定期的にデザインワークショップを実施している: 21% Level 3 – 業務プロセスにデザインが導入されている: 21% Level 4 – 絶え間ない仮説検証が行われている: 12% Level 5 – デザインこそがビジネスの根幹になっている: 5% 組織が大きくなるほど経営戦略へのデザイン導入難易度が上がる 組織の規模が大きくなればなるほど、デザインを経営に浸透させる難易度が高まる。例えば、大企業と比較した場合、最高レベルであるLevel 5の比率は、中小企業で2倍、小規模企業で3倍ほどの開きが見られる。 多くの大企業は、組織構造やプロセスが複雑化しており、経営に対してのデザインの導入に時間がかかる結果となっている。 デザインチームの大きさと経営へのインパクトは必ずしも比例しない 上記のデザインレベルにて、高い数字を達成している = 経営へのインパクトが大きい企業におけるデザインチームが必ずしも大きいとは限らない。 重要なのは、組織内でどのような影響力を持ち、経営陣からのサポート受けているかであり、デザイナーの数や大きさだけではそのインパクトを測ることはできないと言う結果が出ている。 言い換えると、むやみに多くのデザイナーを採用したとしても、そこにしっかりとしたプロセスとカルチャーがない場合は、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあるのだ。逆にたとえデザイナーの数が少なくても、経営に有効活用することが十分可能と言うことである。 デザイン経営に遅れを取るアジア諸国 企業に対するデザインの浸透度合いを地域ごとに見てみると、大きな違いは見られないが、主に北アメリカとヨーロッパが経営戦略にデザインを活用しているLevel 5の率が他の地域と比べ比較的高い。 その一方で、南米とアジア地域は、中間レベルのLevel 2, 3はそれなりの比率となっているが、Level 5はそれぞれ1%、 3%と低い数字となっている。 それぞれのデザインレベルのメリットと改善点 では、それぞれのデザインレベルごとに、ユーザーや企業にとってどのようなメリットがあるのか、そして、次のレベルに上がるにはどのような点が課題となっているかの詳細を紹介する。また、それぞれのレベルにおける平均デザイナー数の調査結果も掲載してみた。 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% デザインを活用することで、主にUIなどの画面やプロダクトの見た目の改善を行っている。一昔前は、デザインレベルが低い=デザイナーが足りない、といのが一般的な理由であった。 しかし、レベル1に属する組織のデザイナーの数は平均30人。これは最高レベルであるレベル5組織のそれの倍であり、デザイナーの数がデザインレベルに比例するわけではないことがわかる。 Level 1では、デザイナーの影響範囲はかなり狭く、主にスクリーン上などでの”見た目のデザイン”にとどまっているケースが多い。 平均的なデザイナー数: […]

注目のスポーツテック5選。デザイン中心から生まれるイノベーション

2020年東京オリンピックの開催まで1年を切った今、日本では多くの人が来年の夏を今か今かと待ち望んでいる。スポーツ好きにはもちろんのこと、自国でのオリンピック開催によって普段はあまりスポーツに興味のない人からの関心も集まることになるだろう。 前回の1964年東京オリンピックから50年以上経った現在、スポーツ業界で大幅に変わったことの1つとして、テクノロジーの発展・導入があげられるのではないだろうか。実際に、スポーツに特化してイノベーションを狙うスタートアップ、いわゆるスポーツテックも多く誕生してきている。 そこで今回は、 スポーツテックとは スポーツテックの市場規模 注目のスポーツテック5選 を紹介していく。スポーツテックに詳しい方も、まだ知らない人も、この記事でスポーツテック業界のおさらいと最新トレンドを掴んでいただきたい。 今更聞けない、スポーツテックとは スポーツテックとは、スポーツ(Sports)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、AIなどの新しいテクノロジーを用いてスポーツ業界に革新的な変化をもたらすサービス、商品、またスタートアップなどのカテゴリーを指す。文部科学省の外局であるスポーツ庁は、スポーツテックを「支える」「観る」「する」という3つの分類に分けており、それぞれ以下のような特徴があるという。 選手を「支える」ためのスポーツテックは、選手やチームのパフォーマンスの向上、怪我の防止に繋がるアプローチから、製品やサービスを開発している。 スポーツを「観る」ためのスポーツテックは、新たな観戦スタイル、観戦者の満足度の向上に繋がるアプローチから、製品やサービスを開発している。 スポーツを「する」ためのスポーツテックは、一般向けの新たなスポーツの楽しみ方の創造、新たなトレーニング方法などに繋がるアプローチから製品やサービスを開発している。 「する」ためのスポーツテックは、当ブログの『米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」』で既に紹介しているので参考にしていただきたい。今回の記事では、「支える」と「観る」を目的とした商品・サービスを提供している最新のスタートアップに注目する。 約3.5倍の成長が見込まれる世界のスポーツテック市場   Statistaから転載 上のグラフを見て分かる通り、日本国内のスポーツテック市場規模は、2019年から2024年にかけて毎年成長すると予想されている。 実際に、今年3月にはスポーツビジネス界のキーパーソンがスポーツテックを含めたスポーツビジネスについて議論する『SPORTS Tech & Biz Conference』というイベントが東京で行われた。さらに、スポーツ系スタートアップのためプログラム『SPORTS TECH TOKYO』は世界中のスタートアップを巻き込んで、日本の中からスポーツテック業界を盛り上げている。 ReportsnReportsから転載 さらに、世界における市場規模成長予想は、2018年から2024年で約3.5倍と予想されていて、スポーツテックは世界的にも注目を集めている。既に様々なスポーツテックのイベントが各地で行われる中、代表的なものでは『CES (Consumer Electronics Show)』『SPORTTechie』『SportsPro』などが挙げられる。 スポーツテック市場全体への期待と注目が集まる中、その中で、世界的に注目を集めるスポーツテックスタートアップを紹介する。 選手を「支える」ためのスポーツテック 1. FORM Swim Goggles: スマートディスプレイ搭載の水泳ゴーグル カナダ、バンクーバー発のスタートアップであるFORMは、ハイテク水泳ゴーグルを開発・販売している。FORMのゴーグルを使えば、水泳選手がタイムや泳いだ距離など様々な情報を水泳ゴーグルのディスプレイ(レンズ)上でリアルタイムに確認することができるのだ。 FORMの創設者であるDan Eisenhardtはもともと水泳選手だった。泳いでいる最中に自分のタイムを確認できないため、選手自身が正確に自己分析することが難しかったり、選手のタイムや情報の計測のためにコーチが余計な労力を使わなければいけなかったりという、自身の体験に基づく問題からFORMが誕生した。 FORM Swim Gogglesの本体。 Official Websiteから転載 FORMの水泳ゴーグルのディスプレイには距離、インターバルの時間、ストローク回数、消費カロリーなどが表示可能。Bluetoothでスマホとの連携も可能で、ディスプレイの表示をカスタマイズすることもできる。さらに計測された情報は、連携したデバイスに蓄積され、分析されるため、データに基づいた選手のパフォーマンス向上に活用することが可能になるのだ。 技術自体は真新しくなくても、徹底してユーザーのことを考える スマートディスプレイのアイデア自体は新しいわけではないが、あくまで選手やコーチをサポートするのに特化した製品であるという点に注目すべきである。水泳選手は、ゴーグルという普段から使っているツールを通して、より自然な形で自分のパフォーマンスを把握することができるようになる。コーチも計測や分析にかけていた負担を減らすことができる。 そのため、機械やテクノロジーではまだ難しい、長年の経験からのアドバイスやメンタル面のサポートなどの指導に徹することが可能になる。「支える」スポーツのお手本のような製品であると言えるだろう。 関連記事:お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い ゴーグルのディスプレイ上。Official Websiteから転載 2. FieldWiz: GPS搭載のパフォーマンス測定デバイス スイス発のスタートアップAdvanced Sport Instrumentsは、『FieldWiz』という、GPSを用いたスポーツ選手のパフォーマンス測定デバイスを提供している。 FieldWizが利用されるスポーツは主にサッカー、ラグビー、野球などの球技だ。測定できる項目は、選手の走行距離・速度、心拍数、身体の動きなどである。 FieldWizのデバイス本体。Official Websiteから転載 デバイス自体はたったの35グラムという超小型で、背中に装着するようになっている。計測後は専用のドッキングステーションに繋げることで簡単にデータをコンピューターに転送することができる。 GPSによるトラッキングシステムは、従来であればトッププロで莫大な資金がある限られたチームにのみ利用されていたが、テクノロジーの発展によって比較的ローコストでの生産が可能となったことにより、ローカルチームへの導入も現実味を帯びてきた。 データドリブンなコーチングを目指す FORM Swim Goggles同様、FieldWizもまた、コーチの指導を円滑に進めるためのサポート役を担っている。今までは人が長時間かけて行っていたデータ収集を、FieldWizによって行うことで、より正確で莫大な情報を瞬時にして計測、分析することができるようになる。 データをコンピューターに移行後の分析画面。Official Websiteから転載 また、今まではコーチの感覚に頼った指導がメインであったため、コーチの感情論によって必ずしも正しくない指導が行われたり、選手たちが抽象的な指導に腹落ちできなかったりということもあった。FieldWizによる計測データを基にした選手1人1人に対する指導は、コーチにとっても選手にとっても具体的で有益なものなのだ。 スポーツを「観る」ためのスポーツテック 1. IBM Watson: AIによって試合のハイライト自動生成が可能に IBMは言わずと知れた、コンピューター・インターネットテクノロジー関連のサービスを扱うアメリカ大手企業だ。様々な製品やサービスを手掛けるIBMが10年以上開発してきたのが『IBM Watson』である。 Watsonは本来、読み込んだ情報をもとに、人の考えが及ばない範囲の答えまで導き出せるという高性能AIによるシステムだ。IBMはこの技術を応用し、スポーツの試合のハイライト動画を即座に作ることを可能にした。 試合分析のイメージ。IBM Official YouTubeから転載。 例えば、従来、テニスの試合のハイライトは、動画編集者が手作業で1つずつ編集してきた。しかし、手作業の編集では時間も労力もかかるので、1日に何十試合も行われる大きな大会などでは全試合のハイライトを作るのは非常に非効率的であった。 IBM Watsonは、テニスの試合が終了した2分後にはハイライトを完成させることができるという。AIが試合中の観客の歓声、選手の動き、点数などの様々な要因を感知し、ベストなプレイを選出するという仕組みだ。 このシステムはテニス界最高峰のトーナメントであるウィンブルドンや全米オープンなどで既に実用化されている。ウィンブルドンで最大18コート以上同時に試合が行われる時ですら、試合後、すぐに世界中のテニスファンにハイライトを届けられるようになったのである。 AIによって要約された、質の良いコンテンツを即座に配信できるという強み 試合のまとめを見たい人、試合を見逃した人にとってハイライトは重要な情報だ。それが試合後、即時に配信されることには多くの需要があるだろう。 ハイライトのイメージ。IBM Official YouTubeから転載。 また、インターネットやSNSの普及により情報が即座に手に入るようになった。より良い情報を早く配信することが、オーディエンスのニーズを満たし、数あるコンテンツの中から効果を生み出す鍵となる。ゆえにIBM Watsonのようにハイライトを試合後にいち早く投稿することで、より多くのインプレッションやエンゲージメントを獲得することが期待できるのだ。 さらに、集められたデータは選手のパフォーマンス向上や怪我防止策にも活用されている。つまり、このシステムは「観る」スポーツテックであり、選手をサポートする「支える」スポーツテックでもあるということだ。 現在は主にテニスとゴルフの試合に使われているが、この技術は他のスポーツへの応用も可能と考えられるため、今後の広がりに注目だ。 2. Brizi: スポーツスタジアムに設置されているカメラを遠隔操作してグループ写真が撮影できるサービス カナダ、トロント発のスタートアップBriziは、スタジアムでのグループ写真で新たな体験を人々に与えるサービスを提供している。Briziは、スポーツスタジアムに設置されているカメラをモバイルデバイスを通して遠隔操作し、写真や動画を撮影することができるサービスだ。Canonとも提携して、開発に取り組んでいる。 今まではスマホカメラで自撮りをしたり、周りにいる人に頼んでグループ写真を撮ってもらうことが当たり前であったが、グループの人数が多いと自撮りで全員が入りきらなかったり、知らない人に写真を頼むことへの抵抗感あったりと、問題があった。 そんな中、スタジアムにある大きなスクリーンに映るような画角からの写真や動画を、誰でも簡単に撮ってSNSでシェアできるというサービスは画期的だ。 スタジアムに設置されているカメラ。 Brizi Official YouTubeから転載。 このサービスではどんなに大人数のグループであっても、スタジアムでの写真を思い通りに撮影することができる。カメラはスタジアム全てをカバーできる性能性を持ち合わせている上に、ユーザーは自分のスマホから拡大・縮小を調整しながら撮影が可能なのだ。 試合観戦に付随する体験をより豊かにする スポーツ観戦に行く目的は、ただ試合を観るだけには留まらない。試合観戦の写真や動画をSNSにアップすることで、その時の感動や楽しさを共有したり、自分の応援しているチームについて投稿することによって、友達との共通の話題を見つけたりすることにも大きな価値がある。 ユーザーによってシェアされたグループ写真。Official Websiteから転載。 また、試合中以外の時間の楽しみを作るという狙いがある。試合中は観戦に集中しているので退屈することは少ないが、試合の前や待ち時間にすることがなくなったという経験をしたことがある人も少なくないだろう。Briziがあれば、その退屈な時間を友達や家族との楽しい時間に変えることができ、会場でのファンの満足度をさらに向上させることができるのだ。 試合観戦という娯楽行事の中でも、ちょっとした退屈に目をつけることで、ユーザーのUX体験をより良いものに近づけることができる。 […]

15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと

日頃よりbtraxのオウンドメディアであるfreshtraxをご愛読いただき誠にありがとうございます! 我々btraxは2019年8月9日をもって、創立15周年となりました!シリコンバレー・サンフランシスコという、多くのスタートアップやビジネスが苦戦を強いられている環境で、15年という間、ビジネスをやってこれたのはいうまでもなく、日頃よりご支援をいただいているみなさまのおかげでございます。 感謝申し上げると共に、これからも日本とアメリカというグローバルな舞台で、みなさまのイノベーション創出やグローバルへの進出サポートに尽力してまいります! さて、今回はこんな節目の時ですから、「15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと」と題して、btraxのあんなことやこんなことについてご紹介いたします。 1. 創業当時のウェブサイトはこんな見た目 btraxの記念すべき最初のウェブサイトは2004年に公開されました。当時流行りのフルFlashのサイトです。UIはシンプルですが、スムーズなインタラクションを実現するために、その裏には複雑なプログラミングが書かれていました。 ぜひ現在のbtrax会社HPと比較してみてください。 2. btraxでの勤続年数がCEOの次に長い社員は、犬! 実はCEO ブランドンの愛犬、クーパーはbtrax創業時から社員(犬?)として参画しているメンバーです。エイプリルフールの時は、CEOに抜擢されたこともありました。 3. btrax東京オフィスは2013年に開設 btraxはアメリカ、サンフランシスコで創業した会社です。日本法人はそのあと、2013年にスタートしました。現在は青山にオフィスを構えております。 (東京オフィスには素敵なルーフトップも!) 4. btraxという会社名はCEOブランドンの音楽好きから 意外と知られていないbtraxという名前の由来。これは、ブランドンの音楽好きからきています。実際に彼は、デザインを勉強する前に音楽を勉強していたこともあるくらいです。 btraxのtraxは音楽のトラックから。bはレコードの「B面」に由来しています。A面がbtraxのクライアント、B面がそれを引き立てるbtraxを表しており、創立以来ずっとbtraxです!ロゴもレコードっぽくなっているのにお気づきいただけたでしょうか。 5. btrax卒業生の4名がスタートアップを始めている btraxは、決して大きい会社ではありません。なので社員全員が責任感と権限をもち、スタートアップ的スピード感を持ってビジネスを行っています。また、サンフランシスコ・シリコンバレーというお土地柄もあってか、btraxの元社員が、卒業後に起業するパターンも少なくないのです。 起業されたbtrax卒業生の方々には、過去、freshtraxでインタビューさせていただいたこともあります。これまでに少なくとも5名の元スタッフ/インターンが起業しています。今後もこんな”btraxマフィア”がどんどん増えていく予定です。 (右から現IN FOCUS CEO 井口忠正氏、ブランドン、現Goodpatch CEO 土屋尚史氏) 関連記事:デザイナーに必要なのはセンスか努力か – 井口忠正×Brandon 2人のデザイン会社CEOが語るデザイナーに必要な才能 関連記事: レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした 関連記事:2人のインターン生が与えてくれた事 6. 100名以上の海外アントレプレナーたちをサンフランシスコへと誘致 btraxは2010年より、Japan NightやAsian Nightといったスタートアップピッチイベントを企画、開催してきました。その主たる目的は、海外のアントレプレナーたちを、ここサンフランシスコへ誘致し、よりグローバルを意識したスタートアップの成長を支援するためです。 さらに、2016年からは福岡市とパートナーシップを組み、起業家育成プログラムを実施。日本での研修に加え、サンフランシスコでも現地でデザイン思考やピッチなどに関する理解を深めていただき、グローバルアントレプレナーへの道を支援しています。 詳しくは事例紹介もご覧ください。 7. freshtraxは日米通算1,263の記事を公開 2009年から始まったbtraxのオウンドメディアfreshtrax。お陰様で、freshtraxを通してbtraxを知っていただくことも非常に多いです。これからもみなさんに愛読していただけるように、サンフランシスコ・シリコンバレーから新鮮かつユニークな情報を発信し続けます! btraxのTwitterやFacebookアカウントではfreshtraxの最新情報をいち早くお届けしております。 8. btraxがこの1年で使ったポストイットの枚数は約43,720枚 btraxが提供するイノベーション・ブースタープログラム(グローバルイノベーション創出を習得することを目的とした、デザイン思考に基づくワークショップ型プログラム)では、ブレインストーミングやアイディエーションといった、ポストイットを使ってアウトプットをだすシーンが多々あります。 気がつけば約43,720枚のアイデアを出していました! 9. btraxの会議室にはフォントの名前がついている サンフランシスコ本社はサンフランシスコ市内でもスタートアップが軒を連ねるSOMA(ソーマ)と呼ばれるエリアにあります。執務エリアに加えて、6つの会議室があるのですが、その全てにタイポグラフィーの名前がついています。 その理由は「btraxはデザイン会社だから」。タイポグラフィーはデザインにおけるもっとも重要な要素の1つであります。また、btraxは「全ての社員が皆、デザイナーである」というフィロソフィーを持っています。会議室の名前からも、そのことを思い起こさせてくれるのです。 10. btraxのハロウィンは毎年ガチ度が増している btraxには非常にクリエイティブなメンバーがいます。そのスキルは仕事だけでなく、社内イベントでも発揮されており、恒例行事であるハロウィンパーティではコスチューム大会が激戦になっています。 11. 毎週カルチャーリーダーへの表彰がある btraxでは毎週、会社のコア・バリューに貢献した社員を表彰しています。これはCEOや人事が選ぶといったものではなく、社員が社員を選びます。もちろん、社員からCEO、人事が選ばれることもあります。 (btraxのコアバリューである「Empowered by Creativity」「Take Ownership」「Communicate and Collaaborate」「Be Playful」の観点で選ばれ、社員同士、上のカルチャーカードを送り合う。) 12. btraxはビジネスの軸を3度大きく変えてきた btraxはもともと、ウェブデザインの会社として創業しました。そのあと、よりグローバルを意識した、マーケティングやブランディングを行うようになります。そして、現在、デザインはより広義なもの になり、UXデザインを中心としたビジネスへと転換しました。 現在は、シリコンバレーと東京のネットワークを活かし、グローバルを意識したイノベーション創出への貢献を強みとするデザイン会社へと成長してまいりました! 13. 2014年からイノベーション・ブースターサービスを開始 btraxの中核サービスである、イノベーション・ブースターサービスは、3日間から2ヶ月でグローバル・イノベーションの創出プロセスを習得することを目的としたサンフランシスコで行うワークショップ型プログラムです。参加者は累計200名以上。 現在も株式会社野村総合研究所(NRI)様やSOMPOホールディングス株式会社様など、多くの企業様から参加いただいています。 詳しくは過去事例もご覧ください。 14. 2018年からデザインスプリントサービスを開始 Google Venturesが、サービス開発の高速手法として発表したデザインスプリント。btraxでも、デザイン思考をベースとした、デザインスプリントサービスを提供しています。 1〜2週間という短時間でプロダクトアイデアの検証やプロトタイプ作成、リサーチ、課題整理、ソリューション決定、プロトタイプ構築、ユーザーテスト等を実施していきます。 関連記事:【デザインスプリント入門】話題の高速サービス開発法とは 15. そして15周年の年、CEOブランドンの抱負はbtraxのビジョンステートメントを一新 15周年という節目の年に、btraxのビジョンステートメントもアップデートいたします! ビジョン:“Provide inspiring experiences” – ワクワクする体験を提供する ミッション:“Inspire innovation through the power of design” – デザインの力でイノベーション創出に貢献する タグライン: “Design to Inspire” これからもbtraxをどうぞよろしくお願いいたします!! btraxのサービスを詳しく知りたい方、サービスにご興味をお持ちの方、お気軽にこちらまでお問い合わせください。 また、btraxでは現在、一緒にイノベーション創出を担ってくれる仲間も募集しております♪

お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い

デザイン思考のゴールの1つが、顧客の視点に立って物事を考え、そのニーズに即した商品やサービスをデザインすることになる。
しかし、これを聞いた多くの人々が「そんなの以前からやっているよ」と言う。そう、世の中の多くの企業は、すでにお客様からの意見を最優先し、それに即したサービス作りや改善を日々行なっている。
では、なぜ今さらデザイン思考が特筆すべき存在になっているのだろうか?おそらくその理由は、いわゆる ”User Centered Design (ユーザー中心デザイン) ”と呼ばれる概念を通じて、ユー…

シリコンバレーでは教育が始まっている“STEAM人材“とは?

STEM人材という言葉を聞くようになって久しいが、ここ最近、STEAM人材の重要性が高まっていることをご存知だろうか。
STEM人材は、情報社会において必要とされる人材を指す。産業革命等の変革を繰り返してきた世界経済では、テクノロジーの発展がもたらす情報に価値が置かれるようになり、情報を司るスキルが必要だと言われてきた。
関連記事:プログラミングが学べるサンフランシスコのスクール7選
しかし、いざ情報時代が到来すると、次に注目されたのは、人間らしさとテクノロジーの関係性であり、STEAM人材だ。例え…

【図解】バリュープロポジションの定義とキャンバスの使い方を解説!

皆さんが販売・開発されているサービス・商品について、顧客がなぜ、購入するのか、しっかりと答えられますか?その理由について、顧客の視点にたち、深掘りできているでしょうか。
サービス開発をする上で欠かせないのが、あなたの提供する価値、バリュープロポジションです。バリュープロポジションが、顧客の本質的なニーズを捉えていると、彼らに深く刺さるサービスが生まれるということになります。
一方で、バリュープロポジションという言葉を知ったばかり、重要性は認識しているけど、使い方などもう少し理解を深めたいという方も多…

「日本式」ピッチあるある5つ:グローバルに通用するためのコツとは

イノベーションの支援をしているbtraxでは、日本企業のエースまたは起業家たちのスタートアップピッチ(主にスタートアップが投資家に向けて自分たちのビジネスアイデアを発表し、投資にこぎつけるためのプレゼンスタイルの売り込みを指す)を指導することが多々ある。
筆者もその指導者の一人であり、イノベーションブースターと言うプログラムを通じて、日本企業のエースたちにデザイン思考やリーンスタートアップの考え方を叩きこみ、短い時は2週間、長ければ8週間かけてスタートアップ風のビジネスプレゼン、ピッチを作らせ、指導…

ここがちゃうねんデザイン思考。5つの違いを理解してモヤモヤを解決

「デザイン思考」という言葉が一般的になって久しい。あらゆる領域で、もはや基礎教養のような位置付けになっているように感じる。しかしながら、「結局デザイン思考て何なん?」状態の人は多いのではないか?
筆者が初めてデザイン思考という言葉を聞いた時は、「なんだか、つかみどころがない…」という感想だった。その感想は本や記事を2、3冊、読んでも正直変わらなかった。
1番の理由は、今まであらゆる業界がやってきたこと、いや、何なら自分が普段心がけていることと何ら変わりがないように思えたからだ。「ユーザー中心」、「素…

デザイン思考によるSAPの企業変革の道程

2019年3月12日に開催されたセミナー「SAP Finance Day 2019 次世代CFO組織の役割の変化とそれを支える仕組み」のオープニングセッションでは、SAPがどのように「デザイン思考」を活用して企業変革を推進したかについて、具体的な例を挙げながら説明しました。…

AI x 保険でユーザー体験を変えるフィンテックスタートアップ4選

AI(人工知能)の実用化が様々な分野で進められています。その中でも保険業界は特にAIとの相性が良く、AI導入に対する期待が大きくなっています。その理由の1つに、保険会社が抱える個人の体調情報や医事統計のデータをはじめとした、契約リスクを判断するための膨大な顧客情報データが関係しています。
AIは大量のデータを分析し、そこからデータに共通するパターンや傾向を導き出すことを得意としています。これにより、保険業界で扱われる大量のデータを人が管理して人が判断するという業務そのものが自動化されていくと考えられ…

デザイン思考の力を公共サービスへ!日本と世界の活用事例3選

2018年8月9日、特許庁は庁内にCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として統括責任者を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げることを発表した。これは、中央省庁が行政サービス向上のためにデザイン思考を本格的に取り入れた初の例である。
米国を起点として提唱されてきたデザイン思考は、日本においてもここ数年間でその認知度を高めてきたが、これまでその活用を積極的に行ってきたのは民間企業であったように感じられる。
2010年頃から日本においてもデザインコンサルティングファームの参入、も…