ワークショップ

LEGOを倒産の危機から救った「ボロボロのスニーカー」~ データ偏重を乗り越えた挑戦と逆転劇 ~

商品開発やマーケティングにおいて、データや数字の重要さは誰もが認めるところだろう。ビジネス戦略についてもそうだ。 しかしながら、我々がこれまで数多くのプロジェクトを通じて得た経験からいうと、数字ほど当てにならないものはない。デザイン思考のワークショップでは、クライアントさんと共に、顧客の「生の声」を聞きに行くたびにそう痛感させられる。 今回は、レゴブロックが会社の倒産の危機に陥っていた時期に、データではなく顧客の声を重視したことで、倒産の危機を逃れたストーリーを通じて、その本質を掘り下げたいと思う。 2003年、LEGOは崖っぷちに立っていた 今の姿からは想像もできないかもしれないが、ブロック玩具の代名詞とも言われるLEGO (レゴ) は、2003年ごろ、倒産寸前まで追いやられていた。 その当時のLEGOは、売上30%減、1日あたり100万ドルの損失という未曾有の危機を迎え、瀕死の状態だった。その理由は「データを重要視しすぎた」こと。 具体的には、「子どもは集中力が続かない」「シンプルを好む」という市場データを盲信し、簡単で短時間で組めるセットへ舵を切ったことだった。 結果、販売は低迷。LEGO本来の魅力である、“作り上げる達成感” が失われたからだ。 11歳のスケーター少年が示した真実 窮地のLEGOが行ったのは、久々の “顧客との対話” だった。11歳の少年に「一番大切なモノは?」と尋ねると、彼はボロボロのシューズを差し出した。理由は「難しい技を習得した証だから」と。 この瞬間、LEGOは気づいたのだ 子どもは挑戦を求めている 難関を突破した“証”を誇りたい 「成長の勲章」こそ価値 ということに。これは数字やデータからだけでは決して得ることのできないインサイトだった。 そして、戦略を180度転換した その少年から得られたインサイトを元に、LEGOは大幅に製品の方向展開を行った。彼らが具体的に行ったのは パーツ数を増やし、構造も複雑化 完成まで時間を要する “やりごたえ” を演出 完成品が「自慢できる勲章」になる設計へ ⠀結果、売上は急回復し、今日の世界No.1トイブランドへと上り詰めた。 データとインサイトのバランスを取る 市場データは「潮流」を示すが、人間の動機や感情までは写し取れない。LEGOの失敗はデータを絶対視し、顧客の声を置き去りにしたこと。逆に、成功は顧客の深層心理を拾い上げ、プロダクトへ反映したことだ。 僕らが学ぶべき3つのポイント このLEGOのストーリーから得られることは3つあり、我々が提供しているデザイン思考ワークショップを通じた新規事業創造プログラムでも、大切にしているポイントでもある。 仮説より先にヒアリング: データ分析前に顧客へ直接あたり、生の課題を抽出する “証拠”をデザインする: 顧客が努力や情熱を誇示できる要素を組み込む KPIに“感情指標”を入れる: 完成度やNPSだけでなく、達成感・熱中度を測定する この教訓をbtraxのデザイン現場でどう活かしているのか? 僕ら btrax がプロジェクト毎に行っているのは、「数字 → 仮説」ではなく「声 → 洞察 → 数字」という逆転プロセスだ。具体的には次のようなサイクルを徹底している。 1. フィールドインタビューを最初に組み込む 事前にデスクリサーチで得た数字はあくまで “問いを立てるための材料”。初日の午前中にクライアントと一緒にユーザー宅や店舗に出向き、最低5件のインタビューを実施する。これで “肌感覚” を全員にインストールする。 2. […]

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デザイン思考のリスキリングのためにファシリテーターが意識している3つのポイント

2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされたリスキリング(Reskilling)というワード、まだあまり馴染みのない方もいるのではないだろうか? リスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」を指す。日本国内でも、企業が従業員に対して職業能力の再開発を行うため、導入を開始または検討し始めている。 btraxでは、「リスキリング」という言葉が流行する以前から、企業向けに技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために効果的なデザイン思考のワークショップを提供してきた。 今回はその一例として、今年1月からサンフランシスコにて実施した滞在型の研修プログラムを題材に、ワークショップ運営側のファシリテーターが意識していることを紹介したい。 デザイン思考とスタートアップカルチャーにどっぷり浸かる10週間 今回行われた研修は、大手日本企業にて入社から数年経った30代前後の中堅社員の方を対象として、「スタートアップの聖地」とも呼ばれるサンフランシスコで、「デザイン思考」やスタートアップカルチャー、UXデザインの特徴を、講義と実践を通じて学ぶ約10週間のワークショップだ。 プログラムの主たる目的は、この研修を通して「参加者一人一人が新しいマインドセットを自分のものにすること」。 そのために、レクチャーを通して考え方を理解していただくだけではなく、実際に手を動かして学んだ考え方を実践し、振り返りを言語化・可視化することで学びを深めるというサイクルを繰り返す。 本研修は、参加者全員にサンフランシスコでスタートアップを起業するつもりで、それぞれの関心をベースに少人数でチームを組んでもらい、それぞれ社名を決めるところからスタート。 現地に住む人々が抱えている問題や隠れたニーズをリサーチし、サービス・プロダクトのコンセプトを練り、実際に住民の方々へインタビューなどをしながら仮説を検証。プロトタイプの作成からサービスアイディアのピッチまでを実践していただく。 デザイン思考のリスキリングのために、ファシリテーターが意識している3つのこと 上記の研修内容を踏まえ、前述のゴール達成のために、今回の研修全体を通してファシリテーターが意識していたことの中から主要な3つのポイントをご紹介したい。 1. 「失敗しても大丈夫!」思い切って挑戦し、トライアンドエラーを繰り返すことを奨励する 日本では文化的に「失敗はしない方がベター」という考え方が根強いため、突飛なアイディアを口にしたり、成功するかもわからないプランを共有することに最初は抵抗がある参加者も多い。 真摯な方ほどこのような傾向が強いのだが、デザイン思考ではトライアンドエラーを繰り返しながらコンセプトを練り上げていくため、最初から正解に一発で辿り着くということはほぼない。 むしろトライした数だけ失敗も増え、そこから学びやデータが得られるため、特にアメリカのスタートアップ業界では「失敗しても、成功するまで止めなければそれは失敗とは呼ばない」という考え方が主流である。今回のような研修において、ベースとなるこのマインドセットへのシフトが最初の超えなければならないハードルとなる。 これは英語での会話についても言えることだ。今回の研修では、リサーチの段階で現地のアメリカ在住の人々へインタビューを実施するフェーズがあり、参加者は英語で全てのコミュニケーションを行う必要がある。 参加者のほとんどは英語圏の国に住んだ経験がないため、「うまく話せないかもしれない」という不安から、最初は英語で話すことに抵抗を感じている人も多かった。 これに対してファシリテーター側からは、「失敗をしても大丈夫」「間違うことや想定通りに進まないことは避けられないものである」ことを定期的にリマインドし、その過程を楽しんでほしい旨を積極的にお伝えするようにしている。 失敗に対する恐怖心を取り除くことで、限られた時間内で試行錯誤を繰り返し、最初に出たアイディアやプロトタイプを踏み台にしながら、さらに良いものを生み出すというサイクルへ進んでいけるようになるためだ。 また小さな成功を喜ぶことや、異なる意見・視点を持っていることを肯定し合う時間を持つことも重要である。そのため研修中は、毎日1日のはじめと終わりにチェックインの時間を設け、参加者一人一人の感じていることや気づきなどを共有する時間を取るようにしている。 感じたことや学びに正解や不正解はないという前提を確認し合い、それぞれの発見をチームで共有し認め合う時間を毎日意識的に取ることで、それぞれが自分の考えを素直に発信できるような雰囲気作りを心がけている。 最初は、なかなか終わりの見えない議論や英語でのコミュニケーションに戸惑う場面もあった。しかし、場数を踏んでいくうちに、それぞれの参加者の顔に自信が浮かび、活発な議論や英語の会話が広がっていったところが印象深かった。 自転車の乗り方を覚えるように、最初は転んだり、恥ずかしい思いをしたりするため、社会人になって数年経ったタイミングで新しいマインドセットやメソッドを実践するには勇気がいる。しかし、思い切って新たな環境へ飛び込み、短期間でみるみる変化していく参加者の姿には運営側である私たちがハッとさせられる場面、学びをいただく機会も多い。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ 2. 「正解は一つではない!」答えを与える代わりに問いを投げかける   今回のようなワークショップで運営側として非常に難しい、しかし重要だと思っていることが「正解をこちらから投げかけない」ことだ。 デザイン思考のプロセスにおいては、問題設定の段階から自由度が高く、実際に先へ進んでみるまで何が正解なのか誰にもわからない類の問いに立ち向かっていくことになる。 正解は1つではないし、ファシリテーターがすでに正解を知っているわけでもない。文字通りファシリテーターと参加者の二人三脚で一緒に進んでいくのだ。 しかし、研修をリードさせていただく立場である以上、チームが迷子状態に陥ってしまった時にはサポートをする必要があるし、「こういうときはどうしたらいいんですか?」という質問も頻繁にいただく。 私たちとしては、ファシリテーターの発言が彼らにとっての正解となってしまったり、それに引っ張られてしまうことは避けたい。 そのため、こちらから声をかけたり質問へ応答する際には、具体的な答えや解決法を示す代わりに、「この時ユーザーはどんなことを感じていたと思いますか?」「一度、現在出てきたアイディアをホワイトボードに書き出してみるのはどうですか?」など、問いやアウトプットの機会を提起するようにしている。 これと並行して意識していることが、できる限り参加者のアイディアや意思を尊重し、自分たちのサービスやプロダクトを自分事として責任感を持ってもらえるようにサポートすることだ。 極端な例を出すと、今回の研修では参加者が合計8名だったのだが、チーム決めの段階で関心ごとに分かれてみたところ人数比が3人と5人になった。全体での議論の結果、無理に半々に分けるよりも、それぞれの関心を優先し、そのままの組み分けで進もうという結論に至った。 参加者からは「数合わせのために誰かが移動になるのではないかと思っていた」との声もあったが、運営側としては10週間かけて取り組むコンセプトに納得感と責任感を思って取組んでほしいという思いから少しイレギュラーなチーム編成を採用した。 その結果、それぞれのチームの個性が際立ち、小さいチームだからこそ意思決定が速かったり、大きいチームだからこそ助け合える幅が広かったりと、「彼らなりのチームのあり方の正解」を模索してもらえたように思う。 さまざまな正解の形があると認めることは、何通りもある正解の中から自分たちなりの正解を見つける決心をすることであり、自由と責任が伴う。それだけ多くの議論や、考えを裏付けるためのリサーチ、検証が必要となり、手間や思考の負荷は増えるものだ。 しかし、このようなプロセスを通して、既存の考え方や慣習にとらわれない、ユーザーに寄り添ったオリジナリティのあるサービス・プロダクトの設計に繋がると私たちは考えている。 3. 「クリエイティブは一夜にしてならず」適度な気分転換・視点の切り替えをおすすめする 前述の通り、正解が決まっていないデザイン思考のプロセスにおいては、チーム内でのディスカッションに非常に多くの時間を費やすことになる。 アイディア出しから、意見のすり合わせ、フィードバックの交換など、お互いの意見を尊重し合いながらもアイディアをブラッシュアップしていく過程は、インタラクティブで楽しそうに聞こえるかもしれない。 しかし、実際にやってみるとかなりの思考力と忍耐を使う。長時間議論が続くと、チーム全員が頭を抱えて悶々としてしまうような場面もしばしば。 課題の締め切り時間や、1日の終わりが近づくにつれて、どんどん空気が重くなり、一生懸命取り組んでいるからこそ、焦りや苛立ちの表情が見えてくるメンバーが現れる。 そんなタイミングに運営側から積極的に働きかけることは、「無理に進めようとしない」ことである。 クリエイティブな発想やひらめきは、ぐるぐるとひたすら考え続ければ降りてくるものではない。むしろ議論が煮詰まって、脳が疲れてくると、私たちは短絡的で安易な解決策に走りがちになってしまう。 それではこれまでの議論や努力が無駄になってしまうため、メンバーの顔が曇ってきたり、議論が行き止まった際には、ファシリテーターが介入し、場所を変えてみたり、休憩を入れてコーヒーを飲んだり、思い切って散歩に出てみたりすることをおすすめする。 創造的なアイディアを生み出すために「余白」が必要な3つの理由 研修が進むにつれて、参加者の間でも気分転換の取り入れ方が自然と身についていき、「議論が煮詰まったタイミングで、オフィスの外の公園に場を移して話をしてみたら、これまで考えつかなかった良いアイディアが出てきました!」といった声も聞こえるようになった。 遠回りに感じられるかもしれないが、焦りが出てきた時こそリラックスして、自分たちなりの解を見つけるまでのプロセスを楽しむことで、新たな視点で問題を捉え直せたり、よりよいアイディアが閃いたりするので、「休憩」の効果を侮ってはいけない。 まとめ 今回のワークショップは、日頃大企業で活躍されている参加者の方々に、実践を通してデザイン思考の考え方を体感していただき、それを言語化できるところまで腹落ちさせ、次のアクションへ繋げていただくことを主眼においている。 これまでの会社での定石からかけ離れたやり方で課題に取り組んでいただくため、特に最初の方は新しい考え方や方法に戸惑う様子の参加者も少なくない。 研修の振り返りのタイミングでは、参加者に下記のような感情曲線を描いてもらい、実践のプロセスで感じたことや学んだことをリフレクションしていただくのだが、参加者の誰もがどこかしらで小さな挫折や戸惑いを経験する。 しかし全てをやり切った時、達成感と共にデザイン思考への理解も深まり、グラフが上向くケースがほとんどだ。 ちなみにこの感情曲線は、感情の上がり下がりを可視化することで、自分の性質や癖、得意・不得意などの理解を深め、次に曲線が下がるような状況になった場合の打開策や対応策を練っていただく機会として実施している。 運営側としても、決まった正解がない中で、アイディアの芽を潰さずに方向性を示していく難しさを感じることも多い。 しかし、参加者の皆さんの中でブレイクスルーがあったり、自分たちなりのアイディアが固まった時の自信に満ちた表情が垣間見える時が、とても喜ばしい瞬間である。 今回は、そんな研修の運営においてファシリテーターが意識している3つのポイントについてご紹介した。btraxでは今回の研修のように、デザイン思考のマインドセットやメソッドをワークショップを通して学べる機会をご提供している。 ご興味のある方は、ぜひ弊社コーポレートサイトよりお問い合わせください。

日本財団がウクライナ避難民を支援するためのプラットフォームを構築

日本財団では日本に避難してきたウクライナ国民に対する支援活動を行うと共に、SAPジャパンと連携して、日本での避難民の状況や支援ニーズを把握し、適切な支援策を講じるための「ウクライナ避難民支援プラットフォーム」を構築しました。SAP Japan Customer Award 2022で「Japan Society部門」を受賞した日本財団が、プラットフォームの活用を通じ、NPO法人や地方自治体等も巻き込みながら今後どんな支援活動を展開していきたいと考えているのか、お話を伺いました。
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グローバル起業家輩出の登竜門 Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKAに参加すべき3つの理由

福岡市は、2016年からグローバルスタートアップ育成事業『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』を実施している。 これは、日本におけるスタートアップシーンを牽引する福岡市から、世界に通用するスタートアップやそのマインドを持った人材を輩出することを目的としている研修プログラムだ。 われわれbtraxは、2016年の開始からこれまで毎年、その運営を支援してきた経緯がある。7年目となる今年も運営を行っており、今はまさに参加者を募る最終段階にある。 この記事では、改めて『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』のポイントや実績、そして今年度参加のメリットをまとめていく。これを読むみなさまにプログラムの魅力が伝わり、そして応募を検討いただけたら幸いだ。 『Global Challenge! STARTUP TEAM FUKUOKA』のポイント 1. のべ1,000人以上を輩出 確かな実績のあるプログラム 本プログラムは過去6年の開催で、1,000名以上の卒業生を輩出してきた。毎年の参加者には、年齢も性別も問わず、本当にさまざまな方にご参加いただいてきた。 その中からは本プログラムをきっかけに起業に至り、ビジネスを大きく成長させているスタートアップも続々と生まれてきている。 一方で、ここで一つ覚えておいていただきたいのが、今すぐに起業をしたい人だけのためのプログラムではないということだ。 つまり、「今は特にビジネスアイディアがない」「起業できたらいいなとは思っているがまだ曖昧だ」といった方にこそ受講をおすすめしたい。 というのも、研修は「起業家候補者」向け対しても、広くさまざまな知識やスキルが網羅できるように設計されているからだ。詳しくは次章にて。 2. ビジネスを広く網羅する国内研修 少数精鋭で「本場」に挑む海外研修 では早速、みなさんが最も気になるであろう研修に関してご紹介する。 今年度は、「国内研修」と「海外研修」の2部構成で実施予定だ。コロナ禍の状況も少しずつ落ち着きを見せてきたこともあり、3年ぶりに海外研修が組み込まれている。 国内研修は全5回で構成されている。各回のテーマは下記だ。 コロナ禍が変えたスタートアップの潮流 ~メタバース, Web3.0, NFT, DAO いま何を理解しておけば乗り遅れない!? ますます重要になった生活者視点からのビジネスアイディア発想 ~ユーザー視点でビジネスを考え、人にうまく伝える方法 グローバル・コミュニケーションへの心構えの習得 資金がないとビジネスは始まらない 投資家を唸らせるビジネスプレゼンとは! ピッチバトル 〜世界の扉を開け! スタートアップの基本知識に始まり、デザイン思考、グローバルコミュニケーション、投資関連、そしてピッチまで、スタートアップに関する「必須科目」を各回で網羅していく予定だ。スタートアップについて学ぶ最初のステップとして、十分に活用いただける内容だと思う。 研修のイメージとして、コロナ禍以前最後のオフライン開催となった2019年度の研修の様子をご紹介する。 第1回国内研修にて、スタートアップ起業家同士の対談の様子 第2回国内研修 デザイン思考に基づくアイディア発想ワークショップの様子 第5回 海外研修でのイベント登壇をかけた英語でのピッチバトル また、今年度も、毎回の研修には各分野で第一線でご活躍されている講師の皆さんにご登壇いただく。 現役のスタートアップ起業家や、デザインリサーチャー、さらに英語を用いたグローバルコミュニケーションのプロや、投資家、弁護士まで。普段はなかなか話を聞くことのできないことも含めて直々にレクチャーいただける時間になる。 一方海外研修は、主に国内研修内のピッチバトルにて選考を勝ち抜いた少数精鋭のメンバーに対して研修を実施する。 場所は、われわれbtraxが本社を構えるスタートアップの本場、サンフランシスコ・シリコンバレーエリアだ。 ここでの大きな目的は、この研修期間内に実施されるピッチイベント『SF Pitch Night』に参加をすることだ。現地のスタートアップと凌ぎを削り、現地の投資家向けに英語でピッチをする、という経験ができる。 日本でもピッチイベントは多く開催されているが、海外のピッチイベントに登壇するというある意味「度胸試し」のような体験ができる機会はそう多くないのではないだろうか。ぜひ挑戦していただきたい。 ピッチイベントの前後では、btraxオフィスにて、メンバーがメンターとなる形でアイディアのブラッシュアップを行う。それも、ほとんどマンツーマンに近い形で徹底的に。 デザインスプリントやイマージョンキャンプのように、短期間で一気にアイディアを磨くことで、飛躍的な改善やブレイクスルーを目指す。 また、ピッチ特有の構成や英語での言葉選びなど、ピッチに最適化したアイディアの見せ方まで一緒に考え、磨き上げていくサポートも行う。 研修詳細はこちら: https://www.fukuokastartup.com/program 3. 単年度で終わらない 強力な運営のサポートとアルムナイグループの存在 また、研修そのものからは少し離れるが、過去6年の蓄積があるということは、それだけ多くの卒業生とのつながりがあることを意味する。 本プログラムでは、Facebookでの公式グループを始め、過去の卒業生とのコミュニティを展開しているため、その期のプログラムが終了しても、研修生間の関係性が長く続いている。 実際、期を跨いで交流のある方や、同期で協力してアイディアの検証やテストを行っているケースもよく耳にする。 また、われわれ運営事務局についても、プログラム期間のみならず、終了後も、あるいは年度をまたいででも、研修生のみなさまのサポートをさせていただいている。ある相談ごとに関して適任者を紹介するなど、相談役として気軽に相談いただける関係性を心がけている。 起業をはじめとして、何か新たなことを始める上で、ネットワークは不可欠。従来のネットワーク外に飛び出し、新たな出会いを得るチャンスとしても、このプログラムへの参加は絶好の機会と言えると思う。 終わりに 本プログラムは、福岡市にゆかりのある方であればどなたでも無料で受講いただける。 国内研修から海外研修まで全回の研修を通じて、グローバルな視野やマインドを持った起業家および起業家候補生を輩出できるよう運営としても最大限サポートをさせていただく次第だ。 この研修をきっかけに新たな一歩を踏み出すきっかけになった方を過去何名も目の当たりにしている。 少しでもご興味をお持ちの方はチャレンジしてみることをおすすめする。詳細や応募は、公式Webページをご覧ください。研修にてお会いできることを楽しみにしています!

イケア/渋谷店で学生が考える店舗集客アイデアの発表会を実施

イケア・ジャパンは8月25日、東京都渋谷区の「IKEA渋谷」で学生が考える店舗集客アイデアの発表会を実施したと発表した。発表会は6月16日に開催しており、提案された集客アイデアの一部は、8月26日から9月10日まで開催されるIKEA Festivalの店舗アクティビティで導入する。 <アイデア発表会の様子> イケアは、ビジョンである「より快適な毎日を、より多くの方々に」提供するために、あらゆる人々のアイデアやニーズに常に耳を傾けている。今回、IKEA渋谷と同じ渋谷区に所在する桑沢デザイン研究所内ゼミ…

【ファシリテーションの裏側】円滑なワークショップ運営のためのツールと活用事例

btraxのサンフランシスコオフィスでは、10週間のデザイン思考ワークショップを提供している。 このワークショップの参加者は、サンフランシスコに滞在する間、スタートアップになりきってサービス開発を行う。 筆者は現在、ファシリテーションアシスタントとしてワークショップに携わっており、ワークショップ運営の実態を目にする機会があった。 そこで本記事では、ワークショップを円滑に進めるためのツールと活用方法について、実際の事例とともにまとめていく。 ちなみに今回のワークショップは、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開講されている。 そのため本記事では、オンラインのみで開催するワークショップでも利用可能なツールをご紹介する。 Slack 最初にご紹介するのは、皆さんご存じのコミュニケーションツールSlackである。 Slackは、ワークショップ中のレクチャー資料共有、チーム内のコミュニケーション、健康管理などの用途で使用されている。 ここでは、4つのチャンネルとその活用方法をご紹介する。 ➀#interview まず最初にご紹介するのはインタビュー専用のチャンネルである。 本ワークショップでは、1対1のオンラインインタビューを通して、実際の生活者の声を聞く機会を設けている。 その際、インタビュー中にのみ活用されるチャンネルを用意している。このチャンネルには、主に2つの活用方法がある。 1つ目は追加質問を共有する場としての役割だ。 チームのメンバーやファシリテーターが、さらに深掘りしたい質問をSlackに投稿する。インタビュアーやアシスタントはそれを見て、臨機応変に追加質問を尋ねていく。 2つ目に英語力のサポートのための活用方法がある。 参加者の中には、海外在住や留学経験がある方から、全く英語に自信のない方まで、様々な方がいらっしゃる。 そこでスタッフは、英語力に不安のあるチームのために、英語表現の修正やインタビューのサポートを行う。 英語表現の面では、インタビュースクリプトやピッチ資料などの翻訳作業を行ったり、より伝わりやすい言葉選びを提案したり、といったサポートをしている。 またインタビューの際には、スタッフはインタビューの様子を見ながらユーザーの発言を同時通訳してSlackに打ち込む。 参加者はその訳を見て、相槌を打ったり、次の質問を考えることができる。 事前にチームとファシリテーターで相談し、インタビュー時に使用するチャンネルとその用途を共通認識として決めておくのだ。 それにより複数のチャンネルを行き来する必要がなくなり、インタビューに集中しやすい環境をつくっている。 ➁#health-check 次にご紹介するのは、「health-check」チャンネルである。 コロナ禍でも安全にワークショップを行うためには、事前のルール作り、そして関係者間での綿密なコミュニケーションが欠かせない。 私たちは、ワークショップの事前準備として、San Francisco Department of HealthやCDCを参考にoffice use protocol(オフィスの使用規則のようなもの)を作成している。 政府機関の規則には変更が多いため、毎回のワークショップで一から内容を見直す必要があるのだ。 オフィスの入口には、アルコールジェルと体温計を用意している。 ワークショップの期間、参加者は体温計で体温を測定し、毎朝Slackに報告する仕組みがある。 ➂#things_you_learned 3つめは、一日の学びや疑問を共有するチャンネル「things_you_learned」だ。 参加者は、一日のワークの終わりに[Fact] [Thought] [Question]の3項目を投稿する。 それを翌朝のチェックインで発表してもらい、各々の悩みや質問を全体で考える機会をつくっている。 これには参加者一人ひとりが一日の学びを振り返るだけでなく、互いの学びや感想を見ることで相互作用を生む狙いもある。 ④btrax_internal 次にご紹介するのは、スタッフ用の「btrax_internal」チャンネル。 ファシリテーションとは、やるべきことや手順が教科書のようにはっきりと決まっているものではない。 参加者一人一人の様子や、チームの雰囲気、議論の流れを見て、その場の状況に合わせた対応が必要となる。 そのため、ファシリテーターは、臨機応変な対応ができるよう、常に意識している。 柔軟な対応を可能にするには、ファシリテーター同士の綿密なコミュニケーションが不可欠だ。 このチャンネルはそのようなコミュニケーションの場として活用されている。 これらは、より実りあるワークショップを参加者に提供するべく行われている工夫なのだ。 FigJam 次にご紹介するのはFigJamだ。こちらもデザイン業界では良く知られている、コラボレーション型デザインツールである。 ワークショップ初日には「How to use FigJam」という時間が設けられている。 この時間では、参加者に自己紹介シートを作成するという課題を与え、実際に手を動かしながら使い方を覚えてもらう。 FigJamは、毎日のチェックイン・チェックアウトの他、宿題の提出やチームごとのオンラインホワイトボードとしての役割を担っている。それぞれ詳細に見ていこう。 ➀チェックイン・チェックアウト btraxでは、チェックイン、チェックアウトという時間を設けている。 これは、参加者が1日の始まりと終わりに集まり、自身の気分を共有する場だ。 この時間を取ることによって、参加者は「参加者としての気持ちの準備」をしたり、1日を振り返ったりする機会を得られるのだ。 対面のワークショップでは、気持ちの書かれた画用紙に人形やシールを置き、メンバーに共有する。 一方、オンラインでチェックインを行う際には、対面で行う際と変わらない環境を提供するため、シートをFigJam上に用意する。 「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ ➁宿題の提出・共有 続いての活用方法は、宿題の提出と共有である。 ワークショップを通しての目標や、フィールドワークでの発見など、参加者に宿題を出すことがしばしばある。 宿題には、シートや文章を穴埋めするスタイルのものが多い。 参加者はFigJam上のシートに自らの答えを書き込み、全体で発表する。 またこれらに加え、ワークショップ運営に欠かせない機能が2つある。 まずはFigJamのboardの右上から設定できる、タイマー機能である。 このタイマー機能によって、発言の持ち時間を管理したり、ブレインストーミングの時間を決めたりすることができる。 ワークショップにおいては、敢えて時間を決めて議論を前に進めてみることがある。この機能は、そういった時にも非常に役立つのである。 さらにFigJamには、チームのコミュニケーションを促す機能が多く含まれている。 そのなかでも今回はコメント機能とGoodスタンプの活用方法についてご説明する。 Goodスタンプは、チーム内での投票や、互いのアイディアに軽いリアクションをするときに非常に便利な機能である。 またファシリテーターが、議論の流れを止めずに助言をしたいときには、しばしばコメント機能が使われている。 この機能によって、会話を途切れさせることなく、それでいてメンバーの目に自然に入る場所に、文字を残しておくことができるのだ。 口頭の発言だと、直接細かなニュアンスが伝えられる代わりに、どうしても話の流れを止めてしまうことがある。 コメント機能は、それを補う形で活用できるアイテムでもあるのだ。 こういった活用方法によってbtraxでは、ワークショップの開催形態に囚われず、クオリティを維持することができている。 デザイナーがファシリテーションをしてみた btraxオフィス 最後にご紹介するのはズバリ、btraxのサンフランシスコオフィスである。 オフィスに常備されている備品はザっと以下のようなものだ。 消毒ジェル、スプレー、スナック、コーヒー、クッション、付箋、ペン、イーゼルパッド、ホワイトボード、アイディアペイント、マーカー デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム これらは、オフィスの利用者たちにクリエイティブな思考を促すアイテムたちである。 ワークショップの参加者はこういったアイテムを自由に使って議論を進めることができる。 これらの備品や食べ物の補充も、ファシリテーターの重要な仕事の1つだ。 またオフィスにはいくつかの部屋があるが、それぞれの部屋が個性を持っていて、雰囲気も異なる。 そのため議論に詰まった際には、気分転換のための部屋移動をファシリテーターから提案することもある。 15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと さらにワークショップの期間には、オフィスで毎朝30分のヨガ教室が開講される。 一日の始まりに心と身体を整え、気持ちよくワークに入ることができる。 このようにbtraxでは、オフィスそのものの環境づくりにもこだわっている。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか おわりに ここまで、ワークショップで使用されているツールとその活用事例をご紹介したが、いかがだっただろうか。 「デザイン思考」や「ワークショップ」と聞くと、捉えどころがなく抽象的な印象を受ける方は少なくないだろう。 本記事では、そんな実態の見えにくいワークショップの「知られざる一面」をお見せした。 btraxは、10週間のプログラムのみならず、新サービスの開発や、デザイン思考研修にてワークショッププログラムを設計し、提供している。 サービスにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ワークショップの目的・心得やファシリテーションのコツについては、以下の記事も併せてご覧いただくと、より理解が深まるだろう。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド Ideas […]

「チェックイン」とは ワークショップで実践する際の狙いとコツ

「1日のワークが始まる前にやるチェックイン、良いですね!」 「今後自分がワークショップを企画するときは、チェックインをプログラムに取り入れてみたいです!」 ビートラックスで提供しているワークショップの参加者から、何度かこのような声をいただいたことがある。 私たちが設計するワークショップには、数週間のあいだ毎日、朝から夕方まで専念して取り組んでもらうものから、週に一度のペースで2〜3時間のワークを繰り返すものまで様々なものがあるが、1日のワークのはじめには「チェックイン」の時間をとることが多い。 しかし、ただ時間を組み込めばいいものでもなく、また、いつも同じ内容、同じペースでやればいいものでもない。 実践する上で意識すべきことや、ファシリテーターとして状況に応じた工夫が必要になる。 今回は、ワークショップで行うチェックインについて、なぜやるのか、実践する際にはどのようなことを意識したら良いのかを、ワークショップを設計する側の目線から紹介してみたい。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ チェックインとは ワークショップで行うチェックインとは、メインのワークが始まる前に、参加者が互いの状況を把握しあったり、ワークに臨むための気持ちを整えたりする時間だ。 日常生活では、ホテルでの宿泊手続きや、空港での搭乗手続きの際に馴染みのある言葉だろう。 カウンターでチケット等を見せながら、スタッフの方へ「チェックインします」と伝える。 「今からこの場に入ります」あるいは「今から私はこの空間ですごすメンバーです」ということを、互いに認識するためのやりとりだ。 ワークショップでのチェックインも同様、メインのワークに入る前に、ファシリテーターから参加者全員へ「これから今日のワークが始まります」と言う合図を送るために行われることが一般的である。 チェックインでは何をするのか チェックインで行う内容は、とても単純だ。 「今の気持ちは?」あるいは「今日のワークに期待してることは?」などのお題を提示し、1人ずつ1分程度で紹介してもらう。 時間は10-15分程度のことが多いが、参加者にはこの時間を通じて「参加者としての気持ちの準備をして欲しい」と考えている。 これらのお題の他、市民参加のワークショップなど多様な方々が参加する場では「参加のきっかけ」や「最も関心のあること」を交えて紹介してもらうこともある。 チェックアウトも忘れずに また、ワークショップの終了時には「チェックアウト」も可能な限り組み込むようにしている。 1日のワークの内容・成果を振り返り、得られた学びを1人1つずつ言葉にしたり、その時点で感じている気持ち、ワークではうまく言えなかった発言を受け入れる時間だ。 盛り上がったワークを“やったまま”にせず、数分でも振り返りの時間を持つことで、次回以降につながる学びが得られる。 では、ファシリテーターは、チェックインではどんなことを心掛けて、どのようなことを達成できるように行うべきなのか。 なぜやるのか、チェックインの狙い 大きな狙いは「その日のワークや議論に適した『場』を準備するため」だ。 様々な人がある場所に集まっただけでは、ワークショップやプロジェクトの最終的なゴールである良いアウトプットにはなかなか辿り着けない。 人々が集う場を、より良い気づきやアイデアが生まれる場所、そう感じられるような場所に整えていくための心がけや工夫が、チェックインの設計・実践には必要である。 そうした場を準備するために、私たちが設計するチェックインでは次の3つのことを意識している。 ①1人ひとりの気持ちを「参加者モード」に切り替える 初対面の人が多い中では、自分の意見を切り出すのに難しさを感じる人もいる。 特に、オンラインのワークショップでは、つい数分前まで別のオンライン会議に参加しており、今から始まるワークに取り組む姿勢に頭と体をうまく切り替えられていない人もいる。 そんな時、チェックインの時間を使って自分のその時の思いを声に出してみたり、他の参加者の考えに耳を傾けられる時間をとることで、自らを「参加者としてのモード」へと切り替えていくことができる。 その場に参加している他の人のことを知らないまま、第一声で重大なテーマについての意見を求められた場合、発言のしづらさを感じる人は多いだろう。 まずは、全員が正解不正解を意識することなく自由に発言できる時間、そしてそれを他の参加者に聞いてもらえる時間をはさむことで、発言のための心理的ハードルを下げることができる。 参加者1人ひとりをその場で発言しやすい気持ちにさせることで、自発的な発言が増え、活発なディスカッションにつながりやすい。 ②進行上、配慮すべきことがないかを汲み取る 参加者の中には、何らかの理由で万全の状態でワークショップに臨むことが難しい人もいる。 実は体調が優れないまま少し無理をして参加していたり、オンラインワークショップの場合だと、使用するアプリやネットワーク環境にトラブルが生じていたりなど、ファシリテーターに見えている範囲からは把握しきれないことがどうしてもある。 そうした時、チェックインの時間があると、ワークショップの途中では言い出しにくい、参加者のネガティブな心情や、配慮が必要な状況を汲み取りやすくなる。 特別な事情を早い段階で他の参加者へ伝えられると、当事者はその後の気持ちが少し楽になるだろう。 日本語を母国語としない参加者から「日本語のワークには不安がありますが、がんばりたいです」との発言があった際には「今日は、みんなが聞き取りやすいペースでの発言を心掛けてみましょう」など、ワークショップの進行に関わる提案もしやすくなる。 ファシリテーターにとってチェックインは、参加者1人ひとりが、その日のワークにいかに前向きに参加できるようになるか、その後のワークショップの進め方を判断するための貴重な時間でもあるのだ。 ③ディスカッションのペースを作る ワークショップに慣れている人もいれば、慣れていない人もいる。 様々な人が集まる場では、その日のワークショップのリズムや議論の進め方を早い段階で共有しておいた方が、本題のワークにおいても序盤からスムーズに進めやすい。 ワークショップでは、ある人の意見に対する他者のリアクションを期待することが多くある。 似た意見を紹介してもらい、グループを作りながら全体像を把握したり、アイディアに便乗しながら新たな切り口を見出したり、その多くの場合は、1人で考えているだけでは到達できない視点・発想へ辿り着くことを目指しているからだ。 そのためのウォームアップを兼ねて、チェックインでは参加者とファシリテーターの間のやりとりだけでなく、参加者同士の会話が喚起される仕掛けを取り入れることも良い。 特にオンラインの場合、初対面の相手との距離を縮めるのに時間がかかるため、例えば「チェックインした人は、次の人を指名する」あるいは「次の人に必ず1つ質問をする」など、半ば強制的に他の人の名前を呼ぶ機会を作るなどの工夫も取り入れている。 また、複数の日に分けてワークを進める場合は、回数や内容に応じてチェックインのリズムを変えることを意識するのも良い。 初回はゆっくりめのペースで進め、なるべく和やかな場の温度を維持しながら参加者のモチベーションを高めていくことに注力する。 一方、中盤から後半にかけて、集中して議論することにより多くの時間を割きたい場合はチェックインは速いペースで回していく、など。 チェックインのリズムに差をつけることで、その日のワークの進め方をより好ましい状態に導くことができるという面もある。 その日のワークのペースメイクのような役割も果たしているのだ。 より上手に行うための工夫 こうした目的を達成するために実践できる工夫を、事例を交えながら紹介したい。 ①トップバッター選び – 慣れている仲間に最初に事例を見せてもらう – 時間的に余裕のあるチェックインでは「準備ができた方から順番に」と、参加者からの自発的な発言を促すようにしている。 しかし、初対面の人が多い場合や、自分から手を挙げることにためらいが生じがちなオンラインのワークショップでは、慣れているアシスタントファシリテーターに1人目をお願いするのも良い。 アシスタントがいない場合でも、何度か一緒にワークショップを進行しているメンバーがチーム内にいれば、「今日のチェックイン、1人目に振ることになると思うので。気持ちの準備お願いね。」と依頼しておけば、以降の人は1人目を参考に発言すれば良い。 他の参加者のハードルを下げつつも、全体のペース管理もしやすくなる。 なお、自分がメインファシリテーターを務める際は、チェックインのなかで発言する順番は終盤にまわることが多い。 それまでに多くの参加者の声を聞いた上で、その日に自分がどのようなことを意識してファシリテーションをしたいかを合わせて伝えられる時間でもあるからだ。 ②気持ちを教えてもらう ビートラックスが行うチェックインでは、感情が書かれた8マスのシートを使うことが多い。 ポジティブなものとネガティブなもの、それぞれ複数を予め用意しておき、また余白として自由に書き込めるスペースも作っている。 参加者には「今の自分の気持ちに当てはまるところに人形を置いてください(あるいは、自分の名前を書いてください)」というお題を出す。 すると、自分の素直な感情を共有しながら、なぜそういう気持ちなのか、自分の体験したエピソードや、その日の意気込みと紐付いた会話が自然に誘発される。 「最近自分が体験したこと」を紹介してもらうだけでは、相手がどのような人なのかまでは、よく分からないままだ。 一方、「自分は今こういう気持ちです。なぜならこんなことが起こったので」というように、事象と感情(気持ちの状態)をセットで話してもらえると、初対面の関係だとしても、相手との心理的な距離が縮まる感覚が味わえるはずだ。 ③受け入れる、否定しない、焦らない ワークショップ参加者が「自分の素直な考えを発言しやすい」と思える場を作ることが重要だ。 そのために、チェックインの時間を使い、全員に発言の機会があること、そして、どのような発言でも受け入れられる場であるということを示していく必要がある。そのために、何か特別に準備をして臨む必要はない。 チェックインで参加者が発言している際は、その相手の方に顔を向け、うなずくくらいがちょうど良い。「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢を示すだけで十分とも言える。 また、数週間にわたってデザインの考え方を学ぶワークショップでは、中盤に差し掛かるとチェックアウトの時間に、ネガティブな感情や意見が出ることがある。 ただ、そうした時でもファシリテーターは、その場がどんな発言でも受け入れられる場であることを示していくことを意識したい。 ワークが思うように行っていないと感じていることを内に秘めながら進めるよりも、少しずつでも口に出してもらう方が、その後の進め方を改善しやすくなったり、ワークの注力ポイントを選定しやすくなるからだ。 否定的な意見を排除するのではなく、「教えてくれてありがとう」「今後の工夫、ぜひ一緒に考えていきましょう」などの言葉と共に、参加者1人ひとりと同じ視点から物事を捉えていく姿勢を推奨したい。 ④慣れてきたら変化を加える 何度か同じメンバーでチェックインを繰り返していると、徐々に慣れが生じてくる。 「その場に入る」「気持ちを切り替える」という意味合いが薄れてくることがある。 そうした時には、参加者の表情を見ながら、状況に応じた工夫を加えていくこともファシリテーターは判断していくことが重要だ。 思い切ってスキップする判断も もちろん、状況によってはチェックイン自体をスキップすることもあって良い。 既に何度か顔を合わせている仲間同士で、参加者が集まった時点で既に自然と会話が生まれている場合や、限られた時間の中でメインのワークに多くの時間を割きたい時などは、あえてチェックインの時間を省くことも必要な判断だ。 毎朝のチェックインに慣れてきた人にとっては、「今日はチェックインを省きますね」という発言が、参加者にとっての切り替えスイッチになることもある。 あくまでチェックインはその日のワークや議論に適した『場』を準備するための手段の一つであり、タイミングや参加者の表情、場の温度を感じ取り、より適切な方法を選択していくことがとても重要となる。 チェックインの時間によって場の緊張感が極度に失われたり、その後のワークの進行に支障がでることのないよう、状況に応じてチェックインの有無や方法を判断することもファシリテーターの大事な役割なのだ。 おわりに 今回は、ワークショップや会議の冒頭で行われることの多い「チェックイン」について取り上げてみた。 メインのワークに比べて「ちょっとしたこと」のように思える時間でも、そこにはワークショップの設計者からの意図が込められている。 ワークショップ参加者としてチェックインを行ったことがある方や、これから実践してみたいと思っている方は、その時間や問いの狙いは何かを振り返ったり、それによって得られる効果などを考えてみるのも良いだろう。 そして今後、自分がワークショップを設計する側の立場になった際には「その日の議論に適した場づくり」のためにはどのような時間を取り入れたら良いか、考えながら設計することをおすすめしたい。 また、参加者と一緒に時間を過ごしながら自分が感じたことから、どのような工夫ができるのかを考えること、試行錯誤を繰り返しながらも、ぜひ柔軟な姿勢で場を設計していくことにも挑戦していただけたらと思う。 ビートラックスでは、新たなサービスづくりの過程において、事業者とデザイン会社のメンバーが「共に調べ、共に考え、共に設計する」メニューを提供している。 デザイナーたちと一緒に新たなサービス開発を進めたい、ワークショップを活用しながら新たなサービスを設計していきたいなど、ご興味をお持ちの方はぜひこちらからお問い合わせを。

デザイナーがファシリテーションをしてみた

デザイン思考ワークショップのファシリテーションをするというとても学びの多い機会があったため、気づいたことなど、体験についてをデザイナー視点でまとめてみた。 デザイン思考とは? デザイン思考の定義は、人によって様々な言葉で説明されると思うが、私はデザイン思考を、「デザインのプロセスを通じて課題解決をし、暮らしをより良くするための手段」と解釈している。より平たく表現すると、ユーザー本人も気づいていないような潜在的なニーズを探し出し、アイデアをテストして、解決することである。 このデザイン思考という言葉は、カリフォルニアに本社を構えるデザインスタジオIDEO社の創業者ティム・ブラウン氏によるもの。彼が2005年にハーバードビジネスレビュー誌において、「デザイナーの手法と感性はビジネスに応用可能である」と提唱したのがきっかけで有名になった。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと この考えは日本にも徐々に浸透してきており、デザインの発想や手法をビジネスの場で活用し、その価値を向上させることを目指す企業が増えてきた。そのため、組織内にデザインのマインドセットをインストールするために、ワークショップや研修形式でデザイン思考を習得するケースが増えた。 そして普段はデザイン業務を行っている筆者が、今回、とあるデザイン思考のワークショップにて、ファシリテーターとして参加した。いわゆるグラフィックデザインを行っており、色や素材を使い、ビジュアル(見た目で伝えられるもの)を作っているが、その領域を超えたファシリテーターとしての経験から見えてきたことをまとめていきたい。 似ている部分と異なる部分 デザイナーとファシリテーター、全く違うようで共通点もあるのが面白い。 ユーザーの気持ちを考えることはやはり非常に大切。 これはちても広い話だが、かなり大事かつデザイン業務と似ていると感じた部分だ。普段ポスターひとつ制作する際でも、どこに一番最初に視線が行くか、伝えたい情報がちゃんと正しく入ってくるようになっているかなど、考えながら制作をする。 それと同じようにデザイン思考では、あらゆる「ユーザーってこういうことを考えているのか?」を想定、把握する必要がある。つまり、ユーザーの気持ちになってみることが重要である。 そのために、ユーザーインタビューを行い、ユーザーの言葉からインサイトを抽出する。この人は実はこんな風に思っていたからこう言ったのか?というユーザーの気持ちを分析していくのだ。 ファシリテーターとして、ワークショップに参加している方が、よりターゲットユーザーの気持ちに寄り添えるようにサポートするということがとても重要なように感じた。 一方で、普段のデザイン制作と異なる点として、目的や最終のゴール地点が明確かどうかの違いがある。 一般的なデザイン制作は目的が決まっているため、プロセスがわかりやすいものが多い。例えば、ポスターを作る際は、いつに何をするか、何が行われるかを伝えるためのもの、と決まっている。そのため制作のプロセスはシンプルだ。 しかしデザイン思考では、ユーザー本人も気づいていないような部分を探っていかなければならない。本当に必要とされているニーズに辿り着くまでに紆余曲折するのが大体のパターンである。 プロのデザイナーとして活躍するために必要な8つの非デザインスキル とりあえずひたすら手と口を動かしてみる 非常に基礎的なことであるが、デザイン思考のワークショップを行う際は、チームでひたすら手と口を動かすことが非常に大事であると実感した。とりあえず書き出してみたり、雑でも良いからアイディアをスケッチしてみたり、変かなと思うこともとりあえず言ってみたり。 これは簡単そうに見えて本当に難しい。特に私の場合なのか、デザイナーあるあるなのか、(おそらくデザイナーのみなさんは共感すると思うが)黙々と考えてしまいがちである。そして黙々と作業しがちなのである。 誰かに共有する際に、ある程度のクオリティにまで持っていったものしか共有したがらない傾向があるのかもしれない。 しかし、デザイン思考のワークショップでは、何より試行錯誤することが重要。どんな段階であれ、一旦チームで考えたことややってみたことを共有することが大事になってくる。 個人作業が多めなデザイン業務とは対照に、ワークショップはチームで進めるものであるため、まずは口に出して思ったことを言わないことには何も生まれない。 ファシリテーターはメンバーのちょっとして考えを引き出すサポーターでもあるため、普段黙々を作業してしまいがちな筆者も、これってこういうこと?というチームが考えを共有しやすい会話を心がけた。 自分の中途半端なアイデアもチームの人の考えによって思いもよらぬアイデアに化けたりするのが、ワークショップの面白いところでもある。 日本人は議論が苦手?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは ワークショップの新しい進め方 コロナ禍前までは、弊社でデザイン思考のワークショップを行う際はオフラインで行っていたが、今回は、オンラインと組み合わせてワークショップを実施した。オフラインとオンラインのハイブリッドで行うのは我々にとっても新しい挑戦で、普段の進め方と変わってきた。 ワークショップ中のアイディア出しやメモとして使用するツールは、オンラインが良いかオフラインが良いか?はたまたハイブリット型が良いか?という議題があるが、今回オフラインのワークショップ時でもオンラインツールを併用した。 今回ワークショップを行ったうちの全体の4割ほどはオンラインで行い、残りの6割はオフラインで行った。 もちろんオンラインでワークショップを行っている期間は、使用するツールも全てオンラインで、オフラインの期間でも、使用するツールの半分以上はオンラインのものだった。 オフライン時でも、とりあえずたくさん思いついたことを書き出す際や、ユーザーインタビューから得た事実を書き出す際にFigmaというオンラインツールを使用した形である。 オンラインツールとしてFigjam、オフラインツールとしてポストイットを使用 Figjamとは、オンライン上で使用できるホワイトボードで、主にチームでブレインストーミングをしたりマインドマップを作成する用途で使われるツールである。画面上に手書きができたり、付箋を貼ってテキスト入力をすることができる。 どう使い分けるべきかに対しては、結論を言うと、チームが円滑に進めやすい方であればどっちを使っても良いし、どう使い分けても良いと感じた。 Figmaもポストイットも、あくまで手段であり、ワークショップをスムーズに進めるためのサポートツールであることを忘れてはならない。 デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか そこで、ワークショップを行う中で個人的に感じた、おすすめの使い分けのポイントを紹介する。 とりあえずブレインストーミングをして少しでも多くのアイディアを出したいとき、それを書き出したいときはFigjam上で。大事なことやハイライトになるような内容は、ポストイットで。この使い分けである。 書き出して、グループワークを行う部屋に貼っておく。そうすることで常に論点がズレにくくなるとともに、チームのみんなが共通の理解をしやすくなる。 どうしても話が白熱して色んなところに話題が散ることがあるが、収束しやすくするためにも、常に視界に入るところに要点だけ書き出しておくのは効果がある。 オンラインツールのメリット 後から融通が効く その時に応じてパネルやブロックの並び替えや整理、複製がしやすい。 綺麗に記録できる 筆者は、自分の手書きを見返すのが嫌になってモチベーションが下がることがたまにあるが、オンラインツールではそのようなことはない。手書きで殴り書きしたものを後から見返し、これは何のことだっけ?となることも防ぐことができる。 お互いへリアクションしやすい Figjamにはスタンプ機能やいいね機能があり、バリエーション豊富なリアクションをリアルタイムで示せるので、オンラインでもインタラクションのあるワークショップになる。 ワークショップはオンラインでも上手くいく?押さえておきたいポイント5つ オフラインの良いところ 全体を俯瞰して見られるので、全体像を把握しやすい 誰が何を書いているのか、同じ空間にいることで把握がしやすい。また、PC上で行うのと違い、画面の大きさに制約がないためパッと全部のポストイットを見ることができる。 全体が見えるため、離れたそれぞれのトピックを併せて考えて、新しい発想が生まれることも。 オンラインでも離れたそれぞれのトピックがつながることもあるが、オフラインで実際にその場で見えることで、より簡単に全体を行き来することができアイデアに繋がりやすいように感じる。 デザイン思考の実践に最適な4つのオフィスアイテム オンライン、オフラインどちらにも良さがあるので、自分にとって、チームにとって、よりクリエイティブな状態になりやすい方を使おう。 おわりに 今回の記事ではデザイナーがファシリテーションをしてみて感じたデザイナーとファシリテーターの役割として似ているところや違い、そしてワークショップをする上での具体的な進め方に言及した。 また、Figmaなどのオンラインツールはユーザーフレンドリーであり、今後のワークショップはオフライン実施であっても、ポストイットや紙を用いる代わりにオンラインツールを用いる場合が増えるかもしれない。 オンラインツールを使うこと自体が目的になってしまわないよう、オンラインでもオフラインでも、参加者同士、参加者とファシリテーターが心地よく意思疎通を図れる方法を模索することが大切だ。 btrax では、最適なユーザー体験の創出に軸足をおいたサービス開発をはじめ、目的に応じて様々なサポートをさせていただいている。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。

デザイン思考のファシリテーターは、なぜポストイットを使わせるのか

『デザイン思考のワークショップ』と聞くと、複数の大人たちが壁一面に並べられたポストイットに向き合う姿を想像する人は少なくないだろう。実際、btraxで実施する研修の様子を写真で振り返ろうとすると、思考の経緯を記録するために撮影した“ポストイットだらけの絵面”が大半を占める。
“design thinking workshop”とGoogleで画像検索すると、ポストイットを使用しているシーンがよく目につく.
しかし、なぜ『デザイン思考』のファシリテーターは、ワークショップの参加者にポストイットを使わせ…

ワークショップをするべきか?会議をするべきか? それが問題だ

会議とワークショップ、効果的に使い分けできていますか? 「無駄な時間」にしないために気をつけるべきこと 会議とワークショップ、それぞれの目的・役割・構造の違い 多種多様な会議 / ワークショップ、目的に合わせた実施方法 「ミーティングにするか、ワークショップ形式にするか。」 現代の企業におけるディスカッションや意思決定の方法は多様になっている。特にオンラインで行うシーンも増え、企業としてもどのような進め方をするのが良いのか迷いがちだろう。 我々もデザインワークショップやデザインスプリント、フォーカスグループなどを通じてサービスのアイディアをディスカッションしたり、素早い意思決定を促したりしている。 でも実際の現場では、ワークショップっぽい会議もあるし、会議になってしまうワークショップもある。全く意味の無い時間になることもありえる。 そしてこの状況は、それぞれの定義や適切な使い方が曖昧な組織で起こりやすい。 会議とワークショップの用途の違い 一般的に、会議では情報共有や議論を行い、目標設定や意思決定を行うのが目的。一方で、ワークショップは問題を解決したり、実行可能な目標を達成するためのもの。 ワークショップと会議の違いを理解することで誰もが時間を節約し、グループコラボレーションを最大限に活用することができる。 では、具体的に無駄になってしまう会議とワークショップの特徴を洗い出した上で、ワークショップと会議の目的、範囲、長さ、構造、準備時間の違いを比較してみよう。 無駄な会議とは? まずは一つの結論として、どのようなミーティングや会議が無駄になってしまうのだろうかを考えてみる。通常、会議には複数人数のが参加するため、無駄な時間が発生してしまうと参加人数分の時間が失われてしまう。 そのこともあり、多くのアメリカ企業ではなるべく会議の数を少なく、時間を短く、参加人数を制限することが推奨されている。 無駄な会議になってしまう主な要素: はっきりとしたアジェンダがない 何も発言しない人が参加している 次のアクションが決まらない 10分で済む内容に60分かける 意思決定者が参加していない 無駄に参加人数が多い などが挙げられる。 ムダだらけの会議 – 海外から見た日本式ミーティングの謎 無駄になるワークショップとは? ワークショップさえ行えば会議での課題が簡単に解決すると思っている人もいる。しかしそれは大きな間違い。 ワークショップをやったからといって全てがうまくいくとは限らない。その最も大きな原因は、そもそも達成したいゴール (目的) と手段 (ワークショップ) が合致していないことだ。 具体的には、目標がはっきりしていなかったり、参加者が活動自体が無意味に思えたり、何も達成できていないような気がしたりなど。多くの場合、適切なファシリテーターが不在であることが原因だったりもする。 無駄なワークショップになってしまう主な要素: 達成すべきゴールが曖昧 プログラム内容が適切にデザインされていない ファシリテーター不在 ファシリテーターのスキル不足 参加者同士の信頼関係ができていない 他の業務に中断され、内容にフォーカスできていない 上司の顔色を伺いながらのアウトプット などが挙げられる。 デザイン思考の本質とは?—新米ファシリテーターの経験を通して気づいたこと ワークショップは万能ではない ワークショップをやる目的でワークショップを開催する、手段の目的化が起きているケースもある。特に最近はデザイン系のワークショップが流行っていることもあり、とりあえずやってみたいという要望が後を絶たない。 長時間同じ部屋にみんなを集めれば魔法がかかると思っている人も少なくない。 しかし、我々のようにクライアントに対してワークショップを企画・実行するデザイン会社としては、とりあえずやってみる前に一度目的の設定や参加者の選定など、企画段階をしっかりと詰めることをオススメすることが多い。 これは、解決すべき問題があらかじめ定義されていない場合や、コラボレーションの必要性がない課題、または事前の十分な計画がない状態だとワークショップは時間の無駄になってしまうため、これらを未然に防ぐためである。 そして、内容が稚拙なため、意思決定者などの重役レベルの人もそのようなワークショップの招待を拒否することが多い。 会議とワークショップ: それぞれの目的と役割 会議は参加者が情報を交換し、ディスカッションをするための方法である。 それに比べてワークショップは問題を解決することが目的。アイデアを生み出すことに時間を割き、グループが実行可能なゴール達成するための実践的な活動である。 簡単に言えば、会議は物事を議論する場所で、ワークショップは物事を実行に移す場所である。 この違いから、会議では多くのトピックを浅くカバーするのに適しているが、ワークショップは問題を深く集中的にカバーするのに適している。 会議とミーティングのそれぞれの目的や方法 会議の目的と種類 出席者が情報を発信したり受け取ったりするための専用の時間と場所を設けるのが会議の主な目的となる。会議の中では、いくつかのトピックをカバーすることができる。 一方で、決定や行動項目は、必ずしも同じ集まりの中で定義されたり、その場で即座に行動に移されたりする必要はない。 会議の種類と目的には下記が挙げられる: プロジェクトキックオフ プロジェクトの概要や役割などの重要な情報を話し合うために、チームメンバーが一堂に会してプロジェクトに取り組む最初の集まり。 スタンドアップ 機能横断的なチームがプロジェクト全体の進捗状況や障害に関する最新情報を共有するために、毎日素早く(通常は15分程度)報告会を行う。 振り返り 定期的に行われるディスカッションで、チームがどのように連携して仕事をしているかを振り返り、プロセスを改善する方法を検討する。 1on1 リードやマネージャーが直属のメンバーと会い、プロジェクトや個人の成長、キャリアアップの機会について話し合うための時間。 リーダーチームミーティング 複数のサブチームにまたがる機能横断的なリーダーが集まり、進捗状況、学習内容、未解決のアクションアイテムについて議論する。 デザインチームミーティング UXやデザインチームのメンバーが一堂に会して、仕事や知識、インスピレーションの源を共有する機会。 デザインレビュー デザインチームのメンバーが進捗状況を発表し、デザインに対するフィードバックを受ける。 オフサイト チームメンバーがオフィス外の場所に集まり、ディスカッションを行う。普段と異なるセットアップのカジュアルな雰囲気の中で、気持ちのリフレッシュにもなり、新しいアイディアが出やすくなる。 オフィス外でのミーティングを行うのも効果的 ワークショップの目的と種類 複数のチームからのインプットと同意を必要とする状況や、同じタイミングでのディスカッションと深い考察、そして意思決定が求められる状況においては、共同作業の実践的なワークショップ形式に適している。 ビートラックスが企業向けに提供しているデザインスプリントも素早いスピードでの正しい意思決定を一番の目的としている。 ワークショップの種類と目的には下記が挙げられる: ディスカバリーワークショップ チームメンバーと主要な知識保有者が集まり、現状を理解した上で今後のプロジェクトのマイルストーンや計画の方向性を決めていく。 チームビルディング 業務にあまり関係ないテーマを元にチームごとに一つのゴールを達成するために競うゲームなどを通じてチームの連帯感をアップさせる。 ユーザー共感ワークショップ デザイナー、研究者、その他の関係者がサービスを設計する前に、ユーザーのニーズについての共通理解をするために行う。 デザインワークショップ 複数の部署から主要チームメンバーが集まり、様々な視点からのアイデアを迅速に生成し、議論する。 優先順位付けのワークショップ チームメンバーおよび他の主要な意思決定者がどの項目が最も重要であるかを決定し、それらに優先順位をつけるために一緒に集まり行う。 アイディエーションショップ ビジネスやサービスの内容をできるだけ多く出すことにフォーカスを当てたワークショップ。質より量を重要視する。 レビューワークショップ デザインプロセスに不可欠な役割を担うメンバーが協力して、目的に照らし合わせてデザインを分析・改善する。 ビートラックスで行われているワークショップの様子 会議とワークショップの構造的違い ワークショップと会議では基本的な目的が異なるため、それぞれの構造も異なるべきである。多くの場合、会議はワークショップよりも受動的なもので、参加者はほとんどの時間を話したり聞いたりしている。 しかし、最近の会議のトレンド、特にオンラインミーティングでは、より雑談を促進するためにあえて議題と異なる日常生活の話をしたり、クイズを出したり、普段無口なスタッフにあえて話を振ることで、チームワークを促進するケースも増えている。 もちろんワークショップでは、参加したメンバー全員からのフルコミットが求められる。話したり聞いたりだけではなく、スケッチをしたり、プロトタイプを作ったり、寸劇を通じてアイディアを発表することも多い。 会議における理想的なアジェンダ スタンドアップ会議や1on1の会議など、日常的に行われている会議であっても、アジェンダを作る利点は大きい。 時間の経過とともに変化する議論項目に柔軟に対応できるようなアジェンダを導入するための効果的な方法の一つとして、会議の前に自由形式の質問を短いリストにして投稿者に提供する方法がある。 オンライン会議の場合は、チャットシステムなどを活用してリアルタイムで質問を送ることも可能。 例えば、従来の日常的なスタンドアップでは対話が軌道に乗るように、決められた項目に沿って質疑を行う。それにより短時間で求められる情報共有が可能になる。 スタンドアップで利用される質問リスト […]