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抹茶がアメリカでバズってる5つの理由 〜 北米560億円市場の波に乗るための実践ガイド 〜

サンフランシスコ市内のおしゃれなフレンチカフェで、クロワッサンの隣に並ぶのは、鮮やかな緑色の抹茶ラテ。以前より週末になると通ってるこのカフェで、つい最近メニューに追加された。 カリフォルニアでどんどんオープンするお茶系店舗 実は、抹茶ブームを感じさせるのはここだけじゃない。サンフランシスコオフィスのスタッフに聞いてみたところ、最近はお茶や抹茶に関する店舗がどんどん増えており、場所によっては行列で入れないところもある。 また、抹茶以外にも、”お茶” の人気が高まっており、ナチュラル&ヘルシーを売りにしたお茶カフェが複数オープンし始めている。 家や店舗で手軽に作れる “抹茶マシーン” も 抹茶を家庭で手軽に楽しめる、抹茶マシーンも登場している。Cuzen Matchaは“抹茶版エスプレッソマシン”。家庭用は$299からで、本格的な挽きたて抹茶を楽しむことができる。 また、Proモデルなら高回転の店舗でも40 秒で抽出可能。抹茶ブームを取り込みたい事業者にとって、体験価値とオペレーション効率を両立する有力ソリューションになっている。 アメリカで抹茶旋風。いま何が起きているのか? こんな感じで、気づいたらアメリカの主要と都市で抹茶ブームが始まろうとしている。 本稿では、抹茶が米国で“バカウケ”している理由を5つに整理し、実例と統計を交えながら、市場参入を検討する企業に向けた具体的アクションを提示する。 米国で拡大する抹茶市場 北米の抹茶市場は2024年に5.6億ドル(約860億円)規模へと拡大し、今後5年間で年8.3%成長が続くと予測されている。 TIkTokで拡散する抹茶をテーマにしたバズり動画 この抹茶ブームは、オンラインでも広がっており、TikTokでは #matcha の総視聴回数が230億回を突破し、若年層の“健康-エンタメ飲料”として定着しつつある。 @f_dez7 Matcha goodness. #japan #kyoto #matcha #matchalatte #gokago ♬ How`s Your Day – aAp Vision 抹茶が米国市場でバカウケしている5つの理由 では、なぜこんなにも抹茶がアメリカの消費者にウケているのか。その理由を5つほど挙げていく。 理由① “ヘルスコンシャス&機能性”志向の高まり アメリカでは、ここ数年でコーヒーの体に対する副作用を気にする人が増え、代替えとなるような飲み物に注目が集まっている。その選択肢の一つが抹茶なのだ。その主な理由は: 低カフェイン・高抗酸化:コーヒーより緩やかな覚醒感とL-テアニンによるリラックス効果が“午後の一杯”ニーズにフィット 機能性フードトレンド:Whole Foodsが2025年トレンドに「茶系フレーバー」と「植物性機能性飲料」を選出 数字で見る健康意識:米国成人の46%が「日常的に抗酸化食品を摂取したい」と回答(Nielsen 2024調査) 実例 Starbucks:2025年株主総会で新ミッドイースト系「Dubai Chocolate Matcha Latte」を投入すると発表し、メニュー革新の柱になった Matchaful:NY発“Farm-to-Whisk®”を掲げ、オーガニック×サステナビリティ訴求で8店舗に拡大 理由② “サステナブルな覚醒剤”としてのポジショニング コーヒー産業の森林伐採・水資源問題が報じられる中、抹茶は「少量で高い抽出効率=低環境負荷」というストーリーを打ち出しやすい。 […]

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Z世代はどのアプリを使ってる?最新データが示す意外なトレンド

Z世代は全世界人口の約25%を占め、今後50年にわたって市場で最大の消費者層となり、今後10年間で最も消費額の伸びが顕著な世代となる(GfK/NIQ Japanリリース参照)と言われており、企業活動において無視できない存在となっている。 Gen Z(Z世代)の主な特徴 Gen Z(Z世代)、つまり1990年代後半から2010年代初頭にかけて生まれた世代には、いくつかの際立った特徴がある。デジタルネイティブとして育ち、テクノロジーやインターネットが生活の一部として当たり前に存在する環境で育った初めての世代だ。以下に、主な特徴を挙げる。 まず、テクノロジーに慣れている。スマートフォンやソーシャルメディアが幼少期から身近にあり、情報収集やコミュニケーションがデジタル中心だ。TikTokやInstagramみたいなプラットフォームで自己表現を楽しんだり、トレンドを追うのが得意だ。 次に、多様性への理解が深い。グローバル化やSNSのおかげで、いろんな文化や価値観に触れる機会が多く、ジェンダーや人種に関する伝統的な枠組みにとらわれない人が多い。インクルーシブ(包括的)な考え方を自然に受け入れている。 あと、現実的で自己意識が強い。経済的な不安定さや気候変動みたいな大きな課題を目の当たりにして育ったからか、夢追い人というより実用的な選択を重視する人が多い。副業やフリーランスに興味を持ったり、自分のブランドを築こうとする人も目立つ。 最後に、社会問題への関心が高い。環境問題や不平等に敏感で、アクティビズム(行動主義)に参加したり、購買行動で信念を示すことがある。 例えば、サステナブルなブランドを支持したり、抗議活動に声を上げたりする。テクノロジーと社会の変化に適応しながら、自分らしさを大事にする世代だ。 世界が注目するZ世代に人気ブランド Top 25と消費嗜好 今回は、Gen Z(Z世代)に特化した研究と戦略を提供するdcdx社の『GEN Z’s SCREEN TIME REPORT』というレポートを参考にZ世代のデジタル習慣について分析したい。 Z世代に関するデータの分析方法 本レポートは、世代のスクリーンタイムに関する行動を深く理解するため、以下の手順で実施された。 データ収集方法 dcdx社の30万人規模のネットワークから、234名の16~27歳のアメリカ在住Z世代を対象に実施 参加者には、スマートフォンのスクリーンタイム設定画面を録画した動画を提出してもらい、完全なデータセットのみを使用 対象年齢と属性 年齢:16~27歳 人種や性別など、参加者の多様な背景を反映 分析内容 スクリーンタイムの総時間 使用アプリとその傾向 デバイスとの関係性における行動パターン Z世代のスクリーンタイムの推移 Z世代の1日のスクリーンタイム(スマホ等で画面を見ている時間)は、平均7時間22分43秒(2024年)となっており、前年度に比べて15分以上増加している。 ただ増加のペースは鈍化しており、デバイスの利用が頭打ちになり、今後の行動が変化する可能性を反映している。 Z世代は、使用するアプリ・サービスを選別しはじめている 2024年のデータによると、ピックアップが昨年度比上昇、通知が減少。 Z世代は、通知が多すぎず、日常生活の妨げにならないアプリやサービスを好むようになったとともに、選別したアプリ・サービスからの通知は積極的にピックアップしている。 Z世代に最も利用されているアプリ 『Z世代に利用されているアプリ TOP10』の結果は以下の通りである。 特にTikTokやInstagramは、短尺のコンテンツを楽しむ傾向が強いZ世代にとって、エンターテインメントや情報収集の中心となっている。 また、メッセージアプリや音楽ストリーミングサービスも、コミュニケーションや音楽鑑賞に欠かせないツールとして広く使用されている。 WhatsAppが急上昇した理由は? また昨年はTOP10圏外であったが、2024年はTOP10にランクインしているプラットフォームとして、WhatsAppが挙げられている。ランクインした理由は、以下の特徴がZ世代の支持を集めたからと考えられる。 ・クロスプラットフォーム対応 WhatsAppはiPhoneとAndroid両方で利用でき、デバイス間でシームレスにメッセージをやり取りできる。この機能は、Z世代が様々なデバイスを使っていることを考慮すると便利で、異なるデバイスを使う友人や家族とのコミュニケーションに役立つ。 ・強固なプライバシーとセキュリティ WhatsAppはエンドツーエンド暗号化を採用しており、メッセージが第三者に漏れない。Z世代はプライバシーを重視しており、個人情報を守るためのセキュリティが大きな魅力となっている。 ・広告なしでの利用 WhatsAppは広告が一切ないため、Z世代にとってストレスなく使えるアプリとなっている。広告に対して敏感なZ世代にとって、シンプルな体験が好まれるポイント。 ・国際的な利用の便利さ WhatsAppは世界中で広く利用されており、海外に住む家族や友人とのコミュニケーションが簡単にできる。特に移民や留学生が多いZ世代にとって、国際的な接続が可能なことは大きな利点。 ・進化する機能 WhatsAppは新しい機能を定期的に追加しており、スタンプやカスタムチャットテーマ、ビデオ通話など、個性を表現するためのツールが豊富。これが、自己表現を重視するZ世代にとって魅力的な要素となっている。 btraxが提供できる価値 Z世代に関する深い理解と戦略的なアプローチは、アメリカ市場での成功に不可欠です。btraxは、アメリカに拠点を構え、日本企業が現地で効果的に事業を展開できるよう、以下のサポートを提供します。 1. 消費者リサーチ Z世代の嗜好、行動パターン、購買心理を徹底的に分析し、データに基づいた洞察を提供。 ユーザーインタビューやオンライン調査を通じて、ターゲット層の本音を明らかにします。 2. 市場参入戦略の立案 アメリカ市場に特化したカスタマイズ戦略を設計し、ブランドの競争力を最大化。 ローカルのトレンドや文化を反映した効果的なマーケティングプランを策定。 3. ソーシャルメディア活用支援 TikTokやInstagramなど、Z世代が利用するプラットフォームでの効果的なキャンペーンを設計・運用。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用方法をアドバイスし、ブランドの魅力を最大限に引き出します。 4. デザインとブランディング アメリカ市場で受け入れられるローカライズデザインを提供し、視覚的にも共感を得るブランドイメージを構築。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験と現地ネットワークを活かし、貴社の成功をサポートします。Z世代へのアプローチや市場参入戦略についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 アメリカに拠点を置いているからこそ提供できる現地目線の洞察と実行力で、貴社の可能性を広げます。 まとめ:Z世代のデジタル習慣を理解することの重要性 Z世代は、デジタルネイティブとして育った特性を活かし、スクリーンタイムやアプリ選択においても明確な価値観を持つ。プライバシーを重視し、シンプルでストレスの少ない体験を求める彼らの行動パターンは、企業のマーケティングや製品戦略において大きな影響を及ぼす。 btraxは、Z世代の行動データや消費トレンドをもとに、日本企業がアメリカ市場で成功するための具体的な戦略を提供。データ分析から現地に即した実践的なアプローチまで、幅広い支援を通じて貴社の成長を後押しする。新たな世代への挑戦を成功に導くパートナーとして、ぜひ私たちをご活用いただきたい。 参考リンク スクリーンタイムで分析!アメリカのZ世代に人気のSNSを解説 WhatsApp Popularity in the USA 2024 | Collabstr WhatsApp now has 100m monthly active users in the US 【2024年版】世界のメッセージングアプリ事情 ~WhatsApp、Messenger、WeChat、LINEまで勢力分布と今後の展望~ – Mobilus CX-Branding Tech. Lab – モビルス CXブランディングテックボ – すべてのビジネスに、一歩先行くCXを。 Z世代の特徴から紐解く、米国の5つの人気サービスとその理由とは […]

【ポリコレにサヨナラ】 スーパーボウルのCMから見るアメリカ社会の揺り戻し

アメリカで毎年2月に開催されるアメフトの決勝戦「スーパーボウル」は、全米最大のスポーツイベントの一つ。試合に注目が集まるのはもちろんのこと、豪華アーティストによるハーフタイムショーや、試合中に放送されるCMにも大きな関心が寄せられる。 そう、スーパーボウルは、その時代を表す「アメリカ文化の縮図」である。 世界で最も高額のスーパーボウルのCM枠 特に、スーパーボウルのCM枠は年間でも最も高額とされ、30秒の放映に数億円から数十億円の予算がかかる。こうした巨額の広告枠を買う企業は、世界的に著名な飲料ブランドや自動車メーカーから、IT企業やスタートアップまで多岐にわたる。 スーパーボウルのCMは「アメリカ文化を象徴する存在」ともいわれる。視聴者にとっては試合そのものと同じくらい、あるいはそれ以上に楽しみなコンテンツでもあるのだ。 ポリコレから古き良きアメリカへ 昨年まではポリティカル・コレクトネス(いわゆるポリコレ)やLGBTQ+への配慮が前面に押し出されたCMが多い印象だったが、2025年はそれが一気に様変わりしている。 まるで80年代・90年代に回帰したような、古き良きアメリカの雰囲気を感じさせるCMが目立つのだ。これがトランプ新政権の誕生と関係しているのかは定かでないが、「アメリカ社会のより戻し」を象徴する事例として興味深い。 2025年に注目されたスーパーボウルのCM ここからは、今年放送されたスーパーボウルのCMの中から、とりわけ興味を引かれたものをいくつか紹介する。 懐かしさを感じさせる演出や、少々不謹慎なユーモアが再び受け入れられているようにも思える。さっそく、どんなCMがあったのか振り返っていこう。 Carl’s Jr. いきなりブロンドセクシーギャル登場のファストフードバーガーのCM。星をモチーフにした服装も雰囲気も、コルベットも、ザ・アメリカって感じ。 Bud light アメリカの週末。隣人を集めた家の庭でのBBQ。 ジョークたっぷりの演出と、なんといってもこのBGM. タイムマシーンで80年代に戻った感じ。思わずマーティーとドクを探してしまう。 Frank’s RedHot ブロンドのパリス・ヒルトンを起用。 キラキラボトルに入ったホットソースをバービーっぽくセクシーに紹介。 Stella Artois デビッド・ベッカムを起用し、生き別れになった双子の兄弟を探しにアメリカへ。そこでマット・デイモンと再会。兄弟が著名なサッカー選手だと知った最後のジョークがめっちゃウケる。 Hellmann’s 大手マヨネーズブランドのCM. メグ・ライアンとビリー・クリスタルが出演し、ラブコメ映画『恋人たちの予感』のワンシーンを再現。去年までだったら許されなかっただろう攻めた演出で商品の魅力を伝える。 Jeep 大自然の中をハリソン・フォードがジープで駆け抜ける。アメリカの兵士、大きな星条旗、ガソリン車もあるし、EVもある。違いがあるからこそ自由になれる。人生に取説はない。たとえ彼の苗字が「フォード」でもジープに乗ったって良いんだぜ。アメリカの自由を体現したCM. Bud Light #2 上記で紹介したBud LightのCMの30秒版別ショット。アメリカンな二人がガレージの前でビール片手に「ビールのCMで飲むシーンはNGなんだぜ。」「え?いつからよ?」「まあ、変えてくれるまで待てよ。」そう、実はアメリカではビールのCMでビールを飲んではいけない。それを逆手に取った演出。 Liquid Death Dub Lightとは真逆にグビグビ飲んでる。それも、パイロットが、外科医が、裁判官が、警察官が仕事中に。BGMの歌詞も「飲め飲め!仕事中に飲め!みんな仕事中に飲んでる!」という、なんとも不謹慎なもの。でも実はこれ、ミネラルウォーターのCM. 真面目路線から面白さへのシフト いくつかのCMを取り上げてみると、昨年まで主流だったDEI(多様性・公平性・包括性)を前面に掲げた“ポリコレ色”が薄れ、より「楽しさ」や「個性」を重視する流れが強まっているように感じる。 不謹慎ギリギリの表現や攻めたユーモアが再び容認され始めたことは、まさに時代が変化している証左といえよう。 今後は日本のブランドにも影響する 2025年はアメリカ社会のみならず、世界的にも新たな動きが生まれる節目の年となりそうだ。ポリコレの概念を完全に無視するわけではないにせよ、過剰に縛られることなく新たなクリエイティブや価値観が模索されはじめているのだろう。 では、日本はどのような道をたどるのか。政治や消費者の意識変化など、多様な要因が組み合わさりながら、広告やエンターテインメントの形がさらに変わっていくと考えられる。 必要なのは社会・文化的な背景の理解 こうした激動の状況下で、日本企業がアメリカ市場におけるプロモーションやブランディングに挑戦する際、信頼できるパートナーを見つけることは非常に重要である。 btraxは、これまで数多くの日本ブランドの米国進出をサポートしてきた実績をもとに、市場調査から戦略立案、ブランド構築、マーケティング支援までを一貫して提供している。 アメリカ社会が大きく変化する今だからこそ、柔軟な対応と的確なクリエイティブが求められる。そうした新時代の動きに合わせたプロモーション戦略を模索する上で、btraxの知見やネットワークは大いに力となるだろう。

世界が注目するZ世代に人気ブランド Top 25と消費嗜好

Z世代は世界人口の約32%を占め、今後50年間にわたって市場を牽引する最大の消費者層になると予測されている(国連調べ)。さらに今後10年間で最も消費額の伸び率が高い世代とも見込まれる。 こうした背景から、グローバルな企業活動においてZ世代を無視することは難しいといえるだおう。 今回は、Gen Z(Z世代)に特化した研究と戦略を提供するdcdx社の『GEN Z’s TOP25 Most Magnetic Brands(Z世代が選ぶ「最も魅力的なブランド」TOP25)』というレポートを参考にZ世代の趣向等について分析したい。 Z世代とは? Z世代に関しては、情報元によって多少異なるものの、この記事では1997年から2012年の間に生まれた世代のことをZ世代としたい。 ミレニアル世代(1980年代~1990年代半ば生まれ)の次に位置し、「デジタルネイティブ」と呼ばれることが多い。この世代はインターネットやスマートフォンが普及した環境で幼少期や思春期を過ごしており、オンラインでの情報収集やコミュニケーションが当たり前の存在として育っている点が大きな特徴だ。 世代観と時代背景 Z世代は、デジタルネイティブとして育ち、情報の取捨選択能力に長けている。また多様性や包括性を重視し、環境問題や社会正義などへの意識が高い一方で、ブランドに対しては「共感」「目的」「透明性」を求めるのが特徴である。 dcdx社のレポートでは、2021年〜2025年(コロナ禍~ポストコロナ期)における、Z世代の価値観の変化について以下のような記載があった。 2021年(不確実性の年):コロナ禍の影響で将来への不安が高まり、Z世代はブランドに「信頼」や「安定性」を求める傾向が顕著に。 2022年(可能性の年):社会の回復が進む中で、Z世代は主体的に行動し、変化を作り出せる可能性を模索。この年は、ブランドがZ世代とともに「前向きなビジョン」を提示することが求められた。 2023年(体験の年):行動制限が緩和され、Z世代は「リアルな体験」に価値を感じるように。ブランドは製品・サービスに体験要素を組み込み、物理的・デジタル両面で感動を提供することが重要に。 2024年(発見の年):Z世代は自らが文化やトレンドの形成者であることを認識。ブランドに対して「消費を通じて自分たちのアイデンティティや価値観を反映できるか」を重視。 2025年(決断の年):経済力が拡大し、消費の主導者となるZ世代が、ブランドの目的や社会的貢献度をもとに選択を行う年。価値観と一致するブランドのみが支持を得られる傾向がさらに強まる。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)の重要性 Z世代におけるユーザー生成コンテンツ(UGC)の影響力は、企業にとって欠かせない要素となっている。 レポートによれば、Z世代はインフルエンサーの投稿に比べて、UGCに4倍も影響を受けやすいとされている。これにより、若年層の消費者は、信頼できる本物のコンテンツを重視し、企業のマーケティング戦略においてもUGCの活用がますます重要になっている。 ユーザー生成コンテンツ(UGC)増加による効果 ユーザー生成コンテンツ(UGC)が増加すると、ブランドのソーシャルメディアでのエンゲージメント(いいね、コメント、シェア)が向上し、ブランドへの親近感や認知度が高まる。 このようなエンゲージメントの向上は、企業にとって重要な指標となり、消費者のロイヤリティや最終的な売上に直結する。 さらに、ブランドの「魅力度」が上昇し、価格決定力やイノベーション、そして株主価値の向上にも繋がることが示されている。 企業は、このUGCの力を最大限に活用することで、Z世代を中心とした次世代の消費者との深い絆を築き、長期的な成長を実現することができる。 Z世代にとって魅力的なブランド Z世代が選ぶ「最も魅力的なブランド」TOP25には、実店舗や施設を持つブランド、娯楽系、オンラインプラットフォームのブランドが多くランクイン。 これらのブランドは、日常的に利用したり、コンテンツを通じて接触する機会が多いため、Z世代との強い繋がりを感じさせる。特に、エンタメやショッピングなど、体験型の要素を重視したブランドが目立っている。 スタバがランクダウンした理由は? また昨年度結果と比較しランクダウンしているブランドとして、スターバックスが挙げられている。ランクダウンした理由は、いくつかの要因が重なった結果と考える。 1.「シークレットメニュー」の誤解や過度な期待 まず、TikTokの影響でカスタマイズの複雑化が進み、オーダー時間が長くなることで顧客の不満が増加した。 特に、「シークレットメニュー」や過度なカスタマイズによる注文の煩雑さが、店舗運営に負担をかけ、消費者体験を損ねた。さらに、過度なカスタマイズ文化や透明性の欠如が、Z世代の価値観と反する形でブランドの信頼性を低下させた。 2.「サードプレイス」としての魅力度低下 また、スタバの「サードプレイス」としての役割が薄れ、ホームレスの問題や店舗の配置変更(スタンド型店舗増加)が影響した。加えて、人種差別問題などの社会的な問題もブランドイメージを悪化させ、支持を失う要因となった。 btraxが提供できる価値 Z世代に関する深い理解と戦略的なアプローチは、アメリカ市場での成功に不可欠です。btraxはアメリカに拠点を構え、日本企業が現地で効果的に事業を展開できるよう、以下のサポートを提供します。 1. 消費者リサーチ Z世代の嗜好、行動パターン、購買心理を徹底的に分析し、データに基づいた洞察を提供。ユーザーインタビューやオンライン調査を通じて、ターゲット層の本音を明らかにします。 2. 市場参入戦略の立案 アメリカ市場に特化したカスタマイズ戦略を設計し、ブランドの競争力を最大化。ローカルのトレンドや文化を反映した効果的なマーケティングプランを策定。 3. ソーシャルメディア活用支援 TikTokやInstagramなど、Z世代が利用するプラットフォームでの効果的なキャンペーンを設計・運用。ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用方法をアドバイスし、ブランドの魅力を最大限に引き出します。 4. デザインとブランディング アメリカ市場で受け入れられるローカライズデザインを提供し、視覚的にも共感を得るブランドイメージを構築。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験と現地ネットワークを活かし、貴社の成功をサポートします。Z世代へのアプローチや市場参入戦略についてのご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 アメリカに拠点を置いているからこそ提供できる現地目線の洞察と実行力で、貴社の可能性を広げます。 まとめ:Z世代へのアプローチが未来を切り開く鍵 Z世代は「共感」「透明性」「体験」を重視し、UGCの影響を強く受ける世代であり、企業にとって重要なターゲットとなる。その特徴を踏まえた適切な戦略が、これからの市場での成功を左右するだろう。 btraxは、アメリカ市場での豊富な経験を活かし、Z世代への効果的なアプローチをサポート。ローカルの視点と専門性を活かし、企業の可能性を広げる支援を提供している。Z世代という新たな市場への挑戦に向けた最適なパートナーとして、ぜひご相談いただきたい。

無人タクシーの未来がここに!【完全解説】Zooxの驚きの技術とAmazonの野望

未来がもう来てた! これは、2022年に日本から来た友人がサンフランシスコにて、無人・自動運転タクシー、通称ロボタクシーのCruiseに乗った際の言葉。当時は、一般車両を利用していました。 それから約半年後。Google傘下のWaymoが実用化され、そして最近はもう一つの自動運転タクシーのZooxがついにサンフランシスコの街を走り出した! ついに見つけた!サンフランシスコの道を走る無人タクシーのZoox. 一般車両を使うWaymoに対して、こちらは完全に運転席の無い専用デザイン。そしてめっちゃ可愛い。 pic.twitter.com/uyVadQ0x91 — Brandon K. Hill | CEO of btrax 🇺🇸x🇯🇵/2 (@BrandonKHill) December 26, 2024 それでは、革新的なデザインと先進技術を備えた『Zoox』が、どのように未来のモビリティを形作ろうとしているのか。最新情報をもとに、その全貌に迫ります。 Zooxとは? Zooxは、Waymoと同様に自動運転タクシーの最前線を走る革新的な企業の1つです。「個人の移動手段を誰にとってもより安全に、よりクリーンに、そしてより快適なものにすること」を使命に2014年に設立され、2020年にAmazonと合併契約を結び、Amazonの完全子会社になりました。 従来の自動車メーカーとは異なり、Zooxは完全自律走行を前提とした車両をゼロから設計しています。高性能なセンサー、先進的なソフトウェア、厳密なテストにより、自動運転車両はこのような交通事故の94パーセントの原因となっているヒューマンエラーの影響を大幅に減少させ、最終的には排除することが可能となるとZooxは発表しています。 この独自のアプローチにより、Zooxは安全性、効率性、そして乗客の快適性を最大限に追求し、現在サンフランシスコやラスベガスなどの都市部でサービス展開を進めており、都市モビリティの革命を目指しています。 Zooxの自動運転車両の特徴 Zooxの車両は、従来の自動車の概念を覆す以下の4つの革新的なデザインを採用しています。 ①双方向デザイン 前後対称の「錠剤型」デザインにより、Uターンやバックが不要で、小回りが利くため狭い都市空間でも効率的な移動が可能です。 ②乗客快適性 ハンドルやブレーキは一切なく、4人乗りの広々とした室内空間を実現。各座席にタッチスクリーンを設置し、温度調整や音楽再生などの個別制御が可能です。カップホルダーやワイヤレス充電ポイントなども設置されています。 ③長時間稼働 133kWhの大容量バッテリーを搭載し、一回の充電で長距離走行が可能です。これにより、24時間稼働のサービス提供を目指しています。 ④革新的な内装 「車輪付きのリビングルーム」をコンセプトに、昼間は大きな天窓から自然光を取り入れ、夜間は星空のような照明で室内を演出します。 この独自設計により、Zooxは単なる移動手段を超えた、新しい都市生活体験を提供しようとしています。 先進的な安全技術 Zooxは安全性を最優先に設計されており、100以上の新しい安全技術を搭載しています。部品の1つが故障したとしても、システムの残りの部分は安全に動作し続けるように設計されており、航空業界からヒントを得て自動車の設計に取り組んでいるとのこと。 例えば以下の4つ。 ①エアバッグシステム 全方向から乗客を保護する独自のエアバッグシステムを開発。Zoox車両の独特な対面式シート配置により、乗員保護システムの抜本的な見直しが必要となりました。 それにより誕生した新しいエアバッグシステムは、エアバッグ制御ユニット(ACU)によって制御され、車両の進行方向や速度、衝突の程度を検知するセンサーデータを活用します。Zoox車両は双方向走行が可能なため、ACUは両方向の衝突を検知します。 従来のステアリングホイールやダッシュボードがない車両内装に適した新世代のエアバッグを開発しました。システムは以下の5つの異なるタイプのエアバッグで構成されています ● 馬蹄型カーテンエアバッグ:車両の両端での衝突時に、乗員が接触する前面エアバッグの反力面(安定した表面)を提供します。 ● フロントエアバッグ:天井から展開し、各座席の前に降下します。くぼみのあるポケットで2つのセクションに分かれており、乗員の頭部、首、胸部をより効果的に保護します。 ● リアエアバッグ:衝突した側の乗員ヘッドレスト後方から展開し、破片の客室内侵入を防ぎます。 ● サイドヘッドエアバッグ:側面衝突時に天井から展開し、座席と窓の間に降下して乗員の頭部と首を保護します。 ● シートサイドエアバッグ:各座席の側面に組み込まれており、高速での側面衝突時に展開します。シート内側に押し出されることで、シート表面が乗員の体に近づき、より安全に乗員を固定します。 また、窓側に向いたエアバッグシステムの表面には、救急隊員向けの指示が明確に表示されており、事故後の車両進入方法や乗員救助の手順が記載されています。 ②360度視野センサー LIDAR、レーダー、カメラを組み合わせた高性能センサーシステムにより、周囲150m以上を認識可能。 センサーによりすでに認識によって識別および分類されている他の「エージェント」(たとえば、車、歩行者、自転車)による潜在的な行動結果を予測します。その次に、車両が取るべき最適なルートを決定します。 ③補完システム 航空機産業にインスパイアされた設計で、システム障害時にも安全運行が継続可能。 ④シートベルト監視システム センサー、スイッチ、カメラを組み合わせた安全システムにより、全乗客のシートベルト着用を確認するまで走行を開始しません。 また、自動運転システムが衝突の可能性や差し迫った危険を検知した場合、シートベルトシステムは事前にベルトを引き締め、エアバッグの展開と保護に最適な姿勢に乗員を保持します。この機能により、常時すべての乗客に対して最高レベルのシートベルト安全性能を提供します。 これらの技術により、Zooxは自動運転車の安全基準を新たなレベルに引き上げています。 高度な自動運転システム Zooxの自動運転システムは、最先端のAI技術と豊富な実地テストデータに基づいています。 ①リアルタイム環境認識 高性能センサーとAIの組み合わせにより、車両は周囲の状況を即座に分析し、安全かつ効率的な判断を実行します。 Zooxは、新しいシナリオに遭遇すると、人間のドライバーと同じように慎重に近づきます。当社の車両は、地図にない工事現場など、一時的な環境の変化も理解します。 ②テレガイダンス 複雑な状況(例:工事現場)では、リモートオペレーターによる遠隔支援が可能です。これにより、AIの学習も促進されます。 ③シミュレーションテスト 現実世界では稀なケースも、仮想環境で徹底的に検証しています。 ④高速走行能力 最高速度は時速75マイル(約120km/h)に達し、高速道路での走行も可能です。 このようにZooxは7年以上にわたり、複数の都市で厳密なテストと検証を重ね、高度な自動運転システムの信頼性を支えています。 サービス展開状況 Zooxは2024年12月現在、以下のように段階的にサービスを拡大しています。 サンフランシスコ 2024年11月からSoMa地区で自社従業員向けのテスト運行を開始。今後、一般向けサービスへの拡大を計画しています。 ラスベガス ラスベガス・ストリップ周辺でテスト運行を実施中。商用サービス開始に向けて準備を進めています。 フォスターシティ カリフォルニア州DMVから許可を得て、本社周辺で時速35マイルまでの公道テストを実施しています。 2024年2月には、カリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から一般向け無料乗車サービスの許可を取得し、4,000人以上のゲストが自動運転を体験しました。 法規制への対応 Zooxは、自動運転車の安全性と信頼性を確保するため、厳格な法規制に積極的に対応しています。 ① FMVSS認証 2022年7月、Zooxは連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠した世界初の完全自動運転車両として認証を受けました。 ② カリフォルニア州許可 カリフォルニア州とネバダ州で無人運転テスト許可を取得。カリフォルニア州では2018年に自動運転車の公道テスト許可を取得した最初の企業となりました。 ③ CPUC許可 2024年2月、カリフォルニア州の公共サービスを監督し、規制する機関であるカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から一般向け無料乗車サービスの許可を取得。 Zooxは「驚きなし、完全な透明性」の哲学に基づき、規制当局や地域コミュニティとの緊密な連携を重視しています。 Waymo, Cruiseとの比較 Zooxは、WaymoやCruiseといった競合他社とは異なるアプローチを採用しています。 既存の車両を改良するのではなく、ゼロから新しい車両を設計・開発することで、都市モビリティの未来を見据えた革新的なビジョンを実現しようとしています。この独自のアプローチにより、安全性を最優先にした設計が可能になっています。 現状の課題 ① 規模拡大 現在は数十台規模ですが、商用サービスの本格展開に向けて大量生産体制への移行が今後必要となります。 ② 公共受容性 自動運転車への不安や懸念を解消し、社会的受容を高めることが重要です。新しい設計による車尾を向いて座ることに対して乗客が不快感を感じる可能性や、見知らぬ人との相乗りによる社会的な不快感への対応が必要になる可能性があります。 ③ 技術的課題 2024年5月にNHTSAが調査を開始した後部衝突事故など、技術面での改善も継続的に必要です。 その他、複雑な都市環境での運用に関して高精度地図の事前作成や、予測困難な状況への対応など、複雑な都市環境での安全かつ効率的な運用に関する技術的課題があります。 […]

瞬間的にめっちゃ流行った Clubhouse (クラブハウス) はなぜ失敗したのか?そこから学べる5つの教訓

コロナ禍真っ只中の2021年の初頭、日本を含め、世界で大きな話題を呼んだサービスがある。「Clubhouse (クラブハウス) 」だ。 今でも覚えている人もいるかもしれないが、招待制の音声メディアサービスで、当時は参加したい人が増えすぎて、招待券がメルカリで売られるレベルにまで加熱していた。 その理由の一つが、イケてる起業家からインフルエンサー、そしてアイドルまでが参加し、ユーザーとの”生” の交流ができていたから。 イケてる奴らはみんな使ってるClubhouse また、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグ、a16zなど、シリコンバレーの著名起業家やVC, そして暗号通貨コミュニティーの間でも頻繁に利用され、大きな話題を呼んでいた。 2021年の1月から4月の3ヶ月間で実に1400万ダウンロードを記録し、”The Next Big Thing” として大きな注目を集めた。それに合わせるように評価額も40億ドルを超え、ユニコーンが4頭いた計算になる。 しかし、その成長の勢いを保てず、さらにプラットフォームの収益化にも失敗した結果、ユーザーの利用頻度が低下し、その評価額も下落していった。 Clubhouseの主な投資家 Clubhouseは一気にユーザーを集めただけではなく、シリコンバレーの著名投資家やVCから資金調達を行なったことでも大きな話題になった。 特にAndreessen Horowitz (a16z) は、イチオシ投資先スタートアップとして、パートナーの2人が主要インフルエンサーとして出演するなど、マーケティング面でも大きな支援を提供していた。 Andreessen Horowitz Clubhouseへの初期投資家の一つで。2020年5月に1000万ドルのシード資金を出資し、2021年1月のシリーズAでも追加出資を行った。このシリーズAでは1億ドルを調達し、評価額は10億ドルと報じられている。 同ファームのジェネラルパートナーであるアンドリュー・チェン氏はブログで「Clubhouseは偶然の出会いが生む会話とユーザー生成コンテンツを見事に実現した」と評価していた。 また「ソーシャルオーディオの主要プラットフォームになる可能性がある」とも強調していた。 DST Global DST GlobalはClubhouseに1億ドルを出資し、評価額を10億ドル規模まで引き上げた。わずか数カ月前までは1億ドル程度の評価額だったため、飛躍的な上昇といえる。この投資により、Clubhouseは世界で最も価値あるソーシャルメディア系スタートアップの一つとみなされた。 DST Globalの創業者兼CEOであるユーリ・ミルナー氏は投資当時、「Clubhouseは音声を軸にした新しいタイプのSNSで、世界中の数百万人の注目を集めている」と述べ、アプリの可能性に期待感を示していた。 Tiger Global Management 2021年4月のシリーズCにおいて5,000万ドルを調達し、評価額は40億ドルにまで達したと報じられている。リード投資家はTiger Global Managementであった。 同ファームのマネージングパートナーであるスコット・シュライファー氏は「Clubhouseは音声をソーシャルに変革し、人々のコミュニケーションの在り方を変えている」とコメントしている。 実際の損益や数字は明らかになっていないが、2020年から2021年にかけての急速な人気と、その後の失速ぶりを見るだけでも、その落差は非常に大きかったといえる。CEO自身も「(アプリが)急速に伸びすぎた」と語っている。 Clubhouseの栄光と挫折から学べる5つの教訓 ではなぜここまで急激にユーザーと資金を集めたClubhouseが失速したのか?また、そこから得られる教訓を考えてみよう。 教訓1:過度なブーム(ハイプ)に注意する Clubhouseの初期成功の大きな要因は、「次なるSNSの本命」ともてはやされた過度なブームであった。有名人や業界のインフルエンサーがこぞって参加し、話題を集めた。 しかし、この盛り上がりは必ずしも持続可能ではなく、Twitter (X) やSpotifyなどが類似機能を提供し始めると、Clubhouseはユーザー数を維持できなくなった。 瞬間風速的に一気に注目を集めたからといって、必ずしも継続性があるわけではない。これまでの多くのスタートアップサービスがそうであった通り、過度なブーム=ハイプに気をつけなければならない。 教訓2:競合環境を見極める Clubhouseは、Twitter (X) の「Spaces」などの競合サービスに直面し、十分な差別化ができないまま競争にさらされた。 先行者優位があったとしても、差別化できなければ市場に埋もれてしまう可能性がある。競合の多い市場で差をつけるのは、優れたスタートアップであっても容易ではない。 特に新しいカテゴリーを開拓する場合、既存の人気サービスに後追いされる可能性が高い。そうなってくると、一時は先行優位性で引っ張れるが、後発サービスに駆逐される可能性がある。 教訓3:明確な収益化戦略を持つ Clubhouseは広告やサブスクといった収益源を持たず、収益化に苦戦した。 魅力的なプロダクトやユーザーベースがあっても、長期的に財務的に安定する方法を持たない企業は投資においてリスクが高い。 最初のうちは無料サービスでガンガンユーザーを増やすのは良いが、どこかのタイミングでプロダクトやユーザー特性に合った明確な収益モデルが重要である。 特に音声系のサービスは、SoundCloudやSpotifyが苦戦したように、マネタイズすることは容易ではなく、その辺の戦略を早い段階で立てておく必要があるだろう。 教訓4:長期的なユーザーエンゲージメントの可能性を見極める Clubhouseは急激にユーザーを増やしたが、そのユーザーを継続的に引き留めることに失敗した。 多くの人がアプリを一度ダウンロードしてみたものの、すぐに飽きて使わなくなるケースが多かったのである。そもそも、何度か使っているうちに、Clubhouse内での会話がかなり「不毛」であることに気づき、時間の無駄使いをしていると感じるユーザーも少なくなかっただろうと想像できる。 その結果、ユーザーが望む機能よりもそうでない機能が先行してしまい、ユーザーにとっての魅力を保ち続けることが難しくなった。 むしろ、現在でも引き続き使い続けている人がいるのだろうか? 教訓5:一時の社会的変化にだけ合致したサービスを避ける Clubhouseが大バズりしていた時期は、世界的に新型コロナウィルスが蔓延し、多くの人々かコロナ禍での「ステイホーム」を余儀なくされていた。 その結果、時間を持て余すものの、人との交流ができないため、何かしらのコミュニケーションツールを欲していた。それも、文字だけではなく、音声といった「血の通った」方法で。 そんな時期に、顔を出さずに気軽に音声だけで参加できて、同じトピックでさまざまな人たちと交流できるプラットフォーム、Clubhouseが出てきたもんだから、大流行り。 しかし、コロナが明け、リアルに人と会えるようになったことで、わざわざ音声ツールを使う必要がなくなった。 まとめ Clubhouseの急成長と急失速は、とりわけサービスをデザインする際、そしてスタートアップのビジネスモデルを考える際の大きな教訓になる。 どんなスタートアップにも成長と成功の可能性は確かに存在するが、競合環境、収益化戦略、長期的なユーザーエンゲージメントなどの要素を慎重に見極める必要がある。 そのためには、ユーザーニーズの掘り起こし、競合サービスの状況、そして未来予測をした上でのプロダクト作りが求められるだろう。

CES 2025 ガイド  世界最大のテックカンファレンスの基本情報と注目したい10のテクノロジートレンド

2025年もテクノロジーの最前線を知る絶好の機会として、世界中のテクノロジー企業が一堂に会する「CES(Consumer Electronics Show)」がラスベガスで開催される。 毎年、次々と発表される革新的な製品やサービスが注目を集め、未来のテクノロジーを垣間見ることができる。CES 2025では、どんな画期的な技術や製品が登場するのだろうか。 CES 2024の様子 CESの歩き方と2025年のテクノロジー予測 本記事では、CES 2025で期待されるトップ10の技術とトレンドを紹介し、どのようなイノベーションが私たちの生活を変えるのかを予測する。 要注意!会場がデカすぎる! 現場での発表や展示エリアが東京ドーム4個分と膨大すぎて何から見て良いかわからくなりがち。 CES 2025の基本情報 開催時期: 2025年1月7-10日 (Media Dayは5, 6日) 開催場所: ラスベガスコンベンションセンター、Venetian Expo. Venetian, Aria, Mandaley Bay等 出店社数: 3,500以上 (見込) 来場者数: 13万人以上 (見込) 公式サイト: https://www.ces.tech/ イベント・展示エリア CESでは、LVCCだけではなく、ストリップと呼ばれるラスベガスの中心エリアに複数のイベント・展示エリアを設置する。それらは大きく分けて3のエリアに分布し、それぞれのエリアの複数の建物の中で開催される。 時間節約のコツ3選 これだけ膨大なエリアを回らなければならないので、時間がいくらあっても足りない。なので本題に入る前に時間を節約するためのコツ3つほど紹介する。 1. スケジュール管理は公式アプリで まずはどこに行ってどの展示やセッションを見るかを事前に決めておくのが良い。というのも、現地に到着してからだとあまりにもバタバタしすぎてて、それどころでは無いから。 ここで問題になるのが、同じ時間に複数のセッション・展示が同時に行われていおり、それも前後の予定の場所とかなり離れている可能性もあるということ。 一つずつのセッションをWebで確認して、カレンダーに入れていくのは気が遠くなるレベルの作業になる。 ここで便利なのが、公式アプリ CES App。こちらをダウンロードしてログインすれば、日時に合わせたスケジュールが表示され、”Add to Agenda” をタップしておくだけで、 事前に、そして自動的にスケジュールが生成される。 2. 入場バッジのピックアップは空港で イベント会場に到着してまず最初の難関は入場バッジの引き換えプロセスだろう。事前にメールやアプリ経由で受け取ったQRコードを紙の入場バッジに変えるのだが、かなりの列になっていることが多い。 そこで便利になるのが、空港に設置された引換所だ。 飛行機を降りて荷物を受け取るエリアの駐車用に近い側、エスカレーター横に設置されており、フライトごとに到着時間が異なるので、大きな混雑になることが少ない。 また、開催日の前日や、結構夜遅くまで開いているので、かなり便利で時間の短縮につながる。 3. LVCCの建物間移動は無料のTeslaタクシー (Vegas LOOP) で イベントの会場が複数の建物に点在しているため、建物間の移動だけでもかなりの時間を要する。また、タクシーやUberなどのライドシェアを捕まえようとも、なかなか時間がかかってしまう。 加えて、交通渋滞も予想されるので、予定していたセッションに間に合わないケースが多発する。 それを解決してくれるのが、通称 Teslaタクシーと呼ばれるVegas LOOPだ。これは3つあるLVCC間をトンネルを通じてつないだルートをスムーズに移動してくれる便利な乗り物。それも完全無料!事前予約も要らないし、待ち時間もほぼ無い、かなり画期的な移動手段である。 では、CESの基本をカバーしたところで、本題の見どころをいくつか紹介する。 CES 2025で注目したいテクノロジートレンド CESで、テクノロジーのさまざまな分野を議論する幅広いセッション複数ある。 ざっと考えても、デジタルヘルス、AI、サステナビリティ、ゲーム、自動車テクノロジー、サイバーセキュリティ、フィンテック、さらには宇宙テクノロジーなどが含まれる。 そんな中でも、今回特に注目したいセッションはこちら。 CES 2025の注目セッションの一部をご紹介: AI搭載デバイスとソフトウェア 革新的な複合現実(MR)体験 ウェアラブル技術の突破口 携帯型ゲーム機 スマートホームの革新 ヘルステクノロジーの進展 持続可能な技術とグリーンソリューション 次世代電気自動車(EV) 量子コンピュータの進展 ロボティクスと自律システム 1. AI搭載デバイスとソフトウェア 人工知能(AI)は消費者向け電子機器にますます統合されており、CES 2025では個人アシスタントからゲーム用ハードウェアに至るまで、さまざまな分野でAIの可能性が示されるだろう。 注目すべきポイントは、効率性を高め、ユーザー体験を向上させるために特別に設計されたチップを搭載したAI搭載ノートパソコンである。 例えば、AIは使用パターンに基づいてバッテリー寿命を最適化したり、写真やビデオ編集をAI支援で改善することが考えられる。 具体例: 起死回生を狙うIntelの「プロジェクトアテナ」は、バッテリー管理をAIで強化し、システムの反応性を改善することで、ユーザーの使用状況に基づいた電力管理を予測する Microsoftの「Surface」シリーズは、AIを活用してタッチ操作を予測し、パフォーマンスを向上させるデバイスを登場させる AIを搭載したスマートフォンのカメラは、ユーザーの好みに合わせて自動で色合いや明るさを調整し、より鮮明な写真を撮影できるように進化している 2. 革新的な複合現実(MR)体験 複合現実(MR)はCES 2025で大きな進展が期待されており、Microsoft、SONY、Metaなどの企業がリーダーとして登場する 次世代のヘッドセットが発表され、より快適で軽量なデザイン、解像度の向上、視野角の拡大、さらにAI技術を駆使したインタラクションが可能になる また、ビジネスでのリモートコラボレーションやエンターテイメントで新しいMRアプリケーションが登場する 具体例: Metaは、ARアプリとの統合が強化されたQuest Proの後継機を発表し、エンターテイメントやビジネス向けの新しいプラットフォームを提供する Microsoftは、HoloLensの新しいバージョンを発表し、製造業や医療業界向けにMR技術を活用したソリューションを提供する SONYは、PSVR 2の後継機を発表し、VRゲームの体験を一層リアルに進化させる 3. ウェアラブル技術の突破口 CES 2025では、ウェアラブル技術の進化が大きな注目を集めるだろう。 […]

【アメリカ進出を目指す企業は必読】今更聞けないウェブアクセシビリティとは?

これまで何度かFreshtraxでも取り上げてきた ウェブアクセシビリティ。 日本でも障害者差別解消法の改正施行に伴い、2024年6月から一般企業にも「合理的配慮」が義務化されることになり注目されています。 パンデミックを経て、行政手続きやビジネス、個人間のコミュニケーションまであらゆる領域でのデジタル化が進んだ結果、ウェブアクセシビリティの重要性はますます高まってきていると言えるでしょう。 アクセシビリティとは?その基本とデザインのポイント 欧米圏では、ウェブアクセシビリティは人権の一部であるという考えが広く普及し、法的にも取り締まりが強化されています。 アメリカへビジネス進出を検討する際には、 ウェブアクセシビリティへの配慮は今や避けては通れない道です。 今回の記事では、海外進出を検討している企業様の参考となるよう、ウェブアクセシビリティを理解する上でキーとなるWCAGと最新のウェブアクセシビリティチェックツールをご紹介します。 アメリカ進出の際に ウェブアクセシビリティが重要なのはなぜ? アメリカ進出において、ウェブアクセシビリティへの配慮がなぜ重要なのか? ビジネス的な観点から一言でいえば、アクセシビリティが確保できていないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反とみなされるリスクがあるためです。 人権意識の高いアメリカにおいては、1990年に成立した「障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act of 1990 :以下、ADA)」が企業のウェブサイトへも適用されると解釈されています。 アクセシビリティへの配慮がないウェブサイトを運営することはコンプライアンス違反と見做されるリスクがあり、日本企業も訴訟の対象となりえます。 近年、ADA関連の訴訟は増加傾向にあるため、十分な注意が必要です。 アクセシビリティとは、アクセス(access)できる=製品やサービスなどが利用できること、また、利用できる状況の幅の広さを意味します。 ウェブアクセシビリティは、その名の通り、デジタル空間におけるウェブサイトの利用しやすさを表す概念です。 例えば、小さな文字ばかりが並び、視覚障害がある方や高齢者の方にとって読みづらいウェブサイトは、”アクセシビリティが低い”と形容されます。   アクセシビリティは、重度の障害を持った方など、限られた人のためのものなのでは?と思っている方もいるかも知れません。 しかし、老化による視力の低下や、年齢・世代による理解度のギャップなども含め、アクセシビリティは限定的というより、むしろ包括的な概念です。 デジタル庁が出しているウェブアクセシビリティ導入ガイドブックによれば、日本だけでもアクセシビリティの確保の恩恵を受ける人は428万人以上いると言われています。 どんな人でも、ある日思いがけず怪我をして片手が動かせなくなったり、歳を重ねるごとに耳が聞こえにくくなる可能性はあります。 アクセシビリティは他人事ではなく、いつかの自分や身近な人のためであるとも考えられます。 ウェブアクセシビリティについて理解する上で欠かせないWCAGとは何か? ウェブサイトのアクセシビリティの確保の重要性がわかったところで、アメリカ基準でコンプライアンスを遵守したウェブサイトを作るためには具体的にどうすれば良いのでしょうか? 実際のところADA自体には、ウェブサイトがADAに準拠しているかどうかを判断するための具体的なルールというのは定義されていません。 そこでウェブアクセシビティ確保のためのガイドラインとして普及しているのが”Web Content Accessibility Guidelines (通称 WCAG)”です。 このガイドラインは、ウェブに関わる技術の標準技術の開発と普及を行っている非営利団体であるワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(World Wide Web Consortium:W3C)によって作成されたもので、ADAに関わるウェブアクセシビリティに関する項目が網羅されています。 このガイドラインに従っている=ADAに準拠したウェブサイトであると言えます。 WCAGの概要 WCAGは、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、及びモバイルデバイス上のウェブコンテンツのアクセシビリティを扱っています。 このガイドラインに従うことで、ウェブサイト上のコンテンツが、視覚や聴覚、運動制限など、様々な障害のある人たちにとって、アクセス可能な状態となります。 これらは、一般のユーザーにとっての使いやすさと矛盾するものではないので、アクセシビリティを向上させることで、利用者全員にとってよりよいウェブサイトにすることができます。 ガイドラインの内容は、時代やテクノロジーの変化に応じてアップデートされており、2024年3月現在、最新版は2023年10月に公開された WCAG 2.2 です。 原文は英語ですが、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の翻訳グループにより、日本語版のガイドラインも公開されています。 達成基準は3段階(A・AA・AAA)に分けられており、各レベルの定義は下記の通りです。  レベルA:ウェブアクセシビリティを確保するために最低限達成するべき状態 レベルAA:ウェブアクセシビリティが十分確保されている状態。日本でも公的機関に対して求められるレベル レベルAAA:非常に高いウェブアクセシビリティが確保できている状態 全体は大きく分けると、知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢の4パートで構成されています。 詳細については今回の記事では割愛しますが、WCAGガイドライン(日本語版 2.2)は無料で公開されていますので、興味のある方はぜひご一読ください。 アクセシビリティチェックに使える!無料のブラウザ拡張機能3選 アクセシビリティやWCAGについての概要をご紹介したところで、ここからは実践編として、ウェブサイトのアクセシビリティをチェックする際に無料で使えるブラウザ拡張機能3選をご紹介します。 なお注意事項として、アクセシビリティチェックツールはどれもサイトのアクセシビリティを100%保証するものではありません。 特にコンプライアンス遵守の観点からはマニュアルのチェックは必須ですし、場合によっては専門のベンダーによる監査が必要な場合もありますのでご留意ください。 ① はじめの一歩におすすめ!無料で使えるプラグイン:Google Lighhouse これまで全くアクセシビリティのことを考えたことがなかった!という方へ、はじめの一歩としておすすめしたいのが、Googleが提供しているウェブサイト診断ツールのLighthouseです。日本語にも対応しています。 サイトのパフォーマンスやSEOスコア、そしてアクセシビリティについて、自動でレポートを作成してくれます。 LighthouseはWCAGに特化しているわけではないのですが、基本的な事項は網羅されているので、アクセシビリティの観点からどんなところが問題になるのかの肌感を掴むには、データが見やすく気軽に使えるのでおすすめです。 ご自身の会社のサイトだけでなく、「このサイト、なんだか使いにくいな?」と思ったサイトを診断してみると、意外な発見があるかもしれません。 ② デベロッパーツール内で利用できる:axe Dev Tools ウェブサイトの開発フェーズで活用できるプラグインとしておすすめなのがaxe Dev Toolsです。デベロッパーツール内で使用するためのプラグインです。 チェックしたいページをスキャンすると、重症度ごとに問題を洗い出し、修正するための情報を表示してくれます。Tutorialの動画もわかりやすく、初心者にもわかりやすいです。 ウェブサイトの開発が進めば進むほど、問題が発覚した際に修正必要な箇所が増えるため、開発のなるべく早い段階からこの様なチェックツールを導入できると、アクセシビリティ関連の修正に必要な工数や費用を削減することができます。 拡張機能の設定で日本語も利用できます。 ③ 自動チェック機能に加え、マニュアルチェックリストあり!:Accessibility Insights  同じく開発フェーズでおすすめなのがAccessibility Insightsです。こちらは英語版のみの提供となっています。 ChromeのプラグインとWindowsのデスクトップアプリで利用可能です。 簡易チェック(FastPass)機能では瞬時にサイト内のアクセシビリティ関連の問題と修正方法などをまとめてリスト化してくれます。 また簡易チェックではカバーしきれない範囲は、マニュアルチェックができるように項目が自動でリスト化されます。細かくテスト方法や判断基準が示されるため、初めてチェックをする人にもわかりやすくなっています。 問題が解消されなかった際にはメモが残せる機能もついており便利です。 本記事ではウェブアクセシビリティのアメリカ進出へおける重要性、及び、関連ツールについてご紹介しました。 Btraxは、2004年設立以来、アメリカ進出を目指す日本企業の皆様へ、様々なサポートを提供して参りました。アメリカ進出へ向け、ウェブサイトのリデザインから、リスキリングワークショップ研修まで幅広く対応可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

リテールテックの革新:アメリカ主要小売店の最新テクノロジーが描く顧客体験の未来

リテールテックがもたらす小売業界の革新 近年、急速に進化するデジタル技術は、小売業界において大きな変革をもたらしている。これにより、顧客体験の向上や業務効率化が実現され、小売店は新たな競争力を獲得することが可能となっている。 本記事では、アメリカの主要小売店で展開されている最新のリテールテックを紹介し、その効果について探っていく。 リテールテックの概要 リテールテックは、小売業界における最新のテクノロジーの活用を指す。このテクノロジーは、さまざまなカテゴリーに分類することができますが、特に注目されるのは以下のような分野である。 新しい決済方法 小売業界では、顧客の支払い体験を向上させるために新しい決済方法が導入されている。これにより、レジ待ち時間の短縮や支払いのスムーズ化が図られ、顧客はよりストレスフリーなショッピング体験を享受することができる。 Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた ロボット ロボット技術の進化により、小売店では在庫管理が大幅に効率化されている。自動化されたロボットが品揃えの確認や商品の位置の更新などの作業を行い、従来の手作業に比べて迅速かつ正確な在庫管理が実現されている。 ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点 ドローン配達 ドローンを活用した配達サービスは、小売店の配送プロセスを革新し、顧客により迅速かつ柔軟な配送オプションを提供している。遠隔地や交通の混雑する地域への配送も容易になり、顧客満足度の向上につながっている。 ドローン産業に起こるであろう4つの変革 Virtual Care(遠隔医療) 小売店では、オンライン上で医療相談や診断を受けることができるVirtual Careサービスも提供されている。顧客は店舗を訪れることなく、自宅から医療サポートを受けることができ、健康管理における利便性が向上している。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 これらのカテゴリーにおける最新のリテールテックの導入により、小売業界はますます革新され、顧客体験の向上や業務効率化が実現されている。 事例紹介: アメリカ主要小売店が導入しているリテールテック 【新しい決済方法】 Whole Foods Market アメリカの大手スーパーマーケットチェーンWhole Foods Marketは、Amazonに買収されて以降Amazonが持つテクノロジーとWhole Foods Marketが持つ様々なデータを上手く掛け合わせたサービスを提供している。 手のひら決済 そのうちの一つに、Amazon oneというサービスを用いた「手のひら決済」という革新的な支払い方法がある。このシステムでは、顧客の手のひらをスキャンすることで支払いが完了し、レジ待ち時間を大幅に短縮することができる。 ちなみに、Amazon oneへの登録は非常に簡単である。順序は以下の4つで1分ほどで完了する。 ①Whole foods店舗内にある「Amazon One」の機械で登録開始 ②クレジットカードを差し込み登録する→ここまではオンラインで登録可能 ③両方の手のひらを機械にかざして登録する ④最後に電話番号を登録して終了 Amazon Dash Cart さらにWhole foods Marketは「Amazon Dash Cart」の機能を用いて、手に取った商品をカート内でスキャンするだけで支払いを行う事ができ、チェックアウトの列に並ぶ必要がない便利なサービスも提供している。 【ロボット】 Walmartの清掃ロボット 世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartは、店内の清掃作業を自動化するためにロボットを導入している。それだけでなく移動しながら清掃すると同時に、棚の在庫状況をチェックも同時並行で行う。 これにより、店舗スタッフはより効率的に在庫管理や顧客サービスに集中することができ、店内の清潔さと品質を維持することができている。 Krogerの在庫管理ロボット 全米最大のスーパーマーケットチェーンKrogerは、店内の在庫管理をロボットを利用して行っている。既に800機以上のロボットにより、毎日20,000件以上のオンラインオーダーに対応している。 このシステムにより、商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、顧客が欲しい商品を素早く的確に提供することができる。また、従来の手作業に比べて効率が大幅に向上し、顧客満足度を高めている。 Krogerの無人トラック また、Krogerは自動運転車を提供しているGatik社と提携し、無人トラックによる配送業務の自動化&高速化を目指し試験運用している。 店舗受け取りや店内での買い物体験に加えて、新しいテクノロジーを用いた『ロボットによる在庫管理と自動運転による配送』を組み合わせることで、顧客にシームレスな体験の提供、それに伴う顧客満足度の向上とリピーターの増加を目指している。 Lowe’sの案内、警備、配達ロボット アメリカの大手ホームセンターLowe’sは、店内での在庫管理&案内、警備、配達の主に3つの作業にロボットを活用している。これにより、顧客は迅速かつ正確なサービスを受けることができ、店舗スタッフの負担を軽減することができている。 在庫管理&案内ロボット 高度な人工知能と3Dマッピング ソフトウェアを搭載したNAViiを利用している。NAViiは店舗内を歩き回り、正確にどの場所のどの商品を補充する必要があるかを知らせるだけでなく、価格が間違っていたり、間違った場所にある商品も識別することができる。 さらに、NAViiは顧客のサポート業務としても機能しており直接話しかけたり、NAViiに搭載されたディスプレイを用いて、特定の製品や部門の場所を尋ねると適切な場所に直接案内してくれる。 警備ロボット Lowe’sは盗難の防止や店舗の安全性向上のために自律型セキュリティロボットをテスト導入している。 このロボットは、周囲を移動しながら潜在的な問題を特定し、懸念事項を監視チームに報告する。また、顔認識機能はないが、熱異常検出及び人物検出センサーを装備しており、望ましくない侵入者をオペレーターに警告するなどの働きをしている。 移動中はヒューヒューという音を発することで視覚障害のある顧客への配慮もしている。また、ロボットを使用して助けを呼ぶことができるなど双方向通信システムを備えている。 配達ロボット Lowe’sは輸送サービスを提供している米国大手のFedExと提携し「SameDay Bot」という自律型ロボットを利用した同日配送サービスを試みている。 このボットは、歩道や道路脇で動作し、安定した状態を維持して障害物を回避しながら、縁石、未舗装路面、急カーブを通過できるように開発されており、段差も難なく進む事ができる。 このように米国ではロボット技術を用いた顧客体験の向上施策がどんどん進んでいる。 【ドローン】 Walmartのドローン配達 Walmartはスピード、安全性、持続可能性を重視するWingやZiplineなどの専門家と緊密に連携することによって、過去2年間でドローン配送をテキサスで試験的に実施し、20,000件を超える安全な配送を完了した。 ドローン配送により、顧客は今まで以上に迅速な配送オプションを利用できるようになり、商品は30分以内に届けられ、場合によっては10分ほどで届くこともある。利用料は無料であることも大きい。 これまで「忘れた食材や市販の風邪薬など急遽必要になったものや午後の甘いもの、カフェインの欲求を満たすスナックや飲み物、卵などの壊れやすい品物」など様々なジャンルの品物がオーダーされている。 その結果を受け、Walmartや提携先の企業は ”ドローン配送の需要は本物だという事が明らかになり、2024年がドローン配達の年になると信じている”と述べている。 Krogerのドローン配達 Krogerは2021年にドローン配送のPilot Testを実施したが、バッテリー、技術面、制限面などの問題から2024年2月時点ではドローン配送サービスの提供を停止している。 Pilot Test時のサービス内容は重さは5ポンド(2.26kg)まで&配達範囲は半径1マイル(約1.6km)などの制限があったものの、配送は無料で1時間以内に到着することを保証していた。 現在サービスは停止しているが、2023年にKrogerのドローンパートナーであるDrone Expressが資金調達を実施し、Krogerの顧客へのドローンサービスの再開と拡大に向け動いていると報道されたため、サービスの再開の日は近いかもしれない。 【Virtual Care(遠隔医療)】 Walmartのオンライン診断サービス Walmartは「Walmart Health Virtula Care」という遠隔医療サービスを一般会員に向けて提供している。そのサービスでは、電話またはビデオによる、資格のある認可を受けた医療提供者への24時間365日のアクセスを提供し、質の高いケアへのアクセスを増やすことで会員の満足度向上を目指している。 「緊急処置、男性&女性のプライベートな健康上の懸念、トークセラピー、ティーンセラピー、精神科」など様々なジャンルに対応したサービスがある。 さらに、ビジネス向けの遠隔医療サービスも提供しており、企業と協力して医療コストを削減し、遠隔プライマリケアなどの既存及び将来の従業員に特典を提供する遠隔医療ソリューションを開発&提供している。 Amazon Clinic Amazonもアメリカ国内で「Amazon Clinic」遠隔医療サービスを展開しており、顧客は24時間365日オンライン上で医師との面談や処方箋の受け取りを行うことができる。 これにより、顧客は緊急時の医療サポートを迅速に受けることができ、健康管理がより身近になっている。Amazon Pharmacyを選択することで処方箋も配送可能となり、診断から処方箋の受け取りまで一連の作業をVirtualで行うことも可能になっている。 Costcoの遠隔医療サービス Costcoはオンライン医療プロバイダーのSesameと提携することで会員に遠隔医療サービスを提供している。 […]

未来への一歩!Waymo無人タクシーがもたらす驚きの実乗車体験

未来の交通手段に一石を投じる革新が既に始まっている。 2023年8月10日、カリフォルニア州が承認した終日有料の無人タクシーサービスが、サンフランシスコ市内で驚きと期待を巻き起こしている。 この新しいタクシーサービスでは、運転手が一切必要なく、ライドシェアサービスですら必要ない。自動運転技術の進化がもたらす未来の一端に迫るこのサービス、一体どのような魅力があるのか。実体験を踏まえた詳細なレビューを通じて、その新しい交通手段の魅力に迫っていこう。 無人タクシー(Driverless taxi)とは? TechTargetの記事を参考にすると、”Driverless carとはセンサー、カメラ、レーダー、人工知能(AI)を組み合わせて使用し、人間のオペレーターなしで目的地間を移動する車両”とある。 実際にこれまでアウディ、BMW、フォード、グーグル、ゼネラルモーターズ、テスラ、ファルクスワーゲン、ボルボなどの企業が自動運転車を開発またはテストしている。 老舗自動車メーカー VS 自動運転時代 〜メルセデス, BMW, GMが起こす改革とは 2024年1月時点、サンフランシスコで代表的な無人タクシーは『Waymo』と『Cruise』だ。 Waymo  Waymoはカリフォルニア州マウンテンビューに本社を置く自動運転技術企業。Googleの親会社Alphabetの子会社であり、2009年よりGoogleの自動運転車プロジェクトとしてスタートした。 サンフランシスコやフェニックスなどの地域で24/7/365 完全自動運転タクシーサービスを展開中。 Cruise Cruiseは、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置く自動運転車の会社。General Motorsの子会社であり、SoftBank, Honda, Microsoftなどの投資家から92.5億ドル(1兆3000億円ほど)を調達し、自動運転車の技術をテスト及び開発している。 Cruise carには、360度見ることができる40以上のセンサーが搭載されており、数百フィート先やダブルパークされた車の周りなどを感知することができる。 話題の無人タクシー Cruiseをサンフランシスコで乗ってみた。その驚愕のユーザー体験とは! さっそく無人タクシーWaymoを使ってみた! サンフランシスコに来る前から無人タクシーの存在を知っていたので、到着した翌日にさっそく利用してみた。 その乗車体験があまりに驚くもので感動したので、乗車した際に得た知見を1つずつ紹介する。  手軽さが魅力!無人タクシーの使い方 何よりまずWaymoを利用して驚いたのは、アプリでWaymoを呼ぶところから目的地に到着するまでの必要とされる動作が明確かつ簡易であったこと。 当日の動作としてはスマホアプリでWaymoを呼び、乗車し目的地に着いたら降車するだけであった。初めて利用したが、利用方法で全く迷う場面がなかった。 退屈知らず!移動中の楽しみ方 乗車中も退屈しないように前席と後席にそれぞれ画像のようなタブレットがあり、各ジャンルの音楽を聴いたり、実際にどのようなルートを進んでいるのか、残りの乗車時間などを確認することができた。 タブレットには、人、車、オートバイなどが異なる大きさ、形で表示されておりしっかりと認知しているのだとわかった。 安全対策は万全! 無人タクシーということで、UberやLyftなどのサービスのように直接運転手に連絡できないため何か問題が生じた際にどうしようかと少し懸念していたが、杞憂に過ぎなかった。 万が一乗車中に問題が生じた際は画像のタブレットよりリアルタイムでサポートチームに連絡することができる。 さらに、何がしかの理由で早めに降車したい場合もタブレット上のボタンを押すことで近くて安全な場所に降車することができる。 プライバシー保護とストレスフリーな体験 個人的には、無人であることによるプライバシーが保たれていることやストレスフリーである点が非常に大きな利点であると感じた。 UberやLiftなどのサービスも非常に便利であるが、これまでドライバーとの会話であったり、時には車内の匂い、チップ制度などによって必要のないストレスを感じる瞬間が幾度もあった。 そのため、今回Waymoのサービスを利用し以上のストレスが一切なく、初めて利用したためテンションが上がり友達と車内で騒いでも誰にも迷惑をかけることがなく楽しく乗車することができた。 スムーズな移動体験! Waymoを利用して感じたのは、非常にスムーズであること。 機械が運転すると聞くと、勝手に時に不器用な動きなどが発生するのではないかと感じていたが街中で道が入り組んでいるサンフランシスコ市内でもスムーズに右折や停車をしていた。 それだけでなく、乗車、降車の際には並列駐車を避けたり、出発地付近のパーキング可能な場所に停まるなど他の歩行者や車の迷惑にならないように停車していたことも印象的であった。 急停止や急発進は一度もないのに加えて、予め推定時間は提示されているので特別遅いと感じることはなく推定時間よりも3分ほど早く到着した。 料金は格安!? Waymoの利用料金がどのくらいかを調べるためにUber、Liftとサンフランシスコ&東京のタクシー料金と比べてみた。(Cruiseはサービスを一時停止しているので比較できず) 条件は土曜日の18時で、東京のタクシーは距離をもとに料金を計算した。(参照記事 : 東洋経済ONLINE , taxisite) すると、意外なことにWaymoはちょうど中間の料金であることがわかった。サンフランシスコのタクシーを除いて他のライドシェアサービスと相場はほとんど同じであることがわかる。(Waymoは実際に乗車した際の料金でその他は諸費用が加算されるので、実質一番安価ではないかと思われる。) Waymoの進化は止まらない! Waymoはどんどん進化を遂げ、現在5th generation。 10 年以上にわたる公道での2,000万マイル(約3,218万km)の自動運転と100億マイル(約160億km)を超えるシミュレーションから得られた情報を分析し、多様で複雑な運転環境に取り組みように設計されている。 5th generationを構成する最新技術は以下の3つ。 Lidars : 車体のトップにあり、300メートルを超える範囲で360度の視野全体に渡る高解像度を提供。周囲の3D画像を描画し、車両の周囲にある物体のサイズと距離を正確に測定する。 Cameras : 500メートル以上離れた歩行者や一時停止標識などの重要な詳細を識別できる長距離カメラ+車体のPerimeter Lidarと連携して動作し、車両近くの物体を正確に検出し死角を減らすのに役立つ。 Radars : 雨、霧、雪などの厳しい気象条件でも物体の速度を瞬時に測定でき、数百メートル離れたところからバイク運転者を検出するなど遠く離れた物体も見ることができる。 結論 : Uberやタクシーよりも利便性が高い!非の打ちどころ無し。 非常に利用方法が明快であることに加えてタクシーなどを利用する際の無駄なストレスも感じることがなかったのが印象的であった。 そのため日本でタクシーを利用する人たちの需要(例えば早く移動したい、移動時間を有効活用したい、電車などの騒音から離れたいなど)を大きく捉えているのではないかと感じた。 値段もUberやタクシーよりも安いのに加えて、ストレスフリーで非の打ち所がない。ベータ版でこのクオリティなら将来どのように進化していくのか非常に楽しみになった。 なんと既にCruiseはHondaとJoint Ventureを作成して2026年度を目安に東京などの日本各地での自動運転車の商用化 を計画している。 日本でもこのような新しく素晴らしいサービスの解禁がされることを願うとともに、これからもサンフランシスコにいるからこそ体験できる最新のサービスを皆さんに共有していく。 補足 : 事故時の補償と責任の所在 最後に無人タクシーに関して疑問としてあるのが、事故が生じた際に誰が補償したり、責任を取るのか?という問題である。 そこで実際に以下のような質問文をCruiseとWaymoのカスタマーサポートに直接送ってみた。 すると、1週間も経たずに以下のようなメッセージを受け取った。 こちらの返信を読み取る限り、残念ながら将来的により内容をシェアするのを楽しみにしているというような曖昧な回答しか受け取ることができなかった。(Waymoは未だに返信なし) 恐らく特定の事象に関して言及するのは法的なリスクがあるため回答が難しいためではないかと思う。 ご参考までに以下にWaymo、Cruiseそれぞれの利用規約などを記載しておく。こちらに補償や責任に関して大きな概要が記載されている。 Waymo利用規約 Cruise 利用規約 参考までに安全性などに関してWaymoのCheif Product Officerが実際にWaymoに乗車しながら話している動画がこちら👇

主要メディアが伝えないCES 2024の裏側 〜 本当のイベントは夜の秘密部屋で 〜 

今年もCESに参加してきた。 そう、毎年恒例ラスベガスで開催される世界最大規模のテクノロジーイベントである。 関連記事: CES 2024 ガイド: 世界最大のテックカンファレンスの基本情報と見どころ7選 今年は日本からも多くのメディア関係者さん達が来ており、すでに各種チャンネルにて複数の取材レポート記事や動画が配信されている。 ということで、我々としては一般来場者が知らない、そして普段メディアがあまり伝えない「CESの裏側」をレポートしてみようと思う。 多くの発表はMedia Day (1/7-8) にて CESといえば、コンベンションセンターを中心とした、膨大なエリアでの展示が有名だ。でも実は本当にインパクトのあるセッションと展示は、一般公開日の前日と前々日に行われている。 そこでは、CES運営団体のCTAによる見所や、主要企業によるメディアセッション、そして特に興味深いプロダクトが展示される「Unveiled」が開催される。 Unveiledは実は誰でも展示可能 これまで何度もCESに参加しているのに、一つ大きな勘違いをしていることに最近気づいた。 というのも、この “Unveiled” と呼ばれるセッションでは、CTAによって選ばれた “Innovation Awards” 受賞プロダクトが多く展示されているため、てっきり選ばれた人達だけしか展示できないのかと思ってた。 しかし、先日サンフランシスコで開催されたCES 2024報告会で、これまで13回の展示経験を誇るShiftfallの岩佐氏によって新たな真実が明かされた。 なんとUnveiledは、お金さえ払えば誰でも展示できるとのこと。それも展示費用はそこまで高額ではないため、かなりコスパが良い。 Unveiledのセッション自体は3時間程度であるが、比較的小さな会場で多くのメディア関係者と接することができるのが魅力とのこと。 展示場所はポイントシステムで決まる さて、これも岩佐氏から聞いた内容。 毎年世界から来た数多くの企業がより良い展示場所を狙って凌ぎを削っているCESだが、その場所はどのように決められるのか?いつも気になっていた。 そこにはどうやら「ポイントシステム」的なものがあるらしく、ブース展示する度にポイントが加算され、それが増えるとより有利なロケーションに展示させてくれるとのこと。 ということは、以前より展示している企業が有利になる。ちなみに第一回から展示しているのは我らがPanasonicである。 ただ、最近は韓国企業がかなりの予算を割いて参加しているため、何かしらの “ブースト” がかかってるっぽい。 会場を歩いていると日本語がめっちゃ聞こえてくる これは毎回思うのだが、会場やその付近を歩いていると、かなりの確率で日本語が聞こえてくる。 おそらくメディア関係者だったり、展示している企業の方々だったり、見学に来ている人たちだと思う。他の国の人たちと比べても結構多いイメージ。 日本企業の展示量はそこまでではないはずなので、やはり取材やリサーチに来ている人が多い。 やっぱり皆んなインプットが好きなんだなー。って感じる。ちなみに、日本人の来場者は日本企業のブースを中心に周りがち。 日本企業はすごい。でも韓国企業はもっとすごい。 第一回からの参加企業がPanasonicだったり、メイン会場のプロダクトが家電系だったり、注目のWest会場がモビリティー展示中心だったりと、このイベントは何かと日本企業が得意なプロダクトカテゴリーが多い。 それもあって、毎年多くの日本企業が展示参加し、注目を集めている。 しかしながら、ここ5年くらいは韓国企業の勢いがすごい。Sumsong, LG, Hyndai, KIAといった大企業をはじめ、スタートアップ企業の参加数も韓国勢が最も多い。 中国追い出されたの? 韓国企業と対照的なのが中国企業。 一時期 (2018年くらい) までは、膨大な量の企業が深圳から展示に来ていたり、キーノートがファーウェイだったりなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。 しかし、それが理由なのかはわからないが、2019年の一件以来、急激になりを潜め、中国企業だらけだったLVCC Southは去年に続き、今年も利用されていなかった。 CTAが公式発表をしているわけでないが、何かしらの力学が働いていそうな気がする。 アメリカの大物が居ない… と思ったら! 最近のCESのもう一つの特徴は、意外とアメリカ企業の参加が少ないということ。 よく考えたら確かに展示やキーノートを行っている企業はアジアやヨー六っぱから来ている事が多く、”地元” のアメリカ企業は多くない。 そして、実はテクノロジー業界の大物スピーカーもあまり参加していない。 例えば、去年のキーノートはジョンディアのCEO。今年はウォールマートのCEOで、いわゆるビッグテック企業ですらない。 と思っていたら!ウォールマートのCEOが「ここでうちのパートナー企業のCEOを呼んで良いかな?Microsoftのサティアです!」とサプライズゲストとして、サティア・ナデラを登場させたのには驚いた。スピーカーリストにも掲載されてなかったので、特に。 現場のワクワク感による感覚補正に要注意 これもCESの意外な落とし穴なのだが、会場の雰囲気がかなりワクワクするので、そこに展示されている内容も何割増かの感じでよく見える。 特にハードウェアガジェット系は、普段の生活で使わなさそうなものでもキラキラして見えて、ついつい欲しくなってしまう。 修学旅行に行って木刀を買ってしまうあの感じ。 去年以前のプレゼンが無かったことにも (パラレルワールド?) これもCESの特徴の一つなのだが、ド派手に展示し、大きな注目を集め、なおかつイノベーションアワードも獲得したようなプロダクトがその後、音沙汰なくなることがある。 イベント中はかなりの将来性を感じさせるようなプロダクトでも、翌年は全く無かったことになってることも多々あり、夢だったのかな?と感じることもある。 その代表が中国のEVメーカーのByton。自らをTeslaキラーと呼び、2018年からド派手に展示とセッションを行い、その後3年間連続で参加。2020年のセッションでは米国での販売目処がついた、とまで説明していた。 それが現在は会社が倒産。期待されたプロダクトも泡のように消えてしまった。 本当のネットワーキングは夜に秘密部屋で行われる 最後にCESに参加する一番のメリットであるネットワーキングについて。 世界中から10万人以上の人たちが同じエリアに集まる事もあり、普段会えないような人にも会えるチャンスがある。でもどこで? その答えは「あまり知られてない秘密の部屋」で。 そう、CESは日中のセッションや展示の後に、夜の時間様々なパーティーが行われている。その中でも、メディア向けや招待制のシークレットパーティーもあり、限られた人しか参加できない。 大体そのようなパーティーは、外からはなかなか分からない ”ヴィラ” と呼ばれるホテルの隠れ部屋で行われることが多い。ヴィラにはいくつかの部屋とプールのある中庭があり、食べ物や飲み物が振る舞われる。 通常はパーティーを開催する企業がヴィラを貸し切り、例えば、VR関係者や、企業のエクゼクティブなど、希望する業界や役職の人たちだけど限定で招待する。 もしこのプライベートパーティーに招待されることができれば、そこに集まる人たちと一気にネットワークが広がる。 さて、続きを知りたい方は、ぜひ1月25日に虎ノ門ヒルズで開催される下記のイベントにご参加ください。

米国に進出したい企業、進出した企業が抱える悩みとその解決アプローチとは

強さ健在の米国市場
人口3億2,000万人(世界第3位)、0歳から64歳の人口が82.6%を占め(2022年)(日本は2023年6月現在、70.9%)、名目GDPランキングトップのアメリカ。既に多数の日系企業が進出しており、今後も事業拡大を狙っている(JETRO 2023年1月)。
米国での成功は世界での成功につながることは紛れもない事実であり、Btraxが日系企業の米国進出を支援してきたこと、これからも重点的に支援していきたい理由はここにある。
一方、虎視眈々と事業拡大を狙う世界の一流企業が米国市…

「サステナ」推しでお腹いっぱい – 主要メディアが伝えないCES 2023の裏側

今年も世界最大のテクノロジーカンファレンス、CESがラスベガスで開催された。 かなり遅いタイミングとなってしまったが、現地に参加したレポートをお届けする。 主要メディアを中心に多くの方々がかなり包括的な記事を書かれているので、僕自身は自分が感じたバイアス満載のぶっちゃけな「裏CES」という文脈でこの記事をお届けする。 メディアは教えてくれない裏CES そう。多くのメディアはどれだけ「凄い」テクノロジーやプロダクトが発表されたかに焦点を絞り、やや “盛った” 感じのレポートに終始している。 そうするのがメディアの役割であるためだからだが、場合によっては参加したレポーターの正直な感想が書きにくくなっているのではないだろうか。 実際に参加したメディア系の方々に聞いても「ぶっちゃけはこうなんだけど、建前上はこのように書いておかないと…。」という意見も実際にあった。 今回、この記事では、実際に参加して感じた、あくまで率直で個人的な感想をお伝えする。 規模は例年の2/3ぐらいかな? 今年の最終来場者数は11万人ちょっとで、去年の1.5倍から2倍ぐらいの規模らしい。 とはいうものの、コロナ前の状況から比べるとこれでも少し少ない印象を受けた。 実際に2019年まで利用されていたラスベガスコンベンションセンターのSouthとWestgateホテルは利用されておらず、フルスケール開催は来年かなー、という感じだ。 勿論、とはいえそれでもかなりの規模のイベントであることは間違いない。 猫も杓子もサステナかよ! 今回も一般展示が始まる2日前より始まるメディアセッションから参加させていただいた。 これらのセッションでは、プレスカンファレンスを通じて複数の企業がそのビジョンや新規プロダクトの「初お披露目」を行う。 セッションの直前キャンセルが相次いだ去年と比べて、今年は多くの企業がしっかりとメディア発表を行った。 参加したのは、Bosh, LG, Samsung, Panasonic, Canon, Hisense, TCL, Valeo, HD Hyundai, Omron Healthcare, SONY, AMD, BMW, そしてCES主催者がプレゼンする2023 Trends to Watch。 上記のセッションに共通しているのが 「サステイナブルへの取り組み」だ。 自然豊かな緑や地球の映像を投影しながら、我々はどれだけ環境に良いことをしているのかの説明が相次いだ。本当にそればかりで、後半は感覚が麻痺してくるレベル。 特にイベント主催者のCTAによるサステナ押しはすごかった。 というか、そもそも環境保護が重要なのであれば、ラスベガスで大量のエネルギーを消費し、世界中から飛行機に乗って10万人以上の来場者を集めるCESというイベントを開催すること自体がかなり非環境的な気もするが…。 優しくするのは人、社会、環境 では、具体的にサステナは何に対しての姿勢なのか?SDGsと同じく、あまりにぼんやり&ざっくりとしたコンセプトな上に、皆が語っているので、いまいちピンとこない。 でも今回はSamsung社がそれをわかりやすく説明してくれた。 サステナブル = 優しさであり、その対象は3つ。人、社会、環境である。 なるほど、会社の存在目的とビジョンをプロダクトを通じて表現していく。その対象は人であり、社会であり、環境であると。 デジタルツインだらけ 展示ブースを周っていてひときわ多かったのが、デジタルツインをコンセプトにしたもの。 自動車の車体や都市だけではなく、人間の体や脳の中身まで、あらゆるもののデジタルコピーを作成し、クラウド上に保管する。そして、その状況や内容を逐一管理できるという仕組みだ。 実際、どのような役割を果たすかはまだまだ未知数であるが、これからはリアルに存在すると同時にデジタル空間でも同じような存在が保持されていく時代になるかもしれない。 メタバースはまだまだ入り口 数年前より注目されているメタバースであるが、CES 2023ではもう新しいコンセプトのMoT (Metaverse of Things) が発表されていた。 これは、メタバースをより身近にするために、専用のVRゴーグル等のデバイスがなくても、家庭やオフィス、車の中でメタバースを体験できる仕組み。 一瞬何のこっちゃと思ったが、おそらく言いたかったのは、まだまだメタバースどっぷりの生活にはならないが、日々の中でメタバース的な体験に触れる瞬間は増えてくるよ、ということだろう。しかし、だからと言って完全に腑に落ちたかと言われると、まだやはり「何のこっちゃ感」は残った。 日本は世界のイノベーションチャンピオン「◯◯位」 今回のCESのキーノートでは、CTAによる世界のイノベーション先進国の発表が行われた。そのなもグローバルイノベーションチャンピオン。 さて日本は何位だっただろう? 正解は、25位。ランキングに入ったのは良いが、微妙な位置だ。経済規模や技術力を考えると少し低いのではと感じた。 日本が採点で特に低かったのは実に「ダイバーシティー」の項目だったそう。 AからEのグレードの中でなんと 「Dマイナス」の評価で、 これはかなり低い。 男女の格差や多様性に関しての課題が大きかったとのことだ。 みんな同じもの作ってるよね プレスカンファレンスや展示場を周って、気づいたことがある。 それは、「どの企業も近い領域で勝負している」ということ。言葉を変えると、カバーしている領域がどんどん被ってきている。 例えば、もともと家電をやっていたメーカーは自動車やヘルスケアの領域まで進出していたり、自動車ブランドが家電領域でサービスを提供し始めたり、といったものだ。 最もそれを象徴的に表現してたのがSONYのプレスカンファレンスにて発表された 、SONY Honda Mobility の自動車ブランドAFEELAだろう。 家電のSONYと自動車のHONDAがタッグを組んで作り出したハイブリッドモビリティーな感じのブランドである。 やっぱコンテンツがあると強い そんな感じで、みんな同じ領域に進出してる中で何が差別化要因になってくるのか? その一つが「コンテンツ」だろうと思う。 例えばFacebookは社運をかけてメタバース事業に乗り出し、社名もMetaに変更した。 しかし苦戦している。これは恐らく彼らがもともとコンテンツをほとんど持っていなかったからだろう。 デバイスやシステムがあっても、そこにキラーコンテンツが存在しなければ、ユーザーに利用する価値をあまり感じてもらえない。 その一方で、例えばSONYのような会社は、新しいデバイスをリリースしても、ゲームや映画といったコンテンツがあるので、一気に人気を集めやすい。 もしかしたら車の中でコンテンツをガンガン提供すれば上記のAFEELAも人気ブランドになっていくかもしれない。(運転していない時にグランツーリスモ用のレーシングシュミレーターとして利用できるとか…。) ブランド力が大きな武器になる時代 そしてもう一つの差別化要因はブランド力。 これだけ多くのテクノロジーが発達し、デバイスやパーツがコモディティー化していく中では、多くの企業が類似したプロダクトをリリースしていくことは避けられない。 例えばSamsungなんかは、日常家電からキッチン周り、ベッドルーム、バスルーム、ワークスペース、ベビーケア、シニアケア、ヘルスケア、スマート家電、モビリティーまで、本当に全部乗せである。 では消費者はどのような基準で興味を持ち、購入を検討するのだろうか?それは恐らくブランド力に違いない。 「何を作っているのか」よりも、「誰がなぜ作っているのか」が重要な差別化要素になってくると思われる。 「水」に関してのプロダクトが多い 去年まではあまり目立たなかったが、今年複数見られたのが「水」を作り出すデバイス。 これもやはりサステナビリティ文脈からくる環境保護への取り組みの一つだと思われる。 それらは空気中の水分を集め、飲料水を生み出す仕組み。軽く見ただけでもフランス、アメリカ、韓国の企業が同じようなデバイスを製造・販売している。 やっぱ韓国めっちゃ強いよね 数年前まではCESといえば中国企業満載のイベントだった。 しかし3年ほど前の華為をきっかけにアメリカと中国の関係性が微妙になっていくにつれ、一気に中国企業の展示数も減った。 それに代わって激増したのが韓国企業。 もちろん以前よりSamsung, LG, Hyundaiのような大企業は展示していたが、それ以外のスタートアップや中堅企業、そしてそれぞれの地域や産業を代表する団体まで、至る所で韓国企業発の展示が見られた。 これには米国市場に対して、国としての強い覚悟と勢いを感じた。 日本企業は視察だけで展示しない! それに対して、日本企業で展示しているところは多くなかった。 […]

2023年にヒット間違いなしの海外スタートアップサービス7選

2023年もすでに2週間目に突入し、そろそろ本格的に仕事モードに入った人たちも多いのかな?と思う。こちらサンフランシスコでは、ここ数年のコロナムードから一変、すでにコロナ明け感満載だ。 とはいえ、世界的にみてみると、パンデミックや戦争、異常気象や金利の上昇などなど、人々の生活と働き方が大幅に変化したことで、世の中には解決しなければならない課題が数多く存在している。 2023年に世界を変えるイノベーション予測 10選 特にテクノロジーを活用して課題解決を進めるスタートアップにとってみると、この時代の変革期は大きなチャンスでもある。今年も私たちはアメリカで流行りそうなサービスやスタートアップをどんどん紹介していこうと思う。 2023年に注目のスタートアップサービス ということで、btraxの代表としてサービスデザインの側面から日々複数のサービスを見ていく中で、今年も注目のスタートアップとヒットすると思われるサービスを7つほど紹介する。 BeReal Adalo Callin Stable Diffusion Phantom Valar Labs Gotham Greens 1. BeReal リアルな友達とだけリアルな写真を共有する サービス概要: フランス発のスタートアップが提供するBeRealは、フィルターや加工なしの、よりリアルな写真をリアルな友人とだけ共有することを目的としたアプリ。 1日1回、ランダムな時間に、アプリから「今日のBeRealを投稿する時間です」という通知が届く。 ユーザーは2分間だけ写真を撮ることができ、背面カメラで行動を撮影すると同時に、前面カメラでユーザーの写真を撮影する。 ユーザーは、2分間の制限時間外に写真を撮り直したり、投稿したりすることができるが、取り直したことが通知される。また、画像の加工やフィルタリングや編集は一切行われないので、本当にリアルな画像だけが共有される。 注目の理由: すでにアメリカでGen Zと呼ばれるZ世代を中心に、インスタに代表されるようなルッキズムから来る写真の加工にうんざりしているユーザーからの人気を得ている。 2022年に急成長し、すでに現在ではアメリカのティーンエイジャーの実に1/3がBeRealを毎月利用しているそうだ。 今後アメリカ以外の地域のユーザー開拓も進めると予想され、近いうちに日本のユーザーからの人気も広がりそうな予感がする。 2. Adalo 誰でもサイトとアプリが作れるノーコードツール サービス概要: Adaloは、誰でもモバイルアプリやウェブアプリを作成できるようにするためのノーコードビルダー。 直感的なドラッグ&ドロップ機能により、ネイティブのモバイルアプリや ウェブアプリを簡単に作成可能にしている。 Adaloを使えば、コードの知識がなくてもアプリを構築することができるようになる。 注目の理由: サイトやアプリ制作のニーズは年々高まっているにも関わらず、モバイルアプリやウェブアプリを作成するスキルを持つ人は、一般人口のわずか0.3%に過ぎない。 この状況を変えるために、ノーコードツールの必要性が高まっていくのではないだろうか。 3. Callin コミュニティー型ポッドキャスティングプラトフォーム サービス概要: ユーザーがライブのオーディオコンテンツを作成し、1つのプラットフォームで楽しむことができるポッドキャスティングアプリ、Callin。 ポッドキャスティングやマルチメディアの市場は参入が難しいとされているが、この型を破ろうとしている。 2021年に立ち上げられたシリコンバレーのスタートアップであるCalinは、ソーシャルオーディオの長所と「ソーシャルポッドキャスティング」という全く新しい概念を融合させようとしている。 創業者のDavid Sacks氏によると、このコンセプトは、ライブ会話やソーシャルディスカバビリティといったソーシャルオーディオの長所をポッドキャスティングと組み合わせることで、業界初となるものを生み出すと語る。 注目の理由: リリース直後より、LAUNCHやGoldcrest Capitalなどの投資家から、1200万ドルの資金調達を完了させた。 現在、Play Storeだけで10,000以上のダウンロードを誇っている。 ポッドキャスティング業界はブームが続いており、広告収入もそれに追随していることから、2023年はこのプラットフォームにとって非常に良い年となることが予想される。 4. Stable Diffusion AIがとんでもなく高クオリティーの画像を生成してくれる サービス概要: 2022年8月に公開されたStable Diffusionは、AIによる画像生成ツール。 テキストを入力するとそれに沿った画像を出力してくれる。 10億個近いパラメータ数をもち、およそ20億個の画像とテキストのペアで学習されている。 入力するテキストを工夫することで、複雑な画像でもいとも簡単に生成してしまう。 AIによる画像生成ツールとしてはこれまでも、MidjourneyやDALL-E 2など、入力テキストを画像に変換してくれるモデルは存在していた。 そんな中、Stable Diffusionがひときわ注目されたのは、他のAI生成サービスの多くが枚数やパラメーターに利用制限を掛けているのに対して、Stable Diffusionが「だれでも無制限に使えた」からだろう。 注目の理由: AIを活用した画像や文章生成ツールは、ここ数ヶ月で一気に注目が集まっている。 その中でもStable Diffusionは、より多くのパラメーターを有し、高いクオリティーの画像を生成してくれる。 その応用は無限で、世界中のアーティストやクリエイティブな思考全般に多大な影響を及ぼすと考えられる。 絵を描く特別なスキルがなくても、入力する文字やパラメーターを操作することで、短時間で大量の画像生成がされるため、今後クリエイティブ制作のプロセスに大きな影響を与えると考えられる。 5. Phantom めっちゃ使いやすいデジタルワレット サービス概要: NFTやその他のブロックチェーンは急速に主流になりつつあるが、金融や暗号のリテラシーが十分ではない場合、投資を検討している一般ユーザーにとっては高い参入障壁となっている。 Phantomは、この問題を解決するために、NFTを保管・管理するための使いやすいデジタルウォレットを提供している。 2021年にシリコンバレーで設立されたこのスタートアップは、当初はSolanaブロックチェーンプラットフォームで活動をしていた。 しかし、最近はWeb3空間全体からコミュニティを集め、ユーザーアクセスをさらに拡大するために、イーサリアムとポリゴンにサポートを拡大している。 注目の理由: リリースからわずか半年で200万人のアクティブユーザーを迎え、現在のユーザー数は300万人を超えると推定されている。 2022年の時点ですでにユニコーンの地位を獲得し、シリーズBの資金調達で1億900万ドルを確保。言うまでもなく、2023年にはより一層の活躍が期待されている。 6. Valar Labs AIを活用してより精度の高いがん治療を サービス概要: Valar labsは、シリコンバレーのパロアルトに拠点を置くスタートアップ。最新の人工知能(AI)技術を活用して、がん治療における大きな課題解決を目指している。 ハーバード大学とスタンフォード大学の研究者が2021年に設立した同社は、画像データの可能性を引き出すために臨床グレードのディープラーニングに投資し、腫瘍医が患者についてより多くの情報に基づいた判断を下せるようなソリューションを提供している。 注目の理由: 現在のところ、がん医療における多くの決断には不確実性が伴い、それにより生命の損失と何十億ドルものコストが掛かってしまっている。 それに対して、画期的な技術で世界の長年の課題を解決することで、Valar Labsはがん医療を飛躍的に前進させる可能性を秘めている。現在のツールが不確実性を減らすのに十分でない医療分野において、このブレークスルーはかなり大きなものになるかもしれない。 また、著名VCのa16z が投資していたり、ヘルステックのスタートアップには珍しく、Valar Labsはサイトのデザインが非常に素晴らしいのにも好感が持てる。 7. Gotham Greens 大都会のビルの中でサステイナブルな農業を実現 サービス概要: ゴッサム・グリーンズは、ニューヨーク市ブルックリン区に設立・本社を置くスタートアップ。温室で年間を通じて地元の野菜を栽培し、レタス、ハーブ、サラダドレッシング、ソースなどを同社のブランド名で販売している。 これはいわゆるヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)と呼ばれる仕組みで、倉庫を改造して、葉物野菜からハーブ、イチゴに至るまでさまざまな作物の栽培スペースにするというものである。 […]

【初心者向け】CESに初参加!行ってこそわかるその実情と参加時のポイント5つ

毎年年始にラスベガスで開催される世界最大のテクノロジーの祭典CESに参加してきた。 昨年2022年に続くオフライン開催となった今年は、公式によると出展社数は3,200社、参加者数は115,000名以上に上ったとのことだ。 筆者は今回が初参加だったため、抱いた印象や参加時のポイントなどをまとめていこうと思う。今後CESに初めて参加される方にとっても、ガイドのようにご覧いただけたら幸いだ。 1. 広い, 大きい, 高い ポイントと言うより感想に近いのだが、まず何より感じたのが、とにかく「広い、大きい、高い」の三拍子。もっと言うと、ラスベガスそのものが何かと規模の大きな街なのだ。飛行機が着陸する時点で、見える建物のサイズが普段日本で目にしていたものと何かとてつもなく違う気がする。 そしてこの感覚は、空港から宿泊先に向かう道中、そして宿泊先から会場へと向かう道中でますます強まっていった。CESの内容以前に、とにもかくにもスケールが大きいことが印象に残っている。 2. 移動が肝 規模が大きいとなると、課題になるのが移動。普段日本で過ごしている時とはまるで異なる感覚を持つ必要がある。 すぐ隣にありそうに見える建物も、いざ歩くと数十分かかることも。(近く見えるのは、そう錯覚するほどに建物もとんでもなく大きいからだ。) 例えば、メイン会場の1つであるコンベンションセンターだけでもCentral Hall、North Hall、West Hall、South Hall(今年は展示なし)と分かれている。 また、コンベンションセンター以外にも、The Venetian Expo、Mandalay Bay、ARIAなど、市内の複数の会場でセッションや展示が行われており、この距離は到底歩けない。 そんな会場間の移動には、無料シャトルバスやモノレール、もしくはUberやLyftといったライドシェアサービスをうまく活用していきたい。 コンベンションセンターに話を戻そう。というのも、同じコンベンションセンターとはいえど、Central HallとWest Hall間は、徒歩で移動すると15-20分程度かかってしまうというトラップがあるからだ。てっきり歩けるだろうと思ってしまうと痛い目に遭う。 こうした移動問題に切り込んだのが、Vegas LOOPだ。 Vegas LOOPは、Vegas Loopを運営するBoring Companyに、テスラ CEOのイーロン・マスクが投資したことから実現した。Central HallとWest Hall、South Hall間をそれぞれ地下道で繋ぎ、テスラ車で送迎してくれるCES公式の交通サービスである。 会場間の移動時間はわずか1,2分で、無料で利用できる。その上いずれのステーションにも乗り場が10つほどあり、巡回している車両の台数もかなり多いため、乗るまでの待ち時間もほとんどない。 日本ではまだ馴染みがないゆえに、ぜひ乗ってみたいと感じるテスラ。 その上申し分なく便利で、テスラに対して悪い印象を持つ余地がない。テスラ社がCESにブースを出さずとも、テスラ車の乗車体験をさせて、ファンを作ってしまう。非常に上手なやり方だとも感じた。 3. 何を持ち帰るべきかを明確に CESにここ10年ほどは毎年参加しているCEO Brandonの話によると、パンデミック直前の最盛期に比べると、今年は70%程度の規模に感じたとのこと。(パンデミック以来初のオフライン開催となった2022度からは1.5倍ほどに戻った感覚だそう。) しかしそれでも数にして3,200社以上が展示を行なっていた。さらにブースのサイズも非常に大きなものが多く、1つ見るのにもある程度時間のかかるブースも。 よって、テーマや観点を持ってブースやセッションを回ることを強くおすすめする。ご自身が関わっている業界や興味のある業界の企業を見ていくのも良いし、業界問わず、使われているテクノロジー軸で見ていくのも良いだろう。 せっかく来たのだからと全てを見て回りたくなる気持ちもよくわかるが、残念ながら物理的にも時間的にも難しい。この点は割り切って、うまくテーマを絞りながら見ていくのが良い。 4. テクノロジーは実体があるとわかりやすい プロトタイプ時点のものも多いとはいえ、かなりの割合の企業が、プロダクトや実体のあるものを展示していたことも印象的だった。 特に、新興のテクノロジーやディープテックのような概念的、もしくはまだまだ世間的な認知が途上にあるものは、展示においてはモノに落とし込まれていると、実際にそれらがどのように機能し、どんな役割を果たすのかを感覚的に理解しやすい。 例えばフランスのソフトウェア系の企業であるDassault Systèmes (ダッソー・システムズ)は、3D技術を活用したデジタルツインを出現させるインタラクションを展示。 パフォーマンスをする女性の動きをカメラが感知し、全く同様の動きが後方に3Dで投影され、シンクロしたように動いていた。 ここに使われている技術は、医療への利用用途が想定されているとのこと。医者が患者の身体を事前に診察したり、脳外科手術のシミュレーションのように使ったりすることを叶える。 言葉だけではなかなかイメージを掴みにくいことも、実際に目に見えたり、手に取ったりできる形で表現されていると、そのサービス自体はもちろん、背景にあるテクノロジーの本質的な価値も理解しやすい。 5. プレゼンテーションが全て 自明かもしれないが、プロダクトやサービスのプレゼンテーションがその企業全体のイメージをかなり大きく左右する。 これはブースのサイズにかかわらず、だ。もちろん大きいブースは視覚的にも目に入りやすく訪問されやすい。しかし、それだけではサービスの魅力を伝えるには不十分だと感じた。 ポイントは、見せ方と語り方に分かれると感じている。 まずは1点目の見せ方について。これは、主要テクノロジーがどのように使われているのか、何が他の類似サービスと異なるのか等がわかりやすく会場の場づくりに反映することが重要だということだ。 例えば自動車。今年は自動車を展示する企業が多かったようで、その展示方法に個性が出ていた。 スクリーンに強みを持つ企業は、見ている人に実際に自動車に乗って、スクリーンをじっくりと見てもらうようにしていたり、新たなコンセプトやデザインを強調している企業、は、自動車を回転台に乗せ、360°ぐるっと眺められるようにしていたり。 後者の例としてStellantisを挙げる。同社は、プロダクトラインの1つであるRAMの新たなコンセプトトラックを発表。片面が大きく開かれた状態で360°内装も含めてよく見える状態での展示だった。 ボイスコマンド機能やARのヘッドディスプレイ、わずか10分で100マイル走行を可能にする急速な充電機能など、さまざまな観点で注目要素が詰まったコンセプトトラックの効果的なプレゼンテーションだったように思う。 次に語り方だ。ブースでは、その企業のメンバーが自分たちのプロダクトのことを説明したり、こちらからの質問に答えてくれたりする。 その際に、自分たちのサービス価値を的確に伝えられるかが重要になるのだろうと感じた。この説明は、スタートアップにおけるピッチのさらに短縮版のようなもので、 何をビジョンやミッションに掲げているか 誰のためのものか どんなテクノロジーを活用しているか などを交えてサービスを簡潔に説明するスキルは、その企業に対する印象の良し悪しにも影響する。 おわりに: 忘れずにアウトプットを 色々な会場やブースをへとへとになりながら回って得たせっかくのインプットも、何もしないとすぐに忘れてしまう。ぜひアウトプットの機会を適宜設けていただきたい。 飲み込まれそうなほどのインプットを得ることになるCESでは、何もしないままでいると、記憶も薄れていき、「どこの企業がどんなことを発表していたっけ?」と内容がぼんやりとしたものになってしまう。 したがって、グループで行かれる方は、仲間間でその日の終わりにラップアップを設けるのも良いし、セッションやブースの合間に、お互いに印象的だったことを持ち寄り、会話を交わすだけでも得たものが記憶に残りやすいと思う。 個人で参加される方も、写真はもちろん、ノートやメモにキーワードなどを簡単にでも書き留めておくなりすることがおすすめだ。 筆者も、初めてCESに参加した時のことを忘れまいと思いながら、こうして記事を書いている。この記事はまず1本目で、後日実際に回ったブースや印象的だった企業などのまとめも公開していく予定だ。

2023年に世界を変えるイノベーション予測 10選

2022年は世界の多くの地域でパンデミック規制が緩和されたことで、やっとコロナが収束に向かっているかなと感じられ始めたと思ったら、記録的なインフレ、ロシアのウクライナ侵攻、気候変動の影響による異常気象など、経済的にも環境的にも、かなり変化の大きい一年だった。 おそらくこの流れは2023年にも継続され、人々の生活も、社会環境も、仕事の仕方に対しても新しいアプローチが求められてくると思われる。言い換えると、これまでよりも一層イノベーションが求められる時代になってきた。 では、2023年にどのような変化、そしてそれに対するイノベーションが生み出されるのかについて、10の予想をしてみる。 1. SNSの利用率が下がり始める 2010年代から破竹の勢いでユーザーを増やし続けてきたSNS。しかし、今年は転換期になりそうな予感がする。 若者のFacebook離れから、イーロンマスクがTwitterを買収した事によるサービスの変化。そして、米国におけるTikTokの禁止の可能性などなど、そろそろ右肩上がりのSNSにもかげりが見え始めているのではないだろうか。 SNS上の誹謗中傷やプライバシー問題などの懸念もあり、多くのユーザーがSNSに対しての不満や不安を感じている。 また、ユーザーの行動を追いかけるSNSのアルゴリズムの危険性を不安視する声も出ている。 それもあり、不特定多数のユーザーが集まる大型SNSチャンネルから、Discord、Mastodon、Geneva、Substack、Patreonといったプライベートな空間でのコミュニティ形成を重視するサービスへの人気が移行し始めている。 これらのニッチなプラットフォームの中には、従来のSNSサービスを模倣したものもあるが、多くはスクロールに何時間も費やしたくない、短時間の利用を好むユーザーに対応している。 例えば、BeRealは、日に1枚しか写真を撮れない。WeAre8では、1日にスクロールが8分間に限定されている。 これらの新しいサービスの人気は定量的にも実証され始めている。例えば、BeRealの会員数は、2022年の1月から4月までの間になんと315%増加している。 TwitterやFacebook, Instagramがすぐに無くなるようなことはないだろう。 しかし、ユーザーはより安全で快適なコミュニティを求めるようになり、SNSの勢力図が大きく変わっていく可能性が高い。 ~Facebook離れは本当なのか~ 米国若者ソーシャルメディア最新実情 2. VCはユニコーン企業よりも黒字化企業への投資を優先する 2013年、ベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーが、10億ドル以上の評価額を得た非上場スタートアップを「ユニコーン」と定義した。「ユニコーン」と名付けられたのは、そんなスタートアップは神話上の生物と同じくらい珍しいものだったからだ。 当時はUberやAirbnb, WeWorkなどのユニコーンに対して、猫も杓子も投資をしたがる「ユニコーンバブル」が広がり始めていた。 しかし、2010年代半ばになると、サンフランシスコやシリコンバレーを中心に、「ユニコーン」だらけになり、日本の国民的スナック菓子とんがりコーンと同じくらい一般的な存在になってきた。 それがエスカレートし、多くのVCが必ずしもその評価額に値しない企業に対しても巨額の資金を投じた。 その後、ユニコーンバブルが弾け、WeWork、Theranos、FTXといったユニコーンは、数百億ドルの価値を消し去り、見事に崩壊した。 加えて、ここ数年の景気の不透明感から多くの投資家がソフトバンクのヴィジョンファンドに代表されるように投資基準を格段に厳しくし、ユニコーンだからといって安易に投資しなくなってきている。 実際に、スタートアップへの投資とユニコーン出現率の鈍化は顕著で、CB Insightsによると、2022年第3四半期に誕生したユニコーン企業はわずか25社で、2021年の同時期と比べても5倍も少ないというデータがある。 言い換えると、投資家たちはスタートアップや起業家に対してこれまでのような幻想的な賭けに出ることを躊躇し始めている。 これからは巨大な評価額よりも、堅実に売上と利益を出せるスタートアップへの投資を優先していくだろう。 スタートアップとしても、1、2年での一攫千金を狙うのではなく、長期的に利益の確保が可能になる企業を目指す必要が出てくるだろう。 ユニコーン企業の次はゼブラ企業? ゼブラ企業の特徴と可能性とは? 3. リモートワークからハイブリッドワークへ パンデミックの影響で2021年中は完全リモートワークを許容していた企業も、少しずつではあるが “Back to Office” を始めている。TwitterやAppleに代表されるシリコンバレーのテック系企業のいくつかも社員のオフィス出社を義務付けている。 やはりリモートだけでは不可能なタイプの仕事や、対面の方がより良い結果が出せるタスクも多いことがその理由。 また、家で一人で仕事をすることで孤独を感じ、メンタルに影響が出ているケースも増えてきている。オフィスに出社するメリットも少なからずあるようだ。 おそらくそれが理由で、LinkedIn Economic Graphの分析によると、リモートワークの求人広告が減少していることがわかった。10月にLinkedInに掲載された求人情報のうち、リモートワークの選択肢を提供していたのは7件のうち1件だけだった。 今後はリモートワークとオフィスワークを混合させた、ハイブリッドなワークスタイルを採用する企業が増えてくるだろう。 ハイブリッドワークではリモートワークの柔軟性を確保しながらも、時折対面してのメンタリングや交流の場を設けることができる。 スタンフォード大学の経済学者であるニック・ブルームもオフィスでのコラボレーションが重要であると唱える。 マイクロソフト社の調査によると、ハイブリッドワークは短期的な生産性を高めるが、長期的なコミュニティや創造性を低下させる可能性もあるという。 ブルーム氏によると、企業は従業員のニーズに合わせて、会社全体で1つのスケジュールを作成するか、チームに決定させるかを決める必要があるとのこと。 2023年はハイブリッドワークがより正式なものになり、会社が出勤日を指定したり、スタッフが事前にオフィス に出勤する日を調整するようになってくるだろう。 新しい時代に広がる10のワークスタイル変革 4. AIの実用化が加速する これまでもずっと「AIがヤバい!」と言われてきたが、いまいちその凄さが実感できなかった。 しかし、2022年後半ぐらいからStable Diffusionによる画像生成や、ChatGPTによる文章作成など、リアルにAIの「ヤバさ」を見せつけられている。 そして、我々の目に付く範囲だけではなく、さまざまな産業において我々はAIの恩恵を受けている。 看護師はAIを利用して健康状態が悪化しそうな患者を見守り、投資家はAIを利用して投資ポートフォリオを調整する。モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンの開発でも、AIは重要な役割を果たした。 これからAIはより直感的になり、複数の「感覚」を同時に使うことが増えていくだろう。マルチモーダルAIアプリケーションにより、AIシステムは音声、視覚、言語データを組み合わせて、また互いに関連づけながら処理することができるようになってくる。 例えば、テキストプロンプトに基づいてオリジナルアートを生成できるDALL-Eのようなツールは、このアプローチの初期の例と言えるだろう。 マルチモーダルAIは、AIシステムが高度に洗練されたニュアンスでデータや環境を分析できるようになるため、今後数年のうちに新しいアプリケーションで飛躍することが期待されている。 医療分野では、マルチモーダルAIが患者の画像や履歴、バイオセンサーからのデータを組み合わせて検査し、診断や治療法の提案を行なえるようになる可能性がある。 また恐ろしいことに、マルチモーダルシステムへの移行により、AIは現在よりもさらに創造的な力を持つようになる。 例えば、Netflixがユーザーごとに単にお薦めを表示させるのではなく、それぞれのユーザーの好みに基づいて全く新しい映画を創り出すことも、近い将来起こっていくかもしれない。 5. 医療従事者の人手不足をテクノロジーが解決する 世界では、医師や看護師などの医療従事者が不足している。 WHOの保健医療人材ディレクターであるジム・キャンベルによると、医療従事者は人口の3倍の速さで増加すると予想されているが、それでも2030年までにさらに1000万人の臨床医が必要になるとのこと。 この状況に対処するために、2023年には、世界中の病院、ハイテク企業、政府機関が団結して、2つの重要な方法を取ることが予想される。 それは、手元にある限られた人材資源を共有することと、患者への対応と新しい医療従事者の育成のために新しいテクノロジーを導入すること。 アマゾンウェブサービスの国際公共部門健康担当最高医療責任者であるローランド・イリングは、「こうしたニーズを補うため、バーチャルケア、遠隔モニタリング、在宅医療などの動きが活発になっています」と述べている。 「また、将来の医療従事者を育成する必要性もあり、デジタルヘルス教育の新しい方法に焦点を当てた製品が増えている」とも語る。 WSは、シアトルに拠点を置くHurone AIなどのスタートアップに資金を提供していく予定。 Hurone AIは、ルワンダでアプリをテストしており、人口1300万人の国全体で、20人足らずの腫瘍医の治療を支援する。 また、米国心臓病学会は、バーチャルリアリティ手術トレーニング会社のOsso VRと提携し、特定の心臓手術のためのグローバルカリキュラムを作成しようとしている。 このように、医療従事者の人手不足を補うために、急ピッチでテクノロジーによる解決策が進んできている、 【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 6. サステイナブルファッションが注目される 国連によると、我々が衣料品に使用する素材の約60%はプラスチックで、毎年約50万トンのプラスチック製マイクロファイバーが海に放出されていると言われている。 この環境負荷を軽減するため、デザイナーやメーカーは、藻類、パイナップルの皮、キノコなどの新素材から衣服を作るなど、植物由来のソリューションにますます注目するようになっている。 これはアパレル業界においても、よりサステイナブルな素材に注目が集まっているということだ。 例えば、畜産業が環境に与える影響を考えると、植物由来の生地はレザーの代用品として特に魅力的と言われている。 デンマークのブランドGanniは、2023年までにレザーを使用しないことを計画しており、ブドウの皮、植物油、水性ポリウレタンでできたVEGEAのような代替品を使用する予定。 キノコやその他の菌類の糸状の根である「菌糸」は、いくつかのレザー代替品の基礎となっており、実はエルメスやStella McCartneyが早くから着目し、採用している素材だ。 ココナッツとコルクを使った完全プラスチックフリーの生地「Mirum」は、BMWを含む投資家から8500万ドルの資金提供を獲得している。 藻類と海藻は、テクニカルファブリックの分野にも進出していくだろう。 英国の生地会社Pangaiaは、海藻パウダーを使ったレジャーウェアを作っており、藻類を使った吸汗速乾素材の研究にも着手している。 サステナビリティ・コンサルタントのソーニャ・パレンティは、植物由来の布地の多く、特に完全にプラスチックフリーのものは、まだまだ実験段階であると述べている。 一方で、より分解しやすいバイオベースの素材の比率を高めた新しい生地が登場することを期待している。 「ファッション界のプラスチック危機を解決することはできませんが、化石燃料から完全に脱却するための解決策の一部になる可能性があります」と彼女は語っている。 海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由 7. 都市部を中心にヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)が広がる 2022年に世界人口は80億人を超えた。それに合わせ、世界的な食糧難が危惧されている。 加えて、今世紀半ばには65億人もの人々が都市部に住むと推測されている。都心部に屋内農場を設けることで、急増する都心部の人口の食糧を賄うのに役立つと考えられている。 これはヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)と呼ばれる仕組みで、倉庫を改造して、葉物野菜からハーブ、イチゴに至るまでさまざまな作物の栽培スペースにするというものである。 2022年上半期、投資家は8億ドル以上を垂直農場系の企業に投じた。2030年までにこの屋内農業ビジネスは、330億ドル規模になる可能性があるとされる。 気候管理された屋内農場には、従来の農場と比較して重要な利点があるとされる。 年間を通じて栽培が可能で、植物を積み重ねることができるため、より少ない土地でより多くの食料を生産でき、害虫や異常気象の影響を受けにくいのだ。 また、農場を消費者に近づけることで、輸送や冷蔵の必要性も少なくなる。 この業界では、毎月のように新しい垂直型農場が誕生している。 AeroFarmsは最近、バージニア州ダンビルに150,000平方フィートの施設をオープンさせた。 […]

日本のアニメがアメリカで爆発的な人気を集める理由と事例3選

アメリカにおいて、アニメは絶大な人気を誇っている。 2022年7月にロサンゼルスにて開催されたAnime Expoでは、10万人を越える来場者が駆けつけ、非常に大規模なイベントとなっていた。 下のデータからも分かるように、アメリカのアニメ市場は急速に拡大中であり、2030年には500億ドル以上の収益が見込めるという。 その中でも、日本のアニメの輸出先としても、アメリカは大きな割合を占めている。 今回は、アメリカにおいて日本のアニメがどのように広まっているのかを、btraxが行ったユーザーインタビューと定量データをもとに、認知から定着までのフェーズに分けてまとめていく。 そして、2022年現在アメリカで人気を集める日本のアニメを3作品取り上げ、これらがどのようにアメリカで認知を獲得し、視聴され、人気を集めたのかを、最新の事例とともにご紹介する。 アメリカにおいて、どのように日本のアニメが広まるのか では、アメリカにいる人がどのように日本のアニメを知り、広まるのだろうか。アニメが認知されてから定着するまでの順を追って解説する。 日本のアニメを認知する・興味をもつ btraxの行ったユーザーインタビューによると、アメリカのアニメファンが日本の新しいアニメを知る主なきっかけは、SNSや友人からの口コミであるという声がが多かった。 アニメファンはアメリカのカートゥーンを幼い頃から視聴しているため、アニメに対しては馴染みがあるそうだ。 また、セーラームーン、ガンダム、ワンピースなど、日本のアニメは以前から人気のため、カートゥーンでなく日本風のアニメにも抵抗がないという。 日本のアニメを視聴する アメリカでは動画配信サービスを通してアニメを閲覧するのが一般的だそうだ。主な視聴サービスはNetflix、crunchyroll、MyAnimeListだという。 特に、crunchyrollの会員は年々増加傾向にあり、2021年には500万人を突破したと言われている。 パーソナライズの死角とデジタル・セレンディピティ 動画サービスでの日本のアニメの視聴を加速させる、コード・カッティングの拡大 「コード・カッティング(cord-cutting)」とは、ケーブル・衛星放送テレビの契約をやめ、インターネット経由の動画視聴を選択する消費者動向を指す言葉。 米調査会社 MoffettNathansonによると、2017 年第一四半期だけで、全米で 76万 2000 人がケーブル・通信会社のケーブル契約をコードカット。 その「コード・カッターズ(cord-cutters)」のうち大多数が、動画サービスの使用は継続する意向だという。(JETRO提供のデータ参照) これらの動画配信サービスはアルゴリズムによってユーザーが過去に視聴した作品と類似した「ユーザーが興味がありそうな」アニメをレコメンドするパーソナライズ機能を備えている。 この機能により、1つのアニメを観たユーザーが、個人にレコメンドされた他の作品も次々と視聴していき、さまざまなアニメに触れることによって、アニメ全般に精通していく。 そのような観点から、動画配信サービスは、動画を視聴する目的だけではなく、新たなアニメを認知する場所でもあるといえる。 テレビを持たない選択をする人が増えることで動画サービスを使用する人が増加傾向にあること、そして動画サービスでアニメを視聴することが、アニメの認知拡大に繋がっているといえるだろう。 日本のアニメが拡散され、視聴者に定着する では、日本のアニメはアメリカではどのように拡散され、一度獲得したファンを楽しませ続けるのだろうか。 その1つとして、インターネット上のユーザー同士のコミュニティ活動が挙げられる。 先のユーザーインタビューによると、Discord(アメリカ発のボイス・ビデオ・テキストコミュニケーションサービス)のサーバーでコミュニティを作り、同じアニメが好きな人同士で集まって配信時間にみんなで同時にアニメを視聴し、その後にストーリーの感想や考察を話し合うという文化ができているようだ。 新たな見方や考察などの意見交換を通して交流することで、アニメに対しての愛着がさらに増すのではないだろうか。 また、ポップアップストア、アニメのコラボストアや展示会も、ファンとなった人たちを楽しませ続けるための施策だ。 今回筆者が参加したANIME EXPOも、アニメの世界を体感できる展示や、人が入って楽しめるフォトブースなどが用意されていた。 このようにして、アメリカでの日本アニメの人気が拡大しているようだ。 2022年現在アメリカで人気を集める日本のアニメの事例3選 1. 僕のヒーローアカデミア(My Hero Academia) 『僕のヒーローアカデミア』は2016年に、日本での公開と同時にアメリカでも字幕版が配信されたアニメ。2020年には米国observerによる最も人気なテレビ番組ランキングで2位に選ばれている。 またTwitterでは、原題のローマ字表記「Boku No Hero Academia」を略した#bnha というタグが拡散されている。このことからも、日本のみならず海外でも人気なアニメであることが窺える。 アメリカで人気となったきっかけ アメリカでは、MARVELシリーズを始めとしたヒーロー物の人気がすさまじい。 同アニメは、日本版スーパーヒーローとして話題になり、世代を問わず幅広い層に閲覧されているようだ。 また雰囲気もアメコミ風のタッチで、アメリカのアニメに慣れ親しんだユーザーにとっては馴染みやすい要因でもあるだろう。効果音に「BOOOM」「YEAHHHH」などの英語が含まれていることも印象的だ。 一方、アメリカで人気のアメコミと違う点もある。アメリカの作品はシリーズものが多く、シリーズの途中から視聴しても、キャラクターの背景が分からず理解が困難なことがある。 しかし同アニメは、全てのキャラクターが本作オリジナルで生み出されたものである。キャラクターやストーリーの事前情報を知っておく必要がないのだ。 そのため、観たいと思った時に、シリーズの一番最初から観始めなくても十分に楽しめるようになっている。 アメリカのアニメファンを取り込む施策 本作品は、2022年に米国ロサンゼルスで開催されたAnime Expoにも出典していた。 全日程を通してコレクティブカードゲームのブースを構え、来場者がカードゲームで対戦できる場を提供していた。 上記のように、好きなアニメの世界観に浸るという非日常的な体験を通じて、ファン同士の関わりの場を提供している。 この取り組みにより、公式によるアニメ配信のみならず、アニメがコミュニティによって自然と広まる流れをつくることができる。作品とファンのインタラクションを増加させることができているのではないかと考える。 2. 鬼滅の刃 (demon slayer) 次に紹介するのは2016年に発表された漫画から生まれた『鬼滅の刃』である。 アメリカでも日本での公開とほぼ同時に、Hulu、crunchyroll、Funimationで配信された。 アメリカでテレビ放送がされたのは2019年。さらに本作品は、crunchyrollの2020年のアワードで最優秀作品賞を受賞したことでも話題になっている。 また2020年に公開された劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は、2022年8月現在までに興行収入で404.3億円を記録。この人気は留まることを知らず、本作の原作者・吾峠呼世晴氏は、漫画家として初めて「TIME 100 Next 2021」に選ばれたほどである。 アメリカではR17指定をされているにも関わらず、ここまでの人気を集める今作には、どのような背景があるのだろうか。 アメリカで人気になったきっかけ コロナ禍において人々は、知らず知らずのうちに「死」を意識せざるを得なくなり、不安や恐怖が高まっている。 そこで、同アニメの主人公が困難に立ち向かう様子が、パンデミック中に喪失感や苦しみを抱える人々の心に強く響いたと考えられる。(参考) アメリカのアニメファンを取り込む施策 認知拡大の施策の一つとして、ロサンゼルスのLittle Tokyoでラッピング電車を走らせて認知拡大を図っている。 Little Tokyoはアメリカ人にとっては「日本」を感じる観光地であり、日本文化が好きな人が自然と集まってくる場所であると考えられる。まさにアニメを認知してもらいたいターゲットの層が集まっている土地ともいえる。 その場所で、アニメの絵が大きく描かれた電車を走らせるという大胆なプロモーションを行うことは、ターゲットにインパクトを残し、認知を獲得できる施策だと考えられる。 Spotted in Los Angeles… 👀 #MugenTrain Demon Slayer -Kimetsu no Yaiba- The Movie: Mugen Train is in theaters now! 🚂 🎟️ Buy Tickets : https://t.co/emM6z2X7zC pic.twitter.com/mxFCMavvOH […]

企業メッセージを効果的に伝える 海外のブランドポッドキャスト事例5選

筆者はポッドキャストを聴くことが好きで、3年ほど前からよく聴くようになったが、最近では企業の配信が増えていると感じる。 ブランディングの一環として企業が配信する「ブランドポッドキャスト」とは、直接的に会社や商品のプロモーションは実施しないが、ブランドメッセージを伝えつつ、オーディエンスが知りたいと思うような有益なコンテンツを提供しているポッドキャストのことを指す。 日本はブランドポッドキャストが徐々に増えてきている段階である一方で、アメリカでは制作を専門に請け負うポッドキャスト制作会社が増加している。 ポッドキャストプラットフォームでのコンテンツ配信に加え、Youtubeにもポッドキャスト収録風景をそのまま配信する形式がスタンダードになりつつある。 Podcast広告がブランドの認知度アップに役立つ3つの理由 拡大するポッドキャスト市場 なぜ今企業がブランディングとしてポッドキャストに力を入れているのか。 その背景には、世界的なポッドキャスト市場の拡大がある。世界のポッドキャストのリスナー数は年々増加傾向にあり、2025年には8億人を突破すると推測されている。(参考) それに伴い、企業が配信するブランドポッドキャストの数も年々増えている。 また、Spotifyによるポッドキャスト分析企業であるChartableとPodsightsの買収や、最近ではAmazon musicでの番組オリジナルコンテンツ配信などからも、コンテンツ配信企業各社のポッドキャストへの注力が見て取れる。 ブランディングに有効なポッドキャスト 冒頭で述べたように、市場の拡大以外にも、ブランディング施策として有効であることを示すデータも出ている。 ポッドキャストの親密な会話形式の環境が、ブランド認知度やブランド指向、好感度、購入意思をも増加させているのだ。 リスナーと密なコネクションが築けることで、ブランドイメージ強化につながっている。(参考) むしろポジティブな効果を発揮する「ながら聴き」 もしかしたら、動画などと異なり注意を惹きつけない音声コンテンツは、印象に残らずちゃんとコンテンツを届けられていないのではないか、と思う方もいるかもしれない。 しかし面白いことに、ながら聴きがむしろブランドイメージを印象付けるとの調査結果がある。 ポッドキャストリスナーの94%が他のタスクをしながら聴いているにも関わらず、むしろエンゲージメントや感情移入、ポッドキャストに対する長期記憶が上がっているというのだ。(参考) このように、侮れない効果を持つポッドキャストをブランディング施策の1つとして活用する企業が増えてきているのが現状なのだ。 今回は海外のブランドポッドキャストの事例について紹介する。 中でもポッドキャストやコンテンツ配信を本業とする企業ではないものの、アクティブにポッドキャストを配信している企業やブランドの事例に絞ってご紹介する。 音によるブランディング 「サウンドロゴ」の基本と企業事例 海外のブランドポッドキャスト事例5選 1: Trader Joe’s: Inside Trader Joe’s 全米に530店舗以上を構えるスーパーマーケットチェーンによるポッドキャスト。季節ごとにおすすめ商品の紹介やTrader Joe’sで働く人々の話が楽しめる。当初シーズン5までの予定だったが、あまりの人気に現在シーズン11まで続いている。(参考) ショッピングリストと称した是非とも食べてみたくなるおすすめ商品の紹介など、とても実用的で生活に根ざしたコンテンツであることが人気の所以であろう。 筆者のおすすめ Trader Joe’s プロダクトのパッケージやラベルデザインを行うチームへのインタビュー Episode47: Trader Joe’s Design Delicious よくあるプライベートブランド商品は、1つの共通したデザインで展開されていることが多いが、Trader Joe’s プロダクトは商品ごとに異なるパッケージデザインがなされている。 それだけパッケージに対してこだわりのあるTrader Joe’sでは、普段どのようにデザイナーたちがデザインのアイデアを出しているかなどが語られており、パッケージデザインを考える上でのアイデアの見つけ方が参考になる。 2: Shopify: Shopify Masters EコマースプラットフォームであるShopifyによるポッドキャスト。 起業家や自身でEコマースビジネスを始めたクリエーターらのリアルなビジネスの話、ブランドを作り上げていく過程をインタビューを通して知ることができる。 これからEコマースビジネスを始めようとしている人への参考情報とともに、誰でも簡単にEコマースビジネスのオーナーになることをサポートするプラットフォームとしての、Shopifyのブランドイメージを発信している。 筆者のおすすめ 100% プラントベースのインスタントラーメンスタートアップ、immiへのインタビュー How This Plant Based Ramen Brand Built A Community of Thousands Prior to Launching immiは、共にアジア系のバックグラウンドを持ち、モバイルゲームのプロダクトマネージャーだった2人の創業者が、様々な業界のテックカンパニーを経験したのちに立ち上げたインスタントラーメンのブランド。 ラーメンに対しても、それまでのプロダクト開発の経験が生かされたプロセスやスピード感で事業を進めている様子が窺えて興味深い。 3: Ben & Jerry’s: Into the Mix アイスクリームブランドであるBen&Jerry’sによるポッドキャスト。 社会問題に対しメッセージを積極的に発信していることで知られるBen&Jerry’s。 ポッドキャストもブランドが大切にしている価値観を表現するような、アーティストやアクティビストらのインタビューで構成されている。 あえてプロダクトではなく、ブランドや企業としての取り組みにフォーカスしている、というのも一つの戦略なのかもしれない。 筆者のおすすめ 環境問題に積極的に働きかけているパンクアイコン・Patti Smith氏らへのインタビュー Episode7: Patti Smith and Bill McKibben 1970年代からニューヨークを中心に「クイーン・オブ・パンク」としてカウンターカルチャーを長年音楽で牽引してきたPatti Smithの団結を呼びかける言葉には力を感じる。 彼女以外にも様々な人へのインタビューを通し、企業が社会的使命を明確に打ち出すことで、そのメッセージに共感する人々がBen&Jerry’sのファンになり、ブランドイメージをより強化している。 4: 3M: Inside Angle 3M Health Information Systems による番組。 ヘルスケアシステム全体に切り込んだトピックにおける、専門家らの様々なチャレンジを聴くことができる。 ヘルスケア領域のUXデザインやオンライン診療についてなど、ヘルスケアに関わる人やサービス設計者が知りたいと思う第一線の情報を得られる場となっていると考えられる。 他にも”What’s Next”や”Science […]

【2022年最新】ユーザーの心を掴むアメリカ発MarTechスタートアップ5選

企業の成長のためには欠かせないマーケティング活動。近年はデジタルマーケティングが主流となり、企業ごとにさまざまなツールを使ってマーケティング活動を行なっていることだろう。 そんな現代のマーケティング活動において必要不可欠となるのが、Martechサービス。 Martechとは、文字通り、MarketingとTechnologyを合わせた言葉だ。営業やマーケティングに関わるテクノロジー全般を指す言葉である。狭義のAdtech(広告×テクノロジー)、Salestech(営業×テクノロジー)などもすべて包括してMartechに含まれる。 あらゆる顧客接点でコンテンツや機能を顧客に伝え、顧客データに変換する役割を担うサービス全般を指す言葉だ。 Martechの興隆 Martech市場は世界規模でここ10年で急拡大している市場である。 2011年には世界で150のサービスしか乗っていなかったカオスマップにも、2020年には8000ものサービスが載るようになった。2022年現在では10000以上のサービスがあると言われている。 上の図に分類されているように、Martechは以下の6つの領域に分けられる。 Advertising & Promotion Content & Experience Social & Relationships Commerce & Sales Data Management 現代では、もはやマーケティングがテクノロジーを用いていることは当たり前となってきており、サービスが右肩上がりに増えているのも納得だ。 そんな中でも、近年注目を集めているのがコンテンツマーケティング。上記の6つの分類では「Content & Experience」に該当する。 コンテンツマーケティングとは、ターゲットとなるユーザーに「適切で価値あるコンテンツを作り、それを伝達すること」にフォーカスした戦略的なマーケティングの取り組みだ。 見込客として明確に定義された読者を引き寄せ、関係性を維持しながら最終的に利益に結びつく行動を促すことを目的としている。 すなわち、人が魅了されて物を買う、サービスを利用する決断に欠かせないのがコンテンツマーケティングと言える。 コンテンツマーケティングが重要視される背景には、常に何らかのデバイスに触れ続けているようになり、消費者の「企業広告疲れ」が顕著となっていることが挙げられる。 閲覧ページでの広告の表示を防止するアドブロックツールを入れている人の割合も近年増え続けているというデータもある。 ユーザーの広告疲れが進んでおり、かつインターネットでの検索が日常的に行われる現代、コンテンツマーケティングによってターゲットに対して有益と思われる情報を積極的に発信してユーザーを魅了し、いかに企業やサービスのファンにできるかが、今後の売上にもより密接に関わってくる。 ターゲットが自社のサービスの情報を自ら進んで情報を取りにくるくらいにモチベートできる可能性を秘めたコンテンツマーケティングは、どの企業にとっても大命題になりつつあると言えるだろう。 今回はそんなコンテンツマーケティングをサポートする、アメリカ発のMartechスタートアップをご紹介する。著者自身もマーケターとして、こんな機能は新しい、あったら嬉しいと思ったポイントを重点的に取り上げてお伝えする。 アメリカ発Martech startup5選 音声コンテンツを動画に:Wavve ビジュアルコンテンツを魅力的に:Visme SNS上のコミュニケーションを最適化:Manychat メールマーケティングのデザインならおまかせ:Flodesk コンテンツを入れるだけでお望みの形に変換:Designrr 1. 音声コンテンツを動画に:Wavve サウスカロライナ発のスタートアップWavveは、Podcastなどの音声コンテンツを動画に変えられるサービス。 実際にWavveを使って作られた動画を見てみると、音声に関連した映像と、音声によって波打つように動く線が印象的だ。 そして、音声に合わせてキャプションをつけることも可能。音声が流せない時でもSNS上でコンテンツを楽しめるようになっている。 53%の消費者が、企業のSNS上で動画コンテンツを見た場合、そのブランドに対してのエンゲージメントが高まるというデータもある。 ショート動画サービスから学ぶ、ユーザーを惹きつけるSNSマーケティングの秘訣 通常のPodcastのみよりも、映像がつくことで印象に残りやすくでき、さらに動画とは違ってあくまでも音声を主役とした映像が流れるところが特徴的なサービスだ。 筆者としては、動画ではなく音声を主役にすることで、Podcastの「距離の近さ」や「親近感」があり、ファンを増やしやすいというメリットを保ちながら、映像でより印象深くできるというメリットがあるのではないかと考えている。 2. ビジュアルコンテンツを魅力的に:Visme メリーランド発のスタートアップVismeは、インフォグラフィック、Facebook広告クリエイティブ、ビデオ、プレゼンテーションスライド、ドキュメント、SNSの投稿素材などのビジュアルコンテンツを作成できるサービス。 このサービスの特徴は、大きく2つある。 1つ目は、このサービス一つでプレゼンテーションスライド、E-book、SNSコンテンツなどのあらゆるビジュアルコンテンツの作成が可能であること。 プレゼンテーションスライドにはPowerpoint, E-bookにはFigma…というように、ツールを使い分ける必要がない。もちろん、複数人で1つのコンテンツを同時編集することも可能だ。 たくさんのデザインテンプレートが用意されており、テンプレートに文章を入れてブランドカラーやテーマカラーに揃えるだけで、デザイン的にもハイレベルなスライドができる。かなりの時間短縮になる優れものだ。 そしてもう1つの特徴は、Visme独自のアナリティクスが活用できること。 例えば、とあるE-bookを何人の人が閲覧したのかを確認するために、エンジニアチーにPDFをサーバーに上げてもらい、Google Analyticsと連携するようにお願いする、ということをせずとも、Vismeのリンクからシェアすることで、何人の人がこのコンテンツを目にしていて、平均的なページ滞在時間がどのくらいかまでを見ることができる。 同社によると、現在120カ国から400万人以上のユーザーがいるグローバルなサービスだ。 3. SNS上のコミュニケーションを最適化:Manychat カリフォルニア発のスタートアップManychatは、Instagram、 Facebook、SMSのチャットボットサービスを運営している。 今では190か国以上に展開されているグローバルなサービスだ。 Manychatが他のチャットボットサービスと異なる点は、SNSに特化した機能があることだ。 ManychatのInstagramのDM向けチャットボットは、Instagramストーリーズとの連携ができる。 例えば、ストーリーに対して”Ebook”とDMで返信すると、そのキーワードに反応して、DMでチャットボットがEbookのダウンロードの手続きを始める、といったような連携も可能だ。 また、ストーリーで@メンションされた時に、自動的にDMで会話を始めることもできる。 例えば、D2CストアのInstagramアカウントをメンションした人に対して、DMで自動で次回以降使える10%割引クーポンを渡せるなど、販促に結び付けられる。 もちろん、Shopify、Mailchimp、Google Sheetsなどとのインテグレーションも可能で、DM上で得たメールアドレスを元にメールを送信したり、電話番号をもとにSMSでコミュニケーションを取ったりできる。 マーケターにとっては重要となる顧客の接点と、そこでのコミュニケーションの管理を自動化、効率化できるサービスだ。 4. メールマーケティングのデザインならおまかせ:Flodesk カリフォルニア発のメールマーケティングツールFlodeskを使えば、顧客に配信するメールコンテンツをより魅力的に見せることができる。 リードナーチャリングや顧客との定期的なコミュニケーションにおいて重要な役割を担っているメール。 Newsletterやメールマガジンは、自社の活動を購読者に継続的に共有できる重要なコミュニケーションチャネルと言えるだろう。 そこで大事になってくるのは、まずサブスクライブをしてもらえるか、そして、メール自体の開封率とクリック率。 メールマーケティングに必要な全てのクオリティを上げられるのがflodeskの特徴だ。 Flodeskではまず、メールをサブスクライブするためのLPからデザインできる。Newsletterのサブスクライブテンプレートから、ドラッグ&ドロップで簡単にLPを作成できることはもちろん、登録フォームをWebsiteに改めて実装するといった手間が省けることも利点だ。 また、メールマガジンの平均の開封率は21.5%前後(データ参照元)と言われているが、中身の内容が薄かったり、読むメリットがないと思われてしまうと、その次の配信メールを開封してもらえなくなったり、読み飛ばされてしまい、伝えたい情報が伝わらないままになったりする可能性も大いにある。 そのような意味では、デザイン性の高いメールは、ユーザーが「見たい」と思えるコンテンツであるための重要な要素の一つだろう。 また、ShopifyなどのECプラットフォーム、WordpressなどのCMS、各種SNSとの連携も可能。 特にShopifyのアパレルD2Cブランドにとっては、ブランドの世界観の発信という観点でも、おしゃれが好きな人がターゲットとしているという点でも、デザインの凝ったメールを送ることも多い。 その際、グラフィックをAdobe Illustratorで作成して、その画像をコーディングして…といった手間をかけなくても、自由に文字を入れ込み、レイアウトを変更するだけで、ブランドの雰囲気に合ったメールが完成する。 もちろん、グラフィックではなくとも、ブランド独自の写真を使用することも可能だ。 狙ったターゲットに即したデザインで、顧客とのコミュニケーションが図れることは、ブランドイメージの醸成に効果的だろう。 5. コンテンツを入れるだけでお望みの形に変換:Designrr 最後にご紹介するのは、デラウェア発のスタートアップDesignrr。このサービスでできることは大きく2つだ。 1つ目は、E-bookの作成。YouTubeのビデオ、ポッドキャストのエピソード、ブログの投稿などの既存のコンテンツからE-bookが作成できる。1枚1枚別のページになっていたPDF資料をE-bookの形にすることも可能だ。 2つ目は、動画やPodcastの音声コンテンツのスクリプトを自動で生成できるということ。 どのサービスにもデモンストレーションビデオが紹介されており、どのように使用するかがクリアに理解できるが、特に特徴的な既存コンテンツからのE-bookの作成に関して言及する。 デモンストレーションビデオでは、ブログ記事をE-bookに変換しているが、ブログ記事のURLをDesignrr上にペーストするだけで変換できてしまうから驚きだ。 その後、デザインテンプレートの中から好みのデザインを選んだ時点で、E-bookのベースはその時点で完成。 ベースとなるE-bookのフォントや文章コンテンツ、色も変更できる。また、他の記事を追加したかったら追加できる。 満足するコンテンツが作成できたら、Publishを押すだけでPDFの形でエクスポートできる。 コンテンツを1から考える時間、デザインの時間、E-bookを作るためにFigmaをはじめとした複数のサービスを使う場合の金銭的なコスト、全てを削減しつつ、クオリティの高いコンテンツをこのサービス1つで作成できる。 まとめ 今回はMartechの中でも特に、コンテンツマーケティングに特化したアメリカ発のスタートアップとそのサービスをご紹介した。 今回のサービスを調べてみて感じたことは、業務の効率化や他のサービスとのインテグレーションはもちろんベースの機能として備わっているものが多く、ユーザーの心を動かすような工夫がデザイン、コミュニケーション方法でなされていることが多いということだ。 もはやどの企業、役職でもマーケティング視点、デザイン視点は必須になってきている。ユーザーの心をつかむにはどんな工夫が効果的なのか、​​今回紹介したようなサービスから学べることも多いだろう。 btraxはサンフランシスコと東京にオフィスを持つデザイン会社として、今後もアメリカの最新スタートアップ情報を発信していく。ぜひ次回もご期待いただけたら幸いだ。 参考 https://explodingtopics.com/blog/martech-startups https://chiefmartec.com/2021/09/47-new-martech-companies-just-two-days-y-combinator/ […]

Adobe Stockから学ぶ、2022年の世界のクリエイティブトレンド予測

2022年のAdobe Stock Creative Trends Forecastが公開された。 Adobe Stockとは、あらゆるクリエイティブプロジェクトに利用できる高品質なロイヤリティフリーの写真、ビデオ、イラスト、ベクター、3D、テンプレート数千万点を厳選して、デザイナーや企業、教育機関、官公庁向けに提供するストックフォトサービスだ。(参考) 毎年、世界と地域のクリエイティブトレンド予測(Creative Trends Forecast)を発表している。 Adobe StockのCreative Trends Forecastは、Visual Trends、Design Trends、Motion Trendsの3つのセクションに分かれている。2022年は世界と日本のクリエイティブトレンドを対象としていた。 btraxは日本のCreative Trends Forecastのうち、ビジュアルトレンドの制作において協業させていただいた。 今回は世界のビジュアルトレンド予測について、AdobeのPrincipal of Consumer and Creative Insights、Brenda Milis 氏にインタビューした内容をまとめてお伝えする。 この記事を読んでからAdobe Stockを見ると、企画者の視点でビジュアルを楽しむことができ、新たな発見があるだろう。 2022年注目のブランディングトレンド Q: 簡単に自己紹介とご経歴をいただけますか? Brenda Milisです。現在Adobe Stockにおいて、年間のAdobe Stock Creative Trends Forecast作成、公開のイニシアチブを取っています。 私のキャリアの始まりはフォトディレクターでした。様々な業界のディレクションを担当していました。 仕事を始めてからずっと「ビジュアル」に関わる仕事をしてきたので、日常的にフォトストックを使ってビジュアルや、アイコンの使い方などをリサーチしてきました。リサーチが私のキャリアにおいて強みであり、情熱を持てることでした。 Adobe StockのCreative Trends Forecastは、かなり影響力のあるものだと感じています。なぜなら、クリエイティブトレンドをグローバル規模で、年間を通して、あらゆる業界の広告やメッセージをもとに予測するからです。 私たちのクリエイティブトレンド予測は、将来的に主流のトレンドとなっていきます。 Q: 今では、SNSなどのオンラインでもビジュアルが見られる時代になりました。しかし一方で、ビルボードなど、オフラインの世界にももちろんビジュアルは溢れています。この変化は、現代のクリエイティブトレンドのリサーチにどのように影響していますか? 全てのプラットフォーム、場所、チャネルで、全ての人がある時は意識的に、またある時は無意識的に画像を見ています。 ビジュアルトレンドが大変重要だと思う理由として、現代のビジュアルは本当に目まぐるしく変化していることが挙げられます。 というのも、いつ何時も私たちはどこを見ても何らかの画像を目にしていて、その画像を「消費」しているからです。 人々が四六時中携帯を見るようになる前、私たちは道を歩いていたり、地下鉄の広告を見たり、店舗のウィンドーディスプレイを見たり、そのようにして画像を発見していました。 それは今も続いていることです。しかし今では家でプライベートの時間を過ごしている時も、SNSを介して画像を見ています。それに伴って、私のリサーチはかなり幅広くなりました。 なぜなら、SNSの活用によって今までの時代よりもはるかにビジュアルを目にする機会が増えたからです。 これは企業にとっても重要な変化で、ビジュアルを変えることで常にブランドを進化させ、自社が顧客に対してどのような関わり方をしたいのかを示すことが以前よりも容易になったということです。 Q: 2022年のグローバルのビジュアルトレンドを制作した印象をお聞かせください。 特に興味深く感じたことは、ここ数年のコロナウイルス感染症による厳しい状況に反して、ポジティブな雰囲気のビジュアルがトレンドになりやすいということです。 そして今年は、どの国でも同じようなビジュアルがトレンドになっていることが印象的でした。Adobeはグローバル企業ですので、トレンド予測を完成させるまでに、各国のスタッフと密に連携しながら綿密なリサーチを行います。 2022年のトレンド予測を作る際初めて地域ごとのスタッフに自分が考えたグローバルトレンド予測を発表した時に、どの国でもすぐに賛同が得られました。 パンデミックによってどの国でも行動範囲が縮小してライフスタイルが似てきているので、同じようなトレンドになりやすいからだと考えます。 Q: 今のお話より、各国のチームとどのように協業しているのかを知ることができました。毎年このStock Trendのプロジェクトを牽引されていますが、毎年どのようなプロセスとスケジュールでリサーチを行っているのでしょうか? いつも私は前半の半年で広く浅くリサーチを実施します。そして、1年の後半に差し掛かった辺りで、範囲を広げるというよりは、今までのリサーチをもとに深掘りするようなリサーチに切り替えます。 例えば、Adobe Stockのユーザーが何を検索しているか、ファッション、美容、ビデオゲーム、メディア、エンタメ、テクノロジー…など、さまざまな領域を総合的に見て、全ての領域においてどんな画像が検索されているかをリサーチします。 私自身も日々人気のカルチャー、年代別のトレンド、アート、などリサーチをたくさんしています。 全ての領域に共通して見られる特定のビジュアルがないかどうかを求めて、他地域のチームやAdobe Creative Cloudチームにリサーチに行き、彼らの視点からのフィードバックを求めることもあります。 このように、私はAdobeの他地域のチームや、Adobe Creative Cloudチームなど、たくさんのチームと連携し、協力を仰ぎながら進めています。 そして、大体の時期については、6月の終わり頃から9月までの間で、全ての広範囲のリサーチを終わらせて、発見したことに関してAdobeの他地域のチームや、Adobe Creative Cloudチームにフィードバックをもらいに行くようにしています。 そうすることで、これらのトレンド予測はより確からしいものになっていきます。そうして、全世界に公開できるようなトレンド予測は出来上がっています。 Q: トレンドを常にリサーチされていると思いますが、一旦スイッチを切って、全ての情報をシャットアウトしようという気分になることはありませんか?例えば、森に入って何もしないでテントに籠る時間を作るとか。 私はきっと森に入っても、その中で見えたものに関して考えてしまいますね笑、アウトドアはご存じのかもしれませんが今のトレンドだから。 全ての公式なリサーチから離れようと思ったら全てのデバイスからシャットアウトして、記事を読んだり、情報を比較したりすることから離れなければいけないと思います。 でも私は個人的に、世界がビジュアル的にどのように動いているのかをリサーチしたり、パズルのピースをはめていくような作業をするのが本当に面白いと感じている人なんです。 なので、もし私がキャンプに行ったとしたら、私はきっと自然の中にいることや、外で活動することがどれほど大切かを実感すると思います、そしてやはり、どこからかトレンドを見つけ出そうとしてしまうかもしれません笑。 Q: 次の質問は、トレンド予測の正確性に関する質問です。例えば、2020年の予測は、どのくらい正確に当たっていたのでしょうか?というのも、2020年に感染症が広まり、あのような状況になるなんて誰も予測できなかったですからね。 2020年ですか、かなり前ですね!リサーチしていたのが2019年になるから、2020年は正直思い出せないのですが、コロナ期間中のトレンド予測として挙げるのであれば、2021年のトレンド予測は、本当に的を得ていたのではないかと思います。 2021年の実際の広告やブランドが発信していたメッセージは似ていました。私たちに語りかけるようなメッセージでしたね。例えば、「この状況を一緒に乗り切りましょう!」とか。 2020年に、私は2021年のトレンドを見つけ出せるか不安でしたが、いつも通りのプロセスを踏んでリサーチをしたところ本当に正確だったと記憶しています。 なので、結論としては、私たちのトレンドは時代や私たちの生活を急激に変化させるもの(例えばパンデミックなど)が現れない限り、本当に正確だと思います。 コロナという状況の中でも、人生の中にポジティブな瞬間を見つけ出すのは必要なことですね。 ええ、本当にそう感じます。2022年のトレンドのうち1つに、”Powerfully Playful”というものがあります。これは2022年の一番強力なトレンドであり、メッセージではないかと推測しています。 いろいろな物事が確実にストレスフルな方向に進んでいて、人々は楽しい想像を掻き立てられるような、美しくてポジティブなメッセージのビジュアルを求めているのではないかと思います。 全てのモチーフのトレンドには、なぜそれが人気なのか、理由があります。この世の中を生きる私たちの心に余裕や安心をもたらすからだと考えています。 過去2年間のパンデミックの時代の中で、メンタルヘルスや感情に関係するビジュアルが重宝されるようになりました。 全ての人の状況は違いますが、私たちは皆メンタルを健康に保つことは大切だと痛感していると思います。前向きなメッセージを発するビジュアルは、それを助ける要素になっていると思います。 2022年のビジュアルトレンドの一つに”The Centered Self”というものが挙げられます。これは落ち着いて、自分を労わる時間をとることを意味します。 ビジュアルは本当に大きな力を持っていて、他の人と相互にリアルタイムで交流する機会の減った現代だからこそ大きなパワーを持つようになりました。 Q: 今回のトレンドで驚いたことはありますか? 私は毎年その年のトレンドに驚いています。毎年、どうやってトレンドの予測をしようか?と思うのです。 なぜなら、明らかになっていることなんて一つもないから。しかしリサーチをし続けるうちに、トレンドは姿を表すものなんですよ。 2022年のトレンドにも驚きました。毎年、地域ごとに少しづつ違うのですが、世界的にほぼ一律に同じようなビジュアルがトレンドになっていたので驚きました。 まとめ 今回はAdobe Stockの制作の過程やリサーチの過程をお聞きした。 今後 […]

主要メディアが伝えないCES 2022の裏側

今年も世界最大のテクノロジーカンファレンス、CESがラスベガスで開催された。と、いうよりも今年こそはリアルで開催された。去年はバーチャルのみでの開催だったから。 直前に感染拡大のニュースが広がり、複数の大企業が直前で出展取りやめの発表があったため、開催自体が危ぶまれたが、結局予定通りに開催することに。 注目されている展示内容などはおそらく多くのメディアによって既に伝えられていると思うので、今回はあくまで個人的な感覚で「裏CES」をお伝えする。 感染対策? ほとんどしてない まずは、このコロナ禍、それも開催の一週間ぐらい前に急激に感染者数が増えた状況で、一体どんな感じで感染対策をするのかな?と思ったが、結論は「ほとんどしていない」。 これはものすごく意外だった。 もちろん、参加するにはワクチン証明書の提示が必須。そしてイベントのパスに加え検査キットが渡されるが、これはあくまで参加者の自主性に委ねられている。 会場に行ってみると、入場制限もないし、感染を防ぐためのこれといったチェックや消毒等もなかった。逆に考えるとそれぐらい心配する必要がないということなのか? 本当に規制があまりなかったおかげで、入場や移動はかなりスムーズ。その代わり会場はかなりの密状態ではあった。 メディアの扱いがめっちゃ良い 今回もいつものように一般開催の2日前から行われるMedia Dayと呼ばれるメディア専用のカンファレンスと、メディア向けに新規プロダクトが展示されるUnveiledのイベントから参加。 これまでとの違いは、メディア枠で参加する人も減ったせいか、待遇と対応がものすごくよくなっていた。展示企業関係者のその多くが「メディアの方々、ありがとうございます!」といった声がけをし、ノベルティーも豊富。 そしていくつかの企業は、個別にメディア関係者をホテルのスイートルームに招待し、プライベート取材をおこなってくれた。なかなかVIPな気分になれる体験だった。 けどドタキャンもめっちゃ多い その一方で、元々はリアルセッションを予定していた企業のいくつかは途中でバーチャルセッションになったため、メディア参加者にとってはドタキャンされた感じになった。 元々予定されていた会場が急遽ビューイングルームとなり、大きな画面に映されたセッションを見るだけ。臨場感もほとんどなく、オーディエンスはわずか数名。売れないインディーズバンドの初ライブを彷彿とさせた。 主催の運営がかなり後手後手 これは実際に展示している友人に聞いた話だが、主催者の対応がかなり後手に回っており、出展者にとっては、とてもしんどい状態だったという。対応もかなり悪く、出展者としてはストレスの溜まる経験だった。 通常であれば、開催の数日前から仕込みを行うのだが、今回は本当にリアルで開催するのか、開催する場合の展示場所は等々、直前まで決まってないことが多く、展示の前日の夜でも設置作業が終わってない事態も少なくはなかった様子。 テクノロジー自体への注目は大幅低下 CES自体はテクノロジーカンファレンスなのだが、今年は一つ大きな変化があったかのように思える。それは、テクノロジー自体のアピールよりも、それを利用したプロダクトや体験の展示が多かったところ。 これが数年前だったら、IoTやウェアラブル、5GやAIなど、要素となるコアテクノロジーやデバイスのバズワードが羅列していたが、今年はそれを活用し、ユーザーへの価値として届けるケースが多かったように思える。 パーツサプライヤーが自動車を作る時代? これは数年前のCESから少しずつ見えてきたトレンドなのだが、自動車メーカーと部品のサプライヤーの関係が徐々に逆転しはじめている。というのも、現代の自動車は、各種センサーやカメラなどのデジタルデバイスとそれを制御するソフトウェアで構成された巨大なデジタルデバイスになってきている。 すなわち従来の自動車の製造技術とは全く異なる仕組みが必要になってきており、巨大サプライヤーがそれを提供している。ということは、そもそもサプライヤーが自動車の重要な部分をほぼほぼ作っちゃてるわけで、それがEVになれば、自動車ブランドの役割は、企画・デザイン・販売・ブランディングぐらいで、その「中身」はサプライヤーが提供するのも納得ができる。 今回はその究極として、巨大サプライヤーのBOSCHが各種センサーをフレームに埋め込んだデジタルシャーシを発表。自動車メーカーはそこに “ガワ” をつければ、はい完成。という仕組み。また、チップメーカー大手のクアルコムも自動車向けのチップを発表していた。 自動車向けのカメラパーツを提供しているSONYが、自動車産業への進出を正式に発表するなど、近いうちに、自動車産業の構造自体が逆転していくのは明らかだろう。そもそも、CES自体が半分オートショーになってきている。 社会的な課題を解決するためのテクノロジー活用 今回のメディア向けセッションの中で最も感銘を受けたのが、アメリカのトラクターブランドのJohn Deere。世界的な食糧危機が叫ばれる中で、アメリカでのメイン産業の一つである農業における課題を説明。このままのやり方だと、世界の飢餓問題に対応できない。 そこでより農家の人たちが効率よく作業をし、農作物の量と質共に向上させるために自動運転テクノロジーをトラクターに実装する。それにより、無人のトラクターが、最も効率良い農作業を24時間おこなってくれる。これまで1日平均10-12時間働いていた農家の人たちが、スマホ一つでトラクターを管理し、家族との時間を増やすことができる。 これまで飛び道具的な利用のされ方の多かったテクノロジーが、人々と環境に対してしっかりと活用されていく例の一つだろう。 韓国勢の勢いがすごい 滞在先から会場に向かう際にUberに乗った。その直後にドライバーから「今回のCESで韓国人じゃないお客さんは君が初めてだよ」と言われた。 聞くところによると、どうやら韓国から参加する方がかなり多いという。確かに、LG, サムソン, Hyndaiなどの大企業をはじめ、スタートアップ系も韓国勢がかなり多い。 そしてオーディエンス側も韓国からこられたと思われる方々を多く見かけた。実際に話してみると、やはり韓国から来られた方々だった。 少ないけど日本勢も結構良いよ 仕事の関係者や友人経由で、日本から来る予定だった企業や参加者のその多くが直前でキャンセルしたという連絡が入った。通常であれば、アメリカ以外で最も参加者の多い国の一つであるが、さすがに現在の帰国時の強制隔離を考えると、来るのが難しくなる。 その一方で、日本企業のプレス発表やJ-Startupの展示はかなり興味深いものも多かった。特にSONYの自動車事業への本格進出の発表や、Canonのプレス向けのマジックショー的なプレゼン、実物大のSkydriveのドローン、岩佐さんの体を張ったShiftfallのデモなんかは結構なインパクトがあった。 まさかのハイパーループ体験 CESのメイン会場はとてつもなく大きい。それも4つの建物で構成されており、それぞれを行き来するだけでも相当な距離がある。なので、より効率の良い移動方法を関係者に聞いたところ「テスラトンネルを利用すれば良いよ」と謎の答え。 会場の前に一昨年まではなかった地下鉄の駅のような入り口がある。そこを下ると、なんと大量のテスラが停まっており、タクシー代わりに無料で送迎してくれるとのこと。 実際に乗ってみて度肝を抜かれた。というのも、イーロン・マスクが以前より構想しているハイパーループの短い版が作成されており、そこをテスラの車両が行き来する仕組み。これにはめっちゃ興奮した。 サステイナブルはすでに特別なことじゃない CES 2022におけるメディアキーノートのその全てにおいて、何かしらサステイナブル文脈のコンテンツが発表された。テクノロジー企業としてイノベーションの追求に加え、地球環境や人々の生活の豊かさを守っていくのが最も重要な責務の一つになっている表れだろう。 数年前までは「うちらもサステイナブルはじめました!」とドヤ顔で発表していたような企業も、現在となってはそれが当たり前であり、サステイナブルなしのイノベーションはあり得ないというノリ。今後はどの企業にも必ず求められる社会的責任だろう。 最もイノベーティブ?な展示 – LG 毎年CESでは多くの企業がとんでもない規模の展示を巨額の予算を投じて行う。その中でも、LGは入り口近くの最も大きなスペースを確保し、一面に広がる巨大スクリーンで度肝を抜くのが例年の流れだった。 それが今年はどんでもないことになっていた。というのも、全く何も展示されていない。いや、いつもと同じ巨大スペースは確保しているのだが、そこにあるのは剥き出しのベニヤの床と、木でできた簡素な椅子。そして、等間隔で貼られているQRコードのみ。 そう、お察しの通り、LGはリアルな展示は諦め、潔く全てを「続きはWebで」に投げてしまったのだ。まあこれも、一つのサステイナブルな展示方法だろう。ある意味。今回の一般展示で最もインパクトがあるイノベーティブな展示だったのかもしれない。 優れた技術は魔法と見分けがつかない その一方で、実際の発表や展示内容はかなり素晴らしいものも多かった。特に最新テクノロジーをプロダクトに落とし込み、上手に見せている企業が多く、一瞬ではどのような技術が使われているかもわからないレベルも多かった。 例えば、ボタン一つで色が変わるBMWの車両、完全自動運転で動くレーシングカー、リアルターミネーターっぽいロボット、など。 まとめ: 結局これくらいがちょうど良い 今回のCESは、結局予定より1日短く終了した。感覚的にいうと、通常の60-70%の展示数、50-60%の参加者数っていう感じだった。 でもそれがなぜか少し安心する部分もあった。おそらくCESはここ数年で注目されすぎて、膨らみすぎていたんだろう。 あまりにも多くの展示企業と参加者が世界中から訪れ、数日をかけても全てを回るのは不可能だし、何よりも人混みがとんでもなくすごく、とても疲れてしまうイベントだった。 それが今年は、少し規模を縮小しての開催になったことで逆に居心地が良かった。初めて参加した5-6年前を思い出させてくれる感じて、来年以降もこのぐらいで良いな、と思った。

2021~2022年スタートアップトレンド徹底解剖!【対談】Skylight America 大山哲生氏×btrax Brandon K. Hill

世界的パンデミックの影響で、社会、政治、経済に急激な変化があったことは言うまでもない。そんな時代の動きをいち早く反映するのがスタートアップトレンドだろう。変化は世界有数のスタートアップの祭典、TC DISRUPTのピッチでも顕著に見られた。
【スタートアップイベント】TC DISRUPT 2021 – 10の感想

TC DISRUPTは、これまでにも数多くの著名人や起業家が出演している世界最大規模のスタートアップイベントだ。今年は新型コロナウイルスの影響で完全オンラインで開催された。

まるで宝箱!? アメリカで話題の「サブスクリプションボックス」とは?

COVID-19で需要が拡大した通称「サブスク」ことサブスクリプション。日本でもそのサービス幅は広がりを見せている。代表的なものは、Netflix、Apple Music、Spotifyなど。こういったものはもはや生活になくてはならないサービスになっている方も少なくないのではないか。 最近では水、食品、サプリメントなどが定期的に家まで届くサービスも登場してきており、コロナ禍の「おこもり需要」に応えている。 今回はそんなサブスクリプションサービスの中でも、アメリカの「サブスクリプションボックス」に焦点を当ててご紹介する。サブスクリプションボックスとは言葉の通り、自分が注文した物がボックスに入って家まで届くサービスのことだ。 「ボックス」であるメリットは? 商品だけが届いてもサブスクリプションとしても機能を果たすが、わざわざボックスに入れて提供しているのは何故か。その理由は大きく2点だ。 1. セレンディピティ セレンディピティとは、思わぬものを偶然に発見すること。「こんなのが欲しかった!」という予期していなかったプロダクトに出会える可能性があるところはサブスクリプションボックスの一つの特徴だ。 サブスクリプションボックスには何が送られてくるかわからないものも多い。新たな出会いのワクワク感があるのは「開けるまで分からない」サブスクリプションボックスの強みだ。 パーソナライズの死角とデジタル・セレンディピティ 2. ワクワクする開封体験 ボックスを開けるとき、まるでプレゼントを開ける時のような体験ができるのも特徴の一つ。入っているものがわからない時はもちろん、何が入っているかわかっている場合も、自分が選んだものが入っている箱を開けるワクワク感が体験できる。 D2Cの開封体験デザイン – ブランドに学ぶカスタマーと繋がる方法 アメリカで人気の最新サブスクサービス5選 【ワインのサブスク】Vinebox 【洗剤のサブスク】CleanCult 【おもちゃのサブスク】Kiwico 【訳あり野菜&果物のサブスク】Misfits Market 【エシカルプロダクトのサブスク】Causebox 【ワインのサブスク】Vinebox Vineboxは、認定ソムリエたちが厳選したワインがグラス一杯分(100ml)×3種類送られてくるサービス。ワイン通向けというよりは、ワイン初心者が「お気に入りの1本」を見つけるのに最適なサービスだ。 黒を基調とした高級感のあるボックスが特徴で、ワインも一本一本、香水を思わせるような細い容器に入っている。毎回異なるワインが送られてくるため、ボックスを開けて新たなワインと出会う楽しみが感じられる。テイスティングをする感覚で利用できるサービスだ。 プロのソムリエが厳選した味といえど、自分の口に合わないワインであれば、いくら良いワインだったとしてもワインボトル1本を消費するのは意外と苦労するもの。新たな味を求めて冒険しようと思っても、ワインボトル一本買うことは意外とハードルが高い。 このサービスを使えば、お気に入りの一本を見つけるためにワインを丸々一本買う必要はなく、口に合わないワインだった場合に余らせてしまうことも起こらない。もう飲まないボトルが家に何本もある、という状態にもならずに済む。 ワインにとって重要な鮮度も担保されている。ワインボトルから小分けにするときも、酸素に一切触れずに入れ替える技術を用いて、鮮度の高いワインを提供している。(HPより) ミレニアル世代の飲みスタイルを捉えたスタートアップ3選 【洗剤のサブスク】CleanCult CleanCultは、自分の好きな種類の洗剤を、好きな香りで、自分に合った周期で届けてくれるサービスだ。扱っているのは植物由来の材料だけを使った無添加洗剤のみ。 最初のオーダーはガラスのボトルに入った状態で送られlくる。そして、その後に送られてくるリフィルも、環境負荷の少ないカーボンニュートラルな素材の、カラフルな牛乳パッケージのようなものを使用している。 Cleancultの誕生の背景には、ファウンダーのライアン・ラップバーガーの強いこだわりがあった。彼はあらゆるプロダクトの成分表示をチェックせずには居られない性格。普段から食品やシャンプーの製品ラベルを確認して、健康や環境に良いものだけを購入するよう心がけていたそうだ。 しかし、食品や化粧品とは異なり、実は洗剤やハンドソープには成分表示が義務付けられていない。 この手の商品においてラベルをチェックする習慣を維持するのが難しくなったラップバーガーは、やがてサステナブルな製品をアピールしている洗剤ブランドはいくつか存在する。しかし、多くの製品がプラスチックのパッケージを使っていることに疑問を持ち始めた。 こうして、パッケージまでもがサステナブルなCleancultが誕生した。 そんなCleanCultは、ミッションとして”A WORLD OF CLEAN INSIDE EVERY DROP”を掲げている。パッケージ、廃棄方法、全てをサステイナブルにするには?と考えた結果、材料からパッケージング、パフォーマンス、出荷、そして容器のリサイクルまでの全てのプロセスの仕組み化を再考。 結果としてパッケージや洗剤の成分、そして輸送の際の排気ガスの削減にまでこだわったサービスが誕生した。 デザインから環境問題を考える。エコ・サステナブル系サービス5選 【おもちゃのサブスク】Kiwico Kiwicoは知育玩具のサブスクだ。おもちゃのサブスクという子供用を想定しがちだが、おもちゃの対象年齢は児童だけではなく、自分で考えて組み立てるものなど、大人でも楽しめるおもちゃも用意されている。 ボックスの中におもちゃ、おもちゃの説明書が入っており、年齢やおもちゃの内容によっておもちゃ以外の付属品も変わる。 例えば0~36ヶ月の乳幼児向けのおもちゃであれば、子育てを始めたばかりの親向けに「子供との接し方」を説明するパンフレットだったり、おもちゃの使い方を説明するビデオが入っていたりする。 これは、Kiwicoのユーザーとなるのは子供だが、顧客は親ということを炉介した上での設計と言える。子供がおもちゃを使用する際のUXデザインだけでなく、親のCXデザインまで総合的な設計がされているプロダクトだ。 3人の子を育てる「ママ」が起業。その背景とは KiwiCoを設立したSandraは、彼女自身が3人の子供を育てる母。育児の中で「子供に”何かを自分で創造する”経験をさせたい」気持ちがあったが、そのようなものを自分で見つけて子供達に提供する難しさを感じた経験からKiwicoを立ち上げた。 会社のVisionは「To inspire the next generation of innovators.」子供たちの問題解決スキルを育成し将来の課題解決に役立てることをミッションとしている。 おもちゃを開発しているのは教育者、メーカー、エンジニア、ロケット科学者のチーム。ブレインストーミング、プロトタイピング、実際に子供達に使ってもらってテストすることを繰り返して、なんと1つのおもちゃを作るのに1000時間以上を費やしている。 母親が実の子供に対して提供したいことを徹底的に考えた結果できたサービスだ。 UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割 【訳あり野菜&果物のサブスク】Misfits Market Misfits Marketは、安価で手に入る農作物を消費者に届けるサブスクリプションサービス。 形の悪い作物を安く手に入れた分食品を安く提供することで消費者に還元する仕組み。これは実は日本でお馴染みの無印良品と似た取り組みだ。 干し椎茸はそのまま食べるわけでもなく、見栄えにはあまりこだわらないはず。多くの場合、おいしい出汁がとれればいいわけで、割れているものでも風味は変わりません。私達は、形の悪いものもすべて買い取り、サイズや形の選別もせず、また、包装の簡略化ということで、パッケージはおなじみの透明な袋に商品名を印字しただけ。 品質はそのままに、あらゆる無駄を省いたことで、従来品より価格を3割ほど抑えることができ、その結果、大ヒット商品となりました。 《引用》日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ【第2回】 実はアメリカは農業大国であるが、生産されている1/3の農作物が食料品店基準を満たさず、収穫されずにそのまま処分されたり、収穫されても店頭に並ばなかったりする。またその影で何百万もの食糧不足で苦しむ世帯が存在することも事実。 こうした生産者と消費者それぞれが抱える問題をを解消するため、サービスが誕生した。Misfits Marketsには産地直送の農作物が90種類以上用意されている。 産地直送ゆえに野菜の鮮度が失われてしまうことがなく、届くのは形が悪くても高品質で無農薬の新鮮な野菜ばかりだ。 blogも運用しており、野菜を使ったレシピや野菜の栄養素、豆知識に関して発信もしている。野菜を買ってからどのように調理するかまで含めてサポートしている。 実は2020年の7月に約91億円の大型資金調達をした期待のスタートアップでもある。 食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選 【エシカルプロダクトのサブスク】Causebox 最近日本でもよく聞く「エシカル」という言葉。エシカルプロダクトとは、自然環境に配慮した製品や、社会問題の解決に貢献する仕組みを組み込んだ製品のことを指す。Alltrueは、エシカルプロダクトを集めた、女性向けのサブスクリプションボックス”Causebox”を提供している。 Causeboxはシーズンごとに手元に届く仕様。年間通して4回届くアニュアルプランと、ワンシーズンごとに注文するプランがある。 1つのボックスにつきエシカルプロダクトが5~8個入っており、それぞれのプロダクトは「女性の活躍支援」「環境保護」「職人の手作り商品」「チャリティー」「スモールビジネス」のいずれかの分野に関連している。 毎回商品が届くとYoutubeで”unboxing(開封)”動画が公開されている。その鍵は、女心をくすぐる「映える」デザインのボックスであること。思わず動画を撮ってしまいたくなるデザインで、まさに開封体験までこだわったサブスクリプションボックスと言える。 最新の2021年秋に届いたボックスの開封動画も複数投稿がある、人気のサブスクリプションボックスだ。 エシカルデザインとは 日本でのサブスクスタートアップの状況は? 実は日本にもサブスクリプションボックスのサービスが増えつつある。日本のサブスクリプションボックスは「パーソナライズ」が鍵。 今回は2つのサービスをご紹介するが、どちらも避けたい成分を選択できたり、フィードバックやリクエストを送ったりすることで自分好みにより近づいていく仕様になっている。 アメリカよりもなぜ「サブスクリプション=パーソナライズ」の色が日本では強いのか。それは日本人のとある国民性の影響が考えられる。 実は日本人は「失敗したくない」と言う気持ちが人一倍強いと言われている。日本の終身雇用制度や、学歴社会はその代表格だ。一旦レールから外れるとやり直しが効きにくいので、皆がレールを外れないように(リスクを取らないように)行動する傾向が他国に比べて強い。 日本では完全に敗者だった【インタビュー】btrax CEO, Brandon K. Hill それゆえ、「何が届くか全くもってわからない」状態では日本人には受け入れられにくい。中身が完璧にわかっていなくとも、「自分好みのものが届く可能性が高い」状態に持っていくことが鍵となる。 そのために日本のサブスクリプションボックスでは「パーソナライズ」が強く押し出されているのだろう。 日本でも広がる サブスクリプションボックス2選 そんな「パーソナライズ」に特化した、サブスクリプションボックスのサービスを紹介する。 【コーヒーのサブスク】PostCoffee 【おやつのサブスク】Snaq.me 【コーヒーのサブスク】PostCoffee Postcoffeeはコーヒーのサブスクリプションボックスだ。 初回の注文の際は好みのコーヒータイプ診断をし、ライフスタイルや嗜好に関する10個の簡単な質問に答える。これにより、約15万通りの組み合わせからその人に合った好みのコーヒーが3種類届く。淹れ方や飲む頻度、量なども指定可能だ。 一度届いたコーヒーに対して味や好みのフィードバックや飲みたいコーヒーのリクエストを送ると、送られてくるコーヒーが注文者好みに近づいていき、届くたびに自分好みのボックスに近づいていく。 サブスクリプションでありがちなのが「◯回以上は商品を買い続けなければいけない」という「定期縛り」。しかしPostcoffeeは最低契約期間も設けていない。 いくらパーソナライズされるからといって完全に自分好みのものが届くは限らない。「気に入らなくてもすぐに辞められる」という心理的安全性も担保し、サブスクリプションを始める障壁も極限まで低くしたサービスと言える。 【おやつのサブスク】Snaq.me […]

フェムテック先進国アメリカの最新サービス & 注目の国内事例6選

日本でジェンダーの平等観の浸透や女性の社会的権利に声をあげることが広がる一方で、女性の健康面までその声の広がりは行き届いているだろうか。 女性の権利に対する運動が盛んなアメリカでは女性のヘルスケアへの意識も高くフェムテックのサービスやプロダクトが広がりを見せている。 実際に私自身アメリカでの学生生活を通して、ここ数年でフェムテックが日常レベルまで浸透してきたと感じている。特に低容量ピルと吸収サニタリーショーツのD2Cを周りで使う学生も多く、フェムテックのサービスを使うことが当たり前になり始めている。 今回は拡大を見せるアメリカでの最新のフェムテック事情と、日本国内でも先駆的に利用者を伸ばしているサービスについて解説をする。 アメリカのトレンドから新たなサービスアイディアを求めるヒントになるだろう。また、幅広い年代に対応したサービスを紹介しているため、それぞれの体の悩みへアプローチする方法が見つかると同時に、サービス開発をする側にとっても参考になれば幸いだ。 フェムテックが取り組むセクシャルウェルネス改善と女性社会進出 フェムテックをリードするアメリカ 広がりが見られるアメリカのフェムテックだが、実際に数値で見ると、圧倒的にフェムテックの数が世界で多いことがわかる。 また2020年には、フェムテックを行うスタートアップへ投資された額は$376.2 millionと多額の額が投資されそのうちの半数以上はアメリカの投資家によるものであった。これらから世界的に見てもフェムテックをリードしている国と言えるだろう。 アメリカで注目のフェムテックサービス紹介 1. Future Family 不妊治療を行う際に立ちはだかる大きな壁として、多額の費用がかかることが挙げられる。アメリカの場合、不妊治療は初診料でけでも20万円近くかかり、体外受精の平均費用は150万円から200万円にも及ぶ高額な治療である。 しかし Future Familyはこの課題を解決するべく、サブスクリプションを導入し月に$250から始まるプランで不妊治療に必要なIVF(体外受精)と卵子凍結のサポートを行う。 プランにはユーザーに合った細かい不妊治療のプランの捻出から医療機関の紹介、いつでも専門医に相談できるコーチングのサポート等がある。 高額かつ通院が必須なイメージがある不妊治療を、月額制にしたことで患者の金銭的な負担を軽くし、各ユーザーにカスタマイズされたプランをオンラインで提供している点が革新的である。 2. The Pill club The Pill Clubは低容量ピルのD2Cブランドである。病院に行かずに低容量ピルの受け取りが保険なしでも可能である。その利便性が支持を得て2016年にスタートし、現在ではアメリカ国内の47州にサービス展開を広げている。 注文までのステップはとてもシンプルで、いくつかの質問に答えた後に医師が自分に合ったピルを選択してくれる。費用は保険がある場合1年間のサブスクリプションで月額$6と手頃になっている。 また注目の点としてはただ薬が自宅に送られてくるのではなく、ピルと一緒に毎月お菓子や可愛いデザインのステッカーなどが同封され配達されることである。 毎月送られてくるのを楽しみながら注文できることもポイントだ。利便性を追求しただけだなくUXやユーザー心理も考えられているのが伝わる。 3. FLO HEALTH FLO HEALTHは全ての女性のライフステージに合った健康や体の悩みに関する情報の提供とサポートを行うヘルス系のアプリである。2019年には世界のアップルストアのヘルス系カテゴリーで最もダウンロードされたアプリであり、その認知は国外にも広まっている。 具体的には、AIを用いたアプリ上での生理周期のトラッキング、また生理による頭痛や体の痛みなど、どのような体の変化が出るかを周期毎のリマインドだ。 妊活のためにはカレンダー作成や赤ちゃんの名前選びに関する知識のシェア。また婦人科系の病気に関する多数の記事をアプリ上で閲覧できるなど、幅広い年齢のユーザーに合うようにと様々なコンテンツが用意されている。 これまで、女性のヘルス系アプリだと生理周期のトラッキングのみ行うものであったり、年代ごと、カテゴリーごとに分けられたヘルス系のアプリが多くあった。しかし、例えば10代の若い女性がが年齢を重ねても、ライフステージに合ったコンテンツを1つのアプリで利用し続けることができるのは目新しく便利である。 日本でも広がりをみせる国内発のフェムテックサービス 1. ファミワン ファミワンはLINEを活用した妊活コンシェルジュサービスであり、専門家である​​不妊症看護認定看護師、臨床心理士、助産師、培養士、ピアカウンセラーから妊活に対する様々なアドバイスを受けることができる。 費用は無料で、治療を開始する場合は、自分に合った病院を紹介してくれる。また画期的な取り組みとして、LINEを通じたサポートの他に、企業に向けて妊活・不妊治療を福利厚生として導入するための支援も行っている。 2. Truly Trulyは、日本で初めて更年期に重点を置いたオンライン相談サービスである。個人向けには女性特有の悩みに特化した様々な記事の提供と体のセルフチェックを、法人向けには月額制で女性社員の負担がなく更年期、性の悩み等のチャット相談が行えるサービスを展開している。 女性は年齢を重ねるごとにホルモンが低下し、その影響は生活や仕事に影響しかねない。女性の起業家や管理職に就く女性が増える中で、女性の健康面とその取り巻く環境を企業側と共に支えることは重要な点である。 世界で活躍する女性起業家たちと、取り巻く環境への課題 3. fermata fermata(フェルマータ)は世界初のフェムテックオンラインストアとしてフェムテックのプロダクト販売するD2Cブランド。世界中のブランドからプロダクトを集めセクシュアルウェアネス、月経、妊娠産後ケアなどの用品を取り扱う。 従来ではひとつのサイトで女性のヘルス系の商品を一挙に閲覧し購入することができなかったが、fermataはそれを可能にした。また商品の豊富さだけでなく、レビューを参考にしながら商品を比較したりできることも利点である。 fermataのビジョンに“あなたのタブーがワクワクに変わる日まで”とあるように、Webサイトのデザインがポップで親しみやすく、性や体の悩みへポジティブな印象を持たせているところも魅力的だ。 まとめ 今回紹介した全ての会社が同様のミッションを掲げ、それぞれのサービスやプロダクトを展開していた。それはフェムテックを通して女性が女性特有の健康問題をオープンにし、理解や支援を得られる場を創るということでもある。 それだけまだまだ女性の健康問題によって生きにくい場面が生活の中であると同時に、フェムテックの広がりの需要性もあるということではないのだろうか。 フェムテックの今後の広がりによって、女性自身も自分のヘルスケアについて正しい知識や方法が広がり、またそのようなヘルスケアの意識が高まればどの性別においてもお互いの体の悩みについてよりオープンな環境や場所が増えていくことが望まれる。 Source: Femtech is expansive—it’s time to start treating it as such 令和2年度産業経済研究委託事業 働き方、暮らし方の変化のあり方が将来の日本経済に 与える効果と課題に関する調査 報告書 (概要版) Written by Himawari Nemoto

海外ブランドが「できるだけ買わないでください」を広げる意外な理由

年間10億枚。 これは日本国内で新品のアパレル商品が廃棄される量である。実に4枚に1枚の割合。賞味期限の切れた食品のごとく、多くの商品が誰にも着られないまま、廃棄されていく。 世界全体を見るとそのスケールは甚大で、年間1,700万トン以上に及ぶ繊維製品が廃棄されている。これは、平均で消費者一人につき年間で合計31.75kgの服を捨てている換算。そしてその廃棄量は年々増えている。 2兆5千億ドル規模のファッション業界の闇 この結果は、利益を追求したことによる弊害によるもの。大量に生産することでユニット単位の生産コストを下げ、なるべく安く消費者に届ける。その一方で、大量に売れ残った商品は廃棄するしかないという状況。 また、速いスピードで多くの製品を生産するために、劣悪な労働環境と自然環境や動物に対して大きな犠牲を払っている。そのような状況に対して、よりサステイナブルな仕組みに注目が集まってきている。 安いものを大量に生産する = 大きな犠牲が発生 安い労働力の酷使 大量廃棄 環境破壊 明るみに出たファッション業界における非人道的な労働環境 サステイナビリティ―への関心を高めたきっかけとなった事件がある。2013年4月24日、バングラディッシュ。グローバルファッションブランドの生産を請け負っている多数の工場が入居していた『Rana Plaza』が倒壊した。 倒壊の数日前に建物に亀裂が入っていたことが確認されていながらも、工場の経営者たちは従業員に労働を強要。その結果、1,100人以上が命を落とし、2,500人以上が怪我を負うという、ファッション業界最悪の事故となった。 商品を低価格で提供するため、または企業の利益を拡大するため、多くのファッションブランドが開発途上国の工場にて生産を行っている。 下請け工場で働く労働者の多くは、若い女性や子どもたちで、彼女たちは驚くほど低賃金で、長時間、危険で暴力が蔓延る非人道的な労働環境で働いていることが、この事故によって明るみに出た。 いまブランドが捉えるべきは“ユーザーの意識変化” – サステナビリティーが重要視される理由とは 現状を3つの打開する方法 この状況は、大量廃棄による膨大な無駄を生み出してるだけではなく、過酷な労働環境による人権侵害、水や化学薬品の大量使用による環境破壊などを生み出している。そろそろ限界が訪れている。言い換えると、これまでのアパレル業界の仕組みは、持続不可能 (アンサステイナブル) なビジネスモデルだ。 そんな状況を打開する方法として、海外を中心に下記の動きが進み始めている。 必要以上に買わない 一つのアイテムを長く使い続ける リユーズ (中古) 市場を活用する より多くの人々がモノを買わない方向に そのようなファンション業界を取り巻く多くの”負”の要素がどんどん表面化してきていることもあり、消費者の意識にも変化が起こり始めている。 GlobeScan社が2020年10月に実施した27,000人を対象としたグローバル調査によると、77%の消費者が耐久性の高い製品に興味を持ち、53%が購入した製品のリユース、修理、リサイクルをブランドに依頼することに興味を持っていることがわかった。 これは、半数以上の人がモノをあまり買わないことに関心があるという結果になってる。 これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる あえて新品よりもユーズド (中古品) を買う人が増加 そんな状況下で、ジェフリーズ社のレポートによると、米国では中古市場が年間300億ドル近くの売上を生み出しており、オンライン再販が牽引し、今後10年間で米国のアパレル市場全体に占める中古市場の割合が、10%台半ばにまで拡大すると予想している。 Z世代の消費者はすでにこのレベルに達しているとのこと。 アパレル市場全体と比較しても、リセールの成長は驚異的。この市場は、多様性、価値、持続可能性を求める消費者の嗜好に対応しており、今後も高い成長が見込まれている。 Z世代も注目する新しい購買パターン 環境への配慮を重視するZ世代の間では、「節約」の人気が高まってる。 パイパー・サンドラーが年2回発表するこの世代の消費動向に関するレポートによると、今年の春に行った10代の若者が好きなブランドのランキングでは、スリフトショップ系や委託販売系が10位内にランクインしてる。この結果は、10代の若者が中古市場に慣れ親しんでいるためで、前年の23位から上昇した結果となった。 18〜24歳の3人に1人が毎年中古品を購入すると予想されており、リセール業界で最も重要な世代なっている。 Z世代の購買意識の変化 使い捨て → 再利用可能 Z世代は、服を買う前に再販価値を考慮する割合が、団塊世代に比べて165%高い。 単独ユーザー → 複数オーナー Z世代は、「アパレルの所有権は一時的なものである」と強く認識している割合が団塊世代に比べて、83%高い。 廃棄 → 再販 Z世代は、アパレル製品を再販する率が33%高い。 世界が注目するミレニアル・Z世代の最新トレンド 大量消費にNOを叫び出した3つのブランド そんな結果を意識してか、いくつかのアパレルブランドが、消費者に対して、よりものを「買わないで」のメッセージを発信し始めている。同時に、物を増やしたくないミニマリスト向けのビジネスモデルの構築も模索し始めている。 現時点で、すでにいくつかの著名ブランドがサステイナブルな仕組みへの取り組みを開始している。その中で今回は3つ紹介する。 パタゴニア リーバイス ルルレモン 中古アイテムを推奨するパタゴニア アメリカではクリスマスシーズンのBlack Fridayと呼ばれる日が、年間で最も商品が売れる時期とされている。自ずと多くのブランドが全力でキャンペーンを走らせるのだが、2011年のBlack Fridayでは、パタゴニアは大胆なキャンペーンを行った。 ニューヨーク・タイムズ紙に 「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買うな)」という広告を掲載したのだ。 これは、自分たちが作っている製品がオーガニックやリサイクル素材を使用しているかどうかにかかわらず、パタゴニアのウェアはその重量の数倍の温室効果ガスを排出し、少なくともウェアの半分に相当する廃棄物を発生させ、地球上のあらゆる場所で不足しつつある大量の真水を汲み上げている事実への認知度を広げ、人々の意識を改革するのが狙い。 2016年には、ブラックフライデーの売上の100%を環境保護の非営利団体に寄付。 さらに2019年には、ブランドの草の根活動プラットフォームである「パタゴニア・アクション・ワークス」を通じて、全寄付金と同額を環境保護団体へ寄付した。 そして2020年、パタゴニアが環境に配慮し「Buy Less, Demand More」キャンペーンを展開。このキャンペーンのコンセプトはシンプルで、下記の2つの原則に基づいている。 まず1つは、顧客になるべく購入を控えてもらうこと。そして、もう1つは、リサイクル素材や再生可能なオーガニックコットン、フェアトレードの生産方法を用いた持続可能な製品の購入を推奨すること。 このキャンペーンで最も注目すべきは、パタゴニアがウェブサイトに設置したボタンで、買い物客が新製品と中古品を簡単に比較できるようにした点。新しい「中古品を見る」ボタンをクリックすると、パタゴニアが運営する中古品のマーケットプレイス「Worn Wear」に移動する仕組みになっている。 過剰消費に警鐘を鳴らすリーバイス アメリカの大手デニムブランドのLevi Strauss & Co.は、消費者に対してできるだけ「少なく」ジーンズを買って欲しいとメッセージを発信している。 該当するリーバイスの広告キャンペーンのテーマは、 “Buy Better, Wear Longer (賢く買って、長く着よう) “ このキャンペーンでは、世界で合計80億人の消費者のために、毎年1,000億枚以上の衣服を生産しているファッション業界の過剰消費に焦点を当てている。一つの商品をなるべく長く着ることで、消費を減らすことが狙い。 リーバイス自身も、毎年60億本ものジーンズを製造している。その製造過程では、何百万リットルもの水を使用し、化学物質や温室効果ガスを環境中に放出している。自ブランドと、ファッション業界全体に対しての警鐘を鳴らしている。 リーバイス社はこれまでも、よりサステイナブルなジーンズの生産に取り組んできたが、それだけでは劇的に地球環境の改善を実現することは難しいこともあり、今回のキャンペーンは、根本的な解決策として「なるべく少なく買い、長く着る事」を消費者に提案する形になった。 上場企業として、リーバイスのこの動きが株主に対してどのように捉えられるかが注目されている。 大量生産、大量消費、大量消費を行わずに売り上げを確保するためには、製品を修理、再販し、最終的にはリサイクルするのがファッション業界の新しいビジネスモデルになるかもしれない。 リーバイスでも、以前よりこの循環的な仕組みへのシフトが進んでいる。2015年には、顧客が製品のカスタマイズや修理を行うことができる「Levi’s Tailor Shop」を立ち上げた。また、昨年10月には、顧客が中古ジーンズを売買できる再販サイト「Secondhand」を開設。 今のところ、全体の収益に占める割合はわずかだが、リーバイスはこのモデルを急速に成長させ、新製品を駆逐することを目指している。 これらの新しいアプローチは、リーバイスが過去10年間にわたって行ってきた環境負荷低減の取り組みと連動している。水の消費量が少ない素材や製造方法の開発に加えて、需要に合わせて生産時間を短縮し、過剰在庫を回避を行っている。 リセールプログラムを提供するヨガアパレルブランドのルルレモン アメリカのヨガウェアブランドであるルルレモンは、2021年5月より、店頭または郵送で使用済みのルルレモン製品を下取りに出し、ギフトカードと交換することができるプログラムを開始した。 回収した中古品は、オンラインで販売し、より安い価格で多少の着用感を気にしない人たちに提供している。下取りされた商品はすべてクリーニングされ、品質基準に満たない商品はリサイクルされる。 “Like […]

これからのブランドはどんどん透明になっていく

皆さんは、最近のApple製品に “とある” 共通点があることに気づいただろうか? そう、あのロゴがかなり目立たなくなってきているのだ。例えば、以前は必ず画面の下の真ん中の目立つ場所にあったAppleのロゴが、最新のiMacにはない。なんか変な感じがする。 ステータスシンボルのAppleロゴが無い! 同様に、ヘッドフォンのAirPods Maxにもロゴが無い。 これまでのAppleであれば、Mac, iPhoneなどの製品には必ず目立つ箇所にロゴが掲載されていたり、場合によっては、ロゴが光る仕様にまでなっていた。 スタバでドヤリングと呼ばれるくらい、Appleのロゴがついた製品を持っていることが一つのステータスシンボルになっていた。 しかし、新しく発表される製品にはなぜか、あの美しいロゴが隠されている。結構なお値段の商品なのに。 ちなみに、Appleが買収したBeatsのヘッドフォンなどは、左右に大きく掲載されているロゴが人気を集め、その商品の大きな魅力になっていた。 パタゴニアもロゴの掲載を控え始めた 実は、商品に目立つようにロゴを表示しなくなったのは、Appleだけではない。人気アパレルブランドのパタゴニアも製品上のロゴ掲載を控えるようにし始めている。 よりサステイナブルなブランドを目指しているのが理由。 パタゴニアの発表によると、一つの製品をより長く着てもらうこよで、より環境に配慮した結果につなげる狙いがあるという。 同ブランドの調査では、ロゴが入ったシャツやコートは、他の人に譲る可能性が低くなったり、部屋着としてきる頻度も下がるという。結果として、製品をきてもらえる “寿命” が短くなってしまいがちだという。 ライフサイクルの長い服を着てもらうことは、持続可能な世の中を実現する第一歩になると考えた。 ロゴを掲載しなくなったことで、パタゴニアは、ある程度の経済的損失を被ることになるだろう。 この変化は、パタゴニアが短期の商業的な結果よりも、より長期的に社会に貢献できるブランドを目指している決意表明でもある。 全てのデザイナーが知っておくべきエシカルデザインとは ニューバランスもロゴなしスニーカーを発表 スティーブ・ジョブスが愛用したことで知られるスニーカーブランドのニューバランスも、最新のコレクションでトレードマークの “N” のロゴを取り除いたスニーカーを発表した。 同ブランドは、1906年のブランド誕生から1世紀以上となる歴史と伝統を祝し、毎年5月15日を「Grey Day」とし、「グレー」をモチーフにした商品を展開。 今年発表された「Grey Day Collection」のうち、限定モデルの “574 Un-N-Ding” には、両サイドに “N” のロゴが掲載されていない。 多くのD2Cブランドもロゴの表記が最小限 そういえば、新規参入が多いD2C系のブランドのその多くも、ロゴの表記がかなり控えめになっていることに気づく。EverlaneやAllbirdsのほとんどのプロダクトにはロゴが表記されていないし、メガネのWarby Parkerもかなり控えめな扱い。これらのD2Cブランドも、かなり “透明性” の高いブランドといえるだろう。 ロゴを掲載しない本当の狙い Appleやパタゴニアなどのトップブランドがロゴの掲載を控え始めている背景には、ブランドとしての透明性を高めたいという狙いがあると考えられる。 ネットを通じてさまざまな情報が直に得られる現代においては、ブランディングを行う際にも、より消費者に対して正直で、透明性の高い存在になる必要がある。 以前までは、”ブランドイメージ” を重視し、ロゴやデザインを通じてそのイメージづくりを行うのがブランディングの主な役割だったが、現在においては、それはもはや”まやかし”に近く、あまり通用しなくなってきた。 であれば、表面を取り繕うよりも、自分たちのバリューがより伝わるブランディングを行うことが、よりファンを増やすための正しい戦略になってくる。 言い換えると、より透明で、可視性の高いブランドが求められる。 ビートラックスがリブランディングにかけた思い – ギャップを埋めるために – 透明性の高いブランドとは? 透明性の高いブランドとは、一言で言えば、消費者に対して率直で正直であること。過度な広告や、自社に不利な事実をあえて隠さずに、素直に顧客と対話する姿勢のあるブランドである。 自分たちの歴史やビジョン、従業員に求めるバリューなどもクリアに伝えることで、顧客との信頼性が高くなる。 また、ネット経由の情報がリアルタイムで伝わる現代においては、ブランド発信の一方的なメッセージだけでは、ブランド構築は難しい。 例えば、社会的な問題に対して、自社の姿勢をしっかりと示し、より良い世の中のために自分たちがどのように貢献できるかを、ブランドとして体現する必要もある。 以前にNikeがBLMや人種問題に対してかなり積極的なメッセージングを発信したのも、透明性を上げる活動の一つである。 一人の男が4年前に放ったメッセージが今、世界を動かし始めた 完璧な人はいない。完璧なブランドもない。 ブランド施策を提供する際に、多くのクライアントはより “完璧” なイメージの構築を求める。しかし、実はそれは逆効果になることの方が多い。 というのも、現代においては企業のブランドも一人の人間のような存在で、顧客とブランドの関係もそれに近い。 完璧な人間が存在しないように、完璧なブランドも存在しない。むしろ、そのブランドの裏にある生々しいストーリーこそが、ユニークな価値になる。 自分の会社を追い出されたこと、倒産しかけたこと、短い余命を感じ、必死にイノベーションを生み出したこと。そんなストーリーがAppleを世界一のブランドに成長させた大きな要因だと思う。

激動の年から読み解くソーシャルメディア2021年の流れ

今までも当たり前に使っていたソーシャルメディアだが、2020年は、グッと必須のコミュニケーションツールになったのではないだろうか。 そこで今回は2020年に追加された各SNSの新機能をおさらいし、ソーシャルメディアがどのような流れになってきているのか、今後どのようなポイントを掴んでおくべきかを紹介する。 2020年振り返り:主要ソーシャルメディアのアップデート全体像 まずは2020年時点での、それぞれの機能の相違や、2020年のソーシャルメディア周りのハイライトを掴んでいただきたい。アメリカでリリースされたものや、アメリカの情勢をまとめたものだが、非常に大きな動きがあったので、異なるケースでも参考にできる場面があれば幸いだ。 ① 多くのSNSの機能が似通ってきた ※ストーリーという機能名は同一ではない 上記の図は、主要ソーシャルメディアの主な機能の有無を比較した表である。基本的に全てのソーシャルメディアで、写真や動画コンテンツの投稿、共有がされるため、加工機能や、3D・360度画像といったようなメディアのタイプも充実してきており、どこも他社に負けないようしのぎを削っている。 後に2020年のアップデートとしても取り上げるが、Twitterがフリートという機能(ここではストーリーに分類)がリリースされた時は、Twitterのインスタグラム化とも言われていた。 また、インスタグラムのReel機能も、TikTokそのものによく似ているため、インスタグラムがまた他社の機能を取り入れたという声が上がった(元々、24時間で消える投稿機能は、スナップチャットのウリであったが、2016年にインスタグラムがストーリーをリリースした過去あり)。 さらに上記に加え、LinkedInまでもが、ストーリーの類の機能を出した。2020年は既視感のある機能が増え、このプラットフォームでこの機能は使うのか?と言いつつも試してみるような年だったのではないだろうか。 ② インフォデミック対策で大忙しだった 何を隠そう、2020年はパンデミックが全世界を襲った。これはインターネット上でも、情報という観点で人々を苦しませた。 「XXすると感染するらしい!」「XXが売り切れているらしい!」「XXすれば大丈夫らしい」といった信憑性が疑わしい情報に踊らされ、コロナ禍初期は本当に混沌としていた。 こういったインフォデミック(正しい情報と不確かな情報が混じり合い、人々の不安や恐怖をあおる形で増幅・拡散され、信頼すべき情報が見つけにくくなるある種の混乱状態)に対し、ソーシャルメディアをはじめとする多くのインターネット企業が素早く対策をとっていたのも2020年のハイライトだろう。 デザインの力で、新しい生活様式に安心と喜びを作るコツ:3事例 例)Facebookの大統領選挙情報センター (画像転載元) 上のような、公式の一次情報を整理した情報センターを設けたり、コロナに関する情報を含むコンテンツは注意喚起をしたりと、ソーシャルメディア上で、ユーザーへの声かけが盛んに行われた。 そして迎えた11月のアメリカ大統領選挙。コロナ禍での開催となり、全てが異例続きで、ソーシャルメディア上でも議論が巻き起こっていた。こういった政治に関連するコンテンツは、印象操作や誤情報による決断を招きかねないため、SNS各社、ユーザー共にかなりセンシティブであった(大統領の投稿が検閲にかかった場面も)。 一方で、SNSを通して投票を呼びかける動きや、大統領選挙にかける想いがシェアされ、投票率は120年ぶり66%に達するとまで予測されるほどとなった。 ③ ソーシャルメディアの力でマイノリティをサポート パンデミックで街がロックダウンする中、黒人への差別行動を反対する動き、Black Lives Matterが一気に広まった。2020年、ここまでの広がりのきっかけとなったは、2020年5月末に、ミネソタ州でおきた、白人警官の不適切な拘束によるジョージ・フロイド氏の死亡事件だ。 この事件自体が、ソーシャルメディアで拡散され、差別被害や、差別を理解し、防ぐためのアクションを起こすための情報が#BlackLivesMatterで発信されていった。 これに対して、各ソーシャルメディアも、BLM関連のコンテンツを集めたページの設置やBLM関連の団体への寄付をするなどのアクションを取っていた。 残念ながら、この問題はまだまだ根深く残っており、ソーシャルメディア側もバッシングを受けては改善していっている。例えば、Twitterでは、投稿内容に含まれる写真が自動で切り取りされる機能があるが、これに人種バイアスがかかっていることが明らかになった。 Geez…any guesses why @Twitter defaulted to show only the right side of the picture on mobile? pic.twitter.com/UYL7N3XG9k — Colin, but at home. (@colinmadland) September 19, 2020 これに対してTwitter側は、切り取り機能の自動化レベルを下げたり、ゆくゆくは投稿者が切り取られ方を選べるようにするなどの対応をしていくことを発表した。 また、インスタグラムでも同様な問題が発見された。プラスサイズモデルの黒人女性が、自分の写真を投稿すると、(同じくらいの露出度の白人女性モデル写真は引っかからないのに)ヌード規定に引っかかり、投稿が削除されるということがあった。インスタグラムは、この誤りを認識し、対処していく方針だ。 2020年振り返り:USトップSNSの追加された主な新機能 その他、各SNS別の主なアップデートをいくつかリストアップする。 Facebook スモールビジネス向け機能が拡充(Facebook Shopsでは、Facebookで商品カタログを作ったり、Facebook上で買い物ができるように。ライブコマース機能もあり) Facebook Groupsの充実(コロナの影響もありグループの月間アクティブユーザーが1年で400万人増加。グループメンバー向けのスポンサー探し、広告表示などの設定が増えたり、グループ内のトピックをハッシュタグ化し、ページのトップにタグをつけることも可能になったりしている) Instagram Reelのリリース(30秒程度の動画投稿機能で、アプリ内でも音楽の挿入、動画編集・加工ができるため、まさにほぼTikok) インスタグラムガイド機能追加(過去の投稿などをキュレートして、まとめて紹介しやすくなった機能) プロダクトタグが投稿だけでなく、広告やReelにも商品情報がつけられるように ライブの機能拡張(配信時間は4時間まで可能に, バッジ機能(投げ銭)も追加) (画像転載元:Instagramのガイド機能) Twitter フリート機能のリリース(24時間で投稿が消えるハイライト機能) 自分の投稿に対して、誰がリプライできるかの設定が可能に 音声ツイート機能テストリリース 他 LinkedInも24時間で消えるハイライト機能、ストーリーズをリリース スナップチャットはSpotlightという、動画コンテストを開始(受賞者には総額100万ドルが授与される) 新機能ではないが、TikTokは2021年に10億ユーザー(MAU)を達成する見込み 2021年、今後のソーシャルメディアまわりの流れ ここでは特に真新しいものの誕生を予測するわけではないが、以下はこれからの拡大に注目をしたい項目である。 ①コミュニティのためのソーシャルメディア x コマース x スモールビジネス/個人 ソーシャルメディアのショッピング機能充実の流れは、2020年のアップデートからもわかるだろう。オンラインショッピング自体が、パンデミックで急速に拡大していることも事実だ。実際に、アメリカ最大の商戦期と言われるブラックフライデーのEコマース売上は、24億ドルになってとShopifyが発表している(グローバル)。これは2019年の売上より75%も増加した数字となる。 パンデミックで被害を受けたスモールビジネスには、Facebook/Instagram Shopのように、ソーシャルメディア上でのビジネスサポートツールが優先的に提供された。また、店舗接客の代替として、ライブ動画で商品を紹介するライブコマースは、オーディエンスも広がり、うまくやればエンゲージメントも高くなる。また、Pinterestなどが一部取り入れているように、アプリ内で、商品のAR試着ができる機能もある。 意図せずEコマースの急速拡大となっているが、今後のソーシャルコマースは、ただの「お店の代わり」ではなく、ソーシャルメディアやインターネット空間のお買い物体験をよりリッチなものにしていくだろう。 また、こういったツールは、スモールビジネスだけでなく、クリエイターなどの個人に向けたものでもある。ソーシャルメディアプラットフォームとしては、ビックブランドよりも、スモールビジネス、ローカルビジネス、個人のクリエイターとその周りのファンといったコミュニティを支えて、自分たちのサービスも良くしていこうという姿勢が見られる。 ブランド拡大に欠かせないソーシャルコマースとは。特徴と海外トレンド紹介 ②これからのUCGはリミックス型が好まれる UGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)は、ブランド側が依頼しなくても、ファンがオーガニックに商品の写真を撮って投稿してくれているコンテンツのこと。インスタグラムでは、「インスタ映え」によって挙げられるコンテンツがまさにそれである。 UGCは、消費者のリアルな声や口コミが可視化される上に、使っている様子が魅力的に見える。さらには拡散力もあるので、非常に好ましいマーケティング手法とされることが多い。 これは、ユーザーが写真映えするものを撮り、投稿する、というものだったが、昨今のユーザーによるコンテンツは、よりフォーマットが決まったリミックス型が広がりを見せている。 例えば、老舗飲料メーカーのMartinelli’sのリンゴ型のペットボトルのリンゴジュースがTikTokでバズった。これは、リンゴ型のペットボトルをかじると、本物のリンゴをかじったような音がする、という「フォーマット」を多くの人が試しては投稿していたのだ。 @kylehiggnsI got the tiktok apple juice that sounds like an apple #foryou […]

btrax CEOによる2021年のイノベーショントレンド予想

毎年行っているイノベーション予測の中で、おそらく今年が最も難しいだろう。というのも、2020年初に想定していた未来はパンデミックの襲来でその起動が大きく変わってしまったから。変化と混乱の中で、時代は大きく変化している。
この急速な変化と不確実性の中で、新しいニーズがどんどんと生み出され、それに対して求められるソリューションも山積み。この非現実的とも言える新しい日常生活で、今年こそは、今までにないほどイノベーションが求められる年になってくるだろう。
リモートワーク採用の加速から消費者の行動の変化まで、…

【2021年予想】5のスタートアップトレンドと注目サービス25選

2020年がスタートアップにとってジェットコースターのような年にだったことは間違いない。パンデミックの影響で一部のテクノロジー系スタートアップは閉鎖を余儀なくされたが、多くのスタートアップが成功したのは、時代の変化に合わせて事業戦略や製品をピボットしたからだ。 人々の生活としても、リモートでの仕事、ショッピング、ソーシャルなどへの大規模なシフトが伴った。それに合わせ、多くのデジタルサービスへの需要が高まった。ある意味、パンデミックが多くのサービスに対してのストレステストとなった。 2020年に消滅した18のスタートアップとその理由 大型IPOと資金調達 2020年はLemonade, Snowflake, Airbnb, Unity, DoorDashに代表される大型IPOが達成された年でもある。また、世界の混乱の陰で着々と資金調達を行なったスタートアップも少なくない。その総調達額の合計は136億ドルにも達する。 2020年のスタートアップ資金調達額ランキング Yuanfudao (中国) – 教育系: 32億ドル Ke.com (中国) – 不動産系: 24億ドル WM Motor (中国) – モビリティ: 15億ドル Gojek (シンガポール) – 教育系: 12億ドル Ryaen Holding (シンガポール) – 投資系: 10億ドル MGI Tech (中国) – ヘルスケア系: 10億ドル Wandian Yunwang (中国) – eコマース系: 9億ドル Grab (シンガポール) – ライドシェア系: 8.56億ドル JD Health (中国) – ヘルスケア系: 8.3億ドル Resilience (アメリカ) – バイオ医薬品製造系: 7.5億ドル 2021年からのスタートアップトレンド予想 2020年に引き続き2021年もスタートアップに対しては、さらなる変革が求められている。ほとんどの企業は、既存のテクノロジーと将来のテクノロジーを吟味し、生き残るための方法を模索している。その一方で、ニューノーマルにおける新しいニーズに対して参入するサービスもどんどん出てくると考えられる。 2021年も確実に繁栄を続けるであろうスタートアップ業界のトレンドをいくつか紹介する。このトレンドをもとに商品やサービス開発の参考になれば幸いである。 リモートワーク関連 デリバリーロボット系 遠隔医療関連 オンライン教育関連 5Gを活用したスタートアップサービス 1. リモートワーク関連 パンデミックで話題になった新しいワークスタイルには、まだまだ大きな成長の余地がある。2020年に多くの企業がリモートワーキングモデルに移行する中でも、多くの課題が見えてきた。そして、現在のサービスやツールでリモートワークが完全に解決したとは言えない。 もちろん、セキュリティは大きな課題となるが(例:Zoomのセキュリティ懸念)、それ以外にも、オフィスで働いている人たちとのコラボレーションや、個人のリモートプロセスの自動化などの機会も十分残されている。 パンデミックが落ち着いてからも引き続きリモートワークを続けると答える企業は多く、この市場はまだまだ黎明期で、スタートアップがこれらの問題に取り組むための大きなチャンスがあることを意味している。多くのスタートアップは、2021年に向けてリモートワークツールの分野での成長が期待されている。 リモートワーク関連で注目のスタートアップは: Spatial: ARを活用したコラボサービス Abodoo: ノマドワーカーのためのプラットフォーム Miro: バーチャルホワイトボードツール Figma: コラボレーション型デザインツール Bluescape: 大企業向けコラボツール Spatial: ARを活用したコラボサービス リモートワークが進む中で、ホワイトボードや付箋を利用したコラボやディスカッション、ワークショップの必要性も高まっている。その相反する2つのニーズをARと3Dテクノロジーを活用して実現するサービスを提供しているところが注目ポイント。 https://spatial.is/ Abodoo: ノマドワーカーのためのプラットフォーム リモートワークやフレキシブルな仕事を探している人が、無料でスキルプロフィールを作成してチャンスにマッチするようにするためのプラットフォーム。新しいワークスタイルに求められるタイプのサービスである。 https://www.abodoo.com/ Miro: バーチャルホワイトボードツール リモートワークの最大のデメリットである、複数でのコラボレーションワークをオンラインで再現したサービス。ビートラックスでも、2020年よりオンラインワークショップの際に利用している。付箋機能も充実しているため、ワークショップ向けだ。 https://miro.com/ Figma: コラボレーション型デザインツール 2015年にリリースされ、すでにデザイン業界ではよく知られているFigmaは、リモートワークを中心としたワークスタイルに最適なツールになった。多くの場合、UIのデザインやプロトタイプ作成に利用されるが、一般的なドキュメント作成などでも利用可能。現在、ビートラックス社内でもメインのデザインツールの一つになっている。 https://www.figma.com/ Bluescape: 大企業向けコラボツール コラボレーション系ツールを提供するSaaS企業の中でも、Bluescapeはより視覚的に理解しやすいツールを充実している。複数のチームメンバーで作成するコンテンツや、会話内容をオンラインの仮想ワークスペースで一元管理できるようになっている。また、大企業向けにセキュリティーにも力を入れている。 https://www.bluescape.com/ リモートワークで企業カルチャーを醸成する方法 […]

2020年に消滅した18のスタートアップとその理由

毎年恒例のその年に消滅したスタートアップシリーズ。毎年多くのスタートアップがその姿を消している中で、2020年はとびきり厳しい一年となった。 パンデミックにより人々の生活は一変し、旅行やリテールに代表されるサービスへのニーズが極端に下がった。それに伴い、ニューノーマル下で必要頻度の下がったサービスは停止を余儀なくされている。 難易度Maxの2020年を生き残れなかったスタートアップ 10社中9社が消滅すると言われるスタートアップゲームの中でも、おそらく2020年はこれまでと比較にならないレベルの難易度の高さ。パンデミックによるロックダウンにより業務を停止したり、サービスを縮小せざるをえない状況に追い込まれた。 また、VCからの投資の縮小も加わり、難易度はMaxレベル。実際に多くのスタートアップはスタッフのレイオフを進め、必死に生き残りにかけている。 それでは2020年に生き残れなかったスタートアップを紹介する。 Atrium 資金調達額: 7,550万ドル 概要: Twitchのファウンダーであるジャスティン・カンが立ち上げたリーガルテック系スタートアップ。機械学習を活用して法的文書のデジタル化を自動化し、資金調達、商業契約、株式の分配と雇用問題、買収取引などのプロセス改善を実現する。アプリケーションを提供していた。 Andreessen Horowitzなどの著名VCからの資金調達に成功し、100人ほどのスタッフを雇っていたが、スタートアから約3年経った2020年3月にオペレーションの停止をジャスティンが自身のツイートで発表。 Thank you to all the clients, investors, and Atrium team members who took a swing. Things didn’t work out as planned and that is my responsibility. We took a swing at something big and you all have my admiration and gratitude. — Justin Kan (@justinkan) March 5, 2020 失敗理由: 法務というアナログな業界に対しての破壊的イノベーションを目指していたが、法律事務所における既存のプロセスのDXに対してのハードルの高さに直面した。 Brandless 資金調達額: 2.9億ドル 概要: ノンブランドの家庭用品、パーソナルケア、ベビー用品、ペット用品を定価3ドルで販売していたeコマースのスタートアップ、Brandlessは、2月上旬にD2C分野での過密と激しい競争を理由に、事業の停止を発表した。 シリーズCにおけるメインの投資家はSoft Bank Vision Fundで、2.2億ドルを調達したと報じられたが、Axiosの報道よると、実際に受け取った金額は1億ドルのみで、残りの1.2億ドルはゴール達成の際に支払われる形となっていたとのこと。 失敗理由: SoftBankからの猛烈なプレッシャーと、誤ったビジネスモデルが相まって、厳しい戦いを強いられていた。具体的には、高い配送料と品質の問題に悩まされ、SoftBankの設定した高い目標を達成するために一部の製品を9ドルに値上げしようとしたこともあったが、無駄だったと報道されている。 厳しい資金繰りに直面したBrandlessは、昨年3月にスタッフの13%をレイオフすることを余儀なくされ、共同創業者兼CEOのティナ・シャーキーは同月に辞任を余儀なくされた。その後、元ウォールマートのCOOをCEOに就任し、方向転換を目指したが、求める結果が出せずに終了した。 Essential 資金調達額: 3.3億ドル 概要: 元Googleの幹部でAndroidの生みの親であるアンディー・ルービン氏が設立したモバイルデバイス スタートアップのEssentialは、製品を発売前からユニコーンの地位に達していた。しかし、同社初のスマートフォンであるEssential Phoneは2017年8月に発売されたが、評価は散々なものとなってしまった。 一時期、シリコンバレーで最も有望なスタートアップの一つとされていたが、著名な投資家陣による多くの資金調達を行なったにもかかわらず、目立った成果を挙げることができず、失敗に終わってしまった。 失敗理由: ルービンが在職中にGoogleの従業員から性的不正行為で告発されていたことがニューヨークタイムズの報道で明らかになった後、Essentialの評判は2018年に下降線を辿り始めた。 さらに、約束していた、Amazon Echoに似たインテリジェントアシスタントと、Ambient OSという名前のオペレーティングシステム(OS)は、決して届けられなかった。 HubHaus 資金調達額: 1,140万ドル 概要: HubHausは、大人向けの寮が流行るだろうというニーズを狙った、長期賃貸住宅プラットフォーム。都市部で働く社会人をターゲットにした。WeWorkに代表されるコワーキングスペースのニーズの拡大に合わせ、居住に対するシェアリングニーズが高まると予測していた。 失敗理由: WeWorkのIPOの失敗により、投資家からの資金調達に難航し、約1100万ドルしか調達できなかった。また、コロナ禍により働き方に大きな変化が起きたと同時に、サンフランシスコなどに代表される都心部の家賃が軒並み定価。長期レンタル型のサービスニーズの低下に苦しみ、サービス停止を余儀なくされた。 Hipmunk 資金調達額: 5,500万ドル 概要: 2010年より旅行系価格比較サービスを展開してたHipmunkは、フライト、ホテル、レンタカーなどの情報を一括表示し、消費者に最もお得な価格を提示提示。その後、SAPの関連会社であるConcurに買収されたが、今年サービスを終了した。 失敗理由: 驚くべきことに、サービス終了の理由はコロナによるものではない。というのも、Hipmunkはパンデミックが世界的に広がる前の、1月23日に運用をストップしたからだ。コロナが旅行業界にインパクトを与えるまでもなく、Hipmunkはすでにユーザーを失っていた。 その原因とされるのが、買収されたことによるサービスアップデートの鈍化と、ユーザーが必ずしも安い情報の表示だけでは便利と感じなくなってきたからというもの。サービス終了直前にファウンダーが買い戻しを試みるものの、その望みは叶わなかった。 IfOnly 資金調達額: 5,140万ドル 概要: IfOnlyはプライベートヨガなどの少数参加イベントのマーケットプレイスを提供していた。しかし、パンデミックによりビジネスモデルが大きな課題にさらされた。最終的には、投資元の一社であるMasterCardによって買収されたが、IfOnlyが夏に閉鎖することを明らかにするまで、買収は発表されなかった。 失敗理由: イベント系のプラットフォームが総じてそうであるように、パンデミックにより、複数の人が一つの場所に集まるタイプの活動は自粛され、そのニーズが極端に低下することになった。 […]

ライフスタイルブランドとは – その代表事例と構築方法 –

物が売れなくなったと言われる現代において、消費者の購買意欲を訴求するにはどうしたら良いだろうか。品質や価格は限界まで追求され、他の製品との差別化も非常に難しくなってきている。 その一方で、ファンから強烈に愛され「一人勝ち」しているブランドがいくつかある。特に価格が安いわけでも、品質が極端に異なるわけでもない。それでも他のブランドを寄せ付けない魅力。それが、ライフスタイルブランドだ。 ライフスタイルブランドとは ライフスタイルブランドを簡潔に説明すると、 “提供する商品やサービスの裏にある信念やストーリーに共鳴した消費者が、自分自身の価値観、願望、生き方を具現化し、共通の意識をもったコミュニティーの一部になれると感じられるブランド。” だろう。 例えば、エルメス。ブランドの一番の魅力は、エルメスの商品を所有しているだけではなく、エルメスを所有している人のライフスタイルを生きていると感じられること、なのだ。 ライフスタイルブランドは、時に大きな憧れの存在にもなり、(まだ) 所有していなくてもインスタでフォローしているブランドになったりする。 ブランド側としては、消費者の生き方の定義に貢献する製品を目標に、人々を鼓舞し、導き、やる気を起こさせることをゴールとした活動通じてライフスタイルブランドとしての地位を確立する。 そうすることでブランドとしての大きな競争優位性を獲得することができる。 ライフスタイルブランドの5つの特徴 熱心なファンを獲得している ユーザーを感情的に訴求している ニッチなオーディエンスと繋がっている コミュニティ生成につながる活動を行なっている コンテンツには自社商品をフィーチャーしすぎない ライフスタイルブランドの強み では、実際にライフスタイルブランドになったらどのようなメリットがあるのだろうか。 1. プロダクトカテゴリーの代名詞になる まずはその存在がカテゴリーにおける代表的な名前になるということ。Red Bullがその代表だろう。 ユーザーは、“エナジードリンク”を飲むというよりも、“Red Bull”か”Red Bullっぽい他のドリンク”を飲む、と表現される。その時点でRed Bull以外のエナジードリンクブランドに差をつけていることになる。 2. 他のブランドと比べられなくなる 同じ商品の他のブランドと比べられることが少なくなり、消費者にとっての“一択”の対象になることができる。AppleのiPhoneが良い例。一度iPhoneを使い始めたら、次に買うスマホもiPhoneである可能性が非常に高く、他のブランドのスマホを検討することを行わなくなる。実際の統計でも、iPhoneにおける顧客リピート率は90%を超えている。 また、過剰な広告やセールス活動などで顧客を追いかけなくても、既存顧客が同じ価値観を持つ周りの人たちを呼び込んでくれる。そして自ずと売り上げと経営が安定する。 3. 高く売れる そう、一番わかりやすいメリットがこれ。ライフスタイルブランドは高く売れる。場合によってはめっちゃ高く売れる。AppleやSupremeが良い例だろう。他にはローレックスやフェラーリもそう。 そのブランドのロゴが記載されているか、そうでないかで値段が数倍から数十倍異なる。ある意味究極のメリットである。その理由は品質だけではなく、ブランドが提供するメッセージやストリーが重要な役割を果たしている。 代表的なライフスタイルブランド それでは、それぞれのカテゴリーで代名詞で呼ばれるレベルの、世界で愛されている代表的なライフスタイルブランドを紹介する。 Red Bull: 翼を授かりたい人たちのために Vespa: スーツでおしゃれにローマの街を Blue Bottle Coffee: 大衆とは一味違うこだわりのプレミアム感 Supreme: 赤い背景と白地のFuturaにクールなファンが集まる Nike: トップを狙うすべての挑戦者たちへ G-Shock: ストリートライフを楽しむための頼れるアイテム Lululemon: ヨガ愛好家を中心に、マインドフルネスを体現する Harley Davidson: 自由を愛する現代のカウボーイ達へ LaCroix: 健康志向の人たちがステータスとして飲む健康ソーダ Muji: ミニマルなライフスタイルを求める人たちへの究極の提案 Red Bull: 翼を授かりたい人たちのために 21世紀に入って最も躍進したライフスタイルブランドの一つがRed Bullだろう。商品カテゴリー的には、エナジードリンクだが、むしろRed Bullと呼ばれることの方が多いことからもわかるとおり、競合と比べても圧倒的なブランド的アドバンテージを誇っている。 Red Bullの提案するライフスタイルを一言で表現すると「アドレナリン出まくり」で、飲むだけで超人になれそうな感じ。身も心もパフォーマンスアップを求める人たちが共鳴している。 キャッチコピーの“Gives You Wings (翼を授ける) ” に始まり、F1をはじめとした様々なエクストリームスポーツへの協賛を通じて、一貫したのブランドイメージ構築に成功している。 それまでは、疲れたおっちゃんたちが飲むもの、というイメージが強かった栄養ドリンクを一気にスタイリッシュに変革させ、疲労回復よりも、強烈なパフォーマンスアップのイメージを与え、スリルや興奮を求める人たちに愛されるブランドになった。 ストーリーこそがブランド価値の源泉である【日本からグローバルブランドを Part 2.】 Vespa: スーツでおしゃれにローマの街を 原チャリの代表がスーパーカブなら、おしゃれなスクーターの代名詞がVespa。そのレトロなデザインが人気を集め、このイタリアブランドは、世界で多くのファンを魅了している。 そのきっかけとなったのが、映画、ローマの休日での二人の男女がローマの街をVespaで走り回るシーン。 そんなストーリーもあり、Vespaに乗れば、誰でもオードリー・ヘップバーンやグレゴリー・ペックの気分に、どんな場所でも一瞬にしてローマの街角に変えてしまう魔力を感じる。 小さめのヘルメットを被り、おしゃれなスカーフを身につけて乗るそのスタイルは一つのライフスタイルとして確立されている。Vespaの存在は、乗り物というよりも、むしろファッションアイテムの一つに近い。 パワーやスピードを追いかけるのではなく、可愛さやおしゃれさの追求は、その他のバイクやスクーターとは一線を画する存在になっている。 Blue Bottle Coffee: 大衆とは一味違うこだわりのプレミアム感 サードウェーブコーヒーの代名詞でもあるブルーボトルコーヒーは日本にインスパイアされた西海岸ブランドでもある。 お手軽にコーヒーを楽しめるスタバとは対照的に、時間をかけてじっくりとこだわってコーヒーを楽しむ。これは元々日本の喫茶店が提供していたコーヒーの楽しみ方。 この日本的コーヒー文化にアメリカ西海岸のスタートアップカルチャーを掛け合わせ、ミニマルで洗練されたブランドとして広がっていった。 ブルーボトルが追求する、禅にも通じるこの精神に共鳴したサンフランシスコ地域の起業家たちがサポートすることで、人と世の中に優しいライフスタイルブランドになった。 そして、日本に「逆輸入」された際にも一気にその人気が広がり、オープン日には行列ができるほどに。現在でも大衆とは一味違った雰囲気を好む人たちに愛され、毎日のようにそのロゴの入ったマグカップがインスタにアップされている。 それは本当に自分が好きな事ですか? – SNSが行動に与える影響 – Supreme: 赤い背景と白地のFuturaにクールなファンが群がる 話題性のあるコラボレーション、カルト的な支持者、そして売り切れ続出。シュプリームは今、世界で最も大きなブランドの一つだ。 1994年にニューヨークの小さなアンダーグラウンドスケートショップとしてスタートした同ブランドは、スケーターやストリートウェアファン、国際的なファッションフォロワーの間で、カルト的なフォロワーを生み出している。 真っ赤な背景にイタリックのFuturaを採用したロゴ。そのプロダクトは限定品だらけで、かなり割高とも思えるプレミアム価格で売買されている。それでも売れまくる。 その秘密は「クール」であること。 シュプリームはクールな人たちによって設立され、クールな場所で、クールな人たちと一緒に仕事をしている。 そして、クールな人たちが身につけているクールな商品で、クールな雑誌に取り上げられる。また、クールではない人たちがクールであると感じるための方法でもある。 消費者行動に革命を起こす3つのファッション系スタートアップ Nike: トップを狙うすべての挑戦者たちへ […]

ニューノーマル時代に注目の海外スタートアップサービス25選

新型コロナウィルス の拡大が世界的に叫ばれ始めてから半年以上たった今、新しい生活スタイル = ニューノーマルの浸透がどんどん進んでいる。 パンデミックが収束しても、それまでの生活スタイルには戻らないという専門家もいる。そうなってくると、これまでとは大幅に異なるニーズが世の中に溢れ、それに対するソリューションサービスが多く求められてくるだろう。 具体的には下記のような領域でのサービスが注目されている。(詳細は後半部に記載) DX系サービス 非接触系サービス 心と体のケア系サービス リモート教育系サービス リモートワーク系サービス シリコンバレーを中心に、海外ではすでに多くのスタートアップが新規課題を解決するべくサービスをリリースしている。そんなニューノーマルに対応しているサービスの中でもbtraxが特に注目しているスタートアップを25選んでみた。 ニューノーマル時代にbtraxが注目する25のスタートアップ それでは具体的なスタートアップを見ていこう。 Lattice: 人材管理プラットフォーム Lemonade: P2P型デジタル保険 Alto Pharmacy: オンライン薬局 Mindstrong: メンタルウェルネス Outreach: 営業系SaaS Curastive: 医療テクノロジー MasterClass: オンライン習い事 Loom: 遠隔コミュニケーション Capsule: 処方箋薬のデリバリー Upkey: 企業と大学をつなぐプラットフォーム Zipline: ドローンによる宅配サービス Verkada: 企業向けセキュリティシステム Drift: 営業/マーケティングプラットフォーム Modern Health: 従業員のメンタルケア Tula Skincare: クリーンビューティー系スキンケア Cameo: 動画マーケットプラットフォーム Wealthfront: ロボアドバイザー型投資サービス Spatial: AR/VR型オンラインコミュニケーションツール Bungalow: シェアハウスプラットフォーム Guild Education: 教育福利厚生オンラインプラットフォーム P.volve: 家庭用フィットネスプラットフォーム Samsara: テレマティックソリューション Nuro: 非接触型マイクロデリバリー Chief: 女性向けコーチングプラットフォーム Carbon Health: 医療プラットフォーム スタートアップ名: Lattice 領域: 人材管理プラットフォーム 概要: 組織マネージメントツールであるLatticeは、企業が目標を設定し、従業員のゴール達成度合いをトラックし、その達成状況に合わせリワードを提供する。それにより、スタッフのパフォーマンスを効率的に管理することを可能にする。 多くの企業がリモートワークへのシフトが進む中で需要が高まっており、今年10月から今年の7月の間に約500社の新規顧客を獲得している。また、4500万ドルの追加資金調達を行い、その評価額は約4億ドルに達している。 注目の理由: 実際に顔を合わせる頻度が減った業務スタイルにおける新しいニーズに対応しているため。 https://lattice.com/ スタートアップ名: Lemonade 領域: P2P型デジタル保険 概要: Lemonadeは月額5ドルからの手頃な保険を提供するスタートアップ。 世界初のP2P保険サービスとして2015年にローンチた。 P2P型保険というコンセプトは、ユーザーとユーザーをつなげることで、それまで中間に存在していた保険会社の概念を廃止することで、よりユーザーにとって魅力の高い保険を提供することをゴールとしている。 スマホ一つあれば、面倒な手続きをしなくても簡単に保険に入会、利用することが可能。保険金の申請、支払いも数分間で行われる。そして費用の支払いも月々のサプスクリプションなので、若者を中心に手軽に利用できるようになっている。 注目の理由: そのスムーズな体験を通じて保険のDXを実現しているため、新しい顧客層の獲得が期待できるため。 https://www.lemonade.com/ スタートアップ名: Alto Pharmacy 領域: オンライン薬局 概要: 元Facebookの従業員によって始められたオンライン薬局であるAlto Pharmacyは、薬剤師へのリモートアクセス、薬の無料配達、価格の透明性の実現をゴールとしている。 パンデミックが発生してからは、医師やクリニックのスタッフの遠隔医療への移行を支援し、サプライチェーンを潜在的な不足から守るための新しい仕組みの提供と、非接触型デリバリーシステムを導入している。 1月に2億5000万ドルを調達し、全米での事業拡大を進めている。 注目の理由: 遠隔医療へのニーズが急激に高まっているため。 https://alto.com/ スタートアップ名: Mindstrong 領域: メンタルウェルネス 概要: Mindstrongは、重度の精神疾患(統合失調症、大うつ病性障害、強迫性障害)を持つ患者とセラピストを結び、ビデオや電話、テキストでコミュニケーションを取ることができるメンタルヘルスケアプラットフォームを提供してる。 […]

アメリカの総消費40%を占めるZ世代について押さえるべき5つの特徴

米国の総消費量40%を占めるZ世代とは。 ミレニアル世代と大きく異なる 特徴① 堅実で本質主義なコツコツタイプ 特徴② デジタルは当たり前 「リモートネイティブ」という新たな側面も 特徴③ 8秒間が勝負。コンテンツの“超”大量消費時代の中、モバイルファーストが鍵 特徴④ ダイバーシティーへの理解 「ありのまま」リアルさの重視 特徴⑤ 買い物はオンラインと店舗のハイブリッド  「開封」もコンテンツに オンラインとオフラインのシームレスなサービス・UX設計が重要 Z世代やGen Z。ミレニアル世代と一括りで語られることも多いが、細かく見ていくと、その属性や世界観、考え方はミレニアル世代と大きく異なる。 この記事では、アメリカのデータを中心に、Z世代の特徴や消費動向、物事に対する姿勢など、その習性を紐解いていく。彼らをターゲットにしたサービス開発や、マーケティング戦略を考えている方の一助になれば幸いだ。 実は筆者も1997年生まれのZ世代。自分の肌で感じるものも織り交ぜながら書いていければと思う。 Z世代とは?ミレニアル世代とは似て非なる存在 諸説あるが、Z世代は1996年から2012年に生まれた世代を指す。一方のミレニアル世代は、1981年から1995年に生まれた世代である。Z世代は、9.11の同時多発テロや、リーマンショックなど、アメリカの歴史に残る大きな出来事を幼いながらに経験してきた世代だ。 また、2020年時点でアメリカにおける総消費の40%以上をZ世代が占め、さらには、金額にして1,430億ドルもの購買力を持つというデータも存在する。これほど大きなボリュームの消費者層を取り逃すわけにはいかないことは自明だ。 では、ここからZ世代の特徴を購買行動などのマーケティングの視点から分析していく。 1. 堅実的かつ本質主義なリアリスト まず特徴としてあるが、リアリスト(現実主義者)だということ。これは、先述のリーマンショックからの大不況に起因しているという主張が一般的である。 この頃、Z世代本人たちはまだ幼く、直接その影響を受けているとは考えづらいが、彼らの親が苦労をした分、お金に関する知識やマナーが教えられている可能性は高そうだ。 Z世代やミレニアル世代は、消費において、体験に重きを置くというデータは随所で見られる。しかし、2世代間には違いが存在する。 ミレニアル世代がラグジュアリーな体験を求めるのに対し、Z世代が求めるのは、たまの非日常ではなく、日々の楽しみであり、日常的なポジティブな体験のようだ。瞬間的な刺激よりも、コツコツと毎日のQOL (生活の質) を上げることに興味を持つことからも、堅実さが窺える。 また、ブランドのネームバリューよりも、実際のプロダクトそのもののユニークさや質の良さを重視する傾向にあり、本質的な側面もある。 2. テックネイティブ・デジタルネイティブ ミレニアル世代が、“Tech savvy (テクノロジーの精通者)”と表されるのに対し、Z世代は“Tech native (テックネイティブ)” と呼ばれることが多い。テクノロジー中心の世界が成熟していく過程を見て育ってきたのか、浸透しきった環境で生まれ育ってきたのかの違いだ。 Z世代は、新たなツールに対する抵抗感をほとんど抱いていないように感じる。というのも、生まれた時から携帯は当たり前。“ガラケー”よりもむしろ、スマホを身近に感じる世代で、デジタルデバイスを始めとするツールに壁を作ることは少ない。 モバイル前提 また、デジタルツールのなかでも「モバイルの利用」がZ世代の特徴だ。Z世代の98%がモバイルデバイスを所有しており、コミュニケーションはもちろん、買い物もコンテンツ視聴もモバイルで行う割合が高い。 Z世代のオンラインアクティビティ時の媒体別使用率 この最たる例が、モバイルファーストを主戦略とするTikTokだろう。次のコンテンツを見る際は、モバイルならではの「スワイプ」をしていく仕様で、そのUXもモバイルを念頭に設計されている。そんなTikTokは、アメリカにおける全ユーザーのうち、60%がZ世代だ。 ソーシャルコマースの兆し その他、ソーシャルコマースの潮流がきている。Instagramに関しては、モバイルとデスクトップの利用率の比較では、ユーザーの98%はモバイルで利用している。 写真がメインのInstagramは、商品画像を載せ、キャプションにその説明を書くことができるため、オンラインショッピングのプラットフォームに向いている。 また、Z世代は、他の世代と比較して2〜3倍の割合でソーシャルメディアで買い物をしており、最も利用しているプラットフォームはInstagramで、41%はブランドのアカウントをフォローしているというデータもある。 モバイル上でのユーザーがほとんどを占める上に、とりわけZ世代にとっては、ショッピングプラットフォームとしても利用されるInstagramでの購買は今後ますます盛り上がっていくのではないかと考えている。 関連記事:ブランド拡大に欠かせないソーシャルコマースとは。特徴と海外トレンド紹介 リモートネイティブ また、Z世代は、テック / デジタルネイティブもさることながら、リモートネイティブ世代だ。2020年現在、Z世代に当たる層は、高校生/大学生か、社会人1、2年目といったところ。 コロナウイルスの影響で、多くの学校や企業でリモート対応が始まり、彼らは、Zoomに代表されるオンラインコミュニケーションツールを駆使した会議や授業を余儀なくされ、適応をしてきたことだろう。 テックネイティブという基盤を持っているため、新しいツールへの適応に骨を折ることは少なかったと考えられる。 一方で、Z世代が求めるものは変わってきていると筆者は考えている。例えば、名刺交換のマナーよりも、オンラインミーティングで独特の間をうまく対処し、議論に入っていく方法や、オンラインを前提とした上司とのコミュニケーションの方法の方が知りたいと感じる。 作られたばかりのルールを新たな当たり前として生きていかなければならないため、先人からの教えが活かせることが少ない。 状況があまりにも大きく変わってしまったため、従来のルールでは通用しない局面にいる。その意味で、Z世代には先駆者的なアントレプレナーシップ的なマインドを持った行動をしていくことが求められていくのではないかと思う。 3. コンテンツの“超”大量消費 様々な記事でこの特徴を目にしたが、これはきっとZ世代ではない世代の方々が出した答えだと思った。なぜなら、筆者を含めZ世代張本人たちは、自分たちが膨大な量のコンテンツを消費している自覚すらないからである。 集中力はたったの8秒 1つのコンテンツに対する集中力が極端に短いことも特徴だ。平均して8秒ほどとされている。大量にコンテンツを見ているということは、1つのコンテンツに使う時間が短いとも言える。 また、大量にコンテンツを見ているからこそ審美眼が育っており、良し悪しの判断も速い。興味のないものにはすぐに拒否反応を起こし、広告を見抜くのは一瞬だ。 8秒間の勝負の鍵を握るのは、Z世代の使う“言語”に合わせることだ。GIFやミーム、絵文字と言ったビジュアルコミュニケーションを積極的に活用すると良い。 実際、Z世代を対象にしたある調査では、コロナ禍におけるフラストレーションの対処に、ミームなどユーモラスなコンテンツが一役買っていると回答した割合が72%という結果も出ている。 それだけミームはZ世代にとって身近なものであり、テキストだけでなく、ビジュアルも使った、流行りの共通言語や内輪ネタとうまく絡めたコンテンツも利用することは、彼らとの距離を近づける1つの方法だと思われる。企業としても、コンテンツ作りの際にはぜひ意識したいポイントだ。 4. 「ありのまま」「多道」の重視 他の世代と比較して、ダイバーシティーへの理解があるというのもまたZ世代の特徴だ。SNSがあって当然の世界で生きてきたZ世代は、学校教育やオフラインで出会う周りの人以上に「見知らぬ誰か」の発信を目にしている。 それだけ多種多様なコンテンツに出会う機会に恵まれており、その中で多様性に対する理解や知見が自然と育まれていったのではないかと思う。筆者も、学校教育以上に、普段視聴するコンテンツから多様性を学ぶ機会が多いように感じている。 関連記事:令和に絶対押さえるべきインクルーシブマーケティングとは。事例6選 リアルな声こそ重宝される また、「ありのまま」というキーワードから派生して、不完全さ、失敗、正直さへの共感もZ世代に刺さるコンテンツを作る鍵になるだろう。先述したように、Z世代はモバイル上で買い物をすることが多く、その際には、SNSやブログなどといったリアルな声を参考にしている。 ある統計では、Z世代は初めて購入するものに対しては第三者による口コミを確認してから購入の検討をすると回答した割合が86%、そしてそのうちの68%が、3つ以上の口コミを読み、熟考したのちに購買を決めるというデータが出ている。 口コミには赤裸々な感想が書かれているもの。ポジティブなものだけでなく、時にはネガティブな要素もある正直なメッセージこそ、Z世代にとっては信頼のおける価値ある情報となる。 5. オンラインとオフラインの使い分け ショッピングに関してZ世代は、情報のインプットや検討はオンラインで、購入はオフラインで行う傾向がある。 モノを買う場合、実際にオフラインの店舗に足を運んで買い物をしたいと考える割合が多い。実物を見たり、モノを購入するだけでなく、店舗の雰囲気や体験全てを包括的に経験した上で総合的に評価をする、ということだ。 日本でのわかりやすい例は、年始に原宿駅前にオープンした@cosme tokyoだろう。もともと@cosmeは、コスメや美容関連商品の口コミサイトとして知られていたが、オフラインのフラッグシップショップをオープンさせたことで話題になった。 また、 アメリカでも、Z世代をターゲットとしたブランドが、オフラインの店舗体験に重きを置いていることはみなさんもすでにご存知だろう。 Z世代を対象にしたIBMの調査を見てみる。いつもどの方法でモノを購入するか?という問いに対し、実店舗やウェブサイト上など、購入方法の頻度を回答してもらう質問だ。 この結果、ほとんどのモノを実店舗で購入するとの回答が67%だった。この数字は、購入チャネルとしてウェブサイトやアプリを最も使うと答えた割合の3〜5倍に相当する。 Z世代のモノ購入方法とその頻度に関する調査 オフラインとオンラインの「いいとこ取り」をして購買行動を起こすのがZ世代の特徴だと言えそうだ。 オンラインでは、SNSやブログ記事を通じて多くの口コミに出会い、商品の良し悪しを総合的に判断することができる。そしてそのインプットを踏まえ、実際に店舗に足を運び、自分の目で商品やその使用感を確認して、購入するかを決める傾向にあると分析できる。 また、動画コンテンツにおいて、面白いところは、開封の様子を載せるものが多く見られるということだ。 開封体験、侮ることなかれ たかが開封と思うかもしれないが、されど開封だ。実際、Instagram上では #Unboxing (開封) というハッシュタグのついたコンテンツが150万以上投稿されている。 また、開封の様子と共に商品を紹介する動画は非常に多く、公式チャンネルが発信しているものもあれば、一般ユーザーによる開封動画もある。 Z世代・ミレニアル世代を中心に人気を誇るコスメブランドGlossierのプロダクトの開封動画 開封体験そのものは、消費者全員・全世代を対象に考えられるべきものだが、SNSや動画のコンテンツになると、Z世代は見逃せないターゲットになる。 Z世代は、コンテンツの「正直さ」に信頼を寄せることは先述の通りだ。実際に手元に商品が届いてから、開封して使用するまでの一連の流れを見せてくれる開封コンテンツは、自分が購入した場合の状況が想像しやすく、購買体験をリアルに感じられる。 したがって、購買行動において包括的な体験を重視するZ世代たちにとってより有益なものに感じられるのではないだろうか。 商品だけでなく、開封からの一連の流れを購買行動として認識することはもちろん、それら全てがZ世代にはコンテンツ化されることも頭に置いて、ユーザー体験をデザインしていく必要がある。 ましてや、このコロナ禍だ。年代別の傾向などもはや関係なく、ECでの買い物率が跳ね上がっている。家にいながら価値を感じてもらえる購買行動のために、開封というフェーズも軽視してはならない。 最後に これまで Z世代の特徴をマーケティング目線で解説してきた。章立てて説明はしているが、それぞれのポイントは密接に関わり合っており、総合的に捉えていただけると幸いだ。 テックネイティブという最大の特徴から、特にモバイルを中心とするデジタルデバイスを起点としたコミュニケーションが重要になる。Z世代は、物事をそもそもデジタルを前提で考えているため、もはや「重要」というよりも「必須」でデジタルの活用を考えていくべきだ。 その一方で、自分の目で確かめたい、自分が信用できるものを選びたいという思いから、オフラインの体験にも価値を感じているところが大きなポイントだと筆者は考えている。 […]

パンデミックによる肉不足も解消!プラントベース食品最前線

コロナで肉品切れ&プラントベース肉は価格を落としての拡大中 プラントベース(乳製品・肉代替)市場は約5,000億円拡大。チェーン店でも買えるまでに浸透中! 拡大の理由はアメリカの消費者の食スタイルの変化、植物性への移行の重要性、そして味! 注目ブランド紹介:gardein、Forager Project、Miyoko’s Creamery トイレットペーパーの次は肉が無い!? コロナウイルス感染拡大を受け、アメリカでは牛肉、豚肉の供給にも影響が出始めた。 屠殺場や食肉パッキング工場でも従業員の集団感染が発生し、4月末までに、カナダおよび国内有数の工場が閉鎖に追い込まれた。 これにより、大手ハンバーガーチェーンのWendy’sでは原料の精肉が手に入らず、全体の約20%の店舗(1,043店舗)でハンバーガーが品切れとなった他、コストコなどでは、一家庭当たりの精肉の購入制限が設けられた。 今後もウイルスの拡大が続けば、洗浄作業のために工場の閉鎖は長引き、冷凍肉の貯蔵も底を尽きて、さらに肉不足が深刻化することが懸念されている。 この肉不足の問題を受けてクローズアップされているのがプラントベース(植物由来)食品だ。嗜好の変化やその健康面から度々注目されてきたが、新型コロナウイルスの影響を受け、さらなる広がりを見せている。 そこで本記事では、最新のプラントベース食品市場について紹介する。ポイントとしては以下。 新型コロナウイルス感染拡大によるアメリカでのプラントベース食品市場の急成長 アメリカのプラントベース市場規模とその浸透度 そもそもなぜプラントベース食品が消費者に受け入れられているのか 注目されているプラントベース食品ブランド紹介 Twitterで拡散されたビーフ切れを訴える貼紙 Big Rapid Newsより 新型コロナウイルス感染拡大によるプラントベース食品市場の急成長 前述の通り、パンデミックにより肉不足となり、食肉の流通価格は上昇した。一方で、プラントベース食品への需要は高まり、各社がそれに応え供給を強化していることで、プラントベース食品市場は盛り上がりを見せている。 代替肉の製造を行うImpossible Foodsは、小売店での販売を拡張した他、レストランへの卸値を15%下げることも発表した。 同じく代替肉スタートアップのBeyond Meatも、2020年第一四半期の売上が前期比141%増の100億円越えと堅調に推移しており、夏には価格を下げることを発表して株価も上昇している。 家族4人分のハンバーガーを作ろうとした場合、精肉を使うとパテの価格は全員分で5ドル程度で済む。一方、Beyond Meatのハンバーガー用パテは1枚が約3ドルで12ドルと、2倍以上の価格差があった。 Impossible FoodsもBeyond Meatも、精肉が不足・高値となっている今が、精肉との価格差を縮め、新規顧客を得るチャンスと見ていることが分かる。 乳由来に限らず、多くの種類が並ぶアメリカの日配品売り場 Dine Magazineより アメリカのプラントベース食品市場の規模とその浸透度 ではプラントベース食品の市場規模はどのくらいなのか。また、一般消費者にとってどのくらい身近なものになっているのだろうか。 2020年3月に発表された最新のSPINS小売売上データを元に、The Good Food InstituteがまとめたPlant-based Food Market Overview(プラントベース食品市場概要)によると、プラントベース食品の売上は過去2年間で29%増加し、2019年に50億ドルに達した。 その主な内訳は、植物性ミルクが20億ドル、次いでヨーグルトやバター、アイスクリームなどの代替となる植物性乳製品が14億ドル、そしてプラントベースミートが10億ドルとなっている。 日本では、フードテック発の代替肉に関するニュースを目にすることが多いと思うが、実際には植物性乳製品も市場を大きく占めていることが分かる。 また食材としてスーパーでプラントベース食品が購入できるだけでなく、カフェ、レストランでもプラントベース食品をオーダーできる機会も多い。 日本でもスターバックスで豆乳・アーモンドミルクに加え、オーツ麦由来のオートミルクが期間限定で選択できたようだが、カリフォルニア州発祥のブルーボトルコーヒーでも、アーモンドミルク、またはオートミルクが選択でき、ナッツアレルギーを持つ人でも植物性ミルクが選択できる。 さらにファストフードチェーンでもプランドベース食品が食べられるようになっている。Impossible Foodsのパテを使用したハンバーガーは、バーガーキングをはじめとする多くのハンバーガーチェーンで食べられるということはかなり浸透してきた。 これに加え、Impossible Foodsの代替肉は、アメリカ全土に200店舗以上を展開するCheesecake Factoryというレストランのボロネーゼにも使用されている。 筆者も実際に食べてみたが、トマトソースの味もあり、見た目、食感ともにひき肉との差は全く感じなかった。 Veg Newsより このように、プラントベース食品はかなり身近なものになってきている。スーパーや馴染みのレストランで見つけることことができるため、日本と比べてもプラントベース食品に挑戦するハードルが低いのだ。 関連記事:ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。 人々の意識:アメリカでなぜプラントベース食品が求められているのか 冒頭で述べたように、昨今の肉不足もあり、プラントベース食品の需要は高まっている。一方で、アメリカのユーザーの食の嗜好の変化にも需要拡大の理由があるという点も理解しておく必要がある。それが『フレキシタリアン』という食スタイルの台頭だ。 フレキシタリアンという言葉は「基本的にはベジタリアンだが、たまに肉を含めた動物食性食品を食べる人」と定義されている。2003年のワード・オブ・ザイヤー(アメリカ版新語・流行語大賞のような賞)で『最も便利な言葉部門』に選出されるなど、知名度もさらに高まっている。 プラントベース食品の認証組織であるPlant Based Foods Associationがまとめた2017年のレポートによると、アメリカ人の約3分の1がフレキシタリアンとのこと。  Plant Based Food Associationより 厳格なベジタリアンまたはヴィーガンがいまだ少数派であるのに対し、こうした「ゆるく楽しむ層」が徐々にメインストリームになりつつあるのだ。 なぜフレキシタリアンが増えてるのか 以下2つの理由がある。 もともとは、自分の健康や地球環境のため(コロナ拡大でこの意識は加速) 今では、プラントベース食品の味も進化していて、味も選ばれる理由になっているため 中高年を中心に、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸のさらなる摂取を控え、より繊維質の多いプラントベース食品を取り入れる人が増えている。また、ミレニアル世代(25-39歳)やGenZ世代(8-24歳)では、社会的問題への危機意識から、ライフスタイルを選択する人も多い。 関連記事:ミレニアル世代のマインドセットを捉えて成功したスタートアップ事例 地球全体の人口増加に対して、動物性たんぱく質の供給が追い付かなくなると予想されていることや、食品の生産過程について描いた「Food Inc.」というドキュメンタリー映画が議論を巻き起こしたように、あらゆる情報にアクセスしやすくなった現代において、動物性食品の生産過程に対する消費者の嫌悪感は一層高まっている。 こうした中、生きた動物を販売する中国の市場で人間に感染したのが最初と言われている新型コロナウイルスが蔓延したことで、人間が食物として動物に依存することを問題視する風潮は強まっている。 動物愛護的な観点だけではなく、その加工過程で働く人々の健康リスクの管理といった公衆衛生的な問題意識の高まりも、人々がプラントベース食品を選ぶことの追い風となっているのだ。 プラントベース食品は「味」でも選ばれている こうした理由に加え、今では52%もの人が、プラントベース食品を選ぶ理由に「味」も挙げたと報告されている。 筆者もそうであったが、「代替食品って確かに動物性原料を使っていないが、その分味は動物性食品より劣るのでは?」というイメージを持ってしまう方も多いだろう。しかし、最新の プラントベース食品の味は、ここまで進化しているのだ。 注目のプラントベース食品ブランド3選 現在、Plant Based Foods Associationには、170社のプラントベース食品関連企業が登録されており、「むしろ動物性食品よりこのプラントベース食品が食べたい!」と思う魅力的な商品が日々開発されている。その中でも特に注目なのが以下の通りだ。 gardein: ミートレス・ミートシリーズ 公式Instagramより こうした新しいタイプの商品はスタートアップ企業発のイメージが強いかもしれないが、こちらは米大手食品メーカーのコナグラ・ブランズ傘下にあるgardeinが作るプラントベース食品だ。肉に限らず、魚の代替食品もラインナップしている。 食品や日配品を注文できるAmazonフレッシュでもその知名度や人気は高く、Beyondブランドにも引けを取らない商品だ。 こちらのシリーズの売り上げは、2020年3月13日から4月19日に前年同期比で65%増加したと報告されており、その需要が高まっていることが分かる。 ところで皆さんは『ミートレス・マンデー』という言葉をご存じだろうか?自分自身と地球の健康のために、読んで字の如く、月曜日は肉を食べないようにしよう、というプロジェクトである。 2003年にジョンズ・ホプキンス大学などが主導して発足したプロジェクトであるが、gardeinのホームページでも詳しく発信されている。 gardein公式HPより 例えば、肉を食べないことで制限できるエネルギーをインフォグラフィックで見せている。(真偽は置いておくとしても、)「1週間に食べるハンバーガーを1つ減らすと、車の使用を500km強(320マイル)控えたことになる」など、生じるインパクトは思った以上に大きく、それならもっと肉を控えようかな、という前向きな気持ちにならないだろうか。 このように、味や食感を動物性の食品に近づける努力だけではなく、一個人の行動にも大きな意味がある、ということをしっかりと啓蒙していることも、この商品が選ばれている理由なのかもしれない。 2. Forager Project : カシューナッツのミルク由来の乳製品代替食品 2013年創業のカリフォルニア発ブランド、Forger Projectが手掛ける、カシューナッツ由来のミルクから作られる商品だ。 Forager Project公式HPより 主力商品である『カシューグルト』は、ヨーグルトに代わり最近の筆者の定番にもなっているのだが、味種も6種類以上と豊富で、購入頻度が高くてもマンネリ化しない。 カシューナッツ由来のクリーミーで滑らかな口当たりが特徴であり、酸味は控えめでヨーグルトとムースの中間のような印象を受ける。ヨーグルトとはまた違った風味であるが、むしろこの味が気に入った。 […]

コロナ危機でシェアリングエコノミーはどうなってしまうのか?

シェアリングエコノミーの歴史とコロナショックが巻き起こす強制的なゲームチェンジ
スマホの普及との相乗効果で、「シェアリング」は本流に (2010 – 2020年)
所有の減少はサービスの消費を促すと踏んだ矢先の…コロナ流行
原点回帰の時。シェアリング本来の「人間と人間のつながりや助け合い」に価値を感じるように
数字や評価だけに踊らされるな。重要なのは、問題の本質を解決すること

今から12年ほど前、スマホの普及が少しずつ始まってきた頃、AirbnbやUber、Lyft、We…

急成長するXR市場の展望と活用サービス事例7選

リモートワークルールやオンラインコミュニケーションツールの台頭の裏にXR市場興隆の兆しアリ 【VR】人材育成や新しい働き方の提案、さらにはエンタメ要素まで網羅 【AR】ファッションやリテール を中心に、商業利用でユーザーの課題を解決 【MR】専門性の高い人材研修や製造サポートも。「並行した現実」だからこそ叶う業務効率化 既に周知の沙汰だが、昨今のこの非常事態で、リモートワーク関連サービスの需要に火がついている。リモートワークを円滑にしてくれる、SlackやZoomなどのコミュニケーションツールは今では必須となり、現実世界のアクティビティをオンラインで拡張させるツールたちが急成長を遂げている。 その裏で、これらのツールに需要が高まったからこそ、今までよりもさらに期待を寄せられている業界がいくつか存在する。その中の1つがXR市場である。 ゆくゆくはXRツールこそがリモートワークの未来を作ると考えられており、オンラインでも現実と同等か、それ以上の生産性を担保できるようになると言われている。MicrosoftがHoloLensで、FacebookがFacebook Horizonで描く未来がこういったものだ。 そういった意味で、XRリモートワークツールのかなり前段階であるオンラインコミュニケーションツールの台頭が、XR産業への期待も高めているということが言えそうだ。 そもそもXRとは? XRとは、何かと話題に上るAR (Augmented Reality、拡張現実)、VR (Virtual Reality、仮想現実)、そしてMR (Mixed Reality、複合現実)などを総称する言葉である。 XR市場は新興成長市場で、その将来性は計り知れない。XRが我々の生活に与えてくれる恩恵は今後さらに増幅するだろうと期待が高まっており、それはXR市場への産業支出予測にも出ている。 (コロナの影響を受ける前ではあるが、今年を皮切りに、産業用XRへの支出は右肩上がりになると予測されている。画像転載元: businesswire)  本記事ではそのXR業界の中でVR、VR、MR分野それぞれのトレンドをご紹介したい。 VR編 VRを活かした人材育成 – Talespin Talespinは2015年に設立されたVR/AR・AIスタートアップである。Telespinが提供しているサービスはとても興味深く、新しい形のVR/AR事業に取り組むスタートアップとしても有名だ。 Talespinが提供するサービスは大きく分けると3つ。1つ目はVRを使ったオブジェクトベースの知識トレーニング。2つ目がAIを駆使したVR人材研修。そして3つ目が、ARを使った職場でのツール等の研修である(現在開発途中)。 この中で個人的にとても興味深いと思ったのが、彼らが提唱しているVR人材研修である。 TalespinのVR研修で注力しているのが、EQの訓練だ。EQとはEmotional Quotientの略で、心の知能指数と訳すことができる。EQで測定されるのは、コミュニケーション能力や職場での人間関係構築、さらにプレゼン能力など、ビジネスを成功に導く多くの要素、ソフトスキルと言われるものだ。 TelaspinのVR研修では、EQを効率的に鍛えることで、未来の職場をより良いものへ変えていくことをミッションとしている。セールスや顧客対応、さらにリーダーシップなどもこのVR研修から学ぶことができ、今後の人材研修の形を変えると言われている。 (研修の状況をなるべく現実に近づけることにより、従来の研修よりも柔軟な対応力が磨ける研修を行えるのだとか。転載元: 公式サイト) さらに、Talespinは企業向けXRソリューションプラットフォームのRunwayの開発も行っており、この分野ではかなり先鋭的な会社としても知られている。 このプラットフォームを活用することで、企業の人材育成から専門的な知識に関する教育の全てをVRやAR化させ、社内外に提供することができるのだ。 導入企業はプラットフォームを提供することで、全ての記録を一括管理することができる。さらに企業のエンタープライズ用教育VR研修ツールをTalespinと共同開発することも可能になる。実際にXRソリューションを教育に使うことへのROIは実証されているという。 世界中に2万4千人の従業員を抱えるバーチャルオフィス – eXp Realty 最近では在宅勤務や遠距離からのリモートワークを従業員にオプションとして提供している会社は少なくない。更にはバーチャルオフィス内での出勤を許可している企業もあり、世界中のどこにいてもインターネット環境さえあれば出社可能になってきた。 そんなバーチャルオフィスをメインのオフィスとする会社の1つとして有名なのがeXp Realtyという2009年創業のアメリカの不動産会社だ。実際に存在しているいくつかの本社やオフィスを除き(これは法律上の制約などにより、やむなくオフィスを構えているという理由らしい)、多くの従業員たちがバーチャルプラットフォーム上に出勤する。 ほとんどの会議や打ち合わせがVR世界のアバターを通じて行われるため、社員同士が実際にオフラインで会うことはほとんどないそう。ちなみに、このバーチャルオフィスはカリフォルニア出身のソフトウェア会社、VirBELAによって開発・運営されている。 (バーチャルの世界はかなり広い。従業員1人1人の情報がひと目でわかるのも面白い。画像転載元: Business Insider) そんなeXp Realtyの業績は、2009年の創業以来、右肩上がりに成長しており、現在の企業価値は580億円を超えている。更に驚くべきことは、従業員たちからの満足度も高いということだ。 職場格付けサイトで知られるGlassdoorでの従業員レビューは非常に高い。(星4.3)また別のサイトでは94%の従業員レビューがポジティブなものであるという報告も上がっている。 もしかすると、これは現在日本企業の多くが頭を抱えている働き方改革のソリューションの1つなのかもしれない。この一連のコロナウイルスの煽りを受けて、営業売り上げなどは多少落ち込んでいるだろうが、通常の営業をすることに関しては、そこまで大きな影響を受けることなく機能しているだろう。 最先端のアーケード、VRゲーム – THE VOID 最近流行り始めてきたのが、アーケード型のVRゲームである。ディズニーランドなどのテーマパークではいち早くVR技術がアトラクションに応用されているが、手軽なVR体験を提供し始めた民間企業がいくつかある。 今回紹介するのは、その中の1つであるTHE VOIDというアーケード型VRゲームセンターだ。このコロナ禍では営業していないが、平常時なら予約で埋まっている時間帯がとても多く、週末の予約はすぐに埋まる人気ぶりだ。 (スタイリッシュな空間が人々を惹きつける。筆者撮影) The VOIDが提供しているVR体験は、人気映画とタイアップしていることが魅力的だ。VR世界の中で、自分自身がその映画の中の1人としてプレイすることができるため、ファンにはたまらない体験ができる。 タイアップに名を連ねている作品は、アベンジャーズやジュマンジ、スターウォーズ、ゴーストバスターズなど、有名どころが多く、大人から子どもまで楽しめるVRゲームとなっている。 (このベストはVRゴーグル、ヘッドセット、VRコンピューター、振動ベストが一体化されており、これを装着するだけで準備は完了だ。筆者撮影) 今後The VOIDのようなVR体験マーケットは更に成長していくと考えられる。実際、サンフランシスコでもVOID以外のアーケード型VRゲームセンターや、VRジムなどのサービスが既に普及し始めている。 AR編 ファッション業界、リテール業界を牽引するARミラー – Sephora & AMAZON  ここ数年、この分野で注目を浴びているのが、ARの商業活用だ。店頭でARを使い、顧客を楽しませ、消費者の購買意欲を煽ることはもちろん、実用面からも、リテール業界から期待を寄せられている。 人気化粧品リテールのSephoraや一部のアパレルリテールで導入されているバーチャルミラーでは、鏡を通して化粧品や衣服を”試着”することができる。 サイズはもちろん、別の色のものを一気に試したりすることも可能で、煩わしい試着のプロセスが簡素化される。このようなARツールが今後一層B2C事業で導入されていくことは間違いないだろう。 (画像転載元: Hackernoon) これらのツールは、オンラインショッピングの一番の難点である「サイズ感が掴めない」というユーザーの課題を解決するとも考えられている。現に、2018年1月2日にAmazonが『ARミラー』の特許を取得しており、一時期話題になったりもしている。 今はまだ開発途中だろうが、このようなARミラーが一家に1台置かれ、オンラインショッピングがそのミラーから行えるような時代へと突入することも考えられる。このような構想は、これから普及していくと考えられている5G通信が火付け役ともなっている。 なぜなら、ARミラーを安価で大量に提供するためには1台1台がハードウェアになるよりも、IoTデバイスとソフトウェアを提供し、そのソフトウェアをアップデートし続けていく方が現実的であり、5Gの特徴である大容量・高速で超低遅延、多数同時接続可能、といった機能が活かされるからだ。 関連記事:5G元年!これから急成長するテクノロジー AR定規 – Target & Apple Quick Look またアパレル以外に、家具などの比較的大きな物をオンラインで購入する時にも、実際の寸法をクリアにイメージできないということは消費者にとって難点になる。 そんな課題を解決するために、大手ショッピングセンターのTargetなどでは、スマホ上で家具の寸法などをシュミレーションするARアプリを提供していたりしている。 (かなりリアルに椅子の寸法を自室で見ることができる。画像転載元: Target Official Website) またアップルでは、2018年からiOSとiPadOSにApple QuickLookというブラウザ上からARでオブジェクトの閲覧を可能にする機能を導入。アップルはこの機能をここ最近拡張し、デベロッパーがカスタマイズ可能なボタンをQuickLookに搭載できるようにした。 2018年の導入当初は、Safariやメッセージの中からでも簡単にARが使用できるので一時期話題に上がった機能であったが、以前まではARでものを見るだけのものだった。 しかし、昨年のアップデートによりさらにできることが増えた。例えばQuickLookに商品購入ボタンを載せてAR上から直接商品を購入する導線が作れるようになったり、その商品の在庫を抱えている実店舗の情報を提示したり。今回の機能の拡張で、何倍も商業価値のあるものへとなったと言える。 これを機に、アメリカ大手小売店のHome DepotやWayfairなどがこぞってこの機能を彼らのオンラインストアに実装すると発表した。今後も、ECサイトにARでの商品確認が用意されていることが当たり前となってくることが予想される。 MR編 CES2020でも話題になったパラレルリアリティ パラレルリアリティとは、2020年1月初旬に行われた世界最大級のエレクトロニクス見本市、CES 2020にて、デルタ航空から発表されたテクノロジー・サービスコンセプトの1つである。 「パラレルリアリティ」を直訳すると、「並行した現実」という意味で、スクリーンを見る人によって、画面に表示させる内容を変えるというテクノロジーである。 加えて、同じスクリーン上で異なる内容を並行して別のユーザーに見せることができる。将来的には空港にあるスクリーンをこれに変えることにより、1人1人が個人の情報を見やすくなる、というのがこのアイデアのコンセプトだ。 自分のフライトの情報を探すために全てのフライト情報を目で追い、その場に立ち尽くす、というような無駄な時間がなくなる日は近いかもしれない。 (同じディスプレイ上だが、角度によって別の内容を見せている様子。転載元: Fast Company) […]

コロナの影響でアメリカのスタートアップではどのくらいレイオフが進んでいるのか

前回の「コロナショックがこれからスタートアップに与える影響」でも触れたが、新型コロナウィルス の経済に与える影響が少しずつ具体化される中で、スタートアップも少なからず影響を受け始めている。 アメリカでは、企業の業績が下がる際に人件費を抑制するために一時的に従業員を解雇する「レイオフ」という仕組みがある。これは、経済や会社の都合で行われるため、一般的な「解雇」とは異なり、対象となる従業員には失業保険が一定期間支払われる。 スタートアップで進むレイオフ Layoffs.fyiによると、この仕組みを利用して、多くのスタートアップでレイオフが進んでいる。3月11日から現在までの統計では、290社が約3万人をレイオフしている。業界として目立つのは、リテール、フード、フィットネス、モビリティ、不動産など、人が動くことで生まれるリアルサービスを提供する企業だ。 著名なスタートアップの例としては: Groupon: 2,800人 – 全体の44% Magic Leap: 1,000人 – 全体の50% Yelp: 1,000人 – 全体の17% Eventbrite: 500人 – 全体の45% Lending Club: 460人 – 全体の30% B8ta: 250人 – 全体の50% Everlane: 227人 WeWork: 250人 Thumbtack: 250人 – 全体の30% GoPro: 200人 – 全体の20% Getaround: 100人 – 全体の25% Casper: 78人 – 全体の21% ユニコーンの”ツノ”が折れ始めている 上記の中には評価額が10億ドル以上のユニコーン企業も6社含まれており、全体の46%である8,416人をレイオフしている。これは、一社につき平均で26%の従業員をレイオフしていることになる。その中でも、85%をレイオフし破産したOneWeb、67%をレイオフしたZume、50%をレイオフしたToastなどもある。 実は仕事を失っても生活できる制度 これだけを見ると、かなり多くの人々が露頭に迷うことになりそうな気がするが、アメリカではレイオフが頻繁に行われるため、それに対する失業保険の制度がある。 加えて、今回の米政府の緊急特別予算で、通常の金額 (カリフォルニア州だと最大$450/週) プラス、週$600の失業保険がもらえるようになった。これにより、万が一無職になっても週$1,000以上、月で$4,000以上受け取ることができるので、しばらくは生活に困窮することはなさそうだ。 また、下手に無給休暇を出すよりも、レイオフになった方がありがたい。企業としても、レイオフを進めることでコスト削減になるので、Win-Winの結果になることもある。 そして、また事態が収束したら採用し直すこともあると考えられる。そういった意味では、日本的なリストラとは少しニュアンスが異なる。 Twitter上で再就職活動 レイオフされたスタッフが、Twitterを活用して、自身及び同僚の再就職を進めているケースもある。本日1,000人のレイオフを行ったMagic LeapのスタッフであるAlexandria Hestonもその一人で、彼女のツイートに対して採用に関するレスも見られる。 Hi All! In terms of #magicleap layoffs – please feel free to thread below of open positions you feel would help individuals who were let go and I can share in groups. These are people looking into AR/VR industry, but also general engineering, design, games […]

デザインから環境問題を考える。エコ・サステナブル系サービス5選

自分たちの生活と環境の結びつきを再確認するタイミング。 ROTHY’S:一気通貫のサステナビリティー意識。サンフランシスコ発女性用シューズのD2Cブランド BIOSSANCE:バイオテクノロジーが実現する、環境への高レベルの配慮と高い安全性を誇るコスメブランド Veles:サプライチェーンから環境に配慮。資源の循環を目指した、廃棄食材生まれの家庭用洗剤 Capsulier Lite:気軽に楽しめるカフェタイムをさらにエコフレンドリーに。高いユーザビリティー提供するプロダクト Bird:より一層求められる環境への配慮。サンフランシスコではお馴染みの電動スクーター 優れたデザインを通じて問題へのアプローチを体現。「モノの使用」に留まらない「コトの提供」が重要 これまで環境問題へのアプローチは壮大な話のように感じられて、イマイチ危機感や実感を持つことが難しいと思っている方も、今回のコロナウイルスの一件で、生活と環境は強く結びついていると感じているのではないだろか。 コロナウイルスが我々の生活に多大な影響を与えていることは言うまでもないが、こうした人間の生活スタイルの変化も、環境に影響を及ぼしているのだ。 具体的には、全世界的な移動の自粛により、ガスの排出量が減少しているというデータが出てきている一方、衛生面を考慮して使い捨てのものを利用するシーンが増えたことでゴミの量が増加している、など。 世界中で品薄状態が続くマスクも、やはり使い捨てのものが多く使用されており、そのゴミ問題が深刻視されて始めている。 環境問題は自分たちの生活に強い結びつきがあるからこそ、身近な取り組みから向き合っていくことが大切だと改めて認識すべきだろう。 そこで今回は、我々の生活に溶け込み、身近な部分から環境への配慮をするプロダクト・ブランドをご紹介する。環境問題へのアプローチだけでなく、優れたデザインによってより良いユーザー体験を提供しているところもポイントだ。 ROTHY’S 2020年始、原宿駅前にサンフランシスコ発サステナブルなメリノウール製シューズブランドAllbirdsが日本初上陸を果たしたのが記憶に新しいが、同じくシューズ系列では、ROTHY’S(ローシーズ)も、サステナビリティーを掲げるレディースシューズとバッグのD2Cブランドだ。 著名人にもファンが多く、ナタリー・ポートマンやイギリスのメーガン妃も愛用。これまでには累計100万足、1億4000万ドル以上の売り上げを出している。 ROTHY’Sのプロダクトには、海洋ゴミになっているペットボトルをリサイクルした繊維素材が使われており、シューズのソール部分もカーボンフリーの素材でできている。 View this post on Instagram Our current spring favorites. Which styles are in your wardrobe rotation? 💭 A post shared by Rothy’s (@rothys) on Feb 25, 2020 at 8:11am PST 無駄ゼロを掲げ、中国の自社工場で生産されるプロセスでは、独自の3Dニット加工で編み上げるため、裁断のゴミも出ない。 さらには靴やバッグを入れて配送する際のボックスも丈夫で、梱包材を必要とせず、ここでもゴミを出さないようにしている。 製造前の素材の段階から発送に至るまで環境に配慮をしているだけでなく、プロダクト自体も優秀。軽量で、シューズは足によく馴染み、履きやすさもピカイチとのこと。 ニット生地であるため、専用の袋に入れて洗濯することもできる。シンプルなデザインで女性のライフスタイルに寄り添うプロダクトと言えるだろう。 関連記事:D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン BIOSSANCE BIOSSANCE(バイオッサンス)は、環境への配慮と高い安全性を実現するクリーンビューティコスメブランドだ。 元々BIOSSANCEは、マラリア治療のためのテクノロジーで特許を取得したローレンス・バークレー研究所の研究者たちが立ち上げた。バイオテクノロジーのバックグラウンドが高い品質を支えている。 コスメやスキンケアに関して、アメリカ国内で使用が禁止されている成分はわずか12種類。しかもこれは1938年からアップデートされていないという。ヨーロッパが1,376種類であるのに対して驚きの数値だ。 これが意味するところは、それだけ肌にも環境にも悪影響を及ぼしかねない成分が含まれてしまうリスクがあるということ。 一方、BIOSSANCEが自社製品に対して独自に定めている使用禁止成分はなんと2000種類。非常に厳しい品質基準を設けることで、人間を含め環境に配慮をしたプロダクトを開発している。 BIOSSANCE公式HPより そのうちの1つが、サトウキビ由来成分100%のスクワランオイル。元々スクワランは、サメの肝油から抽出されるのが一般的だ。 しかし、美容効果の高いスクワランを求めてサメの乱獲が行われたり、絶滅が叫ばれたりと、生態系に悪影響を及ぼす事例も存在する。 そこでBIOSSANCEは、強みであるバイオテクノロジーの知見を生かし、バイオマス資源としても注目されるサトウキビからスクワランを生成することに成功した。 また、製品自体だけでなく、ロジスティックスやコミュニティレベルで環境対策を徹底している。 例えば、配送ではカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロの状態)を徹底したり、森林再生プロジェクトへのサポートをしていたり。 その他、WEBサイト上で『THE CLNAN ACADEMY』というオンラインレッスンを配信し、多方面からクリーンな成分の重要性に関する啓蒙を行うなど、多岐に及ぶ活動をしている。 Veles およそ97%が廃棄食材でできている家庭用洗剤Veles(ヴェレス)。石油化学成分など、環境にマイナスな影響を及ぼす成分は一切含まれておらず、水やアルコール、酢酸などの成分を抽出して作られている。 一般的に売られている家庭用洗剤の90%は水でできているという。これほど大部分を占めているのだから、環境に配慮した洗剤には水の使用も当然大きく関係してきそうだが、Velesは、廃棄食材から抽出した水を再活用している。そのため、水の使用も大幅にカットできているプロダクトなのだ。 Veles公式HPより また、詰め替え(近日発売予定)を購入し中身を詰め替えて使っていくため、容器のゴミも出さずに済む(アメリカは日本ほど詰め替えパックが主流ではない)。 また、この容器自体も環境に配慮されたもので、リサイクル可能なアルミニウム製だ。 原材料となる廃棄食材を調達する際には、大手廃棄物運搬業者と提携し、埋め立てられる予定の廃棄食材を彼らから直接受け取り、加工に回すことでサプライチェーンを簡素化。運搬の際のガスの排出も抑えることに成功している。 Velesが掲げる「Cleaning is closing the loop」というステートメントは、「掃除をすることは、(自分たちの環境にあるものを)循環させること」といった翻訳になる。 これは廃棄食材から成分を取り出し、洗剤として新たなプロダクトを生み出し、それもまた再生可能な有機物でできているという、資源の循環を意味している。 Capsulier Lite 手軽に本格的なコーヒーを楽しむことができると、日本でもネスプレッソのような自宅エスプレッソマシンが人気を博した。 専用のマシンに好みのカプセルをセットし、ボタンを押すだけでドリンクが出来上がる仕組みだが、通常このカプセルは使い捨てで、プラスチックゴミが出てしまう。 このゴミ問題を解決しているのが、 Capsulier Lite(キャプシラーライト)。洗って何度でも使用可能なカプセルを作ることができるプロダクトだ。最新のIoTガジェットのキュレーションストアb8taにも取り上げられており、CES2019への出展実績もある。 毎回のカプセルのゴミが出ないだけでなく、自分で好きなコーヒー豆を選んでオリジナルのカプセルを作って楽しめるため、それだけでも価値を感じることができる。 既製品がカバーしきれていないところに目をつけ、ピンポイントで訴求していく面白い例だと思う。また、特定の機能に特化しており、用途は1つという、いわば「n=1」なプロダクトであるため、使うときの紛らわしさや迷いもなく、ユーザビリティーも高いと言える。 Bird サンフランシスコには、車や自転車だけでなく電動スクーターのライドシェアも浸透している。LimeやSPiNなど複数のメーカーが展開しているが、その中の1つであるBirdは、個人向けに電動スクーターの販売も行っている。 車を使用しなくとも行ける範囲であれば電動スクーターを利用することは、エコフレンドリーな姿勢だと言えるだろう。 Bird公式HPより ただ、電動スクーターは自動車のような排気ガスの排出がないだけで、その製造過程や充電のため、回収する際には温室効果ガスを排出しているのが現状だ。一概に環境に優しいとは言い難いかもしれないことをここで断っておきたい。 電動スクーターそのものをリサイクル素材で製造することや、回収車としてEV自動車を利用するなど、より細かな環境への配慮が求められている。 関連記事:シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 最後に サステナブル、エコフレンドリーなど、環境問題に対して警鐘を鳴らすサービスやプロダクトは多く存在する。しかし、それらを使うことのメリットや価値、影響力の大きさは、たとえ多大なゴミの削減に繋がっているなどと具体的な数字が提示されたとしても、なかなか実感が湧きにくい。 それは、自分のすぐ目の前で問題が起きているのではないからだ。問題自体がいつ始まったかもわからない上に、地球規模という非常に大きな問題であるため、自分ごととして捉えにくい。 しかし、そのプロダクトやサービスには環境に配慮していることがより身近に感じられるストーリーで伝えられたら、あるいは、仮に環境に配慮しているものと知らなくとも使いたくなるような優れたデザインだとしたらどうだろうか。 「環境に配慮されていさえすれば、デザインの良し悪しは気にしない」というブランドはおそらく選ばれなくなってくる。 むしろ、「イケてる上に、環境にも配慮している」「わかりやすくて、使い勝手が良い」といったように、優れたデザインに加えて環境問題に取り組む姿勢が付加価値として上乗せされる構造がこれから主流になってくるだろう。 そうなると、問題意識をいかにしてプロダクトやサービスといった形あるものにしていくか、どのようにストーリーを組み込み、デザインに反映させていくかが重要になってくる。 そして、この考え方はもはや環境問題だけに限らずともサービスデザインの際の肝だ。利用するだけの「モノ」で留まってしまうのではなく、その先の「コト」を提供できるサービスづくりが求められる。 我々btraxも、問題起点でイノベーティブなサービス開発ができるよう日々クライアントの方々と取り組んでいる。ご興味のある方はぜひこちらからお問い合わせいただきたい。 参考記事:Why Fashion Customers Can’t […]

Allbirds、CasperなどD2Cエキスパートに聞くブランド構築6つのポイント

日本でもじわじわと認知度が高まり始めてきているD2Cブランド。すでにアメリカでは、Everlane、Allbirds、Werby Parker, Casperなどのブランドの人気が高く、急成長や上場などの大成功する事例も増えてきている。 freshtraxでは、これまでも何度かD2Cに関する記事を書いてきたが、今回は実際にD2Cブランドを構築している人たちによるアドバイスを紹介する。 Direct to Consumer とは Direct to Consumer (D2C) とはその名前の通り、自ら企画、製造した商品をどこの店舗にも介すことなく販売するビジネスモデルのことである。もともとは店舗を持たず、オンライン販売のみが主流であったが、ここ数年でオンラインで販売開始後に、実店舗を出す事例が増えてきている。 中間業者を極力省き、製造から販売までをブランドが一括管理することで、消費者に直接商品をリーズナブルに届けられるようになるだけではなく、それぞれの工程の透明性を高め、ブランドに対しての高い帰属意識を構築しているのが特徴。 アメリカを中心に、このD2C型のビジネスモデルをベースにするスタートアップが急激に増えてきている。 参考: アパレル業界を席巻する新勢力 – Direct to Consumer (D2C) で成功した7つのブランド D2Cビジネスの成長例 日本ではD2Cはまだまだ個人事業や中小企業のイメージを持たれがちだが、アメリカではかなりのビッグビジネスになっている。 2015年創業のAwayは1年目に5万台 (売上約12億円) を達成 Warby ParkerがFast Company誌上で最もイノベーティブな会社に選ばれる Casperの売り上げ: 1年目1億円、2年目100億円、3年目200億円、現在上場準備中 Allbirdsが創業2年で売り上げ100億円を突破 Bonobosが創業10年でウォールマートに約350億円で買収される 参考: 【ボノボス】アメリカ発 オンライン・メンズアパレルブランド Bonobos 成功物語 D2Cの2つの特徴 D2Cは従来のブランドと比べると下記の点においてかなり特徴的である。 選び抜かれた少数精鋭のアイテム D2Cブランドは選び抜かれた少数精鋭のアイテムでスタートすることが多い。ブランド力を築いてから販売商品を増やしていくという方法はかつてラグジュアリーブランドが行ってきたそれと共通している。ルイヴィトンが鞄メーカーとしてのブランドを築いてからライフスタイル提案という形で販売商品を増やしていったのは有名な話だろう。 今となっては多くの販売商品を抱えるD2Cブランドも最初は少ないアイテムでのスタートであるケースが多い。前回の記事でご紹介したWarby Parkerが当初扱ったのは$95のメガネのみ、Bonobosはデニム以外のメンズパンツのみ、Everlaneも無地のTシャツ・ネクタイ・かばんのみでのスタートだったという。 ストーリーによるブランディング ストーリーによるブランディングもD2Cの特徴としてあげられる。D2Cブランドの多くは歴史が浅く、著名なデザイナーを擁している訳でもない為、ストーリーによってアイデンティティを確立させるブランドが多い。 例えば、Warby Parkerの誕生のきっかけは創業者自らの辛い経験に基づいているという。公式サイトにはこう書いてある。「私が学生の頃、バックパッカーをしている間にメガネを無くしてしまいました。新しいものを買いに行きましたが、値段が高すぎたため購入を断念せざる得えなったのです。その結果、大学院での1学期間は目を細め、不満を言いながら過ごすことになってしまいました。Warby Parkerを興したのは、そんな苦い思い出を皆様には味わって欲しくないという思いがきっかけです。」 ストーリーによるブランディングは従来の店舗での販売をメインに行うブランドよりも、自宅で落ち着いてゆっくり買い物が出来るD2Cとの相性が良いと言えるかもしれない。ストーリーに引き込まれると、彼らの魂の篭った商品を思わず買ってみたくなってしまうだろう。 参考: Direct to Consumer (D2C) 躍進の理由と大企業のジレンマ D2Cブランドに共通する主なブランドメッセージ これはあくまで感覚的なのだが、D2Cブランドがユーザーや世の中に発している共通のメッセージがある。 サステイナブルな素材で人と環境に優しい 製造工場などでの労働環境が良い 無駄なコストを掛けていない 誇大な広告にお金を掛けない 高い透明性でユーザーと共に成長してく 店舗がある場合はその地域に還元する 性別やLGBTなどの多様性への高い意識 世の中を良くすための寄付活動を行っている 中間業者などの既得権益を払拭する 参考: ミッションを売れ! 薄利多売から抜け出すためのD2C戦略とは ↑ EverlaneのSF店舗に展示されている人と地域に対する寄付活動のポップ D2Cエキスパートに聞くブランド構築のポイント これから紹介するのは、D2Cの第一線で活躍するエキスパートによるアドバイス。ユーザーに正しいD2C体験を届ける際に役立つ。おそらく近いうちに日本でもD2Cの潮流が来ると思われるので、知っておいて損はないはず。 体験を最優先したブランド構築を 他のブランドを真似しない スピード重視 できるだけ早く告知を始める ゴール設定は現実的に 時には競合も支援する 1. 体験を最優先したブランド構築を D2Cはユーザーに届ける体験を通じてそのブランド価値を生み出している。例えばマットレスを提供するCasperは、マットレスそのものよりも、質の良い睡眠体験を販売している。同じつ、Glossierはそのプロダクトを通じて、より良いコスメ体験を提供しているのだ。 それを実現するためにはどうしたら良いのか?Casperでは、マットレスに入っている素材よりも、より良い睡眠の効果をユーザーにストリートして届けている。もちろん素材に関してもしっかりと説明はしているが、広告でもキャンペーンでも、彼らのメッセージは必ずより良い睡眠に関してのものだ。 体験を通じたブランド構築をするもう一つの方法は、それぞれの顧客の特性をしっかりと理解すること。Glossierが提供する楽しげなブランディングの裏には、ブランドを愛する顧客の嗜好をしっかりと理解することを差別化要因としている。 そして、ソーシャルメディアなどを通じて、専属のコミュニティースタッフが日々やりとりを重ねている。それが功を奏し、アンバサダーを中心に口コミで多くのファンが広がっていった。 Dollar Shave ClubやWarby Parkerなどの以前までのD2Cブランドが便利さを前面に出していたのと比べてみても、最近のD2Cはより体験を重要視したブランド構築を行っている。 参考: D2Cブランドに学ぶウェブサイトに必要な3つのUX要素とは 2. 他のブランドを真似しない 成功しているモデルを徹底的に研究し、それをなぞるのが、これまでのビジネス戦略の定番の1つだった。これがD2Cになると全く通用しない。むしろ逆効果になってしまう。 そもそもD2Cブランドは、プロダクトやストーリーにおいて、オリジナル性が非常に重要になっている。ユーザーの記憶に残り、周りの人々に自慢したくなるようなブランドにするためには、他がやっていないオリジナル演出が不可欠だ。 その1つが開封体験だろう。オンラインで販売されたプロダクトが届き、パッケージを開ける体験は、ブランドに接する一番最初のタッチポイントであり、ユーザーに強烈な印象を与えることができる。 実に、Dotcom Distributionが2016年に実施したEコマースのパッケージングに関する調査によると、しっかりとブランディングされたプレゼントようなプレミアム感のあるパッケージは、ブランドに対するロイヤリティーを上げ、さらにクチコミを促進するという。 参考: D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン 3. スピード重視 多くのD2Cはスタートアップである。これは、デジタルテクノロジーを活用しているからだけではなく、スピードも重要視しているから。既存のブランドは、じっくりと時間をかけて行うことが多いが、D2Cブランドの場合は、それだけ早く動き、アップデートできるから勝負の鍵となる。 そのスピード感を実現するために、小さくスタートすることが多い。Bonobosは当初お洒落なズボンだけで始めたし、Allbirdsのラインアップもウールのスニーカーだけであった。 もちろん色やサイズのバリエーションはあるのだが、全ての工程でのスピードを上げるために、最小限のプロダクト数にするのがD2C流。その後、ユーザーからのデータを元に、次の商品の企画や、翌月の選定を行うのが一般的になってきている。 参考: シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか? […]

大企業xスタートアップのオープンイノベーションをガンガン実現するDelta航空【CES 2020】

大企業がスタートアップとコラボし、新しい価値を生み出す。これは、多くの企業が目標に取り組んでおり、シリコンバレーに拠点を構える日本企業の最も重要なゴールの一つともなっている。
その一方で、実際の成功例は驚くほどに少ない。そもそも、多くのスタートアップは大企業との取り組みに興味がない。むしろ、めんどくさいとすら思われている。これは日本でもアメリカでも、ほぼ同じような状況である。
スタートアップが大企業に持つイメージ

スピードが遅い
偉そう
プロセスがめんどくさい
社員がポンコツ
できない理由を並べる…

2020年に日本企業の経営スピードを上げる5つの方法

先日、我々のアドバイザーもしていただいている澤さんがVoicyにて日本企業と外資系企業での働き方の違いについてお話しされていた。(Voicy: 高いお給料をもらえる会社という考え方について。) GAFAなどの企業は給料が高いだけではなく、従業員の時間を尊重し自由に使える仕組みを提供する事で、より有意義な仕事環境を与えているという内容。旧態然とした仕組みで従業員を管理し、無駄に時間を奪って経営スピードを鈍らせている日本の大企業とはスピード感も全然違うとのこと。 シリコンバレーの企業の決断スピードは日本の100倍 実はこの分析は正しく、シリコンバレーの企業が世界的に凄いとされている理由の1つが、そのスピードの速さであろう。特にデジタルが主流になってきている現代では、これがかなり強力な武器となる。 日本企業が完璧なプロダクトを1つ出す間に、シリコンバレーの競合は20%の完成度のものを5つ出し、ヒットしたものだけを残し改善すると言われるほど、決断、実行、リリースのスピードが速い。 一説によると、日本企業とシリコンバレーの企業を比較すると、その決断スピードには100倍の差があると言う。これは、例えると時速3kmで進むカメと、時速300kmのF1カーぐらい異なるということだ。ある意味、全くカテゴリーが異なる。 参考: 日本がシリコンバレーに100倍の差を付けられている1つの事 Appleでの象徴的な出来事 Appleもスピードを重要視していることがわかるエピソードを紹介したい。2008年にプロダクトマネージャーの一人がミーティングにて、CEOのTim Cookに対して中国の工場での生産に大きな問題が発生している事を伝えた。するとCookは「それはまずい。誰か出向いてどうにかしなければ」と言った。 そのミーティングは継続し、30分ほどが経った時点でCookがその担当者に対し「あれ、なんで君はまだここにいるんだ?」と言うと、彼は急いでサンフランシスコ空港に直行し、服も着替えずにその足で中国行きの便に飛び乗ったという。 Amazonは平均で11.6秒に一回の頻度でデプロイしている Amazonでも、スピードに関しての意識はかなり高い。その一例として、彼らは実に平均で11.6秒に一回ソフトウェアの更新を行なっているというのだ。 もちろんこれは平日だけでのケースではあるが、常に最善の体験をユーザーに届けるため、そして競合に勝つために、新しい仕様リリースしまくっているということになる。 Googleがたどり着いたハイパフォーマンスチームに共通する5つのポイント その決断スピードが速い事で知られるGoogleは以前に業績の良いチームの共通点を探るべく、社内の180のチームに行ったリサーチプロジェクトを行った。その結果によると、個々のチームメンバーのスペックには全く共通点はなく、その仕組みやカルチャーが最も重要であるということがわかった。 その5つの共通点は下記の通り: 信頼性: 時間通りに結果を出せる信頼性が担保されている 透明性: ゴールとそれぞれの役割がクリアになっている 仕事の意義: 仕事の内容が個々のメンバーにとって意義のあるものになっている インパクト: 仕事の結果が社会に良い影響を与える 心理的安全性: 恐怖や不安を感じることなく自分の意見を伝えられる状態が担保されている 上記の中でも、5番目の心理的安全性が保たれていることが、業績を上げるために最も重要なポイントだとGoogleは定義している。この調査の結果、自分の意見を周りの反応を恐れることなく発言できる環境を作ることを最優先するべきだと分かった。 日本企業が経営スピードを上げるための5つの方法 では、こんな時代に日本企業はどうするべきなのか?おそらく、新しく何かを始めるよりも、既存の古臭い仕組みを打破することが必要になってくる。具体的には下記の5つが挙げられる: 1. メール文章の簡略化 日本の場合、ビジネスメールの書き方の基本として、「お世話になります。XXX社の〇〇です」から始め「よろしくおねがいします」でしめることがマナーとさている。そしてその内容もかなり丁寧に書かなければならない。 おそらくこのようなメールの書き方一つをとっても、日本全体でのGDPの1%ぐらいを浪費してしまっているのではないか。そもそも、そんなメール、モバイルのプレビューで見たら、全部「お世話になっております」しか表示されなく、可視性がかなり低くなってしまう。 アメリカでは、メールを書くときには短い方が良いとされる。というのも、読む人の時間を極力奪わないために、ごく単純にわかりやすく書く方が逆に良い印象を与えやすい。 GoodpatchのCEOの土屋くんがうちでインターンをしてた頃、家を借りるために大家に出したメールになかなか返信がない状態が続いた。その内容を見たら、とにかく丁寧すぎて、読む気にもならない。そこでアメリカ風のノリで書き換えたら一発で返信が来た例を紹介する。 元のメール内容: Whom it may concern, Hi my name is Naofumi Tsuchiya. I am visiting San Francisco from Japan. I have my family with me staying here. So, I need to have a room in a safer area. I need to find a room from June X to July X. I have found your room listing on Craigslist. It looks very interesting. I’d like to come to your place to take a look […]

2020年に予想される10のスタートアップトレンドと注目サービス15選

2019年はシリコンバレーを中心に、グローバル規模でスタートアップに関する多くの変化があった。代表的なのが、ユニコーン至上主義から、社会利益追求型へのシフト。 それまでは、評価額をどれだけ高くできるかをゴールにしていたのが、どれだけ世の中に対してポジティブな影響を与えられるかにフォーカスが移り始めている。これはスタートアップ市場の寡占化 & 熟成化が進んだことが1つの理由だと考えられる。 参考: 日本からユニコーン企業を生み出すために必要な5つのポイント 2020年に予想される主なスタートアップトレンド 他にも予想されるスタートアップを取り巻くトレンドに関する主なキーワードをまずは紹介する。 エクジット至上主義から継続性 ユニコーンブームがひと段落 IoT系に再び注目が集まる 経済的価値に加えて社会的価値の重要性 B2B向けサービスの躍進 テクノロジーよりもユーザー体験 正しいチームカルチャーの重要性 金融業界の大きな改革が進む 心を豊かにするウェルネス系サービス ノンデジタルでのブランド構築 1. エクジット至上主義から継続性 スタートアップのゴールの1つが、短時間でIPOやバイアウトなどのエクジットを達成し、一攫千金を得ること。日本国内の感覚だと、なるべく早い段階の上場を、アメリカだと、なるべく高い金額での売却を狙うことが多い。そのために、赤字での上場や、手段を選ばないユーザー獲得方法などの裏技を駆使することも多い。 その一方で、昨今のWeWorkでの一件などから、早急なエクジットよりも、継続性の高いビジネスモデルが求められるようになってきている。 参考: ベンチャー企業とスタートアップの違い 2. ユニコーンブームがひと段落 上記に関連し、末上場で評価額10億ドルを超える、ユニコーン企業ブームもひと段落する感じがする。上場前のUberに見られるように、グロース重視で、評価額を上げるだけ上げたは良いものの、その後の展開に苦しむケースも増え始めたことにより「ユニコーンを目指そう!」という目標自体がダサい感じになり始めている。もちろん、日本からユニコーンを出そう、という日本政府の方針も時代遅れな感じがする。 参考: ユニコーンの次はデカコーン 3. IoT系に再び注目が集まる 一時期は「モノのインターネット」とも呼ばれ、注目を集めていたIoT系のプロダクトであるが、ビジネスとしては、うまくいかないケースが多く、ここ数年で縮小気味であった。しかし、今年からはB2B系のIoTソリューションや、スマートホームやリテール、エンタメ系など、よりユーザーの日常生活に密着した、新しい形のIoT系プロダクトやサービスがリリースされたことで、再燃してきている感じがする。一時期は下火になったIoT系のスタートアップに再び注目が集まり始めている。 参考: 2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選 4. 経済的価値に加えて社会的価値の重要性 お金儲けだけではなく、社会に対するポジティブな影響を与えられるサービスや企業に人気が集まる。ここ数年で話題になってきているD2C系のブランドや、代用肉のスタートアップも、社会貢献のストーリーを前面に出すことで、注目が集まっている。「ユニコーンとシマウマの違いを知っていますか?」でも語られている通り、大規模、急成長が特徴であったユニコーンに対するアンチテーゼとしても興味深い。 参考: イノベーションの効果測定方法 5. B2B向けサービスの躍進 スタートアップサービスと聞くと、どうしてもアプリやWeb系を想像しがちであるが、実は、業務効率化、顧客獲得、バックオフィス運営などのB2B系のソリューションもかなり注目されている。代表的なものだと、日本でも導入が増えてきているSlackや、Smart HRに代表される、既存の面倒な仕組みをクラウド化して改善する、実務系サービスが挙げられるだろう。 6. テクノロジーよりもユーザー体験 これまでは主に消費者向けのサービスが中心に、優れたユーザー体験を提供することが、そのサービスの大きな価値になってきている。それに加え、今後はB2Bを含め、あらゆるサービスにその重要性は高まっている。例えばMealPalの様に、既存のサービスと同じ内容であったとしても、UX部分を大幅に改善するだけでも、新しい価値提供に繋がるケースも少なくはない。 参考: 【今さら聞けない】デザインがビジネスにこれほど重要な理由 7. 正しいチームカルチャーの重要性 スタートアップは多くの場合、急成長を達成するために全てが流動的に変化する一時的な集合体である事が一般的であった。しかし、より継続的な存在になるためには、社内カルチャーの醸成の重要性が高まってきている。これも、WeWorkの一件で明るみに出た部分でもある。 参考: イノベーションを生み出す海外企業カルチャー10事例 8. 金融業界の大きな改革が進む 2019年は日本でもモバイルペイメントに代表されるようなキャッシュレス系サービスが話題になっていたが、今年はそれらを含む各種フィンテック系ソリューションの知名度がより高まってくるだろう。それと同時に、既存の金融業界は今まで以上にユーザーに喜ばれる体験の提供が求められる。もしかしたらスタートアップサービスの影響で、大手の金融機関の経営に大きな影響が現れ始めるかもしれない。 参考: 銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は? (金融革命 Part 1) 9. 心を豊かにするウェルネス系サービス 世の中にデバイスとデジタルサービスが普及するに合わせ、ユーザーの心の豊かさを危惧する声が上がり始めている。実際、平均的なユーザーは、人と接する時間よりも、デバイスを触っている時間の方が多い。そんな時代の変化に合わせ、人々の心を豊かにする、ウェルネス系のサービスに注目が集まる。 参考: テクノロジー中毒の危険性? 人間よりもデバイスと過ごす時間が多い時代に 10. ノンデジタルでのブランド構築 インターネットを通じて情報にアクセスしやすくなったことで、ユーザーは商品やサービスに関する情報に対して敏感になっている。そのため、最近の傾向としてユーザーはブランドに対して透明性や信頼性を求めるようになった。そこに対していかにリアルなストーリーや、イベントなどを通じた「人間味」出せるかが、スタートアップにおけるブランド構築のポイントになり始めている。 参考: D2Cブランドに学ぶブランド認知向上に効果的なキャンペーン事例4選 2020年にbtraxが注目するスタートアップ 上記のトレンドを踏まえ、クライアント企業とスタートアップとのコラボを提供している我々btraxも注目している15のスタートアップを下記に紹介する。 Spatial ARを活用したコラボサービス 注目ポイント: リモートワークが進む中で、ホワイトボードや付箋を利用したコラボやディスカッション、ワークショップの必要性も高まっている。その二つの相反するニーズをARと3Dテクノロジーを活用して実現するサービス。 本社: ニューヨーク 領域: AR、業務改善、3D https://spatial.is/ Impossible Foods 植物性タンパク質で作った代替肉 注目ポイント: アメリカで現在大きな社会問題の1つにもなっている家畜と食用肉の関係を解決するために、動物の命を奪わずに美味しい肉を提供することをゴールとしている。実際に食べてみても、実際の肉と遜色のないクオリティーで、現在では大手ハンバーガーチェーンのBurger Kingにも採用されている。 本社: シリコンバレー 領域: フードテック、食品 https://impossiblefoods.com/ 関連記事: ビヨンドミートだけじゃない。食品産業に革命を起こす次世代フードを実食。 Nova Credit 移民の人たち向けクレジット金融サービス 注目ポイント: 移民の多いアメリカであるが、国外から移住してきた人にとってすぐにクレジットカードを獲得するのは非常に難易度が高い。そんな社会的問題に対して、テクノロジーを活用し、それぞれの母国でのクレジットヒストリーを活用することで解決するサービス。 本社: サンフランシスコ 領域: フィンテック、金融 https://www.novacredit.com/ AirGarage 利用していないスペースを駐車場として貸し借りするプラットフォーム […]

アメリカに学ぶ、2020年のマーケティング重要な3つのポイント

メディアや動画、音声などのコンテンツ消費、作成・提供の流れ過去最高。1日約6時間は費やす
ソーシャルコマースでさらにオンラインショッピングは進む。それに伴い店舗が提供する体験がより重要になる
幸福を求める「ウェルビーイング」。企業のマーケティング活動もウェルビーイングが長期的に愛される鍵
番外編:多様性を取り込むインクルーシブ・マーケティングはトレンドではなく当たり前に!

新しいトレンド、マーケティングツール・機能についてくのに必死で、多くのマーケターは「で、結局2020年何をやっておけばいいの…

2019年のデザイン経営トレンドを振り返る

2019年を締めくくるにあたり、経営におけるデザインの与えるポジティブインパクトについて、まとめてみたい。アメリカ西海岸をはじめ、多くの企業がすでにデザインの恩恵を受けているが、まだまだその数は少なく、世の中のビジネスの大半は、その重要性をいまだ実感していない。 数字で表される経営に対するデザインの力 米国のコンサルティング会社Motiv Strategiesによると、デザイン的考え方を経営に積極的に取り入れている上場企業16社は、その株価の伸びがS&P 500全体と比べ2003年から2013年の10年間で228%高くなっているという統計を発表した。 ちなみに、このDesign Value Index指数におけるDesign-centric Organizationに選ばれるための評価項目は下記の通り: 過去10年間で上場している 経営とマネージメントの根幹にデザインを活用してる デザインに関する事柄に対しての投資と影響力が増えている 企業の組織構造とプロセスにデザインが浸透している 経営陣に15-20年のデザインバックグラウンドをもつ者が含まれている 経営トップ及び部門長がデザインの重要性を理解し実践している 参照: Design Can Drive Exceptional Returns for Shareholders また、2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出ている。 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザイン施策の計測方法とその活用事例 マッキンゼーのパートナーであり、イギリスでプロダクト開発とデザインに関するサービスを提供するベネディクト・シェパードによると、商品の差別化がどんどん難しくなってきている現代において、多くの企業の重役たちが、プロダクトやサービスデザインの重要性を叫び始めていると語る。マッキンゼーの調査では、下記の4つの領域においてのデザインの経営に対するインパクトを計測している。 1. デザインの影響が実際の数字で計測できる領域での活用 例: とあるゲーム会社はホームページのユーザビリティを改善したことで売り上げが25%アップした。 2. ユーザーとの対話を最優先したユーザー体験 (UX) 設計 例: とあるホテルは、お土産のアヒルのおもちゃにそれぞれの都市名を刻印することで、コレクション性を高めた。それにより顧客の維持率が3%高まった。 3. プロジェクトチームに優秀なデザイナーを参加させ裁量を任せる 例: ストリーミング音楽配信サービスのSpotifyではデザイナーに多くの権限を与え、自分たちの判断で自由な活動ができるようにした。 4. プロダクト開発においてリサーチ、プロトタイピング、改善を推奨 例: とある旅客クルーズ会社は、ユーザー行動調査及び支払データを元に、船上で人気の高い活動を分析し、機械学習を活用することで、最も効率の良い船のレイアウトを導き出した リサーチの結果、上記の4つの領域を一貫して実行している企業は売り上げなどの業績が他の企業よりも急上昇していることがわかった。逆に言うと、この4つ全てをしっかりとコミットしていなければ、しっかりとした結果が出てないという事でもあった。 デザインが経営に与える具体的なインパクト InVisionが実施した、デザインを経営経営に取り入れている企業300社に対するリサーチによると、具体的に下記のようなメリットが表れている。 商品のクオリティに対するインパクト ユーザビリティ改善: 81% 顧客満足度向上: 71% 業務に与えるインパクト 社員の作業効率の向上: 33% 商品の市場リリーススピードの向上: 29% 会社の利益に対するインパクト 売り上げの向上: 42% コンバージョン率の向上: 35% コスト削減: 30% マーケットポジショニングに関してのインパクト ブランド価値向上: 39% 新しい市場参入への効果: 25% デザインパテントや知的財産権への効果: 13% 評価額や株価への効果: 10% 2019年はデザイン経営元年 グローバル規模では上記のような統計データがあるものの、日本国内において本当の意味でデザインの経営における重要性が理解され始めたのはここ最近であり、2019年になってからやっと本格的に企業がデザインに対しての取り組みを進めていると感じる。 今年は年始に予測した通り、主に下記のような変化があったと感じる。 デザインが経営資源の一つの軸に 差別化要因としてのデザインの役割 データ活用とAI連動の実用化 デザイナーの概念の変革 デザイン会社と企業の連動が常識に 参考: 【2019年】デザインと経営に関する5つのトレンド予測 世の中が豊かになったからこそ求められるデザイン的価値 これまではどの企業も価格や機能、品質などの「カタログ要素」で勝負をしてきた。しかし、全てのプロダクトのコモディティ化が進む中では、カタログには乗りにくい特性、例えば、斬新さや、美しさ、使い心地の良さなどで他社製品と争うことになる。 現代のような豊かな時代では、合理的、理論的、そして機能的な必要に訴えるだけのプロダクトでは、とうてい利益は上げられない。これからのビジネスの世界では、手頃な価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけではもはや不十分である。 数字で表現できる性能の高さに加え、感覚的に美しく、ユニークで、意味があり、利用体験の優れたプロダクトでなければ、消費者の心を動かすことが難しくなってきている。 差別化の最後の砦となるデザイン的要素 むしろデザイン力を武器にすれば、大きな差別化要素を生み出すことも可能になってくる。 このことは、SONYの前会長、大賀典雄氏の下記の言葉からも推し量ることができるだろう。 SONYでは、同業他社の製品は全て基本的に同じ技術を使っていて、価格、性能、そして特徴に差はないと考えている。市場において製品を差別化できるものは、デザインをおいて他にない。 価格競争から抜け出し付加価値で勝負 特にアメリカでは、今日の供給気味の市場の中で、他社製品やサービスとの差別化を図るには、デザイン性やユーザー体験の品質が高く、消費者の心に訴えかけるようなものを提供するしかなくなってきている。 言い換えると、どれだけ付加価値を提供できるかが勝負のポイントになってくる。さもなければ、熾烈な価格競争に巻き込まれるのがオチであり、中国などの製造コストの安い国には全くをもって太刀打ちすることが出来ない。 まずは社員にデザイナー的マインドセットを デザイン経営を始めるにあたり、よく聞かれるのは「何から始めたら良いでしょうか?」という質問。答えとしては、スタッフの方々にデザインの基本や、その役割を理解してもらう事から始めるのが良いと思われる。言い換えると、デザイナー的マインドセットを身に付ける事である。 デザイナー的マインドセットとは デザイナーの人たちが普段問題解決を行う際に利用している考え方やプロセスを元にした価値観や考え方。 デザイナー的考え方: クリアにコミュニケーションを行なう 正しいものを正しいところに 自由な発想からスタート 制限をクリエイティブの源に 顧客/ユーザー視点で考える 仮説 → コンセプト→ プロトタイプ → 検証→ 改善のプロセス 失敗から学ぶ 心地よさを優先する ロジックと感覚の両方を活用 分かりやすく使いやすくを優先 Less is more 相手の気持ちを理解する 細部にこだわる […]

2019年のデザイン経営トレンドを振り返る

2019年を締めくくるにあたり、経営におけるデザインの与えるポジティブインパクトについて、まとめてみたい。アメリカ西海岸をはじめ、多くの企業がすでにデザインの恩恵を受けているが、まだまだその数は少なく、世の中のビジネスの大半は、その重要性をいまだ実感していない。 数字で表される経営に対するデザインの力 米国のコンサルティング会社Motiv Strategiesによると、デザイン的考え方を経営に積極的に取り入れている上場企業16社は、その株価の伸びがS&P 500全体と比べ2003年から2013年の10年間で228%高くなっているという統計を発表した。 ちなみに、このDesign Value Index指数におけるDesign-centric Organizationに選ばれるための評価項目は下記の通り: 過去10年間で上場している 経営とマネージメントの根幹にデザインを活用してる デザインに関する事柄に対しての投資と影響力が増えている 企業の組織構造とプロセスにデザインが浸透している 経営陣に15-20年のデザインバックグラウンドをもつ者が含まれている 経営トップ及び部門長がデザインの重要性を理解し実践している 参照: Design Can Drive Exceptional Returns for Shareholders また、2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出ている。 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザイン施策の計測方法とその活用事例 マッキンゼーのパートナーであり、イギリスでプロダクト開発とデザインに関するサービスを提供するベネディクト・シェパードによると、商品の差別化がどんどん難しくなってきている現代において、多くの企業の重役たちが、プロダクトやサービスデザインの重要性を叫び始めていると語る。マッキンゼーの調査では、下記の4つの領域においてのデザインの経営に対するインパクトを計測している。 1. デザインの影響が実際の数字で計測できる領域での活用 例: とあるゲーム会社はホームページのユーザビリティを改善したことで売り上げが25%アップした。 2. ユーザーとの対話を最優先したユーザー体験 (UX) 設計 例: とあるホテルは、お土産のアヒルのおもちゃにそれぞれの都市名を刻印することで、コレクション性を高めた。それにより顧客の維持率が3%高まった。 3. プロジェクトチームに優秀なデザイナーを参加させ裁量を任せる 例: ストリーミング音楽配信サービスのSpotifyではデザイナーに多くの権限を与え、自分たちの判断で自由な活動ができるようにした。 4. プロダクト開発においてリサーチ、プロトタイピング、改善を推奨 例: とある旅客クルーズ会社は、ユーザー行動調査及び支払データを元に、船上で人気の高い活動を分析し、機械学習を活用することで、最も効率の良い船のレイアウトを導き出した リサーチの結果、上記の4つの領域を一貫して実行している企業は売り上げなどの業績が他の企業よりも急上昇していることがわかった。逆に言うと、この4つ全てをしっかりとコミットしていなければ、しっかりとした結果が出てないという事でもあった。 デザインが経営に与える具体的なインパクト InVisionが実施した、デザインを経営経営に取り入れている企業300社に対するリサーチによると、具体的に下記のようなメリットが表れている。 商品のクオリティに対するインパクト ユーザビリティ改善: 81% 顧客満足度向上: 71% 業務に与えるインパクト 社員の作業効率の向上: 33% 商品の市場リリーススピードの向上: 29% 会社の利益に対するインパクト 売り上げの向上: 42% コンバージョン率の向上: 35% コスト削減: 30% マーケットポジショニングに関してのインパクト ブランド価値向上: 39% 新しい市場参入への効果: 25% デザインパテントや知的財産権への効果: 13% 評価額や株価への効果: 10% 2019年はデザイン経営元年 グローバル規模では上記のような統計データがあるものの、日本国内において本当の意味でデザインの経営における重要性が理解され始めたのはここ最近であり、2019年になってからやっと本格的に企業がデザインに対しての取り組みを進めていると感じる。 今年は年始に予測した通り、主に下記のような変化があったと感じる。 デザインが経営資源の一つの軸に 差別化要因としてのデザインの役割 データ活用とAI連動の実用化 デザイナーの概念の変革 デザイン会社と企業の連動が常識に 参考: 【2019年】デザインと経営に関する5つのトレンド予測 世の中が豊かになったからこそ求められるデザイン的価値 これまではどの企業も価格や機能、品質などの「カタログ要素」で勝負をしてきた。しかし、全てのプロダクトのコモディティ化が進む中では、カタログには乗りにくい特性、例えば、斬新さや、美しさ、使い心地の良さなどで他社製品と争うことになる。 現代のような豊かな時代では、合理的、理論的、そして機能的な必要に訴えるだけのプロダクトでは、とうてい利益は上げられない。これからのビジネスの世界では、手頃な価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけではもはや不十分である。 数字で表現できる性能の高さに加え、感覚的に美しく、ユニークで、意味があり、利用体験の優れたプロダクトでなければ、消費者の心を動かすことが難しくなってきている。 差別化の最後の砦となるデザイン的要素 むしろデザイン力を武器にすれば、大きな差別化要素を生み出すことも可能になってくる。 このことは、SONYの前会長、大賀典雄氏の下記の言葉からも推し量ることができるだろう。 SONYでは、同業他社の製品は全て基本的に同じ技術を使っていて、価格、性能、そして特徴に差はないと考えている。市場において製品を差別化できるものは、デザインをおいて他にない。 価格競争から抜け出し付加価値で勝負 特にアメリカでは、今日の供給気味の市場の中で、他社製品やサービスとの差別化を図るには、デザイン性やユーザー体験の品質が高く、消費者の心に訴えかけるようなものを提供するしかなくなってきている。 言い換えると、どれだけ付加価値を提供できるかが勝負のポイントになってくる。さもなければ、熾烈な価格競争に巻き込まれるのがオチであり、中国などの製造コストの安い国には全くをもって太刀打ちすることが出来ない。 まずは社員にデザイナー的マインドセットを デザイン経営を始めるにあたり、よく聞かれるのは「何から始めたら良いでしょうか?」という質問。答えとしては、スタッフの方々にデザインの基本や、その役割を理解してもらう事から始めるのが良いと思われる。言い換えると、デザイナー的マインドセットを身に付ける事である。 デザイナー的マインドセットとは デザイナーの人たちが普段問題解決を行う際に利用している考え方やプロセスを元にした価値観や考え方。 デザイナー的考え方: クリアにコミュニケーションを行なう 正しいものを正しいところに 自由な発想からスタート 制限をクリエイティブの源に 顧客/ユーザー視点で考える 仮説 → コンセプト→ プロトタイプ → 検証→ 改善のプロセス 失敗から学ぶ 心地よさを優先する ロジックと感覚の両方を活用 分かりやすく使いやすくを優先 Less is more 相手の気持ちを理解する 細部にこだわる […]

2019年に消滅したスタートアップとその理由

毎年恒例、その年に無くなってしまったスタートアップ特集。その失敗理由などから学ぶことで、今後の役に立てようというのが目的。こちらアメリカでは失敗することが必ずしも悪いことではなく、そこから得るものがあれば成功へのプロセスの1つとして捉えることも可能になる。 特に新陳代謝の激しいスタートアップ業界では、派手な成功ストーリーの裏では、連日新しい企業が生まれては消えている。IBM Institute for Business Value and Oxford Economicsの調査によると、実にその90%は5年以内に無くなると言われている。その失敗理由やサービス内容を知るだけでも今後の大きな学びになる。 惜しくも2019年に無くなってしまったスタートアップ達 2019年12月25日現在までで、確認されているだけで553のスタートアップが消滅し、その合計資金調達金額は$19億ドルにのぼる。そんな中でも、今回はその資金調達額と、期待値の規模ベースにいくつかをピックアップしてみた。 Layer カスタマーサービス向けのチャットボットシステムを提供し、インドのフードデリバリー大手のSwiggyなどにも採用されたが、競合の存在や、成長速度の鈍化などが理由で、2019年10月末にサービスを停止した。なお、現在Layer.comは25万ドルで売り出し中。 事業エリア: チャットボット 資金調達額合計: 4400万ドル 失敗理由: 投資家からのプレッシャー 主な原因: 会社の成長スピードに対しての投資家からのプレッシャーに対し、Intercomなどの競合の存在もあり、より大きなマーケット獲得をすることができなかった。 Stimwave 神経系の症状に対して、ワイヤレステクノロジーを活用した医療デバイスを開発するStimwaveは、これまで入院を余儀なくされていた患者に対して、より自由なライフスタイルを送れるようなソリューションを提供していた。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 5470万ドル 失敗理由: 市場ニーズに合っていなかった 主な原因: 同社のソリューションの効果に相反するような裁判所による判例もあり、当初想定している効果が得られにくいと考えられた。 Anki カーネギーメロン大学の卒業生によって2010年に創立されたAnkiは、2016年にAIを実装した家庭用ロボット、Cozmoをリリース。その後、2018年には最新モデルであるCozmoをグラウドファンディングでリリースし、190万ドルを集めた。Fast Companyが選ぶ、2018年度の”The Word’s Most Innovative Companies” のロボティックスカテゴリーで1位を獲得するなど、絶好調に見えたが、あえなく終了してしまった。 事業エリア: ロボティクス 資金調達額合計: 1.82億ドル 失敗理由: 資金が尽きた 主な原因: 150万ユニットのプロダクトを販売したものの、ハードウェアビジネスにおけるコストは非常に高く、利益を出すのが難しいと判断した。 Laurel & Wolf 2014年より、インテリアデザイナーと顧客をマッチングさせるプラットフォームを提供していたLaurel & Wolf。その期待値の高さから、eBay、Dropbox、 Twitter、 Uberなどにも投資を行ったVCであるBenchmarkからの投資も獲得。2017年にはHome Depotとのパートナーシップも発表し、順風満帆のように見えていたが、2019年の初頭にサービス停止に追い込まれた。 事業エリア: インテリアマーケットプレイス 資金調達額合計: 3580万ドル 失敗理由: 運営コストとサービスの質の低さ 主な原因: それまでは比較的好評だったサービスが、2018年の夏頃からネガティブな口コミが書かれ始めた。ユーザーとサービス提供側とのトラブルが続出していた。 Call9 高齢者をターゲットに、老人ホームや介護施設と医師をつなげることで、緊急時に必要とされるオンデマンド型救急医師派遣プラットフォームを提供していた。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 3400万ドル 失敗理由: 市場ニーズが追いついていない 主な原因: 加えて、投資家との折り合いがつかず、サービス終了に追い込まれた。 Aria Insights 石油採掘場、軍用、警備用などのシーンにて、ドローンを活用することで、人間では危険だと思われる場所からデータを集めるソリューションンを提供していたが、既存のニーズに合っていなかったという理由で終了した。 事業エリア: ドローン 資金調達額合計: 3900万ドル 失敗理由: プロダクトが時代よりも先進的すぎた 主な原因: 将来起こるであろう課題にフォーカスしすぎたため、現代ではまだ必要とされていないプロダクトを作ってしまった。 Arivale ユーザーの遺伝子、血液、そしてマイクロバイオームデータから、それぞれに最適な情報を提供することで、ウェルネスの達成と病気予防と提供したが、2019年の5月にサービスをクローズした。 事業エリア: ヘルスケア 資金調達額合計: 5260万ドル 失敗理由: サービスのコスト高 主な原因: 医療データにおけるテスト、分析にかかるコストが高く、ユーザーへのチャージ金額との折り合いがつかなかった。 Kahuna 最新の機械学習テクノロジーを活用し、よりパーソナライズな体験を提供するマーケティングオートメーションサービスの提供を目指していたが、2019年の前半にサービスを停止し、5月にはサイトも消滅した。 事業エリア: マーケティングオートメーション 資金調達額合計: 5800万ドル 失敗理由: 未発表 主な原因: いきなりサービスが停止され、具体的な説明も無い。 Nomiku 元々ニューヨークに住んでいたカップルがサンフランシスコに引っ越し、ハードウェアアクセレレーターに参加。その後Samsungからの投資も獲得し、真空調理法を実現するスマートデバイスを開発した。2017年には、真空調理法で作られた料理のサブスクリプション型デリバリーサービスにピボットした。ちなみに社名は日本語の”飲み食い”が由来。 事業エリア: スマート調理デバイス 資金調達額合計: […]

【2019年】3つの業界に見る米国イノベーション事例まとめ

5Gの拡大でAR/VRや自動運転など「技術」が注目されがちだが、サービスの価値は「ユーザーが抱えている問題を解決することで初めて創造される」ということを忘れてはいけない
2019年ユーザーに価値を与えたイノベーション事例をリテール、ヘルスケア、ペットケア分野に分けて紹介

今年も残すところあと僅か。2019年のアメリカは第5世代移動通信システム、「5G」がついに解禁され、VR/AR市場の拡大、自動運転の可能性など、今までは想像もできなかった技術革新がさらに加速した年でもあった。
例えば、Alpha…

世界最大のテクノロジーカンファレンスCES 2020の注目ポイント

2020年の年明け、米国ラスベガスにて1月7日から10日にかけてCES 2020が開催される (メディア向けカンファレンスは1月5日、6日)。CESは、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスで、以前は家電中心だった内容が、ここ数年で急激に拡大し、モビリティー、ヘルスケア、エンタメなど、テクノロジーを活用する様々な業界が参加、出展している。 そんな世界が注目するCESに関しての見どころを説明。最後には関連イベントの紹介も。 年々規模も注目度もどんどん高まっている イベントとしての規模も桁外れで、メインのコンベンションセンターだけでも、東京ビッグサイト4つ分の広さ。それに加えて周辺のホテルの会場などを含めると11箇所で展示が行われる。予想される来場者数は18万人以上、4000を超える出展企業、7000以上のメディア関係者の参加が予定されている。ラスベガス市に対するその経済効果は実に300億円以上とも言われている。 このイベントの注目度は年を追うごとに高まっており、2018年のTOYOTA ePallet、2019年のLG Rollable TVなど、CESを目指して新規プロダクトコンセプトのリリースをしている企業もかなり多い。 関連: 主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント CES 2020で注目したい10の見どころまとめ では、btraxのCEOとして個人的に注目したい10のポイントをまとめてみた。 展示の半分くらいはモビリティーとMaaS系。革新的なサービスの誕生が期待される VR/AR/MR/XRの細分化が進む。実用的な新サービス情報もお披露目される AIとロボティックスからは、AI技術が具体的にどのように活用されるかがみられる ヘルステックだけでなく、心のケアまでおよぶウェルネステックにも注目 コンセプトに留まらない、5Gの活用事例に期待 日常生活により密着した、スマートホーム等のIoT系プロダクトには再注目 Appleが28年ぶりの参加!「What Do Consumers Want?」セッションに参加 数十年大きな変化なかった旅行体験を変革させるテクノロジーが登場 インクルーシブを目的としたセクシャル系プロダクト展示の解禁 徐々に下がりつつある日本企業の今年のプレゼンスにも注目 モビリティーとMaaS系 数年前までは家電がメインであったCES (元々はConsumer Electronic Showの略) も、今となっては展示内容の半分ぐらいはモビリティー関連になってきている。それくらいに、モビリティー業界は大きな変革の時期に来ており、自動車メーカーやサプライヤーををはじめとした各社が、最新テクノロジーをどのようにいち早く取り入れ、移動やロジスティックスなどのエリアにて、革新的なサービスを生み出しているかに注目が集まる。 関連セッション: BYTON Media Days News Conference ZF Media Days News Conference When Will Advanced Automotive Tech Pay Off? Bosch Media Days News Conference Continental Automotive Media Days News Conference Crawl, Walk, Run: Scaling Mobility Ecosystems Products for the Future of Mobility Ground or Aerial: Which Will Win Autonomy? Innovations in Last Mile Toyota Media Days News Conference Connecting the Dots for Mobility Solutions Faurecia Media Days News Conference Human Experience in the Future of Mobility Hyundai […]

2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選

IoTは人の生活に密着しているもの。2019年に話題となった注目されているIoTを知ることで人の価値観の変化を探れる PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi:快適・便利なデジタル靴紐 Oculus Quest、Oculus Go:VRはここまで身近なものになってきている CasperのThe Glow Light:良い睡眠のための光を提供 Flic:様々な操作をボタン1個でシンプルに NorthのFocals:おしゃれが当たり前のスマートグラス 2020年を迎えるにあたり、ぜひ最新IoT情報をアップデートしていただきたい。IoTは人の生活により密着しており、ライフスタイルや嗜好、価値観がどのように変わっているかを垣間見ることができる。 さらに、ここ、サンフランシスコ・シリコンバレーにはb8taやTarget Open Houseといった、最新IoTガジェットをキューレートしてショールーム的な展示や販売をしているお店があり、最新IoTと触れ合う機会が多い。 アーリーアダプターも多いので、IoTに限らず常に最新テック系サービスを生み出し、育てていくエコシステムがあるのだ。 関連記事:世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力 そこで今回は、IoTやテック系サービスに関して日本より数年先を行くサンフランシスコ・シリコンバレーを中心に、2019年に話題となったIoTガジェットを紹介する。 PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi PUMA Fiはドイツの大手スポーツメーカー、PUMAが開発したスマートスニーカーだ。独自のFit Intelligence(Fi)技術を活かして、靴紐のない、『デジタル靴紐』なるものを生み出した。 下の動画を見ていただければわかる通り、コードのようなものはあるが、結ぶ必要のある靴紐はない。靴の甲の部分にあるセンサー部分を上下にスワイプすることで、『デジタル靴紐』のきつさを何段階かで調整できる。 また、スマートフォンやスマートウォッチからの調整も可能で、色々なシーンでの活用を想定したデザインになっている。例えば、旅行の際、飛行機に乗っている時は足の浮腫が気になった時、あるいはリラックスしたい時には靴紐は緩め、歩いて移動中の時は靴紐を絞める、といった調整が簡単にできるのだ。 実はPUMAは1986年にもコンピューターを搭載したスニーカーを開発していた。それ以来、テクノロジーを駆使したスマートスニーカーを追求してきた。今回のFit Intelligence技術は、よりスマートで、軽く、もっと一般に向けたものになっているという。 実際に、2019年4月から、応募によるベータ版の販売が地域限定でされており、すでに30,000人の登録があった。販売は2020年の春を予定しており、値段は330ドルとなっている。 こういったスマートスニーカーが出ると、映画バック・トゥー・ザ・フューチャーの世界が現実になっている!と騒がれる。このプロダクトは、映画が公開された1989年に、人々が想像していたということだ。 新しいトレンドの創出は人間の想像があってのことであり、この想像が現実となり、もう数万円でも手に入るような時代になっているということがPUMA Fiの例からもお分かりいただけるだろう。 VRゲームを格段に身近なものにしたOculus Quest、Oculus Go OculusはVRヘッドセットとそのソフトウェアの開発・販売を行うスタートアップだ。 2012年にカリフォルニア州アーバインで創業すると、ゲームコンソール用VRのメジャープレイヤーとして成長を続け、2014年には20億ドルでFacebookの傘下となった。 買収後3年ほどは売上増加に繋がらず、Oculus買収はFacebookの目の上のたんこぶか、とも思われたが、2019年、Oculusが起死回生の一打として貢献することとなる。 2019年第三四半期、Facebookの広告以外による売上が2億6900万ドル(約269億万円)に達し、前年比43%の増加となった。その主な要因がまさに、Oculus Questなのだという。 Oculus Questは、より気軽で、使いやすいVR体験を提供している。今までの本格的なVRゲームは、パソコンやケーブルの接続が必要だったが、Oculus Questはパソコンも、ケーブルも不要になった。しかも価格は399ドル〜。これは、今までのゲームコンソールと比べて大きく変わらないどころか、むしろその技術力の高さを考えると、リーズナブルなのではと思ってしまう。また、スターウォーズシリーズのゲームも人気の理由だ。 さらにQuestは2019年だけで、130万台売り上げるのではないかという予測も出ている。 また、Oculusはゲームだけでなく、映画や動画を楽しむためのVRヘッドセットも開発している。Oculus Goは、映画や動画などの視聴に特化した、より持ち運びがしやすいモデルだ。別のユーザーと同時に、バーチャルでVR視聴することもできるようになっている。価格は199ドル〜なので、VR初心者でも、より手を出しやすくなってきている。 2018年5月に発売してから販売出荷数が約100万を目前にしているという情報まである。 ちなみにOculusは、ソーシャルグッドのためのVR開発にも力を入れていて、車椅子の人がいろんなところに旅行できるようなVRや、アメリカの黒人に関する歴史についてよりリアリティを持って学べるようなVRコンテンツがある。Oculusの活躍の幅はゲームに留まらないようだ。 ところで、VRヘッドセットはIoTという認識はあまりされないのかもしれないが、インターネットに繋がっているもの(ゴークル)と考えれば含まれる、という解釈で追加した。2019年を通して注目のガジェットだったことは間違いない。 睡眠を考え抜いたCasperがデザインしたライト、The Glow Light CasperはマットレスのD2C(Direct-to-Consumer)ブランドのパイオニア的スタートアップだ。年に創業し、累計約3億3970万ドルの資金調達をしてきた。2019年にはユニコーン企業の仲間入りし、IPOも噂されている。 Casperは主力製品であるマットレス以外にも、枕、ベットフレーム、シーツなど商品ラインナップを拡大してきた。そして2019年に、The Glow Lightというポータブルスマートライトをローンチした。価格は129ドル。 The Glow Lightはベッドサイドテーブルなどにも置ける、小型のポータブルLEDライトだ。人の睡眠より快適にするための様々な特徴がある。まず、点灯・消灯はライトを上下にひっくり返すことで可能だ。ライトは眠い時でも簡単にひっくり返せるくらい軽いので、従来のボタンを押したり引いたりする動作よりも簡単だ。 また、リラックスして睡眠に入れるように、The Glow Lightの光は温かみのあるものになっている。光は徐々に弱くなり、眠りに誘ってくれる。 さらに、起床の時間を設定しておけば、その時間に優しい光によるアラーム機能も果たしてくれる。時間の設定は専用アプリからカスタマイズできるようになっており、就寝の時間も入れておけば、睡眠リズムに沿って光によるサポートをしてくれるのだ。 The Glow Lightのデザインも人の睡眠を徹底的に考え抜いたものになっている。どんなインテリアにも馴染むデザインでありながら、Casperの心地よさも感じるフォルム。子供でも持ち運べるサイズ感。 光の強さは、ライトを回して調整できるのがわかりやすく便利。夜中にちょっと起きて何かするときも、ライトを軽く振れば豆電球程度の光がつく。これは、ユーザー観察やプロトタイプを重ねて開発されたようだ。 Casperはただのマットレスブランドではなく、人の睡眠をデザインするブランドだ。また、D2Cビジネスの根幹には、ユーザーとより近い距離で、彼らのフィードバックを得られるというメリットがある。 ユーザー中心でプロダクトをつくってきたCasperだからこそマットレスという主力製品に留まることなく、ここまで考え抜かれたThe Glow Lightが生まれたのではないだろうか。 ボタン1個というデジタルデバイス、Flic Flicはスウェーデン、ストックホルム生まれのスタートアップ。2013年に創業した。累計調達金額は約110万ドル。従業員も100人にも満たない規模ではあるが、今までに20万個のFlicを110以上の国で販売してきた。スマートフォンアプリや家電用のスマートボタンというシンプルなデバイスなのに、ここまで拡大している。 FlicはBluetoothでスマートフォンと連動させて使う。Flicの専用アプリから、ワンクリック、ダブルクリック、長押しといったボタンを押す動作をトリガーに、どのアクションを起こすかのカスタマイズをする。例えば、かかってきた電話をとったり、音楽を再生したりと、設定次第で使い方の幅は様々だ。 Flicは複数個、いろんなところに設置するような使い方も想定されている。つまり部屋の中だけでなく、自転車や車のハンドルなど色々な場所にFlicをつけておけば、ボタンひとつでコントロールできるもの、シーンが増える。 現在は、スマートフォンのコントロールだけでなく、家にあるスマート家電などの操作もできるようになっている。スピーカーや照明、テレビなど、異なるメーカーのデバイスであっても、Flicをリモコンに、操作できるようになるのだ。 実は2019年のCES(Consumer Electronics Show)で、GoogleがスマートボタンによるGoogleアシスタントのデモがお披露目されていた。ボタンによるスマートライフの構想が徐々に拡大・浸透してきているのだ。 関連記事:主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント Flicにはワンクリック、ダブルクリック、長押しの3つの操作しかない。それをスマートフォンや、スマート家電と接続することで、シンプルでシームレスなスマート体験が生まれる。 ボタンが1つしかないと聞くと、不便さや不十分さを感じるかもしれないが、ユーザーがよく使う操作に絞ることで、リモコンより格段に便利に感じるのだろう。しかもFlicは色々なところに設置できる(設置しても気にならないデザイン)。 これは少し筆者の感覚の話になるが、Flicのボタンは、「今までのボタン」っぽい感じが残っている。押した時の「クリッ」という音と感覚は、どこか無限プチプチのような、「なくても問題はないが、なぜか押したくなる感じ」がある。このような定性的な要素も、昨今のIoTガジェット激戦の中で差別化を図るための特徴となってくれていることだろう。 おしゃれスマートグラス、NorthのFocals ウェアラブルデバイスとして、スマートグラスも開発が進められてきたが、そのほとんどが「技術的にはすごいけど、なんかダサい、サイボーグ感」がなかっただろうか。 NorthのFocalsは、スマートグラスのグラス(メガネ)の部分のデザインにこだわったウェアラブルデバイスである。ぱっと見た感じは、おしゃれなメガネという印象だ。Focalはホログラム技術により、スマートフォンと連動した通知や情報をメガネのガラス部分に映し出してくれる。メガネの度あり度なし、どちらでも可能だ。 Northは2012年にカナダで生まれたスタートアップ。2019年2月には150人の従業員を解雇したり、カナダ政府からの投資が中止となるなどのニュースがあったが、同年5月には4000万ドルの資金調達へと持ち直した。現在はAmazonやIntelからの資金調達を含め、累計額は1億1960万ドルとなっている。 Northのミッションの1つは、テクノロジーやデジタルコンテンツと現実世界の境目を無くすということだ。インターネットを使っていると、現実世界から遮断される。また逆も然り。このような状況に、なるべくグラデーションをもたらそうとしている。Focalはそのためのツールだ。 (ここサンフランシスコでもNorthのショールームトラックが来ていたので筆者も試してみた) 使い方も複雑なものではない。Northのスマートリングと専用アプリと連動させれば、細かい操作や設定も可能となる。スマートリングはコントローラーになり、アプリを開かなくても、レンズに表示された項目の選択が可能になる。 Google Mapのナビ機能、Uberの配車リクエスト、カレンダーやメッセージなどの通知、音声認識によってメッセージへの返信もできるようになっている。 もちろん、耐水性もあり、UV効果やサングラスに切り替えることもできるので、普段使いが前提にデザインされていると言える。 価格は599ドル〜(2019年12月現在生産がストップしている様子)。まだ身近で使っている人を見かけたことはないが(もしかすると普通のメガネっぽすぎて気づいていないだけかもしれない)、Apple Watchのメガネ版と言われているあたり、徐々に浸透してくることが期待されている。 まとめ:IoTを考え、人の価値観を考え、サービスを作ること IoTは私たちの生活に確実に入り込んできていて、IoTに人々の新しい価値観が詰まっている 『IoT』が2017年、2018年ごろ、多用されていたが、2019年は前ほど聞かなくなった。一方でApple Watchやスマートスピーカーなど、多くの商品が世に出て、使っている人も増えてきたと感じていないだろうか。 以下、Google Trendsを見ていただいてもわかる通り、IoTは2017-2018年あたりをピークに、2019年は減少傾向にある。一方で、Apple WatchはAppleの新製品発表会のたびに増加し、通年通しても徐々に増えてきていることがわかる。 つまり、IoTというより、Apple WatchやGoogle Homeといった、より具体的な製品としてIoTが生活に浸透してきていると考えられる。 IoTを考えることは人の価値観を考えること 多くのIoTガジェットは、エンドユーザーに直接接触するものであり、彼らの生活に密着している。スマートスピーカーなどは、声で指示を受けて家事をこなし、生活を豊かにしてきた。IoTは新たな価値観を作り出してきたものだ。それと同時に、注目されているIoTを知ることは、人の価値観がどう変わってきたかを知れるきっかけでもある。 そして、価値の創造や提供に欠かせないのが「体験」だ。今回紹介したブランドはどれもものに留まらないサービス・体験の提供をしている。 ただハイテクな靴を追い求めた訳ではない、ただ機能が優れたライトを作った訳ではない。そのベースに人を考えた考察があるから、人に深く刺さり、イノベーションの創造へと繋がっているのだ。 人を中心にサービスを考える、というのは頭でわかっていても、今まで培ってきた技術力や社内の組織的な課題、時に無意識的な価値観が邪魔して上手く実行できないことも多い。btraxではそのような目的を持ちつつも、自社だけでは解決しづらいという方々を多くサポートしてきた。 […]

ロゴにおけるデザインの重要性がわかるマッシュアップ例

以前に「君の名は」がテレビ放送された際に、そのストーリーに合わせて、提供企業のロゴが入れ替わるという演出がされていた。ロゴの色やデザインをそのままに、文字の部分だけを入れ替えている。一見すると入れ替わっていることすら気づかないぐらいのナチュラルさである。
これは、人間の目が「読む」ということよりも「見る」ことを優先していることから、デザインを「なんとなく」の雰囲気で受け取り、脳が理解していることがわかる。

↑ 「君の名は」でのスポンサー表示画面
このロゴを入れ替えは、デザイナーたちの間で「マッシュ…

米国最新フィットネススタートアップ3選。キーワードは「自宅」

近年日本でもRIZAPのような期間集中型の肉体改造プログラムが注目を集めたり、ゴールドジムのようなフィットネスクラブが人気を呼んだりしているが、ここアメリカでもブティックジムや空中ヨガなどなど、新しいフィットネストレンドの入れ替わりは日本以上に目紛しい。 さらにサンフランシスコやシリコンバレー、ニューヨークといった大都市では、従来の健康関連サービスにテクノロジーを掛け合わせ、イノベーティブなヘルシーライフスタイルに貢献しようという動きが盛んになっている。 そこで今回は、健康 × テクノロジーの中でも、最近アメリカ市場を賑わせている「自宅エクササイズを可能にするスタートアップサービス」をご紹介したい。 関連記事:【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 注目を集める「自宅エクササイズ × テクノロジー」分野 自宅用のエクササイズマシンが今、注目されている理由としては、エクササイズマシンがIoT商品へと姿を変えてきたということが挙げられる。それに伴い、AIを使った画期的な新機能なども加わり、業界に革新をもたらし始めたのだ。 IoTエクササイズマシンの市場規模は順調に成長しており、下の図からもその期待値の大きさを読み取ることが出来る。 Allied Market Researchの数値を元に図を作成 実に、2016年からの次の7年間で、市場成長率は5.7倍になると予想されている。2023年の市場規模は1.5兆円に到達する見込みだ。 昨年2018年には、ベンチャーキャピタリスト達が1年間で合計約2.4兆円もの額をフィットネス系のスタートアップに投資したことも明らかになり、過去最大のフィットネススタートアップブームが起こっているのだ。 自宅エクササイズスタートアップ3選 1. Peloton:登録者数既に50万人超え。フィットネス業界のネットフリックス 自宅用のエクササイズマシンといえば、フィットネスバイクが思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。Pelotonは、フィットネスバイクやランニングマシン、そして登録型のレッスン動画ストリーミングサービスを展開しているスタートアップである。 2012年にニューヨークで設立された。その後も順調に資金を調達し続け、今年2019年には遂にIPOも果たす予定だ。 Pelotonのフィットネスバイクとランニングマシーンには、大型のHDウォータープルーフタッチスクリーン(バイクは22インチ、ランニングマシーンは32インチ)が付いている。ユーザーは、このスクリーン上で提供されるPelotonのエクササイズプラットフォームから好きな動画を選択し、エクササイズを行う。 関連記事:「フェムテック」現代女性の健康を支える海外注目スタートアップ事例 充実したエクササイズコンテンツと徹底した管理機能が強み Pelotonが提供するストリーミングのコンテンツはとても豊富かつクオリティが高いもので、自社で抱えるトレーナーにより、フィットネスバイクやランニングマシーン用のものだけではなく、ヨガや重量を使った筋力トレーニングまで用意されている。その豊富なコンテンツ量から、「フィットネス界のネットフリックス」と呼ばれているのだ。 生放送のクラスに参加することもできるし、オンデマンドクラスもある。ユーザーはエクササイズの種類からクラスを選べることはもちろん、好きな音楽のジャンルから選択も可能。 インストラクターがその音楽に合わせて、トレーニングを支持してくれる。時にはインストラクターからの熱いメッセージでエクササイズのモチベーションを上げてくれるのだ。 Pelotonのオフィシャルサイトから転載 またこのタッチスクリーンからPelotonのアプリ上でエクササイズの管理をすることなども可能だ。心拍計も搭載されており、シンクすることも出来る。専用のアプリを使うことあらゆるデバイスからの確認も可能。 Pelotonのエクササイズ管理アプリ。オフィシャルサイトから転載 決して低価格ではないが、人気を呼び、さらなる注目が集まる 値段としては、フィットネスバイクが約24万円、ランニングマシーンが約46万円、そしてストリーミングサービスが月額約4000円と、決して安い値段ではない。(ちなみにPelotonのマシンなしで、エクササイズ動画の会員登録のみなら約2,000円で可能である。) しかし、Pelotonは2012年の設立から現在まで、40万台以上のフィットネスバイクを売り上げ、ストリーミングサービスの登録者はなんと50万人以上を達成している。ランニングマシーンの発売は去年の12月に開始したばかりで、販売台数は公開されていないが、好調を見込めると言う声が多い。 というのも、ランニングマシーン販売の数ヶ月前に、FacebookやNetflixなどの有名テック企業に投資を行ってきたTVCファンドから600億円の資金を獲得し、去年の第2四半期で推定企業価値が4.3兆円に膨れ上がったからである。潤沢な資金力とTVCファンドが見込んだ企業戦略で、Pelotonがいずれ市場を席巻するであろうと期待されている。 実は分割払いという購入方法もあり、頭金ゼロの年利率0%で、月額約6000円から自宅で始められる。まだ日本市場には上陸していないが、自宅でのフィットネスバイクの本格的なトレーニングが次のフィットネストレンドとなる日はすぐそこかもしれない。 2. Mirror:自宅フィットネスの常識を覆す、デザインも優れた鏡によるエクササイズ Mirrorはその名の通りミラー(鏡)を使った自宅フィットネを提供するニューヨーク出身のスタートアップである。昨年のクリスマスに、アメリカの著名な歌手であるアリシア・キーズが、息子からMirrorをプレゼントして貰った動画がソーシャルメディアにアップされたことを皮切りに、売り上げと注目度を一気に加速させた。 鏡とディスプレイが1つになっているというメリット 今では人気タレントのエレン・デジェネレスや女優のアリソン・ウィリアムズのようなセレブにまで愛用されるようになったりと、インフルエンサーの獲得にも成功している。 Mirroの光沢のある52インチの鏡は、内部にモニターが格納されており、フィットネスクラスを受講できるプラットフォームが見られるようになっている。 つまり、Mirrorの鏡自体がディスプレイとなり、フィットネスクラス動画を見ながらエクササイズができるということだ。さらにディスプレイは鏡でもあるため、自分のフォームを確認しながら運動できる。 また、カメラも設置されているため、遠隔にいるインストラクターが個人のフォームを確認し、アドバイスしたりすることも可能だ。 副社長のカイリー・コムスがニューヨークのショールームで見せたデモ。New York Timesから転載 上記の写真からも鏡の機能とスクリーンの機能が上手く両立されているのがよく分かる。ジムでもインストラクターの動きをみて、向かいの鏡で自分のフォームをみて、ということがあると思うが、それを自宅でそのままできるといったサービスだ。 なお、専用のアプリから操作が可能なので、鏡に指紋等が付着する心配もない。 もはや自宅におきたくなるデザイン Mirror最大の特徴の1つに、自宅におくエクササイズマシンとして、家のインテリアを全く邪魔しないデザインであるという点もあげられる。もはや鏡であり、見た目、スペースのどちらをとっても今までのエクササイズマシンの常識を覆していると言える。 普通の姿見鏡としてもスタイリッシュで、自宅のどこに置いても景観をそこねるものではない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 壁に掛けられるようにもなっており、スペースを取ることもない。Mirrorのオフィシャルサイトから転載 Mirrorのこのスタイリッシュなデザインは、ホテル業界からも受け入れられているほどだ。超一流のホテルで名高いThe Markは、一泊800万円以上もする最上階のスイートルームにMirrorを設置した。そのデザインや機能性は、ラグジュアリー家具としても注目が集まりつつある。 とはいえ、昨年9月から市場販売を開始したばかりのMirror。価格は日本円にして約16万円と、決して気軽に購入できるわけではないが、着実に市場シェアを拡大させている。 数ヶ月前には350億円を上回る推定企業価値をつけられたこともあり、業界内の知名度も急上昇。今後も目が離せないスタートアップだ。 3. Pivot:人工知能でフォーム矯正。次世代フィットネス Pivotは元々B2B向けにジムマシンを販売していたSmartSpotから派生したスタートアップである。商品の正式な販売はまだ始まっていないが、AIを駆使してトレーニングのフォームまで指導してくれるフィットネスマシンの開発は注目を集め、既に多額の出資金を獲得している。 TechCrunchより転載。実際にSmartspotを使っている様子。腕の角度や膝の角度が表示されている。 3Dセンサーとビッグデータに基づいたパーソナライズトレーニング Pivotの特徴の1つとなっているのが、前身のSmartSpotから得た100万回以上のエクササイズデータだ。SmartSpotは上の写真のように、3Dセンサーを搭載したフィットネスモニターで、重量等を使ったフリートレーニングのフォームの確認と矯正するためのデータを提示してくれるものだった。 この情報をマシンラーニングで分析し、BtoC向けへ精密度を格段に向上させたものがPivotである。この膨大なデータと優れた3Dセンサー技術から、エクササイズ中の姿勢や腕の角度まで、あらゆる部分を徹底的に分析し、リアルタイムで補正してくれる。 そして、心拍数や身長・体重などの情報と共に、Pivotに搭載されたAIが一人一人に最適化されたトレーニングを割り出すのだ。 Pivotのオフィシャルサイトから転載。 さらに、実際のクラスにオンラインで参加することも可能になるので、フォームのずれはインストラクターにも通知が直接送られる。それをもとに、インストラクターからの指導も自宅で受けられるようになるのだ。 そして、筋力トレーニングだけではなく、上記の写真のように激しい有酸素運動のようなレッスンもコンテンツの中に含まれる予定である。 Pivot一台で筋力増強プログラムからエクササイズ、そしてヨガなどのフィットネスまでカバーできるのだ。 AIを搭載させたフィットネスマシンは瞬く間に投資家達の間でも人気を博した。その中でもPivotは、Y-Combinatorを含む投資ファンドから18.5億円もの資金(経営初期の投資期間であるシリーズA投資ラウンド)を、2019年7月に調達したばかりだ。これからのPivotの成長から目が離せない。 関連記事:ナイキ・パタゴニア等に学ぶ、セルフマネジメントを促す組織体制 まとめ 今回紹介した自宅エクササイズマシンのIoT化は、自宅エクササイズの限界やエクササイズマシンのあり方を、テクノロジーの力を用いてディスラプトしつつある、格好の例ではないだろうか。 今までのエクササイズ事情と言えば、アメリカの都市部を中心に、フィットネスジムなど会員制ジムに登録しても、多忙ゆえ定期的にジムやレッスンに通えないことから、続かない、結局退会するということがとどのつまりだった。 しかしながら、エクササイズマシンのIoT化はそれを解消しつつある。インターネットの普及により、衣食住にまつわるあらゆるサービスのアクセスも非常に便利になった今、健康でさえも便利に手に入ることが消費者の需要となっているのだ。 この記事で紹介したように、フィットネスマシンもインターネットに繋がり、どこでも簡単に、自分の空いた時間でサービスを消費することが出来る時代がすぐそこまでやって来ているのである。 さらに、不便さを解消しただけでなく、モチベーションを上げてくれるようなコンテンツ・エクササイズプラットフォームや邪魔をしないデザインなど、利用者のか感情や体験に対しても工夫を凝らしていることがわかる。 時代の流れに合わせたビジネスの展開をすることは容易ではないが、それが出来るものが生き残れる厳しい世界でもある。我々btraxは市場調査、マーケティング、海外進出などを通して日本企業がトレンドの波に乗り、さらなる成長を遂げるための飛び石の役割を務めることをミッションとして掲げている。詳しくは公式サイトの問い合わせページよりお問い合わせいただきたい。   参考: Peloton exercise bikes became a $4 billion fitness start-up Peloton, the connected fitness company, has filed to go public 8 Things You Should Know Before Buying A Peloton Bike Cycling Startup […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

LINEはガラパゴス?世界のSNSデータからみる日本依存のリスク

日本で最もよく使われるSNSとして知られるLINEだが、実はここアメリカでは全くと言って良いほど使われていないということをご存知だろうか。 LINEの日本国内の月間アクティブユーザー(以下MAU: Monthly Active Usersの略)は約8,000万人なのに対し、アメリカ国内のMAUはなんとたったの357万人ほどである。これは人口割合でいうと、わずか1.1%程度に留まっている。 日本のスマートフォンユーザーは現在約7,722万人(2017年の日本総人口 x 2017年個人におけるスマートフォンの保有率より計算)。LINEのMAU8,000万人という数は、国内における全スマートフォンユーザー数よりも多い数字である。これは、ガラパゴスケータイやPCからLINEを使っている人もいるのが理由。とにかく国内では、LINEは驚異の普及率であることがわかるだろう。 一方で、アメリカのスマートフォンユーザーに対する普及率はたったの約1.34%という圧倒的な浸透率の差がある。 関連記事:「【アメリカでは誰もLINEを使わない?】国別にみる若者が使うアプリの違い5選」 ↑ SNSごとの日本国内とグローバルでのユーザー数と人口に対しての利用シェアの差 (参照: 日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由) ちなみに筆者もアメリカ留学時代に、ヨーロッパ、中東、南米、アフリカなど、世界各地の学生たちとLINEを交換しようと試みたことはあるが、大半の学生がLINEの存在自体すら知らなかった。代わりに使っていたのはFacebook MessengerやSnapchatだ。 日本では普及率が高く、世界では広まっていない。これは言い換えてみると、LINEは日本に依存するところが大きいということだ。 そこで今回は、LINEがいかに日本で普及しているのか、そして他の競合SNSと比べ、どの程度一国への依存度が高いのかということを紹介したい。ひいては、日本市場の今後を考えると、LINEの今の状態は、成長の限界とリスクが見えてくる。 ↑ 世界市場におけるSNS別アクティブユーザー数 日本で圧倒的な普及率・利用率を誇るLINE みなさんもご存知だとは思うが、LINEは日本国内で一番使われているSNSだ。 下記のグラフの通り、日本でのMAUを世界の競合SNSと比較しても、その違いは明らかである。MAU2位であるTwitterと大きく差が開いており、LINE一強という印象を受ける。 参照:「TechCrunch」、「Facebook News」、「MarkeZine」 LINE PayやLINE BRAINなど、日本におけるサービス拡大の様子からも、いかに日本を重要なマーケットとしているかが伺える。 事実、LINEにとって日本は売上的にもメインのマーケットだ。企業全体として、売上高は順調に伸びているのだが、その売上の内訳は日本国内からが75%を占めるまでになっている。 「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」から転載 言い換えれば、この状態は日本市場に依存しすぎているということ。そしてその日本市場というのは、今後少子高齢化・人口減少が進み、2050年にはGDP7位にまで下がると言われており、このマーケット1つに依存することはすなわち、成長の限界とリスクを示しているのである。 ちなみに日本国外のLINEユーザーとしては、タイ、台湾、インドネシアに多い。LINEユーザーの4割強は日本からではあるものの、これら3ヶ国だけでも同じくらいの割合でユーザーが根付いている。世界展開ができているようにも思えるが、どの国もFacebookに苦戦しており、日本市場ほど優位に立ててないのが実情だ。インドネシアに至っては、ここ2年の間にMAUが半減している。 ↑ 主要4ヶ国=日本、タイ、台湾、インドネシアがしめるLINEのMAU割合 参照:「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「uniad」のデータを元に図を作成 ↑ 主要3ヶ国の中でも、日本市場のみが、Facebookと圧倒的に差をつけて浸透していることがわかる 参照:「Digital 2019 Thailand (January 2019)」、「statista」、「Digital 2019 Taiwan」、「LINE決算説明会(2019年第1四半期)」、「Digital 2019 Indonesia」のデータを元に図を作成 世界市場でみるとほとんど使われていないLINE では、世界規模でみたときに、どのようなソーシャルメディアが多く使われているのだろうか。世界のSNSユーザー統計データから、グローバル市場を見てみよう。 参照: 「Most famous social network sites worldwide as of April 2019, ranked by number of active users (in millions)」*Facebook Messenger除く ご覧いただいてわかる通り、ここにLINEの名前はなく、世界20位となっている。個人情報の取り扱いで多くの問題を起こしてきたFacebookだが、その人気を落とす事はなく未だに世界最大のSNSとして市場に君臨している。Facebookは23億2000万人という圧倒的なMAU数を誇っており、群を抜いた使用率でもあるのだ。 次にアメリカ国内でのSNS利用率をみる。 こちらにもトップ5位以内にLINEの名前はなく、11位となっている。 ちなみに日本ではFacebookの若者離れが囁かれているが、アメリカでは18歳から24歳のユーザーが全体の17%、25歳から34歳のユーザーが25%、そして35歳から44歳のユーザーが18%となっており、彼らが全体の56%を占めている。世界的に見ても、18歳から34歳の男女がMAUの約6割を占めており、Facebookのオーディエンスは若年層という傾向だ。 FacebookやInstagram、Twitterなど多くのSNSはアメリカの企業であるため、自国でのプレゼンスが高くなることはあるのかもしれない。それでも世界的に浸透しており、自国から遠く離れた、文化も全く異なる日本でも頭角を現しはじめているといったことは、LINEがまだできていない、「世界進出の成功例」ではないだろうか。。 さらに世界・アメリカ・日本の人口におけるSNS普及率をSNS別でみてみると、LINEがいかに日本依存しているかがより明確にお分かりいただけると思う。 補足:実際には、全世界の約66%しかスマートフォンを持っておらず、コンピューター普及率は約45%ほどだと言われているので、母数を全世界でにしたときに各SNSの普及率は基本的に低くなる。 やはり、LINEは日本国内で圧倒的な普及率を誇っている。ここまで市場ごとに差が開いているSNSは他にない。 一方で、LINE以外のSNSは1国のみに頼ることなく、日本や世界でも健闘をしている。特にTwitterは日本での浸透率も高い。実はカリフォルニア発祥のTwitterは、出身国であるアメリカ以上に、日本で絶大な人気を獲得している。また、Twitterはアメリカからの売上は約54%にとどまっており、残りは海外から獲得している。 Facebookも母国であるアメリカでの利用率が1番多いものの、LINEほどの差はない。彼らの収益率もアメリカ・カナダエリアからの収益は全体の半分以下となっている。どちらもLINEのように、売上の75%が1ヶ国からというようなことにはなっていない。 (Twitterの売上元割合 – 参照:2019 Q1 Selected Company Metrics) (Facebookの売上元割合 – 参照:Facebook Q4 2018 Report) 一国集中のLINEと世界に向かう競合SNS。成長率の差は明らかに 日本で圧倒的な利用率を誇るLINEと、自国を抜け出し、世界でも普及されてきている他の競合SNS。それぞれのマーケットの大きさから、当たり前の結果ではあるかもしれないが、それぞれ、MAUの伸び率には差が出てきている。上のグラフは、各SNSのリリースから毎年の月間アクティブユーザー数で表したものである。 LINEは他SNSより比較的若い方ではあるが、7年目の他のSNSをみてもその差は歴然。WhatsAppに関しては爆発的な成長が伺える。また、FacebookとInstagramの継続的な成長も見て取れる。 日本人気はレバレッジにならず、出遅れたLINEのアメリカ進出 とはいえ、LINEは世界市場に対して何もしていなかった訳ではない。2016年にはアメリカ市場にも進出をした。その際、アメリカ市場のニーズを正確に把握していなかったことや、広報体制もままなっていなかったことなどはIPOを行う前から批評の対象となっていた。 日本の「かわいい」を全面に押し出したメッセージアプリが現地の文化を超えてアメリカの消費者たちに浸透するのは難しいだろうといった予想が多かったのも事実である。 それに加え、LINEが最初に上場計画を出した2014年と、実際に上場を果たした2016年とでは市場の状況が一変してしまったというのも大きな要因の一つだったであろう。その2年の間にSNSは発展の一途を辿り、全世界のSNS市場が一斉に開拓されていったのだ。 例えば アメリカ国内で約6500万人しかいなかったFacebookユーザーが1億人を突破 全世界のFacebook messengerのMAUが2000万人から1億人へと激増 4300万人しかいなかったWhatsAppのMAUが1億人へと倍増 などの変化が顕著で、その後のLINEの成長に大きな足枷となったということは想像に易い。IPOこそ成功を収めたものの、サービスを現地に対応しきれず、既に市場を独占していた競合から上手く差別化できなかったといったところではないだろうか。 まとめ 日本では圧倒的存在感を見せるLINE。だが、経済が縮小傾向にある日本市場に依存するということは、その成長にも少なからず悪影響を受けることは当然だろう。 そしてLINEのように「日本だけで調子がよく、日本におけるサービス展開に注力し、さらに日本への依存度が増す」といった状況が当てはまる企業・サービスも多いのではないだろうか。 それに対して、世界市場では苦戦を強いられている。世界戦で勝ち抜くのは容易なことではないが、上記の点からすると、むしろこちらの方が企業成長・存続における重要課題のように思える。 そうなってくると、なぜ最初から世界をマーケットにしたサービス開発・改善をしないのか。たとえ日本を狙って日本で勝てても、成長の限界が見えている。LINEがたった2年の間もたついていたら、世界はあっという間に変わっていて、より厳しい状況となった。 関連記事:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% […]

プロダクトのサービス化を実現するための3つの方法

最近ニュースで、”なんとか・アズ・ア・サービス”という言葉を聞くことが多くなってきている。これは、もともと”サービス”ではない商品の提供の仕方を変えることで、サービス化した方でユーザーに提供するビジネスモデルの事を指す。
その根底には、稼働率の低い商品を購入するよりも、必要な時にだけ使うことで、コスパの高いライフスタイルを望むユーザーと、デジタル化が進んだことにより、新しい方法でのプロダクトの提供が可能になった時代背景がある。
それぞを別々に獲得するの…

シリコンバレーの次はシリコンアレー!NYの特徴と注目の理由

アメリカのスタートアップメッカはシリコンバレーだけではない。アメリカ東海岸はニューヨークを中心に広がる、シリコンアレーエリアにも注目してほしい。そこにはシリコンバレーとは異なる特徴と独自の成長がある。
シリコンアレーとは
シリコンアレー(以下SA)は、ニューヨークのスタートアップが盛況なエリアを表すニックネームである。西海岸の北カリフォルニアを中心に広がるシリコンバレー(半導体の素材、シリコンと谷・盆地のバレー)に対して、東海岸ではシリコン「アレー(路地・小道)」でスタートアップやテクノロジーの広が…

デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは?

デジタルテクノロジーの進化に合わせて、こちらシリコンバレーの企業の勢いがより加速しているように感じる。大型M&AやIPOのニュースが毎日のように流れ、時価総額や評価額の最高記録更新も続いている。
その大きなファクターの1つとなっているのが、ユーザー数とそこから獲得しているユーザーデータ、そして優れたユーザー体験だろう。(参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは)
ユーザーの時間をお金に変換してる現代の企業
GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) に…

LGBTプライド月間に知っておきたいインクルーシブマーケティング

時代の変化とともにマーケティングに求められる効果とその内容に大きな変化が生まれてきている。 例えば、あなたが家庭用食器洗剤ブランドの広告ビジュアルを考えていたとして、どのようなシーンをイメージして作るだろうか。 もし台所にいる女性を想定していたら、あなたのマーケティング手法は時代にあっていない可能性がある。なぜなら、現代において台所に立つのは必ずしも女性とは限らないからである。 (あなたのマーケティングは時代遅れかもしれない。画像転載元) ダイバーシティー実現にはマイノリティへの配慮を ダイバーシティという言葉が様々なところで使われるようになった一方で、マイノリティへの配慮が足りていない制度やコンテンツ、発言をいまだによく見かけるのではないだろうか。 著名人による差別的発言、企業と従業員の間で起こる性的蔑視、人種について嘲笑する動画など、これらの問題や報道を他人事のように感じている人さえ、無意識的に排他的な発言や行動をしているかも知れないのである。 企業にとっても必須事項 現状がどうであれ、ダイバーシティを受け入れることは、企業にとって「オプション」ではなく「マスト」であるということだけは言える。企業としてマイノリティーを考慮できていないと、信頼や評判は落ち、消費者や従業員、ステークホルダーはみるみる離れ、企業存続を揺るがせかねない。 ここアメリカでは、日本よりもダイバーシティが一般的であり複雑だ。ゆえに先進的な取り組みが多いのも事実。そしてこのような多様性を受け入れる姿勢・理解を自社のマーケティング活動に反映させようというインクルーシブマーケティングがすでに広がりつつある。 上の写真はサンフランシスコのプライドパレードの様子。毎年6月はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイ、トランスジェンダーの頭文字からなる造語。最近ではクエスチョニングやクィアのQが最後につくことも)を啓発するプライド月間となっている。ここサンフランシスコは主要都市の1つとして、6月はLGBTQを表すレインボーの旗がメインストリートに掲げられる。(写真転載元) 流行と捉えるべきではない、インクルーシブマーケティングとは インクルーシブマーケティングとはダイバーシティ(多様性)を受け入れ、それを考慮し、マーケティング活動へ反映させることだ。ダイバーシティーがインクルードされている(含まれている、受容されている)マーケティングである。 これにより、マイノリティとされる人たちが、自分たちも企業のサービス対象に含まれているという自覚を持てるようになるのだ。 そもそもインクルーシブマーケティングを理解するにはダイバーシティを理解する必要がある。 「【2019年】絶対おさえておくべき、4つのマーケティングトレンド」でも説明している通り、ダイバーシティとは人種、性別、年齢に限ったことではない。宗教や障害、性自認、食習慣(ビーガン、ベジタリアンなど)、体型など、個人を成形するあらゆる点が含まれる。 (Airbnbが2017年のアメフト決勝戦で流した広告キャンペーン。画像転載元) これは当たり前のことのように聞こえるかも知れないが、人口の98%を日本国籍保持者が占める日本では、なかなか身近には感じにくいことだと思う。日本が相当ダイバーシティの低い国であるということを自覚しておく必要がある。さもなくば、無意識に排他的なマーケティングをしかねない。 次に、今までの固定概念を疑っていく必要がある。先に質問した、家庭用食器洗剤を使うのが女性だ、というような固定概念だ。現在では働き方や性に関して多様化しているため、「家庭用食器洗剤ユーザー=女性」と強く押し出してしまうのは排他的ともなる。 顧客管理アプリケーションを開発・販売するセールスフォースは職場におけるダイバーシティやインクルージョンの価値についてオンライン学習ツールを提供している(日本語での受講も可能で、単元ごとに受けやすくなっているのぜひ社内で受けてみてほしい)。 ここでは受講者のダイバーシティに関する固定観念に問いかけるようなコンテンツもある。 (これらを改めて想像すると、ステレオタイプに気づくことができる。転載・加工した画像はこちらのサイトから) インクルーシブマーケティングを取り入れているアメリカ企業 アメリカでは、既存企業が自分たちの社風やマーケティング活動にダイバーシティを反映していこうとする動きも盛んだが、最近ではダイバーシティをメインのミッションにあげるブランドも出てきており、インクルーシブマーケティングやインクルーシブな商品開発のお手本となっている。 以下は該当するブランドの一例だ。 1. 世界の歌姫リアーナが始めたコスメブランド:Fenty Beauty Fenty Beautyは世界的R&Bシンガーのリアーナが2017年に創業したコスメブランド。インクルーシブな商品展開が売りで、ファンデーションのカラーバリエーションは50以上にもなる。 既存のコスメブランドのファンデーションなどのカラーラインアップ対応範囲が、実際のユーザーである有色人種を含む全ての女性層とギャップがあることを感じ、Fenty Beautyの立ち上げに至ったという。Fentyはリアーナの苗字からきている。 リアーナはコスメブランドのMACとも過去にコラボしており、業界への関心を示してきたが、今回は初のソロでのブランドだ。ルイヴィトンやディオールを運営するLVMHの傘下であるKendo Holdingsという美容ブランドインキュベーターと共同で商品開発などを行っている。 なんとブランドローンチの1ヶ月目から7,200万ドル(約72億円)の売上があったという。 もちろん、彼女の歌手としての知名度があったことも影響しているが、インクルーシビティへの徹底ぶりも人気の理由だ。以下のウェブサイト商品ページを見ていただければわかる通り、カラーバリエーションの数が非常に幅広い。色を表す言葉もLightからDeep(Lightの反対Darkではなく)にしている点も考えられている。 メイクで顔に凹凸を作るためのハイライトと呼ばれる化粧品もカラーバリエーション豊富だ。 もちろん、ソーシャルメディアやビデオコンテンツもインクルーシブマーケティングを意識したものとなっている。 リアーナはコスメブランド以外にもSavage X Fentyというランジェリーブランドも展開しており、こちらも様々な体型にあった商品が揃う。さらに2019年にはファッションブランドも開始すると発表されており、インクルーシブマーケティングにおいて彼女の動向は今後も注目だ。 2. ユーザーの声に耳を傾けるコスメブランド:Glossier こちらもミレニアルを中心に人気が高い、コスメD2C(Direct to Consumer)ブランドだ。ユーザーのフィードバックを積極的に商品に反映してきたことも人気の理由だ。ファンデーションのカラーバリエーションも豊富で、ウェブサイトに載せている試し塗りサンプルの様子も様々な肌の色で表現されている。 またGlossierのインスタグラムには度々男性のユーザーの写真が投稿される。必ずしも化粧をしている訳ではなく、日焼け止めやスキンケアなどGlossierの商品を使っているユーザーの写真だ。 ブランドカラーがピンクなだけに女性感が強いGlossierだが、そんな彼らが積極的に男性ユーザーのコンテンツを発信しているのは非常に興味深い。ユーザーの声を聞いている彼らだからこそ、素早くこのような発信ができたのではないだろうか。化粧品は女性だけが使うもの、という考え方は過去のものになりつつある。 3. ファッションのさらなる可能性を見せたアパレルD2C:Tread by Everlane Tread by Everlaneはサステイナビリティとトランスペアレンシーを追求するアパレルD2CのEverlaneがローンチしたスニーカーブランドだ。2019年春に発売が開始されると、瞬く間に話題になり、Everlaneの実店舗には長蛇の列ができた。 究極のエコスニーカーを目指しており、ソールの部分に使われている素材は94%リサイクルプラスチックを採用している。もちろん価格についてもその内訳を公開し、透明性を高めている。 そんなTread by Everlaneの広告に、先進的とも言えるインクルーシブマーケティングを見かけた。それが以下の広告だ。 ただでさえ義足のモデルというのは珍しいのに、義足がブランドのスタイルとマッチしていて驚いた。マイノリティを無理やり起用するのではなく、むしろクールにファッションやビジュアルに落とし込んでいて非常に参考になる。 筆者がこれを見かけたのはソーシャルメディア広告であった。自社の顔ともなる広告にインクルーシブマーケティングを取り入れているあたり、Everlaneがどれほどインクルーシビティを重視しているかがわかる。 4. 子供にこそインクルーシビティを伝えたい:バービー(マテル) 玩具メーカーのマテルは、2019年車椅子や義足のバービー人形の発売を発表した。以前から肌の色や体型などは多様性を受け入れた商品展開をしていたが、今回は身体障害者も含まれている。 マテルはバービー人形が創業から提供してきた美やファッションの多角的な視点を見せていきたいとしている。人形用の車椅子デザインはUCLA Mattel子供病院と協同してデザインされたものというこだわりぶり。 さらにマテルは2015年、女性であろうがどの職種にでもなれるというメッセージを謳った「Imagine The Possibilities(可能性を創造しよう)」というタイトルのバービー動画広告を公開し、話題になった。 大学教授、獣医、アメリカンフットボールのコーチなど、小さな女の子たちがその職業に扮して大人たちに支持・指導している(大人たちのリアクションは全てノンフィクション)。 バービー人形を使って遊んだどんな業界、職業も、性別関係なく誰もがなることができる、そんなメッセージがある。 玩具は小さい頃から触れるものだから、ダイバーシティへの理解や感覚を教えるのに非常に重要な接点だ。マテルは先陣を切って、インクルーシブマーケティングを行っている企業の一つだ。 5. デートの形一つとっても様々:Dating Around(邦題:5ファースト・デート) 動画ストリーミングサービスのNetfixオリジナルコンテンツである。これはマーケティング活動ではない(もしかしたらマーケティング活動かもしれない)が、非常に多様性が盛り込まれている内容だ。 これは「6人の独身男女がそれぞれ5度のブラインド・デートに挑戦し、ときめきや気まずさを体験しながら、初めて会った5人のうち、2回目のデートの相手を1人だけ選ぶ」というリアリティー番組だ。 初回2エピソードは1人の男性が5人の女性とデートをするというものと、1人の女性が5人の男性とデートするというものだった。しかしながら3エピソード目からは同性同士のデートや結婚経験もあるシニアのデートなど、非常に多様な角度でそれぞれのストーリーが展開された。 正直筆者も番組タイトルからは想像していなかった展開もあり、自分にも無意識の偏見があったのかもしれないという思いはあった。また、全てのセッティングに自分が置き換えられる訳ではないが、色々な形のデートがあるということは非常に興味深いし、コンテンツとして非常に見応えのあるものだった。 Netflixは社会問題に対する動画コンテンツも多く制作、配信しており、ダイバーシティを意識した番組はこれが初めてではない。インクルーシブマーケティングは商品そのものがインクルーシブでないことには始まらない。 その点、Netflixの商品(コンテンツ)はインクルーシブであり、社会への問題提起をしており、なおかつエンターテイメントとして楽しめるものを生み出していくことに非常に長けていると言える。 6. btrax事例(大手靴下ブランド) btraxの過去クライアントでもインクルーシブマーケティングはアメリカ市場で成功するための重要項目だという位置付けだ。 例えばアメリカ市場向け、バレンタインキャンペーンでは必ずしも「男性から女性にプレゼントをあげる」訳ではないという点を考慮してターゲット、メッセージ、ビジュアルを作っていった。アメリカのバレンタインは男性から女性にプレゼントを送るという習慣はあるものの、カップルのあり方が、女性同士の場合もあるし、男性同士の場合もあるからだ。 ゆえに女性だけが好むと思われる、女性しか使えないもの、ガーリーすぎるもの、をプレゼントの提案として取り扱うのも注意である。 また、ウェブサイトやソーシャルメディアなどで使うモデルは、一般的に日本企業が海外のモデルと聞いて想像する「細身、白人、金髪」に偏らないように様々な人種を採用した。 まとめ このような新しい概念はマーケティング活動に反映させることがゴールではない。それよりも、今までのステレオタイプが染み付いた思考を変えることに意味がある。その思考がインクルーシブマーケティングとなって世に広がっていくというのが理想だ。 現在皆さんのビジネスが海外向けに展開している・いないに関わらず、日本でも働き方といった面で多様になっていたり、海外からの人が増えていたりと、インクルーシブマーケティングの重要性は間違いなく高まっている(もっとも今後のビジネス拡大をしていく場合、海外は無視できない)。 会社としての歴史が長く、日本的・保守的・伝統的だという点に当てはまる企業は特に自分たちだけで変わろうというのは難しくなるが、変われない訳ではない。ぜひ先進的なインクルーシブマーケティングを行っているアメリカ市場に注目していただきたい。 そしてbtraxオフィスのあるサンフランシスコではダイバーシティやインクルーシブなブランドが特に進み、受け入れられている。btraxではこのようなトレンドのリサーチと発信だけでなく、トレンドを踏まえたサービス開発からマーケティング支援まで包括的なグローバルビジネス支援を行っている。ご興味がある方はこちらよりぜひお気軽にお問い合わせください。 参考: FENTY BEAUTY BY RIHANNA (HARBEY NICHOLS)

ブランド拡大に役立つシェアリング小売スペースという新しい選択肢

昨今、AmazonやShopify、ソーシャルメディアなどオンラインで商品を売るビジネスのためのツールが充実し、D2C(Direct to Consumer)をはじめ多くのデジタルネイティブブランドが勢いを増している。
そしてこれらのデジタルブランドはオンラインでのビジネスがある程度軌道に乗り始めると、オフライン・実店舗にも進出をする。実際、AWAY、Everlane、Warby Parkerなど多くのD2Cブランドが店舗拡大をしている。
こういったスタートアップD2Cは何百万ドルもの資金調達に成功…

「ここはシリコンバレー」とあるGoogle社員が感じた影

ここはシリコンバレー、その響きからどのようなイメージを持たれるだろうか?
日本企業も多く進出するこの地域は、世界中からトップレベルのエリート人材が集まり、GAFAに代表されるような、世界的な企業がひしめきあう、テクノロジーとイノベーションの中心地。
一年の約300日が青空のカリフォルニアの好気候の元、ゴルフ、サーフィン、ビーチバレーを楽しみ、人生を謳歌する人々。
解放的な雰囲気の中で、仕事も遊びもとても充実している。
何もかもが恵まれている、まるで楽園のような場所のイメージがあるかもしれない。しかし…

ミレニアル世代を引きつける“SNSを駆使した分散型コンテンツ“とは

皆さんは普段SNSを使う中でタイムライン上に流れてくるチュートリアル動画や時事ニュース、最新グッツの紹介、可愛い動物の動画などにふと気を留めたことはないだろうか?   昨今、このようにSNSに向けたコンテンツを配信するメディアが急増し、「分散型メディア」と呼ばれている。分散型メディアとは、ウェブサイトが主体であった従来のオンラインメディアとは異なり、他のプラットフォーム(主に複数のSNS)を用いて情報を発信するメディアのことを指す。 日本では、bouncy, C CHANNEL, Tasty japanなどが有名な分散型メディアとして挙げられる。 このような分散型メディアの人気の背景には、ユーザーの行動やニーズの変化が挙げられる。以下はSNSでニュースをチェックするユーザーの傾向を示したデータだ。 アメリカの成人の68%がSNSでニュースをチェックすると回答。またそのうちの20%は「頻繁に」そうしていると答えた(Pew Reserch Center) 74%のTwitter利用者、32%のYouTube利用者、29%のSnapchat利用者がそれぞれの媒体からニュースをチェックしている(Pew Reserch Center) 47%のユーザーが1週間の間に、ニュース目当てでFacebookを開いたと回答(Digital News Report 2017) また、74%が1日に最低一回はFacebookをチェックすると回答(Pew Reserch Center) 1週間の間に使用したSNSの割合(At all)とニュースをチェックするために使用したSNSの割合(For news): Disital News Report 2017 SNSを用いたニュースの入手が近年急増中: Digital News Report 2017 これらのデータを見てもわかる通り、ニュースを見るプラットフォームが徐々にマスメディアからSNSにシフトしているようだ。それではなぜこのような分散型メディアが多くのユーザーに受け入れられているのだろうか。今回は、分散型メディアが注目を浴びる2つの理由と活用事例をご紹介したい。 分散型メディアが好まれる2つの理由と企業事例 1. 分散型メディアは“動画の時代”に最適なタッチポイントとなる btraxに参画した澤円が語る「日本企業が今すぐ改めるべき習慣」でご紹介した通り、世界に存在するデータのうち、直近2年で生まれたデータの割合は90%だという。 世界中で情報が溢れてしまっているため、ユーザーはより良い情報を素早くゲットしたいと感じるようになった。そのため、読ませるテキストベースのコンテンツよりも瞬時に内容がわかる動画コンテンツの方が好まれる傾向にある。 世界中で情報が溢れてしまっているため、ユーザーはより良い情報を素早くゲットしたいと感じるようになった。そのため、読ませるテキストベースのコンテンツよりも瞬時に内容がわかる動画コンテンツの方が好まれる傾向にある。 実際に、1分の動画は180万語に匹敵するといったデータや、テキストと画像だけの投稿よりも動画コンテンツの方が12倍シェアされやすいというデータも公表されている。 また、5Gの導入により、これからは外出先で通信制限を気にすることなく気軽に動画コンテンツを見ることができるようになるといわれている。【2019年】絶対おさえておくべき、4つのマーケティングトレンドで紹介した通り、動画を活用したコンテンツの勢いはより一層増していくだろう。 なお、分散型メディアは通常のオンラインメディアとは異なり、ユーザーにエンゲージしやすい動画を活用することで、情報に敏感なミレニアル層に広くリーチできる。これからは動画の時代とも言われているので、いかにユニークかつ共感性を生むような動画コンテンツを配信できるかがポイントとなるだろう。分散型メディアの事例として、NOW THISをご紹介したい。 【事例1】NOW THIS:動画コンテンツを駆使した次世代メディア (画像はNOW THISのFacebookから引用) 分散型メディアで有名なのはNOW THIS というアメリカのメディアだ。NOW THISは、Instagram, Facebook, Twitter, YouTube, Snapchatの5つのプラットフォームを使って、政治や時事など話題のトピックをおよそ1分の動画をシェアすることで情報を発信するメディアだ。 NOW THISは以前、自社のウェブサイトにて大胆なキャッチフレーズを公表していた。“Homepage. Even the word sounds old. Today the news lives where you live.”(ホームページ。もうその言葉すらダサい。今は人がいる場所にニュースがある時代だ。) ホームページにホームページの自虐を載せるという大胆な手法がうけて話題となったが、このメッセージがまさに分散型メディアの姿を表しているといっても過言ではない。 NOW THISは数々のトピックを扱っているが、トピックによってアカウントを複数保持し使い分けているのも特徴だ。例えば、NOW THISのInstagramアカウントは時事ネタを広く扱ったメインのアカウント@nowthisnewsから、最新テクノロジーを紹介する@nowthisfuture、エンターテイメントトピックを扱う@nowthispop、女性の社会進出やフェミニストなどのトピックを扱う@nowthisherなど、FacebookやTwitterも合わせて10個以上もの異なるトピックを扱うアカウントを運営している。 そしてNOW THISの最大の特徴は、ほとんどすべてのコンテンツが動画であることだ。NOW THISのキャッチフレーズが”Stories that move” という言葉の通り、「感動させる(move)ストーリー / 動く(move)ストーリー」の2通りの意味を含んでいる。 動画コンテンツを制作するメリットは、ユーザーの興味・関心によって動画のテーマを分けることで、ユーザーに刺さる情報を提供できることだ。動画は政治系、面白動画系、テクノロジー系など、チームに分かれて制作が行われている。そのため、視聴者はわかりやすく、より正確な情報を含んだコンテンツを享受することができるのだ。 2. それぞれのSNSの特徴を捉え、ユーザーの関心テーマに沿った情報を提供 従来のオンラインメディアは、能動的に情報を得るためのものだった。情報はすべてウェブサイト上にあるため、ウェブサイトを訪問しない限りそのメディアがどんな情報を発信しているのかがわからない。 加えてSNSの台頭によりプラットフォームの種類が急増し、いたるところに情報が溢れかえるようになった。これによりウェブサイトを訪れるまでのカスタマージャーニーが複雑になったことから、ユーザーが普段使うSNSも上手く活用して「情報が自然に入る」状態を作り出すことが必要となったのだ。 それぞれのSNSの特徴を捉えたコンテンツとは SNSは、それぞれに特徴がある。例えばInstagramだったら、ビジュアル重視なので、画質はもちろんのこと画像や動画に込められたストーリーに気を配る必要がある。Twitterは”つぶやく”ことが本来の目的なので、限られた文字数の中でどれだけシンプルにメッセージを発信できるかが重要だ。FacebookはTwitterやInstagramとは逆で、文字や画像に制限がないことから、自分でコンテンツをカスタマイズして好きな情報を発信できる。 これらの特徴を生かしきれていないと、ユーザーの目を引くことができず、インプレッション数が落ちてしまう原因となりかねないのだ。 例えばInstagramに投稿する際、シンプルな写真とともに長文のキャプションを載せても、文章の内容の良し悪しにかかわらず目に留めてもらえないのは言うまでもない。情報を享受する側に立ったとき、自分が伝えたい情報が見やすく、受け取る相手のストレスがないということはいたって重要だ。 多岐にわたるSNSアプリの中で、ユーザーは分散している。どのアプリをどれくらい見るかも年齢や性別、生活リズムにより異なるのだ。そのため、同じ情報をそれぞれのSNSに合わせて分散して提供する方が、多くのユーザーに情報が届くのである。ユーザーからしたら、SNSでフォローするだけで「探さないでも勝手に現れるコンテンツ」となるわけである。 【事例2】BuzzFeed:可愛い動物の画像から時事ネタまで、幅広いコンテンツをSNSで発信 (画像はBuzzFeed JapanのFacebookから引用) BuzzFeedも、初期から人気の分散型メディアの一つだ。「猫のGIF画像から政治トピックまで」と言われるほど幅広いコンテンツを、様々なSNS上で発信している。 中でもBuzzFeedの特徴は、SNSの違いを生かしたコンテンツ作りだ。BuzzFeedが扱うトピックは様々だが、それぞれのSNSの特徴を生かしてコンテンツの発信の仕方を変えている。 例えば、Facebookでは、BuzzFeedのホームページに載っている記事へのリンクとともに、短い意見や感想、面白いフレーズなど投稿者のコメントを添えて投稿している。Facebookでリンクを開くと、Facebook上でそのページが起動されるため、一読し終えた後に読者がコメント欄に感想を書くことが多い。これによりインプレッション数が増えるのだ。 また、YouTubeでは幅広い話題を扱う動画コンテンツを発信しており、シリーズ化している。Instagramではおもわず笑ってしまうような話題の面白いツイートを画像で紹介し、コメント欄には笑った顔の絵文字やコメントが多く寄せられている。 このように、発信するコンテンツを統一せず、SNSによって形式を変えて、それぞれのSNSユーザーが楽しめる情報を発信する点がBuzzFeedの特徴だ。 まとめ 分散型メディアは、SNSでニュースをチェックするといったユーザーの行動やニーズの変化を背景に成長していった。情報があふれ返る近年、動画やSNSの特徴を生かしたコンテンツ提供がユーザーの心をつかんでいる。 今回は分散型メディアの例をご紹介したが、これらのメディアの戦略を一言でまとめると、「ユーザーのいるところにユーザーが本当に求めるものを提供する」ということだ。これは、PRの戦略を練る上でも重要なUXの視点である。 btraxではUXを考慮したマーケティング、新規事業開発メソッドを提供している。ご興味をお持ちの方は、是非お問い合わせを。