UX

【30億円を生み出したセルフオーダーレジ】マクドナルドの成功の裏側をUXデザインの観点から紐解く

マクドナルドは、セルフオーダーレジの導入により約30億円の追加利益を生み出した。 この増益は、主に顧客がセルフオーダーレジを使うことで平均客単価が上昇したためである。マクドナルドのCEOは、セルフオーダーシステムによって顧客が従来よりも多くの商品を注文する傾向があると述べている。(参照元) この記事では、セルフオーダーレジがどのようにして成功を生み出したのか、UXという観点からユーザー体験の向上と企業の利益の両面から探っていく。 セルフオーダーレジとは? セルフオーダーレジとは、レストランやファストフード店で、顧客が自分で注文を行うためのタッチパネル式の端末である。これにより、顧客は従業員を介さずにメニューを確認し、選択、注文、決済をスムーズに行うことができる。また、通常のレジに比べて、列に並ぶ時間が短縮され、待ち時間を減らす利点がある。 実際にマクドナルドでは、2008年にヨーロッパで初めてセルフオーダーレジを導入した。それ以降、バーガーキングやKFCなどの競合他社も追随して導入し、今では多くのファストフードチェーンで一般的な存在となっている。 それでは、セルフオーダーレジによるユーザーの体験価値の向上について見ていこう。 ユーザーの利益(UX)の向上 マクドナルドがセルフオーダー体験を向上させるために取り組んだことは主に4つある。 ①シンプルさ なるべくシンプルなUIにすることでユーザーが迅速に注文できるように設計されている。 ファストフードを利用する多くのユーザーは、食べたい商品がすぐに見つかり、オーダーできることを求めているため、非常に重要な要素となっている。マクドナルドのセルフオーダーレジでは、ハンバーガーやサイドメニューなどがセクションごとにわかりやすく分かれており、それぞれのアイテムは画像中心のUIとなっているため、直感的にオーダーできるUIとなっている。 ②カスタマイズ性 ユーザーの好みやアレルギーに合わせて注文をカスタマイズできるようになっている。 具体的には、ハンバーガーのトッピングやソースなどの追加や削除など、ユーザーが簡単に調整ができるようになっているため、より多くのユーザーが食事を楽しめるような工夫がされている。また、注文ミスを減らすために、最後に確認が表示されるような導線となっており、ユーザーも安心してオーダーできる設計となっている。 ③楽しい操作感 タッチスクリーンを利用することで直感的に指で操作できるUIになっている。画面のデザインもカラフルでポップな動きをするUIになっているため、ユーザーが楽しみながらオーダー体験できるように設計されている。 ④多言語対応 マクドナルドのセルフオーダーレジでは、複数言語から言語を選べるようになっている。日本では、日本語と英語などから選ぶことができるようになっている。日本語でオーダーができないユーザーでも英語表記に切り替えてオーダーすることが可能になっている。 企業利益の向上 マクドナルドが自社の利益を向上させるために使ったテクニックは主に6つある。 ①ナッジング ナッジングとは、ユーザーに選択の自由を与えつつ、人間の認知バイアスや思考の癖を理解した上でさりげない誘導を行うこと。 セルフオーダーレジの支払い画面では、クレジットカード支払いを推奨するようなUIになっている。クレジットカードでの支払いの方がキャッシュよりも支払い額が増えると言われているため、このようなUIを採用していると考えられる。 また、なるべく多くのセルフオーダーレジを配置することで、待ち時間を減らし、離脱防止に繋げている。7人以上並んでいる時は最大で70%の人が列に並ぶのをやめてしまうという研究結果もあるため、なるべくレジ待ちの列を短くすることが列からの離脱を減らし、オーダーの最大化に繋げている。 ②アップセリング アップセリングとは、ユーザーが当初検討していた単価の低い商品から単価の高い商品の購入を促すこと。 セルフオーダーレジ内のハンバーガーセクションでは単価の高いハンバーガーから順に表示されており、高いハンバーガーが目線の位置にある状態である。元々安価なチーズバーガーを頼もうと思っていたとしても、少し高くて美味しそうなビッグマックを選んでしまう仕掛けになっている。アップセリングのために、ナッジングも利用されていると考えられる。 ③バンドル販売 バンドル販売は、単価で購入するよりもお得な価格でセット商品を提供すること。 セルフオーダーレジでハンバーガーを選んだ後に、ポテトフライや飲み物が含まれたお得なセット商品が表示されるようになっている。ハンバーガーの利益率はそこまで高くないため、ポテトや飲み物などの利益率の高いサイドメニューを一緒に頼んでもらうことが利益率拡大につながる。 ④クロスセリング ユーザーが購入検討している商品に追加の商品を提案することをクロスセリングという。 セルフオーダーレジでは、ハンバーガーを選択した後にセット商品だけでなく、セット商品以外のナゲットやマックフルーリーなどがレコメンドされるような画面設計になっている。また、直感的で楽しいオーダー体験ができるUIが、通常よりも多くの商品を注文しやすい環境を作り出している。 ⑤ダークパターン ダークパターンは企業の利益を優先した結果になるよう、ユーザーが意図しない行動を取らせることを指す。 言い換えると、ユーザーの利益よりも企業の利益を優先させるずるいデザインである。セルフオーダーレジの画面では、トータルの金額がスクリーンの下に小さく表示されており、立っている状態だと視野に入らないデザインとなっている。そのため、ユーザーは合計金額が増えていても気づきにくい。 ⑥A/Bテスト 異なるバージョンを比較して、どちらが効率的かを統計的に検証することをA/Bテストという。 セルフオーダーレジのスクリーン上で、ランダムにコンポーネントの色やサイズ、表示テキスト、商品の並び順やレコメンド商品の表示を変えたりしている。A/Bテストを通して、マクドナルドは利益を最大化できるUI/UXを追求している。 結論:UXデザイナーはユーザーの利益と企業の利益のバランスを考えた設計が重要 マクドナルドのセルフオーダーレジの成功は、ユーザビリティの向上と収益増加の両立を示す好例だ。もちろんナッジングやダークパターンに関しては、ユーザーの信頼を失う可能性や倫理的な問題につながる可能性があるため、ベストな活用事例かどうかは判断が難しい。 しかし、この事例からユーザーと企業の利益の両方を意識することが重要だということがわかるだろう。UXデザイナーの役割は、この両者のバランスを取りながら、長期的な価値を創造することである。 以上のことから、UXデザイナーがユーザーと企業の利益の両方を考慮する上で重要なポイントは以下の3点である。 ①ビジネス目標の理解 企業の戦略や収益モデルを深く理解し、UXがそれらにどう貢献できるかを常に考えることが求められる。ユーザーの問題解決と企業の収益向上を同時に実現できることがベストケースである。 ②長期的価値の創造 短期的な利益だけでなく、長期的なユーザーロイヤリティと企業の持続可能性を考慮する。短期的な利益を追求しすぎることで、ユーザーが離れていってしまうリスクもあるため、長期的な目線を持ちながらプロジェクトを進める。 ③クロスファンクショナルなコラボレーション マーケティング、開発など、他部門と密接に連携することで、様々な意見を取り入れることが可能になる。総合的な視野を持ってプロジェクトを進めることがユーザーや企業のどちらかの利益に偏ることを防ぐ。 これらのポイントを踏まえることで、UXデザイナーはユーザーと企業の利益の双方を向上させるサービスやプロダクトを生み出すことができるだろう。

エアビー(Airbnb)に学ぶ:デザイン主導の会社の成功例

“More designers should rise up and start a company.” 「もっと多くのデザイナーが立ち上がり、起業するべきだ。」 Figma, Incが毎年開催しているデザインカンファレンスイベント「ConFig 2023」にて、Airbnbの共同創業者兼CEOであるBrian Cheskyがデザイナーに訴えた。 彼のカンファレンスは、著者を含めたたくさんのデザイナーを奮い立たせた。 個人的には、過去聴いてきたトークの中で最もインスパイアリングなものだった。YouTubeでアーカイブが公開されているので、読者の皆さまにも是非観ていただきたい。 過去にもfreshtraxでデザイン主導企業をまとめたことがあるが、 【デザイン×経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 今回はこの「Design-Led Companies」に焦点を当てて、Airbnbの事例と共に考察していく。 そもそも「Design-Led」ってどういう意味? Design-LedやDesign-Drivenは日本語で「デザイン主導の」と訳せるが、そもそもこのデザイン主導とはどういう意味なのか? ひとことでまとめると、デザイン主導の企業は、デザインをビジネスの根幹に位置する重要な要素と捉え、デザインの原則や手法を運営や意思決定に活用する企業のことを指す。 現在、ありとあらゆるもののデジタル化と共に無料のアプリケーションが増加し、ユーザーエクスペリエンスが重要視されるようになった。それに伴い、デザインの立ち位置が大きく変わり、デザインを重要視した会社がテクノロジー業界を中心に増えてきている。 現に、世界的に大きく成功しているGoogle、Apple、Airbnbはデザイン主導企業の例として挙げられる。 なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか 一般的なビジネス主導の企業となにが違うのか では、デザイン主導であることにより、具体的に何が違うのか。 違いは大きく分けて三つある。冒頭でも紹介したAirbnbの事例と共にご紹介する。 1. デザイン重視の企業は、ユーザーのニーズを重視。一方、通常の企業は、利益や目標達成を重視する。 Airbnbはユーザー体験を重視しており、その文化や価値観はその中心にある。 これは「Belong Anywhere(どこにいても居場所がある)」という彼らのモットーからも見え隠れするが、これは彼らがユーザーがどこにいても自宅のように感じることを目指していることを示している。 このユーザー体験センタードな考え方は、freshtraxでもよく取り上げられるデザイナーの基礎の部分となるデザイン思考に基づいている。(参照:Airbnb) 例えば、Airbnbは、ユーザーが快適に滞在できるような独自のユーザーインターフェース(UI)や機能を開発している。 これには、利用者が写真を見て宿泊先を選択できるような直感的な検索エンジン、利用者同士が予約前にコミュニケーションを取り合えるメッセージング機能、予約後のサポートや現地でのアクティビティの提案などが含まれる。 また、Airbnbは宿泊先だけでなく、ユーザーが現地でのローカルな体験を楽しめるようなサービスも提供している。 例えば、ホストが地元のおすすめスポットやイベントを紹介する「エクスペリエンス」機能や、地元のガイドとしてユーザーにサービスを提供する「アドベンチャー」機能などがある。 デザインがビジネスに与える影響 〜収益週200だったのAirbnbが急成長した秘訣とは〜 2. デザイン重視の企業は、製品を改善するために、ユーザーテストやフィードバックを繰り返し行う。一方、通常の企業は、より単純な開発プロセスを追求する。 ユーザー体験の優先度が高いということは、必然的にお金をかける部分も一般企業とデザイン主導の企業で変わってくる。 Airbnbは、製品開発においてユーザーのフィードバックを積極的に取り入れている。 彼らは定期的にABテスティングを含むユーザーリサーチを行い、その結果を元にプラットフォームを継続的に改善している。例えば、ユーザーが予約を行う際の手順をシンプル化するなど、常にユーザーのニーズに応えるよう努めている。 デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス 3. デザイン重視の企業は、製品の外見や感覚にこだわり、ユーザーとの強い関係を築く。通常の企業は、機能性を重視し、外見や感情よりも機能性を重視する。 彼らのウェブサイト、プロダクト、マーケティングマテリアルをみると、彼らがこれらに力を入れているのは一目瞭然ではないだろうか。 さらに、Airbnbはメインである宿泊設備予約のサイト以外にも、マガジンを作成したり、オフィスのインテリアデザインにも注力している。 AIの発展から急速に加速していくDX。重要になるのはデザイン的思考? 数字からも見てとれるデザイン主導の会社の成功とそれらの会社から誕生し続けるイノベーションの数々。 このデジタル化が加速していく今、大事になってくるのは、利益やゴールに囚われないデザイン的思考をビジネスに取り入れることかもしれない。 関連記事: 今さら聞けないデザインがビジネスにこれほど重要な理由とは 【デザイン×経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 全ての人に必要なデザイン的マインドセット:デザイン会社の非デザイナーが体感していること 関連ポッドキャスト: 弊社では上記のような新規サービス、プロダクト立ち上げのためのグロール視点での市場リサーチからブランディング戦略、サービス、プロダクトのUI/UXデザイン、新規サービスのマーケティング戦略から施策実行までをサポートしています。 弊社のサービスについてより詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問合わせください。

【UXリサーチの価値】法人向けサービスでUXリサーチを成功させるコツ3選

筆者はBtraxでUXリサーチャーを担当しているのですが、近年日本でもUXデザインというワードは認知されるようになったものの、UXリサーチについてはまだ十分に理解が広まっていないように感じています。 特に法人向け(BtoB)のサービスやプロダクトにおけるUXリサーチは、その重要性にもかかわらずしばしば見過ごされがちです。 UXリサーチって本当に必要なの?AIが発展した後もデザイナーやリサーチャーに依頼する価値はあるのか? という疑問が沸々と湧いてきそうな今だからこそ、今回はUXリサーチとは何かという基本から始め特にリサーチが軽視されがちな法人向けサービスのUXリサーチに焦点を当て、その特徴や重要性についてご紹介していきたいと思います。 二本立ての記事の後編となる法人向けサービスのためのUXリサーチのメリット、及び、実践する上でのコツをご紹介していきます。 前編の記事をまだ読んでいないという方は、ぜひそちらも合わせてチェックしてみてください。 【UXリサーチとは?】法人向けサービス領域で軽視されがちな3つの理由 法人向けサービスのためにUXリサーチを行うメリットとは? 前編の記事では、法人向けサービスにおけるUXリサーチは、ROIがわかりにくく、また、ビジネスソリューションに自信がある企業であればあるほどやらずともとりあえず前にはには進めるので、実行されずに前に進みがちであるという側面を取り上げました。 ではそんな法人向けサービスのためのUXリサーチを実施するメリットとは何か?主要な3つのポイントをまとめましたので、一緒に見ていきましょう! ①法人向けのサービスこそ、”ユーザーへの共感”が競合に負けないサービスを生む 前述の通り、法人向けサービスの顧客は、消費者向けのサービスのように満足度や感情的な側面、個人の価値観を基に商品を選ぶわけではありません。 このため、個人としての体験や考えを掘り下げていく定性調査の必要性を疑問視する人がいることは当然かと思います。 しかし、ステークホルダーが複数存在し、購入時に綿密な検討が必要とされるような複雑性を抱えたサービスにこそ、定性調査は効果的です。 例えば、実際にサービスを使用するユーザーにとって重要なことが、意思決定を行う経営層には重要でないこともあります。 決裁権を持つマネジメント層に好まれるサービスを提供し、一時的には導入されたとしても、現場で実際にサービスを使うユーザーが不満を抱えていた場合、彼らが後に管理職に就いた際により現場に求められるソリューションへ乗り換えられてしまうようなケースは少なくありません。 デザイン思考における「共感」とは? – デザイン思考を学ぶ Part 2 法人向けのUXリサーチでは、多様なステークホルダーと意思決定プロセスを整理・可視化し、多角的にサービスの妥当性やニーズを探っていきます。 また、導入時だけでなく、その後の継続利用に必要な要素を特定し、長期的な利用を見越したサービス改善のためのインサイトを抽出します。 サービスの導入から実際の日々の利用まで、様々な人が関わる法人向けサービスだからこそ関わる人々の生の声に耳を傾け、見過ごされがちな細かいニーズや不満から改善案を練ることは有効であると思います。 ②市場投入時のリスクを抑え、マーケットフィットを最大化する UXリサーチはサービス開発の様々な段階で実施が可能ですが、特に市場投入前の導入は効果的です。 開発初期段階でユーザーからの質の高いフィードバックを得ることは、市場投入後に起こりうる期待値やニーズのズレ、マーケットの特殊性を見過ごすリスクを低減します。 これは、新しいサービスだけでなく、既存のプロダクトを新たなマーケットに投入する場合にも有効です。 事前リサーチを行わずに過去の成功体験だけを頼りに参入すると、予期せぬ障害が発生し、競合に対して不利な状況になるリスクがあります。 ターゲットユーザーの深い理解と、マーケットおよび業界の特性を網羅的・構造的に把握することで、サービスのマーケットフィットを最大化できます。 北米の事例に見るファンマーケティング① ユーザーリサーチに学ぶ今後企業が取り組むべき「ファンづくり」の重要性 ③顧客満足度の向上は、インターナルのコスト削減にもつながる ユーザーのニーズを正確に理解し、ビジネスゴールと照らし合わせて優先順位を明確化することは、開発プロセスの効率化・最適化に繋がります。 また、見落とされがちですが、ユーザーの声をプロダクトに反映させることは、クレームや問い合わせの削減に大きく貢献します。 特に、サービスがスケールしカスタマサポートの部署が設けられると、当然ですが顧客対応には人件費が発生します。 ソリューションがビジネスニーズに合っていても、ユーザーがサービスの使い方や細かな機能を理解できなければ、それは直接的に問い合わせの増加に繋がります。そしてそれは内部コストとなります。 法人向けサービスは、内容や用途が複雑なので導入のための教育コストが大きく、ユーザーの期待値や緊急性が高いために利用開始後のクレームが発生しやすいです。 設計段階からこれらの要素を考慮することは、顧客満足度の向上とクレーム・問い合わせ対応の工数削減につながります。 「欲しい」の言葉を信じるな!行動でニーズを検証するプロトタイピング手法 難易度高めな法人向けサービスのUXリサーチを成功させるコツ3選 さて、ここまで法人向けサービスのUXリサーチが後回しにされがちな理由と、実施した場合のメリットについてご紹介してきました。 ここまで読んでいただいた方の中には、「やっぱりやったほうがいいのはわかったけれど、実施のハードルが高いのもやっぱり事実なんだな」とモヤっとしている方もいらっしゃるかもしれません。 一般消費者向けのサービスに比べ、複雑で難易度の高い法人向けサービスのためのリサーチ。成功させるためのコツはいくつかありますが、特に重要なことは以下の3点であると筆者は考えます。 ①”巻き込み力”と情報・データ収集 法人向けのサービスは、何度も言及しているように、サービスの構成要素が多く複雑で、ステークホルダーの数も多いです。 さらに、ソリューション自体がニッチな領域に特化している場合が多く、リサーチには幅広い知識と深い洞察の両方が必要です。 このような状況下で重要となるのは「人」です。 プロセスの仕組みや関連する専門知識などの情報を得るためには、インターネットや書籍よりも、可能な限りその業界に精通している人(各部署の担当者やベンダーを含む)に直接聞くことがより効果的です。 これは、ニッチな業界の情報は一般にインターネットや書籍で公開されていることが少ないためです。 例えば、ソリューションが化学分野の研究者向けのサービスであっても、その販売経路を理解するためには代理店の知識が必要になるなど、様々な角度からの情報収集が求められます。 ターゲットユーザーからのフィードバックや意見を聞くだけでなく、サービスに関わるできるだけ多くの「人」を巻き込み、直接情報を収集することが成功の鍵となります。 ②”単純化しすぎない”情報整理 法人向けサービスのリサーチでは、その複雑性ゆえに、情報の整理が肝になります。 そこで注意が必要なことは主に2つ。 たくさん集めた情報からインサイトを抽出する際に、情報を単純化しすぎないこと。 無闇に情報を組み合わせて”正解っぽく見える”結論をこじつけないこと。 ターゲットが誰であれ、現実の市場を相手に、生身の人間の声を集める上で避けられないこと、それは”矛盾”です。 ”コストが一番大事だ”と言っている割に目の前に最安値のオプションを提示しても買ってもらえず、顧客は一見割高に見えるサービスを使い続けている。 これは一般消費者向けのサービスだけではなく、法人向けのサービスでも起こります。 また、法人向けのサービスでは、現場ではAが大事だと言っていて、マネジメント層はBが大事だと思っていて、法務部の人はCは外せないと言っている。 全員同じ会社にいて同じゴールを目指しているはずなのに、言っていることがまるで違うというような事態が起こります。 このような矛盾に対峙したときに重要なのは、矛盾を矛盾しているまま”まるっと”受け入れることです。 「Bと言っている人もいるけど実際にはCだよね」と勝手に結論づけずに、各ステークフォルダーがある程度納得して進めるための公約数はどこかにないのか、、?全てはトレードオフの関係にあるのか? といった問いからサービスの改善点を探っていくところにUXリサーチの価値があると思います。 ボトルネックだと思っていた問題が実は突破口を見つけるための鍵を握っているなんてこともあります。 先入観を捨てて、できるだけ生のデータを集め、複雑なものを複雑なものとして受け入れる。そこからのインサイト抽出が、真の顧客理解とマーケットフィットの最大化に繋がります。 ③デジタルツールの活用と再現性の高いシステム作り 法人向けサービスのユーザーリサーチが、一般消費者向けのサービスに比べて特に難しいポイントはリクルーティングです。 業界がニッチであればあるほど、ターゲットのイメージに近い人々にインタビューやサーベイへ参加してもらうハードルは上がります。 また前述の通り、集めるデータも多様で、データの下処理や分析にも時間がかかるため、できる限り全体のプロセスをシステム化・効率化することが重要です。 例えば、 リクルーティング方法の持ち札を増やし、Aがダメな場合はBとすぐに動けるようノウハウを体系化する。(法人向けリクルーティングに特化したサービスも存在するので、自社のサービスと相性の良いサイトを見つけておくと安心です) リクルーティングの際の募集文章を目的別にテンプレート化し、ストックしておく。 インタビューなどから得た音声やテキストのデータを、分析用に加工するためのデジタルツールの選定及びフローを確立しておく。 パンデミックによりオンラインでインタビューを実施する会社が増えた結果、リサーチを効率化するためのサイトやツールも増えてきています。 それらをうまく組み合わせ、またノウハウを体系的に蓄積することで、より時間をかけるべきタスクへ集中することができます。 本記事では、UXリサーチの役割と、法人向けのサービスにおけるUXリサーチの重要性及び成功のコツについてご紹介しました。

【前編】法人向けサービスにこそ重要!見逃されがちなUXリサーチの価値と成功のためのコツ

UX Collectiveが毎年発表するUXトレンド予測で、2024年は「後期UX」という新しい概念が取り上げられていました。この用語は「後期資本主義」にちなんでおり、記事ではAIの進化がUX業界にもたらしうる劇的な変化がダークなイラストで表現されています。 AIの普及により、素人でも簡易なウェブサイトであればデザイナーなしで簡単に、且つ安価に作成ができてしまう時代が訪れ、これまでウェブデザインを生業としてきた人々にとって、常識や既存の枠組みが脅かされている昨今。 しかし、不安を煽るような予測がある一方で、UXリサーチとUXストラテジーの重要性が一層明確になってきたことについてもこちらの記事では取り上げられています。 UXの領域において、AIに全てを任せて自動化させるのではなく、戦略的なデザイン思考、目的に基づくデザイン決定、そして作品に対する独自の視点の価値が、今後かつてないほどに重視されることが強調されています。 UXリサーチに対しての理解が足りない 筆者はBtraxでUXリサーチャーを担当しているのですが、近年日本でもUXデザインというワードは認知されるようになったものの、UXリサーチについてはまだ十分に理解が広まっていないように感じています。 特に法人向け(BtoB)のサービスやプロダクトにおけるUXリサーチは、その重要性にもかかわらずしばしば見過ごされがちです。 『UXリサーチって本当に必要なの?AIが発展した後もデザイナーやリサーチャーに依頼する価値はあるの?』という疑問が沸々と湧いてきそうな今だからこそ、今回はUXリサーチとは何かという基本から始め、特にリサーチが軽視されがちな法人向けサービスのUXリサーチに焦点を当て、その特徴や重要性についてご紹介していきたいと思います。 二本立ての記事の前編となる本記事ではUXリサーチとは何か?そして本人向けのサービスでUXリサーチがスキップされがちな理由について見ていきたいと思います。 後編(3/12公開予定)では、法人向けサービスのためのUXリサーチのメリット、及び、実践する上でのコツをご紹介していきますので、そちらもぜひ合わせてご一読ください。 サクッとおさらい!そもそもUXリサーチとは何か? UX(=ユーザーエクスペリエンス)リサーチとは、サービスやプロダクトの要件と、ターゲットとなるユーザーを体系的に研究し、文脈に沿った現実的な洞察をデザインへ落とし込むための手法です。 UXリサーチの特徴は、「ユーザーが求めているものを推測や作り手の思惑ではなく、ユーザーの生の声・実際の行動をデータとして用いて特定していく点」にあります。 定性調査と定量調査の手法を組み合わせ、目的に合致した手法を使ってデータ収集及び分析をしていきます。集めたデータからインサイトを抽出し、デザインへ反映していくことで、ユーザーを中心においたサービス・プロダクトが生まれます。 UXリサーチはUXデザインのプロセスの一部であり、ユーザーのニーズにあったサービスを設計する上で不可欠な要素です。 なお、UXリサーチを担当する役職ですが、専任のリサーチャーがいる場合はリサーチャーが担当しますが”UXデザイナー”、”プロダクトデザイナー”などの肩書きの人がUXデザインのプロセスの一部として担当することも多いです。 専任のリサーチャーがいる場合も、UX設計においてデザインチームとの連携は必須です。例えば、Btraxでは組織図上デザインチームという枠の中に、リサーチチームが置かれており、リサーチャーも基本的なデザインの原則やノウハウを理解しています。 UXリサーチャーが見る、スマートシティ先駆者バルセロナのゴミ捨て事情 UXリサーチが法人サービスの領域で軽視されがちなのはなぜなのか? 新規サービスを生み出す過程で、「本来ならばリサーチもできたらいいんだろうな」と思いつつも、より優先すべき事項が多いために、リサーチをすっ飛ばし、ありものの情報で初期デザインを組みサービスローンチ。 しばらく経った今、ある程度、顧客もついてきて組織も拡大しつつあるが、最近伸び悩みを感じている…というような経営者層の方はいらっしゃいませんか? UXリサーチャーとして様々なプロジェクトに関わる中で、『一般消費者向けのサービスよりも、法人向けのサービスの方が、初期段階でのリサーチへの時間的・経済的投資に対してオーナーが抵抗を感じている傾向が強い』と感じます。 これはユーザーの軽視からきているわけではなく、大きく分けると次の3パターンのいずれかが理由であることが多いです。 ①法人向けサービスの複雑性とリサーチ実施の敷居の高さ 法人向けのサービスは複雑です。 購入の意思決定だけを切り取って考えても、消費者向けのサービスであれば個人がサイトを見て欲しい!と思えば、多くの場合そこで購入へ至ります。 しかし、法人の場合はそもそも実際にサービスを利用するユーザーと、購入品を選定する人、決済をする人がバラバラだったりします。 そんな複雑なサービスを相手に、目標設定からリサーチのプランニング、実施、分析に着手するためには、多くの時間やリソースが必要になります。 そのハードルの高さゆえに、「もう少し余裕ができたら」と先延ばしにし続け早数年が経っている。というようなケースは少なくないと思います。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違いとは ②短期的なROIの不透明性 通常、UXリサーチは、リサーチの実施・サービスへの落とし込み・検証など、一連のプロセスにおいて時間とリソース、コストを要します。 特に、ステークフォルダーが多く、複雑性も高い法人向けのサービスでは、開発サイクルが長期にわたることが多く、リサーチの結果が目に見える形で出てくるまでにかなりの時間がかかります。 投資効果の不透明さゆえに、短期的なROIを重視して見送られるケースが非常に多いです。「自分はリサーチが大事だと思っているけど、他の担当者たちが首を縦に振ってくれない、、」というお悩みを抱えている方もいるのでは? 日米の声を聞くUXリサーチャーが気がついた、UXリサーチにおける日米の違い ③自社のソリューションへの過信 法人向けのサービスに携わる人は、「法人顧客は心理的な満足ではなくビジネスソリューションを求めている」という考えに基づき、業界特有の要求に合ったサービスを提供していれば、ユーザーリサーチを行わなくても自社の製品が売れると信じています。 この考えがベースとなって、前述の二つの点が強化され、リサーチが永遠に行われないというのが王道のパターンのように思います。実際、多少見かけのインターフェースの見栄えが悪くとも、使いにくさがあったとしても、ビジネス上必要なツールであるが故に使われ続けているサービスはあります。 とはいえ、変化の激しい現代社会では、予期せぬ競合の出現もありえます。国境を超えて様々なツールを試せる環境下で目の肥えたユーザーを相手に、同じ提案を続けているだけで期待に応え続けることは、なかなか難しいのも事実ではないかと思います。 また、デジタルネイティブ世代が労働人口における比率が増している現在、法人向けの領域でも一般消費者向けのサービスに近い消費行動が増える傾向にあるとも言われています。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ

なんちゃってUXデザイナー見破る7つのポイント

UXデザイナーの重要性が高まるにつれて、多くのデザイナーが自分のことを “UXデザイナー” と呼ぶようになって来ている。 その一方で、その仕事内容があまりにもぼんやりしすぎてて、面接の際にどの人が本当にUXデザインスキルがあるのかがわかりにくい。という疑問を持つことがある。 そもそもUXデザイナーは本当にデザイナーなのか?という説もあるくらいだ。 UXデザイナーは本当にデザイナー?UXデザインの役割の拡大 ポートフォリオに騙されるな! 実際のところ、ポートフォリオに掲載されている作品の質だけで判断することは難しいし、そもそもほとんどのプロジェクトがチームで行うため、その人がどこまで関わっているのかを見極めるのも容易ではない。 また、freshtraxを日々読んでいれば、デザイナーとしての知識はかなり蓄積するが、残念ながら、それだけで優れたUXデザイナーになれるわけでもない。 【給与差1.4倍】グラフィックデザイナーからUXデザイナーになる方法 UXデザイナーの標準スキルが明確ではない そもそもUXデザイナーという肩書き自体が比較的新しいものであるため、その仕事内容とスキルセットが明確になっていないのも一つの原因だろう。 元々Webデザイナーをやっていた人が、ワイヤーフレームとフローチャートを作成した経験を元に「UXデザインできます!」と宣言しているのかもしれない。 CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 偽物デザイナーをあぶり出す では逆に “なんちゃって” のデザイナーを見極めることができれば、消去法で自ずと本物をあぶり出すことができる。これまで何十人も面接してきた経験を元に、偽物のUXデザイナーの見分け方を公開する。 志望者の多いUXデザイナー職を採用する際に、下記の5つのポイントに関する質問を行い、その答えの内容でその人が本物のUXデザイナーを見分けることができるだろう。 1. よく聞くと単なるUIデザイナー これが一番あるあるなパターン。UXデザイナーポジションに対しての応募者のかなりの割合が、実はUIデザイナーのスキルしか持ち合わせていない。 これまでの実績を見てみても、明らかにUIのデザインやビジュアルデザインの作り込みはしているが、ユーザーリサーチや体験の設計などのUXデザインに関するプロセスを実践した経験はない。 もしくは、UIデザインとUXデザインを混合してしまっているケースすらある。 まずは、UIデザイナーとUXデザイナーの役割の違いを理解するところから始めた方が良いだろう。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 2. UXデザインの経験がワイヤーフレーム作成のみ 元々WebデザインやアプリUIデザインを行っていたデザイナーが、手っ取り早くUXデザインができるふりをする方法がワイヤーフレームの実績をポートフォリオに掲載する事。なんとなくもっともらしく見える。 しかし、そもそもワイヤーフレームの役割や、作成に至るまでのプロセスが理解できていないと、UXデザイナーとは言えない。 ワイヤーフレーム自体はあくまで全体像を把握したり、ユーザーテストで利用し、データを収集するための際の手段でしかなく、目的にするべきではない。 そもそも、マルチデバイスが当たり前の現代においては、ワイヤーフレームの作成はコンテンツ作成と同時に進める必要があり、むしろ全体を通じたメッセージングの方が重要なので、ワイヤーフレーム自体の価値がかなり低くなっているのも事実。 UXデザイナーの仕事は、伝えるべきことに対して最も効果的な体験を構成することである、ワイヤーフレームの作成自体が目的になるべきではない。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 3. UXデザインの基本的な構成要素が理解できていない これもUXデザインにおける基本的な内容だが、その構成要素が理解できていないパターン。 真のUXデザイナーであれば、タスクフローや情報アーキテクチャ、インタラクションデザインといった個々の要素はもちろんのこと、それらを体系的に統合することで、誰しもが直感的に利用できるシームレスなユーザー体験をデザインできるはず。 しかし、名ばかりのUXデザイナーにこの基本的な洞察が欠けているケースがしばしばある。単に綺麗な画面を作ることに注力し、ユーザーが目的を達成するまでの一連の流れを明確にデザインできていない。 本物のUXデザイナーを見極めるには、その人物がユーザー体験全体の森を見渡す目を持っているかどうかを確認することが不可欠になる。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 4. UXデザインのプロセスを知らない UXデザインのプロセスには、調査、アイデア創出、プロトタイピング、テストといった一連の段階が存在する。 しかし、中にはUXデザイナーを名乗りながら、こうした基本的なプロセスすら理解していない人がいる。 彼らは単に画面のモックアップを作成することに注力し、その先のプロセスを考えようとしない。ユーザー調査なしに勝手な仮定のもとで設計を始めたり、納得のいくまでプロトタイプを繰り返し改善したりすることなく、最初のアイデアをそのまま提供したがる傾向がある。 本物のUXデザイナーは、この定石とでもいうべき一連のプロセスを熟知しており、それを適切に運用して最善の結果を導き出せる能力を備えているはず。プロセスを省略する姿勢は、プロのUXデザイナーの資質に欠けると言わざるを得ないだろう。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 5. UXとユーザビリティーを混合している UXとユーザビリティは、ともにユーザー中心の設計を目指すものの、似て非なる概念である。 ユーザビリティは、主にタスクの遂行効率や使いやすさ、エラー率の低減など、システムの機能面での改善を扱いう。 一方UXは、ユーザーの感情面や価値観に訴えかける体験のデザインを重視する。楽しさ、魅力、満足感といった主観的な側面に注力するのが特徴。 したがって、この2つを混同している人は、UXデザインの本質を見誤っていると言えるだろう。システムの効率化にばかり気を取られ、感性面を置き去りにしがち。結果的に、使いやすいけど、なんかワクワクしないプロダクトになってしまう。 本物のUXデザイナーであれば、ユーザビリティとUXの違いを明確に理解し、両面の改善をバランス良く図ることができるはず。この視点が欠如している場合は、なんちゃってUXデザイナーじゃないかと疑って良いだろう。 6. ビジネスゴールとユーザーメリットのバランス取りが苦手 UXデザインにおいては、ビジネスの目的とユーザーのメリットを両立させることが大切になる。 たとえば、ECサイトの場合、単に商品を売りたいというビジネスゴールと、購入がしやすくなることをユーザーは求めており、その二つを上手に達成するのがUXデザイナーの役割になる。 本来のUXデザイナーであれば、こうしたニーズのバランスを取りながら、win-winなソリューションを生み出す洞察力があるはず。 しかし、中にはビジネス目線のみで設計を進めがちな人もいる。ユーザー体験をある程度犠牲にしてでもコンバージョン率や売上を最大化しようとしがち。特に営業ノルマを重視しすぎるが故にこのパターンにハマるケースがある。 逆に、ユーザー目線に傾き過ぎ、ビジネス上の制約を無視した純粋に使いやすいシステムを提案するデザイナーもいる。この場合は、デザイナーのエゴが強すぎて、企業の利益を置き去りにしてしまうのだ。 いずれにせよ、このバランス感覚が欠如しているのは、本物のUXデザイナーとは言えないだろう。 「良いデザイン」とは?GoogleのUX Lead Designerから学んだ5つのこと 7. ユーザーテストとフォーカスグループの違いがわからない ユーザーテストとフォーカスグループは、ともにUXデザインにおける重要な調査手法だが、その目的と方法は異なる。 ユーザーテストは、プロトタイプや実際の製品を個人に操作してもらい、タスク遂行できるかどうかを観察するテスト。使いにくさの発見が主眼となる。 一方、フォーカスグループは、数人のユーザーに意見を求めるグループディスカッション形式で、新機能への要望や概念に対する感想を聞き出すのが目的となる。 本物のUXデザイナーであれば、この2つの手法の違いと使い分けを理解しているはず。言い換えると、目的に応じて適切な調査手法を選択できる力量が求められる。 この基本的知識がない場合は、なんちゃってUXデザイナーである可能性が高い。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ まとめ: 優れたUXデザイナーを見分けるのは難しい デジタル化が進んだ2010年代以降、UXデザイナーはトレンドの職種となり、自称UXデザイナーもも増えている。しかし実際には、本物のUXデザイン能力を備えている人物はまだ少数派なのが現状である。 今回の内容を参考に、優れたUXデザイナーを見極めるためのポイントを抑えたい。ただし、完璧なUXデザイナーは存在しないことも理解しておく必要はある。 大切なのは自身の専門性を磨き続け、ユーザー体験の向上に真摯に取り組む姿勢を持ち合わせているかどうか。 優秀なUXデザイナーの育成には、実践を積み重ねることが不可欠。ユーザーとビジネスの狭間で失敗を恐れず挑戦し続けることが、この分野で成功への近道と言えるだろう。 こいつできるな!と思わせるUXデザイナー 7つのソフトスキル

リテールテックの革新:アメリカ主要小売店の最新テクノロジーが描く顧客体験の未来

リテールテックがもたらす小売業界の革新 近年、急速に進化するデジタル技術は、小売業界において大きな変革をもたらしている。これにより、顧客体験の向上や業務効率化が実現され、小売店は新たな競争力を獲得することが可能となっている。 本記事では、アメリカの主要小売店で展開されている最新のリテールテックを紹介し、その効果について探っていく。 リテールテックの概要 リテールテックは、小売業界における最新のテクノロジーの活用を指す。このテクノロジーは、さまざまなカテゴリーに分類することができますが、特に注目されるのは以下のような分野である。 新しい決済方法 小売業界では、顧客の支払い体験を向上させるために新しい決済方法が導入されている。これにより、レジ待ち時間の短縮や支払いのスムーズ化が図られ、顧客はよりストレスフリーなショッピング体験を享受することができる。 Amazon Goの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた ロボット ロボット技術の進化により、小売店では在庫管理が大幅に効率化されている。自動化されたロボットが品揃えの確認や商品の位置の更新などの作業を行い、従来の手作業に比べて迅速かつ正確な在庫管理が実現されている。 ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点 ドローン配達 ドローンを活用した配達サービスは、小売店の配送プロセスを革新し、顧客により迅速かつ柔軟な配送オプションを提供している。遠隔地や交通の混雑する地域への配送も容易になり、顧客満足度の向上につながっている。 ドローン産業に起こるであろう4つの変革 Virtual Care(遠隔医療) 小売店では、オンライン上で医療相談や診断を受けることができるVirtual Careサービスも提供されている。顧客は店舗を訪れることなく、自宅から医療サポートを受けることができ、健康管理における利便性が向上している。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 これらのカテゴリーにおける最新のリテールテックの導入により、小売業界はますます革新され、顧客体験の向上や業務効率化が実現されている。 事例紹介: アメリカ主要小売店が導入しているリテールテック 【新しい決済方法】 Whole Foods Market アメリカの大手スーパーマーケットチェーンWhole Foods Marketは、Amazonに買収されて以降Amazonが持つテクノロジーとWhole Foods Marketが持つ様々なデータを上手く掛け合わせたサービスを提供している。 手のひら決済 そのうちの一つに、Amazon oneというサービスを用いた「手のひら決済」という革新的な支払い方法がある。このシステムでは、顧客の手のひらをスキャンすることで支払いが完了し、レジ待ち時間を大幅に短縮することができる。 ちなみに、Amazon oneへの登録は非常に簡単である。順序は以下の4つで1分ほどで完了する。 ①Whole foods店舗内にある「Amazon One」の機械で登録開始 ②クレジットカードを差し込み登録する→ここまではオンラインで登録可能 ③両方の手のひらを機械にかざして登録する ④最後に電話番号を登録して終了 Amazon Dash Cart さらにWhole foods Marketは「Amazon Dash Cart」の機能を用いて、手に取った商品をカート内でスキャンするだけで支払いを行う事ができ、チェックアウトの列に並ぶ必要がない便利なサービスも提供している。 【ロボット】 Walmartの清掃ロボット 世界最大のスーパーマーケットチェーンWalmartは、店内の清掃作業を自動化するためにロボットを導入している。それだけでなく移動しながら清掃すると同時に、棚の在庫状況をチェックも同時並行で行う。 これにより、店舗スタッフはより効率的に在庫管理や顧客サービスに集中することができ、店内の清潔さと品質を維持することができている。 Krogerの在庫管理ロボット 全米最大のスーパーマーケットチェーンKrogerは、店内の在庫管理をロボットを利用して行っている。既に800機以上のロボットにより、毎日20,000件以上のオンラインオーダーに対応している。 このシステムにより、商品の在庫状況をリアルタイムで把握し、顧客が欲しい商品を素早く的確に提供することができる。また、従来の手作業に比べて効率が大幅に向上し、顧客満足度を高めている。 Krogerの無人トラック また、Krogerは自動運転車を提供しているGatik社と提携し、無人トラックによる配送業務の自動化&高速化を目指し試験運用している。 店舗受け取りや店内での買い物体験に加えて、新しいテクノロジーを用いた『ロボットによる在庫管理と自動運転による配送』を組み合わせることで、顧客にシームレスな体験の提供、それに伴う顧客満足度の向上とリピーターの増加を目指している。 Lowe’sの案内、警備、配達ロボット アメリカの大手ホームセンターLowe’sは、店内での在庫管理&案内、警備、配達の主に3つの作業にロボットを活用している。これにより、顧客は迅速かつ正確なサービスを受けることができ、店舗スタッフの負担を軽減することができている。 在庫管理&案内ロボット 高度な人工知能と3Dマッピング ソフトウェアを搭載したNAViiを利用している。NAViiは店舗内を歩き回り、正確にどの場所のどの商品を補充する必要があるかを知らせるだけでなく、価格が間違っていたり、間違った場所にある商品も識別することができる。 さらに、NAViiは顧客のサポート業務としても機能しており直接話しかけたり、NAViiに搭載されたディスプレイを用いて、特定の製品や部門の場所を尋ねると適切な場所に直接案内してくれる。 警備ロボット Lowe’sは盗難の防止や店舗の安全性向上のために自律型セキュリティロボットをテスト導入している。 このロボットは、周囲を移動しながら潜在的な問題を特定し、懸念事項を監視チームに報告する。また、顔認識機能はないが、熱異常検出及び人物検出センサーを装備しており、望ましくない侵入者をオペレーターに警告するなどの働きをしている。 移動中はヒューヒューという音を発することで視覚障害のある顧客への配慮もしている。また、ロボットを使用して助けを呼ぶことができるなど双方向通信システムを備えている。 配達ロボット Lowe’sは輸送サービスを提供している米国大手のFedExと提携し「SameDay Bot」という自律型ロボットを利用した同日配送サービスを試みている。 このボットは、歩道や道路脇で動作し、安定した状態を維持して障害物を回避しながら、縁石、未舗装路面、急カーブを通過できるように開発されており、段差も難なく進む事ができる。 このように米国ではロボット技術を用いた顧客体験の向上施策がどんどん進んでいる。 【ドローン】 Walmartのドローン配達 Walmartはスピード、安全性、持続可能性を重視するWingやZiplineなどの専門家と緊密に連携することによって、過去2年間でドローン配送をテキサスで試験的に実施し、20,000件を超える安全な配送を完了した。 ドローン配送により、顧客は今まで以上に迅速な配送オプションを利用できるようになり、商品は30分以内に届けられ、場合によっては10分ほどで届くこともある。利用料は無料であることも大きい。 これまで「忘れた食材や市販の風邪薬など急遽必要になったものや午後の甘いもの、カフェインの欲求を満たすスナックや飲み物、卵などの壊れやすい品物」など様々なジャンルの品物がオーダーされている。 その結果を受け、Walmartや提携先の企業は ”ドローン配送の需要は本物だという事が明らかになり、2024年がドローン配達の年になると信じている”と述べている。 Krogerのドローン配達 Krogerは2021年にドローン配送のPilot Testを実施したが、バッテリー、技術面、制限面などの問題から2024年2月時点ではドローン配送サービスの提供を停止している。 Pilot Test時のサービス内容は重さは5ポンド(2.26kg)まで&配達範囲は半径1マイル(約1.6km)などの制限があったものの、配送は無料で1時間以内に到着することを保証していた。 現在サービスは停止しているが、2023年にKrogerのドローンパートナーであるDrone Expressが資金調達を実施し、Krogerの顧客へのドローンサービスの再開と拡大に向け動いていると報道されたため、サービスの再開の日は近いかもしれない。 【Virtual Care(遠隔医療)】 Walmartのオンライン診断サービス Walmartは「Walmart Health Virtula Care」という遠隔医療サービスを一般会員に向けて提供している。そのサービスでは、電話またはビデオによる、資格のある認可を受けた医療提供者への24時間365日のアクセスを提供し、質の高いケアへのアクセスを増やすことで会員の満足度向上を目指している。 「緊急処置、男性&女性のプライベートな健康上の懸念、トークセラピー、ティーンセラピー、精神科」など様々なジャンルに対応したサービスがある。 さらに、ビジネス向けの遠隔医療サービスも提供しており、企業と協力して医療コストを削減し、遠隔プライマリケアなどの既存及び将来の従業員に特典を提供する遠隔医療ソリューションを開発&提供している。 Amazon Clinic Amazonもアメリカ国内で「Amazon Clinic」遠隔医療サービスを展開しており、顧客は24時間365日オンライン上で医師との面談や処方箋の受け取りを行うことができる。 これにより、顧客は緊急時の医療サポートを迅速に受けることができ、健康管理がより身近になっている。Amazon Pharmacyを選択することで処方箋も配送可能となり、診断から処方箋の受け取りまで一連の作業をVirtualで行うことも可能になっている。 Costcoの遠隔医療サービス Costcoはオンライン医療プロバイダーのSesameと提携することで会員に遠隔医療サービスを提供している。 […]

話題の無人タクシー Cruiseをサンフランシスコで乗ってみた。その驚愕のユーザー体験とは!

サンフランシスコの街を歩いていると、頻繁に屋根の上やドアの横に各種センサーやカメラのついた車を見かけることがある。これらは自動運転を実現するためのテスト走行を行っている車両で、WaymoやZooxなどのスタートアップのもの。 そんな自動運転車両の中でも、一際目立つのが白とオレンジでカラーリングされた Cruiseの車両。彼らのオフィスが我々 btraxと同じブロックにあることもあり、SOMA地区ではしょっちゅう見かける。 Cruiseとは? このCruiseというスタートアップは自動運転技術を利用し、無人タクシーの実用化を目指している。これまでにGeneral Motors (GM) を筆頭に実に合計150億ドルもの資金を集めている。 オフィスはサンフランシスコのSOMA地区にあり、元々Dropboxの本社として建てられたビルを利用。 以前にSF Design Weekというイベントにて同社デザイナー達がこれからの自動運転に求められるUX設計に関するセッションを行なっていた。 2022年より実用テスト開始 2013年にスタートしたCruiseであるが、10 年弱の時間を経てやっと実用テストが開始された。 2022年の2月にサンフランシスコ市からの認可がおり、公道でのテスト走行が許可された。 そして、同年7月にはアプリを利用して課金も開始された。と言っても、現在はまだクローズドベータの状態で、選ばれた数少ないユーザー向けにしかサービス提供を行なっていない。 ちなみに、筆頭株主がGMということもあり、車両はGM製のEV、シボレー・ボルトが採用されている。 ついに招待状が届いた! そして念願の招待状がメールで届いたので日本から来たスタッフと一緒に乗ってみることにした。 そしたらその乗車体験がかなりの驚愕の体験だったので、一つずつそのポイントをこれから紹介する。 オンボーディング体験 まずは車に乗る前のアプリに “乗る” ためのオンボーディング体験。これはかなりスムーズで、UberやLyftなどの有人ライドシェアアプリに慣れていれば、かなりわかりやすい。 乗るところから降りるところまでの利用方法もアプリ内でステップバイステップのイラストで説明されているので、ストレスは皆無だった。 乗れる時間とルートがかなり制限されている さて、ここからが問題。実はCruiseのサービスはまだ試験運転中ということもあり、サンフランシスコ市だけでしか利用できない。それも、エリアと利用時間がかなり制限されている。 というのも、限りなく安全に利用できるようにするために、市から許可された内容にかなりの制約が課されている。具体的には、利用時間は夜の10時から朝の6時まで。走行できるのは密集地を避けた市内の1/4程度のエリアのみ。最高速度は30マイル (48キロ) まで。など。 早速利用してみる でもやっぱり乗ってみたいことには変わりなく、夜の10時を待って利用してみることにした。それもわざわざCruiseに乗るためだけに利用エリアに車で出向き、特に目的もなく呼んでみた。 なお、アプリの利用感は他のライドシェアとほぼ同じで、違和感は全くない。 乗り場を指定したのに歩かされる ただここに一つ落とし穴があった。本来であれば指定した場所に来てくれるはずのライド系アプリなのだが、Cruiseの場合はどうやらルートに制限があるらしく、自分がいる場所から少し先のピックアップポイントまで歩かせられる結果となった。 まあ、この辺もまだまだベータ版ということだと理解した。 車がなかなか止まらない 今回担当してくれる車両の名前 (ニックネーム) は、ブルーベリー君。 そして実際に車両が来たのだが、近くに来て減速した後に一旦止まってからまた少し前に進んだりと、かなり自信なさげ。止まるところを探しているのか、乗客を探しているのか、かなりきょどった感じだった。 そして本当に無人だった! 車両が目の前に停まった時点から5分以内にアプリでドアを解除し、乗る仕組み。 当たり前なのだが、中には誰もおらず、本当に無人タクシーだった。これはかなり驚いた。というか感動した。人生で初めて運転手のいないタクシーに乗るのだから。 座席前にタブレット表示と車内アナウンスが流れる 実際に乗ってみると、座席の前に二つのタブレットが設置され「Cruiseへようこそ。まずはシートベルトをお締めください。シートベルトが装着され次第出発します。」という自動アナウンスが流れた。 この辺もこれまでの有人タクシーやライド系アプリと比べてもかなり未来的な感覚を覚えた。 運転はかなり安全 そして肝心の運転なのだが、かなりゆっくり& 正確で、かなりの安心感を得られた。自動運転自体はこれまでもTeslaで何度も経験しているので、恐怖心はほとんど無い。 でも… なぜか降ろしてくれない! そんな感じで順調に乗車体験が進んだのだが、ここで大きな問題が発生!車内アナウンスで「そろそろ目的地に到着するので降りる準備をしてください」とのメッセージが流れるも、一向に止まる気配がない! 同乗していたスタッフの「あれ、これかなり遠ざかってませんか?」の一言で気づいたのだが、目的地からどんどん離れていってる。 同じルートを何周も 慌てて車内のタブレットを見てみると、確かに目的地から遠ざかっている。それだけではなく、一度きたルートをもう一度周っている様子。 まあ急いでるわけでは無いので、サンフランシスコをぐるぐる回るアトラクションと考えれば良いが、スタッフの「いや、アトラクションはちゃんと止まってくれますよ」の一言で現実に気づく。 強制終了も、指定したところからかなり遠いところで降ろされる 黙っていても一向に止まる気配がないので、車両の天井部分に設置されている “END RIDE” ボタンを押して止めてもらう事にした。これは文字通りの “強制終了” ボタン。 本来は押さなくても良いのだが、今回は押さないと止まらないので、利用することにした。 やっと止まってくれたと思ったら、本来の目的の場所からかなり離れた場所に停められ、結局真夜中にサンフランシスコの坂道を3ブロックほど歩く羽目になってしまった。 そしてもう一回… 乗れない! Cruiseに乗る目的で移動したわけだから、帰りももちろんCruiseに乗る… 予定だった。しかしここでまたトラブル発生!なんとアプリで呼んだスターダスト君が目の前に来たと思ったら、何度も素通りしていくのだ。 3, 4回目ぐらい周ってきて、でやっと減速して止まってくれたかなー、と思ったらまたノロノロと動き出して去っていってしまった。これはかなり切なかった。 諦めて歩くことに もう時間も時間 (23時過ぎ) だったので、スターダスト号に乗るのは諦めて歩いて帰ることにした。実はCruiseのルートはかなりの遠回りで、歩けは数ブロックの距離。 もうしばらくはこの車両は見たくない!っていう怒りを覚えたが、帰りに見たグレース大聖堂の美しさに癒され、気持ちが治まった。 結論: まだまだ改善点が多いけど今後に期待! さて、今回のCruiseに関するユーザー体験調査だが、かなり複雑な気持ちにさせられた。 サイトやアプリなどのソフト面はかなり完璧に近い。 しかし実際の車両に乗車した際の体験はそのクオリティー云々よりも、誤作動が多すぎて、全くタクシーとして機能していないと言わざるを得なかった。 そもそも止まってくれない、降りれない、というのはタクシーとしては完全に致命的。 まあ、まだまだベータ版だから、という気もするが、実際に課金もしているし、早く解決してほしいなと思った。 ちなみに気になる料金はUberで同じ距離を乗った場合の半額ぐらい。 でもやっぱり思うのは、こんな状態でも実地でテストさせてくれるサンフランシスコ市の懐の深さだろう。 やっぱり新しいイノベーションが生み出されるのはこういう場所なんだろうなー。と感じた。 おそらく東京では絶対にテストさせてくれないと思う。 参考動画: Cruiseに乗った際の様子がわかるショート動画 Amazon, Google, YouTube等の初期バージョンから学ぶ小さく始めることの重要さ

UXデザイナーは本当にデザイナーなのか

最近とあることに気づいた。UXデザイナーポジションへの応募が多いが、そのバックグラウンドがかなり多種多様なのである。 元々Webデザイナーをしていた人もいるし、マーケター出身の人もいる。デザインとは関係のない学部や職種出身の人もいるし、前職がスタバのバリスタのケースもあった。 UXデザイナーの役割多すぎ問題 言われてみれば、”UXデザイナー” のその役割と必要なスキルがあまりにも広く、そして曖昧なこともあり、非常にわかりにくいポジションになってる気がする。 仕事内容も、デザイナーと呼ぶにはかなり多くの非デザインスキルが求められる。正直いうと、そもそもこれってデザイナーの仕事なのか?と思うこともしばしばある。 そんなこともあり、そもそも一人のデザイナーがUXデザインに求められる全てをまかなうのは、非現実的なのではないかとも思ってきている。 そもそもUXって何? このややこしさの根本原因は “UX” という言葉の意味が分かりにくく、人によって微妙にずれているからかもしれない。 なので、まずはUXがなんぞやっていうところからクリアにしていこう。 UXとはユーザー体験の英語訳である “User Experience” を短く、かっこよく表現したもの。その定義としては: 人々が製品に接するとき、そしてその接点から得られる経験そのもの。UXは、成功率、エラー率、離脱率、タスク完了までの時間、完了までのクリック数などの指標で測定される。 が適切だと思う。また、ユーザビリティーの父と呼ばれるヤコブ・ニールセン率いるNielsen Norman Groupによると、 UXは、エンドユーザーと企業、サービス、製品とのインタラクションのすべての側面を包含する と定義されている。 お気付きになっただろうか?上記の定義のどちらにも “デザイン” という言葉が含まれていないことを。 そう。もうお分かりですね。ユーザー体験 (UX) には、ライター、リサーチャー、プログラマー、情報アーキテクト、マーケター、そしてデザイナーなど、多くの多様な部門や専門家が優れたユーザー体験を生み出す責任を負っている。そしてもちろん、最も重要なのが経営陣の役割だろう。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 UXとCXは何が違うの ここで少し余談になるが、日本語でよく言う「顧客体験」とユーザー体験は同じ意味なのだろうか? この議論をもう少し専門的な言葉で表現すると “UXとCXって何が違うの?” になる。 CXとは “Customer Experience” の省略形で、顧客体験と訳される。それぞれは密接に連動しているが、UXがエンドユーザー、つまり製品やサービスを使う人に焦点を当てているのに対し、CXは顧客に焦点を当てている。簡単に言うと、CX はUXを内包している形になる。 多くの場合、顧客も製品やサービスを使用しているが、場合によっては誰かに代わって製品やサービスを購入している可能性もある。 例えば、多くの「おもちゃ」のメインユーザーは子供である。その一方で、その製品を購入する顧客は親になる。この場合、おもちゃにおけるUXデザインのターゲットが子供になるのに対して、CXデザインは購入する親にも訴求する体験を設計する必要が出てくる。 したがって、顧客が必ずしもユーザーではないことも理解してデザインするのがCXデザインである。 UXデザイン 主にプロダクトにおけるユーザーの体験の質を上げる CXデザイン 顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げる CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 優れたUXとは? ユーザー体験の価値を高めるのがUXデザイナーの仕事だとすれば、そもそも何を持って優れたUXって言うのだろうか? 優れたUXは、プロダクトの体験の総合値によってのみ実現される。例えば、Webサイトの読み込みが遅くてユーザーがイライラするような場合は、エンジニアがそれを改善する仕事になる。 コンテンツがユーザーの心に響かない、あるいは価値のある情報を提供できないなら、それはコンテンツライターの責任。また、ニュースレターの解約率が高いのであればマーケティング担当者が解決すべき問題になってくる。 このように、優れたUXを生み出すには、総合的なチームワークが求められる。自ずとUXデザイナーには、見た目の美しさや使いやすさだけではなく、それ以外の多くのポイントに触れる必要があり、自ずとその責任者も幅広い知識と経験が求められる。 UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – なぜUXの改善はデザイナーの仕事になったのか UXの品質改善には多種多様なタッチポイントの改善が必要なのに、なぜか全てデザイナーの責任とされちゃっている節がある。UXデザインのことがちゃんと理解できていない組織は特に。 なぜそうなっているのだろうか? おそらく、プロダクトのUXを改善するというと、多くの人はまず見た目デザインの改善を思い浮かべる。また、UXとユーザーインターフェース(UI)デザインを混同している人も多い。 それぞれは優れたUXを生み出すための戦略の一部であるが、それだけでは不十分である。 もう一つややこしいのは、多くのデザイン関連の出版物やメディアで、デザインとUXをあたかも同じような分野であるかのように表現していること。実際、デザインとUXは大いに重なりあっている。 でも、ユーザー体験の品質が悪い場合、それはデザインに原因があることもあるし、それ以外の要素を改善しなければならないこともある。 UXデザイナーの力だけでUXのその全てを改善できる場合もあるし、多くの場合はカスタマーサポート、価格帯、営業の態度など、それ以外の要素が原因になってる。 従って、UXとデザインを混同してしまうのは正しい考え方ではない。 UXデザイナーだけで解決できない問題が多い このように、UXは総合的な体験価値のそれぞれの要素で構成されているとするのであれば、デザイナー1人で解決できるわけがないだろう。 むしろ、組織のすべての部門がUXの理念を念頭に置いて協力しても、優れたリサーチやインタビュー、テストを採用しなければ、どんな製品も最高のユーザー体験を実現することはできない。 と言うことは、デザイナーだけで解決できる範囲は限られており、それ以外の専門家と一緒に物事を進めない限り、ユーザー体験の品質は改善されない。 なので、UXデザインはデザインだけでなく、それ以外の多くの役割の人たちの協力が求められる。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 必要なのは総合的なUXチーム その一方で、組織内の複数の部署に対して「UX改善しておいてね」とだけ言ってても何も始まらない。 そこで、UXリサーチャーをはじめとするUXのスペシャリスト達が活躍することになる。それぞれ少しずつ異なる役割で構成されるUXチームは、もちろんデザイナーもいるが、それ以外も多種多様な役割のメンバーで構成される。 そのUXチームに関する役割は、マーケティングチームの構成に近いのかもしれない。チーム全体で、文章を書き、インタビューし、調査し、記述的・予測的な分析を行う。そして、 私たちデザイナーは、データ、洞察、その他の情報、推奨事項に基づいて、処方的なソリューションを提案していく。 従って、UXデザイナーと呼ばれる人たちは、UXをデザインする仕事というよりも、総合的なUXチームのメンバーの一人となり、デザイナー的観点からUX改善を進める役割になってくると思われる。 UXデザイナーという謎の役職名 このまで読めばわかると思うが、UXデザイナーの実態は周りのチームメンバーたちの構成によって大きく変化する。 なので、A社のUXデザイナーとB社のUXデザイナーでは、その仕事内容が大きく変わるし、エージェンシーと事業会社でもその立ち位置が全く異なることも少なくない。 UXの改善にはかなり総合的なチームが必要になってくるのに、なぜかUXデザイナーの人が全てそれを行うイメージがいまだに多く広がっている。そして、おそらく本人たちが一番困惑していると思う。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである そもそもデザイナーの仕事って何? ここで一度 “デザイナー” と呼ばれる人たちの仕事内容をおさらいしてみよう。 そもそもここ数年でデザイナーの重要性が高まりすぎて、猫も杓子もデザイナーのキーワードが乱用され、その実態が少しぼやけてきている気がする。 デザイナーというと、絵を描いて形だけを決める仕事だと勘違いしている人が多いのだが、実はそれらは最終アウトプットのごく一部であり、本来デザイナーの仕事というのは、与えられた制限の中で、求められる最大限の結果を生み出すプロセスのその全てに関わる職業である。 実はデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 その普遍的なデザインプロセスが、UXデザインにも密接に関わってきている。 【改めて基本を解説】デザイナーの役割とその仕事内容とは UXデザイナーの肩書きがインフレ気味 最近では多くのデザイナーがUXデザイナーになりたがっている。 どうしてそうなってしまったのだろうか?おそらく、その裏には我々デザイナーの悲しい存在価値がある。 企業におけるデザイナーの存在は、テクノロジーやマーケティングなど、「動くか動かないか」や「数字」で判断される分野とは異なり、デザインは常に数値化が困難な分野。その不透明さゆえに、ビジネスのフィールドにおいて我々の仕事はあまり真剣に捉えてくれない壁があった。 そこで出てきたのがデザインとビジネスを融合させ、結果に繋がるデザイン = 「UXデザイナー」という肩書き。その戦略が功を奏し、その重要性は爆上がり。その結果UXデザインのインフレを招いてしまっている。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 「UXデザイナー > Webデザイナー」は誤り 冒頭で触れたように、元々Webデザイナーをしていた人が、UXデザイナーにスキルチェンジしようとするケースが増えてきている。これは、UXデザイナーの方が市場ニーズが高く、待遇も良いからだろう。 しかし、その安易な考えは危険。 WebデザイナーはUXデザイナーより価値が低いわけではないし、UXデザイナーはWebデザイナーの上位互換でもない。そもそも役割が全く違う。 でも、多くの組織では、WebデザイナーをUXデザイナーの下に配属し、ディレクションをもらってWebデザインをしたり、UXデザイナーを名乗る上司からジュースを買いに行かされたりしている。 そんな日々を続ければ「いつかはUXデザイナーに」って思ってしまうのも仕方ないだろう。 […]

UXデザイナーは本当にデザイナーなのか

最近とあることに気づいた。UXデザイナーポジションへの応募が多いが、そのバックグラウンドがかなり多種多様なのである。 元々Webデザイナーをしていた人もいるし、マーケター出身の人もいる。デザインとは関係のない学部や職種出身の人もいるし、前職がスタバのバリスタのケースもあった。 UXデザイナーの役割多すぎ問題 言われてみれば、”UXデザイナー” のその役割と必要なスキルがあまりにも広く、そして曖昧なこともあり、非常にわかりにくいポジションになってる気がする。 仕事内容も、デザイナーと呼ぶにはかなり多くの非デザインスキルが求められる。正直いうと、そもそもこれってデザイナーの仕事なのか?と思うこともしばしばある。 そんなこともあり、そもそも一人のデザイナーがUXデザインに求められる全てをまかなうのは、非現実的なのではないかとも思ってきている。 そもそもUXって何? このややこしさの根本原因は “UX” という言葉の意味が分かりにくく、人によって微妙にずれているからかもしれない。 なので、まずはUXがなんぞやっていうところからクリアにしていこう。 UXとはユーザー体験の英語訳である “User Experience” を短く、かっこよく表現したもの。その定義としては: 人々が製品に接するとき、そしてその接点から得られる経験そのもの。UXは、成功率、エラー率、離脱率、タスク完了までの時間、完了までのクリック数などの指標で測定される。 が適切だと思う。また、ユーザビリティーの父と呼ばれるヤコブ・ニールセン率いるNielsen Norman Groupによると、 UXは、エンドユーザーと企業、サービス、製品とのインタラクションのすべての側面を包含する と定義されている。 お気付きになっただろうか?上記の定義のどちらにも “デザイン” という言葉が含まれていないことを。 そう。もうお分かりですね。ユーザー体験 (UX) には、ライター、リサーチャー、プログラマー、情報アーキテクト、マーケター、そしてデザイナーなど、多くの多様な部門や専門家が優れたユーザー体験を生み出す責任を負っている。そしてもちろん、最も重要なのが経営陣の役割だろう。 【わかりやすく解説】UXデザインの基本と主要概念 UXとCXは何が違うの ここで少し余談になるが、日本語でよく言う「顧客体験」とユーザー体験は同じ意味なのだろうか? この議論をもう少し専門的な言葉で表現すると “UXとCXって何が違うの?” になる。 CXとは “Customer Experience” の省略形で、顧客体験と訳される。それぞれは密接に連動しているが、UXがエンドユーザー、つまり製品やサービスを使う人に焦点を当てているのに対し、CXは顧客に焦点を当てている。簡単に言うと、CX はUXを内包している形になる。 多くの場合、顧客も製品やサービスを使用しているが、場合によっては誰かに代わって製品やサービスを購入している可能性もある。 例えば、多くの「おもちゃ」のメインユーザーは子供である。その一方で、その製品を購入する顧客は親になる。この場合、おもちゃにおけるUXデザインのターゲットが子供になるのに対して、CXデザインは購入する親にも訴求する体験を設計する必要が出てくる。 したがって、顧客が必ずしもユーザーではないことも理解してデザインするのがCXデザインである。 UXデザイン 主にプロダクトにおけるユーザーの体験の質を上げる CXデザイン 顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げる CXデザインとは?UXデザインとの違いとそれぞれの役割 優れたUXとは? ユーザー体験の価値を高めるのがUXデザイナーの仕事だとすれば、そもそも何を持って優れたUXって言うのだろうか? 優れたUXは、プロダクトの体験の総合値によってのみ実現される。例えば、Webサイトの読み込みが遅くてユーザーがイライラするような場合は、エンジニアがそれを改善する仕事になる。 コンテンツがユーザーの心に響かない、あるいは価値のある情報を提供できないなら、それはコンテンツライターの責任。また、ニュースレターの解約率が高いのであればマーケティング担当者が解決すべき問題になってくる。 このように、優れたUXを生み出すには、総合的なチームワークが求められる。自ずとUXデザイナーには、見た目の美しさや使いやすさだけではなく、それ以外の多くのポイントに触れる必要があり、自ずとその責任者も幅広い知識と経験が求められる。 UXピラミッド – UXデザインの正しい評価方法 – なぜUXの改善はデザイナーの仕事になったのか UXの品質改善には多種多様なタッチポイントの改善が必要なのに、なぜか全てデザイナーの責任とされちゃっている節がある。UXデザインのことがちゃんと理解できていない組織は特に。 なぜそうなっているのだろうか? おそらく、プロダクトのUXを改善するというと、多くの人はまず見た目デザインの改善を思い浮かべる。また、UXとユーザーインターフェース(UI)デザインを混同している人も多い。 それぞれは優れたUXを生み出すための戦略の一部であるが、それだけでは不十分である。 もう一つややこしいのは、多くのデザイン関連の出版物やメディアで、デザインとUXをあたかも同じような分野であるかのように表現していること。実際、デザインとUXは大いに重なりあっている。 でも、ユーザー体験の品質が悪い場合、それはデザインに原因があることもあるし、それ以外の要素を改善しなければならないこともある。 UXデザイナーの力だけでUXのその全てを改善できる場合もあるし、多くの場合はカスタマーサポート、価格帯、営業の態度など、それ以外の要素が原因になってる。 従って、UXとデザインを混同してしまうのは正しい考え方ではない。 UXデザイナーだけで解決できない問題が多い このように、UXは総合的な体験価値のそれぞれの要素で構成されているとするのであれば、デザイナー1人で解決できるわけがないだろう。 むしろ、組織のすべての部門がUXの理念を念頭に置いて協力しても、優れたリサーチやインタビュー、テストを採用しなければ、どんな製品も最高のユーザー体験を実現することはできない。 と言うことは、デザイナーだけで解決できる範囲は限られており、それ以外の専門家と一緒に物事を進めない限り、ユーザー体験の品質は改善されない。 なので、UXデザインはデザインだけでなく、それ以外の多くの役割の人たちの協力が求められる。 UXデザインプロセスの基本的な6ステップ 必要なのは総合的なUXチーム その一方で、組織内の複数の部署に対して「UX改善しておいてね」とだけ言ってても何も始まらない。 そこで、UXリサーチャーをはじめとするUXのスペシャリスト達が活躍することになる。それぞれ少しずつ異なる役割で構成されるUXチームは、もちろんデザイナーもいるが、それ以外も多種多様な役割のメンバーで構成される。 そのUXチームに関する役割は、マーケティングチームの構成に近いのかもしれない。チーム全体で、文章を書き、インタビューし、調査し、記述的・予測的な分析を行う。そして、 私たちデザイナーは、データ、洞察、その他の情報、推奨事項に基づいて、処方的なソリューションを提案していく。 従って、UXデザイナーと呼ばれる人たちは、UXをデザインする仕事というよりも、総合的なUXチームのメンバーの一人となり、デザイナー的観点からUX改善を進める役割になってくると思われる。 UXデザイナーという謎の役職名 このまで読めばわかると思うが、UXデザイナーの実態は周りのチームメンバーたちの構成によって大きく変化する。 なので、A社のUXデザイナーとB社のUXデザイナーでは、その仕事内容が大きく変わるし、エージェンシーと事業会社でもその立ち位置が全く異なることも少なくない。 UXの改善にはかなり総合的なチームが必要になってくるのに、なぜかUXデザイナーの人が全てそれを行うイメージがいまだに多く広がっている。そして、おそらく本人たちが一番困惑していると思う。 もはやデザイナーとは職種ではなくマインドセットである そもそもデザイナーの仕事って何? ここで一度 “デザイナー” と呼ばれる人たちの仕事内容をおさらいしてみよう。 そもそもここ数年でデザイナーの重要性が高まりすぎて、猫も杓子もデザイナーのキーワードが乱用され、その実態が少しぼやけてきている気がする。 デザイナーというと、絵を描いて形だけを決める仕事だと勘違いしている人が多いのだが、実はそれらは最終アウトプットのごく一部であり、本来デザイナーの仕事というのは、与えられた制限の中で、求められる最大限の結果を生み出すプロセスのその全てに関わる職業である。 実はデザイナーの仕事のうち、3分の2はコミュニケーションであると言っても過言ではない。 デザイナーの仕事の最初の3分の1が、正しい人を探してその人から正しい情報を引き出す事で、次の3分の1が実際のデザイン作業。 そして最後の3分の1が出来たものの情報を正しい人に正しく伝える事。この行程を経て、はじめてきちんとしたデザインが作り上げられる。 つまり、最初と最後の3分の1ずつは、コミュニケーション能力にかかっている。”黙っていても良い物を作れば売れる”という時代は終わり、作ったものの見せ方や、伝え方と言ったマーケティング、プロモーション、プレゼンテーションの部分もデザイナーが考える必要がある。 その普遍的なデザインプロセスが、UXデザインにも密接に関わってきている。 【改めて基本を解説】デザイナーの役割とその仕事内容とは UXデザイナーの肩書きがインフレ気味 最近では多くのデザイナーがUXデザイナーになりたがっている。 どうしてそうなってしまったのだろうか?おそらく、その裏には我々デザイナーの悲しい存在価値がある。 企業におけるデザイナーの存在は、テクノロジーやマーケティングなど、「動くか動かないか」や「数字」で判断される分野とは異なり、デザインは常に数値化が困難な分野。その不透明さゆえに、ビジネスのフィールドにおいて我々の仕事はあまり真剣に捉えてくれない壁があった。 そこで出てきたのがデザインとビジネスを融合させ、結果に繋がるデザイン = 「UXデザイナー」という肩書き。その戦略が功を奏し、その重要性は爆上がり。その結果UXデザインのインフレを招いてしまっている。 UXデザイナーとは?仕事内容、求められるスキル、活躍するデザイナーとは 「UXデザイナー > Webデザイナー」は誤り 冒頭で触れたように、元々Webデザイナーをしていた人が、UXデザイナーにスキルチェンジしようとするケースが増えてきている。これは、UXデザイナーの方が市場ニーズが高く、待遇も良いからだろう。 しかし、その安易な考えは危険。 WebデザイナーはUXデザイナーより価値が低いわけではないし、UXデザイナーはWebデザイナーの上位互換でもない。そもそも役割が全く違う。 でも、多くの組織では、WebデザイナーをUXデザイナーの下に配属し、ディレクションをもらってWebデザインをしたり、UXデザイナーを名乗る上司からジュースを買いに行かされたりしている。 そんな日々を続ければ「いつかはUXデザイナーに」って思ってしまうのも仕方ないだろう。 […]

2022年注目のブランディングトレンド

2020年から2年近くのパンデミックの影響により、旅行業を中心に多くの業種が業種が生き残りのために大きな変化を強いられた。その中には、ブランド価値を最大で20%も失ったところもある。 その一方で、なかなかリアルな体験を提供しにくい時代に、デジタルを中心に上手なブランディングを成功させた例もある。消費者の行動が変化したことに合わせ、新しいブランド戦略を進める必要性が高まっている。 ブランディングの重要性は以前に比べ、何倍にも増していると言えるだろう。 ブランディングとは? ブランディングとは、企業が消費者やユーザーと信頼関係を構築するためのプロセスである。代表的なのがロゴであるが、これはブランディング全体の一部でしかない。 そのブランドのビジョン、ミッション、目的を正確に伝えるための手段として、ビジュアル・アイデンティティやデザインから、メッセージングや声のトーンまで、すべてを包含するのがブランディングである。 今さら聞けないブランディングとは なぜブランディングが重要なのか? ものが溢れ、デジタルチャンネルがここまで普及した現代において企業が競合との差別化を実現する方法はどんどん少なくなってきている。 製品の性能や価格だけで勝負するにはあまりにもしんどくなるし、かといって営業やマーケティングだけに頼るのもコストがかかりすぎる。 そんな時にこれまでは何かと遠回りだと思われていたブランディングの重要性に着目する企業がどんどん増えている。 優れたブランドはユーザーからの第一印象から長期的なファン構築まで「なぜこの企業の商品を買いたいか」という理由づけを行ってくれる。逆にそれがないと買う理由も見当たらず、素通りされてしまう。 意外と知らないマーケティングとブランディングの違い 2022に注目すべき大きなブランドトレンドをご紹介 そんなブランディングが今までにないほど重要になった時代に合わせ、2022年の最新トレンドをいくつか紹介していこうと思う。 どんどんミニマルなデザインに ファッションブランドのロゴを中心に、ミニマルなロゴデザインを採用し始めている。 ミニマリズムはこの10年のデザイントレンドであり、ビジュアルアイデンティティやメッセージングなど、ブランディングも適用されている。 デジタル世代のユーザーは直接的なコミュニケーションを求め、ブランドを理解するための両力を最小限に抑えたいというニーズがある。 ブランド側もこうした顧客動向を踏まえ、曖昧さを排除し、明快なコミュニケーションを実現するために、多くの企業のビジュアル・アイデンティティが非常にシンプルな表現を採用する傾向が見られる。 筆記体のフォントやその他の視覚的な要素を廃し、強くシンプルな書体を使ったロゴタイプを採用したロゴが多くなってきている。 これによって、ロゴの適用が容易になり、顧客もブランドにとってもコミュニケーションコストが軽減される。 ミニマルデザインのススメ – 基本知識と7つのヒント レトロスタイルの採用 ミニマルなスタイルと共にトレンドとなっているのがレトロスタイル。立体的なデザインスタイルから、フラットなスタイルを採用するブランドが増えてきている。 そして70年代風レトロや、バウハウス調のビジュアルデザインを通じて、グラデーションでゴテゴテになった現代の多くのブランドとの差別化を図るのが狙い。 また、バーガーキングのリブランディング事例に見られるように、ロゴをあえて過去のものに戻すなど、少し心が休まるようなブランドデザインを採用する企業も出てきている。 2021年にロゴをリデザインした7のブランド ブランディングの核はストーリー 消費者は、ブランドの価値観や信念が自身のライフスタイルにどのように「フィット」するかによって、そのブランドを購入するかどうかが決まると言っても過言ではない。 特に本質を見抜くスキルの高いZ世代は、誇大広告や “修正された” メッセージに不信感を抱く。特に広告のメッセージングと実際の行動がずれている場合は、一瞬にして信頼を失ってしまう。 それ故にブランドのミッションやバリューを可視化し、そこに一貫性のある活動をし、それをストーリーとしてクリアに見せていく必要がある。 それには、ポジティブな変化をもたらすというコミットメントを伝えること、そしてそれを実行に移すことが重要になってくる。 そして、なるべくプロモーション広告よりも、社会へのメッセージや信念をストーリーとして発信する方が効果が高い。 例えばこのNETFLIXのビルボード。 広告の掲示に利用されるパネルに表示されたのは「夢を諦めんな!俺たちだって最初はDVDレンタルから始めたんだ!」の文章。 今でこそオンラインで動画を視ることが一般的だが、NETFLIXが創業した1997年当時はオンラインでDVDをオーダー、郵送するサービスを提供していた。 この創業ストーリーは、どんな広告よりもパワフルに人々の心に響く。特に力強いメッセージを添えると。 人々の心を掴むブランドストーリー 5つのポイント 正しくて透明なブランド この1年、社会的な問題がクローズアップされ、さまざまなソーシャルメディア上で人々がよりオープンに意見を述べたり、強い立場を取ったりするになった。 それに合わせ、消費者は、ブランドの「社会意識」やブランドが支持する価値観に積極的に目を向けるようになった。 マッキンゼーが行った調査では、消費者の61%が、危機の際にブランドがどのように対応するかによって、危機が去った後もそのブランドを買い続けるかどうかが決まると答えている。 消費者は今、ブランドが社会的な問題に対しての正しい対応を求め、その活動内容を透明化することを期待している。 社会に配慮し、責任を持っているブランドは、消費者の信頼をより早く得ることができ、その結果、ブランド価値の上昇を見ることができるだろう。 パタゴニアは、「言うこと」と「やること」を一致させたブランドの好例だろう。 パタゴニアのウェブサイトは、環境への影響を最小限に抑えるために同社がとっているステップをブログ記事、ビデオ、統計などで明確に紹介し、同社のプログラムと進捗状況を説明している。 このコンテンツとメッセージは、パタゴニアの価値観と変化への真正なコミットメントを強く反映している。 アイコン化していく企業ブランド 企業のDXげ進むにつれ、消費者への接点とサービスのデジタル化が進んでいる。これは同時に、多くの企業がパソコンやスマホの中にその存在を移し始めているということでもある。 言い換えると、企業の ”アプリ化” が進み、同時にブランドがどんどん “アイコン化” していくということでもある。 それに合わせ、多くのブランドロゴが通常のデザインに合わせ、アイコンバージョンも準備している。 このように、最近のブランドロゴは、複数のデバイス向けに可変し、ユーザーにとってアイコンとして認識されている。 既存ブランドも新規ブランドも、アイデンティティを作成する際には、アイコンバージョンも忘れずに準備したい。 ロゴもレスポンシブの時代へ ハイパーモダン・ブランディング そして最後に冒頭のレトロスタイルの真逆を行くトレンド。2021年後半から話題になり始めたメタバースやWeb3の登場で、ブランドデザインにも少なからず影響を与え始めている。 NTFやCryptoなど、かなり近未来的な概念が適用されていることもあり、そのブランドデザインもかなり未来的。 80年代に流行した原色のネオンカラーや、映画トロンを彷彿とさせるデザインスタイルで、これから始まる大きな革命を予感させるイメージが彩られている。 “Web3っぽい” デザインの特徴としては、紫外線で浮かび上がるイメージや、デジタルネットワークや、神経パルスを思わせるダイナミックなパターン、神秘的なシンボルや有機的ななラインを採用する。 Web3っぽいデザインの特徴: カラフルなグラデーション 3D要素 可視化されたリアルタイムデータ インタラクティブなコンテンツ 宇宙っぽさ フワッとしたローディング要素 有機的な曲線 2022年 UXデザインに訪れる変化予測 まとめ: 2022年はブランディングにとっての変革年 パンデミックの危機は世界経済を低迷させ、この2年間はほとんどすべての企業が生き残りをかけて奮闘しなければならなかった。そして2022年はそこからの回復&飛躍が期待される。 ブランディングのトレンドは常に変化し続けるのが常だが、2022年は特に大きな転換期となりそう。 2022年を迎える今、ブランドは、消費者行動の変化に対応し、より良い関連性を保つためにブランディング戦略を再考することが重要になってくる。 今回紹介したカラフルで魅力的なブランディングデザインのトレンドは、2022年が活気に満ちたものになることを強く示唆していると感じる。我々btraxもブランディングサービスの内容を大幅改善し、社会にポジティブな影響を与えられるように邁進していきます。

UXデザイナーになるために不可欠な10のスキル

はじめまして。12月からbtraxで、インターンとして働かせていただいている谷口です。前職では、沖縄の会社で2年半ほどUIデザイナーとして働いていました。2021年4月からカナダ・バンクーバーの語学学校に通い、11月からUXデザイナーのインターンとしてbtraxに加わりました。 僕自身、UIデザイナーからUXデザイナーへのジョブチェンジを目指しています。しかし、UXデザイナーのスキルは幅広く、定義が難しいと感じています。そこで、今回はこの記事を通してUXデザイナーに不可欠な10のスキルをまとめたいと思います。 UXデザイナーとは?その役割と仕事内容, 求められるスキル UXデザインとは? そもそも、UXとは User Experience (ユーザー体験) の略で、ユーザーが製品やサービスを介して得られる体験そのものを示しています。 また、UXデザインとはユーザーが製品やサービスを通して得られる体験をデザインし、そのサービスの価値を見出してもらえるようにすることです。 UXデザイナーは、観察やインタビュー手法を用いてユーザー自身も気づけていないペインを解決し、良い体験を設計することが大切です。UXを向上させることで、ユーザーに製品やサービスを長く使って貰えたり、他サービスとの差別化を図ることができます。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ UXデザイナーに求められる10のスキル 1. UXリサーチ サービスが継続的にグロースしていくには、ユーザーが抱えるペインを深く理解する必要があります。 UXデザイナーは、ユーザーのインサイトを軸に、サービスの使用前と使用中、使用後の体験を設計します。また、マーケティングやカスタマーサポート部門と協業しながらユーザーにとって最適な体験を設計していきます。 ユーザーのインサイトを探るのに必要となるのが、UXリサーチです。UXリサーチは、開発プロセスのどの段階においてユーザーや顧客から収集したインサイトをサービスの意思決定に役立てるために行います。 UXリサーチスキルを身につけていくには、インタビューやユーザビリティーテストなどのリサーチ手法をブートキャンプや書籍など、実践を交えて学ぶ必要があります。 また、その学んだスキルをすぐに実務で活用できれば良いのですが、未経験者の場合、なかなかユーザーインタビューをする機会を作ることは難しいかもしれません。 そこでオススメしたい取り組みは、日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることです。その際に重要なポイントは、リサーチ手法を活用して「ユーザー自身も気づいていない潜在的なニーズ」を把握することです。 例えば、新しいカメラを買ったと話す友人に、購入の決め手をそれとなく聞いてみた結果、彼は、カメラ本体の機能よりもサイズを重視していることがわかったとします。 そこで、その点をさらに深堀りしてみます。その結果、手軽に持ち運べてスマホよりも高画質の写真が撮れることが重要だというインサイトを導くことができた、などです。 日々の生活で少しだけリサーチ手法を取り入れることで、リサーチスキルは向上できます。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ 2. コラボレーション UXデザイナーは、日頃から様々なメンバーと協力する必要があります。 例えば、経営層からヒアリングしてサービスの目的やその体験価値を定義したり、プロトタイプ作成後、エンジニアとさらに具体的なサービスに落とし込み、マーケターと共に分析やプロモーションの戦略などを考えたりします。 他のスキルを持ったメンバーやチームとのコラボレーションは、自分のスキルを補完でき、異なる視点でサービスや製品について議論できます。その結果、見落としていた気づきや最適なアイディアが思いがけず生まれることもあります。 ここで大切なことは、マーケティングやエンジニアリングなど、他分野に関する基礎知識を身につけておくことです。基礎知識を身につけておくことで、議論を深く行えたり、意思決定のスピードが上がります。 デザイナーがファシリテーションをしてみた 3. ワイヤーフレーム & プロトタイピング ワイヤーフレームとは、画面レイアウトのことを指します。 ワイヤーフレームのメリットは、多くの時間を割くことなく、ユーザーのニーズに基づいてページ要素の優先順位を決められることです。また、ワイヤーフレームを敲き台に議論を重ねることで、見落としていたニーズを確認することができます。 プロトタイプは、ユーザビリティテストにおいてユーザーのペインポイントを特定し、解決するために不可欠なものです。 UXデザイナーはプロトタイプをテストすることで、潜在的なニーズやフィードバックが得られ、デザインを最適化することができます。 ワイヤーフレームやプロトタイピングのスキルを身につけるためには、実際に手を動かして試行錯誤することが大切です。紙とペンに始まり、ソフトであれば、Adobe XDやFigmaを使うことによって、すぐに画面のレイアウトを組むことができます。 デザイン思考を学ぶ Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 4. ライティング 優れたライティングは、ユーザーに正しい情報を的確に伝えることができ、より良いUXを提供します。ユーザーが製品やサービス内で、迷わずタスクを実行してもらえるよう、言葉をデザインすることがUXデザイナーの仕事では重要です。 言葉は気軽に発することもできると同時に、誤解も簡単に生んでしまいます。そのため、UXデザイナーは製品やサービスとユーザーのインタラクションを、入念に言葉を通じて設計することが重要です。 例えば、アプリやWebサイト内のボタンのラベリングは、実は、UXデザイナーが考えることが多いのです。 なぜなら、UXデザイナーはユーザーとのあらゆるタッチポイントを考慮する必要があり、ボタンのラベリングも含めてUI/UXデザインと言えるからです。 デザイン視点で心を掴む UXライティングの基本5項目 5. ビジュアルコミュニケーション ビジュアルコミュニケーションは、UXデザイナーにとって必要なスキルの一つです。 文字だけではなく、ビジュアルを活用してコミュニケーションを図ることで、適切なタイミングでユーザーの注意を引いたり、情報の理解を高めたりすることができるので、ユーザビリティに大きく寄与します。 また、ビジュアルコミュニケーションには、レイアウト、カラー、タイポグラフィ、アイコン、などデザイン理論の理解が必要です。 ビジュアルコミュニケーションを学ぶには、街中の標識や広告、インフォグラフィックなどを観察することがオススメです。 「なぜこの色が使われているのか?」「なぜこのようなレイアウトやアイコンが使われているのか?」などを考えることで、次第に経験値が貯まり、実際のビジュアル作成に活かすことができます。 感覚に訴えるコミュニケーション – ビジュアルファシリテーションのすすめ – 6. 共感力 UXデザイナーは、ユーザーに共感することで、自分とは異なる視点やニーズを深く理解することができます。ユーザーが何を見て、何を感じ、何を体験しているのかを理解しなければ、良いデザインはできません。 共感は対象を深く理解して、最適な方法を提示するために必要な要素です。しかし、実際にユーザーに共感することは簡単ではありません。 ユーザーに共感するためには、同じことを体験をしたり、質問を問いかけて深堀りしていくことで、事象の解像度が上がり深く共感することができます。 デザイン思考の第一歩:共感力を高める3つの方法 7. インタラクションデザイン インタラクションデザインとは、ユーザーと製品の間の相互作用をデザインすることです。アプリやWebサイトなどのソフトウェア製品を指すことが多いです。 例えば、ボタンをクリックして、ダウンロードや画面遷移などもインタラクションデザインに含まれます。 インタラクションデザインの目的は、ユーザーが可能な限り最善の方法で目的を達成できるような製品を作ることです。 良いインタラクションは、非常に気づきにくい性質を持ち合わせています。違和感なくスムーズに操作を行えるため、認識しづらいのです。反対に、悪いインタラクションというのは、ユーザーも違和感を抱きやすいものです。 UXデザイナーは、良いインタラクションに気づく力を養うことが大切です。ビジュアルコミュニケーションしかり、サービスの登録や申込みがスムーズに行えたときに「なぜ違和感なくスムーズにできたのか?」などを深堀りしていくことが日頃から行えるトレーニングになります。 UXデザイン向上につながるUI評価の10項目 8. コーディング 主にWebサイトやアプリなどは、ビジュアル面はHTMLやCSS、機能面はSwiftやJavaScripなどのコードによって実装されています。 UXデザイナーが機能の仕組みを理解することによって、プログラマーやエンジニアと円滑にコミュニケーションを取ることができ、早く正しく意思決定を行うことができます。 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる 9. 定量分析 UXデザイナーは、インタビューなど定性的なリサーチを行う機会が多くあります。しかし、それだけでなく、数字をベースに分析する定量的な視点も必要です。 「新機能はユーザーに継続的に使用されているか?」「この施策は上手くいっているのか?」といったことも、数字は客観的な事実として結果を示してくれます。 これが、正しい現状を把握して、明確な次の打ち手を考えることにつながります。 また、改善を行う際にも、裏付けとなる数字が提示されることで、他のチームやメンバーにも納得感が生まれ、円滑に改善を進めることができるというメリットもあります。 10. コミュニケーションスキル コミュニケーションは、UXデザイナーにとって重要なスキルです。 クライアントやプロジェクト関係者へのプレゼンテーション、ユーザーへのインタビュー、チームメイトとの共同作業など、UXデザイナーはアイデアを的確に伝えフィードバックを貰うスキルが必要です。 こいつできるな!と思わせるUXデザイナー 7つのソフトスキル おわりに UXデザイナーになるために不可欠なスキルについてお分かりいただけましたでしょうか。 UXデザイナーに求められるスキルは多岐に渡ります。この記事を通して、UXデザイナーが求められるスキルを再確認できたり、UXデザイナーを目指すきっかけに少しでも貢献できていたりすれば嬉しいです。 btraxでは、UXデザインを軸とした様々なデザインサービスを提供しています。ご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

デザイナーがコロナ禍にサンフランシスコに行って感じたこと

筆者は普段、btraxの日本オフィスで働くUI/UXデザイナーだ。本社がサンフランシスコにあるにもかかわらず、自分はアメリカに足を踏み入れたことがなかったのだが、今回コロナ禍でのサンフランシスコへの出張をすることになった。 初渡米ということもあり、サンフランシスコの街の中にあるサービスの便利さに驚かされることが多かった。また、コロナに対する対応も素晴らしく、あまり不安を感じずに生活することができた。 しかし、中には日本と比べると劣っている部分もあった。そこを補おうとしているためにサンフランシスコ発のサービスはUXのクオリティが高いのではないかと思わせるポイントもいくつかあった。 この記事ではそんな筆者がアメリカで3ヶ月ほど生活してみて気づいたことや、学びを書いていく。 安心感と気軽さがあるワクチン接種 筆者はワクチンを打たずにPCR検査のみでアメリカに入国したため、ワクチンはアメリカで接種しようと考えていたが、ここで驚きがあった。 まず、筆者のような外国人であってもワクチン接種のための病院の予約は必要ない。そもそもTargetというアメリカのスーパーの中に併設されているCVS(薬局)のレジの横がワクチンの接種会場であり、とてもカジュアルな感じだった。   そこに出向き、ワクチン接種をしたい旨を伝えるだけで、すぐにワクチンを用意してくれる。また、日本外でのワクチン接種ということで不安もあったが、打つ前に確認するべき事項が書かれた書類が様々な言語に対応したものが用意されており、とてもスピーディーに安心して受けることができた。 こういった、アメリカ人だけにではなく、アメリカにいる人全てに対してコロナを収束させるための施策を平等に行うことは、アメリカ国民にとっても良いことだと思った。また、そのためにワクチン接種を気軽で誰にでも安心してできるような環境づくりの方法は、さまざまな人種が住まうアメリカならではの合理的な施策だと感じた。 PCR検査の気軽さ PCR検査もとてもスムーズであった。筆者が利用したのはcarbon healthという企業のものだ。空き地のような場所にテントを張っただけの最低限の施設ではあるが、検査会場がいくつかあり、最寄りの検査会場を探すのもホームページからすぐなので会場選びには困らなかったし、すぐに行くことができた。 検査自体も無料で、予約も不必要。必要な情報も住所と名前、生年月日、結果を受け取るためのメールアドレスだけ。特別な準備も必要なかった。 日本で検査をしようとした際にはまず検査ができる病院の情報が1つにまとまっていないので、検査を実施している病院探しから始まり、予約が必須で予約時間に行ってもそこそこ時間が取られるということがあったがそんなストレスがここでは感じなかった。 そのため、検査へ行くために予定を立てる必要が無くフラッと行って検査ができるのはとてもユーザーにとってストレスフリーと感じ検査へ行くことの積極性に大きく貢献していると思った。 ヘルスケアのDX – Carbon Healthを試してみた【UX分析】 移動手段の選択肢が多い サンフランシスコは坂が多く徒歩での移動は大変不便である。かといって電車やバスは遅れることが当たり前なので基本移動はUberか自転車、電動スクーターなどのマイクロモビリティに限られていた(自家用車は持っていなかった)。 電動スクーターは日本では道路交通法などが厳しく、乗ることを躊躇っていたがサンフランシスコではそこのルールが日本に比べて規制が少ないこともあり、大変重宝した。 そもそもアメリカの道には、自転車と電動スクーター用の道路が、自動車道路とは別にほぼ必ずある。そのため、歩行者や車を気にすることなくスムーズかつ安全に移動ができた。 また、筆者はUberの電動スクーターのサービスを利用していた。返却場所は自由なため、返却場所を探す手間がなく、借りるときのハードルが低いと感じた。また、借りる際は近くに置かれているスクーターがマップ上に表示されるため、一番近くのものを選ぶだけだった。 ちなみに、これらシェアサイクルサービスの始まりとも言える「Bird」について調べると、サービスをサンフランシスコ市の許可を待たずして展開したらしい。サンフランシスコ市はそのサービスの便利さから、法律に影響があることに関しても柔軟になおかつ迅速に対応していったとのこと。 シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 市の許可を待たずしてサービスをローンチさせることは、日本で生まれ育った筆者からすれば、考えられないことであると思ったが、生活をする上で便利であるため、結果的に市も協力したというエピソードがとてもスタートアップの聖地らしいと思った。 逆にわかった日本のすごいところ ここまでで、サンフランシスコの便利だった点を書いてきたが、逆に、生活に慣れていくにつれ、日本の方が優れている点も見えてきた。 宅配がちゃんと届く 筆者は出張中にUSのメルカリを利用して商品を出品していた。実際に商品が売れたため、バーコードを印刷して商品に貼り付けUPS(配達業者)経由で発送した。 すると後日、商品が届かないと購入者からクレームの連絡が来た。アプリを確認すると、発送完了のお知らせは受け取っているが、肝心の商品がUPSの倉庫から動いていないと出るのだ。 そこでUPSに問い合わせたが、そもそも商品が倉庫にないとのこと。後にネットで調べるとアメリカでは宅配業者や倉庫の労働者がお金になる商品を盗んだりすることがあるらしく、今回の場合もこの可能性が高いということで話は終わった。 この件で思ったのが日本での商品が予定日にしっかり届く(しかも配達日の指定もできる)というのは、とてもすごいことである、ということだ。 接客サービスの質の平均が高い 日本における飲食店などのサービスは、クオリティが高く、なおかつ店員によってばらつきがあることも比較的少なく、一定の高水準であると感じた。一方、サンフランシスコでは、どんな人に接客してもらうかでサービスの品質が大きく変わると思った。 特にファーストフード店では顕著で、日本の場合はどんな人でも丁寧に接客してくれる。個人的には日本のマックの接客は丁寧すぎると感じるほどに。 しかし、サンフランシスコでは店員がぶっきらぼうなことがある。筆者がマクドナルドに行った際は、どうやら店員の機嫌が悪かったらしく、あからさまにめんどくさそうに対応されたことが記憶に強く残っている。 また、Uber eatsを使った際にもなかなか商品を届けてくれない人もいた。 そういった経験から、サンフランシスコではどんな人に配達や接客がされるのかが結構気になったゆえにUber eatsなどの配達員へのレビューはサンフランシスコでは比較的重要な要素だということに気づいた。 アメリカ生活から学んだこと 特に筆者はサンフランシスコでの生活で、現地で暮らしている人がサービスに合わせるというよりは、サービスが暮らしている人のライフスタイルに合わせていると感じる場面が多いと感じた。 これは一見当たり前のことをいっているようだが日本では逆に個人の都合を後回しに頑張ってサービスを使いこなそうとしている、もしくはサービスのやり方に従おうとしていることが多いのではないだろうか。 ユーザー中心設計 コロナのワクチン接種では、アメリカの人種が多いという特性に合わせ、ワクチン接種時に不安を与えないような施策があるだけではなく、摂取会場にいったら必要なものは身分証明書くらいですぐにワクチンを打ってくれる。 日本でのワクチン摂取までのフローを見るとまず摂取券が必要だったり、会場も住んでる地域によって異なる。 これを見るとどちらかというとワクチンを提供する側の都合をユーザーの都合より優先しているように見える(日本はワクチンをアメリカから買っているため仕方ないことなのかもしれないが)。 お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い 人に頼らずサービスで体験の質をあげる 他にも改めて日本人は真面目であるとサンフランシスコで宅配や接客サービスを受けて感じた。反対に日本に比べて「不真面目」な人が多いサンフランシスコで良いUXを提供しようとすると、誰にでも完全に同じ機能を提供できるアプリなどの機械に頼るべきであるため、UXのクオリティを上げることは日本以上に重要視しているのではないだろうかとも考えた。 UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割 バイアスを捨てることがデザイナーには重要と考える これまで自分が日本国内に留まっていた時は「ユーザーは皆真面目である」という暗黙の了解があった上でサービスのデザインを行っていたため、デザイナーの理想をユーザーに押し付けていた面があったのではないかとこの出張を通じ強く反省と共に感じた。 また、優れたUXデザインや人間中心設計をすることとはユーザーの歩く道をデザイナーが決めるのでなく、ユーザーが歩いた道をデザイナーが後から整えるくらいのほうがいいのかもしれないとも思った。

UXデザインにおける「けもの道」現象を考える

先日サンフランシスコ市内の公園を歩いていたら、ふとあることに気づいた。本来設計されている道とは異なるルートが作られているのだ。そう、アスファルトで舗装されている通行用ルートではなく、芝生になっている箇所を複数の人が通ったことによる近道、いわゆる「けもの道」が生成されている。 これはデザイナー的観点から見るとかなり興味深い。というのも、ユーザーに対して元々設計されていた「導線」とは異なるルートをユーザーが選択した結果、いつの間にかそのルートの方を他のユーザーも利用するようになった。これは明らかにデザインミスでは無いのか?と。 けもの道 (Desire Paths) について 英語ではこの現象をDesire Pathsと呼び、Wikipediaには下記のような説明がされている。 公認されていない自転車道や歩道のことで、定期的に自転車や人間が通ることによって時間をかけて作られた道のことを指す。多くの場合、道端の草地の中に現れたもので、公式ルートの近道になる。 多くの人々や自転車が公式ルートの近道をするために、それぞれ独自に同じルートを同じような方法で通行することによって現れる。一旦その痕跡が見られるとさらに多くの人がそこを通るようになり、道が生成されていく。 駅前のTSUTAYA現象 このような「けもの道」が生成されるのは芝生だけではない。大都会の東京でも多くの人が近道を探し、本来の設計とは異なる導線を作り出している。 以前に我々btraxの東京オフィスが六本木にあった頃、地下鉄の駅を出て通常ルートを通ると階段と坂道があり、かなり面倒だった。そこでスタッフの一人が「駅前のTSUTAYAの店内を抜ければかなりの近道になりますよ」と革新的なアイディアを発見。 それ以来スタッフ全員がTSUTAYA経由で通勤をしていた。奇しくもTSUTAYAの店舗がけもの道の役割を果たした事例であるが、都会の多くの店舗がそれを見越してロケーションを決めている可能性もあるだろう。 デザイン的観点からDesire Path現象について考える これをデザイン的観点から考えてみよう。この現象は、デザインの意図とユーザー体験が相反する場合に生まれる状態。デザイナーがユーザーがこう使うだろうという想定と、実際のユーザーが望む利用方法がズレている場合、最終的にはユーザーの解釈が正となる。 言い換えると、けもの道はデザイナーの設計とユーザーニーズが相反した際に生成され、最終的にはプロダクトやサービス、UXデザインの正しい利用方法はユーザーが決めることになる状態に似ている。 UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ この現象をUXデザインに当てはめてみる このように設計者の意図と、ユーザーの行動が異なる状況はUXデザインの現場でもかなり頻繁におこている。例えば、Webページのナビゲーションではなく、毎回サイトマップページに行き、そのリストからページにたどり着くなど、デザイナーが本来想定していた導線をユーザーが理解してくれない事が往々にして発生する。 言い換えると、ユーザーはデザイナーが用意したまどろっこしいルートではなく、手っ取り早く僕的にたどり着ける、より直線的な近道が欲しいのだ。 この状況は、UIにおけるボタンの位置や、ページのレイアウト、ボタンの名称、コンテンツ文章、デザインヒエラルキーなどが不適切の場合に起こりやすい。それを避けるためには、事前にどこにけもの道ができそうかを理解しておくか、リリース後のユーザーの動きを観察し、改善していく必要がある。 けもの道を見つけるのがユーザーリサーチの役割 これを避けるために行うのがユーザーリサーチである。ユーザーリサーチでは、ユーザーが何を求めているかと同時に、どのような利用方法が最も適切であるかを探る。 言い換えると、ユーザビリティーテストやヒートマップなどを活用したユーザーリサーチは、本来のデザインの意図とは異なる「けもの道」がどこに隠されているかを特定するためにも、重要なプロセスになってくる。 実践デザイン思考!量より質を極めるユーザーリサーチ基本のキ けもの道理論を活用したディズニーランド 世界初のUXデザイナーとも言われているウォルト・ディズニーは、ディズニーランドを設計する際にこの理論を採用している。彼はチームのデザイナーやエンジニアに対し、ディズニーランド来客者の「動き」に注目するように指示をした。 そして、オープン直後からユーザーがどのようなルートを通ってアトラクションにたどり着くかを観察。多くの人々は舗装された道ではなく、より短距離で移動可能な芝生を通っていった。それを目の当たりにしたエンジニアは芝生の周りに柵を設置することを提案したが、彼は逆に芝生内に道を作るよう伝えたという。 ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは 検索エンジンはネットユーザーにとっての「けもの道」 現在ではあまりにもナチュラルすぎて気づかなないかもしれないが、パソコンのブラウザーを開いて最初にYahooやGoogleが表示されているのも、ユーザーが求めるけもの道を提供している。 いきなりアドレスバーにURLを入れるよりも、検索ワードを入れた方がよっぽど使いやすい。しかし、ネットが普及し始めた当時にサイトにアクセスするには、URLを入力する必要があった。 従って、当時のブラウザーはアドレスバーが本来想定されていたユーザー導線で、それに対してより楽な近道を提供した検索エンジンがけもの道となり、現在の状態に辿り着いている。 ユーザーのけもの道によって淘汰されたiTunesのCover Flow View iPodとiTunesがリリースしてからしばらくはレコード店でジャッケットを見るかのように、曲のカバーアートをフリップできる”Cover Flow”という機能が存在していた。その見た目の美しさとインパクトでスティーブ・ジョブスのプレゼンではオーディエンスから歓喜の声が上がった。 しかし、実際に使い始めるといちいち画面上で一曲ずつフリップしていくよりも、手っ取り早くリストから選んだ方が早いし楽だった事で多くのユーザーは見た目的にはインパクトの少ないリストビューから曲を選んでプレイし始めた。これも、デザイナーのこだわりが速攻ユーザーのけもの道によって使われなくなった例だろう。 けもの道で成長したTwitter この「けもの道現象」を上手に利用し、成長させたサービスがある。Twitterだ。 現在はTwitterの正式機能になっている@や#, RT などはサービスリリース当時は実装されていなかった。そこでユーザーは他のユーザーに対して返信する際に”at”と記入し始めた。その後下記のツイートで初めて “@” を使うユーザーが出現し、その後、正式な機能になった。 @ buzz – you broke your thumb and youre still twittering? that’s some serious devotion — rsa (@rsa) November 3, 2006 同じく、#もユーザーが勝手に利用し始め、最初は “Channel” や “Pound”などと呼ばれていたが、最終的にハッシュタグの名でサービスに実装。下記が初めて#を使ったツイート。 how do you feel about using # (pound) for groups. As in #barcamp [msg]? — Chris Messina ᵍᵐ (📜,🕯️) (@chrismessina) August 23, 2007 RTも正式な機能ではなかったが、とあるユーザーがReTweetと記入し、その概念が広がることとなり、正式な機能になった。ちなみにその方のプロフィールには「偶然RTを発明した」と記載されている。 ReTweet: jmalthus @spin Yes! Web2.0 is about social media, and guess what people […]

まるで宝箱!? アメリカで話題の「サブスクリプションボックス」とは?

COVID-19で需要が拡大した通称「サブスク」ことサブスクリプション。日本でもそのサービス幅は広がりを見せている。代表的なものは、Netflix、Apple Music、Spotifyなど。こういったものはもはや生活になくてはならないサービスになっている方も少なくないのではないか。 最近では水、食品、サプリメントなどが定期的に家まで届くサービスも登場してきており、コロナ禍の「おこもり需要」に応えている。 今回はそんなサブスクリプションサービスの中でも、アメリカの「サブスクリプションボックス」に焦点を当ててご紹介する。サブスクリプションボックスとは言葉の通り、自分が注文した物がボックスに入って家まで届くサービスのことだ。 「ボックス」であるメリットは? 商品だけが届いてもサブスクリプションとしても機能を果たすが、わざわざボックスに入れて提供しているのは何故か。その理由は大きく2点だ。 1. セレンディピティ セレンディピティとは、思わぬものを偶然に発見すること。「こんなのが欲しかった!」という予期していなかったプロダクトに出会える可能性があるところはサブスクリプションボックスの一つの特徴だ。 サブスクリプションボックスには何が送られてくるかわからないものも多い。新たな出会いのワクワク感があるのは「開けるまで分からない」サブスクリプションボックスの強みだ。 パーソナライズの死角とデジタル・セレンディピティ 2. ワクワクする開封体験 ボックスを開けるとき、まるでプレゼントを開ける時のような体験ができるのも特徴の一つ。入っているものがわからない時はもちろん、何が入っているかわかっている場合も、自分が選んだものが入っている箱を開けるワクワク感が体験できる。 D2Cの開封体験デザイン – ブランドに学ぶカスタマーと繋がる方法 アメリカで人気の最新サブスクサービス5選 【ワインのサブスク】Vinebox 【洗剤のサブスク】CleanCult 【おもちゃのサブスク】Kiwico 【訳あり野菜&果物のサブスク】Misfits Market 【エシカルプロダクトのサブスク】Causebox 【ワインのサブスク】Vinebox Vineboxは、認定ソムリエたちが厳選したワインがグラス一杯分(100ml)×3種類送られてくるサービス。ワイン通向けというよりは、ワイン初心者が「お気に入りの1本」を見つけるのに最適なサービスだ。 黒を基調とした高級感のあるボックスが特徴で、ワインも一本一本、香水を思わせるような細い容器に入っている。毎回異なるワインが送られてくるため、ボックスを開けて新たなワインと出会う楽しみが感じられる。テイスティングをする感覚で利用できるサービスだ。 プロのソムリエが厳選した味といえど、自分の口に合わないワインであれば、いくら良いワインだったとしてもワインボトル1本を消費するのは意外と苦労するもの。新たな味を求めて冒険しようと思っても、ワインボトル一本買うことは意外とハードルが高い。 このサービスを使えば、お気に入りの一本を見つけるためにワインを丸々一本買う必要はなく、口に合わないワインだった場合に余らせてしまうことも起こらない。もう飲まないボトルが家に何本もある、という状態にもならずに済む。 ワインにとって重要な鮮度も担保されている。ワインボトルから小分けにするときも、酸素に一切触れずに入れ替える技術を用いて、鮮度の高いワインを提供している。(HPより) ミレニアル世代の飲みスタイルを捉えたスタートアップ3選 【洗剤のサブスク】CleanCult CleanCultは、自分の好きな種類の洗剤を、好きな香りで、自分に合った周期で届けてくれるサービスだ。扱っているのは植物由来の材料だけを使った無添加洗剤のみ。 最初のオーダーはガラスのボトルに入った状態で送られlくる。そして、その後に送られてくるリフィルも、環境負荷の少ないカーボンニュートラルな素材の、カラフルな牛乳パッケージのようなものを使用している。 Cleancultの誕生の背景には、ファウンダーのライアン・ラップバーガーの強いこだわりがあった。彼はあらゆるプロダクトの成分表示をチェックせずには居られない性格。普段から食品やシャンプーの製品ラベルを確認して、健康や環境に良いものだけを購入するよう心がけていたそうだ。 しかし、食品や化粧品とは異なり、実は洗剤やハンドソープには成分表示が義務付けられていない。 この手の商品においてラベルをチェックする習慣を維持するのが難しくなったラップバーガーは、やがてサステナブルな製品をアピールしている洗剤ブランドはいくつか存在する。しかし、多くの製品がプラスチックのパッケージを使っていることに疑問を持ち始めた。 こうして、パッケージまでもがサステナブルなCleancultが誕生した。 そんなCleanCultは、ミッションとして”A WORLD OF CLEAN INSIDE EVERY DROP”を掲げている。パッケージ、廃棄方法、全てをサステイナブルにするには?と考えた結果、材料からパッケージング、パフォーマンス、出荷、そして容器のリサイクルまでの全てのプロセスの仕組み化を再考。 結果としてパッケージや洗剤の成分、そして輸送の際の排気ガスの削減にまでこだわったサービスが誕生した。 デザインから環境問題を考える。エコ・サステナブル系サービス5選 【おもちゃのサブスク】Kiwico Kiwicoは知育玩具のサブスクだ。おもちゃのサブスクという子供用を想定しがちだが、おもちゃの対象年齢は児童だけではなく、自分で考えて組み立てるものなど、大人でも楽しめるおもちゃも用意されている。 ボックスの中におもちゃ、おもちゃの説明書が入っており、年齢やおもちゃの内容によっておもちゃ以外の付属品も変わる。 例えば0~36ヶ月の乳幼児向けのおもちゃであれば、子育てを始めたばかりの親向けに「子供との接し方」を説明するパンフレットだったり、おもちゃの使い方を説明するビデオが入っていたりする。 これは、Kiwicoのユーザーとなるのは子供だが、顧客は親ということを炉介した上での設計と言える。子供がおもちゃを使用する際のUXデザインだけでなく、親のCXデザインまで総合的な設計がされているプロダクトだ。 3人の子を育てる「ママ」が起業。その背景とは KiwiCoを設立したSandraは、彼女自身が3人の子供を育てる母。育児の中で「子供に”何かを自分で創造する”経験をさせたい」気持ちがあったが、そのようなものを自分で見つけて子供達に提供する難しさを感じた経験からKiwicoを立ち上げた。 会社のVisionは「To inspire the next generation of innovators.」子供たちの問題解決スキルを育成し将来の課題解決に役立てることをミッションとしている。 おもちゃを開発しているのは教育者、メーカー、エンジニア、ロケット科学者のチーム。ブレインストーミング、プロトタイピング、実際に子供達に使ってもらってテストすることを繰り返して、なんと1つのおもちゃを作るのに1000時間以上を費やしている。 母親が実の子供に対して提供したいことを徹底的に考えた結果できたサービスだ。 UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割 【訳あり野菜&果物のサブスク】Misfits Market Misfits Marketは、安価で手に入る農作物を消費者に届けるサブスクリプションサービス。 形の悪い作物を安く手に入れた分食品を安く提供することで消費者に還元する仕組み。これは実は日本でお馴染みの無印良品と似た取り組みだ。 干し椎茸はそのまま食べるわけでもなく、見栄えにはあまりこだわらないはず。多くの場合、おいしい出汁がとれればいいわけで、割れているものでも風味は変わりません。私達は、形の悪いものもすべて買い取り、サイズや形の選別もせず、また、包装の簡略化ということで、パッケージはおなじみの透明な袋に商品名を印字しただけ。 品質はそのままに、あらゆる無駄を省いたことで、従来品より価格を3割ほど抑えることができ、その結果、大ヒット商品となりました。 《引用》日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ【第2回】 実はアメリカは農業大国であるが、生産されている1/3の農作物が食料品店基準を満たさず、収穫されずにそのまま処分されたり、収穫されても店頭に並ばなかったりする。またその影で何百万もの食糧不足で苦しむ世帯が存在することも事実。 こうした生産者と消費者それぞれが抱える問題をを解消するため、サービスが誕生した。Misfits Marketsには産地直送の農作物が90種類以上用意されている。 産地直送ゆえに野菜の鮮度が失われてしまうことがなく、届くのは形が悪くても高品質で無農薬の新鮮な野菜ばかりだ。 blogも運用しており、野菜を使ったレシピや野菜の栄養素、豆知識に関して発信もしている。野菜を買ってからどのように調理するかまで含めてサポートしている。 実は2020年の7月に約91億円の大型資金調達をした期待のスタートアップでもある。 食の多様性を支えるフードテック・スタートアップ3選 【エシカルプロダクトのサブスク】Causebox 最近日本でもよく聞く「エシカル」という言葉。エシカルプロダクトとは、自然環境に配慮した製品や、社会問題の解決に貢献する仕組みを組み込んだ製品のことを指す。Alltrueは、エシカルプロダクトを集めた、女性向けのサブスクリプションボックス”Causebox”を提供している。 Causeboxはシーズンごとに手元に届く仕様。年間通して4回届くアニュアルプランと、ワンシーズンごとに注文するプランがある。 1つのボックスにつきエシカルプロダクトが5~8個入っており、それぞれのプロダクトは「女性の活躍支援」「環境保護」「職人の手作り商品」「チャリティー」「スモールビジネス」のいずれかの分野に関連している。 毎回商品が届くとYoutubeで”unboxing(開封)”動画が公開されている。その鍵は、女心をくすぐる「映える」デザインのボックスであること。思わず動画を撮ってしまいたくなるデザインで、まさに開封体験までこだわったサブスクリプションボックスと言える。 最新の2021年秋に届いたボックスの開封動画も複数投稿がある、人気のサブスクリプションボックスだ。 エシカルデザインとは 日本でのサブスクスタートアップの状況は? 実は日本にもサブスクリプションボックスのサービスが増えつつある。日本のサブスクリプションボックスは「パーソナライズ」が鍵。 今回は2つのサービスをご紹介するが、どちらも避けたい成分を選択できたり、フィードバックやリクエストを送ったりすることで自分好みにより近づいていく仕様になっている。 アメリカよりもなぜ「サブスクリプション=パーソナライズ」の色が日本では強いのか。それは日本人のとある国民性の影響が考えられる。 実は日本人は「失敗したくない」と言う気持ちが人一倍強いと言われている。日本の終身雇用制度や、学歴社会はその代表格だ。一旦レールから外れるとやり直しが効きにくいので、皆がレールを外れないように(リスクを取らないように)行動する傾向が他国に比べて強い。 日本では完全に敗者だった【インタビュー】btrax CEO, Brandon K. Hill それゆえ、「何が届くか全くもってわからない」状態では日本人には受け入れられにくい。中身が完璧にわかっていなくとも、「自分好みのものが届く可能性が高い」状態に持っていくことが鍵となる。 そのために日本のサブスクリプションボックスでは「パーソナライズ」が強く押し出されているのだろう。 日本でも広がる サブスクリプションボックス2選 そんな「パーソナライズ」に特化した、サブスクリプションボックスのサービスを紹介する。 【コーヒーのサブスク】PostCoffee 【おやつのサブスク】Snaq.me 【コーヒーのサブスク】PostCoffee Postcoffeeはコーヒーのサブスクリプションボックスだ。 初回の注文の際は好みのコーヒータイプ診断をし、ライフスタイルや嗜好に関する10個の簡単な質問に答える。これにより、約15万通りの組み合わせからその人に合った好みのコーヒーが3種類届く。淹れ方や飲む頻度、量なども指定可能だ。 一度届いたコーヒーに対して味や好みのフィードバックや飲みたいコーヒーのリクエストを送ると、送られてくるコーヒーが注文者好みに近づいていき、届くたびに自分好みのボックスに近づいていく。 サブスクリプションでありがちなのが「◯回以上は商品を買い続けなければいけない」という「定期縛り」。しかしPostcoffeeは最低契約期間も設けていない。 いくらパーソナライズされるからといって完全に自分好みのものが届くは限らない。「気に入らなくてもすぐに辞められる」という心理的安全性も担保し、サブスクリプションを始める障壁も極限まで低くしたサービスと言える。 【おやつのサブスク】Snaq.me […]

これからのプロダクトは足すことよりも削ることが価値になる

先日、WAGYUMAFIAの浜田さん (@wagyumafia) による「無意味なサービスを増やしまくる日本人」というタイトルのエントリーを読んだ。 おもてなしの国だからなのか、日本のサービスは結構色々な機能が搭載されているイメージが強い。本当にそれらは必要なのか? もしくは、”念の為” として一応搭載させたのだろうか? 自分自身は常々、現代のサービスにおいては、機能が少なければ少ないほどユーザーから長く愛される傾向になると思っている。 最高の贅沢は何もしないこと イタリアには “何もしない贅沢” という概念がある。 フィレンツェやトスカーナ地方には、気ままな日々を何もせずにゆっくりと過ごす意味の “Il Dolce Far Niente” (英語: The sweetness of doing nothing) のフレーズがある。 甘美な怠惰をゆったりと楽しむことが、最高の贅沢であるという意味。 シリコンバレー流何もしない週末 日本の100倍のスピードで、どんどん新しいものが生み出されるシリコンバレー。そこに住む人たちはどのようなライフスタイルを送っているのだろうか?さぞ毎日忙しく、分単位でスケジュールが埋まっているのだろうか? 実は、スタートアップやGAFAなどのビッグテック企業で働く人々のその多くが、週末を中心に “何もしない” 時間を確保している。 サンフランシスコ市内にある Dolores Park と呼ばれる公園は週末になると、多くの人々が集まり、一日中 “何もしていない”。 そう、何もしていない。 芝生の上に寝転がり、カリフォルニアの青空を見上げながら、ただただ、ぼーっとしている。そうすると、ココナッツの実にラム酒を入れたどリングが、どこからともなくふるまわれる。 そして、ほろ酔いのまま、また、何もしない。 そんな週末を過ごすことで、平日から始まる秒速でのプロダクト作りに集中できたりする。 人間とよりもデバイスと過ごす時間が多い時代 しかし、忙しい日々を過ごす人々にとって、何もしない時間は意外と少ない。 そこに、スマホなどのデジタルデバイスが追加され、人間の脳は限界に近いほど常にフル回転している。 Mary Meekerによる2019 Internet Trends Reportによると、平均的な大人が1日でデジタルメディアに費やす時間は、2009年の3時間から、6.3時間と2倍以上に増えている。 直接人間と接している時間が削られ、1日の大半がデバイスによって占有され始めている。 テクノロジー中毒の危険性? 人間よりもデバイスと過ごす時間が多い時代に 機能を追加する = プロダクトの価値低下 こうなってくると、ユーザー (人間) にとっては、機能がどんどん増えていくのは迷惑でしかない。なぜなら、脳が処理しなければならない情報が増えてしまうから。 一昔前なら、プランをアップグレードすればするほど機能が豊富になっていくのが当然とされていたが、現代では逆効果。 むしろ、機能が少ない方がユーザーにとってはありがたいし、価値が高いものになる。自分の時間の最大化してくれるサービスが最高、ということになる。 逆に機能が増えれば増えるほどユーザーの脳にとっては仕事が増える分、迷惑で、プロダクトとしての価値も低く感じ始める。 機能を削ったことでヒットしたプロダクト例 実際に、結構多くの商品やサービスが機能を削ったり、制限したことでより大きな価値を生み出し、ヒットしている。 iPhone – 物理ボタンを極力排除 MacBook Air – DVDドライブ排除 Google – 検索ボックスのみ Twitter – 140文字まで Instagram – 画像のみ Tiktok – 60秒までの制限 Snapchat – 消える Medium – 記事を読むことだけにフォーカス Amazon Go – レジ会計が無い GoPro – カメラから液晶を排除 Kindle – 本を読むだけのデバイス Uber – 降車時の支払いが無い 既存の自動車の機能の多くの削減したTesla Teslaがヒットしている一番の理由は、自動車としての機能の “少なさ” だろう。ユーザー視点から考えると、これまで行ってきた様々な作業が簡略化されている。 車に近づけば自動的にドアが開くし、降りて離れれば自動的に鍵が閉まる。駐車した時もパーキングブレーキを引く必要もないし、出発するのもアクセルを踏むだけ。運転が終わったら、ドアを閉めるだけ。 何かをし忘れることが極端に少ないし、パーツも減らすことができている。とにかく煩わしさが少なくなり、これは最終的に心理的安全性にも繋がる。 Teslaはスマートカーであると同時に、禅カーでもある。 Teslaにないもの: 鍵 鍵穴 エンジン 物理ボタン […]

UXデザイナーなら知っておきたいデザインに関する10の法則

UXデザインを行う際には、感覚ではなく複数のロジックを活用することで、より精度の高いプロダクトを創り出すことができる。そのプロダクトを人間が利用する場合、ユーザーの視覚や行動心理学などをしっかりと理解し、活用すればUXデザイナーとしての能力が一段と高まるはず。 今回紹介するのは、複数あるUXデザインにおける法則のうち、ビートラックスのデザインチームでも頻繁に利用される代表的な10の法則。プロのデザイナーなら、これは押さえておきたい。 全てのUXデザイナーが知っておくべき10の法則 ヤコブの法則 ヒックの法則 80/20の法則 パーキンソンの法則 フィッツの法則 ミラーの法則 テスラーの法則 FBMモデル ドハティのしきい値 3対1の法則 ヤコブの法則 ユーザービリティーの父であるヤコブ・ニールセンが提唱する法則。一般的なユーザーは、アプリやプロダクト、Webサイトなどに、既存のものと同じような動作体験を望む。ユーザーは慣れ親しんだプロダクトに対して抱いていた期待を、似たような製品にも持つというものだ。 既存のメンタルモデルを活用することで、ジェスチャー、視覚的な合図、スクロールなど、慣れ親しんだ動作でタスクに集中できるような、優れたユーザー体験を実現することができる。それにより、ユーザーが新しいモデルの学習をしなくとも良いため、体験価値が高まる。 デザイナーはついついクリエイティブなUIをデザインしようとしがちだが、今までにないような真新しい体験は、ユーザーを混乱させるだけである。最近のソーシャルメディア系のUIがどれも似たものになっていることにも、この法則を活用していると言える。 ヒックの法則 ユーザーが決断に要する時間は、選択肢の数や複雑さに応じて長くなるというもの。これにより、「選択肢が多いほど迷う」や「選択肢が多すぎると何も選ばなくなる」という現象を生み出す法則。 選択肢が多過ぎるとユーザーは迷ってしまい、こちらが望む行動を起こさないという好例と言える。一般的には選択肢を多く提示した方がユーザーが喜ぶと思われがちであるが、エンゲージメントを高めたいのであれば間違いになりうる。 彼らは選択肢が多過ぎると精神的プレッシャーを感じ、行動を起こさなくなってしまう。“選ぶ” という行動自体がハードルになってしまうのが理由。従って、商品やコンテンツが沢山ある場合は、なるべく小出しにしてユーザーに無駄なプレッシャーを与えないようにする方が良い。 コンバージョン率を向上させる7つの方法【UXデザイン】 80/20の法則 結果の80%は、たった20%の原因から生み出されているという法則。「パレートの法則」「ばらつきの法則」「働きアリの法則」などとも呼ばれている。一般的には、売上の80%は、20%のチャンネルから生み出されている。10ページのスライドのうち、最も重要な2ページで全体の80%が伝わる、など。 元々は経済学における法則として考えられたが、UXデザインにでも重要な法則となっている。 例えば、ユーザーは全体の機能のうち、20%しか使わず、その20%で80%の目標は達成される。UXデザインにおいては、ユーザー体験の中で最も重要な20%が何かを特定するのが重要になると言い換えることもできる。 パーキンソンの法則 正式には「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と表現される法則。一言で表現すると「先延ばしの法則」。時間に余裕があるとわかると、脳がリラックスする。 逆に、締め切りのプレッシャーを感じると、重要なことをすることや、時間内に終わらせなければならないことに集中する効果を与えられる。 この法則をUXデザインに当てはめると、コンバージョンを高めるためにユーザーに制限時間を設けるテクニックがある。Amazonで表示される「いつまでにオーダーすると明日中に届く」や、ワンタイムパスワードにカウントダウン時計が表示されるのもこの手法を活用している。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 フィッツの法則 人間の行動をモデル化する方程式で、「対象の大きさ」と「対象までの距離」と「対象の選択しづらさ」との相関関係を説明する法則である。 画面上で、マウスなどの入力装置を使ってものを指し示すときにかかる時間を計測するモデルで、ユーザーインターフェース設計における普遍的な法則とされている。 現在のポインターからの距離が小さくターゲット面の奥行きが大きいものほど短い時間で済み、ポインターからの距離が大きくターゲット面の奥行きが小さいものほど長い時間がかかる。つまり近くて大きいものほどポイントしやすく、遠くて小さいものほどポイントしにくい。 UXデザインへの具体的な活用例としては、モバイルアプリのボタンは大きく親指に近い方が利用体験が高まる。 ミラーの法則 平均的なユーザーがいっぺんに覚えられるのは最大で7つ (±2)であるという法則。プリンストン大学教授、ジョージ・ミラーによる研修では、即時記憶と絶対判断のスパンは、ともに7個程度の情報に限られるとの結果がでている。例えば、電話番号やパスワードで短期的に記憶できる桁数は平均的に7つになる。 この法則に従い、画面に表示されるオブジェクトを7つ以下、もしくは5つまでに抑えると、ユーザーが覚えやすかったり、選択肢を7つ以内に設定することで、ユーザーにストレスを与えないようにしたりするUXデザインのテクニックがある。 優れたユーザビリティを実現する25のUXデザイン基本概念 テスラーの法則 シリコンバレーの研究者、ラリー・テスラーによる「複雑さの保存の法則」とも呼ばれる法則。どんなシステムやプロセスにも、減らすことのできない複雑さが存在するというもの。 ユーザー体験においても、それ以上単純化できない「臨界点」があり、それ以降は本来備わっている複雑性を移動できるだけだという考え方である。 この法則によると、どれだけシンプルなユーザー体験を実現しようとしても、そこには限界点が生じる。そこで、なるべく最後の複雑さをサービスやプロダクト側に寄せ、ユーザーにはできるだけスムーズな体験を実現することに注力するべきである。 優れたデザインは、複雑さの負担がユーザーではなくサービス側で処理する必要がある。 FBMモデル スタンフォード大教授のBJ Foggが唱えたビヘイビアモデルだ。人の行動や習慣というものは、3つの要因により構成されており、それを上手く活用することで人の行動や習慣をある程度思い通りにすることが出来るという法則。 ユーザーの習慣や行動を作り出すためには3つの不可欠な要因がある。その3つの要因とは “モチベーション、能力、引き金” である。これらの要因は互いに関連しており、プロダクトやサービスが3つの要因すべてを満たさなければ、ユーザーはそれを自分の行動や習慣の中に取り入れない。 行動心理学を利用したデザイン – ビヘイビアデザイン Part1~【UXデザイン】 ドハティのしきい値 システムのフィードバック時間が0.4秒以下になると、ユーザーの体験が“苦痛”から“中毒性”に変わるという法則。これは、1982年にウォルター・J・ドハティとアラビンド・J・タダーニによる研究を元にしている。 その研究によると、人間が認識→判断→処理→反応する際のスピードが、平均で0.4秒であることから、UXにおけるスピードを0.4秒以内に納めることで、ユーザーへのストレスを下げ、ユーザビリティをあげることにつながる。例えば、ページのロードスピード、ボタンが反応するまでの時間、メニューが開くまでの時間などの基準として利用される。 サービスデザインで考慮すべき3種類の心理的ハードルとは 3対1の法則 ポジティブな感情がネガティブな感情を上回るには3つのポジティブな感情が必要であるという理論。これはGoogleも採用している、ユーザーが受け取るポジティブな感情とネガティブな感情を“瓶”の中に入れ、その“重さ”を天秤にかけるという方法。 このポジティブ3に対してネガティブ1を基準にデザインを行えば、ユーザーが喜ぶ体験を届けることができる。 Googleも採用するめっちゃ使えるUXデザイン手法

成功するECと売上向上/サイトの改善・促進、UX施策を解説3月17日無料開催

SHIFTは3月17日、オンラインセミナー「ECサイト運営『改善・促進』~机上の空論で終わらせないUX施策~」を開催する。 <サイトの改善・促進、UX施策解説> ポストコロナ社会において消費者との接点は変化し、業界を問わ […]
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UXデザイナー直伝!本当に機能するカスタマージャーニーマップの作るポイント

マーケターやデザイナーなどUXデザインに関係する誰もが当たり前に使うようになったカスタマージャーニーマップ。しかし、多くの場合は新規商品開発や新規サービスの提案フェーズのプロセスの一部として使われており、公表されることもないことから、我々が作っているマップは本当に効果的なのだろうか?と疑問を抱く人は少なくないだろう。
そこで今回はUXデザイナー視点からカスタマージャーニーマップを効果的に活用していくためのポイントをご紹介する。
UXデザインプロセスにおける基本的な6ステップ

カスタマージャーニー…

デザイナー必見!UXを学ぶ7つのTEDトーク

プロダクト開発やグロースにおいてUXデザインを考慮することが当たり前になった昨今、UXデザインにもさまざまな考え方が生まれた。特にデザインする対象がデジタルなのかアナログなのかによって考慮すべきUXデザインの領域は異なってくる。 つまり、良いUXデザイナーになるには幅広いUXデザインに関する知識を身に着けることが重要になってくる。そこでこの記事では、代表的な7つの異なる考え方のTEDトークを紹介する。 どれも10〜15分ほどのの動画のため、本を読むより短い時間で多くを学べると思う。休憩時間や移動時間にぜひ見ていただきたい。 誰にでも分かるUXデザインの基本 1. Donald Norman – The three ways that good design makes you happy – (良いデザインがあなたを幸せにする3つの方法) 登壇者のDonald Normanは多くのデザイナーが一度は読んだことがあるだろう「誰のためのデザイン?」の作者であり、“ユーザー中心設計(User-centered design)”の提唱者である。 人にとってプロダクトの魅力とは何かについて、車のMINIやGoogleのUIを例に述べている。 Dobald曰く、人がものを見て良し悪しを判断する際には3つのレベルでものごとを見ているらしい。 ものサービスに触れる際に、なんとなく触れて楽しいと感じる潜在レベル そのモノでどんなことができるかということがわかる行動レベル 外車は壊れやすいといった偏見に近い考えの内省レベル このトークの良いところは、人のものの見方は意外と単純だということに気づかせてくれる点にある。冒頭でDonaldは、フィリップスタルクのジューサーを果物からジュースを絞るためには使わず玄関に置物として置いてると述べている。 というのも、彼のジューサーは形が奇妙でジュースを絞ってみるものならコップにうまく入らず溢れてしまうからとのこと。しかし、その分魅力的な見た目を持っており、それが顧客を満足させてくれる要因として十分であると彼は語る。 UXデザインの評価方法はさまざまあるが、本質的に見るべきは人である。人はUXデザインの方法論とはお構いなしに、物事をただ欲しいか欲しくないかで判断する。このTEDトークからはそんな人のものの見方が学べるだろう。 2. John Maeda – Design for Simplicity – (シンプルさのためのデザイン) 2つ目は、世界的に有名なデザイナー、John Maedaによるシンプルさとは何か?について自身の体験談とともに語られるトークである。 グラフィックやプロダクトのデザインの分野においてもシンプルさというのは重要視されてきたがUXのように形に表現できないものをデザインする上でのシンプルさとは何だろうか?という問いを中心にトークが展開される。 UXデザインにおいてもロジックや考え方はあるが、それは人の感じ方を保証するものではない。UXの目的はそのプロダクトを使っている人が楽しいかと感じるかどうかであり、それほどシンプルに考えることが重要だとここでは述べられている。 UXデザインに関する書籍やブログが多く、どうしても方法論的に処理されてしまいがちではあるが、今一度この動画でシンプルに人の気持ちについて考えてみてはいかがだろうか。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 3. Rochelle King – The complex relationship between data and design in UX – (UXにおけるデザインとデータの複雑な関係) Rochelle Kingは過去、NetflixのUXやサービスのデザインを率いており、現在はSpotifyにてデザイン、UXのヴァイスプレジデントとしてチームを統率する敏腕デザイナーだ。 このトークではUXデザインにおいてデータの重要性が述べられている。特にデジタルプロダクトから収集できるデータはとても正確で、ボタン押す位置やそのページを見ている時間の長さもわかる。これをうまく活用することができれば会議でどちらのデザインが優れているかで不毛な言い合いに時間を割かずに済む。 このトークで注目していただきたいのが、実際に彼女がSpotifyで行ったUXを改善の仕事を例にどのようにデータを活用したか解説している部分である。 そこではなぜそのデザインが悪かったのかという分析からどう解決したか、その結果的にビジネス面でも効果的であったことが語られている。Spotifyは月間3億人以上のアクティブユーザーを持つ巨大なプロダクトであり、それを支えるデザインプロセスの考え方はデザイナー以外であっても参考になるだろう。 4. David Kelley – How to build your creative confidence. – (創造的な自信を構築する方法) Davidは言わずと知れたIDEOの創設者の一人であり元CEOである。デザイン思考やデザイン教育の第一人者と呼ばれている。そんなデザインの知を築きあげた人が見たクリエイティビティへの自身について語っている。 Davidはこのトーク内でクリエイティブはそれぞれ違った形で持ち合わせていると述べており、自分のアイデアがありきたりで、かっこよくないからといって自信を失う必要はないと強調している。 筆者もワークショップでクリエイティブについて苦手意識を持っている人あったことがある。理由を聞いたことがあるが、その答えの多くが「かっこいいものを作らなくてはいけない」、「誰もが発想できない斬新なアイデアを求められているのではないか」という声だった。 しかし、クリエイティブというのはそういった派手なものだけではなく、些細でありきたりであってもクリエイティブと言える事柄はあるとこのトークでは述べられている。 その例として人の体に異常がないかみるMRIの診察方法が紹介されている。多くの子供はMRIの検査時に聞こえる激しい音に恐怖し、暴れてしまう。そのため鎮静剤を使って子供を宥めていた。 この状況に心を痛めていた医師は、部屋全体を海賊船のようにペイントし、診察時の音は海賊船が揺れている音だと説明した。これによって子供たちは暴れることなく診察を終えるようになった。このような気遣いもクリエイティブなのだ。 5. Tony Fadell – the first secret of great design –  (素晴らしいデザインの秘密) 彼はエンジニアでありデザイナーである。「iPodの父」と呼ばれ、ハードウェアやソフトウェアを専門にしている。このトークでは、思い込みをなくそうというテーマで人が習慣化してしまうことの良さと悪さを語っている。 習慣化によって人は、例えばシャワーの際に冷たい水を間違えて被ってしまった、というような小さな絶望を忘れてしまいがちであり、それを発見する力こそ起業家やデザイナーには必要である。それを発見するための3つの方法があると述べられている。 1.より広く見る 2.より近くで見る 3.より若く考える Tonyはこの3つをまとめ、子供のように純粋でいようと言っている。また、例としてピカソの言葉である「子供は生まれながらにして芸術家である。」というものを取り上げ、大人になってしまうと世の中の不幸に慣れてしまい視野が狭くなってしまうことを述べている。 UXデザインでは、こういった小さな気づきや不満をいかにして見つけられるかが重要である。多くの問題は非常に些細であり、歳を重ねるにつれ不満を感じづらくなってしまう。しかし、そこを解決したデザインにこそ本当に心地よい体験を人々に提供できるのではないだろうか。 6. Johannes Ippen – Humans, not […]

デザイナー必見!UXを学ぶ7つのTEDトーク

プロダクト開発やグロースにおいてUXデザインを考慮することが当たり前になった昨今、UXデザインにもさまざまな考え方が生まれた。特にデザインする対象がデジタルなのかアナログなのかによって考慮すべきUXデザインの領域は異なってくる。 つまり、良いUXデザイナーになるには幅広いUXデザインに関する知識を身に着けることが重要になってくる。そこでこの記事では、代表的な7つの異なる考え方のTEDトークを紹介する。 どれも10〜15分ほどのの動画のため、本を読むより短い時間で多くを学べると思う。休憩時間や移動時間にぜひ見ていただきたい。 誰にでも分かるUXデザインの基本 1. Donald Norman – The three ways that good design makes you happy – (良いデザインがあなたを幸せにする3つの方法) 登壇者のDonald Normanは多くのデザイナーが一度は読んだことがあるだろう「誰のためのデザイン?」の作者であり、“ユーザー中心設計(User-centered design)”の提唱者である。 人にとってプロダクトの魅力とは何かについて、車のMINIやGoogleのUIを例に述べている。 Dobald曰く、人がものを見て良し悪しを判断する際には3つのレベルでものごとを見ているらしい。 ものサービスに触れる際に、なんとなく触れて楽しいと感じる潜在レベル そのモノでどんなことができるかということがわかる行動レベル 外車は壊れやすいといった偏見に近い考えの内省レベル このトークの良いところは、人のものの見方は意外と単純だということに気づかせてくれる点にある。冒頭でDonaldは、フィリップスタルクのジューサーを果物からジュースを絞るためには使わず玄関に置物として置いてると述べている。 というのも、彼のジューサーは形が奇妙でジュースを絞ってみるものならコップにうまく入らず溢れてしまうからとのこと。しかし、その分魅力的な見た目を持っており、それが顧客を満足させてくれる要因として十分であると彼は語る。 UXデザインの評価方法はさまざまあるが、本質的に見るべきは人である。人はUXデザインの方法論とはお構いなしに、物事をただ欲しいか欲しくないかで判断する。このTEDトークからはそんな人のものの見方が学べるだろう。 2. John Maeda – Design for Simplicity – (シンプルさのためのデザイン) 2つ目は、世界的に有名なデザイナー、John Maedaによるシンプルさとは何か?について自身の体験談とともに語られるトークである。 グラフィックやプロダクトのデザインの分野においてもシンプルさというのは重要視されてきたがUXのように形に表現できないものをデザインする上でのシンプルさとは何だろうか?という問いを中心にトークが展開される。 UXデザインにおいてもロジックや考え方はあるが、それは人の感じ方を保証するものではない。UXの目的はそのプロダクトを使っている人が楽しいかと感じるかどうかであり、それほどシンプルに考えることが重要だとここでは述べられている。 UXデザインに関する書籍やブログが多く、どうしても方法論的に処理されてしまいがちではあるが、今一度この動画でシンプルに人の気持ちについて考えてみてはいかがだろうか。 なぜデザインはシンプルな方が良いのか – 5つの理由と6つの鉄則 3. Rochelle King – The complex relationship between data and design in UX – (UXにおけるデザインとデータの複雑な関係) Rochelle Kingは過去、NetflixのUXやサービスのデザインを率いており、現在はSpotifyにてデザイン、UXのヴァイスプレジデントとしてチームを統率する敏腕デザイナーだ。 このトークではUXデザインにおいてデータの重要性が述べられている。特にデジタルプロダクトから収集できるデータはとても正確で、ボタン押す位置やそのページを見ている時間の長さもわかる。これをうまく活用することができれば会議でどちらのデザインが優れているかで不毛な言い合いに時間を割かずに済む。 このトークで注目していただきたいのが、実際に彼女がSpotifyで行ったUXを改善の仕事を例にどのようにデータを活用したか解説している部分である。 そこではなぜそのデザインが悪かったのかという分析からどう解決したか、その結果的にビジネス面でも効果的であったことが語られている。Spotifyは月間3億人以上のアクティブユーザーを持つ巨大なプロダクトであり、それを支えるデザインプロセスの考え方はデザイナー以外であっても参考になるだろう。 4. David Kelley – How to build your creative confidence. – (創造的な自信を構築する方法) Davidは言わずと知れたIDEOの創設者の一人であり元CEOである。デザイン思考やデザイン教育の第一人者と呼ばれている。そんなデザインの知を築きあげた人が見たクリエイティビティへの自身について語っている。 Davidはこのトーク内でクリエイティブはそれぞれ違った形で持ち合わせていると述べており、自分のアイデアがありきたりで、かっこよくないからといって自信を失う必要はないと強調している。 筆者もワークショップでクリエイティブについて苦手意識を持っている人あったことがある。理由を聞いたことがあるが、その答えの多くが「かっこいいものを作らなくてはいけない」、「誰もが発想できない斬新なアイデアを求められているのではないか」という声だった。 しかし、クリエイティブというのはそういった派手なものだけではなく、些細でありきたりであってもクリエイティブと言える事柄はあるとこのトークでは述べられている。 その例として人の体に異常がないかみるMRIの診察方法が紹介されている。多くの子供はMRIの検査時に聞こえる激しい音に恐怖し、暴れてしまう。そのため鎮静剤を使って子供を宥めていた。 この状況に心を痛めていた医師は、部屋全体を海賊船のようにペイントし、診察時の音は海賊船が揺れている音だと説明した。これによって子供たちは暴れることなく診察を終えるようになった。このような気遣いもクリエイティブなのだ。 5. Tony Fadell – the first secret of great design –  (素晴らしいデザインの秘密) 彼はエンジニアでありデザイナーである。「iPodの父」と呼ばれ、ハードウェアやソフトウェアを専門にしている。このトークでは、思い込みをなくそうというテーマで人が習慣化してしまうことの良さと悪さを語っている。 習慣化によって人は、例えばシャワーの際に冷たい水を間違えて被ってしまった、というような小さな絶望を忘れてしまいがちであり、それを発見する力こそ起業家やデザイナーには必要である。それを発見するための3つの方法があると述べられている。 1.より広く見る 2.より近くで見る 3.より若く考える Tonyはこの3つをまとめ、子供のように純粋でいようと言っている。また、例としてピカソの言葉である「子供は生まれながらにして芸術家である。」というものを取り上げ、大人になってしまうと世の中の不幸に慣れてしまい視野が狭くなってしまうことを述べている。 UXデザインでは、こういった小さな気づきや不満をいかにして見つけられるかが重要である。多くの問題は非常に些細であり、歳を重ねるにつれ不満を感じづらくなってしまう。しかし、そこを解決したデザインにこそ本当に心地よい体験を人々に提供できるのではないだろうか。 6. Johannes Ippen – Humans, not […]

btrax CEOによる2021年のイノベーショントレンド予想

毎年行っているイノベーション予測の中で、おそらく今年が最も難しいだろう。というのも、2020年初に想定していた未来はパンデミックの襲来でその起動が大きく変わってしまったから。変化と混乱の中で、時代は大きく変化している。
この急速な変化と不確実性の中で、新しいニーズがどんどんと生み出され、それに対して求められるソリューションも山積み。この非現実的とも言える新しい日常生活で、今年こそは、今までにないほどイノベーションが求められる年になってくるだろう。
リモートワーク採用の加速から消費者の行動の変化まで、…

GoogleとAppleの違いを画像で表現してみた

スマホ、スマートホーム、クラウドサービスなど、多くの分野で覇権を競っているのがシリコンバレーの巨大テクノロジー企業、Google, Apple。
時価総額ランキングでも常に上位にランキングし、ビジネスモデルの側面ではかなり共通点がありそうなこの2社。しかし実はさまざまな側面でかなり異なる戦略を取っている。
GoogleとAppleのデザイン、組織、カルチャー、マーケティングなど10の項目に対してのアプローチの違いを画像で表現してみた。

Google: ユーザーが欲しいと思っているものを作る
Ap…

なぜ日本にはデザイナー出身の経営者が少ないのか

先週、日本デザイン学会主宰の「2020年度 日本デザイン学会 秋季企画大会」というイベントに登壇させていただいた。 セッションテーマは「チーム・クリエイション」。デザイナーを取り巻くチームとビジネスに関するトピックだったため、自分が感じている「海外から見た日本の状況」について触れさせていただいた。 というのも、最近ではビジネスにおけるデザインの重要さが叫ばれている。 マッキンゼーの調査でも、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという結果が出た。 その割には、日本企業におけるデザイナーの役割と立場がまだまだ地味で、ビジネスの根幹に入り込めていないように感じていたから。 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザイン責任者を配置している海外企業 一方で、海外、特にアメリカのスタートアップでは多くのデザイナー出身者が起業し、成功している。 また、大企業でも経営陣にCDO (Chief Design Officer) や CCO (Chief Creative Officer) を配置し、経営にデザインを積極的に取り入れている会社が増えている。 CDOやCCOのいる主な企業・団体 3M ピクサー ペプシコ DBS銀行 ロジテック フィリップス ヘルシンキ市 キアモーターズ ロスアンゼルス市 ウォルトデズニースタジオ * https://en.wikipedia.org/wiki/Chief_design_officer デザインドリブンな世界一の企業: Apple デザインバックグラウンドを持つ経営陣が多いことで知られる最も著名な企業がAppleだろう。 そもそもファウンダーのスティーブ・ジョブスは熱狂的なデザインオタクだったし、後期にAppleを復活させた彼の右腕、ジョナサン・アイブも世界最高峰のデザイナーである。 技術力が重要視されていた20世紀では倒産寸前までになっていたAppleは、デザイン力が重要になった21世紀になって強烈に成長し、名実ともに世界一の企業に君臨している。 Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 デザイナー出身の起業家たち: ジョブスチルドレンの功績 そして現代の起業家のその多くがデザイナー出身だったり、デザインバックグラウンドを持っている。そして、そのような人たちが経営陣にいる企業の成長率の高さは統計的にも実証されている。 デジタルプロダクトを通じたユーザー体験が重要になってきている現代においては、商品の差別化要因はどんどん少なくなり、最後に残されたのがデザイン性とブランド力になってきているのが理由だろう。 デザインバックグラウンドを持つ起業家のその多くがジョブスに憧れ、優れたプロダクトを武器に会社を成長させている、いわゆるジョブスチルドレンである。 この流れはアメリカだけではなく、取締役の多くがデザイン経験を持つサムスンや、海外から多くのデザイナーを採用しているアリババなど、韓国や中国の会社の多くもその流れを踏襲してる。 デザインバックグラウンドを持つ主な起業家: Jack Dorsey – Twitter, Square Brian Chesky – Airbnb Evan Sharp – Pinterest Chad Hurley – YouTube Stewart Butterfield – Slack David Karp – Tumblr Charles Adler – Kickstarter Dave Morin – Path 参照:【デザイン × 経営】ビジネスにおけるデザインの価値を追求する7人の起業家 日本企業におけるデザイナーの役割って何? ここからが本題。そんな世界の潮流の中で、ではなぜ日本の企業の経営陣にデザイナー出身者があまりいないのか? そもそも日本企業の従業員で「デザイナー」という肩書を持つスタッフ自体が驚くほど少ない気がする。では、日本企業におけるデザイナーの役割とは、一体何なのだろうか? おそらくその仕事は、プロダクト制作における最終工程の装飾や、ブランディングにおけるビジュアルデザインの一部にとどまっているケースが少なくない。 とある日本の会社では、企画会議に出席したデザイナーに対して「なぜあなたが参加してるのですか?」と言われたという。 そうなってくると、どうしてもプロダクトが提供するユーザー体験の質は下がるし、ブランド資産も積み上がりにくくなってくるだろう。 なぜ日本ではデザイナー出身の経営者が少ないのか? 従業員にデザイナーが少なく、その役割も限定的なのであれば、経営陣にデザインがわかる人が少ないのもうなずける。しかし、デザインがビジネスにとても重要な時代に日本企業の経営陣にデザイナー出身者が極端に少ない場合、企業としての競争力は極端に下がってしまう。 それなのに、日本企業の経営陣にデザインバックグラウンドを持っている人はかなり少ない。 それはなぜなのか? この答えは、日本は経営において営業がとても重要であるから。 言い換えると、日本では営業力が企業にとってとても重要な役割を果たす。下手するとプロダクトの質以上に。自ずと営業畑出身の人間が経営者や取締役などに出世しやすい。 特に経営者が創業者ではない企業はこの傾向が顕著だ。 この理由は、以前に一緒に登壇したTakramの田川さんも、Goodpatchの土屋くんも、今回登壇したNOSIGNERの太刀川さんも、AIR Designの中平さんも一様に同意していただいた。 めっちゃ使いにくいプロダクトのなのに何故か売れている。その理由は営業力にあったりする。 最近ではメルカリのようにエンジニア出身の人が経営をしている会社も増えているが、デザイナー出身者はまだまだ少ないだろう。 結果として日本の多くの優秀なデザイナー達は、自分たちのフィールドだけにとどまり、ウンチクを語る日々を過ごしている。 日本と海外でなぜこんなにも違うのか? では逆に、アメリカをはじめとした海外ではデザイナー出身の経営者が多いのか?おそらくその秘密は、国土の広さにあると思われる。アメリカと日本の国土の違いをおさらいしてみよう。 ざっとこんな感じである。 アメリカの国土は日本の約26倍。 ニューヨークからサンフランシスコまでは飛行機で片道6時間。3時間の時差がある。近そうに思えるロサンゼルスからサンフランシスコまでも飛行機で1時間以上かかる。サンフランシスコ – シリコンバレー間だって、車で1時間以上かかる。 これはどういうことかというと、簡単に足で稼ぐ営業ができないということ。では、どのようにして顧客やユーザーを集めれば良いのか? そう。プロダクトの質、ブランド力、マーケティングにフォーカスするしかない。 足を使った営業力に頼れない分、他の方法でユーザーを集めてくるしかないのだ。 […]

Googleも採用するめっちゃ使えるUXデザイン手法

先週アップしたエシカルデザインに関する内容に関して、具体的にどのようにして“正しいデザイン”を行えば良いのかという質問が寄せられた。一つの方法は、UXピラミッドの原則に従ってプロダクトの体験価値を検証したり、UXハニカムを活用する方法もある。
それらに加えて今回紹介したいのは、GoogleのAndroidチームが採用しているUXデザイン手法である。とてもシンプルですぐにでも活用できる内容になっている。
進化するデジタルプロダクトに対するUXデザインアプローチ
サービスのデジタル化やDXが進む中で、多…

全てのデザイナーが知っておくべきエシカルデザインとは

広がる支持 エシカル(倫理的な)デザインとは?
デザイナーにとって、エシカルデザインの重要性とは
ビジネスゴールとユーザーメリットを両立するには
デザイナーだけでなく全員が持つべき「エシカル視点」
エシカルデザインを考える際の3つの要素:時間・環境・生活

デザイナーの仕事の一つが、ユーザーが夢中になるプロダクトを作り出すこと。UXデザイナーを中心に、提供側のビジネスゴールを達成するために様々な“仕掛け”が施され、ユーザーが無意識のうちに夢中になっていることも多い。
我々が頻繁にインスタをチェック…

UXデザイナーとは?その役割と仕事内容, 求められるスキル

UXの定義・UXデザイナーの役割をおさらい UXデザイナーは何をもって「優秀」とされるか? UXデザイナーに求められるスキルセット 今日からできるUXデザイナーとして活躍するためにできる5つの行動 ビジネスにおけるデザインの重要性が高まるにつれ、様々なデザイナーの役割と職種名が生まれ始めている。 その中でも、ここ数年でもっとも注目されているのがUXデザイナーだろう。DXへの流れも加速したことで、その需要の大きさから多くのデザイナーがUXデザイナーになるべくスキルアップを進めている。 その一方で、UXデザイナーの仕事の内容だったり、組織での役割だったり、求められるスキルセットに関しては共通認識がまだまだはっきりしていないことも多い。 デザイナーに必要なのはスキルアップではなくスキルチェンジ UXデザインとは? では、そもそもUXデザインとは何なのか? UXとは、User Experience (ユーザー体験) の略で、一言で言ってしまえばサービス利用者の体験そのものを示す。 サービス提供者はプロダクトやシステムの品質・機能等を提供し、それらを受け取ったユーザーはその経験を振り返ることで初めてサービス価値を認識する。ここの機能と価値をつなぐ役割こそがUXデザイン。 注意したいのが、ここでのデザインとは見た目や雰囲気だけではなく、製品やサービスそのものを設計することが最も重要だということ。 そしてその利用体験を企画段階から戦略的に設計するのがUXデザイナーの仕事となる。“デザイナー”のキーワードが入っているが、その内容はユーザー調査から始まり、仮設立案、プロトタイプ作成、実験、検証、改善、など多岐にわたる。 ビートラックスのデザインチームも、このUXデザイナーを中心に編成されているが、それぞれのスタッフのバックグラウンドとスキルセットには結構幅がある。 UXデザインプロセス入門 – 基本的な6ステップ 優秀なUXデザイナーとは? 実際のデザインやプロダクト造りの現場で優秀だと思われるUXデザイナーには共通しているポイントがある。まずは、グラフィックデザイン、ソフトウェア開発、デザインリサーチなど、異なるフィールドへの深い理解があること。 そして、プロダクトの体験のクオリティーを高めるために、UXとUIの両方の分野においての技術も求められる。もちろん機能的な部分も網羅することになるので、エンジニアチームとのやりとりも多い。 言い換えると右脳と左脳のバランスが取れている。 また、UXデザインの最終的ゴールが、ユーザーとビジネスゴールの両方を達成であることから、物づくりに対してビジネス的視点を持つことも必要になってくる。 それらを踏まえると、UXデザイナーは、デザイン的観点、エンジニア的観点、ビジネス的観点の3つの領域をしっかりと理解していることが必要だろう。 優れたUXデザイナーが持つ資質・マインドセットとは?【インタビュー】ホワイトハウスも注目のUXデザイナーJanice Fraser氏(後編) UXデザイナーの主な役割 ではUXデザイナーの具体的な役割を紹介してみよう。 カスタマージャーニーマップ作成 ペルソナ作成 A/Bテストの実施、分析 ユーザーリサーチ実施 ワイヤーフレーム作成 プロトタイプ作成 ユーザビリティーリサーチ実施 プロダクト改善ポイントの抽出 UXデザイナーに求められるスキルセット これだけ幅広い役割のUXデザイナーだが、実際に活躍するにはどのようなスキルが求められるのだろうか? コミュニケーション能力 データ分析能力 マーケティングに関しての基本知識 ブランディングに関しての経験 ユーザーに対する共感力 コーディングやプログラミングに関しての知識 ロジックと感覚の両立 気配り上手 【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる UXデザイナーになるためにできること すでに何かしらのデザイン関係の仕事をしている人や、これからUXデザイナーとして活躍するための5つの方法を紹介する。 1. 個人作業からチームプレーヤーへ フリーランスを中心に、これまでのデザインの仕事は1人で職人的な作業をすることが多い。 しかしこれがUXデザイナーになると、1人で作業をする時間がほとんどないと言って良い。ユーザーとの対話、経営層からのヒアリング、プロダクトチームとのディスカッション、エンジニアとのプロトタイプ作り、マーケティングチームとの顧客獲得における体験設計など、仕事中は必ず誰かと一緒に仕事をしていると考えて良い。 それを考えると全て1人で完結する必要がない。逆に、メンバーそれぞれのスキルと強みを活用して結果を生み出すことが求められる。 この辺は1人で戦っていた初代ドラクエと、その後のパーティー編成での戦い方の違いにも通じるところがある。 一般的なプロジェクトチーム例: プロジェクトマネージャー クリエイティブディレクター ビジュアルデザイナー UXデザイナー エンジニア コピーライター マーケター ピクサーのデザインチームが重要視する4つのプロセス 2. 完璧主義を捨て去る グラフィックやビジュアルのデザイナーの仕事は、できるだけ“完璧な”作りこみをするである。ピクセルやミリ単位のずれを無くし、素材や発色にもとことんこだわる。まさに職人的仕事になる。 それに対し、UXデザイナーはデザインスプリントに代表されるように、速いスピードでの仮説立案とモックアップやプロトタイプ作成が求められる。 そこで作り出されるものは、“ラフでも良いからユーザー検証可能なデザイン”であり、完成とはほぼ遠い不完全なデザインであることも少なくない。 体験をデザインするためには、ユーザーとの対話が最優先。UXデザイナーの仕事としても、ざっくりとした大枠を決め、検証し、そこから導き出された枠組みをビジュアルデザイナーに手渡しし、“清書”してもらう。 その点で元々グラフィックやUIのデザインを行なって来たデザイナーはそのスキルを一度”切り離す”必要が出てくる。 一般的に新しいことを学ぶ“Learn”よりも、すでに身についていることを忘れる“Unlearn”の方がよっぽど難しく、かなり苦しいところであるが、理解しなければならない。 デザインスプリント入門 – 話題の高速サービス開発法とは 3. デザインを「目的」から「手段」に UXデザインの最終的なゴールはビジネス的目的とユーザー的目的の両方を達成することであり、デザインすること自体はあくまでその手段の1つでしかない。 その点において、UXデザインにおけるデザインの役割は、最適なユーザー体験を通じビジネスゴールを達成するための手段であり、デザインがある意味“黒子”の役割になる。 そこにはデザイナーとしての自己主張よりも、あくまで主役はユーザー。それも見えないルールでユーザーを無意識のうちに導いてあげる設計を作り出す事が求められる。 雰囲気だけでクールなアイコンや可愛いイラストを使うのではなく、ユーザーの求めるゴールをもっともストレスなく達成したり、1%でも送信率の高いWebフォームを設計する事がUXデザイナーの仕事となる。 ユーザーとビジネスのゴールが合致するかどうかを見極め、アイコンやイラストを採用するかしないかを冷静に判断する必要性が出てくる。 そのために“誰が” “いつ” “何を” “何を目的で” ”どのように” 使うかを包括的に考えなければならない。そのためにブランディング面も考慮した上で、場合によって“デザイン性”を犠牲にする冷静な判断が求められる。 ユーザーを夢中にさせるAmazonが採用する4つのUXデザイン要素 4. 組織内での存在感・影響力をアップさせる プロダクトの成功と会社の成長、この2つを鍵を握るのがUXデザイナーの仕事だとしたら、企業内での重要性はかなり高いはず。 その一方で、これまで組織内におけるデザイナーの役割としては、全ての企画、仕様、場合によっては試作品が完了してから、“イケてるルックスにしておいて” 的なノリで仕事を振られるケースが多かった。 だとしたら、これからUXデザイナーになる人は、社内で異なる役職や部署の人たちを巻き込んで、包括的な仕事の仕方をする必要があるだろう。 そのためには出世も1つの手段であるが、意外と盲点なのが“影響力の高さ”である。どこの会社や組織でも、特に高い役職に就いているわけではないのに、妙に周りの人を巻き込むのが上手い人がいる。UXデザイナーは多くの人を巻き込む必要があるため、この影響力は不可欠である。 そのためには人間的魅力をアップさせ、多くの人の心を掴む必要が出てくる。 これまでは誰もいない部屋で1人でヘッドフォンをしながら黙々とデザインをしていたデザイナーも、UXデザイナーになりたいのであれば、自ら多くの人と触れ合い、異なる考え方を理解し、組織内でのキーパーソンにならなければならない。 デザイナーとは職種ではなくマインドセットである 5. Looks goodからWorks great! へ これまで1mmや1pxをストイッックなまでに追求して来た人たちは、ついついそれに没頭するがゆえに“どう見えるか”のクオリティーにとらわれ、“どのように動くか”を忘れがちである。 しかし、異なる複数のデバイスやタッチポイントにおいて、全てがインタラクティブになって来ている今の時代、“静止画”の見た目が良いだけで完結するケースが壊滅的に減って来ている。 より良い動きをデザインするためには、見た目以上にコンテンツやインタラクティブ要素、異なるタッチッポイントでの“感覚的要素”の設計が重要になってくる。そのためにはラフでも良いのでプロトタイプ作成のスキルが求められる。 […]

AI時代のUXデザイン、GPT-3から考えるこれから必要なマインドセット

AIの活用からUXデザインを考える シリコンバレーで話題のGPT-3とは? デモンストレーションに見る、常識を覆すGPT-3の凄さ GPT-3が可能にすることとその課題 今後のUXにおけるAIの役割 最近シリコンバレーを中心にGPT-3というAIが話題になっている。6月にベータ版が限定公開されて以来、多くの研究者・開発者がこのGPT-3を用いた様々なデモンストレーションを公開し、その性能の高さだけでなく応用性の高さにも注目が集まっている。 一部の人々からはGPT-3の登場によってAIは大きく進歩し、AIが人間の仕事を奪う日が近づいたと言われている。 特にこれまでのAIテクノロジーと比べて、GPT-3はUXデザインへの活用が見込まれている。故に、我々ビートラックスとしてもデザイン会社として注目しているテクノロジーである。 そこで来るべきAI時代のUXデザインとそのマインドセットを考えてみようと思う。 UXデザインへのAI活用について エンジニアやデザイナーを中心に、これからのAI時代に人間のアドバンテージを生かしつつ、AIを活用してどのようにUXデザインを捉えるばきか。そして、どのようなマインドセットを持つべきかを考えてみよう。まずは、どのようなシーンでUXデザインにAIの強みを生かせるのか整理する。 膨大かつ複雑なデータ分析を補助する 言うまでもなくAIはデータの収集や分析を得意とする。これはUXデザインにも有効だ。例えば、ユーザーリサーチの際に様々なリサーチ結果を関連付け分析する場合はAIがデータ整理や分析の補助をしてくれる。 サービスをパーソナライズする AmazonやNetfrixのように、ユーザーの行動から次のサービスを提案する試みは盛んに行われている。AIが発展すればよりユーザーの趣向にマッチしたものを提示できるだろう。 ただし、プライバシーの問題などでこういったトラッキングを嫌うユーザーも多い。より細かなパーソナライズを行う場合、ユーザー心理を考慮しなければならない。ユーザーの不快感のないサービスの検討こそUXデザイナーの仕事になる。 ワイヤーフレーム/プロトタイプの作成を簡略化する UXデザインでは、ワイヤーフレームやプロトタイプの作成は繰り返し行われる。そういった工程を自動化・簡略化するにもAIが役に立つ。例えば、UIデザイン/開発ツールのteleportHQの例では、AIと画像処理を利用して、ホワイトボードに書かれた簡単なスケッチからHTMLのソースコードを生成している。 スケッチからソースコードを生成する様子 Non-AIサービスと言う選択肢も ここまでAIのメリットを説明してきたが、逆にAIが一切関与していないことを保証するサービスも面白い。大量生産された製品より、職人が手作りしたものが好きだと言う人も多い。 また、営業メールを受け取る場合でも、AIが生成したテンプレートメールよりも手書きの便箋を受け取る方が印象に残るだろう。あえてテクノロジーを使わないことも、ユーザーに共感を訴えることに繋がる。こういった柔軟な姿勢がUXデザイナーに重要だ。 AIに負けない新しい価値を生み出すために必要なマインドセットとは? AIを扱う上で注意するべき項目 上記のようにAIが役立つシーンは多いが、現段階ではAIはまだまだ発展途中だと言える。AIが成生する文章やデザインはいまいちだ、といった話も多い。したがって、UXデザインをする上での課題も多い。 実在しない問題、不条理な質問を解釈できない AIは辞書を引くように事実を正確に回答することは出来るが、正解のない問題には上手く答えることが出来ない。また、統計的なデータから未来を予測することはAIの得意分野だが、予測でなく未来を想像することはAIには難しい。 こうした特性を踏まえると、UXデザインに大事なユーザーの理解・共感はまだまだ人間の仕事だ。例えばユーザーリサーチでは、時には答えのない問題からユーザー自身も気づいていない原因や将来的な不安などを見極める必要がある。 これはAIには難しいだろう。単純な定量的な分析などはAIに任せて、UXデザイナーはこうした人間の得意分野に注力するなど、棲み分けを行って活用することが望ましい。 人間の感情や倫理観・意識の変化に対応できない 近年、差別に対する意識が大きく変わろうとしている。例えばBLM運動の影響で、映画『風と共に去りぬ』が一時的に配信停止されたニュースを聞いた方も多いだろう。同映画は(以前から批判はあったが)アカデミー賞を9部門で獲得し、名作として長年親しまれてきたが黒人差別や奴隷制の表現の為に一時的に配信を停止するに至った。 しかし、AIは過去の事例を学習のデータセットにしているため、差別的な表現を含んだ振る舞いをしてしまうケースがある。世論や意識が大きく変わる場合に過去の学習データを元にするAIが柔軟に対応することは難しい。 言い換えると、AIは相手の気持ちを想像する事が得意では無い。この点を考慮し、その時代の流行や雰囲気を掴み、より人間の感情に寄り添ったデザインこそが人間のアドバンテージになる。 デザインの多様性が失われる 将来的にはAIを搭載したデザインの生成ツールは一般的になり、それを使いこなすことがデザイナーのスキルになるだろう。しかし簡単にUIデザインが作れる分、どれも似たり寄ったりのデザインになってしまうだろう危険性がある。AIは人間のようにその日の気分でデザインを変えてみる、というようなことは無い。 そのため、差別化のためのブランディングがより重要になるだろう。他と異なるデザインを生み出せる独自性がデザイナーの存在意義となっていくだろう。 人工知能 (AI)や機械に絶対奪われない3つのスキル GPT-3がAI時代を切り開く このように、AIのはあくまで人間のサポートで課題もまだまだ多いといった状況だ。しかしGPT-3が登場したことで、これまでの常識が覆されようとしている。 GPT-3とは、「Generative Pre-trained Transformer 3」の略で、機械学習による言語生成モデルだ。簡単に言うとAIによるテキスト生成器だ。ある文字列を入力すると、それに続く文章を予測し生成する。 普段の会話で使うような簡単な自然言語を入力し、そこから人間が書いたものとほぼ遜色のない文章を生成することが可能で、テキストで表現できるものはすべて扱える。そのため学習データによっては、文章、ニュース記事や会話のパターンだけでなく、UIデザインやプログラムのソースコードなども生成できる。 GPT-3はOpen AIという研究団体が開発した。Open AIは、テスラのCEOイーロン・マスク氏を始めとした投資家・実業家がAI技術の発展やオープンソース化の促進のために設立した非営利の研究団体だ。 GPT-3が特に注目されているのは、文章だけでなくUIデザインのHTMLやプログラムのソースコードにも応用できる点だ。専門知識は必要なく、自然な会話形式でUIデザインやアプリケーションが作れてしまう。 これがプログラマーやデザイナーの仕事をAIが奪う時代が来たのではないかと話題になっている。その具体例をとなるデモをいくつか見ていこう。 GoogleのようなWebデザインのHTML/CSSを自動成生 実行可能なソースコードを生成 UIデザインの自動生成 プレゼンテーションをAIが作成 GoogleのようなWebデザインのHTML/CSSを自動成生 これはGoogleライクなデザインのHTML/CSSを生成するものだ。ここでは「Googleのロゴと検索ボックス、そして “Search Google “と “I’m Feeling Lucky “という2つのライトグレーのボタン」と入力するとGoogleのような検索ページを表示するソースコードを生成している。 そして、最初に生成されたデザインには不具合があったため、さらに「(2つのボタンの)間にスペースを入れる」、「幅の広い検索ボックス」と追加の入力をして、見事にGoogleと同じデザインを表示できている。 ここでのやり取りは実際のデザイナーとエンジニアの物に近いと言えるだろう。こうした自然な会話形式で簡単にページのデザインを実現できている。 Here’s a sentence describing what Google’s home page should look and here’s GPT-3 generating the code for it nearly perfectly. pic.twitter.com/m49hoKiEpR — Sharif Shameem (@sharifshameem) July 15, 2020 実行可能なソースコードを生成 上記のデモを公開したSharif Shameem氏は簡単な指示からアプリケーションを作成するデモも公開している。 ここでは「”3ドルを追加”ボタンと”5ドルを引き出す”ボタンと残高の表示」と入力すると、そのソースコードを生成している。そして、残高の計算には触れていなかったがAIがそれを解釈して、計算機能を実装してくれている。 人間であれば、指示されたボタンの名前などを解釈・推測してボタンの操作に合わせて金額を計算して表示すると分かるが、それと同じことをAIが行っているのだ。 I just built a *functioning* React app by describing what I wanted […]

UXデザインとCXデザインの違いとそれぞれの役割

混乱しがちなUXとCXの違いを説明
そもそもUXってなんだっけ
最近出てきたCXの概念と企業へのメリット
UXデザイナーとCXデザイナーの役割
ブランディングにおけるCXの重要性

最近のデザイン界隈において、あまりにも多くの専門用語が飛び交っている。その中でも最もよく使われているバズワードが「UXデザイン」だろう。それなのに、その概念は時代と共に変化し、内容がイマイチわかりにくい部分もある。
UIとUXとの違いは何か?の問いから始まり、その守備範囲、UXデザイナーの役割など、異なる人やコンテキス…

ニューノーマルで注目度アップ! アメリカの非接触サービス12事例

接触をいかに減らすか。ニューノーマル時代、Contactless (非接触) サービスに注目
小売: 「目新しい」から一転。Amazon Goのようなレジレスサービスが大きく普及。
宅配: ロボットにドローンまで!無人宅配サービスの実用化が進行。
医療: 感染リスク軽減。アプリやロボットで医療にも「非接触」というアップデートを。

残念なことだが、コロナウイルスの流行は収まる気配が見えない。そんな中で「After コロナ」でなく「With コロナ」として、コロナウイルスと付き合いながらニューノーマ…

UXデザインプロセス入門 – 基本的な6ステップ

Step1 – 理解: Understand Step 2 – 共感: Emphasize Step 3 – アイディエート: Ideate Step 4 – プロトタイプ: Prototype Step 5 – テスト: Test Step 6 – ローンチ&計測: Launch&Measure ユーザー体験を設計するUXデザインは、現代ではかなり高い認知度を獲得し、多くの企業が注目をしている。その一番の理由が、「スペック重視」から「体験重視」にビジネスもモデルが変換し始めたことだろう。 ユーザーのフォーカスが、所有することから利用することに移行したことで、プロダクト提供側も、より良い体験設計が求められている。 これからの時代にヒットするのはサービス化されたプロダクトだと言えるだろう。そこで最も重要な存在になってくるが、UXデザインであり、UXデザイナーである。 意外と知られていないUXデザインのプロセス その一方で、肝心のUXデザインのプロセスは意外と知られてない上に、多くのデザイナー達がUXを学ぶ方法を未だに模索しているケースが後を絶たない。 ビートラックスでもデザインチームを中心に、UXデザインのプロセスを社内全体に共有しているが、今回はそのUXデザインプロセスと、それぞれのステップで作り出される活動と成果物をまとめて紹介する。 UXデザインにおける6つのステップ ビートラックスによるUXデザインプロセス Step1 – 理解: Understand 最初のステップはユーザーの課題とビジネスのゴールを理解することから始まる。見た目を美しくするだけでは、ユーザーとビジネスの両方の課題を解決することは永遠に不可能である。 主な活動・成果物: ユーザーインタビュー 消費者アンケート マーケット調査 競合調査 ステークホルダーインタビュー お客様第一主義とユーザー中心デザインの違い Step 2 – 共感: Emphasize 優れたデザインを生み出すために最も重要なプロセスがエンパサイズ。デザインを受け取る人たちへの共感をすることだ。彼らがが何を見て、何を感じて、何を経験しているかを理解しなければ、デザインは無意味な作業になってしまう。 主な活動・成果物: ペルソナ ユーザーストーリー ユーザーシナリオ エンパシーマップ カスタマージャーニーマップ デザイン思考入門 Part 2 – Empathize 理解と共感 Step 3 – アイディエート: Ideate アイディエートとは、アイディアを出すプロセスのことで、アイディエーションとも呼ばれる。アイディエーションとは、良いものも悪いものも含めて、可能性のあるすべての解決策を探り、どのようなアイデアで前進すべきかを絞り込んでいく。そのプロセスは対話的で共同作業的であるため、メンバーが一つの場所に集まり、一気に進めていくことが多い。 主な活動・成果物: ブレインストーミング スケッチ ムードボード リファレンス アイディエーションとは?効率的に行うための5つのポイント Step 4 – プロトタイプ: Prototype プロトタイプは、Webやアプリの場合、UIやコンテンツ構成などを確認し、その操作性を理解すること。ハードウェアなどでも、どのようなユーザー体験を提供できるかを理解するために制作される。その役割に合わせ、早い段階でラフなものを作ることもあれば、かなり作り込み、細部の確認に活用する場合もある。 主な活動・成果物: ユーザーフロー ペーパープロトタイプ ワイヤーフレーム インタラクティブプロトタイプ コンセプト動画 ロールプレイ デザイン思考入門 Part 5 – Prototype 今さら人に聞けないプロトタイプの作り方 Step 5 – テスト: Test アイディアやモックアップ、プロトタイプをユーザーにぶつけ、フィードバックを得ることでデザインを洗練させる段階だ。テストを行う時期が早ければ早いほど、変更が容易になり、デザインの制度を高めることが可能になる。 主な活動・成果物: ユーザビリティテスト ヒューリスティック評価 アクセシビリティ評価 フォーカスグループ オンライン調査 […]

インクルーシブデザインとは?現代の多様性に寄り添う7つの実例

今こそ向き合うべき「インクルーシブ」という概念 様々な肌の色に対応。Band-Aidの絆創膏 まさにユニバーサルデザイン。スパイラル形式のお風呂 性別も体型も。あらゆる既成概念にとらわれないジェンダーニュートラルな下着 宗教の違いに合わせて。リデザインされたキューピーちゃん 赤ちゃんから大人になるまで。ずっと使える椅子 男性も女性も、さらには宇宙人まで。誰でも使えるニュートラルトイレ カラーリングの知られざる理由。青と赤のカスタネット ここから始めるインクルーシブデザイン入門 誰のためのデザインか?徹底的なユーザー視点で既成概念を崩す発想が競争優位性を勝ち取る ここ数週間アメリカでは、デモやネット上での熱い議論など、人種や考え方の違いによる様々な軋轢が表面化している。それに伴い、これまでは「普通」と考えられていた概念が見直され、より多様性を受け入れる動きが進んでいる。 日本と比べても、実に多種多様な人種が集まっているアメリカでも、まだまだ多くの商品やマーケティングメッセージが画一的なデモグラフィーを中心に考えられており、マイノリティーと言われるユーザーを考慮していないケースが少なくない。 その一方で、サンフランシスコを中心とした都心部では、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、それを考慮することで、より多くの人々のためのプロダクト作りやマーケティング手法が進んでいる。 関連記事: 令和に絶対押さえるべきインクルーシブマーケティングとは。事例6選 ダイバーシティーの主な構成要素 最近は日本でも知名度が高まってきている「ダイバーシティー」という単語。「多様性」を意味するが、具体的にはどのような要素が含まれているのだろうか?LGBTなどに代表される性別的な要素や人種はわかりやすい例であるが、それ以外にも複数のファクターが存在している。 性別 年齢 人種 言語 体型 肌の色 宗教 食習慣 障がい 収入 利き手 ライフスタイル 人々の多種多様な要素を包み込むのがインクルーシブ 世界中には上記のような様々なバックグラウンドを持つ人々がいるが、一つの場所で生活していると、どうしてもそれを忘れがちになる。特に日本国内に住む98%が「日本人」であることを考えると、日本が相当ダイバーシティの低い国であるということになる。 それを象徴するのが、ターゲットを性別と年齢だけで区切ってしまうマーケティング手法。おそらくこの手法は、日本国外へ出た瞬間に、一瞬で通用しなくなる。 加えて、今後は日本にも海外からの移住者がどんどん増えていくことを考えると、日本企業も、早い段階からダイバーシティーへの理解とインクルーシブデザインの採用を進めていく必要があるだろう。 インクルーシブデザインとは どんなデザインのプロセスにおいても、特定の顧客を除外してしまう可能性がある。インクルーシブデザインは、ユーザーの多様性を理解することで、意思決定の情報を提供し、できるだけ多くの人を取り込むことに貢献することをゴールとしたデザイン手法。ユーザーの多様性は、能力、ニーズ、願望などに様々なバリエーションがあり、インクルーシブデザインでは、それらを広範囲でカバーしている。 近いコンセプトとしては、ユーザー中心デザインや、ユニバーサルデザイン、そしてアクセシビリティーというものも存在する。 インクルーシブデザインは、一人でも多くの人に役立つ製品を作るのがゴールとなる。アクセシビリティはそれ自体がゴールとなるが、インクルージョンはそれ以上の意味を持つ。達成できれば、多様な特性を持った人が、様々な環境で自分の製品を使用することが可能になる。特に何百万人もの人々のためにデザインをする場合、人々が体験に参加するためのさまざまな方法を作ることが重要になってくる。 インクルーシブデザインが考慮するべき要素 多種多様な人々に寄り添うインクルーシブデザイン事例 では、具体的には世の中にはデザインを通じて、どの表に多種多様な人々に対応しているのだろうか。実際の例をいくつか見てみよう。 1. 異なる肌の色に対応したバンドエイド これまでは、形やサイズ、柄などの種類のバリエーションはいくつかあったが、より多くの肌の色の消費者に対応するべく、Band-Aidは複数の色味を持つ商品をリリースした。そして、公式のインスタグラムでは”We hear you. We see you. We’re listening to you.⁣” という、消費者のことを親身に考えているというブランドメッセージを発信している。 様々な肌の色に対応したバンドエイド 2. 車椅子の方でもスムーズに使えて、健常者にも違和感のないお風呂 デザインが解決すべき最も大きな多様性の一つが障がい者向けの施設だろう。特にトイレやお風呂は、日常での利用頻度も高いため、とても重要な場所になってくる。駅や総合施設などでは、車椅子の方でも利用できるトイレを見かけることはあるが、お風呂はあまり知られていないだろう。 今回紹介するお風呂は、静岡県のJIKKAというゲストハウスに設置されたスパイラル形式のお風呂。5mのスロープを設置することで、体の不自由な方や、お年寄りにも優しい設計を実現している。 身体の不自由な方も使いやすいJIKKAのお風呂 3. 性別や体型の既成概念にとらわれない下着 下着といえば、ついついヴィクトリアズシークレットのセクシー系や、トミーヒルフィガーのワイルド系など、どうしても型にはまったスタイルを想像しがちであるが、TomboyXでは、多様性の高いユーザー向けに、多種多様なアイテムを提案している。 トランクスやボクサーブリーフなどの男性的な下着を女性の体に合わせてアレンジしたり、男性の体向けにフェミニンなデザインを提供したりもしている。これはいわゆる、ジェンダーニュートラルのコンセプト。「男性っぽさ」や「女性っぽさ」からあえて離れることで、新しいニーズに対応している。 全ての性別・体型に対応しているTomboyXのオールニュートラル下着 4. 宗教の違いに合わせてキャラクターをリデザインしたキューピーマヨネーズ 日本でもお馴染みのキューピーちゃんであるが、実は販売されている地域で、そのキャラクターのデザインが一部変更されている。変更している地域は、東南アジアのマレーシア、インドネシア。オリジナルのキューピーの背中の羽をなくし、顔と手だけのデザインになってる。 この地域ではイスラム教徒の方々が多いのが理由。イスラム教では、偶像崇拝が禁じられており、オリジナルの羽のついたキューピーは、天使と受け止められる可能性を考慮したものなのだ。 オリジナル(左) とイスラム圏向け(右)のキューピーマヨネーズ 5. 赤ちゃんから大人までが使える椅子 赤ちゃんが生まれて、成長する過程では、身体がどんどん大きくなる。その度に家具を買い替えていると非常にコスト高になる。 この課題を解決すべく、北欧のデザイナー Peter Opsvikは、一生使える椅子をデザインした。TRIPP TRAPPと呼ばれるこの椅子は、生まれた直後から、大人になっても使える。全てのライフステージをインクルーシブにデザインされている。  成長に合わせて使い続けられるTRIPP TRAPPの椅子 6. 誰でも使えるニュートラルトイレ 海外では、男性でも女性でも利用できるトイレが増えてきているが、ヨーロッパなどでは文字通り「誰でも」使えるユニバーサルトイレが出現。 サイネージには、男性、女性、車椅子、老人、人魚、バッドマン、アンドロイド、そして宇宙人までが表記され、しっかりと点字も記載されている。まさに、全てを内包 (インクルード) するデザインとなっている。 ユーモアのあるインクルーシブトイレのサイン 7. 男の子でも女の子でも使えるカスタネット おそらくほとんどの人が学校で使ったことのあるカスタネット。多くの場合、赤と青の2色で構成されている。実は、その理由は男子でも女子でも使えるようにするため。もともとは、男の子向けの青と女の子向けの赤が別々に存在してた。 しかし、クラスによって男女比率が異なったりすることで、どちらかの数が足りない状態が発生していた。そこで、両方の色を合わせて一つにすることで、どちらでも使えるようにデザインをしたというもの。ちなみに現代では、青=男性、女性=赤、という概念自体がなくなり始めている。 男子でも女子でも使える赤と青が合わさったカスタネット インクルーシブデザイン入門 それでは、どのようにすれば、多様性に対応したデザインが実現できるのだろうか?我々btraxでは、世界の異なる地域の様々なニーズに合わせたプロダクトに対するデザインを提供するために、まずはユーザーを深く理解し、共感することからデザインのプロセスを始めている。 これは、デザイン思考のプロセスの第一歩である、エンパサイズのプロセスでもある。 そして、実際のデザインプロセスを進めるにあたり、下記のような命題を踏まえ、より多くの人々に受け入れられるようなプロダクト作りを進める。 デザインを始める前に自分たちにはどんなバイアスがかかっているのか? このデザインを良しとしないのはどのような人だろうか? 必要のない要素にこだわってはいないか? 自分のためだけのデザインになっていないか? 最終的に誰のためにデザインをしているのか? どんなデザインチームでも、これらのシンプルな質問を自問自答し、包括性について考え始めることが重要になってくる。 インクルーシブデザインを実現するための6つのステップ 実際にデザインプロセスを進めるにあたって、下記の6つのステップが有効になる。 1. 排除されているポイントとユーザーを理解する 排除のポイントを積極的に探し出し、それを利用して新しいアイデアを生み出し、新しい解決策を生み出す機会を模索する。人々がどのようにして、なぜ排除されているのかを正確に理解することで、よりインクルーシブになるための具体的なステップを確立することができる。例えば、動画作成をする場合に、耳の不自由なユーザーにもメッセージが届くかどうかを検証するために、音量がオフになっていても、内容が伝わるかの検証を行う。 2. 状況に応じた課題を特定する 排除は状況に応じて発生する可能性がある。ユーザーがプロダクトを利用している際の「特定」のポイントにてインプルーシブではない瞬間が発生していることを探る。今回の例の場合、通常は問題なく視聴できている動画コンテンツでも、空港やカフェなどの騒がしい場所では、音が聞こえなくなる瞬間がある。その場合、耳の不自由なユーザー向けにデザインされた要素がその課題を解決してくれる。 3. […]

Withコロナの体験デザイン。世界の企業がとったアクションとは?

Withコロナ時代に対応するため、米国企業から新たな体験デザインが提供されている ①コミュニティとして支え合い、共存を目指すスモールビジネス応援募金系デザイン(MealPal、ClassPass ②StayHomeのためにできることを優先する、家にいようと啓発系デザイン(Netflix、Uber/UberEats) ③家にいてもひとりじゃない、コミュニティビルディング系デザイン(Instagram、Coffee Meets Bagel) ④インフォデミックを防止する情報共有系デザイン (Medium、Note、Google、Facebook など) Withコロナにおいて、企業がどういうスタンスをとり、人々の価値観に対してどう体験デザインを提供していくか、考え抜き、実行する必要がある   全く未知のウイルスの登場により、経済が停滞、数年先どころか、数ヶ月、数週間先の状況まで全く予測することができず、まさに世界中の人々が足踏み状態である。このことから、欧米では現在の状況を「Great Pause(大いなる停止)」と呼ぶようになってきた。 前例のない状況に困惑し、今後の仕事や生活に不安を抱える人の方が多いことだろう。一方で、環境問題の改善や交通渋滞や事故の減少が顕著に見られるなど、人々が経済活動を一時休止したことによるポジティブな側面も注目されている。それはまさに、この停止期間を我々がどう考え乗り越えていくかによって、この後の世界が大きく変わっていくことを示唆しているようだ。 そして、世界を新しく形作っていく上で大きな力を持つのが「企業」である。今、企業はどのようなアクションを取り、メッセージを社会に発信していくべきなのか。世界中が立ち止まっているこの状況こそ、社会に新たな価値や考え方を提案することができるチャンスと捉え、真剣に向き合っていくべきではないだろうか。 すでに米国では、各企業が自分たちが社会に提供できることを考え、迅速な動きを見せている。消費者を巻き込んだそれらの動きは、体験デザインの視点から見ても、非常に参考になるものが多い。この記事では、コロナ危機発生直後の状況に対応する米国企業の体験デザインを考察しながら、この歴史的な転換期に、企業としてどのような行動をしていくべきなのかを考えていく。 コロナ危機に対する企業の迅速な対応が活発に アメリカではこの世界的危機に対し、企業としてどのように貢献できるかを考えて、即時に行動する流れがとても顕著である。これらの動きは英語で『COVID-19 Corporate Responses』と呼ばれている。 その中でも目立っているのは、資金や物資の支援だ。例えば、Mastercardや、Wellcome、Bill&Mellida Foundationは、3月10日という大変早い段階でCOVID-19事態収束のためのスタートアップを支援するアクセラレーターを共同設立。 CocaColaはフェイスシールドを作る非営利団体の支援のためにリソースとロジスティクスを提供した。各国のマスクの不足に対しては、AlibabaやTrip.comのような企業が日本、アメリカ、ヨーロッパ等に大量寄贈したニュースを目にした読者も多いのではないだろうか。 また、PepsicoやChipotleをはじめとする食品企業やレストラン業が、ウイルスと最前線で戦う医療従事者や経済的に困窮する層に対して、無料で食事を提供する動きもアメリカでは目立った。 ZoomやWorkplaceなどのオフィスツールを提供する企業も、急な自宅勤務が導入された企業をサポートするために、期間限定でサービスの無料提供を行っている。 消費者を巻き込む企業のコロナ対応デザイン 上記のように、直接的に企業の資金や物資を無料提供するような企業活動が目立つ一方で、別の形でコロナ危機に対する企業活動を実践している企業が存在している。 彼らは、この前代未聞の危機の中で私たち消費者側が、お互い助け合い、賢く判断して生活できるようなデザインを提供している。 パンデミックの世の中で新たな社会生活の在り方の創造が求められる中、これらの企業は、他者と自分とのつながりの中で社会が存在することを消費者に再認識させ、新しい社会での行動の仕方をポジティブに提案してくれている。 1. スモールビジネス応援募金系(MealPal、ClassPass) コロナウイルスの感染拡大防止の自宅退避令により、多くの都市で必要最低限のビジネスが禁止される措置が取られている。サンフランシスコでも、レストランやカフェは宅配とお持ち帰りのみが許され、イートインスペースは閉鎖されてしまっている。 スポーツジムやヨガスタジオといった施設も未だ全て閉鎖されている状況だ(5/1現在)。2ヶ月以上もこのような状況が続くため、多くが従業員の解雇や廃業にまで追い込まれている。 このような状況に対して、MealPalやClassPassは、消費者たちが支援を必要とするスモールビジネスをサポートできるような仕組みを提供し始めた。 MealPal MealPalは街中のレストランと提携し、オフィス街で働く人向けに格安でランチを提供するサブスクリプションサービスだ。ユーザーはアプリから翌日のランチとピックアップ時間を選択し、その時間になったらレストランまでランチを受け取りに行く。 参加するレストラン側のメリットはMealPalプラットフォームに参加することでレストランを周知してもらえる点だ。また、MealPal用のランチメニューは数種類に限定することができるのと、事前にオーダー数がわかるのでロスも少なく効率的であるというのもメリットだ。ユーザーは通常より安価にランチを手に入れられるほか、お店で待たずに受け取れるのが嬉しい。     しかし、コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、ほぼ全てのオフィスワーカーが自宅勤務になった。ここサンフランシスコでも、MealPalを利用できるユーザーが激減してしまった。またレストラン自体が一時休業というケースも少なくない。 自分たちの経営すらも危ういであろうこの状況の中、MealPalが始めたのは、加盟店への募金のシステムだ。 今現在、ユーザーがアプリを起動すると、いまだにランチ提供を続けるお店にランチを予約するだけでなく、今日ランチを注文する代わりにその金額を提携レストランへの募金に回すというオプションも存在する。 また、このような状況の中、多くのユーザーがサービス利用の一時停止を考えるだろうが、お金に余裕のあるユーザーに向けて、1ヶ月分のサブスクリプション費用を全額募金に回すという選択肢も提案している。 関連記事:【UX分析】ランチの格安サブスクサービス MealPal ClassPass MealPalと似たビジネスモデルを持つClassPassは、MealPalのジム版とでも言うことができる。ClassPassのサブスクリプション(回数券)を使うと、ダンスやヨガ、ボクササイズなど、複数の異なるエクササイズジムを横断的に使うことができる。 ユーザーはオンデマンドで様々なクラスを予約、ドロップイン参加できるのだ。ユーザーは特定のジムに会費を払う必要はなく、様々なジムで異なったエクササイズを気軽に楽しめるのが魅力だ。 ClassPassのコロナウイルス対応は、とてもスピーディーだった。サンフランシスコでは自宅退避令が3月14日に発令されたが、ClassPassはその翌日15日には、該当地域に居住するユーザーのサブスクリプションを全て自動で一時停止した。現在ClassPassは、加盟するジムのオンラインストリーミングクラスをプラットフォーム上で提供している。 また、各エクササイズジムのClassPassプロフィールページには「サポート機能」を追加している。この機能を通じて、ユーザーはお気に入りのジムに対して、$5-$500の範囲で金額を設定して簡単に献金することができる。 さらに、エクササイズジムで働く人々に補助金を出すことを求めるオンライン署名活動を促す特設ページも一時期設けていた。   寄付文化が日本より浸透するアメリカであっても、先行きの不透明なこの状況で誰かに募金をしてサポートするというのは決して誰もができることではないはずだ。 しかし、いつも使うアプリからの募金の呼びかけは、普段ランチを手渡してくれる飲食店従業員や、エクササイズをサポートしてくれるジムのスタッフの笑顔がユーザーの頭をよぎらせるだろう。 そうしてユーザーは、コロナウイルスの影響で窮地に追いやられているコミュニティが、実は自分の属すコミュニティであることを実感し、募金という行動を選ぶ。そんな体験のデザインが、MealPalとClassPassの「サポート機能」には隠されているように筆者は考える。 このようにして、この2社は、自分の生活すらも不安な今、スモールビジネスを応援する意味を人々に考えさせ、コミュニティとして支え合い、共存してくという価値観を社会に醸成しているのである。 2. 家にいようと啓発系(Netflix、 Uber/UberEats) 次に紹介するのは、コロナウイルス感染のピークを抑え医療崩壊を防ごうとする「Stay Home」の動きを啓発する形で社会に貢献しようとする企業だ。 Netflix 動画配信サービスを提供するNetflixはもう日本でもお馴染み。彼らは街頭に、今一番人気のあるリアリティショーのネタバレ広告を出した。外出する消費者に「家に帰ってNetflixを観たい」という気持ちにさせることで、コロナウイルス感染拡大防止に貢献させるという秀逸な対応である。 このリアリティショーのファンであるbtraxスタッフも「ネタバレし過ぎない程度の絶妙なネタバレ具合で普段から視聴している人にとっては続きが気になって仕方ない」と絶賛していた。 ちなみにNetflixはサブスクリプションベースなので、新規ユーザー獲得でなく、既存ユーザー1人あたりの視聴時間が増えたからといって単純に利益が増えるわけではない。 Uber また、配車マッチングプラットフォームのUberは「A company that moves people is asking you not to move(人々の移動を生業にする会社が、動かないでとお願いしています)」と広告を出した。 現在、Uberをオーダーしようとアプリを開くと「それは本当に必要な外出ですか?」と確認メッセージが表示され、不要不急の外出を避けるように促される。 また、ドライバーたちにも社内のクリーニングキットを提供してたり、万が一ウイルスに感染してしまった場合には14日間の休業支援金を支払ったりしているようだ。 Thank you for not ridingというメッセージも動画広告で発信されている UberEats さらに、レストランのデリバリーに対応するUberEatsでは、現在デリバリー手数料を無料化し、金銭的な面で普段より利用ハードルを下げることで「Stay Home」を後押ししている。 ソーシャルディスタンスの実践をサポートするために、受け取り方法にも「Leave at the door(ドアの外に置く)」というオプションを素早く導入して対応した。 これらの企業は、自社のサービスがどのようにコロナの渦中にある社会で位置付けられるのか、その中で自分たちが取るべき行動はなんなのか考えて即座に行動している。 たとえその動きが自分たちの利益に直接繋がらなかったり、むしろ利益を下げてしまう場合であったとしても、潔く社会のためにその活動を決断している点に注目したい。 3. 家にいてもひとりじゃないーコミュニティビルディング系(Instagram、Coffee Meets Bagel) ソーシャルディスタンスの実施により、自宅退避を強いられ、多くの人々が友人知人と直接顔を合わることがほぼなくなってしまった。そのことから、強い孤独やストレスを感じている人も多いだろう。 そんな中、自宅にいながらも、人と人との繋がりや新たなコミュニケーションのきっかけをデザインしてくれている企業も存在する。 Instagram 日本を含め世界中にユーザーがいるInstagramもその1つだと筆者は考える。彼らは「Stay Home(おうち時間)」スタンプを作ることで、コロナ時代の孤独になりがちな「おうち時間」をサポートしている。 「Stayhome(おうち時間)」スタンプは、日本語、英語のみならず、ドイツ語やスペイン語など世界中の言葉に対応されているようだ。Instagramは、このスタンプを作ることで、ユーザーそれぞれが自宅での過ごし方を共有しあうことを促した。 自宅でも有意義な時間の使い方が可能であることを互いに共有しあったり、逆に「家で寂しい思いをしているのは自分だけじゃない」という同胞感を感じさせる体験デザインしているように見える。   この状況で実は大きな打撃を受けている業界は数えきれないが、オンラインデーティング業界も実はそのうちの1つだ。「オンラインデート」とは言うものの、ユーザーの多くがオンラインで「マッチ」した後に直接顔を合わせることを前提にサービスを利用している。 自宅退避令により、実際に顔を合わせるのがいつになるかわからないため、一旦活動を停止してしまうユーザーも多いようだ。 CoffeeMeetsBagel この状況に対し、Coffee Meets Bagel(以下CMB)は自宅退避令中も(バーチャルで)人々の出会いを支援するデザインを行っている。まずCMBの特徴の1つと言えばマッチした人とのメッセージ機能が7日間でクローズすること(それによって、実際に顔をあわせることを促す仕組み)だが、彼らはその機能を真っ先に「無制限」にした。 […]

ロックダウン直前にオープンしたインスタ映えレストランの現状

満を辞してサンフランシスコにインスタ映え確実なレストランが開店!ただ、タイミングが悪かった… 外出自粛令による売上の大幅縮小とレイオフの実施、起死回生の策を探る ソーシャルメディアの活用とユーザーの嗜好に合わせたメニュー改編でピンチを乗り越える 店舗でのハイレベルな顧客体験をデリバリーでどう再現するか、重要なのはモノより体験 街中が封鎖される直前に体験重視のめっちゃオシャレなレストランがオープンしたらどうなってしまうのか? シェフでオーナーのカセム・セーンサワンと妻のイング・チャタージーは、3月初旬にサンフランシスコ市内に新しいレストランをソフトオープンした。 このレストラン、Son & Gardenはインスタ映えを求めるキラキラ系の熱狂的な夢をイメージしてデザインされた。 インスタ映えバッチリのたSon & Gardenのインテリア インスタ映えを狙った体験型レストラン in サンフランシスコ 室内の壁や天井には花が散りばめられ、全体にブルーの花柄の壁紙が貼られている。店内には「シークレットバー」と呼ばれるエリアもあり、テーブルと座り心地の良いベルベットのラウンジチェアが用意されている。 メニューとしては、アフタヌーンティーセットに加え、バニラソースとブルーベリーのコンポートを使ったリコッタパンケーキ、ポテトウェッジとマッシュルームソースのフライドチキンドーナツ、自家製ベーコンとエンドウ豆、卵、ペコリーノ・ロマーノを使ったパスタカルボナーラなどがある。 その内装、盛り付け、雰囲気、サービス、全てがソーシャルメディアでシェアされることに特化してデザインを施されたレストランだ。 提供するメニューや食器もかなりオシャレ キラキラ系女子垂涎の演出満載 リコッタのパンケーキとブルーベリーのコンポートが芸術的に盛り付けられ、「クラウド9」と呼ばれるスパークリングワインのカクテルの上には、青い蝶々をあしらった綿菓子がトッピング。 すべてがインスタグラムで話題になるように仕立てられたもので、招待されたインフルエンサーたちは、Son & Gardenがグランドオープンする前から、三脚やリングライトを持ってきて、このマジカルな空間を撮影していた。 インフルエンサーを通じて話題沸騰になる…予定だった しかし、3月16日にはサンフランシスベイエリアでは、外出自粛が施行され、レストランやバーの営業に大きな制限が設けられた。それにより、この体験型の新しいレストランがテイクアウトのみに追い込まれた。 オープンまでに2年間という年月と、かなりのコストを掛けオープンに漕ぎ着けた。しかしそのわずか2週間後に市によりシェルターインプレイスの要請が発動された。それにより、忙しい日には2万ドル近くあった売り上げが、4,000ドルにまで落ち込んだとオーナーは語る。 View this post on Instagram Who’s ready to par-tea? ☕️❤️ Tag your pals who needs to experience the Son & Garden High Tea Set! ⤵️⤵️⤵️ A post shared by Son & Garden (@sonandgarden) on Feb 23, 2020 at 6:38pm PST スタッフをレイオフし家賃支払いの猶予要請も これにより、スタッフの60%をレイオフせざるを得なくなり、2ヶ月分の家賃支払いの延期を物件の大家にリクエストした。彼らは州政府に中小企業向け支援を申請しているが、いまだ返事は来ていないという。 現在、全国のレストランの多くが苦戦している中、Son & Gardenのような新しいレストランは特に厳しい状況にある。老舗レストランではある程度テイクアウトを求める常連客を期待できるが、新規オープンの所はまだ忠実なファンを確保できていない。 そのため、インスタ映えするブランチのためにデザインされたSon & Gardenも、シェルターインプレイスの下では、テイクアウトとデリバリーのみにピボットしなければならなくなった。 View this post on Instagram We have exciting news! Our beautiful Cloud 9 boozy drink is available to go 🦋☁️ You can now enjoy this fun drink at home. Available for pick up in store […]

なぜ優秀なデザイナーでも酷いデザインを生み出してしまうのか?

日常生活において「なんでこんなデザインにしちゃったんだろう?」と感じることが意外と多い。誰がどう見たって醜いルックス、どうしたって使いにくい操作性、非常に心地悪い体験、などなど。もっと良いデザイナーにデザインさせろよ!と思うかもしれない。でも、もしかしたら原因は他にある可能性も。 優秀なデザイナー ≠ 優れたアウトプット 優れたデザイナーに頼めば、必ず優れたデザインをしてもらえるのか?答えはNo。むしろどんな優秀なデザイナーであっても、低いアウトプットのクオリティーが低いものになってしまうこともある。そして、その理由はデザイナーのスキル以外にあったりする。これは、イコール優秀なデザイナーさえ雇えばクオリティーの高い結果が出るわけではないということでもある。 ■ 醜いデザインが生み出されてしまう主な理由■ 事前に十分なインプットが得られていない 間違った期待値設定 クライアントや担当者に対して間違った質問をしている 民主主義の決定プロセス PM主体のプロジェクトプロセス フィードバックではなく承認を求め始める 身の丈に合わないプロダクトスペック チームメンバーの主観だけで決めてしまう 全体のUXよりも見た目のデザインを優先してしまう 長期的なUXゴールよりも短期的な結果を優先してしまう 組織が分断されている デザイナースキルのミスマッチ 心理的安全性が担保されていない 多様性の低いチームメンバー構成 求めるデザインの仮説を立て、リサーチを行い、ユーザーとの対話もし、チェックポイントごとに関係各所と綿密な確認も行なった。その後、QAをして、リリースまで漕ぎ着けた。しかし、完成したものを見てみると、なぜか微妙な結果になっている。そのような事例は後を絶たない。これは、デザイナーの能力に問題があったのではなく、多くの場合、組織構造、プロセスや期待値設定など、複合的な理由であることがほとんど。 より良い結果を望むのであれば、デザイナーの方々だけでなく、社内でも、社外でも、デザイナーと仕事をする方々にもぜひ覚えておきたい落とし穴をいくつか紹介する。 事前に十分なインプットが得られていない これは、デザイン会社とクライアントとのプロジェクトで生まれやすい落とし穴。本来はプロジェクトをスタートする時点で、クライアント側からプロジェクトの目的やゴールなど、の入念なインプットに十分な時間を費やすべきなのであるが、どうしても忙しい、納期がきつい、めんどくさい、などの理由で、いきなりデザイン作業に移行してしまうことがある。この“見切り発車”が大きな落とし穴。 そうなると、しばらくしてから出来上がった物がクライアントが想定していた目的に準じていない感じになってしまう。我々、btraxでは、プロジェクトの開始時の1-2週間を”ディスカバリーフェーズ”と名付けた、情報共有と信頼関係構築のための期間に充てる。そうすることで、結果的に時間とコストの短縮につながる。 典型的な結果例: クライアントから発注内容と異なるというクレームが出る 間違った期待値設定 デザインが課題の解決や目的達成のための手段だとするならば、まず最初のゴールや期待値の設定がとても重要になってくる。しかし、多くの場合その時点で既にズレが生じている。多くの場合は、当初設定していた期待値よりも、より多くのことを求めすぎる傾向がある。 例えば、ECサイトのチェックアウト機能の改善という目標に対して、リピート顧客がよりスムーズに買い物ができるようにするために、ステップを減らす、というゴール設定をしたとする。しかし、それがいつの間にか「ユーザーの買い物体験の向上」といった、壮大なるテーマにすり替わり、デザインフォーカスがぶれ始める。 その結果、本当に何を達成すべきかを見失い始め、当初設定していたゴール達成が難しくなってくる。これは、多くの場合、プロジェクトリーダーが上司の顔を気にしすぎることで、欲張りになってしまっているのが原因だ。 典型的な結果例: 何をするにも使いにくいデザイン、構成要素が多すぎて分かりにくい 関連記事: デザイン最優先のAirbnbがユーザー獲得のために行う3つのマインドセットと4つのコアプロセス クライアントや担当者に対して間違った質問をしている デザイナーが最もしてはいけない質問は「こんな感じでどうでしょうか?」だろう。この質問をした瞬間に、そのデザインに対する主導権は相手に渡ってしまい、デザイナーの仕事は一気に言われたことだけをやる、オペレーターになってしまう。 そして、最悪なことに、その時点からデザインのことがよくわからない素人が、個人的な感覚で指示を出し始める。そこにデザイナーとしてのアイディアを提案する余地は残されていない。そうなってくると、その後はデザインのクオリティーがどんどん劣化してしまうだけだ。 以前に先輩のデザイナーから受けた最も重要なアドバイスの1つが「デザインプレゼンの際にはデザインの話をするな」だった。この狙いは、そのデザインが解決するべき課題や、目的、経営的ゴール、プロダクトのビジョンなどにフォーカスを当てることで、デザインを”目的”ではなく、あくまで”手段”として客観的に捉えるようにすることだ。 その目的も考慮せずに、ボタンの色は青が良いか、赤が良いか、のような議論が始まったとしたら要注意である。 典型的な結果例: デザイン理論的にもトンチンカンなアウトプット 民主主義の決定プロセス 優れたデザインを世の中に出すことよりも、プロジェクトメンバーや上司の顔色を伺うことを優先したプロダクトは必ず失敗する。例えば、Appleの製品のその多くが、機能面でかなり”削られた”ものであるケースが多い。それは、iPhoneの物理的ボタンの数や、Macbookのポートの数を見てもわかる。これがもし、プロジェクト参加メンバーみんなの合意を得るプロセスであったとしたら、あのようなプロダクトは生まれない。 また、SONYのウォークマンのような、新しい価値を生み出すプロダクトは、熱狂的なリーダーの一存で決まっていくことも多い。この辺は議論やぶつかりを避ける傾向にある日本企業にとっては大きなハンデとなっている。 典型的な結果例: つまらないデザイン、機能てんこ盛りのプロダクト 関連記事: なぜデザインはシンプルな方が良いのか PM主体のプロジェクトプロセス ユーザーのと対話がデザインプロセスの中で最も重要なポイントであるのであれば、デザイナー自身がエンドユーザーとの対話ができていないのに優れたデザインを生み出すのは、ほぼ不可能に近いだろう。しかし、多くの場合は、プロジェクト担当者やPMの方が表に立ち、デザイナーはあくまで”裏方”として仕事を進めていく。ここにプロセス的に大きな問題が潜んでいる。 デザイナー自身が直接ユーザーとの対話ができないことでモチベーションが下がり、デザインのオーナーシップが失われる。そして、その後はデザイナーとPMとの伝言ゲームが始まり、負のスパイラルに陥る。加えて、デザイナーは最終的なビジネスゴールを理解するのが難しくなり、見た目のデザインだけに終始してしまう現象が発生する。 典型的な結果例: 見た目のクオリティーは悪くないが、妙に使いにくいUX フィードバックではなく承認を求め始める プロジェクトにおける定期的なチェックポイントでは、主にフィードバックとディスカッションに時間を費やすべきなのであるが、チーム内、およびデザイン会社とクライアントの間でフラットな信頼関係が構築されていない場合、どうしても、承認を得るのが目的になってしまい、ミーティングの内容も「これで進めて良いでしょうか」に終始してしまう。 このプロセスに巻き込まれると、承認を得るために、決定権のある人の顔色ばかりを伺ってしまい、デザイナーのスキル以上のアウトプットを出すことが不可能になる。 典型的な結果例: とてもダサいデザイン 身の丈に合わないプロダクトスペック サイトやサービス、プロダクトを考える際には、リリースした後の状態も考慮して設計をする必要がある。と言うのも、あれもこれも含めてしまって、リリース後にコンテンツが間に合わないケースが多発しているからだ。 例えば、更新頻度がめっちゃ低いブログや、表記項目だけあって、中身が空っぽのECページなど、明らかにリリース後の運用フェーズを想定せずにデザインされていることが意外と多い。また、リソースの足りなさから、箱は作ったものの、中身が空っぽの状態でユーザーに届けられる。 そうなると「これ、誰が責任持ってアップデートしていくの?」という質問が公開後にされ、短時間でサービス終了に追い込まれるケースも少なくない。 典型的な結果例: UIは美しいが、コンテンツが空っぽのアプリ チームメンバーの主観だけで決めてしまう 優れたデザインプロセスには、ユーザーとの対話が不可欠である。しかし、現実はそれを行っていない場合の方が多いだろう。なぜなら、デザイナーを含めた、プロジェクトチームのメンバーの直感で多くのことが決められるからだ。人間は視覚で物事を判断しやすく、ことビジュアルデザインに関しては、エンドユーザーでなくとも、意見が言いやすい。 それが上司なのか、クライアントなのか、製作者なのかはケースによって異なるだろうが、想定される利用者からのフィードバックを得ずにデザインされたプロダクトのクオリティーはどうしても低くなってしまいがちである。 典型的な結果例: 説明してもらわないと意図が伝わりにくいプロダクト 全体のUXよりも見た目のデザインを優先してしまう これは、昔からの叩き上げや、アーティスト気質のデザイナーが陥りやすいトラップ。本来、プロダクトやサービスにおけるデザインクオリティーを考えた場合、総合的なユーザー体験が最も優先されるべきである。しかし、目先のビジュアルクオリティーにこだわりすぎたがために、利用した際に、使いにくい、心地悪いUXになってしまうこともある。 このポイントにおけるもう1つの弊害は、デザインした内容が技術的に実現不可能であるケース。見た目にこだわりすぎて、実際にどのようなテクノロジーを活用して”動かす”かを見落としているために、総合的なUXが全く実現されなくなる。 典型的な結果例: 全てが画像になっているサイト 長期的なUXゴールよりも短期的な結果を優先してしまう ビジネス的な結果を重視するのは良いのだが、短期的な結果を求めすぎるが故に、長期的なユーザー体験が犠牲になる。そして、最終的にはブランド価値の低下を招き、顧客離れが起こってしまう。 例えば、短期的な売り上げや問い合わせを増やすことに気が取られすぎると、サイトに余計なポップアップバナーやキャンペーン広告がどんどん表示されたり、連日割引メールが届いたりする。短期の売り上げ目標を達成し、予算獲得をしたいのはわかるが、長期的には絶対的にマイナスなイメージしか残らない。 典型的な結果例: 売り上げ重視が丸見えの使いにくいサイト 関連記事: UXハニカム – UXデザインの正しい品質評価方法 – 組織が分断されている 多くの現代企業における大きな問題の1つが、組織の分断だろう。戦略、マーケティング、企画、エンジニアリング、などそれぞれの役割のチーム間にギャップができてしまうと、ユーザーにとって使いにくいプロダクトや体験が生み出される。優れたデザインを求めるのであれば、相互が重なり合う、”クロスファンクショナル”なチームが理想とされる。 お互いがお互いの領域を理解しながらも、自分たちの専門分野をカバーすることで、一貫したユーザー体験を生み出すことができると考えられている。 典型的な結果例: 一貫性の無い体験、低いユーザービリティー 関連記事: 澤円x越川慎司激論!日本企業がイノベーションを生み出す組織になるには【DFI 2019】 デザイナースキルのミスマッチ そもそも、”優秀なデザイナー” という概念自体がナンセンス。それぞれのデザイナーには得意な範囲や、媒体、スタイルがあり、どんなプロジェクトに対しても良い結果を出すことのできるデザイナーは皆無だろう。 加えて、今の時代は、グラフィック、Web、イラスト、UI、UX、サービスデザイン、ビジネスデザイン、などデザイナーが関わる範囲が無限大に広がっており、一人のデザイナーが全てのエリアで貢献するのはほぼほぼ不可能である。 これは医者に例えると分かりやすい。一言で”医者”と言っても、内科、外科、精神科など、異なる症状に対して、そこにエキスパートがいる。何事も適材適所が重要だ。 逆に考えると、デザイナーとしては、自分の得意な領域とスタイルを集解と理解し、そのスキルセットに合致した役割を与えてもらえるプロジェクトに関わらないと大怪我をしてしまう。 典型的な結果例: フレキシブルになっていないUI、ずれた色やレイアウト、タイポグラフィーの詰めが甘いパンフレット 心理的安全性が担保されていない 優れたデザインを生み出すには、ディスカッションをする時点で、異なる役割の人から多種多様なアイディアを出すことから始める。その際には、”Yes, &”と呼ばれる、相手の意見を否定せずに、よりそれを良くする助言をする姿勢が良いとされる。そうすることで、どんな肩書きや役職の人であっても、否定されることを怖がらずに発言ができる安心感が得られる。 これを心理的安全性の担保されている状態と呼び、Googleが行った調査によると、パフォーマンスの高いチームに共通していたポイントだという。相手の反応が怖くてクレイジーなアイディアが出せないチームは、面白いプロダクトが作り出せない、と解釈しても良いだろう。 典型的な結果例: どこかで見たことのある平凡なプロダクト 関連記事: 上司が若手を育むための5つのマインドセット【DFI 2019】 […]

グローバルにイノベーションを起こす人の7つの特徴

経済産業省が「デザイン経営宣言」を発表したのが2018年のこと。経営にデザインを取り入れることで、組織のイノベーションの創出力を高めようとする試みだ。
実際、日本の多くの企業でも、デザインを取り入れる動きが見られるようになり、その効果も少しずつ現れ始めている。
関連記事:統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ
イノベーション、説明できますか?
では、そもそも「イノベーション」とは何だろうか?ふわっとした「なんとなく」のイメージに留まり、その定義ができていないのではないだろうか?
バ…

統計データで見るデザインの経営に対するインパクトの大きさ

ここ数年で経営に対するデザインの重要性に注目が集まっている。デザインを経営に活用している企業の株価の伸びが平均値の2倍以上であったり、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているなど、その結果が具体的な数字に表れ始めている。 参考: 数字で証明されたデザイン経営の重要性 デザインと経営に関する最新のリサーチ結果 そんな中でも、デザイナー向けのプロトタイピングツールを提供するInVisionが、これまでにないレベルの世界規模でのデザインに関するリサーチを発表した。The New Design Frontierと名付けられたこのレポートでは、世界中のさまざまな規模の企業や団体をリサーチを実施した。 リサーチ対象の内訳は、大企業:71%、エージェンシー:25%、非営利団体:2%、行政:1%で、金融や教育、エンタメなどの異なる24の業界から2,200を超える団体。 70%の企業が積極的に経営に対してデザインを活用してる その結果、全体の2/3以上が、デザインを機能や見た目以外にも活用しているという事がわかった。全体の70%の企業が商品の開発や企業経営のプロセスにデザイン的考えを導入していると答えている。 デザインの浸透に関する主なアンケート結果: 商品開発プロセスに組み込まれている: 66% デザインリーダーが商品開発やエンジニアリーダーと連動している: 53% 従業員がデザインプロセスに参加している: 51% 重役がデザインプロセスに関わっている: 49% 従業員がユーザーや顧客リサーチに関わっている: 48% デザインが経営に与えるインパクトが理解できる統計 また下記の通り、デザインの経営に対する効果としては、効率、利益、ポジショニングなどに加え、3/4近くの企業がデザインを通じて顧客の満足度とユーザービリティが改善されたと答えている。(サンプル数:2,229団体) 商品のクオリティに対するインパクト ユーザビリティ改善: 81% 顧客満足度向上: 71% 業務に与えるインパクト 社員の作業効率の向上: 33% 商品の市場リリーススピードの向上: 29% 会社の利益に対するインパクト 売り上げの向上: 42% コンバージョン率の向上: 35% コスト削減: 30% マーケットポジショニングに関してのインパクト ブランド価値向上: 39% 新しい市場参入への効果: 25% デザインパテントや知的財産権への効果: 13% 評価額や株価への効果: 10% 組織内におけるデザイン熟成度と経営へのインパクトにおけるデザインレベルとその効果 このレポートでは、企業や組織がどれだけデザインを業務や経営に活かしているかによって、会社自体のデザインレベルを5段階に分けている。その結果、経営に対してデザインのポテンシャルを最大限に引き出しているLevel 5に入るのは、全体のわずか5%にとどまった。 全体の80%の企業が常にデザインを企業内の何かしらのプロセスに導入している中で、実に95%はまだまだデザインを活用する余地が残っている。 デザインの活用度合いレベルと全体での割合 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% Level 2 – 定期的にデザインワークショップを実施している: 21% Level 3 – 業務プロセスにデザインが導入されている: 21% Level 4 – 絶え間ない仮説検証が行われている: 12% Level 5 – デザインこそがビジネスの根幹になっている: 5% 組織が大きくなるほど経営戦略へのデザイン導入難易度が上がる 組織の規模が大きくなればなるほど、デザインを経営に浸透させる難易度が高まる。例えば、大企業と比較した場合、最高レベルであるLevel 5の比率は、中小企業で2倍、小規模企業で3倍ほどの開きが見られる。 多くの大企業は、組織構造やプロセスが複雑化しており、経営に対してのデザインの導入に時間がかかる結果となっている。 デザインチームの大きさと経営へのインパクトは必ずしも比例しない 上記のデザインレベルにて、高い数字を達成している = 経営へのインパクトが大きい企業におけるデザインチームが必ずしも大きいとは限らない。 重要なのは、組織内でどのような影響力を持ち、経営陣からのサポート受けているかであり、デザイナーの数や大きさだけではそのインパクトを測ることはできないと言う結果が出ている。 言い換えると、むやみに多くのデザイナーを採用したとしても、そこにしっかりとしたプロセスとカルチャーがない場合は、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあるのだ。逆にたとえデザイナーの数が少なくても、経営に有効活用することが十分可能と言うことである。 デザイン経営に遅れを取るアジア諸国 企業に対するデザインの浸透度合いを地域ごとに見てみると、大きな違いは見られないが、主に北アメリカとヨーロッパが経営戦略にデザインを活用しているLevel 5の率が他の地域と比べ比較的高い。 その一方で、南米とアジア地域は、中間レベルのLevel 2, 3はそれなりの比率となっているが、Level 5はそれぞれ1%、 3%と低い数字となっている。 それぞれのデザインレベルのメリットと改善点 では、それぞれのデザインレベルごとに、ユーザーや企業にとってどのようなメリットがあるのか、そして、次のレベルに上がるにはどのような点が課題となっているかの詳細を紹介する。また、それぞれのレベルにおける平均デザイナー数の調査結果も掲載してみた。 Level 1 – 見た目に対してのデザインを重視している: 41% デザインを活用することで、主にUIなどの画面やプロダクトの見た目の改善を行っている。一昔前は、デザインレベルが低い=デザイナーが足りない、といのが一般的な理由であった。 しかし、レベル1に属する組織のデザイナーの数は平均30人。これは最高レベルであるレベル5組織のそれの倍であり、デザイナーの数がデザインレベルに比例するわけではないことがわかる。 Level 1では、デザイナーの影響範囲はかなり狭く、主にスクリーン上などでの”見た目のデザイン”にとどまっているケースが多い。 平均的なデザイナー数: […]

ブランド価値を下げてしまう7つの落とし穴

最近活躍している企業やプロダクトは共通してブランディングを重要視している。
ブランディングの最終目的は「価値の向上」である。価値を上げる対象は、商品であったり、サービスであったり、企業だったり、人だったりもする。
ブランド資産は目に財務資料に載らない大きな価値
強いブランドは模倣不可能な「見えない価値」を得ることが可能となる。そしてそれは数字では計りにくいこの価値が実は大きな差別化要素となり、競争で優位に立つことで長期的に成功するためには欠かせない重要な資産となるのだ。
参考: 今さら人には聞きにく…

【クレジットカード革命】Apple Cardから学ぶ革新的UXデザインのポイント

もしAppleがクレジットカードを作ったら? シンプル、クール、使いやすい。こんな形容詞が思い浮かぶAppleというブランドが、もしクレジットカードを作ったらどんなものになるだろうか? 今年の初めに発表されたAppleが提供するクレジットカード、Apple Cardが北米ユーザー向けに限定的提供を開始した。これにより、現在のところ、アメリカ在住の特定のユーザーがApple Cardを手にすることができる。*米国時間8月20日に他のアメリカの全ユーザー向けにリリース開始 選ばれたユーザーにはメールにて案内が届き、iPhoneのWalletアプリ内から申し込む。ラッキーなことに自分も選ばれたようなので、早速申し込み、使ってみた。 ↑ Appleから特定のユーザーだけに送られてくる招待メール これまでのクレジットカードの常識を覆す体験満載 では、Apple Cardは何が特別なのか? 実は、そのカード自体から利用体験、アプリとの連動性など、すべてのタッチポイントにおいて、デジタルな現代に最適な体験がデザインされている。 特に、これまでのクレジットカードは、銀行などの金融機関が発行しているものがほとんどで、顧客体験もその延長線上にあった。しかし、以前の「銀行はなぜ滅びるのか – それを阻止する方法は?」を読んでも分かる通り、金融機関が提供する体験はお世辞にも良いものではない。 今回、その体験をAppleが思いっきりリ・デザインすることで、これまでの常識を覆すようなスムーズな利用体験をユーザーに提供している。そのいくつかのポイントを紹介する。 アプリ上から一瞬で申請、数秒後から利用可能 通常アメリカでクレジットカードを申請する際には、銀行の店舗やオンラインで必要事項を入力し送信する。その数週間後に審査結果が郵送され、承認された場合はカードが同封され、却下の際にはお詫びの手紙が添えられている。そのプロセスに要する時間は少なくても数週間。 これがApple Cardの場合、Walletアプリにクレジットカードを追加する要領でできてしまう。Appleから選ばれたユーザーは、Wallet内の➕アイコンをクリックすると、申請プロセスに進むことができる。 必要事項を記入し、その数秒後に承認か否かが表示され、承認された場合、Apple Pay経由で即座に利用可能となる。そして、物理的なカードは、その数日後に送られてくる。これにより、プロセスに要する時間の大幅短縮と、カードが届くまで待っている時間がなくなった。 ↑ カードの申請はWalletアプリ内から行う 番号が記載されていないチタン製のカード 自分の場合は、アプリで申請してから5日後にFedExにてカードが送られてきた。ちなみにカードの発送状況もアプリから確認ができる。 中心にAppleのロゴが刻印された真っ白なパッケージを開けると、中はインスタを思わせるカラフルなデザインが施されている。そしてその真ん中に真っ白なカードが同封されている。 驚くべきことに、このカードには通常のクレジットカードにはあまり見られない工夫がされている。まず、どこにもカード番号も有効期限も記載されていない。表面にAppleのロゴと所有者の名前、裏面には発行銀行のGoldman SachsのロゴとMasterCardのロゴだけだ。 これはカード番号が無いというわけではなく、実はアプリ内でカード番号と有効期限などの情報を確認することができるようになっている。オンラインショッピングなので番号が必要な際には、その方法で情報が獲得可能。 ↑ パッケージに同封されたカードには番号も有効期限も記載されていない 卓越した開封体験とソーシャルシェア性を提供 最初はなぜ番号が記載されていないのか?と思ったが、物理カードに番号を記載しないことで、落としてもセキュリティー的な部分での優位性が保たれるし、何よりもインスタなどのSNS経由で、ゲットしたことを友達に自慢しやすくなることに気づいた。 まさにAppleらしい逆転の発想とシンプルさの追求がされている。 また、カードの素材はチタンで、一般的なプラスチックのものよりもかなりの重厚感がある。ちなみに、CompareCards社のリサーチによると、アメリカ国内のクレジットカード利用者の38%が、素材でカードを選ぶと答えており、ミレニアルになるとその割合は53%にまでアップするという。 チタンのカードは消費者の所有欲を掻き立てる。加えて、容易に切ったりすることができないため、内蔵されているチップを切り取ることが難しく、セキュリティー向上の役割を果たしているとも言える。 開けてびっくりの演出と、手で持った時の満足感がしっかりと設計されている。ユーザーとカードとの最初の接点である、開封体験も総合的に上手にデザインされているのもさすがAppleと感じた。 参考: D2Cブランドに学ぶ!カスタマーと繋がる開封体験デザイン View this post on Instagram Quite happy so far. #applecard #applecreditcard A post shared by brandonkhill (@brandonkhill) on Aug 19, 2019 at 4:32pm PDT 革新的なアクティベーション方法 そして、Apple Cardの最も革新的な体験の1つが、そのアクティベーション方法だろう。通常の場合、新しいクレジットカードを利用する前に、カードに記載されている電話番号に電話するか、サイトに行って番号を入力する。 これは、手間がかかるだけでなく、セキュリティ的に甘い。なぜなら、本人ではない人がもしそのカードを受け取り、アクティベーションしたとしても、本人確認される事は稀であるから。 これがApple Cardの場合はどうなっているのか。驚くべきことに、カードを登録したWalletアプリが入っているiPhoneをパッケージの下の部分に当て、画面に表示されたボタンをたっぷするだけ。そのプロセスに要する時間はおよそ5秒。 それもパッケージがそれぞのユーザーのWalletアプリと紐づいているため、他のユーザーのiPhoneを当てた場合は、アクティベーションができないようになっている。 カード所有者本人のiPhoneを利用しない限りカードを使うことができないため、かなり安全な設計が施されている。そして何より、電話したりサイトにログインしたりせずに一瞬でアクティベーションできるのが最高だ。 ↑ ユーザーのiPhoneをパッケージ部分に当てるだけで一瞬でカードがアクティベートされる ユーザー体験のコアはWalletアプリとの連動性にあり そして、ここからがApple Cardが提供するユーザー体験が最も大きな価値を生み出している要因。Walletアプリとの連動性である。 もともとWalletアプリは、他のクレジットカードなどを登録することで、Apple Payを通じてキャッシュレス決済を可能にする役割としてiPhoneにインストールされている。しかし、自分を含め、アメリカでApple Payを使う機会は意外と少なく、Walletアプリもほとんど使ったことがなかった。Apple Cardに出会う前までは。 実際にApple Cardを店舗で使ってみる。そうするとその直後に利用履歴が自動的にWalletアプリに表示される。それも、金額だけではなく、利用した場所の写真とロケーション情報のマップも。 また、利用した商品のジャンルによってカードとグラフがカラフルに色分けされることで、どのような内容に利用しているのかが一目でわかるようになっている。また、それぞれの利用金額に対するキャッシュバックの額も表示される。 ちなみに、物理カードは1%、Apple Payを使うと2%、Uber、UberEats、およびAppleで買い物をすると3%のキャッシュバックとなっている。 このように、利用状況を即座に可視化することで、リアルタイム性と透明性を高め、ユーザーの安心感とセキュリティ向上を達成している。 ↑ 利用状況とそれぞれの詳細が一目でわかるWalletアプリ Less-is-moreを体現した”無い無い尽くし”が体験の質を高める 生前よりスティーブ・ジョブスもAppleのデザイン哲学の1つとして掲げている”Less-is-more (少ない方がより多くを得られる) “ は、このApple Cardにもしっかりと受け継がれているように感じる。 参考: Appleを1兆ドル企業に成長させた6つのデザイン哲学 そこには、ミニマルなデザインの裏に、大きなメリットがいくつも隠されている。例えば、カード自体に番号が表示されていないのは、上記の理由に加え、もし番号が漏れた際の対策にもメリットを生み出す。 カードの番号はWalletアプリ内でいつでも変えることができるため、万が一番号を変えたいときは、アプリ経由でリクエストすれば良い。また、その際新しい番号が既存のカードにクラウド上で紐づけられるため、物理的なカードを取得し直す必要がない。 こうすることで、カード会社に電話をする手間、カード再発行の手間とコストを抑えることに成功しているのだろう。また、カードメンバー規約等もデジタル化されているため、通常であればカードに同封される分厚い書類が存在していないのも良い。 Apple Cardが改善した体験 カードの申請: Walletアプリ内から → 手間が減る 利用開始までの待ち時間: Walletアプリ内からすぐに利用 → 待ち時間無し […]

15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと

日頃よりbtraxのオウンドメディアであるfreshtraxをご愛読いただき誠にありがとうございます! 我々btraxは2019年8月9日をもって、創立15周年となりました!シリコンバレー・サンフランシスコという、多くのスタートアップやビジネスが苦戦を強いられている環境で、15年という間、ビジネスをやってこれたのはいうまでもなく、日頃よりご支援をいただいているみなさまのおかげでございます。 感謝申し上げると共に、これからも日本とアメリカというグローバルな舞台で、みなさまのイノベーション創出やグローバルへの進出サポートに尽力してまいります! さて、今回はこんな節目の時ですから、「15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと」と題して、btraxのあんなことやこんなことについてご紹介いたします。 1. 創業当時のウェブサイトはこんな見た目 btraxの記念すべき最初のウェブサイトは2004年に公開されました。当時流行りのフルFlashのサイトです。UIはシンプルですが、スムーズなインタラクションを実現するために、その裏には複雑なプログラミングが書かれていました。 ぜひ現在のbtrax会社HPと比較してみてください。 2. btraxでの勤続年数がCEOの次に長い社員は、犬! 実はCEO ブランドンの愛犬、クーパーはbtrax創業時から社員(犬?)として参画しているメンバーです。エイプリルフールの時は、CEOに抜擢されたこともありました。 3. btrax東京オフィスは2013年に開設 btraxはアメリカ、サンフランシスコで創業した会社です。日本法人はそのあと、2013年にスタートしました。現在は青山にオフィスを構えております。 (東京オフィスには素敵なルーフトップも!) 4. btraxという会社名はCEOブランドンの音楽好きから 意外と知られていないbtraxという名前の由来。これは、ブランドンの音楽好きからきています。実際に彼は、デザインを勉強する前に音楽を勉強していたこともあるくらいです。 btraxのtraxは音楽のトラックから。bはレコードの「B面」に由来しています。A面がbtraxのクライアント、B面がそれを引き立てるbtraxを表しており、創立以来ずっとbtraxです!ロゴもレコードっぽくなっているのにお気づきいただけたでしょうか。 5. btrax卒業生の4名がスタートアップを始めている btraxは、決して大きい会社ではありません。なので社員全員が責任感と権限をもち、スタートアップ的スピード感を持ってビジネスを行っています。また、サンフランシスコ・シリコンバレーというお土地柄もあってか、btraxの元社員が、卒業後に起業するパターンも少なくないのです。 起業されたbtrax卒業生の方々には、過去、freshtraxでインタビューさせていただいたこともあります。これまでに少なくとも5名の元スタッフ/インターンが起業しています。今後もこんな”btraxマフィア”がどんどん増えていく予定です。 (右から現IN FOCUS CEO 井口忠正氏、ブランドン、現Goodpatch CEO 土屋尚史氏) 関連記事:デザイナーに必要なのはセンスか努力か – 井口忠正×Brandon 2人のデザイン会社CEOが語るデザイナーに必要な才能 関連記事: レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした 関連記事:2人のインターン生が与えてくれた事 6. 100名以上の海外アントレプレナーたちをサンフランシスコへと誘致 btraxは2010年より、Japan NightやAsian Nightといったスタートアップピッチイベントを企画、開催してきました。その主たる目的は、海外のアントレプレナーたちを、ここサンフランシスコへ誘致し、よりグローバルを意識したスタートアップの成長を支援するためです。 さらに、2016年からは福岡市とパートナーシップを組み、起業家育成プログラムを実施。日本での研修に加え、サンフランシスコでも現地でデザイン思考やピッチなどに関する理解を深めていただき、グローバルアントレプレナーへの道を支援しています。 詳しくは事例紹介もご覧ください。 7. freshtraxは日米通算1,263の記事を公開 2009年から始まったbtraxのオウンドメディアfreshtrax。お陰様で、freshtraxを通してbtraxを知っていただくことも非常に多いです。これからもみなさんに愛読していただけるように、サンフランシスコ・シリコンバレーから新鮮かつユニークな情報を発信し続けます! btraxのTwitterやFacebookアカウントではfreshtraxの最新情報をいち早くお届けしております。 8. btraxがこの1年で使ったポストイットの枚数は約43,720枚 btraxが提供するイノベーション・ブースタープログラム(グローバルイノベーション創出を習得することを目的とした、デザイン思考に基づくワークショップ型プログラム)では、ブレインストーミングやアイディエーションといった、ポストイットを使ってアウトプットをだすシーンが多々あります。 気がつけば約43,720枚のアイデアを出していました! 9. btraxの会議室にはフォントの名前がついている サンフランシスコ本社はサンフランシスコ市内でもスタートアップが軒を連ねるSOMA(ソーマ)と呼ばれるエリアにあります。執務エリアに加えて、6つの会議室があるのですが、その全てにタイポグラフィーの名前がついています。 その理由は「btraxはデザイン会社だから」。タイポグラフィーはデザインにおけるもっとも重要な要素の1つであります。また、btraxは「全ての社員が皆、デザイナーである」というフィロソフィーを持っています。会議室の名前からも、そのことを思い起こさせてくれるのです。 10. btraxのハロウィンは毎年ガチ度が増している btraxには非常にクリエイティブなメンバーがいます。そのスキルは仕事だけでなく、社内イベントでも発揮されており、恒例行事であるハロウィンパーティではコスチューム大会が激戦になっています。 11. 毎週カルチャーリーダーへの表彰がある btraxでは毎週、会社のコア・バリューに貢献した社員を表彰しています。これはCEOや人事が選ぶといったものではなく、社員が社員を選びます。もちろん、社員からCEO、人事が選ばれることもあります。 (btraxのコアバリューである「Empowered by Creativity」「Take Ownership」「Communicate and Collaaborate」「Be Playful」の観点で選ばれ、社員同士、上のカルチャーカードを送り合う。) 12. btraxはビジネスの軸を3度大きく変えてきた btraxはもともと、ウェブデザインの会社として創業しました。そのあと、よりグローバルを意識した、マーケティングやブランディングを行うようになります。そして、現在、デザインはより広義なもの になり、UXデザインを中心としたビジネスへと転換しました。 現在は、シリコンバレーと東京のネットワークを活かし、グローバルを意識したイノベーション創出への貢献を強みとするデザイン会社へと成長してまいりました! 13. 2014年からイノベーション・ブースターサービスを開始 btraxの中核サービスである、イノベーション・ブースターサービスは、3日間から2ヶ月でグローバル・イノベーションの創出プロセスを習得することを目的としたサンフランシスコで行うワークショップ型プログラムです。参加者は累計200名以上。 現在も株式会社野村総合研究所(NRI)様やSOMPOホールディングス株式会社様など、多くの企業様から参加いただいています。 詳しくは過去事例もご覧ください。 14. 2018年からデザインスプリントサービスを開始 Google Venturesが、サービス開発の高速手法として発表したデザインスプリント。btraxでも、デザイン思考をベースとした、デザインスプリントサービスを提供しています。 1〜2週間という短時間でプロダクトアイデアの検証やプロトタイプ作成、リサーチ、課題整理、ソリューション決定、プロトタイプ構築、ユーザーテスト等を実施していきます。 関連記事:【デザインスプリント入門】話題の高速サービス開発法とは 15. そして15周年の年、CEOブランドンの抱負はbtraxのビジョンステートメントを一新 15周年という節目の年に、btraxのビジョンステートメントもアップデートいたします! ビジョン:“Provide inspiring experiences” – ワクワクする体験を提供する ミッション:“Inspire innovation through the power of design” – デザインの力でイノベーション創出に貢献する タグライン: “Design to Inspire” これからもbtraxをどうぞよろしくお願いいたします!! btraxのサービスを詳しく知りたい方、サービスにご興味をお持ちの方、お気軽にこちらまでお問い合わせください。 また、btraxでは現在、一緒にイノベーション創出を担ってくれる仲間も募集しております♪

これらの時代にヒットするのはサービス化されたプロダクトだ

シェア、サブスク、オンデマンド。最近耳にすることの多いフレーズであるが、これまでは、全て「所有」が中心であった商品との、全く新しい接し方である。簡単にいうと、所有することなく必要な時にだけ「利用」するのが、ユーザーとプロダクトを繋げる新しい体験になってきている。
その背景にはインターネットとモバイルテクノロジーの発達があり、現代のインフラで育ったような世代にとっては、むしろ所有しない方が一般的にもなりつつある。
時代と共に変化するライフスタイル
例えば、これまでは頑張ってローンを組んで買うのが一般的…

デジタルウェルビーイングを実現する ”使わせない” デザインとは?

デジタルテクノロジーの進化に合わせて、こちらシリコンバレーの企業の勢いがより加速しているように感じる。大型M&AやIPOのニュースが毎日のように流れ、時価総額や評価額の最高記録更新も続いている。
その大きなファクターの1つとなっているのが、ユーザー数とそこから獲得しているユーザーデータ、そして優れたユーザー体験だろう。(参考: これからの企業に不可欠な三種の神器とは)
ユーザーの時間をお金に変換してる現代の企業
GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple) に…

寿司職人から学ぶ究極のUXデザイン6つの極意とは

ユーザー体験のデザイン、いわゆるUXデザインのフィールドは、どうしても欧米が進んでいると思われがちである。しかし、実は、日本的なおもてなし精神こそが、最も優れたUXデザインに直結しているのではないかという説がある。まあ、その説は自分自身が提唱しているのであるが。
こちらアメリカ西海岸では、寿司レストランがかなり定着しており、食事自体だけではなく、最近ではそこで得られる体験に注目が集まっている。特にカウンターに座り、板さんとのやりとりをしながらゆっくりディナーを楽しむ仕組みは、アメリカでもかなり評価さ…

多様なキャリアを持つUXデザイナーが語る「ユーザー中心デザインの重要性」【btrax voice #11 KJ Kim】

btrax社員の生の声をお届けする「btrax voice」シリーズ。
今回のインタビューは、UX DesignerのKJ Kim 。今回KJには、『ユーザー視点のデザインの重要性』というテーマで、ユニークなキャリアパスを歩んできたKJがどうしてUXデザイナーになったのか、また様々な環境でキャリアを積んできたからこそ気づいたユーザー視点の重要性について伺いました。
Who is KJ?

K.J. Kim (金匡宰)
btrax, Inc. UX Designer
Pratt Institute (…

デザイン思考の力を公共サービスへ!日本と世界の活用事例3選

2018年8月9日、特許庁は庁内にCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として統括責任者を設置し、その下に「デザイン経営プロジェクトチーム」を立ち上げることを発表した。これは、中央省庁が行政サービス向上のためにデザイン思考を本格的に取り入れた初の例である。
米国を起点として提唱されてきたデザイン思考は、日本においてもここ数年間でその認知度を高めてきたが、これまでその活用を積極的に行ってきたのは民間企業であったように感じられる。
2010年頃から日本においてもデザインコンサルティングファームの参入、も…

優れたデザイナーになりたければダヴィンチから学ぼう

どのようにしてデザインを学べば良いのか?今まで聞かれた質問の中で最も多いのがこれ。特に、どこでUXデザインを学べが良いか?という質問は、答えに困ることが多い。なぜなら、デザインは奥が深く、最近様々な分野で求められるUXデザインになると、その幅もとても広くなり、異なる領域の理解と、デザインだけではなく、エンジニアリングの知識も求められることも少なくない。
例えば、「【これからのスキル】デザイナーとエンジニアの境界線がどんどん無くなる」で紹介されているように、自分が設計したものは自分が動かす時代になって…

他のブースと差をつけろ!トレードショーでエンゲージを高めた成功事例3選

開発中の新しいサービスや商品を感度の高いユーザーに試してもらうための場として、トレードショーといった展示会に参加するという手段を検討してみてはいかがだろうか。トレードショーはターゲットになりうるユーザーにサービスを展示できる絶好の機会であり、また投資家による提案や企業同士のコラボレーションなども期待できる場だ。 サービス開発者にとってトレードショー出展のメリットとは 数あるトレードショーの中でも注目されているのが、間も無く開催を迎えるアメリカ最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル、SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)だ。開催地はテキサス州オースティンで、イベント期間中は街全体のいたるところで関連イベントが行われる。 「SXSWを新サービス発表の場として選ぶべき理由」でも紹介した通り、SXSW出店のメリットは以下の通りだ。 1. 感度の高いイノベーターやアーリーアダターからのフィードバック獲得 2. 見込み初期ユーザーの獲得 3. 世界各国からのパブリシティの獲得 当日は2,000以上のカンファレンスやセッションが行われるほか、7万5千人もの参加者が来場する。スタートアップや企業が新しいサービスやプロダクトを展示しており、新規事業開発者にとってサービスのマーケットテストやブランディングのためにも非常に効果的な場だ。 参考記事:【SXSW2017レポート】キーワードは「社会問題解決型」注目の最新テクノロジー5選 上記の効果を最大化するには、展示するコンテンツ(サービス)はもちろん、当日のエンゲージメントも重要になってくる。そこで今回の記事では、過去のSXSW出展企業が行ったエンゲージメント向上のための事例をご紹介する。 (画像はSXSWのホームページより) トレードショーでのエンゲージを高めた成功事例3選 1. VANS:24時間限定のSNSコンテンツをヒントにゲーム感覚で景品をプレゼント トレードショーにてSNSを活用することは欠かせなくなっている。参加者は参加企業のSNSを閲覧・フォローすることで、事前に展示内容を知ることができたり、当日の様子がわかったり、様々な情報を入手することができるのだ。 またハッシュタグを上手く使えば、来場者にもSNSでの投稿を促すことができる。さらには会場にきていない世界中の人々も巻き込んだプロモーションも可能になる。というのも、イベントに参加できなかった人でもテクノロジーや新しいサービス・プロダクトに興味があるSNSユーザーは、イベントのハッシュタグを用いて情報を集めることが多いからだ。そのため、SNSの活用によるプロモーション効果は絶大だ。 シューズメーカのVANSはSNSを用いてゲームっぽくプレゼントの提供をするプロモーションを実施した。 まずVANSは、ツイッターなどのSNSを通じて、#SXSWのハッシュタグとともに、VANSのカスタムメイドの靴を無料でプレゼントすることを告知。その後、その靴を手に入れるための手順をインスタグラムストーリーにて確認するように促した。 このプレゼントを手に入れるにはインスタグラムストーリーに投稿された動画を手がかりに、SXSWの会場内に隠されたカスタムコードを入手し、靴が配布される会場内の指定の場所までたどり着く必要がある。つまり、広い会場の中でカスタムコードの居場所を探し当てる、ゲームのような体験を提供したのだ。 この企画が参加者のエンゲージメントを高められた理由は、インスタグラムのストーリーが24時間の限定コンテンツであることだ。時間が限定されていることからヒントが消えてしまうという危機感を持たせ、短時間で多くの参加者からのエンゲージを得られた。 2. Gaterade:ブースデザインによりプロダクトの世界観を可視化 ブースデザインは、人を引き付けるという点で非常に重要である。ただ人目を引くポスターや演出で存在感を出すだけでなく、その製品・プロダクトの世界観を表現したり、参加者が満足できるような体験を提供することが、エンゲージ向上に繋がるのだ。 アメリカ発のスポーツドリンクブランドGatoradeは、2018年のSXSWにて体験型の展示を行った。一見そのブースはGatoradeの商品が陳列された普通のポップアップストアのように見えるが、実はある大きな仕掛けが隠されている。 商品が陳列されている棚を開くと、そこにはジムエリアが広がっているのだ。ジムエリアには、Gatoradeが開発したVRバスケットボールゲーム「Beat the Blitz」をはじめとしたVRトレーニングシステムが設置してあり、トレードショーの参加者は実際にVRゲームの体験ができるようになっている。 (写真はADWEEKから引用) Gatoradeは、従来のスポーツドリンクメーカーとしての存在感だけでなく、Gatoradeが力を入れるテクノロジーを活用したVRゲームを紹介することによって、今後のスポーツ分野におけるテクノロジー活用の可能性を提示し、その未来に貢献したいというGatoradeの立場を表明した。 Gatoradeはこのようにしてブースの入り口から、最新機能のゲームなどを通した一貫したブランディング体験を提供することでエンゲージメント向上を図っていた。 3. Tinder:アプリのダウンロード・利用と引き換えにフリーギフトを提供 参加者をブースに呼びつけるきっかけとして、小物やステッカーなどのフリーギフトをブースに置くことがある。持ち帰って「こんな展示があったな」と参加者に思い出してもらうことがもできる。 こういったフリーギフトは客を引きつけて、話を聞いてもらうなどのインタラクションのきっかけにもなるが、特別目新しい工夫ではない。しかし、このフリーギフトを有効に活用すると、ユーザーからのエンゲージメントを得られる絶好の機会になる。 オンラインデーティングアプリのTinderは、2018年のSXSWにて、アプリをダウンロードするとアイスクリームをもらえるフリーギフトの特典を用意した。 このキャンペーンの意図は、ただフリーでアイスクリームを配布してくれる素敵な企業だと思ってもらいたいという理由だけではない。無料のアイスクリームを手に入れるためには、Tinderのアプリをダウンロードしてから実際に使用し、”golden ticket”と書かれている画面をスワイプする必要がある。 これは、まず新規のユーザーにアプリをダウンロードするきっかけを与えるだけでなく、Tinderのサービスを実際に使う機会を提供している。ダウンロードで終わりになるのではなく、アプリを開き、スワイプするというところまでユーザーとアプリがエンゲージすることになる。 無料アイスクリーム配布というキャンペーンを通して、参加者にアプリを「使わせる」ことで、Tinderというサービスを知ってもらうのにより深いエンゲージが獲得できたのだ。 まとめ ユーザー中心のサービスをブラッシュアップする手段として、トレードショーは最適な場だ。トレードショーはマーケットテストという側面だけでなく、ユーザーにブランドの体験を提供し、エンゲージできる機会でもある。 筆者は先日東京ビッグサイトで行われたSlush Tokyoにも足を運んだ。そこで様々なスタートアップがピッチを行ったり、ブースを出展する様子を見て、客を引き付ける展示にも「ユーザー視点」があるということを強く感じた。 そしてSlush Tokyoの講演等でよく耳にしたフレーズがまさに「ユーザーエクスペリエンス」や「ユーザーセントリックアプローチ(ユーザー中心型アプローチ)」といったものであった。プロダクトやサービスそのものだけでなく、トレードショーでの出展でブースに客を引き付けるためには常にユーザーの視点に立って考えることが必要なのである。 btraxでは、展示の効果を最大限に引き出すためのサポートはもちろん、サービス開発からマーケティングまで一貫したサービスを行っている。まだ新規サービス開発中の方も、すでにトレードショー出展をご検討中の方も、是非btraxにご相談ください。お問い合わせはこちらから。

【経営xデザイン】なぜデザインオリエンテッドな企業は強いのか

物が溢れている現代の市場の中では単純に正確に動く、壊れない、だけではヒット商品を生み出す事が難しくなってきている。消費者の心を引き付けるためには、美しい見た目や共感、遊び心などの「デザイン的要素」が重要になり、デザインの重要性を理解し、実践する事が、企業の業績に直接反映され始めている。
数字で証明された経営に対するデザインの重要性
2018年10月のマッキンゼーによる調査では、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという…

ミレニアル世代を引きつける“SNSを駆使した分散型コンテンツ“とは

皆さんは普段SNSを使う中でタイムライン上に流れてくるチュートリアル動画や時事ニュース、最新グッツの紹介、可愛い動物の動画などにふと気を留めたことはないだろうか?   昨今、このようにSNSに向けたコンテンツを配信するメディアが急増し、「分散型メディア」と呼ばれている。分散型メディアとは、ウェブサイトが主体であった従来のオンラインメディアとは異なり、他のプラットフォーム(主に複数のSNS)を用いて情報を発信するメディアのことを指す。 日本では、bouncy, C CHANNEL, Tasty japanなどが有名な分散型メディアとして挙げられる。 このような分散型メディアの人気の背景には、ユーザーの行動やニーズの変化が挙げられる。以下はSNSでニュースをチェックするユーザーの傾向を示したデータだ。 アメリカの成人の68%がSNSでニュースをチェックすると回答。またそのうちの20%は「頻繁に」そうしていると答えた(Pew Reserch Center) 74%のTwitter利用者、32%のYouTube利用者、29%のSnapchat利用者がそれぞれの媒体からニュースをチェックしている(Pew Reserch Center) 47%のユーザーが1週間の間に、ニュース目当てでFacebookを開いたと回答(Digital News Report 2017) また、74%が1日に最低一回はFacebookをチェックすると回答(Pew Reserch Center) 1週間の間に使用したSNSの割合(At all)とニュースをチェックするために使用したSNSの割合(For news): Disital News Report 2017 SNSを用いたニュースの入手が近年急増中: Digital News Report 2017 これらのデータを見てもわかる通り、ニュースを見るプラットフォームが徐々にマスメディアからSNSにシフトしているようだ。それではなぜこのような分散型メディアが多くのユーザーに受け入れられているのだろうか。今回は、分散型メディアが注目を浴びる2つの理由と活用事例をご紹介したい。 分散型メディアが好まれる2つの理由と企業事例 1. 分散型メディアは“動画の時代”に最適なタッチポイントとなる btraxに参画した澤円が語る「日本企業が今すぐ改めるべき習慣」でご紹介した通り、世界に存在するデータのうち、直近2年で生まれたデータの割合は90%だという。 世界中で情報が溢れてしまっているため、ユーザーはより良い情報を素早くゲットしたいと感じるようになった。そのため、読ませるテキストベースのコンテンツよりも瞬時に内容がわかる動画コンテンツの方が好まれる傾向にある。 世界中で情報が溢れてしまっているため、ユーザーはより良い情報を素早くゲットしたいと感じるようになった。そのため、読ませるテキストベースのコンテンツよりも瞬時に内容がわかる動画コンテンツの方が好まれる傾向にある。 実際に、1分の動画は180万語に匹敵するといったデータや、テキストと画像だけの投稿よりも動画コンテンツの方が12倍シェアされやすいというデータも公表されている。 また、5Gの導入により、これからは外出先で通信制限を気にすることなく気軽に動画コンテンツを見ることができるようになるといわれている。【2019年】絶対おさえておくべき、4つのマーケティングトレンドで紹介した通り、動画を活用したコンテンツの勢いはより一層増していくだろう。 なお、分散型メディアは通常のオンラインメディアとは異なり、ユーザーにエンゲージしやすい動画を活用することで、情報に敏感なミレニアル層に広くリーチできる。これからは動画の時代とも言われているので、いかにユニークかつ共感性を生むような動画コンテンツを配信できるかがポイントとなるだろう。分散型メディアの事例として、NOW THISをご紹介したい。 【事例1】NOW THIS:動画コンテンツを駆使した次世代メディア (画像はNOW THISのFacebookから引用) 分散型メディアで有名なのはNOW THIS というアメリカのメディアだ。NOW THISは、Instagram, Facebook, Twitter, YouTube, Snapchatの5つのプラットフォームを使って、政治や時事など話題のトピックをおよそ1分の動画をシェアすることで情報を発信するメディアだ。 NOW THISは以前、自社のウェブサイトにて大胆なキャッチフレーズを公表していた。“Homepage. Even the word sounds old. Today the news lives where you live.”(ホームページ。もうその言葉すらダサい。今は人がいる場所にニュースがある時代だ。) ホームページにホームページの自虐を載せるという大胆な手法がうけて話題となったが、このメッセージがまさに分散型メディアの姿を表しているといっても過言ではない。 NOW THISは数々のトピックを扱っているが、トピックによってアカウントを複数保持し使い分けているのも特徴だ。例えば、NOW THISのInstagramアカウントは時事ネタを広く扱ったメインのアカウント@nowthisnewsから、最新テクノロジーを紹介する@nowthisfuture、エンターテイメントトピックを扱う@nowthispop、女性の社会進出やフェミニストなどのトピックを扱う@nowthisherなど、FacebookやTwitterも合わせて10個以上もの異なるトピックを扱うアカウントを運営している。 そしてNOW THISの最大の特徴は、ほとんどすべてのコンテンツが動画であることだ。NOW THISのキャッチフレーズが”Stories that move” という言葉の通り、「感動させる(move)ストーリー / 動く(move)ストーリー」の2通りの意味を含んでいる。 動画コンテンツを制作するメリットは、ユーザーの興味・関心によって動画のテーマを分けることで、ユーザーに刺さる情報を提供できることだ。動画は政治系、面白動画系、テクノロジー系など、チームに分かれて制作が行われている。そのため、視聴者はわかりやすく、より正確な情報を含んだコンテンツを享受することができるのだ。 2. それぞれのSNSの特徴を捉え、ユーザーの関心テーマに沿った情報を提供 従来のオンラインメディアは、能動的に情報を得るためのものだった。情報はすべてウェブサイト上にあるため、ウェブサイトを訪問しない限りそのメディアがどんな情報を発信しているのかがわからない。 加えてSNSの台頭によりプラットフォームの種類が急増し、いたるところに情報が溢れかえるようになった。これによりウェブサイトを訪れるまでのカスタマージャーニーが複雑になったことから、ユーザーが普段使うSNSも上手く活用して「情報が自然に入る」状態を作り出すことが必要となったのだ。 それぞれのSNSの特徴を捉えたコンテンツとは SNSは、それぞれに特徴がある。例えばInstagramだったら、ビジュアル重視なので、画質はもちろんのこと画像や動画に込められたストーリーに気を配る必要がある。Twitterは”つぶやく”ことが本来の目的なので、限られた文字数の中でどれだけシンプルにメッセージを発信できるかが重要だ。FacebookはTwitterやInstagramとは逆で、文字や画像に制限がないことから、自分でコンテンツをカスタマイズして好きな情報を発信できる。 これらの特徴を生かしきれていないと、ユーザーの目を引くことができず、インプレッション数が落ちてしまう原因となりかねないのだ。 例えばInstagramに投稿する際、シンプルな写真とともに長文のキャプションを載せても、文章の内容の良し悪しにかかわらず目に留めてもらえないのは言うまでもない。情報を享受する側に立ったとき、自分が伝えたい情報が見やすく、受け取る相手のストレスがないということはいたって重要だ。 多岐にわたるSNSアプリの中で、ユーザーは分散している。どのアプリをどれくらい見るかも年齢や性別、生活リズムにより異なるのだ。そのため、同じ情報をそれぞれのSNSに合わせて分散して提供する方が、多くのユーザーに情報が届くのである。ユーザーからしたら、SNSでフォローするだけで「探さないでも勝手に現れるコンテンツ」となるわけである。 【事例2】BuzzFeed:可愛い動物の画像から時事ネタまで、幅広いコンテンツをSNSで発信 (画像はBuzzFeed JapanのFacebookから引用) BuzzFeedも、初期から人気の分散型メディアの一つだ。「猫のGIF画像から政治トピックまで」と言われるほど幅広いコンテンツを、様々なSNS上で発信している。 中でもBuzzFeedの特徴は、SNSの違いを生かしたコンテンツ作りだ。BuzzFeedが扱うトピックは様々だが、それぞれのSNSの特徴を生かしてコンテンツの発信の仕方を変えている。 例えば、Facebookでは、BuzzFeedのホームページに載っている記事へのリンクとともに、短い意見や感想、面白いフレーズなど投稿者のコメントを添えて投稿している。Facebookでリンクを開くと、Facebook上でそのページが起動されるため、一読し終えた後に読者がコメント欄に感想を書くことが多い。これによりインプレッション数が増えるのだ。 また、YouTubeでは幅広い話題を扱う動画コンテンツを発信しており、シリーズ化している。Instagramではおもわず笑ってしまうような話題の面白いツイートを画像で紹介し、コメント欄には笑った顔の絵文字やコメントが多く寄せられている。 このように、発信するコンテンツを統一せず、SNSによって形式を変えて、それぞれのSNSユーザーが楽しめる情報を発信する点がBuzzFeedの特徴だ。 まとめ 分散型メディアは、SNSでニュースをチェックするといったユーザーの行動やニーズの変化を背景に成長していった。情報があふれ返る近年、動画やSNSの特徴を生かしたコンテンツ提供がユーザーの心をつかんでいる。 今回は分散型メディアの例をご紹介したが、これらのメディアの戦略を一言でまとめると、「ユーザーのいるところにユーザーが本当に求めるものを提供する」ということだ。これは、PRの戦略を練る上でも重要なUXの視点である。 btraxではUXを考慮したマーケティング、新規事業開発メソッドを提供している。ご興味をお持ちの方は、是非お問い合わせを。

生き残りをかけた小売の挑戦〜メイシーズ、ダンキン、ウォルマート〜

インターネットやモバイルの普及、高速回線の登場などにより、消費者の購買行動は大きく変化してきたが、その変化の速度自体も早くなってきている。 例えば読者の皆さんは5年前、どのようにブランドを知り、購入まで至っただろうか。おそらく今のようにインスタグラムでブランドを知り、ショッパブルボタンから購入をしたという人はほぼいないだろう(そもそもショッパブル機能自体が2016年にリリースされたものだ)。 また、オンラインでの買い物が企業やユーザーにとってどれだけ標準になったかを考えることからもその変化を実感することができるのではないだろうか。 AmazonやeBayなどEコマースを中心としたサービスが台頭してくると、老舗の大手小売企業もビジネスをEコマースへと広げてきた。その結果、かつて実店舗を利用していた客がEコマースへ流れていくと、多くの実店舗が閉店へと追い込まれるようになった。 実際に、実店舗の閉店計画は以下の通り発表されている。 大手ラグジュアリーデパートのNeiman Marcusは2017年、アウトレットラインのthe Last Call38店舗のうち10店舗を閉店した。2018年時点で50億ドルの負債を抱えている。 創業100年以上の大手小売Searsは2019年に全国80の店舗を閉めることを発表している。2018年には経営破綻。2013年から2018年までの間に店舗数は2,000から700へ激減。 2017年経営破綻を発表した子供服Gymboreeは2019年に最高900となる店舗の閉鎖を計画している。 大手デパートのメイシーズも2019年に8店舗閉める計画がある。 この一方で、残った実店舗の買い物体験をよりよくするための新しい積極的な取り組みが見られるのも事実だ。特に大手小売企業は実店舗というチャネルの最適化のため試行錯誤を繰り返している。 そのチャレンジぶりはアマゾンやeBayといったデジタルネイティブ企業の勢いに追いつくためではなく、追い越そうという、どこか「スタートアップ」的な動きをしているようにも見える。 そこで今回は、店舗数を最小限にした大手小売企業が行っている、ユーザー志向の新しい購買体験を提供するための取り組みを紹介する。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 小売大手の新しい取り組み 1. メイシーズ: 社員をインフルエンサーにするプログラム 1858年から続く大手デパートのメイシーズも先に述べた通り、実店舗を中心とした経営に苦しんでいる小売企業の1つだ。 そんなメイシーズは昨今主流となってきたインフルエンサーを活用したマーケティングを独自の方法で取り入れるため、社内インフルエンサープログラムを開始した。 Style Crewと呼ばれるこのプログラムはレジ担当から幹部まで誰でも申し込むことができる。申し込みをしたインフルエンサーたちは、事前に受け取った制作費用予算から写真や動画などのコンテンツ作りを行う。 作成したコンテンツはインフルエンサーのSNS及びメイシーズStyle Crewの専用ページに投稿され、これらの活動が売上に繋がるとインセンティブが入るという仕組みだという。 (それぞれの従業員兼インフルエンサーのフォロワー数は1万〜千くらいで、いわゆるマイクロインフルエンサーが多い。インフルエンサーのひとりであるMichelle Kunzのインスラグラムより転載) インフルエンサー達はメイシーズで販売している商品を取り扱ったビデオコンテンツや写真コンテンツを作成し、インスタグラムやYouTubeに投稿している(下記ビデオリンク参照)。もちろんメイシーズのソーシャルアカウントやウェブサイトにも掲載されている。 もちろん投稿から商品情報を確認したり、メイシーズの販売ページへの導線も確保されている。インフルエンサーはデジタルでコンテンツを配信することで、ユーザーとのエンゲージメントやより親近感のあるコンテンツによるアピールにより、ファン拡大やEコマースへの流入も狙っていると考えられる。 さらに、デジタルだけでなく、実店舗への来店促進にも役立っているようだ。 インフルエンサーの中には店舗でスタイリストをしている人もいたり、働いている店舗を写していたりする人もいるので、本人に実際に会うことができたり、写っている商品を確実にお店で試すことができたりと、オンラインとオフライン融合の可能性が広がっている。 (インフルエンサープログラムのメンバーはメイシーズで買える商品を自分の興味や知識を活かして紹介する。公式サイトより転載) さらに企業としては、ソーシャルで活躍したい従業員(インフルエンサー)をサポートし、ブランドをさらに理解してもらうことで企業対従業員の良い関係作りにもなると前向きだ。 またそのコンテンツを通して、メイシーズはファッションとトレンドを押さえた小売であるという認知向上を狙っている。 このプログラムに参加しているインフルエンサーの数は、開始時2018年に約20人規模で始まってから、現在では400名ほどに増えている。 現在はアパレル商品や化粧品を中心に取り上げているが、2019年は家具や日用品など、メイシーズが扱う全てのカテゴリーに拡大する計画をしている。幅広いジャンルのインフルエンサーを育てる狙いだ。 関連記事:小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題 2. ダンキンドーナツ:リブランドと未来型店舗によるUX改善計画 ドーナツで有名なファストフード小売チェーンのダンキンドーナツ、改めダンキンは未来型店舗に向けた計画を2018年に発表した。名前の変更も今回のコンセプトにあったリブランディングの一部なのである。 ダンキンはこれらのコンセプトを店頭で試す前に、イノベーションラボでそのテクノロジーと体験を再現している。イノベーションラボでテストされている取り組みの一例は以下の通り。 従来のお店の窓に貼られた広告の代わりとして、ホログラムにより投影された広告。広告を掲載するのに壁、紙媒体はいらなくなる。 自動コーヒーマシンも試しているが、ラテアートを楽しめるコーヒーマシンの開発もしている(彼らはセルフィーニトロコーヒーと呼んでいる)。 他にも注文したものを受け取れる無人ロッカーや性別、年齢、気分を分析してそれに基づいたオススメメニューを提案してくれるAIシステムなどを開発している。 イノベーションラボを訪問した記事によるとまた精度が高くなかったり具体的な活用事例がまだなかったりするようだ。しかしながら、ダンキンのイノベーションラボには、昨今の競争の激しい小売業界で生き残るためにもとりあえず試してみて失敗からも学ぶといった姿勢があるのではないだろうか。 3. ウォルマート:小売最大手の最新テクノロジーを使った取り組み ウォルマートは日本の西友を子会社にもつ、売上額で世界最大の小売企業だ。そんなウォルマートも1位の座にあぐらをかくことなく、挑戦をし続けている。 彼らが2018年に発表した取り組みに、Flippy(フリッピー)というAIを搭載した揚げ物調理ロボットがある。このロボットは受けた注文数と揚げ時間を考慮して、最適なタイミングで出来立ての揚げ物を作ることができる。 フリッピーは揚げ物全ての調理をするわけではなく、人と手分けしながら作業の効率化やサービスの向上を目指す、協働ロボットだ。フリッピー自身が油に溜まったカスを掃除するのも可愛らしい。 (フリッピーを開発しているはMiso Roboticsというスタートアップ) また、ウォルマートもWalmart Labsと呼ばれるラボチームを持っており、ここでも様々な実験を行なっている。 例えば店舗を徘徊して管理する棚ロボット。店内を歩き回り、店内の不具合(ラベル・値札の間違いや陳列場所違いなど)や在庫をチェックしている。認識したデータを従業員に共有し、のちに従業員が直すことができるようになることを目指しているという。 現在はまだ開発段階で、まだフル活用には至っていない。今後、ウォルマートが開発しているツールとの連携ができれば、繰り返しのマニュアル作業をロボットが行い、人は顧客の対応に集中できるようになるというのが狙いという。 関連記事:Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業 まとめ ここサンフランシスコも、都市部とはいえ、実店舗が閉店しているところを見かけるし、デパートなどは閑散としていることも多々ある。実際の数字もお見せした通り、決して好調とは言えない状態だ。しかしながら、実店舗を”絞り”ながら、新しい体験の創出に注力している。そして店舗に新しい役割を持たせようとしている。 今回紹介した大手小売企業も逆境の中、もしかしたら失敗かもしれないけどやってみている姿が感じられるではないだろうか。やはりアジャイル的に試していくのが成功に導く道なのかもしれない。 ただ焦って立ち止まるのではなく、最高の体験イノベーションを創り出すために試行錯誤する小売業界はこれからも注目だ。そしてぜひ、彼らのようにできることからやり始めてみるのはどうだろうか。 参考: ・E-commerce share of total retail sales in United States from 2013 to 2021 ・Will There Be A Physical Retail Store In 10-20 Years? ・Inside Macy’s 300-employee influencer program ・How Macy’s is using its store employees and stylists as Instagram influencers to drive sales ・See […]

主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント

これまでに複数のメディア経由でご存知だと思うが、今年のCESでは、5G, AI, VR, AR、MaaSなどなどの最新のテクノロジーと、それらを活用した商品やサービスが展示さた。
CESは毎年ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジーカンファレンスで、世界中の企業が最新テクノロジーを活用したプロダクトの発表を行う。その中には、家電だけではなく、自動車やヘルスケア、そして各国からのスタートアップなどのエリアもあり、大変エキサイティングなイベントでもある。
このイベントに毎年参加することで、テクノロジ…

ロボットハンバーガー店Creatorで感じたUXの改善点

2018年6月27日、サンフランシスコにCreatorと呼ばれるレストランがオープンした。ここは主な調理工程の最初から最後までを自動化した世界初のレストランで、完全にロボットが作ったハンバーガーを$6で提供している。Alex Vardakostasによって2012年に設立され、以前はMomentum Machinesとして知られた同社は、今年ついにここサンフランシスコに最初の店舗を出したのだ。 オープン当初は招待制だったこのレストランだが、3か月後の9月25日、ついに一般客の利用が可能になった。そこで筆者はbtraxの同僚2人とともにその「ロボットが作るハンバーガー」を体験することにした。 未来のハンバーガーレストランに潜入 店に入ると左側に食材と2台のハンバーガー製造ロボット、右側にテーブル席がある。小さなレストランであるうえ、営業時間が限られているためか、席を探すカスタマ―や歩き回る店員などで混みあっていた。雰囲気はカジュアルで、明るい色使いと木のアクセントが親しみやすさを出している。 程なくして店員が我々に気づき、ロボットのある場所まで案内してメニューを渡してくれた。ハンバーガーは5種類、フライドポテトなどのサイドメニューや飲み物もある。注文内容を決めると、店員はその場でスマホ端末を使ってオーダーを処理し、そのまま支払いとなった。どうやら調理以外の部分は人間が担うようだ。 待つ間に、実際にロボットがハンバーガーを作る様子を見ることができた。注文したハンバーガー3人前とフライドポテト2人前が出来上がるまで10分位だっただろうか。調理が終わると店員が機械から取り出し、ボックスに入れ、トレイに置く。名前が呼ばれて受け取ったあと、セルフサービスで飲み物を入れ、テーブルについた。食べ終わると店員がトレイを下げにやってきて、アンケートへの協力を求められた。 ハンバーガーを作るロボットとは では実際にロボットがどうやってハンバーガーを作っているのかをご説明しよう。まず、こちらがCreatorのハンバーガー製造ロボットだ。 写真の通り、このロボットは「オールインワン」で、パンをトーストするところからトマトのスライス、ミートパティを焼くところまで、ハンバーガーづくりに必要な工程すべてを順序通りに行う。全長14フィート(4.3メートル)で、20のアクチュエーター、350のセンサー、20のコンピューターにより自律的に考えて動くことができる。 また搭載されたAIにより、カスタマ―のリクエストに応じて材料を追加したり省いたりすることが可能で、店ではそれの様子を実際に見ることができる。このロボットは店のメイン部分に設置され透明なガラスで囲われているので、カスタマ―はすべての工程を見ることができ、まさにこれから口にするものが作られる様子を見ることができるのだ。 ハンバーガーができるまで 上部にはエアチューブが3本あり、焼き立てのブリオッシュ・パンが入っている。オーダーが入ると、パンを押し出し、振動ナイフでカット、トーストしたあとにバターを塗り、ベルト上に置かれたペーパートレイの上に載せる。 パンを載せたトレイが各材料が入ったガラスチューブの下を通る前に、決められた量のソースとスパイスをパンの上に塗る。その後玉ねぎ、トマト、ピクルスを各場所でスライスして載せ、その後レタスとチーズを載せる。 “The place for awesome inventions, innovative ideas, and constant inspiration.” 💡 🔧 from the team at INVENTIONS INSIDER. Happy to have you over at our place. Creatorさんの投稿 2018年9月4日火曜日 (動画:CreatorのFacebookページより) この間、ロボットはパティとなる肉を機械の内部で調理し、焼き上がると他の材料が載ったパンの上に落としてハンバーガーの出来上がりだ。 人間の役割は? ハイテク色満載のCreatorだが、すでにお分かりのように人間を排除しているわけではない。むしろ人間もチームの一員として活躍している。『ロボット・アシスタント』という役割名を与えられた人間は、オーダーを取ったり、出来上がったハンバーガーを運んだり、テーブル席の片づけを行ったりと結構仕事がある。 また機械に不具合が出た場合の対応や材料の補充も行っている。なお、ハンバーガーの調理自体はロボットが行ってはいるが、ソースの配合やレシピ開発は未だ人間によって行われている。 もう1つ特筆すべき点として、このレストランは水、木、金のみ営業している。その他の日はエンジニアが機械を点検し改良するのに充てられているのだ。どうやら人間不要になる日がすぐに来るというわけではなさそうだ。 食事中、ロボットアテンダントの1人である女性と話すことができた。6月のオープン時から働いている彼女はこの仕事がとても気に入っているという。 彼女の説明によると、アテンダントは機械にそれぞれ各材料を補充する役目を与えられていて、ハンバーガーを作るのに必要な材料が切れないようにしている。それが終わったらランチの混雑時間に備える。営業時間が終わると清掃して翌日の準備と、ロボットへの補充以外は普通のレストランのスタッフと仕事内容はあまり変わらなさそうだった。 ロボットが調理する唯一のレストラン 調理工程という面において一般的なハンバーガーレストランと比べると大きく異なる。通常のハンバーガーレストランでは、人間が機械を使ってハンバーガーを作っており、グリルやフライパンは常に稼働状態だ。一方Creatorのロボットは感応式フライパンを備えており、オーダーが入ったときのみスイッチが入る仕組みだ。 そのためカスタマ―が少ないときにアイドリングするというような無駄な電力消費が発生せず、そうして節約したお金を食材に回すことができる。実際彼らは高品質のオーガニック材料を使うことにこだわっていて、カスタマ―も健康的な食事を摂っているという認識を持つことができるのだ。 サンフランシスコにはZume Pizza、Eatsa、Café X Coffee Barなど、ロボットが活躍しているレストランが他にもある。Zume Pizzaでロボットが担うのは、ピザを作る工程において繰り返し発生する簡単な作業の部分だ。Eatsaでは人間が調理するが人間を介さずにオーダーとピックアップができるという仕組みだ。 Café X Coffee Barでは三菱製のロボットアームがコーヒーを作って提供してくれる。しかしいずれの店でもロボットが自力で食材をカットし、それらを合わせて調理し、またオーダーによって材料を変えるようなことは見られない。ここにCreatorのすごさがわかるだろう。 関連記事:あなたはきっと知らない。サンフランシスコの○○○イノベーション【btrax voice #3 Mark Wake】 UXに改善の余地あり ミレニアル世代のカスタマ―の1人として筆者が気に入ったのは、Creatorが推している透明性というコンセプトと健康的な食事を提供しているという点だ。他よりも健康的なハンバーガーだと知りながら食べるのは満足感があったし、実際の調理場面を見ることができたのもよかった。ロボット自身がパンをトーストし、バターを塗り、材料をスライスしてそれらを1つのハンバーガーにしていたことも素晴らしかった。 ただ、他のハンバーガーレストランでのエクスペリエンスと大きく違うかと言ったら実はそうは感じなかった。接したのは人間で、ロボットと何かやり取りしたわけではなかったからだ。唯一のロボット体験はハンバーガーが作られている場面を見たことだけだった。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 一緒に行った同僚(男性、X世代)もあまり感動した様子ではなかった。曰く、「ハンバーガーが特別おいしいかというとそうでもないし、ロボットもちょっと子供だましっぽい。人間がまだ多くの部分を担ってるし、オーダーのプロセスについても列に並ぶわけではなく、たまたま居たアテンダントが対応してくれたという感じでちょっと違和感があった」とのこと。ただ店の雰囲気は気に入ったようだった。 もう1人の同僚(女性、ミレニアル世代)は非常に楽しんでいた。「キレイでおしゃれなハンバーガー屋さんのちょっとロボット化したバージョンですね。ロボットのデザインもいいと思います。ロボットの活用は効率性やコストカットのためだけではなく、カスタマ―や従業員をハッピーにするべきものだと気付かされました。」 ただ少し不満もあったようで、ロボットの動きがスローすぎて待ち時間を長く感じてしまったとのこと。また、ロボットが作っているハンバーガーのうち、どれが自分のオーダー分かわからないこともマイナスポイントとして挙げていた。 彼女はユーザーにとってロボットの活用が常にベストソリューションになるわけではないと指摘し、Creatorがテクノロジー起点ではなくもっとユーザー起点になるともっとよくなるだろうと言っていた。しかし彼女は店員がアンケートを取っていたことにも注目しており、「アンケート結果に基づいてサービス改善をしようとしていることはわかるので、また今度来てみたい」とも言っていた。 Creatorは健康志向・透明性重視・省エネでありながら、新しいエクスペリエンスを生み出すために日々改善に取り組んでいる。カスタマ―に受け入れられるかどうかはわからないながらも、オールインワンのハンバーガー製造機を作ったこと、そしてロボットの可能性をこういう形で我々に見せてくれたこと自体は素晴らしいことだ。

2019年デザインと経営の関する5つのトレンド予測

Good design is good business.
これはかつてのIBMのCEOが行った宣言である。
そしてついにそれが現実になってきている。それもかなり急速に。
数字で表される経営に対するデザインの力
米国のコンサルティング会社Motiv Strategiesによると、デザイン的考え方を経営に積極的に取り入れている状況企業16社は、その株価の伸びがS&P 500全体と比べ2003年から2013年の10年間で228%高くなっているという統計を発表した。
また、2018年10月のマッキ…

ユーザーフローから学ぶミスコミニュケーションの発生原因と対処方法

UXデザインのプロセスの一つとして「ユーザーフロー作成」というものがある。これは、特定の目的を果たすために、ターゲットとなるユーザーがどのようなプロセスを経るのかを明確にすることで、そこにたどり着くまでの「流れ」を設計するもの。
例えばアプリのデザインをする際には、下記のようなユーザーフローが設計される。

このプロセスの中では、それぞれのタスクごとにフローを作成し、よりユーザーにとって使いやすく、加えて、サービス提供側のゴールをスムーズに達成できる「流れ」に対しての導線をデザインする。

しかし、…

Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業

以前の記事「AmazonGoの仕組みは脅威となるか?サンフランシスコ店へ行ってみた」で紹介したように、実はAmazon Goストアがサンフランシスコに展開する以前に、2社のスタートアップがすでにレジレス店舗の試験的なデモ店舗をサンフランシスコ市内で展開していた。
サンフランシスコに突如現れたレジレス店舗
Amazonが3年という短い期間で3000店舗ほどまでに拡大を計画しているレジレス店舗であるが、その台頭により、レジレス店舗ひいてはその技術やIot、AIを活用し、小売業界の革新を目指しているスター…

ディズニーランドから学ぶ究極のUXデザインとは

ユーザーに優れた体験を提供し、提供側の利益も生み出す。これがUXデザインにおける一つの究極のゴールである。この2つのゴールを達成している最高の例の一つがディズニーランドであろう。実際に行ったことのある人であれば、その体験の素晴らしさと、躊躇なくお金をどんどん使ってしまうその雰囲気は、まさにマジックとも言える。実は、そのマジックの裏には、UXデザイン的観点で見ても卓越した設計が施されている。
UXデザインの価値を図る際には「UXハニカム」や「UXピラミッド」が使われることが多いが、おそらくディズニーラ…

米国企業が実践するデザイン思考の活用例3選

2018年5月、経済産業省は『デザイン経営宣言』を発表した。同省は「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営」としてデザイン経営を定義し、より多くの日本企業がこれを取り入れるよう促している。 このよ […]