2021年美容トレンドはどうなる?メイク編 鍵は「まだマスク着用で目元フォーカス」「コロナ後の気分は前向きに」

 2021年春のメイクアップは、コロナ禍という経験を経た「今の気分」が表現されているように思う。さまざまなストレスとの対峙を強いられた、重苦しい空気感から一歩踏み出すように。コレクションのテーマは「春の訪れ」「希望」「夜明け」など、「幕開け」のイメージが目立つ。カラーは花々や木々など、自然の延長線上にあるような、穏やかなトーンが充実している印象だ。そんなメイクのトレンドを、3つのキーワードでひも解きたい。

【メイクトレンド1】
アイカラーの主役は自然を想起する
「ボタニカルカラー」

 マスク着用の習慣が続く限り、メイクは「目元」に軸足が置かれそうだ。21年春のアイカラーのトレンドは「ベージュ」「ブラウン」「ローズピンク」など、穏やかなトーンのカラーたち。昨年春のトレンドが明るい「イエロー」だったことを考えると、実に対照的である。

 陽光の下で咲くみずみずしい花々を表現した「ディオール(DIOR)」、植物との出合いをテーマにした「ルナソル(LUNASOL)」など、“自然界の美”にインスパイアされたコレクションも多い。自由に外出することがままならない中「自然に触れ穏やかな気分で過ごしたい」、そんな思いが伝わってくる。どの色も透け感に優れており、まだ完全に楽天的になれないけれど「軽やかさ」「透明感」を求める気持ちを象徴している。

【メイクトレンド2】
大人の遊び心あふれる
「中間色」のアイライナー

 ここ数年人気のカラーアイライナーは、マスク着用習慣で、ますます存在感が高まりそうだ。これまでは若年層を中心に、赤やボルドーが流行していたけれど、今シーズンの注目カラーは「絶妙な中間色」。「スック(SUQQU)」からは、ホワイトを含むスタイリッシュなスモーキーグレーが。「セルヴォーク(CELVOKE)」からは、赤みを帯びたビターピンクが登場。いずれも、ありそうでなかった、大人のためのモダンなカラー。あえて太めに入れて、目元に遊び心溢れるニュアンスを添えたい。

【メイクトレンド3】
リップは透け感のある
トリートメント系

 この春も各社から続々リップカラーが登場するけれど、個人的に「今はこういうものがつけたいな」と感じたのが、トリートメント効果に優れた「透けリップ」。「アディクション(ADDICTION)」から登場する全9色の“リップ オイル プランパー”は、唇に潤いとツヤ、そして淡いニュアンスを添える心地良い感触が印象的。「ジバンシイ(GIVENCHY)」の“ランテルディ・リップスティック No.01”は、しっとり唇を包み込み、唇本来の色を透かしながら微細な輝きを添えるニュアンスブルー。双方共にストレスフリーの使い心地と、マスクを外した時にも「唇本来の立体感が際立つ」効果が嬉しい。

 コロナ禍を経て、リップを使う機会が減ったように「一時的に変化したこと」もあれば、スキンケアで肌を立て直す重要性のように「本質に気づかされたこと」もある。たぶん、私たちは2020年の経験から、今後「自分に本当に必要なもの」を、よりシビアに選択していくことになるだろう。

 そういう意味で、この1年間で最も価値観が変わり、女性たちの目下最大の関心事といえば「ベースメイク」にほかならない。次回のコラムでは、ベースメイクの未来について考えたい。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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2021年美容トレンドはどうなる?メイク編 鍵は「まだマスク着用で目元フォーカス」「コロナ後の気分は前向きに」

 2021年春のメイクアップは、コロナ禍という経験を経た「今の気分」が表現されているように思う。さまざまなストレスとの対峙を強いられた、重苦しい空気感から一歩踏み出すように。コレクションのテーマは「春の訪れ」「希望」「夜明け」など、「幕開け」のイメージが目立つ。カラーは花々や木々など、自然の延長線上にあるような、穏やかなトーンが充実している印象だ。そんなメイクのトレンドを、3つのキーワードでひも解きたい。

【メイクトレンド1】
アイカラーの主役は自然を想起する
「ボタニカルカラー」

 マスク着用の習慣が続く限り、メイクは「目元」に軸足が置かれそうだ。21年春のアイカラーのトレンドは「ベージュ」「ブラウン」「ローズピンク」など、穏やかなトーンのカラーたち。昨年春のトレンドが明るい「イエロー」だったことを考えると、実に対照的である。

 陽光の下で咲くみずみずしい花々を表現した「ディオール(DIOR)」、植物との出合いをテーマにした「ルナソル(LUNASOL)」など、“自然界の美”にインスパイアされたコレクションも多い。自由に外出することがままならない中「自然に触れ穏やかな気分で過ごしたい」、そんな思いが伝わってくる。どの色も透け感に優れており、まだ完全に楽天的になれないけれど「軽やかさ」「透明感」を求める気持ちを象徴している。

【メイクトレンド2】
大人の遊び心あふれる
「中間色」のアイライナー

 ここ数年人気のカラーアイライナーは、マスク着用習慣で、ますます存在感が高まりそうだ。これまでは若年層を中心に、赤やボルドーが流行していたけれど、今シーズンの注目カラーは「絶妙な中間色」。「スック(SUQQU)」からは、ホワイトを含むスタイリッシュなスモーキーグレーが。「セルヴォーク(CELVOKE)」からは、赤みを帯びたビターピンクが登場。いずれも、ありそうでなかった、大人のためのモダンなカラー。あえて太めに入れて、目元に遊び心溢れるニュアンスを添えたい。

【メイクトレンド3】
リップは透け感のある
トリートメント系

 この春も各社から続々リップカラーが登場するけれど、個人的に「今はこういうものがつけたいな」と感じたのが、トリートメント効果に優れた「透けリップ」。「アディクション(ADDICTION)」から登場する全9色の“リップ オイル プランパー”は、唇に潤いとツヤ、そして淡いニュアンスを添える心地良い感触が印象的。「ジバンシイ(GIVENCHY)」の“ランテルディ・リップスティック No.01”は、しっとり唇を包み込み、唇本来の色を透かしながら微細な輝きを添えるニュアンスブルー。双方共にストレスフリーの使い心地と、マスクを外した時にも「唇本来の立体感が際立つ」効果が嬉しい。

 コロナ禍を経て、リップを使う機会が減ったように「一時的に変化したこと」もあれば、スキンケアで肌を立て直す重要性のように「本質に気づかされたこと」もある。たぶん、私たちは2020年の経験から、今後「自分に本当に必要なもの」を、よりシビアに選択していくことになるだろう。

 そういう意味で、この1年間で最も価値観が変わり、女性たちの目下最大の関心事といえば「ベースメイク」にほかならない。次回のコラムでは、ベースメイクの未来について考えたい。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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「ルイ・ヴィトン」からメンズの新作レザーグッズ 人気の“ダミエ・パターン”をマルチカラーで

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、メンズの新レザーグッズライン“ダミエ・グラフィット 3D”と“ダミエ・アンフィニ 3D”を2021年1月1日に発売する。一部の直営店ほか公式オンラインストアで扱う。同ブランドを代表する“ダミエ・パターン”を3 つの異なるサイズのブロックで組み合わせて表現した。

 “ダミエ・グラフィット 3D”は、ブラック × グレー、シルバー × ホワイト、深みのあるブルー × ネイビーのほか、遊び心溢れる色鮮やかなマルチカラーを用意した。一方、“ダミエ・アンフィニ 3D”ではカウハイドレザーを用い大人向けの雰囲気を演出。カラーはブラック × ネイビーを展開する。

 一押しアイテムは小ぶりなサイズ感が魅力の“スタジオ・メッセンジャー”だ。ミニマルなデザインで、2箇所のフラットポケットを配し収納力を備える。そのほかサイズの異なる3つのポーチやストラップを自由に組み合わせできる“モジュラー・ポーチ”、旅行用バッグ“キーポル・バンドリエール 50”、メッセンジャーバッグ“トリオ・メッセンジャー”、“キャンパス・バックパック”、“アマゾン・スリングバッグ”、さらにスモールレザーグッズからはカードケース“オーガナイザー・ドゥ ポッシュ”、長財布の“ジッピーウオレット・ヴェルティカル”などをラインアップする。価格は4万6000〜34万9000円。

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古着店「ラグタグ」の巨大倉庫に潜入 真贋、ささげ、保管、受注、発送などを一括

 品ぞろえと編集力で人気を集める古着店「ラグタグ(RAGTAG)」は、全国17店舗やウェブサイトを通じ、消費者から古着(靴やバッグを含む)を買い取って販売している。古着のため商品は一点ものばかり。その全ての商品が集まる東京都国立市の「国立商品センター」は、ブランド古着を循環させる「ラグタグ」の心臓といえる場所だ。膨大な数の一点ものの商品はどう管理されて、消費者に届くのか。

 国立市の郊外にある国立商品センターの建物は、3フロア構成で約1万平方メートル。全国の消費者から買い取った古着が1日平均2000点届き、真贋チェックやコンディション確認などを経て、最終的な価格が付けられる。店舗とECの在庫が一元化されているため、全商品のささげ(採寸、撮影、原稿)作業もここで行われる。常時30万〜40万点の古着を保管し、各店舗に出荷したり、ECを通じて消費者に配送したりする。約110人のスタッフが働く。

 「ラグタグ」の商品はブランド古着で、目の肥えた顧客の売り買いによって成り立っている。他のリユース店に比べて客単価も高い。同社ECの人気ブランドランキングのベスト3(12月29日時点)は、メンズが「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」「ビームス(BEAMS)」、ウィメンズが「トリコ コム デ ギャルソン(TRICOT COMME DES GARCONOS)」「サカイ(SACAI)」「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」。

 独自の基準によって商品のコンディションを「新品同様」から「A」「B」「C」「D」の5段階に分類し、ダメージなども正直に記載することで信頼を築いてきた。メルカリに代表されるフリマアプリが浸透する中でも、ブランド古着の売り買いは「ラグタグ」で行いたいという人も少なくない。

偽物は絶対に入れない

 入荷した古着はまずモード、ストリート、カジュアル、ビジネス、アウトドアといったジャンル別に分けられた後、専門知識を持つスタッフが真贋を見極める。店舗で買い取る古着は店舗スタッフがその場で真贋チェックをしているが、さらに厳しい目で疑わしいものを弾く。

 上光治郎さんは店舗スタッフを経て、6年前から真贋のスペシャリストとして抜擢された。毎日、大量の商品を一つひとつチェックする。買い取られた店舗による値付けを修正したりするのも上光さんの仕事だ。

 アウターの裏側に縫い付けられた品質表示タグのある部分を指差し、「この◯◯◯は真正品では見られないものです」と教えてくれた。品質表示のほか、素材、縫製、ファスナーなどの付属。真贋を見極めるポイントはいくつかある。「(企業秘密なので)具体的には話せませんが、本物にたくさん触れて、その特徴を頭と目に焼き付けることが大切です」と話す。時間があれば、ブランドの直営店に出向き、最新の商品に触れる。経験を重ねると「注意深く見なくても、大量の商品の中から疑わしい商品は自然と浮かび上がってくるようになります」。

日々カイゼンを繰り返す「ささげ」

 真贋を通過した商品はささげに回る。

 フロアの設備で最も目立つのは、照明によって白い光を放つたくさんの撮影機材だ。商品を平置きにして撮影する設備が8台、ハンガーにかけて撮影する設備が15台、帽子や靴などの服飾雑貨を撮影する設備も数台ある。

 撮影は各設備で1人のスタッフが完結して行う。ハンガー撮影はマットレスを立てかけたような白い壁にシャツやワンピースを吊るす。スタッフはキャスターがついた椅子に座ったままで商品を整えたり、カメラを構えたり、パソコンで画像を確認したりする。「ラグタグ」を運営するティンパンアレイの桜庭邦洋ゼネラルマネージャーは「クオリティの高い画像が効率よく撮れるように、現場でたびたびカイゼンを重ねてきました。キャスター付きの椅子を使うのも、無駄な動きを減らしてスタッフの作業量を軽減するためです」と説明する。

 採寸は今のところ1点ずつ袖丈や身幅を手作業で行っている。だが、ティンパンアレイと同じワールドのグループ企業オムニスの自動採寸テクノロジーの試験導入が一部で始まっている。写真を撮影すれば、自動的に採寸してサイズを割り出す。本格的に導入されれば業務効率は飛躍的に上がる。

 商品情報の入力が終わった商品は保管フロアには移動する。広いフロアを埋め尽くす2段組のラックに、ハンガーにかけられた古着がぎっしり並ぶ光景は圧巻だ。30万〜40万点の古着がテイストやブランドごとに棚番号で整理されている。

 新品を売るチェーンストアとは違い、店舗ごとの顧客特性に合わせて選ばれた商品がここから毎日出荷される。例えば都心のモードに強い店と、地方都市のカジュアルが求められる店ではMDを変えている。ECで注文を受けた商品もここから消費者に発送する。ECが更新されるのは毎日17時。掘り出し物を探す常連顧客のアクセスが集中するのもこの時間帯だ。

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OWVが「ジバンシイ」ビューティのジャパンアンバサダーに就任 「プロデュース 101 ジャパン」元練習生の4人グループ

 次世代ボーイズグループOWV(オウブ)が、LVMHフレグランスブランズの「ジバンシイ(GIVENCHY)」ビューティの日本公式アンバサダーに就任した。 今後OWVは、「ジバンシイ」のメイクアップ、スキンケア、フレグランス製品の魅力や発売情報などを発信する。

 OWVは、2019年に行われたオーディション番組「プロデュース 101 ジャパン(PRODUCE 101 JAPAN)」に出演した元練習生である、本田康祐、中川勝就、浦野秀太、佐野文哉により結成。 20年9月30日に「UBA UBA」でメジャーデビュー、21年1月20日にはセカンドシングル「Ready Set Go」をリリースする人気グループだ。

 プロモーション動画では、4人が「ジバンシイ」の店舗に訪れ、パウダーやリップ、フレグランスなどの製品を試し笑顔を見せるシーンが満載だ。

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美容室の店舗デザインを学生コンテストで決定 学生の感性をリアルに生かす産学連携プロジェクト

 美容室チェーン「アグ(Agu.)グループ」はモード学園3校(東京、大阪、名古屋)と共同で、学生たちの感性を店舗デザインに生かす取り組みとして、産学連携プロジェクト“サロン リノベーション コンペティション 2020”を開催した。

 3校のインテリア学科の学生を対象として、“thought & antique”というテーマで店舗デザインのコンテストを実施。最優秀賞に選出された作品は、大阪市にある「アグ ヘアー コットン 梅田店」の店舗デザインに採用。2021年2月下旬~3月上旬を目途に、最優秀作品を具現化した店舗がリニューアルオープンする。

 「アグ ヘアー コットン 梅田店」は、オーナーがこの土地でオープンした第1号店となることから、思いが込められた店舗の新デザインとして“thought=思い”と“antique=古くて価値のあるもの”というテーマを設定した。

 全24チームの中から最終審査に5作品を選出し、「アグ グループ」の顧客を含む約2000人の投票により“Re start”という名前の作品が最優秀作品に選ばれた。

 最優秀作品のコンセプトは“ここからはじまる新しいデザイン空間へ”。1からリニューアルするのではなく、既存のものの良さを生かしつつ、現代の“カジュアル”と“アート”をプラスした新感覚のアンティーク空間としてデザイン。女性目線を意識し、白を基調としたナチュラルで優しい空間に、さまざまな差し色をアクセントとしておしゃれな雰囲気を演出した。

 「アグ グループ」は、全国47都道府県に543店舗を展開する国内最大級の美容室チェーン。今回の取り組みの意図について、担当者は「ファッション業界のみならず、美容などの分野でも多くの人材を輩出してきたモード学園において、インテリアデザインを学ぶ学生向けに実店舗デザインを行う機会を提供した。今後も若い人材の就労意欲を喚起し、学びをアウトプットする場を作ることで、美容業界のさらなる発展のための取り組みを継続していきたい」と話す。

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“香りの編集者”フレデリック・マルが世界最高峰の調香師らとメゾン20年の歴史を語る 「万人受けする香りではなく個性が光る香水を作る」

 「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」はこのほど、メゾン誕生20周年を記念してパフュームサミットを開始した。創業者のフレデリック ・マル(Frederic Malle)が、これまでメゾンの香りを手掛けてきた世界最高峰の調香師と共に香りやブランドなどについて語った。

 そもそもマルは、1962年にアーティストや調香師、実業家が名を連ねる家系に生まれた。「私は幼いときから、(家族などの)周りが常に香水について語っていたし、香りに関する会話をよく耳にしていた。5歳のときには香水の絵を描き、常に香りをまとっていた。子どものときは香水をそこまで理解できていなかったが、女の子が気になりはじめた年頃から、香りが人に与える影響を感じるようになった。人を引きつけるその魅力に気付いてから、香りの世界に進もうと思った」とマル。

 そこで数多くのプレステージフレグランスを作るルール・ベトラン・デュポン(ROURE BETRAND DUPONT)に就職し、世界最高峰の調香師たちと出会う。25年以上をかけて彼らと親交を深めていくうちに、自身のメゾンを立ち上げることを決意。多くの化粧品ブランドがイメージやマーケティングを訴求する中でマルは本来香水の本質である“香り”にフォーカスし、芸術的な香りを作るミッションに出た。そこで誕生した「フレデリック マル」は“エディション ドゥ パルファム(香りの出版社)”というコンセプトを掲げ、真のラグジュアリー パルファムの制作にこだわった。マーケティング戦略や時間、原料、コストなどにとらわれず、調香師にクリエイティビティーの自由を与えたのだ。マルはまさに“編集者”として、世界中の調香師の手掛ける作品を集積したメゾンを立ち上げることにしたのだ。

“香りの編集者”として真に作りたい香りを

 「“香りの編集者”というポジションは私が作った概念。当時は香水の“マスマーケット化”が進み、調香師と消費者との距離がどんどん離れていった。調香師からも不満の声を多く聞くようになった。ユニークで面白い香水が消え、いつしか、つまらない香りばかりが市場に出るようになったし、友人も香水を付けなくなっていった。それでも私は香水が好きでたまらなかったし、どうにかこの状況を変えたかった」。

 そんなある日、マルは日々を共にしていた調香師との関係が、編集者と作家との関係に近いことに気づいたという。「メーカーで働いていた私は、ときには調香師が作る香りにアドバイスをしたり、要望を出したり、彼らの香りを“編集”していたんだ。そこで自分が調香師の“編集者”として彼らが本当に作りたい香水をかなえられたら、真に美しくユニークな香りの世界が蘇るのでは、と思った」。

 香水業界の既成概念を打破しようとしていたマル。彼はその後、世界中の最高峰調香師とタッグを組み、“マニアック”な香りを次々と生み出した。マルと協業した理由を聞かれた調香師のジャン・クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena。“ローズ&キュイール”や“ロー ディベール”などを手掛ける)は「当時は私もまだ若く、次世代を担うパフューマーだったんだ。古いジェネレーションの調香師ともよくぶつかったし、ちょうど香水業界が変わりつつある時代にキャリアをスタートした。私は先輩たちとは違うことをしたかったし、業界を変えたかった。特に香水業界は(一般の人からして)謎に包まれ、閉ざされていた。そんな業界を解放し、調香師として、またアーティストとして自分の声を消費者に届けたかった。そこで少しずつニッチなメゾンフレグランスが台頭してきた時に、フレデリックのブランドを知り、彼はこう言ったんだ。『香水のボトルに、調香師の名前を入れたい』と。本当に驚いたよ。調香師が前に出ることは今までなかったからね。自分の名がボトルに載ることは、それだけの責任も持つ必要がある。でも、やっと“自分が作った香り”として認められることにもなる。ブランドの香りではなく、私の香り。それが面白くて、即座に協業を決めたよ。フレデリックには、私たち調香師にスポットライトを当ててくれて、感謝しかない」。

 調香師のピエール・ブルドン(Pierre Bourdon)は、マルと共に作った“フレンチラバー”という香りについて語った。「私もフレデリックも、母親が“ミス ディオール”をよく付けていたんだ。だから僕らにとって、幼少期を思い出す香りでもあって。共に作った“フレンチラバー”には、“ミス ディオール”に近いノートも感じられるんだ」。実際、パルファン・クリスチャン・ディオール (PARFUMS CHRISTIAN DIOR)の創設者だったマルの祖父はブルドンの父親をアシスタントとして迎え、その後マルの母親が彼の弟子になっている。「本当にファミリーストーリーがある香りなんだ」。


 “ダン テ ブラ”と“ムスク ラバジュール”を手掛けた調香師のモーリス・ルーセル(Maurice Roucel)は同製品が最も誇りに思う香りだと明かした。「当時、カシメラン(Cashmeran)という原料を使いたかったんだ。扱いが非常に難しい原料なだけに、調香師の間ではこれを用いた香水を作ることはステータスでもあった。多くが挑戦したが、いい香りを作ることに成功する人は少なかった。だからこそ、キャリアの中でも最も誇りに思う作品だ」。

“万人受けする”香りを求めるようになった大手

 香水業界の変遷について聞かれるとブルドンは「香水業界は70年代に大きく変わったと思う。大手企業がより“売れる”香りを作るようになったんだ。“ミス ディオール”を父が作っていた時代は、アルコールを500リットル調達していた。今は世界中に展開され、もっと大きなスケールで生産している。名作が次々と大量生産されていく中で、“万人受け”する香りが増えていった。昔はリスクを負ってでも個性的な香りを作ることが醍醐味だったのに」。アン・フリッポ(Anne Flipo)も賛同した。「一時期は、市場に出回る香水が全部似たような香りだったと思う。やっと今、ニッチな香水メゾンの活躍で個性的な香りが再び受け入れられるようになった」。

 ルーセルは「そして今の消費者はセフォラに行けば、何十種類もの香水をその場ですぐに試せる。だから嗅いですぐ彼らの印象に残らないと、選ばれない。トップノートに重きを置いた香りが増えているのではないか」と分析。「でも香水は本来、トップとミドル、ベースが重なりハーモニーを奏でるもの。そして時間をかけてゆっくり表情を変えるもの。だからトップノートだけでなく、全てを鑑みたブレンドを考えるべき」。

コロナで変わる人々の香りの趣向

 新型コロナウイルスの与えた影響についてマルは「ナイトクラブが閉まる中で華やかなドレスをまとって香水をつけることはないだろう。もちろん香水には相手を引きつけたり、印象付ける役割があった。同時に、香水は“自分のために楽しむ”ものでもあると思う。つけると良い気分になり、なんだか安心感や高揚感を与える。例えばジャン・クロードが作った“ロー ディベール”はとても心地の良い香りで、その“心地よさ”は現代人が求めているものでもある」と語った。

 ルーセルは「何でも香りの着想源となるのだ。今はみんな家でパンやケーキを作ったりしているけれど、それも香水の着想源になりうる。と話し、ブルドンも「都会に住んでいた人も、みんな今は実家に帰ったり田舎でロックダウンしていたりする。だから自然や田舎をほうふつとさせる香りを求めるようになるかもしれないし、香りの趣向も変わるかもしれない」とコメント。ドミニク・ロピオン(Dominique Ropion。“ポートレート オブ ア レディ”や“カーナル フラワー”などを手掛ける)は「(調香師として)われわれの仕事は変わることはない。常に、ユニークで新しいことを生み出すこと。もちろん、伝統的な価値や過去のクリエイションを大切にしながらね。だから香水業界の未来には全く不安を抱えていない。困難な状況であっても、それがイノベーションやクリエーションのきっかけになるだろうし、どんな状況であれ、新しいものを生み出せるから」。

 最後にマルは「私は自分だけのやり方で香水を作りたい。。私の香水のボトルがシンプルなのも、見た目や広告にお金をかけるのではなく、中身にこだわりたいから。今はニッチなメゾンが輝きはじめ、個性的な香りが再び活躍できるようになっている。『フレデリック マル』はいつの時代もチャレンジとイノベーションを続け、真にアーティスティックな香りを作り続けたい」と語った。

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イタリア発のダウンブランド「ケープホーン」 プレミアムダウン苦戦の中でも売り上げ伸長

 大磯産業が輸入代理店を務めるイタリアのダウンブランド「ケープホーン(CAPE HORN)」が売り上げを伸ばしている。「11月末時点で卸先での消化率は80%を超え、12月末では90%近い」と大磯隆重・大磯産業最高経営責任者(CEO)。2021-22年秋冬の受注金額は現時点で30%増ペースという。市場全般としてはコロナ禍でアパレル消費自体が冷え込んでいることに加え、アウターよりも室内着のニーズの方が高まっている。「ダウンに充てる買い付け予算は小売店各社恐らく減っている中で、(競合のプレミアムダウンブランドではなく)『ケープホーン』が選ばれるケースが増えている」という。

 20-21年秋冬の卸先は、「ビームス ライツ(BEAMS LIGHTS)」や「ナノ・ユニバース(NANO・UNIVERSE)」などのチェーンセレクトショップ30社、高島屋や阪急阪神百貨店など百貨店5社、全国の個店専門店50店で販売。同時に8月中旬からポップアップストアも全国13社35店で行った。国内での売り上げ比率は、ウィメンズが9割、メンズが1割だ。「ストレッチ素材の使用でフィット感がありながら着心地がよい点や、質に対する価格のバランスの良さが支持につながっている」と見る。

 元々はアウトドアや旅といった要素を打ち出したカジュアルイメージのブランドだが、日本ではよりエレガントなムードで訴求している。光文社の女性誌「ヴェリィ(VERY)」の10、11月号でタイアップを組むなどした効果で、30~40代のママ層の間で認知が向上。「ヴェリィ」11月号で行ったダウンジャケットのプレゼント企画には、「約9000件の応募があった」という。

 ウィメンズ商品の一番人気は、体にフィットするシルエットのロング丈ダウン。表地に伸縮性のあるポリウレタンを12%使用し、羽毛のかさ高を示すフィルパワーは800。10~20万円台も少なくないプレミアムダウンの市場の中で、価格は6万3000円とかなり抑えめだ。エントリー価格のショート丈ダウンは3万9000円。

 メンズでもウィメンズと同様、アウトドアムードの商品だけでなく、ビジネスマンがスーツスタイルのアウターとして着られるような落ち着いたデザインを本国に要望しており、21-22年秋冬ではそういった商品がより充実する。「ポップアップストアでは、女性客から『夫の分も購入したい』といった声が出るケースも少なくなかった。メンズの売り上げはまだまだだが、ここからもっと伸ばせる」と自信を見せる。

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