森星の「今日からできるサステナビリティ」Vol.2 身体が変わる“発酵食”と意識が変化したきっかけ

 渋谷スクランブルスクエアで開催中の新プロジェクト「シティ シェド(CITY SHED)」のポップアップストアで、事業者としてプロジェクトの立ち上げから商品MD、プロモーション、空間デザインまでを初めて指揮したモデルの森星。「都会のなかの循環のかたち」をテーマに、彼女の愛用する約50のアイテムをセレクト販売している。全3回にわたるインタビューでは、「シティ シェド」発足の背景から、具体的なアクションに至るまで、生活に取り入れられそうなヒントをお届け。第2回は、彼女がサステナブルな生活へと意識が変わったきっかけや実践する食習慣について紹介する。

WWD:サステナブルな生活へと意識が変わったきっかけは?

森星(以下、森):私の母は、以前から菜園や養蜂など、都会の中でも自然の循環を感じる生活を実践していましたが、子どものころは全く興味がありませんでした。新しいモノやトレンドのファッションを好んでいて、モデルとして働くようになってから、それらを自分で稼いだお金で買えることが嬉しくて。“新しいモノをたくさん所有すること=幸せ”だと思っていたのかもしれません。でも、ただ新しいモノを追うことに次第に虚しさを感じるようになりました。それは仕事を通して、色々な物事に触れ合えたからこその気づきなのですが、自分が手に取ったり食したりするモノを少しずつ見直すようになりました。

なので「これ!」という具体的なきっかけはありませんが、両親やファッションデザイナーをしていた祖母の影響でファッションが好きになり、モデルになりたいと思ったことは間違いない。20代後半になり「モデルとしての仕事を深堀りしたい」と思ったときに、外見を整えるだけではなく、普段の生活も人の参考になるような存在でありたいと感じるようになりました。もちろん人によって正解は違いますが、私自身自分が購入するアイテムの生産背景を聞くのは楽しいし、それを知っていれば自信を持ってシェアできます。

WWD:「シティ シェド」は結果的に自分のルーツを辿るようなプロジェクトになっている。

森:どんな家庭でも、人のルーツには美しさがあります。今までは、自分のアイデンティティーは自分が作り上げるものという考えを持っていましたが、ルーツを知ることで己を知り、さらに己を知ることでこれからの役目を定められる。まだ明確には見えていないけれど、「自然と共生することをファッショナブルに描く」ことが今の自分の役割だと感じています。

以前、海外の村で出会った男性が、地域全体を豊かにすることを自分の夢として語っていました。そんな皆が共感する心の豊かさは決してお金で買えないし、他人に奉仕することで自分も満たされるような夢の持ち方がうらやましかった。私自身も、人としての内外の美しさを高めていきたいと感じるようになりました。

WWD:新プロジェクト「シティ シェド」の一方で、サステナブルフードトラック「エデン(EDEN)」の取り組みも行っている。

森:「エデン」は“発酵人”の田上彩さんとスタートしたフードトラックで、発酵食品を取り入れたお腹にも環境にもやさしいメニューを提供しています。皆が癒される空間作りも昔からやりたかったことの1つでしたが、店舗を構えるには時間も手間もかかります。まずは移動できるフードトラックでメニューも季節に応じて変化する方がいいと思いました。発酵食品はムダが出ないし、その中では微生物が共存しながら平和な小宇宙を築いている。田上さんから「人は発酵の仕組みから色々なことを学べる」と聞いて興味が沸きました。

もし私が一人で始めようとしていたら、ファッションのキラキラした世界から来た人が興味本位だけで首を突っ込んでいると思われ、農家の方たちにもスムーズに受け入れてもらえなかったかもしれません。田上さんと一緒に取り組みながら、自分自身を違う環境に置くことで、改めて感謝できたり、新しい気づきがあったりする。それがモデルとしての表現の幅にもつながったりと、いい連鎖反応になっています。コロナ禍でなかなか稼働できないのが残念ですが、フードトラックのニーズも増えているので、2021年はもっと色々なことをやっていきたいです。

WWD:そもそも田上さんとの出会いは?

森:出会いは彼女がセレクトショップの販売員時代です。それ以前は表舞台に立っていた経歴もある方。当時から、きらびやかな世界に身を置きつつも湘南で自然に囲まれた生活を送っていて、一見相反する“ファッショナブルな世界と自然の豊かさ”のバランスを取ろうとしている姿に共感したし、自分とも似ていると感じました。

WWD:森さん自身が生活に取り入れている発酵食品は?

森:お味噌汁1杯から朝をスタートすると、すごく身体が整います。他には納豆を食べたり、生のケフィア菌からヨーグルトを作ったりしています。

WWD:体調が変わった実感は?

森:すごくあります。人のマインドと何かを溜め込む腸は似ていて、どちらも行き過ぎるとストレスになります。新しいことを吸収するには取り入れるスペースを作ることが大切。発酵食品を食べると自分の腸のデトックス効果でそれを感じることができて、気持ちのアップダウンが少なくなった気がします。

WWD:1日3食を摂っている?美容トレンドでもある「腸活」には「お腹が空いてから次の食事を摂る」というすすめがある。

森:意識的にではなく、結果的に1食になりつつあります。朝はミカンなどの水分量の多いフルーツや野菜を少しとお味噌汁を飲んでいるのですが、夕方にやっとお腹が空く程度に。以前は空腹になるとイライラを感じることもありましたが、今はそれが苦痛ではなく、逆に集中力が保たれて、調子がいいことに気付きました。

水を飲むのも良いのですが、栄養は水分と一緒に摂ると吸収されやすいので、特に午前中は“水分量の多い食事”を心掛けています。肉や魚も消化に8時間ほどかかるので、できれば野菜や果実は最初に食べて胃の負担を軽くするのがおすすめです。

WWD:他に最近始めたことは?

森:野菜の葉や皮までまるごと料理に使うことにはまっています。以前は当たり前に切り落としていましたが、皮に含まれる栄養や美味しさに目覚めました。特にキウイは、皮ごと食べた方が断然美味しくておすすめ。バナナの皮の成分も身体にいいと聞いて、焼いてお茶に入れたり、ハチミツに漬けたりしてみたのですが……私には合いませんでした(笑)。皮に残っている農薬には注意が必要ですが、色々な野菜をまるごと食べてみて、日々自分のコンディションと照らし合わせています。

サステナビリティと聞くとシリアスに考えがちですが、自分にとっての“好き”や“気持ちがいい”から入り、できることから始めれば、それが1番エゴのない自然の循環のかたちになる。自分にもストレスのない取り入れ方が理想ですね。

■ポップアップショップ「シティ シェド」
日程:12月16日〜1月5日
場所:渋谷スクランブルスクエア 4F スペース4
住所:東京都渋谷区渋谷2-24-12
営業時間:11:00〜21:00
オンラインにて特設サイトがオープン中

※次回は「サステナブルなファッションと、ものづくりへの興味」をお届け

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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「ロクシタン」の限定で人気のフレグランス“エルバブランシュ”シリーズが定番に シャワージェルやハンドクリームも用意

 「ロクシタン(L’OCCITANE)」は1月27日に、2020年3月に限定販売したフレグランス“エルバブランシュ”シリーズを、お客からの再版の要望を受けて定番アイテムとして発売する。オードトワレのほか、シャワージェルやボディーミルク、ハンドクリームの全4品をラインアップする。

 “エルバブランシュ”(50mL、8000円10mL 3200円)シリーズは、全製品共通してホワイトクローバーやホーリーグラス、マシュマロなどを配合した、みずみずしくクリーンなフローラル調の香りだ。オードトワレは50mL(8000円)と持ち運びに便利な10mL(3400円)の2サイズを用意。シャワージェル(250mL 2900円)は植物由来の洗浄成分が肌を優しく洗い上げ、保湿成分のマシュマロルートエキスが乾燥から守る。シアバターを配合したボディーミルク(250mL 3900円)は、洗浄後の肌をみずみずしく整えて保湿する。ハンドクリーム(30mL、1400円)は植物由来成分を6種類配合し、ほのかな香りと指先まで滑らか潤いを与える。

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日本未上陸のフランス発ビューティブランドが集結

 フランス大使館はこのほど、日本未上陸のフランス化粧品商談会を開催した。通常はフランスから企業担当者が来日して自社製品をアピールするものの、コロナ禍で来日がかなわずフランス大使館が変わって展示会を行った。サステナビリティを尊重したスキンケアブランドのほか、フレグランスブランドなど8ブランドがそろった。

マヤ族の女性が愛用「マウェナ」

 スキンケアブランド「マウェナ(MAWENA)」は2020年1月に誕生し、メキシコ・マヤの女性たちが何百年も前から治癒と再生のために使用してきた“スキンツリー”と呼ばれる木の樹皮から採取した成分をベースにした製品をそろえる。動物実験は行わずビーガン処方を重視するほか、マヤの女性たちの地位向上を図るため製品の売り上げの2ユーロを寄付することを約束する。モリンガの成分を配合したクレンジングオイル(100mL、53ユーロ=約6700円)、美容オイル(50 mL、110ユーロ=約1万3000円)などを扱う。日本では百貨店やセレクトショップでの展開を目指す。

100%自然由来成分、フランス製の「オーリューション」

 「オーリューション(OOLUTION)」は、大手化粧品メーカーでオーガニック部門を担当していたアンヌマリー・ガブリカが独立して13年に立ち上げたオーガニックスキンケアブランド。オーガニックまたは持続可能な野生植物を原料とした成分を配合する。100%ナチュラル由来、ビーガン、フランス製にこだわる。混合肌や乾燥肌など肌タイプ別にアイテムを扱い、エイジングケアクリーム(30 mL、43ユーロ=約5400円)、美容オイル(15 mL、47ユーロ=約5900円)などをそろえる。日本ではオーガニックコスメのセレクトショップなどへの進出を狙う。

敏感肌も安心して使える「ジャカディ」

 ベビーケアブランド「カダム(CADUM)」から派生した「ジャカディ(JACADI)」は、赤ちゃんの敏感肌にも使用できるナチュラル成分にこだわったスキンケアブランド。15年に誕生して以来、アメリカやモロッコ、中国、スペインなど15カ国で展開する。フェイスクリームやボディーローション(39ユーロ=約4900円)のほか、ハンドクリーム(19ユーロ=約2400円)や98%がナチュラル由来成分のハンドジェルなども扱う。日本では百貨店や化粧品専門店での展開を希望する。

香水の都で誕生した「シャボー」

 「シャボー(CHABAUD)」は香水の都グラースで製造する100%フランス製のフレグランスブランド。独自の世界観を香りで表現し、感情を目覚めさせる香水(250ユーロ=約3万1000円など)や、キャンドルなどのホームフレグランスをそろえる。12年のリニューアル以降、イタリアやイギリス、中国やロシアなど15カ国へ輸出を開始した。日本での販売はもちろん、新商品の開発や販売戦略を共同で行えるパートナーを探している。

 そのほか、約10年ぶりに再上陸を果たすスキンケアブランド「パイヨ(PAYOT)」や高級香水「イクス・ニイロ・パリ(EX NIHILO)」なども日本進出を目指し、フレンチビューティの存在感を強めていく。

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綿花農家の自殺問題に向き合う 創設者がオーガニックコットンプロジェクトの意義を語る

 持続可能なビジネスとは、そのビジネスに携わる全ての人々にとっても持続可能であることが条件だ。サプライチェーンが長く複雑なアパレルビジネスは、業界全体で手を取り合い、生産者の生活向上に貢献する方法を探る必要がある。そのアプローチの一つを実践するのが、インドの綿花農家の支援を行うピース バイ ピース コットンプロジェクト(以下、PBP)だ。

 PBPは2008年に通販大手のフェリシモの通販ブランド「ハコ!」の事業から立ち上がったプロジェクトだ。当時、世界最大の綿花の生産地であるインドでは綿花農家の高い自殺率が問題視されていた。農薬や化学肥料、遺伝子組み換えの種を買うために借金した農家が、それらを適切に使えなかったり、そもそも土地に合わなかったりなどの理由で収穫量が減り、借金を返せずに自殺してしまうという状況が生まれていたのだ。PBPはこの問題を解決するために、インド産のオーガニックコットンを使用した製品に基金をつけて販売し、その基金でインドの綿農家の有機農法への転換支援と、農家の子どもたちの就学・奨学金を支援する。20年3月時点で、総基金額は1億円を超え、有機農法へ転換した農家の件数は11の地域で1万5000世帯以上、復学した子どもの数は2064人、さらに高等教育に進んだ子どもの数は928人を達成した。PBPを立ち上げた葛西龍也一般財団法人PBP代表理事に話を聞いた。

WWD:PBPを立ち上げた背景は?

葛西龍也一般財団法人PBP代表理事(以下、葛西代表理事):最初は私的な動機だったんです。フェリシモの「ハコ!」の事務所を東京に構えるに当たって、家賃を支払うために原価の低い商品を探していて、偶然目に付いたのがホームセンターで売られていた軍手でした。軍手の原料は落ち綿で原料費が安く、右も左もないので効率的に大量生産されていました。これを1双1000円で売れたら家賃が払えるだろうと考え、手に着用するものなので手をつないでコミュニケーションが生まれるようなツールとしての軍手をコンセプトに、商品企画を進めました。加えて、フェリシモが01年の9.11をきっかけに開始したチャリティーTシャツ「ラブ&ピース プロジェクト」に着想を得て、軍手に子どもの未来を支援する基金を付けて販売するアイデアを思いつきました。

WWD:「ラブ&ピース プロジェクト」とは?

葛西代表理事:9.11が理由でニューヨークとアフガニスタンの親を亡くした子どもの支援を目的にしたものです。08年の時点で約20万着のTシャツを販売していました。そこで、フリーペーパー「ディクショナリー(DICTIONARY)」の創刊者で「Tシャツアズメディア」という活動をしていた桑原茂一さんに相談に行きました。桑原さんは僕の話をじーっと聞いた後に「それってオーガニックコットン?」と聞きました。「いや、違います」と答えると、「君は20万枚もTシャツ売って誰かを助けたって言っているけど、その裏でたくさんの農家の人々が死んでいるのを知っているか?」と言うんです。調べていくと、インドの綿農家では綿花を育てるための農薬や化学肥料、遺伝子組み換えの種を買うために借金し、それらが適切に使えなかったり、そもそも土地に合わなかったりして収穫量が減り、借金を返せないプレッシャーに負けて自殺してしまうという状況がありました。インド政府もこれを問題視し、自殺した家族に保証金を渡す制度などを作って対応にあたっていました。

WWD:そうした背景を知る人は少ないかもしれない。

葛西代表理事:補償金目当てに亡くなってしまう人もいて、年間3万人ほど亡くなっているというのです。僕はチャリティーTシャツを作って、どこかの誰かを救った気になっていたけど、その裏では原料を作る人を殺していたかもしれない。この頃は日本にファストファッションが上陸した年でもありました。これから安い服がたくさん販売されていく時代の流れと、農家の自殺問題を重ね合わせるとゾッとしましたね。何とかしなければ、と思いました。そこで、インドのオーガニックコットンを使った商品に基金を付けて販売し、農家の有機農法への転換を支援して、そこから取れるオーガニックコットンを使ってまた服を作る循環の仕組みを思い付きました。軍手を作るコンセプトは残っていたので、オーガニックコットンで日本製の軍手を作ることになりました。1000円で売りましたが、その頃には原価率の話はどこかに行っていましたね(笑)。

WWD:軍手はどのくらい売れた?

葛西代表理事:10年5月末の時点で1万8770双販売し、軍手以外のオーガニックコットン商品の販売も含めて660万円の基金が集まっていました。

サステナビリティは短期的な計画では取り組めない

WWD:現地の寄付先はどのように探した?

葛西代表理事:最初は集めた基金を、オーガニックコットンを販売する人に渡せば完結するだろうと安易に考えていました。しかし、アパレルビジネスは想像していたより複雑でした。農家の人々は綿花からタネを取り除く作業をするジン工場に綿花を持ち込んで現金を得ますが、当時はジン工場がお金を渡す代わりに農薬を渡すケースが多くありました。08年の10月に初めてインドに行き、現地のジン工場に話しに行くとサックスブルーのシャツを第三ボタンまで開けて金色のネックレス、金色のブレスレットをつけた明らかに怪しいインド人の男性たちが「俺らに任せてくれたら大丈夫」って言うんです。絶対嘘だと思いましたね(笑)。この頃になってやっと、サプライチェーンでは買う立場の人が売る立場の人より強いことに気が付きました。

WWD:つまり農家は一番弱い立場に置かれている。

葛西代表理事:そうです。綿を農家から買う立場の人に任せてはどうなるか分からないと思い、第三者機関を探そうとジャイカ(JICA)のインド事務所を尋ねると、有機栽培への支援に取り組むNPO団体の情報をくれました。その中の一つが現在のパートナーである現地NPOのチェトナ・オーガニックでした。チェトナ・オーガニックは元国連の食料政策事務局で働いていたインド人が母国の課題を解決したいという思いで立ち上げ、インド有数の貧困地帯であるオリッサ州の小規模農家の有機農法への転換を支援していました。どうせ支援するなら、一番困っているところにと思い、10年4月にはオリッサ州に視察に行き、契約締結を決めました。

WWD:有機農法の支援以外にも、農家の子どもたちの就学を支援しようと思った理由は?

葛西代表理事:ジャイカで話をしている時に、貧困地帯の農家では多くの場合、児童労働が行われていて、子どもたちが学校に行かずに働いていることを教えてもらいました。そこでプロジェクトの参加条件として児童労働を禁止すること、現地の子どもたちの奨学と復学支援、高等教育への奨学金を支援することを決めました。

WWD:17年には一般財団法人化した。現在の法人参加企業の数は?

葛西代表理事:豊島やヤギなど法人会員は6社です。19年に展示会を開催して以降、参加ブランドも増えています。この課題は僕たちだけで取り組むものではなく、参画企業それぞれができることを実践してもらいたい。ヤギはインド最大のオーガニックコットンの紡績工場であるナハール社と連携して、オーガニックコットンの原糸に基金をつけて購入する「ヤーンプロジェクト」や種の購入を支援する「シードプロジェクト」を提案してくれています。

サステナビリティとは人が良い未来を描ける環境

WWD:今後の目標は?

葛西代表理事:共感してくれるお客さんやブランドを増やすことです。基金の金額は100円から選べますが、店頭でほかの商品と並んで値段だけを見たときに100円の違いは大きいのだと思います。きちんと目的を伝えるための手段として、来年には購入者がアプリを通して支援先を選択できるシステムもローンチ予定です。昨今、サステナビリティやSDGsへの取り組みを開始する企業は多く見受けます。しかし、短期的な取り組みでは意味がありません。農家の支援も基本的には3年計画なので、「今年はサステナビリティに取り組むけど、来年は分かりません」と言うようなところと取り組むのは難しい。しっかりと腰を据えて頑張ろうとしている人たちと協力していきたいです。

WWD:これまでに1万5000世帯以上の有機農法への転換を支援してきた。この成果をどう見る?

葛西代表理事:振り返れば何もないところからよくやったなと思いますが、1万5000世帯を背負っているって重たいんです。これからどうやってアパレルや消費者の皆さまに伝えていくか――その課題の方が大きい。ただ、昨年現地に行った時にうれしいことがありました。僕に照れ臭そうに話しかけてくれたインド人の男性が、実はPBPの奨学金で大学へ行き、政治学を学び、今はオリッサ州政府の農業担当の役人として働いていると言うんです。実は奨学金を支援すると決断したときに、あなたは子どもが村から去ることを手伝っていると言われたこともありました。それでも、学びたいのに学べないのはおかしいと思って始めました。しかし、最近はちゃんと村に戻って来るケースがあるんです。その男性はきちんと勉強して、自分で物事を決められる立場になった。少なくともその人の人生には何か影響与えられたかもしれない。彼のように主体的に行動を起こしてくれている人が出てきたのは社会にとって大きな変化となります。サステナブルというと、さまざまな捉え方がありますが、僕は人を軸に考えます。変化を起こせるのは人だからです。人々が自分にとって良い未来を描ける環境を作っていくことが僕にとってのサステナビリティです。

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