「#FR2」が移動販売!石川涼が「#FR2DOKO?」を始めた理由

 せーのの石川涼が手掛ける「エフアールツー(#FR2)」はこのほど、移動型販売店舗「エフアールツードコ?(#FR2DOKO?、以下ドコ?)」を始めた。購入希望者は全国各地を移動する黄色の販売車を、地図コミュニケーションアプリ「ゼンリー(ZENLY)」の位置情報を頼りに探す。試験的に茨城や群馬、山梨などで営業したところ、「ドコ?」の限定商品などが各地で完売し、1日の売り上げが200万円に上った。その販売場所はインスタグラムやツイッターのDMで募った、全国各地の協力者の土地だ。全国にいる「エフアールツー」のファンの元へ、「エフアールツー」が自ら出向く――ありそうでなかったこのサービスを始めた理由を石川社長に聞いた。4月12日発売の「WWDJAPAN」では、現地リポートも掲載する。

WWD:「ドコ?」を始めようと思ったきっかけは?

石川涼せーの社長(以下、石川):2回目の緊急事態宣言が出そうだったときに、このままだと今以上にみんなが移動しなくなるなと思った。1回目の緊急事態宣言(昨年4〜5月)のときは本当に酷くて、やっとお店の売り上げが戻り始めていたのに、また1回目のときのように大自粛になったらそれこそ死ぬ。それで、役員会でこっちから車で売りに行こうという話をしていたら、偶然若いスタッフが移動販売をしたいと言ってきた。じゃあやろうと、すぐに軽自動車を発注した。決め手はアパレル業界で移動販売なんてする人がいなかったから。それが一番大きい。

WWD:移動販売の目印に「ゼンリー」を採用した理由は?

石川:アプリ自体は前から知っていたけど、日本ではカップルに、浮気防止のための束縛し合うアプリとして使われていることが多くて、正直気持ち悪いなと思っていた(笑)。ただ、移動販売の場所をお客さんに知らせる方法が必要だから、それに「ゼンリー」を使うのはどうだろう?と。オープンプロフィールにして登録すれば誰でも「ドコ?」の場所を追えるようになる。それで「ゼンリー」に登録したら、一気にユーザーが増えて、承認待ちの時間が必要なほどになってしまった。それに驚いた本国(フランス)が、「ドコ?」のアイコンをわざわざ作ってくれた。

WWD:「ドコ?」を実施して、どうだった?

石川:初回は2月20日と21日で、1日目が茨城県の水戸と下妻、2日目が群馬の高崎と富岡を予定していた。ところが1日目の水戸で2日分の商品が全て売り切れてしまった。同じ日に原宿でもコラボ商品の発売があってスタッフが稼働していたから、急いで追加の商品を社用車で持ってきてもらって下妻で合流したんだけど、翌日の高崎でまた全て売り切れてしまった。商品を積めないので今は週末の1日だけ、軽自動車と社用車の2台態勢で回ることにしている。

WWD:そのときの売り上げは?

石川:軽自動車と社用車に積める分で200万円ぐらい。しかも出店場所はSNSで募っているから、場所代もかかっていない。自分の自宅の庭を使ってくださいというありがたい連絡も来る。

WWD:初期投資は?

石川:車代の100万円だけなので、初回で元は取れた。ただ、2台態勢はスタッフの稼働も増えて効率が悪い。もともとは軽自動車1台で全国を練り歩こうと思っていたんだけど、嬉しいことにそういう次元ではなくなった。だから今、一番大きいハイルーフのバンをオーダーしている。

WWD:「ドコ?」が行く場所はどんな場所?

石川:「エフアールツー」は卸をやっていないので、僕らのお店がないところを中心に回りたい。だからみんな来てくれる。

WWD:どんなお客さんが来る?

石川:カップルが予想以上に多い。多分「ゼンリー」を使って、スマホで追っている感じが楽しんじゃないかな?宝探しというか店の場所を探すところからゲームやイベントのように感じてくれている。「ドコ?」の車を追いかけている動画が(インスタグラムの)スートーリーズとかに上がっていて、それを見たときに“これはいける”と思った。お客さんのテンションを上げさせられているということなので、これは大きなウネリになるな、と。

WWD:これをきっかけにアパレルの移動販売が増えるのでは?

石川:増えると思う。洋服だけじゃなくてキッチンカーとかも。移動販売自体はもともとある方法なので。移動先でしか買えないモノが増えていくと思う。

WWD:将来的にはどうする?

石川:今は週末だけ東京から行って、帰ってこられる距離でやっているけど、本当は東北や関西みたいに各地区にそれぞれ車を分けて、平日も毎日移動しながら巡業したい。ゴールデンウイークは、何日かかけて東北を回るプランを考えている。今後は、現地の食べ物屋さんとかにも出店してもらったりして、少しでもその地域を盛り上げることができればいいなと思う。

WWD:行ったこともない辺ぴな場所で、売れないかも知れないという不安はない?

石川:でも究極は、お客さん1人でもいい。そもそも、そこまで売れると思って始めていないし。移動しながら、そのときにしか会えない人に会う。そうすれば、そのお客さんの中に思い出としてずっと残るから。そういうお客さんがのちのちECで買い物をしてくれればいいなと思う。

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NZ発スキンケア・サプリブランド「ミートゥデイ」が上陸 マッシュビューティーラボが独占販売

 「コスメキッチン(COSMEKITCHEN)」や「トーン(TO/ONE)」「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛けるマッシュビューティーラボはこのほど、ニュージーランド発のプレミアムスキンケア&サプリメントブランド「ミートゥデイ(ME TODAY)」と日本における独占販売契約を締結した。4月5日に、ニュージーランド大使館で契約発表会および調印式を開催した。

 「ミートゥデイ」はニュージーランドのライフスタイル&ウェルネス企業、ミートゥデイグループが手掛けるブランド。“Unlock your best tomorrow with me(あなたの最高の明日を解き放とう)”をコンセプトに、シンプルで効果的な毎日のセルフケアを通して人々の生活にポジティブな変化をもたらすことを使命としている。現在サプリメントを中心にスキンケアやボディーケアなどを展開し、価格帯は15.99〜49.99ニュージーランドドル(約1200〜3800円)。“リラックス”や“集中”などウエルビーイングアプローチのサプリをそろえ、中でも女性・男性別に用意するマルチビタミンや、快眠に導くサプリが人気だという。製品はクリーンで高品質な原材料を使用し、ニュージーランドで一つ一つ丁寧に作っている。現在日本向けにスキンケア・サプリメント10種を開発中で、年内に「ビープル バイ コスメキッチン(BIOPLE BY COSMEKITCHEN)」や「コスメキッチン」での販売を目指す。

 同ブランドはスキンケアブランド「トリロジー(TRILOGY)」やウォッカブランド「42ビロー(42 BELOW)」などニュージーランドを代表する企業での経験を持つマイケル・カー(Michael Kerr)、グラント・ベーカー(Grant Baker)、スティーブン・シンクレア(Stephen Sinclair)の3人が2018年に設立した。また、ニュージーランドのラグビーユニオンプレーヤーであり、 ニュージーランド代表「オールブラックス」と「ブルース」、日本では「サントリーサンゴリヤス」で活躍するラグビー選手のボーデン・バレット(Beauden Barrett)がグローバルアンバサダーを、妻のハンナ・バレット(Hannah Barrett)が理事を務める。

 4月5日の発表会には、マイケル・カー最高経営責任者がズーム上で参加した。「『ミートゥデイ』は、18年に妻が乳がんステージ3と診断されたことをきっかけに、彼女および自分の健康を見直したいという思いで立ち上げた。内外ともに体を養うニュージーランド発のブランドが当時は少なく、自分たちでブランドをスタートした。ニュージーランドの豊かな自然が生み出す素材を最大限に生かし、さらにクルエルティーフリー(動物実験を行わない)処方にこだわっている。素晴らしい製品を通して日本の皆さまの健康と幸せをサポートしたい」と語った。

 椋林裕貴マッシュビューティーラボ副社長は「マッシュビューティーラボでは、自然界との約束を守りながらお客さまと環境の未来を明るく、幸せにすることを目指してきた。日本におけるナチュラル・オーガニック市場は1990年代後半に盛り上がり始めた。その後ショップデザインや接客などがもう少し開放的になりストイックなイメージからの脱却を目指したのが第2ステージとすると、今まさに最盛期を迎える第3ステージはナチュラル・オーガニックでありながら高い効果を発揮する製品が増えている時期。次なる第4ステージは、ウエルネスや心の健康へのアプローチだと考える。コロナで誰もが経験したことのない世の中になっている今、まさにこのウエルネスが求められているだろう。心身の健康をうたう『ミートゥデイ』は、そんな次世代にぴったりなブランド。これから日本で展開することが大変楽しみ」と期待を寄せた。

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ハラール認証取得の新スキンケアシリーズ“ハピネスボーテ“誕生

 桃谷順天館グループは4月5日、グローバルで展開するブランド「MOMOTANI」からスキンケアの新シリーズ “ハピネスボーテ(HAPPINESS BEAUTE)”を発売した。「サステナブルビューティ私のために、地球とすべてのために。for me, for all」をコンセプトに、ハラール認証・動物由来成分不使用・動物実験不実施・FSC認証など安心安全にこだわったクリーン設計。アマゾン(AMAZON)公式ショップで先行販売し、5月以降に世界各地で順次展開する。

 “ハピネスボーテ“は、化粧水“リフレッシングローション”、乳液“バランシングエマルジョン”、クリーム“スージングクリーム”(いずれも税込1540円)をラインアップ。桃谷順天館が独自開発した、肌の基礎力を上げる成分“HBP コンプレックス“を配合し、肌荒れを防いで潤いが満ちた肌に導く。

 桃谷順天館岡山工場は2020年にハラール認証を取得し、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで厳しい検査を行い、徹底した品質管理体制を確立。また商品開発にあたり、ムスリムの消費行動や意識を知るため、在日ムスリムにアンケートやグループインタビューを実施。ライフスタイルや化粧品の嗜好、購買行動、商品パッケージデザイン、香りの好みなどを事前調査した。そこから香りは、深みのあるフローラルを主体に、ベルガモットとスパイシーさのあるグリーン系、カシスを配合。ラストにはムスクやアンバーの余韻が残る、透明感のある香りに仕上げた。

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アダストリア福田会長「アパレル市場は売上高7掛けが当たり前に」

 アダストリアの2021年2月期連結業績は、売上高が前期比17.3%減の1838億円、営業利益が同94.0%減の7億6600万円、純損益が6億9300万円の赤字(前期は63億円の黒字)となった。2度の緊急事態宣言による自主休業や外出減が大きく響いたが、上期の営業赤字からは回復。「コロナ禍でわれわれは未来の世界を体験することになった。アパレルビジネスは今後6〜7年後には、人口減や高齢化によって、(従来に対し)売上高が7掛け(=70%)が常態という世界になる。そうなった時にどう生き残るかを考え、実践する1年だった」と福田三千男会長兼社長は振り返る。

 「これまではショッピングセンターの増加、そこへの出店によって業界の規模が拡大してきたが、そうしたあり方はもう限界にきている。サステナビリティの観点からも、過度に生産することはもう認められない。となると、これまでのような右肩上がりの成長はありえない」と福田会長は続ける。2010年に“チェンジ宣言”を発表し、商社頼りのモノ作りから企画・生産・販売を垂直統合したSPA体制を打ち出してから10年。「その10年間の成果として、バックオフィスのメンバーを含め、社員1人1人が何をすべきか考えて前向きに動けた」ことが、苦しい中で営業黒字を維持できた要因と語る。

 22年2月期の連結業績は、売上高が同19.1%増の2190億円、営業利益が同747.7%増の65億円、純損益が38億円の黒字の予想。

 22年2月期は、変化する世の中に対応していくための「投資の年」と位置付け、グループ連結で約130億円の投資を行う。具体的には、既存事業を盤石にし、利益を生み出すための店舗開発に64億円、システムに47億円、海外に9億円といった内訳。店舗開発では、豊富な雑貨の品ぞろえでコロナ禍でも比較的好調だった「ベイフロー(BAYFLOW)」「ラコレ(LAKORE)」の出店を強化すると共に、「ニコアンド(NIKO AND…)」「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」は店舗の大型化を図る。

 システム投資では、自社EC「ドットエスティ(.st)」のシステムのバージョンアップを進め、8月までに一部店舗でオムニチャネルサービスを開始する。また、オムニ推進の一環として、5月には新規事業として「ドットエスティストア」を2店出店。「ドットエスティ」内の売り上げランキングや、スタッフによる人気コーディネートなどを店頭にも反映する。アプリ上で来店予約を行えば、客のこれまでの購入履歴に応じた新商品の提案なども行う予定という。なお、21年2月期の国内EC売上高(自社EC以外も含む)は前期比23.4%増の538億円。「ドットエスティ」の会員数は前期比140万人増の約1170万人となった。

 海外事業では、コロナ禍からの回復が著しい中国で、上海に2店を出店する「ニコアンド」が好調。これを受けて、今春に海外事業本部を上海に設置、生産・物流・販売の現地機能を強化する。また、東南アジア市場開拓のために東南アジア準備室も設ける。

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住宅のD2C、アラタナ創業者の新事業「ノットアホテル」とは?

 新型コロナ感染拡大の影響で、あらゆる分野におけるECビジネスが急成長している。ファッション、日用品、食品、何でもECで購入できる時代だ。だが、さすがに住宅をECで販売・購入するという発想は今までなかった。ところが、それを実現する「ノットアホテル(NOT A HOTEL)」が登場。2月にサイトを立ち上げてから1週間で約3000件の問い合わせやニュースレターの登録があったという。同サービスを立ち上げたのはECコンサル企業アラタナの元創業者である濱渦伸次氏。彼に「ノットアホテル」の仕組みやサービス、今後について話を聞いた。

WWD:「ノットアホテル」の着想源は?

濱渦伸次ノットアホテル最高経営責任者(以下、濱渦):2020年3月まで「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥディの傘下でアラタナの社長を務めた。そこでD2Cの支援を行ってきたわけだが、独立してECで一番売るのが困難なものは何か考えた。実はECで試乗もせずに「テスラ(TESLA)」を購入してみて、オンラインで完結できるんだと感動した。そこで、高額な住宅をECでパースだけ見て買う感動、そして購入後に家が出来上がる過程を見る感動を提供できないかと考えた。

WWD:住宅のD2Cということだが、どのような仕組みか?どのような物件を販売するか?

濱渦:日本各地の風光明媚なロケーションを選び、その場所に合う建築家を起用してCGで各物件のパースを制作し、ECで販売する。物件が売れたら施工を開始し約6カ月後にオーナーに受け渡す。現在栃木県の約16万坪の牧場に13棟、宮崎県の国定公園内に6棟など、日本国内7カ所で企画が進行中だ。地域ごと、一軒ごとに全て違うデザインにする。ロケーションは、一等地でもメジャーでもない場所だが、空港や駅から車で15〜20分とアクセスの良い場所を選ぶ。そして、オーナーが使用しない時はわれわれがホテルとして貸し出し運用する。そうすることで、オーナーは収益を得ることができる。無駄なく、合理的、そしてユーザーフレンドリーなプラットフォームだ。

WWD:物件の価格帯は?

濱渦:4000万円〜10億円が中心価格帯だが、1000万円台のものも作るつもりだ。また、一つの物件を知人や友人とシェア買いすることもできる。そうすれば、購入価格も抑えられるし、ある期間その物件に滞在できる。

WWD:物件にはオーナーの要望を反映できるか?

濱渦:ホテルとして運営するため、その間取りを重視するので個人の要望の反映はできない。

「ノットアホテル」で世界中のオーナー物件滞在が可能に

WWD:暮らしやホテルの価値観がひっくり返るような体験とは具体的にどのようなものか?

濱渦:住宅費用は一番高い支出だ。旅行や出張で留守にすることもある。その際にホテルとして貸し出すことでオーナーの収入になる。テクノロジーを使うことで課題を解決し、人生がより自由で楽しくなるプラットフォームが「ノットアホテル」だ。一般のホテルの部屋は広くて50〜60平方メートル。だが、われわれが作る物件(ホテル)は最低100平方メートル以上だ。ロビーやレセプションなどの共有部をなくし、部屋に投資する。なぜならチェックインなどのいろいろな手続きは全てアプリ上でできるから。今までいろいろな規制があり作れなかったホテルを建築家と一緒に作るチャレンジでもある。オーナー同士の相互理由が可能なので、いろいろな場所に自宅を持てる仕組みだ。

WWD:オーナー同士の相互利用とは?

濱渦:別荘は所有するだけで費用がかかるが、オーナーであれば、同じレベルの物件に空きがあれば費用がかからずに宿泊できる。あるオーナーが2泊貸したら、2泊別の物件に泊まれる。ランクが違う物件は宿泊日数の制限などがある。新型コロナウイルスの影響でリモートワークが可能になり、住む場所の自由度が高まった。時代に合った住宅を提供していきたい。

WWD:不在の際にホテルとして貸し出す際の私物はどうするか?

濱渦:人の生活におけるモノは、デジタル化が進みどんどん少なくなってきている。いいモノだけ残す生活に変化しつつある。もちろん、各物件に私物を入れられるストレージやパントリーなどを作り、そこに移動する仕組みだ。収納しきれない場合はオンラインストレージを用意する。

WWD:管理費などは?

濱渦:管理費やアプリ使用料がかかるが、ホテルとして数日貸し出せば、それで補える程度の料金設定だ。

WWD:オーナーではない一般人も宿泊できるか?

濱渦:自社アプリを通して販売するので可能だ。宿泊専用サイトを使用すると10%程度のコミッションを支払わなければならない。自社アプリを使うことで安くユーザーに提供したい。通常100平方メートル以上のホテルだとかなり高額だが、われわれの物件だと安い料金で宿泊できる。ホテルなので、もちろんアメニティーなども用意する。

地方に根付く物件を提供し自治体へ貢献

WWD:ターゲットは?

濱渦:ミレニアル世代の起業家や経営者など。自分があったらいいなと思ったプラットフォームを作った。だから、全ての物件にはサウナがある。サイトを立ち上げてから1週間で約3000件の問い合わせがあった。新型コロナの影響で住宅・オフィス・ホテルそれぞれの概念が溶け始めたと感じている。このような状況下の理想の生活空間を考えてみたとき、「ノットアホテル」が人々の琴線に触れたのだと思う。

WWD:今後の予定は?

濱渦:まずは、日本各地に30程度の物件を作って需要をみながら、ゆっくり広げていきたい。各地に根付くものにしたいので「『ノットアホテル』があるから、そこに行く」、そんな物件作りをしていきたい。地方が好きになるきっかけになればいいと思うし、そうすることで、各自治体へ貢献ができると思う。ゆくゆくは、海外にも広げていきたい。特に南半球の南米やオーストラリアなどは気候が北半球と逆なので面白いと思っている。

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感染症予防にも期待のオーラルケア オーガニック・ナチュラルブランド4選

 マスク着用がルーティン化したことに伴って、口内環境への関心を持つ人が増えている。口臭予防歯磨き粉「デンティス(DENTISTE)」を扱うリベルタの山田祐子ブランド戦略PR担当は「オーラルケア関連の市場は拡大傾向にあり、数年前はホワイトニングのサロンやキットの発売が相次ぎ盛り上がったが、近年マスク生活が続くことから口臭ケアへの意識も高くなった。セルフメディケーションの波にも乗り伸長している」と話す。口の中の粘膜はウイルスなどの侵入を防ぐ役割を果たすこともあり口腔ケアに力を入れることは、感染症予防にも良いと聞く。そこで合成界面活性剤、合成発砲剤不使用のオーガニック・ナチュラルアイテムを紹介する。

「ジョンマスターオーガニック」炭の吸着力で、虫歯や口臭のもとを除去

 「ジョンマスターオーガニック(JOHN MASTERS ORGANICS)」からブランド初となるオーラルケアシリーズが3月25日に誕生した。同ブランドのオーラルケアアイテムは、ラウリル硫酸Na・合成着色料・合成香料・人工甘味料・パラベンフリーを約束する。また、無数の細かな穴を持つ炭の吸着力で、虫歯や口臭のもととなる歯の汚れを取り除き、歯のステインを磨いて取り除く。オーガニックのペパーミントを配合しているので、磨いた後はスッキリとした清涼感が感じられる。

 「アムリターラ」虫歯予防、着色除去、口臭予防を1本に

 「アムリターラ(AMRITARA)」の“トータル バランス オーガニック トゥースペースト”は、虫歯予防、歯の着色除去、口臭予防を兼ねたオールインワンタイプ。ペーストのキーとなるのが四万十ヒノキ水、イオン化アパタイト、乳酸菌だ。良質なヒノキから取れる蒸留水、四万十ヒノキ水を抽出して水の代わりに配合し、口中に潤いを与える。歯の表層のエナメル質の約97%は「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる無機質からできている。そこでホタテ貝殻由来のアパタイトにクエン酸や海洋深層水ミネラル、 水素を封じ込めた「イオン化アパタイト(ヒドロキシアパタイト)」を配合。歯の汚れを落とし、滑らかで白い歯をかなえる。水素と海洋深層水で熟成発酵した12種類の乳酸菌を配合することで健やかな口内環境に導く。

「Dr.ハウシュカ」抗菌作用に優れた「セージ」配合のマウスウォッシュ

 メイクアップのイメージがある「Dr.ハウシュカ(DR.HAUSCHKA)」だが、オーラルケアアイテも充実している。ブランドでは、合成の保存料、着色料、香料、鉱物油、パラベン、シリコン、PEG不使用を掲げていて、全製品がネイトゥルーのオーガニック・ナチュラル認証を受けている。2020年8月パッケージリニューアルした“MED セージ マウスウォッシュ”は、口の汚れやべたつきを洗い流すマウスウォッシュ。抗菌作用、風邪や感染症予防に優れたセージを配合している。洗口液にありがちなピリピリ感もなく、スッキリとクリアな洗い上がり。
「Dr.ハウシュカ」“MED セージ マウスウォッシュ”(300mL、1900円)

「ブライトティー」ピンクトルマリン微粉末を配合 歯周炎、歯肉炎、口臭予防に

 「ブライトティー(BRIGHT-T)」はピンクトルマリン微粉末とヒドロキシアパタイトを配合した歯磨き粉を扱う。パワーストーンとしても知られる「ピンクトルマリン」の微粉末を処方している点がユニークだ。研磨剤にヒドロキシアパタイトを配合し、歯周炎・歯肉炎の予防や、歯を白く保つ働き、虫歯・口臭予防効果が期待できる。アミノ酸系洗浄成分を使用していて、磨き上がりは、ハッカ油とスペアミント油の清涼感とほのかな塩みを感じる。防腐剤、合成着色料、合成甘味料は不使用。トルマリンを配合した特殊なナイロン繊維の極細毛“トゥースブラシ”(500円)との併用もおすすめ。ビープルバイコスメキッチン各店、公式オンラインストアで販売。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

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しまむらの営業利益65%増 郊外立地、巣ごもり消費が追い風

 しまむらの2021年2月期業績は、本業のもうけを示す営業利益が前期比65.4%増の380億円だった。一連のMD(商品政策)改革によって値引き販売を抑制したことに加えて、新常態によって郊外立地が追い風になった。コロナ禍で都心の百貨店やファッションビルに出店するアパレルが苦戦する一方、郊外立地で生活に密着した同社や西松屋チェーン、ワークマンなどが業績を伸ばしている。

 売上高は同4.0%増の5426億円。リラクシングウエアやスポーツウエア、衛生雑貨など巣ごもり消費に照準を合わせた商品が好調だった。売上高の7割以上を占める主力業態「ファッションセンターしまむら」の既存店の売上高は同2.6%増、客数は同1.6%減、客単価は同4.3%増だった。昨年10月に本格指導したオンラインストアの売上高は当初のほぼ予定通りの17億円だった。

 値引きの減少で「ファッションセンターしまむら」の粗利益率が1.2ポイント改善し、また新聞への折り込みチラシからデジタルチラシへの移行などによって販管費を抑制したため、利益が底上げされた。純利益は同99.3%増の261億円になった。

 22年2月期は売上高が前期比2.3%増の5548億円、営業利益が同1.6%増の386億円、純利益が同0.4%増の262億円を見込む。

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藤原ヒロシの「フラグメント」と「シークエル」が「ジョン スメドレー」の名品をアレンジ

 英国のニットウエアブランド「ジョン スメドレー(JOHN SMEDLEY)」は、藤原ヒロシが主宰する「フラグメントデザイン(FRAGMENT DESIGN以下、フラグメント)」と、19年設立のストリートブランド「シークエル(SEQUEL)」とのトリプルコラボアイテムを4月9日に発売する。

 シーアイランドコットン(海島綿)を使用した“ハイゲージクルーネックニット”をベースに、ネックと袖先のリブを白に切り替え、胸元に“SEQUEL”のチェーンステッチを施した。ロゴは、20年前に使われていた「ジョン スメドレー」のロゴに「フラグメント」の稲妻マークを組み合わせたオリジナルデザインで、背面には着用者の名前が書けるネームタグが付く。

 ブラック、ネイビー、チャコールの3色で、価格は3万7400円。サイズはS〜XXLを用意する。「ジョン スメドレー」銀座店、横浜店、京都店と特設ECサイト、「シークエル」公式オンラインストアで扱う。

 「ジョン スメドレー」と「フラグメント」の協業は今回で4度目。

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「ジーユー」×「アンダーカバー」は発売前から「過去最高の好反応」 通常コラボの2倍の売り上げ見込む

 「ジーユー(GU)」は4月9日に発売する「アンダーカバー(UNDERCOVER)」とのコラボレーション商品を、5日から東京・原宿の「GU STYLE STUDIO 原宿」で公開している。さまざまなデザイナーとのコラボを行っている「ジーユー」だが、「『アンダーカバー』とのコラボはメンズ、ウィメンズ合わせて全65型という規模感もあり、通常のコラボの約2倍の売り上げを見込んでいる」(矢治寿一ジーユーグローバル商品本部部長)という。

 一部商品は大型店のみで販売するが、全65型のうち「6割は全店で販売する」という。SNSなどでの発売前の消費者の反応は「(過去のコラボの中でも)最高レベルで良い」と期待を寄せている。「昔からの『アンダーカバー』ファンの方にも認めてもらえるよう、モノ作りの面はできる限り突き詰めた。同時に、『アンダーカバー』を知らない若い世代にも、これをきっかけにファッションの楽しさを知ってもらいたい」という。より多くの層にリーチするため、「ディズニー(DISNEY)」のキャラクターをモチーフにしたトリプルコラボ商品も13型そろえる。

 2019年年末に、柚木治ジーユー社長、矢治部長らで「アンダーカバー」のアトリエを訪れ、高橋盾デザイナーと対話を開始。実際にコラボ実施が決まったのは20年3月ころだったという。製作期間だった4〜5月に緊急事態宣言が発令されたことを受け、「ジーユー」として強化しているパジャマやラウンジウエア、雑貨類を拡充した。「地厚なコットン地と繊細なシフォンをドッキングして縫い合わせるなど、大量に商品を作る「ジーユー」では(手間や強度の面で)これまで行ってこなかったモノ作りの際の部分にも今回のコラボでは挑戦している。ただし、使用する素材の集約や早期生産などで、価格は通常の『ジーユー』なみを実現した」点がポイント。これまでの「ジーユー」では使ってこなかった素材で、今回のコラボで好評なものがあれば、「今後の『ジーユー』の既存ラインのモノ作りにも反映させていく」考えだ。

 9日の発売日は、「ジーユー」と同じファーストリテイリンググループの「ユニクロ(UNIQLO)」の「+J」のように、各店舗で整理券を配布して販売する考え。また、フリマアプリのメルカリとファーストリテイリングは3月に、商品発売後すぐの高額転売などを避けるための包括協定を結んでいる。「発売後すぐに商品が高額転売され、本当にほしいお客さまの手元に届かないといったことがないよう、メルカリ側には協定をもとに事前に今回のコラボの商品情報や画像などを提供している」という。

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人気ヘアサロン「シャチュー」からカラー専門店 海外も視野に入れたフランチャイズ事業に挑戦

 「シャチュー(SHACHU)」のみやちのりよし代表は、グラデーション、ハイライト、デザインカラーで爆発的な人気を集め、サロンユーザーだけでなく美容学校生やメディアからも注目されている。3月には「シャチュー」渋谷本店を神南店に統合し、新たにヘアカラー専門店「シーエス メイド バイ シャチュー(CS MADE BY SHACHU)」の全国展開に着手。“秒速で進化”と形容されるみやち代表のコロナ禍における新たな戦略について聞いた。

WWD:渋谷本店と神南店を統合した背景は?

みやちのりよし代表(以下、みやち):「シャチュー」は2014年にオープンし、16年に2店舗目として神南店をオープンしました。神南店は元々ビルの4階からスタート。「少しずつフロアを増せたらいいね」と出店時から話していました。サロンの知名度が上がると、管理会社やビルのオーナーがフロアが空くたびに優先的に連絡をしてくれて、3階、6階と拡張。3店舗目の出店も考えましたが、僕としては1店舗化したいとずっと思っていて。そんなときに神南店の5階が空いたので、路面店だった渋谷本店はクローズし、3〜6階をすべて「シャチュー」にする形で統合しました。同時にヘアカラー専門店の構想を実現するために渋谷本店を今後のさまざまな展開の発信拠点として作り替えることにしたんです。

WWD:1店舗化したメリットは?

みやち:文化の違う2店舗のスタッフが一緒になることで、いい意味で刺激しあえています。ありがたいことに予約もパンパンなので、スタッフ同士がお互いの仕事ぶりを見て「負けたくない」と思っているようです。1フロアにセット面が5席あるのですが、数字を持っているスタイリストは自分のお客さまだけでフロアが埋まるんです。だから自分のムードとペースでサロンワークできる。スタイリストが働きやすい環境は、お客さまにとっても快適なはずです。お店の作り込みもしやすいし、ブランド力は強化できると思っています。

WWD:新規事業のカラー専門店の展望は?

みやち:「シャチュー」とは別に新たに会社を立ち上げ、「シーエス メイド バイ シャチュー」という名前で全国にフランチャイズ展開するための準備を進めています。メニューはカラーとブリーチ、トリートメントで、より多くの人にリーズナブルだと感じてもらえる価格帯を想定しています。技術的にはインナーブリーチやハイライトブリーチも取り入れて、エリアのニーズに応じたデザインを提供したいですね。今回クローズした渋谷本店は、フランチャイズ事業を含め、今後の新たな可能性を研究するラボとして位置づけ、発信拠点として機能させていく予定です。

WWD:ブランドサロンがフランチャイズに着手するのは、かなり珍しい。

みやち:すごく注目されていると思います。みやちは世の中の逆を行くタイプなので(笑)。構想は2020年の4月。緊急事態宣言が出て、コロナ禍の終息には最低でも2年はかかり、ドーナツ化現象が起こるだろうと予測しました。そしてスタッフを守るためにも、次の行動を起こそうと。僕は経営者セミナーの講師をすることも多く、経営者の話を聞いたり多店舗展開している人と交流する機会がありました。いろいろな情報を得るうちに、自分のやろうとする道がはっきり見えてきたんです。昨年は僕自身セミナーを受講して経営やFCについて徹底的に学び、準備しました。オンラインサロンは「シャチュー」も早い段階で始めましたし、有益な情報も得られるけれど、目標を見失いがちになってしまうことも。僕は全国のサロンやスタッフを直接見て回る方が性に合っています。フランチャイズの仲間とは、オンラインとはまた違う熱量で濃い関係になれると思っています。

WWD:「シャチュー」スタッフにとって、また全国の美容師にとって「シーエス メイド バイ シャチュー」はどんな位置付けになる?

みやち:「シャチュー」のスタイリストがカラーショップの講師をすることも考えています。それはひとつのキャリアとして生かせるし、サロンワーク以外の貴重な経験ができて楽しいと思う。全国の美容師にとっては、ステップアップの仕方が変わるサロンになれると思っています。カラーリストとして早くからキャリアを積み、必要に応じてカットはオンラインやアカデミーで学べばいい。実際に「シャチュー」でもスタイリストになる前からカラーでかなりの売り上げを出す例はあるし、スタイリストデビュー時にはすでにお客さまがついているという強みになります。また、何かしらの事情で美容師をドロップアウトした人の受け皿にもなり得ます。現状では美容師からアイリストやネイリストに転向する人も多いですが、美容師という肩書きを生かしながらデザインに取り組めます。コロナ禍が落ち着いたら海外にも進出したいし、カットもできるお店も作りたい。よりいっそう「シャチュー」のブランド力を上げていくことが大切だと考えています。

坂本尚子:島根県松江市出身。総合ライフスタイル誌や育児雑誌の編集を経験したのち、美容業界専門誌を発行する出版社に入社。美容師が作るリアルヘア、クリエイティブヘアの作品ページやインタビュー企画を担当するうちに、すっかり美容業界の虜に。2009年から美容業界に特化したフリーライターとして活動中

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“働き方もゼロから作る” 世界基準の透明性に挑み、業界のルールを覆す【ネクストリーダー2021】

 元「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」の高橋悠介が、2020年2月に立ち上げた「CFCL」は、ブランドストーリーだけでなく、会社の在り方から世界基準の透明性に挑んでいる。その取り組みの一環として、「Bコーポレーション(B Corporation、B corp)」に申請中。事業利益だけでなく、環境や社会に配慮した公益を重んじる企業に与えられる米国の厳しい民間認証で、日本のアパレル企業初の承認取得を目指す。11月に引っ越したばかりのアトリエには、トワルも、裁断机も、ミシンもない。3Dコンピューター・ニッティングを核に、“時代に左右されない衣服”の提供を目指す。高橋が考える、今求められる服とは。企業価値とは。

WWD:ブランドをスタートしてから、どんな1年だったか?

高橋悠介 CEO兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):新型コロナウイルスの流行拡大のタイミングで起業したため、周囲には「大変だったね」と声を掛けられる。しかし、1年間は売上が立たない見込みで事業計画書を作り、資金調達をしていたので、大きな影響はなかった。オフィスを借りたのは11月、社員が増えたのが12月で、やっと会社らしくなってきた。現在は、就業規則を作成中だが、働き方もゼロから作れる。従来のルールに縛られずに変えていきたい。

WWD:就業規則も、「Bコープ」の規定に沿っている?

高橋:働き方に関する項目を参考にしている。もう1つ、昨年フィンランドの首相が、1日6時間労働・週休3日制の指針を出していて、自社でもそれに近づけようと考えている。さすがに週休3日は厳しいが、ブルシット ジョブを徹底的に排除した結果、社員の残業は展示会前の時期に少しだけ。そもそもフレックス制を導入しているので、残業という概念はなく、1日10時間働く日があれば、5時間の日もある。リモートワークで通勤時間は省けるし、デザイン画や指示書も、すべてオンラインで共有できる。急に1日6時間制を導入するのは難しいので段階的に短縮し、2030年までの実現を目指したい。

“コレクションのためだけに作る服は誰も買わない”

WWD:高橋さんが考える、ブルシット ジョブとは?

高橋:1番の無駄は、コレクションのためだけに作る服。「本当にやる必要があるか?」を突き詰めていくと、やるべきことは意外に少ない。その分、構想の時間を増やして、物事と向き合う時間を大切にしたい。

WWD:元コレクションブランドのデザイナーから、その言葉を聞くのは衝撃だ。

高橋:時代が変わった。僕が学生だったときは、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)やジョン・ガリアーノ(John Galliano)、フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)が現役で、エンターテインメントとしてのショーが求められていた。当時はショー自体に価値があったが、人間の感覚や生活様式が急激に変わらないのに、半年に1度のコレクション発表は難しい。ファッションショーを否定しているのではなく、ファッションにおける、“新しいモノ”の価値観が変化している。AIや5G、LOT、社会の女性進出など、新しい技術や価値観が浸透していくにつれて、服のスタイルが変わるのは間違いない。でも、それが見た目で分かるモノとも限らない。

WWD:ブランドに対する周囲からの反応や、ビジネスの推移は想定内?

高橋:サステナビリティに関する質問や取り上げられ方は、想像以上だった。ただ、それを会社の売り文句にしていないので、雑誌社や新聞社の方には「“サステナブランド”にせずに、他の質問もきちんとしてほしい」と伝えている。ビジネスに関しては、消化率は非常に良い。もともとメンズのデザイナーだったので、ウィメンズのバイヤーの方々から良い反応があり、ほっとしている。また、2月1日にスタートしたオンラインストアの越境ECの売上は、想像以上。海外出荷は13カ国で、すでにリピーターがいることに驚いている。

WWD:卸売りの日本と海外の割合は?

高橋:売り上げは国内の割合が大きいが、卸売先の半分以上を海外クライアントが占める。コンサルティング・エージェンシーのセイヤ ナカムラ2.24(SEIYA NAKAMURA 2.24 )が卸のセールスを担っているが、パリでの売り込みがないなかで、この数字が付くのは今の時代ならでは。一部の卸先には、郵送で実物の生地や色味を見てもらったが、それでも数百万円単位で買い付けてくれるのは、すごいことだ。

小学生の頃の夢は建築家。中学生でファッションに目覚める

WWD:そもそもファッション業界を目指したきかっけは?

高橋:祖父が建築家だった影響で、小学生の頃は建築家を目指していたが、中学生の頃に、ファッションに目覚めた。雑誌ブームの全盛期で、スタイリストの祐真朋樹さんや、野口強さんが好きだった。革靴ブームもあって、「ジョンロブ(JOHN LOBB)」などにも興味があった。一方で、インテリアが好きで、吉岡徳人さんのハニーポップチェアに感動した。イギリス留学中は、「チャラヤン」や「アレキサンダー・マックイーン」に就職したいと意気込んでいたが、“海外留学あるある”で、逆に日本の良さにも気付かされた。

WWD:モノ作りは幼い頃から好きだった?

高橋:病院で診断されたわけではないが、僕はディスレクシアという失読症で、幼い頃から文字の読み書きや勉強がとにかく苦手だった。でも図工だけは、他の子よりも圧倒的に出来ている自覚が、5歳くらいからあった。父は医者と弁護士として働いていて、そのことに早く気付いてくれたことも大きい。世間的には「医者の息子は、医者を継ぐ」みたいな風潮があるが、意志を尊重してくれて、いつかモノ作りをしたいとずっと思っていた。

WWD:「CFCL」のコンセプトは「時代が求める服」。今、人が服に求めるコトとは?

高橋:より本質に近づいている。ファッションだけでなく、生き方の価値観が変わりつつある。ダイバーシティという言葉が浸透し、「他人と一緒」が不自然であることにも気づきはじめている。そうなるとトレンドもない。ファッションは、ある意味見せびらかしで、帰属意識から生まれる気持ち良さや、生き方の意思表示だったりしたが、SNSの登場で、ライフスタイル全体で、それを表明する時代になった。もう“服が気張る”必要はないが、生き方をサポートしてくれるモノであることに変わりはない。ファッションは、煌びやかで身近なので、憧れの対象になりがちだが、「所詮は服である」ことを認識しなければならない。

WWD:ブランドが伝えるメッセージが、服を通してだけではなくなっている?

高橋:ウェアラブルなモノ全般を通して、どういう生き方を推奨するかを発信するのが「CFCL」。例えば、お客さまに水を出すときに、ペットボトルでいいのか。商品は、過剰包装になっていないか。すべてがブランドのステートメントやフィロソフィーの一部になる。

“東京を、日本のモノ作りのシリコンバレーに”

WWD:今後10年、どんな役割を担っていきたい?

高橋:アパレルに限らず、日本のモノ作りが、世界で戦っていけるようにネットワークを作って発信していきたい。起業するきっかけの1つが、同世代で活躍している人が多かったことだ。シリコンバレーに、スタートアップ企業が集中しているのは、「新しいモノを作ってやろう」という人たちが集まること自体が、プラスに作用しているから。東京でもそれは出来るし、人が何かを欲しいと思ったり、感動したりするのは、業種が違っても同じ。

WWD:今後の目標は?

高橋:まずは「CFCL」の世界観を多くの人に知ってもらいたい。次のシーズンは、ニットだけでなく、ウォッシャブルウールと再生ポリエステルをミックスしたアイテムなども登場する。これからの時代は、どういう会社が何を作っているかが重要。良いモノを作っている裏で、残業を強いられていたり、安い賃金で作られていたりするモノは、気持ち悪くて着ることができない。すべての面で、服に対する透明性をさらに突き詰めていく。

【推薦理由】
高橋CEOは、世界的ブランドのデザイナーというキャリアを早々に切り上げ、ファッション業界が抱える問題に真っ向から立ち向かっている。“サステナビリティを売りにしたくない”と自身が言う通り、サステナビリティやSDGsを当たり前のように捉える姿勢は、同世代の経営者やデザイナーにもいい刺激を与えているはずだ。実際に彼の周りには“新しいものを作ってやろう”と気概のある連中も集まっている。近い将来、日本のファッション業界をけん引する存在になることを期待する。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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「久留米絣」を使用したビームスの「カスリ」を際立たせるサステナブル素材「エコペット」の魅力とは?

 ビームスのハウスブランド「カスリ(CATHRI)」の2021年春物は、帝人フロンティアのリサイクルポリエステル繊維「エコペット(ECOPET)」を使用したアイテムに注目だ。藍染めの美しいドレッシーなワンピースのほか、コレクション全体の約30%に「エコペット」が織り込まれている。

 同ブランドを立ち上げた佐藤幸子「ビームス プラネッツ(BEAMS PLANETS)」「カスリ」ディレクターは、「エコペット」の魅力をこう説明する。

 「私が担当しているハワイ州観光局とのプロジェクトで、4月に発売するアロハシャツの生地として環境に優しいリサイクル素材を探していた中で『エコペット』に出合った。サステナブルなだけでなく、ハワイのアーティストが環境をテーマに描いたカラフルなイラストを生地上で鮮明に再現できる機能性にも優れている。さらにシルクのように上質な光沢感が『カスリ』にぴったりだと感じた」。「エコペット」を使用したワンピースの価格は5万3900円(税込み)。

 「エコペット」は製造工程で発生したポリエステルくずや、回収された使用済みポリエステル製品、ペットボトル等から、マテリアルリサイクル技術もしくはケミカルリサイクル技術により再生されたリサイクルポリエステル繊維、原綿およびそれを使用した生地、製品のブランド。1995年に誕生し、今年25周年を迎えた。エコロジーの循環型システムとして、現在まで累計約50万tを生産しており、ペットボトルに換算すると約250億本、Tシャツ約25億枚に相当する。帝人フロンティアは環境戦略「シンク エコ(THINK ECO)」を策定し、サステナブルな事業活動を強化中だ。

 帝人フロンティアの中野茂・衣料営業企画部第一課ディレクターは、「日本の産地に根付く伝統のモノ作りをリスペクトする『カスリ』のコンセプトやサステナブルなモノ作りに賛同し、提案した素材が『エコペット』だ。当社は、『エコペット』の誕生とともに25年前からサステナビリティを推進している。『カスリ』はビームスらしい未来を感じるブランドだ。今後も、企画やコンセプトに合わせた素材開発で協業したい」と話した。

 「カスリ」は、江戸時代から歴史を刻む国の重要無形文化財である福岡県の綿織物「久留米絣(くるめがすり)」を使用。エイジレスなリラクシングウエアで、2020年3月にデビューした。伝統工芸と今の時代性を表したファッションがクロスオーバーしたデザインで、サステナブルなモノ作りを重要視している。

 「カスリ」はポップアップストアを4月14日から25日まで、東京・新宿のビームス ジャパン1Fにオープンする。

■「カスリ」ポップアップストア
日程:4月14~25日 11:00~20:00
場所:ビームスジャパン1F(東京都新宿区新宿3 -32- 6)

問い合わせ先
ビームス カスタマーサービスデスク
0120-001-301

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ベルギー発「デルヴォー」が「エディション」とコラボでアフタヌーンティー ポエティックなマグリット作品を表現

 ベルギー発「デルヴォー(DELVAUX)」は「東京エディション虎ノ門(TOKYO EDITION TORANOMON、以下エディション」とコラボレーションし、4月5日、“デルヴォー アフタヌーンティー アット 東京エディション虎ノ門”をスタートする。これは、ベルギーを代表するシュールレアリスム画家のルネ・マグリット(Rene Magritte)へ敬意を示した「デルヴォー」の新作“マグリット”コレクションを記念するもの。「デルヴォー」とマグリット財団との長年にわたるパートナーシップは、ベルギー王国を象徴すると同時に両者の自由奔放な精神を表わしている。

 マグリットのおなじみの絵画「ボウラーハット」や「帰還」「これはパイプではない」「仮面のリンゴ」などを洗練されたカラフルなスイーツで表現。スイートのほかに、アフタヌーンティーの定番であるスコーンはプレーンとアップルレーズンの2種類、クリーミーでリッチなクロテッドクリームとストロベリージャムとともに提供する。

 マグリットと言えば、青いリンゴを想起する人も多いだろう。フィンガーフードは青リンゴがインスピレーション源で、爽やかな風味のキュウリとミントのガスパッチョをはじめ、見た目も美しいエッグサンドイッチやスモークサーモンなどをそろえる。

 紅茶およびハーブティーは、アールグレイ、イングリッシュ・ブレックファースト、カモミール、マウンテンベリーハーバル、ロゼロワイヤル、ペアーツリーなどがバリエーション豊かにラインアップ。「ルイナール(RUINART)」のグラスシャンパン付きのコースもある。

 料金は5500円(税・サービス料別:以下同)。グラスシャンパン付きは7800円。会期は5月9日まで。「エディション」31階の緑豊かな東京を見渡すロビーバーで楽しむことができる。

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新経営陣はユナイテッドアローズを再建できるか 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。セレクトショップ最大手のユナイテッドアローズのトップが交代した。新しいリーダーに求められることは何か。同社の過去と現在を振り返りつつ提言する。

 ユナイテッドアローズは4月1日付で竹田光広社長執行役員が退任し、副社長執行役員第一事業本部本部長の松崎善則氏が社長執行役員CEOに就任したが、巨額の資本流出で脆弱化した財務、低下した収益力、そしてコロナ禍のダメージが重なった同社を再建できるのか。顧客層の消費支出力が落ち込んでセレクトショップ市場が壁に当たる中、抜本的再構築が急がれる。

今なぜ社長交代なのか

 表面的にはコロナ禍に直撃されて上場来の赤字に転落し(2021年3月期予想)、加えて自社EC運営をZOZO傘下アラタナへの委託から自社主導へ切り替えんと目論んで挫折し19年9月12日から77日間の運用停止に追い込まれた責任を取ったとも見えるが、ことの本質はそんなに簡単ではない。コロナ前からユナイテッドアローズの経営は壁に当たっていたからだ。

 創業社長の重松理氏が代表権のない会長に退いて竹田光広氏が社長執行役員に就任したのが9年前の12年4月1日だった。契機となったのは09年6月10日のエービーシー・マート(ABCマート)によるユナイテッドアローズ株式23.62%の大量保有報告で、ABCマートはユナイテッドアローズを持分法適用会社としたものの両社の方針は噛み合わず、業界の実力者の介入もあって2010年9月末までにユナイテッドアローズがABCマートの保有する1070万株を単価1000円で公開買い付けして決着した。

 ABCマートから買い取った1070万株は第三者が引き受けることなく、経営の独立性は回復したが、ユナイテッドアローズは自社株の買い付けで107億円の資金が流出し、11年3月期末時点で1122万9180株(簿価115億3700万円)の自社株を抱え込む羽目になった。

度重なった資本流出の悲劇

 自社株買い入れによる資本流出はABCマート事件だけではなかった。03年3月期の27億9100万円、06年3月期の80億7700万円、計108億6800万円がワールドの保有する自社株式の買い入れで流出し、ワールドは持ち株全株を売却して出資者ではなくなった。竹田氏が社長になって以降も15年3月期に46億1450万円が自社株式の買い入れで流出している。

 02年の東証二部上場以来、ユナイテッドアローズが買い入れた自社株式は計275億6700万円で、09年3月期に490万株(71億6900万円)、13年3月期に500万株(51億3700万円)、16年3月期に758万6324株(121億1900万円)、計244億2500万円を消却してもなお、21年第3四半期末で167万9373株(簿価52億1800万円)の自社株を抱えているから、総流出額は296億4300万円にも達する。

 たびたびの資本流出に見舞われながらも額に汗して稼ぎ、コロナ前の20年3月期末には420億7200万円まで積み上げた純資産も、コロナ禍の売上激減で21年第3四半期末には340億5000万円に擦り減り、20年11月5日に開示された21年3月期業績予想の修正(売上高1283億円、営業損失65億円、親会社株主帰属当期純損失60億7000万円)から計算すると、期末純資産は309億9400万円まで擦り減る。

 昨年春の緊急事態宣言で店舗の大半が長期休業した第1四半期(20年4〜6月)は売り上げが40.8%も激減して純資産対比運転資金率が138.2%と危機的水準に跳ね上がり、新たに141億円を借り入れる羽目になったが(計187億円)、流出した296億4300万円が手元にあれば1円たりとも借り入れる必要はなく、余裕でコロナ禍を乗り切れたはずだ。

 ABCマートからの株式買い付けで議決権株式の13.06%を所有する筆頭株主に返り咲いた重松理氏が代表権のない会長に退いた経緯は誰も語らないが、創業メンバーと汗水垂らして積み上げたユナイテッドアローズの資本が次々と収奪されていく不条理に心を痛めたであろうことは想像できる。

従前ビジネスモデルが壁に当たった

 竹田社長の経営はそんな重松氏の任を引き継ぎ、資本流出による財務逼迫下で株主と従業員の利益配分に腐心してフリーハンドが限られ、従前のビジネスモデルを踏襲して拡大を図ったが、それは同時に従前のコスト構造を引きずることになった。

 竹田氏が社長に就任して2期は粗利益率も販管費率も若干の改善を見たが、15年3月期以降は粗利益率が低下する一方で販管費率が上昇し、12年3月期から3期続いた10%台の営業利益率も15年3月期以降はじりじりと低下して20年3月期は5.6%まで落ち込み、従前のビジネスモデルを踏襲する安全経営は壁に当たった。

 重松体制下最後の12年3月期とコロナ前直近の20年3月期を比較すると、粗利益率は54.5%から50.8%へ3.7ポイント低下した一方、販管費率は44.6%から45.2%へ0.6ポイント肥大し、営業利益率は10.0%から5.6%へ4.4ポイント低下している。販管費の中身を見ると、人件費率は15.8%から15.9%とほとんど動いていないのに対し、賃借料率は12.3%から14.3%と2.0ポイントも肥大している。

 年間在庫回転は、一時は3回転台に乗せたものの2.93回から2.93回と全く変化していないが、平米当たり年間販売効率は184.2万円から148.0万円と8掛けに落ち、1人当たり年間売り上げも3673.5万円から3075.4万円と84掛けに低下している。

 店舗の大型化と運営効率改善が進まず、販売効率の低下が人時生産性を切り下げても給与水準の維持に腐心して人件費率が硬直化する一方、販売効率が低下した分、賃借料率がじりじりと上がっていった。在庫回転が一時は3回転台に乗っても結局、元の3回転弱に戻ったが、消化回転の実態が3回転前後であるにもかかわらず年間6期、8期とMDサイクルを細分化して在庫を消化できず滞貨し、値引きロスが肥大して粗利益率を切り下げた。MDサイクルの細分化は現場の実態を見ない空論で、経営陣が現場と顧客が見えなくなっていたのではないか。

 従前ビジネスモデルを踏襲するだけでは、消費環境の悪化と競争環境の激化で収益性は確実に劣化していく。そんな真理を絵に描いたような結果に責任を取ったというのが実態だと私は思う。

不利な出店条件を是正できなかった

 駅ビルやファッションビルではセレクトショップの最大手として、郊外の大型SC(ショッピングセンター)ではアップスケールな目玉テナントとして、ユナイテッドアローズの各業態は最優遇されていたはずだが、決算書から推察される出店条件は決して有利なものではない。

 確かにどこの商業施設でも一等地を確保しているが、その見返りに(目玉テナントとしては)割高な条件を飲んでいると推察される。一番、露骨なのが売上対比の賃借料率で、19年8月期のファーストリテイリングが8.6%(国内ユニクロは8.0%と推計)に抑えているのに対し、ユナイテッドアローズは20年3月期で14.3%も払っている。国内ユニクロがおそらく共益費込みの8%で契約しているのに対し、ユナイテッドアローズは10%に加えて共益費も払い、高水準な最低保証も呑んで2月、8月には法外な家賃を「天引き」されているのではないか。

 「天引き」されているとわざわざ言ったのは、ユニクロは売上金を直接収納しているから天引きされることがなく、売上債権回転日数は19年8月期で9.6日、20年8月期でも12.2日と日銭が回っている。昨年春の緊急事態宣言下の長期休業では家賃負担を回避し、営業再開後も大幅に抑制したと推察される。決算書を見る限り20年8月期の「地代家賃」は売上高の2.67%に過ぎないから、そう受け取るしかない。

 対してユナイテッドアローズは最優遇テナントであるにもかかわらず一般テナント同様に売上金をデベロッパーに預託して家賃を天引きされており、売上債権回転日数は20年3月期で26.3日、21年3月期第3四半期累計では47.6日と資金繰りを圧迫している。21年3月期第3四半期累計の売上対比「賃借料」も売上減で16.0%に跳ね上がっているから、ユニクロのようにしたたかな減免はできなかったと推察される。

 かつて私は竹田社長に「駅ビルに家賃を払うために営業しているも同然」と出店条件の改善を詰め寄ったことがあるが、彼が私の提言に従うことはなかった。

「賃借料」負担は半減できる

 ユニクロの「地代家賃」負担が軽いのは平均982平方メートル(20年8月期)と店舗が大きく、商業施設では奥行きを深く使うからで、定期借地契約の郊外ロードサイド店舗が多いことも起因している。郊外生活圏のロードサイド店舗が大半のしまむらは6.5%(20年2月期)とさらに負担が軽い。

 ユナイテッドアローズにも同様な「賃借料」負担軽減は十分に可能だが、私が打開策を提言しても聞き入れてはくれなかった。それは同社の業態を集合した「セレクト・デパートメントストア」として出店する方式で、パルコのゼロゲートのようなビル一括賃借なら「賃借料」負担率は確実に半減する。

 これには米国に実例があり、世界最大の「セレクト・デパートメントストア」たるノードストロムは手頃な大衆向けエントリー業態からハイエンドなラグジュアリーセレクト業態まで、アパレル、シューズ、バッグ、アクセサリー、ランジェリー、コスメなど多数の直営セレクトショップとカフェやスパを複合して平均1万4550平方メートルの店舗を全米に116店展開しているが、モールの定期借地権敷地に自ら店舗を建築して出店する方式で売上対比の賃料負担はわずか0.67%、店舗の減価償却費を加えても5.10%に過ぎない(20年1月期)。

 そんな出店方式は手頃な「コーエン」からハイエンドな「ドゥロワー」まで多数の業態を展開するユナイテッドアローズにも可能なはずで、足らないユニットはライバルチェーンの業態も招き入れれば(ベイクルーズの飲食業態など)1000坪スケールは容易なはずだ。これにより賃料負担だけでなく業態をまたがるシフトで人時効率も高まるから、販管費率はノードストロム並みの31.8%まではともかく37%台までは下げられるのではないか。ならば営業利益率は14%台に跳ね上がると期待される。

オシャレ支出の抑制に直面するセレクトショップ

 販管費の圧縮は可能だとしても売り上げが伸びないと期待通りの結果は得られないが、ユナイテッドアローズを取り巻く市場環境と目指す方向性には乖離が指摘される。

 竹田体制下では「アストラット」や「ロク」「ブラミンク」などハイエンド志向のクリエイティブなブランドの布石が打たれた半面、エッセンシャルな生活衣料は子会社「コーエン」だけにとどまり、手頃でオシャレな生活衣料を求めるマーケットの趨勢に逆行してきた。それが成長力を損なうリスクがコロナ禍で顕在化し、稼ぎ頭だった「グリーンレーベル リラクシング(GLR)」がリモートワークによる通勤着の需要激減で失速するに及び、ユナイテッドアローズの業態編成は抜本的な見直しが求められている。

 セレクトショップ上位8社合計の売り上げはリーマンショック前のような2ケタ増はともかく19年決算期(同年8月までに迎えた決算)までは堅調に伸びてきたが、消費税増税からコロナ禍という20年決算期は97.5%と初めて前年を割った。セレクトチェーンの成長を支えてきた団塊ジュニア層が40代後半となって住宅ローンや教育費が重くのしかかり、増税や社会保険料、介護保険料の直撃を受けて衣料支出が抑制されオシャレから遠ざかり、続く30代も介護保険料を除く同様な負担で生計が逼迫しエッセンシャルシフトを強める中、セレクトチェーンの成長にも陰りが見えてきた。

 コロナ禍で所得が細りリモートワークで通勤着が不要になる中、エッセンシャルシフトは加速こそすれ後戻りは期待できず、21年決算期以降もセレクトチェーンの売り上げは伸び悩むと見られる。それでも心強いのはセレクトショップ上位8社合計売り上げの対国内ユニクロ売上比率が年々上昇していることで、10年の43.79%から20年は67.17%と23.38ポイントも伸びている。これを見る限り、セレクトショップ支持層がユニクロに流れているというのは通説に過ぎず、エッセンシャルな企画と手頃な価格を追求すれば成長余地はあるはずだ。

 オシャレ離れした団塊ジュニア層の一部はユニクロに流れているかもしれないが、オシャレを忘れられない40代や30代、20代はストリートな着崩しが効く新世代のエッセンシャルブランドを求めている。大手セレクトチェーンはその期待に応えているだろうか。

 ユナイテッドアローズも「グリーンレーベル リラクシング」のカジュアルシフトを急いでいるが、価格ポジションの切り下げは計画しておらず(前々から中途半端に高価で通勤着比率が高く成長余地が限られていた)、新たに開発するお値頃業態も「グリーンレーベル リラクシング」と「コーエン」の間を埋めるという時代ずれした認識を露呈している。「グリーンレーベル リラクシング」をエッセンシャルシフトし価格ポジションを切り下げて出店立地を広げ、「コーエン」をストリートワークからスポーツ&アウトドアまでカバーするエッセンシャルなライフスタイルブランドに変貌させるのが先決で、新たに中途半端なお値頃ブランドを投入する意味はない。

新経営陣への7つの提言

松崎善則氏率いる新経営陣がこの難局をどう乗り切ろうとしているのか外野からは見えにくいが、ユナイテッドアローズの創業期から同社を見てきた私の知見から以下の7つの改革を提言したい。

(1)「店は客のためにある」を建前にせず、組織と株主でなく現場と顧客を直視せよ
(2)「セレクト・デパートメントストア」で賃料負担を半減せよ
(3)売上金直接収納でキャッシュフローを劇的に改善せよ。
(4)大型化とデジタル化による店舗運営の効率化で人時生産性を向上させ給与水準を維持せよ
(5)C&C※1.とローカル・テザリング※2.で顧客利便と在庫効率を飛躍的に改善せよ
(6)エッセンシャルでサステナブルな(期末に叩き売らず継続する)MDとサプライを実現せよ
(7)デジタルトランスフォーメーション(DX)※3.と生産段階のインレイ※4.封入でVMI※5.とリセール管理、デジタル運営を実現せよ

※1.C&C(Click&Collect)…ECから店舗に取り寄せて試したり、受け取ったりする顧客利便。一括配送の店舗物流を使うから送料無料で、店在庫を引き当てれば倉庫から出荷するより受け取りも早くなる。売り手にとっては顧客利便と在庫効率を高め物流費を抑制するOMO(ネットと店舗の融合)戦略
※2.テザリング…店舗間で在庫を融通して在庫効率を高めるローカル・ディストリビューション手法で、修理加工の集約やC&Cの店出荷と連携される
※3.デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)…デジタル技術でプロセスやサプライチェーンを繋ぐ業務革新
※4.インレイ…樹脂フイルム基板上にICチップとアンテナを配したRFIDタグの中身で、タグに内装せず商品に直接埋め込む方法もある
※5.VMI(Vendor Managed Inventory)…あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給・補充生産を委任する取引形態

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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「魚のうまい居酒屋」は「もう限界」か? 刺身はオワコンになり、「魚バル」も多店化できていない

 最近、気になる動きがあった。刺身の鮮度とコスパで圧倒的な強さを誇っていた「魚金」が50店を迎え、新たにとんかつ店を開店した。素朴に「魚金がなぜ、とんかつ?」という疑問がわくが、魚をウリにした居酒屋業態は実はさほど成功していない。刺身・魚は、もうキラーコンテンツでなくなっているのではないか?
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