「ミラノファッション×AI」の仕掛人、クリエイティブチームのトップが語る「AIとファッションの今後」

1月30日に開幕した今回の「ミラノ・ウニカ」は、大々的にAIを打ち出した。その仕掛人の一人が、ステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)「ミラノ・ウニカ」アーティスティック・ディレクターだ。同見本市の重要なコンテンツの一つであるトレンドコンセプトの発信にAIを導入した。クリエイティブを最重視するイタリアで、その根幹をなすトレンドコンセプト設計に大胆なまでにAIを導入した理由や手法、今後について、聞いた。

ステファノ・ファッダ「ミラノ・ウニカ」アーティスティック・ディレクター

ミラノ工科大学建築学科を経て、「プラダ」のVMDやファッションショーの演出、トレンドアナリスト、クリエイティブ・ディレクターなどを経て、2015年から現職

AIを導入したワケ

WWD:なぜAIを?

ステファノ・ファッダ(以下、ファッダ):生産性の向上といった業務効率改善には、コスト削減などの面で実際に大きな成果を挙げている有力素材メーカーもある。だが、イタリアの繊維とファッション産業の大きな強みは、クリエイティブの部分だ。

WWD:経緯は?

ファッダ:8か月くらい前に、私の方からグーグルにコンタクトし、
「クリエイティブな分野でAIを使いたい」とオファーしたんだ。正直、その段階では繊維やファッションに限らず、クリエイティブな分野でのAI活用事例もなく、どう使っていくかは私自身もわかっていなかったし、グーグル自体、そうしたAIをイタリアでは公開していなかった。ただちょうどグーグル自身が新たな生成AIツール「BARD」を2024年に公開予定のタイミングだったため、そのプロトタイプでの協力を得られた。

WWD:実際、どのようにAIを取り入れたのか?

ファッダ:そもそも、テーマやコンセプトは、膨大な事前リサーチの結果を整理し、分析し、その上でデザイナーやブランドを触発するために発表する。3つのコンセプト、「リ・ジェネレーション」「デザイン」「インタラクティブ」という3つのコンセプトと、それぞれのコンセプトに3つのテーマ(リジェネ:ニットウエア/エンブロイダリー(刺繍)/ランジェリー、デザイン:クラシック/シャツ/プリント、インタラクティブ:テクノ/グラム/シャイニー)を設けた。テーマごとにカラーやテキスタイルのイメージを設定する。ここまでのやり方は、従来どおりで変えていない。重要なのは、そこだと考えていた。あくまでもAIは、クリエイティブな活動を支援するためのツールだ、という考え方だ。

実際どうAIをクリエイティブに活用?

WWD:では、どの部分にAIを?

ファッダ:実際にやってみたからこそ、わかったのだが活用に関してはいくつかのポイントがあった。テーマやコンセプトが、いわゆるプロンプト(AIに入力する指示)の役割を担った。まずAIは、テーマやコンセプトを反映したビジュアル作りの、基礎部分に使った。例えば従来のトレンド情報は「テクノ」というテーマに対して、「合繊のマットな光沢」のように細かいキーワードも設定しており、それに合わせてデザイナーやブランドにインスパイアするビジュアルを制作してきた。われわれのようなトレンドコンセプターにとっては、社会的な事象をテキストに落とし込む分析力とともに、こうしたビジュアル作りも重要な役割の一つだ。だが、AIを使うと、このビジュアルが思いもよらぬアイデアを出してくる。

従来のビジュアル制作では、どのようにブランドやデザイナーを触発するか、という点が重要なわけだが、ビジュアル制作のときのアイデアはどんなに優れたトレンドコンセプターであったとしても、どうしてもその人のキャリアや発想に左右されてしまう。AIは、この部分の枠を取り払うことができた。

とはいえ、この作業は思っていた以上に非常に大変だった。単にテーマやコンセプトをプロンプトとして打ち込むだけでは、良いものが出来ず、一つのビジュアルを作るのに100回以上、繰り返す必要があった。これは正直、とてもしんどい作業だった。

ビジュアル制作は、AIが出してきたアイデアをベースに、ピッタリ合うテキスタイルを探す、あるいは制作し、服を作り、撮影した。この部分でも、従来であれば、テキスタイル会社や縫製会社にこうしたテーマに合ったテキスタイルや服の制作を依頼し、それが最終的なトレンドコーナーに設置するスワッチサンプルになったりもするのだが、あまりにも突飛なアイデアであるため、単にアイデアイメージを渡すだけでは、テキスタイル会社や縫製工場の協力を得られなかった。実際の服は、手作業で作るようなことになった。

AIは「ファッションのクリエイティブ」をどう変える?

WWD:今後をどう見る?

ファッダ:正直、このやり方は賛否両論というか、当初は大きな反発があった。中には、「イタリアのクリエイティブを重視する文化を破壊する」というものもあった。これには明確に反論したい。テクノロジーの進化は、止められるものではない。われわれがやるべきことであり、重要なのは、「テクノロジーをどう活用するか」だ。今回取り組んでみてAIや生成AIはまだまだ未成熟のテクノロジーだとも感じた。それでも、クリエイティブな活動にとって、大きな可能性も秘めている。世界の繊維・ファッション産業にとってイタリアの果たすべき役割は、クリエイティブを軸に産業を発展させることで、われわれイタリアが先頭を切って挑戦することにこそ、意義がある。今回の冒頭のキーノートセッションに「AI」を掲げたのも、この私の取り組みと考え方に「ミラノ・ウニカ」の会長を始めとして賛同したためだ。

WWD:今後AIの導入は、繊維・ファッション産業にどう進んでいくのか。

ファッダ:繰り返しになるが、生産効率の改善のような部分では、大手素材メーカーのレダ(REDA)のように、実際にコスト削減に成果を挙げている企業もある。ただ、クリエイティブの部分ではアイテムやカテゴリーによって、AIとの相性の良し悪しはある。たとえば、プリント柄の生成なんかは、すでに取り入れている企業もあるほどだし、相性はいいと思う。けど、逆にボタンやファスナーといった服飾資材の相性は良くないかもしれない。そもそも生産のためのテクノロジー自体がかなり高度で複雑だし、服のデザインプロセスにおいても最後の方に決まるため、リードタイムが短い。先行するのは、やはりテキスタイルの部分だろう。

WWD:トレンド予測そのもの、つまりコンセプトやキーワード、カラー予測にも使えるのでは?

ファッダ:ノー(即答)。それはない。これは例えば、需要予測にAIが使えるか、という問いにも似ている。水面下では、これまで何度もメガIT企業が服の需要予測に取り組んでいるが、ことごとく失敗している。ある服一着をとっても、丈の長さ、色、細かな仕様があり、そもそも例えば黒色といっても、いろいろな黒色のバリエーションがある。つまりパラメーター(変数)が多すぎる。これはトレンド予測も全く同じことだ。ずっと先のことはもちろんわからないけど、少なくとも現在、あるいは近い将来まではかなり難しいと思う。

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「サボン」がホワイト・ローズのコレクションを限定発売 キットも用意

「サボン(SABON)」は2月8日、2024年春のボディーケアレコクション“ホワイト・ローズ コレクション”を発売する。貴重なホワイト・ローズがもたらすロマンチックな香りで、ベルガモット、ジャスミン、ムスクなどによりエレガントな奥行きを添えた。オードトワレやボディースクラブ、ボディーソープ、ハンドクリームなど5アイテムを用意し、ギフトにもピッタリなキットも取りそろえる。

定番のボディーケアアイテムは、4種のボタニカルオイルを配合した“シャワーオイル ホワイト・ローズ”(300mL、3520円)、ミネラル豊富な死海の塩を使ったソルト‐イン‐オイル処方の“ボディスクラブ ホワイト・ローズ”(320g、4400円)、濃密でなめらかなテクスチャーの“シルキーボディミルク ホワイト・ローズ”(200mL、5060円)を用意。オードトワレ“オー ドゥ サボン ホワイト・ローズ”(30mL、4180円)や“ハンドクリーム ホワイト・ローズ”(30mL、1650円)は、同じ香りのボディーケア商品と組み合わせることで香りのレイヤリングが楽しめる。

数量限定のキットはシャワーオイル(100mL)、ボディースクラブ(60g)、ボディーミルク(50mL)のミニサイズを組み合わせた“ディスカバリーギフト ホワイト・ローズ”(3850円)からボディーケア3商品の現品とハンドクリームの現品、オリジナルポーチをセットにした“コンプリートキット ホワイト・ローズ”(1万5950円)まで、さまざまな価格帯で用意している。

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「メイベリン ニューヨーク」“まつエク級ロング​”マスカラ“ラッシュニスタN”にくすみオレンジカラーが仲間入り

「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」は2月3日、“まつエク級ロング”マスカラ“ラッシュニスタN”から新色を発売する。2022年に販売した限定色“05R コーラルコッパ―”(1290円)が定番カラーとして登場。すでにアマゾンでは先行予約を開始している。

今回仲間入りする“05R コーラルコッパ―”は、自然な透明感を演出するくすみオレンジカラー。“ラッシュニスタN”は、“01 ブラック”“02 ブラウン”“03 オリーブブラック”“04 チェリーブラック”に新色が加わり、5色展開となる。根本からすっと伸びたまつ毛で印象付けながら、お湯で優しくオフすることができる。

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H&M、ヘレナ・ヘルマーソンCEOが退任 後任は「H&M」ブランドの42歳CEO

H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は1月31日、ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)最高経営責任者(CEO)が退任することを発表した。後任として、「H&M」ブランドを率いるダニエル・エルヴェール(Daniel Erver)CEOが、同日付でグループの社長兼CEOに就任した。

カール・ヨハン・パーション(Karl-Johan Persson)会長は、「コロナ禍や、地政学的およびマクロ経済的に難しい時期に舵取りをし、大いに貢献してくれたヘレナに、取締役会一同は深く感謝している。当社は長期的な目標に向かって段階的に歩みを進めており、24年はさらに飛躍できるものと確信している」と語った。

ヘルマーソン前CEOは、1997年に購買部門のエコノミストとしてH&Mに入社した。購買や生産部門を経て、サステナビリティ・マネジャーに就任。その後、香港でプロダクション・マネジャーを務めた。2018年からはCOOとして、ロジスティクス、生産、テクノロジー関連分野などを担当し、20年1月にCEOに就任した。

同氏は、「私はキャリアのほとんどをH&Mで過ごしており、さまざまな部門で多くの役職を経験できたことを大変ありがたく思っている。退任することを取締役会に伝えた際には、複雑な心境だった。ここ数年、コロナ禍をはじめ、地政学上およびマクロ経済上の難局に直面しつつも、チームと共に成し遂げてきたことを誇らしく思っている。一方で、ときとして個人的に負担に思うこともあり、難しい決断ではあったが、退任する時期が来たと感じた。任期中、カール・ヨハンや取締役会がサポートしてくれたことに深く感謝している。しっかりと引き継ぎをし、私自身の次のステップを考えたい」と述べた。

エルヴェール新社長兼CEOは、1981年生まれの42歳。2006年にH&Mに加わり、ドイツや米国のマーチャンダイジング、スウェーデンのカントリーマネージャー、「H&M」の購買マネージャーなどさまざまなキャリアを積み、4年前に「H&M」のCEOに就任した。なお、同氏は引き続き「H&M」ブランドも率いるという。

同氏は、「取締役会からの信任を大変うれしく光栄に思うと同時に、意欲と責任を感じている。今後も献身的なチームと共に顧客のために尽力し、収益性を高めていきたい。刺激的で魅力的な買い物体験のため、ファッション、品質、価格、サステナビリティを最高のコンビネーションで顧客に提供することにフォーカスする」とコメントした。

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欧州議会が証拠なき「環境に優しい」「エコ」などの表示を禁止へ 新法採択

グリーンウォッシュと誤解を招く製品情報を禁止

欧州議会はこのほど、グリーンウォッシュと誤解を招く製品情報を禁止する指令案を採択した。同指令は賛成593票、反対21票、棄権14票で採択。その目的を「消費者の誤解を招くようなマーケティング手法から保護」し、「より良い購買選択を支援すること」としている。理事会の最終承認を得た後、加盟国は24ヶ月以内に国内法に移行する必要がある。

具体的には「環境に優しい」「自然・天然」「生分解性」「気候変動に影響されない」「エコ」といった表示を証拠なしに使用することを禁止する。サステナビリティをうたうラベル・認証も規制され、将来的には公的認証制度に基づくラベル・認証か、公的機関が制定したラベル・認証のみがEUで認められることになる。さらに同指令は、カーボンオフセットにより製品が環境に与える影響を中立、低減するとの主張を禁止する。

商品の耐久性への関心を高める狙いも

新法のもうひとつの重要な目的は、商品の耐久性への関心を生産者と消費者の間で高めること。新しい指令では、根拠のない耐久性のうたい文句(例えば洗濯機が5000回の洗濯に耐えるという表示が、通常の条件下では事実と異なるなど)、消耗品の交換を必要以上に早めるよう促す表示(プリンターのインクでよく見られる)、修理可能でない商品を修理可能であるかのように表示すること、なども禁止される。

1月29日に開いた会見の席で同議会のビリャナ・ボルザン(Biljana Borzan )は「この法律は、すべてのヨーロッパ人の日常生活を変えるだろう。私たちは使い捨て文化から脱却し、マーケティングをより透明化し、商品の早期陳腐化と戦う。信頼できるラベルや広告のおかげで、人々はより耐久性があり、修理が可能で、持続可能な製品を選ぶことができるようになる。最も重要なことは、たとえば企業がペットボトルについて、“代わりに木を植えたから良い”とか “持続可能だ”と主張することができなくなることだ」と述べた。また、会見で「産業側からの反応は?」と問われた同副議長は「雇用や産業を破壊することが私たちの目標ではない。私たちの目標は、業界がより質の高いビジネスを行えるようにすることだ」と主張をした。

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ミラノ・ウニカ開幕、AIで描く「新高級テキスタイル産業構想」

有力素材見本市の一つ「ミラノ・ウニカ」が現地時間の1月30日に開幕した。イタリア企業を中心に609社が出展し、2025年春夏シーズンに向けたテキスタイルや服飾資材をアピールする。

イタリアの繊維・ファッションの業界団体であるシステマ・モーダ・イタリア(SISTEMA MODA ITALIA、以下SMI)によると、23年度のイタリアのテキスタイル産業の売上高は前年比2.5%減だった。メーン市場である高級品市場と中国市場の減速が影響した。

24年も引き続き高級品市場と中国市場の失速が予想される中で、「ミラノ・ウニカ」が打ち出したのが、人工知能(AI)の活用だ。開幕直後に開催された基調講演では、有力な業界団体のトップや大臣がこれまでは業界動向などを語るのが通例だったが、全員がAIについてそれぞれの立場から語る異例の取り組みを行ったほか、、有力なAIのスタートアップ企業のトップや研究者を招いてセッションを行った。ミラノ・ウニカにとって重要なコンテンツであるトレンド発表にもAIを導入した。

有力テキスタイルメーカーのカノニコのトップで、ミラノ・ウニカの会長を務めるアレッサンドロ・バルベリス・カノニコ(Alessandro Barberis Canonico)氏は、「人工知能は、国際的で複雑で絡み合ったサプライチェーンやビジネスモデルの解決をサポートする大きな手助けになる」と、その狙いを語った。

メイド・イン・イタリー&イタリア企業省のアドルフォ・ウルソ(Adolfo Urso)大臣は、「すでに繊維・ファッション業界は、人工知能を生産プロセスの効率化などにも導入しているが、イタリアの重視するクリエイティブな人材や才能の保護や発展にも生かせると考えている。政府としても積極的にバックアップする」と語った。

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休業から復帰のベラ・ハディッド、力を注ぐノンアル飲料事業と自身のメンタルヘルスについて語る

モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)は、ライム病の治療に専念するためモデル活動を1年間休止していたが、実業家としての活動を本格化させているようだ。米「WWD」に、2021年から共同経営するノンアルコール飲料ブランド「キン ユーフォリックス(KIN EUPHORICS)」や自身のメンタルヘルスについて語った。

ベラは昨年、ソーシャルメディアで彼女が長年患う感染症の一種であるライム病や慢性疾患の治療と、不安障害などメンタルヘルスの問題について思いを綴っていた。インタビューでは闘病生活について「苦痛に満ちたものだった。点滴を打ちながらZoomミーティングすることもあった。再び仕事に復帰できるように自分の体を追い込もうとしたが、自分がワーカホリックだったことに気づき、今必要なことはただじっとしていることだと受け入れた」と明かし、アルコール摂取にも気を配るようになったという。

健康チャレンジ”ドライ・ジャニュアリー”とは?

欧米では1月に禁酒する健康チャレンジの取り組み“ドライ・ジャニュアリー(Dry January)”が広まっているが、「新年の31日間、体内からアルコールを完全に排除し、ポジティブで前向きなエネルギーで一年を始めることは自分自身と自分の精神のために非常に重要なこと」と語り、ベラ自身も「キン ユーフォリックス」を通じて実践しているとして“ドライ・ジャニュアリー”を勧める。さらにソーシャルメディアからも離れ、瞑想や読書に時間を費やしたといい、「人は競争やSNSの世界に身を置くと、本来の自分ではない“他人から見た自分”に依存してしまう。SNSから距離を置いたことは自分のために行った最高のことだった」と振り返った。

英市場調査会社IWSRや米マーケティング大手ニールセン・アイキュー(NIELSEN IQ)によると、低アルコールおよびノンアルコール市場は近年急速に拡大しており、米小売大手のターゲット(TARGET)も昨年12月、ホリデーシーズンに向けてノンアルコール飲料ブランドを集めたセレクションを販売。「キン ユーフォリックス」は参加ブランドの中で最高売り上げを記録し、米スーパーマーケットチェーンのスプラウツ・ファーマーズ・マーケット(SPROUTS FARMERS MARKET)でのローンチ成功に続き、3月からはターゲットで常時販売する予定だ。

ベラの実業家としての顔

スピリチュアリティをコンセプトに掲げる「キン ユーフォリックス」は、カラフルなデザインの缶ドリンク4種“アクチュアル サンシャイン”“ライトウェーブ”“キンブルーム”“キン スピリッツ”と、特製スピリッツ2種“ハイ ロード”“ドリーム ライト”をラインアップする。ビタミンC、サフラン、ターメリック、アダプトゲンなどを配合し、肝臓と神経系を保護しながら免疫系や炎症の軽減をサポートする。

「キン ユーフォリックス」はジェン・バチェラー(Jen Batchelor)最高経営責任者(CEO)により17年に創設。インスタグラムのフォロワーが6000万人を超える27歳のベラは、単なる広告塔としてではなく、投資家とのビジネスプランにまつわる会議にも参加し、同ブランドのビジネスの隅々まで関わっている。

パレスチナ出身の不動産開発業を営むモハメド・ハディッド(Mohamed Hadid)を父親に、オランダ出身の元スーパーモデルのヨランダ・ハディッド(Yolanda Hadid)を母親に持つベラは、「ファッションの世界は芸術的な面で成長できる。それが本当に好きだけど、自分の脳のビジネス的な面を使う機会はあまりない。私の両親は素晴らしいビジネスマンで、私にとって頭を使える場所にいられることは大きな喜びだ」と述べた。ベラの現在のキャリアの中心は「キン ユーフォリックス」であり、「来年か再来年には、あらゆる家庭に『キン ユーフォリックス』のドリンクが置かれるようにビジネスを広げていきたい。すでに30ページ以上の商品アイデアを書き溜めている」と語った。

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「ニューバランス」がドーバー ギンザで期間限定スペース コラボアイテムや先行発売も

「ニューバランス(NEW BALANCE)」のコンセプトストア、ティーハウス ニューバランス(T-HOUSE NEW BALANCE)は2月2日〜3月9日までの期間、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA、以下DSMG)で限定スペースをオープンする。「ニューバランス」2024年春夏シーズンのシューズを販売するほか、週替わりで限定アイテムの発売も行う。

同スペースは、ティーハウス ニューバランスのコンセプトを“梱包”して“DSMGに輸送”するがテーマ。2月2日に「ニューバランス」の東京デザインスタジオ(TOKYO DESIGN STUDIO、以下TDS)とDSMGのコラボTシャツ(1万5950円〜)を発売したのち、スニーカー“MADE IN USA 990v4”“998”“996”のグレーカラーをウィメンズサイズも含め販売、また直営店舗限定であるグレーカラーの“MADE IN USA 993”の発売も行う。そのほかコラボシューズの販売やTDSの2024年春夏コレクションの先行発売、ティーハウス ニューバランスのフリーマガジン「NOT FAR」の無料配布(数量限定)なども予定する。

ティーハウス ニューバランスは、2020年7月に東京・日本橋でオープン。茶室の文化に着想を得た独自の空間で商品の展示、販売を行うほか、「ニューバランス」の新たなコンセプトやプロダクトを開発するスタジオ、TDSとしても機能する。

■スペシャルスペース
日程:2月2日〜3月9日
場所:ドーバー ストリート マーケット ギンザ 3階
住所:東京都中央区銀座 6-9-5 ギンザコマツ西館
※限定アイテムの詳細な発売スケジュールは公式サイトに記載

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【一粒万倍日】「フェンディ」からレザーグッズの新色 バッグに着想のウオレットなど

「フェンディ(FENDI)」は、2月の一粒万倍日に向けて新たにウオレットやカードケースなど、レザーグッズを発売する。「フェンディ」の店舗および公式オンラインで取り扱う。

レザーグッズは、「フェンディ」を代表するバッグ“バゲット”をモチーフとした三つ折りウオレット(9万2400円〜)、チェーン付きウオレット(16万2800円)、カードケース(5万9400円)を販売。バーガンディ、シルバーともに新色で、“FF”ロゴのバックルがあしらわれている。ウオレットにはエンボス加工のロゴモチーフ、カードケースにはラミネート加工が施されている。そのほかバッグ“フェンディグラフィ”に着想を得た、“FENDI”文字の飾りが印象的なチェーン付きウオレット(22万1100円)も発売する。

2024年の一粒万倍日

一粒万倍日は、一粒の籾(もみ)が万倍にもなって実るという意味を持つ。この日に物事を始めたり、やり遂げたりすると、その成果が大きくなって返ってくると言われる。

1月1日(月・祝)、13日(土)、16日(火)、25日(木)、28(日)
2月7日(水)、12日(月・祝)、19日(月)、24日(土)
3月2日(土)、10日(日)、15日(金)、22日(金)、27日(水)
4月3日(水)、6日(土)、9日(火)、18日(木)、21日(日)、30日(火)
5月3日(金・祝)、15日(水)、16日(木)、27日(月)、28日(火)
6月10日(月)、11日(火)、22日(土)、23日(日)
7月4日(木)、5日(金)、8日(月)、17日(水)、20日(土)、29日(月)
8月1日(木)、11日(日)、16日(金)、23日(金)、28日(水)
9月4日(水)、12日(木)、17日(火)、24日(火)、29日(日)
10月6日(日)、9日(水)、12日(土)、21日(月)、24日(木)
11月2日(土)、5日(火)、17日(日)、18日(月)、29日(金)、30日(土)
12月13日(金)、14日(土)、25日(水)、26日(木)

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【2024年バレンタイン】「アミ パリス」が心斎橋パルコでポップアップ 限定アクセサリーを販売

「アミ パリス」が2月1日、大阪の心斎橋パルコにポップアップストアをオープン

「アミ パリス(AMI PARIS)」は2月1日、大阪の心斎橋パルコにポップアップストアをオープンする。期間は28日まで。

同ブランドは「2024年春夏コレクションをはじめ、バレンタインデーギフトとしてもおすすめの商品を多数そろえる」と話し、“アミ ドゥ クール”(ブランドイニシャルのAとハートを組み合わせたロゴ)のチェーンネックレス(3万7400円)とブレスレット(3万3000円)を限定販売する。購入客にはノベルティーも用意する。

日程:2月1〜28日
場所:心斎橋パルコ1階 ザウィンドウシンサイバシ
住所:大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-8-3

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「ファンケル」の定番“マイルドクレンジングオイル”から限定シトラスの香り

「ファンケル(FANCL)」は2月16日、ブランドを代表するアイテム“マイルドクレンジングオイル”(120mL、1980円)から“コンフォート シトラス”の香りを数量限定で発売する。

“マイルドクレンジングオイル”は、肌のバリア機能と潤いを守りながらメイク汚れをしっかり落とし、美しい肌に導く無添加のスキンケアクレンジングオイルだ。美容液のようなとろけるテクスチャーで、肌に摩擦を与えずメイクをオフできる。

限定の香りは爽やかさと華やかさを併せ持つネロリと柔らかなカモミールをメインに、幸福の象徴ともいわれる柑橘系のマジョラムをブレンドした。業務用のアロマディフューザーや天然エッセンシャルオイルの企画・販売を行うアットアロマが監修している。

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三栄コーポレーション×生駒芳子 これからの時代のエシカルとは?

専門商社の三栄コーポレーションは「アワー アース プロジェクト」の下、世界各国のエシカル商品を集めたECサイトの運営のほか、基幹のOEM事業では環境配慮型素材の提案の幅を広げるなど、商社の立場からファッション業界のエシカル消費を推進する。同プロジェクト発足と同時に、ファッションジャーナリストの生駒芳子が代表理事・会長を務める一般社団法人日本エシカル推進協議会に加入。有識者や他企業と連携して、業界全体に働きかける。「アワー アース プロジェクト」の責任者である山田敦担当と生駒代表理事に、エシカル消費のあり方について聞いた。

エシカルは身近 みんなが根底に持つ感覚

WWD:一般社団法人日本エシカル推進協議会の活動内容は?

生駒芳子・一般社団法人日本エシカル推進協議会代表理事・会長(以下、生駒):私たちはいち早く気候変動の危機を感じてきた有識者40人から構成された組織で、「危機のカナリア」として世の中に警鐘を鳴らしエシカルなライフスタイルの重要性を伝えることが大きな役割だ。私自身は専門であるファッションの分野におけるエシカルの重要性を感じ、2017年の設立当初から参加している。具体的には、エシカルを深く理解するためのセミナーや会員のみなさまに各分野の最先端情報をお届けする情報交換会などを主催している。

山田敦・三栄コーポレーション服飾雑貨事業部第一部企画開発担当マネージャー(以下、山田):僕は17年に初めて情報交換会に参加し、エシカルに本気で取り組む決心がついた。というのも、長らくOEMの仕事をして大量生産の現場を見てきたなかで地球環境への関心の低さに違和感を覚えていたからだ。当時はそれでも半信半疑な部分があったが、会で出会った人たちと交流するなかでエシカル消費が今後絶対に重要になると確信した。「アワー アース プロジェクト」立ち上げのタイミングで、専門家たちと横のつながりを持ち最新情報に触れる必要があると考え、法人会員として参画した。

WWD:2人にとってエシカルとは?

生駒:「エシカル」の傘は広く、動物福祉や人権、フェアトレードなど多岐にわたる。サステナビリティやSDGsとほぼイコールだが、エシカルはより具体的な行動指針を示していると思う。エシカルな選択を重ねれば、持続可能な世界に近づいていける。振り返ると80年代から、ファッションの世界でエシカルな活動をしているデザイナーはたくさんいた。例えばアニエス・ベー。彼女は自分がデザイナーになる目的の1つは、世の中の困っている人を助けるためという。そのほかにもキャサリン・ハムネットやダナ・キャラン。感度の高いデザイナーや企業は、2000年代より前から取り組んでいることだ。

山田:言葉の捉え方はいろいろあると思うが、僕自身が感じているのはすごく身近なコンセプトということ。子どもの頃から言われていたような、食べ物を残してはいけないとか、無駄なものは買わないとか。みんなの根底にある感覚なのではないかと思う。

結局何を買えばいいの?の一つの答えに

WWD:三栄コーポレーションが考えるエシカルのアウトプットの一つが、「アワー アース プロジェクト」だ。具体的にどんな基準でセレクトしている?

山田:一番大切にしているのは、ブランドが核に持つメッセージは何かということ。たとえばドイツ初の「ゴットバッグ(GOTBAG)」は、世界の海洋ごみが一番たまりやすい地域がインドネシアということから、インドネシアの海洋プラスチックごみを原料にバッグを製造している。それは根幹に、世界の海をきれいにしたいという思いがあるからだ。加えて、現地の雇用も生み出している。輸送手段もなるべく二酸化炭素を出さないように船や陸路を使用するなど、細部にわたるまでエシカルを徹底している部分に共感した。

生駒:私も一番印象に残っているのが「ゴットバッグ」。海洋プラスチックごみの問題から、フェアトレード、リサイクルなどさまざまな問題に多角的にアプローチしている。そしてクリエイティブでおしゃれ。エシカルにデザイン性は絶対に欠かせない。「アワー アース プロジェクト」の商品は、全てデザイン性が高く未来を感じる。エシカル消費を呼びかけるなかでも、「結局何を買えばいいの?」と迷う声もよく聞く。その意味でこのプロジェクトは、一つのアンサー。エシカル経営をしている企業と消費者をつなぎ良い循環を生んでいる。

OEMはエシカルなものづくりを
実現するカギ

WWD:同プロジェクトでは、OEM事業での環境配慮素材の提案も強めている。

山田:OEMはこれまで黒子の役割だったが、これからの時代はモノ作りの現場をエシカルに変えていくための要になると思っている。当社が正規販売代理店を務める「イーダイ(E.DYE)」もその一例だ。これは無水染色技術を活用した原着生地のブランドで、リサイクルペットボトル由来のチップを着色し糸にするため水を使わない。比較的小ロットで対応でき、QRコードから環境負荷軽減のデータも示せる。3月には「イーダイ」を使ったオリジナルブランド「ユーエフ(UF)」も立ち上げる。こうした素材をそろえているものの、実際に普及させていくためには難しさもある。例えばクライアント企業から、リサイクルポリエステルでもペットボトル由来の素材は他社と差別化できないので何か新しい切り口の素材はないかと聞かれることもある。いろいろな素材の選択肢が増えるのはいいことだが、果たしてちゃんとそれが根本的な問題の解決になっているのか、企業のエゴで終わっていないのか、疑問に思う場面もある。従来のOEM業界は、面白いものを出す勝負のような一面があったが、サステナビリティにおいては、それはまた違う競争のような気がする。

生駒:すごくファッションっぽい部分だ。脅かすわけではないが、気候危機の現状は私たちが思っている以上に深刻だ。温暖化の状況でよく例えられるのが、真夏にGジャンを着ているような状態だった地球が、今やダウンジャケットを着ていると。私たちの望む未来に進めるかどうかの瀬戸際まで来ている。その危機感が業界としてやっぱり薄い。人はどうしても楽しい方に、豊かな方に進んでいく。ただ今は、本当の豊さとは何か?というすごく哲学的な問いがなされなくてはいけないと思う。人間の心理が社会を作っていくならば、大事なのは心のエシカル。日本人の心根にはたくさんのエシカルな知恵がある。原点回帰する時が来ていると思う。そしてやはり大人、企業が動かないと社会は変わらない。私たちが2021年に中小企業向けに策定した「JEIエシカル基準」も参考にしてほしい。

山田:エシカル事業の担当者として身に沁みる言葉。企業人として周りの社員を、会社を本当に動かすぐらいの危機感と熱量を持って取り組みたいと改めて思った。「アワー アース プロジェクト」では、エシカルとデザイン性を両立する品ぞろえが強みだ。多くの人に気軽に手に取ってもらうことで、エシカルを考えるきっかけになると信じている。サステナブルやエシカルな体験に興味がある人にはぜひのぞいてもらいたい。

わくわくするエシカル消費に出合える
オンラインショップ

「アワー アース プロジェクト」は2019年に始動。“より地球にやさしい”をコンセプトに、「サステナブル」「エシカル」のキーワードに合致する製品やサービスを提供する。オンラインショップ「アワー アース プロジェクト サステナブルターミナル」では、海洋廃棄プラスチックをリサイクルしたドイツ発のバッグブランド「ゴットバッグ」や、車のエアバッグをアップサイクルしたドイツ発のバッグブランド「エアパック(AIRPAQ)」など、世界のエシカルブランドやオリジナルブランドを含めた全9ブランドを扱う。屋号の「サステナブルターミナル」は、さまざまな商品が行き交う"ターミナルストア"を意味し、空港や大きな電車の駅で新しいものを見つけるようなわくわくするエシカル消費を楽しんでほしいという思いを込めた。

PHOTO:KAZUSHI TOYOTA
問い合わせ先
三栄コーポレーション
03-3847-3521

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「クロックス」が“エコー ストーム”の新作を発売 彫刻のような波打つデザイン

「クロックス(CROCS)」は、人気のエコー・コレクションから2024年春夏の新作“エコー ストーム”(全3色、1万4300円)を発売する。サイズは22.0〜30.0cmをそろえる。

同商品は2022年に登場した“エコー クロッグ”をもとに彫刻のように成型した。“エコー クロッグ”同様、「クロックス」オリジナルのクッショニングシステムであるライトライドのインソールを採用し、柔軟性、伸縮性、はっ水性の特徴を持つネオプレンのライナーを配することで、悪天候でも着用できる仕様にアップデートした。

また、内側のベントホールが通気性を確保しながらも、アウトソールにはラバーのポッドを負荷がかかる部分に配置することで耐久性も備える。

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【2024年バレンタイン】靴下「シックストックス」×「ピーナッツ」 スヌーピーとハートがモチーフ

日本の靴下ブランド「シックストックス(CHICSTOCKS)」は2月1日、人気コミック「ピーナッツ(PEANUTS)」とコラボし、“スヌーピーハートモチーフソックス”(2200円)を発売する。カラーはチャコールグレー×ブルー、ダークブラウン×ダークグリーンの2色、サイズはS~Lの3サイズを展開する。オンラインショップ、伊勢丹新宿本店 本館3階マランジュリー、同メンズ館地下1階、さらに2月20日までの期間限定でデルフォニックス大阪中之島フェスティバルタワー1階で取り扱う。(販売場所により取り扱いサイズが異なる)

同アイテムは、ソックス全体にハートを散りばめたバレンタインらしいデザインに、キスをしているスヌーピーを編みで表現。各モチーフは1970年代のコミックからアレンジし、配色は男性も履きやすいダークカラーでまとめた。またソックスを束ねる巻紙にも、同じモチーフを箔押しで仕上げた特別仕様になっている。

「シックストックス」は、“ソックスからその日のスタイリングを考える”をコンセプトに2017年にスタート。デザインだけでなく履き心地にこだわった靴下を、国が定める基準を満たした医療用ソックスを生産する日本の工場で編み立て、縫製、仕上げまでを一貫して行なっている。

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「ウォンジョンヨ」が体温で“じゅわっと“ととろけるリップスティックを限定発売

ウォンジョンヨ(WONJUNGYO)」は2月9日、とろける質感のリップスティック“フォンダンリップ”(限定2色、各1430円)を数量限定で発売する。

肌の温度にこだわるブランドプロデューサーのウォン・ジョンヨ=メイクアップアーティストならではの発想で開発した同商品は、唇の温度で“じゅわっと”とろけるテクスチャーが特徴だ。滑らかな塗り心地で、水あめのような光沢感のあるぷっくりとした唇をかなえる。保湿成分のモモ果実エキスやビルベリー果実エキスなどの3種のフルーツエキスを配合しているため、メイクしながら唇の潤いをキープする。

カラーはセンシュアルな表情を演出するパープルがかったピンク“メルティンググレープ”と、熟したいちじくのようなコーラルレッド“メルティングフィグ”の2色を用意した。

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【バックステージ】「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ」2024年春夏オートクチュール・コレクション

「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」が2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。ランウエイショーのバックステージに潜入!

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「スキャパレリ」「シャネル」「アレキサンダー・マックイーン」など、写真で振り返るテクノロジーとファッションの歴史的な出合い

ダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」はこのほど、2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。ドラマチックなドレスやビニール素材のアイテムなどが業界人たちの目を引いた一方、SNS上ではとあるルックが話題を呼んだ。

それは、「スワロフスキー(SWAROVSKI)」のクリスタルと共に、電子回路やガラパゴスケータイ(ガラケー)、電卓、バッテリー、CDなどが刺しゅうされた“バイオニック ドール(Bionic Doll)”とミニドレスだ。ローズベリー=アーティスティック・ディレクターは、「これらは全て2007年以前に使用されていたもので、今では前時代的なテクノロジーとなった電子廃棄物。TikTokなどのSNSでは『スキャパレリ』のコレクションをユーザーがデジタル化して着用しているので、私は記憶の中に残っているものを形にすることにした」と語る。

「スキャパレリ」の電子廃棄物を再利用したルックは、テクノロジーとの融合の可能性を模索したファッション史の1ページに加わっただろう。そこで、今回はテクノロジーとファッションの歴史的な出合いを振り返りたい。

「アレキサンダー・マックイーン」1999年春夏コレクション

「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」1999年春夏コレクションは、ファッション史上でもっとも印象に残るフィナーレのひとつだ。モデルのシャローム・ハーロウ(Shalom Harlow)が、真っ白のマルチレイヤード・ドレスを着てランウエイに現れると、左右から2台の工業用ロボットが黒と黄色のスプレーペイントを吹きかけるライブパフォーマンスを行った。

「ジバンシィ」1999-2000年秋冬コレクション

1996年から「ジバンシィ(GIVENCHY)」のデザイナーを務めていたアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)は、1999-2000年秋冬コレクションでSF映画「トロン(Tron)」に着想。キース・ヴァン・ダー・グラーフ(Kees van der Graaf)と協業し、LED基盤を使用した真っ赤に光るルックが現れた。

「アレキサンダー・マックイーン」2006-07年秋冬コレクション

ポストプロダクション「グラスワークス(Glassworks)」の協力のもと、当時コカイン使用疑惑でファッションシーンから追放状態にあったケイト・モス(Kate Moss)を、フィナーレ時にホログラムで登場させた「アレキサンダー・マックイーン」2006-07年秋冬コレクション。なお、マックイーンとケイトは親友として知られた。

「フィリップ プレイン」2016年春夏コレクション

「フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)」2016年春夏コレクションは、ロボットがギターをかき鳴らし、ドラムを叩く中でショーがスタート。そして、モデルたちはウォーキングせずにベルトコンベアで運ばれ、ランウエイ横からロボットに渡されるサングラスやバッグでルックを完成させた。

「シャネル」2017年春夏コレクション

「シャネル(CHANEL)」2017年春夏コレクションは、ファーストルックとセカンドルックでロボット仕様のモデルがランウエイに登場。続く17-18年秋冬コレクションでは会場中央に巨大なロケットを設置し、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)はラグジュアリーとサイバーの共演を図った。

「フィリップ プレイン」2018-19年秋冬コレクション

16年春夏コレクションから2年半後、「フィリップ プレイン」はさらなる進化を遂げ、高性能の人型ロボットがモデルのイリーナ・シェイク(Irina Shayk)の手を引き会場を一周して見せた。

「ディオール」2019年メンズ・プレ・フォール・コレクション

「ディオール(DIOR)」2019年メンズ・プレ・フォール・コレクションは、1927年公開のSF映画「メトロポリス(Metropolis)」が着想源。レーザービームが眩い光を放つ会場では、現代芸術家・空山基が製作した高さ11mの女性型ロボット像がコレクションに華を添えた。

「コペルニ」2023-24年秋冬コレクション

アルノー・ヴァイヤン(Arnaud Vaillant)とセバスチャン・メイヤー(Sebastien Meyer)のデザイナーデュオが手掛ける「コペルニ(COPERNI)」は、2023-24年秋冬コレクションでボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)社による4足歩行の犬型ロボット“スポット(Spot)”を起用。正方形の会場に4匹(最終的には5匹)の“スポット”を放ち、自由に散歩させたほか、モデルがまとっていたブランケットを剥ぎ取らせるなどして物議を醸した。

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「スキャパレリ」「シャネル」「アレキサンダー・マックイーン」など、写真で振り返るテクノロジーとファッションの歴史的な出合い

ダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」はこのほど、2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。ドラマチックなドレスやビニール素材のアイテムなどが業界人たちの目を引いた一方、SNS上ではとあるルックが話題を呼んだ。

それは、「スワロフスキー(SWAROVSKI)」のクリスタルと共に、電子回路やガラパゴスケータイ(ガラケー)、電卓、バッテリー、CDなどが刺しゅうされた“バイオニック ドール(Bionic Doll)”とミニドレスだ。ローズベリー=アーティスティック・ディレクターは、「これらは全て2007年以前に使用されていたもので、今では前時代的なテクノロジーとなった電子廃棄物。TikTokなどのSNSでは『スキャパレリ』のコレクションをユーザーがデジタル化して着用しているので、私は記憶の中に残っているものを形にすることにした」と語る。

「スキャパレリ」の電子廃棄物を再利用したルックは、テクノロジーとの融合の可能性を模索したファッション史の1ページに加わっただろう。そこで、今回はテクノロジーとファッションの歴史的な出合いを振り返りたい。

「アレキサンダー・マックイーン」1999年春夏コレクション

「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」1999年春夏コレクションは、ファッション史上でもっとも印象に残るフィナーレのひとつだ。モデルのシャローム・ハーロウ(Shalom Harlow)が、真っ白のマルチレイヤード・ドレスを着てランウエイに現れると、左右から2台の工業用ロボットが黒と黄色のスプレーペイントを吹きかけるライブパフォーマンスを行った。

「ジバンシィ」1999-2000年秋冬コレクション

1996年から「ジバンシィ(GIVENCHY)」のデザイナーを務めていたアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQUEEN)は、1999-2000年秋冬コレクションでSF映画「トロン(Tron)」に着想。キース・ヴァン・ダー・グラーフ(Kees van der Graaf)と協業し、LED基盤を使用した真っ赤に光るルックが現れた。

「アレキサンダー・マックイーン」2006-07年秋冬コレクション

ポストプロダクション「グラスワークス(Glassworks)」の協力のもと、当時コカイン使用疑惑でファッションシーンから追放状態にあったケイト・モス(Kate Moss)を、フィナーレ時にホログラムで登場させた「アレキサンダー・マックイーン」2006-07年秋冬コレクション。なお、マックイーンとケイトは親友として知られた。

「フィリップ プレイン」2016年春夏コレクション

「フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)」2016年春夏コレクションは、ロボットがギターをかき鳴らし、ドラムを叩く中でショーがスタート。そして、モデルたちはウォーキングせずにベルトコンベアで運ばれ、ランウエイ横からロボットに渡されるサングラスやバッグでルックを完成させた。

「シャネル」2017年春夏コレクション

「シャネル(CHANEL)」2017年春夏コレクションは、ファーストルックとセカンドルックでロボット仕様のモデルがランウエイに登場。続く17-18年秋冬コレクションでは会場中央に巨大なロケットを設置し、故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)はラグジュアリーとサイバーの共演を図った。

「フィリップ プレイン」2018-19年秋冬コレクション

16年春夏コレクションから2年半後、「フィリップ プレイン」はさらなる進化を遂げ、高性能の人型ロボットがモデルのイリーナ・シェイク(Irina Shayk)の手を引き会場を一周して見せた。

「ディオール」2019年メンズ・プレ・フォール・コレクション

「ディオール(DIOR)」2019年メンズ・プレ・フォール・コレクションは、1927年公開のSF映画「メトロポリス(Metropolis)」が着想源。レーザービームが眩い光を放つ会場では、現代芸術家・空山基が製作した高さ11mの女性型ロボット像がコレクションに華を添えた。

「コペルニ」2023-24年秋冬コレクション

アルノー・ヴァイヤン(Arnaud Vaillant)とセバスチャン・メイヤー(Sebastien Meyer)のデザイナーデュオが手掛ける「コペルニ(COPERNI)」は、2023-24年秋冬コレクションでボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)社による4足歩行の犬型ロボット“スポット(Spot)”を起用。正方形の会場に4匹(最終的には5匹)の“スポット”を放ち、自由に散歩させたほか、モデルがまとっていたブランケットを剥ぎ取らせるなどして物議を醸した。

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「H&M」がスペインの28店舗をクローズへ 約590人を解雇

H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は1月26日、スペインにある「H&M」133店舗のうち28店舗を閉じ、およそ590人の従業員を解雇する計画を示した。現地の労働組合である「スペイン労働者委員会(COMISIONES OBERAS)」と「労働総同盟(UNION GERERAL DE TRABAJADORES)」が、ロイター通信(REUTERS)に伝えたことで明らかとなった。

同社は声明文を発表し、適切なエリアに出店することや、競争力を保つことは最優先事項の1つであり、販売網を「常に見直している」ことを強調。「既存店舗での購買体験を向上させ、積極的に新規出店の機会を求めるほか、必要であれば十分な情報を得た上で店を閉める決断を下すこともある」としている。

H&Mは、2022年11月にも1500人規模の人員削減を発表。その際、ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)最高経営責任者(CEO)は、「我々が開始したコストと効率化プログラムには、組織の見直しが含まれており、従業員がその影響を受けることは重々承知している。我々は、同僚が次のステップに進むために必要な支援をする」と述べている。

なお、H&Mの23年9〜11月期の売上高は、速報値で前年同期比0.3%増の626億スウェーデンクローナ(約8764億円)とほぼ横ばいだったが、現地通貨ベースでは同4%減だった。

労働組合は、スペインの「H&M」が、欠勤や過重労働などの問題に直面していたとしつつも、今回の解雇について「あまりに強引であり、解雇以外の方策を検討することは可能である」と指摘した。加えて、H&Mは昨年6月、不満を抱いた同国の従業員らによるストライキを受け、店舗スタッフに1000ユーロ(約16万円)の追加賃金を14ヵ月にわたって支払うことと、今後2年間、販売実績に連動したボーナスを毎月追加で支払うことで合意していたため、労働組合は今回の一斉閉店と大規模解雇について驚きを示している。

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「H&M」がスペインの28店舗をクローズへ 約590人を解雇

H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は1月26日、スペインにある「H&M」133店舗のうち28店舗を閉じ、およそ590人の従業員を解雇する計画を示した。現地の労働組合である「スペイン労働者委員会(COMISIONES OBERAS)」と「労働総同盟(UNION GERERAL DE TRABAJADORES)」が、ロイター通信(REUTERS)に伝えたことで明らかとなった。

同社は声明文を発表し、適切なエリアに出店することや、競争力を保つことは最優先事項の1つであり、販売網を「常に見直している」ことを強調。「既存店舗での購買体験を向上させ、積極的に新規出店の機会を求めるほか、必要であれば十分な情報を得た上で店を閉める決断を下すこともある」としている。

H&Mは、2022年11月にも1500人規模の人員削減を発表。その際、ヘレナ・ヘルマーソン(Helena Helmersson)最高経営責任者(CEO)は、「我々が開始したコストと効率化プログラムには、組織の見直しが含まれており、従業員がその影響を受けることは重々承知している。我々は、同僚が次のステップに進むために必要な支援をする」と述べている。

なお、H&Mの23年9〜11月期の売上高は、速報値で前年同期比0.3%増の626億スウェーデンクローナ(約8764億円)とほぼ横ばいだったが、現地通貨ベースでは同4%減だった。

労働組合は、スペインの「H&M」が、欠勤や過重労働などの問題に直面していたとしつつも、今回の解雇について「あまりに強引であり、解雇以外の方策を検討することは可能である」と指摘した。加えて、H&Mは昨年6月、不満を抱いた同国の従業員らによるストライキを受け、店舗スタッフに1000ユーロ(約16万円)の追加賃金を14ヵ月にわたって支払うことと、今後2年間、販売実績に連動したボーナスを毎月追加で支払うことで合意していたため、労働組合は今回の一斉閉店と大規模解雇について驚きを示している。

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【バックステージ】「ヴィクター&ロルフ」2024年春夏オートクチュール・コレクション

「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」が2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。ランウエイショーのバックステージに潜入!

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「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」が2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。ランウエイショーのバックステージに潜入!

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「メイベリン」のマスカラ“スカイハイ”に青みブラック×微細パールの新色が仲間入り

「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」は4月6日、“スカイハイ”(全6色うち新1色、各1793円)の新色“流星ブラック”を発売する。3月5日にはアマゾンと楽天で先行予約を開始する。

“スカイハイ”はロングな仕上がりをかなえ、ぱっちりとした目元を演出する定番のマスカラ。ブラシとコームのいいとこ取りした“スカイリフトブラシ”を採用し、根元から塗布することで上向きまつ毛に仕上げる。

新色“流星ブラック”は、「マスカラを塗ると重たい印象になってしまう」という悩みを解決するために開発したカラー。絶妙なバランスの色と抜け感を表現する青みブラックと微細パールを掛け合わせ、まつ毛はしっかり強調しつつも抜け感をプラスする。

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「メイベリン」のマスカラ“スカイハイ”に青みブラック×微細パールの新色が仲間入り

「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」は4月6日、“スカイハイ”(全6色うち新1色、各1793円)の新色“流星ブラック”を発売する。3月5日にはアマゾンと楽天で先行予約を開始する。

“スカイハイ”はロングな仕上がりをかなえ、ぱっちりとした目元を演出する定番のマスカラ。ブラシとコームのいいとこ取りした“スカイリフトブラシ”を採用し、根元から塗布することで上向きまつ毛に仕上げる。

新色“流星ブラック”は、「マスカラを塗ると重たい印象になってしまう」という悩みを解決するために開発したカラー。絶妙なバランスの色と抜け感を表現する青みブラックと微細パールを掛け合わせ、まつ毛はしっかり強調しつつも抜け感をプラスする。

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良品計画会長×リトゥンアフターワーズ代表「社会・地域の課題解決とデザイン」を探る

循環型社会の実現に向けて「社会・地域の課題解決とデザイン」は大きなテーマになりつつある。とはいえ「社会・地域」という大きな主語を前に、課題も解決方法も多くの人にとってはおぼろげだ。そこで理想像や概念から具体へ進める道筋を2人のフロントランナーによる対談から探る。金井政明・良品計画代表取締役会長には同社が実践している「地域密着型の事業モデル」について、またファッションデザイナーによる社会・地域の課題解決のアクション例として山縣良和・リトゥンアフターワーズ代表にそのユニークな取り組みを聞く。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)

PROFILE:左:金井 政明/良品計画 代表取締役会長

1957年生まれ。西友ストアー長野(現株式会社西友)を経て93年良品計画入社。生活雑貨部長として長い間、売り上げの柱となる生活雑貨を牽引し良品計画の成長を支える。その後、常務取締役営業本部長として良品計画の構造改革に取り組む。2008年2月代表取締役社長、15年5月代表取締役会長に就任、現在に至る。西友時代より「無印良品」に関わり、一貫して営業、商品分野を歩み、良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組む

PROFILE:右:山縣 良和/リトゥンアフターワーズ代表、ここのがっこう代表

1980年鳥取生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学ファッションデザイン学科ウィメンズウェアコースを卒業。07年4月自身のブランド 「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」を設立。15年日本人として初めて「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」にノミネートされる。デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「ここのがっこう(coconogacco)」を主宰。19年には英国のファッションメディア「ザ・ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)が主催する「BOF500」に選出される。21年第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞 PHOTO:TAMEKI OSHIRO


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):テーマである「社会課題、地域振興とデザイン」についてお二人の考え方を実際のプロジェクトを通じてお話しいただきます。金井さんからお願いします。

金井政明・良品計画代表取締役会長:「素の自分に」が基本的な考え方です。我々人間はとても欲張りな生き物です。人の目を気にして比べて妬んだり、自慢をしたりというような性質を持っています。 そこに消費社会が入り込んでくると「高級な自動車に乗って」「僕の友達はこんなスニーカー持っている」みたいなことが起きて社会がどんどん個人主義になっていく。一方で共同体、その集団と心という「社会」もある。僕らの祖先がアフリカから出た時は道具なんてほとんどなくて、心とその集団でサバイブした。僕達はもう一度、その「心と集団」という時代に向かっている。今は過渡期です。

比べたり、妬んだり、自慢したりという社会に僕達は今生きています。でも、もう一人の自分は例えば、家に帰って全部脱ぎ捨ててホッとしたい。その「素の自分」はどんな商品を選び取るのだろうか、に着目しているのが私共です。

生活の価値そのものを作りたいという思いもあり、衣料品も生活用品も、食品もと領域を多岐に広げてきました。そのデザインは色々なクリエーターに参画してもらいながら積み上げてきましたが、一般的な消費や欲望を煽るようなデザインではありません。

WWD:煽るのではなく「役に立つ」、ですね。

金井:戦略はとてもシンプルです。キーワードが7つほどあり、最初の4つ「1.傷ついた地球の再生」「2.多様な文明の再認識」「3.快適・便利追求の再考」「4.新品のツルツル・ピカピカでない美意識の復興」は創業時から変わりませんが、この対談を含めて最近改めて話をする機会が増えています。

他の3つ「5.つながりの再構築」「6.よく食べ、眠り、歩き、掃く人間生活の回復」「7.OKAGE SAMA、OTAGAI SAMA、OTSUKARE SAMAを世界語として発信」は10年ほど前から「社会にこれが足りないよね」と話しながら加えてきました。

商品は徹底的にそぎ落とした「素材」としての良品、「素の自分」が自分の考え方で生活を編集する「商品」でありたいから、「商品」が自己主張する必要は全くない。できるだけ無駄なく、環境にも良く、そして使う方の自由になる「商品」をずっと目指してきました。

店は「自分のエネルギーを出し惜しみしない社会」の拠点

WWD:「商品」をデザインする起点が「生活、社会」なのですね。

金井:日本は2100年には人口が約半分の6000万人になると言われています。それはどんな社会だろう?今を生きる人は誰も経験はありませんが、大正末期と同じ人口です。NHKの連続テレビ小説の「おしん」が生きた時代です。その2100年に向けて、社会がどういう社会であれば、みんなが感じ良く暮らせて幸せ感があるか、と考えて出したのが「経済と環境と文化がバランス良く支え合う社会」です。言葉を変えれば「自分のエネルギーを出し惜しみしない社会」です。

皆が自分のエネルギーを出し合う社会だと仮定して、日本も含めて世界の津々浦々にそういう拠点となるお店を作り始めています。それを今は第二創業と称して、社員が株主であり、個店経営者であり、プレイヤーである会社をぜひ作りたいと考えているところです。主人公は地域の皆さん。オーナーで経営者である超小売り人材である店舗のスタッフ達が地域に巻き込まれて一緒に社会を作りたい。それが社員の働く充足感だと思っています。

特に日本では5つのテーマ「食と農」「健康と安全」「空き家の利活用」「現代的コミュニティ」「文化・アート」を中心に取り組んでいきます。我々は間違いなく社会を変えなくてはいけない。だから若い人たちに期待をしています。

WWD:御社の社員の一人が「将来の夢は自分の故郷に無印良品の店を持ち、品出しをしている途中に息耐えることだ」と話していた理由がわかりました。生涯好きなことに夢中で誰かの役に立つ、いい人生ですね。

山縣良和・リトゥンアフターワーズ代表:僕は高校時代から無印良品のファンでしたが、当時は地元の鳥取には店舗がなくて大阪や神戸へわざわざ行ってワクワクしていたことを思い出しながら聞いていました。これから自分が話そうとしていることとは、ひょっとすると金井さんの話と全然異なるように聞こえるかも知れませんが、実は共通点が多くて嬉しい。

ファッションデザインと「心の持続可能性」

WWD:良品計画のキーワードの一つ「多様な文明の再認識」から想起するのが、2019年に上野恩寵公演噴水広場で発表した「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」のショーです。魔女をテーマにした3部作の最終章で、タイトルは「フローティング・ノマド」でした。

山縣:僕は社会の現状を自分の中に入れ込んでコレクションを制作することがよくあります。この時は、民族間の対立やその結果土地を渡り歩く人たちのことを考え、いずれ日本にもそういう人たちがやってくるだろう、とイメージしました。

WWD:主宰する「coconogacco(ここのがっこう)」も縫製や仕立てなどの服作りの技術というより社会を見つめる目を養うような性格ですね。

山縣:自分のルーツと向き合いながらファッション表現を学ぶ場所です。2008年からこれまでに1000人以上世の中に送り出してきました。最近では、卒業生である津野青嵐の作品がITS20周年記念式典本の表紙を飾ったり、セント・マーチン美術大学のサラ・グレスティ(Sarah Gresty)教授が来校したりと海外ともつながりを持っています。

WWD:技術を教えることはもちろん重要ですが、同じくらい心の持ちようを教える山縣さんの存在は貴重だと思います。

山縣:今日話したいのが「心の持続可能性」についてです。サステナビリティを考える時、物質的と精神的、両方の持続可能性が大事だと思うからです。立てた問いは「ケアメゾン、キュアメゾンは可能か?」。メゾンは家、ブランドを意味します。今よりもう少し、心に寄り添ったブランド、メゾンの活動ができないだろうか?という問いです。

ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為

WWD:その活動のひとつが昨年、長崎県の五島列島北部に位置する小値賀島(おぢかじま)での新作コレクションの展示・受注会ですね。

山縣:僕のルーツは長崎と鳥取です。東京藝大のゲスト講師として小値賀島でワークショップを行いました。日比野(克彦東京藝大学長)さんや学生と今も残る土地の文化や伝統、なくなったものなどをリサーチし、最終的には空き家を借りてインスタレーションやトークイベントなどを行いました。

WWD:その後それらの作品は、山梨県立美術館の展覧会「ミレーと4人の現代作家たち」で展示されました。

山縣:ミレーの絵画と同じ空間で展示する企画で、小値賀島で得たインスピレーションや衣服などを展示しました。シルクロードの玄関口とも言われる長崎と、シルクの終着地点と言われる山梨を結びつけることで、自分なりに新たな歴史のリサーチを重ねるよう意味合いがあります。自分が生まれ、暮らす場所の歴史を知り、リスペクトする。忘れ去られてしまったものの中にもある大切なものを見つめながら次へつなげてゆく。そういったことが「心の持続性」とつながると考えるからです。

最近は、サステナビリティ以上に「再生」を意味するリジェネラティブという概念が広がっていますが、自分たちが脈々と培ってきた文化や精神性にもリジェネラティブの姿勢をもって向き合うことが大事じゃないかと。だから小値賀島なり、日本なり、島の民の人間像って何だろう?と考えています。

小値賀島の近くにある無人島、宇々島は「自力更生の島」と呼ばれてきました。生活困窮者が移住し、税を免除されつつ生活を立て直しいずれ出てゆく。この仕組みは昭和30年代まで200年くらい続いたそうです。柳田國男が「困窮島」と呼んだこういったある種の共同体は、現代においてもインスピレーションとなりえる。

キュレーターであり作家、美術評論家のニコラ・ブリオーが最近「ラディカント」という本の中で、「群島の可能性」について言及しています。多くのものが融合し根付いている「大陸的」なものとの対比で、「島国的」はいろいろなかけ合わせで自己を作ってゆく旅人のような文化だと。群島で構成されている日本には、ニコラの「群島的な精神」があるんじゃないかと。

ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為でもあります。ファッションデザインを通して行う対話は自他のルーツや文化の理解や自尊心の回復、心のケアや治癒にもつながり、それが結果として未来のデザインにつながっていくのではないでしょうか。

WWD:金井さんは民族衣装にも詳しいですが今の話を聞いてどう思いましたか?

金井:ファッションの方はみな、これを辿るんですよ。浜野安宏さんも「地球風俗曼荼羅」で1980年ころに南米、アジアの民族衣装を研究して「ここに未来がある」と仰っていました。オラファー・エリアソンの現代アートは彼のルーツであるアイスランドの氷の世界が創作の原点。クリエイティブの背景はその時代や文化、伝統に加えて個人の記憶、生まれる前の記憶も含めて関係があるのでしょうね。

山縣:金井さんの「素の自分」という言葉を聞き考えたのが、和服を着てきた自分たちが洋服を着ていることである種の精神的な分断が起きているのでは?ということ。自分たちの文化、存在に尊厳、自尊心を持てなければ持続可能性がちょっといびつな形になってしまうのでは。

他人からの物差しではなく「素の自分」に自信をもてる社会

WWD:「地域の社会課題を解決するデザイン」が今日のお題ですが、お2人の話は多層的で深く、簡単に答えを得られるものではない、と痛感します。

金井:ファッションはある種の自己表現ですが、「他人に見られる」自己表現だけでなく、「素の自分が着たい、地球上にたった一人でもこれを着たい」も自己表現ですよね。レストランに行くときも美術館に行くときも他人からの物差しではなく「素の自分」に自信をもてる社会、それがこれから向かう先で、僕の理想でもあります。そのためには、さきほどの山縣さんの共同体の話じゃないけど地域社会も変わらないといけない。

日本には元々、人間も自然の一部だという考え方がありますが、都心よりもほかの地域の方が自然と近い暮らしをしてきたから社会を変える力は島を含めた地方にある、と考えます。だから無印良品の社員には自分で考え、地域の方と一緒に仕事か遊びか分からないぐらいの仕事をしてほしい。それが成長だし幸せだと思うから。

山縣:無印のコミュニティーは「印が無い」という響き、ひとつのイデオロギーに引っ張られないぞ、という、多層的で混ざり合うメッセージがいいなと思います。

「僕たちが役に立てそうであれば出ていく」が出発点

WWD:金井さんにお伺いします。地域に入り、街の課題も可能性も見えていざ「無印良品」が店舗を出そうとするとき、具体的には何から始めてどう設計に落とし込んでいくのですか?

金井:「無印良品」の創業時のクリエイターは、10代の頃に戦争を経験し、大体ひどい目にあっている。戦争が終わり正反対の社会で彼らが何を思ったかと言えば、権力に対して疑いの眼差し、なんですよ。そして弱い物、はかない物への眼差しも鋭い。だから「無印」の発想を持てたのだと思う。その視点で地域を見るときは資本の論理だけではなく、「僕たちが役に立てそうであれば出ていく」が出発点。出ていくとうまくいかないことも現実問題としてはある。そこからが出発点でこの地域に本当に必要な品揃えって何だろうと一生懸命考える。そんなノリで出店をしています。

WWD:営業、商品の分野を率いてきた金井さんですが、地域社会の中でも「無印」の理想と利益は両立すると考えますか?

金井:株主総会でもそういう「バランスをどのように取るのか」といった質問が出ますが、肝心なことはバランスではなく、地域と一緒に汗かいて実態を作っていくこと。今は社会や価値観が大きく変わるタイミングで、若い世代が変えようと動いている。結果的には商売につながる、儲かると考えています。

WWD:山縣さんにとってファッションのデザインとは?

山縣:哲学者の鷲田清一さんは、著書「ファッション学のすべて」の中で、医学者・精神科医である中井久夫さんの、「心のうぶ毛」という言葉を取り上げています。ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為であると考るとき、「ここのがっこう」の学生たちの作品はうぶ毛がぼふっと映えているように見える。

鹿児島のしょうぶ学園とのプロジェクトでは知的障がい者の作品を紹介しましたが、そこにも心のうぶ毛が、つまりある種の豊かさがありました。こういうファッションデザインの本質的な可能性をぼくは追及したいです。

WWD:心のうぶ毛、良い言葉ですね。暴力的に刈り取られてはならない心のうぶ毛。金井さんは心のうぶ毛は?

金井:僕は結構生えていると思う。アートやデザインの領域には、少し先を見ることができる人がいますよね。無印良品は地域に入りつつ、人間が生きていたら絶対必要な生活の基本の商品を、環境を害さず、むしろ使うことで環境に良くなる商品作ってひたすら頑張っていくから、山縣さんのようなアーティストはその世界をどんどん広げていってほしい。その両方が我々の社会には必要だと思うから。よろしくお願いします。

山縣:こちらこそよろしくお願いします。

サプライチェーン全体をどうやって清流のようにしてゆくかが課題

WWD:ここからは参加者との質疑応答です。

参加者:欧州ではアパレルの廃棄に関する法規制の施行が進んでいますが、それらは無印良品の商売にどのような影響をありますか?

金井:僕たちも含めて皆が、その方向に向かないとまずいだろうと、思います。リサイクルなども含めて新しいテクノロジーを取り入れて企業とお客さんが一緒にそういう社会を作るんだ、と思います。イギリスの経済学者エルンスト・フリードリヒ・シューマッハーは約50年前に「体温を保ち、着やすくて、見た目も良い服をなるべく少ない資源と労力で作るべきだ」と話しています。

参加者:創業時からサステナブルである良品計画は、それをどうやって伝えてゆくのでしょうか?伝えることは非常に重要だが、宣伝と受け取られもかねないですよね。

金井:僕らは一店舗一店舗がその地域にあり、信頼されたり、競争したりしている。(サステナブルな考え方は)コマーシャルを通じてではなく、そういった活動を地域の皆様と対話し共感の輪を拡げ、共創や協働によって伝わるのだと思います。まだ過程だが「無印良品がないと困るよ」といってもらえるところまで一生懸命に汗をかこうと思います。

参加者:山縣さんへ質問です。ルーツをコレクションやプロダクトで表現するとき、締め切りとはどう向き合うのでしょうか?最初からタイムリミットを設けてリサーチを進める?それとも自然と出来上がるものなのか?

山縣:どちらもあると思います。僕は常に発見の連続で終わりはない。ある種自分の中で旅を続けながら発展させていっている感じです。ただすべてを歴史に接続しなければならないとも思っていません。

参加者:無印良品はリーダーシップを取れる企業です。循環型社会の中で今の無印良品の取り組みは100点満点で何点?

金井:リーダーシップか、共感する場をどんどん設けて一緒に進めるかのどちらかで言えば我々は後者を選んでいます。素材、工程、包装みたいな領域ではもう済まなく、サプライチェーン全体をどうやって清流のようにしてゆくかが課題。そう考えるとまだ20点、です。

参加者:山縣さんへは、ファッションがサステナビリティにおいて、できること、可能性をどう感じていますか?

山縣:ファッションデザインの社会的な役割の一つに「人間の尊厳に対するデザイン」があります。ファッションデザインの歴史を遡ると、例えば差別的なもの、見過ごされたしまった価値観にメスを入れるようなところがあります。今僕は、人間の尊厳のために「体の中の感覚と外衣としての服がもっとつながってゆくべき」だと思っていて、サステナビリティについても、例えば問われている労働環境の問題など、そのためにファッションデザインができることがあると思っています。

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良品計画会長×リトゥンアフターワーズ代表「社会・地域の課題解決とデザイン」を探る

循環型社会の実現に向けて「社会・地域の課題解決とデザイン」は大きなテーマになりつつある。とはいえ「社会・地域」という大きな主語を前に、課題も解決方法も多くの人にとってはおぼろげだ。そこで理想像や概念から具体へ進める道筋を2人のフロントランナーによる対談から探る。金井政明・良品計画代表取締役会長には同社が実践している「地域密着型の事業モデル」について、またファッションデザイナーによる社会・地域の課題解決のアクション例として山縣良和・リトゥンアフターワーズ代表にそのユニークな取り組みを聞く。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)

PROFILE:左:金井 政明/良品計画 代表取締役会長

1957年生まれ。西友ストアー長野(現株式会社西友)を経て93年良品計画入社。生活雑貨部長として長い間、売り上げの柱となる生活雑貨を牽引し良品計画の成長を支える。その後、常務取締役営業本部長として良品計画の構造改革に取り組む。2008年2月代表取締役社長、15年5月代表取締役会長に就任、現在に至る。西友時代より「無印良品」に関わり、一貫して営業、商品分野を歩み、良品計画グループ全体の企業価値向上に取り組む

PROFILE:右:山縣 良和/リトゥンアフターワーズ代表、ここのがっこう代表

1980年鳥取生まれ。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学ファッションデザイン学科ウィメンズウェアコースを卒業。07年4月自身のブランド 「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」を設立。15年日本人として初めて「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」にノミネートされる。デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「ここのがっこう(coconogacco)」を主宰。19年には英国のファッションメディア「ザ・ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)が主催する「BOF500」に選出される。21年第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞 PHOTO:TAMEKI OSHIRO


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):テーマである「社会課題、地域振興とデザイン」についてお二人の考え方を実際のプロジェクトを通じてお話しいただきます。金井さんからお願いします。

金井政明・良品計画代表取締役会長:「素の自分に」が基本的な考え方です。我々人間はとても欲張りな生き物です。人の目を気にして比べて妬んだり、自慢をしたりというような性質を持っています。 そこに消費社会が入り込んでくると「高級な自動車に乗って」「僕の友達はこんなスニーカー持っている」みたいなことが起きて社会がどんどん個人主義になっていく。一方で共同体、その集団と心という「社会」もある。僕らの祖先がアフリカから出た時は道具なんてほとんどなくて、心とその集団でサバイブした。僕達はもう一度、その「心と集団」という時代に向かっている。今は過渡期です。

比べたり、妬んだり、自慢したりという社会に僕達は今生きています。でも、もう一人の自分は例えば、家に帰って全部脱ぎ捨ててホッとしたい。その「素の自分」はどんな商品を選び取るのだろうか、に着目しているのが私共です。

生活の価値そのものを作りたいという思いもあり、衣料品も生活用品も、食品もと領域を多岐に広げてきました。そのデザインは色々なクリエーターに参画してもらいながら積み上げてきましたが、一般的な消費や欲望を煽るようなデザインではありません。

WWD:煽るのではなく「役に立つ」、ですね。

金井:戦略はとてもシンプルです。キーワードが7つほどあり、最初の4つ「1.傷ついた地球の再生」「2.多様な文明の再認識」「3.快適・便利追求の再考」「4.新品のツルツル・ピカピカでない美意識の復興」は創業時から変わりませんが、この対談を含めて最近改めて話をする機会が増えています。

他の3つ「5.つながりの再構築」「6.よく食べ、眠り、歩き、掃く人間生活の回復」「7.OKAGE SAMA、OTAGAI SAMA、OTSUKARE SAMAを世界語として発信」は10年ほど前から「社会にこれが足りないよね」と話しながら加えてきました。

商品は徹底的にそぎ落とした「素材」としての良品、「素の自分」が自分の考え方で生活を編集する「商品」でありたいから、「商品」が自己主張する必要は全くない。できるだけ無駄なく、環境にも良く、そして使う方の自由になる「商品」をずっと目指してきました。

店は「自分のエネルギーを出し惜しみしない社会」の拠点

WWD:「商品」をデザインする起点が「生活、社会」なのですね。

金井:日本は2100年には人口が約半分の6000万人になると言われています。それはどんな社会だろう?今を生きる人は誰も経験はありませんが、大正末期と同じ人口です。NHKの連続テレビ小説の「おしん」が生きた時代です。その2100年に向けて、社会がどういう社会であれば、みんなが感じ良く暮らせて幸せ感があるか、と考えて出したのが「経済と環境と文化がバランス良く支え合う社会」です。言葉を変えれば「自分のエネルギーを出し惜しみしない社会」です。

皆が自分のエネルギーを出し合う社会だと仮定して、日本も含めて世界の津々浦々にそういう拠点となるお店を作り始めています。それを今は第二創業と称して、社員が株主であり、個店経営者であり、プレイヤーである会社をぜひ作りたいと考えているところです。主人公は地域の皆さん。オーナーで経営者である超小売り人材である店舗のスタッフ達が地域に巻き込まれて一緒に社会を作りたい。それが社員の働く充足感だと思っています。

特に日本では5つのテーマ「食と農」「健康と安全」「空き家の利活用」「現代的コミュニティ」「文化・アート」を中心に取り組んでいきます。我々は間違いなく社会を変えなくてはいけない。だから若い人たちに期待をしています。

WWD:御社の社員の一人が「将来の夢は自分の故郷に無印良品の店を持ち、品出しをしている途中に息耐えることだ」と話していた理由がわかりました。生涯好きなことに夢中で誰かの役に立つ、いい人生ですね。

山縣良和・リトゥンアフターワーズ代表:僕は高校時代から無印良品のファンでしたが、当時は地元の鳥取には店舗がなくて大阪や神戸へわざわざ行ってワクワクしていたことを思い出しながら聞いていました。これから自分が話そうとしていることとは、ひょっとすると金井さんの話と全然異なるように聞こえるかも知れませんが、実は共通点が多くて嬉しい。

ファッションデザインと「心の持続可能性」

WWD:良品計画のキーワードの一つ「多様な文明の再認識」から想起するのが、2019年に上野恩寵公演噴水広場で発表した「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」のショーです。魔女をテーマにした3部作の最終章で、タイトルは「フローティング・ノマド」でした。

山縣:僕は社会の現状を自分の中に入れ込んでコレクションを制作することがよくあります。この時は、民族間の対立やその結果土地を渡り歩く人たちのことを考え、いずれ日本にもそういう人たちがやってくるだろう、とイメージしました。

WWD:主宰する「coconogacco(ここのがっこう)」も縫製や仕立てなどの服作りの技術というより社会を見つめる目を養うような性格ですね。

山縣:自分のルーツと向き合いながらファッション表現を学ぶ場所です。2008年からこれまでに1000人以上世の中に送り出してきました。最近では、卒業生である津野青嵐の作品がITS20周年記念式典本の表紙を飾ったり、セント・マーチン美術大学のサラ・グレスティ(Sarah Gresty)教授が来校したりと海外ともつながりを持っています。

WWD:技術を教えることはもちろん重要ですが、同じくらい心の持ちようを教える山縣さんの存在は貴重だと思います。

山縣:今日話したいのが「心の持続可能性」についてです。サステナビリティを考える時、物質的と精神的、両方の持続可能性が大事だと思うからです。立てた問いは「ケアメゾン、キュアメゾンは可能か?」。メゾンは家、ブランドを意味します。今よりもう少し、心に寄り添ったブランド、メゾンの活動ができないだろうか?という問いです。

ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為

WWD:その活動のひとつが昨年、長崎県の五島列島北部に位置する小値賀島(おぢかじま)での新作コレクションの展示・受注会ですね。

山縣:僕のルーツは長崎と鳥取です。東京藝大のゲスト講師として小値賀島でワークショップを行いました。日比野(克彦東京藝大学長)さんや学生と今も残る土地の文化や伝統、なくなったものなどをリサーチし、最終的には空き家を借りてインスタレーションやトークイベントなどを行いました。

WWD:その後それらの作品は、山梨県立美術館の展覧会「ミレーと4人の現代作家たち」で展示されました。

山縣:ミレーの絵画と同じ空間で展示する企画で、小値賀島で得たインスピレーションや衣服などを展示しました。シルクロードの玄関口とも言われる長崎と、シルクの終着地点と言われる山梨を結びつけることで、自分なりに新たな歴史のリサーチを重ねるよう意味合いがあります。自分が生まれ、暮らす場所の歴史を知り、リスペクトする。忘れ去られてしまったものの中にもある大切なものを見つめながら次へつなげてゆく。そういったことが「心の持続性」とつながると考えるからです。

最近は、サステナビリティ以上に「再生」を意味するリジェネラティブという概念が広がっていますが、自分たちが脈々と培ってきた文化や精神性にもリジェネラティブの姿勢をもって向き合うことが大事じゃないかと。だから小値賀島なり、日本なり、島の民の人間像って何だろう?と考えています。

小値賀島の近くにある無人島、宇々島は「自力更生の島」と呼ばれてきました。生活困窮者が移住し、税を免除されつつ生活を立て直しいずれ出てゆく。この仕組みは昭和30年代まで200年くらい続いたそうです。柳田國男が「困窮島」と呼んだこういったある種の共同体は、現代においてもインスピレーションとなりえる。

キュレーターであり作家、美術評論家のニコラ・ブリオーが最近「ラディカント」という本の中で、「群島の可能性」について言及しています。多くのものが融合し根付いている「大陸的」なものとの対比で、「島国的」はいろいろなかけ合わせで自己を作ってゆく旅人のような文化だと。群島で構成されている日本には、ニコラの「群島的な精神」があるんじゃないかと。

ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為でもあります。ファッションデザインを通して行う対話は自他のルーツや文化の理解や自尊心の回復、心のケアや治癒にもつながり、それが結果として未来のデザインにつながっていくのではないでしょうか。

WWD:金井さんは民族衣装にも詳しいですが今の話を聞いてどう思いましたか?

金井:ファッションの方はみな、これを辿るんですよ。浜野安宏さんも「地球風俗曼荼羅」で1980年ころに南米、アジアの民族衣装を研究して「ここに未来がある」と仰っていました。オラファー・エリアソンの現代アートは彼のルーツであるアイスランドの氷の世界が創作の原点。クリエイティブの背景はその時代や文化、伝統に加えて個人の記憶、生まれる前の記憶も含めて関係があるのでしょうね。

山縣:金井さんの「素の自分」という言葉を聞き考えたのが、和服を着てきた自分たちが洋服を着ていることである種の精神的な分断が起きているのでは?ということ。自分たちの文化、存在に尊厳、自尊心を持てなければ持続可能性がちょっといびつな形になってしまうのでは。

他人からの物差しではなく「素の自分」に自信をもてる社会

WWD:「地域の社会課題を解決するデザイン」が今日のお題ですが、お2人の話は多層的で深く、簡単に答えを得られるものではない、と痛感します。

金井:ファッションはある種の自己表現ですが、「他人に見られる」自己表現だけでなく、「素の自分が着たい、地球上にたった一人でもこれを着たい」も自己表現ですよね。レストランに行くときも美術館に行くときも他人からの物差しではなく「素の自分」に自信をもてる社会、それがこれから向かう先で、僕の理想でもあります。そのためには、さきほどの山縣さんの共同体の話じゃないけど地域社会も変わらないといけない。

日本には元々、人間も自然の一部だという考え方がありますが、都心よりもほかの地域の方が自然と近い暮らしをしてきたから社会を変える力は島を含めた地方にある、と考えます。だから無印良品の社員には自分で考え、地域の方と一緒に仕事か遊びか分からないぐらいの仕事をしてほしい。それが成長だし幸せだと思うから。

山縣:無印のコミュニティーは「印が無い」という響き、ひとつのイデオロギーに引っ張られないぞ、という、多層的で混ざり合うメッセージがいいなと思います。

「僕たちが役に立てそうであれば出ていく」が出発点

WWD:金井さんにお伺いします。地域に入り、街の課題も可能性も見えていざ「無印良品」が店舗を出そうとするとき、具体的には何から始めてどう設計に落とし込んでいくのですか?

金井:「無印良品」の創業時のクリエイターは、10代の頃に戦争を経験し、大体ひどい目にあっている。戦争が終わり正反対の社会で彼らが何を思ったかと言えば、権力に対して疑いの眼差し、なんですよ。そして弱い物、はかない物への眼差しも鋭い。だから「無印」の発想を持てたのだと思う。その視点で地域を見るときは資本の論理だけではなく、「僕たちが役に立てそうであれば出ていく」が出発点。出ていくとうまくいかないことも現実問題としてはある。そこからが出発点でこの地域に本当に必要な品揃えって何だろうと一生懸命考える。そんなノリで出店をしています。

WWD:営業、商品の分野を率いてきた金井さんですが、地域社会の中でも「無印」の理想と利益は両立すると考えますか?

金井:株主総会でもそういう「バランスをどのように取るのか」といった質問が出ますが、肝心なことはバランスではなく、地域と一緒に汗かいて実態を作っていくこと。今は社会や価値観が大きく変わるタイミングで、若い世代が変えようと動いている。結果的には商売につながる、儲かると考えています。

WWD:山縣さんにとってファッションのデザインとは?

山縣:哲学者の鷲田清一さんは、著書「ファッション学のすべて」の中で、医学者・精神科医である中井久夫さんの、「心のうぶ毛」という言葉を取り上げています。ファッションデザインは心の内なる人間像を外側に出す行為であると考るとき、「ここのがっこう」の学生たちの作品はうぶ毛がぼふっと映えているように見える。

鹿児島のしょうぶ学園とのプロジェクトでは知的障がい者の作品を紹介しましたが、そこにも心のうぶ毛が、つまりある種の豊かさがありました。こういうファッションデザインの本質的な可能性をぼくは追及したいです。

WWD:心のうぶ毛、良い言葉ですね。暴力的に刈り取られてはならない心のうぶ毛。金井さんは心のうぶ毛は?

金井:僕は結構生えていると思う。アートやデザインの領域には、少し先を見ることができる人がいますよね。無印良品は地域に入りつつ、人間が生きていたら絶対必要な生活の基本の商品を、環境を害さず、むしろ使うことで環境に良くなる商品作ってひたすら頑張っていくから、山縣さんのようなアーティストはその世界をどんどん広げていってほしい。その両方が我々の社会には必要だと思うから。よろしくお願いします。

山縣:こちらこそよろしくお願いします。

サプライチェーン全体をどうやって清流のようにしてゆくかが課題

WWD:ここからは参加者との質疑応答です。

参加者:欧州ではアパレルの廃棄に関する法規制の施行が進んでいますが、それらは無印良品の商売にどのような影響をありますか?

金井:僕たちも含めて皆が、その方向に向かないとまずいだろうと、思います。リサイクルなども含めて新しいテクノロジーを取り入れて企業とお客さんが一緒にそういう社会を作るんだ、と思います。イギリスの経済学者エルンスト・フリードリヒ・シューマッハーは約50年前に「体温を保ち、着やすくて、見た目も良い服をなるべく少ない資源と労力で作るべきだ」と話しています。

参加者:創業時からサステナブルである良品計画は、それをどうやって伝えてゆくのでしょうか?伝えることは非常に重要だが、宣伝と受け取られもかねないですよね。

金井:僕らは一店舗一店舗がその地域にあり、信頼されたり、競争したりしている。(サステナブルな考え方は)コマーシャルを通じてではなく、そういった活動を地域の皆様と対話し共感の輪を拡げ、共創や協働によって伝わるのだと思います。まだ過程だが「無印良品がないと困るよ」といってもらえるところまで一生懸命に汗をかこうと思います。

参加者:山縣さんへ質問です。ルーツをコレクションやプロダクトで表現するとき、締め切りとはどう向き合うのでしょうか?最初からタイムリミットを設けてリサーチを進める?それとも自然と出来上がるものなのか?

山縣:どちらもあると思います。僕は常に発見の連続で終わりはない。ある種自分の中で旅を続けながら発展させていっている感じです。ただすべてを歴史に接続しなければならないとも思っていません。

参加者:無印良品はリーダーシップを取れる企業です。循環型社会の中で今の無印良品の取り組みは100点満点で何点?

金井:リーダーシップか、共感する場をどんどん設けて一緒に進めるかのどちらかで言えば我々は後者を選んでいます。素材、工程、包装みたいな領域ではもう済まなく、サプライチェーン全体をどうやって清流のようにしてゆくかが課題。そう考えるとまだ20点、です。

参加者:山縣さんへは、ファッションがサステナビリティにおいて、できること、可能性をどう感じていますか?

山縣:ファッションデザインの社会的な役割の一つに「人間の尊厳に対するデザイン」があります。ファッションデザインの歴史を遡ると、例えば差別的なもの、見過ごされたしまった価値観にメスを入れるようなところがあります。今僕は、人間の尊厳のために「体の中の感覚と外衣としての服がもっとつながってゆくべき」だと思っていて、サステナビリティについても、例えば問われている労働環境の問題など、そのためにファッションデザインができることがあると思っています。

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「パタゴニア」の製品開発責任者が語った「地球に責任を持つ」モノ作りの実践と葛藤

INFASパブリケーションズは12月11日、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」を東京ポートシティ竹芝ポートホールで開催した。4回目を迎えた今回の開幕を飾ったのは、パタゴニア(PATAGONIA)のマーク・リトル(Mark Little)=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクターだ。この日のためにアメリカから来日し、「環境危機下で製品をデザインするときに必要な視点とは何か?」をテーマに、「地球に責任を持つデザインをするときに必要な視点」「製品を作る意義」「チームメンバーとの価値観共有と評価法」について自身の経験を交えて語った。(この記事はから抜粋・加筆しています)

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):まず、マークさん自身にキャリアについて教えてください。

マーク・リトル=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクター(以下、マーク):パタゴニアに入社して約12年、アパレル産業には24年近くいます。カナダで生まれ、10歳のときにアメリカに移住しました。カナダは私のアウトドアへの愛と情熱が生まれ、育まれた場所です。

私とパタゴニアとの歩みのきっかけはユーザーの一人だったこと、そして次世代のためにできることをしたいという思いから始まりました。

アパレル産業でのキャリアは2000年代、「アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)」の絶頂期に始まりました。そこで製品作りについて多くを学び、また、世界中の製産工場や紡績工場などに行き、製品作りのダークサイドを見ることになりました。その後、いくつかのファストファッションブランドで働き、製品の使い捨てや質の悪い製品を目の当たりにするようになり、最終的にパタゴニアで仲間を見つけることができ、地球へ情熱を捧げています。

資本主義や製造業、特に採掘資本主義がいかに気候変動危機に影響を及ぼしていて、パタゴニアがそれに対してどのように取り組んでいるかいう話をする前に、原点が非常に大切なので、パタゴニアの歴史を話そうと思います。

パーパス「故郷である地球を救う」が生まれた背景

マーク:私たちの掲げる「故郷である地球を救う」というミッションステートメントは決してマーケティングキャンペーンではなく、パタゴニアというブランドが紡いできた歴史に深く根ざしており、その歴史は1974年にイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard )が会社を立ち上げたときまでさかのぼります。イヴォンは1970年代前半にビジネスを始めましたが、彼は、いやいやビジネスマンになったと公言しています。彼は、ビジネスマンになるためにパタゴニアを始めたのではないのです。

イヴォンもカナダのケベック州の生まれで、幼少期にアメリカ・ニューイングランド地方のメイン州へと家族で移住し、一家は羊毛紡績工場で働きだしました。メイン州での生活では、素晴らしい森林で多くの時間を過ごし、そこからアウトドアに対する情熱が生まれました。特に魚釣りにのめり込んでいきました。

WWD:パタゴニアはガレージから始まったんですか?このガレージの写真、いいですね。

マーク:これは悪名高きブリキ小屋、ティンシェッドです。この小屋こそが、のちのちイヴォンが登山用器具を作り始めるきっかけになった場所です。しかしその前に、彼の冒険好きな母親は、一家に、メインからカリフォルニアへ移ろうと説得し、イヴォンの父親が喘息を患っていたこともあり、カリフォルニアへの移住を決めます。

カリフォルニアへの旅路で、彼らは空腹の女性と子どもたちと出会いました。イヴォンの母親はこの旅に向けてたくさんの食物を準備していたので、彼女たちに食物を与えました。イヴォンにとって初めての慈善活動の経験です。この慈善経験こそが、パタゴニアの歴史の中でも重大な瞬間の一つです。

カリフォルニアでの生活でイヴォンは言葉と文化背景の違いから、多くの時間を山で小川を探したり、海に行ったりと、一人で過ごすことになりますが、高校時代に鷹狩りクラブに入部します。クラブでは鷲や鷹の訓練をする訳ですが、最終的には、カリフォルニア州で最初の鷹狩り規定の制定に一役買うこととなります。イヴォンがこの先どんな道のりをたどるのかが見えて来たでしょう?
鷹狩りクラブにいる間、イヴォンは鷹を寄せ付けずに鷹の巣に辿り着く方法を見つけました。ある日、彼がいつものように鷹を追い払っていると、シエラ・クラブ(サンフランシスコに本部を置くアメリカの環境保護団体で、アメリカの50州に支部がある)の人々に会いました。彼らはイヴォンにいくつかの登山のアドバイスを与えてくれました。そしてこの鷹狩りクラブで技を磨く中で、登山に対する愛情が育まれていきました。

イヴォンは、夏はヨセミテやワイオミングなどを歩いて回り魚釣りを、冬にはメキシコでサーフィンをしました。こうしたイヴォンの行動から、彼のアウトドアに対する深い愛情を感じていただけると思います。

その後イヴォンは鍛冶屋になる方法を独学で学びますが、これがイヴォンの方向性を大きく変えるきっかけになりました。鍛冶を学ぶことで、製品に対する熱意が芽生えました。イヴォンはパタゴニアを、登山用アパレルとしてスタートしたのではなく、登山用器具のベンチャービジネスとしてスタートしたのです。理由は、彼が納得できる上質な登山器具が見当たらなかったから。彼はピトンを自分の車のトランクで地道に販売し、そこで得た利益を登山とサーフィンを楽しむことに注ぎました。

そのうちに需要が増え、イヴォンはピトンの生産を続けて行くのですが、このタイミングで、イヴォンは品質にこだわるようになります。これがパタゴニアの歴史のキーポイント、その2です。パタゴニアが創業から“高品質が全て”とこだわり続けるきっかけです。なぜならアウトドアでは、質の悪いものは死を意味するからです。

のちにイヴォンは、彼の作る登山用器具が岸壁と環境にダメージを与えているということに気付きます。これがきっかけとなり、シュイナード・イクイップメントは、新しい形状による安全確保と、よりサステナブルな製品作りへと導かれます。私たちが“製品が環境に与える影響”を理解し取り組む最初のきっかけになりました。さらに、カタログで“クリーンクライミング”という環境エッセイを掲載することになりました。この一件こそが、環境問題への取り組みの大きな第一歩になりました。パタゴニアの歴史において、非常に辛い時代でした。

「私たちの行動自体が環境の一部であること」を学ぶ

イヴォンはまた、現在パタゴニア本社のあるべンチュラで自分自身の活動を続ける中“アクティビズム”の機会を見出しました。そんな時に周辺環境に多大な影響を及ぼすべンチュラ川の転流工事が行われると聞き、イヴォンは市役所に転流反対を訴えに行きました。これはイヴォンと会社にとっての初のアクティビズムでしたが、この行動のおかげでべンチュラ川の転流工事は取りやめとなり、「1% for the planet」(収益の1%を地球のために)というプログラムを始める着想源にもなりました。パタゴニアが「アクティビズム」「品質」「環境へのインパクトについてこだわり続けている」という3点を知っていただくためにお話しました。その後アパレル分野に進出し、「シュイナード・イクイップメント」から登山用アパレルの会社になりました。

私たちは製品を生産する中で、気候に及ぼす影響の大きさを知り始め、製品作りの方向性を大きく変えることになります。私たちの行動自体が環境の一部であるということを学び、地球温暖化と生態系の破壊の規模について知り、それに対して私たちがどう貢献できるかを確かめていきます。私たちは企業として、真剣かつ献身的にビジネスのあり方を変えるつもりで挑みました。自社製品を、より害の少ない材料を用いて生産し、収益の1%を地球を守るための活動に寄付し始めました。そして、パタゴニアはカリフォルニア州初のベネフィットコーポレーションになります。

近年では、パタゴニアはミッションステートメントを、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」、と改訂したことはみなさんもご存知のことと思います。これは、デザイナー、生産プロセス担当、経理担当……、会社のどの部署で働いているかに関わらず、パタゴニア社全体の意思決定の指針となります。私たちが毎日目を向け、どのようにビジネスに取り組むのかを定めた指標なのです。

「メーカーとして故郷の地球を救う」意味

WWD:その辺りはこの後さらに掘り下げさせていただきます。

マーク:以前のミッションステートメント「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」では十分ではありませんでした。私たちは、アクティビストをサポートするだけの企業から、アクティビスト主導の企業へと倍増し、進化したかったのです。これが、製造と資本主義におけるパタゴニアの役割、そして「地球を救うためにビジネスを営む」という私たちのビジネスの柱に繋がって行く訳ですが、では、これは何を意味するのでしょうか?「メーカーとして故郷の地球を救う」とはどういう意味でしょうか?

私たちは、気候変動が私たちの生活を脅かしていることを理解しています。私たちは、世界規模の採取主義的な経済がこの危機の根本原因であることを理解しています。私たちは、消費主義が環境破壊の原動力になっていることも理解しています。私たちはパタゴニアがこの問題に関与していることを自認しています。

したがって、パタゴニアの次の段階のアクションは、「不必要な危害を誰にも加えないこと」から、「”危害を加えないこと”以上の努力をすること」になりました。私たちは、たとえ資本主義経済の中であっても、商品消費型のビジネスが広義において非採取主義的になれる可能性があることを証明するために取り組んでいます。

WWD:ルーツが大切であると杭が打たれました。売れていたピトンが環境に影響を与えていたと理由から売るのをやめたのは、相当勇気が必要な判断でしたよね?

マーク:ええ、流れのままに進むということです。イヴォンとチームメンバーが持っていたリーダーシップと先見の明の結果であり、彼らは製品製造が引き起こす影響を理解していました。登山用品は生死が関わりますので、品質が最重要だったことは明らかです。

より大切なポイントは、シュイナード・イクイップメントの初期の頃からずっと、ビジネスの優先事項は製品の品質より何よりも生産している商品が環境に及ぼす影響について考えることで、それが私たちパタゴニア気質の基盤であり、ビジネスを始めた日からずっと変わらないということです。

イヴォンは誰が働くとかそういったことは全く気にしていないのです。彼が気にかけているのは正しい行いをすること。繰り返しになりますが、彼がビジネスをするのはお金を得るためではなく、登山とサーフィンにはまったからです。

新しい資本主義を体現するための新体制発表から変わったこと

WWD:上手く行くかどうかは分からなかったけれど、「正しいことをしたい」と思った。今日の名言を胸に刻みましょう。今日は3つのテーマについてお話いただきます。1つ目はパタゴニアが目指す新しい資本主義と新体制での製品作り、2つ目は製品を作る意義、3つ目はチームメンバーとの価値観共有と評価法です。まず1つ目の「地球が唯一の株主になる」と聞いた時、マークさんはどう受け止めましたか?

マーク:衝撃を受けました。昨日のことのように覚えています。私たちは全員“キャンパス”(パタゴニア本社)に集合しました。パンデミックが明けたばかりの頃で、数年ぶりに全員が直接顔を合わせたタイミングでした。そして、誰も発表の内容を知りませんでした。元 CEO の皆さんを含む初期メンバーが姿を現し始め、どうやら何か大きなことが起こっていると、とても興奮しました。新体制発表のタイミングは、私たちの創立50周年でもありました。ちょうど次の50年を視野に入れ23年秋コレクションに取りかかり始めた非常に意味のあるタイミングでした。「最初の50年間で学んだことは何か」「継続したい物は何か」そして「やめたいことは何か」について熟考しながら次のチャプターに進みたいと考えました。そしてイヴォンとシュイナード家の決断は次の 50 年に向けた大胆なアプローチ方法であると感じました。

株式譲渡について最も意義深い点は、会社を地球に委ねるという点です。地球は厳しい上司です。母なる地球、彼女と一緒に働くのは本当に難しいです。私が“キャンパス”を歩き回ると木々に怒鳴られたり、風に飛ばされた葉っぱが私に当たったり、地球はイヴォンよりもさらに働くのが難しい相手です。

イヴォンとシュイナード家はオーナーシップを 2つの組織に譲渡しました。そして重要なことを言及させていただきますと、私たちは「1% for the Planet」を通して、常に収益の 1% を寄付し続けてきました。私たちは気候危機において十分な推進力を発揮できていないと感じていました。これらを深慮した結果、2つの組織を新たに設立し地球を唯一の株主として据えたわけですが、これはビジネスに再投資されなかった全ての利益が地球に分配されるということを意味します。これは非常に壮大な規模の話です。

自然から採った価値ある原材料、それを株主の富に変えるという今までの方法ではなく、私たちはビジネスで得られる富――つまりパタゴニアの富を、原材料の源である母なる地球の創造と保護に役立てるのです。パタゴニアは、株式公開する代わりに、パーパスを遂行した訳です。これにより、気候と生態系の危機を保護し、永久に戦うことができます。いいと思いませんか?

WWD:この新体制はモノ作りの責任者であるマークさんにとっては、地球に責任を持つ製品作りというとんでもなく大変な役割が求められている訳ですよね。製品をデザインする時に必要な視点について教えてください。

マーク:私たちの製品デザインの哲学をお伝えするのにちょうど良い前フリになりましたね!“キャンパス”の正面玄関に刻まれていて、私たちがいつも目にするものであり、そしてこの発表とともに強烈に思い起こされた言葉をご紹介します。シエラ・クラブのエグゼクティブディレクター、デイビッド・ブラウワー氏の言葉で「死んだ地球からはビジネスは生まれないです。死んだ惑星ではビジネスが成り立ちません。これらは、製品開発チームの私たちにとっては常に最優先事項です。けれど、技術的には大きなプレッシャーですよね?私たちは、矛盾するものを一切作りたくないメーカーになってしまった訳ですから。私たちは、製品作りをする時点で矛盾しているのです。

マーク:この図は「故郷である地球を救う」ために私たちが取り組んでいる事業の核心、「地球が唯一の株主である」ということを要約したものです。製品開発やその他のビジネスを行うときのアプローチについての重要な柱です。パタゴニアは地球上の生命のために従事し、自分たちが作ったもの全てを保証します。私たちは人々の情熱を功績として残します。私たちは草の根活動を支援します。私たちは衣類を修理し、再販を経て、利益を地球に還元します。

「採取主義的資本主義の製品製造・販売は正当化できない」ことを強く問い、模範となるために

WWD:分かりやすい図ですね。

マーク:私はこの図が好きで、時々カンニングペーパーとして持ち歩くこともあります(笑)。

では、この図は製品および製造面において何を意味するのでしょうか?私たちは故郷の地球を救うために製品を作っていますが、これは少し矛盾しています。なぜなら、私たちが何かを作るときは常に、何かを搾取していることになるからです。私たちがパタゴニアにいる理由は、私たちが行う全てのことで模範を示し、先頭に立つことです。私たちのパーパスは、採取主義的資本主義の製品開発と販売を営むことは、もはや正当化できないと強く問うことです。

製品開発でも、単に害を減らすだけでなく、それ以上のことを行う必要があります。パタゴニアが行うことは全て問題解決の一部であり、本質的な問題を解決することに重点を置いています。したがって私たちは最良な素材に重きを置いています。最良の素材とは、例えば、環境再生型有機農業、リサイクル合繊、廃棄された古着の活用などです。当社は優れた品質だけではなく、製品の終着点まで見据えて生産を行っています。

私はこのデザイン哲学に辿り着き、これに基づいて取り組んでいます。私たちは仕組まれた緊張の世界に住んでいます。パタゴニアは基本理念に沿わない物は何も作りたくないと考え、製品の品質保持が私たちにできる最も重要なことだと信じています。私たちはファッションのトレンドなど気にしていませんし、トレンドを追うことはパタゴニアの価値観とは異なります。

大好きな文章がひとつあります。「完璧さとは、これ以上追加するものが何もない時に達成されるのではなく、これ以上取り除く物がないときに達成されるのです」(サン=テグジュペリ)。これは私たちの製品作りへのアプローチにも当てはまるもので、より少ないリソースでより多くのことを実現しようとするものです。私たちは、「禅」のスタイルと「シェーカースタイル」(シェーカー教徒たちのインテリアを模したシンプルかつ機能的なスタイル)のシンプルさに基づいて、必要かつ便利でなければ作らないという設計哲学のもと、日々活動しています。しかし、製品が必要な物かつ役に立つ便利な物なのであれば、ためらわずに美しく製作しようーーこれがパタゴニアの第一のルールです。

「品質とはすなわち環境問題である」、品質を重視する理由

次のトピックは「品質」です。今日の話の中で、皆さんに記憶して欲しいことがたった1つあるとすれば、この言葉に尽きます。「品質とはすなわち環境問題である」ということです。

たとえどんなに環境に配慮した材料を使用しても、使い捨て製品を製造すれば、その素材がもたらす利益を軽減してしまうことになります。ですから製品は、どのような品質であるかが重要なのです。安価な製品は祖末に作られ、すぐに捨てられてしまう。つまり人々とこの地球に多大なダメージを与えていることになります。したがって品質こそが現在パタゴニアが心底強化していることであり、活動の中核なのです。

WWD:「製品を作る意義」について。製品を通じてサプライチェーンを変革されていますが、その具体例を教えてください。

マーク:はい。私たちはこれから作る製品について考えるとき、「その製品を作ることでどのような問題を解決しようとしているのか」をしっかりと理解したうえで製作に入ります。それぞれの製品が貴重な資源を使用して作ることを熟知しているので、目的、機能性、そして長持ちすることを考え抜いてデザインをします。そうしたデザインの基礎となる品質こそが、製品寿命を高めるためのキーとなるので、先ほど品質の部分について何度もしつこくお話してしまいました。

解決すべき問題が見つかった製品は、さらに製品寿命や使用する素材など、どのようにアプローチすべきかを熟考します。耐久性と機能性、長持ちするかの3点がデシジョンツリー(決定木)を作成する際の中核になります。

これから解決すべきは「製品の終着点について考慮すること」

マーク:低品質製品の問題点は、使い捨ての観点で考えられていることです。私たちは一時的なトレンド、計画的陳腐化の道をたどっています。ファストファッション、大量消費主義――人々は過剰に生産し、不必要なものを過剰に消費しています。再生不可能な資源を使用し、有毒化学物質、環境汚染、(生産に際して)使われるエネルギーの量、水の使用などの問題があります。そしてさらなる問題は、ただ「要らなくなったから」と捨てられてしまう、使い捨て製品から発生する産業廃棄物です。製品の終着点について考慮されていない、リサイクルも堆肥化も不可能な廃棄物です。これらが解決すべき問題点です。パタゴニアがこうした問題に対して何を行っているのか、あるいはそうした問題への解決策の取り組みとして修正したキーポイントが2点あります。それは私たちと「製品」との関係性です。

1つ目は、可能な限りリサイクル原料を使用して、耐久性があり、長持ちする、高機能な製品を製造すること、2つ目は、耐用年数が終了した衣類を修理、再利用、またはリサイクルする取り組みです。製品をデザインするときに、これら2つについて考えます。独自のデザイン価値を備えた製品を生み出し、品質を重視しながら、一時的なトレンドを追うのではなく、タイムレスな製品をデザインしています。

私たちは大量消費主義について考えていますが、これがおそらく次の大きなテーマになるでしょう。ところで、パタゴニアが行った「このジャケットを買わないでください」というキャンペーンを覚えていますか?「ジャケットを買いに来ないでください」と言うのはビジネスとして少し変わっていますよね。しかし結局のところ、パタゴニアの製品作りと同じように、消費者の皆さんには「自分は本当にそれを必要としているのか?」と考えてもらいたいのです。私たちは接客で、「このジャケットがご希望ですね?承知しました、環境に配慮した最新バージョンを提供させていただきます。けれど、ちょっと立ち止まって新しく買う必要が本当にあるのかを考えてください」と言った会話を始めています。従来型の「物との関係のあり方」を変えることで、カスタマーを消費者からパタゴニアのコミュニティに取り込みつつ、行動変容を促すことができるのです。

またパタゴニアのコミュニティでは、”Need less”(新規購入を減らす)手段として、簡単かつ楽しい方法を提案したいとも考えています。そのため、デザインと製品製作チームに多目的なワードローブやレイヤリングシステム、買い換える必要のない時代を超越した製品をデザインしてもらおうと考えています。

パタゴニアが製品作りで取り組む具体的なアクション

WWD:具体的なアクションについて教えてください。

マーク:パタゴニア製品に使われている素材に対する解決策について少しお話します。パタゴニアは過去40数年にわたって、非常に堅固なSER(社会環境責任)方針を構築しました。そしてそれは、2025年に向けた当社の戦略的取り組みの一部でもあります。そのキーとなる2点は、世界中のコミュニティに投資をすることと、パタゴニアのパートナーたちを“ファミリー”の一員として真剣に考えることです。私たちにとってパートナー企業は製品の延長線上にいる人(ビジネス上だけの関係性)ではなく、“ファミリー”なのです。

そのためにパタゴニアでは25年に向け、優先材料の使用率を100%にすることを目標にしています。また一方で、化学物質の永久排除に向けても投資しています。DWR(durable water repellent/耐久撥水)は永久化学物質の一種ですから。それとは別に染色では、製品の核となるカラーバリエーションで、”エバーグリーンカラー”と呼ばれる、合成繊維向けの染料の中では環境への悪影響が非常に低い染料を、全ての色味で100%使用できるように取り組んでいます。また、残端などの布地の廃棄物でリサイクル100%を目指しており、合成繊維の 50%で二次廃棄物を使用できるように取り組んでいます。

以上がパタゴニアの推奨する環境に配慮した素材であり、社会的および環境的責任の遂行を支える柱です。これが、私たちのモノ作りにおけるアプローチ方法です。また天然繊維の使用では、革新的農業技術を使った素材、具体的には、オーガニックコットン、コットンインコンバージョン・コットン(有機栽培に変換するための、移行期間中に生産されるコットン)、そしてリジェネラティブ・オーガニックコットン(環境再生型有機農法によるROC認定コットン)を使用しています。

合成繊維の二次廃棄物活用では、パタゴニアは長年、ほとんどの製品でリサイクルポリエステルを使用してきましたが、今は次のレベルに引き上げ、指針としてきたリサイクル素材だけでなく、埋め立て地に送られる産業廃棄物や海洋廃棄物の回収・使用に乗り出そうとしているところで、これらが私たちの言う「二次廃棄物」です。

そのために次のような企業と提携しています。ナイロン素材では、廃漁網の再利用の提携をブレオ社と、ポリエステル素材ではペットボトルの活用をバイオニックと協働しています。彼らとプラスチック廃棄物を再利用するための地域廃棄物管理システムを構築しました。道路や海岸にリサイクルステーションを設置し、海岸清掃キャンペーンや地域社会への働きかけを組織化し、分別、こん包、粉砕のための集中施設や、地元企業、学校、その他の機関への回収ルートを整備しました。一旦ペットボトルが海に流れ込んでしまったら、手の施しようがないですよね?すぐさま海に沈んでしまい、利用できなくなります。そして、社会的責任の遂行が鍵となります。

リサイクルウール素材とリサイクルコットン素材は、本格的に研究を始めているもう1つの分野です。この2つの素材の素晴らしい点は、すでに色が付いているため染色する必要がないことが多く、分別プロセスが進むにつれて、埋め立て地から転用できるだけでなく、ゴミとして終わらせず、継続的な再利用が可能になるかもしれないという点です。

そして最後に、私たちは化学物質とは永遠に別れを告げます。25年までに、パタゴニア全製品でPFC(有機フッ素化合物)フリーを達成します。今後この規制がカリフォルニア州やアメリカだけではなく欧州で、そして究極的には全世界で実施されていきます。

パタゴニアのゴール達成に向けての進捗について少しだけ話します。23年の秋冬コレクションで使用素材の 91% を環境配慮素材にすると掲げた目標は無事に達成されました。25年までに、ダウンは全て責任を持って調達された物を使用します。つまり、卵に至るまでどこから来たのかを把握し、もし新たにダウンを使用する場合はその調達ルートから来るバージンダウンを使用します。実際のところ、古い掛け布団や枕などの寝具から出たリサイクルダウンを使用している場合がほとんどです。

そしてみなさんご存知のようにコットン素材では1996年以来、100%オーガニックコットンを使用しています。環境再生型有機農業やコットン・イン・コンバージョンを引き続きサポートしております。

結果的に25年までに、私たちは目標をほぼ達成しつつあることになります。そして世の常ですが、最後のほんの少しが最も困難とはなりますが、目標の 97% は達成されることになるでしょう。これは困難な課題を乗り越えたという点で、「多大なる功績」と言えるでしょう。

価値観の共有と評価法

WWD:本当に困難な道だと思います。これだけの具体的なアクションを重ねてもなお100%になり得ず、まだ3%残っているという事実に驚かされます。3つ目のテーマ「価値観の共有と評価」について、マークさんがどんなリーダーシップを発揮されているのかお聞かせください。

マーク:実際のところ、パタゴニアではとても簡単だと思います。なぜなら、パタゴニアに入社する人は皆、ミッションステートメントを信じてやって来ます。私たちにとってはこの点が唯一にして最重要な評価ポイントです。もちろん、それでも私たちはビジネスを営んでいるわけですから、目標があり、生き残るために売り上げの必要指標があります。しかし、売り上げは私たちを日々動かす原動力ではありません。パタゴニアの原動力はあくまでも「地球」なのです。そして、生きている者にとっても亡くなった者にとっても、パタゴニアに属する皆にとって大切なのは私たちのミッションステートメント「地球を救うためにビジネスを営む」というただ1点なのです。私たちは常にそれを従い自己評価をしています。自分たちがここでやるべきことは何かを理解したうえで出勤する訳ですから、非常に簡単です。スッキリ明快、目的はたった1つなのです。つまり、パタゴニア社員となったその日から、私たち全員が同じ方向を向いています。

ビジネスを通して「地球全体を救う」ために最小限の害で最高の製品を作り、他のビジネスにインスピレーションを与えるなど、どんなに大きな仕事を成し遂げたことも、原点にあるのはミッションステートメントなのです。

また、お客さまに私たちのコミュニティに参加してもらうことは、私たちの核となる価値観であり重要なことでもあります。そして私たちは可能な限り製品やクリエイションに責任を持ち、系統的かつ客観的にどのような種類の製品を作るかを見極めていきます。そしてお客さまにもそのソリューションに参加していただきたいと考えています。

「コモンスレッズ・イニシアティブ」(パタゴニア社の商品回収プログラム)は、共同的プロジェクトという点で、自分自身を称えたい取り組みのひとつです。この取り組みは再考することの大切さを改めて知る良い機会となりました。繰り返しになりますが、私たちと「物」との関係をもう一度考えてみましょう。欲しいと思う気持ちを減らし、修理・再利用・リサイクルの可能性についてもっと考えましょう。

それから、ただ消費、消費、消費と新しい物を買い続けるのではなく、ぜひ中古品を購入していただきたいです。実は、2013年のファッション・ウィーク中に(製品を長く使うためのプラットフォーム)「ウォーンウエア(WORN WEAR)」をローンチしました。「製品」との関係性を考える意味で、消費者をソリューションの一部として招待した形となったわけですから、パタゴニアのコミュニティにとって大きく評価すべきことと言えます。新しい物を買うのであれば、その製品が長く使えるかどうかを考えてください。手持ちの洋服で、どこかが破れたり、ボタンをなくしてしまった場合は、捨てたり新しい物を買わず、修理することを考えてください。私たちは、顧客が訪ねて来て修理を継続できるよう、顧客とコミュニティとの関係を築き始めています。

WWD:評価についてもう少し教えてください。何をしたら褒められるのか?何をしたら褒めるのかなど具体的なことはありますか?

マーク:利益を逃したのに賞賛されるという状況を理解するのはきっとみなさんには難しいでしょうね。この事実を正しく理解するのに苦労しているようですから。確かに、私たちはビジネスを継続できるように努力し続け、利益を上げる必要があります。しかし、です。パタゴニアでは「利益目標を達成できたこと」よりも、「フェアトレード認定工場を導入したこと」が賞賛される可能性があります。パタゴニアはそんな会社なのです。

(そのような方針でも)会社はかなりうまくいっています。私たちは、このような型破りな考え方でも利益を上げられることを50年間にわたり証明してきました。ですので、私がお薦めしたいのは、伝統的な資本主義の評価を捨て、健全なコミュニティと健全な地球について考え始めること。ビジネスにとって有益なはずです。確かに現実的には物を売ってお金を稼がなければなりませんが、実際に毎年どのくらいの成長が必要ですか?どのような品質の製品を世に出していますか?顧客との関係はいかがですか?

そしてパタゴニアは、かなりフラットな組織です。上下関係はそれほど大した問題ではありません。私たちはお互いを上司と部下として考えていません。私たちは自分たちを家族であり、ひとつの目的を持ったコミュニティであると考えて入社します。施設内に託児所を完備しておりますので、自身の子どもと一緒にランチを食べることができます。私たちはお互いの子どもたちの叔父と叔母です。そして私たちは実際に、健全なコミュニティを通して健全なビジネスを営むことが可能であることを証明しています。

WWD:羨ましいですね。大きな家族の中で仕事をしているーー今までの会社組織の考え方と異なり、そもそも会社の在り方が変わってきている中で、評価法がどうかという固定概念が当てはまらないと感じました。最後にマークさん自身の仕事のやりがいについて教えてください。

マーク:私はパタゴニアのミッションステートメントを信じていますし、登壇の機会に話してしまうと陳腐に聞こえるかもしれませんが、パタゴニアにいる全員が皆、自分たちのしていることを信じていると思います。変化を起こし、革命を起こすには、既成概念にとらわれずに考える必要があり、システムの規範を打ち破る必要があります。私たちは株の利益と成長に左右されるシステムに囚われてしまっていますから。

私が“使命を持って働いている”という事実をも超えて、いそいそと毎日仕事に熱心に取り組むのかというと、同僚たちを心から近しく思い、敬愛しているからです。私はこのチームのメンバーの一員として、社会の既存の構造を覆す役割を果たし、新しい消費方法を!と人々を教育し、揺さぶる機会を得ている訳ですが、この活動こそが、私にとって本当にエキサイティングなのです。

私は若い頃から現在に至るまで、常にちょっとしたアナーキストであったと思います。私を見てください。年を重ねてもパンクロッカーであり続けるための、正しい見本みたいでしょう?パンクロッカーであり続けることが、将来の世代にとって本当に良い利益をもたらすこと、そして、それが世界をより良い場所にすると願っています。ですから、私たちの秘伝のソース(おまじない)はいつだって常識にとらわれないこと。革命を起こすには勇気が必要ですが、どうぞ恐れないでください、私たちはそれを支援するためにここにいるのです。

WWD:ありがとうございました。では会場のみなさんから質問を受けたいと思います。

アクティビズムの役割、アプローチ法について

質問者1:私は日本人ですが、カナダに住んでいて、アメリカにも住んでいたので、すでに少し繋がりを感じています。 2016~ 20 年までニューヨーク市にいたのですが、この期間は、破壊的なアメリカの歴史を経験した瞬間だったと思います。今日のアメリカ社会の形成において、そして地球規模の環境問題全般において、アクティビズムがどのように大きな役割を果たしているかを教えてください。アクティビズムを推進することは、ある種の政党間の対立を感じることにもなると思います。アクティビズムの目的とは人々を一つの場所にまとめることにあります。例えば、本質的に対立している人や、相手を負かせられるくらいの説得力を持つ人々を、どのように予測してどのように巻き込みますか?より良い未来のために全ての人を含めるという観点で、マークさんがビジネスとどのように関わっているのかを知りたいのです。

マーク:素晴らしい質問ですが、なかなか厳しい答えになりますね。私の回答は、私たちはおそらく、歩みを進める中でナビゲートすることを同時に学んでいる、とお答えします。

結局のところ、私たちの最大のメッセージは、気候危機からしてみれば、あなたが誰であるかはどうでも良いということです。地球が滅亡したら、私たち皆いなくなってしまうのですから。では私たちが直面していることに関して、十分に破壊的なメッセージを作るにはどうしたら良いのでしょうか?

それはコミュニティから始まりますが、コミュニティ内の全ての人々をどのように教育し、影響を与えることができるのでしょうか。世界のどこに行っても同じような状況とは思います。特定の名前を挙げるのは控えますが、特に米国では、非常に異なる見解を持つ非常に異なる政党間で、多くの物議を醸す議論が行われてきました。しかし、私たちパタゴニアが学んでいることは、より保守的に票を投じたり、共和党に傾く傾向があるコミュニティだったりしても自然保護活動家がたくさんいて、アウトドア活動にも参加しているということです。

私たちにとっては、最終的には環境政策に興味があり、それが私たちの目指すところです。そして、私たちはそのメッセージができる限り包摂的であるように努めるつもりです。しかし、例えばあなたが私たちと働いていて、イヴォンが「この地球を救うことに死ぬ気で取り組んでいる」と言っているのを聞いたとして、もしもあなたがイヴォンほど真剣に問題に取り組めないのであれば、あなたに構っている時間はありません。私たちは私たちでさらに努力を続けて行くだけです。

質問者1:共通認識を持つことが鍵、と言うことでしょうか。

マーク:はい、そうです。

パタゴニアの社員になる方法

質問者2:パタゴニアの社員になるためにはどうしたら良いのですか?また、必要とされる条件はありますか?

マーク:あなたの履歴書をいただけますか?そこから始められますよ!(笑)。どういう訳か、私もここに辿り着けたのでそんなにハードルは高くないと思うのですが…。冗談はさておき、真剣にお答えいたしますと、気候危機に対するあなたの情熱、全てはそこから始まります。そしてパタゴニアのミッションステートメントを信じていて、それについて何かをしたいと考えている人が求められています。そこが始まりです。役割や資格、経験レベルによって異なりますが、私たちは常に外部から人材を迎え入れようとしています。私が会社に還元できたことは、よりトラディショナルな(経営方法の)ファッションアパレルとファストファッションでの経験でした。その経験からビジネスの汚い側面も知っていましたが、その点で変化を起こしたい、過去に習得したスキルをパタゴニアで活かしたいと思っていました。それらのスキルを良い方向でパタゴニアに上手く持ち込んで活用できたらと思っていました。

夜寝るときに鏡の中の自分を見て、「一晩で全ての問題を解決できるわけではないんだ」と思ったとしても、今は、少なくとも鏡の中の自分を(自信を持って)見ることができます。そしてチームメイトも私と同じ状況のはずで、彼らも自分と同じように地球にいいことをしようとチャレンジしているはずだ、と思えるのです。

製品作りで最も大変でチャレンジなこと

質問者3:プリファードマテリアルのお話を伺い、とんでもなく大変なことだと思いました。実際にそういった素材を、探して、見つけて、使えるかを確認して、デザインして、作って、届けて、LCAも計算して売るというサプライチェーンは大変だと思うのですが、一番大変でチャレンジングな点は何かを教えてください。

マーク:素晴らしい質問ですね。最も責任ある素材であるかを確認することが常に重要ではあるのですが、同時にそれは難しいことでもあります。繰り返しになりますが、品質について考えることで、バランスが取れるのです。

1つ簡単な例を挙げます。リサイクルコットンは、埋め立て地からのコットンを完全に転用できるので、本当に楽しみな素材です。一方で、私たちはリサイクルの過程で糸が短くなってしまうため、品質が低下することを学びました。そこで、リサイクルコットンとオーガニックコットンをブレンドして、その品質と寿命を長くする方法を学ぶことが課題になりました。社内にはこの課題に専念しているチームがあります。

ここにいるあなたにお伝えできることは、ぜひパタゴニアをリソースとして頼ってみるのはどうですかというご提案です。パタゴニアは資料を自分たちだけのために抱え込むことに興味はありません。問題の解決にならないからです。品質レベルを維持するために責任ある素材をどうやって得るかといった課題のいくつかは、私たちが長年にわたって学んできたことです。

サステナビリティを本当の意味で理解して進むために必要なこと

質問者4:パタゴニアの、地球で暮らして行くことをパーパスに掲げてモノ作りをしていることは、アパレルだけでなくモノ作りをする企業にとって目指すべきパーパスだと思うのですが、サステナビリティという言葉だけが一人歩きしている気がしています。日本の企業がパタゴニアのように本当の意味でなぜこれをやらなければならないかを理解し、進んで行くためには何を変えて行くべきだと思いますか?

マーク:リーダーシップから始まります。人々から始まります。それぞれのブランドのリーダーがすぐに態度を変えなければ、時代の声に耳を傾けなければ、消費者も従業員も他の場所に行ってしまいます。消費者は私たちブランドが「地球として向かうべき方向だ」と信じている場所に(一緒に)行きますが、それは(このままでは)あまり良い場所ではありません。

それを理解して、少しずつ変えていかなければなりません。私もかつて変化が遅かったり、ビジョンがなかったりするブランドにも所属してきました。最終的には、自分と一致する価値観を核に掲げるブランドに行かなければならないかもしれません。それが私も最終的に選んだ手段であり、そうして別の形で影響を与えました。または、自分のブランドから働きかけるか、ですね。リーダーシップから始まりますが、この考え方において進歩的なパタゴニアでも、大きな神的な変化が起こりました。

私は人々の多くが、良い方向に向かうことを望まないリーダーシップに不満を抱いていることを知っていますし、これまで話してきた多くの人々の現実でもあります。
満足してもらえる回答ではないかもしれませんが、声を上げ、内部で変化を起こそうと努力し続けることが始まりであり、最終的には、そのブランドが目指す方向性とあなたの目指す方向性が一致するかどうかの岐路に立つタイミングがやってくるでしょう。

(質問者を探している間に…)
マーク:今日ここに来てくださった皆さんは大きな一歩を踏み出した、とだけ言わせてください。そして、パタゴニアがその一歩をサポートするためにここにいることを知っておいてください。変化はごく少数の人々から始まります。少数でも、変化に参加させるべく他者に働きかけることができるのは驚異なのです。ですから自分の会社に不満がある場合は、デザインや製品に携わる人々、さらには会計に携わる人々であっても、少人数でも社内で変革を起こすことができます。これが私からみなさんへの本日の励ましの言葉です。

50年存続できた理由は「品質と透明性」

質問者5:資本主義を変えようとしている企業が資本主義社会で50年続けられた理由は何だと考えますか?

マーク:良い質問ですね。お客さまが当社の存続に投票してくれたのだと思います。私見ですが、50年も存続できたのは私たちが築き上げてきた信頼性によるものだと思います。それは、第一に品質、次に透明性です。私たちは完璧ではありません。ずっと完璧ではありません。私たちはパンデミックの間に起きた品質問題にいまだに悩まされているくらいです。

私はパタゴニアで働く以前から、顧客としてブランドを知っていました。パタゴニアが最高の製品を作っていると知っていたので、信頼していました。それが彼らに対する私の忠誠心を築いたのです。確かに値段は高かったですが、一度そのジャケットを手に入れたら(長持ちするので)、もう次のジャケットを買う必要はないとわかっていたので、お金を貯めて購入していました。それは環境に配慮した素材が使われる以前の製品です。

顧客たちは、私たちがおオフィスからお金を出して、それを地球に還元しているのを実際に見ています。50周年を迎えるにあたり、これ以上にお伝えできることはありません。 私たちは地球に会社を差し出したのですから!

WWD:以上、「環境危機化でのモノ作りとデザイナーの役割とは」を終了させていただきます。マークさん、ありがとうございました。

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「パタゴニア」の製品開発責任者が語った「地球に責任を持つ」モノ作りの実践と葛藤

INFASパブリケーションズは12月11日、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」を東京ポートシティ竹芝ポートホールで開催した。4回目を迎えた今回の開幕を飾ったのは、パタゴニア(PATAGONIA)のマーク・リトル(Mark Little)=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクターだ。この日のためにアメリカから来日し、「環境危機下で製品をデザインするときに必要な視点とは何か?」をテーマに、「地球に責任を持つデザインをするときに必要な視点」「製品を作る意義」「チームメンバーとの価値観共有と評価法」について自身の経験を交えて語った。(この記事はから抜粋・加筆しています)

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):まず、マークさん自身にキャリアについて教えてください。

マーク・リトル=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクター(以下、マーク):パタゴニアに入社して約12年、アパレル産業には24年近くいます。カナダで生まれ、10歳のときにアメリカに移住しました。カナダは私のアウトドアへの愛と情熱が生まれ、育まれた場所です。

私とパタゴニアとの歩みのきっかけはユーザーの一人だったこと、そして次世代のためにできることをしたいという思いから始まりました。

アパレル産業でのキャリアは2000年代、「アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)」の絶頂期に始まりました。そこで製品作りについて多くを学び、また、世界中の製産工場や紡績工場などに行き、製品作りのダークサイドを見ることになりました。その後、いくつかのファストファッションブランドで働き、製品の使い捨てや質の悪い製品を目の当たりにするようになり、最終的にパタゴニアで仲間を見つけることができ、地球へ情熱を捧げています。

資本主義や製造業、特に採掘資本主義がいかに気候変動危機に影響を及ぼしていて、パタゴニアがそれに対してどのように取り組んでいるかいう話をする前に、原点が非常に大切なので、パタゴニアの歴史を話そうと思います。

パーパス「故郷である地球を救う」が生まれた背景

マーク:私たちの掲げる「故郷である地球を救う」というミッションステートメントは決してマーケティングキャンペーンではなく、パタゴニアというブランドが紡いできた歴史に深く根ざしており、その歴史は1974年にイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard )が会社を立ち上げたときまでさかのぼります。イヴォンは1970年代前半にビジネスを始めましたが、彼は、いやいやビジネスマンになったと公言しています。彼は、ビジネスマンになるためにパタゴニアを始めたのではないのです。

イヴォンもカナダのケベック州の生まれで、幼少期にアメリカ・ニューイングランド地方のメイン州へと家族で移住し、一家は羊毛紡績工場で働きだしました。メイン州での生活では、素晴らしい森林で多くの時間を過ごし、そこからアウトドアに対する情熱が生まれました。特に魚釣りにのめり込んでいきました。

WWD:パタゴニアはガレージから始まったんですか?このガレージの写真、いいですね。

マーク:これは悪名高きブリキ小屋、ティンシェッドです。この小屋こそが、のちのちイヴォンが登山用器具を作り始めるきっかけになった場所です。しかしその前に、彼の冒険好きな母親は、一家に、メインからカリフォルニアへ移ろうと説得し、イヴォンの父親が喘息を患っていたこともあり、カリフォルニアへの移住を決めます。

カリフォルニアへの旅路で、彼らは空腹の女性と子どもたちと出会いました。イヴォンの母親はこの旅に向けてたくさんの食物を準備していたので、彼女たちに食物を与えました。イヴォンにとって初めての慈善活動の経験です。この慈善経験こそが、パタゴニアの歴史の中でも重大な瞬間の一つです。

カリフォルニアでの生活でイヴォンは言葉と文化背景の違いから、多くの時間を山で小川を探したり、海に行ったりと、一人で過ごすことになりますが、高校時代に鷹狩りクラブに入部します。クラブでは鷲や鷹の訓練をする訳ですが、最終的には、カリフォルニア州で最初の鷹狩り規定の制定に一役買うこととなります。イヴォンがこの先どんな道のりをたどるのかが見えて来たでしょう?
鷹狩りクラブにいる間、イヴォンは鷹を寄せ付けずに鷹の巣に辿り着く方法を見つけました。ある日、彼がいつものように鷹を追い払っていると、シエラ・クラブ(サンフランシスコに本部を置くアメリカの環境保護団体で、アメリカの50州に支部がある)の人々に会いました。彼らはイヴォンにいくつかの登山のアドバイスを与えてくれました。そしてこの鷹狩りクラブで技を磨く中で、登山に対する愛情が育まれていきました。

イヴォンは、夏はヨセミテやワイオミングなどを歩いて回り魚釣りを、冬にはメキシコでサーフィンをしました。こうしたイヴォンの行動から、彼のアウトドアに対する深い愛情を感じていただけると思います。

その後イヴォンは鍛冶屋になる方法を独学で学びますが、これがイヴォンの方向性を大きく変えるきっかけになりました。鍛冶を学ぶことで、製品に対する熱意が芽生えました。イヴォンはパタゴニアを、登山用アパレルとしてスタートしたのではなく、登山用器具のベンチャービジネスとしてスタートしたのです。理由は、彼が納得できる上質な登山器具が見当たらなかったから。彼はピトンを自分の車のトランクで地道に販売し、そこで得た利益を登山とサーフィンを楽しむことに注ぎました。

そのうちに需要が増え、イヴォンはピトンの生産を続けて行くのですが、このタイミングで、イヴォンは品質にこだわるようになります。これがパタゴニアの歴史のキーポイント、その2です。パタゴニアが創業から“高品質が全て”とこだわり続けるきっかけです。なぜならアウトドアでは、質の悪いものは死を意味するからです。

のちにイヴォンは、彼の作る登山用器具が岸壁と環境にダメージを与えているということに気付きます。これがきっかけとなり、シュイナード・イクイップメントは、新しい形状による安全確保と、よりサステナブルな製品作りへと導かれます。私たちが“製品が環境に与える影響”を理解し取り組む最初のきっかけになりました。さらに、カタログで“クリーンクライミング”という環境エッセイを掲載することになりました。この一件こそが、環境問題への取り組みの大きな第一歩になりました。パタゴニアの歴史において、非常に辛い時代でした。

「私たちの行動自体が環境の一部であること」を学ぶ

イヴォンはまた、現在パタゴニア本社のあるべンチュラで自分自身の活動を続ける中“アクティビズム”の機会を見出しました。そんな時に周辺環境に多大な影響を及ぼすべンチュラ川の転流工事が行われると聞き、イヴォンは市役所に転流反対を訴えに行きました。これはイヴォンと会社にとっての初のアクティビズムでしたが、この行動のおかげでべンチュラ川の転流工事は取りやめとなり、「1% for the planet」(収益の1%を地球のために)というプログラムを始める着想源にもなりました。パタゴニアが「アクティビズム」「品質」「環境へのインパクトについてこだわり続けている」という3点を知っていただくためにお話しました。その後アパレル分野に進出し、「シュイナード・イクイップメント」から登山用アパレルの会社になりました。

私たちは製品を生産する中で、気候に及ぼす影響の大きさを知り始め、製品作りの方向性を大きく変えることになります。私たちの行動自体が環境の一部であるということを学び、地球温暖化と生態系の破壊の規模について知り、それに対して私たちがどう貢献できるかを確かめていきます。私たちは企業として、真剣かつ献身的にビジネスのあり方を変えるつもりで挑みました。自社製品を、より害の少ない材料を用いて生産し、収益の1%を地球を守るための活動に寄付し始めました。そして、パタゴニアはカリフォルニア州初のベネフィットコーポレーションになります。

近年では、パタゴニアはミッションステートメントを、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」、と改訂したことはみなさんもご存知のことと思います。これは、デザイナー、生産プロセス担当、経理担当……、会社のどの部署で働いているかに関わらず、パタゴニア社全体の意思決定の指針となります。私たちが毎日目を向け、どのようにビジネスに取り組むのかを定めた指標なのです。

「メーカーとして故郷の地球を救う」意味

WWD:その辺りはこの後さらに掘り下げさせていただきます。

マーク:以前のミッションステートメント「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」では十分ではありませんでした。私たちは、アクティビストをサポートするだけの企業から、アクティビスト主導の企業へと倍増し、進化したかったのです。これが、製造と資本主義におけるパタゴニアの役割、そして「地球を救うためにビジネスを営む」という私たちのビジネスの柱に繋がって行く訳ですが、では、これは何を意味するのでしょうか?「メーカーとして故郷の地球を救う」とはどういう意味でしょうか?

私たちは、気候変動が私たちの生活を脅かしていることを理解しています。私たちは、世界規模の採取主義的な経済がこの危機の根本原因であることを理解しています。私たちは、消費主義が環境破壊の原動力になっていることも理解しています。私たちはパタゴニアがこの問題に関与していることを自認しています。

したがって、パタゴニアの次の段階のアクションは、「不必要な危害を誰にも加えないこと」から、「”危害を加えないこと”以上の努力をすること」になりました。私たちは、たとえ資本主義経済の中であっても、商品消費型のビジネスが広義において非採取主義的になれる可能性があることを証明するために取り組んでいます。

WWD:ルーツが大切であると杭が打たれました。売れていたピトンが環境に影響を与えていたと理由から売るのをやめたのは、相当勇気が必要な判断でしたよね?

マーク:ええ、流れのままに進むということです。イヴォンとチームメンバーが持っていたリーダーシップと先見の明の結果であり、彼らは製品製造が引き起こす影響を理解していました。登山用品は生死が関わりますので、品質が最重要だったことは明らかです。

より大切なポイントは、シュイナード・イクイップメントの初期の頃からずっと、ビジネスの優先事項は製品の品質より何よりも生産している商品が環境に及ぼす影響について考えることで、それが私たちパタゴニア気質の基盤であり、ビジネスを始めた日からずっと変わらないということです。

イヴォンは誰が働くとかそういったことは全く気にしていないのです。彼が気にかけているのは正しい行いをすること。繰り返しになりますが、彼がビジネスをするのはお金を得るためではなく、登山とサーフィンにはまったからです。

新しい資本主義を体現するための新体制発表から変わったこと

WWD:上手く行くかどうかは分からなかったけれど、「正しいことをしたい」と思った。今日の名言を胸に刻みましょう。今日は3つのテーマについてお話いただきます。1つ目はパタゴニアが目指す新しい資本主義と新体制での製品作り、2つ目は製品を作る意義、3つ目はチームメンバーとの価値観共有と評価法です。まず1つ目の「地球が唯一の株主になる」と聞いた時、マークさんはどう受け止めましたか?

マーク:衝撃を受けました。昨日のことのように覚えています。私たちは全員“キャンパス”(パタゴニア本社)に集合しました。パンデミックが明けたばかりの頃で、数年ぶりに全員が直接顔を合わせたタイミングでした。そして、誰も発表の内容を知りませんでした。元 CEO の皆さんを含む初期メンバーが姿を現し始め、どうやら何か大きなことが起こっていると、とても興奮しました。新体制発表のタイミングは、私たちの創立50周年でもありました。ちょうど次の50年を視野に入れ23年秋コレクションに取りかかり始めた非常に意味のあるタイミングでした。「最初の50年間で学んだことは何か」「継続したい物は何か」そして「やめたいことは何か」について熟考しながら次のチャプターに進みたいと考えました。そしてイヴォンとシュイナード家の決断は次の 50 年に向けた大胆なアプローチ方法であると感じました。

株式譲渡について最も意義深い点は、会社を地球に委ねるという点です。地球は厳しい上司です。母なる地球、彼女と一緒に働くのは本当に難しいです。私が“キャンパス”を歩き回ると木々に怒鳴られたり、風に飛ばされた葉っぱが私に当たったり、地球はイヴォンよりもさらに働くのが難しい相手です。

イヴォンとシュイナード家はオーナーシップを 2つの組織に譲渡しました。そして重要なことを言及させていただきますと、私たちは「1% for the Planet」を通して、常に収益の 1% を寄付し続けてきました。私たちは気候危機において十分な推進力を発揮できていないと感じていました。これらを深慮した結果、2つの組織を新たに設立し地球を唯一の株主として据えたわけですが、これはビジネスに再投資されなかった全ての利益が地球に分配されるということを意味します。これは非常に壮大な規模の話です。

自然から採った価値ある原材料、それを株主の富に変えるという今までの方法ではなく、私たちはビジネスで得られる富――つまりパタゴニアの富を、原材料の源である母なる地球の創造と保護に役立てるのです。パタゴニアは、株式公開する代わりに、パーパスを遂行した訳です。これにより、気候と生態系の危機を保護し、永久に戦うことができます。いいと思いませんか?

WWD:この新体制はモノ作りの責任者であるマークさんにとっては、地球に責任を持つ製品作りというとんでもなく大変な役割が求められている訳ですよね。製品をデザインする時に必要な視点について教えてください。

マーク:私たちの製品デザインの哲学をお伝えするのにちょうど良い前フリになりましたね!“キャンパス”の正面玄関に刻まれていて、私たちがいつも目にするものであり、そしてこの発表とともに強烈に思い起こされた言葉をご紹介します。シエラ・クラブのエグゼクティブディレクター、デイビッド・ブラウワー氏の言葉で「死んだ地球からはビジネスは生まれないです。死んだ惑星ではビジネスが成り立ちません。これらは、製品開発チームの私たちにとっては常に最優先事項です。けれど、技術的には大きなプレッシャーですよね?私たちは、矛盾するものを一切作りたくないメーカーになってしまった訳ですから。私たちは、製品作りをする時点で矛盾しているのです。

マーク:この図は「故郷である地球を救う」ために私たちが取り組んでいる事業の核心、「地球が唯一の株主である」ということを要約したものです。製品開発やその他のビジネスを行うときのアプローチについての重要な柱です。パタゴニアは地球上の生命のために従事し、自分たちが作ったもの全てを保証します。私たちは人々の情熱を功績として残します。私たちは草の根活動を支援します。私たちは衣類を修理し、再販を経て、利益を地球に還元します。

「採取主義的資本主義の製品製造・販売は正当化できない」ことを強く問い、模範となるために

WWD:分かりやすい図ですね。

マーク:私はこの図が好きで、時々カンニングペーパーとして持ち歩くこともあります(笑)。

では、この図は製品および製造面において何を意味するのでしょうか?私たちは故郷の地球を救うために製品を作っていますが、これは少し矛盾しています。なぜなら、私たちが何かを作るときは常に、何かを搾取していることになるからです。私たちがパタゴニアにいる理由は、私たちが行う全てのことで模範を示し、先頭に立つことです。私たちのパーパスは、採取主義的資本主義の製品開発と販売を営むことは、もはや正当化できないと強く問うことです。

製品開発でも、単に害を減らすだけでなく、それ以上のことを行う必要があります。パタゴニアが行うことは全て問題解決の一部であり、本質的な問題を解決することに重点を置いています。したがって私たちは最良な素材に重きを置いています。最良の素材とは、例えば、環境再生型有機農業、リサイクル合繊、廃棄された古着の活用などです。当社は優れた品質だけではなく、製品の終着点まで見据えて生産を行っています。

私はこのデザイン哲学に辿り着き、これに基づいて取り組んでいます。私たちは仕組まれた緊張の世界に住んでいます。パタゴニアは基本理念に沿わない物は何も作りたくないと考え、製品の品質保持が私たちにできる最も重要なことだと信じています。私たちはファッションのトレンドなど気にしていませんし、トレンドを追うことはパタゴニアの価値観とは異なります。

大好きな文章がひとつあります。「完璧さとは、これ以上追加するものが何もない時に達成されるのではなく、これ以上取り除く物がないときに達成されるのです」(サン=テグジュペリ)。これは私たちの製品作りへのアプローチにも当てはまるもので、より少ないリソースでより多くのことを実現しようとするものです。私たちは、「禅」のスタイルと「シェーカースタイル」(シェーカー教徒たちのインテリアを模したシンプルかつ機能的なスタイル)のシンプルさに基づいて、必要かつ便利でなければ作らないという設計哲学のもと、日々活動しています。しかし、製品が必要な物かつ役に立つ便利な物なのであれば、ためらわずに美しく製作しようーーこれがパタゴニアの第一のルールです。

「品質とはすなわち環境問題である」、品質を重視する理由

次のトピックは「品質」です。今日の話の中で、皆さんに記憶して欲しいことがたった1つあるとすれば、この言葉に尽きます。「品質とはすなわち環境問題である」ということです。

たとえどんなに環境に配慮した材料を使用しても、使い捨て製品を製造すれば、その素材がもたらす利益を軽減してしまうことになります。ですから製品は、どのような品質であるかが重要なのです。安価な製品は祖末に作られ、すぐに捨てられてしまう。つまり人々とこの地球に多大なダメージを与えていることになります。したがって品質こそが現在パタゴニアが心底強化していることであり、活動の中核なのです。

WWD:「製品を作る意義」について。製品を通じてサプライチェーンを変革されていますが、その具体例を教えてください。

マーク:はい。私たちはこれから作る製品について考えるとき、「その製品を作ることでどのような問題を解決しようとしているのか」をしっかりと理解したうえで製作に入ります。それぞれの製品が貴重な資源を使用して作ることを熟知しているので、目的、機能性、そして長持ちすることを考え抜いてデザインをします。そうしたデザインの基礎となる品質こそが、製品寿命を高めるためのキーとなるので、先ほど品質の部分について何度もしつこくお話してしまいました。

解決すべき問題が見つかった製品は、さらに製品寿命や使用する素材など、どのようにアプローチすべきかを熟考します。耐久性と機能性、長持ちするかの3点がデシジョンツリー(決定木)を作成する際の中核になります。

これから解決すべきは「製品の終着点について考慮すること」

マーク:低品質製品の問題点は、使い捨ての観点で考えられていることです。私たちは一時的なトレンド、計画的陳腐化の道をたどっています。ファストファッション、大量消費主義――人々は過剰に生産し、不必要なものを過剰に消費しています。再生不可能な資源を使用し、有毒化学物質、環境汚染、(生産に際して)使われるエネルギーの量、水の使用などの問題があります。そしてさらなる問題は、ただ「要らなくなったから」と捨てられてしまう、使い捨て製品から発生する産業廃棄物です。製品の終着点について考慮されていない、リサイクルも堆肥化も不可能な廃棄物です。これらが解決すべき問題点です。パタゴニアがこうした問題に対して何を行っているのか、あるいはそうした問題への解決策の取り組みとして修正したキーポイントが2点あります。それは私たちと「製品」との関係性です。

1つ目は、可能な限りリサイクル原料を使用して、耐久性があり、長持ちする、高機能な製品を製造すること、2つ目は、耐用年数が終了した衣類を修理、再利用、またはリサイクルする取り組みです。製品をデザインするときに、これら2つについて考えます。独自のデザイン価値を備えた製品を生み出し、品質を重視しながら、一時的なトレンドを追うのではなく、タイムレスな製品をデザインしています。

私たちは大量消費主義について考えていますが、これがおそらく次の大きなテーマになるでしょう。ところで、パタゴニアが行った「このジャケットを買わないでください」というキャンペーンを覚えていますか?「ジャケットを買いに来ないでください」と言うのはビジネスとして少し変わっていますよね。しかし結局のところ、パタゴニアの製品作りと同じように、消費者の皆さんには「自分は本当にそれを必要としているのか?」と考えてもらいたいのです。私たちは接客で、「このジャケットがご希望ですね?承知しました、環境に配慮した最新バージョンを提供させていただきます。けれど、ちょっと立ち止まって新しく買う必要が本当にあるのかを考えてください」と言った会話を始めています。従来型の「物との関係のあり方」を変えることで、カスタマーを消費者からパタゴニアのコミュニティに取り込みつつ、行動変容を促すことができるのです。

またパタゴニアのコミュニティでは、”Need less”(新規購入を減らす)手段として、簡単かつ楽しい方法を提案したいとも考えています。そのため、デザインと製品製作チームに多目的なワードローブやレイヤリングシステム、買い換える必要のない時代を超越した製品をデザインしてもらおうと考えています。

パタゴニアが製品作りで取り組む具体的なアクション

WWD:具体的なアクションについて教えてください。

マーク:パタゴニア製品に使われている素材に対する解決策について少しお話します。パタゴニアは過去40数年にわたって、非常に堅固なSER(社会環境責任)方針を構築しました。そしてそれは、2025年に向けた当社の戦略的取り組みの一部でもあります。そのキーとなる2点は、世界中のコミュニティに投資をすることと、パタゴニアのパートナーたちを“ファミリー”の一員として真剣に考えることです。私たちにとってパートナー企業は製品の延長線上にいる人(ビジネス上だけの関係性)ではなく、“ファミリー”なのです。

そのためにパタゴニアでは25年に向け、優先材料の使用率を100%にすることを目標にしています。また一方で、化学物質の永久排除に向けても投資しています。DWR(durable water repellent/耐久撥水)は永久化学物質の一種ですから。それとは別に染色では、製品の核となるカラーバリエーションで、”エバーグリーンカラー”と呼ばれる、合成繊維向けの染料の中では環境への悪影響が非常に低い染料を、全ての色味で100%使用できるように取り組んでいます。また、残端などの布地の廃棄物でリサイクル100%を目指しており、合成繊維の 50%で二次廃棄物を使用できるように取り組んでいます。

以上がパタゴニアの推奨する環境に配慮した素材であり、社会的および環境的責任の遂行を支える柱です。これが、私たちのモノ作りにおけるアプローチ方法です。また天然繊維の使用では、革新的農業技術を使った素材、具体的には、オーガニックコットン、コットンインコンバージョン・コットン(有機栽培に変換するための、移行期間中に生産されるコットン)、そしてリジェネラティブ・オーガニックコットン(環境再生型有機農法によるROC認定コットン)を使用しています。

合成繊維の二次廃棄物活用では、パタゴニアは長年、ほとんどの製品でリサイクルポリエステルを使用してきましたが、今は次のレベルに引き上げ、指針としてきたリサイクル素材だけでなく、埋め立て地に送られる産業廃棄物や海洋廃棄物の回収・使用に乗り出そうとしているところで、これらが私たちの言う「二次廃棄物」です。

そのために次のような企業と提携しています。ナイロン素材では、廃漁網の再利用の提携をブレオ社と、ポリエステル素材ではペットボトルの活用をバイオニックと協働しています。彼らとプラスチック廃棄物を再利用するための地域廃棄物管理システムを構築しました。道路や海岸にリサイクルステーションを設置し、海岸清掃キャンペーンや地域社会への働きかけを組織化し、分別、こん包、粉砕のための集中施設や、地元企業、学校、その他の機関への回収ルートを整備しました。一旦ペットボトルが海に流れ込んでしまったら、手の施しようがないですよね?すぐさま海に沈んでしまい、利用できなくなります。そして、社会的責任の遂行が鍵となります。

リサイクルウール素材とリサイクルコットン素材は、本格的に研究を始めているもう1つの分野です。この2つの素材の素晴らしい点は、すでに色が付いているため染色する必要がないことが多く、分別プロセスが進むにつれて、埋め立て地から転用できるだけでなく、ゴミとして終わらせず、継続的な再利用が可能になるかもしれないという点です。

そして最後に、私たちは化学物質とは永遠に別れを告げます。25年までに、パタゴニア全製品でPFC(有機フッ素化合物)フリーを達成します。今後この規制がカリフォルニア州やアメリカだけではなく欧州で、そして究極的には全世界で実施されていきます。

パタゴニアのゴール達成に向けての進捗について少しだけ話します。23年の秋冬コレクションで使用素材の 91% を環境配慮素材にすると掲げた目標は無事に達成されました。25年までに、ダウンは全て責任を持って調達された物を使用します。つまり、卵に至るまでどこから来たのかを把握し、もし新たにダウンを使用する場合はその調達ルートから来るバージンダウンを使用します。実際のところ、古い掛け布団や枕などの寝具から出たリサイクルダウンを使用している場合がほとんどです。

そしてみなさんご存知のようにコットン素材では1996年以来、100%オーガニックコットンを使用しています。環境再生型有機農業やコットン・イン・コンバージョンを引き続きサポートしております。

結果的に25年までに、私たちは目標をほぼ達成しつつあることになります。そして世の常ですが、最後のほんの少しが最も困難とはなりますが、目標の 97% は達成されることになるでしょう。これは困難な課題を乗り越えたという点で、「多大なる功績」と言えるでしょう。

価値観の共有と評価法

WWD:本当に困難な道だと思います。これだけの具体的なアクションを重ねてもなお100%になり得ず、まだ3%残っているという事実に驚かされます。3つ目のテーマ「価値観の共有と評価」について、マークさんがどんなリーダーシップを発揮されているのかお聞かせください。

マーク:実際のところ、パタゴニアではとても簡単だと思います。なぜなら、パタゴニアに入社する人は皆、ミッションステートメントを信じてやって来ます。私たちにとってはこの点が唯一にして最重要な評価ポイントです。もちろん、それでも私たちはビジネスを営んでいるわけですから、目標があり、生き残るために売り上げの必要指標があります。しかし、売り上げは私たちを日々動かす原動力ではありません。パタゴニアの原動力はあくまでも「地球」なのです。そして、生きている者にとっても亡くなった者にとっても、パタゴニアに属する皆にとって大切なのは私たちのミッションステートメント「地球を救うためにビジネスを営む」というただ1点なのです。私たちは常にそれを従い自己評価をしています。自分たちがここでやるべきことは何かを理解したうえで出勤する訳ですから、非常に簡単です。スッキリ明快、目的はたった1つなのです。つまり、パタゴニア社員となったその日から、私たち全員が同じ方向を向いています。

ビジネスを通して「地球全体を救う」ために最小限の害で最高の製品を作り、他のビジネスにインスピレーションを与えるなど、どんなに大きな仕事を成し遂げたことも、原点にあるのはミッションステートメントなのです。

また、お客さまに私たちのコミュニティに参加してもらうことは、私たちの核となる価値観であり重要なことでもあります。そして私たちは可能な限り製品やクリエイションに責任を持ち、系統的かつ客観的にどのような種類の製品を作るかを見極めていきます。そしてお客さまにもそのソリューションに参加していただきたいと考えています。

「コモンスレッズ・イニシアティブ」(パタゴニア社の商品回収プログラム)は、共同的プロジェクトという点で、自分自身を称えたい取り組みのひとつです。この取り組みは再考することの大切さを改めて知る良い機会となりました。繰り返しになりますが、私たちと「物」との関係をもう一度考えてみましょう。欲しいと思う気持ちを減らし、修理・再利用・リサイクルの可能性についてもっと考えましょう。

それから、ただ消費、消費、消費と新しい物を買い続けるのではなく、ぜひ中古品を購入していただきたいです。実は、2013年のファッション・ウィーク中に(製品を長く使うためのプラットフォーム)「ウォーンウエア(WORN WEAR)」をローンチしました。「製品」との関係性を考える意味で、消費者をソリューションの一部として招待した形となったわけですから、パタゴニアのコミュニティにとって大きく評価すべきことと言えます。新しい物を買うのであれば、その製品が長く使えるかどうかを考えてください。手持ちの洋服で、どこかが破れたり、ボタンをなくしてしまった場合は、捨てたり新しい物を買わず、修理することを考えてください。私たちは、顧客が訪ねて来て修理を継続できるよう、顧客とコミュニティとの関係を築き始めています。

WWD:評価についてもう少し教えてください。何をしたら褒められるのか?何をしたら褒めるのかなど具体的なことはありますか?

マーク:利益を逃したのに賞賛されるという状況を理解するのはきっとみなさんには難しいでしょうね。この事実を正しく理解するのに苦労しているようですから。確かに、私たちはビジネスを継続できるように努力し続け、利益を上げる必要があります。しかし、です。パタゴニアでは「利益目標を達成できたこと」よりも、「フェアトレード認定工場を導入したこと」が賞賛される可能性があります。パタゴニアはそんな会社なのです。

(そのような方針でも)会社はかなりうまくいっています。私たちは、このような型破りな考え方でも利益を上げられることを50年間にわたり証明してきました。ですので、私がお薦めしたいのは、伝統的な資本主義の評価を捨て、健全なコミュニティと健全な地球について考え始めること。ビジネスにとって有益なはずです。確かに現実的には物を売ってお金を稼がなければなりませんが、実際に毎年どのくらいの成長が必要ですか?どのような品質の製品を世に出していますか?顧客との関係はいかがですか?

そしてパタゴニアは、かなりフラットな組織です。上下関係はそれほど大した問題ではありません。私たちはお互いを上司と部下として考えていません。私たちは自分たちを家族であり、ひとつの目的を持ったコミュニティであると考えて入社します。施設内に託児所を完備しておりますので、自身の子どもと一緒にランチを食べることができます。私たちはお互いの子どもたちの叔父と叔母です。そして私たちは実際に、健全なコミュニティを通して健全なビジネスを営むことが可能であることを証明しています。

WWD:羨ましいですね。大きな家族の中で仕事をしているーー今までの会社組織の考え方と異なり、そもそも会社の在り方が変わってきている中で、評価法がどうかという固定概念が当てはまらないと感じました。最後にマークさん自身の仕事のやりがいについて教えてください。

マーク:私はパタゴニアのミッションステートメントを信じていますし、登壇の機会に話してしまうと陳腐に聞こえるかもしれませんが、パタゴニアにいる全員が皆、自分たちのしていることを信じていると思います。変化を起こし、革命を起こすには、既成概念にとらわれずに考える必要があり、システムの規範を打ち破る必要があります。私たちは株の利益と成長に左右されるシステムに囚われてしまっていますから。

私が“使命を持って働いている”という事実をも超えて、いそいそと毎日仕事に熱心に取り組むのかというと、同僚たちを心から近しく思い、敬愛しているからです。私はこのチームのメンバーの一員として、社会の既存の構造を覆す役割を果たし、新しい消費方法を!と人々を教育し、揺さぶる機会を得ている訳ですが、この活動こそが、私にとって本当にエキサイティングなのです。

私は若い頃から現在に至るまで、常にちょっとしたアナーキストであったと思います。私を見てください。年を重ねてもパンクロッカーであり続けるための、正しい見本みたいでしょう?パンクロッカーであり続けることが、将来の世代にとって本当に良い利益をもたらすこと、そして、それが世界をより良い場所にすると願っています。ですから、私たちの秘伝のソース(おまじない)はいつだって常識にとらわれないこと。革命を起こすには勇気が必要ですが、どうぞ恐れないでください、私たちはそれを支援するためにここにいるのです。

WWD:ありがとうございました。では会場のみなさんから質問を受けたいと思います。

アクティビズムの役割、アプローチ法について

質問者1:私は日本人ですが、カナダに住んでいて、アメリカにも住んでいたので、すでに少し繋がりを感じています。 2016~ 20 年までニューヨーク市にいたのですが、この期間は、破壊的なアメリカの歴史を経験した瞬間だったと思います。今日のアメリカ社会の形成において、そして地球規模の環境問題全般において、アクティビズムがどのように大きな役割を果たしているかを教えてください。アクティビズムを推進することは、ある種の政党間の対立を感じることにもなると思います。アクティビズムの目的とは人々を一つの場所にまとめることにあります。例えば、本質的に対立している人や、相手を負かせられるくらいの説得力を持つ人々を、どのように予測してどのように巻き込みますか?より良い未来のために全ての人を含めるという観点で、マークさんがビジネスとどのように関わっているのかを知りたいのです。

マーク:素晴らしい質問ですが、なかなか厳しい答えになりますね。私の回答は、私たちはおそらく、歩みを進める中でナビゲートすることを同時に学んでいる、とお答えします。

結局のところ、私たちの最大のメッセージは、気候危機からしてみれば、あなたが誰であるかはどうでも良いということです。地球が滅亡したら、私たち皆いなくなってしまうのですから。では私たちが直面していることに関して、十分に破壊的なメッセージを作るにはどうしたら良いのでしょうか?

それはコミュニティから始まりますが、コミュニティ内の全ての人々をどのように教育し、影響を与えることができるのでしょうか。世界のどこに行っても同じような状況とは思います。特定の名前を挙げるのは控えますが、特に米国では、非常に異なる見解を持つ非常に異なる政党間で、多くの物議を醸す議論が行われてきました。しかし、私たちパタゴニアが学んでいることは、より保守的に票を投じたり、共和党に傾く傾向があるコミュニティだったりしても自然保護活動家がたくさんいて、アウトドア活動にも参加しているということです。

私たちにとっては、最終的には環境政策に興味があり、それが私たちの目指すところです。そして、私たちはそのメッセージができる限り包摂的であるように努めるつもりです。しかし、例えばあなたが私たちと働いていて、イヴォンが「この地球を救うことに死ぬ気で取り組んでいる」と言っているのを聞いたとして、もしもあなたがイヴォンほど真剣に問題に取り組めないのであれば、あなたに構っている時間はありません。私たちは私たちでさらに努力を続けて行くだけです。

質問者1:共通認識を持つことが鍵、と言うことでしょうか。

マーク:はい、そうです。

パタゴニアの社員になる方法

質問者2:パタゴニアの社員になるためにはどうしたら良いのですか?また、必要とされる条件はありますか?

マーク:あなたの履歴書をいただけますか?そこから始められますよ!(笑)。どういう訳か、私もここに辿り着けたのでそんなにハードルは高くないと思うのですが…。冗談はさておき、真剣にお答えいたしますと、気候危機に対するあなたの情熱、全てはそこから始まります。そしてパタゴニアのミッションステートメントを信じていて、それについて何かをしたいと考えている人が求められています。そこが始まりです。役割や資格、経験レベルによって異なりますが、私たちは常に外部から人材を迎え入れようとしています。私が会社に還元できたことは、よりトラディショナルな(経営方法の)ファッションアパレルとファストファッションでの経験でした。その経験からビジネスの汚い側面も知っていましたが、その点で変化を起こしたい、過去に習得したスキルをパタゴニアで活かしたいと思っていました。それらのスキルを良い方向でパタゴニアに上手く持ち込んで活用できたらと思っていました。

夜寝るときに鏡の中の自分を見て、「一晩で全ての問題を解決できるわけではないんだ」と思ったとしても、今は、少なくとも鏡の中の自分を(自信を持って)見ることができます。そしてチームメイトも私と同じ状況のはずで、彼らも自分と同じように地球にいいことをしようとチャレンジしているはずだ、と思えるのです。

製品作りで最も大変でチャレンジなこと

質問者3:プリファードマテリアルのお話を伺い、とんでもなく大変なことだと思いました。実際にそういった素材を、探して、見つけて、使えるかを確認して、デザインして、作って、届けて、LCAも計算して売るというサプライチェーンは大変だと思うのですが、一番大変でチャレンジングな点は何かを教えてください。

マーク:素晴らしい質問ですね。最も責任ある素材であるかを確認することが常に重要ではあるのですが、同時にそれは難しいことでもあります。繰り返しになりますが、品質について考えることで、バランスが取れるのです。

1つ簡単な例を挙げます。リサイクルコットンは、埋め立て地からのコットンを完全に転用できるので、本当に楽しみな素材です。一方で、私たちはリサイクルの過程で糸が短くなってしまうため、品質が低下することを学びました。そこで、リサイクルコットンとオーガニックコットンをブレンドして、その品質と寿命を長くする方法を学ぶことが課題になりました。社内にはこの課題に専念しているチームがあります。

ここにいるあなたにお伝えできることは、ぜひパタゴニアをリソースとして頼ってみるのはどうですかというご提案です。パタゴニアは資料を自分たちだけのために抱え込むことに興味はありません。問題の解決にならないからです。品質レベルを維持するために責任ある素材をどうやって得るかといった課題のいくつかは、私たちが長年にわたって学んできたことです。

サステナビリティを本当の意味で理解して進むために必要なこと

質問者4:パタゴニアの、地球で暮らして行くことをパーパスに掲げてモノ作りをしていることは、アパレルだけでなくモノ作りをする企業にとって目指すべきパーパスだと思うのですが、サステナビリティという言葉だけが一人歩きしている気がしています。日本の企業がパタゴニアのように本当の意味でなぜこれをやらなければならないかを理解し、進んで行くためには何を変えて行くべきだと思いますか?

マーク:リーダーシップから始まります。人々から始まります。それぞれのブランドのリーダーがすぐに態度を変えなければ、時代の声に耳を傾けなければ、消費者も従業員も他の場所に行ってしまいます。消費者は私たちブランドが「地球として向かうべき方向だ」と信じている場所に(一緒に)行きますが、それは(このままでは)あまり良い場所ではありません。

それを理解して、少しずつ変えていかなければなりません。私もかつて変化が遅かったり、ビジョンがなかったりするブランドにも所属してきました。最終的には、自分と一致する価値観を核に掲げるブランドに行かなければならないかもしれません。それが私も最終的に選んだ手段であり、そうして別の形で影響を与えました。または、自分のブランドから働きかけるか、ですね。リーダーシップから始まりますが、この考え方において進歩的なパタゴニアでも、大きな神的な変化が起こりました。

私は人々の多くが、良い方向に向かうことを望まないリーダーシップに不満を抱いていることを知っていますし、これまで話してきた多くの人々の現実でもあります。
満足してもらえる回答ではないかもしれませんが、声を上げ、内部で変化を起こそうと努力し続けることが始まりであり、最終的には、そのブランドが目指す方向性とあなたの目指す方向性が一致するかどうかの岐路に立つタイミングがやってくるでしょう。

(質問者を探している間に…)
マーク:今日ここに来てくださった皆さんは大きな一歩を踏み出した、とだけ言わせてください。そして、パタゴニアがその一歩をサポートするためにここにいることを知っておいてください。変化はごく少数の人々から始まります。少数でも、変化に参加させるべく他者に働きかけることができるのは驚異なのです。ですから自分の会社に不満がある場合は、デザインや製品に携わる人々、さらには会計に携わる人々であっても、少人数でも社内で変革を起こすことができます。これが私からみなさんへの本日の励ましの言葉です。

50年存続できた理由は「品質と透明性」

質問者5:資本主義を変えようとしている企業が資本主義社会で50年続けられた理由は何だと考えますか?

マーク:良い質問ですね。お客さまが当社の存続に投票してくれたのだと思います。私見ですが、50年も存続できたのは私たちが築き上げてきた信頼性によるものだと思います。それは、第一に品質、次に透明性です。私たちは完璧ではありません。ずっと完璧ではありません。私たちはパンデミックの間に起きた品質問題にいまだに悩まされているくらいです。

私はパタゴニアで働く以前から、顧客としてブランドを知っていました。パタゴニアが最高の製品を作っていると知っていたので、信頼していました。それが彼らに対する私の忠誠心を築いたのです。確かに値段は高かったですが、一度そのジャケットを手に入れたら(長持ちするので)、もう次のジャケットを買う必要はないとわかっていたので、お金を貯めて購入していました。それは環境に配慮した素材が使われる以前の製品です。

顧客たちは、私たちがおオフィスからお金を出して、それを地球に還元しているのを実際に見ています。50周年を迎えるにあたり、これ以上にお伝えできることはありません。 私たちは地球に会社を差し出したのですから!

WWD:以上、「環境危機化でのモノ作りとデザイナーの役割とは」を終了させていただきます。マークさん、ありがとうございました。

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榮倉奈々の決意 なぜアパレルCEOの道を選んだのか

PROFILE:榮倉奈々/LAND NK CEO

(えいくら・なな)2002年にファッションモデルとしてキャリアをスタートし、04年に俳優デビュー。その後、数々のドラマや映画の話題作に出演するとともに、「トッズ」のアンバサダーを務めるなど、ファッションアイコンとしても注目を集める。23年には、自身の経験やビジョンを活かしてLAND NK,Inc.を設立し、最高経営責任者(CEO)に就任。新しい価値観を表現するブランド「ニューナウ(NEWNOW)」をスタートした

2023年12月に開催したイベント「WWDJAPAN サステナビリティ・サミット 2023」では、ミューズとして榮倉奈々を迎えた。「WWDJAPAN」が思い描くミューズとは、日頃からサステナビリティについて考え、取り組み、一緒に世の中に発信していきたいと思うパートナーだ。

榮倉は、受注生産型ブランド「ニューナウ(NEWNOW)」を23年秋に立ち上げた。コンセプトは“変わり続ける今を生きる服”で、10年後に着ても新たな楽しみ方ができる服作りを目指す。榮倉はなぜ表現者として服をまとう側から作り手になり、アパレルメーカーを擁する会社のCEOになる決意をしたのか。ブランド立ち上げの経緯から服作りに込める思い、そして新しいものを生み出していくことへの葛藤や希望を聞いた。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)

向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):環境について意識し始めたきっかけは?

榮倉奈々=LAND NK CEO(以下、榮倉):きっかけは子どもを産んだことですね。育児をする中で、サステナブルや環境、地球について真剣に考えるようになりました。また、コスメブランド「ラ ブーシュ ルージュ(LA BOUCHE ROUGE)」とコラボレーションしたときに、創業者ニコラス・ジェルリエ(Nicolas Gerlier)さんと話をし、彼の情熱に感銘を受けたんです。その行動力を見て、私も立ち止まっている場合ではないなと。

WWD:誰かがきっかけになるのは、皆一緒ですね。中でも出産や子育てが大きな経緯になったのですね。

榮倉:私がサステナブルを考えるときのポイントは、やはり子どもです。子どもが大人になったときの世界や、自分がいなくなった後の世界。わが子が成長したときに、より良い世界であってほしいと願うと共に、子どもが仲間と助け合いながら、世界中の子どもたちが過ごす場所がより良い場所であってほしい——その願いがきっかけです。3年ほど前に、地域の子どもや保護者が気軽に立ち寄り、栄養バランスのとれた食事をしながら交流できる場所「子ども食堂」について調べていたことがあったんです。運営を自身で行うとなったときに大きな壁だと感じたのが、資金力と継続性でした。企業として、お金を循環させて継続していくシステムが必要だと学びました。そのようなことを考えながら、「ニューナウ」を経営しています。

芸能界で得た知名度を社会のために

WWD:改めて、「ニューナウ」を立ち上げた経緯を教えてください。

榮倉:「ニューナウ」は、スタイリストの上杉美雪さんをクリエイティブ・ヴィジョン・ディレクターとして、ブランド「コート(COATE)」の福屋千春さんをクチュール・デザイナーとして迎えて立ち上げたブランドです。お2人とはそれぞれ10年、5年とスタイリングや服を通して信頼関係を築いてきました。次第に「上杉さんのフィルターを通した服を着てみたい」と思うようになり、彼女の視点を通じたスタイリングと、福屋さんの確かなものづくりをたくさんの方に届けたくて起業しました。私は、お2人のクリエイティブを守る役割だと思っています。

また、環境への意識が高まっていくうちに、廃棄物を減らす大きなシステムを作りたいとも考えるようになりました。以前、建築家の武田清明さんを取材したときに、人工物がバイオマスを上回ったという話を聞いてショックを受けて。自分が地球に生きる人間としてのあり方を、今一度考えなければいけないと思いました。

さらに、子どもの未来や人生を考える中で、自らの人生を振り返る機会も自然と増え、芸能界で21年間活動してきた意味についても考えるようになりました。その答えがまだ完全に出たわけではありませんが、自分のためだけに発信するのではなく、何か社会の役に立てるようにしたいと思っています。

WWD:モデルや俳優として服をまとう側から、作り手にもなったことで気付いたことはありますか?

榮倉:企業理念やブランドコンセプトを考えれば考えるほど、美しさは内部に宿っていると強く実感します。

WWD:サステナビリティは誰にとっても新しい世界です。業界の皆さんが純粋に洋服作りやクリエイティブを発揮できる環境を今すぐ作らねばという思いで取り組んでいます。ただ、いざサステナビリティをビジネスにしようとすると知らない言葉ばかり。科学やデジタルの専門用語も多く、技術も今までの作り方とは全く違うものも入ってきて、戸惑っている人も多いです。榮倉さんも、新しい知識や技術について勉強されたのですか?

榮倉:ビジネスに関係していなくても、サステナブル自体が難しいと思います。奥が深く、また見る人の角度や立場によっても答えが変わってくる。個人的には自宅でコンポストをやっていて、本当にできることから少しずつ取り組んでいるのですが、それがあまりにもちっぽけ過ぎて、気が遠くなるときがあります。ただ、小さくてもとにかく続けることが大切だと信じ、自分を鼓舞しています。

「ニューナウ」でいうと、会社の規模や資金力、ステージによって、できることとできないことは変わってくると感じます。私の頭の中で描いていること全てを実現しようとすると、現在の「ニューナウ」の規模ではまだまだ足りない。でも、それでいいと思っています。できることからコツコツと取り組み、そこから継続してできる方法や仲間を探し、大きくなっていきたいです。

WWD:作り手として、1つの大きなステージが受注会だったと思います。

榮倉:5日間開催し、私も会場に立ちました。楽しかったです。「ニューナウ」の服がさまざまな体形や幅広い世代の方に似合うことをお客さまに改めて見せてもらい、次の受注会に生かすヒントにもなりました。生の声を聞けて幸せでした。

WWD:同じ“買い物”でも、従来の買い物と受注会のオーダーでは、購入側の姿勢や気持ちにも違いがあるのでしょうか?

榮倉:受注会を開催した理由は、受注生産にすることで過剰在庫を持たず、廃棄される服を減らしたかったから。「ニューナウ」を買ったら、そういう付加価値があると思ってくださったらうれしいです。でも、服を買うお客さまが、その付加価値に魅力を感じて買ってくださるのか、それとも服が美しいから買ってくださるのか、それは私たちが決めることではありません。どちらの思いで買ってくださった方にもスペシャルな服を届けたいと思っています。

WWD:CEOとしてここまでやってきて得た気付きや学びはありますか?

榮倉:コツコツやっていくことと、日々変わる目の前の課題に柔軟に対応する重要性です。

環境だけでなく
人の心や気持ちも大切にしたい

WWD:ファッションブランドに関わる多くの関係者が、環境への思いと、企業を成り立たせるために作り続けることへの葛藤を抱えています。「ニューナウ」としてはどう考えていますか?

榮倉:アパレルブランドを始めたり続けたりすることは、環境への思いと相反する部分もあります。でも、「ニューナウ」のように受注生産で在庫をコントロールして、さらに10年後も大切にきれいに着続けられる服を作るなら、けして無駄ではありません。そして、「ニューナウ」の成長と共にできることもきっと増えていく。忘れてはいけないのは、洋服ってすごく楽しいじゃないですか。

WWD:それを今言おうと思っていました!ファッションへの愛がとても伝わります。

榮倉:やはり、物理的にも精神的にもまずは楽しくないと。だからこそきれいな服を着ることは大事。私は、イタリアブランド「トッズ(TOD'S)」のアンバサダーとして公私ともに長くいい関係を築かせていただいていますが、それは「トッズ」がクラフツマンシップやアフターケアの重要性を考えていて、尊敬しているからこそ。環境だけでなく、人の心や気持ちを考えることも同じくらい大切。それら2つを両立させられることを、ブランドを通じて実現していきたいです。

WWD:ところで、私は先日合同展「エコプロ」に行ったのですが、そこには小学生や中学生もたくさん来ていたんです。中には盛り上がっているブースとそうでないブースがあり、盛り上がっているブースには、子どもの心をつかみやすいVRがあったり、キャッチーな遊びがあったり。もう1つ面白かったのが、大人が一生懸命説明しているブースは、子どもたちも真剣に話を聞いているんです。本気は子どもには伝わるんだと、熱量は大事なんだと感じました。冒頭でお子さんが1つのきっかけということでしたが、子どもの手本にならなければという気持ちはありますか?

榮倉:教育環境でも、サステナブルやSDGs、地球という言葉をよく聞くようになりましたよね。とてもいいことだと思います。私が子どもに見てもらいたいのは、自分事として捉えて、行動に移している姿。本を読んで教えることは誰にでもできますが、親として行動している姿を見て学んでほしい。それが、次世代の社会を担う子どもたちに対して見せるべき姿だと、大人として責任を感じています。

WWD:背中を見せましょう。最後に、今後「ニューナウ」として挑戦したいことは?

榮倉:「ニューナウ」として、榮倉奈々として、賀来奈々として私が目指している目標は、とても大きすぎて1人では成し遂げられません。クラフツマンシップやフェアトレード、環境問題についてもそうですが、まだ皆さんにお伝えできるほどまとまっていないので、これから一緒に頑張れる仲間や方法を見つけて、自分なりに前に進んでいきたいです。

会場の参加者とのQ&A

参加者:サステナブルが魅力あるファッションで楽しいという話に共感しました。起業して1つの目標を達成し、次に見えている課題を教えてください。

榮倉:洋服を楽しんでもらうことを継続するのがとても重要だと考えています。今後は、受注生産の過程で出た布で何か作れないかなど、アイデアはたくさんあります。そして、もう少し大きな渦を巻き起こしたい。今はまだそれぐらいしか言えないのですが、仲間と出会うべくして出会いながら、つながっていきたいです。

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榮倉奈々の決意 なぜアパレルCEOの道を選んだのか

PROFILE:榮倉奈々/LAND NK CEO

(えいくら・なな)2002年にファッションモデルとしてキャリアをスタートし、04年に俳優デビュー。その後、数々のドラマや映画の話題作に出演するとともに、「トッズ」のアンバサダーを務めるなど、ファッションアイコンとしても注目を集める。23年には、自身の経験やビジョンを活かしてLAND NK,Inc.を設立し、最高経営責任者(CEO)に就任。新しい価値観を表現するブランド「ニューナウ(NEWNOW)」をスタートした

2023年12月に開催したイベント「WWDJAPAN サステナビリティ・サミット 2023」では、ミューズとして榮倉奈々を迎えた。「WWDJAPAN」が思い描くミューズとは、日頃からサステナビリティについて考え、取り組み、一緒に世の中に発信していきたいと思うパートナーだ。

榮倉は、受注生産型ブランド「ニューナウ(NEWNOW)」を23年秋に立ち上げた。コンセプトは“変わり続ける今を生きる服”で、10年後に着ても新たな楽しみ方ができる服作りを目指す。榮倉はなぜ表現者として服をまとう側から作り手になり、アパレルメーカーを擁する会社のCEOになる決意をしたのか。ブランド立ち上げの経緯から服作りに込める思い、そして新しいものを生み出していくことへの葛藤や希望を聞いた。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)

向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):環境について意識し始めたきっかけは?

榮倉奈々=LAND NK CEO(以下、榮倉):きっかけは子どもを産んだことですね。育児をする中で、サステナブルや環境、地球について真剣に考えるようになりました。また、コスメブランド「ラ ブーシュ ルージュ(LA BOUCHE ROUGE)」とコラボレーションしたときに、創業者ニコラス・ジェルリエ(Nicolas Gerlier)さんと話をし、彼の情熱に感銘を受けたんです。その行動力を見て、私も立ち止まっている場合ではないなと。

WWD:誰かがきっかけになるのは、皆一緒ですね。中でも出産や子育てが大きな経緯になったのですね。

榮倉:私がサステナブルを考えるときのポイントは、やはり子どもです。子どもが大人になったときの世界や、自分がいなくなった後の世界。わが子が成長したときに、より良い世界であってほしいと願うと共に、子どもが仲間と助け合いながら、世界中の子どもたちが過ごす場所がより良い場所であってほしい——その願いがきっかけです。3年ほど前に、地域の子どもや保護者が気軽に立ち寄り、栄養バランスのとれた食事をしながら交流できる場所「子ども食堂」について調べていたことがあったんです。運営を自身で行うとなったときに大きな壁だと感じたのが、資金力と継続性でした。企業として、お金を循環させて継続していくシステムが必要だと学びました。そのようなことを考えながら、「ニューナウ」を経営しています。

芸能界で得た知名度を社会のために

WWD:改めて、「ニューナウ」を立ち上げた経緯を教えてください。

榮倉:「ニューナウ」は、スタイリストの上杉美雪さんをクリエイティブ・ヴィジョン・ディレクターとして、ブランド「コート(COATE)」の福屋千春さんをクチュール・デザイナーとして迎えて立ち上げたブランドです。お2人とはそれぞれ10年、5年とスタイリングや服を通して信頼関係を築いてきました。次第に「上杉さんのフィルターを通した服を着てみたい」と思うようになり、彼女の視点を通じたスタイリングと、福屋さんの確かなものづくりをたくさんの方に届けたくて起業しました。私は、お2人のクリエイティブを守る役割だと思っています。

また、環境への意識が高まっていくうちに、廃棄物を減らす大きなシステムを作りたいとも考えるようになりました。以前、建築家の武田清明さんを取材したときに、人工物がバイオマスを上回ったという話を聞いてショックを受けて。自分が地球に生きる人間としてのあり方を、今一度考えなければいけないと思いました。

さらに、子どもの未来や人生を考える中で、自らの人生を振り返る機会も自然と増え、芸能界で21年間活動してきた意味についても考えるようになりました。その答えがまだ完全に出たわけではありませんが、自分のためだけに発信するのではなく、何か社会の役に立てるようにしたいと思っています。

WWD:モデルや俳優として服をまとう側から、作り手にもなったことで気付いたことはありますか?

榮倉:企業理念やブランドコンセプトを考えれば考えるほど、美しさは内部に宿っていると強く実感します。

WWD:サステナビリティは誰にとっても新しい世界です。業界の皆さんが純粋に洋服作りやクリエイティブを発揮できる環境を今すぐ作らねばという思いで取り組んでいます。ただ、いざサステナビリティをビジネスにしようとすると知らない言葉ばかり。科学やデジタルの専門用語も多く、技術も今までの作り方とは全く違うものも入ってきて、戸惑っている人も多いです。榮倉さんも、新しい知識や技術について勉強されたのですか?

榮倉:ビジネスに関係していなくても、サステナブル自体が難しいと思います。奥が深く、また見る人の角度や立場によっても答えが変わってくる。個人的には自宅でコンポストをやっていて、本当にできることから少しずつ取り組んでいるのですが、それがあまりにもちっぽけ過ぎて、気が遠くなるときがあります。ただ、小さくてもとにかく続けることが大切だと信じ、自分を鼓舞しています。

「ニューナウ」でいうと、会社の規模や資金力、ステージによって、できることとできないことは変わってくると感じます。私の頭の中で描いていること全てを実現しようとすると、現在の「ニューナウ」の規模ではまだまだ足りない。でも、それでいいと思っています。できることからコツコツと取り組み、そこから継続してできる方法や仲間を探し、大きくなっていきたいです。

WWD:作り手として、1つの大きなステージが受注会だったと思います。

榮倉:5日間開催し、私も会場に立ちました。楽しかったです。「ニューナウ」の服がさまざまな体形や幅広い世代の方に似合うことをお客さまに改めて見せてもらい、次の受注会に生かすヒントにもなりました。生の声を聞けて幸せでした。

WWD:同じ“買い物”でも、従来の買い物と受注会のオーダーでは、購入側の姿勢や気持ちにも違いがあるのでしょうか?

榮倉:受注会を開催した理由は、受注生産にすることで過剰在庫を持たず、廃棄される服を減らしたかったから。「ニューナウ」を買ったら、そういう付加価値があると思ってくださったらうれしいです。でも、服を買うお客さまが、その付加価値に魅力を感じて買ってくださるのか、それとも服が美しいから買ってくださるのか、それは私たちが決めることではありません。どちらの思いで買ってくださった方にもスペシャルな服を届けたいと思っています。

WWD:CEOとしてここまでやってきて得た気付きや学びはありますか?

榮倉:コツコツやっていくことと、日々変わる目の前の課題に柔軟に対応する重要性です。

環境だけでなく
人の心や気持ちも大切にしたい

WWD:ファッションブランドに関わる多くの関係者が、環境への思いと、企業を成り立たせるために作り続けることへの葛藤を抱えています。「ニューナウ」としてはどう考えていますか?

榮倉:アパレルブランドを始めたり続けたりすることは、環境への思いと相反する部分もあります。でも、「ニューナウ」のように受注生産で在庫をコントロールして、さらに10年後も大切にきれいに着続けられる服を作るなら、けして無駄ではありません。そして、「ニューナウ」の成長と共にできることもきっと増えていく。忘れてはいけないのは、洋服ってすごく楽しいじゃないですか。

WWD:それを今言おうと思っていました!ファッションへの愛がとても伝わります。

榮倉:やはり、物理的にも精神的にもまずは楽しくないと。だからこそきれいな服を着ることは大事。私は、イタリアブランド「トッズ(TOD'S)」のアンバサダーとして公私ともに長くいい関係を築かせていただいていますが、それは「トッズ」がクラフツマンシップやアフターケアの重要性を考えていて、尊敬しているからこそ。環境だけでなく、人の心や気持ちを考えることも同じくらい大切。それら2つを両立させられることを、ブランドを通じて実現していきたいです。

WWD:ところで、私は先日合同展「エコプロ」に行ったのですが、そこには小学生や中学生もたくさん来ていたんです。中には盛り上がっているブースとそうでないブースがあり、盛り上がっているブースには、子どもの心をつかみやすいVRがあったり、キャッチーな遊びがあったり。もう1つ面白かったのが、大人が一生懸命説明しているブースは、子どもたちも真剣に話を聞いているんです。本気は子どもには伝わるんだと、熱量は大事なんだと感じました。冒頭でお子さんが1つのきっかけということでしたが、子どもの手本にならなければという気持ちはありますか?

榮倉:教育環境でも、サステナブルやSDGs、地球という言葉をよく聞くようになりましたよね。とてもいいことだと思います。私が子どもに見てもらいたいのは、自分事として捉えて、行動に移している姿。本を読んで教えることは誰にでもできますが、親として行動している姿を見て学んでほしい。それが、次世代の社会を担う子どもたちに対して見せるべき姿だと、大人として責任を感じています。

WWD:背中を見せましょう。最後に、今後「ニューナウ」として挑戦したいことは?

榮倉:「ニューナウ」として、榮倉奈々として、賀来奈々として私が目指している目標は、とても大きすぎて1人では成し遂げられません。クラフツマンシップやフェアトレード、環境問題についてもそうですが、まだ皆さんにお伝えできるほどまとまっていないので、これから一緒に頑張れる仲間や方法を見つけて、自分なりに前に進んでいきたいです。

会場の参加者とのQ&A

参加者:サステナブルが魅力あるファッションで楽しいという話に共感しました。起業して1つの目標を達成し、次に見えている課題を教えてください。

榮倉:洋服を楽しんでもらうことを継続するのがとても重要だと考えています。今後は、受注生産の過程で出た布で何か作れないかなど、アイデアはたくさんあります。そして、もう少し大きな渦を巻き起こしたい。今はまだそれぐらいしか言えないのですが、仲間と出会うべくして出会いながら、つながっていきたいです。

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「グローバルノースの大量消費を解決するためにいるのではない」 古着の最終地点ケニアのデザイナーと現状を議論

ケニア出身のデザイナー、イオナ・マクレス(Iona Mccreath)は自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるファッションブランド「キコ ロメオ(KIKOROMEO)」を通して、現地の伝統技法を現代的に昇華したモノ作りを続ける。彼女が拠点とするケニアは美しいクリエイティビティーに溢れる土地でありながら、世界の大量生産・大量消費が生み出す古着の最終地点にもなっている。昨年現地を訪れたサステナブルファッションの啓発活動を続ける一般社団法人ユニステップス代表の鎌田安里紗を交えて、ケニアの現状とファッション産業のあるべき未来を議論する。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


木村和花WWDJAPAN編集部記者(以下、WWD):1人目のゲストは、一般社団法人ユニステップス代表の鎌田安里紗さんです。そもそもこのテーマをサミットで取り上げたいと思ったのは、鎌田さんが2023年8月に古着の行き着く先を見るためにケニアに行ったというお話を聞いたのがきっかけでした。この後、現地の様子を詳しくお話しいただきます。2人目は、アフリカ・ケニアからご参加いただきましたファッションデザイナーのイオナ・マクレスさんです。イオナさんは「キコロメオ(KIKOROMEO)」というファッションブランドのクリエイティブ・ディレクターで、ケニアのファッションシーンを担うデザイナーの1人です。自己紹介とブランドの紹介をお願いします。

イオナ・マクレス=「キコロメオ」クリエイティブ・ディレクター(以下、マクレス):皆さんこんばんは。今日この場に参加できてとてもうれしいです。「キコ ロメオ」は私の母が1996年に始めたブランドで、2020年に私が引き継ぎました。サステナビリティに関してはさまざまなことに取り組んでいます。まず大事にしていることは、人々がずっと持ち続けたくなるような素晴らしい伝統を持つ服を作ること。衣服は投資であり、生涯ずっと持ち続けてもらうものであるべきだと思います。私たちの服には、アートが欠かせません。例えば今スクリーンに映っているのは、スーダンのアーティストがハンドペイントで描いた絵で、私の後ろにある絵も彼の作品です。バティックやそのほかの伝統的な染め技法も多く使っています。今私が着ているもののように、伝統や芸術性を生かしながらケニアのストーリーを、服を通じて伝えることに挑戦しています。ほかにもケニア北部のビーズ細工のパターンを取り入れるといった、伝統的なものをインスピレーション源としています。生地は、リネンやケニアで紡がれたコットンなど天然繊維のみを使用しています。日本とは、生地の使い方や作り方、染め方などの歴史や知恵を共有していると思います。以上が私のブランドについてです。

WWD:色が印象的ですが、染色は植物染めですか?

マクレス:いいえ、現在は認証済みの染料を使っていますが植物由来というわけではありません。でも今植物由来の染料で鮮やかな色を出す方法を探しているところです。木の皮や植物を使ってできないかなどいろいろ試しているところで、近々お披露目できたらと思います。

WWD:ありがとうございます。もう一つ、「キコ ロメオ」の顧客層や販路についても教えてください。

マクレス:顧客基盤はとても広く、世界中に顧客がいます。共通点を挙げるとしたら、芸術性を大事にしている点。それから、自分の人生や未来を豊かにするような、投資対象として服を購入しようという価値観を持っている点。世界を旅して、地球環境やサステナビリティ、周りの人々に配慮した選択をしようとしている人たちですね。商品は公式ウェブサイトで販売しています。今まさに世界に販路を広げようと思っているところで、いつか日本でも実現したいです。

輸入される古着の質が低下 そのまま売れるものは2、3割に

WWD:彼女が生まれ育ったケニアは素晴らしい伝統工芸やクリエイティビティーに溢れる土地ですが、もう一つの側面としてファッション産業が生み出す廃棄された服の最終到着地点の一つにもなっています。鎌田さんのケニア滞在の様子をお話しいただけますか?

鎌田:ありがとうございます。私はファッション産業の透明性を高めるグローバルキャンペーン、ファッションレボリューションの日本の事務局をしています。イオナのお母さんが同団体のケニアの代表だったことから、彼女と出会うことができました。8月にはナイロビを中心にケニアのさまざまな場所を訪ねました。最初の写真は、ナイロビ市内の古着マーケットです。数字は50シリング、30シリングという値段です。1シリング大体1円くらいなので、50円、30円ですね。ケニアは物価も上がっていて、貧富の差は激しいんですが、われわれのような海外から行った人が訪ねるようなレストランやカフェでランチを食べると1500円くらい。東京とあまり変わらないですよね。一方で服がとても安い。その理由の1つが、欧米諸国から大量に輸入される古着です。これがモンバサというナイロビの近くの港に届いた古着のかたまりです。現地ではミツンバと呼ばれています。日本だとベールと呼ぶと思います。50kgぐらいのかたまりを2万、3万円程度で古着の業者が購入します。10年前は大体5、6割がそのままマーケットで売れたそうですが、現在そのまま売れるものは2、3割だそうです。それ以外のものは質が悪かったり、傷んでいたりする。街中にはミシンが並んでいるエリアがあり、そこではお直しが行われます。子供服の方が消費のスピードが早いので、大人の服をザクザク切って縫って子供服のサイズにしたりといったことも行われています。お直しをしているとはいえ、寿命が延びるのはすごく短い期間なのかなと思います。

WWD:先ほどの市場の写真では50円30円の服が並んでいましたが、以前はもっと1500円くらいが普通だったんですね。

鎌田:エリアによっては現在もいいものを売っている場所はあるようですが、全体としてその割合が変わってきている。ちなみに先ほどのミツンバはどこから入ってくるかというとイギリス、中国、アメリカ、それからパキスタン、トルコが多いそうです。日本の服は見かけなかったですが現地の方に聞くと「日本の服はパキスタンからたくさん入ってきます」とおっしゃっていて、そういう形で回っているんだなと思いました。

服の形をしたプラスチックが現地の環境を汚染

WWD:ちなみにイオナは先ほどのマーケットには行くんですか?

イオナ:はい、行ったことがあります。今話に上がっていたようにここ数年で、間違いなく古着の質は落ちています。私たちは最近、埋立地の衣類を再利用するプロジェクトを始めました。Tシャツはちょっとしたダメージやシミで売れずに膨大な量が埋め立てられています。これは私たちが作ったバッグで、埋立地から拾ったTシャツ7枚で製作したものです。

鎌田:埋立地に行く前にいろんな形でレスキューされていく服を目撃して、そのクリエイティビティーは本当にワクワクするものがありました。お直しをしていた現場の足元では、端切れをそのまま床に落とすのでマーケットの中が常時10cmから1mぐらい端切れが積み重なって、歩くとふかふかするんです。それが水分も含んで非常に強いにおいがする。その上マーケットの真ん中を流れている川にも端切れや売れない服がそのまま流れ込んでいくような状況です。ケニアに輸入されている服の3枚に1枚はポリエステル混であるといわれています。ケニアはゴミ回収と焼却、再生の仕組みが整っていないため、環境汚染や自公衆衛生上の観点から厳しくプラスチックを取り締まっているんですが、衣類は取り締まられていないので衣類の形をしたプラスチックが河川を汚染してしまう、あるいは土壌汚染してしまうということが一つの大きな問題です。

WWD:端切れ以外の服も混ざっていますね。すごい量だということが分かります。

鎌田:端切れはトラクターが定期的に回収し、ナイロビ市内の埋立地ダンドラという場所に運んでいきます。服だけでなく医療ゴミなど特殊なもの以外はほぼここに集まるため、すでにこれ以上ゴミを埋め立てられなくなっている現状もあります。ここでは見慣れたブランドの服もそのまま落ちていました。非常に真新しい服も落ちています。洗濯表示を見ると、ポリエステル由来のものが多い。日本では洗濯するときのマイクロファイバーが課題として指摘されますが、こういった形でそのまま服が河川や埋立地に入ってしまう可能性もあるんだと思いました。それからもう一つの問題が、国内産業への影響です。これはアフリカのいろんな国々が対策を考えていて、古着の輸入を禁止するところが出ていてきます。ナイロビから2、3時間離れたところの大きな工場に話を聞くと、以前はファッションアパレルがメインだったそうですが、それでは経営できないので今は軍隊の制服やガソリンスタンドなどのグローバルブランドの制服などをメインの事業として行っているそうです。もう一つ忘れてはいけないのが、非常にクリエイティブで面白いクリエイションをしている若いデザイナーが現地にはたくさんいるということ。彼らは古着を素材として扱う感覚が非常に強い。新しい生地を買って服を作るよりも、マーケットに行ってマテリアルとして古着を調達して服を作っています。また現地の適正価格で新品の服を作ると到底売れないとも話していました。適正価格であっても古着に比べると高いのでなかなかビジネスをするのが難しいそうです。こうしたクリエイティビティーの芽をつんでしまうようなことがあるのはもったいないことだなと思いました。

「他人の問題を解決するためにでは疲弊してしまう」

WWD:滞在後、率直にどんな感想をお持ちになりましたか?

鎌田:服のエンドオブライフを考える、循環の仕組みを作るという言葉を耳にすることは増えていますが、本当に服を循環させるのは非常に難しい。全然できていないと強く感じましね。アフリカにある種押し付けてしまっている部分もあると思います。衣類は混紡が多く分離して再生する技術がまだ確立されていなかったり、国内で回収して再利用する際のコストの部分だったりといった課題はありますが、そこを改善していくためには具体的な仕組みや制度を考えていく必要性を感じました。

WWD:イオナはこの現状をどう思っていますか?

マクレス:今鎌田さんが話してくれた内容はまさに現場で起こっていることです。写真を見たことはあっても、実際に何が起こっているかをそこから図ることは難しいでしょうし、現実を外に伝えていくことも簡単ではありません。だからこそ、このような会話の場をもっと生み出していくべきだと思いました。古着の廃棄に加えて、ケニアには「H&M」のようなインターナショナルブランドの巨大な製造拠点もあり、そこで使われなかった新しい生地も同じマーケットに捨てられています。私たちはブランドとしてそうした生地にバティックを施して美しい服を新たに生み出したりしてサステナビリティに取り組むことができますが、問題なのは主にグローバルノースに生きる人々の大量消費を解決するために、私たちがイノベーションを起こさなければいけないことです。アップサイクルしますが、それはしなければいけないからなのです。もちろんここでイノベーションを起こせることは素晴らしいですが、他人の問題を解決するためにという目的のためでは疲弊してしまいます。もう一つの問題は、安い古着が輸入され、さらに再販を繰り返すことで、価格のシステムが完全にゆがんでしまうことです。若手を含めた多くのデザイナーが、ビジネスを続けるために適切な価格をつけようと試みています。しかし、人々は安い価格に慣れているせいでそれらがとても高いと認識されてしまう。つまり、大量の古着が流れ着いている現状はさまざまな問題を起こしています。そしてこのような会話をすること、現実を直視することがとても重要だと思います。私たちは、デザインの仕方を考え直すこと、そして服の最後を考えてデザインする必要があります。世界ではエンドオブライフを考慮せずに作り続けてきたために、廃棄物をどう処理していくべきかという問題を抱えています。だからこそ、ものの最後を念頭に置いてデザインするようになるだけでも問題解決に向けた大きな一歩になるはずです。最後に、私たちの消費主義的価値観の見直しです。人々はもはやそれが美意識とも言えるくらいに、消費に取り憑かれています。この価値観が変化していくには長い時間がかかると思います。消費に対する価値観を徐々に変えると同時に、消費主義の中でもできるだけ害の少ないモノ作りとは何かを考えていくことが重要だと思います。

鎌田:価格の話は、日本でも全く同じ状況だと思います。価格勝負の中ではインディペンデントなクリエイターがビジネスを続けていくことが非常に難しい。日本においてもこの30年で衣服の平均価格は約半分になりました。価格が下がると同時に、衣服の所有期間が短くなっているというデータもあります。自分自身を振り返っても学生時代に服がどんどん安くなってかわいい服が買えるのがうれしかったですが、ある日家に帰ると全然愛着がない服がたくさんある。飽きてしまった服は一応どこかに寄付しますけど回収した企業がどういうふうに服を回していけるかというと、繊維to繊維のリサイクル率は1%未満ですよね。リユースされるとはいえ、最終地点の一つの形としてケニアみたいな状況がある。適正価格と適正な生産量をどう考えていけば良いのかは非常に悩ましいですよね。

「美しいものを生み出したい気持ちは人々が根源的に持っている生きがい」

WWD:イオナの周りの若いファッションデザイナーは、こうした現状を見ながらも新しいものを作り続けたいというパッションを持つ人は多いのでしょうか?

マクレス:もちろんです。アートにしろ、ファッションにしろ、何か美しいものを生み出したい気持ちは人々が根源的に持っている生きがいだと思いますし、このような廃棄やそのほかさまざまな問題のソリューションにもなりえます。ケニアには多くの才能あふれるデザイナーがいます。彼らが置かれた環境に限定されずに、どのようにグローバル市場にアクセスできるかということも考えていきたいです。

WWD:イオナは次世代のサステナブル素材の研究開発にも携わっています。

マクレス:素材開発は、私が一番情熱をささげていることです。テキスタイルとそのイノベーションの世界が大好きなんです。最近取り組んでいるプロジェクトは、地元で入手できる原材料のバリエーションを増やし、エンドオブライフの観点からも実用的な代替素材の開発です。生分解性かつ、肌にも優しい生地は作れないかなどですね。たとえば、サイザルです。まずサイザルを使ってバスケットを作っている地元の女性グループに話を聞きました。これはサイザルを土を使って染色しているところですね。ここの土はとても強力で、茶色の顔料を含んでいるので、とてもいい色を出すんです。そのほかにも煙や木の皮などさまざまなものを使って染めています。これは、彼女たちがサイザルから繊維を抽出し、糸にするところです。従来はこれでバスケットを作っていましたが、私たちはこの糸をもっと細くすることで衣料品を作れないか研究しています。今は研究開発の道なかばで、糸を使って織ることはできましたが、今後もっと柔らかな糸にしたいと思っています。昔からある技術やリソースといった過去を振り返りながらも、新しい未来を作っていく作業はとても楽しいプロセスです。

WWD:彼女のように地元の特徴に焦点を当てて、そこからしか生まれないクリエイションを生み出すというのはすごく良いアイデアだと思います。

鎌田:そうですね。現地でデザイナーと話すと、エンドオブライフの現場にいるので生み出すことへの恐れも当然感じると。ではもう、古着だけ着てれば良いのかというと、それはあまりにも喜びがない。作るという喜びは人間にとって根源的なものだからそれを奪われたくないと強く主張していました。日本でもほとんど海外に生産が移っています。もちろん国外生産が悪いわけではないですし、大量生産がすぐに悪とはいえないかもしれないですが、それぞれの土地で育まれてきた技術が全く使われなくなってしまうのは明らかにもったいないこと。作る喜びを感じながら、それぞれの土地のユニークネスがもっと生き残っていけるような形にできないんだろうかと考えました。

WWD:そこも私たちが考えていかないといけない持続可能性の大事なポイントの一つですね。先ほどの動画にもあったエプソンも古着を使った素材を開発している。

鎌田:エプソンは紙の再生技術ドライファイバーテクノロジーを繊維製品に活用するための技術開発を行っています。今衣類のリサイクルの一つの大きな課題は、複数の繊維を分離してそれぞれ生かすことだと思いますが、混ざった状態でも再生できる選択肢を模索しているようです。

「個人が感じている違和感を業務に反映できるような制度を」

WWD:最後に鎌田さんから、日本のファッション産業に関わる人たちに伝えたいことは?

鎌田:皆さんここにいらっしゃるということは、どうにか産業を変えなくてはいけないと思われているかもしれません。ファッション産業で働く1人1人の方と話すと、繊維やファッションへの強い愛着を感じます。日々仕事をする中で企業人として売り上げを伸ばし続けなければいけないということと、明らかに環境的に無理が来ているという、どちらもが一人の人の中に共存しています。今の経済システムでは売り上げを上げながら、一気に環境負荷を低くすることが難しい。環境負荷が低い方が、価格が高いですし、生み出したものに対して責任を持たなくていい仕組みになっています。産業によっては生産量に合わせて回収して再生する責任を負う業界もありますが、そういった制度がない中で1人の努力、個社の努力で変えられることには限界があると思います。ですので、個人が感じている違和感や変えた方がいいと思っていることを業務に反映できるような制度、政策について、どこかに過度に負担がかからない形できちんと議論されていく必要が早急にあると思います。

WWD:イオナからも最後に来場者へのメッセージをいただけますでしょうか。

イオナ:ありがとうございます。生産者であれ、消費者であれ、この産業に関わる全ての人たちが過去を振り返り、そしてこれからどこに向かおうとしているのかを立ち止まって考えること、そして衣服のエンドオブライフを設計段階から考え、消費主義の価値観を見直すこと、産業と国とがつながり方法を見つけていくことが大事です。エプソンのチームがケニアにきて進めていることを見ただけでもとても驚きました。そうした垣根を越えたコラボレーションによって今私たちが直面している問題を解決できると思います。

WWD:ありがとうございました。

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「グローバルノースの大量消費を解決するためにいるのではない」 古着の最終地点ケニアのデザイナーと現状を議論

ケニア出身のデザイナー、イオナ・マクレス(Iona Mccreath)は自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるファッションブランド「キコ ロメオ(KIKOROMEO)」を通して、現地の伝統技法を現代的に昇華したモノ作りを続ける。彼女が拠点とするケニアは美しいクリエイティビティーに溢れる土地でありながら、世界の大量生産・大量消費が生み出す古着の最終地点にもなっている。昨年現地を訪れたサステナブルファッションの啓発活動を続ける一般社団法人ユニステップス代表の鎌田安里紗を交えて、ケニアの現状とファッション産業のあるべき未来を議論する。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


木村和花WWDJAPAN編集部記者(以下、WWD):1人目のゲストは、一般社団法人ユニステップス代表の鎌田安里紗さんです。そもそもこのテーマをサミットで取り上げたいと思ったのは、鎌田さんが2023年8月に古着の行き着く先を見るためにケニアに行ったというお話を聞いたのがきっかけでした。この後、現地の様子を詳しくお話しいただきます。2人目は、アフリカ・ケニアからご参加いただきましたファッションデザイナーのイオナ・マクレスさんです。イオナさんは「キコロメオ(KIKOROMEO)」というファッションブランドのクリエイティブ・ディレクターで、ケニアのファッションシーンを担うデザイナーの1人です。自己紹介とブランドの紹介をお願いします。

イオナ・マクレス=「キコロメオ」クリエイティブ・ディレクター(以下、マクレス):皆さんこんばんは。今日この場に参加できてとてもうれしいです。「キコ ロメオ」は私の母が1996年に始めたブランドで、2020年に私が引き継ぎました。サステナビリティに関してはさまざまなことに取り組んでいます。まず大事にしていることは、人々がずっと持ち続けたくなるような素晴らしい伝統を持つ服を作ること。衣服は投資であり、生涯ずっと持ち続けてもらうものであるべきだと思います。私たちの服には、アートが欠かせません。例えば今スクリーンに映っているのは、スーダンのアーティストがハンドペイントで描いた絵で、私の後ろにある絵も彼の作品です。バティックやそのほかの伝統的な染め技法も多く使っています。今私が着ているもののように、伝統や芸術性を生かしながらケニアのストーリーを、服を通じて伝えることに挑戦しています。ほかにもケニア北部のビーズ細工のパターンを取り入れるといった、伝統的なものをインスピレーション源としています。生地は、リネンやケニアで紡がれたコットンなど天然繊維のみを使用しています。日本とは、生地の使い方や作り方、染め方などの歴史や知恵を共有していると思います。以上が私のブランドについてです。

WWD:色が印象的ですが、染色は植物染めですか?

マクレス:いいえ、現在は認証済みの染料を使っていますが植物由来というわけではありません。でも今植物由来の染料で鮮やかな色を出す方法を探しているところです。木の皮や植物を使ってできないかなどいろいろ試しているところで、近々お披露目できたらと思います。

WWD:ありがとうございます。もう一つ、「キコ ロメオ」の顧客層や販路についても教えてください。

マクレス:顧客基盤はとても広く、世界中に顧客がいます。共通点を挙げるとしたら、芸術性を大事にしている点。それから、自分の人生や未来を豊かにするような、投資対象として服を購入しようという価値観を持っている点。世界を旅して、地球環境やサステナビリティ、周りの人々に配慮した選択をしようとしている人たちですね。商品は公式ウェブサイトで販売しています。今まさに世界に販路を広げようと思っているところで、いつか日本でも実現したいです。

輸入される古着の質が低下 そのまま売れるものは2、3割に

WWD:彼女が生まれ育ったケニアは素晴らしい伝統工芸やクリエイティビティーに溢れる土地ですが、もう一つの側面としてファッション産業が生み出す廃棄された服の最終到着地点の一つにもなっています。鎌田さんのケニア滞在の様子をお話しいただけますか?

鎌田:ありがとうございます。私はファッション産業の透明性を高めるグローバルキャンペーン、ファッションレボリューションの日本の事務局をしています。イオナのお母さんが同団体のケニアの代表だったことから、彼女と出会うことができました。8月にはナイロビを中心にケニアのさまざまな場所を訪ねました。最初の写真は、ナイロビ市内の古着マーケットです。数字は50シリング、30シリングという値段です。1シリング大体1円くらいなので、50円、30円ですね。ケニアは物価も上がっていて、貧富の差は激しいんですが、われわれのような海外から行った人が訪ねるようなレストランやカフェでランチを食べると1500円くらい。東京とあまり変わらないですよね。一方で服がとても安い。その理由の1つが、欧米諸国から大量に輸入される古着です。これがモンバサというナイロビの近くの港に届いた古着のかたまりです。現地ではミツンバと呼ばれています。日本だとベールと呼ぶと思います。50kgぐらいのかたまりを2万、3万円程度で古着の業者が購入します。10年前は大体5、6割がそのままマーケットで売れたそうですが、現在そのまま売れるものは2、3割だそうです。それ以外のものは質が悪かったり、傷んでいたりする。街中にはミシンが並んでいるエリアがあり、そこではお直しが行われます。子供服の方が消費のスピードが早いので、大人の服をザクザク切って縫って子供服のサイズにしたりといったことも行われています。お直しをしているとはいえ、寿命が延びるのはすごく短い期間なのかなと思います。

WWD:先ほどの市場の写真では50円30円の服が並んでいましたが、以前はもっと1500円くらいが普通だったんですね。

鎌田:エリアによっては現在もいいものを売っている場所はあるようですが、全体としてその割合が変わってきている。ちなみに先ほどのミツンバはどこから入ってくるかというとイギリス、中国、アメリカ、それからパキスタン、トルコが多いそうです。日本の服は見かけなかったですが現地の方に聞くと「日本の服はパキスタンからたくさん入ってきます」とおっしゃっていて、そういう形で回っているんだなと思いました。

服の形をしたプラスチックが現地の環境を汚染

WWD:ちなみにイオナは先ほどのマーケットには行くんですか?

イオナ:はい、行ったことがあります。今話に上がっていたようにここ数年で、間違いなく古着の質は落ちています。私たちは最近、埋立地の衣類を再利用するプロジェクトを始めました。Tシャツはちょっとしたダメージやシミで売れずに膨大な量が埋め立てられています。これは私たちが作ったバッグで、埋立地から拾ったTシャツ7枚で製作したものです。

鎌田:埋立地に行く前にいろんな形でレスキューされていく服を目撃して、そのクリエイティビティーは本当にワクワクするものがありました。お直しをしていた現場の足元では、端切れをそのまま床に落とすのでマーケットの中が常時10cmから1mぐらい端切れが積み重なって、歩くとふかふかするんです。それが水分も含んで非常に強いにおいがする。その上マーケットの真ん中を流れている川にも端切れや売れない服がそのまま流れ込んでいくような状況です。ケニアに輸入されている服の3枚に1枚はポリエステル混であるといわれています。ケニアはゴミ回収と焼却、再生の仕組みが整っていないため、環境汚染や自公衆衛生上の観点から厳しくプラスチックを取り締まっているんですが、衣類は取り締まられていないので衣類の形をしたプラスチックが河川を汚染してしまう、あるいは土壌汚染してしまうということが一つの大きな問題です。

WWD:端切れ以外の服も混ざっていますね。すごい量だということが分かります。

鎌田:端切れはトラクターが定期的に回収し、ナイロビ市内の埋立地ダンドラという場所に運んでいきます。服だけでなく医療ゴミなど特殊なもの以外はほぼここに集まるため、すでにこれ以上ゴミを埋め立てられなくなっている現状もあります。ここでは見慣れたブランドの服もそのまま落ちていました。非常に真新しい服も落ちています。洗濯表示を見ると、ポリエステル由来のものが多い。日本では洗濯するときのマイクロファイバーが課題として指摘されますが、こういった形でそのまま服が河川や埋立地に入ってしまう可能性もあるんだと思いました。それからもう一つの問題が、国内産業への影響です。これはアフリカのいろんな国々が対策を考えていて、古着の輸入を禁止するところが出ていてきます。ナイロビから2、3時間離れたところの大きな工場に話を聞くと、以前はファッションアパレルがメインだったそうですが、それでは経営できないので今は軍隊の制服やガソリンスタンドなどのグローバルブランドの制服などをメインの事業として行っているそうです。もう一つ忘れてはいけないのが、非常にクリエイティブで面白いクリエイションをしている若いデザイナーが現地にはたくさんいるということ。彼らは古着を素材として扱う感覚が非常に強い。新しい生地を買って服を作るよりも、マーケットに行ってマテリアルとして古着を調達して服を作っています。また現地の適正価格で新品の服を作ると到底売れないとも話していました。適正価格であっても古着に比べると高いのでなかなかビジネスをするのが難しいそうです。こうしたクリエイティビティーの芽をつんでしまうようなことがあるのはもったいないことだなと思いました。

「他人の問題を解決するためにでは疲弊してしまう」

WWD:滞在後、率直にどんな感想をお持ちになりましたか?

鎌田:服のエンドオブライフを考える、循環の仕組みを作るという言葉を耳にすることは増えていますが、本当に服を循環させるのは非常に難しい。全然できていないと強く感じましね。アフリカにある種押し付けてしまっている部分もあると思います。衣類は混紡が多く分離して再生する技術がまだ確立されていなかったり、国内で回収して再利用する際のコストの部分だったりといった課題はありますが、そこを改善していくためには具体的な仕組みや制度を考えていく必要性を感じました。

WWD:イオナはこの現状をどう思っていますか?

マクレス:今鎌田さんが話してくれた内容はまさに現場で起こっていることです。写真を見たことはあっても、実際に何が起こっているかをそこから図ることは難しいでしょうし、現実を外に伝えていくことも簡単ではありません。だからこそ、このような会話の場をもっと生み出していくべきだと思いました。古着の廃棄に加えて、ケニアには「H&M」のようなインターナショナルブランドの巨大な製造拠点もあり、そこで使われなかった新しい生地も同じマーケットに捨てられています。私たちはブランドとしてそうした生地にバティックを施して美しい服を新たに生み出したりしてサステナビリティに取り組むことができますが、問題なのは主にグローバルノースに生きる人々の大量消費を解決するために、私たちがイノベーションを起こさなければいけないことです。アップサイクルしますが、それはしなければいけないからなのです。もちろんここでイノベーションを起こせることは素晴らしいですが、他人の問題を解決するためにという目的のためでは疲弊してしまいます。もう一つの問題は、安い古着が輸入され、さらに再販を繰り返すことで、価格のシステムが完全にゆがんでしまうことです。若手を含めた多くのデザイナーが、ビジネスを続けるために適切な価格をつけようと試みています。しかし、人々は安い価格に慣れているせいでそれらがとても高いと認識されてしまう。つまり、大量の古着が流れ着いている現状はさまざまな問題を起こしています。そしてこのような会話をすること、現実を直視することがとても重要だと思います。私たちは、デザインの仕方を考え直すこと、そして服の最後を考えてデザインする必要があります。世界ではエンドオブライフを考慮せずに作り続けてきたために、廃棄物をどう処理していくべきかという問題を抱えています。だからこそ、ものの最後を念頭に置いてデザインするようになるだけでも問題解決に向けた大きな一歩になるはずです。最後に、私たちの消費主義的価値観の見直しです。人々はもはやそれが美意識とも言えるくらいに、消費に取り憑かれています。この価値観が変化していくには長い時間がかかると思います。消費に対する価値観を徐々に変えると同時に、消費主義の中でもできるだけ害の少ないモノ作りとは何かを考えていくことが重要だと思います。

鎌田:価格の話は、日本でも全く同じ状況だと思います。価格勝負の中ではインディペンデントなクリエイターがビジネスを続けていくことが非常に難しい。日本においてもこの30年で衣服の平均価格は約半分になりました。価格が下がると同時に、衣服の所有期間が短くなっているというデータもあります。自分自身を振り返っても学生時代に服がどんどん安くなってかわいい服が買えるのがうれしかったですが、ある日家に帰ると全然愛着がない服がたくさんある。飽きてしまった服は一応どこかに寄付しますけど回収した企業がどういうふうに服を回していけるかというと、繊維to繊維のリサイクル率は1%未満ですよね。リユースされるとはいえ、最終地点の一つの形としてケニアみたいな状況がある。適正価格と適正な生産量をどう考えていけば良いのかは非常に悩ましいですよね。

「美しいものを生み出したい気持ちは人々が根源的に持っている生きがい」

WWD:イオナの周りの若いファッションデザイナーは、こうした現状を見ながらも新しいものを作り続けたいというパッションを持つ人は多いのでしょうか?

マクレス:もちろんです。アートにしろ、ファッションにしろ、何か美しいものを生み出したい気持ちは人々が根源的に持っている生きがいだと思いますし、このような廃棄やそのほかさまざまな問題のソリューションにもなりえます。ケニアには多くの才能あふれるデザイナーがいます。彼らが置かれた環境に限定されずに、どのようにグローバル市場にアクセスできるかということも考えていきたいです。

WWD:イオナは次世代のサステナブル素材の研究開発にも携わっています。

マクレス:素材開発は、私が一番情熱をささげていることです。テキスタイルとそのイノベーションの世界が大好きなんです。最近取り組んでいるプロジェクトは、地元で入手できる原材料のバリエーションを増やし、エンドオブライフの観点からも実用的な代替素材の開発です。生分解性かつ、肌にも優しい生地は作れないかなどですね。たとえば、サイザルです。まずサイザルを使ってバスケットを作っている地元の女性グループに話を聞きました。これはサイザルを土を使って染色しているところですね。ここの土はとても強力で、茶色の顔料を含んでいるので、とてもいい色を出すんです。そのほかにも煙や木の皮などさまざまなものを使って染めています。これは、彼女たちがサイザルから繊維を抽出し、糸にするところです。従来はこれでバスケットを作っていましたが、私たちはこの糸をもっと細くすることで衣料品を作れないか研究しています。今は研究開発の道なかばで、糸を使って織ることはできましたが、今後もっと柔らかな糸にしたいと思っています。昔からある技術やリソースといった過去を振り返りながらも、新しい未来を作っていく作業はとても楽しいプロセスです。

WWD:彼女のように地元の特徴に焦点を当てて、そこからしか生まれないクリエイションを生み出すというのはすごく良いアイデアだと思います。

鎌田:そうですね。現地でデザイナーと話すと、エンドオブライフの現場にいるので生み出すことへの恐れも当然感じると。ではもう、古着だけ着てれば良いのかというと、それはあまりにも喜びがない。作るという喜びは人間にとって根源的なものだからそれを奪われたくないと強く主張していました。日本でもほとんど海外に生産が移っています。もちろん国外生産が悪いわけではないですし、大量生産がすぐに悪とはいえないかもしれないですが、それぞれの土地で育まれてきた技術が全く使われなくなってしまうのは明らかにもったいないこと。作る喜びを感じながら、それぞれの土地のユニークネスがもっと生き残っていけるような形にできないんだろうかと考えました。

WWD:そこも私たちが考えていかないといけない持続可能性の大事なポイントの一つですね。先ほどの動画にもあったエプソンも古着を使った素材を開発している。

鎌田:エプソンは紙の再生技術ドライファイバーテクノロジーを繊維製品に活用するための技術開発を行っています。今衣類のリサイクルの一つの大きな課題は、複数の繊維を分離してそれぞれ生かすことだと思いますが、混ざった状態でも再生できる選択肢を模索しているようです。

「個人が感じている違和感を業務に反映できるような制度を」

WWD:最後に鎌田さんから、日本のファッション産業に関わる人たちに伝えたいことは?

鎌田:皆さんここにいらっしゃるということは、どうにか産業を変えなくてはいけないと思われているかもしれません。ファッション産業で働く1人1人の方と話すと、繊維やファッションへの強い愛着を感じます。日々仕事をする中で企業人として売り上げを伸ばし続けなければいけないということと、明らかに環境的に無理が来ているという、どちらもが一人の人の中に共存しています。今の経済システムでは売り上げを上げながら、一気に環境負荷を低くすることが難しい。環境負荷が低い方が、価格が高いですし、生み出したものに対して責任を持たなくていい仕組みになっています。産業によっては生産量に合わせて回収して再生する責任を負う業界もありますが、そういった制度がない中で1人の努力、個社の努力で変えられることには限界があると思います。ですので、個人が感じている違和感や変えた方がいいと思っていることを業務に反映できるような制度、政策について、どこかに過度に負担がかからない形できちんと議論されていく必要が早急にあると思います。

WWD:イオナからも最後に来場者へのメッセージをいただけますでしょうか。

イオナ:ありがとうございます。生産者であれ、消費者であれ、この産業に関わる全ての人たちが過去を振り返り、そしてこれからどこに向かおうとしているのかを立ち止まって考えること、そして衣服のエンドオブライフを設計段階から考え、消費主義の価値観を見直すこと、産業と国とがつながり方法を見つけていくことが大事です。エプソンのチームがケニアにきて進めていることを見ただけでもとても驚きました。そうした垣根を越えたコラボレーションによって今私たちが直面している問題を解決できると思います。

WWD:ありがとうございました。

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ケリング×CI 生物多様性とファッションの関係をわかりやすく解説

地球上には知られていない種も含めて3000万以上の生き物が存在すると考えられており、それらは直接・間接的に支え合って存在している。その生物多様性の損失が今、大きな問題となっている。ファッションは生物多様性とどう関わりがあり、そして、損失を止め自然を回復するために何ができるのか?専門家である、ケリング(KERING)のサブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ=ソーシングおよび生物多様性スペシャリストと、ジュール・アメリア=コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクターを迎えて、実は深いその関係性について理解を深める。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):自己紹介をアメリアさんからお願いします。

ジュール・アメリア=コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクター(以下、アメリア):私は日本人の母親と、アメリカ人の父親での間で生まれました。出身地の米国ウィスコンシン州は北海道と同じ緯度で寒い地域です。酪農地として知られており、子供のころは東京の学校に通いつつ、夏休みはウィスコンシンの牧場で馬の世話をしていました。

2023年3月末にコンサベーション・インターナショナル・ジャパンへ転職する前は、イノベーション・コンサルティングとして、多くの日本企業と一緒に新製品やサービス、体験を開発する仕事に携わってきました。いろいろな産業の現場を見てきましたが、 中でも食品産業と農業の未来を考えるプロジェクトに携わったことで、自分自身の意識が変わりました。農業における化学肥料使用と健康被害、農家の搾取といった問題ですね。食品を大量生産する中で、地球も人間の体も病んでしまう構造が見えてしまった。

それ以降は、どの産業においても自然と調和する形でビジネスを展開していく必要性を感じ、そこに一番のイノベーション・チャレンジがあると考えるようになりました。コンサベーション・インターナショナル(以下CI)は、政府や企業との協働を通して地球規模の環境課題に取り組んでいる団体であり、そこに惹かれました。

WWD:パリのケリング本社からオンラインで参加のサブリナさん、自己紹介をお願いします。

サブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ =ソーシングおよび生物多様性スペシャリスト(以下、サブリナ):私はケリング・グループのサステナビリティ・チームで、持続可能な調達と生物多様性のスペシャリストとして働いています。特にレザーやコットン、ウール、カシミアのような環境負荷の高い主要原材料の調達に関連する影響を改善し、生物多様性への影響の理解をうながし、管理する手助けをしています。1年半前にケリングに入社し、グループのすべてのブランドとこれらのテーマについて協働してきました。専門は企業の持続可能性の支援、つまり企業が自然や気候、人々に与える影響をより理解し、取り扱うことを手助けすることです。ケリングの前は、世界自然保護基金WWFの英国事務所やその他の環境団体にいました。

人間は4つの生態系サービスを受け取っている

WWD:生物多様性は時代のキーワードですが、実のところその意味が分からない人は多いと思います。まずはアメリアさん、生物多様性の基本をレクチャーください。

アメリア:生物多様性とは、地球上の生命には幅広い多様性があることを指しています。バクテリアから大きな木、クジラから昆虫、キノコ類にカエルまで。つまりすべての種を指しています。そして、生物多様性には、3つのレベルがあります。 一つ目は遺伝子の多様性。例えば、犬にはさまざまなの犬種があります。また、 米もインドだけでも5万種があると言われています。2つ目は種の多様性。例えば、グレートバリアリーフの岩礁であればサンゴだけで400種類、魚で150種類、亀も10種類が生息していると言われています。 最後が生態系の多様性です。地球には砂漠や湿地帯、森林などさまざまなエコシステム、生態系があります。それらはずっと変わらないイメージがありますが、ジャングルが弱って砂漠化したり、サンゴも白化したりしています。

この3つの多様性が互いに関係性を持ち、密度が高まることで強さを増します。織物に置き換えると糸、色、ステッチの種類などが豊富になることで、より強いマテリアルとなったり、より長く使えたり、より美しくなる。その豊富さがつながっているのが生物多様性のイメージです。

WWD:健全な生態系において一種を失ってしまうと、どのような影響があるのでしょうか。

アメリア:こんな事例があります。1920年にアメリカのイエロストーンの国立公園で「捕食動物を駆除する」法律ができて、公園内のオオカミが絶滅しました。すると鹿の一種であるエルクが繁殖し過放牧となり景観が悪化、オオカミの重要さが認識されました。時が進み1995年、オオカミを公園に戻す取り組みを始めた結果、エルクの数が減少しバランスが取れ、ビーバーや鳥類が戻ってきて、川の浸食もなくなった。一種の動物が自然にどれだけ影響を与えているかがわかるストーリーです。

そしてなぜ生物多様性が人間にとっても重要かと言えば、人間の生活が生態系サービスの上に成り立っているからです。

WWD:サービスという言葉を使うのですか?

アメリア:はい、そうです。サービスには4つのカテゴリーがあります。1つは「基盤サービス」。死んだ生物を分解し栄養素を土へ戻し、光合成や土作り、遺伝的多様性の維持を行います。2つ目が「供給サービス」。飲み水や魚、食料など、人間が直接的に得られるものです。3つ目は「調節サービス」といって、空気や水の浄化、気温の調整など健全性を保つ機能が含まれるサービスです。4つ目の「文化的サービス」は自然の中での癒しやレジャーなど“モノ”とは異なるものを指します。

こういったサービには値段をつけることがあまりないので「価値がない」「壊してもいいもの」と思いがちですが、私たちの健康や地球上の生き物、それにビジネスの健康にとっても重要であることがわかると思います。

この瞬間も20分に1種が絶滅している

WWD:その生物多様性が今脅威にさらされています。

アメリア:生物多様性の宝庫として知られているアマゾンの熱帯はこの50年で、17%以上が失われ、ハチのようなポリネーターも40%以上減少していると言われています。ポリネーターは、果物や野菜、ナッツ、スパイスといった人間の食用作物の75パーセントの受粉をサポートしています。また海の生物の25%の生息地で重要な生態系であるサンゴ礁は過去30年で50%以上が死滅しています。過去に見られないスピード感で進行しています。

どれほど深刻かというと、約100万種が絶滅の危機に瀕しており、その絶滅スピードは自然絶滅の1000倍から1万倍のスピードであり、特に過去50年で加速し、一説では現在20分に1種が絶滅していると見られています。

WWD:改めてゾッとします。私たちにできることはあるのでしょうか。

アメリア:ファッションができる生物多様性のサポートの一例は藍染めなど草木染です。大量生産では合成染料が使用されるなか、藍染めが復活しつつあります。染め方を選ぶだけで、生活者も間接的に生物多様性をサポートすることができます。

WWD:しかし、ことは急ぎますね。

アメリア:従来のビジネスを続ければ、生物多様性の危機は下り坂で滅びるばかりです。また、保全活動を強化するだけでは80年経っても2010年の状態まで戻すことすらできません。我々が進むべき道は、保全活動を強化しつつ、より持続可能な生産と消費の革新を起こしてゆくという、新しい姿です。各ファッション企業はビジネスと生物多様性をどうやって調和させていくか、2030年までに新しい姿を描く必要があります。

生態系の管理を誤れば産業基盤も失われる

WWD:サブリナさんは、ファッションと生物多様性の関係をどう見ていますか?

サブリナ:ファッション産業が自然と深く関わっていることを忘れてはなりません。なぜなら、私たちの活動は生物多様性に大きく依存しており、生物多様性にも大きな影響を与える可能性があるからです。私たちの産業は、綿花畑から、カシミア・ウール・レザーを供給するヤギ・ヒツジ・牛、シルクを供給する蚕、そして蚕の餌となる桑の木、森林に至るまで、素材に依存しています。これらはすべて複雑な生物学的網の目の一部であり、アメリアさんが例に挙げたような非常に複雑なタペストリーのようなものです。生態系の完全性が保たれることで、私たちは原料を確保し、産業を続けることができるのです。原材料だけでなく、私たちが消費する水も生態系と関連があります。染料や化学薬品はさまざまな方法で土地を汚染する可能性があるため、原材料だけでなく、私たちが消費する水も生態系と関係があります。

また、森林は製品を生産するスペースを確保するために伐採され、開拓される可能性があります。こうした資源や生態系の管理を誤れば、私たちは産業を支える基盤や機能を損なうことになります。もちろん、これは私たちのグローバルな責任とステークホルダー、つまり投資家や消費者、パートナー、政治家などの課題でもあります。最近は、環境に対する意識が高まり、生物多様性とのつながりをよりよく理解するために、産業構造の透明性を求める動きが出てきていますが、それでもこのテーマに対する誠実さを求める圧力は存在しており、それは増大しています。

WWD:素材別にもう少し詳しく教えてください。

サブリナ:ビスコースやモダールといったセルロース系繊維のほとんどが木材パルプ由来です。木材パルプは木から生産されます。もちろん、持続可能な方法で森林を植林・管理する方法はたくさんあります。しかし残念ながら、この問題に取り組んでいるNGOの試算によると、森林パルプの最大48%が高リスク地域からもたらされている可能性があるそうです。しかも太古から続きつつ絶滅の危機に瀕している森林の木々から生じている可能性があるのです。

土地利用の変化による森林破壊や自然生態系の転換は、動植物の生息地を喪失し、生物多様性を損なっています。ですからこれは本当に重要な問題で、緊急課題を明確に把握することが重要です。

牛の放牧の拡大がアマゾンの森林破壊の一因に

WWD:レザーやカシミアについては?

サブリナ:牛の放牧の拡大は世界で最も重要な生態系のひとつであるアマゾンの森林破壊の主原因となっています。レザーは一般的に牛肉産業の副産物ですが、ファッションは間接的にこの自然環境の損失と荒廃に関係しています。ファッション産業が直面している複雑な課題を浮き彫りにしています。透明性とトレーサビリティを高め、間接的に皮革に関連する森林破壊や加工の潜在的なリスクに対処するために、ファッション産業内だけでなく、食肉産業といった他産業との協業も考える必要があります。

カシミヤの産地であるモンゴルでは1990年代初頭からカシミヤヤギの個体数が増え、過放牧によりヤギが生態系の植物を食べ尽くし、土壌の劣化を引き起こしています。ひいては砂漠化につながっています。生態系の自然回復サイクルを維持できる頭数は限られているのです。

生態系のキャパシティを超えて個体数を増やすと、生態系自体を弱体化させ、その動物を維持する能力さえ失わせてしまうのです。このまま劣化が進めば植物を損失し、将来的には砂漠化が進み、多様性に富んでいるはずのモンゴルの生態系が損なわれ、同じ数のヤギを維持できなくなります。ですから、これもまた本当に重要なトピックでもあり、この特定の状況において私たちが取り組んでいるテーマでもあります。

環境損益計算と呼ばれるツール「EP&L」からわかること

WWD:ケリングは10年以上前に環境損益計算と呼ばれるツール「EP&L」を開発しました。

サブリナ:EP&Lは原料の調達データを用いてライフサイクル・アセスメント調査を行い、原材料の生産から店舗、さらには製品の使用や寿命に至るまで、バリュー・チェーン全体における環境への影響を推定するツールです。EP&L評価の結果を見ると、私たちが環境に与える影響の大部分は原材料の生産段階にあることがはっきりとわかります。もちろん、バリューチェーンにはさまざまな形があります。しかし、影響の大部分は原料生産にあるのです。ですから、原材料の生産をより持続可能なものにする点に業界努力を集中させることが大切です。

EP&Lからは、ケリングの活動は毎年、世界中で約35万ヘクタールの土地を必要としていることがわかります。これには私たちのオフィスや倉庫、工業用地も含まれます。しかし大半は原材料が生産される世界中の農場、森林地帯であり、そこに影響の大半があるのです。そのためケリングは2020年に生物多様性戦略を策定し、25年までに生物多様性にポジティブな影響を与えるという目標を掲げています。

また、生物多様性の専門家や機関の協力のもと、ファッション産業のための生物多様性戦略策定ガイドを作成しました。戦略の優先順位を定めるのにも有用なのでぜひご覧ください。戦略の詳細には触れませんが、ケリングはアメリアさんのレクチャーで紹介された「グリーンカーブ」に沿って2025年までに生物多様性にポジティブな影響を与えるという目標を掲げていることを強調しておきたいと思います。私たちはネガティブなインパクトをさまざまな方法で可能な限り回避し、最小限に抑えるだけでなく、生態系や生物種にとって測定可能なプラスの影響を念頭に置いています。このような戦略の下、私たちは100万ヘクタールの土地の再生を支援しているのです。

WWD:ケリングは21年、コンサベーション・インターナショナルと自然再生基金を共同で設立しました。 ラグジュアリービジネスに欠かせない天然素材に関して、その生産地、生息地との向き合い方が、ネガティブなインパクトを減らすにとどまらず、自然を保護・再生するというより能動的なスタンスがポイントです。

サブリナ:23年にインディテックスが加わりました。現在、世界6カ国で7つのプロジェクトが進行中で、自然保護の観点から非常に重要な生態系の保全と回復に貢献しています。ファッション産業にとって環境負荷が高い原材料であるレザー、ウール、コットン、カシミアに焦点を当てており、現在100万ヘクタールの既存農地や放牧地を環境再生型農業に移行する支援を行っています。プロジェクト第一弾は2021年から2025年ですが、その先も提案を開始しています。

WWD:ファッションは農業と深く繋がっているのですね。

サブリナ:そうですね。生物多様性とファッションの間には深いつながりがあります。環境再生型農業は、自然破壊や生物多様性の損失をもたらす従来型の農業からの転換につながる重要な解決策だと思います。

南アフリカのプロジェクトに参加して考えたこと

WWD:アメリアさんはそのプロジェクトの一つ、南アフリカの取り組みに今年の5月に参加されています。現地で何を思いましたか。

アメリア:まず、日本からとても遠かったです。首都のヨハネスブルグから国内線で一時間のダーバンという街からさらに車で4時間行った先に宿があり、そこから毎日90分、道なき道を四駆で走ってたどり着くのが目的の村です。アパルトヘイト制度の時代に、先住民が元いた場所から奥地へと移動されられた歴史があるからです。

プロジェクトは、人も環境もビジネスもウィン・ウィン・ウィンの保全デザインができており、素晴らしいと思いました。村の人たちの全財産である土地と羊が保全計画の中心に置かれています。羊のワクチンやトレーニング、毛刈りといったサポートを受ける代わりに、保全協定に沿って放牧地を3分の1ずつ休ませる。すると健全な草が生え、それを食べる羊も健全になり、刈り取る毛の質も向上します。

生物多様性の回復と同時に土壌が改善することで炭素吸収も増えて気候対策にもつながり、どのアングルを取っても素晴らしい保全計画になっています。

WWD:基金、保護活動と聞くと「助ける」印象を受けますが、それは結果であり、知識やノウハウを提供して資産をより生かすように導くのがこの基金の活動なのですね。

アメリア:まさに発展と保全を同時にできることが重要ですね。

WWD:ケリングのマリー・クレール・ダヴー=チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、「会社の枠組みの中で起こることだけに目を向けるのではなく、サプライチェーンの上流にも踏み込むべきだ」と話しています。サブリナさんもそう思いますか。

サブリナ:とても重要なメッセージだと思う。我々は、オフィスや倉庫、工業用地も環境にネガティブな影響を与えていることはもちろんわかっています。しかし、影響のほとんどは原材料が生産されるはるか上流にあることは先ほどの環境損益計算のスライドからも明らかです。もちろん、私たちの会社は農家から直接購入しているわけではないため、行動を起こすのは難しいのです。しかし、本当に影響が大きく、それゆえに生態系や気候、そして人々にポジティブな影響を与えるチャンスがあるのも上流なのです。上流に目を向けて対処することは不可欠です。

会場の参加者とのQ&A

WWD:ここから参加者からの質問・意見を交えてお伺いします。

参加者:サステナブルな素材が高価格であることがアクションを妨げる一因になっていることをどう考えますか?

サブリナ:革新的な原材料など持続可能な素材はよりコスト高なのは事実です。しかし、持続可能性の低い原材料を選択することで地球や気候に対して目に見えないコストが発生します。金銭的価値にも換算できる生態系のサービスを失いつつあることと、そこに私たちが影響を及ぼしていることを結びつけて考えたい。それを商品の価格設定に反映させてビジネスモデルをどう構築するかも考える必要があります。

参加者:アメリアさんは日頃、日本企業と接して思うことは?

アメリア:日本企業に限らず、生物多様性は個社ではなく産業の共通課題です。一社での取り組みは、お金もかかるしインパクトも出しづらい。だから競争のマインドセットを横におき、競業ではなく協業、コレクティブなアクションを取る領域だと思います。産業連携のプラットフォームを作って資金を集めてより大きなインパクトを出してゆく活動が重要になってゆくと思います。

まずは、このような場で生物多様性について知ること。そして自社のサプライチェーンの上流がどのくらいのインパクトを与えているからを知ることです。それが難しければまずは現場を見に行くことですね。役員の方を誘って現場ツアーや研修トリップなど何か形にする。見ることによってイノベーションのヒントも見えてくるはずです。

WWD:ファッション産業に従事する人たちは洋服を作ったり売ったりしながら、綿花畑や牧場にも行ったことがない人が大半だと思う。まずは行ってみる。社員研修は畑が良さそうですね。

YouTube視聴はこちら

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ケリング×CI 生物多様性とファッションの関係をわかりやすく解説

地球上には知られていない種も含めて3000万以上の生き物が存在すると考えられており、それらは直接・間接的に支え合って存在している。その生物多様性の損失が今、大きな問題となっている。ファッションは生物多様性とどう関わりがあり、そして、損失を止め自然を回復するために何ができるのか?専門家である、ケリング(KERING)のサブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ=ソーシングおよび生物多様性スペシャリストと、ジュール・アメリア=コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクターを迎えて、実は深いその関係性について理解を深める。

(この対談は2023年12月11日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」から抜粋したものです。記事下のYouTubeでも視聴できます)


向千鶴WWDJAPAN編集統括サステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):自己紹介をアメリアさんからお願いします。

ジュール・アメリア=コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクター(以下、アメリア):私は日本人の母親と、アメリカ人の父親での間で生まれました。出身地の米国ウィスコンシン州は北海道と同じ緯度で寒い地域です。酪農地として知られており、子供のころは東京の学校に通いつつ、夏休みはウィスコンシンの牧場で馬の世話をしていました。

2023年3月末にコンサベーション・インターナショナル・ジャパンへ転職する前は、イノベーション・コンサルティングとして、多くの日本企業と一緒に新製品やサービス、体験を開発する仕事に携わってきました。いろいろな産業の現場を見てきましたが、 中でも食品産業と農業の未来を考えるプロジェクトに携わったことで、自分自身の意識が変わりました。農業における化学肥料使用と健康被害、農家の搾取といった問題ですね。食品を大量生産する中で、地球も人間の体も病んでしまう構造が見えてしまった。

それ以降は、どの産業においても自然と調和する形でビジネスを展開していく必要性を感じ、そこに一番のイノベーション・チャレンジがあると考えるようになりました。コンサベーション・インターナショナル(以下CI)は、政府や企業との協働を通して地球規模の環境課題に取り組んでいる団体であり、そこに惹かれました。

WWD:パリのケリング本社からオンラインで参加のサブリナさん、自己紹介をお願いします。

サブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ =ソーシングおよび生物多様性スペシャリスト(以下、サブリナ):私はケリング・グループのサステナビリティ・チームで、持続可能な調達と生物多様性のスペシャリストとして働いています。特にレザーやコットン、ウール、カシミアのような環境負荷の高い主要原材料の調達に関連する影響を改善し、生物多様性への影響の理解をうながし、管理する手助けをしています。1年半前にケリングに入社し、グループのすべてのブランドとこれらのテーマについて協働してきました。専門は企業の持続可能性の支援、つまり企業が自然や気候、人々に与える影響をより理解し、取り扱うことを手助けすることです。ケリングの前は、世界自然保護基金WWFの英国事務所やその他の環境団体にいました。

人間は4つの生態系サービスを受け取っている

WWD:生物多様性は時代のキーワードですが、実のところその意味が分からない人は多いと思います。まずはアメリアさん、生物多様性の基本をレクチャーください。

アメリア:生物多様性とは、地球上の生命には幅広い多様性があることを指しています。バクテリアから大きな木、クジラから昆虫、キノコ類にカエルまで。つまりすべての種を指しています。そして、生物多様性には、3つのレベルがあります。 一つ目は遺伝子の多様性。例えば、犬にはさまざまなの犬種があります。また、 米もインドだけでも5万種があると言われています。2つ目は種の多様性。例えば、グレートバリアリーフの岩礁であればサンゴだけで400種類、魚で150種類、亀も10種類が生息していると言われています。 最後が生態系の多様性です。地球には砂漠や湿地帯、森林などさまざまなエコシステム、生態系があります。それらはずっと変わらないイメージがありますが、ジャングルが弱って砂漠化したり、サンゴも白化したりしています。

この3つの多様性が互いに関係性を持ち、密度が高まることで強さを増します。織物に置き換えると糸、色、ステッチの種類などが豊富になることで、より強いマテリアルとなったり、より長く使えたり、より美しくなる。その豊富さがつながっているのが生物多様性のイメージです。

WWD:健全な生態系において一種を失ってしまうと、どのような影響があるのでしょうか。

アメリア:こんな事例があります。1920年にアメリカのイエロストーンの国立公園で「捕食動物を駆除する」法律ができて、公園内のオオカミが絶滅しました。すると鹿の一種であるエルクが繁殖し過放牧となり景観が悪化、オオカミの重要さが認識されました。時が進み1995年、オオカミを公園に戻す取り組みを始めた結果、エルクの数が減少しバランスが取れ、ビーバーや鳥類が戻ってきて、川の浸食もなくなった。一種の動物が自然にどれだけ影響を与えているかがわかるストーリーです。

そしてなぜ生物多様性が人間にとっても重要かと言えば、人間の生活が生態系サービスの上に成り立っているからです。

WWD:サービスという言葉を使うのですか?

アメリア:はい、そうです。サービスには4つのカテゴリーがあります。1つは「基盤サービス」。死んだ生物を分解し栄養素を土へ戻し、光合成や土作り、遺伝的多様性の維持を行います。2つ目が「供給サービス」。飲み水や魚、食料など、人間が直接的に得られるものです。3つ目は「調節サービス」といって、空気や水の浄化、気温の調整など健全性を保つ機能が含まれるサービスです。4つ目の「文化的サービス」は自然の中での癒しやレジャーなど“モノ”とは異なるものを指します。

こういったサービには値段をつけることがあまりないので「価値がない」「壊してもいいもの」と思いがちですが、私たちの健康や地球上の生き物、それにビジネスの健康にとっても重要であることがわかると思います。

この瞬間も20分に1種が絶滅している

WWD:その生物多様性が今脅威にさらされています。

アメリア:生物多様性の宝庫として知られているアマゾンの熱帯はこの50年で、17%以上が失われ、ハチのようなポリネーターも40%以上減少していると言われています。ポリネーターは、果物や野菜、ナッツ、スパイスといった人間の食用作物の75パーセントの受粉をサポートしています。また海の生物の25%の生息地で重要な生態系であるサンゴ礁は過去30年で50%以上が死滅しています。過去に見られないスピード感で進行しています。

どれほど深刻かというと、約100万種が絶滅の危機に瀕しており、その絶滅スピードは自然絶滅の1000倍から1万倍のスピードであり、特に過去50年で加速し、一説では現在20分に1種が絶滅していると見られています。

WWD:改めてゾッとします。私たちにできることはあるのでしょうか。

アメリア:ファッションができる生物多様性のサポートの一例は藍染めなど草木染です。大量生産では合成染料が使用されるなか、藍染めが復活しつつあります。染め方を選ぶだけで、生活者も間接的に生物多様性をサポートすることができます。

WWD:しかし、ことは急ぎますね。

アメリア:従来のビジネスを続ければ、生物多様性の危機は下り坂で滅びるばかりです。また、保全活動を強化するだけでは80年経っても2010年の状態まで戻すことすらできません。我々が進むべき道は、保全活動を強化しつつ、より持続可能な生産と消費の革新を起こしてゆくという、新しい姿です。各ファッション企業はビジネスと生物多様性をどうやって調和させていくか、2030年までに新しい姿を描く必要があります。

生態系の管理を誤れば産業基盤も失われる

WWD:サブリナさんは、ファッションと生物多様性の関係をどう見ていますか?

サブリナ:ファッション産業が自然と深く関わっていることを忘れてはなりません。なぜなら、私たちの活動は生物多様性に大きく依存しており、生物多様性にも大きな影響を与える可能性があるからです。私たちの産業は、綿花畑から、カシミア・ウール・レザーを供給するヤギ・ヒツジ・牛、シルクを供給する蚕、そして蚕の餌となる桑の木、森林に至るまで、素材に依存しています。これらはすべて複雑な生物学的網の目の一部であり、アメリアさんが例に挙げたような非常に複雑なタペストリーのようなものです。生態系の完全性が保たれることで、私たちは原料を確保し、産業を続けることができるのです。原材料だけでなく、私たちが消費する水も生態系と関連があります。染料や化学薬品はさまざまな方法で土地を汚染する可能性があるため、原材料だけでなく、私たちが消費する水も生態系と関係があります。

また、森林は製品を生産するスペースを確保するために伐採され、開拓される可能性があります。こうした資源や生態系の管理を誤れば、私たちは産業を支える基盤や機能を損なうことになります。もちろん、これは私たちのグローバルな責任とステークホルダー、つまり投資家や消費者、パートナー、政治家などの課題でもあります。最近は、環境に対する意識が高まり、生物多様性とのつながりをよりよく理解するために、産業構造の透明性を求める動きが出てきていますが、それでもこのテーマに対する誠実さを求める圧力は存在しており、それは増大しています。

WWD:素材別にもう少し詳しく教えてください。

サブリナ:ビスコースやモダールといったセルロース系繊維のほとんどが木材パルプ由来です。木材パルプは木から生産されます。もちろん、持続可能な方法で森林を植林・管理する方法はたくさんあります。しかし残念ながら、この問題に取り組んでいるNGOの試算によると、森林パルプの最大48%が高リスク地域からもたらされている可能性があるそうです。しかも太古から続きつつ絶滅の危機に瀕している森林の木々から生じている可能性があるのです。

土地利用の変化による森林破壊や自然生態系の転換は、動植物の生息地を喪失し、生物多様性を損なっています。ですからこれは本当に重要な問題で、緊急課題を明確に把握することが重要です。

牛の放牧の拡大がアマゾンの森林破壊の一因に

WWD:レザーやカシミアについては?

サブリナ:牛の放牧の拡大は世界で最も重要な生態系のひとつであるアマゾンの森林破壊の主原因となっています。レザーは一般的に牛肉産業の副産物ですが、ファッションは間接的にこの自然環境の損失と荒廃に関係しています。ファッション産業が直面している複雑な課題を浮き彫りにしています。透明性とトレーサビリティを高め、間接的に皮革に関連する森林破壊や加工の潜在的なリスクに対処するために、ファッション産業内だけでなく、食肉産業といった他産業との協業も考える必要があります。

カシミヤの産地であるモンゴルでは1990年代初頭からカシミヤヤギの個体数が増え、過放牧によりヤギが生態系の植物を食べ尽くし、土壌の劣化を引き起こしています。ひいては砂漠化につながっています。生態系の自然回復サイクルを維持できる頭数は限られているのです。

生態系のキャパシティを超えて個体数を増やすと、生態系自体を弱体化させ、その動物を維持する能力さえ失わせてしまうのです。このまま劣化が進めば植物を損失し、将来的には砂漠化が進み、多様性に富んでいるはずのモンゴルの生態系が損なわれ、同じ数のヤギを維持できなくなります。ですから、これもまた本当に重要なトピックでもあり、この特定の状況において私たちが取り組んでいるテーマでもあります。

環境損益計算と呼ばれるツール「EP&L」からわかること

WWD:ケリングは10年以上前に環境損益計算と呼ばれるツール「EP&L」を開発しました。

サブリナ:EP&Lは原料の調達データを用いてライフサイクル・アセスメント調査を行い、原材料の生産から店舗、さらには製品の使用や寿命に至るまで、バリュー・チェーン全体における環境への影響を推定するツールです。EP&L評価の結果を見ると、私たちが環境に与える影響の大部分は原材料の生産段階にあることがはっきりとわかります。もちろん、バリューチェーンにはさまざまな形があります。しかし、影響の大部分は原料生産にあるのです。ですから、原材料の生産をより持続可能なものにする点に業界努力を集中させることが大切です。

EP&Lからは、ケリングの活動は毎年、世界中で約35万ヘクタールの土地を必要としていることがわかります。これには私たちのオフィスや倉庫、工業用地も含まれます。しかし大半は原材料が生産される世界中の農場、森林地帯であり、そこに影響の大半があるのです。そのためケリングは2020年に生物多様性戦略を策定し、25年までに生物多様性にポジティブな影響を与えるという目標を掲げています。

また、生物多様性の専門家や機関の協力のもと、ファッション産業のための生物多様性戦略策定ガイドを作成しました。戦略の優先順位を定めるのにも有用なのでぜひご覧ください。戦略の詳細には触れませんが、ケリングはアメリアさんのレクチャーで紹介された「グリーンカーブ」に沿って2025年までに生物多様性にポジティブな影響を与えるという目標を掲げていることを強調しておきたいと思います。私たちはネガティブなインパクトをさまざまな方法で可能な限り回避し、最小限に抑えるだけでなく、生態系や生物種にとって測定可能なプラスの影響を念頭に置いています。このような戦略の下、私たちは100万ヘクタールの土地の再生を支援しているのです。

WWD:ケリングは21年、コンサベーション・インターナショナルと自然再生基金を共同で設立しました。 ラグジュアリービジネスに欠かせない天然素材に関して、その生産地、生息地との向き合い方が、ネガティブなインパクトを減らすにとどまらず、自然を保護・再生するというより能動的なスタンスがポイントです。

サブリナ:23年にインディテックスが加わりました。現在、世界6カ国で7つのプロジェクトが進行中で、自然保護の観点から非常に重要な生態系の保全と回復に貢献しています。ファッション産業にとって環境負荷が高い原材料であるレザー、ウール、コットン、カシミアに焦点を当てており、現在100万ヘクタールの既存農地や放牧地を環境再生型農業に移行する支援を行っています。プロジェクト第一弾は2021年から2025年ですが、その先も提案を開始しています。

WWD:ファッションは農業と深く繋がっているのですね。

サブリナ:そうですね。生物多様性とファッションの間には深いつながりがあります。環境再生型農業は、自然破壊や生物多様性の損失をもたらす従来型の農業からの転換につながる重要な解決策だと思います。

南アフリカのプロジェクトに参加して考えたこと

WWD:アメリアさんはそのプロジェクトの一つ、南アフリカの取り組みに今年の5月に参加されています。現地で何を思いましたか。

アメリア:まず、日本からとても遠かったです。首都のヨハネスブルグから国内線で一時間のダーバンという街からさらに車で4時間行った先に宿があり、そこから毎日90分、道なき道を四駆で走ってたどり着くのが目的の村です。アパルトヘイト制度の時代に、先住民が元いた場所から奥地へと移動されられた歴史があるからです。

プロジェクトは、人も環境もビジネスもウィン・ウィン・ウィンの保全デザインができており、素晴らしいと思いました。村の人たちの全財産である土地と羊が保全計画の中心に置かれています。羊のワクチンやトレーニング、毛刈りといったサポートを受ける代わりに、保全協定に沿って放牧地を3分の1ずつ休ませる。すると健全な草が生え、それを食べる羊も健全になり、刈り取る毛の質も向上します。

生物多様性の回復と同時に土壌が改善することで炭素吸収も増えて気候対策にもつながり、どのアングルを取っても素晴らしい保全計画になっています。

WWD:基金、保護活動と聞くと「助ける」印象を受けますが、それは結果であり、知識やノウハウを提供して資産をより生かすように導くのがこの基金の活動なのですね。

アメリア:まさに発展と保全を同時にできることが重要ですね。

WWD:ケリングのマリー・クレール・ダヴー=チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、「会社の枠組みの中で起こることだけに目を向けるのではなく、サプライチェーンの上流にも踏み込むべきだ」と話しています。サブリナさんもそう思いますか。

サブリナ:とても重要なメッセージだと思う。我々は、オフィスや倉庫、工業用地も環境にネガティブな影響を与えていることはもちろんわかっています。しかし、影響のほとんどは原材料が生産されるはるか上流にあることは先ほどの環境損益計算のスライドからも明らかです。もちろん、私たちの会社は農家から直接購入しているわけではないため、行動を起こすのは難しいのです。しかし、本当に影響が大きく、それゆえに生態系や気候、そして人々にポジティブな影響を与えるチャンスがあるのも上流なのです。上流に目を向けて対処することは不可欠です。

会場の参加者とのQ&A

WWD:ここから参加者からの質問・意見を交えてお伺いします。

参加者:サステナブルな素材が高価格であることがアクションを妨げる一因になっていることをどう考えますか?

サブリナ:革新的な原材料など持続可能な素材はよりコスト高なのは事実です。しかし、持続可能性の低い原材料を選択することで地球や気候に対して目に見えないコストが発生します。金銭的価値にも換算できる生態系のサービスを失いつつあることと、そこに私たちが影響を及ぼしていることを結びつけて考えたい。それを商品の価格設定に反映させてビジネスモデルをどう構築するかも考える必要があります。

参加者:アメリアさんは日頃、日本企業と接して思うことは?

アメリア:日本企業に限らず、生物多様性は個社ではなく産業の共通課題です。一社での取り組みは、お金もかかるしインパクトも出しづらい。だから競争のマインドセットを横におき、競業ではなく協業、コレクティブなアクションを取る領域だと思います。産業連携のプラットフォームを作って資金を集めてより大きなインパクトを出してゆく活動が重要になってゆくと思います。

まずは、このような場で生物多様性について知ること。そして自社のサプライチェーンの上流がどのくらいのインパクトを与えているからを知ることです。それが難しければまずは現場を見に行くことですね。役員の方を誘って現場ツアーや研修トリップなど何か形にする。見ることによってイノベーションのヒントも見えてくるはずです。

WWD:ファッション産業に従事する人たちは洋服を作ったり売ったりしながら、綿花畑や牧場にも行ったことがない人が大半だと思う。まずは行ってみる。社員研修は畑が良さそうですね。

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「アー・ペー・セー」が初のボディーケアアイテムを発売 オレンジブロッサムの香りの6アイテム

「アー・ペー・セー(A.P.C.)」は、ブランドとして初めてボディーケアアイテムを発売した。今回、天然由来成分を使用し、性別に関係なく誰でも使えるエッセンシャルアイテムを念頭に、オーデコロン(1万3200円)、シャワージェル(7150円)、ボディーローション(7150円)、ハンドクリーム(3850円)、ハンドソープ(6050円)、リップクリーム(2860円)の6つのアイテムを用意した。公式オンラインストアと「アー・ペー・セー」ストアで取り扱う。

香りはシグネチャーであるオレンジブロッサム。オレンジブロッサムは、古代から料理や香水に好まれて使われており、「アー・ペー・セー」のクリエイションにおいても重要な要素であり、1997年から発売しているキャンドル“N°4”の香りにも使用している。

同ブランドのデザイナーであるジャン・トゥイトゥ(Jean Touitou)は、「ファッションも化粧品業界も、過剰でも不足でもないバランスを取ることはとても難しい。この6つの製品は最高の出来栄えになった。皆さんの気分が良くなり、自分を慈しみ、素晴らしい一日を過ごせるようにという願いを込めて作った」と語る。

またドイツの哲学者 ニーチェの“ツァラトゥストラはかく語りき”から引用し、「わたしはどこまでも身体であり、それ以外の何ものでもない。そして魂とは、身体に付随する何ものかをあらわす言葉でしかない」の言葉をラベルに印刷した。

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「イニスフリー」発表会にSEVENTEENのMINGYUが登場 美肌の秘訣も明かす

「イニスフリー(INNISFREE)」は1月31日、世界で2店舗目となるグローバルフラッグシップストアを2月2日にオープンすることを受け、都内で表会を開催した。同発表会にはブランド初のメンズアンバサダーを務めるSEVENTEENのMINGYUが登場。「僕はここに来る前にショップに行きましたが、おしゃれで素敵な空間でした」と語り、「韓国の店舗はインテリアなども含めグリーントーンが多いですが、日本のこの店はグレートーンの中で自然を生かしているなと思いました」と笑顔を見せた。

2023年6月から同ブランドのアンバサダーを務めているMINGYUは、「ワールドツアーなどで海外に行った時に『イニスフリー』の店舗を見ると、とても嬉しい気持ちになります」とアンバサダー就任後の心境の変化を告白。特にお気に入りのアイテムは“レチノール シカ リペア セラム”だと語り、同商品の売り上げが100万個を突破していることが紹介されると「とても気分がいいです。僕が使っている商品がこんなにも人気なことに満足しています」と胸を張った。

美肌で知られるMINGYUだが、「いるんな商品を使うのではなくシンプルに。例えば、朝は水だけで洗顔しています」と語り、「“レチノール シカ リペア セラム”をしっかり塗っているのですが、あとは冬でもUVクリームを使ったりしています」とスキンケアの極意を披露した。

明治神宮前から徒歩2分の場所に構える表参道グローバルフラッグシップストアは「新・自然主義体験」がコンセプト。コンクリートとステンレス、アクリルなどの異素材をミックスしたシックなグレーの空間大自然の力と生命力を表現したオブジェを設置するなど、植物などの自然のエネルギーを生かすブランドの世界観を表現している。1階はブランド商品を体験できるスペースを設け、2回には同店でしか取り扱わない限定商品などもそろえている。

チェ・ミンジョン(Choi Minjung)「イニスフリー」代表は「『イニスフリー』は今年で24歳を迎え、長年多くのお客様に愛されている。特に昨年のリブランディング以降はZ世代のお客さまにも高い支持を受けている」「売り上げの7割は本国韓国以外のグローバルが占めていて、その中心は日本であると確信している。リブランディング後のグローバル店をここ日本で出すことができるのは喜ばしい」と語った。

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ENHYPENがイメージモデルに 「ピーチ・ジョン」がユニセックスのルームウエアを発売

「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」 は、イメージモデルに韓国のアイドルグループ、ENHYPEN(エンハイプン)を起用したルームウエアを発売した。価格は7600円。「ピーチ・ジョン」の店舗および公式オンラインで取り扱う。

ルームウエアは、スエット生地のセットアップでユニセックス仕様。フード部位にタグをあしらい、ブラックとオフホワイト、ラベンダーの3色を販売する。またENHYPENによるスペシャル動画を公開したほか、同アイテムの購入者に向けたノベルティーキャンペーンなどを実施する。詳細は公式サイトに記載する。

ENHYPEN は、ジョンウォン(JUNGWON)、ヒスン(HEESEUNG)、ジェイ(JAY)、ジェイク(JAKE)、ソンフン(SUNGHOON)、ソヌ(SUNOO)、ニキ(NI-KI)からなるアイドルグループ。2020年11月に韓国デビューし、最新アルバム「ORANGE BLOOD」は4枚目のミリオンセラーを達成した。

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「コーチ」の新ブランド「コーチトピア」がドキュメンタリー映像を公開 ファッションの課題と循環型ものづくりの可能性

「コーチ(COACH)」の新ブランド「コーチトピア(COACHTOPIA)」は、循環型ファッションの製造の舞台裏にスポットライトを当てたドキュメンタリーシリーズ“循環型への道のり(The Road to Circularity)”をリリースした。同シリーズを通して、ファッションの循環する未来に向け、グローバルなコミュニティーに訴えかけていく。

サステナブルファッションの提唱者であり、「コーチトピア」のコミュニティーメンバーでもあるアディティ・マイヤー(Aditi Mayer)がホストを務める同シリーズは、「コーチトピア」と協力して大規模なサーキュラリティー(循環性)を可能にするアイデアを開発している人々やパートナーの元に、製造プロセスを学ぶために世界中を駆け巡る。ドキュメンタリーシリーズの動画はブランド公式SNSとオンラインストアで公開中だ。

エピソード1“廃棄物で作る(Making with Waste)”は、アディティがインドのチェンナイにある皮革製造メーカーのKH エキスポートを訪ねるところからスタート。同社は1987年から「コーチ」のパートナーとして協業しており、「コーチ」のレザー廃棄物をユニークな原料として蘇らせることに挑戦している。アディティはバッグの生産工程における廃棄物の分別から、製品のプロトタイピング、素材のデザイン、生産まで、KH エキスポートの製造プロセスを追う。さらに、廃棄物を使ったモノ作りの可能性を探るだけでなく、情熱と創意工夫をもって課題に取り組んでいるデザイナーや職人、製作者のコミュニティーで繰り広げられるパーソナルな物語も紹介している。

アディティはさまざまな過程を学んだ後、ファッションにおける“完璧”を良しとする既成概念への疑問をブランドと消費者の双方に投げかける。「完璧を求める私たちの文化的な考え方のせいで、レザーの自然なシボ(立体的なシワ模様)が欠点とみなされ、廃棄物が増えることになるとは驚いた。サーキュラリティーとは単に作り方を変えることではなく、考え方を変えることなのだと気付かせてくれた」。

2023年9月に日本上陸した「コーチトピア」は、循環型のものづくりに焦点を当て、Z世代と共に新しいファッションシステムの構築を掲げている「コーチ」の新ブランドだ。完全循環型ビジネスモデルを追求したバッグやアクセサリー、ウエアなどを取り扱う。

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750

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「ルイ・ヴィトン」の新作ポータブルスピーカー “ダモフラージュ”柄も

「ルイ・ヴィトン」の“LV ナノグラム・スピーカー”

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、“LV ナノグラム・スピーカー”を発売した。

ユニークな形状が特徴で、トランクを思わせるディテールや持ち運びしやすいコンパクトさは、同ブランドの根幹にある旅へのオマージュを表現したものだ。

シルバー&コッパーカラー(ともに30万9100円)に加えて、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)メンズ・クリエイティブ・ディレクターによるデビュー作となった2024年春夏コレクションに登場した、フレンチカモフラージュとダミエを組み合わせた“ダモフラージュ”バージョン(35万6400円)も販売する。

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「ルイ・ヴィトン」の新作ポータブルスピーカー “ダモフラージュ”柄も

「ルイ・ヴィトン」の“LV ナノグラム・スピーカー”

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、“LV ナノグラム・スピーカー”を発売した。

ユニークな形状が特徴で、トランクを思わせるディテールや持ち運びしやすいコンパクトさは、同ブランドの根幹にある旅へのオマージュを表現したものだ。

シルバー&コッパーカラー(ともに30万9100円)に加えて、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)メンズ・クリエイティブ・ディレクターによるデビュー作となった2024年春夏コレクションに登場した、フレンチカモフラージュとダミエを組み合わせた“ダモフラージュ”バージョン(35万6400円)も販売する。

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【2024年春コスメ】「デジャヴュ」の極細ペンシルアイライナーから限定くすみカラーが登場

「デジャヴュ(DEJAVU)」は2月2日、汗や皮脂にもにじみにくいペンシルアイライナー“ラスティンファインE 極細クリームペンシル“(1320円)から、くすみカラーの限定色“アッシュトープ”を発売する。

極細ラインを滑らかに描くことが可能な“ラスティンファインE 極細クリームペンシル”は、ウォータープルーフ処方で長時間美しい仕上がりがキープできるペンシルタイプのアイライナーだ。2024年春の限定色“アッシュトープ“は、落ち着いたベージュにグレイッシュなニュアンスを加えたくすみカラー。目元を引き締めながらも抜け感を演出する。

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【2024年春コスメ】「デジャヴュ」の極細ペンシルアイライナーから限定くすみカラーが登場

「デジャヴュ(DEJAVU)」は2月2日、汗や皮脂にもにじみにくいペンシルアイライナー“ラスティンファインE 極細クリームペンシル“(1320円)から、くすみカラーの限定色“アッシュトープ”を発売する。

極細ラインを滑らかに描くことが可能な“ラスティンファインE 極細クリームペンシル”は、ウォータープルーフ処方で長時間美しい仕上がりがキープできるペンシルタイプのアイライナーだ。2024年春の限定色“アッシュトープ“は、落ち着いたベージュにグレイッシュなニュアンスを加えたくすみカラー。目元を引き締めながらも抜け感を演出する。

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田中みな実がカネボウ「デュウ」の新ミューズに 化粧品ブランド初の就任で「身が引き締まる思い」

カネボウ化粧品のスキンケアブランド「デュウ(DEW)」のブランドミューズに俳優の田中みな実が就任した。それに伴い、田中が出演する新CM「私は欲しがり」篇を2月9日から全国放映する。31日に行った新CM発表会では田中が登場し、新ミューズ就任の背景や新CMについてトークした。

「デュウ」が化粧品ブランド初のミューズ就任という田中は、「身が引き締まる思いだ。ミューズとしての責務を全うし、1人でも多くの人に商品の魅力を伝えられたらと思っている」と意気込みを語った。CMでも着用している黒のワンピースで登場した田中は、「スキンケアといえば白の衣装を思い浮かべる人が多いと思うが、今回は黒の衣装。オーロラの空間に際立つような黒のワンピースが印象的で、ほかのブランドにはない新しいCMに仕上がったのではないか」。

田中は、新CMでフォーカスした化粧液“アフターグロウドロップ“(170mL、3850円)と、クリーム“タンタンコンクドロップ“(55g、4180円)のお気に入りの使用方法をレクチャー。「2ステップなのでシンプルにスキンケアが完結する。化粧液をたっぷりと使用してローションパックをするのがお気に入り。液だれがしない、ややとろみのあるテクスチャーで使いやすい」。

登壇した原直司ブランドマネージャーは、田中のミューズ就任について「新コンセプト“美フォルムケア。ヒアルロン酸配合“の推進に伴い、新たにブランドミューズを迎え入れることとした。その方は俳優としてはもちろん、美容賢者として圧倒的な支持を与える田中みな実さん。田中さんは美容に精通しているだけではなく、美容を心から楽しむ“美容愛“に溢れている方だ。共に、世の中の女性を美しく幸せにできたらと思いオファーした」と述べた。

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ファッションとアートの蜜月は続く パルコ宣伝部長とNANZUKA代表に聞くそのワケ

渋谷パルコ(PARCO以下、パルコ)は創業以来、世界中の気鋭クリエイターとコラボレーションしてきた。19年の改装後、パルコミュージアムを含む9つのギャラリーを設置。単なるファッションビルではなく、若者及び訪日観光客にとって日本のカルチャーを象徴する場所になっている。パルコとギャラリーNANZUKAは19年の改装以降、2階にオープンしたギャラリー「2G NANZUKA」やパルコミュージアムの展覧会、販促など多岐に渡りコラボレーションしている。手塚千尋パルコ宣伝部部長と「NANZUKA UNDERGROUND」などを運営する南塚真史NANZUKA代表に、ファッションとアートについて聞いた。

パルコは幅広い人とアートのコミュニケーションをする場

パルコミュージアムから劇場まで、文化的な活動はパルコにとって企業の存在意義の一つ。手塚部長は、「ギャラリーが多いのは、パルコに来るたびに新しい発見がある、そのような刺激を与えたいからだ。アートを購入する若い人が増えた。ファッションが好きな人はアートへの関心が高い」と話す。パルコミュージアムでは、見て楽しいコンテンツを提供し、ギャラリーでは新進気鋭のアーティストやクリエイターの作品を紹介している。南塚代表は、「パルコは、若い世代がファッション以外にアートに興味を持ち始める場。アートに関心がなかったような幅広い層とのコミュニケーションの場になっている」と語る。アートは、一定の富裕層とエリート層のものだったが、ファッションなどのコラボにより、民主化、大衆化が進んでいる。「日本におけるアート的デコレーション=ポピュラーアートの浸透力はものすごい。そうではなく、中身のあるアートを届ける必要がある。価値のあるアートを一般に届けるために、よりフレンドリーなアプローチを模索している。保守的なアート界からすると、商業的と見られることもあるが新しい層とのタッチポイントになり、販促効果も大きい」と同代表。NANZUKAが目指すのは、パルコとの取り組みなどを通じて商業目的だけで拡大してきたポピュラーアートに挑むことだ。

「ルイ・ヴィトン」が変えた企業とアーティストの関係

手塚部長と南塚代表は、2000年前半の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON以下、LV)」と村上隆のコラボレーションが、ファッションとアートの関係性を象徴すると口をそろえる。このコラボレーションを機に、アートの大衆化が進み、ファッションとアートの蜜月は続いている。南塚代表は、「LV」と村上のコラボについて、「ファッションの価値を高め、アートの価値をより広く認知させることに成功した例。ファッションだけで新しいものを生み出すのは難しいが、アートは常に新しいものを産まなければならない。うまくアートを解釈して取り入れれば、新たなものが生まれる」と話す。「LV」と村上とのコラボは、アーティストにとって重要な著作権にも変化をもたらした。それ以前“著作権“は企業側にあるケースが多かったが、アーティストに残すべきだと言う流れができた。契約によりけりだが、アーティストがコラボ作品を自分の作品として発表し販売できるようになった。無名なアーティストがラグジュアリー・ブランドとコラボすれば、一気に広く知れ渡り、価値が上がる。ブランドにとっても新たな話題づくりになる。コラボは、ブランドにとってもアーティストにとっても“ウィン・ウィン”というわけだ。同代表は、「20世紀のアートは概念=コンセプトありきだった。今は、コンテクスト=文脈の時代で、作品から派生する影響も含まれる。ファッションは実用性が求められ、商業化するには、文脈が重要視される」と話す。ブランドがアーティストとコラボするのは、お互いの文脈を共有することで相互価値を高めるためだ。ラグジュアリー・ブランドの情報発信性や付加価値を生む力にアート業界は学ぶべきということだ。南塚代表は、「システムの中に自然に価値が生まれるのを待っているだけではダメだ。アーティストは、能動的に価値を生み出すことを考えるべきだ」と言う。

業界の枠組みを超えたコラボは加速するか?

手塚部長は、「アーティストに対する反応が、ブランド自体の方向性になっている。クリエイティブ・ディレクターの世代交代で、キム・ジョーンズ(Kim Jones)が『ディオール(DIOR)』のメンズ、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)が『LV』メンズを率いている。彼らは、ストリートアートに大きく影響を受けている」と話す。メゾンを率いるのは通常、ファッションを学んだデザイナーたちだった。それが、「LV」はメンズのクリエイティブ・ディレクターにミュージシャンであるファレルを選んだ。10年前のファッション業界では、想像できないことが起こっている。ファッションやラグジュアリー業界に求められる価値が時代と共に変化し、ファッションの専門知識よりも、ファレルが持つ感性や影響力が今、ブランドに必要と考えたからだろう。「現代アーティストがラグジュアリー・ブランドのディレクターになるなど、業界の境界を超えて起こりうるのか?それは、もはやクリエイターに適正があるかないかだと思う」と南塚代表。時代を映し出す鏡がアートであれば、それを一般に波及させる力を持つのがファッション。「LV」とファレルがタッグを組んだように、業界の枠組みを超えて、アーティストがラグジュアリー・ブランドのディレクションを手掛ける日が来るかもしれない。

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ガリアーノ節炸裂!「メゾン マルジェラ」“アーティザナル”の記憶に焼き付くショー

「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」は1月25日、パリで 2024年“アーティザナル”コレクションのショーを開き、オートクチュール・ファッション・ウイークの大トリを飾った。「ショー」と書いたものの、通常のランウエイショーとは全く趣向が異なる。1年半前も映画と舞台を融合したスペクタクルで観るものを圧倒したジョン・ガリアーノ(John Galliano)は、今回も独創性あふれるシアトリカルな演出で観客を魅了した。

夜のパリで繰り広げられるミステリアスな物語

雨が降る肌寒い夜のパリで開かれたショーの舞台は、セーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋のたもと。橋の真下にある川沿いの小道に並べられたカフェテーブル&チェアと1920年代のブラッスリー(酒場)を再現したセットが組まれた屋内会場に分かれて、観客は着席する。壊れた照明や曇った鏡、たくさんのグラスや皿が置き去りになったカウンターなど、廃墟のように古びた空間にはどこか不気味な雰囲気が漂い、ショーが始まる前から何かが起こりそうな期待がふくらむ。しかし、なかなかショーは始まらない。キム・カーダシアン(Kim Kardashian)ら大物セレブも到着し、もうスタートするだろうと思ってから待つこと約20分。オンタイムから1時間押しの20時を回った頃、ようやくショーは幕を開けた。

まず客席から立ち上がり酒場の隅にある螺旋階段へと向かったミュージシャンのラッキー ラブ(Lucky Love)が、ゴスペル隊と共に「Now I Don’t Need Your Love」をエモーショナルに熱唱。続いて、バズ・ラーマン(Baz Luhrmann)監督によるミステリアスなフィルム・ノワール風のショートムービーが壁面の鏡に流れた。そこで描かれたのは、コルセットをきつく締め上げるフェティッシュなシーンやタンゴを踊る男女、宝石泥棒、そしてパリの街を走って逃げる男。その映像はから飛び出してきたかのように、モデルのレオン・デイム(Leon Dame)がコルセットにテーラードパンツをまとって川沿いの小道に姿を現し、酒場へとたどり着く。

アデル(Adele)がカバーしたジョージ・マイケル(George Michael)の「Fast Love」や、マックス・リヒター(Max Richter)が改作したヴィヴァルディ(Vivaldi)による「四季」の「春」とマッシヴ・アタック(Massive Attack)の「ティアドロップ(Teardrop)」をマッシュアップした楽曲が流れる中、モデルたちは時に客席の前にあるテーブルやビリヤード台に腰をかけたり、辺りを見回したり、立ち止まってポーズを決めたりしながら、ゆっくりと歩く。男性はマッチを口にくわえ、壊れた傘をさしながら震える仕草を見せたり、身を隠すようにコートを頭まで被り体をかがめたり。女性は寒さに耐えるように腕をクロスさせて体を包み込むものもいれば、壊れた操り人形のようにぎこちなく歩くものもいる。そのドラマチックな動きは、コレオグラファー(振付師)のパット・ボグスラウスキー(Pat Boguslawski)が監修したものだ。そして、パット・マクグラス(Pat McGrath)が作り出す陶器の人形のような艶のある肌に、ダフィー(Duffy)によるボサボサの髪を大きな帽子のようにまとめ上げたヘア。そんな所作や風貌が、ガリアーノが思い描く作品の世界観を具現化している。

誇張されたシルエットと15の技法で描く個性

写真家ブラッサイ(Brassai)による夜のパリの人間模様を覗き見るかのようなポートレートに興味をそそられたというガリアーノが目指したのは、「服装に反映される個性を形作る慣習や出来事を描くこと」。プレスリリースには「服を着るという儀式は、自己を構成する行為。体をキャンバスとして、私たちは内面を表現する外面、つまり感情の形を作り上げる」とある。それを服でどう表現するのか。「感情的な形を物理的に表現する」ためのベースになるのは、コルセットとウエストニッパーでウエストを極端に絞り、腰下や臀部を誇張した丸みのあるシルエット。そこに、ガリアーノは「メゾン マルジェラ」独自の15のテクニックを駆使したアイテムを重ね、キャラクターを描き出す。その制作には1年以上を要したという。

メンズの中心となるのは、ひねりを効かせたテーラリングやコート。一見、ツイードやヘリンボーンといったクラシックなメンズウエアのような素材はウールクレープにトロンプルイユ(だまし絵)プリントを施したもので、その下にオーガンジーやフェルトなどの薄手の生地を何層にも重ねることで軽やかなコートやジャケットを作る。中には雨粒に見立てたクリスタルをあしらったり、裾が水で濡れたようなシリコン加工を施したり、トップレイヤーにチュールのベールを重ねておぼろげな雰囲気を演出したものもある。またキャラクターの感情を服に込めるために用いたのは、”エモーショナル・カッティング(Emotional Cutting)”と呼ぶ無意識のジェスチャーを衣服に取り入れるカッティング。顔を隠すために上げるコートやジャケットのラペルや、水たまりを避けるためにたくし上げたパンツといったデザインに生かされている。

一方、ウィメンズは、ウエストからヒップにかけてのシルエットを際立たせるドレススタイルやスカートスーツが主役だ。内側のコルセットや陰毛をリアルに再現したスキャンダラスなボディースーツがあらわになる透けたドレスは、“シームレース(Seamlace)”というレースなどの断片をなめらかにはぎ合わせてフォルムを作る技法や、ウエアの下から上へと装飾的なディテールが退化するさまを表現する“レトログレーディング(Retrograding)”の技法で仕立てたもの。ボロボロの段ボールのような風合いをプリーツ状にしたシルクオーガンジーで表現したケープコートやスカート、表裏にして一部をカットすることで構造をむき出しにしたジャケット、ほつれや穴など、退廃的な美学を感じさせるデザインもある。

足元に合わせたのは、「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」とのコラボレーションによるレッドソールの“タビ”。蹄(ひづめ)を想起させるプラットフォームとプロテーゼで強調されたかかとが特徴的なウィメンズのパンプスやニーハイブーツから、メンズ向けのレースアップのダービーシューズやショートブーツまで6型を提案した。また、女性はトップハンドルバッグ“スナッチト”を携えたり、陶器や木のように仕上げたレザーのネックピースをまとったり。男性は泥棒風のアイマスクやハンチングを身につける。

終盤は、青と白のストライプのコットンポプリンで作るドレスやスカート。白の部分を折りたたんで縫い合わせることで彫刻的なフィット&フレアシルエットを生み出している。ラストには女優のグェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)が登場し、ストライプのコルセットと半透明のラテックスドレスでショーを締め括った。

鳴り止まぬ拍手と足音

30分にわたり繰り広げられたシアトリカルな大作は、まさに“ガリアーノ節炸裂!”といった印象。フィナーレに登場したモデルたちは、素晴らしいパフォーマンスを称える盛大な拍手で迎えられた。そして、ガリアーノは最後まで姿を見せることはなかったものの、彼の登場を待ち侘びる観客の拍手と歓声、そして木の床を踏み鳴らす足音はしばらく止むことはなかった。それは、記憶に焼き付くようなファッションショーを目の当たりにすることが減り、マーティングや商業的な側面を感じるショーが増える中、心を震わせるクリエイティビティーの結晶に飢える観客たちのピュアなリアクションに他ならない。創業者時代のメゾンをよく知る人は、「メゾン マルジェラ」らしくないと言うかもしれない。しかし、ファッション界にはやはりガリアーノのようなドラマチックなストーリーテラーが必要だ。

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モンベル、被災地支援に「アウトドアの知恵」 約30年の積み重ねを生かす

能登半島地震が発生して1カ月。企業による物資の支援や義援金が活発になる前、いち早く動いたのがアウトドア用品メーカーのモンベルだった。ボランティア集団「アウトドア義援隊」を発足させ、現在までに延べ120人が現地で活動した。同社が扱うアウトドア用品は防災や災害時に役立つものが多い。行政の手が届きにくい初期段階から迅速に動けるのは、1995年の阪神大震災以来、積み重ねてきた支援経験があった。

正月休み明けの4日。モンベルの大阪本社では、寝袋、ダウンジャケット、下着などを2台のハイエースに積み込むスタッフたちの姿があった。第1陣の6人が石川県羽咋(はくい)市にある同社流通センター「北陸モンベル」の前線基地に向けて出発した。

羽咋市は能登半島の南部に位置し、元日の揺れは大きかった。「流通センター内のソーター(自動仕分け機)が壊れたり、壁が落ちたりと被災したが、ハンドピッキングに切り替えて出荷作業を行なっている。ここを拠点に、とくに被害が大きかった珠洲市と輪島市を中心に、小規模な避難所や個人宅、車中泊の被災者などに支援物資や水、灯油を配達して回った」(同社広報部の大塚孝頼課長代理)

登山用の携帯トイレが活躍

現地入りした義援隊は、きめ細かいヒアリングをした上で、必要とされる物を届ける。長引く断水など被害状況が厳しい被災地でとくに需要が高かったのが、軽量コンパクトな使い捨て携帯トイレだった。約2000個を配布し、携帯便座となるトイレシートとポップアップ型テントを併用し、簡易トイレを設営した。防寒着となるダウンジャケットやフリースウエア、アンダーウエアのほか、避難所で寝るための寝袋、断熱効果の高い登山用スリーピングパッドも配布した。「着の身着のまま避難されていてお風呂にも入れないので、防臭効果を備えたアンダーウエアも非常に喜ばれた」(大塚氏)という。

アウトドア義援隊が速やかに動けるのは約30年の積み重ねがあるからだ。誕生のきっかけは1995年の阪神淡路大震災。モンベル創業者の辰野勇社長(現会長)がアウトドア関連の企業や団体に呼びかけて組織した。試行錯誤の連続だったが、アウトドアで培った経験や知識、機能的な道具がいざというとき非常に役立つことが分かった。以来、新潟中越地震(2004年)、東日本大震災(11年)、ネパール大地震(15年)、熊本地震(16年)など国内外の自然災害の被災者支援のための現地活動を継続的に行なってきた。

能登半島地震においても自社製品だけでなく、さまざまな企業の協力を得た。新富士バーナーのアウトドア用ガスバーナー、永谷園フーズの食品、味覚糖の菓子など支援物資の提供を受け、被災地に届けている。

ただ、災害によって被災状況が異なるため、予定通りにいかないことも多い。能登半島の独特の地形が支援の手を阻み、いまだ救済、復旧作業が遅れている。発災直後は羽咋市の前線からでも被災地の珠洲市まで片道約6時間、輪島市まで約4時間かかった。「私たちは緊急車両扱いで入ることはできたが、道路状況がかなり悪く、混んでいたので活動時間のロスはあった。現在は仮設トイレが設置されたり、2次避難所に移動したり支援の体制が整ってきているが、発災直後に行政の支援が行き届いていないときにスピーディーに確実に困っている方に物資を届けるのが、アウトドア義援隊の目的」と、大塚氏は話す。

野外活動の経験がいざというとき役立つ

能登半島は、同社が推進協議会を立ち上げて全国の自治体と取り組むジャパンエコトラックに賛同し、ルート設定したエリアのひとつ。豊かな自然の中を自転車やトレッキング、カヤックなど人力による移動手段で楽しみながら旅しようというもので、道標を立てたりして思い入れがある土地だ。「棚田や見附島など地震や津波のせいで情緒ある景色が変わってしまったのが残念」と大塚氏。アウトドア義援隊の現地での活動は4次隊で一旦終了するが、今後は提携する自治体に災害援助金を贈るなど復興支援へと移行する。

同社は、公式ホームページ内で「暮らしの中の防災」をテーマに、防災に関する知識と災害時に役立つアイテムを紹介している。水害時にライフジャケットになるクッションやフリーズドライ製法の非常食などは、地震発生時から注文が増えているという。

大塚氏は「キャンプや山登りなどで日常生活とは異なる環境に慣れておけば、災害が起きたときに対応できる。低い山でもいいし、野外活動を体験しておくだけで全然違う」と、普段からアウトドアを楽しむことの大切さを呼びかけている。

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「パタゴニア」がオーガニック味噌を発売

「パタゴニア(PATAGONIA)」は3月14日、オーガニック味噌を発売する。600g入り1490円、持ち運びがしやすいTO GOの200g入り778円。取扱店舗はパタゴニア直営店、公式オンラインストア、フード&カンパニー、福島屋六本木店、虎の門店、秋葉原店、コープ自然派、ビオあつみ、グリーンコープなど。

パタゴニアはかねてから地球を修復するための解決策として食品事業に力を入れている。日本独自の製品開発も進めており、すでに自然酒の「繁土 ハンド」(寺田本家)と「しぜんしゅ-やまもり」(仁井田本家)を発売しており、今回のオーガニック味噌は3つ目の日本独自開発製品になる。

オーガニック味噌の原材料は千葉県産の有機大豆と有機米、食塩で、自家採種の蔵つき麹菌で、非加熱で約20カ月、天然醸造で長期熟成した。製造は福井県越前市のマルカワみそが手掛けた。有機大豆はパタゴニアが2018年から投資し、市民エネルギーちばが運営する千葉県匝瑳市のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の下で、スリーリトルバーズ(Three Little Birds)が土壌再生を目指して不耕起栽培で育てたもの。パタゴニアは21年からスリーリトルバーズとリジェネラティブ・オーガニック(RO、環境再生型有機農法)認証取得に向けて協働している。

スリーリトルバーズは、千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングが行われている畑地で、有機JAS認証に基づく有機農業で営農管理をしている団体で、ロンハーマン(Ron Herman)やカナダグース(CANADA GOOSE)ジャパンが投資するソーラーシェアリングの下の畑も管理している。

パタゴニアはRO農法を日本でも推進。日本における不耕起有機栽培の技術体系の研究を、不耕起有機栽培の長期比較試験圃場を擁する国内の第一人者である茨城大学農学部の小松﨑将一教授と、農業機械の専門家の神戸大学農学部の庄司浩一教授とともに進めている。21年からRO農法による大豆栽培に挑戦し、23年には作付け面積あたりの大豆収量が全国平均反収と同等以上の実績を得ることができたという。

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「パタゴニア」がオーガニック味噌を発売

「パタゴニア(PATAGONIA)」は3月14日、オーガニック味噌を発売する。600g入り1490円、持ち運びがしやすいTO GOの200g入り778円。取扱店舗はパタゴニア直営店、公式オンラインストア、フード&カンパニー、福島屋六本木店、虎の門店、秋葉原店、コープ自然派、ビオあつみ、グリーンコープなど。

パタゴニアはかねてから地球を修復するための解決策として食品事業に力を入れている。日本独自の製品開発も進めており、すでに自然酒の「繁土 ハンド」(寺田本家)と「しぜんしゅ-やまもり」(仁井田本家)を発売しており、今回のオーガニック味噌は3つ目の日本独自開発製品になる。

オーガニック味噌の原材料は千葉県産の有機大豆と有機米、食塩で、自家採種の蔵つき麹菌で、非加熱で約20カ月、天然醸造で長期熟成した。製造は福井県越前市のマルカワみそが手掛けた。有機大豆はパタゴニアが2018年から投資し、市民エネルギーちばが運営する千葉県匝瑳市のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の下で、スリーリトルバーズ(Three Little Birds)が土壌再生を目指して不耕起栽培で育てたもの。パタゴニアは21年からスリーリトルバーズとリジェネラティブ・オーガニック(RO、環境再生型有機農法)認証取得に向けて協働している。

スリーリトルバーズは、千葉県匝瑳市でソーラーシェアリングが行われている畑地で、有機JAS認証に基づく有機農業で営農管理をしている団体で、ロンハーマン(Ron Herman)やカナダグース(CANADA GOOSE)ジャパンが投資するソーラーシェアリングの下の畑も管理している。

パタゴニアはRO農法を日本でも推進。日本における不耕起有機栽培の技術体系の研究を、不耕起有機栽培の長期比較試験圃場を擁する国内の第一人者である茨城大学農学部の小松﨑将一教授と、農業機械の専門家の神戸大学農学部の庄司浩一教授とともに進めている。21年からRO農法による大豆栽培に挑戦し、23年には作付け面積あたりの大豆収量が全国平均反収と同等以上の実績を得ることができたという。

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「リファ」がカリモク家具、能作と共同でヘアブラシを発売 “日本独自の美”を追求

美容ブランド「リファ(REFA)」は2月22日、国内製造の木製家具メーカー、カリモク家具と創業100年を超える鋳物メーカー、能作とコラボレーションしたヘアブラシ“リファブリッスル オーク(ReFa BRISTLE OAK)”(3万9600円)を発売する。MTGオンラインショップで取り扱い、順次全国の百貨店、免税店などで販売を予定している。

「リファ」はプロジェクトミッションに“日本の伝統を紡ぐプロの技を世界に発信する”を掲げ、これまでもブランドの技術をプロフェッショナルの技と融合し日本独自の美を発信する商品を発表してきた。第3弾となる今回は、素材、デザイン、使用後の髪の仕上がりなどのこだわりを追求したヘアブラシを製作した。

ブラシの持ち手部分には、手のひらのぬくもりを感じさせる樹木の素材を使用。樹木の色合い、表面の質感、貼り合わせで生まれる木目のパターンはどれも異なり、唯一無二のアイテムに仕上がっている。ブラシの蓋に用いた真鍮は上品な輝きを放ち、日々使い続けることで色や質感が優しい風合いに変化していく。100%天然猪毛のブラシが、猪毛に含まれる適度な水分と油分で髪本来の艶となめらかさを引き出す。

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関西の雄、「じんべえ」「アレグロ」等、㈱レストランバンクの20年を勝手に振り返る。

【記事のポイント】 ●2004年1月の創業から20年を超えたレストランバンク(会社設立は2006年)。「大衆イタリア食堂 アレグロ」「居酒屋じんべえ」など約30店舗にまで成長した。出店エリアは大阪、兵庫(+カリフォルニア州)、関西では絶大な支持されている。その魅力の一端をお伝えしたい。
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「シュウ ウエムラ」が“黒”のクレンジングオイルを発売 毛穴悩みにアプローチ

「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」は3月13日、毛穴の黒ずみや角栓にアプローチするクレンジングオイル“ブラック クレンジング オイル”(450mL、1万2100円/150mL、4950円)を発売する。6日には、店頭と「アットコスメ ショッピング(@COSME SHOPPING)」で予約受け付けを開始する。

“ブラック クレンジング オイル”には洗浄力の高い備長炭と、肌を整える黒米の“黒”を配合。メイクや毛穴の詰まり、角栓をオフするだけではなく潤いのあるなめらかな肌に整える。オイルは半透明のブラックカラーで、さらっとした軽やかなテクスチャーだ。ウッディーで清潔感のあるジェンダーレスな香りに仕上げている。

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「シュウ ウエムラ」が“黒”のクレンジングオイルを発売 毛穴悩みにアプローチ

「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」は3月13日、毛穴の黒ずみや角栓にアプローチするクレンジングオイル“ブラック クレンジング オイル”(450mL、1万2100円/150mL、4950円)を発売する。6日には、店頭と「アットコスメ ショッピング(@COSME SHOPPING)」で予約受け付けを開始する。

“ブラック クレンジング オイル”には洗浄力の高い備長炭と、肌を整える黒米の“黒”を配合。メイクや毛穴の詰まり、角栓をオフするだけではなく潤いのあるなめらかな肌に整える。オイルは半透明のブラックカラーで、さらっとした軽やかなテクスチャーだ。ウッディーで清潔感のあるジェンダーレスな香りに仕上げている。

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