PROFILE: セシリエ・トースマーク/コペンハーゲン・ファッション・ウイークCEO

コペンハーゲン・ファッション・ウイーク(CPHFW)は今年、20周年を迎えた。もともとは北欧地域を中心としたトレードイベントだったが、世界に先駆けて公式スケジュールへの参加条件として「サステナビリティ要件」を導入したり、参加ブランドと招待ゲストの国際化を図ったり、同時期に開催される見本市CIFFとのシナジーを生かしたりしながら発展。パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークに次ぐ“第5のファッション都市”とも呼ばれるようになった。2018年に就任して以来、サステナビリティを中核に据えた改革に取り組むセシリエ・トースマーク(Cecilie Thorsmark)最高経営責任者(CEO)に、CPHFWならではの強みや重要な転換点から現在の取り組み、次の20年に向けた目標までを聞いた。
地域のトレードイベントから国際的に重要な舞台へ
WWD:世界各地でファッション・ウイークが開催される中、コペンハーゲンならではの強みは何か?
セシリエ・トースマーク=コペンハーゲン・ファッション・ウイークCEO(以下、トースマーク):強いクリエイティブ・アイデンティティーと明確なコミュニティー感、そしてプラットフォームを通じて業界を前進させようとする姿勢が組み合わさっていること。コペンハーゲンは、他の都市とは異なる親密さや親近感を失うことなく、ますます国際的に成長している。また、デザインや食、カルチャー、建築など、街そのものと深く結びついていることも、ショーだけにとどまらない独自性を生み出している。
一方、成長によって、このプラットフォームを価値あるものにしてきた要素が損なわれないようにすることも常に強く意識している。CPHFWは、ブランドやクリエイター、パートナー、バイヤー、メディアとの密接な関係によって成り立っていて、その距離の近さを維持することは私たちにとって非常に重要。国際化によってコミュニティーが薄まるのではなく、むしろさらに強くなっていくべきだと考えている。
WWD:CPHFWの20年を振り返って、大きな節目や転換点は?
トースマーク:特に大きかったのは、ファッション・ウイークの国際化、「サステナビリティ要件」の導入、そして新進ブランド支援の大幅な強化。こうした変化によって、CPHFWは地域を中心としたトレードイベントから、国際的にも重要な業界プラットフォームへと変貌を遂げた。
WWD:その中でも「サステナビリティ要件」の策定と導入は注目を集めた。その経緯、そして今までの成果や課題は?
トースマーク:動機はシンプルで、サステナビリティについて本気で語るのであれば、自分たちのプラットフォームが持つ影響力を活用する覚悟も必要だと考えたから。そこで、単に変化を促すだけではなく、公式スケジュールに参加するブランドが満たすべき最低限の要件を設けることにした。大きな成果の1つは、この枠組みがコペンハーゲンを超え、他都市のファッション・ウイークや業界団体にも影響を与えるようになったこと。一方、基準や知識、評価手法は常に進化している。高い目標と信頼性の両方を保つには、フレームワーク自体も継続的に発展させなければならない。
WWD:サステナビリティを推進する一方で、CPHFWは新たな才能を支援するプラットフォームとしても存在感を高めている。新進ブランドの支援で大切にしていることは?
トースマーク:私たちの役割は、新進デザイナーにとって成長を大きく左右する時期に、認知を広げる機会や業界へのアクセス、必要なインフラを提供すること。例えば、「ニュー・タレント(NEWTALENT)」プログラムでは、ショーへの参加をはじめ、メンタリング、業界とのネットワーク作り、国際的な露出などを通してデザイナーを支援している。CPHFWで強いインパクトを残すことだけでなく、その先も成長していけるビジネスの基盤を支えることを大切にしている。
デンマークのクリエイティブシーンに見る変化
WWD:この20年で、デンマークのクリエイティブシーンはどのように変化したか?
トースマーク:独立した精神を強く保ちながらも、以前と比べてはるかに多様になり、国際的なつながりも深まった。私が特に興味深いと感じるのは、現在のデンマークのクリエイティビティーが何か1つの分かりやすい美学によって定義されるものではなく、むしろアティチュードとして表れていること。実験精神や気取らないこと、コラボレーション、そして既存の慣習に挑む意欲。そうした姿勢こそが、特徴になっていると思う。
WWD:現在、世界のファッション産業が直面している最大の課題は何か?また、その課題に対してファッション・ウイークはどのような役割を果たせると考えているか?
トースマーク:最大の課題は、ファッションが持つ非常に大きな文化的・経済的価値を維持すると同時に、業界のあり方そのものを根本的に変えていかなければならないことだと思う。もちろん、ファッション・ウイークだけでその問題を解決することはできない。けれど、その影響力を生かして業界に求められる基準を示したり、共通のスタンダードを作ったり、新しい才能を支援したりすることはできる。また、難題について業界全体が議論し、具体的な解決策を考えるための場をつくることも、ファッション・ウイークが果たせる重要な役割だろう。
WWD:次の20年に向けて、実現していきたいことは?
トースマーク:国際的に影響力のあるプラットフォームとして進化しながらも、紛れもなくコペンハーゲンらしい存在であり続けたい。目指すのは、サステナビリティや人材育成、クリエイティビティー、そしてより広い意味での業界としての責任という面で前進を促し続けると同時に、次世代のためにさらに充実した機会を生み出すこと。最終的には、CPHFWがどれだけ成長したかだけではなく、その存在が周囲のファッション業界にどれだけポジティブな影響を与えられたかによって、私たちの成功が評価されることを願っている。
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