2026年カラーの“クラウドダンサー”をまとう パリ&ミラノコレがお手本【2026年春夏トレンド】

パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE以下、パントン)は、2026年の“カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)”に、やわらかいトーンを帯びた白の“クラウドダンサー(Cloud Dancer、Pantone:11-4201)”を選びました。カラー・オブ・ザ・イヤーでホワイト系の色が選ばれるのは今回が初めてです。今回は来年に向けて、2026年春夏パリ&ミラノコレクションから白系カラーの取り入れ方を先取りチェックしていきましょう。

クラウドダンサーは化学的に漂白されたような真っ白ではありません。ほのかにソフトな雰囲気を宿したナチュラルトーンです。白特有の無垢なニュートラルさを保ちながら、軽やかで穏やか。本の余白を思わせる落ち着きや静かさを漂わせています。

白はもともとノーブル、純粋、清らかといったイメージで知られています。“白紙の状態”という言葉が示す通り、スタートや新章の象徴です。混乱や動揺が続く中、情報や刺激の過剰な現代からの解放という意味合いを帯びているようです。

“クラウド”のネーミングからは、漂う雲の自由感やのどかさがうかがえます。雲から連想される平穏さ、安らぎもファッションに望まれる時代の気分を示すかのよう。“ダンサー”のほうにはは弾む高揚感、高まる期待などが込められていると見えます。

気品や涼しさを感じ取りやすい色だから、春夏ルックになじませやすい色です。たとえば、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」。雲のような優雅な浮遊感で、ブラウス、ジャケット、パンツを白系でまとめました。柔和でソフトなトーンにシフォン系素材の風合いとも溶け合い、エアリーでハンサムな雰囲気です。

しなやかミニマルな細身シルエット

クリーンな色合いのクラウドダンサーはミニマル系のすっきりしたルックになじみます。白主体のトーンでまとめると、清らかでピュアな雰囲気に。細身のペンシルシルエットはホワイトルックに好相性を発揮します。

「ディオール(DIOR)」はシャツとニットを融け合わせたようなトップスと、レギンスのようなパンツでスレンダーなコンビネーションに仕上げました。シンプルなフォルムがしなやかな縦長感を引き出しました。ゴールドの甲飾りが視線を引き込む靴を素足で履いて、ヘルシーリッチな足景色に整えています。

自然体でリッチな“リュラックス”に

真っ白ではなく、ナチュラルなトーンのクラウドダンサーは気負わないエフォートレス気分を醸し出します。“雲”を意味する名前の通り、穏やかでやさしげな色味。ホワイトと組み合わせれば、白系が響き合う“トーン・オン・トーン”にまとめられます。

微妙にトーンの異なるホワイトルックを提案したのは「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」。エクリュカラーのTシャツはゆったりめのフォルムで、自然体の伸びやかな着映え。一方、スパンコールを全面にあしらった白系パンツはリッチでゴージャス。、リュクスとリラックスが交わる“リュラックス”のムードが備わりました。

異素材レイヤードで質感ハーモニー

白主体の装いは単調に見えがちなので、ありきたりを避けるアレンジが肝心です。ダイナミックなシルエットや、異素材のミックス、着丈のアシンメトリーなどがホワイトルックに動感をもたらします。

「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のワンピースは雲のようにふわふわの生地で仕立てられました。ドレーピーな起伏が優美な風情。アシンメトリーな裾は斜めに流れ落ちるかのよう。サテン生地のパンツに重ねて、異素材レイヤードに仕上げました。ホワイトルックの奥行きに深みを加えるスタイリングです。

ロマンティックドレスで“デイリークチュール”

ウエディングドレスに象徴されるように、白はロマンティックなムードを連れてきます。フリルやドレープは白の表情を深めるディテール。フォーマルやオケージョン用を普段使いスル“デイリークチュール”のトレンドはホワイトドレスの出番を増やす追い風になってくれます。

「クロエ(CHLOE)」はレースとフリルをどっさりあしらった、白いトップスとワンピースを組み合わせました。逆三角形のようにトップスがドラマチックな動きを添えています。ティアード(段々)仕立てのスカート部分も流麗な表情。白とディテールが響き合って、清楚で華やかな装いに整っています。

大胆カッティングでアートライクに

白シャツに代表されるように、白系アイテムはベーシックなイメージがあるだけに、大胆なフォルムが引き立ちます。アートライクなカッティングは意外感を高める効果を発揮。素肌見せ演出との組み合わせは清らかなヌーディー感を引き立てます。

「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は風が吹き抜けるような筒状のトップスを打ち出しました。ネック周りが詰まっている一方、ショート丈の裾部分はボディーから離れて宙に浮いているかのよう。細身のスカートは裾にフリルを躍らせました。クチュール感の高いコンビネーションが軽やかで朗らかな装いに導きました。

癖が強くないクラウドダンサーは自在の着こなしに取り入れやすい色です。清潔感やピュアネスなどを印象づけやすいのは、白系ならではのよさ。無垢な色調は1年のスタートにもふさわしいから、2026年の幕開けに迎えてみては。

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寺と食とカルチャーが交差する 町田・簗田寺の“開かれた場“の哲学

東京・町田にある、1629年創建の簗田寺(りょうでんじ)は、庫裡(くり)を改装した精進食堂「ときとそら」や宿坊「泰全」、コーヒー豆焙煎所「CONZEN COFFEE」を併設し、国内外のアーティストが集う音楽フェスやイベントも開催している。寺を学びや文化が交わる開かれた空間として活用することで、新しい寺の魅力を発信している。

こうした新しい場所づくりの背景には、住職の齋藤紘良が音楽家でもあり、保育や福祉の現場にも関わるような分野を超えた多面的な視点を持っていることがあげられる。それらが有機的に交わることで、簗田寺は旅と日常の間にあるような独特の心地よさを感じられる特別な場となっている。そんな簗田寺の魅力と、齋藤の考えをひもとく。

PROFILE: 齋藤紘良/住職、作曲家、しぜんの国保育園社会福祉法人東香会理事長

齋藤紘良/住職、作曲家、しぜんの国保育園社会福祉法人東香会理事長
PROFILE: (さいとう こうりょう)1980年生まれ。東京・町田市にある簗田寺の住職。渋谷・世田谷・町田・相模原で「しぜんの国保育園」などを運営。プロミュージシャンとして楽曲提供やバンド「コイン(COINN)」での活動も行う。500年間続く祭りの創造、寺院の再興、映像番組などへの楽曲提供、そして雑貨と電子楽器を駆使したパフォーマンスなどを行なっている。発表音源に「narrative songs」、著書に「すべて、こども中心。」(KADOKAWA)などがある。全国私立保育連盟研究企画委員で2023年から和光高校非常勤講師と大妻女子大学講師を務める

多様な活動の核にあるもの

――住職・ミュージシャン・しぜんの国保育園理事長として、さまざまな活動をされています。まずはご自身の「核」となるものを教えてください。

齋藤 紘良(以下、齋藤):常に「この環境の中で、自分がどう“あそべる“か」を考えています。“あそび“とは、ひらめきがあり、展開が待っていて、次を予測できない状態のことで、決まった作業をこなすだけでは“あそび“にはなりません。何でも自由であればよいわけではなく、ルールや制約の中でひらめきが生まれて、初めて“あそび“は楽しくなります。

例えば、保育園や社会福祉の現場で生まれるものと、お寺の活動で生まれるものが、不思議とどこかでリンクしていく感覚があります。そこに音楽のエッセンスが加わると、さらに別の形へ変容していくような連鎖が自然に起きて、全てが発想の土台になっています。特に音楽は、自分を形づくった原点であり、その延長に“あそび“の感覚もあります。即興で生み出す音楽が好きで、決まった曲を弾くよりも、自由にその場で音をつくることに魅力を感じます。すべて「環境や場をどうつくるか」という点で、私の中で同じ軸にあります。

人が集まるのは個人の力ではなく、お寺や保育園という「場」の魅力のおかげです。だから、自分が主役ではなく、人に任せつつ、その場を大切にしながら、日々の出来事に反応していくように常に場を開いておく感覚です。

――精進食堂「ときとそら」の地産地消の料理について教えてください。

齋藤:コンセプトは、内臓と心を穏やかにする禅寺の精進食堂です。ここに来た人がゆっくり滞在できる楽しい場にしたいという思いから始めました。これも“あそび“の延長として、ここで過ごす時間を豊かに感じてほしいと考えていくうちに、この土地ならではの精進料理の形が見えてきました。
お寺で採れた食材を中心に、日替わりで「朝粥」「精進カレー」「精進御膳」を提供しています。豆をベースにした精進カレーは、体に優しいスパイスを加え、アチャールやチャイと一緒に食べると、身体が目覚めていくような元気が湧いてくるはずです。月毎にメニューが変わる「精進御膳」で先月提供したのは、茶の湯の流れに沿った「織部御膳」でした。発酵玄米や寺庭で採れたみょうがのおむすび、季節の野菜やテンペ(インドネシア発祥の大豆発酵食品)、トトリムク(韓国の伝統食品の一種で、ドングリのデンプンを固めた食品)など、1つひとつに身体に優しい工夫が施され、食べることで自然と心も整うような体験が広がります。

――お香作りも同じように“あそび“の発想で始められたのでしょうか?

齋藤:お香作りは、落ち葉掃除を、ポジティブな“あそび“に変えられないかという発想から始まりました。商売として成立させることよりも、みんなで楽しさを共有したい。多くの人に来てもらえたら嬉しいのですが、本当に来てほしいのは、このお寺を大事にしてくれる人です。住職が守る場所から、みんなで守る場所へ変えるために、従来のお寺の制度を手放しました。自分が楽しいと感じることをお裾分けしている感覚なので、来てくれた人にも同じように感じてもらいたいですね。

――国内外からアーティストが集まる音楽フェスや親子の学び場「500年の学校」などの文化・社会事業も行っています。

齋藤:この場所は多元的で、自然も人の営みも歴史も重なり合っています。もともとお寺は、山と里の境界に意図的に設けられ、目の前に山の自然と里の生活が同時に広がる空間です。このおかげで、音楽や学びの場の活動が特別な体験として成立しているのかもしれませんね。

音楽だけは、自分の生活の中で自然に形づくってきました。音楽をやっていると、「何歳までに結果を出さないと」といった決まりのようなことを言われることもありますが、私にとってあそびは年齢で区切るものではなく、一生続けるものです。

都市と寺のぞれぞれの役割

――寺という空間は、都市では忘れがちな感覚を取り戻せる場所なのですね。

齋藤:都市では、自然の流れや人々の営みが本来の形で交わりにくいことがあります。渋谷のビルはその典型で、本来の地形に沿わず建てられているため、水や風、人の営みの流れが遮られ、自然のエネルギーを感じにくくなります。その結果、人の活動もバラバラになり、場の流れを読み取りにくくなってしまいます。

例えば、祭りの神輿は、都会でも人々が同じ方向に動く瞬間のエネルギーがぐっと高まり、心地よさを感じます。自分もその流れに乗るように同じ方向に動きます。こうした大きな流れを日常的に感じられるのが寺の魅力です。

――都市と寺、それぞれの役割の違いをどう感じますか?

齋藤:お寺から離れ、都市に出て初めて心から自由に遊ぶ楽しさを知りました。それは若さゆえの可能性への憧れだったと思います。都市は上へ伸びる強いエネルギーがあって、積み重なっていくような感覚になります。吸収する情報が非常に多いので、自分が肥えていく感覚があります。でも、その社会は大勢が関わり合いながら成り立っているので、その流れから離れてしまうと人とのつながりが希薄に感じてしまう。一方でお寺は、減らす、手放す感覚が強くなる。ここでは常に自然や人の営みが循環しているからものを抱えていると疲れてしまうんです。自分が持っているものを減らすほうが気持ちがいい。都市での積み重ねる経験と、寺での手放す感覚の両方を意識して生きるのが自分に合っています。

――自分らしさや個性はどのように育つと考えていますか?

齋藤:仏教では、目の前のとらわれをどう解くかが何千年も前から続く修行の1つです。個性は自分で作るものではなく、場から自然に生まれるものです。私の場合、このお寺自体が個性になっているので、意図して生み出せるものではありません。だから、自分らしさや個性にとらわれることはありません。
生まれ育った環境やタイミングは人それぞれで、その違いを受け止めるだけで自然と個性が見えてきます。また、都会を俯瞰してみることで、自分や他者の個性にも改めて気づくことができます。土地から得られる気づきやインスピレーションは常にあり、外の世界との関わりを通して、その価値はより広がっていくはずです。

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「体は完全に自分のものではない」“編集できる”時代に、伊藤亜紗が考える美と体との距離

PROFILE: 伊藤亜紗/東京科学大学 未来社会創成研究院・リベラルアーツ研究教育院教授

伊藤亜紗/東京科学大学 未来社会創成研究院・リベラルアーツ研究教育院教授
PROFILE: (いとう・あさ)専門は、美学、現代アート。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次に文転。障害を通して、人間の身体のあり方を研究している。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究美学芸術学専門分野を単位取得のうえ、退学。同年、同大学にて博士号を取得(文学)。学術振興会特別研究員をへて、13年に東京工業大学リベラルアーツセンター准教授に着任。16年4月より現職。主な著書に『ヴァレリーの芸術哲学、あるいは身体の解剖』(水声社、2013年)、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社、15年)、『눈이 보이지 않는 사람은 세상을 어떻게 보는가 』(16年)、『目の見えないアスリートの身体論』(潮出版、2016年)、『どもる体』(医学書院、2018年)、『記憶する体』(春秋社。19年)、『手の倫理』(講談社、20年)PHOTO : AI OKUBO

文字通り「美」を扱うビューティ業界は、常に体との対峙を前提とした産業だ。ルッキズム、美容整形、多様性の前提といった社会の変化とともに美や体に対する言及に複雑さが増す昨今、美容業界はどう美や体と向き合うべきか。美学者の伊藤亜紗にきいた。

「美しさ」は保守的で、同時に逸脱する

WWD:美学者という立場から「美しさ」をどのように捉えている?
伊藤亜紗 東京科学大学 未来社会創成研究院・リベラルアーツ研究教育院教授(以下、伊藤):
美しさを感じるのは人間の感性の働きですよね。感性の働きには2つの対極的な要素があり、1つはコンサバティブな部分、もう1つは常識を逸脱していく部分があります。

コンサバティブな感性は二層に分類できます。1つは進化的・動物的なレベルで、瞬時に危険を察知する生存のための判断。もう1つは文化的に作られたレイヤーで、歴史や教育を通じて形成されてきたもので、場合によっては非常に昔ながらの価値観を温存してしまいます。そう言うとネガティブに聞こえますが、それ自体が文化でもある。それは、日本人は靴を脱いで家に上がると落ち着く、などと同じです。ただし、時代の変化によっては変えていかなければならない部分もあるというバランスですね。

後者のコンサバティブな感性は、社会的によしとされている規範に従って反応します。たとえば、人種の問題を扱った有名な書籍『ホイッスリング・ヴィヴァルディ:ステレオタイプの社会』の中に、若い黒人男性が夜のシカゴの公園を歩くとき、必ずヴィヴァルディの“四季”を口笛で吹く話が出てきます。若い黒人男性は“ありのまま”でいると怖がられてしまうため、あえてそういう振る舞いをして「自分は白人文化側の人間だ」というアピールをするのです。他にも、自分の好みではないのに大学のロゴが入ったTシャツをあえて着用するといった話も組み込まれていました。

「差別はいけない」と頭で思っていても、暗い道で前から黒人がくると無意識に身構えたり、道を変えたりする。私たちも実はそういうことをしていますよね。感性というのは人間の非常に根深い部分に紐付いていて、頭で分かっていることと違う行動をしてしまうのです。

WWD:もう1つの「常識を逸脱していく部分」とはどういうものか?
伊藤:
概念やカテゴリーを超え、理由抜きで対象の魅力を感じ取る力です。その感じとり方は個体差があり、人や集団による部分が大きいです。

たとえば、韓国の車椅子のダンサーのキム・ウォニョンさんが車椅子を使わずに地面を這うデモに参加していたときの話です。権利を求めて叫ぶ中、彼は自分の目の前を這っていた友人のふくらはぎの筋肉が美しいと思ったと書かれていました。

それはその人が「ふくらはぎが筋肉質な人が好き」とかいう話ではなく、「その瞬間」や「その人」に対しての個別性が強い出合いです。ラベリングやカテゴライズによる理解を超えた、対象固有の魅力にダイレクトに引き込まれる感性だと思います。

同時に、法律などで認められるから社会に参加できるという流れももちろん大切ですが、感性レベルで肯定されないと社会に“本当の意味で”入れないことを痛感したと話していたのも印象的でした。

WWD:ビューティ業界では、特定の「美しさ」が前提として共有されているように感じられることがある。
伊藤:
ですが、時々明らかに既存の美の基準から逸脱したスーパーモデルが出てきますよね。ファッションやビューティの業界は新しいもの好きという側面もあると思いますが、そういった基準に対して非常に寛容な産業だとも思います。

美しさを感じとる人間の感性はそもそも、相当柔軟だと思います。たとえば、ブルドッグはどちらかというとブサイク顔ですよね。でも、それがかわいいという感覚もある。“ブサかわいい”という言葉があるように、コンサバティブでありながら柔軟でもあるという感性もあります。

視覚が優位な社会では視覚的な美が中心になりますが、見えない人にとっては声質や触覚に美しさや愛らしさを見出すこともあります。

以前、特別支援学校の小学校に行ったとき、全盲の生徒が点字が書かれたプリントを触っていて「めっちゃかわいい」って言っていたんですよね。点字の独特のパターンに反応していたみたいです。私にとってはただの紙なのですが、「触り心地にもかわいさを見出す感性がある」と感じたことを覚えています。

声の心地よさ、話し方から感じる人柄、触ったときの感覚。視覚以外にも美しさがありますよね。

体は”デザインできる”時代に

WWD:体との関係性で言えば、昨今は美容整形が一般化しつつあるという意見もある。
伊藤:
今は過渡期なのかなと思っています。人間と体との付き合い方は従来、生まれたときに自分が望んだわけではない与えられた体を背負って生活する、というものでした。でも、現在は与えられたものが自分の好みではなかった場合に物理的に変えられるようになってきています。

今後はその可能性がさらに増えていくと思います。1つは、生まれる前、DNAレベルでの選択。すでに体外受精では胚の選択が行われていますし、iPS細胞などで生殖のあり方が変わる可能性もある。社会がどう受け止めるかという倫理的な問題はもちろんありますが、生物工学的な意味で体への介入可能性の選択肢は増えています。

そうなると、「体をデザインする」という方向性は止められないのではないか。病気になりにくい胚を選ぶという選択は分かりやすいですが、身長、運動能力、髪質など、どこまでが治療でどこからがエンハンスメントなのか、線引きはどんどん難しくなっていく。その結果、やっぱり美しい体が選ばれる方向に進む可能性は高いと言えますね。

もう1つは、バーチャル空間で体を編集するという方向性です。すでにメタバースでは、別のアバターで生活している人がたくさんいて、そちらがメインになっている人が多くいます。そういった人にとって、日常的に少女の姿でコミュニケーションしている人が実際は中年男性だったとしてもショックを受けない、と聞きます。そうなると、現実の体を整形する必要がなくなる。

結局はコミュニケーションの問題で、整形をすることもメタバースにおいて自分のリアルな姿と別のビジュアルを選ぶことも、他者との関係性を調整できるからその選択を選ぶのだと思います。コミュニケーションの調整として自分の体の見た目を変えるという意味では、今後さまざまな選択肢が増えていくと思います。

WWD:体の捉え方が時代とともに大きく変化してきている?
伊藤:
そうですね。ただ、そもそも昔から体は自分で選んだものではありませんよね。それは単純に造形などの外見の話だけではなく、ふるまいや動作1つとっても、育った環境や経験といったその人の歴史が積み重なっています。

そう考えると、生まれる前にデザインされるか、育つ過程でデザインされるかの違いだけで、体は常に環境との関係で作られている点は変わっていないとも言えます。

WWD:昨今はルッキズムの反動からかビューティ業界では「自分の美しさは自分で決める」という自己性の強いメッセージが増えているように思える。
伊藤:
たとえば、1960年代のアメリカでは「ブラック・イズ・ビューティフル」という運動がありました。それまで醜さや野蛮さの象徴としてしか見られていなかったアフロヘアや肌の色といった黒人の身体的特徴を自分たち自身で肯定し直す運動です。「われわれにはわれわれの美しさがある」という主張のもと、服を作ったり絵を描いたりすることで、見方を変えていくものでした。

なぜそういった行動が必要だったかというと、黒人たち自身が自分たちを醜いと内面化してしまっていたからです。トニ・モリスンの「青い目が欲しい」という小説では、家の外にも中にも安全な場所がない過酷な環境で育つ黒人の少女が「青い目さえあればすべてが解決する」と思い込み、自滅していく様子を描いています。自分を美しいと思えないことがどれほど人を不幸にするかを伝える小説でした。

「ブラック・イズ・ビューティフル」運動のゴールは、美しいと見られたいというだけでなく、自分に対する自分の目線を変えたいというものです。そのゴールが「コンフォータブル」であること。この体のままで社会にいていい、ここにいていいと感じられることが、美しさをめぐる運動の本質でした。

美しくありたいという気持ちと社会的に優位でありたいという文脈が混ざってしまいがちですが、実は「自分が大丈夫だと思いたい」という気持ちによる側面は美容文脈においても強いのかもしれないですね。

WWD:自分の体への視線は「大丈夫でありたい」という感情から作られる、と。
伊藤:
そうですね。ただ、自分と自分の体との関係性がいつの間にか自分と他者のような関係性になってしまうこともあります。

研究の一環で、摂食障害の人にお話を聞くことがありますが、そのきっかけの多くはダイエットのようです。他者の視線が気になって始めたダイエットが、いつの間にか目的を失い、数字で体を管理するプロジェクトになっていく。成果が出やすい分、コントロールできるという感覚に依存してしまう傾向にあるのですね。

どんどん自分の体をコントールできる自信がついてしまった結果、ある人は自分と自分の体との関係を「DV夫と妻の関係みたいだ」と表現していました。頭が夫で、体が妻。体の声、疲れた、空腹、心地よいといった感覚が一切聞こえなくなる。「もう一度体と出合いたいだけなのに」と言っていたのが印象的でした。

その関係を修復するために体にクリームを塗っても、体から「何をやっているの」と見透かされている感じがする。通常ならリラックスできるはずの行為でも、そう感じられなくなる。

体との関係は簡単に壊れてしまうもので、感じられることは当たり前ではありません。介入して制御してという関係を体と強く結んでしまうと、それがダイエットであれ、整形であれ、体の声が聞こえなくなってしまうことはあり得ますね。

体はままならない

WWD:もし、今自分の体との向き合いに苦しんでいる人がいるとしたらなんて言葉をかける?
伊藤:
1つ言えるのは、体は完全に自分のものではないということ。たとえば、実は顔も自分では見たことがなくて、周りの人の方がよく見ている。一緒に住んでいるパートナーの方が影響はありますよね。

だから、自分で定義しすぎなくてもいいのかもしれない。「こういう顔なんだけど、どう?」くらいの距離感で、人の受け止め力に委ねる。そのほうが楽になる場合もあるのではないかと思います。

私は吃音を持っていますが、友人が「このどもり良かったね」と吃音の様子を誉めてくれることがあります。それが嬉しいような、ちょっと痛いような。でも、いつも見てるのは相手の方ですし、人に任せる。

体は常に他者との間にあるものですから、そういう自分ではままならない側面も大いにありますね。それが結局、体の面白さかなと個人的には捉えています。

WWD:ビューティ業界は、美を扱う産業として「美しさ」の定義とどう向き合うべきか?
伊藤:
会社やブランドによって本当に違いますよね。たとえば、ある化粧品ブランドでは「一人一人」を大事にする姿勢を明確にしていて、一人のためのワークショップをやってほしいと依頼されたことがあります。視覚障害のある友人とその1人の顧客と私とで、一緒に料理をするワークショップを実施したことがありました。そういう光の当て方をしている企業もある。

一方で、よりマーケティングに即したメッセージを出しているところもある。一概には言えません。消費者としては、メッセージそのものより、実際に接する人から伝わるものも大きいと思います。美容部員など、形としての美しさではなく、自信や会社から大事にされている感じ。そういうものに惹かれることもありますよね。

WWD:今後、美の基準はどうなっていくと予測する?
伊藤:
明言はしにくいですね。テクノロジーの進化のスピードが速すぎる。AIやインターネット、生殖技術、バーチャル空間。全てが絡み合って、美の基準も固定的なものではなくなっていくと思います。

大学の同じ部局に宇宙関連の研究者が多くいることもあり、日常の中で宇宙の話が近くにあるのですが、もし人類が地球以外で暮らすようになれば、体が置かれる前提が変わります。身長も変わるかもしれないですし、肉を食べなくなって口が退化するという可能性もあります。体は環境と紐づいていますから、そうなれば、人間の定義や美しさの基準も大きく変わるのではと思います。極端な想像かもしれませんが。

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「ウィズリミテッド」が東京ストリートブランドのレジェンド「TAR」とのコラボコレクションを発売

下野宏明の手掛ける「ウィズリミテッド(WHIZLIMITED)」は1月2日の初売りアイテムとして、今年39周年を迎えた東京ストリートブランドのレジェンド「TAR(TOKYO AIR RUNNERS)」とのコラボレーションコレクションを発売する。

「ウィズリミテッド」の下野デザイナーが当時多大な影響を受けた「TAR」の1990年代初期〜中期のアイテムを「ウィズリミテッド」バージョンとして復刻した特別なコレクションで・76枚限定のスタジャン(15万4000円)、フーディー(2万6400円)、ロンT(2種、各1万5400円)、Tシャツ(1万2100円)をラインアップ。また今回のアイテムに付いている「TAR」のネームは全て90年代当時のデッドストックの物を使用している。

アイテム一覧

TAR STA JACKET

90年代中期にリリースされた「TAR」1stスタジャンを「ウィズリミテッド」バージョンとして復刻。76枚限定。背中に付いているアルファベットのサガラワッペン(アルファベットはランダ)は90年代当時のデッドストックを使用している。

TAR HOODIE

90年代初期にリリースされた3アイテムのグラフィックをミックスしたフーディー。

TAR L/S TEE

90年代初期にリリースされた代表的なグラフィックをミックスしたロングスリーブTシャツ。

TAR L/S PHOTO TEE

背中には奇跡的にプリント工場で保存されていた当時(90年代初期)のオリジナルフィルムを使用して製作したロングスリーブTシャツ。

TAR PHOTO TEE

当時(90年代初期)のオリジナルフィルムを使用して製作したTシャツ。

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編集長から不動産業に転身 “五十にして迷わず”で「高齢者の賃貸物件難民問題」に向き合う

PROFILE: (かげやま・きりこ)PROFILE:1974年生まれ。横浜市出身。上智大学文学部心理学科を卒業後、ウェブデザイナーを経てアシェット フィリパッキジャパン(現ハースト婦人画報社)へ。「エル・オンライン(現在のエル・デジタル)」でエディターとして11年勤務。退社後、フリーエディターとして働きながら仲間と一般社団法人ランガールを立ち上げ、女性のためのランニング大会「RunGirl★Night」を9年間にわたって主催。「ウィメンズヘルス」日本版立ち上げのため、再度ハースト婦人画報社へ。創刊から8年間編集長を務め、2023年秋には「エル・グルメ」の編集長にも。 23年、両親の家探しで高齢者が賃貸を借りられない問題に直面し、宅地建物取引士の勉強を開始。24年に合格、25年には世田谷区のインキュベーション・プログラム「HOME/WORK BOOSTER」の支援を受け、26年にamuとして宅建業を開業する PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

ハースト婦人画報社で「ウィメンズヘルス(Women’s Health)」や「エル・グルメ(ELLE gourmet)」の編集長を歴任してきた影山桐子は2025年12月に同社との契約を終了し、26年1月にはamuという会社を立ち上げて宅建業を開業する。目指すのは、家賃の滞納や認知症、そして孤立・孤独死などへの不安から賃貸物件を借りづらい、高齢者の賃貸物件難民問題の解消だ。なぜ影山社長は、大胆なキャリアチェンジに挑むのか?50歳を過ぎた今、「人生の後半30年を費やせば、どうにかなるかもしれない」と話す高齢者の賃貸物件難民問題への思いを聞いた。

WWD:編集長の仕事を辞め、不動産業への転身を志したのはなぜ?
影山桐子amu社長(以下、影山社長):2023年のゴールデンウイークのころ、認知症の初期症状が始まったため母親のため、両親は地元である神奈川県横浜市への引っ越しを決めました。でも75歳の父親と73歳の母親が住む物件探しは、本当に大変。まず最初の不動産屋には「高齢者には物件を紹介できない。UR(旧:公団住宅)を探してください」と言われ、その次はサイトで「高齢者に優しい」を謳う不動産屋にいくつか物件を紹介してもらいましたが、両親の年齢を伝えると内見段階で3件連続断られてしまったんです。ショックでした。その後「高齢者歓迎」物件に出合いましたが、私と同じような境遇、娘が近所に住む高齢の両親が審査に落ちた話を伺い、「一緒に住むということにして契約されては?」と教えていただいたことも。結局、片方が認知症の初期段階にある高齢夫婦の物件探しは、“全滅”だったんです。私がいてもこんなに大変なのに、一方で日本の持ち家率は下がり続けている。こうした現状を知らずに年をとったとき、両親同様に路頭に迷う人が増えるとしたら本当にマズいと思い、年齢を重ねてからの絶望という課題を解決したいと考えました。
編集の仕事は自分の中では一区切りついていて、エネルギーを他のことに傾けたいと考えていました。人生の後半30年を費やせば、この課題はどうにかなるかもしれない。そう考えて不動産屋さんになるため、翌日には「宅地建物取引士(以下、宅建士)」を目指して勉強を始めたんです。でもその1週間後、「ウィメンズヘルス(Women's Health)」に加えて、「エル・グルメ(ELLE gourmet)」の編集長にもなることに。仕事量も、会議も、目標の数字も、部下も2倍になって、勉強は思うように捗りませんでした。23年の6月に宅建士になることを志しましたが、10月に受けた最初の試験は5点足りずに不合格に。翌年の10月、2回目の試験で合格しました。
同じ頃、東京都世田谷区のインキュベーション・プログラムに採択され、期間中であればオフィスの開設費用などもサポートしていただけることになりました。会社には最初「これまでの50%なら編集長の仕事も続けられるかもしれない」と話していましたが、「編集長の仕事は、0%か、100%か。どちらかを選んで」と言われて、25年の12月にハースト婦人画報社との契約が終わりました。

高齢者が賃貸物件を
借りられない4つの理由

WWD:改めて、なぜ高齢者はこんなに賃貸物件が借りづらいのか?
影山社長:問題は4つあります。①家賃の滞納が怖い、②認知症が不安、③孤立・孤独死が心配、そして④相続権には賃貸に関する権利も含まれるため、居住者が亡くなっても大家さんは部屋を勝手に片付けたり、次の人に貸したりできないんです。ただ例えば、地方公共団体や居住支援法人が入居支援や家賃債務の保証などを通じて要配慮者の円滑な入居をサポートする「改正住宅セーフティネット法」など、今は法整備が進み始めています。地方公共団体や居住支援法人が物件探しから先までサポートできれば、仮に居住者が亡くなっても早めに発見できるので、3年間の告知義務がある事故物件になるようなケースは減るでしょう。加えて電気の使用量やトイレのドアの開閉回数などをトラッキングして異変に気づいたら対応するようなテクノロジーも進化中です。亡くなった居住者の“残置物”などについては、国土交通省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定・推奨しており、住宅セーフティネット法を改正して居住支援法人の業務に追加することで、単身高齢者の賃貸利用促進を目指しています。 東京都も高齢者の入居を推進するオーナーや不動産会社に補助金を渡すなど、高齢社会に進む中、行政は今、高齢者を全面的に後押しする法整備を進めているんです。でも、こうした情報は、大家さんには届いていません。不動産会社や管理会社にも、知らない人は多いでしょう。制度は追い風で良い方向に向かっているし、人口の4割が高齢者になる時代に彼らに物件を貸さないのでは不動産屋さんのビジネスは成り立たなくなっていく。メディアに携わってきた身として、私が騒いで、発信することで世間がザワザワすれば、何かが変わるのではないか?と思っています。

WWD:不動産の仲介や居住支援を行うに際して、これまでのキャリアは活かせると思う?
影山社長:業界は全く違うけれど、編集者としてクライアントワークもマネージメントもやってきた経験は活かせると思っています。例えば物件の紹介は、タイアップに似ているのではないでしょうか?すでに東京R不動産などは個性ある物件を独自の視点でセレクトして紹介していますが、ネガティブにも言えることを特定のターゲットに向けてポジティブに表現すること、その価値をできるだけ高めて紹介することは、まさにタイアップのコンテンツ作りと一緒です。不動産の世界には、そんなスキルがある人がとても少ない。だからこそ社名は、「舟を編む」ではないけれど、「暮らしを編む」「つながりを編む」という思いを込めて、amuにしました。

WWD:確かに近所で賃貸物件を探しているとき、「もっといいアングルで写真撮れるのにな」や「あのお店が近いことも紹介すればいいのに」なんて思うことはよくある。
影山社長:今はとある不動産会社で修行中なんですが、私も「成功報酬だけど」と前置きして、カメラマンにちゃんとした写真を撮影してもらいました(笑)。もちろん編集者のキャリアを活かすことができるとは思いつつも、内見のアポにいらっしゃらないお客さまが意外に大勢いらっしゃるなど、これまでの常識が通用しない業界であることも痛感しています。

「男子ごはん塾」や「寝たままストレッチ」
ライフワークのコミュニティーイベントも開催

WWD:「つながりを編む」ため、コミュニティーイベントも開催する予定だ。
影山社長:これは半分私のライフワークでもあるんですが、孤立・孤独死を防ぐため、世田谷界隈で高齢者のコミュニティーを作りたいと思っています。例えば「男子ごはん塾」は、家族が喜ぶ趣味として、自分自身の健康寿命増進のため、そして退職後に友人関係が希薄になりがちな男性のつながり作りの場として、料理に苦手意識がある男性のために定期的に開催している料理教室です。孤立・孤独死は男性が8割と言われ、中でも60代の男性が最多です。一方で私の父親は今、母のためにも嬉々として料理しています。
フリーエディターだった頃は、一般社団法人ランガールを立ち上げ、女性のためのランニング大会を主催してきました。ランガールは今、いくつになっても動ける健やかな心と体を応援する「&everyday」プロジェクトを推進中。「寝たままストレッチレッスン」など、年齢・性別を問わず参加しやすいイベントを定期的に開催し、心身の健康増進を応援しています。まずは小さな成功例をたくさん作り、それを広げていくこと。と同時に、みんなが重大だと認識している問題について、火中の栗を拾おうとしている人たちを応援したいと思います。

WWD:今後の計画は?
影山社長:年明けには宅建免許が交付予定で、そのために事務所も借りました。まずはこれからの30年で会社としての信用を積み上げ、80、90歳までバリバリ働きつつも、私が死んでも残り続ける会社にしたいと思っています。特に編集者には、60歳になって会社を定年退職すると、急に姿を見なくなってしまう方が多い気がしています。とても優秀な方なのに、60歳になった瞬間ヒマになってしまう方が多いのだとしたら、私は、そんなパワフルな60歳オーバーの人たちを雇用したい。自分も含めてワクワク老いることで、若い人に見守ってもらうのではなく、同世代同士が声を掛け合うつながりを編みたい。さらには高齢者のシェアハウスや、賃貸物件の入居者が食を囲む食堂なども作りたいと思っています。高齢者の賃貸物件難民問題はとても難しいけれど、解決に向けて活動を始めるには、今が一番いいチャンスです。

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高感度層に支持広がる「アモーメント」 熾烈な価格競争で磨かれた“韓国発アフォーダブル・ラグジュアリー”

韓国ファッションの勢いが衰えない日本市場にまた一つ、注目ブランドが本格上陸した。このほど、東京・表参道にひっそりと店を構えた「アモーメント(AMOMENTO)」。同ブランドは、いわゆる「韓国好きの若者」向けというよりも、成熟した「洋服好き」にこそ刺さるブランドとして、高感度層の間でコアな支持を集めている。

「アモーメント」は2016年にソウルで設立。カジュアルやストリートに強い韓国ブランドの中では珍しく、北欧的なタイムレスでクラシックなスタイルが特徴だ。黒や茶、ベージュを基調に、テーラードベースのアイテムを豊富に揃える。その服作りは至極ベーシックであり、アウターで4万円〜18万円、ニットで3万〜5万円、パンツで2万5千円〜5万円と、安価なブランドが多い韓国市場においては比較的高価格帯に位置する。韓国ブランドとしては「異質」なポジショニングでありながら支持を広める理由は、価格以上に感じられる「作りの良さ」にあるだろう。そのアプローチは、近年勢いを増す北欧系のアフォーダブル・ラグジュアリー・ブランドとも共鳴する。

日本では大手セレクトから「1LDK」「シボネ(CIBONE)」といった個店まで取り扱いが広がっているが、表参道の新店は本国以外で初となる直営店。神宮前5丁目のビル「ARISTO表参道Ⅱ」の2・3階で、2階にはフルラインアップを揃え、3階はブランドの美学を発信するカルチャースペースとして機能させる。来日したクリエイティブ・ディレクターのMK・リー、CEOのイ・ミョンス(Myeongsoo Lee)に「アモーメント」の哲学、直営店の役割、ブランドの展望を聞いた。

WWD:まず「アモーメント」というブランドについて教えてほしい。

MK・リー=「アモーメント」クリエイティブ・ディレクター(以下、MK):私たちは「服は着ることでこそ、その価値が真につながる」と考え、直接着て体験することを何よりも大切にしています。デザインにおいては、着用感やシルエットはもちろん重要ですが、私は「服とは、人に最も近い空間である」と捉えています。造形的に美しいだけでなく、優れた建築物のように、心地よく快適でありながら、美しい。その両立を最優先しています。

また「ミニマル」であることも、私たちが追求する重要なキーワードです。私は削ぎ落とされたデザインの建築やアートが好きで、いつ見ても良い作品、いつ行っても良い空間に惹かれます。この概念は「アモーメント」にも通じており、「いつ着ても快適で、かつ美しくありえる」という服作りを目指しています。これが、私たちなりの「クラシック」の解釈です。

WWD:元々、建築への造詣があった?

MK:大学での専攻はインテリアアーキテクチャ(室内建築)でした。ファッション業界での最初のキャリアはファッションリテールのVMD(ビジュアルマーチャンダイザー)で、店舗の空間デザインやディスプレイを手掛けていました。そこから、自然な流れで服作りを始めました。

WWD:ブランド名の由来は?

MK:ブランドを立ち上げる際、少し深く、シリアスな問いからスタートしました。「もし人が死んだら、何が残るだろうか?」と考えたのです。想像してみると、やはり「幸せな記憶」「幸せな瞬間」だけが心に残るのではないかと思いました。

スペイン語で「瞬間」を意味する「Momento」に英語の不定冠詞「A」を付け、「ある一つの瞬間(A Momento)」という意味を持たせました。服作りを通じて、人が幸せになる瞬間を作っていきたいという願いを込めています。同時に、「よりよい服とは何か」を考えながら服を作り続け、その一瞬一瞬を積み重ねることでブランドを紡いでいきたいと考えています。

WWD:「アモーメント」は日本でも人気が高まっている。その理由の一つが価格と品質のバランスにありそうだ。

イ・ミョンス「アモーメント」CEO(以下、イ):「アモーメント」が生まれた韓国は、価格競争が極めて激しいファッション市場です。より安価に、よりトレンドをスピーディーに反映することが求められます。その中で、タイムレスで高付加価値な服作りで生き残るためには、上質な素材を使うだけでなく、高いクオリティの商品を適正価格で作る必要がありました。

そのために生産工程やシステム面で徹底した合理化の努力を重ねてきました。必ずしもコストパフォーマンスだけを意識したわけではなく、クオリティーを最優先に考えてきましたが、韓国の激しい競争環境の中で経験を積んできた結果として、現在の価格設定が実現できたのだと思っています。

WWD:日本でのビジネスの沿革は?

イ:日本での卸売(ホールセール)は2016〜17年頃からスタートしました。約10年間取引を続け、ポップアップストアも3回開催しています。韓国で最初に出した店は本当に小さな店舗でしたが、その頃から日本のお客様がたくさん来てくださっていました。そうした経緯もあり、日本は私たちにとって非常に親しみのある場所です。東京への出店は自然な流れでした。2022年の夏頃から神宮前5丁目での物件の話が出ており、ようやく実現に漕ぎ着けました。

WWD:表参道の直営店ではどんなことを伝えたいのか。

イ:まず、3階のインスタレーション(展示)をご覧いただきたいです。これまでお話しした「アモーメント」の表現、アートや建築に通じるエッセンスについては、なるべく言葉で説明したくありません。「定義すること」よりも、直感的に「感じ取ってもらうこと」のほうが重要だと考えています。だからこそ、まず3階でその感覚を味わっていただき、その後に2階のショップへ降りて服に触れる、という空間構成にしています。「スタイル」「ムード」で他のブランドと共にカテゴライズされるよりも、「これはアモーメントらしい」「まさにアモーメントそのものだ」と言われるのが理想です。

WWD:今後の展望は。

イ:私たちは真の“グローバル・ブランド”を志向しています。現在、卸売先は世界で28社ほど。国別の売上規模では韓国がトップですが、日本、中国、北米が続きます。ニューヨークでのショールームビジネスは6〜7年目になり、現在はパリでも展示会を行っています。

ただ、やはりまず東京に店を構えたことは、グローバルブランドとして成長するための足掛かりとして、素晴らしい選択だったはずです。この東京のストアを起点に、さらなる成長を目指して最善を尽くしていきます。さらに、日本には各地に素晴らしいセレクトショップがあり、ファッションに対する審美眼や視点が非常に鋭い消費者がいます。そういった環境で揉まれることは、ブランドのさらなるレベルアップにつながります。今後、表参道に限らず他のエリアでも、店舗を構える可能性を検討していきたいと考えています。

■ AMOMENTO TOKYO FLAGSHIP STORE
営業時間:12:00〜20:00
所在地:東京都渋谷区神宮前 5-49-9 2〜3階

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「イヴ・サンローラン」の人気リップとフレグランスが初コラボ ベリーのフレグランスの香りをまとったリップが登場

「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」は2026年2月27日、フレグランスとリップスティックが同じ香りをまとう、ブランド初のコラボレーションコレクション“ベリー クラッシュ コレクション”を発売する。ラインアップは、ラズベリーのフルーティフローラルな香りの“リブレ オーデパルファム ベリークラッシュ”(30mL、1万4300円/50mL、2万460円)と、同じラズベリーの香りに仕上げた“YSL ラブシャイン リップスティック ベリークラッシュ”(限定、6050円)をそろえる。2月18日からは、「イヴ・サンローラン」表参道フラッグシップブティックおよび公式オンラインストアで先行発売を開始する。

ジューシーなラズベリーを堪能できる2アイテム

“リブレ オーデパルファム ベリークラッシュ”は、ジューシーでフルーティーなラズベリーがリブレを象徴するフローラルラベンダーと、芳醇でクリーミーなココナッツと溶け合う、遊び心がありながらも洗練された香り。ラズベリーの爽やかな酸味と瑞々しい甘さ、力強く官能的に香り立つ、ラベンダー、オレンジブロッサムとの衝突をクリーミーなココナッツで包み込み、最後に残る、奥深い甘い余韻まで、五感を満たすように心ゆくまでかみしめられる、やみつきになる味わいを表現した。

“YSL ラブシャイン リップスティック ベリークラッシュ”は、“リブレ オーデパルファム ベリークラッシュ”と同じ甘美なラズベリーの香りをまとわせた、熟したラズベリーのようなベリージュースレッドのリップ。透明感のあるベリージュースカラーをベースに、まろやかで深みのあるレッドニュアンスをプラスし、フレッシュでいてセンシュアルな印象を実現した。

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