ティモシー・シャラメ主演映画「マーティ・スプリーム」衣装デザイナーが明かす制作の舞台裏

ティモシー・シャラメ(Timothee Chalamet)主演のA24製作の最新映画「マーティ・シュプリーム 世界をつかめ」が、3月13日から日本で全国公開する。

本作は、「アンカット・ダイヤモンド(Uncut Gems)」や「グッド・タイム(Good Time)」を手掛けたニューヨーク出身のジョシュ・サフディ(Josh Safdie)が脚本・監督を務めた最新作。いずれもニューヨークの裏側を舞台に、がむしゃらに生きる主人公の姿を描いた作品だ。「マーティ・シュプリーム」の舞台は、1952年のニューヨーク市マンハッタンに位置するロウアー・イーストサイド。ティモシー・シャラメが演じるのは、靴のセールスマンでありながら卓球チャンピオンでもあるマーティ・マウザー(Marty Mauser)だ。

1950年代NYのファッションを“超リアル”に再現

同作の衣装デザインを担当したのは、スタイリストやコスチュームデザイナーとして活躍するミヤコ・ベリッツィ(Miyako Bellizzi)。ベリッツィは、10年以上前に共通の友人を通じてサフディと出会い、過去2作品でも衣装デザインを担当してきた。50年代を舞台とする今回の作品では、彼女自身の長年の趣味であるビンテージ収集の経験が大きく生かされたという。「その時代の服のシルエットや生地については、もともとよく知っていた。高校生の頃からギャバジンシャツを集めていたので、この映画が始まる前からこの時代のことは熟知していたし、この時代が一番好きだ」と語る。

ベリッツィとサフディが目指したのは、1950年代のニューヨークのリアルをスクリーンに映し出すこと。それは、当時のニューヨークのファッションシーンを忠実に再現することであった。「マーティ・スプリーム」の衣装制作では、当時の雑誌のアーカイブ写真やドキュメンタリーなどの資料をもとにリサーチを重ねた。

世界観を理解すること、そして第二次世界大戦後の1952年に何が起きていたのかを把握することが重要だったと彼女は語る。物語の舞台はニューヨークのロウアー・イーストサイドにとどまらず、登場人物たちがロンドンや日本へと旅する場面もあり、物語は世界各地へと広がっていく。ベリッツィは、“リアル”を表現するためには、当時世界各地の人々が実際にどのような服を着ていたのかを理解することが不可欠だったという。それには、人々の着こなしだけでなく、その時代に何が手に入ったのかを知る必要もあった。当時は戦後の混乱期であり、入手できない素材も少なくなかったからである。例えばロンドンでは、グリーンのウールが手に入らなかった。

制作に特に大きな影響を与えたのは、アメリカの映画監督ケン・ジェイコブス(Ken Jacobs)が1955年に制作したドキュメンタリー「オーチャード・ストリート(Orchard Street)」だ。50年代のロウアー・イーストサイドを記録したこの作品は、当時流行していただぼっとしたシルエットの“ズートスーツ”や、貪欲に生きる人々の姿、さらには多文化の共存によって生まれたさまざまなトレンドを映し出しており、“ロウアー・イーストサイドのバイブル”となった。彼女は、そうしたスタイルは非常に繊細でありながら少し独特でもあり、その雰囲気をマーティというキャラクターを通して表現したかったと付け加える。

スーツが体現するマーティの夢と個性

ベリッツィは、作中に多く登場するスーツを通じてマーティの風変わりな個性を体現しようとした。衣装を決めるうえで重要視したのは、日常の服装というより、彼が旅に出るとき“どんな自分でありたいか”を考えることであった。ロンドンを訪れる場面では、マーティは理想の自分を演出するような装いをする。「彼はロウアー・イーストサイドで育った少年だが、大きな夢を抱いている。だから、今の彼自身ではなく、“彼がなりたい男は誰なのか”という視点で衣装を考えました」とベリッツィは語る。

脚本には、マーティがロンドンへ“特別なスーツ”を持っていくというシーンがあり、それが彼女にとっては大きなポイントだったという。実際にはまだ大物ではないのに、そう見えるように装う彼を、どう表現すればいいか。そのイメージから衣装の方向性を決めた。最終的に選んだのは、ロウアー・イーストサイドのハスラーたちをモデルにした、細かい赤のピンストライプが入ったダブルブレストピークドラペルのグレーのスーツだった。「彼が憧れるのは、まさにああいうタイプの男たちだからだ」とベリッツィは説明する。このスーツは、映画全体の衣装デザインの基準にもなった。作中、マーティは卓球の試合でもそのスーツのパンツを着用しており、スーツを上下バラバラに着こなす場面でもパンツは常に身につけているという。

またベリッツィは、マーティの物語の軌跡を、ロバート・パティンソン(Robert Pattinson)主演の映画「グッド・タイム」と重ねていたという。パティンソンと同様、シャラメも映画の大半を駆け回りながら過ごす。「靴屋での仕事着に始まり、そこから家に走って帰り、ロンドンへ飛び、また戻ってくるといった、動き続ける場面が非常に多い作品だ」と語る。

ベリッツィは20人体制の縫製スタッフと協力し、主要キャストの衣装の大半をオーダーメードで制作。マーティとその後援者たちが着るスーツから、ハーレム・グローブトロッターズのユニホーム、各国の卓球選手たちのユニホームやウォーミングアップウエアに至るまで、全てを一から作り上げた。大舞台に各チームが一堂に集う場面で個性を際立たせるため、それぞれに異なるスタイルを取り入れた。ベトナムはベビーピンクのポロシャツ、インドはバーガンディー、ブラジルはダークグリーン、ドイツはイエローとブラックといったように、国ごとにさまざまなカラーパレットを用いた。

女性キャラクターの衣装は往年の映画スターに着想

同作は男性中心の物語ではあるが、中には重要な女性キャラクターも登場する。マーティの母親を演じるフラン・ドレッシャー(Fran Drescher)、幼馴染を演じるオデッサ・アジオン(Odessa Azion)、そしてアッパー・イーストサイドに暮らす華やかな年配の俳優をグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)らである。

ベリッツィにとって、パルトロウが演じるキャラクターは自身の理想のキャラクターだったという。衣装のインスピレーション源は、マレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)やグレース・ケリー(Grace Kelly)といった往年の映画スター。さらに、「ジバンシィ(GIVENCHY)」、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」、「ディオール(DIOR)」のルックも参考に、クラシックで洗練されたスタイルを追求した。ベリッツィは、特にお気に入りの衣装として、マーティがロンドンのホテルロビーで初めて彼女と出会う場面で着用されるケープと、その直後にマーティの試合を観戦する場面のスカートスーツの2着を挙げた。

実際にベリッツィ自身もスカートスーツをコレクションするほど愛好しており、高校のプロムでもグウィネスが作中で着用しているものに似た1950年代のガウンを着たという。ベリッツィはキャラクターへの思い入れについて言及しながら、「まるでこのキャラクターにたどり着くために、人生をかけて準備してきたような気がします」と語った。

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スターバックスが東京・谷中にアートギャラリー併設店舗をオープン  コンセプト は“藝と珈琲の交差点”

スターバックス コーヒー ジャパンは3月28日、東京・谷中に地元で活動する若手アーティストや芸術、美術を学ぶ学生、地域と創生しながらアートを通じて未来を育むスターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂をオープンする。店内アートは、テーマ展、フェア展、パブリック展の入れ替え式で展開し、1年を通して若手アーティストの多彩な作品に出合える。

日常でありながらちょっとした刺激や特別な時間を過ごせる場所を目指す

同店は、“藝と珈琲の交差点”をコンセプトに、谷中エリアの歴史や文化に敬意を込めた2階建ての木造建築の店舗。スターバックスでのコーヒー体験と、次世代を担う若手アーティストの感性が交差する、日常でありながらちょっとした刺激や特別な時間を過ごせる場所を目指す。

若手アーティストの作品を中心に、定期的に作品を入れ替え、さまざまな作品をお楽しめる。複数のアーティストが参加し、アーティスト同士、またスターバックスの従業員も参加し、会話をしながら展示を作っ ていくテーマ展、気鋭アーティストの作品が並ぶフェア展」公募を行い新しい才能を発掘するパブリック展を予定している。 お気に入りの作品と出会えたら、購入することも可能だ。開業を飾る柿落とし展では、独自の視点で風景や空気感を描き出す若手アーティストのKarin Hosonoと真田将太朗、YU SORAの3人が谷中をテーマにした新作を発表する。

オープン概要

■スターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂

オーブン日:3月28日
住所:東京都荒川区西日暮里3-2-5
時間:8:00〜21:00
席数:74席

開催概要

■ 柿落とし展

期間:3月28日〜6月28日
場所:スターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂

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スターバックスが東京・谷中にアートギャラリー併設店舗をオープン  コンセプト は“藝と珈琲の交差点”

スターバックス コーヒー ジャパンは3月28日、東京・谷中に地元で活動する若手アーティストや芸術、美術を学ぶ学生、地域と創生しながらアートを通じて未来を育むスターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂をオープンする。店内アートは、テーマ展、フェア展、パブリック展の入れ替え式で展開し、1年を通して若手アーティストの多彩な作品に出合える。

日常でありながらちょっとした刺激や特別な時間を過ごせる場所を目指す

同店は、“藝と珈琲の交差点”をコンセプトに、谷中エリアの歴史や文化に敬意を込めた2階建ての木造建築の店舗。スターバックスでのコーヒー体験と、次世代を担う若手アーティストの感性が交差する、日常でありながらちょっとした刺激や特別な時間を過ごせる場所を目指す。

若手アーティストの作品を中心に、定期的に作品を入れ替え、さまざまな作品をお楽しめる。複数のアーティストが参加し、アーティスト同士、またスターバックスの従業員も参加し、会話をしながら展示を作っ ていくテーマ展、気鋭アーティストの作品が並ぶフェア展」公募を行い新しい才能を発掘するパブリック展を予定している。 お気に入りの作品と出会えたら、購入することも可能だ。開業を飾る柿落とし展では、独自の視点で風景や空気感を描き出す若手アーティストのKarin Hosonoと真田将太朗、YU SORAの3人が谷中をテーマにした新作を発表する。

オープン概要

■スターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂

オーブン日:3月28日
住所:東京都荒川区西日暮里3-2-5
時間:8:00〜21:00
席数:74席

開催概要

■ 柿落とし展

期間:3月28日〜6月28日
場所:スターバックス カフェ & ギャラリー 谷中御殿坂

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伊版「ヴォーグ」の編集長を長年務めた故フランカ・ソッツァーニの新たなドキュメンタリー映画が公開

伊版「ヴォーグ(VOGUE)」の編集長を長年務めた故フランカ・ソッツァーニ(Franca Sozzani)の新たなドキュメンタリー映画「ペイビング・ザ・ウエイ/フランカのレガシー(Paving the Way — Franca’s Legacy)」がソッツァーニ財団(Fondazione Sozzani)で公開された。

同作の共同監督を務めたフランチェスコ・ツィッペル(Francesco Zippel)は、ソッツァーニの影響力について「フランカは“星座”の鼓動そのものだった」と表現した。同作は、ソッツァーニがキャリアを通じて次世代のファッションのクリエイターや才能を支援してきた取り組みに焦点を当てており、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccoli)、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)、ジャンバティスタ・ヴァリ(Giambattista Valli)、シルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)、アルベルタ・フェレッティ(Alberta Ferretti)、マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)、ステラ・ジャン(Stella Jean)ら、多数のデザイナーや業界人へのインタビューが収録されている。作中では、インタビューに応じたデザイナーや起業家たちが、個人的で、これまで明かされてこなかった逸話を複数語っている。

ツィッペル監督は初公開に先立つインタビューで、「狙いは、彼女の人生の特定の側面に切り込み、好奇心に満ちたプロフェッショナルとして才能を発掘し続けたフランカの軌跡と、そのために注いだ努力を語ることだった」「取材を進めるうちに、彼女こそが中心であり、ファッションシステムの周囲に引き寄せられて集う人々の“星座”における、ひときわ輝く星であると気づいた。彼女は多くのキャリアの立ち上げを後押しした」と話した。

ソッツァーニ財団は、フランカの姉であるカーラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)と姪のサラ・ソッツァーニ・マイノ(Sara Sozzani Maino)が共に運営。今後、イタリア国内の文化イベントの一環として同作の巡回上映を企画しているという。

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写真で見る「福島県双葉町とスーパゼロ工場」 #知り続ける

2011年3月11日の東日本大震災から15年。一部の復興特区をのぞき、今なお大半が「帰宅困難区域」の福島県双葉町と浅野撚糸の「スーパーゼロ工場」を、フォトグラファーの作永裕範が撮り下ろした。

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フクシマに30億円投資、浅野撚糸が伝える「震災復興の本質」 #知り続ける

2011年3月11日の東日本大震災から、15年が経つ。福島第一原発のある大熊町や双葉町では、一部の復興特区をのぞき、今なお大半が「帰宅困難区域」で、震災の深い傷は文字通り治癒の途上にある。

無撚糸タオル「エアーかおる」で知られる浅野撚糸は23年4月、その双葉町の復興特区に30億円を投じて「フタバスーパーゼロミル工場(以下、「スーパーゼロ」工場)」を新設した。震災の残した傷の最深部にある「スーパーゼロ」工場は、まさに「震災と復興」の象徴的な存在だ。

「震災と復興」「フクシマと原発」は、大半の人にとっては大きく重すぎるテーマで、震災から15年が経過しても答えや解決策は出ていないし、ともすれば大きすぎるテーマの前に思考停止してしまう。また、日本の繊維・ファッションの製造業という観点でも、「震災とは?」「復興とは?」「支援とは?」などの震災に関わるテーマに加え、「人手不足」「生き残り策」などの課題も内包している。

だが、安心してほしい。浅野撚糸の「スーパーゼロ」工場は、そうした悩み、あるいは気後れを同社の驚くほどフワフワなタオルのように優しく包み込む。Googleマップの上空写真で見ると「ゼロ」をかたどった同工場は、撚糸工場というにはあまりにもド派手で、明るい。建物の中にデカデカと掲出されている浅野撚糸の歩みは、同社の数回にわたる失敗や倒産危機、そこからの復活劇がドラマ仕立てで演出され、同社のこれまでのTV出演モニターとともにわかりやすく伝えている。

浅野撚糸は当時の年商よりも大きな投資額を投じた「スーパーゼロ」工場を通じ、体当たりかつ等身大で「震災と復興」に取り組み、それらを伝えることで、訪れる人々にこの大きなテーマを考えるきっかけを与えているのだ。

撚糸という繊維製造業の中でも日陰の存在であった町工場が、なぜ震災の最深部で復興に取り組むことになったのか。東京都心から電車と車を乗り継いで4時間半ほど。「スーパーゼロ」工場の今をリポートする。

浅野撚糸が双葉町に工場を新設したワケ

浅野撚糸の本社は岐阜県安八郡(やすはちぐん)にあり、毛織物の産地として知られる尾州にある。撚糸は糸を撚り合わせることで強度を高める工程で、特に同社は異なる糸を撚り合わせる技術に強みがある。同社の主力製品である無撚糸タオル「エアーかおる」も、コットンに水溶性ビニロン(水ビ)を撚り合わせ、最終的にお湯で水ビを溶かすことで糸に驚異的な膨らみを持たせている。

そんな同社がなぜ双葉町に工場を作ったのか。同社の主な取引先はタオルメーカーで、愛媛県の今治、大阪の泉州、そして三重の「おぼろタオル」であり、福島第一原発の周辺には縫製工場や小規模な織物企業などが点在しているが、産地と言えるほどのエリアでもない。福島との縁と言えば、たまたま浅野雅己社長が福島大学に通っていたくらいだ。きっかけは経済産業省からの声がけだった。「スーパーゼロ」工場の立ち上げから関わり、同工場の所長として現場の指揮を執る河合達也常務執行役員は、「工場用地の見学会には、浅野社長が所用で行けなかったため、私が金融関係者と2人で、浪江町や大熊町など5カ所の候補地を回った。双葉町の候補地は避難指示の解除が進んでおらず、造成も途上。当時は雨で土地がぬかるみ、まともに歩くことができないような有り様だった。私が作成した資料では候補の順位は一番下だった」と振り返る。

にも関わらず浅野社長が選んだのは、その双葉町の用地だった。その真意を浅野社長はこう明かす。「投資を決めたのは19年。知り合いに頼まれて福島県を訪れたときは言葉を失った。当時はすでに津波の瓦礫などは撤去されていたものの、町の中には津波被害を免れた家屋や小学校もあるのに、人がまったくいない。ゴーストタウンのような街の姿には衝撃を受けた。でも投資を決めた一番大きな理由は、双葉町にものすごい可能性を感じたから。『原発事故からの復興を本気で目指す町』。世界中を見回してもここにしかない価値だ。除染や帰宅困難などの課題も山積みだったけど、それ以上の可能性を感じた。まあそれに、投資を決めた19年はタオルが売れまくって業績が絶好調だったことも大きかったね」という。原発事故といえばチェルノブイリがあったが、あくまでダークツーリズムのような文脈で「復興」ではない。「除染が進めば、日本だけでなく世界中から人が訪れ、大きな商機になる。そう直感した」。

そのため「スーパーゼロ」工場は、観光型工場という体裁になっている。撚糸機は2400錘、月間の撚糸生産能力は36トン。建物の1/3弱を占めているに過ぎず、大部分を占めているのは観光客向けのスペースで、残りの約1/3が自社の糸を使った名物タオル「エアーかおる」の物販エリア、さらに残りの約1/3がカフェやイベントスペースだ。撚糸工程は、ガラス張りの大きな見学用ルートを通して見られるようになっているが、その見学ルートの最大の見どころは、撚糸工程よりも、冒頭で記した数回にわたる倒産の危機とその復活劇をストーリー仕立てで壁際に掲出した同社の沿革だ。撚糸工場の存在感は正直スペース以上に小さく、それ以上に来館者を楽しませようという意気込みを感じる。

だが双葉町は、爆発事故を起こした福島第一原発1号機・2号機のある大熊町に隣接し、今も町の大半が「帰宅困難区域」に指定されている。震災前に約7000人だった人口は現在、約200人に過ぎず、訪日客の旅行スポットになっているとは言い難い。浅野社長は「今でもその直感に間違いはないと確信している。日本を訪れる世界中の観光客にとって、銀座よりも表参道よりも、一番魅力的な場所はここ双葉町だ。近い将来には必ず『原発事故から立ち直った町』は、世界中から人を呼び寄せるはずだ」。

だが、「スーパーゼロ」工場には年間1万人もの来客がある。取材に訪れた3月6日にも、20〜30人のスーツ姿の研修らしき団体客が2組ほど視察に訪れていた。河合所長は「平日はほぼ毎日2〜3組が研修に訪れ、土日の来客も珍しくない」と語る。大半の来客は観光客ではなく企業や自治体関係者などの研修や視察だ。河合所長は「当初は旅行会社などと組んでツアーなども企画したが、放射能への忌避感は強く成立しなかった。逆に今は何もしていないのに、研修や視察で訪れた人の口コミで評判となり、まずは福島県内から、やがて県外からも訪れるようになった」。

研修や視察がひっきりなし、というのは実感として非常に理解できる。「フクシマの復興」には誰しも関心が高いものの、原発事故という未曾有の事故に対して、多くの企業や人はどうして良いのかわからないというのが現実だ。だが、「スーパーゼロ」工場は訪れると、そうしたモヤモヤが晴れるような気がするのだ。それが多彩な企業や自治体関係者などに口コミで広がり、1万人を招き寄せる。

それでも広大なスペースのあるカフェと物販エリアが賑わっているとは言い難い。年間の売り上げは1億円ほど。同社の岐阜本社にある物販スペースが3億円ということを考えると、やはり小さい。河合所長は「事業所単体だと赤字なので、所長の私と開業からいるベテランスタッフでイベントや物産展などに出展し、タオルを販売して、赤字を減らしている」という。

目指すは売上高100億円

復興特区で助成金が多かったとは言え、当時の年商以上の投資を行い、事業所単体で赤字。でも、浅野社長は元気いっぱいだ。「いま?もうね、絶好調ですよ。実は『スーパーゼロ』工場が竣工後から赤字に転落して、コロナ前に23億円あった売上高は24年10月期に18億円にまで落ち込み、3期連続の赤字になった。24年には体調も崩して、『会社も自分も、もう駄目だ』と何度も思った。でも25年10月期は売上高が3割近く増え、1000万円だが黒字に転換し、26年は売上高30億円の突破はほぼ確実だ」。

浅野撚糸が「絶好調」なのは、コロナ禍の最中に水面下で進めてきた特殊撚糸「スーパーゼロ」の用途開拓が成功したからだ。主力のタオルに加え、デニムやカットソー、ニット生地などへと広がっているからだ。「コロナ禍でタオル需要が壊滅し、冠婚葬祭が減少したため、現在もタオルの市場は復活していない。その代わりに、デニムだとカイハラ、カットソー/ニットだとドイツのズドールなど、世界の有力な紡織企業からの大型受注を次々と獲得している」(浅野社長)という。ジーンズはすでに「ヤヌーク」など一部の目利きブランドが製品化しており、タオルをフワフワにする無撚糸技術は見た目以上のはき心地の良さを付加するためプロの間での評価は高かった。「このまま行けば来年以降には設備の新設が必要になるし、実はM&Aも検討している。双葉町も見た感じはまだ何も無いように見えるでしょうけど、今年以降どんどん新しい施設や工場が建ち始めると聞いている。そうなれば物販とカフェの売り上げも増える。最近、新たな目標として年商100億円を目指すことに決めた」という。

斜陽の繊維産業が生み出した「異色の経営者」

そう語る浅野社長の話を聞いていると、いまは建物もまばらな周辺の土地が今年来年には工場だらけになりそうな気がしてくるから不思議だ。実際に空き地に見えても「大半はすでに事業所用地として売却済み」(関係者)という声もある。

1969年創業の浅野撚糸だが、企業として急成長したのは、実はこの20年ほどの話だ。そもそも「撚糸」という工程自体、あまりスポットライトが当たることのない分野である。テキスタイル生産は大きく綿(ワタ)から糸を作る「紡績」、糸を織る「織布」、あるいは編み上げる「ニッティング」という2つの工程に分かれる。撚糸は、「紡績」と「織り/編み」の間に行う、糸加工の1工程に過ぎない。糸の強度を上げたり、異なる糸をミックスして機能を付与する重要な工程ではあるものの、花形は紡績や織り/編みであり、野球の打順に例えると、先頭打者や中軸が紡績や織り/編みで、撚糸は2番バッターのようにいぶし銀の存在だと言える。

そもそも繊維産業自体が斜陽なのに、さらにその下請けの撚糸。こうした状況を打破すべく七転八倒を繰り広げてきた経験が、「世界一の撚糸職人」を自称する浅野社長のユニークな経営スタイルとキャラクターを作り上げた。デニム生地開発のスペシャリストで30年の付き合いのある山田善紀Y's Deco(ワイズデコ)社長は「撚糸は、機械の進化はほぼ止まっている『枯れた技術』だが、だからこそ職人的な技術とクリエイティブな発想が生きる分野で、生地開発という分野で見れば、ものすごい可能性があった。それを体現したのが浅野社長だった」と指摘する。

浅野撚糸の商品開発のパートナーとして、欧米のラグジュアリー市場の開拓をサポートしてきたテキスタイルデザイナーでクリエイティブ・ディレクターの梶原加奈子さんも「テキスタイルでも製品でも、勘所や本質を見抜く力がものすごく高く、しかも思い切った投資や開発をやり切る胆力もある。テキスタイル開発はうまく行かないときのほうが多いし、失敗ばかりなので、そうなると”無駄”として途中で切り上げられることも多い。なのに浅野社長は、苦しいときでも、とにかく前向きで諦めることもない。用途開拓が成功したのは、そうした浅野社長の『クリエイティブで前向きな職人気質』が大きい」。

地元出身の社員が語る「復興」

「地元に残って少しでも復興に貢献したかった」ーー「スーパーゼロ」工場の入社の動機をこう語るのは、双葉町の隣町である南相馬市出身で地元の高校を卒業後、24年に新卒で入社した岡田綾菜さん(20)だ。「スーパーゼロ」工場では、22人が働く。半分の12人が工場で、残りが物販やカフェ、来客のアテンドを行う。岡田さんは物販やアテンドなどを担うコーディネーターだ。

メディアへの露出も多く鳴り物入りで事業活動を行う「スーパーゼロ」工場だが、実は就職先としてはかなりシビアな目で見られている。岡田さんは、隣町の南相馬市で生まれ育ち、震災直後は1年ほど避難生活を強いられたものの、その後は地元に戻り、小学校から中学校、高校まで南相馬市の学校を卒業した。「地元の同級生たちは9割が県外に出る。地元に残って就職する私は少数派。条件だけならここより良い企業は他にあったし、就職先の選択肢は正直困らないほどたくさんあった」という。河合所長も「ここに縁もゆかりも無い当社が就職先として選んでもらうためには、就職説明会や地元の商工会議所などとのつながりを使った地道な活動を続ける必要がある。それでも最初はなかなか来てもらえずに苦労した」と振り返る。

それでも岡田さんが就職先に「スーパーゼロ工場」を選んだのは、「やりがいがありそうだったから」。「工場内での製造だけ、接客だけ、じゃなくていろんなことがしたいことがあったんです。『スーパーゼロ』だけが募集要項に接客、企画・運営、製造と3つともできるって書いてあって、『あ、これだ!』って」。入社前に「いろいろやりたい」と思っていた岡田さんの希望は、叶えられた。岡田さんは、毎日福島県の内外から来る団体の研修客や観光客のアテンドを行っているほか、物販の販売も行う。地元の双葉町役場や商工会議所による復興関連のワークショップやイベントの窓口として社外での活動にも参加している。

そんな岡田さんに最後、「復興とは何でしょう?」と尋ねると、笑顔でこんな答えが返ってきた。「世界中の人から憧れられる存在になることです。接客をしていると『大変だね』とか『頑張ってるね』とか言われることがあるんです。そうおっしゃってくれる方に全く悪気がないことは重々理解しているのですが、私はそのたびに同情とか哀れみみたいなことを感じちゃうんです。そうじゃない。私の大好きなこの双葉も、(出身地の)南相馬も、世界に誇れる場所だと大きな声で言いたい。いつか『そんなところで働けていいなあ、羨ましいなあ』って思ってもらいたい。それが私の復興です」。

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「ミュウミュウ」2026-27年秋冬コレクション

「ミュウミュウ(MIU MIU)」が2026-27年秋冬コレクションを発表した。

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ゴールドウインが渋谷スペイン坂「ノンレクチャー ブックス/アーツ」内に常設スペースを設置 選書棚や展示など

アウトドア・スポーツアパレルメーカーのゴールドウインは、ノンレクチャーが3月13日に渋谷パルコ運営のゼロゲート(ZERO GATE)にオープンする「ノンレクチャー ブックス/アーツ」内に、常設スペースを設ける。

都市にいながら自然や身体への感度を見つめ直す時間

本常設スペースでは、展示や選書を通じて、本、アート、写真、哲学など他分野を横断し、未来のあり方を探求する。

ゴールドウイン選書棚には、自然・素材・身体・思想を横断する写真集、エッセイ、思想書、実践的ガイドなどを中心に、約100冊の選書をそろえる。メンズとウィメンズの機能的な衣服で構成されたプラットフォーム“ゴールドウイン0”関連刊行物や協働作家の作品も含む。

また、ゴールドウインのフィロソフィーを表現した展示も行う。本展では、“自然との距離”や“日本の美意識”などをテーマに、年間を通してさまざまな企画を用意する。第1弾として、3月13日〜4月12日に柏田テツヲの写真展を開催する。本展では、“バウンダリー(BOUNDARY)”をというタイトルのもと再構成し、“人と自然の境界はどこにあるのか”や“人と自然は交わることができるのか”などを探求する。

◾️常設スペース概要
オープン日:3月13日
営業時間:11:00〜21:00
場所:渋谷ゼロゲート地下1階「ノンレクチャー ブックス/アーツ」内
住所:東京都渋谷区宇田川町16-9
>店舗ウエブサイト

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JSFAが環境省に政策提言 「専ら物」基準の統一と海外リユース適正化を求める

一般社団法人ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)は3月6日、環境省 環境再生・資源循環局長に宛てた「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン及びリユース等の促進に関するロードマップに対する提言書」を公表した。正会員19社・賛助会員53社が加盟する同アライアンスがは「ファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」をビジョンに掲げており、環境省の検討会で示されていた2つの素案に対し、現場の実態を踏まえた具体的な意見を取りまとめたものとなる。

繊維製品における資源循環ロードマップ(令和6年6月策定)で掲げられたKPIは、「家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比25%削減する」というもの。この目標達成に向け、「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(素案)」と「リユース等の促進に関するロードマップ(素案)」が環境省の各検討会でそれぞれ公表されていた。JSFAはこれらを受け、3項目・計5点の提言を発表した。

回収品の質向上と回収量増加のための官民連携

提言の核心のひとつが、衣類回収における「専ら物」判断の統一だ。廃棄物処理法上、古着・故繊維が「専ら物(もっぱらぶつ)」に該当すれば一般廃棄物の規制対象外となり、民間業者が自治体の許可なく回収・運搬できる。しかし現状は基礎自治体ごとに判断が異なり、このばらつきが故繊維を資源として循環させる事業の拡大を妨げているとJSFAは指摘する。

提言では、「専ら物」と判断されるための故繊維・回収・選別方法の要件を明示し、各基礎自治体に通知するよう求めた。また、行政回収された資源物が排出後に汚染されて廃棄を余儀なくされるケースを防ぐため、回収環境を含めた回収方法の改善基準の策定と、自治体単独での対応が難しい場合の民間回収業者との連携推進も求めている。

さらに、自治体が民間の回収業者を選定する際の基準整備も提言した。具体的には、①不法投棄や押し買いなど必ず防ぐべき事案を排除する「必須基準」と、②回収・選別・再流通の各段階で資源循環に貢献する取り組みを評価する「加点基準」の二軸での検討を提案。参入障壁だけが高まり業界の負担が過度になる事態を避けつつ、優良事業者を育てる仕組みの設計を求めた。

不適正な海外リユースの是正と適正な海外リユースの推進

国内での資源循環完結が理想としながらも、国内リユース市場と資源循環の仕組みが未成熟な現状では、海外輸出も含めた資源循環が現実的な施策だとJSFAは認める。一方で近年、海外にリユース品として輸出された衣類が現地で不法投棄されるケースが問題視されており、適正輸出と不適正輸出の線引きが急務となっている。

提言では、輸入国の需要に合わない物を送ったり、リユースを妨げる異物を同梱したりする不適正輸出を防ぐための要件具体化と実態調査を要求。具体的な調査項目として、受け入れ国における再販売の仕組みの有無、中古衣類販売店での日本からの輸出品の取り扱い状況、現地事業者による日本産輸出品への評価などを挙げた。調査結果を踏まえ、望ましい回収・選別方法(国内外の選別場所や選別基準の定め方など)の整理も提案している。

資源循環行動促進支援

リユース・リサイクル事業者が自社の温室効果ガス排出量を算定しようとしても、バウンダリー設計等の統一ルールが存在しないため、環境負荷削減効果を数値で示すことが困難な状態が続いている。JSFAは、国内外の事例調査と国際整合性を踏まえた統一ルール策定を求めた。算定ルールが整備されれば、アパレルブランドがリセールに取り組むインセンティブとなるほか、リサイクル素材使用の動機づけにもつながると期待されている。

また、消費者向けの情報提供強化も求めた。資源循環への関心の高まりとともに多様な回収サービスや環境配慮素材製品が市場に溢れる中、消費者の期待と実態の乖離を防ぐ認知向上策が必要だとした。官民連携によるキャンペーン展開に加え、エコポイント制度のような経済的インセンティブの設置も引き続き検討するよう提言している。
70社が加盟、産業横断で政策を動かす

EUが拡大生産者責任(EPR)制度の導入を進め、繊維廃棄規制が世界的に強化される流れの中、日本でも行政と産業界が連携した実効性ある仕組みづくりが急がれる。今回の提言が政策の具体化を後押しする力になるか、今後の環境省の動向が注目される。

ジャパンサステナブルファッションアライアンス加盟企業(70社/2026年2月時点)

アーバンリサーチ、アンドエスティHD、ECOMMIT、倉敷紡績、クラレトレーディング、ゴールドウイン、ザ・ウールマーク・カンパニー、JEPLAN、スタイレム瀧定大阪、セイコーエプソン、タキヒヨー、帝人フロンティア、東レ、豊島、丸紅、ヤギ、ユナイテッドアローズ、YKK、AOKI、AOKIホールディングス、旭化成アドバンス、アシックス、タオル美術館グループ 一広、伊藤忠商事、エコリング、SGSジャパン、MNインターファッション、買取王国、カケンテストセンター、キャブ、清原、crossDs japan、グローブライド、グンゼ、コーベル、コニカミノルタ、サザビーリーグ、CFCL、シキボウ、島精機製作所、CHARGEURS PCC Asia Limited、鈴木商会、Spiber、ZOZO、瀧定名古屋、田村駒、TSIホールディングス、東京吉岡、東豊インベスト、日東紡アドバンテックス、日本化薬、日本生活協同組合連合会、日本繊維製品品質技術センター、長谷虎紡績、バリュエンスホールディングス、V&A Japan、福岡ニット、福助、フクル、フジックス、Free Standard、bluesign technologies ag、ブックオフグループホールディングス、ボーケン品質評価機構、メンケン品質検査協会、モリリン、ヤマダヤ、郵船ロジスティクス、リファインバース、良品計画

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JSFAが環境省に政策提言 「専ら物」基準の統一と海外リユース適正化を求める

一般社団法人ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)は3月6日、環境省 環境再生・資源循環局長に宛てた「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン及びリユース等の促進に関するロードマップに対する提言書」を公表した。正会員19社・賛助会員53社が加盟する同アライアンスがは「ファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」をビジョンに掲げており、環境省の検討会で示されていた2つの素案に対し、現場の実態を踏まえた具体的な意見を取りまとめたものとなる。

繊維製品における資源循環ロードマップ(令和6年6月策定)で掲げられたKPIは、「家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比25%削減する」というもの。この目標達成に向け、「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(素案)」と「リユース等の促進に関するロードマップ(素案)」が環境省の各検討会でそれぞれ公表されていた。JSFAはこれらを受け、3項目・計5点の提言を発表した。

回収品の質向上と回収量増加のための官民連携

提言の核心のひとつが、衣類回収における「専ら物」判断の統一だ。廃棄物処理法上、古着・故繊維が「専ら物(もっぱらぶつ)」に該当すれば一般廃棄物の規制対象外となり、民間業者が自治体の許可なく回収・運搬できる。しかし現状は基礎自治体ごとに判断が異なり、このばらつきが故繊維を資源として循環させる事業の拡大を妨げているとJSFAは指摘する。

提言では、「専ら物」と判断されるための故繊維・回収・選別方法の要件を明示し、各基礎自治体に通知するよう求めた。また、行政回収された資源物が排出後に汚染されて廃棄を余儀なくされるケースを防ぐため、回収環境を含めた回収方法の改善基準の策定と、自治体単独での対応が難しい場合の民間回収業者との連携推進も求めている。

さらに、自治体が民間の回収業者を選定する際の基準整備も提言した。具体的には、①不法投棄や押し買いなど必ず防ぐべき事案を排除する「必須基準」と、②回収・選別・再流通の各段階で資源循環に貢献する取り組みを評価する「加点基準」の二軸での検討を提案。参入障壁だけが高まり業界の負担が過度になる事態を避けつつ、優良事業者を育てる仕組みの設計を求めた。

不適正な海外リユースの是正と適正な海外リユースの推進

国内での資源循環完結が理想としながらも、国内リユース市場と資源循環の仕組みが未成熟な現状では、海外輸出も含めた資源循環が現実的な施策だとJSFAは認める。一方で近年、海外にリユース品として輸出された衣類が現地で不法投棄されるケースが問題視されており、適正輸出と不適正輸出の線引きが急務となっている。

提言では、輸入国の需要に合わない物を送ったり、リユースを妨げる異物を同梱したりする不適正輸出を防ぐための要件具体化と実態調査を要求。具体的な調査項目として、受け入れ国における再販売の仕組みの有無、中古衣類販売店での日本からの輸出品の取り扱い状況、現地事業者による日本産輸出品への評価などを挙げた。調査結果を踏まえ、望ましい回収・選別方法(国内外の選別場所や選別基準の定め方など)の整理も提案している。

資源循環行動促進支援

リユース・リサイクル事業者が自社の温室効果ガス排出量を算定しようとしても、バウンダリー設計等の統一ルールが存在しないため、環境負荷削減効果を数値で示すことが困難な状態が続いている。JSFAは、国内外の事例調査と国際整合性を踏まえた統一ルール策定を求めた。算定ルールが整備されれば、アパレルブランドがリセールに取り組むインセンティブとなるほか、リサイクル素材使用の動機づけにもつながると期待されている。

また、消費者向けの情報提供強化も求めた。資源循環への関心の高まりとともに多様な回収サービスや環境配慮素材製品が市場に溢れる中、消費者の期待と実態の乖離を防ぐ認知向上策が必要だとした。官民連携によるキャンペーン展開に加え、エコポイント制度のような経済的インセンティブの設置も引き続き検討するよう提言している。
70社が加盟、産業横断で政策を動かす

EUが拡大生産者責任(EPR)制度の導入を進め、繊維廃棄規制が世界的に強化される流れの中、日本でも行政と産業界が連携した実効性ある仕組みづくりが急がれる。今回の提言が政策の具体化を後押しする力になるか、今後の環境省の動向が注目される。

ジャパンサステナブルファッションアライアンス加盟企業(70社/2026年2月時点)

アーバンリサーチ、アンドエスティHD、ECOMMIT、倉敷紡績、クラレトレーディング、ゴールドウイン、ザ・ウールマーク・カンパニー、JEPLAN、スタイレム瀧定大阪、セイコーエプソン、タキヒヨー、帝人フロンティア、東レ、豊島、丸紅、ヤギ、ユナイテッドアローズ、YKK、AOKI、AOKIホールディングス、旭化成アドバンス、アシックス、タオル美術館グループ 一広、伊藤忠商事、エコリング、SGSジャパン、MNインターファッション、買取王国、カケンテストセンター、キャブ、清原、crossDs japan、グローブライド、グンゼ、コーベル、コニカミノルタ、サザビーリーグ、CFCL、シキボウ、島精機製作所、CHARGEURS PCC Asia Limited、鈴木商会、Spiber、ZOZO、瀧定名古屋、田村駒、TSIホールディングス、東京吉岡、東豊インベスト、日東紡アドバンテックス、日本化薬、日本生活協同組合連合会、日本繊維製品品質技術センター、長谷虎紡績、バリュエンスホールディングス、V&A Japan、福岡ニット、福助、フクル、フジックス、Free Standard、bluesign technologies ag、ブックオフグループホールディングス、ボーケン品質評価機構、メンケン品質検査協会、モリリン、ヤマダヤ、郵船ロジスティクス、リファインバース、良品計画

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