帝国劇場 × カリモク家具 ×「ゾゾヴィラ」 廃棄となる客席などを活用したリメイク家具を販売予定

建築家・谷口吉郎の設計により1966年に竣工し、半世紀以上にわたって多くの人々に親しまれてきた“2代目”の現・帝国劇場は、2月末から一時休館となる。その帝国劇場は解体の際に生まれるさまざまなマテリアルを活用し、建物としての魅力を再発見するとともに新たなステージへ継承するプロジェクト「帝劇劇場 レガシー コレクション」を始動し、その第1弾アイテムを「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」で26年春ごろから販売する。

販売を予定しているのは、解体時に廃棄となる劇場の客席、ロビーを彩る照明、手すりの木部、柱の石などのマテリアルを活用するアイテム。製造はカリモク家具が担当し、帝国劇場の温もりを家庭でも感じられるようなリメイク家具や小物などの展開を予定している。今後の情報は、帝国劇場クロージング特設ページまたは「ゾゾヴィラ」の公式インスタグラムで要確認。

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ファッション研究者と考えるサステナビリティと消費  藤嶋陽子立命館大学准教授

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、藤嶋陽子立命館大学社会学部准教授です。ファッション研究の視点からサステナビリティを語ってもらいます。日頃、学生たちと対話をする中で「ファッション消費のあり方が変わってきた」と藤嶋さんが思う、その意味とは?



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「アニエスベー」も使った廃棄漁網のリサイクルナイロン「ミューロン」とは? 開発者に聞く課題や夢

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

前回に引き続きゲストには、アパレル資材を扱う商社モリトアパレルの船崎康洋サステナブルデザイン室室長代理です。モリトアパレルが開発した漁網を原料にしたリサイクルナイロン「ミューロン」とは。開発背景や「ミューロン」を通して実現したい夢を語ってもらいました。



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「ディーゼル」グレン・マーティンスとkemioが語る熱狂の生み出し方

グレン・マーティンス=クリエイティブ・ディレクターが率いる「ディーゼル(DIESEL)」は、若者を熱狂させるファッション性を維持しつつ、責任あるビジネスの転換をアグレッシブに進めている。例えば使用するデニムの50%以上は、オーガニックやリジェネラティブ、リサイクルに置き換え、化学薬品や水の使用量を削減した加工技術にも投資する。2024年9月にミラノで開催した24-25年秋冬コレクションでは、デニムの循環性をテーマに、「ディーゼル」が描く未来に対するステートメントを発信した。同ショーに込めた思いを出発点にマーティンス=クリエイティブ・ディレクターのサステナビリティに対する考え方を聞いた。セッションのパートナーには、若い世代の心を動かすという共通点を持つ、クリエイターのkemioを迎えた。(この対談は2024年12月13日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」から抜粋したものです)

“デニムの惑星“を表現したショーに込めた思い

木村和花「WWDJAPAN」記者(以下、WWD):9月にミラノで開催された「ディーゼル」の2025年春夏コレクションのショー動画をご覧いただきました。kemioさん、いかがでしたか?

kemio:衝撃的でしたね。「ディーゼル」と言えば、ファッションもそうですが、ステージのプロダクションや音楽、インビテーション、アフターパーティーなど、さまざまな角度からファッションショーの枠組みを越えるエネルギーをいつも感じます。今回は「ディーゼル」のDNAでもあるデニムを大量に敷き詰めたランウエイで、その上をモデルたちが力強く歩くという演出から未来に対しての強いステートメントを感じました。

WWD:グレンにあのショーに込めた思いを聞いてみましょう。

グレン・マーティンス:「ディーゼル」はファッションブランドであると同時にライフスタイルブランドでもあります。つまり、ファッションの美しさを追求する以上に、私たちが掲げる“サクセスフルリビング“、くだらないことは抜きにして人生を全力で楽しもうという精神性を体現しています。「ディーゼル」では、典型的なショーはしません。大事にしているのは、人々を巻き込むこと。例えば過去には、約1万人の一般客を招いたレイブパーティーをしたこともありますし、会場にコンドームの山を作って無料で配布したこともあります。

私が「ディーゼル」に加わって4年目を迎えた今回は、ブランドのコアであるデニムを中心に構成しました。デニムは、国やジェンダー、貧富の差を超えて多くの人々が触れているという意味で最も民主的な素材とも言えます。一方で生産工程では、多くの水や化学薬品を使用する負の側面もあります。実験的なアプローチでみんなが驚く魔法のようなデニム製品を生み出してきた「ディーゼル」は今、未来にあるべき美しいデニムの姿を考え、日々技術革新に取り組んでいます。今回のショーは、その新しいデニムの姿を表現しました。

会場は工場から集めた1万5000kgデニムの端切れを床に敷き詰め、“デニムの惑星“のようなものを誕生させました。その上をモデルが歩く光景を通して、デニムとは何か、循環の可能性などについてディスカッションするきっかけになってほしいという思いを込めたんです。

WWD:ショーの後には、観客がデニムの山に飛び込んだり、自撮りをしたりと、しばらく興奮冷めやらぬといった状態でしたね。サステナビリティの話題はともするとシリアスになりすぎて、楽しいものに変換することがすごく難しい。グレンがサステナビリティをテーマに据えながらあの規模で多く人を熱狂させていた点に感動しました。そうしたショー後の熱狂も予想していたのでしょうか?

マーティンス:全くしていませんでした。私たちのショー会場はいつも熱気に溢れていてさまざまな予想外のインタラクションが発生します。2年前はショー開始前、準備を終えてみんながバックステージでスタンバイしているにも関わらず、観客が会場で盛り上がってしまい開始予定時刻になってもなかなかショーが始められなかったんです。その時は、みんなを席に座らせるために仕方なく会場の照明を全て落としました。急に真っ暗になったのでみんな驚いて叫んでいましたよ(笑)。今回の“デニムの惑星“でもみんなが本当に楽しそうにしていた光景が美しかった。「ディーゼル」は人々が楽しむためのプラットフォームです。たとえランウエイショーであってもそうなのだということが理解いただけたと思います。

デニムの50%以上を環境配慮型に切り替え「楽しみながらより良い未来を考える」

WWD:「ディーゼル」はさまざまな角度からサステナビリティに取り組んでいます。素材面では、デニムに使用するコットンの半分以上をコンベンショナルコットンからオーガニックやリサイクル、リジェネラティブなどに切り替えています。kemioさんは、こうした取り組みを知っていましたか?

kemio:「ディーゼル」のブランドイメージは、セクシーでホット。広告を通して多様性を訴えるなど、社会に対する大事なメッセージを発信していることは知っていましたが、環境面でのサステナビリティにここまで力を入れていることは正直知りませんでした。いつも店に行くと、まずかっこいいデザインに引かれて商品を手に取り、あとから環境配慮素材で作られているんだと知ることが多い。サステナビリティに詳しくないカスタマーに対しても響く、すごく自然なアプローチだと思います。

マーティンス:サステナビリティはつまらないものである必要はありません。私が「ディーゼル」に入った4年前は、リジェネラティブやオーガニック、リサイクルコットンの割合は3%程度でしたが、現在は50%を超えています。半分がよりクリーンな素材に置き換わっているということ。もちろん今も完璧ではありませんが、毎シーズン改善を重ねています。

ファッションに限らず多くのブランドが、全ての製品において自分の子供や孫の世代のために、という視点を持つことが重要でこれが責任あるビジネス、または生き方の核だと思います。デニム以外にも「ディーゼル」の水着でも、同じことが言えます。水着はストレッチや速乾性が必要なので一般的にポリエステルが使われますが、現在は全てリサイクルポリエステルに切り替えました。定番のジャージー製品にはオーガニックコットンを採用しています。素材を未来のためにより良いものに切り替えていくことは、セクシーであること、自由奔放でロックンロールなライフスタイルを送ることを妨げることにはなりません。むしろ、楽しみながらも未来を考えることが私たちの根本的な価値観です。この価値観を毎シーズン、少しずつ実現していこうとしています。

kemio:グレンはクリエイティブ・ディレクターに就任する以前は「ディーゼル」にどんな印象を持っていましたか?

マーティンス:私は昔から「ディーゼル」の大ファンでした。故郷であるベルギーのブルージュという小さな街ですら、「ディーゼル」は人気でした。15〜16歳のころ、バーで皿洗いのアルバイトをしていたのですが、「ディーゼル」のパンツを買うことを目標にお金を貯めていました。当時の私にとっては決して安い買い物ではありませんでしたが、あれが私が人生で初めて意思を持ってした買い物でしたね。

20年に「ディーゼル」に入ると決めた理由の一つは、このようなグローバルブランドであれば、より多くの人と会話ができるだろうと思ったこと。環境の話はもちろん、マイノリティーやセクシャリティーといった社会のサステビリティについても、人々の世の中に対する見方をより良いものに変えるために多くの人に語りかけたかったんです。

「ディーゼル」に加わった時、すでに“レスポンシブル・リビング“と名付けられた環境戦略が走りはじめていました。私も比較的初期の段階から参加することができました。私がしたことはその戦略に“燃料“を加えたことでしょうか。試行錯誤しましたが結果的に、4年でここまでの成果を出せたことを誇りに思っています。

WWD:デザイン工程では具体的にどのようにサステナビリティを意識していますか?

マーティンス:さまざまなレベルがあると思います。例えばランウエイで見せるショーピースは、加工やペインティングなどの表現に重きを置きます。現実的にはリサイクルは難しいですが、生産量が少ないのでより柔軟性を持って考えるようにしています。一方で世界展開する商品については、ケミカルウォッシュや過度な加工をしないことを重要視しています。激しい加工表現はレーザーやオゾンウォッシュなどの技術を使うことで、強力な化学薬品を使わず、水もほとんど使用しない方法を取り入れています。この4年間で、低環境負荷でクリエイティブなデザインを実現するためのデータベースを構築することができました。私には最高のデニムチームがいます。私は基準を提示し、チームがそれを商品に落とし込みますが、多くの場合深く議論する必要もありません。というのも、低環境負荷を前提としてクリエイティブを探求することが私たちのアプローチに組み込まれているからです。

WWD:「ディーゼル」は製品製造以外でも、販売後の製品回収プログラムやリメイクプロジェクトなどさまざまな取り組みを通して循環型経済を推進しています。そうした「ディーゼル」のサステナビリティに対する包括的な考え方を知ることができるのが、動画シリーズ「Behind the Denim(デニムの裏側)」です。ここでリジェネラティブ・コットンを題材にした回をご覧ください。

WWD:kemioさんはご覧になっていかがですか?

kemio:サステナビリティの話題は、詳しくないと関わらない方がいいんじゃないかと距離を置いてしまうこともあると思います。そんな人にとっても優しく寄り添い、コミカルに楽しく学ぶことができる内容ですね。リジェネラティブ・コットンは最近よく耳にするワードですが、土からあれだけの工夫をして今僕が着用しているデニムができていることには驚きました。

WWD:「Behind the Denim」の第1話にはグレンも登場します。その中で印象的だったのがグレンが「サステナブルな商品なんていうものは存在しない」と話し、“レスポンシブル(責任ある)“という言葉に置き換えてインタビューに答えているシーンでした。その意図を説明してもらえますか?

マーティンス:私たちが20年1月にスタートしたサステナビリティ戦略のタイトルは、「レスポンシブル・リビング」です。ここでは素材の原材料のほか、工場やサプライヤー、輸送方法など事業に関わる全てについて触れています。服そのものだけでなく、それを取り巻く全ての項目において、責任ある選択をしていくことを目指しているからです。kemioさんは「ディーゼル」に対してどんな印象を持っていますか?

kemio:今の時代、買い物は投票であるという意識が広まっているように感じます。自分が信じているものと一貫性があるからその服を買う——そんな買い物の仕方が当たり前になってきている。その中で「ディーゼル」を選ぶ行為は、自分の内側から何か熱いエネルギーが込み上げてくるような気持ちになります。

マーティンス:いつもエンパワーリングなkemioさんにそのように感じてもらえていることは光栄です。

WWD:サステナビリティは多くの人の行動変容が必要です。そのためには、人の心を動かす何かを媒介して伝えることが必要だと思います。サステナビリティとクールでセクシーは両立するのでしょうか?

マーティンス:サステナビリティは、日々の言葉や行動に根付くべきもので自己表現を妨げるものではありません。みんなが心の中に持つべき大事な価値観の1つなんだと思います。

「人は情熱を持って取り組んでいる人を応援する」

WWD:最後にこのセッションのテーマである「熱狂の生み出し方」について、2人にお伺いします。多くの人が2人のクリエイションに熱狂してきました。その理由はなんだと思いますか?

kemio:事前にこの質問をいただいたんですが、正直自分じゃ分からなくてChatGPTに聞いちゃいました(笑)。いわく、自分のユニークなバックグラウンドがいろんな人に興味を持ってもらうきっかけになっていると。コピー&ペーストですが、人は情熱を持って取り組んでいる姿を見ると応援したくなるそうです。確かにそういう気持ちは皆さんあるのではないでしょうか。僕自身、どうやったらみんなが熱狂してくれるのか計算できるタイプではないので意図的に何かをやるというよりは、自分に対して誠実に信念を持って続けることで必ず誰かが耳を傾けてくれたり、協力してくれたりするのだと信じています。

マーティンス:おっしゃる通りだと思います。だからこんなに「ディーゼル」が似合うわけですね。大胆であること、偽らないこと、自分らしく生きること、だと思います。常に人生を楽しんで、他者を尊重すること。それが「ディーゼル」が熱狂を生み出すことができる理由だと思います。

来場者とのQ&Aセッション

WWD:まず、kemioさんからどうぞ。

kemio:最近、AI技術がどんどん進化しています。今後ファッションにおいてはどのような影響をもたらすと思うかグレンに聞いてみたいです。

マーティンス:個人的にはTikTokも使えないくらいデジタルにはうといんです。ただ、まずはこの進歩を受け入れ、クリエイションにも組み込んでいかなければいけないと思っています。

質問者:私は出版社で10代向けのコミュニティーメディアを運営していて、若者にどうサステナビリティを自分ごと化してもらうかに関心があります。ブランドとしてカスタマーをどう巻き込んでサステナビリティにアプローチしていきますか?デニムに関して言えば、カスタマーが製品を洗濯し過ぎてしまうといった問題があると思います。また、kemioさんには、実践してみたい“ファン“なサステナビリティアクションはありますか?

マーティンス:私はファッションを次世代に教える立場でもありますが、実は若い世代の方が、環境・社会的意識が高く生活の中で実践していることが多いように思います。「ディーゼル」がZ世代に人気の理由の1つは、透明性だと思います。取り組みや考え方をクリアに発信することが魅力になっています。サステナブルな商品についても、少しずつでも説明をしようと努力をする。長々としたスピーチにしてしまっては、クールさやエッジィさが失われてしまう。冒頭で話したように、日常会話のトピックとしてコミュニケーションをとることが大事なのではないでしょうか。

デニムの洗濯については、一人一人がベストなバランスを見つけると良いですね。デニムは年月を経過することでより美しくなるということをもっと若い世代に理解してほしい。自分でダメージ加工をしてもいいし、パッチをつけて楽しんでもいい。自分らしくデニムに命を吹き込んでいる人たちを見るとうれしくなりますよ。問題なのはむしろ、ファストファッションを楽しんできたミレニアル世代。意識の変化が必要なのは、僕らの世代の方だと思います。

kemio:僕はいろいろな社会問題に関心を持つ入り口はなんでもいいと思います。よく分からないから抵抗を感じる瞬間も多いと思いますが、まずは関心を持ってみる。僕はサステナビリティのエキスパートではないので今回、ここに参加させていただくことを悩みました。ただここに立つことで、自分をきっかけに興味を持ってくれる人がいるかもしれない。きっかけ作りには貢献できると思って参加を決めました。きっかけはなんでもいいからスタートしてみる、が大事だと思います。

WWD:お時間になりました。本日はありがとうございました。

PROFILE: グレン・マーティンス/「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター

グレン・マーティンス/「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: 1983年ベルギー・ブルージュ生まれ。アントワープ王立芸術学院を首席で卒業後、「ジャンポール・ゴルティエ」でキャリアをスタート。2012年には自身の名を冠したウィメンズブランドをパリ・ファッション・ウイークで発表。13年には「Y/プロジェクト」のクリエイティブ・ディレクターに就任し、11年間同職を務める。17年には「ANDAMファッション・アワード」のグランプリを受賞した。「ディーゼル」とは18年にカプセルコレクション「ディーゼルレッドタグ」プロジェクトで協業。その後20年10月から「ディーゼル」のクリエイティブ・ディレクターを務める。英「ビジネス・オブ・ファッション(以下、BoF)」が、世界を代表するファッション業界人に送る「BoF500」2017年版にも選出された PHOTO:Arnaud Lajeunie @ Mini Title

PROFILE: kemio/クリエイター、モデル

kemio/クリエイター、モデル
PROFILE: (けみお)1995年10月16日生まれ。YouTube、Instagram、X(旧Twitter)などを含め、フォロワーは約600万人を超える。高校時代に動画アプリ・Vineで発信した投稿で注目を集め、2016年末に生活拠点をアメリカへ。女子中高生はもちろん、近年では大人からの支持も厚く、クリエイターとして大人気に。卓越したワードセンスで繰り出す「あげみざわ」などの独特な言葉も「けみお語」として親しまれ、若い世代に浸透中。2019年4月に発売した「ウチら棺桶まで永遠のランウェイ」は、発売から3ヶ月で15万部を超えるベストセラー、「GQ MEN OF THE YEAR 2019」では、Youth Infulencer of the Yearを受賞。22年4月28日には、新作エッセイ「ウチらメンタル衛生きちんと守ってかないと普通に土還りそう」が刊行。流行を生み出し続ける世界規模のスターとして、クリエイター、モデル、歌手などとして多岐の分野で活躍している PHOTO:TAMEKI OSHIRO

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バレンシアガのサステナビリティ戦略 デザインチームとの関係や注目の革新技術を語る

左:アニカ・モーア・ストーファルト/ バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクター

スウェーデン出身。ヨーテボリ大学ビジネス・経済・法学部で経営学の修士号を取得。卒業後大手デジタルエージェンシーでキャリアをスタートさせ、さまざまな業界のアカウントを担当。その後、ファッションスクールのアンスティチュ・フランセ・ドゥ・ラ・モード(IFM)で、繊維・ファッションマネジメントの修士号を取得し、ファッション業界に転身。2004 年にケリングに入社し、06 年からバレンシアガで 勤務している。19 年にバレンシアガのグローバル・サステナビリティ・ディレクターに就任し、CEO 直属の新しい部署を立ち上げ、現在に至る。

右:ジェラルディン・ヴァレジョ /ケリング サステナビリティ プログラム ディレクター

フランスのエコール・ポリテクニーク卒業後、カリフォルニア・スタンフォード大学で、環境および土木工学の修士号を取得。建設およびコンセッション事業の世界的企業である VINCI グループで11年、世界的な主要インフラプロジェクトに携わり、その後VINCI SA と VINCI Concessionsで持続可能な開発と科学的パートナーシップのマネージャーを務める。2013 年にケリングに入社。グループ全体のサステナビリティ戦略とプログラムの実施をサポートする責務を担っている。国際的な専門家チームを監督し、持続可能な調達や生物多様性の保全、環境負荷の低い生産に関わる革新的なアプローチの創出と戦略的パートナーシップの構築に重点を置き、傘下のラグジュアリーブランドをサポートしている。Entreprises pour l'Environnement (EpE)の生物多様性委員会の委員長であり、Climate Fund For Nature の専門家委員会のメンバーも務める。PHOTO:TAMEKI OSHIRO

バレンシアガ(BALENCIAGA)の担当者が日本では初めて、同ブランドのサステナビリティ戦略について、グループ親会社であるケリングのグローバル・サステナビリティ・ディレクターとともに語った。いわずとしれたサステナビリティ先進企業である両社が描く未来、乗り越えてきた課題、注目している革新素材や技術、そしてデムナ「バレンシアガ」クリエイティブ・ディレクター率いるデザインチームとの対話とは?(この対談は2024年12月13日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」から抜粋したものです)

バレンシアガで18年、さまざまな部署を経験しサステナビリティの責任者に

向千鶴WWDJAPANサステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):アニカさんのこれまでのキャリアを教えてください。

アニカ・モーア・ストーファルト=バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクター(以下、アニカ):私はスウェーデン出身で約25年前にパリに来ました。デジタルエージェンシーで働いていましたが、20年前にファッションの世界で自分を“リサイクル”しようと考え、フランスのモード研究所でファッションマネジメントの修士号を取得しました。バレンシアガでは18年ほど働いています。最初はサステナビリティの担当ではなく、小売、リテール、Eコマース、マーチャンダイジング、購買などを歴任してきました。サステナビリティを担当するようになったのは、この5年ほどです。サステナビリティの実践的な知識を得たいと考え、ケンブリッジ大学でサステナビリティの修士課程の一部を修了しました。

WWD:バレンシアガでの役割とは?

アニカ:サステナビリティ戦略の定義、リーダーシップ、実行を担当しており、その戦略を世界中のバリューチェーン全体の中で行っています。ご存知のように、私たちはケリングの一員ですから、非常に野心的な目標を掲げ、同時に私たちが活動するための強力なフレームワークもあります。もちろん、今日一緒に登壇しているジェラルディンやケリングのサステナビリティチームがガイダンスやツール、専門知識を提供してくれます。ケリングの方法論のひとつにEP&L(環境損益計算)という、環境損益を測定する手法があります。私たちは正しい優先順位に焦点を当て、具体的な進捗と結果をモニターできるように、私たちが行うすべてのことを測定しています。

WWD:バレンシアガでのサステナビリティの位置付けは?

アニカ:組織全体にとって非常に重要な6つのブランドバリューがあり、そのひとつが「サステナブルであること」です。それはバレンシアガで働く人たち一人ひとりがサステナビリティのアンバサダーであることを意味します。同時に年次業績評価において、全員が持続可能性に関する具体的な業績目標を持つことも意味します。目標は、もちろん各部門に特化したもので非常に実用的なものです。

また、組織内に“サステナブル・カルチャー”を築いています。例えば、各チームが持続可能な目標を達成できるよう、多くのトレーニングを実施しています。社内コミュニケーションも盛んです。ポットキャストを配信したり、“アウェアネス・セッション”といって意識向上、啓蒙活動をしたりしています。

WWD:個々人の年次業績評価における目標はトップダウンですか?それとも個々人が設定するのですか?

アニカ:持続可能性の目標にはさまざまな種類がありますが、弊社では私たちが達成したいゴールの中からチームメンバーに対して達成してほしい目標を伝えます。私の場合は持続可能性に全面的に取り組んでいるため、業績目標はすべてサステナビリティに関連しています。

科学的根拠に基づきサステナビリティの最前線に立ち続ける

WWD:ジェラルディンさんのケリングにおける役割を教えてください。

ジェラルディン・ヴァレジョ =ケリング サステナビリティ プログラム ディレクター
(以下、ジェラルディン):
私はグループレベルで仕事をしています。私の役割は、すべてのブランドと協力し、誠実で科学的根拠に基づいたアプローチを通じて、サステナビリティの最前線に立ち続けるようガイド、サポートすることです。私のチームとともに、環境やイノベーションの多くの分野でブランドを支援しています。私はもともと機械工学を学び、素材を専門としてきました。その経験から、特に革新的な素材に情熱を持っています。また、過去11年間はイノベーションの仕事をしてきました。

WWD:11年間もイノベーションに携わるとは、常に最新に触れて刺激的ですね。

ジェラルディン:とてもエキサイティングです。なぜなら会う方、会う方、皆前向きでポジティブなエネルギーに満ちています。そしてバランスをとる必要もあります。結果を出すには時間がかかりますから忍耐も必要です。

ケリングのサステナビリティ戦略の優先事項は生物多様性と

WWD:ケリングのサステナビリティの優先事項は何ですか?

ジェラルディン:2025年までに達成すべき明確な目標を掲げた戦略を策定しています。特に、グループ全体でのEP&L(環境損益計算)を元にした削減目標を掲げ、全生産に必要な面積の6倍に相当する土地の再生と保護に関連した目標を設定しています。この目標に向けて懸命に取り組んでいますが、2025年以降の次なるサステナビリティ戦略も準備を進めています。新しい目標やトピックにも取り組んでいます。持続可能性とは固定された定義ではなく、進化する概念です。そのため、毎年新しい課題に取り組む必要があります。

2つ目は先ほど述べたように、イノベーション。それをどうスケールアップするか、です。私たちは日本に大変関心を持っており、「ケリング・ジェネレーション・アワード」を通じて、イノベーションをさらに拡大するイノベーターや方法を模索しています。最終選考に11名が残り、最終結果は3月に発表する予定です。この取り組みはファッションだけでなく、ビューティの分野にも広がっています。私たちは、明日のファッションと持続可能なファッションを生み出すイノベーターを探しています。

WWD:欧州規制とはどのような関係を築いているのか。

ジェラルディン:最優先事項は“進化”する規制に関することです。なぜなら、今後2年から4年の間に世界中で約35のファッションをよりサステナブルにするための重要な規制が施行される予定で、我々はそれに対応する必要があります。大半はヨーロッパ発です。私たちは長年にわたり持続可能性に取り組んできました。そのため、準備は十分に整っています。しかし、これからはトレーサビリティや消費者への情報提供をさらに充実させ、真の意味での循環型社会の実現に向けた新たな枠組みに深く踏み込む必要があります。

WWD:バレンシアガにとってのサステナビリティのポイントは?

アニカ:私たちはケリングの傘下にありますので、ケリングの戦略に沿っていますが、進め方はブランドそれぞれです。私たちはアプローチのポイントとなる3つの要素を選びました。それらはすべて、ケリングの3つの柱である「ケア(配慮)」「コラボレート(協働)」「クリエイト(創造)」を軸に展開されています。

1つ目は「インパクト」です。これは、サプライチェーンのあらゆるレベルにおいて、私たちの活動が環境に与える影響を低減し、ポジティブなインパクトを与えることを目指します。たとえば、再生可能な原料調達を選ぶことで、土壌の健全性を改善する“リジェネラティブ”も含まれます。また、私たちはEP&Lを活用し、自分たちの影響を測定することを重視しています。

2つ目は「製品」です。製品の原材料や製造工程における基準に合致するようにたえまなく改善し、持続可能な素材やプロセスを明確に定義するケリング・グループのガイドラインに基づいて行動します。ジェラルディンが指摘したように、今後の規制ではトレーサビリティがますます重要になります。誰がどこでどのように生産したものなのかを追跡することです。また、私たちは製品が良好な労働条件の下で製造されていることを監視する必要もあります。

最後の柱は「システムの変革」です。私たちは産業にたくさんのプレイヤーがいることを理解した上で自社の直接的な活動だけではなくより大きな産業や社会の一部として活動しています。この文脈で、イノベーションが重要なテーマとなります。私たちは、新興企業やイノベーターを含むエコシステム全体で、さまざまなイノベーションに取り組んでいます。これは、ブランドのDNAにおいてイノベーションが重要な価値観のひとつだからです。

コラボレーションもまた、システム変革の一部です。私たちだけでこの大変革を進めることはできません。そのため、ブランドやグループ内で共有するだけでなく、トレーサビリティのような非競争的なテーマについて、グループの外とのコラボレーションを広げています。また、これはサプライヤーへの圧力の軽減にもつながります。もちろん、製品、材料、プロセスなどを提供するあらゆるサプライヤーと協力する必要があるからです。また、ファッション協定やその他の組織的なプロジェクトや議論にも積極的に参加しています。

WWD:やるべきことがたくさんありますね。

アニカ:とても忙しくてエキサイティングです。退屈することはありません。

各ブランドとの目標や情報の共有の仕方

WWD:サステナビリティを推進するにあたり、バレンシアガを始め、各ブランドとの役割分担はどうなっているのでしょうか?目標や情報はどういった方法で共有していますか?

ジェラルディン:すべてのブランドには独自のDNAがあります。そのため、ケリング・グループ内の各ブランドが、自らにとって最も重要な要素にフォーカスすることが重要です。ケリングでは、国際的な枠組みであるサイエンス・ベース・ターゲット・ネットワークを活用し、科学的根拠に基づいて目標を設定しています。またパリ協定を基に、地球の気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えるためにケリングとして何ができるかを検討しています。

各ブランドがこのターゲットに対して適応することが求められます。バレンシアガ、ブシュロン、ケリング アイウエア、ケリング ボーテなどそれぞれ異なる目標を設定します。重要なのは、これらの目標を早期に達成するための支援を提供することです。具体的には、専門知識やツールの提供が含まれます。その一例として、影響を計算しモニターするためのEP&Lが挙げられます。

ミラノにあるマテリアル・イノベーション・ラボでは、イタリアのサプライヤーや各ブランドの製品開発チームと協力し、より持続可能な素材を開発しています。このラボには、持続可能な素材を1,000種類以上集めた素晴らしいライブラリーもあります。しかし、クリエイティブチームにとっては、これだけでは十分ではありませんから、私たちは素材革新において、より革新的で持続可能な素材を活用することを目指しています。

WWD:改めて、EP&Lとは?

ジェラルディン:EP&Lは、自然が私たちに提供してくれる“サービス”、たとえばきれいな水や空気がかつては無限であったものの、現在では有限であるという認識から生まれた考え方です。この限られた資源の中で、経済システムに自然のサービスを組み込む必要性が強調されています。具体的には、自然が私たちに与えるすべてのサービスに価値を見出し、それをビジネスに反映させるという考え方が背景にあります。

EP&Lの目的は、金融のツールを使って自然を金融・経済システムの一部に組み込み、原材料の採取から製品の製造、店舗での販売、さらに製品の使用に至るまで、バリューチェーン全体を通じて環境への影響を計算することです。

このような取り組みが実現すれば、環境への影響が金銭的価値に直結するようになります。EP&Lの重要な点は、この活動が12年間継続されており、その過程で自然を大切にする文化が醸成され、自然には価値があるという意識が根付いたことです。その結果、ビジネスにおいても自然を保護し、再生する必要性が一層明確になりました。

自分のダッシュボードを活用して、たとえば異なるタイプの靴を比較し、それぞれの環境への影響や使用材料を可視化するツールがあります。このツールは、製品やブランドの共同デザインを支援するアプリケーションの一部でもあります。

バレンシアガとサステナビリティを理解する4つのポイント

WWD:バレンシアガがこれまで行ってきたサステナビリティに関わるアクション例を教えてください。

アニカ:4つ事例を挙げたいと思います。一つは、2022年冬コレクションで発表した「エッファ」と呼ばれるマッシュルームの菌糸(マイセリアム)から作られたコートです。レザーに似た質感を持つ代替素材で、バレンシアガのためだけに開発されたものです。バレンシアガとケリング、スタートアップのスクイム(SQIM)の共同開発の成果です。

2つ目は、2024年6月に発表したクチュール コレクションのルックナンバー2に取り入れました。モデルが着用しているパンツにスパイバーによる繊維が含まれています。最も格式の高いクチュールコレクションでも、「ブリュードプロテイン」のような革新的な素材が採用されています。

店舗からも事例を紹介します。バレンシアガでは、100以上の店舗がLEED認証を受けています。LEEDとは、エネルギーと環境デザインにおけるリーダーシップを意味するLeadership in Energy and Environmental Designの略称です。私たちは常にこの認証取得を目指しています。大規模な改装工事を行う際には、その対象となります。

最後に、拡張現実、ARの体験です。何が再生農業なのか、その認識を高めるための取り組みです。私たちは若い方と接することも多いのですが、彼らは特にゲームやゲーミフィケーションに高い関心を持っています。そのためインスタグラム、ティックトック、ウィチャットなどのソーシャルメディア・プラットフォームを活用し、ミニゲーム形式で再生農業について学べるビデオを提供しています。この中で、ユーザーはアバターを選び、種を植え、水を与え、堆肥化し、輪作などの技術を用いることで、再生農業の方法論を実践できます。これにより、少しでもそのプロセスを体感することができます。

デムナ率いるデザインチームとの緊密な関係

WWD:デムナ「バレンシアガ」クリエイティブ・ディレクターをはじめデザインチームとのコミュニケーションについて教えてください。具体的にどのような会議が社内で行われていますか?

アニカ:私たちは緊密に連携して仕事を進めています。特に私のチームは、デザインチームと密接に協力しています。デザインチームは車の運転席に座っているようなものです。彼らが行う選択は、製品のライフサイクル全体に大きな影響を及ぼします。しかし、会社には他にも非常に重要な役割があることを忘れてはなりません。製品のライフサイクルを決める、一つひとつの瞬間に関わる人たちです。開発、生産チーム、サプライヤーも重要な参加者であり、プロジェクトのドライバーとなることで、サステナビリティが実現するのです。

たとえば具体的なインスピレーションがスタジオのデザインチームから湧き上がってきたら、サステナビリティチームが開発チームやサプライヤーと協力してその解決策を模索します。また、サステナビリティチームでは、常に新しいスタートアップ、新しいイノベーション、新しいサプライチェーンを探してデザイナーたちに紹介をしています。

さらに、私たちはクリエイティブチームに対して、ケリング・スタンダードに従って具体的な調達基準について定期的にトレーニングを実施しています。このトレーニングにより、クリエイティブチームはサステナビリティを自分の業務範囲にどのように組み込むかを学んでいます。彼らはすでに高度な訓練を受けているといえるでしょう。

WWD:デムナのような傑出した才能と仕事をするのは面白そうですが大変そうでもあります。

アニカ:全然大変ではないですよ。私たちはデムナやクリエイティブチーム全体と、とても良い会話を交わしていますし、彼らも積極的に関わってくれています。

ケリングとバレンシアガが今必要としている技術や素材

WWD:ケリング、バレンシアガ、それぞれが今必要としている新しい技術や素材を教えてください。

ジェラルディン:私たちは、目標を達成し、サプライチェーンの透明性を向上させるために、環境負荷を軽減する技術革新を模索しています。なぜなら、原材料が環境負荷全体の約3分の2を占めているため、これが私たちの最初の焦点となったからです。バイオマスを原料とするもの、自然由来であること、バイオテクノロジーを駆使し、化学物質を一切使用しないもの、そしてデザインチームのエモーショナルなインパクトのあるものを探しています。心が刺激されないと新しいアイデアは生まれません。これらの基準を満たさない素材では、私たちのブランドの理念に合致しません。そのため、素材選びが優先事項です。

さらに、世界中で水に対する関心・懸念が高まっていることを背景に、私たちは水資源を適切に使用する必要があります。リテールや消費者とのエンゲージメントに関わるテクノロジーも常に探しています。これはファッションに限りません。1年半前、私たちはケリング ボーテを立ち上げ、美容分野も重点となっています。美容業界におけるサステナビリティは、私たちの新たな挑戦の一環です。

アニカが述べたように、イノベーションは競争以前の協調の場でもあります。最終的に私たちが望むのは、これらのイノベーションが業界全体のスタンダードとなることです。気候変動や生物多様性、水はすべての人が必要としているイノベーションですから。

WWD:サステナビリティは物づくりをする人にとってはある種の制約ですが、むしろそれをチャンスだととらえた方が良さそうですね。

ジェラルディン:そう思います。そのように見ることも必要ですし、チームにもそう伝えないといけません。制約としてチームに伝えるとうまくいきません。創造性の欠如は、私たちにとって致命的な問題と見なさなければなりません。それが私たちのアプローチそのものなのです。

最近、私たちのイノベーション・アワードにジュエリーの分野を設けました。そこでのトピックも廃棄物からいかにしてラグジュアリー生み出すか、です。ですから制約と見ることもできますが、素材の見方、廃棄してきたものの見方を変える、新しい意味でのクリエイティブになるということだと思います。

WWD:バレンシアガが今必要としている技術や素材とは?

アニカ:ジェラルディンが伝えたように、私たちは次の新しいプロジェクトに取り組んでいます。私たちは、環境への影響を削減することに非常に注力しています。そのため、即効性のある短期的なアプローチと、フットプリント(環境負荷)に関する現実的な分析を組み合わせています。同時に長期、次世代のイノベーションに焦点を当てています。なぜなら、私たちは「明日」を形作るための素材について議論しているからです。

スタジオでは、コレクションに使用される素材のリサーチやプレゼンテーションを行う際、従来の素材をより持続可能な素材に置き換える取り組みを続けています。この際、デザインや品質について妥協することはありません。おっしゃるように、サステナビリティは創造性を刺激する力を持っています。
そのため、例えばコットンやウールについては従来よりもインパクトの少ない素材を使用するよう努めています。たとえば、2021年にコンサベーション・インターナショナルと共に設立した「自然再生基金」からのサプライチェーンを活用するケースが増えています。

イノベーションは、バレンシアガのDNAの一部です。そのため、次世代素材だけでなく、革新的なプロセスにも焦点を当てています。ジェラルディンが述べたように、例えば、水をほとんど、あるいは全く使わずに染める技術を見つけることなどプロセスが、非常に重要な課題として注目されています。このような取り組みに、私たちは一層力を入れています。

冒頭でも述べたように、これらのプロジェクトには非常に時間がかかります。具体的な成果につながらないプロジェクトもたくさんあるでしょう。でも取り組まなければならないのです。たくさんのプロジェクトの一部が成功する。それを産業、商業規模に拡大し、より環境負荷の少ない明日の素材となることが期待されています。

WWD:お2人のそれぞれの次なるゴールとは?

ジェラルディン:このイノベーションをスケールアップさせ、さらにその実現を手助けできることが、私の個人的な目標であり、大きな希望でもあります。

アニカ:冒頭でも述べたように、まだやるべきことがたくさんあります。だからこそ、一番大きなポジティブなインパクトを残せるところにフォーカスして結果をもたらして具体的なアクションにつなげたいです。

イベント参加者とのQ&Aセッション

参加者:ヨーロッパではエコデザインに関する規制やルールの変更を踏まえてどのようにクリエイティブチームに伝えているのでしょうか、具体的に教えてください。

ジェラルディン:バリューチェーン全体におけるトレーサビリティの向上が規制の主眼です。そして、環境ラベリング形式で最終消費者へ伝えること、また廃棄物の削減と循環型経済の構築が規制の目標です。当局とも常にコミュニケーションをとり意見も出しています。これらの規制の本質は、「持続可能な製品」とは何かを定義することにあります。なぜなら、ファストファッションにおける持続可能な製品の定義と、ラグジュアリー製品におけるそれは同じではないからです。そのため、私たちは製品の物理的な耐久性だけでなく、情緒的な耐久性も考慮しています。これには、製品の価値を維持する方法や、製品を修理して再利用する取り組みも含まれます。

これを実現するため、グループレベルでは定期的なミーティングを行っています。3カ月に一度、各ブランドやその法務チームと会合を持ち、規制が私たちの業務にどのような影響を与えるかを共有し、ディスカッションしています。

現時点では、主にIT面での変更が主です。現時点では、法律が求める内容との整合性については問題ないのですが、細部に問題がある可能性があるから十分に注意する必要があります。私はこれらの法律を土台にして、さらに前進できると考えています。

アニカ:ジェラルディンが述べたように、私たちはこれをブランドに導入する際、トレーサビリティを重視しています。トレーサビリティは非常に複雑な作業ですが、ケリングの基準に沿った素材を使用することで、作業を効率化することができます。生産チームなどと部屋に集まり、資料やスクリーン、スライドを活用しながらトレーニングを進めます。もちろん規制や基準について詳しく議論します。

ただ規制は、それがあるから対応しているわけではありません。行うのは、それが「正しいこと」だからです。現在、規制が施行され始めています。私たちはまだ完璧ではありませんが、取り組みは組織全体に浸透しつつありすでにかなりの進展を遂げていると言えます。社内のすべての部署に理解してもらう必要があります。完璧とは言えませんが、私たちは懸命に努力し続けています。

参加者:「消費者の手に渡った後の流通」に関する質問です。リサイクルだけでなく、リセールプログラムが成功するための条件や、そこにある課題について教えてください。

ジェラルディン:リセールについて、私たちはテストと実践の段階ですが、興味深いモデルであると考えています。ケリングは、中古品プラットフォームであるヴェスティエール コレクティブに投資しています。これにより新しい顧客層へリーチできることがわかっています。つまり、従来のビジネスモデルとバッティングすることなく、新しい可能性を広げています。

完全に異なるロジスティクスですから、現時点では、独自のシステムよりもパートナーと協力する方が容易です。そして、次のステップとして何をすべきかを検討しています。

参加者:私はイノベーションが非常に重要なスポーツ業界の出身です。現在この業界では技術革新への投資はすべてサステナビリティを中心に行われています。この点は、ケリング・グループやバレンシアガにおいても同じでしょうか?

ジェラルディン:はい、そうです。サステナビリティとデジタル技術は、現在の技術革新と投資の原動力となる2つの重要な要素です。この2つの要素が組み合わさる例については、すでにお話ししましたが、その通りです。

参加者:イノベーションへの投資は、それが実際にポジティブな変化をもたらすものでない限り、基本的に価値を持ちません。また、ジェラルディンさんが先ほど述べたように、イノベーションへの投資のうち、10件中1件が成功すれば良いほうです。つまり、それは非常に大きな投資ですから、持続可能性に向けた大きな成果を目指しているということでしょうか?

ジェラルディン:はい、その通りです。特にラグジュアリー分野においては、すべてが完璧でなければならないため、なおさら難しいです。イノベーションには時間がかかり、うまくいかないこともあるため、そのフラストレーションを受け入れる必要があります。

参加者:トレーサビリティとは、すなわち透明性を意味します。すべて透明性を担保しないといけないのでしょうか?パーフェクトではない、ときにはよくない姿を見せないといけないと思いますが、ケリング、バレンシアガとしては100%透明性を担保しようとしていますか?

ジェラルディン:例えば、我々はEP&Lの結果をすべて公表しています。これにより、製品に関する完全な透明性、安定性、環境への影響などを理解していただけると思います。改善点も公開しています。持続可能性とは、終わりのない旅でもあります。そのため、現在地をしっかりと把握することが重要です。今日の世界では、何も隠すことはできません。

参加者:EUがグリーンウォッシングに対する規制を強化したことはよく知られています。このような法改正について、どのように捉えていますか?

アニカ:私たちは現在、この問題に気を配りながら、ガイドラインに基づいて精緻なコミュニケーションをしています。特に重要なのは、何をどのように伝えるべきか、どの単語を使うべきか、そして避けるべきか正確に伝えることが大切です。私たちが使う言葉も外部の専門家にその内容を確認してもらっています。バレンシアガにとってサステナビリティはマーケティングツールではありません。最善を尽くして行うものです。

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日本の繊維産地の可能性を各産地の新リーダーとデザイナー、識者が語る 

日本の繊維産地は世界から見ても多様で、その技術は海外から高い評価を受けている。しかし、後継者不足など深刻な課題を抱えて久しい。その繊維産地から今、新たなリーダーが誕生し始め、一企業の枠を超えて地域と連携した活動が生まれている。日本のものづくりと産地継続に向けて、産地に関わるリーダーやデザイナー、識者がその可能性を語った。(この対談は2024年12月13日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」から抜粋したものです。)

向千鶴WWDJAPANサステナビリティ・ディレクター(以下、WWD):2つ目のセッションは日本の繊維産地の可能性について5名の方をお招きしてディスカッションをいたします。日本には素晴らしいものづくりを行う産地がたくさんあります。そして多くの課題を抱え、同時に可能性を秘めています。ファッションの持続可能性はものづくりの現場の持続可能性があってこそ。本セッションでは現場の声と、識者の声を交えてその未来を語っていただきます。オープニング映像で見ていただいたのはZOZONEXTさんから提供いただいた篠原テキスタイルさんのムービーです。ZOZO NEXTさんのユーチューブでもご覧いただけます。

それでは登壇者をご紹介します。スズサン営業・各種プロジェクト担当の井上彩花さん、糸編代表の宮浦晋哉さん、「フェティコ」デザイナーの舟山瑛美さん、オンラインから篠原テキスタイル社長の篠原由起さん、そして本セッションのファシリテーターを努めていただくA.T. カーニー シニアパートナーの福田稔さんです。福田さんにマイクをお渡しします。福田さんよろしくお願いします!

PROFILE: 福田稔/A.T. カーニー シニアパートナー

福田稔/A.T. カーニー シニアパートナー
PROFILE: 1978年東京生まれ。慶應義塾大学卒、IESEビジネススクール経営学修士(MBA)。電通総研(旧電通国際情報サービス)、ローランド・ベルガーを経てA.T. カーニー入社。消費財・小売プラクティスのAPAC共同リーダーを務める。主にアパレル・繊維、ラグジュアリー、化粧品、小売、飲料、ネットサービスなどの領域を中心に、戦略策定、ブランドマネジメント、GX、DXなどのコンサルティングに従事。プライベートエイティやスタートアップへの支援経験も豊富。経済産業省 産業構造審議会委員、ファッション未来研究会副座長、大学院大学至善館にて特任教授(マーケティングの理論と実践)など政府やアカデミアでも活動。著書に『2040年アパレルの未来 「成長なき世界」で創る、循環型・再生型ビジネス』『2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日』(いずれも東洋経済新報社)など PHOTO:TAMEKI OSHIRO

世界から見ても珍しい、日本の多様な産地

福田稔A.T. カーニー シニアパートナー(以下福田):まず「産地」と一口に言っても日本の繊維産地は非常に多様です。具体的にどのような多様性や魅力があるのか、詳しくお話していきたいと思います。その点について産地に詳しい宮浦さんからお話をいただければと思います。

宮浦晋哉・糸編代表取締役兼キュレーター(以下、宮浦):日本には和装の産地から、ファッション、インテリアの産地などたくさんの繊維産地があります。私たちがワークショップやファッション学校で教える際にはこのうち代表的な20の産地を例として挙げています。

北から南まで日本にはさまざまな繊維産地があるので、皆さまの出身地も実は繊維の生産地だったりしますが意外と知られていません。例えばお母さんやお父さん世代が「機織りの音が聞こえていた」「染めをしていた」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。実は繊維産地は日本の日常生活に非常に近い存在なのです。

繊維産地には日本ならではの文化や風土が独特の文脈で進化を遂げ、現在に至った背景があります。この小さな島国でさまざまな特徴を持つ繊維産地が存在していることは世界的に見ても非常に珍しいことです。

歴史を遡ってみると、綿花を栽培して木綿を織っていた産地もあれば、養蚕が盛んで蚕を育てて生糸を生産し反物にして発展してきた産地もあります。これからご紹介するのはもともと養蚕業を行い、シルクの織物を生産していた産地についてです。これらの産地はシルクの織物産地として発展しつつ、その後ナイロンやポリエステルへと進化を遂げたものもあります。それぞれの産地が独自の進化を遂げています。

例えば日本最大規模を誇る北陸の繊維産地は、ポリエステルやナイロンのテキスタイルの生産が盛んです。東京から近い群馬では桐生を中心にジャカード織りの柄を追求する産地として知られています。山形の米沢は、現在も高密度で非常に美しいシルクのテキスタイルを主力とし独自の地位を築いています。このように各産地がそれぞれの強みを活かして進化し、世界中にファンを持つ存在になっています。

続いて、綿花栽培を背景に持つ産地をご紹介します。これらの地域は日照時間が長く水はけが良いといった土壌や気候条件が綿花栽培に適していました。

オレンジ色の地域の出身の方はおおらかな性格の方が多い印象があります。日照時間が長く、太陽に照らされる環境の中で育まれる文化が影響しているのかもしれません。この地域では5月頃に綿の種を蒔き11~12月頃にコットンボールが弾けるというサイクルで和綿の栽培がされていました。ここから発展してきた繊維産地と言えば、世界に誇るジャパンデニムの産地である岡山から広島、今治のタオル、和歌山の丸編み、そして世界三大毛織物の一つである尾州などがあり、さまざまな製品が生まれています。

一気にお話しすると少し情報が多いかもしれませんが、日本全国にはさまざまな繊維産地があり、それぞれ独自の形で進化を遂げてきました。この多様性と進化こそが、日本ならではの魅力として世界中から注目され、毎シーズン世界各国のデザイナーやバイヤーが訪れるなど、日本の繊維産地は他に例を見ない特別な存在となっています

各産地に新しいリーダーが登場、斜陽産業からの脱却を目指す

福田:このように日本の繊維産地は非常に多様です。そして現在、世界から大きな注目を集めています。その背景には日本の繊維産業が持つ長い歴史があります。日本の繊維産業は、戦前から高度経済成長期にかけて国の基幹産業として大きく成長しました。しかしその後、生産拠点がコストの安い中国や新興国へと次々と移転し、それに伴い斜陽産業とも言われるようになりました。

ところが潮目が変わり、繊維産業が輸出産業として再び成長を始めています。実際、日本のテキスタイルの輸出額は3000億円以上でその金額は年々増加しています。また、近年では日本製のブランド、完成品の輸出も急速に伸びており直近では輸出額が1000億円を超えるまでになっています。

歴史を経て日本の繊維産業は再び成長しようとしています。この新たな成長期を牽引する新しいリーダーたちが登場しています。ここからは、そうしたリーダーの方々をご紹介したいと思います。まず、先ほどオンラインでご参加いただいた篠原テキスタイルの篠原さんをご紹介します。

篠原さんは40代で家業を継ぎ現在事業を拡大されています。ぜひ篠原さんから、新しい繊維産地をリーダーとしてどのように考えていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。特に現在取り組まれていることやコメントがあれば、自己紹介を兼ねてお話しいただければと思います。

PROFILE: 篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役

篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役
PROFILE: 1907年創業のデニム生地機屋「篠原テキスタイル」の5代目。大阪工業大学卒業後、大正紡績へ入社。紡績の製造現場、商品開発室、営業を経て、2012年に篠原テキスタイル入社。新規事業開発リーダーとしてデニム産地内同業他社、異業種、行政、教育機関との連携を深め、デニム産地の発展に取り組む。22年社長に就任。海外展示会への出展や、国内他産地とのコラボ素材の開発、デニム製造工程で発生する残糸や、BC反を活用したアップサイクルブランド「シノテックス(SHINOTEX)」の立ち上げを行ってきた。また、産地の魅力発信のため、デニム・ジーンズの製造工場を回る工場見学ツアーの企画や、若手デザイナーの支援も積極的に行う PHOTO:TAMEKI OSHIRO

篠原由起・篠原テキスタイル代表取締役(以下、篠原):私は広島県福山市を拠点にしています。この福山市と隣接する岡山県の井原市と倉敷市が日本国内でも特に有名なデニムの産地となっています。

現在、同業他社さんと連携してデニム産地全体を盛り上げる活動に取り組んでいます。具体的には日本のデニム生地をさらに広めるために勉強会を開催したり、一般の方向けにはワークショップを行ったりしています。2024年はBtoB向けの展示会を実施したり、マルシェに参加したりして地元住民にも「福山にはデニムがあるんだ」と知っていただく活動を進めています。地域の皆さんに地元への誇りを持っていただきたいという思いもあり、シビックプライドの醸成にも力を入れています。

また、バイヤーさんを対象とした工場見学ツアーも行っており24年は30~40回ほど実施しました。現場を見ていただくことでデニムをより深く知っていただけたらと思っています。

さらに、私たちからも積極的に学校へ赴き「こんな面白いことをやっているんですよ」と紹介する勉強会を開催したり、他の産地を訪問して連携を深めたりしています。例えば、「ひつじサミット尾州」で交流したり、先週は播州を訪問してお互いの産地の取り組みを紹介、素材開発したりとさまざまな活動を行っています。

福田:続きまして他の産地のリーダーについてご紹介します。若い世代が新たなリーダーとして登場しており、この点については産地をつなぐ活動をされている宮浦さんにお話しいただければと思います。

PROFILE: 宮浦 晋哉/糸編代表取締役 キュレーター

宮浦 晋哉/糸編代表取締役 キュレーター
PROFILE: 1987年千葉県生まれ。大学卒業後にキュレーターとして全国の繊維産地を回り始める。2013年東京・月島でコミュニティスペース「セコリ荘」を開設。16年名古屋芸術大学特別客員教授。創業から年間200以上の工場を訪れながら、学校や媒体や空間を通じて繊維産地の魅力の発信し、繋げている。17年に株式会社糸編を設立。主な著書は『Secori Book』(2013年) 『FASHION∞TEXTILE』(2017年)PHOTO:TAMEKI OSHIRO

宮浦:現在、篠原社長は5代目として活躍されていますが、他の産地でも代替わりが進んでいます。若い息子さんや娘さんが事業に参加するケースや外から移住してきた方が会社を経営する例も見られます。

例えば、世界三大毛織物の産地として知られる愛知県と岐阜県にまたぐ尾州産地でオープンファクトリーイベント「ひつじサミット尾州」を立ち上げたのが三星毛糸の岩田真吾さんです。尾州産地は大きい産地なのですが、岩田さんは旗振り役としてリーダーシップを発揮して、日々精力的に活躍されています。産地が自ら立ち上がり外に向けて楽しく開いていかなければならない、という強いメッセージを込めて活動をされています。このオープンファクトリーをはじめ、さまざまなインナーブランディングの取り組みも行っています。

遠州産地に目を向けると、綿の高級シャツ地を手掛ける古橋織布の4代目古橋佳織理さんがいらっしゃいます。男性だけでなく女性も社長や開発担当として活躍してそれぞれの産地で頑張っている時代になりました。和歌山産地ではエイガールズの山下智広社長など、各地で新しいリーダーが次々と現れ、それぞれの産地を盛り上げています。このように、日本全国で新しい世代が活躍している状況です。

福田:このように多くの新しいリーダーが登場している一方で、他の業界から繊維産地に飛び込む動きも見られるようになっています。そこで、経済産業省を経てMBAを取得し繊維産地に飛び込んだ井上さんにその経緯をお伺いしたいと思います。

PROFILE: 井上彩花/スズサン 営業担当

井上彩花/スズサン 営業担当
PROFILE: 慶應義塾大学経済学部卒業後、2016年に経済産業省に入省。通商政策局などを経て、19年4月からファッション政策室、クールジャパン政策課。22年8月からフランスのビジネススクールでラグジュアリーブランドマネジメントを学ぶ。24年8月から現職。 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

井上彩花スズサン 営業担当(以下、井上):私は現在、株式会社スズサンで営業などを担当しています。大学卒業後、経済産業省に入省し、クールジャパン政策を担当する部署に在籍していました。その際、福田さんに副座長、向さんに委員として参加いただいた有識者研究会「ファッション未来研究会」の事務局を担当させていただいたことがきっかけで、ファッション産業が抱える課題や向き合うべきテーマ、そして産業が持つ大きなポテンシャルについて深く知ることができました。

特に職人技術といった独自性の高いものをどのように海外に伝え、市場を作り出すかに興味を持ちました。フランスを中心としたラグジュアリーブランドが世界中で人気を集めている様子を見て、クールジャパンで目指していたことの反対側にある成功例の一つではないかと考え、ラグジュアリーブランドビジネスを学びにパリに約2年間留学をしました。

留学中は、世界中からラグジュアリーブランドビジネスを学びに集まった同級生とともに、その領域に深く携わるさまざまな機会を得ました。その中で、特にフランスでは、職人技術が非常に高い価値を持つものとして業界内で認識されていることを実感しました。また、現地でLVMHメティエダールでのインターン経験を通じて、日本の繊維や工芸といった手仕事に大きなポテンシャルがあること、同時に課題も直接感じることができました。

これらの経験を経て、手仕事のビジネスのよりリアルな部分を体験したいと思い帰国後、名古屋・有松に拠点を置く株式会社スズサンに転職しました。スズサンでは、江戸時代初期から400年以上続く国指定の伝統工芸「有松鳴海絞り」の技術をブランドの核とし、ファッション製品や、クッションやブランケットといったホーム製品に「有松鳴海絞り」の絞り柄を取り入れるブランドビジネスを展開しています。

福田:新しい人材が集まりつつある繊維産業ですが、ここでぜひ日本の繊維産業が持つ「ものづくりの魅力」や「強み」についてお話を伺いたいと思います。「フェティコ」のデザイナーとしてご活躍されている舟山さんにお尋ねします。舟山さんは、特に産地との連携が上手だとうかがっています。産地の魅力やデザイナーの視点から見た日本の産地について教えていただければと思います。

PROFILE: 舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー

舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー
PROFILE: 高校卒業後に渡英、帰国後にエスモードジャポン東京校入学、2010年卒業。コレクションブランド等でデザイナーの経験を積み、20年に「フェティコ」を立ち上げる。22年に「JFW ネクストブランドアワード2023」と 「東京ファッションアワード 2023」を受賞 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

舟山瑛美「フェティコ」デザイナー(以下、舟山):まず、私のブランドについて簡単にご紹介します。私が産地でのものづくりを始めたきっかけは新卒で入社したいわゆるDCブランドといわれるデザイナーズブランドの会社でした。その会社は産地との絆が非常に深く、新入社員も率先して産地や工場に連れて行き、現場を見せてくれるような投資を惜しまない会社でした。この経験が私にとって非常に大きな影響を与えました。それまで私は、服がどのような場所で作られているのかを全く知りませんでした。しかし、実際に現場で働く方々と話す機会を得たことで、彼らがいかに大変な仕事をしているかを知りました。「後継者がいない」「仕事が大変」といった話を若い私に気軽にしてくれる一方で、工場の方々がものづくりに誇りを持っている様子がとても印象的でした。その姿を見て「自分も真剣に向き合わなければ」と覚悟を決めることになりました。

「フェティコ」を立ち上げるにあたり「少しでも産地の力になりたい」という思いが強くありました。いろんなブランドで働く中で時には海外生産を含むOEMで日本の生地を使わない製品を手がけることもありました。ただ、そういったものづくりでは、細かい部分で自分が表現したいことを洋服に落とし込むのが難しく、ジレンマを感じることが多かったです。

その経験を経て「どんな人たちがどんな場所で作っているのか」を見極め、どの産地のどの生地を使いどの縫製工場に頼めばどんなふうに仕上がるまでが見えるものづくりに強い価値を感じるようになりました。今では、日本で作れないもの以外は約90%の生地と縫製を日本国内で行っています。

具体例を挙げると、前シーズンでは桐生でオリジナルの柄のジャカード生地を作りました。同色で派手さのない素材なので一見地味に見えますが、実際に手に取ってもらうと独特の風合いが感じられます。日本で作るメリットの一つにオリジナルの生地を作るのに多額のコストがかからないということ、小さなブランドであっても製作に協力的な機屋さんがいるという点があります。こうした環境は本当にありがたいと感じています。

継続しているところでいうと、尾州のスーツ地があります。ブランドを構成する要素は多々ありますが、細かい工夫や積み重ねがブランドのアイデンティティを形成し、強めてくれると実感しています。同じ梳毛でも、仕上げの加工方法やブランドらしさを求めてオリジナルの色に染めていただくなど自分の求める形にしてもらえるのが魅力です。小さなブランドでもこうしたことができるのは、日本でデザイナーをやる大きなメリットだと思います。

もちろん、海外の素材にも素晴らしいものがたくさんありますが、日本は顔が見える人たちと一緒に理想を追求できる環境が整っています。この環境を活かさないのはもったいないと感じ、産地でのものづくりを続けています。

福田:ちなみに私も今日着ているのは尾州のスーツ生地を使った服です。桐生産地も素晴らしいと思います。さて、日本の産地の魅力を横断的に発信し、さらに世界中のラグジュアリーブランドをアテンドされている宮浦さんにお伺いしたいと思います。

宮浦:舟山さんのお話にも通じるところからいくと、他の国にも繊維産業が存在しますが、いろんな国のデザイナーや学生、先生たちと話していると、小ロットでどのくらい商売になるかわからない前提でファッションブランドにコミットしてくれる工場がなかなかないという状況で、あるとしたら日本とイタリアだと聞きます。それ以外の多くの国では繊維産業として一定の規模があっても、ほとんどが工業的な大量生産で回っているというのが現状です。こうした背景があるからこそ、イタリアやフランス、ドイツといった国々から学生たちが日本に研修に来るのだと感じています。

世界は「信頼の歴史」「技術者」「糸の開発力」を評価

僕自身、日本のテキスタイルの国際競争力をテーマに研究しています。これまで世界中で日本のテキスタイルを使うデザイナーや経営者に話を聞く中で、いくつか共通して言われることがあります。

当たり前のことかもしれませんが「検品をしっかりしてくれる」「品質が安定しており、汚れや染色むらがないものが確実に納期通りに届けられる」という日本全体が積み重ねてきた信頼の歴史が挙げられます。この「当たり前」を守り続けている点が、皆さん口をそろえて評価している部分です。さらに、昔からある機械を大切にリペアしながら使い続けているのも特徴的です。例えば、シャトル織機や和歌山の吊り編み機など、旧式の織機があって、今も扱える技術者がいることも評価されています。

もう一つ挙げられるのは、東レ、旭化成、帝人を代表する原糸メーカーです。糸だけの輸出額でも800億円ほどに上ると考えられます。この糸の開発力に織る技術、編む技術、加工技術をあわせて日本ならではの唯一無二のテキスタイルが生まれてきています。

福田:日本の産地として海外でも特に有名なのが、岡山、広島の三備産地です。日本のデニムがなぜ世界から高い評価を受けているのか、また篠原テキスタイルのデニムがどのように評価され、取引されているのかについて、篠原さんにお伺いしたいと思います。

篠原:宮浦さんが言われた通りだと思いますが、デニムの場合、まず重要なのは“ブルーの色目”です。どのような色落ちをするのか、その“色の変化”が非常に大事なポイントになります。この色のバリエーションが豊かであること、色が美しく繊細であることが評価されています。さらに、紡績の技術も重要です。経糸の微妙なむら感によって経年変化が異なるバリエーションを生み出します。これに生地のクオリティや品質の高さといった要素が組み合わさり、デニムが世界から評価されているのだと思います。

また、三備産地のデニム企業は創業100年以上の歴史を持つ企業が多いのも特徴です。当社も創業117年目になります。当社は「備後絣」という絣織物から、井原市では「備中小倉」と呼ばれる藍染綿織物から始まり、それが続いてデニムの産地になったという歴史が評価につながっているのだと感じます。

当社の場合、さまざまな織機を活用してデニムを製作しています。例えばシャトル織機やエアージェット織機を用い、従来のアメカジスタイルの綿100%のデニムだけではなく、それ以外の新しいデニムを次々に開発しています。

具体的には、新たに反毛原料とヴァージン綿のブレンドで糸を紡績さんと開発したり、糸を加えたり、カシミヤを織り込んだ生地を特殊な加工によって独自の表情を生み出したりしています。その結果、“これはデニムなのか、それともデニムではないのか”という新しい概念の製品を生み出せることが私たちの強みだと思っています。

当社は、テンセル素材のデニムも得意としています。経糸に風合いの良いテンセル糸を用い、横糸に違う触感の素材を織り込むことで新たな手触りの生地に仕上げています。また、紡績さんと一緒にリサイクルポリエステルを原料を独自にブレンドし、デニム調のポリエステル100%の生地を作ったり、極細番手のナイロンを打ち込んで紙のような質感のデニムを作ったりもしています。こうした“これまでになかったデニム”を生み出す取り組みが、海外からの高い評価につながっているのだと思います。

福田:それでは「有松鳴海絞り」についてお伺いします。名古屋で伝統的に受け継がれている絞り染めの技法を「スズサン」というブランドに昇華させ、世界で高い評価を受けています。現在、売り上げの8割が海外市場からだと伺っていますが、なぜ「スズサン」がこれほど海外で評価されているのか、その理由についてお伺いします。

井上:「スズサン」はクリエイティブ・ディレクターでCEOの村瀬弘行が2008年に立ち上げたブランドです。村瀬は当時、ドイツのデュッセルドルフに留学しており、その地でブランドを創設しました。スズサンの拠点は現在2カ所あり、デザインはドイツのデュッセルドルフで、生産は名古屋の有松で行っています。この2拠点体制がブランドの大きな特徴です。

いくつかポイントを挙げたいと思います。1つ目は、デザインをドイツで行っているからこそ、伝統工芸としてではなく、別の見せ方で海外の市場にアプローチしている点です。例えばパリの展示会で、お客さまが最初に注目するのは素材の良さやデザイン、色の使い方であることが多いです。「素材がいいね」「デザインが素敵だね」という入り口からまず製品に興味を持っていただくことができれば、その後に、伝統工芸としての技術的な背景や産地のストーリーなどお伝えできることは豊富にあります。「スズサン」のデザインの特徴として、アートのように大胆な色や柄の組み合わせが挙げられますが、このように現地の視点を取り入れたデザインが受け入れられているのかと考えています。

2つ目のポイントは「有松鳴海絞り」の製品が全て手作業で作られていて、この手作業による温かみや独自性を感じていただいていることだと考えています。「有松鳴海絞り」は絞り染めの技法です。さまざまな方法で素材の一部を防染し、染めの工程の後に防染された部分を残すことで、素材にデザインを作り出す技術です。例えば、私が着ているニットはグレーの部分が元々の製品の色です。製品の一部を四角い板で挟んで防染し、黒の染料で染色することで、板で挟まれていた部分の元の色が柄として残ります。挟む以外にも、糸と針を使った縫いの技法など、100種類程度の技法があります。

絞り加工は一つひとつ全て手仕事で行うため、一度に生産できる量は限定的です。現在、シーズンに合わせてコレクションを発表していますが、生産量としては、1シーズンで約2500点、年間ではおよそ5000点を目安に調整を行っています。

また、技法によっては柄の出方に表情が生まれることもありますし、プリントのように全く同じ柄を繰り返し作ることはできません。たとえば、25年春夏コレクションのFaceの柄の場合、口の大きさが一つ一つ微妙に異なったり、目の位置がわずかにずれたりすることがあります。こうした一点一点の違いについて、お客さまとコミュニケーションを取りながらご理解いただき、手仕事から生まれる一点ものの製品に愛着を持ってご使用いただけるよう努めています。

最後に、ドイツにも拠点があることでヨーロッパでのビジネスをスムーズに行える体制が整っており、言語のギャップや時差の影響を受けにくい点が強みです。このような体制が海外市場での展開を後押ししていると感じています。

技術継承の鍵は「時代の流れを読み取りビジネスを柔軟に変化させる」こと

福田:皆さん、これで産地のポテンシャルについてよく理解いただけたかと思います。産地とデザイナーがコラボしたり、伝統技法とコラボしたり、さらにはテキスタイルそのものがブランドとして成立したりと、さまざまな角度で日本の産地が世界中から注目を集めています。そして、それがビジネスに繋がっている点が大きな魅力です。

しかしながら、当然ながら良い話ばかりではありません。産地にはいくつかの課題があります。ここからは、大きく2つの課題についてお話ししたいと思います。1つ目は事業承継について、2つ目は欧州の規制対応についてです。まず、事業承継についてですが、これは日本全体で大きな問題となっています。後継者がなかなか見つからず、そのために廃業を余儀なくされる会社も少なくありません。一方で、篠原テキスタイルさんのように、若い世代が積極的に事業を引き継ぎうまく次世代に繋げていくことで、何代も続いている会社も存在します。

篠原:当社は創業から117年が経過しており、私は5代目になります。元々はさきほどもお話ししたように「備後絣」の手織り物から始まり、アフリカ向けにエンブロイダーマフラーというターバンの生地のようなものを織っていた時代がありました。その後、学生服用の生地を織る時代を経て、現在はデニムの生産を行っています。このように、時代に合わせて織物を変化させながら続けてきた中での事業承継になります。

私たちは3兄弟で会社を運営しており、私が代表を務め次男が営業、三男が現場管理を担当しています。それぞれ役割を決めてこれから30年、50年先に何を織っていくのかを考えながら進めています。「事業承継で何が大変だったか」と聞かれると、特に大きな困難はなかったと言えます。現状を受け入れつつ、徐々に変化させていくことを常に考えながら進めてきました。ただし、これまでの117年も織る物が時代とともに変化しているため、現場の技術は日々進化、改善が必要になってきています。

例えば「今までの機械ではこんな糸織れない」というケースでは機械メーカーと相談して改造をする必要がありますし、シャトル織機も40年前の機械を使っていますが、そのメンテナンス方法など、ベテランの職人から若手へ引き継ぐ時期に差し掛かっています。そのため職人さんが感覚で行っていた作業を動画に記録し、マニュアルを作成することに取り組んでいます。また、メーカーに存在しない部品は地元の鋳造メーカーさんや、金属加工メーカーさんに依頼して作ってもらうなど、周りの企業さんに助けていただきながら体制を整えています。新たな素材開発に向けて、こうした取り組みに最も時間を取られているかもしれませんね。

福田:篠原さんのお話を伺っていると、時代の流れを読み取りニーズに合わせた事業を展開し、ビジネスを柔軟に変化させていくことが非常に重要なポイントだと感じました。一方で、産地を訪れると後継者がいないという問題が多く聞かれます。このような問題に直面する中で、産地にさまざまな人を呼び込むためにどのような具体的な取り組みが行われているのかも気になるところです。産地活性化のためにどのような活動がされているのかについて、宮浦さんの視点から効果的な事例や取り組みをぜひ共有いただければと思います。

宮浦:十数年、教壇に立ちながら教えてきましたが、自分の教え子が産地に入ったり、自分たちで運営しているスクールを通じて多くの若い世代が産地に携わるようになってきました。もちろん、若い人だけではなく年齢を問わず産地に入る方もいらっしゃいます。産地での仕事は良くも悪くもアナログで、手触り感があります。そのリアルさに魅了されて産地に飛び込む人が多いように感じています。都会で仕事をしていたけれど、見学に行った際に産地のポテンシャルを感じて信じ、そこに飛び込む。そしてその魅力に取り込まれ、夢中になっていく。そんな流れが多く見られます。

そして、そんなIターン勢の姿を見た継ぐ気がなかった社長のお子さんたちが自分の会社に未来を感じたり、若い世代が入ってきていることを目の当たりにしたりすると責任を感じて経営者として戻るといった事例も最近増えています。

ただ、産地の魅力は言葉だけでは伝わりにくい部分があるので、いかに現地に足を運んでもらい、体験してもらうかが大切だと感じています。例えば、学生であればどんどん現地に行ってほしいですし、今日この場にいる何百人もの方々の中で産地に興味を持った方がいれば、ぜひ僕と一緒に産地を訪れてほしいなと思っています。

福田:皆さんも最近始まった「オープンファクトリー」という取り組みをぜひ見に行っていただければと思います。産地が開かれた形で見学できる機会が増えていますので、実際に足を運んでその魅力を感じていただければと思います。

そして、同じく産地である有松に関わられている井上さんですが、長い歴史を持つスズサンの家業をご覧になって、事業承継の難しさについてどのように感じられているか、ぜひお話を伺いたいと思います。家業を受け継ぐという点で、具体的な課題やその捉え方について教えていただけるとありがたいです。

井上:宮浦さんのお話されていた、血の通った、リアルな仕事というところに共感します。昔の街並みの残る、東海道沿いの有松では朝や夕方に綺麗に陽が入り、とても美しい景色が広がります。そんな光景を思い浮かべながらお話を伺っていました。

入社してから感じているのは、産地に対してポジティブな影響を与えるということについて、ブランドだからこそ担える役割があるいうことです。2つの側面があります。まず1つ目は「有松鳴海絞り」の分業制についてです。「有松鳴海絞り」はもともと1つの技法を一つの家族が代々受け継ぎ、分業制で生産を続けてきました。分業制は大きな需要を背景に大量生産が求められた時代には効率的だったのですが、手ぬぐいや浴衣の需要が低迷し、職人を辞める家族が出てきました。その結果、失われた技法も多くあると聞きます。技術の喪失によって将来ものを作れないという状況が生じる恐れがありますし、需要をコントロールできないとビジネスも安定しません。この状況に対して、「スズサン」ではブランドであることを生かして、自律的に国内外に市場を作り出せるように努めています。また、技法の喪失によってものづくりができなくなるという状況を防ぐため、自社工房を設け、13人の職人によって「有松鳴海絞り」の工程を一貫して生産できるような体制を構築しました。

2つ目は、BtoCのブランドビジネスには、自分たちのブランドストーリーと組み合わせて、産地のストーリーを直接伝える力がある点です。有松は1608年、東海道が整備された頃にできた村で、農業が適さない土地でした。そこで東海道を行き交う旅人が多いことに目を付け、旅の必需品である手ぬぐいに絞り染めでデザインを施し、ユニークなお土産品として販売したことが「有松鳴海絞り」の始まりだそうです。このような産地のストーリーをブランド独自のストーリーと組み合わせ、再編集してお客さまに伝えていくことができます。

また、留学中にラグジュアリーブランドを考える際には、「比較」ではなく「絶対」の独自性を作り上げることが重要だということを学びました。背景にある地域のストーリーと組み合わされたブランドストーリーは、絶対的な独自性を説明しやすく、相互作用的にブランドの価値を高めることにもつながると思います。

欧州の規制への対応、分業制が課題のひとつ

福田:事業承継における変化や仕組みの必要性について、非常に貴重なお話をありがとうございました。事業承継は産地の課題の1つとして重要なテーマですが、最近ではもう1つ注目されている課題が欧州における規制対応の問題です。たとえば、環境負荷情報の開示が求められることや、欧州で指定の認証を取得しなければならないといった課題が、産地の企業からよく聞かれるようになっています。次に、この規制対応についてお話を伺いたいと思います。まずは舟山さんにお伺いしたいのですが、デザイナーや作り手の目線で、サステナビリティがますます制約条件として浮上している現状について、どのように向き合いどのように感じていらっしゃるか、その現実についてぜひお聞かせいただければと思います。

舟山:この質問を受けたときに率直に思ったのは「デザインの規制」とまではまだ感じていない、ということです。現在の日本のマーケットの状況だと、サステナブルな基準を満たしていなくても良い製品であれば売れてしまうという現状があるように感じています。

私たちのような小さなブランドでは環境に配慮された素材を新しく開発するような規模感はありません。今すぐできることとして、ブランドとしては約8割の素材を少しでも環境に配慮されたものにシフトする取り組みを行っています。たとえば、よく作るチュールの商品ではバージンポリエステルからリサイクルポリエステルに切り替えました。

生地屋さんと商談するときには、「環境に配慮されたこういう素材はありませんか?」と積極的に話をしています。小さなブランドでも需要があることを生地屋さんに伝えていければと思っています。まだ少しずつではありますが、取り組みを進めているところです。

福田:非常に現実的なお話で、状況がよく理解できました。他方で、産地ではさまざまな課題が浮上しているということで、このあたりについて詳しい宮浦さんに規制対応や認証の現状についてお伺いできればと思います。

宮浦:皆さんのお手元に「サステナビリティ用語」を特集した「WWDJAPAN」があると思います。これを開いていただくと、聞き慣れない言葉がたくさん並んでいるのがわかると思います。ここ数年、環境保護の観点などから認証の種類が急速に増えたため、産業全体がその変化についていけていないのが現状です。さらに産地の多くは分業制が基本で、家族単位で運営している小規模な事業者も多いです。そういった事業者がサプライチェーン全体で協力し、全ての情報を開示しなければならないような認証制度に対応するのは非常に難しい状況です。

特に、綿や麻、ウールといった短繊維を扱う産地は原料の種類が多岐にわたるうえ、農場や農業の問題にも関わりサプライチェーンが長く複雑です。このためどの認証を取得すべきか判断するだけでも産地全体が対応しきれていないのが現状です。

当社でもヨーロッパ、アメリカ、アジアなどに製品を輸出していますが、最近では輸出が厳しくなっていると感じています。

福田:ありがとうございます。輸出が厳しくなっているというお話がありましたが、デニムはご存じのとおり、多くが輸出されている産品です。そんなデニムの生産地として有名な岡山や広島を中心とした三備産地では、どのように認証対応を進めようとしているのか、ぜひ篠原さんに伺いたいと思います。

篠原:三備産地では一貫生産を行っているような大規模な工場ではすでに複数の認証、例えばGOTS認証や、OCSを取得している会社もあります。ただ、当社のようにリーダー系中小規模の工場の場合、認証を取ろうとするとサプライチェーン全体の協力が必要になりますし、それに伴う費用も大きな負担となります。この課題をどうにか解決しなければならないと産地内で勉強会を開催し、「GOTS認証を取るにはどうすればいいのか」「OCSを取得するための具体的な取り組みは何か」などを共有し協力を求めています。

先日も、ブルーサインのお話を伺う機会がありました。認証取得に向けて前向きに動いているものの、まだ取得に至っている企業は限られています。また、認証とは別にサプライチェーン全体をまとめるような生産管理システムを構築し、トレーサビリティを確立しようという動きも進めています。このシステムにより、製品のトレーサビリティを開示できる体制を整えようとしています。

さらに、認証の中で特に重要とされる「働く方の労働環境」の改善にも注力しています。職場環境の改善を目指す動きが三備産地でも大きく広がりつつあります。

「循環型・再生型」を目指す動きも 「デニムの循環」と「クラフトツーリズム」

福田:このように産地としてさまざまな課題を抱えていますが、前半でお話ししたとおり、大きなポテンシャルを秘めており、海外からも非常に注目されています。そして今後という観点では、繊維産業だけでなく地域全体の魅力を活かし、観光やインバウンド需要とも連携しながら、産地を成長産業へと押し上げていくことが重要ではないかと考えています。

もう1つお話ししたいトピックがあります。それは、このセッションのテーマでもある「循環型・再生型」についてです。グローバルでは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の文脈の中で、いかに循環型の社会を実現していくか、そしてその先に地球を再生させる「リジェネレーション」(再生型)の仕組みへ移行していくか、といったテーマが非常に重要視されています。

今後、先ほど申し上げた「産地を盛り上げる」という観点から考えますと、この循環型や再生型といったコンセプトをどのように産地の取り組みに取り入れていくかが非常に重要なポイントになるのではないかと思います。このような新たな視点が産地の発展において鍵を握ると感じています。そこで、少しこの分野の取り組みについてお話を伺いたいと思います。井上さん、スズサンで行われている循環型の取り組みについてお伺いできればと思います。

井上:私たちスズサンは、ものづくりにおける透明性を高めることはもちろんですが、特に「技術を次世代に繋げていく」という視点を強く意識し、そこにフォーカスを置いています。その観点から私たちが考える「循環」についてご紹介させていただきます。

現在、私たちが力を入れている取り組みに「ツーリズム」と「まちづくり」があります。先ほども少し触れましたが、「有松鳴海絞り」は全て手作業で行われており、生産量には制限があります。年間で約5000点を生産しているため、ブランド設立直後の数年を除いたとしても、10年間で約5万人のお客さまに、有松から製品を届けてきたことになります。また、その約8割は海外のお客さまです。

このように、製品を媒介にして世界中のお客さまとコミュニケーションを行ってきたということを私たちはとてもポジティブに捉えています。そこで、これまで有松から世界に向けて製品を届けてきたことの反対に、次のステップとして有松の地にお客さまを招き入れる取り組みを進めています。有松で「有松鳴海絞り」の技術や歴史、その背景にあるストーリーを直接知っていただき、文化的な違いや言語の壁を越えた新たな「共感」を生み出していきたいと考えています。

このように、製品を媒介として地域の文化や伝統技術を伝えていくことは、有松に限らず、他の産地にも転用可能なアプローチであり、それぞれの地域の独自性を発揮しやすいフィールドだと考えています。

福田:すでにさまざまな取り組みをされているとのことで、素晴らしいと思います。この「循環型」「再生型」というコンセプトについて、ぜひ作り手のご意見も伺いたいと思っています。最近では、ステラ・マッカートニーのように再生型の視点まで踏み込んでものづくりを行っているブランドも登場しています。このような動きについて、舟山さんはどのようにお考えでしょうか。ぜひご意見をお聞かせいただければと思います。

舟山:少し話が逸れるかもしれませんが、ものづくりを始める際に「ゴミを作りたくない」という思いがありました。この世の中にはすでに多くのブランドや物が溢れている中で、自分が新たに何かを作るのであれば、価値のあるものを作らなければならないと感じたんです。価値のあるものであれば、お客さまに長く愛用していただけますし、その後ヴィンテージとして新たな価値を持つ可能性もあります。

ブランドとしては、個別でお客さまのお直しのご相談に出来る限り対応するようにもしています。新しいものを作り続けるだけでなく、既存の製品を長く愛用していただけるようにすることにもフォーカスしたいと考えています。

今後取り組みたいことは、古着のアップサイクルやデッドストック素材の活用があります。日本らしくて素敵な素材がたくさん眠っていると思います。それらは簡単に作られたものではなく、非常に多くの時間やコストがかけられて作られたものです。これらを無駄にせず、新たな形で活かしていきたいと考えています。ただ、現段階ではまだ手探りの状態ですので、ぜひ繋いでいただきたいです。

福田:おっしゃる通り、日本の産地を訪れるとデッドストックの素材が本当にたくさんあることに気づきますよね。こういった素材がより循環する仕組みができれば、循環型のモデルというものもさらに大きな広がりを持つ可能性があるのではないかと感じます。そこで、このテーマに関して産地のリアルな意見もぜひ伺いたいです。篠原さん、例えば端材の活用などについて、三備産地ではどのような循環型や再生型のモデルが試されているのかを教えていただけますでしょうか?

篠原:循環型や再生型という観点では、まず使用する素材をオーガニックやリジェネラティブコットンのような環境負荷の少ないものに切り替えた商品開発を進めています。しかしこういった素材を使用しても、生産過程でどうしても端材が出てしまいます。そこで、余った糸を活用して靴下に編立ててアップサイクル製品として販売したり、通常の流通ラインを活用した製品を地元の販売店さんで売ってもらうといった取り組みを行っています。

地域全体での取り組みとしては福山市と同業他社が協力し、福山市内の家庭から不要になったデニム製品を回収し、それを反毛(はんもう)して糸を作り新しい生地に生まれ変わらせ、地元企業の制服として活用いただくプロジェクトを行っています。こうした活動への参加企業も増えてきており、来年には回収拠点がさらに増えて福山市内での循環の輪が広がることを期待しています。

地域でものづくりを続けていくために、「これから何をすべきか」を常に考えながら活動しています。ただし、繊維産業やデニム産業だけに限定して考えるのではなく、家具や食品など他の製造業とも協力しながら、地域全体の在り方を再考して新しい形に編集し直して発信していくことが重要だと考えています。

そのために、私たちは「デニムのイトグチ」というデニム産業に携わる若手メンバーで構成された新しいグループを立ち上げ、情報発信や勉強会を開催しています。また、隣の府中市でHOTEL SMOKEという地域商社が新しく立ち上がりました。これは、2019年に始まったオープンファクトリー「瀬戸内ファクトリービュー」のメンバーが、地域文化の魅力を深堀し世界へ発信するという目的で設立したものです。こういった方々と連携し、この地域を再び編集し直して発信していく活動を今後も続けていきたいと思っています。

福田:循環型や再生型といったコンセプトは現在、世界中から求められており今後日本でもさらに広がっていくべき重要なテーマだと考えています。というのも、江戸時代の江戸は実は循環型社会の見本だったと言われています。

当時はさまざまなものが循環しており、繊維だけでなく食や農業など幅広い分野で資源を無駄なく活用し、環境負荷を抑えた社会が築かれていました。このように日本人は元来、循環型社会の概念に親和性が高く、この分野で世界をリードする素養を十分に持っているのではないかと個人的には感じています。

繊維産地を一つの起点として、日本が循環型社会の構築において国際的にリードを取る存在となることを夢見ています。そのような未来を思い描きながら、今回のセッションを締めくくらせていただきたいと思います。

来場者とのQ&Aセッション

質問者1:気づきが多く参考になることが多く、素晴らしい企画だと思いました。私の生まれは有松のすぐ近くの鳴海という町です。「有松鳴海絞り」の産地として有名な場所で、私も小さい頃からその文化に触れながら育ちました。お隣のおばちゃんや親戚のおばあちゃんが、一生懸命に手で絞っている姿を目の前で見ていたことが思い出され、とても懐かしい気持ちになりました。お話を伺って驚いたのは、ドイツ・デュッセルドルフを拠点にクリエイティブ活動をされ、海外の売上が8割にも及ぶということです。私が幼少期に見ていた風景と重ね合わせると、産地やものづくりがここまで変化し、発展していくことに感嘆しました。本当に素晴らしいことだと思います。

私が住んでいた鳴海の町も、江戸時代の東海道の名残が今でも所々に残っています。そうした風景を思い浮かべながら、伝統の大切さを改めて感じました。自分たちの持つ伝統や技術を大切にし、上手に活かしていくことで、それが世界と繋がりさらに広がっていく。お話を伺いながら、私自身そのように強く感じました。どうぞ、これからも素晴らしいお仕事を続けていただき、日本の産地の発展のためにますますご活躍されることを心より期待しております。ありがとうございます。

実は昨日、伊勢丹新宿店に伺った際に「フェティコ」のポップアップを拝見しました。一つひとつの製品をじっくりと見させていただきましたが、本当に素晴らしいセンスですね。私が言うのも何ですが、お店の担当者の方とお話した際にも「このデザイナーさんは本当に素晴らしい才能をお持ちです」と強調されていました。その担当者の方も深くうなずいておられ、本当にその通りだと思いました。

昨日の今日ですから、なおさら印象が強く心に残っています。舟山さん、ぜひこれからも素晴らしいデザイン活動を続けていただき、日本の産地の方々と力を合わせて、この素晴らしい文化をさらに盛り上げていってほしいと心から願っています。ありがとうございました。

質問者2:承継について。イタリアやドイツ、フランスの学生が日本で学んでいるという話でしたが、外国の方は日本の伝統を承継したいと技術を持ち帰りたいとやってくるのでしょうか。日本の伝統を続けていきたいという話は出ていますか?のれん分け的なことは可能なのでしょうか。

宮浦:承継しよう、技術を残したいという感覚よりもリスペクトして学びに来ている方が多い印象です。

篠原:当社は日本人だけですが、産地の中ではデニム好きでフランスから来て働いている方がいます。織物屋で「のれん分け」は今のところ見当たらないですが、縫製工場では独立して立ち上げる動きはあります。学生が興味を持ち工場見学や産地で働いてみたいという話もあります。「のれん分け」は可能性としてはなくはないと思います。

YouTube視聴はこちら


冒頭の篠原テキスタイルの映像はZOZONEXTから提供

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ゴールドウイン渡辺社長へ19歳の活動家から質問 「環境問題にどれくらい本気ですか?」

PROFILE:左:福代 美乃里(ふくしろ・みのり)/学生団体「やさしいせいふく」代表

都立高校に通う高校3年生。中学校の先生の影響で環境問題に関心を持つようになる。2021年11月に行われた第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に、若者による気候変動の活動団体Fridays For Future Japanのメンバーとして参加する。学生団体「やさしいせいふく」は、人にも環境にもやさしい服づくりを目指して講演会の実施やGOTS認証のオーガニックコットンTシャツの販売などを行っている。24年夏には資金を集めて同シャツのコットンを生産するインドの農家や縫製工場を訪ねて、取材を行った。高校では陸上部に所属。

PROFILE:右:渡辺 貴生(わたなべ・たかお)/ゴールドウイン代表取締役社長

1960年生まれ。76年にザ・ノース・フェイスと出会い、「わたしたちはあらゆる機会を通じて地球環境保護の大切さを伝えていかなければならない」というブランドの思想に感銘し、82年、同ブランドを日本国内で展開するゴールドウインに入社。同ブランドの成長とともに国内のアウトドアファッションの定着にも貢献。05年より取締役執行役員ノースフェイス事業部長、17年より取締役副社長執行役員。20年4月1日より代表取締役社長に就任。27年には富山県内に体験型アウトドアフィールドを開設するプロジェクトを推進し、人と自然が共生する社会の実現と、地球環境再生を経営の最重要項目のひとつとして掲げるなど、サステナブルな経営を実践している。

ゴールドウインが支持集めている理由のひとつが人の心を捉える「デザイン」の力だ。その対象は、製品だけではなく地域創生など「社会」へと広がっている。イノベーションの力を借りてデザインの領域を広げているゴールドウインのデザインに対する考え方、その背景にあるサステナビリティの方針について、渡辺貴生ゴールドウイン代表取締役社長を招いて紐解く。聞き手は高校3年生の活動家、福代美乃里。「ファッションが好きだから、真実を知りたい」と言う彼女から飛び出す質問とは?

(この対談は2024年12月13日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」から抜粋したものです)

WWD :最初の質問は、私から渡辺さんにお伺いします。学校を卒業して最初に就職したのがゴールドウインだったと伺っています。なぜ、ゴールドウインを選んだのですか?

渡辺貴生ゴールドウイン代表取締役社長(以下、渡辺) :私は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」というブランドが大好きで、その存在を初めて知ったのが1976年、高校2年生のときでした。当時、雑誌「メンズクラブ」で「ザ・ノース・フェイス」が紹介されていたんです。それまではアイビーファッションに憧れていましたが、その記事を読んで初めて「ヘビーデューティー」というスタイルに触れました。そして、「ザ・ノース・フェイス」がアメリカ・バークレーで行っているものづくりを知り、「自分のやりたいことに近い」と強く感じました。他の道も考えましたが、どうしても「ザ・ノース・フェイス」のような仕事に携わりたいと思い、最終的にゴールドウインへの入社を決めました。

WWD:写真はどこで撮ったものですか?

渡辺:これは、ゴールドウインに入社してしばらく経ち、「ザ・ノース・フェイス」のMD(マーチャンダイザー)になった頃の写真だと思います。おそらく1990年頃、ヨーロッパでの一枚ですね。2枚目はさらに前、1986年頃の写真です。私は現在、フライフィッシングが大好きですが、当時はまだ始めておらず、ルアーを使って芦ノ湖でブラックバスを釣っていました。これは、その頃、まだ釣りを始めたばかりのときの写真です。

このとき着ているのは、「ザ・ノース・フェイス」のアウトレットで購入したもので、軍の端材を利用して作られた服です。つまり、余った生地を使って生産され、バークレーのアウトレットで販売されていた商品ですね。今でも大切に使っています。「ザ・ノース・フェイス」のロゴが入っていません。代わりに「Windy Pass by The North Face」というブランド名がついており、これはアウトレット専用ブランドでした。

WWD:昔からあまり変わらないスタイルが、現在の成功の理由の一つかもしれませんね。2005年から取締役執行役員として「ザ・ノース・フェイス」の事業部長を務められました。まさに現在に繋がる「ザ・ノース・フェイス」の時代を築かれた期間だったと思います。自己分析すると、なぜ「ザ・ノース・フェイス」はここまで認知され、人気を得ることができたのでしょうか?

渡辺:これは、私が創業者から学んだことが大きいですね。「ザ・ノース・フェイス」は、2人の創業者によって成り立っています。1人は、「ザ・ノース・フェイス」という名前を作ったダグラス・トンプキンスです。彼は、世界的な自然保護活動家としても有名でした。もう1人は、ブランドを製造メーカーとして発展させたケネス・ハップ・クロップです。彼は、社会の仕組みを変えるために新しい事業を始めたいと考え、「ザ・ノース・フェイス」のブランドを買い取り、ものづくりの会社へと発展させました。

当時、アメリカはベトナム戦争の真っ只中でした。その時代、若者たちは従来の社会システムに疑問を抱き、「コーポレート・アメリカ」と呼ばれる大企業中心の社会に対し、異なる選択肢を求める動きが広がっていました。そうした若者たちを応援するために、クロップはものづくりを始めたのです。写真に写っているのはバックパックですが、これは当時「アウトバックスタイル」と呼ばれていました。当時、まだ「バックパッキング」という言葉すら存在していませんでしたが、若者たちは「本当の生き方とは何か」「社会とどう向き合うべきか」「自分たちはどんな社会を作るべきか」と、自然の中で深く考えるようになっていました。そのムーブメントを支えるために生まれたのが、このバックパックです。

もともと「ザ・ノース・フェイス」は、クライミングギアのメーカーではなく、ライフスタイルをサポートするブランドとしてスタートしました。私自身も、その理念に非常に共感しました。地球や自然環境と密接に関わりながら生きることが、人間らしさを見直す大きなチャンスになると考えたからです。「ザ・ノース・フェイス」を単なるアウトドアブランドではなく、ライフスタイルブランドとして確立することを目標に掲げて取り組んできた点が、他のブランドとは大きく異なる特徴だと考えています。

WWD:上の2枚目の写真はそれを象徴していますね。

渡辺:これは1970年代初期の写真だと思います。当時のアメリカには、先進的な考えを持つ人々もいましたが、同時にヒッピーカルチャーが広がっていました。その中でも、新しい価値観を築こうとする真剣な人々が多く、さまざまな経験を積み重ねながら新たな思想を生み出していました。Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズも、おそらく同じような考え方を持っていた一人だったのではないかと思います。

WWD:なるほど、よく分かりました。そして、20年4月に代表取締役社長に就任されましたが、西田会長からは当時、どのような思いを託され、何を成し遂げようと考えて就任を決断されたのでしょうか?

渡辺 :そうですね。私の会社は、西田明男会長の前の社長、つまり西田会長のお父様が創業しました。私もその創業者から直接、多くのことを教えていただきました。お二人から常に言われていたのは「ものづくりの大切さを徹底的に貫いてほしい」ということでした。私たちの会社には「見えないものにこそ、『真実』の価値がある」という言葉があります。つまり、表面的なデザインにこだわるのではなく、本当に重要なのは、目には見えない緻密な作業であり、それを追求することで本当に価値のあるものが生まれる、という考え方です。

また「人生は100年ほどしかないのだから、自分の人生を燃えるように生きなさい」とも教えられました。その考え方を会社全体で共有し、社会に対して何か貢献できる企業でありたいと思っています。

WWD :「燃えるように生きる」と聞いた福代さんが良い笑顔を見せました。

福代 美乃里学生団体「やさしいせいふく」代表(以下、福代) :燃えるように生きたいと思っていますし、私も高校3年生で将来のこと、自分に与えられた人生をこれからどう使っていこうかとか、自分には何ができるんだろうかとこの一年考えてきていたので言葉が刺さりました。

WWD:ゴールドウインにとってサステナビリティは何どういう位置付けにありますか?

渡辺 :あらゆる人々に対して公正な未来を提供することこれが私が考えるサステナビリティですね。

高校3年生がサステナビリティに関心をもったきっかけ

WWD:ここから福代さんからの質問でその「サステナビリティ」について深めていきます。福代さん自己紹介をお願いします。

福代 :はじめまして、福代美乃里です。都立高校に通う高校3年生で現在、学生団体「やさしいせいふく」の代表を務めています。

WWD :そもそも、サステナビリティに関心を持ったきっかけは?

福代:もともと服が大好きで、買うのはもちろん、生地を購入して自分で服を作ることもありました。そんな中、中学3年生のときに、ちょうどコロナ禍で自宅にいる時間が増え、「ザ・トゥルー・コスト」というドキュメンタリー映画を観たんです。その映画を通して、それまで知らなかった ファッション業界の不都合な真実を知りました。

例えば、自分と同じくらいの年の子どもたちが、低賃金で長時間労働を強いられている こと。そして、私は自然が好きなのですが、服の生産が環境破壊につながっている という事実を知り、大きな衝撃を受けました。「おしゃれを楽しむことが、誰かを傷つけているかもしれない」。そのことがショックで、サステナビリティに強く関心を持つようになりました。

WWD :その映画を観てから服を買わなくなったのですか?

福代 :観た直後はまったく買えなくなりました。どの服を見ても、購入をためらってしまって。でも今は、サステナビリティに取り組んでいる企業を調べたり、古着を購入したりしながら、少しずつファッションを楽しめるようになっています。

WWD :福代さんの話を聞きながら、「そんな気持ちにさせてごめん…」という気持ちになりました。そんな福代さんですが、今年の夏、なんとインドのオーガニックコットン畑や縫製工場を訪ねました。

福代 :インドのコインバトールという地域にある工場やオーガニックコットンの畑や倉庫を現地の方に案内していただきながら、綿がどのように栽培・保管・管理されているのかを見学しました。一つひとつの工程を実際に見せてもらいながら学ぶことができました。

WWD :なぜインドへ行こうと思ったのですか?

福代 :今私が着ているTシャツは、私たちが企画した「やさしいTシャツ」というオーガニックコットンのTシャツです。この企画は、私と同じようにサステナビリティに関心を持つ学生たちが集まり、「普段売られている服がどのように作られているのか分からない。だったら、自分たちで作ってみよう!」という思いから始めました。けれど、ちょうどコロナ禍だったため、Tシャツの生産地であるインドに行くことができませんでした。オンラインでは工場と繋がっていたものの、やはり 現場を直接見てみたい、作ってくれた人たちに会いたい という気持ちが強くなり、今回の渡航を決意しました。

WWD :実際に現地を訪れて、どのようなことが見えましたか?

福代 :一つは「オーガニックコットンを選んで本当に良かった」という実感です。

現地の農家の方々に話を伺うと、以前は 農薬を使用した栽培を行っており、それによって健康被害が多発していたそうです。例えば、子どもたちががんを発症したり、亡くなったりするケースがあり、また農家の方々自身も視力障害や手足の痙攣などの深刻な影響を受けていたそうです。

しかし、化学農薬を使わないオーガニック栽培に切り替えたことで、こうした健康被害がなくなったと聞きました。実際にその話をしてくれた方々と直接対話したことで、自分の選択が遠い国の誰かの暮らしを少しでも良くしているかもしれない、と感動しましたね。

WWD :まさにサステナブルな選択の重要性を実感されたのではないでしょうか。

福代 :はい、オーガニックコットンの良さを実感すると同時に、普段私たちが購入する服がどこで、どのように作られているのかについて、消費者にはまだ見えにくい部分が多いとも感じました。

今回、最先端のサステナブルな取り組みを行っている工場も訪れましたが、こうした取り組みを行う工場で作られた服がもっと増えて、消費者が簡単にその背景を知ることができるようになればいいなと思いました。企業が積極的に情報を開示し、消費者も知ろうとする姿勢が大切だと改めて感じました。

WWD:貴重な経験ですね。実際に 現場を自分の目で見るということは非常に大切です。では、ここから本日のメインパートに移り福代さんから渡辺さんへ質問をしてもらいます。

「環境や人権への取り組みはどれくらい本気ですか?」

福代 :最初の質問ですが、御社のホームページを拝見した際、最初に目に入ったのが「人と自然の可能性を広げる」というメッセージでした。環境や人権を大切にされていることが強く伝わってきましたが、実際のところ渡辺さんご自身は、どのくらい本気で取り組まれているのかをお聞きしたいです。また、企業のビジョンとしてこの考えを中心に据えようと思った具体的なきっかけや思いがあれば、教えてください。

渡辺 :本気度については「かなり本気」です。社内では「パタゴニアくらいはやろう」と言っています。それくらいの覚悟でゴールドウインを日本におけるサステナブルな企業のリーダーとして確立したいと考えています。

実際に、私自身は1990年代から少しずつサステナブルな取り組みを始めてきました。ただ、会社として本格的に動き出したのは比較的最近です。それでも、この思いをしっかりと持ち続け、企業のビジョンの中心に据えるべきだと考えています。

その理由として、私たちの事業は スポーツやアウトドアに深く関わっています。私は米国のヨセミテ国立公園が大好きで、これまで何十回も訪れています。今年も6月に、役員の何人かを連れて一緒に訪問しました。

こうした かけがえのない自然を守ることは、人間の使命だと強く感じています。そもそも地球がなければビジネスは成り立たないわけです。アウトドアスポーツにせよ、その他のスポーツにせよ、環境が整っていなければ成り立たない。

私たちの仕事はある意味「遊びの延長」です。しかし「遊びこそが人間らしさを育み、多くの人とのつながりを生むもの」だと考えています。だからこそ、単に「地球環境を守る」だけではなく、再生(リジェネラティブ) していくことこそが、私たちの存在意義であり企業のビジョンとして掲げるべきものだと考えています。

WWD :「守る」から「再生する」へ。これは本気も本気 という答えですね。

そもそも、なぜ企業にとって事業成長が必要なのか?

福代 :2つ目の質問です。そもそも、なぜ企業にとって事業成長が必要なのでしょうか?環境保全と事業成長を両立させるには、どのような方法があると思いますか?

渡辺:よく聞かれる質問です。私が事業成長が必要だと考える理由は、「地球を再生していくため」です。私たちが本質的に必要とする環境を、自分たちの手で作り上げていくことができれば、もっと人間は地球に貢献できるはずです。つまり、私たちの産業や事業を通じて、環境問題を解決することが、事業成長の目的であるべきだと考えています。そのため単なる「経済的な成長」ではなく、「人間としての成長」とは何かを考えながら事業を発展させることが、本当の意味で持続可能な成長を生み出すのではないかと思います。私自身も、そのような考えのもとで仕事に取り組んでいきたいと考えています。

福代 :ゴールドウインさんは 2050年までに、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成と廃棄ゼロを掲げていますよね。これは非常に難しい挑戦だと思いますが、それを達成するために最も必要な変化は何だと考えますか? 最大の課題について教えてください。

渡辺 :カーボンニュートラルを実現するためには、スコープ3の削減を徹底することが重要だと考えています。現在、私たちのCO2排出量は、スコープ1から3を合わせて約26万トンありますが、その99%がスコープ3によるものです。つまり、直接の排出ではなく サプライチェーン全体での排出が圧倒的に多いのです。そのため最も重要なのは、サプライチェーン全体で環境への配慮を共有し、協力し合う仕組みを作ることだと考えています。

まずは「自分たちは何のために事業をしているのか?」を明確にし、「どのような変化がプラスになるのか?」をしっかり示すことが必要です。さらに、具体的なアクションとプロセスをどのように変えていくのかを明確にし、発信していくことも大切だと思います。確かに大きな課題ではありますが、誰かが始めなければ変革の第一歩は生まれません。私たちは、そうした一つひとつの取り組みを、責任を持って進めていきたいと考えています。

WWD :今のお話の内容は、ゴールドウインの統合報告書にも具体的な数値として記載されています。後ほど、裏付けとなるデータもご覧いただければと思います。そしてこの質問は、ここにいる全員が 「19歳から投げかけられている問い」だと受け止めるべきものですね。

福代 :服は、大量生産・大量消費の象徴的な存在だと思います。現在もその考え方は根強く残っており、先ほど話に出た環境と事業成長の両立についても、大量生産・大量消費のままでは難しいのではないかと感じています。そこで、ゴールドウインとしてどのようにこの考え方を変えていこうとしているのかをお聞きしたいです。

渡辺 :そうですね。実は、ゴールドウインには以前から 大量生産・大量消費という考え方はあまりありません。もちろん、ブランドの人気が高まると売り上げが伸び、それに伴い生産量も増えるという側面はあります。しかし、私たちはそうした背景の中でも製品を長く使い続けてもらう仕組みを重視してきました。

例えば、1992年頃から リペアサービスを本格的に導入しています。GORE-TEX製品のような高額なウェアは、アウトドア環境で使用すると傷んだり破れたりすることがあります。しかし、それを修理できなければ、すぐに廃棄されてしまう可能性がありますよね。そこで、工場内に専用のリペアチームを設け、現在では年間約2万4000点の製品を修理し、お客様にお返ししています。

また、最近では子ども服のリサイクルにも取り組んでいます。子ども服は成長とともにすぐにサイズアウトしてしまいます。そこで、不要になった服を店舗で回収し、新しいデザインにアップサイクルして再び販売する取り組みを行っています。単に洗浄して再販するのではなく、新たなデザインを加えることでより魅力的なアイテムとして生まれ変わらせることを大切にしています。

さらに、私たちは「ワンフォーワンシステム」 という特別なものづくりの仕組みも導入しています。これは、人気のある商品についてお客様自身がオリジナルのデザインを作れるサービスです。特定の店舗では、お客様の体のサイズを測定し、カラーやファスナーの種類、その他の細かいパーツまで自由にカスタマイズできるようになっています。このサービスを利用することで、既製品ではなく自分のライフスタイルに合った一着を作ることができ、長く愛用してもらえるのです。この仕組みは、大量生産とは異なるアプローチです。

「自分の人生の中で、どんな服をどのように使いたいのか?」そんなことを考えながら、お客様とともにゴールドウインや「ザ・ノース・フェイス」の製品を作り上げていくサービスとして展開しています。こうした取り組みを通じて、単に新しい服を作って売るだけがビジネスではない という考え方を広めていきたいと考えています。

WWD :「新しい服を作って売るだけのビジネス」からの脱却ですね。

渡辺 :そうですね。服というものは 単なる衣類ではなく、そこに込められた想いや、人と人とのつながり、愛を大切にするものだと考えています。それが循環し、次の誰かへと受け継がれていくこと。それこそが、本当に重要なのではないでしょうか。

1枚の服を見たときに、何を想像する?

福代 :抽象的な質問かもしれませんが、1枚の服を見たときに渡辺さんは何を想像しますか?

WWD :質問の背景とは?福代さんご自身は、1枚の服を見たときに何を想像しますか?

福代 :私は服の生産背景に強い関心を持っています。自分が着る服が児童労働や環境破壊の上に成り立っているのは、とても嫌です。そのため、1枚の服を見たときに「この服はどこで作られたのか?」「作った人は幸せだろうか?」「生産された土地の環境は守られているのか?」といったことを想像しながら、慎重に選ぶようにしています。

渡辺 :この写真は、1989年から1990年にかけて、220日間で6,040kmを犬ぞりで南極大陸を横断し探検隊のユニフォームです。デザインを手がけたのは、当時 「ザ・ノース・フェイス」に在籍していた マーク・エリクソンというデザイナーでした。この南極大陸横断隊には、アメリカ・ロシア・中国・フランス・イギリス・日本の6カ国が参加していました。つまり、資本主義の国も共産主義の国も関係なく、世界の枠を超えて協力し合ったプロジェクトだったんです。

では、なぜこの6カ国が南極大陸を横断したのか?その目的は、南極条約を改めて批准してもらうためのアクションでした。南極条約では「南極はどの国の領土でもない」「科学技術や教育の分野で国際協力を進める」といった原則が定められています。現在、この条約には50カ国以上が批准しており、世界平和のための重要な合意のひとつとなっています。当時、資本主義・共産主義の国々が対立する中で、この遠征は「世界平和のために協力する」という強いメッセージを発信するものでした。

この服は、単なる防寒着ではなく、世界平和を象徴するユニフォームなのです。私は、ものづくりにおいて「目的」や「価値」を持たせることが重要だと考えています。最新のテクノロジーと優れたデザインからこのユニフォームに支えられたこの挑戦は、結果として 今も南極条約が守られ続けていることに繋がっています。1枚の服が与えるインパクトは計り知れません。そして、この服を見るたびに、私は「未来のために、平和利用のために服があるのだ」ということ思いますね。

福代 :たくさんの服を開発されている中でも、1枚の服に込められたストーリーや熱量が伝わってきました。ものづくりに対する 「大切にしたい」という強い思いを感じます

考えを大きく変えたアウトドアアクティビティとは?

福代:私もスポーツやアウトドアアクティビティが好きなのですが、渡辺さんもアウトドアが好きですよね。これまでの経験の中で、アウトドアアクティビティが ご自身の考えを大きく変えた出来事 があれば、教えてください。

渡辺 :私はアウトドアスポーツが好きで、この会社に入ってからも続けています。今は毎年北海道でフライフィッシングを楽しんでいます。もう30年以上通い続けている場所ですね。30年前は、あるシーズンに行くと1投すれば必ず1匹釣れるほど魚が豊富でした。ところがここ2〜3年は、まったく釣れなくなっているんです。これは、水温や気温の変化による影響が大きいのではないかと感じています。実際、魚の数が減っているように思います。

釣りを通じて、川や海など自然環境の変化を肌で感じるようになりました。最近は、南の島のサンゴ礁エリアでもフライフィッシングをしていますが、白化したサンゴ礁では魚が少なくなり、釣るのが難しくなっていることも実感しています。こうした変化は、実際に現地に行き、アクティビティを通じて体験しなければ気づけないことです。私にとってアウトドアアクティビティは「今の環境をどうすれば改善できるのか?」を考えるきっかけになっています。

「世界を平和にしたい」。その言葉に打たれた

福代 :最新技術は、まだコストが高いことや、実用化できるか不確実性が高いため、普及には時間がかかると思います。ゴールドウインがスパイバーと服を作ろうと決断した理由は何だったのでしょうか?

渡辺:私は アウトドアスポーツが好きだったこともあり、これまで高機能な製品の開発に携わってきました。しかし、それらの製品はほとんどが化学繊維であり、化石燃料をベースとした素材を使っていたことは否めません。このような素材は、環境に大きな負荷を与えます。簡単に言えば、プラスチックは生分解しないため、長期的に環境に残り続けるという問題があります。そんなとき、私の知人である発酵技術の専門家から「発酵を利用して植物由来の新しい素材を開発している人がいる」と紹介を受けました。そこで実際に会いに行ったのが、スパイバーの代表である関山さんでした。関山さんに初めて会ったとき、彼が最初に言った言葉が「世界を平和にしたい」だったんです。その言葉に私は強く心を打たれました。

彼の話を聞く中で、スパイバーの技術は環境問題の解決だけでなく、貧困問題にもアプローチできる可能性があることを知りました。そのとき「自分がやるべき仕事はこれなんだ」と感じたんです。もちろん、ゴールドウインとしても環境負荷の低い素材を採用する取り組みは以前から進めていました。しかし、それは既存の素材の中で環境に配慮したものを選ぶという方法でした。スパイバーの技術は、それとはまったく異なるアプローチでした。つまり、従来の石油由来素材を完全に置き換える新たな選択肢だったんです。

この新たな選択肢があるのなら、誰かが最初に動かなければならない。正直、決断にはかなりの逡巡がありました。しかし最終的にゴールドウインとして創業以来最大規模の投資を行い、スパイバーとともに取り組むことを決断しました。このプロジェクトを進めることで、石油依存による環境問題を解決する一歩を踏み出せると確信したからです。

WWD :アウトドアの役割の一つは「命を守ること」です。そのために、機能が進化し、技術が発展し、そこに最適なデザインが追求されてきました。しかし、これまでの常識を覆しその根幹をまったく新しい選択肢に置き換えるという発想は、極めて画期的な取り組みだと思います。

「言葉のいらない遊び場。 未来に向けたデザイン

福代 :ゴールドウインさんは服の開発だけでなく、子どもたちの遊び場の創出やキャンプ事業など、さまざまなプロジェクトに取り組まれていますよね。その中で、渡辺さんご自身が特に印象に残っている取り組みは何でしょうか?

渡辺 :そうですね。一番印象に残っているのは、2022年に開催したイベントです。本来であれば、2020年の東京オリンピックに合わせて実施する予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で無観客開催となり、私たちの計画も延期せざるを得ませんでした。

実はその年、ゴールドウインは創業70周年を迎えていました。そこで、世界中からオリンピックに来る人々に、ゴールドウインという会社を知ってもらうための記念事業を企画しました。当時、若いメンバーたちと話し合う中で「国や言語を超えて、みんなの気持ちが一つになるイベントは何か?」というテーマを考えました。

そこで私が提案したのが、「遊び」をテーマにしたデザインでした。私たちは、地球の五大要素である 水・火・土・空気をモチーフにした遊具を設計し、「地球を遊ぶ」体験を提供する空間を作ろうと考えたのです。言葉が通じなくても、そこに集まった人たちが 助け合いながら楽しめる場所を作ることが目的でした。

残念ながら、このイベントはオリンピック期間中には実施できませんでしたが、2年後の2022年に、六本木と富山で開催することができました。結果として、5万人以上の人々が遊びに訪れてくれました。このプロジェクトの背景には、ゴールドウインが掲げる「2050年にどんな会社でありたいか?」というビジョンがありました。その答えのひとつが「遊び」でした。スポーツの起源は「遊び」です。世界中の人々が「遊び」を通じてつながることができるのではないかという思いを込めて、このイベントを企画しました。

デザインは「社会の仕組み」を変える力を持つ

WWD:スポーツの起源は 遊びなんですね。今回のイベントのテーマのひとつに「デザインの力」があります。ゴールドウインは、単なる製品デザインだけでなく、地域創生や社会とのつながりをデザインするという視点も持っています。つまり、社会そのものをデザインすることも、ゴールドウインのデザインの範疇に含まれているのではないかと思うのですが、渡辺さんは 「デザインの力」についてどうお考えですか?

渡辺 :デザインには大きく二つの方向性があると考えています。一つは、これまでになかった機能や利便性を生み出すためのデザインです。新しい技術や素材を活かし、より快適で便利なものを作るという意味でのデザインですね。しかし、私が特に大切にしているのは「人の意識を変えるためのデザイン」です。これはアパレルやバックパックのデザインだけに限らず、空間デザインにも通じる考え方だと思います。

私はこれまでリテール(店舗)のデザインも手がけてきました。単なるショップの設計ではなく「今までにない空間」を生み出すことで、お客様の意識を変えるデザインを追求してきました。その結果、来店されたお客様の「ザ・ノース・フェイス」に対する考え方やデザインそのものへの価値観に変化が生まれてきたと感じています。

このように、デザインはあらゆる分野で応用できる考え方だと思います。デザインは単に「モノをつくる」ことに留まりません。それどころか、社会の大きな仕組みを変え、世界のシステムそのものを変える力を持っています。私自身、この考え方に大きな影響を受けたのが、ケネス・ハップ・クロップ です。彼のデザイン哲学に触れたことで、私は「デザインの本質とは、より良い社会を作ることだ」という考えを持つようになりました。私たちがデザインを通じてより良い社会を生み出すことができれば、私たちの考えや理念をより多くの人に伝えることができると思っています。これからも、私たちの事業の中でデザインの力を活かし、社会に貢献できる取り組みを進めていきたいと考えています。

WWD:これからゴールドウインとして成し遂げたいことについて教えてください。

渡辺 :ゴールドウインは、これまで 日本国内を中心にビジネスを展開してきました。ある意味「ローカルメジャー」と言える存在かもしれません。しかし、これからは海外市場にも積極的にアプローチしていきたい。特に、今後急速な成長が見込まれるアジア・インド・アフリカ などの地域において、スポーツや遊びを通じて、人々がより楽しく健やかに生きられる環境を提供することを目指しています。

「人と違うことをする」勇気を持つ

福代 :今の学生に向けて伝えておきたいことや、若いうちに知っておいてほしいことがあれば、教えてください。

渡辺 :若い学生の皆さんには、すでに素晴らしいビジョンを持っている方が多いと感じています。今日お話しした福代さんもそうですし、私がこれまで出会った若い世代の方々も、しっかりとした思いを持ち、真剣に考えている人が多い。ですから、特に何かを言う必要はないかもしれませんが、自分のやりたいことにしっかりと向き合い、責任を持って進んでいってほしい と思います。

世の中を変えていくことは、決して簡単なことではありません。しかし、「人と違うことをする」ことこそが、大切 だと思っています。ときには、自分が周りと違うことで 不安を感じたり、違和感を持ったり することもあるかもしれません。でも、その違いこそが、自分の魅力になるのです。だからこそ、「自分は人と違うから嫌だ」と思うのではなく、それを誇りに思って前に進んでいってほしいですね。

福代:お話を伺いながら、将来をとても深く見据えていると感じました。私自身も「こんな未来を作りたい」という思いはありますが、実際どう行動すればいいのか分からないことが多いです。特に、気候変動が進み、将来ご飯が食べられなくなるのではないか など、暗い未来ばかりを考えてしまいがちです。解決策を見つけたいと思っても、どの方向に進めばいいのか分からない ことが多いと感じています。しかし、スパイバーの取り組みや、公園のデザインに関するお話を聞いて、「未来に向けて具体的に行動し、決断し、自らの手で変えていこうとしている」姿勢がとても印象的でした。その姿勢から、強い意志と決断力 が伝わってきて、とてもかっこいいと感じましたし、私自身も 何か行動を起こしたいです。

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ゴールドウイン渡辺社長へ19歳の活動家から質問 「環境問題にどれくらい本気ですか?」

PROFILE:左:福代 美乃里(ふくしろ・みのり)/学生団体「やさしいせいふく」代表

都立高校に通う高校3年生。中学校の先生の影響で環境問題に関心を持つようになる。2021年11月に行われた第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に、若者による気候変動の活動団体Fridays For Future Japanのメンバーとして参加する。学生団体「やさしいせいふく」は、人にも環境にもやさしい服づくりを目指して講演会の実施やGOTS認証のオーガニックコットンTシャツの販売などを行っている。24年夏には資金を集めて同シャツのコットンを生産するインドの農家や縫製工場を訪ねて、取材を行った。高校では陸上部に所属。

PROFILE:右:渡辺 貴生(わたなべ・たかお)/ゴールドウイン代表取締役社長

1960年生まれ。76年にザ・ノース・フェイスと出会い、「わたしたちはあらゆる機会を通じて地球環境保護の大切さを伝えていかなければならない」というブランドの思想に感銘し、82年、同ブランドを日本国内で展開するゴールドウインに入社。同ブランドの成長とともに国内のアウトドアファッションの定着にも貢献。05年より取締役執行役員ノースフェイス事業部長、17年より取締役副社長執行役員。20年4月1日より代表取締役社長に就任。27年には富山県内に体験型アウトドアフィールドを開設するプロジェクトを推進し、人と自然が共生する社会の実現と、地球環境再生を経営の最重要項目のひとつとして掲げるなど、サステナブルな経営を実践している。

ゴールドウインが支持集めている理由のひとつが人の心を捉える「デザイン」の力だ。その対象は、製品だけではなく地域創生など「社会」へと広がっている。イノベーションの力を借りてデザインの領域を広げているゴールドウインのデザインに対する考え方、その背景にあるサステナビリティの方針について、渡辺貴生ゴールドウイン代表取締役社長を招いて紐解く。聞き手は高校3年生の活動家、福代美乃里。「ファッションが好きだから、真実を知りたい」と言う彼女から飛び出す質問とは?

(この対談は2024年12月13日に開催した「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」から抜粋したものです)

WWD :最初の質問は、私から渡辺さんにお伺いします。学校を卒業して最初に就職したのがゴールドウインだったと伺っています。なぜ、ゴールドウインを選んだのですか?

渡辺貴生ゴールドウイン代表取締役社長(以下、渡辺) :私は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」というブランドが大好きで、その存在を初めて知ったのが1976年、高校2年生のときでした。当時、雑誌「メンズクラブ」で「ザ・ノース・フェイス」が紹介されていたんです。それまではアイビーファッションに憧れていましたが、その記事を読んで初めて「ヘビーデューティー」というスタイルに触れました。そして、「ザ・ノース・フェイス」がアメリカ・バークレーで行っているものづくりを知り、「自分のやりたいことに近い」と強く感じました。他の道も考えましたが、どうしても「ザ・ノース・フェイス」のような仕事に携わりたいと思い、最終的にゴールドウインへの入社を決めました。

WWD:写真はどこで撮ったものですか?

渡辺:これは、ゴールドウインに入社してしばらく経ち、「ザ・ノース・フェイス」のMD(マーチャンダイザー)になった頃の写真だと思います。おそらく1990年頃、ヨーロッパでの一枚ですね。2枚目はさらに前、1986年頃の写真です。私は現在、フライフィッシングが大好きですが、当時はまだ始めておらず、ルアーを使って芦ノ湖でブラックバスを釣っていました。これは、その頃、まだ釣りを始めたばかりのときの写真です。

このとき着ているのは、「ザ・ノース・フェイス」のアウトレットで購入したもので、軍の端材を利用して作られた服です。つまり、余った生地を使って生産され、バークレーのアウトレットで販売されていた商品ですね。今でも大切に使っています。「ザ・ノース・フェイス」のロゴが入っていません。代わりに「Windy Pass by The North Face」というブランド名がついており、これはアウトレット専用ブランドでした。

WWD:昔からあまり変わらないスタイルが、現在の成功の理由の一つかもしれませんね。2005年から取締役執行役員として「ザ・ノース・フェイス」の事業部長を務められました。まさに現在に繋がる「ザ・ノース・フェイス」の時代を築かれた期間だったと思います。自己分析すると、なぜ「ザ・ノース・フェイス」はここまで認知され、人気を得ることができたのでしょうか?

渡辺:これは、私が創業者から学んだことが大きいですね。「ザ・ノース・フェイス」は、2人の創業者によって成り立っています。1人は、「ザ・ノース・フェイス」という名前を作ったダグラス・トンプキンスです。彼は、世界的な自然保護活動家としても有名でした。もう1人は、ブランドを製造メーカーとして発展させたケネス・ハップ・クロップです。彼は、社会の仕組みを変えるために新しい事業を始めたいと考え、「ザ・ノース・フェイス」のブランドを買い取り、ものづくりの会社へと発展させました。

当時、アメリカはベトナム戦争の真っ只中でした。その時代、若者たちは従来の社会システムに疑問を抱き、「コーポレート・アメリカ」と呼ばれる大企業中心の社会に対し、異なる選択肢を求める動きが広がっていました。そうした若者たちを応援するために、クロップはものづくりを始めたのです。写真に写っているのはバックパックですが、これは当時「アウトバックスタイル」と呼ばれていました。当時、まだ「バックパッキング」という言葉すら存在していませんでしたが、若者たちは「本当の生き方とは何か」「社会とどう向き合うべきか」「自分たちはどんな社会を作るべきか」と、自然の中で深く考えるようになっていました。そのムーブメントを支えるために生まれたのが、このバックパックです。

もともと「ザ・ノース・フェイス」は、クライミングギアのメーカーではなく、ライフスタイルをサポートするブランドとしてスタートしました。私自身も、その理念に非常に共感しました。地球や自然環境と密接に関わりながら生きることが、人間らしさを見直す大きなチャンスになると考えたからです。「ザ・ノース・フェイス」を単なるアウトドアブランドではなく、ライフスタイルブランドとして確立することを目標に掲げて取り組んできた点が、他のブランドとは大きく異なる特徴だと考えています。

WWD:上の2枚目の写真はそれを象徴していますね。

渡辺:これは1970年代初期の写真だと思います。当時のアメリカには、先進的な考えを持つ人々もいましたが、同時にヒッピーカルチャーが広がっていました。その中でも、新しい価値観を築こうとする真剣な人々が多く、さまざまな経験を積み重ねながら新たな思想を生み出していました。Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズも、おそらく同じような考え方を持っていた一人だったのではないかと思います。

WWD:なるほど、よく分かりました。そして、20年4月に代表取締役社長に就任されましたが、西田会長からは当時、どのような思いを託され、何を成し遂げようと考えて就任を決断されたのでしょうか?

渡辺 :そうですね。私の会社は、西田明男会長の前の社長、つまり西田会長のお父様が創業しました。私もその創業者から直接、多くのことを教えていただきました。お二人から常に言われていたのは「ものづくりの大切さを徹底的に貫いてほしい」ということでした。私たちの会社には「見えないものにこそ、『真実』の価値がある」という言葉があります。つまり、表面的なデザインにこだわるのではなく、本当に重要なのは、目には見えない緻密な作業であり、それを追求することで本当に価値のあるものが生まれる、という考え方です。

また「人生は100年ほどしかないのだから、自分の人生を燃えるように生きなさい」とも教えられました。その考え方を会社全体で共有し、社会に対して何か貢献できる企業でありたいと思っています。

WWD :「燃えるように生きる」と聞いた福代さんが良い笑顔を見せました。

福代 美乃里学生団体「やさしいせいふく」代表(以下、福代) :燃えるように生きたいと思っていますし、私も高校3年生で将来のこと、自分に与えられた人生をこれからどう使っていこうかとか、自分には何ができるんだろうかとこの一年考えてきていたので言葉が刺さりました。

WWD:ゴールドウインにとってサステナビリティは何どういう位置付けにありますか?

渡辺 :あらゆる人々に対して公正な未来を提供することこれが私が考えるサステナビリティですね。

高校3年生がサステナビリティに関心をもったきっかけ

WWD:ここから福代さんからの質問でその「サステナビリティ」について深めていきます。福代さん自己紹介をお願いします。

福代 :はじめまして、福代美乃里です。都立高校に通う高校3年生で現在、学生団体「やさしいせいふく」の代表を務めています。

WWD :そもそも、サステナビリティに関心を持ったきっかけは?

福代:もともと服が大好きで、買うのはもちろん、生地を購入して自分で服を作ることもありました。そんな中、中学3年生のときに、ちょうどコロナ禍で自宅にいる時間が増え、「ザ・トゥルー・コスト」というドキュメンタリー映画を観たんです。その映画を通して、それまで知らなかった ファッション業界の不都合な真実を知りました。

例えば、自分と同じくらいの年の子どもたちが、低賃金で長時間労働を強いられている こと。そして、私は自然が好きなのですが、服の生産が環境破壊につながっている という事実を知り、大きな衝撃を受けました。「おしゃれを楽しむことが、誰かを傷つけているかもしれない」。そのことがショックで、サステナビリティに強く関心を持つようになりました。

WWD :その映画を観てから服を買わなくなったのですか?

福代 :観た直後はまったく買えなくなりました。どの服を見ても、購入をためらってしまって。でも今は、サステナビリティに取り組んでいる企業を調べたり、古着を購入したりしながら、少しずつファッションを楽しめるようになっています。

WWD :福代さんの話を聞きながら、「そんな気持ちにさせてごめん…」という気持ちになりました。そんな福代さんですが、今年の夏、なんとインドのオーガニックコットン畑や縫製工場を訪ねました。

福代 :インドのコインバトールという地域にある工場やオーガニックコットンの畑や倉庫を現地の方に案内していただきながら、綿がどのように栽培・保管・管理されているのかを見学しました。一つひとつの工程を実際に見せてもらいながら学ぶことができました。

WWD :なぜインドへ行こうと思ったのですか?

福代 :今私が着ているTシャツは、私たちが企画した「やさしいTシャツ」というオーガニックコットンのTシャツです。この企画は、私と同じようにサステナビリティに関心を持つ学生たちが集まり、「普段売られている服がどのように作られているのか分からない。だったら、自分たちで作ってみよう!」という思いから始めました。けれど、ちょうどコロナ禍だったため、Tシャツの生産地であるインドに行くことができませんでした。オンラインでは工場と繋がっていたものの、やはり 現場を直接見てみたい、作ってくれた人たちに会いたい という気持ちが強くなり、今回の渡航を決意しました。

WWD :実際に現地を訪れて、どのようなことが見えましたか?

福代 :一つは「オーガニックコットンを選んで本当に良かった」という実感です。

現地の農家の方々に話を伺うと、以前は 農薬を使用した栽培を行っており、それによって健康被害が多発していたそうです。例えば、子どもたちががんを発症したり、亡くなったりするケースがあり、また農家の方々自身も視力障害や手足の痙攣などの深刻な影響を受けていたそうです。

しかし、化学農薬を使わないオーガニック栽培に切り替えたことで、こうした健康被害がなくなったと聞きました。実際にその話をしてくれた方々と直接対話したことで、自分の選択が遠い国の誰かの暮らしを少しでも良くしているかもしれない、と感動しましたね。

WWD :まさにサステナブルな選択の重要性を実感されたのではないでしょうか。

福代 :はい、オーガニックコットンの良さを実感すると同時に、普段私たちが購入する服がどこで、どのように作られているのかについて、消費者にはまだ見えにくい部分が多いとも感じました。

今回、最先端のサステナブルな取り組みを行っている工場も訪れましたが、こうした取り組みを行う工場で作られた服がもっと増えて、消費者が簡単にその背景を知ることができるようになればいいなと思いました。企業が積極的に情報を開示し、消費者も知ろうとする姿勢が大切だと改めて感じました。

WWD:貴重な経験ですね。実際に 現場を自分の目で見るということは非常に大切です。では、ここから本日のメインパートに移り福代さんから渡辺さんへ質問をしてもらいます。

「環境や人権への取り組みはどれくらい本気ですか?」

福代 :最初の質問ですが、御社のホームページを拝見した際、最初に目に入ったのが「人と自然の可能性を広げる」というメッセージでした。環境や人権を大切にされていることが強く伝わってきましたが、実際のところ渡辺さんご自身は、どのくらい本気で取り組まれているのかをお聞きしたいです。また、企業のビジョンとしてこの考えを中心に据えようと思った具体的なきっかけや思いがあれば、教えてください。

渡辺 :本気度については「かなり本気」です。社内では「パタゴニアくらいはやろう」と言っています。それくらいの覚悟でゴールドウインを日本におけるサステナブルな企業のリーダーとして確立したいと考えています。

実際に、私自身は1990年代から少しずつサステナブルな取り組みを始めてきました。ただ、会社として本格的に動き出したのは比較的最近です。それでも、この思いをしっかりと持ち続け、企業のビジョンの中心に据えるべきだと考えています。

その理由として、私たちの事業は スポーツやアウトドアに深く関わっています。私は米国のヨセミテ国立公園が大好きで、これまで何十回も訪れています。今年も6月に、役員の何人かを連れて一緒に訪問しました。

こうした かけがえのない自然を守ることは、人間の使命だと強く感じています。そもそも地球がなければビジネスは成り立たないわけです。アウトドアスポーツにせよ、その他のスポーツにせよ、環境が整っていなければ成り立たない。

私たちの仕事はある意味「遊びの延長」です。しかし「遊びこそが人間らしさを育み、多くの人とのつながりを生むもの」だと考えています。だからこそ、単に「地球環境を守る」だけではなく、再生(リジェネラティブ) していくことこそが、私たちの存在意義であり企業のビジョンとして掲げるべきものだと考えています。

WWD :「守る」から「再生する」へ。これは本気も本気 という答えですね。

そもそも、なぜ企業にとって事業成長が必要なのか?

福代 :2つ目の質問です。そもそも、なぜ企業にとって事業成長が必要なのでしょうか?環境保全と事業成長を両立させるには、どのような方法があると思いますか?

渡辺:よく聞かれる質問です。私が事業成長が必要だと考える理由は、「地球を再生していくため」です。私たちが本質的に必要とする環境を、自分たちの手で作り上げていくことができれば、もっと人間は地球に貢献できるはずです。つまり、私たちの産業や事業を通じて、環境問題を解決することが、事業成長の目的であるべきだと考えています。そのため単なる「経済的な成長」ではなく、「人間としての成長」とは何かを考えながら事業を発展させることが、本当の意味で持続可能な成長を生み出すのではないかと思います。私自身も、そのような考えのもとで仕事に取り組んでいきたいと考えています。

福代 :ゴールドウインさんは 2050年までに、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成と廃棄ゼロを掲げていますよね。これは非常に難しい挑戦だと思いますが、それを達成するために最も必要な変化は何だと考えますか? 最大の課題について教えてください。

渡辺 :カーボンニュートラルを実現するためには、スコープ3の削減を徹底することが重要だと考えています。現在、私たちのCO2排出量は、スコープ1から3を合わせて約26万トンありますが、その99%がスコープ3によるものです。つまり、直接の排出ではなく サプライチェーン全体での排出が圧倒的に多いのです。そのため最も重要なのは、サプライチェーン全体で環境への配慮を共有し、協力し合う仕組みを作ることだと考えています。

まずは「自分たちは何のために事業をしているのか?」を明確にし、「どのような変化がプラスになるのか?」をしっかり示すことが必要です。さらに、具体的なアクションとプロセスをどのように変えていくのかを明確にし、発信していくことも大切だと思います。確かに大きな課題ではありますが、誰かが始めなければ変革の第一歩は生まれません。私たちは、そうした一つひとつの取り組みを、責任を持って進めていきたいと考えています。

WWD :今のお話の内容は、ゴールドウインの統合報告書にも具体的な数値として記載されています。後ほど、裏付けとなるデータもご覧いただければと思います。そしてこの質問は、ここにいる全員が 「19歳から投げかけられている問い」だと受け止めるべきものですね。

福代 :服は、大量生産・大量消費の象徴的な存在だと思います。現在もその考え方は根強く残っており、先ほど話に出た環境と事業成長の両立についても、大量生産・大量消費のままでは難しいのではないかと感じています。そこで、ゴールドウインとしてどのようにこの考え方を変えていこうとしているのかをお聞きしたいです。

渡辺 :そうですね。実は、ゴールドウインには以前から 大量生産・大量消費という考え方はあまりありません。もちろん、ブランドの人気が高まると売り上げが伸び、それに伴い生産量も増えるという側面はあります。しかし、私たちはそうした背景の中でも製品を長く使い続けてもらう仕組みを重視してきました。

例えば、1992年頃から リペアサービスを本格的に導入しています。GORE-TEX製品のような高額なウェアは、アウトドア環境で使用すると傷んだり破れたりすることがあります。しかし、それを修理できなければ、すぐに廃棄されてしまう可能性がありますよね。そこで、工場内に専用のリペアチームを設け、現在では年間約2万4000点の製品を修理し、お客様にお返ししています。

また、最近では子ども服のリサイクルにも取り組んでいます。子ども服は成長とともにすぐにサイズアウトしてしまいます。そこで、不要になった服を店舗で回収し、新しいデザインにアップサイクルして再び販売する取り組みを行っています。単に洗浄して再販するのではなく、新たなデザインを加えることでより魅力的なアイテムとして生まれ変わらせることを大切にしています。

さらに、私たちは「ワンフォーワンシステム」 という特別なものづくりの仕組みも導入しています。これは、人気のある商品についてお客様自身がオリジナルのデザインを作れるサービスです。特定の店舗では、お客様の体のサイズを測定し、カラーやファスナーの種類、その他の細かいパーツまで自由にカスタマイズできるようになっています。このサービスを利用することで、既製品ではなく自分のライフスタイルに合った一着を作ることができ、長く愛用してもらえるのです。この仕組みは、大量生産とは異なるアプローチです。

「自分の人生の中で、どんな服をどのように使いたいのか?」そんなことを考えながら、お客様とともにゴールドウインや「ザ・ノース・フェイス」の製品を作り上げていくサービスとして展開しています。こうした取り組みを通じて、単に新しい服を作って売るだけがビジネスではない という考え方を広めていきたいと考えています。

WWD :「新しい服を作って売るだけのビジネス」からの脱却ですね。

渡辺 :そうですね。服というものは 単なる衣類ではなく、そこに込められた想いや、人と人とのつながり、愛を大切にするものだと考えています。それが循環し、次の誰かへと受け継がれていくこと。それこそが、本当に重要なのではないでしょうか。

1枚の服を見たときに、何を想像する?

福代 :抽象的な質問かもしれませんが、1枚の服を見たときに渡辺さんは何を想像しますか?

WWD :質問の背景とは?福代さんご自身は、1枚の服を見たときに何を想像しますか?

福代 :私は服の生産背景に強い関心を持っています。自分が着る服が児童労働や環境破壊の上に成り立っているのは、とても嫌です。そのため、1枚の服を見たときに「この服はどこで作られたのか?」「作った人は幸せだろうか?」「生産された土地の環境は守られているのか?」といったことを想像しながら、慎重に選ぶようにしています。

渡辺 :この写真は、1989年から1990年にかけて、220日間で6,040kmを犬ぞりで南極大陸を横断し探検隊のユニフォームです。デザインを手がけたのは、当時 「ザ・ノース・フェイス」に在籍していた マーク・エリクソンというデザイナーでした。この南極大陸横断隊には、アメリカ・ロシア・中国・フランス・イギリス・日本の6カ国が参加していました。つまり、資本主義の国も共産主義の国も関係なく、世界の枠を超えて協力し合ったプロジェクトだったんです。

では、なぜこの6カ国が南極大陸を横断したのか?その目的は、南極条約を改めて批准してもらうためのアクションでした。南極条約では「南極はどの国の領土でもない」「科学技術や教育の分野で国際協力を進める」といった原則が定められています。現在、この条約には50カ国以上が批准しており、世界平和のための重要な合意のひとつとなっています。当時、資本主義・共産主義の国々が対立する中で、この遠征は「世界平和のために協力する」という強いメッセージを発信するものでした。

この服は、単なる防寒着ではなく、世界平和を象徴するユニフォームなのです。私は、ものづくりにおいて「目的」や「価値」を持たせることが重要だと考えています。最新のテクノロジーと優れたデザインからこのユニフォームに支えられたこの挑戦は、結果として 今も南極条約が守られ続けていることに繋がっています。1枚の服が与えるインパクトは計り知れません。そして、この服を見るたびに、私は「未来のために、平和利用のために服があるのだ」ということ思いますね。

福代 :たくさんの服を開発されている中でも、1枚の服に込められたストーリーや熱量が伝わってきました。ものづくりに対する 「大切にしたい」という強い思いを感じます

考えを大きく変えたアウトドアアクティビティとは?

福代:私もスポーツやアウトドアアクティビティが好きなのですが、渡辺さんもアウトドアが好きですよね。これまでの経験の中で、アウトドアアクティビティが ご自身の考えを大きく変えた出来事 があれば、教えてください。

渡辺 :私はアウトドアスポーツが好きで、この会社に入ってからも続けています。今は毎年北海道でフライフィッシングを楽しんでいます。もう30年以上通い続けている場所ですね。30年前は、あるシーズンに行くと1投すれば必ず1匹釣れるほど魚が豊富でした。ところがここ2〜3年は、まったく釣れなくなっているんです。これは、水温や気温の変化による影響が大きいのではないかと感じています。実際、魚の数が減っているように思います。

釣りを通じて、川や海など自然環境の変化を肌で感じるようになりました。最近は、南の島のサンゴ礁エリアでもフライフィッシングをしていますが、白化したサンゴ礁では魚が少なくなり、釣るのが難しくなっていることも実感しています。こうした変化は、実際に現地に行き、アクティビティを通じて体験しなければ気づけないことです。私にとってアウトドアアクティビティは「今の環境をどうすれば改善できるのか?」を考えるきっかけになっています。

「世界を平和にしたい」。その言葉に打たれた

福代 :最新技術は、まだコストが高いことや、実用化できるか不確実性が高いため、普及には時間がかかると思います。ゴールドウインがスパイバーと服を作ろうと決断した理由は何だったのでしょうか?

渡辺:私は アウトドアスポーツが好きだったこともあり、これまで高機能な製品の開発に携わってきました。しかし、それらの製品はほとんどが化学繊維であり、化石燃料をベースとした素材を使っていたことは否めません。このような素材は、環境に大きな負荷を与えます。簡単に言えば、プラスチックは生分解しないため、長期的に環境に残り続けるという問題があります。そんなとき、私の知人である発酵技術の専門家から「発酵を利用して植物由来の新しい素材を開発している人がいる」と紹介を受けました。そこで実際に会いに行ったのが、スパイバーの代表である関山さんでした。関山さんに初めて会ったとき、彼が最初に言った言葉が「世界を平和にしたい」だったんです。その言葉に私は強く心を打たれました。

彼の話を聞く中で、スパイバーの技術は環境問題の解決だけでなく、貧困問題にもアプローチできる可能性があることを知りました。そのとき「自分がやるべき仕事はこれなんだ」と感じたんです。もちろん、ゴールドウインとしても環境負荷の低い素材を採用する取り組みは以前から進めていました。しかし、それは既存の素材の中で環境に配慮したものを選ぶという方法でした。スパイバーの技術は、それとはまったく異なるアプローチでした。つまり、従来の石油由来素材を完全に置き換える新たな選択肢だったんです。

この新たな選択肢があるのなら、誰かが最初に動かなければならない。正直、決断にはかなりの逡巡がありました。しかし最終的にゴールドウインとして創業以来最大規模の投資を行い、スパイバーとともに取り組むことを決断しました。このプロジェクトを進めることで、石油依存による環境問題を解決する一歩を踏み出せると確信したからです。

WWD :アウトドアの役割の一つは「命を守ること」です。そのために、機能が進化し、技術が発展し、そこに最適なデザインが追求されてきました。しかし、これまでの常識を覆しその根幹をまったく新しい選択肢に置き換えるという発想は、極めて画期的な取り組みだと思います。

「言葉のいらない遊び場。 未来に向けたデザイン

福代 :ゴールドウインさんは服の開発だけでなく、子どもたちの遊び場の創出やキャンプ事業など、さまざまなプロジェクトに取り組まれていますよね。その中で、渡辺さんご自身が特に印象に残っている取り組みは何でしょうか?

渡辺 :そうですね。一番印象に残っているのは、2022年に開催したイベントです。本来であれば、2020年の東京オリンピックに合わせて実施する予定でした。しかし、新型コロナウイルスの影響で無観客開催となり、私たちの計画も延期せざるを得ませんでした。

実はその年、ゴールドウインは創業70周年を迎えていました。そこで、世界中からオリンピックに来る人々に、ゴールドウインという会社を知ってもらうための記念事業を企画しました。当時、若いメンバーたちと話し合う中で「国や言語を超えて、みんなの気持ちが一つになるイベントは何か?」というテーマを考えました。

そこで私が提案したのが、「遊び」をテーマにしたデザインでした。私たちは、地球の五大要素である 水・火・土・空気をモチーフにした遊具を設計し、「地球を遊ぶ」体験を提供する空間を作ろうと考えたのです。言葉が通じなくても、そこに集まった人たちが 助け合いながら楽しめる場所を作ることが目的でした。

残念ながら、このイベントはオリンピック期間中には実施できませんでしたが、2年後の2022年に、六本木と富山で開催することができました。結果として、5万人以上の人々が遊びに訪れてくれました。このプロジェクトの背景には、ゴールドウインが掲げる「2050年にどんな会社でありたいか?」というビジョンがありました。その答えのひとつが「遊び」でした。スポーツの起源は「遊び」です。世界中の人々が「遊び」を通じてつながることができるのではないかという思いを込めて、このイベントを企画しました。

デザインは「社会の仕組み」を変える力を持つ

WWD:スポーツの起源は 遊びなんですね。今回のイベントのテーマのひとつに「デザインの力」があります。ゴールドウインは、単なる製品デザインだけでなく、地域創生や社会とのつながりをデザインするという視点も持っています。つまり、社会そのものをデザインすることも、ゴールドウインのデザインの範疇に含まれているのではないかと思うのですが、渡辺さんは 「デザインの力」についてどうお考えですか?

渡辺 :デザインには大きく二つの方向性があると考えています。一つは、これまでになかった機能や利便性を生み出すためのデザインです。新しい技術や素材を活かし、より快適で便利なものを作るという意味でのデザインですね。しかし、私が特に大切にしているのは「人の意識を変えるためのデザイン」です。これはアパレルやバックパックのデザインだけに限らず、空間デザインにも通じる考え方だと思います。

私はこれまでリテール(店舗)のデザインも手がけてきました。単なるショップの設計ではなく「今までにない空間」を生み出すことで、お客様の意識を変えるデザインを追求してきました。その結果、来店されたお客様の「ザ・ノース・フェイス」に対する考え方やデザインそのものへの価値観に変化が生まれてきたと感じています。

このように、デザインはあらゆる分野で応用できる考え方だと思います。デザインは単に「モノをつくる」ことに留まりません。それどころか、社会の大きな仕組みを変え、世界のシステムそのものを変える力を持っています。私自身、この考え方に大きな影響を受けたのが、ケネス・ハップ・クロップ です。彼のデザイン哲学に触れたことで、私は「デザインの本質とは、より良い社会を作ることだ」という考えを持つようになりました。私たちがデザインを通じてより良い社会を生み出すことができれば、私たちの考えや理念をより多くの人に伝えることができると思っています。これからも、私たちの事業の中でデザインの力を活かし、社会に貢献できる取り組みを進めていきたいと考えています。

WWD:これからゴールドウインとして成し遂げたいことについて教えてください。

渡辺 :ゴールドウインは、これまで 日本国内を中心にビジネスを展開してきました。ある意味「ローカルメジャー」と言える存在かもしれません。しかし、これからは海外市場にも積極的にアプローチしていきたい。特に、今後急速な成長が見込まれるアジア・インド・アフリカ などの地域において、スポーツや遊びを通じて、人々がより楽しく健やかに生きられる環境を提供することを目指しています。

「人と違うことをする」勇気を持つ

福代 :今の学生に向けて伝えておきたいことや、若いうちに知っておいてほしいことがあれば、教えてください。

渡辺 :若い学生の皆さんには、すでに素晴らしいビジョンを持っている方が多いと感じています。今日お話しした福代さんもそうですし、私がこれまで出会った若い世代の方々も、しっかりとした思いを持ち、真剣に考えている人が多い。ですから、特に何かを言う必要はないかもしれませんが、自分のやりたいことにしっかりと向き合い、責任を持って進んでいってほしい と思います。

世の中を変えていくことは、決して簡単なことではありません。しかし、「人と違うことをする」ことこそが、大切 だと思っています。ときには、自分が周りと違うことで 不安を感じたり、違和感を持ったり することもあるかもしれません。でも、その違いこそが、自分の魅力になるのです。だからこそ、「自分は人と違うから嫌だ」と思うのではなく、それを誇りに思って前に進んでいってほしいですね。

福代:お話を伺いながら、将来をとても深く見据えていると感じました。私自身も「こんな未来を作りたい」という思いはありますが、実際どう行動すればいいのか分からないことが多いです。特に、気候変動が進み、将来ご飯が食べられなくなるのではないか など、暗い未来ばかりを考えてしまいがちです。解決策を見つけたいと思っても、どの方向に進めばいいのか分からない ことが多いと感じています。しかし、スパイバーの取り組みや、公園のデザインに関するお話を聞いて、「未来に向けて具体的に行動し、決断し、自らの手で変えていこうとしている」姿勢がとても印象的でした。その姿勢から、強い意志と決断力 が伝わってきて、とてもかっこいいと感じましたし、私自身も 何か行動を起こしたいです。

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「エイチ・カツカワ」が「Bコープ」認証取得 靴製造・協業・修理・アートピース製作活動の先に見据える靴の未来

PROFILE: 勝川永一/エイチ・カツカワ代表取締役

勝川永一/エイチ・カツカワ代表取締役
PROFILE: 東京・渋谷生まれ。大学卒業後、国内の靴メーカー勤務を経て渡英。英国ノーザンプトンのトレシャム・インスティテュート フットウェアコースで靴のデザインと製作を学ぶ。卒業後「ポールハーデン」でインターン経験を積む。2004年帰国。靴修理職人として働きながら靴のデザインと製作を継続。07年春夏シーズンに独自の皮革にこだわったシューズコレクションを発表し、大手セレクトショップで取り扱われる。10年東京目黒区に靴の修理店「THE SHOE OF LIFE」を開店。同年新宿伊勢丹メンズ館シューズラボ、12年レクレルールとドーバーストリートマーケットギンザでの販売が始まる。16年2月にノーザンプトン博物館&美術館の美術館コレクションに収蔵される。20年3月国家資格クリーニング師資格取得

シューズブランド「エイチ・カツカワ(H.KATSUKAWA)」を手掛けるエイチ・カツカワがこのほど「Bコープ」認証を取得した。総合スコアは97.8点で内訳はガバナンス8.7、従業員29.3、コミュニティ24.2、環境31.3、顧客4。2006年に創業し、パリのレクレルール(L’Eclaireur)やドーバーストリートマーケットギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)といった有力店に並び、16年にはノーザンプトン博物館&美術館(Northampton Museum and Art Gallery)にコンセプチュアルシューズ作品「Return to the Soil」が美術館コレクションに収蔵されるなど、品質とデザイン、そしてコンセプトが評価されてきた。「ポーター(PORTER)」や「フレッドペリー(FRED PERRY)」などこれまでさまざまなブランドとコラボレーションを行っている。10年には靴の修理店「THE SHOE OF LIFE」を目黒に開き、これまで約6万足を修理。また、東京を中心に街のコインランドリーでもスニーカークリーニングができるように技術指導や協力を行うなど活動の幅広さが目を引く。勝川永一代表取締役が目指すこととは。

「愛し、使い続けていただける靴」を目指して

多岐にわたる活動の目的は一つだった。「『愛し、使い続けていただける靴』を愚直に、実現するための活動を続けてきた」。

一般的なデザイナーが目指すブランドビジネスといえば、有力店に卸し有力ブランドとコラボレーションしながら、毎シーズン新作を発表して生産量を増やし、直営店を開けることだろう。しかし、勝川代表取締役は実践しない。2020年以降、「エイチ・カツカワ」の新作を生産していない。「自社が実現したい製品の品質やデザインに研究開発に専念している。具体的には再生素材や循環システムの開発、動物福祉へのアプローチなどで、そのプロセスでサンプリングした製品見本を年に1回発表してはいるが、生産の条件が整わず結果的に生産に至っていない」。現在は修理店の運営と他社との協業のみを行っている。「もちろん経済的利益を出すことを前提にしているし、例えば開発中のリサイクルゴムを用いたソールが一般的なものよりも環境負荷を低減できれば、拡大したいと考えている。現状はそこに達していないので生産しない。経済性とサステナビリティを両立した完全な製品を生産することは現時点では難しく、それを追求すると矛盾をはらむとも感じている」。

勝川代表取締役は渋谷界隈で育ち、ファッションが好きでセレクトショップや古着屋に通っていた。「古着に興味を持ち、生産方法が合理化したことでスペックが変わっていることが面白かった。僕は合理化される前のプロダクトが好きだったが、ファッション産業のスピードは加速する一方。大量生産・大量消費・大量廃棄のビジネスモデルは理解できても違和感をぬぐえなかった」。そんなことを感じながら渡英しノーザンプトンで靴作りを学び、その後「ポールハーデン(PAUL HARNDEN)」で経験を積んだ。帰国後の2年間は靴修理店で働いた。「靴修理を行うことで合理化された時間軸が見えてきた。1970年代以前に天然由来の原材料で作られた靴やその製法に準じているものは長持ちする。80年代に入ると部分的にプラスチックが使われ、プラスチックが割れると使えなくなる。スニーカーの耐久年数は短く、消耗するからビジネスが回るとは理解しているが、僕はデザイン性があり修理しながら長く使うことができる品質の靴をブランドとして提案したいと考えた」。

通常は皮革に使われない皮の活用を始めたのも「エイチ・カツカワ」だった。「最も体に近い部位を皮革としてなめしている。不均一な表情は、機械やコンピュータなどとは大きく違い、それぞれが個性を持っていて美しいと感じた」。捨てられる部位は問屋にも並ばない。取り扱う企業を探し、スエードをなめすことができる職人と開発に着手し、06年に完成したレザーを「ニベレザー」と名付けた。

「Bコープ」認証取得で活動の意義を明文化

エイチ・カツカワは勝川代表取締役の他に正社員が1人とアルバイトが1人と事業規模は小さい。なぜ「Bコープ」を目指したのか。「切迫感があった。目標は環境・社会問題解決につながる靴のデザインを業界の主流にすること。その未来を切り開くにはいわゆるファッション的なイメージ訴求では伝えきれないことがある。表層的に同じようなことに取り組むブランドもある中で、結局はイメージの訴求合戦になる。靴修理で靴を長持ちさせることや捨てられる部位を皮革に昇華した『ニベレザー』などこれまで取り組んできたことを明文化したいと思った」。難易度の高い「Bコープ」取得に向けて伴走したのは「シーエフシーエル(CFCL)」や足立区でハンドバッグの製造や精密裁断加工を行うエヌ・ケーの「Bコープ」取得をサポートした岡田康介シソンズ社長だ。

評価されたポイントは「著名なブランド含め多くのブランドがスニーカーの修理を積極的に受け入れない、あるいはサービスとして全く受け付けていない中で、『原則として、いかなる修理依頼も積極的に受ける』ことをポリシーに業界に先駆けてスニーカーの修理やクリーニングを実践したこと。また、他ブランドへの技術教育も請け負ってきたことで、業界内にインパクトをもたらしたこと。加えて、東京を中心に街のコインランドリーでもスニーカークリーニングができるよう、技術指導や協力を行い、広めた実績。修理店が病院に近いこともあり、足の不自由な方への靴修理や調整サービスを積極的に行い、格差社会の是正に取り組んできた実績が評価された」。

一方、難易度が高かったこともあった。「靴修理が環境負荷低減に寄与していることを実証するのが難しかった。例えば素材。修理にはできる限り端材を使っているがエビデンスとして実証できない。第三者認証を得ているリサイクル素材であれば証明は簡単だが、そもそも日本国内に修理材にリサイクル材がない。業界全体との取り組みにより改善していく必要があると感じた。捨てられる部位を有効活用している『ニベレザー』に関しても皮革のサプライチェーンが複雑なため、動物福祉に関しても証明ができない。自社の調達により動物福祉慣行が広がったなどのインパクトを実証するに至っていないため、今後の更なる取り組みが必要だと感じた。動物福祉を当たり前にした上での動物皮革の利用と生物多様性が保全される社会を実現したい」。

今後は「現代の『靴の在り方』を進化させ、持続可能性をさらに強化した製品開発やサービス拡充を進める。当社が事業に必要だと考える主要な要素は企画、生産、ガバナンス、PR、財務。自社の不足するリソースはビジョンをともにできる企業と協業して、社会に資する事業として成長させたい。地域社会やグローバルなコミュニティとの連携を深め、循環型経済をリードする企業として多くの方々に持続可能な選択肢を提供し、業界全体の進化を支える存在であり続けたい」と意欲的だ。

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「アパレル中小企業の応援団に」 サステナビリティ対応の新ガイドツールが日本上陸

オーストラリアの非営利団体グッドオンユー(GOOD ON YOU)がアパレル企業向けに開発したサステナビリティ対応ツール「グッドメジャーズ(good measures)」がこのほど、日本に上陸した。「顔の見えるライフスタイルの実現」を掲げ、トレーサブルな再エネサービス「みんな電力」をはじめ、さまざまなSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)サービスを提供するUPDATERが、2023年に同団体と事業提携を締結し運営を担う。

900万人が利用する
「グッドオンユー」

世界最大級のエシカル評価機関グッドオンユーは、消費者向けにブランドの“エシカル度”を掲載するウェブサイトおよびアプリの「グッドオンユー」を運営している。「グッドオンユー」では、ブランド名を検索すると、グッドオンユーの専門家集団が算出したそのブランドの“エシカル度”や、具体的なサステナビリティの取り組みを知ることができ、「なるべくサステナブルな商品を買いたいけれど、どんな基準で選んだら良いか分からない」「自分が好きなブランドがどれくらいサステナビリティ対応しているのか知りたい」といった消費者の悩みに応える。ウェブサイトには、世界の6000以上ブランドの情報が掲載されており、アプリ・ウェブサイトほかを含む年間利用者数は、900万人に上る。

さまざまなブランドから信頼を集めるグッドオンユーのリソースを活用して、透明性向上のガイドツールになるよう開発されたのが企業向けサービス「グッドメジャーズ」だ。日本でこれを普及させようと意気込むのが、UPDATERの山浦誉史担当と浦田庸子担当だ。「グッドメジャーズ」事業を統括する山浦誉史担当は、グローバルSPA企業でサステナビリティ戦略の推進に携わった。「前職では日本のアパレル中小企業から、『私たちは何から始めたらよいのか』と相談を受けることもあった。しかし、正直大手の資本があるからできることも多くあった。世界では情報開示の規制が強まっているなか、もっと日本のアパレル企業の目線に立って現実的なサポートができないかと考えていた矢先に出合ったのが『グッドメジャーズ』だった」と山浦担当。一方、浦田担当は女性ファッション誌のエディター職からの転職だ。「“エシカル評価”というと警戒されがちだが、私たちは日本の中小企業の透明性向上の応援団だ」と語る。

約1000項目の評価詳細で
自社の透明性が分かる

「グッドメジャーズ」の仕組みはこうだ。まず、同団体の専門家集団がブランドの一般公開情報に基づいて、「地球」「人」「動物」の3つの観点から“エシカル度”を評価する。例えば「地球」では脱炭素や資源循環、「人」では労働条件やトレーサビリティー、「動物」では動物繊維にまつわる認証の取得状況などの取り組みが該当する。合計で約1000の項目を総合評価して、最終的な“エシカル度”を5段階で算出する。

「グッドメジャーズ」のサービスに登録したブランドは、専用のウェブサイトが割り当てられ自社の“エシカル度”の評価内訳を見ることができる。各項目の自社のスコアに加えて、同規模の他社の平均値も確認できる。なお、評価が掲載されていない場合には、「グッドオンユー」に評価を依頼した後、「グッドメジャーズ」の機能が使える。

さらに各項目ページでは、「製品レベルでの認証は取得できているか?」「それはどんな認証か?」「全製品のうち認証を取得している割合はどの程度か」といった具合に複数の質問が並び、ユーザーはアンケート形式で設問に回答する。その回答をグッドオンユーの担当者が精査し、再びスコア化してくれるという仕組み。併せて、優先的に取り組むべき項目の提案や、その項目を改善するために有益なサービス、団体情報などもあり、サステナビリティロードマップの作成に参考になる。

「健康診断のような感覚で活用してほしい」

山浦担当は「サステナビリティ対応は何から始めればいいのか分からないという声もよく聞くが、自分の状態を知ることが第一歩。ブランドにはこのサービスを健康診断のような感覚で活用してほしい」と言う。

グッドオンユーの調査によれば、日本ブランドは長期保証やリペアといった製品寿命を延ばす取り組みには積極的な一方で、水資源やマイクロプラスチック、森林伐採については情報開示が少なく、包装・パッケージの最小化の取り組みも消極的な傾向があるという。「グッドメジャーズ」を活用すると、こうした日本企業が見落としがちな視点に気付き包括的なサステナビリティ対応の解像度を上げることができる。

アパレル産業を
盛り上げていくことが裏ゴール

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情報開示で終わらず、次のアクションにつなげていくことが同サービスの本質だ。UPDATERでは日本独自の取り組みとして、サステナビリティにまつわる取り組みを生活者向けに発信するウェブサイト製作のサポートや、UPDATERが持つSX関連サービスの特別価格での提供といったユーザープランを用意してサステナビリティ対応を支援する。

また、「グッドオンユー」の日本版としてウェブサイト「シフトシー(Shift C)」も立ち上げた。ここでは、ブランドの“エシカル度”検索の機能のほか、サステナブルファッションについて学べるウェブコンテンツなどを掲載する。メディア事業を率いる浦田担当は、「私の役割は、サステナブルファッションのファンを増やすこと。スコア改善を目指す渦中の努力やブランドの『私たちはこんなことをしています』をどんどん紹介して、情報開示の文化を一緒に作っていきたい」と話す。

山浦担当は「国内のアパレル産業を盛り上げていくことが私たちの裏ゴールだ。『グッドメジャーズ』はいわば世界のサステナビリティ対応を知るための情報の宝庫。このツールをいかようにも活用して日本のファッションブランドの皆さんを応援していきたい」と思いを語る。

問い合わせ先
Shift C
https://shiftc.jp/contact/

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「212キッチンストア」がワールドの衣類在庫をエプロンの原料として再利用

ワールドグループ傘下のライフスタイルイノベーションが展開するキッチン用品専門店「212キッチンストア(212 KITCHEN STORE)」はこのほど、ワールドグループの素材ブランド「サーキュリック(CIRCRIC)」の生地を使用した「サーキュリック エプロン」を発売した。

同商品に使用した生地「サーキュリック・フォー・ワールドループ(CIRCRIC for WORLD LOOP)」はワールドグループの衣類の繊維を分解し、原料となる糸から製造した、いわゆるクローズドループと呼ばれる方法で作られている。残った在庫を廃棄せずに原料として再利用した同社初の取り組みとなり、約一年半の開発期間をかけて商品化された。

エプロンはロングタイプと、腰に巻いて使えるショートタイプの2種類。カラーバリエーションはそれぞれネイビー、イエロー、パープル、ストライプの計4種類を用意する。価格はロングタイプが5,940円、ショートタイプが3,190円(いずれも税込)。

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海を漂流するプラゴミの現状 漁網リサイクルのエキスパートに聞く

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、アパレル資材を扱う商社モリトアパレルの船崎康洋サステナブルデザイン室室長代理です。船崎さんは日本国内の漁港から回収した漁網を原料にしたリサイクルナイロン「ミューロン」を開発しました。漁網のリサイクルのエキスパートである船崎さんに、海洋問題の現状について聞きました。



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「アニエスベー」×「ヘリーハンセン」 日本の漁港で発生した廃棄漁網由来の素材などを採用

ゴールドウインが展開するノルウェー発のマリンウエアブランド「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」は、「アニエスベー(AGNES B.)」とコラボレーションし海洋問題をテーマに据えた日本限定コレクションを発売した。両ブランドがタッグを組むのは初。モリトアパレルが開発した廃棄漁網を原料にしたリサイクルナイロン「ミューロン(MURON)」や、東南アジア沿岸に漂着した廃棄ペットボトル由来のポリエステルなどを用いたユニセックスアイテム10型とキッズアイテム8型で、「アニエスベー」の一部直営店と公式オンラインストア、「ヘリーハンセン」の店舗および、公式オンラインストアで販売中だ。

コラボは「ヘリーハンセン」側からオファーした。企画を担当したゴールドウインの井上翔太・グローバルブランド事業本部・ヘリーハンセン事業部・企画グループMDは、「私たちは水資源を守る活動や海洋ゴミを原料とするリサイクル素材の採用などを進めてきたが、アウトドアブランドとしての立場からは届けられる人に限りがあると感じていた。より多くの人に海洋問題に関心を持ってもらうためには、ファッションの力が必要。アニエスほど、『海が好き』というメッセージをストレートに発信できるデザイナーはいない」とオファーに至った経緯を話す。デザイナーのアニエス・トゥルブレは海を愛し、2003年には海洋に特化した公益財団法人タラ オセアン財団を立ち上げ、海洋探査船タラ号とその活動をサポートしているという背景がある。

日本で回収した漁網素材を初めて製品化

注目は日本の漁港で回収された廃棄漁網を100%使用したリサイクルナイロン「ミューロン」を使ったアイテム群だ。同素材が製品化されるのは本コレクションが初。井上担当は、「トレーサビリティーの取れた素材で、お客さまによりストーリー性を感じてもらえると考えた」と話す。

「ミューロン」は廃棄漁網をケミカルリサイクルしバージンと同等の品質と安定性を持つ。コレクションに登場するウィンドブレーカーは、「ミューロン」と紡績工程で発生するナイロンの落ち綿を再生したリサイクルナイロンを高密度で打ち込んでハリ感のある風合いを実現した。内側には、アニエス自身が撮影した海の写真と“j’aime la mer! (海が好き!)”のメッセージを添えた特別ネームを配した。ウィンドブレーカーはキッズサイズも用意し「親子で着用していただき、一緒に海に出かけたり、次世代にこのテーマを伝えてもらえたりしたらうれしい」と井上担当。

「アニエスべー」らしいボーダーTシャツには、東南アジアに漂着したペットボトルを原料としたリサイクルポリエステルを使用している。これは「日本からでた海洋ゴミは東南アジアに漂着することが多いと知り、採用を決めた」という。

「ヘリーハンセン」渋谷店では、廃棄漁網を使ったディスプレーでもコレクションのストーリーを表現している。また「アニエスべー」渋谷店では1月30日まで、『j’aime la mer!(海が好き!)』をテーマにした写真展を開催中だ。

27日にはゴールドウイン本社で、モリトアパレルの担当者を招いて漁網のリサイクルを体験するワークショップを開催し社内理解を促した。井上担当は、「一度きりの発信では伝えきれない問題だ。継続的に取り組んでいきたい」と展望を語る。

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「アシックス」が自動車用レザーを再利用したシューズを発売 豊田合成と協業

「アシックス スポーツスタイル(ASICS SPORTSTYLE)」は、自動車部品メーカーの豊田合成と協業し、同社が自動車のハンドルに使用している自動車用レザーの端革を再利用したシューズ“スカイハンド オージー(SKYHAND OG)”(1万5400円)を、2月1日に発売する。サイズ展開は22.5〜29.5(0.5cm刻み)、30.5、31.0cmで、「アシックス」フラッグシップ原宿、大阪心斎橋、オンラインストアで販売する。

同シューズは、1990年代に販売していたハンドボールシューズ“スカイハンド”をベースに、当時のデザインDNAを受け継ぎながら、スリムなコートシルエットを現代的な履き心地にアップデートした。アッパーはブラックで、サイドとかかと部、ベロ部に豊田合成の端革で作ったスエードとスムースレザーを採用。これらの材料は、メインアッパーの50%以上を占めている。さらにステッチやミシン目など、自動車のハンドルからインスパイアしたディテールを各所に取り入れた。

「アシックス」が豊田合成と協業したシューズは、2023年1月発売の、廃棄を予定していたエアバッグの生地を再利用した“ゲルソノマ フィフティーンフィフティ(GEL-SONOMA 15-50)”に続く第2弾だ。

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「アシックス」が自動車用レザーを再利用したシューズを発売 豊田合成と協業

「アシックス スポーツスタイル(ASICS SPORTSTYLE)」は、自動車部品メーカーの豊田合成と協業し、同社が自動車のハンドルに使用している自動車用レザーの端革を再利用したシューズ“スカイハンド オージー(SKYHAND OG)”(1万5400円)を、2月1日に発売する。サイズ展開は22.5〜29.5(0.5cm刻み)、30.5、31.0cmで、「アシックス」フラッグシップ原宿、大阪心斎橋、オンラインストアで販売する。

同シューズは、1990年代に販売していたハンドボールシューズ“スカイハンド”をベースに、当時のデザインDNAを受け継ぎながら、スリムなコートシルエットを現代的な履き心地にアップデートした。アッパーはブラックで、サイドとかかと部、ベロ部に豊田合成の端革で作ったスエードとスムースレザーを採用。これらの材料は、メインアッパーの50%以上を占めている。さらにステッチやミシン目など、自動車のハンドルからインスパイアしたディテールを各所に取り入れた。

「アシックス」が豊田合成と協業したシューズは、2023年1月発売の、廃棄を予定していたエアバッグの生地を再利用した“ゲルソノマ フィフティーンフィフティ(GEL-SONOMA 15-50)”に続く第2弾だ。

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「キークス」水原希子とローラ 耕作放棄地や後継者不足に光を当てるコラボを語る

PROFILE: 左:水原希子、右:ローラ

左:水原希子、右:ローラ
PROFILE: 水原希子(みずはら・きこ)女優、モデルとしてマルチに活躍している。 2010 年に映画「ノルウェイの森」でスクリーンデビューし、その後も多くの映画に出演。 「奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール」ではヒロイン役を務め、「あの子は貴族」では高崎映画祭にて最優秀助演女優賞を受賞した。米国のブランド「オープニング セレモニー」とのコラボレーションライン「キコ ミズハラ フォー オープニング セレモニー」を手掛け、世界的シンガーのリアーナやビヨンセが着用したことで話題になる。 自らのブランド「OK」は、日本のギャルカルチャーからインスピレーションを受け、自由で解放的なスタイルと場を追求している。サステナブルな活動にも取り組んでおり、再生素材や環境負荷の低い天然素材を使用したオリジナルプロダクトを提供。日本語と英語を話す。 Rola(ローラ)16 歳でモデルデビュー。ハーフモデルとして独⾃のアイデンティティーをもち、その愛くるしいキャラクターと個性溢れるスタイルで国内外を問わず活躍。あらゆるファッション誌の表紙を飾り、さまざまな表情でファンを楽しませている。 2016 年12 月に公開された⽶映画「バイオハザードⅥ : ザ・ファイナル」では、映画製作プロデューサーの⽬にとまり戦⼠役に抜擢されハリウッド映画デビューを果たす。環境に配慮した自身のライフスタイルブランド「STUDIO R330」も手掛ける。PHOTO: Kzasushi Toyota

インスタグラムのフォロワー数は2人合わせて約1700万人。特に若い女性に大きな影響力を持つ水原希子とローラは、水原がプロデュースするブランド「キークス(KIIKS)」の第3弾アイテム「茶の実ヘアオイル(GREEN TEA SEED HAIR OIL)」で協業をした。この2つの製品の魅力は製品自体に加えて、その存在を通じて日本の地域課題「農業離れと耕作放棄地」および「後継者不足による伝統文化の衰退」に光を当てるところにある。「髪を美しく保ちながら社会課題解決の一助となる」という思いを掲げ、彼女たち行動を起こしている。

放棄茶畑では茶の木が花を咲かせ、秋にはたくさんの実をつける

「茶の実ヘアオイル」のお披露目の会は1月14日に、東京・渋谷の街中にひっそりとたたずむ小さな古民家で開かれた。靴を脱いで上がる昭和の佇まいの居間を展示スペースとし、水原とローラは終日説明にあたっていた。空間全体はヘアオイルの甘みのある爽やかな香りと、同時開催したワークショップで使用するハーブティーの香りで包まれていた。

フロア中央の木製ボウルには大量の茶色い殻に包まれた実が飾られている。これが製品の原点となる茶の実だ。茶葉は見たことがあっても、茶の実は見たことがない人は多いだろう。なぜなら現在の茶の栽培では一般的に、茶葉に栄養がいくよう新芽を摘んだ後、刈り取ってしまうため花を咲かせず、茶の実もならないからだ。しかし、放棄茶畑では茶の木が9月から11月にかけて花を咲かせ、秋にはたくさんの実をつける。「キークス」は、茶の実から抽出された茶実油使用のヘアオイルの開発を通じて地域の課題解決の一助となろうと考えた。

2人を中心とした「キークス」のチームが赴いたのはヘアオイルの製造を行う会社ボタニカルファクトリーがある鹿児島県大熊半島。同社は、廃校した小学校・中学校の跡地に化粧品工場を作り、自然由来の原料を使ったナチュラルコスメを手がけている。同社からほど近い同県錦江盤山地区は県内有数のお茶どころで、他の多くの地域と同じく農業従事者の高齢化や若者の農業離れが深刻な問題となっている。また茶の消費量の減少や茶葉価格の低迷も続いており結果、広大な茶畑が放置され、未使用の茶の実が大量に発生しているのが現状だ。

「キークス」チームは昨年秋に同地区の自治体との話し合いから始め、地元の人たちと耕作放棄茶畑に入り150キログラム近くの茶の実を収集。畑近くの体育館を借りての手作業で殻むきに始め、製品化へとつなげた。茶の実拾いから製品化まで2ヶ月弱というスピードだ。製品は茶の実油と桜島産の椿油をベースに、サンダルウッドとジャスミンのエッセンシャルオイルをブレンド。手に取るとふわりと広がる華やかで心地よい香りが誕生した。

薩摩つげ櫛にオイルを馴染ませ髪をすく

オイルと合わせて木原つげ櫛屋による「薩摩つげ櫛」も、お茶染めのケースに入れて発売する。このつげ櫛はオイルとの相性がとても良い。つげは成長が遅いために年輪が狭く、木材はきめ細かい弾力のある質感がある。黄色くなめらかな肌合いの櫛は、椿油を染み込ませて使うことで、髪をすく(梳く)たびに自然な艶と潤いを与えるという。最近は「髪をとかす」という表現が一般的だが、この櫛を手にすると「髪をすく」という描写がピッタリであることに気がつく。木製の櫛は静電気が発生しにくく、髪を傷めることが少なく、さらに天然の抗菌作用を持つため、長期間使用しても清潔に保つことができるという。

「薩摩つげ櫛」もまた他の伝統工芸と同じく、存続の危機にある。「薩摩つげ櫛」は江戸時代からその名を全国に広め、特に薩摩地方では深く愛されてきた。整髪料がなかった時代から、つげ櫛は一生ものの道具として重宝されており、女児の誕生を祝うためにツゲの木を植える伝統もあったという。製作には高い技術が求められ、熟練の職人たちが丁寧に作り上げているが、後継者不足の課題に直面しており、次世代の職人を育てる取り組みが急務となっている。「キークス」は、「薩摩つげ櫛」の存在を伝え、魅力を広めることで伝統工芸を守る一助となることを願い取り組んだ。

水原希子とローラの人を巻き込む推進力とコラボの力

2人から製造過程の説明を聞く中で印象的だったのは、コラボレーションの力だ。インスタグラムのフォロワー数は水原希子(i_am_kiko)783.2万人、ローラ(rolaofficial)908.9万人(いずれも2025年1月24日時点)と、それぞれに大きな影響力を持つ。その影響力を“正しく”掛け算し、「伝統工芸を守るきっかけとなる事を心から願う」と行動する。2人は互いの仕事をどう見ているのか?会場で話を聞いた。

WWD:お互いのクリエイションの強みについて教えてください。お互いをクリエイターとしてどのように評価していますか?

ローラ:私から見て希子ちゃんは「みんな一緒にやろうよ」というエネルギーがとても強い人です。そのエネルギーが、今回のプロジェクトにも大きく影響していると感じています。それと同時に希子ちゃんのセンスも素晴らしいです。彼女は長年ファッション業界に携わってきた経験を活かし、選び抜かれたセンスを持っています。今回のビジュアルもとてもかっこよく仕上がり、広告というよりアート作品のようになりました。

WWD:「良いこと」をセンス良く伝えることは大切ですね。それでも多くの人を巻き込むのは簡単ではないですよね。

ローラ:そうですね、簡単ではありません。同じ業界で働いていると、さまざまなしがらみや環境問題など、難しい課題がたくさん出てきます。しかし、それでも挑戦し続ける希子ちゃんの姿勢には本当に感心します。一人で心細くなることもありますが、それでも信念を持ち、進み続けるのは勇気のいることです。彼女の強さや情熱にはいつも刺激を受けています。

水原希子(以下、水原):ローラは努力家で、何事にも真摯に取り組み、常に新しいことを学び続けています。そして学んだことをみんなとシェアする姿勢がとても尊い。自分の学びを言葉で伝えることは簡単なことではありませんが、彼女はそれをスピーディーに、そしてピュアな思いで実践しています。その純粋さや優しさが、多くの人々を包み込む魅力になっています。また、彼女はネガティブな経験をすべてポジティブなエネルギーに変える力を持っていて、本当にすごいと思います。

WWD:今回のプロジェクトでは、香りの部分にもローラさんが深く関わったと伺いましたが、どのような思いを込めましたか?

ローラ:香りには特別なこだわりを持ちました。私はメディテーションをするのですが、瞑想やものづくりをする中で、自分を落ち着かせるためのエキゾチックな要素を取り入れたいと考えました。香りは感覚的で、内面を癒す力があると思います。

水原:私も椿オイルを使ったシンプルなヘアオイルを作りたいと考えていました。ローラと一緒に成分を一つ一つ選び抜きながら、学んできたことを活かして作りました。ローラの手作りコスメを使ったとき、その香りと効能に感動したのが、このプロジェクトを始めるきっかけでした。

WWD:耕作放棄茶畑でどのような経験をしたのですか?

水原:この商品は、多くのボランティアや地元の方々の協力がなければ実現しませんでした。放置された畑に入り、道を切り開きながら種を集める作業はとても大変でしたが、みんなで力を合わせてやり遂げました。地元の方々も日本の未来や環境問題について真剣に考えてくださり、目的を共有して取り組む姿勢がとても心強かったです。

WWD:地元の方々との交流で印象的だったことは?

ローラ:お茶を作る地元のおばあちゃんが話してくれた伝統や文化の話がとても印象的でした。お茶づくりを通じて自分を見つめ直し、伝統を未来につなげようとする姿勢に感動しました。

水原:お茶の実を拾う作業は大変でしたが、その過程で地元の方々と話す時間がとても有意義でした。皆さんの純粋な思いが、今回のプロジェクトに込められていると感じます。

WWD:いじわるな質問になりますが、後継者不足という課題はとてつもなく大きくて、一つのアクションがどのくらいの影響を生めるのでしょうか?

水原:実は、プロジェクト通じて出会った地元の若い方が畑を購入を決意し、すでに作業を始るなどの変化が生まれました。私たちの活動がきっかけで、一歩ずつですが前進していると感じます。

WWD:ワークショッを組み合わせた理由は?

水原:ワークショップでは、自分の体調に合わせたハーブティーをブレンドしたり、アロマオイルを作ったりと、感覚を研ぎ澄ませる体験を提供しています。商品だけでなく、体験そのものを持ち帰ってもらうことで、自分を知り、自分を癒すきっかけになればと願っています。

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「キークス」水原希子とローラ 耕作放棄地や後継者不足に光を当てるコラボを語る

PROFILE: 左:水原希子、右:ローラ

左:水原希子、右:ローラ
PROFILE: 水原希子(みずはら・きこ)女優、モデルとしてマルチに活躍している。 2010 年に映画「ノルウェイの森」でスクリーンデビューし、その後も多くの映画に出演。 「奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール」ではヒロイン役を務め、「あの子は貴族」では高崎映画祭にて最優秀助演女優賞を受賞した。米国のブランド「オープニング セレモニー」とのコラボレーションライン「キコ ミズハラ フォー オープニング セレモニー」を手掛け、世界的シンガーのリアーナやビヨンセが着用したことで話題になる。 自らのブランド「OK」は、日本のギャルカルチャーからインスピレーションを受け、自由で解放的なスタイルと場を追求している。サステナブルな活動にも取り組んでおり、再生素材や環境負荷の低い天然素材を使用したオリジナルプロダクトを提供。日本語と英語を話す。 Rola(ローラ)16 歳でモデルデビュー。ハーフモデルとして独⾃のアイデンティティーをもち、その愛くるしいキャラクターと個性溢れるスタイルで国内外を問わず活躍。あらゆるファッション誌の表紙を飾り、さまざまな表情でファンを楽しませている。 2016 年12 月に公開された⽶映画「バイオハザードⅥ : ザ・ファイナル」では、映画製作プロデューサーの⽬にとまり戦⼠役に抜擢されハリウッド映画デビューを果たす。環境に配慮した自身のライフスタイルブランド「STUDIO R330」も手掛ける。PHOTO: Kzasushi Toyota

インスタグラムのフォロワー数は2人合わせて約1700万人。特に若い女性に大きな影響力を持つ水原希子とローラは、水原がプロデュースするブランド「キークス(KIIKS)」の第3弾アイテム「茶の実ヘアオイル(GREEN TEA SEED HAIR OIL)」で協業をした。この2つの製品の魅力は製品自体に加えて、その存在を通じて日本の地域課題「農業離れと耕作放棄地」および「後継者不足による伝統文化の衰退」に光を当てるところにある。「髪を美しく保ちながら社会課題解決の一助となる」という思いを掲げ、彼女たち行動を起こしている。

放棄茶畑では茶の木が花を咲かせ、秋にはたくさんの実をつける

「茶の実ヘアオイル」のお披露目の会は1月14日に、東京・渋谷の街中にひっそりとたたずむ小さな古民家で開かれた。靴を脱いで上がる昭和の佇まいの居間を展示スペースとし、水原とローラは終日説明にあたっていた。空間全体はヘアオイルの甘みのある爽やかな香りと、同時開催したワークショップで使用するハーブティーの香りで包まれていた。

フロア中央の木製ボウルには大量の茶色い殻に包まれた実が飾られている。これが製品の原点となる茶の実だ。茶葉は見たことがあっても、茶の実は見たことがない人は多いだろう。なぜなら現在の茶の栽培では一般的に、茶葉に栄養がいくよう新芽を摘んだ後、刈り取ってしまうため花を咲かせず、茶の実もならないからだ。しかし、放棄茶畑では茶の木が9月から11月にかけて花を咲かせ、秋にはたくさんの実をつける。「キークス」は、茶の実から抽出された茶実油使用のヘアオイルの開発を通じて地域の課題解決の一助となろうと考えた。

2人を中心とした「キークス」のチームが赴いたのはヘアオイルの製造を行う会社ボタニカルファクトリーがある鹿児島県大熊半島。同社は、廃校した小学校・中学校の跡地に化粧品工場を作り、自然由来の原料を使ったナチュラルコスメを手がけている。同社からほど近い同県錦江盤山地区は県内有数のお茶どころで、他の多くの地域と同じく農業従事者の高齢化や若者の農業離れが深刻な問題となっている。また茶の消費量の減少や茶葉価格の低迷も続いており結果、広大な茶畑が放置され、未使用の茶の実が大量に発生しているのが現状だ。

「キークス」チームは昨年秋に同地区の自治体との話し合いから始め、地元の人たちと耕作放棄茶畑に入り150キログラム近くの茶の実を収集。畑近くの体育館を借りての手作業で殻むきに始め、製品化へとつなげた。茶の実拾いから製品化まで2ヶ月弱というスピードだ。製品は茶の実油と桜島産の椿油をベースに、サンダルウッドとジャスミンのエッセンシャルオイルをブレンド。手に取るとふわりと広がる華やかで心地よい香りが誕生した。

薩摩つげ櫛にオイルを馴染ませ髪をすく

オイルと合わせて木原つげ櫛屋による「薩摩つげ櫛」も、お茶染めのケースに入れて発売する。このつげ櫛はオイルとの相性がとても良い。つげは成長が遅いために年輪が狭く、木材はきめ細かい弾力のある質感がある。黄色くなめらかな肌合いの櫛は、椿油を染み込ませて使うことで、髪をすく(梳く)たびに自然な艶と潤いを与えるという。最近は「髪をとかす」という表現が一般的だが、この櫛を手にすると「髪をすく」という描写がピッタリであることに気がつく。木製の櫛は静電気が発生しにくく、髪を傷めることが少なく、さらに天然の抗菌作用を持つため、長期間使用しても清潔に保つことができるという。

「薩摩つげ櫛」もまた他の伝統工芸と同じく、存続の危機にある。「薩摩つげ櫛」は江戸時代からその名を全国に広め、特に薩摩地方では深く愛されてきた。整髪料がなかった時代から、つげ櫛は一生ものの道具として重宝されており、女児の誕生を祝うためにツゲの木を植える伝統もあったという。製作には高い技術が求められ、熟練の職人たちが丁寧に作り上げているが、後継者不足の課題に直面しており、次世代の職人を育てる取り組みが急務となっている。「キークス」は、「薩摩つげ櫛」の存在を伝え、魅力を広めることで伝統工芸を守る一助となることを願い取り組んだ。

水原希子とローラの人を巻き込む推進力とコラボの力

2人から製造過程の説明を聞く中で印象的だったのは、コラボレーションの力だ。インスタグラムのフォロワー数は水原希子(i_am_kiko)783.2万人、ローラ(rolaofficial)908.9万人(いずれも2025年1月24日時点)と、それぞれに大きな影響力を持つ。その影響力を“正しく”掛け算し、「伝統工芸を守るきっかけとなる事を心から願う」と行動する。2人は互いの仕事をどう見ているのか?会場で話を聞いた。

WWD:お互いのクリエイションの強みについて教えてください。お互いをクリエイターとしてどのように評価していますか?

ローラ:私から見て希子ちゃんは「みんな一緒にやろうよ」というエネルギーがとても強い人です。そのエネルギーが、今回のプロジェクトにも大きく影響していると感じています。それと同時に希子ちゃんのセンスも素晴らしいです。彼女は長年ファッション業界に携わってきた経験を活かし、選び抜かれたセンスを持っています。今回のビジュアルもとてもかっこよく仕上がり、広告というよりアート作品のようになりました。

WWD:「良いこと」をセンス良く伝えることは大切ですね。それでも多くの人を巻き込むのは簡単ではないですよね。

ローラ:そうですね、簡単ではありません。同じ業界で働いていると、さまざまなしがらみや環境問題など、難しい課題がたくさん出てきます。しかし、それでも挑戦し続ける希子ちゃんの姿勢には本当に感心します。一人で心細くなることもありますが、それでも信念を持ち、進み続けるのは勇気のいることです。彼女の強さや情熱にはいつも刺激を受けています。

水原希子(以下、水原):ローラは努力家で、何事にも真摯に取り組み、常に新しいことを学び続けています。そして学んだことをみんなとシェアする姿勢がとても尊い。自分の学びを言葉で伝えることは簡単なことではありませんが、彼女はそれをスピーディーに、そしてピュアな思いで実践しています。その純粋さや優しさが、多くの人々を包み込む魅力になっています。また、彼女はネガティブな経験をすべてポジティブなエネルギーに変える力を持っていて、本当にすごいと思います。

WWD:今回のプロジェクトでは、香りの部分にもローラさんが深く関わったと伺いましたが、どのような思いを込めましたか?

ローラ:香りには特別なこだわりを持ちました。私はメディテーションをするのですが、瞑想やものづくりをする中で、自分を落ち着かせるためのエキゾチックな要素を取り入れたいと考えました。香りは感覚的で、内面を癒す力があると思います。

水原:私も椿オイルを使ったシンプルなヘアオイルを作りたいと考えていました。ローラと一緒に成分を一つ一つ選び抜きながら、学んできたことを活かして作りました。ローラの手作りコスメを使ったとき、その香りと効能に感動したのが、このプロジェクトを始めるきっかけでした。

WWD:耕作放棄茶畑でどのような経験をしたのですか?

水原:この商品は、多くのボランティアや地元の方々の協力がなければ実現しませんでした。放置された畑に入り、道を切り開きながら種を集める作業はとても大変でしたが、みんなで力を合わせてやり遂げました。地元の方々も日本の未来や環境問題について真剣に考えてくださり、目的を共有して取り組む姿勢がとても心強かったです。

WWD:地元の方々との交流で印象的だったことは?

ローラ:お茶を作る地元のおばあちゃんが話してくれた伝統や文化の話がとても印象的でした。お茶づくりを通じて自分を見つめ直し、伝統を未来につなげようとする姿勢に感動しました。

水原:お茶の実を拾う作業は大変でしたが、その過程で地元の方々と話す時間がとても有意義でした。皆さんの純粋な思いが、今回のプロジェクトに込められていると感じます。

WWD:いじわるな質問になりますが、後継者不足という課題はとてつもなく大きくて、一つのアクションがどのくらいの影響を生めるのでしょうか?

水原:実は、プロジェクト通じて出会った地元の若い方が畑を購入を決意し、すでに作業を始るなどの変化が生まれました。私たちの活動がきっかけで、一歩ずつですが前進していると感じます。

WWD:ワークショッを組み合わせた理由は?

水原:ワークショップでは、自分の体調に合わせたハーブティーをブレンドしたり、アロマオイルを作ったりと、感覚を研ぎ澄ませる体験を提供しています。商品だけでなく、体験そのものを持ち帰ってもらうことで、自分を知り、自分を癒すきっかけになればと願っています。

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「アー・ペー・セー」のリユースプロジェクト第2弾 青山&神戸店で昨年回収分を販売

「アー・ペー・セー(A.P.C.)」は1月31日から2月28日の期間限定で、不要になった過去シーズンのウエアの回収、査定、ポイント付与を行う“アー・ペー・セー ビンテージプロジェクト”第2弾を展開する。

同企画は、不要になった「アー・ペー・セー」のウエアを対象ショップに持ち込み査定をクリアした人を対象に、会計時に使えるメンバーシップポイントを付与。回収したアイテムをクリーニングし、一部店舗で再販売するサステナブルなプロジェクトだ。

第2弾“アー・ペー・セー ビンテージプロジェクト”

今回は1月31日〜2月11日の期間青山店で、2月15〜28日の期間神戸店で、昨年日本で回収したウエアを再販売する。さらに1月31日〜2月28日の期間、対象ショップで過去シーズンのウエアの回収を行う。

回収対象商品はTシャツ、スエットシャツ、フーディー、セーター、カーディガン、シャツ、ブラウス、スカート、ショーツ、パンツ、ジーンズ、ジョギングパンツ、ワンピース、オールインワン、コート、ジャケット、ブルゾンのみ。付与ポイントはアイテムごとに異なり、カットソーは500ポイント、ニットは1000ポイント、ワンピース、ボトムスは1500ポイント、アウターは3000ポイントとなる。ポイントは3月14日前後に付与予定で、有効期限は6月30日。

「アー・ペー・セー」は2022年4月にパリのノートルダム・ド・ナザレ通りにアー・ペー・セー ビンテージストアをオープンしている。

プロジェクト概要

◾️“アー・ペー・セー ビンテージプロジェクト再販”

再販期間:1月31日〜2月11日(青山)、2月15〜28日(神戸店)
住所:東京都渋谷区神宮前5-47-13(青山)、兵庫県神戸市京町70(神戸)

◾️“アー・ペー・セー ビンテージプロジェクト回収”

回収期間: 1月31日〜2月28日

対象店舗:代官山FEMME、代官山HOMME、原宿アンダーグラウンド、青山、渋谷パルコ、日比谷、二子玉川、横浜ニュウマン、湘南、名古屋、なんば、梅田、神戸、西宮、京都、金沢、広島、福岡、博多、大分、鹿児島、仙台、札幌店

引き取り条件:
・メンバーシップへのご登録が必須
・2010年以降の商品で、洗濯表示ラベルにA.P.C. Japanの表記があり、洗濯表示ラベルが縫い付けられている。ラベルには、2から始まる10桁あるいは11桁の品番が印字されている
・判断が難しい場合はスタッフが査定を行う
・素材が緩んでいないか、歪んでいない
・穴、裂け目、引っ掛かり、毛玉、臭いがない
・ボタン、ジッパーなどが欠損していない
・手直しや改造がされていない
・雑貨の回収は行わない
・1人3点まで
・回収後の取り下げ、キャンセル不可

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東急プラザ原宿「ハラカド」でサステナブルをテーマにしたイベント開催 50超企業が参加


東急不動産、東急不動産SCマネジメント、Free StandardおよびCYKLUSは、サステナブルをテーマにした無料イベント「エコマキ The First CIRCULAR あしたのスタンダードを探しに」を、東急プラザ原宿「ハラカド」で1月31日から2月2日までの3日間開催する。学生および20~30代を主な対象となる。ブランドやメーカー、パートナー企業が協力し「サステナブルな循環型社会へのシフトを参加者に提案することでサステナブルを身近なカルチャーとして体感し、最初の一歩を踏み出してもらう」ことを目指す。

衣類の修理やサーキュラービジネス支援を行うCYKLUSと、ブランドのリコマース支援を行うFree Standardが企画運営を担い、50を超える企業が参加。トークセッションやサステナブル×ファッションについての映画上映のほか、洋服のリペア・リユース・アップサイクルを体験できるプログラムを用意する。東急不動産が運営するハラカド以外の商業施設のテナントも協力企業として参加する。

会場は2つのゾーンで構成し、「体験する」ゾーンでは複数のブランドによる合同リペアチームが、ブランドを問わず来館者の服やバッグを修理する。また、リペアチームがサポートを行う、リペアパッチなどを使ったセルフリペアも体験できる。ほかに藍染体験や服のリメイクを体験するブースを用意する。「知る」ゾーンでは、ファッションについてのドキュメンタリー映画「リペアカフェ」「燃えるドレスを紡いで」「カトマイに刻む足跡」を上映する。また、一部の回では映画の監督やディレクターによるトークセッションも実施する。さらに、本イベント協力ブランドのサステナブルに関する取り組みの紹介や展示、ブランドオフィシャルのリユース品販売などを行う。

■エコマキ The First CIRCULAR あしたのスタンダードを探しに
会場:東急プラザ原宿「ハラカド」4階「ハラッパ」
日時:2025年1月31日(金)11:30〜18:00 ※11:30~12:30オープニングイベント
       2月1日(土)11:00〜18:00
       2月2日(日)11:00〜18:00
費用:無料(ファッションアイテムの販売など一部コンテンツは有料)

■協賛企業・ブランド
A&F / A.P.C. / ABAHOUSE / agnes b. / ART MORIYA / Aquascutum / Atsuraelu / BEAMS / BURTON / Camper / Coleman / Cotopaxi / Crocodile / DESCENTE / DIANA / DNPコアライズ / DUVETICA / EDWIN / fifth / FREITAG / G.H.BASS / G-Star RAW / HOLLYWOOD RANCH MARKET / HUNTER / IDEAS FOR GOOD / ISLAND SLIPPER / Jalan Sriwijaya / KEEN / Kimino Mirai / LACOSTE / Maito Design Works / Mark & Lona / MARGARET HOWELL / MIKI HOUSE / MIZUNO / NEWYORKER / NAKACHIKA PICTURES / Nordisk / Paraboot / Perfectum / Petit Bateau / PUMA / Ralph Lauren / RED WING / SAORI UEKI / STAUB / T.K. Garment / THE NORTH FACE / Theory / TSUCHIYA KABAN / Unisteps / XLARGE・Xgirl / YAMAHA / YAMADAYA -tsumugu & cycle by me- / YKK / ぐるぐるふくい / ごみの学校 / オンワードアップサイクル・アクション / ぐるぐるふくい / ごみの学校 / 博報堂Gravity / 銀座山形屋 / 藍染風布 / 良品計画

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グリーンウォッシュの基礎知識をおさらい、気にするべきは自分たちの目

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

環境配慮型商品の売り場や広告でよく見かける“エコフレンドリー”や“グリーン”“地球のために”といった文言。こうした科学的根拠に基づかない行き過ぎた表現は消費者の誤解を招く「グリーンウォッシュ」にあたるとして昨今、問題になっています。今回は弁護士兼ファッションエディターの海老澤美幸先生の講義を受けた私たちが、グリーンウォッシュとどう向き合うべきか議論しました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
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グリーンウォッシュの基礎知識をおさらい、気にするべきは自分たちの目

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

環境配慮型商品の売り場や広告でよく見かける“エコフレンドリー”や“グリーン”“地球のために”といった文言。こうした科学的根拠に基づかない行き過ぎた表現は消費者の誤解を招く「グリーンウォッシュ」にあたるとして昨今、問題になっています。今回は弁護士兼ファッションエディターの海老澤美幸先生の講義を受けた私たちが、グリーンウォッシュとどう向き合うべきか議論しました。



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大阪府枚方市とワールドがSDGsの共同キャンペーンを実施 回収衣料品をリユース・リサイクル


大阪府枚方市とワールドは、SDGs(持続可能な開発目標)の推進を目的とした「ワールド エコロモ キャンペーン×枚方市」を初めて実施する。キャンペーンでは不要になった衣料品を回収し、リユース・リサイクルを通じて得た収益を枚方市の子どもたちを支援するための寄付にあてる。

今回の取り組みは、枚方市が焼却ごみの削減を目指し、市民の衣料品リユースに向けた行動変容を促進するために「ワールド エコロモ キャンペーン」と共同開催するもの。同キャンペーンは、2009年から全国で継続的に実施されている衣料品回収プロジェクトで、回収からリサイクルパートナーへの流通スキームを確立している。

大阪府枚方市はこれまでも衣料品以外のリユース活動を展開しており、陶磁器やガラス製品の回収を市の取り組みとして実施している。回収された陶器類はイベントなどを通じて無料譲渡されており、移動式拠点回収やリユース品持込回収においては陶器類が想定を上回る量で回収されているという。この実績を受け、衣料品回収にも同様のスキームを導入できるかが検討されている。

市は今回の衣料品回収を通じて「地域住民の環境意識をさらに高めるとともに、子どもたちの未来に貢献すること」を目指している。

具体的には2025年1月21日から3月18日の間の6日、下記で回収する。

■ワールド エコロモ キャンペーン×枚方市 回収日時・場所
1月21日(火)ひらかた夢工房駐車場/枚方市田口5-1-1
1月22日(水)穂谷川清掃工場/枚方市田口5-1-1
2月18日(火)枚方市役所津田支所玄関前/枚方市津田北町2-25-1
2月19日(水)穂谷川清掃工場/枚方市田口5-1-1
3月18日(火)市役所別館北側/枚方市大垣内町2-1-20
3月19日(水)穂谷川清掃工場/枚方市田口5-1-1

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クラシコがシンフラックスのAI技術を活用した医療ユニホーム開始 生地廃棄量約10%減

テーラード技術を取り入れた白衣を中心にメディカルアパレルの企画・開発・販売を行うクラシコは、シンフラックス(SYNFLUX)とのコラボレーションプロジェクトを開始した。AI技術を用いて生地廃棄を最小限に抑え、環境負荷を軽減しつつ、デザインと機能性を両立させた次世代のものづくりを目指す。コラボレーションの第1弾として、25年1月16日に白衣「メンズ白衣:ショートコート・MOVE」を発売した。

クラシコは、医療現場を支えるユニホームを“大切な仕事道具”と捉え、その製造過程で環境への配慮を追求してきた。これまでには染色時に必要なCO2排出量を52.7%削減する先染め生地の採用などを行ってきた。今回のプロジェクトでは、シンフラックスの独自技術「アルゴリズム・クチュール」を活用し、医療用ユニホームの型紙設計を効率化した。この技術は衣服の3Dデータを元に、生地を可能な限り無駄なく使用するための最適な型紙配置をAIで分析・計算するもの。取り組みにより、生地の廃棄量は従来比で約9〜10%の低減を実現。また、AIを活用した精密な分析で型紙設計を効率化し、従来の人力による作業時間を大幅に短縮した。さらに縫製カ所を増やさず効率化を図り、工場での作業工数や電力消費の削減にもつなげたという。

ショートコートはリラクシングなシルエットで、さっと羽織る感覚で着用可能なデザインが特徴。軽量な素材を使用し、ミニマルなデザインと機能性を兼ね備えており、アクティブなシーンで活躍する白衣となっている。

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アクネ ストゥディオズが「Bコープ」認証を取得 総合スコアは83.2


アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)はこのほど、Bコープ(B CORP)認証を取得した。総合評価は83.2のスコアを獲得した。内訳はガバナンス10.6、従業員20.9、コミュニティ14.1、環境34.5、顧客2.9となっている。

認証の取得についてマティアス・マグヌソン(Mattias Magnusson)アクネ ストゥディオズCEOは「ブランドとして、変革を促進し、より持続可能なファッション業界を創造する役割を果たす責任がある。この責任を、デザインの実践から生産、パートナーシップ、倫理基準に至るまで、事業全体にわたって実施してきた。ビーコプ認証は、これまでの取り組みを認めるものであり、プログレッシブなラグジュアリービジネスとしての社会的・環境的なコミットメントを強化・加速するための厳格な枠組みを提供するものだ」とコメントしている。

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2025年のサステナビリティ取材の抱負  行ってみたい海外取材

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は2025年に2人がどのような視点でサステナビリティ関連の取材をするのか、抱負の後編です。木村記者が今年ぜひ行ってみたい海外取材、向ディレクターのプライベートでの新展開など、それぞれの視野の広げ方について話しています。



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2025年のサステナビリティ取材の抱負 トレーサビリティ対応を急げ

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は2025年に2人がどのような視点でサステナビリティ関連の取材をするのか、その抱負を語ります。「アパレルはトレーサビリティ対応を急げ!」と考えるその背景とは?「WWDJAPAN」年始恒例の「CEO特集」に向けた取材で印象的だったキーワードを絡めてお届けします。



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2025年のサステナビリティ取材の抱負 トレーサビリティ対応を急げ

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は2025年に2人がどのような視点でサステナビリティ関連の取材をするのか、その抱負を語ります。「アパレルはトレーサビリティ対応を急げ!」と考えるその背景とは?「WWDJAPAN」年始恒例の「CEO特集」に向けた取材で印象的だったキーワードを絡めてお届けします。



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山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング

PROFILE: 土屋誠/BEEK DESIGN代表 アートディレクター

土屋誠/BEEK DESIGN代表 アートディレクター
PROFILE: 1979年山梨生まれ。東京で約10年デザインと編集に携わり、2013年に地元山梨にUターンし、山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン「BEEK」を創刊。主な仕事に富士吉田市のハタオリマチフェスティバルの広報・企画・運営、98winesデザインディレクションなど多数。やまなしのアートディレクターとして、編集やデザインで伝える仕事をする傍ら、2024年に出版レーベル『MOKUHON PRESS』を立ち上げる

 2016年から山梨県富士吉田市で毎年開催されるハタオリマチフェスティバル、通称“ハタフェス”。織物産業に光が当たる産地観光の成功例としても注目を集める。今年は10月19~20日に開かれ、過去最高の2万4000人が訪れた。その総合プロデュースを任され、チームづくりや骨格となるデザイン、出店者の選定、運営などを市役所と連携して行っているのが山梨県韮崎市を拠点に活動するBEEK DESIGNの土屋誠代表だ。2013年に山梨にUターンして「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトに活動し、山梨をアップデートし続けている。

自腹刊行のフリーペーパー「BEEK」からローカルの仕事が広がる

 土屋代表は東京で9年間、編集者やデザイナー、アートディレクターとして働き、13年に山梨にUターンした。「もともと山梨に戻るつもりで、10年に東京で独立した後は山梨の仕事も手掛けていた」と振り返る。山梨でまず始めたのは「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトにしたフリーペーパー「BEEK」の創刊だ。「まずは僕自身が山梨の今を知るために始めた。楽しく山梨を知ろうと毎号テーマを設けて会いたい人に会いに行き、写真撮影から原稿の執筆、レイアウトデザインまで全部ひとりで行った」。東京で覚えた雑誌編集やデザインのスキルが役立った。最初は5000~6000部を発行し、現在1万部を発行する。

「半年に1回発行して4号出した頃には仕事の9割が山梨の案件になっていた」。Uターン直後は95%が東京の仕事だったというから、山梨の今を伝えたいという想いが形になった「BEEK」を通じてローカルの仕事が舞い込むようになった。「広告なしの自腹で始めた『BEEK』の対価はお金ではなく、人との出会いやつながりだった」。

身近にあるいいものを知って使う。その暮らしが続くことが「いい暮らし」

土屋代表は自身をデザイナーとは名乗らない。「朝日広告賞を受賞して東京っぽさを携えデザイナーとして山梨に帰ってきた。でも機織りやワインなどモノ作りはもちろん売るところまでを考えて取り組む人を見ていると彼らこそクリエイティブだと感じた。そして自分はデザインの本質がわかっていなかったと気づいた。それ以降デザイナーとは名乗れないと感じ、自己紹介を求められると『伝える仕事をしている』と答えるようになった」という。

山梨に住む理由は「楽しく暮らしたいから。いいものが身近にあることが『いい暮らし』だと思う。それを伝える仕事はみんなの役に立つし、自分の生活の中に溶け込み生業になっている」と分析する。

「東京では消費社会の一端を担うような仕事が多かったが、山梨では伝えたいという気持ちが強くなった。身近な人が作るモノに『いい』と思うものが多く、使いたくなるものが多い。それを伝えるためのツールである編集やデザインが大事だと再認識した。例えば『BEEK』で発酵をテーマに特集して改めて気付いたのは、知らなったから手に取らなかったものが多いこと。知っていると知らないのでは大きく違う。一般的に山梨と言えば富士山、桃、ブドウというイメージで織物やジュエリーの産地であることを知る人は少ない。発信が弱く情報が届いていないともいえる。そうした山梨の今を知りたいと思い、伝えるための道筋作り、メディアを通じてどう伝えるかは編集とデザインが重要になる」。土屋代表の仕事は編集とデザイン、その両方のスキルによってつくられている。

 “ハタフェス”の仕事も「BEEK」が起点だった。「BEEK」を見た県職員から「織物を伝える冊子を作りたい」と依頼があり15年に織物のフリーペーパー「ルーム」を作った。「冊子だけでは伝わらないと地元の人に向けて『ルーム』の完成と織物を伝える音楽会を開催した」。そこに(富士吉田市経済環境部)富士山課の勝俣美香さんがたまたま訪れた。「勝俣さんに機織りにフィーチャーしたイベントを開催したいと相談されたが、即答はできなかった。ちょうどそのころ一緒に運営できそうな仲間(後にハタフェスを共同で運営することになる藤枝大裕と赤松智志)が移住を決めた。彼らを巻き込めばできるのではと思い依頼を受けることにした」。この4人が柱となり“ハタフェス”の運営が始まった。

産地観光で重視したのは「町のためになる仕組みに編集すること」

“ハタフェス”を運営するにあたり大事にしたことは「町のためになる仕組みに編集すること。機織りだけのイベントにするのではなく、町を知ってもらい、機織りを知ってもらうイベントにすること、来場者にも出店者にも街を楽しんでもらうことを重視した」という。24年で7回目(19年は台風で20年は新型コロナウィルスの感染拡大により中止した)を迎え、産地観光イベントの中でも成功例として挙げられるほどになった。「近年はイベントが終わっても交流が続き新たな取り組みが始まっている。“ハタフェス”を通じて富士吉田がいい街だと知り、新たに店を始める人が増えた。“ハタフェス”の会場には空き家を活用していたが、今は空き家が店になって会場探しが難しくなった(笑)。インバウンドの影響もあるが、宿が増え滞在してくれる人も増えた。通り過ぎる街ではなく楽しんでもらえる街になり、経済効果も生み出している」。

“ハタフェス”で来場者アンケートを取ると満足度が高かったのは意外にもフードだという。「“ハタフェス”ほど山梨の有名店が集まるイベントはないとも思う。“ハタフェス”は普段の僕らの活動が集約されているともいえる。イベントもメディアの一つで、それを無理なく作ることが大切」だという。

地場産業は継承することとアップデートの2軸が大切

簡単ではない地場産業の継続に土屋代表はどう向き合っているのか。「長く続いているからといってそのまま続けることができるかというとそうではない。時代の変化はもちろん、土地自体も変わっている。僕たちのような立場の人はまず土地にあるニュアンスや文化を知ることから始まる。そして現場に行って交流する。そして継承することとアップデートしていく気持ちの2軸を持つことが重要になる。長く続いているからこそ簡単に手放せないものもある。だからこそ手放すものを間違ってはいけない。さまざまな視点を持ち丁寧に見ることが大切だ。ナガオカケンメイさんに言われてしっくりしたのが『街のお医者さんみたいだね』という言葉。特効薬を出すのではなく、寄り添って一つ一つを丁寧に見て取り組みながらアップデートしてよりよい方向に持っていくようなイメージ」。

地場産業がさかんな山梨に暮らしながら仕事をすることは「東京で仕事をしていたときよりもハードルが高いが、だからこそやりがいがある」という。「土地に関わるのは、その歴史に関わることでもあり、何かを左右しかねないから責任感が必要になる。そして、デザインはもちろん人を見る目を養う必要がある。何より、楽しみながら暮らせれば自分にできることや役に立ちたいと思うことが見つかる。だからこそスキルも磨かねばと思うし、東京にいる頃よりも成長できていると感じる」と話す。

土屋代表の手掛けるプロジェクトは関わり続ける仕事が多い。甲州市塩山の福生里集落の「98wines」もその一つで、土屋代表はブランディング、ロゴや建物のサインなどを担当した。その「98wines」は2024年、「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード 2024」で49位にランクインした。「日本のワイナリーで唯一トップ50に入った。建築家やランドスケープをデザインする人、施工を行う人など、関わる皆で出し合ったアイデアで化学反応を起こせたように感じる」。選出理由は「ワインで土地文化を表現したことが評価されたのではないか」と分析する。「風景として根付く新しいものを作れたように感じる。昔から多い石垣を活用しながら、自然に寄り添ったものができたのではないか」。

地場産業継続の先に見据えること

 地場産業は担い手不足が叫ばれて久しいが、仮に担い手を獲得した先に何を見据えればいいのだろうか。「楽しく暮らす人が増えること。地場産業に携わりながら自分らしい暮らしができると思ってもらえる風土が育つことではないか」という。「山梨に暮らすようになって豊かさを感じている。生活に組み込める気持ちいいモノが当たり前にあるというか。僕の場合は温泉がそのひとつ」と土屋代表はいう。「僕は山梨で自分らしい暮らしができている。消費を含めて地場にあるもので暮らしができているから。僕はあるものをそのまま使って遊ぶスケーターカルチャーが好きで、地場産業もその感覚に近いと感じている。ある環境を大事にして生かすことがこれから大事になってくるのではないか」。

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山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング

PROFILE: 土屋誠/BEEK DESIGN代表 アートディレクター

土屋誠/BEEK DESIGN代表 アートディレクター
PROFILE: 1979年山梨生まれ。東京で約10年デザインと編集に携わり、2013年に地元山梨にUターンし、山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン「BEEK」を創刊。主な仕事に富士吉田市のハタオリマチフェスティバルの広報・企画・運営、98winesデザインディレクションなど多数。やまなしのアートディレクターとして、編集やデザインで伝える仕事をする傍ら、2024年に出版レーベル『MOKUHON PRESS』を立ち上げる

 2016年から山梨県富士吉田市で毎年開催されるハタオリマチフェスティバル、通称“ハタフェス”。織物産業に光が当たる産地観光の成功例としても注目を集める。今年は10月19~20日に開かれ、過去最高の2万4000人が訪れた。その総合プロデュースを任され、チームづくりや骨格となるデザイン、出店者の選定、運営などを市役所と連携して行っているのが山梨県韮崎市を拠点に活動するBEEK DESIGNの土屋誠代表だ。2013年に山梨にUターンして「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトに活動し、山梨をアップデートし続けている。

自腹刊行のフリーペーパー「BEEK」からローカルの仕事が広がる

 土屋代表は東京で9年間、編集者やデザイナー、アートディレクターとして働き、13年に山梨にUターンした。「もともと山梨に戻るつもりで、10年に東京で独立した後は山梨の仕事も手掛けていた」と振り返る。山梨でまず始めたのは「やまなしの人や暮らしを伝える」をコンセプトにしたフリーペーパー「BEEK」の創刊だ。「まずは僕自身が山梨の今を知るために始めた。楽しく山梨を知ろうと毎号テーマを設けて会いたい人に会いに行き、写真撮影から原稿の執筆、レイアウトデザインまで全部ひとりで行った」。東京で覚えた雑誌編集やデザインのスキルが役立った。最初は5000~6000部を発行し、現在1万部を発行する。

「半年に1回発行して4号出した頃には仕事の9割が山梨の案件になっていた」。Uターン直後は95%が東京の仕事だったというから、山梨の今を伝えたいという想いが形になった「BEEK」を通じてローカルの仕事が舞い込むようになった。「広告なしの自腹で始めた『BEEK』の対価はお金ではなく、人との出会いやつながりだった」。

身近にあるいいものを知って使う。その暮らしが続くことが「いい暮らし」

土屋代表は自身をデザイナーとは名乗らない。「朝日広告賞を受賞して東京っぽさを携えデザイナーとして山梨に帰ってきた。でも機織りやワインなどモノ作りはもちろん売るところまでを考えて取り組む人を見ていると彼らこそクリエイティブだと感じた。そして自分はデザインの本質がわかっていなかったと気づいた。それ以降デザイナーとは名乗れないと感じ、自己紹介を求められると『伝える仕事をしている』と答えるようになった」という。

山梨に住む理由は「楽しく暮らしたいから。いいものが身近にあることが『いい暮らし』だと思う。それを伝える仕事はみんなの役に立つし、自分の生活の中に溶け込み生業になっている」と分析する。

「東京では消費社会の一端を担うような仕事が多かったが、山梨では伝えたいという気持ちが強くなった。身近な人が作るモノに『いい』と思うものが多く、使いたくなるものが多い。それを伝えるためのツールである編集やデザインが大事だと再認識した。例えば『BEEK』で発酵をテーマに特集して改めて気付いたのは、知らなったから手に取らなかったものが多いこと。知っていると知らないのでは大きく違う。一般的に山梨と言えば富士山、桃、ブドウというイメージで織物やジュエリーの産地であることを知る人は少ない。発信が弱く情報が届いていないともいえる。そうした山梨の今を知りたいと思い、伝えるための道筋作り、メディアを通じてどう伝えるかは編集とデザインが重要になる」。土屋代表の仕事は編集とデザイン、その両方のスキルによってつくられている。

 “ハタフェス”の仕事も「BEEK」が起点だった。「BEEK」を見た県職員から「織物を伝える冊子を作りたい」と依頼があり15年に織物のフリーペーパー「ルーム」を作った。「冊子だけでは伝わらないと地元の人に向けて『ルーム』の完成と織物を伝える音楽会を開催した」。そこに(富士吉田市経済環境部)富士山課の勝俣美香さんがたまたま訪れた。「勝俣さんに機織りにフィーチャーしたイベントを開催したいと相談されたが、即答はできなかった。ちょうどそのころ一緒に運営できそうな仲間(後にハタフェスを共同で運営することになる藤枝大裕と赤松智志)が移住を決めた。彼らを巻き込めばできるのではと思い依頼を受けることにした」。この4人が柱となり“ハタフェス”の運営が始まった。

産地観光で重視したのは「町のためになる仕組みに編集すること」

“ハタフェス”を運営するにあたり大事にしたことは「町のためになる仕組みに編集すること。機織りだけのイベントにするのではなく、町を知ってもらい、機織りを知ってもらうイベントにすること、来場者にも出店者にも街を楽しんでもらうことを重視した」という。24年で7回目(19年は台風で20年は新型コロナウィルスの感染拡大により中止した)を迎え、産地観光イベントの中でも成功例として挙げられるほどになった。「近年はイベントが終わっても交流が続き新たな取り組みが始まっている。“ハタフェス”を通じて富士吉田がいい街だと知り、新たに店を始める人が増えた。“ハタフェス”の会場には空き家を活用していたが、今は空き家が店になって会場探しが難しくなった(笑)。インバウンドの影響もあるが、宿が増え滞在してくれる人も増えた。通り過ぎる街ではなく楽しんでもらえる街になり、経済効果も生み出している」。

“ハタフェス”で来場者アンケートを取ると満足度が高かったのは意外にもフードだという。「“ハタフェス”ほど山梨の有名店が集まるイベントはないとも思う。“ハタフェス”は普段の僕らの活動が集約されているともいえる。イベントもメディアの一つで、それを無理なく作ることが大切」だという。

地場産業は継承することとアップデートの2軸が大切

簡単ではない地場産業の継続に土屋代表はどう向き合っているのか。「長く続いているからといってそのまま続けることができるかというとそうではない。時代の変化はもちろん、土地自体も変わっている。僕たちのような立場の人はまず土地にあるニュアンスや文化を知ることから始まる。そして現場に行って交流する。そして継承することとアップデートしていく気持ちの2軸を持つことが重要になる。長く続いているからこそ簡単に手放せないものもある。だからこそ手放すものを間違ってはいけない。さまざまな視点を持ち丁寧に見ることが大切だ。ナガオカケンメイさんに言われてしっくりしたのが『街のお医者さんみたいだね』という言葉。特効薬を出すのではなく、寄り添って一つ一つを丁寧に見て取り組みながらアップデートしてよりよい方向に持っていくようなイメージ」。

地場産業がさかんな山梨に暮らしながら仕事をすることは「東京で仕事をしていたときよりもハードルが高いが、だからこそやりがいがある」という。「土地に関わるのは、その歴史に関わることでもあり、何かを左右しかねないから責任感が必要になる。そして、デザインはもちろん人を見る目を養う必要がある。何より、楽しみながら暮らせれば自分にできることや役に立ちたいと思うことが見つかる。だからこそスキルも磨かねばと思うし、東京にいる頃よりも成長できていると感じる」と話す。

土屋代表の手掛けるプロジェクトは関わり続ける仕事が多い。甲州市塩山の福生里集落の「98wines」もその一つで、土屋代表はブランディング、ロゴや建物のサインなどを担当した。その「98wines」は2024年、「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード 2024」で49位にランクインした。「日本のワイナリーで唯一トップ50に入った。建築家やランドスケープをデザインする人、施工を行う人など、関わる皆で出し合ったアイデアで化学反応を起こせたように感じる」。選出理由は「ワインで土地文化を表現したことが評価されたのではないか」と分析する。「風景として根付く新しいものを作れたように感じる。昔から多い石垣を活用しながら、自然に寄り添ったものができたのではないか」。

地場産業継続の先に見据えること

 地場産業は担い手不足が叫ばれて久しいが、仮に担い手を獲得した先に何を見据えればいいのだろうか。「楽しく暮らす人が増えること。地場産業に携わりながら自分らしい暮らしができると思ってもらえる風土が育つことではないか」という。「山梨に暮らすようになって豊かさを感じている。生活に組み込める気持ちいいモノが当たり前にあるというか。僕の場合は温泉がそのひとつ」と土屋代表はいう。「僕は山梨で自分らしい暮らしができている。消費を含めて地場にあるもので暮らしができているから。僕はあるものをそのまま使って遊ぶスケーターカルチャーが好きで、地場産業もその感覚に近いと感じている。ある環境を大事にして生かすことがこれから大事になってくるのではないか」。

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“量より質”を体現するシャンパーニュ「テルモン」 元新聞記者のCEO右腕が語る「サステナにプランBはない」

環境に優しいシャンパーニュ「テルモン(TELMONT)」は、シャンパーニュ業界で最もサステナビリティに力を入れているブランドの代表格だ。“母なる自然の名のもとに”を掲げ、ブドウの有機栽培から輸送は海輸のみと徹底したサステナブルな企業活動を通して、シャンパーニュ業界に革新をもたらすと同時に、“量より質”をモットーにクオリティの高いシャンパーニュを届けている。「テルモン」を率いるのは、ルドヴィック・ドゥ・プレシ=テルモン最高経営責任者(CEO)。彼の右腕が、ジャスティン・ミード=テルモン グローバル・マーケティング&ビジネスデベロップメント・ディレクターだ。元々はフランスの新聞「ル・モンド(LE MONDE)」の記者だったというミードに、記者からシャンパーニュメゾンの運営へ転身した道のりや“ソバーキュリオス”の動きなどについて聞いた。

WWD:「ル・モンド」の記者からアルコール業界へ転換したきっかけは?
ジャスティン・ミード=テルモン グローバル・マーケティング&ビジネスデベロップメント・ディレクター(以下、ミード):記者として働き、コミュニケーション・エージェンシーでの経験もある。もともとお酒には興味があったし、記者としてではなく、違った視点で素晴らしい製品の重みのあるストーリーを伝えたいと思いモエ ヘネシーに転職し、シャンパーニュの世界を発見した。記者とシャンパーニュ業界での仕事を比較してみると、共通点がたくさんある。両方共、“真正性”や“情熱”が必須だし、真実に対する敬意がなくてはできない仕事だ。それからコニャックの世界に進んだ。
WWD:プレシCEOとの出会いや「テルモン」に携わるようになったきっかけは?
ミード:ルドヴィックとは、レミーコアントローの世界最高級コニャック「ルイ13世(LOUISⅠⅢ)」の仕事で出会った。彼がグローバル・ディレクターで、私はシニア・ブランド・マネジャーだったが、彼のチャレンジング精神とエネルギーに共感し、すぐに意気投合した。シャンパーニュもコニャックも高級で素晴らしい味わいが特徴。どちらも、自然の産物であるブドウがなければ作ることはできない。だから、徐々に自然やそれを育む地球を大切にするべきだという思いが芽生えた。それなしでは、これら最高の味わいは生まれないから。だから、ルドヴィックから環境に優しいシャンパーニュ「テルモン」の事業を手伝ってほしいと言われて「イエス」と即答したよ。「テルモン」はブドウ農家のシャンパーニュメゾンに対する暴動により1912年にアンリ・ロピタルが創業した。彼はブドウ作りを熟知しており、シャンパーニュも自分で作ろうと始めた当時のスタートアップ企業だ。ブドウ作りとシャンパーニュ作りは同じという精神を引き継ぎ、ルドヴィックとメゾンに第二次革命を起こしているところだ。

100年後にシャンパーニュを楽しむためにはプランBはない

WWD:数多くあるシャンパーニュブランドの中で「テルモン」の強みは?
ミード:シャンパーニュそのものが強みだ。それは、テロワール(ブドウが栽培される土地)そのものを表している。ボディーはしっかりしているけれども、とても軽やかな余韻がある点。フルーティで生命力があり、繊細な泡が特徴。それは、原料であるブドウの味に左右される。高品質のシャンパーニュをつくるには、いいブドウを栽培する必要がある。創業時からのブドウ作り=シャンパーニュ作りという考えを引き継ぎ、セラーマスターのベルトラン・ロピタルが1999年に有機栽培を始めた。畑を有機にすることは、新しい言語を学ぶほど大変なこと。長年かけて土壌を改善し、ここ数年で、除草剤、殺虫剤、防カビ剤、化学肥料を全く使用せず、100%の再生有機栽培に切り替えた。25年かけて生まれた完全有機栽培のブドウを使用したシャンパーニュは全体の約5%だ。
WWD:サステナビリティやトレーサビリティーへの取り組みには時間と投資が必要だが、ビジネス活動の主軸にそれを掲げるのは?
ミード:プランBは存在しないから。50年後、100年後にシャンパーニュを楽しみたいと思ったら、徹底したサステナビリティやトレーサビリティの活動を実行する以外に方法はない。われわれはサステナビリティへの取り組みを制限とは考えない。ビジネス活動を日々より良くする変化をもたらし、革新する大きなチャンスだと見ている。
WWD:具体的に行っている活動は?
ミード:まず、ギフトボックスを廃止。ボトルもリサイクルガラスを使用した色付きのボトルに切り替えて二酸化炭素の削減を行っている。「テルモン」は、グラスメーカーのヴェラリアと協業でシャンパーニュボトルとしては最軽量の800gのボトル(通常900g~1kg)を製作し、軽量化に成功した。通常は特許を取得し、他社との差別化を図るが、敢えてオープンソースにしている。より多くのシャンパーニュ業者がこの軽量ボトルを使用することで二酸化炭素排出量を減らせるから。「テルモン」の活動が小川だとしたら、それが業界全体に広がることで大きな川へとなる。オフィスや工場は全て再生エネルギーを使用しているし、トラクターもバイオ燃料に切り掛えた。通勤も全員、電車と自転車。雨の日は合羽を着て通勤しているよ。このように徹底的にサステナビリティにコミットすることで、「テルモン」は2050年までにネットゼロを達成した最初のシャンパーニュハウスになることを目指す。

品質や体験を重要視する“ソバーキュリアス”に商機あり

WWD:現在の課題は?
ミード:シャンパーニュの味自体やそれを製造する方法など、まだまだやることはたくさんある。サステナビリティの道は長い。「テルモン」のサステナビリティをビジネスの軸に据えた活動に続くワイン醸造家が増えることを期待している。
WWD:「テルモン」をより多くの人々に知ってもらうために行っていることは?
ミード:「テルモン」は、サステナビリティに関して一才妥協せずに、最高品質のシャンパーニュを提供するメゾンであることを伝える役割がある。われわれと共感してくれるディストリビューターやレストランなどとの関係性を築くのはもちろん、ラグジュアリー・ブランドをはじめ、サステナビリティ活動を積極的に行っているさまざまな他業種の会社とコラボレーションしている。イギリス発自転車「ブロンプトン(BROMPTON)」と協業でエコなワインツーリズムも提供している。パリから電車と「ブロンプトン」の自転車を使って、「テルモン」本社へ訪れるというものだ。
WWD:“ソバーキュリアス”の動きが広がり、アルコールフリーの飲料が増えているが、現在のアルコール業界をどのように分析するか?
ミード:ソバーキュリアスの動きは、確かにわれわれの業界に影響をもたらしている。それは、お酒の飲み方に対する意識が高まっているということ。「テルモン」のような量よりも品質や体験を重要視するブランドにとってはいい傾向だと思う。われわれにとって、この動きはポジティブなものでブランドの哲学ともマッチしている。高級アルコール飲料の未来は、透明性を持って本物と意味ある体験を提供することにあると思う。

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“量より質”を体現するシャンパーニュ「テルモン」 元新聞記者のCEO右腕が語る「サステナにプランBはない」

環境に優しいシャンパーニュ「テルモン(TELMONT)」は、シャンパーニュ業界で最もサステナビリティに力を入れているブランドの代表格だ。“母なる自然の名のもとに”を掲げ、ブドウの有機栽培から輸送は海輸のみと徹底したサステナブルな企業活動を通して、シャンパーニュ業界に革新をもたらすと同時に、“量より質”をモットーにクオリティの高いシャンパーニュを届けている。「テルモン」を率いるのは、ルドヴィック・ドゥ・プレシ=テルモン最高経営責任者(CEO)。彼の右腕が、ジャスティン・ミード=テルモン グローバル・マーケティング&ビジネスデベロップメント・ディレクターだ。元々はフランスの新聞「ル・モンド(LE MONDE)」の記者だったというミードに、記者からシャンパーニュメゾンの運営へ転身した道のりや“ソバーキュリオス”の動きなどについて聞いた。

WWD:「ル・モンド」の記者からアルコール業界へ転換したきっかけは?
ジャスティン・ミード=テルモン グローバル・マーケティング&ビジネスデベロップメント・ディレクター(以下、ミード):記者として働き、コミュニケーション・エージェンシーでの経験もある。もともとお酒には興味があったし、記者としてではなく、違った視点で素晴らしい製品の重みのあるストーリーを伝えたいと思いモエ ヘネシーに転職し、シャンパーニュの世界を発見した。記者とシャンパーニュ業界での仕事を比較してみると、共通点がたくさんある。両方共、“真正性”や“情熱”が必須だし、真実に対する敬意がなくてはできない仕事だ。それからコニャックの世界に進んだ。
WWD:プレシCEOとの出会いや「テルモン」に携わるようになったきっかけは?
ミード:ルドヴィックとは、レミーコアントローの世界最高級コニャック「ルイ13世(LOUISⅠⅢ)」の仕事で出会った。彼がグローバル・ディレクターで、私はシニア・ブランド・マネジャーだったが、彼のチャレンジング精神とエネルギーに共感し、すぐに意気投合した。シャンパーニュもコニャックも高級で素晴らしい味わいが特徴。どちらも、自然の産物であるブドウがなければ作ることはできない。だから、徐々に自然やそれを育む地球を大切にするべきだという思いが芽生えた。それなしでは、これら最高の味わいは生まれないから。だから、ルドヴィックから環境に優しいシャンパーニュ「テルモン」の事業を手伝ってほしいと言われて「イエス」と即答したよ。「テルモン」はブドウ農家のシャンパーニュメゾンに対する暴動により1912年にアンリ・ロピタルが創業した。彼はブドウ作りを熟知しており、シャンパーニュも自分で作ろうと始めた当時のスタートアップ企業だ。ブドウ作りとシャンパーニュ作りは同じという精神を引き継ぎ、ルドヴィックとメゾンに第二次革命を起こしているところだ。

100年後にシャンパーニュを楽しむためにはプランBはない

WWD:数多くあるシャンパーニュブランドの中で「テルモン」の強みは?
ミード:シャンパーニュそのものが強みだ。それは、テロワール(ブドウが栽培される土地)そのものを表している。ボディーはしっかりしているけれども、とても軽やかな余韻がある点。フルーティで生命力があり、繊細な泡が特徴。それは、原料であるブドウの味に左右される。高品質のシャンパーニュをつくるには、いいブドウを栽培する必要がある。創業時からのブドウ作り=シャンパーニュ作りという考えを引き継ぎ、セラーマスターのベルトラン・ロピタルが1999年に有機栽培を始めた。畑を有機にすることは、新しい言語を学ぶほど大変なこと。長年かけて土壌を改善し、ここ数年で、除草剤、殺虫剤、防カビ剤、化学肥料を全く使用せず、100%の再生有機栽培に切り替えた。25年かけて生まれた完全有機栽培のブドウを使用したシャンパーニュは全体の約5%だ。
WWD:サステナビリティやトレーサビリティーへの取り組みには時間と投資が必要だが、ビジネス活動の主軸にそれを掲げるのは?
ミード:プランBは存在しないから。50年後、100年後にシャンパーニュを楽しみたいと思ったら、徹底したサステナビリティやトレーサビリティの活動を実行する以外に方法はない。われわれはサステナビリティへの取り組みを制限とは考えない。ビジネス活動を日々より良くする変化をもたらし、革新する大きなチャンスだと見ている。
WWD:具体的に行っている活動は?
ミード:まず、ギフトボックスを廃止。ボトルもリサイクルガラスを使用した色付きのボトルに切り替えて二酸化炭素の削減を行っている。「テルモン」は、グラスメーカーのヴェラリアと協業でシャンパーニュボトルとしては最軽量の800gのボトル(通常900g~1kg)を製作し、軽量化に成功した。通常は特許を取得し、他社との差別化を図るが、敢えてオープンソースにしている。より多くのシャンパーニュ業者がこの軽量ボトルを使用することで二酸化炭素排出量を減らせるから。「テルモン」の活動が小川だとしたら、それが業界全体に広がることで大きな川へとなる。オフィスや工場は全て再生エネルギーを使用しているし、トラクターもバイオ燃料に切り掛えた。通勤も全員、電車と自転車。雨の日は合羽を着て通勤しているよ。このように徹底的にサステナビリティにコミットすることで、「テルモン」は2050年までにネットゼロを達成した最初のシャンパーニュハウスになることを目指す。

品質や体験を重要視する“ソバーキュリアス”に商機あり

WWD:現在の課題は?
ミード:シャンパーニュの味自体やそれを製造する方法など、まだまだやることはたくさんある。サステナビリティの道は長い。「テルモン」のサステナビリティをビジネスの軸に据えた活動に続くワイン醸造家が増えることを期待している。
WWD:「テルモン」をより多くの人々に知ってもらうために行っていることは?
ミード:「テルモン」は、サステナビリティに関して一才妥協せずに、最高品質のシャンパーニュを提供するメゾンであることを伝える役割がある。われわれと共感してくれるディストリビューターやレストランなどとの関係性を築くのはもちろん、ラグジュアリー・ブランドをはじめ、サステナビリティ活動を積極的に行っているさまざまな他業種の会社とコラボレーションしている。イギリス発自転車「ブロンプトン(BROMPTON)」と協業でエコなワインツーリズムも提供している。パリから電車と「ブロンプトン」の自転車を使って、「テルモン」本社へ訪れるというものだ。
WWD:“ソバーキュリアス”の動きが広がり、アルコールフリーの飲料が増えているが、現在のアルコール業界をどのように分析するか?
ミード:ソバーキュリアスの動きは、確かにわれわれの業界に影響をもたらしている。それは、お酒の飲み方に対する意識が高まっているということ。「テルモン」のような量よりも品質や体験を重要視するブランドにとってはいい傾向だと思う。われわれにとって、この動きはポジティブなものでブランドの哲学ともマッチしている。高級アルコール飲料の未来は、透明性を持って本物と意味ある体験を提供することにあると思う。

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「フェティコ」舟山瑛美に聞く独特な女性像、そして日本の産地のモノ作り

PROFILE: 舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー

舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー
PROFILE: (ふなやま・えみ)高校卒業後に渡英、帰国後にエスモードジャポン東京校入学、2010年卒業。コレクションブランド等でデザイナーの経験を積み、2020年に「フェティコ」を立ち上げる。22年に「JFW ネクストブランドアワード2023」と 「東京ファッションアワード 2023」を受賞。 PHOTO:DAISUKE TAKEDA

「フェティコ(FETICO)」の登場は、多くの女性たちに勇気を与えている。大胆に肌を露出し、体のラインを強調するそのスタイルは日本のデザイナーズブランドでは珍しい。「自分の身体や欲望をありのまま愛でたい」。そんな女性たちの内なる声を「フェティコ」は代弁し、肯定してくれる。だから女性たちからの支持を得ているのだろう。ブランド立ち上げから4年目を迎え、改めてその世界観について、そして日本の産地を重んじるモノ作りの姿勢について舟山瑛美デザイナーに聞いた。

30歳になり、ある日スイッチが入りブランドを立ち上げる

WWD:ブランドのコンセプトは「The Figure:Feminine」。意味は「その姿、女性的」と詩的です。改めてその意味を教えて欲しい。

舟山瑛美「フェティコ」デザイナー(以下、舟山):ファッションの勉強をしている学生にはよくある話ですが、私も学生時代から、いつか自分のブランドを持ちたいという気持ちがありました。実現に至らないまま30歳になり、ある日スイッチが入ったのです。「他で吸収することはいったん終わりにして自分でモノ作りをしていこう」と決めました。決めたら次はコンセプトが重要。時代やトレンドが変わる中でも自分にとって変わらない軸は日本人女性であり、アジア人らしい体つきであること。そして私はいろいろな女性の体を美しいと感じる。だからそこを軸にしようと決めて言葉にしました。

WWD:スイッチが入ったきっかけは?

舟山:結婚をしたことかな。節目であり、今後の人生を考える一歩となりました。家族を持ったうえで自分が何をしたいか、と考えたとき、私の場合は子供以上にブランドを作りたい。そう自覚をして踏ん切りがつきました。彼がスタイリストで自分の名前で仕事をしており、それに憧れを持ったのもひとつの理由。自分の名前で仕事をしたい、と思いました。

そのタイミングで自分のウエディング用のドレスを作りました。長らくブランドに沿ったデザインをしてきたのですが、パタンナーとともに自分の納得がいく形を作り上げることが楽しくて、自分のブランドでそれを存分にする喜びを知りました。

WWD:企業デザイナー時代に吸収し、今の自分のベースになっていることは?

舟山:一番は「クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)」時代に、パターンやサンプルを見ながらこれのどこを修正すればよりよくなるか、試行錯誤する中で感覚をつかんだことです。ダダでは、脱構築など入り組んだものを作っていたので、アイデアを商品に落とし込む経験を積んだことは大きかった。

あと、新卒で入った「ヒステリック グラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」は、担当アイテムを企画から生産まで一貫して見るという、少し変わった仕組みで服がどうやって工場に入り、付属がここで作られて、など基本的な服作りの流れを学びました。

WWD:感性的なことで外から受けた影響は?

舟山:それは不思議と、学生の頃からずっと変わらず。昔から体を強調する服が好きで大人になるにつれて、より深く広くなっている感覚はあります。

自分が魅力的であること、その見せ方をわかっている人に惹かれる

WWD:女性の体ってきれいだな、と最初に思ったのはいつですか?

舟山:高校生の頃からファッションを学んでおり、文化服装学院の夜間クラスで週一でヌードクロッキー実習を取ったときだと思います。いろいろな女性の体を描くことがとてもおもしろいと思った。人によってバランスが違ったり、単純にきれいだなと思ったり。

WWD:女性の体は色々な時代の芸術家のインスピレーションとなってきましたが、アーティストの視点から受けた影響はありますか?

舟山:衝撃を受けたのはロンドンで見た荒木経惟さん、アラーキーの展示です。高校卒業後に、ロンドンへ1年留学していたとき、荒木さんの大規模な展覧会があり、大きなプリント写真を見て、そのダークでエロティックな美しさには影響を受けました。

WWD:美しさ、を別の言葉にできますか?

舟山:官能性、だと思います。

WWD:官能性は他人に見出すもの?それとも自分に向けたもの?

舟山:人に感じ取れるものでもあるし、自分自身に思うところもあります。

WWD:日本の“官能性”は、襟足や足首の素肌をチラッと見せる、といった“隠す”方向にありますが、舟山さんの“官能性”の表現は、堂々としていますね。  

舟山:そうですね、自分で自分が魅力的であること、そしてその見せ方をわかっている人に惹かれるのだと思います。

WWD:女性にとって体は他人から「見られる」対象であり、どこか自分のものでない感覚がある人は多いと思う。「フェティコ」は「私の体」を自分側に取り戻してくれた。「好きだから見せる」という自発的で能動的な表現です。同時に「フェティコ」の中には、お姫様的な可愛さも共存しています。

舟山:少女性に惹かれるとことはあります。峰不二子みたいな“完璧なお姉さん”より、少しバランスが崩れているところが魅力的と感じます。

WWD:ブランド設立から4年が経ちました。

舟山:そうですね。私は洋服を作る仕事以外はできないから短期間で終わらせるつもりはなく、かといって一緒に始めたパタンナーと2人、自分たちが食べる分だけ稼げれば幸せだな、という感覚でもありました。

WWD:継続を決めてはいたけど、戦略的ではないのですね。振り返って何を思うことは?

舟山:作りたいものと世間が求めていることがマッチする部分がある、という感覚はつかめました。それを信じていけそう、が今の心境です。 最初に作ったボディコンシャスなニットドレスの反応が良くて「こういうブランドを待っていたよ!」といった声をもらい、こういう服を求めてくれる層がいるのだな、と気がつきました。ただ、関わる人が増えて、それぞれから「フェティコ」を広めてくれるようになっているから、より強いヴィジョンを示した方がよいのだろうな、と今は思う。発信するヴィジュアルやメッセージも大事です。

WWD:それもあってか、 2025年春夏コレクションはそれ以前と少し様子が変わりました。

舟山:いつもコレクションにはタイトルをつけずに制作を進めて、締め切りに追われながらムードをつかんでゆきます。核となる好きなコアがあり、リサーチすることでそこから一歩出た世界へ広げる感じです。

今回最初にピックアップしたのが、1980年代の雑誌「マリ・クレール」の旅支度をテーマにした一ページでした。 「アズディン アライア(AZZEDINE ALAIA)」を着たアフリカ系アメリカ人モデルのヴェロニカ・ウェブ(Veronica Webb)に惹かれ、そこから80年代のリサーチを進めてサスペンス映画「数に溺れて」もモチーフになりました。

WWD:珍しく色が使われていたのもそこから?

舟山:映画にはパステル調の色が使われていて、定番素材のチュールやシアー素材とパステルを組み合わせました。私は色を着ないのですが、ブランドを強くするために苦手に挑戦したい、というのもあります。ショーでスタイリングを担当している夫からは、いつも“また黒ばかり。もっと色ないの?”と聞かれます(笑)。

WWD:ブランドの世界観が明確になってくると、コラボレーションなどいろいろな声がけがありそうです。

舟山:次から次へと新しいことが起こることはいいことなのですが、今は起きたことに対処するのが精いっぱい。そろそろ、会社として中長期的なヴィジョンをちゃんと掲げたいと思っています。

日本の産地はなくてはならない存在。続いてもらわないと困る

WWD:ブランド紹介文には、“「フェティコ」のコレクションは日本国内の繊維産地や職人との取組みで丁寧に生産されています”とあります。これまで産地と取り組んできた中で印象的なものを教えてください。

舟山:2023-24年秋冬コレクションでお願いした、京都の職人さんによる着物用の引き染めは単純にとても美しいと思いました。着物用ではない、幅広の生地を前に3、4人で手で染めてゆく影像を見て驚きました。

WWD:2024-25秋冬コレクションのコルセットのようなトップスはベルベットですか?

舟山:はい。ベルベットが好きで通年で使います。こちらは北陸のベルベットに、桐生の刺しゅうでオリジナルの柄を入れました。刺しゅうにより収縮をかけることで凹凸感を出しています。スペシャルなピースです。スーツ地は尾州のものが多いです。

WWD:産地の生地を意識して使用する理由は?

舟山:最初の就職先である「ヒステリックグラマー」が新入社員を産地に連れて行ってくれる会社で、岡山の児島のデニムの工場の人たちに「新入社員、頑張れ~」などと声をかけてもらい、顔が見えてのモノづくりはよいなと思ったのが最初です。
自分のブランドを始めるときに「あの人にお願いしたい」と顔が浮かびました。「舟山さん始めるのか、じゃあ、一緒に頑張ろう」と言ってもらって嬉しかった。生地も縫製も顔が浮かぶ人たちと仕事をしたいという気持ちがあります。

WWD:顔が浮かぶ人との仕事は何がよいのでしょうか?

舟山:小さい工場さんも多いのですが、自分ごとにように扱ってくれます。仕事だけど楽しんで作ってくれて、難しいオーダーでも、どう縫ったらきれいになるかを前向きに考え提案してくれる。そのやりとりが好きです。「フェティコ」のように小さいブランドにとって日本の産地はなくてはならない存在。続いてもらわないと困るし、私もなるべく日本で続けたい。

WWD:やりとりの中から新しい技法と出会うこともあるでしょう。今、探している素材や加工は?

舟山:レザー風の加工です。レザーは元々が好きですし、長く着ることができるのでサステナブルでもある。ただ、直接肌につけるには少し抵抗があるので、コットン地でレザー風の箔加工などにトライしたいです。

WWD:日本の産地は存続の危機にあります。デザイナーとしてできることは何だと思いますか?

舟山:ブランドやデザイナーができることは、モノ作りの背景をもっと伝えることだと思います。モノ自体から伝わることも大事ですがもっと、積極的に「こういう職人の手があるからこういういいモノができる」といったストーリーを伝えたい。その手段は課題ですが、まずは展示会でバイヤーさんに伝え、そこから店頭の販売員さん、そしてお客さんへ伝わったらいいなと思う。

WWD:サステナビリティについて思うことは?

舟山:まずは、日本の縫製業や生地屋さに存続してもらえるように貢献すること。それはブランドが存続するためでもあります。もうひとつは、ゴミにはならない、価値がある服を作ること。ブランドを作るとき、すでに世の中にこんなに多くの服がある中で私たちが作らなくても誰も困らない。だからゴミになるものだけは作りたくない、と話しました。一シーズンで捨てられない服、気分でなくてもクローゼットにしまったり、誰かに譲ってもらったりされる服は品質が良く、デザインがおもしろいから。それもサステナビリティにつながると思う。

WWD:10年後となる2030年はどうなっていたい?

舟山:時代によって求められていることは変わっていると思うから、そこにフィットする柔軟な自分でありたいなと思う。そして店を持ち、コミュニケーションの場を持っていたい。売って終わりではなく世界観を体現できる場があってよりお客さんとつながれると思うから。

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アップデーターがAIマーケティング企業と連携 「エシカル経済圏」創出を目指す


アップデーター(UPDATER)とアイキュー(AIQ)は、マーケティング領域で連携し、エシカル志向の高い消費者が集まる「エシカル経済圏」の創出に向けて取り組みを始めた。アイキューは、特許技術AIで新たな産業DXを推進するサービスを提供している企業で、第一弾としてアップデーターが提供するファッションブランドのエシカル評価検索サービス「シフトシー(Shift C)」において、「アイキュー」の特許技術AIを使ったインフルエンサーマーケティングを実施し、エシカル志向の高い消費者が集まる「エシカル経済圏」の創出に取り組むという。さらに、アップデーターの法人向けSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)プラットフォーム「みんなSX for Biz」において、サステナブル商材に対するAIを活用したマーケティング支援サービスの提供も目指す。

両社は連携の背景について「近年、エシカル消費やサステナブルな商品への関心が高まっており、消費者の購買行動においても環境や社会的な配慮が重視されている一方、多くの企業がサステナビリティの取り組みを進める中で、消費者にその価値が十分に伝わらず、事業活動に結びつかないという課題がある。この現状を踏まえ、今回の連携を通じて消費者と企業の信頼関係を築き、エシカルな経済循環を促進することを目指す」と説明する。

具体的には「シフト シー」で、「アイキュー」の特許技術であるプロファイリングAIを活用したインフルエンサーマーケティングを展開し、認知拡大を図る。さらに、サステナブル商材を持つアップデーターの顧客に対して、エシカル経済圏を起点にしたサステナブル商材のマーケティング支援プラン「顔の見える広告(仮称)」を展開し、アップデーターの法人向けSXプラットフォーム「みんなSX for Biz」の提供を目指す。「これらの取り組みにより、サステナビリティを推進している企業の努力が報われ、サステナビリティやエシカル志向の高い消費者にきちんと情報が届き、企業の利益につながる循環を生み出したい」と両社。

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アップデーターがAIマーケティング企業と連携 「エシカル経済圏」創出を目指す


アップデーター(UPDATER)とアイキュー(AIQ)は、マーケティング領域で連携し、エシカル志向の高い消費者が集まる「エシカル経済圏」の創出に向けて取り組みを始めた。アイキューは、特許技術AIで新たな産業DXを推進するサービスを提供している企業で、第一弾としてアップデーターが提供するファッションブランドのエシカル評価検索サービス「シフトシー(Shift C)」において、「アイキュー」の特許技術AIを使ったインフルエンサーマーケティングを実施し、エシカル志向の高い消費者が集まる「エシカル経済圏」の創出に取り組むという。さらに、アップデーターの法人向けSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)プラットフォーム「みんなSX for Biz」において、サステナブル商材に対するAIを活用したマーケティング支援サービスの提供も目指す。

両社は連携の背景について「近年、エシカル消費やサステナブルな商品への関心が高まっており、消費者の購買行動においても環境や社会的な配慮が重視されている一方、多くの企業がサステナビリティの取り組みを進める中で、消費者にその価値が十分に伝わらず、事業活動に結びつかないという課題がある。この現状を踏まえ、今回の連携を通じて消費者と企業の信頼関係を築き、エシカルな経済循環を促進することを目指す」と説明する。

具体的には「シフト シー」で、「アイキュー」の特許技術であるプロファイリングAIを活用したインフルエンサーマーケティングを展開し、認知拡大を図る。さらに、サステナブル商材を持つアップデーターの顧客に対して、エシカル経済圏を起点にしたサステナブル商材のマーケティング支援プラン「顔の見える広告(仮称)」を展開し、アップデーターの法人向けSXプラットフォーム「みんなSX for Biz」の提供を目指す。「これらの取り組みにより、サステナビリティを推進している企業の努力が報われ、サステナビリティやエシカル志向の高い消費者にきちんと情報が届き、企業の利益につながる循環を生み出したい」と両社。

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経済産業省が「みらいのファッション人材育成プログラム」成果発表会開催  参加者募集


経済産業省が主催する「みらいのファッション人材育成プログラム」は2025年1月17日には京都で、2月1日には東京でそれぞれ最終成果発表会開催する。

「みらいのファッション人材育成プログラム」は、次世代ファッションクリエイターの育成を目的に、経済産業省が主催する補助事業。2024年度から開始した本プログラムでは、これからのファッション産業を牽引する5組の事業者を公募により採択し、育成および事業化支援を行ってきた。

最終成果発表会では、プログラムに採択された5組の事業者(メタクロシス、ワコール、JR西日本SC開発、シンフラック、マイ スズキ)が、持続可能なサプライチェーンのアップデートにつながる事業創出に向けて進めてきた取り組みの成果を発表する。会場には、成果物やプロトタイプの展示エリアを設け、各事業者に直接コミュニケーションできる時間も用意する。

京都および東京で2回の開催を予定しており、発表する内容は同じ。東京開催ではオンライン配信も実施する。いずれも参加費無料。詳細・申込みは「みらいのファッション」で検索 。

多彩な参加クリエイター

メタクロシス

「デジタルマネキンAuinの開発」
3Dモデルの活用が広がるなか、3DCGの衣服を着用させ小売向けに活用できるマネキンの選択肢が少ない現状に対し、デジタルマネキン「Auin」を開発し、普及させることを目指す。「Auin」を用いた演出例の制作と発信や「Auin」を用いたデモアプリの作成、3Dプリントを活用したマネキン製作などに取り組む。

ワコール

「立体メルトブロー法による単一素材アイテムの展開」
これまでブラジャーのカップ部などに採用されていた立体物を直接的に作製する独自技法「立体メルトブロー法」を用いて、単一素材でジャケットやパンツ等のアイテムを作製する。将来的に他社と協力し、技術と社会課題解決の可能性を探ることを目指し事業を推進する。

JR西日本SC開発

「商業施設を起点としたサーキュラーエコノミーモデルの構築について」
衣料品廃棄物の削減に向けて、商業施設が回収拠点となり様々なステークホルダーと協業し、購買から回収・再活用までの一連の流れを設計する。回収した衣料品は複数の再活用のループを併用することでサーキュラーエコノミー型社会モデルを構築し、消費者・テナント事業者の意識を変え、社会課題の解決に取り組む。

シンフラックス(SYNFLUX)

「ゼロウェイストファッション事業におけるLCA評価導入調査事業」
ファッション産業の廃棄問題の解決に向け、シンフラックスの環境配慮事業にLCA評価手法(ライフサイクルアセスメント)を導入すること、及び得られた知見を日本国内のファッション事業従事者と共有することを目指す。具体的にはシンフラックスの提供する「Algorithmic Couture®※」の事業推進のため、環境配慮事業の効果を定量的に評価・改善する方法論として、LCA評価手法の確立と応用可能性の探求を進め、知見を共有するための会議を開催し、レポートを公開する。
※ファッションデザインの過程における廃棄を最小化するため、AI(人工知能)を活用した新しいパターンメイキングのシステム

マイスズキ(MAI SUZKI)

「伝統工藝『組子』×デジタルファブリケーションの融合による循環型・ウェアラブル新素地の開発」
伝統的な木工技術「組子」を3Dモデル化し、デジタルアーカイブすることにより技術を保存する。さらにデジタルファブリケーションを活用した新たな「組子」の製造方法を見出し、再構築可能で柔軟性のあるウェアラブル素地の開発を目指す。

■「みらいのファッション人材育成プログラム」最終成果発表会
京都開催
日時:2025年1月17日(金)10:00-14:30
場所:QUESTION 7階 Creative Commons
住所:京都市中京区河原町通御池下る下丸屋町

東京開催
日時:2025年2月1日(土)13:00-18:00
場所:東京大学 情報学環・福武ホール 地下2階 福武ラーニングシアター/福武ラーニングスタジオ
住所:東京都文京区本郷7丁目3 情報学環・福武ホール

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高島屋のクリスマス装飾をリユースやリサイクル活用 鯖江の高島リボン


高島リボンは、高島屋のクリスマスディスプレイに使用した装飾リボンを回収しリユースやリサイクルを行う。回収の対象は、高島屋の日本橋店、新宿店、横浜店、大阪店、京都店の5店舗。

回収した不要品は、エコミット(ECOMMIT)のリサイクルパートナーを通じて再資源化などが行われ、ポリエステル100%のリボンなどの一部は伊藤忠商事が展開するリサイクルポリエステル糸「レニュー(RENU)」の原材料として使用する。「レニュー」は、高島リボンが展開する製品「アイアムサステナブル(I am sustainable)」でも使用している。高島リボンは、福井県鯖江市を拠点とする1932年創業の衣料用副資材やラッピングリボンの企画製造販売を行う企業。

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高島屋のクリスマス装飾をリユースやリサイクル活用 鯖江の高島リボン


高島リボンは、高島屋のクリスマスディスプレイに使用した装飾リボンを回収しリユースやリサイクルを行う。回収の対象は、高島屋の日本橋店、新宿店、横浜店、大阪店、京都店の5店舗。

回収した不要品は、エコミット(ECOMMIT)のリサイクルパートナーを通じて再資源化などが行われ、ポリエステル100%のリボンなどの一部は伊藤忠商事が展開するリサイクルポリエステル糸「レニュー(RENU)」の原材料として使用する。「レニュー」は、高島リボンが展開する製品「アイアムサステナブル(I am sustainable)」でも使用している。高島リボンは、福井県鯖江市を拠点とする1932年創業の衣料用副資材やラッピングリボンの企画製造販売を行う企業。

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エイガールズの「マル」好調 ファクトリーブランドの「3万円の100%カシミヤインナー」が売れるワケ

和歌山のテキスタイルメーカーエイガールズのインナーウエアブランド「マル(MALU)」が好調だ。2021年に“Your Personal Luxury(自分だけの贅沢・自分にしか味わえない贅沢)”をコンセプトに6型で始動。手編みのような膨らみと柔らかさのあるカシミヤ100%のインナーウエアがウケて、22年秋には型数を10型に増やし、23年にはシルク100%9型をラインアップに加えた。23年の売上高は前年比140%増、24年の現時点でも前年比150%増と好調だ。リピーターが多く、人気デザイナーズブランドのデザイナーが何着もまとめ買いをして愛用するなどプロからの支持が厚い。販路は自社ECに加え、セレクトショップでのポップアップストアや店舗は限られるが卸売りも始めた。

24年には米国ニューヨークのセレクトショップで「マル」のポップアップストアを開きテストマーケティングを行った。山下装子エイガールズ副社長は「伸縮性があるニットとはいえサイズ展開が求められる米国でワンサイズ展開は難しいかもしれないという不安があったが、『One size fits all(全てのサイズに対応)』と好反応をいただきタンクトップやオープンネックが特に好評だった」と話す。25年1月からは台湾でもポップアップストアを開くなど販路を海外にも広げる。

「マル」で用いている生地はもともとエイガールズとしてさまざまなブランドに提案していたものだった。「筒状のインナーを作ってみてはどうかと提案していたが売れなかった。そもそも10年前はブランドがインナーを手掛けることはほとんどなかったし、下着ではなくインナーに特化したブランドもなかったことも理由だろう」と振り返る。カシミヤやシルクを100%使用し繊細に編み上げた生地は高価でもあった。「素晴らしい生地だから自分たちでブランドを始めようと決めた」。

ファクトリーブランドの成功が意味すること

好調の理由を装子副社長は「ファッションブランドではなくプロダクトプランドだった点、他にはない肌触りのインナーウエアだったという点がよかったのではないか」と分析する。

「マル」を編む小寸のビンテージ丸胴機械はシルクとカシミヤ用にそれぞれ2台。編み上がった生地をそのままボディに用いるためロスが少ない。この機械は最大18本の糸から編み上げることができるが、「マル」で用いるカシミヤ糸もシルク糸も極細のため、糸への負担をできる限り抑えながら2本の糸でゆっくり編み上げる。「1年で作ることができる枚数は限られているため、1年中編み機を回している」。

「用いるカシミヤやシルクの糸は引っ張るとすぐに切れるほど細い。世界でもこの極細糸を編み上げることができるのはおそらく当社だけだ」と「マル」を手掛けるニッターの南方俊二コメチゥ社長は胸を張る。コメチゥには他のニッターが根を上げたような難しい依頼が集まるという。装子副社長も「機械を理解している俊二さんだからこそできる唯一無二の製品だ」と語る。余談だが、南方社長は100年前のベントレー社製のチェーン編み機を、廃業を決めたニッターから譲り受け、全て分解して組み立て直すことで構造を理解して使い続けている。「約1500のパーツがあり3カ月かかった。構造を理解することでトラブルに対応できる」と南方社長。

「売上高の上限が見えた」と装子副社長はいうが、「マル」を始めて「単純に利益を上げることだけではない利点があった。例えば異業種への販路が広がった」という。「自社ブランドを運営することで今まで接点がなかった人とつながることができた。正直ファッション産業だけで商売を続けていくのは厳しい。レストランのリニューアルにあわせてクッションカバーやタペストリーの依頼があるなど、販路が広がっている」と話す。

エイガールズはラグジュアリーやデザイナーズ、カジュアルまで幅広いブランドから支持を集め、生地を販売しOEMも手掛ける。すでに多くのブランドが認知する有力テキスタイルメーカーではあるが、「最近では一度取引がなくなったブランドから『マル』を手掛けていることを知ってもらい、そのクオリティを評価してもらい『もう一度生地を見たい』とアプローチがあるなど相乗効果が生まれている」。

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エイガールズの「マル」好調 ファクトリーブランドの「3万円の100%カシミヤインナー」が売れるワケ

和歌山のテキスタイルメーカーエイガールズのインナーウエアブランド「マル(MALU)」が好調だ。2021年に“Your Personal Luxury(自分だけの贅沢・自分にしか味わえない贅沢)”をコンセプトに6型で始動。手編みのような膨らみと柔らかさのあるカシミヤ100%のインナーウエアがウケて、22年秋には型数を10型に増やし、23年にはシルク100%9型をラインアップに加えた。23年の売上高は前年比140%増、24年の現時点でも前年比150%増と好調だ。リピーターが多く、人気デザイナーズブランドのデザイナーが何着もまとめ買いをして愛用するなどプロからの支持が厚い。販路は自社ECに加え、セレクトショップでのポップアップストアや店舗は限られるが卸売りも始めた。

24年には米国ニューヨークのセレクトショップで「マル」のポップアップストアを開きテストマーケティングを行った。山下装子エイガールズ副社長は「伸縮性があるニットとはいえサイズ展開が求められる米国でワンサイズ展開は難しいかもしれないという不安があったが、『One size fits all(全てのサイズに対応)』と好反応をいただきタンクトップやオープンネックが特に好評だった」と話す。25年1月からは台湾でもポップアップストアを開くなど販路を海外にも広げる。

「マル」で用いている生地はもともとエイガールズとしてさまざまなブランドに提案していたものだった。「筒状のインナーを作ってみてはどうかと提案していたが売れなかった。そもそも10年前はブランドがインナーを手掛けることはほとんどなかったし、下着ではなくインナーに特化したブランドもなかったことも理由だろう」と振り返る。カシミヤやシルクを100%使用し繊細に編み上げた生地は高価でもあった。「素晴らしい生地だから自分たちでブランドを始めようと決めた」。

ファクトリーブランドの成功が意味すること

好調の理由を装子副社長は「ファッションブランドではなくプロダクトプランドだった点、他にはない肌触りのインナーウエアだったという点がよかったのではないか」と分析する。

「マル」を編む小寸のビンテージ丸胴機械はシルクとカシミヤ用にそれぞれ2台。編み上がった生地をそのままボディに用いるためロスが少ない。この機械は最大18本の糸から編み上げることができるが、「マル」で用いるカシミヤ糸もシルク糸も極細のため、糸への負担をできる限り抑えながら2本の糸でゆっくり編み上げる。「1年で作ることができる枚数は限られているため、1年中編み機を回している」。

「用いるカシミヤやシルクの糸は引っ張るとすぐに切れるほど細い。世界でもこの極細糸を編み上げることができるのはおそらく当社だけだ」と「マル」を手掛けるニッターの南方俊二コメチゥ社長は胸を張る。コメチゥには他のニッターが根を上げたような難しい依頼が集まるという。装子副社長も「機械を理解している俊二さんだからこそできる唯一無二の製品だ」と語る。余談だが、南方社長は100年前のベントレー社製のチェーン編み機を、廃業を決めたニッターから譲り受け、全て分解して組み立て直すことで構造を理解して使い続けている。「約1500のパーツがあり3カ月かかった。構造を理解することでトラブルに対応できる」と南方社長。

「売上高の上限が見えた」と装子副社長はいうが、「マル」を始めて「単純に利益を上げることだけではない利点があった。例えば異業種への販路が広がった」という。「自社ブランドを運営することで今まで接点がなかった人とつながることができた。正直ファッション産業だけで商売を続けていくのは厳しい。レストランのリニューアルにあわせてクッションカバーやタペストリーの依頼があるなど、販路が広がっている」と話す。

エイガールズはラグジュアリーやデザイナーズ、カジュアルまで幅広いブランドから支持を集め、生地を販売しOEMも手掛ける。すでに多くのブランドが認知する有力テキスタイルメーカーではあるが、「最近では一度取引がなくなったブランドから『マル』を手掛けていることを知ってもらい、そのクオリティを評価してもらい『もう一度生地を見たい』とアプローチがあるなど相乗効果が生まれている」。

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青山商事が回収したスーツを活用 “繊維to繊維”リサイクルコート発売


青山商事は、洋服の青山の店舗などに設置している「リサイクリングボックス」で回収したスーツのウールを再利用する“繊維to繊維”のリサイクルコート「ウエアシフトコート」を「洋服の青山」主要100店舗および公式オンラインストアで発売した。

同社は2023年10月から「洋服の青山」および「スーツスクエア」の店内に不要になった衣類などを回収する「リサイクリングボックス」を設置。2023年度はスーツをはじめ約355トンの衣類を回収しており、そのうちウール100%のスーツを再利用し“繊維to繊維”のリサイクルコートを制作した。

リサイクルウールは大津毛織が手掛ける「オズミー(OZMY)」の生地を採用。今回は生地製造過程や縫製時にでる裁断残布に加えて、店頭で回収したウール地のスーツを使用した。コートの裏地には再生ポリエステルを使用している。

デザインはオンオフ兼用しやすいショート丈のステンカラーコート。襟はコーデュロイの切り替えがアクセントで、襟に付いているストラップを留めればスタンドカラーへとデザインを変えることができるなど様々なシチュエーションで活躍するマルチコートとなっている。価格は3万7290円。

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青山商事が回収したスーツを活用 “繊維to繊維”リサイクルコート発売


青山商事は、洋服の青山の店舗などに設置している「リサイクリングボックス」で回収したスーツのウールを再利用する“繊維to繊維”のリサイクルコート「ウエアシフトコート」を「洋服の青山」主要100店舗および公式オンラインストアで発売した。

同社は2023年10月から「洋服の青山」および「スーツスクエア」の店内に不要になった衣類などを回収する「リサイクリングボックス」を設置。2023年度はスーツをはじめ約355トンの衣類を回収しており、そのうちウール100%のスーツを再利用し“繊維to繊維”のリサイクルコートを制作した。

リサイクルウールは大津毛織が手掛ける「オズミー(OZMY)」の生地を採用。今回は生地製造過程や縫製時にでる裁断残布に加えて、店頭で回収したウール地のスーツを使用した。コートの裏地には再生ポリエステルを使用している。

デザインはオンオフ兼用しやすいショート丈のステンカラーコート。襟はコーデュロイの切り替えがアクセントで、襟に付いているストラップを留めればスタンドカラーへとデザインを変えることができるなど様々なシチュエーションで活躍するマルチコートとなっている。価格は3万7290円。

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2024年に印象に残ったサステナビリティ取材と「買ったもの」を振り返り

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

ゲストは前回に続いて、「WWDJAPAN」欧州通信員の藪野淳さんです。今回は藪野通信員がインタビュアーとなり、2024年に特に印象に残ったサステナビリティ関連取材をヒアリング。向ディレクターは「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のショーや日本の繊維産地で見たコミュニティーのパワーを、木村記者はセレクトショップ「デルタ」で感じたファッション愛やハースト婦人画報社の取材で考えたメディアの役割についてなどを振り返ります。2人が今年「買ったもの」についても語っています。



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「プラダ」が青山店で海洋保護イベントを開催 環境写真家やユネスコ科学者らが意見を交わす

プラダ・グループとユネスコは12月11日、「プラダ(PRADA)」青山店・エピセンターで、2019年から協働で進めている教育プログラム「シービヨンド(SEA BEYOND)」をテーマとしたトークイベントを開催した。

「シービヨンド」はプラダ・グループとユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)が持続可能性と海洋保護に対する意識向上を目指して実施しているもので、トークイベント「プラダ ポッシブル カンバセーション」は、世界中の思想家、文化人、科学者、ファッションリーダーが集まり各地のプラダ・エピセンターで行っている。

今回はエミー賞ノミネートの経歴を持つ環境写真家・アーティストのエンツォ・バラッコ(Enzo Barracco)とフランチェスカ・サントロ(Francesca Santoro)ユネスコ-IOC シニアプログラムオフィサが登壇し、さらに海洋エコシステムの理解と保護促進を目的とする組織、全米海洋教育者協会(NMEA)を代表してメーガン・マレロ(Meghan Marrero)とジョアンナ・フィリッポフ(Joanna Philippoff)も参加した。魚類学者のさかなクンもビデオメッセージを通じて議論に意見を寄せた。

イベント会場には、エンツォが撮影したインパクトある環境写真も併せて展示した。プラダ・グループCSR担当責任者のロレンツォ・ベルテッリ(Lorenzo Bertelli)はイベントの意義について「多様なオーディエンスにリーチし、より大きなインパクトを起こすことを願っている。そしてアートフォトは、知識を深め、変化を導き実現するためのパワフルなツールのひとつだと信じている」と話している。

「写真には複雑なストーリーをシンプルに伝える力がある」

「WWDJAPAN」はトークセッションの後、登壇者の2人に単独インタビューを行った。科学者と写真家という異なる立場の2人に海を守ること、そのために私たち自身ができることについて聞いた。

WWD:写真の力とは?

エンツォ・バラッコ(以下、パラッコ):写真には複雑なストーリーをシンプルに伝える力がある。私が自然を体験して自然の美に触れたように、写真を通じて見て気になり、その背景にある事実を科学者の力を借りて知れば考え方が変わるきっかけになるだろう。南極で氷山のアンバランスな形を見て私は美しいと思ったが、同行していた大学教授である科学者は「一部が解けてバランスが変容したあの氷山は、生き残りをかけて戦っている形なのだ」と教えてくれた。同じようなことを写真を見る人にも体験してほしい。

WWD:あなたは長らくファッション撮影の第一線で活躍した後に、南極大陸に魅せられて自然の美に目覚めたと聞く。人造的であり欲望を掻き立てる権威的なファッションの美の力とありのままの自然の美しさは、同じ“ビューティ”でも異なる。その両方に触れて思うことは?

パラッコ:確かに私は自然に触れ、その美しさを発見した。自然の美しさの本質、つまり儚さと同時に美しさを解き放つようなものだ。最近は、ファッションの概念が少し変わってきたと思う。今は「プラダ」をはじめ、それぞれのブランドが保全や持続可能性に対するアプローチを熱心に行っている。私たちのファッションが自然に対してもう少し敬意を払い、自然からインスピレーションを得るようになり、自然をただ利用するのではなくなったことは、とても興味深い。

WWD:例えば?

パラッコ:今日私は「リナイロン」を使用した「プラダ」のブルゾンを着ている。デザインはもちろん素晴らしく、とても快適。でも、もっと重要なのは、この製品が「シービヨンド」のようなプロジェクトの資金調達に役立つということだ。このブルゾンは、ファッションの美しさと私たちが達成すべき主な目標である海や原則についての創造的な意識を結びつける、とても簡単な方法なのだ。つまり、“目的を持ったファッション(fashion with the purpose)”だ。

WWD:あなた自身は変わることを楽しんでいるが多くの人にとって変わることは容易ではない。

パラッコ:地球には緊急の問題が迫っており、私たちは変革を迫られているのです。確かに変わることは難しい。が、私たちがこれは生き残るために必要な変化なのだ。

「情報や知識があれば変わることへの恐れはなくなる」

WWD:今日は子供たちを対象とした海洋教育の話をたくさん聞き、いかに体験を通じた体験が重要であるかを理解した。同時に子ども以上に大人の方が変わるのは難しいし、変えることを強制されることに恐怖すら感じる。海を守るために大人の意識を変えていけることは?

フランチェスカ・サントロ(Francesca Santoro)ユネスコ-IOC シニアプログラムオフィサ(以下、サントロ):その感覚はよく理解できる。人々が恐れる理由は、知識や情報が十分ではないからだと思う。逆に言えば、情報や知識があれば恐れはなく、人々を動機づけ、感情的な観点からも動かすことができる。例えば、海がなぜ重要なのか、なぜ私たちの健康にとって重要なのかを大人にも説明することが大切。基本的な要素を理解しなければ、人々は決して行動を起こそうとはしないから。私が科学者であり、「知識を増やすこと」の力を本当に信じている。

WWD:その具体的な方法とは?

サントロ:知識を増やすには多くの方法がある。例えば、芸術やゲーム、あるいは本やドキュメンタリー映画を読むことなど。人によって情報の入手方法は異なるか私たちは、情報を伝えるさまざまな方法についても試している。ポッドキャストを好む人もいれば、ドキュメンタリー映画を好む人もいますし、展覧会に行くのが好きな人もいる。私たち一人一人が異なる料理人であるように、例えば動物に興味を持つ人もいれば、物理的な環境に興味を持つ人もいる。だから、私たちは本当にさまざまな方法で情報を発信しなければならない。それが、ジャーナリストやコミュニケーション担当者と多く仕事をする理由でもある。

WWD:ユネスコで働き、科学者でもあるあなたは海を守る活動を通じてさまざまな産業と対話をしていると思うが、ファッション業界はあなたの目にはどう映っている?

サントロ:ファッション業界のすべての人々ではありませんが、ファッション、特に「プラダ」のような大きなブランドは、海を守るメッセージが多くの人々にリーチする手助けができると思う。なぜなら「プラダ」は多くの人々に知られており、多くの人々がその製品やソーシャルメディアに注目しているから。特に、科学的事実にはあまり興味のないコミュニティの人々に届けることができる。ファッションも文化の一部であり、文化は人々にメッセージを届けるための非常に重要な手段であり、人々を動かす力がある。

WWD:さまざまな環境問題がある中で、何から取り組んでよいか迷う企業は多いと思う。「プラダ」のように海にフォーカスする意義とは?

サントロ:海は「プラダ」ファミリーのDNAやバックグラウンドのひとつ。そして海は地球にとって海は本当に重要な存在だ。この事実を知っている人は多くないが、海をより健康的なものにできれば私たち人間もより健康的になる。地球の70%が海で覆われており、生命は海から始まった。また、海から遠く離れた場所に住んでいても、海は多くのものの源であり、海を守ることは、未来への投資となる。海がもし国であれば世界第4位の経済大国になるという研究結果もある。つまり、海には非常に大きな経済的価値があるということ。海運、商品、輸送、観光、インターネットケーブル、石油やガスなど、海に関係する産業は本当にたくさんある。数字で示せば、海が経済的にも非常に重要になっていることがわかるだろう。

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「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」開催 「ディーゼル」グレンら登壇に熱気あふれる

尽きないQ&A、熱気に包まれた時間

「WWDJAPAN」は12月13日、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」を東京ポートシティ竹芝 ポートホールで開催した。本サミットはグローバルで最先端をキーワード2020年にスタートし、今年で5回目となる。回を追うごとに来場者数が増え、今年は4つのトークセッションのために用意した400席がすべて満席となり、Q&Aタイムでは多くの質問が飛び出すなど熱気に包まれた時間が生まれた。リアルでの対話を重視し、トークセッションに加えて2つのプレゼンテーション、さらにブース形式でのプロジェクト紹介の展示を用意。来場者は会場内を巡回しながらコーヒーを片手にイベントをそれぞれの視点で楽しんでいた。

ゴールドウインの渡辺貴生社長と福代美乃里/学生団体「やさしいせいふく」代表のセッション(上写真)では、19歳の福代代表が「そもそもなぜ事業成長が必要なのか?事業成長と環境保全の両立は可能だと思うか?」といった直球の質問を次々投げかけ、それに対して渡辺社長は自身の製品に対する思い入れや事業の戦略を率直に返答するなど、世代や立場を超えた熱い対話が繰り広げられた。

日本の繊維産地をテーマにしたセッション(下写真)では、福田稔A.T. カーニー シニアパートナーがファシリテーターを務め、舟山瑛美「フェティコ(FETICO)」デザイナー、宮浦晋哉 糸編 代表取締役/キュレーター、井上彩花スズサン営業、各種プロジェクト担当、篠原由起 篠原テキスタイル代表取締役といった異なる立場のニューリーダーがそろい、事業継承や欧州規制への対応といった産地が抱える深刻な課題を浮かび上がらせつつ、海外からも高い評価を得ている日本のモノづくりの可能性について掘り下げた。

「バレンシアガ」のサステナビリティ担当者が日本のメディア初登場

ケリングとグループメゾンである「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のセッションではそのサステナビリティ戦略について、フランスからアニカ・モーア・ストーファルト バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクターとジェラルディン・ヴァレジョ ケリング サステナビリティ プログラム ディレクターが登壇して解説。具体的なコレクションや製品、店舗を例に「サステナビリティチームはデザインチームと緊密に連携している」などクリエイションの背景について語り、会場からの質問にも多く答えた。

Z世代のカリスマ、kemioも登場

「ディーゼル」のセッションでは、パリから参加したグレン・マーティンス「ディーゼル(DIESEL)」クリエイティブ・ディレクターがZ世代を中心に熱狂的なファンを持つファッションアイコンであるkemioと「時代を変える熱狂の生み出し方」をテーマに熱いトークを繰り広げた。破棄デニムを大量に使用した会場演出が印象的だった「ディーゼル」の2025年春夏ミラノコレクションを題材に、グレンは「サステナビリティはその重要性を理解しながらも“退屈”で“難し”など距離を置かれがちだが、デザインを通し魅力的に表現すれば、“参加したい”気分を駆り立てることができると思う」などと語り、kemioも拠点とするニューヨークの日常で目にするサステナブルなライフスタイルについてなど自身の体験を交えて語り、議論を深めた。

「これまで感じたことのない熱気を来場者から感じた」

「今年はこれまで感じたことのない熱気を来場者から感じて、ファッション×サステナビリティのフェーズがひとつ変わった、前に進んだという手ごたえを得ました」と、主催者である向千鶴「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターは振り返る。今年のテーマに「Beyond the Boundary ~サステナビリティを携え、境界線を越えてゆく!~」を掲げた理由については「サステナビリティはパスポートのようなもの。それを前提としたヴィジョンを掲げて活動を始めれば、企業や産業、地域、年齢や役職といった、私たちが無意識に持つさまざまな境界線を超えて前に進むことができる、そんな経験を持つ人は多いでしょう。本イベントはまさに“Beyond the Boundary”を体験していただく場として用意しました」と解説する。「トークセッションのライブ配信を行わないのも、アットホームかつ熱い、リアルな場作りを目指したから。まさにそれを体現できたことで “勉強になった”に加えて、“楽しかった”“ファッションの未来が明るく見えた”といった感想を幅広い世代からいただけて嬉しい」。

トークセッション

【15:05 ~ 15:50】19 歳の活動家がゴールドウイン渡辺社長に聞く 10 の質問
・渡辺貴生/ゴールドウイン代表取締役社長
・福代美乃里/学生団体「やさしいせいふく」代表

【16:15 ~ 17:30】循環型、再生型への転換に向けた日本の繊維産地の可能性をさぐる
・福田稔/A.T. カーニー シニアパートナー
・井上彩花/スズサン営業、各種プロジェクト担
・篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役
・舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー
・宮浦晋哉/糸編 代表取締役/キュレーター

【17:45 ~ 17:55】プレゼンテーション Shift Cサイトおよびサステナブル経営のためのガイドツール「グッドメジャーズ」
・山浦誉史Shift Cブランド営業担当
・浦田庸子Shift C編集長

【18:00 ~ 18:45】 バレンシアガのサステナビリティ戦略 世界基準の革新とは
・アニカ・モーア・ストーファルト/バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクター
・ジェラルディン・ヴァレジョ/ケリング サステナビリティ プログラム ディレクター

【18:55 ~ 19:05 】プレゼンテーション 「プチバトー」のサステナビリティのポリシーとモノづくりの背景
・ジャン=マルク・ギュメ プチバトーCOO

【19:15 ~ 20:00】 ディーゼルのグレン・マーティンスと語る 時代を変える熱狂の生み出し
・グレン・マーティンス/「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター
・kemio /クリエイター、モデル

なお、アーカイヴ動画は2025年1月末から期間限定で無料配信する予定だ。

PHOTO:TAMEKI OSHIRO

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「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」開催 「ディーゼル」グレンら登壇に熱気あふれる

尽きないQ&A、熱気に包まれた時間

「WWDJAPAN」は12月13日、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2024」を東京ポートシティ竹芝 ポートホールで開催した。本サミットはグローバルで最先端をキーワード2020年にスタートし、今年で5回目となる。回を追うごとに来場者数が増え、今年は4つのトークセッションのために用意した400席がすべて満席となり、Q&Aタイムでは多くの質問が飛び出すなど熱気に包まれた時間が生まれた。リアルでの対話を重視し、トークセッションに加えて2つのプレゼンテーション、さらにブース形式でのプロジェクト紹介の展示を用意。来場者は会場内を巡回しながらコーヒーを片手にイベントをそれぞれの視点で楽しんでいた。

ゴールドウインの渡辺貴生社長と福代美乃里/学生団体「やさしいせいふく」代表のセッション(上写真)では、19歳の福代代表が「そもそもなぜ事業成長が必要なのか?事業成長と環境保全の両立は可能だと思うか?」といった直球の質問を次々投げかけ、それに対して渡辺社長は自身の製品に対する思い入れや事業の戦略を率直に返答するなど、世代や立場を超えた熱い対話が繰り広げられた。

日本の繊維産地をテーマにしたセッション(下写真)では、福田稔A.T. カーニー シニアパートナーがファシリテーターを務め、舟山瑛美「フェティコ(FETICO)」デザイナー、宮浦晋哉 糸編 代表取締役/キュレーター、井上彩花スズサン営業、各種プロジェクト担当、篠原由起 篠原テキスタイル代表取締役といった異なる立場のニューリーダーがそろい、事業継承や欧州規制への対応といった産地が抱える深刻な課題を浮かび上がらせつつ、海外からも高い評価を得ている日本のモノづくりの可能性について掘り下げた。

「バレンシアガ」のサステナビリティ担当者が日本のメディア初登場

ケリングとグループメゾンである「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のセッションではそのサステナビリティ戦略について、フランスからアニカ・モーア・ストーファルト バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクターとジェラルディン・ヴァレジョ ケリング サステナビリティ プログラム ディレクターが登壇して解説。具体的なコレクションや製品、店舗を例に「サステナビリティチームはデザインチームと緊密に連携している」などクリエイションの背景について語り、会場からの質問にも多く答えた。

Z世代のカリスマ、kemioも登場

「ディーゼル」のセッションでは、パリから参加したグレン・マーティンス「ディーゼル(DIESEL)」クリエイティブ・ディレクターがZ世代を中心に熱狂的なファンを持つファッションアイコンであるkemioと「時代を変える熱狂の生み出し方」をテーマに熱いトークを繰り広げた。破棄デニムを大量に使用した会場演出が印象的だった「ディーゼル」の2025年春夏ミラノコレクションを題材に、グレンは「サステナビリティはその重要性を理解しながらも“退屈”で“難し”など距離を置かれがちだが、デザインを通し魅力的に表現すれば、“参加したい”気分を駆り立てることができると思う」などと語り、kemioも拠点とするニューヨークの日常で目にするサステナブルなライフスタイルについてなど自身の体験を交えて語り、議論を深めた。

「これまで感じたことのない熱気を来場者から感じた」

「今年はこれまで感じたことのない熱気を来場者から感じて、ファッション×サステナビリティのフェーズがひとつ変わった、前に進んだという手ごたえを得ました」と、主催者である向千鶴「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターは振り返る。今年のテーマに「Beyond the Boundary ~サステナビリティを携え、境界線を越えてゆく!~」を掲げた理由については「サステナビリティはパスポートのようなもの。それを前提としたヴィジョンを掲げて活動を始めれば、企業や産業、地域、年齢や役職といった、私たちが無意識に持つさまざまな境界線を超えて前に進むことができる、そんな経験を持つ人は多いでしょう。本イベントはまさに“Beyond the Boundary”を体験していただく場として用意しました」と解説する。「トークセッションのライブ配信を行わないのも、アットホームかつ熱い、リアルな場作りを目指したから。まさにそれを体現できたことで “勉強になった”に加えて、“楽しかった”“ファッションの未来が明るく見えた”といった感想を幅広い世代からいただけて嬉しい」。

トークセッション

【15:05 ~ 15:50】19 歳の活動家がゴールドウイン渡辺社長に聞く 10 の質問
・渡辺貴生/ゴールドウイン代表取締役社長
・福代美乃里/学生団体「やさしいせいふく」代表

【16:15 ~ 17:30】循環型、再生型への転換に向けた日本の繊維産地の可能性をさぐる
・福田稔/A.T. カーニー シニアパートナー
・井上彩花/スズサン営業、各種プロジェクト担
・篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役
・舟山瑛美/「フェティコ」デザイナー
・宮浦晋哉/糸編 代表取締役/キュレーター

【17:45 ~ 17:55】プレゼンテーション Shift Cサイトおよびサステナブル経営のためのガイドツール「グッドメジャーズ」
・山浦誉史Shift Cブランド営業担当
・浦田庸子Shift C編集長

【18:00 ~ 18:45】 バレンシアガのサステナビリティ戦略 世界基準の革新とは
・アニカ・モーア・ストーファルト/バレンシアガ グローバル・サステナビリティ・ディレクター
・ジェラルディン・ヴァレジョ/ケリング サステナビリティ プログラム ディレクター

【18:55 ~ 19:05 】プレゼンテーション 「プチバトー」のサステナビリティのポリシーとモノづくりの背景
・ジャン=マルク・ギュメ プチバトーCOO

【19:15 ~ 20:00】 ディーゼルのグレン・マーティンスと語る 時代を変える熱狂の生み出し
・グレン・マーティンス/「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター
・kemio /クリエイター、モデル

なお、アーカイヴ動画は2025年1月末から期間限定で無料配信する予定だ。

PHOTO:TAMEKI OSHIRO

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大阪・関西万博「住友館」が制服を「ヨウヘイ オオノ」と協業 ペットボトルリサイクルなど活用

住友グループは、⼤阪・関⻄万博の「住友館」のアテンダントユニフォームのデザインを「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」の⼤野陽平デザイナーと協業した。ユニフォームには、住友商事グループ企業が全国の⼩売店などで独⾃に回収したペットボトルから再⽣した特殊⻑繊維⽤ペレット「ボトリウム(BOTTOLIUM)」と、住友化学が開発した吸熱と放熱の特性を併せ持つ温度調節樹脂「コンフォーマ」を⽤いた繊維を採⽤する。

⼤野デザイナーにとってユニフォームのデザインは初の取り組み。森や自然、いのちをテーマにした住友館から着想を受けつつ、ユニフォームとしての機能性を保ちながら、分量感のあるプリーツを採用するなど「ヨウヘイ オオノ」らしいスタイルを採用している。ジャケットやパンツ・カットソーを用いたスーツスタイルや帽子やシューズなどを共通デザインとしながら2種類のユニフォームを制作した。

サイクリングトップをベースにしたスポーティーなインナーは、住友化学の「コンフォーマ」を採用し、首元に「襟風の切り替え」を配することで接遇スタッフとしてのフォーマル感も兼ね備えたという。また、帽子には日本を代表する帽子ブランド「オート モード ヒラタ(HAUTE MODE HIRATA)」の一ブランドである「サキ エ ショウ(SAKI E SHOW)」と「ヨウヘイ オオノ」が共創。「ボトリウム(BOTTOLIUM)」を用いて立体感のあるフォームで一目で住友館のユニフォームを印象づけるデザインに仕上げた。靴は靴メーカーのアポロ(APOLLO)と「ヨウヘイ オオノ」の靴を手がけている「セレナテラ(SELLENATELA)」の榎本郁栄デザイナーとの協業で、ジャケットやパンツと統⼀性あるシルエットやコントラストになるカラーリングと、履き⼝が柔らかいエラスティック仕様で機能⾯も融合させたシューズとした。

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「WWDJAPAN」欧州通信員が語るヨーロッパのサステナ事情

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、「WWDJAPAN」欧州通信員の藪野淳さんです。藪野通信員はドイツ・ベルリンを拠点に、ヨーロッパのファッション・ウイークをはじめ、世界のデザイナーやブランドを精力的に取材しています。藪野通信員が今年最も印象に残ったサステナビリティ関連の取材は、パリのグラン・パレ・エフェメールで開かれたサステナビリティサミット「チェンジ ナウ」だと言います。「チェンジ ナウ」の盛り上がりぶりやベルリンのサステナビリティ事情などについて語ってもらいました。



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企業と共に社会課題の解決を目指す「ココ・ラボフッド」始動、第一弾はAOKIと連携

残布やリサイクル素材を活用したアパレルブランド「ココ(coxco)」を展開するココ(coxco)はこのほど、社会課題の解決を目指す法人向けの新たなプロジェクト「ココ・ラボフッド(coxco Labhood)」を発足した。第一弾としてAOKIと連携し、ウィメンズ向けの機能性インナーを寄付金付きで販売する。

「ココ・ラボフッド」では加盟企業とともに、社会課題解決に向けた具体的なアクションを推進する。同プロジェクトで集まった資金は、同社が支援するフィリピンの復職技能訓練校「ココラボ(coxco Lab)」の運営に活用する他、他の連携NPO団体への支援にも充てる。これにより、日本とフィリピンでの女性活躍を後押しする社会貢献活動として展開する。加盟企業には、「ココラボ」とのタイアップや、SDGs・ESG専門家による特別講義などを提供する。

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地域特有の文化資源の発見と再生 岐阜の限界集落で取り組む夫妻に見るビジネスの新しい視点

PROFILE: (右)平野彰秀/NPO法人地域再生機構副理事長 (左)平野馨生里/石徹白洋品店店主

(右)平野彰秀/NPO法人地域再生機構副理事長<br />
(左)平野馨生里/石徹白洋品店店主
PROFILE: (ひらの・あきひで)右:1975年岐阜市生まれ。大学・大学院で都市計画と建築を学ぶ。2001~05年北山創造研究所、05~08年経営コンサルティングのブーズ・アレン・ハミルトン。01年に東京にいながら岐阜市でまちづくり団体の立ち上げに参画、07年に石徹白に出合う。08年に岐阜市にUターンし自然エネルギーの活動を開始。11年に石徹白に移住 (ひらの・かおり)左:1981年岐阜市生まれ。石徹白での小水力発電事業を経て2011年岐阜県の山奥の集落、石徹白(いとしろ)に移住。12年石徹白洋品店設立。地域に伝わる農作業ズボン「たつけ」をリデザインした商品を製造・ 販売する。石徹白で植物を育て採取し、藍染・草木染めを行う。服作りに加えて地域の高齢者に話を聞く「聞き書き」の活動や民話絵本の制作なども行う。22年、地域再生大賞準大賞受賞

地域文化を守り、つなげる取り組みが増えている。日本各地には土地特有の文化があり、世界を見渡してもこれほど多様な文化が残る国は少ない。他方、開発や過疎によってその文化が失われつつある地域がいくつもある。こうした土地に暮らし地域特有の文化資源を発見して再生する人々の取り組みからは、ビジネスや暮らしの新しい視点が見えてくる。

水力発電と伝統民衣、石徹白の文化をつなぐ夫妻の挑戦

福井県との県境の険しい山道を車で上ること30分。標高700mの山間に人口約200人の石徹白(いとしろ)集落がある。集落には4つの小規模水力発電設備があり、そのうち2機が北陸電力と接続していて発電量は集落の電気使用量の280%。驚くのは2016年に竣工した最大出力125kw(約150世帯分)の「石徹白番場清流発電所」を集落ほぼ全世帯出資で建設した点にある。建設費2億4000万円のうち3/4は自治体からの補助を受けたというが、通常、電力会社や企業、行政が運営することが多い発電所を集落で運営している。小規模水力発電は水量と落差があればどこでもでき、石徹白では農業用水路を活用して発電しているため環境影響はほぼないという。

「石徹白番場清流発電所」の売電収益は年間約2400万円。単純計算すると10年で原価償却できるが、15年の返済計画を立て、利益を地域の課題解決に充てている。例えば、耕作放棄地の再生や移動販売の誘致などを行っている。

限界集落の存続に取り組むのは2011年に石徹白に移住してきたNPO法人地域再生機構副理事長の平野彰秀さんだ。平野さんの妻は以前「WWDJAPAN」でも紹介した「石徹白洋品店」を営む平野馨生里さんで、夫妻でかつて石徹白地区に根付いていたサステナブルな暮らしの知恵を復活させようと取り組んでいる。

集落の存続のために事業する意味

平野夫妻が目指すのは「縄文時代から続く集落の文化をつなぎ、当たり前の暮らしが当たり前に続いていくこと」。馨生里さんは石徹白に伝わる民衣の作り方をおばあさんから聞き、現代服にアレンジして提案している。実は彰秀さんが取り組む小規模水力発電も石徹白では1913~55年まで行われていたという。夫妻はかつて石徹白で行われていたことに取り組みながら、持続可能な集落の在り方を模索している。

石徹白には最大出力5000kw規模の水力発電所建設の話があったというが断った経緯がある。彰秀さんは「エネルギーのために水力発電を行っているわけではなく、地域のために行っている」と話す。川の魚や子供たちの遊び場を失ってまで作る必要があるのか、という決断だった。

石徹白は白山信仰が盛んだった平安時代から鎌倉時代にかけては「上り千人、下り千人、宿に千人」と言われるほど修験者の出入りが多く栄えた土地で、明治時代までは、神に仕える人が住む村としてどの藩にも属さず、年貢免除・名字帯刀が許されたところでもある。柳田國男や宮本常一ら民俗学者が調査に訪れるほど独自の文化が形成されている。こうした歴史から従来の自治組織に重きを置く住民も多く、集落による発電所運営につながっている。

平野夫妻は、非人間(動物・植物・微生物のみならず、信仰の対象である山や川なども含む)と共に暮らしながら、土地に住む人々から土地のことを教わり、学び、伝えている。一方的に有限の自然から資源を収奪するのではなく、自然も人間から恩恵を受けるような状況となるよう、地域共同体が住む場所との結びつきを維持し、継承すべく取り組んでいるともいえよう。

そのためにも「仕事」を生み出し、移住者誘致や関係人口増加に夫妻は取り組む。これまでの移住世帯は13を数えるが、もともと高齢化率が高い集落だったため、現在の人口は約200人な上に減少傾向が続いている。移住は厳しくても地域を知ってもらう取り組みとして「石徹白洋品店」では夏場に藍染めのインターンシップを受け入れる。最低3週間滞在することによって、関係人口増加を狙っている。新しい取り組みとして「石徹白洋品店」は25年9月に築150年の建物を改装し、一棟貸の宿泊施設をオープンする。「馬小屋や屋根裏、囲炉裏の部屋などが残っている。石徹白らしい家の間取りを生かしてこの土地の暮らしを体験できるような施設になる」と馨生里さん。新たな仕事を生むことはもちろん、集落の形を残すことも大切だと考えたからだ。

大きなシステムの中で生きるのとは異なる生き方があると示したい

多くの人にとって都市部で安定した生活を送ることが当たり前になっているが、平野夫妻は「もともと日本にあったサステナブルな知恵を受け継いで形にするという着眼点で事業や暮らしをして、大きなシステムの中で生きるのとは異なる生き方があると示したい」という。

土地の文化をつなげる活動が新たな活動を生み、それが地域の豊かさにつながることがある。平野夫妻の活動にインスパイアされ、日本各地の地域文化をつなごうと取り組む人の輪が広がっている。知多半島の藍染め文化を復活させるために「石徹白洋品店」の門をたたき、3年間の修業を経て地元の愛知県常滑市で「知多藍」に取り組む桒山奈美帆さんもその一人だ。知多半島はかつて木綿生産で知られ、その知多木綿を使った藍染めもさかんだった。桒山さんは、畑から染料を作り染めまでを一貫して知多半島で行う。常滑焼の甕を使い染料に混ぜる酒、ふすまや貝灰の一部も知多半島から調達し、知多半島で循環するものづくりに取り組んでいる。

PROFILE: 桒山奈美帆/紺屋のナミホ代表

桒山奈美帆/紺屋のナミホ代表
PROFILE: (くわやま・なみほ)1991年愛知県常滑市生まれ。2011年ゴールドウイン入社。「ザ・ノース・フェイス」で販売とVMDを担当。18年石徹白へ。「石徹白洋品店」で藍染めを学び、21年、藍染め工房「紺屋のナミホ」創業。天然灰汁発酵建てという100%天然染料の昔ながらの技法にこだわる。企業や個人からの染色依頼を受けたり、藍染めした自社商品企画を行う。一般向けにワークショップや工房見学も行う

桒山さんに石徹白を選んだ理由について尋ねると「実は石徹白でなければならない理由はなかった」というが、結果的に石徹白から影響を受けたことが3つあったという。1つ目は「藍の葉1枚も無駄にせず藍染液を使い切る姿勢」。「石徹白の藍染めは他の藍染め工房と変わらないが、無駄にしないという“たつけ”の作り方と同じ信念がある」。2つ目は「できるだけ身の回りでモノをそろえること」。顔の見える人から野菜を買う、物々交換をするという石徹白の暮らしの影響だという。「『知多藍』と名乗るなら地元から調達したいと考えた。実際取り組んでみると思っていた以上に顔の見える人たちから材料を調達できた。難しいのは貝灰のみで一部を購入している」と話す。

3つ目は「地域の文化を大事にしなければという想いが強くなったこと」。桒山さんは石徹白で近所のおばあさんの家で時間を過ごすことが多かったという。「昔ながらの方法を現役の方から直々に教わることが多く、リアリティがあった。一番衝撃だったのは雪深い石徹白ではかんじきが現役に使われていたこと。スノーブーツではないんですよ。おばあさんは『かんじきが一番』とかんじきの作り方や履き方を教えてくれた」。

知多の藍染めは昭和時代には途切れていた。「まずは知多のおばあさんやおじいさんに話を聞きにいこうと考えた。直接藍染めをしていた方には巡り合えなかったけれど、藍染めでもどんな柄が流行っていたかを調べているおじいさんがいた。銭湯の盗難品の台帳から調査していてその方法もユニークで印象的だった。横縞が多い時期、千鳥格子が多い時期と分析していた。今そのおじいさんと柄の研究を始めていて再現しようと取り組んでいる」。

今後の展望を尋ねた。「『知多藍』を根付かせたい。私自身、プレイヤーでい続けたいから工房を拡張する気はない。のれん分けという形で『知多藍』を伝える方を増やしたいと考えている。これまで4人がこの工房を卒業して新たに工房を構えた。藍は一度栽培をやめると種が取れない。やむを得ない状況になったときでも仲間がいれば種を分け合うことができる」。現在の仕事はアパレルメーカーからの依頼が約8割を占めるというが、「大量に依頼されたときは皆と助け合って染めている」という。

「知多藍」の種は石徹白から譲りうけたものだという。平野夫妻の撒いた種が吹生き始めている。

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地域特有の文化資源の発見と再生 岐阜の限界集落で取り組む夫妻に見るビジネスの新しい視点

PROFILE: (右)平野彰秀/NPO法人地域再生機構副理事長 (左)平野馨生里/石徹白洋品店店主

(右)平野彰秀/NPO法人地域再生機構副理事長<br />
(左)平野馨生里/石徹白洋品店店主
PROFILE: (ひらの・あきひで)右:1975年岐阜市生まれ。大学・大学院で都市計画と建築を学ぶ。2001~05年北山創造研究所、05~08年経営コンサルティングのブーズ・アレン・ハミルトン。01年に東京にいながら岐阜市でまちづくり団体の立ち上げに参画、07年に石徹白に出合う。08年に岐阜市にUターンし自然エネルギーの活動を開始。11年に石徹白に移住 (ひらの・かおり)左:1981年岐阜市生まれ。石徹白での小水力発電事業を経て2011年岐阜県の山奥の集落、石徹白(いとしろ)に移住。12年石徹白洋品店設立。地域に伝わる農作業ズボン「たつけ」をリデザインした商品を製造・ 販売する。石徹白で植物を育て採取し、藍染・草木染めを行う。服作りに加えて地域の高齢者に話を聞く「聞き書き」の活動や民話絵本の制作なども行う。22年、地域再生大賞準大賞受賞

地域文化を守り、つなげる取り組みが増えている。日本各地には土地特有の文化があり、世界を見渡してもこれほど多様な文化が残る国は少ない。他方、開発や過疎によってその文化が失われつつある地域がいくつもある。こうした土地に暮らし地域特有の文化資源を発見して再生する人々の取り組みからは、ビジネスや暮らしの新しい視点が見えてくる。

水力発電と伝統民衣、石徹白の文化をつなぐ夫妻の挑戦

福井県との県境の険しい山道を車で上ること30分。標高700mの山間に人口約200人の石徹白(いとしろ)集落がある。集落には4つの小規模水力発電設備があり、そのうち2機が北陸電力と接続していて発電量は集落の電気使用量の280%。驚くのは2016年に竣工した最大出力125kw(約150世帯分)の「石徹白番場清流発電所」を集落ほぼ全世帯出資で建設した点にある。建設費2億4000万円のうち3/4は自治体からの補助を受けたというが、通常、電力会社や企業、行政が運営することが多い発電所を集落で運営している。小規模水力発電は水量と落差があればどこでもでき、石徹白では農業用水路を活用して発電しているため環境影響はほぼないという。

「石徹白番場清流発電所」の売電収益は年間約2400万円。単純計算すると10年で原価償却できるが、15年の返済計画を立て、利益を地域の課題解決に充てている。例えば、耕作放棄地の再生や移動販売の誘致などを行っている。

限界集落の存続に取り組むのは2011年に石徹白に移住してきたNPO法人地域再生機構副理事長の平野彰秀さんだ。平野さんの妻は以前「WWDJAPAN」でも紹介した「石徹白洋品店」を営む平野馨生里さんで、夫妻でかつて石徹白地区に根付いていたサステナブルな暮らしの知恵を復活させようと取り組んでいる。

集落の存続のために事業する意味

平野夫妻が目指すのは「縄文時代から続く集落の文化をつなぎ、当たり前の暮らしが当たり前に続いていくこと」。馨生里さんは石徹白に伝わる民衣の作り方をおばあさんから聞き、現代服にアレンジして提案している。実は彰秀さんが取り組む小規模水力発電も石徹白では1913~55年まで行われていたという。夫妻はかつて石徹白で行われていたことに取り組みながら、持続可能な集落の在り方を模索している。

石徹白には最大出力5000kw規模の水力発電所建設の話があったというが断った経緯がある。彰秀さんは「エネルギーのために水力発電を行っているわけではなく、地域のために行っている」と話す。川の魚や子供たちの遊び場を失ってまで作る必要があるのか、という決断だった。

石徹白は白山信仰が盛んだった平安時代から鎌倉時代にかけては「上り千人、下り千人、宿に千人」と言われるほど修験者の出入りが多く栄えた土地で、明治時代までは、神に仕える人が住む村としてどの藩にも属さず、年貢免除・名字帯刀が許されたところでもある。柳田國男や宮本常一ら民俗学者が調査に訪れるほど独自の文化が形成されている。こうした歴史から従来の自治組織に重きを置く住民も多く、集落による発電所運営につながっている。

平野夫妻は、非人間(動物・植物・微生物のみならず、信仰の対象である山や川なども含む)と共に暮らしながら、土地に住む人々から土地のことを教わり、学び、伝えている。一方的に有限の自然から資源を収奪するのではなく、自然も人間から恩恵を受けるような状況となるよう、地域共同体が住む場所との結びつきを維持し、継承すべく取り組んでいるともいえよう。

そのためにも「仕事」を生み出し、移住者誘致や関係人口増加に夫妻は取り組む。これまでの移住世帯は13を数えるが、もともと高齢化率が高い集落だったため、現在の人口は約200人な上に減少傾向が続いている。移住は厳しくても地域を知ってもらう取り組みとして「石徹白洋品店」では夏場に藍染めのインターンシップを受け入れる。最低3週間滞在することによって、関係人口増加を狙っている。新しい取り組みとして「石徹白洋品店」は25年9月に築150年の建物を改装し、一棟貸の宿泊施設をオープンする。「馬小屋や屋根裏、囲炉裏の部屋などが残っている。石徹白らしい家の間取りを生かしてこの土地の暮らしを体験できるような施設になる」と馨生里さん。新たな仕事を生むことはもちろん、集落の形を残すことも大切だと考えたからだ。

大きなシステムの中で生きるのとは異なる生き方があると示したい

多くの人にとって都市部で安定した生活を送ることが当たり前になっているが、平野夫妻は「もともと日本にあったサステナブルな知恵を受け継いで形にするという着眼点で事業や暮らしをして、大きなシステムの中で生きるのとは異なる生き方があると示したい」という。

土地の文化をつなげる活動が新たな活動を生み、それが地域の豊かさにつながることがある。平野夫妻の活動にインスパイアされ、日本各地の地域文化をつなごうと取り組む人の輪が広がっている。知多半島の藍染め文化を復活させるために「石徹白洋品店」の門をたたき、3年間の修業を経て地元の愛知県常滑市で「知多藍」に取り組む桒山奈美帆さんもその一人だ。知多半島はかつて木綿生産で知られ、その知多木綿を使った藍染めもさかんだった。桒山さんは、畑から染料を作り染めまでを一貫して知多半島で行う。常滑焼の甕を使い染料に混ぜる酒、ふすまや貝灰の一部も知多半島から調達し、知多半島で循環するものづくりに取り組んでいる。

PROFILE: 桒山奈美帆/紺屋のナミホ代表

桒山奈美帆/紺屋のナミホ代表
PROFILE: (くわやま・なみほ)1991年愛知県常滑市生まれ。2011年ゴールドウイン入社。「ザ・ノース・フェイス」で販売とVMDを担当。18年石徹白へ。「石徹白洋品店」で藍染めを学び、21年、藍染め工房「紺屋のナミホ」創業。天然灰汁発酵建てという100%天然染料の昔ながらの技法にこだわる。企業や個人からの染色依頼を受けたり、藍染めした自社商品企画を行う。一般向けにワークショップや工房見学も行う

桒山さんに石徹白を選んだ理由について尋ねると「実は石徹白でなければならない理由はなかった」というが、結果的に石徹白から影響を受けたことが3つあったという。1つ目は「藍の葉1枚も無駄にせず藍染液を使い切る姿勢」。「石徹白の藍染めは他の藍染め工房と変わらないが、無駄にしないという“たつけ”の作り方と同じ信念がある」。2つ目は「できるだけ身の回りでモノをそろえること」。顔の見える人から野菜を買う、物々交換をするという石徹白の暮らしの影響だという。「『知多藍』と名乗るなら地元から調達したいと考えた。実際取り組んでみると思っていた以上に顔の見える人たちから材料を調達できた。難しいのは貝灰のみで一部を購入している」と話す。

3つ目は「地域の文化を大事にしなければという想いが強くなったこと」。桒山さんは石徹白で近所のおばあさんの家で時間を過ごすことが多かったという。「昔ながらの方法を現役の方から直々に教わることが多く、リアリティがあった。一番衝撃だったのは雪深い石徹白ではかんじきが現役に使われていたこと。スノーブーツではないんですよ。おばあさんは『かんじきが一番』とかんじきの作り方や履き方を教えてくれた」。

知多の藍染めは昭和時代には途切れていた。「まずは知多のおばあさんやおじいさんに話を聞きにいこうと考えた。直接藍染めをしていた方には巡り合えなかったけれど、藍染めでもどんな柄が流行っていたかを調べているおじいさんがいた。銭湯の盗難品の台帳から調査していてその方法もユニークで印象的だった。横縞が多い時期、千鳥格子が多い時期と分析していた。今そのおじいさんと柄の研究を始めていて再現しようと取り組んでいる」。

今後の展望を尋ねた。「『知多藍』を根付かせたい。私自身、プレイヤーでい続けたいから工房を拡張する気はない。のれん分けという形で『知多藍』を伝える方を増やしたいと考えている。これまで4人がこの工房を卒業して新たに工房を構えた。藍は一度栽培をやめると種が取れない。やむを得ない状況になったときでも仲間がいれば種を分け合うことができる」。現在の仕事はアパレルメーカーからの依頼が約8割を占めるというが、「大量に依頼されたときは皆と助け合って染めている」という。

「知多藍」の種は石徹白から譲りうけたものだという。平野夫妻の撒いた種が吹生き始めている。

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ハースト婦人画報社が「気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞

ハースト婦人画報社はこのほど、環境省による「気候変動アクション環境大臣表彰」の「普及・促進部門(緩和部門)」を受賞した。同賞は、気候変動の緩和(温室効果ガスの排出抑制対策)及び気候変動への適応(気候変動の影響による被害の回避・軽減対策)に関して、顕著な功績のあった個人もしくは団体に対して贈られる。同部門・同分野をメディア企業が受賞するのは初めて。

ハースト婦人画報社は、1905年に女性の社会進出を後押しする時代の要請に応じて創刊された「婦人画報」を筆頭に、「エル(ELLE)」や「ヴァンサンカン(25ans)」「ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)」などのメディアを運営。国連安保理で気候変動が議論された2007年には「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」で「グリーン(環境)」特集を実施した。それ以降もさまざまな媒体で社会課題や環境課題などを特集し、計測を開始した2020年春から現在まで累計2600以上のデジタル記事を配信している。カーボンフットプリントを算出したイベントを開催するなど、業界、ステークホルダーとも連携しながら情報発信を行なっている。

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抽選販売12月16日まで 日本酒産業課題解決を目指し「サケハンドレッド」の「百光」が原料米から刷新

Clearが運営する日本酒ブランド「サケハンドレッド(SAKE HUNDRED)」が、代表銘柄「百光(びゃっこう)」のリニューアルを実施した。2024 年醸造の「百光」※には、約1万本の抽選販売に対して約7万人の応募があり、7月までで一般販売分全てが完売した。新生「百光」(720mL、3万8500円、楯の川酒造)は、10月から2025年春にかけて醸造。抽選販売の応募受付をブランド公式サイトで12月16日まで行なう。

※一般向け販売分完売。一部小売店や飲食店、ホテル、法人、海外輸出向け販売は含まない

日本酒産業は1973年をピークに消費量は右肩下がりで、この20年間で毎月平均2.4社が廃業するなど低利益が常態化している。「サケハンドレッド」は、日本酒産業における量から質への転換と酒蔵をはじめとする日本酒産業全体のサステナブルな成⻑を目指し、2018年、「“上質”を極める、至高の1本」として「百光」を販売した。以降、同酒は日本酒における高価格帯市場の創出を担うブランドの旗艦銘柄として、売り上げをけん引。現在、「サケハンドレッド」の平均購入価格は5万円を超える(24年5月現在)。利益は醸造パートナーである全国8カ所の酒蔵や酒米農家、種麹メーカーなど産業全体に還元している。

「百光」の新しい原料米には「山形県産・雪女神」を採用。「雪女神」は山形県が独自に開発した品種で、大吟醸を造ることに特化した酒米だ。高精白に耐えられ、醸造時のコントロールがしやすいため精度の高い発酵管理をかなえる。酒質はよりエレガントできめ細やかな味わいに仕上げた。これまで採用していた酒米は有機栽培米であり、昨今の異常気象や人手不足の中での安定的供給という点で課題を感じていたという。日本酒産業界における新規市場の創出に必要な供給量を確保するためにも、高価格日本酒がより広く認知され、⻑期的に多くの商品が流通し続けることの重要性をより強く発信していく。「高級=希少な米という前提からの脱却を図ると共に、希少性に頼りすぎることのない魅力を伝えていきたい。今回のリニューアルは、『百光』が王道定番の高級酒になるための第一歩だと考えている」と、生駒龍史Clear代表取締役CEO兼ブランドオーナーは語る。

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ゴールドウインが大阪万博パビリオンのユニホームを製作 中里唯馬、宮田裕章とタッグ

ゴールドウインは12月12日、2025年開催の大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「Better Co-Being®(いのちを響き合わせる)」にサプライヤー協賛することを発表し、中里唯馬「ユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)」デザイナーとともに手掛けたアテンダントスタッフのユニホームを披露した。

厳しい暑さなど気候の変化が予想される4月13日〜10月13日までの長期間中、屋根も壁もない森の中をイメージしたパビリオンで、常駐するスタッフが快適に過ごせるよう、デザイン性と環境性、機能性を大きな柱に、パビリオンのコンセプトに沿った“自然と共鳴する衣服”を製作。テーマ事業プロデューサーを務め、「Better Co-Being®」を手掛ける慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授とゴールドウイン、中里デザイナーが協業の背景を明かした。

屋根も壁もない、日光と雨風を心地よく感じるパビリオン

「Better Co-Being®」は、万博の中心に位置するメインのパビリオンとなる。宮田教授はパビリオンの名前とコンセプトについて、現在に重きを置いた“Well-Being”のWellを未来に向かうBetterに変えて、「共に生きる」という意味のCo-beingと組み合わせた。さらに、未来につながる持続可能性と一人ひとりの多様な豊かさが調和する考え方のもとに、世界とのつながりを生態系の中でつなげていこうと緑豊かなスペースを作り上げた。設計は金沢21世紀美術館などを手掛けた妹島和世と西沢立衛によるユニット、SANAA事務所が担当。敷地面積は1634㎡。パビリオンでは人と人、人と世界、人と未来の3つのシークエンスを描き、それらが結びつき共鳴する体験をアートインスタレーションなどで表現する。

少ない型数でさまざまな着方ができるように、着物に着想

オートクチュールデザイナーとしてファッションの最高峰の衣服を手掛けてきた中里デザイナーだが、昨今は実験的なアプローチで新たな美を生み出す持続可能な服作りに挑戦してきた。そして今回「Better Co-Being®」のコンセプトのもと、中里デザイナーのミッションは、世界中の人を迎え入れるフォーマルさと環境負荷軽減を考えた機能美だった。ユニホームの大きな特徴は、着る人の性別も体型も問わないサイズ展開と好みの着方ができるということ。アイテムは、半袖Tシャツと長袖パンツ、ロング丈のシャツ、レインコート、帽子の1型ずつのみ。シャツにおいては、長い袖を半袖またはノースリーブに変形でき、ウエスト位置はベルトを用いることで4段階に調整することができる。また、前立てを左右どちらも使えるよう設計することでユニセックスでの着用を可能とした。「環境負荷を与えないよう、また多様なニーズに応えられるよう、少ない型数でさまざまな体型にフィットできる仕掛けに工夫した。そこで、私もよくデザインのヒントとする着物にインスピレーションを得て、帯や前立てのアイデアを採用した」と中里デザイナー。

太陽光反射率の高い新素材と3Dデジタル技術を採用

今回のユニホーム開発には、ゴールドウインの富山本店にある研究開発施設「ゴールドウイン・テック・ラボ」(以下「テック・ラボ」)が中心となり、素材の開発やプリントデザインにおいて最新技術を提供した。素材については、屋外で着用する暑さ対策として、太陽光反射率に着目した素材を新たに東レと開発。特殊な加工技術により、紫外線遮蔽率(UVカット値)と太陽光の反射率をともに高め、ユニホームのジャケットとシャツ、パンツに採用した。さらには隙間を作る織り方により、通気性も確保した。日本で回収された使用済みPETボトルを原料にしたリサイクル率76%の超フルダム糸を使った素材でもあり、環境に配慮している。

印象的なプリントデザインは、朝から夕方までパビリオンを照らす太陽光の木漏れ日に着想。時間によって変化する木漏れ日の写真と中里デザイナーによるドローイングを重ね、「テック・ラボ」のAI技術を駆使したテキスタイルパターンと3Dデジタル技術によるグラフィックのサイズや配置の開発・検証を行い、つなぎ目のない連続したパターン制作を実現した。これらの技術により、残反削減だけでなく、試作サンプルもデジタル上で作成することで、資源の削減にも成功。また、セイコーエプソンのデジタル捺染機「モナリザ」の顔料インクを使用し、アナログ染料プリントに比べ96%の水使用量を削減した。

ファッションの未来も捉えたユニホーム

中里デザイナーは、「最先端技術により、アイテム一枚一枚に異なるプリントを配することができ、パビリオンのコンセプトでもある個性を輝かせるデザインを完成することができた。また防水のレインコートも新素材によって、ダイナミックな風も受けられる通気性を備えているし、脇のファスナーを開ければケープのように着ることもできる心地よさがある。襖や障子のある和室のような構造をイメージに衣類の中で空気を変化させていく。ともに試行錯誤した『テック・ラボ』との協業は、(15年以上ファッションに携わる)私にとって新しい発見と学びが多くあり、楽しく制作することができた」と話した。

ゴールドウインの新井元常務執行役員は、「われわれの使命はパビリオンの環境の中で、スタッフが安全に、そして快適に過ごせるかを実現すること。オファーがあった時は、相当難易度が高いなと思った。私たちを照らす太陽の光は大事であるが、現代の環境を考えると遮熱や遮断を考慮しなければいけない。さらに風が吹けば、速やかに通気できる機能も必要だ。『テック・ラボ』は天候に合わせた研究開発を行っている。今回は中里さんのデザインを具現化し、快適性を実現できる材料を考え、長期間でもクオリティーを落とさず着用できることに注力した」と明かした。

開発の裏側について話を聞いた宮田教授は、「中里さんは未来の責任からどう服を作るのかという問いに挑む、尊敬するデザイナー。個性を尊重するという多様性の時代において、服を通してチャレンジできたことにとても感謝している。そして自然環境と常に向き合ってきたゴールドウインの技術力もすばらしく、遮断しながらも風や緑、光の自然の魅力を感じることができる。ファッションにおいて、今回掲げたデザイン性と環境性、機能性のバランスは難しく、両者においても優先順位が異なる中で、すてきなユニホームを完成することができた。長く着ることで素材の風合いがさらに良くなることだろう。着用するのが楽しみだ」と喜びを語った。

「Better Co-Being®」のユニホームは12月13〜14日、東京・青山にあるゴールドウイン本社1階のイベントスペース「FASHION FRONTIER PROGRAM」エキシビションで特別展示をしている。

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乃村工藝社が“素材=地球資源”をテーマにした新プロジェクト始動 仲野太賀「MIDNIGHT PIZZA CLUB」とコラボ 

乃村工藝社は、2022年から取り組むR&Dプロジェクトの一環として、“素材=地球資源”をテーマにした「マテリアルレコード(material record)」を立ち上げ、その第1弾プロダクトとして12月13日に、音響装置「ヌーン バイ マテリアルレコード(noon by material record)」(以下、「ヌーン」)を発表する。

同プロダクトは、地球を構成するさまざまなサステナブル素材に目を向けて、“音”と“素材”を結びつけた空間設計を得意とする乃村工藝社グループの創造性が詰まった体験型アートピースだ。

「MIDNIGHT PIZZA CLUB」

今回の「ヌーン」発表に際し、俳優の仲野太賀、映像ディレクターの上出遼平、写真家の阿部裕介の3人による旅サークル「MIDNIGHT PIZZA CLUB」とのコラボレーションを実施。12月12日に発売される、旅の記録をまとめた書籍「MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY」の出版記念イベントに、「ヌーン」を設置。12月13〜15日に開催される同イベントでは「MIDNIGHT PIZZA CLUB」が旅の途中で撮影したネパールの写真が展示されるほか、上出遼平が旅先で収集した音源から制作したアンビエント・サウンドを「ヌーン」で聴くことができる。

サステナブル・マテリアルを活用

「ヌーン」は、海洋ごみや廃棄プラスチックを活用した再生素材、100%食品廃棄物を原材料とした自然由来の新素材、デニム端材をアップサイクルした左官材、コルクとウールの廃棄物からつくられたフェルトのような生地、再生材のアルミハニカムパネル、再資源化した人工砂を主原料としたセラミックス造形材、埼玉県南西部で間伐された未利用木材、スリランカで採掘された天然石の複合板、数十年掛けて生成される緑青を6時間で生成させた銅板など、サステナブル・マテリアルを活用してスピーカーを制作し、音響体験を通して素材の新しい価値観を生み出すことにチャレンジしている。

今回発表する初のプロダクトは建築物を思わせるような柱を意匠として施し、計9種のマテリアルを組み込んだ、帯域の異なる6つのスピーカー、真空管アンプなどの積層で構成。固有のストーリーや記憶を内包した筐体(きょうたい)から発する音が素材の特性を反映することで、素材の向こうにある風景、資源に目を向けるきっかけをつくる。さらに「ヌーン」は、スピーカーの筐体を構成するマテリアルを他素材に置換することも可能で、例えば地域や企業から排出される未利用資源や廃材を使った新素材を開発するなど、今後の展開も考えられる。「MIDNIGHT PIZZA CLUB Special Exhibition」での展示以外にも、さまざまな場所でポップアップ展示などを企画し、人々との接点を創出していく予定だという。

■「MIDNIGHT PIZZA CLUB Special Exhibition」
会期:12月13〜15日
時間:11:00〜18:30
会場:StandBy
住所:東京都渋谷区神宮前5-11-1

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「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」がアップサイクルプロジェクト第3弾を発売

「ナナミカ(NANAMICA)」がプロデュースする「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル(THE NORTH FACE PURPLE LABEL)」(以下、「パープルレーベル)」は、ファッションロスゼロを目指すプロジェクトの第3弾アイテムを12月13日に発売する。

今回は“RP フィールドリバーシブルジャケット”(5万5000円)と“RP フィールドパンツ”(3万3000円)の2型を展開。「ナナミカ」直営店舗とオンラインストア、下記の「ザ・ノース・フェイス」直営店で、日本国内かつ数量限定で販売する。

「ナナミカ」や「パープルレーベル」の生産の過程で余ってしまった生地や在庫としてある素材を用いながら、「ザ・ノース・フェイス」のアーカイブのディテールをミックスしてアイテムを再構築した。

“RP フィールドリバーシブルジャケット”

“RP フィールドリバーシブルジャケット”は表面に65/35ベイヘッドダッククロス、裏面にPOLARTECフリースを使用したフィールドリバーシブルジャケット。表面と裏面で使用する生地により、糸番手、運針などを変えたリバーシブルデザイン。製品洗いを施すことにより、着古したような柔らかい風合いを表現。表面に「ザ・ノース・フェイス バークレー」グラフィックプリントネームラベル、裏面に「ザ・ノース・フェイス」ロゴ刺しゅうが付く。身幅にゆとりをもたせたオーバーサイズシルエットでMとLの2サイズ展開。

“RP フィールドパンツ”

“RP フィールドパンツ”は、パッチワークデザインのフィールドパンツ。メイン素材はハウンドトゥース柄のPOLARTECフリースを使用。股上、ヒップ周りといったすれる箇所には、カバーリングコアヤーンチノクロスを使用。複数の生地を組み合わせることにより、リメイク感のあるデザインとなっている。チノパンツとスエットパンツのデザインをミックスし、使用する生地の部分によって運針などを変えている。左ももに「ザ・ノース・フェイス」ロゴ刺しゅう付き。ウエストにゆとりを持たせたワイドカットでMとLの2サイズ展開。

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東レと学生服飾団体「KFC」がコラボ 未来のファッションを語った!作った!

繊維大手の東レは、学生服飾団体の「Keio Fashion Creater(以下、KFC)」とコラボレーションを行う。回収ペットボトルをリサイクルした「アンドプラス(&+)」使用の素材を提供し、KFCが年に1度に全てを注ぎ込むファッションショーをサポートする。2年後の2026年に創業100周年を迎える東レは、なぜKFCとコラボレーションしたのか。東レの工場や現場で奮闘する若手社員とKFCのコラボレーションを3回に分けて追っていく。

東レが繊維研究所を構え、ナノテクノロジーを駆使した最先端繊維素材「ナノデザイン」の生産拠点であり、研修センターなども備える静岡県の三島工場を訪れたKFCのメンバーは、「アンドプラス」や東レの繊維事業の歴史に触れ、「多くの人が関わって巨大な設備で生産する糸も、過去から多くの人の熱い思いがつないできたことを実感した」と語った。

一方で東レのモノ作りを支える若手スタッフも、新しく開発したばかりの糸を生産することの難しさに触れつつ、「目標は(自分が生産の立ち上げに関わった糸が)30年、40年とロングセラーとなって続いていくこと」とやりがいを語る。東レには、当時まだ和装も盛んだった1964年に開発し、現在でもバージョンアップを繰り返しながら続く「シルック」がある。40年続くロングセラーを目指すという目標は、決して絵空事ではない強い思いの裏返しでもある。

100年近くにわたる繊維技術を次代につなげ、かつファッション産業を進化させられるのか。KFCのメンバーが「工場見学ですごく真摯にサステナビリティをはじめとした社会課題に向き合っていると感じた一方で、それが消費者やファッションの作り手に届いていないのでは?」といった忖度なしの意見をぶつける一方、「サステナブルを義務感ではなく、面白いテクノロジーや面白い素材を開発するための手段になっていて、その結果として持続可能なデザインにつながっていることを改めて実感した」といった意見も出た。対して東レの若手社員は、モノ作りの難しさに触れつつ、その楽しさややりがい、その先に広がる新しいファッションなどを語った。

次回の2回目は、東レの若手社員とKFCメンバーが互いの意見を本気でぶつけ合った座談会をお届けする。これまで培ってきた繊維の技術を継承しつつ、未来のためにサステナビリティにどう向き合っていくべきか。また、ファッションの持つ楽しさや喜びとは?

注:現在「アンドプラス(&+)」は、回収したペットボトルなどをリサイクルしたポリエステル繊維と、回収した漁網などをリサイクルしたナイロン繊維の2種類を展開している。なお、回収したペットボトルをチップにする工程は社外の協力企業にておこなわれている。

問い合わせ先
東レ 繊維事業本部新流通開拓室
ft-marketing-ig.toray.mb@mail.toray

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経産省から中川政七商店へ 意外なキャリアチェンジの理由

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は、中川政七商店で働く羽端大さんをゲストにお迎えしました。中川政七商店は、衣食住にまつわる生活工芸品の企画・製造・卸・小売を行う老舗企業です。羽端さんは経済産業省で行政官として務めたのち昨年、中川政七商店に転職。現在全国のメーカーのコンサルティング事業などに携わっています。羽端さんの意外なキャリアチェンジの背景や、ニューヨークの芸術大学パーソンズ・スクール・オブ・デザインで学んだデザイン思考、ファッション産業のサステナビリティについて思うことなどを聞きました。



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サステナビリティの事業実装に奮闘する 100年企業タカラベルモントの取り組み

タカラベルモント,takarabelmont

理美容室、エステ・ネイルサロンおよび歯科・医療クリニックの業務用設備機器や化粧品・空間デザインなどを手掛けるタカラベルモント。創業から100年以上の歴史を持つモノづくり企業である同社が、次の100年を視野にビジネスに実装しようと試行錯誤しているのがサステナビリティだ。23年には「人と地球の『らしさ』輝く社会をつくる。」をスローガンとし、「5つの領域と6つのマテリアリティ(重要課題)」などを含むサステナビリティポリシーを制定。社会課題と向き合うとともに、SDGsへの貢献を宣言した。

その上で標語だけで終わることなく、サステナビリティを事業へと落とし込むべく、「サステナビリティ推進プロジェクト」を発足。部署の垣根を超えてメンバーが集まり、25年発表予定の事業計画へと盛り込み、ビジネスへの実装を進める。同プロジェクトの2人のキーマンが、1年の活動を振り返り、タカラベルモントのサステナビリティへの向き合い方や未来像を語る。

一貫性のない活動に疑問符
サステナビリティに
企業としてどう向き合うか

WWD:「サステナビリティ推進プロジェクト」の立ち上げ背景を教えてください。

日野翔人 タカラベルモント 経営管理室(以下、日野):プロジェクトが立ち上がったのは、サステナビリティポリシーを定めた昨年の8月です。ポリシーを耳触りの良い言葉や雰囲気で終わらせるのではなく、企業活動の中で機能させてより具体的な活動へと落とし込むために、全社横断的なプロジェクトとしてスタートしました。

WWD:何らかの課題感があって動き始めた?

日野:プロジェクト発足以前の話ですが、そもそもポリシーがないことに問題意識を持っていました。当社は以前から、当たり前のように社会貢献や環境配慮などの活動に取り組んでいました。そういった活動を世の中のSDGsへの関心の高まりから、ホームページなどで開示するようになったときに、一貫性がなく取り組んでいる理由が不鮮明で疑問に感じることがありました。当てはまるからといって持続可能な開発目標に当てはめて発信しているのではウォッシュになりかねません。そうならないようにするためにはポリシーが不可欠です。その上でサステナビリティの重要度が増す中で、企業活動として利益を産みながら推進するべきと考えました。

中山健太郎 タカラベルモント 開発本部 インキュベーションラボ マネージャー(以下、中山):私もそんな現状に課題感を感じることが多く、日野によく相談していました。日頃は新規事業の開発に携わっていますが、企業がビジネス視点で取り組むサステナビリティと、一般の人が生活の中で取り組むサステナビリティは視点も意図も違います。世の中が目まぐるしく変わる中でこのままではビジネスチャンスを逃してしまうと危機感を感じていました。サステナビリティポリシーの設定は、企業としてかじを切るべきタイミングに実行できたと思います。

日野:近年は就活生にサステナビリティについてどのような取り組みを行っているのかを聞かれることも増えました。その答えや活動の方向性は経営層の間で共有されているべきだし、胸を張って取り組む意義や未来像を伝えていきたい。そのために僕が所属する経営管理室で、ポリシーの策定を行い、プロジェクトの立ち上げを交渉しました。

ポリシーを具体的に事業に落とし込むための
解像度アップと意識の共有

WWD:プロジェクト発足後にまず取り組んだことは?

中山:具体的な行動を起こすには、「地球環境にいいことをしましょう」「脱炭素に向けて取り組みましょう」では動けません。解像度を上げて、各事業部門へとブレイクダウンするために、6つのマテリアリティ(重要課題)を17のターゲットへと具体的に設定していきました。昨年8月から今年の3月までにおおよそをまとめました。

WWD:どのようなプロセスで、どういったターゲットが設定された?

中山:例えば水の領域を上げると、まずは社会から何を求められているかを調査し、世の中にあるガイドラインと照らし合わせて、具体的にどういった活動が必要なのかを理解します。その上で各事業部門でどのような取り組みができるのかを話し合いました。例えば機器や化粧品の製造において水の使用は欠かせません。しかし地球の立場から見つめてみると、当社のシャンプー機器での施術を通して理美容室で使われる水の量のほうがはるかに多く、対策した際の環境への貢献度が大きい点に着目して取り組みを進めることに。

WWD:プロジェクトを進める中では苦労も多かったのでは?

中山:推進するにあたり取捨選択は必ず必要で、優先的に取り組む領域に対して、決してもう一方がどうでもいいわけではないんです。そのあたりは難しいですよね。またわれわれの事業を通じてどのような社会を実現したいか、各部門の担当者には自分の言葉でビジョンを語ってもらいたいんです。しかし意見交換をする中で事業の課題はたくさん出てくるのですが、社会課題へと結びつけてもらうことがなかなかできなくて、何度も会話を重ねました。

日野:例えば理美容サロンで使う水の使用量を減らすことで、どのような社会につながるのか。グローバル視点で考えると当社はシャンプーも製造しているので、水を十分に使えない地域でも気持ちの良いシャンプーのサービスを受けることができて、美容文化が育っていったらうれしい。そんな夢を語ってほしいと考えています。一方で、新入社員の間でサステナビリティの研修を行うと、それぞれが感じている社会課題と、それを解決するタカラベルモントらしい事業のアイディアがたくさんでてきます。

中山:世代間でサステナビリティへの意識の差が大きいため、役員や各部門の担当者、中間管理職を集めてセミナーを行うこともプロジェクトの重要な取り組みでした。

ゴールを決めてプロジェクトを推進
過去最大級の社内イベントを開催

WWD:プロジェクトを通してどのような成果が得られた?

日野:特に大きな成果の一つは社内イベントで生まれた意識の高まりや共通認識の醸成です。全国からミドルマネジメント以上のポジションにつく社員を可能な限り大阪の拠点ティービースクエア オオサカに集めて、「タカラサステナビリティフェス 2024 -Change the Angle」を開催しました。全従業員向けたオンライン配信も含めると、全社員の3分の1にあたる520人ほどが参加。社内イベントとしては最大級の催しになりました。ミドルマネジメント層はとくに若手からのボトムアップを受けたとき、経営陣に連携し事業につなげる存在。そんな彼ら・彼女らがサステナビリティへの共通認識をもつことで、スムーズに事業が進むと考えました。

中山:小出しに意識改革やリテラシーアップを目指してもあまりうまく浸透しなかった過去の事例を鑑みて、インパクトとスピード感を重視し、大きなイベントで発信することに決めました。

日野:サステナビリティの活動は結果や成果の実感を得られるまでに時間がかかります。そこで、「サステナビリティ推進プロジェクト」ではプロジェクトのゴールを社内イベントに決め、その過程に細かな目標を設定することでメンバーのモチベーション維持に努めました。社内イベントまでに目指す状態、当日の目標などを決めて取り組めたことは、プロジェクトを進める上で大切だったと思います。

中山:イベント後にはサステナビリティを語る際に、ビジネスの中で取り扱う必要性を理解できたという意識変化の声が上がるようになってきました。一方で地域の活動やボランティアをすればサステナビリティにつながると考えていた人の中には悩み出した人がいるのも見受けられます。疑問が生まれていることはポジティブな成果だと考えています。サステナビリティを実現するためには、事業自体をサステナブルな方向へとシフトする必要があります。企業活動の中でビジネス視点で、サステナビリティについてできることを考え始めているのは良い傾向です。

老舗企業として
リーダーシップを発揮したい

WWD:タカラベルモントがサステナビリティに取り組むことで、理美容産業にどのような影響を与えたい?

日野:理美容産業にはあまたの企業がありますが、これまではそのシェアを広げることがビジネスであり、何もしなければこれからもその構造が変わることはないと思います。けれども、同じ産業でビジネスしているからこそ解決できる共通の課題もあると思いますので、これから先は課題を解決するビジネスをやりたいですね。当社がアクションを起こそうとしたときに、集まってくれる企業もあるはず。競うことから、共創へとシフトして、持続可能な産業にしたいです。創業から104年。歴史と実績のある老舗企業というメリットを生かして、リーダーシップを発揮したいです。

中山:私は二つあります。一つは理美容産業がリーディング産業といわれる未来を作りたいです。私たちがリーダーシップをとって、アクションを起こすことで、ほかの産業にも良い影響を与えていけるような社会のロールモデルを作っていきたいです。もう一つは、理美容室を通じて日本全国にサステナビリティの意識改革を巻き起こしたいです。世の中の大半の人は1年に数回、理美容室を利用しているはずです。ゆえに通う理美容室の意識が変われば、お客さまの意識が変わり、結果的に全国民の意識を変えられると考えています。タカラベルモントが変われば日本が変わる可能性さえも秘めています。B to B to Cのビジネスであるからこそ、理美容室を通じて日本全国にサステナビリティの意識改革が巻き起こせると信じています。

TEXT : NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
タカラベルモント 広報室
06-7636-0856

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技術継承と染め直し、D&DEPARTMENTのファッション産業の課題への向き合い方

ロングライフデザインを提唱するディアンドデパートメント(D&DEPARTMENT)は2014年からテキスタイルメーカーのデッドストック生地を活用したバッグを提案する「ライフストック(LIFE STOCK)」と、シミや色あせなどで着られなくなった服を染め替えてよみがえらせるプロジェクト「ディ アンド リウェア(d&RE WEAR)」を立ち上げ、取り組む。24年までに「ライフストック」に活用した生地は2万9430m(生地幅120cm)、東京ドームの敷地に換算すると75.5個分。現在までに9700着を預かり染め直した。23年からは「生地を作ることができる職人と環境が失われる」との危機感から新たな需要を生み出すために「アーカイブス(ARCHIVES)」をスタート。日本の産地を回り、同プロジェクトを指揮する重松久恵ファッション部門コーディネーターに、産地の現状とディアンドデパートメントが取り組む意義を聞く。 

PROFILE: 重松久恵(しげまつ ひさえ)/D&DEPARTMENT ファッション部門コーディネーター

重松久恵(しげまつ ひさえ)/D&DEPARTMENT ファッション部門コーディネーター
PROFILE: ファッション誌の編集、デザイン会社などのマネジメントを経て2014年、「ライフストック」、洋服染め直しの「ディ アンド リウェア」プロジェクト発足時に「『D&DEPARTMENT』のコーディネーターに。中小企業診断士の資格を58歳で取得し、さまざまな会社のアドバイザーとしても活躍。旅と料理、手仕事をこよなく愛す

きっかけはラナ・プラザ崩落事故、ファッション産業の課題に向き合う

ディアンドデパートメントが「ライフストック」と「ディ アンド リウェア」に取り組み始めたのは2014年のこと。今でこそ、デッドストックの活用や染め直しを行う企業が少しずつ増えてきてはいるが、同社は早かった。両プロジェクトを手掛ける重松コーディネーターは「13年のラナ・プラザ倒壊事故によってファッション産業の課題が浮き彫りになり、向き合う必要があると感じていた。ちょうどその頃、『ディアンドデパートメント』からファッション部門を手伝ってほしいと依頼があり、同社らしくファッション産業の課題に向き合うことができる取り組みとは何かを考えた」と振り返る。

「ディアンドデパートメント」は10年、金沢21世紀美術館で行った企画展示「本当のデザインだけがリサイクルできる Only honest design can be recyclable. D&DEPARTMENT PROJECT」の際に、ミュージアムショップで残反を用いて製作したバッグを販売していた経緯がある。「私自身産地を回る中で、決算前にバッタ屋が残布を買いに行くのを知っていた。こうした残布を活用できないかと考えた」。

「残反購入だけでは貢献できない」、技術継承のための新プロジェクト

「ライフストック」では「10産地10生地で100種類作ろうと考えた。半分は懇意にしている産地に頼み込み、半分は中小企業診断士の資格を生かし商工会議所を通じて声をかけてもらった」。現在は小さな地域を含めると20カ所程度と取り組む。人気はビンテージ生地やマス見本(色合わせのサンプル布で同じ柄を色違いで数色プリントした布)だ。「特にマス見本は絶対に捨てられる運命なうえ、レアでもある。こうした背景をお客さまに説明するとマス見本ファンになり、マス見本狙いの方も増えた」。

23年から「アーカイブス」をスタートした。残反の入手が難しくなったからだ。「理由は2つある。1つ目は16年頃に日本で始まったSDGsの活動の気運が高まるにつれて、残反を活用したモノ作りをする人が増えたこと。2つ目はメーカーの生産量が減ったこと。生産すればその分残反もB反も出るが、特にこの3年少なくなったと感じる。そして、残反を買うだけでは産地に貢献できなくなったとも感じていた」と話す。

「1mが8000~1万円の手が込んだ特殊な生地は、高度な技術がないと作ることができない。他方で一般的には高額で購入が難しく、海外ブランドに販売していることが多い。こうした素晴らしい技術を残したいし、作る職人がいることを知らしめたいと思った。そのためには高度な技術を要する生地を作り続けて発信することが大切で、バッグは要尺が少ないので気軽に持つことができる価格で提案できると考えた」。

「アーカイブス」では「産地の定番で一般的に知られている生地でも次世代の担い手や需要を生み出す必要があると考え」会津木綿や伊勢木綿、久留米絣などの活用も始める。3月から箱型バッグを順次発売する。小幅生地の特性を最大に生かし、生地の無駄が極力出ないパターンを作成した。「生地にかけられる金額を上げ、工場と一緒に歩む持続可能なものづくりのカタチを探る」。

「多くの産地で倒産が増えている」、産地の抱える課題

産地の状況は刻々と変化している。産地の多くが「作れない産地」になりつつあり、モノ作りのリードタイムが長くなっている。「多くの産地で倒産が増えている。いろんな産地でいろんな変化があり、一概に何が原因とはいえないが、共通しているのはリーマンショック後から緩やかに沈みはじめ、新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけたこと。コロナ禍では補助金や融資があったが、その返済が難しくなり、事業者に高齢の方が多いこともあってか、疲れてしまって廃業や倒産を選ぶ事業者が増えている。今、特殊な技術を持つ方の多くは60代後半から70代。彼らが今まで日本のモノ作りを支えてくれているが、後継者がいないし、現状は少量生産で取り組むしかない。例えば、チェーンステッチで脇を縫う人がいなくなったら、縫製の仕様書自体を変えなきゃいけなくなる。こういうことが連続的に起こっている」と話す。

モノ作りを絶やさないために考えられること

日本でモノ作りできる環境を残すにはどうすればいいのか。

「一つの方向として、製造メーカーが自社ブランドを立ち上げることがある。例えば山梨の『WAFU.(ワフ)』は縫製業だけでは言い値で安い賃金で請け負うことになってしまうと危惧して自社ブランドを立ち上げた。今ではOEMを一切せずに自社ブランドのみで利益を出せる体質に移行できている。『ワフ』のように高付加価値のモノ作りの自社ブランドを立ち上げるメーカーは増えており、自社ブランドの利益比率を上げようと取り組む企業が増えている。自社ブランドとOEMの黄金比は各企業により異なるが、両軸を持つことが会社の安定につながるケースが多い。たとえ、自社ブランドの売り上げが伸び悩んでも自社ブランドを通じて発信ができるため、OEMの依頼が増えて会社が安定することもある」。

廃業する工場を産地のメーカーがM&Aを行うケースも散見するようになった。「例えば、2011年に継続できなくなった新潟県の織物工場をマツオインターナショナルの松尾産業が子会社にしたケースでは、設備投資や機械を独自改造することでオリジナル生地の生産ができるようになった。友人のテキスタイルデザイナーや若いデザイナーたちがそこで生地を作っている。このケースのように技術を引き継いでいければいいと思う一方、難しいケースも多い。最近ではニット産地の山形できらやか銀行の経営悪化によって取引先が相次いで倒産し大きな影響を及ぼしている。取引先のニッターも倒産した。一緒に取り組むデザイナーと話し合い、彼は出資し合って小規模ロットの対応ができる工場を共同運営することも考えたいと話していた。そんなときに候補にあった廃業予定の小さなニット工場が『もう少し頑張ってみる』と継続を決めた。けれどM&Aを行うような体力のある会社もなかなか見つからない状況で見通しは不透明だ。もう一つは、工場に無理をさせない方法でモノ作りを行うことも大切だ。私たちは秋物の納期を5月に設定し、閑散期に無理をせずに生産していただいている」。

産地内で築けていたサプライチェーンの一つでも欠ければモノ作りのリードタイムはさらに伸びるが、M&Aを行うのはハードルが高い。「例えば、『オソク(OSOCU)』の谷佳津臣さんは元縫製工場を賃貸で借りて、古いミシンを活用しながら業務委託や新規雇用で技術者に参画してもらっている。工場を購入したわけではないが、場所を借りて縫製業の内製化を実現して自社ブランドをマイペースに展開している。新たなに人を雇用して職人を育てることは大変な挑戦だが、谷さんのように場所を活用しながらチャレンジしている人もいる」という。

特に染色や仕上げを行う工場が少なくなっていると聞くが、「別の産地に頼まなければいけない状況は増えている。もう一つの方向性としては一貫生産がある。先日訪れた京丹後の工場は撚糸・織り・染めを自社で行えるように整えていた。実際問題、染色や仕上げの機械を数台入れ、一貫生産に向かえるところは向かわないと厳しいのではないか」と指摘する。

一貫生産は強味にもなる。「赤ちゃんの製品を手掛ける工場はエコテックス認証取得を求められるなどあるが、外注すると取れるかわからない。特に染色は空きがなくて納期が大変なこともあり、縫製工場でも設備投資をして染色の機械を入れた工場もある。自社で染色を行うことで認証を横串で取れるようにしていた。織り専門だった富士吉田のとある工場も、糸染めも布染めもできる機械をそろえていた」。

対処療法の先に見据えること

今後向かう方向性について尋ねた。「小規模で高付加価値のもの、ははまるかもしれない」。

また、「職人が格好いいという文化を作っていく必要がある。サードウェーブコーヒーの文化が生まれたとき、コーヒーを焙煎する人が格好いいと焙煎士が増えたでしょう?そういう単純なことでもある。布作りの職人が格好いいとなれば興味が沸く人は増える。実際に布を作り、布のあるオシャレな生活を送っている人も多い。織機が動く動画をよく見るけど、生地を手掛けている人やその人の暮らしを紹介する人は少ない。そういう職人の暮らしを知ってもらいたいとも思う。“布を作ってオシャレな生活ができる”“これで食える”となれば、やってみたいという若者が増えるのではないか。機織りが職業の選択肢の一つになる。私の周りで織物に取り組む若い男性が増えていて、彼らに『何で』と尋ねると海外育ちの人が多く『職人がめちゃめちゃ格好いいし、この仕事は一生できるじゃない』との答え。彼らは素敵な生活をインスタグラムで発信していたりする。人間は恰好いいにあこがれるじゃない?」。

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「カナコサカイ」デザイナーが語るトレーサビリティーの難しさ

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回も前回に引き続き、ゲストに「カナコサカイ(KANAKO SAKAI)」のサカイカナコ=デザイナーをお迎えしました。世界的にトレーサビリティーにまつわるルールが厳しくなっています。原料調達から製品に至るまでの工程を全て把握しようと言うは易し。「カナコサカイ」のような日本のデザイナーズブランドにとって、世界に販路を広げようとした時の大きなハードルの1つになっています。サステナビリティのグローバルスタンダードと、日本の現状、現場の葛藤をサカイデザイナーが赤裸々に語ってくれました。



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「カナコサカイ」デザイナーが語るトレーサビリティーの難しさ

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回も前回に引き続き、ゲストに「カナコサカイ(KANAKO SAKAI)」のサカイカナコ=デザイナーをお迎えしました。世界的にトレーサビリティーにまつわるルールが厳しくなっています。原料調達から製品に至るまでの工程を全て把握しようと言うは易し。「カナコサカイ」のような日本のデザイナーズブランドにとって、世界に販路を広げようとした時の大きなハードルの1つになっています。サステナビリティのグローバルスタンダードと、日本の現状、現場の葛藤をサカイデザイナーが赤裸々に語ってくれました。



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「無印良品」と帝人フロンティアが共同プロジェクト開始 繊維から繊維への水平リサイクル目指す

「無印良品」を運営する良品計画は、帝人フロンティアと共同で、回収したポリエステル繊維製品の完全循環型リサイクルプロジェクトを開始した。両社の知見やノウハウを生かし、回収した繊維製品からリサイクルしたポリエステル原料を用いて、新たな商品開発を検討。繊維から繊維への水平リサイクルを目指す。

プロジェクトのもとで、良品計画は店頭での使用済み繊維製品を回収・リユースする取り組みを拡大。24年秋からは、“易リサイクル商品設計”をコンセプトとした商品群も企画している。24年秋は同商品群として、100%ポリエステルの「素材に還る フリースカーディガン」など衣料品5アイテムと、寝具などを一部店舗と公式ECで発売した。帝人フロンティアは回収繊維製品の中でリユースできないポリエステル製品や、プレコンシューマ繊維(製造時に出た端切れなどを指す)を独自のケミカルリサイクルによってリサイクルポリエステル原料へと再資源化する。

今後は、パートナー企業や国内外の企業、地方自治体などとコンソーシアムを立ち上げ、循環型社会を目指した実証実験も行っていく予定。

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メゾンブランドを目指す「カナコサカイ」がメード・イン・ジャパンにこだわる理由

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は記念すべきゲスト第1号として、「カナコサカイ(KANAKO SAKAI)」のサカイカナコ=デザイナーが登場します。2021年にスタートした同ブランドの特徴の1つは、日本のモノ作り産業の継承を使命に掲げている点です。作り手と真摯に向き合い、敬意を払う姿勢はサステナブルファッションに欠かせません。サカイデザイナー自身は、サステナビリティをどう捉え、どんな視点でモノ作りをしているのか、伺いました。



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「メディア業界は連携を」 ハースト婦人画報社が脱炭素に向け呼びかけ

PROFILE: 池原亜矢子/ハースト婦人画報社・ハースト・デジタル・ジャパン 社長室ジェネラルマネージャー

池原亜矢子/ハースト婦人画報社・ハースト・デジタル・ジャパン 社長室ジェネラルマネージャー
PROFILE: 総合商社、留学、クレジットカード会社広報を経て、2012年にハースト婦人画報社に入社。広報機能の立ち上げを行い、事業がプリントからデジタルへ移行する変革期をコミュニケーションの側面からサポート。17年からは人事にも携わり、最終的には本部長として人事制度の刷新をリード。育休を経て、21年に復帰し現職。企業広報とサステナビリティを統括

「エル(ELLE)」や「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」「ヴァンサンカン(25ans)」などを展開するハースト婦人画報社は、事業全体における温室効果ガス(GHG)排出量を削減する脱炭素に取り組む。2023年には環境省が主催する「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加し、イベント開催にかかるカーボンフットプリントを測定した。今年7月からは、同社が手掛ける雑誌全14媒体で雑誌製造にかかるカーボンフットプリント数値の開示も開始している。

カーボンフットプリントとは、製品の原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出されるGHGの量を、二酸化炭素に換算して表示する仕組みのこと。雑誌の製造工程においては、紙の調達先から製紙、インクの調達先、印刷工程、輸送といった工程のGHG排出量データを取得する必要がある。メディア業界ではまだまだ実践事例が少ないカーボンフットプリントの算定・開示に、同社はなぜ着手したのか。社内の脱炭素を推進する池原亜矢子・社長室ジェネラルマネージャーに、メディア企業において取り組む意義を聞いた。

社をあげてカーボンフットプリントの測定に取り組む

WWD:ハースト婦人画報社が脱炭素に取り組むようになったきっかけは。

池原亜矢子・社長室ジェネラルマネージャー(以下、池原):大きなきっかけは、ニコラ・フロケ(Nicolas Floquet)が2018年に社長に就任したこと。以前も植物油を含有した印刷インキや「FSC認証」取得済の紙の採用などを進めてきたが、彼が就任時に、経営の根幹にサステナビリティを置くと発信したことで社全体を上げて取り組む優先事項になった。

WWD:池原さんに任されたミッションは?

池原:私がサステナビリティチームに加わったのは22年ごろ。会社全体でカーボンフットプリントを測定するプロジェクトが動き出した時だった。その旗振り役が最初のミッションだった。ただ私自身、GHGの算定に取り組むのは初めて。「スコープ1、2、3」といった知らない専門用語ばかりだったが、本を読んだり、外部のコンサルに教えていただいたりしながら、いちから勉強した。現在はサステナビリティマネージャーの大竹紘子と2人で社全体の取り組みを推進している。

WWD:26年までに広告主に対して、「脱炭素支援広告プラン」を提供する計画と聞いた。

池原:これは広告出稿やイベント実施におけるGHGを算定し、できるだけ減らしていくという広告プランだ。現在実現に向けて、事業部ごとにGHG排出量を算定し削減アクションプランを練っている最中だ。

WWD:実際にクライアントから「脱炭素支援広告」プランへの要望があるのか?

池原:過去に欧米のラグジュアリーブランドから、別冊制作にかかったCO2排出量を報告してほしいと言われたことがあった。多くはないが、こうした声は増えていくはず。ハーストのイギリス支社のサステナビリティ担当者からは、CO2排出量の報告が請求書と一緒に提出が求められるようになる時代も近いだろうというような話も聞く。そうした傾向も踏まえ、少なくとも算定できる状態を整えておくことは急務だろうと考えた。

全社員、サプライヤーまでを巻き込む難しさ

WWD:現在各部署でどんな工夫を?

池原:まずは、社員一人ひとりが理解を深めることが大切。イベントや雑誌製造におけるGHG排出の算定に加え、取材や撮影などのコンテンツ制作における算定も始めている。全編集部において、少なくとも1件の取材やタイアップにかかるカーボンフットプリントの算定を実施してもらった。日々の仕事のどんな部分に、どれだけのGHGが出ているのか、自分の手を動かして測定することでカーボンフットプリントの仕組みが理解できる。こちらから、GHG排出量の高いタクシー利用をなるべく控えてくださいといった呼びかけもするが、仕組みを理解すれば自発的に工夫ができるようになる。また昨年からは、気候変動やグリーンウォッシュについて理解を深める研修を強化している。全社員必修で実施し、当社の社員としての最低限のリテラシーとして身につけてもらうようにしている。

WWD:社員全員の理解を得るのにはハードルもあったのでは?

池原:メディアに携わる人間として、全く興味がない人は少なかったように思う。とはいえ、普段の仕事に加えて、GHG算定の業務や研修を受けてもらったりするには、なかなか時間が取れないといった反応はあったし、直近の売り上げに直結するわけではないなか優先順位を上げてもらうのは難しかった。意識したのは、脱炭素の取り組みが社員にとっても得だと思ってもらえるようコミュニケーションすること。今ではサステナビリティに力を入れていることが、社員の誇りにつながるようになってきた実感があるし、若手の社員からサステナビリティが当社の強みの1つとして自然に上がってくるようになった。

WWD:具体的に脱炭素に向けて工夫している点は?

池原:23年からは「グリーン電力証書」を使い、全14媒体の定期刊行紙における印刷・製本にまつわる電力に再生可能エネルギーを適用している。そのほか、プラスチック素材を使用していた雑誌の表面加工を変えたり、付録のプラスチック梱包を減らしたりして、雑誌事業におけるプラスチック使用量も減らしている。22年には19年度比で80%減らすことができた。国内出張方針も変えた。GHG排出量の高い飛行機の使用は控え、移動時間が4.5時間以内の場合は電車を使ってもらうように呼びかけている。実際に、実務をどう変革していくかは非常に難しい。でもそこで思考停止せず、できるところから1つずつ地道に実践している。

WWD:社外に向けてはどのように協力を仰いだ?

池原:そこは大変であると同時に特に重要な部分。私たちは製造業の側面もあるものの、フットプリントを計ると自社で削減できる部分はわずか1%しかない。残りの99%は製紙会社、印刷会社などのサプライヤーの協力なくしては削減できない。当初サプライヤーの方にGHG排出量のデータを求めると、「重要なのは分かるが、どこから始めればよいかわからない」「社内のコンセンサスをとる事に時間がかかる」といった反応が多かった。雑誌製造に関してのフットプリント算定は、前例がなく分からない部分や不透明な部分も多々あった。各社と協力し一歩進んでは半歩戻り、と互いに学び合いながら進めてきた。今振り返ると、何も分からない地点から諦めずに取り組んできたチームのような意識がある。

WWD:社内では環境負荷の削減とビジネス成長のバランスについて、どのような議論がある?

池原:サステナビリティの概念は、環境面だけではなくビジネスの持続可能性も踏まえて議論すべきだ。そうでなければ極論、雑誌やイベントもいらないのではないかという話になりかねない。両輪で捉えた上で私たちが今注力しているのは、排出してしまう項目をいかに努力で減らせるか。例えばイベントの会場設備も、新しく作るのではなく既存のものを再利用できないか、廃棄物を減らしつつどう魅力的な空間を作れるかを考える。そうした創意工夫ができるチームに育つことが今後社の強みにもなる。

メディア業界に統一規格を

WWD:メディア企業として脱炭素に取り組む意義とは?

池原:一般的な事業会社とメディアの大きな違いは発信力だろう。特に脱炭素は、多くの人の行動変容が求められる。当社のサステナビリティの取り組みの柱の1つとして掲げているのが、「エデュケーティング・ザ・パブリック」。読者にきちんとした情報をお届けし、当社のコンテンツに触れる多くの人たちに気付きのきっかけを作ることが力の発揮どころだと思う。

WWD:メディア業界全体ではどのような連携が必要だと思う?

池原:カーボンフットプリントの算定を実施して感じたのは、統一規格の必要性だ。計る側もいちから情報を集めるのは非常に手間と工数がかかるし、算定値を受け取る消費者の混乱も招きかねない。業界として足並みをそろえる必要性を強く感じた。現在全雑誌で算定数値の開示を始めたが、おそらくその数字の意味まで理解している読者は少ないだろう。それでも雑誌の製造に二酸化炭素が発生していることを知ってもらうことに意味がある。

WWD:理想は?

池原:社長のフロケが掲げている標語は「ビルド・トラスト」。有象無象な情報が錯綜する世の中において、当社は消費者にとって信頼のおける発信拠点でありたい。サステナビリティの分野でもグリーン・ウォッシュをしないよう社員教育に力を入れているところだ。当社としてもできる努力を進めつつ、透明性のある信頼できるメディアからの質の高い情報を発信していきたい。面白いのは、社外向けの勉強会などのイベントを開くと媒体の枠を超えてみんなで力を結集しようという姿勢を感じる。当社としても、積極的にメディア間の連携を生み出していきたい。

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「メディア業界は連携を」 ハースト婦人画報社が脱炭素に向け呼びかけ

PROFILE: 池原亜矢子/ハースト婦人画報社・ハースト・デジタル・ジャパン 社長室ジェネラルマネージャー

池原亜矢子/ハースト婦人画報社・ハースト・デジタル・ジャパン 社長室ジェネラルマネージャー
PROFILE: 総合商社、留学、クレジットカード会社広報を経て、2012年にハースト婦人画報社に入社。広報機能の立ち上げを行い、事業がプリントからデジタルへ移行する変革期をコミュニケーションの側面からサポート。17年からは人事にも携わり、最終的には本部長として人事制度の刷新をリード。育休を経て、21年に復帰し現職。企業広報とサステナビリティを統括

「エル(ELLE)」や「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」「ヴァンサンカン(25ans)」などを展開するハースト婦人画報社は、事業全体における温室効果ガス(GHG)排出量を削減する脱炭素に取り組む。2023年には環境省が主催する「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加し、イベント開催にかかるカーボンフットプリントを測定した。今年7月からは、同社が手掛ける雑誌全14媒体で雑誌製造にかかるカーボンフットプリント数値の開示も開始している。

カーボンフットプリントとは、製品の原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体で排出されるGHGの量を、二酸化炭素に換算して表示する仕組みのこと。雑誌の製造工程においては、紙の調達先から製紙、インクの調達先、印刷工程、輸送といった工程のGHG排出量データを取得する必要がある。メディア業界ではまだまだ実践事例が少ないカーボンフットプリントの算定・開示に、同社はなぜ着手したのか。社内の脱炭素を推進する池原亜矢子・社長室ジェネラルマネージャーに、メディア企業において取り組む意義を聞いた。

社をあげてカーボンフットプリントの測定に取り組む

WWD:ハースト婦人画報社が脱炭素に取り組むようになったきっかけは。

池原亜矢子・社長室ジェネラルマネージャー(以下、池原):大きなきっかけは、ニコラ・フロケ(Nicolas Floquet)が2018年に社長に就任したこと。以前も植物油を含有した印刷インキや「FSC認証」取得済の紙の採用などを進めてきたが、彼が就任時に、経営の根幹にサステナビリティを置くと発信したことで社全体を上げて取り組む優先事項になった。

WWD:池原さんに任されたミッションは?

池原:私がサステナビリティチームに加わったのは22年ごろ。会社全体でカーボンフットプリントを測定するプロジェクトが動き出した時だった。その旗振り役が最初のミッションだった。ただ私自身、GHGの算定に取り組むのは初めて。「スコープ1、2、3」といった知らない専門用語ばかりだったが、本を読んだり、外部のコンサルに教えていただいたりしながら、いちから勉強した。現在はサステナビリティマネージャーの大竹紘子と2人で社全体の取り組みを推進している。

WWD:26年までに広告主に対して、「脱炭素支援広告プラン」を提供する計画と聞いた。

池原:これは広告出稿やイベント実施におけるGHGを算定し、できるだけ減らしていくという広告プランだ。現在実現に向けて、事業部ごとにGHG排出量を算定し削減アクションプランを練っている最中だ。

WWD:実際にクライアントから「脱炭素支援広告」プランへの要望があるのか?

池原:過去に欧米のラグジュアリーブランドから、別冊制作にかかったCO2排出量を報告してほしいと言われたことがあった。多くはないが、こうした声は増えていくはず。ハーストのイギリス支社のサステナビリティ担当者からは、CO2排出量の報告が請求書と一緒に提出が求められるようになる時代も近いだろうというような話も聞く。そうした傾向も踏まえ、少なくとも算定できる状態を整えておくことは急務だろうと考えた。

全社員、サプライヤーまでを巻き込む難しさ

WWD:現在各部署でどんな工夫を?

池原:まずは、社員一人ひとりが理解を深めることが大切。イベントや雑誌製造におけるGHG排出の算定に加え、取材や撮影などのコンテンツ制作における算定も始めている。全編集部において、少なくとも1件の取材やタイアップにかかるカーボンフットプリントの算定を実施してもらった。日々の仕事のどんな部分に、どれだけのGHGが出ているのか、自分の手を動かして測定することでカーボンフットプリントの仕組みが理解できる。こちらから、GHG排出量の高いタクシー利用をなるべく控えてくださいといった呼びかけもするが、仕組みを理解すれば自発的に工夫ができるようになる。また昨年からは、気候変動やグリーンウォッシュについて理解を深める研修を強化している。全社員必修で実施し、当社の社員としての最低限のリテラシーとして身につけてもらうようにしている。

WWD:社員全員の理解を得るのにはハードルもあったのでは?

池原:メディアに携わる人間として、全く興味がない人は少なかったように思う。とはいえ、普段の仕事に加えて、GHG算定の業務や研修を受けてもらったりするには、なかなか時間が取れないといった反応はあったし、直近の売り上げに直結するわけではないなか優先順位を上げてもらうのは難しかった。意識したのは、脱炭素の取り組みが社員にとっても得だと思ってもらえるようコミュニケーションすること。今ではサステナビリティに力を入れていることが、社員の誇りにつながるようになってきた実感があるし、若手の社員からサステナビリティが当社の強みの1つとして自然に上がってくるようになった。

WWD:具体的に脱炭素に向けて工夫している点は?

池原:23年からは「グリーン電力証書」を使い、全14媒体の定期刊行紙における印刷・製本にまつわる電力に再生可能エネルギーを適用している。そのほか、プラスチック素材を使用していた雑誌の表面加工を変えたり、付録のプラスチック梱包を減らしたりして、雑誌事業におけるプラスチック使用量も減らしている。22年には19年度比で80%減らすことができた。国内出張方針も変えた。GHG排出量の高い飛行機の使用は控え、移動時間が4.5時間以内の場合は電車を使ってもらうように呼びかけている。実際に、実務をどう変革していくかは非常に難しい。でもそこで思考停止せず、できるところから1つずつ地道に実践している。

WWD:社外に向けてはどのように協力を仰いだ?

池原:そこは大変であると同時に特に重要な部分。私たちは製造業の側面もあるものの、フットプリントを計ると自社で削減できる部分はわずか1%しかない。残りの99%は製紙会社、印刷会社などのサプライヤーの協力なくしては削減できない。当初サプライヤーの方にGHG排出量のデータを求めると、「重要なのは分かるが、どこから始めればよいかわからない」「社内のコンセンサスをとる事に時間がかかる」といった反応が多かった。雑誌製造に関してのフットプリント算定は、前例がなく分からない部分や不透明な部分も多々あった。各社と協力し一歩進んでは半歩戻り、と互いに学び合いながら進めてきた。今振り返ると、何も分からない地点から諦めずに取り組んできたチームのような意識がある。

WWD:社内では環境負荷の削減とビジネス成長のバランスについて、どのような議論がある?

池原:サステナビリティの概念は、環境面だけではなくビジネスの持続可能性も踏まえて議論すべきだ。そうでなければ極論、雑誌やイベントもいらないのではないかという話になりかねない。両輪で捉えた上で私たちが今注力しているのは、排出してしまう項目をいかに努力で減らせるか。例えばイベントの会場設備も、新しく作るのではなく既存のものを再利用できないか、廃棄物を減らしつつどう魅力的な空間を作れるかを考える。そうした創意工夫ができるチームに育つことが今後社の強みにもなる。

メディア業界に統一規格を

WWD:メディア企業として脱炭素に取り組む意義とは?

池原:一般的な事業会社とメディアの大きな違いは発信力だろう。特に脱炭素は、多くの人の行動変容が求められる。当社のサステナビリティの取り組みの柱の1つとして掲げているのが、「エデュケーティング・ザ・パブリック」。読者にきちんとした情報をお届けし、当社のコンテンツに触れる多くの人たちに気付きのきっかけを作ることが力の発揮どころだと思う。

WWD:メディア業界全体ではどのような連携が必要だと思う?

池原:カーボンフットプリントの算定を実施して感じたのは、統一規格の必要性だ。計る側もいちから情報を集めるのは非常に手間と工数がかかるし、算定値を受け取る消費者の混乱も招きかねない。業界として足並みをそろえる必要性を強く感じた。現在全雑誌で算定数値の開示を始めたが、おそらくその数字の意味まで理解している読者は少ないだろう。それでも雑誌の製造に二酸化炭素が発生していることを知ってもらうことに意味がある。

WWD:理想は?

池原:社長のフロケが掲げている標語は「ビルド・トラスト」。有象無象な情報が錯綜する世の中において、当社は消費者にとって信頼のおける発信拠点でありたい。サステナビリティの分野でもグリーン・ウォッシュをしないよう社員教育に力を入れているところだ。当社としてもできる努力を進めつつ、透明性のある信頼できるメディアからの質の高い情報を発信していきたい。面白いのは、社外向けの勉強会などのイベントを開くと媒体の枠を超えてみんなで力を結集しようという姿勢を感じる。当社としても、積極的にメディア間の連携を生み出していきたい。

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シューズブランド「オッフェン」がリユース品を販売開始、店舗と郵送で回収受付

シューズブランド「オッフェン(OFFEN)」はこのほど、リユース品を販売するサイト「プレラブドストア」をオープンした。

サイズが合わなかった、新しい靴を新調したために不要になった、など本来なら廃棄される「オッフェン」の靴を店頭や郵送で回収。リセールサービスを展開する委託先のキッシュ(KISH)で洗浄や修繕を行い、同ストアで販売する。価格帯は品番によって異なるが、販売価格のおよそ50~70%。同ブランドの靴はペットボトルから生まれたリサイクル糸など環境に配慮した素材を使用している。

店舗での回収は、代官山店、北野店、西宮阪急店で受け付ける。郵送回収は、プレラブドサイト内の回収申込フォームへ入力後、元払いで発送されたものが対象となる。いずれも事前に手洗いしてからの持ち込み・郵送が必要。また、回収プログラムに参加するとそれぞれ、店舗とオンラインで使用できる2000円分のギフトカード/クーポンコードが発行され、次回以降の買い物に使用できる。

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「ゴアテックス」「パタゴニア」らアウトドア関連各社が製品ケアの取り組み強化 PFAS規制背景に

世界的にPFAS(ピーファス)規制が強まっている。PFASは1万種以上あるとも言われる有機フッ素化合物の総称で、安定性が高く水や油をはじく性質が重宝されて、衣料品のはっ水・防水加工にも長らく使われてきた。しかし、分解されづらく環境残留性が高い点が指摘されており、欧州や米国の一部州で規制が先行している。衣料品の中でも特に、高精度のはっ水・防水性能が求められるのがアウトドア領域だ。PFAS規制によって高山や厳しい天候下での着用を想定したハードシェルの性能が落ちるようなことがあっては、人の命にも関わる。高いパフォーマンス性とPFASフリーを両立するため、アウトドア関連各社が製品ケアの面で取り組みを深めている。

防水・透湿・防風性を備え、アウトドアからライフスタイル領域まで数多くのブランドが使用している素材が「ゴアテックス(GORE-TEX)」だ。よく知られているように同素材は3層構造で、メンブレンと呼ぶ真ん中の膜が防水・透湿・防風性能のキモとなっている。「ゴアテックス」は従来、メンブレンと表面加工のはっ水剤にPFASを使用してきたが、10年以上をかけて従来と同じレベルの機能性とPFASフリーを両立する新素材を研究。PFASに代えて延伸ポリエチレン(EXPANDED POLYETHYLENE、略称ePE)を使うメンブレンを開発した。

「ゴアテックス」では、はっ水剤については先行して2018年からPFASフリーへ順次切り替え。メンブレンについては22年秋冬に一般アウトドア向け製品でePEに切り替え、23年秋冬はより高い性能が求められるパフォーマンス製品で切り替えを開始した。24年秋冬時点では、アウトドアのスペシャリスト向けの最高性能が求められる「ゴアテックス プロ」を除いて切り替えが済んでおり、その「ゴアテックス プロ」も25年秋冬は全てePEになる。これでPFASフリーを達成し、連動して「アークテリクス(ARC’TERYX)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」をはじめ多くのブランドもPFASフリーとなる。

「はつ油性は持ち合わせていない」

「ゴアテックス」はePEメンブレンへの切り替えによって、PFASフリーと共に製造過程におけるCO2排出量削減も実現(使用する表地・裏地によって異なるが、Higg MSI測定で従来製品より12〜42%の削減)。また、ePEメンブレンは従来のメンブレンよりも薄く軽くしなやかという特徴を持ち、「ゴアテックス」特有のゴワゴワした肌触りも軽減される。そのように優れた部分は多いが、1点だけ、「フッ素化合物が分子構造的に持つはつ油性(油をはじく性質)だけは、ePEメンブレンもPFASフリーのはっ水剤も持ち合わせていない」(平井真理子 日本ゴア マーケティングコミュニケーション担当)のだという。

はつ油性が無くても、「ゴアテックス」の防水・透湿・防風性が損なわれることはないが、皮脂などの汚れはつきやすくなる。汚れがつくとはっ水性が低下し生地表面が濡れやすくなり、製品内部に水が侵入していなくても、冷たく湿った感覚が生じやすくなるという。ただし、「ゴアテックス」のはっ水性は、自宅やランドリーでの中性洗剤での洗濯と熱処理(乾燥機またはアイロンなど)というケアで回復させることが可能。「ゴアテックス」製品は「洗ってはいけない」「洗うと防水性が落ちる」と思い込んでいる消費者も多いが、実は洗濯を含む日々のケアこそ重要。「ケアが大切と従来から伝えてきたが、はつ油性のないePEではさらに重要」と平井担当。

正しいケアを行えばはっ水性が回復すると共に、汚れの侵入によるシームテープのはがれや3層構造生地のはがれも防ぐことができ、結果的に製品が長持ちする。長持ちさせて使い続けることで、製品のライフサイクル全体としての環境負荷も下がる。

PFASフリーに向けたこうした「ゴアテックス」の変化を消費者に適切に伝えていくために、日本ゴアは今、これまで以上に啓蒙活動にも力を注いでいる。公式サイトなどでももちろん正しいケア方法については発信しているが、10月末に「パタゴニア(PATAGONIA)」「アークテリクス」「ザ・ノース・フェイス」とブランド横断で、報道関係者に向けた「ゴアテックス」の生地構造やケア方法を伝えるイベントを開催。「なるべく多くのブランドと連携し、業界として正しいケアで製品をなるべく長く使ってもらえるよう、ユーザーにしっかり声を届けていくべき」と、阿部功 日本ゴア アカウントマーケティングスペシャリストは開催意図について話す。アウトドアブランドだけでなく、“はっ水回復コース”というメニューを備えたドラム式洗濯機を販売している、パナソニックも巻き込んでいた点もユニークだ。

「パタゴニア」は25年1月に
PFASフリー達成

合同イベントだけでなく、アウトドアブランド各社もユーザーに正しいケアを伝えるためのコミュニケーションをそれぞれで強めている。例えば「パタゴニア」は9月、東京・清澄白河のランドリーを会場に、「ゴアテックス」を含む防水シェルの正しいケア方法をメディア関係者らに伝えるイベントを開催した。検証の結果、ブランドとして最もおすすめできると判断した「ストーム」の中性洗剤やはっ水剤も紹介。「アンケートを行うと防水シェルは洗濯してはだめと思っている人が一定数いる。洗って適切にケアすることで長持ちすることを伝え、洗うことが当たり前なカルチャーにしていきたい」と担当者。「パタゴニア」は10年ほど模索してきたというPFASフリーを、25年1月に達成予定。現時点でPFAS使用製品が残っているのは、フィッシングカテゴリーの一部のみだ。

「アークテリクス(ARC’TERYX)」も9月に、「ゴアテックス」と共にシェルのケア方法を伝える消費者向けのイベントを10日間にわたって実施した。原宿のレンタルスペースに洗濯機や乾燥機を設置し、アドバイスを受けながらユーザー自身で「ゴアテックス」製品を洗濯・乾燥できるというもの。両社タッグでの「ゴアテックス」の機能を伝えるイベントは既に5年目というが、実際にその場で製品を洗える形式にしたのは昨年に続き2回目。「アークテリクス」は11月30日にオープンする新宿の日本最大店舗には常設で洗濯機・乾燥機を設置し、客から製品を預かってのケアも行っていく。


【一括規制には批判の声も】

PFASについて、一括しての規制には疑問の声も上がっている。基本的に規制はしつつも、限定的に使用可能とするのが現実的といった意見もあり、今後規制がどんな方向に進むのかは見えない部分もある。とは言え、例えば国内外で発信力の大きな「ユニクロ(UNIQLO)」は今秋配布のフリーペーパーや公式サイトで、「17年にPFASフリーを達成」と掲出。日本の消費者の間でも「PFAS=避けるべきもの」という認識がここからより深まっていくことは恐らく間違いなく、アウトドアだけでなく日常用衣料も含め、メーカー各社で対応が進む。

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メルカリが新作ゼロのファッションフェスを原宿で開催 アダストリアやオンワード、ゴールドウインら11社が参加

メルカリ(MERCARI)は、11月22〜24日の3日間、「メルカリ グリーンフライデープロジェクト2024 ~新作ゼロのファッションフェス~」を東急プラザ原宿「ハラカド」4階「ハラッパ」で開催する。「メルカリ グリーンフライデープロジェクト」は今回で5回目。11社のアパレル関連企業がパートナーとして参画し、昨年を超える規模での実施となる。

大規模セールが行われる「ブラックフライデー」(11月第4金曜日)へのアンチテーゼとして、欧州を中心にモノを大切に長く使うなど、地球環境に優しい持続可能な消費を啓発する「グリーンフライデー」に合わせたプロジェクトで、衣類のリユースやリペア、リメイクといった方法で持続可能な消費を広げることを目的とする。

「“捨てるをへらす”がコンセプト」とメルカリの河野秀治執行役員 SVP of Management Strategy。「不用品を持ち寄っての交換や、リペアやリメイクなどを通して、さまざまなファッションの楽しみ方を体験してもらえる機会にしたい」と語り、企業同士の連携の大切さも訴えた。

今年もファッションショーを開催

初日の22日には、昨年に引き続き、リユースアイテムのみを使用した「新作ゼロのサステナブルファッションショー」を開催した。一般公募の来場者や、パートナー企業のスタッフ、インフルエンサーがモデルとして登場し、スタイリストのRIKU OSHIMAがコーディネートを担当。衣装は、アダストリアの「ハレ(HARE)」のサンプルなどをリメイクしたブランド「アールイー(re:)」のほか、ゴールドウイン「ザ・ノース・フェイス」のユーズドアイテム、オンワード樫山の「アップサイクル・アクション」プロジェクト、ティンパンアレイ「ラグタグ(RAGTAG)」、ベイクルーズ(BAYCREW'S)のスタッフの私物を扱うリユースショップ「サーキュラブル サプライ(CIRCULABLE SUPPLY)」などからのセレクトアイテムに、モデル本人の“自宅に眠っていた”私物などを組み合わせた。

このほか、不要な衣類を持参することで、他のリユース品や回収衣類と交換できる物々交換ブースを設置するほか、持ち寄った衣類でオリジナルチャームやキッズ向け服を制作するワークショップ開催や、自身の衣類に刺しゅうを施す体験やデニムリペアの実演、ゴールドウイン「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「サイクル(CYKLU)」によるリペアブースを設置する。

メルカリは、今回のフェスの開催に際してイオングループのリフォームスタジオと連携し、全国に388店舗を展開する「マジックミシン」で不要になった衣類の回収を期間限定で実施。まだ着用可能なアイテムについては物々交換ブースで活用したり、そうでないものはワークショップなどで使用したりする。

また、会場では、ファッションショーで使用した衣装を展示し、関連アイテムの購入情報をQRコードで提供。ランウエイもフォトスポットとして一般開放し、サステナブルな世界観の中で記念写真を撮影する機会を提供する。

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メルカリが新作ゼロのファッションフェスを原宿で開催 アダストリアやオンワード、ゴールドウインら11社が参加

メルカリ(MERCARI)は、11月22〜24日の3日間、「メルカリ グリーンフライデープロジェクト2024 ~新作ゼロのファッションフェス~」を東急プラザ原宿「ハラカド」4階「ハラッパ」で開催する。「メルカリ グリーンフライデープロジェクト」は今回で5回目。11社のアパレル関連企業がパートナーとして参画し、昨年を超える規模での実施となる。

大規模セールが行われる「ブラックフライデー」(11月第4金曜日)へのアンチテーゼとして、欧州を中心にモノを大切に長く使うなど、地球環境に優しい持続可能な消費を啓発する「グリーンフライデー」に合わせたプロジェクトで、衣類のリユースやリペア、リメイクといった方法で持続可能な消費を広げることを目的とする。

「“捨てるをへらす”がコンセプト」とメルカリの河野秀治執行役員 SVP of Management Strategy。「不用品を持ち寄っての交換や、リペアやリメイクなどを通して、さまざまなファッションの楽しみ方を体験してもらえる機会にしたい」と語り、企業同士の連携の大切さも訴えた。

今年もファッションショーを開催

初日の22日には、昨年に引き続き、リユースアイテムのみを使用した「新作ゼロのサステナブルファッションショー」を開催した。一般公募の来場者や、パートナー企業のスタッフ、インフルエンサーがモデルとして登場し、スタイリストのRIKU OSHIMAがコーディネートを担当。衣装は、アダストリアの「ハレ(HARE)」のサンプルなどをリメイクしたブランド「アールイー(re:)」のほか、ゴールドウイン「ザ・ノース・フェイス」のユーズドアイテム、オンワード樫山の「アップサイクル・アクション」プロジェクト、ティンパンアレイ「ラグタグ(RAGTAG)」、ベイクルーズ(BAYCREW'S)のスタッフの私物を扱うリユースショップ「サーキュラブル サプライ(CIRCULABLE SUPPLY)」などからのセレクトアイテムに、モデル本人の“自宅に眠っていた”私物などを組み合わせた。

このほか、不要な衣類を持参することで、他のリユース品や回収衣類と交換できる物々交換ブースを設置するほか、持ち寄った衣類でオリジナルチャームやキッズ向け服を制作するワークショップ開催や、自身の衣類に刺しゅうを施す体験やデニムリペアの実演、ゴールドウイン「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「サイクラス(CYKLUS)」によるリペアブースを設置する。

メルカリは、今回のフェスの開催に際してイオングループのリフォームスタジオと連携し、全国に388店舗を展開する「マジックミシン」で不要になった衣類の回収を期間限定で実施。まだ着用可能なアイテムについては物々交換ブースで活用したり、そうでないものはワークショップなどで使用したりする。

また、会場では、ファッションショーで使用した衣装を展示し、関連アイテムの購入情報をQRコードで提供。ランウエイもフォトスポットとして一般開放し、サステナブルな世界観の中で記念写真を撮影する機会を提供する。

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アシックス、廃棄禁止する欧州エコデザイン規制に対応 未使用在庫を再利用しシューズ発売

アシックスは11月1日から、廃棄予定だった自社シューズをリサイクルした素材を、全重量の15%に使用したシューズ“ネオカーブ(NEOCURVE)”を、英仏独など欧州17カ国で販売している。回収から分解・粉砕、材料化、デザイン、製造、販売までを欧州圏内で行う“地産地消”によって、CO2排出削減にもつなげる。欧州では2026年から、アパレル事業者に売れ残った製品の廃棄を禁じる規制(エコデザイン規制)が適用される。それに対応する意味合いも大きい。

欧州内のデッドストックやサンプル、B品などの未使用シューズを、アシックスが提携するオランダのシューズリサイクル大手Fast Feet Grindedで分解。EVAフォーム、ゴム、繊維、皮革、金属などに分けて、オランダ、イタリア、ポルトガルなどの素材工場でペレットやプレート、糸などにリサイクルする(=マテリアルリサイクル)。それをニットアッパーやシューレース、ミッドソール、アウターソール、中敷きの一部に使用した“ネオカーブ”を、ポルトガルの工場で生産している。価格は250ユーロ(約4万500円)で、2400足の限定販売。

アシックスはサーキュラーエコノミーを目指し、23年9月に一足あたりのCO2排出量を市販スニーカーで最も低く抑えた(1.95キログラムCO2e)という“ゲルライトスリー シーエム1.95”を発売。同モデルはサトウキビ由来素材を一部で使い、使用パーツも工夫して減らしている。24年4月には、使用後に回収してケミカルリサイクルすることが可能な“ニンバス ミライ”を発売。ただし、それら2足のような「バイオベース素材やケミカルリサイクルは、機能性担保の点で今すぐ全製品には転用できない。既にある製品をどう循環の輪の中に取り込んでいくかが課題だった」と井上聖子サステナビリティ部長。マテリアルリサイクルでその課題に取り組む。

消費者の行動変容はここから

「“ネオカーブ”プロジェクトは21年に始動しており、エコデザイン規制の話が出てから急いで開発したわけではない」と、同プロジェクトを率いる村岡秀俊サーキュラーエコノミー推進部長。環境先進国の欧州では以前から未使用品のリサイクルを進め、床材などとして建材メーカー等へ提供していたというが、自社製品に再利用するのは今回が初。現時点では未使用品のみのリサイクルだが、欧州の直営店では店頭にボックスを設置しての使用済みシューズの回収も行っている。「需給予測の精緻化やサンプルのデジタル化で、そもそも廃棄量は年々減らしてきた。将来的には回収した使用済みシューズをリサイクルしていくことも考える」。

まずはリサイクル環境の整った欧州で“地産地消”を進め、環境負荷の少ない輸送方法が見つかれば他地域に運んで販売することも検討する。他地域で地産地消の仕組みを作ることは、「現時点ではリサイクル環境が整っておらず難しい面が多い」という。

サーキュラーエコノミーは企業1社で達成できるものではなく、消費者を含めて行動変容を促し、社会全体で意識を変えていくことが重要だが、使用後に集荷・回収しリサイクルする仕組みを整えて発売した“ニンバス ミライ”は、発売から約半年の10月末時点で「回収したのは0足」という。消費者が大切に履いているがゆえとも言えるが、行動変容を起こさせることがいかに難しいかも感じさせる。

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若者が熱狂した「ディーゼル」のショーに涙

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

ロンドン・ファッション・ウイークを振り返った前回に続き、第4回はミラノ・ファッション・ウイークについて。さまざまなブランドのなかでも「ディーゼル(DIESEL)」は今季、力強くサステナビリティのメッセージを発信しました。実は「ディーゼル」は商品の生産工程や販売以降の動線においても、さまざまなアプローチで循環型を推進しているブランドです。今年は英エレン・マッカーサー財団によるサーキュラーエコノミー賞も受賞しています。そんな「ディーゼル」の取り組みに関しては、ぜひ同社が制作するドキュメンタリー動画「Behind the Denim(デニムの裏側)」を見てみてください。ポッドキャストでは、若者が熱狂した「ディーゼル」のショーの様子を語ります。加えて、「WWDJAPAN」が12月13日に開催するサステナビリティ・サミットにまつわる重大ニュースも発表します。



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4社の回収ボックスがずらり 玉川高島屋S・Cが“循環先を選べる”衣料品回収を開始 

玉川高島屋ショッピングセンターは、11月25日から西館3階に複数社の不要衣料回収ボックスを並べ、参加者が投入先を選べるプロジェクト「デパート デ ループ ポート(Depart de Loop Port)」をスタートする。衣料品や雑貨を持ち込む際に循環先を参加者自身が選択をする仕組みだ。商業施設が不要衣料の回収ボックスを置く事例は増えているが、複数種類の回収ボックスが並ぶケースは珍しい。

参加者には4つの選択肢がある1つ目のJEPLANによる「ブリング(BRING)」は、衣料から衣料へのリサイクルに向けて、ポリエステル素材を独自のケミカルリサイクル技術によって、新たな衣料などの原料に生まれ変わらせる。2つ目のエコミットによる「パスト(PASSTO)」は、まだ使える衣料や雑貨を選別・再利用し、再流通先を通じて必要な人に届ける。3つ目のスタイレム瀧定大阪による「プラスグリーンプロジェクト(PLUS∞GREEN PROJECT)」は、ポリエステル繊維をリサイクルして「トゥッティ(TUTTI)」という培地とする。4つ目のクレサヴァによる「サーキュラーファーム(CIRCULAR FARM)」は、「衣から新しい食への循環」をコンセプトに、衣料は独自のテクノロジーで再資源化され、土壌改良剤などに生まれ変わらせる。

また、開業初期に西館地下に設置したごみ分別施設「リサイクルファクトリー」を11月15日から「リサイクルステーション」としてリニューアル。「透明性」をコンセプトにコロナ禍で使用した飛散防止アクリル板512kgを再利用した素材で分別ルームの見える化を実現した。さらに、品目ごとの廃棄量をテナント単位で可視化し、従業員一人ひとりの意識改革につなげる。「ごみとしての終着点から、資源としての始発点に変えることを意識」し、分別の種類を細分化し「施設従業員の廃棄物による環境問題への意識醸成と行動変容を促進する施設として生まれ変わる」ことを目指すという。

さらに近隣の小学校・地域住民に同社のごみ廃棄の実態や環境保全に対する取り組みを知ってもらうきっかけづくりとして、春休みにあわせた 2025年3月に小学校高学年の児童に向けた環境教育の場の提供を行う予定だ。

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ビーピーラボとブックオフが回収ボックス「アールループ」スタート 市役所への導入も


ビーピーラボ(BPLab)とブックオフグループホールディングスは11月1日、リユースとリサイクルの循環型回収ボックス「アールループ(R-LOOP)」をローンチした。回収ボックス設置費用・回収物の配送費用は原則無料。施設などは所定のボックスを設置するだけで、「アールループ」側が不要な衣料品・雑貨を回収しリユースやリサイクルにつなげる。

回収後の衣料の行方は一般的に、「リユース・リペア」と「リサイクル」のふたつに大別できる。現在のところ多くの回収プロジェクトはどちらか一方に強みを持つ。「アールループ」は2社それぞれの強みを生かし、リユースはブックオフが、リサイクルは繊維製品の回収・再生の循環プラットフォームを運営するビーピーラボがそれぞれ行う点がポイントだ。リユースとリサイクルの分別はブックオフの6拠点で手作業で行う。リサイクルはビーピーラボが契約するリサイクル工場で繊維製品を280種類以上に分別し再資源化へ進める。

回収ボックスの設置はブックオフの店頭、全国29店舗でスタート。自治体では、11月1日に相模原市市役所が導入した。設置から約3か月の間、モデル実証ケースとして来庁する人から回収をする。対象は、靴やバッグなどの服飾雑貨・生活雑貨・おもちゃと衣料品で、コピー品や破損が激しい物など、アイテムによっては対象外となる。

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ビーピーラボとブックオフが回収ボックス「アールループ」スタート 市役所への導入も


ビーピーラボ(BPLab)とブックオフグループホールディングスは11月1日、リユースとリサイクルの循環型回収ボックス「アールループ(R-LOOP)」をローンチした。回収ボックス設置費用・回収物の配送費用は原則無料。施設などは所定のボックスを設置するだけで、「アールループ」側が不要な衣料品・雑貨を回収しリユースやリサイクルにつなげる。

回収後の衣料の行方は一般的に、「リユース・リペア」と「リサイクル」のふたつに大別できる。現在のところ多くの回収プロジェクトはどちらか一方に強みを持つ。「アールループ」は2社それぞれの強みを生かし、リユースはブックオフが、リサイクルは繊維製品の回収・再生の循環プラットフォームを運営するビーピーラボがそれぞれ行う点がポイントだ。リユースとリサイクルの分別はブックオフの6拠点で手作業で行う。リサイクルはビーピーラボが契約するリサイクル工場で繊維製品を280種類以上に分別し再資源化へ進める。

回収ボックスの設置はブックオフの店頭、全国29店舗でスタート。自治体では、11月1日に相模原市市役所が導入した。設置から約3か月の間、モデル実証ケースとして来庁する人から回収をする。対象は、靴やバッグなどの服飾雑貨・生活雑貨・おもちゃと衣料品で、コピー品や破損が激しい物など、アイテムによっては対象外となる。

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兵庫県 播州産地がオープンファクトリー開催「昔話はもういい。もういっぺん、現場を開く」 


兵庫県西脇市と多可町は10月26、27日に協業で、地元企業がものづくりの現場を一般に開放するイベント「もっぺん」を初開催した。西脇市と多可町は南北に流れる杉原川や良質な地下水など水資源が豊かな地域で、それを生かした織物や染色は「播州産地」の名で知られている。産地全体の生産量はピーク時と比べると大幅減少している、関係者たちは「なんべんでも立ち上がり、挑戦する」思いを込めてイベント名を「もっぺん」とした。オープンファクトリーを通じて見えたのは、一口に播州といっても個性豊かな企業スタンスや、職人技だ。

産業としての起源は1792年、ひとりの宮大工に始まる

新神戸駅から日本海方面に向かって車で1時間強、紡績、織物、染色・加工などの工場は穏やかな田園風景の中に点在している。温暖な地域の日本の繊維産地の多くがそうであるように、播州も自家用綿花栽培に始まり、産業としては1792年に宮大工の飛田安兵衛が京都西陣から織物の技術を持ち帰ったのが起源と伝えられている。これもまた他の繊維産地と同じで水源が豊富で、加古川、杉原川、野間川などの河川が染色業の発展につながってきた。年間生産量は1987年の約3億8,800万平方メートルをピークに減少し、2023年は約1,256万平方メートルと、ピーク時の約3.0%。まさに“激減”だ。「もっぺん」の実行委員のメンバーたちは、この現実を踏まえつつ「僕らは良い時は知らないから、ここから上がるしかない、昔話はもういい。もっぺんやり直そう」と言う。

織機をフルカスタムし、アイデアで直販勝負

「立ち上がり方」はそれぞれだ。1950年創業の大城戸織布は「直販」にこだわり、織機に手を加え、オリジナルの織物で勝負している。工場の引き戸を開いて中に入ると、整理整頓が行き届いた工場の天井から大量の房耳が下がっており、圧巻だ。房耳とは高精度織機で織る生地の両端の耳糸が房状になるもの。「捨て耳」とも呼ばれ、多くの工場では廃棄しているが、 同社では2011年からそれを直販している。生地そのものが個性的だから房耳も希少価値が高い。それに気がついた個人ブランドや手芸愛好家などから人気になっている。

同社の2代目である大城戸祥暢 大城戸織布代表は、現在のスタイレム瀧定大阪を経て、1997年に家業を継いだ。公式ページの言葉がその姿勢をわかりやすく伝える。「生産者からの直接販売によってオモシロイものが生まれ始めている。テキスタイルの生産現場には無尽蔵のネタがあり、目指すところは存在感がある布“喋る生地”だ。AIによる織機の革新が進んでも人による手作業やアイデアをしのぐことは不可能で、飽くまで“現場主義”をまっとうする」。

「オモシロイ」生地作りは「ブランドの担当者と1対1で話す」ことに始まり、他との違いを出すための織り方や加工のアイデア、そして大城戸代表自身がフルカスタムした織機(この記事の冒頭写真)などで織り出す微妙な風合いから生まれる。「誰でも買える糸でも数社のものを撚り合わせ、織り方のタイミングを変えれば独特の見え方になる」などと着眼点がユニークだ。気の相手から難しいお題が届けば考えて手を動かし、提案を生み出す。この日も島根で羊の育成から行っている「カサギ・ファイバー・スタジオ」から届いたボリュームのある無染色ウールを前にアイデアを捻っていた。

オープンファクトリーでは第二工場も公開していた。そこには、「フェラーリ程度」を投資した高速織機が鎮座しており、これもまた改造を加えているという。「勉強のためにこれを入れた。この辺りには、生産環境を作るための仲間がいるから、機織りをするには最高の場所だ」。

ひときわ異彩を放つ「イッテンもの量産主義」の「タマキニイメ」

播州産地の中でもひときわ異彩を放つのが、「タマキニイメ(TAMAKI NIIME)」だ。福井出身の玉木新雌デザイナーが2004年に同ブランドを立ち上げ、08年に西脇市に直営店をオープン。10年から染工所跡地である現在の場所へ移し、デザインから染色、織り、ニット、縫製、そして完成品の販売やPR活動まで一貫してこの場所で行っている。社内には畑があり、馬やアルパカがいて、バスケットゴールもある。会社というより大きなアトリエや共同体の趣だ。

屋内は吹き抜け、もしくはガラス張りで見通しが良い。そして床や天井のあちこちにカラフルなメッセージが描かれている。「常に新しい挑戦」「透明性」「tanoしむ!」「変態モノづくり集団」など。「イッテンもの量産主義」とあるように、基本は一人の作り手がひとつの服を一貫して担当する。使う機械の調整も自分で行う。「すべての職人が、一点物という最小SKUを最初から最後まで一貫して手掛ける。もちろん最初はできないこともたくさんある。結果できるようになって、次のステージを目指す人は多い。ここでの3年の経験は“ヤバイ”と思う」と玉木デザイナーは言う。編み機の上には編みかけの生地が残り、ミシンの周りには個人の部屋のようなデコレーションがある。いたるところに人の存在感を強く感じる独創的な「工場」だ。

“日本一小さな” 紡績工場を独自でオープン

玉木新雌はなんと、独自で紡績工場も作ってしまった。2年をかけて機械を集め“日本一小さい紡績工場”を4月に本格オープンをする。オープンファクトリーで説明を担当したのは、播州産地で長年この仕事に携わった後同社に入った藤本隆太繊維品製品品質管理士だ。トルコから仕入れたオーガニックコットンを用いた紡績の全工程を実に楽しそうに説明する。「紡績はクリエイティブ。玉木さんはきれいな糸よりも表情のある糸が良いという。原料からこだわり、ここにしかない糸を作りたい」と藤本管理士。今進めているのは、国内の有機栽培コットン農家・団体との連携だ。

「白は200色ある」を地で行く、先染めの全工程を一貫する東播染工

播州織りと言えば先染めが有名であり、その先染めの代名詞とも言えるのが東播染工だ。日本で唯一、染色・サイジング・織り・加工まで一貫で行う先染め織物に特化した1943年創業のテキスタイルメーカーで大量生産商品から、デザイナーズブランドのこだわりの表現までを担う。日本生産にこだわり、大型機械を用いた全工程を広大な敷地の中で一貫している。

機械の稼働規模が大きいため、週末開催の「もっぺん」でのオープンファクトリーには参加していない。糸編が主催する「産地の学校」では休日の工場を訪れ、担当者から話を聞いた。上記の写真は電気を落とした工場の様子だ。ゴミも汚れも全く見当たらない磨き上げた機械と床を見れば徹底管理もまた職人の仕事のひとつだと理解する。

染めは素材、ロットサイズ、天候などあらゆる条件で染め上がりが変わってくる。機械を前にした人の手がそこで生きてくる。タレントのアンミカさんの有名な「白って200色あんねん」のあの言葉をここではまさしく目にすることができるのだ。

縫製工場の開設でジレンマを解消し、“メード・イン・播州”

播州織の産元商社である播は今年、西脇市に縫製工場を開設した。目的は「ここから“メード・イン・播州”の品を消費者に届ける」こと。播州織りの生地であっても中国で縫製すれば“メード・イン・チャイナ”となる。そのジレンマを少しでも解消しようと、西脇市の「西脇ファッション都市構想」事業を活用し、生地づくりから縫製まで、産地での一貫生産の体制を整えた。自社ブランドのワイシャツや、他社から委託を受けた商品を生産している。

新工場の建物面積は約650平方メートルで、ミシン約30台やコンピューター制御の裁断機、アイロン台など、最新式の設備を導入した。従業員は新たに雇用した10人からスタートし、熟練度を高めながら20人程度まで増やすという。雇用を通じて街との産業のつながりも深めてゆくのも狙いだ。

オープンファクトリー時に同工場を訪れていた西脇市の職人は、「もっぺん」の初開催について「播州織という共通の地場産業を有する西脇市と多可町が、2市町の垣根を超えて地域一体となって活性化に取り組めたことが一番の成果。今後は認知度向上に向けたPRを強化し、コンセプトである“まちびらき”に向けて、地域住民をさらに巻き込む工夫をしてゆく。そのためにも継続して開催するための人や資金の仕組みづくりが課題だ」と話している。

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名古屋「スズサン」、伝統工芸でハイエンド市場参入に成功、その戦略と展望をCEOが語る

PROFILE: 村瀬弘行/スズサンCEO兼クリエイティブ・ディレクター

村瀬弘行/スズサンCEO兼クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: 1982年愛知県名古屋市生まれ。英国のサリー美術大学を経て、ドイツのデュッセルドルフ国立芸術アカデミー立体芸術及び建築学科を卒業。在学中の2008年にデュッセルドルフでsuzusan e.K. (現Suzusan GmbH & Co. KG)を設立。自社ブランド「スズサン」をスタートした。14年に法人化した家業のスズサン(旧鈴三商店)を4代目の父から継承し、20年から現職。現在もデュッセルドルフで暮らしながら、デザインや有松でのモノづくりを監修している PHOTO:HIROMICHI TABATA

日本の伝統工芸がハイエンド市場から注目を集めている。「有松鳴海絞り」の「スズサン(SUZUSAN)」は、欧州で人気に火が付きパリ「レクレルール(L'ECLAIREUR)」、ミラノ「ビッフィ(Biffi)」、ベルリン「アンドレアス ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)」といった好感度セレクトショップに並び、現在30カ国80都市120店舗に販路を持つ。自社ブランドの製造販売だけでなく、「ディオール(DIOR)」など数々のラグジュアリーブランドから依頼を受け、絞りを施したテキスタイルを提供する。2008年に3人でブランドを立ち上げ、現在の社員数はドイツ法人が7人、日本が20人(取締役を除く)にまで増えた。4代目の父1人だった技法の担い手は沖縄や兵庫からの移住者も含め12人に。7~8工程の分業制の技術「有松鳴海絞り」を、スズサンでは一貫生産しそれぞれの工程も担い手たちが重複して行っている。「有松鳴海絞り」の高付加価値化と伝統工芸の担い手育成を成功させたのが5代目の村瀬弘行スズサンCEO兼クリエイティブ・ディレクターだ。村瀬CEOにどのようにして伝統工芸をハイエンド市場にマッチさせたのか、その市場開拓の戦略や今後の展望を聞く。

WWD:まず「有松鳴海絞り」の特徴について教えてほしい。

村瀬弘行CEO兼クリエイティブ・ディレクター(以下、村瀬):200種類以上の技法があること。これは世界にも類を見ない。現存している染色技術は4000年前に生まれ、インドやアフリカ、南米などで見られるがその多くは1つの地域に2~3技法。有松の歴史は1608年の江戸初期に始まり、江戸時代は専売制が敷かれ「絞りは有松だけ」というお触れによって産業として発展した。歩いて15分圏内に「誰々さん家は〇〇絞り」といった具合に200以上の技法が生まれた。

WWD:そもそも村瀬さんはアーティストになりたくて海外に留学した。なぜ「有松鳴海絞り」を?

村瀬:きっかけは2006年に父が英国で開いた展示を手伝ったことだった。365日見続けていた「有松鳴海絞り」を久々に英国で見ると美しいと感じた。近すぎて見えなかったものが見え、その技術がなくなりつつある現実を聞かされて興味が沸いた。当時、父は50代後半で絞りの職人としても最後の世代でその下の世代がいなかった。

そして、そのときに父から預かった布が当時同じ寮に住んでいた友人の目に留まった。その後、彼はビジネスパートナーになるのだが、経営学を学んでいた彼は卒業論文のテーマに「日本の手仕事が海外のラグジュアリーマーケットで販路を築けるか」を選んだ。これがベースになりスズサンを立ち上げた。

卒論きっかけで始まった「スズサン」、リーマンショックでどん底スタート

立ち上げ時はブランドもプロダクトもなかった。手元にはあと数年でなくなる技術のみ。「なくなりそうな手仕事を次につなげたい」という想いをどうビジネスにするかーーブランドを作ることで自ら需要を生み出せると考えた。父の仕事を振り返るとオーダー数によって右往左往していたし、OEMは生産者の顔が見えないから、作り手にリスペクトが届かない。ブランドとして毎シーズン必ず絞りを用いた製品を提案すれば需要が生み出せるし、モノ作りする人の声や顔を届けることができると考えた。

WWD:日本の伝統技法を洋服やクッション、ラグといった西欧的なアイテムで表現するとうまくはまらないことが多い。「スズサン」の色や柄は汎用性が高く、洗練された印象だ。

村瀬:立ち上げ時に有松の絞りを見直したときのこと。有松の風景では着られるけど、出ると着られないものがほとんどだった。デザインチームにはよく「風通しのいいデザインを作ろう」と伝えているが、この言葉は美術の先生が教えてくれたもので、平面的にモノを見るのではなく、後ろにも空間があることを感じながらデッサンしなさいというもの。この考え方を大切にしている。製品の後ろにニューヨークのマンハッタンやミラノのモンテナポレオーネ通り、地中海の島などさまざまな風景に溶け込むことをイメージしている。風通しがよいデザインになればいろんな場所で生かされる製品になる。

WWD:実際に製品にするときに「有松鳴海絞り」をどのように応用しようと考えたか。

村瀬:スズサンで「何を残して何を変えるか」を考えた時に、絞りの文化を素材、技術、用途の3つに分けて考えた。400年の間、素材は木綿、技術は絞り、用途は浴衣やてぬぐいで成り立ってきた。それをそのまま海外に持っていっても売れない。素材は木綿からカシミヤやアルパカ、ランプシェードにはポリエステルを用い、コアの絞りは残して、用途をストールやプルオーバー、クッションやブランケットに変えることで、日本で日本の伝統工芸好きしか使えなかったものが、世界中に販路を作ることができる製品になる。

WWD:販路開拓の戦略はラグジュアリー市場を意識したように見受けられる。

村瀬:最初から戦略があったわけではなかった。手仕事なので立ち上げ時からハイエンドマーケットにフォーカスはしていた。他のブランドに比べてもモノ作りにおいて優位性があり、ストーリーがある。とはいえ卒論通りにはいかないし、会社を設立した08年はリーマンショックが起こりどん底からのスタート。売ろうにも電話もメールも取り合ってくれない状態だったので作ったサンプルをトランクに入れて、ビジネスパートナーの弟がくれたおんぼろカーで欧州中を駆けずり回り、草の根の中で販路を広げた。その車は最後には床に穴が開き廃車にした(笑)。

WWD:販路拡大のきっかけはあったか。

村瀬:ただただ地道に続けて120店舗になったというのが実感だ。トランクを担いでさまざまな店を回ったのがとても勉強になった。店にどんなブランドが並びどんな製品がいいのかを直接見ることができたから。

そして、バイヤーは断りたいから断り文句を考え、「色が」「素材が」といちゃもんを付けてくる。そのバイヤーが指摘した点を改善してサンプルを新しく作って持っていくと、根負けしてオーダーしてくれるということもあった。

パリ・ファッション・ウイーク中に開催される合同展示会「TORANOI」に出て10年目になるが、そこからバイヤーが来てくれるようにもなった。

WWD:思い入れがあり狙い打ちした店は?

村瀬:ミラノのビッフィとその姉妹店バンネル。古くは「ケンゾー(KENZO)」や「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」を発掘し、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)を学生の頃に見出した目利きの店で、セレクションも内装も素晴らしく、初めて訪れたときにその美しさに感動した。「スズサン」を取り扱って欲しいと思ったが当時はこのレベルに達していないとも思った。店の人が話しかけてくれて、「僕は日本人のデザイナーでこの素晴らしい店に出合えて嬉しい」と伝えると「あなたの製品が並ぶのを待っているわ」と答えてくれた。その3年後、ミラノの合同展示会「ホワイト(WHITE)」に出展すると小柄な女性がやってきて買い付けてくれた。店の名前を尋ねるとビッフィだった。最近ではミラノ・ファッション・ウイーク中にビッフィのウィンドーを手掛けている。今年3月、ビッフィのオーナーが有松に来てくれて、一緒にワークショップをした。ベルリンのアンドレアス(・ムルクディス)も有松にも来てくれた。

WWD:「スズサン」の取り扱い店の幅が広い。ブランドのポジショニングをどう考えているか。

村瀬:試行錯誤した結果築いたポジショニングだ。色、柄、型、サイズをカスタマイズして1点から作ることができることが強みになっている。市場を分析するためにファッションブランドやセレクトショップの傾向や価格帯から「ラグジュアリー」「プレミアム」「アッパー」「デイリー」「マス」とピラミッド型の分布図を作った。さらに僕たちがターゲットとしている「プレミアム」を、「アーバン、ダーク、マスキュリン、アヴァンギャルド」「ジョイ、コンテンポラリー、カラフル、フェミニン」「リラックス、エフォートレス、ナチュラル、クラフト」「コンサバティブ、クオリティ、ネームバリュー、タイムレス」の4つに分類するとファッションブランドとセレクトショップはいずれかにはまる。具体的なブランド名やショップ名は控えるが、ブランドの多くは、カテゴリー内にある店のみで取り扱われていることがわかった。

強調したいのは「スズサン」は全てのカテゴリーの店に販路があるということ。

同じように4つのカテゴリー全てにはまるブランドは「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」だ。「ドリス」はメンズとウィメンズを年4回毎シーズン約1500点の新作を作ると聞いたことがあるが、柄や色のバリエーションが多く圧倒的型数でマーケットを築き、幅広くリーチできている。「スズサン」は「ドリス」とは比較にならないほど規模は小さいが、「黒に染めて」「ピンクに染めて」に1点から対応できる。毎シーズン6型4柄あるニットは、サイズも入れると576パターンあり、カスタマイズすることで各店が求める製品を供給できる。

WWD:「スズサン」の製品を購入、支持する人は何に惹かれていると考えているのか。

村瀬:袖通して肌触りがいいとか、色が好き、から始まる。製品のクオリティが担保されていることは絶対だ。日本の産地でモノ作りをしており、他の国で作れない編み方や織り方がある。例えばカシミヤニットは大阪の深喜毛織で糸を紡績して山形で編み立て、有松で絞りを施している。布帛は尾州の素材を使い岐阜で縫製している。日本はきらびやかなモノ作りは得意ではないかもしれないが、品質の良さやマニアックなモノ作りは日本でしかできないものがたくさんあり、それが優位性になっている。

WWD:人気アイテムはカシミヤのニット製品だ。

村瀬:やわらかい素材に絞りを施すのは技術的にかなり難しく、失敗を重ねてここまでたどり着いた。欧州は年中、カシミヤを着る。今後、販路をさらに分散していく戦略なので売れる製品が変わるかもしれない。

WWD:海外の関係者にどのように価値を理解してもらったのか。

村瀬:背景にあるストーリーだ。

「アンドレアス」も「レクレルール」もケリング(Kering)やLVMHからのオーダーをやめた。製品価格が上がり、オーダー方法もどんどん厳しくなったと聞く。バイヤーの力量は本来セレクションで問われるが、それができない環境になったから一切止めたと聞いた。ブランドイメージを作る意味では、大手のやり方が間違いではないとしても、肥大化したファッションビジネスの中で、バイヤーは売れるから仕方なく買っているようにも見える。

アンドレアスや「レクレ」のオーナーのバルマンさんは、誰も発見したことのない優れたものを探し、新しい価値を紹介するのがバイヤーの仕事でお店のあるべき姿だと考えていて、そこには有名や無名は関係なく、良ければ扱うというわかりやすい基準がある。

次のラグジュアリーは「共感を覚えるもの」「一方方向ではないもの」

WWD:「ラグジュアリー」という言葉をどう捉えているか。

村瀬:ラグジュアリーは今までは“憧れ”が形作っていた。象徴していたのはダイヤモンドやゴールド、オートクチュールのドレスといったきらびやかなもの。欧州からトップダウン的に、華やかなショーを開いて発信して世界中にインフルエンスさせることでマーケットを作ってきており、世界中のファッションデザイナーはパリを目指し、パリのサントノレ通り(有力ファッションブランドが軒を連ねる)やヴァンドーム広場(有力ジュエラーが軒を連ねる)に店を出すことがデザイナーとしての一番のステータスだった。

「ラグジュアリー」の言葉の代わりになる言葉が必要だと感じている。

あえてラグジュリーという言葉を使うなら、次に来るのは「共感を覚えるもの」「一方方向ではないもの」。世界中のローカルでそこでしかできない体験や風景を見ることがよりラグジュアリーになると感じている。アイフォンをスワイプすれば「シャネル(CHANEL)」のショーから有松の風景に飛ぶ状況で、トップダウンのインフルエンスがそんなに意味がないとも感じている。

「『スズサン』はファッションショーをやらないのか」と聞かれるが、リアリティを感じないから興味がない。もっと親近感や共感を得られるものが大切だと考えているから。例えば海外でも開催している絞りのワークショップは、3時間くらい話しながらモノを作り、できたときは喜びを分かち合う。高価なものではないけれど時間としての価値や生きる意味として大きな価値がある。

WWD:今、有松を訪れる顧客が増えていると聞いた。

村瀬:さっきもドイツの隣町に住む知り合いにばったり会った。「日本に来たからあなたの工房があると聞いた有松に来た」と声をかけてくれて嬉しかったし、実際訪れてくれる方は増えている。毎シーズン20~30代の若手と地域のおばあちゃんが2500~3000点を染め、年間5000点を10年間売ってきたとすると、5万人のユーザーがいる。ここでしかできない体験をして、目の前で職人のモノ作りを見て、自分が着ているシャツはこの人が作ったとわかる。飛行機と電車を乗り継いでわざわざ訪ねて来た人から賞賛されるのは作り手側の尊厳にもつながる。買う側は、作ることで伝統工芸の継続に貢献はできないけど、購買することで協力することができるからと、応援購買に近いマインドがある方が多い。

WWD:手染めは個体差が生まれやすい。化学染料を用いることでコントロールしていると聞いたが、それでも難しいのではないか。個体差はクラフト業界では自明のことで“味”になるが、一般的なファッション・繊維製品において個体差はクレーム・返品対象になりかねない。個体差を「不良品」と認識させないために、どのような対応をしているのか。

村瀬:もともと、同じものがいいと伝えてない。世界中のラグジュアリーブランドの店では同じかばんが並んでいて、やっていることは「マクドナルド」と変わらないと感じる。「有松鳴海絞り」は型を用いることも多くリピートができる。個体差がありながら、コントロールしやすいのが特徴だ。

「ヒューマニティのある循環と継続」を目指す

WWD:「スズサン」のビジネスの展望について、クラフト・ツーリズムに向けての進捗などあれば教えてほしい。

村瀬:ヒューマニティのある循環と継続を目指す。よく「グローバルなビジネスをやっていますね」と言われるが、一つの大きなことをやっている感覚はなく、製品を通じて有松というローカルと世界中のローカルをつなぐビジネスをやっているという感覚だ。2年前に企業理念「We are Bridge」を作った。文化と文化の橋渡しをする会社という意味を込めている。この15年は有松から世界中に「有松鳴海絞り」を発信した。次の15年は5万人の「スズサン」ユーザーが有松に来る循環を作りたい。そのために地域事業部を新設した。有松を「面」で見られる場所にしたい。

現在は10~17時の日帰りで有松をぐるっと案内する「スズサンディスカバリーツアー」を開催している。徳川家が来た茶室や地域の食材を使ったレストランでの食事、職人の超絶技法や、若い職人たちが携わっているところを見て、実際に自分でも絞りを体験して店にも立ち寄ってもらうというものだ。丸一日の体験を通じて、袖を通している服が特別なモノになることを目指している。

WWD:宿泊施設やレストランなども視野に入れるのか。

村瀬:ホテルは念頭にあった。でも箱を作っても人が入らなきゃ意味がないので、まずは人を呼び込むツーリズムというソフトを整えることに注力している。有松は空襲がひどかった名古屋の中でも、米軍の捕虜収容所があったため、空襲を免れ建物や風景が残っている。そして、観光地にある顔はめパネルではない、生活の文化も残っている。「おー弘之帰ってきたか、お茶でも」と声をかけてくれる人々の暮らしがある。オーセンティックな暮らしがあることは訪れる人にとっては特別なものになる。欧米の方の日本滞在に長期滞在が増えている。今は1日のツアーのみだが、今後は1週間有松に滞在できるような街にしたい。

伝統工芸の海外進出をサポートする新会社設立

WWD:日本の産地における技法や技術継承や価値向上について、どこが課題だと認識しているのか、反対にどこに可能性があるとみているか。未来につなげていくために必要なこととは?

村瀬:経産省が指定する伝統的工芸品は北海道から沖縄まで241ある。抱えている課題は一緒で後継者がいないことや高齢化がある。名古屋市の調査によると、伝統工芸に携わっている従業員数は、1人が37%、2~5人が37%と大半を占める。年齢分布は、20代7%、30代13%,40代以上が80%。これから、有松の事例を他の産地で応用することに取り組む。日本の中小企業の海外進出をサポートする新会社「TOBIRA DESIGN」を作り始動する。これまで僕らが穴があったら落ちて、地雷があったら踏んでいたような知見を有効に活用して、日本の見過ごされている価値を世界に発信できるのではないかと考えた。具体的には準備(言語含む)、製品(サイズや用途などマーケットのニーズ)、ブランディング(継続的なビジネスに向けた戦略)、セールス(契約書などの書類や金銭回収)、物流などさまざまな課題に対応できる新しい仕組みを作り、職人と世界中の取引先とのやり取りを整えることを考えている。

行政ができることと民間ができることは異なる。井上さんは「スズサン」を大きくすることが目的ではなく、僕たちが日本の地域文化を発信できる切り口になると思ってくれて入社してくれた。

WWD:日本の産地の多くは経済的課題に直面し海外企業連携は重要である一方、寡占状態に陥るのは危険だともいえる。産地で生きる人の自律性をどのように維持することが望ましいのか?

村瀬:今までは受注する側と発注する柄の上下関係があった。大資本の企業が力を持ち、イニシアチブを取るのが通例だったが、変わりつつある。欧州は目利き集団による価値付け上手な「目の文化」、日本はモノ作りが残る「手の文化」。欧州は「手の文化」がなくなっていく中で、「手の文化」が一つの価値として認められるようになったと肌で感じる。価値の交換は上下関係ではなく対等な立場で行われつつあり、巨大資本の企業が僕らのところに来るのは彼らができないからで、そこにはリスペクトがある。こちら側もクリエイションにリスペクトを持つことが大切だ。

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「ミュウミュウ」から大胆で型破りなアップサイクル・ホリデーコレクション 


「ミュウミュウ(MIU MIU)」は、ビンテージアイテムをアップサイクルしたホリデーコレクション“ミュウミュウ アップサイクルド ホリデー 2024”を発表した。キャンペーンビジュアルには俳優のエマ・コリン(Emma Corrin)を起用し、撮影はフォトグラファーのレングア(Lengua)が手掛けた。

“ミュウミュウ アップサイクルド”

本コレクションは、2020年にスタートした “ミュウミュウ アップサイクルド”プロジェクトの一環で、今回で第5弾となる。「循環型デザインをブランドとして長期的に奨励すること」を目的に、これまでヴィンテージドレスやデニム、端材を活用したバッグ、レザージャケットなどを扱ってきた。

ホリデーコレクション

2024年のコレクションでは、世界中から集められたレザーや1950年代から70年代に使われていたキルト、色彩に重点を置きブランドのアーカイブから選んだ糸、シャンティリーレースをベースに施した刺しゅうに焦点を当て、それぞれのアイテムに備わるストーリーをもとに唯一無二のアイテムを作り上げた。

また、2022-23年秋冬コレクションで初登場したアップサイクルレザーが今年も登場。11年春夏コレクションに着想したフラワーとフレームのモチーフや、24-25年秋冬コレクションの刺しゅうをあしらい、取り外し可能なソフトシャーリングの襟で仕上げた。ローウエストのスカートには、タータンチェックのアップサイクルキルトを使用。ブラックのオーバープリントやファセットストーンの刺しゅうをアクセントで加えた。

そのほか、アイコンバッグ“ワンダー”や「ミュウミュウ」のアップサイクル糸で編んだクルーネックのセーター、スカーフ、ニット帽などをラインアップする。

また、製品のライフサイクル全体を通して透明性を促進することを目的に、非営利団体のオーラ・ブロック チェーン・コンソーシアムと提携。2024年の全てのアイテムがオーラ・ブロックチェーン認証を受けている。オーラ ブロックチェーン コンソーシアムは、プラダ グループ(PRADA GROUP)が他のラグジュアリーグループとともに、21年4月に結成し、メタバースなどを含む技術開発を行っており、原材料からエンドユーザーまでの製品の追跡が可能となる独自のデジタルIDを取得するサポートを行っている。

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ファーストリテイリング、“サステナブル素材”の自社基準策定 まずは綿で25年8月までに

「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」などを運営するファーストリテイリングは、 “サステナブル素材”の自社基準を策定する。これまでは、「原料調達基準」として温室効果ガス(GHG)排出量指標は業界データベースを参照し、重要素材は個別目標を設定するも環境指標の定量基準は設けていなかった。新定義では、「GHG排出量」「水使用量」「生物多様性」「人権」「動物愛護」の5項目で自社基準を順次策定する。自社基準を土台にして、第三者認証も運用団体と意見を交わしながら活用していく。

同社は、2030年8月期までに全使用素材の約50%を、リサイクル素材など GHG排出量の少ない素材に切り替えることを掲げている。23年は商品全体で8.5%、24年は同18.2%とその比率を高めているものの、目標達成までにはへだたりがある。「グローバルで業界全体としての“サステナブル素材”の基準がない。それゆえ、使える素材はリサイクルポリエステルが中心で、選択肢が限られている」と、同社でサプライチェーンのサステナビリティ分野を担う新田幸弘グループ執行役員。“サステナブル素材”の基準や定義を自社やパートナーであるサプライヤー、工場などとの取り組みの中で具体的に定め、「持続可能な調達を高水準で実現する」。

自社基準の策定はまず綿で先行し、25年8月期に自社基準策定を終え、26年8月期から基準を適用。環境負荷を検証する材料として個別の環境負荷測定データ(LCA)も参考情報として活用するほか、環境再生型(リジェネラティブ)コットンを新たにサステナブル素材に組み込む。その他の素材についても、順次基準を定めていく。

なお、GHG排出量(スコープ1,2)については、2030年8月期までに19年8月期に対し90%を、取り組み先工場などサプライチェーン領域でのGHG排出量(スコープ3)については20%を削減すると掲げており、23年8月期は前者が69.4%削減、後者が10%削減を達成している。

先行してきたトレーサビリティーの強化

ファーストリテイリングでは17年以降、縫製工場や素材工場を集約して情報公開し、サプライチェーンの可視化を進めてきた。素材工場よりもさらに上流の紡績工場までさかのぼっての監査も、綿から始まって、ウール・カシミヤへと広げている。「カシミヤは全商品の工場・牧場を把握済みで、ウールでも同様の枠組みを進めている」このように、トレーサビリティーを強化してきたからこそあらゆる情報が可視化し、“サステナブル素材”の自社基準が策定できる。また、背景には各国で強まるサステナビリティ関連の法規制がある。環境保護関連の法規制では欧州が先行するが、欧州で決まったことを受け入れるだけでなく、ルール作りに主体的に携わっていくことにもつながる。「法規制はむしろビジネスチャンスととらえている。自社基準が評価されれば、業界内に広めることもある」という。

ファーストリテイリングは、11月13日に今年で4回目となるサステナビリティ方針説明会を開催。“サステナブル素材”の自社基準策定のほか、01年以降継続してきた難民支援やリサイクル活動、古着販売など同社が取り組む多様な活動を紹介すると共に、17年にスタートした“有明プロジェクト”における「無駄なものを作らない、運ばない、売らない」仕組み作りなどを紹介した。「(サステナビリティ実現のため)多岐にわたって活動してきたが、それがお客さまに適切に伝えられているかと言えばまだまだ。商品も本当にお客さまの役に立つものならヒットするように、本当に世の中の役に立つ活動は世の中に広がっていく。やるべきことを誠実に続けていく」と柳井康治 取締役グループ上席執行役員は話した。

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世界の若手デザイナーは廃棄素材を楽しんで使う:サステナブルファッション・トークvol.3

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

9月に行われたロンドン・ファッション・ウイークを初めて取材しました。そこで出会った若手ブランドは、デットストック素材やリサイクル繊維を当たり前のように取り入れながら、強い個性を発揮したのが印象的でした。第3回は、ロンドンコレクションを振り返りつつ、最近出会った世界の若手デザイナーのサステナ観について話します。



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「ヘレンカミンスキー」豪産メリノウールの生産過程を追跡可能に

オーストラリア発のヘッドウエアブランド「ヘレンカミンスキー(HELEN KAMINSKI)」は、ウールフェルトハットの一部コレクションの生産過程を追跡可能にしたと発表した。

対象となるのはオーストラリア産メリノウール。環境再生型農業を行うバルナー・プレーンズとのパートナーシップにより、今回のトレーサビリティが実現した。

農場とそこでの刈り取りから始まり、洗浄、カーディング(羊毛をほぐす工程)、コーミング(不純物を取り除く工程)、縮絨(厚みと強度を増やす工程)、成型、出荷まで、複数の国をまたいだ生産工程が追跡可能になる。

オーストラリア・ビクトリア州の西部地区で牧場を営むバルナー・プレーンズは、1840年代に牧畜のパイオニアであるラッセル一族によって設立された。毛刈り小屋、厩舎、馬車庫、コテージは、オーストラリアのナショナルトラストに指定されている。

追跡可能なウールを使用した製品は「ヴァレリー」5万9400円、「オーガスティン」6万4900円、「フリーダ」5万7200円など。公式ホームページではクリーニング方法や保管方法なども併せて紹介している。

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鯖江で「小さな産業革命」、インタウンデザイナー新山直広に聞く地場産業の継続と価値創出に必要なこと

PROFILE: 新山直広/TSUGI代表兼クリエイティブディレクター

新山直広/TSUGI代表兼クリエイティブディレクター
PROFILE: 1985年大阪府生まれ。京都精華大学デザイン学科建築分野卒業。2009年福井県鯖江市に移住。応用芸術研究所、鯖江市役所を経て15年に地域特化型クリエイティブカンパニーTSUGIを設立。「福井を創造的な地域にする」をビジョンに、通常のデザインワークだけではなく、眼鏡素材を転用したアクセサリーブランド「Sur」、福井の産品を扱う物産店「SAVA!STORE」の運営、産業観光イベント「RENEW」のディレクションなど、地域に何が大切で何が必要かという問いに対して、リサーチとプランニングを繰り返しながら、これからの時代に向けた創造的な地域づくりを実践。22年に越前鯖江地域の観光まちづくりを行う一般社団法人SOEを設立。23年にはこれからの地域とデザインを探究するLIVEDESIGN Schoolを開校するなど、近年ではものづくり・まちづくり・ひとづくりといった領域で活動。グッドデザイン賞特別賞、国土交通省地域づくり表彰最高賞など受賞多数。著書に「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」(学芸出版社)がある

福井県鯖江市で興味深い変化が起きている。鯖江市は眼鏡をはじめ漆器や和紙などモノ作りがさかんな地域だったが、産業は衰退の一途だった。しかし今、「伝統工芸で元気な街」と言われるまでになった。その立役者の1人が2009年に鯖江に移住した新山直広ツギ(TSUGI)代表だ。“インタウンデザイナー”を提唱し、デザイン力を多方面で発揮して、地場産業の魅力を高めてその価値向上に取り組む。「福井を創造的な地域にする」と3人で始めたツギの従業員数は現在20人に。スタッフの多くが県外からの移住者だ。現在は政策デザインアドバイザーとして鯖江市や福井県の政策立案も行う。若者の鯖江への移住者は130人を超え、OEM中心のビジネスだった企業は自社ブランドを立ち上げ、新店舗をオープンしている。その数10年間で35店舗。きっかけは新山代表が15年に始めたオープンファクトリーイベント「RENEW(リニュー)」で、産業構造だけでなく人々の意識変化をもたらした。新山代表に鯖江の変化について、デザイナーが“インタウン”である重要性とやりがいについて聞いた。

意識高い系学生が町に溶け込むまで

WWD:鯖江市に移住を決めた決定打は何か?

新山:これからは地域の時代だと思ったこと。ただ鯖江でないといけない理由はなかった。京都精華大学で建築を学んでいたときにゼミの先生が行っていたプロジェクト「河和田アートキャンプ」に参加した。その頃はちょうど日本の人口がピークでリーマンショックの直後。もう建物を新築する時代じゃないだろうと感じていた。これからは今ある環境をどうよくするか、コミュニティデザインが主流になると考え、先生が運営する応用芸術研究所に入り、その勤務先が鯖江だった。

WWD:大阪や京都で生活してきた新山さんにとって公共交通機関が少ない街への移住のハードルは高くなかった?

新山:その頃、恥ずかしいくらい意識高い系の学生だった(笑)。偉そうに日本の都市がどうなるか語っていた。分かりもせんのに。移住のモチベーションは「僕が地域を活性化してあげます」だったから、今思えばマジでくそ野郎だった。一番あってはならない気持ちで移住してしまった。

WWD:実際に住んで見えた課題は?

新山:課題は大きく2つ。1つ目は自分自身の課題で、町に溶け込む必要があった。今でこそ鯖江は移住者が多いが、地域活性の文脈で移住したのは僕が第一号だった。そして会社や行政から「お前がミスると次が来ないから絶対にミスるな」と脅されていたから、まずはなじもうと必死にがんばった。夏祭りなど地域行事には積極的に参加して、地区の青少年健全協議会のオブザーバーなど声がかかったもの全部に行って信頼を獲得しようとしていた。

WWD:「嫌われないように保守的に動く」と「地域の課題解決に向けた動き」はつながりにくいのでは?

新山:移住後2年くらいは野望や野心があまりなくて、なじむことを一生懸命考えていたが、その中で直面したのが地域の本当の意味の課題だった。つまり2つ目の課題、産業がオワコン過ぎるということ。移住1年目は市からの委託で産業調査を行っていた。越前漆器の職人さんや問屋さんを100件くらい回り、後継者や売り上げ、未来の展望を聞いていた。その9割が「もうやばい、終わりだ。息子に継がしたら一生恨まれるわ」という状態。2年目は越前漆器の売り場調査を行った。結果どこにも売ってなかった。業務用のtoBビジネスは縮小傾向だし、そもそもtoCはなかった。国内の漆器流通上に越前漆器はなく、そもそも売り場自体も縮小している。このままいくと産業が衰退する一方だ、という課題が浮き彫りになった。

その時僕が思ったのは、この町には圧倒的にデザインが必要だということ。他産地を見ると、例えば石川輪島のキリモトは三越日本橋店に直営店を出しているし、富山高岡の鋳物メーカー能作もデザインされた製品を売っている。技術は負けていないのに見せ方や伝え方、デザインが足りていない。僕はそこを手伝う必要があると思った。移住して1年半が経った10年の年末だった。

コミュニティデザインや地域活性をしたくて移住したが、職人さんには「お前は全然わかっていない。鯖江は眼鏡、漆器、繊維とモノ作りの町。モノ作りが元気にならないと地域活性しない」と言われたことも大きかった。

町の人にデザイナーになりたいと宣言すると「デザイナーなんて大嫌いだ。作品みたいなものを作りやがって。あいつら詐欺師だ」とデザイナーをネガティブにとらえていた。この町でデザインを生業にするならモノを作るだけではなくて流通や販路まで手伝わないと通用しないと思った。“流通までできるデザイナー”になろうと考えた。

流通までできるデザイナーになる

WWD:移住して3年は河和田アートキャンプの運営会社で働きながらリサーチャーとしても活動、12~15年は鯖江市役所広報課で働いたのち独立したのは15年。そもそもこれまでデザインは取り組んだことがなかった。

新山:約5年の間に独学で学んだ。未経験で福井のデザイン事務所で雇ってはもらえないだろうし、東京にあるデザイン会社に行きたいと考えていた。面接に行くお金がなくてうだうだしていると鯖江市役所から電話があり、「移住者第一号が3年で抜けると市政の失態だ」と言われ、役所で働くことになった。でもそれはやりたいことと違う。それを伝えると市長室に呼ばれた。当時市長だった牧野百男さんに「お前は全然わかっていない。行政は最大のサービス業だ。そもそも行政にデザイン視点がないのがおかしい。お前がそれをやれ」と言われた。牧野さんは支持率8割のカリスマ市長で伝説の市長。「若者に居場所と出番を」という考えを持っていて、若者にやりたいことをやらせて俺が全部責任を取るという姿勢だった。臨時職員として商工政策課に入り、地場産業の支援を始めることになった。具体的には眼鏡のウェブマガジンや観光パンフレットのデザインをした。思った以上に面白くてやりがいを感じていた一方、産業振興は行政組織として公平公正であることが難しく、限界がある。そんな葛藤を抱えながら仕事をしていると、日々倒産情報がファックスで入ってくる。この勢いだと10年後に産業がなくなると思い、早めに独立して流通までできるデザイナーになるしかないと思った。

オープンファクトリーイベント「RENEW」を始動、小さな産業革命が起きる

WWD:鯖江の産業の中でもWWDJAPAN読者になじみがあるのは眼鏡産業。現在の課題は何か、また課題に対する取り組みで評価できるものは何が?

新山:現在の課題は大M&A時代に入ったこと。それ以前の課題はOEM中心のビジネスだったため、受注が減ったことで仕事がどんどんなくなり、どうするんだと自社ブランドを作る動きが生まれ始めていた。そのときに立ち上げたのが「RENEW」だ。

WWD:今年で10年になる。成果は?

新山:OEMを生業の中心としていた町に35の新規店舗ができた。工場の一部を自社ブランドを売る店にしたファクトリーショップのような形態。大げさかもしれないが「RENEW」によって小さな産業革命が起きた。意識変化が起き、新しい稼ぎ口を見出した事業者は多かった。

WWD:鯖江の眼鏡は分業制で、自社ブランドのためのサプライチェーン作りが大変そうだ。リードタイムが長くなっていることが課題だとも聞く。

新山:分業とはいえ、メーカーは他の工程を依頼して取りまとめることで売ることができる。どちらかというと今の課題はリードタイムが長過ぎること。15~21年はリードタイムが3~5か月だったのに対して一時期は1年3か月まで伸びた。今は1年程度だが、あまりに伸びると資金繰りやキャッシュフローが難しくなる。分業制を売りにしていた町だが、どこかの工程が止まればサプライチェーンが崩壊し、最終製品まで至らない。漁業でいうところの乱獲した結果、魚がいなくなったのに近く、課題はわかっていたのに手を付けなかったともいえる。人材は育たないし、結果的に作れない産地になった。

WWD:別の課題も生まれ、厳しい状況は続いているが、いい形で産業を継続させるためにはどこを目指せばいいのか。

新山:今僕が期待しているのは3代目社長。ちょうど2代目から3代目への代替わりの時期で、3代目の多くは40代。2代目は家族経営が中心で家族が食べていければいい、という感じだったが、3代目の経営者は共存共栄の視点を持っている。自分たちが儲かればいい、ではなく、産地の生態系まで考えた経営しようとしている方々がいる。例えば佐々木セルロイド(母体は兵庫県の企業)は独立支援コースができ、独立前提の雇用計画を進めている。何年か働いた後に独立されると会社としては大変になるかもしれないけど、産地にとっては作り手が増えるのでよしとしている。

沢正眼鏡は家族経営6人の小さな会社で平均年齢が約60歳だったが、息子が4月に社長になり、新たにスタッフを雇用しようと労務環境の改善を目指している。例えば「技術は目で盗むもの」というのが通例だったが、マニュアルを作りDX化を促進している。面白いのは、空き家対策事業を始め、会社のまわりの空き家を買い取って改装し、若い人向けのシェアハウスにしていること。“働く×暮らす”の環境作りをすることで担い手を作ろうとしている。

マーベルは給与水準を上げることを目指して給与体系を作り、給与を高くしたことで若い人が入社した。社風もイケイケになっていて、眼鏡業界では新しい風になっている。

WWD:新山さん自身がこれから取り組む課題は?

新山:廃棄物と労務だ。眼鏡は単一素材ではないし、例えば「土に還るやさしい素材」とうたっている素材はあるが、資源環境についてしっかり取り組まないと産業自体が危うくなる。本当に土壌分解するのか。眼鏡は単一素材ではない。具体的なアクションは難しく、儲からないと止まる。産地の意識変化を5年かけて取り組んでいく。

労務についてはいろいろ見えてきていて、鯖江市の労働環境の課題は、「給料が安い」「離職率が高い」「採用応募数が少ない」「高齢化」に加え、「技術伝承の遅れ」「分業化の限界」などがある。解決策として考えられるのは、HR(ヒューマンリソース)を重視した世界観。産地の中で人材育成をしっかりして、従業員のエンゲージメントを上げることなどに取り組みたい。

ツギが目指すこと、デザイナーの可能性

WWD:ツギはグラフィックデザインからブランディング、商品開発、プロジェクト運営、施設運営に加えて、自社ブランドも作っている。

新山:自社ブランドを作り地元の人に作ってもらったり、「SAVASTORE!」という小売店を立ち上げたり、福井のアンテナショップの運営を行うなど出口まで作ることを心掛けている。

WWD:自社ブランドを作る理由は?

新山:2つある。1つ目は自社ブランドを作り運営することでノウハウを貯めてフィードバックするため。2つ目は請負仕事だけではなく、自分たちで企画し土地の技術を生かした製品作りをすることは産地貢献の一つだと考えているため。「頼まれないとできない」というデザイナーの職能を幻想だと思っている。リアクションだけではなく、アクションをすることも大切だ。デザインの仕事を請け負ったときにボツになったネタをやらせてほしい、と自社ブランドとして始めたケースもある。

WWD:改めて“インタウンデザイナー”であることの重要性、意義とは何か?日本の地場産業を維持し成長するために必要な点とは?

新山:日本にデザイナーは約20万人いるが、その多くが東京に集中している。消費地としてデザインが求められることはわかるが、生産する町だからこそできるデザインが地域には絶対ある。本質を見つけ出し、地域資源を結びつけて新しい価値を作る“インタウンデザイナー”が増えると国が良くなるんじゃないかと思っている。国力、上がるんじゃね?と。そういう人を増やしたい。例えば漁業の町だったら漁業的視点の“インタウンデザイナー”が生まれるはずだと考えている。僕はモノ作りの町の“インタウンデザイナー”の一つのモデルを作る。

WWD:“インタウンデザイナー”のやりがいは?

新山:消費されるものではなく、長く続ける生態系を作ることができる。それが地域の良さ。春夏、秋冬といった時間軸ではない。そもそも商品開発が全てではなく、町医者のような感覚を持っている。「おなかが痛い」と来た人の話を聞いて、「原因は別にあるんじゃない?」と診断することもある。つまりアウトプットは製品のデザインでなく、労務にもなりえる、ということ。僕らの町は経営者と話せるし、意思決定が早い。二人三脚で事業を成長させる素地は十分にある。生産地でやれる醍醐味は物事の本質――そもそもやる意味があるのかーーから関わることができる、という点において意義がある仕事だと思う。

WWD:消費地では「なぜ」よりも「どうやって」が多いが、「なぜ」から取り組むことができるのはデザイナーとしても人としても鍛えられそうだ。

新山:規模が小さいがゆえに直接アプローチできる社長や行政の意思決定が変わると、イノベーションが起きる。何度もそういう現場を見ることができたし、できるんだと思った。政治家ではないけれど、デザイナーも地域をよくしていける存在。それがデザイナーの価値向上にもつながっている。「町を動かすには政治家になるしかない」ではない。政治家にならなくても、デザインで町をよくできる。

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鯖江で「小さな産業革命」、インタウンデザイナー新山直広に聞く地場産業の継続と価値創出に必要なこと

PROFILE: 新山直広/TSUGI代表兼クリエイティブディレクター

新山直広/TSUGI代表兼クリエイティブディレクター
PROFILE: 1985年大阪府生まれ。京都精華大学デザイン学科建築分野卒業。2009年福井県鯖江市に移住。応用芸術研究所、鯖江市役所を経て15年に地域特化型クリエイティブカンパニーTSUGIを設立。「福井を創造的な地域にする」をビジョンに、通常のデザインワークだけではなく、眼鏡素材を転用したアクセサリーブランド「Sur」、福井の産品を扱う物産店「SAVA!STORE」の運営、産業観光イベント「RENEW」のディレクションなど、地域に何が大切で何が必要かという問いに対して、リサーチとプランニングを繰り返しながら、これからの時代に向けた創造的な地域づくりを実践。22年に越前鯖江地域の観光まちづくりを行う一般社団法人SOEを設立。23年にはこれからの地域とデザインを探究するLIVEDESIGN Schoolを開校するなど、近年ではものづくり・まちづくり・ひとづくりといった領域で活動。グッドデザイン賞特別賞、国土交通省地域づくり表彰最高賞など受賞多数。著書に「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」(学芸出版社)がある

福井県鯖江市で興味深い変化が起きている。鯖江市は眼鏡をはじめ漆器や和紙などモノ作りがさかんな地域だったが、産業は衰退の一途だった。しかし今、「伝統工芸で元気な街」と言われるまでになった。その立役者の1人が2009年に鯖江に移住した新山直広ツギ(TSUGI)代表だ。“インタウンデザイナー”を提唱し、デザイン力を多方面で発揮して、地場産業の魅力を高めてその価値向上に取り組む。「福井を創造的な地域にする」と3人で始めたツギの従業員数は現在20人に。スタッフの多くが県外からの移住者だ。現在は政策デザインアドバイザーとして鯖江市や福井県の政策立案も行う。若者の鯖江への移住者は130人を超え、OEM中心のビジネスだった企業は自社ブランドを立ち上げ、新店舗をオープンしている。その数10年間で35店舗。きっかけは新山代表が15年に始めたオープンファクトリーイベント「RENEW(リニュー)」で、産業構造だけでなく人々の意識変化をもたらした。新山代表に鯖江の変化について、デザイナーが“インタウン”である重要性とやりがいについて聞いた。

意識高い系学生が町に溶け込むまで

WWD:鯖江市に移住を決めた決定打は何か?

新山:これからは地域の時代だと思ったこと。ただ鯖江でないといけない理由はなかった。京都精華大学で建築を学んでいたときにゼミの先生が行っていたプロジェクト「河和田アートキャンプ」に参加した。その頃はちょうど日本の人口がピークでリーマンショックの直後。もう建物を新築する時代じゃないだろうと感じていた。これからは今ある環境をどうよくするか、コミュニティデザインが主流になると考え、先生が運営する応用芸術研究所に入り、その勤務先が鯖江だった。

WWD:大阪や京都で生活してきた新山さんにとって公共交通機関が少ない街への移住のハードルは高くなかった?

新山:その頃、恥ずかしいくらい意識高い系の学生だった(笑)。偉そうに日本の都市がどうなるか語っていた。分かりもせんのに。移住のモチベーションは「僕が地域を活性化してあげます」だったから、今思えばマジでくそ野郎だった。一番あってはならない気持ちで移住してしまった。

WWD:実際に住んで見えた課題は?

新山:課題は大きく2つ。1つ目は自分自身の課題で、町に溶け込む必要があった。今でこそ鯖江は移住者が多いが、地域活性の文脈で移住したのは僕が第一号だった。そして会社や行政から「お前がミスると次が来ないから絶対にミスるな」と脅されていたから、まずはなじもうと必死にがんばった。夏祭りなど地域行事には積極的に参加して、地区の青少年健全協議会のオブザーバーなど声がかかったもの全部に行って信頼を獲得しようとしていた。

WWD:「嫌われないように保守的に動く」と「地域の課題解決に向けた動き」はつながりにくいのでは?

新山:移住後2年くらいは野望や野心があまりなくて、なじむことを一生懸命考えていたが、その中で直面したのが地域の本当の意味の課題だった。つまり2つ目の課題、産業がオワコン過ぎるということ。移住1年目は市からの委託で産業調査を行っていた。越前漆器の職人さんや問屋さんを100件くらい回り、後継者や売り上げ、未来の展望を聞いていた。その9割が「もうやばい、終わりだ。息子に継がしたら一生恨まれるわ」という状態。2年目は越前漆器の売り場調査を行った。結果どこにも売ってなかった。業務用のtoBビジネスは縮小傾向だし、そもそもtoCはなかった。国内の漆器流通上に越前漆器はなく、そもそも売り場自体も縮小している。このままいくと産業が衰退する一方だ、という課題が浮き彫りになった。

その時僕が思ったのは、この町には圧倒的にデザインが必要だということ。他産地を見ると、例えば石川輪島のキリモトは三越日本橋店に直営店を出しているし、富山高岡の鋳物メーカー能作もデザインされた製品を売っている。技術は負けていないのに見せ方や伝え方、デザインが足りていない。僕はそこを手伝う必要があると思った。移住して1年半が経った10年の年末だった。

コミュニティデザインや地域活性をしたくて移住したが、職人さんには「お前は全然わかっていない。鯖江は眼鏡、漆器、繊維とモノ作りの町。モノ作りが元気にならないと地域活性しない」と言われたことも大きかった。

町の人にデザイナーになりたいと宣言すると「デザイナーなんて大嫌いだ。作品みたいなものを作りやがって。あいつら詐欺師だ」とデザイナーをネガティブにとらえていた。この町でデザインを生業にするならモノを作るだけではなくて流通や販路まで手伝わないと通用しないと思った。“流通までできるデザイナー”になろうと考えた。

流通までできるデザイナーになる

WWD:移住して3年は河和田アートキャンプの運営会社で働きながらリサーチャーとしても活動、12~15年は鯖江市役所広報課で働いたのち独立したのは15年。そもそもこれまでデザインは取り組んだことがなかった。

新山:約5年の間に独学で学んだ。未経験で福井のデザイン事務所で雇ってはもらえないだろうし、東京にあるデザイン会社に行きたいと考えていた。面接に行くお金がなくてうだうだしていると鯖江市役所から電話があり、「移住者第一号が3年で抜けると市政の失態だ」と言われ、役所で働くことになった。でもそれはやりたいことと違う。それを伝えると市長室に呼ばれた。当時市長だった牧野百男さんに「お前は全然わかっていない。行政は最大のサービス業だ。そもそも行政にデザイン視点がないのがおかしい。お前がそれをやれ」と言われた。牧野さんは支持率8割のカリスマ市長で伝説の市長。「若者に居場所と出番を」という考えを持っていて、若者にやりたいことをやらせて俺が全部責任を取るという姿勢だった。臨時職員として商工政策課に入り、地場産業の支援を始めることになった。具体的には眼鏡のウェブマガジンや観光パンフレットのデザインをした。思った以上に面白くてやりがいを感じていた一方、産業振興は行政組織として公平公正であることが難しく、限界がある。そんな葛藤を抱えながら仕事をしていると、日々倒産情報がファックスで入ってくる。この勢いだと10年後に産業がなくなると思い、早めに独立して流通までできるデザイナーになるしかないと思った。

オープンファクトリーイベント「RENEW」を始動、小さな産業革命が起きる

WWD:鯖江の産業の中でもWWDJAPAN読者になじみがあるのは眼鏡産業。現在の課題は何か、また課題に対する取り組みで評価できるものは何が?

新山:現在の課題は大M&A時代に入ったこと。それ以前の課題はOEM中心のビジネスだったため、受注が減ったことで仕事がどんどんなくなり、どうするんだと自社ブランドを作る動きが生まれ始めていた。そのときに立ち上げたのが「RENEW」だ。

WWD:今年で10年になる。成果は?

新山:OEMを生業の中心としていた町に35の新規店舗ができた。工場の一部を自社ブランドを売る店にしたファクトリーショップのような形態。大げさかもしれないが「RENEW」によって小さな産業革命が起きた。意識変化が起き、新しい稼ぎ口を見出した事業者は多かった。

WWD:鯖江の眼鏡は分業制で、自社ブランドのためのサプライチェーン作りが大変そうだ。リードタイムが長くなっていることが課題だとも聞く。

新山:分業とはいえ、メーカーは他の工程を依頼して取りまとめることで売ることができる。どちらかというと今の課題はリードタイムが長過ぎること。15~21年はリードタイムが3~5か月だったのに対して一時期は1年3か月まで伸びた。今は1年程度だが、あまりに伸びると資金繰りやキャッシュフローが難しくなる。分業制を売りにしていた町だが、どこかの工程が止まればサプライチェーンが崩壊し、最終製品まで至らない。漁業でいうところの乱獲した結果、魚がいなくなったのに近く、課題はわかっていたのに手を付けなかったともいえる。人材は育たないし、結果的に作れない産地になった。

WWD:別の課題も生まれ、厳しい状況は続いているが、いい形で産業を継続させるためにはどこを目指せばいいのか。

新山:今僕が期待しているのは3代目社長。ちょうど2代目から3代目への代替わりの時期で、3代目の多くは40代。2代目は家族経営が中心で家族が食べていければいい、という感じだったが、3代目の経営者は共存共栄の視点を持っている。自分たちが儲かればいい、ではなく、産地の生態系まで考えた経営しようとしている方々がいる。例えば佐々木セルロイド(母体は兵庫県の企業)は独立支援コースができ、独立前提の雇用計画を進めている。何年か働いた後に独立されると会社としては大変になるかもしれないけど、産地にとっては作り手が増えるのでよしとしている。

沢正眼鏡は家族経営6人の小さな会社で平均年齢が約60歳だったが、息子が4月に社長になり、新たにスタッフを雇用しようと労務環境の改善を目指している。例えば「技術は目で盗むもの」というのが通例だったが、マニュアルを作りDX化を促進している。面白いのは、空き家対策事業を始め、会社のまわりの空き家を買い取って改装し、若い人向けのシェアハウスにしていること。“働く×暮らす”の環境作りをすることで担い手を作ろうとしている。

マーベルは給与水準を上げることを目指して給与体系を作り、給与を高くしたことで若い人が入社した。社風もイケイケになっていて、眼鏡業界では新しい風になっている。

WWD:新山さん自身がこれから取り組む課題は?

新山:廃棄物と労務だ。眼鏡は単一素材ではないし、例えば「土に還るやさしい素材」とうたっている素材はあるが、資源環境についてしっかり取り組まないと産業自体が危うくなる。本当に土壌分解するのか。眼鏡は単一素材ではない。具体的なアクションは難しく、儲からないと止まる。産地の意識変化を5年かけて取り組んでいく。

労務についてはいろいろ見えてきていて、鯖江市の労働環境の課題は、「給料が安い」「離職率が高い」「採用応募数が少ない」「高齢化」に加え、「技術伝承の遅れ」「分業化の限界」などがある。解決策として考えられるのは、HR(ヒューマンリソース)を重視した世界観。産地の中で人材育成をしっかりして、従業員のエンゲージメントを上げることなどに取り組みたい。

ツギが目指すこと、デザイナーの可能性

WWD:ツギはグラフィックデザインからブランディング、商品開発、プロジェクト運営、施設運営に加えて、自社ブランドも作っている。

新山:自社ブランドを作り地元の人に作ってもらったり、「SAVASTORE!」という小売店を立ち上げたり、福井のアンテナショップの運営を行うなど出口まで作ることを心掛けている。

WWD:自社ブランドを作る理由は?

新山:2つある。1つ目は自社ブランドを作り運営することでノウハウを貯めてフィードバックするため。2つ目は請負仕事だけではなく、自分たちで企画し土地の技術を生かした製品作りをすることは産地貢献の一つだと考えているため。「頼まれないとできない」というデザイナーの職能を幻想だと思っている。リアクションだけではなく、アクションをすることも大切だ。デザインの仕事を請け負ったときにボツになったネタをやらせてほしい、と自社ブランドとして始めたケースもある。

WWD:改めて“インタウンデザイナー”であることの重要性、意義とは何か?日本の地場産業を維持し成長するために必要な点とは?

新山:日本にデザイナーは約20万人いるが、その多くが東京に集中している。消費地としてデザインが求められることはわかるが、生産する町だからこそできるデザインが地域には絶対ある。本質を見つけ出し、地域資源を結びつけて新しい価値を作る“インタウンデザイナー”が増えると国が良くなるんじゃないかと思っている。国力、上がるんじゃね?と。そういう人を増やしたい。例えば漁業の町だったら漁業的視点の“インタウンデザイナー”が生まれるはずだと考えている。僕はモノ作りの町の“インタウンデザイナー”の一つのモデルを作る。

WWD:“インタウンデザイナー”のやりがいは?

新山:消費されるものではなく、長く続ける生態系を作ることができる。それが地域の良さ。春夏、秋冬といった時間軸ではない。そもそも商品開発が全てではなく、町医者のような感覚を持っている。「おなかが痛い」と来た人の話を聞いて、「原因は別にあるんじゃない?」と診断することもある。つまりアウトプットは製品のデザインでなく、労務にもなりえる、ということ。僕らの町は経営者と話せるし、意思決定が早い。二人三脚で事業を成長させる素地は十分にある。生産地でやれる醍醐味は物事の本質――そもそもやる意味があるのかーーから関わることができる、という点において意義がある仕事だと思う。

WWD:消費地では「なぜ」よりも「どうやって」が多いが、「なぜ」から取り組むことができるのはデザイナーとしても人としても鍛えられそうだ。

新山:規模が小さいがゆえに直接アプローチできる社長や行政の意思決定が変わると、イノベーションが起きる。何度もそういう現場を見ることができたし、できるんだと思った。政治家ではないけれど、デザイナーも地域をよくしていける存在。それがデザイナーの価値向上にもつながっている。「町を動かすには政治家になるしかない」ではない。政治家にならなくても、デザインで町をよくできる。

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動物も人も愛護、「セーブ・ザ・ダック」CEOが語る「ビジネス、規制、ESG」

PROFILE: ニコラス・バルジ/セーブ・ザ・ダック最高経営責任者

ニコラス・バルジ/セーブ・ザ・ダック最高経営責任者
PROFILE: 1970年イタリア・フィレンツェ生まれ。バイリンガル教育を受け、経済学の学位を取得後、ミラノで10年間PRマネージャーとして勤務。家業にも携わった後、2012年にセーブ・ザ・ダックを設立。趣味はサーフィン

伊「セーブ・ザ・ダック(SAVE THE DUCK)」は帝人フロンティアと共同出資して5月にセーブ・ザ・ダック・ジャパンを設立した。日本での事業拡大に向け来日したニコラス・バルジ=セーブ・ザ・ダック最高経営責任者(CEO)に日本でのビジネス戦略やブランド設立の経緯、動物・人・環境に配慮したビジネスについて聞いた。

WWD:ジャパン社設立にあたり帝人フロンティアと組んだ理由は?

ニコラス・バルジ=セーブ・ザ・ダックCEO(以下、バルジ):帝人フロンティアは2012年の創業当初から生地や素材の供給を受ける、最も重要な素材サプライヤーの一つだった。帝人フロンティアとはESGの観点から同じコンセプトやアイデアを持っていた。日本市場の開拓の際にも、まずは代理店として2020年秋冬物から協業した。ビジネスが順調に成長したため共同出資によるジャパン社を設立した。出資比率は本国が51%、帝人フロンティアが49%だ。

WWD:日本事業の今後の計画は?

バルジ:これまで日本では伊勢丹や高島屋といった主要百貨店を中心に50~60平方メートルのポップアップストアを開きビジネスを成長させてきた。秋冬期間は42カ所、春夏は20カ所程度、期間は長いところで10カ月、短いところは1週間程度。今後、この規模の店舗を5店舗程度オープンする予定だ。現在注力しているのは来冬に路面店を開けること。銀座エリアを検討しているが、場所が見つからなかった場合は表参道エリアも候補に入れる。

WWD:現在のビジネスの状況を教えてほしい。

バルジ:42カ国に販路を持ち、昨年の売上高は6400万ユーロ(約105億6000万円)。今年は7200万ユーロ(約118億8000万円)を予定している。本来はもう少し高い数字を掲げていたが欧州の状況がかなり厳しい。特にドイツ、オーストリア、スイス、フランス、北欧が厳しく卸売事業は昨年比12%減だった。一方直販事業は同30%増。今年は過去2年に比べて、欧州の冬の始まりが早く天候が味方している。

成長しているのは米国で全売り上げの20%を占めるほどに成長した。現地法人を設立し、ニューヨークのソーホーに直営店を構えた。ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)やサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)、ノードストローム(NORDSTROM)など有力百貨店全てと提携している。

日本は全売り上げの8%だが、1年ごとに50%ずつ成長しておりさらなる成長が期待できる。米国、日本いずれも直販チャネルが成長に貢献している。

「動物と人の扱われ方にショックを受けた」

WWD:そもそもなぜ羽毛の代替品を作ろうと思ったのか。

バルジ:ファミリービジネスに参画し、約3年間で荷物運びから物流部門、出張販売などあらゆることを経験し会社の全行程を学んだ。その後、デザインやモノ作りに興味が芽生え、多くの国々を飛び回り、良い工場も悪い工場もさまざまな工場を見た。私が働き出した1990年代は今とは全く異なりかなりひどい状況。非常にショックを受ける出来事を何度も目にした。

WWD:具体的には?

バルジ:特に動物と人、2つについて話したい。90年代のダウン工場に行ったときのこと。臭いが強く死んだアヒルが床に転がっていて、実際にアヒルを殺しているのも目にした。別の工場ではアヒルの毛を何度も利用するために生きた状態で毛をむしり取り、再び毛が生えるのを待ちまたむしり取っていた。それを3~4回繰り返すとアヒルは病気にかかって死んでしまう。これを目にすると二度とダウン製品を着たくなくなるだろう。

もう一つは児童労働だ。90年代の話だが、父の会社ではある大きな工場に注文していて、その工場は下請けを使い下請けはさらに下請けに注文していた。最終検査に行ったときのこと。全ての商品がひどい出来で「どうしたんだ」と尋ねると、下請け工場では子どもたちを働かせていることがわかった。その工場に赴くと子どもたちがミシンで縫製作業をしていたが、賃金は支払われていなかった。子どもたちは私に「工場に支払いがなければ私は給料がもらえない」と泣きながら訴えてきた。本来だったら品質に問題があったので突き返すこともできたかもしれないが、私は代金を支払い修理をしてその商品を販売した。この一件で私は生産工程の全てを確認することが重要だと学んだ。これは子どもたちだけの話ではなく、労働者が一日に何時間働いているか、快適なベッドはあるか、食べられているか、どんな生活をしているか、その全てを知る必要があるろいうこと。

WWD:今以上に90年代は搾取工場が多かった。

バルジ:その頃すでにアウトドア業界は地球に目を向けていたが、ファッション業界は気にしておらず、イメージに集中していた。どちらも衣類を生産するのになぜこんなに違うのか――私はファッション業界に身を置いていたので、ファッション業界に一ひねり加えてアウトドア業界がすでに着手していたことを応用しようと考えた。つまり、動物、人、自然に敬意を持った方法で、ファッション業界に変化をもたらすためにビジネスをしようと決めた。

WWD:羽毛の代替素材についての優位性や機能性について教えてほしい。

バルジ:倫理的な問題だけでなく、技術についてもメリットしかない。合成繊維は通気性がある。ダウンは着用したときからとても暖かく感じるが、汗をかくと湿気がこもりさらに汗をかく。「プラムテック(PLUMTECH、ペットボトルをリサイクルした微粒子をポリエステル繊維と配合したもの。軽量で通気性、速乾性、保湿性などに優れており、家庭用洗濯機で丸洗いもできる)」は、通気性があるため湿気を放出でき暖かさだけが体を包み込む。最初はダウンに比べて暖かく感じないかもしれないが、数時間着て動き回ると合成繊維の方がずっと快適だと感じられる。

もう一つの利点はメンテナンスだ。ダウンは時間が経つと羽根が抜け落ち劣化する。洗う回数にもよるが、少なくとも「プラムテック」はダウンよりも2倍以上は長持ちするし、10年は着られる。

eBayと連携した再販プログラムを提供

WWD:いわゆる羽毛の代替品の提案だけではなく商品カテゴリーが増えている。カテゴリーを増やしながらビジネスを拡大していくのか。

バルジ:温暖化の影響によりアウターウエアは、シェルとウォーマーのレイヤードが重要になってきており、シェルとウォーマーの組み合わせに注力している。例えば旅行者は軽量のこの2つのアイテムで雨や寒さに対応でき、単独で使用すれば雨や暑い日、寒い日にも対応できる。これが春夏コレクションにおけるアウターウエアの方向性だ。

また新しいレジャーの形として「スマートレジャー」を提案している。機能繊維を用いて軽量で通気性があり、手入れも簡単で速乾性があり汚れが付きにくく型崩れをしないものを提供している。これも旅行者向けで特に若い世代をターゲットにしている。合成繊維を使用すると衣類のメンテナンスが簡単になり、長持ちもするからエコデザインと言える。

WWD:ブランドとして地球環境への敬意を掲げているが、地球環境を思えば商品カテゴリーを増やしてたくさん作ることは反しているのではないか。

バルジ:われわれの広告キャンペーンを見ればわかると思うが、常に環境保護を目的としており公平な視点を盛り込んでいる。例えば、動物、人々、水、CO2、化学物質といった特定の事柄で、その重要性を理解してもらうよう努めている。もちろん洋服も取り上げてはいるが、「購入することは責任を負うということ」であるという説明を加えている。

もう一つはデジタルプロダクトパスポートの活用だ。全製品に付いているQRコードをスキャンすると、衣類がどこでどのように作られたかや、生地やファスナーがどこから来たかもわかるようになっている。工場名は公表していないが地域は公表している。

さらに再販ボタンも用意しており、このシステムを使うことでeBayのプラットフォームとつながり、写真と価格を入力すれば出品できる。これが生産量を減らす最も倫理的な方法だ。洋服を捨てずに済むし洋服に第二の命を与えることができる。リセールによる唯一の影響は輸送だが、その影響は非常に小さい。

WWD:PFASフリーを達成できた理由は?欧州や米国では法規制も進んでいる。

バルジ:当初は完全にPFASフリーと言っていたが、現在は基本的には使用していないが非常に限定的に存在していると表現している。というのも、今後法規制ではPFASの使用をある程度認めることになると思う。なぜならPFASは触れた瞬間に汚染されるから。例えば、PFASを使用した生地と同じ工程でそのままPFASフリーの生地を処理するとたちまちPFASに汚染されてしまう。つまり、PFASの現実は使用しないように管理は必要だがある程度許容されるべきであること。PFASを100%除去することはできない。私の考えではあるが、最終的には10を1に減らす法律ができると考えている。ただし許可される「1」は、誰にも害を与えないものである必要はある。

私はこれまでESGを学んできたが、ESGに関しては極端であってはならないと考えている。ESGに取り組むと必ずプラス面があるが常にマイナス面もある。そのバランスを見つけなければならない。

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学生服を来客用スリッパにアップサイクル 山形の工場×オンワードコーポレートデザイン


オンワードコーポレートデザインは、山形県米沢市の九里学園高等学校の不要になった学生服を、来校者用スリッパにアップサイクルした。

九里学園では、これまでの卒業生の学生服を、サイズが合わなくなったり破れや汚れで着られなくなったりして新たな学生服を必要とする生徒のために“制服バンク”で保管してきた。2023 年春に実施した学生服リニューアルにともない、現在保管している旧学生服が不要になるため、活用方法について新制服を製作した同社に相談。同じ山形県内の河北が日本有数のスリッパ産地なことから地元工場でのスリッパへのアップサイクルにいたった。

山形県河北町には、かつては20社以上のスリッパ工場があったが、海外工場への切り替えや担い手の高齢化で減少し、今では 4~5軒になっている。今回のアップサイクルを製作した後藤は、熟練した職人による丁寧なモノづくりと、時代に合わせた商品開発で付加価値を高めてきた。その技術を生かして学生服からスリッパへのアップサイクルという難易度の高い取り組みを実現したという。

九里学園高等学校の髙木ユキエ教員は「学生服をスリッパにできることに驚いた。これまで大切に着用してきた学生服がこのように生まれ変わるのはとてもいいと思う。長く学校で活用していきたい」とコメント。後藤の後藤重美社長は「一針一針、懇切丁寧に気持ちを込めて縫製しているので、履いていただく方に温もりが伝われば嬉しい」と話している。

オンワードコーポレートデザインは、法人向けのユニフォームやセールスプロモーション、空間づくりを手がけており、学生服をアップサイクルするのは初めてだという。

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学生服を来客用スリッパにアップサイクル 山形の工場×オンワードコーポレートデザイン


オンワードコーポレートデザインは、山形県米沢市の九里学園高等学校の不要になった学生服を、来校者用スリッパにアップサイクルした。

九里学園では、これまでの卒業生の学生服を、サイズが合わなくなったり破れや汚れで着られなくなったりして新たな学生服を必要とする生徒のために“制服バンク”で保管してきた。2023 年春に実施した学生服リニューアルにともない、現在保管している旧学生服が不要になるため、活用方法について新制服を製作した同社に相談。同じ山形県内の河北が日本有数のスリッパ産地なことから地元工場でのスリッパへのアップサイクルにいたった。

山形県河北町には、かつては20社以上のスリッパ工場があったが、海外工場への切り替えや担い手の高齢化で減少し、今では 4~5軒になっている。今回のアップサイクルを製作した後藤は、熟練した職人による丁寧なモノづくりと、時代に合わせた商品開発で付加価値を高めてきた。その技術を生かして学生服からスリッパへのアップサイクルという難易度の高い取り組みを実現したという。

九里学園高等学校の髙木ユキエ教員は「学生服をスリッパにできることに驚いた。これまで大切に着用してきた学生服がこのように生まれ変わるのはとてもいいと思う。長く学校で活用していきたい」とコメント。後藤の後藤重美社長は「一針一針、懇切丁寧に気持ちを込めて縫製しているので、履いていただく方に温もりが伝われば嬉しい」と話している。

オンワードコーポレートデザインは、法人向けのユニフォームやセールスプロモーション、空間づくりを手がけており、学生服をアップサイクルするのは初めてだという。

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アップデータがアパレル特化の情報開示ブロックチェーン開発 「ヨーク」へ提供 


アップデーター(UPDATER)はこのほど、アパレル業界に特化した情報開示ブロックチェーンソリューション「タドリチェーン ツナグ フォー ファッション(TADORi CHAiN– Tsunagu for Fashion」を、寺田典夫デザイナーが手掛ける「ヨーク(YOKE)」に提供した。10月19日オープンの「ヨーク」初のフラッグシップストア限定アイテムに導入され、デジタルとフィジカルが融合した新しい購買体験を提供する。製品個体に取り付けたQRコードや付属のNFCカードを読み込むことで情報にアクセス可能となる。

アップデーターは開発・ソリューション提供の背景について「製品がいつ、どこで、だれによって作られたのかを辿ることができるトレーサビリティへのニーズが、ライフスタイルに関わるさまざまな製品の中で高まっている」と説明する。同社はこれまで「顔の見える電力」というコンセプトを掲げ、「みんな電力」ではブロックチェーンソリューションを活用して「どの電源からどれだけ電気を買ったか」を証明する電力のトラッキングシステムを提供してきた。

同ソリューションは、同社がサプライチェーン情報を見える化する目的で開発した「タドリチェーン ツナグ ベータ(TADORiCHAiN Tsunagu β)」をベースにしている。製造元などの製品情報を記録したデジタルプロダクトパスポート(Digital Product Passport、DPP)の機能を付加しているため、導入により製品ライフサイクルが静脈まで見えるようになり、eコマース情報登録業務やPR販促・在庫管理・通関業務などの効率化、店頭接客、マーケティングに活用できるという。

特に欧州ではエコデザイン規則などサステナビリティ関連の法規制が増えており、日本においても今年6月に経済産業省が「繊維・アパレル産業における環境配慮 情報開示ガイドライン」を開示するなど、アパレルビジネスにおいて情報開示が求められるケースが急増している。同ソリューションは規制やガイドラインへの対応を進めるアパレル企業のサポートおよびアパレル企業が所有する無形資産の価値化を進めるのが目的。

「タドリチェーン ツナグ フォー ファッション」のDPPに関する基盤システムは、アート作品の信頼性と真正性、価値継承を支えることを目指すスタートバーンの「スタートレイル(STARTRAIL)」を採用。発行されるDPPは、発行事業者情報に加え、その後の取引や修理や鑑定など、製品の価値に関わるさまざまな情報やデータを記録できる。ブロックチェーンの性質上、これらの情報の削除・改ざん・複製はできず、製品の二次流通について設定した規約はサービスを横断して引き継がれ、長期的に製品を管理することができるという。クリエイティブディレクションは、LiNKLLC.が担当する。

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アップデータがアパレル特化の情報開示ブロックチェーン開発 「ヨーク」へ提供 


アップデーター(UPDATER)はこのほど、アパレル業界に特化した情報開示ブロックチェーンソリューション「タドリチェーン ツナグ フォー ファッション(TADORi CHAiN– Tsunagu for Fashion」を、寺田典夫デザイナーが手掛ける「ヨーク(YOKE)」に提供した。10月19日オープンの「ヨーク」初のフラッグシップストア限定アイテムに導入され、デジタルとフィジカルが融合した新しい購買体験を提供する。製品個体に取り付けたQRコードや付属のNFCカードを読み込むことで情報にアクセス可能となる。

アップデーターは開発・ソリューション提供の背景について「製品がいつ、どこで、だれによって作られたのかを辿ることができるトレーサビリティへのニーズが、ライフスタイルに関わるさまざまな製品の中で高まっている」と説明する。同社はこれまで「顔の見える電力」というコンセプトを掲げ、「みんな電力」ではブロックチェーンソリューションを活用して「どの電源からどれだけ電気を買ったか」を証明する電力のトラッキングシステムを提供してきた。

同ソリューションは、同社がサプライチェーン情報を見える化する目的で開発した「タドリチェーン ツナグ ベータ(TADORiCHAiN Tsunagu β)」をベースにしている。製造元などの製品情報を記録したデジタルプロダクトパスポート(Digital Product Passport、DPP)の機能を付加しているため、導入により製品ライフサイクルが静脈まで見えるようになり、eコマース情報登録業務やPR販促・在庫管理・通関業務などの効率化、店頭接客、マーケティングに活用できるという。

特に欧州ではエコデザイン規則などサステナビリティ関連の法規制が増えており、日本においても今年6月に経済産業省が「繊維・アパレル産業における環境配慮 情報開示ガイドライン」を開示するなど、アパレルビジネスにおいて情報開示が求められるケースが急増している。同ソリューションは規制やガイドラインへの対応を進めるアパレル企業のサポートおよびアパレル企業が所有する無形資産の価値化を進めるのが目的。

「タドリチェーン ツナグ フォー ファッション」のDPPに関する基盤システムは、アート作品の信頼性と真正性、価値継承を支えることを目指すスタートバーンの「スタートレイル(STARTRAIL)」を採用。発行されるDPPは、発行事業者情報に加え、その後の取引や修理や鑑定など、製品の価値に関わるさまざまな情報やデータを記録できる。ブロックチェーンの性質上、これらの情報の削除・改ざん・複製はできず、製品の二次流通について設定した規約はサービスを横断して引き継がれ、長期的に製品を管理することができるという。クリエイティブディレクションは、LiNKLLC.が担当する。

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サステナブルアパレルを追求する人たちの価値観:サステナブルファッション・トークvol.2

「WWDJAPAN」ポッドキャストの新連載「サステナブルファッション・トーク」がスタートします。ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

第2回は、「How to be a Sustainable Apparel」と題したサステナビリティ特集について。本特集は、デザイナーや生産管理担当者などものづくりの現場に携わる人々のインタビューをベースに、サステナブルなファッションを追求するさまざまな切り口をまとめました。ポッドキャストではその一部をご紹介します。



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コーヒー生豆の直接トレード「ティピカ」の新社長に葛西龍也氏 フェリシモなど経て


コーヒー生豆のダイレクトトレードを行うオンラインプラットフォーム、ティピカ ホールディングス(TYPICA HOLDINGS)の新社長に葛西龍也氏が11月3日付けで就任した。葛西新社長は、大手通販会社フェリシモの執行役員、EC子会社の代表、物流会社セイノーグループとの配送ジョイントベンチャー会社の共同代表、さらにオーガニックコットンの普及と農家子女の教育支援を目的とした一般財団法人 PEACE BY PEACE COTTONの代表理事などを歴任してきた。

「ティピカ(TYPICA)」は、「コーヒー産業を革新する新国際コーヒー市場づくり」を主題に2019年に創業したベンチャー企業。現在は日本、韓国、台湾、オランダ、米国の5カ国に拠点を置き、世界84カ国・地域にまたがる約11万軒のコーヒー生産者とロースターのネットワークにおいて、ダイレクトトレードの主流化を推進している。オンラインプラットフォームでは、生産者とのダイレクトトレードによって、先物市場に依存しない価格決定を追求。貧困や人権問題などコーヒー産業を取り巻く社会課題の解決に向けた取り組みにも着手している。

また、2024年6月から物流を中心に事業全体の改善を推進しており、葛西新社長の就任について同社は「豊富な経験とリーダーシップを併せ持つ葛西氏に舵取りを担っていただくことが、経営体制を強固なものにすると考えた」と言う。今後は代表取締役3名(後藤将代表取締役CEO、山田彩音代表取締役CQO、浅子信太郎代表取締役CFO)に葛西新社長を加えた4名の取締役の下で運営する。

葛西新社長は就任にあたって「コーヒー豆の収穫を生産者とロースター、そして世界中のコーヒーラバーとともに世界で祝い合う祭りの文化を育み合いながら、媒介としてのTYPICAが人類の歩んできた歴史を紐解き直し、民間企業として市場経済の中で経済そのものの在り方を見つめ直していく。大から小に流れる流通の在り方をダイレクトトレードの民主化という観点で見つめ直していく。このことが未来のコモディティ市場の構造や世界の農業全体の構造に、シンボリックな存在として良い影響を与えられることを願っている」と話している。

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豪エシカル評価機関の国際基準ツール「グッドメジャーズ」が国内で利用開始に

 アップデーターはこのほど、世界最大級のエシカル評価機関である豪グッドオンユー(Good On You)が開発した「グッドメジャーズ(Good Measures)」を、国内ファッションブランド向けに提供開始した。

「グッドメジャーズ」は世界で224ブランドが導入するサステナブル経営のためのガイドツール。参加する各社は専用サイトにアクセスができ、自社のパフォーマンスやスコアリングとその詳細を確認できる。評価は「グッドオンユー」の専門アナリストチームが行う。また、各項目において対応したものがあれば本サイト内でエビデンス資料とともに提出し、再度評価を受けることが可能。評価は自社が展開するウェブサイト「シフトシー(Shift C)」内で掲載する。

アップデーターは2023年にグッドオンユーとの連携を発表。24年6月から国内ブランドを対象にトライアルを実施してきた。トライアルで得られたフィードバックからニーズや課題をもとに、国内では3つの独自プランを展開する。

「グッドメジャーズ」の導入により、参加企業が持続可能な経営のための自社目標やターゲット設定を容易にすることや、透明性の向上、それによる消費者からの信頼度の向上、従業員のエンゲージメントの維持向上などを目指す。

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「ターク」で日本の美に触れ、「グッチ」で緊張の司会、優秀な高校生と出会う【向千鶴サステナDが行く】

向千鶴「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターが取材を通じて出会った人、見つけた面白いことなどを日記形式でお届けします。秋はファッションイベントが多いから新しい出会いが目白押し。ファッション×サステナビリティに取り組む人はハートがアツい人が多くてエキサイティングです。

「ターク」は三島由紀夫が着たらきっと似合っただろう

「TOKYO FASHION AWARD」10周年記念イベント(9/7)

若手ファッションデザイナー支援、「TOKYO FASHION AWARD」10周年を記念するイベントで、2017年の受賞者である「ターク(TAAKK)」の森川拓野さんに公開インタビューをしました。準備のために過去のコレクションを全部見るなかで、特に惹かれたのがコロナ下のパリメンズで映像形式で発表した2022年春夏コレクションです。コットンからウールへとグラデーションで変化してゆくジャケットなどが力強く美しく、勝手ながら三島由紀夫が着たら似合っただろうなと夢想します。

デザイナーの仕事の進め方はそれぞれ。「森川さんの場合」はその映像内で明快に語られています。「偶然を必然にするってさ、モノづくりの一つの真理じゃん。それを自然はいとも簡単になしとげちゃうし、上空から見た地表とか海岸線とか、めっちゃきれいじゃん」。いい言葉ですね。具体的には機屋さんの資料室などで「原石」を見つけて、それをデザインへと展開してゆくそうです。「服の根本の生地に誰よりもストイックに向き合うことにした。そしたらまだ残されている可能性を見つけた」の言葉が実践されています。

森川さんは「日本の産地や技術を盛り上げる」みたいな表現は使いません。大義ありきではないのです。だけど結果的に実践していることはそれ、です。尾州や桐生の技術という「原石」が「美しい」ジャケットとなり世界へ出ていっているのですから。「ターク」を見て三島由紀夫を連想したのは、そのファブリックやパターンに向き合うストイックや美意識にしなやかな強さを見たからだと思います。

ちなみに、私が着ている地球Tシャツも「ターク」で、「AGAINST PSEUDO SUSTAINABILITY」って書いてあります(PSEUDOは疑似とか、偽物といった意味)。攻めてますね。「地球の柄を着ている人はポイ捨てしないでしょ」とのことで、はい、そうです!

スーパー高校生と出会い、井之頭公園で話を聞く

福代美乃里「やさしいせいふく」代表インタビュー(9/13)

凄い19歳に出会いました。日本版グレタ・トゥーンベリさんとでも言いましょうか。大人が作り出した現状に素直に疑問を投げかけ、行動を起こしている高校3年生の福代美乃里さんです。東京で学生団体「やさしいせいふく」の代表を務めています。この日は活動エリアである吉祥寺の井之頭公園に団体の制服でもあるオーガニックコットンのTシャツを着て、来てくれました。彼女は仲間とともにインドのオーガニックコットン畑を訪ねたばかりでその話を聞き取りました。詳しくはぜひこの記事の下にある関連記事からお読みください。その行動力に圧倒されると思います。

福代さんは中学3年生のときに先生から薦められた映画「ザ・トゥルー・コスト」を見て、自分たちが着ている服が環境汚染や児童労働から成り立っているかもしれないことを知り、ショックを受けたそう。ファッションが大好きだけど、しばらく服を買うことができなくなったと言います。

日本の若い世代が環境問題に向き合うきっかけは、「罪悪感」であることが多い気がします。この世界を作り出した大人を非難する以前に、自分たち自身がその世界の一部であり、環境や労働環境へのネガティブなインパクトに加担していると考えて内省する。福代さんのようにそれを言葉にする人は少数派で、無自覚のうちにその感情を胸にしまっている若者が多いのではないでしょうか。そうだとしたらやはり大人の責任は大きい。彼らに罪悪感なくファッションを楽しんでもらえる世界を作りたいです。

サバトの「グッチ」を着てトム・フォードからの系譜を体感

展覧会「Gucci Cosmos」のプレスカンファレンス(9/30)

「グッチ」と京都市の共催による展覧会「Gucci Cosmos」のプレスカンファレンスでモデレーターの大役をもらい、イタリアのファッション研究家であり評論家のマリア・ルイーザ・フリーザさんたちと話しました。マリア・ルイーザのキュレーションの特徴は雑誌的。説明的ではないのに会場を歩くうちに「グッチ」というブランドが大切にしていること、ひいてはイタリアやデザインそのものの奥深さに気づかされます。

「グッチ」の取材はいつも濃厚です。2004年に初のミラノコレ取材でトム・フォード引退の「グッチ」に立ち会うという衝撃的で超絶ラッキーな経験をし、東日本大震災後にはフリーダ・ジャンニーニと東北を訪れ、アレッサンドロ・ミケーレのデビューコレクションでは新しい時代の扉が開く音を聞きました。それらの記憶を携えつつ、サバトによる最新コレクションを着ながら展示場を歩くと過去20年の流れが体の中に流れ込むようです。

何より、トム・フォード時代の「グッチ」のルックの横に並ぶサバト・デ・サルノによる最新ルックを見て、はっきりとした系譜と進化が見て取れたのが自分の中でも大きな収穫でした。そしてトム以前、1970年代のアーカイブが全デザイナーに影響を与えたことも明らか。突然変異のように見えたけど、アレッサンドロ・ミケーレの仕事もそれらの上に成立していたことが理解できてクリエイティブ・ディレクターの仕事って面白いな、と改めて思ったのでした。

壇上の話で特に面白かったのは、ブランド誕生物語です。1800年代後半に若き創業者グッチ・オ・グッチがロンドンのホテル、ザ・サヴォイでポーターとして働いたとき、そこで見た英国の旅行者たちのスタイルからインスパイアされたそう。クリエイティブ・ディレクターたちの登場よりずっと前から「社会を観察して製品に反映する」姿勢があったということです。だから展示されているものは言葉を持たないオブジェだけれど、雄弁に時代の美意識、人々の“欲望”を浮かび上がらせるのでしょう。

展示の説明にあった「見ること、見られることを楽しむ人生というパーティの主役になる」という言葉がとてもイタリア的。本当にイタリアが好きだな~。

展覧会は京都市京セラ美術館12月1日まで開催しています。

播州で活躍するニューリーダーとの出会い

東播染工のオリジナル「ジセツ」デビュー展示会(9/20)

最近、日本の産地の各方面から威勢のよい若手の声が届きます。播州産地の足立直人さんもそのひとり。自社からオリジナルブランドをデビューさせました。

兵庫県西脇市の東播染工は、日本唯一の染色・サイジング・織布・加工 . 加工まで一貫で行う播州織・先染め織物に特化したテキスタイルメーカーです。ギョーカイで仕事をしていると「トーバンさん」の名前はよく聞きます。ただし、「ジセツ」は、「ポジティブな無所属さ」を大切にしているそうで、いわゆるファクトリーブランドというより、作り手個人の意思や意図が伝わってきます。  

デザインを手がけた足立直人さんは大阪の上田安子服飾専門学校を卒業後、ブランドを立ち上げようと産地巡りをする中でその価値の高さを再認識すると同時に、テキスタイルとファッションの産業が分離している現実を知り、まずは業界の基礎を学ぶため大手アパレルでパタンナーとしてキャリア積んだそうです。2019年に営業として東播染工に入社し、優秀なテキスタイルデザイナーの存在もありブランド設立に至りました。

オフィシャルのブランド表記は小文字で「jisetsu」。「ji」は「時代、自分らしさ、産地」の3つの「ji」を意味しています。いずれもベーシックなデザインです。そして密度が高いけど粗野な表情、ドレスシャツの縫製でワークシャツなどツウがうなるこだわりが詰まっています。播州で毎日目にする農家さんの姿からヒントを得て「外で仕事をする人に似あうシャツ」をデザインするなど道具としての美しい服、といった印象です。

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「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターの役割とは?:サステナブルファッション・トークvol.1

「WWDJAPAN」ポッドキャストの新連載「サステナブルファッション・トーク」がスタートします。ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

第一回は、長らく「WWDJAPAN」の編集長を務め、今年独立した向千鶴ディレクターのキャリア転換の経緯やサステナビリティ・ディレクターの仕事の意義について、そしてZ世代記者との価値観の違いなどについて語ります。



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高校生が自主企画でインドの綿畑を訪問 「服が好きだから本当のことを知りたい」

PROFILE: 福代美乃里/高校3年生、学生団体「やさしいせいふく」代表

福代美乃里/高校3年生、学生団体「やさしいせいふく」代表
PROFILE: 中学校の先生の影響で環境問題に関心を持つようになる。2021年11月に行われた第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)に、若者による気候変動の活動団体Fridays For Future Japanのメンバーとして参加する。学生団体「やさしいせいふく」は、人にも環境にもやさしい服づくりを目指して講演会の実施やGOTS認証のオーガニックコットンTシャツの販売などを行っている。24年夏には資金を集めて同シャツのコットンを生産するインドの農家や縫製工場を訪ねて、取材を行った。高校では陸上部に所属。

都立高校に通う高校3年生の福代美乃里さんはクラウドファンディングを実施して今夏、代表を務める学生団体「やさしいせいふく」のメンバーとともにインドのオーガニックコットン農家や縫製工場を訪れた。目的は、自分たちで作ったオーガニックコットンのTシャツの生産現場を自分たちの目で見て、作る人たちと対話をすること。「ファッションが好きだから本当のことを知りたい」と言う、その行動力には驚かされる。

映画「ザ・トゥルー・コスト」に衝撃を受けて服を買わなくなる

WWD:オーガニックコットンなどに関心を持ったきっかけは?

福代美乃里 学生団体「やさしいせいふく」代表(以下、福代):中学3年生の時に先生のおすすめで観た2015年の映画「ザ・トゥルー・コスト」です。映画を通じて、私たちが着ている服が環境汚染や児童労働から成り立っているかもしれないことを知り、ショックを受けました。ファッションについては、自分で服を作るくらい好きだったけど、大量生産の弊害を知り、映画を見た直後の中学3年生の頃は何を着ていたか記憶にないくらい新しい服は買わなくなりました。でもファッションを楽しみたいから、今は古着から選ぶか「パタゴニア(PATAGONIA)」など取り組みを公開しているブランドから選ぶようにしています。新しいブランドを買うときは製造過程や環境への取り組みなどをできるだけ調べるようにしています。

WWD:そのときのショックが、自らオーガニックコットンのTシャツを作ることにつながるのですね。

福代:映画を見た後に仲間を得て、自分たちが理想とする服、つまり誰かを傷づけたりしていない服を作りたくて企業を訪ね、話し合いを重ねてオーガニックコットン使いの「やさしいせいふく」Tシャツが完成しました。

WWD:そこからさらに踏み込み、生産地であるインドを訪ねることになったのはなぜ?

福代:Tシャツを作る過程でもインドの縫製工場とオンラインでつながり紹介をしてもらいましたが、画面越しの生産者さんがどんな人たちでどういう環境で働いているのかを知りたいという気持ちがずっとありました。2022年に1年間、カナダに留学したのも生産者さんと直接会話をするために英語を話せるようになりたかったから。おしゃべりだから、語学の勉強は苦ではなかったです。

WWD:渡航費などを集めるクラウドファンディングは計画が未達だったそう。どうやって資金を集めましたか?

福代:クラウドファンディングで資金は集まらなかったけど活動を知ってもらうきっかけとなり、少しずつ関心を持ってもらい、Tシャツの店頭販売による収益と、活動を通じて知り合った企業や個人からの支援で実現しました。渡航したのは高校生3人、大学生2人です。

WWD:実際にはどのようにして訪問が実現したのですか?

福代:テキスタイル エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)の稲垣貢哉アンバサダーと現地のNGO団体が案内をしてくれました。稲垣さんは、コットン畑をオーガニックに転換する活動をしてきた方でお世話になりました。今回はコットンの花が咲いている時期に畑と縫製工場を訪問したくて夏にしました。ただ、「やさしいせいふく」の畑があるエリア、オリッサ州は治安が悪いため諦め、別のオーガニックコットン畑を訪問しました。

オーガニックコットン畑の生産者の会議に参加

WWD:そこで見たものは?

福代:一言では、オーガニックコットンの大きなメリットです。オンラインでも生産者さんから「従来のコットン栽培では、農薬の影響で身体を壊したり、皮膚が痒くなったりすることがあったけど、それがなくなった。目に見える良い変化が会った」と聞いてはいましたが、畑で直接会ったことで実感できました。目の前にいるこの人が健康になったんだな、と知るとオーガニックのTシャツを着てよかったなと思うし、逆にこれまでは自分が着る服で農薬被害を受けていたのかと。オーガニックコットンは、遺伝子組み換えをしてないため背丈が低いこともあり、大量の水を必要とせず、雨だけで育つといった事実も知りました。

WWD:逆にオーガニックコットンの課題は見えましたか?

福代:遺伝子組み換えをしていないから綿の収穫量が少ないことです。ただ農薬の使用量が減ったことで利益は増えたそう。あと、殺虫剤を使用しないので虫がつくことがあることですが、これもコットンの間にレンズ豆を植えることでコットンに虫を寄せ付けない工夫をしていて、その豆をタンパク質源にするなど工夫をしていました。

子供達にどう育ってほしいか?と質問をしたら、「市場価格は変動するから収入が安定せず、生活が苦しくなることもあるし、オーガニックであっても農家は炎天下できつい仕事だから、子供たちには農家になってほしくない」という言葉がリアルでした。

WWD:そういう話はどういう環境で聞くのですか?

福代:農家の方たちのミーティングに入り聞きました。「収入が安定しないから決まった価格でまとまった量を買い取ってほしい」という話が出たり、「どうやったらより高額で買い取ってもらえるのか?」などシリアスな話を聞く一方で、雑談では暇な時は皆で一緒にテレビ見ると教えてもらったり、スマホでSNSアカウント見せてもらったりして身近に感じました。

予想以上に効率的で良環境だった縫製工場

WWD:縫製工場も訪問したのですよね?

福代:はい、タミルナドゥ州コインバトールのGOTS認証を取得している縫製工場を訪ねました。予想以上に効率的、が最初の感想です。生地を裁断して縫う一貫工場で、複数の認証生地を扱うため、混ざらないようにラインが分かれており、縫製場所も区分されていたのが印象的です。労働環境はしっかり管理され、守られていました。寮があり、休憩時間や食事や水などのサポートもしっかりしている。電力も太陽光、風力でまかなうなど再生可能エネルギーにこだわっていた。ドキュメンタリーで見た悲惨な労働環境の工場とは全然違い、自分の服がこういういところで作られていてこういう笑顔を見られるならいいなと思いました。ただ残念ながらそこで作っているのはほとんどがサステナビリティの法規制が厳しいヨーロッパ向けの服で、日本向けの服は見当たりませんでした。

「ナイキ」「パタゴニア」などを扱っている別の工場はさらに進んでいて、問屋を通さず農家との直接契約でオーガニックコットンを仕入れることで、より透明性を高めると同時もオーガニックコットン自体の研究を進めていました。オーナーが熱心で「仲介業者多いと、個々の企業に入るお金が減る。農家の収入を増やすためでもある」と話していました。

WWD:工場の人たちとは直接話をしましたか?

福代:はい、作っている人と仲良くなりたかったこともあり、休憩時間にスマホで自撮りしながら話しました。同世代の人は趣味が自分と同じ映画鑑賞だったりして、彼女が教えてくれたのは知らないインド映画ばかりで話は合わないけど仲良くなれた気がします。

WWD:帰国して今思うことは?

福代:今は、自分が着ているTシャツがどこから来たのか?鮮明に記憶に残っているし、作った人の笑顔も覚えている。自分が着ている服を今までで一番身近に感じています。自分の目で見たからこそ、他の服を見たときに「これを作っている人たちは同じような生活ができているのかな?どんな気持ちなのかな?どんな工場なんだろう?」と考えます。

それと、本当のことをとても知りたかっただけに、「知ることができる服を探すのは大変」だと実感もしたから、アパレルメーカーが私たちの代わりにオープンにしてくれたら安心できるのに、とも思います。ドイツの子供服にはQRを読み込むと作った工場を見ることができるブランドがありいいなと思います。

アパレルで働く人たちにも生産現場を見てほしい

WWD:実はアパレルで働く人は農地や工場を見たことがない人の方が多いのです。

福代:そうなのですね。「見たい」と思ってほしいし、関心がないのは私には不思議です。インドも1週間あれば行けます。インドの工場で会った19歳の人が「自分が作った服を着ている人を見たことがない」と言っていたから作り手も着ている人の姿を知らないのですよね。私は、服の背景に人がいて一つ一つにストーリーがあることをもっと伝えたいです。

WWD:これから挑戦したいことは?

福代:自分はまだまだ勉強不足です。なぜ農薬が使われるようになったのか?どうして低賃金労働が生まれたのか、服飾産業に限らずビジネスが不透明になってゆく、複雑になってゆく根本的な原因をちゃんと知りたい。だから高校を卒業し、来年からは大学でも経済学を学びます。これまでは「高校生であること」が伝える手段になり得たとも思うので、大人になったら思いを伝えるだけじゃなくて、個々の企業や産業全体が向かってゆく先に自分もいたいと思う。

WWD:見てきたことはどう伝えてゆく?

福代:撮ってきた映像をショートムービーにまとめており、上映会を行う予定です。この活動を通じて、繊維や生地の業界の人たちと会うことができたので、アパレルやショップなどの人たちにも会って伝えてゆきたいです。

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インド生産でトレーサブルな新ブランド「フィルムス トレーズ」が25年春夏に始動

「フィルムス トレーズ」2025年春夏コレクション

インドを拠点にOEM事業を手掛けるソハナ(東京、伊藤賢司代表取締役)は、新たなウィメンズ向け自社ブランド「フィルムス トレーズ(FILMUS13)」を2025年春夏シーズンに立ち上げる。元マッシュスタイルラボで、「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」の商品企画に携わった経歴を持つ、浅井美恵がデザインを担当する。トレーサビリティーの取れた生産背景と、天然素材・天然染料を使った環境負荷の低さを強みに、世代を超えて着続けられるウィメンズウエアを届ける。自社ECサイトをはじめ、「シップス(SHIPS)」や「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」などで25年3月から販売する。

商品はインドで縫製・染色する。染色はオーガニックテキスタイルの国際認証GOTS認証を取得する染色工場トゥルートーンインク(True Tone Ink)と協業し、独自に開発した天然ハーブやスパイスから成る染料で染色する。通常化学薬品が用いられる色止めは、シーソルトや鉄などを活用した。浅井デザイナーは、「人や環境に配慮したモノ作りに挑戦したいという気持ちと、ソハナの伊藤代表の新事業への意向が合致した」と話す。ブランド名はフランス語に由来し「人とのつながりを大事にするブランドでありたい」という思いを込めた。

ファーストシーズンは全23型。定番品として打ち出すたっぷりとした生地感のティアードキャミソールドレス(4万9500円)は、ミルクからタンパク質紡糸液を抽出してできた繊維からなる“ミルクファブリック”を使用(表記はレーヨン)。ウールのような起毛感と光沢、滑らかな肌触りが特徴だ。そのほか、コットン・ビスコースのスラブ織りにボタニカルプリントを施したドレス(4万9500円)や、オープンバックのパフスリーブドレス(5万9400円)など、リゾートシーンに合うアイテムを豊富にそろえる。浅井デザイナーの「オーガニックというと牧歌的なイメージに偏りやすいが、本当に自分が着たいと思える現代的でサステナブルな服を作りたい」という気持ちが原動力になった。価格帯は2万円台〜4万円台が中心。OEM事業の背景を活かし、商社を介さず直接貿易することで価格帯を抑えた。

浅井デザイナーは、「インドの生産現場の人たちから、モノ作りの商売は関わる人同士の信頼が基本と教わった。当たり前のことだが、ビジネスが先行すると忘れてしまうこともある。『フィルムス トレーズ』では、ブランドに関わるすべての人との信頼関係を大切に育んでいきたい」と話す。

展示会にはインドの工場長を招いてワークショップ

10月25日に東京・青山で開催した展示会には、トゥルートーンインクの工場長を招いて染色のワークショップ体験なども行った。アルン・バイド(Arun Baid)工場長は、「ここまでスケール感を持ちながら継続的に私たちのハーバル・ダイを採用してくれるブランドはなかなかない。浅井デザイナーは実際に工場に訪れ、きちんと染料の特性などについて学んでくれた。私たちの努力を理解し、ハーバル・ダイを広めるイニシアティブをとってくれることを非常にうれしく思う」と話した。

販路は自社ECとセレクトショップなどへの卸を中心とする。セールは行わない方針。また、売り上げの一部は、NGO団体を通して途上国の子どもたちの教育や女性の自立支援活動に寄付する。

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インド生産でトレーサブルな新ブランド「フィルムス トレーズ」が25年春夏に始動

「フィルムス トレーズ」2025年春夏コレクション

インドを拠点にOEM事業を手掛けるソハナ(東京、伊藤賢司代表取締役)は、新たなウィメンズ向け自社ブランド「フィルムス トレーズ(FILMUS13)」を2025年春夏シーズンに立ち上げる。元マッシュスタイルラボで、「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」の商品企画に携わった経歴を持つ、浅井美恵がデザインを担当する。トレーサビリティーの取れた生産背景と、天然素材・天然染料を使った環境負荷の低さを強みに、世代を超えて着続けられるウィメンズウエアを届ける。自社ECサイトをはじめ、「シップス(SHIPS)」や「ジャーナル スタンダード(JOURNAL STANDARD)」などで25年3月から販売する。

商品はインドで縫製・染色する。染色はオーガニックテキスタイルの国際認証GOTS認証を取得する染色工場トゥルートーンインク(True Tone Ink)と協業し、独自に開発した天然ハーブやスパイスから成る染料で染色する。通常化学薬品が用いられる色止めは、シーソルトや鉄などを活用した。浅井デザイナーは、「人や環境に配慮したモノ作りに挑戦したいという気持ちと、ソハナの伊藤代表の新事業への意向が合致した」と話す。ブランド名はフランス語に由来し「人とのつながりを大事にするブランドでありたい」という思いを込めた。

ファーストシーズンは全23型。定番品として打ち出すたっぷりとした生地感のティアードキャミソールドレス(4万9500円)は、ミルクからタンパク質紡糸液を抽出してできた繊維からなる“ミルクファブリック”を使用(表記はレーヨン)。ウールのような起毛感と光沢、滑らかな肌触りが特徴だ。そのほか、コットン・ビスコースのスラブ織りにボタニカルプリントを施したドレス(4万9500円)や、オープンバックのパフスリーブドレス(5万9400円)など、リゾートシーンに合うアイテムを豊富にそろえる。浅井デザイナーの「オーガニックというと牧歌的なイメージに偏りやすいが、本当に自分が着たいと思える現代的でサステナブルな服を作りたい」という気持ちが原動力になった。価格帯は2万円台〜4万円台が中心。OEM事業の背景を活かし、商社を介さず直接貿易することで価格帯を抑えた。

浅井デザイナーは、「インドの生産現場の人たちから、モノ作りの商売は関わる人同士の信頼が基本と教わった。当たり前のことだが、ビジネスが先行すると忘れてしまうこともある。『フィルムス トレーズ』では、ブランドに関わるすべての人との信頼関係を大切に育んでいきたい」と話す。

展示会にはインドの工場長を招いてワークショップ

10月25日に東京・青山で開催した展示会には、トゥルートーンインクの工場長を招いて染色のワークショップ体験なども行った。アルン・バイド(Arun Baid)工場長は、「ここまでスケール感を持ちながら継続的に私たちのハーバル・ダイを採用してくれるブランドはなかなかない。浅井デザイナーは実際に工場に訪れ、きちんと染料の特性などについて学んでくれた。私たちの努力を理解し、ハーバル・ダイを広めるイニシアティブをとってくれることを非常にうれしく思う」と話した。

販路は自社ECとセレクトショップなどへの卸を中心とする。セールは行わない方針。また、売り上げの一部は、NGO団体を通して途上国の子どもたちの教育や女性の自立支援活動に寄付する。

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アパレルリサイクルのショーイチ、孤児や避難民支援にも注力 「自分たちの得意分野で社会の役に立ちたい」

アパレルの余剰在庫買い取り大手のショーイチ(大阪、山本昌一社長)は、近年衣料品のリサイクル事業にも注力している。ショーイチが国内産地の反毛業者などと組んで進めているリサイクルの仕組みは、協業相手やその品質に対して厳しい基準を持つラグジュアリーブランドにもじわじわと支持を広げている。そんなショーイチは2019年から、「TASUKEAI 0 PROJECT(以下、たすけあいプロジェクト)」という名称で、社会貢献活動にも取り組んでいる。

個人的なストーリーが貢献活動の原点

「たすけあいプロジェクト」は、ショーイチが企業から衣料品を買い取り、衣料品や現金を海外で子どもたちや戦争避難民の支援活動を行っているNPOやNGOに寄付するというもの。カンボジアの孤児院を支援する活動からスタートし、22年のロシアによるウクライナ侵攻以降は、ウクライナにも支援物資を送っている。

山本社長が「たすけあいプロジェクト」をスタートしたのは、非常にプライベートな理由から。「離婚を経験し、子どもと以前のようには会えなくなって、とても気分が落ち込んだ時期がある。母親に『ボランティアをしてみたら?』と提案され、自宅そばの養護施設でボランティアをさせてもらって寄付をしたら、少し心が軽くなった気がした。それが活動の原点」と山本社長は振り返る。「会社がある程度大きくなって、何らかの社会貢献をしたいとも考えていた。カンボジアを旅した際に孤児院を支援している現地の団体に出合ったこともあり、子どもたちに服を送る活動から始めた。余剰在庫の買い取りやリサイクルを本業としているわれわれは、服ならば比較的手配がしやすい。それを生かそうと考えた。服を送ることに加えて、今は日本語学校の先生も孤児院に派遣している」。

「支援物資の仕分けができるのは
当社ぐらい」

自分たちができること、得意なことで社会に貢献するというあり方を山本社長は意識しているという。ウクライナへの支援では、多様な支援物資が大量に集まって、それをどう仕分けするかに困っていたウクライナ大使館の声を受け、ショーイチが倉庫を借り、フォークリフトを使い物資の仕分けを行った。「こうした物資の仕分けを手際よく行えるのは、うちのような企業しかない。自分たちが負担なく続けられることの中で、『何が必要ですか?』と相手に支援内容を聞くようにしている」。

仕分け作業を行うだけでなく、ウクライナにはショーイチとして衣料品支援も実施。関西ファッション連合と共同の枠組みで、ウクライナの国内避難民などに22〜23年にかけて計6万着を送った。

近鉄百貨店も活動に共感
店頭で衣料品を回収

「たすけあいプロジェクト」に共感し、ショーイチと組んで社会貢献活動を始めた企業もある。近鉄百貨店は21年8月から、あべのハルカス近鉄本店を含む全9店の店頭に、年2回(1〜4月、8〜9月)回収ボックスを設置。客から不要な衣料品を回収し、ショーイチを通して海外への支援に充てている。1回あたり最大10着の持ち込みが可能で、1回の持ち込みにつき食料品売り場で使える100円のクーポンを配布している。使い古されて支援物資には適さない衣料品は、ショーイチ経由で資材などにリサイクルする。

「店頭回収を継続していることで、リピーターとして何度も持ち込んでくださるお客さまもいる。回収できるアイテムとできないアイテムとがあると店頭スタッフがその場で判断せねばならず、負担が大きくなってしまう。その点、ショーイチは名前の刺しゅうが入った制服なども引き取ってくれるため、取り組みがしやすい」と、近鉄百貨店 本店 営業政策統括部 営業政策部 森下彩絵係長。近鉄百貨店として、24年は1〜4、8、9月の計6カ月間で、1万7114着を店頭で回収し、支援やリサイクルに充てることになったという。

「子どもたちに貢献がしたい」

「社会貢献活動をするときに、一般的に大きくは3つの理由があると思う」と山本社長。いわく、1つ目はビジネスとして、2つ目はイメージアップのために、3つ目が山本社長がボランティアを始めたきっかけのような個人的なストーリーだ。「僕は子どもたちに貢献がしたいという気持ちが強い。それで『たすけあいプロジェクト』を行っているが、どうせやるなら知ってもらいたいと会社のサイトで告知もしている。イメージアップのためにやっていると言われたらそうかもしれないが、告知もしていることで近鉄百貨店さんのように賛同してくださる人たちもいる。本業の在庫買い取りやリサイクル事業と同様に、社会貢献活動も今後も力を注いでいく」と話す。

問い合わせ先
ショーイチ
050-3151-5247

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YKKが循環型社会に向けた商品を続々発表、繊維製品の長寿命化や易リサイクル目指す

YKKはこのほど、PET素材を最大限採用したPETガーメントリサイクル対応ファスナーの「NATULON Plus with Recycled PET Open Parts」を開発した。

同社は循環型社会に向けた商品開発を積極的に行なっており、今回発表されたファスナーもその一つ。PET素材の衣類のリサイクルをなるべく簡易にするため、同ファスナーのチェーンと開具に再生PETを使用した。うち開具の射出成形用のPET素材はYKKが独自開発した。一方、スライダーは選別のしやすさと耐久性を重視して金属を使用。これにより、PET素材の最終製品使用後の素材選別の手間を簡素化した。

同社は、9月にもビスロン(VISLON)シリーズ用のリペア対応エレメント商品の展開を開始した。こちらは、ビスロンファスナーのエレメントが取れてしまった際、ダイキャスト製のリペア対応エレメントの取り付けとファスナーの修理を可能にするというもの。専用の工具とともに展開することで、各ブランドのリペアセンターでの修理が容易になる。従来であれば製品からほどいて新しいファスナーに交換し、縫製するという作業が必要だったが、リペア対応エレメントがあれば破損した部分のみの修理で済むため、修理に必要な時間や、廃棄部品の削減を見込める。

今後もリサイクルやリペア対応の循環型商品を拡充し、サプライチェーン全体での視点からアパレル業界への環境問題に積極的に取り組んでいくという。

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駅は初 エコミットが衣料品回収「パスト」をJR海浜幕張駅改札外に期間限定で設置

千葉ステーションビルとエコミット(ECOMMIT)は、不要品の回収・選別・再流通を一気通貫で行う資源循環サービス「PASSTO(パスト)」の不要品回収ボックスを、10月18日から31日の14日間限定でJR海浜幕張駅改札外に設置し、衣類回収を実施する。「パスト」の不要品回収ボックスの駅での設置は、初となる。

回収した不要品は、エコミットにより国内外でリユース品として再流通されるほか、リユースが難しいものに関してはリサイクルパートナーを通じて再資源化されるという。対象は、衣類で、汚れやシミ、やぶれ、過度な毛玉のある服、靴下・肌着、水着、着物、体操服・制服、ユニフォーム、靴類、ホビー・雑貨などは回収できない。

アパレルや小売りの間で衣料品回収の取り組みが広がる中で、回収ボックスの設置場所については試行錯誤が続いている。繊維・衣料品はペットボトルや古紙などと異なり、資源として回収しない自治体が多い中、回収事業をいかに生活導線に組み込み、回収の量と質を上げるかがひとつの課題となっている。「パスト」は商業施設や役所などの公共施設、スーパーマーケッなどさまざまなタッチポイントでの設置を増やしており、今回も多くの人にとって日常生活の導線上にある「駅」に設置した点がポイントだ。

なお、「パスト」は16日、2024年度グッドデザイン賞を受賞している。

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「リン」がカシミアリメイク「ア ラブムーブメント」と協業 LAで見出した一点物の可能性


「リン(WRINN)」は今夏、カシミアリメイクブランド「ア ラブ ムーブメント(A LOVE MOVEMENT)」とのコラボアイテムをLAのセレクトショップ「マックスフィールド(MAXFIELD)」限定で販売した。川島幸美「リン」デザイナーは、2020年のブランド立ち上げ時からサステナビリティを前提とした服作りに取り組むも、環境配慮型素材の選択肢の狭さなどに悩んできた。そんな彼女が「光が見えた」と話すのが、協業による一点物の取り組みだ。

一切のゴミを出さないカシミアのリメイク

コラボのきっかけは川島デザイナーが昨年、LAの「ア ラブ ムーブメント」のアトリエを訪れたことだったという。同ブランドはLAを拠点に活動する大久保鉄三デザイナーが手掛け、現在は「マックスフィールド」限定で販売し、カシミアのリメイクアイテムのほか、オーガニックコットンを使用したリラックスウエアなどもそろえる。早くから廃材や古着を用いたリメイク作品を展開してきた、アップサイクルの分野の第一人者的存在だ。ブランドとして初めて作った1点物のリメイクのカシミアジャージーが「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の会員制サロンで販売されたり、「レディメイド」や「アミリ(AMIRI)」「ダミアンハースト(DAMIEN HIRST)」などともコラボしたりと独自のビジネススタンスを貫いている。顧客にはレッド・ホット・チリ・ペッパーなど、LAのスターたちが名を連ねる。

川島デザイナーは「大久保さんのアトリエでは、小さな端切れもワッペンに活用するなど、とことんゴミを出さない。そのプロジェクトを目の当たりにして感銘を受けた」と話す。そして「大久保さんから “レディースコラボしたらどんな化学反応が起きるか見たいので作らないか?”と話をもらい、ぜひぜひとなりました」と協業の起点について振り返る。その後はしばらく、LAと東京間で作業を進めた。「大久保さんは全部手作業で、ボディとなるカシミア部分のサイズも一点ずつ異なるので、それに合わせて私の方も裁断から縫製まで全て自分で作った」という。

「マックスフィールド」での限定アイテム発売には前段に別のストーリーがある。「リン」は今夏、米国ロサンゼルスのセレクトショップ、「ルームメイツ(ROOM MATES)」で初の海外ポップアップを開催し、コラボアイテムもそこに向けて準備を進めてきた。同ポップアップではほかに、「リン」が得意とするバンブーやオーガニックコットン、ペットボトルリサイクルポリエステル素材を使ったオリジナルアイテムを扱った。そのポップアップを開催中に、2人は即アトリエに入り、大久保デザイナーによるリサイクルカシミアのボディに、川島デザイナーによるペットボトル由来のリサイクルポリエステルのチュールを使用しアレンジを加えた、$2,400(約35万円)のブルゾン4点を手作業で製作した。

「マックスフィールド」のバイヤーに仕上がったコラボアイテムの写真を送ると即日でオーダーが入り即納品。納品翌日には3点売れるという猛スピードの展開だった。川島デザイナーのインスタグラムでは、糸と針を持ち仕上げてゆく様子を残しており、デザイナーとして作る喜び、それが売れる喜びが伝わってくる。

日本では得られない、店頭での手ごたえ

この結果にはLAというマーケットの特性も関係ありそうだ。川島デザイナーは、ポップアップで接客にあたり、一見客の反応に「驚いた」と振り返る。店を訪れるのは地元の人、エンターテインメント業界関係者やツーリストなどで、その多くがウェルネス志向で環境問題にも関心を寄せたという。「再生素材やサスティナブルな取り組みを説明すると、興味を示してくれて、初めて見るブランドでも購入してもらえた」。売れ筋は、朝夕肌寒いLAならではの長袖ニット。「日本では得られない予想以上の反応と成果だった」と手ごたえを感じた。

その手ごたえは、日本でモノづくりをしながら感じていたジレンマと対照的だ。「リン」は、女性らしいシルエットなどが特徴で、素材にこだわる。しかし、生地メーカーが打ち出す環境配慮型素材にオーダーを入れても「量産しなくなった」と度々キャンセルになり、オーガニックコットンを望むもテキスタイルデザインのバリエーションは乏しいと感じてきた。欲しい素材が手に入らず、進む先が見えづらくなっていたタイミングで見えたLAで「一点物」の可能性だった。

「長くデザイナーをしてきて、仕事の進め方がルーティーンになっている。新しい生地を買って、服を作って売る、その仕組み自体を見直すタイミングなのだろう。ヴィンテージや古着を大切に循環させ1点ものの価値を再認識することが、地球環境を守る一番の近道かもしれない。いろいろな方面から可能性を探り、モノづくりの根本を変えてみようと思う」。今後「リン」とはレーベルを分け1点ものに関しては「ユキミ.K(YUKIMI.K)」として活動していく予定で、「ア ラブ ムーブメント」とのタッグで一点物を持って世界のセレクトショップを巡回する企画も構想中だ。

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