ユナイテッドアローズ、新広告に「若手歌舞伎役者」を起用した理由 仕掛け人に聞く

ユナイテッドアローズ(UA)は、次世代に向けたコミュニケーションの第2弾を2月末から開始した。今回は“光”をテーマに、歌舞伎役者の片岡千之助氏(25)と現代アーティストの森本啓太氏(35)を起用。昨年秋の第1弾に続き、若い世代へのアプローチを強める。仕掛け人である松本真哉・執行役員チーフクリエイティブオフィサー(CCO)は「(第1弾以上に)明確に若い人たちに向けたメッセージを意識した」と話す。

同社は2026年3月期を最終年度にした中期経営計画の柱の一つとして「企業ブランドのリブランディング」を掲げた。1989年の創業から36年が過ぎ、顧客の高齢化が課題として浮上する。UAに対してロイヤリティの高い40代の主要顧客を大切にしつつ、20代の次世代顧客との接点を増やす。近年は新規ブランド開発においても「アティセッション(ATTISESSION)」「シテン(CITEN)」などの若い世代に向けた業態を強化している。4月からは韓国で若い世代の支持を集めるアパレルと雑貨のセレクトショップ「ナイスウェザー(NICE WEATHER)」の国内展開もスタートする。

松本CCOは「若い世代の支持はファッション企業としての生命線。コンサバな大人のファッションに代表される一面的なUAではなく、年齢もテイストも様々な多面的なUAの魅力を伝えたい」と新しいコミュニケーションの意義を語る。

第1弾は“異次元リミックス”をテーマに中条あゆみ、原口沙輔、リカちゃん、ABEchanが手掛けたオリジナル3DCGキャラクターを起用し、UAの企業イメージを覆すカオスなビジュアルで話題を集めた。第2弾はUA本来の美意識を新鮮なフレッシュなキャストと演出で表現した。幻想的で不思議な魅力を持つ森本さんの作品世界に、若手の歌舞伎役者として注目を集める千之助さんをキャスティングした。着物をまとい、凛としたたたずまいの千之助さん。UAの服を着て絵画の中の人物になる千之助さん。いずれも“光”の演出でユニークなビジュアルに仕上がっている。

松本CCOは撮影現場では千之助さんの落差に驚いたという。「カジュアルな普段着で撮影現場に現れた千之助さんは、本当に今どきの若者といった雰囲気で、実年齢よりも若く見えるくらいでした。でも和服に着替えて、舞を踊っていただくと、その場の空気がピンと張り詰める。一瞬で撮影現場が彼に支配されたのです。森本さんの表現と相俟って、想像以上のものが完成しました」。

すでに雑誌やデジタル広告での露出がされており、主要ターミナルでの大型広告も計画している。「企業ブランドのリブランディング」は一朝一夕で達成できるものではないが、「“UAが変わろうとしている”というメッセージは届いているのではないか」と手応えを感じている。

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短い春のアウター異変 三陽商会の高級トレンチコートも「袖なし」に

春が短くなり、春物衣料品の実売も短期決戦となる中で、春コートの主役だったトレンチコートに異変が起きている。

三陽商会のコート専業ブランド「サンヨーコート(SANYOCOAT)」は、素材と縫製にこだわった日本製“100年コート”から、初のジレタイプの新商品“100年コート トレンチジレモデル”を3月上旬に発売した。「サンヨーコート」を展開する6店舗、同社公式EC「サンヨー オンラインストア」などで取り扱っている。

“100年コート トレンチジレモデル”は、本格的なトレンチコートの特徴を残しつつ、カジュアルな着こなしもできるバランスを追求した。中空糸を織り交ぜた独自開発の生地を採用し、既存の“100年コート”の生地と比較して約30%軽量化。さらにエポレット(肩章)をはじめとする仕様を省くことで、軽さと着やすさを両立し、春から初夏にコートの代わりに気軽に羽織れるよう、軽やかに仕上げた。生産は他の“100年コート”同様に、コート専業56年の自社工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」(青森県七戸町)で仕立てている。

短期決戦の春へ
コート戦略を最適化

三陽商会は、気候変動と実需型の消費者ニーズに対応するため、昨春夏から新たな商品開発・販売計画を推進している。春物の需要期間については、従来の3カ月(3〜5月)から2カ月(3〜4月)へと考え方を改め、短期決戦のコート戦略を展開する。春物コートの生産数は全社で抑制する一方、ジレ、ショートコート、ブルゾンといった羽織りアイテムの品揃えを強化。軽量素材の採用や仕様の見直しによる商品自体の軽量化も進めている。

ショート丈の好評受け開発

昨秋冬には、温暖化傾向を踏まえて、“100年コート”初のショート丈モデル(9万9000円)を投入。当初の計画を上回る販売実績となるなど好評だった。これに手応えを得て、今春のジレモデル開発に至ったという。

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ミズノが部活動の地域移行支援コンソーシアムに参画 「少子化も進み、部活動に危機感」

教員の労働超過などが問題となる中で、学校部活動を地域や企業に委ねる動きが進みつつある。2024年9月に、スポーツデータバンク、三井住友海上火災保険、日本郵政の3社は、部活動の地域連携・地域移行を支援する「ブカツ・サポート・コンソーシアム」を立ち上げた。この度、同コンソーシアムに、ミズノなど4社が会員企業として参画した。

「ミズノのビジネスにとって、特に国内では部活動は非常に重要な位置を占める。しかし近年は少子化も著しく、危機感を覚えている。社内で部活動支援のためのプロジェクトも立ち上げてきたが、自社だけでは(指導者不足や財源確保、活動場所確保などの)この大きな課題に対応できない」と、ミズノの長沼秀一執行役員は参画意図についてコメント。ミズノの売上高2297億円(24年3月期)のうち、国内売上高は約61%。「そのうちの3〜4割が部活動関連の売り上げ」という。「部活動が行われなくなり、子どもたちが多様なスポーツを経験する機会がなくなってしまうことが一番問題。アスリートなどとして飛躍する可能性を秘めた人の芽をつんでしまうことになる」。

ミズノはコンソーシアムを通じ、具体的には、①スポーツ用品の販売、②所属アスリートやOB・OGらによる指導者向け研修やスポーツ体験イベントの企画、③自治体などから依頼されて管理運営を行っているスポーツ施設の活用検討、の3軸で自治体を支援する。特に、本業と直結する①については、「これまでもチームユニホームの製作などを手掛けてきたが、デザイン面などをサポートして、手間なくユニホーム等の発注ができる仕組みを新たに立ち上げる」。②については、既に社内で所属アスリートらがバレーボールやサッカー、水泳など各種スポーツを指導する“ビクトリークリニック”を実施しており、その仕組みを応用する。

今回、ミズノ以外でコンソーシアムに参画した企業は、スポーツクラブ運営などを行うルネサンス、フィットネススクールや各種運動クラブ向けのデジタルソリューションを提供しているhacomono、教育・文化交流事業にも注力するTOPPANホールディングスの4社。各社、自社の得意とする領域を生かし、自治体をサポートする。

「ブカツ・サポート・コンソーシアム」では24年9月の設立直後に、沖縄県教育委員会との連携協定を発表し、同県の宜野湾市や宜野座村など6自治体で実証を重ねている。その中で、宜野座村ではコンソーシアムのメニューを使って「JSPO公認スポーツコーチングリーダー」資格を取得した郵便局社員が、バドミントンの地域クラブの指導者として活動するなどしているという。「3月中に、他にもいくつかの自治体との連携協定の締結を予定する。また、将来的には運動部だけでなく、文化部の活動にもコンソーシアムの対象を広げていく」(石塚大輔スポーツデータバンク社長)。

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MTGが25年9月期連結業績を上方修正 絶好調の「リファ」の増収増益を受けて

MTGは2025年9月期の業績予想を上方修正する。修正後は、売上高が880億円(前回予想は800億円)、営業利益が70億円(同50億円)、純利益が45億円(同33億円)。

同社の売り上げの75%以上を占める主軸ブランド「リファ(REFA)」の24年10〜12月期の売上高は前年同期比45%増だった。ドライヤーやブラシの新製品のヒットに加え、“ミルクプロテインシリーズ”が大きく寄与し、国内事業が好調だった。チャネル別でも、EC、美容サロン、直営店、百貨店の全てで増収を果たした。増収と新製品売り上げ比率の向上による粗利増、ブランド力向上によるマーケティング効果の発揮で、大幅な増益も果たした。これらにより、前回予想を大きく上回ると判断し第1四半期後に上方修正した。

第1四半期は、売上高が前年同期比39%増の236億円、営業利益が3.2倍の36億円だった。

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MTGが25年9月期連結業績を上方修正 絶好調の「リファ」の増収増益を受けて

MTGは2025年9月期の業績予想を上方修正する。修正後は、売上高が880億円(前回予想は800億円)、営業利益が70億円(同50億円)、純利益が45億円(同33億円)。

同社の売り上げの75%以上を占める主軸ブランド「リファ(REFA)」の24年10〜12月期の売上高は前年同期比45%増だった。ドライヤーやブラシの新製品のヒットに加え、“ミルクプロテインシリーズ”が大きく寄与し、国内事業が好調だった。チャネル別でも、EC、美容サロン、直営店、百貨店の全てで増収を果たした。増収と新製品売り上げ比率の向上による粗利増、ブランド力向上によるマーケティング効果の発揮で、大幅な増益も果たした。これらにより、前回予想を大きく上回ると判断し第1四半期後に上方修正した。

第1四半期は、売上高が前年同期比39%増の236億円、営業利益が3.2倍の36億円だった。

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今季「ダブレット」は朝ドラが着想源?「WWDJAPAN」が2025-26年秋冬メンズトレンドを徹底分析

「WWDJAPAN」はこのほど、2025-26年秋冬メンズトレンドセミナーを開催した。ミラノ&パリ・メンズ・ファッション・ウイークでの現地取材を通して見えてきた潮流を、キーワードと共に解説。セッションは2部構成で、1部ではパリでコレクションを発表してきたデザイナーを、2部では現地でのバイイングを通じて、各ブランドのコレクションを小売り視点で分析する百貨店バイヤーを招き、次シーズンのトレンドを多角的な視点で分析した。


購入には事前にOneStreamの会員登録が必要です。
視聴期限:2026年3月6日(水)23:59 まで
「アカウント作成はこちら」から作成してください。
※10分間のお試し視聴ののち、「購入する」ボタンが表示されます。

洗練とリラックス感を両立する
リアリティーのある着こなし

第1部の前半では、「WWDJAPAN」メンズ担当の大塚千践副編集長に加え、ベルリン在住の藪野淳欧州通信員がオンラインで参加し、25-26年秋冬メンズのトレンドを総括した。ミラノとパリのメンズコレクションを特集した「WWDJAPAN」(3月3日発売)の紙面を参照し、4つの代表的スタイルを紹介。特に注目のスタイルとして、洗練された日常のワードローブ“エレベーテッド・デイウエア(Elevated Daywear)” と、冒険心を呼び覚ますアウトドアミックス“イントゥ・ザ・ワイルド(Into the Wild)”の2つを挙げた。それぞれの代表的なブランドのショーを解説しながら、トレンドが生まれた背景についても言及した。大塚副編集長は今季のトレンドについて「トレンドが明確に切り替わることが少ないメンズウエアだが、日常着を基本にした気の利いた着こなしのバリエーションが増えている」と分析した。

さらに、第1部の後半では、パリでコレクションを発表したばかりの「ダブレット」井野将之デザイナーが登壇。「パリで一番になりたい」という強い思いでショーに臨んだという井野デザイナーは、“悪役”をテーマにした今季のコレクションを振り返った。ファイバークレーズが開発した繊維素材“クレーズ・テックス”との出合いがコレクション制作に大きく影響したこと、NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」で松平健が演じた主人公の祖父・米田永吉のセリフから受けたインスピレーション、さまざまな企業やブランドとの協業など、デザイナー本人だからこそ語られる貴重なエピソードに、聴講者たちは熱心に耳を傾けた。

売り場視点でのトレンド分析
カギになる素材は“レザー”

第2部には、伊勢丹新宿本店メンズ館の椋田暁バイヤーも登場。ランウエイでも「リアルな」着こなしが主流になっているとは言え、コレクションで目を引くものと実際に売れるものとの間には、少なからず開きがあるもの。このセッションでは、記者と百貨店バイヤーという異なる立場でウエアから素材、色柄、ディテール、バッグ&シューズに至るまで、より詳細にトレンドを分析。売り場で実際に動きそうなものを共に語り合った。

「WWDJAPAN」の2人と椋田バイヤーは、今季のカギになる素材に“レザー”を挙げるなど、両者が注目したトレンドは重なる部分も多かった。また、近年の暖冬で何を売るかという話題では「暖冬化する東京で、ヨーロッパのトレンドをいかに落とし込むか」というテーマに及んだ。「オーバーサイズのコートや、ファーやムートンを用いたアイテム、ダウンや中綿が入ったジャケットなどのボリューミーなアウターが目立ったが、日本でどこまで受け入れられるかは未知数」とした薮野通信員に対して「24-25年秋冬シーズンは短丈のアウターが売れ、ヘビーなコートの売り上げと大きく差がついた。しかし、ライトアウターのトレンドが続いたので、そろそろボリューミーなアウターを着たいと考えるお客さまは増えてくるはず。積極的に提案していきたい」と椋田バイヤーは答えた。 “売り手”の視点で語られるトレンド展望や、顧客への具体的な提案テクニックなど、実利性が高く示唆に富んだ椋田バイヤーのプレゼンテーションが、聴講者を引き付けた。

セミナー終了後は、登壇者とセミナー聴講者によるミートアップを実施。参加者と登壇者がドリンクを片手に、活発に意見交換をしたり、セッションには収まりきれなかった井野デザイナーのパリコレこぼれ話に耳を傾けたりした。

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今季「ダブレット」は朝ドラが着想源?「WWDJAPAN」が2025-26年秋冬メンズトレンドを徹底分析

「WWDJAPAN」はこのほど、2025-26年秋冬メンズトレンドセミナーを開催した。ミラノ&パリ・メンズ・ファッション・ウイークでの現地取材を通して見えてきた潮流を、キーワードと共に解説。セッションは2部構成で、1部ではパリでコレクションを発表してきたデザイナーを、2部では現地でのバイイングを通じて、各ブランドのコレクションを小売り視点で分析する百貨店バイヤーを招き、次シーズンのトレンドを多角的な視点で分析した。


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洗練とリラックス感を両立する
リアリティーのある着こなし

第1部の前半では、「WWDJAPAN」メンズ担当の大塚千践副編集長に加え、ベルリン在住の藪野淳欧州通信員がオンラインで参加し、25-26年秋冬メンズのトレンドを総括した。ミラノとパリのメンズコレクションを特集した「WWDJAPAN」(3月3日発売)の紙面を参照し、4つの代表的スタイルを紹介。特に注目のスタイルとして、洗練された日常のワードローブ“エレベーテッド・デイウエア(Elevated Daywear)” と、冒険心を呼び覚ますアウトドアミックス“イントゥ・ザ・ワイルド(Into the Wild)”の2つを挙げた。それぞれの代表的なブランドのショーを解説しながら、トレンドが生まれた背景についても言及した。大塚副編集長は今季のトレンドについて「トレンドが明確に切り替わることが少ないメンズウエアだが、日常着を基本にした気の利いた着こなしのバリエーションが増えている」と分析した。

さらに、第1部の後半では、パリでコレクションを発表したばかりの「ダブレット」井野将之デザイナーが登壇。「パリで一番になりたい」という強い思いでショーに臨んだという井野デザイナーは、“悪役”をテーマにした今季のコレクションを振り返った。ファイバークレーズが開発した繊維素材“クレーズ・テックス”との出合いがコレクション制作に大きく影響したこと、NHK朝の連続テレビ小説「おむすび」で松平健が演じた主人公の祖父・米田永吉のセリフから受けたインスピレーション、さまざまな企業やブランドとの協業など、デザイナー本人だからこそ語られる貴重なエピソードに、聴講者たちは熱心に耳を傾けた。

売り場視点でのトレンド分析
カギになる素材は“レザー”

第2部には、伊勢丹新宿本店メンズ館の椋田暁バイヤーも登場。ランウエイでも「リアルな」着こなしが主流になっているとは言え、コレクションで目を引くものと実際に売れるものとの間には、少なからず開きがあるもの。このセッションでは、記者と百貨店バイヤーという異なる立場でウエアから素材、色柄、ディテール、バッグ&シューズに至るまで、より詳細にトレンドを分析。売り場で実際に動きそうなものを共に語り合った。

「WWDJAPAN」の2人と椋田バイヤーは、今季のカギになる素材に“レザー”を挙げるなど、両者が注目したトレンドは重なる部分も多かった。また、近年の暖冬で何を売るかという話題では「暖冬化する東京で、ヨーロッパのトレンドをいかに落とし込むか」というテーマに及んだ。「オーバーサイズのコートや、ファーやムートンを用いたアイテム、ダウンや中綿が入ったジャケットなどのボリューミーなアウターが目立ったが、日本でどこまで受け入れられるかは未知数」とした薮野通信員に対して「24-25年秋冬シーズンは短丈のアウターが売れ、ヘビーなコートの売り上げと大きく差がついた。しかし、ライトアウターのトレンドが続いたので、そろそろボリューミーなアウターを着たいと考えるお客さまは増えてくるはず。積極的に提案していきたい」と椋田バイヤーは答えた。 “売り手”の視点で語られるトレンド展望や、顧客への具体的な提案テクニックなど、実利性が高く示唆に富んだ椋田バイヤーのプレゼンテーションが、聴講者を引き付けた。

セミナー終了後は、登壇者とセミナー聴講者によるミートアップを実施。参加者と登壇者がドリンクを片手に、活発に意見交換をしたり、セッションには収まりきれなかった井野デザイナーのパリコレこぼれ話に耳を傾けたりした。

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「フォーエバー21」が2度目の破産申請を準備か 米国の運営会社が700人を解雇の見込み

米ファストファッションチェーン「フォーエバー21(FOREVER 21)」の米国における運営会社フォーエバー21 オプコ(FOREVER 21 OPCO)が、破産申請の準備をしているようだ。

同社は2月下旬、労働者調整・再訓練通知法(Worker Adjustment and Retraining Notification)の適用をカリフォルニアおよびペンシルバニア州で申請したことが明らかに。これは100人以上の労働者を抱える雇用主が工場閉鎖や大量解雇を行う際、その60日前に従業員に通告することを義務付けている法律のため、同社は両州で700人程度の人員整理を実施すると見られている。情報筋によれば、同社は本社での解雇や100〜200店の閉鎖を行い、残った店舗の買い手を探す予定だが、清算も視野に入れているという。

なお、同社は米国内における「フォーエバー21」の運営を行っているため、いずれにしても他国での事業や店舗、また米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)が保有する同ブランドのIP(知的財産)への影響はない。

「フォーエバー21」の歴史

「フォーエバー21」は、1984年に米ロサンゼルスで創業。ショッピングモールに大量に出店し、ファストファッションチェーンとして急成長したものの、ECの台頭やサステナビリティ意識の高まりなどを受け、2015年頃をピークに徐々に失速した。19年9月、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請。競争入札の結果、20年2月にABGと、家主である米不動産投資信託会社のサイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP以下、サイモン)および同ブルックフィールド・プロパティー・パートナーズ(BROOKFIELD PROPERTY PARTNERS以下、ブルックフィールド)の3社連合が8110万ドル(約119億円)で落札した。米国における「フォーエバー21」事業は、ABGとサイモンが設立した合弁会社スパーク・グループ(SPARC GROUP以下、スパーク)が行っており、買収当時の米国内の店舗数は448店。現在は360店程度と見られている。

スパークの新会社に「フォーエバー21」は含まれず

23年8月には、グローバルSPAブランド「シーイン(SHEIN)」がスパークの株式のおよそ3分の1を取得し、スパークも「シーイン」の少数株主に。同年10月、ABGと「シーイン」は「フォーエバー21」のライフスタイルおよびファッション領域において長期的なパートナーシップ契約を締結。25年1月には、スパークと米百貨店J.C.ペニー(J.C. PENNEY)が新会社カタリスト・ブランズ(CATALYST BRANDS)を設立した。なお、J.C.ペニーは20年5月に経営破綻したが、同年9月にサイモンとブルックフィールドが買収している。

カタリスト・ブランズは、スパーク傘下の「エアロポステール(AEROPOSTALE)」「ノーティカ(NAUTICA)」「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」「ラッキー ブランド(LUCKY BRAND)」、そしてJ.C.ペニー(J.C. PENNEY)を擁するが、「フォーエバー21」は含まれていない。同社は、業績低迷が続く「フォーエバー21」について「戦略的な代替案を検討中だ」としていた。

買い手が見つからなければ清算か

情報筋によれば、同社は「フォーエバー21」を今後は主にオンラインで展開することを想定し、米国での運営権をECに強いパートナーに譲渡することを検討しているが、売り上げの高い100店程度を残す道も模索しているという。しかし、条件の合う買い手が期日までに見つからない場合には、米国事業の清算手続きに入る可能性が高いと見られている。

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40周年の頭痛薬「イブ」は女性の痛みに“本気”で挑む 身体的痛みだけでなく心的痛みにも

エスエス製薬が展開する解熱鎮痛薬ブランド「イブ(EVE)」は、女性の活躍支援を応援する“ビリーブ プロジェクト(BeliEVE Project)”を2024年から遂行している。プロジェクト2年目でありブランド誕生40周年でもある25年は、最終的な目標の“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロの実現に向けて、社内制度の変革や他社への波及を目指したアクションを加速する。

「イブ」は男女雇用機会均等法が制定された1985年に誕生。翌年の施行に向け、「新たな挑戦に向かう女性の痛みを取り除くこと」を目指して立ち上がり、痛みに優れた効き目を表す“イブプロフェンを配合した市販薬からスタートした。

元々女性の社会活躍を応援する気持ちから生まれたブランドだが、24年に“ビリーブプロジェクト”が始動した理由をマーケティング本部の元島陽子本部長は「2年ほど前にあらためて自分たちのブランドの存在意義は何かを考えるタイミングがあった。われわれはやるべきことがやれているかを立ち返った時、体の痛みを和らげる製品の提供という基盤に加えて、社会からの圧力や我慢する文化といった心の痛みを取り除くことはできてなかったのではと考えた」と説明する。

働く女性にとっての“10年目の壁”が判明

同ブランドが24年に実施した消費者調査を分析したところ、10年目を機に仕事に対する満足度が下がったり性別によるキャリアの諦めを感じたりする女性の数が増える結果となった。「働く女性にとって10年目の壁が大きい」ことが判明した。「理想のキャリアを築きたい」「今後も理想のキャリアが築けると信じている」と考える人の比率はどの年次でも男性が高く、全体平均で14.4%の男女差があった。「イブ」ではこれを“ジェンダーキャリアギャップ指数”と定め、同プロジェクトの目標を「“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロ」に設定した。

また、24年には対話型×生成型AIツール「BeliEVE Your voice AI」をローンチし、女性の生の声を集めた。「悩みを相談したいけどできてない」という実情が見え、「多くの女性が抱える心の痛みは目に見えていないということがわかった」と元島本部長は話す。

これらを通して見えてきた、時間・体力の物理的な制限、活用しにくい制度、モチベーションにつながるロールモデルの不在という3つの課題に「イブ」は着目。「“ジェンダーキャリアギャップ指数”ゼロの目標を掲げるならば、まずは自社が日本一にならなくては」という考えから、25年4月には3つの課題にそれぞれにアプローチする社内制度を導入する。

政府のシッターサービスの加盟、家事代行サービスの費用負担、母のコミュニティー作り、メンタリング制度、育休取得者の所属チームメンバーに対する経済的支援を新たに実施。「まずは社内でアクションを起こし、他者や社会に呼びかけるための土台を作る」と元島本部長。

社会人10年目前後までの女性たちに特化したメンタリング制度は、他企業への拡大を進める。彼女たちの課題にフィットした女性社員メンターをアサインすることで“10年目の壁”の解消を目指す。また、メンタリング制度は女性のマインドセットの変革も意図する。「これらの課題解決のベースとして最も大切なマインドセットが自分を信じ、夢を追い求める強いマインド。どんなに制度や会社のポリシーが変わっても、女性自身が『自分なんて』『申し訳ないから』と思ってたら本質的なところは変わらない」(元島本部長)。

すでにウェルシアが共感
「これをさらに他社へ広げる」

「イブ」のこのプロジェクトに共感を示し、すでにメンタリング制度を導入を決めているのがウェルシアだ。同社は最終目標を「店舗での女性店長比率30%の達成」に設定し、新たに定めた女性店長キャリアアンバサダーをメンティーとして育成するワークショップを実施。女性社員にとってのロールモデルと出会う機会を作り、目標達成に向けてステップを踏んでいる。

25年は「アクションを起こし、世の中にメッセージを発信していく年」として、国際女性デーの8日には新たなブランドスローガン「痛みよ、私よ、とんでゆけ。」を発表。菜々緒をメインキャストに据えたウェブCMを公開した。

「マーケティングコミュニケーションだけで世の中はもちろん変わらないし、一企業のみの行動でも1回のキャンペーンでも変わらない。われわれは10年かけてやってこうと思っている」と元島本部長。今後も共感を示して協働する企業パートナーを探しつつ、定点観測を実施して蓄積したファクトを用いて他社への展開を加速する。「大局を動かさないと、世の中は変わらない。最終的には政治や制度に影響を与えるムーブメントを起こしたい」。

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クリスマス商戦が記録的売り上げのラゾーナ川崎 セレクトショップを筆頭にファッションが好調【ビジネスリポート2024年下半期】

ラゾーナ川崎は、JR川崎駅西口に直結するアクセスの良さと衣食住が充実した施設を備え、同エリアのランドマークになっている。施設中央のルーファ広場でのイベントも活況を呈している。三井不動産商業マネジメントの荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長に商況を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月24日号特別付録「ビジネスリポート2024年下半期」からの抜粋です。)

WWD:2024年下半期の商況は?

荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長(以下、荻島):売上高は前年同月比も予算比もクリアして堅調に推移した。特にファッションが好調。お盆明けの秋物の立ち上がりが良かった。その後、9月から10月は気温が下がらずに苦戦したが、11月に冬物実需が一気に上がって復調。クリスマス商戦が好調だった12月は記録的な売り上げになった。

WWD:好調なショップやカテゴリーは?

荻島:メンズとウィメンズが両方そろうショップは軒並み良かった。「RHCロンハーマン(RHC RON HERMAN)」「ジャーナル スタンダード レリューム(JOURNAL STANDARD RELUME)」などセレクトショップの伸びが顕著。中でも良かったのは「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RERAXING)」。店長が交代し、接客力が格段にアップした。接客力は重要なキーワードで、ファンをしっかりつかんでいる「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」、秋に新規出店した「リーバイス(LEVI'S)」も接客が高評価で絶好調。「コーエン(COEN)」はVMDをテコ入れしたことで売り上げが急伸した。「アディダス(ADIDAS)」「ニューエラ(NEW ERA)」「アークテリクス(ARC’HTERYX)」などのスポーツ&ストリートカジュアルも継続人気。メガネショップも引き続き売れており、「ジンズ(JINS)」が突出した。

また、「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」は23年秋にリニューアルし、今季さらに内装を整えたことと、お客さまからも高評価される接客で2ケタ増。顧客がしっかりついている。7月に新規出店した「アグ」は、気温が下がった後に売り上げが急上昇した。館全体としても、この秋冬の傾向として高価格帯商品の動きが良い。上質化とグレード感を高めるブランディングを今後も続ける。

WWD:大型店舗は?

荻島:「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」は手堅く売れている。特に「ユニクロ」はコラボレーション商品が大ヒット。「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」コラボや「プラスジェイ」の再販初日は大行列を作った。ほかにも「ラコステ(LACOSTE)」と人気漫画「ワンピース」のコラボレーションが大盛況だった。コスメは「東京小町」がベースメイクを中心に伸ばしている。

WWD:訪日客需要は?

荻島:もともと比率は低いが、昨今の都心のホテル満室の影響で川崎に訪日客が流れ始めている。そこで、近隣の川崎日航ホテルとホテルメトロポリタン川崎に、訪日客限定の割引券付き館内案内パンフレットを配布し始めた。今後は春節に合わせた中国人客向け割引券も配る予定だ。

WWD:特に効果的だった施策は?

荻島:23年夏から紙のカタログを作っているが、館内配布はすぐなくなるし、顧客に送ると反響がある。ショップからも「載せてほしい」という要望が増えている。作るのは大変だが、効果を感じている。また、10月に初めて開催した「ジャパンクラフトフェス」が盛況。お酒と音楽がテーマのゆったり過ごせるイベントとして、ルーファ広場の空間をうまく活用できた。夜までにぎわいを見せていた。DA PUMPや原因は自分にある。といった音楽アーティストのイベントも反響が良く、今後も継続する。

WWD:クリスマス商戦は?

荻島:クリスマスイブが平日だったにもかかわらず土日と変わらない好実績。地下食料品専門店街のグランフードは、過去最高の売り上げを記録した。「新宿高野」と「アンテノール」のケーキが爆発的に売れ、ファッションの売り上げにも波及した。

WWD:今抱えている課題は?

荻島:前述の通り接客力が売り上げに大きく関係するため、さらに強化したい。今年度のSC接客ロールプレイングコンテストに、館のテナントから3人が出場した。関東甲信越地区エリアの優勝者が出たほか、審査員特別賞を受賞したスタッフもいて、かなり手応えを感じている。接客力の向上にますます磨きをかけていく。

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クリスマス商戦が記録的売り上げのラゾーナ川崎 セレクトショップを筆頭にファッションが好調【ビジネスリポート2024年下半期】

ラゾーナ川崎は、JR川崎駅西口に直結するアクセスの良さと衣食住が充実した施設を備え、同エリアのランドマークになっている。施設中央のルーファ広場でのイベントも活況を呈している。三井不動産商業マネジメントの荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長に商況を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月24日号特別付録「ビジネスリポート2024年下半期」からの抜粋です。)

WWD:2024年下半期の商況は?

荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長(以下、荻島):売上高は前年同月比も予算比もクリアして堅調に推移した。特にファッションが好調。お盆明けの秋物の立ち上がりが良かった。その後、9月から10月は気温が下がらずに苦戦したが、11月に冬物実需が一気に上がって復調。クリスマス商戦が好調だった12月は記録的な売り上げになった。

WWD:好調なショップやカテゴリーは?

荻島:メンズとウィメンズが両方そろうショップは軒並み良かった。「RHCロンハーマン(RHC RON HERMAN)」「ジャーナル スタンダード レリューム(JOURNAL STANDARD RELUME)」などセレクトショップの伸びが顕著。中でも良かったのは「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RERAXING)」。店長が交代し、接客力が格段にアップした。接客力は重要なキーワードで、ファンをしっかりつかんでいる「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」、秋に新規出店した「リーバイス(LEVI'S)」も接客が高評価で絶好調。「コーエン(COEN)」はVMDをテコ入れしたことで売り上げが急伸した。「アディダス(ADIDAS)」「ニューエラ(NEW ERA)」「アークテリクス(ARC’HTERYX)」などのスポーツ&ストリートカジュアルも継続人気。メガネショップも引き続き売れており、「ジンズ(JINS)」が突出した。

また、「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」は23年秋にリニューアルし、今季さらに内装を整えたことと、お客さまからも高評価される接客で2ケタ増。顧客がしっかりついている。7月に新規出店した「アグ」は、気温が下がった後に売り上げが急上昇した。館全体としても、この秋冬の傾向として高価格帯商品の動きが良い。上質化とグレード感を高めるブランディングを今後も続ける。

WWD:大型店舗は?

荻島:「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」は手堅く売れている。特に「ユニクロ」はコラボレーション商品が大ヒット。「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」コラボや「プラスジェイ」の再販初日は大行列を作った。ほかにも「ラコステ(LACOSTE)」と人気漫画「ワンピース」のコラボレーションが大盛況だった。コスメは「東京小町」がベースメイクを中心に伸ばしている。

WWD:訪日客需要は?

荻島:もともと比率は低いが、昨今の都心のホテル満室の影響で川崎に訪日客が流れ始めている。そこで、近隣の川崎日航ホテルとホテルメトロポリタン川崎に、訪日客限定の割引券付き館内案内パンフレットを配布し始めた。今後は春節に合わせた中国人客向け割引券も配る予定だ。

WWD:特に効果的だった施策は?

荻島:23年夏から紙のカタログを作っているが、館内配布はすぐなくなるし、顧客に送ると反響がある。ショップからも「載せてほしい」という要望が増えている。作るのは大変だが、効果を感じている。また、10月に初めて開催した「ジャパンクラフトフェス」が盛況。お酒と音楽がテーマのゆったり過ごせるイベントとして、ルーファ広場の空間をうまく活用できた。夜までにぎわいを見せていた。DA PUMPや原因は自分にある。といった音楽アーティストのイベントも反響が良く、今後も継続する。

WWD:クリスマス商戦は?

荻島:クリスマスイブが平日だったにもかかわらず土日と変わらない好実績。地下食料品専門店街のグランフードは、過去最高の売り上げを記録した。「新宿高野」と「アンテノール」のケーキが爆発的に売れ、ファッションの売り上げにも波及した。

WWD:今抱えている課題は?

荻島:前述の通り接客力が売り上げに大きく関係するため、さらに強化したい。今年度のSC接客ロールプレイングコンテストに、館のテナントから3人が出場した。関東甲信越地区エリアの優勝者が出たほか、審査員特別賞を受賞したスタッフもいて、かなり手応えを感じている。接客力の向上にますます磨きをかけていく。

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ワールドグループのゴルフブランド「アダバット」 25年2月期は4期ぶりの黒字化見込み

ワールドグループのエクスプローラーズトーキョーが運営するゴルフブランド「アダバット(ADABAT)」が復調傾向にある。「プロパー消化率が高まり、利益率が上昇。2025年2月期は4期ぶりの黒字化見込み」と、靏博幸(かく・ひろゆき)ワールドグループ常務執行役員兼エクスプローラーズトーキョー社長。25年春は新ブランド「アダバット ストリーム(ADABAT STREM)」と、新ライン“アダバット ネイビー(ADABAT NAVY)”を立ち上げており、「アダバット ストリーム」のポップアップは上々の滑り出しだという。

コロナ禍中にはゴルフブームという追い風もあったが、「アダバット」はその波をつかみきれず、苦戦していた。靏常務執行役員が24年3月にブランドディレクターに就任し、この1年間で「拡大していた品番数を半分以下に絞り込み、その分、売れ行きが見込める品番の発注を手厚くしたことでプロパー消化率が改善した」。また、ブランド公式LINEを立ち上げ、プロモーション用の動画制作を開始したほか、EC用の写真の撮り方、カタログ制作手法、ショッパーのデザインなど、「あらゆるものをこの1年間で変えてきた」。結果、24年9月以降は、売上高も前年同期比14%増前後のペースで推移しているという。

今春は有力百貨店でポップアップ実施

25年2月までは既存事業の立て直しに注力してきたが、3月からは新ブランド「アダバット ストリーム」と新ライン“アダバット ネイビー”で積み増しを目指す。ブランドの既存顧客が60〜70代中心であるのに対し、「アダバット ストリーム」では20〜50代に向けて、モノトーンを中心としたシャープなイメージを打ち出す。1月末に阪急うめだ本店で行ったポップアップを皮切りに、松坂屋名古屋店、そごう横浜店、高島屋新宿店、高島屋大阪店などでポップアップを実施。また、同じエクスプローラーズトーキョーが運営するショップ、「ドレステリア(DRESSTERIOR)」4店(渋谷スクランブルスクエア、ルクア大阪、京都BAL、アミュプラザ博多)でもポップアップを行い、高感度な客層に新しいイメージを打ち出す(以上すべて、実施済みも含む)。

今春に新ラインとして立ち上げた“アダバット ネイビー”は、既存店内で下げ札などの色を変えて展開。40〜50代を中心対象に、既存ラインよりも若々しく凝ったディテールのアイテムを投入している。“アダバット ネイビー”のイメージに合わせて、一部店舗ではショップの改装も進めている。

「百貨店の中でも有力な館に『アダバット ストリーム』のポップアップに前向きに取り組んでいただいており、一定の手応えを感じている」と靏常務執行役員。19年に百貨店ゴルフ売り場を中心に約80店あった店舗は、苦戦期間をへて現状で39店にまで減少しているが、「『アダバット ストリーム』と“アダバット ネイビー”を立ち上げたことで、取引終了予定だった百貨店で、終了どころか増床することになったケースもある」と語る。今後は、「既存ライン5割、“アダバット ネイビー”4割、『アダバット ストリーム』1割といった仕入れのイメージでブランドを運営していく」。

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東京マラソン2025に行ってきた!:記者談話室vol.168

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「記者談話室」は、ファッション業界のその時々のニュースや話題について、3人の記者が分かりやすく解説したり、時には脱線したりしながら、掘り下げていきます。

168回目となる今回は、3月2日に行われた東京マラソン2025について。グローバルで市場拡大中のランニングマーケット事情と合わせ、東京マラソンの楽しみ方を語ります。「自分は走らないからあまり関係ないな〜」という人も、沿道で応援したり、東京マラソンEXPO(見本市)をパトロールしたりするだけで面白い!大会テーマソングや東京マラソンかるたなど、ニッチネタも含めお届けします。「WWDJAPAN」2月24日号ランニング特集も合わせてぜひお読みください!

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ファンケル、老化細胞を除去する新成分を発見

ファンケルが、バラ科の「キンミズヒキ」と、その由来成分「アグリモール類」に、老化細胞を除去する作用があることを発見した。キンミズヒキは「龍牙草(りゅうげそう)」や「仙鶴草(せんかくそう)」といった生薬名で知られ、中国医学でも使用される食品素材だ。

同社は、微量の採血で血液中に含まれる老化細胞を定量する手法を確立。この手法を用いた分析の結果、ウイルスに感染した細胞などを攻撃する免疫を担うキラー細胞などの老化細胞は、加齢とともに増加することが確認された。同社によると、日本人の老化細胞量と年齢の関係を明らかにしたのは世界で初めてという。

40〜60歳未満の日本人男女を対象にした臨床試験では、キンミズヒキ摂取郡とプラセボ群に分け、8週間の摂取前後におけるキラー細胞の老化細胞の割合の変化を比較。キンミズヒキ由来アグリモール類を含むサプリメントを摂取した男性グループでは、プラセボ群と比較して老化細胞の割合が有意に減少することを確認した。キンミズヒキ由来アグリモール類は、体内に蓄積した老化細胞を除去する可能性が示唆された。

同社は、キンミズヒキ由来アグリモール類の摂取による老化免疫細胞の除去作用が、老化細胞が関与する生理機能の低下に対してさまざまな効果を発揮することが期待されるという。今後も抗老化作用の研究を進め、製品開発やサービスの提供を目指す方針だ。

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ファンケル、老化細胞を除去する新成分を発見

ファンケルが、バラ科の「キンミズヒキ」と、その由来成分「アグリモール類」に、老化細胞を除去する作用があることを発見した。キンミズヒキは「龍牙草(りゅうげそう)」や「仙鶴草(せんかくそう)」といった生薬名で知られ、中国医学でも使用される食品素材だ。

同社は、微量の採血で血液中に含まれる老化細胞を定量する手法を確立。この手法を用いた分析の結果、ウイルスに感染した細胞などを攻撃する免疫を担うキラー細胞などの老化細胞は、加齢とともに増加することが確認された。同社によると、日本人の老化細胞量と年齢の関係を明らかにしたのは世界で初めてという。

40〜60歳未満の日本人男女を対象にした臨床試験では、キンミズヒキ摂取郡とプラセボ群に分け、8週間の摂取前後におけるキラー細胞の老化細胞の割合の変化を比較。キンミズヒキ由来アグリモール類を含むサプリメントを摂取した男性グループでは、プラセボ群と比較して老化細胞の割合が有意に減少することを確認した。キンミズヒキ由来アグリモール類は、体内に蓄積した老化細胞を除去する可能性が示唆された。

同社は、キンミズヒキ由来アグリモール類の摂取による老化免疫細胞の除去作用が、老化細胞が関与する生理機能の低下に対してさまざまな効果を発揮することが期待されるという。今後も抗老化作用の研究を進め、製品開発やサービスの提供を目指す方針だ。

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カナダ大手百貨店ハドソンズ・ベイ、破産法の適用を申請 融資を受け事業再建を目指す

カナダの大手百貨店ハドソンズ・ベイを運営するハドソンズ・ベイ・カンパニーULC(HUDSON'S BAY COMPANY ULC以下、ハドソンズ・ベイ)は3月7日、オンタリオ州上位裁判所に企業債権者調整法(Companies’ Creditors Arrangement Act以下、CCAA)の適用を申請し、これが承認されたことを発表した。CCAAは日本の民事再生法や、米国の連邦破産法第11条にあたるもので、同社はつなぎ融資を受けながら事業再建を目指すこととなる。なお、今回受ける融資により同社は10日程度の事業継続が可能となるが、その間に再建計画もしくは融資期間の延長を裁判所に提出する必要があるという。

同社は長らく業績が低迷しており、その主な要因として、小売り環境の変化やコロナ禍後に売り上げが回復しなかったこと、デジタル化に関する多額の投資が重しとなったことなどを挙げている。また、最近ではドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領によるカナダへの追加関税にまつわる混乱が、業績悪化に拍車をかけたという。

同社は現在、およそ80の店舗を運営。今回のCCAAの適用に伴い、いくつかの店が閉じられる見込みだが、現時点で詳細は明らかにされていない。

355年と北米最古の歴史を持つハドソンズ・ベイ

ハドソンズ・ベイは、1670年に貿易会社として設立。北米で現在も事業を継続している企業の中で最古といわれている。1881年には、カナダ・マニトバ州で百貨店ハドソンズ・ベイをオープンした。同社は時代によってさまざまなオーナーの手を経ているが、2008年に不動産開発や小売りを専門とする米投資会社NRDCエクイティ・パートナーズ(NRDC EQUITY PARTNERS)が買収。同社の創業者の息子であり、取引を先導したリチャード・ベーカー(Richard Baker)が、ハドソンズ・ベイのエグゼクティブ・チェアマン兼ガバナー(現在は会長兼最高経営責任者(CEO))に就任した。12年にトロント証券取引所に上場。13年には、米百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FITH AVENUE)を買収した。

2019年に上場廃止し持株会社に

その後しばらくは業績を伸ばしたものの、ECの台頭などによって小売り環境が大きく変化し、16年頃から失速。19年には、「短期間での成果やリターンが期待されない環境で再生を目指したい」として、ベーカー会長兼CEOを含む複数の主要株主が同社の発行済み株式を買い取る形での上場廃止となった。その際、持株会社ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)を設立し、組織を再編している。

新会社から切り離されたハドソンズ・ベイ

HBCは24年7月、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)を26億5000万ドル(約3895億円)で買収。取引の成立後、HBCは百貨店の運営と店舗の土地開発などの不動産業を行う新会社サックス・グローバル(SAKS GLOBAL)を設立し、ベーカー会長兼CEOがエグゼクティブ・チェアマンに就任した。これに伴い、持株会社としてのHBCは解散。年商100億ドル(約1兆4700億円)規模と見込まれる新会社は、サックス・フィフス・アベニュー、そのオフプライスストアであるサックス・オフ・フィフス(SAKS OFF 5TH)、ニーマン・マーカス、バーグドルフ・グッドマンを運営しているが、ハドソンズ・ベイは含まれていない。

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「プラザ」運営会社が「ハッピーソックス」の独占輸入販売権を取得

「プラザ(PLAZA)」を運営するスタイリングライフ・ホールディングス(以下、SLH)は、スウェーデンの靴下ブランド「ハッピーソックス(HAPPY SOCKS)」の独占輸入販売権をこのほど取得し、今冬から販売を開始する。直営店、「プラザ」各店やECで取扱う。

「ハッピーソックス」は08年に広告代理店出身のミカエル・ソーデリン氏と元グラフィックデザイナーのヴィクトル・テル氏の2名が立ち上げたブランドで、カラフルでポップなデザインが特徴のソックスが主力商品。世界40カ国以上で販売され、1万以上の販売拠点がある。

SLHは、同社の小売ビジネスとブランドセレクトの経験、ノウハウを活かして日本市場での認知をさらに拡大するとともに、「中長期戦略である『SLH VISION2030』の中で掲げている、新たな事業領域の拡大に向けて挑戦を続けていく」としている。

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「プラザ(PLAZA)」を運営するスタイリングライフ・ホールディングス(以下、SLH)は、スウェーデンの靴下ブランド「ハッピーソックス(HAPPY SOCKS)」の独占輸入販売権をこのほど取得し、今冬から販売を開始する。直営店、「プラザ」各店やECで取扱う。

「ハッピーソックス」は08年に広告代理店出身のミカエル・ソーデリン氏と元グラフィックデザイナーのヴィクトル・テル氏の2名が立ち上げたブランドで、カラフルでポップなデザインが特徴のソックスが主力商品。世界40カ国以上で販売され、1万以上の販売拠点がある。

SLHは、同社の小売ビジネスとブランドセレクトの経験、ノウハウを活かして日本市場での認知をさらに拡大するとともに、「中長期戦略である『SLH VISION2030』の中で掲げている、新たな事業領域の拡大に向けて挑戦を続けていく」としている。

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中川正七商店の中川会長が退任 「退任後は中小・中堅企業の支援に力を注ぐ」

工芸品や生活雑貨を扱う中川政七商店(奈良市、千石あや社長)の中川政七(本名:中川淳)代表取締役会長が2月28日付で退任した。中川氏は業界で初めての工芸をベースにしたSPA業態を確立したことで知られる。

中川氏は1974年生まれ。京都大学法学部卒業後2000年富士通入社。02年に中川政七商店に入社し08年に十三代社長に就任した。16年に「十三代 中川政七」襲名(退職とともに返上)し、18年から会長を務めた。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業や教育事業を立ち上げ尽力した。

中川氏は「退任後は工芸の枠を超えて中小・中堅企業の支援に力を注ぎ、社会が少しでも良い方向に進むよう微力ながら取り組んでいきたい」とコメントを発表した。

なお中川氏はNKG倉庫の代表取締役社長職も退任した。後任は千石あや中川政七商店代表取締役社長が兼任する。

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中川正七商店の中川会長が退任 「退任後は中小・中堅企業の支援に力を注ぐ」

工芸品や生活雑貨を扱う中川政七商店(奈良市、千石あや社長)の中川政七(本名:中川淳)代表取締役会長が2月28日付で退任した。中川氏は業界で初めての工芸をベースにしたSPA業態を確立したことで知られる。

中川氏は1974年生まれ。京都大学法学部卒業後2000年富士通入社。02年に中川政七商店に入社し08年に十三代社長に就任した。16年に「十三代 中川政七」襲名(退職とともに返上)し、18年から会長を務めた。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業や教育事業を立ち上げ尽力した。

中川氏は「退任後は工芸の枠を超えて中小・中堅企業の支援に力を注ぎ、社会が少しでも良い方向に進むよう微力ながら取り組んでいきたい」とコメントを発表した。

なお中川氏はNKG倉庫の代表取締役社長職も退任した。後任は千石あや中川政七商店代表取締役社長が兼任する。

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第9話:物流倉庫も巻き込み一歩前進! 次に見えた課題とは?

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

売れ行きに応じて自動で在庫管理できるシステム「ダイナミック・ターゲット・マネジメント」を考案してからの徹は、南関東倉庫のマネージャー、加地からのお墨付きを得て前途洋々。一方、あいは投資家である兄の蓮也に会い、徹が着手したテコ入れ策の好業績を報告していた。厳しい表情の蓮也が放った言葉とは......?

登場人物紹介

第九話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
SCRIPT:TAKEO AOKI
COMICS:YAMA AOTA

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第9話:物流倉庫も巻き込み一歩前進! 次に見えた課題とは?

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

売れ行きに応じて自動で在庫管理できるシステム「ダイナミック・ターゲット・マネジメント」を考案してからの徹は、南関東倉庫のマネージャー、加地からのお墨付きを得て前途洋々。一方、あいは投資家である兄の蓮也に会い、徹が着手したテコ入れ策の好業績を報告していた。厳しい表情の蓮也が放った言葉とは......?

登場人物紹介

第九話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
SCRIPT:TAKEO AOKI
COMICS:YAMA AOTA

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「ビオトープ」事業開始15年で4店目の神戸店 厳選した立地で「オンリーワンの店」を作る秘訣

ジュンは、大型路面店「ビオトープ神戸(BIOTOP KOBE)」をきょう8日に開く。場所は近代建築が点在する旧居留地。歴史を感じさせる空間に、ファッション、コスメ、生活雑貨を豊富にそろえ、さらには飲食店を併設した複合型セレクトショップとなる。ジュンの佐々木進社長と、クリエイティブディレクターである迫村岳・常務取締役の2人の仕掛け人は、どんな店を目指しているのか。神戸で聞いた。

新規出店は「まず物件ありき」で決める

WWD:「ビオトープ」は東京・白金(2010年開店)、大阪・南堀江(14年開店)、福岡(19年開店)に続く4店舗目。神戸を選んだ理由は?

迫村岳クリエイティブディレクター(以下、迫村):「ビオトープ」に関しては物件ありきで決めている。通常の業態であれば、まず東京に数店舗、次に大阪、続いて名古屋となるだろう。これまでの3店舗はいずれも大勢の人が行き交うターミナル立地でもなく、商業施設のテナントでもない。ユニークな建物や空間、周辺環境を重視して厳選してきた。今回の神戸も1958年竣工のビルにたまたま空きが出たため、出店を決めた。

佐々木進社長(以下、佐々木):神戸港に近いこのビルは海運商社のオフィスビルとして建てられたと聞いている。港町らしい独特の匂いがある。これまでの3店舗とは異なる個性があって面白い。

WWD:神戸のマーケットをどう分析しているか?

佐々木:旧居留地で当社は古くは「アーペーセー(A.P.C.)」(現在の運営は別の会社)を運営してきたし、13年からは「サタデーズNYC(SATURDAYS NYC)」を出店しており、エリアの特性は深く理解している。目的意識を持って来店されるお客さまが多く、一度ファンになれば繰り返し来てくださる。商圏には芦屋をはじめ富裕層のお客さまもたくさんいる。「ビオトープ」の世界観に共感してくださるはずだ。

迫村:神戸はもちろん、中・四国を含めて広範囲からお客さんを呼びたい。落ち着いた空間で、じっくり買い物していだけるよう空間設計した。仮に同じ服であっても「ビオトープ」の店内で手に取ると他店よりも魅力的に映る。そんな工夫をこれまでの3店舗で磨いてきた。ていねいに接客して、商品の背景まで伝える。

「物販」と「飲食」を両立する手法

WWD:神戸にもカフェ&レストランを併設した。

迫村:この区画は市民の憩いの場である東遊園地にも近く、休日には家族連れも多い。旧居留地は意外にカフェが少ないので、そんな方たちにも気軽に立ち寄ってもらえる場所になるだろう。メニュー開発は東京・日本橋の「ネキ」や世田谷代田の「ソングブック」を手掛ける西恭平さんにお願いした。ワインも充実しており、昼も夜も楽しめる。

佐々木:同じ店で物販と飲食を両立させるのは、けっこう難しい。「服を買う」と「食事をする」はモチベーションが違うから、無理に一緒にすると失敗する。でも「ビオトープ」は既存の3店舗とも相乗効果を生んでいる。

WWD:コツはあるのか?

佐々木:「ビオトープ」の場合は物販と飲食のゾーニングを一体化しずぎるとダメ、明確に区切りすぎてもダメ。言葉で表現するのは難しいけど、適度なゾーニングの塩梅がある。「サタデーズNYC」や「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」、昨年12月に表参道に開いた「V.A.」など、当社は物販と飲食の併設店をいくつか運営しているが、それぞれ業態によってやり方は異なる。

迫村:飲食の併設は「ビオトープ」の強みだ。服だけが目的であれば、来店の頻度が限られてしまう。でも居心地の良い空間で食事をしたりお茶をしたりするため立ち寄れる店であれば、お客さまは頻繁に来店してくれる。ついでに服や生活雑貨を手に取る。

WWD:秋に出店予定の札幌はどんな店になる?

迫村:札幌の円山公園付近になる。広大な緑が広がる円山公園は札幌市民のオアシスであり、周辺は閑静な住宅街だ。ここもいわゆるショッピングエリアではない。既存の店舗とはまた違ったユニークな店になるだろう。

WWD:事業開始から15年で、神戸は4店目。現在の「ビオトープ」の売上高はどれくらいに成長しているのか?

佐々木:具体的には言えないが、神戸を含めた4店舗とEC(ネット通販)で30億円が見えてきた。中長期的には7〜8店舗とECで50億円は見込めるだろう。ただ、迫村が述べた通り「ビオトープ」の出店は物件ありき。性急な成長は求めない。厳選した立地とオンリーワンの店作りで、わざわざ訪れるに値する「ビオトープ」であり続ける。

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「ビオトープ」事業開始15年で4店目の神戸店 厳選した立地で「オンリーワンの店」を作る秘訣

ジュンは、大型路面店「ビオトープ神戸(BIOTOP KOBE)」をきょう8日に開く。場所は近代建築が点在する旧居留地。歴史を感じさせる空間に、ファッション、コスメ、生活雑貨を豊富にそろえ、さらには飲食店を併設した複合型セレクトショップとなる。ジュンの佐々木進社長と、クリエイティブディレクターである迫村岳・常務取締役の2人の仕掛け人は、どんな店を目指しているのか。神戸で聞いた。

新規出店は「まず物件ありき」で決める

WWD:「ビオトープ」は東京・白金(2010年開店)、大阪・南堀江(14年開店)、福岡(19年開店)に続く4店舗目。神戸を選んだ理由は?

迫村岳クリエイティブディレクター(以下、迫村):「ビオトープ」に関しては物件ありきで決めている。通常の業態であれば、まず東京に数店舗、次に大阪、続いて名古屋となるだろう。これまでの3店舗はいずれも大勢の人が行き交うターミナル立地でもなく、商業施設のテナントでもない。ユニークな建物や空間、周辺環境を重視して厳選してきた。今回の神戸も1958年竣工のビルにたまたま空きが出たため、出店を決めた。

佐々木進社長(以下、佐々木):神戸港に近いこのビルは海運商社のオフィスビルとして建てられたと聞いている。港町らしい独特の匂いがある。これまでの3店舗とは異なる個性があって面白い。

WWD:神戸のマーケットをどう分析しているか?

佐々木:旧居留地で当社は古くは「アーペーセー(A.P.C.)」(現在の運営は別の会社)を運営してきたし、13年からは「サタデーズNYC(SATURDAYS NYC)」を出店しており、エリアの特性は深く理解している。目的意識を持って来店されるお客さまが多く、一度ファンになれば繰り返し来てくださる。商圏には芦屋をはじめ富裕層のお客さまもたくさんいる。「ビオトープ」の世界観に共感してくださるはずだ。

迫村:神戸はもちろん、中・四国を含めて広範囲からお客さんを呼びたい。落ち着いた空間で、じっくり買い物していだけるよう空間設計した。仮に同じ服であっても「ビオトープ」の店内で手に取ると他店よりも魅力的に映る。そんな工夫をこれまでの3店舗で磨いてきた。ていねいに接客して、商品の背景まで伝える。

「物販」と「飲食」を両立する手法

WWD:神戸にもカフェ&レストランを併設した。

迫村:この区画は市民の憩いの場である東遊園地にも近く、休日には家族連れも多い。旧居留地は意外にカフェが少ないので、そんな方たちにも気軽に立ち寄ってもらえる場所になるだろう。メニュー開発は東京・日本橋の「ネキ」や世田谷代田の「ソングブック」を手掛ける西恭平さんにお願いした。ワインも充実しており、昼も夜も楽しめる。

佐々木:同じ店で物販と飲食を両立させるのは、けっこう難しい。「服を買う」と「食事をする」はモチベーションが違うから、無理に一緒にすると失敗する。でも「ビオトープ」は既存の3店舗とも相乗効果を生んでいる。

WWD:コツはあるのか?

佐々木:「ビオトープ」の場合は物販と飲食のゾーニングを一体化しずぎるとダメ、明確に区切りすぎてもダメ。言葉で表現するのは難しいけど、適度なゾーニングの塩梅がある。「サタデーズNYC」や「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」、昨年12月に表参道に開いた「V.A.」など、当社は物販と飲食の併設店をいくつか運営しているが、それぞれ業態によってやり方は異なる。

迫村:飲食の併設は「ビオトープ」の強みだ。服だけが目的であれば、来店の頻度が限られてしまう。でも居心地の良い空間で食事をしたりお茶をしたりするため立ち寄れる店であれば、お客さまは頻繁に来店してくれる。ついでに服や生活雑貨を手に取る。

WWD:秋に出店予定の札幌はどんな店になる?

迫村:札幌の円山公園付近になる。広大な緑が広がる円山公園は札幌市民のオアシスであり、周辺は閑静な住宅街だ。ここもいわゆるショッピングエリアではない。既存の店舗とはまた違ったユニークな店になるだろう。

WWD:事業開始から15年で、神戸は4店目。現在の「ビオトープ」の売上高はどれくらいに成長しているのか?

佐々木:具体的には言えないが、神戸を含めた4店舗とEC(ネット通販)で30億円が見えてきた。中長期的には7〜8店舗とECで50億円は見込めるだろう。ただ、迫村が述べた通り「ビオトープ」の出店は物件ありき。性急な成長は求めない。厳選した立地とオンリーワンの店作りで、わざわざ訪れるに値する「ビオトープ」であり続ける。

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アディダス、24年は黒字転換 業績好調なるも25年は“トランプ関税”を警戒

アディダス(ADIDAS)の2024年12月期決算は、売上高が前期比10.5%増の236億8300万ユーロ(約3兆6945億円)、営業利益はおよそ5倍(同398.9%増)の13億3700万ユーロ(約2085億円)、純損益は前年の1400万ユーロ(約21億円)の赤字から8億3200万ユーロ(約1297億円)の黒字に転換した。

カテゴリー別での売上高は、売り上げ全体の59%を占めるフットウエアが同15.7%増の139億7500万ユーロ(約2兆1801億円)と業績をけん引。同じく35%を占めるアパレルは同4.6%増の82億1600万ユーロ(約1兆2816億円)、アクセサリー&ギアは同0.7%増の14億9900万ユーロ(約2338億円)だった。

地域別の売上高は、同社の最大の市場である欧州が同19.8%増の75億5100万ユーロ(約1兆1779億円)、中国(大中華圏)は同8.4%増の34億5900万ユーロ(約5396億円)、新興市場は同16.1%増の33億1000万ユーロ(約5163億円)、南米は同21.0%増の27億7200万ユーロ(約4324億円)、日本と韓国は同3.6%増の13億3900万ユーロ(約2088億円)といずれも増収だった。一方、同社にとって欧州に次ぐ市場である北米は、「イージー(YEEZY)」事業の終了や卸の軟調により、同1.7%減の51億2800万ユーロ(約7999億円)と減収。しかし、10~12月期(第4四半期)には回復し、2ケタ成長となっている。

「イージー」の在庫販売は24年で完了

アディダスは22年10月、カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)の反ユダヤ主義的な発言を含むヘイトスピーチや相次ぐ問題行動を受けて関係を解消し、約7年半にわたって共に手掛けていた「イージー」事業も同時に終了した。これに伴って発生したおよそ12億ユーロ(約1872億円)相当の在庫の一部を、23年5月から2回に分けて販売。残りの在庫は24年度に全て販売し、この分の売り上げはおよそ6億5000万ユーロ(約1014億円)となった。なお、そのうち2億6000万ユーロ(約405億円)程度を、同社が設立したヘイトクライムなどの被害者支援を行うチャリティー団体に寄付したという。

CEOのコメント

23年1月に就任したビョルン・グルデン(Bjorn Gulden)最高経営責任者(CEO)は、「24年は2ケタ増収を実現したほか、営業利益が前年から10億ユーロ(約1560億円)以上増えるなど、予想を超える結果となりうれしく思っている。現在の経営体制となって2年が経つが、23年は立て直しに集中し、24年にはその成果が表れてきた。改善すべき点はまだ沢山あるものの、尽力してきたチームを誇らしく思う。マクロ経済上の先行き不透明感が続いているが、“ローカルマインドを持ったグローバルカンパニー”として機敏に対応し、25年もさらに成長できるものと確信している」と語った。

25年は米政府による関税の引き上げを警戒

一方、同社は25年の見通しとして、売り上げの成長率は現地通貨ベースで1ケタ台後半、営業利益は17億〜18億ユーロ(約2652億〜2808億円)と発表。24年の好業績を踏まえるとやや保守的な数字だが、グルデンCEOによれば、2ケタ成長も視野に入れているものの、地政学上の先行き不透明感が継続していることや、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による関税の引き上げを警戒した結果だという。「上り調子だった24年第4四半期に続き、25年も好調な滑り出しとなっているが、社会情勢が非常に不安定であることを加味せざるを得ない」と説明した。同社は数年前からサプライチェーンの分散化に取り組んでおり、調達先をこれまでの中国からベトナムやインドネシアなどにも拡大している。このため、対中関税の引き上げによる影響は以前より抑制できる見通しだが、中国以外の国にも関税の引き上げが適用される可能性があり、実際の影響については「予想のしようがなく、その都度、機敏かつ柔軟に対応するしかない」と話した。

なお、同社は1月、ドイツ本社で最大500人規模の人員整理を行うことを発表。これはコスト削減のためでなく、持続的な成長に向けた組織の合理化を図ることが目的だが、こうした機敏性を高めるためでもあるという。また、同社はデザインチームをドイツ本社に加えて、米ロサンゼルスとポートランド、中国・上海、そして東京の拠点に置いているほか、生産工場も中国市場向けのものは中国に、インド市場向けのものはインドに設立するなど、主要市場におけるローカライズ戦略を推し進めている。

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映画「ケナは韓国が嫌いで」が描く「韓国社会の生きづらさ」 チャン・ゴンジェ監督インタビュー 

韓国で2015年に刊行され、ベストセラーとなった小説「韓国が嫌いで」を原作に、現代の韓国社会を舞台に生まれ育った場所で生きづらさを抱える女性が、海外で人生を模索する姿を描いた映画「ケナは韓国が嫌いで」が3月7日から日本でも公開される。

ストーリーは、ソウル郊外の小さな団地で家族と暮らす28歳の会社員ケナは、生まれ育った韓国に嫌気がさし、一念発起して単身ニュージーランドへと移り住む。そこでかけがえのない友人と出会い、新しい生活を手にしたケナは自分の居場所を見つけていく……というもの。

監督は「第2のホン・サンス」や「韓国の是枝裕和」と称され、奈良県を舞台にした映画「ひと夏のファンタジア」(15年/プロデュース:河瀨直美)でも知られるチャン・ゴンジェが務める。主人公ケナを演じるのは、ポン・ジュノ監督「グエムル-漢江の怪物-」(06年)に中学生の娘役で出演し、天才子役として鮮烈な印象を残したコ・アソン。

今回チャン監督に本作を通して描いた韓国社会の生きづらさや日本と韓国の映画業界の違いについて、話を聞いた。

PROFILE: チャン・ゴンジェ(장건재、Jang Kun-jae)/映画監督

PROFILE: 1977年生まれ。韓国映画アカデミー撮影専攻卒業。長編デビュー作「十八才」(2009年)でバンクーバー国際映画祭、ペサロ国際映画祭、ソウル独立映画祭などで受賞し、その後「眠れぬ夜」(12年)は全州国際映画祭大賞および観客賞、エジンバラ映画祭、ナント三大陸映画祭などで受賞。日本の奈良を舞台に撮影した日韓合作映画「ひと夏のファンタジア」(14年)は、釜山国際映画祭、ムジュ山里映画祭、韓国評論家協会賞、イタリア・アジアティカ映画祭などで受賞し、韓国独立映画協会の「今年の独立映画」に選ばれる。濱口竜介監督の著書「カメラの前で演じること」(22年)の韓国語版出版も手掛ける。

「ケナは韓国が嫌いで」で描きたかったこと

——チャン・ガンミョンさんの「韓国が嫌いで」という小説を映画にしようと思ったきっかけについて教えてください。

チャン・ゴンジェ(以下、チャン):2015年くらいだったんですが、私自身が「こんな状態で仕事をしていたら、いつか死んでしまうのではないか」という思いを抱きながら暮らしていたことがあったんです。そんなとき、この小説を読んで、ここにも同じような人がいたんだと思って、それで映画化したいと思いました。

——映画化にあたって、実際に取材をされながら撮られたそうですが、取材で何を感じられましたか?

チャン:韓国というのは、女性が生きていくには疲れる国だなと感じました。そして、変化を望む人は冒険を試みるんですけれども、変化を望まない人は秩序を守ろうとしているんだなと思いました。

——シナリオを何度も書き直したとも聞きました。どのような部分を書き直したんでしょうか?

チャン:胸の痛む話なんですが、投資してもらうのに時間がかかってしまったんです。その結果、独立映画として制作をすることになり、公共機関に制作費の申請をしました。その審査に受かるために、シナリオを書き直すといった試みを行いました。長い時間がかかってしまいましたが、この作品を必ず作りたいという思いはありました。

——そんな中、ここは絶対に変えられないと思ったところはありますか?

チャン:ニュージーランドでの地震のシーン、キョンユンのシーン、幸せの伝道師チェ・ボクヒのシーン、そしてケナとインドネシアから来た男性との会話のシーンは必ず描きたいなと思いました。

——インドネシアの男性との会話は、各国のアジア人の留学の背景にも、格差があるということが見えて興味深かったです。ケナの友人で、大学を卒業してもまだ試験勉強を続けているキュンユン、「お金より幸せを集めろ」という考え方をメディアで広めている幸福の伝道師チェ・ボクヒ、ニュージーランドで出会う韓国からの移民の家族のシーンについては、どのような狙いがあったのでしょうか。

チャン:幸福の伝道師に関しては、韓国では、ここ数年の間にあの伝道師のように、大衆に向かってなんらかの講演をする市場が大きくなっているんです。あのシーンは、人々がオピニオンリーダーの言葉に従うというような心理を反映しているんですけれども、私はそのような構造について、批判的な姿勢を持っていまして、それでぜひ、このような人物を登場させたいなと思いました。

ニュージーランドでケナが出会う家族、特に父親のサンウに関しては、韓国では中年の男性もケナのように韓国を去る方が多いんですね。ほとんどの方は移民として韓国を出ていくんですけど、なかなか適応することができない。取材を通して、そのような人の存在を知ったことで、このキャラクターが出来上がりました。

いつまでも試験勉強をしているキョンユンなんですけれども、私自身、非常に感情移入をしている人物です。キョンユンという人物は、最後までやれば必ずかなうと思っている人なんですね。そして、現実でも、彼の信じているようなストーリーが韓国社会では支配的なんです。でも私はそのようにできなくてもいいと思っているんです。ケナとキョンユンも、そこまで親しい友人というわけではないんですね。でもときどき思い出すくらいの。

——ときどき思い出す彼は、韓国の競争社会の中で諦めきれず、でも実は疲弊してしまっている人を象徴しているわけですね。ある意味、ケナの次に重要な人物のようにも思えました。監督自身は今の韓国社会をどう見ていますか?

チャン:韓国というのは、多様性というものに対しての包容力が小さいと思います。性別、ジェンダー、性的志向、地域、学歴、人種、そういったものに対しての差別、嫌悪、排除がまん延していると思います。以前よりはおおっぴらに嫌悪することは減ってきているかもしれないけれど、隠密に巧みに今も続いていると思います。

——監督は、表現活動をする上で、ケナのように外に出て行こうという気持ちはありますか?

チャン:そういったものを主張するために作った映画ではないんですが、私もケナのように冒険したい、外に出て行きたいという憧れはあります。僕自身は、行動に移せない人間なので、今回ケナを通して表現したいと思いました。

日本と韓国の映画業界について

——監督は、日本映画や日本人監督がお好きということで、特に濱口竜介監督の映画がお好きだそうですね。

チャン:今、北東アジアにおいて一番重要な方だと思っています。私は彼の「寝ても覚めても」(韓国のタイトルは「아사코、アサコ」」が韓国で公開されてから見始めました。初期の作品も好きで、他の監督とは何かが違うなとずっと感じていました。監督の映画には、異物感や違和感のようなものがあって、あるときに予想もしなかったことが起こるんですけど、そういう要素が好きだなと感じています。最近は、山中瑶子監督のような日本の90年代生まれの監督にも関心を持っています。

――監督が日本映画に感じる特徴とはどんなところでしょうか?

チャン:独立映画については、制作費の調達に違いがあると感じます。韓国では独立映画は公共機関の支援によって作られますが、日本はもっと自主的につくられているなと思います。公共機関の支援なく、資金調達の多様化が存在しているように感じます。

——日本の側からすると、韓国で公共機関が資金を出すということは良い仕組みであるとも感じていたのですが、そうとも言えないところが、それ以外にもあるのでしょうか。

チャン:日本には、黒沢清監督、三宅唱監督、濱口竜介監督などが、同時代に存在していて、その上、新しい監督も次々と出てきているように感じています。韓国では、パク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督の後続の世代が力を持っていない、そういう違いがあると思います。また、韓国の投資家が韓国の映画市場に魅力を感じていないと言うこともあると思います。というのも、韓国の観客が今、あまり映画館に足を運んでいなくて、コロナ禍以降の市場がまだ回復していないんです。

――日本からすると、「パラサイト 半地下の家族」が世界を席巻したり、近年も「ソウルの春」のような映画が1000万人を超えてヒットしたりと、韓国映画の発展をまぶしく見ているところはあるんですが、そこだけ見ていたのでは見えない部分があるということなのでしょうか。

チャン:そうなんです。大きくヒットした映画以外の収益はマイナスのものが多いんです。

——そんな中、監督はこれからの韓国映画界で、どのように活動していこうとお考えでしょうか。

チャン:私としては、映画の規模は重要ではなく、どのような映画を作りたいかが重要であると思っていて、今後も規模の大小に関わらず、自分の作りたい映画を作っていければと思います。

——現在、関心のあるテーマというのはありますか?

チャン:先ほども少し申し上げたんですけど、やっぱり多様化に対する包容力不足を感じるし、これが正しいあり方であり、これは正しくないあり方であるとすぐに分けるような社会について考える映画を作ってみたいと思っています。そういった話を、深刻に扱うのではなく、大衆性のある親しみの持てる雰囲気の中に描きたいという思いがあります。

——それは「ケナは韓国が嫌いで」でも感じました。監督は去年、映画祭で、菊地成孔さんとトークイベントをされていました。菊地さんは、監督のことをホン・サンス監督になぞらえらえて語られていましたが、それはどのように受け止められていますか?

チャン:偉大な監督なので、引き合いに出してもらうなんてとんでもないことだと思います。でも、そう言ってもらって、とてもうれしく思いました。先輩の映画を尊敬していますし、継承していかなくてはいけないと思っています。でも、同時に打ち壊してもいかないといけないとも思っています。先輩の映画を超えるものを作ると言うよりも、先輩が作っていないものを作ったり、別の道を模索したり、新しいものを作っていくべきだなと考えています。

——韓国や日本のようなアジアだけでなく、アメリカを見ても、多様性への許容力は弱まっているような気がしています。そんな今、この映画をどのような人に見てほしいと思われますか?

チャン:そういった特定の観客層のことを考えながら作った映画ではないんです。でも、大人世代に何かを感じてほしいとは思いました。私自身もそうなんですけど、大人の世代、中年の世代は、ケナのような若い世代と比べて、そこまで韓国社会に生きづらさを感じていないんじゃないかと思うんです。だから、大人の世代に対して、問いかけていかないといけないと思っています。若い人たちがなぜ韓国を去ろうとしているのかということについて、大人の世代の人たちにもう一度考えてほしいなと思っています。

映画「ケナは韓国が嫌いで」

■「ケナは韓国が嫌いで」
3月7日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
監督・脚本 :チャン・ゴンジェ
原作:チャン・ガンミョン著「韓国が嫌いで」
出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム、イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョン他
韓国劇場公開日:2024年8月28日
配給:アニモプロデュース
2024年/韓国/韓国語・英語/107 分/カラー/DCP/
https://animoproduce.co.jp/bihk/
©︎2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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映画「ケナは韓国が嫌いで」が描く「韓国社会の生きづらさ」 チャン・ゴンジェ監督インタビュー 

韓国で2015年に刊行され、ベストセラーとなった小説「韓国が嫌いで」を原作に、現代の韓国社会を舞台に生まれ育った場所で生きづらさを抱える女性が、海外で人生を模索する姿を描いた映画「ケナは韓国が嫌いで」が3月7日から日本でも公開される。

ストーリーは、ソウル郊外の小さな団地で家族と暮らす28歳の会社員ケナは、生まれ育った韓国に嫌気がさし、一念発起して単身ニュージーランドへと移り住む。そこでかけがえのない友人と出会い、新しい生活を手にしたケナは自分の居場所を見つけていく……というもの。

監督は「第2のホン・サンス」や「韓国の是枝裕和」と称され、奈良県を舞台にした映画「ひと夏のファンタジア」(15年/プロデュース:河瀨直美)でも知られるチャン・ゴンジェが務める。主人公ケナを演じるのは、ポン・ジュノ監督「グエムル-漢江の怪物-」(06年)に中学生の娘役で出演し、天才子役として鮮烈な印象を残したコ・アソン。

今回チャン監督に本作を通して描いた韓国社会の生きづらさや日本と韓国の映画業界の違いについて、話を聞いた。

PROFILE: チャン・ゴンジェ(장건재、Jang Kun-jae)/映画監督

PROFILE: 1977年生まれ。韓国映画アカデミー撮影専攻卒業。長編デビュー作「十八才」(2009年)でバンクーバー国際映画祭、ペサロ国際映画祭、ソウル独立映画祭などで受賞し、その後「眠れぬ夜」(12年)は全州国際映画祭大賞および観客賞、エジンバラ映画祭、ナント三大陸映画祭などで受賞。日本の奈良を舞台に撮影した日韓合作映画「ひと夏のファンタジア」(14年)は、釜山国際映画祭、ムジュ山里映画祭、韓国評論家協会賞、イタリア・アジアティカ映画祭などで受賞し、韓国独立映画協会の「今年の独立映画」に選ばれる。濱口竜介監督の著書「カメラの前で演じること」(22年)の韓国語版出版も手掛ける。

「ケナは韓国が嫌いで」で描きたかったこと

——チャン・ガンミョンさんの「韓国が嫌いで」という小説を映画にしようと思ったきっかけについて教えてください。

チャン・ゴンジェ(以下、チャン):2015年くらいだったんですが、私自身が「こんな状態で仕事をしていたら、いつか死んでしまうのではないか」という思いを抱きながら暮らしていたことがあったんです。そんなとき、この小説を読んで、ここにも同じような人がいたんだと思って、それで映画化したいと思いました。

——映画化にあたって、実際に取材をされながら撮られたそうですが、取材で何を感じられましたか?

チャン:韓国というのは、女性が生きていくには疲れる国だなと感じました。そして、変化を望む人は冒険を試みるんですけれども、変化を望まない人は秩序を守ろうとしているんだなと思いました。

——シナリオを何度も書き直したとも聞きました。どのような部分を書き直したんでしょうか?

チャン:胸の痛む話なんですが、投資してもらうのに時間がかかってしまったんです。その結果、独立映画として制作をすることになり、公共機関に制作費の申請をしました。その審査に受かるために、シナリオを書き直すといった試みを行いました。長い時間がかかってしまいましたが、この作品を必ず作りたいという思いはありました。

——そんな中、ここは絶対に変えられないと思ったところはありますか?

チャン:ニュージーランドでの地震のシーン、キョンユンのシーン、幸せの伝道師チェ・ボクヒのシーン、そしてケナとインドネシアから来た男性との会話のシーンは必ず描きたいなと思いました。

——インドネシアの男性との会話は、各国のアジア人の留学の背景にも、格差があるということが見えて興味深かったです。ケナの友人で、大学を卒業してもまだ試験勉強を続けているキュンユン、「お金より幸せを集めろ」という考え方をメディアで広めている幸福の伝道師チェ・ボクヒ、ニュージーランドで出会う韓国からの移民の家族のシーンについては、どのような狙いがあったのでしょうか。

チャン:幸福の伝道師に関しては、韓国では、ここ数年の間にあの伝道師のように、大衆に向かってなんらかの講演をする市場が大きくなっているんです。あのシーンは、人々がオピニオンリーダーの言葉に従うというような心理を反映しているんですけれども、私はそのような構造について、批判的な姿勢を持っていまして、それでぜひ、このような人物を登場させたいなと思いました。

ニュージーランドでケナが出会う家族、特に父親のサンウに関しては、韓国では中年の男性もケナのように韓国を去る方が多いんですね。ほとんどの方は移民として韓国を出ていくんですけど、なかなか適応することができない。取材を通して、そのような人の存在を知ったことで、このキャラクターが出来上がりました。

いつまでも試験勉強をしているキョンユンなんですけれども、私自身、非常に感情移入をしている人物です。キョンユンという人物は、最後までやれば必ずかなうと思っている人なんですね。そして、現実でも、彼の信じているようなストーリーが韓国社会では支配的なんです。でも私はそのようにできなくてもいいと思っているんです。ケナとキョンユンも、そこまで親しい友人というわけではないんですね。でもときどき思い出すくらいの。

——ときどき思い出す彼は、韓国の競争社会の中で諦めきれず、でも実は疲弊してしまっている人を象徴しているわけですね。ある意味、ケナの次に重要な人物のようにも思えました。監督自身は今の韓国社会をどう見ていますか?

チャン:韓国というのは、多様性というものに対しての包容力が小さいと思います。性別、ジェンダー、性的志向、地域、学歴、人種、そういったものに対しての差別、嫌悪、排除がまん延していると思います。以前よりはおおっぴらに嫌悪することは減ってきているかもしれないけれど、隠密に巧みに今も続いていると思います。

——監督は、表現活動をする上で、ケナのように外に出て行こうという気持ちはありますか?

チャン:そういったものを主張するために作った映画ではないんですが、私もケナのように冒険したい、外に出て行きたいという憧れはあります。僕自身は、行動に移せない人間なので、今回ケナを通して表現したいと思いました。

日本と韓国の映画業界について

——監督は、日本映画や日本人監督がお好きということで、特に濱口竜介監督の映画がお好きだそうですね。

チャン:今、北東アジアにおいて一番重要な方だと思っています。私は彼の「寝ても覚めても」(韓国のタイトルは「아사코、アサコ」」が韓国で公開されてから見始めました。初期の作品も好きで、他の監督とは何かが違うなとずっと感じていました。監督の映画には、異物感や違和感のようなものがあって、あるときに予想もしなかったことが起こるんですけど、そういう要素が好きだなと感じています。最近は、山中瑶子監督のような日本の90年代生まれの監督にも関心を持っています。

――監督が日本映画に感じる特徴とはどんなところでしょうか?

チャン:独立映画については、制作費の調達に違いがあると感じます。韓国では独立映画は公共機関の支援によって作られますが、日本はもっと自主的につくられているなと思います。公共機関の支援なく、資金調達の多様化が存在しているように感じます。

——日本の側からすると、韓国で公共機関が資金を出すということは良い仕組みであるとも感じていたのですが、そうとも言えないところが、それ以外にもあるのでしょうか。

チャン:日本には、黒沢清監督、三宅唱監督、濱口竜介監督などが、同時代に存在していて、その上、新しい監督も次々と出てきているように感じています。韓国では、パク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督の後続の世代が力を持っていない、そういう違いがあると思います。また、韓国の投資家が韓国の映画市場に魅力を感じていないと言うこともあると思います。というのも、韓国の観客が今、あまり映画館に足を運んでいなくて、コロナ禍以降の市場がまだ回復していないんです。

――日本からすると、「パラサイト 半地下の家族」が世界を席巻したり、近年も「ソウルの春」のような映画が1000万人を超えてヒットしたりと、韓国映画の発展をまぶしく見ているところはあるんですが、そこだけ見ていたのでは見えない部分があるということなのでしょうか。

チャン:そうなんです。大きくヒットした映画以外の収益はマイナスのものが多いんです。

——そんな中、監督はこれからの韓国映画界で、どのように活動していこうとお考えでしょうか。

チャン:私としては、映画の規模は重要ではなく、どのような映画を作りたいかが重要であると思っていて、今後も規模の大小に関わらず、自分の作りたい映画を作っていければと思います。

——現在、関心のあるテーマというのはありますか?

チャン:先ほども少し申し上げたんですけど、やっぱり多様化に対する包容力不足を感じるし、これが正しいあり方であり、これは正しくないあり方であるとすぐに分けるような社会について考える映画を作ってみたいと思っています。そういった話を、深刻に扱うのではなく、大衆性のある親しみの持てる雰囲気の中に描きたいという思いがあります。

——それは「ケナは韓国が嫌いで」でも感じました。監督は去年、映画祭で、菊地成孔さんとトークイベントをされていました。菊地さんは、監督のことをホン・サンス監督になぞらえらえて語られていましたが、それはどのように受け止められていますか?

チャン:偉大な監督なので、引き合いに出してもらうなんてとんでもないことだと思います。でも、そう言ってもらって、とてもうれしく思いました。先輩の映画を尊敬していますし、継承していかなくてはいけないと思っています。でも、同時に打ち壊してもいかないといけないとも思っています。先輩の映画を超えるものを作ると言うよりも、先輩が作っていないものを作ったり、別の道を模索したり、新しいものを作っていくべきだなと考えています。

——韓国や日本のようなアジアだけでなく、アメリカを見ても、多様性への許容力は弱まっているような気がしています。そんな今、この映画をどのような人に見てほしいと思われますか?

チャン:そういった特定の観客層のことを考えながら作った映画ではないんです。でも、大人世代に何かを感じてほしいとは思いました。私自身もそうなんですけど、大人の世代、中年の世代は、ケナのような若い世代と比べて、そこまで韓国社会に生きづらさを感じていないんじゃないかと思うんです。だから、大人の世代に対して、問いかけていかないといけないと思っています。若い人たちがなぜ韓国を去ろうとしているのかということについて、大人の世代の人たちにもう一度考えてほしいなと思っています。

映画「ケナは韓国が嫌いで」

■「ケナは韓国が嫌いで」
3月7日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
監督・脚本 :チャン・ゴンジェ
原作:チャン・ガンミョン著「韓国が嫌いで」
出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム、イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョン他
韓国劇場公開日:2024年8月28日
配給:アニモプロデュース
2024年/韓国/韓国語・英語/107 分/カラー/DCP/
https://animoproduce.co.jp/bihk/
©︎2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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YKKが新中計、キモは「DX」「ワクワク」「社員満足度の向上」

ファスナー大手のYKKは3月5日、2025〜28年の中期経営計画を発表した。「ワクワクする商品開発」「DXによるスマートファクトリー」「社員のエンゲージメント」という4つを柱に据える。前中計で進めてきた定年撤廃やコストダウン&納期改革、ファスナー機開発をさらに一歩進め、25年度の設備投資は前年から倍増の803億円、25〜28年度の4年で2470億円を投じ、全世界的に設備の更新&増設を行う。大谷裕明・社長は「アジアを中心に設備を増強する。この中計の期間中には黒部事業所で24時間365日稼働するスマートファクトリーを実現させたい」と意気込む。

YKKは技術の総本山と位置づける黒部事業所で全世界のファスナー工場に供給するファスナー機械の開発と生産を行っており、前中計ではこれまで画一的だったファスナー機械の考え方を改め、地域や用途に応じた新型機の開発を行ってきた。25年度はこうした新型機を中国や東南アジアに投入するほか、欧州や米国でも工場の集約、設備の更新を行う。

また、地域で異なっていた業務や商品コードを、全世界的に統一・標準化する業務オペレーション改革を進めながら、デジタルテクノロジーも積極的に導入。取引先と生産現場をダイレクトにつなぎ、商品や生産状況を共有するDXにも取り組む。

また、黒部事業所ではこの24年10〜12月期から一部の生産ラインで、無停止・無人生産をスタート。今後4年で、24時間365日稼働するスマートファクトリーの基盤を確立させる考え。「現時点での課題は検品。AIなども導入し、画像検査による品質安定化を早く確立させる」(大谷社長)。

こうした積極的なDXの導入や業務改革の背景にあるのは慢性的な人手不足だ。働きやすさや働き方改革に加え、新しい中計ではやりがいやモチベーションの向上に加え、海外現地スタッフの登用と育成、国際間異動も見据えた人材育成に力を入れる。

25年3月期は2年振りのファスナー販売100億本超え

2025年3月期の業績見通しは、売上高が前期比14.7%増の4351億円、営業利益が同53.3%増の511億円、ファスナー販売数量が同13.2%増の101.1億本だった。ファスナー販売量が100億本を超えるのは、23年3月期以来2年ぶり。欧米市場の不振で流通在庫過多だった前年の状況が、徐々に解消した上、中国やインドを中心とした内需向けの新規顧客の開拓が奏功した。この数年「シーイン」「TEMU」といった新興企業の開拓にも取り組んでおり、中国エリアは過去最高の売り上げだったという。

 26年3月期は、売上高1.4%増の4413億円、営業利益は同3.7%増の529億円、ファスナー販売数量は4.5%増の105.6億本を見込む。設備投資は前年から倍増となる803億円で、内訳は中国・アジア・中東・アフリカで541億円、日本・アメリカ大陸・欧州で249億円になる。

 中計の最終年度となる2029年3月期は売上高5347億円、営業利益807億円、ファスナー販売は124.1億本を計画。4カ年の設備投資は2470億円を計画する。ただ、この設備投資の中には、スマートファクトリーやDXによる最新デジタル機器は含まれておらず、DXの進捗によってはさらに積み増す考え。

グループでは初の売上高1兆円超え

AP(サッシ・窓)も含めたYKKグループ全体では、25年3月期で初の売上高1兆円を達成する見通し。グループ全体の業績は売上高が前期比9.1%増の1兆36億円、営業利益が同13.6%増の627億円の見込み。

経営幹部も一新

YKKは4月から経営幹部が一新する。4月1日付で、2011年から同社を率いてきた猿丸雅之会長が退任し、代表権のある会長に大谷裕明・社長、新社長に松嶋耕一・副社長が昇格する。副社長には執行役員営業本部長の敷田透氏が就く。また、副社長に次ぐポジションとして上席常務執行役員職を新設し、九十九好司・商品戦略部長、米島久嗣・生産技術部長、松本光司・経営企画室長、坪島広和・中国総代表の5人が就任する。

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プラダ グループ、24年は15%増収と好調 「ヴェルサーチェ」買収のうわさについては明言を避ける

プラダ グループ(PRADA GROUP以下、プラダ)の2024年12月期決算は、売上高が前期比14.9%増の54億3200億ユーロ(約8473億円)、調整後EBIT(利払前・税引前利益)は同20.5%増の12億8000万ユーロ(約1996億円)、純利益は同25.0%増の8億3900万ユーロ(約1308億円)の増収増益だった。営業(EBIT)利益率も、23年度の22.5%から23.6%へと拡大した。

販売チャネル別では、全体の89.3%を占める小売りの売上高が同15.7%増の48億4900万ユーロ(約7564億円)、卸は同6.5%増の4億6100万ユーロ(約719億円)だった。

地域別での売上高(小売り、以下同)は、地元客と観光客の両方が好調だった欧州が同16.8%増の15億3200万ユーロ(約2389億円)、10~12月期(第4四半期)に中国市場が回復したアジア太平洋地域(日本を除く)は同10.9%増の16億400万ユーロ(約2502億円)だった。円安の影響によるインバウンド需要が引き続き旺盛な日本は同35.5%増の6億5600万ユーロ(約1023億円)、観光客が増加した中東は同26.1%増の2億2700万ユーロ(約354億円)といずれも大幅増収。下半期に北米が回復した南北アメリカは同8.2%増の8億3000万ユーロ(約1294億円)だった。

ブランド別の売り上げでは、主力の「プラダ(PRADA)」の売上高は同2.2%増の35億6300万ユーロ(約5558億円)と堅調、勢いが続く「ミュウミュウ(MIU MIU)」は同89.2%増の12億2800万ユーロ(約1915億円)と非常に好調だった。

会長とCEOのコメント

パトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)会長兼エグゼクティブ・ディレクターは、「厳しい環境下においても、引き続き市場全般を上回る業績を上げられたことをうれしく思う。これは高い品質、商品イノベーション、クラフツマンシップの追求、そして時代を読むユニークな能力に裏打ちされた当社の傘下ブランドの強みが発揮された結果だ。また、会社組織も数年をかけて強化しており、25年も長期的かつ持続的な成長に向けて投資し、尽力していく」と語った。

アンドレア・グエラ(Andrea Guerra)最高経営責任者(CEO)は、「24年も大変よい結果を残すことができてうれしく思う。現地通貨ベースおよび既存店ベースでは4年連続で2ケタ成長を遂げ、利益率も昨年度から拡大するなど、財務状況は非常に健全だ。『プラダ』は引き続き市場シェアを拡大しており、『ミュウミュウ』は記録的な勢いで成長している。今後も小売りや生産能力、テクノロジーなどへの投資を継続し、ブランドのポジショニング、品ぞろえ、顧客とのエンゲージメントを強化することで、複雑な環境下でも市場を上回る持続的な成長ができるものと確信している」と述べた。

「『ミュウミュウ』の大躍進は『プラダ』の成功あってこそ」

アナリスト向けの決算説明会で、大躍進が続く「ミュウミュウ」の今後3年から5年の目標について質問されたグエラCEOは、「言うまでもないことだが、こうした凄まじい勢いでの成長は長く続くものではない。今後も魅力的な商品をそろえ、地元客やリピーターを大切にし、持続的な成長を維持したいと考えている」と回答。また、「そもそも『プラダ』のために作り、進化させてきたインフラやサービス、生産能力があったからこそ、『ミュウミュウ』が大きく飛躍できた」と話し、「プラダ」が先に成功したことにより現在の「ミュウミュウ」があるという考えを示した。

なお、3月5日には、同社が10年にオープンした「ミュウミュウ」ロンドン旗艦店が入る建物を2億5000万ポンド(約472億円)で購入したことが明らかに。現在、同店は改装中のため、近くの仮店舗で営業している。また、同社は13年、「プラダ」ロンドン旗艦店の建物も購入している。

「極めて高い価格帯」への参入を示唆

ここ数年はコストの高騰などを背景に、ラグジュアリーブランドで値上げが続いている。「プラダ」と「ミュウミュウ」も例外ではないが、「極端な値上げはしていない」とグエラCEO。「エントリーアイテムの価格はほとんど変えていない。一方で、上の方には現在の商品群ではカバーしきれていない価格帯があり、そこには信じられないほど大きな可能性がある。そうした極めて高い価格帯の商品を取り扱うために、店舗などの準備も進めてきた。大切なのは、さまざまな価格帯の商品を、ブランドのポジショニングに合わせてバランスよく扱うことだ」と説明した。

「ヴェルサーチェ」買収のうわさについて

カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)が保有する「ヴェルサーチェ(VERSACE)」と「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の売却について、以前からさまざまな臆測が広まっているが、今年1月にはプラダが両ブランドの買収に関心を示しているとのうわさが浮上した。情報筋によれば、プラダはすでにカプリと独占的なデューデリジェンス(買収前の詳細な財務およびリスク調査)を行っている段階で、3月半ばにはその結論が出るのではないかという。

本件について、プラダはこれまでコメントを発表していない。このため、今回の説明会でも注目が集まっていたが、グエラCEOは「以前から明確にしていることだが、当社は傘下ブランドに100%フォーカスしている。一方で、何らかの機会が訪れることがあれば、誰しもそれに一度は目をやるものだ」と答えるにとどめた。

また、アンドレア・ボニーニ(Andrea Bonini)最高財務責任者も、「当社はうわさに対するコメントはしない」と述べた。しかし、同社が1990年代には「フェンディ(FENDI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」「アズディン アライア(AZZEDINE ALAIA)」などに投資し、多数のブランドを擁するコングロマリットを目指していたことについてアナリストから問われると、「当時から数十年が経ち、当社の規模やチームなど、あらゆる面で変化している。もはや異なる会社と言えるのではないか」と話し、やはり明言を避けた。なお、プラダはその後、これらのブランドの持分を売却している。

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アトレに公取委が「警告」、JREポイントで独禁法違反のおそれ

公正取引委員会は3月5日、JR東日本の子会社でファッションビルを運営するアトレが「JREポイント」の運営費用の一部をテナント側に負担させる契約に一方的に変更したのは、独占禁止法の第19条の「優越的地位の濫用」の規定に違反するおそれがあるとして警告を行った。アトレも同日、警告を受けたことを認め、「法令遵守の取組み強化や再発防止を徹底していく」とコメントを出している。

「JREポイント」は、JR東日本のグループ全体で使用できるポイントで、鉄道のほか、アトレやルミネなどの商業施設の買い物でも貯めて、使用できる。

公取委によると、アトレは昨年7月ごろにテナントに対して運営費用のいち部を出店者に負担させる内容に一方的に変更した疑いがあるという。独占禁止法第19条で「優越的地位の濫用」を禁じており、公取委はこれに該当すると判断した。

アトレによると今年1月から調査を受け、2月5日に契約の変更を撤回した。

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アパレルリサイクルのショーイチ、業界課題であるバッグやシューズのリサイクルにも注力

余剰在庫や顧客から回収した衣料品のリサイクルを目指すアパレルメーカーや小売企業は着実に増えているが、次の段階として、いま課題となっているのがバッグやシューズなどの服飾雑貨類のリサイクルだ。服飾雑貨は、レザーや合皮、ゴムなどを組み合わせて使用しているケースが多いため、繊維である服に比べてリサイクルが難しい。大阪を拠点に、アパレル関連のリサイクル事業を手掛けるショーイチ(山本昌一社長)は、まさにこの課題にも取り組んでいる。

2000万円かけて粉砕機を導入

ショーイチがリサイクル事業でタッグを組む、反毛・粉砕工場の同心工業(大阪・泉大津)。同社の工場の一角に、ショーイチが借りている専用の建屋がある。取材で訪ねた際はブーツやパンプスのアッパー、スニーカーやサンダルの厚底ソール、ハンドバッグ、麦わら帽子などをまさにリサイクルしているところだった。それらをまずは粗く裁断した後、粉砕機にかけていく。粉砕機の下からは、すぐに色付きの粒がところどころ混じったグレーのわたが出てきた。レザーも合皮もゴムも全て細かく砕かれて、わたの一部になっている。このわたを圧縮してフェルトにし、自動車用などの工業資材にするのだという。

「困っている人の役に立ちたい」

同心工業のショーイチ専用建屋に、この粉砕機が導入されたのは2024年11月のこと。「導入には2000万円ほどかけた」とショーイチの山本社長は話す。「余剰在庫や古着といった、服のリサイクルを手掛ける企業であっても、バッグやシューズのリサイクルは行っていないというケースは多い。服飾雑貨のリサイクルには、硬い素材にも対応できる粉砕機を導入することが必要で、その分ハードルが高いのだと思う。でも、服の次は必ず雑貨のリサイクルが求められるようになる。雑貨のリサイクルで、どうすればいいか困っている方たちのお役に立ちたい」と山本社長は話す。

化粧品容器のリサイクルも一部を担う

バッグやシューズと共に、化粧品のリサイクルも業界としては課題の一つだ。「化粧品の余剰在庫は基本的に量が多く、常に引き受けられるわけではない」(山本社長)が、ショーイチでは化粧品容器のリサイクル事業も一部を担うようになっている。具体的には、企業在庫である未使用品の回収、ラベルはがし、中身を出して簡易洗浄、素材ごとの分別の工程まで。舞台はショーイチグループで運営する就労支援施設だ。

同就労支援施設を訪れると、プラスチックの化粧水ボトルに貼られた商品名のパッケージやシールをブランドが毀損しないようにはがしてから、容器と中身を分け、容器を簡易洗浄する作業が行われていた。これらは手作業でしか行えないため、化粧品のリサイクルは進んでいないのが現状だ。ショーイチはこの手作業の部分を請け負って、業界の共通課題解決の一端を担い、同時に就労支援施設に仕事を作っている。

簡易洗浄したプラスチック容器は回収業者に渡し、業者のもとで再度ペレットからプラスチック製品に加工される。化粧水の中身は紙などに吸わせて、別途業者のもとでサーマルリサイクル処理を行っているという。

「中小企業だからこそ、
いち早く世の中の課題に対応」

「リサイクルの業界には、専業の大手企業もいくつかある。一方で、ショーイチはリサイクル専業ではないし、規模も中小だ。だからこそ、リサイクル大手がまだあまりやっていない分野にも挑戦して、いち早く世の中の課題に対応していくことが大切だと思っている」と山本社長。「ショーイチに頼めば、ブランドの毀損も防ぎつつ、服だけでなく服飾雑貨や化粧品のリサイクルも可能だということを広く伝えていきたい」。

問い合わせ先
ショーイチ
050-3151-5247

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伊藤忠が韓国セレクト「ナイスウェザー」の国内販売権取得 ユナイテッドアローズが店舗運営

伊藤忠商事は5日、韓国のセレクトショップ「ナイスウェザー(NICE WEATHER)」の日本市場におけるマスターライセンス兼および独占輸入販売権を取得したと発表した。ユナイテッドアローズを独占サブライセンシー・ブランドストア出店パートナーとして今春から販売する。ユナイテッドアローズは日本1号店を阪急うめだ本店に4月23日開くほか、公式ECサイトを始める。

「ナイスウェザー」は2020年にソウルで事業を開始したライフスタイルセレクトショップ。“次世代のコンビニ”をコンセプトに、日用雑貨、化粧品、カジュアルファッション、食品など幅広い商材を扱う。韓国の旬なブランドをはじめ、各国から厳選した商品やオリジナル開発商品を並べ、20〜30代の若い世代から人気を集める。現在、韓国内に3店舗を運営する。

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伊藤忠が韓国セレクト「ナイスウェザー」の国内販売権取得 ユナイテッドアローズが店舗運営

伊藤忠商事は5日、韓国のセレクトショップ「ナイスウェザー(NICE WEATHER)」の日本市場におけるマスターライセンス兼および独占輸入販売権を取得したと発表した。ユナイテッドアローズを独占サブライセンシー・ブランドストア出店パートナーとして今春から販売する。ユナイテッドアローズは日本1号店を阪急うめだ本店に4月23日開くほか、公式ECサイトを始める。

「ナイスウェザー」は2020年にソウルで事業を開始したライフスタイルセレクトショップ。“次世代のコンビニ”をコンセプトに、日用雑貨、化粧品、カジュアルファッション、食品など幅広い商材を扱う。韓国の旬なブランドをはじめ、各国から厳選した商品やオリジナル開発商品を並べ、20〜30代の若い世代から人気を集める。現在、韓国内に3店舗を運営する。

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モンクレール、24年は増収増益 下半期に中国市場が力強く回復

モンクレール・グループ(MONCLER GROUP)の2024年12月期決算は、売上高が前期比4.2%増の31億890万ユーロ(約4849億円)、EBIT(利払前・税引前利益)は同2.5%増の9億1630万ユーロ(約1429億円)、純利益は同4.5%増の6億3960万ユーロ(約997億円)の増収増益だった。

ブランド別では、主力「モンクレール(MONCLER)」の売上高が同5.2%増の27億730万ユーロ(約4223億円)と増収。これを地域別で見ると、下半期に中国本土の業績が力強く回復したアジアは同6.1%増の13億7900万ユーロ(約2151億円)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)は同4.3%増の9億4930万ユーロ(約1480億円)、南北アメリカは同2.1%増の3億7900万ユーロ(約591億円)といずれも増収だった。販売チャネル別では、売り上げ全体の86%を占める小売りが同7.8%増の23億3190万ユーロ(約3637億円)、卸は同8.3%減の3億7540万ユーロ(約585億円)だった。

21年2月に傘下に収めた「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」の売上高は、同2.3%減の4億160万ユーロ(約626億円)だった。地域別で見ると、やはり下半期に業績が回復した中国市場や、円安およびインバウンド需要の影響で引き続き好調の日本を含むアジアは同17.7%増の1億520万ユーロ(約164億円)と好調だったものの、EMEAは同6.5%減の2億6890万ユーロ(約419億円)、南北アメリカは同19.4%減の2750万ユーロ(約42億円)と減収。販売チャネル別では、小売りは同20.9%増の2億890万ユーロ(約325億円)、卸は同19.1%減の1億9270万ユーロ(約300億円)だった。なお、売り上げに占める小売りの割合は、23年度の42%から52%へと大幅に増加している。

会長兼CEOのコメント

レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社は24年の複雑かつ不安定な環境下においても、踏みとどまる強さや回復力を発揮し、素晴らしい結果を上げることができた。『モンクレール』と『ストーンアイランド』は、小売りにおいていずれも(現地通貨ベースで)2ケタ成長となり、グループの売上高は30億ユーロ(約4680億円)を突破。営業(EBIT)利益率は29.5%と昨年度の30%と同水準を維持し、当社のビジネスモデルの強さを明確に示した。25年もマクロ経済の先行き不透明感が続いているが、市場がダイナミックに揺れ動く中でも、うまく舵取りできるものと確信している。当社の豊かなヘリテージ、イノベーションに対する情熱、従来の枠を超えていく野望により、今後も持続的に成長し、長期的な価値を創出していく」と語った。

LVMHからの間接的な出資について

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は24年9月26日、ルッフィーニ会長兼CEOの持株会社であるルッフィーニ パルテチパツィオーネ ホールディング(RUFFINI PARTECIPAZIONI HOLDING以下、RPH)と提携し、RPHが保有する投資会社ダブルR(DOUBLE R)の株式の10%を取得したことを明らかにした。ダブルRはモンクレールの株式の約15.8%を保有している。

アナリスト向けの決算説明会で、ルッフィーニ会長兼CEOは同取引について、「持株会社レベルでの投資であり、経営上の安定性をもたらしてくれた。しかし、当社は引き続き完全に独立していることを強調しておきたい」と述べた。また、同取引により、LVMHはダブルRの取締役会のメンバー2人と、モンクレールの取締役会のメンバー1人を任命する権利を獲得している。しかし、LVMHは「(モンクレール・グループの)事業戦略の策定には携わらない」こともあり、シナジー効果については「特に期待していない」と話した。

M&Aは視野に入れず、傘下の2ブランドに注力

現金および現金同等物を含む純金融資産は、23年の10億3000万ユーロ(約1606億円)から13億ユーロ(約2028億円)に増加。これを活用して買収などを行う予定はあるかという質問に対し、ルチアーノ・サンテル(Luciano Santel)=グループ・チーフ・コーポレート&サプライ・オフィサーは、「(資産が多いのは)うれしい悩みだが、当社はM&A戦略を策定していない」と回答。「『モンクレール』と『ストーンアイランド』には、まだまだ大きな可能性がある。この素晴らしい2つのブランドの開発に引き続き注力したい」と述べた。

中国市場の業績が回復した理由は?

中国市場の景気停滞により、打撃を受けているラグジュアリーブランドも多い。そうした中、「モンクレール」と「ストーンアイランド」はいずれも24年下半期に同市場での業績が回復している。これについて、同社は「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」が10月に上海で開催した大規模なイベントが成功を収めたことを要因の一つとしつつも、それだけではないと説明。ロベルト・エッグス(Roberto Eggs)=グループ・チーフ・ビジネス戦略&グローバルマーケット・オフィサーは、「現地チームを通じて中国の消費者について理解を深め、それに基づいて時流に合うカプセルコレクションを発売したり、イベントを開催したりしてきた。また、『モンクレール』は、アウターを専門とする数少ない、もしくは唯一のラグジュアリーブランド。ほぼ競合がいないのも大きな強みだろう」と話した。

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ユニクロ春物はジーンズや「ユニクロ:C」スエットがヒット アダストリアは2カ月連続不調【専門店25年2月度】

専門店チェーン、セレクトショップの2025年2月度業績(既存店ベース)は、低気温で冬物の消化が進むと共に、春物が動き出したという声が多い。各社比較的好調な中で、2カ月連続で前年実績割れとなったアダストリアの変調が目立つ。なお、2月は昨年がうるう年だったため、営業日数は1日減っている。

国内ユニクロの売上高は前年同月比12.2%増。これで、24年9月〜25年2月の上期累計の既存店売り上げは、前年同期比9.8%増での着地となった。「低気温で“ヒートテック”や“パフテック”、“シームレスダウン”などの実需アイテムが売れたと同時に、春物も動いている」と広報担当者。春物では、ウィメンズで「ユニクロ(UNIQLO)」×「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」のストレートジーンズやオックスフォードシャツ、メンズで「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」のスエットパーカやスエットワイドパンツなど。

良品計画の「無印良品」は前年同月比8.5%増と、13カ月連続の前年実績超えを達成。衣服・雑貨カテゴリーは同6.5%増だった。「前月に続き全部門で前年実績をクリアしたが、なかでもスキンケア商品や日用雑貨がけん引し、生活雑貨カテゴリーが同10.4%増となった」(発表資料から)。

しまむらの「ファッションセンターしまむら」(1月21日〜2月20日)は同0.5%増と、ギリギリながら前年実績超え。これで、24年2月期の既存店売上高は前期比4.3%増で着地した。「春物のニットカーディガンがデニムジャケットなどの軽防寒衣料、トレーナーなどが売れた」(発表資料から)。

ユナイテッドアローズは同8.8%増。これで14カ月連続での前年実績超えと、好調を維持している。「春物に加え、秋冬商品の最終消化が進んだ」(発表資料から)。

アダストリアは同7.8%減と、前月の同3.0%減からさらに落ち込んだ。「低気温で春物販売が伸び悩んだと共に、昨年実施した会員向け20%ポイント還元キャンペーンを控えたこともあり、前年売上高を下回った」(発表資料から)という。

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ファストリが一足早い入社式を開催 初任給33万円で「期待に応えたい」

「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」「セオリー(THEORY)」などの親会社であるファーストリテイリングは3月4日、東京・有明の有明本部に2025年の日本入社の新入社員を迎えて、入社式を行った。出席したのはグローバルリーダー候補中心の313人(前年比43人増)。4月に入社する地域正社員を合わせると、25年の日本入社は420人(同20人増)という。グローバルでは、25年は計約1300人(同140人増)が入社する。

一般的には4月に行われる入社式だが、5月の大型連休に商戦の山場の一つを迎えるファーストリテイリングは、3月にグローバルリーダー候補の入社式を行うのが通例となっている。4日に行われた入社式の出席者には、採用を強化しているインド・ベトナム出身の24年秋の新入社員24人も含まれる。インドでは19年から、ベトナムでは21年から採用を強化し、インドでは現在4校、ベトナムでは2校の大学と採用で連携している。「ITスキルのある学生やMBA取得者など、これまで累計で90人の学生を採用してきた」(発表資料から)。

入社式に登壇した柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、自身のジャスコ時代や家業を継いだ駆け出し時代の話を交えつつ、「ユニクロは24年に設立40周年を迎え、売上高も3兆円を突破、真のグローバルブランドを目指す新しいステージに立った。ここからは、過去のやり方では通用しない。過去の成功パターンに囚われず、いまのお客さまや世の中に求められているものを日々考え、挑戦し続ける人材であってほしい。それでこそ、革新的なサービスや商品が生まれる。そのために、今月から新たな報酬体系を導入した。年齢や社歴に関係なく抜擢していく。皆さんにはそのフロントランナーとして活躍してほしい。自分がこの会社を引っ張るんだと決意し、行動してほしい」とコメント。

「1カ月早く成長できる」

新入社員代表としては、青山学院大学卒の河野瑠凪さん、ベトナム・ハノイ工科大卒のドー・ブイ・クアン・アインさんが登壇し、囲み取材にも対応。今年から新入社員の初任給が30万円から33万円に賃上げされたことについて水を向けられると、「プレッシャーもあるが、その分期待もされている。期待をモチベーションにして頑張っていきたい」(河野さん)という回答。ファストリへの入社の決め手は「“グローバルワン・全員経営”という考え方に共感した。また、私の家族は『ユニクロ』が大好きで、誕生日プレゼントなどによく買ってもらった。なじみのあるブランドなので、この会社で働きたいと思った」(ドーさん)という。

河野さんは10日から「ユニクロ」のイオンモールりんくう泉南店に配属、昨秋入社したドーさんはデジタル業務改革サービス部で働いており、既にスペイン出張なども経験したという。他社よりおよそ1カ月早い入社式については、「人生という長いスパンで考えれば、この1カ月は短いもの。(他社の新卒社員より)1カ月早く成長できると前向きに捉えている」(河野さん)。

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米ランニングシューズ「サッカニー」が日本初の直営店開業 丸紅CBと新体制で“リポジショニング”

グローバルでのランニング市場拡大を追い風に、国内でもランニング関連ショップの出店が止まらない。2月8日に、米VFコーポレーション傘下の米ユタ発のランニング&ハイクシューズ「アルトラ(ALTRA)」が、銀座の歌舞伎座そばに世界初の直営店を出店。2月22日〜3月2日には、国内では伊藤忠商事×アキレス体制で販売する米シアトル発のランニングシューズ「ブルックス(BROOKS)」が日本初のポップアップストアを開いた。3月15日には、「ニューバランス(NEW BALANCE)」も国内初のランニングのコンセプトストアを代々木公園内にオープンすると発表している。

そうした出店の話題の一角を占めるのが、米ウルヴァリンワールドワイド傘下の老舗ランニングシューズブランド「サッカニー(SAUCONY)」だ。これまで、日本では長らくABCマートが代理店を務めてきたが、2024年に丸紅コンシューマーブランズ(以下、丸紅CB)がウルヴァリンと契約、同ブランドの代理店となった。ABCマートが扱っていたこともあり、従来はライフスタイルシューズのイメージが強かったが、丸紅CBは速さを求めるランナーに応えるパフォーマンスシューズとしての打ち出しを強化。東京マラソン(3月2日実施済み)直前である2月27日には、日本初の直営店舗を東京・原宿の明治通り沿いにオープンした。

「われわれは127年の歴史がある専業メーカー」

「サッカニー」の日本初店舗が出店したのは、以前「サロモン(SALOMON)」の渋谷店だった場所(『サロモン』は24年11月に通りを挟んだ向かいに移転増床済み)。1階、地下1階の2層の作りで、売り場面積は約170平方メートル。1階にはレーシングシューズの最高峰モデル“エンドルフィン エリート2(ENDORPHIN ELITE 2)”(4万2900円)をはじめとしたパフォーマンスシューズを並べ、地下1階にはライフスタイルシューズをそろえる。

「いま、ランニングシューズメーカー各社が技術革新を重ね、次々と新製品を発表する環境にあることはありがたい。それがあるからわれわれもさらに努力することができる。われわれは、創業127年という歴史あるランニングシューズ専業ブランドというオーセンティックな存在であり、創業時からイノベーション(革新性)を重視してきた」と話すのは、出店に合わせて来日したロブ・グリフィス(Rob Griffiths)サッカニーグローバルブランドプレジデント。「1年半ほど前から、米本国とグローバルとでブランドのリポジショニングを進めている」という。

リポジショニングとしては例えば、クッション性、反発性といった、ランナーが利点と感じる機能性を打ち出す商品コミュニケーションの採用や、主力販路として重視する卸先の再編などを実施してきた。ブランドを拡大していくためには、パフォーマンスと共にライフスタイル領域での認知向上も欠かせないが、「“ワン サッカニー”として、パフォーマンスとライフスタイルとで別のイメージにならないようにアプローチしていく。熱量を高め、ブランド認知を上げていくために、コラボレーションもどんどん企画していく」とグリフィスプレジデント。

6月にはロンドンにも出店予定

国やエリアごとにパートナー企業がいることで、本国のディレクションをそのまま反映することが難しかった面もこれまであったようだ。それをリポジショニングによって、“ワン サッカニー”にまとめていく過程にある。東京に次いで、6月には「ロンドンの中でランニングが盛り上がっているエリア」というコベントガーデンへの直営店出店も決定。「その後は、パリ、ニューヨークなど、世界の主要都市に出店を考える」。米国や欧州では、「ランニングクラブにアプローチする草の根活動によってブランドの支持を広げてきた。こうした手法を日本でも取り入れたい」とグリフィスプレジデント。

「直営店のオープン初日は販売予算も達成し、好調な滑り出しとなった」と話すのは、高原秀人 丸紅CB社長。2月27日〜3月1日に開催された「東京マラソンEXPO」にも出展し、“エンドルフィン エリート2”や日本らしい絞り染め風のデザインを取り入れた東京マラソン限定モデルの“キンバラ15(KINVARA 15)”(1万9250円)などを販売した。「ウルヴァリンと協力し、パフォーマンスシューズを販売する売り場作りやマーケティングに注力していく。数年後には、箱根駅伝で履く選手が出ることが目標」と続ける。

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米ランニングシューズ「サッカニー」が日本初の直営店開業 丸紅CBと新体制で“リポジショニング”

グローバルでのランニング市場拡大を追い風に、国内でもランニング関連ショップの出店が止まらない。2月8日に、米VFコーポレーション傘下の米ユタ発のランニング&ハイクシューズ「アルトラ(ALTRA)」が、銀座の歌舞伎座そばに世界初の直営店を出店。2月22日〜3月2日には、国内では伊藤忠商事×アキレス体制で販売する米シアトル発のランニングシューズ「ブルックス(BROOKS)」が日本初のポップアップストアを開いた。3月15日には、「ニューバランス(NEW BALANCE)」も国内初のランニングのコンセプトストアを代々木公園内にオープンすると発表している。

そうした出店の話題の一角を占めるのが、米ウルヴァリンワールドワイド傘下の老舗ランニングシューズブランド「サッカニー(SAUCONY)」だ。これまで、日本では長らくABCマートが代理店を務めてきたが、2024年に丸紅コンシューマーブランズ(以下、丸紅CB)がウルヴァリンと契約、同ブランドの代理店となった。ABCマートが扱っていたこともあり、従来はライフスタイルシューズのイメージが強かったが、丸紅CBは速さを求めるランナーに応えるパフォーマンスシューズとしての打ち出しを強化。東京マラソン(3月2日実施済み)直前である2月27日には、日本初の直営店舗を東京・原宿の明治通り沿いにオープンした。

「われわれは127年の歴史がある専業メーカー」

「サッカニー」の日本初店舗が出店したのは、以前「サロモン(SALOMON)」の渋谷店だった場所(『サロモン』は24年11月に通りを挟んだ向かいに移転増床済み)。1階、地下1階の2層の作りで、売り場面積は約170平方メートル。1階にはレーシングシューズの最高峰モデル“エンドルフィン エリート2(ENDORPHIN ELITE 2)”(4万2900円)をはじめとしたパフォーマンスシューズを並べ、地下1階にはライフスタイルシューズをそろえる。

「いま、ランニングシューズメーカー各社が技術革新を重ね、次々と新製品を発表する環境にあることはありがたい。それがあるからわれわれもさらに努力することができる。われわれは、創業127年という歴史あるランニングシューズ専業ブランドというオーセンティックな存在であり、創業時からイノベーション(革新性)を重視してきた」と話すのは、出店に合わせて来日したロブ・グリフィス(Rob Griffiths)サッカニーグローバルブランドプレジデント。「1年半ほど前から、米本国とグローバルとでブランドのリポジショニングを進めている」という。

リポジショニングとしては例えば、クッション性、反発性といった、ランナーが利点と感じる機能性を打ち出す商品コミュニケーションの採用や、主力販路として重視する卸先の再編などを実施してきた。ブランドを拡大していくためには、パフォーマンスと共にライフスタイル領域での認知向上も欠かせないが、「“ワン サッカニー”として、パフォーマンスとライフスタイルとで別のイメージにならないようにアプローチしていく。熱量を高め、ブランド認知を上げていくために、コラボレーションもどんどん企画していく」とグリフィスプレジデント。

6月にはロンドンにも出店予定

国やエリアごとにパートナー企業がいることで、本国のディレクションをそのまま反映することが難しかった面もこれまであったようだ。それをリポジショニングによって、“ワン サッカニー”にまとめていく過程にある。東京に次いで、6月には「ロンドンの中でランニングが盛り上がっているエリア」というコベントガーデンへの直営店出店も決定。「その後は、パリ、ニューヨークなど、世界の主要都市に出店を考える」。米国や欧州では、「ランニングクラブにアプローチする草の根活動によってブランドの支持を広げてきた。こうした手法を日本でも取り入れたい」とグリフィスプレジデント。

「直営店のオープン初日は販売予算も達成し、好調な滑り出しとなった」と話すのは、高原秀人 丸紅CB社長。2月27日〜3月1日に開催された「東京マラソンEXPO」にも出展し、“エンドルフィン エリート2”や日本らしい絞り染め風のデザインを取り入れた東京マラソン限定モデルの“キンバラ15(KINVARA 15)”(1万9250円)などを販売した。「ウルヴァリンと協力し、パフォーマンスシューズを販売する売り場作りやマーケティングに注力していく。数年後には、箱根駅伝で履く選手が出ることが目標」と続ける。

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今期でyutori超え、「バクネ」でバク速成長するテンシャルのポテンシャル

リカバリーウエア「バクネ(BAKUNE)」を展開するテンシャルが2月28日、東証グロース市場に上場した。上場初日である2月28日の初値は2600円、3月3日の終値は2608円と順調な滑り出しを見せた。「バクネ」を大ヒットさせた同社の驚異的な成長率を考えれば、当然とも言える。直近の24年2〜10月期の売上高は61億円、営業利益4億6400万円だが、25年1月期は119億5500万円、26年1月期には169億円を見込む。創業者である中西裕太郎・社長CEOは「上場した限りは開示に対してしっかりと達成していく」と自信を見せる。

テンシャルはDMMグループやリクルートキャリア(現リクルート)を経て、中西CEOが2018年2月に創業した。創業当初はウェブのスポーツメディアを展開し、19年4月にアカツキからのVC資金を元手に社名と同じソールブランド「テンシャル」をスタートした。プロサッカー選手を目指していたものの高校3年生の時に病気で挫折した中西CEOは「スポーツテック」を掲げたものの、転機となったのは20年12月にクラウドファンディング形式でスタートした、リカバリーウエア「バクネ」だった。

ありそうでなかった疲労回復型のナイトウエアとして注目を集めたことで、「バクネ」は空前のヒットとなり、売上高は8億4800万円(22年1月期)→20億3400万円(23年1月期)→54億900万円(24年1月期)と急成長した。「バクネ」はナイトウエアを中心に現在はパーカやスーツ、ネックピローなど157アイテムを展開し、累計で100万セットを販売するまでになった。

yutoriの片石社長はライバル!?

ここで注目したいのは、同じアパレル分野で注目を集めるスタートアップのyutoriとの類似性だ。テンシャルの中西CEOは1994年6月生まれ、yutoriの片石貴展(たかのり)社長が1993年12月生まれ、創業はテンシャルが2018年2月、yutoriが18年4月、直近の売上高はテンシャルが24年2〜10月期に61億円、対してyutoriが24年4月〜12月期に55億3500万円とほぼ同じになる。しかも創業直後には同じアカツキが出資している。

ただ、yutoriの25年3月期の見通しは売上高80億円、営業利益6億7000万円だが、テンシャルの25年1月期の業績見通しは売上高119億5500万円、営業利益が13億2100万円で、テンシャルがyutoriを大きく上回る見通し。

中西CEOは会見時に、yutori及び片石yutori社長をどう思っているか?という質問に対して「同じアパレル業を展開し、同世代なのでもちろん意識している。ユニークな働き方や社風を実現しているyutoriの片石さんはとてもリスペクトしている存在だ。勝手ながら、この世代の起業家の同志としてお互いにしっかりとした成功例を出して、日本の経済を盛り上げていきたい」と語った。

テンシャルは売り上げの7割をオンラインで稼ぐ。中西CEOは同社のビジネスモデルと組織を「購買から行動、属性までのデータを起点にPDCAを回すSaaS型の企業に近い」と定義する。26年1月期の業績予想を公開するのも、こうしたデータドリブンなビジネスモデルがあってこそと言える。

大株主の上位に豊島 CVCで出資、仕入れの9割を占める

上場前の株主構成は筆頭株主の中西CEOが30.23%、ついでアカツキが13.79%、中西CEOの資産管理会社のAnchorが8.14%で、6番目の大株主として豊島のCVCファンドが4.8%を所有する。豊島はCVCを通じて出資をしているだけでなく「バクネ」の大半の製造を受託しており、24年1月期のテンシャルの仕入高のうち実に9割を占めている。

リカバリーウエアの市場はワークマンが廉価版のアイテムの販売で追随するなど、競合が激しくなっているようにも見えるが、中西CEOは「市場はまだまだ広がる。伸びる市場に対して適切な広告費や商品を出すことで、十分に成長の余地はある」と自信を見せる。yutoriとともに降臨した新星のテンシャルに注目だ。。

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百貨店2月度、主要4社増収 短い春節でもインバンド底堅く

百貨店主要4社の2025年2月度の売上高は、前年同月に比べて全社が増収だったものの、伸び率は小幅だった。前年同月がうるう年ため営業日が1日多かったことに加えて、今年は中国からの訪日客が増える春節(旧正月)の期間が半分ほど1月度に前倒しされた影響が大きい。それでも免税売上高は全社とも前年同月の実績を上回っており、インバウンドの底堅さを印象づける。

前年同月に比べて三越伊勢丹が2.3%増、高島屋が1.7%増、大丸松坂屋百貨店が4.6%増、阪急阪神百貨店が0.6%増だった。引き続き訪日客や国内の富裕層がけん引するかたちで、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾品が好調を持続した。バレンタイン催事も集客に寄与した。衣料品は全国的に気温の低い日が続いたため、春物の先物買いの動きは鈍かった。

伊勢丹新宿本店は前年同期に比べて0.4%減だった。年間で最も1日の稼ぎが多い外商客イベント「丹青会」が前年は2月開催だったのに対し、今年は1月開催になったことが響いた。

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河村康輔が語る「創作」と「仕事」——パンク・ハードコアからコラージュの世界へ

PROFILE: 河村康輔/アーティスト、グラフィックデザイナー

PROFILE: (かわむら・こうすけ)1979年広島県生まれ。コラージュアーティストとして多くのアーティストとの‬コラボレーションや国内外での個展、グループ展に多数参加。代表作に大友克洋の初の大規模原画展「大友克洋‬ GENGA展」(2012)メインビジュアル制作や「AKIRA」を使用したコラージュ作品「AKIRA ART WALL‬ PROJECT」(19)、個展「TRY SOMETHING BETTER」(21)など。現在もアパレルブランドへ‬のグラフィックワーク、ジャケット、書籍の装丁、広告デザイン、アートディレクションで活躍している。21‬年に「UT」のクリエイティブディレクターに就任。‬24年10月にはロックバンド「オアシス(OASIS)」の公式ロゴをシュレッダーアートの作品として発表した。

「UT」のクリエイティブディレクターやロックバンド、オアシスの公式ロゴを担当するなど、世界的な仕事を手掛けるアーティスト、グラフィックデザイナーの河村康輔。もともとはパンク・ハードコアが好きで、それをきっかけにコラージュでの作品制作を行うようになった。今回、河村の創作のルーツから多くのブランドとのコラボレーションについて、話を聞いた。

影響を受けたウィンストン・スミスと裏原文化

——河村さんの出身は広島ですが、10代の頃からパンク・ハードコアのライブを見るために上京していたとか。

河村康輔(以下、河村):中3から高1になる春休み、だから1994年ですかね、その頃に初めて東京へ行きました。パンク・ハードコアが専門だったので、新宿のライブハウス「アンチノック(ANTIKNOCK)」が多かったかな。お金が貯まると広島から高速バスに乗って、行ける限り行ってました。今ちょうど2月なので、よく覚えているのは、渋谷の「ギグアンティック(GIG-ANTIC)」で、「POGO77 RECORDS」というレーベルが主催する、バレンタインデーにチョコをもらえないパンクス集合みたいな企画があって、当時の彼女に嘘ついてそのライブに行ったら、のちのち嘘がバレてふられました。懐かしいなぁ。

——アメリカのハードコアバンド、デッド・ケネディーズ(DEAD KENNEDYS)のジャケットを手掛けたコラージュ・アーティストのウィンストン・スミス(WINSTON SMITH)との共作もありますが、コラージュとの出会いも、バンドのジャケットやフライヤーですか?

河村:そもそも最初にパンクを知ったのは14歳ぐらい、セックス・ピストルズ(SEX PISTOLS)ですね。今考えると、ピストルズのアートワークにもコラージュが使われていますけど、当時はそんなこと全然意識してなくて。デッド・ケネディーズも初めて先輩から教えてもらって聴いたのがファーストアルバムだったので、ファーストのジャケットはコラージュではないんですよ。なので、ジャケットで「うわ、なにこれ」と思ったのでいうと、ラード(LARD)の「LAST TEMPTATION OF REID」。あれでウィンストン・スミスのコラージュにやられた感じです。

——グラフィックデザインに興味を持ったのもその頃?

河村:僕が思春期だった1990年代の中盤は、いわゆる裏原文化が全盛期で。「バウンティーハンター(BOUNTY HUNTER)」のヒカルさんやデザイナーのSKATE THING(スケシン)さんが雑誌にめっちゃ出ていたんです。それで、スケシンさんの肩書きに「グラフィックデザイナー」と書いてあって、そういう仕事があるんだと知って、グラフィックデザイナーになりたいって思いました。具体的に何をしているかはよく分からないまま(笑)。

一方でヒカルさんの方は、パンク・ハードコアバンドのTシャツをよく着ていて、なのに本業はおもちゃ屋さんで、ポップなフィギュアとかを雑誌で紹介していたんです。ハードコアのダークでアンダーグラウンドな文化とポップな趣味が両立するんだっていうことに感銘を受けましたね。

——そこから、自分でも何か作ってみたいと?

河村:そういう流れでラードのジャケットを見た時に、まさにハードコアとポップが融合していたんです。しかも、初めて見た時はすっごい絵がうまいんだなと思っていたのが、実は切り貼りのコラージュだと分かって。僕はいまだに絵は全然描けないのですが、当時から手先だけは器用だったので、切り貼りならできるかもって。そこから一気に、見るだけじゃなく、自分がやってみたいこととして興味を持ちました。

ちょうどその頃、高校1年生くらいの時、地元でバンドをやっている友達からフライヤーのデザインを頼まれることが多くて。それこそ、ピストルズのアートワークを手掛けたジェイミー・リード(Jamie Reid)じゃないですけど、雑誌の文字を切り抜いたりして、フライヤーを作っていたんです。ただ、自分で絵は描けないので、メインのビジュアルは写真を切り貼りして。これを極めていけば、ラードのジャケットまでいくのかも、みたいなことは考えていました。

「絶対にこのシーンの一員になると誓った気持ちがいまだに残ってる」

——河村さんの初期の仕事としては、ホラーやスプラッター映画の日本版をリリースする「トラッシュマウンテンビデオ」のジャケットデザインがあります。

河村:ハードコア好きの人たちはトラッシュ系のB級映画好きも多いので、そこは自分が10代からやっていたバンドのフライヤーデザインとも自然とつながっていきました。趣味としては一貫している感じ。当時はそれで成功しようなんてまったく思ってなくて、そもそも「トラッシュマウンテンビデオ」の仕事はほぼノーギャラでしたから(笑)。バイトしないで好きなことをして、なんとか東京で生活できたらいいな、くらいに思ってましたね。

——仕事の幅が広がる転機となったのは?

河村:人との出会いでいうと、最初に大きかったのは根本敬さんですかね。アップリンクがまだ渋谷の消防署の近くのビルにあった頃に、自分で作ったフライヤーを勝手に置いてきたんですよ。そうしたら、次の日にアップリンクの人から電話がかかってきて、これは怒られるだろうなと思ったら、「面白いので一度会いませんか?」って。それで、アップリンクでイベントをやっていた根本敬さんを紹介してもらって、全然仕事がないこととかを話したら、根本さんが「ここに電話してみな」って、デザインの仕事をくれそうな会社を教えてくれたんです。それが、のちに「ERECT Magazine」を一緒に作ることになる福田(亮)の会社でした。

——「ERECT Magazine」は、創刊号からウィンストン・スミスの特集を組んで、本人に会いにサンフランシスコまで行ったり、気合いの入ったハードコア雑誌でした。

河村:もともと福田の会社が業界誌に広告を出す予算が60万円くらいあって、「この金があったら何したい?」って聞かれて、「雑誌作りたい」って言ったんです。そうしたら「じゃあやろう」って。でも僕は雑誌なんて作ったことなかったから、入稿のやり方も知らないし、今考えると、とんでもないデータを作ってましたよ。

——河村さんの対談集「1q7q LOVE AND PEACE」(東京キララ社)を読むと、先ほど名前の挙がった根本敬や、大友克洋、田名網敬一、伊藤桂司といった方々とコラボレーションするに至るまでの経緯が細かく語られていますが、人との出会いがきちんと作品や仕事につながっているのがすごいなと。

河村:僕が気をつかわないからじゃないですかね(笑)。有名とか無名とか興味ないし、どんなに大御所の人であっても、敬意を持って接してはいますが、最初に会った時には一緒に仕事しようとか、仲良くなっておこうとか、一切思ってないんですよ。好きな音楽の話とか趣味の話をしてるだけ。あ、でも、直感は超働くので、合わないなって感じた人とは全然しゃべらないです(笑)。

あと、出会いを大切にするという意味では、まだ広島に住んでいた頃、東京にライブを見に来るたびに、自分は帰らないといけないのに、パンクスのみんなは駅前の路上とかでずっと飲んでるんですよ。それが本当に悔しくて。悔しいというか、もうつらかった。それで、バチバチの鋲ジャン着て夜中に高速バスに乗りながら、絶対東京に来て、このシーンの一員になるんだって誓ったんです。その気持ちがいまだに残っているので、東京で面白い人と出会えるだけでうれしいんですよね。

大企業案件と友達のバンドのジャケットを同時進行で

——その頃と比べて、憧れだったウィンストン・スミスやジェイミー・リードとの共作をはじめ、ユニクロ「UT」のクリエイティブディレクターといった大企業の案件もたくさん手掛けるようになった現在の自分は、どう見えていますか?

河村:それが全然変わらないんですよ。テーマや題材が違うだけで、やってることは友達のバンドのフライヤーを作っている頃からずっと同じ。というか、今でもバンドのジャケットとかバンバン作ってますからね。まさに今も、超大企業とのコラボ案件を進めながら、三重のcontrast attitudeというハードコアバンドのジャケットを同時進行でやってます。テンションもやり方もまったく一緒で、題材が違うだけです。

——新作となる加熱式たばこ“プルーム(Ploom)”とのコラボレーションについても聞かせてください。

河村:商品とのコラボレーションは、当たり前ですが自分の作品ではないので、その商品を使う人のことを第一に考えます。僕は作家脳とは別にグラフィックデザイナー脳もあるので、そっちの脳を働かせているイメージ。特に“プルーム”は喫煙具という常に持ち歩くもので、デザインを乗せられる範囲も小さい。だったら写真や絵のコラージュではなく、かっこいい柄がいいかなと。その上で、僕の熱心なファンとかではない、幅広い層に喜んでもらうために、テイストは出すけど主張はし過ぎない、でもコレクションアイテムとして欲しくなるようなデザインを作りました。

——ご自身の原点にあるハードコアやパンクの作風とは別で、現在進行形のトレンドや人気の傾向は意識しますか?

河村:意識はしないですね。意識はしてないですけど、そういうものは自然と入ってくるじゃないですか。Tシャツでも前までMサイズだったのが、今はLとかXLの方がいいなとか。そういう感じで、無意識に入ってくる感覚はいつの間にか反映されていくと思うので、それ以上に前のめりでチェックしたりとかはしないです。

でも、流行の面白さも分かるので、どうせ乗るなら最先端の超細いところは狙っていきたい。でかい波が来た時に、その真ん中にいるのは二番煎じなんですよ。そうではなく、1年後には定番になるなっていうものを見つけて、流行る1年前には手をつける。そうすれば、表現としての完成度は低くても、最初だから誰も文句を言えないし、結果的にそれが一番目立つ。そもそもコラージュなんて100年前からある手法ですからね。絵画とかもそうですが、古い手法の中でどれだけ新しいことを発見して、続けていけるか。それだけだと思います。

「飽きないために、やりきった先で技術を磨く」

——コラージュという手法・表現を追求していく過程で、ご自身の中で、もうやり切ったとか飽きてきた、みたいなことはないですか。

河村:やり切った感は感じたことありますよ。大友克洋さんとコラボレーションした「大友克洋GENGA展」の時ですね。大友さんのことはずっと大好きだったし、そのご本人から「自分の作品として好きにやっていいよ」と言われていたので、本気出しまくったんです。1つの絵の中に、これ以上はもうどうやっても貼れないくらいの量をぶち込んで、やりたいことも全部やった。それで完成した作品は、大友さんも喜んでくれたし、自分的にも満足できたんです。そうしたら、めっちゃ飽きました。

——でも「大友克洋GENGA展」をきっかけに、仕事は急増したんじゃないですか?

河村:そうなんですよ。せっかく新しいクライアントからオファーをいただけるようになったのに、そのタイミングで飽きてるなんて、意味分かんないですよね。なので、どうにか新しいことをしようと思って発見した1つが、シュレッダーを使った切り貼りだったりします。

——シュレッダーで縦に裁断された紙を素材にコラージュする技法ですね。

河村:思いついたきっかけは、「2ND(ツー・エヌ・ディー)」という1冊目の作品集を作っている時に、もう今日中に全ページ入稿しないと間に合わないって日になって、載せる作品の数が足りないことが発覚したんです。それで、どうしようと焦っている時に、事務所にあったシュレッダーが目に入って、試しに裁断した紙を貼り付けたら、だいぶいい感じになって。時間も1作品20分くらいで完成したので、これで入稿できる、というのが最初でした。

——その場しのぎで思いついた手法が、今では1つの代名詞になり。

河村:ですね。しかも、そのギリギリ入稿した日に、たまたま大友克洋さんから連絡があって、一緒にご飯を食べることになったんですよ。で、持っていたシュレッダーの作品を見せたら、「面白いじゃん。もっと突き詰めた方がいいよ」と言ってくださって、大友さんが言うなら突き詰めてみようって。なので、初めてシュレッダーを使った作品を発表した「2ND」の帯は、大友さんが書いているんです。

——まさに「古い手法の中での新しい発見」ですね。

河村:そう。あと、飽きないためのもう一つは、技術を磨くことですね。技術ならいくらでも伸ばすことができるじゃないですか。それで、手で貼る精度を高めまくって、もはやデジタルとの差が分からないぐらいのところまでもっていくようにしました。で、アナログの手貼りを極めたら、あえてデジタルでもやってみる。そうすると、デジタルに見えるけどアナログだったり、逆に、手で貼ってるかと思えばデジタルだったりして、混乱させることで新鮮さが生まれました。

——企業案件となると、作品とは違い、制約があったり改変を求められたりもしますよね?

河村:オーダーを制約とは思ってないんですよ。お題をもらった、くらいの感覚。改変についても、完成させるまでは本気でやってますけど、作ったものを提出したあとのことについては、こだわりがまったくない。SNS用にリサイズしたいとか言われても、基本的には自由にやっていいですよっていう。でも、そこまでひどいことをされた経験はないので、皆さんの優しさのおかげです。

——コラボレーションする相手の見極めとかは?

河村:そもそも、この人とコラボレーションしたい、というのもないんです。好きなブランドや尊敬する作家はたくさんいますけど、それで一緒に仕事したいっていうふうにはならないんですよ。僕自身が超絶オープンなので、オファーがあればやりますっていう感じで。そもそも僕のコラージュとコラボするっていうのは、エフェクトみたいなもので、素材次第でいろんな方向にいけるし、見え方も変わってくる。なので、切り貼りする素材さえあれば、いくらでも自由自在にコラボができる。そこが一番の楽しみであり、コラージュの魅力だと思います。

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河村康輔が語る「創作」と「仕事」——パンク・ハードコアからコラージュの世界へ

PROFILE: 河村康輔/アーティスト、グラフィックデザイナー

PROFILE: (かわむら・こうすけ)1979年広島県生まれ。コラージュアーティストとして多くのアーティストとの‬コラボレーションや国内外での個展、グループ展に多数参加。代表作に大友克洋の初の大規模原画展「大友克洋‬ GENGA展」(2012)メインビジュアル制作や「AKIRA」を使用したコラージュ作品「AKIRA ART WALL‬ PROJECT」(19)、個展「TRY SOMETHING BETTER」(21)など。現在もアパレルブランドへ‬のグラフィックワーク、ジャケット、書籍の装丁、広告デザイン、アートディレクションで活躍している。21‬年に「UT」のクリエイティブディレクターに就任。‬24年10月にはロックバンド「オアシス(OASIS)」の公式ロゴをシュレッダーアートの作品として発表した。

「UT」のクリエイティブディレクターやロックバンド、オアシスの公式ロゴを担当するなど、世界的な仕事を手掛けるアーティスト、グラフィックデザイナーの河村康輔。もともとはパンク・ハードコアが好きで、それをきっかけにコラージュでの作品制作を行うようになった。今回、河村の創作のルーツから多くのブランドとのコラボレーションについて、話を聞いた。

影響を受けたウィンストン・スミスと裏原文化

——河村さんの出身は広島ですが、10代の頃からパンク・ハードコアのライブを見るために上京していたとか。

河村康輔(以下、河村):中3から高1になる春休み、だから1994年ですかね、その頃に初めて東京へ行きました。パンク・ハードコアが専門だったので、新宿のライブハウス「アンチノック(ANTIKNOCK)」が多かったかな。お金が貯まると広島から高速バスに乗って、行ける限り行ってました。今ちょうど2月なので、よく覚えているのは、渋谷の「ギグアンティック(GIG-ANTIC)」で、「POGO77 RECORDS」というレーベルが主催する、バレンタインデーにチョコをもらえないパンクス集合みたいな企画があって、当時の彼女に嘘ついてそのライブに行ったら、のちのち嘘がバレてふられました。懐かしいなぁ。

——アメリカのハードコアバンド、デッド・ケネディーズ(DEAD KENNEDYS)のジャケットを手掛けたコラージュ・アーティストのウィンストン・スミス(WINSTON SMITH)との共作もありますが、コラージュとの出会いも、バンドのジャケットやフライヤーですか?

河村:そもそも最初にパンクを知ったのは14歳ぐらい、セックス・ピストルズ(SEX PISTOLS)ですね。今考えると、ピストルズのアートワークにもコラージュが使われていますけど、当時はそんなこと全然意識してなくて。デッド・ケネディーズも初めて先輩から教えてもらって聴いたのがファーストアルバムだったので、ファーストのジャケットはコラージュではないんですよ。なので、ジャケットで「うわ、なにこれ」と思ったのでいうと、ラード(LARD)の「LAST TEMPTATION OF REID」。あれでウィンストン・スミスのコラージュにやられた感じです。

——グラフィックデザインに興味を持ったのもその頃?

河村:僕が思春期だった1990年代の中盤は、いわゆる裏原文化が全盛期で。「バウンティーハンター(BOUNTY HUNTER)」のヒカルさんやデザイナーのSKATE THING(スケシン)さんが雑誌にめっちゃ出ていたんです。それで、スケシンさんの肩書きに「グラフィックデザイナー」と書いてあって、そういう仕事があるんだと知って、グラフィックデザイナーになりたいって思いました。具体的に何をしているかはよく分からないまま(笑)。

一方でヒカルさんの方は、パンク・ハードコアバンドのTシャツをよく着ていて、なのに本業はおもちゃ屋さんで、ポップなフィギュアとかを雑誌で紹介していたんです。ハードコアのダークでアンダーグラウンドな文化とポップな趣味が両立するんだっていうことに感銘を受けましたね。

——そこから、自分でも何か作ってみたいと?

河村:そういう流れでラードのジャケットを見た時に、まさにハードコアとポップが融合していたんです。しかも、初めて見た時はすっごい絵がうまいんだなと思っていたのが、実は切り貼りのコラージュだと分かって。僕はいまだに絵は全然描けないのですが、当時から手先だけは器用だったので、切り貼りならできるかもって。そこから一気に、見るだけじゃなく、自分がやってみたいこととして興味を持ちました。

ちょうどその頃、高校1年生くらいの時、地元でバンドをやっている友達からフライヤーのデザインを頼まれることが多くて。それこそ、ピストルズのアートワークを手掛けたジェイミー・リード(Jamie Reid)じゃないですけど、雑誌の文字を切り抜いたりして、フライヤーを作っていたんです。ただ、自分で絵は描けないので、メインのビジュアルは写真を切り貼りして。これを極めていけば、ラードのジャケットまでいくのかも、みたいなことは考えていました。

「絶対にこのシーンの一員になると誓った気持ちがいまだに残ってる」

——河村さんの初期の仕事としては、ホラーやスプラッター映画の日本版をリリースする「トラッシュマウンテンビデオ」のジャケットデザインがあります。

河村:ハードコア好きの人たちはトラッシュ系のB級映画好きも多いので、そこは自分が10代からやっていたバンドのフライヤーデザインとも自然とつながっていきました。趣味としては一貫している感じ。当時はそれで成功しようなんてまったく思ってなくて、そもそも「トラッシュマウンテンビデオ」の仕事はほぼノーギャラでしたから(笑)。バイトしないで好きなことをして、なんとか東京で生活できたらいいな、くらいに思ってましたね。

——仕事の幅が広がる転機となったのは?

河村:人との出会いでいうと、最初に大きかったのは根本敬さんですかね。アップリンクがまだ渋谷の消防署の近くのビルにあった頃に、自分で作ったフライヤーを勝手に置いてきたんですよ。そうしたら、次の日にアップリンクの人から電話がかかってきて、これは怒られるだろうなと思ったら、「面白いので一度会いませんか?」って。それで、アップリンクでイベントをやっていた根本敬さんを紹介してもらって、全然仕事がないこととかを話したら、根本さんが「ここに電話してみな」って、デザインの仕事をくれそうな会社を教えてくれたんです。それが、のちに「ERECT Magazine」を一緒に作ることになる福田(亮)の会社でした。

——「ERECT Magazine」は、創刊号からウィンストン・スミスの特集を組んで、本人に会いにサンフランシスコまで行ったり、気合いの入ったハードコア雑誌でした。

河村:もともと福田の会社が業界誌に広告を出す予算が60万円くらいあって、「この金があったら何したい?」って聞かれて、「雑誌作りたい」って言ったんです。そうしたら「じゃあやろう」って。でも僕は雑誌なんて作ったことなかったから、入稿のやり方も知らないし、今考えると、とんでもないデータを作ってましたよ。

——河村さんの対談集「1q7q LOVE AND PEACE」(東京キララ社)を読むと、先ほど名前の挙がった根本敬や、大友克洋、田名網敬一、伊藤桂司といった方々とコラボレーションするに至るまでの経緯が細かく語られていますが、人との出会いがきちんと作品や仕事につながっているのがすごいなと。

河村:僕が気をつかわないからじゃないですかね(笑)。有名とか無名とか興味ないし、どんなに大御所の人であっても、敬意を持って接してはいますが、最初に会った時には一緒に仕事しようとか、仲良くなっておこうとか、一切思ってないんですよ。好きな音楽の話とか趣味の話をしてるだけ。あ、でも、直感は超働くので、合わないなって感じた人とは全然しゃべらないです(笑)。

あと、出会いを大切にするという意味では、まだ広島に住んでいた頃、東京にライブを見に来るたびに、自分は帰らないといけないのに、パンクスのみんなは駅前の路上とかでずっと飲んでるんですよ。それが本当に悔しくて。悔しいというか、もうつらかった。それで、バチバチの鋲ジャン着て夜中に高速バスに乗りながら、絶対東京に来て、このシーンの一員になるんだって誓ったんです。その気持ちがいまだに残っているので、東京で面白い人と出会えるだけでうれしいんですよね。

大企業案件と友達のバンドのジャケットを同時進行で

——その頃と比べて、憧れだったウィンストン・スミスやジェイミー・リードとの共作をはじめ、ユニクロ「UT」のクリエイティブディレクターといった大企業の案件もたくさん手掛けるようになった現在の自分は、どう見えていますか?

河村:それが全然変わらないんですよ。テーマや題材が違うだけで、やってることは友達のバンドのフライヤーを作っている頃からずっと同じ。というか、今でもバンドのジャケットとかバンバン作ってますからね。まさに今も、超大企業とのコラボ案件を進めながら、三重のcontrast attitudeというハードコアバンドのジャケットを同時進行でやってます。テンションもやり方もまったく一緒で、題材が違うだけです。

——新作となる加熱式たばこ“プルーム(Ploom)”とのコラボレーションについても聞かせてください。

河村:商品とのコラボレーションは、当たり前ですが自分の作品ではないので、その商品を使う人のことを第一に考えます。僕は作家脳とは別にグラフィックデザイナー脳もあるので、そっちの脳を働かせているイメージ。特に“プルーム”は喫煙具という常に持ち歩くもので、デザインを乗せられる範囲も小さい。だったら写真や絵のコラージュではなく、かっこいい柄がいいかなと。その上で、僕の熱心なファンとかではない、幅広い層に喜んでもらうために、テイストは出すけど主張はし過ぎない、でもコレクションアイテムとして欲しくなるようなデザインを作りました。

——ご自身の原点にあるハードコアやパンクの作風とは別で、現在進行形のトレンドや人気の傾向は意識しますか?

河村:意識はしないですね。意識はしてないですけど、そういうものは自然と入ってくるじゃないですか。Tシャツでも前までMサイズだったのが、今はLとかXLの方がいいなとか。そういう感じで、無意識に入ってくる感覚はいつの間にか反映されていくと思うので、それ以上に前のめりでチェックしたりとかはしないです。

でも、流行の面白さも分かるので、どうせ乗るなら最先端の超細いところは狙っていきたい。でかい波が来た時に、その真ん中にいるのは二番煎じなんですよ。そうではなく、1年後には定番になるなっていうものを見つけて、流行る1年前には手をつける。そうすれば、表現としての完成度は低くても、最初だから誰も文句を言えないし、結果的にそれが一番目立つ。そもそもコラージュなんて100年前からある手法ですからね。絵画とかもそうですが、古い手法の中でどれだけ新しいことを発見して、続けていけるか。それだけだと思います。

「飽きないために、やりきった先で技術を磨く」

——コラージュという手法・表現を追求していく過程で、ご自身の中で、もうやり切ったとか飽きてきた、みたいなことはないですか。

河村:やり切った感は感じたことありますよ。大友克洋さんとコラボレーションした「大友克洋GENGA展」の時ですね。大友さんのことはずっと大好きだったし、そのご本人から「自分の作品として好きにやっていいよ」と言われていたので、本気出しまくったんです。1つの絵の中に、これ以上はもうどうやっても貼れないくらいの量をぶち込んで、やりたいことも全部やった。それで完成した作品は、大友さんも喜んでくれたし、自分的にも満足できたんです。そうしたら、めっちゃ飽きました。

——でも「大友克洋GENGA展」をきっかけに、仕事は急増したんじゃないですか?

河村:そうなんですよ。せっかく新しいクライアントからオファーをいただけるようになったのに、そのタイミングで飽きてるなんて、意味分かんないですよね。なので、どうにか新しいことをしようと思って発見した1つが、シュレッダーを使った切り貼りだったりします。

——シュレッダーで縦に裁断された紙を素材にコラージュする技法ですね。

河村:思いついたきっかけは、「2ND(ツー・エヌ・ディー)」という1冊目の作品集を作っている時に、もう今日中に全ページ入稿しないと間に合わないって日になって、載せる作品の数が足りないことが発覚したんです。それで、どうしようと焦っている時に、事務所にあったシュレッダーが目に入って、試しに裁断した紙を貼り付けたら、だいぶいい感じになって。時間も1作品20分くらいで完成したので、これで入稿できる、というのが最初でした。

——その場しのぎで思いついた手法が、今では1つの代名詞になり。

河村:ですね。しかも、そのギリギリ入稿した日に、たまたま大友克洋さんから連絡があって、一緒にご飯を食べることになったんですよ。で、持っていたシュレッダーの作品を見せたら、「面白いじゃん。もっと突き詰めた方がいいよ」と言ってくださって、大友さんが言うなら突き詰めてみようって。なので、初めてシュレッダーを使った作品を発表した「2ND」の帯は、大友さんが書いているんです。

——まさに「古い手法の中での新しい発見」ですね。

河村:そう。あと、飽きないためのもう一つは、技術を磨くことですね。技術ならいくらでも伸ばすことができるじゃないですか。それで、手で貼る精度を高めまくって、もはやデジタルとの差が分からないぐらいのところまでもっていくようにしました。で、アナログの手貼りを極めたら、あえてデジタルでもやってみる。そうすると、デジタルに見えるけどアナログだったり、逆に、手で貼ってるかと思えばデジタルだったりして、混乱させることで新鮮さが生まれました。

——企業案件となると、作品とは違い、制約があったり改変を求められたりもしますよね?

河村:オーダーを制約とは思ってないんですよ。お題をもらった、くらいの感覚。改変についても、完成させるまでは本気でやってますけど、作ったものを提出したあとのことについては、こだわりがまったくない。SNS用にリサイズしたいとか言われても、基本的には自由にやっていいですよっていう。でも、そこまでひどいことをされた経験はないので、皆さんの優しさのおかげです。

——コラボレーションする相手の見極めとかは?

河村:そもそも、この人とコラボレーションしたい、というのもないんです。好きなブランドや尊敬する作家はたくさんいますけど、それで一緒に仕事したいっていうふうにはならないんですよ。僕自身が超絶オープンなので、オファーがあればやりますっていう感じで。そもそも僕のコラージュとコラボするっていうのは、エフェクトみたいなもので、素材次第でいろんな方向にいけるし、見え方も変わってくる。なので、切り貼りする素材さえあれば、いくらでも自由自在にコラボができる。そこが一番の楽しみであり、コラージュの魅力だと思います。

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日本の「オリバーピープルズ」の3ブティックが直営店に1本化

「オリバーピープルズ(OLIVER PEOPLES)」は2月28日、アイヴァンリテーリングにより運営されているオリバーピープルズ ブティックの3店舗を契約の満了に伴い、ブランド直営店舗へ移行すると発表した。直営店はオリバーピープルズ 青山店、代官山店、名古屋店で、4月1日から丸の内店と共にブランドのグローバルリテール戦略に加わり新たなスタートを切る。

ロッコ・バジリコ(Rocco Basilico)=オリバーピープルズ最高経営責任者は「これらのオリバーピープルズ ブティックを直営店舗に迎えることができることを、とても嬉しく思います。日本はブランドの歩みにおいて常に特別な場所であり、1989 年に初めて日本にブティックをオープンして以来、変わらぬインスピレーションの源であり続けています。この移行は、買い物体験を強化し、お客様とのつながりを深める重要な節目となります」と語った。

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日本の「オリバーピープルズ」の3ブティックが直営店に1本化

「オリバーピープルズ(OLIVER PEOPLES)」は2月28日、アイヴァンリテーリングにより運営されているオリバーピープルズ ブティックの3店舗を契約の満了に伴い、ブランド直営店舗へ移行すると発表した。直営店はオリバーピープルズ 青山店、代官山店、名古屋店で、4月1日から丸の内店と共にブランドのグローバルリテール戦略に加わり新たなスタートを切る。

ロッコ・バジリコ(Rocco Basilico)=オリバーピープルズ最高経営責任者は「これらのオリバーピープルズ ブティックを直営店舗に迎えることができることを、とても嬉しく思います。日本はブランドの歩みにおいて常に特別な場所であり、1989 年に初めて日本にブティックをオープンして以来、変わらぬインスピレーションの源であり続けています。この移行は、買い物体験を強化し、お客様とのつながりを深める重要な節目となります」と語った。

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「ユニクロ」の“感動パンツ”10周年 「アスリートが求める機能性は、一般消費者も快適にする」

「ユニクロ(UNIQLO)」の“感動パンツ”“感動ジャケット”シリーズが、シリーズの原点となる“ドライストレッチパンツ”を2014年に発売してから、10周年を迎えた。25年春夏は、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)による「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」で企画した、ウィメンズのダブルブレストの“感動ジャケット”(7990円)やメンズの“感動ジャケット”(7990円)が「非常に好調」(勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員ユニクロR&D統括責任者)という。

“感動パンツ”は、「ユニクロ」が13年にグローバルブランドアンバサダー契約を結んだ豪のプロゴルファー、アダム・スコット(Adam Scott)選手の意見を取り入れて開発したというのは有名な話。「軽量性、速乾性、高伸縮性を備えてゴルフのプレーを邪魔せず、見た目は合繊ではなく天然素材のように見えるパンツがほしい」というスコット選手の要望を受け、ユニクロと、06年から同社と戦略的パートナーシップを結んでいる東レとで開発をスタートした。

「シワになりづらいしすぐ乾くが、見た目は天然素材のようでエレガント。このように、“感動”シリーズの開発には、矛盾する要素をいかに成立させるかという課題解決が詰まっている。これは『ユニクロ』の企業としての開発姿勢を表すものでもある」と勝田執行役員は話す。

「東レがこだわり抜いて生地開発している」

“感動パンツ”のような、「アスリートが求める機能性は、一般消費者の日常生活も快適にする」といったアイテム開発の考え方は10年前に比べていっそう世の中に浸透した。コロナ禍以降は特に、あらゆるシーンで着心地の良い服を求めるニーズが強まっている。「(そのように)カジュアルウエアが機能性を持つようになり、逆にスポーツウエアはライフスタイル化が進み、今の市場はボーダーレスとなっている。その中でも、他ブランドと比較した際に『ユニクロ』は(機能性と見た目の両立の)要求のレベルが非常に高い。われわれもこだわり抜いて作っている」と、東レの石川元一グローバルSCM事業部門長は説明する。

“感動”シリーズとしては、20年にファーストリテイリンググループ傘下で元々パンツを強みとする「セオリー(THEORY)」と組んでイージーパンツを開発。22年に発売した「ユニクロ」と「マルニ」とのコラボレーションの中でも、“感動ジャケット”“感動パンツ”をラインアップした。また、22年以降は「ユニクロ」のコアラインで、メンズに加えてウィメンズでも“感動”シリーズを展開するようになっている。「(ブラトップや“ラウンドミニショルダーバッグ”など)『ユニクロ』として海外でバズを生むアイテムもいくつか出てきているが、“感動”シリーズは海外での認知はまだまだ。“ヒートテック”しかり、『ユニクロ』の商品は一度着ると機能性を理解していただけることが多い。“感動”シリーズも海外でも販促に力を入れていく」。

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【受講受付中】「アシックス スポーツスタイル」「アークテリクス」に聞く “プレミアムスポーツ市場”セミナー

コロナ禍以降、好調なスポーツ領域
成長の背景を有力2ブランドのキーマンが語る!

「WWDJAPAN」は3月25日、近年マーケットとして高成長が目立つスポーツ・アウトドア領域にフォーカスしたセミナーを開催します。コロナ禍で消費者の意識改革が進み、また気候変動などの背景もあって、機能性を土台とした製品開発に強みを持つスポーツやアウトドアのメーカーが、より一層支持を得るようになっています。この潮流は、恐らく今後も長期的に続くものです。機能性だけでなく、独自の美的感覚やきめ細やかなサービス、サステナビリティへの意識など、多様な価値を備えたブランドによる、“プレミアムスポーツ&アウトドア”の市場も、国内外で形成されつつあります。今回のセミナーでは、「アシックス スポーツスタイル」「アークテリクス」という、スポーツ・アウトドア領域の中でも特に成長著しい2ブランドの担当者をお招きし、そのブランド戦略や大切にしているフィロソフィー、消費者とのコミュニケーションなどについて語っていただきます。

このような人におすすめ

・競合他社がどのような戦略を持っているのかを知りたいスポーツ・アウトドア企業関係者
・ライフスタイル提案の一環として、スポーツやアウトドア領域に挑戦したいと考えているアパレルメーカーやSPA関係者
・スポーツ・アウトドア関連ブランドのリーシングや催事などを考えている商業施設関係者
・スポーツ・アウトドアメーカーのコミュニティーマーケティングに興味があるビジネスパーソン

 

クーポンコードをご利用の方は、申し込み画面で入力してください
早割クーポンコード【ZBH0LKIYP6】/有料会員の方はこちらからクーポンコードを取得してください

 


インフォメーション

日時

2025年3月25日(火)13:00〜15:30
※講座開始30分前から会場受付開始

実施方法

会場 または オンライン受講
※受講前日と当日に、ご案内メールをお送りしますので、ご入力にお間違いがないようご注意ください。セミナー当日は受付にてメールをご提示ください。
※オンライン受講の方は、ご案内メールに視聴用URLを記載しております。また、OneStreamでの配信を予定しています。
※ご案内メールが届かない場合は迷惑メールフォルダなどもご確認ください。
※セミナー終了後、会場&オンライン受講者へのアーカイブ配信の案内はありませんのでご了承ください。後日アーカイブ動画は、単体で購入することが可能です。

会場

株式会社TSIホールディングス本社
東京都港区赤坂 8-5-27 住友不動産青山ビル東館

募集人数

会場:50名
オンライン:100名

募集期間

2025年3月3日(月)〜 2025年3月24日(月)12時まで
【早割10%OFFキャンペーン】
3/10(月)18時までのお申し込みで、一般価格から10%OFFで受講いただけます。
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クーポンコード:ZBH0LKIYP6

受講料金

一般価格:16,500円14,850円早割10%OFF
スタンダードプラン:11,550円 30%OFF
ライトプラン:14,850円 10%OFF
※表示価格は全て1名様分、税込です。
※他のクーポンとの併用はできません。
※早割期間内であっても、募集人数に達し次第受け付けを締め切らせていただく場合がございます。

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講座終了後、アーカイブ受講の販売を予定しております。




プログラム

【Session#1】13:00~13:10(10分)

コロナ禍以降、絶好調 スポーツ・アウトドア市場概況

コロナ禍以降、スポーツやアウトドアのメーカーはナイキなど一部を除き、軒並み好調を維持しています。好調の背景として、消費行動にどのような変化があるのでしょうか。特に好調なブランドはどこでしょうか。市場概況をお伝えします。

スピーカー:五十君 花実/WWDJAPAN副編集長
PROFILE:(いそぎみ・はなみ)1983年生まれ、愛知県出身。大学卒業後、2006年に繊研新聞社に入社し記者を経験。18年にINFASパブリケーションズに移り「WWDJAPAN」記者、21年から現職。スポーツ・アウトドア領域の取材は24年から担当
【Session#2】13:10~13:55(45分)

ファッションでも高い支持、「アシックス スポーツスタイル」

かつては部活や体育のイメージが強かった「アシックス」ですが、ここ数年でファッションとしても地位を確立し、街ゆくおしゃれな男女の足元に“ゲルカヤノ”などのスニーカーが定着しました。それをけん引してきたのが、「アシックス」の中のファッションやライフスタイルのカテゴリーにあたるスポーツスタイルです。2024年12月期のカテゴリー売上高は984億円と、前期比56.2%増(為替影響を除く)で着地。アシックス全社の成長を支える、スポーツスタイルの躍進を掘り下げます。

ゲストスピーカー:鈴木 豪/アシックス執行役員スポーツスタイル統括部統括部長
モデレーター:五十君 花実/WWDJAPAN副編集長
【Session#3】13:55~14:40(45分)

「アークテリクス」、成長を支えるブランド戦略

昨今、急成長著しいスポーツ・アウトドアブランドの代表格の1つでもある「アークテリクス」。国内では、2024年11月に新宿の駅前に“アルファストア”と位置付ける大型店を出店。予約制接客の導入や洗濯機も導入したケアサービス、コミュニティー育成を意識したイベント開催など、独自の価値提供で、「スポーツ・アウトドアブランドとはこういうもの、こうあるべき」という既存の枠組みを拡張しています。その狙いやブランドとして目指すあり方を語っていただきます。

ゲストスピーカー:高木 賢/アメアスポーツジャパン アークテリクス ブランドヘッド
PROFILE:(たかぎ・けん)1967年東京都生まれ エスモード ジャポン卒業 日系、外資のアパレル数社を経て2013年にアメアスポーツジャパン入社。アメアスポーツジャパンアークテリクス日本事業を立ち上げ。2020年から現職
モデレーター:五十君 花実/WWDJAPAN副編集長

※講義内容やタイトルは予告なく変更となる場合があります。あらかじめご了承ください。

【Extra】14:45 ~15:30(45分)

ミートアップ

会場受講の方はセミナー終了後、登壇記者も参加するミートアップにご参加いただけます。ドリンクを用意しておりますので、さらなるコミュニケーションの場としてご活用ください。

 

特典

注意事項

・受講料は会場とオンライン同額です。
・割引価格はクーポンをご利用時に適用となります。スタンダードとライトのクーポンコードはマイページをご確認の上、申し込み画面で入力してください。
・申し込みの受け付けは先着順です。募集人数に達し次第締め切らせていただきます。
・申し込み完了後のキャンセルは受け付けておりません。
・定期購読者で会員登録がお済みでない方はこちら
・本ページでのお支払いはクレジットカードのみとなります。コンビニ支払いをご希望の方はこちら
・適格請求書(領収書)の発行は、こちらから。記載のお宛名をご入力の上ご連絡ください。
弊社登録番号:T5-0110-0104-4278
・当日は会場内に撮影用のカメラが入ります。撮影した動画や写真は、「WWDJAPAN」Weeklyやウェブサイト、公式SNSなどで掲載する場合があります。ご了承いただける方のみお申し込みください。

 

講座終了後、アーカイブ受講の販売を予定しております。

 

問い合わせ先
INFASパブリケーションズ カスタマーサポート
お問い合わせフォームはこちら

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奈良・橿原の「無印良品」世界最大店をパトロール 「資源循環型社会を具現化した店」と清水社長

良品計画は3月1日、奈良・橿原に世界最大となる大型店「無印良品 イオンモール橿原」をオープンした。イオンモール橿原が本館の西側に増床したオープンモールエリア「ウエスト・ビレッジ」にワンフロアの独立店舗で出店。売場面積は8201平方メートルで、昨年11月に一時閉店した旧店舗の約10倍の規模を誇る。「奈良は『無印良品』を作った田中一光さんの出生地であり、それゆえ奈良への造詣も深い。その地に世界一の規模で戻ってきた。『無印良品』がいま持っているすべてのコンテンツを揃えた特別店となる。とくに無印良品が進めてきた資源循環型社会を分かりやすく具現化した店舗」と、オープン時の会見に登壇した同社の清水智社長は話す。

一周すると約400mある広い店内は、「衣」(衣料品)、「健」(美容と健康)、「生」(日用雑貨)「住」(家具とファブリック)、「収」(収納用品)、「食」(食品)、「集」(Open MUJI)、「ReMUJI」、「本と喫茶 橿原書店」の9つのゾーンで構成。大きな売場サインを掲げるなどして、カタログのようにひと目で場所が分かるよう工夫されている。通常の店舗では展開できないような大型家具から寝装品までパーツも含めてフルラインナップを揃えているのが特徴だ。ベッドやソファなどを購入後、そのまま持ち帰れるよう店舗に面したピックアップ駐車場も設けた。

作業の様子が見えるリペア工房

南側のエントランスを入ってすぐ左手に位置するのが、資源循環の新たな取り組み拠点となる「ReMUJI」エリア。これまで衣料品再生プロジェクトの名称だった「ReMUJI」を資源循環の取り組み全体の総称に変更し、国内最大規模の売場を設けた。資源の回収ステーションを中心に、アイテムを拡大した「リユース品販売」のほか、「わけあり品販売」「古家具販売」「古本販売」のコーナーに加え、新たに約132平方メートルの「リペア工房」を併設。国内外で仕入れた古家具のアップサイクルや回収した家具のリペア、クリーニングを同店専任スタッフが行い、作業の様子を客からも見えるようにしている。

「無印良品」は、店舗を地域のコミュニティーセンターと位置付け、地域課題の解決に取り組んでいる。同店でも「自然、循環、文化」をキーワードにコンセプトを設定し、地域住民にとって健やかな集いの場となることをめざすという。その象徴的なコーナーが、店舗中央の集いの場「Open MUJI」だ。天井には約8メートル四方の天窓を設け、光を取り込むことで自然と人が集まるような場所を演出。奈良県産の吉野杉など地域資源をふんだんに活用したぬくもりある空間には、約1万冊の絵本と児童書を用意した。店内内装に吉野杉などを多用するほか、家具や玩具にも吉野で活動する職人や工房が製作したものを採用している。

新たな試みとして注目されるのは、無印良品初の新業態「本と喫茶」のエリアだ。日本出版販売(日販)が運営する「橿原書店」と無印良品の「Café&Meal MUJI」を組み合わせ、書店と飲食を融合させたブック&カフェ空間を提供。書店にはこれまでの無印良品では取り扱いがなかった雑誌も含め約10万冊が並び、購入前の試し読みも可能だ。さらに、企画コーナーを常設するほか、奈良の伝統工芸品や特産品、奈良ゆかりのクリエーターの作品、土産物のはにわなどグッズも展示し、本以外でも地域の魅力を発信。「まちの本棚」コーナーでは、顧客が薦める街の魅力をマップで可視化し、奈良の文化や歴史を伝えるイベントも開催する。カフェでは、本を読みながらでも食べやすいおにぎりや丼ぶり、デザート、ドリンクに特化。奈良産の食材を活用したメニューを用意し、地域住民や観光客の憩いの場としても機能する。

「地域のコミュニティーセンターを体現」

日販グループホールディングスの富樫建社長は、全国の書店数が20年間で半減し、社会問題化している現状を説明。「この社会課題に対する解決策にこの数年取り組んできたが、橿原書店もその一環。地域のコミュニティーセンターを体現している無印良品の姿に共感して今回の取り組みを決めた。地域の交流や文化の拠点であり続けるよう地域にいいインパクトを与えられる場所にしていきたい」と語る。

イオンモール橿原はもともと奈良県内だけでなく、大阪南部や和歌山からも集客する広域商圏型ショッピングモールだが、「無印良品」の開業により、商圏エリアがさらに拡大することが期待される。車で30分以内を足元商圏としながらも、週末やイベント時期には京都や三重、大阪市内からの来店も見込まれるという。

構想から2年、立ち上げから1年。地域のコミュニティーセンターをめざすという同店の下田裕店長は「無印良品の今を感じてもらえる店ができたと自負している。ファンはもちろん、新たなお客様にも商品やサービスで新たな発見をしてもらえる店にしていきたい。そのためのサポートを全力でしていく」と意気込みを語った。

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第8話:「回転数」ってこういうこと! 信号機に着想を得たマネジメントって?

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

徹は渋谷店のスタッフに「店舗の在庫を増やす」のではなく、「在庫の回転数を向上させる」必要性を提言。そして、信号機に着想を得て、「在庫を切らさず、回転数を向上させる」手法にたどり着く。「ハンナズ」でダイナミックなマネジメントが始まろうとしている!

登場人物紹介

第八話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
SCRIPT:TAKEO AOKI
COMICS:YAMA AOTA

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リカバリーウエア“バクネ”で知られるテンシャルが東証グロース市場に上場 初値は公開価格30%高の2751円

リカバリーウエアをはじめとするコンディショニング製品を手掛けるテンシャル(TENTIAL)は2月28日、東京証券取引所グロース市場に上場した。初値は2600円と公開価格を30%上回り、2751円で取り引きを終えた。中西裕太郎・最高経営責任者(CEO)によると、調達資金は主に広告・宣伝や製品開発に充てるという。同社の2024年1月期の売上高は54億900万円を記録し、25年1月期は前期比21%増の119億5500万円を見込んでいる。

中西CEOはプロサッカー選手を目指した高校時代に病気で夢を絶たれた体験から、アスリートの経験と健康の重要性を社会に還元したいという思いで18年2月にアスポールという社名で創業。19年4月に「テンシャル(TENTIAL)」の始動を発表し、8月に第1弾としてスニーカーの機能性インソールを発売した。それ以降、リカバリーウエア“バクネ”や寝具、リカバリーサンダルなど製品を拡充。科学的根拠に基づいたコンディショニング製品を開発し、健康課題にアプローチしている。

「テンシャル」の特徴と今後の展望

「テンシャル」はオンライン中心のマーケティングが特徴で、売上高はECが77.9%を占める。なお直営店を含む89.2%を自社チャネルで売り上げているため、高い粗利率を実現。中西CEOは、「昨年末、“バクネ”のテレビCMに櫻井翔を起用したことで、ブランドの認知率は1ケタ%から18.3%にアップした。今後も同製品を軸に認知拡大に注力し、ほかのカテゴリーの売り上げにもつなげていく」と話す。中心顧客層は、高・中所得者層の30〜50代。製品改良による価格改定や高価格帯製品の発売によって購入単価の向上をかなえながら、購入件数も着実に増加している。全国の主要都市に9店舗を構え、全店舗で黒字営業を維持。「今後も適切なタイミングに厳選した場所へ出店し、オンラインでは得られない認知獲得に努める。オンラインを中心に発展してきたが、高価格帯製品を取り扱っていることもあり、手触りを確かめたり、試着したりするなど体験の場として店舗拡大を視野に入れている」。

リカバリー市場の規模

一般社団法人日本リカバリー協会によると、23年のリカバリー市場は5.4兆円と推計され、健康意識の高まりと共に、30年には23年比2.6倍の14.2兆円に成長すると見込まれる。日本マーケティングリサーチ機構によると、「テンシャル」の“バクネ”はリカバリーウエアの年間売上高、年間販売数、ギフト売上高においてNo.1(24年11月11日〜12月24日)を獲得している。

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三井不動産、台湾のアウトレットモール事業で存在感 日系テナントが人気

三井不動産が台湾で手掛けるSC(ショッピングセンター)事業が好調だ。現在、新北市、台中市、台南市にアウトレット業態を3施設、台中市にショッピングモール「ららぽーと」を1施設展開する。いずれも地元住民や観光客から支持を得て、台湾における同社の存在感を高めている。SCのみならず、ホテル事業と住宅事業も展開し、今後開業予定を合わせて計13事業を推進する。

台湾における成功の先駆けとなったのが、2016年に開業した「三井アウトレットパーク 台湾林口」(以下、MOP台湾林口)だ。開業以来、地域とともに発展し、23年には年間来館者数延べ約1000万人、売り上げは過去最高を達成した。24年11月14日にはプロパーとアウトレットを融合した第2期棟「三井アウトレットパーク台湾林口Ⅱ館」を開業し、順調に売り上げを伸ばしている。

Ⅱ館を運営する三新二奧特萊斯股份有限公司董事総経理の村原良祐氏は「Ⅱ館のプレオープン以降、累計で予算比を大きく上回り想定以上に好調に推移している。近隣の住民中心に待ち望まれていたことが分かり、増床してよかった」と話す。

MOP台湾林口は、台北市中心部から車で約30分、桃園国際空港から車で約20分、MRT「林口」駅からも徒歩5分という交通至便な立地にある。商圏人口は5キロ圏内で21万人、車で30分圏内に約670万人、60分圏内に約1020万人。林口エリア周辺の人口は、同施設の進出が検討され始めた12年からこれまでに4~5倍に増えた。住宅の価格も3~4倍に上昇しているという。

「もともと何もなかった場所にアウトレットが出店したことでエリアの価値が上がり、若い共働き世帯が住むベッドタウンに変貌した。アウトレットでは珍しく近隣住民が日常的に訪れる。まちづくりに貢献できたことが成功の大きな要因だ」と、台湾三井不動産股份有限公司総経理特別助理の春田三四朗氏は話す。

Ⅱ館増床オープンでは、広域からのレジャー目的だけでなく、近隣住民の暮らしを支える日常使いができるフロアを新設し、初の2業態複合型商業施設への進化を目指す。2階をアウトレット、1階と3階をプロパー販売のフロアとし、I館とつなぐブリッジを設けて回遊性を高めた。「無印良品」「ユニクロ」「ジーユー」「ダイソー」など日系の大型専門店がプロパーフロアに出店するほか、台湾初出店のキッズブランド「マーキーズ」、林口初出店のベビー・マタニティー用品専門店「アカチャンホンポ」、台湾北部初出店のデジタルテーマパーク「リトルプラネット」など親子向けの物販やエンターテイメント施設も充実する。Ⅱ館の約100店舗を合わせて総店舗数は約300店舗となった。計画では25年の来館者数は延べ1400万人、売上高は前年比50%増の125億台湾元(約600億円)を見込んでいる。

日本のアウトレットモールはオープンエア型が主流だが、同施設は台湾の気候に合わせて室内型モールとして設計されたことも地元に受け入れられた理由の一つ。さらに、日本では、飲食店比率は10~12%程度だが、同施設ではⅠ館とⅡ館を合わせて25%と大幅に増やした。「台湾人にとって食は娯楽のひとつ。外食文化が根付いているのでこのゾーニングが功を奏した」(春田氏)。

日系企業が台湾市場で順調に拡大

「ダイソー」「スタンダードプロダクト」「スリーピー」の3業態を展開する台湾大創百貨股份有限公司は、台湾での店舗数を着実に拡大してきた。95店舗目となる林口店は、3業態を組み合わせた複合店を3階に出店している。「平日の集客が弱いアウトレットで高い集客力を発揮できるので出店の引き合いは多い。ただ、今回はプロパーフロアへの出店なので出店を決めた」と、同社の吉川宗岐董事長は話す。

台湾での売り上げは今期、新店も含めて前年比2ケタ増で推移する。特にいま導入期にある「スタンダードプロダクト」は、良質でシンプルなデザインが台湾の消費者に支持され、売上が予想の2倍に達しているという。

大阪・堺の子供服ブランド「マーキーズ」は、可愛いデザインとバリエーションの広さ、手頃な価格が台湾でも人気だ。店舗のディスプレイに日本らしさを表現するなど店づくりにもオリジナリティを発揮している。日本国内でも中華圏を中心としたインバウンドの間で人気を集めており、店内で台湾や中国のバイヤーがインスタライブをすることもよくあるという。「台湾市場には子供服ブランドがあまりないので、日本の上代でも通用するし、支持されると判断し、出店を決めた」と、台灣瑪琪思股份有限公司の内藤浩次総経理は話す。MOP台湾林口Ⅱ館店の売り上げは想定以上で、平均客単価は8000~9000円。買い上げ点数は1人3枚以上で日本より多い。

「ユニクロ」はⅠ館から売り場面積を2倍に拡大移転し、「ジーユー」との複合店をオープンした。売場面積は合わせて3465平方メートル。「ジーユー」は台湾での知名度が低く、進出当初は苦戦したが、「ユニクロ」との相乗効果を狙って出店したららぽーと台中店が大成功し、規模を拡大してⅡ館に出店した。

現地法人の設立8年目を迎え、MOP台湾林口Ⅰ館にも店舗を構えるビームス台湾は、現在台湾に路面店も含めて計9店の直営店を運営する。出店エリアや施設の特徴に応じた商品構成を行うことで現地ニーズに適合させたビームスブランドの確立を進めてきた。ビームス台湾の公式サイトにおける台湾国内会員数は24年10月で18万人を誇る。MOP台湾林口店については絶好調で年々売り上げが伸びているという。「出店する前は、台湾ではスーツは売れないかもと心配したが、蓋を開けてみたら意外とスーツの需要はあるし、売れているものも日本とあまり変わらない。同店では、ビームスハート中心にプロパー商品も結構取り扱っている」(碧慕絲股份有限公司の原田至玲董事長)。24年9月には台南初の路面店型店舗「ビームス新光三越台南新天地」をオープンした。路面店を拠点に台南エリアでのコミュニティ作りをめざす。ビームスジャパンのポップアップも展開し、日本の伝統やデザインを紹介していく。

3月、台北郊外にららぽーとの新店オープン

アウトレット業態の成功を背景に、ららぽーとの開発も進む。23年5月に開業した「三井ショッピングパーク ららぽーと台中」は、台湾初出店の16店舗を含む約300店舗が集結。空いていた区画も順次埋まり、オープン景気が終わった現在でも順調に推移している。とくに好調なのが飲食店。周辺人口は林口の5倍ほどで、盤石な商圏に支えられているという。

25年3月20日には、台北市初のららぽーとで台湾2施設目となる「三井ショッピングパーク ららぽーと台北南港」が開業する。台北初のスーパーマーケット「ロピア」をはじめ、日系とインターナショナルファッションブランドや2か所のフードコートを含む約280店舗が出店。25年4月以降にシネマと約20店舗のレストラン、26年上期には大型エンターテインメント施設「キッザニア」が開業し、約300店規模の施設となる。

特色を持たせた吹抜け空間や、エンターテインメントなどのイベント開催が可能な広場を設置。家族で楽しめる施設を充実させ、単なる買い物の場ではなく、長時間滞在できる空間を提供する時間消費型ショッピングモールをめざす。

「台湾では三井=アウトレットのイメージが強く、アウトレットモールと百貨店の違いがまだ十分に認知されていない。ショッピングモールが提供できる快適な空間や時間の過ごし方をもっと広め、滞在時間を増やしていきたい」と春田氏。2~3年後には、ららぽーと3号店となる高雄店の出店を計画。台湾市場を足がかりに海外進出を狙う日系企業からの期待も高まっている。

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「松本パルコ」40年の歴史に幕 「これほど深く愛されたパルコはない」

長野県の松本パルコが2月28日で閉店した。北信越唯一のパルコとして1984年にオープンし、“松本でおしゃれを買える”店として地元住民に親しまれてきた。

最終日は、開店前の午前10時には約300人が列をなし、かつての日常のように店の扉が開くのを待った。「最後のパルコ」を惜しむ声が交差し、館内は別れを惜しむ買い物客で終日賑わった。その光景は、松本の街に40年間息づいてきたパルコの存在の大きさを物語っていた。

松本市出身で、2階にセレクトショップ「トーカ バイ リファート(TOCA by lifart...)」を構えていた西牧隆行代表は、かつて高校生の頃、「学校帰りに『とりあえずパルコ』に立ち寄るのがルーティンだった」と振り返る。「買い物だけでなく、立ち読みをしたり音楽を聴いたりと、青春の思い出が詰まった憧れの場所でもあった。街の文化的な側面でも、僕らの世代はもちろん、今の若い人たちにとっても新たな世界への扉を開く場所が一つ失われるのは寂しい」と語った。

6階では、市民有志による「ありがとう松本パルコ実行委員会」や、市・松本商工会議所による「商都松本にぎわい発信プロジェクト実行委員会」がイベントを自主的に開催し、来館者と最後の思い出を作った。

津田沼パルコで店長を務めた経歴を持つ野口香苗・広報担当業務部長も、松本パルコの閉店を見届けようと駆けつけた。これまで数々の店舗の閉店に立ち会ってきたが、「ここは特別な雰囲気がある」と語る。他の店舗でもパルコへの愛着は感じられたが、「松本パルコは、地域の人々にとって誇りの存在だったことが伝わってきた」。最終営業日に6階で開かれたイベントもパルコ主催ではなく、市民が自主的に企画したものだった。「このような形で最後を迎えられるのは、松本ならではかもしれない」と、店を見守る視線は温かかった。

午後6時に松本パルコ前の公園通りの一部が歩行者天国となり、多くの来店客が足を運んだ。店の姿を目に焼き付けようとする人々の表情には、それぞれの思いが滲んでいた。午後8時の閉店が近づくと、正面入り口前には多くの人が集まり、最終営業の瞬間を見届けた。閉店セレモニーでは、松本市出身の写真家・白鳥真太郎氏がパルコの建物と来店客の集合写真を撮影。その歴史的瞬間を記録に残した。

斉藤博一・松本パルコ店長は、「パルコにとって、松本は特に地域の皆さまやお客さまとの絆が深い場所だった。これほどまでに愛していただいたパルコは他にないと感じている。この40年間の思い出はかけがえのないものであり、大切な財産でもある」と振り返りった。そして最後に「長年にわたるご支援に、心より感謝申し上げます。40年間、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。

閉店の瞬間、松本パルコを包み込むように大きな拍手が響き渡り、どこからともなく「ありがとう」という声が幾重にも重なった。地域に愛され続けたこの場所は、温かな別れの言葉とともにその40年の歴史に静かに幕を下ろした。

松本パルコは1984年8月23日に開業した。当時、松本市の人口は20万人に満たなかったものの、民藝や音楽教育法「スズキ・メソード」発祥の地として知られ、多様な文化が息づく地域であった。こうした文化的背景はカルチャーを発信するパルコとも親和性が高く、地元青年会議所などによる積極的な誘致活動が展開された。松本市への出店には特別な縁もあった。パルコの社長・会長を歴任した増田通二氏の父であり、日本画家の増田正宗氏が松本市の出身であったことも、開業実現の一因となったともいわれている。

同店は松本市の中心街に位置し、56年に開業したはやしや百貨店(74年に信州ジャスコに転換)の跡地にオープンした。地上5階・地下1階の6フロアで、店舗面積は約2万2000㎡。22年2月期のテナント取扱高は39億8600万円で、コロナ禍の影響含め苦戦が続いていた。営業力の強化や、運営の効率化を進めてきたが、競争環境の変化や今後の投資負担を考慮し、閉店を決断した。

地元の一部メディアによると、松本パルコの閉店後は建物の活用をめぐり、関係者による協議が進められているという。新たな複合商業施設としての再生が検討されているが、市中心部の活性化に向けた具体策が問われている。

近隣エリアでは、1885年に呉服店として創業した井上百貨店も3月31日に閉店する。これら地域を盛り上げてきた商業施設の撤退が続き、地方都市の商業環境の厳しさを浮き彫りにするとともに、その施設や跡地の利用が課題となっている。

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「松本パルコ」40年の歴史に幕 「これほど深く愛されたパルコはない」

長野県の松本パルコが2月28日で閉店した。北信越唯一のパルコとして1984年にオープンし、“松本でおしゃれを買える”店として地元住民に親しまれてきた。

最終日は、開店前の午前10時には約300人が列をなし、かつての日常のように店の扉が開くのを待った。「最後のパルコ」を惜しむ声が交差し、館内は別れを惜しむ買い物客で終日賑わった。その光景は、松本の街に40年間息づいてきたパルコの存在の大きさを物語っていた。

松本市出身で、2階にセレクトショップ「トーカ バイ リファート(TOCA by lifart...)」を構えていた西牧隆行代表は、かつて高校生の頃、「学校帰りに『とりあえずパルコ』に立ち寄るのがルーティンだった」と振り返る。「買い物だけでなく、立ち読みをしたり音楽を聴いたりと、青春の思い出が詰まった憧れの場所でもあった。街の文化的な側面でも、僕らの世代はもちろん、今の若い人たちにとっても新たな世界への扉を開く場所が一つ失われるのは寂しい」と語った。

6階では、市民有志による「ありがとう松本パルコ実行委員会」や、市・松本商工会議所による「商都松本にぎわい発信プロジェクト実行委員会」がイベントを自主的に開催し、来館者と最後の思い出を作った。

津田沼パルコで店長を務めた経歴を持つ野口香苗・広報担当業務部長も、松本パルコの閉店を見届けようと駆けつけた。これまで数々の店舗の閉店に立ち会ってきたが、「ここは特別な雰囲気がある」と語る。他の店舗でもパルコへの愛着は感じられたが、「松本パルコは、地域の人々にとって誇りの存在だったことが伝わってきた」。最終営業日に6階で開かれたイベントもパルコ主催ではなく、市民が自主的に企画したものだった。「このような形で最後を迎えられるのは、松本ならではかもしれない」と、店を見守る視線は温かかった。

午後6時に松本パルコ前の公園通りの一部が歩行者天国となり、多くの来店客が足を運んだ。店の姿を目に焼き付けようとする人々の表情には、それぞれの思いが滲んでいた。午後8時の閉店が近づくと、正面入り口前には多くの人が集まり、最終営業の瞬間を見届けた。閉店セレモニーでは、松本市出身の写真家・白鳥真太郎氏がパルコの建物と来店客の集合写真を撮影。その歴史的瞬間を記録に残した。

斉藤博一・松本パルコ店長は、「パルコにとって、松本は特に地域の皆さまやお客さまとの絆が深い場所だった。これほどまでに愛していただいたパルコは他にないと感じている。この40年間の思い出はかけがえのないものであり、大切な財産でもある」と振り返りった。そして最後に「長年にわたるご支援に、心より感謝申し上げます。40年間、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。

閉店の瞬間、松本パルコを包み込むように大きな拍手が響き渡り、どこからともなく「ありがとう」という声が幾重にも重なった。地域に愛され続けたこの場所は、温かな別れの言葉とともにその40年の歴史に静かに幕を下ろした。

松本パルコは1984年8月23日に開業した。当時、松本市の人口は20万人に満たなかったものの、民藝や音楽教育法「スズキ・メソード」発祥の地として知られ、多様な文化が息づく地域であった。こうした文化的背景はカルチャーを発信するパルコとも親和性が高く、地元青年会議所などによる積極的な誘致活動が展開された。松本市への出店には特別な縁もあった。パルコの社長・会長を歴任した増田通二氏の父であり、日本画家の増田正宗氏が松本市の出身であったことも、開業実現の一因となったともいわれている。

同店は松本市の中心街に位置し、56年に開業したはやしや百貨店(74年に信州ジャスコに転換)の跡地にオープンした。地上5階・地下1階の6フロアで、店舗面積は約2万2000㎡。22年2月期のテナント取扱高は39億8600万円で、コロナ禍の影響含め苦戦が続いていた。営業力の強化や、運営の効率化を進めてきたが、競争環境の変化や今後の投資負担を考慮し、閉店を決断した。

地元の一部メディアによると、松本パルコの閉店後は建物の活用をめぐり、関係者による協議が進められているという。新たな複合商業施設としての再生が検討されているが、市中心部の活性化に向けた具体策が問われている。

近隣エリアでは、1885年に呉服店として創業した井上百貨店も3月31日に閉店する。これら地域を盛り上げてきた商業施設の撤退が続き、地方都市の商業環境の厳しさを浮き彫りにするとともに、その施設や跡地の利用が課題となっている。

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「新宿アルタ」45年の歴史に幕 最後は「いいとも!」でお別れ

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は28日、新宿アルタと原宿アルタを閉館した。1980年開業の新宿アルタは商業施設というだけでなく、フジテレビの長寿番組「笑っていいとも!」(1982〜2014年)の観覧スタジオとして全国的に有名だった。また新宿駅東口に面した大型のアルタビジョンは街のランドマークとして親しまれ、待ち合わせ場所でもあった。最終日には別れを惜しむ人たちが新宿アルタの外観をスマホで撮影する姿が絶えなかった。

閉店後の20時40分、正面入り口で末広泰之店長が閉店のあいさつを行った。「45年の長年にわたり、ショッピングやスタジオ観覧、待ち合わせなどにご利用いただき、新宿アルタを支えてくださった全てのお客さまに深く感謝申し上げます」と述べた後、閉店を見守る人たちに唱和を呼びかけた。末広店長が「(営業継続する)サンシャインシティアルタと(伊勢丹がある)新宿東口)に来てくれるかな?」と叫ぶと、集まった数百人の人たちが「いいとも!」と応えた。

新宿アルタは地下2階・地上7階のフロア構成。7階にはかつて「笑っていいとも!」の観覧スタジオだった「キースタジオ」、6階にレコードの「HMV」、4・5階に服飾生地の「オカダヤ」、中低層階にはアパレル、雑貨、飲食、サービスなどの店舗が入り、1階グランドフロアはダイソーのプチプラ雑貨「スタンダードプロダクツ」が営業していた。三越伊勢丹HDは新宿アルタ単体の業績を公表していないが、赤字だったもようだ。土地・建物はもともと三越が所有していたが、2000年にダイビルに所有権を売却している。閉館後の計画は現時点で発表されていない。

同時に15年開業の原宿アルタも閉館したため、アルタの屋号で運営する商業施設は池袋のサンシャインシティアルタだけになる。

1999年ごろに館内のラブボート系列の店舗で店長をしていたという女性は、当時の同僚5人と一緒に訪れ、建物の前で記念撮影をしていた。「当時はギャルブランドが全盛でした。館内に一体感があって他のお店の店舗スタッフとも仲良しでした。私たちの休憩室と、『いいとも!』のタレントさんの楽屋がとても近くて、タモリさんや(笑福亭)鶴瓶さんはもちろん、堂本光一さんや安室奈美恵さんも間近で見ました」「エレベーターでは香取慎吾さんとよく一緒になりました。アルタで働けて幸せでした」と振り返った。

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「新宿アルタ」45年の歴史に幕 最後は「いいとも!」でお別れ

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は28日、新宿アルタと原宿アルタを閉館した。1980年開業の新宿アルタは商業施設というだけでなく、フジテレビの長寿番組「笑っていいとも!」(1982〜2014年)の観覧スタジオとして全国的に有名だった。また新宿駅東口に面した大型のアルタビジョンは街のランドマークとして親しまれ、待ち合わせ場所でもあった。最終日には別れを惜しむ人たちが新宿アルタの外観をスマホで撮影する姿が絶えなかった。

閉店後の20時40分、正面入り口で末広泰之店長が閉店のあいさつを行った。「45年の長年にわたり、ショッピングやスタジオ観覧、待ち合わせなどにご利用いただき、新宿アルタを支えてくださった全てのお客さまに深く感謝申し上げます」と述べた後、閉店を見守る人たちに唱和を呼びかけた。末広店長が「(営業継続する)サンシャインシティアルタと(伊勢丹がある)新宿東口)に来てくれるかな?」と叫ぶと、集まった数百人の人たちが「いいとも!」と応えた。

新宿アルタは地下2階・地上7階のフロア構成。7階にはかつて「笑っていいとも!」の観覧スタジオだった「キースタジオ」、6階にレコードの「HMV」、4・5階に服飾生地の「オカダヤ」、中低層階にはアパレル、雑貨、飲食、サービスなどの店舗が入り、1階グランドフロアはダイソーのプチプラ雑貨「スタンダードプロダクツ」が営業していた。三越伊勢丹HDは新宿アルタ単体の業績を公表していないが、赤字だったもようだ。土地・建物はもともと三越が所有していたが、2000年にダイビルに所有権を売却している。閉館後の計画は現時点で発表されていない。

同時に15年開業の原宿アルタも閉館したため、アルタの屋号で運営する商業施設は池袋のサンシャインシティアルタだけになる。

1999年ごろに館内のラブボート系列の店舗で店長をしていたという女性は、当時の同僚5人と一緒に訪れ、建物の前で記念撮影をしていた。「当時はギャルブランドが全盛でした。館内に一体感があって他のお店の店舗スタッフとも仲良しでした。私たちの休憩室と、『いいとも!』のタレントさんの楽屋がとても近くて、タモリさんや(笑福亭)鶴瓶さんはもちろん、堂本光一さんや安室奈美恵さんも間近で見ました」「エレベーターでは香取慎吾さんとよく一緒になりました。アルタで働けて幸せでした」と振り返った。

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「ペリー エリス」親会社の会長が死去、享年89 キューバから米国に渡った立志伝中の人物

米アパレル企業ペリー・エリス・インターナショナル(PERRY ELLIS INTERNATIONAL)は、共同創業者のジョージ・フェルデンクレイス(George Feldenkreis)会長が死去したことを発表した。89歳だった。死因は明らかにされていない。

キューバ革命を機に米国移住など波乱万丈の人生

フェルデンクレイス会長は、1935年キューバ生まれ。ハバナ大学(University of Havana)のロースクールで学んだものの、大学がしばらく閉鎖されたことから家業の輸入会社に加わった。その後、故フィデル・カストロ(Fidel Castro)らによるキューバ革命を機に61年に米国に渡り、自動車部品会社を設立。67年、兄弟と共にユニホーム会社シュプリーム・インターナショナル(SUPREME INTERNATIONAL)を立ち上げた。同社は93年に上場。99年に「ペリー エリス(PERRY ELLIS)」を買収したことから、現社名に変更した。

現在、同社は「ペリー エリス」に加えて「オリジナル・ペンギン(ORIGINAL PENGUIN)」「ベン・ホーガン(BEN HOGAN)」「ラファエラ(RAFAELLA)」など30以上のブランドを保有。また、「キャロウェイ(CALLAWAY)」や「ジャック ニクラウス(JACK NICKLAUS)」、「ナイキ(NIKE)」のスイムウエアなどのライセンスビジネスを行っている。全体の売り上げは10億ドル(約1490億円)程度と見られている。

退任に追い込まれてからの逆転劇

フェルデンクレイス会長は、93年から2015年まで会長兼最高経営責任者(CEO)として同社を率いていたが、アクティビスト投資家が、コーポレートガバナンスの強化を理由に会長職とCEO職の分離を要求。これを受け、同氏はエグゼクティブ・チェアマンに就任し、当時社長を務めていた息子のオスカー・フェルデンクレイス(Oscar Feldenkreis)がCEOに昇格した。なお、フェルデンクレイス会長は17年、取締役会によって退任に追い込まれたものの、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ(FORTRESS INVESTMENT GROUP)と手を組み、MBO(経営陣による買収)を実施。ペリー・エリス・インターナショナルを非公開化することに成功し、自身は会長に返り咲き、オスカーは社長兼CEOに就任した。MBOが完了した時点で、フェルデンクレイス会長は83歳。高齢ではあったが、その後もエネルギッシュに業務に取り組んでいたという。

CEOを務める息子や同社の追悼コメント

オスカーは訃報に際し、「ジョージは、父として、創業者として、そして真のアイコンとして皆に愛された。私たちの心の中で永遠に生き続ける父の人生とレガシーを、誇りを持って祝したい」と語った。

ペリー・エリス・インターナショナルは、「ジョージはキューバからの移民として厳しい環境の中でキャリアをスタートしつつも、その起業家精神や先見の明があるリーダーシップにより、58年にわたって当社を繁栄させるという輝かしい功績を残した。彼が世界中の友人たちやビジネスパートナー、ファッション業界に与えた影響やインスピレーションは消えることはない」と声明を発表した。

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米アパレル企業ペリー・エリス・インターナショナル(PERRY ELLIS INTERNATIONAL)は、共同創業者のジョージ・フェルデンクレイス(George Feldenkreis)会長が死去したことを発表した。89歳だった。死因は明らかにされていない。

キューバ革命を機に米国移住など波乱万丈の人生

フェルデンクレイス会長は、1935年キューバ生まれ。ハバナ大学(University of Havana)のロースクールで学んだものの、大学がしばらく閉鎖されたことから家業の輸入会社に加わった。その後、故フィデル・カストロ(Fidel Castro)らによるキューバ革命を機に61年に米国に渡り、自動車部品会社を設立。67年、兄弟と共にユニホーム会社シュプリーム・インターナショナル(SUPREME INTERNATIONAL)を立ち上げた。同社は93年に上場。99年に「ペリー エリス(PERRY ELLIS)」を買収したことから、現社名に変更した。

現在、同社は「ペリー エリス」に加えて「オリジナル・ペンギン(ORIGINAL PENGUIN)」「ベン・ホーガン(BEN HOGAN)」「ラファエラ(RAFAELLA)」など30以上のブランドを保有。また、「キャロウェイ(CALLAWAY)」や「ジャック ニクラウス(JACK NICKLAUS)」、「ナイキ(NIKE)」のスイムウエアなどのライセンスビジネスを行っている。全体の売り上げは10億ドル(約1490億円)程度と見られている。

退任に追い込まれてからの逆転劇

フェルデンクレイス会長は、93年から2015年まで会長兼最高経営責任者(CEO)として同社を率いていたが、アクティビスト投資家が、コーポレートガバナンスの強化を理由に会長職とCEO職の分離を要求。これを受け、同氏はエグゼクティブ・チェアマンに就任し、当時社長を務めていた息子のオスカー・フェルデンクレイス(Oscar Feldenkreis)がCEOに昇格した。なお、フェルデンクレイス会長は17年、取締役会によって退任に追い込まれたものの、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループ(FORTRESS INVESTMENT GROUP)と手を組み、MBO(経営陣による買収)を実施。ペリー・エリス・インターナショナルを非公開化することに成功し、自身は会長に返り咲き、オスカーは社長兼CEOに就任した。MBOが完了した時点で、フェルデンクレイス会長は83歳。高齢ではあったが、その後もエネルギッシュに業務に取り組んでいたという。

CEOを務める息子や同社の追悼コメント

オスカーは訃報に際し、「ジョージは、父として、創業者として、そして真のアイコンとして皆に愛された。私たちの心の中で永遠に生き続ける父の人生とレガシーを、誇りを持って祝したい」と語った。

ペリー・エリス・インターナショナルは、「ジョージはキューバからの移民として厳しい環境の中でキャリアをスタートしつつも、その起業家精神や先見の明があるリーダーシップにより、58年にわたって当社を繁栄させるという輝かしい功績を残した。彼が世界中の友人たちやビジネスパートナー、ファッション業界に与えた影響やインスピレーションは消えることはない」と声明を発表した。

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シチズン時計の次期社長に大治氏

 

シチズン時計は、次期社長に、4月1日付で大治良高(61)常務取締役が就任すると発表した。2019年4月に就任した佐藤敏彦(69)社長は取締役相談役に退く。

東京都出身の大治次期社長は、1986年に新卒でシチズン時計に入社。香港やシンガポールでのグループ会社勤務を経たのち、同社の経営企画部長などの要職を歴任してきた。

なお同社は、社長交代の理由を「来年度から『中期経営計画 2027』をスタートするにあたり、グループ成長の核となる時計事業の成長戦略をより強力に推し進めるため」と説明している。

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中国・杉杉集団が法的整理、伊藤忠が出資

杉杉集団が再生型の法的整理の一つである「重整」手続きに入った。寧波市の人民法院が申請を受理した。2月27日、杉杉集団の上場子会社である寧波杉杉が発表した。今後、杉杉集団は裁判所が指定する弁護士事務所と会計事務所の管理下に入る。杉杉集団は中国の大手アパレルの一角を占め、現在はエレクトロニクス分野にも進出し、多角化していた。

杉杉集団は伊藤忠商事との関係が深く、2009年には伊藤忠が28%を出資し、持分法適用会社にしていた。現在は持分法適用会社からは外れており、現在の出資比率は伊藤忠が約12.2%、中国の現地法人が約2.2%の出資にとどまる。同社広報は「業績への影響は軽微」としている。

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TOKYO BASEの新ブランド「リタン」 大人の女性に“曲線美”の提案

TOKYO BASEは、オリジナルの婦人服ブランド「リタン(RITAN)」の1号店を東京・青山に22日開いた。あす28日にはニュウマン新宿に2号店を開く。ターゲットはエイジレスとしながらも35〜40代の大人の女性の本来の美しさを引き立てるような服を提案する。

商品は曲線的なカッティングをうまく用いているのが特徴だ。ウエストが曲線的にシェイプしたベストやワンピース、脚線が独特のカーブを描くデニムパンツなどが目を引く。「リタン」を担当する片寄友香ディレクターは、海岸線や山並みなど自然の曲線美からインスピレーションを受けたと話す。「年齢を重ねると体形を隠す服を選びがちだが、『リタン』は曲線によって体の線をポジティブに美しく見せる服にした」という。透ける素材や肌を見せるカッティングの服も多い。

春夏物の平均価格帯はジャケット4万5000〜7万円、コート4万〜5万円、パンツ2万5000〜4万円、ワンピース3万〜4万円、ニット2万3000〜3万5000円。同社らしく日本製の高品質なものづくりにこだわり、全商品の品質表示タグに産地を表記する。

店舗の内装にも曲線美を取り入れる。ノットアホテルなどを手がけたGENERAL DESIGNが設計を担当し、R形状のタイルの壁や流線形のミラーやテーブルで曲線美を表現する。

片寄ディレクターは主に20〜30代前半を対象にしたオリジナルブランド「ユナイテッドトウキョウ」で実績を重ねてきた。同社にとっては新しい挑戦である大人の女性向けのオリジナルブランドで、新しい顧客の獲得を狙う。今後は東京、大阪、名古屋といった大都市を中心に多店舗化していく。

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TOKYO BASEの新ブランド「リタン」 大人の女性に“曲線美”の提案

TOKYO BASEは、オリジナルの婦人服ブランド「リタン(RITAN)」の1号店を東京・青山に22日開いた。あす28日にはニュウマン新宿に2号店を開く。ターゲットはエイジレスとしながらも35〜40代の大人の女性の本来の美しさを引き立てるような服を提案する。

商品は曲線的なカッティングをうまく用いているのが特徴だ。ウエストが曲線的にシェイプしたベストやワンピース、脚線が独特のカーブを描くデニムパンツなどが目を引く。「リタン」を担当する片寄友香ディレクターは、海岸線や山並みなど自然の曲線美からインスピレーションを受けたと話す。「年齢を重ねると体形を隠す服を選びがちだが、『リタン』は曲線によって体の線をポジティブに美しく見せる服にした」という。透ける素材や肌を見せるカッティングの服も多い。

春夏物の平均価格帯はジャケット4万5000〜7万円、コート4万〜5万円、パンツ2万5000〜4万円、ワンピース3万〜4万円、ニット2万3000〜3万5000円。同社らしく日本製の高品質なものづくりにこだわり、全商品の品質表示タグに産地を表記する。

店舗の内装にも曲線美を取り入れる。ノットアホテルなどを手がけたGENERAL DESIGNが設計を担当し、R形状のタイルの壁や流線形のミラーやテーブルで曲線美を表現する。

片寄ディレクターは主に20〜30代前半を対象にしたオリジナルブランド「ユナイテッドトウキョウ」で実績を重ねてきた。同社にとっては新しい挑戦である大人の女性向けのオリジナルブランドで、新しい顧客の獲得を狙う。今後は東京、大阪、名古屋といった大都市を中心に多店舗化していく。

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東急不動産HDがマンション「BRANZ」など68施設で衣料品・雑貨回収スタート


東急不動産ホールディングスは、グループの東急不動産ならびに東急コミュニティー、東急リゾーツ&ステイの3社で、展開・管理する施設68施設(2025年1月現在)で衣料品・雑貨品回収サービス「アールループ(R-LOOP)」をスタートした。

「アールループ」は、ビーピーラボ(BPLab)及びブックオフコーポレーションが展開する循環型衣料品・雑貨品回収サービス。同社グループの営業所・事務所のほか、保有・管理するオフィスビルやマンションの共用部、リゾート施設などに回収ボックスを設置し「資源循環が身近なライフスタイルの実現に貢献する」ことを目指す。

ビーピーラボでは、経済産業省指定団体である日本再生資源事業協同組合連合会指定のリサイクル化証明書の運用を行っており、集まった衣料品について燃やす、埋めるなどをしない100%リサイクルの証明を行い、資源のトレーサビリティを確保した回収プラットフォームを提供する方針だ。

東急不動産ホールディングスは、23年12月にビーピーラボと契約を締結し、まずは10施設で試験的に不要になった衣料品・雑貨品の回収サービスを導入した。トライアルを重ね、特に、グループが分譲し管理するマンション「BRANZ」などでの好評を得て、「資源循環を身近に行えるライフスタイルがお客様に受け入れられることを実感したことから、拡大の検討を開始した」という。24年11月にはビーピーラボとブックオフとの協業スキーム「アールループ」が完成。以降、最初の2カ月間で不要になった衣料品・雑貨品約3386kgが回収された。そのうち、衣料品約2595kgがリサイクルされる。

スキー場では、スキー用品が雪山という過酷な環境で使用されることから、軽微な損傷や撥水性能の低下が見られると買い換えられることが多く、またその一方雪山以外のタウンユースには十分耐えられる製品が廃棄されるという現状に課題がある。そのため、東急スノーリゾートは25年1月から4カ所のスキー場へ回収ボックスを設置し、不要となった衣類や雑貨を3月31日まで回収している。

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「マルジェラ」や「ディーゼル」の親会社OTB、24年は5.3%減収 日本は16.3%増収と好調

「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」などを擁するOTBの2024年12月期決算は、売上高が前期比5.3%減の18億ユーロ(約2808億円)、営業利益は同68.6%減の4400万ユーロ(約68億円)だった。

同社はブランド別での売上高は開示していないが、ラグジュアリー部門に属する「メゾン マルジェラ」が引き続き好調で、現地通貨ベース(以下同)で同4.6%増だった。また、「ディーゼル」も同3.2%と堅調だった。

地域別の売上高では、景気低迷が続く中国市場は同5.7%減だったが、北米は同13.3%増、日本は同16.3%増と2ケタ成長だった。なお、同社の主要市場に位置付けられている日本は、売り上げ全体の26%を占めた。

販売チャネル別では、小売りが同7.4%増となり、売り上げ全体の57%を占めた。同社は24年12月末現在、世界で608の直営店を運営している。一方、卸は同15%減と不調だった。

OTBの会長とCEOのコメント

OTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)創業者兼会長は、「ラグジュアリーセクター全体が厳しい状況に置かれていることを踏まえ、24年の結果に満足している。卸は不調だったものの、戦略的に強化した小売り部門は好調だった。財務上の短期的な成長よりも、中長期的な目線での持続的な成長を重視し、テクノロジーやマーケティングへの投資も継続した」と語った。

ウバルド・ミネッリ(Ubaldo Minelli)最高経営責任者(CEO)は、「24年はラグジュアリーセクター全体にとって複雑な年だったが、当社はそうした中でも販売網や経営構造の強化、グループの拡大など、将来に向けた投資を続けた。また、主要市場と位置付ける日本と米国も好調だった。さまざまな苦難に直面しつつも、傘下ブランド、商品、サプライチェーンに関する戦略を維持し、目標に向けて邁進できたことを誇らしく思う」と述べた。

米政府による関税の引き上げより「中国が気がかり」

ミネッリCEOはアナリスト向けの決算説明会で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が行うとしている関税の引き上げと米国における百貨店業界の再編について、「いずれも認識しているが、私たちにできることは何もない。静観するしかないという意味では同じだが、むしろ中国市場の回復の遅れのほうが気がかりだ。いずれ復活するであろう同市場への投資を続けると24年前半に決断しており、25年もそれを継続する」と述べた。

同氏によれば、24年に世界でオープンした61店のうち28店が中国にあり、出店数が増加するとともに売り上げも増加しているという。また、小売りを強化する戦略について、「売上高全体に占める小売りの割合は、21年は30%以下、23年は50%以上、24年は57%と増加している。将来的には、これを75%程度まで引き上げたい」と説明した。

「メゾン マルジェラ」の新トップ、グレン・マーティンスについて

「メゾン マルジェラ」のクリエイティブ面を14年から率いていたジョン・ガリアーノ(John Galliano)=アーティスティック・ディレクターは、24年12月11日に退任を発表。これを受け、OTBは1月29日、「ディーゼル」のグレン・マーティンス(Glenn Martens)=クリエイティブ・ディレクターが「メゾン マルジェラ」の指揮も執ることを発表した。ミネッリCEOはこの人事について、「『メゾン マルジェラ』が次章を迎えるにあたり、気心の知れたデザイナーにブランドを任せたいと考えた。グレンは『ディーゼル』を5年にわたって率いており、比類のない才能の持ち主だ。以前務めていた『Y/プロジェクト(Y/PROJECT)』のクリエイティブ・ディレクター職を離れているので、時間のやりくりも問題ないと判断した」と述べた。

一方で、「ジル サンダー」のクリエイティブ・ディレクターを務めるルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻が、2月26日に開催する25-26年秋冬コレクションのショーを最後にブランドを離れるのではないかという臆測については、コメントを差し控えるとした。

IPOの実施は2026年?

また、兼ねてより期待されている新規上場(IPO)については、「引き続き準備を進めているが、急いではいない。経済環境がより改善していれば、26年ごろに実施するかもしれない」とコメント。同社は21年11月の時点では24年に、24年2月の時点では24年後半から25年前半にIPOを実施したいとしていた。

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「マルジェラ」や「ディーゼル」の親会社OTB、24年は5.3%減収 日本は16.3%増収と好調

「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」などを擁するOTBの2024年12月期決算は、売上高が前期比5.3%減の18億ユーロ(約2808億円)、営業利益は同68.6%減の4400万ユーロ(約68億円)だった。

同社はブランド別での売上高は開示していないが、ラグジュアリー部門に属する「メゾン マルジェラ」が引き続き好調で、現地通貨ベース(以下同)で同4.6%増だった。また、「ディーゼル」も同3.2%と堅調だった。

地域別の売上高では、景気低迷が続く中国市場は同5.7%減だったが、北米は同13.3%増、日本は同16.3%増と2ケタ成長だった。なお、同社の主要市場に位置付けられている日本は、売り上げ全体の26%を占めた。

販売チャネル別では、小売りが同7.4%増となり、売り上げ全体の57%を占めた。同社は24年12月末現在、世界で608の直営店を運営している。一方、卸は同15%減と不調だった。

OTBの会長とCEOのコメント

OTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)創業者兼会長は、「ラグジュアリーセクター全体が厳しい状況に置かれていることを踏まえ、24年の結果に満足している。卸は不調だったものの、戦略的に強化した小売り部門は好調だった。財務上の短期的な成長よりも、中長期的な目線での持続的な成長を重視し、テクノロジーやマーケティングへの投資も継続した」と語った。

ウバルド・ミネッリ(Ubaldo Minelli)最高経営責任者(CEO)は、「24年はラグジュアリーセクター全体にとって複雑な年だったが、当社はそうした中でも販売網や経営構造の強化、グループの拡大など、将来に向けた投資を続けた。また、主要市場と位置付ける日本と米国も好調だった。さまざまな苦難に直面しつつも、傘下ブランド、商品、サプライチェーンに関する戦略を維持し、目標に向けて邁進できたことを誇らしく思う」と述べた。

米政府による関税の引き上げより「中国が気がかり」

ミネッリCEOはアナリスト向けの決算説明会で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が行うとしている関税の引き上げと米国における百貨店業界の再編について、「いずれも認識しているが、私たちにできることは何もない。静観するしかないという意味では同じだが、むしろ中国市場の回復の遅れのほうが気がかりだ。いずれ復活するであろう同市場への投資を続けると24年前半に決断しており、25年もそれを継続する」と述べた。

同氏によれば、24年に世界でオープンした61店のうち28店が中国にあり、出店数が増加するとともに売り上げも増加しているという。また、小売りを強化する戦略について、「売上高全体に占める小売りの割合は、21年は30%以下、23年は50%以上、24年は57%と増加している。将来的には、これを75%程度まで引き上げたい」と説明した。

「メゾン マルジェラ」の新トップ、グレン・マーティンスについて

「メゾン マルジェラ」のクリエイティブ面を14年から率いていたジョン・ガリアーノ(John Galliano)=アーティスティック・ディレクターは、24年12月11日に退任を発表。これを受け、OTBは1月29日、「ディーゼル」のグレン・マーティンス(Glenn Martens)=クリエイティブ・ディレクターが「メゾン マルジェラ」の指揮も執ることを発表した。ミネッリCEOはこの人事について、「『メゾン マルジェラ』が次章を迎えるにあたり、気心の知れたデザイナーにブランドを任せたいと考えた。グレンは『ディーゼル』を5年にわたって率いており、比類のない才能の持ち主だ。以前務めていた『Y/プロジェクト(Y/PROJECT)』のクリエイティブ・ディレクター職を離れているので、時間のやりくりも問題ないと判断した」と述べた。

一方で、「ジル サンダー」のクリエイティブ・ディレクターを務めるルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻が、2月26日に開催する25-26年秋冬コレクションのショーを最後にブランドを離れるのではないかという臆測については、コメントを差し控えるとした。

IPOの実施は2026年?

また、兼ねてより期待されている新規上場(IPO)については、「引き続き準備を進めているが、急いではいない。経済環境がより改善していれば、26年ごろに実施するかもしれない」とコメント。同社は21年11月の時点では24年に、24年2月の時点では24年後半から25年前半にIPOを実施したいとしていた。

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ワコールHDが子会社ルシアンを売却 構造改革の一環

ワコールホールディングス(HD)は26日、子会社で婦人下着のルシアンの全株式をIT企業のTANAAKK(東京、田中翔一朗CEO、以下タナーク)に売却すると発表した。売却価格は非開示。業績不振で大規模な事業再編を進める中、不採算が続くルシアンを手放すことを決断した。

ルシアンは1933年にレースなどの輸入販売会社として創業。55年から婦人下着や婦人服に業容を拡大し、90年代から2000年代には中国やベトナムに生産拠点を設けるに至った。09年に株式交換によってワコールHDの完全子会社になった。近年は苦戦が続き、24年3月期の業績は売上高が前期比17%減の40億円、営業損益が2億3300万円の赤字(前期は6000万円の赤字)、純損益が1400万円の赤字(同7800万円の赤字)で終わっていた。

タナークは2015年設立で、大企業のクラウド型新規事業を支援するサービス「HITSERIES(ヒットシリーズ)」を開発・提供するベンチャー企業。

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ユナイテッドアローズ、日本の美意識のセレクトショップ「タバヤ」を4月開店 原宿本店を全面刷新

ユナイテッドアローズは、旗艦店である「ユナイテッドアローズ」の原宿本店を全館リニューアルし、「タバヤ ユナイテッドアローズ(TABAYA UNITEDARROWS、以下タバヤ)」として4月25日にオープンする。日本の美意識を前面的に出し、アパレルや服飾雑貨だけでなく、日用品、工芸品、美術品の扱いを大幅に増やすほか、カフェバーも併設する。同日ECサイトも開設する。

「タバヤ」のステートメントは「史上最上級のユナイテッドアローズ」。地下1階、本館1階・2階、アネックス1階・2階のフロア構成で、1992年に竣工したスペインの建築家リカルド・ボフィル氏による外観建築は維持しつつ、木材などを使った和風の内装を採用する。

地下1階はメンズ・ウイメンズのアパレルやアクセサリー。「ロエベ」「ザ・ロウ」「メゾン・マルジェラ」「セッチュウ」「コモリ」「ミオ ハルタカ」など国内外のブランドをそろえる。日本の素材や縫製にこだわった「ユナイテッドアローズ」のスーツ、ジャケット、シャツなどのドレスアイテムや、和の文化を表現する民芸品なども扱う。

本館1階とアネックスにはギャラリーを置く。国内外のさまざまな分野のアーティスト作品の展示販売を月替わりで行う。初回の4月から5月にかけては、韓国の伝統工芸作家のパク・ソングク氏、キム・ソヨン氏、ホン・ドゥヒョン氏ら7人の作家による作品の展示販売を実施する。また新コンセプトのカフェバーを設け、ゆったりした空間で和食や和菓子、柚子や抹茶を用いたスイーツ、ソフトドリンク、アルコール類を提供する。

本館2階とアネックスは工芸品、美術品、骨董品、日用品をそろえる。西陣織の「細尾」、木桶の「中川木工芸」、京金網の「金網つじ」、竹芸品の「公長斎小菅」、茶筒の「開化堂」、茶陶の「朝日焼」とった工芸品を充実させる。「ユナイテッドアローズ ボトルショップ」では厳選された日本酒各種を取り扱う。

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シューズ強化の「ザ・ノース・フェイス」 新型トレランシューズ発売、渋谷でポップアップも

ゴールドウインが運営する「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は3月14日、「3年をかけて開発した」という新しいソールユニットを搭載した3モデルのトレイルランニングシューズ“ベクティブ 3.0(VECTIVE 3.0)”を発売する。同ブランドはライフスタイル領域を含むアパレルでは高い知名度を誇るが、これまで比較的手薄だったシューズの強化を24年に宣言。シューズ拡大により、引き続きの成長を見込む。強化の第一弾として打ち出すモデルが“ベクティブ 3.0”だ。

新ソールユニットは、「着地の衝撃を抑える」5層構造が特徴。ミッドソールに軽量性や高反発性、高クッション性などを特徴とする“DREAMフォーム”を採用した。フラッグシップモデルの“サミット ベクティブ プロ 3(SUMMIT VECTIV PRO 3)”(3万3000円)、片足240グラム(US9サイズ)という軽量性を追求したスピードモデルの“サミット ベクティブ スカイ 2(SUMMIT VECTIV SKY 2)”(2万9700円)、トレラン初心者も意識したという万能モデルの“ベクティブ エンドゥリス 4(VECTIV ENDURIS 4)”(2万4200円)の3型。

発売に合わせ、3月14〜5月6日に渋谷のレイヤード ミヤシタパーク1階でポップアップストアを開く。“ベクティブ 3.0”の3モデルのほか、2025年春夏のランニングコレクションを販売する。また、3月16日からは、トレランが盛んな東京の高尾山ふもとにある施設マウントタカオベースキャンプで、“ベクティブ 3.0”の3モデルや新作バックパックの試着も開始する。

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シューズ強化の「ザ・ノース・フェイス」 新型トレランシューズ発売、渋谷でポップアップも

ゴールドウインが運営する「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は3月14日、「3年をかけて開発した」という新しいソールユニットを搭載した3モデルのトレイルランニングシューズ“ベクティブ 3.0(VECTIVE 3.0)”を発売する。同ブランドはライフスタイル領域を含むアパレルでは高い知名度を誇るが、これまで比較的手薄だったシューズの強化を24年に宣言。シューズ拡大により、引き続きの成長を見込む。強化の第一弾として打ち出すモデルが“ベクティブ 3.0”だ。

新ソールユニットは、「着地の衝撃を抑える」5層構造が特徴。ミッドソールに軽量性や高反発性、高クッション性などを特徴とする“DREAMフォーム”を採用した。フラッグシップモデルの“サミット ベクティブ プロ 3(SUMMIT VECTIV PRO 3)”(3万3000円)、片足240グラム(US9サイズ)という軽量性を追求したスピードモデルの“サミット ベクティブ スカイ 2(SUMMIT VECTIV SKY 2)”(2万9700円)、トレラン初心者も意識したという万能モデルの“ベクティブ エンドゥリス 4(VECTIV ENDURIS 4)”(2万4200円)の3型。

発売に合わせ、3月14〜5月6日に渋谷のレイヤード ミヤシタパーク1階でポップアップストアを開く。“ベクティブ 3.0”の3モデルのほか、2025年春夏のランニングコレクションを販売する。また、3月16日からは、トレランが盛んな東京の高尾山ふもとにある施設マウントタカオベースキャンプで、“ベクティブ 3.0”の3モデルや新作バックパックの試着も開始する。

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銀座の空中庭園と高架下の魅力:記者談話室vol.166

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「記者談話室」は、ファッション業界のその時々のニュースや話題について、3人の記者が分かりやすく解説したり、時には脱線したりしながら、掘り下げていきます。

166回目の今回は「銀座」です。日本を代表するショッピングエリアである銀座は、世界中から訪れる観光客にも大人気です。そんな中、数寄屋橋交差点の東急プラザ銀座が香港系の投資ファンドに売却されたことがニュースになりました。また、銀座を取り囲むように走る高架のKK線が4月に廃止され、空中遊歩道に再開発されることも話題を集めています。これから銀座はどう変化するのでしょうか。

この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。
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銀座の空中庭園と高架下の魅力:記者談話室vol.166

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「記者談話室」は、ファッション業界のその時々のニュースや話題について、3人の記者が分かりやすく解説したり、時には脱線したりしながら、掘り下げていきます。

166回目の今回は「銀座」です。日本を代表するショッピングエリアである銀座は、世界中から訪れる観光客にも大人気です。そんな中、数寄屋橋交差点の東急プラザ銀座が香港系の投資ファンドに売却されたことがニュースになりました。また、銀座を取り囲むように走る高架のKK線が4月に廃止され、空中遊歩道に再開発されることも話題を集めています。これから銀座はどう変化するのでしょうか。

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第7話:在庫減で向上した「投資収益率」が会社に莫大な効果をもたらす

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

南関東倉庫の「バラ在庫」が尽きかけると、徹は足りない在庫を他の店舗から集める「クロスシッピング」を提案。先輩の加地の協力を取り付けた。一方、ハンナズの小泉経理部長は、渋谷店の在庫が大幅に減ったことで「投資収益率」が向上したことを徹に報告。自宅に帰った徹は、妻のあいと「投資収益率」の向上が会社にもたらす莫大な効果を考える。

登場人物紹介

第七話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
SCRIPT:TAKEO AOKI
COMICS:YAMA AOTA

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第7話:在庫減で向上した「投資収益率」が会社に莫大な効果をもたらす

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

南関東倉庫の「バラ在庫」が尽きかけると、徹は足りない在庫を他の店舗から集める「クロスシッピング」を提案。先輩の加地の協力を取り付けた。一方、ハンナズの小泉経理部長は、渋谷店の在庫が大幅に減ったことで「投資収益率」が向上したことを徹に報告。自宅に帰った徹は、妻のあいと「投資収益率」の向上が会社にもたらす莫大な効果を考える。

登場人物紹介

第七話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
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オンワードHD、グアムのゴルフ場2カ所を売却

オンワードホールディングスは21日、グアムで運営するゴルフ場2カ所を売却すると発表した。ゴルフ場「オンワードマンギラオグアム」と「オンワードタロフォフォゴルフクラブ」を運営するグループ会社の2社の株式とその債権で、株式の譲渡価格が約27億円、債権の譲渡価格が約12億円。コロナ禍以降、2カ所ともに赤字から抜け出せていなかったためリゾート事業を営む米Sono Hospitality(本社ニュージャージー州)への売却を決めた。

「オンワードマンギラオグアム」は2006年から、「オンワードタロフォフォゴルフクラブ」は05年からオンワードが運営してきた。オンワードHDは22年にグアム島で運営するホテルを星野リゾートに譲渡しており、今回のゴルフ場の譲渡によってグアム島でのリゾート事業から徹底する。

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オンワードHD、グアムのゴルフ場2カ所を売却

オンワードホールディングスは21日、グアムで運営するゴルフ場2カ所を売却すると発表した。ゴルフ場「オンワードマンギラオグアム」と「オンワードタロフォフォゴルフクラブ」を運営するグループ会社の2社の株式とその債権で、株式の譲渡価格が約27億円、債権の譲渡価格が約12億円。コロナ禍以降、2カ所ともに赤字から抜け出せていなかったためリゾート事業を営む米Sono Hospitality(本社ニュージャージー州)への売却を決めた。

「オンワードマンギラオグアム」は2006年から、「オンワードタロフォフォゴルフクラブ」は05年からオンワードが運営してきた。オンワードHDは22年にグアム島で運営するホテルを星野リゾートに譲渡しており、今回のゴルフ場の譲渡によってグアム島でのリゾート事業から徹底する。

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「新卒採用で負けないよう一気に勝負をかける」 初任給30万円を発表したパル小路社長

「新卒採用で負けないように、ここで一気に勝負をかける」。そう話すのはパルの小路順一社長だ。2026年4月から新卒(大学・大学院卒)の初任給を30万円に上げると発表した。現在は23万4000円のため6万6000円の増額となる。既存社員も足並みをそろえ、同額のベースアップを実施する。

新卒採用は圧倒的な売り手市場。金融やIT、製造業の大手企業では「初任給30万円」が珍しくなくなる中、アパレルや小売業の動きは鈍い。新卒初任給で30万円以上への賃上げを発表したのはファーストリテイリング、アシックスといった潤沢な資金を持つグローバル企業、あるいはTOKYO BASEなどに限られる。

パルはプチプラ雑貨「スリーコインズ」、婦人服「チャオパニックティピー」「ディスコート」「カスタネ」などを展開する。近年は「スリーコインズ」がけん引し、パルグループホールディングスの2025年2月期の売上高は5年前に比べて約1.6倍になる見通しで、収益性は大幅に上がっている。積極的な新規出店を進める上で「人への投資は欠かせない」と判断した。

背景には「われわれの業界自体に若い人が集まらなくなっている」という危機感がある。この数年は新卒採用枠を300人で設定してきたが、25年4月入社は260人にとどまった。内定辞退者が相次いだからだ。

パルは現場が強い。店頭の販売員がたくさんの優良顧客を持つ。また販売員がSNSを駆使してヒット商品を生み出すノウハウは同業他社が研究するほどだ。店舗の人手不足は競争力の低下に直結する。

賃上げに伴う人件費の増額は14億円程度になる見通し。小路社長は「当社にとっては結構デカい額だ。それでもパルは付加価値をつける業態でお客さまから支持されてきた会社だ。業界の中で頭一つ抜けた初任給を設け、優秀な人材をもっともっと集める」と話す。

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「新卒採用で負けないよう一気に勝負をかける」 初任給30万円を発表したパル小路社長

「新卒採用で負けないように、ここで一気に勝負をかける」。そう話すのはパルの小路順一社長だ。2026年4月から新卒(大学・大学院卒)の初任給を30万円に上げると発表した。現在は23万4000円のため6万6000円の増額となる。既存社員も足並みをそろえ、同額のベースアップを実施する。

新卒採用は圧倒的な売り手市場。金融やIT、製造業の大手企業では「初任給30万円」が珍しくなくなる中、アパレルや小売業の動きは鈍い。新卒初任給で30万円以上への賃上げを発表したのはファーストリテイリング、アシックスといった潤沢な資金を持つグローバル企業、あるいはTOKYO BASEなどに限られる。

パルはプチプラ雑貨「スリーコインズ」、婦人服「チャオパニックティピー」「ディスコート」「カスタネ」などを展開する。近年は「スリーコインズ」がけん引し、パルグループホールディングスの2025年2月期の売上高は5年前に比べて約1.6倍になる見通しで、収益性は大幅に上がっている。積極的な新規出店を進める上で「人への投資は欠かせない」と判断した。

背景には「われわれの業界自体に若い人が集まらなくなっている」という危機感がある。この数年は新卒採用枠を300人で設定してきたが、25年4月入社は260人にとどまった。内定辞退者が相次いだからだ。

パルは現場が強い。店頭の販売員がたくさんの優良顧客を持つ。また販売員がSNSを駆使してヒット商品を生み出すノウハウは同業他社が研究するほどだ。店舗の人手不足は競争力の低下に直結する。

賃上げに伴う人件費の増額は14億円程度になる見通し。小路社長は「当社にとっては結構デカい額だ。それでもパルは付加価値をつける業態でお客さまから支持されてきた会社だ。業界の中で頭一つ抜けた初任給を設け、優秀な人材をもっともっと集める」と話す。

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タペストリー、傘下の「スチュアート・ワイツマン」を159億円で米シューズメーカーに売却

タペストリー(TAPESTRY)は2月19日、傘下に持つ「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を、米フットウエアメーカーのカラレス(CALERES)に1億500万ドル(約159億円)で売却した。取引は今夏に完了する見込み。

「スチュアート・ワイツマン」は、1986年にニューヨークで創業。2015年に、タペストリーは当時同ブランドを保有していた米投資会社シカモア・パートナーズ(SYCAMORE PARTNERS)から5億7400万ドル(約872億円)で買収した。タペストリーはほかに「コーチ(COACH)」と「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」を保有しており、23年8月には「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)を85億ドル(約1兆2070億円)で買収することに合意した。しかし、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて24年4月に提訴。10月に米連邦地方裁判所がFTCの申し立てを認める判決を下したことから、11月に両社は買収契約を双方の合意の上で正式に解消している。

なお、24年9月の段階で、タペストリーが「スチュアート・ワイツマン」の売却を検討しているという情報筋の話が複数の海外メディアで報じられていた。

カラレスについて

カラレスは1878年、米ミズーリ州セントルイスで靴店のブライアン・ブラウン・アンド・カンパニー(BRYAN, BROWN & COMPANY)として創業。靴の製造販売会社として事業を拡大し、現在は「ドクター ショール(DR. SCHOLL'S SHOES)」「フェイマス フットウエア(FAMOUS FOOTWEAR)」「サム エデルマン(SAM EDELMAN)」「アレン エドモンズ(ALLEN EDMONDS)」「バイオニック(VIONIC)」などのブランドを運営している。

ジョアン・クレヴォイセラ=タペストリーCEOのコメント

ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリー最高経営責任者(CEO)は、「『スチュアート・ワイツマン』はグローバルかつアイコニックなフットウエアブランドであり、当社が大切にする情熱、クリエイティビティー、クラフツマンシップなどの価値観を10年にわたって共有してきた。同ブランドが次章を迎えるにあたり、カラレスはその成長過程を導いてくれる理想的なオーナーだ」と語った。また、今後について、「『コーチ』のリーダーシップと勢いをさらに強化しつつ、『ケイト・スペード ニューヨーク』をよみがえらせることに注力し、持続的な成長および株主価値の拡大を促進していく」と説明した。

タペストリーの業績は?

タペストリーが2月6日に発表した2024年10~12月期(第2四半期)決算は、売上高が前年同期比5.3%増の21億9540万ドル(約3337億円)だった。ブランド別での売上高は、主力の「コーチ」は同10.9%増の17億930万ドル(約2598億円)と好調だったものの、「ケイト・スペード ニューヨーク」は同9.6%減の4億1640万ドル(約632億円)、「スチュアート・ワイツマン」は同15.2%減の6970万ドル(約105億円)と減収だった。

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「スリーコインズ」のパル、初任給30万円に

「スリーコインズ」「カスタネ」「チャオパニックティピー」などを展開するパルは、2026年4月から新卒社員の初任給を約30万円に引き上げる。現状は大学・大学院卒で23万4000円、短大・専門学校卒で22万7000円だが、引き上げ後は大学・大学院卒で30万円、短大・専門学校卒で29万3000円となり、約3割のアップとなる。既存の社員も26年3月から6万円台のベースアップを実施して、足並みをそろえる。

少子化によって新卒採用は業種を超えた争奪戦になっており、金融やメーカーなど初任給30万円を打ち出す大手企業は増えている。アパレル業界では「ユニクロ」「ジーユー」を運営するファーストリテイリングが新卒初任給を23年に30万円に、25年に33万円に引き上げた。TOKYO BASEも初任給を40万円に設定して大きな話題になっていた。パルの動きはこれらに続くものになる。

「パルは新卒で毎年300人前後の採用計画を立てているが、最近は(異業種が初任給を大幅アップする中)苦戦を強いられていた。将来を担う人材を確保するためにも、初任給30万円は避けて通れないと判断した」(為田招志・パルグループホールディングス専務執行役員広報室長)。

賃上げを支えるのはパルグループHDの好業績だ。連結業績はコロナ前の20年2月期実績が売上高1321億円、営業利益90億円だったのに対し、25年2月期見通しは売上高2092億円、営業利益229億円。収益性が改善され、人件費をアップする余力が生まれている。

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ダイソン対パナソニックの広告表示訴訟は二審もパナソニック勝訴 「ナノケア」に関する広告表現を巡る裁判

ダイソン(DYSON)が2022年6月にパナソニックのヘアドライヤー「ナノケア」の“EH-NA0G”の広告が不正競争防止法に違反するとして、広告の差し止めや抹消を求めてパナソニックを提訴した控訴審において、裁判所は2月19日、一審判決は妥当であり、ダイソンの請求はいずれも認められないとして訴えを退けた。一審においてもパナソニックが勝訴している。

判決を受けてパナソニックは、「控訴審では、ダイソンが実験をやり直して結果を追加で提出し再審理を求めるとともに、当社に対しては当社の実験結果をダイソンにも開示するよう求めた。しかし、実験結果は非常に重要な営業秘密であり、競合他社に開示することによる当社事業への影響は計り知れない。営業秘密保護の観点から可能な範囲で実験結果を提出した結果、裁判所には当社の広告表示が実験結果により裏付けられていることを十分ご理解いただくとともに、ダイソンが提訴時に行った実験及び控訴に際してやり直した実験のいずれも不適切なものであったことが確定するに至ったと考えている。」とコメント。一方のダイソンは「今後もユーザーの皆さまに寄り添い、科学的根拠にもとづく広告を展開していく」とコメントしている。

ダイソンは、「ナノケア」“EH-NA0G”のナノイー技術が髪への影響や潤い、保護に与える影響に関する複数の広告表示は不正確であり、公正な競争を阻害すると主張。具体的には、「EH-NA0Gで使用されている高浸透技術により『水分発生量が従来の18倍』になる」「EH-NA0Gは『髪へのうるおい、1.9倍』を与える」など、「ナノケア」に関するいくつかの広告表現を挙げた。その裏付けとして、一審では独立した第三者機関による実験結果を証拠として提出したが、その内容や結果が信頼性に欠けると判断され、「ナノケア」の広告が品質について消費者を誤認させると裏付けるには不十分として、ダイソンの請求をいずれも棄却した。これを受けてダイソンは、追加の検証試験の結果を控訴審で提出した。対してパナソニックは裁判において、一貫してダイソンが提出した実験は不適切であると主張。パナソニックの代理人である松田知丈弁護士によると、裁判所は、ダイソンが追加で提出した検証試験の結果を踏まえても、不適切な点があり、ダイソンの請求はいずれも理由がないと判断し、ダイソンの主張を退けたという。

髪質に与える影響を測定する統一的な基準や規格は業界に存在せず、企業において適切な方法で実験を行うことが必要になる。パナソニックによると、裁判所は、パナソニック側が実施している実験は科学的に相当と認められる方法により行われたこと、そしてその実験はパナソニックの表示内容を裏付ける内容であると認めたという。

松田弁護士は、「ダイソンが提訴時や公訴提起時に、『複数の広告表示が不正確であって消費者に誤解を与える』『一部の広告表示が消費者に誤解を与えるものであることを引き続き懸念している』といった情報発信を行ったことは、公正な市場競争の観点から消費者の商品選択に影響を与えかねないものだった。また、ダイソンが提訴および控訴の根拠としたダイソン側の実験結果がいずれも不適切だったにもかかわらず同社の営業秘密の開示を求めたことも非常に問題のある対応だったと考えている」とコメントしている。

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ダイソン対パナソニックの広告表示訴訟は二審もパナソニック勝訴 「ナノケア」に関する広告表現を巡る裁判

ダイソン(DYSON)が2022年6月にパナソニックのヘアドライヤー「ナノケア」の“EH-NA0G”の広告が不正競争防止法に違反するとして、広告の差し止めや抹消を求めてパナソニックを提訴した控訴審において、裁判所は2月19日、一審判決は妥当であり、ダイソンの請求はいずれも認められないとして訴えを退けた。一審においてもパナソニックが勝訴している。

判決を受けてパナソニックは、「控訴審では、ダイソンが実験をやり直して結果を追加で提出し再審理を求めるとともに、当社に対しては当社の実験結果をダイソンにも開示するよう求めた。しかし、実験結果は非常に重要な営業秘密であり、競合他社に開示することによる当社事業への影響は計り知れない。営業秘密保護の観点から可能な範囲で実験結果を提出した結果、裁判所には当社の広告表示が実験結果により裏付けられていることを十分ご理解いただくとともに、ダイソンが提訴時に行った実験及び控訴に際してやり直した実験のいずれも不適切なものであったことが確定するに至ったと考えている。」とコメント。一方のダイソンは「今後もユーザーの皆さまに寄り添い、科学的根拠にもとづく広告を展開していく」とコメントしている。

ダイソンは、「ナノケア」“EH-NA0G”のナノイー技術が髪への影響や潤い、保護に与える影響に関する複数の広告表示は不正確であり、公正な競争を阻害すると主張。具体的には、「EH-NA0Gで使用されている高浸透技術により『水分発生量が従来の18倍』になる」「EH-NA0Gは『髪へのうるおい、1.9倍』を与える」など、「ナノケア」に関するいくつかの広告表現を挙げた。その裏付けとして、一審では独立した第三者機関による実験結果を証拠として提出したが、その内容や結果が信頼性に欠けると判断され、「ナノケア」の広告が品質について消費者を誤認させると裏付けるには不十分として、ダイソンの請求をいずれも棄却した。これを受けてダイソンは、追加の検証試験の結果を控訴審で提出した。対してパナソニックは裁判において、一貫してダイソンが提出した実験は不適切であると主張。パナソニックの代理人である松田知丈弁護士によると、裁判所は、ダイソンが追加で提出した検証試験の結果を踏まえても、不適切な点があり、ダイソンの請求はいずれも理由がないと判断し、ダイソンの主張を退けたという。

髪質に与える影響を測定する統一的な基準や規格は業界に存在せず、企業において適切な方法で実験を行うことが必要になる。パナソニックによると、裁判所は、パナソニック側が実施している実験は科学的に相当と認められる方法により行われたこと、そしてその実験はパナソニックの表示内容を裏付ける内容であると認めたという。

松田弁護士は、「ダイソンが提訴時や公訴提起時に、『複数の広告表示が不正確であって消費者に誤解を与える』『一部の広告表示が消費者に誤解を与えるものであることを引き続き懸念している』といった情報発信を行ったことは、公正な市場競争の観点から消費者の商品選択に影響を与えかねないものだった。また、ダイソンが提訴および控訴の根拠としたダイソン側の実験結果がいずれも不適切だったにもかかわらず同社の営業秘密の開示を求めたことも非常に問題のある対応だったと考えている」とコメントしている。

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着物の「やまと」がパリに初の常設店 

着物の「やまと」は、パリに常設店を4月上旬に開く。2024年1月から約1年にわたって営業したポップアップストアが好評だったことを受けて本格進出を決めた。矢嶋孝行社長は「パリはさまざまな国のクリエイターが交わる場所。売り上げも大切だが、それ以上にパリに常設の拠点を置くことでコラボレーションの機会が生まれ、着物に新しい価値が加わることを期待している」と話す。

パリのマレ地区に店舗面積83平方メートルの路面店を出す。ポップアップストアで展開していた女性向けの「キモノ バイ ナデシコ(KIMONO BY NADESHIKO)」と男性向けの「ワイ&サンズ(Y. & SONS)」の2ブランドを売る。

常設店出店を視野に、23年にフランス法人を設立した。24年にポップアップストアを営業した際は、フランス国内の客が半分、国外の客が半分だった。ファッションに造詣の深いクリエイティブな職業の人たちの購買が多く、日本の伝統文化やものづくりの背景に対する関心が高かった。着物の着こなし方は自由で、羽織りの着物をコートのような感覚でジーンズやスカートに合わせるコーディネートが人気だという。羽織りの着物の中心価格は10万円弱。

常設店では、ポップアップストアでは難しかった意匠をこらした空間を作る。着物への造詣が深い日本人スタッフが接客し、織りや染めなどの技法、着付けや手入れ方法などを伝える。着物だけでなく、手ぬぐいや小物入れなど比較的手頃な価格の雑貨も充実させ、エントリーユーザーも利用できるようにする。

矢嶋社長の意気込みは強い。「昨年のポップアップストアを通じて、インドの刺繍専門家やセネガルのアーティストと結びつきができた。パリで活躍するスタイリストやデザイナーも店に足を運んでくれた。これらと日本の産地を結びつければ、新しい着物文化が生まれるかもしれない。パリから着物の可能性を広げていきたい」と話す。

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着物の「やまと」がパリに初の常設店 

着物の「やまと」は、パリに常設店を4月上旬に開く。2024年1月から約1年にわたって営業したポップアップストアが好評だったことを受けて本格進出を決めた。矢嶋孝行社長は「パリはさまざまな国のクリエイターが交わる場所。売り上げも大切だが、それ以上にパリに常設の拠点を置くことでコラボレーションの機会が生まれ、着物に新しい価値が加わることを期待している」と話す。

パリのマレ地区に店舗面積83平方メートルの路面店を出す。ポップアップストアで展開していた女性向けの「キモノ バイ ナデシコ(KIMONO BY NADESHIKO)」と男性向けの「ワイ&サンズ(Y. & SONS)」の2ブランドを売る。

常設店出店を視野に、23年にフランス法人を設立した。24年にポップアップストアを営業した際は、フランス国内の客が半分、国外の客が半分だった。ファッションに造詣の深いクリエイティブな職業の人たちの購買が多く、日本の伝統文化やものづくりの背景に対する関心が高かった。着物の着こなし方は自由で、羽織りの着物をコートのような感覚でジーンズやスカートに合わせるコーディネートが人気だという。羽織りの着物の中心価格は10万円弱。

常設店では、ポップアップストアでは難しかった意匠をこらした空間を作る。着物への造詣が深い日本人スタッフが接客し、織りや染めなどの技法、着付けや手入れ方法などを伝える。着物だけでなく、手ぬぐいや小物入れなど比較的手頃な価格の雑貨も充実させ、エントリーユーザーも利用できるようにする。

矢嶋社長の意気込みは強い。「昨年のポップアップストアを通じて、インドの刺繍専門家やセネガルのアーティストと結びつきができた。パリで活躍するスタイリストやデザイナーも店に足を運んでくれた。これらと日本の産地を結びつければ、新しい着物文化が生まれるかもしれない。パリから着物の可能性を広げていきたい」と話す。

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EC拡大で注目度急上昇の「返品DX」、損保ジャパンが外資と組んで本格参入へ

顧客体験の向上により業績を伸ばそうとする企業が増える中、ECの返品にまつわる顧客体験の向上で売り上げ・収益の伸長を支援しようという新しい返品DXサービスが登場した。損保ジャパンが日本エマージェンシーアシスタンス(EAJ)と協業して提供する「リターンプラス(Return+)」だ。

「返品DX」が注目されるワケ

このサービスの最大の特徴は、EC事業者側が負担する返品送料のコストキャップ保証だ。返品をフリー(無料)にする場合、返品率の上昇に伴うコスト増が企業にとって重荷になりがちだ。「リターンプラス」では事前に返品率を予測し、万が一、予測を上回る返品送料負担が発生した場合でも、企業は安心して返品無料化策を導入できることになる。購入者にはECでの購入ハードルを下げ、サイズやイメージが合わなければ返品できるという安心感を、EC事業者にはコストの上振れリスクを回避しながら売り上げ向上や利用者拡大を目指せるという安心感を提供する。

2つ目の特徴は、米国発の返品プラットフォーム「ナーバー(Narvar)」との連携によるユーザーが直感的に操作できる専用の返品用ページと管理システムだ。返品ポリシーの事前設定により、カスタマーサポート部門による顧客対応や返品情報の記入が原則不要になり、売り上げ拡大に比例して増大しがちな人件費やコストを抑制することができるようになる。返品理由の項目を設定することで、マーケティングやモノ作りにも活用できることになる。

3つ目は物流会社と連携して静脈物流網を整備し、お客さまが自身の都合に応じて自宅引き取りやコンビニ持ち込みなど返品手段を選ぶことを可能にしている点だ。事業者は自社で手配する必要がなく、返品先も倉庫、オフィス、店舗などにカスタマイズ設定できるため、コストも時間も削減につなげることが可能になるという。

それにしてもなぜ異業種である損保ジャパンがファッションECを中心とした返品フリーのサービスを開発したのか。その背景や期待される効果などを、損保ジャパンの情報通信産業部開発課で新規事業を担当する曽我純也課長と川上美咲氏、山﨑貴弘氏の3人に聞いた。

3人の担当者が語る、損保ジャパンが「返品DX」に参入する理由

――なぜ損害保険会社がファッション業界のECに着目してサービスを開発することになったのか?

川上美咲(以下、川上):世界でEC市場が年々成長を続けるなかで、国内で特に右肩上がりの高い伸びで拡大しているマーケットがアパレル小売り市場だった。しかもアパレルECにおける物流費のシェアが大きいことに着目。発展を支援できるような商品・サービスの提供ができないかと4 年前から検討してきた。ECの最大の課題は購入前に商品を試すことができないこと。しかも返品の手続きが煩雑であることがECでの買い物を阻害する要因の一つになっていた。EC 化率の高いアメリカや英国ではすでに返品しやすいソリューションが普及し、返品周りの顧客体験の向上が業界や経営のテーマにも上がって来ていた。その流れを鑑みて、日本でも返品関連のソリューションのニーズが高まると考え、昨年8月に「リターンプラス」を発表した。

――損保ジャパンとNarvar、EAJの各々の役割は?

曽我純也課長(以下、曽我):カスタマーサポートに強みがあるEAJが、「リターンプラス」のサービス提供者、事業主体としてEC事業者に返品送料のコストキャップ保証を提供し、損保ジャパンは「リターンプラス」を運営する事業者のビジネスを支援する損害保険を提供する。商品購入後の顧客体験に焦点を当てたポストパーチェス改善のリーディングカンパニーである米国発のナーバーがシステム周り、返品のオンライン化、自動化を担当し、商品購入者が円滑に返品ができるインターフェイスを提供する。グローバルでの導入実績も豊富で、さまざまな環境でECサイトを構築され、システム連携などつなぎの部分でも柔軟に対応いただけ、日本でも安心して多くの事業者にサービスをお届けできることになる。EAJはこれらのナーバーが提供する返品UI、物流、返品送料のコストキャップ保証、カスタマーサポートまでワンパッケージで提供していくことになる。

返品をポジティブに
返品送料無料で顧客満足度を高める

――あらためて、「リターンプラス」のサービスの特徴と、導入した場合、どのようなメリットが創出されるのか?

川上:最大の特徴は「返品送料のコストキャップ保証」にある。返品フリーにした際に返品数や返品コストがどの程度増えるか予測しにくく、上振れするのが不安だという事業者も多い。予算超過のリスクを軽減するための保険サービスとして、企業やブランドごとに返品送料コストキャップ保証サービスを提供していく。

繰り返しになるが、ECの課題は試着できないこと。購入前に買ったり触ったりサイズを確認したことがないものは購入しずらい。とくに買ったことのないお店では躊躇しがちだ。そのうえ、返品に送料がかかる、返品手続きがわかりづらい、といったことがあればなおさらネックになる。返品をフリー(無料)にして、購入者が5ステップで返品の配送手配までシステムで完了できるようにして返品にまつわる顧客体験を改善することで、購入のハードルを下げ、コンバージョンレートを上げ、まとめ買いも誘発し、売り上げアップに寄与できる。平均単価が1万5000円前後のアパレルブランドと行った「返品フリー・自宅で試着キャンペーン」では、売上高が対前年同期比で23%増、コンバージョン率は16%増など、あらゆる指標で効果が確認できました。購入者へのインタビューやアンケートでも、80%のお客さまが返品無料が購買意欲向上につながったと回答。いつもより高い商品の購入や複数の商品購入につながったというコメントもあり、手応えを感じた。キャンペーンだけ、あるいは、優良顧客や会員ランクの上位の方向けのロイヤリティプログラムのメニューとしても活用いただき、LTV(ライフタイムバリュー)を高める施策としても有意義だと思う。

――「リターンプラス」を導入すると返品が増え、コストも上がりそうだが、コスト削減にもつながるという理由は?

山﨑貴弘(山﨑):返品ソリューションを導入する企業が増えつつあるが、今でも返品を電話で受けたり、問い合わせフォームに対応したり、商品に同封した返品用紙の内容を改めて手入力するなど、人手に頼っている企業が多いと聞く。これでは売り上げが上がれば上がるほどコストが増大し続けてしまう。返品をオンライン化・自動化するとともに迷いにくいUIにすることで、問い合わせを極力減し、省力化・省人化することで返品サポートコストが削減できる。また、オンライン化によるデータ連携で、いつ、どこに、どれくらい返品が戻ってくるのかを踏まえてタイムリーに検品・加工し、美品は再販し、それ以外はアウトレットに送るなど、返品在庫のスムーズな運用にもつながる。

――返品をマーケティングにどのように生かしていくことを提案しているのか?

山﨑:ここも非常に重要なポイントだ。商品購入後にお客さまがご意見やご不満などをお持ちだったとしても黙認されがちだ。ストレスのない返品体験によって返品理由を企業にフィードバックしやすくし、商品やサービスの改善に生かし、今後の成長に役立ててもらいたい。また、返品後の確認メールやメッセージの開封率は非常に高い。これをマーケティングや顧客接点の機会ととらえ、代替商品やオススメ商品を提案したり、新たな情報発信も行うことができる。返品先を店舗に設定することで、来店動機につなげることも可能だろう。

また、アパレルの大きな課題が廃棄の削減だ。返品理由を明確化してマーケティングやモノ作りに生かせたら、大量生産・大量消費から脱却して本当に必要なものだけを作ることや、自分たちのブランドを好きで愛してくれる人たちの期待に応え続けることで、ロイヤリティの向上やサステナビリティにもつなげてほしい。返品フリーにすることで、ニーズにフィットした愛着が持てる商品を長く着用してもらえたり、連携先のリバースロジスティクスを活用することでCO2の抑制などにもつながるはずだ。

――今後の導入予定や、推奨ジャンル等は?

曽我:百貨店やアパレル、郊外型チェーンストアやD2Cのインナー企業などと話を進めているところで、本格導入はこれからだ。サイズやフィット感、素材感、コーディネートなどを試着して確かめたいシューズや布帛のシャツやワンピース、ジャケット、コートやデザイン性の高いアイテム、D2Cブランド、価格帯で言うと中価格帯以上の単価の商品を扱うブランドやストアとの相性が良さそうだ。返品はコストという意識から、良い返品体験が売り上げ、収益、ロイヤリティ向上につながると認識が変わり、実感する企業やブランドが増えてほしい。とくに、店舗だけ、ECだけの利用ではなく、両方を利用いただくことで、1人の方の年間買上げ額が3倍近くなるというデータがあるように、OMO(オンラインとオフラインの融合)やユニファイドコマースを進める中で、返品体験は売上げ、ロイヤリティ、LTVなどを伸ばすうえで重要な役割を果たせると思う。

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羽田空港に人気シェフのスイーツ店が集合 デパ地下に負けないギフトを提供

日本空港ビルデングは、羽田空港第1ターミナルに各種スイーツを集めた新エリア「ハネダ スター&ルクス(HANEDA STAR&LUXE)」を2月20日に開く。和菓子から洋菓子まで約13ブランドが出店。気鋭のシェフやパティシエとの協業によって、デパ地下に負けないクオリティーとストーリー性でギフト需要を狙う。

羽田空港第1ターミナルの出発フロアである2階マーケットプレイスに、300平方メートルの新エリアを設ける。ここではジャンルの枠を超えて活躍する作り手のスイーツを“クリエイタースイーツ”と名づけ、国内外から人が集まる空港の立地を生かして発信する。

18日にメディア向けの記者会見と内覧会を実施した。羽田空港を運営する日本空港ビルデングの大西洋副社長は「羽田の価値を高める上で、食はとても需要」と位置づけ、「搭乗客以外のお客さまを3割は集めたい」と意気込む。一方で「(商業を運営するあたり)羽田空港のMD施策には課題が多い。顧客の関心ごとに合わせた展開分類やMD施策が遅れており、ポテンシャルを生かし切れていない」と述べる。ハネダ スター&ルクスはそうした課題をクリアする一歩にしたい考えだ。

ハネダ スター&ルクスでは、よくある空港のお土産にとどまらない商品価値を提供するため、羽田限定商品も充実させた。客単価も従来の品ぞろえに比べて1.5倍を想定する。

出店するシェフやパティシエの期待も高い。イートインもある「諸鈎(もろかぎ)」を出店するシェフパティシエの加藤峰子氏は、「和菓子の文化を未来につなげたい。そのために空港から若い人や海外の人に届ける」と話す。「メゾンカカオ」創業者でカカオディレクターの石原紳伍氏は、「空港はワクワクする特別な場所。(搭乗して)数時間後にも美味しく食べることができる生ガトーショコラを開発した」と述べた。

13店舗のうち、クリエイタースイーツは「諸鈎」「いったつみとらどう」「メゾンカカオ」「レガレヴ」「ミスターチーズケーキ」の5店舗。それ以外にも「とらや」「小布施堂」「叶 匠壽庵」「福砂屋」「ねんりん屋」「ナーディル・ギュル」「ラデュレ」が出店するほか、「ザ・ペニンシュラ・ブティック」が5月末までポップアップを営業する。

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羽田空港に人気シェフのスイーツ店が集合 デパ地下に負けないギフトを提供

日本空港ビルデングは、羽田空港第1ターミナルに各種スイーツを集めた新エリア「ハネダ スター&ルクス(HANEDA STAR&LUXE)」を2月20日に開く。和菓子から洋菓子まで約13ブランドが出店。気鋭のシェフやパティシエとの協業によって、デパ地下に負けないクオリティーとストーリー性でギフト需要を狙う。

羽田空港第1ターミナルの出発フロアである2階マーケットプレイスに、300平方メートルの新エリアを設ける。ここではジャンルの枠を超えて活躍する作り手のスイーツを“クリエイタースイーツ”と名づけ、国内外から人が集まる空港の立地を生かして発信する。

18日にメディア向けの記者会見と内覧会を実施した。羽田空港を運営する日本空港ビルデングの大西洋副社長は「羽田の価値を高める上で、食はとても需要」と位置づけ、「搭乗客以外のお客さまを3割は集めたい」と意気込む。一方で「(商業を運営するあたり)羽田空港のMD施策には課題が多い。顧客の関心ごとに合わせた展開分類やMD施策が遅れており、ポテンシャルを生かし切れていない」と述べる。ハネダ スター&ルクスはそうした課題をクリアする一歩にしたい考えだ。

ハネダ スター&ルクスでは、よくある空港のお土産にとどまらない商品価値を提供するため、羽田限定商品も充実させた。客単価も従来の品ぞろえに比べて1.5倍を想定する。

出店するシェフやパティシエの期待も高い。イートインもある「諸鈎(もろかぎ)」を出店するシェフパティシエの加藤峰子氏は、「和菓子の文化を未来につなげたい。そのために空港から若い人や海外の人に届ける」と話す。「メゾンカカオ」創業者でカカオディレクターの石原紳伍氏は、「空港はワクワクする特別な場所。(搭乗して)数時間後にも美味しく食べることができる生ガトーショコラを開発した」と述べた。

13店舗のうち、クリエイタースイーツは「諸鈎」「いったつみとらどう」「メゾンカカオ」「レガレヴ」「ミスターチーズケーキ」の5店舗。それ以外にも「とらや」「小布施堂」「叶 匠壽庵」「福砂屋」「ねんりん屋」「ナーディル・ギュル」「ラデュレ」が出店するほか、「ザ・ペニンシュラ・ブティック」が5月末までポップアップを営業する。

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高級EC「ネッタポルテ」、中国市場から3月20日に撤退 親会社YNAPの買収やECブームの下火などを背景に

ラグジュアリーEC大手ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)は、中国大手EC企業のアリババ(ALIBABA)と設立した合弁会社フェンマオ(FENGMAO)を3月20日付で終了することを明らかにした。フェンマオは、YNAPが擁する高級EC「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」の中国事業として2018年に設立されたが、24年6月には近日中に終了するのではないかと複数の海外メディアが報じていた。

フェンマオの終了に伴い、中国市場における「ネッタポルテ」のECチャネルは全て閉鎖する。これにはアリババが運営するECサイト「Tモール(TMALL)」、ウィーチャット(微信、WeChat)上のミニプログラム、中国版インスタグラムの「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書)」、中国版TikTokの抖音(Douyin、ドウイン)などにあるショップが含まれるが、アフターサービスは4月22日まで提供するという。

「ネッタポルテ」とその中国事業について

YNAPは、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)の子会社だったネッタポルテが、15年にユークス グループと合併して誕生。ウィメンズを中心とした「ネッタポルテ」、メンズの「ミスターポーター(MR. PORTER)」、リーズナブルな価格の「ユークス(YOOX)」に加えて、ディスカウントECの「アウトネット(THE OUTNET)」を運営している。リシュモンはYNAPの株式の49%を保有していたが、18年に残りの株式を買い付けて完全子会社化した。

ネッタポルテは13年に中国に進出し、15年に中国事業を設立。「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモンはその後、本格的に中国市場に進出するべく、18年にアリババと戦略的パートナーシップ契約を締結してフェンマオを設立した。

YNAPが中国市場から撤退する理由

中国では、「シャオフォンシュウ」などのSNSやライブ配信での販売が急激に台頭し、「Tモール」をはじめとするECは厳しい競争に直面。その後、コロナ禍が落ち着いて実店舗への客足が戻ったこともあり、中国でのECブームは下火となった。こうした状況を背景に、YNAPは資金やリソースをコア事業およびより収益性の高い地域に集中させるべく中国市場からの撤退を計画しており、フェンマオ事業の終了はその一環と見られている。それに加えて、リシュモンがYNAPを売却したことも影響しているだろう。

リシュモンは23年8月、YNAPの株式の47.5%を高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)に売却することに合意。しかし、取引が成立する前にファーフェッチが経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同年12月に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。これを受けてリシュモンは取引を中止した。その後、24年10月、ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」を運営する持株会社MYTネザーランズ ペアレント B.V.(MYT NETHERLANDS PARENT B.V.)がYNAPの株式を100%取得した。

同取引は25年上半期に完了する見込みで、それを機にMYTネザーランズ ペアレント B.V.は社名をリュクスエクスペリエンス(LUXEXPERIENCE)に変更する。主力のECサイト「マイテレサ」の名称は存続する。

YNAPを買収した「マイテレサ」は中国事業を強化

「マイテレサ」は中国事業を強化するべく、24年7月に新たなグレーターチャイナ地域担当社長として、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のグレーターチャイナ地域EC担当ヘッドを務めていたデデ・チャン・ブリノーリ(Dede Chan Brignoli)を任命。同年9月には、中国市場での社名をメイリンシー(MEI LIN SHI)に変更したほか、ウィーチャット上のミニプログラムにショップをオープンした。同店はウィメンズ、メンズ、キッズウエアなど180以上のブランドを取り扱っており、商品は欧州にある「マイテレサ」の倉庫から出荷しているという。

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高級EC「ネッタポルテ」、中国市場から3月20日に撤退 親会社YNAPの買収やECブームの下火などを背景に

ラグジュアリーEC大手ユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)は、中国大手EC企業のアリババ(ALIBABA)と設立した合弁会社フェンマオ(FENGMAO)を3月20日付で終了することを明らかにした。フェンマオは、YNAPが擁する高級EC「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」の中国事業として2018年に設立されたが、24年6月には近日中に終了するのではないかと複数の海外メディアが報じていた。

フェンマオの終了に伴い、中国市場における「ネッタポルテ」のECチャネルは全て閉鎖する。これにはアリババが運営するECサイト「Tモール(TMALL)」、ウィーチャット(微信、WeChat)上のミニプログラム、中国版インスタグラムの「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書)」、中国版TikTokの抖音(Douyin、ドウイン)などにあるショップが含まれるが、アフターサービスは4月22日まで提供するという。

「ネッタポルテ」とその中国事業について

YNAPは、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)の子会社だったネッタポルテが、15年にユークス グループと合併して誕生。ウィメンズを中心とした「ネッタポルテ」、メンズの「ミスターポーター(MR. PORTER)」、リーズナブルな価格の「ユークス(YOOX)」に加えて、ディスカウントECの「アウトネット(THE OUTNET)」を運営している。リシュモンはYNAPの株式の49%を保有していたが、18年に残りの株式を買い付けて完全子会社化した。

ネッタポルテは13年に中国に進出し、15年に中国事業を設立。「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモンはその後、本格的に中国市場に進出するべく、18年にアリババと戦略的パートナーシップ契約を締結してフェンマオを設立した。

YNAPが中国市場から撤退する理由

中国では、「シャオフォンシュウ」などのSNSやライブ配信での販売が急激に台頭し、「Tモール」をはじめとするECは厳しい競争に直面。その後、コロナ禍が落ち着いて実店舗への客足が戻ったこともあり、中国でのECブームは下火となった。こうした状況を背景に、YNAPは資金やリソースをコア事業およびより収益性の高い地域に集中させるべく中国市場からの撤退を計画しており、フェンマオ事業の終了はその一環と見られている。それに加えて、リシュモンがYNAPを売却したことも影響しているだろう。

リシュモンは23年8月、YNAPの株式の47.5%を高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)に売却することに合意。しかし、取引が成立する前にファーフェッチが経営破綻の瀬戸際にあることが判明し、同年12月に韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)が買収。これを受けてリシュモンは取引を中止した。その後、24年10月、ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」を運営する持株会社MYTネザーランズ ペアレント B.V.(MYT NETHERLANDS PARENT B.V.)がYNAPの株式を100%取得した。

同取引は25年上半期に完了する見込みで、それを機にMYTネザーランズ ペアレント B.V.は社名をリュクスエクスペリエンス(LUXEXPERIENCE)に変更する。主力のECサイト「マイテレサ」の名称は存続する。

YNAPを買収した「マイテレサ」は中国事業を強化

「マイテレサ」は中国事業を強化するべく、24年7月に新たなグレーターチャイナ地域担当社長として、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のグレーターチャイナ地域EC担当ヘッドを務めていたデデ・チャン・ブリノーリ(Dede Chan Brignoli)を任命。同年9月には、中国市場での社名をメイリンシー(MEI LIN SHI)に変更したほか、ウィーチャット上のミニプログラムにショップをオープンした。同店はウィメンズ、メンズ、キッズウエアなど180以上のブランドを取り扱っており、商品は欧州にある「マイテレサ」の倉庫から出荷しているという。

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ルックを10年率いた多田氏 社長のバトンはインポータービジネスの礎を築いた“戦友”へ

ルックホールディングス(HD)は3月28日付で、次期社長に専務取締役の渋谷治男氏(60)が就任する。多田和洋現社長(同)は代表権を持つ会長となる。17日に開かれた同社の2024年12月期決算会見では、多田氏が15年からルック、18年からルックHDを率いてきた10年間を振り返った。

社長交代について問われた多田氏は、「僕が就任してからもう10年が経つ。そろそろバトンタッチするのに適切なタイミングだ。経営における意思決定のパターン化を防ぐことは(社長交代の)目的の一つ」と説明した。社長としての10年間の成果については、「就任直後は、かなり厳しい経営状態だったが、ある程度経営を安定させることができたと思う」と述べた。

ターニングポイントは、19年の伊イルビゾンテの子会社化だった。「100億円を超える大型投資だったが、結果的に当社の収益性にとってかなりのプラスになった」と手応えを話す。「イル ビゾンテ」については、子会社化する以前から国内販売権を取得(10年)して展開してきたが、それを現場で主導したのが多田氏だった。それだけに、「グループに迎え入れることができたことへの喜びもひとしおだった」という。「そして新型コロナという危機を、人員、給与のカットを一切することなく乗り切ることができた」と振り返った。

30年来の“戦友”

多田氏と次期社長の渋谷氏は同い年で、ルックでは約30年来の“戦友”。まだ同社が百貨店アパレルビジネスを主力としていた頃から、黎明期のインポートビジネスを担う「ブティック事業部」に所属し、事業拡大に向けて二人三脚で仕事をした。00年代以降、百貨店市場の縮小に伴い、同社はライフスタイルブランドを含めたインポーター(輸入販売事業)へ本格的にビジネスモデルを転換。05年に「マリメッコ(MARIMEKKO)」の独占販売権を取得、08年に「アー・ペー・セー(A.P.C.)」の日本法人を設立、10年に「イル ビゾンテ」の国内販売権を取得するなど、成長性のある海外ブランドの目利きをしながら、今に続く収益の礎を作った。その中心にいたのが多田氏と渋谷氏だった。

当時の経験から、多田氏は「彼(渋谷氏)にはグループを引っ張っていくだけの経験、人格、リーダーシップ、そして海外パートナーとの交渉力がある」と全幅の信頼を寄せる。「当社グループのポテンシャルを考えれば、まだまだ企業価値を向上できるはず」との期待に、渋谷氏も「阿吽の呼吸で経営を舵取りしていきたい」と応えた。

24年12月期は韓国苦戦

なお、ルックHDの24年12月期通期連結業績は、売上高が前年同期比1.3%減の547億円、営業利益が同17.5%減の25億円、純利益が同21.7%減の19億円だった。主力の韓国事業が冬物販売で苦戦し、同2.5%の減収。国内事業は同2.0%の増収となるもカバーしきれなかった。25年12月期予想はおおむね前期並みを見込み、売上高が前期比横ばいの550億円、営業利益が同2.7%増の26億円、純利益が同3.9%増の20億円を計画する。

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H&M、24年は0.7%減収 ホリデーシーズンは現地通貨ベースで4%増収

H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)の2024年11月期決算は、売上高が前期比0.7%減の2344億7800万スウェーデンクローナ(約3兆2826億円)、営業利益は同19.0%増の173億600万スウェーデンクローナ(約2422億円)、純利益は同32.9%増の115億8400万スウェーデンクローナ(約1621億円)だった。

営業利益率は前年の6.2%から7.4%とやや改善したものの、同社が目指すとしている10%以上にはまだ遠い。なお、純利益の大幅増は、23年5月に国際財務報告基準の法人所得税に関する項目が改訂されたことに伴い、23年度の繰延税金を調整した影響による。

地域別での売上高は、本拠地であるスウェーデンを含む欧州・アフリカは同1.2%増の1540億6000万スウェーデンクローナ(約2兆1568億円)と微増だったものの、アジア・オセアニアは同4.4%減の286億1900万スウェーデンクローナ(約4006億円)、南北アメリカは同3.7%減の517億9900万スウェーデンクローナ(約7251億円)だった。なお、売り上げ全体に占めるECの割合は30%程度だった。

24年1月から同社を率いるダニエル・エルヴェール(Daniel Erver)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「当社は正しい方向に進んでいると自信を持っている。中核事業に集中しつつ、引き続きコストおよび組織の効率化、サプライチェーンの最適化、需給バランスの正確性の改善などを推し進めていく」と語った。

なお、ホリデーシーズンを含む24年12月~25年1月の売り上げは、現地通貨ベースで前年同期比4%増と堅調だった。

事業の合理化を推進

現在、同社の主力ブランド「H&M」は世界80カ国でおよそ3700店を運営。ほかに「コス(COS)」「アンド アザー ストーリーズ(& OTHER STORIES)」「モンキ(MONKI)」「ウィークデイ(WEEKDAY)」「チープマンデー(CHEAP MONDAY)」「アーケット(ARKET)」「H&M ホーム(H&M HOME)」を展開している。

同社は昨今の精彩を欠いた業績の要因として、マクロ経済の悪化、調達などに関するコストの高騰、消費意欲の減退があると分析。その対応策の一環として「モンキ」の販売網を「ウィークデイ」と統合し、オフプライスのマーケットプレイス、アファウンド(AFOUND)を終了するなど、事業の合理化を進めている。また、需要により迅速に対応し、輸送費を削減するべく、生産拠点をより消費地に近い地域に移転する“ニアショアリング(near-shoring)”にも取り組んでいるという。

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訪日客に沸く2025年雪山マーケット動向:記者談話室vol.165

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「記者談話室」は、ファッション業界のその時々のニュースや話題について、3人の記者が分かりやすく解説したり、時には脱線したりしながら、掘り下げていきます。

165回目となる今回の配信で取り上げたのは、2025年のスノースポーツ市場動向。“JAPOW”を求める訪日客激増で、かつてとは違う姿になっているスキーやスノーボードといったウィンターアクティビティーのマーケットについて、雪山を愛してやまない記者を中心にお伝えします。昨シーズン発行した、「WWDJAPAN」スノースポーツ市場特集もぜひお読みください。

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エルメス、24年も2ケタ増収で着地 “ラグジュアリー減速”の中でも強さを発揮

エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL以下、エルメス)の2024年12月期決算は、売上高が前期比13.0%増の151億7000万ユーロ(約2兆4120億円)、営業利益は同8.8%増の61億5000万ユーロ(約9778億円)、純利益は同6.8%増の46億300万ユーロ(約7318億円)の増収増益だった。

地域別の売上高は、フランスが同13.6%増の14億4700万ユーロ(約2300億円)、フランス以外のヨーロッパは同18.1%増の21億4700万ユーロ(約3413億円)だった。いずれも現地の顧客および観光客による需要が好調だった。北米が好調な南北アメリカは同14.5%増の28億6500万ユーロ(約4555億円)だった。日本以外のアジア太平洋地域は、景気停滞が続く中国市場を抱えているものの、同6.0%増の66億4800万ユーロ(約1兆570億円)で着地。円安によるインバウンド消費と現地顧客の需要の両方が好調だった日本は、同14.0%増(現地通貨ベースでは22.5%増)の14億3700万ユーロ(約2284億円)だった。

カテゴリー別での売上高は、主力のレザーグッズが同16.4%増の64億5700万ユーロ(約1兆266億円)、衣料・アクセサリーが同13.6%増の44億500万ユーロ(約7003億円)といずれも2ケタ成長を維持。シルク・テキスタイルは同1.9%増の9億5000万ユーロ(約1510億円)、香水・ビューティは同8.7%増の5億3500万ユーロ(約850億円)と増収だったが、景気回復が遅れている中国市場の影響を受けたウオッチは同5.6%減の5億7700万ユーロ(約917億円)だった。

アクセル・デュマCEOのコメント

アクセル・デュマ(Axel Dumas)最高経営責任者(CEO)は、「経済上および地政学上の先行き不透明感がさらに増している中、24年も安定した業績を残せたことは、エルメスのビジネスモデルの強さを示している。また、機敏に対応してくれたチームに心から感謝する。事業のバランスおよび雇用主としての責任を維持しつつ、今後も当社の基本的な価値観である高い品質、クリエイティビティー、サヴォアフェール(受け継がれる職人技や美意識)をいっそう追求していく」と語った。

同氏は「エルメス」の強さの秘訣として、忠誠心の高い顧客の存在が大きいと指摘。「現地の顧客を大切にした小売り戦略や、(品質に対する)高い信頼性が成功の要因だと考えている」と述べた。

ウォルマートが販売した“バーキン”の模倣品について言及

同氏はまた、アナリスト向けの決算説明会で、米小売最大手ウォルマート(WALMART)が24年12月にEC上で販売し、「エルメス」の“バーキン(Birkin)”にデザインがそっくりだとしてSNSなどで大きな話題を集めた60~300ドル(約9120~4万7000円)のバッグについて言及。「当社は模倣品対策に真剣に取り組んでおり、模倣品に対しては弁護士らと共に全力で闘う」と“公式の回答”を示した上で、「個人的には、当該のバッグに対するメディアの注目度の高さに苛立ちを覚えつつも、購入した人々の心情は理解できる」と話した。「当該のバッグを本物だと思って購入した人は誰もいないだろう。品質の差は一目瞭然で、混乱を招く余地はない。『エルメス』に敬意や憧れを抱きつつも手が届かないので、ひとまず手の届くもので夢を見たいという人々の気持ちには胸を打たれる部分もある」。なお、当該の商品は完売しており、現在ウォルマートのオンラインストアには掲載されていない。

関税が引き上げられれば「価格に転嫁せざるを得ない」

ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が行う可能性がある、欧州製品に対する関税の引き上げについては、「懸念事項だ」と回答。これに備えて、在庫を予め米国内に集めるなどの対策は取っていないため、関税が引き上げられた際には価格に転嫁せざるを得ないだろうと説明した。一方で、米国の顧客は他国との価格差を比較することに慣れており、「エルメス」の商品を入手するために旅行することを厭わない得意客も多いため、過剰な心配はしていないと付け加えた。

なお、米国ではロサンゼルスの山火事やフロリダ州のハリケーンの影響で休業している店舗もあるが、業績への長期的な影響はない見込みだという。

以前から期待されている「エルメス」のオートクチュールについては、開発に時間をかけていることから、26年後半~27年前半の発表になるのではないかとの見解を示した。また、ビューティ部門におけるスキンケア商品のローンチについては、まだ商品開発の段階にあるとし、発表時期については明らかにしなかった。

ブランド買収による“コングロマリット化”の予定はないと明言

同氏はまた、競合他社のようにブランドを買収して“コングロマリット化”する予定はないと明言。「『エルメス』の運営をどうすべきはよく分かっているが、それ以外のブランドについてもそうだとは言い難い。また、ほかのブランドに『エルメス』のビジネスモデルを当てはめても、成功するとは思えない。当社の場合、ブランドの買収は逆効果となるだろう」とし、引き続きジュエリーやシューズの工房に投資して垂直統合を進めていくと述べた。

好業績を受けて全従業員に71万円の特別ボーナス

ラグジュアリーセクターは、23年から需要が世界的に“正常化”し、24年には減速傾向となっている。ラグジュアリー市場をけん引するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の24年12月期決算は、売上高が前期比1.7%減の846億8300万ユーロ(約13兆4645億円)、営業利益は同16.2%減の189億700万ユーロ(約3兆62億円)、純利益は同17.3%減の125億5000万ユーロ(約1兆9954億円)と減収減益に。不調が続く「グッチ(GUCCI)」を擁するケリング(KERING)も、24年12月期の売上高は同12.1%減の171億9400万ユーロ(約2兆7338億円)、営業利益は同50.2%減の23億1200万ユーロ(約3676億円)、純利益は同62.0%減の11億3300万ユーロ(約1801億円)と大幅な減収減益だった。

両社と比較すると、ラグジュアリー市場が減速する中でも増収増益を維持したエルメスの強さが際立つ。こうした好業績を受け、同社は従業員全員に4500ユーロ(約71万円)の特別ボーナスを支給するという。なお、同社は24年にもやはり4000ユーロ(約63万円)の特別ボーナスを支給している。

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プレステージビューティの小売地図に異変あり【鈴木敏仁USリポート】

アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。米国では高級化粧品を指すプレステージビューティの小売地図が再編されつつある。マーケット拡大の期待は高いが、これまでの主力販路だった百貨店の店舗数は右肩下がり。そんな状況を背景ににして、専門店や百貨店の試行錯誤が続いている。

ビューティ専門のチェーンストア「ブルーマーキュリー」の創業者が5年ほど前にECとの競合について問うリテールメディアの取材に対してこう答えていた。

「お客がリアル店舗に来る理由は情報だ。新商品や新しいメイク技といった新情報が大切で、これを店員が対面コミュニケーションで提供することできれば、お客は店に来る」

「ブルーマーキュリー」は160店舗前後を展開している。プレステージブランドを取り扱う小商圏型の小型フォーマットである。アルタやセフォラと競合するが、この2社が中~大商圏であるのに対して、「ブリューマーキュリー」はスーパーマーケットが出店するようなショッピングセンターに立地することで差別化している。

対面サービスが成立する要件とは、サービス提供者とお客との間の情報の非対称である。

例えば、おそらく読者のほとんどがご存じないかもしれないが、1900年代初頭のグローサリーストアは対面販売形式で、理由は加工食品というものが登場したばかりでお客が使い方が分からず、店員が一つ一つ説明していたからである。当時は加工食品に情報の非対称が存在したのだ。

これが一巡しお客が慣れて、店員とお客を隔てるカウンターを取り払って商品を自由に取れるようにし、集中レジを置くレイアウトとして、セルフ環境を作り革新を起こして誕生したのがスーパーマーケットである。

当初ビューティカテゴリーはECへ移行しづらい商材だと私は思い込んでいたのだが、さにあらず、定期購買向きの商品もあるし、形状が小さく単価が高く宅配向き商品も多く、あっという間に市場が拡大した。

しかしながらとりわけトレンドサイクルが短いビューティは情報の非対称が生まれやすく、EC比率が高まってもそれでもやはりリアル店舗はいつまでも必要なのだろうと思っている。

メイシーズが「ブルーマーキュリー」を買収した本当の狙い

「ブルーマーキュリー」は2015年に百貨店大手のメイシーズに買収されて傘下に入っている。独立店舗としての展開と、百貨店内のインストアショップ展開と、2つの出店戦略を取ってきているが、インストアは当初言われていたほど増えていない。

また総店舗数は19年の171店舗を境にして減少傾向となっている。傘下の新興フォーマットを育成する技術がメイシーズに欠けているのだろうと思っている。

メイシーズは多くを語っていないが、「ブルーマーキュリー」を買収した戦略的な目的は、プレステージビューティをモールという大商圏から外に出すことだと考えている。箱としてのモールだけではなく自身の集客力も落ちている中で、「アルタ」や「セフォラ」の好調を横目で見て、後を追おうとしたのである。

このプレステージビューティをモール外に出す戦略を別の角度から挑戦しているのが、自身の小型フォーマットの「マーケット・バイ・メイシーズ(Market by Macy’s)」である。24店舗まで増えているのだが、今年初頭に発表した閉店計画にこの小型フォーマットは4店舗含まれていた。

昨年末に訪問する機会があったのだが、客数はまばらで、閉店計画を知ってやはりそうなのかと納得したのであった。

この「マーケット・バイ・メイシーズ」で私が最も興味を持ったのがプレステージビューティだ。「クリニーク」「エスティ ローダー」「ボビイブラウン」といった、メーカーが流通チャネルをコントロールし対面でしか売らせない高価格帯のブランドが、百貨店と同じように店頭に並んでいるのである。

さらにこのコミュニティ型ショッピングセンター(CSC)には、「セフォラ」が出店し、「アルタ」をインストア展開しているターゲットも立地していたのである。プレステージビューティがこれほど過密に存在するCSCというものを、私はいまだかつて見たことがない。

これが成立するのかどうかは私には判断できないのだが、一つだけ言えることは、メーカーが新たなチャネルを欲しているということである。

百貨店縮小の受け皿となるビューティ専門店

百貨店の集客力は落ち続けていて、総店舗数はずっと右肩下がりで推移している。この傾向はしばらく変わらないというのが大方の見方だ。メイシーズは昨年初頭に3年かけて150店舗を閉鎖すると発表しているが、再来年からも閉店による縮小均衡は続くだろう。

これで困るのがプレステージブランドを持つメーカーである。百貨店業界自体が縮小している以上、サプライヤーとしてどんなに頑張っても限界がある。

このメーカーによるニーズの受け皿となっているのが「アルタ」であり、「セフォラ」であり、そして「ブルーマーキュリー」なのである。

「マーケット・バイ・メイシーズ」のビューティ売り場は、ブランドごとにそれなりの投資が必要な高品質の什器やデザインとなっていて、そういった背景をひしひしと感じたのである。

ただ、いかんせん「マーケット・バイ・メイシーズ」自体が繁盛店化しておらず、ブランドメーカーとしては歯がゆいところだろう。いまだ試行錯誤の状態で、思うように進んでいないというのが現状だ。

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プレステージビューティの小売地図に異変あり【鈴木敏仁USリポート】

アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。米国では高級化粧品を指すプレステージビューティの小売地図が再編されつつある。マーケット拡大の期待は高いが、これまでの主力販路だった百貨店の店舗数は右肩下がり。そんな状況を背景ににして、専門店や百貨店の試行錯誤が続いている。

ビューティ専門のチェーンストア「ブルーマーキュリー」の創業者が5年ほど前にECとの競合について問うリテールメディアの取材に対してこう答えていた。

「お客がリアル店舗に来る理由は情報だ。新商品や新しいメイク技といった新情報が大切で、これを店員が対面コミュニケーションで提供することできれば、お客は店に来る」

「ブルーマーキュリー」は160店舗前後を展開している。プレステージブランドを取り扱う小商圏型の小型フォーマットである。アルタやセフォラと競合するが、この2社が中~大商圏であるのに対して、「ブリューマーキュリー」はスーパーマーケットが出店するようなショッピングセンターに立地することで差別化している。

対面サービスが成立する要件とは、サービス提供者とお客との間の情報の非対称である。

例えば、おそらく読者のほとんどがご存じないかもしれないが、1900年代初頭のグローサリーストアは対面販売形式で、理由は加工食品というものが登場したばかりでお客が使い方が分からず、店員が一つ一つ説明していたからである。当時は加工食品に情報の非対称が存在したのだ。

これが一巡しお客が慣れて、店員とお客を隔てるカウンターを取り払って商品を自由に取れるようにし、集中レジを置くレイアウトとして、セルフ環境を作り革新を起こして誕生したのがスーパーマーケットである。

当初ビューティカテゴリーはECへ移行しづらい商材だと私は思い込んでいたのだが、さにあらず、定期購買向きの商品もあるし、形状が小さく単価が高く宅配向き商品も多く、あっという間に市場が拡大した。

しかしながらとりわけトレンドサイクルが短いビューティは情報の非対称が生まれやすく、EC比率が高まってもそれでもやはりリアル店舗はいつまでも必要なのだろうと思っている。

メイシーズが「ブルーマーキュリー」を買収した本当の狙い

「ブルーマーキュリー」は2015年に百貨店大手のメイシーズに買収されて傘下に入っている。独立店舗としての展開と、百貨店内のインストアショップ展開と、2つの出店戦略を取ってきているが、インストアは当初言われていたほど増えていない。

また総店舗数は19年の171店舗を境にして減少傾向となっている。傘下の新興フォーマットを育成する技術がメイシーズに欠けているのだろうと思っている。

メイシーズは多くを語っていないが、「ブルーマーキュリー」を買収した戦略的な目的は、プレステージビューティをモールという大商圏から外に出すことだと考えている。箱としてのモールだけではなく自身の集客力も落ちている中で、「アルタ」や「セフォラ」の好調を横目で見て、後を追おうとしたのである。

このプレステージビューティをモール外に出す戦略を別の角度から挑戦しているのが、自身の小型フォーマットの「マーケット・バイ・メイシーズ(Market by Macy’s)」である。24店舗まで増えているのだが、今年初頭に発表した閉店計画にこの小型フォーマットは4店舗含まれていた。

昨年末に訪問する機会があったのだが、客数はまばらで、閉店計画を知ってやはりそうなのかと納得したのであった。

この「マーケット・バイ・メイシーズ」で私が最も興味を持ったのがプレステージビューティだ。「クリニーク」「エスティ ローダー」「ボビイブラウン」といった、メーカーが流通チャネルをコントロールし対面でしか売らせない高価格帯のブランドが、百貨店と同じように店頭に並んでいるのである。

さらにこのコミュニティ型ショッピングセンター(CSC)には、「セフォラ」が出店し、「アルタ」をインストア展開しているターゲットも立地していたのである。プレステージビューティがこれほど過密に存在するCSCというものを、私はいまだかつて見たことがない。

これが成立するのかどうかは私には判断できないのだが、一つだけ言えることは、メーカーが新たなチャネルを欲しているということである。

百貨店縮小の受け皿となるビューティ専門店

百貨店の集客力は落ち続けていて、総店舗数はずっと右肩下がりで推移している。この傾向はしばらく変わらないというのが大方の見方だ。メイシーズは昨年初頭に3年かけて150店舗を閉鎖すると発表しているが、再来年からも閉店による縮小均衡は続くだろう。

これで困るのがプレステージブランドを持つメーカーである。百貨店業界自体が縮小している以上、サプライヤーとしてどんなに頑張っても限界がある。

このメーカーによるニーズの受け皿となっているのが「アルタ」であり、「セフォラ」であり、そして「ブルーマーキュリー」なのである。

「マーケット・バイ・メイシーズ」のビューティ売り場は、ブランドごとにそれなりの投資が必要な高品質の什器やデザインとなっていて、そういった背景をひしひしと感じたのである。

ただ、いかんせん「マーケット・バイ・メイシーズ」自体が繁盛店化しておらず、ブランドメーカーとしては歯がゆいところだろう。いまだ試行錯誤の状態で、思うように進んでいないというのが現状だ。

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マンガで学ぶ「在庫管理の魔術」 第6話:きめ細やかな補充は「言うは易し、行うは難し」、組織の壁に直面する

中堅アパレルのチェーンストア「ハンナズ」は、過剰在庫が原因で経営危機に瀕している。社長の安堂平磨は、娘でバイヤーの安堂あい、あいの夫で渋谷店店長の安堂徹に再生を期待するが、2人は「売れ残るリスクを抱えながら在庫を持つべきか?」それとも「売り上げが落ちるリスクを抱えながら在庫を減らすべきか?」で迷い続ける。

きめ細やかな補充が売り上げのみならず利益率も押し上げることを学んだ徹は、渋谷店同様の在庫管理を全店に広げることを提案。ところが南関東倉庫を取り仕切る先輩の加地からは「難しい」と、南関東エリアマネージャーの町田からは「飲めない」と言われてしまう。それでもきめ細かな補充を続けていると、新たな問題が浮上した。

登場人物紹介

第六話

このマンガは、ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)も経営陣で読んだとされるTOC(制約理論)の原点にして最高の入門書「ザ・ゴール」を原案としています。「ザ・ゴール」を中心としたマネジメント理論に関する書籍は、ダイヤモンド社が販売中です。

ORIGINAL WORKS:ELIYAHU GOLDRATT、JEF COX
SUPERVISION:YUJI KISHIRA
SCRIPT:TAKEO AOKI
COMICS:YAMA AOTA

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ルックHD10年ぶりトップ交代 次期社長に渋谷専務

ルックホールディングス(HD)は14日、次期社長に専務取締役の渋谷治男氏(60)が3月28日付で就任するトップ人事を発表した。2015年からルック、18年に設立された持ち株会社ルックHDを率いた社長の多田和洋氏(60)は代表権を持つ会長に異動する。

渋谷氏は1987年にレナウンルック(当時)に入社。営業部門の要職を歴任し、2019年には事業会社ルックの社長に就き、24年3月から現職を務める。

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ジュンのスポーツ業態「ナージー」今春で終了 10年で幕

ジュンは女性向けのスポーツ業態「ナージー(NERGY)」を今春物で終了する。現在運営する6店舗を順次閉める。

「ナージー」はアスレジャーが注目され始めた2015年、「ナイキ」をパートナーに迎えてスタートした。ランニングやヨガなどを日常的に楽しむ女性に向けて、スポーツ専門店とは異なる切り口のアパレルやシューズを提案した。店舗スタッフにもインストラクター経験者を積極的に採用し、店頭で専門的なアドバイスができるようにしていた。

現在は恵比寿(東京)、二子玉川(同)、武蔵小杉(神奈川県)、札幌(北海道)、金沢(石川)、心斎橋(大阪)の6店舗とオンラインストアで展開している。

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ジュンのスポーツ業態「ナージー」今春で終了 10年で幕

ジュンは女性向けのスポーツ業態「ナージー(NERGY)」を今春物で終了する。現在運営する6店舗を順次閉める。

「ナージー」はアスレジャーが注目され始めた2015年、「ナイキ」をパートナーに迎えてスタートした。ランニングやヨガなどを日常的に楽しむ女性に向けて、スポーツ専門店とは異なる切り口のアパレルやシューズを提案した。店舗スタッフにもインストラクター経験者を積極的に採用し、店頭で専門的なアドバイスができるようにしていた。

現在は恵比寿(東京)、二子玉川(同)、武蔵小杉(神奈川県)、札幌(北海道)、金沢(石川)、心斎橋(大阪)の6店舗とオンラインストアで展開している。

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ブルガリ」の日本法人に新社長 LVMH傘下「ディオール」「フェンディ」などで要職を歴任したデニス・コアン氏

ブルガリ(BVLGARI)日本法人の新社長に1月1日、デニス・コアン(Denis Coan)氏が就任した。コアン社長は1978年、イタリア・ヴィットリオ・ヴェネト生まれ。ベネチア・カ・フォスカリ大学で経済学と経営学を学んだ後、ケンブリッジ大学で中国経済学の修士号を取得。2006年に香港が拠点のサフィロ・アジア・パシフィックでキャリアをスタート。アジア免税店マネジャーや国際トラベル・リテール部門責任者、中国のコマーシャル・ディレクターなどとして活躍。11年にショパール(CHOPARD)のセールス&マーケティングディレクターに就任後12年、中国のジェネラルマネジャーに昇進した。

13年には、さまざまなチャネルにおける豊富な経験を買われ、LVMHグループ傘下のクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)にウオッチ&ファイン・ジュエリー部門のディレクターとして入社後、中国北東部のリージョナルディレクターに就任。中国でレディース・ウオッチ&ファインジュエリーのMD担当ジェネラルマネジャーとして活躍。18年、フェンディ(FENDI)に入社し、中国法人社長を4年間務める。フェンディ本社へ異動し、メンズ部門のMDディレクターを務めた。

コアン社長は、昨年8月に退任したヴィンセント・ライネス(Vincent Reynes)の後を引き継ぐ。

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ブルガリ」の日本法人に新社長 LVMH傘下「ディオール」「フェンディ」などで要職を歴任したデニス・コアン氏

ブルガリ(BVLGARI)日本法人の新社長に1月1日、デニス・コアン(Denis Coan)氏が就任した。コアン社長は1978年、イタリア・ヴィットリオ・ヴェネト生まれ。ベネチア・カ・フォスカリ大学で経済学と経営学を学んだ後、ケンブリッジ大学で中国経済学の修士号を取得。2006年に香港が拠点のサフィロ・アジア・パシフィックでキャリアをスタート。アジア免税店マネジャーや国際トラベル・リテール部門責任者、中国のコマーシャル・ディレクターなどとして活躍。11年にショパール(CHOPARD)のセールス&マーケティングディレクターに就任後12年、中国のジェネラルマネジャーに昇進した。

13年には、さまざまなチャネルにおける豊富な経験を買われ、LVMHグループ傘下のクリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)にウオッチ&ファイン・ジュエリー部門のディレクターとして入社後、中国北東部のリージョナルディレクターに就任。中国でレディース・ウオッチ&ファインジュエリーのMD担当ジェネラルマネジャーとして活躍。18年、フェンディ(FENDI)に入社し、中国法人社長を4年間務める。フェンディ本社へ異動し、メンズ部門のMDディレクターを務めた。

コアン社長は、昨年8月に退任したヴィンセント・ライネス(Vincent Reynes)の後を引き継ぐ。

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J.フロントとコメ兵の買取店「めぐらす」 7月に松坂屋名古屋店に1号店

J.フロント リテイリング(JFR)は13日、リユース大手のコメ兵と3月3日に設立する合弁会社の社名や店名、代表者、出店計画などを発表した。7月に松坂屋名古屋店と大丸東京店、9月に大丸神戸店と博多大丸福岡天神店にそれぞれ出店する。

JFRが51%、コメ兵が49%を出資する合弁会社の社名は「JFR & KOMEHYO PARTNERS」。社長にはJFR出身の下垣徳尊氏(現・事業企画部事業創造担当マネージャー)が就く。本社は東京都千代田区神田須田町に置く。

買取店の屋号は「MEGRUS(めぐらす)」とした。循環型ビジネスの「巡らせる」と、商品を次の利用者につなぐ「巡り合い」の意味を込めてネーミングした。JFR傘下の大丸と松坂屋、パルコに「めぐらす」を出店し、顧客から高級バッグや時計・宝飾品などを買い取り、それをリユース品としてコメ兵に売却するビジネスモデルを構築する。

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J.フロントとコメ兵の買取店「めぐらす」 7月に松坂屋名古屋店に1号店

J.フロント リテイリング(JFR)は13日、リユース大手のコメ兵と3月3日に設立する合弁会社の社名や店名、代表者、出店計画などを発表した。7月に松坂屋名古屋店と大丸東京店、9月に大丸神戸店と博多大丸福岡天神店にそれぞれ出店する。

JFRが51%、コメ兵が49%を出資する合弁会社の社名は「JFR & KOMEHYO PARTNERS」。社長にはJFR出身の下垣徳尊氏(現・事業企画部事業創造担当マネージャー)が就く。本社は東京都千代田区神田須田町に置く。

買取店の屋号は「MEGRUS(めぐらす)」とした。循環型ビジネスの「巡らせる」と、商品を次の利用者につなぐ「巡り合い」の意味を込めてネーミングした。JFR傘下の大丸と松坂屋、パルコに「めぐらす」を出店し、顧客から高級バッグや時計・宝飾品などを買い取り、それをリユース品としてコメ兵に売却するビジネスモデルを構築する。

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