製造業の企業ブランドを決定する2大要素について

こんにちは、ものづくり経革広場の永井です。

製造業にも企業ブランディングの必要性が高まってきました。これまで取引のない企業に対してはホームページや展開会に出展するなどをして、企業ブランドを認知させていきますが、既に取引のある企業に対してはどのようにすればよいでしょうか。ブランドはお客様が貴社に持つイメージそのものです。そのため、お客様との接点となる「製品」と「企業としての対応」の2つを工夫することで、貴社のブランドをある程度操作できるようになります。今回はその2点についてまとめました。

1.製品が与えるブランドイメージ

製品はブランドイメージを相手へ伝えるために最も重要な役割を担います。。精度などが図面値に入っていることは当然のことですが、それ以外にもお客様が見ている点について紹介します。

1-1.きれいな仕上がり

製品をぱっと見てわかるのが仕上がりです。図面通りに製品ができていることは当然ですが、「きれいな仕上がりは=いい仕事している」と思ってもらえます。

例えば、切削加工であれば小さなキズ、打痕、ツールマーク、面取りなども見られています。特に、溶接の場合は美しい溶接痕であることが一種のステータスにもなります。

もちろん仕上げ加工を無駄に追加することで、コストや納期が遅くなったりしては意味がありませんが、コストが同じであれば美しい仕上がりを目指すべきだと私は思います。

「図面値に入っているからいい」ではなく、「なるべくきれいな製品を納品する」ことで「きれいな製品を作る企業」というブランドを作ることができます。

1-2.低い不良率

量産ではいかに気をつけようとも不良品は出てしまいます。自社の中で不良品を発見することができればよいのですが、お客様先で発見され、かつラインを止めてしまった場合は多大な損失を与えてしまいます。

そのため、量産品の場合は1個の出来ではなく、数万個の製品の出来を良くする必要があります。なかなか難しいとは思いますが、不良率が10ppm未満ですとお客様も安心して依頼できます。

不良率の低い製品を提供することで「安心して量産を任せられる企業」というブランドを作ることができます。

1-3.見せる技術力

加工方法がわからない製品や自分では到底出来ない加工を見た時に、技術者は感動します。

例えば、細穴深穴加工、薄肉加工、微細加工などのわかりやすいものや、高精度なプレス加工やはめあいなど見た目ではわからなくても、気づいたときに「えっ?」と思える加工です。

普段の打ち合わせのときに「実はこのようなものを作ってみたんですよ。おもしろくないですか?」といった、ちょっとした会話から自社の技術力をさり気なくPRすることで、「難しい加工もできる企業」というイメージをもっていただけるようになります。

2.企業の対応が与えるブランドイメージ

2-1.過去まで追える品質管理

不良品を出さないことはもちろんですが、不良品が出てしまった時に原因を追求できるように生産行程を再現し、改善できる企業は「安心して任せられる企業」というブランドを作ることができます。

特に、大手メーカーの場合は不良の再発を嫌います。不良品が出た時は、製品がいつ、どこで、どのように加工され、なぜそのような製品が流出してしまったのか、そして今後はどのようにすれば改善できるのかを明確に提案しなければなりません。

逆にそのような管理をすることができれば大手メーカーからも信頼されるブランド力を身につけることができます。

2-2.見積もりよりも安いコスト

コストは企業ブランド決める上で、かなり重要な項目になります。もちろん、実際にコストが安いことは大切ですが、コストを安く感じさせる工夫も大切です。

例えば、ある企業では「見積もりよりも加工時間を短縮できたので、安くしました」ということを通じて自社のブランド力を向上させています。

「安くするための努力をしていることを相手に見せる」ことで、「低価格で依頼できる企業」というブランドを作れます。

2-3.予想よりも早い納期

納期は企業努力である程度調整が可能です。

納期を守ることはもちろんですが、短納期での対応や依頼した納期より少し早めに納品するなどをすることで、企業のイメージを変えることができます。

例えば、実際の加工可能な日よりも1日遅めに伝えて、1日早く納品するれば、加工側の手間は変わりませんが、発注側の印象は良くなります。 また、本当に困っている時に短納期で加工をしてあげることで、お客様の信頼も増します。

また、納期だけではなく、電話対応や見積もりなどに対してレスポンス良く対応していくことで、「仕事が早い企業」というブランドを作ることができます。

2-4.不具合発生時の突発対応

製造をしている以上、不具合の製品が出てしまうことはさけられません。品質管理に気をつけていても、不具合品は必ず出てしまいます。

不具合品は相手先で見つかることが多いので、相手が怒っている状況の中で、原因追求をしていかなければなりません。

このときの対応が「誠実かどうか」で、企業のイメージは大きく変わってきます。対応が良いと「何かあっても安心して頼める企業」となりますが、対応が悪ければ「二度と頼みたくない企業」になってしまいます。

不具合品は出さないに越したことはありませんが、相手の予想を超える対応をするこでピンチをチャンスに変えることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ブランドはお客様のイメージです。既に既存の取引のある企業に対しては「製品」と「企業としての対応」で、自社のイメージは良くも悪くもなります。

これからブランド戦略を立てていこうとお考えの方は参考にしてみてください。

 

固定残業制という制度

2回目の連載では、株式会社吉原精工の残業ゼロの達成に大きく寄与した「固定残業制」という概念をご紹介しました。

本連載以降では、固定残業制という制度を労働基準法等の法令の視点を交えながら解説していきます。

1.残業代の計算方法

そもそも労働基準法では、使用者は労働者に、1週間について40時間をこえて労働させてはならないと定められています(労基法32条1項)。週40時間制です。

そして、1日について8時間をこえて労働させてはならないとも定められています(労基法32条2項)。

戦後の労働基準法は週48時間制を採用しており、週休1日制が原則でした。その後、漸進的な法改正の結果、現在の週40時間制の原則は、平成9年4月1日から完全に実施されています。ちなみに学校週5日制も、このような労働時間短縮をめぐる政治的動向が背景になったとの指摘もあります(私が小学生の頃の話ですね。土日が休みになったときは小躍りしたものです)。

さて、ここに月給30万円をもらっているAさんがいました。このAさんが勤めているB会社では長時間労働が常態化しており、毎月80時間程度の残業時間が発生しています。B会社は、就業規則も特に作成しておらず、個々の従業員との間で雇用契約書も作成していませんでした(このパターンの会社は実際には非常に多いのです)。

ここで、このようなB会社における残業代の計算方法を確認しておきましょう。意外と残業代の計算方法のプロセスを理解している人は少ないので、一度思考過程を一緒に辿っていきましょう。

Aさんがもらっている月給30万円は、何に対する対価かというと、所定労働時間に対する対価です。所定労働時間とは何かと言うと、始業時間から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間のことです。B会社は就業規則も雇用契約書も無いので、ここでは、1日8時間、1週40時間が所定労働時間と考えることになります。

そうすると、月あたりの所定労働時間は下記のとおり、173時間となります。

週40時間÷1週間7日×365日÷12か月=173.8時間

今何をしているのかというと、残業代の計算の前提として、Aさんの時給は一体いくらなのかを考えています。Aさんは月給30万円、月の所定労働時間は173時間ということまで分かりました。

そうすると時給は、30万円÷173時間=1,734円ということになりますね。

さてAさんは、毎月80時間程度の残業をしているという設定です。したがってAさんの残業代は、1,734円×1.25×80時間=17万3,400円ということになります。なかなか高額な残業代です。

時給単価に1.25を乗じている、すなわち、通常の時給を25%増しにして計算しようというのが労働基準法のルールです(労働基準法37条、深夜等は割愛)。よって合計金額は、基本給30万円+残業代80時間分17万3,400円の47万3,400円となります。

2.固定残業制とは何か

固定残業制とは、文字通り一定の金額により残業代を支払うことを言います。

吉原会長(吉原会長については以前の連載参照)が行った改革は、労働時間を短くするために、労働時間が仮に80時間から50時間になったとしても、給料は下がらないという仕組みを構築することによって、従業員の生産性を上げよう(どうせ同じ給料をもらうなら、仕事の効率を上げてさっさと帰ろう!と動機づけ)というものです。

Aさんのケースで説明すると、残業が80時間あった場合、47万3,400円のところ、仮に残業が50時間に減ったとしても47万3,400円を変わらず支給し続けますよ、という制度です。

ここまで聞くと素晴らしい制度ですね。しかし、この固定残業制の使い方を一歩間違えてしまうと

①残業代を1時間分も支払っていないこととなるばかりか、②残業代計算の基礎となる時給単価が極端に跳ね上がるというダブルパンチを喰らうことになります。実際に正しく運用できていない企業で、多額の残業代を支払う羽目になっているケースが多々生じています。次回は正しく固定残業制を導入する為の方法と、失敗例を見て行きましょう。

ものづくり資格あれこれ

ものづくりドットコムの熊坂です。

昨年から次第に充実してきたものづくりドットコムのセミナー案内が、15社目との提携を開始し、いよいよ掲載件数が1,000件を超えるようになってきました。

https://seminars.monodukuri.com/

技術、生産系であればほとんどの分野を網羅していますので、知りたいことがある時は是非このページで検索してください。

さらに現在これらセミナーのネット配信プロジェクトを検討中で、運用試験の一環で私の大学講義を社会人向けにアレンジし、「生産工学概論」として配信することとしました。受講対象は、従業員100人程度の製造業経営者、後継者、工場長が最適ながら、製造業関係者であればそれぞれ気づきが得られると思いますので、是非申込んでください。

https://www.monodukuri.com/seminars/detail/4777

さて毎回ひとつずつ紹介しているものづくりキーワード、今回は「資格」を取り上げます。

製造業関連の資格

製造業は裾野が広いために、一口に関連資格と言っても、民間資格、国家資格それぞれ分野によって膨大な種類があります。「~士」という資格名称を使えるものもあれば、「~検定合格」というのも資格の一種として扱われます。私が今回ざっと調べた資格の一覧を下表1に示しますが、これがすべてでは全くありません。

表1.製造業に関連する資格/検定リスト

どれが良いとか悪いとかの話ではなく、必要なものは取らなくてはいけません。表1の「安全」で分類したものがそれにあたり、作業をする場合に必要あるいは職場内の誰かが資格を持っていなくてはなりません。弁理士もいわゆる業務独占資格といわれるもので、第三者の特許申請代行の際は必須です。

ところが同じ知財資格でも、社内の特許申請事務を進めるだけなら弁理士資格は不要です。知的財産管理技能士という資格はその業務能力を判定するものですが、検定に合格しなくても担当して問題ありません。品質管理検定も同様で、1,2級を持っているとちょっと自慢できますが、級を所持していないとできない品質管理業務はありません。

私は資格専門家ではないため、すべてを解説できません。表1で自分が持っている資格に*印をつけ、以下の二つだけ紹介します。

技術士

技術士はエンジニアが取得する最高峰の国家資格で、機械、電気電子などの19部門と、いずれかの合格者だけが受験できる総合技術監理部門のあわせて20部門からなります。取得までの手順は図1のようになり、2次試験受験のためには一定期間の実務経験を要求されるため、30歳を超えての受験が多く、口頭試験で業務実績を試されることもあり、今年3月に発表された合格者の平均年齢は42.9歳と他の資格と比較すると高めです。

図1.技術士資格取得の道のり

私は50歳で1次試験、51歳で経営工学部門、52歳で総監を取りました。これくらいの年代で、退職に備えて取得する人が結構います。日本技術士会に登録している技術士だけで1万8千人ほどいるのですが、その半数以上は公共事業入札に必要となる建設関連部門であり、他の部門は独占業務がないためか製造業従事者でも知らない人が多いくらいで、一般人には全くなじみがありません。

ビジネスキャリア検定

ビジネスキャリア検定は中央職業能力開発協会が平成5年から開始したもので、同協会で技能者を対象に実施する技能検定に対して、人事、経理、営業などの事務系を対象としています。もちろん製造企業にもこれらの事務はありますが、生産管理が一番製造業っぽい分野です。各分野で3級から1級があり、そのレベルは図2のようにイメージされているため、経験に応じて上の級を受験して行けば良いですね。

図2.ビジネスキャリア検定の等級イメージ

技術士にもまして認知度の低い資格ですが、力試しとしてもっと注目されて良いでしょう。私は企業時代に部門の自己研鑽目的で部下たちに社費で受験させ、自分は自費で受けました。そういえば技術士試験も学習費用、受験費用一切会社から出ませんでしたねえ。自前で払った方が身に付くような気がします。

資格取得の意義とメリット

業務独占ではない資格を取得する意義は、次のようなものが挙げられます。

  1. 受験勉強することによって専門事項に対する知識が深まり、現在や将来の業務に役立つ。
  2. 客観的な能力の証拠となり、社内外からの評価を高める。
  3. それによって社内の異動や転職の際に有利となる。
  4. 勉強する動機となり、また取得後も学習の習慣が継続する。
  5. 同じ資格を持つ者同士のコミュニティに加わることができる。

私が技術士を取った時もこれらすべてのメリットを感じた中で、特に(4)と(5)は本当に良かったと思います。人生100年、そして変化のスピードがますます大きくなる時代に向かって、資格取得を契機として常に新たな知識とスキルを習得していくことを勧めます。

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、森谷仁さんが資格試験や技術文章の指導がお得意です。不明の点や相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問してください。

半導体業界の構造と好調な要因について

一昨年より半導体業界が忙しいという話をお客様からよく伺います。半導体業界の市場規模も下記の表を見て頂くとわかるように年々拡大傾向です。半導体業界とはどういう業界か?また、なぜ好調なのか?調査しました。

EE Times Japan 記事参照

半導体とは

ご存知の方も多いと思いますが、まずは半導体がどういうものかについてご説明します。物質は電気の通りやすさで、銅のように電気をよく通す「導体」と、ガラスや紙のように電気を通さない「絶縁体」、その中間の性質を持つシリコンなどの「半導体」に分けられます。つまり、「半導体」とは条件によって電気を通したり通さなかったりする物質のことを言います。その特殊な性質が活用され、電子部品材料に利用されています。半導体で作られる電子回路自体を半導体と呼ぶことも増えているようです。

利用用途

半導体はどのような場面で使われているのでしょうか?半導体はPC、ゲーム機、TV、スマートフォン、自動車、家電製品まで幅広い用途で利用されており、情報を記憶する、数値を計算する役目を担っています。

業界構造

一言で半導体業界といっても、様々なメーカーが存在しています。

半導体業界は、設計だけを行う企業、製造だけを行う企業、製造装置を作る企業、検査装置を作る企業、材料を作り供給する企業、これらの複数を1社で行う企業などが互いに関係を保ちながら大きな産業界を構成してます。(Wikipediaより)

中小製造業と特に関わりが深い企業は、半導体の設計開発を行うメーカーではなく、半導体の製造装置メーカーではないでしょうか?装置部品の製造に携わっている企業も多いと思います。その半導体製造装置の多くは数年経つと陳腐化します。回路の縮小化技術を中心に新技術の開発が絶え間なく行われ、技術の世代交代するからです。そのため、一度作れば長く利用できるものではないため技術革新が起きる限り常に新しい設備需要が生まれる業界です。そのため、半導体業界の中で半導体メーカーに次ぐ規模が半導体製造装置メーカーです。

注目したい半導体製造装置メーカー

①東京エレクトロン株式会社
世界シェア90%のコータ/デベロッパをはじめ、主要設備での世界シェアが高い会社です。

②株式会社SCREENホールディングス
洗浄装置で世界シェア50%以上のトップシェアを持っています。

③株式会社ディスコ
シリコンウェハをチップに切り出すダイサ、シリコンウェハを薄く削るグラインダで世界シェア約80%の会社です。

④株式会社アドバンテスト
半導体テスタの大手で、メモリテスタに強い会社です。ちなみにテスタとは電気的な動作確認をするもので一連の半導体製造の後工程に属します。

⑤レーザーテック株式会社
シリコンウェハ上に回路を描く際の「マスク」とマスクの材料である「マスクブランクス」の検査装置の大手です。

半導体業界が好調な理由

2008年のリーマン危機後は、2010年にかけて市場が回復した後、市場規模が約3000億米ドル付近の水準を横ばい状態で推移でしたが、2016年の後半から顕著な上昇局面に入っています。

iPhoneに代表されるスマートフォンの需要拡大だけでなく、最近ではビッグデータやAI、IoTなど新しい技術が実用化され半導体が活用される分野が広まっていることが要因です。自動運転技術、ロボット化など最先端技術には半導体は欠かせないものとなってきています。これから遠くない未来に訪れるであろう「すべてのモノがインターネットにつながる世界」を考えた時に、半導体はすべての業界に関連する可能性があります。

以前のように「半導体は波のある業界」という認識は考え直す必要があるかも知れません。特に前述の半導体製造装置メーカーは最近の半導体の好況の波を受け売上が躍進しています。その半導体製造装置部品を一つのターゲット市場として顧客開拓を検討してみるのも良いかも知れません。

見積業務とは何なのか?

こんにちは月井精密の名取です。今日は見積りについてのお話です。

面倒な作業

見積作業はとても面倒な作業です。

受注できるかどうかわからない案件に対して、正確に工程を算出し、受注できる価格までコスト削減した上に、利益まで見越して設定しなければならない。それもできるだけ短時間に、大量に処理を完了し提出しなければならない。しかし、忙しいからといって雑に見積もってしまうと後で後悔したりもします。

現に月井精密でもリーマンショックの時に大変痛い思いをしました。装置一式の新規案件を見積もる際、不景気のため仕事欲しさに採算度外視で見積りを提出した案件が5年間も毎月継続受注となり、大赤字の案件となってしまいました。客先は大幅な原価低減となって当時は大変喜んでいましたが、月井精密の決算書には大打撃でした。

他社での生産に切り替えてほしいと願い出ましたが、その価格で請け負う他の工場が見つからず、その案件の受注を断れない状況になってしまいました。結局無理を言って他社での生産に切り替えてもらいましたが、いい加減に見積もってしまったことにより結果的には客先に迷惑をかけてしまう形になってしまいました。

そんな経験から見積りをきちんと行おうと決心し、見積業務とは何なのかを真剣に考えるようになりました。

KKD

多くの工場は「見積りとはK勘とK経験とD度胸である」と答えます。僕も先代から「見積りはKKDだ」と教わりました。これがさっぱり理解できませんでした。

例えば売上比5%の純利益の会社は5%の見積り間違いで純利益が丸ごと無くなってしまいます。1万円に対して500円の誤差です。年間を通じてこれだけ正確な見積を続けるのは至難の業であると思いました。そこでまず感覚的な「どんぶり勘定」をやめ、見積業務を細分化することから始めました。

見積業務とは?

  • 時間チャージの設定
  • 顧客ごとにレートを設定
  • 納期ごとにレートを設定
  • 社内の工程算出(旋盤、マシニング、レーザー、ベンダーなど)
  • 社内の工程ごとの作業者を決める
  • 社内の経費算出(工具代、材料代、電気代、管理費など)
  • 外注先探し
  • 外注先への見積り依頼
  • 外注先から帰ってきた見積書の集計
  • 合算
  • 事業計画と照らし合わせて利益を上乗せ
  • 見積書作成
  • メールで送信
  • 受失注を分析
  • 案件ごとに利益が上がっているかどうかを分析
  • 時間チャージ、顧客ごとのレート、納期ごとのレートの修正

までが見積業務です。

この一連の流れをいかに早く正確にこなしPDCAを回せるかがカギとなります。製造業にとって技術力と見積力は両輪です。どちらが欠けても工場経営はうまくいきません。次回はこの面倒な見積業務をクラウドとIT技術を使ってどうスピーディーにこなせるかをご紹介したいと思います。

【3ヶ月が勝負】中途採用した社員のフォローについて

こんにちは、ものづくり経革広場の永井です。

昨年度に引き続き、今年度も人材の採用は厳しい状況にあります。そのようなきびしい状況の中で採用ができたとしても、すぐに辞められてしまっては意味がありません。辞める理由の多くは、入社前後でのギャップ、入社後のフォローが無い、会社に馴染めず自分の居場所を見つけられないなどの給与や待遇でない理由がほとんどです。

継続して働いてもらうためには、入社後のフォローをどの様にしていくかがポイントになります。今回は入社後のフォローについてまとめました。

1.社員研修について

できるだけ早く会社に馴染んでもらうために、はじめの数日は社員研修をしっかりと行ってください。社員研修の良し悪しで、社員のやる気が変わってきます。モチベーションを落とさず、逆に高めるような研修を心がけてください。

1-1.企業理念や価値観の共有

入社前にも伝えていると思いますが、企業理念や価値観を改めて伝える時間をとりましょう。社員もすでにわかっている内容であれば、話も聞きやすいですし、新しい気づきも共有できます。

また、企業理念については、人事担当だけではなく、取締役や社長などの経営層から直接伝えると効果的です。経営者から今後の会社の方針や新しい挑戦などを聞くことで、やる気にも繋がります。言葉だけでなく理念と行動が結びついている事例なども紹介すると効果的です。

1-2.最低限のルールやスキルの説明

管理方法や出退勤など社内の独自ルールを共有しましょう。ファイルの場所や文房具の場所など些細なことでも大切です。

単純なことですが、ルールを知らないと何かする度に誰かに質問しないといけませんし、間違った方法で行うと他の社員から注意されてしまいます。

すると行動の自由度が小さくなり、萎縮してしまいます。もちろんどんどん質問できるタイプの人であれば問題はありませんが、最低限のルールについて説明するだけで会社の居心地は変わってきます。

1-3.目標設定や給与の説明

初めに企業が求める役割について、説明しましょう。 現場の課題や改善してもらいたい問題などを説明することで、自分の役割が明確になり、やる気も向上します。役割を説明したら、次は目標の設定をしましょう。具体的な目標が決まるとやる気も向上します。評価制度が充実している企業であれば、評価に対する給与なども併せて説明すると効果的です。

「自分が何をすれば会社のためになり、自身の評価が上がるか」を知ることで、迷いなく働けるようになります。

2.他の社員とのコミュニケーション

2-1.社員の紹介

中途入社した社員の自己紹介はもちろんですが、同部署や、他部署についても仕事上関係する方たちの紹介はしっかり行いましょう。初めは誰に話しかけていいか分かりませんし、知らない人に話しかけること自体がストレスとなる可能性もあります。初めは先輩社員が一緒に回って、あいさつ回りすることをオススメします。

2-2.早い段階での歓迎会

できるだけ早い段階で歓迎会をしましょう。仕事以外の話をすることで、会社に馴染みやすくなります。 お酒を飲むのが苦手だったり、予定が合わないときはランチ会でも大丈夫です。 要は仕事以外で社員の人と話す場を作ることが大切です。一度でも話したことがあれば、仕事上での相談もしやすくなります。中途採用でもはじめのうちはわからないことだらけです。できるだけ質問しやすい環境を作るためにも、早めの歓迎会をオススメします。

2-3.昼食の有効活用

中途入社した社員が自分から周囲に声をかけるのは難しいので、はじめのうちはランチを誘ってあげましょう。みんなで食事をすることで、会社に馴染みやすくなります。はじめの1週間はローテンションでランチ会をするなど、多く人と強制的に話す場を作っている企業もいます。会話の量を増やすことが会社に馴染んでもらうための近道です。

3.定期的な面談

定期的な面談は必ず行うようにしてください。はじめのうちは思い通りに仕事が進まなかったり、他の人と話づらかったりとストレスを抱えています。中途採用の場合、同期もいないので、社内の人に相談できず、そのストレスを溜め込んでしまう傾向にあります。ストレスが長期間続くとモチベーションが下がったり、最終的には転職を考えるようになります。

ストレスを取り除くためには、定期的に面談をして、抱えている課題や不満点などを共有するようにしてください。話を聞いてもらったり、自分を見てくれている人がいるともうちょっと頑張ろうという気になれます。

まとめ

入社前後でギャップは必ずあります。そのギャップを埋めずに仕事を続けていると会社への不満が高まり、早い段階で辞めてしまう可能性が高くになります。 一日でも早く会社に馴染めるように、はじめの3ヶ月はフォローが必要です。 また、そのようなフォロー体制があることを採用時に説明することで、採用にも良い効果が得られるようになります。

今、時代が求める「経営者の考え方」とは

第1回目の連載では、経営とは、全人格を賭けた戦いであり、経営において最も大切なことは経営者の考え方であると書きました。

では、「経営者の考え方」とは一体なんなのでしょうか。経営者のタイプは千差万別であり、解は決して一つではありません。それを承知の上で、ここでは、敢えて私が一つの正解だと信じて疑わない原会長の考え方を紹介します。

原会長:株式会社原精工の原博会長のこと。社員7人という小規模の町工場において、残業ゼロ、社員の年収全員600万円超え、年3回10連休を導入という働き方改革の先駆者、体現者とも評すべき神奈川県綾瀬市在住の経営者のこと。

本書:『町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由』(ポプラ社)のこと

経営改革を社員目線で考える

それは、「経営改革を社員目線で考える」という考え方です(本書p.135)。

要するに、「自分が社員なら満足して働けるか」という視点から経営を考えるということです。株式会社吉原精工の労働条件をざっくりと見てみましょう。

①残業ゼロ

基本的な労働時間は、午前8時30分から午後5時まで。休憩は1時間。一日7時間30分就労の完全週休2日制です。

「社員は、17時に仕事を終えたらクルマでさっさと帰宅します。18時にはみんな風呂から上がり、さっぱりしてビールを飲む生活を送っています」(本書p.50)

②ボーナスは夏冬手取り100万円

→ポイントは「手取りで100万円」というところです。つまり、社会保険料や税金などを諸々差し引いて100万円(だから実質は約140万円!)。これを帯付きで現金で手渡しするというのです。

→しかも、ボーナスの金額は、古参社員も新入社員も一律手取り100万円です。一見、古参社員の反発を招くのではないか、と思いますが、原会長は「配慮しなければならないのは、伸び盛りの若手」であると断言します(本書p.71)。ボーナスの原資を「利益の半分」とすることによって、社員一丸となって利益を出そうと奮闘する効果があるのだと言います。古参社員は、能力に見合った基本給を支給していれば少々のことで辞めることは無いとのことです。

③年3回10連休

「有給休暇のうち14日間を私が割り振るのは、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始にそれぞれ10連休をつくるためです」(本書p.76)

有給休暇制度を効果的に利用し、年3回の10連休を実現しています。

 

以上が、大まかな労働条件です。社員が気持ちよく働ける環境が整備されていると言えますね。

残業ゼロを達成できた理由

では、ここから原会長の改革を法的に分析していきましょう。

まずは、残業ゼロを達成するために原会長が最初に導入した「残業代は基本給に組み込んで支給する」という固定残業制という制度です(定額残業制という呼び方もあります。)。

株式会社原精工も昔から残業時間がゼロだった訳ではありません。むしろ、設立した1980年から多いときで月80時間から月100時間程度の残業時間があったとのことで、残業ゼロを達成できたのは、リーマン・ショックが起きた2008年以降のこと。そう、残業ゼロに至るまで実に30年ほどの歳月を要しているのです。

残業ゼロの達成に一躍を買ったのは固定残業制。

原会長は、それまでに支払っていた残業代と同じ水準の金額を、固定給に組み込むことで、「給料が下がらないのだったら、できるだけ時給単価を上げるために生産性を上げて早く帰れるようにしよう」という意識を社員に植え付けることに成功したのです。

次稿以降では、この固定残業制という制度を労働基準法等の法令の視点を交えながら解説していきます。この制度は、まさに経営者の覚悟が問われる制度だと断言できます。誤った目的(もっとはっきり言うと、従業員に利益は残さず、会社に利益が残ることを目的とした使用方法)でこの制度を利用することはお勧めしません。制度自体の有効性を争って従業員から裁判を起こされ、会社が負けるという例が昨今増加傾向にあり、固定残業制に対する法の目は厳しさを増しています。誤った使い方により、結果的に会社に大ダメージが発生するケースが増えている現代でこそ、正しい使い方を次稿以降学んでいきましょう。

経営工学と技術経営教育

ものづくりドットコムの熊坂です。

年が明けたと思っていたら、もう新学年です。私が山梨学院大学で講義を受け持つのも9年目に入りました。当初は「ものづくり経営論」で始め、6年目から「技術経営論」に講義名が変わりましたが、中身は8割方同じで(^_^;)、多分に経営工学要素の強い内容になっています。その理由は、自分が経営工学部門の技術士であり、得意な分野を教えているということに尽きます。シラバスが公開されていますので、関心のある方はご覧ください。

https://ygu-ibs.cc.ygu.ac.jp/syllabusgaku/Syllabus.asp?mode=2&cdky=2274&cdsl=1682

毎月のものづくり経革広場への投稿が「まるで大学の講義のようだ」と感じていた勘の良い方もいると思いますが、それもそのはず、ほとんどこの講義の資料から項目や図表を抜粋して執筆しているからです。

毎回ひとつずつ紹介しているものづくりキーワードですが、今回は新学期にちなみ「経営工学」と「技術経営」を取り上げます。

経営工学の歴史

経営工学は英語のIndustrial Engineeringを和訳したもので、本来なら産業工学あるいは工業工学とでも訳すべきでしょう。ゴロが悪かったのか、そう呼ばれるようになりました。一般的には20世紀初頭、F.Taylorが製造企業内で自ら実践しながら体系化した科学的管理法をその起点とされるものの、それ以前にも経験的な生産管理、品質管理の概念はあったと思われます。それ以降、科学的、論理的に製造を管理する多くの方法が提案、実施され、発展してきた結果、製品の品質向上、原価低減が進み、現代の豊かな社会が実現したと言って良いでしょう。

Taylor以降の経営工学項目の変遷を下図に示します。

こうやって見ると、人類が石器を作り始めた200万年前、土器を作り始めた2万年前、産業革命で動力を使い始めた200年前という悠長な変化に対し、わずか100年の間に急激な進化が起こっていることに驚かされます。

技術経営教育の導入

前記のように多種多様な方法論の進展もあって工業の生産性は向上していったものの、下図2のように1991年以降日本の工業生産額は全く成長しなくなりました。モノ余り、人口の減少、東西冷戦終了による低賃金労働国の出現などの社会的要因もさることながら、技術、生産だけに注力し、その能力を価値(お金)に転換する戦略の貧困さが指摘されるようになりました。

図2.世界主要国の製造業生産額推移

さらに日本製造業のROA(Return of Asset:資本利益率)は、欧米と比較すると下図のように半分程度であり、特に中小規模企業の低さが顕著です。欧米では競争力がなくなるとさっさと撤退して、独自の分野に特化する傾向があるのに対して、日本企業は苦難に耐え忍び、また業界内で協調して発展しようとする傾向からこのような違いになるように思います。

図3.製造業ROAの国際比較

そんな背景のもと、70年代に高度成長する日本に打ちのめされた米国がビジネススクール内に設置したMOT(Management of Technology:技術経営)クラスを日本でも創設する動きが、2001年文科省「第2期科学技術基本計画」を基点に始まりました。米国で80年代から90年代にかけて200大学以上が設置したMOTクラスを、30年遅れで日本でも導入しようというものです。

技術の市場化、価値化を進めるための考え方や、方法論を学ぶことで、経営の分かる技術者を育てようという試みであり、10年の間に30大学ほどが次々に開講して注目を浴びました。カリキュラムは大学によって、イノベーション、リスクマネジメント、産学連携、中小企業経営、知財、環境など力を入れる分野に特色があります。

技術経営教育の課題

21世紀に入って期待されたMOT教育でしたが、MBAとの差異化が難しく、本家の米国ではMBAの一部として組み込まれる傾向にあり、日本においても修了者が必ずしも技術経営分野で重用される機会を与えられないことから、志願数が減少傾向にあり、募集を停止する大学も出てきています。

修了生の一人として残念ではありますが、技術経営は単独の研究分野というよりは、技術者を目指すすべての人材が習得すべき基本的リテラシーではないかと最近考えています。単に製品設計や技術開発ができるだけでなく、そこから社会的価値を生み出し、企業に持続可能な利益をもたらすために、工学部の2年から3年にかけて、数コマの講義を必修にすべきと考えます。現在はMOTクラスごとに教える内容も雑多ですが、経営工学の方法論もうまく取り入れて次第に落ち着いていくのではないかと楽観しています。

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、平木肇さんがR&Dにおける価値創造分野の専門家です。不明の点や相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問して、実践してください。

【製造業】未経験者を採用する際の心構え

2017年の求人倍率は1.59と依然高い状態が続いています。 厚生労働者が出している求人倍率の結果では、平成21年から右肩上がりで伸び続け、平成30年では1.59と非常に高い状況になっています。 具体的には、求人数は275万人に対して、求職者はわずか164万であり100万人の不足が発生している状況です。

このような採用困難な状況の中では、経験者という限られた人材の採用だけではなく、未経験者の採用も考慮していかなければなりません。中小企業の観点からすると、即戦力ではない未経験者を採用する余裕はないかもしれません。

しかし、教育コストさえクリアできれば、実は未経験者でも採用メリットは多くあります。今回は未経験者を採用するためのポイントについてまとめました。

※厚生労働省のホームページより引用

未経験者を採用するメリット

未経験者を狙う最大のメリットは「採用の市場を広げられる」ことです。さらに、業界や職種を知らないからこそ、自社のやり方や社風に馴染みやすいという側面もあります。

経験者にターゲットを絞ってしまっては、採用の市場が狭すぎてそもそも採用したい人材に出会うことが難しくなってしまいます。また、経験者とは言ってもそのレベルの幅は大きく、レベルの高い人材は大手企業など労働条件が良いところに持っていかれます。レベルの低い経験者に注力するよりは、未経験でも会社に合う人を採用したほうが会社のためになるかと思います。

もちろん未経験と言っても様々な人材がいるため、その見極めが大切になります。

未経験者の見極め方

未経験者の採用といっても、実際に欲しい人材は「即戦力ではなくても、早期に戦力になってくれる」方かと思います。

まずは未経験レベルを3つのパターンに分類してみます。今回はわかりやすくするため、業界と職種で分けています。

  • A.業界未経験者 :職種経験はあるけれど、業界経験はない
  • B.職種未経験  :業界経験はあるけれど、職種経験はない
  • C.全くの未経験者:職種経験も業界経験もない

Aタイプは限りなく経験者に近い未経験者で、入社後即戦力になる可能性があるため、どこの企業も採用ターゲットとして考えていると思います。問題はBとCタイプです。この2つのタイプはきちんと見極めた上で採用しなければなりません。

見極める際に重要視するポイントは、

  • 学習意欲があるかどうか
  • 素直かどうか
  • 会社に合うかどうか

になります。学習意欲が高くなければ今後の成長は見込めませんし、素直でなければ成長速度が遅くなります。また、会社に合わなければすぐに辞めてします可能性が高まります。

素直さ、会社に合うかどうかは一緒に働いてみないと分かりませんが、学習意欲は過去の経験からある程度見極めることができます。

  • 前職で何を達成したのか、そのプロセスは?
  • 前職でどのような評価を得てきたか、その理由は?
  • 仕事以外でどのようなことをしてきたか?(スポーツ、趣味など)

などの質問を面接のときにすることで、求職者の「学習」に対する意欲を知ることができます。中途採用の場合は、将来のキャリアプランよりも、過去の実績が大切です。 学習意欲の高い人であれば、前職でも必ず何かを残しているはずです。口先だけではなく、本質を見抜くための質問を心がけてください。

未経験者を採用するときの心構え

未経験者を採用するためには、それなりの覚悟が必要です。中途採用だからといって、即戦力を期待し、教育する時間をかけなければ、会社に合わないと思われ退職していまいます。特に、はじめのうちは成果も上がらず、悩むことも多くなります。

相談したくても、先輩社員が忙しく相談にも乗ってもらえない状況が1ヶ月以上も続くと、転職を考え始めます。 会社としては負担になるかもしれませんが、未経験者を受け入れられる教育体制を整えることは大切です。せっかく採用しても、会社の教育体制が整っていないがために、退職されてしまっては元も子もありません。 未経験を採用する際にはそれなりの覚悟を持って採用活動を行ってください。

まとめ

採用は年々難しくなってきています。経験者に限らず、未経験でも受け入れていかなければ企業として存続できない状況になりつつあります。 その為には、社内の教育制度をきちんと整え、求職者が安心して働ける環境作りが大切です。

連載開始に当たって

はじめまして。法律事務所かなめの代表弁護士の畑山浩俊(はたやまひろとし)です。ご縁があってこれから、ものづくり経革広場で連載を担当させて頂きます。お付き合いのほどどうぞ宜しくお願い申し上げます。最初に、簡単に私の自己紹介と今後連載するコラムの概要をお伝えします。

自己紹介

私は、1986年奈良県で生まれ育ちました。現在32歳です。実家は肥料販売店を営んでいます。農家の方々に肥料を配達したり、来店されるお客様に施肥のアドバイスをしたり種苗を販売したりと、商売人の息子として育ちました。土日祝の休みは無し、一年の休みは田植えの時期と盆正月のみでした。朝7時頃には開店に向けて家の中が騒がしくなるという状況でしたので、私の育った幼少期の環境は、「大阪船場編の落語の世界観」に近いと言えるかもしれません。

そのような育ち方をしたお陰で、弁護士として活動している今も、「サービス業としての弁護士」という意識で活動しています。「肥料」の先には人がいますし、「法律」の先にも人がいます。「人」を相手にしているという点で、すべての仕事に違いはありません。

弁護士になってからも「早く自分の看板を掲げて勝負したい」という意欲が人一倍強く、弁護士登録をしてから1年9ヶ月で法律事務所かなめを立ち上げました。「かなめ」とは扇の中心の金具の部分のことであり、「すべての物事の重要な起点になるような場所になろう」という気持ちを込めています。

現在、同期の弁護士4名でフットワーク軽く活動しています。

今後連載するコラムの概要

私の専門分野

私の専門は、労働法です。労働法に携わる弁護士は大きく分けて2種類に分かれます。「会社側で労働問題を扱う弁護士」「従業員側で労働問題を扱う弁護士」です。

このうち、私は「会社側で労働問題を扱う弁護士」です。企業の抱える労務管理全般にまつわるトラブル対応、就業規則作成、労基署対応、労働組合との団体交渉対応等、幅広く労働問題の対応をしています。

株式会社吉原精工 吉原博会長との出会い

様々な労働トラブルを担当する中で、「どうしたら労働トラブルを生じない会社を作ることができるのか」「弁護士としてもっとできることはないのか」と試行錯誤を繰り返すようになりました。

最初に結論めいたことを書くと、どのような会社にしたいのかは、すべて「経営者の考え方次第で決まる」ということです。こう書くと、「経営者の考え方が立派だったら労働トラブルは生じないのか」という意見が聞こえてきそうですが、勿論そんなことはありません。どんな会社であっても、トラブルが起きるときは起きてしまいます。しかし、経営者が労務問題にきちんと向き合っている会社は、そうでない会社に比してそのリスクが格段に低いことも事実です。

私自身も一経営者として、「経営」というものを学ぶために様々な人と積極的に会うようにしています。その中から、今回の連載では、私が直接お会いした経営者の方々の中で、最も強い衝撃を受けた株式会社吉原精工の吉原会長のお話をさせて頂きます。

連載に先立ち、まずはこの記事を読んで下さい。

https://newswitch.jp/p/7811

私と吉原会長との出会いもこの記事から始まりました。この記事に衝撃を受けた私はすぐに株式会社吉原精工に電話し、翌週には吉原会長にお会いし、奇跡の改革についてお話を伺いました。現在は、『町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由』(ポプラ社出版)という書籍も販売されているので、是非手に取って読んでみてください。

この連載では、吉原会長の改革を「弁護士目線で」分析します。そこから「経営は全人格を賭けた戦いである」ということを今一度確認していきたいと思います(自戒も込めて)。

最後に少し宣伝

吉原会長と4月18日に大阪でコラボセミナーをするので、参加頂ける方は是非お越し下さい!

https://www.facebook.com/events/1997617487116895/

お申し込みはこちらから

では、次回以降の連載をお楽しみに!

連載開始に当たって

はじめまして。法律事務所かなめの代表弁護士の畑山浩俊(はたやまひろとし)です。ご縁があってこれから、ものづくり経革広場で連載を担当させて頂きます。お付き合いのほどどうぞ宜しくお願い申し上げます。最初に、簡単に私の自己紹介と今後連載するコラムの概要をお伝えします。

自己紹介

私は、1986年奈良県で生まれ育ちました。現在32歳です。実家は肥料販売店を営んでいます。農家の方々に肥料を配達したり、来店されるお客様に施肥のアドバイスをしたり種苗を販売したりと、商売人の息子として育ちました。土日祝の休みは無し、一年の休みは田植えの時期と盆正月のみでした。朝7時頃には開店に向けて家の中が騒がしくなるという状況でしたので、私の育った幼少期の環境は、「大阪船場編の落語の世界観」に近いと言えるかもしれません。

そのような育ち方をしたお陰で、弁護士として活動している今も、「サービス業としての弁護士」という意識で活動しています。「肥料」の先には人がいますし、「法律」の先にも人がいます。「人」を相手にしているという点で、すべての仕事に違いはありません。

弁護士になってからも「早く自分の看板を掲げて勝負したい」という意欲が人一倍強く、弁護士登録をしてから1年9ヶ月で法律事務所かなめを立ち上げました。「かなめ」とは扇の中心の金具の部分のことであり、「すべての物事の重要な起点になるような場所になろう」という気持ちを込めています。

現在、同期の弁護士4名でフットワーク軽く活動しています。

今後連載するコラムの概要

私の専門分野

私の専門は、労働法です。労働法に携わる弁護士は大きく分けて2種類に分かれます。「会社側で労働問題を扱う弁護士」「従業員側で労働問題を扱う弁護士」です。

このうち、私は「会社側で労働問題を扱う弁護士」です。企業の抱える労務管理全般にまつわるトラブル対応、就業規則作成、労基署対応、労働組合との団体交渉対応等、幅広く労働問題の対応をしています。

株式会社吉原精工 吉原博会長との出会い

様々な労働トラブルを担当する中で、「どうしたら労働トラブルを生じない会社を作ることができるのか」「弁護士としてもっとできることはないのか」と試行錯誤を繰り返すようになりました。

最初に結論めいたことを書くと、どのような会社にしたいのかは、すべて「経営者の考え方次第で決まる」ということです。こう書くと、「経営者の考え方が立派だったら労働トラブルは生じないのか」という意見が聞こえてきそうですが、勿論そんなことはありません。どんな会社であっても、トラブルが起きるときは起きてしまいます。しかし、経営者が労務問題にきちんと向き合っている会社は、そうでない会社に比してそのリスクが格段に低いことも事実です。

私自身も一経営者として、「経営」というものを学ぶために様々な人と積極的に会うようにしています。その中から、今回の連載では、私が直接お会いした経営者の方々の中で、最も強い衝撃を受けた株式会社吉原精工の吉原会長のお話をさせて頂きます。

連載に先立ち、まずはこの記事を読んで下さい。

https://newswitch.jp/p/7811

私と吉原会長との出会いもこの記事から始まりました。この記事に衝撃を受けた私はすぐに株式会社吉原精工に電話し、翌週には吉原会長にお会いし、奇跡の改革についてお話を伺いました。現在は、『町工場の全社員が残業ゼロで年収600万円以上もらえる理由』(ポプラ社出版)という書籍も販売されているので、是非手に取って読んでみてください。

この連載では、吉原会長の改革を「弁護士目線で」分析します。そこから「経営は全人格を賭けた戦いである」ということを今一度確認していきたいと思います(自戒も込めて)。

最後に少し宣伝

吉原会長と4月18日に大阪でコラボセミナーをするので、参加頂ける方は是非お越し下さい!

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では、次回以降の連載をお楽しみに!

サプライヤー確保がマーケティングの課題!?

以前、「協力工場を開拓するために」という記事を書きました。その中で新規で仕事を受けてもらうためには指値が重要というお話をしましたが、それだけでは仕事受けてもらうのが難しなくなってきている様です。

新しいサプライヤーに仕事を受けてもらうのが難しい時代

現在、既存顧客の仕事で目一杯になり、新規で問い合わせを頂いても断っているという会社も多いようです。先日、商社の営業の方にお話を聞いたのですが、「今まで付き合いのない会社にいきなり図面を送っても、見積もりをしてくれる会社は中々ない」と仰っていました。受け手の企業側としても「今は、既存顧客の依頼なら多少の無理も聞けるけど、新規顧客が案件持ってきても対応はできない」という会社も多いようです。関係性がしっかり構築されていないと、見積もりすらしてもらえないというケースが増えてきています。

サプライヤー確保にマーケティング

需要過多に加え、中小製造業の廃業による業者数の減少により、供給が不足しています。人気のあるサプライヤーは、常に仕事が満杯で、なかなか仕事を受けてもらうことができない状態です。当然、サプライヤーをしっかり確保しないことには、製品製造に支障が出てしまいます。現に最近の半導体業界の好景気により、部品供給が半導体に流れ、他業界の機械に使用する予定の部材が不足し、生産が遅れるという事態も出てきています。安定供給するために、サプライヤー確保に本腰を入れている会社が増えてきています。「マーケティング」というと売るための手法になりがちですが、需要過多の現状では、いかに効果的に供給ラインを確保できるかが課題になると思います。

そのサプライヤーを確保するために考えるポイントは大きく分けて二つだと考えています。

  • 既存サプライヤーの把握
  • 新規サプライヤーの開拓

まずは既存のサプライヤーはどのような会社があるのかをしっかり把握し、頼めるものは既存のサプライヤーに頼むことが第一かと思います。その上で足りないものを新規で探すという流れです。

既存のサプライヤーの把握

すでに行っている会社も多くあるとは思いますが、各個人が持っている情報を共有、見える化することが必要です。営業担当や部署ごとに外注情報を持っているため、全体での情報共有が出来ていない、ということをよく聞きます。「持っていたサプライヤー情報を、頭に入れたまま退職していった」みたいなことが起こっている可能性があります。サプライヤー側でも、「発注先の担当が辞めてしまったと同時に仕事が来なくなった」という話を聞くのはこのせいかと思います。これではせっかく関係が出来ていたサプライヤーをあっさり手放している危険性があります。まずは各サプライヤーの情報をリスト化し、共有できるようにすることが重要です。リストを作る目的は、情報共有だけでなく、どのサプライヤーを今後大事にすべきかを選定したり、先々訪れるであろうリスクを回避することにも役立ちます。また、定期的な情報収集、更新をすることで、新しい設備導入による対応領域の拡大や、稼働余力を見つけることができるようになります。情報整理する内容は以下のようなものが考えられます。

  • 業界(自動車、電機、通信機等)
  • 対応加工領域
  • 得意加工
  • 対応ロット数
  • 加工精度
  • 対応材質
  • 保有設備 (新規導入などの定期的なチェックが必要)
  • コストについて
  • 納期対応(今までの実績や納期対応の姿勢について)
  • 品質体制(今までの実績)
  • 後継者の有無(長期的なお付き合いができる会社かどうか?)
  • 加工相談(改善の提案などを積極的に行ってくれる会社か?)
  • 担当者情報
  • 発注担当
  • 今までの発注実績
  • 現状の稼働状況について

新規サプライヤーを開拓するために

上記の既存企業の情報から、新規企業に求めるものがどういう会社かを策定します。そして、アプローチの際に重要なことは、仕事を受けてもらうためには、出来る限りの状況を先方に伝えることです。「そもそも今まで頼んでいる会社があるだろうに新規で探すのはなぜか?」という疑問があるからです。そのため「この図面、この値段、この納期で出来る?」というようなアプローチだけでは、何社にも聞いて回ってるような印象があり、対応して頂くことが難しくなってきています。忙しいサプライヤーは「出来なくはないけど、よくわからない会社からいきなり来られても、そこまで積極的に受けようとは思わない」と考えています。

ちなみに、一番心象が良いと思った手法は直接訪問することです。本当に頼みたいと思っている会社でなければ訪問しないためです。その上で「なぜ新規で探しているか?」「特に何を求めているのか?」「今後の計画について」など状況を説明し、なぜその会社に頼みたいかまで説明することができれば、検討してくれる可能性は高まります。今ある図面だけでなく、サプライヤーを大事にする会社なのか、長期的にお付き合いができそうな会社なのかどうかを、先方は見ています。

まとめ

仕事を受けてもらうのにそこまでする必要あるの?と思う方もいるかも知れませんが、長く良い関係を作れる会社でないと「おたくの仕事はもう受けません」と言われることが無いとも言い切れません。仕事を受けてもらいたいと思うようなサプライヤーは、自社の稼働にも限りがあるため、仕事を選ばざるを得ない状況だからです。

弊社でもうまくつなぎ合わせができるようお手伝いしていますので、お気軽にご相談ください。

「協力工場探しはモノマド」

 

「設計」の役割とフロントローディング

ものづくりドットコムの熊坂です。このところ一気に暖かくなり、お花見の話題も出てくるころですね。

早いもので、ものづくりドットコムはもうすぐ公開丸6年になります。それに感謝する意味で、また製造業関係者相互の情報と意見を交換するために、毎年この時期に交流会を開催してきました。前半は製造業向サービス提供者による13分ずつのプレゼン8件で最新情勢をインプットし、その後参加者と講師を交えての懇親会となります。

会場は昨年と同じ北とぴあカナリアホール@王子、4月19日(水)18:15開始です。もちろん私も会場にいますし、ものづくり経革広場主宰の徳山さんも来場予定ですから、生の執筆陣とお話したい方は是非ご参加ください。

https://www.monodukuri.com/information/detail/137

さてものづくりキーワードを毎回ひとつずつ紹介しており、今回は「設計」を取り上げます。

設計の役割

ものづくりのおおまかなプロセスフローを下の図1に示します。お客様(市場)の要望に始まり、最終的に要望に沿った製品をお客様(市場)に届ける一連の流れです。図中で実践はものの流れ、点線は情報の流れを示しています。

  図1.ものづくりプロセスフロー図

最終製品メーカーは基本的にこれらすべての工程要素を多かれ少なかれ持っていますが、いわゆる下請け企業は、左上の企画から設計までを発注企業が実施し、真ん中と右側の「作る」部分だけを担当している場合があります。もちろんものづくりにおいて「作る」ことは不可欠かつ本質的なプロセスですが、頭脳労働に価値がシフトしつつある昨今では、下請け企業でも企画、研究、開発、設計といった上流プロセスに少しずつ対応していくことが、企業の存在価値を高めるうえで重要だと考えます。

さて「研究」「開発」「設計」はニュアンスの違いは分かるものの、明確に分離されないで使われることがあります。私なりに整理した比較表を下の表1に示します。研究は独創性が、設計は安定性が求められ、開発はその中間です。100%実現する研究テーマは革新的成果が期待できず、一方の設計は発売日程が決まっていますから「できませんでした」は基本的に許されません。

表1.研究/開発/設計の比較

悪魔のサイクルとフロントローディング

設計に当たっては、検討すべき項目をあらかじめWBS(Work Breakdown Structure)形式に整理し、もれのないように検討、作業を進め、図2のプロジェクトAのように製品リリース後は初期流動して、早々に次の製品に取り掛かりたいものです。ところが設計時の検討が不十分だと、できたと思った設計に不備があり、製品を販売して市場で使われて初めて不具合が見つかって、図2プロジェクトBのように対策に追われます。すると次の製品の設計が遅れ、もしくは十分な人と時間が掛けられず、結果的にまた検討不十分な設計で市場問題を起こす可能性が高くなります。これを悪魔のサイクルと呼び、リコール問題をイメージすれば分かりますが、市場問題の対策費用は設計時の検討費用より圧倒的に大きくなりますので、一旦このサイクルに入るとなかなか抜け出すことが難しくなります。

図2.悪魔のサイクル

プロジェクトAのように設計初期に負荷をかけて市場問題を防止することをフロントローディングと呼んで、日本語にすれば前に負荷をかけるという意味になり、これを実現するには次のような方策があると報告されています。[1][2]

(1)部門間の知識とルール共有/進捗の見える化

部門によって、人によって仕組みやルール、持っている知識や情報が違うと、受け渡しのたびに変換、翻訳が必要となり、効率が極めて低くなります。また企業間の合同プロジェクトでは、それらの違いが一層大きくなりがちです。大きな組織、プロジェクトほど、初めにこれらを統一しておくことが重要です。

(2)コンピュータ支援技術(CAD/CAE/3Dプリンタ)の活用

CADは製造業事業所の90%以上に普及しており、過去の設計資産活用、共用化に有効です。CAEについても広い分野で使われるようになり、実体試作の回数を減らす効果があります。そこへ3Dプリンタも併用して、試作における金型製作の期間、費用の低減が期待されています。

(3)分散型情報移転/オーバーラップ型問題解決

大きな組織では開発から設計、生産技術、製造技術へと工程間、組織間で直列的に情報移転する場合があります。(1)で見たような、部門間の認識/評価の違いがあると、手戻りが発生してしまいます。ひとつの工程が終わったら引き継ぐのではなく、作業中に前後の工程担当者が情報を共有し意見を出すことで、一見遅いように見えて、手戻り時間、損失を減らす効果があります。

(4)ロバスト設計の実施

設計開始前にFMEAで想定される不具合を想定し、未然防止の手を打っておいたり、ここでも何度か取り上げたタグチメソッドを設計プロセスに導入したりすることで、製造工程や市場での使用時の不具合を劇的に減らすことが可能で、これらはロバスト設計と呼ばれます。

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、村上英樹さんが金型/部品加工分野の設計専門家です。不明の点や相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問して、実践してください。

 

【参考文献】

[1] 藤本隆宏,「生産マネジメント入門Ⅱ」,日本経済新聞出版社,P.190-223(2001)

[2] 延岡健太郎,「MOT技術経営入門」,日本経済新聞出版社,P.207-227(2006)

中途採用の面接のコツ

こんにちは、ものづくり経革広場の永井です。

今回は中途採用の面接で気をつけるべきポイントについてまとめました。面接は求職者を見極めると同時に自社をPRするための絶好の機会です。

面接の工夫次第で採用は変わります。自社に合った人材を採用するためにもぜひ参考にしてください。

面接前の準備

人材に求める条件の「優先順位」を決める

まずは、採用基準を明確にするため、採用したい人物像を設定します。 年齢、スキル、キャリア、コミュニケーション能力など最低限必要な条件は予め決めておきましょう。条件を厳しくすると採用ハードルが高くなるため注意は必要ですが、面接の時に、設定した条件に沿った質問ができるようになるため、採用のブレはなくなります。

また、条件の違う人物を誤って採用することもなくなるため、企業として必要な人材を確実に掴むことができます。

求職者がリラックスできる状況を作る

求職者は必ず緊張しています。緊張していることが悪いわけではありませんが、緊張した状態では本来の姿を見ることはできません。普段の雰囲気を見るためにも、求職者がリラックスできる雰囲気を作ることは大切です。 例えば、お茶やコーヒーを用意する、面接の前に工場見学をしながら少し雑談話するなども効果的です。

あとは、面接者が笑顔でリラックスしていれば、求職者の方もリラックスしてきます。面接の目的は「普段の相手をみる」ことになります。気軽に話せる雰囲気を作り、相手の本心を聞き出してください。

面接で求職者を見極めるポイント

求職者の経験や人柄を見極める質問をする

求職者は採用されたい一心から話を大きくすることもあります。実は企業が求める技術に達しておらず、企業と求職者にギャップが発生し、辞めていくケースも珍しくありません。 面接の際には、具体的な経験内容な何をどこまで出来るのかなどエピソードを交えて答えてもらえるような質問をしてください。 また、技術面だけではなく、人柄についてもそのような質問をすることで、企業に合う人物かどうかを判断できるようになります。

例えば

  1. ◯◯ではどのようなどのような開発に携わったのか
  2. チームリーダーで管理していたときの、部下の人数は何人で、具体的に何を管理していたのか
  3. 趣味はなにか
  4. 休日はどのようのに過ごしているのか

など、仕事面やプライベート面を具体的に聞いてみて下さい。

入社後をイメージできるような企業説明をする

面接は求職者を評価するだけではなく、求職者から評価される場所でもあります。そのため、求職者に自社の魅力も伝えるなければなりません。

求職者は入社後に、どのような仕事をするのかを具体的に知りたいと思っています。 そのため、入社後をイメージできるような説明を心がけてください。 また、工場見学や面接時に先輩社員と話てもらうなどをしても効果的です。

面接で自社をPRするポイント

社長の考え方、経営方針、ビジョンを伝える

中小企業の最大の武器は社長と気軽に話せることです。 面接の時に社長と話して「社長に惹かれて、入社を決めた」という事例も多くあります。 社長の考え、経営方針、ビジョンなどを熱く語り、求職者を口説いてください。

参考記事:【中小企業】社長の情熱が採用を成功させる

求職者の不安を取り除く要因を伝える

求職者は不安を抱えています。特に転職の際は、この企業で本当にやっていけるのか?この企業は将来も存在しているのか?一生を捧げられる企業なのか?など、常に不安を抱えています。

不安の内容は求職者によってことなるため、面接の時に「何に不安を抱えているのか」を直接聞き、正直に答えることが大切です。 求職者が気にしている内容としては、

  • 会社の人とうまくやっていけるか
  • 企業が安定しているのか
  • 将来給料はどれくらいあがるのか

などです。これらの内容については事前に回答を用意しておくことをオススメします。内容に魅力を感じていただければ、採用はうまくいきます。

どんな役割を期待しているか明確に伝える

人は「求められている」ことに対して嬉しく感じます。 大企業では条件だけを見て採用が進みますが、中小企業では「あなたに来てほしい」という情熱を社長が求職者にぶつけることができます。「今の会社がこうで、将来成長するためには君の力が必要なんだ」と言われたら、考えは揺らぎます。

まとめ

採用を成功させるためには、面接でいかに相手を見極め、説得できるかがカギになります。 入社後、すぐに退職されては意味がありません。マッチング精度を高めるための面接を心がけてください。

商品企画の標準プロセス「商品企画七つ道具」

ものづくりドットコムの熊坂です。

2月1日に平成29年度の補正予算が国会で承認され、1000万円×1万件と言われるものづくり補助金交付が決定しましたね。補助金のために設備を買うのは本末転倒ですが、以前から導入したかったものの、資金不足で先延ばしにしていた設備やプロジェクトがあれば非常に良いチャンスです。

申請書の書き方によっても採択確率が変わってきますので、もし自社単独での申請に自信のない方はご相談ください。

さてものづくり革新のキーワードを毎回ひとつずつ紹介しており、今回は「商品企画7つ道具」を取り上げます。

生産から企画へ

戦後の高度成長期を支えたのは統計技術を使った品質管理でした。作れば売れた時代には、生産しながらデータを解析し不良を出さないことが重要だったのです。そこで重宝されたのがQC7つ道具(Q7)で、その後QCサークルで改善活動を進めるにあたって、数値ではない言語情報を整理する必要性が生まれ、考えられたのが新QC7つ道具(N7)でした。

さらに1990年バブルが崩壊してモノ余りの時代になり、高品質&低価格であってもモノが売れにくくなると、どう作るかではなく何を作るか、つまり商品企画の重要性が高まってきました。そんな背景から日科技連主導のプロジェクトで生まれたのが商品企画7つ道具(P7)なのです。

下図1は、1つのヒット商品を生まれるまでに、3,000個の初期アイデアが存在することを示しており、この絞り込みプロセスを効率的に進めることは極めて有益なことに思えます。7つ道具を使えば必ず大ヒットするほど世の中は甘くはありませんが、標準的なツールと手順を参考にすることで成功確率の向上が期待できます。 

図1.成功する新商品開発までの経緯

商品企画7つ道具

商品企画7つ道具の流れと関連を図2に示します。大きくは顧客、利用者の意識を調査し、コンセプトを発想、決定し、最終的に設計仕様としてまとめるというステップで進みます。

図2.商品企画7つ道具の関係性

以下各道具(ツール)を簡単に説明します。

(1)インタビュー調査

P7ではグループインタビューと評価グリッド法が使われます。前者は、テーマに関心の深いユーザーを5~8人程度一室に集め、司会者が気持ちを解きほぐしながら参席者同士の会話を弾ませる事で、案件に対する潜在的な意識と要求を掘り起こします。後者はインタビュアーとユーザーが1対1で面談し、商品サンプルを2つずつペアで提示して、好ましい方とその理由を尋ねることでやはり潜在ニーズを引き出す方法です。

(2)アンケート調査

ユーザーあるいはその候補者に対して予め設定された質問への回答を回収し、統計的な処理によって意識、要求の全体像を知る方法です。 実施形態は多種多様で、目的とする対象や期間、内容によって適切に使い分けます。

(3)ポジショニング分析

アンケートなどで判明した重要な要素を2項目選んで2次元空間を作成し、そこに競合他社や自社の製品、サービスを配置して、それらの兼ね合いで新製品の性格付けを決めます。

(4)アイデア発想法

商品コンセプトを実現するためにはアイデア発想が必要になります。世の中には実にたくさんの発想法があり、P7では「焦点発想法」や「アナロジー発想法」、「チェックリスト発想法」、「シーズ発想法」などを用います。

(5)アイデア選択法

前項で発案した多くのアイデアから、現実的な企画に適したものを絞り込む必要があり、P7では、「重み付け評価法」や「一対比較評価法」が使われます。

(6)コンジョイント分析

コンセプトが絞り込まれてきた時に、多くの組合せを試してみるのは非現実的なために、項目と水準を直交表に当てはめて一部の組合せを抜粋し、統計的にユーザーの反応を分析して、最終的な仕様組み合わせを決定してゆく方法です。

(7)品質表

ここまでに整理した顧客要求を顧客表現のままに整理し、別途整理した品質特性との関連性をマトリクスで明確にする事で、顧客要求の重要度を品質特性の重要度に転換して、顧客要求に応える機能、性能を設計することができる手法です。

日本発で商品企画のために発展してきた品質機能展開(QFD)のキーツールであり、また別項で詳細したいと思います。

商品企画7つ道具利用の実際

7つ道具の説明を見るとなんだか膨大で尻込みしてしまいますね。一遍に全部理解、実践しようとすると確かに手に余りますが、例えばQC7つ道具も毎回全部使わなければいけないわけではなく、必要に応じて効果的なツールを選んで使えば良いわけで、P7も同じです。

ニーズ探索がキモであれば、インタビューやアンケートに力を入れ、コンセプトが大事ならポジション分析をきっちり考え、最終的に品質表で整理すれば良いでしょう。何のツールもそうですが、使っているうちにだんだん習熟して、早くうまく使えるようになってくるものです。

字数の関係で各サブツールは概要しか説明していませんので、詳細は書籍やものづくりドットコムなどで学習してください。

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、石川朋雄さんがこの分野の専門家です。不明の点や相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問して、実践してください。

ものづくりベンチャーと町工場の連携が進まない理由

ものづくり経革広場の徳山です。先日「経済産業省がものづくりベンチャー支援するネットワーク作りに乗り出す」というニュースを見つけました(以下、毎日新聞の引用)。

経済産業省が、「ものづくり」を手がけるベンチャー企業の製品試作を支援するネットワーク作りに乗り出す。製品のアイデアを持つベンチャー企業と、既存の町工場のものづくり技術を結びつける拠点「スタートアップファクトリー」を民間施設の中から選定し、2018年度から設備導入補助や人材育成支援を実施する。ベンチャー企業が、市販レベルの製品を試作する段階で事業に行き詰まる「量産化の壁」を解消するのが狙い。

以前から同様の取り組みは各地で行われていましたが、経済産業省が本格的に乗り出す、ということで大きなニュースになっていました。そもそも何故ものづくりベンチャーと町工場がうまくマッチングせず製品開発がうまく進行しないのでしょうか?両者との接点が多い弊社なりの理由をいくつか考えてみました。

①町工場がものづくりベンチャーとの取引を嫌がる

多くの町工場がメーカーからの下請け仕事に慣れてしまっていて、図面がないと物を作りたがりません。ものづくりベンチャーの仕事は面倒な割に利益にならないのでどうしても積極的に引き受けようとは思わないようです。また、金型製造など大きな資金を要する製造案件の場合、資金回収のリスクが発生するため取引に至らない要因にもなっています。更に加えると年齢差(ジェネレーションギャップ)から生まれるコミュニケーションロスも大きく、取引を敬遠される要因になっていると思われます。

②ものづくりベンチャー側の知識不足

次に指摘するのが、ものづくりベンチャーの多くが初めて製品開発に挑戦するため、製品を製造するのにどれぐらいのコストがかかるか分かっていないということです。3Dプリンタなどの機器が流行した影響でものづくりのハードルが下がったように感じていますが、それは試作の話で量産に関してのハードルは全く変わっておらず、そのギャップを理解できていないことが多いようです。

③製品製造における横断的な知識を両者が持っていない

町工場は製造におけるプロだと見られるが、多くの会社がニッチで部分的な仕事しかしておらず、自社の設備でできることを前提に考えてしまうと最適な製造法を提案できる訳ではありません。なので、どのような素材・加工法が最適で、どのような協力工場が必要かをコーディネートできる存在にはなりにくいです。最適なコストでスピーディに製品を製造しようとした時に、全ての部品を一から作るのではなく、既製品などの活用も視野に入れて設計することも必要で、その辺りの知識も必要となります。

ゆえに、上記のような問題点を払拭できるような民間施設と連携しないと当取組はうまくいかないのではないかと考えています。具体的には、積極的に協力してくれる町工場のネットワークを築くこと(日頃の人間関係から多少無理も聞いてくれるような)、ものづくりベンチャー側の製造に関する教育を行うこと、両者の間に立ちコーディネートできる人材の確保、などが必要になるのではないでしょうか。

また、ものづくりベンチャー側が初期投資におけるリスクを全面的に背負わなければならない現状も製品開発における大きな阻害要因になっていると思われます。クラウドファンディングなどの解決手段もありますが、寄付者へのリターンなどのコストも考えると十分な資金源にはならないことが多いです。もっとリスクを分散する仕組みが求められます。

資金調達に関しては、今後ものづくりベンチャー向けのベンチャーキャピタルなどが増えてくると思われるので、リスクを全面に背負うケースも減っていきそうです。しかし、ベンチャーキャピタルに今後求められる支援として、資金やマーケティング面の支援だけでなく、上記のような製品製造におけるコーディネータ的な役割を担うことも必要となるのではないでしょうか。

記事の最後の方に「事業化を目指す会員に深センの企業から支援の声がかかっている。このままでは事業アイデアが海外に流出してしまう」とありますが、この脅威はとても大きいと思います。こういう話を聞くと「コストが安いから中国企業」と思われがちですが、深センなどの企業と取引する会社はコスト以外のメリットを感じています。それが分かりやすく表現されている四コマ漫画がありますので最後にご紹介します。これを見ると町工場側の変革も求められそうですね。。

 

【中小企業】社長の情熱が採用を成功させる

こんにちは、ものづくり経革広場の永井です。

中小企業で採用を成功させるためのカギは「社長の情熱」にあります。絶対採用したほうが良い人材に出会った時には、社長が直接説得することで採用の確率は上がります。 大企業ではできない、中小企業の強みを武器にした採用方法をご紹介します。

絶対に採用したほうが良い人材の条件

まずは絶対に採用したほうが良い人材の条件についてです。ターゲットとなる人材は今の企業では自分の力を発揮できなくて、仕事が面白くないと感じている方です。このような考え方の人はなかなか出会うことはありませんが、必ず中小企業で力を発揮してくれます。

1.1人の責任は重たいけれど、仕事の達成感を優先したい人

大企業で働く場合、世界規模の大きなプロジェクトに参加できます。しかし、プロジェクトは細分化され、結局自分がどの仕事を行っているのかわからなくなってしまい、仕事への情熱を失いがちです。

逆に、中小企業の場合、小さなプロジェクトではありますが、自分が中心となりプロジェクトをまとめ上げることができるため、仕事の達成感ややりがいは大きくなります。1人の仕事範囲が広く、責任も重たくなる傾向にありますが、企業への貢献度や自分自身のポジションが明確に見えるため、責任を持って仕事をしている方は多くいます。そのような考えの人は大企業に勤めていても、中小企業へ転職したいと考えていることも多いので、出会ったらぜひ説得してみてください。

2.自分なりのやり方で仕事を進めたいと考えている人

大企業と違い、中小企業は良くも悪くも「お任せ」の部分が多くなります。特に、新しい仕事に対してはフローやチェック方法などが決まっていないことも多くあります。

何も決まっていないからこそ、自分なりの方法やアイディアを出してプロジェクトを成功させなければなりません。責任は重たくなりますが、自分の考えが反映されたプロジェクトが成功したときの達成感は決して大企業では味わえません。

これまでに会社のルールやしきたりに不満感を感じ、思う様に仕事が出来なかったと感じている人は少なくありません。

3.社長や役員に直接提案し、経営に参加したいと考えている人

大企業の場合、社長や役員と直接話せる機会は年に数回程度で、一対一で話すことはほとんどなく、自分の意見も言いにくいのが現状です。

逆に中小企業の場合、ほぼ毎日社長や役員と会う機会があり、意見や質問のしやすい環境があります。やはり企業の経営層と直接話せるメリットは大きく、今後の企業の考え方や方向性を知り、自らの意見がそれに反映されれていくのでは、仕事に対する姿勢も変わってきます。自分が勤めている企業の考え方を深く知ることで、責任感を持って働いてくれます。

まとめ

自分の力を試したい、自分で何かを成し遂げたいと思い中小企業を希望する人はいます。 ただ、そこまでのやる気を持って転職活動をしてる人が多くないのも事実です。 だからこそ、素晴らしい人材に出会ったときには、出来る限りのことをして、採用の確率を上げる必要があります。

中小企業だからできる効果的な採用方法

1.社長が主体となり、採用を行う

中小企業のメリットは、「人材の選定」と「面談」の両方を社長ができることにあります。選定と面談が分かれている場合、社長がほしいと思った人材でも、その前に人事担当が落としてしまっている可能性もあります。社長が応募者全員と会うことは負担になりますが、会社の将来を支えてくれる人に出会うチャンスと思って、ぜひ全員と面談してみてください。

企業説明についても人事担当が説明するのと社長がするとでは、企業の印象は全然違ってきます。社長が話す方が企業の本質や将来性について深く語れるため、企業の魅力を伝えやすくなります。

2.企業の本音を話す

中小企業の採用で見栄をはってはいけません。企業の良いところだけを説明すると、採用後に離職する確率が上がってしまいます。そのため、良いところだけではなく、今の状況を本音で話す必要があります。

会社の職場環境はもちろん、残業についても本音で話すことが大切です。

また、今後改善していく予定であることや、将来の方向性も話すことで、求職者に「将来は成長してく企業」と思ってもらえることは必要です。

魅力的な会社には必ず「経営理念」や「ビジョン」があります。仕事にやる気を持ち、自分で何かをしたいと考えている人は現在の企業の状況よりも、将来どのような方向を目指しているかに重きをおいて採用活動をしています。中小企業の場合、ビジョンを打ち出すのは難しいかもしれませんが、これを機に一度大きなビジョンを掲げてみてください。

3.本当に来てほしいという情熱を伝える

これが一番大切なことですが、人は「求められている」ことに対して嬉しく感じます。 大企業では条件だけを見て採用が進みますが、中小企業では「あなたに来てほしい」という情熱を社長がぶつけることができます。「今の会社がこうで、将来成長するためには君の力が必要なんだ」と言われたら、考えは揺らぎます。 これは中小企業の社長でしかできませんし、これほど効果のある採用方法もありません。

条件は他社よりも悪くても情熱で動いた事例

「なぜスーパーマンは大田区の中小企業を選んだのか|20代女性社長の右腕となるハイスペック人材を採用できた理由」

まとめ

中小企業の採用は年々厳しくなってきています。しかし、自分の力を試したいと思っている人はまだまだいます。「三顧の礼」の様に情熱があれば、優秀な人材も引っ張ってくることはできます。どうしてもこの人を採用したいというときは社長が情熱を持ってその人材を説得してみてください。

品質を設計から作り込む方法タグチメソッド(その3)

ものづくりドットコムの熊坂です。

年が変わったと思ったらもう半月過ぎてしまいました。油断も隙もありませんね(^^) 今年はどんな年にしますか?何をすれば良いかはだいたい皆分かっているもので、誰かではなく自分でブレーキを踏んでいるだけなんですよね。「それ」を実行すれば、新たな道が拓けますよ。

想いを新たに、挑戦していきましょう!

さてものづくり革新のキーワードを毎回ひとつずつ紹介しており、今回は前回に引き続き「タグチメソッド」ですが、そこで使われる直交表についてお話します。

いっぺんにたくさんの因子を評価する

前回までにタグチメソッド独特の「技術評価方法」である「SN比」について説明しました。これを大きくすれば安定した≒トラブルの起きにくい技術になるのですが、そのためには設計者が自由に決められる因子=パラメータを変化させて実験することになります。

ほとんどの人は一つあるいは二つの因子を少しずつ変化させて最適値で固定し、次に他の因子を変化させて、少しずつ良い因子水準を探していきます。これを逐次実験と呼びますが、次のような問題点があります。

  1. 交互作用があると、実験の順番によって結果が変わる場合がある。
  2. 良い結果が得られても、最適組み合わせの保証がない。
  3. いつ目標に達するか分からない。非常に多数回の実験が必要な時がある。

ならばたくさんの因子のすべての水準組み合わせを実験すれば、このような問題は解決するわけですが、2水準で3因子:組み合わせ数23=8サンプルまでならまあ何とかなるものの、4因子24=16、5因子25=32サンプルあたりになると、現実的ではなくなってきます。

そこでタグチメソッドで採用するのが直交表という道具です。これは言ってみれば統計的な手抜き実験法です。例えば7因子を2水準で全組み合わせは27=128サンプル必要となりますが、下図1のL8(27)という直交表を使うと、たった8通りの組み合わせで7因子の各種効果を評価することが可能となります。 

図1.L8直交表

 

直交表の仕組み

上の図1を良く観察しましょう。7つの因子列のどの2列を取り出しても、因子水準の組み合わせ(1,1)(1,2)(2,1)(2,2)という4種類が必ず2回ずつ現れます。それによってある因子の効果を評価する時に、第1水準4個と第2水準4個のそれぞれの実験結果の平均を比べることで、他の因子効果が相殺されて結果に影響を与えないことになり、簡単な計算で7因子の主効果が、繰り返し数4で分かってしまうのです。

ただし因子間の交互作用が大きい場合は、この理屈が正確には成り立ちません。128通りの組み合わせ中のたった8通りを実験するだけですから仕方がありません。大きな交互作用がいくつもあると、直交表を使った評価は不正確になっていきますが、もし直交表を使わず適当に実験していると、多くのサンプルを使いながらも不正確ということすら分からず、いつまでも右往左往することになります。

前節ではL8直交表を例示しましたが、他にも下表1のように3水準や多数の因子を扱えるものなどたくさんの種類があり、実験目的や内容、許される費用や期間などに応じて使い分けることになります。

表1.主な直交表の種類

実際の利用にあたっては、4水準以上の変数の扱いや、水準間隔の考え方など多くのノウハウがあります。

パラメータ設計

前回説明した基本機能評価に、上記の直交表を組み合わせて制御因子の最適水準組み合わせを探索するのがパラメータ設計です。その構造を下図2にまとめます。

図2.技術システムとパラメータ設計の関係

その効用をまとめると次のようになります。

  1. 実験で意図的に特性をばらつかせる因子を加えることで、技術の良しあしを安定性によって評価し、
  2. 入力変化に対する出力の応答性を見ることで、技術の汎用性を確保するとともに、評価の感度を向上し、
  3. 直交表を使うことで多くの設計因子を一度に評価するとともに、設計因子どうしの交互作用についてもある程度の緩衝効果を発揮する。

前々回紹介したように、多くの企業がこの方法を使って高いレベルすなわち低コストで良い特性が安定的に続く技術を短期間に開発、設計するようになっています。ちょっと手強い手法ではありますがそれだけに、品質問題で窮地に追い込まれる前に習得しておきたいものです。導入にあたっては、さらに詳細な情報を入手するか、経験者の指導のもとで進めるのが早道でしょう

どうでしょう、参考になりましたか?ものづくりドットコムでは、村島繁延さんがこの分野の専門家です。不明の点やご相談はQ&Aコーナーや問い合わせフォームで質問してください。