「ルメール」が期間限定の直営店 南青山の空き物件を合法的に“占拠”

 「ルメール(LEMAIRE)」は、東京・南青山の多目的スペース「スクワット(SKWAT)」に期間限定ストアをオープンした。2021年3月31日まで営業する(移転・延長の可能性あり)。20-21年秋冬のメンズ・ウィメンズコレクションのフルラインをそろえる。直営店はフランス・パリに次ぐ世界2店舗目。

 「スクワット」は、東京の空き物件を合法的に“占拠”(=スクワット)するアートプロジェクトだ。設計事務所のダイケイ・ミルズ(DAIKEI MILLS)とアートブックのディストリビューションなどを手掛ける「トゥエルブブックス(TWELVEBOOKS)」による共同プロジェクトで、これに「ルメール」が賛同して今回の出店に至った。

 「スクワット」は過度な装飾を施さず、最小限の資材を用いて空き物件そのものが持つ個性を最大限に生かすデザインが特徴だ。「ルメール」の売り場では築100年の日本古民家の廃材を再利用し、接着剤やクギを使わない日本伝統の木工技法である“木組み”を用いて、日本でしか実現できない店舗に仕上げた。

 「スクワット」はこれまで原宿の元クリーニング店や南青山の「シボネ(CIBONE)」を“占拠”してきた。現在の物件は5月末から使用している。

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福井県発「ファクトリーキュウヒャク」と宮川大輔がサングラスをコラボレート

 宮川大輔が「ファクトリーキュウヒャク」の10年以上の愛用者だったことから、このプロジェクトが実現した。デザインは大きなスクエアシェイプのゴーグル形で、価格は4万2000円。

 青山嘉道「ファクトリーキュウヒャク」チーフデザイナーはデザインについて、「宮川氏は顔立ちがしっかりしているので、ボリュームの強弱を意識した。平面と立体の造形美がポイントだ」と説明した。

 「ファクトリーキュウヒャク」は2000年にスタートし、東京・表参道と大阪・北堀江に直営店を構える。ブランド名の「900」は、青山眼鏡の福井県眼鏡工業組合での登録番号。

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マシューによる新生「ジバンシィ」公開、遠い未来から希望を届けた「トム ブラウン」 デジコレでドタバタ対談パリ7日目

 2021年春夏のコレクションサーキットのラストとなるパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も7日目となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも日本の記者たちが対談レビューという形で、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。今回は、今回はメンズ、ウィメンズともにこれまでも各都市のコレクションを取材してきた「WWD JAPAN.com」の村上要編集長とパリコレ取材3度目の丸山瑠璃ソーシャルエディターがリポートします。

リアリスティックな「スキャパレリ」ウーマン

丸山:「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」は、ダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)がクリエイティブ・ディレクターに就任してプレタポルテをスタートしてからもう3シーズン目になるんですね。クチュールのイメージが強かったのですが、ウエアラブルなアイテムが予想外に多く驚きました。というのも、今季ローズベリーは現在も数十年後まで着られるエッセンシャルなコレクションを、クチュールのクオリティで作りたかったそうです。過去2シーズンのコレクションも見てみたのですが、ゴールドの装飾がちりばめられたクラシックなパンツスーツからツイストが加えられたイブニングドレスまで、確かに今後何年も使えそうなアイテムがそろいます。ベーシックではあるものの、創業者のエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)が好んで使っていたというゴールドのメジャーテープの装飾や南京錠、ロブスター、ゾウなどのアイコンが効いていますね。

村上:ダニエルさんは、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」出身だけど、絵心あるクリエイティブ・ディレクターですね。ムービーでも、イラストの制作場面がなんども出てきます。スカーフのみならず、セットアップにまで本人直筆のイラストを用いているみたい。シュールレアリスムが信条のブランドが、アーティストのごときデザイナーを起用するのは、とても正しい選択な気がしました。正直にいうと復活以降、「難しいなぁ」って思って見ていたんです。オートクチュールとプレタポルテの中間“プレタ・クチュール”の確立を目指して再スタートを切ったけれど、シュールすぎて「お金とアートを愛でる心の双方がズバ抜けた、欧州のお金持ち以外にマーケットはあるのかな?」って思っていました。それがずっとリアルになって、それでもアートマインドは失わず、絶妙なバランスを模索しながら路線変更しつつある印象です。例えば寝転ぶと床と一体化した平面のように見えるジャケットは、もちろん実物はリアルウエア。でも写真に撮るとシュールに見えて、SNS全盛の今っぽい。マスクは販売するかわからないけれど、シュールの度合いが強い商品はアクセサリーに絞り込んでいるのも正解だと思います。

NYからパリにやって来た「ガブリエラ ハースト」

丸山:いつもニューヨークで発表している「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は今季パリで発表しました。リアルなショーをライブ配信していましたが、映像ではランウエイだけでなくモノクロでバックステージの様子も見せていて、その緊張感が伝わってきました。ニューヨーク・ファッション・ウイークを取材している村上さんは「ガブリエラ ハースト」のクリエイションをこれまで見てきたと思いますが、彼女の強みは何なのでしょう?

村上:「ガブリエラ ハースト」の今季は編みや太めのコットン糸を用いたハンドステッチなどの手仕事を加えながら、オーガニックなムードを維持しながら、エキゾチックなスパイスを加える彼女らしさが発揮されていたと思います。シンプルなコットンワンピのショルダーストラップや、細い2連のベルトづかいも彼女らしい。ただ、そうそうたるブランドが集うパリだと、もうちょっとオリジナリティが欲しいのも事実。ニューヨークでは、他よりラグジュアリーな分、素材に人一倍こだわって独自性を保ってきたけれど、それだけじゃパリでも同様には輝けない。今後の進化に期待しましょう。

夜のパリをガツガツ歩く「バレンシアガ」

村上:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、他のブランドよりも一足早く、21年プレ・フォール・コレクションに相当する21年サマー・コレクションを発表ですね。このブランドのサイクルは独特で、メインと次のプレで1つのストーリーが完成。つまり今回の21年プレ・フォールは、7月に発表したコレクションの続き、ですね。確かに、全体のシルエットは7月発表のコレクションよりも落ち着いている印象だけど、ボロボロのニットやロゴ入りのスエット、カラフルなトートバッグなど似たようなアイテムもチラホラ。モノすごく新しいとは思わなかったけれど、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしいクリエイションですね。サステナブルへの取り組みを明言しているけれど、これまでの残反やアーカイブも使っているのかな?アイデアが枯渇しないためにも、考え自体も使い捨てず、次に繋げる考えは賛成です。気になったのは、BGMの「Sunglasses at Night」でしょうか?元々は、好きな女の子のウソを直視したくないから夜でもサングラスっていう男の子の歌だと思うんだけど、その曲を今、用いた理由はなんだろう?業界の悪しき慣習に対するアンチテーゼ??

丸山:音楽はコリー・ハート(Corey Hart)の1983年の曲「Sunglasses at Night」をデムナと長年組んでいるプロデューサー、BFRNDがカバーしたものでしたね。ちなみに最後に仲間と合流したラストルックのモデルがBFRNDです。映像では曲の通り夜なのにサングラスをしたモデルがパリの街をガツガツ歩きます。勝手に3Dを駆使したSFチックな映像が来るのではないかと想像して身構えていたので意外でした。でも、デムナは事前インタビューでこのコレクションでは2030年のファッションを思い描こうとしたと明かしています。2030年ですが「レトロフューチャリスティックなスタイルの提案ではなく、何が必要不可欠でサステナブルかということをより探求するということ」だそうで、見たこともない新しいものというより、デムナが10年後も残ると思うエッセンシャルなアイテムを集めたコレクションだったのではないでしょうか。1983年の曲を使ったのも、それが現代まで残っているからなのかなと思いました。ですがフーディーを着ずに頭からかけたり、イブニングドレスにスリッパを合わせたり、ティックトック(TikTok)のように歌詞に合わせてモデルが口パクする演出など、どこか違和感のある要素は健在でした。違和感というのは新しいものを初めて見るから生まれる感情でもあると思うのですが、昔からあるものを違う見せ方をしているので新しいように感じます。ちなみにユーチューブでは映像をずっとループさせて見せていて、かれこれ十数時間ライブしているのですがいつまでやるのでしょう?

遠い未来の宇宙からユーモアを届けた「トム ブラウン」

丸山:「トム ブラウン」はリアルのショーと同じようにデジタルでもユーモアたっぷりな映像を公開。まず設定から、22世紀の月で開かれたスポーツ大会「2132 LUNAR GAMES」の開会式の実況とぶっ飛んでます。会場は実在のスタジアム、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)なのですが、実況者によれば過去のアーカイブから再現したものだそう。スタジアムを埋め尽くす観客は全員「トム ブラウン」を着用。オリンピックの開会式で選手が正装で入場してくるときのように、最新コレクションをまとった選手が、各競技を現したロゴが描かれた旗とともに入場してきます。最後はトム・ブラウンの愛犬ヘクターをモデルにした犬型の宇宙船がスタジアム上空に現れ、双子のスター選手が宇宙船から降りた後、「トム ブラウン」のライターで聖火を灯すという、ツッコミ満載な映像でした。コレクションは白を基調にしていましたが、これは希望を表しているそう。デジタルでも変わらないユーモアを希望とともに届けてくれたトム・ブラウンに感謝です。

村上:「トム ブラウン」は、112年後も燦然(さんぜん)と輝き、代表選手団のユニホームを手がけているのね(笑)。112年後のオリンピック的なスポーツの祭典は、まだスタジアムをメーン会場に行われているのかな?ナレーターによると、このスタジアムは「20世紀のロサンゼルスを再現している」みたいだけれど。その後ナレーターは、グレース(Grace)さんのリポートの後、「Amazing Grace」とのコメントを発していたね。「Amazing Grace」はアメリカで昔から歌われる賛美歌で、春には新型コロナウイルスと戦う医療関係者に向けて贈られました。舞台は2132年だけれど、随所に過去へのリスペクトが感じられます。心温まるストーリーですね。2132年も「トム ブラウン」が打ち出し続けるフォーマルに代表される古きと、
スペースエイジ時代に欠かせないミラーサングラスのような新しきが入り混じっている素敵な世界だといいなぁ、って思っちゃいますね。絶対生きてないけれど(笑)。

パリジャンに着想を得たリアルな「パコ ラバンヌ」

村上:「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」は、正直、もうちょっと何かを期待してしまいましたね。終盤のシルバー&ゴールドのスパンコールドレスは、「まさに!!」と興奮しましたが比して前半は、それなりにメタルづかいは含まれているけれど、「『パコ ラバンヌ』で買わなくてもいいかもなぁ」というアイテムも多く。ただメタル使いとか、ラミネート加工を増やすと重さ、着心地、価格などの面でリアルから遠ざかってしまうし、難しいところですね。終盤は、とっても「パコ ラバンヌ」だけど、あくまでコレクションピースでしかないワケで……。そう考えると、「スキャパレリ」は上手な落とし所を見つけつつある印象です。

丸山:今季の「パコ ラバンヌ」は、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクターがロックダウン中に自宅の窓から近所を歩くパリジャンの服装を観察してそれに着想を得たとのことで、ジーンズやブラトップ、キャミソールなど日常使いできるリアルなアイテムが多かったですね。一部のモデルもドッセーナの友人のパリジャンを採用していたとか。さらに会場の扉は開け放たれていて、ショーを見に集まった群衆や通りを走る車が垣間見えます。モデルは会場の外を歩いてから会場に入ってくるという演出で、パリの日常からランウエイにそのままやってきたようでした。ただ前回のジャンヌダルクに着想を得たコレクションは強さもありながら神秘的な素晴らしいコレクションで、ドッセーナの本領は日常着よりも洗練されたファンタジックな表現の方が発揮されるのかなと思っていたので、個人的には少し残念ではありました。ただ、コロナ禍で消費者もファンタジックよりもリアルな方を好む消費傾向にあるので、それに合わせた結果でもあるのかなと思います。

ビーズを用いたドリーミーな「ビューティフルピープル」

村上:「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」はバルーンシルエットを基調に、フリルやプリーツをプラスしたひざ丈のドレスの裾にマイクロビーズを封入。すると裾まわりのボリュームがさらに誇張されて、という仕掛けですね。ショーの前に届いた招待状も、マイクロビーズを詰め込んだハンドピローみたいな物体だったんだけど、実際、ビーズも販売するのかな?とても自宅で気軽に詰め込めるシロモノじゃないけれど、軽くて暖かそうではあります。招待状みたいなハンドピローを数個セットにして販売したり、ドレスとセットで売ったりするのかな?そば殻を詰め込んだ枕とフカフカの布団のように、軽くて、ドレスだけど「おうち時間」にも良さそうで、リラックスできるアイテムでした。

丸山:「ビューティフルピープル」は服の表である“Side-A”と裏である“Side-B”、表と裏の間に着目した仕立てのアイデア“Side-C”を以前から採用していましたが、今回はこの間を相互につなげてマイクロビーズを入れられるポケットを作ったんですね。公開した映像は、封入されたビーズが服からモデルの動きに合わせてドラマチックに落ちるという演出でした。ビーズが詰まったポケットに寄りかかればそれはビーズクッションやアームチェアに早変わり。そのまま寝れちゃう枕にインスパイアされたヘッドピースや、ベッドリネンやテーブルクロスのような生地など、家の中にあるものに着想を得たコレクションでしたが、「もしも洋服が住居として変化したら?もしも洋服が感情を揺さぶる存在として、精神を高揚させつつも、穏やかな居心地良さと安心を与えることができたとしたら?」というアイデアを由来としているそうです。

マシュー・ウィリアムズによる新生「ジバンシィ」

村上:新生「ジバンシィ(GIVENCHY)」、私たちはルックを見ただけですが、なんだか良さそうですね。クロコダイルのようにゴツゴツした質感のレザー、喜平のメタルチェーン、スキャンダラスなブラックミニドレスなど、メゾンらしい強さとモード感が漂います。前任クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)は、とっても優しいので、時に無理して力強い方向に振っていた印象もあるけれど、マシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)にとって、ブラックやモード、メタル使いに代表されるエッジーは、得意のフィールドだしね。詳しくは、ヨーロッパ通信員の藪野淳さんが現地でコレクションを見てリポートしてくれています。

丸山:やっぱりマシューの得意なアクセサリーは素晴らしかったですね。特にティーザーでも見せていた南京錠を用いたアイテムは売れそうです。しかもエントリー価格のアイテムも出すそうで、楽しみですね!「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」でも最近はテーラードを意識していましたが、メゾンの技術によりまた別格なクオリティに仕上がっていました。ちなみにキャップやヒールに採用した角などゴシックな要素は意外だったのですが、アレキサンダー・マックイーン(Alexander Mcqueen)期のアーカイブからと聞いて納得。

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マシューによる新生「ジバンシィ」公開、遠い未来から希望を届けた「トム ブラウン」 デジコレでドタバタ対談パリ7日目

 2021年春夏のコレクションサーキットのラストとなるパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も7日目となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも日本の記者たちが対談レビューという形で、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。今回は、今回はメンズ、ウィメンズともにこれまでも各都市のコレクションを取材してきた「WWD JAPAN.com」の村上要編集長とパリコレ取材3度目の丸山瑠璃ソーシャルエディターがリポートします。

リアリスティックな「スキャパレリ」ウーマン

丸山:「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」は、ダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)がクリエイティブ・ディレクターに就任してプレタポルテをスタートしてからもう3シーズン目になるんですね。クチュールのイメージが強かったのですが、ウエアラブルなアイテムが予想外に多く驚きました。というのも、今季ローズベリーは現在も数十年後まで着られるエッセンシャルなコレクションを、クチュールのクオリティで作りたかったそうです。過去2シーズンのコレクションも見てみたのですが、ゴールドの装飾がちりばめられたクラシックなパンツスーツからツイストが加えられたイブニングドレスまで、確かに今後何年も使えそうなアイテムがそろいます。ベーシックではあるものの、創業者のエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)が好んで使っていたというゴールドのメジャーテープの装飾や南京錠、ロブスター、ゾウなどのアイコンが効いていますね。

村上:ダニエルさんは、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」出身だけど、絵心あるクリエイティブ・ディレクターですね。ムービーでも、イラストの制作場面がなんども出てきます。スカーフのみならず、セットアップにまで本人直筆のイラストを用いているみたい。シュールレアリスムが信条のブランドが、アーティストのごときデザイナーを起用するのは、とても正しい選択な気がしました。正直にいうと復活以降、「難しいなぁ」って思って見ていたんです。オートクチュールとプレタポルテの中間“プレタ・クチュール”の確立を目指して再スタートを切ったけれど、シュールすぎて「お金とアートを愛でる心の双方がズバ抜けた、欧州のお金持ち以外にマーケットはあるのかな?」って思っていました。それがずっとリアルになって、それでもアートマインドは失わず、絶妙なバランスを模索しながら路線変更しつつある印象です。例えば寝転ぶと床と一体化した平面のように見えるジャケットは、もちろん実物はリアルウエア。でも写真に撮るとシュールに見えて、SNS全盛の今っぽい。マスクは販売するかわからないけれど、シュールの度合いが強い商品はアクセサリーに絞り込んでいるのも正解だと思います。

NYからパリにやって来た「ガブリエラ ハースト」

丸山:いつもニューヨークで発表している「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は今季パリで発表しました。リアルなショーをライブ配信していましたが、映像ではランウエイだけでなくモノクロでバックステージの様子も見せていて、その緊張感が伝わってきました。ニューヨーク・ファッション・ウイークを取材している村上さんは「ガブリエラ ハースト」のクリエイションをこれまで見てきたと思いますが、彼女の強みは何なのでしょう?

村上:「ガブリエラ ハースト」の今季は編みや太めのコットン糸を用いたハンドステッチなどの手仕事を加えながら、オーガニックなムードを維持しながら、エキゾチックなスパイスを加える彼女らしさが発揮されていたと思います。シンプルなコットンワンピのショルダーストラップや、細い2連のベルトづかいも彼女らしい。ただ、そうそうたるブランドが集うパリだと、もうちょっとオリジナリティが欲しいのも事実。ニューヨークでは、他よりラグジュアリーな分、素材に人一倍こだわって独自性を保ってきたけれど、それだけじゃパリでも同様には輝けない。今後の進化に期待しましょう。

夜のパリをガツガツ歩く「バレンシアガ」

村上:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、他のブランドよりも一足早く、21年プレ・フォール・コレクションに相当する21年サマー・コレクションを発表ですね。このブランドのサイクルは独特で、メインと次のプレで1つのストーリーが完成。つまり今回の21年プレ・フォールは、7月に発表したコレクションの続き、ですね。確かに、全体のシルエットは7月発表のコレクションよりも落ち着いている印象だけど、ボロボロのニットやロゴ入りのスエット、カラフルなトートバッグなど似たようなアイテムもチラホラ。モノすごく新しいとは思わなかったけれど、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしいクリエイションですね。サステナブルへの取り組みを明言しているけれど、これまでの残反やアーカイブも使っているのかな?アイデアが枯渇しないためにも、考え自体も使い捨てず、次に繋げる考えは賛成です。気になったのは、BGMの「Sunglasses at Night」でしょうか?元々は、好きな女の子のウソを直視したくないから夜でもサングラスっていう男の子の歌だと思うんだけど、その曲を今、用いた理由はなんだろう?業界の悪しき慣習に対するアンチテーゼ??

丸山:音楽はコリー・ハート(Corey Hart)の1983年の曲「Sunglasses at Night」をデムナと長年組んでいるプロデューサー、BFRNDがカバーしたものでしたね。ちなみに最後に仲間と合流したラストルックのモデルがBFRNDです。映像では曲の通り夜なのにサングラスをしたモデルがパリの街をガツガツ歩きます。勝手に3Dを駆使したSFチックな映像が来るのではないかと想像して身構えていたので意外でした。でも、デムナは事前インタビューでこのコレクションでは2030年のファッションを思い描こうとしたと明かしています。2030年ですが「レトロフューチャリスティックなスタイルの提案ではなく、何が必要不可欠でサステナブルかということをより探求するということ」だそうで、見たこともない新しいものというより、デムナが10年後も残ると思うエッセンシャルなアイテムを集めたコレクションだったのではないでしょうか。1983年の曲を使ったのも、それが現代まで残っているからなのかなと思いました。ですがフーディーを着ずに頭からかけたり、イブニングドレスにスリッパを合わせたり、ティックトック(TikTok)のように歌詞に合わせてモデルが口パクする演出など、どこか違和感のある要素は健在でした。違和感というのは新しいものを初めて見るから生まれる感情でもあると思うのですが、昔からあるものを違う見せ方をしているので新しいように感じます。ちなみにユーチューブでは映像をずっとループさせて見せていて、かれこれ十数時間ライブしているのですがいつまでやるのでしょう?

遠い未来の宇宙からユーモアを届けた「トム ブラウン」

丸山:「トム ブラウン」はリアルのショーと同じようにデジタルでもユーモアたっぷりな映像を公開。まず設定から、22世紀の月で開かれたスポーツ大会「2132 LUNAR GAMES」の開会式の実況とぶっ飛んでます。会場は実在のスタジアム、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)なのですが、実況者によれば過去のアーカイブから再現したものだそう。スタジアムを埋め尽くす観客は全員「トム ブラウン」を着用。オリンピックの開会式で選手が正装で入場してくるときのように、最新コレクションをまとった選手が、各競技を現したロゴが描かれた旗とともに入場してきます。最後はトム・ブラウンの愛犬ヘクターをモデルにした犬型の宇宙船がスタジアム上空に現れ、双子のスター選手が宇宙船から降りた後、「トム ブラウン」のライターで聖火を灯すという、ツッコミ満載な映像でした。コレクションは白を基調にしていましたが、これは希望を表しているそう。デジタルでも変わらないユーモアを希望とともに届けてくれたトム・ブラウンに感謝です。

村上:「トム ブラウン」は、112年後も燦然(さんぜん)と輝き、代表選手団のユニホームを手がけているのね(笑)。112年後のオリンピック的なスポーツの祭典は、まだスタジアムをメーン会場に行われているのかな?ナレーターによると、このスタジアムは「20世紀のロサンゼルスを再現している」みたいだけれど。その後ナレーターは、グレース(Grace)さんのリポートの後、「Amazing Grace」とのコメントを発していたね。「Amazing Grace」はアメリカで昔から歌われる賛美歌で、春には新型コロナウイルスと戦う医療関係者に向けて贈られました。舞台は2132年だけれど、随所に過去へのリスペクトが感じられます。心温まるストーリーですね。2132年も「トム ブラウン」が打ち出し続けるフォーマルに代表される古きと、
スペースエイジ時代に欠かせないミラーサングラスのような新しきが入り混じっている素敵な世界だといいなぁ、って思っちゃいますね。絶対生きてないけれど(笑)。

パリジャンに着想を得たリアルな「パコ ラバンヌ」

村上:「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」は、正直、もうちょっと何かを期待してしまいましたね。終盤のシルバー&ゴールドのスパンコールドレスは、「まさに!!」と興奮しましたが比して前半は、それなりにメタルづかいは含まれているけれど、「『パコ ラバンヌ』で買わなくてもいいかもなぁ」というアイテムも多く。ただメタル使いとか、ラミネート加工を増やすと重さ、着心地、価格などの面でリアルから遠ざかってしまうし、難しいところですね。終盤は、とっても「パコ ラバンヌ」だけど、あくまでコレクションピースでしかないワケで……。そう考えると、「スキャパレリ」は上手な落とし所を見つけつつある印象です。

丸山:今季の「パコ ラバンヌ」は、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクターがロックダウン中に自宅の窓から近所を歩くパリジャンの服装を観察してそれに着想を得たとのことで、ジーンズやブラトップ、キャミソールなど日常使いできるリアルなアイテムが多かったですね。一部のモデルもドッセーナの友人のパリジャンを採用していたとか。さらに会場の扉は開け放たれていて、ショーを見に集まった群衆や通りを走る車が垣間見えます。モデルは会場の外を歩いてから会場に入ってくるという演出で、パリの日常からランウエイにそのままやってきたようでした。ただ前回のジャンヌダルクに着想を得たコレクションは強さもありながら神秘的な素晴らしいコレクションで、ドッセーナの本領は日常着よりも洗練されたファンタジックな表現の方が発揮されるのかなと思っていたので、個人的には少し残念ではありました。ただ、コロナ禍で消費者もファンタジックよりもリアルな方を好む消費傾向にあるので、それに合わせた結果でもあるのかなと思います。

ビーズを用いたドリーミーな「ビューティフルピープル」

村上:「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」はバルーンシルエットを基調に、フリルやプリーツをプラスしたひざ丈のドレスの裾にマイクロビーズを封入。すると裾まわりのボリュームがさらに誇張されて、という仕掛けですね。ショーの前に届いた招待状も、マイクロビーズを詰め込んだハンドピローみたいな物体だったんだけど、実際、ビーズも販売するのかな?とても自宅で気軽に詰め込めるシロモノじゃないけれど、軽くて暖かそうではあります。招待状みたいなハンドピローを数個セットにして販売したり、ドレスとセットで売ったりするのかな?そば殻を詰め込んだ枕とフカフカの布団のように、軽くて、ドレスだけど「おうち時間」にも良さそうで、リラックスできるアイテムでした。

丸山:「ビューティフルピープル」は服の表である“Side-A”と裏である“Side-B”、表と裏の間に着目した仕立てのアイデア“Side-C”を以前から採用していましたが、今回はこの間を相互につなげてマイクロビーズを入れられるポケットを作ったんですね。公開した映像は、封入されたビーズが服からモデルの動きに合わせてドラマチックに落ちるという演出でした。ビーズが詰まったポケットに寄りかかればそれはビーズクッションやアームチェアに早変わり。そのまま寝れちゃう枕にインスパイアされたヘッドピースや、ベッドリネンやテーブルクロスのような生地など、家の中にあるものに着想を得たコレクションでしたが、「もしも洋服が住居として変化したら?もしも洋服が感情を揺さぶる存在として、精神を高揚させつつも、穏やかな居心地良さと安心を与えることができたとしたら?」というアイデアを由来としているそうです。

マシュー・ウィリアムズによる新生「ジバンシィ」

村上:新生「ジバンシィ(GIVENCHY)」、私たちはルックを見ただけですが、なんだか良さそうですね。クロコダイルのようにゴツゴツした質感のレザー、喜平のメタルチェーン、スキャンダラスなブラックミニドレスなど、メゾンらしい強さとモード感が漂います。前任クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)は、とっても優しいので、時に無理して力強い方向に振っていた印象もあるけれど、マシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)にとって、ブラックやモード、メタル使いに代表されるエッジーは、得意のフィールドだしね。詳しくは、ヨーロッパ通信員の藪野淳さんが現地でコレクションを見てリポートしてくれています。

丸山:やっぱりマシューの得意なアクセサリーは素晴らしかったですね。特にティーザーでも見せていた南京錠を用いたアイテムは売れそうです。しかもエントリー価格のアイテムも出すそうで、楽しみですね!「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」でも最近はテーラードを意識していましたが、メゾンの技術によりまた別格なクオリティに仕上がっていました。ちなみにキャップやヒールに採用した角などゴシックな要素は意外だったのですが、アレキサンダー・マックイーン(Alexander Mcqueen)期のアーカイブからと聞いて納得。

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「LV」のショーはサマリテーヌ跡地の最上階で開催 2021年春夏パリ・コレクション

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は2021年春夏パリ・ファッション・ウイーク最終日の10月6日15時(日本時間22時)、05年に安全上の理由で閉店した老舗百貨店サマリテーヌ(LE SAMARITAINE)跡地でニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)=ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターによるショーを開催する。

 パリ市街中心部に位置するサマリテーヌは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が01年から所有しており、21年初旬に新たな複合施設としてオープン予定だ。ショーは、“ラ・ロトンド(La Rotonde)”と呼ばれるガラスドームを有した見晴らしのいい同複合施設の最上階フロアで開催される。

 ショーは200人規模で2回にわたって行われる予定で、フロントローのゲストの一部にはショーを体験するための専用デバイスが配布される。一方で、インスタグラム(INSTAGRAM)をはじめとしたオンライン上のプラットフォームで配信されるライブショーにも趣向を凝らしているという。

 マイケル・バーク(Michael Burke)=ルイ・ヴィトン会長兼最高経営責任者は、「サマリテーヌは19世紀から存在するパリの歴史的なランドマークだ。今回のショーはまたとない経験になる。ジェスキエールは長い間ファッションについて思いを巡らせてきた。限られたファッション業界のプロだけではなく、ショーを一緒に見たいと願う世界中の人びとも参加できる素晴らしい試みになる。一般の人びとに向けたショーを行うためには、ストーリーをわかりやすく説明する必要がある。今回のショーでは、オーディエンスが求めている膨大な情報をまとめ上げた技術が披露される。ただの見せかけではなく、人びとを夢中にさせるようなものを作りたかった。近年はパリのルーブル美術館内外でウィメンズショーを開催しているが、今シーズンは一旦休止といったところだ。21年はまたルーブル美術館で開催するだろう」とコメントした。

 ジェスキエール率いる「ルイ・ヴィトン」は、17年春夏シーズンにヴァンドーム広場の旗艦店でオープンに先駆けてショーを開催し、15年春夏シーズンにもフランク・ゲーリー(Frank Gehry)が設計した美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)」でオープンを前にショーを開催している。

 サマリテーヌはLVMH傘下の免税店、DFSのパリ旗艦店のほか、同じく傘下の高級ホテルであるシュバル ブラン(CHEVAL BLANC)、ショップ、レストラン、オフィス、低所得者向け住宅、デイケアセンターなどが入った複合施設として生まれ変わる。新型コロナウイルスのパンデミックによる影響で、20年にオープンの予定が21年初旬に延期された。

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マット・ゴンデックのグラフィックを使用した「モンスト × エクストララージ」のコラボスタジャンを製作 

 スマホアプリのひっぱりハンティングRPG「モンスターストライク(MONSTER STRIKE以下、モンスト)」の7周年を記念して、ミクシィが展開する「エックスフラッグ(XFLAG)」は“この指とまりやがれ”を合言葉に感謝キャンペーンを実施。キャンペーンの一環として、「エクストララージ(XLARGE)」とコラボした“わいわい着ようぜ モンスタジャン”を「モンスト」でマルチプレイを楽しめる人数にちなみ、4着を1セットとしてプレゼントする。

 “わいわい着ようぜ モンスタジャン”はブラックをベースに、リブにはブラウンを採用して普段使いできるものに仕上げた。フロントの胸部分には7周年を意味する“07”と、今回の7周年のビジュアルでもある“この指とまりやがれ”のグラフィックを、バックには両者のロゴをあしらったワッペンを配した。

 “この指とまりやがれ”のキャンペーンビジュアルは、米・ロサンゼルスを拠点に活動しネクストカウズともいわれているマット・ゴンデック(Matt Gondek)が手掛けた。これまで数々の日本のゲーム・アニメを題材にしたアート作品を手掛けてきたゴンデックは、今回の取り組みに対して「エキサイティングなプロジェクトの一員になれたことを光栄に思う。僕の破壊的ポップアート技法を『モンスト』の世界に生かすことができて嬉しく思う。『モンスト』には、広大で魅力的な世界観があった。“この指とまりやがれ”に込めた想いと、爆発的な表現・大胆な色使いが見所だ」と語る。

 7周年の合言葉の“この指とまりやがれ”は、他者を誘う呼びかけを示すものとして、小さい頃に誰もが使っていた言葉・行為であると考えた。これらをアイコン化していくことで、“みんなとワイワイ楽しんだ体験”を思い出し、ユーザーをはじめとした多くの人々と「モンスト」との共創を生み出すことを目指していくという思いを込めた。

 同商品は、10月8日にアプリ内に登場する特別クエスト“今日こそ戦型大強化!”をクリアすることで、抽選に参加することができる。

 また“ツイッター投稿ミッション”と題して、特別クエストクリア後に、ゲーム内のミッション画面から“♯ゲリラの日、♯この指とまりやがれ、♯モンスト7周年”のハッシュタグを付けてツイートすると応募者の中から抽選で1万人にギフトコード500円分をプレゼントする。応募にはモンストキャンペーン公式アカウント(@monst_campaign)のフォローが必要だ。

問い合わせ先
ミクシィ XFLAG

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高田賢三氏を悼むファッション業界の声 パリも悲嘆に暮れる

 「ケンゾー(KENZO)」の創業者でもあるファッションデザイナーの高田賢三氏が4日、新型コロナウイルスの合併症により死去した。81歳だった。


 1964年に渡仏し、「ケンゾー」の前身となる「ジャングル・ジャップ(JUNGLE JAP)」を立ち上げた同氏は、70年に初のコレクションを発表。その鮮やかな色彩と明るい作風で、パリのファッション業界に旋風を巻き起こした。93年にはLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)にブランドを売却し、99年に同ブランドのデザイナーを退任。2016年には、フランス政府からレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。20年1月にはラグジュアリーホームウエア&ライフスタイルブランド「K3」を立ち上げた。またフレグランスの世界でも大きな功績を上げている。


 パリでは現在、2021年春夏コレクションを披露するパリ・ファッション・ウイークが開催されているが、高田氏の死去を受けて多くのデザイナーや関係者が声明を発表している。その一部をここに紹介する。

・ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)
「高田賢三氏は、1970年代からファッションに軽やかで詩的なタッチと自由な精神をもたらし、多くのデザイナーにインスピレーションを与えた。またそのいつまでもフレッシュで伸びやかな感性により、フレグランスの世界にも大きなインパクトを残している。彼が創業した『ケンゾー』は、現在でも彼の世界観に基づいて作品を発表している。彼が亡くなり、とても悲しく思う。ご家族、ご友人の方々に心からお悔やみを申し上げる」

・シドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEO
「高田賢三氏が70年代にブランドを立ち上げた当初から、私は彼のファンだった。本当に素晴らしいデザイナーで、素晴らしい人物だった。とても悲しい。彼は『ケンゾー』のチームをずっとサポートしてくれて、2月には現在同ブランドを率いているフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)新クリエイティブ・ディレクターによる初のショーも見に来てくれた」

・ラルフ・トレダノ(Ralph Toledano)=フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode)会長
「独創的なカットや多様な文化からのインスピレーション、エキゾチックなプリントで、賢三は紛れもなく東洋と西洋の融合というファッションの新たなページを記すことに貢献した」

・フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ「ケンゾー」新クリエイティブ・ディレクター
「高田賢三氏の素晴らしいエネルギー、優しさ、そして才能は人々に大きな影響を与えた。同志である彼の魂は永遠に生き続けるだろう。私の師である彼のご冥福をお祈りする」

・シルヴィ・コリン(Sylvie Colin)=ケンゾーCEO
「半世紀にわたり、高田氏はファッション業界の象徴的な存在だった。彼は常にクリエイティビティーにあふれ、鮮やかな色彩を世界にもたらした。その楽天的な性格や人生を楽しむことへの情熱、寛容な心はこれからも当メゾンの柱であり続ける。彼を失ったことは本当に寂しく、これからもずっと忘れることはないだろう」

・ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)=デザイナー
「賢三はフランスに居を構えた初めての日本人デザイナーの一人として60年代からこの地で暮らし、ファッションに新鮮な息吹をもたらした。時代の空気にマッチした、自由で喜びに満ちたポジティブな精神の持ち主で、東洋と西洋の文化を融合した。彼の革新的なファッションショーはパーティーのようだった。それまでショーといえばクチュールのモデルばかりだったが、『ケンゾー』のショーでは雑誌モデルがランウェイを闊歩した。彼に深い敬意を抱いている」

・フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)=ケリング(KERING)会長兼CEO
「高田氏はパリを“ファッションの都”たらしめた、クリエイティブな精神を持つデザイナーの一人だ。彼の作品はさまざまな文化が融合しており、クリエイティビティーと喜びにあふれ、度量が深くて、まさに彼そのものだった」

・イネス・ド・ラ・フレサンジュ(Ines de la Fressange)=モデル
「高田氏はさまざまなことの先駆者で、素晴らしいデザイナーであり、素晴らしい人だった。私が初めてランウェイを歩いたのは『ケンゾー』のショー。私はとてもシャイで変わったモデルだと思われていたけれど、彼もシャイな人だったからか、私をショーのモデルに起用してくれた。70年代の終わりごろはもう誰もがオートクチュールに飽きていて、刺激的でグラマラスな『ケンゾー』のショーを一目見たいという人たちの間で争いが起きるほどの人気だった。当時、ショーにたくさんのモデルを登場させたのは彼が初めてだったし、セレブリティーをモデルとして使ったのも彼が初めてだった。彼がいなくなって本当に悲しいし、ファッション業界全体が悲嘆に暮れている」

・ジャンバティスタ・ヴァリ(Giambattista Valli)「ジャンバティスタ ヴァリ」デザイナー
「私は20年ほど前にパリに来たのだが、高田氏は最初に出来た友人の一人だ。彼とはプーケットやタイ、モロッコなど、さまざまな場所を一緒に旅をした。彼は“生きる喜び”を体現したような人で、そのデザインと同様にエネルギーに満ちあふれ、ポジティブで寛容な人だった。また幅広い趣味と好奇心を持ち、瞑想をしたり絵を描いたりする一方で、ベリーダンスや日本料理のレッスンを受けていたりもした。私が知る中で、彼は最も若々しい心を持つ人だった」

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メイクアップの歴史に特化した博物館がマンハッタンに開業 海外ビューティ通信ニューヨーク編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。(本文中の円換算レート:1ドル=105円)

 メイクアップに特化した世界初の“メイクアップ博物館(MAKEUP MUSEUM)”が、9月1日にニューヨークのミートパッキング地区にオープンした。化粧の歴史とそれが社会でどのような役割を果たしてきたのかを展示している。当初は5月にオープンする予定だったがコロナ禍で延期となっていた。

 共同設立者はビューティデータ会社を創設し経営するドリーン・ブロック(Doreen Bloch)、美容マーケティングを専門とするケイトリン・コリンズ(Caitlin Collins)、そして著名メイクアップアーティストのレイチェル・グッドウィン(Rachel Goodwin)の3人だ。同博物館長であるブロック共同創設者は「このような危機の中でもビューティと芸術、文化はなお人々にとって非常に大切なものです。ビューティに捧げる文化的施設を開館できることをうれしく思います」と語り、コリンズ共同創始者も「この数カ月間、多くの支援の言葉をもらいました。博物館を開けるための情熱とクリエイティビティー、喜びは決して途絶えることがありませんでした」と述べる。

 スポンサーにはアーノラズロ(ERNO LASZLO)社、コンエア社(CONAIR)、アルコン(ALCON)社、ジボダン(GIVAUDAN)社が名を連ねる。現在、コロナ対策のために時間制限を設け、入館人数を収容可能人数の16%に抑えて運営している。チケット(40ドル=約4200円)は事前にオンラインで購入でき、入館時には検温と常時マスク着用が求められる。

 同館初の特別展は「ピンク・ジャングル:アメリカの1950年代のメイクアップ(PINK JUNGLE 1959s Makeup in America)」と題して、50年代の化粧品や香水の数々やロシアからの移民としてハリウッドで活躍したメイクアップアーティストのマックス・ファクター(Max Factor)のメイクアップルームも再現している。そして当時のアイコンであるマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やグレタ・ガルボ(Greta Garbo)、ジャクリーヌ・ケネディ(Jacqueline Kennedy)が愛用したアーノラズロ(Erno Laszlo)博士によるスキンケア製品や肌診断のメソッドも見どころだ。

 エルジン(ELGIN)社製の小鳥の形をした手首につけられるコンパクトは、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)のデザインによるものという稀少な品だ。またブラック層をターゲットにした雑誌「エボニー(EBONY)」(1945年創刊)と「ジェット(JET)」(1951年創刊)のコピーが常設展示してあり、メインストリームの雑誌では見えにくいブラック層のメイクアップの歴史を辿ることができる。そのほか細眉とリップライナー、光と影を駆使して立体感を出すコントゥアリングを広め、革新的なメイクテグ額で90年代に一斉を風靡したメイクアップアーティスト、故ケヴィン・オークイン(Kevyn Aucoin)の日記も7冊が展示してあり、夭逝した彼の内面が窺い知れて興味深い。

 館内にはセルフィーにぴったりの色別にわけられた一角があり、ギフトや化粧品の販売コーナーも設けている。またメイクアップの歴史や展示物をインタラクティブに検索できるアプリも用意されている。とても興味深く一見の価値がある博物館だ。

黒部エリ/ライター:東京都出身。雑誌ライター、ジュニア小説家を経て1994年からニューヨーク在住。ニューヨークのトレンドやビューティ情報を女性誌などで発信している。著書に「生にゅー 生のニューヨーク通信」(文藝春秋社) ブログ「黒部エリぞうのNY通信」

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「ポール・スミス」が誕生50周年 アーカイブプリントを再解釈したカプセルコレクションと書籍発売

 「ポール・スミス(PAUL SMITH)」は10月21日に、創業50周年を記念したカプセルコレクションを発売する。

 デザイナーのポール・スミスは80年代にメンズウエアにフォトグラフィックプリントを取り入れ、プリントデザインにおけるパイオニアとしての評判を確立した。同コレクションでは1988年から2002年の間に発表されたアーカイブのグラフィックプリントを再解釈し、メンズとウィメンズのアイテムに落とし込んだ。注目は1994年秋冬コレクションで発表されたスパゲッティプリント。これはポールが80年代に東京を訪れた際に食品サンプル専門店で見つけたプラスチック製のスパゲッティが、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)のシュルレアリスムの作品に見えたことをきっかけに誕生したもの。そのほか、光沢のある青リンゴやバラなどのフローラルプリントも登場する。

 アイテムはジャージーやボンバージェケット、シャツなどのアパレルからスニーカー、バッグ、時計、革小物などをそろえる。全てに70年代にデザインされたブランド最初のロゴで、アール・デコ調のグラフィックとレトラセットのモダンなフォントが特徴のネームを取り付けた。公式オンラインショップと「ポール・スミス」店舗、一部の主要百貨店イベントスペースで順次販売する。

 また、ポールの人物像に迫る書籍「Paul Smith」が10月にファイドン社から出版される。なお、日本語版は11月22日に青幻舎から出版される(7500円)。同書ではポール自身がこれまでインスピレーションを受けてきた50のモノを紹介する。花の種のパッケージや家族写真などさまざまなモノが登場し、彼のデザイナーとしての仕事や思考のプロセスなどを探ることができる。ポールと交友のあるマノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)やマーティン・パー(Martin Parr)、ジョン・ポーソン(John Pawson)らの手紙や写真などの寄稿も収められている。公式サイトでは10月1日から先行予約の受け付けを開始した。

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「ポール・スミス」が誕生50周年 アーカイブプリントを再解釈したカプセルコレクションと書籍発売

 「ポール・スミス(PAUL SMITH)」は10月21日に、創業50周年を記念したカプセルコレクションを発売する。

 デザイナーのポール・スミスは80年代にメンズウエアにフォトグラフィックプリントを取り入れ、プリントデザインにおけるパイオニアとしての評判を確立した。同コレクションでは1988年から2002年の間に発表されたアーカイブのグラフィックプリントを再解釈し、メンズとウィメンズのアイテムに落とし込んだ。注目は1994年秋冬コレクションで発表されたスパゲッティプリント。これはポールが80年代に東京を訪れた際に食品サンプル専門店で見つけたプラスチック製のスパゲッティが、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)のシュルレアリスムの作品に見えたことをきっかけに誕生したもの。そのほか、光沢のある青リンゴやバラなどのフローラルプリントも登場する。

 アイテムはジャージーやボンバージェケット、シャツなどのアパレルからスニーカー、バッグ、時計、革小物などをそろえる。全てに70年代にデザインされたブランド最初のロゴで、アール・デコ調のグラフィックとレトラセットのモダンなフォントが特徴のネームを取り付けた。公式オンラインショップと「ポール・スミス」店舗、一部の主要百貨店イベントスペースで順次販売する。

 また、ポールの人物像に迫る書籍「Paul Smith」が10月にファイドン社から出版される。なお、日本語版は11月22日に青幻舎から出版される(7500円)。同書ではポール自身がこれまでインスピレーションを受けてきた50のモノを紹介する。花の種のパッケージや家族写真などさまざまなモノが登場し、彼のデザイナーとしての仕事や思考のプロセスなどを探ることができる。ポールと交友のあるマノロ・ブラニク(Manolo Blahnik)やマーティン・パー(Martin Parr)、ジョン・ポーソン(John Pawson)らの手紙や写真などの寄稿も収められている。公式サイトでは10月1日から先行予約の受け付けを開始した。

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「バルクオム」がマツモトキヨシとココカラファイングループ1371店舗での展開を決定

 メンズスキンケアブランド「バルクオム(BULK HOMME)」は、ドラッグストアのマツモトキヨシグループとココカラファイングループの1371店舗で、10月15日から順次販売を開始する。

 「バルクオム」は2013年の事業開始以来、バラエティショップ、GMS、美容室を中心に取り扱い店舗を増やし、現在では累計1300以上の店舗で販売している。コロナ禍の4~6月においても、売り上げは前年同期比約90%増と好調を維持。5月に関東地区で放送したテレビCMにより認知が拡大したことや、巣ごもり需要拡大によりスキンケアを始める男性が増えたことが好調の理由と分析している。

 今回のドラッグストアへの展開の拡大は、さらなる販売強化策の一環だという。「ドラッグストアは、コスメ市場における最も大きい販売経路であり、マツモトキヨシグループとココカラファイングループは、ドラッグストアの中でも化粧品の売り上げ比率が高い傾向にある。そこでテレビCMによる認知拡大、コロナ禍における巣ごもり需要拡大という状況下で、お客さまにとってより身近な場所であるドラッグストアで『バルクオム』製品を購入できる環境を作ることで、新規購入およびリピート購入が増加するのではないかと考えた」とブランド担当者はコメントした。

 今後さまざまなマーケティング施策を実施し、マツモトキヨシグループとココカラファイングループで、年間2億5000万円の売り上げを目指す。

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「バルクオム」がマツモトキヨシとココカラファイングループ1371店舗での展開を決定

 メンズスキンケアブランド「バルクオム(BULK HOMME)」は、ドラッグストアのマツモトキヨシグループとココカラファイングループの1371店舗で、10月15日から順次販売を開始する。

 「バルクオム」は2013年の事業開始以来、バラエティショップ、GMS、美容室を中心に取り扱い店舗を増やし、現在では累計1300以上の店舗で販売している。コロナ禍の4~6月においても、売り上げは前年同期比約90%増と好調を維持。5月に関東地区で放送したテレビCMにより認知が拡大したことや、巣ごもり需要拡大によりスキンケアを始める男性が増えたことが好調の理由と分析している。

 今回のドラッグストアへの展開の拡大は、さらなる販売強化策の一環だという。「ドラッグストアは、コスメ市場における最も大きい販売経路であり、マツモトキヨシグループとココカラファイングループは、ドラッグストアの中でも化粧品の売り上げ比率が高い傾向にある。そこでテレビCMによる認知拡大、コロナ禍における巣ごもり需要拡大という状況下で、お客さまにとってより身近な場所であるドラッグストアで『バルクオム』製品を購入できる環境を作ることで、新規購入およびリピート購入が増加するのではないかと考えた」とブランド担当者はコメントした。

 今後さまざまなマーケティング施策を実施し、マツモトキヨシグループとココカラファイングループで、年間2億5000万円の売り上げを目指す。

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コロナ禍での新会社設立。CTスピリッツジャパンが9月1日より本格始動。「アぺ飲み」文化を定着させられるか?

 コロナ禍による外食業界の痛時はアルコールメーカーにも大きな影響を与えている。ビールメーカー4社を中心に業務用事業への大打撃は図りしれない。しかし、暗いニュースだけではない。飲食店で馴染み深いカンパリやアペロールなどを扱っているカンパリグループ(イタリア)が日本で合弁会社を設立、CT Spirits Japan株式会社(本社:東京都渋谷区 代表取締役社長 阿部哲)が、2020年9月1日より本格始動した。
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デジコレでドタバタ対談 パリ6日目 「コム デ ギャルソン」不在の土曜日、「エルメス」の“自由の再発見” 

2021年春夏のコレクションサーキットのラストとなるパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)も6日目となりました。パリからはベルリン在住のヨーロッパ通信員が現地取材の様子をお届けしますが、オンラインでも日本の記者たちが対談レビューという形で、“できるだけリアルタイムに近いペース”で取材を進めていきます。今回は、ウィメンズ・コレクションを長年取材している「WWDジャパン」の向千鶴編集長と、大杉真心記者がリポートします。

常連不在で、若手ブランドの発表続く

向:今日は土曜日。パリコレ中の土曜日は通称“ギャルソン・デー”で、朝一番に「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」、昼には「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」、夕方には「コム デ ギャルソン」がショーを披露しています。今シーズンはでコム デ ギャルソン社の3ブランドに加えて同じく土曜日の常連「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」が不参加のため寂しい印象でした。空いたスロットに「エスター マニャス(ESTER MANAS)」「カルバン ルオ(CALVIN LUO)」といった初参加ブランドが組み込まれ、それはそれで楽しみだったけど正直心に響かず。とテンション低めでごめんなさい。

大杉:ギャルソン社3ブランドの穴は大きいですね。今回パリコレ初参加の「エスター マニャス」は今年のLVMHプライズのセミファイナリストで、サステナブルでインクルーシブなアプローチで注目を集めているベルギー発のブランドです。砂漠や海、宇宙をデジタルツアーで移動しながら、異なる体型、人種のモデルたちが同一のルックを着ることで、見え方の違いを表現しているのに好感が持てました。サイズはXXSからXXLまでそろえているそう。キャッチーなブランドロゴをのせたバッグのお披露目もありました。

「アルチュザラ」のドキュメンタリーに好印象

向:「アルチュザラ(ALTUZARRA)」はデザイナー本人がコレクションの説明をするシーンから始まりますが、生地を丁寧に触りながら「このリネンガーゼは大量のリサーチを経て決めたんだ」など実感のこもったコメントがよかった。その後もどうやってこういった形が生まれたか?について具体的なテクニックを丁寧に話していて引き込まれました。こういったことはショーを見るだけでは分からないし、展示会に行ってもデザイナー本人からここまで詳しく話を聞けるケースは少ない。モノ作りへの真摯な姿勢が伝わりましたね。取材陣だけじゃなく、ブランドのファンも嬉しいんじゃないかな。

大杉:オートクチュールの期間中に多かったドキュメンタリー形式の動画でしたね。デザイナーのジョセフ(Joseph Altuzarra)が描いていたデザイン画の服が、モデルが着用して出てきたときに「あの服だ!」と喜びがありました。軽やかな素材とアースカラーの色使いがとても優しい雰囲気でした。ボリューミーナドレープが美しいドレスは、スリットが深かったり、胸元や背中が空いていたりと、洗練された色っぽさがありましたね。

向:今シーズンのトレンドを凝縮したようなコレクションでしたね。綺麗な色、優しい質感、体を締め付けないボリュームあるフォーム。デザイナーの話を聞くと、ボリュームってただ単に布をたくさん使えばいいんじゃない、生地の質感とパターンの絶妙な掛け算で生まれるんだとわかります。ドレープをたっぷり寄せたイエローのドレスとジャケットのセットアップなど着たい服がたくさん見つかりました。

ヴィヴィアン本人が朗読する
「アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド」

向:「アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(ANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD)」の最初に登場した緑のドレスの女性はまさか、とてもスリムになったヴィヴィアン・ウエストウッド本人!?白壁のスタジオで詩の朗読に合わせてモデルが一人一人ポージングをするのですが、服もモデル自身の個性もポージングも全てにインパクトがあり独特です。ファッションショーを見たときに受ける印象と全く同じですね。イエローのコートを着たグレイヘアーのヴィヴィアンのようなマダムもとてもきれいでこういう風に年齢を重ねられたら、と思いました。

大杉:ヴィヴィアン本人がモデルになって登場していましたね。ハイヒールを履いて、ボリュームのある髪型でいつもと雰囲気が違いました。イエローのコートを着たマダムもヴィヴィアン本人でした。中国版の「織姫と彦星」やウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)の詩「ミツバチが蜜を吸うところで(Where the bee sucks)」などを朗読し、撮影はアンドレアス本人が行ったそうです。インスタグラムの情報によると、今回のコレクションはパンデミック前にデザインをした服で、存在感がある必須アイテムを目指したそう。花柄のブーツがコーディネートのポイントになっていましたね。

向:話はそれますが、先日発表された「アシックス(ASICS)」と「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」は、新作コラボスニーカー“アシックス × ヴィヴィアン・ウエストウッド ゲルカヤノ26(ASICS × VIVIENNE WESTWOOD GEL-KAYANO 26)”のビジュアルもユーモアたっぷりで面白かったです。本当に自由な発想です。

“明るい未来”へのメッセージが込められた「エルメス」のリアルショー

向:リアルショーを行った「エルメス(HERMES)」はエレガントであることは変わらないのですが今シーズンは力強さ、決意のようなものを見てとりました。上質できれいな色のレザーやウール、シルクといった素材をシンプルに使いながらカッティングが直線的で大胆。背中が大きく開いて肌を見せるスタイルが多かったですよね。

大杉:露出が多いのにとても上品ですね。ジャケットやサロペットの下にバンドゥを合わせるスタイリングや、体にフィットしたシルエットにヘルシーで美しい。モノトーン、ブラウン、ベージュのベーシックカラーに朱赤やオレンジ、ライトブルーをポイントに入れた色使いも心地よく、フレッシュです。また、このコレクションには“自由の再発見”という思いが込められていると書かれていました。不自由なコロナ禍のロックダウンを経験し、「次の春夏こそ、マスクを付けずに外に出て楽しみたい」というような解放感があります。

向:デザイナーのナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)は、約 6 カ月をかけて、12人の親しいアーティストたちと一緒にスクラップブックを作ったそうです。会場でモデルの後ろに見えるビジュアルがそうですね。「自粛生活を余儀なくされる中で、自由と明るい未来に対する人々の願いや、女性として生きることをビジュアルで表現した」とのこと。複数のアーティストの思想や視点をコラージュしているということですね。この“思想や視点のコラージュ”は今季のパリコレのテーマの一つだと思う。分断されたカルチャーをつなぎ合わせ、離れて生活しながら知恵を寄せ合うことで互いに勇気付けよう、そんなメッセージを受け取ります。そしてハッとする発色のリップが良かった。大ヒット中の「ルージュ・エルメス(ROUGE HERMES)」ですね。

大杉:ナチュラルなベースメイクに合わせたリップカラーが際立っていましたね。マスクが必需品となり、口紅がなかなか楽しめない日々なので、早くマスクを取って思いっきりメイクを楽しめる日が待ち遠しいです。私は多彩なカラーで登場したショルダーバッグや、スタッズ使いが特徴的なローファ風のクロッグなどの新作アクセサリーも気になりました。

10シーズン分のアーカイブ素材を使った「アナイス ジョルダン」

向:個人的に好きなのよね、「アナイス ジョルダン(ANAIS JOURDEN)」の世界観。ガーリーでトゲがあり力強い。フワフワしたドットのドレスに「ナイキ(NIKE)」のスニーカーといったミックススタイルが印象的です。コレクションのタイトルは「WORLD OF REALMS(現実の世界)」で、撮影場所はおそらくデザイナーの故郷である香港でしょうか?インスタには「過去10シーズンのアーカイブの記憶を再訪し、真実とファンタジー、時間と空間の境界線を曖昧にした新しいコレクションを作った」とあります。

大杉:迫力のある映像でしたね。香港の滝や港、ビルの屋上などフォトジェニックな場所でありながらも、ちゃんと服に焦点が当たっていて、サクサクと次のルックへ切り替わっていくのも見やすかったです。“アップサイクルコレクション”と題して、これまでの10シーズンで使った素材で、デザイナーのアナイス・マック(Anais Mak)が気に入っているものを再利用したそうです。ブランドとしてサステナビリティへの考えを深めるべく、まずは“ローカルで作る”ことから始めて、素材の調達から仕立てまで全て香港と中国国内で行ったそう。

向:以前、別の香港デザイナーに話を聞いた時、彼は中国との関係について触れて「僕ら香港のクリエイターは頭の上にずっとガラスの天井がある世界で仕事をしている。突き破りたいけど壊したら傷つく。だからずっと同じ場所でグルグル回っている気分なんだ」と話していた。今の香港でアナイスが何を思うのか、話を聞いてみたいな。

セーヌ川沿いをランウエイにした「アミ アレクサンドル マテュッシ」

向:9年目にして初めてウィメンズのファッションウィークに参加した「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」はリアルショーで、セーヌ側沿いの遊歩道をランウェイに見立て男女のモデルが歩きました。セーヌ川沿いの道っていつも大渋滞しているけど、車道から一段下がったこの遊歩道は喧騒から外れて穏やかに過ごせる場所だよね。夜は怖くて一人では歩けないけど。

大杉:川がライトに反射してキラキラしていてとても素敵なロケーションでしたね。ただ暗闇の中モデルたちがサングラスかけて登場するので、川に落ちてしまわないか少しハラハラしました(笑)。モノトーン、ネイビー、ブラウンのシャツスタイル、セットアップなど、ハンサムなルックが多かったですね。

向:ネイビージャケット、白シャツ、ボーダーカットソー、デニムにプリーツスカート、キャメルのコートなどクローゼットのベースとなるアイテムを上質素材で丁寧に作る姿勢は変わらず。 私の中では「アー・ペー・セー(A.P.C.)」のデザイナー、ジャン・トゥイトゥ(Jean Touitou)やエディ・スリマン(Hedi Slimane)のスタイルと通じるものがある。ザ・パリジャン&パリジェンヌという意味でね。だから夜のセーヌ川はぴったりだと思う。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が富士山の前で撮影したのと同じで、ブランドのルーツが一瞬で理解できます。

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ファッションショーの乱入ハプニング8場面 ネコちゃんのリアル“キャットウォーク”から抗議運動まで

 9月29日にパリで行われた「ディオール(DIOR)」の2021年春夏コレクションのショーでは、“私たちはみなファッション・ヴィクティム(We Are All Fashion Victims)”と書かれた黄色いバナーを持った抗議者がランウエイを歩いた。同ブランドのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=アーティスティック・ディレクターは定期的にランウエイで社会的メッセージを伝えており、抗議者の登場が計画的だったのかどうか会場に困惑が広がったが、すぐにショーの一部でないことが判明した。

 今回のようにショーに登場して混乱をもたらすモデル以外の人物、いわゆる”ランウエイクラッシャー“はファッションショーにおいて珍しいものではない。突発的に奇抜な衣装で乱入したものから、メッセージ性を持った抗議運動まで、ここでは8つのハプニングを取り上げる。

1 「シャネル(CHANEL)」のフィナーレにユーチューバーが乱入

 パリで行われた「シャネル」20年春夏コレクションショーでは、グラン・パレ(Grand Palais)通りの屋上を再現したステージを歩くモデルの列に、ツイードのセットアップを着た観客が乱入した。

 乱入したのはインスタグラムで19万以上のフォロワーを持つユーチューバーでコメディアンのマリー・ベノリエル(Marie Benoliel)。ステージに上がりモデル同様ウォーキングするも、ショーのモデルを務めていたジジ・ハディッド(Gigi Hadid)に退場するようバックステージへと促された。

2 「グッチ(GUCCI)」にモデルのアイーシャ・タン・ジョーンズ(Ayesha Tan-Jones)がプロテスト

 いわゆる“ショークラッシャー”とは異なるが、「グッチ」20年春夏コレクションショーではモデルのアイーシャ・タン・ジョーンズが“メンタルヘルスはファッションじゃない(Mental health is not Fashion)”と書いた両手を掲げてランウエイを歩いた。イギリス出身のノンバイナリーモデルであるジョーンズは、「グッチ」が拘束衣のようなデザインを含むコレクションを、ベルトコンベアーを使って発表したことに対して抗議の意を表明した。

 ジョーンズはショーの後インスタグラムで、「メンタルヘルスをタブー視する風潮を終わらせるべきだと信じて抗議した。私を含めた多くのモデルもそうだと信じている。精神病患者を示唆するようなデザインを使うこと、そして食肉工場のようにベルトコンベアーで移動させることは悪趣味。この資本主義社会の中で人々の苦悩を洋服を売るための小道具として利用することは、メンタルヘルスに苦しむ世界中の何百人に対して想像力のかける行為であり、下品で侮辱的だ」と語った。

3 「ディオール(DIOR)」のキャットウォークにネコちゃん

 モロッコで行われた「ディオール」の20年プレ・スプリング(リゾート)では、モデルたちが行き交うランウエイのステージ、通称キャットウォークを本物の猫が歩いた。フィナーレを歩くモデルたちに混じって野良猫は、進行とは逆方向に闊歩した。

4 「プラバル・グルン(PRABAL GURUNG)」のショーに王冠をかぶった半裸の男性

 「プラバル・グルン」の14-15年秋冬コレクションショーでは、突然黒いトレンチコートに金の王冠、ヒョウ柄のビキニ、赤いソックスを身に付けた男性がランウエイに登場。すぐに警備員によって退場を促され、逮捕された。

 男性は後にウクライナ出身の記者だと判明し、ジジ・ハディッドやウィル・スミス(Will Smith)、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、ブラッド・ピット(Brad Pitt)、ミランダ・カー(Miranda Kerr)らをはじめとする多くのセレブリティーに悪ふざけやわいせつ行為を行なっていた人物だとわかった。

5 トップレスの女性が「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のショーにカットイン

 「ニナ リッチ」14年春夏コレクションショーではトップレスの女性2人がランウエイに割って入った。それぞれの体には“モデルは売春じゃない(Models don’t go to brothels)”“ファッションの独裁者(fashion dictaterror)”と書かれていた。

 両者はトップレスによる抗議行動で知られるウクライナの女性権利団体、フェメン(Femen)のメンバー。同団体は13年にも「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のショーや、ハイディ・クルム(Heidi Klum)司会のドイツのトップモデル発掘ライブ番組でも抗議を行なった。

6 英コメディアンが珍衣装でショーをクラッシュ

 英俳優のサシャ・バロン・コーエン(Sacha Baron Cohen)は、09年に行われた「アガタ・ルイス・デ・ラ・プラダ(Agahta Ruiz de la Prada)」のショーにマジックテープでさまざまな布や靴を装着した奇抜な格好で乱入した。コーエンはコメディアンとしてアリ・G(Ali G)やブルーノ(Bruno)、ボラット(Borat)など複数のキャラクターを持っており、ショーではブルーノのキャラクターとしてランウエイを闊歩した。警部員に連れ出された。

 また英「ヴォーグ(VOGUE)」によると、翌週に行われた「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のショーでもコーエンは、レザージャケットとジーンズを着用して赤いビキニが露出した格好でフロントローに登場し、会場を混乱させたという。

7 「ディオール(DIOR)」のショーに抗議団体ペタ(PETA)が押し入る

 動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals、PETA)は、たびたび毛皮の使用をめぐって抗議運動を行なってきた。そのうちの一つが「ディオール」の03-04年秋冬コレクションショーだ。抗議運動を行なったPETAメンバーは“ファー・シェイム(Fur Shame)”と書かれたバナーを掲げてランウエイに上がったが、すぐに警備員に降ろされた。

8 「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」にもPETAが乱入

 02年に行われた「ヴィクトリアズ・シークレット」のショーでは、ブラジル出身のモデル、ジゼル・ブンチェン(Gisele Bundchen)を狙ってPETAメンバーが抗議運動を行なった。黒と赤のランジェリーに身を包んだジゼルがランウエイに登場するや否やPETAメンバー4人がバナーを持ちながら並んで歩いた。

 バナーには“ジゼル:ファーのクズ(Gisele: Fur Scum)”と書かれており、同モデルが毛皮の養殖会社ブラックグラマ(Blackglama)と契約を結んだことに抗議した。ジゼルは抗議者を無視して歩き続け、抗議者は警部員に取り押さえられた。

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ユニクロがSNSで話題の“ヒートテック毛布”を今年は全店で販売

 「ユニクロ(UNIQLO)」は10月5日から、“ヒートテック毛布”を全店舗で販売する。同商品は2017年に販売を開始しており、SNSなどで毎冬話題になっていた。これまではEC限定商品だったが、今年はECに加えて店舗でも販売する点がポイント。

 “ヒートテック”の吸湿発熱、保温機能を活用し、「暖かい、軽い、(自宅で)洗える」を実現した。シングル(4990円)とダブル(5990円)の2サイズがあり、各3色展開。重量はシングルで約1.2キログラム。

 コロナ禍を背景に自宅で過ごす時間が増えていることを受けて、「ユニクロ」では各店舗でラウンジウエアやパジャマ、ルームシューズ、“ヒートテック毛布”などをそろえた「UNIQLO at HOME」コーナーを展開している。

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ベールを脱いだ新生「ジバンシィ」 クリーンなテーラリングにハードウエアや激しいテクスチャーをミックス

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」は10月4日、マシュー・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)新クリエイティブ・ディレクターの手掛けた2021年春夏コレクションを発表した。これまでジョン・ガリアーノ(John Galliano)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)といった実力派デザイナーが率いてきた老舗クチュールメゾンに34歳で抜擢された彼のデビューコレクションは、今シーズンのパリコレ最大のトピックだ。しかし、コロナ禍でのランウエイショー開催は見送り、オンラインでウィメンズとメンズのルックを公開した。

 同日、パリ・モンテーニュ通りにあるショールームで行われたプレビューで、ウィリアムズは「コレクションに特定のテーマはない」と語り、プロダクト重視の考え方を明かす。それを最も象徴するのは、ハードウエアだ。コレクション発表に先駆けて公開したビジュアルも南京錠やチェーンなどにフォーカスしていたが、「自分にとってハードウエアはとても大切な要素であり、新しいプロジェクトに取り組むときは常にそこからスタートする」という。そして、それらを新たなブランドシグネチャーとして、アクセサリーだけでなくウエアやバッグ、シューズのデザインにも取り入れていく。自身のブランド「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」でもローラーコースターバックルで人気を確立し、「ディオール(DIOR)」のメンズコレクションのバックルデザインも手掛ける彼らしいアプローチと言えるだろう。

 ハードウエアに加えて、今シーズンのウエアの鍵となるのは、直線的なテーラリングとハードなテクスチャーやプリントだ。「今の時代、メンズとウィメンズは流動的がいい」という考えから、共通した素材やシルエットを採用したアイテムも多い。テーラードジャケットやコートはボクシーなシルエットで、ウィメンズでは“グラブ・スリーブ”と呼ぶ袖を浮かせたようなデザインを提案。一方、メンズは隠しボタンもしくはハードウエアの留め具で仕上げた。そのクリーンな印象と相反するように組み合わせるのは、溶岩やひび割れた地表のような荒々しいテクスチャーに加工したジーンズや型押しクロコダイルレザーのアイテム、タトゥーのようなグラフィック。オーバーサイズのスタンドカラージャケットやアノラックなど、カジュアルなアイテムもある。また、「アーカイブから創業者ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)の透け感のある素材使いや装飾を研究し、それをいかにモダンに表現できるかに取り組んだ」とウィリアムズが語るように、ウィメンズのイブニングでは、ビジューやパールを飾ったシアドレスや背中の大きく開いたニットドレスなどセンシュアリティーを探求した。

 バッグはアイコンの“アンティゴナ”を再解釈。マグネット開閉を採用した長細いハンドル付きの新デザインを提案する他、ゴツいチェーンでアレンジしたモデルや縦長のミニバッグ、ボディバッグなどもラインアップする。また、新しいアイコンとして、ユニセックスな“カットアウト”バッグも2サイズで打ち出す。やや猟奇的にも感じる角型のヒールやツノの付いたキャップは、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)時代のアーカイブからヒントを得たもの。ゴールド&シルバーカラーのインパクトのあるアクセサリーに加え、厚底のスライドサンダルやエアソールのスニーカー、ストラップ付きiPhoneケース、ウォーターボトル、コンパクトに折り畳めるサングラスなど若い層でも手が届きそうなアイテムが豊富で、顧客の裾野を広げることにつながりそうだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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瀧定大阪が子会社スタイレムを吸収合併 2021年2月1日付でスタイレム瀧定大阪に商号変更

 繊維商社の瀧定大阪は、100%子会社のスタイレム(STYLEM)を2021年2月1日付で吸収合併すると発表した。経営資源の集約、事業運営および業務の効率化が目的という。これにともない瀧定大阪を存続会社としてスタイレムは解散し、商号はスタイレム瀧定大阪に変更する。「瀧定への150年超の長きにわたって培われてきた信頼と、近年業界に浸透させてきたスタイレムとを融合した名称とすることが最善と判断した」としている。

 瀧定大阪は13年にコーポレートブランドとして「スタイレム」を導入し、「スタイレム」ブランドを冠して世界でファッション素材や製品を提供するサプライヤー事業などを推進。15年に新グループ体制に移行し、会社分割により瀧定大阪の全事業を継承するかたちでスタイレムが始動したが、約5年での軌道修正となった。

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「クレ・ド・ポー ボーテ」がバーチャルで色味を確認できるオンラインカウンセリングを実施

 資生堂のグローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」は、パーフェクトのARメイク機能を使用したバーチャルオンラインカウンセリングを伊勢丹新宿本店で10月7日から12月6日まで実施する。

 伊勢丹新宿本店のビューティーコンサルタントが「クレ・ド・ポー ボーテ」サロン(伊勢丹会館・イセタン ビューティー パーク 2・1階)などからオンラインでカウンセリングを行い、顧客は提案されたリップやチーク、ファンデーション、アイシャドウなどのメイクアップ商品の色味をその場で確認することが可能だ。

 バーチャルオンラインカウンセリング「Web BA 1on1」は、「ユーカムメイク」など美容関連のARやAI技術をグローバルで提供するパーフェクト独自のAR(拡張現実)、AIおよび対面型ビデオ通話を組み合わせたWEBサイト向けオンラインカウンセリングサービス。一方的なメイクチュートリアルや製品紹介ではなく、オンラインカウンセリングを受けながら非接触でも顧客との密なコミュニケーションをかなえる。シミ・シワ・キメなどの肌バランス状態をチェックするAI肌診断サービスの実装も可能で、診断結果をもとにその場で顧客一人一人に適したスキンケア商品の提案もできる。

 アメリカでは米美容小売り大手のウルタが6月から実施しているが、日本国内では「クレ・ド・ポー ボーテ」が国内初の導入になる。

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スーツが嗜好品になる日 エディターズレター(2020年8月5日配信分)

※この記事は2020年8月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

スーツが嗜好品になる日

 米ドラマ「SUITS」は世界中で人気を集め、日本でもリメークされたのでご覧になった人は多いでしょう。一流弁護士事務所を舞台にしたドラマのタイトルは、SUIT=訴訟と、パワーエリートの象徴であるSUIT=背広という二重の意味が込められています。ただ、現実のビジネスの世界ではIT企業を例に出すまでもなく、仕事着のカジュアル化が加速中です。最近ではウォール街の金融マンですら、スーツを着ない世代が増えているようです。

 米国最大の紳士服店であるテイラード・ブランズが8月3日、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法第11条の適用を申請しました。「メンズ・ウエアハウス」「ジョス・エー・バンク」などの屋号でビジネススーツを販売。「スーツを2着買えば割引」などの安さを武器にした販売手法で全米に約1400店舗を展開し、売上高は約3400億円の規模でした。「米国の青山商事」と呼ぶ業界人もいます。

 米国ではブルックス ブラザーズが同様に米連邦破産法第11条の適用を申請したのも記憶に新しいところです。既製服のスーツを初めて作った老舗であり、歴代大統領をはじめとしたエスタブリシュメントに愛されてきた名門の破綻は衝撃を与えました。

 低価格のテイラード・ブランズも高価格のブルックス ブラザーズもコロナ以前から経営状況は悪化しており、コロナによる店舗休業がダメ押しになった格好です。コロナ以前の悪化についてはそれぞれ複合的な要因もあるでしょうが、大きな流れとして男性のスーツ離れが痛手になったことは間違いありません。

 日本においてもコロナ以前からスーツ離れが顕著になっています。青山商事、AOKI、コナカといった大手紳士服専門店は業績が悪化。百貨店向けの有力ブランド「ダーバン」を販売してきた総合アパレルのレナウンも経営破綻しました。コロナ禍で在宅勤務が広がりを見せる中、スーツにとって明るい材料はあまりありません。

 戦後の日本でスーツはホワイトカラーの男性の仕事着という位置付けで、大きなマーケットを形成してきました。しかし今やホワイトカラーが必ずしもスーツを着ない世の中になってきている。残念ながらマーケットの縮小は避けられないでしょう。

 「SUITS」の弁護士たち、あるいは今放送中の「半沢直樹」に登場する銀行マンや証券マンもスーツを脱ぐ時代がくるかもしれない。現に三井住友銀行は昨年から、本店の一部とはいえ服装の自由化に取り組んでいます。多くの男性にとって仕事の必需品だったスーツは、かつて和服がたどったような嗜好品への道をたどることになるのかもしれません。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDジャパン」のビジネス担当記者がコンパクトに解説するメールマガジン。ニュースを読み解くヒントを提供します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「ステラ マッカートニー」が新ビジョン発表 ジェフ・クーンズやオラファー・エリアソンとコラボ

 「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」はこのほど、未来への意思を示す設計図としての新ビジョンを、AからZの26ワードで発表した。これはブランドのマニフェストであり、ブランドの姿勢を示すものである。今後、このビジョンを進化させるという覚悟を表明した。

 AからZまでの26文字のアルファベットを頭文字にしたワードは、英国や米国、フランス、ロシア、日本などのアーティストとコラボレーション。視覚的なアプローチを行った。「アーティストたちのユニークなビジョンと、ブランドの倫理観、美学、そしてファッション業界に道徳心をもたらすという大胆なミッションがクリエイティブに交流する」ことを目的にしたという。

 今回アーティストを起用したのは「アーティストはファミリー同然の存在である」というブランドの考え方に基づいている。コラボレーションしたのは、ブランドと深いつながりを持つ世界各国のクリエイターたちの中から厳選。ステラの親しい友人のジェフ・クーンズ(Jeff Koons)、オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)、ウィリアム・エグルストン(William Eggleston)、空山基、ステラの母で写真家のリンダ・マッカートニー(Linda McCartney)ら著名なアーティストたちと共に、将来を期待される若い才能も多く選出した。

 ロックダウン(都市封鎖)中に誕生したというこのコンセプトは、21年春夏コレクションから、素材の調達方法から衣類の製造方法、コミュニケーション方法まで、ブランドのあらゆる方針決定のベースになる。

 ステラ・マッカートニーは「このAtoZはロンドンで、ロックダウンの初期に生まれた。少し立ち止まって、本当に重要なこととは何かについて考える時間があった。私たちがファッションにおいて愛し、知り、信じていることを定義するものは何かについて考え、それを言葉で表現した。この“AtoZ”は、『ステラ マッカートニー』に関する全て。私たちの価値観や活動、そしてブランドが目指すことに責任を持ちながら、人々に愛され続ける魅力的で持続可能なファッションを常に生み出していくために私たちを導いてくれるアルファベットになった。“AtoZ”には、私たちの環境意識や、これまでに学んできたあらゆること、これまでに実現し、そしてこれから実現していくパートナーシップや変化、そして私たちが日々目指す目標など、全てが反映されている」とコメントを発表した。

 2021年はブランドの設立20周年の年でもある。この“AtoZ”コンセプトは21年春夏コレクションを通して表現されていくという。コレクションには“ゼロウェイスト(廃棄ゼロ)”コンセプトの限定アイテムが登場する予定だ。リサイクル素材の使用を増やすことにより、原材料の使用を最小限に抑えた、循環型ソリューションを推進すると同時に、ブランドのアイコンアイテムに再びパワーを与えたという。「人々を惹きつけるファッショナブルな魅力にさらなるフォーカスを当て、自信あふれる女性らしさを大胆に表現する」。

“A to Z”マニフェストと参加アーティスト

A is for Accountable - 責任を持つ(ラッシード・ジョンソン〈Rashid Johnson〉, アメリカ)
B is for British – ブリティッシュ(ピーター・ブレイク〈Peter Blake〉, イギリス)
C is for Conscious – コンシャス(シャンタル・ジョフィ〈Chantal Joffe〉, アメリカ/イギリス)
D is for Desire – 欲望(エルテ〈Erte〉, ロシア/フランス)
E is for Effortless – エフォートレス(シンディ・シャーマン〈Cindy Sherman〉, アメリカ)
F is for Falabella – ファラベラ(ロレンツォ・ヴィットゥーリ〈Lorenzo Vitturi〉, イタリア)
G is for Grateful – 感謝 (ジョージ・コンド〈George Condo〉, アメリカ)
H is for Humour – ユーモア (アレックス・イスラエル〈Alex Israel〉, アメリカ)
I is for Intimacy – 親密さ(ウルス・フィッシャー〈Urs Fischer〉, スイス)
J is for Joy – 喜び(Hou Zichao, 中国)
K is for Kind – 思いやり(ジェフ・クーンズ〈Jeff Koons〉, アメリカ)
L is for Linda –リンダ・マッカートニー(リンダ・マッカートニー〈Linda McCartney〉, アメリカ)
M is for Mindful – マインドフル (マート&マーカス〈Mert + Marcus〉, トルコ/ウェールズ)
N is for Nature – ネイチャー(リラ・アズー〈Lila Azeu〉, フランス)
O is for Organic – オーガニック (オラファー エリアソン〈Olafur Eliasson〉, デンマーク/アイスランド)
P is for Progressive – プログレッシブ(革新的)(ジェイアール〈JR〉, フランス)
Q is for Question – 疑問(リチャード・アーダー〈Richard Ardagh〉, イギリス)
R is for Repurpose – 再利用 (タリン・サイモン〈Taryn Simon〉, アメリカ)
S is for Sustainability – サステナビリティ(空山基〈Hajime Sorayama〉, 日本)
T is for Timeless – タイムレス(ウィリアム エグルストン〈William Eggleston〉, アメリカ)
U is for Utility – ユーティリティ (エミリー・プリア&パオロ・アクシオリ〈Emilie Pria and Paulo Accioly〉, フランス/ブラジル)
V is for Vegan – ヴィーガン (ウィル・スウィーニー〈Will Sweeney〉, イギリス)
W is for Womanhood – 女性であること (サム・テイラー・ジョンソン〈Sam Taylor-Johnson〉, イギリス)
X is for Kiss – キス (エド・ルシェ〈Ed Ruscha〉, アメリカ)
Y is for Youth – ユース(ジャーメイン フランシス〈Jermaine Francis〉, イギリス)
Z is for Zero Waste – ゼロウェイスト(ジョアナ・ヴァスコンセロス〈Joanna Vasconselos〉, ポルトガル)

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NY撤退後の「鎌倉シャツ」の課題 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。日本以上にコロナの影響が深刻な米国で、鎌倉シャツがニューヨークの店舗の閉鎖を決めた。当面はオンラインストアを受け皿にし、終息後の再出店の機会を伺う。日本ブランドの成功例といわれてきた同店の閉店は、コロナ下の米国小売業の厳しさを印象づけるものだった。

 メーカーズシャツ鎌倉(鎌倉シャツ)がニューヨークのマジソン・アベニュー店を年内で閉店すると発表した。2012年の進出以降、黒字を確保していたが、コロナによってマンハッタンの消費自体が壊滅的な影響を受ける中での決断だった。閉店の背景とコロナ後の課題を考えてみた。

NY撤退は避けられなかった

 鎌倉シャツは2012年10月30日にNYマジソン・アベニューに米国進出の1号店を開設した。続いて15年12月17日にはグラウンドゼロのブルックフィールドプレイスに2号店を開設したが、3年半後の19年9月15日に同店を閉店している。その段階で米国市場対応の難しさは見えていたはずで、コロナ禍による売り上げの激減で撤退を決断したと思われる。

 米国での鎌倉シャツの売り上げは、マジソンとブルックフィールドの2店舗体制だった19年5月期でも271万ドル(20%を占めるECも含む)に過ぎず、米国法人は投資に見合う収益には遠かったはずだ。コロナ禍のロックダウンで休業期間が4カ月にも及び、感染が収まらずリモートワークが定着してマンハッタンの人出は戻らず、売り上げは前年の10分の1という惨状だったから、撤退の決断はやむを得なかった。

 ではコロナ禍がなければ、いずれボストンやワシントンDCなど東海岸の諸都市にも店舗を広げ米国市場で一角を占める規模に成長できたかというと、それは難しかったのではないか。もしそんな勢いがあったならブルックフィールドの店舗を閉めてはいないし、進出から8年間もあったのだから3号店や4号店も出店していたはずだ。価格と品質のバランスを評価する手応えを感じても多店化するまでの勢いはなく、アウェイな米国事業を遠隔マネジメントする労力とコストは小さな会社には負担が大きかったと思われる。

 加えて、米国ビジネスウエア市場の変化も鎌倉シャツには逆風だった。ビジネスウエアのカジュアル化が加速してスーチング需要が激減しているのは日本と同様で、とりわけ伝統的な東部風ビジネススタイルに立脚するアパレル事業者の業績は近年、急速に悪化していた。そこにコロナ禍のロックダウンでわが国に倍する長期休業を強いられ、アメリカントラディショナルの大御所というべきブルックスブラザーズ(BROOKS BROTHERS)は7月8日、「米国の青山」ともいうべきテイラード・ブランズ(TAILORED BRANDS)も8月2日、連邦破産法11条を申請して破綻した。

ドレスシャツとワーキングシャツは違う

 米国のメンズウエア市場はわが国以上にカジュアル化が進んだ一方、階級意識もシリアスで、経営層の「スーツ」、中間管理職・現場監督層の「オフィサー」、労働者階級の「ワーカー」や「セールスマン」というビジネスウエアの階級区分がはっきりとある。「スーツ」はピッタリ仕立てのテーラードスーツと華奢なドレスシャツ、「オフィサー」はジャケットにタフなワーキングシャツとセンタープレス・スラックス、「ワーカー」はブルゾンやパーカにカジュアルパンツ、「セールスマン」は安手な吊るしの既製スーツ、というのが東海岸や中北部ではお約束になっている(自由な気風のカリフォルニアなどは異なる)。

 「スーツ」階級の着るテーラーメイドスーツは、ショーファー付きで汗して働くこともないから、ソフトな上質ウーステッド素材でかなりスリムに仕立てられている。合わせるテーラーメイドのドレスシャツも華奢な上質素材で、同様にスリムに仕立てられている。米国ドラマ「ホワイトカラー」の主人公、ニールのしなやかな着こなしを思い出してもらいたい。対して「セールスマン」の着る既製スーツは肉体労働も可能なようにフィットがややラフで、耐久力のある素材で手頃な値段に抑えてある。売っているところもロードサイドの「メンズ・ウエアハウス(MEN'S WEARHOUSE)」など、日本の青山商事やAOKIと変わらない。そんな「セールスマン」や「オフィサー」が着るのがワーキングシャツだ。

 テーラーメイドのドレスシャツに近い素材と造りの既製ドレスシャツとワーキングシャツは素材も造りも違う別物で、フィットも機能性も異なる。ドレスシャツは素材も華奢でしなやかだが胴回りや肩口、袖口などフィットがタイトで、体を動かして働く「オフィサー」や「セールスマン」には窮屈だ。「静」と「動」の違いといったら良いだろうか。

 鎌倉シャツはもとより「VAN」の血筋を引くトラッドマインドが通底しており、ノーネクタイでも着崩せる清潔感あるカジュアルさがあって、アイビースクール感覚が抜けないさわやかな大人を感じさせる。そこには「スーツ」や「オフィサー」「ワーカー」といった階級意識とは無縁のおおらかさがある。そんな鎌倉シャツにニューヨーカーたちはプレッピーの系譜を見たのかも知れないが、今日のシリアスな階級闘争を生きる「戦闘服」としては中途半端だったのかも知れない。「スーツ」階級のドレスシャツとしては華奢さが足りず、「オフィサー」のワーキングシャツとしてはタフさが足りない。前者にしては安価に過ぎ、後者にしては上質に過ぎたのだろう。

 わが国とはビジネスウエアの社会慣習が少なからず異なる米国市場では、品質と価格のバランスを評価する顧客は付いても、ビジネスウエアの社会慣習を変えるほどのインパクトはなかったと思われる。

日本の商品とビジネスにも負荷がかかった

 組織も資本も小さな鎌倉シャツにとって米国進出は夢ではあっても現実の経営は荷が重すぎ、日本の商品や経営にも負担が及んだのではないか。

 ニューヨーク進出直後から日本で展開する鎌倉シャツのフィットが微妙にスリムになり、米国事業の投資が嵩んでかベーシックシャツの価格が税別4900円から5900円になり、6900円とか7900円のベターラインが増えていった。創業間もない頃から愛顧してきた私など、これまで試着しなくてもおきまりのサイズを選べば済んでいたのが逐一、試着しないと買えなくなって戸惑った。ニューヨーカー風にスリムに着る若い顧客を取り込む効果はあったかも知れないが、馴染みの顧客は戸惑うばかりで、素材やデザインは目立って若返ることはなかったから疑問に思ったことを覚えている。

 日本のビジネスマンにとって既製ワイシャツは「コモディティ」であって、それぞれに買えるクラスは違っても、自分のご愛顧ブランドを決めて時々に好みの色柄を選び、値札も寸法も確かめることなくいつものサイズを買えば済むのが好ましい。忙しいときはECで済ましても良いし(鎌倉シャツは4分の1がEC売り上げ)、奥さんや秘書に代理購入してもらうのも容易だ。

 鎌倉シャツもグローバルなブランドになったのだから、フィットもニューヨーカー風にスリムになり、価格もブランドの付加価値(実際はコスト)が乗って多少は高くなっても仕方ないよね、と当時は思ったものだ。グローバルとローカル(実際は日本もNYもそれぞれローカル)のギャップやコストの上昇を解消しないまま、夢を追って19年11月7日に上海(上海は華南、北京は華北、2つのローカルがある)に進出して間もなく、コロナが襲ってさまざまな課題が露呈した。

コロナ禍のダメージと対策

 日本の鎌倉シャツの店舗はビジネス需要を狙ってターミナルやビジネス街に集中していたから、コロナ禍の直撃を受けた。緊急事態宣言下で1カ月半の休業を強いられ、リモートワークの定着もあって営業を再開しても顧客の戻りは限られた。ビジネスシャツの売り上げは3〜5月がピークなのに4月と5月の店舗売り上げがほぼゼロになり、メーカーズシャツ鎌倉の20年5月期売上は32億2900万円と前期の45億4700万円から29%も減少し、創業以来初めての減収となった。店舗スタッフを動員してのチャット接客で伸ばしたEC売り上げ※1、取り組み工場で急きょ作った布マスクの累計50万枚の売り上げはサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブに計上されたから、両社合計の売り上げはそこまで落ち込まなかったと思われる。

 高齢で引退した創業者の両親に代わり2月に企画・生産・EC運営のサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブ、5月に店舗販売のメーカーズシャツ鎌倉の代表取締役社長を引き継いだ長女の貞末奈名子氏は、両親の理念を受け継いで雇用と取引の継続に努め、店舗休業中の従業員給与を全額支給し、5月末の決算ボーナスも8月末との二分割にはなったが全額を支給。取り組み縫製工場に対しても布マスクの製造を発注して生産ラインの維持に尽力している。

 メーカーズシャツ鎌倉は営業外収益を計上して4割近い減益ながら4700万円の最終損益を確保し、決算が12月のサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブ(前期売り上げは51億7000万円)もEC売り上げが下支えして黒字が見込めると奈名子社長は「繊研新聞」のインタビューに答えている。サダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブの売り上げの過半はメーカーズシャツ鎌倉への商品納入とEC販売の代行であって重複しているが(残りは外部のOEM受注)、両社の連結実態は開示されておらず推測の域を出ない。

※1.EC売り上げの計上はサダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブで、メーカーズシャツ鎌倉への売り上げ計上は不明。

浮上した4つの課題

 そんな課題を見据え、貞末奈名子新社長は以下の3つの改革を進めようとしているのだと推察する。

(1) 製販両社の一体化によるチームVMI※2の機動化効率化、店舗とEC一体のC&C顧客利便と在庫効率の向上

(2) 出店の抑制と適正店舗規模への回帰、店舗運営と接客プロセスの再確立

(3) 創業の地「鎌倉」へ回帰しての新創業と会社組織の再構築

 サダ・マーチャンダイジングリプリゼンタティブはメーカーズシャツ鎌倉への適時適品供給の一方、取り組み11工場の稼働率にも配慮して外部のOEM受注を確保するという両面対応を求められ、必ずしもメーカーズシャツ鎌倉へのVMI供給に徹していたわけではないし、ECも店在庫を引き当てての店受け取りや店出荷というC&Cまでは実現できていなかった。製販一体のようで二人羽織のような一面もあったのではないか。だからこそ、遠からずの組織一本化を考えているのだろう。

 出店立地や店舗規模、VMDや運営スタイルも再検討する必要がある。ターミナルやビジネス街に集中する出店はコロナで壁に当たり、郊外ターミナルなど生活圏立地に布陣する品ぞろえと店舗スタイルの確立が急務だし、少人数運営の小型店で後方ストックに多頻度に出入りする在庫運用は鎌倉シャツの原点から乖離している。鎌倉シャツの効率を実現したサイズ別ボックスVMDと店舗運営が崩れているという危機意識はないのだろうか。

 奈名子社長は米国事業も中国事業も担当して、商品でも物流でも店舗運営でもローカルギャップを痛感したはずから、「鎌倉」回帰は国内完結を志向したものという受け止め方もできる。上海の店舗は好調で撤退など考えないだろうし、ニューヨーク再進出の夢も捨ててはいないだろうが、多店化して一定の事業規模まで伸ばすつもりなら商品と物流のローカル対応は必須で、投資も手間もかさむ。コロナ禍のダメージの中、限られた資産や人材をどこに集中するかも問われよう。

 コロナ後を見据えるなら

(4) 需要の衰退が避けられないビジネスシャツをカバーする新アイテムの拡充

も急がれよう。それも取り組み工場の生産ラインで効率的に作れるものに限られるから、シャツの派生アイテムになる。単仕立てのシャツジャケットやシャツコート、パジャマやシャツガウン、ネルシャツやワークシャツ、夏場はアロハやカリユシ、ということになるのだろうか。それをシャツ同様の陳列・販売プロセスと製販一体のウィークリーVMIで回す仕組みを築き上げるとしたら、非効率な海外事業に時間も費用も割く余裕は到底ないはずだ、と思うのは外野の老婆心に過ぎるだろうか。

※2.VMI(Vendor Managed Inventory)……あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに補給と在庫管理を委任する取引形態

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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今週のスケジュール(2020年10月5日〜2020年10月11日)

FASHION

4 MON
アシックス
アシックス事業説明会(第3回インベストメントデイ)
13:00〜14:00 
オンライン

BEAUTY

8 THU
ブルーベル・ジャパン
「ボン パフューマー」プレスイベント (9日も開催)
11:00~/16:30~
ブルーベル・ジャパン株式会社
(東京都港区南青山2-2-3 南青山M-SQUARE 6F)

マッシュビューティーラボ
ビープルフェス(9日も開催)
11:00~20:00
マッシュグループ本社2F
(千代田区麹町5-7-1 ダイビル)

9 FRI
ポーラ
新「リンクルショット メディカル セラム」製品発表会
11:00〜/13:00〜/15:00〜
オンライン

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デザイナーの高田賢三が死去 新型コロナウイルス感染で

 「ケンゾー(KENZO)」の創業者でもあるファッションデザイナーの高田賢三氏が4日、新型コロナウイルスの合併症により、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌにあるアメリカン・ホスピタルで死去した。81歳だった。

 高田氏は1939年兵庫県生まれ。文化服装学院を卒業後、64年に渡仏。その後、「ケンゾー」の前身となる「ジャングル・ジャップ(JUNGLE JAP)」を立ち上げた。93年にはLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton)にブランドを売却し、99年に同ブランドのデザイナーを退任。2020年1月にはラグジュアリーホームウエア&ライフスタイルブランド「K3」を立ち上げていた。

 「ケンゾー」が属するLVMHファッショングループのシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)会長兼最高経営責任者は、「私は彼が70年代にスタートしたブランドのファンだった。彼は素晴らしいデザイナーだったと思う。とても悲しい」とコメント。また、高田氏は「『ケンゾー』のチームをサポートしていた」と述べ、2月には現在同ブランドを手掛けるフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)新クリエイティブ・ディレクターによる初のショーにも来ていたと話した。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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