ユニクロ「+J」仕掛け人に聞く ジル・サンダー氏との“伝説のコラボ”復活の経緯とは?

 ユニクロは11月13日、デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏とのコラボレーションライン「+J」を発売する。同コラボは2009年10月1日のパリ・オペラ旗艦店オープンに合わせてスタートし、11年秋冬まで5シーズン継続。今回は9年ぶりの販売となる。サンダー氏以降、同社はパリR&Dセンターを率いるクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)を始め、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)など、世界のトップデザイナーとの協業を重ねてきた。数々のコラボを担当してきた勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者に、サンダー氏との“再会”について聞いた。

WWD:今回のコラボレーションは約1年前から準備を進めていたと聞いたが、なぜこのタイミングで復活することになったのか。
勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):前回のコラボが終了した11年以降も、実は2年に1度くらいの頻度でサンダー氏とは会っていた。3年前に(サンダー氏の出身地)ドイツ・ハンブルクで行われたサンダー氏の展覧会にも足を運んでおり、折々で「またいつか一緒にできたら」という話はしていた。「ユニクロ(UNIQLO)」は先月、ハンブルクに旗艦店をオープンしたが、その出店はコラボ復活のきっかけの一つになっている。出店が決まった時点でサンダー氏に報告し、昨年プロジェクトが動き出した。
09年当時は「ユニクロ」の海外での知名度はまだまだ低かったが、今では店舗数も売上高も海外が国内を上回り、われわれの立ち位置は11年前と大きく変わっている。コロナ禍で残念ながら東京五輪は延期となったが、2020年は世界中のさまざまな人にとってターニングポイントになると思い、ここからもっともっと世界中の皆さんに喜んでもらう服作りをしていきたいと考えた。それが、未来に向かってコラボの第2章を実現しようと決めた背景だ。

WWD:「+J」以降、「ユニクロ」はさまざまなデザイナーと取り組みを重ねてきた。その中でもやはりサンダー氏とのコラボは思い入れが深いのか。
勝田:どのデザイナーと組んでも、毎回毎回目からウロコが落ちるような気づきがある。中でもサンダー氏は、われわれがグローバル化できるかどうかまだ分からない09年のタイミングで一緒に取り組んでくれた相手。上質で長く着られる服を作ろう、それは値段とは関係ない、という考え方に理解を寄せてくれた。当時、サンダー氏と「ユニクロ」という取り合わせには世の中がびっくりしたが、そんな中でコラボすると決めてくれたサンダー氏に僕は感謝と敬意を込めた特別な思いがあるし、それは柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)も同じだと思う。

WWD:サンダー氏を始めとしたデザイナーと取り組むことは、「ユニクロ」の通常ラインにどんな効果をもたらすのか。
勝田:(コラボによって追求されたディテールや仕様などが)通常ラインのデザインに生かされる部分もあるが、一番強く感じるのはチームの学びの部分だ。今回のコラボで言えば、サンダー氏のデザインへの向き合い方や考え方、徹底的に追求する姿勢は無形ではあるが、大きな財産としてチームの中にしっかり残っていく。
2度目のコラボということでお互いに分かっているだろうという気持ちで企画に入ったが、品質、デザイン、仕上げなどさまざまな面で、改めて「さすがだ」「われわれはそこまでは到達していなかった」と感じる部分は多かった。サンダー氏は常に限界を超えて追求しているからこそいい商品ができるんだとチームみなが肌で感じたし、その姿勢を通常ラインにも持っていけば、「ユニクロ」としてやれることはまだまだたくさんある。サンダー氏は「まだまだできる!」と徹底的に追求していくので、われわれは千本ノックを受けているような気分だった(笑)。大変だったけれど楽しくて、充実感に満ちていた。デザイナーとの取り組みでは、いつもこのように学ばせてもらっている。

WWD:サンダー氏と取り組むことで、具体的にはどういった部分が変わるのか。
勝田:それは企業秘密だが、実はそんなに複雑なことではない。でも、言われてみればそこまでは気が回っていなかったな、という部分だ。一つの工程、一つの考え方で、仕上がりがこれほどまで変わるのかと驚かされる。通常ラインの商品と同じ生地屋、同じ縫製工場で生産しているのに、「ああして」「こうして」と言う人が変わるだけで、できあがる素材や商品は全く異なるものになる。やはり違いを生むのは人のディレクションであり、どこまでこだわるか、細かく見るか、チェックするかという部分なんだと思う。

WWD:多くのトップデザイナーと取り組む一方で、「ユニクロ」は“ボイス・オブ・カスタマー(以下、VoC)”と呼ぶ、客の声を生かしたモノ作りにも力を入れている。その2つはどう関わりあっているのか。
勝田:デザインはアウトプットであり、VoCはインプットだと思っている。お客さまにどういうものが必要とされているか、または必要とされていないかを目の当たりにしていくのがVoCだ。ただ、お客さまから聞いた話をそのまま商品にするというのでは物足りない。声をもとにして、どんなデザインにしていくのかを考える。だから、デザイナーとの取り組みとVoCは別の話というわけではない。お客さまの声は常に聞いていて、その声に対してサンダー氏などの外部デザイナーや社内デザイナーが、今できる最高の形を出していく、ということだ。

WWD:最初のコラボからは11年が経った。この間を振り返って、R&D(リサーチ&デベロップメント)部門としての到達点と課題は何か。
勝田:R&Dにゴールはない。お客さまの要望や需要を理解しながら、いかにアウトプットしていくか。モノを形にしていく作業には、ここまでやればOKという指標がない。今日いいものができたと思っても、次の日にはもっといいものがあるんじゃないかとなる。シンプルなもの一つ一つをよりよくしていくことが、われわれが掲げる“LifeWear”のデザインのあり方。もっともっと上があるんだと追求していく姿勢は、09年当時よりも社内で強くなっていると思う。「+J」の後にもさまざまなデザイナーと知り合い、いろいろな経験をしてきたつもりだが、まだまだやるべきこと、勉強することはたくさんある。もっといいデザインを追求していかなければならないという意識が強まっている。

WWD:話題のコラボだけに、今回の「+J」がどれくらい在庫を積んでいるかも気になる。また、コラボはいつまで続くのか。
勝田:どちらも公表はしていない。生産数量については、求めていただける方にはお届けしたいという気持ちと、ニーズを読み間違えて残してはいけないという気持ちの両方がある。ただ、全商品を扱うのは国内では48の店舗とECだが、マスターピースと考える一部の商品は国内全店舗で販売することになっている。それは前回のコラボ時とは異なる点だ。今回は品番もかなり厳選しており、どれ一つとっても完成している。「10年分買っておいたら?」と薦めたくなる商品ばかりだ。

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ユニクロ「+J」仕掛け人に聞く ジル・サンダー氏との“伝説のコラボ”復活の経緯とは?

 ユニクロは11月13日、デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏とのコラボレーションライン「+J」を発売する。同コラボは2009年10月1日のパリ・オペラ旗艦店オープンに合わせてスタートし、11年秋冬まで5シーズン継続。今回は9年ぶりの販売となる。サンダー氏以降、同社はパリR&Dセンターを率いるクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)を始め、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)など、世界のトップデザイナーとの協業を重ねてきた。数々のコラボを担当してきた勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者に、サンダー氏との“再会”について聞いた。

WWD:今回のコラボレーションは約1年前から準備を進めていたと聞いたが、なぜこのタイミングで復活することになったのか。
勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):前回のコラボが終了した11年以降も、実は2年に1度くらいの頻度でサンダー氏とは会っていた。3年前に(サンダー氏の出身地)ドイツ・ハンブルクで行われたサンダー氏の展覧会にも足を運んでおり、折々で「またいつか一緒にできたら」という話はしていた。「ユニクロ(UNIQLO)」は先月、ハンブルクに旗艦店をオープンしたが、その出店はコラボ復活のきっかけの一つになっている。出店が決まった時点でサンダー氏に報告し、昨年プロジェクトが動き出した。
09年当時は「ユニクロ」の海外での知名度はまだまだ低かったが、今では店舗数も売上高も海外が国内を上回り、われわれの立ち位置は11年前と大きく変わっている。コロナ禍で残念ながら東京五輪は延期となったが、2020年は世界中のさまざまな人にとってターニングポイントになると思い、ここからもっともっと世界中の皆さんに喜んでもらう服作りをしていきたいと考えた。それが、未来に向かってコラボの第2章を実現しようと決めた背景だ。

WWD:「+J」以降、「ユニクロ」はさまざまなデザイナーと取り組みを重ねてきた。その中でもやはりサンダー氏とのコラボは思い入れが深いのか。
勝田:どのデザイナーと組んでも、毎回毎回目からウロコが落ちるような気づきがある。中でもサンダー氏は、われわれがグローバル化できるかどうかまだ分からない09年のタイミングで一緒に取り組んでくれた相手。上質で長く着られる服を作ろう、それは値段とは関係ない、という考え方に理解を寄せてくれた。当時、サンダー氏と「ユニクロ」という取り合わせには世の中がびっくりしたが、そんな中でコラボすると決めてくれたサンダー氏に僕は感謝と敬意を込めた特別な思いがあるし、それは柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)も同じだと思う。

WWD:サンダー氏を始めとしたデザイナーと取り組むことは、「ユニクロ」の通常ラインにどんな効果をもたらすのか。
勝田:(コラボによって追求されたディテールや仕様などが)通常ラインのデザインに生かされる部分もあるが、一番強く感じるのはチームの学びの部分だ。今回のコラボで言えば、サンダー氏のデザインへの向き合い方や考え方、徹底的に追求する姿勢は無形ではあるが、大きな財産としてチームの中にしっかり残っていく。
2度目のコラボということでお互いに分かっているだろうという気持ちで企画に入ったが、品質、デザイン、仕上げなどさまざまな面で、改めて「さすがだ」「われわれはそこまでは到達していなかった」と感じる部分は多かった。サンダー氏は常に限界を超えて追求しているからこそいい商品ができるんだとチームみなが肌で感じたし、その姿勢を通常ラインにも持っていけば、「ユニクロ」としてやれることはまだまだたくさんある。サンダー氏は「まだまだできる!」と徹底的に追求していくので、われわれは千本ノックを受けているような気分だった(笑)。大変だったけれど楽しくて、充実感に満ちていた。デザイナーとの取り組みでは、いつもこのように学ばせてもらっている。

WWD:サンダー氏と取り組むことで、具体的にはどういった部分が変わるのか。
勝田:それは企業秘密だが、実はそんなに複雑なことではない。でも、言われてみればそこまでは気が回っていなかったな、という部分だ。一つの工程、一つの考え方で、仕上がりがこれほどまで変わるのかと驚かされる。通常ラインの商品と同じ生地屋、同じ縫製工場で生産しているのに、「ああして」「こうして」と言う人が変わるだけで、できあがる素材や商品は全く異なるものになる。やはり違いを生むのは人のディレクションであり、どこまでこだわるか、細かく見るか、チェックするかという部分なんだと思う。

WWD:多くのトップデザイナーと取り組む一方で、「ユニクロ」は“ボイス・オブ・カスタマー(以下、VoC)”と呼ぶ、客の声を生かしたモノ作りにも力を入れている。その2つはどう関わりあっているのか。
勝田:デザインはアウトプットであり、VoCはインプットだと思っている。お客さまにどういうものが必要とされているか、または必要とされていないかを目の当たりにしていくのがVoCだ。ただ、お客さまから聞いた話をそのまま商品にするというのでは物足りない。声をもとにして、どんなデザインにしていくのかを考える。だから、デザイナーとの取り組みとVoCは別の話というわけではない。お客さまの声は常に聞いていて、その声に対してサンダー氏などの外部デザイナーや社内デザイナーが、今できる最高の形を出していく、ということだ。

WWD:最初のコラボからは11年が経った。この間を振り返って、R&D(リサーチ&デベロップメント)部門としての到達点と課題は何か。
勝田:R&Dにゴールはない。お客さまの要望や需要を理解しながら、いかにアウトプットしていくか。モノを形にしていく作業には、ここまでやればOKという指標がない。今日いいものができたと思っても、次の日にはもっといいものがあるんじゃないかとなる。シンプルなもの一つ一つをよりよくしていくことが、われわれが掲げる“LifeWear”のデザインのあり方。もっともっと上があるんだと追求していく姿勢は、09年当時よりも社内で強くなっていると思う。「+J」の後にもさまざまなデザイナーと知り合い、いろいろな経験をしてきたつもりだが、まだまだやるべきこと、勉強することはたくさんある。もっといいデザインを追求していかなければならないという意識が強まっている。

WWD:話題のコラボだけに、今回の「+J」がどれくらい在庫を積んでいるかも気になる。また、コラボはいつまで続くのか。
勝田:どちらも公表はしていない。生産数量については、求めていただける方にはお届けしたいという気持ちと、ニーズを読み間違えて残してはいけないという気持ちの両方がある。ただ、全商品を扱うのは国内では48の店舗とECだが、マスターピースと考える一部の商品は国内全店舗で販売することになっている。それは前回のコラボ時とは異なる点だ。今回は品番もかなり厳選しており、どれ一つとっても完成している。「10年分買っておいたら?」と薦めたくなる商品ばかりだ。

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「ヨウジ」に称賛を送り「エルメス」「パコ ラバンヌ」に心打たれる 仏メディアはパリコレをこう見た

 未来は予測不可能である――パンデミックの経験から得た教訓の一つだ。まさかこれほど静かなシーズンになるとは予想していなかった。3月のパリ・ファッション・ウイークの時点では、新型コロナウイルス感染拡大の影響でアジアからの渡航者こそ少なかったものの、フランス国民は対岸の火事として楽観的に捉えていた。医療崩壊の危機が迫り、ロックダウンが施行されたのはパリコレが閉幕したわずかその数日後である。夏には落ち着くかと思われたが、9月には第2波を警戒して渡航制限が行われ、10月にはまたロックダウンが始まった。生活の自由が再び奪われたことで、未来に希望を抱くことさえ諦めかねない暗いムードが街を覆った。そんな異例の状況下で、2021年春夏シーズンのパリコレは開催された。デザイナーは自宅でどのようにクリエーションを磨き、リモートで制作したのだろうか。リアルのショーに参加した仏メディアの講評を抜粋した。

YOHJI YAMAMOTO
「いつものように、心地よい喪失感」

 変化を強いられる社会環境下で、人々はファッションの“変わらない価値”に安心感を覚えるようだ。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」と「シャネル(CHANEL)」はその点で評価が高かった。山本耀司デザイナーは、リスク覚悟で日本から約11時間のフライトを経てパリでショーを行った。ショー翌日の10月3日に77歳の誕生日を迎えたベテランのアクションに、称賛の声が寄せられた。仏新聞紙「ル フィガロ(Le Figaro)」は「いつものように、心地よい喪失感に満ちていた。いつものように、フィナーレでデザイナーは幸せそうな顔で挨拶した。ビズ(挨拶や祝意を表して行われる頬を付け合わせる行為)は控えなければならないが、祝福に値する価値ある内容だった」と表現した。仏ウェブメディア「ファッション・ネットワーク(FASHION NETWORK)」のゴドフリー・ディーニー(Godfrey Deeny)は「ドレープの芸術的技術を習得している人物は山本耀司以外存在しない」と唯一無二のクリエーションを称えた。さらにディーニーが山本デザイナーに渡仏を躊躇したかを聞くと「いいえ、全く。パリコレが行われると聞いてすぐ『よし、行こう!』と言いました」と答えたと綴っている。山本デザイナーは1981年に初めてパリでショーを行い、来年で40年目を迎える。心意気と技術と継続する力、そしてデザイナーとしての生き様に脱帽した。

CHANEL
「派手ではないが、時代を超越している」

 「シャネル」は通常2000人の招待客を500人に減らし、例年通りグラン・パレを会場に選んだ。施設は間もなく大規模な改修工事に入るため、現在の様相で行われるのは今季が最後となる。10月1日からパリのガリエラ美術館では、創設者ガブリエラ・シャネル(Gabrielle Chanel)の回顧展が開催されており、約350点のアーカイブが展示されている。クリエイティブ・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)はショー開催までにすでに2回も訪れたという。創設者シャネルが築いた知的で実用的、エレガンスのアプローチは、ヴィアールによって今季の「シャネル」で見事に表現された。仏新聞紙「ル・モンド(LE MONDE)」は「ツイードや白黒カラーの遊び、ロゴの流用は全てブランドが信頼を置く柱である。今回のショーでは、何十年にも渡ってスタイルに一貫性をもたらす『シャネル』コードの強さを強調した。パッチポケットが付いた黒いスーツスカートのように、最も美しい作品は派手ではないが説得力があり、時代を超越している」と評価した。「ファッション・ネットワーク」はヴィアールの言葉を掲載。「若返りを求めたり、20歳の女性に50歳の成熟さを表現してほしいとは思いません。みんなガブリエラ・シャネルになってほしいだけなのです。私は常に“彼女はこれを着るだろうか?”と自問しています」と、創設者が自分の着用したい服を作り続けたクリエーションの背景に立ち返ったことをヴィアールは語った。「ロブス(L’OBS)」のソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)もコレクションがブランドのDNAを継承していると評価した。「カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のようなユーモアに溢れた現実逃避の魔法はないが、それは問題ではない。人々がアパートかホテルの部屋にこもっている今、ファンタジーへアクセスするよりも、これらの衣服を着用したいという現実的な欲求を呼び起こす。それは生きる欲求でもある。ヴィアールは創設者シャネルが提唱した“欲望の目覚め”を継承しているのだ」。

CHLOE
「ロックダウン中に才能を解放したかのよう」

 「クロエ(CHLOE)」と「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」も、シンプルに着てみたいという欲求を掻き立てるリアルクローズだった。特に「クロエ」は演出も素晴らしかった。パレ・ド・トーキョーの会場周辺の道を歩いたり、会話を楽しんだり、セーヌ川を見るモデルを隠し撮りしたようなリアルタイムの映像が会場中央の巨大スクリーンに映し出された。会場内に四方八方から人が入場し、中央で交差する様子はパリの街角の風景とオーバーラップした。「ル・モンド」は「着用しているのはファッショナブルな未知の衣服ではなく、日常生活向けに構成された巧妙なアイデアが光る服。慣れ親しんだそれらを観察していると、自分自身を簡単に投影することができた」と綴った。コレクションとショーの演出はパリの街並みを恋しくさせるとともに、日常がいかに尊い存在であるかを物語っているようだった。「ロブス」のフォンタネルも「身近な衣服は実生活という意味で美しかった。まるでロックダウン中にナターシャ・ラムゼイ=レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)は隠していた才能を解放したかのようだ。リブニット、コットンチュニック、ワイドパンツなど全部着てみたい!」と、欲求を相当くすぐられたようである。個人的にはクリエイティブ・ディレクター、ラムゼイ=レヴィによる衣服とスタイリングは柔らかさと強さ、反抗的な精神が伴っていて好きなのだが、ビジネスの核となるバッグやシューズのアクセサリーにアイコニックで売れ筋となりそうなアイテムがまだ見当たらないことが懸念点である。

PACO RABANNE
「これは連想ゲームである」

 「パコ ラバンヌ」クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)の評価は右肩上がりである。売り上げは17年から2年で3倍に伸ばし、今年3月にはパリのフォーブールサントノレ通りにテクノロジーを生かした新コンセプトの店舗をオープンした。前季はジャンヌ・ダルクに着想を得た幻想的なコレクションだったが、今季はドッセーナがロックダウン中にパリの日常に思いをはせ、街中で見かけるパリジェンヌの装いに着目したリアルクローズを披露した。「ル・モンド」は「これは連想ゲームである」と説明する。「色落ちしたジーンズはスーパーマーケットへ行くためのもので、スリットが入ったスカートは友人とアペリティフを楽しむため、テーラードジャケットは仕事の面接を受けるためなど、日常を思い起こさせる」。またランジェリーを日常着として着用するアイデアはフェミニズムの観点から批判を受けることもあるが、これにはデザイナーの強い意志が込められていたようだ。ドッセーナは同紙に対し「『パコ ラバンヌ』の一貫したテーマは女性を力強くすること。誇張された曲線と少し攻撃的な装いで女性らしさを意識しました。他人の好みに従わず、自分が好きな服を着用する勇気のある女性と対話しているのです」と述べている。その言葉通り、内側からにじみ出す官能とそれを楽しむ女性像が表現されていたし、ナチュラルなメイクと無造作なヘアがその雰囲気をさらに後押しした。ショーの後、エディ・スリマン(Hedi Sliman)が「セリーヌ(CELINE)」のデビューコレクションで披露したミニスカートや、胸元が大きく開いた服に対してアメリカのジャーナリストは「フェミニズムを侮辱している」と批判したのに対し、フランスのジャーナリストは「女性は自分のために好きな服を着たいだけ」と擁護した一件を思い出した。今季の「パコ ラバンヌ」のコレクションに対しても、賛否両論が起こっているのかもしれない。

HERMES
「これまで前例のない官能性」

 「パコ ラバンヌ」とは異なる手法で官能性を表現したのは「エルメス(HERMES)」だ。アメリカのジャーナリストに批判する余地を与えないほど、極めて上品に官能さが香り立つコレクションであった。仏新聞紙「ル・フィガロ(LE FIGARO)」は「厳格さと官能性を併せ持つコレクション」だと述べ、「最上級に上質な素材を用いているにもかかわらず冷たさはなく、親しみと温かさを持つ内容だった。確固としたエレガンスへの意志と、自由で柔軟な女性像を呼び起こす」と称賛した。「ル・モンド」も同様の見解のようだ。「背中の美しさを惜しみなくあわらにし、ローカットのボディースーツが腰を露出し、ストラップ付きのスリットスカートが脚を解放し、柔らかい革は女性特有の曲線的な身体を抱きしめる。ベーシックなカラーと上質な素材で心地良く、これまで前例のない官能性が表現されている」。

 ナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)「エルメス」アーティスティック・ディレクターは今回、12人の親しいアーティストと共にコラージュ作品を制作して会場を装飾した。このようなコラージュのアイデアは「クロエ」や「ディオール」など、今季のパリコレで多く見られた。コラージュは、異なるもの同士を調和させる手法である。人々の視点や思考も分断するものではなく、調和させることで再び新しい形が生まれるーー私たちがこれから向かうべき世界を示唆しているのではないかと感じた。

ファッションが教えてくれた希望の力

 今年を振り返ると、噛み合わないファスナーをいつまでもこねくり回して時間を無駄にしたような気分だった。きっと、自分の手には負えない問題にばかり気を取られていたからだろう。現在も新型コロナウイルスやテロの脅威が迫っているため未来を楽観することが難しく、不安は大きくなるばかりだ。パリコレでもなじみの人々に会えず、街の静けさに空虚さを覚えることもあった。しかしパリコレが終わってみると、充実感と希望でいっぱいになっている自分がいた。理想とするパリコレではなかったかもしれないが、ときに現実は理想よりも素晴らしいこともあるのだ。プレゼンテーションを行った「ロエベ(LOEWE)」の芸術美に涙しそうになった。「ロンシャン(LONGCHAMP)」がパリの日曜のブランチを再現した演出で心に平穏がもたらされた。「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」の魔法がかかった空間で白昼夢にひたった。コレクションの良し悪し以上に、その背景にある“理想を求めて何かを生み出そうとする人々の力”に心を揺さぶられた。この先もしばらくは未来への不安が消えることはないだろう。しかし明日に期待し、理想の実現に向けて進む過程は決して無駄にはならないということをファッションは教えてくれた。現在が過去になる頃には良い思い出、悪い思い出、心が引き裂かれた経験の全てを寄せ集めて、自分なりの美しいコラージュ作品ができるのだろうか――今は未来に希望を持ちたい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「ベドウィン」の渡辺ディレクターによる「デイズ」が初の展覧会を開催 アーティストに西山徹を起用

 渡辺真史ディレクターが手掛けるセレクトショップ「デイズ(DAYZ)」は、展覧会“THE TRUTH IS OUT THERE”を東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」のサイギャラリー(SAI GALLERY)で11月13〜29日に開催する。今回、「フォーティーパーセント アゲインストライツ(FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS、以下FPAR)」の西山徹デザイナーをアーティストとして迎えいれた。

 作品は、「FPAR」のアーカイブとビンテージのタイダイTシャツをドッキングし、そこにブリーチ加工やスクリーンプリントを加えたロングTシャツ、マスクを収納したクリアバッグにラベルや“Know your enemy”の刺しゅうを施したもの、コットンジャージーをキャンバスに見立てて製作したスクリーンなどを展示した。作品を担当した西山デザイナーは、「渡辺ディレクターの『東京のストリートシーンを伝承していきたい』という強い思いに共感し参加させていただいた。『ミヤシタパーク』を訪れた人たちには、ぜひ見てもらいたい」と語った。

 また展覧会の開催を記念して、“BEYOND THE CHAOS SHALL BE THE TRUTH.”をフロントにプリントしたTシャツ(6000円)やベースボールキャップ(7000円)、マスク(3500円)を「デイズ」で販売する。

 今回のイベントに合わせ、東京カルチャーを世界に発信していくオンラインマガジン「デイズ アーカイブ(DAYZ ARCHIVES)」を11月13日11時にスタートする。“東京発世界行きのムーブメントをベースに、現在のカルチャーを切り取る”をコンセプトに、ファッションやアート、音楽、フードなど渋谷にまつわるローカルカルチャーを発信していく。

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「ベドウィン」の渡辺ディレクターによる「デイズ」が初の展覧会を開催 アーティストに西山徹を起用

 渡辺真史ディレクターが手掛けるセレクトショップ「デイズ(DAYZ)」は、展覧会“THE TRUTH IS OUT THERE”を東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」のサイギャラリー(SAI GALLERY)で11月13〜29日に開催する。今回、「フォーティーパーセント アゲインストライツ(FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS、以下FPAR)」の西山徹デザイナーをアーティストとして迎えいれた。

 作品は、「FPAR」のアーカイブとビンテージのタイダイTシャツをドッキングし、そこにブリーチ加工やスクリーンプリントを加えたロングTシャツ、マスクを収納したクリアバッグにラベルや“Know your enemy”の刺しゅうを施したもの、コットンジャージーをキャンバスに見立てて製作したスクリーンなどを展示した。作品を担当した西山デザイナーは、「渡辺ディレクターの『東京のストリートシーンを伝承していきたい』という強い思いに共感し参加させていただいた。『ミヤシタパーク』を訪れた人たちには、ぜひ見てもらいたい」と語った。

 また展覧会の開催を記念して、“BEYOND THE CHAOS SHALL BE THE TRUTH.”をフロントにプリントしたTシャツ(6000円)やベースボールキャップ(7000円)、マスク(3500円)を「デイズ」で販売する。

 今回のイベントに合わせ、東京カルチャーを世界に発信していくオンラインマガジン「デイズ アーカイブ(DAYZ ARCHIVES)」を11月13日11時にスタートする。“東京発世界行きのムーブメントをベースに、現在のカルチャーを切り取る”をコンセプトに、ファッションやアート、音楽、フードなど渋谷にまつわるローカルカルチャーを発信していく。

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「ステューシー」 × 「CDG」カプセルコレクション発売

 今年設立40周年を迎えた「ステューシー(STUSSY)」は11月13日に、コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)の「CDG」とのカプセルコレクションを発売する。「ステューシー」直営店やオンラインストア、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で扱う。

 アイテムは、ミリタリーグリーンで仕上げたサテンナイロンのMA-1や、ピンストライプのセットアップ、両ブランドのロゴを施したTシャツのほか、ビーチパンツ、バケットハット、トートバックなどをラインアップした。

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スワロフスキーが従業員の2割にあたる6000人を削減

 オーストリア発クリスタルメーカーのスワロフスキー(SWAROVSKI)が従業員6000人を削減する。米「ブルームバーグ(BLOOMBERG)」によると、この数字は同社の従業員の約2割に相当する。世界に約3000店舗あるブティックの数も減らす意向だ。ロバート・ブッフバウアー(Robert Buchbauer)スワロフスキー社最高経営責任者(CEO)は、「創業一族と収益の低いビジネスを縮小して収益の高いジュエリービジネスに注力することについて議論してきた。ビジネスにおける新戦略と効率化がゴールだ」とコメントしている。一族はその戦略に反対し法的措置を取ろうとしているようだが、約8割の株主がブッフバウアーCEOに賛同しため変革を進める結果になった。

 新体制により、新製品、人事、投資などにおける迅速な決定が可能になるが、創業一族との軋轢は継続しそうだ。同CEOは、「ラグジュアリー企業としての存続が危ぶまれる中、株式売却かパートナーを探すことで資本金を確保するべきだ」と述べている。

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エスモードの学生が「ユニクロ」の着なくなったダウンをアップサイクル

 ファッション専門学校のエスモードジャポンはこのほど「ユニクロ(UNIQLO)」と協働し、エスモードジャポンの学生が「ユニクロ」の着なくなったダウンをモードにアップサイクルするサステナブルプロジェクトを始動した。

 同企画は、エスモードジャポンが「ユニクロ」の全商品をリサイクル、リユースする取り組みRE.UNIQLO(リ・ユニクロ)に賛同し、2020年4月に開始したもの。同企画に参加した学生は、ユニクロ商品部MD部長の斎藤源太郎氏によるサステナブルセミナーを受講し、さらに「ユニクロ」が店頭回収したダウンを用いたオリジナル作品を製作した。2回の審査を経て選出された4作品は10月31日からの5日間、ユニクロ原宿店にて展示された。

 「ユニクロ」の公式ツイッター上で実施した人気投票の結果、1位に選ばれたエスモードジャポン1年生の杉原慶さんは「授業を通して『ユニクロ』の取り組みを知り、環境問題に興味を持つようになった。子どもの頃から今も家族で着ている『ユニクロ』とコラボできると知り、この企画に参加した。作品はポケットや裏の始末、身ごろをそのまま活用し、『ユニクロ』が掲げる“LifeWear”のテーマのもと、日常生活でも着られるようなデザインにこだわった。今後は環境問題やサスティナビリティはもちろん、洋服の可能性をもっと考え勉強し、着る人の暮らしが豊になるような服を作りたい」と語った。

 エスモードジャポンは、ファッションを通して持続可能な社会を実現するためにサステナブル教育をカリキュラムに取り入れ、持続可能で責任あるクリエーションができるデザイナー、パタンナーとして次世代を担う人材の育成に力を入れる。

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三越伊勢丹HD、命運かけた「再生プラン」 1対1のオンライン販売に活路

 三越伊勢丹ホールディングスは2020年4〜9月期、367億円の最終赤字に沈んだ。これを受け、来期を最終年度とする中期経営計画(営業利益500億円)を取り下げる。21年5月にはリアル店舗の抜本的な改革やデジタル化の加速などを盛り込んだ新中期計画「再生プラン」および長期計画を発表し、以降の巻き返しを図る。カギになるのはオンライン上での「ワン・トゥ・ワン(1体1)」の接客だ。

 中期計画の詳細はこれから詰める段階だが、最優先事項の一つがECやビデオ接客による「オンライン販売」の強化だ。オンライン販売の売上高は21年3月期に310億円での着地を見込んでいるが、22年3月期はこれを目標値400〜450億円に設定し、デジタル施策の推進でこれをさらに上振れさせられるとみる。

 トライアル中の新アプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」では予約制でのビデオ接客機能に加え、紹介した商品をそのまま購買できる導線設計を可能にした。同社のEC「三越伊勢丹オンラインストア」の掲出商品数は、今期末までに伊勢丹新宿本店のSKUの8割以上に当たる15万型に到達する。来期以降は商品ページの充実など「質と効率」の向上でさらなる成長を見込む。これらの施策により、22年3月期末までにデジタル会員は10月末から約2倍の300万人、アプリ会員は200万人を計画する。

 同社の百貨店事業の20年4〜9月期売上高は前年同期比43.1%減の3051億円、営業損益は212億円の赤字。「(新型コロナによる)最悪の状況は脱しつつある」(同社)としながらも、影響の長期化も見越して10月〜3月は販管費の削減(7 月から80億円減を想定)によるダメージ抑制、子会社三越不動産の売却など(特別利益150億円)による手元資金の増強で守りを固めており、来期から反転攻勢の構えだ。杉江俊彦社長は「(新型コロナが収束しても)リアル店舗の売上高は今後完全に戻ることはない」とした上で、これまでデジタルからリアル店舗への送客を主眼に置いていた方針を見直し、来客を前提としない販売を強化する姿勢を示した。

 リアル店舗に目を向けると、基幹3店で進めてきた大型改装は一旦凍結している。「だが、お客さまが望まれるMDに変えることは使命感を持ってやっていかねばらならない。細かいレベルでの入れ替えは進める。大型案件に関しても、コロナの状況を慎重に見つつ、お取引先様との交渉を再開したい」とする。

 子会社の三越伊勢丹が運営する首都圏店舗では、非効率な売り場の見直しなど運営体制の改善で人員の20%削減を達成。今後はこの運営モデルを全事業会社へ水平展開する。「集客力がある売り場であっても、収益性が低ければ見直しをかけていく」。

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「ポール・スチュアート」本店が外苑前に移転 買い付け品や雑貨、バーで表現するNYの世界観

 三陽商会はこのほど、「ポール・スチュアート(PAUL STUART)青山本店」を東京・外苑前の商業・宿泊施設「ジ・アーガイル アオヤマ(THE ARGYLE AOYAMA)」1階にオープンした。2月末で閉店した表参道店に代わる日本唯一の路面店となる。ここでしか手に入らない限定商品を多く取りそろえ、ライフスタイル雑貨のポップアップスペースやバーを併設するなど、アパレル以外も絡めてブランドの世界観を色濃く表現する。

 店舗はメンズ・ウィメンズの複合で、面積は325平方メートル。ブランドのルーツであるニューヨークをイメージした大理石と木目調を組み合わせた重厚な雰囲気で、3〜4メートルの天井高が開放的な空間を演出する。店舗が面する青山通りは、1960〜70年代に「ヴァン(VAN)」「ケント(KENT)」などの店舗が軒を連ねた。「かつてのアメトラブーム発祥の地で、もう一度ブランドのアイデンティティーを表現したい」と菅泉拓己・三陽商会ポール・スチュアート ビジネス部長。

 百貨店の売り場で採用するスーツ中心のMDではなく、鴨志田泰人氏がディレクションするデザイン性重視の“コレクションライン”のほか店舗限定商品や買い付け商品が全体の半分以上を占めるなど、商品のバリエーションを持たせた。限定アイテムは自社の若手パタンナーチーム「サンヨーエンジン」が手掛けたチェック柄のピーコート(22万円)など。アメリカのものを中心とした買い付け品は、「ブランドが自信を持ってセレクトした」証として、ブランドタグを付けて販売する。

 ストアの中央には、「コリドー」(フランス語で屋根付き通路の意)と称した通路状のポップアップスペースが走り、家具や雑貨など、ブランドの世界観にマッチしたライフスタイル商品を定期的に企画を入れ替えて販売する。オープンから12月25日まで、バラの専門店「アフリカ ローズ(AFRIKA ROSE)」のギフト商品を展開する。

 そこから続く先には、夜間(午後6時〜午前0時)のみ営業するバー「ザ・コッパールーム(THE COPPER ROOM)」がある。10種類以上のワインやウイスキーを楽しめる。中には1ショット3万円の希少な品も用意している。

■ポール・スチュアート 青山本店
住所:東京都港区北青山2 the ARGYLE aoyama 1階
営業時間11:00〜20:00(バーは18:00〜24:00)

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アリババ「独身の日」セールが7兆円突破 昨年を2倍上回る

 中国の最大手EC企業アリババ(ALIBABA)が開催した「独身の日(光棍節、シングルデー)」セールが11日、最終取引額4982億元(約7兆9000億円)で終了した。2019年に記録した2684億元(約4兆2000億円)の2倍以上を上回った。例年のセール期間は11日のみだったが、今年は11月1〜3日の3日間の先行セールと合わせて開催された。

 今回で12回目を迎える「独身の日」セールは、毎年11月11日にネット通販各社が大規模な値引き販売を行う一大イベントだ。アリババは、20年の配送件数が11日23時の時点で22億件に達したと公開した。終了まで1時間を残した中で10年に中国全体で取引された件数の総数のほぼ同じ数を記録しており、同社による「独身の日」セールの勢いは年々増している。

 中でも今年のセール期間中に話題を大きく集めたのはライブストリームによる商品販売だ。ライブストリームを行ったインフルエンサーによる流通取引総額(Gross Merchandise Value以下、GMV)のトップ5は、ウェイヤー(薇婭、Viya)、オースティン・リー(李佳琦、Austin Li Jiaqi)、シェイリ(雪梨、Cherie)、キキ(陳潔、Kiki)、オウ・カン(Wang Han)ら。

 企業によるライブストリーム販売のトップ10は、ファーウェイ(HUAWEI)、シャオミ(XIAOMI)、ハイアール(HAIER)、スニンディエンチー(蘇寧電器、SUNING)など家電製品を扱うブランドが大半を占めた。カテゴリー別ではビューティは2番目にパフォーマンスの高い分野となった。エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は4位に、ランコム(LANCOME)は5位、ロレアル(L'OREAL)は9位にランクインした。

 アリババ傘下のECサイト、タオバオ(淘宝、Taobao)のユ・フェン(Yu Feng)=ECコンテンツ・ジェネラルマネジャーは、「これはほんの始まりに過ぎない」と述べ、今後ライブストリーミングはアリババのマーケットプレイスでの総取引の3分の1を占めると予測する。「ライブストリーミングは、GMVで1兆人民元(約15兆円)か、それ以上の規模に達する可能性を持っている。総GMVの割合を2、3年以内に30%とする。それが私の目指している目標だ」と述べた。

 中国政府の独占禁止法案の発表による販売規制へのリスクや、主要なECサイトの請負業者である宅配会社のストライキもあったが、宅配ボックスを活用した配送システムの導入などを行なったという。

 アリババに次ぐ大手ECサイトのJDドットコム(京東商城、JD.com)は11月1〜11日に「独身の日」セールを開催し、取引額は2715億元(約4兆3000億円)に上った。セールの最初の9日間でウェルネスアイテムが好調な滑り出しを見せた。売上はそれぞれ前年比でヨガアパレルが307%増、ピラティス用品が268%増、ゴルフ用品が77%増、テニス用品が50%増、ダンベルが34%増だった。

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シュプリームを買収した米「ザ・ノース・フェイス」親会社、「何も変えるつもりはない」

 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコープ(VF CORP.以下、VFC)は11月9日、シュプリーム(SUPREME)を21億ドル(約2163億円)で買収する契約を締結したと発表して大きな話題を呼んでいる。

 シュプリームは、1994年にジェームス・ジェビア(James Jebbia)がスケートショップおよびオリジナルブランドとしてニューヨークで創業。世界中に熱狂的なファンがいるストリートブランドとして成長を続け、2017年には巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP以下、カーライル)に株式の51%を5億ドル(約515億円)で売却した。当時の企業価値は10億ドル(約1030億円)程度と見積もられている。また14年には、米投資会社グード・パートナーズ(GOODE PARTNERS以下、グード)にも株式を一部売却している。

 買収後もジェビア創業者およびシュプリームの主要なメンバーはブランドに残り、引き続きニューヨークに拠点を置く。取引は今年中に完了する予定で、カーライルとグードはそれぞれの持ち分をVFCに売却する。なお買収後に一定の業績を上げれば、VFCはシュプリームに最大3億ドル(約309億円)を追加で支払うという。

 スティーブ・レンドル(Steve Rendle)VFC会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は、「シュプリームは非常にうまく運営されており、事業として大きな成功を収めているので、買収後も干渉したり何かを変えたりするつもりはない。シュプリームがさらに発展できるようサポートするべく、時間をかけて互いに理解を深めたいと考えている」と語った。

 ジェビア=シュプリーム創業者は、「『ザ・ノース・フェイス』『ヴァンズ』『ティンバーランド』など、当社がこれまでコラボレーションをしてきた素晴らしいブランドを擁する世界的な一流企業、VFCの一員となったことを誇らしく思っている。このパートナーシップは、シュプリーム独自のカルチャーやその独立性を維持しつつ、さらに大きく成長することを可能にするものだ」と述べた。

 シュプリームの実店舗は世界でも12店しかなく(そのうち6店は日本にある)、売り上げの60%はECによるものだ。それが幸いし、コロナ禍にあっても売上高は1ケタ台の伸びを見せている。粗利率は最大で60%程度、営業利益率は20%以上だという。またVFCは今後5年間におけるシュプリームの年平均成長率を8~10%と見積もっているが、これは「ヴァンズ」の同12~13%より低いものの、VFC全体より高い成長率が見込まれている。なお今回の買収により、VFCは少なくとも5億ドル(約515億円)の増収となる見込みだ。市場はこれを好感し、VFCの株価は9日に一時、前日比19.2%高の83.48ドル(約8598円)を付けている。

 スコット・ロー(Scott Roe)VFC最高財務責任者兼副社長は、「われわれは主にシュプリームのブランド価値を考えて取引を決定しており、シナジー創出などは織り込んでいない。当社が支援できる面もあると思うが、それはシュプリームにとって適切なものである必要がある。同社はコロナ禍においても顧客とのつながりを保ち、ECで素晴らしい業績を上げているので、当社としては新たな計画やアプローチを打ち出そうとは思っていない」と説明した。

 レンドルVFC会長兼社長兼CEOは、「シュプリームの顧客エンゲージメントに対するアプローチや、質の高い商品をコンスタントに発表する力、そして顧客の需要や期待に関する深い洞察力は本当に素晴らしいと思う。当社はここ数年、D2Cに注力しており、それに関連した部門などで年間30億ドル(約3090億円)程度の売り上げとなっている。シュプリームが顧客と非常に近い関係性を築いていることを考えると、同社の買収は当社の成長戦略にぴったり当てはまるものだ」と話した。

 VFCの20年4~9月期決算は、売上高が前年同期比29.5%減の36億8461万ドル(約3795億円)、純損益は前年同期の6億9822万ドル(約719億円)の黒字から2889万ドル(約29億円)の赤字となっている。

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宮沢りえが13日発売のユニクロ「+J」をお披露目 「長く着られて、娘にも引き継げる服」

 ユニクロは11月13日、デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏とのコラボレーションライン「+J」を9年ぶりに発売する。発売に先立って12日、東京・銀座のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ(UNIQLO TOKYO)」で会見を行い、勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者と女優の宮沢りえさんが登場した。

 同コラボは2009年10月1日のユニクロのパリ・オペラ旗艦店出店に合わせてスタートし、11年秋冬まで5シーズン継続。「今となってはユニクロの国内売り上げを海外売り上げが上回っているが、09年当時はロンドンのオックスフォードやニューヨーク・ソーホーに旗艦店を出し、次はとうとうファッションの中心地パリだ、という状況だった」と勝田執行役員。パリ出店にあたり、「日本のブランドとして、価格とファッション性でリーダーシップを取る。価格の面ではカシミヤニットやジャパンデニムで驚きを与えられると考えていたが、ファッション性をどうするかとなったとき、われわれが追求するシンプルで上質な服作りの最高峰はサンダー氏だとなった」と振り返る。

 9年ぶりのコラボは、コロナ禍発生前の1年前から企画がスタートしていたという。「サンダー氏と共にわれわれの限界を超えたチャレンジができ、世界中の人に自信を持って届けられるものを作ることができた。サンダー氏は『人は誰しもエネルギーと自信を持つべき、服にはその力がある』といったことを語っているが、(コロナ禍の中で)今回のコラボが少しでも世界の人々の力になればと思っている」。

 宮沢りえさんは、「+J」のカシミヤ混ダブルフェースのチェスターコート(2万2900円)、シルクのギャザーブラウス(8990円)、ウールパンツ(9990円)で登場。コートの内側やパンツのポケットなどが丁寧に作られていることなどを紹介しながら、「内側の仕立てもきれいで、レストランでコートを脱いで渡すときにも自信が持てる服。特別な日におしゃれをするときはもちろん、休日に家族と買い物にいく際などに着ても気分が盛り上がる。(長く着られる『+J』のような服は)娘にも引き継いでいくことができる」と語った。

 「+J」は計61アイテムを48店舗と公式オンラインストアで取り扱うほか、一部の商品は国内全店舗でも販売する。

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宮沢りえが13日発売のユニクロ「+J」をお披露目 「長く着られて、娘にも引き継げる服」

 ユニクロは11月13日、デザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏とのコラボレーションライン「+J」を9年ぶりに発売する。発売に先立って12日、東京・銀座のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ(UNIQLO TOKYO)」で会見を行い、勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D統括責任者と女優の宮沢りえさんが登場した。

 同コラボは2009年10月1日のユニクロのパリ・オペラ旗艦店出店に合わせてスタートし、11年秋冬まで5シーズン継続。「今となってはユニクロの国内売り上げを海外売り上げが上回っているが、09年当時はロンドンのオックスフォードやニューヨーク・ソーホーに旗艦店を出し、次はとうとうファッションの中心地パリだ、という状況だった」と勝田執行役員。パリ出店にあたり、「日本のブランドとして、価格とファッション性でリーダーシップを取る。価格の面ではカシミヤニットやジャパンデニムで驚きを与えられると考えていたが、ファッション性をどうするかとなったとき、われわれが追求するシンプルで上質な服作りの最高峰はサンダー氏だとなった」と振り返る。

 9年ぶりのコラボは、コロナ禍発生前の1年前から企画がスタートしていたという。「サンダー氏と共にわれわれの限界を超えたチャレンジができ、世界中の人に自信を持って届けられるものを作ることができた。サンダー氏は『人は誰しもエネルギーと自信を持つべき、服にはその力がある』といったことを語っているが、(コロナ禍の中で)今回のコラボが少しでも世界の人々の力になればと思っている」。

 宮沢りえさんは、「+J」のカシミヤ混ダブルフェースのチェスターコート(2万2900円)、シルクのギャザーブラウス(8990円)、ウールパンツ(9990円)で登場。コートの内側やパンツのポケットなどが丁寧に作られていることなどを紹介しながら、「内側の仕立てもきれいで、レストランでコートを脱いで渡すときにも自信が持てる服。特別な日におしゃれをするときはもちろん、休日に家族と買い物にいく際などに着ても気分が盛り上がる。(長く着られる『+J』のような服は)娘にも引き継いでいくことができる」と語った。

 「+J」は計61アイテムを48店舗と公式オンラインストアで取り扱うほか、一部の商品は国内全店舗でも販売する。

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今田美桜が「カサ ロエベ 東京」オープン一周年で来店 クリスマスコレクションも発売

「ロエベ」の銀座旗艦店「カサ ロエベ 東京(CASA LOEWE TOKYO)」は、11月16日にオープン一周年を迎える。一周年を記念して同店舗で12日に、女優の今田美桜をゲストに迎えてメディアセッションを行った。

 今田美桜は12日に発売した「ロエベ」のクリスマスコレクションを着用して登場。「“ハンモック バッグ”は、ヤシの木の装飾がオリエンタルで気に入っています。シャツもLAの風景のようで、夏らしくて素敵」とスタイリングのポイントを語った。店舗の一周年に際して自身にとってはどんな一年だったかという質問には「いろいろと大変な年でしたが、生活が新たに変わって楽しいこともたくさんありました」と笑顔を見せた。

 「ロエベ」のクリスマスコレクション“ケン・プライス カプセルコレクション”は、ロサンゼルス出身のアーティスト、ケン・プライス(Ken Price)のアートとコラボレーションした。ヤシの木やLAの街並みなどのモチーフを取り入れ、冬でも太陽を求める人にぴったりな明るく爽やかなコレクションに仕上げた。

 プライスは1930年代に生まれ、伝説的なフェルス・ギャラリーでの展示をきっかけに60年代にアメリカ国内で名声を確立。クレイ(粘土)を使った明るい色使いの小さなセラミック彫刻やオブジェで知られる。

 ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、「かつて『私たちは、クラフトのヒエラルキーから脱却していわゆる “完全な自由” を塗り替えた集団だと言われている』と言ったプライスの作品は、長い間私の心をつかんで離しません」とコラボレーションした理由をコメント。「彼は“タウンユニット”というより機能的なオブジェも制作していました。私は、これらのユニットに含まれるオブジェが放つエネルギーや無関心な雰囲気に魅了されました。街の景色や風景が、ユーモア溢れるアニメの様なスタイルで、陶器や皿全体に大胆な色使いで描かれているのです」とその魅力を説明した。
 
 特に着想を得たのは、80年代初頭にニューポートビーチにあるレストラン「ラ パルム(La Palme)」の依頼で彼が制作した、20枚のユニークなセラミックの手描きのプレート。今回のコレクションではそのうち「ヤシの木」「イースター島」「LAシリーズ」のほか、「Happy’s Curios」展で使用されたモチーフを取り入れた。シルクシャツやスエット、Tシャツ、ウォッシュドデニムパンツやドローストリングスカート、シャツにもプライスのカラフルな絵画をプリント。カシミアカーディガン、ジャンパーでは、同じモチーフをインターシャで再現した。バッグには、マルケトリー(レザー象嵌)という高い技能と労力を要する手法でモチーフを表現した。

 また新宿伊勢丹本店で12月2〜8日、阪急うめだ本店で12月2~8日、三越銀座店で12月9〜15日にポップアップストアをオープン。ポップアップ限定の“ハンモック バッグ”を用意する。

 さらに11月20〜23日には、ロエベのアイコンバッグ“ハンモック バッグ”が一堂にそろう“ハンモック ルーム”も「カサ ロエベ 東京」と横浜高島屋店で開催予定。プライスとのコラボレーションのバッグのほか、冬の新色から定番色まで幅広いラインアップのバッグをそろえる。横浜高島屋店は「カサ ロエベ 東京」と同じく11月にオープン一周年を迎える。

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金山大成がD2Cのファッションブランド インフルエンサーが銀座の元テーラーと組んだ理由

 インスタグラムやユーチューブで活動するインフルエンサーの金山大成は、自身初となるEC主軸のファッションブランド「サブレーションズ(SUBLATIONS)」をこのほどスタートした。ブランド名は“相反する物を昇華する”の意で、「メンズ×ウィメンズ」「ドレス×ミリタリー」などさまざまな二律背反の要素をデザインに落とし込んだ国内生産のシャツやジャケットを主軸に受注生産する。企画・生産面では、銀座のテーラーや国内アパレル企業で縫製や生産のノウハウを培ってきた中村泰貴氏とタッグを組む。インフルエンサーと、テーラーの元職人という異色な2人が交わることで、どんなシナジーが生まれるのか。

 ファーストコレクションは全4型。ジャケット7万8000円、シャツ3万6000〜4万8000円、パンツ3万5000円とインフルエンサーによるD2Cブランドとしては比較的高価格ながら、受注開始(10月15日)からすぐさま受注上限に達した。12月5〜6日には、東京・渋谷で追加の受注会及び新作の一部展示を予定するほか、今後はポップアップストアの出店も検討しているという。

限られた型数のアイテムに世界観を凝縮

 コレクションのメインアイテムに据えたのは、1970年代にヘルムート・ニュートンが撮影したことで知られる、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のスモーキングジャケットから着想を得たピークドラペルのジャケット。力強い黒の発色が特徴のフォーマルスーツ用ウールを使用し、シャープなラペルとゆとりあるシルエットでエレガントな魅力を同居させた。裏地はテケポケットやハンドステッチミシンによる仕上げなど、細部まで手が込んでいる。ダブルフロントのシャツ(4万8000円)は東京・墨田区の工場でネイビー、グレージュに染め上げた生地を使った。経糸にスーピマコットン、緯糸にシルクとフレンチリネンの混合糸を組み合わせて、肌触りの良さと見た目の奥行きを出している。

 ブランド発足に当たっては外部からの出資は受けず、「やりくりは全てポケットマネー」。そのため仕込める商品の型数・数量も限られたが、「自分たちのやりたいことを表現するには、結果的にはそれがよかった」と2人は振り返る。「利益を確保するため、ある程度の販売量が見込めるTシャツを作ることも考えたものの、していない。というよりできなかった(笑)。だが僕らが作るべきはシャツとジャケットだし、ここできちんと世界観を表現してこそ、ファンがしっかりついて来てくれるだろうと考えた」(金山)。

ぶつかり合い、尊敬し合う2人 ファンの楽しさを第一に

 服の製作プロセスにおいては、中村の知見で本格派のディテールを盛り込み、スタイリングやルックの撮影では金山が感性を生かしてリードした。「意見がぶつかり合うことは結構ある」とも言うが、根底にはお互いへのリスペクトがあるから関係は破綻しない。「(中村は)ビンテージの軍用ベストのような、それどこで手に入れたの?と思うような服を着ていることも多い。服に対する情熱や知識がすごくて、この人とならきっと面白い物が作れると確信している」と金山。一方の中村は「(金山の)すごいと思うのは服への審美眼。僕たち技術者のように知識や理論に裏付けされたものではなく、“好き”という気持ちだけで本能的に答えにたどり着く」と感嘆する。

 「サブレーションズ」は発信や新作の打ち出しの仕方においても、これまでのファッションブランドとは異なる道を行く。シーズンの考え方にとらわれず、「セクション(章)」という単位で、少ない型の新作を短スパンで販売していく。さらに「ランウエイ起点のブランドの発信とは、逆転の発想をしたい」といい、「ゆくゆくはショーができるくらいまでブランドが大きくなったら、いくつかのセクションを販売した後に、それらを小説のように紡いだストーリーをランウエイで見せて、商品を買ってくれたファンを楽しませたい」と胸を膨らませる。「僕らがやりたいのは、これまでのファッションブランドのような一方通行のものづくりではなく、買ってくれる人の楽しさを第一に考えたブランド運営。ゼロから新しいシステムを作っていく気概でやらないと、大きな資本とは戦えない。インフルエンサーが片手間でやっているブランドで終わらせるつもりはないし、人生を賭けてやっていくつもりだ」。

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パリコレで日系モデルが活躍 注目は六本木のスタバでスカウトされた21歳の新星

 2021年春夏のファッション・ウイークでは、前シーズンに紹介した日系ブラジル人のマリーエル・ウチダ(Maryel Uchida)さんがさらなる活躍を見せてくれました。「ディオール(DIOR)」「クロエ(CHLOE)」「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などのランウエイに登場したほか、「ディオール」2020-21年秋冬と21年リゾートコレクションの広告に起用されるという躍進ぶり。マリーエルさんは前シーズンとの違いを「にぎやかさに欠けていました。バックステージではみんながマスクを着けてソーシャル・ディスタンスを保つなど異様な光景だったけれど、その分お互いをケアし合う精神が感じられました」と教えてくれました。

 日本とフランスのハーフである美佳さんも各ブランドのショーに相変わらず引っ張りだこでした。パリだけでなくミラノでも「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ポーツ1961(PORTS1961)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」で堂々としたウオーキングを披露し、存在感を放っていました。

「バーバリー」に抜擢された新星

 そして今シーズンデビューした新たな注目株を発見!1999年生まれで神奈川県出身の樋口可弥子さんです。今季はリアルとデジタルを含めて7ブランドに起用されました。ロンドンの「バーバリー(BURBERRY)」のショーで無名の彼女がオープニングを飾ったことで、多くのブランドから注目を浴びました。結果、他の都市のキャスティングにも呼ばれてミラノで「マックスマーラ(MAX MARA)」「トッズ(TOD’S)」「ヴェルサーチェ」、パリで「ディオール」「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」に登場。「モデルズ ドット コム(Models.com)」にて、最も多くのショーを歩いた新人モデル6人の中で唯一のアジア系モデルとして紹介されています。

 モデルとしてのキャリアを本格的にスタートさせたのは「3年前に六本木のスターバックスでスカウトされたのがきっかけ」と教えてくれました。初めてのパリコレは驚きの連続だったそうで、「『ディオール』の集合時間は朝7時だったのですが、フィッティングは前日の深夜1時30分まで行われていました。でもその時点ではショーに起用されるかはまだ確定しておらず、ファッション・ウイークの仕事は色々なことが直前まで決まらないのだなと驚きました」と振り返ります。憧れのモデルはリトアニア出身で31歳のガードレ・ドゥカウスケート(Giedle Dukauskaite)で「ベーシックでありながら、独特な雰囲気を持っているモデルだと思います。モデルとして10年以上のキャリアがありながら、未だにメインストリームで活躍しているのがかっこよくて憧れています」。樋口さんは過去に過食症を患った経験があり、心身共に健康で仕事を続けていくことが今の目標とのこと。今後の展望については、「年齢や体型、人種など歴史と共に培われてきた美の固定概念がいい意味で壊され、“個の美しさ”が尊重されていくとよいなと心から思います。その流れの一端となれるように、モデルとして表現力を身につけていきたいです」と頼もしく答えてくれました。今後もショーだけでなく、雑誌や広告などでさまざまな表情を見せてくれそうな彼女に期待大です!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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女将志望が急増中。外食チェーンの皆さま「女将酒場、いまやらずにいつやるの?」

 コロナ禍で働く女性の意識が変化している。ある調査では、半数以上の働く女性がキャリアの見直し、転換を考えていることが明らかになった。大企業に属していても雇用が保証されない時代、キャリア形成としてスモールビジネス「女将酒場」を志す、女将志望が急増している。
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イタリア植物タンニンなめし革協会が初のオンラインセミナーを開催

 イタリア植物タンニンなめし革協会は11月26日16時半から、Zoomを使ったオンラインセミナーを開催する。誰でも申し込み可能で参加費は無料。同協会は21年にわたりトスカーナ産植物タンニンなめし革の魅力を伝えるイベントを行っているが、コロナ禍の今年、初めてウェブ開催する。

 広報担当者は「どんなフォーマットであっても、われわれは常にトスカーナ産植物タンニンなめし革の“真の価値”を伝える」と言い、今回は同協会の本部があるイタリア中部・トスカーナ州からライブ配信する。スピーカーはシモーネ・レミ(Simone Remi)同協会会長らで、トスカーナ産植物タンニンなめし革を紹介しながら、その社会的責任や製造プロセスの持続可能性についてレクチャーするという。

 参加希望者は特設フォーム(下記リンク)から申し込みを行い、後日ログイン用URLが届く。

■イタリア植物タンニンなめし革オンラインウェビナー
日程:11月26日
時間:16:30~17:30
形式:オンラインセミナー(Zoom)同時通訳付き
定員:先着300人
参加費:無料

問い合わせ先
イタリア大使館貿易促進部
03-3475-1401

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爆裂!健康美容マニア道 冷え症を根っこから改善!免疫力UPのほかほか生姜灸って?

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけをここで余すことなくお伝えする。今回は生姜灸について。

日本で唯一⁉︎うわさの「生姜灸専門」の温灸院に行ってみた

 「冷えは万病のもと」とはよく言ったもので、冷えによって婦人科系に問題が起きたり、胃腸が弱ったり、免疫力が落ちたりと、冷えるって本当に怖いのだ。名越自身、年々改善はしているものの、冬は足裏の携帯用カイロすら冷やしてしまうほどの雪、もとい、氷の女王。もう、こんな冷えとは今年こそおさらばだわ・・!と、降り立ったのはJR鶯谷駅。橋を渡って住宅街を進んでいくと、見えてきた。大正5年開業、生姜灸専門の「中村温灸院」だ。生姜灸専門だなんて、日本で唯一かもしれない。ここは婦人科系に悩みを持つ世の女子たちの駆け込み寺となっているという。扉を開けると、お灸のいい香り。優しい笑顔の先生たちが迎えてくれた。

生姜灸とは?

 生姜灸とは、厚めに切った生姜の上にもぐさ(ヨモギを乾燥させたもの)を置いて中低温でじっくりと体の芯から温めていくお灸のこと。もぐさの熱により生姜の温め成分が体に入っていくことで、終わった後もずっとほかほかが続く。さらには、もぐさに含まれるヨモギの成分が浸透し白血球が増え、血液をアルカリ性に傾ける作用があるのだとか。ツボに熱の刺激を与えることによって自律神経の働きが促され、全身の血液の循環を改善できることが期待できる。自律神経が整えば、必要なホルモンが分泌されるし、自然治癒力も高まる。なにこれ、いいこと尽くしじゃないか。
 

全身、お灸の煙に包まれる未知の世界

 どーん。どや、このインスタ映えしそうな生姜灸。体の大きさにもよるが、全身70〜90カ所のツボにお灸を据え、体調に合わせて45℃前後まで温度を上げていくそう。そうそう、私の体(155センチ)でも1.5キロ分の生姜を使うという。首回りから始まり、背面、前面と進んでいく。治療は基本、一人で完全プライベート空間の中、ゆったり施術してもらえるのがうれしい。「熱いときは我慢しないでくださいね〜」と、先生2人がかりでてきぱきとお灸が据えられ、熱が浸透したら違うツボへ移動。温められた場所はほんのりピンク色になるが、これは2〜3時間くらいで消えるのでご安心を。前面に進むころにはすっかりぽかぽかであまりの心地良さに眠くなってしまうほど。あ〜極楽、極楽。

ぽかぽかの持続力が半端ない。これぞ生姜パワー。

 正直、「え?もしかして今、燻製にされてる?!」と思うレベルで煙に包まれる。これくらい“ガチ生姜灸”ができる環境ってなかなかない。全身1時間かけてじっくりと温められたおかげで、その後一日冷え知らず。いつもなら夕方には酸化して茶褐色になっている顔もほんのりピンクで血色がいい。(これぞ、リアル・蒸気肌!)徹底的に冷えをどうにかしたいなら週に2回ほど通うのがおすすめ。今年の冬こそ冷え知らずでいたいあなた!食べるだけじゃない、生姜の底力を感じてみてほしい。

中村温灸院
〒110‐0003 東京都台東区根岸3丁目12-21
JR山手線/京浜東北線「鶯谷駅」北口から徒歩5分
要予約:090-6243-0837

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

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業務が作業に変わる恐怖 エディターズレター(2020年7月29日配信分)

※この記事は2020年7月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

業務が作業に変わる恐怖

 「ブルックス ブラザーズ」の破たんに次いで、「ザ・ロウ」が大規模リストラに着手。かつての「ルイ・ヴィトン」メンズのトップ、ポール・エルバースもブランドを去るようです。

 アメリカ企業の艱難辛苦は、まだまだ続きそうですね。無論、個別の企業やブランドにも問題はあったでしょうし、新型コロナウイルスの影響はどの国より顕著だと思いますが、こうなると市場そのものの問題、もしくは築き上げてしまったファッション・システムの問題とも言えそうです。

 最後にアメリカを訪れたのは、今年の2月。ニューヨークではなく、ロサンゼルスでした。破たんしたバーニーズ ニューヨークのビバリーヒルズ店に行き、NY同様のカオスに衝撃を受けました。中でも一番ショッキングだったのは、のちにブランド終了が報じられた「シエス マルジャン」の同じ洋服が、90%オフになってなお、色違いもあるとは言え10着単位で売れ残っていたこと。「簡単に売れる洋服ではないのに、こんなに大量に。ナゼ?」。考え始めたらキリがなく、「数の論理」や「内輪ネタ」「パワーゲーム」「肥大」「作業」などなど、自戒も込め、さまざまな反面教師的教訓を心に刻みました。もういずれも、通用しないモノばかりですよね。

 中でも今、一番危惧するのは「業務が作業に変わること」です。ここでは「業務」には思考が伴い、「作業」にはそれが伴わないと考えてください。「業務が作業に変わる」って、本当に恐ろしいこと。今はそれに気付いた瞬間、内容なのか人なのかアプローチなのか、なにかを変えなければと思っています。

 冒頭のアメリカに話を戻すと、アメリカン・ファッションは全体として、システムを巨大化させる作業にまい進してしまったのではないか?なんて考えます。日本は、同じ道を辿っちゃいけない。常々「アメリカは、日本の3年先を体現している」と思ってきたからこそ、そう思うのです。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「ミキモト」がオウンドメディア「マイ・パール、マイ・スタイル」を始動

 「ミキモト(MIKIMOTO)」は11月10日、スペシャルサイト「マイ・パール、マイ・スタイル(MY PEARLS, MY STYLE)」をスタートした。同サイトでは、実際に「ミキモト」のジュエリーを愛用する著名人を起用し、撮り下ろしたビジュアルとスペシャルインタビューを随時公開するというものだ。モノクロのイメージで、トップのフォトグラファーやスタイリストを起用して制作されている。インタビューも読み応えたっぷりだ。

 初回は夏木マリと千葉雄大が「ミキモト」のパールジュエリーをまとって登場。それぞれが思うパールの魅力について語っている。夏木のインタビューは「パールは、個性に寄り添って」というタイトルで、スタイリングも彼女のアイデアを反映させており、「4メートルのスーパーロングのパールネックレスをスタイリングするのは長年の夢だった」とコメントしている。撮影はHiro Kimuraが担当。千葉は、「僕とパールの秘密」というタイトルで、「ミキモト コム デ ギャルソン(MIKIMOTO COMME GARCON)」のネックレスを重ね付けして登場。31歳の誕生日に自分へのプレゼントとしてパールネックレスを選んだと語っている。千葉の撮影は下村一喜が行った。

 来年1月には冨永愛が登場することになっている。

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ワタミ、居酒屋でも「牛肉推し」に大転換。「これはもう”牛肉居酒屋”という新ジャンル」

 既存の居酒屋120店を「焼肉の和民」に転換するワタミ。2021年3月期までに60店、翌2020年3月期までにさらに60店を転換する計画だが、すでに足元では居酒屋業態で牛肉を大きくフューチャーした大幅なメニュー改訂を実施している。これはもう「牛肉居酒屋」だ。
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