マッシュの「アンダーソン アンダーソン」がヘアサロンとコラボした和紙Tシャツを発売

 マッシュスタイルラボのアンダーウエアブランド「アンダーソン アンダーソン(UNDERSON UNDERSON)」は11月28日、ブランド初のコラボレーションとしてヘアサロン「サンバレー」と協業したTシャツ(9500円)を発売する。「サンバレー」のスタッフユニホームとして採用するほか、店頭で数量限定発売する。

 同アイテムは、特許取得の和紙布「WASHIFABRIC(R)」を使用し、肌に触れる部分の99.9%が和紙でできた「アンダーソン アンダーソン」のTシャツに、「サンバレー」のオリジナルロゴをプリントした。サロンでは鏡に写った姿を長時間目にすることから、鏡に映ることでロゴが本来の向きで見えるようにフロントロゴのみが“鏡文字”になっている。

  “和紙がつくる健やかな肌”をコンセプトに肌に触れる部分の99.9%を和紙の素材、「WASHIFABRIC(R)」を使用し、アンダーウェアやルームウェアを中心にレディース・メンズ・ベビーアイテムを展開するほか、オリジナルの洗剤や器など生活雑貨などもそろえる。

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伊勢丹新宿本店でビデオ通話接客が本格スタート 将来的に「100万種類の商品を購入可能に」

 三越伊勢丹は25日、スマートフォン用の自社アプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」による、ビデオ通話のオンラインショッピングを伊勢丹新宿本店でスタートした。同店の婦人服、紳士服、ジュエリー・時計、化粧品カテゴリーの計14売り場・300ブランドで先行導入する。

 同日、本館3階の婦人服の自主編集売り場「リ・スタイル」と地下2階の化粧品フロア「ビューティ アポセカリー」で、アプリによる接客のデモンストレーションが行われた。接客枠は1時間の完全予約制で、売り場の販売員が対応する。事前にチャットとアンケートによるヒアリングにより、性別や年齢のほか嗜好やライフスタイルなどの情報を得ておく。アパレルの販売では、スタッフが自分の身長を伝え、服を体に当ててサイズ感を確認したり、服を画面に近づけて色味や素材感などを伝えたりする。クリームなどの化粧品は、実際に手指に塗ってテクスチャーを見せたり、「甘く華やか」といった香りのニュアンスを画面越しに伝える。

 検討中の商品は、同社EC「三越伊勢丹オンラインストア」のカートにスタッフが代理で登録し、客のスムーズな購入を促す。EC上に掲載のない商品も、売り場のスタッフがその場で商品を撮影・アップすることで、「将来的に(伊勢丹新宿店にある)100万種類の商品をオンラインで購入できるようにしたい」(升森一宏・三越伊勢丹MD統括部デジタル推進グループシームレス推進部長)とする。

 同社は、今年6月から「ズーム(ZOOM)」や「ライン(LINE)」を使ったリモート接客のトライアルをランドセルや美術品販売で実施し、一定の成果を得たことで本格導入に至った。「三越伊勢丹リモートショッピング」の導入でオンライン接客の間口を一本化するとともに、接客で得た性別、年齢、購買趣向やライフスタイルなどの顧客情報をウェブ会員IDと結びつけて蓄積し、サービスの向上につなげる。

 「ビデオ接客はお客さまとの双方向のコミュニケーションが可能で、商品に関するさまざまな疑問にもじっくりお答えできるのがメリット」と升森部長は話す。「一方で、もちろん来店して購入したいお客さまもいれば、商品を横並びで比較しやすいECを選択する方もいる。その場その時で最適な買い方はさまざまで、大事なのはお客さまの利便性を考えて購入の選択肢の幅を増やすこと」。今後はオンライン接客の教育体制の整備や、専門販売スタッフの育成なども視野に入れ、同じく都心旗艦店である三越日本橋本店と三越銀座店にもサービスを広げる。

 親会社の三越伊勢丹ホールディングスは2020年4〜9月期の最終赤字367億円を受けて来年5月にも新中期経営計画を発表するとしており、優先事項の一つに「オンライン接客の強化」を掲げている。ECを含めた売上高は21年3月期末で310億円を見込み、22年2月期には400億〜450億円規模を目指す。

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AYAKOメイクアップアーティストが語る「Nº21」とのコラボの裏側 「透明感と大胆さを両立したメイク」

 アレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell’Acqua)が手掛ける「ヌメロ ヴェントゥーノ(Nº21)」は、ブランド設立10周年を記念したプロジェクト「ガラージュ ヴェントゥーノ」を始動した。11月4〜10日に阪急うめだ本店1階コトコトステージ 11、11月11日〜2021年1月31日に同店3階イベントスペースでポップアップを行い、そこで限定のグッズやビューティアイテム、フードをそろえる。
 
 ブランド初のビューティアイテムを手掛けたのは、コスメブランド「アディクション(ADDICTION)」の前ディレクター、AYAKOメイクアップアーティスト。「ヌメロ ヴェントゥーノ」を代表するブラックとヌードをコンセプトにスキンケアとメイクアップ製品5つをセットにした。「アディクション」を離れて約1年のAYAKO氏。最近はクリーンビューティにも目覚め、「ヌメロ ヴェントゥーノ」とのコラボも動物実験を行わないなどビーガン処方にこだわり、またパラベン(防腐剤)も含まないなどできる限りのクリーンビューティを目指した。今回はファッションのブランドのために作るメイクと、これまでとは異なるアプローチでの化粧品作りだが、どのような思いが込められているのかーー。

WWD:今回「ヌメロ ヴェントゥーノ」と協業したきっかけは?

AYAKOメイクアップアーティスト(以下、AYAKO):もともとデラクア氏の服が好きでした。日本で「ヌメロ ヴェントゥーノ」を輸入販売するグルッポタナカの田中タキ副社長と2年前にお会いしたのがきっかけで、昨年、日本でスタートする「ガラージュ ヴェントゥーノ」の話を伺い、ビューティの提案をしたことでスタートしました。

WWD:デラクア=デザイナーの服の魅力は?

AYAKO:セクシーだけれど少しメンズ仕立てになっていたり、ガーリーでありながらハンサムであったり。甘すぎず、モードすぎず、そのバランスが絶妙。また、彼はシアーやヌードの素材の使い方が美しく、服に透明感があるように感じます。透明感がありながら、ボールド(大胆さ)もあって、その相反した使い方が素敵です。

WWD:今回のメイクも“透明感”と“大胆さ”を兼ね備えたコンセプトになっている。

AYAKO:そうです。ブラックにフォーカスしたボールドなコレクションと、シアーヌードを意識したコレクションの二つを作りました。ボールドな黒のコレクションは黒のマットなネイルやリキッドアイライナー、深みのあるボルドーのリップスティックと艶やかな透明のグロスのようなリップエンハンサーなど異なる質感も楽しむことができます。一方でシアーなヌードのコレクションは艶やかなネイルやシアーなリップスティック、肌に溶け込むようなアイ&チークのパウダーやヌードカラーのアイライナーなどをそろえました。彼のコレクションから、肌が透けるくらいのシアーな素材に着想を得ました。この2つのコレクションを並べた時にガラスから見えるネイルカラーと、ヌードとブラックの色が見えるマスクでインパクトを加えました。

WWD:今回、単品ではなくセットにこだわった理由は?

AYAKO:これは新しいアプローチです。常々ビューティとファッションが別々に語られることに違和感を感じていたので、「ガラージュ ヴェントゥーノ」だからこそできる提案を考えました。それはつまり、ファッションのフロアで潔くビューティを提案することでした。化粧品カウンターとは違い、ビューティアドバイザーのいないスペースなのでセットで使えば1つのルックが完成するようなものを作りました。また、ジェンダーフリーに使えるようにもこだわりました。

WWD:メイクだけでなく、スキンケアもセットに入れている。

AYAKO:メイクアップの土台となる肌のケアもできるアイテムをどう入れるか。カウンセリングを必要とせず、全てのスキンタイプで誰もが簡単に使えるもの、それであって魅力的なものにこだわりました。ブラックのコレクションには肌をデトックスするチャコールマスク、ヌードのコレクションは肌をふっくら保湿するローズウオーターのマスクを入れています。

WWD:成分にもこだわり、クリーンビューティをうたっているのもポイント。

AYAKO:今話題のクリーンビューティは私自身、今とても関心があるものです。アイテムはビーガン処方でもちろん動物実験も行っていません。パラベンフリーであることを前提に、物によっては、シリコーンやアルコールフリー、無香料で作るには結構大変で(笑)。試行錯誤を繰り返しました。

WWD:セットにつくバッグもAYAKOさんがセレクトしたもの?

AYAKO:バッグもこだわりました。アーカイブから選んだバッグの縮小版をエコレザーで再現していただきました。化粧品なのでメイクを入れるポーチが通常は定番ですが、今回はファッションブランドとのコラボレーションですから、あえてバッグにしたかったんです。ちょっとランチタイムに持っていけるくらいのサイズで、いろんなシーンで使えると思います。実は製品が入っている外箱もガレージをイメージしてピザ箱のように仕立てたり、細かいディテールにも目を配りました。

WWD:「アディクション」で製品を作っていたときと、今回のコラボの違いは?

AYAKO:クリエイティブの部分では大きな違いはありませんでした。「アディクション」では常に旅をテーマにクリエイションをしていましたが、今回の旅はN21の旅でした。ブランドの世界観や価値観をビューティで表現する旅はとてもエキサイティングで、幸いデラックア氏は快く私のクリエイションやビジョンを受け入れてくれて、とてもスムーズに進みました。ただなんと言っても大きな違いはアメリカでラボを探すところから全て一から一人でやらなくてはいけなかった部分です。ものすごく勉強になりました。

WWD:今後もファッションブランドとコラボしたいと思うか?

AYAKO:そうですね。今回のお仕事は初めてのことも多く、とても勉強になりました。特にコロナ禍での作業だったので、遠隔でのコミュニケーションやサンプル製作など、チャレンジングなこともたくさんありました。今後はファッションに限らず、いろいろなコラボレーションやプロジェクトに挑戦したいですし、クリーンビューティの知識ももっと深めていきたいですね。また、今回の経験で良かったと思うのは、ビューティとファッションをつなげられたこと。以前からビューティとファッションが切り離されて扱われることに違和感を抱いていました。アディクションの前には「ナーズ(NARS)」でインターナショナルメイクアップディレクターという立場で ファッションショーや広告などを手掛けていましたが、同時にストアアピアランスを世界中で行った経験があります。アメリカのカウンターとロンドンやパリ、マドリッドではまた違ういろいろな反応がありましたが共通していたのは、ファッションを基盤にメイクアップの提案をすると、人種に限らず必ず納得してもらえたという経験でした。今回も、大阪の売り場での反応は想像以上で、化粧品カウンターでないからこそ違ったアプローチで提案したことが無条件にお客さまにストレートに伝わったことが実感できました。今後のビューティのあり方に、少しでも新しい道を提供できたのではないかと思います。

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「バレンシアガ」2021-22年秋冬コレクションをオンラインゲームを通じて発表

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は12月6日、2021-22年秋冬コレクションを、発表のために制作したビデオゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー(Afterworld: The Age of Tomorrow」で披露する。ゲームとコレクションはあらゆるデバイスからのアクセスに対応しており、シェアも可能だ。

 コレクションのテーマは「人間の運命」で、ゲームの舞台は2031年。21年プレ・フォール・コレクションで挑戦した2030年のファッションを思い描くというアイデアを引き継いでいる。ゲームでは寓話的な冒険を軸に、キャラクターやビジュアルには写真から3DCGモデルを作成するフォトグラメトリーを採用する。

 「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターは9月、パリ・ファッション・ウイークでプレ・コレクションを発表し、6月と12月にメインコレクションを披露するスケジュールに切り替えると発表した。また、毎シーズン慣習的にランウエイショーを行うことからも脱却したいと表明している。ファッションショー自体は肯定しながらも、「ファッションはチェックリストをこなすものになってしまった。私は違ったやり方で取り組みたい」とコメントした。

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ダウンに動物以外の選択肢を 木の実由来のダウンブランド「カポックノット」

 植物由来のダウンブランド「カポックノット(KAPOK KNOT)」は、羽毛の代わりに東南アジアに自生する植物カポックの実からできた繊維を使用し、デザインバリエーション豊かなアイテムを提案する。

 創業者の深井喜翔は、大手繊維メーカーに勤め、アパレル業界の大量生産、大量廃棄の現状に課題を感じ、28歳の時に同ブランドを立ち上げた。2019年10月にファーストアイテムとなるコートをクラウドファンディングサイトの「マクアケ(MAKUAKE)」で販売したところ、開始9分で目標の50万円を達成し、合計1700万円以上を調達した。また日本での反響を受けてこのほど、アメリカでのオンライン販売も開始した。

 原料となるカポックの木1本からは、約コート30着分のコットンを採集することができる。木の実由来のため、木を伐採せず土地の環境を破壊することなく調達ができるというメリットに加えて、通常のコットンの1/8の軽さで、吸湿発熱といった機能性も備える。アイテムはこのカポックの機能性や着膨れしない特徴を生かしたダウンやチェスターコート、ステンカラーコートなどで、メンズ、ウィメンズ合わせて10型をそろえる。価格は3〜5万4000円。公式ECサイトを軸に、新宿マルイと有楽町電気ビルにある体験型店舗「ベータ(B8TA)」でも取り扱う。

 今季から同ブランドのデザインを手掛ける満汐国明は、江角泰俊が手掛ける「エズミ(EZUMI)」やイタリアの「コスチューム ナショナル(COSTUME NATIONAL)」でデザイナーを務めた経験を持つ人物だ。満汐デザイナーは「長く着用してもらうため、1970年代や80年代のディテールを参照したクラシックなアイテムを提案していく。コートの購入を通して、自分の選択が地球環境の再生に貢献していると感じられる体験を提供したい」と言う。

 自社ECサイトはメディア機能を持たせ、サステナブルな衣食住にまつわる情報を網羅的に発信していく。さらに、購入者を中心としたオンライン上のコミュニティーを運営し、環境問題解決に向けたアクションや情報交換なども行う予定だ。

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「フェンディ」が公式サイトにサステナビリティのためのページを新設 地元イタリアに工場も

 フェンディ(FENDI)は13日、公式サイトに社会的責任とサステナビリティに特化したページを設けた。

 同サイトは「サプライチェーン」「環境」「コミュニティー」の3つの軸で展開され、活動内容や達成率に関する情報を提供している。「サプライチェーン」のセクションでは、全体の流れの透明性促進に取り組みながら、労働環境や社会的基準を満たすよう努めていると発信。「環境」では、フェンディが使用する素材に関する情報や調達源を提供しており、製品をめぐるコンプライアンスも掲載。また、資源を循環利用し廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーの取り組みについてのページも設けている。ブランドと企業と関わりを持つ人々に焦点を当てた「コミュニティー」では、職人や従業員、クライアント、サプライヤー、そして地元社会に貢献する取り組みを紹介。若いデザイナーを支援するプログラムなども掲載している。フェンディのセルジュ・ブランシュウィッグ(Serge Brunschwig)会長兼CEOは「サステナビリティの分野では透明性がますます重要になっている」と述べた。

 フェンディの親会社であるLVMHモエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH MOE HENESSY LOUISE VUITTON)では、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)が1992年にサステナビリティに関する部署を設立している。アントワン・アルノー(Antoine Arnault)=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「LVMHグループのすべてのマネジャーや経営陣は、サステナビリティを優先リストの最上位に置いている。過去数年で考え方は変わり、プロジェクトの種類にかかわらず、常にステナビリティを考慮しており、エコデザインは最優先事項になりつつある。アイデアが生まれる瞬間から製品が廃棄されるまで、リサイクルや古いものから新しいものを生みだすこと、サステナビリティはわれわれのビジネス活動に根付いている。このテーマがまだ広く普及していない時から、長く取り組んできたことを誇りに思う」と述べた。

 また「コミュニティーや従業員、クライアント、このトピックについて興味のある人などみんなと話すことが大切」とし、「われわれは自分たちが完璧ではないと理解している。ときには落ち度があることも認めた上で、透明性を通じて誠意を示している。正しい方向に進んでいないよう感じた場合は内外の人に注意してほしいとお願いしている。これは改善のために有効な方法だ」とコメント。

 また、フェンディはフィレンツェ郊外のトスカーナに新工場を設立する。新工場は22年7月にオープン予定で、革製品の生産と発展を強化し、トレーニングセンターとしても活用するという。生産規模の拡大に伴い、すでに工場で働く150人の従業員に加えて、今後2、3年のうちに300〜350人を新たに雇用する予定だ。8万平方メートルの敷地に建てられ、ミラノを拠点とする建築スタジオのピウアーチ(PIUARCH)が設計を手掛けた。周囲と内壁の両方にガラスを使用し、中庭に地元の品種の植物や花を置くことで、フェンディは建築や都市の環境性能評価システムであるLEEDプラチナ認証取得を目指している。また、生物多様性へのアプローチで公園も併設した。

 フェンディのシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=
クリエイティブ・ディレクターは、「素晴らしいことで、とても幸せだ。このような厳しい状況にある中でも“メード・イン・イタリア”を核に成長を続けられている。工場は常に私たちの中心にあり、工場を訪れるといつも感情が揺さぶられる。この施設では人々が協調性を持って働くことができ、周囲の景観にも馴染むだろう」とコメントした。すでにあった古い建物を生かして建てられることから、「これ以上新たに建てる必要もない」と喜びを露わにした。

 フェンディはほかにも、サステナブルなコットンの生産に取り組むBCI(Better Cotton Initiative)認証のコットンの使用など天然素材の採用を強化し、最終的に完全にオーガニックコットンの使用を目指す。ライニングや包装にセルロースベースの繊維を使用するとともに、2020年春夏コレクションではレザーデザインの進化系である“FFグリーン インターレース”カプセルコレクションを発売した。ハンドバッグの“ピーカブー”や“バケット”は、認定されたFFコットンと、リサイクルポリエステルを混合して作られる。

 サステナビリティを通じた地元コミュニティーの支援にも力を入れており、10月にはイタリアの職人を称えるためのパートナーシッププロジェクト「ハンド・イン・ハンド(Hand in hand)」を発足した。21年春夏コレクションで初めてのデザインを公開。さらにパンデミックによって事業に大きな打撃を受けたイタリアのガラス会社を買収し、37のシャンデリアを分解してローマや上海、パリ、ロンドン、ニューヨークなど世界各地の店頭のクリスマスディスプレイの装飾に再利用する。

 一方フェンディのブランドの核ともいえる毛皮製品は、近年環境問題と動物愛護の観点からその存在が見つめ直されつつある。人工ファーを用いたファッションは関心を集めており、ファッションブランドも動物を原料とする毛皮の使用を避ける傾向にあるが、ブランシュウィッグ会長兼CEOは、「フェンディにとって毛皮は間違いなくサステナブルな素材だ」という。

 アントワン=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「このようなセンシティブな話題について真実を伝えることは非常に重要だ。確かな認証に準拠するためにできることはすべて行うが、ナイーブであってもいけない。私たちが毛皮の生産をやめたとしても、人々が毛皮を買うのをやめるわけではない。正しい方法で作られた毛皮をそういったクライアントに売りたいと思っている。確かに動物は命を落としているが、敬意を示して扱っている。劣悪な環境で動物を扱う業者による毛皮が取り引きされるより、むしろ私が悪者になり、正しい方法で販売したいと思っている。聞き入れがたい意見であることも理解しているが、良い反応も悪い反応もすべて受け止める責任は持っている」と語った。

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「フェンディ」が公式サイトにサステナビリティのためのページを新設 地元イタリアに工場も

 フェンディ(FENDI)は13日、公式サイトに社会的責任とサステナビリティに特化したページを設けた。

 同サイトは「サプライチェーン」「環境」「コミュニティー」の3つの軸で展開され、活動内容や達成率に関する情報を提供している。「サプライチェーン」のセクションでは、全体の流れの透明性促進に取り組みながら、労働環境や社会的基準を満たすよう努めていると発信。「環境」では、フェンディが使用する素材に関する情報や調達源を提供しており、製品をめぐるコンプライアンスも掲載。また、資源を循環利用し廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーの取り組みについてのページも設けている。ブランドと企業と関わりを持つ人々に焦点を当てた「コミュニティー」では、職人や従業員、クライアント、サプライヤー、そして地元社会に貢献する取り組みを紹介。若いデザイナーを支援するプログラムなども掲載している。フェンディのセルジュ・ブランシュウィッグ(Serge Brunschwig)会長兼CEOは「サステナビリティの分野では透明性がますます重要になっている」と述べた。

 フェンディの親会社であるLVMHモエ ヘネシー ルイ ヴィトン(LVMH MOE HENESSY LOUISE VUITTON)では、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)が1992年にサステナビリティに関する部署を設立している。アントワン・アルノー(Antoine Arnault)=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「LVMHグループのすべてのマネジャーや経営陣は、サステナビリティを優先リストの最上位に置いている。過去数年で考え方は変わり、プロジェクトの種類にかかわらず、常にステナビリティを考慮しており、エコデザインは最優先事項になりつつある。アイデアが生まれる瞬間から製品が廃棄されるまで、リサイクルや古いものから新しいものを生みだすこと、サステナビリティはわれわれのビジネス活動に根付いている。このテーマがまだ広く普及していない時から、長く取り組んできたことを誇りに思う」と述べた。

 また「コミュニティーや従業員、クライアント、このトピックについて興味のある人などみんなと話すことが大切」とし、「われわれは自分たちが完璧ではないと理解している。ときには落ち度があることも認めた上で、透明性を通じて誠意を示している。正しい方向に進んでいないよう感じた場合は内外の人に注意してほしいとお願いしている。これは改善のために有効な方法だ」とコメント。

 また、フェンディはフィレンツェ郊外のトスカーナに新工場を設立する。新工場は22年7月にオープン予定で、革製品の生産と発展を強化し、トレーニングセンターとしても活用するという。生産規模の拡大に伴い、すでに工場で働く150人の従業員に加えて、今後2、3年のうちに300〜350人を新たに雇用する予定だ。8万平方メートルの敷地に建てられ、ミラノを拠点とする建築スタジオのピウアーチ(PIUARCH)が設計を手掛けた。周囲と内壁の両方にガラスを使用し、中庭に地元の品種の植物や花を置くことで、フェンディは建築や都市の環境性能評価システムであるLEEDプラチナ認証取得を目指している。また、生物多様性へのアプローチで公園も併設した。

 フェンディのシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=
クリエイティブ・ディレクターは、「素晴らしいことで、とても幸せだ。このような厳しい状況にある中でも“メード・イン・イタリア”を核に成長を続けられている。工場は常に私たちの中心にあり、工場を訪れるといつも感情が揺さぶられる。この施設では人々が協調性を持って働くことができ、周囲の景観にも馴染むだろう」とコメントした。すでにあった古い建物を生かして建てられることから、「これ以上新たに建てる必要もない」と喜びを露わにした。

 フェンディはほかにも、サステナブルなコットンの生産に取り組むBCI(Better Cotton Initiative)認証のコットンの使用など天然素材の採用を強化し、最終的に完全にオーガニックコットンの使用を目指す。ライニングや包装にセルロースベースの繊維を使用するとともに、2020年春夏コレクションではレザーデザインの進化系である“FFグリーン インターレース”カプセルコレクションを発売した。ハンドバッグの“ピーカブー”や“バケット”は、認定されたFFコットンと、リサイクルポリエステルを混合して作られる。

 サステナビリティを通じた地元コミュニティーの支援にも力を入れており、10月にはイタリアの職人を称えるためのパートナーシッププロジェクト「ハンド・イン・ハンド(Hand in hand)」を発足した。21年春夏コレクションで初めてのデザインを公開。さらにパンデミックによって事業に大きな打撃を受けたイタリアのガラス会社を買収し、37のシャンデリアを分解してローマや上海、パリ、ロンドン、ニューヨークなど世界各地の店頭のクリスマスディスプレイの装飾に再利用する。

 一方フェンディのブランドの核ともいえる毛皮製品は、近年環境問題と動物愛護の観点からその存在が見つめ直されつつある。人工ファーを用いたファッションは関心を集めており、ファッションブランドも動物を原料とする毛皮の使用を避ける傾向にあるが、ブランシュウィッグ会長兼CEOは、「フェンディにとって毛皮は間違いなくサステナブルな素材だ」という。

 アントワン=ヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「このようなセンシティブな話題について真実を伝えることは非常に重要だ。確かな認証に準拠するためにできることはすべて行うが、ナイーブであってもいけない。私たちが毛皮の生産をやめたとしても、人々が毛皮を買うのをやめるわけではない。正しい方法で作られた毛皮をそういったクライアントに売りたいと思っている。確かに動物は命を落としているが、敬意を示して扱っている。劣悪な環境で動物を扱う業者による毛皮が取り引きされるより、むしろ私が悪者になり、正しい方法で販売したいと思っている。聞き入れがたい意見であることも理解しているが、良い反応も悪い反応もすべて受け止める責任は持っている」と語った。

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伊藤忠と日本気象協会 天候データ活用でアパレル廃棄を減らす

 伊藤忠商事は、日本気象協会と提携してアパレル向けの需要予測サービスを始める。日本気象協会の中長期の天候予測と、伊藤忠の川上から川下のサプライチェーンを結びつけることで、アパレルの生産・販売計画の適正化を図る。ファッション業界の課題である在庫過多や値引き販売の乱発を抑える。

 2021年春夏からユナイテッドアローズ、ナノ・ユニバースなどの専門店とテスト運用を始め、効果や課題を検証したのち、22年春夏から本格的に展開する。

 まず各社のPOSデータなどを収集してファッション業界全体の商品の動きを学習する。その後、中長期の気象予測に基づき、生産計画、生産調整、売価変更の最適化を図る。生産計画では寒暖や降水量などの予想と近年の収益の実績を分析した上で、コートやカットソーなどアイテムごとの需要予測を弾き出し、発注量の決定に役立てる。販売計画では、週1回の頻度で気象予測・需要予測を配信し、値引きや棚割り変更のタイミングを知らせる。

 日本気象協会はこれまでも食品や日用品の企業に向けて同様のサービスを提供してきた。ビールや制汗剤では気温が1℃変わるだけで販売量が万単位で変わる。豆腐では廃棄を3割減らした実績もあるという。

25日にオンラインで会見した伊藤忠のファッションアパレル第二部の溝内剛士部長は「アパレルでは前年の販売実績をクリアする目標ありきで計画が作られるケースが多かった。客観的なデータに基づいた生産計画・販売計画を組むことで過剰在庫や大量廃棄などの問題解決をサポートしたい」と話した。

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「メルカリ」が新作ゼロの「サステナブルファッションショー」を開催 MBや丸山敬太が登場

 フリマアプリ「メルカリ」は11月26日15時に、家で眠っているモノの利活用を促す取り組みとして、新作ゼロの「サステナブルファッションショー」を公式ユーチューブチャンネルで開催する。

 「サステナブルファッションショー」は、人気スタイリストの小山田早織氏、ファッションアドバイザーのMB氏が一般参加者から募集した不要になった服や「メルカリ」で購入した服を活用したコーディネートをショー形式で披露する。加えて、ファッションデザイナーの丸山敬太氏を招き「これからのサステナブルな消費のあり方」と題したトークセッションを実施する予定だ。

 メルカリが2020年10月に実施した独自調査では、「購入後ほとんど活用できていないモノを保有している人が45.7%で、そのうち58.5%は『洋服』で占められている」ことが判明した。また活用できていないモノを購入する背景には「衝動買い」があり、「購入時は気に入っていた」(54.9%)、「セールされていた」(42.4%)などの理由が挙げられている。そこで、活用できていないモノの価値を見直し、セール品を購入する以外にもファッションを楽しむ選択肢があることを提唱するため、欧州を中心に広がっている持続可能な消費を促すグリーンフライデーに合わせて開催に至った。

 グリーンフライデーは、大規模なセールが行われるブラックフライデー(11月第4金曜日)に代表される過剰消費に対抗し、モノを大切に長く使うなど、地球環境に優しい持続可能な消費を啓もうする目的で行われている取り組みだ。

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ワコールのアバター接客体験リポート 本音トークでより深いカウンセリングが可能に

 ワコールは、アバターを活用した新しい接客システム「アバカウンセリング パルレ(以下、パルレ)」を10月末、東京の「3Dスマート&トライ」東急プラザ表参道原宿店に導入した。2019年に同社がスタートした「3D スマート&トライ」とは、3Dボディースキャナーで約5秒でバストをはじめ全身18カ所を計測し、A Iを用いて最適な下着を提案するサービスで、現在日本国内の12店舗で提供されており年内に数店舗に導入予定だ。「対面接客は苦手」という消費者や体のメンテナンスへの意識が高い20〜30代を中心に、今年の10月末までに約3万人が計測した。「3Dスマート&トライ」の店舗ではカウンセリングルームを設けて予約制でサービスを提供していたが、新型コロナ感染拡大で現在は行っていない。その代わりに登場したのがアバター接客「パルレ」だ。「パルレ」とはどのようなサービスか、ここでリポートする。

 店舗に到着するとカウンセリングルームに案内される。スクリーン上に2人のアバターが登場。ショートヘアの進藤みなみさんか、セミロングヘアの明石舞さん、どちらかを選ぶ。まず、アバターによるカウンセリングがあり、奥の3Dボディスキャナーで計測後、アバターがおすすめのインナーやアドバイスをしてくれるという流れだ。カウンセリングにかかる時間は約1時間。アバターの進藤さんを選び、カウンセリングをスタートした。アバターはお辞儀をしたり、自然な仕草や目線で想像以上にリアルだ。下着に関する悩みや理想のバスト、好みのつけ心地について聞かれた。自分の体に関することなので対面だとどうしても控えめになりがちだが、相手がアバターなのでざっくばらんに話せる。

計測結果やおすすめ商品を丁寧に解説

 3Dボディースキャナーの計測方法の説明があり、セルフで計測が終わるとタブレットに必要情報を入力して登録、そうすると計測データを見ることができる。自分自身の体型を360度客観的に見るのは初めてという人も多いだろう。私自身、想像以上にお尻が下がっていてがっかり。進藤さんは「皆さん、お尻や下腹の話をされます」と言う。このデータをアバターの進藤さんと共有することで、体型の特徴や体型に合う下着選びのポイントを説明してくれる。計測結果のパーソナルシートをはじめ、タブレットでA Iによる商品の提案からお気に入りを選びプリントアウトすることもできる。進藤さんはカウンセリングと計測結果から、「すっきり3/4カップのブラジャーがおすすめです。後ろの棚にサンプルが幾つかあるので、実際商品に触って見てください」と言う。カウンセリングルーム内にある棚からサンプルを取り出して、実際触りながらその商品の特徴について進藤さんが説明してくれる。気に入った商品の在庫が店舗にあれば、購入可能だ。店舗スタッフに頼めば、試着も可能。また、即決しなくてもお気に入りアイテム情報をプリントアウトして、後にワコールウェブストアやショップで購入してもO Kとフレキシブルだ。カウンセリングが終了すると進藤さんは、うやうやしくお辞儀をして、さようならと手を振ってくれた。対面のストレスもなく、可愛らしいアバターとおしゃべりしながら楽しく下着選びができる「パルレ」。しかも、そこで購入しなくてもいいという自由度も魅力だ。カウンセリングルームへの案内以外は、対面接客はなく、全てセルフで完結するコロナ時代にはぴったりのサービスといえる。だが、「パルレ」はコロナ対策ではなく、別の目的から開発されたサービスなのだ。

消費者、販売員どちらにとっても画期的なシステム

 「パルレ」の着想は2019年秋。下着についての相談は抵抗があると人も多い。だが、アバターだったら、相手の顔色を伺うことなくより深いカウンセリングができるのではという理由から。今年に入って、ワコールが持つビューティーアドバイザー(BA)の接客技術とソーシャルデザイン企業のヒーローズのアバターコミュニケーション技術である“アヴァ・トーク(Ava Talk)”を融合させて開発を進めた。ワコールは、システム開発企業のテックファームにシステム開発および運用に関する技術支援を受けている。

 アバターとBAの融合はどのように行われているのだろうか。PCのカメラがBAの動きを感知しアバターに反映。まばたきは連動しているので、とても自然な反応だ。BAがお辞儀をしたり手を振ればアバターも同じ動きをするという仕組みになっている。BAにとっても仕事とはいえ、1時間対面カウンセリングをするのはプレッシャーだという。しかし、アバターを介せばBAも消費者もお互い楽に、悩みや感情の共有ができる。

 また、このシステムは、“接客員は店頭に立たないと仕事ができない”という概念を覆すものでもある。ワコールでは、将来的にこのシステムを活用することで、B Aのリモートワーク環境を実現し、自宅からでも接客できる新しい働き方の創造を目指している。コスト削減や効率化ではなく、消費者もBAも両方ハッピーになれるシステム「パルレ」。これからのアバター接客の大きな布石になりそうだ。

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ワコールのアバター接客体験リポート 本音トークでより深いカウンセリングが可能に

 ワコールは、アバターを活用した新しい接客システム「アバカウンセリング パルレ(以下、パルレ)」を10月末、東京の「3Dスマート&トライ」東急プラザ表参道原宿店に導入した。2019年に同社がスタートした「3D スマート&トライ」とは、3Dボディースキャナーで約5秒でバストをはじめ全身18カ所を計測し、A Iを用いて最適な下着を提案するサービスで、現在日本国内の12店舗で提供されており年内に数店舗に導入予定だ。「対面接客は苦手」という消費者や体のメンテナンスへの意識が高い20〜30代を中心に、今年の10月末までに約3万人が計測した。「3Dスマート&トライ」の店舗ではカウンセリングルームを設けて予約制でサービスを提供していたが、新型コロナ感染拡大で現在は行っていない。その代わりに登場したのがアバター接客「パルレ」だ。「パルレ」とはどのようなサービスか、ここでリポートする。

 店舗に到着するとカウンセリングルームに案内される。スクリーン上に2人のアバターが登場。ショートヘアの進藤みなみさんか、セミロングヘアの明石舞さん、どちらかを選ぶ。まず、アバターによるカウンセリングがあり、奥の3Dボディスキャナーで計測後、アバターがおすすめのインナーやアドバイスをしてくれるという流れだ。カウンセリングにかかる時間は約1時間。アバターの進藤さんを選び、カウンセリングをスタートした。アバターはお辞儀をしたり、自然な仕草や目線で想像以上にリアルだ。下着に関する悩みや理想のバスト、好みのつけ心地について聞かれた。自分の体に関することなので対面だとどうしても控えめになりがちだが、相手がアバターなのでざっくばらんに話せる。

計測結果やおすすめ商品を丁寧に解説

 3Dボディースキャナーの計測方法の説明があり、セルフで計測が終わるとタブレットに必要情報を入力して登録、そうすると計測データを見ることができる。自分自身の体型を360度客観的に見るのは初めてという人も多いだろう。私自身、想像以上にお尻が下がっていてがっかり。進藤さんは「皆さん、お尻や下腹の話をされます」と言う。このデータをアバターの進藤さんと共有することで、体型の特徴や体型に合う下着選びのポイントを説明してくれる。計測結果のパーソナルシートをはじめ、タブレットでA Iによる商品の提案からお気に入りを選びプリントアウトすることもできる。進藤さんはカウンセリングと計測結果から、「すっきり3/4カップのブラジャーがおすすめです。後ろの棚にサンプルが幾つかあるので、実際商品に触って見てください」と言う。カウンセリングルーム内にある棚からサンプルを取り出して、実際触りながらその商品の特徴について進藤さんが説明してくれる。気に入った商品の在庫が店舗にあれば、購入可能だ。店舗スタッフに頼めば、試着も可能。また、即決しなくてもお気に入りアイテム情報をプリントアウトして、後にワコールウェブストアやショップで購入してもO Kとフレキシブルだ。カウンセリングが終了すると進藤さんは、うやうやしくお辞儀をして、さようならと手を振ってくれた。対面のストレスもなく、可愛らしいアバターとおしゃべりしながら楽しく下着選びができる「パルレ」。しかも、そこで購入しなくてもいいという自由度も魅力だ。カウンセリングルームへの案内以外は、対面接客はなく、全てセルフで完結するコロナ時代にはぴったりのサービスといえる。だが、「パルレ」はコロナ対策ではなく、別の目的から開発されたサービスなのだ。

消費者、販売員どちらにとっても画期的なシステム

 「パルレ」の着想は2019年秋。下着についての相談は抵抗があると人も多い。だが、アバターだったら、相手の顔色を伺うことなくより深いカウンセリングができるのではという理由から。今年に入って、ワコールが持つビューティーアドバイザー(BA)の接客技術とソーシャルデザイン企業のヒーローズのアバターコミュニケーション技術である“アヴァ・トーク(Ava Talk)”を融合させて開発を進めた。ワコールは、システム開発企業のテックファームにシステム開発および運用に関する技術支援を受けている。

 アバターとBAの融合はどのように行われているのだろうか。PCのカメラがBAの動きを感知しアバターに反映。まばたきは連動しているので、とても自然な反応だ。BAがお辞儀をしたり手を振ればアバターも同じ動きをするという仕組みになっている。BAにとっても仕事とはいえ、1時間対面カウンセリングをするのはプレッシャーだという。しかし、アバターを介せばBAも消費者もお互い楽に、悩みや感情の共有ができる。

 また、このシステムは、“接客員は店頭に立たないと仕事ができない”という概念を覆すものでもある。ワコールでは、将来的にこのシステムを活用することで、B Aのリモートワーク環境を実現し、自宅からでも接客できる新しい働き方の創造を目指している。コスト削減や効率化ではなく、消費者もBAも両方ハッピーになれるシステム「パルレ」。これからのアバター接客の大きな布石になりそうだ。

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「アグ」がサステナビリティに特化したサイトを開設

 「アグ(UGG)」は10月15日、“環境”“コミュニティー”“革新”の3つの柱に焦点を当てたウェブサイト「フィールグッド(Feel Good)」を立ち上げた。透明性と説明責任を育むことを目的としており、消費者がブランドの活動を知ることで、その影響を理解することができるようになっている。

 1978年創業の「アグ」は、クラシックなシープスキンブーツからアパレル、アクセサリー、ホームウエアへと多角化し、拡大を続けている。同社は2016年にデッカーズ ブランズ(DECKERS BRANDS)傘下ブランドとして国連グローバル・コンパクトに加盟。多様性、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、インクルージョンの重要性を掲げて、3万3000人以上の女性にトレーニングを行い、27年までにその数を10万人とする計画を立てている。

 また、パリ協定に沿って環境への影響を監視し、温室効果ガスの排出量を削減するために専門家のパートナーと協力して活動を開始し、21年までに科学的根拠に基づいた目標を設定することを計画している。さらに27年までにリサイクル、再利用、植物由来素材、バイオ由来素材、認証繊維の使用量を35%増やすことも掲げている。

 アンドレア・オドネル(Andrea O'Donnell)「アグ」ブランドプレジデントに米「WWD」が聞いた。

WWD:新たなイノベーション、そして新たなステップとは何か?

アンドレア・オドネル「アグ」ブランドプレジデント(以下、オドネル):私たちはこれまで、特にウールとリヨセルの混紡“アグプラッシュ(UGGplush)”と、天然ウールの“UGGpure(アグピュア)”を使って、廃棄物を減らし、環境への影響を最小限に抑えることに取り組んできた。さらに、アウトソールの“シュガーソール(SugarSole)”など、革新的なソリューションを含む、エキサイティングな新コレクションも発表する。同コレクションでは、成長が早く、雨水に依存し、灌漑を必要としない再生可能なサトウキビを採用。また、テンセルと植物由来の染料を使用し、化学物質への影響を軽減している。これは、私たちが取り組むイノベーションの一例に過ぎず、今後もシーズンごとに拡大していく。

 パートナーも重要だ。サヴォリー・インスティテュート(THE SAVORY INSTITUTE)とは、非営利団体「ランド・トゥ・マーケット」のプログラムの一環として、再生可能な農業プロジェクトのためのコラボレーションを開始した。同プログラムは、私たちが暮らす土地を保護し、回復させるために農家と協力し、人と地球の両方に良い影響を与えている。また、業界の専門家と協力して、パリ協定の目標に沿った温室効果ガスの計測や排出削減対策支援も行っている。

WWD:なぜサステナビリティに投資するようになったのか?

オドネル:私たちは皆、未来の世代のために地球を守る役割を担っており、このメッセージを伝え、推進していくことが重要だと考えた。それにはまず、自分たちが今どこにいるのかを理解し、環境への影響を最小限に抑えるためにブランドレベルで何ができるのかを正直に評価する必要があった。そこで専門家のパートナーに依頼して、積極的な変化を促進してきた。変化は一朝一夕には起こらないことは分かっているが、私たちは現在地と今後の方向性について、透明性を保ちたいと考えている。

WWD:踏み込んだステップをどのように伝えていくのか?

オドネル:ウェブサイト「フィールグッド」で、私たちの長期的な持続可能性の目標や計画、提携についての情報を提供したいと考えている。“環境”“コミュニティー”“革新”という3つの柱に基づいた活動や情報を閲覧したり、体験することができる。“環境”とは、地球を大切にし、事業が与える影響を最小限に抑えることだ。“コミュニティー”とは、従業員、お客さま、地域社会、そしてその先の人々を第一に考えること。そして最後に、“革新”とは、地域社会と地球のために、より良い製品を生み出すために努力し続けることだ。その3つにどのように取り組んでいるかを発信していく。

WWD:消費者との関係は?

オドネル:「アグ」は、“人々を感じさせる”ことで知られているブランドであり、私たちは消費者と密接で個人的な関係を持っている。サステナビリティと透明性が消費者にとって重要だ。このサイトで私たちの取り組みや計画を共有していく。

WWD:そのような消費者がいるからこそ、持続可能性を高めるための努力が必要か?

オドネル:消費者は私たちの原動力であり、消費者にとっての透明性を保つことが鍵だと思う。ファッションは現実的で、民主的で、同時に野心的なものであり得るというのが、私たちの信念だ。また、美しいだけでなく、革新的で、長持ちし、ポジティブなインパクトを与える商品を作っていきたい。

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「ウーバーイーツ」が「フランフラン」と提携 東京都内3店舗で雑貨の宅配をスタート

 デリバリーサービス「ウーバーイーツ(UBER EATS)」は、「フランフラン(FRANCFRANC)」とタッグを組み、雑貨の宅配を東京都内3店舗(青山店、新宿サザンテラス店、自由が丘店)で11月25日に開始する。食器や加湿器などの商品約30種類(700~7000円)を扱い、配送手数料は300~400円に設定。飲食を含まない小売り事業者としては日本で初めての試みとなる。

 新しい生活様式の導入により、「ギフトを買いに行く時間がない」という悩みを抱えている客が多いことが判明。注文から約30分で配達ができる「ウーバーイーツ」との取り組みにより、客の「今すぐ欲しい」「今すぐ贈りたい」というニーズに応えるため、サービスを開始した。

 「ウーバーイーツ」は、日本国内でのフード以外のデリバリーサービスの拡大を図っており、ギフトニーズの高い「フランフラン」と組み、さらなる人々のつながりを創出していくという。

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「モンクレール」がダウ・ジョーンズのサステナブル企業ランキングで首位

 モンクレール(MONCLER)が、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(Dow Jones Sustainability Index以下、DJSI)のテキスタイル・アパレル・ラグジュアリーグッズ部門で「DJSI ワールド(DJSI WORLD)」と「DJSI ヨーロッパ(DJSI EUROPE)」のトップに輝いた。DJSIはサステナビリティ推進企業を、経済と環境、社会的責任からなる基準でランク付けする。調査は信用格付けプロバイダーであるS&Pグローバル(S&P GLOBAL)が行っている。

 モンクレールのレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「われわれの会社の発展において、サステナビリティが戦略的資産であるということを証明している。ステークホルダーへの決意の表明であり、子ども達や未来への道徳的義務である。モンクレールでは人々や環境を反映して敬意を示し、守ることのできるビジネスモデルを構築するために日々取り組んでいる。次世代に確かなビジョンや新しいインスピレーション、希望を残していきたい」とコメントした。

 同社は10月、2025年までにサステナビリティへの取り組み強化計画として、気候変動対策、持続可能な循環型経済、公正な資源調達、多様性の強化、そして地域社会への還元という5つの戦略的要素を主軸とする「ボーン トゥ プロテクト サステナビリティ プラン(Born to Protect Sustainability Plan)」を発表した。また、「ナーチャー ジーニアス(Nurture Genius)」プロジェクトの一環として、21年1月までにダイバーシティー&インクルージョン協議会を発足し、社内外文化の改革にも取り組んでいる。

 これまでも製品パッケージの90%にサステナブルな素材を使用し、17〜19年には二酸化炭素排出量を30%削減してきた。同プランでは新たに21年までにカーボンニュートラルを世界的に実現し、23年までに100%再生可能なエネルギーを世界規模で採用するなどの目標を設定した。

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「原料といえば伊藤忠」から「環境配慮型素材といえば伊藤忠」へ 循環型経済の実現目指す

 伊藤忠商事はリサイクルポリエステル素材を軸とした「レニュー」プロジェクトを通して、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現を目指す。核となるリサイクルポリエステル素材「レニュー」の原料は中国の協力工場で回収した端切れや残たんに加えて使用済衣服で、年間約3万トンの衣料品生地を回収する。それらを化学的に分解することで元の原料にまで戻し、機能を落とすことなく新しい繊維に再生するケミカルリサイクル技術で、バージンポリエステル同様の安定した染色性と品質を備える。下田祥郎繊維カンパニーファッションアパレル第三部繊維原料課長に話を聞いた。

WWD:「レニュー」を立ち上げたきっかけは?

下田祥郎繊維カンパニーファッションアパレル第三部繊維原料課長(以下、下田課長):私が所属する繊維原料課では2000年頃からコットン生産者のオーガニック農法への移行をサポートするプレオーガニックコットンの販売を開始し、常に環境に重点を置いたビジネスを行ってきた。さらに海外を含めた繊維業界の大量廃棄と環境の問題にわれわれとして何か貢献できないかと考え、19年度に循環型経済の実現を目指す「レニュー」プロジェクトを立ち上げた。

WWD:サステナビリティにはさまざまなアプローチがあるが、循環型に注目した理由は?

下田課長:これまでのペットボトルを原料としたマテリアルリサイクルでは、一度しかリサイクルができないためペットボトルのゴミを繊維のゴミに変えているだけだった。それではサステナブルとは呼べないだろう。繊維で作ったものを繊維にリサイクルして循環させることこそが、繊維業界の責任だと考えたからだ。

WWD:「レニュー」素材の優位性は?

下田課長:バージンポリエステルと同様の機能性と品質を持つことが最大の強みだ。お客さまは繊維から繊維のリサイクルというストーリーの部分に共感していただいているようだ。

WWD:現在はどのようなブランドと取り組んでいる?

下田課長:最近では「H&M」「GU」、デサントの「リ:デサント(RE:DESCENTE)」、アダストリアが手掛ける「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」の一部の商品で採用してもらっている。国内外ともに反応がよく、次の春夏に向けて商品展開を拡大していく。

WWD:トレーサビリティーはどのように担保している?

下田課長:われわれは環境に配慮した繊維素材の普及を進める国際NGOのテキスタイルエクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)が発行する環境認証GRS(GLOBAL RECYCLE STANDARD)を取得している。これは、毎年の監査でわれわれの部署だけでなく、工場、糸の売り先も同じ基準をクリアすることで、トレーサビリティーのある生産体制を認証する仕組みになっている。

WWD:循環型経済実現に向けた技術で注目しているものは?

下田課長:特に最近増えているのが。イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)社が手掛けているようなリサイクルナイロンだ。そのほか、レンチング社のリサイクルレーヨンにも注目している。世界的に繊維業界における温室効果ガス削減への取り組みは加速していくため、これからさらにリサイクル素材は増えるだろう。ケミカルリサイクルはさまざまな技術開発が現在ラボレベルで行われている。それらをどのように商業化していくかが、この5年での課題となるだろう。われわれもそこをサポートしていきたい。

WWD:循環型経済を目指す上での課題は?

下田課長:企業ごとの開発に加えて、消費者の文化レベルで衣料品の回収を定着させる必要がある。以前イタリアに住んでいた時には家の近所に衣料回収ボックスが常設してあり、生活に溶け込んでいた。モノを捨てて焼却するのが当たり前になっている日本では、新しい制度や仕組み作りから取り組むべきだろう。

WWD:「ファッション協定(The Fashion Pact)」のようなグローバルな枠組みに参加する予定はあるか?

下田課長:まずはテキスタイルエクスチェンジの会員として、カンファレンスに参加し意見交換している。ほかにも、エレンマッカーサー財団や環境NPOのキャノピー(Canopy)ともコミュニケーションが取れている。同時に当社が繊維業界の旗振り役となり、日本での枠組み作りにも取り組んでいきたい。9月にはクラボウと業務資本提携を結び、環境を軸にしたコンソーシアム作り目指すことを発表した。ここから消費者も巻き込んだ循環型社会を目指していく。サステナビリティは、業界全体が手を取り合って取り組むべき課題だ。「レニュー」プロジェクトは横のつながりを作るための一つのツールとしても機能するだろう。これまでは「原料といえば伊藤忠」とうたってきたが、今後は「環境素材といえば伊藤忠」というステータスを世界で作っていきたい。

WWD:「レニュー」プロジェクトの今後の目標は?

下田課長:消費者が欲しいと思って買った商品が、実は「レニュー」素材を使っていた、というような世界の実現を目指す。しかし、まだ完全にクローズドループは実現できていない。回収して繊維に戻す工程をわれわれとしてもさらに注力していきたい。究極の目標は、世界各地でこのプロジェクトを地産地消できるまでに拡大していくことだ。

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「ヴォーグ チャイナ」の名物編集長が退任 中国ファッションのグローバル化を牽引

 「ヴォーグ チャイナ(VOGUE CHINA)」を創刊から16年間率いてきたアンジェリカ・チャン(Angelica Cheung)編集長が退任するようだ。同誌を発行するコンデナスト・チャイナ(CONDE NAST CHINA)からはコメントを得られなかったが、米「WWD」のスタッフが見た内部メモによると12月8日で退任。後任は未定で、チャン編集長の今後も明らかになっていない。

 中国のファッション業界で最もパワフルな女性として知られるチャン編集長は1966年に北京で生まれ、文化革命の中で育った。北京大学で法学と英語の学位を取得し、香港の英字新聞「イースタン・エクスプレス(EASTERN EXPRESS)」のジャーナリストとしてメディア界でキャリアをスタート。その後、香港版「マリ・クレール(MARIE CLAIRE)」や「エル チャイナ(ELLE CHINA)」などの編集長を務めた後、2005年に「ヴォーグ チャイナ」の創刊編集長に就任した。彼女は国際的なクリエイターを同誌に紹介するとともにグローバルブランドの中国進出に携わり、中国人スーパーモデルや若手ブランドの育成や国際的な活躍の支援にも尽力。中国におけるファッションの発展や中国ファッションのグローバル化への貢献は計り知れない。

 退任については、「別れを告げるのは決して簡単ではないが、これほど長く続けるつもりはなかった。もともと『ヴォーグ チャイナ』を創刊した後、法律家としてのキャリアを積もうと考えていたが、そうはならなかった。5年、10年、そして今15年という節目を迎え、退任するのにふさわしい時が来たと感じていた」と語った。

 なお、新編集長が決まるまでは、現在グローバルコンテンツを監修するアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長兼コンデナスト(CONDE NAST)アーティスティック・ディレクターがチャン編集長とデニス・スエン(Denise Suen)「ヴォーグ チャイナ」マネジング・エディターと密に連携し、スムーズな移行を図るという。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 女性初副大統領の登場で沸くファッション業界 Arrival of New Ladies

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第15回。“You’d Better Be Handsome”では、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)も加って、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。今回のテーマは、バイデン勝利で終わった大統領選挙から生まれた新世代のアイコン、カマラ・ハリス、そしてトランプのテイラースーツなどなど。

 1週間続いた冷たい雨がやみ、初冬にしては暖かい外の陽気に久しぶりに外でランチをせずにはいられなかった今回は、オフィスからも近くトライベッカの住人から長く愛されている「ペトラーカ カックチーネ ヴィノ(PETRARCA CUCINA E VINO)」をチョイス。シェフのレオナルド・プリト(Leonardo Pulito)と2人の息子、さらにボスと呼ばれる奥さんの家族経営ならではの温かな本場のイタリアン料理を楽しめる。
34 White St, New York, NY 10013

メイ:長い長い大統領選挙がようやく終わったはずなのに、なんだかスッキリしないよね。

スティービー: ドナルド・トランプ(Donald Trump)が負けを認めずゴルフばっかりやっているから?彼の護衛や家族も、彼が大統領じゃなくなると無職になるからか粘っている。こうなることは分かっていたとはいえ醜い。

メイ:実際のところ、引退したトランプを待っているのは、数多くの裁判だろうし。返済しないといけない借金や未払いの税金も山のように抱えていて、それを選挙の不正とかいって時間稼ぎしている。

レイチェル:それにしても今回よく分かったけど、アメリカが広いとはいえ、ウソばかりついて何にもしないトランプをヒーローのように祭り上げる人たちが多くいて、本当に衝撃だった。選挙の後も、トランプのニセ情報に踊らされて、選挙に不正があったと抗議したり。自分たちに有利だと票を数えろと言い、不利になりそうだと票を数えるなと言う。

スティービー:破茶滅茶過ぎてストレスになるから、もうニュースを見ないという人たちがニューヨークにも多くいるけど、それももっとも。いまセラピーに通う人たちは、ストレスの理由の一つに大統領選挙を必ず挙げるらしい。ただ今回の選挙を見ているなかで、ジャーナリズムの重要性というか、作り話をネタ元も確認せずにすぐ信じる人たちがたくさんいて驚かされた。

メイ:いちばんいい例がキューアノン(QAnon)。ジョー・バイデン(Joe Biden)をはじめ、前大統領のバラク・オバマ(Barak Obama)や大統領候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)といった民主党の数名、セレブリティーらが児童売春の組織を運営しているという陰謀論。

レイチェル:それだけでも不明な発想なのに、その救世主としてトランプが登場するんだから、みんなしっかり目を開いてほしいと思う。トランプが困っている子どもを助けに行くような大統領だったら、アメリカで新型コロナの死者が250万人に達するいま、ワクチンをニューヨーク州にはあげないとか、幼稚園児みたいな発言はしていないはず。

スティービー:ソーシャルメディアも、右寄りの人たちには、右寄りの情報ばかりが入っていくシステムだから、自分で情報源をきちんと選ばないと。当たり前のこととはいえ、一人一人が真実とウソを見分けていく力、メディアリテラシーを身につけていかないと。もちろんアメリカだけの話ではなくて。

初女性副大統領に興奮のファッション界

レイチェル: 先行きが見えない2020年だけど、残すところ1カ月。それにしても、勝利演説のときのカマラ・ハリス(Kamala Harris)新副大統領は白いシルキーなパンツスーツで、まさにハンサムウーマン。久々に希望が見えた!

メイ:あれは「キャロリーナ・ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」のパンツスーツだったらしい。18年からは、ウェス・ゴードン(Wes Gordon)がクリエイティブ・ディレクターを務めているけど。キャロリーナ自身はベネズエラ出身。カマラは初の女性副大統領として、女性が創業者のブランドを選んだのかしら。

スティービー: 堂々としているからか、彼女ってミシェル・オバマ(Michelle Obama)ほどではないとしても、身長も高いのかと思っていたら、身長が157cmと知って驚いた。

メイ:それは意外、少なくとも170cmくらいはありそうだったから。ミシェル・オバマも、メラニア・トランプ(Melania Trump)も、身長180cmと大きいからね。ちなみにトランプは190cmあるらしいけど…。

スティービー:ファーストファミリー(大統領一家)ではないけれど、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)も大きく見えて、実際は155cmくらいらしい。彼女の場合はあらゆる手を尽くして背が高く見えるようにバランスを研究しているだろうけど、カマラと共通しているのは堂々とした存在感。

メイ:ミシェル・オバマが、アメリカのデザイナーの服を積極的に着てプロモートしたことは記憶に新しい。就任式にはジェイソン・ウー(JASON WU)のドレスを着たことで、彼の知名度が一気にアップしたり。アメリカのデザイナーたちには、振り返ってみるといい時代だった。それを指揮していたのが、シカゴのセレクトショップ、イクラム(IKRAM)。

レイチェル:一方のメラニアは、モデル出身で何でも似合うルックスなのに、アンチトランプばかりが圧倒的に多いニューヨークのファッション業界からは歓迎されていなかった。

スティービー:そういう意味でも4年ぶりにファッション業界も可能性を感じている。ファーストレディーで大学教授のジル・バイデン(Jill Biden)は、勝利宣言のとき「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」を着用していたね。カジュアルだけど華のあるデザインだった。

レイチェル:故オスカー自身はドミニカ共和国出身のデザイナー。16年から韓国出身のローラ・キム(Laura Kim)と、ドミニカ共和国出身のフェルナンド・ガルシア(Fernando Garcia)が共同クリエイティブ・ディレクター。キャロリーナ・ヘレラも、オスカーも、歴代のファーストレディーに愛されてきたブランド。

メイ:カマラみたいに初の女性副大統領として歴史を大きく変えている人には、今後は新しいデザイナーブランドにも挑戦してほしいな。

スティービー:こういう場合、アメリカのデザイナーが中心になるとは思うけど、最近元気のないニューヨークのファッション業界に誰がいる?

レイチェル:そうね、現在CFDA(アメリカファッション協議会)の会長も務めるトム・フォード(Tom Ford)とかはどうかな?似合いそうじゃない?シルキーなパンツスーツに、彼女のシグニチャーであるパールネックレスで。

メイ:あとは、今回もバイデン新大統領を一生懸命応援していたレディー・ガガ(Lady GaGa)のスタイリストもしていたブランドン・マックスウェル(Brandon Maxwell)、シックに「ザ・ロウ(THE ROW)」、または「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」とかも似合いそう?

スティービー:イメージとしては、「ダナ キャラン(DONNA KARAN)」とかもいいかと思うんだけど、最近はどこで売っているかよく分からないから残念。それか、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」、「ダナ キャラン」で経験を持つ、ネリー・パートウ(Nellie Partow)のアメリカンスポーツウェアブランド、「パートウ(PARTOW)」もカマラにとても似合いそう。

レイチェル:ネリー自身も小柄でかつ有色人種の女性デザイナー。カマラにぜひ着てほしい。それと個人的には、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」とかも似合いそうと思っている。ディレクションだけでなく、今では数少ない(?)服を作れるデザイナー兼ディレクターであるマークは、店頭で見る派手なものだけでなく、ジャケットなどの少し硬い服も再評価されてもよいころかと。

メイ:どちらにしても、ホワイトハウスに女性がいる方がファッション界的には話題があっていいよね。

スティービー:誰も話題にしないけど、トランプって実はブルックリンにあるカルト的テイラー、マーティン・グリーンフィールド(Martin Greenfield)に仕立ててもらっていたのは知ってた?

レイチェル:え?あのダブダブのシルエットのスーツ?マーティン・グリーンフィールドって、どちらかというと細身のシルエットかと思っていた。「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のスーツとかも仕立てていたような記憶が。オバマ前大統領のスーツとか。

スティービー:何着か仕立てただけだと思うけど。ほかにもトランプは「ブリオーニ(BRIONI)」を愛用しているらしいけど、全く気付かなかった。

メイ:前副大統領というか新大統領のバイデンは、すらっとスーツをかっこよく着こなしているけどね。どこのブランドかまでは分からないけど、体にフィットしているという印象。

政界のニューミューズ

レイチェル:大統領レベルではないけれど、AOCの頭文字で知られるニューヨーク出身の若手アレクサンドラ・オカシオ・コルテス(Alexandra Ocasio-Cortez)議員も、最近「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」誌の表誌を飾ったり、話題の女性政治家よね。

スティービー:19年の当選のときはウエイトレスをしながら選挙活動をしていたという!当時29歳。おしゃれにすごく敏感というわけではなさそうだけど、「ヴァニティ・フェア」誌ではいろんなスーツをクールに着こなしていたという印象。

レイチェル:フォトグラファーは、「ヴォーグ(VOGUE)」史上初めてカバーを撮影した黒人フォトグラファーのタイラー・ミッチェル(Tyler Mitchell)が担当。ワードローブも、クリストファー・ジョン・ロジャーズ(Christopher John Rogers)やウェールズ・ボナー(Wales Bonner)ら注目の若手から、キャロリーナ・ヘレラや「ロエベ(LOEWE)」など大御所からビッグブランドまで、面白い企画だった。

メイ:今年はどんなセレブリティーよりも、政治家が良くも悪くも目立っていたから。AOCは彼女のスタイルというよりも、発言力で目立ってはいるんだけどね。

レイチェル:夏に「VOGUE.COM」の人気ビデオシリーズ、ビューティシークレット(Beauty Secrets)で、彼女自身の毎日のルーティンを披露していた。

スティービー:鏡に向かって自分で語りながら、すっぴんからメイクしていく人気シリーズだね。ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)、ミランダ・カー(Miranda Kerr)、ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)、リアーナ(Rihanna)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、渡辺直美、水原希子までゴージャスなラインアップ。

メイ:政治家は見かけたことがないような。AOCいわく、毎日テレビに出たり、さらにニューヨークとワシントンDCを行ったり来たりの生活らしいけれど、コントゥアーもカーダシアン並みにしっかり入れ、ハイライトもきちんと入れ、熱い演説のようなトークをしながらも、レッドリップスティックで仕上げるテクニックは見ていて気持ち良かった。

レイチェル:周りの人々からどう思われるかではなく、自分を愛するという意味でメイクアップが彼女にとっては大切だという。ビューティ哲学の根本を語ってくれた気がする。ミレニアル世代として、メイクアップはユーチューブで学んだらしいけどね。

スティービー:彼女のファンが増えるのも分かるね。米「ヴォーグ」のアナ・ウィンター(Anna Wintour)編集長も彼女のことを褒めていたよね。スタイルではなく、彼女が話していることの本質にもっと目を向けるべきと。

メイ:AOCが仲良くしている若い女性議員が何人かいて、彼女たちの今後の活躍も期待したい。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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「オバジ」が“Cセラム”シリーズをリニューアル 20年守り続けた処方を一新した理由とは

 ロート製薬は2021年3月10日、「オバジ」ブランドの高濃度ビタミンC配合美容液シリーズ“オバジCセラム”をリニューアルする。シリーズの処方を一新し、ビタミンCの肌への浸透スピードがアップ。シミやシワなど肌悩みに対してこれまで以上に効果を実感できるようになる。

 2001年に誕生し、来年6月に20周年を迎える「オバジ」は、肌に適切なアプローチをすることで自ら美しくなろうとする力を高めるという皮膚再生理論に基づき、化粧品開発に取り組んできた。特に昨年発売した、ピュアビタミンC濃度25%というブランド史上最高濃度を実現した美容液「オバジC25セラム ネオ」は、各美容誌のベストコスメ賞を受賞し売り上げも加速。シリーズ累計1000万本以上の出荷を達成した。

 そんな好調な「オバジ」だが、「さらにピュアビタミンCの効果を最大限発揮した形でお客さまに届けたい」(黒木未知瑠スキンケア製品開発部開発2グループ)という思いから、20年間守り続けたベース処方の見直しを行うことに。「“オバジCセラム”シリーズの高濃度・高浸透・超安定をかなえる製剤設計は、ベース処方があってこそ。また、ピュアビタミンCは効果が高い一方、溶解性が悪い、安定配合できない、水溶性成分のため浸透しにくいという製剤化の難しさもあった。そこで800を超える製剤検討の末、新ベース処方が完成。肌への有用性をさらにアップした」と話す。特に新処方は旧処方に比べてピュアビタミンCの浸透スピードが3.7倍にアップ。浸透スピードが高まるメリットは、抗酸化スピードが速くなることでシミやシワの原因となる活性酸素をいち早く除去し、ダメージの蓄積を防ぐことができる。さらに、頬に広範囲にわたる“肝斑様シミ”へのアプローチも可能となるという。

 リニューアル後も、「オバジC5セラム」(12mL、3000円)、「オバジC10セラム」(12mL、4000円、26mL、7000円)、「オバジC20セラム」(15mL、8000円)、「オバジC25セラム ネオ」(12mL、1万円)といった、肌悩みや年齢に応じて幅広く使用できる濃度別のラインアップは継続。「各濃度の“極限”の効果を発揮するように進化した。これまで以上に肌への効果実感が期待できる」(石井雪プレステージスキンケア事業部 マーケティングマネージャー)と語った。

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ロート製薬が化粧品の廃棄ロスに取り組む理由とは 「汗水流して作った製品が大量廃棄されることに心が痛んだ」

 ロート製薬はこのほど、化粧品・日用品の廃棄ロスや廃棄物を減らす取り組みの一環として、2つのプロジェクトを始動した。1つはロハコと協業して、従来は廃棄処分対象となっていた製品で品質に問題ないものをアウトレット売り場で再販売することを7月に始めた。もう1つは、マツモトキヨシと共同で始めた「地球も肌も潤うリサイクルプログラム」と題し、全国のマツキヨ ラボでスキンケア製品(他社製品も含む)の空き容器の回収を行うものだ。

 化粧品は使用期限が設定されているものもあり、毎年大量の製品が廃棄処分されている。そのことから、同社は化粧品業界ではほとんど行われていないアウトレットを活用を決めた。また、化粧品業界のプラスチック消費量も問題になる中で自社製品の空き容器の回収は化粧品ブランドでも最近増えているが、メーカーが他社製品も回収対象にするのはめずらしい。以前からもさまざまなサステナビリティ施策を行ってきたが、同社は日本をけん引する製薬メーカーとして、まだ課題が多く残る化粧品の廃棄ロスの減少を目指す。そこで自身も数多くの商品開発に携わり現場を見てきた角田康之マーケティング&コミュニケーション部部長に、プロジェクト始動のきっかけや思いを聞いた。

WWD:廃棄ロスは化粧品業界でも大きな問題になっている。今回の取り組みを始めるきっかけは?

角田康之ロート製薬マーケティング&コミュニケーション部部長(以下、角田):まず、メーカーの役割が変わったことが大きい。作る側の責任はより良い製品を作って、買って頂いたらそれで終わり、ではなくなっている。また、ビューティ・日用品業界においても、大量生産・大量消費を前提としたビジネスモデルの時代ではなくなっている。環境や人間以外の生命にも配慮した容器・成分などにフォーカスした、よりサステナブルな製品設計が必要だ。今後は、お客さまが製品を手に取っていただくまでの間、使っていただく最中、そして使い終えたあとの製品がどのような形で環境に戻るか、製品のライフサイクル全てにおいて作る側に責任があると考える。廃棄を減らす、サーキュラーエコノミー型ビジネスを目指さなければ、と考えていた。

さらに背景を話すと、われわれはシーズンに特化した製品やブランドを多く手掛けている。例えば1980年代後半に誕生した「アルガード」という花粉症対策のトップブランドを抱えているが、製品は花粉の飛散期は大きな売り上げを作っている。しかし花粉シーズンが過ぎると、相当量が小売店から返品されることもあった。日焼け止めブランド「スキンアクア(SKIN AQUA)」もカテゴリーで大きなシェアを持っているが、1990年代後半から日焼け止め市場も拡大傾向となり、花粉カテゴリー同様にピーク時にに向けて十分な商品供給を行なったことでシーズン終了とともに返品が増える傾向にあった。日焼け止め以外にも、制汗剤、リップ、皮膚治療薬など、所有する人気ブランドの製品の多くがいわゆる季節商材であり、季節が終わるとその多くは返品となっていた。実際に製品開発にも携わっていたが、工場に製品が大量に返品され、ゆくゆくは廃棄処分されることを想像すると、汗水流して製品を作っている側としては心が痛む思いだった。

小売店側も同様で、多くは季節の変わり目に合わせて店内の品ぞろえを大きく変更し、シーズン商品は棚替えのタイミングで返品が増える。これらシーズン商品は短期間で集中的に販売するため、大量に陳列してお客様にアピールする必要があり、緻密に計画しても売れ残りはどうしても発生してしまう。取り扱い店舗数が多い、生活必需品の人気ブランドほど、返品数絶対値も多くなる傾向にあるだろう。売らんがためのビジネスによって大量に作り、返品も多く生み出す……。じきにこの現象は、社員の間でも課題意識が高まっていた。

WWD:品切れを起こさないためにも少し多めに生産することは理解できるが、大量返品を防ぐために需要を予測し、それだけの分を作ることはやはり難しいのか?

角田:季節商材は天候が大きく影響するので、どうしても生産時点で正確に予測を立てることが難しい。例えばどんなに「今年は夏が長い、猛暑が続く」と予報されていても、実際は曇りの日が多かったりすると、日焼け止めの売り上げは左右される。返品抑制のための試行錯誤は長年繰り返してきており、メーカー1社だけで動いても成果が出ないと考え、お客さまの動向をいち早くキャッチできる小売りとの議論を重ねてさまざまな対策を打ってきた。その一例が、全国有数の小売りから販売POSデータを購入し、適正在庫・適正発注量コントロールによってリニューアルや季節品・棚替えに伴う返品を減らす対策。小さな一歩でも、新しい取り組みを続けてきたと思う。そんな試行錯誤を繰り返している中で、アスクルのロハコから新しい返品廃棄の削減取組のお話をいただき、またマツモトキヨシとは業界での環境問題に対する課題認識をお互いに話し合う中で、取り組みの必要性を強く感じ、協業することになった。

WWD:アウトレットで再販する製品の基準は?

角田:基本的に未開封かつ品質的に長期間保存しても変質しにくいアイテム。一般製品と同様に、製薬会社としての品質管理基準にかなった製品だけを販売することにしている。基準は社内で議論を重ね、100%廃棄することにしていた店頭戻り品と、廃棄率がきわめて高かった旧商品の不動在庫の中から選んでいる。ロット、使用期限の管理の徹底などを盛り込んだ「選定基準」をそれぞれの商品ごとに細かく定めている。

WWD:自社の製品の空き容器回収をしている企業はほかにもある。他社製品も回収対象にするのはコストや手間もかかると思うが、あえてそうする理由は?

角田:基礎化粧品カテゴリーでは、「肌ラボ」はブランド全体で販売個数がナンバーワンで、ゆえにプラスチックの排出量も多い。発売時から詰替えパウチを準備するなど製品単位では無駄を省くことは常に考えてきたが、カテゴリー全体で環境への取組を加速化させていきたいと考えた。また、正直に言えばリサイクルするにはボリュームが必要。ペットボトルなど生産量・消費量が多大なものは大量にリサイクルの資材が出るため再利用できているが、われわれの場合自社製品だけだと足りないため、他社製品も受け付けることにした。リサイクルした製品は、今後植木鉢にして再生させ、地球にも社会にもやさしく潤いを与えられるようにしていきたい。

WWD:ファッションは某ラグジュアリーブランドが洋服を廃棄処分したことで炎上したり、一部のファストファッションも問題になっていたりする。一方で化粧品の廃棄ロスはそこまで話題になっていないように感じる。

角田:化粧品は基本的には3年以上の使用期限を担保している。1年で販売しきれなくても、もう1シーズン販売することが可能。シーズンごとに製品を入れ替えるファッションと違って化粧品、特に通年売れるような定番製品は長く販売できる。店頭に置ける。ファッションや食品に比べるとサイクルが長いことから、店頭まで並ばずに廃棄される商品の量は他の業界と比べても少ないかもしれず、棄物量総量の規模は違うかもしれない。でも、どんなに数量が少なくても無駄が発生し環境に負荷をかけているのは事実。またシーズン終盤によるディスカウントやアウトレットも、まだ常識とまではなっていない。依然、店頭からの返品が生まれてしまう状況にはあるので、これは課題だと考えている。

WWD:今後、どのようにプロジェクトを拡大させていきたいか?

角田:ロハコとの取組はすべての返品商品が再販売できているわけではないので、品質確認体制や流通協力体制を整えて出来る限り無駄をなくすべく、取扱商品を増やしていきたい。またマツモトキヨシとの取組みについては結果をお互いに確認しながらどういった環境取り組みが出来るのか?議論を重ねていきながらお互いの課題認識を合わせてさらなるアクションにつなげて行ければと考えている。作る側の責任として、地球に優しい製品設計に加え、廃棄ロスを削減することは、今後も取り組むべき重要な課題。化粧品も、大量生産・大量消費をしてきた時代もあったが、これからは、小売店様とも協力しながら問題提議や取り組みを続けていきたい。

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「いきなり!ステーキ」、激安路線を止める? 国産牛を推して、美味しさ重視に

 「いきなり!ステーキ」のポジショニングが微妙に変わってきた。「ステーキを安く、お腹いっぱいに」という基本理念は変わらないものの、国産牛フェアを実施するなど、「激安」から「美味しさ」を両立する路線に変化している。大量閉店、希望退職を実施して瀬戸際にあるペッパーフードサービスの今は?
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この週末は「ザラ」と「日経電子版」アプリを エディターズレター(2020年8月21日配信分)

※この記事は2020年8月21日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

この週末は「ザラ」と「日経電子版」アプリを

 UI・UXとクリエイティブの両立は、正直なかなか難しいものであります。例えばSP(スマートフォン)で見るウェブメディアの場合、私は、デザインは「WWDJAPAN.com」風と「TOKION」風に大別されると考えています(笑)。乱暴に言えば、前者は全世代に向けた情報サイトの王道で、後者はデジタルネイティブ世代に重きを置いたイマドキのデザインでありUI・UXです。「日経電子版」は「WWDJAPAN.com」風、「MEN’S NON-NO WEB」は「TOKION」風など、多くのメディアは2つのグループのいずれかに属すると思っています。「FASHIONSNAP.COM」は、両者の中間っぽいカンジでしょうか?独特なのは、「新R25」です。

 各社・各ブランドが積極開発したり、既存のサービスを利用したりで広がり続けるオンライン買い付けシステムについては、「SSENSE」や「マッチズファッション ドットコム」を思わせるUI・UXを採用するケースが多いように思います。実際、「それを意識しています」という開発担当も多いです。大手ECやプラットフォームはUI・UXを研究し続けているでしょうし、私たちも慣れてきましたよね。となると、多くのデザインがそこに収斂されるのは当然のハナシです。

 数年前は、「バーバリー」や「セリーヌ」「フルラ」など、あらゆるブランドのロゴがサンセリフ体の太字に変わり、ニュースに触れるたび私たちは「『バルマン』よ!!お前もか……!?」と、シェイクスピアの悲劇よろしくニュースをお伝えしました。アレなんかはまさに、「スマホの画面の中で、高速でスクロールされちゃうSNSのタイムラインの中で、どんな書体に変えたら視認性が高いだろう?」を考えた末の決断かと思われます。「クリエイティブか?」と聞かれたら、下の記事の通り賛否両論あるでしょう。でもUI・UX的デジタル観点から考えれば「ベター」。ゆえにUI・UXとクリエイティブの両立は、なかなか難しいと思うのです。

 そんな中、「やっぱスゴいな」と思うのは、「ザラ」のスマホアプリです。皆さん、最近ご覧になってますか?最近、ちょっとシンプルになった感はあるのですが、それでもなお先鋭的。全画面表示を基本に、モーションてんこ盛り。画面が上下左右から飛び込んできます。正直ありがちなUI・UXに慣れきった人には、多分チョット使いづらい(笑)。でも「これは、未来かもしれない」と思わせてくれるのです。ごくごく一部の消費者に向けたブランドならまだしも、「ザラ」ですからね。「ザラ」が提供するEC体験は、「将来のメジャーになるのだろうか?」なんて考えながら操作すると、Z世代のスマホ使い含め学ぶべきが多いと思います。

 メディアの世界では、「WWDJAPAN.com」風なんて生意気申し上げましたが、「日経電子版」の「ビジュアルデータ」というコンテンツに未来を感じます。トップページ下段のタブを、一番右までスクロールしてください。既存のニュースを、クリッカブルなモーション付きで再構築してデータ化。「この1タップで、1PV?」なんて考えながら、イロイロ操作しています。新たな取材はほとんどせずに価値を生み出す挑戦は、編集者としても学ぶべきが多いです。みなさま、ぜひお試しあれ。そして未来を感じるUI・UXがありましたら、ぜひ教えてください。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「グッチ」「プラダ」も採用するリサイクルナイロン 創業者に開発秘話を直撃

 イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)が開発したリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」に環境配慮型素材として世界中から注目が集まっている。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「H&M」などサステナビリティを推進するブランドがこぞって採用。特にインパクトが大きかったのは、環境意識の高まりを受けて、ナイロン製品を主力の一つとする「プラダ(PRADA)」が、21年までに使用するナイロンを全て「エコニール」に切り替えると発表したことだろう。

 「エコニール」は漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしたリサイクルナイロンで、アクアフィル社は廃棄物をナイロンの原料に戻す技術を4年かけて開発した。しかもこの過程で使う溶剤は無害なもので、これまでになかった画期的な技術で特許も取得している。実はアクアフィルはこの技術開発の10年以上も前から、リサイクルナイロンの開発に力を入れていた。なぜ、リサイクルナイロンなのか。ジュリオ・ボナッツィ(Giulio Bonazzi)会長にオンラインインタビューを行った。

WWD:「エコニール」を開発しようと思ったきっかけは?

ジュリオ・ボナッツィ会長(以下、ボナッツィ会長):人は「生きるか死ぬか」ではなく「どのように生きるか?」ということが大切で、私は“エコニール”で一つの答えを出したかった。合成繊維は石油からできていて、エネルギーをたくさん消費します。加えて、そうした石油から作られたものが海にたくさん捨てられていて地球にとって有害なものになっています。私たちは今、できることをやらなければならないのです。

WWD:あなた自身の中で環境への意識が高まったきっかけを教えてください。

ボナッツィ会長:まず、妻から学びました。私たちは結婚した当初、2000本のオリーブの木がある畑の中で暮らし始めました。私の家族所有の畑でしたが、ほぼ放置された状態。そこで妻は、有機栽培でオリーブオイルの生産を始めました。今ではビオロジック(有機栽培でブドウを育て自然酵母で発酵させる製法)のワインも生産しています。今でこそ、有機栽培やビオロジックは普通になっていますが、30年前はまだ珍しかったんです。

そして、1990年代半ばに本を読んで知った業界の改革者の2人から影響を受けました。一人目は、タイル型になった(四角い形の)カーペットを作ったレイ・アンダーソン(Ray Anderson:タイルカーペット世界シェアナンバーワンの米国インターフェイス〈Interface〉社の創業者。廃棄物ゼロ、環境に悪影響を与えない排出、再生可能エネルギーの利用、再利用材やバイオベース素材の利用などで2020年までに環境への負荷をゼロにすることに取り組む)。そして、もう一人は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「エスプリ(ESPRIT)」の創業者ダグ・トンプキンス(Douglas Tompkins:パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード〈Yvon Chouinard 〉と並んで環境保護活動家としても知られる)です。この2人が、“変えることができる”と教えてくれました。

WWD:もともとアクアフィルはレインコートの製造から始まり、そこからナイロンの糸やテキスタイルの製造を始めました。

ボナッツィ会長:まずは90年代に、プレコンシューマーの素材(製造工程などで出る端切れなど)からリサイクルナイロンを作ろうと技術開発を始めて、10年後の2007年に作れるようになりました。これが最初の「エコニール」でした。けれど、もっとポテンシャルが高い技術開発をしなければと、さらに開発を加速させることを決めました。

WWD:というと?

ボナッツィ会長:どんなタイプのナイロンでもリサイクルできる機械があればと思いませんか?そこで、当時ケミカルリサイクルで主流だったポリマー(重合によってできる高分子化合物のこと)にとどまらず、さらにさかのぼったモノマー(単量体。高分子であるポリマーの分子結合を分解した状態)に戻す技術開発に取り組み、ナイロンの原料であるカプロラクタムまで戻す技術“デポリマライゼーション”を4年かけて開発しました。11年に初めていろんなナイロンの廃棄物から、リサイクルナイロンが作れるようになりました。

WWD:「エコニール」の優位性を教えてください。

ボナッツィ会長:「エコニール」はマジカルな商品で、ポリエステルやポリプロピレンといった他のマテリアルを使っている部分の代替品になれます。そして、染色されたさまざまな廃棄物を再生できる技術は他にはありません。他社のリサイクルナイロンは自社の何も加工されていない廃棄物をリサイクルしていて、それは比較的簡単です。

エコニールの基本的な特徴は3つあります。100%廃棄物からできているので、地球の資源を使わずに無限に繰り返し利用ができます。そして、エンジニアやデザイナーが作りたいと思うものの可能性が無限です。通常のナイロンに比べてエネルギー消費量は60%削減できていて、われわれは自然エネルギーを用いているので、通常のナイロンに比べてCO2排出量は90%削減できます。

WWD:原料は全て漁網などの使い古した素材なのですか?

ボナッツィ会長:50%がポストコンシューマー(使用済み、使用できなくなった製品)からという規格を作っています。その多くは漁網かカーペットです。今、漁網は海を汚染していると問題になっているので漁網を用いることはとても重要です。私たちはNGOと組んで、破棄された漁網などの漂流ゴミを取り除くこともしています。そして、なぜカーペットか、というとわれわれはカーペット用の糸のサプライヤーとして世界でトップシェアを誇っています。ですので、カーペットの循環を作り上げることはとても大事です。もう半分の50%というのはプレコンシューマー素材です。われわれが再利用するまでは、誰もそれをリサイクルしなかった。重要なのは、今まで誰も扱っていなかった、リサイクルできなかったものをリサイクルするということです。

WWD:材料となる廃棄物はどのように回収するのですか?

ボナッツィ会長:プレコンシューマー素材は私たちの取引先から回収しています。例えば「グッチ」「ステラ マッカートニー」「スピード(SPEED)」などです。漁網の回収で一番簡単なのは養殖をしているところに取りに行くこと。漁網は世界各国のものを集めています。日本から届くものもありますよ。

WWD:回収するにあたり難しいことは?

ボナッツィ会長:今市場に出ているほとんどの商品は、最終の目的を考えずに生産されています。例えば魚網は、100%ナイロンでできていない場合もあるし、危険な物質が入っている場合もあります。

WWD:リサイクル前提にしたデザインが求められていますよね。

ボナッツィ会長:リサイクルしやすいモノを作ることを始めた企業も増えてきました。例えばVFコーポレーションの「ナパピリ(NAPAPIJRI)」は、ジャケットを100%ナイロン6(エコニール)で作ることを試みました。ライニングもファスナー全てナイロン6で作るので完成まで3年かかりました。

WWD:現在の「エコニール」の生産量は?

ボナッツィ会長:年間4万トンです。昨年大きな投資をして、機械を大きくして今年完成し、6万トンまで生産できるようになりました。昨年の当社の売上高の38%が「エコニール」です。目標は5~6年以内に商品を100%廃棄物から生産することです。

WWD:昨年の売上高と今年の見込みは?

ボナッツィ会長:昨年は5億4900万ユーロ(約675億円)でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響と原油の価格下落で20%減ぐらいになるでしょう。

WWD:技術開発のチームについて教えてください。

ボナッツィ会長:アクアフィルの内部だけでなく、いろんな大学の研究室やリサーチセンターと協力しています。イタリア、ドイツ、アメリカ、スロベニア4カ国のリサーチセンターと組んでいますが、研究のために年商の2%を投資しています。今現在、新型コロナウイルスの問題が起こっていますが、それにもかかわらず会社内部のリサーチ部の人数を増やしました。今世界中で起こっている問題を解決していくためには、リサーチが一番重要だと思うからです。

WWD:人数を増やすということはさらなる新技術の開発に取り込んでいるのですか?

ボナッツィ会長:はい。「エコニール」の旅は始まったばかりで、いろいろな問題があります。完全なものにするには研究が欠かせません。循環性を高めるために、簡単にリサイクルできるようにすることに取り組んでいます。方法は2つあります。モノマテリアルで作るか、分解しやすいものを作るか。

WWD:「エコニール」で資材も作っているということですか?

ボナッツィ会長:ファスナーや、ボタン、面ファスナーなどに取り組んでいます。そしてもう一つ、染料の原料に少し問題があります。今、化学染料を使っているのですが、より環境に配慮した染色ができないかも研究しています。大前提として商品は美しくなくてはいけません。そうじゃないと誰も買いませんから。

WWD:今、「エコニール」でどういうものが作れますか?

ボナッツィ会長:いろいろな種類の商品ができますよ。これは(画面で見せながら)私の「プラダ」のリュックですが、「グッチ」のスニーカーも持っています。妻は「ステラ マッカートニー」のリュックや「バーバリー」のレインコート、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のサングラスを持っています。

WWD:メーカーは今何kgから購入可能なのですか?

ボナッツィ会長:スタンダードのものであれば、50kgから可能ですが、商品のタイプにもよります。カーペットに関しては、カーペット用の材料として色を染めたもので100kgから可能です。

WWD:最後にボナッツィさんが考える環境に配慮した素材はどんなものだと思いますか?

ボナッツィ会長:環境に対してリスクのある物質を使わないもの、地球の資源を消耗しないもの。だからとても難しいんです。

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「グッチ」「プラダ」も採用するリサイクルナイロン 創業者に開発秘話を直撃

 イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)が開発したリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」に環境配慮型素材として世界中から注目が集まっている。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」「H&M」などサステナビリティを推進するブランドがこぞって採用。特にインパクトが大きかったのは、環境意識の高まりを受けて、ナイロン製品を主力の一つとする「プラダ(PRADA)」が、21年までに使用するナイロンを全て「エコニール」に切り替えると発表したことだろう。

 「エコニール」は漁網や使い古したカーペットなどの廃棄物を100%原料にしたリサイクルナイロンで、アクアフィル社は廃棄物をナイロンの原料に戻す技術を4年かけて開発した。しかもこの過程で使う溶剤は無害なもので、これまでになかった画期的な技術で特許も取得している。実はアクアフィルはこの技術開発の10年以上も前から、リサイクルナイロンの開発に力を入れていた。なぜ、リサイクルナイロンなのか。ジュリオ・ボナッツィ(Giulio Bonazzi)会長にオンラインインタビューを行った。

WWD:「エコニール」を開発しようと思ったきっかけは?

ジュリオ・ボナッツィ会長(以下、ボナッツィ会長):人は「生きるか死ぬか」ではなく「どのように生きるか?」ということが大切で、私は“エコニール”で一つの答えを出したかった。合成繊維は石油からできていて、エネルギーをたくさん消費します。加えて、そうした石油から作られたものが海にたくさん捨てられていて地球にとって有害なものになっています。私たちは今、できることをやらなければならないのです。

WWD:あなた自身の中で環境への意識が高まったきっかけを教えてください。

ボナッツィ会長:まず、妻から学びました。私たちは結婚した当初、2000本のオリーブの木がある畑の中で暮らし始めました。私の家族所有の畑でしたが、ほぼ放置された状態。そこで妻は、有機栽培でオリーブオイルの生産を始めました。今ではビオロジック(有機栽培でブドウを育て自然酵母で発酵させる製法)のワインも生産しています。今でこそ、有機栽培やビオロジックは普通になっていますが、30年前はまだ珍しかったんです。

そして、1990年代半ばに本を読んで知った業界の改革者の2人から影響を受けました。一人目は、タイル型になった(四角い形の)カーペットを作ったレイ・アンダーソン(Ray Anderson:タイルカーペット世界シェアナンバーワンの米国インターフェイス〈Interface〉社の創業者。廃棄物ゼロ、環境に悪影響を与えない排出、再生可能エネルギーの利用、再利用材やバイオベース素材の利用などで2020年までに環境への負荷をゼロにすることに取り組む)。そして、もう一人は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」と「エスプリ(ESPRIT)」の創業者ダグ・トンプキンス(Douglas Tompkins:パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード〈Yvon Chouinard 〉と並んで環境保護活動家としても知られる)です。この2人が、“変えることができる”と教えてくれました。

WWD:もともとアクアフィルはレインコートの製造から始まり、そこからナイロンの糸やテキスタイルの製造を始めました。

ボナッツィ会長:まずは90年代に、プレコンシューマーの素材(製造工程などで出る端切れなど)からリサイクルナイロンを作ろうと技術開発を始めて、10年後の2007年に作れるようになりました。これが最初の「エコニール」でした。けれど、もっとポテンシャルが高い技術開発をしなければと、さらに開発を加速させることを決めました。

WWD:というと?

ボナッツィ会長:どんなタイプのナイロンでもリサイクルできる機械があればと思いませんか?そこで、当時ケミカルリサイクルで主流だったポリマー(重合によってできる高分子化合物のこと)にとどまらず、さらにさかのぼったモノマー(単量体。高分子であるポリマーの分子結合を分解した状態)に戻す技術開発に取り組み、ナイロンの原料であるカプロラクタムまで戻す技術“デポリマライゼーション”を4年かけて開発しました。11年に初めていろんなナイロンの廃棄物から、リサイクルナイロンが作れるようになりました。

WWD:「エコニール」の優位性を教えてください。

ボナッツィ会長:「エコニール」はマジカルな商品で、ポリエステルやポリプロピレンといった他のマテリアルを使っている部分の代替品になれます。そして、染色されたさまざまな廃棄物を再生できる技術は他にはありません。他社のリサイクルナイロンは自社の何も加工されていない廃棄物をリサイクルしていて、それは比較的簡単です。

エコニールの基本的な特徴は3つあります。100%廃棄物からできているので、地球の資源を使わずに無限に繰り返し利用ができます。そして、エンジニアやデザイナーが作りたいと思うものの可能性が無限です。通常のナイロンに比べてエネルギー消費量は60%削減できていて、われわれは自然エネルギーを用いているので、通常のナイロンに比べてCO2排出量は90%削減できます。

WWD:原料は全て漁網などの使い古した素材なのですか?

ボナッツィ会長:50%がポストコンシューマー(使用済み、使用できなくなった製品)からという規格を作っています。その多くは漁網かカーペットです。今、漁網は海を汚染していると問題になっているので漁網を用いることはとても重要です。私たちはNGOと組んで、破棄された漁網などの漂流ゴミを取り除くこともしています。そして、なぜカーペットか、というとわれわれはカーペット用の糸のサプライヤーとして世界でトップシェアを誇っています。ですので、カーペットの循環を作り上げることはとても大事です。もう半分の50%というのはプレコンシューマー素材です。われわれが再利用するまでは、誰もそれをリサイクルしなかった。重要なのは、今まで誰も扱っていなかった、リサイクルできなかったものをリサイクルするということです。

WWD:材料となる廃棄物はどのように回収するのですか?

ボナッツィ会長:プレコンシューマー素材は私たちの取引先から回収しています。例えば「グッチ」「ステラ マッカートニー」「スピード(SPEED)」などです。漁網の回収で一番簡単なのは養殖をしているところに取りに行くこと。漁網は世界各国のものを集めています。日本から届くものもありますよ。

WWD:回収するにあたり難しいことは?

ボナッツィ会長:今市場に出ているほとんどの商品は、最終の目的を考えずに生産されています。例えば魚網は、100%ナイロンでできていない場合もあるし、危険な物質が入っている場合もあります。

WWD:リサイクル前提にしたデザインが求められていますよね。

ボナッツィ会長:リサイクルしやすいモノを作ることを始めた企業も増えてきました。例えばVFコーポレーションの「ナパピリ(NAPAPIJRI)」は、ジャケットを100%ナイロン6(エコニール)で作ることを試みました。ライニングもファスナー全てナイロン6で作るので完成まで3年かかりました。

WWD:現在の「エコニール」の生産量は?

ボナッツィ会長:年間4万トンです。昨年大きな投資をして、機械を大きくして今年完成し、6万トンまで生産できるようになりました。昨年の当社の売上高の38%が「エコニール」です。目標は5~6年以内に商品を100%廃棄物から生産することです。

WWD:昨年の売上高と今年の見込みは?

ボナッツィ会長:昨年は5億4900万ユーロ(約675億円)でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響と原油の価格下落で20%減ぐらいになるでしょう。

WWD:技術開発のチームについて教えてください。

ボナッツィ会長:アクアフィルの内部だけでなく、いろんな大学の研究室やリサーチセンターと協力しています。イタリア、ドイツ、アメリカ、スロベニア4カ国のリサーチセンターと組んでいますが、研究のために年商の2%を投資しています。今現在、新型コロナウイルスの問題が起こっていますが、それにもかかわらず会社内部のリサーチ部の人数を増やしました。今世界中で起こっている問題を解決していくためには、リサーチが一番重要だと思うからです。

WWD:人数を増やすということはさらなる新技術の開発に取り込んでいるのですか?

ボナッツィ会長:はい。「エコニール」の旅は始まったばかりで、いろいろな問題があります。完全なものにするには研究が欠かせません。循環性を高めるために、簡単にリサイクルできるようにすることに取り組んでいます。方法は2つあります。モノマテリアルで作るか、分解しやすいものを作るか。

WWD:「エコニール」で資材も作っているということですか?

ボナッツィ会長:ファスナーや、ボタン、面ファスナーなどに取り組んでいます。そしてもう一つ、染料の原料に少し問題があります。今、化学染料を使っているのですが、より環境に配慮した染色ができないかも研究しています。大前提として商品は美しくなくてはいけません。そうじゃないと誰も買いませんから。

WWD:今、「エコニール」でどういうものが作れますか?

ボナッツィ会長:いろいろな種類の商品ができますよ。これは(画面で見せながら)私の「プラダ」のリュックですが、「グッチ」のスニーカーも持っています。妻は「ステラ マッカートニー」のリュックや「バーバリー」のレインコート、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」のサングラスを持っています。

WWD:メーカーは今何kgから購入可能なのですか?

ボナッツィ会長:スタンダードのものであれば、50kgから可能ですが、商品のタイプにもよります。カーペットに関しては、カーペット用の材料として色を染めたもので100kgから可能です。

WWD:最後にボナッツィさんが考える環境に配慮した素材はどんなものだと思いますか?

ボナッツィ会長:環境に対してリスクのある物質を使わないもの、地球の資源を消耗しないもの。だからとても難しいんです。

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【時短要請・自治体の動き】「ノーゲス」の悪夢が、よみがえるのか? 東京都が今日25日会見の予定

 コロナ感染者数の急増で、国や自治体が飲食店の利用制限を再び始めようとしている。いまのところ、4月のような全国一律の緊急事態宣言ではなく、エリアごとのピンポイント要請だが、年末の書き入れ時に大きな影響を与えそうだ。
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【時短要請・自治体の動き】「ノーゲス」の悪夢は、またやってくるのか? 東京都が今日25日会見の予定

 コロナ感染者数の急増で、国や自治体が飲食店の利用制限を再び始めようとしている。いまのところ、4月のような全国一律の緊急事態宣言ではなく、エリアごとのピンポイント要請だが、年末の書き入れ時に大きな影響を与えそうだ。
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「わけあって、安い」の限界 コロナ後の価格革命に備えよ 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。12月で40周年を迎える「無印良品」(運営:良品計画)が、衣料品の価格見直しによって攻勢をかけている。そこに死角はないのか。

 「わけあって、安い」は「無印良品」の原点的キャッチフレーズでレーゾン・デートル(存在意義)と言ってもよいだろう。だが、「わけあって、安い」商品開発は“トレード・オフ(trade-off)”であり、「お、ねだん以上。」とは限らない。そこに現在の「無印良品」の限界がある。

ユニクロに引き離される良品計画

 10月21日掲載の本リポート「『ユニクロ』と『無印良品』の明暗を分けたコロナ禍決算」で詳説したように、ファーストリテイリングと良品計画、国内ユニクロ事業と良品計画国内事業の業績格差は年々開き、コロナ禍決算では一段と明暗が広がった。なぜそうなったのか、詳細は当リポートを読み返してほしいが、コンセプト先行で食住衣遊と際限なく広がっていく領域に商品開発が追いつけず、「わけあって、安い」がブラックジョークになりかねない状況に陥っている。

 衣料関連の売り上げを比較すべく2020年3〜8月期の国内ユニクロ事業商品売り上げと良品計画単体商品売り上げ(連結の「国内事業」には衣料売り上げの開示がない)を比較すれば、国内ユニクロ事業が前年同期比89.7%の3304億1300万円を売り上げたのに対し良品計画単体は同84.1%の1406億300万円と、国内ユニクロ事業商品売り上げに対する良品計画単体商品売り上げの比率は前年同期の45.4%から42.6%に低下した。同期間の良品計画単体商品売り上げに占める衣料・雑貨比率は34.7%、実額で487億1900万円に過ぎないから、良品計画単体の衣料・雑貨売り上げはユニクロの14.7%(7分の1強)でしかない。それでいて年間の展開アイテム数は年々増えて20年2月期では1854にも達していたから、1品目当たりの売り上げは7200万円弱でしかなかった。国内ユニクロの年間展開アイテム数を660と見れば1品目当たりの売り上げは前期で12億7500万円ほどだから、両者の1品目当たり売り上げ規模は17.7倍も違う。

 良品計画単体衣料・雑貨売り上げの中身も服飾雑貨・靴・バッグが21.3%、インナーウエアが16.3%を占め、紳士ウエアは18.9%の91億9000万円、婦人ウエアは39.1%の190億6500万円、子供服は4.4%の21億2400万円、アパレル合計は303億7900万円と中堅チェーンほどの売り上げ規模でしかない。国内ユニクロ事業のメンズは40.4%を占めて良品計画より圧倒的に比率が高く1335億1900万円、ウィメンズは45.1%の1491億1500万円、キッズ・ベビーは7.7%の255億2700万円だから、良品計画の紳士ウエアはユニクロの6.9%、婦人ウエアは12.8%、子供服は8.3%の規模でしかない。これでは調達ロットもケタ違いで、「ユニクロ」と品質とお値打ちを競えるはずもない。

壁にぶつかる「わけあって、安い」

 「無印良品」の「わけあって、安い」は元々、ブランド商品の宣伝費や包装費、流通コストなどマーケティング費用を省くという一面と並んで、素材はもちろんパターンと生産仕様、縫製工程や仕上げ工程を工夫して生産コストを落とすという“トレード・オフ”が前提となっていた。

 “トレード・オフ”とは何かを実現するために別の何かを犠牲にする、という交渉事や商品開発における「代償行為」であり、商品開発では主要な企画意図を実現しながらコストを抑制すべく、素材を落としたり生産仕様を簡略化したりすることが多い。見た目の織り組織は同じでも糸のクオリティーを落とせば素材のコストは倍も変わるし(大手商社は毎シーズン、同タイプで3段階の素材を用意する)、パターンとマーキングを工夫すれば用尺を節約し、縫製工程数を減らすことができるが、玄人目には手抜きは一目瞭然だし、やり過ぎれば素人客でも手抜きが見えてしまう。

 工場の閑散期に生産したりロットを増やしたりしてもコストは落とせるし、製品在庫を市場投入直前まで生産地倉庫に保管し、生産地で店舗仕分けと物流加工を済ませてからコンテナ単位でパッキン物流するなど物流方法でもコストは落とせる。閑散期生産や過大ロット生産は需給ギャップを肥大させ、物流の集約はサプライ効率を切り下げ、パッキン物流は畳みシワや型崩れの原因となるから“トレード・オフ”にはなってしまうが、それで商品の品質が落ちるわけではない。

 「無印良品」の衣料品は売り上げ規模が限られるのにアイテム数が多く、MDも流動するからロットでコストを落とすのが難しく、“トレード・オフ”に頼ることになる。ブランド流通が大勢でSPA的な商品開発がまだマイナーだった1990年代半ばまでは、「無印良品」の“トレード・オフ”はブランド商品より「わけあって、安い」を実現してインパクトがあったが、98年に「ユニクロ」がフリースでブレークしてSPA流通が大勢になって以降、単品でお値打ちを比較されれば苦しくなっていった。とりわけリーマンショック以降、デフレが再燃して価格がジリジリと下がっていく中、衣料品は「ユニクロ」や「ジーユー」、生活雑貨は100円ショップとの価格競争にさらされ、割高感から値引き販売が増え、シーズンごとに政策的に価格切り下げを繰り返すようになった。

価格と品質のポジション是正が不可避

 「無印良品」の衣料品は「価格」を「ユニクロ」と張っても、素材や縫製仕様、工業パターンは「ジーユー」にも見劣りするものがあり、エコナチュラルでサステナブルなコンセプトやライフスタイルをうたっても「正価」を通すのは難しくなっていた。玄人目には「ジーユー」に及ばず、「ファッションセンターしまむら」やホームセンターの衣料と比較したくなるようなものもある。自然素材志向のコンセプトゆえ、近年の機能素材アクティブウエアや機能性アウトドアウエアにも手を伸ばせず、店頭在庫は抑えても過剰在庫が倉庫に積み上がり(2019年2月期から20年2月期で41.6%増、さらに20年8月期で45.0%増。19年2月期との比較では2.05倍)、値下げによって在庫の消化を図る図式が強まっていた。

 コロナ禍はそんな「無印良品」の苦境を突き、割高感をコンセプトでカバーできない海外市場はもちろん、支持基盤が厚い国内市場でも打撃は大きく、回復も鈍かった。3〜8月期の国内ユニクロ既存店売り上げ(EC含む、良品計画も同じ)が9.6%の減少にとどまったのに対し良品計画単体衣料・雑貨は28.7%(商品売り上げベース)も落ち込み、9月も国内ユニクロの10%増に対して良品計画衣料・雑貨は15.5%減と差が開き、10月は前年の消費増税の反動もあって国内ユニクロが16.2%増と加速する中、良品計画衣料・雑貨は6.5%増にとどまった。

 アイテムを集約して調達ロットを1ケタ上げるとともに原価率を切り上げて抜本的に品質を高めない限り、「ユニクロ」と同じ価格ポジションを維持するのは難しく、現行の調達ロットと品質のままなら「ジーユー」の価格ポジションに切り下げるしか「無印良品」衣料品の立ち位置はないのではないか。そのどちらも難しいのなら、「無印良品」のコンセプトを無理なく訴求できるアイテムに絞り込んで一から出直すしかない。

 「顧客がコンセプトに共感してくれるなら、商品開発や在庫運用のスキルが至らず多少は割高になっても受け入れてもらえる」とスタートアップのD2Cブランドみたいに考えているとしたら、良品計画は自らの事業規模をあまりに見誤っている。国内でも海外でも「ユニクロ」と張り合って事業を拡大していきたいなら、事業の構造と組織、商品開発手法とサプライ同盟を抜本から再構築して出直すべきだ。

コロナを契機にデフレが加速する

 そんな指摘は良品計画だけに限らない。「ユニクロ」が価格と品質のデフェクトスタンダード(事実上の標準)として定着した今日、店頭で商品を手に取れば一般消費者も、つい「ユニクロ」の同一アイテムと比較してしまう。「ユニクロ」で3990円のアイテムに4500円とか4900円とか、中には5900円とか付けているブランドをしばしば見かけるが、そんな価格で買う消費者はまれだから早々に値引きすることになる。そんなことを繰り返していては、どこかのアパレルチェーンのように二重価格商法なのかといぶかられるのがオチだ。

 「ユニクロ」でも厳しいのに「ジーユー」や「ワークマン」が次のデフェクトスタンダードになるとしたら、アパレルの価格はもう一段のデフレが避けられない。コロナ禍の過剰在庫が大量にたたき売られるのを目の当たりにした消費者が素直に「正札」を信用するとも思えない。ならば、業界都合のコストとロスを積み上げた無理強い価格はもう通らないと覚悟するべきだろう。

 半世紀前のブティックは65掛けで買い取っても8割以上をプロパー消化して利益を確保していた。商店街の自前店舗で家族労働プラスαというエコ経営だったからできた芸当だが、今やそんなプロパー消化率など望むべくもなく、テナント店舗では不動産費と人件費やキャッシュレス決済手数料など販売費で売り上げの40%が消えていく(百貨店のインショップなら50%)。そんな法外コストを前提とした価格と品質のバランスがもはや通らない以上、販売コストを切り下げるか、高いプロパー消化率が望めるお値打ち価格を「正札」とするしかアパレルの生き残る道はない。高コストな販路から早々に脱出し、LCC型商業施設(オープンモール型の低コスト商業施設)やD2C、C2M※1.など格段に低コストで低ロスな販路や販売手法に転ずるべきだろう。

※1.C2M(Customer to Manufactory)……ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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