映像で発表した「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は“Greetings From Antwerp”がテーマ。映像はデザイナーのドリスから届いたグリーティングカードのような内容で、ブランドの拠点であるベルギー・アントワープの街並みを背景にルックが次々に入れ替わります。全体的にイージーフィットで、ショーツやシャワーサンダルなどのラフなアイテムがリラックスムードを後押し。BGMのプライマル・スクリーム(Primal Scream)“Loaded”ともぴったりの雰囲気で癒されました。全体は落ち着いた色使いで、時折差し込むポップなカラーのグラフィックがエネルギッシュ。ドリスからのグリーティングカードを言葉で表現するなら、「僕はアントワープで元気にやってるよ。離れていてもお互い頑張ろうね!」といったポジティブなメッセージを受け取りました。
2012年に設立された「オフィシン ジェネラーレ(OFFICINE GENERALE)」のショーはとってもリアルクローズ。会場はドーバー ストリート マーケット パリ(DOVER STREET MARKET PARIS)の店舗としてリノベーション中の、オテル・パティキュリエ(Hotel Particulier)です。今季は仕立て屋だった祖父のスタイルをベースに、ロックダウン中に見かけたパリジャンからインスピレーションを多く受け取ったそうです。テーラードとスラックスにTシャツを合わせたり、かぎ編みニットとショーツのスタイリングなど、パリの高級住宅地16区を歩いていると見かけるパリジャンそのもの!ルックの中で一番パリジャンらしくて“あるある”なのが、テーラードジャケットを腰に巻いちゃうラフなスタイルです。
6月25日 19:30 ヴェトモン
「ヴェトモン」が発表した映像より
「ヴェトモン(VETEMENTS)」はメンズとウィメンズの129ものルック画像が高速で切り替わる動画を約1カ月前に発表済み。今回のパリメンズの公式スケジュールでは“Secret Project”と題したティザー動画を公開しました。ただし動画だけでは詳しい内容は謎のまま。リリースには「ヴァザリア・ファミリー財団(Gvasalia Family Foundation)は、若い才能のための多次元プラットフォームとなる新しい実験的ラボを開始します。これはいつの日か、コワーキングスペースを再定義し、経験を共同制作することで、従来のコングロマリット構造に取って代わる可能性があります」と記されていました。プロジェクトは生産から流通、財政支援を提供するもので、ビッグプロジェクトの第1弾として7月22日に新ブランドをローンチするようです。今のところ情報は以上!とりあえず今は、焦らされながら待ちましょう。
6月25日 20:30 ゲーエムベーハー
「ゲーエムベーハー」2022年春夏パリ・メンズ・コレクション
パリメンズ4日目の最後は、「ゲーエムベーハー(GMBH)」のデジタル発表です。「なんともコメントしずらいなぁ」と、映像を見た直後にポロッと本音が漏れました。映像の最初にテーマ“White Noise”と表示された瞬間から何かイヤな予感が……。トルコ系ドイツ人のセルハト・イシク(Serhat Isık)とノルウェーとパキスタンにルーツを持つジャミン・A・フゼビー(Benjamin A. Huseby)の中東系のデザイナーデュオが付けたタイトルなので、Whiteは白ではなく“白人”を意味していると容易に分かりました。Noiseの直訳は“雑音”で、白人に対してあまりポジティブな表現ではありません。キャスティングされたのは、茶褐色系の肌の色をしたモデルのみ。ルックはどこかに白を使うか、白で薄めた色(淡いパープル、ピンク、ブルーなど)が用いて“白”を探求したのでしょう。上下デニムやファー、乗馬ブーツなどが登場しましたが、まとまりがないうえに新鮮さもなく、私の頭の中は(???)だらけ。“Free Palestine(パレスチナ解放)”の文字だけが、宗教と政治の問題により中東の国々で衝突が激しさを増す今を象徴するもので、それ以外のデザインは意図が正直分かりません。
新ブランドは、「若い世代が才能を発揮できる多次元プラットホーム」と掲げるヴァサリア・ファミリー・ファウンデーション(Gvasalia Family Foundation)のもとで運営する。ヴェトモンは同ファウンデーションについて、「コワーキングスペースやコラボレーションを歓迎し、従来のコングロマリット(会社)とは異なる形態で運営する。教育、技術開発、生産、サプライチェーンおよび財政支援を提供することで、トレンドや既存の枠組みにとらわれないユニークなブランドを生み出す場」と発表した。なお、今後発表するブランドはファッション系とは限らないという。
Kan(カン) PROFILE:大学在学中にカナダに留学。卒業後はイギリスへ渡り、大学院でジェンダー・セクシュアリティについて学ぶ。帰国後は化粧品会社に入社し、マーケティング業務を担当。2019年にネットフリックスシリーズ「クィア・アイ in Japan!』エピソード2に出演。性的マイノリティー当事者として、自分らしさやセクシュアリティをテーマにSNSでの発信や企業・学校での講演を行う。20年にはジェンダーニュートラルなアンダーウエアブランド「リング」やジュエリーブランド「ヒロタカ」のモデルを務めた