皆さん、こんにちは。「WWDJAPAN」の村上要です。2026-27年秋冬のミラノ・ファッション・ウイークが終了しました。今シーズンは、ミラノこそ新デザイナーの新コレクションが目白押しで、「WWDJAPAN.com」ではすでにそれらをリポートしていますが、ここでは、そのほかのコレクションを一挙にダイジェストでご紹介。普段は日記形式でお送りしていますが、今回は私の頭の中を皆さんにご紹介するイメージでしょうか?編集長の“ひとりごと”に最後までお付き合いいただければ幸いです。今日は、3つのブランドについて呟きます。
「ジル サンダー」
不安を払拭のセカンドシーズン
二重の“ハウス”で厳格から脱却
「ジル サンダー」がミニマリズムに回帰 過去のデザイナーたちが潜めてきたエモーションの表現に課題【26年春夏 新デザイナーの初コレクションVol.2】
シモーネ・ベロッティ(Simone Bellotti)クリエイティブ・ディレクターによる「ジル サンダー(JIL SANDER)」には正直、一抹の不安を感じていました。それは、ファースト・コレクションがあまりに「シリアス」だったから。創業デザイナーの1990年代のスタイルに敬意を表していることは理解しましたが、忠実であることを意識しすぎたような気もしたし、静的な緊張感からは昨今の、特に日本市場では大事だと私は思っているエモーションを見出すことが難しかったからです。ルーシー&ルーク・メイヤー(Lucie and Luke Meier)夫妻の「ジル サンダー」が好きだったので、そこからの反動に驚いてしまったというのもあります。
「エモーションって、1、2シーズンでどうにかなるもんじゃないだろうなぁ。結局はパーソナリティの問題だから」なんて思いながら拝見したセカンドシーズンは、お見事!しっかりエモーショナルでした(笑)。嬉しい!ヨカッタ。そんな気持ちです。
シモーネは今シーズン、「ジル サンダー」の“ハウスコード”を考えたといいます。でも“ハウスコード”という言葉から「ジル サンダー」というブランドのコードと、実際のハウス、つまり「家」の意味について考えるようになったそう。こういう想像力の連鎖というか、物事を時には違う角度や視点から考え直す才能って、トップデザイナーの必要条件ですよね。シモーネにとって「家」とは、「人が心地よく感じる安全な避難所であり、外の世界へと飛び出したいという衝動に駆られる出発点」。さらに家具職人、特に家具の布地を張り替える職人だった父親にも思いを馳せました。
結果生まれたのは、家にありそうなファブリックを贅沢に使った、“豊か”なコレクションでした。シモーネは、「余分なものを極端に加えたかった。余分なものさえ、本質的なものと言えるのかと疑問に思ったから」と振り返ります。こういう思考は、実に「ジル サンダー」らしいです。
豊かさがもたらす美しさに心が華やいだスタイルの代表例は、こちらのルック13。といっても正面の写真じゃよくわからないので、ここは動画でご覧ください。そもそものシルエットさえファースト・コレクションに比べれば流線型で安堵しますが、背面では直線の布地を下に垂らしています。シャープな直線や無機質なグレーというところに「ジル サンダー」のハウスコードが宿り、そこから生まれたカーテンのように美しいドレープに安らぎを提供する「家」のムードが宿ります。こうしたアイデアは、控えめながらセットアップなどでもきちんと表現。例えばルック2のジャケパンスタイルは、コンパクトなシルエットやセンタープリーツでは「ジル サンダー」らしい静謐なムードを、一方でボトムスの緩やかなフレアシルエットやシャツの襟を片方だけ出すスタイリングで家ならではのくつろいだ雰囲気を表しました。「リアリティという要素も取り入れ、いわゆる『きちんとした』イメージを打ち破りたかった」といいます。見事な軌道修正力です。素材は、まるでシーツ、まるでお布団!など、時にはシモーネの父親が駆使していたようなインテリアファブリック風がチラホラ。パーソナルになることは、エモーショナルになるための1つの手段です。
課題は、ハンガーにかけてしまうと、洋服の魅力が減ってしまうこと。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)などもそうですが、流動的な洋服って、マネキンに着せたり、実際に人が試着したりしないと魅力が十分伝わらないんですよね(苦笑)。ということで、半年後の「ジル サンダー」のお店には、マネキンが増えるのではないか!?と大胆予測します(笑)。皆さんもぜひ、店頭で試着してください。
「オニツカタイガー」
ポンピリオのセンス炸裂
“メキシコ 66”のパンプスに太鼓判
2023年度の売上高は前年に比べて40%増の630億円、そこから24年度は同58%増954億円、さらに25年度は同43%増の1365億円と爆速で成長。そこで今季は敢えての成長減速を予定している「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」ですが、コレクションでは進化が止まりません。
26年春夏は、これまでスタイリングや色違いで少し誤魔化していたアイテムのバリエーションが一気に広がり、ようやくファッションショーとして徹頭徹尾楽しめるようになりましたが、今季もお上手(笑)。前回との違いは、クリエイティブ・ディレクターを務めるアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)が得意とする、少しハズしたセンスが光り、キンチョーしちゃうモードではなく、特に若い世代にはより親しみやすい雰囲気が増したことでしょう。
ピークドラペルのジャケットに合わせるのは、プリーツのミニスカート。そのミニスカートを残して、トップスをフェイクファーのブルゾンに変えてみたり、花柄刺しゅうのカーディガンを合わせてみたりとコーディネートは自由自在。ジャケットをまとえばユニバーサル、そこにフリルのブラウスを加えれば日本っぽいカワイイが加わります。ミリタリーからワーク、レトロ、フォーマル、もちろんスポーティまでを行ったり来たりしたり、狭間にあるスタイルを楽しんでいる気分。センスがあって、お手頃で、これはウエアももっと広がるような予感です。この路線を継続すれば、そのうち「ミュウミュウ(MIU MIU)」の背中も見えてくるのではないか?と結構真剣に考えました。
十八番のシューズでは、スゴいのがでました。“メキシコ 66”のバックストラップパンプスです。バックストラップになっているのは、オニツカタイガーのストライプ。“メキシコ 66”の生誕60周年を記念したそうですが、これは売れそうであります。
「MM6 メゾン マルジェラ」
“らしさ”は「メゾン マルジェラ」に
親しみやすさにシフトの予感
さぁ、今日のフィナーレは「MM6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」。今シーズンは、いつも以上に注目が集まります。
理由は、「メゾン マルジェラ」のクリエイティブ・ディレクターにグレン・マーティンス(Glenn Martens)が就任したから。下の記事の通り、グレンは原点回帰して、“マルジェラ期の「メゾン マルタン・マルジェラ(当時)」”に着想を得たし、これからもそうし続ける予感がします。だって、きっとグレンが“マルジェラ期の「メゾン マルタン・マルジェラ」”を愛しているから。となると、これまで一番“マルジェラ期の「メゾン マルタン・マルジェラ」”に近かった「MM6」は、どう軌道修正するのか?ここに注目が集まります。私の予想は、良い意味で「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」っぽくなること。「アクネ ストゥディオズ」はアートっぽいのにちゃんと(可愛く)着られたり、あえて完璧にしないから自己投影できそうな気がしたりと、特に若い世代は理解しようと努めるので愛着が湧いちゃうブランドです。「MM6」も、この路線を「アクネ ストゥディオズ」とは違う形でを標榜するのではないか?というのが私の見立てです。
グレン・マーティンスの「マルジェラ」はプレタポルテを再定義 クチュール傾倒のガリアーノよりリアルに【26年春夏 新デザイナーの初コレクションVol.11】
で、どうでしょう?結構、そんな感じがしませんか?もちろんこれまでの「MM6」だって余白を残してきたからこの路線を目指せるワケですが、今回は“マルジェラ期の「メゾン マルタン・マルジェラ」”目指したというよりは、“マルジェラ期の「メゾン マルタン・マルジェラ」”の世界観の中でいろんな可能性を提示してくれたカンジがしませんか?って、この説明でわかるでしょうか(笑)?
特に日本人にとって、しかもメンズにとっては、どちらかと言えば“男臭い”イメージが少し薄れ、これまで以上に挑戦しようという意欲が湧くかもしれません。
裾を折り返したジャケットや、フロント部分を折り返してフェイクレイヤードを覗かせたパンツ、ニーハイブーツにシールドサングラスなどの“らしさ”は残しつつ、全般的には“分かりやすさ”に転じた印象です。加えてオーバーサイズのニットやレトロテイストのジャージーなどにはわかりやすく「6」のモチーフ。きっと若い世代は、まず、このアイテムを目掛けるでしょう。「アクネ ストゥディオズ」で言うところのデニムみたいなアイテムになるのかな?
“らしさ”は少し薄れたように思えるかもしれないけれど、古着っぽいテイストを中心に“痕跡”感を残していけば、他のコンテンポラリーブランドとも、「メゾン マルジェラ」とも差別化できそうです。
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広島県福山市は3月13日、メンズブランド「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」の梶浦慎平社長兼クリエイティブディレクターを迎え、トークイベント「なぜブランドは『産地』へ向かうのか 〜福山の工場がクリエイションを刺激し続ける理由〜」を東京の文化服装学院で開催する。福山市のデニム関連事業者とともに、ブランドが産地に見出す価値や、それをいかにクリエイションへ昇華しているかを探る。
