
東京都は、都内在住の若手デザイナーを対象とした都主催のファッションコンクール「NFDT」「SFDA」の受賞者を対象に、パリでのファッションショー挑戦を支援するプロジェクト「パリ・ファッションショー挑戦プロジェクト」を行う。今年1月25日、2023年度の受賞者13組、14人が約半年間にわたる準備期間を経て、パリ16区にあるパレ・ド・トーキョーでファッションショーを開催し、約350人が来場した。

ショー全体の監修を行うのは、森永邦彦「アンリアレイジ(ANREALAGE)」代表取締役、デザイナー。「NFDT」の審査員を勤めた他、若手デザイナーがパリに渡るまで合計4回にわたり、デザイン面、ビジネス面におけるワークショップも行った。
パリコレクション協会に掛け合い、パリ・ファッション・ウイーク・オフスケジュール内でショースケジュールを確保。ショープランニングは金子繁孝事務所、ヘアメイクは計良宏文 資生堂チーフヘアメイクアップディレクターと、国内外で活躍する業界のプロフェッショナルを集結させ臨んだ。
現地ではアトリエとしてスタジオ・ランドード(STUDIO LANDLOAD)を借り、モデルオーディションやルックのチェックなどの準備を行う拠点とした。参加した若手デザイナーはこのアトリエで、ブランドがショー実施までに行う準備、作業を体験し、本番に臨む。ショー開催後にはこの場でルックを展示し、来場者とデザイナー達が交流する場となった。
ショー終了後には、ショールックやその他のルックをショールームに展示し、来場者と交流できる機会を作った。かなりの賑わいで、多くの参加者がさまざまな人の意見を聞くきっかけとなった。現在はパリの「アンリアレイジ」チームの拠点であるアルファベットショールーム(Alphabet showroom)のディレクターに参加者の作品を見てもらい、今後の連携を試みている。
2月10日に行われた本プロジェクトの報告会には森永デザイナーのほか、プロジェクトに参加した13組のブランドから、山岡寛永「カネイ(KANEI)」デザイナー、岩間夢々「オーナメント(ŌNAMENT)」デザイナー、末永るみえ「キューフロウ(Q+FLOW)」デザイナーが参加した。
1 / 3
森永デザイナーは「世界で自分の作品を発表する機会はあまりなく、自分自身もできなかったこと。私自身は34歳から世界への挑戦を始めたが、もっと早い段階で世界の空気感やレベルを感じていれば、もっと違う未来があったかもしれない。それぞれの学び、経験が5年後、10年後、参加デザイナーの背中を押すものになるとうれしい」と語る。報告会後に、今回の取り組みについて改めて話を聞いた。
PROFILE: 森永邦彦(もりなが・くにひこ)/「アンリアレイジ」デザイナー、アンリアレイジ代表取締役

WWD:多忙な中、かなりの熱量で本プロジェクトに取り組んでいた。その背景とは?

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):当初はワークショップの登壇の話をいただいて、ショーづくりそのものには関わらない予定だった。しかし「アンリアレイジ」がパリでやってきたことを、若く志が高い人たちに共有していくことで、ファッション業界で活躍したい人の母数を増やせるのでは、と思うようになり、ショー作りも携わるようになった。
WWD:「アンリアレイジ」では、森永さんがかつて所属していた早稲田大学「早稲田大学繊維研究会」の学生アルバイトも実施するなど、次世代の育成を積極的に行なっている。
森永:今、若くして活躍しているデザイナーはたくさんいるが、その下のさらに下、未来のデザイナーとなり得る世代から、世界に通用するデザイナーが出てくれたらうれしい。歴史上でも証明されてきた通り、東京のデザイナーには絶対に世界で通用するポテンシャルがあるはずだ。だから、「できる」という目線をみんなが持つことが大切だ。
私自身が東京でブランドを立ち上げ、10年が経ったのち、パリ・ファッション・ウイークに進出して12年。自分自身の経験やショーのノウハウ、スタッフなどのリソースを若い世代のファッションを志す人たちに共有したい。パリ・ファッション・ウイークには第一線のプロが集まって戦っている場だ。そのハイレベルなクオリティー、空気感を若手に感じてもらい、今後につなげてほしい。
WWD:今回のプロジェクトを通じて得た手応えは?

森永:来場者からは「すごくエネルギッシュだった」「あのブランドが気になる」というポジティブな言葉をもらえた。パリを目指さなくてもブランドが成立する今、パリコレへの参加ブランドは減っている。それでも、日本のファッションがパリで闘い、脈々と受け継いできた“何か”がある。今回の取り組みで、その“何か”をつないでいくような次世代のデザイナーが生まれてくるかもしれない土壌を作っていくことはとても大事だと思う。
来年の開催がどのようなものになるかは未知数だが、この循環をつないでいくデザイナーが増えていくとうれしい。このプロジェクトを実現するためにたくさんの人を巻き込んでいく中で、僕と同じような思いを持つ人がたくさんいるんだと知ることができた。僕自身、当初はこんな大規模な話になるなんて思っていなかったが、やればやるほど「僕たちも本気でやろう」という気持ちになれた。
そして未来の東京のファッション産業にとって、今回のプロジェクトはとても大きなインパクトになったと思う。いくらブランドを始めたばかりであっても、最初からパリという高い目線を持つことはとても大切だ。東京都が仕掛けることによって今回のプロジェクトが実現して、参加者はその中で半ば強制的に世界水準を見ることになり、彼らが見ている景色が変わる。例えちょっとしたことが起きたとしても消えない火が、参加者の中に灯ったんじゃないかと思うと、今回の取り組み、ショーはとても意義深いものになったはずだ。
今回のプロジェクトを通じて、末永デザイナーが手掛けるレザーバッグのブランド「キューフロウ」は、「アンリアレイジ」パリコレクションでのコラボレーションが決定した。
The post 若手デザイナーが世界水準を体感 森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナーと東京都「パリ・ファッションショー挑戦プロジェクト」 appeared first on WWDJAPAN.
































