故アルベール・エルバス氏を称える展覧会開催 パリコレでのトリビュートショーを再現

 パリのガリエラ美術館は、ファッションデザイナーの故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏の功績を称える展覧会「ラブ・ブリングス・ラブ(Love Brings Love)」を開催する。会期は、2022年3月5日から7月10日まで。22-23年秋冬パリ・ファッション・ウイーク期間中に開幕する。

 エルバスが19年にコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)と共に立ち上げた「AZファクトリー(AZ FACTORY)」は、前回のパリコレ最終日となる10月5日に彼のトリビュートショーを開催。故人が生前にデザインしたルックに続き、45組の名だたるデザイナーたちがエルバスを偲び手掛けたルックや、同ブランドのデザインチームが彼の思いを受け継ぎ制作したルックを披露した。今回の展覧会では、そんなショーで来場者が味わった忘れがたいエモーショナルな体験を蘇らせることを計画。ルックの登場順や着用したモデルの肌の色から、光のランウエイを生み出すライティングや演出、音楽までを再現するという。

 ミレン・アルザルス(Miren Arzalluz)=ガリエラ美術館ディレクターは、「ファッション業界による感動的かつ前代未聞のトリビュートを再現することで、アルベール・エルバスの人生とレガシーに敬意を表し、彼のファッションへの喜びあふれるビジョンを来場者に味わってもらいたい」と述べる。

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故アルベール・エルバス氏を称える展覧会開催 パリコレでのトリビュートショーを再現

 パリのガリエラ美術館は、ファッションデザイナーの故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏の功績を称える展覧会「ラブ・ブリングス・ラブ(Love Brings Love)」を開催する。会期は、2022年3月5日から7月10日まで。22-23年秋冬パリ・ファッション・ウイーク期間中に開幕する。

 エルバスが19年にコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)と共に立ち上げた「AZファクトリー(AZ FACTORY)」は、前回のパリコレ最終日となる10月5日に彼のトリビュートショーを開催。故人が生前にデザインしたルックに続き、45組の名だたるデザイナーたちがエルバスを偲び手掛けたルックや、同ブランドのデザインチームが彼の思いを受け継ぎ制作したルックを披露した。今回の展覧会では、そんなショーで来場者が味わった忘れがたいエモーショナルな体験を蘇らせることを計画。ルックの登場順や着用したモデルの肌の色から、光のランウエイを生み出すライティングや演出、音楽までを再現するという。

 ミレン・アルザルス(Miren Arzalluz)=ガリエラ美術館ディレクターは、「ファッション業界による感動的かつ前代未聞のトリビュートを再現することで、アルベール・エルバスの人生とレガシーに敬意を表し、彼のファッションへの喜びあふれるビジョンを来場者に味わってもらいたい」と述べる。

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「ボッテガ・ヴェネタ」人気の立役者、ダニエル・リーが突然の退任

 「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の親会社であるケリング(KERING)は11月10日、約3年にわたり同ブランドを率いてきたダニエル・リー(Daniel Lee)=クリエイティブ・ディレクターの退任を発表した。2019-20年秋冬コレクションでランウエイデビューしたリーは、瞬く間にブランドをトレンドセッターに返り咲かせた立役者。象徴的な編み込みの技法“イントレチャート”などをモダンに再解釈したバッグやシューズをはじめ、多くのヒットアイテムを生み出してきた。

 同グループは、声明の中で「『ボッテガ・ヴェネタ』とダニエル・リーは、コラボレーションの終了に合意したことを発表する。彼はブランドに新たなエネルギーをもたらし、『ボッテガ・ヴェネタ』の現在の勢いに多大な貢献を果たしてきた」と述べた。退任の理由は明らかにされていないが、近日中にブランドの新たなクリエイティブ組織が発表される予定だという。

 リーは「『ボッテガ・ヴェネタ』で過ごした時間は、素晴らしい経験だった。卓越した才能あふれるチームと共に働けたこと、そして、私たちのビジョンの実現に関わってくれた全ての人に感謝している。また、フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)のサポートや『ボッテガ・ヴェネタ』が紡ぐストーリーの一部になるチャンスを与えてくれたことにも感謝している」とコメントした。

 一方、ピノー会長兼CEOは、「彼の唯一無二のビジョンは、ブランドの伝統を現代にふさわしいものに変え、ブランドをファッションシーンの中心に押し戻してくれた。私個人としても、『ボッテガ・ヴェネタ』の長い歴史の中で、彼が綴ったユニークな一章に感謝している」と述べた。また、レオ・ロンゴーン(Leo Rongone)=ボッテガ・ヴェネタCEOも「彼はブランドの50年の伝統に敬意を表しつつ、フレッシュな視点と現代性の新たな感性をもたらしてくれた。この3年間の目覚ましい成長は、彼のクリエイティブな仕事が成功したことを証明している」と説明。実際、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で多くのブランドが苦戦する中でも、同ブランドは成長を継続。直近の21年第3四半期の既存店売上高も、前年同期比8.9%増となっている。

 リーはロンドンの名門セント・マーチンズ美術大学を卒業後、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ダナ キャラン ニューヨーク(DONNA KARAN NEW YORK)」などでキャリアを積み、「セリーヌ(CELINE)」に入社。当時のクリエイティブ・ディレクター、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の下で、ウエアのデザイン・ディレクターを務めた。その後、18年7月、「ボッテガ・ヴェネタ」を17年間率いてきたトーマス・マイヤー(Tomas Maier)の後任として、現職に就任。ブランドの発展に貢献してきた。また、ファッション・ウイークのカレンダーから離れ、ベルリンやデトロイトなど独自のロケーションと日程でコレクションを発表したり、公式SNSアカウントを削除したりと、デザイン以外でも改革に取り組んできた。

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パリコレは「ルイ・ヴィトン」「シャネル」「ヨウジヤマモト」などがリアルショー 76ブランドが現地発表を計画

 フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は9月14日、2022年春夏パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)の最終スケジュールを発表した。9月27から10月5日までの9日間に、97ブランドがコレクションを披露する。そのうち、37ブランドがリアルショーを計画。39ブランドは、デジタル発表に加え、現地でのプレゼンテーションを行う。

 ショーを予定しているのは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「シャネル(CHANEL)」「ディオール(DIOR)」「エルメス(HERMES)」「ロエベ(LOEWE)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」「バルマン(BALMAIN)」「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」「アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(ANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD)「ロク(ROKH)」「コペルニ(COPERNI)」「コシェ(KOCHE)」など。「クロエ(CHLOE)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「クレージュ(COURREGES)」「ロシャス(ROCHAS)」はそれぞれ、新クリエイティブ・ディレクター就任後初のリアルショーを計画する。

 今季は、「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」もパリコレのショースケジュールに復帰する。普段はパリメンズで発表している「ラフ シモンズ(RAF SIMONS)」と「ルドヴィック デ サン サーナン(LUDOVIC DE SAINT SERNIN)」「ボッター(BOTTER)」も参加。一方、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」や「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ニナ リッチ(NINA RICCI)」は、デジタルのみでの発表を決めた。

 日本ブランドでは「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」のみがパリでのショーを計画。「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」はデジタル発表に加え、現地でのプレゼンテーションを予定する。そのほか、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」「ウジョー(UJOH)」「オーラリー(AURALEE)」「ワタル トミナガ(WATARU TOMINAGA)」がデジタル発表で参加する。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「サカイ(SACAI)」は、今季も参加しないようだ。

 今シーズンの締めくくる10月5日20時(現地時間)からは、4月に新型コロナウイルスが原因で死去した故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏による「AZファクトリー(AZ FACTORY)」のメモリアルショーが予定されている。同ブランドのアトリエに加え、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)「ルイ・ヴィトン」ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターやマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール」ウィメンズ・アーティスティック・ディレクター、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)「バレンシアガ」アーティスティック・ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)「ヴァレンティノ」クリエイティブ・ディレクターら40組以上のデザイナーが故人に敬意を表するルックを制作し、披露する予定だ。

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ミラノコレは3分の2が現地でショー開催 「プラダ」はラフ・シモンズ参画後初のリアルショーを予定

 イタリア・ファッション協会(Camera Nazionale della Moda Italiana)は、9月21〜27日に開催される2022年ミラノ・ファッション・ウイークのスケジュールを発表した。ショースケジュールに掲載された63ブランドのうち、40組がリアル発表を予定。ウエアやバッグ、シューズなどのプレセンテーションや、カクテルパーティーなども計画されているが、コロナ禍での開催となる今季は招待客を限定して開かれることになりそうだ。また、イタリア政府の決定により、全てのイベントに参加するには、“グリーンパス”(ワクチン接種を終えていることやコロナからの回復済みであること、48時間以内に受けた検査で陰性だったことを証明するQRコード、正式名称は“EUデジタルCOVID証明書”)の提示が必要になる。

 リアルショーに向けて準備を進めているのは、ラフ・シモンズ(Raf Simons)が共同クリエイティブ・ディレクターに就任以来初のリアル発表となる「プラダ(PRADA)」をはじめ、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による「フェンディ(FENDI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「マックスマーラ(MAX MARA)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」「エトロ(ETRO)」「トッズ(TOD’S)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」「ミッソーニ(MISSONI)」「マルニ(MARNI)」「MSGM」「ヌメロ ヴェントゥーノ(NO21)」など。今季は、「モンクレール(MONCLER)」や「MM6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」、ファウスト・プリージ(Fausto Puglisi)がクリエイティブ・ディレクターに就任した新生「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」も、ショーを計画する。一方、「ディースクエアード(DSQUARED2)」や「エミリオ プッチ(EMILIO PUCCI)」「GCDS」「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は、デジタルで発表する。

 対面でのプレゼンテーションを予定するのは、74ブランド中55ブランド。「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」や「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」をはじめ、「ヘルノ(HERNO)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」「バリー(BALLY)」「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」「ジュゼッペ ザノッティ(GIUSEPPE ZANOTTI)」などが名を連ねる。また、ファッション・ウイーク期間外のコレクション発表に移行した「グッチ(GUCCI)」は、25日に「ヴォールト(VAULT)」と題したスペシャルイベントを開催予定。「ポメラート(POMELLATO)」はアイコニックな“ヌード(NUDO)”コレクションの20周年を祝うカクテルパーティーを開く。さらに、ファッションラインを刷新し、6月に初のランウエイショーで披露した「フェラーリ(FERRALI)」は、ミラノ旗艦店のオープニングパーティーを行う予定だ。

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「ソニア リキエル」が再始動 新オーナー兄弟が語る今後の展望

 「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」が新たなオーナーの下、再スタートを切った。同ブランドは創業デザイナーの退任後経営難に苦しんで身売りを画策したが買い手がつかず、2019年7月に一度は清算されたが、同年12月にファッションや小売り、デジタル業界で実績を持つフランス人実業家のダイヨン兄弟が買収。20年5月にインスタグラムなどソーシャルメディアの運用を再開し、10月には主要通貨に対応する新たなグローバルサイトで商品の販売も始めた。さらに今年2月には、ブランドの代名詞であるニットウエアを中心とした新作の21-22年秋冬コレクションを発表。ブランドを再び開花させるために取り組むエリック・ダイヨン(Eric Dayan)=プレジデントとミカエル・ダイヨン(Michael Dayan)=ジェネラル・ディレクターに買収の理由やこれからの展望を聞いた。

WWD:まず、2人のバックグラウンドは?

ダイヨン兄弟:2人とも実業家としての最初の経験は、(フランスなど7カ国で展開する大手会員制ファッションECサイトの)「ショールーム プリヴェ ドットコム(SHOWROOMPRIVE.COM)」。2006年の創設時から、アソシエイト・ディレクターとして、その発展に関わってきた。今でも取締役会のメンバーと株主ではあるが、それぞれの投資会社の事業に専念するために、17年に運営からは離れた。

WWD:「ソニア リキエル」はフランスを代表するブランドの一つだが、買収した理由は?

ダイヨン兄弟:まず「ソニア リキエル」は、その歴史やアイデンディティ、ブランド力によって、フランスのスタイルや精神を世界に伝えることができるプレーヤーになりうる。だから、なくなってしまうことは想像できなかったし、自分たちがメゾンコードと価値を守っていきたいと思った。「ショールームプリヴェ ドットコム」での野心的な経験の後に取り組みたいと思ったのは、「ソニアリキエル」の世界観や力によるところが大きい。

WWD:ブランドをどのように分析している?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、世界的に知られるアイコニックなブランド。フランスのノウハウやファッション、スタイルの象徴であり、フランスの文化的な遺産の一部と言える。そして、女性の解放に関する前衛的かつ現代的な価値を持つ、服に自由を求める女性のためのブランドでもある。そのスタイルを特徴付けるキーワードは、フェミニン、エレガント、ロマンチック、魅惑的、オーセンティック、大胆、自由、そして好奇心や独立心にあふれる姿勢。個性的でありながら、廃れることはない。世代を超えて愛着や愛情を持ってもらえるエモーショナルなブランドだ。

WWD:どのようにリブランディングしていくのか?具体的なアプローチの仕方やターゲット層は?

ダイヨン兄弟:私たちの優先事項は、ファッションとラグジュアリーの世界で「ソニア リキエル」を本来のポジションに戻すこと。そして、ブランドに対するニーズを再発見することだ。そしてコミュニケーションにおいては、ロイヤルカスタマーを安心させて呼び戻すと同時に、若い世代にもアプローチする。また、ソニア・リキエルという類稀なクリエイターの前衛的なメッセージを再び発信することも、これまで以上に重要だと考えている。

WWD: 21-22年秋冬は、ニットにフォーカスしていた。今後は以前のようにさまざまなウエアやアクセサリーを含めたフルコレクションを展開していくのか?その中で注力する商品カテゴリーは?

ダイヨン兄弟:21-22年秋冬コレクションでは、ブランドのクリエイションの核となるニットウエアに焦点を当て、それを再構築することを目指した。ニットは今後のコレクションでも中心となるが、レザーグッズ含め、他の商品カテゴリーも加えていく。具体的には、アイコニックなバッグを再構築し、ナイロンやレザー、ベルベットなどブランド特有の素材を使った新しいモデルを制作する。また、トータルルックを提案するとともに、ライフスタイルへのアプローチも行っていきたいと考えている。キッズウエアのライセンスも並行して進めていて、公式ECサイトでの提案を拡大していく予定だ。

WWD:再始動はECサイトからだったが、今後は直営店での小売やEC、卸売りなど、どのように展開していくのか?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、B2CとB2Bの双方で高いポテンシャルを持っている。直営では公式ECサイトに加え、ソーシャルコマース、マーケットプレイス、旗艦店、ポップアップショップなどで販売していく。年末には、パリの百貨店ル・ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)にコーナーを開く予定だ。また、2月のコレクション発表後に世界20カ国への卸売りを始め、セレクトショップ100店舗に卸している。総売り上げの半分は海外が占めている。

WWD:日本市場をどのように考えているか?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、フランスのラグジュアリーメゾンの中でもいち早く日本に進出したブランドなので、その歴史を生かして展開していきたい。ブランドには、日本との関係性を象徴する何百ものアーカイブがある。ソニア自身も日本に強い愛着を持っていたし、彼女は日本で成功を収めた初のフランス人デザイナーだった。ブランドのDNAが日本人の心に響くものであると分かっている一方で、日本ではコミュニケーションが異なることも理解している。例えば、日本市場専用のインスタグラムページを作ることも考えている。また、日本市場で成功するためには、商品の供給、ディストリビューション、露出に取り組む必要がある。これまで共に取り組んでいたオンワードグループのような現地パートナーを見つけたい。今は、さまざまなグループとオープンに話を進めているところだ。

WWD:今後のビジョンは?

ダイヨン兄弟:私たちが目指すのは、ファッションとラグジュアリーの世界において、「ソニア リキエル」にふさわしいポジションを維持すること。そのためには、革新とともに驚きをもたらし、その価値を守り続けていくことが重要だ。フランス国内だけでなく、世界中でブランドを輝かせたいと考えているが、最高のロケーションで展開していくために、ディストリビューションは質重視でコントロールしていく。また、メンズラインとセカンドラインの「ソニアバイ ソニア リキエル(SONIA BY SONIA RYKIEL)」も再始動したい。いつか、ブランドのデザインコードとアーカイブで飾られた“ホテルリキエル”をつくる日がくるかもしれない。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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NYコレ、参加にはワクチン接種証明が必須に 約90ブランドがリアル発表を予定

 9月8〜12日に開催予定の2022年春夏ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)では、観客を招いたショーやプレゼンテーションが本格的に再開する。期間中には、「トム フォード(TOM FORD)」や「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」「コーチ(COACH)」「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」「トム ブラウン(THOM BROWNE)」など、約90ブランドがリアルイベントでコレクションを発表する予定だ。

 開催に先駆けてNYコレを主催するIMGは8月2日、メイン会場となるスプリング・スタジオに入場するすべての人にワクチン接種証明を求めることを参加ブランド関係者に通達。「デザイナーやプロデューサー、PRは、全ての従業員やスタッフ、招待客がこのポリシーを認識し遵守することに対する責任がある」とし、ポリシーにはモデルやメイクアップアーティスト、ヘアスタイリスト、フォトグラファーなども含まれるという。また、16歳未満の未成年については、会場到着6時間以内に実施した抗原検査もしくは同72時間以内のPCR検査の陰性証明を提示する必要がある。

 さらに3日午後(現地時間)には、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA)もワクチン接種に関する声明を発表。ニューヨーク市の屋内施設利用時におけるワクチン接種証明提示の義務化に伴い、NYコレの全イベントで観客やスタッフなど会場内にいる全員にワクチン接種証明を求めることを明らかにした。マスク着用などのより詳しいガイドラインは、8月中旬に発表する。この声明に関する同団体のインスタグラムの投稿には、拍手の絵文字などで支持を示すコメントがある一方で、「人々の分断をさらに広げることになる」や「ワクチンを接種しても新型コロナウイルスに感染している人はたくさんいる。入場時に検査しないと意味がない」といった否定的な意見も多く書き込まれている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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NYコレ、参加にはワクチン接種証明が必須に 約90ブランドがリアル発表を予定

 9月8〜12日に開催予定の2022年春夏ニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)では、観客を招いたショーやプレゼンテーションが本格的に再開する。期間中には、「トム フォード(TOM FORD)」や「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」「コーチ(COACH)」「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」「トム ブラウン(THOM BROWNE)」など、約90ブランドがリアルイベントでコレクションを発表する予定だ。

 開催に先駆けてNYコレを主催するIMGは8月2日、メイン会場となるスプリング・スタジオに入場するすべての人にワクチン接種証明を求めることを参加ブランド関係者に通達。「デザイナーやプロデューサー、PRは、全ての従業員やスタッフ、招待客がこのポリシーを認識し遵守することに対する責任がある」とし、ポリシーにはモデルやメイクアップアーティスト、ヘアスタイリスト、フォトグラファーなども含まれるという。また、16歳未満の未成年については、会場到着6時間以内に実施した抗原検査もしくは同72時間以内のPCR検査の陰性証明を提示する必要がある。

 さらに3日午後(現地時間)には、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA)もワクチン接種に関する声明を発表。ニューヨーク市の屋内施設利用時におけるワクチン接種証明提示の義務化に伴い、NYコレの全イベントで観客やスタッフなど会場内にいる全員にワクチン接種証明を求めることを明らかにした。マスク着用などのより詳しいガイドラインは、8月中旬に発表する。この声明に関する同団体のインスタグラムの投稿には、拍手の絵文字などで支持を示すコメントがある一方で、「人々の分断をさらに広げることになる」や「ワクチンを接種しても新型コロナウイルスに感染している人はたくさんいる。入場時に検査しないと意味がない」といった否定的な意見も多く書き込まれている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「マルジェラ」と「フェンディ」は映像で世界観を巧みに表現 ドキドキワクワクのクチュール初体験記 Vol.4

 こんにちは〜、WWDJAPANヨーロッパ通信員の藪野です。あっという間にオートクチュール・ファッション・ウイークも最終日。期間中は微妙に肌寒い曇り続きでしたが、なんとか最終日まで大雨は降らずにもってくれました。今日は、ショールームやプレゼンテーション回り。これまでのファッション・ウイークだとふらっと立ち寄れたのですが、今回はコロナによる制限もあって、ほぼすべてが事前アポ制です。これまたスケジュール調整が大変であまり詰め込む訳にもいきませんでしたが、夜のフライトでベルリンに戻るまでガッツリ取材してきます!

8日12:00 ジュリー ドゥ リブラン

 朝からパッキングとチェックアウト、そして薬局で帰国に必要な抗原検査を済ませていたので、遅めのスタート。まず、「ジュリー ドゥ リブラン(JULIE DE LIBRAN)」のプレゼンテーションにお邪魔しました。植物が生い茂る小さな中庭で行われていたのですが、ちょうど晴れ間が見えて、心地よい気が流れる空間でした。ジュリーは2019年3月まで「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」のクリエイティブ・ディレクターを務めていましたが、退任後に自身の名を冠したドレス中心のブランドを設立。今季で4シーズン目になりますが、過剰な在庫を抱えないために受注生産型にしているそう。提案するのも、いわゆる豪華なクチュールドレスではなく、日常に少し特別感を加える服というイメージです。

 今シーズンは、これまでに制作したデザインを出発点に、長年付き合いのあるフランス国内の小さなアトリエとの取り組みにフォーカス。中には過去のコレクションのアイテムに職人の手でアレンジを加えたものもあり、素朴なイギリス刺しゅうやキラキラしたビジュー装飾がポイントになっています。また、次世代に技術を継承していくことも重要と考えるジュリーは現在、マランゴーニのパリ校で教鞭をとっているのですが、コレクション制作には刺しゅう職人から指導を受けた学生も関わったそうです。

8日13:00 アエリス クチュール

 お次は、“サステナブルなアート・トゥ・ウエア”を掲げる「アエリス クチュール(AELIS COUTURE)」。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)時代の「ディオール(DIOR)」などでキャリアを積んだイタリア人女性デザイナー、ソフィア・クロチアーニ(Sofia Crociani)によるブランドです。コレクションには、ビンテージウエアもしくは環境に配慮されて作られた素材のみ使用しているので、立ち上げ当時の17年は生地を見つけるのが大変だったそう。ですが、それから数年で素材メーカーの姿勢は大きく変わり、今ではずいぶん選択肢が広がったといいます。今回はイタリア製のシルクやコットンを中心に使い、ドレープを生かしたドレスを制作。トスカーナの雄大な草原で自然との共生を感じさせる映像を撮影しました。

 また今シーズンは、新たにNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)にも取り組み、コレクションの中のドレス1着がNFTとリンクしているとのこと。「サステナブルな未来へと歩んでいくには、伝統的な技術を守ることだけでなく、クリエイティブな表現に新しいテクノロジーを活用していくことも重要」と話していたのが、印象的でした。今後は、クチュールも現実だけでなく、バーチャルの世界へと広がるかもしれません。

8日14:00 シャルル ドゥ ヴィルモラン

 ランチを食べる暇もなく向かったのは、「シャルル ドゥ ヴィルモラン(CHARLES DE VILMORIN)」のプレゼンテーション会場であるバカラメゾン パリ。コロナ禍に自身のブランドを立ち上げ、「ロシャス(ROCHAS)」のクリエイティブ・ディレクターにも抜擢された24歳のシャルルとは、どんな人物なのか気になります。会場で迎えてくれた彼は、物静かで繊細な雰囲気の青年。すらっとした長身で、過去にモデルをしていたというのも納得です。

 コレクションはと言うと、先シーズンの鮮やかな色を組み合わせたカラフルなクリエイションから一転、今季はほぼ黒一色にフォーカスしています。その理由を尋ねると、「カラフルな服を作るのは好き。だけど、そのイメージがブランドについてしまう前に、黒のコレクションで自分の異なる側面を見せたかった」そう。植物のような造形や大きなフェザー、プリーツを取り入れたドレス中心のコレクションからは、「アダムスファミリー(The Addams Family)」や「マレフィセント(Maleficent)」のようなダークでミステリアスな雰囲気が漂います。ディテールを見るとちょっと粗い部分があり、コスチュームっぽい印象も否めないのですが、今後に期待したい次世代のクチュールデザイナーです。

 今は、9月のパリ・ファッション・ウイークでの「ロシャス」のデビューショーに向けて準備を進めているそう。さらに、「自分のブランドのショーも開きたいし、ゆくゆくは自分のブランドのプレタポルテも始めたい」と意欲的なシャルルでした。

8日14:30 フェンディ

 車で移動中にデジタルで発表された「フェンディ(FENDI)」の映像をチェック。小説家ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)の「オーランドー(Orlando)」から着想したコレクションで1月に注目のクチュールデビューを果たしたキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、どんなコレクションを見せてくれるのでしょうか。

 今季の出発点は、ローマの映画監督ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)の詩情あふれる作品。その世界を通して、フェンディの本拠地であるローマを探求したようです。「パゾリーニは近代化していくローマを目の当たりにした。時代をつなぎ、古きものと新しきもの、過去と現在を結びつけること、そこにこそ私は興味を引かれる」とキムが語るように、コレクションのポイントは異なる時代を重ね合わせるような手法です。例えば、1800年台半ばや1920年代に作られたドレスのファーやファブリックをスキャンして、シルクジャカードで表現。カットアウトやクリスタルビーズの刺しゅうを施し、新たなアイテムを生み出しています。また、「フェンディ」の象徴でもあるファーアイテムは、大半が再生されたものを使用しているそうで、タイルのような小さなファーパーツを並べたデザインも印象的でした。

 映像のセットに見られるアーチは、ブランドの本社を構えるイタリア文明宮を想起させますが、その形状はシューズのヒールにも。こういうキャッチーなアイデアを入れてくるところが、キムらしいですね。シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)の娘であるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)が手掛けるジュエリーには、手彫りしたイタリア産大理石やマザーオブパールのモザイクが用いられています。

 ちなみに美しい映像は、映画「君の名前で僕を呼んで(Call Me By Your Name)」や「ミラノ、愛に生きる(Io sono l'amore)」で知られるルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)監督が手掛けたもの。スローなカメラワークや意味深にカメラを見つめるモデル、神秘的かつ壮大な音楽でノーブルな雰囲気を演出しつつ、クローズアップを効果的に取り入れることで贅を尽くした服のディテールを伝えています。

8日15:00 エリー サーブ

 最後のアポは、レバノン・ベイルート発の「エリー サーブ(ELIE SAAB)」。2月中旬〜3月初旬に発表された2021-22年秋冬のプレタポルテで台頭した“オプティミスティック(楽観的で前向きな感覚)”で明るい未来への希望を込めたようなクリエイションは、クチュールでも顕著で、こちらもテーマは“希望の芽(Bud of Hope)”でした。ただ新型コロナウイルスだけでなく、20年8月に起こったベイルート港の巨大爆発事故による被害などレバノンが抱える苦難を乗り越えた先をイメージしたそうです。

 「エリー サーブ」のクチュールといえば、やはりレッドカーペットにも度々登場する装飾たっぷりの華やかなイブニングガウン。今季はテーマにちなみ、クリスタルやスパンコール、パール、刺しゅう、立体モチーフ、ラッフルなどさまざまな手法で咲き乱れる花を表現していました。63ルックあるコレクションはすべてベイルートのアトリエで仕上げて、パリに持ってきているそうです。

8日16:00 メゾン マルジェラ

 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」は、デジタルでの発表と同時にシャンゼリゼ通りの映画館で上映会を開催したのですが、僕はフライトの時間が変えられなかったので諦めてオルリー空港へ。タクシーの中で見ようと思っていたら、今回も超大作のようで、めちゃくちゃ長い!なんと、まさかの1時間超え!!ということで、ベルリンに戻ってから家のテレビでじっくり拝見しました。

 「ア フォーク ホラー テール(A Folk Horror Tale、ホラーな民話)」と題された映像の冒頭の19分間は、今回もジョン・ガリアーノが今シーズンのクリエイションの背景について、饒舌に語ります。これは、もはや立派なドキュメンタリー作品!と思って見ていたら、そこからはジョンがコンセプトと脚本を手掛け、フランス人映画監督のオリヴィエ・ダアン(Olivier Dahan)が監督を務めた作品がスタート。フランス国内最大級のLEDスクリーンで仮想空間を作り出し撮影されたという同作は、昔の漁村のようなシーンから始まり、ミステリアスでSFホラーのようなストーリーが展開していきます(ネタバレになるので、気になる方はぜひ映像をご覧くださいね)。正直、1時間以上ある映像は、たとえファッション好きでもすべての人が見るわけではないと思います。ですが、コレクションの背景にこれだけのエピソードがあることを知り、その世界観に浸るということを、望む人全員が体験できるというのは、デジタル発表ならではですね。

 コレクションは、時の経過とともに魂が吹き込まれてきたものに敬意を表したもの。ジョンは歴史が染み込んだ年代的なものに宿る安心感や信頼性に現代の若い世代の切望や憧れの要素を見出し、それをアトリエの手仕事を生かして表現しています。例えば、穴の空いたセーターを修繕するように昔の新聞を刺しゅうしたり、チャリティーショップで売っているようなさまざまな人の記憶が宿るバンダナやエプロン、ウエアなどをパッチワークしたり。また今季は、「水分を絞り取る」という意味を持つ“エソラージュ(Essorage)”を新たなテクニックとして採用。8〜12倍に拡大したアイテムに酵素加工とストーンウオッシュ加工を施すことで、サイズを縮小させるとともに色や質感を変え、時の経過によってもたらされる着古した感覚を表現しているそう。実際のビンテージアイテムをアトリエが修復・復元したピースが今季も登場します。

 今回、パリでの現地取材を通してあらためて実感したのは、現代のクチュールはただ華やかな装飾があしらわれたドレスやフォーマルウエアだけではないということ。その解釈は広がり続けていて、共通しているのは、創造性の自由とモノづくりにおけるあらゆる要素を徹底的に追求できる“ぜいたくさ”だと思います。そこには、やはりファッションの“夢”や“真髄”があります。また縁遠いと思いがちなクチュールの世界ですが、芸術や文化としての価値は高く、実際にオーダーする顧客ではなくても見るものを引きつける魅力があると感じました。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「バレンシアガ」と「ゴルチエ」×「サカイ」に大興奮! ドキドキワクワクのクチュール初体験記 Vol.3

 ボンジュール!WWDJAPANヨーロッパ通信員の藪野です。3日目は、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のクチュール復活と「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢デザイナーが手掛ける「ゴルチエ パリ(GAULTIER PARIS)」発表という今季の2大トピックが重なるビッグデー!どちらもリアルショーへの強いこだわりから1年延期していたので、待ちに待ったお披露目です。一体どんなコレクションが披露されるのか、ワクワクする1日の始まりです。

7日10:00 アレクシ マビーユ

 本日朝一番は、街の中心にある素敵なパッサージュ、ギャルリ・ヴィヴィエンヌに構える「アレクシ マビーユ(ALEXIS MABILLE)」のサロンへ。今季のテーマは“フラワーウーマン”だったのですが、「さすがにこれは直球すぎないだろうか……?」と感じるバラのつぼみをモチーフにしたヘッドピースと茎に見立てたスパンコールのボディースーツのルックに目が点。燕尾服の要素を取り入れたイブニングドレスやチュールに小花の刺しゅうを散りばめたドレスは素敵でしたが、どうしてもラグジュアリーな“モジモジくん”が頭をよぎってしまうのでした。

7日11:00 ディオール

 初日に発表された「ディオール(DIOR)」の展示会へ。クチュールでは普段プレス向けの展示会はないそうなのですが、今回は特別に見せていただけることになりました。うねるように手で形成したプリーツやボディにピッタリと沿う編み、極薄の生地をつなぐクラフト感のあるノット、花柄のパッチワークに重ねたステッチ、メッシュ状のニットに1本1本縫い付けたフェザーなど、間近で見るとクラフツマンシップへのこだわりがヒシヒシと伝わってきます。ショーのラストに登場したフェザーをあしらった淡いグリーンのドレスは、600時間以上をかけて制作されたものだそう。 クチュールなので、もちろん生地や装飾の色合いを好みに合わせてオーダーできます。

7日11:30 バレンシアガ

 続いては、お待ちかねの「バレンシアガ(BALENCIAGA)」です。53年ぶりに復活するクチュールを披露する舞台は、ジョルジュサンク通り10番地に再建したクチュールサロン。内装は、創業者のクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)がそこにいた当時を再現しているそうです。その話題性に対して、スペースが限られているために席数はかなり少なく、今季1番のプレミアチケットだったことは間違いありません。日本のメディアでショーを取材したのは、おそらくWWDJAPANのみです!コレクションの内容はこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

 最大のポイントは、やはりそのシルエット。これまでプレタポルテでもクチュール由来のシルエットをストリートの文脈を交えながら表現してきましたが、今回のクチュールで見せたのは紛れもないエレガンス。日常着のようなアイテムやデザインディテールを取り入れているものの、表現の方向性は全く異なると感じます。例えば、襟を背中にずらしたような“スイングバック”のシルエットは、デムナ・ヴァザリア(Demna Cvasalia)アーティスティック・ディレクターのデビューとなった16-17 年秋冬コレクションでも印象的だったシルエットですが、クチュールではピュアな造形美を追求。作りとしても、本来の肩の位置にフィットするパーツが内側に配されていて、常に完璧なシルエットになるように仕上げられていました。これこそが、デムナの考える現代そして次世代のためのクチュールなのでしょう。

7日12:30 エルメス

 「バレンシアガ」の会場で歴史的瞬間の余韻に浸るのもそこそこに、「エルメス(HERMES)」の新作ジュエリーの展示会が開かれているフォーブル・サントノレ通り店へ。“ケリーモルフォーゼ(KELLYMORPHOSE)”と題されたコレクションは、アイコニックな“ケリー(KELLY)”バッグの留め具や南京錠をさまざまな形でデザインに落とし込んだネックレスやブレスレット、リングをラインアップ。ダイヤモンドをふんだんに使ったハイジュエリーですが、そのデザインには01年から同ブランドのジュエリーを手掛けているピエール・アルディ(Pierre Hardy)=クリエイティブ・ディレクターの自由な発想が光ります。

7日14:30 ゴルチエ パリ バイ サカイ

 会場近くのこじんまりした素敵なレストラン「プラミル(PRAMIL)」でランチをいただいた後、いよいよ本日2つ目の目玉、「サカイ」の阿部さんがゲストデザイナーとして手掛ける「ゴルチエ パリ」のショーへ。早めに到着しましたが、会場前にはすでに人だかり。会場内は3つの輪が並ぶように席が配置されています。ざっと数えたところ200席ほどしかなく、これまたかなりのプレミアです。

 こちらのレビュー記事でも書きましたが、コレクションは本当に力強く美しく、それは「ゴルチエ」であると同時に「サカイ」でした。2人のクリエイションに共通する部分が多いからこそ、ここまでナチュラルに2つの世界観が融合したのでしょう。そして今回のコレクションは、阿部さんからゴルチエさんへの絶大なリスペクトと、ゴルチエさんからの阿部さんのクリエイティビティーへの全幅の信頼で成り立っていると感じました。

 過去のインタビューで「常に違う景色が見たいと思っている」と阿部さんは話していましたが、クチュール制作はまさに“まだ見たことのない景色”。ショー後、やり切った感のある清々しい表情でインタビューに答える姿が忘れられません。日本人としても、ファッションジャーナリストとしても、いち「サカイ」ファンとしても、この瞬間に立ち会えたことは感無量!阿部さん、本当にお疲れさまでした‼︎

7日16:00 メゾン ラビ ケイルーズ

 「ゴルチエ」のショー後に阿部さんとゴルチエさんを夢中で取材していたら、次のアポまで10分しかないという大ピンチ!ダッシュで地下鉄に駆け込んで、サンジェルマン・デ・プレにある「メゾン ラビ ケイルーズ(MAISON RABIH KAYROUZ)」のショールーム兼アトリエを訪れました。元は小さな劇場だったらしく、天井が高くてとっても気持ちいい空間です。

 今シーズンのアプローチは、これまでとも、他のブランドとも異なります。ベースとなるのは、“エッセンシャル”と呼ぶシーズンレスなプレタポルテ・コレクション。そのシルエットをデフォルメしたり柄を描くように全面に装飾を施したりと、実験的なアプローチで再解釈することによって、特別なアイテムを制作しています。目を引いたのは、海岸で集めた貝殻から象ったゴールドの装飾やパールを全面にあしらったトレンチコートや、2枚のチュールの間にリアルなドライフラワーを挟んで縫いつけたドレス。ドレスに関してはコンセプトの提案のみで実際にオーダーが入った際には刺しゅうで表現するそうですが、思い出をデザインの一部にするようなアプローチはエモーショナルです。

 帰り際に、デジタルで発表された映像に映っていたアトリエも少し見せてもらいましたが、そこには若い女性職人たちがたくさん。未来のクチュールの担い手が育っているということは、頼もしいですね。

7日17:00 ズハイル ミュラド

 今回取材する最後のリアルショーは、レバノン発のクチュールブランド「ズハイル ミュラド(ZUHAIR MURAD)」です。会場で世界を飛び回るファッションジャーナリストのマスイユウさんと久々に会えて話していたら、目の前をいかにも“富裕層”な雰囲気をまとった煌びやかな女性たちがぞろぞろ。クチュールのショーは来場する顧客を見ると、どんなブランドなのかがよく分かりますね。今シーズンのインスピレーション源は、仮面舞踏会的なカーニバルで知られるイタリアのベネチア。シャンデリアからヒントを得たというクリスタルが揺れ動く装飾や、ワントーンでまとめつつも刺繍をたっぷりと施したカラードレスは、豪華絢爛の一言に尽きます。

 ただ、緩やかに傾斜するランウエイをピンヒールの華奢なサンダルで歩くモデルの中にはぎこちなく辛そうな子もちらほら……。こういうウォーキングだと、見る側もそれが気になり服に集中できないので、非常にもったいない。リアルショーを開き、ライブ配信するからには、そういうところも考える必要があると感じるショーでした。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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実際に服に触れ、デザイナーと対面で話せる喜びを再認識 ドキドキワクワクのクチュール初体験記 Vol.2

 みなさん、こんにちは。WWDJAPANヨーロッパ通信員の藪野です。7月5〜8日に開催された2021-22年オートクチュール・ファッション・ウイーク取材のため、久々にパリを訪れました。街には活気が戻り、夕方になるとホテルの近くにあるカフェのテラスはどこも満席状態。屋外と言えど、かな〜り密なのは少し気になりましたが、“日常”が戻ってきているように感じられるのは嬉しいですね。2日目からはショールームでのアポも続々と入り、ある意味“ファッション・ウイークらしい”1時間刻みのスケジュールが始まります。

6日10:30 ロナルド ファン デル ケンプ

 朝一番に訪れたのは、オランダ大使館。アムステルダムを拠点にする「RVDK ロナルド ファン デル ケンプ(RVDK RONALD VAN DER KEMP)」のプレゼンテーションを見に行ってきました。エントランスには注射器が置かれていたのですが、今季のテーマは“マインド ワクチン(Mind Vaccine)”。デザイナーのロナルドは、ヨーロッパでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、皆が解放感を感じると共に急速に元の生活に戻ろうとしていることを不安にも感じたそう。そこで、実際に気持ちを落ち着かせてくれるCBDオイルベースのペーストを開発。限定販売するらしく、「史上初のデザイナードラッグだよ。でも、合法でエシカルなやつね(笑)」と話していました。

 “責任ある快楽主義”を掲げ、サステナブルなアプローチにこだわる彼は、今回も古着やストック素材のみを使用してクチュールを制作。スタイル自体はグラマラスですが、細く切ったデニムを編み込んでいたり、異なる素材を組み合わせたり。特に気になったのは、白いリングを繋いだケープ。こちらは繊維ゴミを再生したフェルトで作られていて、クチュールだけでなく、外部企業と提携して同じ素材を使用したバッグやアクセサリーも販売するそうです。

6日13:00 ルイ・ヴィトン

 今回のパリは天候が悪くて風邪を引きそうなのでセーヌ川沿いの「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」でストールを急遽購入し、6月に映像で発表された「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」22年クルーズ・コレクションを見にショールームへ。皆さんはショー映像をもうご覧になりましたか?彫刻家の故ダニ・カラヴァン(Dani Karavan)氏が手掛けたアックス・マジャール(大都市軸)が舞台になっているのですが、「パリ郊外にこんな素敵なロケーションがあるんだ!」と思わず唸る壮大な映像は必見です。ショールームでも、その一部である赤い歩道橋のデザインが再現されていました。コレクションは、マーチングバンドを想起させるスタイルや鮮やかな色使いが印象的。ビニールでコーティングしたようなツイードや角度によってストライプが動くような視覚効果のあるホログラム素材など、間近で見るとやはり新たな発見があります。ショーには登場しませんでしたが、ゴツいチェーンをあしらったサンダルやローファーも気になります。

6日14:00 ヴィクター&ロルフ

 7日に映像を公開する「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」のコレクションを一足先に見せてもらうため、1日限りのプレゼンテーションのための準備をしている贖罪教会へ。08年にイギリス・ロンドンのバービカンセンターで開催された展覧会「ザ ハウス オブ ヴィクター&ロルフ」も、18年にオランダ・ロッテルダムのクンストハルで開催された25周年の回顧展にも足を運んだ自分としては、デザイナーの2人に実際会えることに超ワクワク。会場に行ったら、ロッテルダムの展覧会を手掛けたカナダ人キュレーターのティエリー・マキシム・ロリオ(Thierry-Maxime Loriot)さんが今回のプレゼンテーションにも関わっているということでちょうど会場にいて、なんとも贅沢な時間でした。

 ユーモアやアイロニーを感じるテーマを掲げることが多い「ヴィクター&ロルフ」ですが、今シーズンのテーマは“ザ ニュー ロイヤル(The New Royal)”。体裁を保ちながらも人間らしさが垣間見える新世代のロイヤルファミリーから着想を得たそう。「ファッション業界にも確固たるヒエラルキーがあり、それは王室や階級制に通じる。あえて“フェイク”と呼ばれるものを使って、高揚感のあるコレクションを作りたかった」とヴィクターは話していました。その言葉通り、上流階級を象徴するようなスタイルを、人工ファー(生分解可能なものだそう)やラフィア、キッチュなビジューやパール、「メリッサ(MELISSA)」とのコラボバッグやシューズなど伝統的なクチュールとはかけ離れた素材や装飾で解釈しているところが、“ファッション・アーティスト”と呼ばれる彼ららしいですね。“SIZE QUEEN”や“Don’t be Drag just be a QUEEN”など、コートの上にかけたサッシュのフレーズもウィットに富んでいます。

6日15:00 スキャパレリ

 バイデン大統領の就任式でレディー・ガガ(Lady Gaga)が着用したことも記憶に新しいダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)による「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」の展示会のために、ヴァンドーム広場へ。先シーズンはムッキムキの筋肉ドレスで度肝を抜きましたが、今季も型にはまらない世界観が炸裂!「ザ マタドール(The Matador)」と題されたコレクションは、闘牛士のジャケットや牛の角を想起させるシェイプが目を引きます。そこにあしらわれた煌びやかな装飾や組み合わせるアクセサリーには、乳房や目、鼻、耳、口、手など体のパーツのモチーフが溶け込んでいて、インパクト絶大。エンターテインメントの世界から愛されるのも納得です。発表の約1週間後には早速、モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)がカンヌ映画祭で着用していましたね。

6日16:00 ジャンバティスタ ヴァリ

 「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)」は、オスカー・ニーマイヤー(Oscar Niemeyer)が設計したフランス共産党本部周辺で撮影された映像を通して発表。「クチュールはファンタジー」と語るジャンバティスタは、パリのグラマラスな“夜遊び”からヒントを得て、生き生きとしたエネルギーを表現しています。幾重にも重ねたチュールやフリルと美しいドレープで描くロマンチックなドレスや、スパンコールにフェザーを組み合わせたドラマチックなピースなど、華やかなパーティーウエアがそろっています。また、今季は初めてメンズ向けのクチュールもお披露目。先シーズンからクチュールでのメンズ提案が増えていますが、この流れは今後も広がりそうです。

 ショールームのお隣にはギャラリー・ラファイエットのシャンゼリゼ通り店があったので、ちょっと視察に。今は「ポケモン(POKEMON)」の25周年を記念して、ピカチュウだらけになっていました〜。

6日17:00 アレクサンドル ヴォチエ

 お次は、「アレクサンドル ヴォチエ(ALEXANDRE VAUTHIER)」の展示会。公開されたムービーを見ながら移動していたのですが、今季はウエスタンな雰囲気。黒とクリスタル装飾で、クールでグラマラスな世界を描きます。そのストーリーは明快で、フリンジやバンダナモチーフ、大きなバックルのベルト、カウボーイハット、ウエスタンシャツに見られるようなラインなどのデザインが印象的。ギャングスターをイメージしたというスーツや、キャバレーのダンサーをほうふつとさせるフェザーのヘアピースとミニドレスのルックなんかもありました。ただ、展示会の会場ではマネキンではなくハンガーにかかっている状態だったこともあり、服の魅力はあまり伝わってこず。やっぱりモデルが着て動く中で見たいですね。ちなみに、シューズはロック&グラマラスなスタイルで知られるシューズ界のベテラン、ジュゼッペ・ザノッティ(Giuseppe Zanotti)が手掛けています。

6日18:00 ジョルジオ アルマーニ プリヴェ

 本日唯一のリアルショー取材は、「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」。コロナ後の明るい世界への思いを込めて、輝きに満ちたコレクションをイタリア大使館で披露しました。天井や壁に煌びやかな装飾が施された空間を優雅に歩くモデルを見ていて頭に浮んだのは、光がキラキラ反射する水面。光沢のあるシルクやサテン、ベルベットに加え、極細の金属糸を織り込むことで液体のような独特なきらめきを放つ生地を使い、テーマである“シャイン(Shine)”をさまざまな素材で表現しています。序盤は、ブラックやインディゴ、ブルーで描くコンパクトなジャケットとゆったりとしたパンツやロングスカートという「アルマーニ」らしいスタイル。次第に優しいパステルカラーへと移り変わっていくのですが、透けた生地の上にちりばめたクリスタルやスパンコール、ビーズの装飾がとても幻想的。繊細で儚いドレスにうっとりしました。

 ショー後は中庭に出て、アペリティフ。久々に現地在住ファッションジャーナリストの井上エリさんとキャッチアップしていたら、日本が好きだという素敵なマダム(後でパリの写真家キャスリーン・ナウンドルフ(Cathleen Naundorf)さんと発覚)も加わり、シャンパンを片手に話し込んじゃいました。ただ、こういう時間を過ごせるのも、今回のようなゆったりしたスケジュールならではです。いつもならそそくさと会場を後にして、次の取材先に向かうことが多いですから。

6日20:30 シャネル

 ホテルに帰ってからは、残念ながら現場では取材できなかった「シャネル(CHANEL)」を映像でチェック。先シーズンのクチュールも結婚式のような演出でしたが、今季もハッピーで高揚感のある雰囲気は継続です。「私は刺しゅうがあふれ、温かみを感じさせる、とりわけ色彩豊かなコレクションを心から求めていた」とヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)=アーティスティック・ディレクターが話すように、いつも以上にカラフルなコレクションは、会場となったガリエラ宮のアイボリーの背景に映えますね。

 今シーズンの軸となるのは“絵画”で、「黒や白の1880年代スタイルのドレスを身にまとったガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)のポートレートをあらためて目にした時、すぐに絵画が思い浮かんだ」そう。序盤のツイードのコートやスーツの上にはキラキラ輝くスパンコールの装飾をのせ、筆で何度も色を重ねたかのような奥行きを演出。そして、イングリッシュ・ガーデンを思い浮かべたという花のモチーフが、さまざまな刺しゅうでスカートやブラウス、ドレスを彩ります。ショーの最後には、ラストルックで登場したウエディングドレス姿のマーガレット・クアリー(Margaret Qualley)がブーケトス。観客の一人がナイスキャッチし、拍手喝采で幕を閉じました。

 ちなみにショー中盤の音楽が日本語っぽく聞こえるなーと思っていたら、1983年に岩本清顕が発表した「Love Will Tear Us Apart」を、大阪を拠点に活動する2人組ミュージシャンの千紗子と純太が2020年にリワークした楽曲が使われていました。まさか本人たちも「シャネル」のショーに使われるなんて、想像もしていなかったでしょうね〜。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ディオール」の職人技に感動し、「アライア」の今後に期待 ドキドキワクワクのクチュール初体験記 Vol.1

 こんにちは。WWDJAPANヨーロッパ通信員の藪野です。9カ月ぶりに出張を再開し、南イタリアで「マックスマーラ(MAX MARA)」2022年リゾート・コレクションのショーを取材した後、パリに到着しました。EU内の多くの国は、20分ほどで結果が出る抗原検査の陰性証明でも渡航可能になったので、今はずいぶん気軽に行き来できるようになっています。実際、パリの空港では入国審査があったものの、陰性証明はまったくチェックされず。拍子抜けしてしまいました。

 今回の目的は、21-22年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイークの取材です。これまでプレタポルテしかコレクションを取材したことがないので、実のところ、ちょっとドキドキ。ただ、数は少ないですがリアルショーが再開するのでコレクションを生で見られること、そして展示会で服に触れられたりデザイナーと直に話せたりすることへのワクワク感で、そんな不安は吹き飛びました。ここでは、現地で見て、聞いて、感じたことを綴っていきますので、クチュールの世界を楽しんでいただけたら幸いです。

4日20:30 アライア

 今シーズンは注目トピックが多いのですが、まずはラフ・シモンズ(Raf Simons)の右腕として長年活躍してきたことで知られるピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)をクリエイティブ・ディレクターに迎えた新生「アライア(ALAIA)」のデビューです。2017年にこの世を去った偉大な創業デザイナーの跡をどのように継いでいくのか、どんなコレクションを披露したのかは、こちらの記事をご覧ください。ショー翌日には展示会にも行ってきましたが、その完成度からはピーターを支えるアトリエの力を感じました。今後がとっても楽しみです。

5日12:00 イリス ヴァン ヘルペン

 リアルショーが再開したとは言いつつも7ブランドのみで、大半はデジタル発表。顧客やメディア向けには、個別にアポイントをとってコレクションを見せるというブランドが今季は多いです。

 オランダ発の「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」は、実際に見られることを楽しみにしていたブランドの一つだったのですが、パリにはコレクションを持ってこないことになったそうで、残念ながら映像で見ることに。手仕事とテクノロジーを掛け合わせて作られる彼女の服には、いつも異世界の生物のような神秘的な美しさや生々しさが漂います。今季の映像は、そんな服にマッチする壮大な岩山を舞台に撮影。スローモーションを生かして、羽衣のような生地が風をはらむ様子や神々しい雰囲気が存分に表現されていました。そしてラストには、なんとスカイダイバーが登場!繊細なクチュールを着てスカイダイビングだなんて、前代未聞ですよね(笑)。このドレスは時速300kmでの降下という負荷に耐えられるように何度もテストを重ねて作られ、4回ダイビングを行って撮影されたそうです。

5日14:30 ディオール

 過去2シーズンは、ファンタジー映画のような映像作品でオートクチュールを披露してきた「ディオール(DIOR)」ですが、6月中旬にギリシャ・アテネで開催した22年クルーズ・コレクションに続き、オートクチュールも観客入りのリアルショーを再開させました。会場は、かの有名な「考える人」が展示されているロダン美術館。中庭に建てられた特設テントを入ると、壁全面がシルク刺しゅうのアートで囲まれた空間「シルクの部屋(Chambre de Soie)」が広がります。こちらはアーティストのエヴァ・ジョスパン(Eva Jospin)が描いた森のドローイングをベースに、インドの刺しゅう工房と工芸学校の職人たちが数カ月をかけて手作業で作り上げたもの。なんと150もの異なるテクニックが使われているそうで、長さは40m、大きさは350平方メートルに及びます。その背景には、クラフツマンシップを称え、未来に継承していきたいというマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=アーティスティック・ディレクターの強い思いがあり、その視覚や触覚を刺激する空間からコレクションへの期待も高まります。

 ショーは、マルク・ボアン(Marc Bohan)が手掛けていた1963年に発表されたコレクションから着想を得たというツイードのトータルルックからスタート。質感豊かなツイードは今季のキー素材で、曲線を描くように異なる色調をシームレスにつないだり、部分ごとに切り替えたり。装飾でも、さまざまな色のフェザーを組み合わせてツイードのようなミックスカラーを再現しています。トレーンを引く幻想的なドレスに使われたくすみがかった美しい色使いは、背景のアートから飛び出してきたよう。今季はそんな色と質感、そして多彩なプリーツや編みなどの職人技が際立つコレクションに仕上がっていました。

5日15:30 メシカ

 オートクチュールの期間中には、ハイジュエリーの展示会も数多く開催されます。「メシカ(MESSIKA)」は、ダイヤモンドディーラーの父を持つヴァレリー・メシカ(Valerie Messika)が2005年に立ち上げたブランドで、昨年にはケイト・モス(Kate Moss)ともコラボレーションしていました。今季は、人と惹かれあい、再びつながることができる喜びをジュエリーで表現。2つのダイヤモンドやリングを並べたデザインがポイントになっていましたが、“あなたと私”をイメージしているそう。なんだかロマンチックですね。

5日16:30  Y/プロジェクト

 クチュールとは関係ないのですが、現地のPRから案内をもらい、先日パリメンズで披露された「Y/プロジェクト」22年春夏コレクションをチェックしに展示会へ。「ディーゼル(DIESEL)」のクリエイティブ・ディレクターにも就任し勢いに乗っているグレン・マーティンス(Glenn Martins)のシグネチャーブランドは、いろいろな着方を楽しめるクセのあるデザインが特徴。初期の頃はそれこそ「どう着るのか?」や「一人で着られるのか?」と考えるアイテムが盛りだくさんでしたが、ずいぶんリアルになった印象でした。バッグやアクセサリーのバリエーションも増えて、「メリッサ(MELISSA)」とのコラボシューズの第2弾も登場。写真ではお届けできませんが、このシューズ匂い付きです。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「バレンシアガ」のクチュールがついに復活 デムナ・ヴァザリアが考える現代のエレガンス

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は7月7日、創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)が引退してから眠っていたオートクチュールを53年ぶりに復活させた。今回発表された2021-22年秋冬コレクションは、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターが初めて手掛けるクチュールであると共に、メゾンとして50回目のクチュール・コレクション。ジョルジュ・サンク通りの本社に再建したクチュールサロンを会場に、緊張感漂う無音の中でショーを行った。間違いなく今季一番のプレミアチケットになったショーに招かれたのは、わずか100人ほど。その中には、カニエ・ウエスト(Kanye West)やベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)らの姿もあった。

 招待状と共に届いたのは、「BALENCIAGA COUTURE」と金の文字で記された黒いボックス入りの“指抜き”モチーフのペンダント。クリストバルが実際に使用していた指抜きを、24Kゴールドメッキが施されたシルバーで忠実に再現したものだという。そこには、クチュリエの仕事とメゾンのヘリテージへの敬意が込められている。

 初のクチュールを手掛けるにあたり、デムナがフォーカスしたのは、クリストバルが生み出したシルエットだ。「『バレンシアガ』は建築。シルエット以外に選択肢はない。そして、装飾よりもプロポーションやアティチュードで体を取り巻くものを作り上げるというのが私の服への取り組み方。今回はもちろん、現代的かつクチュール的な方法でね」と話す。就任当初から日常やストリートに美を見出す彼ならではの解釈で、そんなメゾンの遺産をプレタポルテに落とし込んできたが、今回のクチュール・コレクションではよりエレガントかつ洗練された形で表現した。

 今回メンズ向けのクチュールも提案することを明かしていたデムナは、現代の男女に向けたテーラードスタイルからショーをスタート。幅広の角ばったショルダーラインと少しくびれたウエストが特徴のジャケットやコートに、ワイドパンツやロングスカートを合わせる。テーラリングは、クリストバルが着用していたものからインスピレーションを得ると共に、彼がオーダーしていたサビル・ロウのテーラー、ハンツマン(HUNTSMAN)との協業で制作。足元に目を向けると、男女問わずピンヒールのシューズを履いている。

 その後もアワーグラスシルエットのジャケットやドレスをはじめ、逆三角形や四角形を描くような肩の広がったジャケットやニット、デムナがブームを巻き起こした襟を背中に落として胸元を開いたデザインなど、派手な装飾はあまり用いず、単色をベースに構築的なシルエットを追求。ルックにアクセントを加える三度笠のようなハットは、アーカイブから着想したもので、帽子デザイナーのフィリップ・トレーシー(Philip Treacy)が手掛けた。

 終盤にかけて、シルエットはさらに誇張されていく。サテンやシルクで仕立てたマキシ丈のたっぷりとしたオペラコートは、スポーティーなデザインディテールを取り入れながら、エレガンス漂うイブニングルックに。メンズでは、無数の細かい切れ目を入れてパイルに似せたレザーで作ったバスローブ風のコートなどユーモアあるアイテムを提案する。

 さらに、ストリートをラグジュアリーファッションの世界に持ち込んだデザイナーの一人であるデムナは、クチュールでもデニムジャケットやジーンズ、パーカー、トラックスーツ、パファージャケットなどカジュアル由来のアイテムをミックス。カシミヤやシルクなどの上質素材とアトリエのクラフツマンシップを生かして最高級のアイテムに仕上げることで、ストリート感を希釈し、現代のクチュールの在り方を模索しているようだ。

 また、クチュール再開には、“トリプルS(Triple S)”などのスニーカーでブランドを知った世代に、100年以上の歴史を持つメゾンのヘリテージを伝えたいという思いもあったという。これまでファッション業界の常識や既成概念を次々と打ち破ってきたデザイナーによって、クチュールメゾンとしての「バレンシアガ」の新たな時代が幕を開けた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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2つの世界の美しく力強い融合 「サカイ」阿部千登勢が手掛けた「ジャンポール・ゴルチエ」のオートクチュール

 「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢をゲストデザイナーに迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER 以下、ゴルチエ)」の2021-22年オートクチュール・コレクションが、1年の延期を経て、7月7日に発表された。会場は、同メゾンの本社。数々のアイコニックなデザインを生み出してきた「ゴルチエ」と、ハイブリッドスタイルで日本から世界へと羽ばたいた「サカイ」という2つの世界が共鳴するように溶け合い、美しく力強いコレクションが誕生した。

 「今回手掛けるにあたって、ゴルチエさんのDNAや良さを残したいと思った。20代の頃から彼のコレクションが大好きで、意識したのは、そのハッピーな感じと既成概念を壊すという”自由さ”。ただ、昔の『ゴルチエ』と同じということではなく、あくまで『サカイ』らしく、そして2021年の今に合った洋服にしたかった」。そう阿部デザイナーが話すように、披露した31体はマリンボーダーやコルセット、コーンブラといったゴルチエのエッセンスとアトリエの力を生かしながら、異なる要素のハイブリッドや軽やかで透け感のある素材使い、手の込んだケーブルニット、立体的なシルエットなどで「サカイ」らしさを表現している。

 例えば、ファーストルックのピンストライプのコルセットドレスには、同柄のオーガンジーで仕立てたオーバーサイズシャツを組み合わせ、そこにビスチェをプラス。トレンチコートはバッスルやテントのようなシルエットで再解釈し、テーラードのコートドレスにはフェティッシュなレースアップでボンバージャケットのパーツをドッキングする。また、フェイクファーと「JPG」のマークをあしらったアウターは、阿部デザイナーの記憶に強く残っていた1994-95年秋冬のショーショーでビョーク(BJORK)が着用したジャケットを参考にしたもの。デニムアイテムは「リーバイス(LEVIS)」の古着をアップサイクルし、マリンボーダーやタータンのドレスはテープ状にカットした切りっぱなしの生地を重ね合わせている。

 ラスト2ルックは、ブルーのワークウエアをサテンと組み合わせて、ドレスライクにアレンジした。その足元を飾るのは、「ナイキ(NIKE)」とのトリプルコラボによる”LD ヴェイパー ワッフル(LD Vapor Waffle)”。ショー直後から「ゴルチエ」の公式サイトで開始した先行オーダーは即完売状態になり、9月末の発売時にも話題を集めることは間違いないだろう。

 多くのルックに取り入れたセカンドスキントップスやレギンスのタトゥープリントは、「サカイ」でもコラボレーションしているタトゥーアーティストのドクター・ウー(Dr. Woo)が描いたもの。ヘアはグイド・パラウ(Guido Palau)、メイクはダイアン・ケンダル(Diane Kendall)、音楽はミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)、シューズはピエール・アルディ(Piere Hardy)と、これまでの「サカイ」のコレクションでも一緒に取り組んできた顔ぶれが脇を固めている。

 今回のコレクションはコロナ禍に4回渡仏して作り上げたもので、「渡航のたびに隔離しなければならず大変だったけれど、ZOOMでのやりとりでは決して作れなかった」と阿部デザイナー。初めてのクチュール制作については「私たちは常にたくさんじゃなくていいからスペシャルな服を届けたいと思っていて、『サカイ』の服も大量に生産して売るようなものではない。けれど、今回のオートクチュールは、その究極の形。本当に好きなように作らせてもらって、とても楽しかった」と、清々しい表情で話す。

 一方、ゲストの一人としてショーを見守ったゴルチエは「質問があれば答えるよという感じで、あとは完全な自由を与えた。自分が関わり始めると、ついついコントロールしたくなってしまうからね(笑)」と説明。また、今回の人選については、「最初のゲストデザイナーとして『サカイ』の千登勢を選ぶのは、とても簡単だった。自分の後にコレクションを手掛ける一人目は女性にしたいと思っていたし、彼女のクリエイションには自分がこれまでやってきたことと共通する部分が多い。同じスピリットを持ちながらも、彼女らしい新たな方法でエネルギーをもたらしてくれた。とても喜ばしいことだ」と笑顔で語った。

 なお、ゴルチエは20年1月にランウエイを引退。今回から、毎シーズン異なるゲストデザイナーを迎えてオートクチュール・コレクションを発表する。来シーズンの人選は、まだ明かされていない。

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ピーター・ミュリエが紡ぐ「アライア」の新章 創業者への敬意を込めたコレクションで好発進

 「アライア(ALAIA)」はオートクチュール・ファッション・ウイーク開幕前日の7月4日夜、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)新クリエイティブ・ディレクターによる初のコレクションを発表した。創業者のアズディン・アライア(Azzedine Alaia)がまだ健在だった2017年に開かれた17-18年秋冬オートクチュールから4年ぶりとなる今回のショーで披露されたのは、22年冬春のオートクチュールとプレタポルテ。かつてアズディンが暮らし、今でもアトリエや本店を構えるマレ地区のムシー通りにランウエイを設け、アズディンの生涯のパートナーだったクリストフ・フォン・ウェイエ(Christoph von Weyhe)や親友カルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)、ラフ・シモンズ(Raf Simons)らが見守る中、デビューを飾った。

 座席に置かれていたのは、「This collection is intended as a tribute to thank you(このコレクションは、あなたへの感謝の気持ちを込めたものです)」という一文から始まるピーターがアズディンに宛てた感謝の手紙。そこからは、彼の温かい人柄が伝わってくるとともに、アズディンが築き上げたレガシーを受け継いでいく決意が感じられる。

 そんな手紙からも分かるように、コレクションは女性のボディラインを強調するシルエットなどブランドを象徴するデザインを現代的に再解釈したものだ。アイコニックなフードをあしらったテーラリング群から幕を開けたショーには、絶妙なカッティングやダーツ、切り替え、ニットで生み出す体に吸い付くようなドレスを筆頭に、タイトシルエットとの対比を描くオーバーサイズのテーラードコート、純白のポプリンを使ったケープのようなシャツとギャザーをたっぷり入れたスカート、ブラックレザーのドレスなどが登場。そこにフリンジや動きのあるヘムライン、メタルパーツの装飾、ボリュームのあるファーライクな素材、フューシャピンクやブルーなどの鮮やかな差し色がドラマチックな印象を加える。

 さらに、より若い世代に伝えていくことを意識したというピーターは、デニムやビニールといったカジュアルな素材を使ったり、レギンスやサイクリングパンツのようなアイテムを取り入れたり。ただし、あくまでも「アライア」らしくセンシュアルかつエレガントに落とし込んでいる。象徴的なパンチングが施されたコルセットベルトはメタリックレザーでアレンジし、立体的なシェイプの新たなバッグとクロッグやウッドヒールのミュール、メタルリング付きのフラットシューズなども提案した。

 シモンズの右腕として長年活躍してきたピーターが一人でブランドのクリエイションを率いるのは、今回が初めてのこと。偉大な創業デザイナーの跡を継ぐハードルは高いが、上々のスタートを切ったと言えるだろう。ただ、彼自身のシグネチャーとなるデザインについてはまだ見えない部分も多く、今後どのように「アライア」の象徴的なスタイルと融合していくかに注目だ。

 在りし日のアズディンは、加速するファッション業界のサイクルやファッション・ウイークのスケジュールにとらわれず、独自のペースで突き詰めたコレクションを制作し続けてきたことで知られる。そんな彼の遺志を継承するピーターも、長く丁寧に「アライア」のストーリーを次世代へと紡いでいってくれることを期待したい。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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再び旅する日を夢見て 「マックスマーラ」が南イタリアのリゾートで見せた現代のジェットセッタースタイル

 世界を自由に飛び回ることが難しい時を過ごす中、多くの人が人生を豊かにしてくれる旅という体験を渇望している。6月29日に南イタリアのイスキア島で発表された「マックスマーラ(MAX MARA)」の2022年リゾート・コレクションも、まさにそんな思いから生まれたものだった。ショー会場となったのは、ナポリ湾を望むホテル メッツァトーレ(Hotel Mezzatorre)のロマンチックな庭園。ヨーロッパとアメリカから招いたエディターやジャーナリスト、セレブリティー、インフルエンサーなど約90人の観客が見守る中で、再び旅する日を心待ちにする現代のジェットセッターのためのコレクションを披露した。

 「旅することを夢見ていた私はイギリスでクダウン中、旅について書かれた本をたくさん読み直した」と話すイアン・グリフィス(Ian Griffiths)=クリエイティブ・ディレクターは今季、1950年に発行されたアメリカ人作家トルーマン・カポーティ(Truman Capote)による旅行記「ローカル・カラー/観察記録(Local Color)」にインスピレーションを得た。その一章でイスキア島で過ごした4ヵ月について綴ったカポーティは、まだ旅が特別なものだった当時、半年ごとにパリでオートクチュールを仕立て、その間に地中海の隠れ家的なリゾートでバカンスを過ごす社交界の女性たちを“スワン(白鳥)”と呼んだ。そして、グリフィス=クリエイティブ・ディレクターは洗練された美しいものを追求し、きらびやかな世界を旅する彼女たちの姿からイメージをふくらませ、現代を生きる“スワン”を描いた。

 ファーストルックは、ブランドを象徴するアイテムの一つである“101801”コートと、腰下にギャザーを施したミニドレスのコーディネート。どちらも今季のキー素材である上質なテクニカルジャージーを用いることで、軽やかであると同時にシワになりにくく旅にぴったりなアイテムに仕上げている。また、サイドに深いスリットの入ったカフタン風のロングドレスやジュートソールのレースアップサンダル、ラタンやラフィアを使ったバッグ、ボストンなどリゾートトラベルを想起させるアイテムも数多く登場。一方、店頭に11月頃から並び始めることを考え、ブランドの新たなアイコンとなっているテディベアコートや同素材のブルゾンもラインアップする。

 全体を通して際立ったのは、ギャザーとハリのある素材感を生かしたフレアラインやベルスリーブなどのふんわりした構築的なシルエット。「パリのクチュールを着想源としていた『マックスマーラ』の50〜60年代のアーカイブデザインからヒントを得た。ただ、ダッチェスサテンのようなクチュールによく使われる素材ではなく、テクニカルな素材やスポーティーなディテールと掛け合わせたり、フルレングスだったスカート丈をミニで再解釈したりすることで、コンテンポラリーで若々しいエレガンスを表現した。スエットで多くの時間を過ごした後、またエレガントな着こなしを楽しみたいという女性たちの気持ちに応えたかった」という。

 ベージュやキャメル、白、黒といった落ち着いたカラーパレットに彩りを添えるのは、鮮やかな赤やフューシャ、そして優しいベビーピンク。「喜びに満ちた高揚感のある色合いは、“スワン”がパリで滞在していたオテル プラザ アテネ(Hotel Plaza Athenee)の外観を象徴するとともに、リサーチする中で彼女たちの写真にもよく写っていたゼラニウムのグラデーションからとったもの。それは、イスキア島のいたるところに見られる花々にも通じる」。

 また、2月に21-22年秋冬コレクションをデジタルで発表した際に「リアルなショーが恋しい」と話していたグリフィス=クリエイティブ・ディレクターは、「モデルからエディターもジャーナリストまでショーに携わるすべての人と同じように、私もさまざまな要素が一つになって魔法やエネルギーを生み出すショーを再開できる日を待ちわびていた」と明かす。

 一方、デジタルでは今回はあえてショーのライブ配信は行わず、イタリア人映画監督ジネヴラ・エルカン(Ginevra Elkann)の手がけたムービーを7月1日に公開した。その理由については「ルックやアイテムだけでなく、背景にあるストーリーやショーの高揚感、島の雰囲気を織り交ぜることで、現地でショーを見たゲストと同じ感覚を視聴者にも味わってもらいたかったから。シンプルでぜいたくなエレガンスと、世界ともう一度つながることへの強い思いを伝えたい」とコメント。エルカンは“スワン”の一人であったマレラ・アニェッリ(Marella Agnelli)の孫娘でもあり、そんな彼女の視点を通してカポーティの作品から広がる今シーズンのストーリーを完結させた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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ナイジェリアとインドにルーツを持つ若手女性デザイナーが「マルベリー」とのコラボに込めた思い

 「マルベリー(MULBERRY)」は創業50周年を記念して、将来有望な英国の若手デザイナーとのコラボレーションに取り組んでいる。その第1弾となるのが、ナイジェリアとインドにルーツを持ち、ロンドンで生まれ育った女性デザイナーのプリヤ・アルワリア(Priya Ahluwalia)だ。

 自身のブランド「アルワリア(AHLUWALIA)」をメンズウエアからスタートした彼女は、パッチワークをはじめとするテキスタイルの技術を駆使して、ビンテージや余剰素材の可能性を探求。6月14日に2022年春夏コレクションと共に披露したコラボアイテムでも、シグネチャーである波状のパターンなどを「マルベリー」初の100 %サステナブルレザーを使用したバッグ “ポートベロー”にあしらった。さまざまな色のカーフレザーやスエードを組み合わせた3サイズをそろえ、リンクするデザインのオーガニックシルク製スカーフも提案する。
 
 2月の「英国デザイン クイーン エリザベスII アワード(Queen Elizabeth II Award)」受賞に加え、今回のコレクション発表当日には「BFC/GQ デザイナー メンズウエア ファンド(BFC/GQ Designer Menswear Fund)」も勝ち取り、さらなる飛躍が期待されるアルワリアにコラボの背景から、デザイナーを志した理由やこれからの展望までを聞いた。

WWD:「マルベリー」には、もともとどのようなイメージを持っていましたか?コラボレーションに取り組むにあたり、重視したことは?

プリヤ・アルワリア「アルワリア」デザイナー(以下、アルワリア):「マルベリー」は英国人ならば、まずその名を知っているお馴染みのブランドです。「アルワリア」とは背景にある文化的歴史やブランドストーリーを含め、大きく異なるブランドですが、どちらも社会的また環境的にポジティブな方法で生産することにフォーカスしています。それぞれの違いや似ている部分があるからこそ、パートナーシップはとても面白いものになり、お互いから学び、それぞれが新たな方法を考えるきっかけになるだと思います。

WWD:コラボバッグは、ウエアとリンクする波状のパターンやパッチワーク、そしてワッペンのデザインが印象的です。そのインスピレーションや、なぜこのコレクションに選んだかのこだわりを教えてください。

アルワリア:ナイジェリアとインドにルーツを持つ女性の一人として、アフロカリビアンヘアの芸術性や儀式、そして、インド北西部のパンジャーブ州における髪に対する考え方(編集部注:同州に教徒の多いシク教では、歴史的に髪を切らない戒律がある)に目を向けようと考えました。これは、私自身とても大切だと感じていることですし、髪は“差別の道具”として使われることが多いため、非常に重要なことでもっと広めたかったんです。バッグのシームや刺しゅうのスタイルは、コーンローや編み込みのリサーチから生まれたもので、色使いは昔の美容院のポスターから。バッジは1970年代の黒人と南アジアの人々が平等を求めて起こした運動のグラフィックから着想を得たものです。

素材を“廃棄から救い出す”クリエイション

WWD:今回のコラボレーションに、数あるスタイルの中から“ポートベロー”を選んだ理由は?

アルワリア:“ポートベロー”トートが大好きなんです。コンテンポラリーでいろんな使い方ができますし、サステナブルな原則に基づいて開発されたアイテムですから。そんな“ポートベロー”は、私にとって素晴らしい真っ白なキャンバスのようでした。今回のコラボアイテムもサステナブル認証項目をクリアしていて、英サマーセット州にある(カーボンニュートラルを実現した)自社工場で、(国際環境基準団体のレザーワーキンググループから)ゴールド認証を受けたレザーと再生ポリエステルの糸を使って作られています。

WWD:サステナビリティは、あなた自身やブランドにとってどのような意味や価値を持っていますか?

アルワリア:私は、いつもこのアプローチでコレクションを制作しています。地球上には、私たちが付加価値を与えることで、廃棄から救い出せる素材がたくさんあるのではないでしょうか。実際、「マルベリー」のストックにあった素材は限られていたので、バッグも必然的に限定数になりました。それによって、より特別なコレクションになったと思います。

着実に進む、幼い頃から志したデザイナーの道

WWD:あなたのバックグラウンドについても聞かせてください。いつ頃、何がきっかけでファッションデザイナーを志したのですか?

アルワリア:幼い頃から、ずっとファッションデザイナーを夢見ていました。たくさんスケッチをしていましたし、いつも母のファッション誌を読んでいました。とにかくできるだけ早くインターンを経験し、必要な技術をすべて身につけられるように学びました。

WWD:ナイジェリアとインドのルーツは、デザイナーとしての姿勢やブランドを通して伝えるメッセージにどのような影響を与えましたか?

アルワリア:さまざまな形で作品に影響しています。育った環境の中で、物心ついた時から黒人や南アジアの音楽や映画、カルチャーに影響を受けてきたので、自然とその要素が作品に反映されているのだと思います。また、(ナイジェリアの)ラゴスの活気とインドのクラフツマンシップからもインスピレーションを得ています。

WWD:ブランド立ち上げから3年間はメンズのみでしたが、今回ウィメンズウエアのコレクションをスタートしたました。このタイミングで始めたきっかけは?

アルワリア:ずっとウィメンズウエアに取り組みたい気持ちはありました。ただ小規模なブランドとしては、まずは一つのことにフォーカスし、ブランドのアイデンティティーをしっかりと固めることが必要だと思いました。ブランドが成長するにつれて、より多くの資金や知識を得ることができるようになり、ウィメンズウエア発表にふさわしい時期が来たと感じたんです。

WWD:2月には「英国デザイン クイーン エリザベスII アワード」を、今回のコレクション発表当日には「BFC/GQ デザイナー メンズウエア ファンド」を受賞されましたね。おめでとうございます。この支援プログラムから得たメンターシップと賞金をどのように活用しようと考えていますか?また、今後どのようにブランドを発展させていきたいですか?

アルワリア:ありがとうございます。なんだか本当に夢のように感じましたが、素晴らしいことですよね。このような機会を与えていただけたことにとても感謝しています。また、メンターシップと賞金は、来年、そしてその先に私たちのビジネスを発展させていくために欠かせないもの。メンタリングには私のチーム全員が参加できますし、賞金は鍵となる物流面やチームの育成に活用できると考えています。

 なお、アルワリアの手掛けたコラボレーションバッグは現在、「マルベリー」のギンザ・シックス店と公式オンラインストアで販売中。「マルベリー」は9月にはリチャード・マローン(Richard Malone)、11月にはニコラス・デイリー(Nicholas Daley)との協業によるカプセルコレクションを発表予定だ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ジャックムス」が“すぐ買える”コレクションに 6月30日のショー直後から新作を販売

 「ジャックムス(JACQUEMUS)」は、6月30日に約1年ぶりとなる男女合同ショーを開催し、新コレクション“ラ モンターニュ(La Montagne)”を発表する。シーズンレスな同コレクションは、ショー終了直後から披露したアイテムを販売する、いわゆる“SEE NOW, BUY NOW(見てすぐ買える)”形式。その後、さらに何度かに分けてアイテムをリリースするという。

 シモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)=デザイナーは、「この1年は自分たちらしくいることの大切さを実感したし、みんなとファッションを楽しむ瞬間を共有したかった。今回のコレクションは、より多様な環境に適応するモダンで柔軟なアプローチへの移行を示すもの。僕たちが目指しているのは、発表から製品化までの間、コレクションの熱量を保ち続けることだ」とコメント。「僕たちにとって、これはより身近で現実的に感じられるアプローチ。今は、シーズンにとらわれないことにフォーカスしている。自分たちの独立精神に誠実でありつつ、挑戦と改革に取り組んでいきたい」と続ける。

 「ジャックムス」はここ数年、パリ・ファッション・ウイークの公式カレンダーから離れ、雄大なラベンダー畑や麦畑でショーを開催。雄大な自然を背景にしたドラマチックなショーは、340万フォロワーを抱えるインスタグラムを中心に大きな話題を集めた。またファッションにとどまらず、百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のシャンゼリゼ通り店内にあるカフェ「シトロン(CITRON)」を手掛けるなど、活躍の場を広げている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ジャックムス」が“すぐ買える”コレクションに 6月30日のショー直後から新作を販売

 「ジャックムス(JACQUEMUS)」は、6月30日に約1年ぶりとなる男女合同ショーを開催し、新コレクション“ラ モンターニュ(La Montagne)”を発表する。シーズンレスな同コレクションは、ショー終了直後から披露したアイテムを販売する、いわゆる“SEE NOW, BUY NOW(見てすぐ買える)”形式。その後、さらに何度かに分けてアイテムをリリースするという。

 シモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)=デザイナーは、「この1年は自分たちらしくいることの大切さを実感したし、みんなとファッションを楽しむ瞬間を共有したかった。今回のコレクションは、より多様な環境に適応するモダンで柔軟なアプローチへの移行を示すもの。僕たちが目指しているのは、発表から製品化までの間、コレクションの熱量を保ち続けることだ」とコメント。「僕たちにとって、これはより身近で現実的に感じられるアプローチ。今は、シーズンにとらわれないことにフォーカスしている。自分たちの独立精神に誠実でありつつ、挑戦と改革に取り組んでいきたい」と続ける。

 「ジャックムス」はここ数年、パリ・ファッション・ウイークの公式カレンダーから離れ、雄大なラベンダー畑や麦畑でショーを開催。雄大な自然を背景にしたドラマチックなショーは、340万フォロワーを抱えるインスタグラムを中心に大きな話題を集めた。またファッションにとどまらず、百貨店ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のシャンゼリゼ通り店内にあるカフェ「シトロン(CITRON)」を手掛けるなど、活躍の場を広げている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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パリコレはサステナブルになれるか? 主催団体がエコデザイン支援ツールをブランドに提供

 本格的なファッションショーの再開にあたり、リアルイベントにおける環境問題への配慮が話題に上っている。そんな中、数年前からこの問題に取り組んできたフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)参加ブランドが環境への影響を測定するための2つの新たなデジタルツールを発表した。フランス服飾開発推進委員会(DEFI)の出資を受け、サンディカと共に開発を担当したのは世界的な会計コンサルティング企業のプライスウォーターハウスクーパース(PRICEWATERHOUSECOOPERS)。今年秋の本格ローンチを計画している。

 一つ目のツールは、ショーやプレゼンテーションなどのイベントに特化し、パリコレの環境的、社会的、経済的な影響を測るもの。ブランドが、制作会社との契約からキャスティングやフィッティング、デジタルコミュニケーションまでイベントの全段階を網羅する約120のKPI(重要業績評価指標)を設定するために役立てられる。このツールにより、参加ブランドはイベントの開催前に計算を行い、環境負荷の軽減や社会的影響の最適化のためにふさわしい選択ができるようになるという。またブランドは、その算出結果を非公開にしておくこともできるが、詳細を明かすことなく、パリコレ全体の負荷を計測するためにパフォーマンスのスコアを提供することも可能だ。同開発プロジェクトの運営員会は、「ディオール(DIOR)」や「クロエ(CHLOE)」のショーを手掛けるビュロー・べタック(BUREAU BETAK)、PR会社のDXL、パリコレの主要会場の一つである文化施設のパレ・ド・トーキョーで構成。ブランドやイベント制作会社からPR会社、モデルエージェンシー、関連機関まで、パリコレに携わる幅広いステークホルダーが開発に携わった。パスカル・モラン(Pascal Morand)=サンディカ会長は、同ツールについて「シンプルでちょっとした遊び心があるだけでなく、すぐに結果を算出できて、より良い取り組み方を提案できるようなものを目指した」とコメント。将来的には、パリだけでなく世界のファッションイベントの主催者にも提供される予定だ。

 もう一つは、企業が業界のバリューチェーン全体の環境的及び社会的影響を測定できるようにすることで、コレクションのエコデザインを支援する管理ツール。あらゆる規模のブランドがエコデザインのアプローチを全面的に取り入れられるようになるという。同ツールはフランス・モード研究所(Institut Francais de la Mode、IFM)と共同開発によるもので、ローンチ前にいくつかのメゾンが試験的に導入。技術委員会には、DEFIやフランス・ウィメンズプレタポルテ連合会(Federation Francaise du Pret a Porter Feminin)などの業界団体、素材見本市のプルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision)などが名を連ねる。まずはサンディカ加盟ブランド向けに提供されるが、将来的にはアパレル業界で幅広く利用される可能性もあるという。

 サンディカが環境問題に対する取り組みに着手したのは、19年のこと。現在はさまざまなブランドで利用できる公式会場の設置や、市内の会場を巡るシャトルや自動車の電動化、廃棄物のリサイクル、セットの再利用などに取り組んでいる。今回のツールも、19年9月に開発を確約していたものだ。モラン会長は、「私たちには世界的なリーダーシップを発揮する義務がある」と社会的・環境的側面におけるパリコレの役割について話す。

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「マルジェラ」や「ジル サンダー」を擁するOTBとモンクレール、イタリアを代表する二人の実業家が語る

 OTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)=プレジデントとモンクレール(MONCLER)のレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)はこのほど、ミラノのビジネススクール、RCSアカデミーが主催するオンライン・トークセッションに登場した。その中で、ビジネスに対する考え方や後継者の計画から二人で行ったマウンテンバイクの旅まで、幅広い話題を語り合った。

 「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」などを傘下に抱え、3月には「ジル サンダー(JIL SANDER)」も買収したOTBについて、ロッソ=プレジデントは「(イタリアを拠点とする)ラグジュアリーブランド・グループを確立しようとしている。パンデミックによって拍車が掛かり、今は集合体を作るのにふさわしい時期だ」とコメント。かつてから親交のあるルッフィーニ会長兼CEOも「イタリアの実業家の中で、ラグジュアリー・グループを構築しようとしているのは、レンツォだけ。どんな時代にも資金力のある人はいるが、このようなビジネス文化がなければ成功する可能性はほぼない」と称える。そして、モンクレール自体も2020年12月に「ストーン アイランド(STONE ISLAND)」の親会社スポーツウェアカンパニー(SPORTSWEAR COMPANY)を買収しているが、ファッショングループを設立する考えがないことを改めて示した。

 二人のビジネスに対する考え方において共通しているのは、業界のため、従業員のため、そして自分たちが率いる会社の存続のために価値を創造するということだ。「今の時代に会社を経営するには、文化的な変化と新しいビジネスマインドセットが必要だ。全ての企業がこの変化に対応できるわけではないが、自分たちだけで成し遂げられない企業はいつでも提携することができる。OTBは各ブランドの飛躍的な発展を支援することに尽力するが、そのためには多くの投資と人材が欠かせない」とロッソ=プレジデントは語る。一方、ルッフィーニ会長兼CEOは「私の肩書きはモンクレールの会長兼CEOだが、実際にはそのどちらでもない。5人からなる委員会があり、毎週集まって意思決定をしている」と明かす。「私は所有権や出資比率にこだわるよりもむしろ価値を生み出すことに専念している。イタリアでは皆、完全な所有権を求めていて、自分の会社の99%を保持したいと考えているようだ。その気持ちは分かるが、そのせいでイタリアにラグジュアリー・グループができないのだと思う」。

 13年にミラノ証券取引所に上場したモンクレールにとって経営陣の後継者計画は最重要課題だが、同社の経営幹部の多くはすでに自分の跡を継ぐ人材を育成している。ルッフィーニ会長兼CEOは自身の息子たちに引き継ぐことも否定しなかったが、それは彼らが他の候補者を凌ぐことが条件になるという。一方、OTBではロッソ=プレジデントの7人の子どものうち3人がすでに社内で働いており、時期が来れば彼らにバトンタッチすることに前向きだと話す。それと同時に、これまでも語ってきたことではあるが、会社の存続を確実にするため、将来的にOTBグループを上場させる可能性も否定しなかった。そして、「上場企業では個人企業では得られない後援を生かすことができ、その成功により多くの人々が携われるという考え方を気に入っている」とコメント。「私たちも、数年後にはそういう段階に達するだろう。そうすれば、異なる方法で会社を経営することができるようになる。私も、自分だけの小さな庭を育てるような所有権にはこだわっていない。しかし、大きく重要な何かを作り上げるという責任感と、私たちのグループを素晴らしいものにしてくれている7000のファミリーに対しては満足している」と続けた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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コロナ明けのファッション・ウイークはどうなる? 夏から欧米でリアルショー再開

 欧米では断続的に半年以上続いた新型コロナウイルスによるロックダウンや規制が緩和され、夏以降のファッション・ウイークの計画が続々と発表されている。EU域内では出発直前に受けた検査の陰性証明やワクチン接種完了の証明書があれば、ほぼ入国後の隔離義務なしで渡航できるようになっており、域外からもワクチン接種済みの観光客受け入れを再開するための準備が進行。現在落ち着きつつある感染状況が再び悪化しないという確証はなく暫定的な計画ではあるが、観客を入れたリアルショー再開の明るい兆しが見える。

 2022年春夏コレクションのスタートを切るロンドン・ファッション・ウイークは、デジタルファーストのイベントとして、6月12〜14日に開催される。若手を中心に35組が参加するほか、リアルイベントやパーティーもいくつか行われる予定だ。続くミラノ・メンズ・ファッション・ウイークは、イタリア政府が6月15日から物理的なイベント開催を許可したものの、リアルショーを計画しているのは「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「エトロ(ETRO)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」の3ブランドのみ。グレン・マーティンス(Glenn Martens)新クリエイティブ・ディレクターのデビューとなる「ディーゼル(DIESEL)」をはじめ、「プラダ(PRADA)」や「フェンディ(FENDI)」など60ブランドは引き続きデジタルで発表する。一方、6月30日〜7月2日にフィレンツェで開かれるメンズウエアの国際見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」は、1年半ぶりにリアルでの実施を決定した。ただし、新型コロナの影響により出展社数は従来の1200から300へと大幅に規模を減少。例年1500人を超えるアジアからの来場者は見込めずEU内の業界人が中心になりそうだが、デジタルプラットフォームも活用して100回目の開催を祝う。

 また、フランスでも政府からの許可が下り、6月22〜27日のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク(以下、パリメンズ)と7月5〜8日の21-22年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイーク(以下、クチュール)は、リアルのショーやプレゼンテーションが可能になった。各ブランドがどのような形式で発表を行うかはまだ明らかになっていないが、フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode)は「衛生状況の変化によるが、リアルイベントでは公的機関が定める対策やルールに従って、観客を迎えられるだろう」とコメント。リアルとデジタルのハイブリッド開催になるという。パリメンズの暫定スケジュールには、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」「エルメス(HERMES)」から「ジル・サンダー(JIL SANDER)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTTEN)」「ヴェトモン(VETEMENTS)」まで、計72ブランドがラインアップ。日本からは、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「カラー(KOLOR)」「ファセッタズム(FACETASM)」「ダブレット(DOUBLET)」「ターク(TAAKK)」「サルバム(SULVAM)」など10ブランドが参加する。また期間中の25〜27日には、合同展「トラノイ(TRANOI)」もパレ・ド・トーキョーで開催される予定だ。

 クチュール開幕前日の7月4日夜には、「アライア(ALAIA)」が、長年ラフ・シモンズ(Raf Simons)の右腕を務めてきたことでも知られるピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)新クリエイティブ・ディレクターによるクチュールとプレタポルテをお披露目。期間中には、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が53年ぶりにクチュールを復活させる。創業者クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)が使用していた当時のクチュールサロンを再現し、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける初のクチュール・コレクションを有観客のショーでお披露目する予定だ。さらに、「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PREVE)」もイタリア大使館でショーを行うことを発表。「シャネル(CHANEL)」も9カ月ぶりにゲストを招いたショーをガリエラ美術館で開催する計画を明らかにしている。発表形式は未定だが、阿部千登勢「サカイ(SACAI)」デザイナーがゲストデザイナーとして手掛ける「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のクチュールも、今季のハイライトになる。

 ファッション・ウイーク外では、「ディオール」は6月17日にギリシャ・アテネで、「マックスマーラ(MAX MARA)」は6月29日にイタリア南部のイスキア島で、2022年クルーズ・コレクションのショーを計画。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、7月15日にイタリア・ベネチアで21-22年秋冬オートクチュールのショーを開催。会場には少数の観客のみを招き、デジタルでもライブ配信する予定だ。「サンローラン(SAINT LAURENT)」も、7月にベネチアでリアルショーを開くようだ。詳細は明かされていないが、タイミング的に22年メンズ・コレクションの可能性が高い。

秋以降は本格的にリアルイベント再開か

 秋の海外コレクションサーキットのトップバッターとなる9月8〜12日のニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYコレ)は、コロナからの復活を感じられるものになりそうだ。同イベントについて、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA 以下、CFDA)は、衛生ガイドラインに準拠したリアルショーが再開されると共に、デジタルでの発表も継続されるだろうと推測。「トム フォード(TOM FORD)」や「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」など、すでにリアルショー開催の意向を示しているブランドも多い。また、独自のスケジュールで発表していた「マイケル コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」、パリコレに参加していた「トム ブラウン(THOM BROWNE)」と「アルチュザラ(ALTUZARRA)」がカムバックするほか、ジェレミー・スコットの手掛ける「モスキーノ(MOSCHINO)」もミラノから参戦。アメリカ人デザイナーたちが結集し、NYコレを盛り上げる。さらに直後の13日には、メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art、MET)の衣装研究所(Costume Institute)によるアメリカファッションを掘り下げる展覧会開幕を記念したガラパーティーも予定されている。

 その後のヨーロッパでのファッション・ウイークについてはまだ未定だが、観客の前で発表することへの思い入れが強いデザイナーは本当に多い。このままワクチン接種と制限緩和が順調に進めば、さまざまなブランドがリアルのショーやプレゼンテーションを再開させるだろう。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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ベルリン発気鋭ブランド「GMBH」のデザイナーデュオが「トラサルディ」再生へ

 ベルリンを拠点に「ゲーエムベーハー(GMBH)」を手掛けるセルハト・イシク(Serhat Isık)とベンジャミン・A・フゼビー(Benjamin A. Huseby)が、イタリアの老舗ブランド「トラサルディ(TRUSSARDI)」のクリエイティブ・ディレクターに就任した。二人は今後、デザイン、イメージ、ブランディングのすべてを統括し、新たな方向性でブランドの再生に取り組む。デビューコレクションは、2022-23年秋冬シーズンに披露する予定だ。

 テーラリングを得意とし、ベルリンの大学でファッションを教えていたトルコ系ドイツ人のイシクと、ノルウェーとパキスタンにルーツを持ち、写真家やアーティストとして活動していたフゼビーは、16年に「ゲーエムベーハー」を設立した。18年春夏からはパリ・メンズ・ファッション・ウィークに参加し、メンズを中心にしつつもジェンダー・フルイドなコレクションを発表。ベルリンのクラブカルチャーや入り交じる文化背景の影響を受けたデザイン、デッドストックやリサイクル素材の活用したものづくり、多様性のあるキャスティングなどで知られる。就任に際して、二人は「『トラサルディ』には、伝統とまだ眠ったままの大きなポテンシャルがある。そんなブランドを新たに構築するという可能性に引かれた」とコメント。なお、今後も「ゲーエムベーハー」の活動は継続する。

 一方、1911年の創業以来ファミリー・ビジネスを続けてきた「トラサルディ」は、2019年に企業再建に定評があるアンドレア・モランテ(Andrea Morante)会長率いる投資会社のクアトロアール(QUATTROR)の傘下に入った。20年10月には、セバスチャン・スール(Sebastian Suhl)前ヴァレンティノ(VALENTINO)グローバルマーケット部門マネジング・ディレクターが最高経営責任者に就任。創業者のひ孫にあたるトマソ・トラサルディ(Tomaso Trussardi)は、会長を務めている。また、同じく創業家出身のガイア・トラサルディ(Gaia Trussardi)=クリエイティブ・ディレクターが18年4月に退任して以降、後任は指名されていなかった。

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「過去の習慣に戻ってしまわないことが大切」 マリーン・セルが考えるファッションの今と未来

 マリーン・セル(Marine Serre)は、アップサイクルやリサイクルを駆使したクリエイションでファッションの在り方を探求する若手デザイナーの代表格だ。2016年に自身の名を冠したブランドをスタートし、その翌年にはLVMHヤング ファッション デザイナープライズでグランプリを受賞。初期から「循環性(circularity)」「気候中立(climate neutrality)」「困難な状況から立ち直る力(resilience)」を柱にしたコンセプト“エコフューチャリズム”を掲げ、未来を見据えたものづくりに取り組んでいる。18-19年秋冬からはパリ・ファッション・ウイークにも参加し、世界の終焉を感じさせるようなショーで気候変動への警鐘を鳴らしてきた。しかし、3月に発表された21-22年秋冬コレクションはアプローチを一転。身近な人の日常を切り取ったような親密な映像やさまざまな素材が製品になるまでのドキュメンタリーを通して、コアアイテムを中心とした新作を見せた。そこには、どんな心境の変化があったのか?コレクションと映像作品に込められた思いやこれからについて聞いた。

――2021-22年秋冬コレクションでは、どのようなメッセージを伝えたかったのでしょうか?また、その理由や背景を教えてください。

マリーン・セル「マリーン セル」デザイナー(以下、セル):今シーズンに向けてドキュメンタリーと本を制作することを決めたのは、ブランド初のショートムービー「AMOR FAI」を通して21年春夏コレクションを発表した後。16年にブランドを始めてから4周年になるアニバーサリーを祝いたいという気持ちがあり、今シーズンは「CORE」と名付けました。
そして、全世界が自問自答しているような困難な1年を経て、かつて(地球温暖化の)防止や警鐘、そして最終的には切迫した黙示録までを表現していた私たちの物語を続けていくことも重要だと感じました。今では、誰もがこの緊迫感を真剣に受け止めていますからね。そこで、私たちは「マリーン セル」が誕生した当時を振り返り、持続可能性と再生に基づいたブランドの根幹を見直すことにしました。具体的に時間をかけたのは、シルエットと環境に配慮したプロセスにあらためて取り組むこと。設立当初から一貫している“エコフューチャリスティック”なアプローチを際立たせるとともに、(アップサイクルやリサイクルを駆使して)再生されたアイテムを着心地と価格面でより身近なものにすることを目指しました。
この野心的なプロジェクトを成功させるために欠かせなかったのは、デザインやアトリエから開発、経理、PR、マーケティング、セールスまですべてのチームが、各ステップの重要性に対する共通認識を持つこと。今は製品についての伝えることも重要ですが、それと同じように、どのようにデザインしたり作ったりするか、どうやって工場に説明するか、いかに材料を調達するかということも重要です。そのためには、すべてのチームを同じレベルにするのが鍵だと考え、スタートしました。

――今シーズン発表した映像は、何気ない日常の中にある幸せが描かれていました。これまでのショーとは大きく異なるアプローチでしたが、このような表現を選んだ理由は?

セル:私たちはブランドを始めた頃から友人や家族と一緒に取り組み、同じ未来を信じる仲間を増やしてきました。共に働き、歩み、そして創造する人々と誠実な関係を築くのは、私が大切にしていること。「CORE」はある意味、私たちを支え、エネルギーを与えてくれるとともに、時間を共有し、仲間になってくれたミューズや友人たちへのオマージュです。そして同時に、私たちを信頼し、彼らの家や私生活に迎え入れてくれたことへのオマージュでもありますね。

――21-22年秋冬から三日月プリントのシリーズなどアイコニックなアイテムをそろえるホワイトラインの価格帯を見直したそうですが、なぜ価格を下げる必要があると感じたのですか?

セル:今季の大きな目的は、サイズやフィットの改善といった着やすさと価格面で、商品をより手に取りやすくすることでした。そこで価格に関しては、古着などをアップサイクルした再生アイテムとリサイクル繊維で作ったウエアで構成するホワイトラインに焦点を当てることにしました。私は、消費者が「マリーン セル」のアイテムを購入する際に直面するハードルの高さを懸念しています。(アップサイクルやリサイクルなどの)新たな方法で作られた服を着たいと思っていても経済的な理由で購入が難しいこともあるでしょう。なので、手仕事を必要とする生産にかかる時間に対してフェアであり、ブランドを続けるために必要なマージンを意識しながらも、価格を下げる努力をしなければならないと感じました。上質かつユニークであることを維持しつつ実現するには生産工程を簡素化しなければならず、ベストな方法を見つけるために工場との密なコミュニケーションが必要でした。それでも、私たちは“エコフューチャリズム”をストリートにもたらしたいと考えています。

――「マリーン セル」は設立時からずっとサステナビリティと向き合っていますが、最近はより多くのブランドや消費者がサステナビリティについて話し合ったり、取り組んだりするようになりました。ファッション業界の現状をどのように捉えていますか?

セル:ファッション業界は、生産や流通の方法、そして生き方において、もう“サステイナブルではない”という選択肢がないことに気付いていると思います。これは、私たちの未来の話です。

――この1年で、人々の価値観は大きく変わりました。ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?

セル:私の考え方や価値観は、まったく変わっていません。ただ、パンデミックによって変化のための動きは加速し、扉が開かれたと思います。

――パンデミックが明けたら、まず何をしたいですか?
セル:今の状況は終わるわけではなく、形を変えていくでしょう。だからこそ不安が軽くなった時に、過去の習慣に戻ってしまわないようにすることが大切だと思います。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ジル サンダー」の2人が新作に込めた思い 「前向きな変化を起こせるような強い気持ちになってほしい」

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」は2021-22年秋冬、ウィメンズでは初めてパリ・ファッション・ウイークに参加し、映像を通してコレクションを発表した。個性、自由、変化を称え、さまざまな面を持つ自己を表現するための服を目指したという今季は、意外性のある要素のレイヤードや対比がポイントだ。例えば、かっちりとしたテーラードジャケットにはたくさんの天然真珠で作られた胸飾りやレースの装飾を加えたスリップドレスを合わせたり、クリーンなAラインスカートに着心地のいいニットのボディスーツを合わせたり。ウエスト部分をニットで切り替えたドレスもある。そして、ホワイト、ライラック、クリームなどの明るい色と、幾何学や蝶、素朴なペイント調の花といった柄やモチーフには、変わるための前向きな姿勢が反映されている。クリエイションを手掛けるルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)=クリエイティブ・ディレクターに、コレクションに込めた思いを聞いた。

――今シーズンのコレクションに込めた思いやメッセージを教えてください。

ルーシー&ルーク・メイヤー「ジル サンダー」クリエイティブ・ディレクター(以下、ルーシー&ルーク):私たちは、今回のコレクションをポジティブなものにしたいと考えました。この1年は、人々に重くのしかかっています。だから私たちが求めていたのは、軽やかさや遊び心に加え、力強さや大胆さを感じさせること。今の時代には、誰もが変化し、新しい状況に適応することが求められます。服装は気持ちに大きく影響するものなので、私たちの服を着ることによって、前向きな変化を起こせるような強い気持ちになってもらいたいのです。

――今回はパリコレの公式スケジュールで発表しましたが、その理由は?今後もミラノコレではなく、パリコレに参加する予定ですか?

ルーシー&ルーク:リアルなショーを行わないことで、コレクションを披露するのに最適なタイミングを自由に選ぶことができました。今回は、パリコレのタイミングで発表しましたが、今後については未定です。ただ一つ言えるのは、私たちはパリが大好きだということです!

――先シーズン(2021年春夏)は、柔らかく軽やかな素材や締め付けることのないシルエットを多用していましたが、今シーズンはよりフィットした曲線的なシルエットや遊び心のある素材の組み合わせ、大胆なパターンが目を引きました。今シーズン、特にこだわった要素を教えてください。

ルーシー&ルーク:今シーズンは、ニットウエアのインサートを多く用いました。私たちはさまざまな技術を一着の服に取り入れるのが好きで、ブーツや手袋にもニットのパーツを組み込みでいます。そして、柄のモチーフもとても大切。プリントやニット、クロシェ(かぎ針編み)などの異なるテクニックを駆使して、その解釈を探りました。テーラリングは変わらず厳格な印象ですが、ベルトで柔らかさをもたらしたり、軽やかなスリップドレスに合わせたりしています。ブーツも重要な要素の一つです。

――この1年で人々の価値観は大きく変わりましたが、お二人の価値観や考え方はどのように変わりましたか?

ルーシー&ルーク:私たちの価値観はあまり変わっておらず、常に価値あるものや上質なものにこだわっています。

――パンデミック後の世界におけるデザイナーズ・ファッションの役割をどのように考えていますか?

ルーシー&ルーク:私たちは、自分たちのデザインを通して明るい気持ちを伝えられるし、喜びをもたらすことができると信じています。こんな状況でも、皆、自分自身にご褒美をあげたり、贈り物をし合ったり、人生を豊かにしたいと思っていますよね。(これまでよりも)特別なものが求められるようになったかもしれませんが、長く大切に使うことに対する感度は高まっているのではないかと考えています。

――この先の見えない不安な日々が明けたら、まず何をしたいですか?

ルーシー&ルーク:また世界を旅したいです!

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「グッチ」が100周年 アレッサンドロ・ミケーレが最新コレクションでの“ハッキング”を語る

 「グッチ(GUCCI)」は、今年100周年を迎える。しかし、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターは、そんな歴史あるブランドを「何度も生まれ変わり、再生し続ける幼い子ども」と捉え、「いくつもの人生を経ても、これほどの人気を保ち続けていることは驚くべきことだ」と話す。4月15日にデジタルプラットフォームで映像作品を通して発表された最新コレクション“アリア(ARIA)”でも、伝統を受け継ぎながら変化や再生によって新たな可能性を探求する彼のアプローチは際立っていた。同コレクションは、数カ月以内に中国・上海でも披露される予定だ。

 約1年前にコレクションのペースを変えることを発表して以来、「グッチ」はファッション・ウイークから離れ、独自のスケジュールでコレクションを発表している。その決断により、パンデミックの厳しい状況や映像の準備に追われた日々があっても、ミケーレは活気に満ちていて幸せだという。「コレクションに自然なリズムをもたらすことで自由を感じた。もちろん、このような独自のペースで歩むことはより大きな責任を伴う。だから、会社に神経を注ぎ、丁寧にブランドをポジショニングしたいと考えているんだ。(ファッション業界には)とても民主的な動きが見られ、デザイナーたちは他のブランドを妨げないような方法で自身の手掛けるブランドをポジショニングしている」。

 そして、彼のポジティブなムードが反映された映像作品は、視聴者に強いインパクトを与えることを意図していたと明かす。「私は異なる“言語”を扱い、それらを混ぜ合わせり、そこから形作ったりするのが好き。ガス(2020年11月に発表されたコレクションの映像作品を監督したガス・ヴァン・サント)と取り組んだ後、ブランドの100周年を祝いたいと思った。『グッチ』は単なるファッションではなく、その本質であり、人生でもある。そして、高い人気を得ていることが大きな強みになっている。『グッチ』は、映画やその登場人物であり、歌やポップスター、そして世界でもあるんだ」と話す。

 実際、フローリア・シジスモンディ(Floria Sigismondi)と共に監督した今回の映像のサウンドトラックには、リル・パンプ (Lil Pump)の「Gucci Gang」やリル・ヨッティ (Lil Yachty)をフィーチャリングしたバッド・ベイビー(Bhad Bhabie)の「Gucci Flip Flops」など、同ブランドに捧げられた数々の曲がミックスされている。現在、「グッチ」という言葉を使った曲は実に2万2000曲以上もあり、彼はその数に驚いたとしつつも「この名前には、そうなるにふさわしい力強さがある。『グッチ』は魔法の言葉のようなものだ」と語る。

 また、1995年に起きたマウリツィオ・グッチ(Maurizio Gucci)の殺害事件について触れると、レディー・ガガ(Lady Gaga)がマウリツィオの殺害を命じた元妻のパトリツィア・レッジアーニ(Patrizia Reggiani)を演じる映画「ハウス・オブ・グッチ(House of Gucci)」(2021年公開予定)も話題に。すでに注目を集めている同作については、「グッチの高い人気を反映している」と評価する。

 そんなミケーレの目に映る「グッチ」の“自然な再生”は、「ファッションは終わっていないし、ファッション・ウイークとは関係なく、終わることは決してないということを示している。ファッションは人生の表現であり、自分自身で管理できるものだ」とコメント。そして、「実験することへの情熱を再び見出した。この数カ月は困難で、今では友人に会うことさえも大きな価値を持つ。私たちは、多くのことを当たり前だと思っていたからね」と続ける。

 映像の制作自体は「『グッチ』への愛と意志の力の表れ」であり、「そこには、モデルを現地に呼び、彼らやスタッフを検査し守るという大変な努力があった」という。しかし、彼にとって「グッチ」は「偉大な神であり、煙がのぼる火山。だから、決して賛辞のトーンを下げてはいけない。それは、武勇伝から悲劇まで何百万もの物語から成るファッションの神話のようなものだ」とし、努力するだけの価値があったと説明する。

“アリア”に登場する多様なデザインの背景

 ミケーレは、「グッチ」が100年もの歴史があるにも関わらず、若い世代と深い関係性を築いていることを強調する。この若返りに関して、2015年にクリエイティブ・ディレクターに就任した彼が大きく関係していることは間違いない。しかし今回のコレクションでは、赤いベルベットのパンツスーツなど、トム・フォード(Tom Ford)が手掛けたアーカイブデザインにも光を当てた。そして、トムのことを「グッチ」を生き返らせた「天才」と表現し、「彼はブランドにニュアンスや官能性、贅沢さ、快楽主義といった要素をもたらし、核であったハンドバッグやラゲージのルーツからレディ・トゥ・ウエアを生み出した」と称える。

 また、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデムナ・ヴァサリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターにも敬意を表し、彼が確立したシルエットを“ハッキング(侵略)”して“グッチ化”。例えば、パワーショルダーのコートにGGマークをあしらったり、輝くスパンコールのスーツに両ブランドのロゴを並べたり。ウエアだけでなく、アイコンバッグに他方の象徴的な柄をのせたアイテムも登場した。この取り組みに関する噂がコレクション発表数日前に流れたことに関しては、「私たちはこのデザインで観客を驚かせたかったし、その反応を想像して2人で笑っていたので、ニュースが流れてしまい残念だった」とコメント。ブランドの外にある世界との対話という実験を続けていくことを目指すミケーレは、「クリエイティビティーは、対話や継続的な実験、自由を意味する。閉ざされた空間であるアトリエを飛び出し、認知度の高い2つのブランドの特徴的な要素やロゴを混ぜ合わせるのは、とてつもなく冒涜的な遊びをしているように感じた」と振り返る。“ハッキング”という言葉には、トム・フォードによる再生や、自身による新章の幕開けなど、新しいものを“上書き”することで再生し続け、100年生き続けたメゾンのアイデンティティへの敬意の念も込めた。

 そして、デムナと組んだ理由については、「私は、実際に知っている人や自分の人生の一部である人と一緒に仕事をするのが好き。ファッションはインスピレーションではなく、連続するハプニングだ。デムナのことはよく知っていて、彼の才能を認めているし、私たちにはたくさんの共通点がある」とコメント。「(デムナによる『バレンシアガ』の)デビューショーは素晴らしく、感銘を受けた。とても気に入ったし、心に残るものがあるショーだったよ」と続ける。そういった「バレンシアガ」の要素を再解釈するのは楽しかったというが、その要素は「創業者のクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)が生み出したデザインとも異なるもので、厳格で魅惑的な服を作る偉大なクチュリエであった彼はおそらくこのようなことを認めなかっただろう」と話す。

 さらに、“アリア”コレクションでは全体を通して、“バンブー”バッグや“フローラ”パターン、ホースビットといった「グッチ」の歴史を物語るデザインも打ち出した。「戦後まもなく生み出された“バンブー”バッグの現代性と優れたスタイルは、まさにデザインにおける発明だ」と、ミケーレは称賛。長年にわたってビンテージの“バンブー”と収集してきたといい、「それはブランドを代表するアイテム。コレクションをスタイリングしているときに、いくつかはその場で装飾し直した」という。さらに歴史をさかのぼると、1800年代後半にまだ10代だった創業者グッチオ・グッチ(Guccio Gucci)は、ロンドンのサヴォイ・ホテル(Savoy Hotel)で働いていた。そこで見た豪華なトランクやスーツケースに感銘を受け、自身の名を冠した会社を立ち上げることを決意したという逸話もある。コレクションに“サヴォイ・クラブ(Savoy Club)”という言葉が登場するのは、そのためだ。数え切れないほど「グッチ」のデザインソースとなっている馬術の世界から着想を得たデザインも多い。「できることなら、グッチオ・グッチに会ってみたかった。彼は独創的なアイデアに溢れる人で、おそらく気付かぬうちに神話を生み出していたのだろう」。

 その一方で、解剖学模型の心臓のようなスパンコールのクラッチなどミケーレらしい要素も目を引いたが、「これはミステリアスに鼓動を刻みながら輝く、ブランドのポップな心臓。最後のシーンで宙に放り投げられるのは、『グッチ』の未来がどんなものになるかは分からないということのメタファーだよ」と明かす。

 映像作品の共同監督を務めたことについて尋ねると、彼は「いかにイメージを通して自分が心の中で思い描くものに命を吹き込むかという、ストーリーテリングが好き」と回答。作品では、登場人物たちはサヴォイ・クラブへと入っていくが、カメラのフラッシュやライトが眩しく光るランウエイを歩いて出口を抜けると、自然の中にたどり着く。そこに広がるのは、モデルが宙に浮かぶなどさまざまな意味で高揚感を感じさせる瞬間。「これは私たちが開きたい真のパーティーのための瞬間であり、“アリア”は酸素だ」という。

 そんなスローモーションで流れる幻想的な世界の中で、ミケーレは春の終わりの発表に先駆けて、新作ハイジュエリー・コレクションのデザインにも光を当てた。その背景を「金庫に閉じ込めておくのではなく、すべてを生き返らせなければいけない。私はジュエリーに熱い思いを抱いていて、ジュエリーは私たち家族の歴史でもある。ブランド同様に、決して息絶えることはない」と説明する。そして、「ものに対する大きな情熱を持っていることは幸運だよ。他にできる仕事は何もなかっただろうからね」と笑顔を見せた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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クリス・ヴァン・アッシュ、「ベルルッティ」を去る 今後のコレクション発表は独自スケジュールに

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下のメンズブランド「ベルルッティ(BERLUTI)」は、今後のコレクション発表を独自のスケジュールに改める。これに伴い、クリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)=アーティスティック・ディレクターは退任する。アントワン・アルノー(Antoine Arnault)最高経営責任者は声明の中で、今回の方針変更について「サヴォアフェール(受け継がれる職人技術)とイノベーション双方への深いこだわりを維持するため」と説明。今後はコラボレーションによるプロジェクトやアイテムを含む新製品の発表を独自の方法に切り替え、コレクションカレンダーに新たなアプローチをとるという。そのため、クリスの後任を指名する予定はないようだ。

 現在44歳のクリスは、エディ・スリマン(Hedi Slimane)の後任として2007年から11年間、「ディオール オム(DIOR HOMME)」(当時)を率いた後、18年4月にハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)の後任として「ベルルッティ」のアーティスティック・ディレクターに就任。レザーシューズで知られる同ブランドの象徴的な染色技法“パティーナ”からイメージをふくらませ、アートを感じさせる生き生きとした色使いと美しいテーラリングが際立つコレクションを発表してきた。3年の間にはウエア、アクセサリー、シューズの審美的な統一感を高めるとともに、ビンテージ家具のカスタマイズやトラベルバッグなどに用いるシグネチャーキャンバスの開発にも取り組んできた。4月8日に披露されたばかりの21-22年秋冬シーズンがラストコレクションとなり、これから数週間のうちにいくつかのプロジェクトを仕上げた後、ブランドを去るという。

 クリスは、「『ベルルッティ』での仕事によってデザイナーとして成長できたし、スタジオのチームや職人たちには感謝してもしきれない。私はテーラリングであってもレザーグッズあっても、常にアトリエと一緒に取り組むことが好き。品質やリサーチに対する期待の大きさは、間違いなく刺激的だった」とコメント。「次はどんなことができるか、ワクワクしている」と話す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ボッテガ・ヴェネタ」のベルリンでのショーがSNSで炎上 “特権階級主義”な行動に批判の声

 「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が4月9日にドイツ・ベルリンで行ったファッションショーが、物議を醸している。厳しいロックダウンの最中にあるベルリンで、関係者やゲストが規制を遵守していなかったという疑惑からSNSを中心に炎上。同ブランドは1月に公式インスタグラムアカウントなどを閉鎖してSNSと距離を置いているが、今回のイベントに対する反発とは無縁ではなく、参加者やそのスナップを掲載したメディアのアカウントに多くの批判的なコメントが書き込まれている。

 事の発端は、4月9日に有名ナイトクラブのベルクハイン(BERGHAIN)で開催された、2021-22年秋冬コレクションにあたる「サロン02(SALON 02)」のシークレットショーだ。「ボッテガ・ヴェネタ」は昨シーズンからコレクションの発表形式を刷新し、少数のみのゲストを招待したショーを撮影して、数カ月後にその映像を公開している。今回も現地の感染拡大防止ルールを守り、現地のゲストを呼んで撮影を行うだけなら問題はなかっただろう。しかし、そこにはヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やスケプタ(Skepta)といった海外から渡航したセレブリティーも含まれ、会場周辺で撮られたスナップがインターネット上に出回ると、その写真を投稿した「ヴォーグ オム(VOGUE HOMMES)」などのインスタグラムアカウントにイベントに対する批判が上がり始めた。さらに、関係者やゲストが宿泊していたホテル「ソーホーハウス(SOHO HOUSE)」でアフターパーティーが行われたという情報や、マスクなしでソーシャル・ディスタンスも取らずに盛り上がる模様を収めたストーリーの動画が拡散され、火に油を注ぐことに。この問題を非難するインスタグムアカウント「ボッテガ ヴェネトノー(Bottega VenetNO)」まで登場し、12日にはファッション界のさまざまな不正を糾弾するアカウント「ダイエット プラダ(Diet Prada)」も投稿を行った。

 現在、ベルリンは新型コロナウイルスの第3波に見舞われ、感染者が急増。昨年11月から規制の内容が何度も変わりながら、終わりの見えないロックダウンが続いている状況だ。市民が厳しい接触制限や渡航制限を強いられる中で規制を軽視したブランドや参加者に対しては、「街全体への大きな侮辱」や「恥を知れ」「特権階級的」「ベルリンに住む人々は21時以降(自分の世帯以外の)誰とも会うことができないのに、こんなパーティーが許されるのは二重規範だ」「モラルに欠けた行動」などの辛辣なコメントが寄せられた。また、アメリカやイギリス、イタリア、フランスを含むリスク地域(独ロベルト・コッホ研究所が指定する感染リスクの高い地域)からベルリンへの渡航者には、原則として入国後最低5日間の隔離義務(入国後5日目以降のコロナ検査で陰性が確定した場合のみ。それ以外の場合は10〜14日間)が生じる。そのため、対象国から渡航した関係者やゲストがこの義務を遵守していないのではないかという疑問の声も上がっている。

 現地在住者の感覚で言うと、長引くロックダウンでベルリン市民は我慢することに疲れ切っているし、必ずしも皆が規制をきちんと守っているわけではない。そして、SNSのコメントの中には、“ベルクハインでパーティーが行われた”と事実を誤認しているものもある。しかし、影響力のあるビッグブランドやセレブリティーがこういうことを行ってしまうと、炎上するのは目に見えている。なお、「ボッテガ・ヴェネタ」は米「WWD」の取材に対し、コメントを拒否。13日時点では、公式のコメントも発表されていない。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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創業70周年を迎えた「マックスマーラ」 女性の役割の変化と共に歩んできた軌跡を表現

 「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年、創業70周年を迎えた。2月25日にミラノ・ファッション・ウイークで発表された2021-22年秋冬コレクション「1951」もそんなブランドの節目を祝うものだ。設立当初から同ブランドが追求しているのは、女性たちに寄り添い、自信や心地よさをもたらすウエアラブルな服づくり。今季はブランドらしいイタリアのアクセントを効かせたブリティッシュスタイルに、英国のカントリームードを取り入れた。今年で勤続34年になるというイアン・グリフィス(Ian Griffiths)=クリエイティブ・ディレクターに、初めてデジタルのみでの発表となった今シーズンのクリエイションから、長いキャリアの中でのブランドや環境の変化までを尋ねた。

――今シーズンのコレクション制作において、70周年という点は意識しましたか?そして、コレクションを通して表現したかったメッセージとは?

イアン・グリフィス「マックスマーラ」クリエイティブ・ディレクター(以下、グリフィス):もちろん!アーカイブを見ることに多くの時間を費やしました。今シーズンのコレクションの出発点は、「マックスマーラ」が1951年から70年間、いかに女性の役割の変化と共に歩んできたかを反映することです。50年代当時、多くの女性は結婚して妻になり、必ずしも自分自身のキャリアがあるわけではなかった。しかし、創業者のアキーレ・マラモッティ(Achille Maramotti)は、志の高い女性たちの役割が変わっていくことを感じ取り、彼女たちに向けた服を作るために「マックスマーラ」を立ち上げました。その方向性は正しく、やがて“妻”でしかなかった女性たちは自分の会社を経営したり、弁護士や医師として活躍したりと素晴らしいキャリアを築くようになりました。そんな女性たちの変化を祝い、女性たちのエネルギーや高揚感を表現したかったのです。

――では、アーカイブが今シーズンのインスピレーションとなったのでしょうか?

グリフィス:アーカイブを見ると、「マックスマーラ」は昔からずっとブリティッシュスタイルを愛していることが分かります。それはオーセンティックかつクラシックでありながら、着こなし方によって個性が生まれるもの。今回は英国人である私自身が田舎に行った時に着るようなアイテムに着目し、カントリースタイルを都会的に仕上げました。つまり、英国からのインスピレーションをイタリアが誇る最高級の素材や職人の力で形にしたのです。そして、私は「マックスマーラ」を着る女性たちを自身の力で称号を手にしたクイーンのように考えているので、“クイーン”の代表格である英エリザベス2世からもインスピレーションを得ました。彼女のスタイルは、まさに英国クラシック。ワックスジャケットとキルトを着用している写真などから、デザインのアイデアをふくらませました。

――ショー冒頭に登場したキャメルは、色としても素材としても「マックスマーラ」にとって重要な要素ですが、キャメルに対する思いを教えてください。

グリフィス:いつだってキャメルについて考えていて、私の世界はキャメルに染まっています。夢に出てくることさえあるくらいですよ(笑)。キャメルはもともと1950年代にメンズウエアのワードローブから借りてきたのが始まりでしたが、やがて「マックスマーラ」を特徴付けるカラーとなり、今回も含め多くのショーでオープニングを飾っています。今では、「マックスマーラ」に自分のコートを探しに来られる男性もいるんですよ。

――今回は初めてデジタルのみでコレクション発表となりましたが、実際に取り組んでみてどうでしたか?

グリフィス:リアルなショーを開くのとは、全く異なるプロセスでした。コレクションのビデオは普通のファッションショーのように見えますが、さまざまなアングルで撮影する必要があるので、実は6回ショーをやりました。ヘアメイクなどの準備も含めると、1日がかりの撮影でしたね。そして、ディテールやシーン別の撮影もあるので、編集を経て完成するまで実際のショーのようなエネルギーやワクワクを感じられないというのは、なんとも不思議な感覚でした。一方、デジタルになったことで世界中のたくさんの人に同じものを届けることができるようになりました。なので、リアルなショーは再開させたいですが、閉ざされたショーに戻ることはないでしょう。これからはデジタルの要素を取り入れたリアルなショーに取り組んでいきたいと考えています。

――ロケーションも印象的でしたが、会場についても教えてください。

グリフィス:会場に選んだのは、ミラノにあるトリエンナーレ・デザイン美術館の一部。そのカーブしたデザインをロンドンのリージェントストリートと重ね合わせました。リージェントストリートには、特別なお祝いの時にいくつもの英国旗が吊るされます。そのアイデアを取り入れ、「マックスマーラ」の1950年代のブランドの広告に使われていたグラフィックを用いた旗を吊るしました。窓から大きな公園を見渡せるという点も、ケンジントン宮殿など英国王室の宮殿を少し感じさせます。

――長年「マックスマーラ」で働いてきからこそ分かるずっと変わらないこと、そして変わったことは?

グリフィス:まず変わっていないとはっきり言えることは、アキーレ・マラモッティが掲げた「リアルな女性のためのリアルな服」という考え方です。それはクラシックな服ですが、重要なのは必ずしもクラシックは保守的ではないということ。モダンにも、時には少し反骨的にだってなります。そして変わったのは、女性の仕事着に対する考え方。私が「マックスマーラ」に入ったころ、職場で女性が真剣だと認めてもらうためには“パワー・ドレッシング”、つまりとても厳格なドレスコードやユニフォームがありました。しかし今では、女性は自分に似合うものや自分が心地よく感じるものを着られるようになった。スーツだけでなく、選べる服のバリエーションが格段に広がったのです。

――34年のキャリアの中で最も印象的だった出来事や思い出を教えてください。

グリフィス:どこから始めればいいでしょう(笑)。たくさんありますが、最も誇らしかった瞬間の一つは、2018年に当時のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)米下院議長がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領との会談に「マックスマーラ」の赤いコートを選んだ時のこと。彼女がホワイトハウスから出てくるところを捉えた写真はインターネットを通して世界に広がり大きな話題になりました。そのコートは、彼女が8年前から愛用していて、13年のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の就任式でも着用していたものです。“勝負”の時に選ばれたことで、「マックスマーラ」が服を通して表現し続けている女性のエンパワーメントの象徴となりました。

――この時代にファッションが持つ役割とは?

グリフィス:私は、着る人を特別な気分をもたらしてくれるファッションの力を信じています。ファッションには自意識過剰に陥らせるようなネガティブな部分もありますが、私はポジティブな面を探求し続けていきたい。コロナ後の世界では、新しいファッションに挑戦したり、ドレスアップを楽しんだりすることから生まれる喜びを再発見できるのではないでしょうか。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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新生「クロエ」はサステナブル&ソーシャル・グッドに 素材へのこだわりとクラフト感あふれる2021-22年秋冬

 ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)新クリエイティブ・ディレクターのデビューを飾る「クロエ(CHLOE)」の2021-22年秋冬コレクションが3月3日、創業者ギャビー・アギョン(Gaby Aghion)生誕100年に合わせて発表された。夜のサンジェルマン・デプレの街を舞台にしたショー映像でモデルが現れるのは、アギョンが1960年代にショー会場として使っていたブラッセリー・リップ(Brasserie Lipp)などのカフェから。デザイン面でも当時のドレスにあしらわれ、ブランドのシンボルになっているスカラップディテールを随所に取り入れることで、彼女への敬意を表した。

 ファーストルックは、 “パフチョ(PUFFCHO)”と呼ぶ丈の長いカシミアのポンチョとパファージャケットのネックラインを組み合わせたアイテム。ボヘミアンムード漂うポンチョは歴代の「クロエ」のショーにも度々出てきているが、そこにガブリエラはユーティリティーのエッセンスを加えた。コレクションの中心となるのは、彼女が得意とするニットのロングドレス。故郷ウルグアイをイメージさせるマルチカラーボーダーや素朴なオープンステッチニット、肩から腰にかけてラッフルをあしらったデザインなどをラインアップする。そのほか、「クロエ」らしさを感じさせる軽やかなエンパイアラインのシルクドレスをはじめ、ウールガーゼのプリーツトップスやスカート、ナパレザーのドレスやスカート、シアリングのコートなどを織り交ぜ、新たな「クロエ」ウーマンを表現した。

 その女性像の解釈について尋ねると、「例えるならば、『クロエ』はアフロディーテ。そして、自分のブランド『ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)』はアテナのイメージ」とガブリエラ。「アテナは戦士で、アフロディーテも同じように強いけれど、その強さは愛や美、魅惑から来ている。だから、温かみや母性的な愛を放つような魅力的で丸みを感じる女性らしさがある。どちらも力強い女性ではあるけれど、アプローチが違う」と続ける。

 そしてバッグは、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の“エディス(EDITH)”を復刻した。「初めて買ったラグジュアリーブランドのハンドバッグが“エディス”だった。今でも好きで、オマージュを捧げたかった」とし、オリジナルに忠実なデザインを発売するほか、リサイクルカシミアやリサイクルジャカードを用いたものやミニサイズ、トート、ドクターズバッグなどもそろえる。さらに、「新しいことが必ずしも優れているわけではない」という考えから、eBayで買い集めたビンテージの“エディス”をコレクションで余った素材でカスタマイズしたバッグ50点も製作。そのほかにも、スカラップ状のキルティングやパッチワークを施したチェーン付きの“ジュアナ(JUANA)”や、手作業で編み込んだレザーに“C”型のウッドパーツをあしらったスタイル、ニットのショルダーバッグなどクラフト感のあるアイテムを提案する。

ガブリエラ就任で大きく動き出した改革

 「クロエ」は現在、環境や社会に配慮した持続可能なビジネスモデルへの変革の最中にあり、サステナブルな素材やものづくりの知識とノウハウを持つガブリエラがそのキーパーソンになることは間違いない。彼女が就任したのは昨年12月で、“サステナビリティと大義へのコミットメント”をテーマにした今季のコレクションの制作期間はたった2カ月だったというが、すでに大きな前進が見られた。

 特筆すべきは、素材へのこだわりだ。それは、ショー前にコレクションで使用している生地の見本が届き、ショー後に配信されたリリースに各アイテムが何の素材でできているかが書かれていることからも分かる。実際、“パフチョ”やドレスに用いたカシミアは80%以上がリサイクルで、シルクも50%以上がオーガニック。「リサイクル以外のポリエステルやビスコースの使用を止めたり、リサイクルやリユース、オーガニック素材を調達したりとより環境負荷の低い素材を切り替えることで、昨秋冬コレクションと比べて環境負荷は1/4相当になっている」という。また、素材だけでなくパッケージにいたるまでサステナブルなサプライヤーを導入したほか、ミャンマーのマングローブへの植樹を通してカーボンオフセットにも取り組む。

 さらに社会貢献活動として、ホームレスの支援を行うオランダの非営利団体シェルタースーツ・ファンデーション(SHELTERSUIT FOUNDATION)に過去のコレクションの残反を渡し、雨風から身を守るための“シェルタースーツ”を製作。そのいくつかをショー終盤に披露したほか、同団体の活動支援を目的にしたバックパックも販売する(1点販売されるごとにシェルタースーツ2着分の制作費用を出資する)。これについて、ガブリエラは「他者の苦難を認識し救いの手を差し伸べるという目的をパンデミック後の世界での企業努力に織り込んでいくことは、『クロエ』の使命の一部。ラグジュアリーブランドには、その義務がある」と話す。

 一方で、こういった背景にある理念や取り組みはショーやアイテムを見るだけでは分かりづらい部分でもある。「新しいコンセプトを快く受け入れてチームのおかげで、このコレクションを作り上げることができた。ただ、私のメッセージを実現するには、デザインだけでなくさまざまな部門の理解が必要。昔ながらのデザイナーならしないかもしれないけど、マーチャンダイジングやプロダクションの会議にも出席して、その浸透を図っている。(気候変動の悪化を防ぐために)人間に残された時間は限られているから、規模の大きなラグジュアリーブランドのビジネスを変えるには急速な改革が欠かせない」とし、今は社内全体での理解を深めているところだという。その輪を広げていくため、今後はいかに卸先や消費者に伝えていくかが重要になるだろう。

 コレクションとして見ると、今シーズンはパターンの数も限られ、「ガブリエラ ハースト」を想起させるスタイルの印象も強かった。就任から3カ月足らずで抜本的な社内改革と並行してコレクションを準備するのは、時間が十分でなかったのかもしれない。しかし、ガブリエラと「クロエ」が今進めていることは一朝一夕で成し遂げられることではないし、ショー翌日のZoomインタビューからは彼女のメゾンを担っていく覚悟と自信を感じた。「私はブランドが提案するものに対して長期的なアプローチで取り組んでいる。まずこの1年の最大のミッションは、環境への配慮という点での『クロエ』のスタンダードをより一層高めること」と語るように、彼女の壮大な挑戦はまだ始まったばかりだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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ハイダー・アッカーマンがベルギー発「メゾン ウレンス」に加入 日本ではサン・フレールが輸入販売

 ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)が、ベルギー発のウィメンズウエアブランド「メゾン ウレンス(MAISON ULLENS)」のクリエイティブ・コンサルタントに就任した。彼が手掛けるのは2021-22年秋冬コレクションからで、コレクションのデザインとイメージを統括していく。日本ではサン・フレールが同ブランドの独占輸入販売権を取得し、21年春夏コレクションから取り扱いを始める。

 「メゾン ウレンス」は09年、起業家で慈善家のミリアム・ウレンス(Myriam Ullens)が“ウエアラブル・ラグジュアリー”を掲げるブランドとして設立した。「ディオール(DIOR)」や「シャネル(CHANEL)」のフロントローの常連でもあり、旅をすることが多かった彼女は、楽に着られる快適でエレガントな服を見つけられなかったことからブランド立ち上げを決意。当初はニットウエアを中心に展開していたが、高級感と上質なモノづくりを求める洗練された顧客のニーズに応え、フルラインアップのコレクションに拡大してきたという。同ブランドは、「10年の歴史におけるターニングポイントとなり、素晴らしい発展を遂げることになる」とコメントしている。

 コロンビア生まれのアッカーマンは、エチオピアやチャド、アルジェリア、オランダを転々とする幼少期を過ごし、アントワープ王立芸術アカデミーで学んだ。いくつかのブランドで経験を積んだ後、01年に「ハイダー アッカーマン」を設立。シャープなシルエットや美しいドレープ使いに定評がある。現在はパリを拠点にウィメンズとメンズのコレクションを手掛けており、今後もシグネチャーブランドは継続する。また、16年から18年には「ベルルッティ(BERLUTI)」のクリエイティブ・ディレクターも務めていた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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果たしてデジタルでもファッション・ウイークは必要か?

 すでに「グッチ(GUCCI)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「セリーヌ(CELINE)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ジャックムス(JACQUEMUS)」といった人気ブランドがファッション・ウイークを離れ、独自のスケジュールでのコレクション発表に切り替えているが、その流れは加速しそうだ。大きな要因は、デジタルでの発表になったことで、決められた時間に出席しなければならないという絶対的な必要性がある程度なくなったこと。来たる2021-22年秋冬ウィメンズ・ファッション・ウイークも大半はデジタルになる予定で、4大都市の公式スケジュールに分断が生じている。

 2月14〜17日に開催されるニューヨーク(NY)コレでは、「ジェイソン ウー(JASON WU)」と「レベッカ ミンコフ(REBECCA MINKOFF)」は少数のゲストを招いたリアルなショーやプレゼンテーションを行うが、それ以外はデジタルでコレクションを披露予定。また、2月19〜23日のロンドンコレは英国ファッション協議会(British Fashion Council)と英国政府との協議の結果、全ブランドが無観客のライブストリーミングもしくは事前収録映像で発表することになった。2月24日〜3月1日に開かれるミラノコレではジャーナリストやバイヤーなど少数の業界人を会場に招くことは可能だが、「プラダ(PRADA)」や「フェンディ(FENDI)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」などショースケジュールのほぼ全ブランドがデジタルを選択。最終日の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、まだ会場にゲストを迎えるか未定だという。そして、3月1〜9日のパリコレに関してはまだ詳細が明らかになっていないものの、他都市と同様の形式になる可能性が高いだろう。

ファッション・ウイークに固執しないブランドが増加

 そんな中、今シーズンはファッション・ウイークに固執しないブランドがさらに増えている。発表の時期や場所に関係なくアメリカを拠点とするデザイナーを包括するために公式カレンダーを「アメリカン・コレクションズ・カレンダー」に改称したNYは、ファッショ・ウイーク期間の前後での発表が目立つ。「コザブロウ(KOZABURO)」や「プラバル グルン(PRABAL GURUNG)」「コーチ1941(COACH 1941)」「オスカー デラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」などが期間外の発表を決定。「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「トリー バーチ(TORY BURCH)」などもスケジュールには含まれず、後日の発表を予定する。

 また、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」は、1月のオートクチュール・ファッション・ウイークでの“アーティザナル”コレクションの発表と3月のパリコレでの男女共通の“コーエド(Co-Ed)”コレクションの発表をそれぞれ延期し、今回に限り公式スケジュールから離れた。さらに、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」もミラノコレには参加せず、期間終了後の3月5日にデジタルでメンズ&ウィメンズ・コレクションをお披露目する。これは技術的な理由だというが、ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)は「デジタルの利点の一つは、自分がふさわしいと思う時に観客とつながれるということ」とも話している。

 デジタルになると、ファッション・ウイークにおける開催都市の意味合いは薄れ、ブランドは時期だけでなく発表形式や場所もより自由に選択することが可能になる。実際、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」はオンラインゲームを通して、「グッチ」は7日間毎日ショートフィルムを公開して、最新コレクションを発表。また、「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」は、モナコのサーキットやフランス・ロワール地方の古城を舞台にした壮大なショー映像でコレクションを披露している。

 知名度のあるブランドにとってファッション・ウイークを離れることがマイナスになるわけではないことはデータからも明らかだ。ソーシャルメディア分析プラットフォームのリッスンファーストによると、2020年で最も多くYouTubeの視聴数を記録したランウエイショーのライブ配信は、パリコレが終了してから約2カ月後の12月15日にアップロードされた「サンローラン」21年春夏コレクションのショーだったという。リサ・グラント・ダミコ(Lisa Grant Damico)=リッスンファースト アカウント管理ディレクターは「『サンローラン』はソーシャルメディア上に1600万のファンやフォロワーを抱えており、ファッション・ウィークのような増幅を必要とせずに、新しいコレクションに関してソーシャルメディア上でオーディエンスにリーチすることができる」と分析。「ファッション・ウイークに参加することで最も恩恵を受けているのは、ソーシャルメディアのフォロワーを構築していない小規模なブランドであり、リアルなファッション・ウィークがないために苦労している」と続ける。

 ちなみにデジタルが主軸となった21年春夏パリコレ(20年9月28日〜10月6日開催)でハッシュタグ「#PFW」を用いたツイートは1万8192件となり、全てがリアルで開催された20年春夏パリコレ(19年9月23日〜10月1日開催)から87%減少したという。デジタル・ファッション・ウイークがリアル同様の反響をもたらせるわけではないものの、「ソーシャルメディアの観点では、確立されたブランドが伝統的なファッション・ウイークのスケジュールに固執することのメリットはほとんどない」とグラント・ダミコは結論づけている。

パリ&ミラノコレ主催者の考えは?

 一方、パリコレを主催するフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode)のラルフ・トレダノ(Ralph Toledano)会長は、公式カレンダーの必要性を強調。カレンダーに則ることは、ショーがデジタルであろうとリアルであろうと、業界に共通のリズムをもたらすだけでなく、参加ブランドやデザイナーにコミュニケーションと商業化のシナジーをもたらすと説明する。「日程が決められていることで、デザイナーは与えられた時間にコレクションを披露しなければいけない。そうしなければ、クリエイティブチームは常により良いものを目指すのでコレクションは完成しないだろう」。

 また、ミラノコレを主催するイタリア・ファッション協会(Camera Nazionale della Moda Italiana)のカルロ・カパサ(Carlo Capasa)会長は、「ファッション・ウイークは、デジタルであろうとリアルであろうと、私たちのシステムに活力を与える集合的なエネルギーを生み出している」とコメント。「もしも皆がそれぞれの道を歩んでしまったら、すぐに対比や挑戦から生まれる魔法を失ってしまうだろう。若手や新しいブランドは市場へのアクセスがさらに減るリスクがあり、新たなものが脚光を浴びる機会は減り、ファッションへの関心は時間の経過とともに低下していくだろう。その関心とは、ある空間もしくは少なくとも決められた時間枠の中に同居するクリエイティブなエネルギーの結集によって増幅されるものだ」と話す。

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