「シティショップ(CITY SHOP)」コンセプターで現在はフリーランスのクリエイティブ・ディレクターとして活動する片山久美子と、スタイリストの高木千智が新ブランド「イーヨ(Y YO)」を2025-26年秋冬シーズンに立ち上げた。「モードなカシミヤブランド」をコンセプトに、モンゴル産の上質なカシミヤを用いたアイテムを展開する。ファーストシーズンは、ホワイトカシミヤの柔らかで上品な発色を生かした、色鮮やかなウエア9型と雑貨5型。「ロンハーマン(RON HERMAN)」や「シップス(SHIPS)」「イエナ(IENA)」「プラージュ(PLAGE)」などで取り扱う。2人にブランドに込めた想いを聞いた。
WWD:ブランド立ち上げの経緯は?
PROFILE: 高木千智

高木千智(以下、高木):モンゴルのカシミヤ農場と長年付き合いのあるアパレルメーカーのクリケットウェブと出合ったことがきっかけでした。私は出産を機に、肌に触れるものの心地良さや、上質な服の価値を再認識していたタイミングで、カシミヤにはとても興味があったんです。でも私の好みのファッションは、白Tシャツにデニムのような超ベーシック。世の中にはすでに、ベーシックなカシミヤブランドはたくさんあります。きっと私ひとりで作っても、シンプルすぎて面白みに欠けてしまう。新しいブランドを作るなら、私とは真逆の遊び心のある人と組みたいと思い、まず頭に浮かんだのがかねてより友人の片山さんでした。
PROFILE: 片山久美子

片山久美子(以下、片山):私はバイヤーとして20年以上ファッション業界に携わってきましたが、過剰にモノを生み出すことに少し疲れを感じていました。だからこそ、もしブランドをやるなら、きちんと意味のあるプロジェクトにしたいと思っていたんです。話を聞くと、パートナー企業であるカシミヤ農場の生産背景がすごく魅力的でした。カシミヤは過放牧が原因で、砂漠化につながるとも言われています。その農場は、中国政府や現地の大学とも協業しながら、カシミヤヤギの健全な生育環境を守ると同時に持続可能な放牧を現地の遊牧民に指導するといった取り組みをしています。飼育から紡績まで自社工場で一貫生産していて高い透明性もある。こうした背景があるならば、と参加を決めました。その農場が組んでいる遊牧民の数が1140。ブランド名は、1140の語呂合わせで名付けました。
WWD:「イーヨ」ならではの強みは?
片山:私も高木さんもデザイナーではありません。スタイリストとバイヤーの私たちだからこそ提案できる面白さって何だろうと思い付いたのが、色で遊ぶというアプローチです。1つ1つのアイテムはシンプルですが、組み合わせ次第で新しい魅力が生まれるように工夫しました。また、使っているのは“ホワイトカシミヤ“と呼ばれる、白い山羊から採れる原毛です。ホワイトカシミヤならではの上品な発色だからこそ、年齢問わず幅広い人に手に取ってもらえると思います。
高木:実際に展示会では、モードからコンサバまで想像していた以上に色々な方たちに楽しんでもらえました。デザインは、私が好きな1960年代や90年代のメンズのファッション写真をインスピレーション源にしました。
片山:ミリタリーウエアに着想を得たオーバーサイズのヘンリーネックのニットや、60年代のスキーウエアをヒントにしたコンパクトなシルエットのニット、ケーブル編みの甘さのあるVネックニットなどもあります。私が着ているニットは、肩パッドを入れてモードな印象に仕上げました。グローブやフード付きストールなど、小物でも色合わせを楽しんでもらいたいですね。私はずっとバイヤーとして、売上目標ありきでモノ作りを考えるのが当たり前だった。高木さんの「これがすてき」と、感覚的にすごく自由な発想で提案してくるその姿勢がとても新鮮でした。最終的に長く愛される商品は、やっぱり自分たちが「本当に可愛い」「これを着たい」と思えるものから生まれるんですよね。そのことを、あらためて学ばせてもらいました。
WWD:今後の展開は?
片山:春夏は作らず、秋冬のワンシーズンだけ新作を出します。必要な分だけ生産し、セールはしません。ブランドとして規模の拡大を目指すというより、生産も販売も自分たちの手の届く範囲で、誠実に取り組みたい。コロナを経て、ファッションにより「意味」を求めるようになりました。ブランドにどんな背景があり、なぜそれを良いと思うのかを、お客さまにきちんと提示することを心がけています。「イーヨ」もずっと大切にしてもらえるような意味のある服を届けていきたい。
高木:大人になるとファッションも守りに入りがち。普段カラーアイテムに手を出さない人たちにも、「これだったら私も着られるかも」「ちょっと遊んでみようかな」って思ってもらえるとうれしいですね。
片山:高木さんは本当にモノを買わない人なんです。「これは!」と思った時にしか手を伸ばさない。まさに高木さんのような人に届いたらと思っています。
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