三越伊勢丹HD次期社長の細谷氏 “マス”から“個”の百貨店へ脱皮目指す

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)の杉江俊彦社長(60)が4月1日付で退任し、子会社である岩田屋三越社長の細谷敏幸氏(56)が新社長に就任する。コロナ禍のダメージで、2021年3月期には450億円の最終赤字を見込むなど、厳しい経営環境の中でバトンを受ける。26日に開かれた記者会見で細谷氏は「百貨店のビジネスモデルは新型コロナに関わらず、年々市場に受け入れられなくなりつつあった。社内に顧客思考を定着させ、“マス”から“個”へ向けた百貨店ビジネスに変えていかなければならない」と方針を語った。

 杉江社長の後継者議論はコロナ禍の昨年6月から、指名報酬委員会を交えて進められてきた。コロナ禍で都心をはじめとした立地優位性が失われるなど、百貨店を取り巻く状況が大きく変わり、これまでとは違う視点での抜本改革の必要性が高まった。細谷氏は婦人服や服飾雑貨、特選・宝飾など百貨店の王道を歩んできた「営業のエース」(杉江社長)。だが、杉江体制以降は三越伊勢丹HDの経営企画部長としてグループ経営の視野を培い、近年業績が低迷していた岩田屋三越の社長として19年3月期には同社で過去最高益へと再生させるなど、地方店運営にも手腕を発揮。後継候補のトップに躍り出た。

 岩田屋三越での顧客重視の方針を、三越伊勢丹HDのトップとして全社に波及させる。岩田屋三越時代は、岩田屋本店の優れた品ぞろえを久留米店(福岡県久留米市)の顧客にも提案するため、外商販売やオンライン接客などパーソナルなサービスを充実させたことが奏功した。「これまでの百貨店はたくさんお客さまを呼び込み、店内をたくさん買い回ってもらうことを前提にしていた。だが今は目的意識の高い方の来店が増え、必要なものだけを買って帰られる。呼び込むコストとリターンが見合わない、時代遅れのビジネスモデルになっている。マスではなく顧客に向けて、上質で感度の高いものを提案していかなければならない」。

 退任する杉江氏は就任時から、不採算店舗の整理や人件費削減といったコスト構造改革を強力に推し進めてきたが、「(改革は)一定のめどが立った」と振り返る。並行して、近年はECやオンライン接客などデジタルでの販売・顧客接点強化にも取り組んできた。21年3月期は巣ごもり消費も追い風に、EC売上高が300億円、オンライン会員は160万人への到達を見込むなど、「(デジタルによる)今後の成長の“種”は撒けた」と一定の手応えを得る。細谷氏はこの“種”を収益の柱に成長させることに加えて、リアル店舗における店舗面積の適正化など、途上の改革についても引き続き進めていくことになる。

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春夏の最旬デニムは“アイスウォッシュ” 脱ストリートな着こなし術

 2021年春夏のデニムパンツは、アイスウォッシュデニムが主役になりそうです。アイスウォッシュデニムとは、洗い加工でデニムの表面が氷で覆われたような薄い青色に仕上げたタイプ。さわやかで優しい色合いが、春夏のワードローブにぴったりです。

 色落ちしたブルーデニムの爽快なイメージは、今の時代が求めるムードにもマッチしています。ただし、これまで通りのストリート寄りの着こなしではなく、程よくフェミニンを盛り込みながら、しなやかでクールに着こなすのが今季流。有力ブランドの春夏コレクションルックは、上品でウィットフルな着こなしに誘っています。

“メンズ風デニム×肌見せ” 目指すはフェミニンスポーティー

 爽やかな印象に仕上げるなら、重たく見えがちな濃いインディゴブルーより、青さをトーンダウンさせた色落ちタイプがおすすめです。レザージャケットの下は、短め丈のトップスで素肌をのぞかせることで抜け感が生まれます。
 
 「セリーヌ(CELINE)」のデニムルックは、ウォッシュ加工を施したくるぶし丈のストレートデニムが涼やかな印象。ライダースジャケットの内側にビスチェを着込み、ちょっとだけ腹見せしているのがポイントです。バレエシューズと細めのベルトで女性らしさをアピールする一方、キャップでスポーティーなアクティブ感も添えているところが21年春夏流です。

“ロング×ロング” 縦長シルエットでフェミニンカジュアル

 脚線を伸びやかに見せるなら、やはりハイウエストのデニムパンツが使えます。おすすめは、ロング丈のライトアウターとのコンビネーション。“ロング×ロング”の相乗効果が期待できます。

 その代表的なコーデが、「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」。ハイウエストのデニムパンツに、アンクル丈に近いロングローブをさらりと羽織って落ち感を演出しています。ストレートで細身のシルエットがシャープなレッグラインを引き立て、さらにベルトによるウエストマークが視線を上に誘導して、縦長効果を強調しています。きらめきを帯びたレオパード柄でゴージャスさを上乗せし、ブラトップのチラ腹見せでヌーディー感も漂わせています。

“リュクス×カジュアル” “ずらし”のコントラストが効果的

 ロマンチックなトップスや懐かしげなアウターなど、スイートなディテールのアイテムと合わせると、本来のデニムパンツらしさが引き立ちます。

 「ヴァレンティノ(VALENTINO)」がデニムパンツのパートナーに選んだのは、フリルをたっぷりあしらったボリューミーなブラウス。柔らかいシフォン素材がフェミニンを薫らせ、色落ちデニムのカジュアルさと絶妙なコントラストを際立たせています。ゴールドがアクセントのベルトと靴など、デニムとは対照的なアイテムを合わせて“リュクス×カジュアル”のミックスコーデを完成させています。

“きれいめ×リラックス” ウエストマークで視線を誘導

 ウォッシュ加工を施したデニムパンツはそれなりに主張が強いので、印象を弱める一工夫が肝心。別のスポットに視線を誘導するスタイリングを使えば、全体のバランスを整えやすくなります。

 「クロエ(CHLOE)」が打ち出したのは、ワイドなデニムパンツ。正面にステッチが入ったアイキャッチなタイプです。ストリート感が強くなりすぎないよう、エレガントなブラウスと極太ベルトを重ねてデニムの印象をトーンダウンさせています。フラワー柄のブラウスも、デニムのアイシーな雰囲気に朗らかさを加えています。

“薄めデニム×マリン”  70年代ミックスでタイムレスなムードに

 色味が薄めのウォッシュデニムパンツは、トップス次第で自在に雰囲気をアレンジできます。マリンテイストのトップスとも相性抜群です。

 「バルマン(BALMAIN)」が提案したデニムパンツは、モダンヒッピーを思わせる裾広がりの細身シルエット。真っ白なポインテッドトーのシューズを裾から見せれば、すっきりした印象がさらにアップします。ややビッグサイズのニットベストは、ネイビーと白のマリンボーダー柄。シャツは肩が張った70年代風のシルエットで、プレッピー感も投入。ミックステイストがデニムルックの鮮度を高めています。

 アイスウォッシュデニムはデイリーなイメージが強い分、ラフになりすぎない味付けが着こなしのポイントになります。フェミニンなブラウスやスタイリッシュなシャツなど、持ち味のはっきりしたアイテムを選ぶと、一味違うデニムの魅力が引き出せます。さりげない腹見せやウエストマークなどの小技も駆使して、マルチなミックスコーデを楽しんでみてください。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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キム・ジョーンズが原点に戻した「フェンディ」、モードを強めた「プラダ」 ミラノコレ前半リポート7選

 2021-22年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開催中です。ここでは1日目から3日目までに発表された中から厳選した7ブランドをご紹介。長年メンズとウィメンズのコレクションを取材する村上要「WWDJAPAN.com」編集長と、ウィメンズコレクション担当の大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

「ミッソーニ」のニットは在宅勤務の最高級アイテム

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):「ミッソーニ(MISSONI)」は引き込まれてしまう動画でした。映像はボウリング場からスタートし、"どこでもドア"のような窓をくぐって、路上や部屋の中など別の空間へとワープしていきます。ニットワンピースなどを着用した若々しいモデルたちが楽しそうに会話をしている姿や、カメラの前を横切る姿は魅力的に見えました。

村上要「WWDJAPAN.com」編集長(以下、村上):ファーストカットのボウリング場から、なぜか全員リゾートウエアの学校でのシーン(笑)、そして屋外のペデストリアンまで、全部が1カットに見える不思議で素敵な映像でしたね。今の時代はオンもオフも境界は曖昧で、僕らの日常も全然違う場面の組み合わせというよりは、いろんなシーンに行ったり来たりするカンジ。そんな日常生活を映像で表現しているように思えました。

大杉:洋服はブランドらしいマルチストライプで従来と大きく変化はありませんが、ニットワンピースやトップスとパンツのセットアップなどシンプルな構造のアイテムが多かったように感じます。秋冬ですが、重たい印象がなくて着心地がよさそう。またパーカやショートパンツをスニーカーに合わせるなど、スポーツ要素が増えていたのも新鮮でした。私も着たい!と思ったので、アラサー層にも受け入れられそうな印象です。

村上:アラサーどころか、軍資金さえあれば、もっと若い女性も「挑戦してみたい!!」って思ってくれるだろうスタイルでした。従来よりスポーツやストリートのムードにシフトしながら、健康的な素肌ならチョットくらい大胆に見せても大丈夫、という雰囲気を漂わせている。でも、「ミッソーニ」らしいカラフルなジグザグや、柔らかなニットの軸はブレないから、セクシーというよりヘルシー。ニットのセットアップは、在宅勤務の最高級アイテムとしても使えそう。

スタート地点に立ったキム・ジョーンズの「フェンディ」

大杉:いよいよ、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による「フェンディ(FENDI)」のプレタポルテがお披露目になりましたね!先月発表したオートクチュールとはまた異なる雰囲気で、とてもソリッドでシンプル。ファーストルックは、毛皮ビジネスから始まったメゾンを象徴するキャメル色のファーコートでした。その後も全身ワントーンでそろえたコーディネートが続き、ホワイト、ペールピンク、モーブ、グレーへと変化していくカラーパレットが美しかったです。これらは、ブランドを現在に導いたフェンディ家の5人姉妹のワードローブから着想を得ているそうです。

村上:「フェンディ」の「FF」は、「ファン ファー(FUN FUR)」の頭文字。だからこそユーモアは忘れちゃいけないブランドだけど、ここ数年は“インスタ映え”とかストリートを意識しすぎていた感もありました。もう一回原点に立ち返り、「『フェンディ』のお客さま、洋服も、長く愛してくれる人たちって誰だろう?」と考え直したようなコレクションです。本人も「今回は、ボールが転がりだすスタート地点なんだ」って言っているね。シルクやオーガンジーを多用して、ジャケットのような肩周りのワンピース、ドレスのように流れるシャツなど、メンズ由来とウィメンズ由来のアイテムを融合。メンズ出身、ウィメンズは初挑戦のキムらしいなぁ、と思いました。

大杉:前任の故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)による「フェンディ」はキャッチーな柄やアイテムの提案を得意としていましたが、キムは正統派のイタリアのエレガンスに着目したようですね。昨年からの流れですが、イタリアンブランドが得意とするタイムレスなアイテムが見直されていると思います。私が唯一、物足りなさを感じたのはアクセサリーです。今回はクラッチやハンドバッグ、トートバッグなど実用性を考慮した"きちんとバッグ"がそろっているんですよね。シューズも無駄な装飾がなく、とても削ぎ落とされた印象です。これまでの「フェンディ」は、アイコンバッグの"バゲット"をマイクロサイズで提案するなど、「何が入るの!?」とツッコミたくなる雑貨が心をくすぐりました。

村上:確かに、バッグやチャーム、ストラップも、まずは一旦“オールリセット”だった。物足りなく思う人もいるかもしれないね。こういうご時世だから賛否両論あるんだろうけれど、バッグでもファー使いが印象的だったね。昔、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)にインタビューした時、「ラグジュアリーやデザイナーズの洋服が決定的に違うのは、コミュニケーションを誘う点だ。見るからに肌触りの良い素材の洋服を着ている人には、『触ってみて良い?』と話しかけてしまう。そうやってコミュニケーションを喚起するのが、ラグジュアリーの魅力だ」と聞いて、とっても納得したんだけれど、ファーバッグを見て、そんなことを思い出しました。アクセサリーの注目は、ジュエリーかな?キムとともにクリエイションを手がけるシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)の娘で4代目に当たるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)のゴールドアクセサリーが首元や耳を彩っていたね。キムはクチュールの時から、「僕は、シルヴィアからデルフィナへのスムーズな継承を支えるリリーフだから」と言い切っています。今後は、アクセサリーを起点に、どれだけデルフィナの現代的な感覚がコレクション全体に浸透するか、注目ですね。

常に女性を応援してきた「マックスマーラ」の70周年

大杉:「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年でなんと創業70周年。今季は70年間で変化した女性たちの環境や地位がキーワードになっているそうです。というのも創業時の顧客は、医師の妻など"富裕層の奥さま"だったけれど、今はエグゼクティブや経営者などの"ビジネスウーマン"が増えている。常に女性を応援してきた歴史は、ブランドの価値につながっています。ブリティッシュとイタリアンの正統派と遊び心あるスタイルを掛け合わせて、社会的にも精神的にも自立した女性のワードローブにまとめました。私も「マックスマーラ」の上質なアイコンコートは永遠の憧れで、いつか着こなしたい!と思っています。

村上:僕も、一昨年も去年も「“テディベアコート”、やっぱり買うべきかしら?」と思っています。今回もファーストルックは“テディベア”チェスターと、ボンバージャケットのレイヤードでしたね。キャメル、カーキ、ネイビー、ガンクラブチェック、レオパード……。70年間、リアルな女性のワードローブの一翼を担ってきたプライドを感じました。でもケーブル編みのニットをオーバーサイズにして、合わせるガンクラブチェックのパネルスカートをウールからチュールに変えるだけで、1951年から続くスタイルも2021年っぽく見えますね。70周年のシンボルマーク(なのかな?)に使っていた「!」のマークには、「素材で遊んだら、昔ながらのスタイルも今風に!」という驚きが表現されているのかな?と勝手に想像しました。キルティングのプルオーバーや“テディベア”コートを含めて、名門のイタリアンブランドには、もっと素材で遊んで欲しいな。余談ですが「マックスマーラ」や「スポーツマックス」にはぜひ、カワイイアイメイクにも挑戦して欲しいです。毎回アイラインもリップも強めで、正直、チョット間口を狭めて、ソンしちゃってる気がするので。

大杉:このようなコレクションはシンプルな無観客ショーで見せて正解ですね。編集部では長年クリエイティブ・ディレクターを務めるイアン・グリフィス(Ian Griffiths)の取材も行いました。後日インタビュー記事を公開予定ですので、そちらも合わせて読んでいただければと思います。

ラフ加入で「ミュウミュウ」との差別化が明確になった「プラダ」

大杉:ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)によるウィメンズは2シーズン目ですね。「プラダ(PRADA)」はいつも同じ空間演出でメンズとウィメンズ・コレクションを発表していますが、今回もラフが加わって初のメンズだった1月のメンズと共通テーマでした。色鮮やかなフェイクファーと大理石を床や壁に施した部屋をモデルたちが駆け抜けて行くので、どこでスクショしても可愛く撮れます(笑)。村上さんはこのコレクションをどのように見られましたか?

村上:なるほど。正直「プラダ」は、デジタル戦略がそんなに上手じゃなかったのに進化してるね(笑)。ラフが加入してから3つ目のコレクションですね。正直、ウィメンズの方が「2人の協業が、良い結果につながっているな」って思います。メンズは、けっこうシルエットとキーアイテム、そしてスタイリングのいずれもラフ・シモンズ、いやブランドとしての「ラフ・シモンズ」だったと思っていて、チョット心配だったんです。でもウィメンズは、ピタピタのニットやブーツ、反対にブカブカのMA-1などラフっぽいアイテムさえ、チュールのスカートや不思議な絵柄のカーディガン、スパンコールのセットアップなどミウッチャらしいアイテムと組み合わさるから、「2人の協業」を感じやすい。

大杉:どのルックにも登場するキーアイテムは、幾何学柄や花柄のセカンドスキン。ジャカードニットのボディースーツで、シャツやジャケットの下に忍ばせるとレイヤードが楽しめるアイテムです。カラータイツのようでかわいいですね!ミウッチャとラフは「変化と変容、開かれた可能性」というテーマで対話を重ね、このコレクションで人間の本質に迫ったそうです。人間、誰もが持つ"男性らしさと女性らしさの両極間に存在する「シンプルさと複雑さ」「上品さと実用性」「制限と解放」の間を表現しているとのこと。分かりやすいのが、プレーンなスーツと複雑な柄のニットの組み合わせ。テーラードスーツは厳格さがあり、ボディースーツは性別を問わない体の自由を象徴しています。

村上:「制限と解放」、2人はどんな話をするんだろう(笑)?ラフとの協業については、「プラダ」の視点のみならず、会社としてのプラダグループの視点で考えるのも大事だと思っています。僕は半年前の2021年春夏シーズン、「プラダ」はもちろんだけど、「ミュウミュウ(MIU MIU)」も大好きでした。レトロスポーツなスタイルを見て、「そう!『ミュウミュウ』って、こういうチョット不思議な女の子の世界だよ!」って嬉しくなって。ここ数年の「ミュウミュウ」は、「プラダ」との差別化が難しくなっていた印象で、グループ内で食い合っていた印象がありました。それがラフの加入で、モードの性格を強めた「プラダ」と、ミウッチャらしい「ミュウミュウ」の違いが再び明確になったと思っています。だから「プラダ」は、ちょっとラフっぽいくらいでちょうど良いのかもしれない、とも思い始めています。

大杉:最後にはおなじみとなったミウッチャとラフの対話が収録されていて、今回はゲストにブランドと所縁のある建築家のレム・コールハース(Rem Koolhaas)をはじめ、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、映画監督のリー・ダニエルズ(Lee Daniels)、音楽家のリッチー・ホゥティン(Richie Hawtin)、トランスジェンダーのモデルで俳優のハンター・シェーファー(Hunter Schafer)が登場します。マークが笑いをとって場を和ませていたのが印象的で、「プラダらしさ(Pradaness)とは?」という質問にマークが「ミセスプラダ(ミウッチャ)そのもの。彼女の着眼点、知性、スタイル、テイスト、文化、ファッションへの愛が詰まったもの」と話していたのがその通りだと思いました。

着る人をやさしく包み込む「ブルネロ クチネリ」

大杉:「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は今季、ニットの質感で“フィール・グッド・スタイル”を目指したそうです。不安やストレスを抱えやすい状況下で、着る人を包み込んでくれるエレガントな服がそろっていますね。やさしい色使いに、上質な素材の美しさが伝わって、本当に直接触れたいと思うコレクションです。

村上:これまで以上に淡い色彩でしたね。ベージュやグレー、デニムでさえ、今季は総じてペールトーン。映像の舞台、「ブルネロ クチネリ」の古里であるソロメオ村の朝霧に包まれているような気持ちになりました。映像ではコーデュロイがクローズアップで何度か映ったけれど、このブランドのコーデュロイはコットンだけじゃないからね(笑)。カシミヤとか入ってて、直接触れると、驚愕します(笑)。

大杉:特にプライベートとバブリックの境を曖昧にしてジャケットにニットパンツを合わせるなど、1月のメンズ・コレクションで編集部が提案したホームとフォーマルを掛け合わせた“ホーマル”トレンドを体現するコレクションでした!クチネリさんはいつも世の中が必要とする服を的確に提案されていますね。

“オールドハリウッド”を表現した「モスキーノ」の豪華ショー

村上:「モスキーノ(MOSCHINO)」は、“おうち時間”が長くなっている今、まさかのスーツから始まったよ(笑)。さすがジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、パンクなのか、何も考えていないのか?どっちだろう?と思ったら、今度は田舎の牧場に来ちゃったよ!!でもスタイルは、壁紙やタペストリー柄のウールをハイブリッドしたペプラムスーツ。お次の美術館では、スーパークラシックなセットアップに、ドレスです!今はまだ、どこにも着ていけないよ(笑)!!

大杉:ジェレミーはLAを拠点にしている利点を生かしているなと思いました。まずはモデルの豪華さです!ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)をはじめ、アンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)、ミランダ・カー(Miranda Kerr)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、テイラー・ヒル(Taylor Hill)ステラ・マックスウェル(Stella Maxwell)ら世代の異なるモデルや女優、パフォーマーまで出てきました。確かに、今はどこへも着ていけない服ばかりでしたが、ハリウッドのようなショービジネスのお膝元ではこのようなドレスの需要があるのだと納得しました。コレクションテーマもずばり“オールドハリウッド”でした。

村上:大都会、牧場、美術館、サファリ、そしてシアター。映像作品として、大いに楽しみました。「モスキーノ」の映像に登場するモデルって、みんな芸達者だよね(笑)。コレクションのデジタル配信が始まったばかりの頃は「やっぱりモデルと役者って、違うんだなぁ」なんて思っていたけれど、「モスキーノ」はモデルが完璧な役者で、役者が完璧なモデル。ウィニー・ハーロウ(Winnie Hallow)も、めちゃくちゃ演技上手でした。

大杉:動物や絵画になりきるポージングも面白かったですね。キャッチーで着るだけで気持ちが高揚しそうなウエアばかりなので、出演者も皆楽しそうでした。そして最後にはディタ・フォン・ティースの美尻のドアップで幕が閉まるシーンが衝撃的でした(笑)。

ポジティブな気持ちになれる「エンポリオ アルマーニ」

村上:ネオンカラーの照明が瞬く「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のメンズ&ウィメンズ・コレクションは、鮮やかなパープルやフューシャピンク、エメラルドグリーンなど元気いっぱい。グレーベースのセットアップにピンクのシャツくらい、さりげなく取り入れているメンズが良かったな。リアルショーでは顔色変えずに歩く姿しか見られないけれど、映像ではウォーキングを始める前のポージングやちょっとしたダンス、笑顔が見られて、「あぁ、こういうビビッドな色を着ると、こんな風に楽しい気持ちになれるだろうな」って素直に思えます。

大杉:得意とするリラックスエレガントな世界観に、1980年代のポップカルチャーのムードをプラスしたコレクションでしたね。見ているだけで、ポジティブな気持ちになれる演出でした。ウィメンズはハイウエストで細身。ベルベットなどの上質な素材感に相反するスポーツのエッセンスも加わっていました。

村上:メンズは、いつもよりゆとりのあるシルエット。元気になれる色と、リラックスできるシルエットの対比がユニークでした。素材では、いつも以上にベルベットが多かったかな?アルマーニと言えば、のベルベットは触り心地が抜群だから、イヴニングだけじゃなくデイリーウエアに取り入れても良いかもね。

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1つだけ確かそうな2040年の出来事 エディターズレター(2020年12月7日配信分)

※この記事は2020年12月7日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editor's Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

1つだけ確かそうな2040年の出来事

 前回のお手紙で告知させていただいた通り、今回の「CEO特集」はファッション&ビューティの各社社長に「2040年のビジョンは?」と伺っています。取材はまだ前半戦ですが、さすがに各社20年後の未来は全然違いますね~(笑)。毎日、刺激的な取材が続いています。

 無論、ウチ半数くらいの社長からは「20年後の未来なんて、わかんない!」や「20年後の未来を、今決めたくない」というお言葉をいただき、「それもまた真実」と思っています。あらためて社長の皆々様、本当に答えづらい質問を取材の根幹に据えまして、申し訳ございません(笑)。

 業務用ヘア化粧品の専売品メーカーとして誕生したミルボンの佐藤龍二社長からも、他社のトップ同様「20年先なんてわからないよ(笑)」とのお言葉を頂戴しました。佐藤社長は、「私たちが携帯電話を使うようになって20年ちょっと。その間に携帯電話は、それ以上の存在になった。次の20年の技術の進歩は計り知れない。だから、社会がどうなっているかなんて、わからない」と続けます。業務用ヘア化粧品の専売品メーカーも、近年はコーセーとタッグを組んでスキンケアビジネスに挑んだり、B to B to Cという形ではありますがエンドユーザーともつながるECを立ち上げたり、「20年前だったら、考えられない」ビジネスに挑んでいます。そんな佐藤社長は、「でも1つだけ、かなり確かなのは……」と続け、「今の20歳は40歳になっていて、今年生まれた人は成人する。20年後の人口動態は、『見える』こと」と教えてくれました。

 なるほど。そう言えば同じ話は、下のリンク1本目の通り、IT賢者も口にしていました。「20年後の社会」と言われると皆目見当が付きませんが、「国内の女性の半数が50歳以上の社会」と言われると、いろんなコトが想像しやすくなります。こんな風に想像の翼を広げた佐藤社長は、20年後のビジネスに関するキーワードの1つに「地域密着」をあげました。高齢者にとって、移動は大変。生活圏が小さい人が増えれば、「地域密着」には商機があるという考えです。

 この、極めて確度が高い人口動態から将来を想像というのは、なかなか賢いアプローチですね。試しに「2040年 人口 日本」でググってみると、「現役1.5人が高齢者1人を支える」「人口は1億1000万人」「世帯数は2015年比で5%減」などの記事がヒットします。「2040年 人口 世界」とかでググれば、また違う確度の高い情報が得られ、想像の翼が広がるコトでしょう。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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“人にも地球にもやさしいコスメ”アワードのゴールド賞は瀬戸内の化粧水

 環境省森里川海アンバサダーメンバーを中心に立ち上げたソーシャルアクティビストチームのマザーアースは2月27日、“人にも地球にもやさしいコスメ”を表彰する「サスティナブルコスメアワード(SUSTAINABLE COSMETIC AWARD)2020」のオンライン表彰式を銀座ロフトで行った。多くの応募製品の中からゴールド賞にはリム・ジャパンの「せとうち T&K ハーブ せと(SWTOUCHI T&K HEAB SETO)」“しっとり瀬戸内ハーブ・ウォーター”が選ばれた。

 同アワードは、マザーアースと日本環境協会エコマーク事務局のコラボレーションイベントとして2019年にスタートした。2回目となる今回は応募数が前年比20%増となった。審査員も前回の4人から、学生から環境に関する専門家まで幅広いジャンルから15人が務めた。

 審査基準は、フェアトレードによって生産された原材料を使用しているか、未利用資源や持続可能に管理された原料を使用しているかなど、SDGs の目標およびターゲットの基準に沿った製品であること。その中で、“しっとり瀬戸内ハーブ・ウォーター”は「耕作放棄地をハーブ栽培地として利用し、放置された竹林による竹害対策の一環として竹の有効成分を活用することにした」(審査委員長の岸紅子日本ホリスティックビューティ協会代表理事)ことが評価されゴールド賞を受賞した。

 シルバー賞は陽と木の「明日 わたしは柿の木にのぼる」“フェミニンオイル”が、ブロンズ賞にエキップの「アスレティア(ATHLETIA)」“コアバランストーニングローション”が選ばれた。そのほか審査員賞には16製品が選出された。

 審査員の一人でオンライン表彰式に登壇した吉川千明オーガニックスペシャリストは「環境に配慮した取り組みはもちろん、化粧品としても素晴らしい製品が多かった。若い人が製品開発に取り組む姿勢もあり、サステナブルコスメ市場は伸び代がある」とコメントした。

 オンライン表彰式の会場となった銀座ロフトでは3月5日まで受賞製品を集積した売り場を展開。その後は常設販売するという。「良い製品を手掛けていても小規模な企業が多いため、小売りに力を注げていない。その一助になれば」と石丸桂子・銀座ロフト健康雑貨マネージャー代行は語る。

 同アワードはSDGsが掲げたゴールである2030年で終了する予定だ。「そのころには地球にも人にもやさしいコスメが当たり前の時代になっていると信じている。同じ思いを持った仲間たちが少しずつ増え、持続可能な社会を目指して歩み始めている今、それを応援していくアワードでありたい」と岸審査員長は期待を寄せた。

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「オニツカタイガー」がミラノコレに初参加 デジタルでコレクションを発表

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は、ミラノ・ファッション・ウイークに参加し、2021-22年秋冬コレクションを日本時間2月27日19時にデジタルで発表する。

 同ブランドは13年にイタリア・フィレンツェの見本市“ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)”に出展後、東京ファッション・ウイークなどでショー形式の発表を続けてきた。クリエイティブディレクターのアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)の活動拠点であるミラノのファッション・ウイークへの参加は初めて。昨年12月にはミラノにイタリア初の旗艦店を開いていた。

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「オニツカタイガー」がミラノコレに初参加 デジタルでコレクションを発表

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は、ミラノ・ファッション・ウイークに参加し、2021-22年秋冬コレクションを日本時間2月27日19時にデジタルで発表する。

 同ブランドは13年にイタリア・フィレンツェの見本市“ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)”に出展後、東京ファッション・ウイークなどでショー形式の発表を続けてきた。クリエイティブディレクターのアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)の活動拠点であるミラノのファッション・ウイークへの参加は初めて。昨年12月にはミラノにイタリア初の旗艦店を開いていた。

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「アシックス」と隈研吾のコラボスニーカー第2弾はアフリカのサハラ砂漠と日本の伝統技法を融合

 「アシックス(ASICS)」は、建築家の隈研吾とのコラボスニーカー第2弾“メタライド アム(METARIDE AMU)”(3万6000円)の新色サンドベージュカラーを公式オンラインストアで3月12日に発売する。サイズは23.0〜31.0cmをそろえる。

 昨年12月に発売した第一弾と同様、ランニングシューズ“メタライド(METARIDE)”をベースにし、日本の伝統的な竹細工技法の“やたら編み”に着想した複雑に交差するテープが特徴だ。新色のサンドベージュは、隈が人生で最も影響を受けたアフリカのサハラ砂漠をイメージ。アッパーのニット素材とテープとで色の変化を付け、木や砂が飛び交う砂漠の風景を表現した。木材を原料としたミッドソールや、和紙糸で製作したプルストラップ、リサイクルポリエステルを用いたアッパーなど、“環境に配慮した建築”を目指す隈らしいスニーカーに仕上げた。

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「エルメス」が15年ぶりのメンズフレグランス“H24”を発売 クラリセージのハーブノート

 エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)
は3月1日、15年ぶりとなる男性用オードトワレ“H24”を発売する。価格は50mLが1万700円、100mLが1万5000円、レフィル125mLが1万4500円。エルメスブティックで取り扱う。

 メゾンの香水クリエーション・ディレクター、クリスティーヌ・ナジェル(Christine Nagel)は、革新的で創造的であり、男性を一つのアイデンティティーにとどめようとしない新しい香りを生み出すため、男性的なウッディノートから離れて創作。都会の中の自然をイメージして香りの中心にハーブノートのクラリセージを用い、苦みのあるスイセンやローズウッドのエッセンスを加えて、センシュアルな透明感という逆説的な印象を作り上げた。

 ボトルデザインは、メゾンのテーブルウエアや時計も手掛けるデザイナーのフィリップ・ムケ(Phillip Mouquet)が担当。リチャージャブルタイプのボトルは基本的なフォルムでありながら挑戦的なデザインで、現代の男性の躍動感とエネルギーを表現している。

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