「生産者の顔が見たい」 インドの綿花農園を訪れた高校生を突き動かすものとは

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、学生団体「やさしいせいふく」代表の福代美乃里さんです。福代さんがファッション産業の環境および人権問題に関心をもったきっかけや、昨年夏に「生産者の顔が見たい」との思いで訪れたインドの綿農家での話などを聞きました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 「生産者の顔が見たい」 インドの綿花農園を訪れた高校生を突き動かすものとは appeared first on WWDJAPAN.

ジャパンサステナブルファッションアライアンス、繊維 to 繊維など政策提言


ジャパンサステナブルファッションアライアンス(Japan Sustainable Fashion Alliance)は、6月30日、ファッション産業の循環型移行を加速させるための政策提言書を公表した。2030年度までに「手放される衣料品のうち、繊維 to 繊維リサイクルで5万トンを処理する」という政府目標の実現に向け、業界横断での議論と課題整理を踏まえた具体策を提示した。提言は、消費者庁、経済産業省、環境省に提出される予定。

繊維 to 繊維リサイクルの産業構造的課題

繊維 to 繊維リサイクルの最大の障壁は、技術そのものではなく、それを活かしきれない産業構造にある。たとえば、ポリエステルtoポリエステルのケミカルリサイクルや、反毛による再資源化技術はすでに商業レベルで存在しているにもかかわらず、活用が十分には進んでいない。その背景には以下のような課題がある。

・バージン材との価格差という根本的問題
本アライアンスの会員企業によれば、再生材はバージン材よりコストが高く、再生材を使用した製品は価格上昇を招きやすい。ファッション・アパレル製品は価格弾力性が高いため、消費者の支持を得られず、結果として企業も継続的な再生材採用が難しくなる。

・表示制度が反毛利用を阻む
反毛は有効な再資源化技術であるものの、複数素材混合による混率表示が困難という理由から法制度上の壁に直面している。現在、紡毛糸や空紡糸では「列記表示」が認められているが、主要な綿紡糸には適用されておらず、再生材利用が広がらない要因となっている。

・回収インフラの未整備
衣類回収の利便性にも課題がある。多くの自治体では衣類の資源分別が義務化されておらず、消費者がわざわざ回収ステーションへ持ち込む仕組みは利用率が上がりづらい。廃棄より簡便か同程度でなければ、古着回収への誘導は困難だ。

7つの重点提言

こうした構造的な課題を踏まえ、本提言書では、繊維 to 繊維リサイクルの実効性を高めるため、以下の7つの政策支援を政府に求めている。

1.リサイクル処理キャパシティの実態調査
現状の処理能力と将来見込みを匿名で集計・共有し、政策設計の基盤とする。

2.再生材コストの構造調査
工程ごとの追加コストの実態を把握し、価格差是正の糸口を探る。

3.再生材普及のための制度・補助導入
移行期には価格差を埋める仕組みとして、補助制度など官の支援が不可欠。

4.官公需による再生材優先採用
行政による需要創出で市場拡大を図り、グリーン購入法での基準追加も求める。

5.故繊維の安定回収と品質向上の施策
行政回収の基準整備と透明性の確保により、回収品質を底上げ。

6.反毛製品の表示ルール見直し
家庭用品品質表示法の改正を通じ、列記表示の対象に綿紡糸も含めるよう求める。

7.リサイクル処理施設への初期・継続支援
イニシャルコストのみならず、安定稼働に向けたランニングコスト支援も要請。

商業施設における水光熱使用情報の開示標準化なども

さらに本提言では、過去の議論に基づく要望の継続的検討も求めた。具体的には、
・繊維製品のGHG排出量算定の原単位精緻化
・商業施設における水光熱使用情報の開示標準化
・「環境配慮設計ガイドライン」におけるポジティブ影響項目(生分解性・循環性など)の追加

ジャパンサステナブルファッションアライアンス加盟企業

ジャパンサステナブルファッションアライアンスは、ファッション産業における「適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロス・ゼロ」および「2050年カーボンニュートラル」の実現を掲げ、2021年8月に設立。2025年6月現在、正会員22社、賛助会員48社、計70社が加盟している。

アダストリア、アーバンリサーチ、伊藤忠商事、ECOMMIT、倉敷紡績、クラレトレーディング、ゴールドウイン、ザ・ウールマーク・カンパニー、JEPLAN、鈴木商会、Spiber、スタイレム瀧定大阪、ZOZO、タキヒヨー、帝人フロンティア、東レ、豊島、福助、丸紅、ヤギ、ユナイテッドアローズ、YKK、AOKI、AOKI ホールディングス、旭化成アドバンス、アシックス、タオル美術館グループ一広、エコリング、SGS ジャパン、エプソン販売、買取王国、カケンテストセンター、キャブ、清原、crossDs Japan、グローブライド、グンゼ、コーベル、コニカミノルタ、サザビーリーグ、サルト、CFCL、シキボウ、島精機製作所、セイコーエプソン、瀧定名古屋、Chargeurs PCC、TSI ホールディングス、東京吉岡、東豊インベスト、日華化学、日東紡アドバンテックス、日本化薬、日本生活協同組合連合会、日本繊維製品品質技術センター、長谷虎紡績、バリュエンスホールディングス、V&A Japan、フクル、フジックス、Free Standard、bluesign technologies ag、ブックオフグループホールディングス、ボーケン品質評価機構、メンケン品質検査協会、モリリン、ヤマダヤ、郵船ロジスティクス、リファインバース、良品計画

The post ジャパンサステナブルファッションアライアンス、繊維 to 繊維など政策提言 appeared first on WWDJAPAN.

しまむらグループ、900店で期間限定の衣料品回収 カイタック「ムダゼロ」と連携


しまむらグループは、7月7日から27日までの期間、全国のしまむらグループ900店舗で衣料品回収を実施する。アパレルメーカーのカイタックファミリーと連携し、同社が展開する服のリサイクルプロジェクト「MUDAZERO(ムダゼロ)」を通じて衣料品の再資源化を図る。2023年にデニム素材で知られるISKO社とのパートナーシップのもと始動したこのプロジェクトでは、回収衣料を糸や生地に再生し、新たな製品へと循環させる仕組みを構築している。

2024年より一部店舗で試験的に実施してきた衣料品回収では、これまでに約73トンの衣料品を回収。今回は回収店舗数を全国規模に拡大し、期間限定で本格展開する。一部の衣料品は、実験的にリユース品として再流通させる取り組みも行っている。

■回収の概要
期間:7月7日(月)〜7月27日(日)
実施店舗:全国のしまむらグループ900店舗
対象品目:衣料品(他社商品も可)
※下着、靴下、靴、服飾雑貨、寝具類、革製品(合皮含む)は対象外

なお、持ち込み前には洗濯を済ませ、ポケットの中身確認が推奨されている。濡れた衣類や著しく汚れたものは回収対象外であり、持ち込み品の返却は不可。

The post しまむらグループ、900店で期間限定の衣料品回収 カイタック「ムダゼロ」と連携 appeared first on WWDJAPAN.

創業家の29歳が立ち上げた「ゲス ジーンズ」 ストーンウォッシュ、ヒップホップの次はサステナブルへ

PROFILE: ニコライ・マルシアーノ

ニコライ・マルシアーノ
PROFILE: 2014年に17歳で「ゲス」にインターンとして入社。デニム製品の開発に注力。入社後3カ月で学校を辞め、「ゲス」でのキャリアに身を捧げる。23年までに新規事業開発統括責任者に就任。24年にデニムプロダクトに焦点を当てた「ゲス ジーンズ」を始動

「ゲス(GUESS)」が、ブランドの出発点であるデニムに再び光を当てる展示を東京・原宿で開催中だ。会期は7月12日まで。40年以上にわたるブランドの軌跡をたどる本展示では、軽石を使った加工法“ストーンウォッシュ“の導入や、1990年代のカルチャーアイコンたちと共に成長した変遷を辿る。最終パートでは、「ゲス」のこれからを示す象徴として、パートナー企業のジノロジア社と共同開発した最新技術“ゲス エアウォッシュ“を展示。これは従来の水や化学薬品の使用を大幅に削減した加工技術で、「ゲス」がサステナビリティを軸に掲げて進化していることを示す。その変革において現在旗振り役を務めるのが、創業者ポール・マルシアーノ(Paul Marciano)の息子、ニコライ・マルシアーノ(Nicolai Marciano)だ。ニコライはデニムプロダクトに焦点を当てた新ライン「ゲス ジーンズ(GUESS JEANS)」を2024年に立ち上げた。サステナビリティをコアに据え、ブランドのヘリテージを次世代に伝えるミッションを担うニコライにそのビジョンと挑戦を聞いた。

WWD:「ゲス ジーンズ」を立ち上げるに至った背景を教えてほしい。

ニコライ・マルシアーノ(以下、マルシアーノ):僕のミッションは、次世代のオーディエンスにリーチすることだ。デニムブランドとして始まった「ゲス」は、40年以上の歴史を通じてライフタイルブランドに成長した。今ではバッグやアイウエア、フレグランスまで25以上のカテゴリーを有している。その進化はすばらしいことだけど、一方でデニムブランドとしてのアイデンティティーが僕らの世代には伝わっていないことが課題だった。僕にとっては「ゲス」と言えばデニム。僕が17歳で「ゲス」で働き始めた最初の3年間はほぼ毎日デニムの加工場に通っていた。今回の展示でも触れているようにデニムは「ゲス」のルーツと未来に向けた方向性を語る上で重要なツールだと考えた。

WWD:「ゲス ジーンズ」ではサステナビリティを大きく打ち出した理由は?

マルシアーノ:ただ、それが“スタンダード“であるべきことだから。100カ国で約2000店舗を構えるブランドとしてサステナビリティを追求する責任がある。サステナビリティは今後ブランドが業界を牽引する存在として向かうべき方向であることは間違いない。「ゲス」では20年以上前からサステナビリティに取り組んできた実績があるから、「ゲス ジーンズ」を始めようとした際にも、生地やトリム、加工の方法まで全て必要な選択肢がそろっていたんだ。

WWD:サステナビリティがスタンダードであるという価値観は誰から教わったもの?

マルシアーノ:会社のカルチャーがもともとそうだったのだと思う。僕の生活はいつも「ゲス」が中心にあった。その中でサステナビリティという考え方は、父や会社の中でも常に話題にされてきた記憶があるし、ロサンゼルスという土地柄もあると思う。“エコ“や”環境保護“にすごく敏感なカルチャーを持っている場所で育って自然とそういう感覚を育んできたのだと思う。

WWD:必要な選択肢は全てそろっていたとはいえ、製造工程を大きく変えるのは難しい局面もあったのでは。

マルシアーノ:もちろん。すごく大変だった。“エアウォッシュ“は既存の機械では対応できないから、取引先の工場に出向いて、「これが僕たちの新しいやり方だから」と直接伝えに回った。ありがたいことに、みんな僕たちの考えに共感してくれて、未来に対して投資する決断をしてくれたんだ。強いパートナーシップがあったからこそ乗り越えられたと思う。クリエイティブ面でもたくさんの課題があった。当初は本当にシンプルな製品しか作れなくて、量も生産できなかった。でも、そこを諦めたくなかった。自分のチームにも、技術チームにも、限界を突破しようと言い続けた。だって、50型あるうちの2型が“エアウォッシュ“では意味がない。それなら僕はやりたくないとも言った。僕にとっては、きちんと規模感を持ってインパクトを出すことが重要だから。最初は苦しかったけど、同時にものすごい速さでテクノロジーも改良されて、乗り越えることができた。

WWD:サステナブルな製品は価格が上がりやすいが、「ゲス ジーンズ」では通常よりも価格を抑えたと聞いた。

マルシアーノ:手に取りやすい価格設定も妥協できないポイントだった。最初に話した通り、僕のミッションは新しい世代にブランドを届けることだから。たとえば18歳くらいの子が、品質がしっかりしたかっこいいデニムを買えて、しかも「これは環境にも配慮された製品なんだ」と感じられるような商品を作りたかった。品質、価格、サステナビリティの3つをそろえているブランドは多くない。それをパートナーと一緒に挑戦できていることを、すごく誇りに思っている。

WWD:サステナビリティの観点で、今後さらに改善したいポイントは?

マルシアーノ:デニムにおける最大の環境負荷は水。今後のステップとしては、工場レベルで水のリサイクルを導入すること。開発ラボではもう実現しているけど、それを全体の生産に広げていけば、99%まで削減できる。

「ゲス ジーンズ」をキャンバスにコミュニティーを作りたい

WWD:VERDYをチームに迎えた背景も教えてほしい。

マルシアーノ:彼とはもう10年来の付き合いになる。ファッションウイークや「コンプレックスコン」、いろんな場所で出会う中で、共通の友人も多くて自然とつながった。僕にとってファッションを考える上ですごく大事なのが、カルチャーの視点。VERDYはまさに、グローバルなカルチャーを体現している人物。だから僕が「日本をブランドの中心に据えたい」って考えたとき、最初に頭に浮かんだのがVERDYだった。彼となら一緒に何か最高のことができると思ったし、ブランドのメッセージをちゃんと表現してくれる確信があった。彼の発信はいつもポジティブでエネルギーがあって、誠実。僕が目指したい「ゲス」の方向性とも重なった。これからも音楽やアート、いろんな人たちと手を組んで「ゲス ジーンズ」の“エコシステム“を作っていきたい。つまり、ただプロダクトを作るだけではなくて、コミュニティーを育てるイメージ。今回オープンしたショップでは、VERDYが選んだブランドがコラボしてくれたけど、「ゲス ジーンズ」がキャンバスになって、いろんなアーティストやブランドが自由に「ゲス」という土台をリミックスできる仕組みができたら面白いと思う。

WWD:“ザ ネクスト 40 イヤーズ オブ デニム“展で伝えたいメッセージは。

マルシアーノ:デニムブランドとして始まった「ゲス」が、築いてきたものは時代を超えて通用する普遍的なツールだと信じている。そこに新しいテクノロジーやイノベーションが融合されて、未来に向けて大きく踏み出そうとしている。そんな「ゲス」を360°体験できる場所になっていたらうれしい。

■「ゲス ジーンズ」“ザ ネクスト 40 イヤーズ オブ デニム”開催概要

日程:7月4〜12日
時間:月〜木・日曜日 11:00〜20:00 / 金・土曜日 11:00〜21:00
場所:ヨドバシJ6ビル
住所:東京都渋谷区神宮前6-35-6
入場料:無料
※7月4日の営業時間は13:00〜

The post 創業家の29歳が立ち上げた「ゲス ジーンズ」 ストーンウォッシュ、ヒップホップの次はサステナブルへ appeared first on WWDJAPAN.

6月のサステナ取材 無印のESG会見やカシミヤの新ブランド、人事部主導のリサイクル

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今週は最近の取材から印象的だった出来事を振り返ります。無印良品による初のESG説明会で語られた「リサイクルはエモーショナルな行為」という清水社長の言葉や、新設された再エネ事業会社「ムジエナジー」について。さらに、ロンハーマンの展示会で出会った内モンゴルの牧場と連携してカシミヤの持続可能性に挑む新ブランドや、TDKが人事部主導で進めたユニフォームのリサイクルプロジェクトまで、サステナビリティに取り組む人たちの言葉を中心に振り返ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 6月のサステナ取材 無印のESG会見やカシミヤの新ブランド、人事部主導のリサイクル appeared first on WWDJAPAN.

6月のサステナ取材 無印のESG会見やカシミヤの新ブランド、人事部主導のリサイクル

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今週は最近の取材から印象的だった出来事を振り返ります。無印良品による初のESG説明会で語られた「リサイクルはエモーショナルな行為」という清水社長の言葉や、新設された再エネ事業会社「ムジエナジー」について。さらに、ロンハーマンの展示会で出会った内モンゴルの牧場と連携してカシミヤの持続可能性に挑む新ブランドや、TDKが人事部主導で進めたユニフォームのリサイクルプロジェクトまで、サステナビリティに取り組む人たちの言葉を中心に振り返ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 6月のサステナ取材 無印のESG会見やカシミヤの新ブランド、人事部主導のリサイクル appeared first on WWDJAPAN.

メルカリが新メディア「サーキュラーエコノミー総研」を公開 調査・研究機能も

メルカリは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現のための調査・研究機能を持つメディア「サーキュラーエコノミー総研 by mercari」(以下、CE総研)を公開した。

同メディアはフリマアプリの社会的影響、二次流通市場の可能性を探る「メルカリ総合研究所」とリコマース市場の影響を探求してきた「リコマース総合研究所」の活動を統合・発展させたもの。サーキュラーエコノミーを社会全体で本格的に推進するべく、事業者、行政、研究者、生活者といった多様なステークホルダーと連携する。また客観的かつ多角的な調整・研究を推進するため、初期の共同パートナーとして京都大学大学院医学研究科社会疫学分野の近藤尚己教授と慶應義塾大学商学部の山本晶教授を迎える。捨てるを減らし、持続可能な社会を実現するための知見を発信していく。

メルカリ、ニッセイ基礎研究所共同調査によれば、日本の家庭に眠る不要品、いわゆる「隠れ資産」は推計約66兆円に上るという。

The post メルカリが新メディア「サーキュラーエコノミー総研」を公開 調査・研究機能も appeared first on WWDJAPAN.

デンマークのバイオ企業がEUから約13億円調達 化粧品向け石油代替素材の商業化で

デンマーク発のバイオベンチャー企業セルジー(CELLUGY)はこのほど、欧州委員会から環境・気候変動対策を支援するためのLIFEプログラムを通じて810万ユーロ(約13億円)の助成金を受領した。対象となったのは同社の「バイオケア・フォー・ライフ(BIOCARE4LIFE)」プロジェクトで、今回の資金調達により、石油代替原料となる新素材“エコフレクシー(EcoFLEXY)”の生産体制を増強し、商業化を本格化させる。

バイオ由来の新素材
“エコフレクシー”の革新性

セルジーが開発した新素材“エコフレクシー”は、セルロースをベースとしたレオロジー調整材(質感の調整や安定化のために添加する成分)で、化粧品業界で広く使用されるマイクロプラスチックと石油由来原料に代わるサステナブルな選択肢を提供する。完全バイオベースの同素材は、生分解性と競争力のある価格を持つ高性能なレオロジー調整材として開発した。

同社は声明で、「“エコフレクシー”は、有害なマイクロプラスチックとして知られる合成高分子ポリマーのカルボマーを置き換えられるように設計した。化粧品産業における有害化学物質使用と環境負荷を大幅に減らすことができる。優れた性能と質感により、サステナビリティとイノベーションの観点で急速に変化するニーズに対応し、大量生産可能で高効率の製造プロセスを実現している」とコメントした。

マイクロプラスチックに広がる懸念
調整材市場の約70%が石油由来に依存

同社は続けて、「フェイシャルスクラブや液体石けんなどパーソナルケア製品の多くは、マイクロプラスチックを放出する可能性があり、環境汚染に悪影響を及ぼしている。最近の研究では、マイクロプラスチックが吸入や経口摂取、皮膚接触を通じて人体に侵入する可能性が示唆されており、その影響について懸念が広がっている」と説明した。しかし同社は、全てのパーソナルケア製品にレオロジー調整剤が不可欠だといい、28億ユーロ(約4731億円)規模のレオロジー調整剤市場で、約70%が欧州連合(EU)の化学物質管理規制であるリーチ(REACH)規則が指定する石油由来のカルボマーとアクリレートに依存していると指摘した。

“エコフレクシー”は、「バイオケア・フォー・ライフ」プロジェクトの完了までに年間259トンのマイクロプラスチック放出を防止し、34年までに同1289トンの削減まで拡大する見込みだという。セルジーは、EUのマイクロプラスチック添加製品の販売禁止措置と米国のPFAS(永久に残る化学物質)規制により、ビューティ業界が約120億ユーロ(約2兆277億円)の損失を受ける可能性があるとの報告を踏まえ、(代替原料に切り替える)タイミングが重要だと述べた。

化粧品業界の変革には
石油由来を上回る性能が課題

セルジーのイザベル・アルヴァレス・マルトス(Isabel Alvarez-Martos)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は、「単に持続可能性を追求するだけでは不十分だ。真の課題はテクスチャーや機能性、ユーザー体験などの性能において石油化学製品を上回るソリューションを提供し、同時に大量生産可能で運用効率の高いものを実現しなければならない。意図が良いだけでは業界の変革は起こらない。“エコフレクシー”のような高品質な代替品が必要で、化粧品ブランドが持続可能性を選択するのを容易にすることが重要だ。バイオベース素材が伝統的な原料の性能と経済性を同等か上回るまで、人間の健康と地球を守るための変革は実現しない」と語った。

「バイオケア・フォー・ライフ」プロジェクトは、専門家からなるコンソーシアムが“エコフレクシー”の商業化を目的に運営する。参画企業には、循環型経済ソリューションと環境影響評価に特化したコンサルティング会社のザ・フットプリント・ファーム(THE FOOTPRINT FIRM)や、データ管理と機械学習、AI駆動型プロセス最適化を手掛けるスタートアップのサイ・トゥー・サイ(SCI2SCI)が名を連ねる。

ザ・フットプリント・ファームのウィル・ナーン(Will Nunn)=マネージャーは、「このプロジェクトは、パーソナルケア業界におけるよりサステナブルな製造への真の進展を示している。プロジェクトの技術革新と持続可能性の検証を組み合わせたアプローチは、“エコフレクシー”の市場参入における優位性を強固にし、EUのより資源効率の高い経済への移行を支後押しする」と述べた。サイ・トゥー・サイのアンジェリーナ・レスニコワ(Angelina Lesnikova)CEOは、「バイオテクノロジーソリューションのスケールアップは簡単ではないが、そこに真の価値が生まれる。われわれは、サステナブルな“化学”を、経済的に魅力があり環境的に不可欠なものにする可能性を持っている」と述べた。

The post デンマークのバイオ企業がEUから約13億円調達 化粧品向け石油代替素材の商業化で appeared first on WWDJAPAN.

TDK、電子部品製造の廃材から作業服を製作 東レ・オンワードと協業で実現


TDKは、自社の電子部品製造工程で廃棄されるフィルムをリサイクルし、社員の作業服として再生する取り組みを始動した。東レおよびオンワードコーポレートデザインとの協業により、積層セラミックコンデンサの製造過程で排出される使用済みフィルムに特殊処理を施し、再生糸から生地を製造。夏用の上着として縫製し、2025年6月より岩手県の北上工場にて導入を開始している。

現場と人事が手を組んだ“着る資源循環”

この取り組みは、製造現場から「使用済みフィルムを作業服に活用できないか」という声が上がったことが出発点だったという。TDKでは2022年から「フィルム to フィルム」、つまり製造に使ったフィルムを洗浄・再生し、再び工程で使用するリサイクルスキームを模索してきたが、それに加えて作業服への活用が検討され始めたのは2023年。ちょうどその時期、TDKでは全国の作業服をリニューアルするタイミングを迎えていたこともあり、人事部が主導するかたちで構想が本格化した。

作業服は、現場オペレーターだけでなく技術開発、設計、人事総務など工場内で勤務するすべての社員が着用する。日常的に身に着けるものだからこそ、環境への関心を高める象徴的な取り組みとして、社内でも位置づけられているという。

“原料メーカー”としての意識が支える品質保証体制

今回の作業服リサイクルでTDKは、原料の段階から高品質を担保する体制作りに力を入れた。プロジェクト発表の記者会見での「私たちが原料メーカーになる」という言葉は、TDKが単に廃材を供給するのではなく、原料品質の責任を自らが負うという立場への転換を意味する。この思想のもと、TDKは製造工程で排出されたフィルムからセラミック残留物などの微細な不純物を完全に除去するため、自社でスリッター機を新たに開発・導入した。これにより、従来は人の手では選別しきれなかった“見えない汚れ”まで取り除き、リサイクル原料としての安定供給を可能にしている。

東レは、TDKから提供されたこの高純度のフィルムを原料とし、独自のメカニカルリサイクル処理を施したうえでチップ化し、再生糸へと加工。さらに、グループおよび協力企業との連携により、生地の生産、染色、仕上げまでを一貫して管理し、高いトレーサビリティと現行製品と同等の品質を実現した。オンワードコーポレートデザインは、2000社以上のユニフォーム納入実績で蓄積された知見を活かし、着用時の快適性と耐久性を兼ね備えた夏用作業上着を完成させた。吸水速乾性やストレッチ性といった機能も、従来品と同様に確保されている。

社員15000人への展開は段階的に

今回のリサイクル作業服は、まず岩手県・北上工場で一部の導入からスタートしている。全国で作業服を着用するTDK社員は約15000人にのぼるが、既存在庫の消化を待って、順次導入していく予定だという。TDK全体では年間5000~6000着が新たに製造・更新されていることから、今後数年で着実に拡大していく見通しだ。

また、同社が目標とするのは、自社で排出されたフィルムのうち「20%を自社の工程に再活用する」というスキームの確立である。ただし、現時点では数%にとどまっており、技術的な検証と品質評価が進行中。中長期的な目標として、製造工程のキャリアフィルムとしての活用など、より本質的な“循環”の実現に向けた挑戦が続いている。

なお、TDKの製造工程からは月に数百トン規模で使用済みフィルムが排出されているが、その多くはペットボトル業界など、より使用量の大きい外部産業への原料供給にも転用される予定だという。これは「自社完結」よりも「地球規模での資源有効利用」を優先する判断でもある。

The post TDK、電子部品製造の廃材から作業服を製作 東レ・オンワードと協業で実現 appeared first on WWDJAPAN.

工芸ミャクミャク完売続出 165万円や55万円の超絶技巧ミャクミャクも

中川政七商店が大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」とコラボしたアイテムが売れている。職人技とユーモアが光る品ぞろえで、実用的な豆皿やふきんだけでなく、165万円の「漆のミャクミャク」をはじめ、55万円の「鍋島焼のミャクミャク」など超絶技巧の製品が高額にもかかわらず、抽選受付に応募が殺到したという。会場販売でも「多くの製品が開幕1週間で完売の気配が出はじめ、追加生産を決めた」ほど反響を呼んでいる。超絶技巧シリーズ(生産数非公開)の追加生産分は、ほぼ完売だという。

この取り組みは、単なる“キャラクターグッズ”の枠を超えた、日本の工芸を次世代につなぐ挑戦でもある。100年前の1925年に開催されたパリ万博では美術工芸品が「日本の最先端のものづくり」として数多く展示され、中川政七商店も麻織物のハンカチーフを出展した。同社は今回、100年振りに万博で工芸を紹介している。プロジェクトを担当した羽田えりな商品部ディレクター・デザイナーに聞く。

WWD:工芸を大阪万博で紹介しようと考えた理由は?

羽田えりな商品部ディレクター・デザイナー(以下、羽田):「工芸」という言葉はしばしば“渋い”“高価”“扱いづらい”といった印象を持たれがちで、興味のある方にしか見てもらえないという現状がありました。万博は世界中から多くの人が訪れる機会であり、工芸に触れてもらえる絶好のチャンスだと考えました。「ミャクミャク」というフォーマットに落とし込むことで、楽しい、可愛い、面白いと興味を持ってもらえるきっかけになればと思い企画しました。

WWD:製品はどのように構成しましたか?

羽田:2つの軸を考えました。1つ目は“超絶技巧”シリーズで、高度な工芸技術で表現したオブジェ。ミャクミャクという同じフォーマットで、技法の違いを知ってもらえるようなものを提案しようと考えました。ミャクミャクの「細胞と水がひとつになり誕生したふしぎな生き物」という背景と、万博のコンセプト「未来社会を共創」から「水と共創する工芸」をコンセプトに水と関係のある工芸を選びました。たとえば、漆は艶やかで潤うような見た目の水っぽさはもちろんですが、乾燥させるのに水分が欠かさなかったり、漆と人間の皮膚の水分量が近かったりと、漆と水とは切ってもきれない関係にあることがわかりました。海外で漆が「ジャパン」と呼ばれているくらい日本を代表する工芸だったこともあります。

もう一つは“暮らしに取り入れやすい雑貨”で初めて工芸に触れる方にも親しみやすい価格帯の暮らしの道具を12種提案しました。

WWD:製品ラインアップを考えるうえで大事にしたことは?

羽田:全体のコンセプトを「初めましての日本の工芸」とし、「知恵から生まれた工芸」「愛でる工芸」「進化する工芸」という3つのサブテーマを設けて、日本の工芸の奥深さや美意識、技術の進化を世界に発信することを目指しました。

「知恵から生まれた工芸」は素材特性を活かした製品で、たとえば、ふきん。目が粗い「かや織」を用いており吸水性に優れていて丈夫です。多様な形で包める風呂敷も知恵から生まれたアイテムです。「愛でる工芸」は小さなものを大切にする日本の美意識を表現していて、豆皿や手のひらにのせて愛でることができるだるまや鈴などを提案しました。「進化する工芸」は超絶技巧シリーズで表現しています。

WWD:超絶技巧シリーズは実用的な工芸品を得意とする中川政七商店としても新しい挑戦だったのでは?

羽田:今回制作を担ったのは、当社と長年信頼関係を築いてきた全国各地の工芸メーカーで、その共通点は優れた技術を持つだけでなく「変化に前向き」であることでした。ミャクミャクの形状はユーモラスですが再現するには高度な技術が求められます。話を持ち掛けたのは23年夏。最初は「これは無理かもしれない」と頭を抱えながらも「なんとか形にしてやろう」という職人魂で、試行錯誤を重ねることで実現しました。完成後には「自分たちの技術のすばらしさを再確認できた」「同業者から高い評価を受けた」「万博以降の自社のものづくりにも良い影響を与えた」という声があり、今回のプロジェクトを通じて誇りが育まれ、励みになったことは大きな成果だと感じています。

WWD:特に印象に残っているエピソードを教えてください。

羽田:「漆のミャクミャク」です。漆は乾燥に時間がかかるうえ、温度や湿度の微妙な変化が仕上がりに影響を与える素材です。制作終盤になったころ、「このままでは良い仕上がりにならないかもしれない」と職人から連絡が入り、急きょ塗り直すことになりました。職人の“勘”に基づく判断で、私たちが見ても差がわからない程度のものだったかもしれませんが、職人の技術への誇りと誠実さを感じる出来事でした。ギリギリまで工程を調整し、スタッフが直接受け取りに行くという対応を経て、なんとか万博のプレオープンに間に合わせることができました。

完売続出。老若男女に届いた「語れる製品」

WWD:特に好評なアイテムは?

羽田:販売状況はまさに想定以上。開幕直後から売れ行きは加速し1週間後には完売の兆しが出るほどで追加生産を行い、4月中には超絶技巧シリーズ第2弾の受注を締め切る事態になりました。特に「鍋島焼」が人気を集めました。超絶技巧シリーズの購入者は全て日本国内の方で、年代も20代から70代まで幅広く、キャラクター人気に支えられつつも「万博の記念に残したい」「行けなかった人に思いを届けたい」といった“記憶”を形にしたいという購入動機が多かった点も特徴でした。

一方、手に取りやすい価格帯の製品は、有田焼の豆皿やおミャクじが特に好評です。ミャクミャクの造形を手書きで表現した有田焼の豆皿は、伝統的な有田焼の技法を現代的に解釈してミャクミャクを巧みに取り入れたギミックがウケました。サンプル段階で社内からも好評で好感触でしたが、最も動きが早い製品でした。「工芸だからこそ出せるゆらぎやにじみが魅力」という声も多く細部へのこだわりが評価されました。

WWD:今回の取り組みの手応えは。

羽田:私自身「将来このミャクミャクを手にして、万博の記憶を語り合ってもらえたら」という気持ちで取り組んでいたのでお客さまからの声が届いたときは嬉しかったですね。当社としても100年振りに万博に参加し、新たな歴史を刻む機会になりました。工芸の歴史に新たな1ページを刻めたと感じています。

 

The post 工芸ミャクミャク完売続出 165万円や55万円の超絶技巧ミャクミャクも appeared first on WWDJAPAN.

良品計画とJERA、再生可能エネルギーの新会社「ムジエナジー」を設立へ

良品計画とエネルギー大手JERAは6月25日、共同出資による再生可能エネルギー発電事業会社「ムジエナジー」を設立すると発表した。新会社の設立は2025年9月を予定しており、出資比率は良品計画が80%、JERAが20%。まずは太陽光発電設備の開発から着手し、再生可能エネルギーの創出とCO₂排出量の削減を目指す。

この取り組みは、良品計画の脱炭素経営を本格化させる一手と位置づけられている。初年度には13メガワット規模の太陽光発電設備の開発を予定しており、これは同社の電力使用量の約20%に相当。年間で約8000トンのCO₂排出量削減が見込まれており、主に無印良品のテナント店舗における電力使用の環境負荷軽減に活用される予定だ。

「環境価値」を可視化・活用するバーチャルPPAの仕組み

ムジエナジーで創出された再生可能エネルギーの「環境価値」は、JERAの子会社であるJERA Crossを通じて、バーチャルPPA(電力の物理的な供給を伴わず、環境価値のみを長期契約で取引する仕組み)という形で良品計画に供給される。一方、実際の電力は日本卸電力取引所(JEPX)に供給される。良品計画はこの「環境価値」を、無印良品のテナント店舗での電力使用におけるCO₂排出量削減に役立てる方針だ。

良品計画は、2030年までに温室効果ガス排出量(スコープ1・2)を2021年度比で50%削減する目標を掲げている。これまでも自社店舗への太陽光パネル設置や、再エネメニューへの切り替えなどを進めてきたが、今回の発電事業への参入は、より安定的かつ持続可能な再生可能エネルギー導入を実現するための大きな一歩となる。

一方、JERAは、燃料の上流・調達から発電、電力・ガスの卸販売までを一貫して担うエネルギー企業であり、2050年までに自社事業からのCO₂排出ゼロを目指す「JERAゼロエミッション2050」構想を掲げている。子会社のJERA Crossは、24時間365日カーボンフリーな電力の提供や、企業のGX(グリーントランスフォーメーション)推進を支援する役割を担っている。

The post 良品計画とJERA、再生可能エネルギーの新会社「ムジエナジー」を設立へ appeared first on WWDJAPAN.

「パタゴニア」が環境省と協定締結 “流域思考”の海洋再生プロジェクトを始動

アウトドアブランド「パタゴニア(PATAGONIA)」を運営するパタゴニア日本支社は、環境省と協定を締結し、「Ridge to Reef(リッジ トゥー リーフ)」プロジェクトを始動した。同省が推進する「戦略的『令和の里海づくり』基盤構築支援事業」と連携し、「流域思考で日本の海洋再生を目指す」(発表リリースから)。プロジェクト始動を記念し、7月23日にシンポジウムを紀尾井町カンファレンスで開催する。

日本の沿岸生態系は「高度経済成長期の埋め立てなどにより大幅に縮小し、その生物多様性は長期的な悪化傾向にある」。沿岸生態系の健全性回復のために、「海域だけでなく、その源流となる陸域を含めた流域全体を見据えた広域的視点が不可欠」とし、“流域思考”というのはそれを指した言葉。

「Ridge to Reef」プロジェクトでは、「ブランドが培ってきた支援の仕組みを活用し、沿岸域の再生に取り組む地域の人々を、陸域とのつながりという視点から支援する」。そこで得た知見や教訓を整理・共有し、「陸域と海域を一体的に捉えるアプローチで持続可能な海洋環境の実現に貢献する」。

7月23日に開催するシンポジウムには、浅尾慶一郎環境大臣、マーティ・ポンフレー (Marty Pomphrey)パタゴニア日本支社支社長が登壇し協定に著名するほか、鳥取・大山で流域思考の海洋再生に取り組んでいる大原徹 一般社団法人Bisui Daisen代表理事、熊本県立大学の島谷幸宏 特別教授らが講演を行う。

◼️Ridge to Reef:Restoring Our Ocean−流域思考でひらく海洋再生の道−
日時:2025年7月23日 14〜17時
会場:紀尾井町カンファレンス
住所:東京都千代田区紀尾井町1-4東京ガーデンテラス紀尾井タワー4階
参加費:無料(事前登録制)
申込締切:7月10日

The post 「パタゴニア」が環境省と協定締結 “流域思考”の海洋再生プロジェクトを始動 appeared first on WWDJAPAN.

「パタゴニア」が環境省と協定締結 “流域思考”の海洋再生プロジェクトを始動

アウトドアブランド「パタゴニア(PATAGONIA)」を運営するパタゴニア日本支社は、環境省と協定を締結し、「Ridge to Reef(リッジ トゥー リーフ)」プロジェクトを始動した。同省が推進する「戦略的『令和の里海づくり』基盤構築支援事業」と連携し、「流域思考で日本の海洋再生を目指す」(発表リリースから)。プロジェクト始動を記念し、7月23日にシンポジウムを紀尾井町カンファレンスで開催する。

日本の沿岸生態系は「高度経済成長期の埋め立てなどにより大幅に縮小し、その生物多様性は長期的な悪化傾向にある」。沿岸生態系の健全性回復のために、「海域だけでなく、その源流となる陸域を含めた流域全体を見据えた広域的視点が不可欠」とし、“流域思考”というのはそれを指した言葉。

「Ridge to Reef」プロジェクトでは、「ブランドが培ってきた支援の仕組みを活用し、沿岸域の再生に取り組む地域の人々を、陸域とのつながりという視点から支援する」。そこで得た知見や教訓を整理・共有し、「陸域と海域を一体的に捉えるアプローチで持続可能な海洋環境の実現に貢献する」。

7月23日に開催するシンポジウムには、浅尾慶一郎環境大臣、マーティ・ポンフレー (Marty Pomphrey)パタゴニア日本支社支社長が登壇し協定に著名するほか、鳥取・大山で流域思考の海洋再生に取り組んでいる大原徹 一般社団法人Bisui Daisen代表理事、熊本県立大学の島谷幸宏 特別教授らが講演を行う。

◼️Ridge to Reef:Restoring Our Ocean−流域思考でひらく海洋再生の道−
日時:2025年7月23日 14〜17時
会場:紀尾井町カンファレンス
住所:東京都千代田区紀尾井町1-4東京ガーデンテラス紀尾井タワー4階
参加費:無料(事前登録制)
申込締切:7月10日

The post 「パタゴニア」が環境省と協定締結 “流域思考”の海洋再生プロジェクトを始動 appeared first on WWDJAPAN.

「いいことしてても、伝わらなきゃもったいない」――エシカルと“見える化”の話

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

本日のゲストは先週に引き続き、再エネを中心とした脱炭素支援事業「みんな電力」などを手掛けるUPDATER(アップデーター)から山浦誉史さんをお迎えしました。ファッション業界におけるサステナビリティの「透明性」とは何か――。情報開示の重要性と日本的価値観とのギャップについて掘り下げます。ファッション領域のSXサービス「シフトシー(Shift C)」などのサービスを通じて企業と消費者をつなぐ現在の取り組み、そしてデジタル製品パスポート(DPP)など国際規制への対応を語る中で見えてきたのは、「言わないことが美徳」とされがちな日本の文化や業界慣習に一石を投じる姿勢。山浦さんの言葉から、これからの“伝える責任”のあり方を考えます。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 「いいことしてても、伝わらなきゃもったいない」――エシカルと“見える化”の話 appeared first on WWDJAPAN.

「いいことしてても、伝わらなきゃもったいない」――エシカルと“見える化”の話

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

本日のゲストは先週に引き続き、再エネを中心とした脱炭素支援事業「みんな電力」などを手掛けるUPDATER(アップデーター)から山浦誉史さんをお迎えしました。ファッション業界におけるサステナビリティの「透明性」とは何か――。情報開示の重要性と日本的価値観とのギャップについて掘り下げます。ファッション領域のSXサービス「シフトシー(Shift C)」などのサービスを通じて企業と消費者をつなぐ現在の取り組み、そしてデジタル製品パスポート(DPP)など国際規制への対応を語る中で見えてきたのは、「言わないことが美徳」とされがちな日本の文化や業界慣習に一石を投じる姿勢。山浦さんの言葉から、これからの“伝える責任”のあり方を考えます。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 「いいことしてても、伝わらなきゃもったいない」――エシカルと“見える化”の話 appeared first on WWDJAPAN.

ゴールドウインが自社製品のクリーニングと保管サービスを開始、テントや寝袋にも対応

 ゴールドウインは富山本店のリペアセンターにて、製品の修理からクリーニング、保管までを請け負う「クリーニング・ストレージ」サービスを開始した。

 同社は現在、年間2万点を超える製品の修理に対応している。中でもキッズ製品や「ゴールドウイン(GOLDWIN)」ブランド製品は無料でリペアを行なっており、恵比寿やグランフロント大阪の「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」店舗では常設型のリペアサービスを設置している。

 特にアウトドア環境で使用された製品は、時間の経過とともに小さな破れや擦れが生じたり、汚れによって本来の機能が低下することがある。今回開始するサービスでは、ダウンジャケットやテント、寝袋など、メンテナンスやクリーニングをせずにそのまま保管しがちな製品にリペアを施し、クリーニングをして保管する。衣類はリペアとクリーニングをセットで提供し、希望によって保管を行う。またテントや寝袋などのギアはリペアがなくてもクリーニング後に保管のサービスを受けることが可能だ。

価格はダウンジャケットのクリーニングが7,480円、寝袋が8,500円、テントはインナーテントのクリーニングコースで1万2000円〜。保管は最大9ヶ月まで可能で、一点につき660円(いずれも税込)。スマートフォンなどから申し込み可能で、集荷・送料は無料。

The post ゴールドウインが自社製品のクリーニングと保管サービスを開始、テントや寝袋にも対応 appeared first on WWDJAPAN.

ファッション産業の透明性に情熱を注ぐUPDATER山浦誉史さんの意外なこれまで

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

本日のゲストは、再エネ事業「みんな電力」などを手掛けるUPDATER(アップデーター)から山浦誉史さんをお迎えしました。山浦さんは現在、SXコンサル&イノベーション本部に所属し、ファッション領域のSXサービス「Shift C」にて国内のアパレル企業に向けたサステナビリティ・ガイドツール「グッドメジャーズ(good measures)」などの提供を担当しています。前職は、H&Mジャパンでサステナビリティを推進。ファッション業界の変化を現場から見てきた山浦さんのこれまでの歩みを聞きました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ファッション産業の透明性に情熱を注ぐUPDATER山浦誉史さんの意外なこれまで appeared first on WWDJAPAN.

ファッション産業の透明性に情熱を注ぐUPDATER山浦誉史さんの意外なこれまで

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

本日のゲストは、再エネ事業「みんな電力」などを手掛けるUPDATER(アップデーター)から山浦誉史さんをお迎えしました。山浦さんは現在、SXコンサル&イノベーション本部に所属し、ファッション領域のSXサービス「Shift C」にて国内のアパレル企業に向けたサステナビリティ・ガイドツール「グッドメジャーズ(good measures)」などの提供を担当しています。前職は、H&Mジャパンでサステナビリティを推進。ファッション業界の変化を現場から見てきた山浦さんのこれまでの歩みを聞きました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ファッション産業の透明性に情熱を注ぐUPDATER山浦誉史さんの意外なこれまで appeared first on WWDJAPAN.

仏上院、「ファストファッション法案」可決 「シーイン」など対象に広告制限や1点あたり最大10ユーロの課税も

フランス上院は、中国の「シーイン(SHEIN)」や「ティームー(TEMU)」などの“ウルトラ・ファストファッション”と呼ばれるブランドを規制する「ファストファッション法案」をほぼ全会一致で可決した。

同法案では、“ウルトラ・ファストファッション”企業を対象に、EU域外から発送される小包1個あたり2〜4ユーロ(約330〜660円)の課税を行うほか、製品および企業の広告を全面的に禁止する。最終的に、2030年までに1商品あたりの課税上限を10ユーロ(約1651円)に引き上げられる可能性がある。また、20年に施行された売れ残り商品の廃棄を禁止する「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」により、未販売品を「寄付」することで得られる税制優遇も廃止される見通しだ。

なお、広告の全面禁止といった措置については、EUレベルでの承認が必要となるため、フランス政府はまず欧州委員会への通知を行う。その後、最終調整が行われる予定で、成立は早くても9月末から10月が予想される。

一方、シーインは価格に敏感な消費者や低所得世帯を罰するものだと主張。同社のフランス広報担当クエンティン・ルファ(Quentin Ruffat)はAFPの取材に対し、「今回の法案が成立すれば、当社の顧客の財布に直接的な負担を強い、購買力を大幅に低下させることになる」と主張した。同社は、法案のさらなる修正を求めてロビー活動を続ける方針を示している。

可決をめぐっては、“ウルトラ・ファストファッション”の定義が争点となった。原案では、より広義のファストファッションが対象とされていたが、企業側の「地域雇用への貢献」といった主張による強いロビー活動により、内容が一部緩和された。今回の法案では、“ウルトラ・ファストファッション・プラットフォーム”と、実店舗を構えるファストファッションブランドを区別することで、結果的にスウェーデン、アイルランド、スペインといった欧州本社の企業は、実際には中国、インド、バングラデシュなど低賃金国での下請け生産や複雑なサプライチェーンに依存している場合にも規制の適用を免れる形となる。

フランス上院で法案の推進役を務めた共和党所属のシルヴィー・ヴァラント・ル・イール(Sylvie Valente Le Hir)議員は、「我々は明確に線を引いた。規制すべきは“ウルトラ・ファスト・ファッション”。一方フランスに雇用を生み、地域経済とつながりを持つ、国に根付いた手頃なファッションブランドは保護していきたい」と述べた。

法案は今後、施行に向けて細則の整備が進められる見通しだが、「ウルトラ・ファストファッションを規制する法制度としては世界初となり、他国の政策にも影響を与える可能性がある。

The post 仏上院、「ファストファッション法案」可決 「シーイン」など対象に広告制限や1点あたり最大10ユーロの課税も appeared first on WWDJAPAN.

仏上院、「ファストファッション法案」可決 「シーイン」など対象に広告制限や1点あたり最大10ユーロの課税も

フランス上院は、中国の「シーイン(SHEIN)」や「ティームー(TEMU)」などの“ウルトラ・ファストファッション”と呼ばれるブランドを規制する「ファストファッション法案」をほぼ全会一致で可決した。

同法案では、“ウルトラ・ファストファッション”企業を対象に、EU域外から発送される小包1個あたり2〜4ユーロ(約330〜660円)の課税を行うほか、製品および企業の広告を全面的に禁止する。最終的に、2030年までに1商品あたりの課税上限を10ユーロ(約1651円)に引き上げられる可能性がある。また、20年に施行された売れ残り商品の廃棄を禁止する「廃棄禁止及びサーキュラーエコノミーに関する法律」により、未販売品を「寄付」することで得られる税制優遇も廃止される見通しだ。

なお、広告の全面禁止といった措置については、EUレベルでの承認が必要となるため、フランス政府はまず欧州委員会への通知を行う。その後、最終調整が行われる予定で、成立は早くても9月末から10月が予想される。

一方、シーインは価格に敏感な消費者や低所得世帯を罰するものだと主張。同社のフランス広報担当クエンティン・ルファ(Quentin Ruffat)はAFPの取材に対し、「今回の法案が成立すれば、当社の顧客の財布に直接的な負担を強い、購買力を大幅に低下させることになる」と主張した。同社は、法案のさらなる修正を求めてロビー活動を続ける方針を示している。

可決をめぐっては、“ウルトラ・ファストファッション”の定義が争点となった。原案では、より広義のファストファッションが対象とされていたが、企業側の「地域雇用への貢献」といった主張による強いロビー活動により、内容が一部緩和された。今回の法案では、“ウルトラ・ファストファッション・プラットフォーム”と、実店舗を構えるファストファッションブランドを区別することで、結果的にスウェーデン、アイルランド、スペインといった欧州本社の企業は、実際には中国、インド、バングラデシュなど低賃金国での下請け生産や複雑なサプライチェーンに依存している場合にも規制の適用を免れる形となる。

フランス上院で法案の推進役を務めた共和党所属のシルヴィー・ヴァラント・ル・イール(Sylvie Valente Le Hir)議員は、「我々は明確に線を引いた。規制すべきは“ウルトラ・ファスト・ファッション”。一方フランスに雇用を生み、地域経済とつながりを持つ、国に根付いた手頃なファッションブランドは保護していきたい」と述べた。

法案は今後、施行に向けて細則の整備が進められる見通しだが、「ウルトラ・ファストファッションを規制する法制度としては世界初となり、他国の政策にも影響を与える可能性がある。

The post 仏上院、「ファストファッション法案」可決 「シーイン」など対象に広告制限や1点あたり最大10ユーロの課税も appeared first on WWDJAPAN.

高橋アランが体感 「バウム」が取り組む樹木の循環

6月でブランド誕生5周年を迎えた「バウム(BAUM)」は、“樹木との共生”をテーマに掲げるスキン&マインドケアブランドだ。“樹木の恵みを受け取るだけでなく、自然に還していく”というブランドの哲学に基づき、2021年から「BAUM オークの森」(岩手県盛岡市)でオーク(ナラ)の苗木の植樹活動を、昨年からは愛媛県新居浜市に位置する「BAUM ひのきの森」でもひのきの植樹活動を開始。2年目を迎えたこの活動に、モデルの高橋アラン氏が参加した。

「バウム」のパッケージには、木製家具の老舗メーカーであるカリモク家具との協業により家具の製作過程で発生する端材をアップサイクルした木製パーツが使用されている。そのブランド哲学や温かみがありながらもスタイリッシュなたたずまいは、年代・ジェンダーを超えて支持されている。昨年春には、“ハイドロ エッセンスローション n”やスキンオイル“モイスチャライジング オイル n”などの主要スキンケア成分をリニューアル。ひのきの貯水力と、外的ダメージへの防御力に着目し、四国地方の豊かな森で育てたひのきから抽出された樹木由来成分「ひのき水*」を採用した。中味成分においても循環の輪を生み出すことを掲げ、「BAUM ひのきの森」での植樹を行っている。

循環の輪には店舗で育てた苗木も

「バウム」の店頭には苗木を育てる一角がある。その苗は、住友林業の苗木生産施設・本山樹木育苗センター(高知県長岡郡)へ送られ、植樹に適した大きさの苗木になるまで大切に育てられる。種まきから出荷までの期間は、ひのきで約1.5〜2年ほどだという。
アラン氏は、苗木作り(移植)と苗木のコンテナ苗への植え替えを体験した。「こんなに小さなベビーちゃん(幼苗)が大きくなるんですね」と目を輝かせる。「森になるのはきっと80年、100年と先のこと。けれど、生きたものを『いただきます』と手に取るような感謝の気持ちであふれますね」。

トップス 7150円、ジャケット2万2000円、キャップ4180円/以上、サロモン(サロモンコールセンター03-6825-2134)、ネックレス5万8300円、(右手人差し指)天然石リング4万1800円/以上、マリハ(マリハ 03-6459-2572)、その他スタイリスト私物

企業と地域で紡ぐ未来の森

「BAUM ひのきの森」で行われた2回目の植樹式。愛媛県新居浜市、住友林業、資生堂の3社が協定を結び、2.1haの敷地で植樹活動を行っている。ただ植えるだけでなく、下草刈りや獣害よけのネットの設置など丁寧な管理のもと、健やかな森づくりを目指している。植樹には「バウム」ブランドチームのほか、店舗スタッフも参加し、約600本のひのきの苗木を植えた。

トップス1万1000円、キャップ4180円/以上、サロモン(サロモンコールセンター03-6825-2134)、ネックレス5万8300円、ハートチャーム4万700円、(右手人差し指)天然石リング4万1800円/以上、マリハ(マリハ 03-6459-2572)、その他スタイリスト私物
標高約800m、急傾斜の敷地を進みながら笑顔でひのきの苗木を植えるアラン氏。「種から苗になるまで大切に育てる人がいて、『バウム』の店舗でもその苗を育て、さらに育った苗をこうして植えて、森を広げていく──。僕が体験したのは製品になるまでのほんの一部だけれど、その過程に触れることができて、自然と僕たち人間とのつながりを感じ、学ぶことができました」。

樹木との共生で次世代へつなぐ

高橋アラン/モデル
PROFILE:イタリア&ブラジル人の父と 日本人の母のもとに生まれ日本で育つ。天真爛漫な性格の持ち主で、カポエイラやサンバ、トゥアークなどブラジルカルチャーにも精通する。NETFLIX - THE BOYFRIEND -出演後、日本国内のみならず世界中からの反響に応えていくべく、表現者・発信者として日々活動する。音声配信プラットフォーム「Artistspoken(アーティストスポークン)」にて、ポッドキャスト番組「高橋アランのBONCHACHA」を配信中
鮮やかな緑がまぶしい新緑の森を歩きながら、今回の見学や植樹体験を振り返るアラン氏。「苗を育てること、製品にすること、そして植樹。全てがつながっていて、その取り組みに自然へのリスペクトを感じました」と語る。「幼い頃、母とよく家庭菜園をした記憶があります。母とおしゃべりをしながら土に触れていた時間は僕にとって濃く、幸せな思い出です。自然には人と気持ちをつなげる力があるし、こうして森の中にいるだけでとても心地いい。樹木と共生することで、心も暮らしも豊かになることをあらためて実感しました」。
ローションをきっかけに「バウム」を愛用しているというアラン氏。「『バウム』を知ってから自然とのつながりを考えるだけではなく、自分自身の気持ちと向き合う時間が増えたように思います。『バウム』の製品はレフィルを買って、木製パーツをずっと使うことができますよね。経年による木の色味の変化が愛おしいですし、“育てていく”喜びがあります。日々の買い物でも、なるべくレフィルができるアイテムを選ぶようになりました」。

「バウム」の循環ストーリー

「バウム」はブランド立ち上げ当時から一貫して、“樹木は循環する資源の象徴”と考える。業界を超えて、思いに共感するプロフェッショナルと共に樹木を守り、森の循環への取り組みを続けている。「BAUMの森」での植樹活動もその一つだ。パッケージの木製パーツに端材を使用しているオークを育む「BAUM オークの森」と、主要スキンケアの中味成分「ひのき水*」の原料となるひのきが育つ「BAUM ひのきの森」。2つの森には、それぞれ毎年600本ずつ植樹を行っている。
店頭では春夏にオークを、秋冬にはひのきの苗を育てる。スタッフは年に2回の植樹活動にも参加。ブランドが掲げる“循環”を知識だけでなく実体験として理解し、その思いを自らの言葉で顧客に伝える──。川上から川下まで流れる情熱と姿勢で、さらなる循環の輪を広げていく。
*配合目的:保湿・肌保護
PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA
STYLING:KOUKI IWASAKI(UNTLIM)

BAUM LINE公式アカウント友達追加で
森林浴美容®体験スキンケアサンプルプレゼント

問い合わせ先
BAUM お客さま窓口
0120-332-133

The post 高橋アランが体感 「バウム」が取り組む樹木の循環 appeared first on WWDJAPAN.

高橋アランが体感 「バウム」が取り組む樹木の循環

6月でブランド誕生5周年を迎えた「バウム(BAUM)」は、“樹木との共生”をテーマに掲げるスキン&マインドケアブランドだ。“樹木の恵みを受け取るだけでなく、自然に還していく”というブランドの哲学に基づき、2021年から「BAUM オークの森」(岩手県盛岡市)でオーク(ナラ)の苗木の植樹活動を、昨年からは愛媛県新居浜市に位置する「BAUM ひのきの森」でもひのきの植樹活動を開始。2年目を迎えたこの活動に、モデルの高橋アラン氏が参加した。

「バウム」のパッケージには、木製家具の老舗メーカーであるカリモク家具との協業により家具の製作過程で発生する端材をアップサイクルした木製パーツが使用されている。そのブランド哲学や温かみがありながらもスタイリッシュなたたずまいは、年代・ジェンダーを超えて支持されている。昨年春には、“ハイドロ エッセンスローション n”やスキンオイル“モイスチャライジング オイル n”などの主要スキンケア成分をリニューアル。ひのきの貯水力と、外的ダメージへの防御力に着目し、四国地方の豊かな森で育てたひのきから抽出された樹木由来成分「ひのき水*」を採用した。中味成分においても循環の輪を生み出すことを掲げ、「BAUM ひのきの森」での植樹を行っている。

循環の輪には店舗で育てた苗木も

「バウム」の店頭には苗木を育てる一角がある。その苗は、住友林業の苗木生産施設・本山樹木育苗センター(高知県長岡郡)へ送られ、植樹に適した大きさの苗木になるまで大切に育てられる。種まきから出荷までの期間は、ひのきで約1.5〜2年ほどだという。
アラン氏は、苗木作り(移植)と苗木のコンテナ苗への植え替えを体験した。「こんなに小さなベビーちゃん(幼苗)が大きくなるんですね」と目を輝かせる。「森になるのはきっと80年、100年と先のこと。けれど、生きたものを『いただきます』と手に取るような感謝の気持ちであふれますね」。

トップス 7150円、ジャケット2万2000円、キャップ4180円/以上、サロモン(サロモンコールセンター03-6825-2134)、ネックレス5万8300円、(右手人差し指)天然石リング4万1800円/以上、マリハ(マリハ 03-6459-2572)、その他スタイリスト私物

企業と地域で紡ぐ未来の森

「BAUM ひのきの森」で行われた2回目の植樹式。愛媛県新居浜市、住友林業、資生堂の3社が協定を結び、2.1haの敷地で植樹活動を行っている。ただ植えるだけでなく、下草刈りや獣害よけのネットの設置など丁寧な管理のもと、健やかな森づくりを目指している。植樹には「バウム」ブランドチームのほか、店舗スタッフも参加し、約600本のひのきの苗木を植えた。

トップス1万1000円、キャップ4180円/以上、サロモン(サロモンコールセンター03-6825-2134)、ネックレス5万8300円、ハートチャーム4万700円、(右手人差し指)天然石リング4万1800円/以上、マリハ(マリハ 03-6459-2572)、その他スタイリスト私物
標高約800m、急傾斜の敷地を進みながら笑顔でひのきの苗木を植えるアラン氏。「種から苗になるまで大切に育てる人がいて、『バウム』の店舗でもその苗を育て、さらに育った苗をこうして植えて、森を広げていく──。僕が体験したのは製品になるまでのほんの一部だけれど、その過程に触れることができて、自然と僕たち人間とのつながりを感じ、学ぶことができました」。

樹木との共生で次世代へつなぐ

高橋アラン/モデル
PROFILE:イタリア&ブラジル人の父と 日本人の母のもとに生まれ日本で育つ。天真爛漫な性格の持ち主で、カポエイラやサンバ、トゥアークなどブラジルカルチャーにも精通する。NETFLIX - THE BOYFRIEND -出演後、日本国内のみならず世界中からの反響に応えていくべく、表現者・発信者として日々活動する。音声配信プラットフォーム「Artistspoken(アーティストスポークン)」にて、ポッドキャスト番組「高橋アランのBONCHACHA」を配信中
鮮やかな緑がまぶしい新緑の森を歩きながら、今回の見学や植樹体験を振り返るアラン氏。「苗を育てること、製品にすること、そして植樹。全てがつながっていて、その取り組みに自然へのリスペクトを感じました」と語る。「幼い頃、母とよく家庭菜園をした記憶があります。母とおしゃべりをしながら土に触れていた時間は僕にとって濃く、幸せな思い出です。自然には人と気持ちをつなげる力があるし、こうして森の中にいるだけでとても心地いい。樹木と共生することで、心も暮らしも豊かになることをあらためて実感しました」。
ローションをきっかけに「バウム」を愛用しているというアラン氏。「『バウム』を知ってから自然とのつながりを考えるだけではなく、自分自身の気持ちと向き合う時間が増えたように思います。『バウム』の製品はレフィルを買って、木製パーツをずっと使うことができますよね。経年による木の色味の変化が愛おしいですし、“育てていく”喜びがあります。日々の買い物でも、なるべくレフィルができるアイテムを選ぶようになりました」。

「バウム」の循環ストーリー

「バウム」はブランド立ち上げ当時から一貫して、“樹木は循環する資源の象徴”と考える。業界を超えて、思いに共感するプロフェッショナルと共に樹木を守り、森の循環への取り組みを続けている。「BAUMの森」での植樹活動もその一つだ。パッケージの木製パーツに端材を使用しているオークを育む「BAUM オークの森」と、主要スキンケアの中味成分「ひのき水*」の原料となるひのきが育つ「BAUM ひのきの森」。2つの森には、それぞれ毎年600本ずつ植樹を行っている。
店頭では春夏にオークを、秋冬にはひのきの苗を育てる。スタッフは年に2回の植樹活動にも参加。ブランドが掲げる“循環”を知識だけでなく実体験として理解し、その思いを自らの言葉で顧客に伝える──。川上から川下まで流れる情熱と姿勢で、さらなる循環の輪を広げていく。
*配合目的:保湿・肌保護
PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA
STYLING:KOUKI IWASAKI(UNTLIM)

BAUM LINE公式アカウント友達追加で
森林浴美容®体験スキンケアサンプルプレゼント

問い合わせ先
BAUM お客さま窓口
0120-332-133

The post 高橋アランが体感 「バウム」が取り組む樹木の循環 appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロのチャリティーTシャツ、万博の国連パビリオンで難民支援の展示 役所広司も登壇

ファーストリテイリングは6月16〜22日、大阪・関西万博内の国連パビリオンで、難民支援に関する展示を国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)と共同で行っている。6月20日の「世界難民の日」に合わせたもの。「ユニクロ(UNIQLO)」のチャリティーTシャツプロジェクト「ピース・フォー・オール(PEACE FOR ALL)」で新たにコラボレーターに加わった俳優の役所広司氏を招き、16日には同パビリオンで記者会見も開催した。

ファーストリテイリングが「ピース・フォー・オール」を開始したのが2022年。理念に賛同した著名デザイナーやスポーツ選手、俳優、建築家、作家、研究者、キャラクターなど、これまで多種多様な43組とコラボレーションしてきた。Tシャツ(1500円)の販売による利益の全額をUNHCRなど3団体に寄付し、難民や女性、子どもの支援に充てている。

「ピース・フォー・オール」は立ち上げからの3年間で、約719万枚のTシャツを販売し、総額約21億5771億円を寄付した。「お客さまに支援活動に参加いただかないとこの数字にはならなかった。さらに大きな取り組みにしていける可能性があると思っている。皆さんにより参加してもらえる形にしていきたい」と、柳井康治ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員。UNHCRの柏富美子 次期駐日代表は「Tシャツのデザインを気に入って手に取ったお客さまが、そこから難民問題を知り、興味を持つきっかけになっている」と、同取り組みの意義についてコメントした。

「こんどはこんど、今は今」

役所氏は、メジャーリーグで活躍した元野球選手のイチロー氏と共に、このたび新たにコラボレーターに加わった。両氏がデザインに関わったTシャツは6月20日に国内外の「ユニクロ」で発売。それに先駆け、国連パビリオンでは16日から販売している。同パビリオンで「ピース・フォー・オール」Tシャツを購入すると、スペシャルスタンプを押してカスタマイズすることも可能だ。

役所氏は、柳井取締役が個人としてプロデュースした、ヴィム・ベンダース(Wim Wenders)監督による23年公開の映画「パーフェクト・デイズ(PERFECT DAYS)」で、渋谷区のトイレ清掃人である主人公、平山を演じた縁がある。役所氏は同役で、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。

役所氏がデザインに関わった「ピース・フォー・オール」のTシャツは、「パーフェクト・デイズ」の中の2カットと、役所氏自身が「シンプルだけど、僕自身の心にも残った」と話す「こんどはこんど、今は今」という平山のセリフをプリントしたもの。会見で役所氏は、「未来や過去で思い悩むより、今この瞬間を大切に生きていれば、痛みも悩みも消えていくんじゃないのかということを伝えたかった」と、コメント。「(難民問題や厳しい世界情勢に日々接する中で感じるのは)他人の痛みを感じる心は、天性で備わっているものではなく、(相手の状況を思いやって想像するという)訓練をしなければ身につかない。かつて司馬遼太郎さんがそう言っていたが、人との一瞬一瞬の交流の中で、(相手のことを想像し)辛いだろうな、苦しいだろうなと感じることを大切にするといいんだろうなと思っている」と続けた。

新たに「難民映画基金」も開始

会見では、ファーストリテイリングが2001年のアフガン難民への衣料支援以来、20年超にわたって取り組んでいる難民支援についても紹介した。06年にUNHCRとの協働を開始し、11年にグローバルパートナーシップを締結。25年4月末時点で、全世界で1億2210万人いるという難民・国内避難民に対し、ファーストリテイリングは緊急支援、衣料支援、店舗での難民雇用も行っている。

また、ミャンマーからのロヒンギャ難民が100万人暮らすというバングラデシュ・コックスバザールのキャンプでは、難民女性たちの自立支援として縫製トレーニングも実施。バングラデシュにあるファーストリテイリングの協力工場がトレーナーを務め、これまで累計で700人超の女性に縫製トレーニングを行い、キャンプで女性たちに必要とする布ナプキンや生理ショーツを生産している。

新しい難民支援の形として25年1月に立ち上がったのが、「難民映画基金」だ。俳優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)氏らによって創設された同基金に、ユニクロは創設パートナーとして参加、10万ユーロ(約1600万円)を寄付している。難民という境遇にありながら活動を続けてきた映画制作者への支援を実施し、難民問題を映像の力でより幅広い層に届ける狙い。

The post ユニクロのチャリティーTシャツ、万博の国連パビリオンで難民支援の展示 役所広司も登壇 appeared first on WWDJAPAN.

ラスベガスで「ケリング・ジェネレーション・アワード X ジュエリー」授賞式開催、韓国人学生らが受賞

 ケリング(KERING)は同社初となる「ケリング・ジェネレーション・アワード X ジュエリー」の授賞式を、米ラスベガスで開催されたJCKショーで行った。

同アワードは2024年11月にCIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)と共同で立ち上げたもので、ジュエリー業界において環境と社会にポジティブな影響をもたらす次世代のイノベーターを支援・育成することを目的としている。今年は「セカンドチャンス・ファーストチョイス」というテーマのもと、廃棄物に新たな価値を見出すジュエリーデザインが集まった。

22のスタートアップや学生の参加の中から、学生部門では韓国ソウルの弘益大学に在籍するイ・ミンソが受賞。スタートアップ部門では、中国発のジュエリーブランドIanyanが受賞した。イ・ミンソは韓国の伝統打楽器チャングから廃棄されたレザーを用いたジュエリーコレクションを発表。韓国音楽の再解釈に挑戦した。一方Ianyanは、ひび割れたオパールなど完璧でない宝石をあえて選び、「ありのままの美しさ」に焦点を当てたジュエリーを発表した。Ianyanの全てのジュエリーは修理、再構成、変形が可能で、長く使い続けられる工夫が施されている。

授賞式にはケリング傘下のジュエリーブランド「ブシュロン(BOUCHERON)」「ポメラート(POMELLATO)」「ドド(DODO)」「キーリン(QUEELIN)」も参加した。

受賞者たちはミラノ工科大学の専門家によるメンタリングを受ける機会を得る。また、イ・ミンソにはケリングのジュエリーブランドのいずれかでインターンシップを受ける機会も提供される。

JCKは毎年1万8000人以上の来場者と1900社を超える出展者が集う、世界でも影響力の高いジュエリー展示会として知られている。

The post ラスベガスで「ケリング・ジェネレーション・アワード X ジュエリー」授賞式開催、韓国人学生らが受賞 appeared first on WWDJAPAN.

細尾がSBT認定を取得 中小企業版SBTを活用

京都西陣織の細尾はこのほど温室効果ガスの削減目標において科学的根拠に基づくことを証明する国際的な環境イニシアチブSBT(Science Based Targets)認定を取得した。2030年度までにスコープ1&2において23年度比で42%削減することを目標とする。

細尾は気候変動対策を重要な経営課題と捉え、持続可能な社会の実現に向けて、現在5つの施策を進めている。1つ目は再生エネルギーの導入だ。本社、旗艦店、ギャラリー、カフェラウンジ及び全ての自社工房において使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来の電力へと25年6月時点で全て切り替えた。2つ目はエネルギー使用量の定期的なモニタリングと改善施策の実施。3つ目は社内委員会を発足し、役員及び社員による定期的な実態確認および社内共有の実施。4つ目は事業用車両に電気自動車の導入を検討する。5つ目は段階的にLEDへ切り替え照明を効率化する。

細尾は「西陣織の伝統を守りながらも、持続可能な未来に向けて進化し続けることを企業の責任と考えている。SBT認定を契機に、伝統工芸の未来と地球環境の両立を目指す」とコメントを発表した。

細尾は24年に新たに定義された中小企業版SBTを活用。30年を目標年とし、目標レベルはスコープ1&2において年4.2%以上の削減が求められる。一方スコープ3の数値目標はなく、算定削減の意志表示が求められる。

The post 細尾がSBT認定を取得 中小企業版SBTを活用 appeared first on WWDJAPAN.

世界最大規模のサステナビリティ国際会議GFSで語られた日本企業が知るべきポイント

グローバル・ファッション・サミット(GFS)が6月3~5日、デンマーク・コペンハーゲンで開催された。世界各国からアパレル&テキスタイルメーカーのサステナビリティ責任者やデザイナー、非営利団体や政策立案者など25カ国以上から集まり、より持続的で循環型のファッション産業への移行を目指して議論した。

今年のテーマは「バリア・アンド・ブリッジ (障壁と掛け橋)」。昨年のように企業がサステナビリティへの取り組みを意気揚々とアピールする様子は少なかった。その背景には、ここ1年で大きく変化した政治情勢やそれに伴うサステナビリティ関連規制の緩和、アメリカの関税政策による企業の混乱とその影響を受けるサプライヤーの存在など、さまざまな要因がある。こうした状況により、多くの企業ではサステナビリティの優先順位が下がり、消費者への発信も控えている。その一方、環境負荷削減や循環型ビジネスの効率化やスケールを実現するための技術革新が生まれている。

GFSは実行のための計画を立てパートナーを見つける場

GFSで取り上げるテーマや登壇者の選定を担当するフェイス・ロビンソン(Faith Robinson)=グローバル・ファッション・アジェンダ・ヘッド・オブ・コンテンツは、今年のテーマについてこう語る。

「『障壁と掛け橋』をテーマに『イノベーション(革新)』『キャピタル(投資資本)』『カレッジとリーダーシップ(勇気と先導力)』『インセンティブ(動機付け)』『レギュレーション(規制)』の5つの主要なトピックに焦点を当てた。この1年で業界には多くの変化が起き、さまざまなプレーヤーが葛藤や困難に直面している。しかし同時に、変革に向けた多くの“掛け橋”も着実に築かれている。例えば、新しい技術への投資や、競合他社ともパートナーシップを構築するなど、表には出ていない取り組みも数多く進んでいる。今回GFSへ参加している企業の多くが、サステナビリティに関する具体的な行動を起こし始めている」。

さらに、ロビンソン=ヘッド・オブ・コンテンツは、GFSの役割についても語る。「企業に対して『変革を起こさなければならない』と働きかけて意識を高める段階はすでに終わっている。今は『何をいつまでに、どのように進めるか』という具体的な行動が求められている。GFSはその実行に向けた道しるべとなり、企業同士のコラボレーションを生み出す出発点となることを目指している」。

縮小・延期されたサステナビリティ関連法案

ラーラ・ウォルターズ(Lara Wolters)欧州委員会メンバーと、メッテ・レイスマン(Mette Reissmann)デンマーク議会メンバーは、主要なトピックの1つである規制について言及した。ウォルターズ「2024年は世界各国で選挙が相次いだスーパーサイクルの年だった。その結果、米国だけでなく欧州でも右派政権が台頭しこれまで進められてきたサステナビリティ関連の規制が、経済競争力を損なうものと見なされ方向転換が起こっている」と語る。

欧州委員会は25年2月、「オムニバス法案」を発表した。この法案は企業の報告義務に関する負担を軽減し、EUの競争力を高めることを目的としている。主な内容はサステナビリティに関する情報開示を企業に義務づけるCSRD(企業持続可能性報告指令)に関する変更だ。CSRDの運用開始時期を2年延期し、適用対象企業を従来の5万社から1万社へと約8割削減する見込みだ。

また、欧州委員会は24年に企業が製品やサービスの環境配慮について主張する際のルールを定めた「グリーンクレーム指令」を採択し、25年中に施行する予定だ。これにより多くの企業が批判や取り締まりのリスクを避けるため、サステナビリティに関する発信をすでに控える傾向にある。この指令は製品の環境影響をライフサイクルアセスメント(LCA)で評価し、使用するサステナブルな素材の科学的根拠やデータを明確に示すなど、透明性のあるコミュニケーションを促すことを目的としている。しかしその実現には、第三者機関による検証や専門家の関与といったリソースが必要となる。欧州のファッション産業の企業の9割以上が中小企業だ。米国向け製品への追加関税によるコスト増も重なり、補助金などの支援がない中で、サステナビリティに関する取り組みに予算を割くのは難しい状況である。こうした背景から、サステナビリティへの優先順位が下がっているのが現状である。

イノベーションが循環型ファッションへの救世主となるか

ファッション産業が循環型のビジネスモデルへと移行するためには「ものを作らずに、どう売り上げを上げるか」という根本的な問いに向き合う必要がある。この問いに対する答えを探るべく、エレン・マッカーサー財団(EMF)は昨年、「ファッション・リモデル・プロジェクト」をGFSで発表し、3年間の実証実験を進めている。レニエラ・オドネルEMFエグゼクティブリード・ファッション&フードはプロジェクト開始から1年目の成果を発表した。

「当初8社だった参加企業は現在では18社にまで拡大し、7カ国・6大陸にまたがる世界的な取り組みへと発展している。参加企業はすでに初期成果の報告を始めており、いくつかの事例では明るい兆しが見え始めている。例えば、アウトドアブランドの『アークテリクス(ARC'TERYX)』が実施している修理・再販・アップサイクルを軸とした循環型プログラム「リバード(REBIRD)」は前年の2倍の売上を記録した。英国の百貨店『ジョン・ルイス(JOHN LEWIS)』は、24年5月からメンズフォーマルウェアのレンタルサービスを開始し、既に英国最大規模のメンズウェアレンタル事業へと成長させている。H&Mでは、循環型ビジネスモデルで生まれる売り上げが過去2年間で50%増加したと報告している」。

GFSのプレパーティの場で商品を展示した「マッド・ジーンズ(MUD JEANS)」は、約10年前からレンタルサービスを行っている。ジョランダ・ブリンク(Jolanda Brink)CEOは「現在ではオンライン売上の約2割がレンタルによるもので、企業にとって重要な収益源のひとつになっている」と語った。

こうした成果は、もともとの循環型ビジネスの売上規模が小さかったために成長率が大きく見える側面があるが、企業内や業界全体に本当のインパクトを与えるには、これらのモデルをスケールすることが不可欠である。その鍵は技術による効率化だ。今回のGFSでは、特にリペア・レンタル・リサイクルといった循環型ビジネスを収益化するためのテクノロジーが多く紹介された。

AIを活用した効率化の技術

今回注目を集めたスタートアップ企業リファイバード(Refiberd)は、繊維の素材構成を高速かつ正確に識別できる革新的な技術を開発。この技術は循環型ファッションの実現に大きな可能性を示す技術として高く評価され、GFSのスタートアップ企業を対象としたアワード「トレイルブレイザー・プログラム」で優勝した。

リファイバードの技術はAIとハイパースペクトル画像技術を組み合わせたもので、人の目では見えない波長までを捉えることで、繊維を高精度に識別することができる。これにより、リセール商品の真贋判定、繊維リサイクルの効率化、素材トレーサビリティの向上など、循環型ビジネスにおける課題の解決が期待されている。サリカ・バジャジ(Sarika Bajaj)=リファイバード共同創業者兼CEOは、「同社が開発したシステムは、衣類を非接触で1着ごとにミリ秒単位のスピードでスキャンできるのが特徴。装置は机の上に置けるほどのコンパクトサイズのためベルトコンベアなどが設置されているリサイクル施設でも、既存設備に後付けする形で簡単に導入できる」と説明した。これまでに12社との実証実験を完了し、現在は導入段階に入っているという。

EUでは昨年「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」が発効され、27年から製品の素材構成などの情報をデジタルで記録する「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」が段階的に義務化される。ただし、DPPに記録される素材情報は、長いサプライチェーン上の複数の企業から提供されるため、情報に誤りが生じるリスクもある。こうした課題に対してもリファイバードの技術は、素材情報の正確性を検証する手段として活用が期待される。

昨年、GFSに参加していたインディテックス(Inditex)傘下の「ザラ(ZARA)」幹部も、すでに社内で同様の技術を導入していると語っていた。こうした背景からもこの技術は、需要・供給の両面でさらに拡大していく可能性が高いだろう。

再販ビジネスの利益化を助けるロボット

再販業者向けにAI搭載ロボットを開発するスタートアップ企業ヴィニックス(Ynxy)も、プロトタイプを展示して注目を集めた。再販ビジネスでは、少量多品種の商品を効率よく扱うことが求められ、特に「ささげ(撮影・採寸・原稿作成)」の効率化が利益向上の鍵となる。ヴィンセント・ヴァン・デル・ホルスト(Vincent van der Holst)=ヴィニックスCEOによると、「従来は1つの商品を出品するのに、8人が8つのテーブルで作業し、平均19分かかっていた」という。「ヴィニックスのロボットを使えば、1人がロボットに服を着せるだけで、1分以内にささげ作業が完了する。商品を自動で回転させながら、高品質な360度画像や動画、商品情報を自動で生成する。これにより、1着あたりの販売コストが大幅に削減され、再販による利益が向上するだけでなく、これまでコスト面から販売できずに廃棄されていた衣類も再販が可能になる。その結果、廃棄量の削減につながる可能性がある。現在、生成される情報の正確性は75%だが来年には90%を目指す。今後1年間は実証実験を重ね、高品質かつ使いやすいシステムへと改良していく予定だ」と語った。ヴィニックスは、日本企業を含む開発パートナーを募集中だ。

日本企業の参加が待たれている

世界のファッション産業の未来を議論する場GFSでは、誰でも参加できるセミナーに加えて招待制のラウンドテーブルも開催している。このラウンドテーブルでは、限られたリーダーたちが少人数で深い議論を交わし、業界の方向性を形作っている。かつては、ファーストリテイリングなどの日本企業もこうした場に参加していたというが、現在では日本企業はほとんど見られない。カンファレンス中に紹介された各国のサステナビリティ・ロードマップや、セミナーでの会話の中でも、日本や日本企業の名前が一度も挙がることはなかった。

その背景には、日本がファッション産業の主要なサプライヤーを有する国ではないという構造的な理由があると考えられる。しかし、日本は一人当たりの衣類廃棄量や温室効果ガス排出量では世界上位に位置しており、日本の産業や消費者が担う責任は小さくない。また、日本にはサステナビリティに関する優れた技術革新や、循環型ビジネスモデルを実現する企業も存在するはずだ。そうした取り組みを世界に紹介し、国際的な議論に参加することは重要だ。実際、GFSに参加していたニーナ・マレンジ(Nina Marenzi)フューチャー・ファブリックス・エキスポ(Future Fabrics Expo)創業者からは「日本の素材をぜひ展示してほしい」と話していたし、GFSのロビンソン=ヘッド・オブ・コンテンツも「日本の状況を知り、それに合わせて必要なことを準備したい」と語っていた。

サステナブルなファッション産業を実現していくためには、世界の現状を知り、ともに行動することが求められる。今こそ、日本もその波に乗るときではないか。

The post 世界最大規模のサステナビリティ国際会議GFSで語られた日本企業が知るべきポイント appeared first on WWDJAPAN.

世界初の“海で分解する人工芝“ ミズノとカネカが共同開発、スポーツ施設に導入

スポーツ用品メーカーのミズノは、化学メーカーのカネカと共同で、海洋で分解される世界初のスポーツ用生分解性人工芝シリーズを開発した。カネカが開発した植物由来の生分解性ポリマー「グリーンプラネット」を採用し、スポーツ性能と環境配慮を両立。従来の人工芝が抱えていたマイクロプラスチックの海洋流出問題を抜本的に解決する製品として、2025年内の発売を予定している。

近年、海洋生態系に深刻な影響を及ぼすとして地球規模の緊急課題として注目されているのが、5ミリ未満の微細なマイクロプラスチックだ。自然分解することなく、海中に蓄積していくため、解決策として世界各国でプラスチックの使用規制や代替素材の開発などが進んでいる。環境省の調査によると、海洋プラスチックの約8割は陸からの流出だと報告されている。

一方、ミズノは20年間で約300のスポーツ施設や広場にプラスチック製人工芝を導入。野球専用の人工芝は、プロ野球6球団の本拠地球場に採用され、25年シーズンにおいてシェアナンバーワンだという。

そんな中、マイクロプラスチック問題への対策としては、充填材の施設外流出を大幅に抑制する人工芝の開発や、摩耗した人工芝葉の流出抑制などさまざまな取り組みを行なってきた。また「人工芝がマイクロプラスチックの一因となっている」という実態調査結果が18年に公表されたのを機に、環境省などはガイドラインを作成。危機感を持った人工芝メーカー各社は流出抑制の工夫を重ねてきたが、雨風などで意図せず海に流出することもあり、抜本的な解決には至っていなかった。

転機となったのは21年10月。「人工芝メーカーが集まる会議で、30年までに土に還る人工芝を作ってほしいという発言があり、まったく新しい製品の開発に挑戦するきっかけになった」と、ミズノ グローバルエクイップメントプロダクト部用具開発課の土肥弘一氏は振り返る。

7回目の試作でようやく完成

土に還る人工芝を作るには、生分解性樹脂が必要になる。しかも、マイクロプラスチック問題を解決するには、土壌だけでなく海中でも分解されなければならない。その条件に適合する数少ない素材が、カネカの生分解性バイオポリマー「グリーンプラネット」だ。

「グリーンプラネット」は、植物油や廃食油を原料に培養され、加工された製品は土壌だけでなく、海中でも容易に二酸化炭素と水に生分解される。さらに任意の硬さに成形可能で、使用時は耐久性に優れるため、長期保管が可能なのが特徴だ。1991年にその生産菌が発見されて以降、研究開発が続けられ、バイオ技術と高分子技術を融合させることで工業化に成功。現在では、年間2万トン規模の生産体制を擁する。大手コーヒーチェーンのストローやカトラリーをはじめ、コンビニ、飲料メーカー、ホテルなどの資材に採用され、石油由来の代替素材として期待されている。

「人工芝は耐久性が要求される製品であり、『グリーンプラネット』にとっても新しい挑戦」と、カネカの常務執行役員グリーンプラネット技術研究所長の西村理一氏は語る。

ミズノは同素材を生かしつつ、スポーツ用人工芝としての物性と実用性を担保するため、21年から試作と評価試験を重ねた。最初の試作品は耐久性に課題があり、実用に耐える強度が不足していたが、配合比率や形状を再設計。23年9月に人工芝らしい見た目の製品ができ、24年7月の7作目でようやく、現行品と同等の耐久性と強度を持つ量産試作が完了した。また、海水中での分解実験も行われ、6週間後には人工芝が分解され始める様子が確認されている。

今回開発された製品は「屋内スポーツ用生分解性ロングパイル人工芝シリーズ」として、人工芝葉と充填材(弾性材)を展開する。これまで実現できなかったモノフィラメント構造の芝葉製造に成功したことで、風合いは従来品に近い。充填材もクッション性があり、水より比重の大きい設計とすることで、雨や風による流出を抑制する。「それだけでなく、植物由来原料によって石油資源の使用量を大幅に削減でき、二酸化炭素排出量も低減できる。原料調達から製造まですべて日本国内で行われるオールジャパン製品であることも特徴」と土肥氏は強調する。

今後は景観用人工芝や屋外スポーツ用人工芝の開発も検討中だ。自然環境での実地検証を重ねながら、段階的に広げていく。

The post 世界初の“海で分解する人工芝“ ミズノとカネカが共同開発、スポーツ施設に導入 appeared first on WWDJAPAN.

シャネルが循環型素材の活用を促進する新たなBtoBプラットフォーム立ち上げ

シャネル(CHANEL)はこのほど、循環型素材の開発に特化したBtoBプラットフォーム「ネヴォルド(NEVOLD)」を立ち上げた。パトゥ(PATOU)の前最高経営責任者で、今年初めに同社に加わったソフィー・ブロカール(Sophie Brocart)が同プロジェクトの指揮を執る。

「ネヴォルド」は、ラグジュアリー市場をはじめ、スポーツウエアやホスピタリティ業界のユニフォームなど、アパレル全体における循環型素材の利用を拡大することを目指す。企業間の協業を促すため、シャネル本体からは独立した形で運営する。

デッドストックや端材、売れ残り品を回収する企業アトリエ・デ・マティエール(L’ATELIER DES MATIERES)、繊維リサイクルのノウハウを持つ紡績工場フィラチュール・デュ・パーク(FILATURES DU PARC)、レザーを中心としたアップサイクル素材を手がけるオーセンティック・マテリアル(AUTHENTIC MATERIAL)など、シャネルが出資する複数の企業が参加し、循環型素材の製造を担う。また、さまざまなブランドや企業と協力することで、再資源化に十分な量の資源の確保し、リサイクルコストの低減およびスケール化につなげたい考え。生産した素材は、シャネルまたは参画企業間で活用していく。

ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントは、寿命を終えた製品の循環方法を模索する中で、「そもそも一社から出る廃棄衣類は量が少なく、将来的に採算の取れるような大規模な取り組みにはつなげられないことが見えていた」と話し、スケール化と低コスト化の実現なしには再生素材の活用は進まないだろうと指摘する。本プロジェクトの開発にあたっては、5000万〜8000万ユーロ(約85億〜136億円)を投資。「当社は『ネヴォルド』を、ファッション部門、そして既存の製造部門に続く“第三の柱”に据え、ファッションや他業種も利用できる循環型の素材開発に力をいれる」と話す。

シャネルでは、すでに「ネヴォルド」プロジェクトから生まれた再生繊維やリサイクルレザーの活用が進んでいる。パブロフスキー=プレジデントは、「たとえラグジュアリーブランドが採用しない糸でもスポーツメーカーであれば活路が見出せるかもしれない。そうした具合に、業界全体に視野を広げれば必ず興味を持つ企業は現れるだろう」と協業の意義について話した。今後はさらなる買収も視野に入れ、再生素材の研究開発体制を強化していくという。

The post シャネルが循環型素材の活用を促進する新たなBtoBプラットフォーム立ち上げ appeared first on WWDJAPAN.

サステナ戦線、梅雨入り中!?世界最大サミットの“重さ”と希望

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のエピソードでは、6月初旬にデンマーク・コペンハーゲンで開催された「グローバル・ファッション・サミット」のレポートをもとに、欧州サステナ規制の停滞感、企業の取り組み、そして突破口となるスタートアップの動きまでをお届けします。

たとえば
・ “ESPR”“企業持続可能性デューデリジェンス”など、法規制は進んでいるのか?
・シャネルが打ち出した循環型新プラットフォーム「NEVOLD」にも注目
・サミットで話題のAIスタートアップ「Refiberd」とは?
・雨の季節にぴったりな、黒い傘の話や、捨てられないボロ布の悩みまで

などなど、“サステナの大義”と“現実の摩擦”をユーモアを交えて語ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post サステナ戦線、梅雨入り中!?世界最大サミットの“重さ”と希望 appeared first on WWDJAPAN.

サステナ戦線、梅雨入り中!?世界最大サミットの“重さ”と希望

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のエピソードでは、6月初旬にデンマーク・コペンハーゲンで開催された「グローバル・ファッション・サミット」のレポートをもとに、欧州サステナ規制の停滞感、企業の取り組み、そして突破口となるスタートアップの動きまでをお届けします。

たとえば
・ “ESPR”“企業持続可能性デューデリジェンス”など、法規制は進んでいるのか?
・シャネルが打ち出した循環型新プラットフォーム「NEVOLD」にも注目
・サミットで話題のAIスタートアップ「Refiberd」とは?
・雨の季節にぴったりな、黒い傘の話や、捨てられないボロ布の悩みまで

などなど、“サステナの大義”と“現実の摩擦”をユーモアを交えて語ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post サステナ戦線、梅雨入り中!?世界最大サミットの“重さ”と希望 appeared first on WWDJAPAN.

「パタゴニア」が東京・京橋の店舗で“ウォーン ウエア”イベント開催 中古製品の販売や買い取り実施

「パタゴニア(PATAGONIA)」は6月7日〜8月18日、期間限定で運営している東京・京橋の店舗で、“ウォーン ウエア(Worn Wear)”のポップアップイベントを開催している。期間中には、製品ケアについてなどのイベントも実施する。

期間中は自社製品の中古ウエアを販売すると共に、修理して長く着続けることのストーリーを展示し、ケア方法も紹介する。中古ウエアの購入は1人2点まで。

イベントは2種を企画する。防水シェルの基本的な洗濯ケアを紹介するデモイベントは、7月5、6日に開催予定。製品の買い取り&リペアについての相談会イベントは8月2、3日に予定する。相談会では、買い取り希望として持ち込まれた洗濯後の製品をその場で検品・査定し、現金を支払う。買い取り業務は委託先のティンパンアレイが担当。買い取り価格の目安はホームページで公開しており、例えばアウターウエアならば「1000〜5000円」。リペアについては、対応可能な製品についてはその場で修理を行う。

◼️Worn Wear 京橋POP UP STORE
期間:6月7日〜8月18日
場所:パタゴニア 東京・京橋(期間限定ストア)
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル1階
営業時間:11〜19時
定休日:毎月第3水曜日

The post 「パタゴニア」が東京・京橋の店舗で“ウォーン ウエア”イベント開催 中古製品の販売や買い取り実施 appeared first on WWDJAPAN.

制度後退と企業の混乱   サステナビリティの岐路に立つグローバル・ファッション・サミット2025

2025年6月3日から5日まで、デンマーク・コペンハーゲンのコンサートホールを会場に、世界最大級のサステナビリティ国際会議「グローバル・ファッション・サミット(Global Fashion Summit)」が開催された。今年のテーマは「障壁と架け橋(Barriers and Bridges)」。地政学リスクや規制の後退、経済不安ど、サステナビリティをめぐる世界的逆風の中、いかに連携と革新を通じて乗り越えるかが焦点となった。欧州委員会による「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」の一部凍結や、米国の関税政策などにより、企業が進めてきた脱炭素や人権配慮の取り組みが揺らぐ現状を受け、政策立案者、企業経営者、NGO、投資家などが議論を交わした。

主催は、ファッション業界における持続可能性推進を目的とする非営利団体「Global Fashion Agenda(GFA、グローバル・ファッション・アジェンダ)」。2009年に設立され、当初は「コペーハーゲン ファッション サミット」としてスタート。現在は北米やアジアにも活動を広げ、ファッション業界の持続可能性を加速するための政策提言、報告書作成、国際連携などを行っている。

「制度の後退」と「企業の動揺」

今年、最大の論点となったのは、政策と制度の後退である。欧州連合(EU)においては、「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」の一部が凍結。ドイルなどEU加盟国の一部から「企業負担が過剰」との反発が強まり、最終的な採決が難航し、大企業に対する人権・環境デューデリジェンスの義務化が見送られ、企業は準備を進めていたにもかかわらず「宙ぶらりん」の状態となっている。これに対し、欧州議会議員ララ・ウォルターズ氏は「政治のトランプ化」と警鐘を鳴らした。

また米国では、トランプ政権による新たな関税政策が持続可能性戦略の不確実性を高めている。アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)によるNGO支援の打ち切りにより、企業は人権監視や環境対応における負担を自ら背負う必要に迫られている。

主催者は今年の雰囲気を「重苦しい」と表現し、それは不透明感の高まりを反映している。企業の予算削減や法整備の遅れ、経済的逆風への対応として、多くのブランドが出張を控えた結果、参加者数も減少した。

不確実性の時代に必要なのは「生産的なパラノイア」

デンマークのアパレル企業ベストセラーのクラウス・テイルマン・ピーターセン=サステナビリティおよび人権責任者は、「EUの制度戦はある意味で敗北した。しかし、ここからこそ“生産的なパラノイア(productive paranoia)”が必要だ」と主張。不安やリスクへの過敏な意識を前向きな行動につなげる力を指す言葉“パラノイア“を用いて、企業主導の取り組み強化を求めた。

さらに、地政学的な不安定性は、調達・生産・融資に波及しており、銀行は工場の省エネ改修に対する投資を控える傾向が強まっている。GFAのマリア・ルイサ・マルティネス・ディエス副代表は「今や持続可能性よりも“競争力”が優先されている」と警告した。

注目されたトピックのひとつがAIの活用である。旧来の卸売モデルを刷新し、在庫最適化やリスク軽減をもたらす可能性があるとして、AIを活用したオンデマンド製造のプラットフォームを提供する英国のスタートアップ、マニー・エーアイ(MannyAI)や、ジーンズの月額リース制度とポストコンシューマーの再生コットン使用の製品で知られるオランダのデニムブランド「マッド・ジーンズ(MUDD JEANS)などの小規模ブランドが登壇した。AIにより「少人数で大きな成果」が可能になると期待される一方、米国の大手コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループの調査では「投資回収を実感できたCEOは4%」とのデータも示され、実装の難しさと過剰な期待の温度差も浮き彫りとなった。

消費者の「意図と行動のギャップ」をどう埋めるか

もうひとつの重要な論点は、消費者の意識と行動の乖離である。Visaの調査によれば、「87%の人がサステナブルな選択を望んでいる」にもかかわらず、実際にそれを実行しているのは27%に過ぎないという。そこで、コス(COS)やコスメブランド「シャーロット・ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」などは「コミュニティ志向」「リフィル促進」など、ナッジによる行動転換の成功例を発表。環境訴求ではなく「経済性やスタイル重視」で訴える手法が注目された。また、Visaが開発中の「エージェンティックAI(自律的ショッピングAI)」や「デジタルパスポート」は、リセール市場の信頼性向上にも貢献しうるとされる。

ハイライトのひとつは、「ライクラ・エコモード・ウィズ・キラ(Lycra EcoMade with Qira)」の初公開だ。トウモロコシ由来で70%が再生可能資源からなるストレッチ素材であり、従来の石油由来ライクラと同等の性能を持ち、アクティブウェアへの活用が可能だという。この素材は7年をかけて開発され、アイオワ州の工場で生産されており、年65トンの規模にまで拡大する予定だ。今秋には春物コレクション向けに初の大規模出荷が行われる見通しである。また、ラボ培養によるレザー代替素材を手がける米国のバイオテクノロジー企業モダン・メドウ(Modern Meadow)は、新たに「イノヴェラ(Innovera)」としてリブランディングされた素材を発表し、デイビッド・ウィリアムソンCEOが今後の展望を語った。

先駆者をたたえる「GFAトレイルブレイザー賞」はリファイバード(Refibered)に授与された。同社はAIと機械学習を活用して、繊維製品の素材構成を特定し、リサイクルや再販のためのトレーサビリティ/認証を支援する米国のスタートアップ企業だ。

2025年のサミットは、かつてのような華やかさや前のめりの熱狂は見られなかった。参加者も例年より少なく、開催時期が他の国際イベントと重なったことも影響した。しかしその分、「現場のリアル」や「持続可能性に立ち戻る姿勢」が色濃く出た内容であった。持続可能性は、制度や正義ではなく「関係性」として再構築されるべきフェーズにあると言えるだろう。

The post 制度後退と企業の混乱   サステナビリティの岐路に立つグローバル・ファッション・サミット2025 appeared first on WWDJAPAN.

制度後退と企業の混乱   サステナビリティの岐路に立つグローバル・ファッション・サミット2025

2025年6月3日から5日まで、デンマーク・コペンハーゲンのコンサートホールを会場に、世界最大級のサステナビリティ国際会議「グローバル・ファッション・サミット(Global Fashion Summit)」が開催された。今年のテーマは「障壁と架け橋(Barriers and Bridges)」。地政学リスクや規制の後退、経済不安ど、サステナビリティをめぐる世界的逆風の中、いかに連携と革新を通じて乗り越えるかが焦点となった。欧州委員会による「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」の一部凍結や、米国の関税政策などにより、企業が進めてきた脱炭素や人権配慮の取り組みが揺らぐ現状を受け、政策立案者、企業経営者、NGO、投資家などが議論を交わした。

主催は、ファッション業界における持続可能性推進を目的とする非営利団体「Global Fashion Agenda(GFA、グローバル・ファッション・アジェンダ)」。2009年に設立され、当初は「コペーハーゲン ファッション サミット」としてスタート。現在は北米やアジアにも活動を広げ、ファッション業界の持続可能性を加速するための政策提言、報告書作成、国際連携などを行っている。

「制度の後退」と「企業の動揺」

今年、最大の論点となったのは、政策と制度の後退である。欧州連合(EU)においては、「企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)」の一部が凍結。ドイルなどEU加盟国の一部から「企業負担が過剰」との反発が強まり、最終的な採決が難航し、大企業に対する人権・環境デューデリジェンスの義務化が見送られ、企業は準備を進めていたにもかかわらず「宙ぶらりん」の状態となっている。これに対し、欧州議会議員ララ・ウォルターズ氏は「政治のトランプ化」と警鐘を鳴らした。

また米国では、トランプ政権による新たな関税政策が持続可能性戦略の不確実性を高めている。アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)によるNGO支援の打ち切りにより、企業は人権監視や環境対応における負担を自ら背負う必要に迫られている。

主催者は今年の雰囲気を「重苦しい」と表現し、それは不透明感の高まりを反映している。企業の予算削減や法整備の遅れ、経済的逆風への対応として、多くのブランドが出張を控えた結果、参加者数も減少した。

不確実性の時代に必要なのは「生産的なパラノイア」

デンマークのアパレル企業ベストセラーのクラウス・テイルマン・ピーターセン=サステナビリティおよび人権責任者は、「EUの制度戦はある意味で敗北した。しかし、ここからこそ“生産的なパラノイア(productive paranoia)”が必要だ」と主張。不安やリスクへの過敏な意識を前向きな行動につなげる力を指す言葉“パラノイア“を用いて、企業主導の取り組み強化を求めた。

さらに、地政学的な不安定性は、調達・生産・融資に波及しており、銀行は工場の省エネ改修に対する投資を控える傾向が強まっている。GFAのマリア・ルイサ・マルティネス・ディエス副代表は「今や持続可能性よりも“競争力”が優先されている」と警告した。

注目されたトピックのひとつがAIの活用である。旧来の卸売モデルを刷新し、在庫最適化やリスク軽減をもたらす可能性があるとして、AIを活用したオンデマンド製造のプラットフォームを提供する英国のスタートアップ、マニー・エーアイ(MannyAI)や、ジーンズの月額リース制度とポストコンシューマーの再生コットン使用の製品で知られるオランダのデニムブランド「マッド・ジーンズ(MUDD JEANS)などの小規模ブランドが登壇した。AIにより「少人数で大きな成果」が可能になると期待される一方、米国の大手コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループの調査では「投資回収を実感できたCEOは4%」とのデータも示され、実装の難しさと過剰な期待の温度差も浮き彫りとなった。

消費者の「意図と行動のギャップ」をどう埋めるか

もうひとつの重要な論点は、消費者の意識と行動の乖離である。Visaの調査によれば、「87%の人がサステナブルな選択を望んでいる」にもかかわらず、実際にそれを実行しているのは27%に過ぎないという。そこで、コス(COS)やコスメブランド「シャーロット・ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」などは「コミュニティ志向」「リフィル促進」など、ナッジによる行動転換の成功例を発表。環境訴求ではなく「経済性やスタイル重視」で訴える手法が注目された。また、Visaが開発中の「エージェンティックAI(自律的ショッピングAI)」や「デジタルパスポート」は、リセール市場の信頼性向上にも貢献しうるとされる。

ハイライトのひとつは、「ライクラ・エコモード・ウィズ・キラ(Lycra EcoMade with Qira)」の初公開だ。トウモロコシ由来で70%が再生可能資源からなるストレッチ素材であり、従来の石油由来ライクラと同等の性能を持ち、アクティブウェアへの活用が可能だという。この素材は7年をかけて開発され、アイオワ州の工場で生産されており、年65トンの規模にまで拡大する予定だ。今秋には春物コレクション向けに初の大規模出荷が行われる見通しである。また、ラボ培養によるレザー代替素材を手がける米国のバイオテクノロジー企業モダン・メドウ(Modern Meadow)は、新たに「イノヴェラ(Innovera)」としてリブランディングされた素材を発表し、デイビッド・ウィリアムソンCEOが今後の展望を語った。

先駆者をたたえる「GFAトレイルブレイザー賞」はリファイバード(Refibered)に授与された。同社はAIと機械学習を活用して、繊維製品の素材構成を特定し、リサイクルや再販のためのトレーサビリティ/認証を支援する米国のスタートアップ企業だ。

2025年のサミットは、かつてのような華やかさや前のめりの熱狂は見られなかった。参加者も例年より少なく、開催時期が他の国際イベントと重なったことも影響した。しかしその分、「現場のリアル」や「持続可能性に立ち戻る姿勢」が色濃く出た内容であった。持続可能性は、制度や正義ではなく「関係性」として再構築されるべきフェーズにあると言えるだろう。

The post 制度後退と企業の混乱   サステナビリティの岐路に立つグローバル・ファッション・サミット2025 appeared first on WWDJAPAN.

DHLが廃棄ユニフォームをバッグにアップサイクル 「サブジェクト」と協業

国際エクスプレスの大手、DHLジャパンは、ファッションブランド「サブジェクト(SUBJECT.)」と協業し、DHLの廃棄予定ユニフォームをアップサイクルバッグへと生まれ変わらせるプロジェクトを始動した。

このプロジェクトは、「SEEKER CREATIVE STUDIO」を主宰する坂尾正中デザイナーの発案によるもので、廃棄されるはずだったユニフォームに新たな命を吹き込む。第一弾コレクションは、6月10日からブランド公式ウェブサイトで販売。DHLの環境配慮型国際輸送サービス「DHL GoGreen Plus」を活用して世界中へ販売される。

本コレクションの製作には、兵庫県豊岡市のバッグ工房や岡山県倉敷市の熟練職人が参画。また、売上の一部はNPO法人「メイドインジャパンプロジェクト」へ寄付され、地域産業や伝統技術の継承にも寄与する。

DHLジャパンのトニー・カーン代表は、「私たちのユニフォームには、グローバル輸送の最前線で働くスタッフの誇りが刻まれている。それが新たな価値を持つ製品として蘇ることは非常に意義深い」と語る。「環境負荷を抑えつつ、日本のスモールビジネスを世界へ後押しできることを嬉しく思う」ともコメントしている。

The post DHLが廃棄ユニフォームをバッグにアップサイクル 「サブジェクト」と協業 appeared first on WWDJAPAN.

持続可能な未来に向けて声を上げた女性起業家たちに感動

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は、「カルティエ(CARTIER)」が大阪・関西万博に合わせて5月に開催した「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ インパクト アワード」授賞式について。元ニュージーランド首相のジャシンダ・ケイト・ローレル・アーダーン氏に始まり、社会と環境に持続可能なインパクトをもたらすために声を上げた世界の女性起業家たちとの交流を通じて受け取った熱いメッセージを向ディレクターが語ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 持続可能な未来に向けて声を上げた女性起業家たちに感動 appeared first on WWDJAPAN.

持続可能な未来に向けて声を上げた女性起業家たちに感動

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は、「カルティエ(CARTIER)」が大阪・関西万博に合わせて5月に開催した「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ インパクト アワード」授賞式について。元ニュージーランド首相のジャシンダ・ケイト・ローレル・アーダーン氏に始まり、社会と環境に持続可能なインパクトをもたらすために声を上げた世界の女性起業家たちとの交流を通じて受け取った熱いメッセージを向ディレクターが語ります。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 持続可能な未来に向けて声を上げた女性起業家たちに感動 appeared first on WWDJAPAN.

循環型配送のcomveyが障がい者雇用を促進する新プロジェクト サザビーリーグとアダストリアが参画

梱包材のリユースサービス「シェアバッグ」を運営するcomvey(コンベイ)は、障がい者雇用を推進するプロジェクト「おもいをとどける。みんながよろこぶ。」を始動した。サザビーリーグの特例子会社であるササビーリーグHRと、アダストリア特例子会社のWeOur(ウィーアー)が参画し、「シェアバッグ」の運営業務の一部を6月3日から受託する。

サザビーリーグが出資するcomveyは、2022年6月に創業。アパレル、コスメ、ジュエリーを中心としたEC事業者を対象に、「シェアバッグ」サービスを提供する。利用者は、ECでの商品購入時に「シェアバッグ」を選択すると、繰り返し使用可能な専用のバッグで商品を受け取り、使用後はポストに投函して返却する仕組みだ。

comveyの調査によると、「シェアバッグ」は従来の使い捨てのダンボール梱包と比べ、10回の配送で二酸化炭素排出量を85%以上削減できるという。バッグ1つにつき、50〜100回程度再利用可能で、使用限度に達したものは、パートナー企業とともに素材の95%以上を水平リサイクルし、もう一度新たなバッグの材料として活用する。循環型経済を促進する新たな梱包材の選択肢として、「グッチ(GUCCI)」親会社ケリングが主催する「ケリング・ジェネレーション・アワード(KERING GENERATION AWARD)」のファイナリストにも選出されている。サザビーリーグ傘下ブランドの「アガット(AGETE)」や「マッドハッピー(MADHAPPY)」、アダストリアの「オー・ゼロ・ユー(O0U)」などで導入している。

今回の協業では、これまでcomvey本社に一括返却されていたバッグの一部を、各社が直接受け取り、それぞれのスタッフが清掃・検品業務を行う。数百枚単位からスタートし、年内には数千枚規模での運用を目指す。

一般的に特例子会社ではグループ内の業務受託が主なため、業務領域を広げにくいことが課題として挙げられている。本取り組みでは、バッグのクリーニングといった軽作業を通じてより多くの障がい者スタッフの雇用や働き方を広げている点で社会課題の解決に寄与する施策だ。サザビーリーグHRの担当者は、「今後も段階的に引き上げられる法定雇用率に対応するためにも、職域を拡大し採用する人材の幅を広げることは不可欠であり、社会的意義が高く、お客さまとつながることができる取り組みだ」とコメントした。

The post 循環型配送のcomveyが障がい者雇用を促進する新プロジェクト サザビーリーグとアダストリアが参画 appeared first on WWDJAPAN.

コスがマテラと共創した水耕栽培コットンのシャツを発表 水使用量削減などにつなげる


コス(COS)はこのほど、水耕栽培コットンを用いたホワイトシャツ2型を発売した。水耕栽培コットンを生産するのは、英国を拠点とするスタートアップ企業のマテラ(MATERRA)で、同社はインドの農村地域を拠点に、土壌を使わずに水と栄養素を制御する水耕栽培技術を用いてコットンを栽培している。フランスで開催されている国際ファッションテック見本市のピッチコンテスト「Avantex Fashion Pitch」では最優秀賞を受賞するなど、数々の受賞歴がある。

この技術により、従来の農法と比べて最大80%の水使用量削減を実現。農薬の使用も抑えられ、環境負荷を大幅に軽減できるという。また、同社は現地農家との連携を通じて、収入の安定や教育機会の提供にも貢献している。マテラ共同創業者のエドワード・ヒルCSOは「保護された屋内環境でコットンを栽培する最大の利点は、従来の農場よりもはるかに多くのコントロールが可能になる点にある。特に資源の使用において大きなメリットがあり、テクノロジーが農業の基盤となることで、人と地球への影響を左右する未来を拓く可能性がある」と語る。

コスは2021年からマテラの取り組みに参画し、初収穫への投資および5型のプロトタイプTシャツを制作。2025年春には、その集大成として2型のホワイトシャツを完成させた。

ウィメンズは襟なしのハーフプラケットデザインで、アテネのランウェイショーでデビュー。メンズはコットンポプリンを使用した、テーラード感のあるデザインとなっている。いずれの型もシンプルな中に、精密なトップステッチやグログランのハンガーループ、マザーオブパールのボタンなど、細部へのこだわりが光る仕上がりだ。

「コス」の各店舗および公式オンラインストアにて取り扱っている。

The post コスがマテラと共創した水耕栽培コットンのシャツを発表 水使用量削減などにつなげる appeared first on WWDJAPAN.

「ヴェルサーチェ」がサンゴ礁の保全活動を支援 9000個のサンゴのかけらを寄贈

「ヴェルサーチェ(VERSACE)」は、全国の店舗および公式ECサイトで販売中のバケーションコレクション「ラ ヴァカンツァ(LA VACANZA)」を通じて、サンゴ礁の保全活動を行う団体コーラル ガーデナーズ(CORAL GARDENERS)の取り組みを支援する。コレクションを購入した先着9000人を対象に、顧客の名前を付けたサンゴのかけらをフランス領ポリネシアに寄贈する。各顧客は個別のコードとリンクからサンゴ礁までの道のりを追跡できるほか、現場からの写真や最新情報をメールで受け取ることができ、参加型の仕組みとなっている。

コーラル ガーデナーズは、フランス領ポリネシア、フィジー、タイの海洋を中心に活動。サンゴの養殖や損傷したサンゴ礁の移植を通じて、海洋の生物多様性と生態系の健全性の回復を目指している。地中海の神話から誕生し、海を大切にする「ヴェルサーチェ」の理念と共鳴し、今回の協業に至った。

同団体は、「サンゴは海洋生態系におけるキーストーン種(生態系全体のバランスを大きく左右する種)であり、非常に重要な存在だ。サンゴは何千ものほかの種の生育場所として機能し、私たちが呼吸する酸素にも関わっている。しかし残念ながら、過去150年間で、生きたサンゴの約50%が失われ、絶え間なく脅威にさらされている現状だ。『ヴェルサーチェ』と私たちは、信念と大切なものを恐れずに主張するという理念において合致している」とコメントした。

「ラ ヴァカンツァ」コレクションの新作は、メゾンの歴史的モチーフである“トレゾール・ドゥ・ラ・メール(TRESORS DE LA MER)”をアレンジしたワードローブを中心に構成。スイムウエアからレジャーウエア、フォーマルウエア、ジュエリー、タオルやスリッパなどのホームアイテムまでをそろえる。海中の風景や水中のメドゥーサ(イタリア語でクラゲの意)を描いた鮮やかなグラフィックをあしらったトップスや水着、貝殻やタツノオトシゴなどをテーマにしたジュエリー、シーグリーンの「ヴェルサーチェ タグ(VERSACE TAG)」バッグなど、海とのつながりを感じられるコレクションとなっている。

The post 「ヴェルサーチェ」がサンゴ礁の保全活動を支援 9000個のサンゴのかけらを寄贈 appeared first on WWDJAPAN.

情報化時代の産地をどう編集する?

毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月26日号からの抜粋です)

廣田:「地域文化商社」を掲げるうなぎの寝床を見に、福岡県八女市に家族旅行したのが今回の特集のきっかけです。もんぺがそんなに売れるのか?なぜ都心のいい場所でポップアップができるのだろう?と不思議だったのですが、福岡市からもかなり離れている店に、多くの人が車で来ていて、楽しそうに買い物をしていました。こういう形で地域が活性化するのは素敵だな、と。特集の前半は、地域文化から生まれる新しい経済循環として2つの事例を紹介しました。

:私はこの半年で多くの繊維産地を取材しましたが、すごく魅力的なモノを作っているのに、それが世の中にうまく伝わっていないと感じることが多々ありました。事業者数は15年で半減し、メード・イン・ジャパンのアパレルはもはや1%程度という中で、地域の価値・財産を資源化する視点は、日本の産地も生かすべきです。特集の後半では、八女のような事例を生かせるであろう魅力ある産地14カ所にスポットを当てました。

視点の持ち方と編集の仕方が重要

廣田:うなぎの寝床も地元の伝統工芸である久留米絣をなんとかせねば、から始まっています。いいモノ作りをしていても、それをどう世の中に伝えていくか。うなぎの寝床創業者の白水高広さんが「この時代において、価値化は情報化」と語っていたのがとても印象的でした。視点の持ち方と編集の仕方が重要なのですが、デザイナーや編集者のスキルにも通ずると感じました。

:私も“日本のモノ作り”ってよく言っていたけれど、あまり産地に足を運んでこなかったことを反省して、今回多く巡りましたが、「日本にこんなに豊かな地域があるんだ」と感動しました。今、国としても観光に力を入れ始めていて、オープンファクトリーも増えてきています。アパレル業界で働く人は、ぜひ産地に行ってほしい。人生も職業人としても豊かになります。これぞサステナビリティですよね。

廣田:はい。日本国の持続可能性について考えました。ぜひ読んで、現地に行ってみてほしいです。

The post 情報化時代の産地をどう編集する? appeared first on WWDJAPAN.

情報化時代の産地をどう編集する?

毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月26日号からの抜粋です)

廣田:「地域文化商社」を掲げるうなぎの寝床を見に、福岡県八女市に家族旅行したのが今回の特集のきっかけです。もんぺがそんなに売れるのか?なぜ都心のいい場所でポップアップができるのだろう?と不思議だったのですが、福岡市からもかなり離れている店に、多くの人が車で来ていて、楽しそうに買い物をしていました。こういう形で地域が活性化するのは素敵だな、と。特集の前半は、地域文化から生まれる新しい経済循環として2つの事例を紹介しました。

:私はこの半年で多くの繊維産地を取材しましたが、すごく魅力的なモノを作っているのに、それが世の中にうまく伝わっていないと感じることが多々ありました。事業者数は15年で半減し、メード・イン・ジャパンのアパレルはもはや1%程度という中で、地域の価値・財産を資源化する視点は、日本の産地も生かすべきです。特集の後半では、八女のような事例を生かせるであろう魅力ある産地14カ所にスポットを当てました。

視点の持ち方と編集の仕方が重要

廣田:うなぎの寝床も地元の伝統工芸である久留米絣をなんとかせねば、から始まっています。いいモノ作りをしていても、それをどう世の中に伝えていくか。うなぎの寝床創業者の白水高広さんが「この時代において、価値化は情報化」と語っていたのがとても印象的でした。視点の持ち方と編集の仕方が重要なのですが、デザイナーや編集者のスキルにも通ずると感じました。

:私も“日本のモノ作り”ってよく言っていたけれど、あまり産地に足を運んでこなかったことを反省して、今回多く巡りましたが、「日本にこんなに豊かな地域があるんだ」と感動しました。今、国としても観光に力を入れ始めていて、オープンファクトリーも増えてきています。アパレル業界で働く人は、ぜひ産地に行ってほしい。人生も職業人としても豊かになります。これぞサステナビリティですよね。

廣田:はい。日本国の持続可能性について考えました。ぜひ読んで、現地に行ってみてほしいです。

The post 情報化時代の産地をどう編集する? appeared first on WWDJAPAN.

桐生、尾州、北陸、富士吉田 産地と人をめぐるサステナブルトーク

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、「WWDJAPAN」で素材・テキスタイルを担当する横山泰明記者。5月26日発売号の特集「地域文化から生まれる新しい経済循環 Dive into the Local Community」の舞台裏を語った。群馬・桐生や山梨・富士吉田などの繊維産地に取材したエピソードを通して、地域と産業、そして観光が融合する“クラフトツーリズム”などのの新たな可能性を紹介。現場から生まれるリアルな変化に光を当てている。「繊維産地の価値は、経済だけでなく文化や人のつながりからも生まれる」と語る横山記者。ファッションに携わる人や産地の魅力を再発見したい方にぜひ聴いてほしいエピソードだ。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 桐生、尾州、北陸、富士吉田 産地と人をめぐるサステナブルトーク appeared first on WWDJAPAN.

未来を形づくる“彼女たちの力” 「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」授賞式リポート

カルティエは大阪・関西万博に合わせ、ウーマンズ パビリオンのオープニングセレモニー翌日、堺市民芸術文化ホールにて「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ インパクト アワード」授賞式を開催した。社会と環境に持続可能なインパクトをもたらす女性起業家9名が表彰され、800名を超えるゲストがその功績を祝った。

今回の授賞式は、「Forces for Good(変革をもたらすチカラ)」というテーマのもと、5月20日から23日まで行われたインパクト アワード ウィークの集大成として開催。冒頭では、音楽家の渋谷慶一郎とバイオリニスト廣津留すみれ、ダンサー堀田千晶による特別パフォーマンスが行われ、芸術と表現の力がイベントの幕開けを飾った。

セレモニーでは、カルティエ ウーマンズ イニシアチブの過去フェローから選出された9名に授与。選出は「地球の保護(Preserving the Planet)」「生活の向上(Improving Lives)」「機会の創出(Creating Opportunities)」の3カテゴリーに分かれ、それぞれが国連のSDGsを体現する取り組みを展開している。ホストを務めたのは、キャスター、作家として活躍し、ジェンダー平等の提唱者として知られるサンディ・トクスヴィグ。その軽快かつ人間味あふれるファシリテーションで9人の業績が紹介された。

受賞者は各10万ドルの助成金と、1年間のフェローシッププログラムへの参加資格を獲得。メディア露出、リーダーシップ育成、インパクト測定支援を含む新たなプログラムが彼女たちの活動を後押しする。プログラム中にはショートフィルム「Shaping the Future」や、コミュニティの絆を描いたメッセージ映像が上映され、世代を超えた連携の重要性が強調された。最後にはカルティエ カルチャー&フィランソロピーのシリル・ヴィニュロン会長が登壇し、「女性起業家には変革をもたらす力がある。彼女たちが次世代のために道を切り開き続ける力を讃えたい」と語り、セレモニーはKAORIaliveによるダンスパフォーマンスで締めくくられた。

【9人の受賞からのメッセージ】

同日午前にはジャーナリストとのラウンドテーブルが開催された。インスピレーションあふれる9人からのスピーチの中から、特に印象的だった言葉を紹介する。

「地球の保護」カテゴリー

トレーシー・オルーク/Vivid Edge 創業者(アイルランド)

“最も困難な課題こそが、最も革新的な解決策を生み出す。
だから私は、この時代にこそ希望を持っています”

アイルランド出身のトレーシー・オルーク(Tracy O’Rourke)は、長年にわたり大企業で金融・航空機リースなどの分野に従事し、数々の革新的なビジネスモデルを導入してきた。彼女が起業したのは、最新鋭のオフィスビルですら60%ものエネルギーを浪費しているという現実に気づいたことがきっかけだった。 Tracyは航空機リースの仕組みを応用し、「初期投資ゼロで導入できるエネルギー効率改善サービス」を開発。資金調達から設置・運用・保守までを一括で提供し、顧客企業は削減されたエネルギーコストの一部でサービス料を支払うというモデルを確立した。 「エネルギー効率」という地味だが影響力の大きい分野において、トレーシーは“資産として担保できないものに投資を集める”という難題に挑み、それを成し遂げた。「間違った方向に進んだ時、どう軌道修正するのか?」への返答が冒頭の通り。「問題の大きさは、解決の創造性を引き出す力になる」とも語る。


クレッセ・ウェズリン/Elvis & Kresse 共同創業者(英国)

“私たちは、“ただ与え、奪わない”ビジネスを設計しています。
それこそが、本当のラグジュアリーではないでしょうか?”

クレッセ・ウェズリン(Kresse Wesling)は、英国を拠点に活動するChrissyは、社会的・環境的に持続可能なビジネスを追求するブランド「Elvis & Kresse」の共同創業者。彼女の事業は、役目を終えた消防ホースやレザーといった廃材をアップサイクルし、高品質なバッグや財布へと蘇らせるだけでなく、利益の半分をチャリティに寄付するという大胆なモデルを持つ。 最初の10年は「いかに廃材を美しく変えるか」というクラフト中心だったが、次の10年ではビジネス自体を“再生可能”に進化。農場に製造拠点を移し、太陽光発電や水の浄化、土壌への炭素固定といった取り組みを導入した。「贅沢とは何か?」という問いに対し、彼女は“奪わず、与えること”こそが本質だと断言する。環境・地域・経済を横断的につなぐ、再定義されたラグジュアリーの姿がそこにある。


クリスティン・カゲツ/Saathi 共同創業者(インド)

“アクセスのない地域に生理用品を届けたかった。
でも、プラスチック製では別の問題を生む。
だから“使っても環境を汚さないナプキン”を開発した”

米国出身のクリスティン・カゲツ(Kristian Kagetsu)は、インドでの生活を通じて、女性の生理用品へのアクセス格差という深刻な問題に直面した。農村部ではナプキンの普及率が36%にとどまり、教育・就労・健康に多大な影響を与えていた。彼女はそこで、廃棄されるバナナ繊維と竹を用いた完全生分解性ナプキンを開発。Saathiというブランドを通じて、都市部と農村部の両方に製品を届けている。 「なぜバナナ繊維なのか?」との質問に対する答えが冒頭である。社会的な偏見や、工場設立時の拒否、設備導入の困難など、数多くの壁に直面したが、現地の女性たちを雇用し、教育し、チームとして共に成長することで乗り越えてきた。環境への負荷ゼロという製品設計に加え、女性たちが自らの手で“問題を解決する側”になるという、循環型で誇り高いエンパワメントを実現している。


「生活の向上」カテゴリー

ケイトリン・ドルカート/Flare Health 共同創業者・CEO(ケニア)

“ケニアでは、かつて救急車を呼んでも162分かかっていた。
今では15分。世界中のどこにいても、誰であっても、
緊急医療サービスにアクセスできる未来を一緒に築こう”

米国出身のケイトリン・ドルカート(Caitlin Dolkart)は、ケニアで15年間暮らしながら保健医療分野に携わってきた。彼女がFlare Healthを創業したのは、ナイロビの渋滞中に「サイレンが一度も鳴らない」ことに気づいた瞬間だった。「救急車がない」のではなく、「存在していても連携されていない」ことが問題だと悟り、Flareは国中の救急車を統合するデジタル緊急対応ネットワークとして誕生した。 当初は救急車の到着に162分かかっていたが、技術導入により現在は平均15分まで短縮。救急医療アクセスのなかった人々に対して、45,000件以上の救命対応を実現。特に出産に向かう女性14,000人の命を守った事例は、社会的な信頼を築く礎となった。 記者からの「救急医療という公共的な分野に、民間企業として挑戦することにためらいはなかったか?」への回答が冒頭の通り。「政府の不在こそが、私たちのイノベーションを可能にした」と語り、既存の仕組みの限界をチャンスに変えてきたことを共有した。


ナミタ・バンカ/Banka BioLoo 創業者・CEO(インド)

“女性である私たち自身が、
「きれいなトイレが必要だ」と声を上げてこなかったこと。
それが問題の始まりだったのかもしれません”

ナミタ・バンカ(Namita Banka)は、「トイレがない日常」が日常だったインドで、排泄と向き合うビジネスを立ち上げた起業家。2012年当時、インドの6億2,600万人がトイレを使っていなかったという現実に、企業として初めて“糞尿”を正面から扱う事業に挑んだ。 Banka BioLooは、鉄道車両へのバイオトイレ25万基の設置をはじめ、各地で排水処理や水再利用を実施。Clean India運動と連携し、CSRや世界銀行資金を引き寄せ、140,000人以上の生活に変化をもたらしてきた。 きっかけは、ある展示会で女性たちから「トイレを設置してほしい」と懇願された経験。設置後、「ありがとう」と涙ながらに感謝されたその瞬間が、彼女の人生を変えた。 “トイレを語ること”すら恥とされた文化において、声を上げ行動することで、「女性が語る衛生」という社会的沈黙を打ち破ったパイオニアである。衛生インフラは国の責任という見方が強いなかで、民間でこの分野に挑んだ理由について答えるなかで出てきたのが冒頭の言葉であり、声を上げることの重要さを訴える。


イヴェット・イシムウェ/Iriba Water Group 創業者・CEO(ルワンダ)

“水ATM1台で、毎日1500人の子どもたちに安全な飲み水が届けられます。
たった2000ドルで、命のインフラを動かせるのです”

イヴェット・イシムウェ(Yvette Ishimwe)が「水供給は本来政府の仕事。民間として取り組む意義とは?」と問われて返したのが冒頭の言葉だ。イシムウェがIriba Water Groupを立ち上げたきっかけは、家族で移り住んだルワンダの村で体験した「水のない日常」だった。生活用水を湖から買い、水タンクに注いで使う不便さに直面した彼女は、水浄化装置を取り寄せて家庭用に設置。それが近隣住民から大きな反響を呼び、事業化が始まった。 現在は、ソーラー駆動のスマート水ATM「Tap & Drink」を導入し、ボトル水より70%安価に提供。500,000人以上に清潔な水を届け、200以上の学校にも無償設置。カーボンクレジットを活用して資金調達し、2030年までに500万⼈に水を届ける計画を持つ。 政府とのやり取りでは、当初「民間企業に水設備の許可を出す制度がなかった」ことに阻まれたが、高官判断により突破。今では気候ファイナンスの担い手として、国際的にも注目されている。彼女の言葉は、「わずかな資金で命を守れる」という現実を、多くの人の行動につなげる力を持っている。


「機会の創出」カテゴリー

ラマ・ケヤリ/Little Thinking Minds 共同創業者(ヨルダン)

“中東では、子どもが1年間に読む教科書以外の本はわずか1冊、
6分。私たちは、それを読む喜びに変えたい”

ラマ・ケヤリ(Rama Kayyali)は、アラビア語を母語とする子どもたちの「読み書き能力の危機」に正面から取り組む教育起業家。彼女が共同設立した「Little Thinking Minds」は、中東の子どもたちのリテラシー格差を埋めることを目的に、アラビア語の学習アプリを開発・提供している。 アラブ諸国では、家庭で話されるアラビア語(口語)と、学校で教えられるアラビア語(文語)の間に大きな乖離があり、それが子どもたちの読解力不足を引き起こしている。ラマは、この言語ギャップが10歳時点で7割の子どもに影響していることを重く受け止め、読み書きの力を「子ども自身が自信を持てる力」へと変えるアプリを開発。 UNICEFなど国際機関と協働し、難民コミュニティでも導入。内容にはSDGsやジェンダー平等、気候変動といったテーマも盛り込まれ、すでに中東10か国・800校で50万人以上に届いている。読み書き能力の向上は最大で30%を記録し、証拠に基づいた成果を積み重ねている。ビジョンを問われての答えが冒頭だ。


マリアム・トロスヤン/SafeYOU 創業者・CEO(アルメニア)

“SafeYOUがなければ、私は死んでいたかもしれない。
その夜、アプリが私と子どもの命を救った。
今度は私が、誰かを救う側になりたい”

マリアム・トロスヤン(Mariam Torosyan)は、ジェンダーに基づく暴力という“世界的パンデミック”とされる問題に対し、テクノロジーと法制度を結ぶソリューションを構築してきた。彼女が立ち上げた「SafeYOU」は、女性が自分自身を守るためのモバイルアプリであり、同時に政府・警察・NGOと連携するAIベースのプラットフォームでもある。 1/3の女性が暴力を経験し、年間5万人以上が命を奪われている現状。「利用した女性たちから、どのような声が届いていたか?」の問いへの答えが冒頭の通りである。

SafeYOUは“保護・予防・起訴”という3つの柱で支援を行う。被害の証拠を安全に記録・保管し、必要に応じて提出できる機能、心理・法的カウンセリングの導線、そして女性同士のつながりを保つ「安全な空間」を提供。 すでに世界100万人以上の女性に届き、実際に危機を乗り越えた事例も300件以上にのぼる。国連のSDGs貢献プロジェクトとしても認定され、政策提言にもつながっている。社会的に“扱いにくい”テーマに正面から挑み、世界各国で制度との統合も進めている。


ジャッキー・ステンソン/Essmart 共同創業者(インド)

“起業なんてしない方がいい。
孤独で大変で、誰にも助けてもらえない。
それでもやり続ける人こそが、生き残る”

ジャッキー・ステンソン(Jackie Stenson)は、工学のバックグラウンドを持ち、アフリカ各地で水ポンプや農具などの現地向け製品開発を経験してきた。しかし、どれだけ優れたプロダクトを作っても、現場に届かなければ意味がないという課題に直面。その教訓から生まれたのが「eSmart」だ。 彼女の企業は、農村部の小規模小売店と提携し、農業用の省力化製品やソーラー機器など、生活を変える製品をラストマイルで届ける仕組みを構築。製品設計から流通まで、現地の声を反映させた“本当に使われる”仕組みをつくる。これまでに150万人以上に影響を与え、生産性向上・排出削減・コスト削減の実績も残している。 女性起業家として直面する孤独、育児と経営の両立、そして資金調達の壁を、彼女は“同じ境遇の仲間”との絆で乗り越えてきた。「本当に苦しい時に支え合える女性同士のコミュニティこそが、最大のリターンだった」と語るその姿勢は、多くの挑戦者にとっての励みとなる。「起業によって得られた価値」を問われての答えが冒頭だ。

The post 未来を形づくる“彼女たちの力” 「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」授賞式リポート appeared first on WWDJAPAN.

ロンハーマン、漁網をリサイクルした「レンジ オブ ライト」から新コレクション発表

「ロンハーマン」は31日、オリジナルレーベル「RANGE OF LIGHT(レンジ オブ ライト)」の新コレクションを発売する。

24年秋に発表したローンチコレクション同様、一部商品には漁網からつくられた100%リサイクルナイロン素材のネットプラス(NetPlus)を使用。伸縮性が高く、撥水性に優れた同素材に合わせ、可動性、着脱性に配慮したアイテムを展開する。タウンユースだけでなく、キャンプや音楽フェスなどアウトドアシーンでも着用できるコレクションだ。

ブランド名の「レンジ オブ ライト」(光の山脈の意)は、「自然保護の父」と称された環境活動家、ジョン・ミューアがシエラネバダ山脈に名付けた愛称に由来。ロンハーマンは「雄大な風景の中で移ろいゆく光の美しさ。そして、それを感じる私たち人間もまた、自然の一部であることの象徴」としている。

The post ロンハーマン、漁網をリサイクルした「レンジ オブ ライト」から新コレクション発表 appeared first on WWDJAPAN.

ビームスがひとり親家庭を対象に衣類の無償提供会 「透明性のある支援に」

ビームスは、ひとり親家庭を支援するNPO法人グッドネーバーズ・ジャパンと連携し、中高生の子どもを持つひとり親家庭を対象に、衣類の無償提供会を2023年から継続的に開催している。今年は、5月24、25日に渋谷区の実践女子大学校内で開催。アパレル5社で構成する「スペシャリティ・ストアーズ・アソシエーション」の会員企業であるアバハウスインターナショナルとノーリーズも初参加し、支援の輪を広げた。

提供会では、キャリー品や売れ残ったアパレル・雑貨を各社240点ずつ持ち寄った。来場した親子は、1人あたりトップス、ボトムス、雑貨それぞれのカテゴリーから1点ずつ無償で持ち帰ることができる。会場は、店舗さながらの空間に仕立て、ラックや什器に丁寧に製品を陳列。試着室やトルソーも用意し、各社の販売経験のある社員がスタッフとして参加して接客を行い、「買い物体験」を再現した。

2日間で、抽選で当選した90世帯が参加した。会場では、「久しぶりに親子で出掛けるいい機会になった」「トータルコーディネートを組めてうれしい。娘と交換しながら、楽しみたい」といった感想が聞かれた。

売れ残り品を廃棄せずに活用したい

発起人は、本間征東・ビームス経営企画本部・サステナビリティ推進部兼ロジスティック本部・戦略部・戦略1課だ。当時、ロジスティックス部門で在庫管理を担当していた本間担当は、売れ残り品を廃棄せずに活用できないかと模索していた。「NPO団体を通じて寄付する方法はあったものの、顔も見ずに一方的に在庫をお渡しするのは、乱暴なのではないかという思いがあった。スタッフの接客を通じて、本当に気に入った服と出合える、透明性のある支援ができればと考えた」と話す。そしてフードバンク「グッドごはん」などを運営するグッドネーバーズ・ジャパンに協力を依頼し、「買い物体験を提供する支援の場」としてスタートした。

23年に第1回を開催し、昨年はグッドネーバーズ・ジャパンの支部がある大阪でも実施した。グッドネーバーズ・ジャパンの綿貫玲子部長は、「私たちが対象としている家庭は、食べる物にも困っているような状況。その中で新しい洋服を買う余裕がないケースも少なくない。過去に参加した方たちからは、このイベントをきっかけに思春期の息子が一緒に出掛けてくれた、帰宅した後も家族で会話が弾んだといった声もあった。すてきな空間でスタッフにコーディネートまで提案してもらえるすばらしい機会になっていると思う」と話す。

今年初めて参加したノーリーズの小島直樹社長も当日会場を訪れ、「ファッションを通じて暮らしを豊かにするというイベントの目的に共感した。『ノーリーズ』は働く女性向けの服が多く、学校行事や仕事の場面でも着られるアイテムがそろう。自分たちにもできる支援があると感じた」とコメントした。

同イベントは現在、ビームスのサステナビリティ推進部が主導する。24年に発足したサステナビリティ推進部では、これまでのCSR活動を引き継ぎながら、環境負荷の低減や従業員の働き方改革など、包括的なサステナビリティに取り組んでいる。経年在庫の活用は、「廃棄衣類ゼロ」に向けた課題の一つであり、これまでにも学校や被災地への寄付、アップサイクル企画などを実施。本取り組みも、そうした活動の柱の一つとして位置づけられている。

本間担当は、「サイズの観点からまだ中高生の子どもを持つ家庭に対象を狭めているが、より対象を広げて衣類にまつわるライフイベントに広げていきたい」と意気込む。今後は、グッドネーバーズ・ジャパンの支部がある全国の地域でも開催を計画している。

The post ビームスがひとり親家庭を対象に衣類の無償提供会 「透明性のある支援に」 appeared first on WWDJAPAN.

ロレアル、中国バイオテク企業に出資 AI×サステナブル原料開発を推進

ロレアル グループ(L’OREAL GROUP)は、バイオテクノロジーに関する中国のスタートアップ企業の未名拾光(VEMINSYN)への出資を発表した。今回の出資ラウンドはロレアル中国のCVCである上海美次方投資(SHANGHAI MEICIFANG INVESTMENT)が主導し、グループのベンチャーキャピタルファンドの
ボールド(BOLD)と中国の日用品大手ナイスグループ(NICE GROUP)が参画。規制当局の承認を待つが、出資総額は1億人民元(約19億円)規模でマイノリティ出資となる。本出資は、持続可能なバイオアクティブ原料開発とサプライチェーンのローカル化の推進が狙いとみられる。

未名拾光は、北京大学と清華大学の博士課程で合成生物学と分子設計を専門とする4人の学生が2021年に設立。AIを活用した分子設計プラットフォームと独自のバイオ製造技術を強みに、肌老化に対応するバイオアクティブ成分を開発しており、中国の有力企業プロヤ コスメティクス(PROYA COSMETICS)やシャンハイ ジャワ ユナイテッド(SHANGHAI JAHWA UNITED)、ブルーメイジバイオテクノロジー(BLOOMAGE BIOTECHNOLOGY)などを顧客に持つ。同社のウィーチャット(WeChat)の公式アカウントによれば、調達した資金は「革新的なバイオアクティブ原料の開発、商用生産への展開、低炭素のバイオ製造技術を用いた化粧品原料の開発」に充てられるという。

ヴァンサン・ボワネ(Vincent Boinay)=ロレアル北アジアゾーン プレジデント兼ロレアル中国最高経営責任者(CEO)は、「中国市場の圧倒的なイノベーションポテンシャルを信じている。未名拾光の高度なバイオ技術と中国スタートアップのスピード感は、持続可能な新原料開発に大きな力を与えてくれるだろう」とコメント。

バーバラ・ラヴェルノス(Barbara Lavernos)=ロレアル グループ副CEO兼リサーチ&イノベーション テクノロジー責任者は、「未名拾光のAI設計プラットフォームとバイオ技術、ロレアルの皮膚・毛髪・頭皮に関する科学的知見を組み合わせ、独自の高機能バイオアクティブ原料の迅速な開発とスケール化を実現していく」と述べた。

未名拾光の共同創業者であるヤラン・ジャオ(Yaran Zhao)CEOは、「われわれはサステナブルな資源由来のバイオアクティブ原料が当たり前になる世界を目指している。ロレアルとのパートナーシップは、その実現を加速させるはずだ」と語った。

未名拾光は22年にシティック・キャピタル(CITIC CAPITAL)などからシリーズAで約1億人民元(約19億円)を調達。23年にロレアルが主催するオープンイノベーションプログラム「ビッグバン ビューティーテック イノベーション」で受賞するなど、注目のビューティテック企業として急成長を続けている。

The post ロレアル、中国バイオテク企業に出資 AI×サステナブル原料開発を推進 appeared first on WWDJAPAN.

ケリングが水や生態系の再生を促すウォーターポジティブ戦略を発表

ケリングはこのほど、新たなウォーターポジティブ戦略を発表した。同戦略によると、2050年までのネットウォーターポジティブインパクト達成に向け、2025年、30年、35年をキーマイルストーンに設定し、段階的にプログラムを拡大していく。

ウォーターポジティブとは一般的には、消費量を上回る水の量を供給することを指す。ケリングでは、水消費の削減にとどまらず、システム全体の変革を通じて、水の循環や生態系を積極的に再生し、水に良い影響をもたらすことと定義している。

三本柱となるのは、ウォーターポジティブのスチュワードシップ・プログラム、ウォーターポジティブな原材料、ウォーター・レジリエンス・ラボ。25年に開始するスチュワードシップ・プログラムでは、直接的な事業活動とサプライチェーンの両方において水管理を強化する。またクロムフリーや環境に優しいなめし剤などのベストプラクティスや革新的な技術を活用して、水の効率的な利用を促進し、事業地域での水質と水量の改善を目指す。

ウォーターポジティブな原材料とは、リサイクル生地や代替素材など、自然環境や水への負担を軽減する原材料を指す。ケリングの環境損益計算分析によると、現在2/3の水消費が原材料の生産過程で発生しているという。そのため、再生農業由来の素材を増やすとともに、汚染の削減と流域の回復を促進していく。特に30年以降積極的に拡大を図る。

ウォーター・レジリエンス・ラボは、35年までに重点地域10箇所に設立予定。特にストレスがかかる特定の流域や圧力を受ける生態系を対象に、サプライヤーや他の企業、セクター、地域社会、先住民、公共機関など各地の関係者と連携しながら、健全な淡水生態系の再生と回復を目指す。25年秋には、グループやサプライヤーのなめし革業者が多く拠点を置くトスカーナのアルノ川流域に最初のラボ開設を予定している。

ケリングのマリー=クレール・ダヴー チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者は「各地の関係者と連携して、測定可能なウォーターポジティブの成果を達成し、社会、環境、経済の強靭性を高め、最終的にすべての人々がきれいな水を利用できるように貢献していきたい」とコメントしている。

The post ケリングが水や生態系の再生を促すウォーターポジティブ戦略を発表 appeared first on WWDJAPAN.

サトウキビから生まれたデニム “紙の糸”が切り開く地域創生の新たな扉

観光地として大きく発展を遂げた沖縄。しかしその一方で、地域資源や一次産業への負荷といった深刻な課題も浮かび上がっている。そうした現実に向き合い、地域創生の視点から新たな価値を生み出そうと立ち上がったのが、キュアラボ(Curelabo)山本直人代表だ。彼は活動の起点として、沖縄の基幹作物であるサトウキビの副産物“バガス”に着目。その成分を活用し、試行錯誤を重ねて“紙糸”を開発した。素材開発の背景や、地域をつなぐ構想、そこに込めた思いを聞いた。

“バガス”に見いだした可能性

PROFILE: 山本直人/キュアラボCEO

山本直人/キュアラボCEO
PROFILE: (やまもと・なおと)広告代理店で地域活性化に携わった後、2018年に独立。地域創生とアップサイクルによる循環型ビジネスを展開するリノベーションを設立し、“バガス”を活用した製品を扱う「シマデニムワークス」を開業。21年には、サステナブル素材の研究・製造・販売を行うキュアラボを設立し、現職 PHOTO:NAOKI MURAMATSU

WWD:プロジェクトを立ち上げた経緯を教えてほしい。

山本直人キュアラボCEO(以下、山本):前職では観光業に特化した広告代理店に勤務し、20年ほど前から沖縄に関わるようになった。当時、年間約500万人だった観光客数は、(コロナ禍前の数値で)現在では1000万人を超える規模に達し、ハワイを上回る観光地へと成長している。

一方で、地域が抱える課題も見えてきた。観光産業が急成長すると、地域資源に負担がかかる。その影響を最も大きく受けたのが一次産業だ。沖縄の基幹作物であるサトウキビは、現在でも耕地面積の約47%を占めるが、収穫量はピーク時の約3分の1にまで減少している。とはいえ、国内で製糖用のサトウキビを生産しているのは沖縄と奄美大島のみであり、国内で砂糖を自給するにはこの2地域での栽培は不可欠。残すべき重要な産業だ。地域の魅力を生かしながら、残すべきものを守りたいという思いから、地域創生に貢献する事業を立ち上げた。

WWD:そこから、なぜサトウキビの残渣“バガス”に注目を?

山本:製糖工場を訪れた際、山積みになったバガスを目にし、それがボイラー燃料として使われていることを知った。だが、収穫時期が限られているため、余剰バガスは使い切れず、燃やすことでCO2を排出するという課題も抱えていた。

バガスの成分は約90%が食物繊維で、主に不溶性繊維だ。そのままでは発酵する可能性があり、肥料や飼料に活用するにも輸送面の問題がある。そこで、この食物繊維(セルロース)を利用して、付加価値のある新しい製品を作れないかと模索した結果、“紙の糸”という発想にたどり着いた。バガスを使って紙糸を作ることで、サトウキビという沖縄の原風景を守りながら、産業としての可能性を広げたいと考えた。

軽さと機能性を兼ね備えた紙糸の魅力

WWD:紙糸の特徴は?

山本:紙糸は、和紙を細く裂いて撚(よ)って作るので、繊維構造としては一般的な糸とそれほど大きな違いはなく、番手(糸の太さ)で管理もできる。最も異なる点は、軽さだ。同じ太さの糸で比較すると、綿糸の半分以下と非常に軽い。また、紙は多孔質なので、顕微鏡で拡大すると小さな穴が開いていて、その構造が吸水性と速乾性を生み出す。さらに、植物由来のポリフェノール系成分の効果で、消臭性や抗菌性も非常に高い。軽くて機能性も備え、かつ日本でしか作れない、ユニークな糸だ。

WWD:相性のいい組み合わせは?

山本:紙糸の軽さや、多孔質による吸水・速乾性、消臭・抗菌性といった機能性は、天然繊維と相性がいい。紙糸100%での使用も可能だが、衣類だと着心地の観点でコットンなどとの混紡が主流だ。カシミヤやウール、丹後ちりめんなどシルクとの組み合わせも、高い評価をいただいている。中でも、日本のシルクと紙糸の組み合わせは、海外での反応が非常に良い。

WWD:海外でも手応えを感じている?

山本:日本の紙糸自体が珍しく、ストーリー性にも富んでいる点が評価され、ハイブランドを含むさまざまなブランドから注目を集めている。デニムよりも、糸として卸すケースが多く、糸やテープの状態で提供し、海外でテキスタイルに加工して使用されるのが主だ。現在では、70種類以上あるサンプルから「この糸・生地を使いたい」とオーダーを受ける機会も増えている。

WWD:開発でこだわった点は?

山本:一番のこだわりは、「国内で製造したい」という思いだ。「サトウキビの残渣は東南アジアでも採れるのだから、沖縄産にこだわる必要はないのでは?」と言われることもあるが、僕たちは地域創生を目的に取り組んでいる。コストなどの課題もあるが、それでも“価値”として残すべきだと考えている。「この素材を通して何をしたいのか」という思いに強くこだわってきたからこそ、「こういうものができた」と沖縄の人々に伝えると、とても喜んでもらえる。そういう姿を見ると、やってよかったと心から思う。

WWD:サトウキビの“バガス”から紙糸を作ろうと考えた後、なぜ「シマデニムワークス(SHIMA DENIM WORKS)」を立ち上げたのか?

山本:デニムは、アパレルの中でも製品寿命が長いアイテムだ。素材にこだわると同時に、できるだけ環境負荷を抑えたいと考えた。さらに、プロジェクトの出発点が沖縄であったことも大きい。沖縄とアメリカの歴史的な関係性を踏まえると、ジーンズというアイテムは象徴的だと思った。

WWD:一般的なコットンデニムとはどんな違いがある?

山本:まず、軽さは明らかに違う。私たちのデニム生地では、紙糸を50%ほど混ぜているので、コットン100%の従来のデニムと比較するとかなり軽い。また、通常のデニムは横糸に白のコットン糸を使うことが多いが、私たちのデニムは横糸に紙糸を採用しているので、裏返すとその色味がよく分かる。少し生成りがかった独特の色なので、それによって経年変化や風合いが少し違ってくる。

沖縄から全国へ
30種類の未利用資源が紙糸に

WWD:現在では、バガス以外も扱っていると聞く。

山本:パイナップルやトマトの葉っぱや米のもみ殻、麦茶やワインの搾りかす、サクランボの剪定枝など、全国21エリア以上で、約30種類の素材を展開している。試作も含めるともっと多い。将来的には、全国47都道府県全てで取り組みたい。

WWD:どういうものが紙糸の原料に向いている?

山本:紙にする上での結合率でいうと、食物繊維を多く含む植物由来のものが適している。ただ、糖度が高かったり、油分が多かったりするものは、工程を追加しなければならず、少し手間がかかる。

WWD:国内製造はどこで?

山本:北海道や岐阜で製造した紙に、静岡・浜松や広島・福山でスリット加工や撚糸を施し、用途に応じて異なる工程を経て仕上げている。例えば、山形のサクランボの枝は、宮城の提携先で乾燥・粉砕処理を行い、その後北海道で紙に加工する。愛知で出る残渣であれば、岐阜で紙にするなど、可能な限り素材の産地に近い場所で完結できるようにしている。

私たちは、サプライチェーンの構築を重視している。自社で全てを抱え込むのではなく、“発注すれば回る体制”を整える。それが実現すれば、全体のバランスが取れて、関わる全ての人がハッピーになれる。デニム製品に関しては、広島・福山を拠点に体制を整えている。製織は篠原テキスタイル、染色は坂本デニムにお願いしている。

WWD:自社の規模を拡大していくより、連携を軸に動いていく、と。

山本:その通りだ。全国の職人や産地にしっかりと還元できるよう、提示された金額のままで依頼しており、価値を下げるような量産はしない。客観的な視点で地域を観察し、そこにある課題を見つけ出し、それをいかに新たな価値へと変換できるかを常に考えている。各地域が自らアップサイクルを実現できる仕組みを、一緒に作っていきたい。

地域、企業と生み出すモノ作り

WWD:なぜ地方創生にこだわるのか?

山本:日本のモノづくりは、私たちが世界と戦える“武器(強み)”だと思うから。日本製の価値は、いまだにすごく高い。だからこそ、昔からある素材や技術に新たな価値を加えて“創生”する発想は、今とても重要だと感じている。それを47都道府県にまで広げていけるような仕組みができたら──。日本のモノ作りの価値と可能性を、今一度提示していきたい。

WWD:今、特に注力している地域連携があれば教えてほしい。

山本:地域軸と企業軸でそれぞれある。地域軸でいうと、100万本のバラが咲く“ばらのまち”として知られる広島・福山では、これまで剪定された枝は全て焼却処分されていた。そこで、福山市役所と篠原テキスタイルと連携し、それらの枝を再利用してデニムを作っている。

また、今年は山形でフルーツ栽培が始まって150周年という節目の年。これに合わせ、山形県庁やJRと連携し、サクランボの剪定枝をアップサイクルした糸を用いて、佐藤繊維をはじめとする県内のニット工場で製品化するプロジェクトを進めている。

京都では、北山杉を活用したプロジェクトも進行中だ。約600年の歴史を持つ北山杉は、かつて茶室や数寄屋建築、寺院などに使用されていたが、洋風化とともに需要が減少している。こうした状況を受け、京都芸術大学と連携し、廃材となった北山杉を糸や布に加工して、林業用の作業着や法被として再生する取り組みを行っている。

WWD:企業軸では?

山本:「サッポロビール」黒ラベルの搾りかすを活用したプロジェクトは、かれこれ4年ほど継続しており、毎年新たな素材や製品を販売している。「明治」チョコレートの原料であるカカオ豆の皮を活用したプロジェクトでは、私たちが作った生地を「エドウイン(EDWIN)」が製品化・販売している。

目指すは“産業がある地域”

WWD:今後は、海外の未利用資源を活用した動きも考えている?

山本:すでに挑戦を始めている。例えば、タイは世界第4位のサトウキビ生産国で、日本をはるかに上回る生産量を誇る。もしタイ国内に紙糸を製造する技術を導入できれば、現地で新たな産業を創出することが可能になる。地域ごとの残渣を生かしたアップサイクルが実現すれば、それこそ地域創生のグローバルモデルとなり得る。

WWD:日本と海外で需要に違いは感じる?

山本:ヨーロッパの方が意識は高いと感じている。日本のマーケットでは、サステナブルやエシカルという観点からの購買意識がまだ根付いていない。もちろん、感度の高い一部の層からは反応があり、メディアを通じて知ってもらえる機会も増えた。ただし、紙糸の吸水性や消臭・抗菌性といった“機能的価値”がなかなか評価されず、最終的には価格で比較されて終わるケースも少なくない。

一方で、若い世代を中心に変化の兆しも見えてきた。現在、全国約20の小中学校と連携し、ワークショップやオンライン授業を実施している。サステナブルな考え方を若い世代に伝えることは、長期的視点で“持続可能な社会”を実現するための布石になる。こういう取り組みこそ真のサステナブルだ。

WWD:今後の目標は?

山本:1つの大きな目標としては、沖縄で繊維産業を生み出すこと。沖縄には縫製業はあるが、繊維産業は存在していない。現在、われわれは、バガスのパウダー化までの工程を沖縄で行っており、それ以降の紙や糸にする工程は、弊社の特許をそれぞれの加工パートナーに委託している状況だ。沖縄本島に唯一ある製糖工場「ゆがふ製糖」に新しい設備を導入できれば、沖縄でも原料から紙、糸、生地、製品までを一貫して行えるようになる。内閣府「沖縄総合事務局」とプロジェクトについて意見を交わしているところだ。

WWD:最後に、この活動を通じてどんな未来を作っていきたい?

山本:“産業がある地域”を実現したい。白川郷のような、観光地としてだけでなく、人が住み、働き、経済が循環している地域。そこに“本当の意味での創生”があると信じている。この紙糸という素材が、地域と世界をつなぐ架け橋になればうれしい。

The post サトウキビから生まれたデニム “紙の糸”が切り開く地域創生の新たな扉 appeared first on WWDJAPAN.

世界最大級のサステナサミットを欧州通信員がレポ 注目は藻の可能性?!

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回のゲストは、ドイツ・ベルリン在住で海外ファッション・ウイークなどを取材する「WWDJAPAN」欧州通信員の藪野淳さん。4月にパリで開催された世界最大級のサステナビリティサミット「チェンジナウ(ChangeNOW)」を現地で取材してきた藪野さんに、イベントの熱気や気になる最新トピックを伺いました。なかでもワクワクしたのは“藻類”のポテンシャルだそう。未来を変えるアイデアが集結した会場の様子をレポートしてもらいました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 世界最大級のサステナサミットを欧州通信員がレポ 注目は藻の可能性?! appeared first on WWDJAPAN.

LVMH メティエ ダール 盛岡氏に聞く、産地との共生モデル ラグジュアリーの次の役割

PROFILE: 盛岡笑奈/LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター

盛岡笑奈/LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター
PROFILE: 2011年ラグジュアリー業界を牽引するLVMHグループに入社。以降、ウォッチ・ジュエリー部、本社勤務を通じマーケティングや経営戦略の経験を重ね、22年より卓越した職人のノウハウの継承と発展を掲げるLVMHメティエ ダールの日本支部の設立と共にディレクターに就任。工芸から工業に渡り、日本の優れたものづくりの潜在力を発揮し、伝統と革新の対話を通じ、卓越したクラフトマンシップの活性化と職人に対する持続性のある事業の開拓と展開を志す。PHOTO:KAZUO YOSHIDA
LVMHグループが推進する伝統産業継承プロジェクト「LVMH メティエ ダール」。フランスをはじめとする欧州各地で築かれてきた産地連携モデルは、いま日本市場へと本格的に拡張されつつある。なぜ、いま日本なのか。グローバルなラグジュアリービジネスの文脈において、日本のクラフト技術はどのような位置づけにあるのか。そして、急速に進む産地の衰退と向き合いながら、どのような持続可能なモデルを構築しようとしているのか。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンの盛岡笑奈LVMH メティエ ダール ディレクターへのインタビューを通じ、現場でのリサーチ活動、職人ネットワーク構築の現状、地域エコシステム形成への展望、そしてグローバル市場における日本産クラフトの可能性を探る。

伝統と革新をつなぐ、日本展開のミッション

WWD:LVMH メティエ ダール ジャパンは2022年に設立され、伝統産業の継承と発展を掲げています。はじめに、盛岡さんのミッションや、現在どのような役割で活動されているのか教えてください。

盛岡笑奈LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン、LVMH メティエ ダール ディレクター(以下、盛岡):LVMH メティエ ダールは2015年に立ち上がった事業で、今年でちょうど10年を迎えます。ラグジュアリー業界では、多くのブランドがヨーロッパの伝統産業を支えにビジネスを展開してきましたが、近年は世界的にそうした産業の衰退が顕著になってきました。

その中で「優れたものづくりを守り、未来へつなぐ」という姿勢が、私たちの中核的な価値観として根づいています。ルイ・ヴィトンをはじめとするフランス発祥のメゾンであっても、いまやフランスや欧州にとどまらず、最良の素材や技術、クラフトマンシップを取り入れて製品を生み出すことが重要視されています。

日本は、伝統技術や素材、品質、そしてクリエイティビティにおいて世界的にも高く評価されています。さらに、まだ十分に発掘・活用されていないものづくりが、各地に数多く残されています。それらを再発見し、世界に発信していくことが、私のミッションです。

WWD:盛岡さんがこの任務に選ばれた背景には、どのような経緯があったのでしょうか?

盛岡:もともと日本のものづくりに強い関心があり、それをどうブランドビジネスに生かすかを考え続けてきました。ですので、自然な流れで現在の役割を担うことになったと感じています。

ビジネスとしての共生と産地連携

WWD:対象となる技術や産業については、どのような基準で取り組みを進めているのでしょうか?

盛岡:LVMH メティエ ダールはCSR活動ではありません。ビジネスとして成立させることを前提としたプロジェクトです。つまり、企業やブランドの成長と並行して、パートナーである職人や工房の持続的成長を支える「共生モデル」を目指しています。伝統的価値を単に保存するのではなく、それを経済活動として活かしていくことが求められているのです。

WWD:2020年にはベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)会長兼最高経営責任者(CEO)が日本を訪問し、日本のクラフトや繊維産業に高い価値を見出す発言もありました。こうした動きは、LVMH メティエ ダールの展開と連動しているのでしょうか?

> LVMHアルノー会長が松野官房長官を訪問 商品に日本産地表示など提案

盛岡:はい、グループ内でも以前からラグジュアリーの未来を考える上で、素材の定義や重要性を再確認する必要性が議論されてきました。従来は欧州の産地や職人たちが中心でしたが、すでに失われた技術も少なくありません。

一方、日本はフェーズが少し遅れていることもあり技術や素材がいまだ豊富に残されています。この「最後のチャンス」を逃さず、日本で残る技術や素材を再発見し、活性化していくことが今、重要だと考えています。

WWD:LVMH傘下のブランドはこれまでも日本の伝統産業と協業してきましたね。

盛岡:1953年にデザインされた「クリスチャン ディオール」の“ジャルダン ジャポネ(日本庭園)”と名付けられたドレスが象徴するように、多くのメゾンはかつてより日本をインスピレーションの源にしていて、日本の素材や職人技術を高く評価し、制作にも採用しています。ただ、活用の面ではまだ伸びしろは十分あると感じています。

地理的距離や言語の違い以上に、価値観や仕事観の隔たりがあったことも否めません。本質的な対話の欠如が、これまでの限界だったと感じています。単なる商取引ではなく、長期的な関係性を築く「かけ橋」となることが、私の使命だと考えています。

日本でしかできないものを見極める

WWD:特に、日本の繊維産業の、どのような点に注目されていますか?

盛岡:日本の繊維技術は世界的に見ても非常に高水準ですが、物理的な距離のために欧州ブランドと連携するハードルが高いという課題がありました。サンプル確認のスピードや物流コストが大きく影響します。

だからこそ、「日本でしかできないこと」から始めるべきだと考えました。たとえば、デニムや日常着で使われる絹織物など、唯一無二の技術にフォーカスしています。

WWD:実際の産地リサーチは、どのように進めているのでしょうか?

盛岡:資料や文献も大切ですが、最も重要なのは現場に足を運ぶことです。職人の工房で、ものづくりの現場を自分の目で確かめることが不可欠だと考えています。

注目している地域にはほぼすべて訪問しており、将来的には全都道府県を回りたいと思っています。訪問の際は、事前に関係者との打ち合わせを行い、それぞれの得意分野や技術の特性を理解したうえで現地に向かいます。

日本のものづくりには、分業制に基づく緻密な工程が多く見られます。たとえば同じ織物でも、染めに特化した工房や、糸づくりに強みを持つ地域などがあり、それぞれに独自の技術が根づいています。単発の訪問では見えにくい本質的な価値を見極めるため、何度も足を運びながら信頼関係を築いています。

WWD:軸として「日本でしかできないもの」を重視されているとのことですが、具体的には?

盛岡:はい、その軸は絶対にぶらさないようにしています。とくに繊維産業では、各工程が極めて高度に専門化されているのが特徴です。素材の品質に加えて、糸づくり、染め、織り、仕上げといった各段階で、それぞれ独立した高い技術が存在します。しかし現実には、たとえば糸づくりの工程では担い手が急速に減少しています。糸がなければ織物も成り立たないように、ひとつの工程が消えることで、全体の持続可能性が脅かされる可能性があるのです。だからこそ、今ある技術をどのように未来につなぐかを、慎重かつ戦略的に考える必要があります。

WWD:産地での出会いの中で、特に印象に残ったことはありますか?

盛岡:すべての出会いが印象的ですが、特に強く心に残っているのは、優れた技術を持ちながらも後継者がいない、あるいは高齢で引退間近という職人の方々との出会いです。「この方が最後かもしれない」と思う瞬間があり、そのたびに胸が締めつけられる思いになります。この貴重な技術を何としても次代へつなぎたい、という気持ちが自然と湧き上がります。

また、伝統技術というと「守るべきもの」というイメージが先行しがちですが、実際には多くの職人たちが日々挑戦を続けています。単に受け継ぐだけでなく、自らの手でアップデートしていこうとする意志にあふれています。まさに伝統と革新の両立を体現されているとつくづく感じています。年齢を問わず、そうした未来志向を持つ職人に出会うと、私たちも大きな力をもらいます。

エコシステム構築と地域への還元

WWD:パートナーシップの締結はどのように進められていか?

盛岡:パートナーシップの形態は一様ではありません。事業者の状況に応じて、資本提携、優先取引による戦略的連携、あるいは新事業立ち上げに向けたジョイントベンチャーなど、さまざまな選択肢を用意しています。重要なのは、一方的に「これをしてください」と求めるのではなく、相手の現状や可能性を十分に理解し、対等な立場で課題をともに乗り越えていくことです。

たとえば、欧州基準への対応トレーニングやサプライチェーンの透明化など、即時対応が求められる項目と中長期的に取り組むべきテーマを整理し、段階的に支援を行っています。最終的には、各事業者が自立してグローバル市場で戦えるスキルと自信を身につけ、新たなチャレンジを自ら始められる状態を目指しています。その橋渡しを担うことが、私たちの重要な役割だと考えています。

WWD:「クロキ」のデニム生地や西陣織「細尾」との取り組みも注目を集めました。

盛岡:いずれの事例も、単なるパートナー契約にとどまらず、「どう生かしていくか」に重点を置いています。たとえばクロキさんのデニムが、ラグジュアリー業界で広く認知され、世界に展開されていくこと。それ自体が一つの成果であると考えています。デニム産業は地域全体で支えるものです。ですから、単に一社が生地を供給するのではなく、地域全体の魅力を紹介し、「メイド・イン・ジャパン」の価値をグローバルに伝えるエコシステムを構築していきたいと考えています。

細尾さんの西陣織についても同様です。京都が持つ技術力や文化の奥深さを、ラグジュアリーの世界に改めて発信していく取り組みです。

WWD:伝統を大切にしながら、地域への還元も意識したエコシステムづくりですね。

盛岡:地域産業を真に守るためには、一部の工房や企業だけが恩恵を受けるのではなく、地域全体に利益が波及する循環を構築する必要があります。たとえば「ルイ・ヴィトン」や「ディオール(DIOR)」の製品が、ある地域の素材によって生まれていると広く知られるようになれば、その地域で働きたいと思う若い人も増えるかもしれません。

そうした流れができれば、地域内に小さな経済圏が生まれ、持続可能なエコシステムが構築されていきます。また、日本のものづくりは自然環境との結びつきが深く、地場産業は土地の特性と切り離せない存在です。たとえば、織物産地の近くに清らかな水があるように、風土と技術は一体です。

だからこそ、観光だけが先行し、地域に還元されないような形では本質的な価値は生まれません。本当に地域の人々に価値が戻ってくる仕組みづくりが、何よりも重要だと考えています。

課題は世界との比較や客観的な視点

WWD:日本の産地やクラフトの課題について、どのように捉えていますか?

盛岡:最大の課題は、世界との比較や客観的な視点が不足していることだと感じています。地域の中では「素晴らしい」と評価されているニットや織物であっても、同様に優れた技術や製品が世界の他の地域にも存在する可能性があります。そこを知らなければ、自分たちの強みも、どこで勝負すべきかも見えてこない。

世界に出ていくためには、すべてを守ろうとするのではなく、ある程度フォーカスを絞り、「これが私たちの核です」と明確に打ち出す必要があります。

WWD:最近、日本でもアーティスト・イン・レジデンス(AIR)のプログラムを始められたと伺いました。その意図を教えてください。

盛岡:もともとこのAIRプログラムはヨーロッパで展開していた取り組みで、毎年一社ずつ、パートナー企業の現場にアーティストを派遣し、工業や工芸のプロセスをアートの視点で表現してもらうというプロジェクトです。

工業の現場というと、どうしても機械的な作業に見えがちですが、そこにも繊細なクラフトマンシップが息づいています。アーティストがその現場に入り込むことで、職人たち自身が自らの技術の価値を再認識するきっかけになるのです。「なぜその手の動きなのか」「なぜこの作業順なのか」——当たり前と思っていた所作に対して、アーティストが新しい視点から問いを投げかけてくれる。それが職人たちにとっても大きな刺激になります。このプログラムを日本でも展開することで、改めてクラフトの価値を内側から見つめ直し、未来への革新につなげるきっかけになればと考えています。

The post LVMH メティエ ダール 盛岡氏に聞く、産地との共生モデル ラグジュアリーの次の役割 appeared first on WWDJAPAN.

LVMH メティエ ダール 盛岡氏に聞く、産地との共生モデル ラグジュアリーの次の役割

PROFILE: 盛岡笑奈/LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター

盛岡笑奈/LVMH メティエ ダール ジャパン ディレクター
PROFILE: 2011年ラグジュアリー業界を牽引するLVMHグループに入社。以降、ウォッチ・ジュエリー部、本社勤務を通じマーケティングや経営戦略の経験を重ね、22年より卓越した職人のノウハウの継承と発展を掲げるLVMHメティエ ダールの日本支部の設立と共にディレクターに就任。工芸から工業に渡り、日本の優れたものづくりの潜在力を発揮し、伝統と革新の対話を通じ、卓越したクラフトマンシップの活性化と職人に対する持続性のある事業の開拓と展開を志す。PHOTO:KAZUO YOSHIDA
LVMHグループが推進する伝統産業継承プロジェクト「LVMH メティエ ダール」。フランスをはじめとする欧州各地で築かれてきた産地連携モデルは、いま日本市場へと本格的に拡張されつつある。なぜ、いま日本なのか。グローバルなラグジュアリービジネスの文脈において、日本のクラフト技術はどのような位置づけにあるのか。そして、急速に進む産地の衰退と向き合いながら、どのような持続可能なモデルを構築しようとしているのか。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンの盛岡笑奈LVMH メティエ ダール ディレクターへのインタビューを通じ、現場でのリサーチ活動、職人ネットワーク構築の現状、地域エコシステム形成への展望、そしてグローバル市場における日本産クラフトの可能性を探る。

伝統と革新をつなぐ、日本展開のミッション

WWD:LVMH メティエ ダール ジャパンは2022年に設立され、伝統産業の継承と発展を掲げています。はじめに、盛岡さんのミッションや、現在どのような役割で活動されているのか教えてください。

盛岡笑奈LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン、LVMH メティエ ダール ディレクター(以下、盛岡):LVMH メティエ ダールは2015年に立ち上がった事業で、今年でちょうど10年を迎えます。ラグジュアリー業界では、多くのブランドがヨーロッパの伝統産業を支えにビジネスを展開してきましたが、近年は世界的にそうした産業の衰退が顕著になってきました。

その中で「優れたものづくりを守り、未来へつなぐ」という姿勢が、私たちの中核的な価値観として根づいています。ルイ・ヴィトンをはじめとするフランス発祥のメゾンであっても、いまやフランスや欧州にとどまらず、最良の素材や技術、クラフトマンシップを取り入れて製品を生み出すことが重要視されています。

日本は、伝統技術や素材、品質、そしてクリエイティビティにおいて世界的にも高く評価されています。さらに、まだ十分に発掘・活用されていないものづくりが、各地に数多く残されています。それらを再発見し、世界に発信していくことが、私のミッションです。

WWD:盛岡さんがこの任務に選ばれた背景には、どのような経緯があったのでしょうか?

盛岡:もともと日本のものづくりに強い関心があり、それをどうブランドビジネスに生かすかを考え続けてきました。ですので、自然な流れで現在の役割を担うことになったと感じています。

ビジネスとしての共生と産地連携

WWD:対象となる技術や産業については、どのような基準で取り組みを進めているのでしょうか?

盛岡:LVMH メティエ ダールはCSR活動ではありません。ビジネスとして成立させることを前提としたプロジェクトです。つまり、企業やブランドの成長と並行して、パートナーである職人や工房の持続的成長を支える「共生モデル」を目指しています。伝統的価値を単に保存するのではなく、それを経済活動として活かしていくことが求められているのです。

WWD:2020年にはベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)会長兼最高経営責任者(CEO)が日本を訪問し、日本のクラフトや繊維産業に高い価値を見出す発言もありました。こうした動きは、LVMH メティエ ダールの展開と連動しているのでしょうか?

> LVMHアルノー会長が松野官房長官を訪問 商品に日本産地表示など提案

盛岡:はい、グループ内でも以前からラグジュアリーの未来を考える上で、素材の定義や重要性を再確認する必要性が議論されてきました。従来は欧州の産地や職人たちが中心でしたが、すでに失われた技術も少なくありません。

一方、日本はフェーズが少し遅れていることもあり技術や素材がいまだ豊富に残されています。この「最後のチャンス」を逃さず、日本で残る技術や素材を再発見し、活性化していくことが今、重要だと考えています。

WWD:LVMH傘下のブランドはこれまでも日本の伝統産業と協業してきましたね。

盛岡:1953年にデザインされた「クリスチャン ディオール」の“ジャルダン ジャポネ(日本庭園)”と名付けられたドレスが象徴するように、多くのメゾンはかつてより日本をインスピレーションの源にしていて、日本の素材や職人技術を高く評価し、制作にも採用しています。ただ、活用の面ではまだ伸びしろは十分あると感じています。

地理的距離や言語の違い以上に、価値観や仕事観の隔たりがあったことも否めません。本質的な対話の欠如が、これまでの限界だったと感じています。単なる商取引ではなく、長期的な関係性を築く「かけ橋」となることが、私の使命だと考えています。

日本でしかできないものを見極める

WWD:特に、日本の繊維産業の、どのような点に注目されていますか?

盛岡:日本の繊維技術は世界的に見ても非常に高水準ですが、物理的な距離のために欧州ブランドと連携するハードルが高いという課題がありました。サンプル確認のスピードや物流コストが大きく影響します。

だからこそ、「日本でしかできないこと」から始めるべきだと考えました。たとえば、デニムや日常着で使われる絹織物など、唯一無二の技術にフォーカスしています。

WWD:実際の産地リサーチは、どのように進めているのでしょうか?

盛岡:資料や文献も大切ですが、最も重要なのは現場に足を運ぶことです。職人の工房で、ものづくりの現場を自分の目で確かめることが不可欠だと考えています。

注目している地域にはほぼすべて訪問しており、将来的には全都道府県を回りたいと思っています。訪問の際は、事前に関係者との打ち合わせを行い、それぞれの得意分野や技術の特性を理解したうえで現地に向かいます。

日本のものづくりには、分業制に基づく緻密な工程が多く見られます。たとえば同じ織物でも、染めに特化した工房や、糸づくりに強みを持つ地域などがあり、それぞれに独自の技術が根づいています。単発の訪問では見えにくい本質的な価値を見極めるため、何度も足を運びながら信頼関係を築いています。

WWD:軸として「日本でしかできないもの」を重視されているとのことですが、具体的には?

盛岡:はい、その軸は絶対にぶらさないようにしています。とくに繊維産業では、各工程が極めて高度に専門化されているのが特徴です。素材の品質に加えて、糸づくり、染め、織り、仕上げといった各段階で、それぞれ独立した高い技術が存在します。しかし現実には、たとえば糸づくりの工程では担い手が急速に減少しています。糸がなければ織物も成り立たないように、ひとつの工程が消えることで、全体の持続可能性が脅かされる可能性があるのです。だからこそ、今ある技術をどのように未来につなぐかを、慎重かつ戦略的に考える必要があります。

WWD:産地での出会いの中で、特に印象に残ったことはありますか?

盛岡:すべての出会いが印象的ですが、特に強く心に残っているのは、優れた技術を持ちながらも後継者がいない、あるいは高齢で引退間近という職人の方々との出会いです。「この方が最後かもしれない」と思う瞬間があり、そのたびに胸が締めつけられる思いになります。この貴重な技術を何としても次代へつなぎたい、という気持ちが自然と湧き上がります。

また、伝統技術というと「守るべきもの」というイメージが先行しがちですが、実際には多くの職人たちが日々挑戦を続けています。単に受け継ぐだけでなく、自らの手でアップデートしていこうとする意志にあふれています。まさに伝統と革新の両立を体現されているとつくづく感じています。年齢を問わず、そうした未来志向を持つ職人に出会うと、私たちも大きな力をもらいます。

エコシステム構築と地域への還元

WWD:パートナーシップの締結はどのように進められていか?

盛岡:パートナーシップの形態は一様ではありません。事業者の状況に応じて、資本提携、優先取引による戦略的連携、あるいは新事業立ち上げに向けたジョイントベンチャーなど、さまざまな選択肢を用意しています。重要なのは、一方的に「これをしてください」と求めるのではなく、相手の現状や可能性を十分に理解し、対等な立場で課題をともに乗り越えていくことです。

たとえば、欧州基準への対応トレーニングやサプライチェーンの透明化など、即時対応が求められる項目と中長期的に取り組むべきテーマを整理し、段階的に支援を行っています。最終的には、各事業者が自立してグローバル市場で戦えるスキルと自信を身につけ、新たなチャレンジを自ら始められる状態を目指しています。その橋渡しを担うことが、私たちの重要な役割だと考えています。

WWD:「クロキ」のデニム生地や西陣織「細尾」との取り組みも注目を集めました。

盛岡:いずれの事例も、単なるパートナー契約にとどまらず、「どう生かしていくか」に重点を置いています。たとえばクロキさんのデニムが、ラグジュアリー業界で広く認知され、世界に展開されていくこと。それ自体が一つの成果であると考えています。デニム産業は地域全体で支えるものです。ですから、単に一社が生地を供給するのではなく、地域全体の魅力を紹介し、「メイド・イン・ジャパン」の価値をグローバルに伝えるエコシステムを構築していきたいと考えています。

細尾さんの西陣織についても同様です。京都が持つ技術力や文化の奥深さを、ラグジュアリーの世界に改めて発信していく取り組みです。

WWD:伝統を大切にしながら、地域への還元も意識したエコシステムづくりですね。

盛岡:地域産業を真に守るためには、一部の工房や企業だけが恩恵を受けるのではなく、地域全体に利益が波及する循環を構築する必要があります。たとえば「ルイ・ヴィトン」や「ディオール(DIOR)」の製品が、ある地域の素材によって生まれていると広く知られるようになれば、その地域で働きたいと思う若い人も増えるかもしれません。

そうした流れができれば、地域内に小さな経済圏が生まれ、持続可能なエコシステムが構築されていきます。また、日本のものづくりは自然環境との結びつきが深く、地場産業は土地の特性と切り離せない存在です。たとえば、織物産地の近くに清らかな水があるように、風土と技術は一体です。

だからこそ、観光だけが先行し、地域に還元されないような形では本質的な価値は生まれません。本当に地域の人々に価値が戻ってくる仕組みづくりが、何よりも重要だと考えています。

課題は世界との比較や客観的な視点

WWD:日本の産地やクラフトの課題について、どのように捉えていますか?

盛岡:最大の課題は、世界との比較や客観的な視点が不足していることだと感じています。地域の中では「素晴らしい」と評価されているニットや織物であっても、同様に優れた技術や製品が世界の他の地域にも存在する可能性があります。そこを知らなければ、自分たちの強みも、どこで勝負すべきかも見えてこない。

世界に出ていくためには、すべてを守ろうとするのではなく、ある程度フォーカスを絞り、「これが私たちの核です」と明確に打ち出す必要があります。

WWD:最近、日本でもアーティスト・イン・レジデンス(AIR)のプログラムを始められたと伺いました。その意図を教えてください。

盛岡:もともとこのAIRプログラムはヨーロッパで展開していた取り組みで、毎年一社ずつ、パートナー企業の現場にアーティストを派遣し、工業や工芸のプロセスをアートの視点で表現してもらうというプロジェクトです。

工業の現場というと、どうしても機械的な作業に見えがちですが、そこにも繊細なクラフトマンシップが息づいています。アーティストがその現場に入り込むことで、職人たち自身が自らの技術の価値を再認識するきっかけになるのです。「なぜその手の動きなのか」「なぜこの作業順なのか」——当たり前と思っていた所作に対して、アーティストが新しい視点から問いを投げかけてくれる。それが職人たちにとっても大きな刺激になります。このプログラムを日本でも展開することで、改めてクラフトの価値を内側から見つめ直し、未来への革新につなげるきっかけになればと考えています。

The post LVMH メティエ ダール 盛岡氏に聞く、産地との共生モデル ラグジュアリーの次の役割 appeared first on WWDJAPAN.

ヤギの25年3月期は3期連続で増益、今期は21円増配

繊維専門商社ヤギの2025年3月期連結業績は、売上高833億円(前期比0.6%増)、経常利益37億円(同17.5%増)、純利益26億円(同26.5%増)で3期連続の増益となった。アパレル事業とブランド・リテール事業が好業績をけん引し、経常利益と当期純利益は過去最高を更新した。

売上高の約半分を占めるアパレル事業は、引き続き安定した消費意欲に支えられた。主力のOEM事業では、量販店から通販、セレクトショップまで主要取引先への提案など営業強化を図り、中高価格帯の商品に注力した結果、売上高は前期より3.9%増の435億円だった。長引く円安の影響はあったものの、生産背景の見直しと物流コストの圧縮などにより収益性を確保。セグメント利益は29億円(同8.3%増)と堅調に推移した。

ブランド・リテール事業では、グループ会社のWEAVAが展開する「タトラス(TATRAS)」が24年11月、東京・銀座に旗艦店を出店。新規出店店舗が好調に推移したことに加え、販売価格の適正化と在庫水準の見直しなどにより、売上高は106億円(同14.0%増)と2ケタ成長を維持。セグメント利益は10億円と販管費増を吸収して前期並みの利益水準を確保した。韓国のWINWIN SPORTSと共同で設立した「WINWIN YJV」が積極的な先行投資によって24年12月に「NIKE SHIBUYA」をオープン。旗艦店の集客力が発揮される今期の業績が期待される。

マテリアル事業では天然繊維の国内需要減退が響き、売上高は229億円(同7.1%減)となったものの、在庫圧縮や適切な価格転嫁、海外販売の増加により利益は4億9600万円(同19.1%増)に改善した。環境配慮型素材ブランド「ユナ・イト(UNITO)」の再構築も進め、3月には初の展示会を開催した。

ライフスタイル事業はダストコントロール商材の調整が続き、売上高73億円(同9.5%減)だった。一方、タオルや化粧雑貨などの生活資材は堅調に推移。コストの見直しと価格改定を行い、高付加価値商品の販促を進めた結果、セグメント利益は6億6700万円(同9.9%増)と健闘した。

2026年3月期は中期経営計画「Heritage to the future」の最終年度にあたり、売上高900億円(同7.9%増)を目指す。利益面は戦略投資の増加を見込み、経常利益38億円(同0.9%増)、当期純利益26億5000万円(同0.9%増)と微増予想にとどめた。

配当については、前期の90円から21円増配し、今期は1株当たり111円を予定。配当性向35%以上を維持する方針だ。

The post ヤギの25年3月期は3期連続で増益、今期は21円増配 appeared first on WWDJAPAN.

街の価値は“人と物語”で育てる 行政の現場から見た「ハタオリマチフェス」と富士吉田の10年

いま、「地域活性」という言葉が産業のみならず、カルチャーやライフスタイルの文脈でも語られるようになっている。そのなかで、必ずと言っていいほど名前が挙がるのが、山梨県・富士吉田市の「ハタオリマチフェスティバル」だ。織物の産地としての歴史に、観光やデザインを掛け合わせ、街の空気ごとアップデートしてきたこのプロジェクトは、9年目となる2024年、2日間で全国から2万6000人を集めた。その立ち上げと成長の背景には、行政と民間クリエイターによる柔軟な連携があったという。今回は、行政側の視点にフォーカスし、同フェスティバルを主導してきた富士吉田市富士山課・勝俣美香観光担当課長に、プロジェクト誕生から現在に至るまでの道のり、そして行政の立場から見た地域連携の可能性について聞いた。

WWD:「ハタオリマチフェスティバル(以下、ハタフェス)」は富士山課所属の勝俣さんと、山梨にU・Iターンした3人のクリエイターのつながりで生まれ、拡大してきました。その一人であるBEEK DESIGNの土屋誠代代表が甲府で2016年に開いた、富士吉田の織物の魅力を伝えるフリーマガジン「LOOM」の音楽会に足を運び、“ピンときた”のがきっかけだとか。どんな直感が働いたのでしょうか。

勝俣美香 富士吉田市富士山課観光担当課長(以下、勝俣):実は、私自身も「なぜあの時あんなに惹かれたのか」、今でもはっきりとは分かりません。知り合いがいるわけでもない場所に、自分から飛び込むというのは、当時の私としては珍しいことでした。「なぜ隣町である甲府で富士吉田のイベントをやるんだろう?」と疑問に思いつつも、とにかくその場を自分の目で見てみたくなったんです。その日は東京出張でしたが、東京から直接甲府に向かうほど、なぜか惹かれました。そして実際にイベントを見て「この空間は温かい」と感じました。

WWD:富士吉田の街に響く機織り工場の音をコンセプトにした音楽だったと聞きます。

勝俣:ええ。ただ、当時、富士吉田の機織りに携わる方々が、自分たちの織物をもっと広めていきたいという思いでブランディングを行い、立川のエコキュートを皮切りに、東京の百貨店などでポップアップイベントを開催していましたが、それを知ったのは後のことです。

WWD:本来であれば富士山に関する施策に注力すべきタイミングですよね。

勝俣:当時は2013年に富士山が世界文化遺産に登録された直後でした。ただ、街中には富士山をベースに商売をしている方が少なく、「やりたいけれど、担い手がいない」という状況でした。観光は、お金を落とす場所や動かす人がいなければ成立しません。

そんな中で、織物業界の方々は「全国的には右肩下がり」と言われている中でも、「もう一度盛り上げたい」とチームを作り、冊子を発行するなど、自発的に動いていらっしゃいました。その活動に観光としても何か一緒にできないかと心を動かされました。観光は結局、「プレーヤー」がいなければ成り立ちません。

WWD:織物に関わる人たちを“プレーヤー”と位置付けるのがユニークです。

勝俣:プレーヤーがいる、ということがとても心強く、だったら「機織りの町を見に来てもらう環境」を作ることが重要だと思いました。中心市街地には飲み屋街などレトロな雰囲気が残っていて、当時の観光ガイドブックにも、吉田のうどんや富士急ハイランド、神社などと並んで1ページだけですが、昭和レトロな街並みが紹介されていました。

「そのレトロなエリアを中心に富士吉田のまちに響くハタオリ工場の音をコンセプトにした心温まる音楽会のようなイベントを開催してほしい」と思い、音楽会を開いた土屋さんに相談しました。この街の物語を描き、イベントとして形にしていただけたら、温かみのある街づくりができ、観光的にも人が訪れてくれるのではないかと考えたんです。

富士吉田には、大きなホテルもありませんし、40人以上が同時に食事できる飲食店も少なく、団体バスツアーには向かない街です。では、どうやって個人旅行者に愛着を持って訪れてもらうか? その答えは、まさに“物語”と“体験”だと思いました。最初は限られた予算でしたが、土屋さんに相談したところ、「機織りの街に来てもらいたい」という私の思いを汲んでいただき、「織物フェスティバル」ではなく、「ハタオリマチ(機織り街)フェスティバル」という名称をご提案いただきました。もし織物だけにフォーカスしていたら、単に「機織りフェスティバル」になっていたかもしれません。

> 山梨を“伝える”インタウンデザイナー土屋誠 “ハタフェス”やワイナリーをブランディング

最初から「産業の活性化」を目的としたわけではない

WWD:確かに、「街」という言葉が入っていることで、場所や人のぬくもりが伝わってきますね。

勝俣:そうなんです。これは“街を表現し、街に来てもらい、街を楽しんでもらう”ためのもので、織物はあくまでそのためのコンテンツのひとつです。最初から「産業の活性化」を目的としたわけではなく、「観光」を起点としたプロジェクトとして始まり、結果として街の活性化につながる形で「ハタフェス」がスタートしました。

WWD:なるほど。「ストーリーを作る」ことが最初から重要だったのですね。そのためには登場人物が必要で、まるで脚本のように展開していくという発想が、勝俣さんの中にあったのでしょうか?

勝俣:当時の私は富士山課に来たばかりで、それ以前にロードレースのようなイベントの運営経験はありましたが、地域活性化を目的とした街づくりイベントの経験はほとんどありませんでした。なので、最初はそこまで深く考えていたわけではなかったんです。ただ、よくある“ラーメン祭り”的なイベントは、終わったらそれで終わってしまう。その場限りの盛り上がりで終わるイベントではなく、この街の歩みや人の思いが伝わるような、長く記憶に残るイベントを作れたらとは思っていました。

そういう意味で、土屋さんに「この街を好きになってもらえるようなイベントを作れないか」とご相談したところ、土屋さんは本当にプロフェッショナルで、しっかりとした“ストーリー”を描いてくださった。そのおかげで、「街への思い」が形になったと感じています。

富士山課が街の中心地に人を呼び込む

WWD::富士山課に異動した際のミッションが“街の再生”だったとのことですが、具体的にはどのような指示があったのでしょうか?

勝俣:「女性の視点で、街中に人を呼び込むことを考えなさい」というのが私に与えられたミッションでした。

WWD:富士山課という名称からは、富士山関連の業務が中心のように思えますが。

勝俣:はい、富士山課では観光だけでなく、それまでは登山事業などを主に行ってはいましたが、“街の中心地に人を呼び込む”という観点からの取り組みは、当時の富士山課長や私が異動してきたタイミングで初めてミッションとして掲げられたと思います。

WWD:現在は商工振興課と連携して取り組んでいるのですか?

勝俣:商工振興課としての取り組みである「ハタオリマチのハタ印」というプロジェクトと連携しています。「ハタオリマチのハタ印」として生地販売や「BTAN」事業として傷あり生地の販売や織物屋さんの廃棄される生地などを使ったワークショップなどもやっています。

「行政らしくないイベント」を目指して

WWD:「ハタフェス」の参加者数の推移を教えてください。

勝俣:初回の2016年は約2000人でした。19年は台風で中止、20年はコロナで開催できませんでしたが、21年以降は徐々に回復し、22年に1万2000人、23年に2万4000人、そして24年に2万6000人と増加しています。22年からは、富士山への登山道でもある中心市街地の「本町通り」を、日曜日だけ歩行者天国にする施策を取り入れたことも来場者数の増加に寄与したと思います。

WWD:2万6000人という数字について、どのように受け止めていますか? 観光客は地元だけでなく、かなり広範囲から来ている印象があります。

勝俣:沖縄など遠方からも来場があります。フェスの大きな特徴のひとつが「他地域とのコラボレーション」です。たとえば、魅力的なパン屋さんや雑貨店、デザイン会社など、他の地域の出店者と組んでイベントを盛り上げています。こうした出店者たちが、それぞれの地域に戻ってフェスをPRしてくださることで、さらに認知が広がるという好循環が生まれています。最近では他の自治体からの視察も増え、出店者からも「ハタフェス」は売り上げがいいという声を多くいただいています。本当に、最初に想像していた以上に、このイベントは大きく育ちました。

WWD:行政の仕事は異動が多いですが、勝俣さんは今年で10年ですね。

勝俣:珍しいですよね。正直、自治体の職員というのは、いろんな部署を数年ごとに異動するため、専門性を深めるのが難しい面があります。観光やイベントのように「答えが一つではない」領域では、なおさら判断が難しくなります。だからこそ、信頼できるパートナーとともに進めることが非常に重要だと感じました。3人のクリエイターたちは、行政が何を求めているかを感じ取りながら、自分たちに求められる役割を的確に理解し、常に魅力的なイベントを意識してくれました。

WWD:行政らしくないイベントに思うのですが、気を使っていることはありますか?

勝俣:専門的なデザインを入れて、魅力的なチラシやHP、SNSを作成したり、フェスでの魅力あるプログラムや出展者を募りました。市のイベントなのに、なぜ市内の事業者が少ないのか?という声もありました。でも、私たちが目指しているのは、各地域の魅力ある出展者に来ていただき、その出展者のファンを富士吉田市に呼び込む。そして、この街の良さを感じてもらい、何度も訪れてもらうことが何よりも大切なんです。

もし市制祭(市民向けイベント)であれば、市内事業者中心でいいと思います。でも富士山課の事業としては、「この街にどう人を呼び込み、リピーターになってもらうか」を重視しているので、観光客がハタフェスのあとも「また行きたい」と思ってくれるような設計をしています。

WWD:つまり、来場者2万6000人という数字よりも、その後1年を通して訪れる人がいて、街でお金を使い、街が元気になるという流れを生むことが、本当の満足につながっているのですね?

勝俣:その通りです。「ハタフェスがきっかけでこの街に来てみました」「フェスで出会った織物ブランドを東京で見かけて嬉しかった」などの声をいただくこともあり、本当にうれしいです。イベントを通じてこの街を知り、好きになってくれる人が増えていると実感しています。

WWD:一年を通じた来訪者数など、データは取っていますか?

勝俣:感覚的には明らかに人の流れが増えていると感じています。「ハタフェス以降、いろいろと声をかけられることが増えた」といった話は聞こえてきます。山梨県が調査しているデータでは2023年319万人、コロナ前の2019年では627万人です。

移住者が増え、空き家問題解決の一助にも

WWD:空き家の活用も進んでいるようです。

勝俣::はい、空き家が減ってきているという話も聞きます。私たちが行っているもう一つの取り組みに、今年で4回目になる「フジテキスタイルウィーク」というアートイベントがあり、こちらも中心市街地活性化事業の一環です。イベントでは、普段閉まっている空き家を活用し「ここで商売ができるかもしれない」と思ってもらえる場づくりをしています。「ハタフェス」が終わった後、その空き家が案内所やカフェとして再活用される例も出ています。

WWD:富士吉田は、もともと空き家率が高かったのですか?

勝俣:はい。山梨県は全国でも空き家率が高い地域で、その中でも富士吉田は特に多いと言われています。

WWD:移住者も増えているのでしょうか?

勝俣:増えています。「ハタフェス」や「フジテキスタイルウィーク」に関わるクリエイターの活動を見たり、富士山が近く、ふもとの豊かな自然に恵まれ、水や空気がおいしいといったこの富士吉田市の環境を感じて移住した方もいらっしゃいます。その方の影響で、さらに別の方が移住してくるという“連鎖”も起きています。

「この街の織物業には力がある」

WWD:勝俣さんご自身は、もともと織物にはそれほど関わってこられなかったと思いますが、ハタフェスを通じて見えてきた織物の魅力について、どう感じていますか?

勝俣:富士吉田はもともと「裏地」の産地でした。東京から山を越えて来るような立地なので、軽くて質が良い織物が求められ、江戸時代の庶民が「表ではおしゃれできないから裏地でおしゃれを楽しむ」という時代に提案していたのがこの街でした。

ただその後、羽織を着る人が減り、海外から安価な素材が入ってきたこともあり、日本全体の繊維業と同じように衰退してきました。それでも富士吉田ではリネン生地やネクタイ、オーガニックコットン、カーテンなどのインテリア用の織物など、個性ある製品を作る方々が頑張っていて、「この街の織物業には力がある」と思っていました。

たとえば、渡辺竜康さんという若手の織物職人がいらっしゃいます。ハタフェスの初回には参加していなかったのですが、第2回から出展し、自分が想像した織物を発表したところ高評価を得ました。以来、彼の織物は即完売が続き、BtoBの依頼も増えたそうです。彼は使う人の声を聞きながら、どうすれば喜んでもらえるかを常に考えてものづくりをしています。彼のような存在を通じて、今の富士吉田の織物業の力強さを実感しています。

異動が多い、行政関係者だからこそできること

WWD:「行政だからこそできること」があれば、教えてください。

勝俣:他の自治体にも共通することだと思いますが、まず制度として、職員が2~3年で異動してしまう仕組みに課題を感じています。せっかく立ち上げた事業が、後任の方の思いとずれると、続かなくなるケースが多くあります。行政が本来持つ力というのは、「民間のやる気ある人をどう応援するか」だと私は思っています。そして、最も分かりやすい支援の形が補助金です。ただし、行政職員が主導してしまうと、その人が異動した途端にプロジェクトが止まってしまうリスクがあるんです。

職員がやりたくないのではなく「その後の責任を取れないからやれない」という人も多い。ですから、行政として事業を立ち上げたなら、しっかり責任を持ち、そのプロジェクトが自走するまで見届ける体制が必要です。

WWD:街づくりは、感覚的にはどれくらいのスパンで取り組むべきですか?

勝俣:10年は必要だと考えます。ハタフェスも3回目くらいからようやく市民の方々に「面白いイベントが始まった」と認識していただけるようになりました。それまでは模索の連続でしたが定着しつつあります。

WWD:行政が3〜5年支援して、その後民間が主体となり社団法人を立ち上げ、自走型へ移行していく例も増えています。

勝俣:マネタイズの視点を持てる方々であれば、3〜5年ほど行政が支援することで、その後は自立していくケースもあると思います。ただ、地域型のイベントでマネタイズを成立させるのは本当に難しい。たとえば体育館などのクローズドな空間であれば入場料を設定しやすいですが、まち全体で行うフェスでは、通行人から料金を徴収するわけにもいきません。「どうやって収益を得るか」という課題は常に頭にあります。

WWD:行政と民間が協業するうえで、成長につながる大事なポイントとは?

勝俣:一番大切なのはやはり信頼関係だと思います。これはどの事業にも共通していますが、プレイヤーとの信頼が築けていなければ、協業は難しいと考えます。

WWD:勝俣さんはどのように信頼関係を築いたのでしょうか?

勝俣:私は、行政として「これをしてはいけない」「あれはやめてほしい」といった制約をあまり設けないようにしてきました。ハタフェスを担う3人の企画を尊重してきたことが成功に繋がってきていると感じています。

「愛されるイベントを作る」

WWD:目標設定はしていますか?

勝俣:「富士吉田を愛してくれて、リピートしてくれるような雰囲気のあるイベントにしたい」が第一です。

WWD:「愛されるイベントを作る」というのが目標だったのですね。静岡など、他の産地からも出店があり繊維産地の合同展示会のような趣もありましたが、それは狙いでしたか?

勝俣:地域と産業を盛り上げようと思った時に、地元の人だけでやるのではなく、同じ志をもった仲間といっしょにどう取り組めるかが大事だと思って、他の産地の人も呼んでいます。
外の人にみてもらうことで、織物も街も、地元の人では気づきにくい新しい魅力を見つけてもらえているのがハタフェスの盛り上がりの一因だと思っています。

WWD:なるほど。全国の産地の職人たちが自然に引き寄せられているわけですね。

勝俣:そうですね。出店者がそれぞれの地域の魅力を背負ってきてくださることで、富士吉田という場所を知っていただく機会にもなっていると感じます。

WWD:イベントが産業全体ともう少しつながっていけば、より広がりが生まれそうですね。

勝俣:まさにその通りで、私たちも空き家対策や移住促進など、さまざまな分野でこのイベントを活かせればと思っています。そうした広がりを持たせていくことも、今後の課題であり、可能性です。

The post 街の価値は“人と物語”で育てる 行政の現場から見た「ハタオリマチフェス」と富士吉田の10年 appeared first on WWDJAPAN.

いらなくなった服、どうしてる?回収・修理・レンタル…“手放し方”の正解を考える

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

みなさん、いらなくなった服はどうしていますか?環境省の最新の調査結果によると、国内の衣類の新規供給量の約7割にあたる量が廃棄されているそうです。これらをいかに循環のサイクルに戻せるかは、業界の大きな課題の1つです。実際最近は、商業施設や駅中などさまざまな場所に衣類の回収ボックスが設置されるようになりました。加えて、店頭でのリペアサービスや、そもそも所有しないレンタルサービスなど、結果として捨てないための選択肢が増えてきたように感じます。日頃、どれくらいこうしたサービスを活用しているか、赤裸々にお話しします。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post いらなくなった服、どうしてる?回収・修理・レンタル…“手放し方”の正解を考える appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロ、「難民映画基金」に10万ユーロ寄付 カンヌ映画祭中にケイト・ブランシェットら登壇するイベント

ユニクロ(UNIQLO)は「Displacement Film Fund(難民映画基金)」に、創設パートナーとして10 万ユーロ(約1630万円)を寄付した。同基金は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使でもある俳優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)氏と、ヒューバート・バルス基金が、2025 年 1 月のロッテルダム国際映画祭で創設を発表したもの。同基金は5月23日、カンヌ国際映画祭の公式イベントとして、ブランシェット氏らが登壇するパネルイベントを行うといい、ファーストリテイリングの柳井康治取締役も渡仏予定だ。

「難民映画基金」は、「難民という境遇にありながら活動を続けてきた才能ある映画制作者5人に対し、短編映画制作のために1人当たり10万ユーロを支援し、26年のロッテルダム国際映画祭で、作品のプレミア上映の機会を提供する」(発表リリースから)もの。ウクライナ、ソマリア、シリア、イラン、アフガニスタン出身の5人の制作者への支援を発表している。

「パーフェクト・デイズ」の製作も担当

ファーストリテイリングの柳井取締役は、「映画は人々の意識を変えることができると強く信じている。ユニクロが、映画業界の専門家、ビジネスリーダー、慈善活動家、そして実際に避難生活を経験した方々を集めた、この新しい取り組みに参加できることをうれしく思う」とコメント。なお、柳井取締役は過去に、役所広司氏が渋谷区のトイレ清掃人を演じたヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督の「パーフェクト・デイズ(PERFECT DAYS)」の製作も個人会社で担っている。同作で役所氏は、23年のカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。

ファーストリテイリングは01年にアフガニスタン難民にエアテックジャケット1万2000着を寄付し、難民支援に着手。06年以降はUNHCRと協働し、世界の難民、国内避難民を支援してきた。国内外の店舗で、難民雇用を推進しており、国内の「ユニクロ」「ジーユー(GU)」店舗では24年4月時点で約60人の難民が就労しているという。

The post ユニクロ、「難民映画基金」に10万ユーロ寄付 カンヌ映画祭中にケイト・ブランシェットら登壇するイベント appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロ、「難民映画基金」に10万ユーロ寄付 カンヌ映画祭中にケイト・ブランシェットら登壇するイベント

ユニクロ(UNIQLO)は「Displacement Film Fund(難民映画基金)」に、創設パートナーとして10 万ユーロ(約1630万円)を寄付した。同基金は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)親善大使でもある俳優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)氏と、ヒューバート・バルス基金が、2025 年 1 月のロッテルダム国際映画祭で創設を発表したもの。同基金は5月23日、カンヌ国際映画祭の公式イベントとして、ブランシェット氏らが登壇するパネルイベントを行うといい、ファーストリテイリングの柳井康治取締役も渡仏予定だ。

「難民映画基金」は、「難民という境遇にありながら活動を続けてきた才能ある映画制作者5人に対し、短編映画制作のために1人当たり10万ユーロを支援し、26年のロッテルダム国際映画祭で、作品のプレミア上映の機会を提供する」(発表リリースから)もの。ウクライナ、ソマリア、シリア、イラン、アフガニスタン出身の5人の制作者への支援を発表している。

「パーフェクト・デイズ」の製作も担当

ファーストリテイリングの柳井取締役は、「映画は人々の意識を変えることができると強く信じている。ユニクロが、映画業界の専門家、ビジネスリーダー、慈善活動家、そして実際に避難生活を経験した方々を集めた、この新しい取り組みに参加できることをうれしく思う」とコメント。なお、柳井取締役は過去に、役所広司氏が渋谷区のトイレ清掃人を演じたヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督の「パーフェクト・デイズ(PERFECT DAYS)」の製作も個人会社で担っている。同作で役所氏は、23年のカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。

ファーストリテイリングは01年にアフガニスタン難民にエアテックジャケット1万2000着を寄付し、難民支援に着手。06年以降はUNHCRと協働し、世界の難民、国内避難民を支援してきた。国内外の店舗で、難民雇用を推進しており、国内の「ユニクロ」「ジーユー(GU)」店舗では24年4月時点で約60人の難民が就労しているという。

The post ユニクロ、「難民映画基金」に10万ユーロ寄付 カンヌ映画祭中にケイト・ブランシェットら登壇するイベント appeared first on WWDJAPAN.

「ゴールドウイン0」クリエイティブ・ディレクター OK-RMに聞く 個々の創造性を結びつけ、化学反応を生むブランド作り

ゴールドウインは、日本のバイオベンチャー・スパイバー社が開発したブリュードプロテインをはじめとした新テクノロジーの導入、国立公園の保全や活用、気候変動問題への取り組みなど、環境保護に対するアクションと未来へ向けた創造性の強化を掲げる。この理念をもとに、ファッションを通して循環型社会の実現を目指すプロジェクトとして2022年に立ち上げられたのが「ゴールドウイン0(GOLDWIN 0)」だ。

「ゴールドウイン0」は機能性を備えた衣服で構成される実験的かつテクニカルなプラットフォーム。現在、ウエアのデザインはイギリス出身、オレゴン州ポートランド在住のヌー・アバス(Nur Abbas)が務める。従来の服作りの常識を超え、広範なリサーチを通じて「ゴールドウイン」ブランドの可能性を拡張することを使命に、カプセルコレクションやコラボレーションの発表にとどまらず、自然や科学、技術に根ざした最高の品質と時代を超えた美しさを追求している。

このプロジェクト全体のクリエイティブ・ディレクターを務めるのが、オリヴァー・ナイト(Oliver Knight)とローリー・マクグラス(Rory McGrath)によるOK-RM。プロジェクトの根底にある哲学を探求し、ユニークなコミュニケーション構築によって異なる分野のエキスパートを繋ぎ、書籍、ブランドアイデンティティー、映画、展示会など越境的なデザインに落とし込むロンドンのデザインユニットだ。これまでに「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」やヴァージル・アブロー、グッゲンハイム美術館、メトロポリタン美術館などのクライアントとのコラボレーションの経験を持つ。

そんな「ゴールドウイン0」は、24-25年秋冬コレクションで自然界にある螺旋状の構造体や、植物、岩、水といった自然現象から着想した曲線やパターン、テクスチャを反映させたアイテムを展開。合わせてプロジェクト開始からの3年間にわたる探求的な研究成果についての展覧会 「Goldwin 0 1 2 3 4 5 0」を、昨年10月に東京・青山のスパイラルホールで開催した。本展のタイトルは、0から1へ、そして再び0に戻る深遠な旅を表現したものだ。

インスタレーションとライブパフォーマンスで構成された本展では、音楽家、建築家、詩人、作家、デザイナーが協力し「ゴールドウイン0」コレクションと共に公開された美しいメディアの融合を創り上げる5つの異なる探求を反映した作品を発表。テーマ探求の過程を分析し、コラボレーターたちの芸術的なプロセスを理解できる没入型の体験を来場者に提供した。本展のために来日したOK-RMのローリー・マクグラスに、今回の「ゴールドウイン0」におけるプラットフォーム創造の経緯やアイデア、背景的思念について話を聞いた。

団結・協働がもたらす可能性の拡張
それを支えるカルチャーの重要性

ーークリエイティブ・ディレクターとして参画している「ゴールドウイン 0」での具体的なミッションとは?

ローリー・マクグラス(以下、ローリー):クリエイティブ・ディレクション、アート・ディレクション、アーティストの選定、振付など、すべてに関わっている。私たちにとって、これらは等しく「デザイン」の仕事。そういう意味で私たちは「ゴールドウイン 0」の根源的なデザイナーと言えるだろう。プロジェクトやブランド・アイデンティティーのデザインとは、すなわちコミュニケーション。私たちの仕事は多くアーティスト、振付師、建築家、作家、詩人、映像作家…あらゆる専門家と協働することだ。

プロジェクト始動時にゴールドウィンCEOの渡辺社長がかかげたテーマは「このプロジェクトを通して世界と愛を分かち合い、芸術、科学、自然のストーリーを伝えたい」というもの。これほど自由でアーティスティックなプロジェクトに携われる機会は滅多にない。

ーー「循環」や「可能性の拡張」といった「ゴールドウイン 0」のテーマから、どのようにイメージの構築を図ったのか?

ローリー:「Circulation(循環)」とは、自然そのもの。プロジェクトの目的の一つは、西洋的な個人主義やリニア(直線的)思考から私たちを解き放ち、かわりにサークル(円環)的な発想に接近すること。人が集まり、結束することで、個人では成し遂げられない可能性の拡張が生まれる。ひるがえって、科学的な視点から見た自然においても、万物の本質は「円環」をベースにしていると考えている。

このプロジェクトに携わったことで、団結して物事を進めることの重要性、人々が共存し協働するためには、皆で作り上げるカルチャーが必要不可欠だということを再認識した。

ーー今回の「ゴールドウイン0」のキャンペーンでは、建築家・振付家・詩人・ミュージシャンたちとのコラボレーションを実現した。多様な分野との協働のために工夫したことは?

ローリー:本プロジェクトのコラボレーションの主題は「探究することの探究」、いわば集合知が機能することの実証だ。今回はまずアーティスト・イン・レジデンスのような空間を作り、コラボレーターたちと「ゴールドウイン0」 の本質的な哲学を共有した上でアイデアを追求した。

これは映画や本、ファッションショーなどの制作とはまた違った種類の創造的行為だ。私たちは保守的なものや予定調和的なアイデアに可能性は見出さない。本当のカルチャーというものは常に開かれ、優れた音楽のように広がり、クリエイティブな人々を包み込んでエネルギーを与えるものだ。

ーーコラボレーターの選定で重要視していることは?

ローリー:活躍する分野や技術などの細かな部分より、個々が持っている哲学が重要だ。実際に協働した人たちは、同じような価値観や考え方の人が多い。写真家のダニエル・シーはその最たる例で、まるで同時代に同じ文化の中で共に過ごしてきたような存在。我々にとって大切なコラボレーターだ。

「ゴールドウイン0」には、クリエイティブな人々にとって必要不可欠な、ある種のカルチャーが存在する。言語的なコミュニケーションがなくても、カルチャーを通じてお互いに理解しあい、信頼をベースにしたつながりがあり、それが共鳴をもたらす。

今回のプロジェクトで最後の撮影が終わった時、みんなで抱き合って泣きそうになった。こんなことは初めてだ。全員がプロジェクトに対し主体的に関わっていたことを実感したからではないかと思う。

--イベントを継続的に開催する中で「ゴールドウイン 0」の世界観やアートディレクションのアウトプットはどのように発展してきたか?

ローリー:あらゆる要素を吸収して劇的に発展してきた。このプロジェクトを通じて、他のメンバーから何か良い影響を受け、それをクリエイションに込めてチームに報いるという良い相互作用が生まれた。この好循環を繰り返しながら一連のプロジェクトが進行した。

ーーOK-RMにとっての「デザイン」とは、今の話にもあった「人々の相互作用」の痕跡ともいうべき、創作プロセスのドキュメンタリーのような印象を受ける。

ローリー:「デザイン」とは人間が行うものであり、究極的には「人間」そのものだ。デザイン上の課題を明らかにするための問題提起と解決手段の模索。探求とはこのサイクルを積み重ねる行為だ。身体と音楽、身体と動作、詩人と着想…こういった関係性について深掘りしていく、純粋で創造的な問題提起だ。

ーーOK-RMはデザインにおいて、コンセプトの本質の再考、探究や対話、コラボレーションを重視している。こうしたアプローチの重要性を意識したきっかけや影響を受けたものはあるか?

ローリー:特定の人物を挙げるのは難しいが、私たちは職業的デザイナー以外にも多くの人たちをデザイナーととらえ、彼らから影響を受けている。一貫した姿勢で本質を追求し、職人技術を駆使してそれらを可視化し他者に示すことができる人は、みなデザイナーであると考えている。伝統的な日本庭園の庭師などがまさにそうだ。

「ゴールドウイン0 」プロジェクトの冒頭で、渡辺CEOが語った「完璧なデザインは、哲学や物事の本質、アイデアを擁し、それらが自然の中での生活において表現されるものだ」という言葉にも感化されている。

機能性を備えた実験的なウエアを生み出し、創造性を刺激する存在でありたい

ーー「ゴールドウイン0 」プロジェクトを通して、顧客やファッションシーン、現代社会にどのような影響をもたらしたいと考えているのか?

ローリー:人々にインスピレーションをもたらしたい。実際に私たちは多くの若手デザイナーやクリエイター、シネマトグラファーたちにチャンスを提供しており、それが少しでも彼らにとっての希望になればと願っている。

クリエイティブな仕事をしていると、ただ誰かに何かを与えるだけの垂直的なあり方ではなく、好循環を創り出したいと望むようになる。若い世代のクリエイターの多くは、この先困難な道のりを歩むことになるだろうから、彼らに良い刺激を与える存在になれたら嬉しい。

ーー「ゴールドウイン 0」における最終的なアウトプットはウエア。服についての価値観が多様化している現在において、OK-ROMは衣服をどのようにとらえているか?

ローリー:一般的に、衣服は商品だ。でも「ゴールドウイン0」はそうした営利目的ではなく、コミュニケーションについてのプロジェクト。この視点を持つと「ゴールドウィン 0」がもたらす本質的な恩恵について考察しやすいだろう。実際のところ「ゴールドウイン0」の製品は非常に実用的だ。厳しい環境から身体を保護するためにデザインされているし、パフォーマンス・ウエアのようでもある。

私たちが作る服は、それぞれ別個に存在するクリエイティビティを結びつけるような媒介のようなもの。化学反応を生み出す存在でありたい。

「ゴールドウイン0」では3人のデザイナーと仕事をしてきた。彼らに共通しているのは「実験的な姿勢」。彼らはリサーチやデザインのプロセス、素材の検討などにおいて非常に実験的だ。パフォーマンス・ウエアにおいて重要な機能性を持ちながら、実験性を兼ね備えた衣服を作れたら最高だ。

The post 「ゴールドウイン0」クリエイティブ・ディレクター OK-RMに聞く 個々の創造性を結びつけ、化学反応を生むブランド作り appeared first on WWDJAPAN.

廃棄カカオ殻が鉛筆とアートに CLOUDYと三菱鉛筆が原宿で描いて学ぶ体験型展覧会

NPO法人CLOUDYとDOYAは、三菱鉛筆の協力のもと、アフリカ・ガーナ共和国で廃棄されているカカオの殻を鉛筆へと再生させるプロジェクト「チョコペン(CHOCOPEN)」を始動。プロジェクトのローンチにあわせて、東京・原宿のアンノン原宿で、参加型イベント「ゴミと鉛筆とアート展」を5月2日(金)から10日間限定で開催する。

同プロジェクトは、食用部分のみが使われた後、廃棄物として放置されているカカオの殻に着目。その殻を回収・洗浄し、現地雇用と技術指導を通じて鉛筆へと再生する取り組みだ。鉛筆はそのまま現地の子どもたちの文房具支援にもつながる。日本では同鉛筆を用いたアート展を通じ、環境問題や教育支援に対する来場者の理解と参加を促す。

CLOUDYによると、日本に輸入されるカカオ豆の約8割がガーナから輸入されている。また、ガーナで年間80万トンが生産・出荷されるカカオの75%が殻であり、使い道がなく廃棄され、ゴミの山を作っている。路上などで日常的に廃棄されているカカオの殻は単なる“ゴミ”の問題にとどまらず、有機廃棄物としての蓄積、地域社会や生態系への有害な影響といった課題につながっているという。こうした背景を踏まえ、同プロジェクトはカカオの殻を“問題”から“資源”へと再定義するため、アートを通じてまずは気づきを得てもらうことを狙いとしている。

来場者が“描いて関われる”インクルーシブな展覧会

同展では日本とガーナのアーティスト計36名が「チョコペン」を用いて制作した作品を展示。売り上げの一部は、ガーナの教育支援に寄付される。また、高さ2.7m、幅8mの白い壁が会場に設置され、来場者は用意された筆記具で自由に描くことができる。アートが“観る”ものから“創る”ものへと変える試みだ。さらに、会場で鉛筆を購入すると、同じ数の鉛筆がガーナの子どもたちに届けられる「ワン・フォー・ワン」形式を採用している。

初日の2日は、銅冶勇人DOYA・CLOUDY代表と数原滋彦三菱鉛筆社長がトークイベントを開催。本プロジェクト以外にも雇用・教育・健康を軸に主にアフリカのガーナ・ケニアにて支援活動を展開している銅冶代表は「フェアトレードという言葉は浸透してきたが、それが本当に“フェア”かどうか、使う側の私たちが考えることも含まれている。メーカーや流通だけの責任にせず、自分ごととしてとらえてほしい」と強調した。また、数原社長は今回のプロジェクトは、通常の製品開発よりもはるかにハードルが高かったと振り返る。「正直、社内でも“本当にできるのか?”という声もあったが、だからこそ、チャレンジする価値がある」などと話した。開発にあたっては現地で、現地調達の素材に日本の製造技術を組み合わせて実現した。現在、「チョコペンシル」の生産に関わる雇用は、ガーナの農家10人、工場勤務2人、チームメンバー3人の計15人で、今後も新たな雇用の創出を目指している。

参加アーティスト

森本啓太(KOTARO NUKAGA)/ 友沢こたお / 大和美緒(COHJU)/ 熊谷亜莉沙(ギャラリー小柳)/ 古武家賢太郎(MAHO KUBOTA GALLERY )/ Atsushi Kaga(MAHO KUBOTA GALLERY )/ 三瓶玲奈(Yutaka Kikutake Gallery)/今西真也(nichido contemporary art)/ 山本亜由夢(MAKI Gallery)/ ユーイチロー・E・タムラ(KOTARO NUKAGA)/ 井上七海(KOTARO NUKAGA)/ 小林万里子(KOTARO NUKAGA)/ 松川朋奈(KOTARO NUKAGA)/ 川井雄仁 (KOTARO NUKAGA)/ 木津本麗(KOTARO NUKAGA)/ マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー(KOTARO NUKAGA)/ 寺本明志 / 熊野海 / 飯川雄大 / 川村摩那 / 品川美香 / 南依岐 / 米村優人 / 三浦光雅 / 東慎也(COHJU)/ 小左誠一郎(Yutaka Kikutake Gallery)/ 金田実生(ANOMALY)/ 津上みゆき(ANOMALY)/ 淺井裕介(ANOMALY)/ 潘逸舟(ANOMALY)

ガーナから参加するアーティスト

Edmund Boateng / George Ohene Gyamfi / Desmond Agbenyo Dawfor / Emmanuel Fynn / Simson Ackah/ Francis Quainov

■ゴミと鉛筆とアート展

日時:2025年5月2日(金)〜5月11日(日)
時間:5月2日(金)14:00〜18:00、5月3日(土)〜5月11日(日)11:00〜19:00
会場:アンノン原宿(UNKNOWN HARAJUKU)
住所:東京都渋谷区神宮前6-5-10
入場料:無料

The post 廃棄カカオ殻が鉛筆とアートに CLOUDYと三菱鉛筆が原宿で描いて学ぶ体験型展覧会 appeared first on WWDJAPAN.

「産地はひとつ」 補助金に頼らない「ひつじサミット尾州」の仕掛け人が描く道筋

PROFILE: 岩田真吾/三星グループ代表

岩田真吾/三星グループ代表
PROFILE: 1887年創業の素材メーカー「三星グループ」の五代目アトツギ。慶應大学を卒業後、三菱商事、ボストンコンサルティング グループ(BCG)を経て2010年より現職。欧州展開や自社ブランド立ち上げ、ウール再生循環プロジェクトReBirth WOOL、産業観光イベント「ひつじサミット尾州」、アトツギ×スタートアップ共創基地「タキビコ(TAKIBI & Co. )」などを進める。2019年ジャパン・テキスタイル・コンテスト経済産業大臣賞(グランプリ)を、2022年「フォーブス ジャパン」 起業家ランキング特別賞をそれぞれ受賞。個人としてAB&Company(東証GRT9251)社外取締役、認定NPO法人Homedoor理事、神山まるごと高専起業家講師、フィンランド政府公認サウナ・アンバサダー等も務める。PHOTO:KANA KURATA

「ひつじサミット尾州」立ち上げのきっかけと背景

WWD:オープンファクトリーを軸とした産業観光イベント「ひつじサミット尾州」を企画した背景は?

岩田:きっかけはコロナ禍です。それまでも「産地のみんなが協力した方がいい」ということは頭では理解していましたが、心の奥では、それぞれの企業が自己責任で経営し、自社の収益最大化を目指すものだと考えていたため、産地全体ではバラバラな状態でした。僕自身も例外ではありません。ただ、コロナ禍で産地全体の売り上げが半減し、危機感が現実のものになりました。たとえ自社が生き残っても、糸屋がなくなればモノづくりはできない。染工所がなくなれば、やはり製品は作れない。他の機屋(はたや)が減れば、糸屋や染工所の仕事も減って共倒れしてしまう。産地全体がつながっていることを、初めて心理的にも実感しました。

しかし、百年以上別々に存在してきた会社同士が、いきなり合併して共同事業を始めるのは現実的ではありません。だからこそ、まずはお互いをもっとよく知る機会を作ろうと考えました。せっかくなら内輪だけで終わらせず、実際に生地を使ってくださるお客様、つまり「使い手」と「作り手」がつながる場にしたいと考え、「オープンファクトリーを開こう」という話に至りました。

WWD:関係を取り戻す、“ほぐし”の感覚があったのでしょうか?

岩田:それは非常に重要だったと考えています。遠回りに見えるかもしれませんが、産地を一つにまとめ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえでも不可欠なプロセスでした。振り返れば、この取り組みが最短ルートだったと思います。

WWD:なぜそう思えたのですか?

岩田:2015年に自社ブランドを始めたことがきっかけです。海外のラグジュアリーブランドに生地を使ってもらう中で、「自分たちの生地には価値がある」と手応えを感じていましたが、同時に「使い手はどんな思いで使っているのか」を知りたくなり、工場を案内するようになりました。すると、自社工場だけを見てもらうのはもったいないと感じ、協力してくれている糸屋にも声をかけるようになりました。

点ではなく面で見てもらう方が使い手にとって良いと気がつき、お客さんを自社に囲い込むのではなく、「他の機屋に行ったとしても三星のファンが減るわけではない」、「産地全体への関心が広がるはずだ」と考えが変わりました。そのタイミングで、コロナの直撃です。

三星毛糸の生産体制、元食堂で社内での織りを再開

WWD:オープンファクトリーにより提供できる価値がある、とまずは自社のビジネスを通じて実感があったのですね。その三星毛糸のモノづくりについて教えてください。

岩田:三星毛糸はその名の通り、もともと紡績の会社でした。そこから織りに進出し、自社で全量を織るようになりましたが、時代とともに専属の協力工場に織ってもらうスタイルに移行し、企画に特化する体制を築きました。僕が社長に就いた2010年頃には、すでに100%が業界用語で言うところの出機(でばた)さん、つまり協力工場での生産となっており、高齢化が進み、小規模なところが多いため自社で若手を採用・育成するのは難しい状況でした。

弊社で雇用した社員を協力工場に派遣して支援する取り組みも行いましたが、コロナ禍で一段と厳しくなり、協力工場だけに頼るのは限界が見え始めました。この状況を受け、空いていた元食堂スペースを活用して社内での織りを再開する決断をしました。最初はサンプル工場程度の規模で考えていました。織れるか不安だったので、試しに織機を3台だけ導入しましたが、生産計画を見直し、現場でコミュニケーションを密に取ることで、意外と量産が可能だという手応えを得ました。

たった3台から始めた取り組みが、今では主力工場の一つとなり、欧州ラグジュアリー向けの生地も織るレベルに成長しています。今後はこの社内工場をさらに強化していく方針です。

WWD:スタッフはどのように採用したのでしょうか。

岩田:協力工場から来てもらう場合もあれば、自社採用して育てる場合もあります。

WWD:使用しているレピア織機は高速織りが可能ですが、作業風景からは職人による手作業のように見えました。

岩田:レピア織機はションヘルやシャトルに比べれば高速ですが、実際はほとんど手織りに近いスピードで織っています。ウールの糸はそのくらい丁寧に織った方が風合いが良くなる。尾州にはションヘルのイメージを持つ方も多いですが、レピアを丁寧に使って生地を織るのも非常に良いやり方だと考えています。

WWD:製品の何パーセントを自社内で織っていますか?

岩田:今は生地の3割ほどと、増えてきました。これは現場のメンバーが機械の知識を熱心に学び、生産効率向上に精力的に取り組んでくれた結果です。さらに、長年支えてくれた協力工場の方々も協力してくれていて、工場を辞めた方が技術を教えに来てくれるなど、支え合いによって自社生産比率がここまで伸びています。

「ひつじサミット尾州」の成果

WWD:持続可能な産地をめざして2021年にスタートした「ひつじサミット尾州」ですが、昨年の成果を振り返ると?

岩田:集客人数は少し減り、約1万2000人でしたが、売り上げは2000万円近くまで伸びました。人数が減ったのは天候不良で駅前イベントが中止になった影響ですが、各工場を訪れた人の数は増え、本気で生地や糸、製品を求めてくれる方が確実に増えました。ファンが着実に増えていると実感しています。4年続けてきて本当に良かったです。

WWD:YouTubeで公開している振り返りムービーが印象的でした。参加企業の言葉をつなぐ中、岩田さんは登場していませんでしたね。そこがまた良かったです。

岩田:成果物を通して消費者に親近感を持ってもらうことが大切です。同時に、当初から掲げていた「産地内をつなぐ」という目標にも確実に貢献できたと思っています。

WWD:「つないだ」成果はどこに出ていますか?

岩田:たとえば今年の「ひつじサミット尾州」の実行委員長を務める伴染工の伴昌宗社長とは、これまで取り引きがありませんでしたが、今回新たに取り引きが始まりました。

WWD:今までなかったことが、外から見ると意外です。

岩田:産地内でも全員が知り合いというわけではなく、名前は知っていても話したことがない相手は多くいますよ。競合関係というより、互いに話しかけるきっかけがなかっただけで、心理的なハードルがあったのが実情。「ひつじサミット尾州」のような場があることで、雑談ベースで「実はこんなことを考えている」と気軽に相談できるようになり、そこから具体的なビジネスの話が生まれやすくなっています。

また、経済的な効果に加えて、最近は企業が社会課題に向き合うこともますます重要になっていますが、産地でもこうした動きが進んでいます。今年6月6日には「ひつじサミット尾州」として産地全体の勉強会を開催する予定です。テーマはサステナビリティ認証で、オーガニック繊維の国際基準であるGOTSや、ウールのRWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)などについて、認証取得の窓口担当者を招き、学び合います。これらの認証は機屋だけでは取得できず、糸屋や染屋との連携が不可欠なため、産地全体で取り組む意義があります。イベントを賑やかに開催するだけではなく、こうした実践的なアクションを積み重ねることで、経済的な価値にも確実につなげています。

WWD:勉強会の対象は?

岩田:「ひつじサミット尾州」参加企業が中心ですが、産地に関わる人なら誰でも参加できるようにします。他地域の参加も歓迎です。カジグループの梶政隆社長とは、北陸と尾州で連携して総合的な勉強会をやろうと話しています。こうして産地間のつながりが広がってきているのを実感しています。

WWD:産地の課題である後継者不足にもイベントは生かせそうですか?

岩田:最近は採用にも各社で少しずつ効果が出てきています。ただ、3年経つと入社した若手が辞めてしまうケースも出てきており、産地全体で課題意識が高まっています。一社で採れる人数が少ないため、同期がいないことで孤立感が生まれやすく、また小規模なため十分な研修制度も整えにくい状況です。そこで、たとえば繊維品質管理士の資格取得を目指し、産地内で横断的に教え合う仕組みを作ろうとしています。

また、実際の製品づくりだけでなく、働き方の面でも総務や人事といった管理部門の強化にも力を入れ、勉強会を開くなど地道な取り組みを続けています。まだ土曜日勤務が多い現状を見直し、TOYOTAカレンダーのような土日休みを基本とする形に近づけようとしています。今年のひつじサミット実行委員会を務めている企業とも、そうした取り組みを共有しながら進めています。

補助金に頼らない運営による自由度と課題

WWD:補助金はどのように活用していますか?

岩田:「ひつじサミット尾州」はボランティア組織でして、初年度の一宮市100周年の補助金をのぞき、現在は補助金に頼らず運営しています。僕らが“マジックタイム”を使っていて時々「これ、部活かな?」みたいな冗談を言っています。

毎年予算500万円の規模で開催していますが、同規模のイベントは通常800万〜1000万円ほどの補助金を受けて運営しているものが多い中で、僕たちは参加企業からの参加費と、一部企業からの協賛金だけでやりくりしています。参加費は企業規模に応じて5万〜15万円で、協賛は豊島、瀧定名古屋、モリリン、今年はタキヒヨーも加わり、さらに地銀からも支援を受け、ようやく成り立っている状態です。

WWD:地域活性は補助金ありき、と思い込んでいました。

岩田:普通、そう考えますよね。最初に立ち上げた時は、コロナ禍で「お金をかけずにつながろう」という想いが強く、プロジェクトを通して産地内の仲間をつなぐことを重視したので、代理店に依頼する形にはしたくありませんでした。最初のプレ開催のときは経産省や愛知県、岐阜県、一宮市から後援は受けていて、それは公式な後ろ盾があることで参加者や工場側が安心できるだろうと考えたためです。

もし補助金をもらっていたら、コロナの緊急事態宣言下で開催を中止せざるを得なかったかもしれませんし、今のようにオープンファクトリーからデジタル支援や認証取得支援などに自由に発展させることも難しかったと思います。自由度の高い現在の運営形式は、結果的に良かったと考えています。ただ、回を重ねるごとに運営メンバーの疲労も見えてきており、今後サステナブルな形にするにはどうすべきかをみんなで議論しているところです。

WWD:福井県鯖江市で15年に始まったオープンファクトリーイベント「RENEW(リニュー)」は、実行委員会形式から社団法人化する流れがありますよね。

岩田:そういった形も参考にしながら検討していく必要があります。

WWD:官と民の連携についてどう考えますか?

岩田:行政との連携も重要だと考えています。例えば富士吉田市の成功事例を見ると、官の側にもメリットを作り出し、自然に巻き込んでいくことが必要です。僕たちも、たとえばFDC(ファッションデザインセンター)との連携を通じて、一宮市、羽島市から参加費を、地銀からも協賛金をいただくなど、少しずつ官側との関係を築いてきました。ただ、全体を運営する補助金はもらっていないので、自由度の高い活動ができています。

これからも無理に税金を使うのではなく、地域にとって本当にメリットがあると認められるような活動を続けることが大切だと考えています。

WWD:山梨県富士吉田市の「ハタオリマチフェスティバル」は観光課である富士山課がリードしています。産業観光としての可能性は?

岩田:特に尾州の場合は観光誘致よりも、地域産業の活性化と雇用創出の方が重要で、働く人口を増やし、地域の税収に貢献することが本質的な目標だと思っています。強い地域産業があることはシビックプライドにもつながる。だからこそ、今後は観光だけでなく、地域産業全体を巻き込む総合連携をさらに強めていきたい。

アトツギとして。コンサルでの経験が生かされる

WWD:岩田さんご自身のリーダーシップについて伺います。三菱商事やボストンコンサルティンググループでの経験は、今回の地域プロジェクトにどう生きていますか?

岩田:コンサルやビジネスの現場で培ったスキルは確実に役立っています。たとえば、資料作成やプレゼンテーション、プロジェクトマネジメント、目標設定、タスク割り振り、定例ミーティングの運営、議事録作成といった基本スキルです。「ひつじサミット尾州」の初年度はコロナ禍で時間もあったため、しっかりと運営の「型」を作ることができました。これらは過去の経験を活かした結果です。

「ひつじサミット尾州」を立ち上げるにあたって、富士吉田「ハタオリマチフェスティバル」や鯖江「リニュー」や新潟・燕三条「工場の祭典」、大阪・八尾「ファクトリズム」、京都・五条坂など、他地域のオープンファクトリー事例を事前に徹底的に調査しました。各地でどのくらいの人数を動員し、どのくらいコストをかけ、どんな運営体制を敷いているかをインタビューし、情報を整理してから立ち上げに臨みました。何もないところから始めたわけではなく、成功事例をベンチマークしたうえで、自分たちに合ったやり方を抽出して進めたプロジェクトです。

跡継ぎとしての覚悟と物語の継承

WWD:「アトツギ」について、どのように考えていますか?三星の跡継ぎとしての覚悟や希望を教えてください。

岩田:僕がカタカナで「アトツギ」と書くのは意図的です。昔ながらの「跡継ぎ」というと、親の七光りやボンボンというイメージ、あるいは借金を引き継ぐかわいそうな存在というネガティブな印象がありました。でも今、カタカナの跡継ぎは、積極的に家業や地域の資産を新しい視点で再編集し、新たな価値を生み出していく存在だと思っています。偶然この立場にいるなら、それをポジティブに捉え、明るく堂々と発信していきたい。

正直、悩みながらやってきました。僕は社長になって15年になりますが、その間に事業の一部撤退も経験しました。いろいろなことがありましたが、仲間たちと話していると、事業が変わること自体はむしろ正しいアクションだと思うようになりました。時代の変化に応じて事業を変えていかなければ、逆に生き残ることはできない。例えばトヨタも、もともとは織機の会社だったのが、自動車産業に進出し、今ではまちづくりにも取り組もうとしています。僕たちも、繊維という軸そのものは変わらないかもしれませんが、大量生産・大量消費型のものづくりから、適時適量のものづくりへとシフトしていく必要があります。事業とは変わり続けるものだと考えています。

僕は、事業や社員、資本そのものではなく、「物語」を継ぐことが跡継ぎの本質だと考えています。事業は時代に合わせて変わるし、社員も変わる。会社の名前や株主も変わるかもしれない。でも、創業から続く精神や価値観、積み重ねてきた歴史や文化こそが継ぐべきものです。1887年創業の三星毛糸の場合、創業者が女性だったことは、今でいうダイバーシティの精神につながっているし、上皇陛下が来訪されたことは、開かれた姿勢を象徴しています。そうした物語を未来につなぎ、さらに豊かにしていくことが、跡継ぎとしての自分の役割だと考えています。もちろん、残せるものは残したいですが、変わること自体を恐れるべきではない。

業界の若い世代がプライベートで行きたくなるイベントに

WWD:業界関係者の多くが週末にプライベートで参加していたのが印象的でした。

岩田:「ひつじサミット尾州」はアパレル業界の人たちにまだまだその存在を知られていません。BtoBの産地なので、商売につなげたい気持ちは当然ありますが、それ以上にまずは見て欲しい。昔は尾州にも多くのアパレル関係者が訪れていました。父親の時代には、頻繁に足を運んでいたと聞きますが、消費の縮小とともに来訪者が減ってしまいました。

しかし、実際に来てもらうと違います。例えば、テキスタイル展示会に行っても生地サンプルは数百点しか触れませんが、三星毛糸のテキスタイルライブラリーには6000点以上もの生地が揃っていて、じっくり話をしながらアイデアを広げることができる。染色工場に行けば「こんな加工ができるならこうしてみよう」という新たな発想も生まれます。

出張費を増やすのは難しいかもしれません。それもありアパレル業界の若い世代がプライベートでも行きたくなるようなイベントを目指しています。BtoCで評価されるなら、アパレルの人にも自然と足を運んでもらえるはず。そういう時の方が、学びも深くなると感じています。

WWD:産地に足を運んだことがないアパレル関係者の方が今は多い。

岩田:そもそも普段から国内の生地を使っていなければ、わざわざ見に行こうとはならない。だからこそ、国内生地への関心そのものを増やしていかないといけない。現状、多くのアパレルは商社や卸を通して尾州の生地を仕入れていますが、アパレルの担当者が直接工場を見に来て、現場で指名買いする流れが生まれれば、尾州の地位はもっと上がっていくはずです。

潜在的には「尾州の生地を使ってみたい」と思っているアパレルやデザイナーはかなりいる感触です。ただしアポを取って工場訪問するのは心理的なハードルが高い。だからこそ、公式ホームページなどを見て直感的に「ここに行ってみたい」と思ってもらい、気軽に見学できるような仕組みを用意するべきです。

名刺交換ができる場も設ければ、初めての人でも自然に関係を築ける。そもそも尾州の生地を使っていない人たちにとって、そうしたカジュアルなきっかけをつくることが重要です。

WWD:潜在的なニーズは感じている?

岩田:はい。「オーラリー(AURALEE)」のようなブランドが海外バイヤーからも評価されていることで、尾州の認知度も着実に高まっています。まだまだ尾州が役立てる余地は多い。とはいえ、普通にしているだけではメーカーが急に生地を買ってくれるわけではないので、きっかけづくりを意図的に設計することが必要です。

WWD:若い人たちが働き場所として尾州に来て得られることとは?

岩田:ウールの生地を作りたいなら、尾州ほど環境が整った場所はありません。もちろん、シルクなら桐生ほか、コットンなら遠州や泉州、デニムなら福山など、それぞれ適した産地はありますが、ウールへの愛着があるなら尾州は最適です。アクセスも良く、日本のほぼ中央に位置しているので、全国の産地とのつながりも作りやすい。もちろん東京に住んでいれば情報量は多いかもしれませんが、さまざまな地域とつながる拠点として、尾州はとても有利な立地で産地の結節点になりつつあります。繊維の道を志す若い人たちにとって、尾州はキャリアを築くうえで非常に良い場所です。

まず日にちを決めてイベント実施を宣言してしまおう

WWD:これから同じような取り組みを目指したいと思っている他の産地に向けたアドバイスは?

岩田:まずは現状を正しく把握して理解すること。そして、もう一つ必要なのは強いリーダーシップです。この二つは欠かせません。そのうえで、僕はとにかく一度やってみることが大事だと思う。難しいことは考えず、まず日にちを決めて「この日にオープンファクトリーをやります」と宣言してしまうのがいい。ホームページを一つ作るだけでもいいし、インスタグラムでアカウントを立ち上げるだけでもいい。工場は一つよりも複数で参加した方が来場者にとっても魅力的になるので、できれば何工場かで連携してオープンにすると効果的です。

動いてみて初めて「何が足りなかったのか」「何を整えればよかったのか」が具体的に見えてきます。もしもう一歩踏み込むなら、既存のオープンファクトリーイベントを一度訪れてみることを勧めます。異業種の事例でも十分学びがあります。とにかく一度、実際に足を運んでみること。そして、一度やってみること。コロナ禍は、そうした行動のハードルを一段下げてくれたと思っています。

The post 「産地はひとつ」 補助金に頼らない「ひつじサミット尾州」の仕掛け人が描く道筋 appeared first on WWDJAPAN.

春の東京で聞いたサステナのヒント 「ヴェジャ」「J.M.ウエストン」そして“選ぶ力”

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

桜の季節でもある4月は来日ラッシュ。多くのファッション関係者が日本を訪れ、「WWDJAPAN」もインタビューの機会を得ました。今回はそんな来日インタビューの裏話や共通して見えきたことなどをお伝えします。東京・虎ノ門ヒルズに期間限定でオープンした「セレクト バイ ベイクルーズ(SELECT BY BAYCREW’S)」のキュレーターを務めた元コレットのサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)からはセレクトショップのバイヤー魂を受け取り、フランスのラグジュアリーシューズ「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」のヴィンテージライン戦略を通じて自社ブランドのリセールマーケットの可能性を考えました。「ヴェジャ(VEJA)」の共同創業者からは、最初のキャリアである銀行をわずか半年で辞めた理由を聞いて納得。キーワードは「止める勇気」です。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 春の東京で聞いたサステナのヒント 「ヴェジャ」「J.M.ウエストン」そして“選ぶ力” appeared first on WWDJAPAN.

世界のチェンジメーカーが集うサステナビリティサミットがパリで開催 ケリングが認めた日本のスタートアップも出展

地球の問題解決に取り組む世界のチェンジメーカーが集う大型サステナビリティサミット「チェンジナウ(ChangeNOW)」が4月24〜26日、フランス・パリのグランパレで開催された。2017年に同名の社会的企業がスタートした「チェンジナウ」は、今世紀の主要な環境的・社会的課題に対応する具体的な行動とソリューション(解決策)の展開を促進することを目指している。8回目を迎えた今回は、約400社がブースを出展し、総勢500人のスピーカーが登壇。カンファレンスやトークセッション、分野別のピッチに加え、ワークショップやミートアップ、アートの展示など充実したプログラムを用意し、盛り上がりを見せた。

今年は、パリ協定の採択から10周年という節目でもある。オープニングセレモニーに登壇したサンティアゴ・ルフェーブル(Santiago Lefebvre)=チェンジナウ創設者兼最高経営責任者(CEO)は、「10年前、この街で196カ国が地球温暖化を努力目標1.5度以内、そして目標2度以内に抑えるために集まった。パリ協定は気候変動対策の礎石であり、人類がどのように団結してグローバルな課題に立ち向かうことができるかの象徴でもある。そして私たちが決めたのはパリのレガシーを守ること、そして、それ以上に野心を行動に変えていこうということ。それこそが『チェンジナウ』の開催意義だ」とコメント。今回は世界78カ国からチェンジメーカーを迎えたといい、「『チェンジナウ』は行動であると同時につながりや架け橋でもある。出会い、創造し、会話を始め、新たな友人を作り、そしてそこから学ぼう」と呼びかけた。

また最終日は、学生から子連れのファミリーまで全ての人に持続可能な開発について考え学ぶ機会を提供するため、会場を一般開放。企業と求職者をつなぐ「インパクト・ジョブフェア」も実施した。さらに今回からの取り組みとして、会場近隣のセーヌ川沿いに海や水にまつわるアクティビティーやトークセッション、ソリューションの紹介などを行う入場無料の屋外展示スペース「ウォーター・オデッセイ」を設けたほか、会期前後を含めた日程でパリ市内のさまざまな会場でカンファレンスや上映会など30以上の独立イベントを開催する「チェンジナウ・プラネット・ウイーク」も始動。より開かれた形で、サステナビリティのムーブメントを推進している。

政治家やビジネスリーダーから活動家まで多彩なスピーカー

「チェンジナウ」の醍醐味の一つは、3日間朝から夕刻まで会場内に設けられた5つのステージと「ウォーター・オデッセイ」のステージで同時進行する100以上のカンファレンスやトークセッションだ。スピーカーは、ポリシーメーカーやビジネスリーダー、企業のCSRやサステナビリティ推進を担う責任者から、国連関係者、スタートアップ企業やNGOの代表、活動家まで実に幅広く、トピックも多岐にわたる。

今年は、パリ協定が採択されたCOP21で議長を務めたローラン・ファビウス(Laurent Fabius)や今年11月にブラジルで開催されるCOP30のCEOでもあるアナ・トニ(Ana Toni)=ブラジル環境・気候変動省気候変動担当副大臣、メアリー・ロビンソン(Mary Robinson)元アイルランド大統領、サステナビリティの推進とビジネスの成長を両立した経営手腕で知られるポール・ポールマン(Paul Poman)元ユニリーバ(UNILEVER)CEO、「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)のマリー=クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)=チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者、エコロジー思想家で平和運動家のサティシュ・クマール(Satish Kumar)、俳優のナタリー・ポートマン(Natalie Portman)らが登壇。それぞれの視点から現状の課題やより良い未来に向けた考えを語り、人気のプログラムには立ち見が出るほどだった。

日本版「ケリング・ジェネレーション・アワード」受賞者も初参加

ガラス屋根から自然光が差し込むグラン・パレの広々とした空間には、「エコシステムの促進」や「循環経済」「土壌と農業」「海洋と水」から「ファッション」「習慣の見直し」「エネルギー」「フード」「インパクトのためのAI」「モビリティー」まで18の分野に分かれて、企業のブースがずらりと並んだ。ファッション関連は今回、藻類や飲料・食品製造で発生する廃棄物を活用した代替素材、環境負荷の少ない顔料や染色技術、デッドストック生地や余剰素材の再販プラットフォームを手掛けるスタートアップ企業が中心となった。

そして今回の「チェンジナウ」には、第1回「ケリング・ジェネレーション・アワード・ジャパン(KERING GENERATION AWARD X JAPAN)」で受賞者に選ばれたファーメンステーション(FERMENSTATION)、アンフィコ(amphico)、アルガルバイオ(algal bio)、そして同じく初開催された「ケリング・ジェネレーション・アワード・サウジアラビア(KERING GENERATION AWARD X SAUDI ARABIA)」の受賞3社も出展した。

独自の発酵技術を有し、食品廃棄物などの未利用資源から機能性バイオ原料を生み出すファーメンステーションの酒井里奈・代表取締役は、初めて参加した「チェンジナウ」について「気候変動の課題に対する共通認識をベースに、これだけのソリューションが集まっている場所に来られた意味は大きい」とし、次のように語った。「弊社も『Bコープ』認証をとっているが、チェンジナウも同じく取得している。その空気を、イベントの事前準備からブースに紙が使われていたりフードコートに難民シェフによる店が入っていたりという会場作りに至るまで徹底して感じた。グローバルでいろんな展示会に訪れているけれど、地域やコミュニティーなど全方位的にソーシャルインパクトを残しているものは他に見たことがない。そして『Bコープ』取得の有無にかかわらず、マインドとしてサステナブルなビジネスに取り組みたいという人が集まっていて、トークセッションの締め括りも自分のアピールではなく、みんなで取り組もうという『Act now, Change now』の姿勢が見られる。そこに夢と希望を感じた」。

また同社は4月上旬に24年版のインパクト・リポートを出したばかりでもあり、トークセッションを聞く中で「今できていることだけでなく、何が課題かということも示すということが方向として間違っていないと実感できた」という。さらに「課題意識のある人が集まっているので、ブースで受ける質問もシャープ。アプリでボタンを押すだけで投資家に声をかけてアポを取れるシステムなどもあり、実際にやり取りができたことも面白かった」と振り返った。

「ケリング・ジェネレーション・アワード」のブースはファッションのエリアにあり、訪れたのはファッションやインテリアなどの実際に生地を扱うデザイナーや関係者が多かった。英国と日本に拠点を持ち、アウトドアアパレル用の機能性防湿防水テキスタイルを「PFAS(有機フッ素化合物)」を使わずに実現する技術や無水着色技術を有するアンフィコの亀井潤・創業者兼CEOは、「通常の素材見本市だとテキスタイルを買いに来てはいるが、必ずしもサステナブルなものを求めているわけではないので、来る人が前提としてサステナブルな素材を探しているというのが良かった」と述べた。「内装用として使えるか?」や「天然繊維で実現できるか?」などの質問を受けたり、協業の可能性も含めて他の参加企業とも交流したりもしたといい、今後の広がりが期待できそうだ。

一方、東京大学の20年以上にわたる研究をベースにした微細藻類の育種、量産、培養技術を有し、化粧品やサプリメントからインク素材まで幅広く持続可能な素材や商品開発を行うアルガルバイオは、ブースで自然の色素を持つ藻類の粉末を色材として使用したカラフルなタイルや漆塗りの木魚などを展示。小田康太郎レッドバイオ事業部グループリーダーは、「ファッションやビューティに興味のある方に加え、インテリアのデザイナーやアーティスト、ギャラリストもブースに来られたが、ベースとしてサステナビリティに対する意識が高い。説明を行う中で(微細藻類による)CO2固定の話などをすると反応が変わり、ソリューションとして受け入れられやすい土壌があると感じた」という。

さらに「『チェンジナウ』は参加者同士のコミュニケーションが活発で、ワークショップやミーティングなど距離感が近い。VC(ベンチャーキャピタル)を中心に、日本と比べて興味を持ってくれる人が多いという感触もあった。同じ藻類を扱っていたり循環経済に取り組んだりしている企業との話も弾んだので、ここでの出合いをきっかけにつながり、次のステップのためのオンラインミーティングなども組んでいきたい」とコメント。「ケリング・ジェネレーション・アワード」を通して踏み出したファッション&ビューティ分野や、アート&デザイン系のコラボレーションなども含め、「藻類技術のアプリケーションをさまざまな産業に広げていきたい」と先を見据える。

The post 世界のチェンジメーカーが集うサステナビリティサミットがパリで開催 ケリングが認めた日本のスタートアップも出展 appeared first on WWDJAPAN.

森を守るゴムと、土を育てる綿 「ヴェジャ」共同創業者が語る、素材と思想のあいだ

サステナビリティは矛盾だらけ。環境に配慮された素材も見方によってはそうでなくなる。そんなとき、実践者たちはどう考えるのか?来日したサステナビリティの先駆者であるフランスのスニーカーブランド「ヴェジャ(VEJA)」のフランソワ・ギラン・モリィヨン(Francois Ghislain Morillion)共同創業者に彼らが考える“正義”について聞いた。場所は、東京・原宿。ヴィンテージのサッカーシューズをベースにした最新モデル「パネンカ(Panenka)」のお披露目をするスペースだ。

重要なのは、ブランドの社会的意義をしっかり伝えること

WWD:最初に「パネンカ(Panenka)」のコンセプトを教えてください。

フランソワ:・ギラン・モリィヨン(Francois Ghislain Morillion)ヴェジャ共同創業者(以下、フランソワ):私たちは、「ヴェジャ」の思想や世界観を伝えるために、新しいスタイルやモデルを開発しています。その背景には、ブランドの世界観を体現する“言い訳”となる要素を探しているという想いがあります。今回はサッカーシューズの世界観を取り入れ、「パネンカ」という名のモデルをつくりました。これは、サッカーのペナルティーキック技術の名前にもなっているもので、その世界観を借りる形で新しいラインを展開しています。

重要なのは、ブランドの存在意義、つまり社会的意義をしっかりと主張することです。そのために、素材選びにもこだわっており、ラバー、コットン、ペットボトル由来のリサイクルポリエステルを積極的に使っています。これらをスポーティーなサッカーというイメージと結び付けて、新しいスタイルとして打ち出しています。

WWD::「言い訳」とは、どういう意味ですか?

フランソワ::ポルトガル語で“ヴェジャ”は「見る」という意味があります。つまり、デザインの裏にあるすべてのストーリーを見てほしいという意図があります。「こういう背景があるんだよ」と伝えるための“きっかけ”のようなものです。

「神様が植えた」と言われるゴムの木から採取

WWD::新作で採用した素材について教えてください。

フランソワ:::4つの主要な素材を使用しています。まず一つ目はアウトソールの天然ラバーです。これはブラジルのアマゾン地域に自生している、人工的に植えられたものではない「神様が植えた」と言われるゴムの木から採取しています。

WWD:「神様が植えた木」を採取して問題ないのですか?

フランソワ::逆です。アマゾンの森林破壊が大きな問題となっている今、この天然ゴムの使用は森林保全にもつながっています。各家庭が約300ヘクタールの森林を守りながらゴムを採取しており、現在約2000家族と契約しています。つまり、60万ヘクタールもの森を私たちの購買活動で保護していることになります。

WWD:なるほど、ゴムは木を切るのではなく、樹皮に切れ目を入れて樹液を収穫するから、木を枯らさず「ゴムを採るから森を残す」という構造が成立するのですね。現地とのやり取りはどのように行っていますか?

フランソワ:アマゾンには「ヴェジャ」のオフィスがあり、常駐のスタッフ6人が地元の方々と連携しています。ブラジルの生産者たちは小さなグループに分かれ、さらにそれを統括する協同組合のような団体が存在します。私たちはそういった組織と直接契約を結んでいます。

WWD:彼らは元々ゴム生産に関わっていたのですか?

フランソワ:はい、元々ゴムの生産技術は持っていましたが、価格が非常に低かったため生計の主軸にはしていませんでした。収入の約30%がゴムからで、残りはナッツの収穫や農業、畜産などで得ています。「ヴェジャ」が適正価格で買い取るようになったことで、ゴム生産への関心が高まり、生産量も増えています。

WWD:コットンも持続可能な方法で生産していると伺いました。

フランソワ:はい。私たちは約2000家族と「アグロエコロジー」方式で契約しています。これは、単一作物の栽培を禁止し、最低3種類以上の作物を同じ畑で育てるというルールです。例えば、コットンのほかにトウモロコシや豆などを育てることで、土壌の多様性と肥沃さを保っています。生産地は主にブラジルで、一部はペルーにもあります。2005年からこの方式で栽培されたコットンを継続的に使用しています。

WWD:新作の「パネンカ」では革素材も使っていますね?

フランソワウルグアイ産で、完全な自然放牧によるものです。森林を切り開くことなく、広大な自然草原で、1ヘクタールに1頭という贅沢な飼育環境で育てられています。飼料や飼育方法にも自然に配慮しており、「コンパ」と呼ばれる場所で自由に放牧されています。

WWD::リサイクルポリエステの仕組みは?

フランソワ:私たちは15年以上前から再生ポリエステルを使っています。ただし、私たちは「どこから来たペットボトルなのか?」という点まで重視しています。ブラジルの産廃業者と協力し、現地で回収されたペットボトルを洗浄・分類し、小さなチップ状にしてから再生糸にしています。特に「ヴェジャ」では、これらを持ち込む回収者(多くは女性)に対し、通常の2倍の価格で買い取ることで、独自のサプライチェーンを築いています。

WWD:マイクロプラスチック問題にはどう対応していますか?

フランソワ:マイクロプラスチックが問題であることは認識しています。衣類のように頻繁に洗濯されるものに比べ、靴は洗濯されにくいため、発生量は少ないと考えています。とはいえ、内側のライニングにリサイクルペット素材を使っており、これはコットンよりも耐用年数が長く、結果として環境負荷が少ないと考えています。

理想は、20〜30年後にはペットボトル自体の使用がなくなることですが、現状では使い終わったペットボトルを有効に循環させることが大切だと考えています。

私たちは常に自問自答を繰り返しています。以前、リサイクルポリエステルでスウェットを作ったこともありましたが、マイクロプラスチックの懸念から制作を中止したこともあります。完璧ではないからこそ、疑問を持ち、間違いを修正する柔軟さが必要だと考えています。

WWD:グローバル基準についての意見をお聞かせください。

フランソワ:グローバル基準の整備には賛成ですが、懸念もあります。基準を作る側(主に北半球の国々)が、基準を守るよう求める一方で、そのために必要なコストを十分に支払っていないという問題があります。

たとえば、発展途上国や小規模生産者に「この基準を守れ」と求めるだけでは不公平です。使用する側、つまり私たち消費国がそのコストを負担するべきだと考えます。私たちはブラジルの生産者に対しても、その理念に基づいて適正価格での取引を行っています。本来、サステナブルな基準とは、生産者に押し付けるものではなく、それを使用する企業や消費者が共に支えるべきものです。

売り上げよりも、共感を広げるために

WWD:ブランド設立から20年となり、日本ではこのほど、Seiya Nakamura 2.24と日本総代理店契約を結ぶなど、ビジネスの新展開にも意欲的です。現在の売上高は?

フランソワ:2024年は約2億4,500万ユーロ(約395億円)でほぼ横ばいで安定しています。

WWD:その売り上げに満足されていますか?

フランソワ:私たちは売上至上主義ではありません。共同創業者のセバスチャン・コップ(Sebastien Kopp)と私の二人が会社の株式を100%保有しており、外部の株主はいません。だから「もっと売り上げを上げろ」といったプレッシャーもありませんし、自分たちがやりたいことに集中できています。

特に今は、日本に来て、日本市場に私たちの考え方を知ってもらうこと、そして日本の文化を学ぶことの方がずっと大切です。売上数字よりも、価値観を共有できることの方が重要だと考えています。

WWD::買収や投資の話も多いのでは?

フランソワ:たくさんあります。でも私たちはそこを目指していません。投資の話は多く来ますが、「それは私たちの目標ではない」と断っています。

WWD:米国のトランプ政権の施策はビジネスに影響していますか?

フランソワ:弊社の生産はブラジルで行っており、アメリカに輸出する際は関税が10%かかります(2025年4月11日時点)。1足あたり約5ドル程度の影響ですので、特に大きな打撃は受けていません。それに政策が日々変わるので、深刻に受け止めすぎないようにしています。

WWD:地産地消に関しての考えを聞かせてください。

フランソワ:私たちはパリを拠点にしつつ、生産はブラジルで行っています。そして世界中に商品を届けていますが、空輸ではなく船便を使用しています。そのため、物流が排出するCO₂は全体のわずか3%にとどまっています。

一部ポルトガルで生産している商品もあり、それはパリまでトラック輸送しています。実は、ブラジルからの輸送の方が環境負荷が少ないケースもあるのです。「遠くで生産しているからサステナブルではない」というのは誤解で、実際にはより環境に配慮した仕組みで生産・輸送しています。

WWD:迷いなく、明確ですね。

フランソワ:ありがとうございます。私たちは完璧ではありませんし、間違えることもあります。でもその都度立ち止まり、考え直し、変化を受け入れる姿勢を大切にしています。科学技術も日々進化していますから、時には立場を変える必要もあります。それは当たり前のことであり、恐れることではありません。

銀行員時代、「自分はこれをやりたくない」と思った

WWD:創業時から広告に頼らないビジネス方針を掲げていることが広く知られています。改めて、現代ではチャレンジングな戦略では?

フランソワ:広告を使わないという方針は、「ヴェジャ」にとって不可欠です。なぜなら、私たちはラバーやコットンなどの原材料を、生産者が生活できるだけの適正価格で購入しており、競合の約2倍のコストがかかることもあります。それでも大手ブランドと同じくらいの価格で商品を販売できるのは、広告費を一切かけていないからです。もちろん、広告を使えばブランドがもっと大きくなる可能性もあります。しかし、それによって商品の価格が上がったり、素材にかける予算が減ったりすることは、私たちの信念に反します。だから、最初から一貫して広告を使わない方針を続けています。

WWD:経営学を学び、最初のキャリアは銀行だそうですが、それらの経験は役立っていますか?

フランソワ:大学では経営学を学びましたが、金融の実務経験は半年ほどしかなく、それを“キャリア”と呼べるかは疑問です。ただ、その短い経験から、「自分はこれをやりたくない」という気持ちを明確に持てたのは大きかったです。銀行で働いていたとき、上司たちの姿を見て「自分もこうなりたい」とはどうしても思えませんでした。

卒業前に共同創業者のセバスチャンと一緒に旅をして、多くの場所を訪れました。その中で「サステナビリティは非常に重要だ」と感じ、学校にその学びの機会を求めたのですが、校長先生には「そんなの誰も興味を持たない」と一蹴されました。でもその2年後、普通にサステナビリティの授業が始まっていて、「僕たちは少し早すぎたのかもしれない」と感じました。

The post 森を守るゴムと、土を育てる綿 「ヴェジャ」共同創業者が語る、素材と思想のあいだ appeared first on WWDJAPAN.

森を守るゴムと、土を育てる綿 「ヴェジャ」共同創業者が語る、素材と思想のあいだ

サステナビリティは矛盾だらけ。環境に配慮された素材も見方によってはそうでなくなる。そんなとき、実践者たちはどう考えるのか?来日したサステナビリティの先駆者であるフランスのスニーカーブランド「ヴェジャ(VEJA)」のフランソワ・ギラン・モリィヨン(Francois Ghislain Morillion)共同創業者に彼らが考える“正義”について聞いた。場所は、東京・原宿。ヴィンテージのサッカーシューズをベースにした最新モデル「パネンカ(Panenka)」のお披露目をするスペースだ。

重要なのは、ブランドの社会的意義をしっかり伝えること

WWD:最初に「パネンカ(Panenka)」のコンセプトを教えてください。

フランソワ:・ギラン・モリィヨン(Francois Ghislain Morillion)ヴェジャ共同創業者(以下、フランソワ):私たちは、「ヴェジャ」の思想や世界観を伝えるために、新しいスタイルやモデルを開発しています。その背景には、ブランドの世界観を体現する“言い訳”となる要素を探しているという想いがあります。今回はサッカーシューズの世界観を取り入れ、「パネンカ」という名のモデルをつくりました。これは、サッカーのペナルティーキック技術の名前にもなっているもので、その世界観を借りる形で新しいラインを展開しています。

重要なのは、ブランドの存在意義、つまり社会的意義をしっかりと主張することです。そのために、素材選びにもこだわっており、ラバー、コットン、ペットボトル由来のリサイクルポリエステルを積極的に使っています。これらをスポーティーなサッカーというイメージと結び付けて、新しいスタイルとして打ち出しています。

WWD::「言い訳」とは、どういう意味ですか?

フランソワ::ポルトガル語で“ヴェジャ”は「見る」という意味があります。つまり、デザインの裏にあるすべてのストーリーを見てほしいという意図があります。「こういう背景があるんだよ」と伝えるための“きっかけ”のようなものです。

「神様が植えた」と言われるゴムの木から採取

WWD::新作で採用した素材について教えてください。

フランソワ:::4つの主要な素材を使用しています。まず一つ目はアウトソールの天然ラバーです。これはブラジルのアマゾン地域に自生している、人工的に植えられたものではない「神様が植えた」と言われるゴムの木から採取しています。

WWD:「神様が植えた木」を採取して問題ないのですか?

フランソワ::逆です。アマゾンの森林破壊が大きな問題となっている今、この天然ゴムの使用は森林保全にもつながっています。各家庭が約300ヘクタールの森林を守りながらゴムを採取しており、現在約2000家族と契約しています。つまり、60万ヘクタールもの森を私たちの購買活動で保護していることになります。

WWD:なるほど、ゴムは木を切るのではなく、樹皮に切れ目を入れて樹液を収穫するから、木を枯らさず「ゴムを採るから森を残す」という構造が成立するのですね。現地とのやり取りはどのように行っていますか?

フランソワ:アマゾンには「ヴェジャ」のオフィスがあり、常駐のスタッフ6人が地元の方々と連携しています。ブラジルの生産者たちは小さなグループに分かれ、さらにそれを統括する協同組合のような団体が存在します。私たちはそういった組織と直接契約を結んでいます。

WWD:彼らは元々ゴム生産に関わっていたのですか?

フランソワ:はい、元々ゴムの生産技術は持っていましたが、価格が非常に低かったため生計の主軸にはしていませんでした。収入の約30%がゴムからで、残りはナッツの収穫や農業、畜産などで得ています。「ヴェジャ」が適正価格で買い取るようになったことで、ゴム生産への関心が高まり、生産量も増えています。

WWD:コットンも持続可能な方法で生産していると伺いました。

フランソワ:はい。私たちは約2000家族と「アグロエコロジー」方式で契約しています。これは、単一作物の栽培を禁止し、最低3種類以上の作物を同じ畑で育てるというルールです。例えば、コットンのほかにトウモロコシや豆などを育てることで、土壌の多様性と肥沃さを保っています。生産地は主にブラジルで、一部はペルーにもあります。2005年からこの方式で栽培されたコットンを継続的に使用しています。

WWD:新作の「パネンカ」では革素材も使っていますね?

フランソワウルグアイ産で、完全な自然放牧によるものです。森林を切り開くことなく、広大な自然草原で、1ヘクタールに1頭という贅沢な飼育環境で育てられています。飼料や飼育方法にも自然に配慮しており、「コンパ」と呼ばれる場所で自由に放牧されています。

WWD::リサイクルポリエステの仕組みは?

フランソワ:私たちは15年以上前から再生ポリエステルを使っています。ただし、私たちは「どこから来たペットボトルなのか?」という点まで重視しています。ブラジルの産廃業者と協力し、現地で回収されたペットボトルを洗浄・分類し、小さなチップ状にしてから再生糸にしています。特に「ヴェジャ」では、これらを持ち込む回収者(多くは女性)に対し、通常の2倍の価格で買い取ることで、独自のサプライチェーンを築いています。

WWD:マイクロプラスチック問題にはどう対応していますか?

フランソワ:マイクロプラスチックが問題であることは認識しています。衣類のように頻繁に洗濯されるものに比べ、靴は洗濯されにくいため、発生量は少ないと考えています。とはいえ、内側のライニングにリサイクルペット素材を使っており、これはコットンよりも耐用年数が長く、結果として環境負荷が少ないと考えています。

理想は、20〜30年後にはペットボトル自体の使用がなくなることですが、現状では使い終わったペットボトルを有効に循環させることが大切だと考えています。

私たちは常に自問自答を繰り返しています。以前、リサイクルポリエステルでスウェットを作ったこともありましたが、マイクロプラスチックの懸念から制作を中止したこともあります。完璧ではないからこそ、疑問を持ち、間違いを修正する柔軟さが必要だと考えています。

WWD:グローバル基準についての意見をお聞かせください。

フランソワ:グローバル基準の整備には賛成ですが、懸念もあります。基準を作る側(主に北半球の国々)が、基準を守るよう求める一方で、そのために必要なコストを十分に支払っていないという問題があります。

たとえば、発展途上国や小規模生産者に「この基準を守れ」と求めるだけでは不公平です。使用する側、つまり私たち消費国がそのコストを負担するべきだと考えます。私たちはブラジルの生産者に対しても、その理念に基づいて適正価格での取引を行っています。本来、サステナブルな基準とは、生産者に押し付けるものではなく、それを使用する企業や消費者が共に支えるべきものです。

売り上げよりも、共感を広げるために

WWD:ブランド設立から20年となり、日本ではこのほど、Seiya Nakamura 2.24と日本総代理店契約を結ぶなど、ビジネスの新展開にも意欲的です。現在の売上高は?

フランソワ:2024年は約2億4,500万ユーロ(約395億円)でほぼ横ばいで安定しています。

WWD:その売り上げに満足されていますか?

フランソワ:私たちは売上至上主義ではありません。共同創業者のセバスチャン・コップ(Sebastien Kopp)と私の二人が会社の株式を100%保有しており、外部の株主はいません。だから「もっと売り上げを上げろ」といったプレッシャーもありませんし、自分たちがやりたいことに集中できています。

特に今は、日本に来て、日本市場に私たちの考え方を知ってもらうこと、そして日本の文化を学ぶことの方がずっと大切です。売上数字よりも、価値観を共有できることの方が重要だと考えています。

WWD::買収や投資の話も多いのでは?

フランソワ:たくさんあります。でも私たちはそこを目指していません。投資の話は多く来ますが、「それは私たちの目標ではない」と断っています。

WWD:米国のトランプ政権の施策はビジネスに影響していますか?

フランソワ:弊社の生産はブラジルで行っており、アメリカに輸出する際は関税が10%かかります(2025年4月11日時点)。1足あたり約5ドル程度の影響ですので、特に大きな打撃は受けていません。それに政策が日々変わるので、深刻に受け止めすぎないようにしています。

WWD:地産地消に関しての考えを聞かせてください。

フランソワ:私たちはパリを拠点にしつつ、生産はブラジルで行っています。そして世界中に商品を届けていますが、空輸ではなく船便を使用しています。そのため、物流が排出するCO₂は全体のわずか3%にとどまっています。

一部ポルトガルで生産している商品もあり、それはパリまでトラック輸送しています。実は、ブラジルからの輸送の方が環境負荷が少ないケースもあるのです。「遠くで生産しているからサステナブルではない」というのは誤解で、実際にはより環境に配慮した仕組みで生産・輸送しています。

WWD:迷いなく、明確ですね。

フランソワ:ありがとうございます。私たちは完璧ではありませんし、間違えることもあります。でもその都度立ち止まり、考え直し、変化を受け入れる姿勢を大切にしています。科学技術も日々進化していますから、時には立場を変える必要もあります。それは当たり前のことであり、恐れることではありません。

銀行員時代、「自分はこれをやりたくない」と思った

WWD:創業時から広告に頼らないビジネス方針を掲げていることが広く知られています。改めて、現代ではチャレンジングな戦略では?

フランソワ:広告を使わないという方針は、「ヴェジャ」にとって不可欠です。なぜなら、私たちはラバーやコットンなどの原材料を、生産者が生活できるだけの適正価格で購入しており、競合の約2倍のコストがかかることもあります。それでも大手ブランドと同じくらいの価格で商品を販売できるのは、広告費を一切かけていないからです。もちろん、広告を使えばブランドがもっと大きくなる可能性もあります。しかし、それによって商品の価格が上がったり、素材にかける予算が減ったりすることは、私たちの信念に反します。だから、最初から一貫して広告を使わない方針を続けています。

WWD:経営学を学び、最初のキャリアは銀行だそうですが、それらの経験は役立っていますか?

フランソワ:大学では経営学を学びましたが、金融の実務経験は半年ほどしかなく、それを“キャリア”と呼べるかは疑問です。ただ、その短い経験から、「自分はこれをやりたくない」という気持ちを明確に持てたのは大きかったです。銀行で働いていたとき、上司たちの姿を見て「自分もこうなりたい」とはどうしても思えませんでした。

卒業前に共同創業者のセバスチャンと一緒に旅をして、多くの場所を訪れました。その中で「サステナビリティは非常に重要だ」と感じ、学校にその学びの機会を求めたのですが、校長先生には「そんなの誰も興味を持たない」と一蹴されました。でもその2年後、普通にサステナビリティの授業が始まっていて、「僕たちは少し早すぎたのかもしれない」と感じました。

The post 森を守るゴムと、土を育てる綿 「ヴェジャ」共同創業者が語る、素材と思想のあいだ appeared first on WWDJAPAN.

台湾出張で見つけたサステナブル素材の新潮流 台北FW取材から

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

3月末に行われた「台北ファッション・ウイーク」の取材のため、台湾を訪れました。「台北ファッション・ウイーク」の今シーズンのテーマは、「循環型ファッション」。合成繊維に強みを持つ台湾では、ペットボトルや古着を再利用したリサイクルポリエステルに加え、魚の鱗やバナナを原料とする繊維など、ユニークな新素材が次々と登場しています。地元の繊維企業を取材する中で見えてきた、サステナブル素材の新潮流についてお話しします。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post 台湾出張で見つけたサステナブル素材の新潮流 台北FW取材から appeared first on WWDJAPAN.

「マーカウェア」が情報開示ブロックチェーン導入 素材起点のトレーサビリティを前進

「マーカ(MARKA)」「マーカウェア(MARKAWARE)」を運営するエグジステンスはこのほど、アパレル業界に特化した情報開示ブロックチェーンソリューション「タドリチェーン ツナグ フォー ファッション(TADORi CHAiN– Tsunagu for Fashion、以下タドリチェーン)」を導入し、ウルグアイ産オーガニックウールのカプセルコレクションを発売した。これまでも長く、トレーサブルな素材調達に尽力してきた石川俊介デザイナーはいまWeb3(ブロックチェーン技術によって実現される分散型インターネット)の技術も取り入れながら、洋服の一生を「見守る」挑戦をしている。

トレーサビリティはブランド立ち上げ当初からの思い

「ファッションは農業だ」と語る石川俊介デザイナー。その言葉通り、服作りはオーガニックウールやコットン、アルパカといった原料の栽培地から始まり、着る人の手元に届いた後のケア方法まで見据えている。2000年代初頭からトレーサビリティを意識し、原料の牧場や紡績工場に足を運んできた石川デザイナーは「ブランドを始めた頃から、日本の工場の面白さを伝えたかった」と振り返る。まだ「トレーサビリティ」という言葉が一般的でなかった2000年代初頭、製品タグに協力工場の名前を明記し始めたのがその原点だ。「2014年には、工場名を明記した製品ラベルを導入し始めました。2012年頃にコーヒーショップを開いたとき、ちょうどアメリカでサードウェーブコーヒーが注目されていて、コーヒー農園のトレーサビリティが話題になっていた。じゃあ洋服でもできるだろうと考えたんです」。

その後、QRコードやウェブサイトを活用した情報提供を経て、今回のWeb3による「デジタルパスポート」へとつながった。導入した「タドリチェーン」はアップデータ(UPDATER)が提供する情報開⽰ブロックチェーン ソリューションで、フェーズに合わせた3つのバージョンがある。今回は、 “初期フェーズ”の導入で、製品タグのQRコードから原料の生産者や工場といった情報を得ることができる。

石川デザイナーの人生のテーマは「洋服・旅・食」。観光地ではなく、現地のリアルな暮らしに触れられる場所に惹かれる彼にとって、原料の生産現場を訪れることはまさに「旅の目的地」でもある。「コーヒー農園を訪ねるように、僕たちもコットンやウールの農場に足を運びたいと思うようになったんです。現地の生活や文化に触れることも、ものづくりの一部だと感じています。」これまでに訪れた場所はペルー、アルゼンチン、エジプト、ウガンダ、モンゴルなど多岐にわたる。中には自らネットで調べ、直接連絡を取ってアポイントを取りつけた場所もある。

垂直統合と認証──日本の産地を残すために

現在力を入れているのが、「スモールビジネスの限界」を超えるための拡張だ。商社などに頼らず単身で原料輸入も広げてきたが、「オーガニック原料を使うだけでは、スモールビジネスのままでは、産地に何も還元できない。原料をトン単位で買える規模にならないと、産地に影響を与える提案もできない」。そのため、近年は3t〜7t規模の発注も行っており、間の紡績工場と連携して年単位で素材を仕入れるスキームを構築中だという。

ヨーロッパを中心とした国際的なサステナビリティ基準の高まりを前に、日本の繊維産地は危機にあると石川デザイナーは指摘する。「2025年以降、日本の生地はハイブランドの選定対象から外れつつある。いま日本が動かなければ、世界市場で取り残されてしまう」。

それもあり注目するのが、「垂直統合」。紡績から仕上げまで一貫して対応できる体制を整えることが、持続的な輸出と競争力の鍵だという。「一貫生産ができる工場には、RWS(Responsible Wool Standard)やGOTSの認証取得を提案しています。最終的には生地ブランドとして海外に販売していきたい。目指すはそうですね、“一人「ロロピアーナ」”かな(笑)」。

洋服の一生を追いかける。ウエブ時代のトレーサビリティ

Web3技術によるNFT化された製品情報は、ユーザーの手に渡った後もその洋服の「一生」を見守るための仕組みだ。「製品のライフサイクル全体が見えるようになれば、アフターケア、二次流通、保証など多様な展開が可能になる」。それは思いだけではなく、実践に直結している。自らクリーニング師の資格を取得し、YouTubeでケア方法を発信。洗濯やアイロンの楽しさを伝えることで、「洋服を長く着ること」が本当のサステナビリティだと伝えている。「男性のお客様は、背景のストーリーやヒストリーにお金を払う。だからこそ、服の“ロマン”を伝えることが大事なんです」。

「タドリチェーン」の第⼆フェーズではサプライチェーン動脈の情報開⽰に加え、顧客が製品購⼊後の所有権移転や リペア履歴などの情報を管理することができる。25年秋冬コレクションではウルグアイウールだけでなくモンゴルカシミア製品に第二フェーズ用のプロダクトを導入する予定だ。

The post 「マーカウェア」が情報開示ブロックチェーン導入 素材起点のトレーサビリティを前進 appeared first on WWDJAPAN.

「CFCL」の“サの字なきサステナ”、GAKU高校生の涙、廃棄501を扱う覚悟【向千鶴サステナDが行く】


向千鶴「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクターが取材を通じて出会った人、見つけた面白いことなどを日記形式でお届けします。読者から「人の感情を軸にサステナビリティを語っている」という評価をいただき、確かにそうかも、と納得しました。「人との出会い」やその後ろにあるストーリーを今回もお届けします。

容器を見て、心がスッとした。潔い美しさ

サキュレアクト「530」キャラバン(3/11)

私のビューティ×サステナビリティの先生(本質を教えてくれる方)のひとりが、サキュレアクトの塩原社長です。この記事の下部にリンクを載せているインタビュー記事のタイトル、インパクトがありますよね。「新商品を出すたびごみを作っている気になる」化粧品業界の闇から抜け、“未来の原料”と出合いサキュレアクトを起業――です。大量生産・廃棄に嫌気がさし、「25年携わった化粧品業界を卒業しよう」と考えた最中に、地球環境を改善する可能性を秘めた微細藻類に出合い、プラスチック製品を使わずごみを出さない工夫をするライフスタイルブランド『530(ファイブサーティ)』を立ち上げたそうです。

そんな塩原さんが、天然由来成分100%・ビーガン認証を取得した新製品“ナイトケア クリーム”をもって来社してくれました。見てください、この潔い容器を。ガラスとアルミだけを採用しているため、リサイクルしやすい。半顔ずつ使って試してみようと思います。

サステナぶらないサステナブルを楽しむ

繊維商社ヤギ展示会(3/12)


TBSでSDGs関連の番組を手がけている方の講演で、印象的だった言葉が「人は、喜怒哀楽のどれかに触れたときに心が動く」でした。どうしたらより多くの人にSDGs関連の番組に関心をもってもらえるか?という議題の中で出てきた言葉です。確かに、SDGs関連の情報は「正しい、けど伝わらない」という悩みが常について回ります。

展示会もまったく同じだと思います。そういった意味で、繊維商社ヤギの見せ方はとても上手でした。原料や生地の展示会なのに、まるでアパレルの展示会かと思うようなディスプレーや、テーマごとに設けられたブースの構成が、心に届くものになっていました。そして何より、お土産コーナーが可愛い!展示会のテーマである「サステナぶらないサステナブル」を、キャップや靴下、Tシャツにポップに落とし込んでいて、思わず「可愛い〜」と近寄ってしまいます。喜怒哀楽の「楽」が動いた瞬間ですね。デザインが得意なファッション業界には、この感覚をもっと発信してほしい!

世界へ飛び出せ!日本のイノベーション

ケリング・ジェネレーション・アワード(3/13)

ケリングによるスタートアップ支援につながるアワードがこちら。上海などで先行していたこのアワードですが、ジャパン社の担当者が「日本でも実現したい」と、数年前から準備を重ねてきたそうです。私自身もアドバイザリーボードとして参加したので、とても感慨深い。

新しいことの立ち上げにはものすごいエネルギーが必要です。矛盾だらけで正解が見えにくいサステナビリティの世界では、「オープンソース」マインドがとても大切。ここに集まった起業家たちが、情報を交換しながら互いに高め合っていく姿を目の当たりにして、改めてそう感じました。

ローラの本気度。リジェネラティブへ向かう

「ステュディオ アール スリーサーティー」展示会(3/13)

私はローラを尊敬しています。母国語ではない日本語をここまで習得した時点でまずすごい。そして、サステナビリティに対する考え方がとても真摯です。展示会では農業に関心があると話していたローラ。自身のブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」の展示会では、リジェネラティブ・コットンのアイテムなどが登場していました。

輝け!意識高い系若者

10代のクリエーションの学び舎「GAKU」合同展示会(3/23)

学び舎「GAKU」が三菱地所と協働し、10代がクリエイターや専門家とともに食・ファッション・建築の分野で「これからのサステナブル社会を構想する」ことを趣旨に、昨年10月から約半年間にわたってクラスを開講してきました。私は講師のひとりとして、成果発表の場で2人の高校生と3人の大人とともにトークイベントに参加しました。

テーマは「ファッションと地球のより良い関係の土台を考える」。難易度が高そうに聞こえますが、副題が「サステナビリティと向き合う中で感じたジレンマと、それらと向き合うことで見えてきた良い兆し」だったため、実際は非常に話しやすい内容でした。それは10代も同じだったようで、環境や人権の問題に関心を持つ高校生たちは、自分の思いを周囲に伝える中で葛藤を抱えていました。その葛藤は、ファッションを愛し、大切な人を思うからこそ生まれるもの。感極まって涙を流す学生の純粋さに触れ、抱きしめたくなるような瞬間がありました。

でも、その必要はありませんでした。彼らはすでに葛藤を越えて、友人や家族とより良い関係を築いていたからです。“意識高い系”。ともすれば揶揄に使われがちなこの言葉を、彼らには勲章のように掲げて進んでほしい。そして、彼らが堂々と自分の意見を言える環境を作るのは、私たち大人の役割だとも思います。

高橋さんが受賞した装苑賞作品が必見

「CFCL: KnitwearからKnit-wareへ」内覧会(3/24)

「CFCL」が5周年を記念して表参道・GYRE GALLERYで開催した展覧会では、代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介さんが自ら来場者に展示解説を行っていました。

わずか5年ながら、ニットへの深いこだわりと独自のクリエーションで存在感を確立してきた「CFCL」。この展示は単なる過去の振り返りではなく、ブランドの“哲学”を言語化し、次の5年を見据える再出発のような場になっていました。会場の入り口には、2009年に大学院生として装苑賞を受賞した作品が展示されています。まさにブランドの原点ともいえるニット作品であり、それだけでも足を運ぶ価値があると感じました。

「社員が60人を超え、私自身が面接に入ることもなくなりました。だからこそ、理念や哲学を改めて社内外に伝えたかった」と語る高橋さん。「ニットだからできることは、まだまだある。ようやくその入口に立ったばかりです」とも。

展覧会に“サステナ”の文字はひとつも登場しませんでしたが、映像で見せる生産工程の開示など、やっていることはまさに“サステナ中のサステナ”でした。

廃棄501と言えば山澤さん。その覚悟とは?

ヤマサワプレス(3/26)


展示会案内にあった「ヤマサワプレスの覚悟を見に来てください」の一文に誘われて、行ってきました。写真は「リーバイス501」が好きすぎて、アメリカで廃棄されると聞いたそれらを大量に買い付け、日本に運んだ山澤さん。「リーバイス」のお墨付きでアップサイクルに取り組み、たくさんの人を巻き込んできた情熱の持ち主です。日本の多くのデザイナーが、足立区にあるヤマサワプレスの町工場を訪れたことがあるのではないでしょうか。

今回新たに提案していたのは、リサイクルデニムを使ったジャケットなど。リメイク工程で出る端材を裁断し、バージンコットンを混ぜて紡績し直した生地を使用しているそうです。アメリカでジーンズを捨てた人は、まさかそれが日本でこんなに美しいブルーのジャケットになっているとは想像もしないでしょう。面白い時代です。

そして、ここで感動の再会がありました。大阪文化服装学院出身で、現在ヤマサワプレスで働いている松浪希峰さん。コロナ禍に私が同校で行ったセミナーを覚えていて、声をかけてくれました。「向さんの講義が、今の道に進む大きなきっかけでした」という言葉に思わず涙。後日も「今後も循環型のファッションを探求し、モノづくりに励んでいきたい」とメールをもらい、2度目の嬉し泣きです。がんばれ!

The post 「CFCL」の“サの字なきサステナ”、GAKU高校生の涙、廃棄501を扱う覚悟【向千鶴サステナDが行く】 appeared first on WWDJAPAN.

価格40%、年齢マイナス5歳 「ジェイエムウエストン」のヴィンテージが生む新たな接点

ブランドが自社製品を顧客から回収し、修理・補修をして再販売するビジネスが広がっている。1891年創業のフランスの靴ブランド「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」もそのひとつ。革靴には修理しながら長く愛用するカルチャーが根付いているが、同社は2019年からそれをビジネスモデルに組み込み、グローバル展開している。通常の40%という価格設定も手伝い、「ウエストン・ヴィンテージ(WESTON VINTAGE)」の顧客年齢は通常ラインと比べてマイナス5歳と新規顧客獲得にもつながっているという。伊勢丹新宿店メンズ館でのポップアップストアを控えて来日したマーク・デューリー ジェイエムウエストンCEOにその戦略と成果、課題を聞いた。

ヴィンテージを事業化するという挑戦

WWD:「ウエストン・ヴィンテージ」プロジェクトを始めたきっかけを教えてください。

マーク・デューリー ジェイエムウエストンCEO:このプロジェクトを始めたのは2019年です。実は「ジェイエムウエストン」では創業当初から靴の修理を行っており、現在では毎年約1万足をフランス・リモージュの工房で修理しています。多くのお客様が修理のために靴を持ち込まれる中で「もう履けない」と言われることが増えました。理由はさまざまで、足の形が変わった、ライフスタイルが変わったなどです。

お客様から「もう履けないけれど、この靴をどうすればいいか?」という声を受けて、われわれは「では、それらの靴を何かに活かせないか?」と考え始めました。同時に、当社のアーティスティック・ディレクターであり、ファッション史家でもあるオリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)が、当社の“修理のDNA”を活かして、古い靴で何ができるかを模索していました。彼は、ヴィンテージの靴をカスタマイズしてパフォーマンスとして見せる試みを行っていて、それを店頭で展示しました。そこからこのプロジェクトがスタートしました。

2020年には、お客様から300足を買い取りました。24年には2000足と、23年から倍増しています。確実に関心が高まっていると感じています。

WWD:プロジェクトを開始したとき、チームや顧客の反応はどうでしたか?

マーク:19年当時、ヴィンテージや回収の取り組みを行っているブランドはほとんどありませんでした。「ジェイエムウエストン」の顧客はすでに修理に慣れていたので、靴を「売る」という新たなステップも比較的受け入れていただけました。

正直なところ、私自身もこの会社に入るまではヴィンテージの靴を履いたことがありませんでした。でも、「ウエストン・ヴィンテージ」では靴を完全に内部まで消毒し、インソールを交換して新品同様に仕上げています。また、「ジェイエムウエストン」の靴は伝統的な作りで、新品は硬く感じることがありますが、ヴィンテージはすでに履きならされているので、最初から快適です。

23年は2000足を回収し、そのうち670足を販売

WWD:若い世代の顧客が増えたそうですね。

マーク: はい、ヴィンテージ靴は新品より約40%安いため、若い世代にとって魅力的です。実際、ヴィンテージ製品の購入者の平均年齢は、通常の顧客より5歳若くなっています。日本でもフランスでも新しい顧客が増えており、初めて「ジェイエムウエストン」の靴を購入するきっかけになっています。

WWD:ヴィンテージ靴の魅力とは?

マーク: 例えば、長年履かれた革のパティーナ(経年変化による艶や風合い)は唯一無二の美しさを生み出します。また、すでに販売終了となっているモデルとも出会える可能性があります。5年前の靴もあれば、20年、25年前の靴もあります。当時の革は、現在の規制とは異なるなめし方法で加工されており、より深みのある表情を楽しめます。

WWD:回収した靴のうち、再販可能な割合は?

マーク: 23年は2000足を回収し、そのうち670足を販売しました。つまり約33%です。前年までは1000足回収して600足販売していたので、通常は60%前後です。昨年は回収数が急増したため、販売率が少し下がりました。

WWD: 「ウエストン・ヴィンテージ」を2019年にスタートして、これまで6年経ちました。特に印象に残っていることや、顧客の反応はありますか?

マーク: いくつかありますが、私が特に気に入っているのは、“宝探し”のような感覚です。ラグジュアリー業界では、世界中どこへ行ってもだいたい同じ商品が店頭に並んでいます。でも、ウェストンのヴィンテージはその都度違うので、サイズ、カラー、スタイルが毎回異なり、思いがけない出会いがあります。これは本当にワクワクする体験です。私自身、店舗でヴィンテージコーナーがあると、必ずチェックしています。

また、多くのお客さまが「この靴は修理できて、また再販売できるんだ」と発見してくださるのも素晴らしいことです。当社の価格帯では「長く大切に履ける投資価値のある靴」であることを実感していただきたいですし、二度、三度と履き継がれていくことで、さらにポジティブな気持ちになっていただけます。

日本について一つ紹介したいエピソードがあります。私たちが2回目のヴィンテージイベントを伊勢丹新宿店メンズ館で開催した際、開店初日に予想を超える反響がありました。地上階のポップアップスペースから、なんと7階まで行列ができたのです。お待たせしてご迷惑をおかけしましたが、その反響の大きさは本当に嬉しかったです。

伊勢丹新宿店で5回目のポップアップを開催

WWD: 日本の顧客は職人技やタイムレスに価値をおく傾向がありますから。

マーク: 日本のお客様は本当に職人技に敏感で、非常に知識が豊富です。時には私たち以上に靴の製法に詳しい方もいて、昨日も店舗マネージャーとの夕食で、縫製について非常に専門的な質問を受けました。こうした対話があるのは日本ならではで、多くのスタッフの教育が必要だと感じています。

WWD: 職人と深く話すこと自体がエンターテインメントですよね。

マーク: まさにその通りです。だからこそ、今年はマーケティング部門のスタッフの一人が、自ら靴を一足丸ごと作れるようになりました。彼は以前、靴工場で働いていたんです。こうした人材がいることで、クラフトマンシップをよりわかりやすく伝えることができます。個人的にも、日本のお客様は伝統的なものづくりを世界でもっとも理解してくださるマーケットだと感じています。

WWD: 4月30日から伊勢丹新宿店で5回目のポップアップを開催しますが、これまでとの違いは?

マーク: 初年度はミックスイベントだったので実質6回目ですが、本格的なヴィンテージイベントとしては今年で5回目になります。フランスから多くの靴を日本に持ち込みます。限定商品も一部用意しています。ヴィンテージ自体が一点物ですが、さらに特別な商品も並びます。

100足すべて違う靴を修理する難しさ

WWD: このプロジェクトにおける課題について教えてください。

マーク: 最大の課題の一つは、すべての靴が修理可能なわけではないということです。アウトソールを取り外して、新たに取り付けるには、アッパーの革が十分にしっかりしている必要があります。お手入れが不十分だと、革が乾燥してしまい、修理に耐えられないことがあります。これはお客様にとって理解が難しい点でもありますが、時にはどうしても修理できない靴もあるのです。

また、サプライチェーン面でも大きな挑戦があります。毎回違う靴が届くので、店舗ごとに回収した靴を一旦工場に集めて修理する必要があります。100足同じモデルを修理するのではなく、100足すべて違う靴を扱うことになるのです。

WWD: サイズの問題も大きいのでは?

マーク: そうですね、重要なポイントです。履き込まれた靴は、サイズが変わっていることがあります。オリジナルのサイズを表示するべきか、実際のサイズを再評価するべきか悩むところです。店舗スタッフにとっても、適切なフィッティングの提案がより難しくなります。ただし、履き心地自体は柔らかくて快適なことが多いです。

日本ではヴィンテージを「売る量」のほうが「買い取る量」より多い。つまり、フランスで回収した靴が日本市場のサイズに合わないことがあり、それも課題の一つです。ただ一方で、「パリで履かれていた靴を、今は東京で誰かが履いている」というロマンチックな物語にもなります。

新製品の開発に与える影響

WWD: 新品にはないストーリーですね。このプロジェクトは、新製品の開発にも影響を与えていますか?

マーク: はい、間違いなく影響があります。当初はアイコニックなモデルのみ修理対象としていましたが、今では全製品の100%を修理可能にしたいと考えています。たとえば、スニーカーではアウトソールを交換可能なように、全周にステッチを入れるなどの設計をしています。現在ではすべてのコレクション開発において、将来的に修理ができる構造かどうかを検討しています。

WWD: EUで進む消費者の「修理する権利」の規制への対応にもなりますね。それには職人の育成も必要です。

マーク: その通りです。靴産業では通常、工場ごとに特化した製品しか作らないのが一般的です。フランス・リモージュの工場では130年間、グッドイヤー製法の靴だけを作っていましが、現在はスニーカー製造を含めた職人技の幅を広げました。

最初に復刻したスニーカーは、1938年に作ったテニスシューズの再現です。もともと1920〜30年代、ウェストンはスポーツシューズのメーカーでもありました。社内で修理技術を持つことが、外部に依頼せず修理を可能にする重要なポイントなのです。

■ジェイエムウエストン 伊勢丹新宿店メンズ館 ポップアップ
日時: 2025年4月30日(水)~5月13日(火)
場所: 伊勢丹新宿店 メンズ館1階「ザ・ステージ」
住所:東京都新宿区新宿3-14-1
ジャズライブ: 5月10日(土)14時~/15時~/16時~ 各回約20分予定

The post 価格40%、年齢マイナス5歳 「ジェイエムウエストン」のヴィンテージが生む新たな接点 appeared first on WWDJAPAN.

ウールマーク・プライズ本年度のグランプリは「ゴルチエ」のトップに就くデュラン・ランティンク

インターナショナル・ウールマーク・プライズ(INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE以下、IWP)はこのほど、ミラノで2025年度の授賞式を開催し、オランダ人デザイナーのデュラン・ランティンク(Duran Lantink)にグランプリを贈った。ランティンクはその後、「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のクリエイティブ・ディレクターに就任することが発表された。ランティンクには、例年より50%多い30万豪ドル(約2600万円)の賞金が贈られる。

ランティンクは、伝統的な手編みの技術に現代的な解釈をプラス。3月にパリで25-26年秋冬コレクションとして発表した、彫刻のように立体的なドレスが注目を集めた。ランティンクはコレクション制作に尽力したアムステルダム在住の女性ニッター15人からなるグループに謝意を示し、「ウールやニットの専門知識を持つ人々との対話が何より重要だった」と語った。「ウール、特に手編みには、独特の豊かさがある。機械編みではこのような作品はできない。また、グループとのゆったりとしたプロセスが果たす役割の大きさにも気がついた。自分は元来せっかちな人間だが、辛抱強さを学んだ」という。

「アライア」のミュリエはカール・ラガーフェルド賞を受賞

また、今回のプライズでは「アライア(ALAIA)」のピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)=クリエイティブ・ディレクターが、メリノウールの可能性を広げたブランドや個人に贈られるカール・ラガーフェルド・イノベーション賞を受賞。審査員は、ミュリエが「アライア」の24年春夏コレクションで発表した、単一のウール糸のみを使用したウエアを高く評価した。さらに、ウールやウール混紡糸の梳毛紡績メーカーとして知られるドイツ・ニュルンベルクのズートヴェレ グループ(Suedwolle Group)は、サステナブルな実践においてリーダーシップとイノベーションを発揮してサプライチェーン賞を受賞した。

授賞式に出席したザ・ウールマーク・カンパニー(THE WOOLMARK COMPANY)のジョン・ロバーツ(John Roberts)=マネージング・ディレクターは、「コロナ禍以来、ウールの価格は40%下落し、生産量は2年間で20%減少している」とウール業界の窮状を訴えた。だからこそ受賞者を選ぶ際には、6万人の生産者の利益を最優先に考えたという。「私にとって重要なのは、ウールに対する人々の認識を変え、長期的にウールに対する需要を喚起できるか否か。農家にとっての最大の擁護者となれるデザイナーを求めていた」と語る。

今回から、イノベーションとサステナビリティに重点を置き、隔年開催となったウールマークプライズでは、コンテストに参加するデザイナーに6万豪ドル(520万円)を支給。各デザイナーは、25-26年秋冬コレクションの一部として、もしくは単独のコレクションとして、メリノウールを使用した6ルックを制作してメリノウールの多用途性、革新性、環境への配慮を提示した。

今年度の審査委員長は、先月「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のクリエイティブ・ディレクターを退任したドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)が務めた。またゲスト審査員には「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー ™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」のイブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)アート・イメージディレクターを招へい。ヴェルサーチェは「デュランの作品には、灰色の世界に生きる私たちが、今一番必要なエネルギーがある。伝統を尊重しつつ、ユーモアと楽観主義、そしてアナーキーな未来主義を体現している」と語った。このほか、「ゼニア(ZEGNA)」のアレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)らの業界のエキスパートたちが名を連ねた。

The post ウールマーク・プライズ本年度のグランプリは「ゴルチエ」のトップに就くデュラン・ランティンク appeared first on WWDJAPAN.

ウールマーク・プライズ本年度のグランプリは「ゴルチエ」のトップに就くデュラン・ランティンク

インターナショナル・ウールマーク・プライズ(INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE以下、IWP)はこのほど、ミラノで2025年度の授賞式を開催し、オランダ人デザイナーのデュラン・ランティンク(Duran Lantink)にグランプリを贈った。ランティンクはその後、「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のクリエイティブ・ディレクターに就任することが発表された。ランティンクには、例年より50%多い30万豪ドル(約2600万円)の賞金が贈られる。

ランティンクは、伝統的な手編みの技術に現代的な解釈をプラス。3月にパリで25-26年秋冬コレクションとして発表した、彫刻のように立体的なドレスが注目を集めた。ランティンクはコレクション制作に尽力したアムステルダム在住の女性ニッター15人からなるグループに謝意を示し、「ウールやニットの専門知識を持つ人々との対話が何より重要だった」と語った。「ウール、特に手編みには、独特の豊かさがある。機械編みではこのような作品はできない。また、グループとのゆったりとしたプロセスが果たす役割の大きさにも気がついた。自分は元来せっかちな人間だが、辛抱強さを学んだ」という。

「アライア」のミュリエはカール・ラガーフェルド賞を受賞

また、今回のプライズでは「アライア(ALAIA)」のピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)=クリエイティブ・ディレクターが、メリノウールの可能性を広げたブランドや個人に贈られるカール・ラガーフェルド・イノベーション賞を受賞。審査員は、ミュリエが「アライア」の24年春夏コレクションで発表した、単一のウール糸のみを使用したウエアを高く評価した。さらに、ウールやウール混紡糸の梳毛紡績メーカーとして知られるドイツ・ニュルンベルクのズートヴェレ グループ(Suedwolle Group)は、サステナブルな実践においてリーダーシップとイノベーションを発揮してサプライチェーン賞を受賞した。

授賞式に出席したザ・ウールマーク・カンパニー(THE WOOLMARK COMPANY)のジョン・ロバーツ(John Roberts)=マネージング・ディレクターは、「コロナ禍以来、ウールの価格は40%下落し、生産量は2年間で20%減少している」とウール業界の窮状を訴えた。だからこそ受賞者を選ぶ際には、6万人の生産者の利益を最優先に考えたという。「私にとって重要なのは、ウールに対する人々の認識を変え、長期的にウールに対する需要を喚起できるか否か。農家にとっての最大の擁護者となれるデザイナーを求めていた」と語る。

今回から、イノベーションとサステナビリティに重点を置き、隔年開催となったウールマークプライズでは、コンテストに参加するデザイナーに6万豪ドル(520万円)を支給。各デザイナーは、25-26年秋冬コレクションの一部として、もしくは単独のコレクションとして、メリノウールを使用した6ルックを制作してメリノウールの多用途性、革新性、環境への配慮を提示した。

今年度の審査委員長は、先月「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のクリエイティブ・ディレクターを退任したドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)が務めた。またゲスト審査員には「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー ™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH™)」のイブラヒム・カマラ(Ibrahim Kamara)アート・イメージディレクターを招へい。ヴェルサーチェは「デュランの作品には、灰色の世界に生きる私たちが、今一番必要なエネルギーがある。伝統を尊重しつつ、ユーモアと楽観主義、そしてアナーキーな未来主義を体現している」と語った。このほか、「ゼニア(ZEGNA)」のアレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)らの業界のエキスパートたちが名を連ねた。

The post ウールマーク・プライズ本年度のグランプリは「ゴルチエ」のトップに就くデュラン・ランティンク appeared first on WWDJAPAN.

グランプリ受賞者が教える “良いピッチ”の秘訣 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

先週に引き続き、注目のスタートアップ企業、ファーメンステーションの酒井里奈代表取締役をゲストにお迎えしました。ケリング(KERING)が日本で初開催したスタートアップ企業のアワード「ケリング・ジェネレーション・アワード(KERING GENERATION AWARD)」での最優秀賞受賞をはじめ、世界各国でビジネスピッチを行い成果を上げている酒井代表に、人の心をつかむピッチの秘訣などを伺います。世界へ飛び出し、ファーメーステーションがこれから目指す世界についてもお話しいただきました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post グランプリ受賞者が教える “良いピッチ”の秘訣 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】 appeared first on WWDJAPAN.

「群言堂」の“植物担当” 染料調達・営農・朝食のおもてなし、3足のわらじを履くに至るまで

PROFILE: 鈴木良拓:他郷阿部家 暮らし紡ぎ人兼SUZUKI FARMS代表

鈴木良拓:他郷阿部家 暮らし紡ぎ人兼SUZUKI FARMS代表
PROFILE: (すずき・よしひろ)1988年福島県南会津町生まれ。秋田公立美術工芸短期大学プロダクトデザイン科でデザインの基礎を学び、文化服装学院テキスタイルデザイン科でテキスタイルを学ぶ。2012年に石見銀山生活文化研究所に入社と同時に島根県大田市大森町へ移住。企画担当として主にテキスタイルデザインを手掛ける。19年に独立。「他郷阿部家」での朝食、台所周りの掃除や「阿部家」のメンテナンス業務、お客さまの感動価値を上げるものづくりに取り組みながら、随時里山パレットの染料となる植物の調達を行う

島根県大田市に拠点を置く群言堂グループが運営する宿泊施設「他郷阿部家」で朝食を担当する鈴木良拓さんは、自ら育てた野菜と卵を宿泊客にふるまう。聞けば、もともとは「石見銀山 群言堂」のテキスタイルデザインを担当し、大森町周辺で採取した草花や枝木などから染めた「里山パレット」を開発した人物で、今も「里山パレット」の染料になる植物を採集しながら、「阿部家」の仕事と営農を行う。

WWD:仕事のタイムスケジュールを教えてほしい。

鈴木:朝6時半に「阿部家」に来て8時からの朝食を準備し、朝食後はお客さまに群言堂の関連施設のご案内などを行う。11時のチェックアウト業務後は14時頃まで洗濯や掃除などを行う。お昼休憩後、15時頃からは(群言堂グループの創業者)登美さんからの頼まれごとや畑仕事、「里山パレット」の業務を行っている。18時には帰宅して家族のために夕食を作っている。「里山パレット」の下げ札に描かれた植物画も僕の担当。

WWD:大森町に移住したきっかけは?

鈴木:学生時代に生地の産地を巡り、機屋や染工場を見学させていただく中でインターンを経験した。そこでさまざまなブランドの生地ファイルが並ぶ中で「石見銀山生活文化研究所」というファイルを見つけた。「石見銀山」「研究所」って何だ?と興味を持ちファイルを見るとちゃんとした生地を作っていて惹かれた。調べると島根を拠点に面白い取り組みをしていた。求人は出ていなかったが問い合わせると面接することになり、学生時代に取り組んでいた自生する植物繊維で作った物や植物で染めた衣服などの作品をたくさん持って臨んだ。

WWD:大森町の本社で面接を行った。

鈴木:(創業者の)登美さんと大吉さん(夫妻)はもちろん経営陣がそろい10人に囲まれた面接だった。いろんな質問をされて答える中で大吉さんが盛り上がってきて「この町には手つかずの自然の資源があるが、生かし切れていない。植物資源を使ったものづくりをやってみないか」と言われた。後に登美さんが教えてくれたのは、登美さんは面接の時点では迷いがあって、面接帰りの電車で偶然一緒になりいろんな話をする中で採用を決めたそう。

WWD:12年にデザイナーとして採用され、テキスタイルデザインを担当した。

鈴木:入社後すぐに大森町周辺の植物を生かしたものづくりに取り組みはじめ、今は食堂になっているかやぶき屋根の建物で実験的に染め始め入社して1年が経ったころに「里山パレット」をスタートすることになった。

WWD:「里山パレット」は完全な草木染めではなく化学染料も用いる「ボタニカルダイ」を採用した。

鈴木:流通させるにはある程度の耐久性が必要だった。「ボタニカルダイ」は従来の草木染めで用いるような重金属を使わない自然由来の糊で色を吸着させる。色落ち防止のための化学染料を用いたハイブリッドな染色法で、文化服装学院時代に染め織りのアドバイスを頂いていた有機化学研究者が在籍する染めの会社が取り組んでいた。

WWD:「里山パレット」はどんな植物を用いているのか。また、染料になるかどうかをどう見極めているのか。

鈴木:畦道にある蓬、梅や桜の剪定をするときに出た枝、収穫が間に合わず落ちてしまったブルーベリーの実、山に自生する香りの良い黒文字(クロモジ)や湿気の多いところに生えるシダ植物など、大森の環境で得られるいろんな植物を使っている。大森らしい植物は何かな?という視点で探している。

色に関してはどの植物も色素を持っているので、例えば枝や幹、渋み味が強い植物はタンニンが多いのでブラウン系かな?とか、ブルーベリーやヨウシュヤマゴボウだったらアントシアニン系が多いかな?と大体の予測は立てながら集めている。

WWD:現在何種類くらいの植物から染料を作っているのか。

鈴木:少しずつ増えていて今は100種類以上ある。植物別にデータ化してシーズンごとに選んでいる。人気なのは明るめではっきりとした色。嬉しいのは10年続けると、「今年の黒文字の色が良かったよ」と徐々に色ではなく植物で見比べてくれる人が増えていること。気に入った形の服で10色そろえてくれる方もいる。

WWD:染料をどのように作り、染めているか。

鈴木:大森で染料となる植物を集めて乾燥か冷凍してストックし、それを「ボタニカルダイ」ができる会社に送り染料にしてもらった後に染工場で染めていただいている。1種類50~60kgストックしているものもあれば、集めにくいものは1kg単位でストックしてキロ単位で出荷している。採集しやすい植物も難しい植物も価格は一律で、どれくらい貴重か(採集が難しいか)などは「里山パレット」のページで紹介している。特に貴重なのは冬頃に集めるサカキやヒサカキの実で、小粒の実を寒い冬に集めなきゃいけないので手が冷たくなるし大変だけど、色がいい。

WWD:今は「里山パレット」の材料収集と営農、「阿部家」の運営に携わる。なぜ3足のわらじを履くことに?

鈴木:大森に移住してきてから田畑が荒れていくのが徐々に目立つようになった。もともと植物や森に興味があり「自然と自分の繋がり」を畑で表現してみたくなった。群言堂のお取引先などのお客さまが大森にいらしたときにスタッフたちが採ってきた山菜やイノシシ肉などでおもてなすることもあり、野菜も自分たちの手で育てたものが提供できればと考えた。また、大森町で畑や田んぼをしている人は少なく、1人くらい農業に注力する人がいると面白いいかな?とも思った。独立を選んだのは農家じゃないと農地が借りられないことに加えて、畑を借りるための資金がなかったから。借金をするために独立した。「群言堂」の仕事も引き続き行うことも決まっていたから独立できた。

実態は「群言堂」で稼いで畑に投資、それでも営農する意味

WWD:荒れた畑を野菜が採れる畑にするのは簡単ではない。今ではニホンミツバチが畑にやってくるまでになった。

鈴木:最初の3年は全く野菜ができず、意味があると思って始めたことだったがしんどかった。「群言堂」の仕事をしながら、もともと田んぼだった場所を畑にするなど土木工事から行っていたからとにかく必死だった。4年目からは人参や葉物野菜が採れるようになり、野菜による売り上げはわずかだったが心が安定した。その頃に「阿部家」に合流して、野菜のおもてなしを始めた。自分たちの手で育てた野菜と卵でつくる朝食は納得感があっていい仕事だと感じている。今は手放しでも野菜の花が咲いて種がこぼれ、新しく芽がでて放っておいても自然環境に任せることができるようになった。

育てた野菜は「阿部家」の朝食をメインに大森町にあるドイツパン屋べッカライコンディトライヒダカや近くのジビエ料理屋さんなど、顔が見える数店舗に卸している。そのほか、近所におすそ分けしたり、野菜のある時期に町の人や滞在されている人、保育園や学童の子どもたちに畑に入ってもらって収穫してもらっている。つい先日も保育園の子どもたちがタケノコ堀りに畑に来て、町の中での立ち位置ができて営農する意味を感じている。

WWD:畑で利益を出すのは難しいと聞く。

鈴木:大規模農家や土壌環境がいい畑以外はほぼ赤字なのではないか。僕は経費をかけずにやっていても営農だけでは赤字で、「『群言堂』で稼いで畑に投資」が実態に近い(笑)。今は投資になっているが、教育など何かをきっかけに活用できる可能性があるとも感じている。また群言堂グループとして「生活観光」を打ち出しているので畑が自分を表現できる場所として確立したい。

WWD:自然農法にこだわっている。

鈴木:森のような畑を作りたくて、農薬や肥料を使っていないので結果的に「自然農法」になった。人が支配的に管理するのではなく、自然環境に近い畑を作りたいと思った。というのも、父親が林業に関わっていたこともあり、家族の話題は森や自然のことが多く興味を持つようになった。中学生の頃に出合った植物生態学者の宮脇明さんの本に「本来の自然(森)というは、いろんな生き物がせめぎ合っている場所である。高木の下に亜高木、低木、下草、そして地面の下にもミミズや様々なバクテリアがいる」とあった。空間の中に色んな生き物がせめぎ合っているのが「自然」だという言葉が強く印象に残った。宮脇さんの植樹方法は本来そこにあったであろう植生を神社の鎮守の森などから導き出して何十種類もの木を混生密植させるもので、僕もそれを参考に60種類くらい科の違う野菜の種を混ぜて、はなさかじいさんのように畑に種をばら撒いて「小さな森のような畑」を作っている。農業というよりもものづくりに近い感覚で、生態系が成立する畑をつくっている。

WWD:結果的に「群言堂」の価値を上げる取り組みになった。

鈴木:経済優先の効率重視した農業ではなく、大森の「暮らし」の延長線上にある畑で採れたものをお客さまへのおもてなしとして提供した点がよかったのではないか。「里山パレット」もそうだが、里山の暮らしから環境に負荷をかけずに少しずついただいていることが「群言堂」らしく結果的に価値を高めることになるのではないか。

WWD:「群言堂らしさ」とは。

鈴木:よそのものに価値を見出してありがたがるのではなく、価値あるものは自分の身近にあると「群言堂」は考えている。僕の領域でいうならこの土地にある植物を活用すること。

WWD:大森町の暮らしについて教えてほしい。

鈴木:よそ者に対して壁がないのが第一印象だった。着いて1週間くらい経った頃、男子寮の前に軽トラを乗り付け「港にアジがあふれているから乗れ、いくぞ」と町の人が声をかけてくれた。

大森町は栄えていた時期はIターンで出来上がった町で、それが大森の気質として残っているのではないか。400人の小さな町で1本道に家が並んでいるので、それぞれの暮らしぶりがなんとなくわかるし、外から来た人でも感じられるところがユニークなところ。

WWD:群言堂で働くことについてどんなところが面白いか。

鈴木:単に出勤してから退勤するまでの関係でなく、そこで働くスタッフも(全員ではないが)大森に暮らしがあり、その家族や子どもたちも大森で生活している。働く場と暮らしの場、子育ての場がつながっているところが面白いと感じる。単に仕事の関係だけではなく、みな町民でもあり消防団や町の役割も持っていて町の機能を担い、助け合っている。仕事とプライベートが曖昧でそれが面白いと思う。夫婦、兄弟、親子で働く人もいて家族の延長の雰囲気がある。

WWD:今後取り組みたいことは?

鈴木:大吉さんが旗振りをしている町のコンソーシアムによって500年祭(2027年は石見銀山発見500年)に向けて山の整備が進んでおり、その際に切られる木を活用したい。町では森に関わる勉強会も行っていて、今年の6月頃から本格的に整備が始まる予定だ。例えば暮らしにつながる製品として「阿部家」の食卓に並べる食器を作るのはどうかと試作品を作っている。半年後に登美さんにプレゼンする予定だ。経済的な循環を生まなくても暮らしに溶け込む循環を生みたい。

The post 「群言堂」の“植物担当” 染料調達・営農・朝食のおもてなし、3足のわらじを履くに至るまで appeared first on WWDJAPAN.

「群言堂」が目指す「地域一体型経営」、衣料品と観光事業から過疎地域を活性化

「石見銀山 群言堂」――島根県大田市大森町を拠点に“根のある暮らし”をコンセプトに衣料品や生活雑貨を手掛ける企業が、過疎地域の再生に一役買っている。「群言堂」は生き方や暮らし方を提案するライフスタイル産業の先駆け的存在でもある。大森町の人口は380人(令和7年3月31日現在)。そのうち小学校児童は24人、保育園児は28人と子どもの数が多く過疎地域としては極めて珍しい。群言堂グループ本社で働く社員は6人がUターン、25人が14の地域からのIターンと若い世代が移住している。同グループは衣料品の製造販売だけではなく、保育園留学や滞在型シェアオフィスを運営しており、中長期滞在者が増えて町の関係人口が増えている。

創業者から子どもへ引き継がれたバトン、「地域一体型経営」を目指して

「群言堂」を手掛ける株式会社石見銀山生活文化研究所は2019年、アパレル・飲食・観光事業を統合した石見銀山群言堂グループを設立し、創業者夫妻が経営を娘婿や娘に引き継いだ。そのときに創業者の一人松場大吉は次の世代に伝えたいこと12ケ条を示した。

一、 里山を離れることなく事業を進める覚悟を持て
二、 業種、業態にしばられるな
三、 改革、チャレンジを恐れるな 勇気こそ力である
四、 常に日常の暮らしに着目せよ
五、 類あって非のない価値を創れ
六、 対峙する人が憧れるスタイルを創れ
七、 常に若者に投票せよ
八、 儲けることは大事だが使い方がもっと大事である
九、 「経済49%、文化50%、崇高な理想1%」のバランスを持て
十、 どんな判断も里山でおこなえ
十一、紡いできた風景と生活文化を相続せよ
十二、根のある暮らしをとことん深く耕せ

同年、「生活観光」をコンセプトにした石見銀山生活観光研究所を設立し、観光業に本格的に乗り出す。町屋や古い建造物を改装し、中長期滞在者向けの宿泊施設や滞在型シェアオフィスをつくり、大成建設や中小企業のDXを支援するスタートアップのスタブロなどの企業を誘致した。

群言堂グループが掲げるのは「地域一体型経営」だ。松場忠社長は「地域を一つの会社のように捉えて地域内の事業者が連携して収益を最大化し、地域全体の発展に繋げる経営モデルだ。観光資源を有効活用し、地域全体の魅力を高めて町の存続を目指す」と意気込む。行政や異業種、町民たちと地域の在り方を探っている。本社のある島根県大田市大森町で「群言堂」の歩みと現在地、描く未来について、松場忠群言堂グループ社長と峰山由紀子石見銀山生活文化研究所所長、創業者の松場登美・群言堂グループ取締役に話を聞いた。

世界遺産でも土地の「暮らし」が残る場所

石見銀山はかつて世界の1/3量の銀を採掘していたとも言われる日本最大の銀山で、お膝元の大森町周辺はピーク時には約20万人が住んでいたという。しかし1923年の閉山後は“取り残された町”となり過疎化が進んだ。他方、開発が入らなかったことで街並みが残り1987年に伝統的建造物群保存地区に指定された。2007年には自然環境に配慮した「自然環境と共存した産業遺跡」であることが評価され世界遺産に登録された。

世界遺産登録後に観光地化が加速して地域の暮らしや生活文化が失われる場所は少なくない。大森町も世界遺産登録時にオーバーツーリズムを経験するが、その時町民たちは住民憲章を制定する。石見銀山遺跡を守り、活かし、未来に引き継ぎたいという願いを示すと同時に自らの暮らしを守るためだ。

住民憲章には「暮らし」という言葉が3回繰り返され、歴史と自然を守りながら大森町での「暮らし」を大事にしたいという住民の総意が示された。経済優先の観光ではなく、大森町ならではの地域づくりを重視した。

大森町に残る「暮らし」は世界に誇る遺産

群言堂グループがこれまで改修した町屋は16軒。「誰かのために景観を作るのではなく、まっとうな生業が行われていればおのずと美しくなる」とは創業者の松場登美取締役の言葉だ。本社やカフェを併設する本店、社員寮、そして武家屋敷を21年かけて修繕した宿泊施設「他郷阿部家」、中長期滞在者向けの宿泊施設など、町屋や建物の状態によって中の構造を残したり、現代風に改修したりと一軒一軒の個性を最大限に生かしている。同グループのシンボルで現在は社員食堂として活用している大きなかやぶき屋根が印象的な建物は1997年に広島県から移築したもの。「引き取り手が見つからないという新聞記事を偶然見つけたのがきっかけだった。今思えば、よくあそこまで多額の借金をして引き取ったなあ」と登美取締役は振り返る。

大森町を拠点に「石見銀山 群言堂」を創業したのは大森町出身の松場大吉と三重県出身の登美夫妻。仕事をつくるためにパッチワークの布小物の販売から始まり、89年に大森町に庄屋屋敷を改修して本店を開いた。

「大森町に戻ったのはバブル全盛期。その価値観の中では取り残された地域だったが、夫の大吉と私はここを選び事業を興した。ビジネスの舵は夫が切り、危機はしょっちゅうだった(笑)」と登美取締役は振り返る。「群言堂」の前進「ブラハウス(BURA HOUSE)」はカントリー調パッチワークの布小物ブランドで、「私たちは石見銀山を愛し、この地に根を下ろしてモノ作りをしたいと考えています」と商品ラベルに書き、広島など近隣地域の百貨店などへ赴き行商した。その「ブラハウス」が徐々に人気を集め、コピー商品が生まれるほどに成長した94年、「町を深く知れば知るほど、カントリー調のものを作る事業がふさわしいのかと考えるようになった。検討を重ねて日本人による日本人のためのものづくりをしようと『石見銀山 群言堂』を立ち上げた。「群言堂は中国人留学生が教えてくれた言葉。仲間が集まっておいしいものを食べお酒を飲みながら語り合う様子を見て『中国ではみんなが目線を一緒にして意見を出し合いながらいい流れをつくっていくことを“群言堂”という』と教えてくれた」。企業理念に造語“復古創新”を掲げた。「ただ古いものを蘇えらせるのではなく過去・現在・未来をつなぎ、未来のために今何をすべきかと暮らしの在り方を考えることを大切にしている」と登美取締役。98年に石見銀山生活文化研究所を設立した。

石見銀山の暮らしを伝える店として百貨店を中心に31店舗出店

群言堂グループの2025年6月期の売上高は25億5000万円を見込む。現在の従業員数は235人。古民家を再生した路面店や百貨店を中心に31店舗を展開し、顧客層のコアは60代後半だ。「石見銀山」を大々的にうたい、地域の暮らしを前面に打ち出し全国各地に31店舗を展開するのは稀有かもしれない。

衣料品は日本の繊維産地の技術力を生かした生地作りから産地と取り組む。近年存続の危機が叫ばれる産地を支えるためにコロナ禍の21年、厚みのある発注に切り替えるために1シーズンの型数を約200型から100~110型に絞った。そのうち20型が定番品だ。

創業者夫妻の娘で石見銀山生活文化研究所の峰山由紀子代表取締役所長は「私たちの強味は大森町という実態があること。大森町の暮らしの中で着たい服を大森町でデザインし、日々目にする景色からこの色が美しいといった感覚を大事にしている。山間にある町ならではの吹き下ろす風や湿度を感じながら正直に服づくりをしている」と語る。大森町の色を取り入れたいと考え、周辺で採取した草花や枝木などから染めた「里山パレット」は人気を集める製品の一つだ。ファッションブランドの多くはブランドとは直接関係のないところにインスピレーションを求め、ある種の夢やフィクションと製品を重ねて提案するところがあるが、「群言堂」は常に大森町の暮らしが中心にある。どちらがいいではなく、町に根差したものづくりが「群言堂」の独自性といえる。

大森町の工房を拡大、中長期滞在者を誘致

「群言堂」は20年からお直し・リメイクサービス「お気に入り相談室」に取り組む。この春、事業を拡大する。「中長期滞在と工房は相性がいい。お直しから仕立てまで相談のために町を訪れることができるよう工房を拡大する」と由紀子所長。現在、「お気に入り相談室」は舞台衣装を手掛けた経験を持つスタッフが全国の顧客の要望に応えているが、専門スタッフを増やして需要の広がりとともに体制を整える予定だ。「ものづくりの現場を大森町に持ちたい。創業期は内職さんを集めて大森で生産しており、本店の半分は工場だった。サプライチェーン構築や人を抱える難しさから大森での生産を断念したが、社会が変わってきているので、大森に工房を再び整えることはブランドとしてあるべき姿なのではないか」と由紀子所長。

ポイントを貯めると登美さんが手掛けた「他郷阿部家」で登美取締役と食事

21年かけて改装した築230年の武家屋敷「暮らす宿 他郷阿部家」は登美取締役の「捨てない暮らし」のアイデアが詰まった場所だ。飾りガラスをパッチワークした戸や和紙を張り合わせた障子、古材を活用した柱や廃校になった小学校のパイプ椅子など。「昔の日本の暮らしは廃材すら捨てず再利用していた。それはとても美しいこと。できるだけごみを出さないことを難しく考えるのではなくて楽しむことを伝えたい」と登美取締役。

「群言堂」には画期的なポイント制度がある。ポイントを貯めると登美取締役が10年間住みながら理想の暮らしの場をつくった「他郷阿部家」に宿泊できる。1日2組限定で、宿泊者は夕食を登美取締役とともにして会話を楽しむ。全国各地から顧客を大森町に招き、「群言堂」が大切にする暮らしを体験できる仕組みが秀逸で、08年にはじまりこれまでのべ1万1900人が宿泊した(一般客の宿泊は1組2人からで1人あたり4万4000円~)。登美取締役は「阿部家」とは「群言堂」にとって暮らしの豊かさや日本の美意識を伝える場だという。「ビジネスを通じて世の中にメッセージを伝えたいと思いながら活動してきた。この暮らしはどうですか?と提案したのが『阿部家』で、実際に感じてもらう場所をつくることが重要だった」。

「阿部家」は訪れた人にとって生活や暮らしを見つめ直すための機会になるだけでなく、群言堂グループが大森町で積み上げてきたことを顧客に見てもらう機会になり、コミュニティーづくりの場になっている。その結果、大森町の関係人口増加に一役買っている。

暮らしを体感する「生活観光」を事業に

石見銀山群言堂グループは「地域一体型経営」を掲げて町にも投資する。娘婿の松場忠社長は「投資額の売上高に対する割合などを決めているわけではないが、地域への投資は大事だと考えている。国や県、市からの補助金を活用しながら持続可能な地域づくりのためにいろいろなことに取り組んでいる」と語る。現在、観光業に力を入れるが経済合理性を優先しない。「観光産業は文化を守るためにあるはずなのに産業モデルによって文化を壊していることも多い。私たちはこの町の暮らしや生き方を感じていただきたいと思っている。町人と他愛のない会話を楽しむような、かつての日本に当たり前にあった豊かな交流がここにはある」と話す。

「地域にとって重要なのはその土地に思いを持つ企業や個人が増えること。大森町の今があるのは当社だけでなく、大森町をなんとかしたいという同じ想いを持った(義肢・装具・人工乳房などの医療器具を扱う)中村グレイスもあったから。人口減少社会が進めば進むほど支えなければいけない割合は増える。そうなったときに町を支える企業は多い方がいいし、対応できる枠組みを作っておく必要がある」。今後は中長期滞在者を増やすための取り組みを強化する。引き続き保育園留学や地域おこし協力隊インターンプログラムを活用した二地域居住推進事業「遊ぶ広報」、大企業との連携を進めていく予定だ。「全ては町の共感者を増やすため。応援者が増え、この地域で新事業を始める企業が増えることを期待している」。

大田市のサポートを受けて24年に開業した滞在型シェアオフィスは、専用個室が3室とフリーアドレスの大部屋を用意していて、運営は順調だ。「私たちの考え方に共感してくれる人たちとのマッチングを重視して誘致している」と忠社長。現在、中小企業のDXを支援する企業や抹茶などを輸出する商社を誘致しており、大成建設とはメタバース事業を協働している。「地域を守っていくためには特定の強い存在だけではなく、多様な企業や団体、個人との連携が重要だ。滞在型シェアオフィスもそのための拠点として活用していく」。

これからの地域づくりは民間主導、ガバナンスが重要に

「地域づくり=行政だったのが、民間の役割が大きくなり民間主導でやらなければいけない時代になっている。大切なのは民間が暴走し過ぎないようにカバナンスを効かせることと、外部資本と組むときは経済的利益だけを目的にしている企業ではなく、地域を一緒に作っていくという意識を共有できるところを選ぶことが大切だ」と忠社長。群言堂グループは文化庁や観光庁、大田市や島根県からの助成金を元に新たな活動を興すことも多い。例えば、キッテ大阪の店舗は島根県、滞在型シェアオフィスは大田市、二地域居住の推進は日本郵政や国土交通省とともに取り組む。「国の政策を理解し、自分たちの強味を生かして地域を盛り上げることが大切だ。事業化するときに大切にしているのは地域に足りないものを補完できるか、そして地域にとってプラスになるかだ。『阿部家』のように補完的な役割を担う事業もある」。オーバーツーリズムの経験が丁寧なまちづくりに生かされている。

群言堂グループの事業と直接関係ないが、創業者の娘で忠社長の妻である奈緒子さんは、地域の子育て支援の必要性を感じ、保育園と学童を運営する社会福祉法人の理事を務める。もともとあった保育園の運営団体がNPO法人から社会福祉法人に変わるタイミングで奈緒子さんが関わるようになった。「町の福祉を考えた時に子どもたちの居場所を優先して作ることが大切だと考えた。その結果子育てがしやすい環境を求めて移住してきた人も増えている。他方、住宅の供給が追い付いていない。現在の課題はすぐに居住できる住宅がないことだ」と忠社長。

構造自体を変える必要がある事柄は行政と連携

群言堂グループは行政とも積極的に連携する。「構造を変えないとうまくいかないことも多い。まず思いや考えを伝えて計画書にする。短期的、中長期的な構想を描き、構造を変えるための実証事業を行いながら改善を進めていく。行政の力による構造変化は丁寧に進めることが大切だ」。例えば、大森町の観光施設の運営を集約し、共通券を発行することで両方の施設に足を運んでもらえるようにするなどだ。運営団体が市であれば条例の改訂も必要になる。

持続可能な町づくりに一役買っているのが創業者の大吉さんだ。大吉さんは群言堂の経営から退いた後に、若い世代とまちの防災・教育・福祉・観光に取り組む地域運営組織「一般社団法人石見銀山みらいコンソーシアム」と地域限定の協同組合型人材派遣業「石見銀山大田ひと・まちづくり事業協同組合」を創設し、地域の在り方を日々検討しているという。

当面の人口目標は500人だ。「大森町には五百羅漢というお地蔵様があって、その中に必ず自分に似た顔があると言われている。500は一つのコミュニティーの目安になると思っている。急速な増加ではなく緩やかに増えていくことが理想」と忠社長。町の将来像については「これまでの500年は銀という資源による発展の歴史だった。これからの500年は小さくても幸せに生きていける社会を作ることが目標で、生き方やライフスタイルを世界に広める町にしたいと考えている」。

The post 「群言堂」が目指す「地域一体型経営」、衣料品と観光事業から過疎地域を活性化 appeared first on WWDJAPAN.

「群言堂」が目指す「地域一体型経営」、衣料品と観光事業から過疎地域を活性化

「石見銀山 群言堂」――島根県大田市大森町を拠点に“根のある暮らし”をコンセプトに衣料品や生活雑貨を手掛ける企業が、過疎地域の再生に一役買っている。「群言堂」は生き方や暮らし方を提案するライフスタイル産業の先駆け的存在でもある。大森町の人口は380人(令和7年3月31日現在)。そのうち小学校児童は24人、保育園児は28人と子どもの数が多く過疎地域としては極めて珍しい。群言堂グループ本社で働く社員は6人がUターン、25人が14の地域からのIターンと若い世代が移住している。同グループは衣料品の製造販売だけではなく、保育園留学や滞在型シェアオフィスを運営しており、中長期滞在者が増えて町の関係人口が増えている。

創業者から子どもへ引き継がれたバトン、「地域一体型経営」を目指して

「群言堂」を手掛ける株式会社石見銀山生活文化研究所は2019年、アパレル・飲食・観光事業を統合した石見銀山群言堂グループを設立し、創業者夫妻が経営を娘婿や娘に引き継いだ。そのときに創業者の一人松場大吉は次の世代に伝えたいこと12ケ条を示した。

一、 里山を離れることなく事業を進める覚悟を持て
二、 業種、業態にしばられるな
三、 改革、チャレンジを恐れるな 勇気こそ力である
四、 常に日常の暮らしに着目せよ
五、 類あって非のない価値を創れ
六、 対峙する人が憧れるスタイルを創れ
七、 常に若者に投票せよ
八、 儲けることは大事だが使い方がもっと大事である
九、 「経済49%、文化50%、崇高な理想1%」のバランスを持て
十、 どんな判断も里山でおこなえ
十一、紡いできた風景と生活文化を相続せよ
十二、根のある暮らしをとことん深く耕せ

同年、「生活観光」をコンセプトにした石見銀山生活観光研究所を設立し、観光業に本格的に乗り出す。町屋や古い建造物を改装し、中長期滞在者向けの宿泊施設や滞在型シェアオフィスをつくり、大成建設や中小企業のDXを支援するスタートアップのスタブロなどの企業を誘致した。

群言堂グループが掲げるのは「地域一体型経営」だ。松場忠社長は「地域を一つの会社のように捉えて地域内の事業者が連携して収益を最大化し、地域全体の発展に繋げる経営モデルだ。観光資源を有効活用し、地域全体の魅力を高めて町の存続を目指す」と意気込む。行政や異業種、町民たちと地域の在り方を探っている。本社のある島根県大田市大森町で「群言堂」の歩みと現在地、描く未来について、松場忠群言堂グループ社長と峰山由紀子石見銀山生活文化研究所所長、創業者の松場登美・群言堂グループ取締役に話を聞いた。

世界遺産でも土地の「暮らし」が残る場所

石見銀山はかつて世界の1/3量の銀を採掘していたとも言われる日本最大の銀山で、お膝元の大森町周辺はピーク時には約20万人が住んでいたという。しかし1923年の閉山後は“取り残された町”となり過疎化が進んだ。他方、開発が入らなかったことで街並みが残り1987年に伝統的建造物群保存地区に指定された。2007年には自然環境に配慮した「自然環境と共存した産業遺跡」であることが評価され世界遺産に登録された。

世界遺産登録後に観光地化が加速して地域の暮らしや生活文化が失われる場所は少なくない。大森町も世界遺産登録時にオーバーツーリズムを経験するが、その時町民たちは住民憲章を制定する。石見銀山遺跡を守り、活かし、未来に引き継ぎたいという願いを示すと同時に自らの暮らしを守るためだ。

住民憲章には「暮らし」という言葉が3回繰り返され、歴史と自然を守りながら大森町での「暮らし」を大事にしたいという住民の総意が示された。経済優先の観光ではなく、大森町ならではの地域づくりを重視した。

大森町に残る「暮らし」は世界に誇る遺産

群言堂グループがこれまで改修した町屋は16軒。「誰かのために景観を作るのではなく、まっとうな生業が行われていればおのずと美しくなる」とは創業者の松場登美取締役の言葉だ。本社やカフェを併設する本店、社員寮、そして武家屋敷を21年かけて修繕した宿泊施設「他郷阿部家」、中長期滞在者向けの宿泊施設など、町屋や建物の状態によって中の構造を残したり、現代風に改修したりと一軒一軒の個性を最大限に生かしている。同グループのシンボルで現在は社員食堂として活用している大きなかやぶき屋根が印象的な建物は1997年に広島県から移築したもの。「引き取り手が見つからないという新聞記事を偶然見つけたのがきっかけだった。今思えば、よくあそこまで多額の借金をして引き取ったなあ」と登美取締役は振り返る。

大森町を拠点に「石見銀山 群言堂」を創業したのは大森町出身の松場大吉と三重県出身の登美夫妻。仕事をつくるためにパッチワークの布小物の販売から始まり、89年に大森町に庄屋屋敷を改修して本店を開いた。

「大森町に戻ったのはバブル全盛期。その価値観の中では取り残された地域だったが、夫の大吉と私はここを選び事業を興した。ビジネスの舵は夫が切り、危機はしょっちゅうだった(笑)」と登美取締役は振り返る。「群言堂」の前進「ブラハウス(BURA HOUSE)」はカントリー調パッチワークの布小物ブランドで、「私たちは石見銀山を愛し、この地に根を下ろしてモノ作りをしたいと考えています」と商品ラベルに書き、広島など近隣地域の百貨店などへ赴き行商した。その「ブラハウス」が徐々に人気を集め、コピー商品が生まれるほどに成長した94年、「町を深く知れば知るほど、カントリー調のものを作る事業がふさわしいのかと考えるようになった。検討を重ねて日本人による日本人のためのものづくりをしようと『石見銀山 群言堂』を立ち上げた。「群言堂は中国人留学生が教えてくれた言葉。仲間が集まっておいしいものを食べお酒を飲みながら語り合う様子を見て『中国ではみんなが目線を一緒にして意見を出し合いながらいい流れをつくっていくことを“群言堂”という』と教えてくれた」。企業理念に造語“復古創新”を掲げた。「ただ古いものを蘇えらせるのではなく過去・現在・未来をつなぎ、未来のために今何をすべきかと暮らしの在り方を考えることを大切にしている」と登美取締役。98年に石見銀山生活文化研究所を設立した。

石見銀山の暮らしを伝える店として百貨店を中心に31店舗出店

群言堂グループの2025年6月期の売上高は25億5000万円を見込む。現在の従業員数は235人。古民家を再生した路面店や百貨店を中心に31店舗を展開し、顧客層のコアは60代後半だ。「石見銀山」を大々的にうたい、地域の暮らしを前面に打ち出し全国各地に31店舗を展開するのは稀有かもしれない。

衣料品は日本の繊維産地の技術力を生かした生地作りから産地と取り組む。近年存続の危機が叫ばれる産地を支えるためにコロナ禍の21年、厚みのある発注に切り替えるために1シーズンの型数を約200型から100~110型に絞った。そのうち20型が定番品だ。

創業者夫妻の娘で石見銀山生活文化研究所の峰山由紀子代表取締役所長は「私たちの強味は大森町という実態があること。大森町の暮らしの中で着たい服を大森町でデザインし、日々目にする景色からこの色が美しいといった感覚を大事にしている。山間にある町ならではの吹き下ろす風や湿度を感じながら正直に服づくりをしている」と語る。大森町の色を取り入れたいと考え、周辺で採取した草花や枝木などから染めた「里山パレット」は人気を集める製品の一つだ。ファッションブランドの多くはブランドとは直接関係のないところにインスピレーションを求め、ある種の夢やフィクションと製品を重ねて提案するところがあるが、「群言堂」は常に大森町の暮らしが中心にある。どちらがいいではなく、町に根差したものづくりが「群言堂」の独自性といえる。

大森町の工房を拡大、中長期滞在者を誘致

「群言堂」は20年からお直し・リメイクサービス「お気に入り相談室」に取り組む。この春、事業を拡大する。「中長期滞在と工房は相性がいい。お直しから仕立てまで相談のために町を訪れることができるよう工房を拡大する」と由紀子所長。現在、「お気に入り相談室」は舞台衣装を手掛けた経験を持つスタッフが全国の顧客の要望に応えているが、専門スタッフを増やして需要の広がりとともに体制を整える予定だ。「ものづくりの現場を大森町に持ちたい。創業期は内職さんを集めて大森で生産しており、本店の半分は工場だった。サプライチェーン構築や人を抱える難しさから大森での生産を断念したが、社会が変わってきているので、大森に工房を再び整えることはブランドとしてあるべき姿なのではないか」と由紀子所長。

ポイントを貯めると登美さんが手掛けた「他郷阿部家」で登美取締役と食事

21年かけて改装した築230年の武家屋敷「暮らす宿 他郷阿部家」は登美取締役の「捨てない暮らし」のアイデアが詰まった場所だ。飾りガラスをパッチワークした戸や和紙を張り合わせた障子、古材を活用した柱や廃校になった小学校のパイプ椅子など。「昔の日本の暮らしは廃材すら捨てず再利用していた。それはとても美しいこと。できるだけごみを出さないことを難しく考えるのではなくて楽しむことを伝えたい」と登美取締役。

「群言堂」には画期的なポイント制度がある。ポイントを貯めると登美取締役が10年間住みながら理想の暮らしの場をつくった「他郷阿部家」に宿泊できる。1日2組限定で、宿泊者は夕食を登美取締役とともにして会話を楽しむ。全国各地から顧客を大森町に招き、「群言堂」が大切にする暮らしを体験できる仕組みが秀逸で、08年にはじまりこれまでのべ1万1900人が宿泊した(一般客の宿泊は1組2人からで1人あたり4万4000円~)。登美取締役は「阿部家」とは「群言堂」にとって暮らしの豊かさや日本の美意識を伝える場だという。「ビジネスを通じて世の中にメッセージを伝えたいと思いながら活動してきた。この暮らしはどうですか?と提案したのが『阿部家』で、実際に感じてもらう場所をつくることが重要だった」。

「阿部家」は訪れた人にとって生活や暮らしを見つめ直すための機会になるだけでなく、群言堂グループが大森町で積み上げてきたことを顧客に見てもらう機会になり、コミュニティーづくりの場になっている。その結果、大森町の関係人口増加に一役買っている。

暮らしを体感する「生活観光」を事業に

石見銀山群言堂グループは「地域一体型経営」を掲げて町にも投資する。娘婿の松場忠社長は「投資額の売上高に対する割合などを決めているわけではないが、地域への投資は大事だと考えている。国や県、市からの補助金を活用しながら持続可能な地域づくりのためにいろいろなことに取り組んでいる」と語る。現在、観光業に力を入れるが経済合理性を優先しない。「観光産業は文化を守るためにあるはずなのに産業モデルによって文化を壊していることも多い。私たちはこの町の暮らしや生き方を感じていただきたいと思っている。町人と他愛のない会話を楽しむような、かつての日本に当たり前にあった豊かな交流がここにはある」と話す。

「地域にとって重要なのはその土地に思いを持つ企業や個人が増えること。大森町の今があるのは当社だけでなく、大森町をなんとかしたいという同じ想いを持った(義肢・装具・人工乳房などの医療器具を扱う)中村グレイスもあったから。人口減少社会が進めば進むほど支えなければいけない割合は増える。そうなったときに町を支える企業は多い方がいいし、対応できる枠組みを作っておく必要がある」。今後は中長期滞在者を増やすための取り組みを強化する。引き続き保育園留学や地域おこし協力隊インターンプログラムを活用した二地域居住推進事業「遊ぶ広報」、大企業との連携を進めていく予定だ。「全ては町の共感者を増やすため。応援者が増え、この地域で新事業を始める企業が増えることを期待している」。

大田市のサポートを受けて24年に開業した滞在型シェアオフィスは、専用個室が3室とフリーアドレスの大部屋を用意していて、運営は順調だ。「私たちの考え方に共感してくれる人たちとのマッチングを重視して誘致している」と忠社長。現在、中小企業のDXを支援する企業や抹茶などを輸出する商社を誘致しており、大成建設とはメタバース事業を協働している。「地域を守っていくためには特定の強い存在だけではなく、多様な企業や団体、個人との連携が重要だ。滞在型シェアオフィスもそのための拠点として活用していく」。

これからの地域づくりは民間主導、ガバナンスが重要に

「地域づくり=行政だったのが、民間の役割が大きくなり民間主導でやらなければいけない時代になっている。大切なのは民間が暴走し過ぎないようにカバナンスを効かせることと、外部資本と組むときは経済的利益だけを目的にしている企業ではなく、地域を一緒に作っていくという意識を共有できるところを選ぶことが大切だ」と忠社長。群言堂グループは文化庁や観光庁、大田市や島根県からの助成金を元に新たな活動を興すことも多い。例えば、キッテ大阪の店舗は島根県、滞在型シェアオフィスは大田市、二地域居住の推進は日本郵政や国土交通省とともに取り組む。「国の政策を理解し、自分たちの強味を生かして地域を盛り上げることが大切だ。事業化するときに大切にしているのは地域に足りないものを補完できるか、そして地域にとってプラスになるかだ。『阿部家』のように補完的な役割を担う事業もある」。オーバーツーリズムの経験が丁寧なまちづくりに生かされている。

群言堂グループの事業と直接関係ないが、創業者の娘で忠社長の妻である奈緒子さんは、地域の子育て支援の必要性を感じ、保育園と学童を運営する社会福祉法人の理事を務める。もともとあった保育園の運営団体がNPO法人から社会福祉法人に変わるタイミングで奈緒子さんが関わるようになった。「町の福祉を考えた時に子どもたちの居場所を優先して作ることが大切だと考えた。その結果子育てがしやすい環境を求めて移住してきた人も増えている。他方、住宅の供給が追い付いていない。現在の課題はすぐに居住できる住宅がないことだ」と忠社長。

構造自体を変える必要がある事柄は行政と連携

群言堂グループは行政とも積極的に連携する。「構造を変えないとうまくいかないことも多い。まず思いや考えを伝えて計画書にする。短期的、中長期的な構想を描き、構造を変えるための実証事業を行いながら改善を進めていく。行政の力による構造変化は丁寧に進めることが大切だ」。例えば、大森町の観光施設の運営を集約し、共通券を発行することで両方の施設に足を運んでもらえるようにするなどだ。運営団体が市であれば条例の改訂も必要になる。

持続可能な町づくりに一役買っているのが創業者の大吉さんだ。大吉さんは群言堂の経営から退いた後に、若い世代とまちの防災・教育・福祉・観光に取り組む地域運営組織「一般社団法人石見銀山みらいコンソーシアム」と地域限定の協同組合型人材派遣業「石見銀山大田ひと・まちづくり事業協同組合」を創設し、地域の在り方を日々検討しているという。

当面の人口目標は500人だ。「大森町には五百羅漢というお地蔵様があって、その中に必ず自分に似た顔があると言われている。500は一つのコミュニティーの目安になると思っている。急速な増加ではなく緩やかに増えていくことが理想」と忠社長。町の将来像については「これまでの500年は銀という資源による発展の歴史だった。これからの500年は小さくても幸せに生きていける社会を作ることが目標で、生き方やライフスタイルを世界に広める町にしたいと考えている」。

The post 「群言堂」が目指す「地域一体型経営」、衣料品と観光事業から過疎地域を活性化 appeared first on WWDJAPAN.

オンワード社員の“副業アップサイクル”第2弾はシャツ 「予想外の発見が業務に生きる」

オンワードホールディングスは、着なくなった衣料品から制作したアップサイクル製品の第2弾を発売した。同社社員15人が制作した95点はすべて1点物で、オンラインで4月7日から、「オンワード・リユースパーク 吉祥寺」で4月25日から販売する。

オンワードグループは、2009年から自社の衣料品を引き取る「オンワード・グリーン・キャンペーン」を行っており、19年間で累計約170万人から約884万点の衣料品を引き取った。それらは毛布や軍手、固形燃料に活用してきたが、新たな活用方法として昨年から「アップサイクル・アクション」をスタート。社員が副業として参加し、制作した作品は、自らで価格設定を行い、収益の90%を制作者に還元。残りの10%は、日本赤十字社への寄付している。

アウトレット部門や管理部門など日頃モノづくりに関わっていない社員も参加し、素材の選定からデザイン、縫製までを担当した。前回はデニムを使用したが、特殊ミシンが必要だったため難易度が高かったこともあり、今回は扱いやすいシャツを素材に選び、自宅や会社のミシンで自由に制作できるよう配慮された。制作は業務時間外に行う。期間は参加者の声を反映し、7月から翌年2月末までの7ヶ月間に延長された。

同プロジェクトは単体で収益につながる規模になっていないが、社内におけるサステナビリティへの関心の高まりや、日ごろの仕事の発想の転換など、目に見えない成果が出ているようだ。参加者のひとり、森本朱理さん(写真)はオンワード樫山のプロダクトグループ生産技術Div.レディス技術第二Sec.でパタンナーとして服作りに携わっている。「自由にものづくりができる機会は普段なかなかないが、このプロジェクトでは自分の好きなようにデザインし、制作できたのが楽しかった」と語る森本さん。最終的な販売においては、制作者名を明示することはないが、自身が制作したアイテムが実際に売り上げにつながることで、達成感を得たという。作品制作では日ごろ行っている「パターンを引く」工程を省き、布を自由に組み合わせる手法が多く用いた。例えば、シャツ3枚を解体し、それぞれの袖やカフスを使ってスカートを制作するなど、素材の新たな可能性を引き出している。「パターンに縛られないことで、新しい形が生まれたり、予想外の発見があったり。これらの経験は通常のパターン業務にも生かせる」と言う。

すべての工程を自分で行い、その上で販売価格を決定する。2回目の参加である森本さんの今回のもうひとつの目標は「もっと売れること」。「前回は自身の好みに偏ったデザインで売り上げに結びつかなかった反省を踏まえ、多くの人に届くよう意識した。たとえば誰でも着られるようにウエストをゴム仕様にするなど工夫を凝らした」と語る。「参加を通して、環境問題やサステナブルな取り組みに自然と関心が向くようになった。もっと多くの人にアップサイクルの魅力が伝わるようになれば古着のマーケットがすでに成立し、人気であるように、アップサイクルもひとつのマーケットとして広がるのでは?そうあってほしい」と熱く語る姿が印象的だった。

The post オンワード社員の“副業アップサイクル”第2弾はシャツ 「予想外の発見が業務に生きる」 appeared first on WWDJAPAN.

アシックスが財団設立、スポーツを通し社会課題に取り組み 障がい者や青少年、女性を支援

アシックスは4月1日、一般財団法人ASICS Foundation(アシックスファウンデーション以下、財団)を設立した。「当社は『健全な身体に健全な精神があれかし』を創業哲学としている。世界にはまだまだスポーツに触れる機会が少ない人が多く存在している。財団ではそうした社会課題に向き合い、特に⻘少年、障がいのある方、女性を中心にスポーツの機会を提供し、スポーツを通じた社会貢献を推進していく。同時に、企業としての価値向上にもつなげる」と、廣田康人アシックス会長CEO。

財団に割り当てられた自社株からの配当を原資に、「社会的または経済的に困難な状況にある青少年、障がい者、女性などに対する運動・スポーツを通した支援を提供する団体への助成」(発表資料から)を行う。まずは日本や、アシックスの事業所・生産拠点がある国・地域(インド、インドネシア、ベトナム)での取り組みを予定する。

日本では障がい者と青少年、インドでは青少年と女性、インドネシア、ベトナムでは青少年にフォーカスする。スポーツ用具の提供やグラウンド整備などのハード面だけでなく、スポーツ教育、指導者教育、スポーツを通したロールモデルの育成など、ソフト面でも環境整備を進める。

財団理事長には、甲田知子アシックス常務執行役員が就任。評議員には元マラソンランナーでスポーツジャーナリストの増田明美氏、作家の岸田奈美氏ら、理事には元プロ卓球選手の石川佳純氏、元パラ水泳選手の一ノ瀬メイ氏らが就いた。石川理事は「財団の活動を通し、誰もがスポーツに触れられるきっかけを作り、スポーツを通じた学びや人生を豊かに感じられる瞬間を届けていきたい」とコメント。一ノ瀬理事は「(パラアスリートとして)現役時代は競技に専念できる環境を整えるのに障壁を感じた。日本の障がい者スポーツの一番の課題は、健常者、障がい者が完全に分けられていること。財団の活動を通し、あらゆる人のスポーツへの障壁を減らしていきたい」と語った。

評議員、理事で話し合い、3月に助成対象団体のガイドラインを策定した。5月から助成対象団体の公募を開始し、7、8月に視察訪問も含め助成対象を決定、10月に助成を開始する。初年度は8団体への助成を想定しており(日本では1〜2団体)、まずは1団体につき最長3年間の助成を予定する。5年間で、30団体前後を助成していく。

【INTERVIEW】
「事業活動と財団の両輪が必要」
甲田知子/ASICS Foundation理事長兼アシックス常務執行役員

アシックスは創業哲学にもある通り、誰もが一生涯、スポーツや運動を通して心身が満たされる世界の実現をビジョンとして掲げている。近年は(業績好調で)事業活動がうまくまわり始めているが、その中でわれわれのプロダクト、サービスが届きづらくなっている部分もある。例えば、高価格帯製品を増やしていることで、(途上国の弱い立場の人々などに)製品が届きづらいといったことだ。われわれの創業哲学やビジョンを実現していくためには、事業活動と財団の活動の両輪が重要だ。

社会貢献活動が事業活動にどんな影響をもたらすのかと聞かれることは多いが、財団の活動を積極的に行っていくことで、長期視点で「アシックス」のブランド価値向上につながると考えている。インドネシア、インド、ベトナムはここからスポーツ市場の拡大が見込めるエリアだ。また、個人的にはここが最も重要だと考えているが、財団の活動が、社員のエンゲージメント向上にもつながる。アシックスの社員は、やはりすごくスポーツが好きで、鬼塚喜八郎の創業哲学に感銘を受けている人が多い。若い世代になればなるほど、社会課題に取り組んでいる企業で働きたいという意識も強い。財団活動はまさに創業哲学の実現であり、社員のエンゲージメントが上がればパフォーマンスも上がり、結果的に企業価値も上がる。

日本では、まずは障がい者のスポーツ参画のハードルを下げるために活動している団体を助成していく。日本は障がい者スポーツの指導者も少ないし、障がい者を受け入れるスポーツの場も非常に限られている。そうした障壁をなくすために地道に活動しているNPOなどを助成したい。

The post アシックスが財団設立、スポーツを通し社会課題に取り組み 障がい者や青少年、女性を支援 appeared first on WWDJAPAN.

アシックスが財団設立、スポーツを通し社会課題に取り組み 障がい者や青少年、女性を支援

アシックスは4月1日、一般財団法人ASICS Foundation(アシックスファウンデーション以下、財団)を設立した。「当社は『健全な身体に健全な精神があれかし』を創業哲学としている。世界にはまだまだスポーツに触れる機会が少ない人が多く存在している。財団ではそうした社会課題に向き合い、特に⻘少年、障がいのある方、女性を中心にスポーツの機会を提供し、スポーツを通じた社会貢献を推進していく。同時に、企業としての価値向上にもつなげる」と、廣田康人アシックス会長CEO。

財団に割り当てられた自社株からの配当を原資に、「社会的または経済的に困難な状況にある青少年、障がい者、女性などに対する運動・スポーツを通した支援を提供する団体への助成」(発表資料から)を行う。まずは日本や、アシックスの事業所・生産拠点がある国・地域(インド、インドネシア、ベトナム)での取り組みを予定する。

日本では障がい者と青少年、インドでは青少年と女性、インドネシア、ベトナムでは青少年にフォーカスする。スポーツ用具の提供やグラウンド整備などのハード面だけでなく、スポーツ教育、指導者教育、スポーツを通したロールモデルの育成など、ソフト面でも環境整備を進める。

財団理事長には、甲田知子アシックス常務執行役員が就任。評議員には元マラソンランナーでスポーツジャーナリストの増田明美氏、作家の岸田奈美氏ら、理事には元プロ卓球選手の石川佳純氏、元パラ水泳選手の一ノ瀬メイ氏らが就いた。石川理事は「財団の活動を通し、誰もがスポーツに触れられるきっかけを作り、スポーツを通じた学びや人生を豊かに感じられる瞬間を届けていきたい」とコメント。一ノ瀬理事は「(パラアスリートとして)現役時代は競技に専念できる環境を整えるのに障壁を感じた。日本の障がい者スポーツの一番の課題は、健常者、障がい者が完全に分けられていること。財団の活動を通し、あらゆる人のスポーツへの障壁を減らしていきたい」と語った。

評議員、理事で話し合い、3月に助成対象団体のガイドラインを策定した。5月から助成対象団体の公募を開始し、7、8月に視察訪問も含め助成対象を決定、10月に助成を開始する。初年度は8団体への助成を想定しており(日本では1〜2団体)、まずは1団体につき最長3年間の助成を予定する。5年間で、30団体前後を助成していく。

【INTERVIEW】
「事業活動と財団の両輪が必要」
甲田知子/ASICS Foundation理事長兼アシックス常務執行役員

アシックスは創業哲学にもある通り、誰もが一生涯、スポーツや運動を通して心身が満たされる世界の実現をビジョンとして掲げている。近年は(業績好調で)事業活動がうまくまわり始めているが、その中でわれわれのプロダクト、サービスが届きづらくなっている部分もある。例えば、高価格帯製品を増やしていることで、(途上国の弱い立場の人々などに)製品が届きづらいといったことだ。われわれの創業哲学やビジョンを実現していくためには、事業活動と財団の活動の両輪が重要だ。

社会貢献活動が事業活動にどんな影響をもたらすのかと聞かれることは多いが、財団の活動を積極的に行っていくことで、長期視点で「アシックス」のブランド価値向上につながると考えている。インドネシア、インド、ベトナムはここからスポーツ市場の拡大が見込めるエリアだ。また、個人的にはここが最も重要だと考えているが、財団の活動が、社員のエンゲージメント向上にもつながる。アシックスの社員は、やはりすごくスポーツが好きで、鬼塚喜八郎の創業哲学に感銘を受けている人が多い。若い世代になればなるほど、社会課題に取り組んでいる企業で働きたいという意識も強い。財団活動はまさに創業哲学の実現であり、社員のエンゲージメントが上がればパフォーマンスも上がり、結果的に企業価値も上がる。

日本では、まずは障がい者のスポーツ参画のハードルを下げるために活動している団体を助成していく。日本は障がい者スポーツの指導者も少ないし、障がい者を受け入れるスポーツの場も非常に限られている。そうした障壁をなくすために地道に活動しているNPOなどを助成したい。

The post アシックスが財団設立、スポーツを通し社会課題に取り組み 障がい者や青少年、女性を支援 appeared first on WWDJAPAN.

カイハラが「バイオインディゴ」で染めたデニム 4月から量産開始

デニム大手のカイハラは4月から、バイオマス原料から製造した新しいインディゴ染料「バイオブルー(BIO BLUE)を使ったデニムの生産を開始した。染料は住友化学が開発しており、再生可能なバイオマスを原料に、微生物発酵を通じて生産する。カイハラは住友化学と共同で100%使いから、従来の石油由来の合成インディゴ染料との併用までの検証を重ね、従来品と遜色のない量産技術を確立した。稲垣博章・執行役員営業本部長は「バイオインディゴは従来品に比べ3〜3.5倍の価格になるため、10%のみを使うといった併用を考えている。もちろん取引先の希望があれば100%使いにも対応できる」という。まずは日本で生産し、染料のコストダウンや発注量によってはタイ生産も視野にいれる。

住友化学は2023年に、合成生物学を応用し人工タンパク質原料の研究開発と設計を手掛ける米国のギンコバイオワークス(GINKGO BIOWORKS)と提携していた。「バイオブルー」染料は微生物の発酵を利用して生産するため、従来の合成インディゴ染料に比べて環境負荷を大幅に削減できるという。

カイハラはすでに合成インディゴとの併用での量産技術を確立しており、まずはバイオインディゴ10%を配合し、広島県福山市の本社工場でのデニム糸の染色を行う。「今後は『バイオブルー』の供給体制の拡大やコストダウンを見ながら、使用比率を段階的に引き上げていく」(稲垣執行役員)考え。

4月13日に開幕する大阪・関西万博のパビリオン「住友館」でも、「バイオブルー」で染色したデニム生地を使ったバッグなど3本目を出品する。

The post カイハラが「バイオインディゴ」で染めたデニム 4月から量産開始 appeared first on WWDJAPAN.

ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は注目のスタートアップ企業、ファーメンステーションの酒井里奈代表取締役をゲストにお迎えしました。ファーメンステーションは、食品廃棄物のような未利用資源を発酵技術を用いて再資源化するノウハウを持っています。先日「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などの親会社であるケリング(KERING)が日本で初開催したスタートアップ企業のアワード「ケリング・ジェネレーション・アワード(KERING GENERATION AWARD)」で最優秀賞を受賞。ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは何か、起業までのストーリー、今後にかける思いなどを酒井さんに聞きました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】 appeared first on WWDJAPAN.

ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は注目のスタートアップ企業、ファーメンステーションの酒井里奈代表取締役をゲストにお迎えしました。ファーメンステーションは、食品廃棄物のような未利用資源を発酵技術を用いて再資源化するノウハウを持っています。先日「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などの親会社であるケリング(KERING)が日本で初開催したスタートアップ企業のアワード「ケリング・ジェネレーション・アワード(KERING GENERATION AWARD)」で最優秀賞を受賞。ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは何か、起業までのストーリー、今後にかける思いなどを酒井さんに聞きました。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ラグジュアリー企業も注目する発酵技術とは 【ファーメンステーション・酒井里奈代表】 appeared first on WWDJAPAN.

「デニム生地生産量日本一」の新リーダーが同業他社や異業種、行政と連携して目指す「市民の認知度100%」

PROFILE: 篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役社長

篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役社長
PROFILE: 1907年創業のデニム生地機屋「篠原テキスタイル」の5代目。大阪工業大学卒業後大正紡績に入社。紡績の製造現場、商品開発室、営業を経て、2012年に篠原テキスタイル入社。新規事業開発リーダーとしてデニム産地内同業他社、異業種、行政、教育機関との連携を深め、デニム産地の発展に取り組む。19年デニム製造工程で発生する残糸やBC反を活用したアップサイクルブランド「シノテックス」を立ち上げる。22年社長に就任。海外展示会への出展や国内他産地とのコラボ素材の開発、デニム・ジーンズの製造工場を回る工場見学ツアーの企画や若手デザイナーの支援を積極的に行う

日本一のデニム生地生産量を誇る広島県福山市。古くから繊維産業が盛んで備後産地として栄えてきたがその認知度は低い。産地継続の危機が叫ばれて久しいが近年、産地をブランディングして産地観光を目指す取り組みが増えている。福山市でも篠原テキスタイルの篠原由起社長がその認知度を高めてシビックプライドを醸成しようと同業他社や異業種、行政と協働しながら産地をけん引する。

篠原テキスタイルは日本三大絣のひとつ「備後絣」の生産から始まり今年で創業118年目。15年前から自社で生地展開をはじめ、旧式のシャトル織機や最新のエアージェット織機を活用してさまざまな風合いのデニム生地を生産する。現在の月産量は2500反(12万5000m)。ラグジュアリーブランドから国内のデザイナーズやデニムブランドに生地を供給する。篠原社長に現在の取り組みと未来の展望を聞く。

WWD:篠原テキスタイルの強味は?

篠原由起社長(以下、篠原):生地の自社展開を始めて15年。生地メーカーとしては後発だったので、アジアの量産型工場が作らないような織りにくいものを織って価値をつくることを目指した。これまで織っていた人工セルロースの「テンセル」に加えて、経糸と緯糸の番手や素材を変えて風合い豊かな生地をつくっている。また、カシミヤやシルクのネップ糸など従来デニムに使われていなかった糸を用いたデニム生地を提案している。特にラグジュアリーブランドから評判が良く、「なんじゃこりゃ」「これはデニムなのか」という触り心地の生地を提案している。

WWD:織りにくい生地を織るのは熟練技が必要だ。どのように技術をつなげているのか。

篠原:当社もちょうど技術を引き継ぐタイミングにある。これまで「見て覚える」「手を動かしてみる」といった感覚的な方法で技術を継承してきたが、動画を撮影してマニュアル化しているところだ。中学卒業後に入社して現在74歳のベテランスタッフが機械を動かす様子や機械のメンテナンスや改造の方法を記録している。現場の技術は日々進化するし、改善が必要になってきているので技術のマニュアル化は必須だ。

WWD:自社の生産工程から生まれる残糸や端材を用いて靴下や手袋、ニットキャップやバブーシュやハンドバッグなどを提案する「シノテックス(SINOTEX)」ブランドを19年に始動した。

篠原:例えば靴下の編立は福山の老舗ニットメーカーに依頼するなど、地元企業と協働することで福山市にさまざまな技術が集積していることを訴求している。人と人がつながり、企業と企業がつながることで新たな価値を生み出したい。自社ECサイトや地元の百貨店、福山や広島の雑貨店などに卸していて、お土産的に販売している。

WWD:残糸や端材の活用以外でのサステナビリティの取り組みと成果は?

篠原:定番のデニム生地をアメリカ産のリジェネラティブコットン糸(環境再生型農業で栽培された綿糸)に変えた。欧州基準で戦うために現在GOTS認証を申請中だ。リサイクルポリエステル糸を用いたデニム生地の開発にも力を入れているが、先日出展した欧州の素材見本市では反応がいまいちで、強味の「テンセル」、カシミヤやシルクなどセルロース系繊維の反応が良かった。

工場の省エネ化も進めており、LEDへの切り替えや太陽光パネルの設置、省エネタイプの機械への切り替えなどで電気使用量は2018年に比べて約30%削減できた。近年特に電気料金も上がってきているのでコストにも効いている。

WWD:異業種・行政・教育機関との連携について、何を目指しどのように連携しているのか。

篠原:目的は福山市がデニムの町だという認知度を高めること。現在の市民の認知度は42.6%で、タオルで知られる今治ならばほぼ100%だろう。認知度を上げるために大学や高校に出向きデニムについて伝えたり小学校の工場見学を受け入れたりしている。結果は10~20年後になるが、地道な活動を重ねることで就職先の選択肢にデニム産業を残したいと考えている。こうした活動を続けると地元でマルシェに出店すると「デニム屋さんだ」となり、やり続けることでデニムファンを増やせていると感じる。

行政とは福山市が「備中備後はデニムの産地」をPRするために16年に始動した「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」を軸に、福山の企業の成長や人材確保の取り組みを支援するための「グリーンな企業プラットフォーム事業」に参画したり、福山市と一緒に一般家庭のジーンズの回収リサイクルプロジェクトを行ったりしている。市役所や商業施設、ガソリンスタンドや銀行など市内6カ所で回収したジーンズを反毛(はんもう)して新たな生地にしてバッグにしたりしている。企業から声がかかり、「ネームプレートにしたい」という話もある。

WWD:回収から再生産する事業は手間がかかり事業として成立させるには難易度が高そうだが。

篠原:部分使いであればコストに見合う。例えば企業の制服の一部に使用し回収の取り組みに賛同してもらうなど、デニムを福山市内で循環させることで、地元での認知を高めることが目的にある。回収拠点が町中にあることで福山市がデニムの町であることを訴求できる。また「つくる責任、つかう責任、回収も日本一」になれば、一般の方にもデニムの町だという認知が広がるのではないか。

WWD:工場見学について、地元小学校の受け入れだけでなく多くの事業者も受け入れている。

篠原:バイヤーさんを対象とした工場見学ツアーは昨年30~40回ほど実施した。またスノーピークが日本各地のものづくりや文化を継承することを目的に始めた「ローカル ウエア ツーリズム」とも協働している。

WWD:2023年のG7広島サミットの「サミットバッグ」に採用された。

篠原:広島県織物工業会が製作した。企画はディスカバーリンクせとうち、染色は坂本デニム、撚糸は備後撚糸、織りは当社に加えてカイハラと中国紡績織が行い、縫製は大江被服とC2が手掛けた。福山は市内で生地から製品まで作ることができる。そのほか、福山市内に6軒の医療施設を運営する医療法人徹慈会と制服づくりも始めている。当社とカイハラが素材提供をして縫製はC2が手掛ける予定だ。

また、産婦人科から退院のお祝いに提供するマザーズバッグをデニムでつくりたいという要望があるなど、今まで声がかからなかったところからも依頼があり、地道な活動の成果が見えてきている。

WWD:現在の課題は?

篠原:福山市でデニムを盛り上げるための連携はあるが、サプライチェーン全体の足並みをそろえるのが難しいとも感じている。福山市は素材や技術の町で製品ブランドが少なく、一般の人への訴求が難しい。そんな中で小売店との協働は直接生活者に届けられる一つの方法だと感じている。例えば、松屋銀座が日本のものづくりを紹介する「東京クリエイティブサロン」で紹介いただいたり、広島市拠点のセレクトショップで東京にも店舗を持つアクセが産地デニムブランド「ジャパンデニム」を立ち上げ、販売していただいたり。ただ、地元福山でも盛り上がりを作りたいので、BtoB向けの事業者が多い中でどのような仕組みにするのかを地元の地域商社などと検討しているところだ。

WWD:地域として目指すところは?

篠原:地域指名で来てくれる人が増えること。例えばシャンパーニュのシャンパン、今治のタオルといったように、業界内はもちろん一般での認知度を上げたい。

The post 「デニム生地生産量日本一」の新リーダーが同業他社や異業種、行政と連携して目指す「市民の認知度100%」 appeared first on WWDJAPAN.

「デニム生地生産量日本一」の新リーダーが同業他社や異業種、行政と連携して目指す「市民の認知度100%」

PROFILE: 篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役社長

篠原由起/篠原テキスタイル代表取締役社長
PROFILE: 1907年創業のデニム生地機屋「篠原テキスタイル」の5代目。大阪工業大学卒業後大正紡績に入社。紡績の製造現場、商品開発室、営業を経て、2012年に篠原テキスタイル入社。新規事業開発リーダーとしてデニム産地内同業他社、異業種、行政、教育機関との連携を深め、デニム産地の発展に取り組む。19年デニム製造工程で発生する残糸やBC反を活用したアップサイクルブランド「シノテックス」を立ち上げる。22年社長に就任。海外展示会への出展や国内他産地とのコラボ素材の開発、デニム・ジーンズの製造工場を回る工場見学ツアーの企画や若手デザイナーの支援を積極的に行う

日本一のデニム生地生産量を誇る広島県福山市。古くから繊維産業が盛んで備後産地として栄えてきたがその認知度は低い。産地継続の危機が叫ばれて久しいが近年、産地をブランディングして産地観光を目指す取り組みが増えている。福山市でも篠原テキスタイルの篠原由起社長がその認知度を高めてシビックプライドを醸成しようと同業他社や異業種、行政と協働しながら産地をけん引する。

篠原テキスタイルは日本三大絣のひとつ「備後絣」の生産から始まり今年で創業118年目。15年前から自社で生地展開をはじめ、旧式のシャトル織機や最新のエアージェット織機を活用してさまざまな風合いのデニム生地を生産する。現在の月産量は2500反(12万5000m)。ラグジュアリーブランドから国内のデザイナーズやデニムブランドに生地を供給する。篠原社長に現在の取り組みと未来の展望を聞く。

WWD:篠原テキスタイルの強味は?

篠原由起社長(以下、篠原):生地の自社展開を始めて15年。生地メーカーとしては後発だったので、アジアの量産型工場が作らないような織りにくいものを織って価値をつくることを目指した。これまで織っていた人工セルロースの「テンセル」に加えて、経糸と緯糸の番手や素材を変えて風合い豊かな生地をつくっている。また、カシミヤやシルクのネップ糸など従来デニムに使われていなかった糸を用いたデニム生地を提案している。特にラグジュアリーブランドから評判が良く、「なんじゃこりゃ」「これはデニムなのか」という触り心地の生地を提案している。

WWD:織りにくい生地を織るのは熟練技が必要だ。どのように技術をつなげているのか。

篠原:当社もちょうど技術を引き継ぐタイミングにある。これまで「見て覚える」「手を動かしてみる」といった感覚的な方法で技術を継承してきたが、動画を撮影してマニュアル化しているところだ。中学卒業後に入社して現在74歳のベテランスタッフが機械を動かす様子や機械のメンテナンスや改造の方法を記録している。現場の技術は日々進化するし、改善が必要になってきているので技術のマニュアル化は必須だ。

WWD:自社の生産工程から生まれる残糸や端材を用いて靴下や手袋、ニットキャップやバブーシュやハンドバッグなどを提案する「シノテックス(SINOTEX)」ブランドを19年に始動した。

篠原:例えば靴下の編立は福山の老舗ニットメーカーに依頼するなど、地元企業と協働することで福山市にさまざまな技術が集積していることを訴求している。人と人がつながり、企業と企業がつながることで新たな価値を生み出したい。自社ECサイトや地元の百貨店、福山や広島の雑貨店などに卸していて、お土産的に販売している。

WWD:残糸や端材の活用以外でのサステナビリティの取り組みと成果は?

篠原:定番のデニム生地をアメリカ産のリジェネラティブコットン糸(環境再生型農業で栽培された綿糸)に変えた。欧州基準で戦うために現在GOTS認証を申請中だ。リサイクルポリエステル糸を用いたデニム生地の開発にも力を入れているが、先日出展した欧州の素材見本市では反応がいまいちで、強味の「テンセル」、カシミヤやシルクなどセルロース系繊維の反応が良かった。

工場の省エネ化も進めており、LEDへの切り替えや太陽光パネルの設置、省エネタイプの機械への切り替えなどで電気使用量は2018年に比べて約30%削減できた。近年特に電気料金も上がってきているのでコストにも効いている。

WWD:異業種・行政・教育機関との連携について、何を目指しどのように連携しているのか。

篠原:目的は福山市がデニムの町だという認知度を高めること。現在の市民の認知度は42.6%で、タオルで知られる今治ならばほぼ100%だろう。認知度を上げるために大学や高校に出向きデニムについて伝えたり小学校の工場見学を受け入れたりしている。結果は10~20年後になるが、地道な活動を重ねることで就職先の選択肢にデニム産業を残したいと考えている。こうした活動を続けると地元でマルシェに出店すると「デニム屋さんだ」となり、やり続けることでデニムファンを増やせていると感じる。

行政とは福山市が「備中備後はデニムの産地」をPRするために16年に始動した「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」を軸に、福山の企業の成長や人材確保の取り組みを支援するための「グリーンな企業プラットフォーム事業」に参画したり、福山市と一緒に一般家庭のジーンズの回収リサイクルプロジェクトを行ったりしている。市役所や商業施設、ガソリンスタンドや銀行など市内6カ所で回収したジーンズを反毛(はんもう)して新たな生地にしてバッグにしたりしている。企業から声がかかり、「ネームプレートにしたい」という話もある。

WWD:回収から再生産する事業は手間がかかり事業として成立させるには難易度が高そうだが。

篠原:部分使いであればコストに見合う。例えば企業の制服の一部に使用し回収の取り組みに賛同してもらうなど、デニムを福山市内で循環させることで、地元での認知を高めることが目的にある。回収拠点が町中にあることで福山市がデニムの町であることを訴求できる。また「つくる責任、つかう責任、回収も日本一」になれば、一般の方にもデニムの町だという認知が広がるのではないか。

WWD:工場見学について、地元小学校の受け入れだけでなく多くの事業者も受け入れている。

篠原:バイヤーさんを対象とした工場見学ツアーは昨年30~40回ほど実施した。またスノーピークが日本各地のものづくりや文化を継承することを目的に始めた「ローカル ウエア ツーリズム」とも協働している。

WWD:2023年のG7広島サミットの「サミットバッグ」に採用された。

篠原:広島県織物工業会が製作した。企画はディスカバーリンクせとうち、染色は坂本デニム、撚糸は備後撚糸、織りは当社に加えてカイハラと中国紡績織が行い、縫製は大江被服とC2が手掛けた。福山は市内で生地から製品まで作ることができる。そのほか、福山市内に6軒の医療施設を運営する医療法人徹慈会と制服づくりも始めている。当社とカイハラが素材提供をして縫製はC2が手掛ける予定だ。

また、産婦人科から退院のお祝いに提供するマザーズバッグをデニムでつくりたいという要望があるなど、今まで声がかからなかったところからも依頼があり、地道な活動の成果が見えてきている。

WWD:現在の課題は?

篠原:福山市でデニムを盛り上げるための連携はあるが、サプライチェーン全体の足並みをそろえるのが難しいとも感じている。福山市は素材や技術の町で製品ブランドが少なく、一般の人への訴求が難しい。そんな中で小売店との協働は直接生活者に届けられる一つの方法だと感じている。例えば、松屋銀座が日本のものづくりを紹介する「東京クリエイティブサロン」で紹介いただいたり、広島市拠点のセレクトショップで東京にも店舗を持つアクセが産地デニムブランド「ジャパンデニム」を立ち上げ、販売していただいたり。ただ、地元福山でも盛り上がりを作りたいので、BtoB向けの事業者が多い中でどのような仕組みにするのかを地元の地域商社などと検討しているところだ。

WWD:地域として目指すところは?

篠原:地域指名で来てくれる人が増えること。例えばシャンパーニュのシャンパン、今治のタオルといったように、業界内はもちろん一般での認知度を上げたい。

The post 「デニム生地生産量日本一」の新リーダーが同業他社や異業種、行政と連携して目指す「市民の認知度100%」 appeared first on WWDJAPAN.

産地×デザイナーの「ジャパンデニム」好調 ギンザシックス4階の月坪売上高150~200万円

セレクトショップのパリゴを手掛けるアクセ(広島県尾道市、髙垣孝久社長)が力を入れる「ジャパンデニム(JAPAN DENIM)」 が好調だ。2023年3月にギンザシックス4階に開いた旗艦店は売り場面積が11.6坪ながら年間約2億円を売り上げる。店頭には常時約10ブランドと協業したアイテムが20型程度並び、価格帯はジーンズが2万円台中盤~3万円台前半、デザインスカートが3~5万円、デザインジャケットが4~8万円。客単価は約6万円、月坪売上高は150~200万円と好調だ。特に訪日外国人の来店が多くその比率は65~80%で、中でも中国からが最も多く訪日外国人全体の35~40%を占める。中国向けには中国版インスタグラム「REDBOOK」にオフィシャルアカウントを作り情報を配信している。

「ジャパンデニム」は広島県福山市が16年に「備中備後はデニムの産地」をPRするために始動した「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」の一環で、同産地を拠点にするアクセが2018年に始動。福山市と岡山県井原市を中心とする備中備後地域で生産されるデニム生地を用い、同地域の縫製・加工業者と国内外のデザイナーとを組み合わせて世界に発信するもの。製品には各工程の工場名を明記してトレーサビリティを担保するほか、環境に配慮した素材や染色方法などにもこだわる。

現在の販路はギンザシックス店を除くパリゴ店頭とアクセのECサイトでギンザシックスの旗艦店と合わせると年間約3億円を売り上げる。好調の理由を「ジャパンデニム」のディレクターを務める高垣道夫アクセ専務取締役は「海外のお客さまは日本製デニムの付加価値を感じている。また、ブランドとのものづくりを進める中でブランド側にフィードバックを重ねて試行錯誤しながら、売れるデザインデニムづくりを目指している。結果的に1シーズンで消費されないデザインになり、シーズンを超えて売れ続けている」と胸を張る。パリゴはラグジュアリーからデザイナーズまで国内外のブランドを30年以上扱ってきており、デザイナーとのネットワークや店頭で動くアイテムなどのノウハウがある。

下げ札に事業者名を書いたことで新たな商売が始まっているという。「ブランドから直接生地や縫製工場にオーダーが入ったり、外国人からの問い合わせが増えていたりと聞く」と髙垣ディレクター。「プロジェクトを始めた理由は世界に誇れるデニム産地“備中備後エリア”の認知度を高めること。実は僕自身も詳しくは知らなかった。バイヤーとして各国のラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを買い付ける中で、デニムの多くが日本製であることを知った。さらにその多くが備中備後産地で作られていた。生産者は守秘義務で訴求できない理由を知り、直接世界に誇れる技術を訴求したいと始めて、少しずつ成果が出てきた」と手ごたえを話す。

今後は「国内の複数の商業施設から出店オファーがあるので、積極的に出店する。立ち上げ間もなくコロナ禍に入り海外への卸を止めていたが再開する。越境ECも計画中だ」と意気込む。

The post 産地×デザイナーの「ジャパンデニム」好調 ギンザシックス4階の月坪売上高150~200万円 appeared first on WWDJAPAN.

産地×デザイナーの「ジャパンデニム」好調 ギンザシックス4階の月坪売上高150~200万円

セレクトショップのパリゴを手掛けるアクセ(広島県尾道市、髙垣孝久社長)が力を入れる「ジャパンデニム(JAPAN DENIM)」 が好調だ。2023年3月にギンザシックス4階に開いた旗艦店は売り場面積が11.6坪ながら年間約2億円を売り上げる。店頭には常時約10ブランドと協業したアイテムが20型程度並び、価格帯はジーンズが2万円台中盤~3万円台前半、デザインスカートが3~5万円、デザインジャケットが4~8万円。客単価は約6万円、月坪売上高は150~200万円と好調だ。特に訪日外国人の来店が多くその比率は65~80%で、中でも中国からが最も多く訪日外国人全体の35~40%を占める。中国向けには中国版インスタグラム「REDBOOK」にオフィシャルアカウントを作り情報を配信している。

「ジャパンデニム」は広島県福山市が16年に「備中備後はデニムの産地」をPRするために始動した「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」の一環で、同産地を拠点にするアクセが2018年に始動。福山市と岡山県井原市を中心とする備中備後地域で生産されるデニム生地を用い、同地域の縫製・加工業者と国内外のデザイナーとを組み合わせて世界に発信するもの。製品には各工程の工場名を明記してトレーサビリティを担保するほか、環境に配慮した素材や染色方法などにもこだわる。

現在の販路はギンザシックス店を除くパリゴ店頭とアクセのECサイトでギンザシックスの旗艦店と合わせると年間約3億円を売り上げる。好調の理由を「ジャパンデニム」のディレクターを務める高垣道夫アクセ専務取締役は「海外のお客さまは日本製デニムの付加価値を感じている。また、ブランドとのものづくりを進める中でブランド側にフィードバックを重ねて試行錯誤しながら、売れるデザインデニムづくりを目指している。結果的に1シーズンで消費されないデザインになり、シーズンを超えて売れ続けている」と胸を張る。パリゴはラグジュアリーからデザイナーズまで国内外のブランドを30年以上扱ってきており、デザイナーとのネットワークや店頭で動くアイテムなどのノウハウがある。

下げ札に事業者名を書いたことで新たな商売が始まっているという。「ブランドから直接生地や縫製工場にオーダーが入ったり、外国人からの問い合わせが増えていたりと聞く」と髙垣ディレクター。「プロジェクトを始めた理由は世界に誇れるデニム産地“備中備後エリア”の認知度を高めること。実は僕自身も詳しくは知らなかった。バイヤーとして各国のラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを買い付ける中で、デニムの多くが日本製であることを知った。さらにその多くが備中備後産地で作られていた。生産者は守秘義務で訴求できない理由を知り、直接世界に誇れる技術を訴求したいと始めて、少しずつ成果が出てきた」と手ごたえを話す。

今後は「国内の複数の商業施設から出店オファーがあるので、積極的に出店する。立ち上げ間もなくコロナ禍に入り海外への卸を止めていたが再開する。越境ECも計画中だ」と意気込む。

The post 産地×デザイナーの「ジャパンデニム」好調 ギンザシックス4階の月坪売上高150~200万円 appeared first on WWDJAPAN.

米「オールバーズ」、「世界初」の二酸化炭素排出量ゼロシューズを限定発売 再生型農場と取り組み

米サンフランシスコ発のフットウエアブランドで、日本では2024年6月からゴールドウインが独占販売する「オールバーズ(ALLBIRDS)」は、「世界初」というネット・ゼロカーボン・シューズの“ムーンショットゼロ(M0.0NSHOT Zero)”(3万5200円)を開発した。日本では4月5日に、同ブランドの東京・丸の内店限定で発売する。

“ムーンショットゼロ”は、素材選定、製造、輸送、廃棄までの製品の一連の流れにおいて、二酸化炭素換算排出量ゼロを達成した。ニットアッパーには、農場全体の二酸化炭素排出量に対し、同吸収量が2倍という再生型農場に由来するメリノウールを使用。カーボンネガティブな(=二酸化炭素排出量の方が吸収量よりも少ない)メリノウールを使うのはブランドとして初めてという。メタン由来のバイオプラスチックでできた装飾ボタン、サトウキビ由来のポリエチレンのパッケージもカーボンネガティブ。ミッドソール、アウトソールには、従来から採用している、サトウキビ由来のカーボンネガティブなEVAフォームを使用した。輸送にはバイオ燃料の船便を利用している。

日本のほか、ニューヨーク、ロンドン、ドバイ、ソウルの店舗で扱い、日本以外は既に発売済み。全世界で500足限定で、うち日本では75足を販売する。「発売時はどの都市でも行列ができた。特にドバイでの引き合いが高かった」(マーケティング担当者)という。

今後のカギは
他のシューズにいかに広げるか

「オールバーズ」は「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」ことをミッションとして掲げている。計測を始めた20年のカーボンフットプリントに対し、25年は50%削減、30年までにカーボンフットプリントゼロを目標としている。23年時点で20年に対し40%の削減を達成したといい、「目標に対し前倒しで進行できている」と、ゴールドウインの西田幸平オールバーズ事業部長。

今後、ブランドが目標とするカーボンフットプリントゼロを達成するために、“ムーンショットゼロ”はマイルストーンとなる商品だという。「“ムーンショットゼロ”で採用した再生型農業の取り組みなどを、どう他のシューズにも広げていくかがカギ。“ムーンショットゼロ”は、今後の商品開発におけるDNAになる」という。

The post 米「オールバーズ」、「世界初」の二酸化炭素排出量ゼロシューズを限定発売 再生型農場と取り組み appeared first on WWDJAPAN.

米「オールバーズ」、「世界初」の二酸化炭素排出量ゼロシューズを限定発売 再生型農場と取り組み

米サンフランシスコ発のフットウエアブランドで、日本では2024年6月からゴールドウインが独占販売する「オールバーズ(ALLBIRDS)」は、「世界初」というネット・ゼロカーボン・シューズの“ムーンショットゼロ(M0.0NSHOT Zero)”(3万5200円)を開発した。日本では4月5日に、同ブランドの東京・丸の内店限定で発売する。

“ムーンショットゼロ”は、素材選定、製造、輸送、廃棄までの製品の一連の流れにおいて、二酸化炭素換算排出量ゼロを達成した。ニットアッパーには、農場全体の二酸化炭素排出量に対し、同吸収量が2倍という再生型農場に由来するメリノウールを使用。カーボンネガティブな(=二酸化炭素排出量の方が吸収量よりも少ない)メリノウールを使うのはブランドとして初めてという。メタン由来のバイオプラスチックでできた装飾ボタン、サトウキビ由来のポリエチレンのパッケージもカーボンネガティブ。ミッドソール、アウトソールには、従来から採用している、サトウキビ由来のカーボンネガティブなEVAフォームを使用した。輸送にはバイオ燃料の船便を利用している。

日本のほか、ニューヨーク、ロンドン、ドバイ、ソウルの店舗で扱い、日本以外は既に発売済み。全世界で500足限定で、うち日本では75足を販売する。「発売時はどの都市でも行列ができた。特にドバイでの引き合いが高かった」(マーケティング担当者)という。

今後のカギは
他のシューズにいかに広げるか

「オールバーズ」は「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」ことをミッションとして掲げている。計測を始めた20年のカーボンフットプリントに対し、25年は50%削減、30年までにカーボンフットプリントゼロを目標としている。23年時点で20年に対し40%の削減を達成したといい、「目標に対し前倒しで進行できている」と、ゴールドウインの西田幸平オールバーズ事業部長。

今後、ブランドが目標とするカーボンフットプリントゼロを達成するために、“ムーンショットゼロ”はマイルストーンとなる商品だという。「“ムーンショットゼロ”で採用した再生型農業の取り組みなどを、どう他のシューズにも広げていくかがカギ。“ムーンショットゼロ”は、今後の商品開発におけるDNAになる」という。

The post 米「オールバーズ」、「世界初」の二酸化炭素排出量ゼロシューズを限定発売 再生型農場と取り組み appeared first on WWDJAPAN.

ステラ・マッカートニーと日本の高校生から聞いた 「自分が正しいと思うこと」の伝え方

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は2025-26年秋冬ミラノ・ファッション・ウイークや最近の東京でのイベントについて振り返ります。今シーズンのランウェイには、毛足の長い人工ファーやシアリング使いの服がたくさん登場しました。一見ではリアルか人工か見分けもつかないこれらの素材使いはサステナビリティ観点から見てどう解釈したらよいのか?来日したデザイナー、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)へのインタビューの感想を交え、迷いながら自分の考えを話します。イベントで出会った誠実な高校生との対話や、「CFCL」の展覧会のオープニングなど日々の取材の中で見つけた視点もシェアします。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ステラ・マッカートニーと日本の高校生から聞いた 「自分が正しいと思うこと」の伝え方 appeared first on WWDJAPAN.

ステラ・マッカートニーと日本の高校生から聞いた 「自分が正しいと思うこと」の伝え方

「WWDJAPAN」ポッドキャストの「サステナブルファッション・トーク」は、ファッション業界のサステナビリティに関する最新ニュースやトレンドをざっくばらんにお話しする番組です。本番組では、サステナビリティ担当記者木村和花がホストを務め、「WWDJAPAN」サステナビリティ・ディレクター向千鶴とともにお届けします。

今回は2025-26年秋冬ミラノ・ファッション・ウイークや最近の東京でのイベントについて振り返ります。今シーズンのランウェイには、毛足の長い人工ファーやシアリング使いの服がたくさん登場しました。一見ではリアルか人工か見分けもつかないこれらの素材使いはサステナビリティ観点から見てどう解釈したらよいのか?来日したデザイナー、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)へのインタビューの感想を交え、迷いながら自分の考えを話します。イベントで出会った誠実な高校生との対話や、「CFCL」の展覧会のオープニングなど日々の取材の中で見つけた視点もシェアします。



この配信は以下のアプリでもご利用いただけます。​
Apple Podcast
Spotify

The post ステラ・マッカートニーと日本の高校生から聞いた 「自分が正しいと思うこと」の伝え方 appeared first on WWDJAPAN.

「トッズ」がデジタルプロダクトパスポートの適用を拡大、限定コンテンツやサービスも利用可能に

 「トッズ(TOD’S)」は、製品のトレーサビリティに関するデータを包括的に管理するデジタルプロダクトパスポート(DPP)を、“マイ ゴンミーノ”コレクションにも適用する。カスタマイズ製品の“ディーアイ バッグ”に続く導入となる。

“マイ ゴンミーノ”はブランドのアイコンであるドライビングシューズをパーソナライズできるサービス。DPP導入により、顧客は右足のソールに埋め込まれたNFCチップをスキャンし、製品の登録や所有権の主張などを自身のスマートフォンで行える。また、真贋証明書にもアクセス可能だ。

このDPPにはストーリーテリングなどの要素も登録されており、顧客はモカシン製作に携わる職人や職人技、品質に関する情報を得ることができる。さらに所有書のバーコードをトッズの店舗でスキャンすることで顧客データベースとも連携でき、ワンランク上の店舗体験が楽しめるほか、延長保証や専任の顧客アドバイザー、限定イベントなども利用可能になる。

今回のDPPは、オーラ ブロックチェーン コンソーシアム(AURA Blockchain Consortium)とテメラ社との協業で実現した。オーラ ブロックチェーン コンソーシアムは、ラグジュアリーブランドがブロックチェーン技術を容易に利用できるようにという目的で設立された非営利団体。50以上のラグジュアリーブランドにおいて、5000万点以上の製品をブロックチェーン上で管理している。一方、テメラ社は原材料の調達から製作、物流、流通、在庫管理、販売、アフターサービス、アップサイクルや使用後のプロセスまで、製品のライフサイクル全般に関連するすべての情報とデータの追跡をサポートしている。

The post 「トッズ」がデジタルプロダクトパスポートの適用を拡大、限定コンテンツやサービスも利用可能に appeared first on WWDJAPAN.

東京都のファッションデザイナーコンテストNFDTとSFDA 4人の若手がパリ行きを手に

東京都は、世界を舞台に活躍するファッションデザイナーを発掘・育成することを目的に、学生対象としたファッションコンテスト「ネクスト ファッション デザイナー オブ トウキョウ(Next Fashion Designer of Tokyo 2025 以下、NFDT)」および、着物等を活用した「サステナブル ファッション デザイン アワード 2025(Sustainable Fashion Design Award 2025 以下、SFDA)」を開催し、3月29日には六本木ヒルズ 大屋根プラザで最終審査が行われ、ファッションショーおよび審査員によるトークセッション、表彰式が実施された。大賞4名を含む、計16組(18名)が入賞を果たした。大賞には100万円が、優秀賞と特別選抜賞には50万円がそれぞれ賞金として授与された。また、受賞者には創業・ブランド立ち上げをサポートし、パリでの展示会参加などを支援する。

「SFDA」東京都知事賞ウェア部門は野口キララさんが、同ファッショングッズ部門は藤井大将がそれぞれ受賞。野口さんは「納得のいく作品を発表できただけでも十分幸せだったが、このような賞をいただけて嬉しい」とコメント。藤井大将さんは靴について学ぶ人が増え、靴業界が明るくなるきっかけとなれば嬉しい。今日の結果が新たな進歩につながることを願っている」と語った。

「NFDT」東京都知事賞フリー部門は、二宮櫻壽さんが、同インクルーシブデザイン部門は黒田菜々子さんが受賞。二宮さんは「この賞をいただけて光栄。1年間全力で制作してきたが、支えてくれた両親をはじめ、関わってくれたすべての人々に感謝している」と述べた。昨年もエントリーした黒田さんは「昨年の悔しさを、今年の結果で晴らすことができた。一人の力ではなく、先生方や友人、母の支えがあってこそ」と感謝を語った。
すべての発表の後には、小池百合子東京都知事の祝辞が、松本明子副知事によって代読された。祝辞では、「今年で3回目を迎えたNFDTとSFDAにおいて、受賞者の才能が満開の桜とともに花開いた瞬間に立ち会えたことを嬉しく思う。東京を世界有数のファッション都市とするため、未来を担うデザイナーの育成と支援を今後も続けていく」と力強いメッセージが送られた。

NFDT審査員長の日比野克彦東京藝術大学長/岐阜県美術館長/熊本市現代美術館長/東京都芸術文化評議会評議員は、「インクルーシブ部門やフリー部門では、新たな素材に刺激を受ける作品が多くあった。技術が進化する中で、若手が東京都を盛り上げてくれることを期待したい」と激励。NFDT副審査員長の原由美子ファッションディレクターは「70年代からファッションに携わってきたが、近年はインクルーシブやサステナブルといった新しい視点が加わっている。参加者はいずれも真剣に考え、自分にしかできないことを追求しており、感激した」と振り返った。

SFDA審査員長のノルベール・ルレLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン合同会社社長は、「長年業界に関わってきたが、未来は明るいと実感できた。若さと未来を感じることができる場に立ち会えたことを光栄に思う。これからも若者を応援していきたい」、SFDA副審査員長の篠原ともえデザイナー/アーティストは、「大賞を受賞した二人の言葉が特に印象的だった。服づくりは一人ではできないということを、感謝の言葉からあらためて感じた。観客やスタッフの皆さまにも深く感謝を申し上げたい」としめくくった。

〈NFDT審査員〉
日比野克彦:東京藝術大学長/岐阜県美術館長/熊本市現代美術館長/東京都芸術文化評議会評議員(審査員長)
原由美子 :ファッションディレクター(副審査員長)
森永邦彦 :ANREALAGEデザイナー
高橋悠介 :株式会社CFCL/代表兼クリエイティブディレクター
向千鶴  :WWDJAPANサステナビリティディレクター
橋本航平 :株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店リ・スタイル バイヤー
織田友理子:NPO法人ウィーログ代表理事/NPO法人PADM代表(インクルーシブデザイン部門のみ)
山口大人 :一般社団法人日本アダプティブファッション協会理事(インクルーシブデザイン部門のみ)

〈SFDA審査員〉
ノルベール・ルレ:LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン合同会社社長(審査員長)
篠原ともえ   :デザイナー/アーティスト(副審査委員長)
石田栄莉子   :MALION vintageデザイナー
志鎌英明    :Children of the discordanceデザイナー ※当日欠席
大田由香梨   :LIFESTYLIST/クリエイティブディレクター
小湊千恵美   :FASHIONSNAPファッションディレクター
中西祥子    :株式会社三越伊勢丹 第2MDグループ/新宿 宝飾時計・雑貨商品部 婦人靴バイヤー
小泉文明    :株式会社メルカリ取締役会長/株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長/公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)非常勤理事※当日欠席(事前に審査済み)

The post 東京都のファッションデザイナーコンテストNFDTとSFDA 4人の若手がパリ行きを手に appeared first on WWDJAPAN.

万博・関西パビリオンの制服は藍染め「BUAISOU」がデザイン 徳島・上勝町の杉の間伐材を素材に

大阪・関西万博の関西パビリオンは、杉の間伐材から生まれた新素材「キノフ(KINOF)」を採用し、天然染料「阿波藍(あわあい)」で染めたユニホームを採用した。徳島県で生産される天然染料「阿波藍」はその深い青から「ジャパンブルー」としても知られ、2020年東京オリンピックのエンブレムにも採用されている。

今回のユニホームは、藍師・染師集団「ぶあいそう(BUAISOU)」がデザインおよび染色を手がけた。「キノフ」は、ゼロウェイストの取り組みで知られる徳島県上勝町で誕生した新しいファブリックブランド。日本建築に用いられる杉の間伐材から繊維を抽出している。藍染めの法被に描かれた絵柄は鯛の躍動感と、上勝の自然を融合しており、徳島の自然から感じ取る生命やその精神性を表現しているという。

制作者は「デザインには、踊っているのか、それとも外へ飛び出そうとしているのか、さまざまな解釈が可能な大きな鯛を登場させた。鯛は大きければ大きいほど『めでたい』とされる象徴的な存在。小さいうちは群れで行動するが、成魚になると単独で生きてゆく。また、夏に阿波おどりが始まると、徳島県民は必ず帰ってくるという話がある。これは、徳島ならではの美しい風景だと思う。藍の魅力は、実際に目の前で体験しなければ伝わりにくいもので、阿波おどりや鳴門の渦潮にも共通する部分がある。万博だけでなく、徳島にも足を運んでいただきたいという願いを込めた」とコメントしている。

The post 万博・関西パビリオンの制服は藍染め「BUAISOU」がデザイン 徳島・上勝町の杉の間伐材を素材に appeared first on WWDJAPAN.

万博・関西パビリオンの制服は藍染め「BUAISOU」がデザイン 徳島・上勝町の杉の間伐材を素材に

大阪・関西万博の関西パビリオンは、杉の間伐材から生まれた新素材「キノフ(KINOF)」を採用し、天然染料「阿波藍(あわあい)」で染めたユニホームを採用した。徳島県で生産される天然染料「阿波藍」はその深い青から「ジャパンブルー」としても知られ、2020年東京オリンピックのエンブレムにも採用されている。

今回のユニホームは、藍師・染師集団「ぶあいそう(BUAISOU)」がデザインおよび染色を手がけた。「キノフ」は、ゼロウェイストの取り組みで知られる徳島県上勝町で誕生した新しいファブリックブランド。日本建築に用いられる杉の間伐材から繊維を抽出している。藍染めの法被に描かれた絵柄は鯛の躍動感と、上勝の自然を融合しており、徳島の自然から感じ取る生命やその精神性を表現しているという。

制作者は「デザインには、踊っているのか、それとも外へ飛び出そうとしているのか、さまざまな解釈が可能な大きな鯛を登場させた。鯛は大きければ大きいほど『めでたい』とされる象徴的な存在。小さいうちは群れで行動するが、成魚になると単独で生きてゆく。また、夏に阿波おどりが始まると、徳島県民は必ず帰ってくるという話がある。これは、徳島ならではの美しい風景だと思う。藍の魅力は、実際に目の前で体験しなければ伝わりにくいもので、阿波おどりや鳴門の渦潮にも共通する部分がある。万博だけでなく、徳島にも足を運んでいただきたいという願いを込めた」とコメントしている。

The post 万博・関西パビリオンの制服は藍染め「BUAISOU」がデザイン 徳島・上勝町の杉の間伐材を素材に appeared first on WWDJAPAN.

“持続可能な製品”の大賞は能登のジャムと鎌倉のコーヒー豆 ソーシャルプロダクツ・アワード2025が発表

持続可能な社会の実現に向け、社会性と製品性の両面を評価するソーシャルプロダクツ・アワード(以下、SPA)はこのほど、2025年度の受賞製品を発表した。本年度のテーマである「令和6年度能登半島地震からの震災復興につながる商品・サービス」の大賞には石川県能登町でブルーベリーを栽培するひらみゆき農園のジャム「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」が受賞。毎年共通の「自由テーマ」である「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できる商品・サービス」は、企業(三本珈琲、国分首都圏)・市民(鎌倉エシカルラボ)・行政(鎌倉市)が協働で展開する珈琲豆「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」が賞を勝ち取った。

SPAは東日本大震災をきっかけに持続可能な社会の実現に向けて2012年にスタート。対象は生活者が購入可能なソーシャルプロダクツで、食品や住宅、旅行、金融製品などジャンルを問わない。審査員が製品・サービスの社会性、製品性、ストーリーを応募書類と実物から審査する。大賞、優秀賞、生活者審査員賞、環境大臣特別賞、審査員特別賞、ソーシャルプロダクツ賞を年度・自由テーマごとに選定する。

年度テーマで大賞を受賞した「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」の平美由記ひらみゆき農園代表は「ブルーベリーは生で出荷できる時期が6〜8月と短い。それ以外でもブルーベリーを味わってほしいとジャムを17年から手がけている。ブルーベリーは、年間で1トン8000キログロムの収穫量があるが、そのうち約4割が規格外になる。それを活用して作っている。農園は高齢化が進んでいるが、私たち若手メンバーが産地を守っていきたいという思いが評価されてうれしい」とコメントした。

自由テーマの大賞「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」の岩渕泰行・三本珈琲品質管理室課長兼研究・開発室は、「2050年に気候変動によりアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少するという“コーヒーの2050年問題”がある。価格が高騰したり、美味しいコーヒーが飲めなくなったりすることを解決するための一つの手段として、全国に販路を持つ国分首都圏、鎌倉市のサポートにより24年8月にフェアトレード認証農園から調達したコーヒー豆を発売した。コーヒーを1杯飲むことで鎌倉市の緑地保全にも貢献できる仕組みも作っている。こうした3者連携に評価を得られた」と語った。

年度テーマ・自由テーマの生活者審査員賞には伊藤園のとろみつきのユニバーサルデザイン緑茶飲料「とろり緑茶」、ウテナの高知県北川村のゆずの種から抽出したオイルを配合したヘアケアシリーズ「ゆず油」シリーズが受賞。優秀賞は自由テーマのみで、デンソーの地域情報サービス「ライフビジョン」が選ばれた。年度テーマ・自由テーマの環境大臣特別賞に加賀木材の能登ヒバの端材を使用した100%天然成分のエッセンシャルウォーター「ノトヒバカラ エッセンシャルウォーター」、スリーピングトーキョーの国産有機大豆100%を使用した大豆ミート「ラベジ オーガニック」。ソーシャルプロダクツ賞はトヨクモの緊急時の安否確認から対策指示まで一括で活用できるシステム「安否確認サービス2」、ヘアサロンU+のカラーリング剤のプラスチックキャップをアップサイクルしたヘアブラシ「トク」などが獲得した。

中間玖幸SPA専務理事は「授賞式は毎年開催しているが、そこでは伝えきれない思いがあった。今回初めて製品の背景を発信できる場としてプレゼンの機会を設けた。社会全体にその思いが伝わることを願っている」と語った。

The post “持続可能な製品”の大賞は能登のジャムと鎌倉のコーヒー豆 ソーシャルプロダクツ・アワード2025が発表 appeared first on WWDJAPAN.

“持続可能な製品”の大賞は能登のジャムと鎌倉のコーヒー豆 ソーシャルプロダクツ・アワード2025が発表

持続可能な社会の実現に向け、社会性と製品性の両面を評価するソーシャルプロダクツ・アワード(以下、SPA)はこのほど、2025年度の受賞製品を発表した。本年度のテーマである「令和6年度能登半島地震からの震災復興につながる商品・サービス」の大賞には石川県能登町でブルーベリーを栽培するひらみゆき農園のジャム「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」が受賞。毎年共通の「自由テーマ」である「生活者が『持続可能な社会』づくりに参加できる商品・サービス」は、企業(三本珈琲、国分首都圏)・市民(鎌倉エシカルラボ)・行政(鎌倉市)が協働で展開する珈琲豆「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」が賞を勝ち取った。

SPAは東日本大震災をきっかけに持続可能な社会の実現に向けて2012年にスタート。対象は生活者が購入可能なソーシャルプロダクツで、食品や住宅、旅行、金融製品などジャンルを問わない。審査員が製品・サービスの社会性、製品性、ストーリーを応募書類と実物から審査する。大賞、優秀賞、生活者審査員賞、環境大臣特別賞、審査員特別賞、ソーシャルプロダクツ賞を年度・自由テーマごとに選定する。

年度テーマで大賞を受賞した「ごろごろ果実の能登ブルーベリー」の平美由記ひらみゆき農園代表は「ブルーベリーは生で出荷できる時期が6〜8月と短い。それ以外でもブルーベリーを味わってほしいとジャムを17年から手がけている。ブルーベリーは、年間で1トン8000キログロムの収穫量があるが、そのうち約4割が規格外になる。それを活用して作っている。農園は高齢化が進んでいるが、私たち若手メンバーが産地を守っていきたいという思いが評価されてうれしい」とコメントした。

自由テーマの大賞「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」の岩渕泰行・三本珈琲品質管理室課長兼研究・開発室は、「2050年に気候変動によりアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少するという“コーヒーの2050年問題”がある。価格が高騰したり、美味しいコーヒーが飲めなくなったりすることを解決するための一つの手段として、全国に販路を持つ国分首都圏、鎌倉市のサポートにより24年8月にフェアトレード認証農園から調達したコーヒー豆を発売した。コーヒーを1杯飲むことで鎌倉市の緑地保全にも貢献できる仕組みも作っている。こうした3者連携に評価を得られた」と語った。

年度テーマ・自由テーマの生活者審査員賞には伊藤園のとろみつきのユニバーサルデザイン緑茶飲料「とろり緑茶」、ウテナの高知県北川村のゆずの種から抽出したオイルを配合したヘアケアシリーズ「ゆず油」シリーズが受賞。優秀賞は自由テーマのみで、デンソーの地域情報サービス「ライフビジョン」が選ばれた。年度テーマ・自由テーマの環境大臣特別賞に加賀木材の能登ヒバの端材を使用した100%天然成分のエッセンシャルウォーター「ノトヒバカラ エッセンシャルウォーター」、スリーピングトーキョーの国産有機大豆100%を使用した大豆ミート「ラベジ オーガニック」。ソーシャルプロダクツ賞はトヨクモの緊急時の安否確認から対策指示まで一括で活用できるシステム「安否確認サービス2」、ヘアサロンU+のカラーリング剤のプラスチックキャップをアップサイクルしたヘアブラシ「トク」などが獲得した。

中間玖幸SPA専務理事は「授賞式は毎年開催しているが、そこでは伝えきれない思いがあった。今回初めて製品の背景を発信できる場としてプレゼンの機会を設けた。社会全体にその思いが伝わることを願っている」と語った。

The post “持続可能な製品”の大賞は能登のジャムと鎌倉のコーヒー豆 ソーシャルプロダクツ・アワード2025が発表 appeared first on WWDJAPAN.

「45R」の「藍職人いろいろ45」NY店開店5カ月、客単価26.6万円・新規客30%で計画通りに推移

フォーティファイブアールピーエムスタジオが手掛ける「藍職人いろいろ45」の海外1号店であるニューヨーク・クロスビーストリート店がオープンから5カ月が経った。「10月24日から3月までの売上高は計画通りに予算をクリアしている。予想外だったのは新規客が30%を占める点で新規ファンを獲得できている」と海外店舗を統括する同社あっぱれ部の栃澤千尋副部長は話す。ニューヨーク店の顧客層は30~50代で日本国内の40~60代よりもやや若く、客単価は1787ドル(約26万6000円)。売れ筋は1232ドル(約18万3000円)のデニムパンツと740ドル(約11万円)のスーピマオーガニックコットンガーゼのクルーネックTシャツで、、50万円を超える製品が並ぶ中ではエントリーアイテムになりつつある。「藍の価値を理解してくださっているお客さまが多い」。

「藍いろいろ職人45」のデリバリーは年に4回と決して多くはないが、コンスタントに売れているという。「新規アイテムがない中でスタッフが店頭での打ち出しを考えて工夫して接客している。その結果、例えば真冬にレザーサンダルが売れている」。

24年3月にオープンした「藍いろいろ職人45」1号店の阪急梅田店は計画比が約130%と好調に推移している。日本での客単価は約15万円で人気アイテムはレースのブラウスだという。

現在、全国の藍染め職人たちと協働して製品づくりに取り組む。藍染めは個体差が魅力でもあるが、人によって持つイメージが異なることは多い。「当社では手仕事が伝わるむら感を大事にしており、そのことは各職人に伝えて意思疎通しながら進めている」と栃澤副部長はいう。現在、フォーティファイブアールピーエムスタジオでは藍の栽培から発酵、染めまで行う職人が社内に1人いる。安定的な生産に向けて「今後は自社職人を増やし、東北にある倉庫に工房を作る計画がある」。

The post 「45R」の「藍職人いろいろ45」NY店開店5カ月、客単価26.6万円・新規客30%で計画通りに推移 appeared first on WWDJAPAN.

「45R」の「藍職人いろいろ45」NY店開店5カ月、客単価26.6万円・新規客30%で計画通りに推移

フォーティファイブアールピーエムスタジオが手掛ける「藍職人いろいろ45」の海外1号店であるニューヨーク・クロスビーストリート店がオープンから5カ月が経った。「10月24日から3月までの売上高は計画通りに予算をクリアしている。予想外だったのは新規客が30%を占める点で新規ファンを獲得できている」と海外店舗を統括する同社あっぱれ部の栃澤千尋副部長は話す。ニューヨーク店の顧客層は30~50代で日本国内の40~60代よりもやや若く、客単価は1787ドル(約26万6000円)。売れ筋は1232ドル(約18万3000円)のデニムパンツと740ドル(約11万円)のスーピマオーガニックコットンガーゼのクルーネックTシャツで、、50万円を超える製品が並ぶ中ではエントリーアイテムになりつつある。「藍の価値を理解してくださっているお客さまが多い」。

「藍いろいろ職人45」のデリバリーは年に4回と決して多くはないが、コンスタントに売れているという。「新規アイテムがない中でスタッフが店頭での打ち出しを考えて工夫して接客している。その結果、例えば真冬にレザーサンダルが売れている」。

24年3月にオープンした「藍いろいろ職人45」1号店の阪急梅田店は計画比が約130%と好調に推移している。日本での客単価は約15万円で人気アイテムはレースのブラウスだという。

現在、全国の藍染め職人たちと協働して製品づくりに取り組む。藍染めは個体差が魅力でもあるが、人によって持つイメージが異なることは多い。「当社では手仕事が伝わるむら感を大事にしており、そのことは各職人に伝えて意思疎通しながら進めている」と栃澤副部長はいう。現在、フォーティファイブアールピーエムスタジオでは藍の栽培から発酵、染めまで行う職人が社内に1人いる。安定的な生産に向けて「今後は自社職人を増やし、東北にある倉庫に工房を作る計画がある」。

The post 「45R」の「藍職人いろいろ45」NY店開店5カ月、客単価26.6万円・新規客30%で計画通りに推移 appeared first on WWDJAPAN.

ステラ・マッカートニー、サステナに迷い、向き合う次世代に語る責任ある創造

デザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)がこのほど来日し、三越伊勢丹が主催する「三越伊勢丹ミライアワード」に参加した。「三越伊勢丹ミライアワード」は、さまざまな企業から集めた残反などを素材に、服飾学校の学生たちが作品づくりに取り組むアワード企画。2023年に続く2回目の開催となった今年は、エスモード東京校、東京モード学園、文化服装学院の学生らが参加した。

ステラは同アワードの審査員を務めたほか、文化服装学院で開催された特別トークショーにも登壇。浅尾慶一郎環境大臣と近藤詔太・伊勢丹新宿本店店長と共に、サステナビリティに取り組む意義などについて語った。イベントを終えたステラに、若手に期待することや今のファッション産業についての考えを聞いた。

WWD:「三越伊勢丹ミライアワード」に参加した感想は?

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):とても楽しかったわ。学生たちの作品はどれも非常にレベルが高くて、本当に驚いた。彼らがどれだけ真剣に取り組んだのかが、作品を通じてしっかりと伝わってきた。次世代デザイナーの作品を審査する機会はたびたびあるけど、ここまで優秀な作品ばかりのアワードは珍しい。優秀作品を選ぶのが本当に大変だったくらいよ。

WWD:若手のクリエイションを評価する際に大事にしている視点は?

ステラ:創造性とアイデア、パターンカッティングの精度といったテクニック。そしてサステナビリティ。それから、よく学生たちに聞くのは、自分がそれを本当に着たいかどうか。コスチュームではなく、ちゃんと着たいと思うものに仕上げているかは大切だと思う。

責任あるクリエイションこそファッショナブル

WWD:サステナビリティに真面目に取り組もうとするあまり、自分らしいクリエイションを発揮しきれない学生も多い印象だ。

ステラ:サステナビリティがクリエイションの障壁になってはいけないと思う。もちろん、素材のバリエーションには制限があるけど、本来そういう時こそよりクリエイティビティーを発揮するべきだと思う。私でさえいまだに使いたい素材はあっても、デザインを変えなければいけなかったり、欲しい色が実現しなかったり、毎度何かしらの壁にぶつかって奮闘している。でも、どうやったら“マッシュルームレザー“を調達できるか、ペットボトル由来の糸で理想とするボリューミーなニットウエアを作れるか、そういうことを考える工程こそクールでファッショナブルだと思う。

WWD:一方で、サステナビリティを自分ごと化しきれない学生もいる。

ステラ:素材の製造過程で行われていることを知れば、迷いもなくなるんじゃないかしら。たとえば、「こちらのレザーは、牛を殺して人々がガンになるようなリスクのある化学薬品を使いながら作られています。加えて、森林を伐採して作られた穀物は、飢餓に苦しむ人々ではなく、バッグになるための牛の食糧になっています」としか思えない素材と、「こちらの“マッシュルームレザー“は、そうした犠牲がなく作られています」と思える素材。この2つを並べられた状態で前者と後者を迷うなんてありえないと思う。必要なのは、十分な情報と代替素材へのアクセス。そして、サステナブルな選択をしやすくなる法律。昨日環境大臣にお会いした際には、「責任は私でもなく、若手でもなく、行政側にあるのよ」ときちんと伝えたわ。

WWD:トークショーでは、「作る責任との狭間で葛藤しています」と言った悩める学生からの質問が印象的だった。

ステラ:彼らとの交流は楽しかった。私の世代は孤独だったから。今私が実践していることの価値を本当に理解してくれているのは、若い世代の人たちだと感じている。

ショーは見る人が動物と地球への敬意を思い出すきっかけに

WWD:パリで発表したばかりのコレクションでも多くのイノベーティブな代替素材が登場した。

ステラ:スネークレザーのように見える素材は、キノコの菌糸体由来。スパンコールもすべて木材や再生可能なバイオマス原料からできているの。従来のスパンコールは石油やガソリンから作られていて、マイクロプラスチックを発生させるし、分解されないし地球にとっては悪いことばかり。正直、もっと厳しく規制されるべきだと思う。スネークのモチーフを使ったのは、かつて人間が文化の中で、蛇をとても神聖な存在として扱ってきた歴史を祝福する目的もあった。今では残虐に殺されて皮をはがれている蛇もいる。でも昔は蛇を尊敬し、崇拝していた。多くの動物との関係性についても、同じようなことが言える。特に日本人に対して声を大にして言いたいのは、捕鯨は禁止すべきということね。

WWD:近年はショー会場で新聞を配ったり、マルシェを開催したりと、多くの情報を発信しているのは、人々を教育するため?

ステラ:私はただ情報を伝えたいだけなの。動物の命の尊さや、当たり前に使用している素材の環境負荷を少しでも人々に思い出してほしい。そしてそれを美しい形で伝えようと努力している。例えば昨シーズン発表したニットウエアも、誰もあれがペットボトルから作られているなんて分からない。見た人の多くは「すごいデザイン!」って思うだけ。でも、たった一人でもちゃんと読んで、いろんな情報を知ってくれたらそれでいい。誰もやらないのだから、それが私の役割なんだと自覚している。

WWD:特に若い世代には、ステラと考えを共有する人物も多いはず。ファッションや音楽、アートなど今注目している若手はいる?

ステラ:情熱を持って活動している人たちはたくさんいると思う。ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)とかはまさにそうだけど、残念ながらファッション業界の中では本当に少ない。細かくは追えていないけど、若いデザイナーが私と同じような視点を持っていることは知っているし、これからの産業にはそういう人たちにあふれてほしいと願っているわ。

The post ステラ・マッカートニー、サステナに迷い、向き合う次世代に語る責任ある創造 appeared first on WWDJAPAN.

ステラ・マッカートニー、サステナに迷い、向き合う次世代に語る責任ある創造

デザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)がこのほど来日し、三越伊勢丹が主催する「三越伊勢丹ミライアワード」に参加した。「三越伊勢丹ミライアワード」は、さまざまな企業から集めた残反などを素材に、服飾学校の学生たちが作品づくりに取り組むアワード企画。2023年に続く2回目の開催となった今年は、エスモード東京校、東京モード学園、文化服装学院の学生らが参加した。

ステラは同アワードの審査員を務めたほか、文化服装学院で開催された特別トークショーにも登壇。浅尾慶一郎環境大臣と近藤詔太・伊勢丹新宿本店店長と共に、サステナビリティに取り組む意義などについて語った。イベントを終えたステラに、若手に期待することや今のファッション産業についての考えを聞いた。

WWD:「三越伊勢丹ミライアワード」に参加した感想は?

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):とても楽しかったわ。学生たちの作品はどれも非常にレベルが高くて、本当に驚いた。彼らがどれだけ真剣に取り組んだのかが、作品を通じてしっかりと伝わってきた。次世代デザイナーの作品を審査する機会はたびたびあるけど、ここまで優秀な作品ばかりのアワードは珍しい。優秀作品を選ぶのが本当に大変だったくらいよ。

WWD:若手のクリエイションを評価する際に大事にしている視点は?

ステラ:創造性とアイデア、パターンカッティングの精度といったテクニック。そしてサステナビリティ。それから、よく学生たちに聞くのは、自分がそれを本当に着たいかどうか。コスチュームではなく、ちゃんと着たいと思うものに仕上げているかは大切だと思う。

責任あるクリエイションこそファッショナブル

WWD:サステナビリティに真面目に取り組もうとするあまり、自分らしいクリエイションを発揮しきれない学生も多い印象だ。

ステラ:サステナビリティがクリエイションの障壁になってはいけないと思う。もちろん、素材のバリエーションには制限があるけど、本来そういう時こそよりクリエイティビティーを発揮するべきだと思う。私でさえいまだに使いたい素材はあっても、デザインを変えなければいけなかったり、欲しい色が実現しなかったり、毎度何かしらの壁にぶつかって奮闘している。でも、どうやったら“マッシュルームレザー“を調達できるか、ペットボトル由来の糸で理想とするボリューミーなニットウエアを作れるか、そういうことを考える工程こそクールでファッショナブルだと思う。

WWD:一方で、サステナビリティを自分ごと化しきれない学生もいる。

ステラ:素材の製造過程で行われていることを知れば、迷いもなくなるんじゃないかしら。たとえば、「こちらのレザーは、牛を殺して人々がガンになるようなリスクのある化学薬品を使いながら作られています。加えて、森林を伐採して作られた穀物は、飢餓に苦しむ人々ではなく、バッグになるための牛の食糧になっています」としか思えない素材と、「こちらの“マッシュルームレザー“は、そうした犠牲がなく作られています」と思える素材。この2つを並べられた状態で前者と後者を迷うなんてありえないと思う。必要なのは、十分な情報と代替素材へのアクセス。そして、サステナブルな選択をしやすくなる法律。昨日環境大臣にお会いした際には、「責任は私でもなく、若手でもなく、行政側にあるのよ」ときちんと伝えたわ。

WWD:トークショーでは、「作る責任との狭間で葛藤しています」と言った悩める学生からの質問が印象的だった。

ステラ:彼らとの交流は楽しかった。私の世代は孤独だったから。今私が実践していることの価値を本当に理解してくれているのは、若い世代の人たちだと感じている。

ショーは見る人が動物と地球への敬意を思い出すきっかけに

WWD:パリで発表したばかりのコレクションでも多くのイノベーティブな代替素材が登場した。

ステラ:スネークレザーのように見える素材は、キノコの菌糸体由来。スパンコールもすべて木材や再生可能なバイオマス原料からできているの。従来のスパンコールは石油やガソリンから作られていて、マイクロプラスチックを発生させるし、分解されないし地球にとっては悪いことばかり。正直、もっと厳しく規制されるべきだと思う。スネークのモチーフを使ったのは、かつて人間が文化の中で、蛇をとても神聖な存在として扱ってきた歴史を祝福する目的もあった。今では残虐に殺されて皮をはがれている蛇もいる。でも昔は蛇を尊敬し、崇拝していた。多くの動物との関係性についても、同じようなことが言える。特に日本人に対して声を大にして言いたいのは、捕鯨は禁止すべきということね。

WWD:近年はショー会場で新聞を配ったり、マルシェを開催したりと、多くの情報を発信しているのは、人々を教育するため?

ステラ:私はただ情報を伝えたいだけなの。動物の命の尊さや、当たり前に使用している素材の環境負荷を少しでも人々に思い出してほしい。そしてそれを美しい形で伝えようと努力している。例えば昨シーズン発表したニットウエアも、誰もあれがペットボトルから作られているなんて分からない。見た人の多くは「すごいデザイン!」って思うだけ。でも、たった一人でもちゃんと読んで、いろんな情報を知ってくれたらそれでいい。誰もやらないのだから、それが私の役割なんだと自覚している。

WWD:特に若い世代には、ステラと考えを共有する人物も多いはず。ファッションや音楽、アートなど今注目している若手はいる?

ステラ:情熱を持って活動している人たちはたくさんいると思う。ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)とかはまさにそうだけど、残念ながらファッション業界の中では本当に少ない。細かくは追えていないけど、若いデザイナーが私と同じような視点を持っていることは知っているし、これからの産業にはそういう人たちにあふれてほしいと願っているわ。

The post ステラ・マッカートニー、サステナに迷い、向き合う次世代に語る責任ある創造 appeared first on WWDJAPAN.

廃棄予定の制服など活用 地域色豊かな衣装のリカちゃんが来館者をお出迎え 東急ステイ31施設

東急リゾーツ&ステイは、3月26日から6月18日まで、全国で運営するアパートメントホテル「東急ステイ」全31施設において、タカラトミーの着せ替え人形「リカちゃん」とのコラボレーションによる体験プロジェクト「Color Your STAY with Licca」を開催する。

本プロジェクトは、「ホテル×アップサイクル×リカちゃん」をテーマに、全国31施設それぞれにおいて、その地域ならではの特性を反映した衣装をまとったリカちゃんが来館者を迎える。素材には、入れ替えにより使用されなくなった同社の制服や制作者が着なくなった服などを活用している。展示されるのは、北海道から沖縄まで各地域をイメージして制作された31種類の“アップサイクル”衣装を着用したリカちゃんだ。制作は、コミュニティNewMakeの会員であるクリエイターが担当した。

また、サステナブルな視点を学ぶことができる体験型プログラムも実施予定。廃材を活用したリカちゃんの衣装をデザインする体験や、施設のイメージに合わせた地域クリエイターとのコラボレーション企画などが予定されている。プロジェクトは、宿泊者に限らず一般来館者も無料で参加可能。

The post 廃棄予定の制服など活用 地域色豊かな衣装のリカちゃんが来館者をお出迎え 東急ステイ31施設 appeared first on WWDJAPAN.

廃棄予定の制服など活用 地域色豊かな衣装のリカちゃんが来館者をお出迎え 東急ステイ31施設

東急リゾーツ&ステイは、3月26日から6月18日まで、全国で運営するアパートメントホテル「東急ステイ」全31施設において、タカラトミーの着せ替え人形「リカちゃん」とのコラボレーションによる体験プロジェクト「Color Your STAY with Licca」を開催する。

本プロジェクトは、「ホテル×アップサイクル×リカちゃん」をテーマに、全国31施設それぞれにおいて、その地域ならではの特性を反映した衣装をまとったリカちゃんが来館者を迎える。素材には、入れ替えにより使用されなくなった同社の制服や制作者が着なくなった服などを活用している。展示されるのは、北海道から沖縄まで各地域をイメージして制作された31種類の“アップサイクル”衣装を着用したリカちゃんだ。制作は、コミュニティNewMakeの会員であるクリエイターが担当した。

また、サステナブルな視点を学ぶことができる体験型プログラムも実施予定。廃材を活用したリカちゃんの衣装をデザインする体験や、施設のイメージに合わせた地域クリエイターとのコラボレーション企画などが予定されている。プロジェクトは、宿泊者に限らず一般来館者も無料で参加可能。

The post 廃棄予定の制服など活用 地域色豊かな衣装のリカちゃんが来館者をお出迎え 東急ステイ31施設 appeared first on WWDJAPAN.

ティピカが長期固定価格の直接取引でブラジルとコーヒー業界に新市場 ドトールが参画

コーヒー生豆のダイレクトトレードを行うオンラインプラットフォーム「ティピカ ホールディングス(TYPICA HOLDINGS)」は、3月26日に開催された日本・ブラジル経済フォーラムにおいて、長期固定価格によるダイレクトトレードの第一号案件に関する覚書を、両国首脳の立ち会いのもと発表した。ドトールコーヒー、ブラジルでコーヒーの倉庫・品質管理を担うACAUA、同じくブラジルで持続可能な農業向けの土壌ソリューションを提供するFertinutriがパートナーとして参画。ティピカは独自のプライシングモデルと新たなエコシステムの構築を通じ、2030年までに日・ブラジル間で10件、総額1000億円規模の市場創出を目指している。

投機マネーの流入で価格上昇「コーヒー2050年問題」

これまでコーヒー生豆の取引価格は先物市場の国際価格を基準として決定されてきた。しかし、近年は投機マネーの流入が激しく、過去1年間で約112%の価格変動が生じている。こうした価格の不安定さは生産者の収入に直接的な影響を与え、短期的な価格変動への対応が優先される結果、中長期的な視点での品質や生産量の安定が困難となっている。同様に、バイヤーにとっても調達コストの予測が難しくなり、経営の不確実性が増している。これにより、消費者へのコーヒー提供価格の上昇も進行しており、いわゆる「コーヒー2050年問題」を背景に、コーヒー産業全体のサステナビリティが脅かされている。

今回の覚書締結を契機に、ティピカは「世界中の志を同じくする生産者とバイヤーが同社のプラットフォームを通じて、実際のコストおよび付加価値に基づく長期固定価格の新たな枠組みによるダイレクトトレードを推進し、コーヒー取引の品質と経済性を向上させ、持続可能で発展的なコーヒー取引の実現を目指す」としている。

ドトールは年間取扱量の10%、1000トンの取引へ

ドトールはこの取引で年間最大1000トンのコーヒーを最大10年間取り扱う。1000トンは、同社の年間のコーヒー取扱量の10%に相当する。26日に開かれた会見でドトールコーヒーの星野正則社長は、「コーヒー生豆の価格高騰に加え、日本側においては円安による為替の影響もあり、非常に厳しい状況が続いている。今後の見通しも不透明である中、価格の安さだけを追求した品質の低いコーヒーを提供するのではなく、我々の使命はお客様に本当においしいコーヒーを適正な価格で安心して楽しんでいただくこと。その意味で、今回のような取り組みは、有益だ」と話している。

ティピカHDの後藤将CEOは、「ティピカは2019年からコーヒー生産者とロースターをつなぐダイレクトトレードプラットフォームの信頼を地道に築いてきたが、コーヒーの生産と取引は、国や地域によってビジネス習慣や宗教、文化などが大きく異なる非常に複雑な市場。ただオンラインプラットフォームを構築しただけでは機能しない。その中で今回、ドトールコーヒーからの強いコミットメントを得られたことは、大きな前進だ。例えば、『これだけの物量を、これだけの期間で』というような明確な条件があることで、生産者に対しても安定的な需要があることを示すことができた。これは非常に意味のある一歩だ」と話している。

ブラジルで148年続くコーヒー農園Fazenda Amizadeのマルセロ・カイシェタ・バルボサ・パテルノ氏は、「長年コーヒーに携わってきて、自分が知る限り、このような仕組みは世界初だ」とその意義を語っている。

The post ティピカが長期固定価格の直接取引でブラジルとコーヒー業界に新市場 ドトールが参画 appeared first on WWDJAPAN.