【ギャラン堂】少女から大人へ……「70年代の岩崎宏美」の軌跡を知る10枚をギャランティーク和恵が聴く

みなさんこんにちは! いかがお過ごしでしょうか? ギャランティーク和恵です。「レコードショップ ギャラン堂」3か月ぶりのオープンです! ……って、3か月もお店休むなんて随分な殿様営業だこと! まぁ、「ギャラン堂」は“架空”のレコードショップですし、商店街のなかでひっそり気ままにやっているようなそんなお店ですから、そのくらいのユルいペースでどうか宜しくお願いいたします。でも、そんな寂れた商店街の活気を取り戻すため、2軒先のナショナルの電気屋さんとお向かいの金物屋さんと協力して町おこしカラオケ大会を開き、商店街のアイドルとして自慢の美声を響かせちゃったりする今日この頃です!(妄想開始)

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

この「レコードショップ・ギャラン堂」では、各レコード会社からリリースされる歌謡曲のコンピレーションCDや復刻アルバムCDなどから、和恵イチ推しの1枚をピックアップしてみなさんにご紹介しています。レビューを読んで気になったらぜひお買い求めくださいね! 「ギャラン堂」に買いに来てくれると嬉しいのですが、何度も申し上げますが「ギャラン堂」は架空のレコードショップですので、間違ってもネットで探したりしないでくださいね……。

 

【今月の推薦盤】

「岩崎宏美 紙ジャケ復刻シリーズ(10タイトル)」 各2300円(税別)

今月ご紹介するのは、紙ジャケにて復刻した岩崎宏美さんが70年代にリリースしたオリジナル・アルバム10タイトルです。2007年よりビクターにて発売されて以降、入手困難となっていたこのシリーズを、2018年6月27日にタワーレコードが限定復刻してリリース。ビジュアルの再現性の高さをそのままに、価値あるボーナス・トラックの追加収録などでさらにヴァージョンアップした完全生産限定盤・紙ジャケCDとなっています。

 

この10枚のアルバムでは、1975年にデビューした16歳から二十歳を越えるまでの思春期から大人へと変貌してゆく過程があり、デビューした時点で既に抜群の歌唱力を持っていた彼女ではありますが、まだ少女の面影を残した初々しいその声が、1年1年を重ねるごとにつれ、憂いと色気を帯びて深化してゆく彼女の成長を垣間見ることができます。歌うことで初恋や失恋や様々な感情を経験していく歌手としての青春時代は、その楽曲の数だけ濃密な経験を重ねた分、普通の女の子とは違う速度で大人になっていくのです。

 

今回、岩崎宏美さんの70年代の初期のアルバムを取り上げるにあたって、ワタシが注目していきたいのは「母音」の声色の変化です。デビュー当初のまだ初恋しか知らないような初々しい声が、失恋の歌を歌い重ねてゆくことでゆっくりと悲しみの色に染まっていく過程を、彼女の伸ばす母音の音色に見ることができます。それこそが、岩崎宏美さんという歌手の本質的な魅力であり、彼女が女として成長してゆく過程とともに、その時々の同世代として生きるの女の子、もしくは女たちの抱く「悲しみ」を代わりに背負って歌い続けた慈悲深き行いが、いずれ「聖母たちのララバイ(マドンナたちのララバイ」)という歌と出会いで、彼女をマリア様の域へと到達させるわけです。

 

ひとりの少女が「歌」によって悲しみの色に気づき、その色を愛し、そして深く染まってゆく……、そんな女としての業さえ感じる彼女の憂いある声の魅力を、この10枚でぜひ感じ取ってもらえたらと思います。

(撮影:下村しのぶ)

 

「あおぞら +1」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1975年9月5日

1. ロマンス(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. はだしの散歩(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
3. ささやき(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
4. 私たち(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
5. 二重唱(デュエット) (作詞: 阿久 悠、作・編曲: 萩田光雄)
6. 空を駈ける恋(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 馬飼野康二)
7. 愛をこめて(作詞: 千家和也、作・編曲: 穂口雄右)
8. 涙のペア・ルック(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
9. 月見草(作詞: 阿久 悠、作曲: 筒美京平、編曲: 萩田光雄)
10. 美しいあなた(作詞: 千家和也、作・編曲: 穂口雄右)
11. この広い空の下(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 馬飼野康二)
12. そうなのよ <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
ファーストアルバムは、特大平仮名で「あ」「お」「ぞ」「ら」と書かれた、当時のビクターによくあるタイポセンス皆無のジャケットデザイン。麻丘めぐみさんとか仲 雅美さんのレコードにもよく見かけます。ま……それは置いておいて、阿久 悠/筒美京平コンビによる5曲目の「二重唱(デュエット)」でデビューを果たした彼女の声は朗らかに初々しくも、しっかりと情感を表現できる歌唱力はすでに身につけていて、16才にしてすでに貫禄があります。このデビュー曲以降、阿久 悠センセーは彼女の成長を側で見守るかのように、その年頃の恋の喜びや悲しみなどを歌で経験させながら、思春期の多感な時期をしっかりとサポートしていくのです。おすすめは8曲目「涙のペア・ルック」(作曲/筒美京平)、そしてボーナス・トラック「そうなのよ」(作曲/筒美京平)。

 

「ファンタジー +10」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1976年2月10日

1. パピヨン(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. キャンパス・ガール(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
3. ファンタジー(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
4. 愛よ、おやすみ(作詞: ちあき哲也、作・編曲: 筒美京平)
5. 感傷的(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
6. おしゃれな感情(作詞: ちあき哲也、作・編曲: 筒美京平)
7. ひとりぼっちの部屋(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
8. グッド・ナイト(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
9. 月のしずくで(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
10. センチメンタル(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. パピヨン(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
12. キャンパス・ガール(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
13. ファンタジー(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
14. 愛よ、おやすみ <ボーナス・トラック>
15. 感傷的 <ボーナス・トラック>
16. おしゃれな感情(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
17. ひとりぼっちの部屋(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
18. グッド・ナイト <ボーナス・トラック>
19. 月のしずくで(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>
20. センチメンタル(オリジナル・バージョン=DJ抜き) <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
当時人気DJだった「糸井五郎」さんがノン・ストップで楽曲を繋げていくという、セカンド・アルバムにして企画性がかなり高い珍盤にして名盤。数曲を除いてほとんど作曲は筒美京平センセーによるもの。当時ディスコ・サウンドに傾倒していた京平センセーが、岩崎宏美というDIVAを手に入れて量産されていく上質なディスコ歌謡を堪能できます。おすすめは4枚目のシングルでもある「ファンタジー」。やはり名曲。そして4曲目の「愛よ、おやすみ」もおすすめ。後に香坂みゆきさんもカバーされています。

 

「飛行船 +2」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1976年7月25日

1. 未来(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
2. 地平線の彼方(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
3. サマー・グラフィティ(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
4. ワンウェイ・ラブ(作詞: 松本隆、作・編曲: 萩田光雄)
5. 夏からのメッセージ(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
6. ケン待っててあげる(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
7. 霧の日の出来事(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
8. さよならがビショビショ(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 穂口雄右)
9. 美しい夏(作詞: 松本 隆、作・編曲: 萩田光雄)
10. 愛の飛行船(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. 霧のめぐり逢い <ボーナス・トラック>
12. 感傷時代 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
1曲目いきなり「未来」で急上昇! 飛行船はこの曲で夏の大空へと飛び立ちます。この「未来」はもちろん、収録された曲はどれも名曲で、筒美京平さんは然り、萩田光雄さん、穂口雄右さんと、編曲家としても才能高き彼らによるソングライティングもあり、そこがいい意味で一癖ある通好みなアルバムとして仕上がっています。その中でも一押しは「ワンウェイ・ラブ」「美しい夏」。萩田光雄さんのソングライティングとアレンジの美しさを堪能されたい。アーリー岩崎宏美アルバムのなかでワタシ的ベスト3。

 

「ウィズ・ベスト・フレンズ +2」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1977年5月25日

1. 悲恋白書(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 萩田光雄)
2. 砂の慕情(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
3. メランコリー日記(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 青木望)
4. わたしの1095日(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
5. 平行線(作詞: ちあき哲也、作曲・編曲: 穂口雄右)
6. 学生街の四季(作詞: 阿久 悠、作曲: 川口真、編曲: 萩田光雄)
7. パパにそむいて(作詞: 阿久 悠、作曲: 三木たかし、編曲: 田辺信一)
8. コンサート(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
9. 花のことづけ(作詞: 櫛田露孤、作曲: 中山大三郎、編曲: 田辺信一)
10. 想い出の樹の下で(作詞: 阿久 悠、作・編曲: 筒美京平)
11. 愛をどうぞ(作詞: 阿久 悠、作曲: 大野克夫、編曲: 萩田光雄)
12. さよならそして自由へ(作詞: 中山大三郎、作曲: うすいよしのり、編曲: 田辺信一)
13. ドリーム <ボーナス・トラック>
14. スイート・スポット <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
このアルバムで一気に岩崎宏美さんのヴォーカルが大人びてきます。この頃にもしや失恋なんかをしたのでしょうか……? 全編彼女の歌声にどこか憂いが漂っています。作曲陣も、筒美京平さん以外に川口真さん、三木たかしさん、そして中山大三郎さんまで参加しており、京平センセーによるリズミカルでポップな楽曲から、しっとりと歌い上げるような楽曲へとシフトしています。恐らく彼女も大人になるにつれ、そういう楽曲と出会いたいという気持ちがあったのではないでしょうか。とはいってもやはり8枚目のシングルでもある京平センセー作「想い出の樹の下で」は最高なわけです。この一聴明るく突き抜けるような歌も、ちゃんと恋を知ってそれを失った悲しみを知った上での声になってます。だからこそ切ない。ボーナス・トラックで加えられた7枚目のシングル「ドリーム」と聴き比べればよく分かります。7枚目と8枚目の間に一体何があったというのでしょう?

 

「思秋期から…男と女 +1」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1977年10月5日

1. 思秋期(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
2. ランボルギーニが消えて(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
3. 男と女(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
4. 恋夏期(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:三木たかし)
5. 個人指導(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口真)
6. 煙草の匂いがする(作詞:阿久 悠、作曲:川口真、編曲:船山基紀)
7. メランコリー・ジュース(作詞:阿久 悠、作曲:川口真、編曲:船山基紀)
8. 幸福号出帆(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口真)
9. チェイス(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
10. ピアノ弾きが泣かせた(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:萩田光雄)
11. ウエルカム・ホテル(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:萩田光雄)
12. BOO BOO(作詞:阿久 悠、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
13. 折れた口紅 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
このアルバムにして、ついに彼女の楽曲は筒美京平センセーの手から離れます。しかし作詞は変わらず全曲阿久 悠センセーによるもの。彼女のヴォーカルを最大限に活かしたスローでメランコリックな曲調を中心としたアルバムになっています。大人へと脱皮していく彼女のためにじっくりと作り込まれたような、作り手の愛情さえも感じる名盤です。このアルバムが出来上がった時、京平センセーはどう思ったでしょうか。ディスコ・サウンドよりも叙情的な楽曲のほうが、本来の彼女の素質に合っているのかもしれない……と感じたかもしれません。そのくらい、彼女の魅力が存分に引き出されています。(しかし京平センセーはその後「シンデレラ・ハネムーン」という最強ディスコ歌謡で彼女を次のステージへ誘うのですが……)。アルバムタイトル曲「思秋期」は間違いなく名曲ですが、それ以外もどれもクオリティー高く名曲でおすすめするのが難しいほど。アーリー岩崎宏美アルバムのワタシ的ベスト1。

 

「二十歳前… +4」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年4月5日

1. 二十才前(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:穂口雄右)
2. クエッション・マーク(作詞:阿久 悠、作曲:三木たかし、編曲:船山基紀)
3. 熱帯魚(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口 真)
4. 夏のたまり場(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:川口 真)
5. ニッカ・ポッカ(作詞:阿久 悠、作曲:三木たかし、編曲:船山基紀)
6. ザ・マン(作詞:阿久 悠、作曲・編曲:穂口雄右)
7. 何かが起こりそうな朝(作詞:東海林良、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
8. 季節のかほり(作詞・作曲:丸山圭子、編曲:佐藤 準)
9. つめたい抱擁(作詞:東海林良、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)
10. ヴェニスの花嫁(作詞:中里 綴、作曲・編曲:萩田光雄)
11. 暁(作詞:中里綴、作曲・編曲:萩田光雄)
12. 今様つづり(作詞・作曲:丸山圭子、編曲:佐藤 準)
13. あざやかな場面 (ボーナス・トラック)
14. いちご讃歌 (ボーナス・トラック)
15. ひとりぼっちの部屋 (イントロ・ロング・バージョン) (ボーナス・トラック)
16. 二十才前 (イニシャル・バージョン) (特別収録音源)

 

<和恵のチェック・ポイント>
前回のアルバム「思秋期」で19歳を迎えた後、残り最後の10代を歌った次のアルバム「二十歳前…」ではどんな二十歳前が描かれているのか……と思いきや、憂いに満ちた前作とは打って変わって割と歌謡色が強めで元気な歌が多く、歌唱も力強い。B面(7曲目以降)からは東海林 良や中里 綴や丸山圭子などの新しいクレジットも見られ、新しい作家陣で彼女の次なる歌手としての方向性を探っているような、少し迷いのあるようなアルバム。11枚目のシングル「思秋期」よりも先にリリースしていた10枚目のシングル「熱帯魚」を、12枚目のシングル「二十歳前」と合わせてアルバムとして収録するためのアルバムだったのか。その「熱帯魚」のB面だった「夏のたまり場」という曲が良曲。同じく「二十歳前」のB面で、穂口雄右さんらしいドラマティックなアレンジが素晴らしい「ザ・マン」も良き。「ニッカ・ポッカ」という謎なタイトルは内容もどこかやけっぱち感があって謎。

 

「パンドラの小箱 +4」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年8月25日

1. 媚薬(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
2. パンドラの小箱(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
3. コントラスト(作詞: 島 武実、作曲: 筒美京平、編曲: 船山基紀)
4. パンドラの小箱(バリエーション)(作曲・編曲: Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ)
5. ピラミッド(作詞: 橋本 淳、作曲・編曲:筒美京平)
6. カンバセーション(作詞: 橋本 淳、作曲・編曲:筒美京平)
7. シンデレラ・ハネムーン(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
8. 想い出は9月ゆき(作詞: 島 武実、作曲・編曲:筒美京平)
9. ミスター・パズル(作詞: 島 武実、作曲・編曲:筒美京平)
10. L(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
11. 南南西の風の中で(作詞: 阿久 悠、作曲・編曲:筒美京平)
12. パンドラの小箱(リプライズ) (作曲・編曲: Dr.ドラゴン&サウンド・オブ・アラブ)
13. さよならの挽歌 <ボーナス・トラック>
14. 夕暮れメヌエット <ボーナス・トラック>
15. 春おぼろ <ボーナス・トラック>
16. 吐息ばかり <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
「想い出の樹の下で」以降、筒美京平センセーの楽曲から離れて、二十歳前の多感な少女から大人の女へと変わるための“脱皮”期間を見事消化した後、手を広げて待ち受けていたかのように、とびきりの楽曲(しかもやっぱりディスコ)で大人の世界へと誘った京平センセー全編作曲によるアルバム「パンドラの小箱」。その楽曲の難解さとサウンドの重厚さに、京平センセーの彼女への思い入れと力の入り用が伺えます。ファンキーなベーズに腰に響く重めなドラムの音でスタートする1曲目「媚薬」からすでに攻めまくり、その後も次々と難解かつダンサブルでエキゾチックな曲たちを歌いまくる彼女には、1年前のアンニュイな時代にケリをつけたような潔ささえ感じます。しかし14枚目のシングルでヒット曲でもある「シンデレラ・ハネムーン」では、早くも不倫の恋をスタートさせており、思春期の憂いのベクトルは傷ついた後の強さを身につけて、大人の女の憂いへとさらに深化を続けるのです。そこが彼女の宿命なのでしょうか。アーリー岩崎宏美アルバムのワタシ的ベスト2。

 

「ALBUM +10」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1978年10月25日

1. この道
2. 赤とんぼ|七つの子
3. 宵待草
4. 浜千鳥
5. 花嫁人形|叱られて
6. 花
7. 雪の降る町を
8. ペチカ
9. 椰子の実
10. 青い目の人形|赤い靴
11. ちいさい秋みつけた
12. 冬の夜|母さんの歌
13. 青い目の人形 (NHK「みんなの童謡」より) <ボーナス・トラック>
14. ぼくのプルー (NHK「みんなのうた」) (モノラル録音) <ボーナス・トラック>
15. 走馬燈 (NHK「みんなのうた」) (モノラル録音) <ボーナス・トラック>
16. 春おぼろ <オリジナル・カラオケ集VI>
17. 夏に抱かれて <オリジナル・カラオケ集VI>
18. スローな愛がいいわ <オリジナル・カラオケ集VI>
19. 女優 <オリジナル・カラオケ集VI>
20. 銀河伝説 <オリジナル・カラオケ集VI>
21. 愛の生命 <オリジナル・カラオケ集VI>
22. 摩天楼 <オリジナル・カラオケ集VI>

 

<和恵のチェック・ポイント>
ここで突然、童謡のカバーアルバムをリリース。おかっぱヘア(自前)にかすりの着物を来た童(わらべ)スタイルのジャケ写。それはそれはもう良くお似合い。美しいメロディと詞を持つ童謡にチャレンジしたいと思うのは、歌手としてさらなる成長を望む上でのことだと思いますが、伸びやかな彼女の歌唱と、トレードマークでもあるおかっぱヘアというポテンシャルを活かし、スムーズに童謡の世界へ誘ってくれます。

 

「恋人たち +7」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1979年3月9日

1. 恋人たち(作詞: 阿木燿子、作曲・編曲:筒美京平)
2. 白いバラ(作詞・作曲:Cat Stevens、訳詞:片桐和子)
3. シェルブールの雨傘(作詞: Jacques Demy、作曲:Michel Legrand、訳詞: 片桐和子)
4. ラ・ボエーム(作詞:Jacques Plante、作曲:Charles Aznavour、訳詞:菅美沙緒)
5. 黒いオルフェ(作詞・作曲:A.Maria-L.Bonfa、訳詞:片桐和子)
6. この想いをあなただけに(作詞: Luciano Beretta、作曲:Alberto Anelli、訳詞:なかにし礼)
7. 行かないで(作詞・作曲:Jacques Brel、訳詞:菅美沙緒)
8. 禁じられた遊び(Traditional 作詞:片桐和子)
9. マイ・ラブ(作詞・作曲:Paul & Linda McCartney、訳詞:櫛田露孤)
10. 白い恋人たち(作詞: Pierre Barouh、作曲:Francis Lai、訳詞:永田文夫)
11. 思い出さないで(作詞・作曲:中山大三郎、編曲:青木 望)
12. 甘い生活 <ボーナス・トラック>
13. 再会 <ボーナス・トラック>
14. ジョニイへの伝言 <ボーナス・トラック>
15. 五番街のマリーへ <ボーナス・トラック>
16. ブーツをぬいで朝食を <ボーナス・トラック>
17. 憎みきれないろくでなし <ボーナス・トラック>
18. 立ちどまるなふりむくな <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
前回の童謡カバーに続き、お次は洋楽・映画音楽をカバーしたアルバム「恋人たち」をリリース。そのタイトル曲「恋人たち」のみ阿木燿子センセーと筒美京平センセーによるオリジナル曲、そして11曲目に何故か「思い出さないで」という島崎恵子という歌手がリリースした曲のカバーが唐突に収録されています(のちにシングルカット)。当時、伊東ゆかりさんが司会を勤めていたTBSの日曜日夜11時に放送していた「SOUND INN ‘S’」という映画音楽や洋楽を主に歌う番組があり、そこに出演できるのは、そういった楽曲をレパートリーとして歌える実力のある大人の歌手たちで、彼女もそのランクの歌手へレベルアップするための挑戦だったのだろうと想像出来ます。

 

「10カラット・ダイヤモンド +7」<タワーレコード限定>

オリジナル発売:1979年10月5日

1. スリー・カラット・ダイヤモンド(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:川口 真)
2. マチネへの招待(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:穂口雄右)
3. 東京-パリ(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:穂口雄右)
4. 麗しのカトリーヌ(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:佐藤 準)
5. めぐり逢い伝説(作詞:阿木燿子、作曲:筒美京平、編曲:後藤次利・船山基紀)
6. 小夜曲(セレナーデ)(作詞:阿木燿子、作曲:筒美京平、編曲:後藤次利・船山基紀)
7. 水曜の朝、海辺で…(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:船山基紀)
8. 哀しみは火のように(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:佐藤 準)
9. テーブルの下(作詞:三浦徳子、作曲・編曲:船山基紀)
10. 微笑の翳り(作詞:阿木燿子、作曲・編曲:川口 真)
11. 夏に抱かれて <ボーナス・トラック>
12. ラブ・アラベスク <ボーナス・トラック>
13. 万華鏡 <ボーナス・トラック>
14. 泣きながら目覚めて <ボーナス・トラック>
15. 砂の伝説 <ボーナス・トラック>
16. 時の女神 <ボーナス・トラック>

 

<和恵のチェック・ポイント>
カバーアルバムを2枚挟み、前作「パンドラの小箱」以来のオリジナル・アルバムは、シングルカットなしのアルバムのみでしか聴けない楽曲ばかりで構成されていて、筒美京平センセー、川口 真センセー、穂口雄右センセー、船山基紀センセー、佐藤 準センセーの5人が2曲ずつ書き下ろした豪華な内容です。そして、作詞が阿木燿子女史と三浦徳子女史という気鋭の女性作詞家であることもポイント。梓みちよ「淋しい兎を追いかけないで」の岩崎宏美版といった感じの1曲目「スリー・カラット・ダイヤモンド」を皮切りに、気品あるエレガントな大人の女性が次々と描かれます。ビッグネームに並んであまり馴染みのない佐藤 準さんですが、しかし彼の楽曲がこのなかで際立ってとても良いです。個人的に歌謡曲のなかでも1番好きなサウンドと世界観で、個人的にはアーリー岩崎宏美アルバムベスト3に入れたい気持ち満々ですが、通マニア好みなアルバムともいえるので残念ながら外します。でもおすすめ。

 

ということで、70年代にリリースされた、アーリー岩崎宏美アルバム10タイトルをレビューさせていただきました。歌手として大尊敬している岩崎宏美さんを、私自身も歌手でありながら客観的にレビューするなんておこがましく恐縮しまくりでしたが、歌手として、そして女として、歌を歌い重ねることで深みを増してゆくその変化をこれらのアルバムと共に堪能していただきたく、取り上げさせていただきました。出来れば1枚目から全部通して聴いてもらいたい!

 

どのアルバムも名曲揃いで捨て曲がないように思えるのは、もちろん彼女に楽曲を提供する作家の皆さんの力の入り用が格別というのもあるでしょうが、どんな楽曲でもその魅力を100パーセント引き出すことが出来る岩崎宏美さんの歌唱力があってこそだと思います。だからこそ私たちは安心して、彼女の歌う歌に心を預けることが出来るのではないでしょうか。どのアルバムを買っても損はありません! ぜひとも、今回のレビューを参考に1枚でもお手に取っていただけると幸いです。

 

レコードショップ「ギャラン堂」、次回も素敵なアルバムをご紹介出来たらと思います。どうぞお楽しみに!(また3か月後とかにならないようにしなきゃ…)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さんがメンバーを務めるコーラスユニット・星屑スキャットが、9月29日、30日の2daysでライブ「惑星たちのダンステリア」を開催します。結成13年目にして初となるアルバム「化粧室」をリリースして勢いに乗る星屑スキャットの華麗なステージをお見逃しなく! チケットは公表発売中です!

【公演名】星屑スキャットLIVE 2018「惑星たちのダンステリア」
【開催日】2018年9月29日(土)1公演/30日(日)2公演

 

◆9月29日(土)
開場:17:30/開演:18:15
◆9月30日(日)
第1公演 開場:13:30/開演:14:15
第2公演 開場:17:15/開演:18:00

 

【会場】クラブeX(品川プリンスホテル内)
〒108-8611 東京都港区高輪4-10-30
TEL:03-3440-1111
http://www2.princehotels.co.jp/shinagawa/clubex/access.html

 

【料金】全席指定 ¥7000 (税込・入場時別途ドリンク代)
※未就学児童入場不可
※お一人様各公演4枚まで

 

【チケット発売中】
イープラス
ローソンチケット Lコード:72108
チケットぴあ Pコード:120-511

詳細はH.I.P.まで
公式HP→https://www.hipjpn.co.jp/archives/49753

 

撮影協力:天盛堂(亀戸)

今夜開店! 「レコードショップ ギャラン堂」第1回目は昭和歌謡の巨星・筒美京平の自選作品集を全曲紹介

みなさんこんにちは! いかがお過ごしでしょうか? ギャランティーク和恵です。4月から新しい企画「レコードショップ ギャラン堂」がスタートします! 「ギャラン堂」は“架空の”レコードショップ。歌謡曲・演歌に特化した、何となく亀戸の商店街あたりにありそうな街の古いCDショップといった感じでしょうか。店長はワタクシ和恵。街のみなさんからは「ギャラン堂の和恵ちゃん」って呼ばれてます!(妄想開始)

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

毎月、各レコード会社からリリースされる歌謡曲のコンピレーションCDや復刻アルバムCDなどから、和恵イチ推しの1枚をピックアップしてみなさんにご紹介します。レビューを読んで気になったらぜひお買い求めくださいね! 「ギャラン堂」に買いに来てくれると嬉しいのですが、何度も申し上げますが「ギャラン堂」は架空のレコードショップですので、間違っても本当に亀戸まで行って探したりしないでくださいね……。

(撮影:下村しのぶ)

 

【今月の推薦盤】
「筒美京平自選作品集 シティ・ポップス編」(ユニバーサル)
「筒美京平自選作品集 アイドル・クラシックス編」(ビクター)
「筒美京平自選作品集 AOR歌謡編」(日本コロムビア)

 

今月ご紹介するのは、2018年3月7日に発売された、日本ポップス史に燦然と輝く大ヒット作曲家「筒美京平」の作家活動50周年を記念して企画された、筒美京平本人の自選による作品集です。<AOR歌謡><アイドル・クラシックス><City Pops>をテーマで3枚、それぞれのレコード会社よりリリースされています。筒美京平センセーの作品集は過去にもたくさん出ていて、さかのぼること1997年に作家生活30周年を記念して作られた「HITSTORY」(「ヒットストーリー」と「ヒストリー」を兼ねたようなタイトル)というLPサイズの特別仕様ケースで4枚ずつパッケージされた計8枚組のベストセレクションCDが発売されたのがもう20年前(めまいがする……)。

 

さらに90年代は歌謡曲再評価ブームが花開いた年でもあり、レアグルーブ的観点でセレクトされたマニアも喜ぶラインナップで各レコード会社からリリースされた「筒美京平ウルトラベストトラックス」、2007年には作家生活40周年でリリースの6枚組「THE HIT MAKER ~筒美京平の世界~」、そして作家生活45周年ではレコード会社7社の合同企画で計7枚リリースされた「GOLDEN HITSTORY」など、過去にもたくさんの作品集がリリースされていますが、今回は筒美京平センセー「自選」といういままでにないアプローチでまとめられた作品集というのが大きなポイント。しかしほとんどが過去の作品集にも収録されているおなじみの曲がほぼ並んでいるわけですが、そうはいっても筒美京平センセー本人が選んでいるのか……と思うと、自身のその曲への評価や思い入れや好みなどを想像したりして改めて聴き直す面白さもあります。さらには、最近の歌謡曲再評価の傾向において外すことのできない「AOR」「アイドル」「シティーポップ」というカテゴリーに焦点を合わせてパッケージされているというところも特筆すべきポイントです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、この度この「筒美京平自選作品集」3タイトルをレビューさせていただくにあたり、まずは120曲一気に聴き通しました。筒美京平センセーの楽曲に浸ることのできる至福の時間……。まず感動したことは、京平センセーのクリエイティブの素晴らしさはさる事ながら、歌手たちも負けず劣らず素晴らしい表現者であるということです。そして京平センセーはその歌手たちの魅力や表現力を見事に引き出しているということがよくわかります。

 

逆にいえば、筒美京平メロディとは何だろう? とあらためて考察してみるも、実は決まった特徴やクセというものがあるわけでなく、その時代の流行に合わせたサウンドに適するメロディ、そしてそれを歌う歌手の声色、キャラクター、クセ、湿度などをしっかりと計算して作品に昇華させているのだと気付かされました。表現者でもありながら実に裏方的であり、職人的であります。だからこのCDは、筒美京平センセーの作品集でもありながら、収録されている歌手たちの素晴らしい個性と表現力にただただ浸ることのできる素晴らしいアルバムともいえます。ワタシが普段から聴き慣れている歌手でも今回新しい発見があったり、いままで知らなかった曲に心を鷲掴みにされて新しい涙を誘うものもありました。このCDを手に取った皆さん、ぜひ、主役の歌手たちそれぞれの歌の表現に耳を傾けてみてください。その表現がメロディとともに活き活きと耳に飛び込んできた時、自ずと作曲家・筒美京平がいかに素晴らしい作曲家であるかということに気づかされるでしょう。

 

このアルバムを聴き通しながら晴れた日の午後に散歩していると、イヤホンから次々と押し寄せてくる名曲の数々にふと感謝の気持ちがこみ上げてきて、思わず青空に向かって心の中で叫んでしまいました。「こんなに素晴らしい歌たちを生み出してくれた京平センセー、心の底からありがとう! あなたとこの時代に一緒にいれて本当に良かった! 」

 

【聞き流しレビュー】

1枚のアルバムを曲目順に1曲ずつ短いコメントでレビューする「聞き流しレビュー」のコーナーですが、今回は初回にして豪華版、全6枚120曲という特別仕様のアルバムをご紹介ということで、全曲レビューするのは書くほうも読むほうもウンザリしてしまいそうなので、とりあえず全曲目リストを掲載しつつ1行レビューを心がけて参ります。思い入れ強くて長くなったらゴメンね。短かすぎてもゴメンね。

 

1枚目「筒美京平自選作品集〜City Pops〜」(ユニバーサル/UPCY-7457~8)

【Disc1】

1.「黄色いレモン」藤 浩一(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これCity Pop? 1曲目からいきなりズッコケますが、筒美京平センセーの作曲家としてのデビュー曲であるこの曲は、藤 浩一さん以外にも泉 健二さん、望月 浩さん(また区別しにくい名前で覚えにくい……)などが競作でリリースしています。まだ初々しさが感じられる、朗らかで優しいメロディです。

 

2.「バラ色の雲」ヴィレッジ・シンガーズ(作詞/橋本 淳 編曲/森岡賢一郎)
グループ・サウンズの誕生とともに、筒美京平センセー始め、フリーの職業作曲・作詞家たちが誕生し、活躍の場が広がりました。

 

3.「ダーティー・ドッグ」尾藤イサオ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
尾藤イサオさんの表現力ハンパないっす。City Popというか、闇市という感じ。

 

4.「スワンの涙」オックス(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
オックス大好き! 野口ヒデトのハスキーな泣き声ヴォーカルが無邪気な少年のよう。

 

5.「白いハイウェイ」ブレッド&バター(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーにとって男性ヴォーカルは、ポップさという観点でどこか少年のような中性的な声質を好んでいたようで、特にブレバタのお兄さんのヴォーカルは最高に少年的でピュア。ワタシにとっても最高に好きな男性ヴォーカルの1人です。

 

6.「サザエさん」宇野ゆう子(作詞/林 春生 編曲/筒美京平)
ある意味City Pops。みんなご存知サザエさん。子供のころから聞き馴染み過ぎていたので気付かなかったけど、サウンドはバッチリ京平サウンドです。

 

7.「ひとりの悲しみ」ズー・ニー・ヴー(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」がヒットする前にGSの「ズー・ニー・ヴー」がリリースしていた歌詞違いの同曲。ヴォーカルの町田義人さんの震えるような声が「ひとりの悲しみ」感を醸し出しています。アレンジ、「また逢う日まで」とほぼ同じだけれども何かが違う。さてそれは何か。答えは2曲後に。

 

8.「悪っぽい人だけど」森山良子(作詞/小平なほみ 編曲/筒美京平)
「たいくつだったのね よくあることだわ」のメロディが秀逸。

 

9.「また逢う日まで」尾崎紀世彦(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
答えあわせです。正解は、グルーヴィーに上下激しく動きまくるベースラインです。そのグルーヴにキーヨの力強い歌唱が乗ると、「ひとりの悲しみ」からこんなにも壮大な歌に生まれ変わるんですね。

 

10.「お世話になりました」井上順之(作詞/山上路夫 編曲/筒美京平)
これほどにも、井上 順さんのキャラクターとヴォーカルでしか表現できない歌があるだろうか。

 

11.「雪が降るのに」黛ジュン(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
あぁ……この鼻にかかった喘ぐような声が好き! 一聴すると京平センセーにしては歌謡寄りに感じますが、何気に演奏がタイトでカッコいいのです。

 

12.「愛の挽歌」つなき&みどり(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これも一聴すると歌謡寄りな印象ですが、演奏がこれまたタイトでクール。前曲「雪が降るのに」と同じようなド頭の不思議なドラムフィル然り、かなりストイックなアレンジです。この2曲を並べるなんて流石だわ。それにしてもつなき&みどり夫妻のクレッシェンド歌唱は何度聴いてもクセになります。

 

13.「青春挽歌」かまやつひろし(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
ジャパニーズ・カントリー。ムッシュのカントリー歌唱は、藁葺き屋根、水車小屋、田んぼのあぜ道に咲く野の花、手ぬぐいを頭に巻いたおばあちゃん、そんな素朴な日本の田舎の景色が見えてくるのでスゴイのです。

 

14.「或る日」ザリバ(作詞/石津善之 編曲/矢野 誠)
矢野顕子さんが所属していたグループ。ちゃんと歌ってる(怒られるわ)。

 

15.「夏しぐれ」アルフィー(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。

 

16「忘れ雪」オフ・コース(作詞/松本 隆 編曲/矢野 誠)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。その2。そして太田裕美の誕生へと続く。

 

17.「セクシー・バスストップ」Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス(作詞/橋本 淳 編曲/高田 弘)
京平センセーが和製ディスコへと果敢に挑戦された頃に結成された覆面バンド。京平センセーも「Jack Diamond」と変名で作曲、コーラスは矢野顕子さん、ドラムに林立夫さん、ベースに後藤次利さん、ギターに鈴木 茂さんという豪華さ。しかしそれを隠して洋盤としてリリースしたそうな。

 

18.「ヒットマシーン」K・T-585 BAND(作詞/今野雄二 編曲/筒美京平)
こちらも和製ディスコへ果敢に挑戦された時期のものですが、このグループでは筒美京平名義で制作されています。当時レコード会社それぞれが企画盤としてリリースしていた「ステレオ・チェック」モノLPというのがあって、そこではミュージシャンたちが商業音楽から少し離れて好きなことをプロフェッショナルに追求できるという枠があったようで、京平センセーもこのグループでディスコ・サウンドを追求なされていたようです。

 

19.「たそがれマイ・ラブ」大橋純子(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
Aメロ「今は夏~」の出だし1発目をあのコードで歌いださせる感じの斬新さ。

 

20.「グッド・ラック」野口五郎(作詞/山川啓介 編曲/高田 弘)
ディスコ歌謡の名曲。着目すべきは編曲に高田 弘さんということですが、先ほどの「セクシー・バス・ストップ」も高田 弘さんということで、わりとディスコ・サウンドに長けてた方だったのかと改めて知りました。ワタシの中ではちあきなおみ「喝采」のアレンジャーとしての印象が強かったので。

 

21.「センチメンタル・ブルー」BUZZ(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
小出博志さんと東郷昌和さんによるフォーク・デュオ「BUZZ」。いい名前。何気にYMOの高橋幸宏さんや彼のお兄さんとの交流があったり、デビュー前のユーミンが詞を提供していたり、スノッブな方たちだったと見受けられます。小出さんの胸の奥をくすぐられるような優しい歌声が素晴らしい。

 

22.「ワールド・ファンタジー」レターメン(作詞/L.Rhee 編曲/大村雅朗)
なにコレ? オシャレ! レターメンって誰?! とWikiで調べると、アメリカのコーラス・トリオ(星屑スキャットみたいな?)なんですね。「セクシー・バス・ストップ」あたりの腰が揺れる重心重めのグルーヴから、水平飛行するようなライトな四つ打ち感あるグルーヴへ移行した78年あたりのディスコ・サウンド、ワタシの大好物です。同時期に作られた隠れた名曲「青い地平線」と同じアレンジやコード進行感。

 

【Disc2】
1.「ロキシーの夜」近田春夫(作詞/島 武実 編曲/小田健一郎)
ハルヲフォンから近田春夫としてのソロデビュー曲。近田春夫さんはロックミュージシャンにして歌謡曲研究家であり、特にヒットメーカーとしての筒美京平センセーの作曲法などを熱心に研究していたようです。

 

2.「ブルー・バタフライ」さとうあき子(作詞/松本 隆 編曲/瀬尾一三)
かなり危うい声……。

 

3.「ラスト・トレイン」宮本典子(作詞/三浦徳子 編曲/筒美京平)
ソウルフルなお声とソウルフルなお顔でキャラ立ちまくり。失恋の悲しみを振り払い立ち上がろうとする女性の心情を、彼女の伸びやかな歌唱が見事に表現しています。

 

4.「とりあえずニューヨーク」山下久美子(作詞/近田春夫 編曲/近田春夫)
ここでまた近田春夫さん×京平センセーの化学反応が。この曲の素晴らしさは、最後の最後に出てくる「とりあえずニューヨーク!」というコーラス部分です。取ってつけたように、いままでにまったく出てこなかったメロディとリズム展開でフィナーレを迎える、こういうのをワタシは「デザートメロ」と呼んでおります。

 

5.「ドラマティック・レイン」稲垣潤一(作詞/秋元 康 編曲/船山基紀)
あぁ……また京平センセーが好きそうな声! プラスティックで中性的で甘く、ワタシもこんな声だったら京平センセーに曲を書いてください! ってお願いするのに。

 

6.「夏のクラクション」稲垣潤一(作詞/売野雅勇 編曲/井上 鑑)
イントロが流れると同時に目に浮かんでくる、夏の強い日差しや湿った風やアスファルトの蜃気楼なんかが、稲垣潤一さんの甘酸っぱいヴォーカルとともに立ち上がってきます。

 

7.「Romanticが止まらない」C-C-B(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
筒美京平meetsエレクトロには欠かせない右腕的存在、船山基紀さんの素晴らしいアレンジ。そしてヴォーカルの笠 浩二さんのこれまた少年っぽい声で、地声とファルセットのあいだを行き来するギリギリの音域を歌う感じがあどけなくタマラナイ。

 

8.「その後で殺したい」SHOW-YA(作詞/秋元康 編曲/松下 誠)
筒美京平meetsロックバンド。というのはワタシの中ではあまり結びついてなかったのですが、なるほどこうなるのかと納得。寺田恵子ネーサンのヴォーカルが見事に引き立つメロディと展開が素晴らしい。

 

9.「野性の風」今井美樹(作詞/川村真澄 編曲/久石 譲)
洗いざらしの白いシャツにブルージーンズ、真っ赤なルージュ。そんな感じ。

 

10.「HI! HI! HI!」森川由加里(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
何だこのパワーソングは! エキゾでパワーソング、なんかバブルな感じでイイね。ベッド・インとかにカバーしてもらいたい。もうしてるかもしれないけど。

 

11.「夏の二週間」谷村新司(作詞/康 珍化 編曲/船山基紀)
初めて知りました。

 

12.「兆しのシーズン」中島みゆき(作詞/中島みゆき 編曲/瀬尾一三)
大好きな歌。中島みゆきさんのシングルのB面だったみたいです。過去にも「肩幅の未来」(長山洋子)、「美貌の都」(郷ひろみ)と京平センセーとの共作はありますが、これも誰かに提供する予定だったのでしょうか。でも、みゆきさんの蜃気楼のように危うく揺れるボーカルがこの曲にすごく合っていると思います。

 

13.「カナディアンアコーデオン」井上陽水(作詞/井上陽水 編曲/佐藤 準)
楽しいね。

 

14.「強い気持ち・強い愛」小沢健二(作詞/小沢健二 編曲/筒美京平・小沢健二)
筒美京平meets渋谷系。京平センセーは90年代も果敢に新しい音楽と交わっていきます。というよりむしろ、渋谷系と呼ばれるミュージシャンからのリスペクトによるアプローチによるコラボレーションでもありました。クレジットでもわかるように、共同作業により作り出されたサウンドから、お互いへのリスペクトと愛を感じます。青空に突き抜けるような歌。ワタシの青春そのもの!

 

15.「MUST BE HEAVEN」中西圭三(作詞/高見沢俊彦 編曲/小西貴雄)
恐縮ながら初めて聴きました。中西圭三さんの歌は、もちろん色んなヒット曲で耳にしていましたし、歌唱力の素晴らしさは承知でしたが、こんなにも引き込まれ、胸をグっと掴まれた歌唱は久しぶりです。歌い出しからラストへ向かうほどに少しずつ声が擦れていく中、それでも絞り出すように歌い上げる中西圭三さんのヴォーカルの凄みに、つい涙が込み上げていました。

 

16.「恋のルール・新しいルール」ピチカート・ファイヴ(作詞/小西康陽 編曲/小西康陽・福富幸宏)
筒美京平meets渋谷系その2。これもワタシの青春そのもの。小西康陽さんの京平センセーへのリスペクトは様々な作品や仕事を見てもよく分かります。しかしこの曲、かなりピチカートっぽく、アレンジの力が大きいにしても、まるで小西さんが作曲しててもおかしくないくらいピチカートなんですが、京平センセーがピチカートに寄せたのしょうか? 真偽は分かりませんが、京平センセーの呑み込みのよさみたいなものを感じます。

 

17.「Desire」DOUBLE(作詞/SACHIKO 編曲/福富幸宏)
マブいわ。

 

18.「AMBITIOUS JAPAN!」TOKIO(作詞/なかにし礼 編曲/船山基紀)
新幹線に乗れば皆が聞くあのフレーズ、Aメロの出だし部分のメロディやサビの「Be ambitious!」の部分がジングルになってるのでお馴染みかと思います。この曲がリリースされた時、「あぁ、まだまだ京平センセーは現役だ!」と実感した覚えがあります。

 

2枚目「筒美京平自選作品集〜アイドル・クラシックス〜」(ビクター/VICL-64903~4)

【Disc1】
1.「悲しみのアリア」石田ゆり(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
石田ゆりさんはいしだあゆみさんの妹で、作詞家のなかにし礼さんの奥様です。バロック調でメロディもクラシカルで美しく、まさに「アイドル・クラシック」というタイトルの1曲目にふさわしい。

 

2.「17才」南 沙織(作詞/有馬三恵子 編曲/筒美京平)
南 沙織さんがデビューするときに「何が歌えるの?」という質問に「ローズ・ガーデン」と答えたことからこの曲が生まれたという逸話は有名。ワタシはその「ローズ・ガーデン」という歌を知らず「17才」が先だったので、のちに「ローズ・ガーデン」を聴いたときの驚きは大きかった。これはパクリなんて簡単なことではない、非常に高度なサンプリングだと思いました。

 

3.「芽ばえ」麻丘めぐみ(作詞/千家和也 編曲/高田 弘)
特筆すべきは麻丘めぐみさんの高い歌唱力。フレーズ一つ一つに対する表情、声色、そして抑揚などが完璧であることに改めて気づかされました。にしても「足にまめをこさえて」ってスゴい歌詞だわね……。

 

4.「初恋のメロディー」小林麻美(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
一方、小林麻美さんの歌唱力はとてもたどたどしく、むしろ外国人かな? というくらい日本語の発音やフレーズの表情がちぐはぐ。でもそこがアイドルとしての魅力もあるのでしょう。

 

5.「私は忘れない」岡崎友紀(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
岡崎友紀さんのファルセット部分のせつなさと、地声部分の甘酸っぱさがうまくメロディのなかで表現されています。

 

6.「赤い風船」浅田美代子(作詞/安井かずみ 編曲/筒美京平)
子供心に感じる夕暮れの寂しさや怖さみたいなものを感じる曲。歌詞もよく読むとちょっと怖い。

 

7.「娘ごころ」水沢アキ(作詞/山上路夫 編曲/筒美京平)
この曲好きな人多いのよね。しかも男の人に多いの。なんだろ、ファンタジー?

 

8.「わたしの彼は左きき」麻丘めぐみ(作詞/安井かずみ 編曲/筒美京平)
やっぱ歌うまい。

 

9.「恋のインディアン人形」リンリン・ランラン(作詞/さいとう大三 編曲/筒美京平)
外国人によるカタコト日本語歌謡の金字塔。このズンドコくる重めのサウンドもたまりません。

 

10.「ほほにかかる涙」エバ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
70年代アイドル歌謡の大名曲。ゴールデン・ハーフ解散後のエバのソロ曲。アン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」を思わすドリーミーでセンチメンタルなメロディですが、やはり京平センセー、Bメロで展開されるコード進行で歌の景色の縮尺を一気に広げるところはさすがです。

 

11.「ロマンス」岩崎宏美(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
京平センセーにとって岩崎宏美さんは、自分の音楽を表現してくれる歌手の1人として大事にされていたと思われます。京平センセーがディスコ・サウンドに傾倒し、歌謡曲との融合を試みていたころ、それと同時期に現れた彼女の歌唱力や表現力を味方につけて、ディスコ歌謡の量産にパワーを注いでいたように思えます。なので、岩崎宏美さんの70年代のオリジナル曲は、かなりクオリティの高く名曲揃いです。必聴。

 

12.「センチメンタル」岩崎宏美(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
そんなディスコ歌謡の可能性は、ざまざまな試みへと展開されます。岩崎宏美さんの2枚目のLP「ファンタジー」は、当時ラジオDJでも名を馳せていた「糸居五郎」さんを起用し、曲と曲の間をDJで繋げるという斬新なスタイルで発売されました。この「センチメンタル」もLPに収録されています。まんまディスコではなく、ディスコ・サウンドのエッセンスを見事に取り入れた、まさに「ディスコ歌謡」の名曲。

 

13.「木綿のハンカチーフ」太田裕美(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平・萩田光雄)
「日本人ならば知っておくべき歌謡曲10選」みたいなのがあるとすれば、きっとこの曲は入るのであろう、歌謡史に燦然と輝く大名曲。とりあえず若い人たちもこの曲くらいは聴いておきましょう。日本人としての嗜みです。

 

14.「セクシー・バスストップ」浅野ゆう子(作詞/橋本 淳 編曲/高田 弘)
先ほどの岩崎宏美さんの「センチメンタル」のようなディスコ歌謡ではなく、京平センセーが「Jack Diamond」名義で和製ディスコに取り組んでいた頃のインスト作品で、それを橋本 淳センセーの作詞で浅野ゆう子さんが歌ったもの。その後「ハッスル・ジェット」「ムーンライト・タクシー」と京平ディスコ3部作をリリースします。まさにゆう子はディスコ・クイーン。

 

15.「恋のハッスル・ジェット」シェリー(作詞/橋本 淳 編曲/船山基紀)
その浅野ゆう子さんがリリースした「ハッスル・ジェット」と異名同曲「恋のハッスル・ジェット」をシェリーも同時期にリリースしています。シェリーの声って、誰かの声に似てるな~と思ったら、南 沙織に似てますよね。どこか攻撃的な声。

 

16.「6年たったら」五十嵐夕紀(作詞/松任谷由実 編曲/萩田光雄)
70年代アイドル歌謡の名曲のひとつ。なんでしょう。「完璧」としかいいようがない。

 

17.「リップスティック」桜田淳子(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平)
ズンコの「リップスティクス」を歌謡ファンの中では名曲とされていて、もちろんワタシもこの曲は名曲だと思っているのですが、なんかピンと来ない感じもあって、何でだろうな~と思っていたのですが、最近分かったんです。この曲をもし岩崎宏美さんが歌ってたら、ワタシもそう納得出来てたんではないかと。ズンコ、ゴメン。

 

18.「シンデレラ」高見知佳(作詞/橋本 淳 編曲/船山基紀)
あかん! 名曲続きや! これこそホント「完璧」としかいいようがない。起承転結ある展開、そして何より高見知佳さんのヴォーカル表現の巧さ。特に高音部分。

 

19.「日曜日はストレンジャー」石野真子(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
これも歌謡ファンの中で名曲とされています。「仮面つけて生きていいのよ~」のサビメロが泣けるよぉ。でも今のいままで、「仮面つけて生きてい~ろよ~」と歌っていたのだと思ってました。最後の最後で出てくる、ワタシ曰く「デザートメロ」があり、そこで「ごちそうさま!(はぁ~いい曲!)」って気分になります。

 

20.「ROBOT(ロボット)」榊原郁恵(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
出ました、筒美京平meetsテクノ。テクノブームに対しての京平センセーの回答。バート・バカラックであろうとディスコであろうとテクノであろうと、京平センセーにかかれば誰もが美味しくいただける見事な「日本食」へと変わるのです。

 

【Disc2】
1.「センチメンタル・ジャーニー」松本伊代(作詞/湯川れい子 編曲/鷺巣詩郎)
伊代ちゃんのフワフワした歌唱が耳心地良い。すべてのフレーズの語尾が下降カーブを描くクセはむしろ高度な技術であり、聖子のような語尾をシャクり上げる巷のアイドルからは一線を画する歌唱表現方法として新鮮だったのかもしれない。

 

2.「夏色のナンシー 」早見 優(作詞/三浦徳子 編曲/茂木由多加)
近年のポップスは、AメロやBメロやサビなどのブロックごとに意外性のある転調をするというのが流行っていますが、この曲は大きく転調はしていませんがその気配を感じます。という意味でかなり新しい。

 

3.「エスカレーション」河合奈保子(作詞/売野雅勇 編曲/大村雅朗)
先ほどの「夏色のナンシー」のように、イントロや間奏に歌詞の一部を持ってきて、しかもそれをコーラスに歌わせるパターンが流行ってたのか、この頃の歌謡曲に多く見られます。オシャレではありますが、ワタシとしてはバンドとかで歌いたくてもコーラスを2人くらい雇わないと再現できないという辛さがあります。

 

4.「ト・レ・モ・ロ」柏原芳恵(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
かなり高度な楽曲かと。お茶の間を軽く突き放したような、そう簡単には飲み込ませてくれない通好みなメロディですが、京平センセーはこれをヒットさせるつもりで書いていたとすればかなり挑戦的だと思います。

 

5.「卒業」斉藤由貴(作詞/松本 隆 編曲/武部聡志)
みんなこの曲好きよね~。聞き慣れてるからあまり意識しなかったけど、このAメロの符割りとメロディってスゴい。歌詞を当てるためにこういう符割りになったのか、京平センセーがすでにこの符割りを用意していたのか。

 

6.「あなたを・もっと・知りたくて」薬師丸ひろ子(作詞/松本 隆 編曲/武部聡志)
はぁ……名曲! すべてに紗がかかっているようにキラキラしていて、なんとなくクリスタル。1985年、電電公社から民営化しNTTとなったキャンペーン・ソングとして作られたこの曲は、通信によるコミュニケーションがパーソナルでファッショナブルになってゆく新しい時代の幕開けソングともいえる。しかし現代では「あなたを・もっと・知りたくて」ではなく「わたしを・もっと・知ってほしい」になってきてますが……。

 

7.「なんてったってアイドル」小泉今日子(作詞/秋元 康 編曲/鷺巣詩郎)
アイドルのアイドルによる「アイドル」職業宣言。そんなまさかの手法もキョンキョンのキャラクターだからこそ成し得るのです。秋元 康さんってそういうところホントに凄いし、一貫してますね。

 

8.「1986年のマリリン」本田美奈子(作詞/秋元 康 編曲/新川 博)
大胆な衣装とダンス、よく覚えています。

 

9.「地上に降りた天使」水谷麻里(作詞/松本 隆 編曲/大谷和夫)
へぇ〜これ京平センセー選ぶんだ……というのが正直な感想。

 

10.「夜明けのMEW」小泉今日子(作詞/秋元 康 編曲/武部聡志)
武部聡志さんのミニマルなアレンジの素晴らしさよ。イントロはもしかして由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」へのオマージュでしょうか?

 

11.「WAKU WAKUさせて」中山美穂(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
でも船山基紀さんの濃密で豪華なアレンジも好きよ。ミポリンの奔放でじゃじゃ馬な感じが良く出てますね。

 

12.「teardrop」後藤久美子(作詞/来生えつこ 編曲/武部聡志)
名曲ですな。この頃によくあるこういうマイナー調の刹那ソングを総じて音楽的に何て呼べばいいのでしょうか。ヨーロピアンエレクトロ? ニュー・ロマンティーク? ヌーベルバーグ? 誰か教えて。

 

13.「さよならの果実たち」荻野目洋子(作詞/売野雅勇 編曲/武部聡志)
歌、ウマっ。

 

14.「ホンキをだして」酒井法子(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
歌、ウマっ。

 

15.「17才」森高千里(作詞/有馬三恵子 編曲/斉藤英夫)
DISC-1に南 沙織版「17才」と両方入っててお得ね。

 

16.「肩幅の未来」長山洋子(作詞/中島みゆき 編曲/山川恵津子)
京平センセーと中島みゆきさんがタッグを組む珍しい楽曲。割と歌謡よりなメロディなのは、いずれ長山洋子さんが演歌歌手へと転向する予感のようなものか。しかし最後の「……らちもない」ってスゴい歌詞よね。歌詞カード見ないと何言ってるのか正解が分かりませんでした。

 

17.「ときめいて」西田ひかる(作詞/松本 隆 編曲/渡辺 格)
京平センセーの90年代における大名曲。冒頭「ときめいて」の繰り返し部分で幅の広い音域を歌わせたり、サビのベースラインが8分で刻みながら1音ずつ上がっていく感じとか、すんごくときめいてる。西田ひかるもすんごく光ってる。

 

18.「元気!元気!元気!」高橋由美子(作詞/秋元 康 編曲/清水信之)
元気だね。

 

19「TENCAを取ろう! -内田の野望-」内田有紀(作詞/広瀬香美・川咲そら 編曲/松本晃彦)
広瀬香美さんが歌詞を書くと、これホントに京平センセーが書いてる? ってくらいこんなにも広瀬香美節になるのね。ったく恐ろしい女だわ。

 

20.「理由」安倍麻美(作詞/326 編曲/久保田光太郎)
筒美京平meetsドラムンベース。2003年リリースの時点で京平センセー御歳63になろうとしています。まだまだ感性がお若いこと。初めて聴きましたがメッチャいい曲ですね。歌詞は326さん。ワタシが福岡にいた頃、イラストレーターとして地元の古着屋で個展をしている彼によく会っていました。彼は覚えてないでしょうが。

 

3枚目「筒美京平自選作品集〜AOR歌謡〜」(日本コロムビア/COCP-40205~6)

【Disc1】
1.「渚のうわさ」弘田三枝子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
やっとAOR歌謡編に突入。みなさん元気ですか~? まずはAORとは何ぞやということですが、「Adult-oriented Rock」の略で「大人向けのロック」ということらしいです。しかしイマイチ定義が分かりません。とりあえずここでは「渚のうさわ」はAOR歌謡です。

 

2.「さよならのあとで」ジャッキー吉川とブルー・コメッツ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーが職業作曲家として活動をスタートし、グループ・サウンズにも楽曲を多く提供し始めたころのヒット曲。ただしグループ・サウンズというよりはムード歌謡路線の曲で、グループ・サウンズがのちに歌謡曲化していったきっかけになったといわれています。

 

3.ブルー・ライト・ヨコハマ / いしだあゆみ
京平センセーの60年代にして最大のヒット曲です。ムードを持ちながらもGSサウンドの影響もあり、そしてポップなメロディといしだあゆみさんのエレガントな雰囲気すべてがこの楽曲の魅力を作り上げているように思います。こちらも「日本人なら知っておくべき歌謡曲10選」のなかに選ばれるでしょう。

 

4.「京都・神戸・銀座」橋 幸夫(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
AORの極み幸夫。

 

5.捧げる愛は / 島倉千代子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
おチヨさんが歌うとどこか演歌の香りがしますが、この曲と「ブルー・ライト・ヨコハマ」はそんなに実は大差はありません。いしだあゆみさんが歌っているのを想像してみてください。すごくしっくりきます。でも、このおチヨさんのコロコロ節の回した歌唱がなんともクセになってしまう、ワタシの大好きな曲です。

 

6.くれないホテル / 西田佐知子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
筒美京平センセーを語る上でマニアが絶対に外せない曲、それがこの「くれないホテル」です。細野晴臣さんが筒美京平センセーにお会いした際に「西田佐知子さんの『くれないホテル』っていい曲ですよね」と尋ねると、「あぁ、あの売れなかった曲ね」と答えたという話は語り草。京平センセーにとって、いい曲は「売れた」かどうかがすべて。ただ、いまの京平センセーだったらどう答えるのでしょうか? 気になります。

 

7.粋なうわさ / ヒデとロザンナ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ヒデロザのどこかヨーロピアンな薫りがするのはやっぱりロザンナの存在によるものでしょうか。Aメロの「粋なうわさをたてられた~」という出だしが何ともオシャレ。ちなみに2番は「粋な別れと言われたね~」です。「言われたね~」って。

 

8.「フランス人のように」佐川満男(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
「フランス人のように」ってイイタイトル。4小節ずつ進行するよくある構成の曲ではなく3小節5小節で進行するトリッキーさ、さらにはAメロが3小節5小節3小節、となってるところもトリッキー。

 

9.「真夜中のボサ・ノバ」ヒデとロザンナ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ジャズ・ボッサの名曲! 近年に由紀さおりさんとピンク・マルティーニの共作「1969」でもカバーされている、マニアには有名な曲でもあります。いま聴いてもオシャレです。

 

10.「ヘッド・ライト」黒沢 明とロス・プリモス(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ザ・ムード歌謡。こういうのも書いちゃうのね。

 

11.「あなたならどうする」いしだあゆみ(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
あなたならどうする? 泣くの? 歩くの? 死んじゃうの? って、いかにもなかにし礼さんらしい歌詞です。

 

12.「雨がやんだら」朝丘雪路(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
朝丘雪路さんの「イェイェイウォウォウ歌唱」を堪能しましょう。

 

13.「絵本の中で」クロディーヌ・ロンジェ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
まったく洋楽に疎いワタシが説明するのもなんですが、クロディーヌ・ロンジェさんというフランスの歌手の方が来日した際、この曲を録音したそうです。ワタシは先にいしだあゆみさんバージョンの「絵本の中で」を聴いていたのですが、こちらがオリジナルだったんですね。京平センセーによるドリーミーなソフトロック。

 

14.「さらば恋人」堺 正章(作詞/北山 修 編曲/筒美京平)
もちろん「さらば恋人」は名曲です。しかしワタシだったら、京平センセーが全曲手がけたアルバム「サウンド・ナウ!」の中のもっといい曲を選びたいと思うのがマニアのどうしようもないところです。

 

15.「真夏の出来事」平山三紀(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
80年代初期に「廃盤ブーム」というのがありまして、中古レコード店でひと昔前の歌謡曲やビジュアルをニッチな感覚で掘り起こし楽しんでいた、いわゆる「歌謡曲再評価」の源流のような時期がありました。その時に必ず人気No.1になっていたのが、この「真夏の出来事」です。現在も再評価における「指標」のようなものになっています。

 

16.「誰も知らない」伊東ゆかり(作詞/岩谷時子 編曲/筒美京平)
すごく歌謡曲的。

 

17.「夜が明けて」坂本スミ子(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
筒美京平meetsフォルクローレ。といってもこの頃フォルクローレが流行っていたかは謎ですが、ソニーの名ディレクターの酒井政利さんによる、ヒットから遠ざかっている歌手をもう一度ヒットさせるための「クリーニング」という手法により生み出された曲。京平センセーと酒井さんのコンビによるアダルト歌謡は名曲多し。

 

18.「自由の鐘」西郷輝彦(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
京平センセーこれ選ぶんだ……。どういう思い入れや観点で選ばれたのか伺ってみたい。尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」みたいな曲。

 

19.「貴方の暗い情熱」高田恭子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ヤバいす。見事なまでの「カーペンターズ歌謡」。A面の「ラブ」という歌もサイコーですが、やっぱコッチのほうが完成度高いですね。

 

20.「かもめ町 みなと町」五木ひろし(作詞/山口洋子 編曲/筒美京平)
一筆書きのような気持ち良いメロディと軽快なリズムゆえにスーパーキャッチー。

 

【Disc2】
1.「恋の十字路」欧陽菲菲(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ソウルフルなロッカバラード。さらにソウルフルなフィフィがパワフルに歌うことにより、岐路に立つ女の決意みたいなものをより際立たせます。大名曲。

 

2.「二時から四時の昼下り」朱里エイコ(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
2時から4時という絶妙な時間帯で男と女がホテルで密会する。これぞAOR歌謡の真髄。

 

3.「よろしく哀愁」郷ひろみ(作詞/安井かずみ 編曲/森岡賢一郎)
郷ひろみさん×筒美京平さんで生み出された曲はほぼ名曲揃い。京平センセーにとっても郷ひろみさんの存在感やプラスチックな声はお気に入りだったのだと思います。そんな名曲は数あれど、AORという枠で選ぶならこれなのでしょう。

 

4.「飛んでイスタンブール」庄野真代(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
知ってました?この曲、もともとは野口五郎さんに書いた曲だったんですって。それを知ってこの曲をゴローの歌唱で想像してみたら、確かにこれってゴローのために書いたメロディだよね? って分かるくらい、京平センセーはゴローの声や歌唱のどこが魅力的なのかを熟知していることがよく分かります。

 

5.「銀河特急」松崎しげる(作詞/たかたかし 編曲/筒美京平)
筒美京平meetsフィリー・ソウル。良き。

 

6.「ぬくもり」細川たかし(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
サウンド的にフィリー・ソウルへ強引に持っていこうとするが、もう細川たかしさんの声がどう頑張っても演歌から逸脱出来ない感じがすごいクロスオーバー感。

 

7.「魅せられて」ジュディ・オング(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
言わずと知れた、レコード大賞受賞曲。70年代における京平センセーの最大のヒット曲にして、最後のアレンジ仕事でもあり最高峰と自ら言わしめた曲。この曲も酒井政利プロデューサーとの共同作業による「クリーニング」だったということも加えておきます。

 

8.「来夢来人」小柳ルミ子(作詞/岡田冨美子 編曲/萩田光雄)
京平センセーは高低差のある音階をよく書かれるのですが、この「来夢来人」は京平センセーの曲のなかでもかなり超難解です。歌いこなすルミ子の歌唱力の凄さよ。

 

9.「スニーカーぶる〜す」近藤真彦(作詞/松本 隆 編曲/馬飼野康二)
AORかなぁ~?

 

10.「愛しつづけるボレロ」五木ひろし(作詞/阿久 悠 編曲/船山基紀)
演歌とアーバンの融合。

 

11.「普通のラブ・ソング」水谷 豊(作詞/松本 隆 編曲/石川鷹彦)
良き。

 

12.「モロッコ」森 進一(作詞/松本 隆 編曲/井上 鑑)
モロッコ。

 

13.「こころ美人」布施 明(作詞/なかにし礼 編曲/前田憲男)
前田憲男センセーアレンジによる豪華なショータイムのような大人のラブソング。タキシードを着て歌う布施明さんが目に浮かびます。でも歌詞がショッキング!

 

14.「君だけに」少年隊(作詞/康 珍化 編曲/馬飼野康二)
少年隊にも数多く提供されてる京平センセーですが、それまでずっとアップテンポのダンスナンバーでしたが、ここでグッと大人っぽくスローなバラードを……ということで制作されたこの曲。宇宙の渚をたゆたうような壮大な歌。

 

15.「JOY」石井明美(作詞/ちあき哲也 編曲/戸塚 修)
付き合っていた、もしくは結婚していた男に別の女が出来て捨てられる……というのはよくある歌の設定ですが、ここでは女のほうが少し大人で、どこか不器用で無邪気で小心者な男に対し「自由に生きていいのよ」と、少し強がりながら呼びかける「JOY」という言葉。別れの悲しみを笑顔に変える大人のラブソング。超・名曲。

 

16.「抱きしめてTONIGHT」田原俊彦(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
よく出来ているとしか言いようがありません。

 

17.「とまどい小夜曲(セレナーデ)」高橋真梨子(作詞/松本 隆 編曲/萩田光雄)
いい!

 

18.「タイムマシーン」藤井フミヤ(作詞/藤井フミヤ 編曲/KUDO・辻剛)
ふぅ~。

 

19.「ありがとう おかげさん」都はるみ(作詞/きたやまおさむ 編曲/鷺巣詩郎)
みなさんが読んでくれたおかげでここまで来ました。ありがとう。

 

20.「ビヨンド」平山みき(作詞/橋本 淳 編曲/涌井啓一)
とうとう最後です。京平センセーの秘蔵っ子といわれた平山みきさん。このクレジットを見てください。橋本 淳さん×筒美京平さんで今でもずっと一緒に音楽制作をしているということが何より嬉しいことです。「ビヨンド」は2013年リリース。ワタシのディレクターとミキティ担当のディレクターが同じで、この曲が生まれるまでの行程をそばで見ていました。2013年版の京平センセーが取り込んだ音楽はまぎれもなく「ダフト・パンク」だと思われます。そんなサウンドに全然メロディが負けてない。そして、今でもこんなに最先端なサウンドで新曲をリリースできるミキティのPOPセンスを見初めた京平センセーは、やはり日本が誇るPOPマエストロなのです。

 

終わった! やっと終わった! 半ば強引な部分もあったけど120曲、全曲レビューやりきりました! 初回からなんでこんなに頑張ってんだろうワタシ。別に全曲じゃなくてイイですよって編集の方に言われてたのに、原稿料が上がるわけでもないのに、全部レビューしちゃいました。ここまで懲りずに読んでくださった皆様、本当にありがとございました!

 

今回は特別に3枚分をレビューしましたが、おそらく次回は1枚10曲程度のアルバムのレビューで、こんなに毎回長くはなりませんのでご心配なく。次回の「ギャラン堂」和恵の推薦盤をどうぞお楽しみに! (もう「ギャラン堂」ってことさえ長すぎて忘れてたわ……)

 

撮影協力:天盛堂(亀戸)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットの1st ALBUM「化粧室」が2018年4月25日に発売決定!これまでのシングルに加え、“星屑スキャットを見初めた男”リリー・フランキー作詞「新宿シャンソン」を初収録するなどバラエティに富んだ作品に仕上がっています。どうぞお聴き逃しなく!

【収録曲】

DISC1

1.Knock Me In The Middle Of The Night
2.愛のミスタッチ
3.ANIMALIZER (2018 new mix)
4.半蔵門シェリ
5.波の数だけターコイズ
6.降水確率
7.星屑スキャットのテーマ (2018 new mix)
8.マグネット・ジョーに気をつけろ (シングル・バージョン)
9.Interlude – Cosmetic
10.コスメティック・サイレン
11.REMEMBER THE NIGHT (2018 new mix)
12.HANA-MICHI
13.ご乱心 (2018 extended mix) ※Bonus Track

DISC2

1.新宿シャンソン

 

また、アルバムの発売を記念したライブやイベントも多数開催されます。最新情報は日本コロムビアHPの星屑スキャット インフォメーションをチェックしてみて下さい。

●2018/04/25(水) タワーレコード新宿店7Fイベントスペース 17:30〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念インストアイベント ミニライブ&サイン会」

●2018/04/25(水) HMVrecordshop新宿ALTAイベントスペース 19:30〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/04/25(水) 新宿2丁目AiSOTOPE LOUNGE 開場21:00 開演21:30

「星屑スキャット LIVE2018『化粧室』リリースパーティー」 料金:全席自由席¥3500(ドリンク代¥500込)

●2018/04/28(土) 三井アウトレットパーク大阪鶴見 3F プラザステージ 14:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/04/28(土) あべのキューズモール3Fスカイコート 17:00〜

「アルバム『化粧室』発売記念イベント ミニライブ&特典会」

●2018/04/29(日) アリオ西新井店 1階 イベント広場 16:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/05/05(土) 二子玉川 蔦屋家電 2階 ラウンジ 開場18:30 開演19:00

【蔦屋家電3周年イベント】星屑スキャットが選曲した歌謡曲歌詞に情景を重ねるTALK&LIVE with リリックスピーカー

●2018/06/02(土) イオン八事店4階G.Gモール イベントコーナー 13:00〜 / 15:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/06/09(土)~10(日) コットンクラブ(丸の内)

「星屑スキャット LIVE2018 化粧室で逢いましょう」

出会いと別れの季節に聴きたい―― ギャランティーク和恵が選ぶ「男と女の別れ歌」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「別れ歌」特集です。春といえば別れの季節。卒業式で友人たちとの別れもありますし、新しい環境に変わるために住んでいた町との別れなんかもあります。しかしやっぱり歌謡曲には男女の別れ歌がほとんどです。それは季節関係なく年中あることですけど……。ということで、春を感じるかどうかはさておき、ワタシがグッとくる恋人たちの「別れ歌」を厳選してお送りいたします。泣かないでね……。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

01.また逢う日まで/尾崎紀世彦
(作詞:阿久 悠 作曲/筒美京平)

まずはベタにみなさんがよく知ってるであろうこの曲からスタート。1971年にリリースされた尾崎紀世彦さんの2枚目のシングル曲。もともとは三洋電機のエアコンのCMソングとして作られた曲がボツになってお蔵入りしていたものでしたが、阿久 悠さんの作詞によって、当時ヒットしていたズーニーブーというグループに「ひとりの悲しみ」というタイトル曲でリリースさせたもののやっぱりヒットせず。その後、歌詞のテーマを「別れ」に変えて、さらには力強いボーカルの持ち主に歌わせればヒットするだろうと、尾崎紀世彦さんに「また逢う日まで」というタイトルで歌わせたところ大ヒット、1971年のレコード大賞を獲得するまでとなりました。……という逸話は歌謡曲愛好家のなかでは有名な話。男女の別れを、「誰かが立ち去り誰かが悲しむ」という構図ではなく「ふたりで決意して別々の道を歩み出す」という前向きな別れを描いた新しさに、作詞家としての阿久 悠さんの挑戦が伺えます。

 

02.美しい別れ/いしだあゆみ
(作詞:なかにし礼 作曲:加瀬邦彦)

お次は、1974年にリリースされたいしだあゆみさんの44枚目のシングル曲。タイトル通り「美しい別れ」にするため、旅立つ男との別れまでの時間をわざと1時間残しておくという小憎い演出をする女の歌。この歌の中の2人の「別れ」というのは決して悲しい結末を迎えた恋の終わりではなく、愛し合っているけれども離れなくてはいけなくなったやむを得ない事情の上での「別れ」で、だからこそせめて悲しい気持ちでお別れするのではなく、最後まで楽しい時間を過ごしたいと願う気持ちが痛いほど伝わります。こんな粋な女でいられたらいいですよね……。

 

03.リクエスト/ジュディ・オング
(作詞・作曲:中村泰士)

続いて、1976年にリリースされたジュディ・オングさんのシングル曲。一度コロムビアでリリースしたものの、ソニーへ移籍した後1980年に改めて録音し直してシングルでリリースするほど、きっと本人もこの曲がお気に入りだったのではと思わせる、隠れた名曲です。こちらも恋の終わりの歌う別れ歌ですが、歌謡曲によくある「捨てられてさめざめ泣きすがる」みたいな女ではなく、悲しみを隠しつつ最後の夜のデートを楽しみながら、別れの瞬間にもどこか凛として気品を漂わせる、大人の女性の美しさと強さを感じます。別れのシーンをエレガントにできるかどうか、そこが上質な女であるかどうかのポイントです。

 

04.孔雀の羽根/安倍律子
(作詞:千家和也 作曲:筒美京平)

4曲目は、1974年にリリースされた安倍律子さんの14枚目のシングル曲。こちらは70年代ならではの「男に捨てられ逃避行」系失恋ソング。この頃の歌は失恋すると住んでた街から出て行くパターン多いのよねぇ……。新しく住むアパートとか新しい仕事とか探すの大変だろうなぁとか勝手に心配しちゃいます。しかしこの歌、男を「孔雀」と見立てて、「孔雀が羽根を広げるように心を変えた」という多少意味がわからないけれどどこか仰々しいキッチュな歌詞世界が素晴らしい。そこがほかの「男に捨てられ逃避行」系のどこか自虐的で貧乏くさい感じとは一線を画しています。良曲。ちなみにワタシもCD「ANTHOLOGY#4」にてカバーしておりますのでぜひ聴いてみてくださいませ。

 

05.ワン・シーン/近田春夫
(作詞:山口洋子 作曲:近田春夫)

お次は、1979年にリリースされた近田春夫さんのLP「天然の美」からの1曲。沢田研二さんの「勝手にしやがれ」はみなさんご存知だと思いますが、この「ワン・シーン」という曲、スーパースターのジュリーに対してや、「勝手にしやがれ」という大ヒット曲へのオマージュもありつつ、どこかアイロニカルに山口洋子センセーは歌詞を書かれたのでは? という個人的な見解を元に、両曲を比較しながらこの「ワン・シーン」という曲の素晴らしさをお伝えできれば思います。女の家に転がりこんで1年ほど住んでいた男が、ある日部屋に帰ってドアを開けると別の男がいて、そのまま何も言わず扉を閉めて出てゆく……というまさにワン・シーンを歌った歌なのですが、「行ったきりなら幸せになるがいい」(勝手にしやがれ)的なセリフで「世話になったな!」と気障にキメたいが、「言葉のナイフでぶった切るほど熱い仲でもなかったな……」と冷静になってみたり、「背中で聞いている」(勝手にしやがれ)ものは、ドアを閉めたあとに聞こえてくる男と女の堪え加減の笑い声だったり、「思い出かき集め鞄に詰め込む」(勝手にしやがれ)ほど長い仲でもなかったことに気付いたりして、みんなジュリーに憧れているけれど、現実は「勝手にしやがれ」みたいにはいかず結構淡白で情けないものだったりするし、この歌の男のほうがワタシはジュリーよりもアーバンを感じます。ということでワタシは断然「ワン・シーン」派です。近田春夫さん大好きすぎて文章長くなってしまいました。ゴメンナサイ。

 

06.ロマンチスト/伊東ゆかり
(作詞/松本 隆 作曲:筒美京平)

6曲目は、1977年にリリースされた伊東ゆかりさんの36枚目のシングル曲。こちらも「部屋」が出てくるのですが、この「部屋」というのは、恐らく主人公の女の部屋だとは思うのですが、歌詞の中の「カフスをはめ込む」とか「シーツをすっぽりとかぶって」などの言葉に、これはラブホテルか? という感じもします。どことなくアダルト。松本 隆さんの描くモチーフや男の仕草がいちいちキザで、別れの男女(というか一方的に男)がここまでカッコつけられたら絵にはなるのですが、実際にこんなナルシストな男に捨てられたらワタシならムキーッとなりそうです。主人公の女も、そんな終始キザに決める男(ウザい)にムキーッとなりながら、そんな男に惚れてしまった自分を責めつつ、部屋を出たあとまでキザに決めまくる(マジウザい)男に結局キュンとしてる自分にも気づいているのです。あるある〜!

 

07.春なのに/柏原芳恵
(作詞・作曲:中島みゆき)

こちらは1983年にリリースされた柏原芳恵さんの14枚目のシングル曲。春だから選んでみました「春なのに」。春は別れの季節……という今回のテーマには1番ピッタリな曲ですね。卒業式での好きな人との別れを描いたこの曲、当時のヨシヨシとしても歌の主人公と同じ年頃だとは思いますが、可愛げなおぼこい歌い方をしつつ、1番のAメロの「それだ〜けです〜か〜」という部分だけ妙に大人っぽく怨念深い声になっているのが聴きどころ。どんな時代のアイドルにも、10代にしてすでにスナックの香りが漂うオヤジ受けするアイドルっていると思うんですが、柏原芳恵さんもその1人ですよね。

 

08.花吹雪/ちあきなおみ
(作詞:吉田 旺 作曲:都倉俊一)

この曲は、1975年にリリースされたちあきなおみさんの19枚目のシングル曲。こちらも卒業をテーマにした春の別れの曲。しかしちあきなおみさんが歌う卒業ですから、そう一筋縄にはいきません。卒業したのは好きだった男の方で、そんな男子大学生と付き合っていたスナックのママ、という設定です。ヨシヨシもビックリ! 大学を卒業して、就職か何かで地元へと帰ってゆく男を見送り、そのタイミングで自分の店を閉めて故郷へ帰る決意をする歌。スナックのママと付き合っちゃう男子大学生もなかなかやるな、という感じですが、男子大学生と付き合っちゃうママもママでなかなかやるな、という感じです。一体何歳の設定なんだろう……。しかもそんなママを男子大学生はビンタとかしちゃったりして、もう何? プレイ? 桜も散ってて和風SMの匂いもしてとにかく官能小説のようなエロティシズムを感じます。

 

09.ブルースカイブルー/西城秀樹
(作詞:阿久 悠 作曲:馬飼野康二)

お次は、1978年にリリースされた西城秀樹さんの26枚目のシングル曲。こちらも一筋縄にはいかない男女の別れの歌です。いわゆる「不倫」関係にある2人で、恐らくこの男女、男はまだ血気盛んな20代前半くらい、女は30代くらいの人妻でしょうか。周りの大人からの忠告を無視してでも、その若さゆえの情熱で彼女の自分のものに奪い取ろうとしたあの日。しかし、その女とは結局終止符を打たれ、二度と逢えない関係となってしまったのです。歌詞では「遠く連れ去られ」るという表現でそれを描いているのですが、結婚相手の男が主人公と妻の関係を断ち切るために強引に遠い街へ移り住んだのか、もしくは女が何かの理由でこの世から去ってしまったのか、そこは色々と想像をさせます。これが後者だった場合、愛し合ってしまったからこそ彼女を追い詰めてしまった結果だったかもしれません。そして少しばかり大人になった今でも、目に沁みるほどの青空を見るたびに、あの若き日々の愛と悲しみと過ちが蘇ってくるという、なんとも切なく胸に突き刺さってくる歌です。ブルースカイブルーは青春の青。阿久 悠センセー、深すぎます。

 

10.いつか何処かで/平山三紀
(作詞:橋本 淳 作曲:筒美京平)

最後はこの歌でお別れです。1972年にリリースされた5枚目のシングル「希望の旅」のB面曲。アップテンポで軽快なリズムにのせて、爽やかに別れを歌います。平山ミキティもビンビンにハネまくって歌ってます。フィフス・ディメンションの「ビートでジャンプ」を明らかに下敷きにしていて、当時他にもこの曲をベースに作られた歌謡曲がいくつかあり、それをまとめてワタシは「ビートでジャンプ」歌謡と言っております。この歌も男女の別れを歌った歌ですが、もっと男らしくなって帰っておいでと女が旅立ちを送り出すという歌。橋本 淳さんの歌詞にはよく「心を開く」とか「心の扉」とか「心」というモチーフが出てきますが、この曲にも「自分を変え 心を閉ざさずに あなたにふさわしく」という強いメッセージが。こんなことを別れ際にサラリと言える、海のような懐の深い女になってみたいものでございます。

 

以上、今月のプレイリスト、3月は「別れ歌」を特集してお送りいたしました。そういうワタシも、実はひとつお別れのお知らせがあります。なんと、数か月に渡りお送りしました「歌謡プレイリスト」ですが、なんと! 今月で最終回となってしまいました。理由(わけ)は聞かないで……。その代わりといってはなんですが、4月より新しい企画が用意されております。そちらのほうをどうぞ引き続きお楽しみに!(つまりまだ別れません。)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットの1st ALBUM「化粧室」が2018年4月25日に発売決定しました!これまでのシングルに加え、“星屑スキャットを見初めた男”リリー・フランキー作詞「新宿シャンソン」を初収録するなどバラエティに富んだ作品に仕上がっています。どうぞお聴き逃しなく!

【収録曲】

DISC1

1.Knock Me In The Middle Of The Night
2.愛のミスタッチ
3.ANIMALIZER (2018 new mix)
4.半蔵門シェリ
5.波の数だけターコイズ
6.降水確率
7.星屑スキャットのテーマ (2018 new mix)
8.マグネット・ジョーに気をつけろ (シングル・バージョン)
9.Interlude – Cosmetic
10.コスメティック・サイレン
11.REMEMBER THE NIGHT (2018 new mix)
12.HANA-MICHI
13.ご乱心 (2018 extended mix) ※Bonus Track

DISC2

1.新宿シャンソン

 

そして、2018年6月9日(土)10日(日) 丸の内「COTTON CLUB」にて星屑スキャットLIVE 2018「化粧室で逢いましょう」の開催も決定! 詳しい情報は、日本コロムビアの「星屑スキャット」公式サイトでチェック!

【ギャランティーク和恵セレクト】歌謡曲の多様性を知る“グループ楽曲”10曲

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「グループ」特集です。

 

歌謡曲には様々な形態のグループが存在します。早くは1950年後期に登場した「ダーク・ダックス」や「デューク・エイセス」などのコーラスグループの流行に始まり、キャバレーなどで活動していたラテンやハワイアンなどのムード音楽を奏でる「マヒナスターズ」や「ロス・プリモス」、さらにはブリティッシュロックに影響を受けた「ザ・タイガース」などのグループ・サウンズ、そして「キャンディーズ」などのアイドルグループに「ツイスト」などのロックバンドなど、「グループ」をテーマに絞ってみても、歌謡曲というジャンルには多様な音楽性があることに気づきます。これから紹介するのは、そんな歌謡曲の「グループ」モノのなかでさらにカテゴリーを決めて、ワタシの個人的な趣味も交えて選んでみたいと思います。……やだ、真面目。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【2月のプレイリスト】

01.赤いドレスの女の子/ザ・スパイダース
(作詞:橋本 淳 作曲:かまやつひろし)

まずは<GS(グループ・サウンズ)>編。1968年6月に発売されたザ・スパイダースの15枚目のシングル「真珠の涙」のB面曲を選ばせていただきました。スパイダースのなかで個人的に1番好きな曲です。GSの誕生をきっかけに、歌謡曲黄金期を作り上げた職業作詞家・作曲家というものが同時に誕生したのも大きなポイント。そのポイントは、ワタシが「歌謡曲」というものを語るうえで大きな節目として捉えています。多くのGSがそんな職業作家によって手がけられているなか、スパイダースはメンバーの1人であるかまやつひろしさんが作曲している曲も多く、商業ベースに染まらない音楽性の高さを垣間見ることが出来ます。

 

02.男と女のいる舗道/内山田洋とクールファイブ
(作詞:吉田 旺 作曲:穂口雄右)

続いては<ムードコーラスグループ>編。1979年にリリースのLP「内山田洋とクールファイブ 第12集」のなかの1曲。デビュー曲「長崎は今日も雨だった」のような♪ワワワワ〜みたいなコーラスのいわゆる「ムードコーラス」スタイルも、70年代も終わりに差しかかりアーバンかつ大人のムードがクールファイブにも漂い始めます。肩に力が抜けたような優しい穂口センセーのアレンジと、男女の別れ際のキザな描写がなんともダンディーです。しかし、お互い背中を向けてそれぞれの道を歩もうとする時、女に対して「死ぬなよ」と願う別れって一体どんな別れなんでしょうか……。

 

03.ハチのムサシは死んだのさ/平田隆夫とセルスターズ
(作詞:内田良平 作曲:平田隆夫)

お次は<ヴォーカル&インストゥルメンタルグループ>編。ちょっとわかりにくいカテゴリーではありますが、この当時、「ピンキーとキラーズ」にはじまり「ペドロ&カプリシャス」なんかに見る女性ヴォーカルをフロントに置くバンドスタイルが多く出てきました。そのなかのひとつがワタシも大好きな「平田隆夫とセルスターズ」です。1972年2月にリリースされ大ヒットしたこの曲は、マイナー調でテンポ感のあるアレンジに、子供受けもするような歌詞がとてもキャッチー。しかしフロントに立てた女性2人「村部レミ」と「みみんあい」。この2人が衣装を合わせる気がなくそれぞれ好き勝手な格好をしてるところを見ると、あぁきっと仲悪いんだろうなぁ〜とか想像出来て楽しいです。

 

04.急げ!若者/フォーリーブス
(作詞:千家和也 作曲:都倉俊一)

お次は<男性アイドルグループ>編。男性アイドルグループは数いれど、ワタシが大大大好きなのは「フォーリーブス」です! 1974年7月にリリースされた24枚目のシングル曲。特にこの曲が好きで、ワタシの10年前にリリースしたアルバムでもカバーさせていただきました。ミュージカル調でドラマティックなこの曲は作曲の都倉センセーお得意の世界観。さらに「いつも神は見ている」とどこか耽美的な歌詞も、千家センセーお得意の世界です。黒の衣装を身に纏い、まさにミュージカルのように踊り歌う1974年紅白歌合戦でのステージは必見です。話は逸れますがフォーリーブスって、無駄に衣装替えするわりに、毎回誰かがうまく脱げなかったりボタンが外れなかったりしてトチるんですよね〜。

 

05.恋はミステリー/アップルズ
(作詞:松本 隆 作曲:穂口雄右)

お次は<女性アイドルグループ>編。女性アイドルグループも星の数ほどいますが、「キャンディーズ」を選ぶわけでもなく、あえて「アップルズ」という3人組をご紹介したいと思います。特にこの「恋はミステリー」という、1976年リリースのデビューシングル「ブルーエンジェル」のB面曲が大好きなのです。作編曲はキャンディーズの楽曲を多く手がけられた穂口雄右センセー。キャンディーズ同様の難易度高いコーラスワークに加え、彼女たちのハンパない歌唱力の高さが売りでしたが残念ならがヒットすることはなくアップルズとしては2枚のシングルのみのリリースとなりました。しかし! その後彼女たちは「EVE」というコーラスグループへと生まれ変わり、80年代以降の大ヒット曲の多くに彼女たちによるバックコーラスが刻まれることとなります。

 

06.ジェット・マシーン/フィンガー5
(作詞・作曲:三枝 伸)

お次は<兄弟グループ>編。半ば強引なカテゴリーですが……兄弟グループといえばやっぱり「フィンガー5」でしょう。残念ながら「サーカス」ではありません。何故ならサーカスは3人兄弟プラス従兄弟なんです。歌謡ひっかけ問題。「恋のダイヤル6400」や「個人授業」などで大ヒットを飛ばし、子供受けを狙った楽曲を数多くリリースしてきたフィンガー5ですが、1975年にアメリカへ渡りレッスンをつむために留学。その帰国後に再起を賭けてリリースされたのがこの「ジェット・マシーン」です。かなりアッパーで攻め攻めなこの曲、作詞作曲にはフィンガー5に数多くの楽曲を提供している三枝 伸センセー。ヒット曲のほとんどが都倉俊一センセーと井上忠夫センセーのため陰に隠れた印象がありますが、この方のヒップな作曲センスは抜群です。特筆すべきは、この曲から長男がマネージャーとしてメンバーから脱退し、代わりに8歳の甥っ子が加入したこと。8歳って! 血統を守るって大変です……。

 

7.賣物ブギ/ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
(作詞:島 武実 作曲:宇崎竜童)

お次は<バンド>編〜その1〜。バンドとひと口に言っても、フォーク・ニューミュージックの世界にもたくさんバンドがいるなか、ここでは「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。たくさん名曲はありますが、ワタシが選んだのは1975年にリリースのシングル曲「賣物(うりもの)ブギ」。もちろんこれは笠置シヅ子さんの「買物ブギー」を下敷きに作られたコミカルな歌ではありますが、それと比較するとよく出来ています。ぜひ両方聴いていただきたい。しかしコミックソングといってもサウンドとしてはソリッドな演奏で非常にカッコ良いです。この曲は作詞が島 武実さんで、高田みづえさんの「硝子坂」や由紀さおりさん「う・ふ・ふ」など作詞家として活動しつつ、のちに「プラスチックス」のメンバーとしても活動された方。なるほどニューウェイブだわ……と納得出来るセンスを感じさせてくれます。

 

8.はるかな旅へ/ゴダイゴ
(作詞:奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ)

お次も<バンド>編〜その2〜。皆様ご存知の「ゴダイゴ」。スーパーミュージシャンでありながらも「お茶の間」の大人から子供たちに支持を受けたグループとして、こちらも「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。大ヒット曲の「銀河鉄道999」に「モンキー・マジック」と最強ソング数多いなか、ワタシが選ぶのは1979年にリリースされたシングル曲「はるかな旅へ」です! 「銀河鉄道999」同様の、新しい何かが始まりそうな期待に胸を膨らませる、希望に満ち溢れた楽曲。そこはミッキー吉野センセーのアレンジの素晴らしさもあり、奔放に大きく横揺れしながら歌うタケカワユキヒデさんのフレッシュなヴォーカルの魅力もあるのでしょう。

 

9.星化粧ハレー/ハイ・ファイ・セット
(作詞:田口 俊 作曲:杉 真理)

お次は<コーラスグループ>編。元は「赤い鳥」という5人組のフォークグループだった3人が「ハイ・ファイ・セット」に、そしてもう2人は「紙ふうせん」として活動を続けています。「紙ふうせん」は引き続きフォーク路線でしたが、「ハイ・ファイ・セット」は都会的で洗練された、ファッショナブルなコーラスグループとなりました。そして今回独断と偏見で選ばせていただいたのは、1984年にリリースされたシングル曲「星化粧ハレー」。井上 鑑さんのアレンジが最高にアーバン! そして何より山本潤子さんのα波ヴォイスが優しく包み込んでくれます。途中Cメロ的に現れるメジャー調の分厚いコーラスが、この曲の切なさをより引き立てています。あと、見れたらPV見て欲しいのですが、80年代ならではのアニメーションと実写を組み合わせたドリーミーなPVは、ちょっと泣けます。

 

10.涙をこえて/ヤング101
(作詞:かぜ耕士 作曲:中村八大)

最後は<合唱>編。グループの極み……。1970年からNHKで放送された番組「STAGE 101」に出演していた若者たちで結成されたグループが「ヤング101」です。NHKの一番大きな「101」スタジオにて収録していたことからこの番組名がつけられました。その出演者のなかには「田中星児」さんや「串田アキラ」さん、「上條恒彦」さんや「太田裕美」さんなんかも在籍していました。番組内では外国曲を中心にオリジナル曲もたくさん制作され、そのなかでもこの番組の代表曲ともいえるのが、ヤング101によって歌われた「涙をこえて」です。中村八大センセーのメロディ展開の素晴らしさ、そして東海林修センセーのラグジュアリーなアレンジはいまも色褪せず、40年以上経ったいまでもその当時の熱量が楽曲と共に伝わって胸を震わせてくれます。

 

以上、今月のプレイリスト、2月は「グループ」を特集してお送りいたしました。カテゴリーを作りながらご紹介しましたが、ほかにもカテゴリー分けとして、<チビッコ>若草ジャイアンツ、<ハーフ>ゴールデン・ハーフ、<不良>横浜銀蠅、<ダンサー>ニュー・ホリデー・ガールとかいろいろ出来そうですが、かなりニッチな方向になりそうなのでやめました。そういうワタシもソロ歌手と平行して、「星屑スキャット」というグループに所属させていただいております。ジャンル分けとしては、もちろん<女装>です。かなりニッチですよね……女装グループって。ほかに思いつきません。そう考えると貴重なグループなのかも知れませんね。自分で言うなって感じですけど。

↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)

 

「星屑スキャット」も春に向けていろいろ準備中であります。来月素敵なニュースをお届け出来ればいいなと思ってますので、皆様どうぞお楽しみに!

 

歌とともに北国へ……師走に聴きたい演歌・歌謡曲を集めたギャランティーク和恵の「歌謡プレイリスト」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「北国」特集です。先日、ワタシが所属する星屑スキャットのお仕事で北海道は富良野に行って参りました。そう、富良野といえばワタシも大好きなドラマ「北の国から」ですよね。初めて降り立つ富良野で「北の国から」ごっこしたいなぁ〜なんて思っていたのですが、いきなり大雪で極寒という試練を与えられ、ラベンダー畑でいしだあゆみごっこみたいな甘い考えを早速打ち砕かれてしまいました。

 

ということで、テーマは寒い寒い「北国」。「北国」って言葉、いまも使う人いるのでしょうかね。ずいぶんと乱暴な言い方のようにも思える「北国」。どこを指しているのか「北国」。歌謡曲の歌詞にはたくさんの「北国」があります。ま、とりあえず「北国」に向かって出発してみましょう……。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【12月のプレイリスト】

01.北国行きで/朱里エイコ
(作詞:山上路夫 作曲:鈴木邦彦)
まず北国に行くためには北国行きの汽車に乗らなくてはいけません。ということで1曲目はここではお馴染み、朱里エイコさんの1972年1月にリリースされたシングル曲からスタート。付き合っていた男と別れて黙ってひとり北国へ逃避行するお話。この曲で紅白歌合戦初出場だったのですが、北国に行く歌なのに朱里エイコさんはいつもと変わらずミニスカートで素晴らしい御御足を露わにステップを踏みながら歌うのでした。

 

02.逢いたくて北国へ/小柳ルミ子
(作詞:橋本 淳 作曲:井上忠夫)
お次は、1976年9月にリリースされた小柳ルミ子さんの20枚目のシングル曲。汽車が走っているような音にも聞こえる軽快なリズムに乗せて、ルミ子(敬称略)が遠く北国に住む愛する人への募る思いを歌い上げます。先ほどの朱里エイコさんの歌は男と別れて北国へ。一方こちらは男に逢いたくて北国へ。しかしこの男とはどういった関係なのでしょうか。遠距離? 単身赴任?

 

03.だからわたしは北国へ/チェリッシュ
(作詞:林 春生 作曲:筒美京平)
なんで北国なの? それは……ということで、お次は1972年1月にリリースされたチェリッシュの2枚目のシングル曲。チェリッシュと言えば松崎さんとえっちゃんのデュオ、というイメージがありますが、デビュー曲「なのにあなたは京都へ行くの」とこの「だからわたしは北国へ」までは5人編成でした。この「接続後+名詞+場所」シリーズとして、「だけど二人は湯布院へ」とか「そして娘は納沙布岬へ」とか色々作って欲しかったわ……。

 

04.北の宿から/都はるみ
(作詞:阿久 悠 作曲:小林亜星)
北国への旅路の途中でどこか宿に泊まりましょう。ということでお次は1975年12月にリリースされた都はるみさんのシングル曲。75年の紅白歌合戦でも歌われたこの曲は、翌年もロングヒットして76年のレコード大賞を受賞、そして紅白に2年連続この曲で出場し、しかも76年は大トリで歌うという快挙を成し遂げました。まるで手紙にしたためるような私小説的な“ですます調”の歌詞にも見られる、フォーク・ニューミュージックのブームが歌謡曲・演歌に与えた影響は大きく、70年中期あたりに感じる、どこか暗く影のある時代のムードをも映し出しているような曲だと思います。

 

05.津軽恋女/新沼謙治
(作詞:久仁京介 作曲:大倉百人)
さて、北国へ向かう旅路は津軽へと向かいます。お次は1987年4月にリリースされた新沼謙治さんの28枚目のシングル曲。東北出身でもある新沼さんの声には郷愁があり、青年の汚れない純粋な心を呼び起こすようで清々しく絶品です。津軽には7つの雪が降るらしい……と、いろんな雪の名前を並べたサビの歌詞がとってもキャッチー。でも何より歌い出しの「津軽〜の海よ〜」の導入部分でもうギュッ! と心を掴まれてしまうメロディーとコード感がスーパーキャッチー。名曲です。

 

06.津軽海峡・冬景色/石川さゆり
(作詞:阿久 悠 作曲:三木たかし)
さぁみなさん、とうとう津軽海峡を渡りますよ。お次は言わずと知れた大名曲、1977年1月にリリースされた石川さゆりさんの15枚目のシングル曲。ババババーンッというド派手なイントロが、津軽海峡の荒波と(見たことありませんが)凍えるような青森の冬の厳しさ(知りませんが)を想像させます。アレンジ、三木たかしセンセー自らやったんだって。スゴいわ。あと阿久 悠センセーが描く「北へ帰る人の群れは誰も無口で」って情景もスゴいです。フィクションのリアリティとでもいいますか……。本当だったら絶対みんな寒すぎて「あ〜寒い寒い寒い!」とかベラベラ喋ってそうじゃない? でもそうじゃないのよね、歌の世界は。

 

07.函館の女/北島三郎
(作詞:星野哲郎 作曲:島津伸男)
津軽海峡を越えて、ようやく北海道へ上陸です。はるばる来たぜ! 函館! みなさまご存知、1965年11月にリリースされた北島三郎さんの14枚目のシングル曲。先ほどまでの寒さに耐え忍ぶようなストイックな楽曲から一転、何とも陽気で開放的な歌に心が救われます。もしワタシも津軽海峡を越えて函館に向かうことがあるならば、絶対にこの歌を口ずさむでしょう。「は〜るばる〜来たぜ、鮭茶漬け〜!」っていう永谷園のCM、30代以下の方たちはもう知らないんでしょうね……。

 

08.北酒場/細川たかし
(作詞:なかにし礼 作曲:中村泰士)
テレッ! テレテレッ! イントロから調子E感じのお次の曲は、1982年3月リリースされた細川たかしさんの18枚目のシングル曲。「北酒場」と言えば札幌のすすきのあたりを想像します。旅行気分でちょっぴり浮かれちゃって、隣に居合わせた女の人に恋なんかしちゃったりなんかして。歌は世につれ……といいますが、豊かになってゆく80年代の日本人の心の余裕を映しているかのようです。この曲で細川たかしさんは初めてのレコード大賞を獲得。作詞作曲はデビュー曲「心のこり」と同じく、なかにし礼センセーと中村泰士センセー。低迷していた時期に再起を賭けて挑む細川さんへの、お二人の愛のようなものを感じずにいられません。

 

09.石狩挽歌/北原ミレイ
(作詞:なかにし礼 作曲:浜 圭介)
札幌からさらに北へ……。お次は1975年6月リリースされた北原ミレイさんの8枚目のシングル曲。こちらも「北酒場」と同じく作詞はなかにし礼センセー。なかにし礼さんは実際に幼少期を小樽で過ごした経験があり、貧困の中で兄が鰊(にしん)漁で博打のような商売に手をつけて莫大な借金を抱えてしまったという実体験から、この曲が生まれたといいます。栄枯衰退……夢を追いかけて挑む漁師たちの活気を感じる力強いアレンジと、その夢が消えてゆく様を重ねるように描かれたモチーフたち。聴いていると、入ってるはずのないソーラン節が遠くに聴こえてくるから不思議です。

 

10.稚内ブルース/原みつるとシャネル・ファイブ
(作詞・作曲:藤本卓也)
北国行きが行き着いた先は、稚内……。最後は1971年にリリースされた原みつるとシャネル・ファイブのデビュー曲でお別れです。藤本卓也センセーは、歌謡曲の作家先生の中では少しマイナーな印象がありますが、五木ひろしさんの「待っている女」や、矢吹健さんの「あなたのブルース」、内山田洋とクールファイブ「愛の旅路を」などを手がけた方で、狂気を帯びたようなアレンジや情念深い歌詞世界などが、熱量の高い歌手の方たちと非常に相性がよく、傑作を数多く残されている素晴らしい作家先生なのであります。流れ流れて最果ての街、稚内。サビの「稚内 あとがない」「稚内 先がない」「稚内 わからない」というダジャレまで……。ジャケットも“先がない”感溢れてます。北国への旅、行き着く先まで行きました。おしまい。

 

以上、今月のプレイリスト、12月は「北国」をテーマにお送りいたしました。一緒に北国へ旅をした気分を味わっていただけましたでしょうか?(結構悲惨な旅)

 

今回のプレイリストは演歌色が強いですね……。年の暮れって演歌が聴きたくなりませんか? 紅白歌合戦も大トリは演歌歌手じゃないと年を越した気分になれない世代なものですから。今年もワタシの店「夜間飛行」では紅白歌合戦を見ながら年越します。東京でひとり淋しく年を越されるご予定の方、夜間飛行であったかい鍋をご用意してお待ちしております。

 

今年も一年ご愛読いただきありがとうございました。来年もどうぞギャランティーク和恵をよろしくお願いいたします!

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットのNEW SINGLE「ANIMALIZER」が発売中! 各音楽配信サイトでもダウンロードできます。ぜひチェックしてみて下さい!

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「ANIMALIZER」(Kuchibiru RECORDSより発売中/iTunes Storeほかで配信中)

1.ANIMALIZER(作詞:MITZ MANGROVE 作・編曲:中塚 武)
2.新宿トランスファー(作詞:山川啓介 作曲:有澤孝紀 編曲:中塚 武)

LINE MUSICで聴ける! ギャランティーク和恵が選ぶ“秋の気分にひたれる歌謡曲”プレイリスト

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「秋」をテーマに選んでみました。秋の歌はどこかセンチメンタルでセピア色をしたような歌が多いですね。選曲してるあいだそんな歌ばっかりを聴いていたもんだから、心が枯葉のようにカッサカサになってしまいました。だ……だれか水分補給してぇ〜。

20170331-i04 (1)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

せっかく選んだ曲なので、ぜひみなさまに聴いて頂きたく、今回は音楽聴き放題サービスの「LINE MUSIC」でプレイリストを作りました。アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、ぜひLINE MUSICでワタシのプレイリストを楽しんでみてくださいね。

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※PCから試聴可能(Chromeブラウザでは動作しない場合があります。その場合はほかのブラウザでお試し下さい)
※スマホ・タブレットで試聴する場合は「LINE MUSIC」アプリ(無料/アプリ内課金)が必要となります

 

【11月のプレイリスト】

01.心のこり/細川たかし
(作詞:なかにし礼 作曲:中村泰士)
トップバッターは爽やかなこの曲から。1975年4月にリリースされた細川たかしさんのデビュー曲。三連のリズムにサックスが咽び泣くイントロに、旅の出発を後押しするような晴れ晴れとした爽やかさを感じさせます。少し肌寒くなってくる冷たい秋風が、背筋を伸ばし襟を正すような気持ちにさせるこの季節がとても大好きです。「私バカよね〜おバカさんよね〜」という出だしの歌詞が印象的で、むしろ「私バカよね」というタイトルになりそうだったところを、さすがにデビュー曲でそれはないよ……ということで「心のこり」になったという冗談のような話も。

 

02.メランコリー/梓みちよ
(作詞:喜多條 忠 作曲:吉田拓郎)
お次はオシャンティー姉さんこと、梓みちよさんの1976年9月リリースのシングル曲。乃木坂という街は赤坂と六本木と青山に挟まれた、少し静かで隠れ家的なイメージのある街。そんなオシャレな乃木坂あたりではイイ女って言われてんだけどさ……と自分で言うアズアズの気位の高さが素敵。そんな気位が邪魔をして、秋だというのに恋も出来ないしフラっと旅にさえも行けない。可愛げのある女になんかなれない自分自身を諦めてしまう感じが、もう痛いほど分かるわアニキ! ……あ、姉さん! 吉田拓郎さんに「わざと下手に歌ってください」と指示され、レコーディングで実際に下手に歌ったところ「OKです!」と言われ、「フォークってつまんないわね!」と言い放ったというアズアズらしい逸話が好き。

 

03.色づく街/南 沙織
(作詞:有馬三恵子 作曲:筒美京平)
お次はこの曲、1973年8月にリリースした南 沙織さんのシングル曲。健康的で奔放なイメージの10代の頃のシンシアにとっては少しアダルトな雰囲気の歌。色づく街、というのは恐らく街路樹なんかの木々の葉が色を変えてゆくという意味なのだろうと思うのですが、そういう秋の景色と失恋というのはどう考えても相性がいいものですね。そして夕暮れの風景というものしかり。しかしシンシア、そんな色づく街のなかでまだ青い落ち葉を拾い、なんと、噛みます。意味わかりません。どういう心境なのでしょうか。「まだ青いクセになに落ちてんのよ! バカッ!」という意味でしょうか……。有馬三恵子センセー、教えてください。

 

04.枯葉の街/由紀さおり
(作詞:山上路夫 作曲:いずみたく)
お次はそんな枯葉舞い散る歌。1969年10月にリリースされた由紀さおりさんのシングル曲。口笛から始まるイントロからしてもう木枯らしがピューピュー吹いているような景色が目に浮かびます。渋谷 毅センセーの優しさ満ち溢れるアレンジが本当に素晴らしい。西洋の映画音楽かな?と思ってしまうような、日本ではないどこか違う国の街角が思い浮かび、その街路の石畳に枯葉が舞い散るなかをトレンチコートを着た女が歩いている……そう思わせるのは、やはり由紀さおりさんのクラシカルでエレガントな歌声が故でしょう。もちろん、新宿西口大ガードの交差点なんかで人混みに押されながら副都心エリアへトボトボと歩くにも良いBGMになります。寒い季節と副都心は相性がよろしいかと。

 

05.恋人よ/五輪真弓
(作詞・作曲:五輪真弓)
誰もが知ってる秋の歌。1980年8月にリリースの五輪真弓さんの大ヒット曲。ピアノの重々しいダーンッダッダーンというイントロからもう絶望感溢るるスタート、そして出だしの歌詞の「枯葉散る夕暮れ」で一気にセピア色の景色が広がり、もう秋気分満載です。そして何といっても五輪さんの歌唱力でしょう。一度生で拝聴させていただいた時の感動は忘れられません。この大ヒット曲が生み出される前、彼女はフランスの歌手「アダモ」に見出されて単身でフランスへ渡り修行、そのあいだシャンソンに傾倒していたらしく、帰国後にこのような曲が生まれたという逸話もあり。五輪だけに(……)。ちなみに2番で「マラソン人(びと)が行き過ぎる」という歌詞に「マラソン人って何だよ!」といつも突っ込んでしまいます。五輪さんゴメンナサイ。

 

06.ワインレッドの心/安全地帯
(作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二)
ロマンティーク歌謡の代表曲。1983年11月にリリースされた安全地帯による大名曲です。秋……? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ワインレッドって聞くと秋を感じませんか? しかもこのセンチメンタルな曲調はどうしたって秋に聴きたくなります。井上陽水さんと玉置浩二さんの黄金コンビが作り出す耽美的な歌世界。怪しい色気を放つ言葉の魔法にかけられて恋に落ちてしまうような、罪の香りさえする井上陽水さんの歌詞と、それを狂おしく情熱的に歌い上げる玉置浩二さんのヴォーカルが心を震わせます。現在の玉置浩二さんもますます色っぽく、それこそイケナイ恋に落ちてしまいたくなるようなダンディズムは健在です。

 

07.ワインカラーのときめき/新井 満
(作詞:阿久 悠 作曲:森田公一)
お次はワイン繋がりでこの曲。1977年にリリースされた新井 満さんのシングル曲。カネボウ化粧品の77年秋のキャンペーンソングとして作られ、新井 満さんはそのとき広告代理店に勤めていた社員だったとのこと。カネボウ化粧品と資生堂が毎年キャンペーンソングで競い合っていた時代、前年に資生堂の秋のキャンペーンソング「揺れるまなざし」を歌っていた小椋 佳さんが銀行員だったこともあり、そういう風潮などもあって新井 満さんの抜擢だったのでしょうか。ちなみに新井 満さんは「千の風になって」の訳詞をされた方。非常に多彩な方だとお見受けいたします。中年男性が若い女の子に恋をした時の諦めと葛藤を描いていて、ワタシもそんな歳になってきて妙に沁みてくる歌です。ちなみにLINE MUSICでのプレイリストでは新沼謙治さんバージョンでお送りいたします。こちらも素敵よ。

 

08.秋桜/山口百恵
(作詞・作曲:さだまさし)
1977年10月にリリースされた山口百恵さんのシングル曲。1970年代はフォーク・ニューミュージック系のミュージシャンを歌謡曲の作家に起用することが多かった。1974年に吉田拓郎さんが森 進一さんへ、そして1975年には小椋佳さんが布施 明さんに書いた曲が連続でレコード大賞を獲得するなか、山口百恵さんが恐らく1977年にレコード大賞を狙っての意欲作だったと思われます。しかしそこにはジュリーが立ちはだかり、金賞にノミネートされたものの獲得とはならず。歌謡曲黄金期の激しい戦いに惜しくも破れたものの、大賞に選ばれても遜色ない大名曲です。まるでこの先の結婚を意識したような、嫁ぐ日の前日に育ててくれた母への感謝の思いを歌った歌です。「この頃涙もろくなった母が」という歌詞、気づくとワタシの年齢は百恵というよりはむしろこの母の方に近くなっていることに驚愕……。LINE MUSICでは曲を書いたさだまさしさんバージョンでお楽しみ下さい。

 

09.思秋期/岩崎宏美
(作詞:阿久 悠 作曲:三木たかし)
同世代のアイドルからもう1曲。1977年9月にリリースされた岩崎宏美さんのシングル曲。前曲の「秋桜」と同じ時期にリリースされており、この曲も1977年のレコード大賞で金賞にノミネートされたものの惜しくもレコード大賞に届かず。こちらは青春を駆け抜けた10代の最後の時を迎えた時に、振り返るとそこには失った出会いや傷ついた思い出の数々があり、そしてそんな「青春」たちにさよならを告げる歌。「思秋期」は、「思春期」という言葉から作られた阿久悠さんの造語だと思われますが、恋を覚える「春」から無邪気に戯れる「夏」、そして失恋を覚える「秋」という季節の移ろいにその心情を重ね、青春を振り返る時を「思秋期」と表現した阿久 悠さんの素晴らしさ。そして溢れんばかりの情感で歌い上げる岩崎宏美さんの歌の素晴らしさをぜひ堪能してください。

 

10.燃える秋/ハイ・ファイ・セット
(作詞:五木寛之 作曲:武満 徹)
そして最後はこの曲。1978年11月にリリースされたハイ・ファイ・セットのシングル曲。映画「燃える秋」の主題歌として制作されたもの。作詞にその映画の原作者でもある五木寛之さん、そして作曲には武満 徹さん! 歌謡曲としては珍しいクレジットです。しかしAメロが……あれ、出だしが何となく4曲目に選んだ由紀さおりさんの「枯葉」に似ているわ……。枯葉のイメージにはこういったメロが浮かんでくるのかもしれません。そしてサビでは一気に景色が変わり、美しく紅葉した大自然が広がります。ヴォーカルの山本潤子さんの透き通る声とそれを包み込む美しいハーモニーが、澄み切った冷たい秋の空気に響いているようなスケールの大きな曲です。実はワタシも去年のこの時期にリリースした「ANTHOLOGY#3」でこの曲をカバーさせていただきました。この壮大さを表現出来ているかは分かりませんが……LINE MUSICでもお聴き頂けますので、ぜひチェックしてみて下さいね。

 

20171108-i09(5)↑LINE MUSICではギャランティーク和恵さんの作品も配信中

 

以上、今月のプレイリスト、11月は秋をテーマにお送りいたしました。もう暦では立冬を過ぎ、秋も終わりを迎えようとしております。そんな残り少ない秋の日に思いっきりセンチメンタルな気分に浸るのもまた風流。どうぞLINE MUSICでこのプレイリストをイヤホンで聴きながら街のなかをひとり、失恋気分で歩いてみてはいかがでしょうか? でも、気持ちが入りすぎて、つい人混みのなかで「恋人よぉぉぉ〜〜!」と涙ながしながら口パクとか、しないようにね。そういうのはおウチでやりましょう。