アジア圏メーカーの勢いがすごい! 中国のBYDと韓国のヒョンデおすすめEV5選

環境に優しい乗りものとして真っ先に挙げられるのが電気自動車(EV)です。それは走行中の排出ガスがまったく出ないからです。そんな中で日本メーカーはハイブリッド車を主体として販売し、EVの販売はどちらかといえば積極的ではありませんでした。そうした中、日本国内で勢いを増しているのが中国のBYDと韓国のヒョンデです。ここでは、この両社が日本で販売しているおすすめのEVをご紹介したいと思います。

 

販売台数は世界第3位のHYUNDAI

ヒョンデは韓国の自動車メーカーで、キアを傘下に持つことで、その販売台数は日本のトヨタグループ、ドイツのフォルクスワーゲングループに次ぐ世界第3位となっています。それだけに北米や欧州に行けば、ヒョンデのマークを付けたクルマが数多く走っており、その数はもはや日本車と引けを取らないほど。それなのに日本で知名度が低いのは、2001年に一度日本市場に参入したものの、2009年に乗用車部門が撤退していることが影響しているのかもしれません。

 

そんなヒョンデが再参入を果たしたのが2022年。その際、同社は日本市場への戦略を大幅に変更しました。それは日本車が手薄となっているEVに的を絞ったことです。2022年当時、世界的にEVは追い風となっており、ヒョンデはその時流に乗るべくEVの開発を積極的に行い、その実力は欧米でも高く評価されました。

 

そうした中で、ハイブリッド車(HEV)が中心となっている日本市場には、このEVであればブランドを浸透させるチャンスがあるとの判断があったようです。その先兵として燃料電池車(FCEV)の『NEXO(ネッソ)』と共に送り込まれたのが、100%バッテリーEVの『アイオニック5』でした。その後、韓国ではガソリン車もラインナップする『コナ』をEVとして追加し、アイオニック5をマイナーチェンジしてバッテリー容量をアップ。さらにすでに予約販売を開始している小型EV『インスター』が登場する予定です(後半に解説記事)。

 

中国のEV市場ではトップシェアを獲得するBYD

一方のBYDは、中国・深圳市に本社を置くメーカーで、創業は1995年。最初はパソコンや携帯電話などに搭載するバッテリーの製造を中心としてスタートしていますが、そこで使った独自のバッテリー技術を活かし、2003年にBYD Autoを設立。ここから自動車メーカーとしてスタートしました。会社としては今年で設立30周年を迎え、自動車メーカーとしても今年で22年という若い会社です。

 

しかし、設立後はめざましい発展を遂げ、すでに中国のEV市場ではトップシェアを獲得し、日本だけでなく東南アジアや欧州など海外にも輸出することでその存在は広く知られるようになりました。日本市場にはまず2015年にEVバスなどの商用車で参入し、すでに累計350台のEVバスが走っている状況にあります。そして、2022年、満を持してEV乗用車での日本市場を果たしたのです。

 

BYDが日本市場において大きな特長としているのが、ディーラー網の充実にあります。テスラやヒョンデはEVの販売にあたり、オンラインでの販売を基本としていますが、BYDは「2025年末までにショールーム完備の店舗を100店舗以上作る」ことで、ディーラーによる対面販売を基本としたのです。2024年12月で誕生した正規ディーラーはすでに33店舗を数え、今年もその勢いは止まりそうにありません。

 

BYDが現時点でラインナップする車種は『ATTO3(アットスリー)』『DOLPHIN(ドルフィン)』『SEAL(シール)』で、今年4月には新たに『SEALION(シーライオン)7』が追加されます。また、2025年中にはEVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)の追加することも発表されました。

 

【その1】欧州チームが開発したEV

ヒョンデ

アイオニック 5

523万6000円(税込)〜

「アイオニック 5」は、デザインから足回りに至るまで同社の欧州チームが開発した、いわば生粋の欧州生まれのEVです。それだけに、外観は走りを意識した欧州車を彷彿させるデザインとなっています。

 

特にアイオニック 5 の個性をしっかりと表現しているのが「パラメトリックピクセル」と呼ばれる、デジタルピクセルをイメージしたユニークなデザインです。加えて、逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは、一度見たら忘れられない独創性を発揮しています。極端に短いオーバーハングは、バッテリーをフロアに置いたEV専用プラットフォーム(E-GMP)だからこそ実現できたもので、これがクラスを超える圧倒的に広い車内空間を実現。それだけに、運転席に座ると前後左右とも実に広々としていることを実感できます。

 

コックピットは大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターを2つ並べて設置。そのデザインは素材からして高品質で、スイッチの感触も適度な重みがある心地よさを実感します。

↑音声認識機能付きの12.3インチナビゲーションシステムを搭載。ステアリング中央の4つのピクセルライトは、音声コントロールの際、運転手の声に反応して点灯します。

 

搭載されるバッテリーは、2024年11月の仕様変更で84kWhにまで容量をアップ。一充電走行距離をRWD車で703kmの実現することとなりました。このほか、ドライブモードに各種設定を任意で調整できる「MY DRIVE」の追加や、最上位グレードのラウンジにはドライブレコーダー、ARナビ、デジタルキー(スマートフォンやスマートウォッチで施錠・解錠・始動が可能)を装備して機能を充実させています。その走りは軽くアクセルを踏んだだけで素直に速度が上がっていき、アクセルを少し強めに踏み込むとBEVらしい強烈な加速が味わえ、これはガソリン車では絶対に得られない感覚です。回生ブレーキを使ったワンペダルも自然で、峠道でのドライブも楽にこなすことができました。

 

また、2024年2月、ラインナップに“EVスポーツカー”とも呼ぶべき『アイオニック5N』を追加。前後両軸にアイオニック5とは別のモーターを備え、最高出力は合計で609PS、最大トルクは740Nmを発生するなど、強烈なパフォーマンスを発揮してくれます。

 

【その2】未来的なスタイリングとユニークなキャラクターライン

ヒョンデ

コナ

399万3000円(税込)〜

韓国ではガソリン車も用意される『コナ』ですが、日本市場向けにはEVの第2弾として2023年9月に導入されました。ボディ形状はクロスオーバーSUVとしており、グレードは他の車種と同様、「カジュアル」「ヴォイヤージ」「ラウンジ」の3グレードを用意します。

 

そのデザインは、「アイオニック5」で採用された水平基調のピクセルを使ったラインが際立ち、その上で柔らかい曲面を組み合わせたユニークさを感じさせるものとなっています。一方で好き嫌いがハッキリ分かれるのもコナのデザインです。テールランプはがリアのホイールアーチのエンドに配置する独特のデザインで、ここに好き嫌いが分かれるのもコナらしさなのかもしれません。ボディサイズは全長4335×全幅1825×全高1590mmと十分に大きく、車内や荷室は余裕のあるスペースが確保されています。しかも、このサイズながら、その大きさをほとんど感じさせず、住宅街でも取り回しは想像以上に良い印象です。

 

低速から十分なトルクを発生するEVは走りもかなり軽快で、発進から中低速の速度域まで力強く加速していきます。走行モードは、エコ、ノーマル、スポーツ、スノーの4種類に切り替えが可能で、回生ブレーキはステアリングのパドルスイッチによって、最弱から最強まで4段階の調整ができます。“最強”に設定すれば、完全停止までワンペダルで走行することも可能です。

 

市街地走行で安心度を高めてくれたのがウインカーを操作すると、操作した側の斜め後方をメーター内に映し出す機能。要はドアミラーとカメラ&モニターの両方で確認できるもので、必要な時だけ表示されることで周囲の状況確認に貢献してくれるというわけです。また、ARナビゲーションと呼ばれる、カメラで撮影した映像に進行方向などを重ねて表示して案内するのも重宝するかもしれません。

↑開放的な水平基調のダッシュボード、12.3インチクラスターとナビゲーションディスプレイが統合した12.3インチパノラマディスプレイを採用。

 

また、2024年8月、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップ。ファミリーカーテイストが強かったコナに“走り”を強く意識したデザインのグレードが追加されました。

 

【その3】海洋生物の自由さや美しさから着想を得たデザイン

BYD

ドルフィン

363万円(税込)〜

2023年9月、BYDが日本市場向け第二弾として発売したのが、コンパクトハッチバックのEV『DOLPHIN(ドルフィン)』です。実車を前にして実感するのは、思ったよりも存在感があるということです。全長4290×全幅1770×全高1550mmで、クラスとしてはBセグメントとCセグメントの中間に位置するサイズ。これは日産「ノート」や「フィット」よりも一回り大きいサイズに相当します。

 

徹底した日本市場向けのローカライズも大きなポイントです。高さを回転式駐車場制限に合わせて1550mmとしたほか、「ATTO 3」と同様、ウインカーレバーを中国本国の左側から右側に変更し、急速充電についても日本で一般的なチャデモ方式を採用。日本では装着が義務づけられている誤発進抑制システムや、各種機能の日本語による音声認識機能までも追加しているのです。

 

グレードはスタンダードな「ドルフィン(車両価格:363万円)」と、より上級な装備を搭載した「ドルフィン・ロングレンジ(車両価格:407万円)」の2種類。その違いで最も大きいのはバッテリー容量とモーターの出力で、ロングレンジはバッテリー容量を58.56kWhとし、一充電での航続距離は476㎞。一方のスタンダードはバッテリー容量が44.9kWhとなり、一充電当たりの走行距離は400kmとなります。

↑「ドルフィン ロングレンジ」。

 

駆動方式はどちらも前輪駆動のみ。サスペンションは、フロントはどちらもストラットですが、リアはロングレンジがマルチリンクで、スタンダードはトーションビームを組み合わせます。外観上は、ロングレンジにはルーフとボンネットをブラックとした2トーンカラーを組み合わせましたが、スタンダードは単色のみの選択となります。

 

その走りは、モーター出力が小さいスタンダードでも、もたつく印象は一切なく、決して速さは感じませんが、軽くアクセルを踏むだけで交通の流れに乗れるので、運転はとてもラクに感じました。一方のロングレンジは、モーターの出力の違いもあって、その力強さは絶大。走行モードを「スポーツ」に切り替えてアクセルを踏み込むと、車重が1680kgもあるクルマとは思えない圧倒的な加速力を見せてくれます。

 

【その4】ファミリーユースで使えるSUV

BYD

ATTO 3

450万円(税込)〜

『ATTO3(アットスリー)』は2023年に、ファミリーユースで使えるSUVとして日本市場に導入されたEVです。WLTCモードで470kmの航続距離を実現しつつ、リン酸鉄バッテリーを縦長に並べた独自のブレードバッテリーで高い安全性をアピールしてきました。そのATTO 3が2024年3月にアップデートされています。

 

ボディカラーに「コスモブラック」を追加し、窓枠とクオーターピラーのガーニッシュにグロスブラックを採用。リアにあった説明っぽい「BUILD YOUR DREAMS」から「BYD」へと変更されてもいます。インテリアは大きな変更はありません。個性的なデザインのダッシュボードやドアパネルはそのまま。しかし、ダッシュボードをはじめとして、全体の質感は極めて高いものとなっています。ボタン類の表面処理や手触り感、操作時の触感に至るまでとても質感が高いのです。

 

強いて難を言えば、操作スイッチの表示や、ディスプレイ上の文字が小さくて読みにくいこと。一方で中央の巨大なディスプレイは、従来の12.8インチから15.6インチへと大幅に拡大。画面いっぱいに展開されるカーナビゲーションは、ここまで必要かとも思う反面、大画面の魅力に取り憑かれた人にとっては大きな魅力となることは間違いないでしょう。さらにアップデートにより、インフォテイメントとしての機能も進化しており、専用のアプリストアを介してウェブブラウザーや「Amazon Music」が楽しめ、さらにカラオケの導入も可能となったのです。

↑流線的なデザインが特徴の室内。15.6インチの大型ディスプレイはインパクト大!

 

その走りにもアップデートは図られています。最初のバージョンに比べて、中高速域での路面追従性が進化し、フラット感が高まったようにも感じました。中でも好印象だったのが低速~停止時のブレーキタッチで、これまでよりも効き方がリニア。操舵フィールの中央が曖昧なのは同じですが、全体としては走りの質感が明らかに向上しているのがわかります。この辺りは、クルマとしてより自然なフィールを感じられるクルマに仕上がってといえそうです。

 

【その5】狭い路地や住宅地の道でも扱いやすいスモールEV

ヒョンデ

インスター

284万9000円(税込)〜

ヒョンデが2025年春以降に日本での納車を予定している新型EVが「INSTER(インスター)」です。インスターは2024年6月に韓国・釜山モビリティショーで世界初公開されたモデルで、日本で販売されるラインナップで最も小さなモデルとなります。まだ、日本仕様の正式なスペックは確定していませんが、明らかになっているデータからご紹介したいと思います。

 

インスターが持つ最大のポイントは、全長3830mm×全幅1610mmというコンパクトなサイズながら、全高は1615mmと少し高めのSUVっぽいフォルムを備えていることにあります。実はインスターは、韓国内で軽自動車規格「軽車=キョンチャ」として販売されている「キャスパー」をベースとしています。それを、全長で230mm、ホイールベースで180mm長くし、後席と荷室を広げて実用性を高めたEVとして登場しているのです。

 

驚くのはその価格です。グレードは「カジュアル」、「ラウンジ」、「ヴォイヤージ」と3グレードあり、ベース車である「カジュアル」はなんと284万9000円! まだ、補助金額が決まっていませんが、仮に55万円が認められれば、実質223万円を下回る可能性が高いのです。しかもEVで重要なスペックとなるバッテリー容量はカジュアルで42kWhと、日本の軽EV「SAKURA」の2倍以上! 航続距離も間違いなく300kmを超えてくるでしょう。

 

充実した装備も大きなポイントです。緊急時SOSコールやセントラルドアロック、タイヤ空気圧モニターなどは全車に標準装備。上位グレードのヴォイヤージ(車両価格:335万5000円)、ラウンジ(車両価格:357万5000円)ではバッテリー容量が49.0kWhに増えるのと共に、ACCやブラインドスポットモニターなどが装備され、最上位のラウンジにはシートヒーター&ベンチレーション機能、スマホ用ワイヤレスチャージ、デジタルキーまで備えているのです。

↑大画面の10.25インチナビゲーションとベンチタイプのフロントシート。助手席フルフォールディングやリヤシートスライド機構で、使いやすい室内となっている。

 

ただ、インスターは韓国で軽自動車規格をベースにしていることもあり、定員は4名。しかし、そのサイズから日本では登録車のカテゴリーに入ってしまいます。それでも補助金を考慮すれば300万円前後で手に入れられるわけで、300kmを超える航続距離を達成できるEVは現状ありません。その意味でも日本での期待度はかなり高いEVといえるでしょう。

 

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スズキのクーペSUVから、トヨタの新型クラウンまで!プロがヒットを確信する4台

2025年に流行するモノは何か、専門家が大断言する「GetNavi NEXTトレンド」。今回取り上げるのはクルマ部門。2025年ヒット確実の4台を紹介する。

スタイリッシュなデザインに4WDの走破性も好評!

スズキ
フロンクス
254万1000円〜282万7000円

 

グローバル展開するモデルが日本向け仕様になって上陸!

SUVらしい力強さとクーペの流麗なフォルムを融合した「クーペスタイルSUV」。世界70か国で販売されているグローバルモデルだが、日本仕様には悪路や雪道の走行を想定した4WDも用意される。10月末には受注台数が1万台を突破した。

 

SPEC【2WD】●全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm ●車両重量:1070kg ●パワーユニット:1460cc直列4気筒DOHC ●最高出力:101PS/6000rpm ●最大トルク:135Nm/4400rpm ●WLTCモード燃費:19.0km/L

 

 

↑流麗なクーペスタイルに存在感のあるフロントマスクや独特のボディラインによる力強さを演出した足回りが印象的。最小回転半径は4.8mと市街地でも扱いやすいサイズだ。

 

↑コンパクトなボディながら、レイアウトの工夫やホイールベースを長くすることで後席も足元が広く、快適に過ごせる。

 

↑ブラック×ボルドーの配色となる内装は日本仕様専用。安全運転支援装備も充実しており、ヘッドアップディスプレイも備えている。

 

↑5名乗車時でも最大210Lの容量を確保するラゲッジルーム。取り外し可能なラゲッジボードを活用してアレンジもできる。

 

↑K15C型エンジンとマイルドハイブリッド、6速オートマチックを組み合わせる。力強くスムーズ、スポーティな走りを実現する。

 

【ヒット確定の根拠】コンパクトでも存在感は大! 4WDも選べる

「印象的な顔とクーペのようなフォルムによりコンパクトでも存在感が十分。装備が非常に充実していて走りもしっかりしています。それでいてお買い得な価格を実現しているのはさすがスズキです。海外にはない4WDが日本では選べます」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

<コレも注目!>待望のスイスポが間もなくデビュー?

※写真は通常のスイフト

 

スズキ
スイフトスポーツ
価格未定

 

スイフトのコンパクトで軽い車体に強力なエンジンを積んで足まわりを強化した高性能版は、歴代モデルも低価格で楽しいクルマとしてもてはやされてきた。ベース車の登場から約1年、まもなく新型が登場する見込みだ。

↑機能的にまとめられたスイフトスポーツ(現行モデル)のインパネまわり。マニュアルトランスミッションが登場するかも注目だ。

 

クラウン4タイプの“最後の砦”はついに2025年発売!?

トヨタ
クラウン(エステート)
価格未定(2025年発売予定)

 

度々の発売延期を経てワゴン(エステート)スタイルが登場!

2022年に新しいクラウンシリーズが発表されてから2年経った現在、4タイプの最後の砦として発売が待たれるエステート。後席の背もたれを倒せばフルフラットなデッキが現れ、機能的なSUVとして使えるのがウリとなっている。

 

SPEC(開発目標値) ●全長×全幅×全高:4930×1880×1620mm

 

↑後席を倒した際に若干の傾斜は生じるが、凹凸のないフルフラットな空間が出現。後席の足元空間を埋める拡張ボードも設置することが可能だ。

 

【ヒット確定の根拠】高級な内外装と使い勝手に優れるトランクが武器

「現行クラウンシリーズの第4弾は、車体後部のトランク(荷室)がポイント。使い勝手に優れる広々としたトランクは並のSUVとは一線を画します。高級感のある内外装もクラウンならでは。完成度の高いPHEVもラインアップされます」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

日本での登場が待たれる正統派AWD

※写真は北米仕様


SUBARU

フォレスター
価格未定

 

高い燃費効率を誇る「ストロングハイブリッド」採用!?

2023年のロサンゼルスモーターショーで世界初公開となり、北米で販売中の新型フォレスター。現行型よりもシャープなデザインとなり、同社のクロストレックで採用した「ストロングハイブリッド」も搭載される見込みだ。

 

SPEC【Tuoring(米国仕様】●全長×全幅×全高:4656×1828×1730mm ●車両重量:1662kg ●パワーユニット:2.5L水平対向4気筒DOHC ●最高出力:180PS/5800rpm ●最大トルク:178lb-ft/3700rpm ●WLTCモード燃費:非公表

 

↑「ストロングハイブリッド」は状況に応じて動力源であるエンジンとモーターを効率よく使い分ける新世代のハイブリッド方式だ。

 

【ヒット確定の根拠】スバルならではのこだわりに満ちた定番モデルの新型

「スバルならではの水平対向エンジン×シンメトリカルAWDや、このスクエアなフォルムがいいという大勢のファンが新型の登場を待っています。秋に発表された待望のストロングハイブリッドもラインナップに加わる見込みです」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

輸入車販売台数No.1モデルはEVも加わり盤石!


BMW

MINI COOPER E(3ドア)
463万円〜531万円

 

約10年ぶりの全面改良でBEV(電気自動車)も追加

2023年の国内輸入車販売台数No.1に輝くMINI COOPERが約10年ぶりにモデルチェンジして4代目に進化。ガソリンモデルのほかBEV(電気自動車)も登場し、より幅広いラインナップから選べる。5ドアモデルも登場した。

 

SPEC【クーパー SE(3ドア)】●全長×全幅×全高:3855×1755×1460mm ●車両重量:1640kg ●パワーユニット:モーター×1 ●最高出力:218PS/7000rpm ●最大トルク:33.7kg-m/1000〜4500rpm ●一充電走行距離:446km

 

↑SUVタイプの「MINI Countryman」も同時にモデルチェンジ。ガソリンモデルのほかクリーンディーゼル、そしてBEVも選べる。

 

【ヒット確定の根拠】10年ぶりのモデルチェンジ!よりシンプルかつモダンに

「もともと日本でも大人気のMINIですが、新型はMINIらしさを継承しながらもガラリと雰囲気が変わり、とことんシンプルになりました。しかも中身は最新の装備が満載されていて、100%BEV版がついに設定されたのもポイントです」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

モータージャーナリスト:岡本幸一郎さん
26台の愛車を乗り継ぎ、軽から高級車まで幅広く網羅。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。

 

※「GetNavi」2025月2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです。

スズキ「ジムニー ノマド」の人気は間違いなかった。2025年プロが注目する国産車5選!

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さん。その岡本さんがいきなり受注停止のスズキ「ジムニー ノマド」をはじめ、2025年に登場するかもしれない注目すべき国産車5台を紹介します。

 

【その1】発表からわずか4日で受注停止の人気車種

スズキ

ジムニー ノマド

265万1000円(税込)〜

もともと「ジムニー」は、小さいながらも高い走破性能を持つ世界最小の本格的クロスカントリー車として、その性能を本当に必要とする職業や一部のマニアックな層から絶大に支持されていたが、販売台数としてはそれほど多くなかった。ところが、2018年にモデルチェンジした現行型は、愛嬌のあるカジュアルなルックスをはじめ、従来に比べると大幅に改善された乗り心地や周囲に見劣りすることのない先進運転支援装備の採用などが効いて、いきなり一般ユーザーをも巻き込んだ大ヒット車となり、ずっと納車の遅れが伝えられるほどの状況になった。

 

その一方で、現行ジムニーには歴代ジムニーにはなかったロングボディの5ドア版が存在し、先に海外から導入されたことが知られると、日本での販売を望む声がヒートアップした。2025年1月30日、5ドアモデル「ジムニー ノマド」が日本で発売されるや注文が殺到し、発表からわずか4日後にいきなり受注停止という異常事態になった。ただでさえ人気のジムニーに実用性に優れる5ドアがあれば人気が出るのは確実と思っていたら、こんなに早くこうなるとは予想を超えていた。1日も早く受注が再開されるよう願いたい。

 

【その2】6代目フォレスターいよいよ発売!

スバル

フォレスター

価格未定

「日常から非日常まで使えるSUV」をコンセプトに、スバルSUVの中核モデルとしてずっと安定の人気を誇ってきた「フォレスター」。人気の秘訣は、ちょうどよいサイズとクセのないキャラクターとソツのない完成度と使い勝手のよさにある。フォレスターの伝統である、ほどよくスクエアなフォルムや、独自の水平対向エンジンを軸にすべてを左右対称にレイアウトしたシンメトリカルAWD(※)による優れた走行性能に惹かれるファンも少なくない。6代目となる新型もそのあたりをしっかりと受け継いでいる。すでに海外ではモデルチェンジした新型が発売済み。

 

先だって「クロストレック」に初めて搭載され、燃費がよくて力強いことからとても評判のよい2.5リッター水平対向エンジンに、トヨタの技術を応用したスバル独自のシリーズパラレルハイブリッド方式のシステムを組み合わせたストロングハイブリッド「S:HEV」がフォレスターにも搭載されることを期待している人も少なくないはずだ。また、スバルといえば運転支援システム・アイサイトに魅力を感じる人も多い。最新の機能を身に着けたアイサイトが、より安全で快適なドライブを提供してくれるに違いない。

※:スバルによって開発された常時4輪駆動システム

 

【その3】日本車で高級なワゴンがあったら欲しい

トヨタ

クラウンエステート

価格未定

現行16代目「クラウン」は4つの個性がラインアップされるうち、2025年春時点でセダン、スポーツ、クロスオーバーと3つのバリエーションが販売中。残るひとつの「エステート」もそう遠くないうちに発売されるはずだ。エステートと呼ぶとおり、ステーションワゴンとSUVをクロスオーバーさせた新しいタイプの機能的なSUVであり、大人の雰囲気で余裕のある走りとアクティブライフを楽しめるクルマを目指しているという。

 

肝心の荷室スペースは非常に広く、リアシートを倒すとフルフラットデッキになるなど、使い勝手にもこだわっている。パワートレーンは定番の2.5リッターのハイブリッドのほかに、長距離をどっしりゆったりと走れるように味付けされたPHEVが選べる。ワゴンとして見たときに、いまや日本車のワゴンは数えるほどしかないが、輸入プレミアムブランド車は一定の支持を得ていて、日本車で高級なワゴンがあったら欲しいという人は少なくないはずだ。

 

【その4】昭和のデートカーが令和に復活!

ホンダ

プレリュード

価格未定

元祖デートカーとして知られる「プレリュード」が復活するという情報に胸躍らせている人が続出しているようだ。かつて若い頃にプレリュードに乗っていた人たちが結婚し、出産を迎え、子育て時期にはファミリーカーに乗っていた。しかし、実は2ドアクーペに乗りたいと思っていた人は大勢いるだろう。そんな子離れしたタイミングを迎えた2ドアクーペ好きたちが、車名を聞いただけでテンションが爆上がりしそうな魅力的なクーペの登場となる。

 

実車をぜひ見てほしいと感じさせるよう、スタイリッシュさには大いにこだわったという。夫婦で旅行に出かけるときに荷物を積み下ろししやすいよう、過去のモデルとは違ってハッチバックの流麗なファストバックスタイルを採用するのも特徴だ。パワートレーンにはクルマのキャラクターに合わせて専用にチューニングしたハイブリッドのe:HEVを搭載し、4WDもラインアップされる見込みで、走りにも期待できそうだ。

 

【その5】東京オートサロン2025にコンセプトカーが展示されて話題に

ダイハツ

ミライース GRスポーツ

価格未定

東京オートサロン2025にコンセプトカーが展示されて話題となった「ミライース GRスポーツ。ベーシックな軽自動車である「ミライース」に、強力なターボエンジンと5速MTを搭載するとともに、全日本ラリー選手権の参戦マシンから流用したスポーティなデザインの前後バンパーをまとい、足まわりにはBBS鍛造ホイールとブリヂストンのポテンザRE050A、コクピットにはレカロ製スポーツシートなどを装着。走りに特化したホットハッチに仕立てたというクルマである。

 

位置づけとしては、コペンに続いてGRの一員となるとともに、ダイハツがかねてから力を入れている国内ラリー等のモータースポーツ向けのベースモデルとしても市販化に期待する声は小さくない。件のコンセプトカーの反響が非常に大きいので、おそらく市販されることになりそうだが、願わくはミライースがベースなことだし、価格があまり高くならないよう期待したい。

 

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これがマイチェンってウソだろ…?「BEVらしい走りを目指した」三菱の新型アウトランダー極上の乗り味を試乗レポート

PHEV(後述)の先駆けともいえる三菱のSUV「アウトランダー」が昨年10月、駆動用バッテリーを刷新するなどのビッグマイナーチェンジを実施しました。外観からはほとんど従来モデルとの違いがわからないほどですが、走りを含めたクルマとしての進化はそれを超える大きなものとなっていました。

◾今回紹介するクルマ

三菱/アウトランダーPHEV

※試乗グレード:P Executive Package(7人乗り)

価格:526万3500円〜659万4500円(税込)

 

PHEVとは何か?

PHEVとは「プラグインハイブリッド車」のことです。日本で主流となっているハイブリッド車との違いは、この“プラグイン”によりコンセントから充電ができる機能を備えたことにあります。つまりPHEVは、任意に追加充電できるハイブリッド車ということになります。

 

また、ハイブリッド車(HEV)はエンジンによってのみ充電しますが、搭載するバッテリーの容量が小さいこともあって、モーターはエンジンのアシストが中心。ストロングハイブリッド車であってもモーターで走れる時間はあまり長くありません。PHEVではバッテリーを大容量化したことで、モーターで走る時間が長く、バッテリー残量がある時はBEV(電気自動車)と同等の走りを体験できるのもメリットとなります。

 

これにより、自宅でも充電が可能となり、この場合はガソリンよりもエネルギーコストを安くすることができるのです。さらにモーターで走ることでBEVと同等の静かさで走れることもPHEVならではの大きな魅力といえるでしょう。

 

バッテリーを刷新してEV走行距離を大幅に延長。内装も質感アップ

アウトランダーは2012年に登場した2代目でこのPHEVにいち早く参入し、以来、PHEVの先駆者として地位を固めてきました。今回のビッグマイナーチェンジでは、PHEVとしての魅力に磨きをかけ、着実な進化を遂げたモデルとなりました。

↑外観はほとんど変わらないが、アルミホイールを新デザインに変更し、ターンシグナルランプをLED化した

 

メインとなる進化のポイントは駆動用バッテリーの刷新です。電池パックの作り直しを行うほど大がかりなもので、その容量は従来の20.0kWhから22.7kWhへと1割以上もアップ。これにより、EVモードでの航続距離は100kmオーバーとなり、これはおそらく国産PHEVの中では最長となるのではないかと思います。

 

そして、この容量アップに伴い床下構造の変更も実施されました。もちろん、一般的に言えば、マイナーチェンジでここまで行うことはありません。しかし、よりモーターで走行する領域を増やし、よりBEVらしい走りに近づけるという開発者の思いが、あえてここまで手を入れさせたというわけです。さらに、三菱自動車によれば「より多くの駆動トルクがタイヤへ伝わるようになり、その対応として駆動系の制御やサスペンションの味付けはすべてやり直した」と言います。まさにフルモデルチェンジ並みの刷新が実施されたのです。

↑ラゲッジスペースは5人乗車時でもゴルフバッグが4個、スーツケースが3個収納できる大容量。荷室長(セカンドシート折り畳み時)2040mm、荷室幅(最小)1070mm、荷室幅(最大)1300mm

 

一方で、従来モデルとの差をほとんど感じないのが外観です。高速走行中のフードのバタ付きを抑えるために、ボンネットフードをアルミからスチールに変更し、ターンシグナルランプとバックランプをLED化したということで、これは見た目ではわかりづらいところ。とはいえ、よく見ればグリルやバンパーのデザインも変更したことで前から見るとシャープさを増した印象を受けますし、アルミホイールも新デザインに変更されています。また、全高は5mm高くなったことでSUVらしさがより強調されたのは確かです。

↑リアビューでも大きな違いはないが、バックランプはLED化された。リアフォグは装備されていない

 

内装でも進化を遂げています。ダッシュボード中央にあるディスプレイは、12.3インチに大型化され、ここではApple CarPlayやAndroid Autoへの対応も可能。ルームミラーはフレームレスのデジタルミラーとなって先進性をアピールしています。快適性については前席にシートヒーターに加えてベンチレーション機能を装備しています。また、アルミペダルの採用もあり、全体として一段と質感が向上した印象を受けます。

 

モーターが活躍する領域が増えて、トルクフルでスムーズな加速を実現

さて、実際に走ってみましょう。スイッチをONにしてアクセルを踏むと、車体はほとんど音もなく前へと進み出しました。スタート地点から西湘バイパスまでの一般道でエンジンがかかることは一切なく、西湘バイパスの本線へ流入する際、アクセルを少し強めに踏んだところで初めてエンジンが動き出したのです。この加速は極めて力強く、アッという間に本線の流れに乗ることができました。

↑回頭性が素晴らしく良く、大柄なボディにもかかわらず取り回しの良さは特筆に値する

 

モーターは特性上、ゼロスタートからトルクをフルに出すことができます。つまり、このモーターでの領域が増えたことでその特性をフルに活かせるようになり、それがトルクフルでスムーズな本線への流入につながったのは間違いありません。

↑エンジンは直列4気筒2.4Lで、これに前85kW/後100kWのモーターを組み合わせている

 

西湘バイパスに入ってからも車内は極めて静か。時折、海側から吹いてくる強い風がボディを襲いましたが、それでもアウトランダーはびくともせずに快適に車体を走らせます。低速域で若干大きめに聞こえたジェネレータの音もほぼ聞こえなくなり、足腰のしっかりとしたサスペンションは、西湘バイパスの準高速域でも快適な乗り心地を提供してくれました。

 

市街地に入ってからは、この大柄で2t近い重量級のボディとは思えないフットワークの良さが光ります。車線変更はもちろんのこと、交差点での操舵フィールも良好で、ステアリングを操作する度に運転する楽しさを実感させてくれるのです。さらに狭い路地に入っても、ボディの見切りの良さがサイズ感を感じさせないスムーズな走行を可能にしてくれました。このあたりは、「パジェロ」などの大型SUVで培った、三菱ならではの経験が活かされているに違いありません。

 

ぜひ一度は聴いて欲しい、YAMAHAが作った渾身のサウンドシステム

そして、ビッグマイナーチェンジを受けたアウトランダーPHEVで見逃せないのが、YAMAHAサウンドシステムの搭載です。グレードによって、12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」(※「P Executive Package」に標準装備、「G」「P」はオプション)と、8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」(※「M」「G」「P」は標準装備)の違いはあるものの、それぞれが純正オーディオとしてはハイレベルなサウンドを聴かせてくれたのです。

↑12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」

 

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」に組み合わされるサブウーファーはラゲッジスペース左側にある

 

もちろん、両者を聴き比べればUltimateに軍配が上がります。特に中低域の再現性が高く、女性ボーカルを再生した時はその声質に思わずウットリしてしまったほど。また、背後のベースの量感も豊かで、これはUltimateだけのサブウーファーの搭載が効果を発揮しているのだと思います。とはいえ、どちらもダッシュボード上にステージが展開される様子を見事なまでに再現しており、音楽を楽しむにはいずれも十分に満足がいくレベルでした。

↑8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」

 

ただ、Ultimateには大きなアドバンテージがあります。それは、周囲の騒音を把握して、周波数帯に応じた補正機能を備えていること。ノイズキャンセルではないものの、その補正を加えていくと確かに細部の音が浮かび上がり、より聴きやすくなるのです。これをON/OFFすればその差は歴然。この操作がややわかりにくいのが残念でしたが、この効果は多くの人にぜひ体験してほしいと思いました。

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」を試聴中の筆者

 

SPEC【P Executive Package(7人乗り)】●全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm●車両重量:2180kg●パワーユニット:2359cc直列4気筒DOHC 16バルブ●エンジン最高出力:98kW/5000rpm[モーター最高出力:前85kW/後100kW]●エンジン最大トルク:195Nm/4300rpm[モーター最大トルク:前255Nm/後195Nm]●WLTCモード燃費:ハイブリッド燃料消費率17.2km/L・交流電力量消費率227Wh/km●一充電消費電力量:23.22kWh/回

 

撮影/松川 忍

 

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「上り坂では速度がどこまでも伸びて…」ヒョンデのスポーツBEV「アイオニック 5 N」で箱根を走る楽しさ再発見!

韓国の自動車メーカー、ヒョンデ(現代)自動車が、日本市場において最初のバッテリーEV(BEV・バッテリーに蓄えた電気のみで走行する電気自動車)専用車として提供しているのが「IONIQ(アイオニック)5」です。このモデルは、2022年に日本の乗用車市場へ再参入(かつて2001-10年に日本で展開していた)するにあたり、その主力車種として投入されました。そして、今回の試乗レポートとしてお届けする「IONIQ 5 N」は、それをベースにスポーツモデルの頂点に立つモデルで、Nブランド初のBEVともなります。

◾今回紹介するクルマ

ヒョンデ/IONIQ 5 N

858万円(税込)〜

 

走りの楽しさを実感させるハイパフォーマンスぶりを発揮

「BEVって走るのがこんなに楽しいんだ!」これがヒョンデ・アイオニック5 Nで箱根の峠道を走った正直な感想です。もともとアイオニック5はシャープな操舵感とトルクフルな走りが魅力のBEVとして、日本だけでなく欧州でも高く評価されてきました。そのアイオニック5の走りを徹底的にチューンナップし、走りの楽しさを実感させるスポーツモデルとして誕生したのがアイオニック5 Nなのです。

↑「アイオニック5 N」はヒョンデのサブブランド「N」初の電気自動車としてデビューした。ボディカラーは10色から選べる

 

この“N”の由来は、ヒョンデの開発拠点があるソウル郊外のナムヨンと、足回りを鍛えるためにテストを繰り返したニュルブルクリンクの頭文字を取ったもの。このロゴマークをよく見ると二重に表現されていますが、それはこの二か所を表したものなのだそうです。

↑「N」の位置づけは、ベースモデルの上にその入門用として「N Line」があり、そこからモータースポーツに一歩近づいた位置にある

 

それだけに、アイオニック5 N は単にパワーの強化だけでなく様々な先進デバイスを加えることで、まさに新時代のスポーツカーと呼べるだけのパフォーマンスを発揮するモデルとして誕生しています。

↑フルLEDヘッドランプ(プロジェクションタイプ)。ヒョンデらしいパラメトリックピクセルで独自性を主張

 

↑ヘッドランプと共通の方眼型テールランプを備え、その存在感は抜群に高い

 

そのパワーユニットは前後に2基搭載され、フロントモーターの最高出力は175kW(238PS)/最大トルクが370Nmで、リアモーターは最高出力が303kW(412PS)/最大トルクが400Nmとなっています。中でも注目なのは「N Grin Boost(NGB)」と呼ばれるブースト機能で、10秒間の制限付きではあるものの、システムトータル最高出力は478kW(650PS)、最大トルクは770Nm。最高速度は260km/h、0-100km/h加速は3.4秒というスポーツカー並みの性能を発揮します。

↑ボンネットを開くとインバータをはじめ、フロントモーターが配置されているのがわかる

 

このパワーの源泉となる駆動用リチウムイオンバッテリーは、エネルギー密度を高めたヒョンデとしては第4世代となる最新バージョンで、その容量は84.0kWhの大容量。そのため、これだけのハイパフォーマンスを発揮しながらも、一充電走行距離は561kmを達成しているのはうれしいですね。

 

内外装共にハイパフォーマンスモデルにふさわしい装備を満載

サスペンションは、フロントがストラットで、リアはマルチリンクの足まわりにホイールGセンサーと6軸ジャイロセンサーを組み合わせた大容量の可変ダンパーを搭載。リアには電子制御式LSDも装備しています。また、ボディそのものもこのパフォーマンスに耐えられるよう、スポット溶接を42か所増やし、接着剤の使用範囲を広げて剛性を大幅にアップ。それらを受け止めるタイヤには、電動車の大トルクにも耐えられるよう専用開発したピレリ「P ZERO ELECT」の275/35ZR21を組み合わせています。

↑タイヤには電動車の大トルクにも耐えられる専用開発のピレリ「P ZERO ELECT」の275/35ZR21を組み合わせた

 

エクステリアにも「N」ならではオリジナルな仕様が施されました。空力性能を向上するためにエアカーテンとアクティブエアフラップ付きの専用バンパーを採用し、スポークからのぞく赤色のブレーキキャリパーやボディ下部のオレンジ色のストライプからは、否応なく高性能ぶりが感じられます。なお、ボディ寸法はベース車と基本的に同じですが、専用エアロパーツによって少しだけ長くなっています。

 

運転席に座ると、ダッシュボードにはN専用グラフィック付き12.3インチカラーLCDメーターをはじめ、ヒーテッド機能付き本革ステアリングホイール、メタルペダルなどインテリアにもN専用品が数多く採用されていることがわかります。シートもヘッドレスト一体型のアルカンターラ+本革仕様のN専用タイプで、サポート性が高く手触り感も上々。また、ステアリングホイールやドアトリム、アームレストなどはパフォーマンスブルーアクセントが施されるほか、Nエンブレムウェルカムライトも搭載されていました。

 

橋折りを楽しませる多彩なドライブモードと疑似エンジン音

ここからはいよいよアイオニック5 Nの走りを体験となりますが、それをより楽しむためにはステアリングホイールに用意された4つのボタンを使いこなすことがポイントとなります。なにせ、これを使いこなせばBEVを活かした多彩なドライブモードとオーバーブースト機能を設定でき、これらは任意にプリセットも可能となるのです。

↑ステアリングには、「N Grin Boost」起動ボタン(右上)、ドライブモードセレクト(左上)、Nボタン(下側左右)が備わる

 

↑ドライブモードの切り替え方法の解説図。右下の“N”ボタンを押すところから「N e-Shift」が起動する

 

具体的には駆動用モーターの反応のほか、ステアリングの重さやダンパーの硬さを調整でき、電動LSDの効き具合までも任意に設定が可能。しかもこれらを好みの状態にプリセットしておけば、ドライバーは容易に走りを楽しめるようになるというわけです。ただ、これらはじっくりとその効果を試したうえで使いこなすべきもの。正直言えば、今回の限られた時間の試乗枠ではその効果を自在に使いこなせるまではいきませんでした。

 

その中でも、誰でもすぐに使いこなせるのが「Nペダル」です。いわば“ワンペダルドライブ”ともいえるもので、N専用回生ブレーキによって最大減速力0.6Gを実現。これにより、アクセル操作だけで素早い重心移動が可能となり、ほとんどの場合でブレーキを踏むことなくコーナーへの進入ができます。まさに電動車ならではのメリットを実感できるでしょう。

 

それと、走りをさらに楽しい気分にさせてくれるのが、電子合成音で再生される“エンジン音”です。このモードではBEVにもかかわらず、あたかもエンジン車に乗っているかのような疑似音を伴って走行することができます。しかも変速機能を有効にすれば、変速ショックまでリアルに再現するので、同乗者なら間違いなくエンジン車に乗っていると勘違いしてしまうでしょう。選べるモードは3つ。この中にはジェット機のようなサウンドも含まれ、個人的には楽しく体験することができました。

 

スポーツカー並みの性能を発揮しながら乗り心地も上々!

こうしたパフォーマンスを念頭にアクセルを踏むと、2210kgという車重にもかかわらず車体は軽やかに前へと踏み出します。BEVならではのスムーズな加速はまさに淀みなくトルクが湧き出てくる感じで、どの速度域からアクセルを踏み込んでもその俊敏さには圧倒されっぱなし。特に箱根ターンパイクの最初の上り坂では強大なトルクにより速度がどこまでも伸びていってくれそうな、そんな印象を持つほどでした。

↑アイオニック 5 N。個性的なリアビューが印象的だ

 

コーナリングの入り方も実に気持ちがいい。ステアリングはクイックながら電動パワーステアリングの操舵力は一定で、どんなコーナーでも軽く滑らかにコントロールすることが可能。Nペダルによってブレーキを踏むことはほとんどないから、コーナーの通過もスムーズそのものです。ここに疑似エンジン音を加えると、峠道を走る楽しさは倍増! 箱根の峠道を走る楽しさを改めて呼び起こす思いでした。

 

こんなハイパフォーマンスなアイオニック5 Nですが、一般道を走行すれば硬めではあるものの、電子制御可変ダンパーが巧みに効果を発揮して、乗り心地はむしろベースモデルよりも良いのではないかと思えるほど。広々とした車内はルーミーで明るく、それでいて5人が乗っても480L を確保したカーゴルームは積載量も十分。561kmの航続距離とも相まって、普段使いにも十分対応できるクルマに仕上がっているといえるでしょう。

↑トランク容量は5人乗車時で480Lと十分だが、ベース車の520Lよりも狭くなっている

 

このBEVならではの走りの楽しさを満喫できるアイオニック5 Nの価格は858万円〜。ベース車よりも300万円近くアップすることになりますが、それが妥当かどうかは、まずは試乗してから判断すべきだと思います。もちろん、走りだけを捉えればベース車でも満足してしまうかもしれません。しかし、“N”の圧倒的なパフォーマンスを体感すれば後戻りできなくなるのは確実。ベース車レベルのコスパの高さをとるべきか、アイオニック5 Nの圧倒的な走りの楽しさをとるべきか……。個人的には「悩ましいモデルが登場してくれたなぁ」とマジで思った次第です。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4715×1940×1625mm●車両重量:2210kg●パワーユニット:交流同期電動機●最高出力:(フロント)175kW/4600〜1万rpm(リヤ)303kW/7400〜1万400rpm●最大トルク:(フロント)370Nm/0〜4000rpm(リヤ)400Nm/0〜7200rpm⚫一充電走行距離(WLTCモード):561km

 

撮影/宮越孝政

 

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減益90%超……最近元気がない日産だけど、振り返ると記憶に残る名車は実に多い!

2024年4月から9月までの日産の中間決算は、主力のアメリカ市場での販売不振などから営業利益、最終的な利益ともに90%を超える大幅な減益。日産では経営の立て直しに向けて、世界で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行う方針を明らかにしました。まさに正念場を迎えている日産。

 

本稿では、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんに日産の名車について振り返ってもらいました。

 

昔の日産は名車が多かった

若い方々にはピンと来ないかもしれないが、日産はかつて日本の自動車メーカーとしてトヨタと双璧をなすほどのメーカーだった。たしか80年代初頭には、日産とトヨタはお互いシェア率が30%前後で、最接近したときには約5%しか差がなかったほどだ。

 

ところが、時がたつにつれて差が開いていき、いつしかシェアはトヨタ約48%、日産約14%(2024年3月)というようになったわけだが、販売台数やシェアでは大差がついたものの、記憶に残る名車の数なら、日産もぜんぜん負けていない。むしろ昔は日産車のほうが名車が多かったぐらいだ。

 

そこで今回は、「スカイライン」「フェアレディZ」のような長い伝統を誇る名車や、比較的新しい「エクストレイル」「エルグランド」のように現在まで続いていている車種ではなく、今ではなくなってしまったなかで、印象的だった車種をいくつか紹介したい。

 

80年代終盤から90年代は「元気な日産」

まずは初代「シーマ」。1988年に登場し、当時のバブル景気もあって「シーマ現象」なる言葉を生み出すほど売れに売れた。当時としては相当なハイパワーである255psを発揮したエンジン・VG30DETが生み出す強烈な加速により、リアを下げて離陸するかのように走り去る姿が忘れられない。最近になっても、有名女優さんが長年愛用していることがたびたび報じられているのは、それだけ印象的なクルマだったからにほかならない。

↑初代「シーマ」。トヨタ「クラウン」の3ナンバー版の対向車として発表された

 

その少しあとに出た、「S13シルビア」も大人気を博した。この類いのクルマで月販がコンスタントに1万台を超えていた時期があるのは大したものだ。美しいデザインで女性ウケもよく、デートカーとしてだけでなく、手頃な価格とサイズのパワフルなFR車であることから、兄弟車でよりスポーティなスタイリングの「180SX」とともに走り好きにも大いにもてはやされた。

↑5代目となる「S13シルビア」。ホンダ「プレリュード」の対抗馬として開発された

 

その後シルビアはS14、S15と進化するものの販売は下降線をたどり、消滅してしまったが、いまや中古車市場では新車価格をゆうに超えるものがズラリ。走り好きからずっと支持されつづけている。

 

1990年登場の初代「プリメーラ」も印象的な1台だった。日本車ばなれしたデザインとセダンなのに車内が広々したパッケージングの巧みさに加えて、何より走りが鮮烈だった。FFでここまで極めたクルマはちょっと心当たりがない。開発陣は日本では売れないだろうと思っていたそうだが、ことのほか売れて驚いたそうだ。

↑初代「プリメーラ」。欧州市場でもヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーで日本車初の2位を獲得するなど、その評価は高かった

 

「Be-1」、「パオ」、「フィガロ」というパイクカー(※)を送り出して人気を博したのもその頃。日産はそうした他社にはあまりないユニークな取り組みもやっていたのだ。それらパイクカーの中古車には、おそるべき高値のついている個体もある。

※レトロ調であったり先鋭的であったりと、スタイリングが特徴的な自動車。
↑「Be-1」。1987 年1月に限定1万 台で発売されると、高い前評判から限定数を超える受注が殺到し、購入者を抽選で決定する異例の事態となった

 

それらパイクカーのベースになった「マーチ」は、日産のエントリーモデルとしてこのクラスを支えてきたが、1992年登場の「K11マーチ」は国内と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するほど高く評価され、販売の面でも最盛期には1年間で約14万2000台が売れたほど非常に人気の高いモデルだった。次の「K12マーチ」もかわいらしいデザインで特に女性から人気を博したが、その次の「K13マーチ」はあまり評価が得られず、尻すぼみで消滅してしまったのは残念だ。

↑2代目となる「K11マーチ」。ボディ形式は3ドアと5ドアのハッチバック型、後期型にはワゴン型「マーチBOX」やオープンモデルの「マーチカブリオレ」もラインナップされていた

 

80年代終盤から90年代にかけて、「元気な日産」をアピールしていた通り、ここで紹介していない車種も含めて、日産には存在感のある印象的なクルマがいくつもあった。

 

90年代中期から勢いに陰りが現れる

90年代中期には一転して、ちょっと元気がなくなってしまったのだが、そんな中でもいくつか記憶に残る名車がある。

 

1994年に登場した「ラシーン」は、前述のパイクカーの流れをくむ商品企画が受けて、現役時代もそれなりに人気を博したが、その後に絶版車となってから、あらためてその魅力が再認識されて、現在では中古車がプチカルト的な相場となっている。

↑「ラシーン」。クロスオーバーSUVの先駆け的なモデル

 

1996年に登場した「ステージア」は、当時のワゴンブームの中で日本勢の頂点に立つことを念頭において開発されたモデルだ。目論見通り、それなりの価格帯でありながら売れ行きは好調だった。97年秋には、「スカイラインGT-R」ゆずりのエンジン・RB26DETTを搭載した、「260RS」まで登場したことには驚いたものだ。

↑「ステージア」。ワゴン人気が絶頂期を迎えたなかで、堂々としたサイズ感と高級感、優れた走行性能や使い勝手などが評価されて人気モデルとなった

 

21世紀に入ってからの日産

ここからは、現在も販売されているモデルを紹介。おそらく読者のみなさんもまだ記憶に新しいことと思うが、21世紀に入ってからの日産車でやはり際立つのは「R35GT-R」だ。すでに登場から17年が経過するが、その間ずっと絶大な存在感を発揮してきた。

↑2007年に誕生して以来、モデルイヤーごとに進化を続けた「R35GT-R」。2025年モデルは、青を基調とした専用特別内装色「ブルーヘブン」が特徴

 

2024年は、日本カー・オブ・ザ・イヤーの規定に該当するニューモデルがなく、ノミネートなしというさびしい状況となったが、それでも現行型が発売されていながら長らく滞っていた「アリア」と「フェアレディZ」の受注が正常化されたことや、「アリアNISMO」のような興味深いモデルが加わったのはうれしいニュースだ。

↑アリアのe-4ORCEに、NISMO専用の加速チューニングを施し、動力性能をさらに引き上げた「アリアNISMO」。欧州市場でも発売されている

 

一方で、近年の日産はどちらかというとよいニュースよりもよろしくないニュースのほうが多かった印象だ。2024年も、業績の低迷や大規模なリストラでせっかくの創立90周年を祝う空気が吹き飛んでしまったのが残念でならない。要因はいろいろあるには違いないが、とにかくクルマが売れないことに尽きる。

↑2024年12月23日、日産とホンダは、両社の経営統合に向けた協議・検討を開始することについて合意。共同持株会社設立による経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結した

 

「BEV(バッテリー式電気自動車)はあってもハイブリッドカーがないのがいけない」という声もあるが、本格的ハイブリッドカーがなくても北米で成功している他メーカーはある。そのうえ、そもそも日産には発電専用ガソリンエンジンとモーターを融合した「e-POWER」があり、可変圧縮比を実現したVCターボエンジンと組み合わせたことで、苦手といわれた高速燃費を大幅に改善することに成功している。

 

先進運転支援装備については、業界をリードするほど高度なことをすでにやってのけている。

 

個人的にはそれほど悪くないと思うのだが、うまくいっていないのは、商品の微妙なところや売り方に問題があるのではないかと思う。すぐに改善するのは難しいだろうが、ぜひ仕切り直して、いずれ「元気な日産」が再来するよう期待したい。

 

 

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日本に定着したハイブリッド車、世界的な再評価へ!「政策頼み」で根付かない「EVの最新事情」が見えてきた

今、自動車業界が「100年の一度の大変革期」にあるということは、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。そのきっかけとなったのは2016年にドイツ・ダイムラーのディーター・ツェッチェCEO(当時)が、その変革を「CASE(ケース)」の4文字で表現したことに始まります。

 

これは「C=Connected」「A=Autonomous」「S=Shared&Service」「E=Electric」という4つの重要キーワードの頭文字を取った造語で、クルマの使い方や在り方が変わるだけでなく、価値やサービス、産業構造までもが変化していくという考え方に基づきます。つまり、そのうちの「E」に該当する電気自動車(BEV)が走行中にCO2を含む排気ガスを出さず環境面で変化をもたらすとして、世界中で注目されているのです。

 

そのBEVが近年で急速に販売台数を伸ばし始めたのは2020年頃から。ハイブリッド車(HEV)が半数以上を占める日本では、BEVが広く普及していると感じにくいかもしれませんが、海外に目を向ければその状況は大きく違っているのです。

 

世界各国の電気自動車の普及率

では、世界のPHEV(ハイブリッド車に外部からのバッテリー充電機能を追加したクルマ)を含む電気自動車の普及率はどのぐらい進んでいるのでしょうか。EV用充電インフラを手掛ける「ENECHANGE(エネチェンジ)」が国際エネルギー機関(IEA)のデータをもとに公表した「【2024最新版】世界の電気自動車(EV)の動向」から、その動向を紐解いていきましょう。

 

それによると、世界の電気自動車の普及率は、新車販売台数に占める電気自動車(PHEVを含む)の比率として、2023年時点で18%となりました。特に2020年以降の伸び率が大きく、2020年4.2%、2021年9%、2022年14%、2023年18%と一貫して上昇を続けている状況にあります。

 

このレポートでは、世界各国の電気自動車(PHEVを含む)の2023年末での普及率も公表されています。

 

もっとも普及率が高い国はノルウェーで93%、次いでアイスランド71%、スウェーデン60%、フィンランド54%、デンマーク46%、ベルギー41%と北欧を中心としたヨーロッパ諸国が上位を占めており、ヨーロッパ全体で見ると21%の普及率となっているそうです。つまり、ヨーロッパでは5台に1台が電気自動車となっていることがわかります。

 

一方、ヨーロッパ以外での普及率が高いのは中国で38%。次いでイスラエルが19%、ニュージーランドが14%と続きます。ちなみに世界最大の自動車市場を持つアメリカは9.5%で、お隣の韓国では7.9%、日本はそれよりもさらに低い3.6%にとどまりました。

 

各地域の電気自動車の詳細

次に電気自動車の販売台数と保有台数を実数で見てみましょう。

 

ここでトップに立つのが中国です。2023年に世界で販売された電気自動車は約1400万台ですが、このうち中国が60%で810万台、ヨーロッパが25%で約330万台、アメリカは10%で約139万台がそれぞれ販売されました。

 

また、電気自動車は世界ですでに約4000万台が保有されていますが、このうち中国では約2190万台を保有。世界の電気自動車のうち半分以上が中国に存在していることになります。それに続くヨーロッパは28%の1120万台を、アメリカは12%の480万台を保有し、この2か国1地域で世界全体の95%近くを占めていることになるわけです。

↑タイに進出した中国のメーカーBYD。タイではBEV産業振興政策「EV3.0」に基づき、1台当たり7万~15万バーツ(約32万~約68万円、1バーツ=約4.5円)の補助金が支給された。しかし、これを利用する場合、その翌年に販売した台数を現地生産することが義務化され、これがタイでの過剰生産を生み出した

 

ちなみに日本はといえば、2023年の電気自動車の販売台数は約14万台で世界のちょうど1%。保有台数は約54万台で、世界の1%強にとどまっています。

 

各地域の電気自動車の詳細

ここからは、電気自動車の普及が著しい各地域の詳細を見ていくことにします。

 

まず中国です。中国政府は新車販売における新エネルギー車(NEV)の割合を2027年までに45%まで引き上げることを目標としています。もともとは25年までに20%以上としていましたが、早々にこの目標を達成してしまったためにこの目標値が23年に引き上げられたのです。その結果、その割合は30年までに40%以上、35年までに50%以上にまで引き上げる目標が設定されています。

 

ただ、この目標を達成できるかは否かはわからない状況です。というのも、目標達成のために2010年から続けられてきた電気自動車の購入補助金を22年末に完全終了したからです。折しも不動産不況による景気悪化の影響も受け、新車販売が鈍化。そのため、中国のEVメーカーは過剰生産状態となり、周辺国やヨーロッパなどへの輸出に力を入れている状況にあります。

↑中国・深圳での光景。グリーンのナンバープレート車がNEV(New Energy Vehicle)。この写真だけでも3割程度がNEVであることがわかる

 

ヨーロッパはどうでしょうか。欧州連合は2035年までに合成燃料(e-fuel)車を除いて、ガソリンやディーゼルを使う内燃機関搭載車の新車販売を禁止する方針を掲げています。つまり、電気自動車シフトを積極的に推進してきたわけですが、2024年1月~9月の累計で見ると新車販売におけるEV(BEV)のシェアは約14%の約143万台にとどまり、前年比で普及率・販売台数で減少する結果となりました。

 

その要因は2020年以降、ヨーロッパ全体で実施されてきたEV購入支援策の厳格化や打ち切りが相次いで実施されたことが理由です。こうした支援策の変更で販売台数が鈍化するあたりは、EV市場そのものが根付いていないことの証しなのかもしれません。

 

一方でアメリカは意外にも電気自動車の販売が好調です。2022年末時点でのEV新車販売台数比率は、BEVとPHEVを含めて約8%。前年比では1.7倍の伸びとなり、販売台数では約36万台も増えました。見逃せないのがBEVの大幅な増加で、47万台から80万台へと急増。さらに23年になると第一四半期には約8.6%にまで上昇し、それは前年同期比で45.4%の増加となり、BEVだけに絞っても48%増加しているのです。(データ:国際エネルギー機関)

 

ただ、これが今後も続くかは不透明です。アメリカでもこれまで電気自動車に対する税額控除がありましたが、それにも関わらず2024年に入ってその伸びが鈍化しているからです。一方でこの優遇策を廃止することを示唆していたトランプ次期政権でしたが、テスラ社のイーロン・マスク氏の支援を受けたことで、この考えは留保している状況にあります。HEVの販売が伸びている状況もあり、今後、これがどう展開していくのか目が離せない状況にあるといえるでしょう。

 

最後に日本です。日本自動車販売協会連合会によれば、2020年の電気自動車の新車販売比率は0.6%(約1.5万台)だったのに対し、21年は0.9%(約2.1万台)、22年は1.4%(約3.2万台)となり、23年には1.7%(約4.4万台)にまで上昇。さらに欧米などでEVとしてカウントされるPHEVやFCEV(燃料電池車)を含めると、2023年には3.6%(約9.7万台)となり、電動車の新車販売比率は日本でも着実に上がってきています。

 

なかでも日本のEV販売比率向上に大きく貢献したのが軽EVである日産「サクラ」や三菱「ekクロスEV」です。全国軽自動車協会連合会の資料によれば、2023年の販売台数は軽自動車全体の2.2%(約4.4万台)となり、電動車の普及底上げに大きく貢献したといえるでしょう。また、中国のBYDや韓国のヒョンデがBEVで日本市場に参入したことも刺激になったはずです。

↑日産「サクラ」

 

↑三菱「ekクロスEV」

 

しかし、2024年に入ると日本でも販売台数はマイナスに転じます。2024年11月時点でEVとPHEVを合わせた新車販売比率は2.98%で、前年同月の3.21%から減少していたのです。2026年以降にトヨタやレクサスがEVの投入計画を明らかにしていることから、それが販売増につながる期待もありますが、新車が出なければ途端に販売台数が急減する状況は、ハイブリッド車(HEV)の使い勝手の良さを知り尽くした日本ならではの背景があるといえるのかもしれません。

 

肝心な充電インフラの状況はどうなのか?

電気自動車の使い勝手を高める上で重要なのが充電インフラです。エネチェンジによれば、2023年時点で世界の公共EV充電器は390万台で、もっとも多いのが中国、続いてヨーロッパ、アメリカの順となります。特に中国は普通充電器が150万台、急速充電器が120万台設置されているという充実ぶりです。実際、中国に行くとショッピングセンターなどちょっとした施設にも充電設備が充実しており、高速道路のSAなどでも待つことなく充電できるようでした。

↑充電設備が充実した中国・深圳市内のショッピングモール

 

↑中国・深圳で高速道路のSA。ここだけでも5台の急速充電器が稼働していた

 

この状況に大きく後れを取っているのが日本です。2023年時点でその数は普通充電器で2万2000台、急速充電器に至っては9600台しかありません。日本政府は2030年までに公共用の急速充電器3万口を含む30万口の充電インフラを整備することを目指していますが、待ち時間なしで充電するにはこれでも決して十分とはいえないでしょう。

↑日本のスーパーに設置されていた出力90kWの高出力型急速充電器。日本でも徐々に身近な場所でのインフラが整い始めた

 

↑常磐道・友部SAでの急速充電器。6台が整備されていた

 

とはいえ、自動車の電動化への流れは決して止まることはないと思います。現時点でこそ、まだバッテリーの充電に要する時間が負担となっていますが、近い将来、こうした問題も解決されていく方向にあるのは間違いないからです。バッテリーの充電時間が短縮されたら電気自動車の使い勝手は大幅に高まり、小さなバッテリーであっても充電を繰り返す負担も減少してロングドライブもしやすくなるでしょう。それは電気自動車をより身近にできる大きな一歩となるはずです。

 

こういった状況から、すぐに電気動車の使い勝手を高めることが難しいのは事実です。そこで、エンジン車から電気自動車への橋渡し役として位置付けられるのが、日本で普及が進んで圧倒的シェアを持つハイブリッド車(HEV)なのです。【世界のHEV販売台数は約553万台で、新車販売の33.2%。それに対し、日本のHEV販売台数は146万台で、軽自動車を除く新車販売の55.1%。(※2023年時点)】

 

HEVは、エンジンと小さいバッテリーを上手に組み合わせることで、充電が不要な自動車としての使い勝手の良さと環境負荷を可能な限り低くできることを最大の特徴としています。まさにHEVはそうしたバランスの良さを最大限に発揮できるパワーユニットといえるでしょう。

 

このHEVのメリットはグローバルでも徐々に理解されてきているようで、当初はHEVをNEVから対象外としていた中国でさえも今では低燃費車として認定しているほど。欧米でもハイブリッドのメリットが再認識されるようになり、好調な販売を続けていると伝えられています。こうした状況を踏まえると、HEVはもう少し先まで活躍すると考えるのが妥当ではないでしょうか。

 

 

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「こんなに万能なファミリーカーはない」プロが絶賛したクルマって? 2024年ファミリー層にオススメの国産車5選

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さん。その岡本さんが2024年に登場したクルマのなかから、比較的手ごろな価格帯を中心に、ファミリー層におすすめしたい国産車を5台紹介します。

 

【その1】こんなに万能なファミリーカーはない

ホンダ

フリード

250万8000円(税込)〜

まずは、日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことでも知られるフリードだ。初代からずっと「ちょうどいい」とアピールしているとおり、狭い場所でも取り回しに苦労しない手頃なサイズでありながら、車内は3列目までしっかり使えるほど広々としている。スライドドアの開口部が幅広く高さも十分に確保されていて、ステップの段差もなく乗り降りしやすい。ファミリーカーとして、たしかにこれほど日本で「ちょうどいい」クルマはない。

 

さらにフリードは走りもいい。新たに搭載したホンダ独自のe:HEVと呼ぶハイブリッドシステムにより、スムーズで力強い走りを実現していて、大人数を乗せてもストレスを感じることもない。しかも燃費が抜群にいい。4WD性能も望外に高くて、降雪地の人も不安に感じる必要はないだろう。

 

一方のガソリン車は軽快な走りが持ち味だ。アクセルを踏み込むと、いかにもホンダらしい元気のいいサウンドを楽しめる。乗り心地が快適で、ハンドリングも素直で意のままに操れて、直進安定性も高く、ボディが小さいながらもロングドライブでも疲れ知らずだ。こんなに万能なファミリーカーはない。デザインは万人向けの「エアー」と、SUVテイストの「クロスター」が選べる。

 

【その2】この雰囲気を乗員全員が味わえると思えば割安にすら思える

マツダ

CX-80

394万3500円(税込)〜

SUVでファミリーカーなら、「CX-80」が最強だろう。ひと足先に登場したCX-60の3列シート版であり、後輪駆動ベースで、直列6気筒のディーゼルエンジンや本格的なPHEVの設定など特徴的な部分を共有しつつ、全長とホイールベースを延長。3列目の十分な居住空間の広さを実現しているのが他のクロスオーバーSUVにはないポイントだ。

 

内外装デザインもなかなか見応えがある。インテリアでこれほど高いクオリティ感を達成するには、ヨーロッパのメーカーだったら軽く1000万円を超えるに違いない。その意味では、CX-80も決して安くはないが、この雰囲気を乗員全員が味わえると思えば割安にすら思えてくる。

 

大柄なサイズで後輪駆動ベースのクルマらしく、ドライブフィールは重厚でありながらスポーティだ。特にいまや貴重な直列6気筒ディーゼルエンジンは、直列6気筒ならではの奥ゆかしい響きを味わわせてくれる。

 

【その3】懐かしいけれど新しいイメージの仕上がり

トヨタ

ランドクルーザー250

520万円(税込)〜

より本格的なクロスカントリー車が好みの人には、「ランドクルーザー250」がある。原点回帰を図り、あえて高級路線ではなく質実剛健を追求したところがポイントだ。中身は最新のSUVそのもので、装備も非常に充実していながらも、見た目や走りは新しいけれど懐かしく、懐かしいけれど新しいイメージに仕上がっている。

 

車内や荷室の広さも十分で、並のSUVに比べると座る位置が高い。着座姿勢も立ち気味で、高い目線から周囲を見下ろす形になるのも特徴だ。

 

悪路走破性はとてつもなく高くて、このクルマで走れない道は日本にはないと思っていいだろう。おそらく本領を発揮させる機会は、普通に過ごしている分には訪れないだろうが、それだけの実力を持ったクルマに乗れるのると思えるのは頼もしいことこの上ない。

 

【その4】アクティブなファミリーにもってこい

スズキ

スペーシア

153万100円(税込)〜

小さなファミリーカーには、各メーカーがそれぞれ腕によりをかけた力作が勢ぞろい。なかでも、2024年末の時点でのイチオシは、「スペーシア」だ。軽ハイトワゴンはどれも概ね同じような方向性でまとめられているなかでも、スペーシアはもっとも軽く、マイルドハイブリッドを搭載していて、軽快な走りとクラストップの低燃費を実現。先進運転支援機能が充実しているという強みもある。

 

車内には収納スペースが豊富に設けられていて、ひとつひとつがより使いやすいよう工夫されている。リアシートにリラックスして座れる「オットマンモード」、座面上の荷物の落下を防ぐ「荷物ストッパーモード」、安定した姿勢を支える「レッグサポートモード」という3通りのモードを選べる「マルチユースフラップ」というユニークな機能を採用したのもポイントだ。

 

SUVテイストのギアは遊び心のある内外装デザインのほか、撥水加工シートや防汚タイプのラゲッジフロアを採用しており、ステアリングヒーターが全車に標準装備されている。アクティブなファミリーにもってこいだ。

 

【その5】EV航続距離が100kmを超えた!

三菱

アウトランダーPHEV

526万3500円(税込)〜

電動化モデルに興味のある人には、マイナーチェンジした「アウトランダーPHEV」をすすめたい。大容量化と高出力化した新開発のバッテリーにより、EV航続距離が100kmを超えたのがうれしいかぎり。ふだんはBEVと同じように乗れて、ガソリンを使うのは遠出するときだけという付き合い方ができる。走りにも磨きがかかって、より静かでなめらかで力強くなり、乗り心地がよくなってハンドリングの一体感も増している。

 

新設定された最上級グレードなら、海外のプレミアムブランドにも負けない高級感あるインテリアや、ヤマハと共同開発したという高性能オーディオシステムの卓越したサウンドが楽しめるのもポイントだ。広くはないが、いざとなれば3列目シートもある。

 

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーを活用し、家庭の電力供給源として機能させる先進技術V2HやV2Lにも対応。「走る蓄電池」のような使い方も可能だ。

 

 

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急な降雪でも安心! 手軽に装着できる軽自動車用滑り止めカバー「モビルシュシュ」

ソフト99コーポレーションは、軽量・コンパクト・簡単装着の新しいタイプのタイヤ用布製滑り止めカバー「モビルシュシュ」を、2024年12月20日(金)よりソフト99公式オンラインショップ各店限定にて一般販売を開始します。公式オンラインショップでの直販価格は9900円(税込)。

 

記事のポイント

タイヤに被せるだけで手軽に装着できる軽自動車専用の布製の滑り止めカバー。使わないときはコンパクトに収納しておけるので、急な降雪に備えてこの時期常備しておきたいアイテムです。チェーン装着に苦手意識のある人はぜひチェックしてみてください。

 

本製品は、急な降雪時にすばやく装着できる布製タイヤ滑り止めカバー。日本の軽自動車タイヤ向けに再設計された日本専用モデルとして、3品番をラインナップしています。2024年11月にクラウドファンディングサイト「Makuake」にて先行販売を行ったところ、多くの人に支持されて約20日間で目標の1735%を達成し、ついに一般販売されることになりました。

 

従来のタイヤチェーンは、金属製や樹脂製の商品が多く、装着前から作業に抵抗を感じる方や、実際に装着に苦労したという声も多く聞かれました。「モビルシュシュ」は、ヘアアクセサリーの“シュシュ”を大きくしたようなドーナツ形状で、素材が軽くてやわらかいため、初めて装着する人でも特別なテクニックや力は必要なく、慣れれば1分もかからず装着できる手軽さが魅力。

 

また、見た目や取り扱いやすさとは裏腹に生地表面の凸凹が際立つよう、立体製法で編み込まれた特殊な生地を採用しており、雪上走行に必要な「走る・曲がる・止まる」の安定した走行性能を実現します。2018年に改正された「チェーン規制」にも対応しています。

 

布製ながら耐久性にも優れており、生地に厚みを持たせることで耐久性を向上。さらに破損の原因となるタイヤ装着時の「ヨレ」「タルミ」を抑制するため、タイヤとの適合サイズを専用設計し、タイヤとのフィッティングにこだわっています。雪路走行なら100km以上(※)の走破性能を有しており、緊急時の通勤使用や移動などで力を発揮します。

※同社テストによる。雪のない道路での使用は耐久性を著しく低下させますので、速やかに取り外してください。

 

EU諸国で広く使われるオーストリアのスタンダード規格ÖNORMの布製タイヤ滑り止めカバー規格「EN16662-1」の認定を取得。圧雪路や氷盤での制動や、高速走行テスト等、降雪路の走行に必要な性能試験をクリアした商品です。

使わないときはコンパクトに収納可能

 

【適合車種】

 

ソフト99コーポレーション
タイヤ用布製滑り止めカバー「モビルシュシュ」
2024年12月20日発売
直販価格:9900円(税込)

時代を駆け抜ける総合芸術「クルマ」の肉体美を堪能せよ。雑誌「ENGINE」の装幀写真家、秦 淳司 ポートレート写真集『ENGINE ERA』発売!

雑誌『ENGINE』(新潮社)の装幀写真を長年撮り続けているフォトグラファー 秦淳司氏の写真集『ENGINE ERA』が11月14日(木)に発売された。 

 

↑秦淳司 『ENGINE ERA』

 

秦氏はファッション・カメラマンでもありながらクルマをこよなく愛する写真家の一人。2014年に雑誌『ENGINE』の「乗る車×着る服」というカーファッション・ページの撮影を担当し、翌年の2015年から同雑誌の顔となるクルマ自体の撮影を行ってきた。 

 

今回、出版された写真集『ENGINE ERA』は、秦氏がその雑誌『ENGINE』の撮影で出会ったクルマの数々を記録した一冊。雑誌掲載用とは別のものとしてカットをまとめた、極めて希少価値の高い写真集だ。 

↑LAMBORGHINI HURACAN PERFORMANTE(2019)

 

↑McLaren 765LT SPIDER(2021)

 

秦氏がシャッターを切ったクルマの写真は、まるで人間を撮影したかのようなポートレート写真になることが特徴。

 

クルマ一台一台が持つ個性豊かな表情や細部に渡る造形美を、独特のフレーミングを用いて切り取る――その写真を見た感想として出る言葉は「官能的」。クルマに対する形容としては相応しくないようにも思うが、その艶やかなボディを見続けるうちに、否が応でも見る者の感情を刺激してくるのである。 

↑VOLKSWAGEN TYPE14 KARMANN GHIA 1200(1955)

 

↑FERRARI 250LM(1965) 

 

掲載されるクルマの総台数は驚愕の114台。大衆車から数量限定生産のスーパーカーに至るまで、多種多様なクルマ達が顔を連ねる。なかには、現代では姿を拝むことが難しいヒストリックカーもラインナップ。ハイクオリティな写真で歴史的名車がプリントされているだけで、クルマ好きとしては胸が躍る一冊と言えよう。 

↑ラルフローレン氏のコレクション・ガレージ

  

写真集には、世界有数のカー・コレクターとして知られるラルフローレン氏の愛蔵品の数々も収録。ニューヨーク郊外にあるというガレージにも足を踏み入れ、コレクションを写真に収めている。 

 

この歴史的にも類を見ない巨大カーポートレート集について、秦氏は次のように語る。 

 

「フロントや中央、リアにエンジンを積むことによって生まれるフォルム。クルマが生き物のように見えるのはエンジンという心臓を内蔵しているからこそ。

ひとたびキーを捻れば鼓動を打つエンジンを抱きかかえるフォルムであるが故に、クルマは美しい。生命体のような金属の塊と対峙して、僕はその肉体を撮る。顔、腰、尻。それはポートレートを撮る作業に他ならない」(秦氏) 

 

本写真集は、さながらクルマの「博物館兼美術館」。本文なんと336ページ、重量2.3キロもの重量感に仕上がったこの一冊は、クルマの歴史の証人ともいえる存在だ。

 

自動車は18世紀にフランスで発明され、以後様々な進化を遂げた。動力源も蒸気からガソリンへ、そして現在は電気自動車へと急速にシフトしつつある。本書は、その変遷を美麗なグラフィックで体感できる、唯一無二のパッケージと言えるのだ。 

 

定価は圧巻の3万3,000円。安くはないが、ページをめくる読者に深い懐古と憧憬を刺激を与えてくれる。その価格だけの価値は、十分にあるだろう。 

↑ASTON MARTIN DB6(1966)

 

写真集の購入者は収録カットのプリント額装20%OFFで購入できる特典が付く。好きなページの写真を公式ページから注文することが可能だ。 

 

秦 淳司(Hata Junji 

赤坂スタジオで写真を学び、アシスタントを経て1994年からフリーランス・フォトグラファーとして活動。ファッション誌を中心に、アーティスト写真・CDジャケットや広告など多岐に渡る分野にて活動中。2022年には『DEKOTORA -Spaceships on the Road in Japan-』を上梓。夜の闇に鮮やかに浮かび上がる電飾を点灯したデコトラの数々を厚さ5センチ、重さ2.6キロの一冊に収録。 

 

書誌情報 

秦 淳司『ENGINE ERA』

発売日:2024年11月14日(木)
定価:3万3,000円(税込)
体裁:B4変形判(356×240×30mm)/336ページ/ハードカバー/2.3kg
発行所:DIAMOND HEADS
特設サイト:https://www.heads.co.jp/era/
販売サイト:https://store.heads.jp/items/93858903 

 

購入者特典

好きな掲載写真のオリジナルプリント2タイプを20%OFFで購入可能 

 

Print Size A
価格:13万2,000円(税込)
プリントサイズ:W490×H325
フレームサイズ:W610×H508 

Print Size B
価格:22万円(税込)
プリントサイズ:W900×H600
申し込み:写真集同封のQRコードから 

 

イベント情報 

カフェ併設ガレージ「Kitasando garage / Flip Flip Coffee Supply」で写真集販売とオリジナルプリントを展示

日程:2025年1月18日(土)~2月18日(火)
時間:8:30-18:00(土日祝日は10:00-18:00)
場所:Kitasando garage / Flip Flip Coffee Supply
住所:東京都渋谷区代々木1丁目21-5
入場:無料/予約不要
※カフェ営業中につき、ひとり1品の注文が必要 

カロッツェリアから後方が見やすいデジタルミラー型ドライブレコーダー「VREC-MS700D」登場

パイオニアは、カロッツェリアブランドから、クリアな視界と高感度録画を実現する前後2カメラタイプのデジタルミラー型ドライブレコーダー「VREC-MS700D」を2025年1月に発売します。

「VREC-MS700D」

 

記事のポイント

後方を確認しやすいデジタルミラー型ドライブレコーダーは、ミニバンやワゴン車などにオススメ。暗所に強いソニー製CMOSセンサー「STARVIS2」を採用しているので、夜間の映像もしっかり記録できます。

 

「VREC-MS700D」は、高解像度370万画素のWQHDカメラ(2560×1440)による高画質撮影が可能。画像をズームした際も、劣化の少ない自然な映像を表示します。

 

また、SONY製CMOSセンサー「STARVIS2」やHDR機能により、夜間の走行や暗闇の駐車場、トンネルなどの明暗差が激しい場所でもノイズの少ない鮮明な画像を記録できます。フロントカメラとリアカメラの明るさをそれぞれ9段階調整できるので、リアウィンドウがスモークガラスの場合でも、鮮明な映像で後方確認・録画を行えます。

 

デジタルミラーには、隅々までクリアな後方視界を確保する11V型高輝度IPS液晶を採用。表示映像を1~3倍まで拡大表示できるので、好みや見やすさに合わせて設定できます。タッチパネルと液晶の間に空気層がないエアギャップレス構造により、光の乱反射とにじみを抑え、隅々まで明るくてクリアな映像を表示します。

 

配線が目立たないようにケーブルコネクタの形状や位置をデザインしており、車内にすっきりと取り付けられます。GPSアンテナをフロントカメラに内蔵しているので、ダッシュボードへのアンテナ設置も不要です。また、多くの車種でサンバイザーの使用に影響しにくい横幅サイズ(257.6mm)です。

 

3種類の録画機能を搭載(常時/衝撃/マニュアル)するほか、最大24時間駐車監視機能(※)にも対応します。

※別売の駐車監視ユニット「RD-DR003」(税込6600円)が必要です。

 

32GBのmicroSDカードを同梱しており、長時間録画が可能。256GBまでの大容量SDカードにも対応しています。

 

パイオニア
ドライブレコーダー「VREC-MS700D」
2025年1月発売
実売価格:オープンプライス

世界中で選ばれる「テスラ」の凄さってなんなんだよ! 現行4車種のお値段と憧れポイントを教えます

世界で最も電気自動車(EV)を販売している会社といえば、アメリカのテスラ社です。2023年の世界シェアでは2割近い19.3%を達成し、2位には中国の比亜迪(BYD)が、3位には中国の上海汽車集団(SAIC Motor)が迫っているものの、同社がグローバルで安定した人気を保っているのは間違いありません。

 

そんなテスラ社が日本で展開する乗用車は計4車種。すべてをEVとし、価格は「Model S」がデュアルモーターAWDで1266万9000円から。SUVとなる「Model X」になると1416万9000円からとなります。一方でもっとも安価な「Model 3」のRWDは531万3000円からで、そのSUVである「Model Y」が533万7000円からとなっています。今回はこのテスラについてご紹介します。

 

そもそもテスラとは?

そもそもテスラ社は2003年、米国テキサス州オースティンにおいて、電動輸送機器やクリーンエネルギーの開発・販売をする会社として設立されました。世間ではEVばかりが注目される同社ですが、実は蓄電池や太陽光発電など電力インフラ系でも世界的な企業として成長しているのです。

 

そのテスラ社の有名人といえば、今や誰もが知っているイーロン・マスクCEOでしょう。2008年にCEOに就任したあとは、積極的にEVの開発や販売を手掛けたほか、宇宙ベンチャーのスペースXへの投資など、その言動や一挙手一投足が常に注目を浴びる存在となりました。EV事業でも順調に実績を残し、今に至っているのは冒頭で述べたとおりです。

 

さて、そのテスラ車、ラインナップ全般でポイントとされるのが、すべてがEV専用ボディとなっていること。そのため、そのデザインはガソリン車にありがちないかついフロントグリルはなく、見た目はかなりスマートです。これは熱源となるエンジンがボンネット内に存在しないからで、バッテリー用のラジエーターにしてもエンジン車に比べればかなりコンパクト。それがスマートなデザインを生み出した理由となっています。

 

また、環境に配慮したパーツを積極的に採用しているのもポイント。たとえばシートをはじめとするインテリアには、石油由来の素材や動物の皮革を使うことなく、植物性樹脂を用いた“ヴィーガンレザー”を採用するなど、サステナブル性を重視した対応を採っています。まさに走行中の排出ガスをゼロとする、EVならではの環境への配慮といえるでしょう。

 

クルマとしての先進性においても目を見張るものがあります。今や高度な運転アシスト機能(ADAS)を備えることは決して珍しくありませんが、テスラ車はこの分野でもAIを活用した先進性を発揮しているのです。センシングは基本的にカメラだけで行いますが、ここにAIを組み合わせることで、広範囲にわたって優れた認知性能を発揮しているのです。

 

【その1 Model 3】テスラ車の魅力を体験するには最適!

現時点(2024年12月時点)でテスラが製造するもっともコンパクトで身近な価格帯となっているEVとなります。とはいえ、国産車のようなコンパクトカーとは一線を画した存在です。なにせボディの全幅(ミラー含まず)は1850mmもあり、この寸法は日産・スカイラインの1820mmを超えます。ただ、それでもテスラ車で唯一、日本の機械式駐車場に入れられるサイズなのはメリット。

 

しかも、この幅の広さが幸いして、後席には大人3人が楽に座れます。運転席回りは、テスラらしく操作ボタンはほとんどなく、スタートボタンすらありません。エアコンをはじめとする様々な車両設定は15.4インチのディスプレイ上で行い、後席に備えた8インチディスプレイからもエアコンなどの設定が行えます。こうしたUIからも先進性を実感するでしょう。

 

また、フロントシートはベンチレーテッド機構付きとなっており、これは事前にスマホからエアコンと連動して作動させることが可能。デュアルサブウーファーを含む最大17スピーカーのオーディオシステムやワイヤレス充電が2台分備わっているのも注目です。

 

Model 3で素晴らしいのはその動力性能です。最大出力は208KW(283PS)で、EVならではのトルク特性により、停止状態から100km/hまで4.4秒(ロングレンジAWD)で到達。高級スポーツカー並みの加速力を発揮します。まさにModel 3は外観からは想像もつかないような走りを身近に味わえるものとなっているのです。

 

身近な価格とはいえ、「RWD」でも531万3000円となりますが、国の補助金65万円を加味すればユーザーの実質負担額は470万円ほど。これに自賠責などの諸経費を加えても500万円以内に収まります。その意味で、Model 3のRWDは、テスラ車の魅力を体験するエントリーモデルとしては最適な一台となりそうです。

 

【その2 Model Y】SUVでパフォーマンスの高いEV

Model 3をベースにSUVとしたのがModel Yです。全長4760mm、全幅(ミラー含まず)1925mmとModel 3を上回るボディサイズとなりましたが、その分だけユーティリティ性を高めているのがポイント。シートは2列/5人乗りで、大人が5人乗車してもゆったりとした空間を確保しています。

 

特にリアシートは折りたためばフラット状態にできるだけでなく、5人乗車時でのラゲッジルームの容積は854L、後席を折りたためば2041Lもの空間が生まれます。加えて、フロントボンネットには117Lの収納スペースが用意され、ラゲッジボードの下にも収納スペースが確保されています。この辺りはまさにEVならではのメリットといえますね。

 

車内では何といっても、空の景色が見通せるパノラマルーフが広々とした風景をもたらし、ドライブの楽しさを盛り上げてくれます。静粛性も高く、ドライブの快適性が一段と高められています。ただし、ホイールベースが2890mmと長くタイヤも太いため、最小回転半径は6.05mとなってしまいました。狭い路地では取り回しが大変かもしれません。

 

コクピットはテスラ車共通で物理スイッチは一切なし。あるものといえば法規上必要となるウィンカーレバーや、コラム式のシフトセレクターぐらい。オーディオや空調など、ほとんどの車載機器はセンターにある液晶パネルで設定するか、音声コマンドで操作する仕組みです。こうした先進的なUIがテスラファンを生み出している理由でしょう。

 

動力性能では、上位グレードの「パフォーマンス」の実力に驚かされます。なにせ158(前)/235(後)kWのシステム出力を発揮しており、これを馬力換算すると535PS! それだけに0→100km/hはわずか3.7秒で到達します。さらに、一充電走行距離も595km(WLTCモード)という長さ。それだけに価格も697万9000円となりますが、それも十分納得できるパフォーマンスといえるでしょう。

 

ではベースモデルの「RWD」はどうかといえば、リア駆動のみでも220kW(300PS相当)と、これでも十分なパフォーマンス。価格も533万7000円とグッと身近になってきます。SUVでパフォーマンスの高いEVを手軽に欲しい人にはマッチするグレードかもしれません。なお、国の補助金はModel Yすべてが65万円となります。

 

【その3 Model S】テスラ初の量産型として誕生したモデル

テスラ初の量産モデルとして誕生したモデルSは(SLA/SLP)は、フラッグシップモデルとなる4ドアセダンタイプの電気自動車。発売当初は後輪駆動モデルのみでしたが、後に前輪にもモーターを追加したAWDが発売され、2017年以降のモデルはすべてAWDとなっています。全長4978mm×全幅1964mm×全高1440mmのボディサイズでありながら、高出力モーターによる圧倒的な加速性能は、大排気量エンジンを搭載したスーパーカーにも勝ります。価格はデュアルモーターAWDが1266万9000円、対して最強グレードのPlaidは1566万9000円!

 

室内を覗いてみると、上半分がない近未来的なステアリングを採用し、センターコンソールに配置される17インチシネマティックディスプレイは2200×1300の解像度、超高輝度、トゥルーカラーを誇り、素早い応答性を見せます。また、左右に傾けられる機構を備えたことで、どこからでも画面が見やすくなっています。リアトランクは実用性に優れるハッチバック形式で、容量は約750Lもある。

 

ちなみに今年の6月4日、モデルSの最強グレードPlaidが、ドイツ・ニュルブルクリンク北コースでタイムアタックを行い、7分25秒231のラップタイムを計測した、と発表しました。これは量産EVの最速記録になるとのこと。

 

【その4 Model X】アメリカンなサイズを体験するのも悪くはない!

現在、テスラ車が販売するEVの最上位モデルがModel Xです。グレードは「デュアルモーターAWD」(1416万9000円)と「Plaid」(1636万9000円)の2つで、価格も最上位モデルにふさわしい設定となっています。補助金はいずれも52万円。特に、リアドアが上に開く“ファルコンウイングドア”となっており、しかも開くときはドアが中折れし、車体との空間が30cmあれば乗り降りできるよう工夫されているのがありがたいですね。

 

とはいえ、そのサイズは全長5057mm×全高1690mm×全幅(ミラー含まず)2000mmにもなり、まさに“巨大”ともいえるサイズというほかはありません。重量も2.5tに近い重さ。当然、狭い道はもちろん、駐車をはじめとする普段の取り扱いにも苦労するのは間違いないでしょう。米国生まれのEVだけに、どうせならこのアメリカンなサイズを体験するのも悪くはないです。

 

しかも、Model Xにはテスラ車で唯一6人乗りに加えて7人乗りもラインナップ。つまり、テスラ車でミニバン的な使い方ができるのもModel Xだけなのです。シートをたたむと最大2614Lもの巨大な空間が生まれます。Model Xなら多めの家族や仲間とともに、テスラならではの圧倒的なパフォーマンスが楽しめるわけです。

 

最上位モデルだけに、そのパフォーマンスも群を抜いています。最上位のPlaidは重量が2470kgとなりますが、発揮するパフォーマンスは最大出力が623kWで馬力換算だとなんと1020PS! 最高速度は262km/hに達し、0→100km/hは2.6秒しかかかりません。また、ベースモデルでも最大出力は503kWで馬力換算すると670PS。0→100km/hは3.9秒という高いパフォーマンスを発揮するのです。

 

車内に目を移せば、運転席のステアリングには先進的かつ斬新な「ヨーク型」がオプションで選べるほか、世界最大のパノラミックウィンドシールドと最大7人乗りの広々としたキャビンが楽しめます。また、センターディスプレイは2230×1300ドットの高解像度設計の17インチモニターで、これを22個のスピーカーと組み合わせたオーディオシステムがドライブの楽しさを盛り立てます。

 

テスラの先進性と圧倒的パフォーマンスをすべてにおいて体験したいのなら、Model Xが唯一無二選択となるのは間違いありません。

 

 

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テスラの公式アプリ、Apple Watchで使えるようになった!

テスラの車両が「Apple Watch」の公式アプリからコントロールできるようになりました。

↑Apple Watchでテスラ公式アプリが使える(画像提供/テスラ)

 

テスラの車両はスマートフォンのアプリにより、さまざまな機能をコントロールすることができます。同様のことをApple Watchで行うためには、「Watch for Tesla」などのサードパーティ製アプリを使用する必要がありました。

 

テスラによれば、今月後半に配布されるアップデートにより、スマートフォンアプリと同様の機能がApple Watchでも利用できるようになるとのこと。車両のロックを解除したり施錠したり、トランクやフロントトランクを開閉したり、バッテリー状態を確認したり、空調を設定したり、さまざまなことがApple Watchで行えるようになります。

 

テスラによれば、Wear OSを搭載したスマートウォッチに同様のアプリが提供されるかどうかは未定とのこと。テスラを公式アプリでコントロールしたいドライバーは、しばらくiPhoneとApple Watchを使うことになりそうです。

 

Source: Tesla/X via MacRumors

世界首位奪還はどうなる?日本トップチーム「東海大学ソーラーカーチーム」の次戦に向けた戦い

全世界20カ国以上が参加した2023年の「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(以下、BWSC)」から1年が経ちました。この世界最高峰に位置付けられる大会で、“総合5位”と“デイビット・ヒューチャック賞”を受賞した東海大学ソーラーカーチームは、すでに2025年のBWSCに向けて準備を進めています。

 

2024年8月に秋田県で行われた「World Green Challenge (以下、WGC)」では、首位を守りきり見事、総合優勝を果たしました。振り返って「学生たちだけで次に何をすべきか、どう動くべきか役割を意識して自律的に動けていた」と評価するのは、佐川耕平総監督。今回は、新車の設計まっただ中にある東海大学ソーラーカーチームのみなさんに、残り1年を切ったBWSCへ懸ける思いを伺います。

 

BWSCから1年。本当にあっという間だった

オーストラリアを縦断するBWSCの2023年大会にて。

 

オーストラリアの大地を約5日間かけて太陽の力だけで走り切るBWSCは、2年に一度開催されている世界最大級のソーラーカーレースです。4年ぶりに開催された23年大会では、気象変化やトラブルを乗り越え見事総合5位で完走しています。

 

BWSC(ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ)2023で東海大学が得た“日本トップで完走”以上の戦果とは?

 

この大会にも出場し、2024年度の学生代表を務める工学部機械工学科3年の熊林楽(がく)さんは次のように振り返ってくれました。

 

「本当にあっという間で、もう1年か……というのが率直な感想。この1年は国内大会に向けての調整をしながら、新車作りにも取り組んできました。学生代表になったことで責任感は増しましたが、自分の中ではまだまだ。来年に向けて、チームを率ながら今できることを進めていきたいです」(学生代表・熊林さん)

 

前回大会終了後の取材で「実は意外と時間がないんです」と語った佐川総監督。その実感に変化はあるのでしょうか?

 

「正直、さらに追い込まれている感覚があります。前回大会終了後、25年大会の新しいレギュレーションが発表され、これまで通りでは難しい部分も多く出てきたんです。また開催日程も10月末から8月末へ。2ヶ月早く開催される分、学生たちも夏休みに最後の追い込みができなくなり、負担も大きくなるでしょう。大人たちがチームビルディング含め環境を整えていかなければなりませんね」(佐川総監督)

 

チームワーク良く和気藹々とした雰囲気の中、WGCで総合優勝

8月に秋田県大潟市で開催された2024 World Green Challengeでは、ソーラーカーチャレンジ チャレンジャー・クラスで優勝、さらにソーラーカーチャレンジのグランドチャンピオンに輝いた。

 

新車の設計に忙しい最中ですが、8月に秋田県大潟村で開催されたWGCに参加。2019年にBWSCで準優勝した車体で挑み、周回数計34周(総走行距離875km)を走破! トラブルを乗り越えながら2位と50kmもの大差をつけ見事、総合優勝を獲得しています。

 

今回優勝したのは、2019年にBWSCで準優勝を獲得したマシン。ポテンシャルを最大限に活かし、よりチームの絆を強めた大会になった。

 

今年はたくさんの新入生が興味を持って、チームに参加してきたという東海大学。メインで活躍している新入生10名の半数が女子学生だといいます。WGCに初参加した工学部機械システム工学科1年の種田花音(おいだかのん)さんは、初めての大会で感じたことを次のように教えてくれました。

 

「プレッシャーもありましたが素直に『楽しい!』と思えることがたくさんありました。同級生も多く参加していたので、女子同士で夜遅くまで話し込んでしまいました(笑)」(種田さん)

 

トップでゴールしたマシンと、コース脇でマシンとドライバーを迎えるチームメンバーたち。

 

種田さんの言葉からも楽しそうなチームの雰囲気が伝わってきます。入学式でソーラーカーに一目惚れしてチームに参加した、という工学部4年の小平苑子(そのこ)さんは、女子学生が増えたことに「うれしい!」と目を輝かせます。

 

大クラッシュから逆転優勝! 東海大学ソーラーカーチームが世界的な強豪であり続ける理由

 

「新入生たちはとても元気なんです。女子学生が増えたことも影響しているのか、広報活動も積極的に行ってくれていて、とても和気藹々とした雰囲気。私は4年生なので、後輩に気を遣わせてしまうかな? と心配していたのですが、すごく仲良くしてもらっています」

 

WGCの会場でも、さまざまなシーンで女子学生の姿が目立った。

 

「そんな状況で、WGCを優勝できたことはチームの自信にもつながったと感じています。ただどうしてもBWSCを経験している人・していない人で経験の差が出てしまうのが正直なところ。25年の大会に向けて、後輩たちの育成など強化していきたいです」(小平さん)

 

ちなみに、この大会期間中に還暦を迎えられた木村英樹教授。1996年からチームを率いてきた中で、今年のメンバーたちをどのように見ていたのでしょうか?

 

「実は、大会期間中に体調を崩してしまいまして……戦力になれなかったと反省もあるのですが、学生たちが中心となって優勝を手にできたのはとてもうれしい結果でした。レース後には、胴上げもしてもらいましたよ(笑)
女子メンバーが増えているのは、理系学生全体にも言えることかもしれません。もちろん彼女たちが和気藹々と楽しんで参加してくれているのもチームの雰囲気に影響していますが、今年の新入生たちはコロナ禍の大学生活を知らない子がほとんど。やっと通常通りの大学生活が送れるようになったのも影響しているかもしれませんね」(木村教授)

 

チームを統括する木村教授は、大会期間中に節目となる誕生日を迎えた。学生たちとの絆を窺わせる一コマ。

 

秋田の夜空に広がる満点の星。雑音なく真剣に取り組める環境も、チームの絆を強める。

 

2025年BWSCは約2ヶ月前倒しに……課題と対策は?

大学のチームは常に学生たちの入れ替わりがあるため、来年大会に出場予定のBWSC経験者は半数ほどになってしまいます。さらに例年の10月末開催が8月末に前倒し。チームを率いる工学部の福田紘大教授は、これからの1年をどう過ごしていくかが勝負になると話します。

 

「開催時期が前倒しになることは、毎年メンバーが入れ替わる大学チームにとっては大きな影響があります。ただし、学生たちが責任感を持ってくれるようになり、自主的に動いてくれるようにもなったのは良い成果ではないでしょうか。新車体の設計についても、学生主体でアイデアを出してくれて、活発な議論ができています。私たちが『〇〇をしなさい』と指示を出さずとも、自分たちでやるべきことを見つけてくれているのはいい成長を感じられていますね」(福田教授)

 

2024 WGCでの1シーン。

 

工学部機械工学科2年の木村遥翔(はると)さんは、昨年との心境の変化を次のように話してくれました。

 

「1年生の頃はすべてが受け身の状態。大会についても先輩に教わることばかりでした。2年生になって、後輩ができてからは『受け身のままではいけない』と感じるようになり、責任感が伴うようになったと思います。2025年のBWSCはもちろんのこと2027年大会も見据えながら、この1年取り組んでいきたいです」

 

リベンジを果たし、目指せ世界一!

 

2024 WGCでの1シーン。

 

では、学生のみなさんに2025年の大会に向けた意気込みを伺っていきましょう。

 

「まだ実感がわかないのが正直なところですが、楽しみな気持ちが強いです。まだまだ私たちができることはたくさんあると思っているので、残り1年しかありませんが、できる限りのことを尽くして頑張ります」(種田さん)

 

「個人的には、焦っています(笑)。まだまだ成長できるところはたくさんあると思うので、自分自身を成長させていきながら準備していきたい。WGCでの課題をBWSCへと繋げられるよう、メンバーとのコミュニケーションを密にとりながら進めていきたいです」(木村さん)

 

「来年は大学院に進む予定なので、BWSCにも出場予定です。2021年の大会が新型コロナウイルスの影響により中止され、出場できなかった経験を踏まえて挑んだ23年の大会。そして来年が私にとっては最後のBWSCになります。いろんな思いがありますが、目標は優勝。前回大会で得た海外チームの技術も参考にしつつ、東海大学の実力を100%発揮できる大会にしたいと思います」(小平さん)

 

「8月に前倒しになったことで焦る気持ちもありますが、来年こそは優勝を目指したい。反省を活かして、リベンジですね。大会をゴールとするとまだ20%くらいの完成度だと思っています。まだまだやれることはある、そう信じて進んでいきます」(学生代表・熊林さん)

 

下が第1号車「Tokai 50TP」(1992年・Dream Cupソーラーカーレース鈴鹿大会)。2人乗り4輪の構造で、上の近年の車体とは形状がまったく異なることがわかる。

 

最後に、先生方からも学生たちに期待していることを伺いました。

 

「限られた中で、最高のパフォーマンスを出し切れるように頑張ってほしい。BWSCに出場するチームは、全チームが優勝を狙っています。技術の向上はもちろんのこと、チームで戦える力を身につけてもらえるといいですよね。今年の夏に行われたWGCでは、学業と地域イベントと新車体の設計と同時進行で進めることが多かった中で優勝することができた。チーム全体を見ながら、やるべきことに取り組める学生が増えてきたのは素晴らしいこと。期待しています!」(佐川監督)

 

「25年の大会は、開催時期が早まりレギュレーションも変わりましたが、見方を変えれば勝負できる大会ともいえます。仲間たちと勝利を勝ち取って、喜びをわかちあいたいですね。1年後にはもう大会が終わっているわけですから、どんな結果になるか私自身も楽しみです」(福田教授)

 

「毎年のことではありますが、学生チームは入れ替わりが発生する分、毎年フレッシュな気持ちで挑めるのがいい部分でもある。新しいメンバーにどんどん新しい発想を出してもらって来年のBWSCに挑みたい。学生にとっては、オーストラリアの大自然を存分に感じられるまたとない機会。世界中の仲間とふれあい、5日間過酷な条件で戦うことは人間としても成長できる大会なので、出場してよかったと心から思えるよう頑張ってもらいたいです」(木村教授)

 

 

東海大学は、この世界的なソーラーカーレースで過去に総合優勝2回、準優勝2回、第3位1回の輝かしい戦績を残しています。新たなメンバーでたくさんの人の期待を背負って挑む、2025年大会が楽しみですね。

 

 

Profile


東海大学ソーラーカーチーム

大きなスケールを誇るチャレンジプロジェクトの一つである「東海大学ソーラーカーチーム」。東海大学に所属する大学生・大学院生、約50名のメンバーで構成されており、学生自らが組織運営するプロジェクトチーム。省エネルギー技術を駆使した電気自動車やソーラーカーの研究に力を入れながら、ソーラーカーの世界大会でもある「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ」への参加、企業とのソーラーカー共同開発、学内外への広報活動にも取り組んでいる。また近隣の小学校を対象にしたエコカー教室を開くなど、地域貢献活動にも積極的。
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ヒョンデの「コナ」に新ラインナップ「N Line」が追加。個性強めだけど実用性は十分だ!

韓国のヒョンデが電気自動車(BEV)のコンパクトSUV「コナ」に、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップしました。コナといえば、これまではファミリーカーテイストが強かった印象ですが、この装備によって“走り”を強く意識したデザインへと変貌したのです。

 

■今回紹介するクルマ

KONA N Line

506万円(税込)

 

“N”の系譜を受け継いだ新たなスポーティグレード「N Line」

N Lineと聞いて、ヒョンデ「アイオニック5」の“N”との違いが気になると思います。実はアイオニック5のNは、サーキットなどでの走行も想定したスポーツ系モデルに与えられるグレード。それに対して、 N Lineは、パフォーマンスはベース車と同等ながらNで培った空力改善技術に基づいたデザインなどを加えた、いわばNの系譜を受け継いでその雰囲気を演出したスポーティグレードとなります。

 

この N Lineは韓国でも販売されているそうですが、韓国ではコナにガソリン車もラインナップしていることが関係しているのか、ベース車の方がよく売れているとのこと。対する日本ではスポーティ仕様が好まれやすいとの分析があるそうで、その意味でコナの N Lineは期待を持って日本市場に投入されたということでした。

↑2024年8月23日に日本で発売された「ヒョンデ・コナ N Line」。“N”の系譜を受け継いだスポーティグレードとして追加された

 

N Lineのベース車となったのは、コナのトップグレードとなる「ラウンジ」です。コナはデザインからすると若干大きく見えますが、実寸は全長4385×全幅1825×全高1590mm、ホイールベース2660mmとコンパクトSUVのカテゴリーに入ります。ただ、ベース車のラウンジに N Line専用バンパーを前後に装着したことで、全長は30mm長くなりました。さらに特徴的な専用のウイングタイプリアスポイラーやアルミホイールも装備し、要所をブラックアウトすることで、ラウンジよりスポーティな印象も表現しています。

↑N Line専用デザインとしたフロントバンパーの右端にはN Lineのエンブレムを備える

 

↑ルーフエンドに採用された2分割タイプのN Line専用ウィングタイプリアスポイラー

 

↑N Line専用デザインの19インチアルミホイール。タイヤはクムホ「ECSTA PS71」でサイズは235/45R19 99V

 

インテリアでは N Line専用アルカンターラ+本革コンビシートを採用し、この前席にはラウンジと同じくヒーター&ベンチレーション機能を装備しつつ、Nならではの差し色ともいえる赤のステッチ+ストライプを追加。これはベース車との違いをもっとも感じさせる部分といえます。ほかに専用装備として前席メタルドアスカッフプレートやNロゴ付きステアリングなども加えられ、ラウンジと同様、フルスペックのADAS機能や、12.3インチAR機能付ナビ、BOSEプレミアムサウンドシステムなどを装備しているのもポイント。

↑N Lineのインテリアは専用ブラックを設定。エアコンのルーバーなどに控えめに赤のアクセントがあしらわれている

 

 

使い勝手の良いBEVとして十分なパフォーマンスを発揮

さて、気になる走りですが、コナそのものは「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマとして基本性能に長けているといえます。快適性も十分にあり、その意味でバランスに優れたBEVといえるでしょう。

 

パワートレーン系は前述したようにラウンジとスペックは同じです。定格出力50kWのモーターを使って前輪で駆動し、そこから得られる最高出力は204PS・最大トルク255N/m。決してハイスペックなものではありませんが、電動車として不満のない動力性能は獲得できています。搭載したバッテリーもラウンジと同じ容量である64.8kWhで、フル充電時の航続距離はWLTCモード541kmと十分。とはいえ、実際の走行ではエアコンの利用や道路のアップダウンによる負荷もかかるので、その7割程度の航続距離と思った方がよいかもしれません。

↑ボンネットを開くと「EV」の文字を付したカバーがあるが、この中は27リッターの小物入れとなっている

 

走り出してまず感じるのが、コナ N Lineは必要にして十分なパワーが得られているということです。電動車にありがちな、低速域からズドーン!というトルクの出方ではなく、トルク感を発揮しながらやんわりとスムーズに加速していく感じです。しかもボディはしっかりとした剛性があり、そのために安心感もあります。ガソリン車からの乗換えでも違和感なく乗れるのがBEVであるコナ共通の美点といえるでしょう。

 

フロアは若干高めとなっていますが、ルーフが高いこともあってヘッドクリアランスも十分確保されており、その分だけ視点が高いため前方の見通しは良好です。ステアリングは若干重めに感じますが、切ったときの取り回しは良好で、市街地でも全幅1825mmの幅広ボディによるハンデをほとんど感じさせずに済みました。

 

ドライブモードは「NORMAL」「ECO」「SPORT」「SNOW」から選択可能。 N Lineらしいスポーティな走りを期待するならSPORT一択です。キビキビとしたアクセルワークとなり、それでいて過敏にならないのが助かります。一方、NORMALでも十分なスムーズに走れるので、個人的には日常ではNORMALで十分ではないかと思いました。また、 N Lineにはパドルシフトも装備されており、これを上手く使えば回生を使ったワンペダルドライブも可能となります。これを峠道で使えば楽しさは倍増するでしょう。

↑ステアリングコラムに設置されたシフトレバーは、アイオニック5でも採用された方式。手元で操作できる使いやすさがある

 

フラット感が増して乗り心地が向上。カーナビは未来感満載

コナ N Lineでは乗り心地の良さも向上したようです。シャシーも含め、基本的なスペックはベース車と変更はないとのことでしたが、過去に試乗したラウンジに比べてもフラット感が増している印象なのです。多少、路面のたわみが連続するとサスペンションがバタつく面もありましたが、路面からの突き上げ感もマイルドになっていて快適に乗ることができました。特に高速域では静粛性も高く、振動も少ない印象で、長時間のドライブでも疲れは少ないのではないでしょうか。

 

一方で、走行時には仮想のエンジン音を出すことができる「エレクトリック・アクティブサウンドデザイン(e-ASD)」も装備されていました。エンジンに郷愁を感じる人向けの装備とは思いますが、個人的にはインバータの音を聴きながらBEVならではのフィールを楽しんだ方が良いと思います。まぁ、これも好み次第ですね。

 

ナビゲーションは、スピードメーターからヨコイチに並んだインフォテイメントシステムに含まれています。ポイントはルート案内中に画面上に表示されるAR機能。カメラで撮影した映像に進行方向を流れる矢印によって重ねて表示するものです。かなりギミックな装備となりますが、未来感を感じさせる装備としては楽しいでしょう。

↑コナ・ラウンジに装備されているAR機能付きカーナビ。カメラで撮影した映像に進行方向が重ねて表示されている。(撮影:会田 肇)

 

その中で私が便利さを感じたのは、ルート案内時に一旦停止すると目的地までのルート全体を一時的に表示してくれる機能で、地図上で目的地までの進み具合が確認できます。また、スケールの異なった地図を2画面で同時表示できるのも良いと感じました。さらに、OTAによって地図データは常に最新版へと自動更新してくれるので、スマホのように常に最新の地図データが使えるのもうれしいですね。

 

コナは、そのデザインこそ個性が強めではありますが、クルマとして実用性の高さはクラスの中でも秀でているのは間違いありません。BEVとしての造り込みの巧さに、ヒョンデの実績が十分に発揮されています。BEVというと、どこか特別感をもってラインナップされる印象がありますが、 N Lineも含め、日本でもコナのような自然体のクルマがもっと登場して欲しいところです。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4385×1825×1590mm●車両重量:1790kg●パワーユニット:交流同期電動機●最高出力:150kW/5800〜9000rpm●最大トルク:255Nm/0〜5600rpm⚫一充電走行距離(WLTCモード):541km

 

撮影/茂呂幸正

 

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日本・米国・中国の開発状況は?「自動運転」の現在地と私たちへの影響

2021年、自動車メーカーのホンダは、「特定の条件下でドライバーがハンドルから手を放して運転できる自動運転車」を世界に先駆けて発売しました。これ以降、各国で同様の自動運転車が登場しています。また2024年10月には、愛知県名古屋市で自動運転車の定期運行の実証実験が開始。公道で制限速度や周囲の車の速度に合わせて走行する取り組みは国内初です。このように、自動運転車の公道での実用化はもう目前。

 

自動運転車の最前線とは? オンラインモーターマガジン『DRIVETHRU』ディレクターの神保匠吾さんに解説いただきます。

 

 

「自動運転」の定義と、技術進化の背景にあるもの

まず、「自動運転」とは何かについておさらいしましょう。

 

「自動運転とは、簡単に言えば、乗り物が自律的に目的地まで運転してくれる技術のことです。乗り物が自律的に動くことから『自律走行』とも呼ばれ、また、運転者がいないため『無人走行』という表現も使われます」(『DRIVETHRU』ディレクター・神保匠吾さん、以下同)

 

ここ数年、自動運転の技術開発が加速していますが、その背景には、ガソリン車から電気自動車(EV)への移行、いわゆる「EVシフト」が密接に関係しているといいます。

 

車を作動させる仕組みがシンプルであればあるほど、自動運転技術を導入しやすくなります。従来のガソリン車は、エンジンを使ってピストンを動かし、燃焼による爆発でタイヤを回す仕組み。エンジンを安定して稼働させるだけでも高度な技術が求められ、システムが複雑化しています。
一方、EVに使われるモーターは、構造が非常にシンプルです。バッテリーから供給される電力を使ってモーターを回転させ、その動力でタイヤを直接動かします。複雑な工程がないため機械的なトラブルも少ないことが、EVにおける自動運転技術の導入を容易にしているというわけです」

 

「自動運転車」によって実現する未来の形とは?

 

なぜ今、世界中で自動運転技術の開発が進められているのでしょうか? 主に2つの目的が後押ししていると神保さんは言います。

 

1.社会的な課題の解決

「過疎地での移動手段の確保や、運転できない高齢者や免許を持たない人々の移動支援、さらには交通事故の減少などが期待されています」

 

“移動革命”「MaaS(マース)」とは? モビリティジャーナリストが解説する日本と世界の現状と課題

 

2.SDGsへの対応

「北米やヨーロッパでは、サステナブルではない化石燃料からの脱却を急ぎ、EVへの移行が進められています。現在、EVの充電に使われる電力の多くは化石燃料を利用して発電されており、その段階でCO2が排出されていますが、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)に切り替えることで、環境への負荷を大幅に減らすことができます。SDGsに対応してEVシフトが進むほど、自動運転技術の開発も加速するのです」

 

充電ステーションの数は、ガソリンスタンドの数には及ばないものの急速に増加中。

 

実現しているのはレベル3まで。
自動運転技術の5段階

自動運転は、国際規格の分類に基づき、5つのレベルで区分されています。

 

自動運転レベル1

……アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のどちらかが、部分的に自動化された状態。
運転操作の主体:運転者
車両の名称:「運転支援車」

 

自動運転レベル2

……アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方が、部分的に自動化された状態。
運転操作の主体:運転者
車両の名称:「運転支援車」

 

自動運転レベル3

……特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。ただし、自動運行装置の作動中、自動運行装置が正常に作動しないおそれがある場合において、運転者に運転操作を促す警報が発せられるので、適切に応答しなければならない。
運転操作の主体:自動運行装置(自動運行装置の作動が困難な場合は運転者)
車両の名称:条件付自動運転車(限定領域)

 

自動運転レベル4

……特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
運転操作の主体:自動運行装置
車両の名称:自動運転車(限定領域)

 

自動運転レベル5

……全領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態。
運転操作の主体:自動運行装置
車両の名称:完全自動運転車

 

本当の意味で自動運転と呼べるのは、レベル4と5のみです。レベル1~3とレベル4~5の大きな違いは、“責任の所在”にあります。レベル1~3の車では、運転操作に対してドライバーが責任を持ち、事故が起きた際もその責任はドライバーにあります。レベル4~5では、車のシステムが運転を担うため、システムに責任が生じることになります」

 

現行の市販車はどのレベルにある?

 

現在、公道を走る車の多くには、レベル1~2の自動運転技術が搭載されているのだとか。

 

「トヨタ、ホンダ、日産、メルセデス・ベンツ、BMWなど、主要な自動車メーカーでは、レベル1~2の技術を搭載した車を販売しています。たとえば、自動運転レベル1~2の機能には、先行車との車間距離を維持しながら指定した速度で走行する『アダプティブ・クルーズ・コントロール』、車線を外れそうなときにハンドル操作を補助する『レーンキーピング・アシスト』、急ブレーキを踏んだ際に減速をサポートする『ブレーキアシストシステム』などがあります。これらは自動運転というよりも、“運転支援”という位置付けですね」

 

一方で、レベル3の機能が市販車に搭載されているケースは非常にまれです。

 

レベル3の技術を先駆けて搭載した市販車は、日本でも海外においてもホンダの『レジェンド』です。この車には、高速道路での渋滞時にドライバーに代わって運転操作を行う『トラフィックジャムパイロット』が搭載されており、2021年に100台限定でリース販売されました。しかし、現在ではレジェンド自体が生産終了しています。海外ではメルセデス・ベンツやBMWなどがレベル3の自動運転車を発表していますが、国ごとの法規制や基準の違いが影響し、まだ広く普及していない状況です」

 

道路側のインフラが整い、車両と道路がリアルタイムで情報共有することで、効率的で安全な自動運転が実現する。

 

レベル4~5の自動運転車が公道を走るためには、さまざまな課題をクリアしなければなりません。とくに大きなハードルとして挙げられるのが、法整備とインフラ整備です。

 

「まず必要なのは法整備でしょう。事故時の責任の所在、運転免許証のあり方、保険の仕組みなど、多くの法的問題を解決する必要があります。自動運転車が普及した未来では、自動運転以外で走行したら保険がおりない、なんてことも起きるでしょうね。
自動運転車がスムーズに走行できるよう、交通標識のデジタル化、信号機との通信、道路状況のリアルタイムマップの更新など、インフラの整備も不可欠です」

 

自動車メーカーだけではつくれない!?
自動運転の鍵となる技術

自動運転は、カメラ、LiDAR(光学レーザー)、ミリ波レーダー、GPS、慣性計測装置(IMU)など、さまざまな技術に支えられています。なかでも重要なのが、カメラとLiDARです。

 

「自動運転車の“目”として、車線、標識、歩行者、信号など、周囲の状況を視覚的に認識するカメラ。光学レーザーを使って環境を3次元でスキャンし、物体までの距離や形状を正確に把握するLiDAR。この2つの技術が、自動運転技術の中核をなします。
そして、カメラやLiDARなどのセンサーから収集された情報は、専用のチップ(プロセッサ)やOSでリアルタイムに処理され、AIがその情報をもとに周囲の状況を判断して車の動きをコントロールするのです」

 

 

注目すべきは、自動運転専用のチップやOSはテクノロジー企業にしか開発できないことだと、神保さんは話します。

 

「自動車メーカーには、それぞれ独自の運転特性やブランドの“乗り味”があります。たとえば、スムーズな加速や減速のタイミングなどですね。自動車メーカーは、自社の自動運転車でもこの乗り味を再現したいと考えています。そのため、NVIDIA社などのAI半導体チップを用いて、乗り味のチューニングを行っているわけです。
つまり、自動運転車は、もはや自動車メーカーだけでは開発できないということ。ここに自動車業界のパラダイムシフトが生まれています。従来、自動車メーカーはエンジンや車体などハードウェアの開発・製造に強みを持っていました。ところが自動運転の時代に求められるのは、センサーやAI、ソフトウェアなどテクノロジーの領域なんです。世界の自動車産業は、その構造を大きく変えようとしているんですね」

 

世界中で進む開発レース!
日米中の動向は?

グローバル市場では、自動車メーカーやテクノロジー企業が、各社の強みと戦略を活かし、技術開発を進めています。ここではとくに、日本、アメリカ、中国における特徴的な動きを紹介します。

 

【日本】

・日産<日本>が目指すのは“安心して任せられる”自動運転

「日産は、軽自動車やミニバン、EVなど幅広い車種に自動運転レベル2の技術を搭載。『スカイライン』や『アリア』などの高級モデルには、高速道路でのハンズオフ走行(手放し運転)を可能にする『プロパイロット2.0』を搭載しています。
日産が目指す自動運転技術は、“馬と人間の関係”。馬が人をサポートしながら安全に道を進むように、車もドライバーをサポートし、安心して任せられる存在になることを目標にしているそうです」

 

高速道路でのハンズオフ走行が可能な日産車。

 

【米国】

・宇宙技術にも支えられたテスラは独自路線で開発を進める

「テスラはEVのパイオニアとして、多くの人に自動運転の可能性を示してきました。最近では、自動運転技術の開発において独自路線を歩んでいます。通常であればカメラとLiDARの併用が必須ですが、カメラのみのシンプルな技術開発を模索しているようです。ちなみに、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏が設立した航空宇宙メーカーのSpaceXは、商用ロケットの再使用に世界で初めて成功。その底知れぬ技術力に大きな期待が寄せられています」

 

高速道路をハンズオフ走行するテスラ車。

 

・自動運転タクシー競争

「アメリカでは、自動車メーカー GM(ゼネラルモーターズ)が手がける「Cruise(クルーズ)」と、テクノロジー大手 Google の子会社「Waymo(ウェイモ)」が自動運転タクシーの市場で競り合っています。現在は、限定されたエリアや条件でのみ運行中(自動運転レベル4)。
クルーズは2023年に人身事故を起こし認可停止中ですが、それでも海外市場への進出を模索中で、日本もその候補国のようです。GMはホンダからの出資を受けていて、技術提携も進めています。自動車メーカーとしてのアプローチで自動運転を広げようとしているわけです。
一方、ウェイモはテクノロジー企業として自動運転の開発に早くから着手し、世界中から優秀なエンジニアを集めているのが強みです。現在は既存の車両にセンサーを装着して走行していますが、将来的にはオリジナルの車両の開発も目指しているようです」

 

アメリカのカリフォルニア州を走行するウェイモの自動運転タクシー。

 

【中国】

・国家戦略による支援と巨大なEV市場に支えられる

「中国はEVの生産・販売が世界トップクラス。その背景には、Huawei(ファーウェイ)やBaidu(バイドゥ)などテクノロジー企業の多さと、政府の国家戦略による強力な後押しがあります。さらに、IT技術を活用した便利で持続可能な都市づくりを目指すスマートシティ構想のもと、インフラ整備や自動運転技術の導入も推進されています。
規模が大きく、ビジネスチャンスも多い中国市場には、世界中のデザイナーやビジネス関係者が熱い視線を送っています。その結果、車のデザインは洗練されてきていますし、自動運転技術を搭載した中国製EVは今、ヨーロッパにどんどん輸出されているんですよ」

 

2023年に世界でもっとも売れたEVメーカーは中国のBYD。最新モデルには、レベル2の自動運転機能を搭載。

 

運転から解放される時代、
ライフスタイルはどう変わる?

 

自動運転車が普及した未来、「それは“移動”そのものが新たなライフステージへと変わる瞬間かもしれない」と、神保さんは語ります。

 

移動中にかかるストレスや不確定要素が減り、移動時間の予測がより正確になるでしょうね。渋滞の発生なども自動運転車同士の連携で緩和され、移動の効率が高まるでしょう。そのため、例えば仕事中の移動、子どもの送り迎え、買い物といった日常の場面での活用が広がり、ライフスタイルは一変しますよね。
シェアリングエコノミーとの融合も進むでしょう。街中の車のほとんどがシェアカーとなり、必要なときに乗って自動運転で目的地に行けるような仕組みが整うかもしれません。タクシーが常に街中を走るのではなくて、必要なときにだけ自動運転車を呼び出して使う、といった新たなパーソナルモビリティの形が生まれるはずです」

 

さらに、自動運転車は「時間」や「行動範囲」の捉え方そのものを変える可能性を秘めています。

 

「これまでは、自分が車を運転しさえすれば、行きたいところに行けました。レベル5の自動運転車が社会実装されたら、自分が寝ていても行きたいところに行ける。車を運転できなかった人でも、好きなところに行けるわけです。それってすごく自由だと思いませんか?
電車や徒歩の移動では、『持ち物はこれだけにしよう』『日帰りできるのはこの距離までだ』と、私たちは無意識にさまざまな制限をかけているでしょう。自動運転車なら、荷物を好きなだけ積み込んで、移動中に家族との団らんを楽しんだり、仕事をしたりできる。自動運転の技術は、時間の使い方や行動範囲の可能性を広げ、私たちの意識そのものに変革をもたらすのではないでしょうか」

 

 

Profile


『DRIVETHRU』ディレクター / 神保匠吾

カエルム株式会社より2014年にオンラインモーターマガジン『DRIVETHRU』を創刊。先進的な領域とカーカルチャーを織り交ぜたエディトリアルを得意とし、インディペンデントなカーブランドのクリエイティブディレクション多数。2021年にコンバートEVにてグッドデザイン金賞を受賞。京都芸術大学「モビリティ学」非常勤講師(2023年)など。
HP

地図表示の実力はトップレベル!パイオニアのスマホ用カーナビアプリ「COCCHi」を徹底レビューしてわかった信頼性と快適さ

提供:パイオニア株式会社

スマートフォンで使うカーナビ用アプリを使う人が増えている中で、パイオニアの「COCCHi(コッチ)」が人気を集めています。そのダウンロード数は登場以来1年でなんと60万超え。支持される理由とはいったい? 家電にガジェットにグルメに……とモノ好きを自認するGetNaviの有料会員向けサービス「GetNavi Salon」のクルマ好きメンバーに、このCOCCHiを2週間にわたって実際に使ってもらい、その人気の秘密を探ってみることにしました。

↑「GetNavi Salon」メンバー、スズミチさん提供

 

従来の無料アプリとは一線を画する本格的ナビアプリ「COCCHi」

まずはスマートフォン向けカーナビアプリCOCCHiの基本的な特徴について、GetNavi乗り物担当の上岡が解説していきます。

プロの目線で解説!
GetNavi乗り物担当・上岡 篤

2023年は撮影絡みのキャンプしかできず残念。仮にデリカミニを所有したらどんな体験ができるのだろうと想像を膨らませて、2024年こそはキャンプに出かけようと計画中。

パイオニアといえば、1990年に日本で初めてGPS信号を使ったカーナビ「AVIC-1」を発売したメーカーとしても知られます。当時のキャッチコピーは「道は星に聞く」。宇宙から届く電波を受信して現在地を地図上に表示する初のカーナビをこの一言で言い表したものです。その意味でも、パイオニアはまさにカーナビを切り拓いた先駆者といえるでしょう。

 

それ以来、パイオニアは常に時代の先を行くカーナビを提供するメーカーとして存在感を発揮。やがてその実力はカーナビ界のベンチマークとして高く評価されるまでになり、そこで培った知見はサイバーナビや楽ナビへと継承されていきました。そうした中で2023年9月、パイオニアは、満を持してCOCCHiの提供を開始したのです。

パイオニア
スマートフォン向けカーナビアプリ「COCCHi」
OSはAndroid、iOSに対応。無料版/有料版 基本プラン(月額350円)/有料版 基本+住宅地図プラン(月額1400円)の3プランを用意。

 

無料で使えるカーナビ用アプリが数多く提供されている中で、このタイミングで有料プランをラインナップさせたのは、それだけパイオニアがCOCCHiに自信を持っている証なのかもしれません。

↑CarPlay/Android Autoに対応し、車載機器の大画面でスマートフォンアプリ画面の表示と直接操作が可能

 

COCCHiが持つ最大の特徴は、これまで提供されてきた無料アプリとは一線を画する、本格的なナビとなっていること。有料プランを基本とすることで、これまで車載ナビを使ってきた人でも十分に満足できる機能を盛り込んでいるのです。これにはもちろん、パイオニアが培ってきた知見が数多く活かされているのは言うまでもありません。

↑車両情報を登録することでマイカーの通行規制に適したルート案内をしてくれる。さらにCO2排出量やガソリン代金を可視化できる

 

「到着が早い」「コストが安い」「道幅が広い」の3種類からルート検索方法を指定でき、独自に保有するプローブデータとリアルタイム情報を活用し、高精度な到着時間予測や出発時間の算出、走行中に発生した渋滞を考慮したルートの再提案を行なうなど本格的です。

↑3種類のルート検索方法は「早」「安」「幅広」と表示される

 

 

GetNavi Salonメンバーが2週間使って評価!

さて、今回、参加してくれたGetNavi Salonのメンバーは、愛車がステップワゴンのシライシさんと、出張にプリウスで出かけることが多いというスズミチさん、EVであるサクラを通勤に使っているゆうさんの3名。ここからはCOCCHiのポイントを挙げながら、それぞれに使ってみた感想を伺ってみることにします。

GetNavi Salonメンバー
シライシさん
乗っているクルマ:ホンダ・ステップワゴン

最新ガジェットを買い集める40代男性。子どもが2人いるパパ。普段は子どもの送り迎えなどで運転している。

GetNavi Salonメンバー
スズミチさん
乗っているクルマ:トヨタ・プリウス

仕事などでクルマを利用することが多い30代男性。出張先でもレンタカーを借りて運転する。

GetNavi Salonメンバー
ゆうさん
乗っているクルマ:日産・サクラ

毎日通勤で往復55kmほど運転している30代女性。通勤時間の悩みは渋滞に巻き込まれてしまうこと。

 

◾わかりやすくリアルな交差点拡大図を使って目的地まで誘導

3名がまずCOCCHiをもっとも高く評価したのが、どこへ向かっても常にわかりやすいルート案内をしてくれることでした。

↑COCCHiはスマホ画面のタテ/ヨコ表示にも対応。シライシさんは6.9インチディスプレイのiPhone 16 Pro Maxを使用しているので視認性も高かったとのこと(シライシさん提供)

 

スマホ上でCOCCHiを直接使っているシライシさんは「愛媛の実家に帰ったときでも音声案内が丁寧に行われ、曲がるタイミングがとてもわかりやすい。交差点拡大図もスマホをタテにしたときは画面の上側で、ヨコにした時は車載ナビのように右側に並べて表示してくれることは良いと思いました」と、わかりやすいルート案内に満足。

 

↑レーン情報などの案内地のイラスト

 

スズミチさんは「車線数の多い都心を走っていても、『2車線目を走って下さい』とか、道案内が具体的でわかりやすい。ほかの地図アプリによってはかなり攻めた道を案内して、通れそうにない道案内もあったりしました。しかしCOCCHiは最短ルートではないと思いつつも、自車が通れる道を案内してくれます。さらに、到着予想時間もほぼ案内通りで、時間に遅れるわけにはいかない営業の仕事で本当に助かってます」とCOCCHiが仕事の面でも役立っていることを話してくれました。

 

実は交差点拡大図は多くの無料アプリで未採用となっていることが多いんです。そんな中でCOCCHiはほとんどの交差点で車線ガイドを表示でき、周辺の状況をリアルに描いたイラストを使って進行方向を案内します。なので、複雑な交差点でも進むべきルートが把握しやすいというわけです。

 

また、ゆうさんは「ルートを選ぶ時、狭い道を案内されると不安に思う人も多いと思いますが、COCCHiでは“幅広道路”が選択肢の中にあって、これが結構安心感につながると思うんです。私としては、狭い道に自信がない人はこの機能を使うことをおすすめしたいですね」とも話していました。

 

 

◾その音声ガイドはまるで助手席にナビゲーターが座っているかのよう

また、音声案内に対しても皆さんは、おおむね「聞き取りやすい」との評価。COCCHiで使われている音声ガイドはすべて電子合成音なんですが、そのレベルが相当に高い。特に有料プランで使われている“ニューラル音声”を使った音声は、人の発話に近い高品質さが特徴で、まるで助手席にナビゲーターが座って案内してくれているかのようです。

↑音声案内のタイミングが良くて聞き取りやすい(スズミチさん提供)

この聞き取りやすい音声を使って、スズミチさんが話していたように、進行方向だけでなく、何番目の車線を走ればいいかまでもしっかりとサポートします。しかも、分岐点までは距離だけでなく、所要時間でも案内してくれるのです。カーナビでは案内されることが多いのですが、分岐点までの距離を把握しにくい人が多いことに対応した措置。これによって、カーナビ初心者でもルート案内が把握しやすくなるってわけです。また、音声案内の発話頻度は3段階から選択可能。初めて走行する道ではより詳細な音声案内(多)、走り慣れた道や音楽を聴いている時はシンプルな音声案内(少)を利用するなど、ユーザーの用途や状況に合わせて発話頻度を選択できます。

 

一方で、ゆうさんはCOCCHiのルート案内を、通勤での実体験をもとに語ってくれました。「私は今までの純正ナビがベストだと思っていたんです。それが、COCCHiを使ったらもっとも効率よく仕事先に到着できるルートを案内してくれて、おかげで仕事の始業時間にも無事に間に合うようになって助かっています。これは渋滞情報がかなり正確だからなんでしょう、これにはビックリしましたね」。

 

COCCHiで使われている渋滞情報は、パイオニアが独自に収集したプローブ情報に加えて、有料プランならVICS情報も追加されます。それは細街路を除くほとんどの道路が対象となるレベル。つまり、メインの通りから別のルートへ回避した時もこのデータを使って誘導するため、ゆうさんのように可能な限り時刻通りに目的地へ到着できるのです。

 

また、COCCHiではルートを選ぶときに、有料道路の料金に加え、燃料費も同時に見ることができます。つまり、この料金を見ながらお得なルートを選べるわけで、単純に所要時間だけでなく、走行コストまで気配りを見せるCOCCHiならではの機能と言えるでしょう。

 

 

◾車載ナビさながら精緻かつ美しいCOCCHiの地図表示

多くのナビアプリの中でもCOCCHiは地図表示で抜きんでた実力を発揮します。ほかの無料アプリでは考えられないほど地図が美しく、特に地図上の色遣いではパイオニアの車載ナビのこだわりである地図のビジュアライゼーションもCOCCHiへ継承しています。そこには街区や道幅などの情報がリアルに再現されているのです。この表現力もCOCCHiならではのアドバンテージと言えるでしょう。

↑レーン情報などの案内地のイラストや方向看板をはじめ、ナビゲーション中の表示情報も十分。進行方向を容易に確認できる

 

この表示についてシライシさんは、「COCCHiは地図の色合いがとても見やすいですね。案内中のルートが緑色に表示されて、何処を走っているのかもすぐにわかるんです。この辺りは私が使ってきたほかのナビアプリや車載ナビよりもずっと見やすいと感じてます」と、パイオニアらしい地図表示に感動した様子でした。

 

また、ゆうさんは「地名が四角い枠で囲われているのに加えて、そのフォントがとても見やすくてそれがわかりやすさにつながっている」と地名表示で使われているフォントにも良さを感じている様子でした。

 

この見やすさが安全につながるのではないかと話すのはスズミチさん。「色味がすごいキレイなので、パッと見ただけで知りたい地名とか現在地とかがすぐにわかるんです。(結果として)地図を見る時間が少なくて済むのでこれは安全性にもプラスになるんではないか」というわけです。

 

さらにゆうさんは「(夜モードって多くは背景がブラックになってしまうのが多い中で)COCCHiではその色バランスの使い方がとても良く、長時間使っていてもとても楽に視認できます」と話し、これがロングドライブでのストレス低減につながると話します。

↑道路名称の表示がルートや道路と重ならないようにするなど、夜モードでの地図表示の視認性も高い(ゆうさん提供)

 

そんな中でゆうさんがあることに気付きました。それは自車位置から目的地へ向かって示される赤紫の実線の存在です。「細い線ですが目的地へ向かって伸びていて、これがあることで自分の向かう方角を見失わずに済むようになるんです。以前、使っていたナビにはあったのに、今使用している純正ナビではそれがなくなっていたのでこれはとてもありがたいです。それと夜モードの色バランスも気に入っています。ナビの多くは夜モードになるとブラックになってしまうからです」。

 

 

◾一軒ごとの所在がわかるゼンリン住宅地図を初導入。でも料金は業務用向け?

地図表示については、パイオニアとして初めてとなるゼンリン住宅地図に対応したことも話題となりました。

 

住宅地図は、一軒ごとの表札から記録した膨大なデータが地図上に表示されるもので、不動産関係でよく使われるデータでもあります。それが有料プラン(月額350円)に加えて1050円の計1400円(月額)を支払うことで、アプリ上で表示されるオプションプランです。このプランを選ぶと、地図を拡大していくと最後に住宅地図へ切り替わります。目的地付近で一軒ごとの情報を知りたい時にとても便利な機能と言えます。

↑建物の名称や居住者名、番地などの情報を詳細に表示する「ゼンリン住宅地図オプションプラン」。写真はオフィス街(左)と住宅地(右)

 

実際使ってみれば、スマホの性能が素晴らしいのか、サクサクと動いてその表示も鮮明そのものです。この機能があればいざという時に役立つこと間違いなし!と思うんですが、一般的にドライブするうえでこのプランを選ぶかといえばなかなか難しそうです。

 

ゆうさんも「料金は月額350円から一気に月額1400円になるのは、年間を考えたら少し負担が大きいかなと。私としては月額350円プランで十分役立っています」とのこと。やはりこのプランは、個人宅の配送や送迎、不動産業や建設業などの仕事で使うのに便利なプランなのかもしれませんね。

 

 

詳細なジャンル分けでスムーズに目的地検索。Googleマップとの共有も可能

ここからは改めて、GetNavi乗り物担当の上岡が解説。COCCHiは9月21日にサービスを開始して1周年を迎えました。その間、5回にわたる大型アップデートを行い、スマホでのタテ/ヨコ表示に対応など、その使い勝手は順次機能アップしてきています。

 

直近では9月28日に、自宅へ到着したタイミングですべての走行軌跡を消去する「自宅到着時自動消去」が選べるようになったほか、夜モードでは住所や施設、駅名称などの文字色を黒から白に変更し、道路名称もルートや道路と重ならないような配慮を加えているのも見逃せませんね。また、地図上の任意場所を長押しして目的地/立寄地を設定する際に有料道路/一般道路のどちらに設定するかも選べるようになったことで、使い勝手はさらに向上しました。

↑もちろん有料専用道路専用のハイウェイモードにも対応

 

カーナビとして目的地の検索能力はきわめて重要です。目的地が探せなければカーナビとしての機能を果たせませんからね。そこで、COCCHiの目的地検索ではフリーワードやジャンル、住所などが使え、フリーワードは施設名や電話番号、住所検索に対応した上で音声での入力も実現。これにより、運転中であっても簡単に目的地が探せるのです。

 

ただ、COCCHiではジャンル分けに該当しない施設は検索対象外になってしまうことがあります。目的地は観光名所があったり、またはリストにも掲載されないようなマイナーな施設もあるわけです。そういうときは、検索能力でライバルなし!とまで言われているGoogleマップで探した位置情報をCOCCHiと共有しましょう。これを使えば、日本全国どんなところでも目的地に設定して出かけられるようになります。ぜひ、COCCHiを使って、今まで行ったことがない素敵なルートをぜひ見つけて下さいね。

 

それと、ドライブ中に助けて欲しいと思うことって結構ありますよね。そんなとき、COCCHiでは画面上のメニューボタンを押すだけで「駐車場」「ガソリンスタンド」「トイレ」の3つを探すことができる「お助けメニュー」が活躍してくれます。

↑「駐車場」「ガソリンスタンド」「トイレ」の3つを探すことができる「お助けメニュー」

 

お助けメニューには並走する高速道路あるいは一般道との切り替えをワンタッチで行える機能も備えています。スマホで使う以上、道路の高低差を自動認識するのは困難ですから、この機能は積極的に使いこなすことをおすすめします。こうした、いざという時のお役立ち機能が、ドライバーの運転中のストレス低減につながるのです。

 

COCCHiには無料版と2つの有料版の計3プランが用意されているとお伝えしましたが、おすすめはなんといっても有料版の基本プラン。“基本”と称することからもわかるように、COCCHiはこの基本プランで初めて本来の機能が発揮できる設定となっているからです。1か月間は無料で使えるので、まずは試して、その上で無料版にするか有料版にするかを決めればいいでしょう。

 

 

COCCHiは9月21日でサービス開始1周年! 公式Xで「みんなの#推しルートキャンペーン」を実施中

COCCHiの提供開始1周年を記念して、パイオニアでは公式X「みんなの#推しルートキャンペーン」を実施。推しルートの写真とキャンペーン告知投稿の引用リポストと、ハッシュタグ(#推しルート)投稿で「ドライブでおすすめのルート」または「今年探索したルート」を募集中です。投稿した中から抽選で20人にガソリンギフト券(2000円分)が当たるとのこと。キャンペーン期間は10月1日から11月30日まで。

 

ちなみに、GetNavi Salonメンバーの推しルートは以下でした。

「厚木から宮ヶ瀬ダムに向かう山道のルートは走っていて楽しいですね。たまに、家族でさがみ湖MORI MORIまでドライブしたりもします」(シライシさん

「首都高の堀切JCT から江戸橋JCTの間です。夕方から夜になる短い時間ですけど、首都高から見える東京スカイツリーが綺麗で好きですね」(スズミチさん

湘南の国道134号線がおすすめ。特に鎌倉の材木座海岸から藤沢方面に向かって走ると左手に、美しい海、穏やかな波の音に癒されます。パシフィックドライブインで江ノ島に沈む夕日を眺めながらレモネードを飲む時間が最高のひとときです」(ゆうさん

 

文/会田肇 撮影/松川忍

 

「走りと乗り心地」に納得! 発売1か月で3万8000台を受注した新型「フリード」の魅力に迫る

ホンダのコンパクトミニバン、ホンダ「フリード」が今年6月、フルモデルチェンジして三代目となりました。受注状況も絶好調のようで、なんと発売開始後1か月で月間販売計画の約6倍となる3万8000台を記録! その人気の秘密はどこにあるのか、試乗を通してレポートします。

↑三代目「フリード」は標準車の「エアー」(左)と、アウトドア志向に振った「クロスター」(右)の2タイプと明確なキャラクター分けが行われた

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ フリード e:HEV(エアー EX[FF]、クロスター[4WD])

250万8000円〜343万7500円(税込)

 

ラインナップは「エアー」と「クロスター」の2タイプ

フリードは初代より手頃なサイズと高い実用性が評価され、ホンダ車の中でも常に上位に入る人気車です。先代はモデル末期になっても月間1万台近くを販売するほどの人気を得ていましたが、これはまさにファミリーカーとして“ちょうどいい”ことが評価されてきたからこそ。そして、様々な面で進化を遂げた三代目は、その良さを継承しながらも新型ならではの改良が加えられて誕生しました。

 

ラインナップは大きく分けて標準車の「エアー」と、アウトドア志向に振った「クロスター」の2タイプとなり、ステップワゴンと同様、明確なキャラクター分けが行われました。パワートレーンは1.5リッター直4ハイブリッド「e:HEV」と、同じ1.5リッターのガソリンエンジン車で、それぞれにFFと4WDを用意。このラインナップは先代と同様ですが、そこに新型ならではの改良が加えられたのです。

↑「フリード e:HEV エアー EX」/3列6人乗りFF

 

↑「フリード e:HEV クロスター」/2列5人乗り4WD

 

フリード初、パワーユニットにe:HEV採用!

その改良のポイント一つ目は、ハイブリッドモデルのパワーユニットを刷新したことです。先代はデュアルクラッチトランスミッション(DCT)を使った「i-DCD」を採用していましたが、三代目はそれを「e:HEV」に変更。これはホンダのコンパクト車としては「フィット」や「ヴェゼル」に続くもので、走行用モーターと発電用モーターの2つのモーターを備えて走行状況によって駆動力を自動的に切り替えるハイブリッドシステムとなります。

↑ハイブリッドシステム「e:HEV」のパワーユニットは、最高出力106PSの1.5リッター直4エンジンに最高出力123PSのモーターを組み合わせた

 

これによって、i-DCDを上回る加速性能を実現することとなり、市街地でのスムーズな加速だけでなく、特に登坂や高速域での加速性能にも余裕を感じ取れるようになりました。今までどちらかといえば得意ではなかった高速での走行でも、一段と力強さを感じるようになったのです。

 

二つ目はプラットフォームの進化です。ベースこそ先代からのキャリーオーバーとはなりますが、ホンダによればフロアやサイドシル、フロアフレームを一新し、開口部やダンパーの取り付け部、リアクォーターピラーも大幅に剛性をアップしたとのこと。その結果、走り出せば先代とは別モノとの印象を受けます。街乗りでのしなやかな走りは上質ささえ感じさせるほどでした。

 

ただ、室内の広さは先代とはほぼ同じです。全長で45mm長くなっていますが、これはその大半を新搭載となったe:HEVを収めるためにフロント部を拡大したため。一方でベースモデルとなるエアーは5ナンバー枠に収めていますが、クロスターは25mm増しの3ナンバー枠となりました。

 

3列シート車にリア専用エアコンを採用

室内に入ると水平基調のダッシュボードが最近のホンダ車らしさを感じさせます。視界も良好で、運転席からは周囲を広々と見渡すことができます。インパネには大容量の収納ボックスや取り出しやすさを追求したトレーを配置。さらに、シートの肩に当たる部分を細身にして後席からの圧迫感を抑えたことで、2列目や3列目のシートからの抜けのいい視界を実現していることも見逃せません。

↑フリード エアーの運転席回り。内装は明るいトーンでまとめられている

 

↑フリード クロスター/2列5人乗りの運転席回り

 

ダッシュボードは基本的に硬質パネルで構成されますが、それでもエアーにはダッシュボードの上部に手触りが心地よいファブリックが施され、それがナチュラルさを演出。また、ホンダのコンパクトミニバンとして初めて、リア用エアコンが3列シートの上級グレードに標準装備されたのは新型の大きなポイントとなるでしょう。

↑3列シート車に標準装備されるリア専用エアコン

 

さて、試乗したのは、2列5人乗りのクロスター(4WD)と、一番の売れ筋となると思われる3列7人乗りのエアーEX(FF)で、いずれもe:HEV仕様です。そして、別の日に2列5人乗りのクロスター(FF)のガソリン車にも試乗しました。

 

2列目がもっとも快適なのは3列6人乗り仕様

まず、e:HEVのクロスターですが、新型フリードで2列5人乗りが選べるのはクロスターのみで、これは先代でいえば「フリード+」から置き換わったもの。また、クロスターとエアーでは2列目がキャプテンシートとなる3列6人乗りも選べ、さらにこのクロスターに限っては、車椅子のまま乗り込める「スロープ」や「助手席リフトアップシート」を備えた福祉車両も用意されました。ただ、エアーにある3列7人乗り仕様はクロスターに用意されていません。

↑フリード e:HEV クロスター/2列5人乗りのスロープ仕様。電動インチで車椅子を引っ張り上げることができる

 

その中で、2列目に座ってもっとも快適だったのは3列6人乗りのキャプテンシートでした。細身ながら身体にフィットする専用シートである上に、左右にアームレストがあることで身体を常に安定させることが可能だったからです。対して、2列5人乗りのシートは2列目がベンチシートとなり、特にe:HEVではフロアが高めとなるために太ももが座面から離れることもあって、乗車中はどうしても不安定になりがち。ミニバンらしい快適さを2列目で感じたいのなら、3列6人乗りのキャプテンシートをおすすめしたいですね。

↑フリード エアーの2列目。3列6人乗り仕様の2列目はキャプテンシートとなる

 

とはいえ、乗り心地だけを捉えれば2列5人乗りでも驚くほど快適でした。先代はともすればハンドリングの良さを重視して、路面からの反応をリアルに伝えてくる印象でしたが、新型はそれとは真逆。三代目フリードは、ミニバンとして熟成の乗り心地に達したといえるかもしれません。

↑今回の試乗では横浜の市街地から首都高速を経由するルートを走行しましたが、路面からの突き上げもしなやかで、シートを介したショックはほとんど伝わってこない

 

その4WDシステムは先代同様の電子制御油圧多板クラッチを備えたプロペラシャフト付「リアルタイムAWD」で、これはSUVのヴェゼルと同じもの。発進時より積極的にリアに駆動配分するため、ステアリングを切ったときなどでも思い通りにトレースできるのがメリットです。実際、後述するエアーのFFと比べると、明らかにどっしりとした安定感があり、決してパワフルな印象こそありませんが、市街地での発進は極めてスムーズにこなしてくれていました。

 

軽快な走りを見せたe:HEVのFF。市街地で十分なガソリン車

次に試乗したのが3列7人乗りのエアー EX(FF)です。4WDに比べて車重が軽くなることもあって、その走りの軽快さではシリーズ中ナンバーワンといえます。アクセルを踏めばリニアに加速し、HVならではの力強さをより感じさせるものとなっていました。フリードには燃費向上が期待できる「ECON」モードが備えられていますが、このモードでも十分な加速を発揮。そして、これをOFFにすればモーターらしさをよりしっかりと感じられる走りとなります。これなら高速道路の流入でも不満は感じないでしょう。

 

さらに3列7人乗りのエアー EX(FF)は、路面からの反応でも一段としなやかさが増していました。多少ロールが大きめではあるものの、足回りのフリクションも徹底して抑えられているようで、その乗り心地はひとクラス上のミニバンと比べても遜色ありません。エンジン音も静かですし、ロードノイズの侵入もかなり少なめとなったこともあり、ミニバンとしての快適性はこのグレードがピカイチであると感じました。

 

最後に2列5人乗りのクロスター(FF)のガソリン車です。モーターを搭載していないだけに絶対的なパワー感はe:HEVに比べると落ちるのは確かです。しかし、それでも市街地での走行に限ればほとんどストレスは感じないレベルにあり、高速道路への進入もECONモードにしなければ十分な加速力が得られます。特に組み合わせたCVTは、あたかも変速があるかのように段をつけた加速フィールが味わえ、アクセルを踏んだときの心地良さを感じさせてくれるものでした。

 

全車速追従のACCやブラインドスポットインフォメーション採用

新型となって様々なドライブアシスト機能も進化しています。特に見逃せないのが、電子制御パーキングブレーキ(EPB)+オートブレーキホールド(ABH)が全グレードに標準装備されたことと、ブラインドスポットインフォメーション(BSI)が一部グレードに搭載されたことです。

↑フリード エアーのシフトレバー回り。パーキングブレーキが電動化されたのに伴い、オートブレーキホールド機能も装備された

 

EPBの採用は渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)の実現をもたらすもので、先行車がいない場合は設定した車速を自動で維持し、先行車がいる場合は自動で加減速して適切な車間距離を保ちます。ただ、センシングが従来のミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせから、単眼カメラのみとなったことで、先行車との距離の検知はやや不安定な印象です。それでも渋滞時もACCが継続できるメリットは大きいといえます。

↑運転支援に使われるセンシングがフロント上部に設置された単眼カメラ(中央)で行われる

 

また、BSIは車線移動する際、ミラーでは見えなくなっている斜め後方の車両検知してくれるというもので、車線移動での安全性を高めるのに有効な装備となっています。ベースグレード以外はすべて装備されているのはうれしいポイントです。

↑ベース車以外のすべてに装備されるブラインドスポットインフォメーション。隣車線の斜め後方にいる車両を検知するとアイコンがオレンジに光る

 

三代目フリードは、3列目シートすべてで快適に座れる長所を引き継ぎつつ、ハイブリッド車はe:HEVに進化し、乗り心地でもひとクラス上の上質さを獲得しました。課題となっていた先進安全装備でもライバルに追いついたことで、コンパクトミニバンとしての魅力度をさらに向上させたのは間違いないでしょう。

 

SPEC【e:HEV エアー EX(FF)】●全長×全幅×全高:4310×1695×1755mm●車両重量:1480kg●パワーユニット:1.5L水冷直列4気筒エンジン+交流同期電動機●エンジン最高出力:78kW/6000〜6400rpm[モーター最高出力:90kW/3500〜8000rpm]●エンジン最大トルク:127Nm/4500〜5500rpm[モーター最大トルク:253kW/0〜3000rpm]●WLTCモード燃費:(6名)25.4km/L・(7名)25.3km/L

SPEC【e:HEV クロスター(4WD)】●全長×全幅×全高:4310×1720×1780mm●車両重量:(5名)1560kg・(6名)1580kg●パワーユニット:1.5L水冷直列4気筒エンジン+交流同期電動機●エンジン最高出力:78kW/6000〜6400rpm[モーター最高出力:90kW/3500〜8000rpm]●エンジン最大トルク:127Nm/4500〜5500rpm[モーター最大トルク:253kW/0〜3000rpm]●WLTCモード燃費:(5名)21.3km/L・(6名)21.1km/L

 

撮影/松川 忍

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

ファンでなくても欲しくなる「MAZDA RX-7」Tシャツ発売!

フェイスは、ノリモノ雑貨を扱うECショップCAMSHOP.JPより、「MAZDA RX-7」のイラストがプリントされたTシャツを発売しました。実売価格は3960円(税込)。

 

記事のポイント

3台のカラフルなRX-7が描かれたインパクトのある仕上がりで、RX-7ファンでなくても欲しくなるような遊び心たっぷりの仕上がり。ホワイトとチャコールの2色展開なので、両方買うのもオススメ!

 

本品は、マツダを代表するスポーツカー「RX-7」シリーズをプリントした半そでTシャツ。5.6オンスのヘビーウエイト生地を採用しており、1枚で着てもすっきりと着こなせるスタンダードなシルエットに仕上がっています。

 

カラーは清潔感のあるホワイトと、落ち着いた色合いのチャコールの2色をラインナップ。サイズはM/L/XLの3サイズ。

マツダ公認のライセンス取得商品です。

 

フェイス
「MAZDA RX-7 Tシャツ」
発売中
直販価格:3960円(税込)

 

「歴史に名を刻むのは間違いない」二刀流で話題の“次世代オールシーズンタイヤ”、ダンロップ「シンクロウェザー」で真冬の雪道と初夏の路面を走った結果

大谷翔平とベーブルースが歓談? そんなシーンを使ったダンロップのCMに、思わず目を凝らした人も多かったのではないでしょうか。

 

これはダンロップがこの秋に発売する「シンクロウェザー」という、2つの機能を備えた、いわば“二刀流”とする新たなタイヤに絡めたCMなのです。今回はそのタイヤについて、解説と走りをレポートします。

↑ダンロップが新たに開発した独自のオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」

 

“二刀流”を共通としてイメージキャラクターに大谷翔平を起用!

 

この動画に登場している“ベーブ・ルース”は、当たり前ですが本物ではありません。

 

この方はベーブ・ルース財団の協力によって紹介された“そっくりさん”で、骨格や輪郭などに修正を加えることで、まるで本人であるかのように演出しているそうです。かつて打者・投手の二刀流で名を馳せたベーブ・ルースと、現代の二刀流のスーパースターである大谷翔平とのコラボレーションを、新たな“二刀流タイヤ”として発売される「シンクロウェザー」のイメージに重ねているわけですね。

 

では、「シンクロウェザー」とはどんなタイヤなのでしょうか。概要をかいつまんで言えば、冬タイヤとしてスタッドレスタイヤ並みの性能を発揮しながら、ドライ&ウエット路面でも夏タイヤ並みの性能を発揮するというものです。こうお伝えすると、多くの方から「本当なのか?」と疑いの眼差しも寄せられることでしょう。でも、ダンロップの開発陣は自信満々なのです。

 

夏でも冬でも高性能を発揮する“次世代オールシーズンタイヤ”

↑「シンクロウェザー」のトレッド面。このタイヤのゴム素材には、水に濡れると柔らかくなり、また低温時でも硬くなりにくい素材が採用されています

 

その自信の裏付けとなっているのが「アクティブトレッド」と呼ばれる新技術。水に触れたり、温度が下がったりした際にゴムの性質が変化して柔らかくなり、結果として摩擦係数を常に高く維持できることで滑りにくくなる、というものです。つまり、タイヤ自身が路面に「シンクロ」することで、ウエット路面でもアイス路面でも高いグリップ力を発揮するというわけです。

 

従来のオールシーズンタイヤなら、雪道でこそ一定のグリップを保つことはできたものの、凍った氷上路面までは対応は難しいとされてきました。しかし、この技術を採用することで、氷上路面の走行時にも確かなグリップを可能にしたのです。

 

それだけではありません。「シンクロウェザー」は、夏タイヤ並みのドライ&ウエット路面性能を合わせ持っています。つまり、スタッドレスタイヤ並みの雪上&氷上路面性能と、夏タイヤとしての実力もフルに発揮できる、史上初のオールシーズンタイヤとして登場しているのです。

 

まさにこれが「シンクロウェザー」が“次世代オールシーズンタイヤ”といわれる所以であり、“二刀流”を謳う理由もそこにあるわけです。

 

ゴムに仕込まれた“2つのスイッチ”が環境に応じて切り替わる

↑「シンクロウェザー」は認定ショップでのみの販売となり、価格は高めに設定されています

 

でも、どうしてこんなことができるのでしょうか。不思議ですよね?

 

そもそも「アクティブトレッド」とは、水や温度などの外的要因に反応してゴムの特性が変化する新技術で、ゴムを柔らかくするには欠かせないポリマーの動きをコントロールする役割を果たします。「シンクロウェザー」ではこのゴムの中に「水スイッチ」と「温度スイッチ」の2つのスイッチ機能を備えており、これを環境に応じて切り替えることでゴムの特性を変化させているのです。

 

具体的には、路面に接地するトレッドの一部に、水に触れると結合が溶けるイオン結合のポリマーを採用(水スイッチ)。これによりウエット路面に入ると表面が柔らかくなってグリップ力が高まります。そして、水が乾けば再び元の硬さに戻ってドライ路面でのグリップ力を回復するのです。

 

そして、次に冬場の低温時にはゴムのグリップ力を高める成分をポリマーから切り離すことで(温度スイッチ)ゴムが硬くなるのを抑えます。これによってゴムは柔らかいまま維持され、雪上や氷上でもしっかりとしたグリップを実現することができるというわけです。

 

タイヤの表面には、その性能を裏付けるものとして、冬用タイヤ規制が発令された高速道路も走れる「スノーフレークマーク」はもちろんのこと、国連が定めた氷上性能をクリアした「アイスグリップシンボル」までも刻印されています。まさに、これまでのオールシーズンタイヤではあり得なかったことを「シンクロウェザー」は可能にしたのです。

 

氷上でも安心して走れる高いグリップ力を実感

では、その実力は本物なのでしょうか? 2月に北海道で雪上&氷上路面を、5月に岡山でドライ&ウエット路面で試乗する機会を得ました。

↑用意された雪上路で「シンクロウェザー」の実力を試します

 

雪上&氷上路面での試乗は、旭川市内にあるダンロップのテストコースと周辺の一般道を使って行なわれました。試乗の対象となったのは「シンクロウェザー」に加えて、ダンロップのオールシーズンタイヤ「マックス・エーエスワン(MAXX AS1)」と、「ウインターマックス・ゼロツー(WINTER MAXX 02)」です。

 

最初に「MAXX AS1」で走ると、最初の氷上でさっそくグリップ力の弱さを露呈。アクセルを踏んでも思うように加速してくれません。氷上を旋回するとそのまま外側へと膨らんでしまい、そのコントロールにずいぶんと苦労することになりました。まさにオールシーズンタイヤゆえの氷上でのグリップ力の低さを体感したわけです。

 

次の「シンクロウェザー」では、氷上でもステアリングを切っただけの反応が伝わってきました。もちろん、パワーをかければ外側へ膨らみますが、「MAXX AS1」とは安心感がまるで違います。ただ、その後に「WINTER MAXX02」を走らせると、さすがはスタッドレスタイヤ、よりしっかりとしたグリップを感じさせてくれました。とはいえ、「シンクロウェザー」との差は小さく、改めてその実力の高さに驚かされた次第です。

↑氷上での旋回で「シンクロウェザー」はスタッドレスに近いグリップ力を示しました

 

続いて「シンクロウェザー」で雪深い一般路に出てみました。雪深い路面をものともせず、グイグイと雪道を突破していきます。カーブに差しかかったところで少し強めにステアリングを切るとわずかに横に流れる動きを見せましたが、それでもすぐにグリップして安心感は十分。雪道での頼りがいをしっかり感じ取ることができました。

↑「シンクロウェザー」で雪深い一般路を走行。オールシーズンの概念を超えるグリップ力が安心の走行をもたらします

 

シャープなハンドリングと快適な乗り心地。静粛性の高さに驚き!

そして、次なるシーンは5月の岡山。ここではダンロップのテストコースで周回路を使ったハンドリング、濡れたスキッドパッドでのウエット路面走行、さらに周辺の一般路でも試乗しました。タイヤは「シンクロウェザー」のほかに、「ルマン・ファイブ・プラス(LE MANS V+)」と、スタッドレス「ウインターマックス・ゼロツー(WINTER MAXX02)」を試しています。

↑ドライな路面でも、シャープなハンドリングによる気持ち良い高速走行が可能です

 

ここで最初に試乗したのは夏タイヤの「LE MANS V+」。周回路を走ると路面の状況にしっかりと反応し、操舵に対しても忠実にトレースする高いスポーツ性を発揮し、高速での周回でももっとも安心度が高かったです。一方のスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX02」は剛性の低さがモロに出ており、ステアリングを切っても反応が鈍く、高速でもその都度修正を余儀なくされました。また、ロードノイズもかなり高めです。

 

続いて「シンクロウェザー」に乗り換えてまず実感したのは、その静粛性の高さ。おそらくその実力は夏タイヤの「LE MANS V+」とほぼ同等と言っていいでしょう。実はこれまで、オールシーズンタイヤはノイズレベルが高いのが個人的にも悩みでしたが、これなら音楽だって十分楽しめそうです。

↑水をまいたスキッドパッドでも、夏タイヤ並みの限界性能を実感できました

 

さらに乗り心地も上々。荒れた路面でもいなし方が巧みで、路面からのショックが最小限にとどまっていました。しかも周回路での高速走行でレーンチェンジをすると、その反応はとてもオールシーズンタイヤとは思えないほどシャープ。その反応の良さに、高速周回がとても楽しく感じられたほどでした。

↑一般路での走行では、路面の荒れをしっかりと吸収する乗り心地の良さ。高い静粛性にも驚き!

 

タイヤの歴史に新たな1ページを刻むのは間違いなし

雪深い真冬の北海道、汗がにじみ出そうな5月の岡山でテストした「シンクロウェザー」の試乗は、これまでのオールシーズンタイヤの概念を大きく変えるものでした。今までなら、オールシーズンタイヤは一年を通して使える便利さを持ちつつも、夏タイヤとしても冬タイヤとしても“そこそこの性能”にとどまっていたわけです。

 

一方、この秋に登場する「シンクロウェザー」は見事に“次世代オールシーズンタイヤ”としての実力を十分に見せつけてくれました。価格は同社のタイヤの中では最も高くなるとのことですが、ダンロップとしてはこの製品の実力を正しくユーザーに伝えるため、認定シップ制度を導入して大事に育てていく考えとのこと。「シンクロウェザー」の登場はタイヤの歴史に新たな1ページを刻むのは間違いないでしょう。今後のさらなる進化にも期待したいですね。

↑予想をはるかに超える快適な走りをもたらした「シンクロウェザー」。この秋より発売開始です

 

 

「4WDは超オススメ」期待大のコンパクトSUV スズキ「フロンクス」乗ってみたら予想を超えるデキだった!

2024年秋、スズキからコンパクトSUV「フロンクス」が登場します。インドで生産されるこのSUVは、これまでに多くの賞を獲得しており、日本でも大きな期待が寄せられています。そんな中、正式発売を前にフロンクスのプロトタイプに試乗する機会に恵まれました。今回はそのインプレッションをお届けします。

↑インドで生産されるスズキ「フロンクス」。クローズドされたコースで試乗することができた

 

■今回紹介するクルマ

スズキ フロンクス(試乗グレード:2WD、4WD)

 

インドで大好評のバレーノをベースに開発

新型フロンクスは2023年1月、インドのデリー近郊で開催された「Auto Expo 2023」でデビューしました。その後、同年4月にインド国内でスズキの高級ブランド「NEXA」から発売され、8月から10月にかけて南アフリカや中東、南米の一部でも販売を開始。主に新興国を中心に展開してきました。そうした中で今回、日本への導入が決まり、メディア向けにいち早く試乗会が開催されたというわけです。

 

実はスズキがインドで生産した車両を日本で販売するのは初めてではありません。2016年3月に「バレーノ」を日本に導入したことがありました。残念ながら、日本では思ったほど販売台数が伸びず、2020年7月に日本での販売を終了していますが、インドではこれが大ヒットとなり、2022年には前モデルを受け継いだ2代目が登場。今回のフロンクスはこの2代目バレーノをベースにSUVとして開発されたものとなります。

 

個性的なデザインと扱いやすいボディサイズ

車両を前にして感じるのが抜群の存在感です。開発者によれば、「街中にあっても溶け込まないデザインを狙った」そうで、特にクロームメッキ加飾のバーとピアノブラックを組み合わせたフロントグリルは迫力満点。デイタイムランニングライト/ウインカー兼用のLEDランプの組み合わせも個性的で、さらにその下には左右まで回りこんだブリスターフェンダーにヘッドライトを組み込むなど、そのデザインは一度見たら忘れられない奇抜さがあるといえます。

↑ピアノブラック処理を施したフロントグリルを真一文字に横切るクロームメッキバーとLEDランプが個性的

 

↑ヘッドライトを組み込んでフロントにまで広げたブリスターフェンダーが迫力をさらに増している

 

リアビューはいま流行りの一文字型のテールランプとなっており、光るところ以外はブラックアウトされているのでキリッとした印象。後続車からも好印象となるのではないでしょうか。

↑リアも個性的なデザインに仕上がっている

 

リアゲートは手動式ですが、動作は軽めなので使い勝手も上々。リアフォルムが寝ているものの、フロアが2段構造となっているのでかさばるものも結構いけそうです。

↑カーゴルームのフロアは二段階式

 

↑ボードを上側にセットしてリアシートをたたむとフラットに近い状態となる

 

また、ボディサイズは全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mmとBセグメントのコンパクトSUVになります。全長が4m未満ということでBセグメントの中でも小さめの部類になりますし、なによりも高さが1550mmに抑えられているので、立体駐車場に入れられ、これが都市部で使う人にとってはメリットとなるでしょう。

 

渋滞追従ACCなど日本仕様だけに与えられた先進装備

インテリアはどうでしょう。このクラスのセグメントとしては珍しいぐらい、ピアノブラックやメッキパーツが多用され、そこにボルドーカラーが組み合わされています。それぞれのパーツは樹脂製であるため、素材自体は決して高級なものではないと思います。しかし、それぞれが主張することなく自然に組み合わされていることで、見た目の印象はかなり良いです。

↑腰回りをしっかりホールドしてくれるフロントシート。ブラックとボルドー色を組み合わせたカラーリングもシャレている

 

個人的に気に入ったのは、日本仕様にはヘッドアップディスプレイなど先進機能が標準装備されていることです。スズキはスペーシアやワゴンRでもこれを採用するなど、先進機能の搭載を積極的に進めてきましたが、フロンクスにも搭載となりました。さらにインド本国では手で引くタイプの機械式だったパーキングブレーキが、なんと日本仕様では電動式としたのです。さらにACCも搭載されており、この組み合わせによって全車速追従が可能となり、渋滞時の疲労軽減にも大いに役立ってくれるというわけです。

 

【機能面をフォトギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

リアシートはセンターにアームレストが装備されておらず、後席用のエアコンの吹き出し口もありません。このあたりはクラスとして標準的な仕様と言えます。それでも後席にUSB端子(Type-A/Type-C)が装備されているのはイイですね。

↑リアシートは基本的にルーミーだが、センターにアームレストがないのが残念

 

広さは大人3人が座っても十分なスペースがあります。ただ、助手席側の後席足元にはマイルドハイブリッド用バッテリーが搭載されているので、その分だけ足元は窮屈に感じるかもしれませんね。

 

軽快でリニアなハンドリングを備える2WD

フロンクスのパワートレインは、1.5リッター直列4気筒の自然吸気エンジン、これにマイルドハイブリッド機構を備えたものとなっており、最高出力は74kW/6000rpm、最大トルクは135Nm/4400rpm。ミッションはアイシン製6速ATが組み合わされています。また、ラインナップには日本仕様のみ4WD仕様が加えられていることも見逃せません。

↑1.5リッター直列4気筒の自然吸気エンジンの最高出力は74kW/6000rpm、最大トルクは135Nm/4400rpm。ミッションはアイシン製6速AT

 

さて、そのフロンクスにいよいよ試乗です。試乗コースは、静岡県・伊豆の国市にあるサイクルスポーツセンターのクローズドコース。ここを通常とは逆回りで走行することとなりました。

 

最初に試乗したのは2WDモデルからです。走り出してまず気付いたのが、ロードノイズが予想以上に低く、かなり静かであるこということ。この日はそこそこ風も吹いていたのですが、風切り音も入って来ません。もちろん、ガソリン車ですからアクセルを踏み込めば、それなりのエンジン音が侵入してきますが、それもうるさいという感じはありません。おそらく車内の遮音がしっかり効いているのでしょう。

 

開発者によると、サイドのガラス厚を前後ともに通常より厚くしてあるとのこと。こういった積み重ねがこの静粛性をもたらしているのでしょうね。

 

ハンドリングもなかなか良好です。試乗コースのコーナリングでもリニアに反応してくれて、思い通りのコースをトレースしてくれます。ブレーキを踏んでアクセルを踏み込むコーナーからの立ち上がりもスムーズで、それほどパワー不足は感じません。それどころか、元気かつ軽快な走りを感じ取れました。サーキットを走ると、一般道に比べてパワー不足を感じやすいのですが、それもほとんど感じることはありません。

 

また、2WD車はリアサスがトーションビームなのですが、嫌な突き上げ感はほとんどなかったのも好印象です。

 

4WDならではの駆動力が安心の走りを生み出す

続いて4WD車の試乗です。この4WDはプロペラシャフトで駆動力を伝えるタイプで、これにより車重は2WD比で60kgほど増えます。とはいえ、それでも1130kgですから、これはスズキならではの軽量設計が活かされている結果とも言えるでしょう。ただ、最高出力は73kW/6000rpmと2WD車に比べて若干低く、最大トルクも134Nm/4400rpmとこれも低くなっています。おそらく4WD化に伴う排気系の取り回しなどで低くなったと思われます。

 

ただし、それが走りに影響が出ているかといえばそうではなく、むしろ駆動力が増えたことで安心感のある走りを楽しめます。特にコーナリングでは路面にピターッ! と車輪が吸い付けられるように駆け抜けていく。この感覚が2WDとの大きな違いですね。2WDにもあるスポーツモードに切り替えてみるとさらに効果的で、キックダウンのレスポンスが向上。そのため、コーナリングを繰り返すうちにどんどんペースが上がっていっちゃうんですね。「ホント、サーキットで良かった」なんて思っちゃいました。

↑4つの車輪がしっかりと路面を捕まえ、連続するコーナリングでも安定した走りをもたらす4WD

 

また、4WDには急な下り坂などで役立つヒルディセントコントロールを装備しているのも見逃せません。

 

それと本来なら4WDにありがちなプロペラシャフトによるノイズも発生するところなのですが、車体の強度を高める部材の最適化やマウント防振ゴムの採用、さらにはプロペラシャフトにダイナミックダンパーを装着することで、驚くほど静粛かつスムーズさを生み出しています。この4WDはかなりオススメですね。あとは価格と燃費のスペックが気になりますが、今秋の正式発表が楽しみです。

SPEC【2WD】●全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm●車両重量:1070kg●パワーユニット:直列4気筒エンジン●最高出力:74kW/6000rpm●最大トルク:135Nm/4400rpm

SPEC【4WD】●全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm●車両重量:1130kg●パワーユニット:直列4気筒エンジン●最高出力:73kW/6000rpm●最大トルク:134Nm/4400rpm

 

撮影/茂呂幸正

 

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車内エンタメ空間がグレードアップする! “つながるナビ”に進化したパナソニック「ストラーダ」の楽しさをレポート

パナソニック オートモーティブシステムズ(以下:パナソニック)は9月12日、ネットワーク機能を強化してYouTubeやAmazonPrime Videoなど7つの「ネット動画」を楽しめるようにしたカーナビステーション「ストラーダ」の最新モデル計6機種を10月上旬から11月下旬にかけて順次発売します。

↑「CN-F1X10C1D」はストラーダのフラッグシップモデル。ディスプレイ部には有機ELを唯一採用する

 

ラインナップは大画面モデルを含め全6機種

↑パナソニック「ストラーダ」新製品発表会

 

新製品のうちFシリーズとなるフローティング大画面モデルは、10V型有機EL/HD「CN-F1X10C1D」、9V型液晶/HD「CN-F1D9C1D」の2タイプをラインナップ。価格はオープンプライスで、店頭想定価格は前者が25万円前後(税込)、後者が16万円前後(税込)で、発売は2024年11月下旬を予定しています。ちなみに10V型、9V型は540車種以上に装着可能。

 

7V型液晶を搭載するスタンダードモデルとなるCAシリーズは、ワイド2DIN対応の「CN-CA01WD」と2DIN対応の「CN-CA01D」の2タイプ。店頭想定価格はともに12万円前後(税込)。また、特定販路向けとしてワイド2DIN対応の「CN-CE01WD」と、2DIN対応の「CN-CE01D」を用意し、ともに店頭予想価格は10万円前後(税込)。発売はいずれも2024年10月を予定しています。

↑パナソニック「ストラーダ」新製品のラインナップ。右から「CN-F1X10C1D」「CN-F1D9C1D」「CN-CA01WD」

 

ネットワーク機能を活かした3つの機能

パナソニックは、新製品のコンセプトについて「インターネットにつながることで、より充実したコンテンツをナビの大画面で楽しめ、それを簡単かつ便利にすることで、 車室空間をより快適で、安心できる心地よいものにしていく」と説明。今回発表した6モデル共通する特徴として、「ネット動画サービスへの対応」「Apple CarPlay、Android Autoへのワイヤレス接続対応」「最新の地図コンテンツへの対応」の3つを挙げています。

 

まず「ネット動画サービスへの対応」ですが、これはWi-Fi接続によりYouTubeやAmazon PrimeVideo、TVer、U-NEXT、TELASA、NBA-Rakuten、SPOOXの7つの動画配信サービスを楽しめるもので、これはWebブラウザ機能の搭載により可能となりました。スマートフォンが普及した昨今、ストリーミングで動画視聴する人が急増していることが機能搭載の背景にあるとのことでした。

↑新型ストラーダでは、YouTubeやAmazon PrimeVideo、TVer、U-NEXT、TELASA、NBA-Rakuten、SPOOXの7つの動画配信サービスが楽しめる

 

一方で、ストラーダは従来機より自宅のレコーダーに録画した動画が見られる「レコーダーリンク」機能も搭載しています。お気に入りの番組を出先でいつでも視聴できるのはもちろん、異なるエリアであっても自宅エリアの地デジ放送が楽しめ、さらにレコーダー経由でBS放送を楽しむことも可能となるのです。

 

また、HDMI接続にも対応したことで、スマホやタブレットのコンテンツを展開することができるのも大きなメリット。これらの対応により多彩なコンテンツがストラーダの画面上で楽しめるので、車内での楽しさも高まることは間違いないでしょう。

↑新型ストラーダでブラウザを活用し、パナソニックのサイトへアクセスしてみた

 

Apple CarPlay、Android Autoへのワイヤレス接続対応

インターネットへの接続によってもたらされた2つめの「Apple CarPlay、Android Autoへのワイヤレス接続対応」は、読んで字のごとし、ケーブルレスでスマホのコンテンツがストラーダ上で楽しめるようになったことです。

↑「Apple CarPlay、Android Autoのワイヤレス接続対応」。いつも使い慣れたスマホの表示画面で操作できるから安心

 

さらに、ゼンリンが運営するサーバーにある最新スポットや、グルメ情報のオンライン検索に対応していることも見逃せません。これにより、地図データに含まれていない最新の情報までもサポート可能となり、その使い勝手は大幅に高まったと言えるでしょう。

↑ネットで目的地を検索できる「オンライン名称検索」

 

なお、「Apple CarPlay」「Android Auto」のワイヤレス接続や、最新スポットやグルメ情報のオンライン検索については、Fシリーズは実装済みとなりますが、CAシリーズとCEシリーズは、2024年12月末までに提供されるソフトウェアのアップデートにより実現する予定となっています。

 

そして、ネット接続によって実現される3つめが、最長3年間の無料地図更新サービスをオンライン上で対応可能としたことです。更新操作もディスプレイ上のアイコンにタッチするだけの「ワンタッチ地図更新」としており、これまで以上に手軽に地図データのアップデートが行えることになりました。

↑最新の地図情報に更新できる「ワンタッチ地図更新」

 

パナソニックによれば、「地図の自動更新はニーズが高いものの、地図が古くなっても更新を行わないユーザーが70%を超えている」と説明します。その要因として推定されるのが「更新が面倒と感じていたり、更新のコストが高い」こと。そこで、新モデルではこれをワンタッチで行えるよう使い勝手を高め、最長3年間にわたって無料でアップデートできるとしたのです。

↑ちなみに、ディスプレイ背後には充電用のUSB端子(15W3A)を装備。この部分をカバーするフタは仕様変更される予定

 

ディスクドライブを非搭載とする一方で音質を大幅アップ

一方で、今回発表された6機種はすべてディスクドライブが非搭載となりました。Fシリーズのトップモデルで可能だったブルーレイディスクの再生もできません。個人的にはこれが少し残念ではありますが、その代わりに新モデルではそのスペースを有効活用して基板から新設計することで、オーディオの音質アップを図っているのです。

 

そのポイントが「ストラーダサウンドエンジン」の搭載です。サンプリング周波数192kHzに対応したデジタルアンプを新採用し、従来のアナログアンプに比べてSN比やセパレーション性能を大幅に向上。音の解像度、広がりを実現する新たなパーツの選定と、パーツのポテンシャルを最大限に引き出す設定とすることで、低音の迫力と広がりのあるサウンドを実現しているそうです。なお、192kHzでのサンプリングはSDカードとUSBメモリーの音源が対応しています。

 

なお、フローティング機構を採用する「Fシリーズ」は、従来からの大画面だけでなく、見やすいアングルに調整できる高いセットアップの自由度を引き継いでいます。その対応車種はなんと540車種以上にまで拡大。より幅広いクルマでストラーダの大画面が楽しめるようになりました。ネットワークへの接続もテザリングを基本として対応することで、より身近にストリーミング動画が楽しめます。市販カーナビでは数少ない「Apple CarPlay」「Android Auto」のワイヤレス接続の実現も大きな魅力となるでしょう。

↑発表会に登壇したパナソニック オートモーティブシステムズ インフォテイメントシステムズ事業部 ビジネスユニット長・渡辺智雄氏(右)と、同事業部市販事業総括・渡邊 洋氏(左)

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

ドライブを快適に!人気を集めている4つのスマホ向けカーナビアプリ

長いことドライブに欠かせなかったカーナビゲーションが、スマートフォンで使うカーナビ用アプリへとシフトされつつあります。背景には車載インフォテイメントシステムの急速な普及も理由の一つですが、なによりもアプリが無料か、あるいは身近な価格で使えることが人気を押し上げているのは間違いありません。今回は、人気を集めている4つのアプリをご紹介します。

 

【その1】累計60万ダウンロード突破のパイオニア「COCCHi」

パイオニアが提供するスマホ向けカーナビアプリが「COCCHi(コッチ)」です。2023年9月にサービスが始まり1周年を迎えたナビ用アプリですが、つい先日ダウンロード数60万件を突破しました。その魅力はなんといっても、パイオニアが車載ナビで蓄積してきたノウハウがギッシリと詰まっているからと言えます。

 

Android版/iOS版が用意され、利用プランは月額350円の「基本プラン」と、機能を制限した「無料プラン」の2種類が用意されています。無料で使えるカーナビ用アプリが数多くある中で、あえてこの時期に有料プランをメインとして誕生したのは、それだけパイオニアがこのアプリに自信を持っている証なのかもしれません。

 

カーナビを使うにあたって重要なのは、行きたい場所が簡単に探せて、目的地までのルートをわかりやすく案内することです。そこでCOCCHiでは、目的地検索をフリーワードやジャンル、住所などが使えるようにしています。フリーワードは施設名や電話番号、住所検索に対応し、音声での入力も実現しており、これにより、運転中であっても簡単に行きたいところが探せるのです。

 

しかも、ありがたいことにCOCCHiでは、検索能力で敵なし!とまで言われているGoogleマップとの連携も果たしているのです。なので、COCCHiで目的地が探せないようなマイナーな施設でも、行きたい場所が簡単に探し出せるというわけです。

 

ルート案内中で驚くのは、そのきめ細かな音声ガイドです。たとえば、単純に距離を案内するだけでなく、次の交差点まであと何分ぐらい走るのか、何番目の車線を走ればいいかなどをタイミング良く的確に案内してくれます。併走道路の切り替え機能も備えていて、高低差を認識できないカーナビ用アプリにとってこの装備は重宝するのは間違いありません。音声案内には電子合成音を使っていますが、有料版では肉声に近い音を表現できる「ニューラル音声」としていることで、とても聞き取りやすいのも見逃せないですね。

 

そして、何よりも使いやすさを感じるのが「お助け」メニューです。このボタンを押すと、周辺にある駐車場やトイレ施設をワンタッチで検索でき、ほかにも渋滞情報の確認や並走道路への切り替えなどのアシスト機能が利用できるのです。アプリに使い慣れない人でも簡単に行きたい場所が探し出せるのがこの機能なのです。

 

COCCHiは冒頭でも述べたように有料版と無料版があります。有料版は最初の1か月を無料としているので、まずは有料版で登録をし、1か月間じっくりと使ってみるのがオススメ。その段階で無料版との違いを判断してみてもいいと思います。ただし、ディスプレイオーディオでの利用を前提とするなら有料版のみの対応ですのでご注意ください。

https://jpn.pioneer/ja/cocchi/

 

【その2】地図データの充実ぶりは群を抜く「Googleマップ」

皆さんがよくご存知のカーナビ用アプリといえば、「Googleマップ」が真っ先に思い起こされることでしょう。Googleでアカウントを取得すれば、誰でも無料で使え、日本全国にとどまらず、海外へ出かけてもそのまま使えるのが他のカーナビ用アプリにはマネができないところでもあります。

 

地図は広域から詳細マップまでフリースケールで対応し、詳細マップでは建物を高さデータに基づいて地図上に表示します。河川や公園にも色分けして再現するため、若干地味ではありますが、これによっておおよその街並みが地図上から把握できるのです。また、航空(あるいは衛星)写真やストリートマップなど多彩な地図表示機能をサポートしており、まさに地図データの充実ぶりは群を抜く存在であると言えるでしょう。

 

そして、Googleマップの実力の高さを見せつけられるのが、優れた目的地の検索能力です。うろ覚えの施設名を入力しただけで、施設名を推測して候補をリストアップし、しかも思いついたキーワードに対しても驚くほど正確に結果を出してくれるのです。もちろん、音声での入力にも対応しています。先日も、戦時中に米軍の爆撃機「B29」が墜落し、そのタイヤが残っている場所を検索するため、「B29のタイヤ」と入力すると、それだけでその場所を地図上に表示してくれたのです。こんな検索で結果を出すのは他のアプリではあり得ないことです。

 

しかも、ここで検索した結果はメールで共有したり、一部のカーナビ用アプリでもその座標を転送して目的地として設定可能となるのです。カーナビを使って戸惑うのは、目的地が思うように探せないことでした。Googleマップならそんなことは一切ないのです。

 

ルート案内中は、車載ナビのような交差点拡大図こそ用意していませんが、分岐点に近づけばルート上に進行方向を示す矢印を重ねて表示。交差点名は音声でも読み上げるし、車線ガイドも表示するので、よほど複雑な交差点でもなければ道に迷うことはそう多くはないと思います。また、並行する道路の切り替え機能も備えられ、地図上ではリアルタイムの速度も表示されるようになりました。

 

そして、今回驚いたのが、GPS信号を受信できないトンネル内の分岐で、しっかりと追従してみせたことです。この時、他のアプリも検証しましたが、いずれも分岐には対応できず。トンネルに入ってフリーズしたものもあれば、動いたとしても入口での車速をそのまま反映しただけものとなっていました。こんなところにもGoogleマップの最先端ぶりを見た気がしました。

https://www.google.co.jp/maps/

 

【その3】ルート案内の安心度が高い「Yahoo!カーナビ」

日本発のカーナビ用アプリとして、高い人気を獲得しているのが「Yahoo!カーナビ」です。Googleマップと同様、Yahoo!でアカウント登録をすれば誰でも無料で使え、渋滞情報には定番のVICS情報が使われています。

 

目的地を探すときは、検索ウインドウに直接入力するか、右にあるマイクをタップして音声入力すれば、これで候補リストが一覧表示されます。そのリストの中から行きたい場所を選べばOK。特に周辺の施設を探す時も音声入力はとても便利です。車載カーナビのように「周辺検索」を用意していないので、この機能を使うことがむしろオススメです。

 

検索キーワードは、頭に“近くの”というワードを付けて、「近くの×××」と読み上げれば、それで対象施設が近い順にリスト表示されます。各項目をタップすると詳細な情報が表示されますから、そこが気に入らなければ前へ戻って別の施設を選ぶこともできます。案内ルートは広い道を優先して案内しており、再探索でもその傾向は変わりません。その意味でも使っての安心度はとても高いと言えます。ルート候補もいまは最大5ルートまで同時表示できるようになり、少し前のバージョンであったような一般道を優先してルートを案内することはなくなりました。

 

ルート案内中は分岐点までを距離で示し、交差点名を呼び上げながら車線ガイドを伴いつつ矢印で進行方向を表示します。さらに政令指定都市では、分岐点に近づくと周辺をリアルに見せるCGによって進行方向を案内し、道路標識に基づいた速度規制や一時停止といった案内も地図上で行います。初めてのエリアに行った時は重宝するのは間違いありません。高速道と一般道が近いところでは、ワンタッチで切り替えることも可能です。

 

実はYahoo!カーナビが使っている地図データの管理は住友電工が行っていますが、データベースはマップボックスのプラットフォームにゼンリン製を埋め込んだもの。ゼンリンのデータには道幅情報も含まれており、このあたりが使いやすいルート案内となる秘密なのかもしれません。また、地図上でいつ雨が降るのか、いつ止むのか、降水量などがひと目で確認できる「雨雲レーダー」機能もあります。

 

そして、Yahoo!カーナビには有料プラン「Yahoo!カーナビプラス」(月額250円)も用意されています。これを契約すると、iOS版のみリアルタイムの取り締まり情報「スピード注意情報プラス」が利用可能となり、このサービスではオービスだけでなく、有人による取り締まりも対象となっているとのこと。これはYahoo!カーナビならではのサービスと言えるでしょう。

https://carnavi.yahoo.co.jp/promo/

 

【その4】トヨタが開発したカーナビアプリ「moviLink」

「moviLink」はトヨタが開発したアプリで、2021年3月にサービスを開始。トヨタの標準的な車載カーナビと同等の機能を持ちながら、誰でも無料で使えるカーナビ用アプリです。トヨタは近年、ディスプレイオーディオの標準搭載を進めていますが、このアプリを使うことで手軽にカーナビ機能が利用できるというわけです。しかも、その対象をトヨタ車ユーザー以外にも無料で解放しているから、これは“太っ腹”というほかはありませんね。

 

トヨタ発のアプリだけに、その使い心地はトヨタの純正カーナビのクオリティを実感します。交差点名を読み上げる音声ガイドはまんま同じで、一般道での側道案内や高速道路での合流案内も行うなど、その案内機能はかなりの充実ぶり。中でも都市高速入口や高速道路での分岐点ではイラストを使って詳細にガイドするなど、進行方向が一目で把握しやすくなっています。何よりも音声がとても聞きやすいため、状況把握がしやすいのです。

 

ただ、データが重くなることを避けるためか、交差点拡大図をすべての交差点で表示することはありません。それでもオートズーム機能を使い、分岐点に近づくに従い、徐々に地図を自動的にズームアップして、周辺をわかりやすくガイド。信号機の存在も地図上で案内し、交差点名も一部で読み上げられていました。

 

ルート案内中で便利と思えるのは、一般道や高速道において複数の交差点や施設のリストを表示することです。車線ガイドや交差点名の表示が含まれているので、これを使うことで分岐点の手前から心構えができ、初めての道路でも安心というわけです。ただし、ディスプレイオーディオではこの表示は行われません。

 

また、探索したルートは「お出かけプラン」としてあらかじめ登録しておくことも可能です。出掛ける前にプランを経由地を含めて立てておき、当日はそれを展開してすぐに出発できるのは便利ですね。moviLinkに対応するトヨタ純正カーナビを使っていれば、アカウントの共通化でこれを自動的に反映させることも可能です。

 

一方で、moviLinkは目的地を設定する時は音声での検索にも対応していますが、曖昧な入力やマイナーな施設には思うように探し出せないこともあります。そんな時はGoogleマップで検索して、その位置情報をmoviLinkに転送して使うことをおすすめします。また、同様にスマホ向けアプリ「NaviCon」との連携をすることで、好みのアプリで探した位置情報の転送も可能であることも見逃せません。

 

交通情報はVICSを基本にトヨタが独自に収集した「Tプローブコミュニケーション交通情報」を加えたもの。日本の国道や都道県道に限った総延長距離は約40万kmありますが、そのほとんどをカバーしているということです。このあたりも心強いですね。

https://toyotaconnected.co.jp/movilink/

 

プレミアムなエンジンオイル「ENEOS X PRIME」は何が違う? 自動車ジャーナリスト・河口まなぶが走って実感!

提供:ENEOS株式会社

クルマは好きだけど、エンジンオイルの性能はあまり気にしたことはない……そんなあなたは必見! 今回は、30年以上のキャリアを誇る自動車ジャーナリスト・河口まなぶさんによる国内最大級の自動車専門YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」と、ENEOSのコラボ動画をダイジェストでお届け!

噂のプレミアムなエンジンオイル「ENEOS X PRIME」(エネオス エックス プライム)で、どこまでクルマの走りは変わるのか……? 河口さんとともにチェックしていきます!

↑今回は河口まなぶさんとコラボ!

 

【動画本編はコチラ】

https://youtu.be/EHlrnXmov-M

 

エネゴリくんが手にしていたのはあのプレミアムオイル!

ENEOSの馬事公苑サービスステーションに、颯爽とスバル「BRZ」でやってきた河口さん。待っていたのはENEOSのキャラクター・エネゴリくんです。

以前、ENEOSがサービスを提供する「新車のサブスク」を紹介した河口さん。そのお礼として、エネゴリくんが河口さんに手渡したのが「ENEOS X PRIME」のオイル缶です。

 

「エネゴリくんから(ENEOS X PRIMEを)説明いただけるんですか?」と河口さんが聞いたところ、説明できないエネゴリくん、背後に向かって誰かを呼びましたよ! 「こんにちは!」とひとりの男性が登場。彼こそが「ENEOS X PRIME」の技術開発担当者・松井能利之さんです。

 

「ENEOS X PRIME」はどこがスゴイのか?

さっそくプレミアムなエンジンオイル「ENEOS X PRIME」はどこがスゴイのか、松井さんに聞いてみましょう!

 

「(一般的にエンジンオイルで重視される)加速性や省燃費性、それに加えて、当社で独自に評価基準を設定した乗り心地性を極めて、商品開発しております。実際に社内で乗り比べを行いまして、アンケートの結果においても明らかな差が確認できました。

 

また、データの面でもオイルの摩擦抵抗を極限まで低下させることによって、エンジンから発生する振動やノイズなどが下がっている、という確認も取れています(※ENEOS独自調べ)」(松井さん)

さらには省燃費性は軽自動車で最大3%の燃費向上、さらに加速性能も最大5%まで向上するとのこと(※ENEOS独自調べ)。ニコニコと楽しそうに聞いていた河口さん。しかし、質問コーナーでは、河口さんが松井さんに根本的な疑問をぶつけます。

 

「省燃費と加速と乗り心地。欲張りな性能で、本当にそんなことがすべて実現できるのか疑問に思うところなんですけど、そのあたりどうですか?」

これにひるまず、松井さんは自信たっぷりの返答!

 

「ご指摘の通り、この3つの性能をバランスよく成立させるのはかなり技術的にも難しいところがありました。ブレイクスルーするために自動車メーカー様との開発で培った技術をすべてフィードバックしております。開発チームの知見を活かし合った努力の結晶のような製品となっております」

 

松井さんによると、エンジンオイルでは特に「潤滑性能」「清浄性能」「冷却性能」、サビを抑える「防錆性能」、出力ロスを減らす「密封性能」の5つの要素が重視されているとのこと。「ENEOS X PRIME」はその5つを十分に満たしつつ、さらに「省燃費性」「加速性」「乗り心地性」の3つの性能をプラスしたフラッグシップ製品だと説明してくれました。「ちゃんと付加価値の乗った商品なんですね」と感心する河口さん。

 

スバル「BRZ」のエンジンオイルを交換してみるとどうなる!?

「ENEOS X PRIME」のすごさがわかったところで、サービスステーションの整備士さんにエンジンオイルを交換してもらうことに。その最中、河口さんはエンジンオイルを交換する意義とともに、その楽しさについても語ってくれました。

「(エンジンオイルを)交換したばかりのクルマのフィーリングを楽しむという部分もありまして。クルマが好きであればあるほどこういったことをすることによって、よりクルマと(自分)の関係性が上がってくるし、楽しみも増えるかなと」(河口さん)

 

さらに動画では、抜いたオイルと新しいオイルを透明なプラコップに入れて色を比較。そこには明らかな違いが!? こちらはぜひとも動画で確認してみてください。

 

エンジンオイルを一新して街へ飛び出す!

いよいよ実際に街に繰り出して試乗スタートです。果たして、乗り心地はどこまで変わるのでしょうか?

「さっそくエンジンをスタートしたいと思います……はい、今アイドリングの状態でございますけれども、ちょっと軽やかな感じがあるんじゃないかな」

 

エネゴリくんに見送られて出発する河口さん。動き出しから手応えを感じているご様子。「全般的に軽いわ~」と走りの滑らかさに満足げ。

そして、空いている昼の環八に出て加速を試したところ、想像を超える驚きが……! 「これは違いますね! 気持ちよく回転が上がっていくところがあって」。文字では伝えにくいですが、確かにスーッとスピードが上がっていく滑らかさと、河口さんの高揚感が動画から伝わってきます。

環八を通り、街を一周した河口さん。「ENEOS X PRIME」を実際に使った感想とその評価とは……? 詳しくはぜひ動画本編をチェックしてみてください!

 

【動画本編はコチラ】

https://youtu.be/EHlrnXmov-M

 

【キャンペーン情報】

河口まなぶ氏コラボ記念!

ENEOS X PRIMEオイル交換で限定グッズが当たる!キャンペーン

期間:2024年10月1日(火)~2024年11月30日(土)

対象商品:ENEOS X PRIME全8商品(0Wー8、0Wー16、0Wー20、5Wー30、5Wー40、0Wー50、ATフルード、CVTフルード)

※ENEOS Xシリーズは対象外となります。

抽選条件:期間中にENEOS X PRIMEをモバイルEneKey決済にて購入されたお客様

応募方法:自動エントリー(お客様からの申し込み不要)

当選商品:ENEOS X PRIMEロゴ入りミニブランケット抽選700名様

キャンペーンについて詳しくはこちらをチェック!

当選者には、12月中にアプリのお知らせ(あなたへ)欄に通知を行う予定です。

・一部対象外のサービスステーションがございます。

・応募は1伝票で1口とさせていただきます。

 

発売1か月で1万3000台の受注を記録した、ホンダのメガヒットSUVをチェック!

GetNaviが太鼓判を押す、2024年上半期ベストヒット! 今回は発売わずか1か月で1万3000台を受注したメガヒットSUVを紹介する。SUVらしい力強いスタイリングに加え、軽自動車を圧倒する低価格が若い層のニーズをガッチリつかみ、3月の発売以来快進撃を続けるホンダWR-V。好調なコンパクトSUVのなかでも特に注目度の高い同車の魅力をチェックした。

※こちらは「GetNavi」2024年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します!

モータージャーナリスト

岡本幸一郎さん

新型車の情報ほぼすべてを網羅し、これまで試乗したクルマは1万台を優に超える。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

圧倒的コスパを誇る「みんなのSUV」登場

ホンダ
WR-V
209万8800〜248万9300円

ホンダがコンパクトクラスのクロスオーバーSUVをより増強するために送り込んだインド生産のニューモデル。すでにヴェゼルという定番の人気車があるからこそ、あえてひと味違った個性が与えられた。「X」「Z」「Z+」の3グレード体系。

SPEC【Z+】●全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm●車両重量:1230㎏●パワーユニット:1496cc直列4DOHC●最高出力:118PS/6600rpm●最大トルク●142Nm/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L

 

割り切って低価格を実現。若々しいイメージが持ち味

3月に登場するや、わずか1か月で月販目標の4倍超となる累計約1万3000台を受注。その後も順調に受注を伸ばし、5月末時点で約1万5000台に達した。購入層は、軽自動車やコンパクトカー、SUV、ミニバンなどからの乗り替えるという人が多く、幅広い年代にわたるという。

人気の要因は、なによりも価格の安さにある。ホンダには同じクラスにヴェゼルというヒットモデルもあるが、価格帯が約265万円〜であるのに対し、WR-Vは上級グレードでも250万円未満と極めてリーズナブルだ。なぜそんな低価格が実現できたのか、そこには納得の理由がある。ハイブリッドや4WDをラインナップせず、自然吸気の1.5Lガソリンエンジンを積んだFFモデルのみと割り切り、装備類も極力シンプルな設定となっている。

しかも、日本とタイで共同開発することで、企画から商品化までの時間の短縮を図るとともに、開発コストの低減に成功した。さらには、アジア圏向け車両をインドでまとめて生産し、日本でもそれを輸入販売する。これらにより軽自動車もビックリの低価格を実現したのが特徴だ。
もちろんいくら安くても、クルマに魅力がなければ売れるわけがないが、WR-Vは商品性も高い。ユーザーからは、安心と信頼を感じさせるエクステリアデザインをはじめ、見晴らしが良く前方の距離感のつかみやすい運転視界や、クラストップレベルの荷室空間を実現したパッケージなどが好評という。また、元気がいいエンジンとステップアップシフトするCVTの組み合わせによる快活な走りや、後席も含め快適な乗り心地も強みだ。目新しさこそあまりないものの、安くて広くて見た目も走りも良く、若々しいイメージを感じさせる。

「みんなそろって、最高かよ。」のキャッチフレーズのとおり、親しい仲間と荷物を満載して出かける姿がよく似合いそうだ。

 

↑広さを訴求するTVCMのとおり荷室はかなり広い。センタータンクレイアウトではないが、隅々まで使えるよう配慮されている

 

↑車体は小さくても車内は広く、後席も十分な居住性を確保。このクラスとしては珍しく後席向けのエアコン送風口も設定されている

 

↑1.5Lのi-VTECエンジンの音をあえて車内でよく聞こえるように設計。インドでは「ホンダサウンド」として好評だという

 

売れ筋コンパクトSUV SPEC比較

日産 キックス(e-POWER/2WD)

<評価>

ハイブリッドや4WDも選択可能。後席は広くないが荷室は広い。このクラスでは珍しくパワーシートやパワーテールゲートの設定もあり。

 

トヨタ ヤリス クロス(ガソリン/2WD)

<評価>

ハイブリッドや4WDも選択可能。後席は広くないが荷室は広い。このクラスでは珍しくパワーシートやパワーテールゲートの設定もあり。

ホンダ WR-V(ガソリン/2WD)

<評価>

もっともSUVらしい雰囲気を持つ。後席や荷室の広さはトップレベルで、走りも快活。選択肢は限られるがコスパの高さが光る。

 

クルマ好きの興味を集めるスズキ スイフト! スポーティさを残した”普通のスイフト”の魅力に迫る

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、新たなデザインでスポーティ感が薄まったとも言われる新型スイフトを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」2024年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

PROFILE

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

安ド「殿! 今回はスズキのスイフトです!」
永福「そうか」
安ド「スイフトと言えば、ターボエンジンを積んだスイフトスポーツが大人気ですが、今回は普通のスイフトです!」
永福「うむ。先代モデルでは、スイフトスポーツの販売比率が半分近くを占め、普通のスイフトは影が薄かった」
安ド「そうだったんですか!」
永福「そこで今回スズキは、普通のスイフトをもっと売ろうということで、力が入っている」
安ド「デザインも一般ウケするよう、あまりスポーティに振らなかったみたいですね」
永福「らしいな」
安ド「先代モデルのデザインのほうが好きっていう人が多いみたいですが、新型はボンネットの特異な形状が印象的で、カッコいいと思います!」
永福「実物を見ると、お魚の顔みたいで親しみが沸くな」
安ド「スイフトスポーツがどんなデザインになるか楽しみです!」
永福「結局クルマ好きの興味は、スイフトスポーツに集中しておるわけだ」
安ド「はい。どうしてもそうなります!」
永福「ところがこの普通のスイフトが、猛烈にいいクルマでビックリなのだ」
安ド「そうなんですか!?」
永福「外観もインテリアも地味でパッとしたところはないが、ヘタすると、スポーツはいらないと思うくらい走りがイイ!」
安ド「僕も最初、新しい3気筒エンジンはあんまりパワーがないし、全体的にいまひとつかなと思ったんですが、スポーティに走るとかなりいいことに気づきました!」
永福「うむ。新型は先代の4気筒エンジンより馬力はダウンしているが、実用トルクは増しているし、CVT、つまりオートマのセッティングが大変良くなっているので、先代よりむしろ軽快に走る。しかも驚くほど静かだ」
安ド「乗り心地はどうでしょう」
永福「やや硬めだが、古き良きヨーロッパのコンパクトカーのようにビシッと安定しておる」
安ド「そのあたりが殿の高評価の理由ですね!」
永福「クルマ好きなので、どうしても走りの良いクルマの評価が高くなってしまうな」
安ド「インパネはクセがなくて少し退屈な印象ですが、ディスプレイや安全装備など最新装備が満載になって、旧型スイフトから乗り換えるオーナーは、大満足じゃないでしょうか!」
永福「今回の試乗車は最上級グレードだけに、最新装備がテンコ盛り。これならトヨタ車にも負けまい。ただ値段がだいぶ上がっている。もはや値上げは当たり前の世の中だが、先代モデルの登場時に比べると、40万円くらい高くなった印象だ」
安ド「ゲゲッ! 貧乏な僕にはキツイです!」

 

【今月のGODカーは】SUZUKI SWIFT

スズキ/スイフト

SPEC【HYBRID MZ・2WD・CVT】●全長×全幅×全高:3860×1695×1500mm●車両重量:950kg●パワーユニット:1197cc直列3気筒エンジン+モーター●エンジン最高出力:82PS(60kW)/5700rpm●エンジン最大トルク:108Nm/4500rpm●WLTCモード燃費:24.5km/L

172万7000円〜233万2000円

 

【その①】クラシックな趣きを感じる、ボンネット

ボンネットフードが盛り上がっていて、まるでクラシックカーのようなレトロな雰囲気があります。また、すき間の大きいボンネットの境目ラインは、そのままボディサイドにつながり、ボディを一周していて、ファニーな雰囲気が演出されています。

 

【その②】“マイルド”たる所以はここに。マイルドハイブリッド

新型エンジンが搭載されていて、「HYBRID」グレードでは、ISG(発電機)が組み合わされてさらに低燃費化が図られています。カタログ燃費値は約1㎞/ℓしか変わりませんが、ハイブリッドのネームバリューは強みになります。

 

【その③】ドライバー重視の姿勢が見て取れる、インパネ

インテリアは先代モデルよりデザインの印象が弱くなりましたが、先進的な雰囲気にまとめられています。なお、よく見ると中央部分が若干ながら運転手側に傾いており、このあたりはいかにもスイフトらしいスポーティ感が表現されています。

 

【その④】スズキはスポーティさを忘れない。CVT

軽量化された新開発CVTがエンジンの高効率化を助けて、燃費性能だけでなく静粛性も高めています。ハイブリッドには5速MTも設定されていますが、これはスズキ初。ニッチなカーマニアにも優しいスイフトです。

 

【その⑤】安全性はクラストップレベルに! 衝突被害軽減ブレーキ

単眼カメラとミリ波レーダーを備えた「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」を搭載しています。従来型より検知エリアが拡大されて自転車や自動二輪車も検知対象となるなど、一気にセーフティレベルが上がりました。

 

【その⑥】特徴だった部分をあえて消す、Cピラー

先代モデルまでデザインのポイントになっていたCピラー(リアウインドウとサイドウインドウ間の柱)が、新型では完全にブラックアウトされています。スポーティ感は薄れましたが、一般向けに間口を広げた感じです。

 

【その⑦】カメラはここから見ています。モニタリングシステム

ディスプレイの右上にあるマルは、「ドライバーモニタリングシステム」のカメラです。運転者の顔をチェックして、眠気や脇見などを確認したら警告してくれます。スズキ初にして新型スイフトのみ搭載する装備です。

 

【その⑧】ブタのようにも見えるけど好印象な表情。フロントグリル

フロントマスク中央の丸型グリルのせいで、なんだか蚊取り線香を炊く容器のブタのようにも見えます。しかし見慣れてくるとこれが愛嬌のある表情に思えてきて好印象に。メッキパーツはちょっとチープな感じもします。

 

【その⑨】先進性が高められてもここだけはアナログで! 2眼メーター

先進的なデザインと装備でまとめられたインテリアですが、メーターはデジタルディスプレイではなく、昔からあるアナログなメーターでした。やはりアクセルに合わせて針が動く感じがスポーティでいいですね。

 

【これぞ感動の細部だ!】しなやかかつ軽やかにスポーティさは健在!足まわり

プラットフォーム、つまりボディの骨格は先代モデルと同じものが使われていますが、スタビライザーの仕様やストローク量など細かな改良が施されています。運転してみると、乗り心地も悪くないですし、ボディ剛性についても強度が高められたとのことで、操縦安定性が高く、コーナーを軽やかに走り抜けることができます。

フリード、クラウン エステート、ジムニー5ドア、スイスポ――24年下半期のクルマの勝者はどれだ?

前回は「2024年上半期ベストヒット」と題して、クルマのトレンドやヒット車種を紹介しましたが、今回はその下半期版として、「次に何がくるのか?」というネクストトレンドを3つのキーワードでまとめました! クルマ編は、今回もモータージャーナリストの岡本幸一郎さんに解説をしていただいています。

 

キーワード01【フリード】

ホンダのコンパクトミニバン「フリード」の新型モデル(3代目)が6月に発売され、快進撃を続けています。岡本さんも大本命モデルと太鼓判!

 

「ティザーサイトが立ち上がって間もない頃、あるイベントでフリードがちょっと展示されたんですね。そうしたら長蛇の列ですよ! スーパーカーとかじゃないのに、少しでも早く見たい人がこんなに大勢いるんだと驚きました」(岡本さん)

 

そもそもフリードとはどのような車種なのでしょうか?

 

「ちょうどいい、に尽きるかなと思います。取り回しのいいコンパクトなサイズで、だけど室内は広くて3列目までしっかり座れる。絶妙なバランスですね」(岡本さん)

 

今回のモデルチェンジの一番の変更点はどこでしょう?

 

「今まで、結構リコールされた『i-DCD』というハイブリッドシステムを最後まで積んでいたのがフリードだったんですね。今回、モデルチェンジで最新の『e:HEV』という、非常に効率も性能も高いシステムに置き換えられています。なので走りが見違えると思います」(岡本さん)

 

キーワード02【プレミアム価格帯のワゴンに異変?】

プレミアム価格帯、特に輸入車のメルセデスベンツ、BMW、アウディが強いワゴンの領域で異変が起こるのではないか、と岡本さん。

 

「まず、ワゴンってすっかり減っちゃったんですよね。日本も昔は各メーカーがワゴンをラインナップしてたと思うんですけど、今や数えるほどしかない。アメリカのメーカーに至っては一台もありません。みんなSUVになった。そんな中でも比較的健闘しているのはドイツのメーカーのワゴンです」(岡本さん)

 

しかし、岡本さんはトヨタ「クラウン エステート」(2024年発売予定)の復活に注目。「エステート」は「クラウン」のステーションワゴンです。

 

「クラウンはもともとワゴンがあったんですけど、しばらくなかった。今回出る16代目クラウンの実車を見てまいりました。これがひょっとしたらアッパーミドルの輸入車のクラスを食うのではないかと思うような出来栄えですね」(岡本さん)

 

比較対象は大きさ的にはメルセデスの「Eクラス」、BMWの「5シリーズ」、アウディの「A6」あたりとのこと。

 

「プレミアム性のある日本のワゴンって最近なかったんです。そこに名乗りを上げたクラウンが、どう受け入れられるかは非常に興味深い。円安で輸入車の価格が上がっていることもあって、これまでドイツのプレミアムブランドのワゴンを買っていた人が、クラウンのエステートに行くんじゃないかなと私は踏んでおります」(岡本さん)

 

キーワード03【キャラ立ち系続々】

上半期のまとめでは「ランドクルーザー250」「トライトン」と個性が際立っている車種を紹介しましたが、下半期以降もさらに“キャラ立ち系車種”が続々出てくる、と岡本さん。

 

「下半期に間に合うかはわかりませんが、面白そうな車があります。たとえば『ジムニー5ドア』や『スイフトスポーツ』。スズキで価格もそれほど高くならないでしょう。

 

あとは『ランドクルーザー』の小さい版が出るという噂もあります。『カローラ クロス』くらいのサイズと言われてますけど、ランクルに恥じない内容で出てくる。ちゃんとラダーフレームを使って、本格的な悪路走破性もあって、デザインはランクル。これ、めちゃめちゃ売れそうな感じしないですか?」(岡本さん)

 

先に名前が上がったスイフトスポーツはどうでしょうか。

 

「2023年はスイフト全体の中で、スイフトスポーツの販売比率が5割も行ってるんです。2023年はベース車のスイフトがモデル末期だったので特殊な状況かなと思っていたら、そんなことはなくて、新型スイフトになってからも4割ぐらいの高い販売比率だそうです」(岡本さん)

 

では、キャラが立っているクルマが売れる理由とは?

 

「せっかく買うなら面白いものという風に皆さん思ってらっしゃるのではないかと。付加価値ですね。基本性能はもちろん、基本を踏まえた上での付加価値に購入する理由を求めているのではないでしょうか」(岡本さん)

 

多様化して魅力的な選択肢が増えている今、どのようなトレンドが形成されるか、下半期も目が離せません。

 

 

まとめ/柚木安津

BYD「シール」の実力を体感! 抜群のコスパで同じクラスのライバルを凌駕しちゃう?

日本での導入が期待されていたBYDのスポーツセダンEV「SEAL」(以下、シール)が、6月25日ついに発表。そのシールに一足早く、公道で試乗できました。このクラスは目が肥えたユーザーが多いDセグメントに属し、それだけに高いパフォーマンスが要求されます。果たして、シールはその期待に応えられているのでしょうか。

 

■今回紹介するクルマ

BYD シール(試乗グレード:シール、シールAWD)

価格:528万円~(税込、以下同)

 

AWDなら0→100km/hがわずか3.8秒! バッテリーは得意のリン酸鉄採用

シールは先行して発売されたATTO 3、ドルフィン(DOLPHIN)に続く、同社の日本市場向け第3弾として投入される最上位のスポーツセダンです。ワイド&ローなボディデザインからはスタイリッシュかつエレガントな雰囲気を伝えてきますが、注目はなんといっても圧倒的な走りのパフォーマンスです。

 

実は2023年秋に、筆者は中国・珠海(ズーハイ)のサーキットで開催されたメディア向け試乗会でそのパフォーマンスを体感しています。“ゼロヒャク(0→100km/h)”がわずか3.8秒という圧倒的加速性能に驚嘆した記憶はいまでも鮮明に蘇ります。それから8か月が経ち、今回やっとその実力を公道で試す機会が得られたわけです。

今春発売のBYD製セダン「シール」に中国で試乗、圧巻の速さに度肝を抜いた!

 

試乗会は御殿場を基地として、2WDとAWD(4WD)の2台に試乗する形で実施されました。あくまで公道での試乗ですので、サーキットでアクセルをベタ踏みするような走りはできませんが、周辺の箱根や東名高速道を走行してそのフィーリングを体験できました。

 

シールを簡単に紹介すると、全長4800×全幅1875×全高1460mmの堂々たるボディに、82.56kWhの大容量バッテリーを搭載。最高出力312PSのモーターで後輪を駆動する2WDモデル「シール」と、これに217PSのフロントモーターを加えてトータル529PSとしたAWDモデル「シールAWD」がラインナップされます。装備内容で両者に違いはありません。

↑BYD「シール」AWDモデル。2WDモデルと外観で違いはない

 

↑BYD「シール」2WDモデル

 

そして、バッテリーにはBYDのBEVでおなじみのリン酸鉄リチウムイオン電池を使用した「ブレードバッテリー」を採用しています。また、バッテリーユニットを車体と一体化するBYD独自のCTB(Cell to Body)技術を採用し、これが車体の剛性を高めると同時に高水準の安全性を両立いるのです。ちなみに、航続距離はシールが640km、シールAWDが575kmとしています。

 

予想を大幅に下回る価格に驚き。しかも特別キャンペーンも

6月25日の発表で驚かされたのはその価格です。シールは528万円で、シールAWDでも605万円に設定し、さらに導入キャンペーンで最初の1000台に限ってはそこから33万円安い特別価格としたのです。

 

また、8月31日までに購入を申し込めば、前後2カメラのドライブレコーダーやETC車載器、充電器(設置工事費用10万円まで)、メンテナンス費用を含んだ「BYD eパスポート」の4点がプレゼントされる特別キャンペーンも実施中です。

 

珠海で試乗した際、関係者からの取材で700万円前後を予想していましたが、それを大幅に下回る価格で発売されたことになります。これは相当に攻めた価格設定と言っていいのではないでしょうか。

 

インテリアはDセグメントにふさわしく、メーターの視認性も上々

さて、最初の試乗は最上位となるAWDからでした。実車を目の前にして感じるのは、周囲に媚びることなくひたすら美しさを追求しているデザインです。ボディは十分にワイドさを実感させるもので、その外観はスタイリッシュかつエレガント。街中でも十分に存在感を発揮しそうです。

↑海洋生物“あざらし”の髭をデザインに反映した「シール」のフロント回り

 

↑タイヤはコンチネンタル製の235/45/R19

 

車内に乗り込むと、黒を基調とした上質な空間が広がっていました。パワー機構付きのシートはナッパレザーによって手触り感に優れ、この素材感がインテリア全体にまで及んでいます。前席シートにはベンチレーション機能が組み込まれ、さらにステアリングにはヒーターも装備される快適仕様。車内は十分プレミアム感に包まれています。

 

【インテリアをギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

その中で少し違和感を覚えたのは、センターに据えられた15.6インチのディスプレイです。スイッチひとつでタテ置きにもなるギミックな機構を備えていますが、ナビゲーションの表示がディスプレイの解像度に追いついていません。そのため、方面案内や分岐点リストなどのフォントが荒れた状態となっていたのです。Dセグメントに相当する車格を考えれば、このあたりはきちんと対応すべきなのではないかと思いました。

↑センターディスプレイをタテ表示にしてナビゲーションを展開した状態

 

↑Apple CarPlay/Android Autoにも対応。写真はCarPlay

 

“ハイウェイクルーザー”として十分なパフォーマンスを発揮!

さて、いよいよ走行です。センターコンソールにあるスタートボタンを押し、その先にあるシフトスイッチを操作すると運転準備は完了。すぐにエアコンなどのシステムが動き出し、アクセルを踏むと2tを超える車体が滑るようにスムーズに走り出しました。

 

アクセルは踏み込みに応じてリニアに反応し、コントロールはとてもしやすい印象です。2段階で設定できる回生ブレーキも自然なもので、効果が強く出る“ハイ”に設定しても、その適度な減速感が扱いやすさを感じさせてくれました。

 

一方で、加速はきわめて力強いもので、高速道路本線への流入でその実力をいかんなく発揮してくれました。少し強めにアクセルを踏み込めば、529PSもの圧倒的ハイパワーを4輪がしっかり路面に伝え、あっという間に周囲をリードする速度域に達します。

↑529PSのビッグパワーがもたらす圧倒的な加速力を示したシール「AWDモデル」

 

アクセルはどこからでも俊敏に反応するので、速度差のある他車線への移動も楽々。加えてドッシリとした乗り味は高速走行時のフラット感があり、路面の段差も突き上げ感をほとんど感じさせません。AWDモデルは、“ハイウェイクルーザー”としての役割を十分果たしてくれそうだと実感しました。

 

一方で続く2WDモデルではAWDモデルとのパワー差を否応なしに感じることになりました。AWDと比べてスペック上でも217PSもの差があるわけで、これは当然と言えば当然。絶対的なパフォーマンスや乗り心地ではAWDモデルに軍配が上がるのは間違いありません。

 

とはいえ、2WDモデルが力不足というわけではなく、ほとんどの人がこの走りに十分なパワーを感じるレベル。むしろ、ハンドリングでは2WDモデルの方が軽快で、普通使いでの扱いやすさは2WDモデルに分があるようにも感じたほどです。

 

日本ではミニバンやSUVに人気が集まる中で、シールはファストバックスタイルながら、完全な4ドアセダンとして登場しました。それでいて圧倒的なパフォーマンスを示すシールは十分に魅力的です。ただ、どこまで支持を得られるかは現時点では未知数。とはいえシールは価格の上でも魅力的と感じる人は少なくないはず。その意味でも同クラスのライバルを凌駕しているのは間違いないでしょう。デリバリーは今秋からを予定しているそうですが、その登場がいまから楽しみです。

 

SPEC【シールAWD】●全長×全幅×全高:4800×1875×1460mm●車両重量:2210kg●パワーユニット:かご形三相誘導モーター(フロント)+永久磁石同期モーター(リア)●最高出力:529PS●最大トルク:670Nm●WLTCモード燃費:165Wh/km

SPEC【シール】●全長×全幅×全高:4800×1875×1460mm●車両重量:2100kg●パワーユニット:永久磁石同期モーター(リア)●最高出力:312PS●最大トルク:360Nm●WLTCモード燃費:148Wh/km

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

撮影/松川 忍

リアカメラは防水仕様、車外設置も可能!デジタルインナーミラー型ドライブレコーダー「AMEX-A09シリーズ」発売

青木製作所は、12V・24V車両に対応したデジタルインナーミラー型の2カメラドライブレコーダー「AMEX-A09シリーズ」を2024年8月1日(木)より発売します。

AMEX-A09シリーズは、一般向けモデル「AMEX-A09」、外付けIR防水リアカメラ付属の業務用モデル「AMEX-A092(20mケーブル仕様)」、「AMEX-A092B(10mケーブル仕様)」の3種類を展開。

 

12V・24V車両に対応!リアカメラは防水仕様、車外設置も可能!

↑一般用途から業務用途まで幅広く対応

 

12V車両と24V車両の両方に対応しており、乗用車やトラック、バスなど一般用途から業務用途まで幅広い車種に取り付けることができます。また、リアカメラは、3種類の設置パターンを用意しており、トラックやキャンピングカーなどに「外付けIR防水リアカメラ」を設置することで、車外後方の視野確保としても使えます。

 

モニターと前後カメラがセパレート式&ジャストサイズモニターで取付汎用性が大幅に向上!

↑ジャストサイズモニター

 

本機は、「モニター本体」と「フロントカメラ」と「リアカメラ」が別体となるセパレート式を採用し、従来機に比べて取り付け時の車両依存を改善。また、10.88インチのモニターは、サンバイザーに干渉しないジャストサイズとなり、より多くの車両に設置可能な設計となっています。

 

定期的なSDカードメンテナンスが不要!

 

フォーマットフリー機能を搭載し、microSDカードの定期的なメンテナンス作業を削減。また、最大128GBのmicroSDカードに対応しています。

 

その他機能

・モニターOFFで通常ミラーとしても使用可能

・リアカメラにHDRを採用し逆光やトンネルなどで明暗差を自動補正

・IPSタッチパネルを採用

 

■商品概要

AMEX-A09
セット内容:本体 + フロントカメラ + 車内用リアカメラ(8.75m仕様) など
おすすめ車両:乗用車 など
価格:オープン(実売予想価格:3万4800円前後)

AMEX-A092
セット内容:本体 + フロントカメラ + 外付けIR防水リアカメラ(20m仕様) など
おすすめ車両:トラック、キャンピングカー など
価格:オープン(実売予想価格:6万4800円前後)

AMEX-A092B
セット内容:本体 + フロントカメラ + 外付けIR防水リアカメラ(10m仕様) など
おすすめ車両:軽トラック など
価格:オープン実売予想価格:6万2800円前後)

【24年上半期を象徴するクルマ】スペーシア、WR-V、ランクル250はなぜ売れた?

2024年上半期に売れたアイテムを、3つのキーワードで厳選して紹介する本企画。クルマ編では、モータージャーナリスト岡本幸一郎さんによる解説とともにお送りします。

 

キーワード01【スペーシア】

昨年11月に発売されたスズキの軽ハイトワゴン「スペーシア」の新型(3代目)がヒットしています。2024年の1月から3月期では、なんとトヨタのカローラシリーズを上回る販売台数を記録した月も。そして、2024年5月の販売台数ではN-BOXを上回る1万5160台を記録しています。

 

「(初代まで遡ると)もともとハイトワゴンに火をつけたのはダイハツの『タント』(2003年発売)で、各社も後を追い、スズキも『パレット』(2008年発売)を送り出しました。いち早く両側スライドドアを取り入れたのがポイントで、当時としては画期的。この『パレット』がモデルチェンジの際に『スペーシア』に名前変更されました」(岡本さん)

 

軽自動車の王者であるホンダ「N-BOX」に、スペーシアはどのように挑もうとしているのでしょうか?

 

「スペーシアがN-BOXに上回っているかな、というポイントが2つあります。1つは全車マイルドハイブリッド化を進めていて、出足が軽やか。燃費にも効いています。もう1つは先進運転支援装備です。軽自動車のユーザーさんの意識もだんだん変わってきて、軽自動車も安全性が高いほうがいいと考えるようになってきました。N-BOXも十分に優れた装備を搭載してますが、スペーシアはカメラだけでなくミリ波レーダーも搭載しています」(岡本さん)

 

スペーシアは燃費と安全装備の2つで軽自動車界を席巻しそうです。

 

キーワード02【ホンダ「WR-V」】

2024年3月に発売されたホンダのエントリークロスオーバーSUV「WR-V」は、発売1か月で約1万3000台を受注し、月間の販売計画台数の4倍以上となる立ち上がりを見せました。

 

「ホンダには小型SUVの『ヴェゼル』や新興国向けの小型SUVなどもありますが、さらに多くの人に使ってもらえるようなニューモデルとして企画されました。特徴的なのは、日本、インド、タイの3か国で共同開発され、インドで生産されているということ。開発期間も非常に短縮でき、コストも下げることができます」(岡本さん)

 

ヴェゼルとはどのような差別化が図られているのでしょうか?

 

「まず見た目の印象が全然違います。中身も違っていて、ヴェゼルはハイブリッドもあれば、先進的な四駆もあるんですけど、このWR-Vは割り切ってガソリンエンジンのFFのみの設定になってます。こうすることでより低価格を実現できている」(岡本さん)

 

1番安いグレードで209万8800円ということで、普通乗用車でコンパクトなSUVが欲しい人には有力な選択肢となっています。

 

キーワード03【ランクル狂想曲】

トヨタの「ランドクルーザー」は、2024年4月に新型「ランドクルーザー250」が発売され、予約が殺到。グレードによっては納車が来年ということも。

 

「今まで『プラド』(ランドクルーザー150)があったんですけど、年々高級になりすぎて、フラッグシップのランドクルーザー300の弟分のような存在になってしまった。トヨタ的には”ランクルのライトデューティー系”という原点回帰を図ろうというコンセプトをもとに企画されました」(岡本さん)

 

300の基本的なプラットフォームを用いつつ、より悪路走破性や質実剛健さを追求している250。その人気は非常に高まっています。

 

「まず売ってもらえないみたいですね(笑)。知り合いでディーラーに行った人が、『うちのお店で何か買ったことありますか』とか、『ランクルを持ってますか』とかいろいろ聞かれたそうです」(岡本さん)

 

300を狙っていた人が250に変えようと思ったものの、諦めてやっぱり300を待つことにした、というエピソードもあり、ランクルに振り回されている人が続出しています。

 

また、個性が立っている車でいうと、三菱自動車のピックアップトラック「トライトン」(2024年2月発売)も好調。先行注文を受け付けたところ、2月13日時点で1300台半ばと月間販売目標台数の6倍以上にあたる注文があったとのことです。

 

「多分僕の予想では3000台近く行っていますね(補足:2024年6月3日時点で2500台を突破)。本来ならそこまで売れる車でもないです。でも、実際トヨタの『ハイラックス』もコンスタントに売れていますし、強い個性を持つものは一定数、絶対欲しい人がいるんですよね」(岡本さん)

 

個性的なものから王道のものまで、上半期はバラエティ豊かな車種に注目が集まりました。

 

GetNaviTVでは下半期のトレンド予測を7月下旬に公開予定です。そちらもぜひチェックしてください。

まとめ/柚木安津

4人に1人が「カーナビ購入後に後悔」カロッツェリア特設サイトが「購入前のチェックポイント」紹介

カーナビ購入者の4人に1人が「カーナビ購入後に後悔したことがある」――。パイオニアが、カーナビ利用者1000名を対象にした実態調査の結果、複雑な胸の内が明らかになりました。

 

後悔や不満を感じている人のうち、約半数の方が「機能や性能に満足していない」ことを受け、同社はカーナビ選びをサポートするカロッツェリア特設サイト「カーナビも、選ぼう」を公開しました。

↑「カーナビも、選ぼう」特設サイト

 

パイオニアのカーナビ・カーAVブランド「カロッツェリア」の「楽ナビ」シリーズは、「高性能で誰でもカンタンに使えるカーナビ」がコンセプト。ドライブ時間の楽しさと、使いやすさを実現するための機能を搭載しています。「カーナビも、選ぼう」を通じ、自分の車に合ったカーナビ選びをサポートするさまざまなコンテンツを発信することで、カーナビ選びに関わる悩みや不安を解消したいという思いがあります。

 

サイトには、最新カーナビの種類や画面サイズ、ルート案内、さらに「エンタメ」まで含んだ各種機能など、購入前にチェックしておきたいポイントを掲載しています。

 

最初からきちんと選べば、後悔せずに済む?

なお前述の実態調査によると、カーナビ購入者の「後悔・不満を感じた原因」はこのようになっています。

↑後悔・不満を感じた理由は?(「カーナビ利用者の利用実態と心理調査」より)

 

具体的に、不満に感じた「機能・性能」は下記の通りです。

↑現在使っているカーナビで不満を感じていることは?(複数回答/「カーナビ利用者の利用実態と心理調査」より)

 

パイオニアの発表資料によると、次に「購入後により良い商品を見つけた」との回答も多いことから、後悔した人の多くが、しっかりカーナビを選ぶことなく購入している状況がわかるそう。より快適なカーライフを送るためにも、ルート案内をはじめとしたカーナビ本来の機能や性能について、しっかり見極めておきたいですね。

ホンダ「WR-V」の価格はすべて250万円以下!取り回しの良さとクラス随一の車内スペースが大きな魅力

ますます高くなっている新車価格。もはや以前のように気軽に新車を買うのは難しい状況となっています。そんななかで注目したいのがホンダから登場した新型SUV「WR-V」です。パワーユニットをガソリンエンジンのみとすることで、今どきの新車とは思えない手軽な価格帯を実現しています。今回はそのWR-Vの試乗レポートをお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ WR-V(試乗グレード:Z+)

価格:248万9300円(税込、以下同)

 

オーソドックスな仕様と開発・生産の手法で低価格に

では、WR-Vはいくらで買えるのでしょうか。価格を聞いてビックリ!なんと、もっともベーシックな「X」なら209万8800円で買えるんです。「装備がチープだから?」と思いそうですが、上級の「Z」でも234万9600円。さらに専用エクステリアを備えた「Z+」でも248万9300円と、全ラインナップが250万円以内に収まっているのです。今どき200万円超えが珍しくない軽自動車とさえ真っ向から勝負できる価格帯と言っていいでしょう。

↑上位グレードの「Z」に専用エクステリアを加えた「Z+」。ウィンドウモールやドアモールにシルバー加飾をしている

 

この価格が実現できた背景にはいくつか理由があります。冒頭で述べたように、エンジンを1.5リッター自然吸気直4ガソリンとし、これにCVTを組み合わせるだけと、今どきの日本車ならほとんどラインナップされているハイブリッドは採用されていません。駆動方式もFFのみで4WD設定はなし。特に目新しさを感じる技術は盛り込まれておらず、極めてオーソドックスな造り込みが価格を抑えられた一つの要因となっているのです。

↑角張ったフォルムがゆったりとした車内スペースを確保した

 

開発から生産に至るまでの手法も低価格実現の要因の一つと思われます。実はWR-Vは、開発をタイの四輪開発拠点である「ホンダR&Dアジアパシフィック」が担当し、生産をインドの「ホンダカーズインディア」が行なうグローバルモデルとなっています。加えてグローバルモデルとはいえ、投入するのは日本とインド、南アフリカのみ。つまり、右ハンドル仕様に絞る、徹底したコスト管理のもとで生まれたのがWR-Vというわけです。

↑タイヤは「Z」「Z+」にアルミホイール付き215/55R17(写真)を装備し、「X」には215/60R16を組み合わせる

 

ACCまで備えたHonda SENSINGで安全運転を支援

となれば、いろいろ妥協の産物なのかと思われがちですが、内容を見ればそんなことはないことがすぐにわかります。たとえば、安全装備としてはHonda SENSINGが装備されており、衝突軽減ブレーキをはじめ、急アクセル抑制機能や路外逸脱抑制機能といった一通りの安全機能を装備したほか、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、オートハイビームなどの運転支援機能も充実しています。

 

強いて残念な点を挙げれば、パーキングブレーキが機械式となっていること。そのため、ACCは30km/h以下になると自動的に解除されてしまい、渋滞時に使うことはできません。それと、新型車という割には、ブラインドスポットモニター機能がオプションでも用意されていないのはちょっと残念ですね。

 

外観は、シャレたデザインが増えてきた最近のSUVにしては、珍しいほど全体に角張ったデザインで、フロントグリルもなかなかの迫力ぶり。特に運転席に座るとフロンボンネットの端がしっかり把握できるあたりは、クロスカントリー向けなスタイルにも見えます。しかも最小回転半径は5.2mと、ハンドルを切ったときの取り回しも良好で、それだけに4WDがラインナップにないのが惜しいと思えるほどです。

↑マッチョなフォルムを印象づけるフロントグリル。LEDフォグライトは「Z」「Z+」にのみ装備される

 

インテリアは水平基調のシンプルなデザインで、地味さはあるものの、機能面で困ることはまったくなく、必要なものはすべて装備されています。ソフトパッドはドアトリムだけですが、それもこのクラスとしては上出来。なによりも全体の仕上がりが良く、チープさを感じることはなく、これなら、多くの人にとって不満を感じることはないだろうと思いました。視界の広さも特筆もので、それが運転中のストレス軽減に役立つのは間違いありません。

↑実用性を重視したシンプルなダッシュボード。ステアリングやシフトセレクターには本革を採用しています

 

↑フロントワイドビューカメラと前後8つのソナーセンサーを用いた安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車で標準装備。右はオプションのドライブレコーダ

 

角張ったフォルムがもたらしたクラス随一のスペースユーティリティ

一方で、「Honda CONNECT」に対応する9インチのナビはディーラーオプションで20万2400円。試乗車では試せませんでしたが、独自のコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム」によってエアコンやライトをリモート操作したり、スマホでドアロックを解錠/エンジンを始動させたりといった、さまざまな便利機能が使えるようになるとのこと。ただ、ナビ機能としては起動に少し時間がかかるのが気になりました。

↑9インチ Honda CONNECTナビはディーラーオプションで20万2400円。ナビ機能(下)を標準装備しつつ、スマホを接続できるディスプレイオーディオ(上)としても使用可能。ほかに8インチ Honda CONNECTナビやディスプレイオーディオも選べる

 

↑7インチTFT液晶メーターとアナログスピードメーターの組み合わせ。ほかにHonda SENSINGなどの情報を表示する

 

↑エアコン操作部の下にはスマホを置ける収納スペースが用意され、その右にはナビと接続できるUSB端子を、左下には充電専用USB端子を備える

 

そして、WR-Vで最大の美点となっているのが車内の広さです。これは角張ったフォルムがもたらしているものと思われますが、車内すべてがゆったりとしていて、特に後席に至っては上級グレードのヴェゼルよりも明らかに広いスペースを確保している印象を受けます。しかも、このクラスにしては贅沢な後席専用エアコン吹き出し口まであるのです。Zグレード以上に装備される後席アームレストを組み合わせれば、ちょっとした高級車並みの雰囲気が楽しめそうですね。

↑モノトーンながらシャレたデザインを織り込んだフロントシート。サイズもたっぷりとして長距離ドライブも楽ちんだった

 

↑クラス随一の広さを確保したリアシート。「Z」以上にはセンターアームレストも備え、使用時は大人2名がゆったりと座ることができる

 

↑このクラスとして装備されることがほとんどない後席専用エアコン吹き出し口を全車に装備。その下にはシガーソケットも備えられた

 

荷室容量は458L(5名乗車時/床下収納を除く)と、クラスを上回る収容力を確保しています。特に床面を低く取ってあり、天井までの高さも十分あるため、キャンピングなどで必要となる荷物の積載にも十分応えられるほどです。6:4分割式のリアシートを倒した際はフラットにはなりませんが、むしろ、家族4人が乗車したときの収容力を評価すべき仕様と言えるでしょう。

↑カーゴスペースは床面が深く、自転車(27インチ)などかさばるものも楽に収納可能。リアシートはフラットにたためないが、スペースユーティリティは十分だ

 

乗り心地は少し硬めなものの、特に不満はなし

それでは、いよいよ試乗です。試乗したのは上位モデルの専用エクステリアを備えた「Z+」。

 

今回は都内から郊外へトータル120kmほどを走行してみました。パワートレインは1.5リッター直4 i-VTECガソリンエンジンで、これにCVTを組み合わせたシンプルなものです。最高出力は118PS、最大トルク142N・mと、特に目を引く数値とは言えませんが、スムーズな加速力は日常のドライブであれば十分なパフォーマンスを備えていると言えます。ただ、アイドリングストップ機能はなく、また、高速での加速では少しノイジーに感じるかもしれません。

↑パワートレインは1.5リッター直4 i-VTECガソリンエンジンで、これにCVTを組み合わせる

 

乗り心地は少し硬めの印象で、低速で走っていると路面からの突き上げはややタイトに感じます。しかし、その分、コーナリングではロールもしっかりと抑えられていて、峠道も安心して走行できました。そういった面を踏まえれば、個人的にはこの硬さは乗り心地も含め、十分に許容範囲に入っていると言っていいでしょう。

 

120kmほどの距離を走った結果の燃費は、エコランを少し意識した往路では18.2km/Lを記録。復路では普通にアクセルを踏んで走行した結果、15.8km/Lという結果でした。カタログ値では16.4km/L(WLTCモード)となっていましたから、ほぼ想定通りの結果が得られたと判断できます。

↑WR-Vに試乗中の筆者

 

全体としてWR-Vは秀でた部分は特に見つからないものの、かといって不満に感じる部分もない。しかし、クラスを超える車内スペースがもたらす、ゆったりとした空間と優れた実用性はこのクラスとしては随一のものです。新車価格が高騰する中で、予算面で軽自動車を考えていながら、そこに踏み切ることに躊躇していた人にとってWR-Vはまさに打って付けの一台。発売1か月で目標の4倍となる1万3000台もの受注を獲得した理由もここにあるのだと思います。

 

SPEC【Z+】●全長×全幅×全高:4325×1790×1650mm●車両重量:1230kg●総排気量:1496L●パワーユニット:水冷直列4気筒 DOHC16バルブ●最高出力:118PS/6600rpm●最大トルク:14.5kgf-m/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L

 

撮影/松川 忍

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

ライドシェアが日本でも解禁!知っておくべき仕組みと安全で賢い活用法

2024年4月から、タクシー運転手ではない一般のドライバーが有償で客を送迎する「ライドシェア」が、日本国内で解禁となりました。現在は東京都や神奈川県など一部の地域で限られた時間帯のみ利用することができますが、今後も導入される地域は増えていく見込みです。

 

日本版ライドシェアの特徴や仕組みとは? 利用する際のポイントや海外のライドシェアとの違いも含め、モビリティジャーナリストの森口将之さんに教えていただきました。

 

「ライドシェア」の定義と、「カーシェア」との違い

 

最近、ニュースなどでもようやく耳にする機会が増えたライドシェアですが、海外ではすでに普及している国も。そもそもライドシェアとは何でしょうか? また普及し始めたきっかけについて教えていただきました。

 

「『ライドシェア』とは、タクシー運転手ではない一般のドライバーが有償でお客を送迎するサービスのことを言います。乗車予約から支払いまでを、すべてアプリ上で行うところが大きな特徴です」(モビリティジャーナリスト・森口将之さん、以下同)

 

ライドシェアと似た言葉に『カーシェア』があります。

 

「『カーシェア』はドライバーと車両をマッチングさせる、車の貸し出しを目的としたサービスのこと。一方、ライドシェアはタクシー配車アプリなどを活用し、ドライバーと乗客がマッチングすることでサービスを利用することができます」

 

ライドシェアに欠かせない“配車アプリ”として有名なのが、アメリカ発のサービス「Uber」。

 

「日本でも利用されているUberは、配車アプリを提供する企業の先駆けとも言える存在です。このような企業が出てきたことで、ライドシェアという新しい移動の形が誕生し、世界的にライドシェアが普及していきました」

 

日本版ライドシェアの特徴や仕組みは?

ライドシェアは現在さまざまな国で導入されていますが、国によって独自のルールが定められています。日本では、どのような仕組みで運用されているのでしょうか?

 

「日本には、『自家用車活用事業』と『自家用有償旅客運送』の大きく2種類のライドシェアの制度があります」

 

・自家用車活用事業(都市型ライドシェア)

「こちらが、2024年4月から一部の地域で解禁されたライドシェアの制度。タクシー会社の管理のもと、一般ドライバーが自家用車を使って有償で送迎するサービスが認められるというものです。走行しているのはタクシーが不足する時間帯のみで、ライドシェアのドライバーはタクシー会社が募集・管理しています。東京、神奈川、愛知、京都の一部地域から導入が始まり、都市部での導入が中心であることから、私はこのライドシェアを“都市型ライドシェア”と呼んでいます」

 

4月に解禁された地域でライドシェア導入の目安となった、タクシーが不足する曜日および時間帯はこちら。

 

東京都(23区、武蔵野市、三鷹市)
・月~金曜:7時~10時台
・金・土曜:16時~19時台
・土曜:0時~4時台
・日曜:10時~13時台

 

神奈川県(横浜市、川崎市、横須賀市など)
・金・土・日曜:0時~5時台
・金・土・日曜:16時~19時台

 

愛知県(名古屋市、瀬戸市、日進市など)
・金曜:16時~19時台
・土曜:0時~3時台

 

京都府(京都市、宇治市、長岡京市など)
・月・水・木曜:16時~19時台
・火~金曜:0時~4時台
・金・土・日曜:16時~翌日5時台

 

国土交通省の発表資料より

 

・自家用有償旅客運送(地方型ライドシェア)

過疎地における移動手段の確保などを目的に、市町村やNPO法人などが主体となり、自家用車を使って有償に運送できる制度です。制度自体は2006年に創設されましたが段階的にルールが改正されており、2023年末にも大幅な改革が行われました。ニュースなどでは『自治体ライドシェア』と呼ばれることもあり、都市型ライドシェアに対して“地方型ライドシェア”とも言えます」

 

“移動革命”「MaaS(マース)」とは? モビリティジャーナリストが解説する日本と世界の現状と課題

 

ライドシェア導入の背景にある、ドライバー不足

2024年4月から一部で解禁された都市型のライドシェアは、そもそもなぜ導入されることになったのでしょうか?

 

「導入された大きな理由は、ドライバー不足です。都市部に限った話ではありませんが、コロナ禍でタクシーの利用者が減少し、ドライバーが辞めたり、タクシー会社が廃業せざるを得なかったりという事態が起こりました。しかしコロナ禍が落ち着きインバウンドの観光客も戻ってきたため、今はドライバーが不足しているのです」

 

また現在、物流業界でドライバーの時間外労働の上限規制が設けられることで起こる『2024年問題』も懸念されていますが、タクシードライバーも同じ状況にあると言います。

 

「2024年4月から、タクシードライバーの拘束時間や休息期間も見直され、一人あたりが運転できる時間は短くなりました。そのためドライバー不足に拍車がかかることが懸念されています。これまでも国内でライドシェアの議論はたびたびあったものの、こうした社会的な背景や、菅義偉前首相がライドシェア導入を後押しする発言をしたことなどもあって、本格的に導入が進められることとなったのです」

 

ライドシェアのメリットとは?

都市型・地方型ライドシェアにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

【都市型ライドシェア】

タクシーがつかまりにくい時間帯に、移動手段を確保できる
「4月からライドシェアが導入された地域では、タクシーが不足している時間帯に通常のタクシーに加えてライドシェアの車両が走行することになります。そのため今までタクシーがつかまりづらかった時間帯でも移動手段を確保しやすくなることが、利用者にとっては一番の利点だと思います」

 

【地方型ライドシェア】

タクシーより安く乗車できる
「都市型のライドシェアは通常のタクシーと同じ料金ですが、地方型のライドシェアはタクシーの約8割の価格で乗車することができます。また、自治体が主導する地方型のライドシェアならではの取り組みもあります。例えば石川県小松市が実施するライドシェアでは現在、能登半島地震で被災した二次避難者が無料で利用することができます。このように地域ごとに独自の取り組みができるところも、自治体主導のライドシェアならではのメリットと言えます」

 

また“ライドシェアドライバー”という仕事が生まれることによって、より多様な働き方ができるようになることもライドシェアを導入するメリットの一つと言えるでしょう。

 

「海外のライドシェアドライバーには、ドライバーの仕事だけで生計を立てている人と、副業として空いている時間に仕事をしている人の2パターンのドライバーがいます。日本でもライドシェアが導入されたことで、ドライバーになるための条件や時間の制限はあるものの、後者のような働き方が可能になりますよね。
また、地方でライドシェアドライバーが収入源の一つになるなら移住してみようと考える人も出てくるかもしれません。“ライドシェアドライバー”という仕事が、多様で柔軟な生き方、働き方をするための一つの手段にもなり得るのではないでしょうか」

 

ライドシェアを利用する際のポイント

 

実際にライドシェアを利用するときにはどのような準備が必要なのか、利用する前に知っておきたいポイントや注意点を教えていただきました。

 

・配車アプリをダウンロードしておく

「ライドシェアは配車アプリがなければ利用することができません。アプリ内で支払い登録などもしておく必要もあるため、乗車直前ではなく、あらかじめダウンロードしてすぐに利用できる状態にしておくことをおすすめします。
都市型ライドシェアが利用できるのは『GO』『Uber』『DiDi』などの配車アプリです。地方型のライドシェアは独自のアプリを用いているところもあるため、利用したい地域によって対応するアプリを確認してください」

 

・ライドシェアのタクシーに乗るための設定をしておく

「配車アプリでは、乗車できるタクシーを『通常のタクシーのみ』と『通常のタクシーとライドシェアの両方』のどちらかで設定することができます。都市型ライドシェアは今のところ、ライドシェアのみを選んで乗車することはできません。
またデフォルトは『通常タクシーのみ』の設定になっていることが多いので、ライドシェアを利用したい場合は設定し直しましょう」

 

電動キックボードは免許・ヘルメットなしでOK?「小型電動モビリティ」の法改正によるルールと可能性

 

日本にはない仕組みも!
海外のライドシェア事情

 

国内での利用はまだという人も、海外でライドシェアを利用したことがある方は意外と多いかもしれません。日本のライドシェアとの違いも含めて、海外のライドシェア事情についても教えていただきました。

 

「ライドシェアは国によって仕組みや運用方法が異なります。たとえば、アメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコなどのライドシェアは、Uberなどのプラットフォーム事業者が運転手管理や運行管理を行う形で導入されています。一方で、イギリス、フランス、ドイツといったヨーロッパでは、ドライバーに公的なライセンスが必要だったり国や地域が運行管理を行ったりする形で導入されている国が多くあります」

 

海外のライドシェアというと、犯罪やトラブルに巻き込まれた事例もメディアを通して耳にしたことがあるかもしれません。

 

「アメリカなどのライドシェアにまつわる犯罪の話題がメディアでも取り上げられますが、正直なところ、犯罪はどのようなシチュエーションでも起こり得るもの。ライドシェア乗車中の犯罪発生率は国の治安事情を反映しているというデータもあるため、ライドシェア=危険とは一概に言えないと考えています。逆に、乗車前に運転手情報を確認できたり乗車やGPSの情報が記録されたりするところに、安全性を感じるユーザーもいるようです」

 

森口さん自身も、通常のタクシーよりライドシェアのほうが安心して乗れると感じることもあるのだとか。

 

「ライドシェアは、あらかじめアプリで目的地を入力するので料金の目安がわかりますが、国によってはタクシーでわざと遠回りして料金を上乗せされてしまうなど、タクシーサービスの質があまり良いとは言えないこともあるためです。逆に言えば、今まで日本でライドシェアが導入されなかったのは、日本のタクシーのクオリティが高いことも一因かもしれませんね」

 

 

また、日本と海外のライドシェアの大きな違いとして森口さんが挙げたのが、「ダイナミックプライシング(変動価格制)」と呼ばれる仕組みです。

 

「ダイナミックプライシングは、需要と供給に応じて価格が変わる仕組みのこと。例えば人が多く集まるイベント終了後など、需要が増える時には、通常のタクシーよりライドシェアの料金の方が高くなることがあるのです。価格はドライバーではなく、アプリ提供側が設定しています。
ユーザー側が価格を見ながら、タクシーを利用するかライドシェアを利用するかを選べることは、個人的に良い仕組みだと思っています。日本でも導入することができれば、場所や時間によってタクシーよりライドシェアを安く利用できる可能性もあるため、ユーザー側のメリットもより大きくなるのではないでしょうか」

 

日本のライドシェアはこれからどうなる?

 

現在、利用にはさまざまな条件がある国内のライドシェアですが、今度はどうなっていくのでしょうか?

 

「地方では移動手段が限られる一方で、都市部ではタクシーが不足している今、どの地方自治体にとっても“移動”は切実な問題となっています。そのため現在進行形で規制緩和を求める声や、導入を検討する地域は多くあります。都市型のライドシェアは今後、仙台、大阪、福岡などの地域でもサービス提供が認められるようになる予定です。
とはいえ、今のところ国内でライドシェアを利用するには、ユーザー自らが配車アプリでライドシェアを利用できるように設定しなければならず、利用できる時間帯も限られています。そのため普及していくためには、ライドシェアを利用するための方法を周知していく必要もあると思います。さらに、ダイナミックプライシングの導入や時間帯の制限を撤廃するなど、少しずつ規制が緩和されていけば、利用者にとってのメリットも増えていくのではないでしょうか」

 

地方型のライドシェアについても、多くの地域で導入や規制緩和を求める声が上がっていると言います。

 

「地方型のライドシェアはこれまで自治体やNPO法人が主体となっていましたが、ルールが改正されて運行管理や車両の整備管理などをタクシー・バス事業者が協力して行うこともできるようになりました。今もさまざまな議論が行われているため、今後もさらなる改革が進んでより使いやすい形になることを期待したいですね」

 

 

まさに今、活発な議論が行われながら導入・普及が進められている国内のライドシェア。導入・普及が進めば、タクシーが捕まりにくかった時間帯や移動手段の少なかった場所での移動が、より便利になるはずです。導入の背景や利用の際のポイントを押さえた上で、かしこく上手に利用しましょう。

 

 

Profile


モビリティジャーナリスト / 森口将之
モビリティジャーナリストとして、移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

Wi-Fi利用時間が大幅に拡大! 定額で使い放題の車載ルーター「DCT-WR200D」

パイオニアは、ドコモのLTEデータ通信が定額で使い放題になる車載用Wi-Fiルーター「DCT-WR200D」を発表しました。9月に発売を予定しています。

 

近年、動画や音楽のストリーミングサービス普及にともない、車内でもこれらのオンラインコンテンツを楽しむユーザーが増加しているとのこと。DCT-WR200Dは、こうしたニーズに応え、ドコモユーザーに限らず誰でも手軽に車内でWi-Fiを利用できる製品です。データ通信量を気にすることなく、オンライン動画や音楽、ゲームなどを快適に楽しめます。なお、利用するには車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」のプランに加入する必要があります。プランは1日550円、30日1650円、365日1万3200円(各税込)から選べます。

 

DCT-WR200Dは、前モデルに比べて停車時のWi-Fi利用時間が大幅に拡大。前モデルでは、エンジン始動後最大30分間、走行後最大60分間の利用が可能でしたが、新モデルではこれが最大2時間まで延長されました。

 

利用開始までのステップがわかりやすく記載されたクイックスタートガイドが同梱。スマートフォンを使って簡単に登録やチャージができるため、好きなタイミングですぐに使い始めることができるとのこと。また、車のシガーソケットやUSBポートに接続するだけで設置できます。

 

本体はコンパクトな設計で、縦置き・横置きどちらにも対応しています。これにより、設置場所を選ばず、ほかの車両への乗せ換えも可能です。さらに、USBポートが2系統(Type-A)のUSBシガーチャージャーを採用しており、スマートフォンの同時給電もできます。

車内のオンライン機能が強化! 動画や音楽がもっと楽しめるカロッツェリア「楽ナビ」新機種

パイオニアは、車内オンライン機能に対応したカロッツェリア「楽ナビ」シリーズ13機種を発表しました。発売は6月を予定しています。

 

■製品名

【ネットワークスティック同梱モデル】

・9V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

・9V型HD/TV/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

・8V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

【スタンダードモデル(ネットワークスティック別売り)】

・9V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・9V型HD/TV/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・8V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・8V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

 

楽ナビは「高性能で誰でもカンタンに使えるカーナビ」をコンセプトに進化を続けてきた製品。2023年に初のオンライン対応モデルが登場しています。今回のモデルチェンジでは、NTTドコモの車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」による、停車時のWi-Fiスポット利用時間が最大2時間に拡大され、停車中もストレスフリーで、動画や音楽、ゲームといったオンラインコンテンツを楽しむことができます。また、HDMI接続により、カーナビ本体や後席モニターでオンライン動画を大画面で視聴できます。

 

docomo in Car Connectは、3つのプラン(1日550円、30日1650円、365日1万3200円/各税込)が選べます。またネットワークスティック同梱モデルには、1年間の無償使用権が付いており、より手軽に車内Wi-Fiを体験できます。

 

さらに、ドライブをサポートするインターフェース「Doメニュー」を採用。ドライブ中によく使う機能をスムーズに操作できます。「お出かけ検索(オンライン)」では、キーワードや住所、電話番号で最新スポットを検索でき、フリック入力に対応しています。「ダイレクト周辺検索」では駐車場やガソリンスタンドをワンタッチで簡単に検索でき、オンライン接続時には最新のガソリン価格情報も確認できます。

 

ディスプレイは、黒色再現性に優れるNormally Black方式と視野角が広いIPS方式を採用したHDパネルを搭載しています。加えて別売りのHDバックカメラやドライブレコーダーを接続することで、駐車時や走行時の映像を高画質で表示します。

 

ナビゲーション機能も充実しており、「信号機カウント交差点案内」や「ルート探索」機能、リアルタイムの渋滞情報を提供する「スマートループ渋滞情報」なども利用できます。

 

車内のオンライン機能が強化! 動画や音楽がもっと楽しめるカロッツェリア「楽ナビ」新機種

パイオニアは、車内オンライン機能に対応したカロッツェリア「楽ナビ」シリーズ13機種を発表しました。発売は6月を予定しています。

 

■製品名

【ネットワークスティック同梱モデル】

・9V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

・9V型HD/TV/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

・8V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーションネットワークスティックセット

【スタンダードモデル(ネットワークスティック別売り)】

・9V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・9V型HD/TV/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・8V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/DVD/CD/Bluetooth/SD/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・8V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/TV/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

・7V型HD/Bluetooth/USB/チューナー・AV一体型メモリーナビゲーション

 

楽ナビは「高性能で誰でもカンタンに使えるカーナビ」をコンセプトに進化を続けてきた製品。2023年に初のオンライン対応モデルが登場しています。今回のモデルチェンジでは、NTTドコモの車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」による、停車時のWi-Fiスポット利用時間が最大2時間に拡大され、停車中もストレスフリーで、動画や音楽、ゲームといったオンラインコンテンツを楽しむことができます。また、HDMI接続により、カーナビ本体や後席モニターでオンライン動画を大画面で視聴できます。

 

docomo in Car Connectは、3つのプラン(1日550円、30日1650円、365日1万3200円/各税込)が選べます。またネットワークスティック同梱モデルには、1年間の無償使用権が付いており、より手軽に車内Wi-Fiを体験できます。

 

さらに、ドライブをサポートするインターフェース「Doメニュー」を採用。ドライブ中によく使う機能をスムーズに操作できます。「お出かけ検索(オンライン)」では、キーワードや住所、電話番号で最新スポットを検索でき、フリック入力に対応しています。「ダイレクト周辺検索」では駐車場やガソリンスタンドをワンタッチで簡単に検索でき、オンライン接続時には最新のガソリン価格情報も確認できます。

 

ディスプレイは、黒色再現性に優れるNormally Black方式と視野角が広いIPS方式を採用したHDパネルを搭載しています。加えて別売りのHDバックカメラやドライブレコーダーを接続することで、駐車時や走行時の映像を高画質で表示します。

 

ナビゲーション機能も充実しており、「信号機カウント交差点案内」や「ルート探索」機能、リアルタイムの渋滞情報を提供する「スマートループ渋滞情報」なども利用できます。

 

Z世代のニーズにジャストフィット! スズキの新型スイフト試乗レポート

スズキの世界戦略車種「スイフト」が2023年12月、7年ぶり5世代目となるフルモデルチェンジを果たしました。世界累計販売台数は900万台ともなり、スイフトはまさにスズキを牽引するグローバルカーとして位置付けられています。新型となったスイフトはZ世代を意識した作りになっていると感じました。その実力を、試乗を通して体験レポートします。

↑新型「スイフト」ハイブリッドMZ(2WD・CVT)

 

■今回紹介するクルマ

スズキ スイフト(試乗グレード:ハイブリッドMZ/2WD・CVT)

価格:216万7000円(税込)

 

目指したのは“スイフト=走り屋のクルマ”からの脱却?

スイフトは2000年に登場した初代からコンスタントに売れ続ける根強い人気を保ってきました。それだけに5代目となる新型もキープコンセプトとなったようで、一目見ただけでは先代と大きく変わらない印象を受けます。しかし、よく見ると新型ならではの進化が随所に見られます。

 

実はここに新型に課せられた大きな命題がありました。商品企画の担当者によれば、メインターゲットであるZ世代から少し上の子育て世代にアンケートを取ったところ、“スイフト=走り屋のクルマ”という印象をもつ人が多かったそうです。これは走り屋をイメージしがちな“スイスポ”がスイフト全体の約半分に迫っていたことが影響しているとも言えます。そのため、「普通に乗れる乗用車が欲しい」人たちからスイフトは敬遠されることが少なくなかったらしいのです。

 

一方でファミリー層のウケを狙うばかりに柔なイメージを作れば、今度は走りを期待するユーザー層が離れてしまいかねません。そんな悩ましい思いの中からこのデザインは誕生したというわけです。

 

エクステリアではヘッドライトとフロントグリルに先代の面影を残しつつも、先代の丸みを帯びていたデザインから直線基調のシャープなボディラインへと変更されています。特に劇的に変わったのがボンネットで、新型は貝殻のように全体を覆うようなクラムシェル型ボンネットを採用。そこからボディサイドへ回り込ませることで、新たなスイフトとしての個性を発揮しています。

↑タイヤはブリヂストンのエコタイヤ「エコピア」を組み合わせる。サイズは185/55R16

 

フロントグリルはクロームメッキとピアノブラック調を組み合わせた凝った造りで、ヘッドランプにはL字型のポジションランプを内蔵。リアテールランプも上質感を伝えるLEDを採用しています。

↑ヘッドランプと組み合わされたLEDポジショニングランプ

 

インテリアは先代のドライバー中心設計の機能性を継承しつつ、インパネとドアトリムをデザイン上でつなげる一体感を演出。インテリアカラーはブラックを取り入れながらも、全体を明るいグレー系でまとめるなどして高品質感と同時に軽快感も生み出しています。特筆すべきはセンタークラスターを運転席側に向けることでドライバーの操作性を高めていること。電動ブレーキが採用されたことも大きなプラスポイントと言えます。

 

【インテリアをギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

新開発1.2LエンジンとCVTの組み合わせでリニアな加速感

パワーユニットは新開発の直列3気筒1.2Lガソリンエンジンで、最高出力82PS、最大トルク108Nmを発揮。これまでのスイフトと同様に、モーター機能を持たせた発電機「ISG」と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドとなっています。スズキによれば、発電効率と減速時の回生エネルギーを高め、より省エネルギーを図った設計になっているとのことでした。

↑エンジンは新開発「Z12E型」直列3気筒1.2Lガソリンエンジン。最高出力82PS、最大トルク108Nmを発揮する

 

↑モーター機能を持たせた発電機「ISG」と専用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドを採用

 

トランスミッションは高効率化と軽量化を進めたCVTを採用。これが主力となるのはいうまでもありませんが、見逃せないのはラインナップに5MTを揃えたことです。スズキによれば、マイルドハイブリッドを組み合わせるのは同社として初めてのことになるそうです。スイスポまでの走りは求めないけど、少しはスポーティな走りも楽しみたい。そんなユーザーにはうってつけの一台となるのかもしれません。

 

プラットフォームは先代から引き継いだ高剛性の「ハーテクト」を採用しつつも、実走行でのテスト走行を繰り返すことで実用域でのフィールを向上させたとのこと。サスペンションは捻り剛性を高め、コーナリングでの車体の傾きを抑えて高い操縦安定性を実現したそうです。また、車体の接合部に減衰力を持たせた接着剤を採用したことや、ダッシュパネルの板厚に厚みを持たせたるなどして騒音対策を徹底。これにより先代よりも高い静粛性を確保したということです。

 

リニアな加速感と高いライントレース性がスポーティさを発揮

走り出してすぐにわかったのが、CVTにありがちなアクセルを踏んだときの加速とエンジン音のずれがほとんどなかったことです。アクセルを軽く踏んだだけでスルスルッと走り出し、そのまま気持ちよくエンジンを回していくことができます。CVT嫌いになる人の多くは、このラバーバンドフィールを要因としていることがほとんどですが、新型スイフトに限ってはそうした感覚はほとんど感じずに済むのはないでしょうか。

↑新型スイフトを試乗する筆者

 

サスペンションも走り出した直後から、足腰のしっかりとした感触が伝わってきました。ステアリングのフィールもシャキッとしていて、ラインのトレース性も高いために思ったとおりのコースを走り抜けることができます。コーナリングでのロールもしっかり抑えられており、これなら絶対的なパワーがあるとは言えないまでも、十分にスポーティな走りが楽しめるでしょう。このフィールは「明らかに“スイスポ”の血筋を引いているな」と思ったほどです。

 

それと新型スイフトは、先進安全装備であるADAS機能の性能向上が図られていることも見逃せません。スズキの予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」は、ミリ波レーダーと単眼カメラ、超音波センサーを組み合わせたもの。衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートII」では画角、検知エリアを拡大し、交差点衝突回避支援では右左折と出会い頭での衝突を検知してブレーキ作動を支援します。

↑ADAS機能はミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせ、検知範囲を広げるなどして安全性能を大幅アップ

 

特に、ACCには車線中央を維持する「車線維持支援機能」以外に、カーブ進入時に速度を抑制したり、車線変更時に方向指示器に連動して自動で加減速したりする機能も装備。さらに先行車や対向車に眩しさを与えない「アダプティブハイビームシステム(AHS)」や後方車両を検知する「ブラインドスポットモニター」のほか、後退時に接近する車両を検知してディスプレイや音などで知らせる「リアクロストラフィックアラート」を装備して、安全装備での先進性は大幅に高められたと言っていいと思います。

↑ACCは停止までサポートできるよう電動パーキングブレ機を採用。ホールド機能も備わる

 

より元気にドライブを楽しむのに最適な仕上がり

新型スイフトの試乗を終えて感じたのは、全体としてシャキッとしたシャープな走りが楽しめるということです。絶対的なパワー感こそ得られませんが、リニアな加速感が味わえることでアクセルを踏み込んだときのストレスはほとんど感じません。乗り心地にしてもタイトなサスペンションが低速域でこそ若干固さを感じさせますが、トレース性も高くロールを抑えていることで、気張らずとも誰でも気持ちよい走りが楽しめます。

↑シャープなハンドリングとリニアな加速感が好印象だった新型スイフト

 

こうした点からも新型スイフトは、乗り心地重視の世代ではなく、より元気にドライブを楽しむことを普通に感じるZ世代向けに開発されたクルマなのです。これをベースとした“スイスポ”の登場がとても楽しみになってきました。

SPEC(ハイブリッドMZ/2WD・CVT)●全長×全幅×全高:3860×1695×1500mm●車両重量:950kg●パワーユニット:Z12E型エンジン+モーター●最高出力:82PS(エンジン)、3.1PS(モーター)●最大トルク:108Nm(エンジン)、60Nm(モーター)●WLTCモード燃費:24.5km/L(ハイブリッド燃費)

 

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撮影/松川 忍

外国人観光客から熱視線の聖地「大黒PA」。しかしマナー問題が大きな課題に

“日本の自動車文化の聖地”として知られ、関東各地から熱狂的なドライバーたちが集う神奈川県横浜市鶴見区の首都高速「大黒パーキングエリア(以下、大黒PA)」。大黒PAは、日本の旧車やカスタムカーに熱中するクルマ好き日本人や外国人観光客が集まる側面もあるのですが、そこが今新たな注目を浴びています。

 

独自の雰囲気とクルマの多様性から外国人を魅了

大黒PAは日本国内から集まるクラシックカーやチューニングカー、カスタムカー愛好者が、自らの愛車を誇示し、交流する場として利用されています。首都高速道路を背景に、様々な車種やスタイルが一堂に会する様子は、クルマ好きたちにとってまさに夢のような空間と言えるでしょう。

 

そもそも大黒PAが、クルマ好きたちの集まる場所となったのは1990年代前半から。東京方面、神奈川方面、千葉方面からアクセスしやすく、駐車できる台数も多いなどの理由から、週末、関東各地のクルマ好きが集まる場所となったのです。今では、同じジャンルのオーナー同士がリアルな情報交換をする場となり、その人気はソーシャルメディアを通じてさらに広がり、世界中のクルマ愛好者たちが共有し合っています。

 

海外では古い国産車スポーツカーをカスタムしたスタイルを「JDM(Japan Domestic Market)」と呼び、絶大な人気を誇っています。その人気は、カーアクション映画「ワイルド・スピード」シリーズなどにも登場するほど。インスタグラムの「#JDM」(Japan Domestic Market)のハッシュタグ件数は3500万件以上で、高い注目を浴びています。

 

実際に大黒PAでは、普段は滅多に見られない「ケンメリ GT-R」や「ダットサン 240Z」、「70系スープラ」、漫画&アニメ「頭文字(イニシャル)D」で知られる「AE86」といった多くの稀少モデルを見ることができます。ほかにも「西部警察」仕様にドレスアップした「スカイライン RSターボ」の姿も。もちろん前述のワイルド・スピードなどに登場する車両を忠実に再現したカスタムカーに遭遇することもあり、JDMのほかにはイタリアやドイツ、アメリカ、イギリスなどの本国でも滅多に目にすることのないハイパフォーマンスモデルも多数見られます。

 

そんな日本独自のクルマやチューニングカー、カスタムカーカルチャーと実際に触れるため、クルマ好きの外国人観光客がわざわざ大黒PAまで訪れているのですね。ちなみにインスタグラムでは「#daikoku」というハッシュタグだけで8万件近くの投稿があります。もちろん全ての投稿が、外国人観光客が大黒PAで撮影した写真という訳ではありません。しかし、それだけ多くの人々が訪れていて、さらにその投稿に興味を持っていると言えるでしょう。

 

海外から注目を集めるのは大変喜ばしいことです。立派な観光資源と言っても過言ではありません。しかし残念ながら、そのことでいくつかの問題も起こっています。

 

例えば大黒PAはクルマでしか入ることができないため、外国人観光客たちは徒歩で近くまで行き、外壁の柵をよじ登って侵入するケースが発生しています。クルマがないので白タクシーで乗り付ける、または通常のタクシーで乗り付けたは良いが、閉鎖によって帰りのタクシーを呼べなくなってしまう、といった光景が増えています(閉鎖については後述)。そして外国人観光客は家族連れで訪れているケースも多いため、小さな子ども達が駐車スペースで走り回る姿も見られます。クルマの往来が増える夜間では、ドライバーからは足元が大変見えにくく、事故などのトラブルも起こりかねません。

 

大黒PA内でのマナー向上が大切

大黒PAでは、週末や祝日前夜の20時30分、あるいは21時から数時間にわたって閉鎖されてしまうことも度々あります。これは、大きな騒音をたてて集会などが行われたり、チューニングカーやスーパーカーが大型車スペースに侵入したり、PA内を周回したりなどの迷惑行為によって、一般利用者が困る状況になるのを防ぐことが主な目的となっています。大黒PAは基本的に休憩施設なので、そういった状況が続いて快適な休憩が妨げられるなら、さらに厳しい規制がかかるかもしれません。

 

これは外国人観光客に限った話ではありませんが、大黒PAの快適なひと時や、観光資源としての価値を守るため、空ぶかしや大挙しての集会、ゴミのポイ捨て、路上喫煙、立ちションと言った迷惑行為は止めるなど、利用する際のマナーを深めて行くことが大切ですね。

 

 

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正直ガジェット・AVとしての実力はどう? その道のプロが最新「サイバーナビ」を試したら……

先進の機能を満載して多くの人を魅了しているカーナビゲーションが、パイオニアのカロッツェリア「サイバーナビ」です。その最新モデルが発売されたのが2023年10月のこと。

 

従来モデルにも備えられていた使い放題のインターネット接続サービスなど、ネットワーク機能はそのままにカーナビ機能を極め、新たにサイバーナビ史上最高峰と言われる高音質設計までも取り込んだ最新型へと進化したのです。

 

でも、いまやスマホのアプリを使えばカーナビだって簡単に使えてしまう時代。先進機能を満載しているとはいえ、サイバーナビは本当に魅力的なのか、懐疑的になる人も少なくないでしょう。

 

そこで今回は、サイバーナビのカーナビ機能を紹介しつつ、デジタルガジェットとしての良さや、史上最高峰となった高音質再生機能を、“その道に詳しい人たち”にチェックしていただくことにしました。

↑試乗車に搭載された最新のサイバーナビを、“その道のプロたち”がチェック

 

まずは基本性能をおさらい

今回取材したのは、サイバーナビの中で最も画面サイズが大きい9V型で、ネットワーク機能を備えた「AVIC-CQ912Ⅲ-DC」です。ラインナップにはほかに8V型モデルや7V型モデルの計8モデルがあり、7V型ではボディサイズを幅200mm/180mmから選ぶことができます。また、全モデルでネットワーク機能対応機を選択できるのもポイントと言えるでしょう。

 

そして、サイバーナビたるゆえんなのがこのネットワーク機能なのです。

 

ネットワーク機能の最大の特徴は、市販カーナビ初の通信量無制限、使い放題のインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応したことにあります。これはドコモの高速データ通信を使ったネットワークサービスで、地図の自動更新やYouTube動画の再生、車内Wi-Fiスポット化といったサービスが無制限でいつでも楽しめるようになるのです。

↑サイバーナビ本体でネットに接続できるうえに、Wi-Fiスポットとしての利用も可能。もちろん、ネットワーク名やパスワードを任意に設定できる

 

しかも、サイバーナビのネットワークスティックを標準付属しているモデルを選べば、最初の1年間は無料で使い放題となる使用権をゲットできます。この1年間、じっくりとdocomo in Car Connectのサービスを使い倒し、それ以降は自分に合ったプランを用意された3つの中(1日550円、1か月1650円、1年1万3200円/各税込)から選べばいいというわけです。

 

加えてサイバーナビ本体にはYouTubeを直接再生できる機能も備わっているので、スマホのように見たい動画を探して好みのコンテンツを再生できます。もちろん、docomo in Car ConnectによるWi-Fiスポットに接続して、同乗者が自分のスマホで楽しんでも構いません。

↑サイバーナビでYouTubeを表示。9V型だと運転席から見える画面はわりと大きく、コンテンツの視認性がいい

 

また、サイバーナビならエンジンさえ動いていれば停車中であってもこのネットワーク機能を楽しめます。なので、車中泊などで利用するのもOK。いろんな使い方ができるのもメリットなのです。

↑休憩中にちょっと動画を楽しんだり、あるいは運転中に音声コンテンツを再生したりと広い用途が考えられる

 

さらに、サイバーナビには出掛けた先で自宅のレコーダーにアクセスできる機能もサポートしています。録画済みの番組を見られるのはもちろんですが、見逃せないのが自宅で受信中の地デジ以外に、スポーツ中継が多いBSやCS放送までも楽しめるところ。スポーツはリアルタイムで見るからこそ価値があるわけで、サイバーナビなら場所にとらわれず、出掛けた先で見られるわけです。

↑自宅のレコーダーにアクセスできるRecorder Accessの画面。スマホアプリで自宅のレコーダー、スマホアプリとサイバーナビ「DiXiM Play for carrozzeria」アプリとそれぞれペアリングし、docomo in Car Connectの通信回線を使えばレコーダーのコンテンツを再生できる

 

こうした便利な機能を備えたサイバーナビですが、ガジェットとしての実力はどうなのか。日々多くのガジェットをレビューしているヤマダユウス型さんがチェックします。

ヤマダユウス型

楽器、カメラ、ゲームなどを好むフリーライター。平時はガジェットに生かされつつも、休日は登山やキャンプで魂を漂白している。最近は塊根植物にハマっている。

 

ディスプレイは精細で操作性が明快。Wi-Fiはゲームも快適(ヤマダユウス型)

まず印象的だったのは、ディスプレイの発色の良さです。解像度は1280×720ドットのHDサイズですが、パネルの光沢感や色の鮮やかさも相まって、非常に精細に感じました。また、昨今は大画面のディスプレイを見る機会も少なくありませんが、画面サイズに対する物足りなさは感じませんでした。

 

視野角も広く、運転席からも助手席からも画面がクッキリと見えます。カーナビは斜め方向から見るのが基本となるので、そこをキッチリ抑えているのはさすが。本モデルはどこから見ても情報を受け取れます。ガジェットのディスプレイスペックで見るとやや控えめですが、カーナビとして見たときにスペック以上の作り込みがなされていることを感じます。

 

操作性やインターフェースのデザインも明快で、初めて本機に触った筆者が説明を受けずとも、設定画面やブラウザー操作までこなすことができました。特に、地名を入力すると検索候補を表示してくれる「サジェスト入力」は、タッチ操作での入力にとっても便利! 音声入力の精度も高く、音声操作とタッチ操作のどちらからもアプローチできるのは、最新ガジェットにも通じるインターフェースでしょう。

 

スマホなどでは当たり前と言えるかもしれませんが、カーナビでも“その当たり前”を実現しているところは注目すべきところです。

 

またWi-Fiスポットにできるユニークな機能を使えば、たとえば自宅で使っているタブレットや、携帯ゲーム機のオンライン対戦などもじっくり楽しむことが可能です。回線速度を測ると下りで約20Mbps、上りで約11Mbpsとなり、動画視聴はもちろんオンラインゲームも快適に楽しめるでしょう。

↑スマホやタブレット、ゲーム機をネットワークに接続できるので、たとえば渋滞にハマってしまっても退屈はしのげそう

 

Wi-Fiスポットの利用に必要なdocomo in Car Connectも利用期間を選べるため、たとえば旅行や帰省のときに3日間だけ利用する、といった柔軟な使い方もできるのは便利だと感じます。

 

高品質なパーツ、最適な音場でたどり着いた史上最高峰の音質

続いて“サイバーナビ史上最高峰の高音質”について紹介しましょう。これは発表されたリリースで、「原音再生にこだわった高音質を実現する設計思想『マスターサウンド・アーキテクチャー』のもと、新『サウンドマスタークロック』をはじめとした高音質パーツを惜しみなく採用し、サイバーナビ史上最高の音質を実現」したというものです。

 

特に注目なのが、デジタルオーディオの要ともなる基準クロック信号の生成において、最新サイバーナビでは従来よりも高品質かつ高精度なものを採用していることです。これがジッターを低減し、音質劣化を抑えてより高品質なサウンドを提供可能としたのです。

↑新しくなったサウンドマスタークロック

 

さらにハイエンドオーディオ機器・プロ用オーディオ機器用の日清紡マイクロデバイス製「MUSES8820」を採用。これは高級オーディオ製品向けに開発されたもので、車載器でありながら、まさに素材からして高音質を徹底して極めたというわけです。

↑高音質オペアンプのMUSES8820。これらの高音質パーツを採用し、“サイバーナビ史上最高峰の高音質”を実現したという

 

ただ、カーオーディオの場合、本体で音作りを極めても取り付けた状態によってその能力を活かせないこともあります。そこで役立つのが、サイバーナビが以前から搭載してきた車内の音響を最適な状態に調整する「オートタイムアライメント&オートイコライザー」です。調整に必要なマイクは別売りとなっていますが、これによってわずか4~5分で取り付けたクルマに最適化した音場をもたらしてくれます。

↑各スピーカーから音が出るタイミングを調整するタイムアライメントの設定画面

 

調整を終えた後でこの効果をON/OFFでチェックしてみるとその違いは歴然! まさにこの機能は高音質化されたサイバーナビの実力を引き出すのに欠かせない機能であることを実感させられます。サイバーナビを取り付けたら、高音質を存分に楽しむためにもぜひ調整しておくことをオススメします。

 

では、これらのこだわりを詰め込んだサイバーナビ史上最高の音質は、具体的にどういった音質なのか。オーディオ・ビジュアル専門のライターである山本敦さんがチェックします。

山本 敦

オーディオビジュアル誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾに音楽配信、スマホなどポータブルオーディオの最先端を徹底探求。海外の展示会取材やメーカー開発者へのインタビューなども数多くこなす。

 

原音に忠実。クルマの中が本格的なオーディオルーム&ホームシアターになる(山本敦)

音質はこれまでパイオニアがオーディオで培ってきた傾向に似て、原音に忠実ですごくピュア。車の中が専用のオーディオルーム、ホームシアターに早変わりします。

 

サウンドはとてもフラットなバランスでむやみな味付けがないぶん、再生する音楽や騒音の多いドライブ環境などによっては低音が若干物足りなく感じるかもしれません。そんなときにはイコライザー機能が活躍してくれます。たとえば「Vocal」を選ぶと歌声が前に出てきますし、「Powerful」に変更すればビートが効くなど、ドライブシーンや楽曲に合わせた音の作り込みができてすごく楽しめます。

↑イコライザーの設定画面。真ん中下でプリセットされている設定を選び、右側の数字でイコライザーの効きを選べる

 

また、ハイレゾ音源にも対応しています。試乗車にはハイレゾ対応スピーカー「TS-C1730SⅡ」が搭載されていることもあり、楽曲の情報量がしっかりと出ていて、クラシックや声楽系の曲でも細かいニュアンスを感じ取れました。パイオニアらしい、ハイレゾ高音質に妥協なくこだわり抜いたシステムと言えます。

↑ハイレゾ音源は主にUSBかSDメモリーカード経由で再生。試乗車ではサイバーナビ液晶の裏側にSDカードスロットがありました

 

一方、普段スマホで聞くようなBluetoothオーディオも、ハイレゾ相当に高音質化する「マスターサウンドリバイブ」のおかげで、音楽配信やビデオのオーディオトラックも断然リッチな音質で聴けます。臨場感がとても豊かで、ひとつひとつの音像を明確にとらえることができます。生々しさがケタ違いです。

↑マスターサウンドリバイブの画面。CDなどの圧縮率の低い音源用の「MODE1」と、圧縮率の高い音源用の「MODE2」が用意されて、音源によって選べる

 

これらに加えて、オートタイムアライメント&オートイコライザーで調整すれば、運転席のポジションに合わせて最高の音質が楽しめます。こうしたオーディオファンの琴線に振れる作り込みはさすがパイオニア。オーディオコンポやホームシアター商品の開発により、培ってきたノウハウがしっかりとカーサウンドにも生きています。

 

通信機能でカーナビ検索が便利になり、地図データの自動更新も

ここからは、カーナビ機能について触れていきましょう。はじめにお伝えしたネットワーク機能の搭載はカーナビ機能にもメリットをもたらします。サイバーナビ内にあるデータ以外に通信機能によるオンラインを活用した便利な目的地検索も実現。「フリーワード音声検索」「フリーワード検索」を用意し、サイバーナビのデータに反映されていない、たとえばオープンしたばかりのスポットなども探し出して目的地に設定できます。

↑フリーワード音声検索は、はっきりと発声すればちゃんと聞き取ってくれるので、たとえばドライブの途中で近くのコンビニなどのスポットを検索する際にも便利

 

ルート案内時には、長年にわたって蓄積してきた膨大な渋滞予測データやリアルタイムの走行・交通情報が「スマートループ渋滞情報」として反映され、ドライバーに最適な情報を提供。専用サーバーの情報を活用して膨大なルート候補から、時間と料金まで考慮して導き出す「スーパールート探索」は、その能力をいかんなく発揮したものと言えるでしょう。

 

地図データもこの通信機能を使って自動で更新してくれます。最新の道路や施設情報を自動でダウンロードしてくれるのはもちろん、費用も最大3年分(最大年6回配信で、期間は発売時~2026年10月31日まで)が無料で付いてきます。

 

また、パイオニア製カーナビをより便利にする会員サービスのMapFanスマートメンバーズに加入すれば、この期間を最大3年から4年(2027年10月31日まで)に延長してくれる特典まで用意されているというからうれしいところです。

↑MapFanスマートメンバーズになると、カーナビの地図や各機能を最新状態で利用できるほか、カーナビの周辺機器をお得に購入できたり、渋滞情報やガソリン価格などをリアルタイムで把握できたりします

 

充実の基本性能にネットワークが加わった新時代のナビ

サイバーナビならではの真骨頂とも言えるのが、カーナビとしての高精度な測位能力。ビルが建て込んだ都会はもちろん、長いトンネルが続いてもサイバーナビは常に正しい位置を表示する優れた能力を備えているのです。

 

たとえば高架道路と下の一般道のどちらを走っているのかも自動的に認識するので、仮に案内されているルートを間違えて高速道路を降りてしまってもすぐに新しいルートで案内してくれます。さらに地下駐車場に入って周回しても出口を見失うことはありません。この優れた能力が運転中の安心感や快適さをもたらし、まさにスマホのナビアプリと決定的に違う点なのです。

 

今回、コメントをいただくのに識者の方と駅周辺で待ち合わせしたわけですが、駅前は開発が古く、道路が狭くて一方通行をうまくクリアしてアプローチする必要がありました。そんな場所でもサイバーナビは分岐ポイントを的確に案内してくれました。

↑カーナビの根幹であるルート案内はもちろん的確

 

サイバーナビはそうしたカーナビとしての基本機能をしっかり押さえ、そこに最先端の技術を取り込んで進化し続けてきたと言えます。しかもそこにはネットワークとリンクする新たな時代のサイバーナビの姿があります。カーライフをもっとグレードアップするにも、サイバーナビは大きな手助けとなることは間違いないでしょう。

カロッツェリアのディスプレイオーディオとナビアプリ「COCCHi」の組み合わせが最強だった! 特に相性が良いのは…?

クルマを運転する際に、ほとんどの人はナビゲーションを利用すると思いますが、その選択肢は多様化しています。一昔前なら、カーナビを使う人が主流でしたが、近年ではスマホのナビアプリなどを使用する人も増え、「Apple CarPlay」や「Android Auto」を介して大画面でアプリ画面を表示できるディスプレイオーディオ(以下、DA)や、音声でナビをしてくれるパイオニアの「NP1」のようなデバイスも登場しています。

 

その中でも、ガジェット好きな人たちの間で 話題となっているのがDAです。そして、このジャンルで高い人気を獲得しているのがパイオニアのカロッツェリア。「楽ナビ」や「サイバーナビ」などのカーナビで知られるブランドですが、DAだけでも複数のラインナップを用意しています。今回試用したのは、そのトップモデルである「DMH-SF700」です。

 

そもそもDAとは? DMH-SF700を選ぶメリット

DAとは、車載のディスプレイにスマホを接続することでアプリを表示できるデバイス。といっても、すべてのアプリが表示されるわけではなく、画面に表示されるのはApple CarPlayやAndroid Autoに対応したものだけです。基本的にはナビアプリやミュージックアプリなど、ドライブ中に使うものが表示されると考えておけばいいでしょう。

↑iPhoneを接続すると表示されるApple CarPlayの画面。Android端末を接続すればAndroid Autoの画面が表示される

 

いわゆるカーナビは端末に内蔵された地図データを表示するので、地図の更新が必要になりますが、DAはスマホのナビアプリを使うため、地図は常に最新のものが利用できるのがメリットです。

 

カロッツェリアのDMH-SF700は、画面がフローティングした構造を採用することで9インチという大きなサイズの画面を実現。スマホの画面に比べて圧倒的に大画面なので、視認性も優れていますし、広い範囲の地図を表示させることができます。ディスプレイはHDの高画質に対応しているため、ナビアプリの地図も高解像度で表示することが可能です。

↑ディスプレイをフローティング構造とすることで大きなサイズを実現。本体は1DINサイズに収まるので幅広い車種に取り付け可能だ

 

↑画面サイズは9インチで、スマホの画面とは比べ物にならない視認性の高さ。地図の表示範囲が広いのもメリット

 

DAの自車位置情報はスマホのGPSを活用しているため、カーナビ専用機に比べて自車位置の精度が低いというデメリットもあります。ただ、DMH-SF700ではそれを補うためにGPSアンテナも装備。車体のセンサーとも接続されるため、位置情報を補正することができます(ただしアプリ側が測位された情報をどのように処理するかはわからないため、位置情報が常に補正されるとは限らないとのこと)。長年カーナビを手掛けてきたブランドらしい気遣いと言えるでしょう。また、DAと相性の良い商品として車載用Wi-Fiルーターも用意されています。試乗車にはそれも装着されていました。

↑スマホのGPSを補うためのGPSセンサーも装着されているので、より精度の高い自車位置の表示に貢献

 

↑カロッツェリアの車載用Wi-Fiルーター「DCT-WR100D」が装着されているので、クルマをWi-Fiスポットとして活用できる

 

↑Wi-Fiでネット接続することによって、DMH-SF700でAmazon Alexaの機能も使用可能。音声認識中は画面の下端が青く光る

 

カーナビアプリ「COCCHi」との組み合わせが最適解

DAはスマホアプリの画面を表示させるものだけに、ナビゲーション機能についてはアプリに依存することになります。利用者が多いアプリというと「Google Maps」や「Yahoo!カーナビ」がありますが、カロッツェリアを展開するパイオニアでも「COCCHi(コッチ)」というカーナビアプリをリリースしています。昨年9月にリリースされ、今年2月までに20万ダウンロードを達成。カーナビ事業で培ってきたノウハウが反映されたアプリです。

 

アプリ自体は無料でダウンロードすることができますが、Apple CarPlayやAndroid AutoでDAに表示するためには基本プラン月額350円(1か月間無料)の有料登録が必要。有料版になると、複数ルートの選択が可能となるほか、VICSとプローブ情報を反映したスマートループ渋滞情報や、オービス情報の利用、車格別のルート検索などが使えるようになります。

↑DMH-SF700などのDAで利用するためには有料登録が必要。複数の候補からルートを選ぶこともできるようになる

 

↑無料版と有料登録した際に利用できる機能の一覧。駐車場の満空情報の表示や、ニューラル音声による案内も利用できるように

 

COCCHiの持つアドバンテージの1つが、ルート精度の高さです。カロッツェリアブランドで数多くのカーナビを手掛けてきたパイオニアには、時期や時間帯によってどこが混むかといった渋滞情報や、信号ごとの通過時間などのデータが膨大に蓄積されています。そうした情報と最新の渋滞情報などを組み合わせて提案されるルートの信頼性は高く、サーバ上でルートを検索するため、同社のフラッグシップモデル「サイバーナビ」に迫るレベルのルートを利用することができます。

 

実際ドライブしていても、いつもと違うルートで案内されるなと思っていたら、それは渋滞を避けるためのルートだったり、1つ手前の出口で高速道路を出るように促されたら、その先で渋滞が発生していたというようなことが何度かありました。また、地図だけではわかりづらい交差点や高速道路の出入り口などでは拡大表示もされるなど、案内もわかりやすく迷うようなことがありません。

↑どこを走るのか判断しづらい交差点などでは、写真のように拡大図が表示される

 

もう1つ、使ってみて便利だと感じたのは、画面の左上をタッチすると高速道路と一般道を切り替えることができること。筆者がよく通るルートには高速道路の高架下を走る道路があるのですが、そこを走っていると一般道を通っているのにナビアプリでは高速道路を走っている表示になることがあります。そんなときに、ここに触れると一般道でのルートにワンタッチで切り替えることができました。

↑画面左上の高速道路と一般道の切り替えは、役立つシーンは限られるかもしれませんが、かなり便利

 

音声案内も、「次の信号を右です」という案内だけでなく、曲がるべき交差点で「この信号を右です」と案内してくれるなど、かなり親切。複数の車線がある道路で「右寄りの車線がおすすめです」などと、走るべき車線を案内してくれるのも便利でした。ちなみに、音声案内が多いと感じる人には、発話頻度を調整する機能も用意されています。

↑曲がるポイントなどだけでなく、走るべき車線も案内してくれるのは知らない道ではかなり便利

 

誰がDA+スマホカーナビアプリが最適なのか考えてみた

ここまでDAとCOCCHiのメリットについて解説してきましたが、今回のコンボはどんな人に最適なのか考えてみました。

 

■カーナビにコストをかけたくないユーザー

カーナビを必要とするのは、1か月に数回程度という人やカーAV機器にコストをかけたくないという人ならばDA。そもそもカーナビよりも安価で財布にも優しい。カロッツェリアにはコストを極力抑えたい方に向けたモデル「FH-8500DVS」から、このDMH700のようにこだわり層も満足できるモデルもあります。スマホと視認性が変わらないので、スマホ操作性に慣れている人にも使いやすいです。また、走行履歴で得たログデータをもとにCO2排出量やガソリン代金を可視化できるため、そのデータをもとに自身の運転を振り返って環境や財布にも優しい運転につなげていくことも可能。ガジェット好きでスマホカーナビアプリとの最先端を味わいたい人にはおすすめでしょう。

 

■輸入車好きのユーザー

輸入車オーナーにとっては、DA+スマホカーナビアプリの連携によって日本の本格的なナビを使えるメリットが大きいと思います。輸入車の純正カーナビは日本に最適化されていないことが多く、例えばフォルクスワーゲンやBMWなどの純正ナビだと高速道路のインターチェンジやパーキングエリアの案内パネルが表示されないといったことがあるからです。

 

■エンタメ好きなユーザー

DAは「Googleアシスタント」や「Siri」など音声アシスタントにも対応しており、聴きたい音楽の再生やカーナビアプリの目的地設定、簡単なメッセージの送信など様々な操作が音声で可能です。ドライバーの余計な画面タッチが減り、「ながら運転」による事故の危険性も減らせます。特にSF700は、9インチの大画面なので見やすさも抜群!

 

まとめ

筆者は、過去に様々なカーナビを使ってきましたが、近年はスマホのナビアプリを主に使用しています。いわば、カーナビ派からスマホ派に乗り換えた者で、ナビアプリもいくつかの種類を試してきました。そんな目から見ても、DMH-SF700とCOCCHiの組み合わせは、かなり”最強”に近いと感じます。ルートの信頼性や案内のきめ細かさ、そして長年のカーナビ開発で培ってきたドライバーへの配慮はかなり高いレベル。カーナビを使っていて、地図更新などにわずらわしさを感じている人や、スマホのナビアプリでは案内が今ひとつ物足りないと感じている人には、一度試して欲しいと思える完成度です。

 

↑COCCHiはドライバーアシストと呼ばれる機能も用意。駐車場やガソリンスタンド、トイレなどドライブ中に探したくなることが多いスポットを素早く検索できる

 

ただ、この組み合わせにも欠点がないわけではありません。それは、目的地検索の使い勝手。住所などまでわかっている場合は問題ありませんが、あまり有名ではないスポットを名称で検索しても、見つけ出せない場合がありました。Googleなどスマホでのスポット検索を使い慣れていると、この辺りは不満に感じるかもしれません。

 

検索機能が劣っていることはパイオニアでも把握しているようで、Googleで検索した結果をCOCCHiに転送できる機能が用意されています。検索と、ルート設定や案内など、それぞれの得意分野を活用することができます。

 

最後に1つ触れておきたいのが、DMH-SF700で音楽再生した際の音質の良さです。ドライブ中はスマホに保存してある音楽を聴くことが多いのですが、同じ音源のはずなのにDMH-SF700で聴くと解像度がかなり高くなっていることが感じられました。実はDAのフラッグシップモデルだけあって、ノイズを処理するDSPやパワーアンプ部のコンデンサなどにはかなり高品質のパーツを採用しているとのこと。

 

また、圧縮音源をハイレゾ音源相当で再生する「マスターサウンドリバイブ」機能も搭載しているので、いつもの音源でも高音質で楽しむことができます。ドライブ中の音楽は気分を高めるためにも重要と考える人は、一度味わってもらいたい音質です。

 

現在COCCHiは、パイオニア製ディスプレイオーディオ購入者対象の6か月無料キャンペーンを行っています。

COCCHiダウンロードはコチラ:https://cocchi.onelink.me/wgPQ/lhe56cig

 

撮影/松川 忍

 

 

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2024年クルマの重要キーワード「SDV」とは何か? CESで見た注目技術をおさらい

新年を迎えて間もない1月9日(現地時間)、米国ラスベガスでは世代最大級のテクノロジーイベント「CES(シーイーエス)2024」が4日間の日程で開催されました。

 

CESは1967年からアメリカ国内で続く歴史ある見本市で、かつては家電中心だったものがいまではIT化されたデジタル家電を含むビッグイベントへと成長。そして、その中心となっているのが自動車です。自動運転や電動化が進む過程でのAIやソフトウェアを駆使した数々の新技術が披露されました。

↑56年の歴史を持つCESは、ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)を中心として、その周辺にある巨大なホテルを巻き込んで展開するビッグイベントとなっている

 

ソフトウェアのアップデートで進化し続ける「SDV」

まず取り上げたいのは、今回のCES2024で決して見逃せないキーワードとなった「SDV」です。これはソフトウェア・ディファインド・ヴィークルの略で、要はソフトウェアのアップデートによってクルマが進化していくというものになります。

 

これまでクルマは新車のときの機能でずっと使い続けるのが普通でした。それがクルマの中枢を司るコンピューターを、通信によってアップデートすることでさまざまな機能が追加されていくことが可能となるのです。

 

この機能はすでテスラが一部導入していて、コンテンツを追加するごとにユーザーは料金を支払うので、自動車メーカーとしても購入後もユーザーから料金が支払われ、ユーザーも新機能を楽しめるようになる。つまりWin-Winの関係がここで成り立つというわけです。

↑CES2024ではAIとSDV(Software Defined Vehicle)が大きなテーマとなった。特に通信によって機能をアップデートできるSDVは、新しいクルマの形として各社がこぞってその対応状況を発表していた

 

そうした中で、CES2024において、SDVをはっきりと主張したのがソニー・ホンダモビリティの「AFEELA(アフィーラ)」でした。プレイステーションで培った人間の感性とエモーショナルな体験を、バーチャルとリアルで再現するVRを実現しようというのです。後述するホンダの新しいEV「0(ゼロ)シリーズ」も、ホンダ独自の「E+Eアーキテクチャー」が使われ、サービスや機能が新車購入後も進化していくと説明していました。

↑ソニー・ホンダモビリティではAFEELAをADASやエンターテインメントにその機能を加えることを示唆していた

 

また、サプライヤー側の積極的なSDVへの対応にも注目が集まりました。フランスの大手サプライヤー「Valeo(ヴァレオ)」は、EVで使われるバッテリーの温度管理を行なうことで航続距離の延長に貢献するソフトウェアを開発。ドイツの「Bosch(ボッシュ)」もアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と協力することで新たなサービスを加えていく方針を発表しました。

 

また、このSDVが当たり前の時代になってくると、その機能ごとにパーソナライズ化が可能となります。たとえば、IDごとに自分の好みを設定しておくと、新たに購入したクルマにもその好みが反映されます。さらにシェアリングで乗り換えたときもIDひとつで同じようなことが可能となるのです。まさにスマホのように“機種変”してクルマを乗り換えられる時代が訪れるのかもしれません。

 

ただ、この機能を活用するには同じプラットフォーム上にあることが求められます。まさにここに覇権が存在するわけです。その意味でSDVの普及により、自動車のあり方は大きく変化していくと考えていいでしょう。CES2024ではそうした時代をいち早く体験できるイベントとなっていたのです。

 

自動車メーカーの出展は減ったものの、関連メーカーの出展が目立つ

ここからは改めて各社の動向を見ていきましょう。とは言ったものの、CESは会場が半端なく広い! ターゲットを絞り込まないと、肝心なものすら見落としかねません。ですから私は基本的に自動車関連だけに絞って見ることにしています。しかし、今となってはそれも危うい。CESそのものに多くの自動車関連メーカーが集まるようになったからです。

 

特にサプライヤー系の数が多く、世界最大のボッシュをはじめ、コンチネンタルやZF、ヴァレオ、フォルシアといったサプライヤー大手がズラリと勢揃い。加えて、パナソニックや三菱電機のほか、クアルコムやブラックベリー、セレンスなどIT系で名を馳せるメーカーも自動車関連に参入して新技術を披露していました。

 

ただ、以前に比べると自動車メーカーの出展は減りました。かつては日本からもトヨタや日産も出展していましたが、特にトヨタグループはデンソーやアイシンを含め、現在は出展を見送っています。理由は定かではありません。

 

そんな中でブースを構えて出展していたのは、メルセデス・ベンツやヒョンデ、キアに加え、日本からはホンダとソニー・ホンダ。なかでも大きな存在感を見せたのが、新たなEVブランド「0シリーズ」を発表したホンダでした。

↑メルセデス・ベンツはCES2024に出展した数少ない自動車メーカーのひとつ。写真は北米で初披露された「コンセプトCLAクラス」で、4ドアクーペ、シューティングブレーク、SUVを揃えた新世代のEVシリーズとなる

 

電動化に対して本気であることを示すホンダの0シリーズ

ホンダは2040年にラインナップのすべてを電動化すると宣言しており、0シリーズはその頂点に位置するグローバルブランドとして発表されたのです。CES2024では「SALOON(サルーン)」と「SPACE-HUB(スペース・ハブ)」の2台を発表。

↑EVの頂点とする「0シリーズ」を発表したホンダのプレスカンファレンス。「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」のコンセプトの下、新たなEVの価値を創造するものとした。プレゼンは本田技研工業の三部敏宏社長(写真中央)

 

ともにシリーズを象徴するコンセプトモデルとしましたが、サルーンはほぼ披露されたデザインで登場予定であることも明かされました。一見、イタリアンスポーツカーとも思しきデザインそのままに登場するなんて驚きです。

↑ホンダ「0シリーズ」の『SALOON』。思わずイタリアンスポーツカー? と見まがうデザインで、2026年にもほぼこのデザインで量産されるという

 

↑魅惑的なデザインからは想像できないほどの広い室内空間を実現。インテリアはコンセプトとして発表されたもの

 

一方のスペース・ハブはコンセプトモデルであるものの、ホンダが進めてきた“人のためのスペースは最大に、機械のスペースは最小に”との「MM思想」に、「ステア・バイ・ワイヤ」技術を組み合わせることで、ミニバンらしい広い室内と低重心、軽量さを実現したものです。

↑ホンダ「0シリーズ」の『SPACE HUB』。「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発したモビリティで、発表時はあくまでコンセプトとする

 

↑「ユーザーの『やりたい』に即座に応えるフレキシブルな空間を備え、人と人、人と社会をつなぐハブとなり共鳴を生み出す」思いを込めたという

 

0シリーズの開発を統括した電動事業開発本部四輪事業戦略統括部ビジネスユニットオフィサーの假屋 満氏によれば「スペース・ハブの反応は上々で早急に考え直す必要があるかもしれない」と話し、そのほかにSUVも存在しているとのこと。

 

さらにこれを機に、長く親しまれてきたホンダのロゴマークデザインを変更することも発表されました。まさに、この発表は日本メーカーの電動化への本気度を示す好例となったことは間違いないでしょう。

 

ダッシュボードで展開されるエンタメ。アフィーラの実像が見えてきた

もうひとつ見逃せない電動化への動きを見せたのが、2022年、ソニーとホンダが折半で立ち上げた「ソニー・ホンダモビリティ(SHM)」です。同社は2023年のCES2023で新ブランド『AFEELA(アフィーラ)』を冠したプロトタイプを発表。2025年中に受注を開始して、翌年にはデリバリーを予定することもアナウンスされました。そのプロトタイプがCES2024ではより量産に近い形となって披露されたのです。

↑ソニー・ホンダモビリティの『AFEELA』プロトタイプ。サイドミラーを電子式から光学式に変更したり、フロントグリルのメディアバーをフロントだけにしたりするなど、米国内の法規合わせてより量産モデルに近い形で披露された

 

一見すると2023年と変わりがないように見えますが、SHMによれば「車体は全面刷新」したとのこと。外観からわかるのは、アメリカの法規に合わせてサイドミラーを電子式から光学式、いわゆる普通のミラーとしたほか、前後にあったメッセージや情報を表示できるメディアバーがフロントだけに変更されていること。加えてルーフに搭載された前方を高精度にセンシングするLiDARも他社製に変更されているようです。

 

これに合わせて具体的なスペックも発表されています。寸法は全長4915×全幅1900×全高1460mm、ホイールベース3000mm。パワーユニットは前後それぞれに最高出力180kW(約245PS)のモーターを搭載する完全な電動4WDで、搭載されるリチウムイオン電池の容量は91kWhです。また、自動運転レベル3も実現していると発表されました。

 

続いて、アフィーラの真骨頂となりそうなのが、ダッシュボードで展開されるエンターテインメント機能です。左右いっぱいに広がるパノラミックスクリーンには走行情報以外に映画やゲームといった、出かけた先で楽しめるコンテンツを表示できるようになっています。

 

ここではARが駆使され、リアルな風景にゲームのキャラクターを乗せて展開することも可能。身体が音に包まれるような「360(サンロクマル)リアリティオーディオ」によって、臨場感たっぷりにコンテンツを楽しめる工夫もされています。これはデモとして体験もできました。

↑インテリアのデモでは、ゲームキャラクターを交えたシミュレーションがディスプレイを通して楽しめた

 

また、見逃せないのが、マイクロソフトの「Azure(アジュール)」を活用した対話型パーソナルエージェントを開発中であることです。

 

すでにテキストでの生成AIの体験をされた方は多いと思いますが、これをドライブ中に音声でのやりとりで実現しようというもの。そのうえでアプリのプラットフォームを公開してサードパーティからの参加も呼びかけていくということです。これによってAIとソフトウェアによる新時代のEVが誕生します。

 

VWはChatGPT活用の音声アシスタントを導入

対話型パーソナルエージェントについては、VWも自社のEV「I.Dシリーズ」にChatGPTを利用する対話型音声アシスタントを導入することを発表しています。

↑「I.Dシリーズ」にChatGPTを採用することを発表したフォルクスワーゲンのプレスカンファレンス

 

これは音声認識のトップランナーである「セレンス」と共同開発したもので、目的地を探す際にさまざまな条件を背景に、利用者の好みを判別しながら最適な目的地を提案していくというものです。発表会場では実際にデモも披露され、従来のようにひとつのキーワードでのやり取りを超える複雑なコマンドに対しても応えられる様子を見ることができました。

↑目的地を検索する際にドライバーとさまざまなやり取りを行なう中で、もっとも最適な施設を探し出して設定できる

 

パイオニアはナビアプリに対話機能を早くも搭載か

対話型パーソナルエージェントはパイオニアも採用を考えているようです。すでに日本で展開中のナビアプリ「COCCHi(コッチ)」にマイクロソフトのAzureを活用したもので、会話するような自然言語でやり取りできるのが特徴。利用者が希望を告げると複数の条件に基づいた提案をしてくれ、その様子はまるで助手席の人と会話しているかのようでした。

↑パイオニアが披露したナビアプリ「COCCHi」にマイクロソフト「Azure」を活用し、ChatGPTによって自然言語でやり取りできるのが特徴

 

この技術は音声だけでやり取りができるため、パイオニアではこれをオートバイのユーザーにも展開を想定しているとのこと。早ければ2024年春頃にも日本国内からスタートする予定とも話していました。ナビアプリが劇的に進化しそうですね。

↑音声だけでのやり取りも可能ということで、オートバイでの展開も視野に日本では今春にも提供される可能性があるという

 

コックピットで表示をON/OFFできる「デジタル・デトックス」の提案

インテリアなどを手がけるマレリは、AIを活用したアバターをコックピットに取り入れた技術を披露しました。従来の文字やアイコンでの表示よりも、アバターの動きによって内容をわかりやすくドライバーに伝えられるのがポイントとなります。

 

また、マレリは「デジタル・デトックス」と呼ばれる、新たなコックピットでの表示方法を提案。これは必要に応じて表示をON/OFFできるもので、たとえば助手席側では普段は木目パネルなのに、必要となればそこにさまざまな表示を可能にします。従来はディスプレイを左右いっぱいに搭載していましたが、それを“必要なときに必要なぶんだけ表示する”との発想の転換を提案したものと言えます。

↑マレリは「デジタル・デトックス」と呼ばれる、新たなコックピットでの表示方法を提案した。必要に応じて表示をON/OFFし、表示しない時は木目パネルのままでリビングにいるような府に機を味わえる

 

燃料電池、水素エンジン向けコンポーネントを開発するボッシュ

水素への取り組みを本格化させることを発表したのがボッシュ。気候中立を目指しながら世界のエネルギー需要を満たすカギは水素であるとし、今後は水素バリューチェーンに沿ったソリューションを展開していくそうです。背景にはEV熱が一巡したいま、世界各国で水素製造に対して大型の補助金政策が始まっていることが挙げられます。

 

ボッシュはすでに燃料電池を大型車向けに開発し、現在のディーゼルエンジンに置き換えることを目指します。また、水素を直接使うエンジンに向けたコンポーネントの開発も進め、年内にもこれを活用した水素エンジンの実用化を見込んでいるそうです。

↑ボッシュは新たに水素への取り組みを本格的に進めていくことを発表。水素を化学反応によって電気を発生される燃料電池だけでなく、水素を直接燃料として使う水素エンジンへのコンポーネントも提供を本格化させ、年内にもそれが実現する計画だ

 

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90年代から「音声入力」を提案していた。「楽ナビ」25周年をデジタルの歴史に重ねると面白いことだらけだった

提供:パイオニア株式会社

今から26年前の1998年にローンチし、2023年で25周年目を迎えたカロッツェリア「楽ナビ」。実はモノ・コト情報誌「GetNavi」も2024年で創刊25周年を迎えました。ほぼ同じ時代をくぐり抜け、共通しているのは互いにデジタルが進化する課程の中で育ってきていること。そこで楽ナビの誕生から現在までを5モデルに絞り、デジタル関連の時代背景と共に振り返ってみることにしました。

 

 

1990年代はデジタルがクルマにも広く浸透し始めた時代

楽ナビが登場した1990年代は、デジタルの波が車載器にも押し寄せた時代。そうした中でGPS衛星からの電波を受信し測位する、いわゆる“GPSカーナビ”が誕生します。それが1990年にパイオニアが市販モデル初のGPSカーナビとして発売した、カロッツェリア「AVIC-1」でした。

 

それまでのカーナビは、使う前に必ず現在地を地図上に設定する必要がありましたが、このGPSカーナビの登場により、現在地はいつでも正しい位置に表示できるように進化。ここからGPSカーナビの歴史はスタートしたのです。ただ、AVIC-1は目的地検索ができないため、“カーナビ”というよりも正確な現在地を地図上に表示する“電子マップ”としての性格が強かったとも言えるでしょう。

 

その後、1990年後半から91年にかけて、ルートガイドを搭載したカーナビが自動車メーカーから登場します。これをきっかけとして、ルートガイドを伴った本当の意味でのカーナビの機能競争が始まることとなったのです。

 

【1998年】タクシーに乗るように目的地を音声で告げるだけ。楽ナビ「AVIC-500」

ただ、ルート案内を備えてカーナビ機能は向上したものの、その機能をうまく使いこなせない人が少なからず存在していました。カーナビでルート案内をするには目的地設定は欠かせませんが、当時はメニューを開いてカテゴリーで絞り込んでいく必要があり、この操作が“壁”となってカーナビを使いこなせない人が一定数いたのです。

 

「そんな状況を放っておいてたら真のカーナビ普及にはつながらない」。そう考えたパイオニアの開発チームは、使いやすさを徹底追求したカーナビの開発をスタートさせます。試行錯誤を繰り返した結果、目的地の検索に音声認識機能を組み合わせることが最良と判断。ここに楽ナビの初代「AVIC-500」が誕生することとなったのです。

 

AVIC-500のポイントは「タクシーに乗る時のように行き先を音声で伝えるカーナビ」にありました。それまで難しいと感じていた目的地設定は、付属するリモコンの発話ボタン「お出かけボタン」を押して行き先を告げるだけで済むようになったのです。スマホが普及した今でこそ、音声で目的地を探すのは当たり前となっていますが、ガラケーしかないこの時代にこれを実現したのはまさに画期的なことだったと言えるでしょう。

 

その認識精度や検索能力は現在のスマホとは比べものにならないほど低かったのは確かです。しかし、「カーナビを誰でも使えるようにする」との楽ナビのコンセプトはこの時に確立し、それは多くの人に受け入れられて大ヒットへとつながります。以来、楽ナビはそのコンセプトを継承しながら、時代に合わせた最適なモデルへと発展しつつも、その精神は今もなお連綿と受け継がれているというわけです。

 

GetNaviの誌面と振り返る1998年デジタルトピックス

1998年をGetNaviの誌面からも振り返ってみます。この年は、Google検索がスタート。大量の情報を「検索して探す」が一般的になっていった時期でもありますが、楽ナビは2010年代以降につながる「ボイスコントロール」を先立って提案していました。

 

また、Apple iMacの「初代」モデルが登場。普通の人でも使える「わかりやすさ」にこだわった点で楽ナビとの共通点を見出すことができます。また、PDAの拡大も見逃せないところ。PDAには地図ビューアー機能を搭載していることも多く、外部のGPSレシーバーを追加することでナビゲーション的な役割を果たしていました。懐かしいですね。

 

■iMac。Appleのディスプレイ一体型デスクトップ「iMac」が登場したのが1998年。Appleに復帰したスティーブ・ジョブズが最初に発表した製品で、これまでのパソコンのイメージを一新するポップなデザインにより大ヒット。Apple復活を印象づけました。

2018年VOL.7

 

■Palm III。イケショップなど秋葉原の店舗で「Palm(パーム) III」と日本語化キット「J-OS」が販売開始。GUI、ペン操作に対応した「PDA(パーソナルデジタルアシスタント)」が注目を集めました。

2018年VOL.4

 

■Google検索。今では当たり前の「Google検索」もこの年にスタート。検索エンジンとしては後発でしたが、特許取得の特殊アルゴリズムを使用した独自のロボット型検索エンジンにより一気に普及しました。

 

【2005年】楽ナビ「AVIC-HRZ09」はHDDを初搭載

カーナビは今も昔も、いかに多くの地図データを活用できるかがポイントです。楽ナビもデビュー当初こそデータをCD-ROMに収録していましたが、より詳細なデータを収録するために容量が7倍以上もあるDVD-ROMを採用するように進化。これによって、全国主要都市の市街地データを収録可能になり、ピンポイントでの目的地設定が可能になりました。

 

一方で、時代はカーナビにエンタテイメント性を求めるのが常識となっていました。そこで楽ナビは2005年、「AVIC-HRZ09」でデータ収録メディアをHDD(ハードディスク)とした新モデルを登場させます。

 

AVIC-HRZ09は、HDDに地図データだけでなく、再生したCDの音楽データまでも収録できるミュージックサーバーを実現。それ以外にも、当時流行っていたMD(ミニディスク)ドライブも搭載する一方、人気を集め始めていたiPodへの対応も果たすマルチメディア対応としました。

 

映像面でもディスクドライブをCDとDVDが両方楽しめるコンパチブル化を果たし、2003年からスタートした地デジにもオプションで対応。これにより幅広い映像メディアも楽しめるように進化させました。これだけ多彩なエンタテイメント機能を2DINというサイズに凝縮したわけで、このモデルで楽ナビは音楽や映像までも一括で楽しめるカーナビへと進化していったのです。

 

GetNaviの誌面と振り返る2005年デジタルトピックス

Googleマップは2005年生まれでしたが、楽ナビはすでにAVIC-HRZ09で美しさと実用性にこだわった「ターゲットマップ」を採用するなど、マップ表示からカーナビの性能を高めてました。人気を集めたiPod nanoが登場する頃には、楽ナビもiPod接続に対応。最新かつトレンドのAV機器との連携を実現していたことも見逃せません。

 

■Googleマップ。単なる地図に留まらず、衛星写真、航空写真、ストリートマップ、ストリートビュー、ナビゲーション機能を搭載。ウェブ版、Android版だけでなく、iOS版もリリースされ、世界で最も多くのユーザーに利用される地図アプリとなっています。

 

■iPod nano。iPodの1シリーズとして登場した「iPod nano」。iPod miniの後継モデルとして位置づけられ、画面を搭載するiPodの最小モデルとして人気を集めました。

2005年11月号

 

■YouTube。動画共有サイトの先駆けとして創業され、同年に正式サービスを開始。著作権などさまざまな問題をはらみつつも、巨大メディアプラットフォームとして成長を遂げました。

2007年10月号

 

 

【2008年】地図ストレージにフラッシュメモリーを採用した「楽ナビLite」の初号機「AVIC-MRZ088」!

HDDを採用したカーナビゲーションが主流になる一方で、価格を抑えられるフラッシュメモリーを採用したPND(ポータブルナビゲーション)が伸長していきます。そういった市場の変化を捉えて2008年に導入されたのがこの「楽ナビLite」になります。楽ナビLiteは登場時こそ低価格の1モデルだけでしたが、メモリーナビが主流となる市場変化に合わせてモデルを拡充させていき、多くのヒットモデルを生み出すことになります。

 

初号機になるのがこの「AVIC-MRZ088」です。低価格を売りにしながらもDVDやCDはもちろん、iPodやUSB、SDなどのメモリーオーディオとの接続を可能にするなど、日頃のドライブを楽しく快適にするモデルとなっていました。さらにカーナビとしての機能も進化させます。その立役者がパイオニアが2006年からスタートさせたプローブ型渋滞情報「スマートループ」です。

 

これはパイオニア製カーナビのユーザーが走行実績を収集して交通情報に反映させたもの。これにより、VICSの10倍近い(当時)交通情報をカーナビに反映できるようになり、より高精度に渋滞を避けたルートが案内できるようになりました。オプションの通信ユニットを必要としたものの、その採用でルート案内能力は劇的な進化を遂げたのです。

 

また、楽ナビ用PCソフト「ナビスタジオ」に対応することで、それまで何かと複雑な手続きを必要だった収録データのアップデートで大きな進化が図られました。AVIC-MRZ088で使うSDカードに、全国の天気予報を反映させるウェザーライブをはじめ、PCから音楽ファイルを転送するマイミュージックチャージなどを保存可能としたのです。また、スマートループへの走行実績のアップロードや渋滞情報をダウンロードするほか、地図データの更新もこのソフトを経由して可能になったことも見逃せないポイントとなりました。

 

GetNaviの誌面と振り返る2008年デジタルトピックス

iPhoneやAndroidのスマートフォンの登場で、人々のライフスタイルが変わりました。それらのスマートフォンを楽ナビに接続して、動画や音楽のストリーミング再生など車内空間が楽しめるようになるのは、また後の時代。

 

■iPhone。日本初上陸のiPhoneである「iPhone 3G」がソフトバンクから発売。ソフトバックショップや家電量販店に長蛇の列ができました。PCを使ってインターネットするよりも、スマホを使ってインターネットする時代が始まりました。

2008年9月号

 

■Android。Androidスマートフォン1号機「T-MobileG1」が米国T-Mobileより発売。この端末はキーボードを搭載しており、当初は実験的なコンセプトの製品も多かったです。現在でもAndroidは、さまざまな新技術がいち早く搭載されています。日本初のAndroidスマートフォン「HT-03A」は2009年に発売。

2009年8月号

 

■Google Chrome。Windows、macOS、Android、iOS、Linux用が提供されているウェブブラウザー。Googleのウェブサービスとの親和性の高さ、豊富な拡張機能などの利便性により、ウェブブラウザーのトップシェアを獲得しました。

 

【2014年】使い勝手を進化させた楽ナビ「AVIC-RL09」!

車内エンタテイメントの進化に伴い、時代はインフォテイメント系のサイズアップが重要なテーマとなりました。それを反映して楽ナビは2014年に登場した「AVIC-RL09」で、画面サイズを従来の7型から8型へと大型化。これによって地図の見やすさと、迫力映像の再生を実現させました。

 

また、見逃せないのが「スマートコマンダー」の採用です。もちろん、画面上のタッチパネルは装備していましたが、画面上に手を伸ばす必要があり、操作していると意外に疲れるものです。このコマンダーを手元に置くことで、よく使う7つの機能をショートカット的に使えるようになり、その使い勝手は飛躍的に高まりました。

 

さらに使い勝手を向上させたのは通信を介した音声認識への対応です。たとえば「近くのコンビニ」「軽井沢の観光スポット」などと音声で入力すると、AVIC-RL09はその候補を画面上にリストアップ。ここから行きたい場所を選べばすぐに目的地設定が可能となりました。コマンド入力の起動はスマートコマンダーでも行え、その使い勝手はも良好。まさに初代からの楽ナビならではの思想を感じさせてくれた採用と言えるでしょう。

 

AVIC-RL09はオーディオ機能の強化も見逃せません。きめ細かいサウンド調整が可能なデジタルプロセッサーの搭載し、タイムアライメントやイコライザーといったサウンド調整機能が楽ナビでも行えるようになったのです。自動調整ではないのが残念でしたが、それでも最適な音場設定により音楽をベストな環境で楽しめるのは嬉しい装備となりました。

 

GetNaviの誌面と振り返る2014年デジタルトピックス

スマホを使ってできた操作を手首からできるApple Watchの新しい操作感が新鮮でした。AVIC-RL09はカーナビでの新しい操作性とインターフェイスを搭載。楽ナビブランドの長い歴史が経過しようとした、この時代でも使い勝手にこだわり続けていました。

 

■PlayStation 4。北米で2013年11月15日、日本で2014年2月22日に発売。ネットワークを介したゲーム体験ができるのはPS3から存在していましたが、PS4になりそれが大衆化につながりました。普及価格帯で最新のゲーム体験ができるのがPlayStationだとすれば、普及価格帯で最新のナビ体験ができるのは楽ナビといったところに共通点を見出せるでしょうか。

2015年4月号

 

■Apple Watch。iPhone専用のスマートウォッチ。多くのiPhone用アプリがApple Watchに対応して利便性が高く、アルミニウム、ステンレス、チタニウムを使用したボディも上質。日本ではいち早くFeliCaに対応したことから普及に拍車がかかりました。

2015年5月号

 

■Uber Eats。自動車配車サービスを手がけるUberが、米国で2014年にスタート。日本上陸は2016年。当初は東京で開始したが、2021年9月に47都道府県への進出が完了しました。ロゴが描かれた大型リュックサックを日常的に見かけるようになっています。

 

【2023年】オンライン化への本格対応した最新楽ナビ「AVIC-RQ920-DC」

楽ナビの最新モデルは2023年1月に発表されました。そのラインナップは7型/8型/9型と3タイプを用意し、9型には最近のトレンドとなっているフローティング型もラインナップ。その数は15モデルにも及び、「AVIC-RQ920-DC」は通信ユニットまでも標準装備としたその最上位モデルとなります。

 

新型楽ナビのポイントは初代の楽ナビから引き継いだ「高性能×使いやすさ」にあります。時代に合った誰もが使いこなせる“使いやすさ”と、ドライブ時間の“楽しさ”を追求してきた楽ナビならではのコンセプトを具現化したものとなっているのです。

 

中でももっとも大きなトピックと言えるのが、オンライン化への本格対応です。これまでも楽ナビは音声認識による目的地検索や、オンデマンドVICS、駐車場の満空情報などでオンライン化を実現していましたが、最新モデルではサイバーナビに続いて車載用Wi-Fiが楽ナビとして初対応。さらにネットワークスティックと呼ばれる通信ユニットを同梱したモデルを用意することによって、車載用Wi-Fiをはじめとした様々なオンライン機能を手軽に活用できるようになりました。そして、よく使う機能にスムーズにアクセスできる「Doメニュー」を採用しています。

 

目的地検索は、インターネットでの検索と同じように思いついたキーワードを入力するだけ。これだけで最新スポットまでも目的地検索できる「お出かけ検索(オンライン)」を実現したのです。このメニューでは他にも「ダイレクト周辺検索」、「ショートカットキー」などを備え、まさに時代を反映した楽ナビならではの使いやすさを実現したのです。

 

オンライン化は、オンデマンドVICSやスマートループによる渋滞情報を加味したルートを示すことで抜きんでた高品質なルート案内をもたらしました。加えて、ルート案内中は「信号機カウント交差点案内」で分岐する交差点を特定し、見やすさを高めた交差点案内でその状況を詳細にガイドします。

 

大画面化によって車内での存在感も高く、しかもオンラインによって使い勝手を大幅にアップ。まさに楽ナビ史上、最強の楽ナビがここに誕生したのです。

 

GetNaviの誌面と振り返る2023年デジタルトピックス

生成AIのおかげで検索や調べるといった行為に変化が出て、Copilotでビジネスに変化が出そうと期待がかかるなか、車内Wi-Fi搭載の楽ナビAVIC-RQ920-DCによって、ただ運転するだけの車内空間から、リモートワークや動画鑑賞など車内で過ごすのも快適になりました。

 

■生成AI。OpenAIの「ChatGPT」の有料サービスが2023年2月にスタート。「Windows 11」やGoogleの検索エンジンにすでに生成AIが組み込まれており、多くの人が意識しないうちに利用を始めています。

2023年9・10月合併特大号

 

■Copilot。Microsoftが提供するAIアシスタント。OS、ブラウザーから利用するだけでなく、「Microsoft365」のアプリからもCopilotにアクセス可能。導線の多さから、AIアシスタントのなかで大きなアドバンテージを獲得していています。

 

■X。イーロン・マスク氏は旧Twitter社買収後、2023年7月23日にロゴを青い鳥からXに変更。賛否入り交じる氏の施策を象徴する出来事として、ネット上での大きな話題となりました。

 

 

デジタルトピックス監修/ジャイアン鈴木

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

ENEOS新車のサブスク、前回即完売のキャンペーンの追加企画を急遽開催!

先日お伝えした、「ENEOS新車のサブスク」に新しい動きがありました。2月19日にスタートしたキャンペーンは早々に申し込み定数に達し、完売。その後も継続を求める声が多数あったことから、急遽追加企画として3月1日から、新たなキャンペーンの開催が決定しました。

それが、サービスステーション(SS)での契約を対象とした「ガソリン代1年分相当 先着400名様にプレゼント!キャンペーン」。期間中にENEOSのSS店頭で「ENEOS新車のサブスク」に新規成約をした先着400台限定として、ガソリン代1年分相当のデジタルギフトをプレゼントするというもの。ガソリン代1年分相当額の「えらべるPay(9万6000円分)」が提供されます。

 

企画内容は前回から若干変更となりますが、年度末も迫るクルマの買い替えのシーズンにはうってつけのキャンペーン。新生活に向けて新しいクルマを持とうと考えている人も9万6000円という金額は大きな魅力なはず。こちらも早期の完売が見込まれるので、早めの申し込みがよさそうです。

 

【キャンペーン概要(ENEOSリリースより抜粋)】

キャンペーン名:ガソリン代1年分相当 先着400名様にプレゼント!キャンペーン

キャンペーン期間:申込期間:2024年3月1日(金) ~ 2024年3月31日(日)

※2024年4月30日(火)までにご契約が完了することを条件といたします。

※先着人数に達し次第、キャンペーンを終了とします。

キャンペーン特典:ガソリン代1年分相当(96,000円分)のえらべるPay

※様々なスマホ決済サービスのポイントを自由にえらべるギフトです。

キャンペーン適用条件:

(1)3月31日(日)までにENEOSのサービスステーション店頭でENEOS新車のサブスクに新規お申込みをいただくこと。

(2)4月30日(火)までにENEOS新車のサブスクのご契約が完了し、お客様にサイン・捺印いただいた契約書を当社宛にご送付いただくこと(4月30日(火)必着 )。

(3)個人でのお申込み、およびご契約であること。

注意事項 :当社公式サイトからのお申込みの場合や、当社公式サイトから審査申込み後にサービスステーション店頭でご成約されたお客様は対象外となります。契約書へサイン・捺印後、当社に契約書が到着し確認ができた時点をもって成約とみなします。その後にキャンセルとなった場合は対象外となります。

 

ENEOS新車のサブスク、前回即完売のキャンペーンの追加企画を急遽開催!

先日お伝えした、「ENEOS新車のサブスク」に新しい動きがありました。2月19日にスタートしたキャンペーンは早々に申し込み定数に達し、完売。その後も継続を求める声が多数あったことから、急遽追加企画として3月1日から、新たなキャンペーンの開催が決定しました。

それが、サービスステーション(SS)での契約を対象とした「ガソリン代1年分相当 先着400名様にプレゼント!キャンペーン」。期間中にENEOSのSS店頭で「ENEOS新車のサブスク」に新規成約をした先着400台限定として、ガソリン代1年分相当のデジタルギフトをプレゼントするというもの。ガソリン代1年分相当額の「えらべるPay(9万6000円分)」が提供されます。

 

企画内容は前回から若干変更となりますが、年度末も迫るクルマの買い替えのシーズンにはうってつけのキャンペーン。新生活に向けて新しいクルマを持とうと考えている人も9万6000円という金額は大きな魅力なはず。こちらも早期の完売が見込まれるので、早めの申し込みがよさそうです。

 

【キャンペーン概要(ENEOSリリースより抜粋)】

キャンペーン名:ガソリン代1年分相当 先着400名様にプレゼント!キャンペーン

キャンペーン期間:申込期間:2024年3月1日(金) ~ 2024年3月31日(日)

※2024年4月30日(火)までにご契約が完了することを条件といたします。

※先着人数に達し次第、キャンペーンを終了とします。

キャンペーン特典:ガソリン代1年分相当(96,000円分)のえらべるPay

※様々なスマホ決済サービスのポイントを自由にえらべるギフトです。

キャンペーン適用条件:

(1)3月31日(日)までにENEOSのサービスステーション店頭でENEOS新車のサブスクに新規お申込みをいただくこと。

(2)4月30日(火)までにENEOS新車のサブスクのご契約が完了し、お客様にサイン・捺印いただいた契約書を当社宛にご送付いただくこと(4月30日(火)必着 )。

(3)個人でのお申込み、およびご契約であること。

注意事項 :当社公式サイトからのお申込みの場合や、当社公式サイトから審査申込み後にサービスステーション店頭でご成約されたお客様は対象外となります。契約書へサイン・捺印後、当社に契約書が到着し確認ができた時点をもって成約とみなします。その後にキャンセルとなった場合は対象外となります。

 

計算上は17万1000円も元が取れる。ENEOSがガソリン代+洗車代を1年間「無料」にしたワケ

ENEOSがユニークなキャンペーンを発表しました。これは同社が手がける個人向けカーリース事業「ENEOS新車のサブスク」で行われるもので、ウェブサイトからの成約者を対象に、ガソリン代と洗車代が1年間無料になるというもの。

内訳は毎月最大70Lのガソリンと洗車代2000円が無料に。レギュラーガソリン1Lを175円(※)とすると、計算上は1年間でガソリン代が14万7000円、洗車代が2万4000円と、合計で17万1000円になります。

※:資源エネルギー庁 石油製品価格調査より

 

ガソリン代のプリペイドカードプレゼントというのはたまにキャンペーン景品でありますが、「1年間無料」しかも、月「洗車代まで無料」というのは聞いたことがありません。

 

SNS上でも「これからの時期、新生活開始に伴い、クルマに興味が少ないがクルマを持たないといけない人が大量発生しますが、うってつけのプラン」など様々な反応が。どのような経緯でこのキャンペーンが生まれたのでしょうか? ENEOS担当者に聞いてみました。

 

――そもそも、「ENEOS新車のサブスク」とはどんなサービス?

ENEOS担当者:「ENEOS新車のサブスク」は、頭金ゼロ円で契約でき、税金、車検・点検費、メンテナンス費を含んだ月々定額費用でクルマに乗れるサブスクリプションサービスで、2021年4月からスタートしました。クルマにまつわるサービスをいつものENEOSにワンストップでお任せいただける、当社ならではのサービスです。

 

――これまでもこうしたキャンペーンは行っていた?

ENEOS担当者:以前には契約された方を対象に、ギフト券を進呈するという施策を行なったことはあります。そのときは数万円のギフト券でした。そのときもかなり頑張ったのですが、「もっとインパクトのある内容にしたい」という話に社内でなり、今回のキャンペーンを企画しました。

 

――ガソリン代だけなく洗車代まで無料なのはなぜ?

ENEOS担当者:今回のキャンペーンは専門家のアイデアもいただきながら構築しています。「ENEOS新車のサブスク」は月々定額でクルマに乗っていただけることでも好評いただいていますが、はそれ以外に日常的な出費としてガソリン代と洗車代はどうしてもかかってしまいます。。この2つを1年間無料にすることで、費用を気にせずドライブをしたり、旅行に出かけたりして欲しいという願いを込めております。

 

サブスク形式でクルマを保有するというまだ目新しいサービスですが、それでも食料品や家計費全般が上がっているなかでの大胆なキャンペーン。受付は2月19日からで先着50台となっています。

ENEOSが発表、ガソリン代・洗車代1年間無料の衝撃!「ENEOSカーリース」太っ腹キャンペーンの中身

「ENEOS 新車のサブスク」が破格のキャンペーンを発表しました。これは「ENEOS 新車のサブスク」の契約先着50台の「ガソリン・洗車代が1年間無料」になるというもの。物価高騰の一途を辿る昨今にあって、かなり衝撃的な内容です。

 

でも、そもそも「クルマをサブスクで乗る」ってどういうこと? という人も多いかもしれません。というわけで、「ENEOS 新車のサブスク」のサービス概要と、そのベースとなっているカーリースの基本を解説。そして、モータージャーナリスト・河口まなぶさんが実際に監修したという本キャンペーンの詳細について紹介していきます。

 

「ENEOS 新車のサブスク」キャンペーンページはコチラ

 

【前提】そもそも「カーリース」とは?

カーリースは自動車を所有せずに、一定期間にわたってクルマを借りるサービス。毎月固定の金額を支払い、契約期間が終了するとクルマをリース会社に返却するという仕組みです。契約内容にもよりますが、税金を含む諸経費が月額費用に組み込まれていたり、頭金ゼロ円で契約できたりと、自身の経済事情に合わせて月々の支払い金額を調整できます。

 

毎月決まった金額を支払ってサービスを受ける意味で、個人向けカーリースでは「サブスクリプション(サブスク)」という言葉を使って説明されることも多いです。「動画サブスク」は広く普及していますし、最近では「家電のサブスク」というのも一般化しつつあります。カーリース自体は1960年代からありますが、モノを所有するから利用するへ、という大きな流れのなかで改めて見直されているといえるでしょう。

 

事実、個人向けカーリースは近年参入企業が増加。市場も大きく伸びてきており、2017年3月末と2023年3月末を比較すると、保有台数が20万7306台から3倍近い58万1920台に増加しています(※:一般社団法人日本自動車リース協会連合会データより)。「古くからあるけど、今新しいサービス」として脚光を浴びているのです。

 

「ENEOS 新車のサブスク」の特徴・メリット

「カーリース=サブスク」の概要がわかったところで、「ENEOS 新車のサブスク」の特徴について触れていきましょう。

「ENEOS 新車のサブスク」は頭金ゼロ円で契約でき、税金、車検・点検費、メンテナンス費を含んだ月額費用でクルマに乗れるサービスです。サービス名にあるように、もちろん新車。クルマのサブスクのなかには、車検費用が含まれていないケースもありますが、同サービスはコミコミです。さらに、国産全車種に対応しており、グレードや各種オプションも選択可能

 

特長としては、ガソリンスタンド最大手のENEOSが展開していることで、それにちなんだサービスが受けられる点です。わかりやすいところでは、契約すると給油が5円/L割引になること。また、各種メンテナンスを近隣のENEOS対応店舗で受けられることです。契約自体も数多くの店舗で行えるので、どのクルマを選んでよいかわからない場合の相談も気軽に行えます。また、多忙で時間のない人は、自宅でウェブからも申込みが可能。

 

編集部的に面白いと思ったのは、「のりかえプラン」が用意されていること。これは、5年のリース期間の3年目か4年目に1度だけ車両を乗り換えるプランです。結婚や出産を機に新車を買ったり、乗り換えたりといったケースは多いはず。ライフステージに応じて選択肢が広がるのは、非常にユニークですね。

 

「ガソリン代、洗車代1年間無料キャンペーン」の詳細

さて、今回の目玉である「ガソリン代、洗車代1年間無料キャンペーン」を説明していきましょう。文字通りの内容で、「ENEOS 新車のサブスク」のウェブサイト経由で契約した、先着50台を対象にリース開始日からガソリン代と洗車代が1年間無料になる(※)というものです。

 

仮にレギュラーガソリンを170円/Lとすると、年間で約14万2800円お得に! さらに洗車は毎月2000円分のドライブススルー洗車が無料になるため、年間で2万4000円節約できます。

 

さらに、金額と同じぐらいのメリットといえるのが、全国のENEOSで利用できるということ。全国でトップシェアの店舗網を持つENEOSだからサービスが圧倒的に受けやすい!せっかく新車が手に入ったので遠出をしたいというときに、「ガソリン代、結構かかるな」と熱が冷めることなく、気軽にドライブに出かけられます。キャンプやアウトドアに行って、クルマがドロドロになっても安心です。

 

また、契約者への特典として、エネゴリくんのバスタオルが進呈されるとのこと。さらなる詳細はキャンペーンページが充実しているのでぜひそちらでご確認を!

 

↑キャンペーンサイトの詳細はコチラ

 

監修したモータージャーナリストの河口まなぶさんも太鼓判

「ガソリン代、洗車代1年間無料って、よくよく考えると太っ腹すぎない?オペレーションも大変だろうに」というオトナ視点の事情もよぎりましたが、このキャンペーン、モータージャーナリストの河口まなぶさんと考案したという背景があります。

 

登録者50万人を持つ河口さんのYouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」では、河口さんが実際にENEOSの店舗を訪れて担当者とバチバチ(?)にやりとりする内容を配信。

 

河口さんの着想のもとになったのは契約者が受けられる給油代5円割引。「『ENEOS 新車のサブスク』はすべてがコミコミになっているとはいえ、実際クルマを使うとなると燃料などがランニングコストとして入ってくるので、ここは…思い切ってガソリン代を無料にするのはどうでしょう?」と提案。ENEOSの担当者もタジタジになりながらも、意外にも快諾。

 

さらに洗車代も無料にすることで、「大変インパクトのあるキャンペーンになった」と太鼓判を押しています。河口さんが言うように、クルマの費用は車両価格や各種税金だけでなく、維持費がかかってきます。ガソリン代、洗車代が1年間無料になることで“真のコミコミ価格”を実現しているといっても過言ではありません。

 

ちなみに、この動画、ENEOSのマスコットキャラクターであるエネゴリくんも登場していて、コミカルな動きにほっこりします。

 

行動を制限しないを後押ししてくれる

ENEOS 新車のサブスク」とそのキャンペーンについて紹介してきましたが、ライフスタイル視点で見ると、「行動を制限しない」をサポートしてくれる側面が見えてきます。というのも、「ガソリン代洗車代1年間無料」だから、どこかに出かけるのを制限しないーー行きたい場所に気兼ねなく行けるし、遊べます。サービスを受けられる場所も多数あるので、そこの制限もありません。

 

ENEOS 新車のサブスク」自体、月の支払額を自分の財布事情に応じて固定できるから、先々の見通しが立てやすくなります。突発的な出費がないという意味で余計な心配もありません。

 

昨年は行動制限が解除された年であり、2024年はさらに制限のない年になっていくはずで、そうした新しい生活を後押ししてくれるサービス&キャンペーンといえるでしょう。2月、3月は年間でクルマが最も売れる時期であり、先着50台ということもあり、競争が激化しそうな予感。クルマの購入を検討している人はぜひお早めに!

 

↑キャンペーンサイトの詳細はコチラ

 

マツダの“ロータリー”がMX-30でついに復活! 新時代の走りを体験レポート

マツダは2023年11月、実に11年ぶりともなるロータリーエンジンを発電機として搭載したシリーズ型プラグインハイブリッド(PHEV)「MX-30 ロータリーEV」を発売しました。今回はそのうちの「Modern Confidence」に試乗。その詳細をお伝えするとともに、試乗した印象なども含めてお伝えします。

↑「MX-30 ロータリーEV」の外観は、ほかのMX-30シリーズとほとんど違いはない

 

■今回紹介するクルマ

マツダ MX-30 ロータリーEV(試乗グレード:Modern Confidence)

価格:478万5000万円(税込)

 

ロータリーをPHEVの発電専用とした新世代のパワーユニット

そもそも「MX-30」は2020年10月、24Vマイルドハイブリッドと2.0L直列4気筒エンジンを組み合わせた「e-SKYACTIV G」を発売したのが最初です。この時点ですでにマツダは、MX-30を電動車として明確に位置付け、EVはもちろんのこと、ロータリーエンジンを発電機として使うPHEVもラインナップに加える構想を示していました。

 

構想はすぐに実行され、2021年1月にはEVモデルを追加。そして2023年11月には今回紹介するロータリーEVを投入することでラインナップの完成をみたのです。

 

注目はこのロータリーエンジンでしょう。エンジンは830ccの小排気量仕様(8C型)で、あくまで発電用としてのみ活用されます。つまり、このエンジンによる発電が加わるシリーズ型PHEVとすることで、EVモデルと同様に全領域にわたるモーター駆動を実現しつつ、EVを超える長距離走行を実現したのです。

↑パワーユニットをフロントに搭載し、バッテリーはフロアに、燃料タンクはリアシート下に配置した

 

↑ボンネット内のパワーユニット。ロータリーエンジン(8C型)は向かって右側に配置された

 

↑パワーユニットは、発電用ロータリーエンジン「8C」を高出力モーターに同軸状に配置してほぼ一体化されている

 

バッテリー容量は17.8kWhと「MX-30 EV」のちょうど半分ですが、それでも国産PHEVとしてはトップクラスの大容量。これによる航続距離は107kmを達成し、ロータリーエンジンでの発電を行えばカタログ値で航続距離は877kmにもなります。MX-30ならではのしなやかな足回りを考慮すれば、ロングツアラーとしての資質を十分備えていると言っていいでしょう。

 

ロータリーを採用した理由はコンパクトさにあった

ではマツダは、発電用にどうしてロータリーエンジンを採用したのでしょうか。その理由はロータリーエンジンならコンパクトで高出力が得られるからです。基本的にEVでは航続距離を稼ぐためにできるだけの軽量化が求められますが、シリーズハイブリッドともなるとエンジンに加えてガソリンタンクも搭載しなければなりません。

 

マツダによれば、発電用として開発した8C型ロータリーエンジンは71psのパワーを発揮しますが、これをレシプロエンジンで発生させるには1000cc・3気筒程度が必要になるそうです。EV用システムと組み合わせてこれを搭載するのはサイズの上からも難しく、一方でロータリーであればそのサイズは約3分の2で済みます。つまり、ロータリーエンジンをMX-30に搭載するのはPHEVとする上で必然だったとも言えるのです。

↑発電用ロータリーエンジン「8C」は軽量化のためにロータリー構造体のサイドハウジングをアルミ化し、従来比15kgの軽量化に成功した

 

MX-30 ロータリーEVはシリーズ型PHEVなので、外部からの充電機能が搭載されています。しかも、普通充電だけでなく、CHAdeMO規格の急速充電にも対応したことで、高速充電だけでなく自宅へ給電ができる「V2H」にも対応しています。

 

17.8kWhのバッテリーが満充電であれば、一般的な家庭の約1.2日分の電力供給が可能になるということです。これならアウトドアでの利用だけでなく、非常時の電源としても役立ちますね。

↑運転席側後方に配置されている充電口は、普通充電(左)とCHAdeMO方式の急速充電の両方に対応した

 

ところで、ロータリーEVだからといって、MX-30として特別な仕様が備えられたわけではありません。外観でほかのMX-30との違いがわかるのは、ロータリーエンジンが搭載されていることを示すバッジがあるのと、ホイールが専用品となっているぐらい。インテリアではメーター内がロータリーEV専用となるものの、基本的なレイアウトは三連式の同じものです。その違いはパワートレーン系が変わっただけとも言えるでしょう。

↑「MX-30 ロータリーEV」のリアスタイル。「ロータリーEV」を示すバッジと専用ホイールが装備した以外、ほかのシリーズとの違いはない

 

↑「MX-30 ロータリーEV」の三連メーター。バッテリー管理用表示があるものの、基本的なレイアウトはほとんど同じだ

 

↑「MX-30 ロータリーEV」の運転席周り。ほかのMX-30シリーズとの違いはほとんどない

 

スムーズな走りはBEVそのもの。高速域までひたすらストレスフリ-!

試乗コースは、横浜のみなとみらい→金沢八景の往復約50kmを、首都高と一般道を使い分け、1時間半ほどかけて走行しました。

↑「MX-30 ロータリーEV」を試乗する筆者

 

ドライブモードは、センターコンソールのスイッチにより、デフォルトの「ノーマル」、そして「EV」に「チャージ」という3つを選べます。ノーマルモードでは電池残量があるうちは基本的にBEVとして走り、電池残量が半分を切るとエンジンを適宜ONにしながらの走行となります。一方のEVモードにすると電池残量ぎりぎりまでBEVとして走ります。

↑ドライブモードはデフォルトの「ノーマル」、そして「EV」に「チャージ」という3つが選べる

 

ただ、この距離だと言うまでもなくBEVですべて走り切れてしまいます。その走りはBEVによく見られるような、特別に“速い!”ことはありませんでした。体感としては、MX-30 EVよりも動きに俊敏さがないようにも思いましたが、それはロータリーEVの方が、100kgほど車重が重いことが影響しているのかもしれません。

 

それとチャージモードでのエンジン音は思った以上に賑やかです。マツダによれば「ロータリーエンジンならではの効率の良さを引き出すために、高回転域で回していることが影響している」とのこと。ならばノイズキャンセラーなどで対策はできなかったのか? とも訊ねてみましたが、「ノイズの帯域が幅広く、ノイズキャンセラーでは対応しきれなかった」ということでした。

 

とはいえ、スムーズな走りはBEVそのもので、高速域まであっという間に到達。アクセルを踏み込んで、あえてロータリーエンジンをONにしても(足元からスイッチが入ったのを体感できる)、その快適な走りは変わらずストレスなし! エンジン音もノーマルモードで走っている分にはそれほど気になるものではなく、気持ちの良い走りが楽しめました。

 

そんな中で試乗を通して気になったのは、マツダコネクトのディスプレイサイズが8.8インチと小さめだったことです。特に周囲のベゼルにドライバーモニター用赤外線センサーが入っていることもあり、ディスプレイがとても小さく感じてしまうのです。その割にコンソール下に配置されたエアコンの表示は“巨大”な印象を受けます。

↑マツダコネクトで使われるディスプレイは8.8インチ。周囲のベゼルにはドライバーモニタリング機能も備わる

 

一方でマツダコネクトのコントローラーのリニアな動きは、操作する上でのストレスはまったく感じさせません。また、このグレードには標準装備となる12スピーカーの「ボーズサウンドシステム」も、EVモードで走ったときの静粛性と相まって心地よさを感じさせるものとなっていました。このサウンドはぜひ試乗しながら体験して欲しいと思います。

SPEC(Modern Confidence)●全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm●車両重量:1780kg●パワーユニット:8C-PH型エンジン+電気モーター●最高出力:72PS(エンジン)、170PS(モーター)●最大トルク:112Nm(エンジン)、260(モーター)●WLTCモード燃費:15.4km/L(ハイブリッド燃費)

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

撮影/松川 忍

もはや「ないものはない」 さらに便利&快適となったスズキ「スペーシア」

今回は日本が生んだ軽の合理性が堪能できるスズキ「スペーシア」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2024年2.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

さらに便利&快適になってライバルを迫撃!

スズキ スペーシア

SPEC【ハイブリッドX(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm●車両重量:880㎏●パワーユニット:657cc直列3気筒DOHC●最高出力:49PS/6500rpm●最大トルク:5.9kg-m/5000rpm●WLTCモード燃費:23.9km/l

 

後席に新採用された“飛び道具”は効果も十分

2021年には累計販売が100万台を突破、現在は130万台を超えているというスペーシアが3代目へとスイッチ。この新型では持ち前の使い勝手を一層高めるとともに、運転支援機能はもはや「ないものはない」レベルに。走りについてもクラストップの低燃費を実現するなど、全方位的に隙のない進化を遂げている。

 

その外観はベース車、カスタムともに全体の質感が向上している。頑丈な大容量コンテナがモチーフという造形はシンプルでいながら、適度な“塊感”も演出。特にカスタムはフロント回りがスッキリとした相乗効果で、サイズ以上の上質感すら漂わせるようになった。

 

シンプル、という表現は例によって多機能な室内にも当てはまるが、新型では後席に要注目の新装備も採用。座面前方の「マルチユースフラップ」はオットマン、レッグサポート、荷物ストッパーという3つの機能があり、このなかではレッグサポートが走行中の疲労軽減に大きく貢献していることが今回の試乗でも確認できた。

 

その走りは自然吸気、ターボともに満足できる仕上がり。足回りは自然吸気でも頼もしさを感じさせる仕立てとなるだけに、動力性能に余裕があるターボなら、ファーストカーとしてのニーズにも高いレベルで応えられるはずだ。

 

クラストップの低燃費を実現

マイルドハイブリッドとなるエンジンは、先代比でターボ(写真上)が2.1㎞/ℓ、自然吸気(同下)は2.9㎞/ℓWLTCモード燃費が向上。

 

外観は「ツール感」を演出する造形に

先代はスーツケースだったが、新型の外観は大容量コンテナがモチーフ。ボディカラーは新色を含む8色に、ルーフがソフトベージュ(写真)となる4色を加えた合計12色。

 

カスタムは上質感と存在感を重視

先代比では、特にフロント回りがスッキリした印象のあるカスタムの外観はベース車以上に質感が向上した印象。こちらのボディカラーは単色7色、2トーン4色の合計11色。

 

後席の快適性と使い勝手が格段に向上

シート回りのトピックは、後席のマルチユースフラップ。オットマンモード(写真:中)ではリラックスした姿勢が取れるほか、荷物ストッパーモード(写真:下)では買い物かごのずり落ち防止などに重宝する。

 

先代比では荷室高が拡大

荷室は後席格納時の床面が先代以上にフラット化。加えて40㎜の低床化を実現したことで、使い勝手を着実に進化させている。

 

シンプルにして多機能な仕立て

コンパクトな液晶メーターを採用するインパネ回りは、収納関連の装備が充実。助手席前には大きなオープントレイのほか、適度なサイズのインパネボックスも備わる。

反則技的な手法でEVの新たな楽しみ方を提案する“電動サソリ“「アバルト500e」レビュー

今回は反則技的な手法でEVの新たな楽しみ方を提案する「アバルト500e」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2024年2.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

時代を象徴する“電動サソリ”その毒気は?

アバルト 500e

SPEC【ハッチバック】●全長×全幅×全高:3675×1685×1520㎜●車両重量:1360㎏●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:42kWh●最高出力:155PS/5000rpm●最大トルク:24.0㎏-m/2000rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):303㎞

 

サウンドジェネレーターは新たなEVの楽しみ方に貢献?

アバルトといえば、クルマ好きにはサソリのエンブレムでもお馴染みのスポーツ銘柄。フィアットがベースの高性能車作りに長けたブランドということで、最新作はEVのフィアット500eを独自アレンジ。電気モーターは出力とトルクがそれぞれ37PSと1.6kg-m引き上げられ、ベース車はもとよりガソリン仕様のアバルトと比較しても同等以上の速さを実現する。実際、その走りは見た目に違わず活発で、EVとしては軽量なことも相まって、積極的に操った際のスポーツ性は十分に高い。

 

だが、最大の特徴はやはりアクセル開度やスピードに応じてスポーティな音が楽しめる「サウンドジェネレーター」を装備していることだろう。のべで6000時間以上をかけ“調律”されたという擬似サウンドは、往年のアバルトを彷彿とさせる出来映え。真面目に考えれば本末転倒なのだが、クルマの運転を趣味とする人にはEVの新たな楽しみ方として有望であることは間違いなさそうだ。

 

インターフェイスはデジタル化

クラシカルな造形ながらメーターがデジタル化されるなど、機能は最新のEVらしい仕立て。もちろんサウンドジェネレーターはON/OFF可能なので、EVらしい静かさも確保できる。

 

スポーティな外観と「音」がセットに!

アバルトを象徴するサソリのモチーフを随所に配した外観は、スポーティな風情を演出。サウンドジェネレーターのスピーカーはリア下部に配置され、車外にも高性能なコンパクトハッチらしい快音を響かせる。

 

ガソリン仕様と同等の速さを実現!

フロントの電気モーターはベース車より強化。ガソリン仕様のなかでも上位モデルとなるアバルト695と同等の加速性能を実現する。

 

アバルトらしさも十二分!

アルカンターラ仕立てのシートは、ハイバックのセミバケット形状。スポーツ仕様らしいサポート性と快適な座り心地を両立する。

 

実用度はベース車と変わらず

ボディサイズを考えれば、十分に実用的な広さの荷室。ベース車同様、ハッチバックの他にセミオープンのカブリオレも選択できる。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

アジアを代表する高級車となったミニバンの王者「ヴェルファイア」を深掘り【クルマの神は細部に宿る】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、現代ミニバンの王者とも言えるヴェルファイアを紹介。兄弟車であるアルファードとの違いとは?

※こちらは「GetNavi」 2024年2.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

 

TOYOTA
VELLFIRE

SPEC【Zプレミア・ターボガソリン車】●全長×全幅×全高:4995×1850×1945mm●車両重量:2180kg●パワーユニット:2393cc直列4気筒+ターボ●最高出力:279PS(205kW)/6000rpm●最大トルク:430Nm/1700〜3600rpm●WLTCモード燃費:10.3km/L

655万円〜892万円

 

アジアを代表する高級車

安ド「殿! 今回は殿も高く評価されている、ヴェルファイアの2.4Lターボエンジン搭載モデルです!」

永福「うむ。ミニバンの王者であるな」

安ド「ミニバンの王者と言えば、どちらかというと兄弟車のアルファードのほうという気もしますが」

永福「たしかにヴェルファイアの先代モデルは、販売台数でアルファードに大差をつけられ、消滅すら噂された」

安ド「でしたよね」

永福「しかし新型は、ヴェルファイアが王者の名にふさわしい」

安ド「それはデザイン的に、ということでしょうか」

永福「違う」

安ド「新型アルファードのグリルは魚の鱗みたいでギョッとするので、僕はこのヴェルファイアのほうが好きなんですが……」

永福「グリルのデザインは、魚の鱗のようなアルファードのほうが断然迫力があり、全体のフォルムにもマッチしている。それに比べるとヴェルファイアの横桟グリルは凡庸だ。しかしアルファードには、2.4Lターボエンジン搭載モデルがない。このエンジンはヴェルファイア専用だ」

安ド「つまり、エンジンがミニバンの王者なんですね!」

永福「エンジンもそうだが、スポーティで乗り心地の良い専用の足まわりも、王者にふさわしい」

安ド「たしかに、車両重量も重心の高さもそれほど気にせず、スイスイ走れました」

永福「先代と比べたら、ボディ剛性やサスペンションのセッティング、エンジンレスポンス、すべてにおいて段違いだ」

安ド「そんなにですか!」

永福「そんなにだ。先代アルファード/ヴェルファイアは、一般ユーザーから芸能人や経営者などのセレブにまで大人気だったが、ボディ剛性が足りなかったから、乗り心地がドタンバタンした」

安ド「でも、みんなすごく快適だって言ってましたけど」

永福「それは本物の贅沢を知らないからだ」

安ド「そうなんですか!」

永福「あれが快適というなら観光バスで良い」

安ド「まあ、観光バスも快適ですけど……」

永福「観光バスが飛ばすと、乗客は気持ち悪くなるだろう?」

安ド「アッ、そうか!」

永福「新型ヴェルファイアは、飛ばしても快適なのだ」

安ド「そういうことなんですね!」

永福「真の高級車はこうではくてはいけない」

安ド「じゃ、新型ヴェルファイアは、ミニバンの王者と共に、真の高級車になったんですね!」

永福「アジアを代表する高級車と言えるな」

安ド「日本じゃなくアジア代表なんですか?」

永福「アルファード/ヴェルファイアは、日本国内だけでなく、アジア全域で大人気なのだ」

 

【GOD PARTS 神】フロントグリル

従来からの進化型でありながら大人っぽい雰囲気を獲得

アルファードとの一番の違いはグリルのデザインです。アルファードは縦横両方向に区切られていて刺激的な面持ち、一方ヴェルファイアは従来の高級ミニバンの集大成的な横仕切り&メッキの超大型グリルになっています。この抑揚のある全体的なボディラインには、アルファードのグリルのほうが合っている気がします。

 

【GOD PARTS 1】パワーサイドサンシェード

高級車らしさを感じさせる所作

下から上へあげるタイプのサンシェードはよくありますが、こちらはウインドウ上側から下降してくるタイプです。当然電動で、途中で止めることも可能。「障子を閉じるときのマナーを参考にした」ということで、ゆっくり静かに閉まります。

 

【GOD PARTS 2】スーパーロングオーバーヘッドコンソール

すべてのスイッチを天井に集約

照明や空調のスイッチ、収納などがすべて天井センター部分に集約されていて、ムーンルーフは左右独立式になっています。白いラインのところはカラーイルミネーションLEDで、車内を好きなカラーに彩ることができます。

 

【GOD PARTS 3】リアバンパー

下方向にグッと力が入っているイメージ

リアバンパーの左右および下部がメッキパーツで縁取られていて、非常に踏ん張り感のあるデザインにまとめられています。アルファードにはこれがなく、のっぺりした面で構成されています。

 

【GOD PARTS 4】パワーユニット

燃費の良さを取るか走りの良さを取るか

2.5lハイブリッドと2.4lターボエンジンの2種類が用意されています。カタログ燃費値が約7㎞/ℓも違いますが、このクルマに乗るような人はあまり燃費を気にしないような気もします。

 

【GOD PARTS 5】パワーバックドアスイッチ

ボディ側面に配置した優しさ

車両のリアランプ下側面にあるスイッチで、バックドアを電動開閉できます。操作の際に車両横に立つことで、開ける際に後方に下がったりする必要がなくなります。先代にはなかった便利な装備です。

 

【GOD PARTS 6】リアスポイラー

兄弟で共通した帽子のつば

リアウインドウには帽子のつばのようにかぶさる形でリアスポイラーが付けられていて、左右両端はまるで鬼の角のようにちょこんと盛り上がっています。ちなみにココのデザインはアルファードと共通です。

 

【GOD PARTS 7】エグゼクティブパワーシート

上には上があるプレミアムシート

「Zプレミア」グレードでは、肌触りのよいプレミアムナッパーレザーを使用し、最大530㎜も前後スライドできる豪華シートが採用されています。しかし「エグゼクティブラウンジ」グレードのシートはもっと豪華です。

 

【GOD PARTS 8】ワンタッチシーソースイッチ

前後の矢印があって直感的に使える

トヨタ初搭載というシーソースイッチが、リアのスライドドアの取っ手に付いています。前後方向を示すボタンを押すことで半分開いて止めたり、そこから開いたり、または閉じたりと、感覚的に操作できるようになります。

 

【GOD PARTS 9】ユニバーサルステップ

トヨタのおもてなし精神を体現

スライドドアを開けると、自動でステップがせり出してきます。自然と一歩目の足の高さが低くなるので、お年寄りや子どもでも乗り降りしやすくなります。このあたりもトヨタのおもてなしの精神が感じられます。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

1万8000円相当もあり! 楽ナビがアウトドア体験などできるギフトプレゼントキャンペーン開始

パイオニアは1月26日、「楽ナビ」ユーザーに向けて感謝の意を込めて、お出かけ先での「楽しい体験」をプレゼントする「知ってもっと楽ドライブキャンペーン」を開始しました。

 

キャンペーンは楽ナビ25周年を記念したもの。パイオニアのWebサイトにあるキャンペーンページ内の「楽ドライバー検定」に回答し、応募した人の中から抽選で合計25人に、お出かけ先での楽しい体験を選べる「アソビュー!デジタルギフト」をプレゼントする、太っ腹な企画です。

 

なお、楽ドライバー検定はチャレンジの前に予習することもできます。プレゼントに応募したいのであれば予習はぜひしたいところですね。

 

アソビュー!デジタルギフトは3つのコースを用意しています。

 

【Aコース】(楽ナビユーザー限定)

アソビュー!ギフト「総合版体験ギフト Colorful」(1万8260円相当)

アウトドア体験からインドア体験まで幅広い体験を収録したギフト。

抽選で15名にプレゼント。

 

【Bコース】(誰でも応募可能)

アソビュー!ギフト「ONSEN TICKET(ペアチケット)」(6160円相当)

日本全国の人気温泉施設を収録したギフト。

抽選で5名にプレゼント。

 

【Cコース】(誰でも応募可能)

アソビュー!ギフト「Aquarium TICKET(ペアチケット)」(6160円相当)

日本全国の人気水族館を収録したペアギフトチケット。

抽選で5名にプレゼント。

 

応募期間は1月26日(金)~2月29日(木)です。お出かけしたい人はぜひキャンペーンページから応募してみてください。

今春発売のBYD製セダン「シール」に中国で試乗、圧巻の速さに度肝を抜いた!

2023年10月に開催され、100万人を超える賑わいで成功裏に終えることができた「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」。その中で特に人気を呼んだのが中国の自動車メーカー「BYD」です。

 

BYDとはいったいどんな会社なんでしょうか。今回は、今春にも発売されるBYDのスポーツセダン「シール」の試乗インプレッションも交えてレポートします。

↑BYD「シール」プロトタイプ

 

BYDは中国トップのバッテリーメーカー

BYDは1995年、創業者である王伝福氏によって中国・深セン市にバッテリーメーカーとして設立されました。中国での正式名称は比亜迪股份有限公司「略称:比亜迪」。BYDは「Build Your Dream」の略でもあります。

↑BYD本社は中国・深セン市にあり、そのビルはアメリカ国防総省の五角形を六角形にした形で、ペンタゴンならぬヘキサゴンビルと呼ばれる(BYDホームページより)

 

↑創業当時より続くBYD本社の構内。広大な広さを持ち、構内ではモノレールも走っている。実はこの車両も自社開発だという

 

同社が成長するきっかけとなったのは、創業当時、市場から見放されかけていたニッケルカドミウム電池を手がけたことでした。ここでバッテリーメーカーとして頭角を現し、その後は携帯電話やカメラなど向けにリチウムイオンバッテリーを提供してからは世界中から注文が殺到。2008年には中国ナンバーワンの電池メーカーまで成長したのです。

 

しかし、王氏はバッテリーだけでは成長にいずれ限界が来ると考え、これと並行して自動車事業への進出を決断していました。2003年に中国国内の自動車メーカーを買収し、パワーユニットを三菱自動車から供給を受けることで自動車の生産を開始したのです。

 

クルマのデザインこそ、先進国車両をまんまコピーするといった状況でしたが、このクルマが大ヒット。そこから自動車メーカーの地位を築き上げることとなったようです。

 

量産PHEVを世界で初めて発売。2023年は販売台数でテスラを超える

転機となったのは2008年のこと。BYDは世界初の量産プラグインハイブリッド車(PHEV)「F3DM」を発売し、2009年には電気自動車「e6」を発表してEVメーカーとして頭角を現し始めたのです。つまり、創業時からのバッテリー技術があったからこそ、EVメーカーとしての地位をBYDは築き上げることができたといっていいでしょう。

 

そのBYDが日本市場への参入を発表したのは2022年7月。2023年1月にはミドルレンジSUVとして「ATTO 3」を、9月にはコンパクトハッチの「ドルフィン」を相次いで発売し、JAPAN MOBILITY SHOW 2023では最上位セダン「シール」が2024年春までに発売されることも発表されました。

走りはどう? 日本上陸したBYDのコンパクトハッチBEV「ドルフィン」をチェック

 

これまでのところ、爆発的な売れ行きこそ見せていないものの、ハイブリッドが半数を占める日本市場の中で、EVとしての販売台数は健闘している様子。なかでも購入者の6割が40歳代以下となっている傾向も「まずは狙い通りの滑り出し」(BYD)と判断しているようです。

 

また、2023年の10~12月期のEV販売台数では、それまで世界一だったテスラを抜いたことも伝えられました。欧州や東南アジアでもBYDの人気は高く、その成長ぶりは世界中が注目しているといっていいでしょう。

 

そんな折の2023年10月、BYDの中国本社を訪問する機会をいただき、その際に注目のシールに一足早く試乗することができたのです。

↑シールの試乗は、中国・珠海(ズーハイ)のサーキットを舞台に実施された

 

0→100km/hはわずか3.8秒! 圧巻の加速力を見せたシール

このシールはBYDが日本で展開する3車種の中で最上位に位置するスポーツセダンです。ボディサイズは全長4800×全幅1875×全高1460mmと、全高を低く抑えたスタイリッシュなデザインが特徴。それでいてEVらしくホイールベースは2920mmと長めで、居住性も十分意識された造りとなっています。

↑タイヤは前後ともコンチネンタル製の235/45R19を履いていた

 

インテリアはBYDらしく、大型のディスプレイが目を引きます。ドライバー正面のディスプレイは10.25インチと、ATTO3のほぼ2倍! 中央のディスプレイは15.6インチと、これも12.8インチのATTO3と比べてはるかに大きく、その分だけ見やすくなっていました。

 

【シールのインテリアを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

パワートレインは、中国国内では後輪駆動のスタンダードと4輪駆動のハイグレードが用意されていますが、日本に導入されるのはハイグレードのみ。前後モーターを合わせたシステム出力は最高出力390kW・最大トルク670Nmにも達し、そこから生み出される加速は0-100km/hをわずか3.8秒です。エンブレムにもそれを意味する「3.8S」が貼られています。試乗もこのタイプで体験しました。

↑日本向け第3弾となる「シール」は、前後にモーターを持つAWD仕様が日本に導入される予定

 

↑トランクリッドに貼られていた「3.8S」のエンブレム。0→100km/h加速が3.8秒であることを意味する。日本仕様で採用されるかは未定

 

バッテリーにはリン酸鉄リチウムイオン電池を使用した「ブレードバッテリー」を車体に組み込んでボディと一体化するCTB(Cell to Body)技術を採用。これが安全性と安定性の両立をもたらしているそうです。ちなみに電池容量は82.5kWhで、満充電時の航続距離は欧州のWLTPモードで555kmを達成しているとのことでした。

 

コーナリングスピードも相当に速い!

試乗コースは、中国の珠海(ズーハイ)にあるサーキットの本コースです。走り出しで路面の凹凸をリニアに拾う硬さを感じましたが、本コースに入るとそんな印象は吹き飛ぶような安定した走り。アクセルを踏むと低速域からアッという間に高速域まで到達し、圧倒的な加速力にはスポーツセダンらしい頼もしさを感じました。

 

中でも秀逸だったのがコーナーでのハンドリングで、意図したコースを正確にトレースしてくれたのです。その安定ぶりは見事なもので、速度が多少出ている状態でも不安なく走り抜けることができました。これは4輪駆動モデルに採用された最新の「iTAC(スマート・トルク制御)」によるトルク制御が功を奏しているものと思われます。

↑最新の「iTAC(スマート・トルク制御)」によって、安定したコーナリング特性を見せた(BYD画像提供)

 

日本でどこまで勝負できるかは未知数なものの、大いに期待

この日試乗したシールは、日本市場向けの右ハンドル仕様で、ほかのBYD車両と同様、ウインカーも右側にセットするなど、徹底したローカライズが実施されていました。

↑日本仕様はステアリングの右側にウインカーレバーを用意するなど、徹底したローカライズが図られている(BYD画像提供)

 

日本での価格は現時点で未発表ですが、中国での価格は27万9800元(日本円換算:約567万円 ※1月9日時点)。日本では700万円前後になるのではないかと見られています。ハイブリッド車が強い日本市場で、この価格帯のスポーツカーがどこまで勝負できるかは未知数ですが、日本での電動化への流れに一石を投じることになるか、動向に大いに注目したいと思います。

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

クルマ通を唸らすスズキの中で実は売れ筋。「ソリオバンディット」の魅力を改めて深掘りする

ソリオは2020年末の発売から3年が経とうとしているモデル。それでいて今も販売ランキングベスト20にランクインし続ける。その魅力の源泉はどこにあるのか。今回はソリオバンディットを借り出し、実際に見て触って確かめてみた。

 

■今回紹介するクルマ

スズキ ソリオバンディット(試乗グレード:HYBRID MV)

価格:212万5200~231万7700円(税込)

 

スズキの普通乗用車の中で売れ筋なのがソリオ

現在のスズキのラインナップにおいて、普通乗用車(軽自動車以外)は何があるのか? 数えてみると、イグニス、エスクード、クロスビー、ジムニーシエラ、スイフト、そしてこのソリオ(バンディット)と計6車種もあった。

 

トヨタ ノアのOEMであるランディは除いたが、スズキが6車種もラインナップしていることに驚く人もいるかもしれない。

 

この6車種というのが、どれもクルマ通を唸らせる深みを持つ魅力を持つモデルばかりで、イグニスやエスクード、スイフトなどは欧州でも販売されており、本格的な走行性能を備えた味のあるモデルだ。

 

また、クロスビーとジムニーシエラは、それぞれハスラーとジムニーの排気量アップ版であり、キャラのたった存在感のある人気車2台に対して、「軽ではちょっと物足りない」というユーザーの要望を満たしたモデルである。

 

しかし、実はこのなかで最も売れているのが、ソリオ(バンディット含む)だ。2023年1月~6月の乗用車販売台数ランキングのベスト20に入っているのはソリオのみ。

 

ソリオ自体は、名車「ワゴンR」の普通車版である「ワゴンRワイド」の流れを汲む、ハイトワゴンタイプのコンパクトカー。2000年に車名が「ワゴンRソリオ」に、2005年には「ソリオ」となった。

 

2011年に発売された2代目モデル以降は、室内空間の拡大や、前後シート間ウォークスルー、後席スライドドアなどを採用し、一躍人気モデルに。以後、ソリオは国内スズキの屋台骨を支える量販モデルとして君臨し、2020年末に、現行型となる4代目モデルが発売されている。

↑先代から全面改良を施したソリオとソリオ バンディット。今回はソリオ バンディットを試乗しました

 

ダイナミックなエクステリア。カーキを選ぶとオシャレな雰囲気に

ソリオバンディットは2代目ソリオの頃に追加された派生モデルで、ソリオとバンディットの違いは、ぱっちりお目目の大型ヘッドライトが装着されるソリオに対し、若干目を細めたようなシャープな造形のヘッドライトを装着している。スポーティで若者受けしそうな雰囲気にまとめられたモデルだ。

↑細部まで作り込むことで、立体感を目指したフロントグリル

 

簡単にいえば、ファミリーっぽいイメージのソリオに対して、やや都会的な雰囲気で若者や男性ウケを狙ったのがバンディットである。

 

ハイトワゴンタイプのクルマといえば、箱型なため、どうしても単調なデザインになりがちだ。しかしソリオでは、ヘッドライトの下から流れるサイドラインが、一度下に落ちてからグイッと上へ向かっている。この抑揚のあるラインのおかげで、横から車体を見たときにダイナミックな雰囲気が感じられ、前後方向に伸びやかなスタイリングを実現している。

↑ポジションランプとヘッドランプが二段構えのように並んでいるのも特徴的

 

↑シャープで動きのある線がダイナミックさを作り出しています

 

ルーフ(屋根)部分がボディ別色のツートンカラーを選べば、さらに車体が薄く見えてスポーティな雰囲気だ。

 

個人的には今回撮影したボディカラーであるカーキがお気に入りである。白や黒はあまりにも流通量が多いので除いたとして、赤や青はたいていのクルマに設定があるが、カーキはなかなかラインナップされないボディカラーだ。

↑ソリオバンディットのカラバリは全7色11パターンをラインアップ

 

イメージされるのは軍用車ベースのジープなどであり、どこか泥臭さも感じさせながら、現代的なデザインのソリオバンディットでは、これがハズシのオシャレになっている。ちなみにカーキの設定はソリオのほうにもあり、これまたデザインのイメージを変えるくらい素敵なルックスとなるのでご確認いただきたい。

 

スズキの哲学を感じる使い勝手。低燃費&静かな走りも好印象

中身はどうかといえば、これが実に安心感を得られるクルマにまとまっている。先代型よりボディは約70mm延長したことで、もともと広かった室内空間をさらに拡大し、リアシートは大幅な前後スライドが可能。同乗する家族に満足してもらえる快適な後席スペースが広がっている。

 

【インテリアを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

スライドドアについても、「HYBRID」系のグレードでは両側、あるいは左側のみ電動式のパワースライドドアとなっていて、使い勝手がいい。このあたりは、スズキの哲学が活きていることを実感させられる。

↑荷物をたくさん持っているときなどに便利なパワースライドドア。また予約ロック機能も追加されており、ドアが閉まるのを待たずに携帯リモコンでドアロックが可能です

 

スズキといえば軽自動車メインの小型車メーカーとして国内で長い歴史と販売実績を持ちながら、ハンガリーやインドでも競争力のあるグローバルモデルを販売している。コストを低く抑えながら、ユーザーのツボを押さえたクルマ造りを得意としており、価格の安い小型車であっても、乗る人の不満が徹底的に改善されている。それが発売から3年経とうとしている現行型ソリオバンディットにもしっかり感じられる。

 

今回試乗したのは「HYBRID MV」というマイルドハイブリッドモデル。最上位のフルハイブリッドモデル「HYBRID SV」に比べると、乗り味はガソリン車感が強く、実際にモーターによるアシストもごく少量となり、EV走行もできない。

 

しかしマイルドハイブリッドであっても十分なほど低燃費(カタログ燃費は19.6km/L)で、静粛性も高い。これこそが長く販売されてきたことで商品力が洗練された結果だ。

 

室内の広大なスペースに反してボディはほどよいサイズにまとめられていることもあり、取り回しの良さは優れている。サスペンションは柔らかめに設定されていて、スポーティな走りは苦手だが、乗り心地は悪くない。このあたりは売れ筋カテゴリーのモデルだけにユーザーの要望を真摯に受けとめた結果といえよう。一方で、ライバルモデルに対して静粛性が高めなのは4気筒エンジンにこだわったスズキらしさだ。

↑パワーユニットは直列4気筒エンジンとモーターの組み合わせで、最高出力は91PS(67kW)/6000rpm、最大トルクは118Nm/4400rpm

 

王道ではないクルマを選ぶなら最適

ライバル車を挙げるなら同クラスの同形状のトヨタ ルーミーになるが、2023年1月~6月の乗用車販売台数で見るとルーミーは約4万6000台、かたやソリオ(バンディット含む)は約2万7000台である。販売力が違いすぎる相手に対して、善戦しているといえよう。ヤングファミリーや独身層が、王道ではないクルマ選びをするには最適の一台だ。

SPEC【HYBRID MV・2WD】●全長×全幅×全高:3790×1645×1745mm●車両重量:1000kg●パワーユニット:1242cc直列4気筒エンジン+モーター●最高出力:91PS(67kW)/6000rpm●最大トルク:118Nm/4400rpm●WLTCモード燃費:19.6km/L

 

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文・撮影/安藤修也

「クロスオーバー」とはまったく別モノ。クラウン「スポーツ」「セダン」の存在感が際立ってイイ!

クラウン4兄弟の次男と三男である「スポーツ」と「セダン」がついにデビュー。ショートボディでSUV風スタイルのスポーツと、大本命ともいえるセダンが、クラウン全体のイメージに与える影響を、従来のクラウンとは「まったく別のクルマ」と評する筆者がレポートしていく。

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ クラウン

セダン 価格:730万~830万円

スポーツ 価格:590万~765万円

 

デザイン第一のクラウンスポーツ

クラウンが「クラウンクロスオーバー」に生まれ変わって約1年半。SUV風になるなんてビックリ仰天したが、早くも街でしょっちゅう見かけるようになった。

 

2023年の販売台数は、約4万台。先代末期は年間2万台前後だったから倍増! と言いたいところだが、先代のピーク時には約5万台売れていたので、「微減」とも言える。クラウンの大変身は、いまのところ大成功とまでは言えない。

 

が、クロスオーバーだけで現在の16代目クラウンを語ることはできない。現行型クラウンは、4モデルへの分化が決まっている。今回は、クロスオーバーに続いて登場した「スポーツ」と「セダン」に乗ることができた。

 

クラウンスポーツは、クラウンクロスオーバーに対して、文字通り「よりスポーティ」という位置づけだ。クロスオーバーもデザイン優先で作られたが、スポーツはさらにカッコ第一。グラマラスで速そうであることを、なによりも優先して作られている。

↑クラウンスポーツ

 

「コ」の字型の薄目ヘッドライトはクロスオーバーと共通のイメージだが、ボディはコンパクトかつ豊満。特にリアフェンダーのグワッとしたふくらみは、一瞬「くどすぎないか?」と思ったりもする。

↑ヘッドライトを薄くすることで、よりシャープで精悍な表情を実現したといいます

 

↑リアフェンダーのふくらみは、スポーツの1番の特徴。大きいタイヤの存在感を高めるうえに、ダイナミックで低重心な印象を与えるとうたっています

 

ところが、実際に走っているクラウンスポーツを斜め後ろから見ると、迫力満点でカッコいい。発表当時からフェラーリの新型SUV「プロサングエ」に似ていると評判だったが、クラウンがフェラーリと比較されるだけで驚天動地だ。

↑ボディサイズは全長4720×全幅1880×全高1565mmで、車両重量は1810kg。またボディカラーは、モノトーンカラー6色とバイトーンカラー5色を用意しています

 

インテリアもスポーティ&ゴージャスで、従来のクラウンのようなおっさんくささは微塵もない。従来のクラウンファンには異世界なので、なじめないかもしれないが、それは仕方ないだろう。

↑包まれるような感覚を意識したコックピット

 

エンジンはグッと洗練、しかも燃費は21.3km/Lでかなりエコ

パワートレインは、クロスオーバーにも採用されているFFベースのエンジン横置き2・5Lハイブリッドだ。クロスオーバーでは、特にスポーティでもなく、かといって高級なフィーリングでもなく、インパクトに欠けたが、スポーツに積まれたソレは、1年半の熟成の成果なのか、ぐっと洗練されてスポーティだ。ハンドリングも明らかにスポーティなので、今どきのエリートにピッタリな雰囲気である。

↑スポーツ Zグレードのパワーユニットは2487cc直列4気筒エンジン+モーターで、エンジン最高出力は186PS/6000rpm、エンジン最大トルクは221Nm/3600-5200rpm。

 

それでいてWLTCモード燃費は21.3km/Lと良好で、実燃費でも16km/L前後は走るから、かなりエコ。システム最高出力は234馬力なので、加速がそれほど凄いわけではないが、アクセルに対する反応がいいので、クルマの流れに乗って気持ちよく走るぶんには不満はない。

 

これで590万円という価格は、輸入車のライバルたち、たとえばスポーツSUVのBMW X4(852万円~)に比べると断然安い。もっと加速がほしい人には、今後追加される予定のPHEVモデルがおすすめだ。

ラゲージは容量397Lで、通常でゴルフバッグ1個分、後席前倒し時には4個まで収納可能とのこと

クラウンセダンは真横のシルエットはカッコいいけど……

一方のクラウンセダンは、クラウンシリーズの中で最もフォーマルなモデルだが、実物を見ると、これはこれでスポーティだ。

↑クラウンセダン

 

なにしろ全長は5mを超えている(5030mm)。それだけで「うわ、長っ!」という迫力が出る。しかもリアピラーが傾斜したファストバックスタイルなので、真横から見ると、アウディA7スポーツバックあたりがライバルというイメージ。クラウンクロスオーバーより高級なのはもちろん、クラウンスポーツと比べても、むしろシュッとスポーティに見える。

↑伸びやかで美しい佇まいを実現したというデザイン。ボディサイズは、全長5030×全幅1890×全高1475mmです

 

真横のシルエットがとてもカッコいいのに対して、フロントやリアはやや凡庸で物足りない。ヘッドライトが「コ」の字型ではなく、シンプルな薄目に見えることも、印象を薄めている。従来のクラウンのイメージはほとんど捨てているので、今後どうやってクラウンらしい「顔」を構築していくかが課題だろう。

↑縦基調のグリルを採用したフロント

 

↑リアはワイド感を強調した横一文字のテールランプを採用

 

↑スポーツのようなふくらみはなく、すっきりとした佇まいです

 

魔法の絨毯に乗っているような乗り心地

クラウンセダンは、クロスオーバーやスポーツと違って、エンジン縦置きのFR(後輪駆動)だ。つまりまったく別のクルマと言っていい。同じクラウンの中で別のモデルを作り分けるなんて、トヨタにしかできない贅沢な芸当だ。

 

FRなので、車体中央にはドライブシャフトが貫通しており(FCEVモデルは水素タンクが貫通)、リアシートの足元中央部は大きく膨らんでいる。定員は5名だが、4人乗りと考えたほうがいい。4人までならゆったりくつろげる。

↑後部座席。中央のアームレストにタッチパネルを内蔵し、オーディオをはじめ、エアコン、シート機能、リラクゼーション機能、サンシェードの操作などが可能です

 

フロントに縦置きされるのは、2.5Lのハイブリッド(730万円)だが、タンクに積んだ水素と空気中の酸素を反応させて発電してモーターを回して走るFCEV(燃料電池車:830万円)も用意される。

 

FCEVのメカは基本的にMIRAIと同じだが、これが驚くほどイイ。水素ステーションの設置が進んでいないこともあって、MIRAIは極端な販売不振に喘いでいるが、クラウンセダンのFCEVは、EVだけに静かさや滑らかさはハイブリッドとは比較にならないし、加速はダイレクトそのものだ。仮に自分が社長で、社長車にクラウンを導入するなら、FCEVがベストかもしれない。水素ステーションは運転手が探せばいいのだから。

↑FCEVのモーター最高出力は182PS/6940rpm、最大トルクは300Nm/0~3267rpm

 

しかし自分で運転するなら、やはりハイブリッドだ。エンジンが4気筒なので、アクセルを深く踏み込んだときの唸り声が少々安っぽいのは残念だが、それを除けばとても快適で、ハンドリングもサイズを考えれば軽快だ。

↑大型の杢目調パネルを採用するなど、上質感を追求したコックピット

 

なにしろクラウンセダンは、乗り心地が素晴らしい。足まわりはクラウンらしく適度にソフトだが、ピッチング(前後の傾き)を徹底的に抑えたセッティングゆえに、魔法の絨毯に乗っているようなフラットライド感なのである。

↑ハイブリッドのラゲージ容量は450Lで、ゴルフバッグ3個を収納可能。一方のFCEVは400Lで、ゴルフバッグを2個収納できます

 

スポーツ、セダンともに断然魅力的

クラウンは、スポーツ、セダンともに、従来とはまったく別のクルマになり、断然魅力的になった。反面、クロスオーバーが中途半端な存在に思えてくる。スポーツとセダンの存在感が際立っているからだ。是非もなし。

 

若返りを目論むクラウンだが、価格を考えると、若返ってもせいぜい40代まで。しかし、おっさんは見た目が9割。クラウンスポーツやクラウンセダンなら、見た目を気にする都会派エリートのおっさんも、愛車として検討対象になるはずだ。

(セダン)SPEC【Z】●全長×全幅×全高:5030×1890×1475mm●車両重量:2020kg●パワーユニット:2487cc直列4気筒エンジン+モーター●エンジン最高出力:185PS(136kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:225Nm/4200-5000rpm●WLTCモード燃費:18.0km/L

 

(スポーツ)SPEC【SPORT Z(ハイブリッド)】●全長×全幅×全高:4720×1880×1565mm●車両重量:1810kg●パワーユニット:2487cc直列4気筒エンジン+モーター●エンジン最高出力:186PS(137kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:221Nm/3600-5200rpm●WLTCモード燃費:21.3km/L

 

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撮影/清水草一

空気入りタイヤと乗り味ほぼ同じ! ブリヂストン「エアフリーコンセプト」試乗レポート

空気を入れる必要がないタイヤ、すなわちパンクしない「エアフリーコンセプト」が、ブリヂストンによって開発され、その試乗体験会が開かれました。開発された背景には何があったのか、そして走行フィールはどうだったのかをレポートします。

↑特殊形状のスポークで荷重を支える、空気を使わずパンクもしないタイヤ「エアフリーコンセプト」

 

空気の代わりに特殊形状のスポークを使うからパンクしない

エアフリーコンセプトとは、具体的にどんなタイヤなんでしょうか。タイヤはこれまで空気を高圧充填することで膨らませ、それによって車体の荷重を支えることが基本となっていました。エアフリーコンセプトでは特殊形状のスポークが空気の代わりを果たすため、パンクしないだけでなく空気圧管理などのタイヤメンテナンスも一切不要です。

 

また、路面に接するゴムの部分についても、リトレッドによる張り替えが可能になっているのもポイントとなります。

 

特に注目したいのが、路面から受けたショックの吸収方法です。今までのタイヤでは充填された空気がクッションの役割を果たしていましたが、エアフリーコンセプトでは特殊形状スポークが衝撃に応じた変形によってクッションの代わりをつとめます。

 

つまり、このスポークの素材や造り込み次第で、乗り心地やその特性を変化させることができるのも、エアフリーコンセプトの大きな特徴と言えるでしょう。

↑エアフリーコンセプトの技術概要

 

また、パンクしないためにスペアタイヤが不要となることも見逃せません。最近はスペアタイヤが非搭載のクルマも増えていますが、それでもパンク修理キットは必要になるわけで、それを不要とすればその分だけ重量削減にもつながり、ひいては燃費や走行性能にプラスとして作用します。特にバッテリーによる重量増が避けられないEVにとってメリットは大きいと言えます。

 

開発の背景にあるサステナビリティビジネス構想とは?

このエアフリーコンセプトの開発にあたって、背景にあるのが、ブリヂストンが目指すサステナビリティビジネス構想です。

 

たとえば、タイヤは使うことによって摩耗していき、タイヤの溝がなくなれば、新しいタイヤに履き替えるのがこれまでの常識でした。しかし、エアフリーコンセプトでは路面に接するゴムの部分をリトレッドによる張り替えで対応し、特殊形状スポーク部分は何世代にもわたって繰り返して使うことを前提に開発されているのです。

↑エアフリーコンセプトが最初に発表されたのは2011年。当初は“パンクしない”ことを訴求したが、現在はサステナビリティをメインに訴求する

 

もちろん、スポークが樹脂である以上、長年使っていけば劣化も進んでいきます。しかし、その場合でもエアフリーコンセプトでは、耐用限度が訪れたら粉砕してリサイクルできるようにして、再び材料として繰り返し活用されることを想定しています。

↑耐用年数が過ぎたスポーク部分は、粉砕してチップ化して再利用できるように配慮されている

 

そもそもタイヤの原料である石油は有限な資源であり、そのサステナブルな社会を実現するためにも、石油の消費を抑えて繰り返し使っていくことが求められます。また、タイヤには天然ゴム以外にもさまざまな構造材や配合剤が加えられており、使用済みとなったタイヤを素材ベースで精密に分解する技術の開発も重要です。

↑タイヤに使われている材料は化学物質だけでもこれだけ多岐にわたる。これを素材ベースで分解する技術の開発も進む

 

ブリヂストンではさらに天然ゴムの代わりに、砂漠に自生する植物「グアユール」を使う技術も開発中とのこと。これが実現すれば、現在の天然ゴム産地地域への一極集中の緩和につながり、資源の持続可能性を大きく高められる可能性も出てきます。ブリヂストンとしてはこうした活動を通じ、2050年までに「作る、使う、再生」における完全循環を目標としているのです。

↑砂漠に自生する植物「グアユール」を使うことで、天然ゴム産地地域への一極集中の緩和につながっていく

 

路面の突起を超えても不快なショックはうまく吸収してくれた

では、肝心のエアフリーコンセプトの乗り味はどうだったのでしょうか。

 

試乗は東京都小平市にあるブリヂストンのテストコース「B-Mobility(ビー モビリティ)」で行なわれました。試乗車両はタジマモーターコーポレーションが開発した超小型EV「ジャイアン」。タイヤのサイズは超小型モビリティ向けに開発された「145/70R-12」で、これを4輪すべてに装着し、大人2人が乗車した状態で試乗することになりました。

↑試乗に使われたタジマモーターの超小型モビリティ「ジャイアン」。手前がエアフリーコンセプトを履いた車両で、奥のジャイアンは空気入りタイヤ「スニーカー」を履いている

 

↑超小型モビリティのジャイアンに装着されたエアフリーコンセプト(サイズ:145/70R-12)。トレッドのパターンはやや大きめのブロックとなっていた

 

走り出すと真っ先に感じたのはゴツゴツとした硬さでした。そのままだとイヤだなぁと思いましたが、速度が20km/hを超えるあたりからその印象はなくなり、逆にしっとりとした、落ち着いた乗り心地を感じるようになりました。

↑低速域でこそやや硬めの印象だったが、速度が20km/hを超えるあたりからしっとりとした、落ち着いた乗り心地を体感できるようになった

 

路面の突起を繰り返し乗り越えるシーンでは、車体の剛性の低さはあるものの、衝撃に対する不快さはほとんどなし。空気入りタイヤと比べてもほぼ差がないように思いました。

↑路面の突起を乗り越える瞬間のエアフリーコンセプト。スポークが変形して衝撃を吸収しているのがわかる

 

続いて連続するコーナリングでの走行です。ステアリングを切っていくと、リニアに反応して思ったよりもシャープな印象を受けます。これはトレッド部の剛性が高いのとスポーク部の柔軟な動きが功を奏しているのではないかと思いました。ただ、トレッド面のブロックが大きいことが災いしているのか、パターンノイズが速度の上昇と共に大きくなってくるのは気になりました。

↑連続するカーブでもハンドリングは想像以上にシャープで、空気入りタイヤとほとんど変わらない軽快な印象だった

 

今回試乗したエアフリーコンセプトは、高速走行での使用を想定していません。ブリヂストンとしてはSUVやミニバンといった、より重量のある車両への対応もロードマップに含めていますが、実現にはスポーク部分の次元の違う設計が必要になるとのこと。

 

当面はまず普及が予想される身近な超小型モビリティ向けに市販化し、そこから100%リサイクルが可能な循環型社会の実現を踏み出していく考えのようです。空気を使わない新時代のタイヤの登場を今から心待ちにしたいと思います。

↑エアフリーコンセプトの実用化に向けて、出光興産の事業所内において社会実装への実証実験を展開中だ

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

「デリカの軽が出る」予約だけで異例の大ヒット! 2023年「レジャー部門」ヒットセレクション

コロナによる制限が緩和して、賑わいが戻ってきた2023年はより豊かな体験ができるアウトドアアイテムが人気を呼んだ。GetNaviヒットセレクションのレジャー部門から、本記事では、話題沸騰中の軽自動車 三菱「デリカミニ」と新しい学習スタイルのラーケーション、そして4年ぶりに開催した隅田川花火大会をご紹介しよう。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私たちが解説します

モータージャーナリスト 岡本幸一郎さん
軽自動車から高級車まで続々と登場する新型車のほぼすべてに試乗し、原稿の締め切りに追われる生活を送る。消費者目線の評価が身上。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

トラベルライター 澄田直子さん
国内外のガイドブックを中心に取材・編集を行うトラベルライター。最近は北から南まで日本の島を中心に活動。念願叶って初上陸した秘島、青ヶ島はやはりすごかったです!

 

 

本誌乗り物担当 上岡 篤
2023年は撮影絡みのキャンプしかできず残念。仮にデリカミニを所有したらどんな体験ができるのだろうと想像を膨らませて、2024年こそはキャンプに出かけようと計画中。

 

【軽自動車】「デリカ」ブランドがスモールサイズで登場!

同車の登場が2022年11月に発表されてから “デリカの軽が出る” と話題に。2023年1月開催の東京オートサロンで初めて実車を展示。同年5月の発売までに1万6000台の予約注文が入るほどの人気となった。

売上:10/影響:9/市場開拓:9

 

オフローダースタイルとかわいらしいフェイスが魅力

三菱
デリカミニ
180万4000円〜223万8500円
2023年5月発売

トラックに端を発する同社伝統のオフロードモデルがスモールサイズの軽自動車になって登場。デリカらしい力強いデザイン、日常からアウトドアまで使いやすい車内空間、運転をサポートする走行性能や安全装備なども充実している。

↑ラゲッジルームは4人乗車時でも十分な広さ。後席は簡単に分割してスライド、格納できるので荷物に合わせてアレンジできる

 

↑樹脂仕様のラゲッジボードと塩化ビニール仕様の後席シートバックを設定。泥がついたアウトドアグッズもラフに積み込める

 

三菱らしいタフギア感とメジャーな名前も後押し

「SUVスタイルの軽自動車の人気が高まるなか、絶妙なタイミングで命名して注目の的に。価格は割高ですが、高くても良いモノを求めるユーザーから支持されました」(岡本さん)

 

【復活花火大会】夏の風物詩が全国各地で相次ぎ開催!

コロナ禍で中止が続いたが4年ぶりに開催。夏の東京の風物詩を楽しもうと多くの人が訪れ、初の100万人超えとなった。テレビ東京の生中継番組の視聴率も11.2%と同時間帯1位を獲得。

観客動員:10/影響:10/市場開拓:8

 

隅田川上空を彩る大輪が4年ぶりに満開に!

隅田川花火大会
2023年7月29日開催

1773(享保18)年に端を発する、両国の花火の伝統を受け継ぐ大会。混乱や事故を避けるための対策が施され、第1会場、第2会場から打ち上がる約2万発の花火が夜空を彩った。多くの人が4年ぶりの夏の風物詩を堪能。

↑大阪でも「なにわ淀川花火大会」が8月5日に開催。昨年は声出しの自粛要請のなか開催されたが、今年は制限のない大会に

 

各地で花火大会が復活今後は運営資金がカギに

「コロナによる規制が解け、全国各地で “制限のない花火大会” が復活。一方で花火の原材料の高騰などにより運営資金が不足する懸念も。有料席を設ける大会が増えました」(上岡)

 

【ラーケーション】自ら計画を立てて楽しみながら学ぶ学習スタイル

「ラーケーションの日」は公立小・中学校を対象に9月から愛知県内14の市町村で実施。10月には34市町村、11月には4市町と拡大。県内の体験学習施設などがラーケーションの場として人気を集めそう。

売上:―/影響:8/市場開拓:10

 

平日だからこそできる学習スタイルを応援!

週末に休みが取れない親と子どものふれあいの機会を提供するとともに、土・日、連休の旅行客の集中を分散させるため愛知県で始まった施策。あらかじめ申請することで忌引・出席停止扱いとなり、欠席にならない。

愛知県教育委員会ラーケーション
2023年9月開始

↑長久手市にあるトヨタ博物館。自動車の歴史やクルマを動かす仕組み、未来のモビリティについて学ぶことができる

 

↑小・中学生向けの「ラーケーションカード」。取得日、学ぶ場所、学ぶ内容を自ら考えて記入し、活動計画を立てる

 

旅のスタイルのニーズは学びや体験にシフト

「名所を巡ったりリゾートで過ごす旅から、歴史や地理などの学びや文化体験を求める旅に人気が変化しています。その土地ならではの体験ができるかがポイントです」(澄田さん)

フルモデルチェンジで注目度アップ!2023年大ヒットのミニバン&軽自動車をプロが解説

コロナによる制限が緩和し、人気観光地には多くの観光客が訪れ賑わった2023年。GetNaviヒットセレクションのレジャー部門から、本記事では大人気のトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」とホンダ「N-BOX/N-BOX カスタム」を紹介しよう。フルモデルチェンジを遂げた両モデルの注目ポイントとは? 2台を選んだモータージャーナリストの岡本幸一郎さんと本誌乗り物担当がじっくり解説する。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私たちが解説します

モータージャーナリスト 岡本幸一郎さん
軽自動車から高級車まで続々と登場する新型車のほぼすべてに試乗し、原稿の締め切りに追われる生活を送る。消費者目線の評価が身上。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

本誌乗り物担当 上岡 篤
2023年は撮影絡みのキャンプしかできず残念。仮にデリカミニを所有したらどんな体験ができるのだろうと想像を膨らませて、2024年こそはキャンプに出かけようと計画中。

 

大人気の両モデルが揃ってフルモデルチェンジ

人気モデルのフルモデルチェンジとあって注目度は抜群。アルファード/ヴェルファイアは工場出荷目処が明示されず、販売店に問い合わせの状態に。N-BOXも先行受注で約1万7000台と人気だ。

 

ミニバン

プラットフォームを全面刷新してより快適な移動を後押し

トヨタ
アルファード/ヴェルファイア
540万円〜892万円
2023年6月発売

乗る人すべてが快適に過ごせることを目指して、プラットフォームとパワートレインを一新。モデルチェンジを機にヴェルファイアはより走りを重視した志向になり、専用のサスペンションやパワートレインが設定されている。

↑最上級の「エグゼクティブ ラウンジ」の車内。全席本革シートとなるほか、2列目シートでは照明や空調を個別に設定できるモードも

 

↑優れた動力性能と省燃費を実現する2.5Lダイナミックフォースエンジンをハイブリッドモデルに搭載。アクセル操作に的確に反応する

 

極めて高い完成度に感心。兄弟車の差別化も巧い

「トヨタ2モデルは期待超えの高級感と快適性を実現して驚き。歴代初となる走りの差別化もポイントです。ターボを搭載したヴェルファイアの鮮烈な走りは特筆です」(岡本さん)

 

軽自動車

コンセプトはキープしつつより上質&安全性能を強化

ホンダ
N-BOX/N-BOX カスタム
164万8900円〜236万8200円
2023年10月発売

8年連続軽四輪販売台数日本一を誇る、ホンダ軽の屋台骨がフルモデルチェンジ。前モデルまでで評価されてきたコンセプトをキープしつつ、後席シートの居住性や収納スペースの見直しが図られた。安全運転支援技術も進化している。

↑ホンダの軽として初となる7インチTFT液晶モニターを採用。Honda SENSINGの作動状態などをわかりやすく表示してくれる

 

↑助手席前は小物類をディスプレイしたくなるようなインパネトレーを装備。N-BOXにはコルクカラーが用意されており、質感が高められている

 

先代の良さを徹底研究し、さらに上質さをプラス

「N-BOXは日本一売れている同車の良さを徹底的に検証し、キープすべき点は継承。そのうえで使いやすさや上質さを磨いたのがポイントで、安全運転支援技術も進化しています」(上岡)

楽ナビ使って空前ブームの「城巡り」をしてきた。楽すぎて泣けるのです。

提供:パイオニア(カロッツェリア)

JTBが2023年12月に発表したデータによると、年末年始の国内旅行の人数は2019年比で95.7%。ほぼコロナ禍前の水準まで回復するという。コロナが5類指定になって旅したいが、海外は円安もあり国内旅行を、という家庭も多いはずだ。となればクルマ&カーナビの出番である。

 

というわけで、カロッツェリアの「楽ナビ」に乗って国内の歴史名所、特に“城”を巡ってみようというのが本記事である。「いや、城って唐突じゃない?」と思うかもしれないが、これには意図があるのと、楽ナビの性能をお伝えするのに適したステージだからだ。それらは次のパートで触れていくとして、まずは商品の紹介から。

↑今回は小田原周辺を巡りながら楽ナビをレポート。後半ではおすすめのお城スポットを紹介。

 

【今回紹介する製品】

パイオニア カロッツェリア

楽ナビ AVIC-RQ920-DC

カロッツェリアはカーナビ、カーオーディオ、ディスプレイオーディオ、ドライブレコーダーなどカーライフ全般をサポートしてくれる、パイオニアのカーエレクトロニクスブランド。楽ナビはフラッグシップカーナビ「サイバーナビ」とともに、カロッツェリアを牽引するカーナビシリーズだ。

 

本機は、9V型ラージサイズのHDディスプレイにHDMI出入力、DVDやCD、SD、USBの端子やドライブを搭載した全部入りモデル。カロッツェリアではもはやお馴染みとなった「docomo in Car Connect」に対応し、楽ナビをWi-Fiスポット化することもできる。

 

↑UIでの注目は「Doメニュー」。これはよく使う機能を集約したインターフェースで、画面下部には自分で好きなコマンドを割り当てられて、必要な操作をすぐに行える

 

 

なぜ、城とカーナビ?

世は空前のお城ブームである。2023年12月中旬に開催された「お城EXPO2023」は過去最大数の105団体が参加。「日本100名城公式ガイドブック」は累計90万部を突破し、世代性別問わず歴史スポットへの関心が集まっている。

 

お城は歴史的、地理的要因によって事情は異なるが、代表的なものとして「山城」と「平城」がある。前者は文字通り山の上にあり、敵から攻められにくい場所にあるため何かしらの交通機関がないと行けない。後者は都市の中心地に位置するためアクセス自体は良いのだが、昔ながらの街並みで道が狭いことも。カーナビの出番である。

 

あとは、2023年が楽ナビ25周年ということもあり、時代を切り拓き長く続くブランドという点も本企画に適していると思った次第だ。ちなみに楽ナビのシリーズ累計販売台数は650万台を突破。お城の石垣のように積み上げてきた数字が段違いである。

 

石垣山一夜城を目的地にセットした瞬間、楽ナビの実力が…

最初の目的地は、石垣山一夜城。豊臣秀吉が小田原合戦の本営とした城の跡地である。クルマ好きの聖地とも言える箱根ターンパイクそばに位置しており、訪れた人もいるのではないだろうか。

 

立派な石垣が残っており、物見台や展望台からは小田原城や相模湾を見渡せる。国立公園区域および国指定史跡に指定される、風光明媚なスポットである。

 

もともと自動車雑誌を担当していたこともあって、箱根は通い慣れた道。自宅からは70-80分で到着すると踏んで楽ナビをセットしたところ、所要時間が120分近くに。「平日の早朝の下りですよ、楽ナビさん」と思って走らせたところ、やはり楽ナビの渋滞予測は優秀だった。

 

というのも、東名リニューアル工事の一環で、2023年夏から東京IC〜東京料金所間で車線規制があり、その渋滞のあおりをくらってしまった…。楽ナビはスマートループ渋滞情報全道路対応(※1)で、のっけからその性能を再確認した次第だ。

※1:VICS渋滞情報と合わせ約70万kmにおよぶ道路に対応して最新の交通状況を更新、ルート反映してくれる技術

 

小田原城に向かう最中、「そこまでやる?」という機能が…

師走の石垣山一夜城を散策して身体も温まったところで続いては小田原市街へ。石垣山一夜城から小田原城まではクルマで15-20分の距離にあり、併せて巡りたいスポットだ。

 

目的地を小田原城とクルマが一緒に撮影できる「青橋」にセットして走り出すと、今度は音声案内&画面表示で力を見せつけてくれる。「信号機カウント交差点案内」という楽ナビならではの機能で、曲がる交差点を信号の数でガイドしてくれるのだ。そこまでやってくれるのか、楽ナビ

↑「信号機カウント交差点案内」。画面右に「2個目の信号」という表示が出る。同時に音声でも案内してくれる

 

城下町は、城や駅周辺が入り組んでいたり狭い道が多かったりと、信号を見逃すと迂回できないケースが多い。タイムロスになるぐらいならまだいいだろうが、「そこ右だったよ!なんで曲がらないの?」と同乗者とケンカになったら旅も台無しだ

 

小田原駅周辺の場合、道が複雑で初見では無理!というほどではないが、一方通行の道が一定数あり、それなりに気を遣う。これが京都だったり、東京の日本橋だったりしたら涙目だが、楽ナビの正確な位置情報捕捉と信号機カウント交差点案内のおかげで迷うことなく目的地に着くことができるだろう。

↑小田原駅周辺の様子

 

快晴ということもあり、小田原城は城壁の白が青空をバックに映えて、天守閣の佇まいも美しいばかり。と、ここまで楽ナビの説明ばかりだったので、このパートの締めとして小田原城の歴史と見どころを触れておこう。

小田原城が初めて築かれたのは、大森氏が小田原地方に進出した15世紀中ごろのことと考えられています。1500年ごろに戦国大名小田原北条氏の居城となってから、関東支配の中心拠点として次第に拡張整備され、豊臣秀吉の来攻に備えて城下を囲む総構を完成させると城の規模は最大に達し、日本最大の中世城郭に発展しました。

(小田原城 公式ホームページよりより)

 

このあと、豊臣秀吉の来攻により、北条氏は滅亡。その後、徳川家康に従って小田原攻めに参陣した大久保氏が城主となり、城は近世城郭の姿に改修される。少し時を進めて現代につながる部分も引用する。

小田原城は明治3年に廃城となり、ほとんどの建物は解体され、残っていた石垣も大正12年(1923)の関東大震災によりことごとく崩れ落ちてしまいました。

現在の小田原城跡は、本丸・二の丸の大部分と総構の一部が、国の史跡に指定されています。また、本丸を中心に「城址公園」として整備され、昭和35年(1960)に天守閣が復興(以下省略)。

(小田原城 公式ホームページよりより)

 

クルマ旅に適した機能まである

クルマで旅をしていてご飯どきになった際、こんな行動を取らないだろうか?

 

  • 下調べをしてピンポイントで行くパターン
  • 近場で良さげなお店を探してパターン

 

特に②の場合に役立つのが楽ナビの目的地検索「お出かけ検索(オンライン)」である。「小田原 ランチ」などのある程度のキーワードでお店の候補をオンライン検索してくれるので、リストに出てきた中から気になる店に行ってもいいし、そこからは普通に手持ちのスマホでより詳細なお店データを調べてもいい。

↑「お出かけ検索(オンライン)」で「小田原 ランチ」で検索した画面

 

検索アルゴリズムの詳細は公表されていないが、通常のウェブ検索とは違った店に出会える可能性が高いと感じた。食事だけでなく、観光スポットでも同様だ。オンライン検索なのでナビ更新不要で最新のスポットが検索できる点がかなりうれしい。少し時間が余って近場で何か見学できるところがないかを調べる最初のステップとして活用するのが良いだろう。

 

小田原は歴史都市であると同時にコンパクトな街なので、この2つの城を軸に様々なスポットを巡ることができる。ここでは紹介できなかったが、歴史スポットでいえば、明治時代に活躍した黒田長成の別邸である清閑亭。グルメスポットといえば、小田原かまぼこ通りや、鈴廣かまぼこ博物館というのものも。

 

 

少し違った視点で語りたい車内Wi-Fiスポット

このあとのパートで石垣山一夜城と小田原城以外を紹介していくが、その前にどうしても触れたい機能がある。通信容量無制限の車内Wi-Fiスポット機能だ。楽ナビでは2023年モデルから対応した機能で、専用ネットワークスティックを使い、docomo in Car Connectに申し込むことで使用可能となる(※2)。

 

本撮影をしたのが師走のど平日で、カーナビの取材だというのに動画の確認作業や会議が入れられており、通信どうしたものか、場所どうしたものか、朝から悩ましい状態だった。が、この車内Wi-Fiスポット機能で難なく乗り越えられた(正確な到着時刻で余裕を持って駐車場に入って確認作業や会議ができた点も大きい)。

 

何が言いたいかというと「ビジネスで使える!」ではなく、“自宅にいる感覚”で通信が使えちゃう点だ。docomo in Car Connectには少し細かい使用条件(※2)があるのだが、基本的にそれは停車が絡む場面であり、走行中の制限は特にない。

 

車内Wi-Fiスポット機能は5台まで同時にデバイスを接続できるので、同乗者が車内で動画を見たり、ゲームをしたりと車内エンタメ性を格段に引き上げてくれる機能であり、クルマ旅には欠かせない存在だろう。

 

※2:docomo in Car Connectの使用条件、料金は以下の通り。

↑図の赤紫の箇所が使用ができない場面。それ以外は使用できるので活用の幅が広い

 

↑料金プランは3つ。通信量無制限でこの価格帯はいずれもリーズナブル。クルマでの外出頻度に合わせて選べる点がうれしい

 

 

カーナビの力を頼りつつ行きたい日本の名城(&城跡)3選

さて、「日本100名城公式ガイドブック」担当編集者にカーナビを使って行くべき名城・城跡をピックアップしてもらった3つの城を記事の締めにお届けしたい。城跡もあれば立派な天守閣があるものもある。

 

【福島県】鶴ヶ城(会津若松城)

提供:会津若松観光ビューロー

1593年に蒲生氏郷が東日本で初の本格的な天守閣を建てて「鶴ヶ城」と命名される。1868年の戊辰戦争では新政府軍の猛攻に耐え、難攻不落の名城として知られるように。1874年に全ての建築物が解体されるも、1965年に外観が再建され、天守閣も作り直された。2023年に館内を全面リニューアルして体験型の博物館に。

 

層塔型の五層天守が実に堂々していてカッコいい! 鶴ヶ城を選んだ理由が天守を一番近くで望める「西出丸駐車場」が意外とわかりづらい点。高齢の親と一緒に歴史旅に出るときは歩く距離を減らしてあげたいことを考えると、カーナビを使って訪れたい。

住所:福島県会津若松市追手町1-1

 

【愛知県】犬山城

提供:犬山城

織田信長の叔父である織田信康によって創建された現存十二天守の城。特徴的な天守は、当時のままの姿を今に伝えている。1952年に国宝に指定され、その歴史的価値と優れた建築様式で多くの観光客で賑わう。

 

その美しさたるや見惚れてしまうお城。本城を選んだのは城下町グルメが充実している点に加えて、博物館明治村やかがみはら航空宇宙博物館といった知的好奇心をくすぐる施設が近隣にあること。どちらも10km圏内にあるため、30分程度で移動でき、濃度の高い旅ができる。

住所:愛知県犬山市犬山北古券65-2

 

【東京都】品川台場(第3台場跡)

写真提供:東京港埠頭株式会社

江戸時代末期に築かれた6つの台場(砲台)のひとつで、幕府が外国船の侵攻に備えて東京湾に設けた防衛施設。このうち第3台場は第6台場とともに、1915年東京市に払い下げられ、1926年に国指定史跡となる。現在、第3台場は遺構を公園として整備され、人々の憩いの場となっている。

 

城は軍事施設ということで、品川台場が「続日本100名城」に選ばれておりピックアップ。東京観光、お台場観光の際に少しだけ足を伸ばすだけで歴史を感じられる。レインボーブリッジも近くで見ると壮観で、過去と現在を同時に楽しめる場所だ。

住所:東京都港区台場1-10-1

 

撮影(提供写真以外):茂呂幸正

輸入EVの「黒船」本命か!? 個性あふれるBYD「ドルフィン」試乗レビュー

今回紹介するBYDドルフィンは、最新ピュアEVとして十分な実用性と個性あふれる見た目が注目のモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

これが輸入EVの「黒船」本命かも?

BYD
ドルフィン

SPEC【ロングレンジ】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550㎜●車両重量:1680kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:58.56kWh●最高出力:204PS/5000〜9000rpm●最大トルク:31.6kg-m/0〜4433rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):476km

 

実用性の高さと遊び心を感じさせる見た目を両立!

ドルフィンは、アットスリーで日本上陸を果たした中国BYD社のコンパクトEV。その価格は、最大航続距離400kmを確保するベーシック仕様でも363万円と輸入EVのなかでは圧倒的な価格競争力を誇る。だが、もちろん注目すべきポイントはそれだけではない。名前の通り、イルカをモチーフとした内外装の造形は実に個性的で、あえて輸入車を選ぼうという人へのアピール度は十分。コンパクトカーとしての実用性にも抜かりはなく、室内空間は満足できる広さを実現した上で荷室容量もサイズを考えれば申し分ない。

 

走りも新興メーカーのモデルとは思えない完成度だ。今回は航続距離が476kmとなる上級版のロングレンジに試乗したが、必要十分な動力性能と自然なアクセルレスポンスは街中での扱いやすさに大きく貢献。穏やかな仕立ての足回りも、マイルドな乗り心地を提供するだけに、EVを本気で日常のパートナーとしたい人には有力な候補のひとつとなるはずだ。

 

使い勝手への配慮もうれしい荷室

荷室は通常時でも345l、最大では1310lまで容量を拡大できる。可変式のフロアボード等、使い勝手への配慮も行き届いている。

 

コンパクト級としては十分な広さ

2700mmというロングホイールベースの恩恵で、室内は前後席とも満足できる広さ。ハイバック形状となる前席はたっぷりとしたサイズを生む。

 

アットスリーと同様の機能も搭載

インパネ中央のディスプレイは、先行上陸したアットスリーと同じく縦横両方で使える仕立て。イルカをモチーフとした個性的な造形も特徴的だ。

 

日本の立体駐車場にも対応!

写真は航続距離400㎞のベーシック版。日本仕様は車高を1550㎜に抑え、一般的な立体駐車場にも対応する。グレードは、航続距離476㎞のロングレンジを加えた2タイプ。

 

パワートレインは2タイプを用意

電気モーターはグレードに応じて95PSと204PSの2種類が用意される。1か所にまとめられた充電口は、もちろん急速充電にも対応している。

 

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ベストセラーに相応しいデキ!3代目「エヌボックス」静粛性と乗り心地に進化を実感

今回は、国産乗用車のベストセラーとして君臨するNボックスの新型をチェック!

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

まさにベストセラーの後継に相応しい完成度!

ホンダ
エヌボックス

SPEC【カスタム(FF)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1790mm●車両重量:920kg●パワーユニット:658㏄直列3気筒DOHC●最高出力:58PS/7300rpm●最大トルク:6.6kg-m/4800rpm●WLTCモード燃費:21.5km/l

進化のほどは快適性能の高さで実感できる!

軽自動車カテゴリーのみならず、いまや国産乗用車のベストセラーとして君臨しているNボックスが3代目へと進化。この新型では、拡大するユーザー層のニーズに対応すべく持ち前のユーティリティや扱いやすさをブラッシュアップ。走りについても、すでに評価の高かった先代のそれをベースとして一層の進化を遂げている。

 

その内外装は、最新のホンダ車らしくシンプルで親しみやすい仕上がり。視界を良くする等、機能面も着実に向上している。また、運転支援機能であるホンダ・センシングの検知機能や制御を高度化する等、安全性が一層高められた点も要注目のポイントだ。

 

搭載するパワートレイン、シャーシ回りは基本的に先代を踏襲しているが、制御やセッティングを見直すことで快適性や操縦性が進化。カタログ燃費も自然吸気、ターボともにわずかだが数値が向上している。今回は自然吸気版に試乗したのだが、特に印象的だったのは静粛性の高さと穏やかな乗り心地。動力性能も日常域なら必要にして十分、かつCVT特有の悪癖も上手く抑えられているので、大きな負荷がかかる領域を除けば軽自動車であることすら意識させない。その完成度の高さは、まさに国産乗用車のベストセラーモデルに相応しいものと言えそうだ。

 

低床レイアウトの美点も継承!

後席座面をチップアップさせ、背の高い荷物でも立てたまま積載できる強みは新型でも健在。独自の低床レイアウトにより、通常の荷室も使い勝手は秀逸。

 

広さ、座り心地ともに上々!

写真はカスタムの室内だが、標準仕様は落ち着いた色使いでリビングルーム感覚を演出。後席の座り心地でライバルを凌ぐ点も健在だ。

 

標準仕様はシンプルで親しみやすい仕立てに

標準仕様は、最新のホンダ車らしいシンプルなデザインを採用。ボディカラーの選択肢も10色と豊富だ(カスタムも2トーンを含む9色を用意)。

 

カスタムは上質感と精悍なイメージを強調!

Nボックス・カスタムは精悍なフロントマスクの造形等で上級グレードらしさをアピール。自然吸気エンジン搭載車の走りは、静粛性の高さと快適な乗り心地が印象的だ。

 

運転のしやすさにも配慮した作り

合わせ鏡を使う独自の補助ミラーは、新型で一層高機能に。オプションでフロントガラス用ロールブラインドが装備できる等、使い勝手への配慮も行き届く。

 

自然吸気、ターボともに熟成化

先代から継承されたエンジンは、各種制御の洗練度がアップ。自然吸気(写真)、ターボともに燃費も向上した。

 

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「マイルドな乗り味に癒される」クロスオーバーSUVで人気のスバル「クロストレック」を深掘り【クルマの神は細部に宿る】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、小型のクロスオーバーSUVとして人気のスバルXV……から車名が変わった、クロストレックを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

SUBARU
CROSSTREK

SPEC【Limited・AWD】●全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm●車両重量:1620kg●パワーユニット:1995cc水平対向4気筒エンジン+モーター●最高出力:145PS(107kW)/6000rpm●最大トルク:188Nm/4000rpm●WLTCモード燃費:15.8km/l

266万2000円〜328万9000円

 

全体にマイルドで癒されるe-BOXER

安ド「殿! 今回はスバルの新型SUV、クロストレックです!」

永福「以前はXVという名前だったな」

安ド「そうです! 今回は海外での車名に合わせて、国内でもクロストレックに変更されました!」

永福「XVは個人的に好きだった」

安ド「どのあたりがですか?」

永福「インプレッサをベースに、肩肘張らないライトなSUVに仕上がっていて、サラッと自然体にカッコ良かった」

安ド「新型は、バンパーとか樹脂パーツの形がごちゃごちゃしててクセが強くて、良いんじゃないかと思います!」

永福「自然体なイメージではなくなったな。世界のデザイントレンドはシンプル方向だが、最近のスバルはそれに逆行している」

安ド「スバルらしい武装ではないですか?」

永福「ゴチャゴチャしているのが好きな人もいるから、それはそれで良いのだが」

安ド「ですよね! パワートレインは2.0lのe-BOXERのみです!」

永福「マイルドハイブリッドだな」

安ド「力強さは物足りないですが、悪路をガンガン走るような人でなければ、これで十分満足ですよね」

安ド「安ドよ。その認識は間違っておる。悪路はガンガン走ってはいけない。最低限のパワーで丁寧に走らねばクルマを傷めてしまうだろう」

安ド「言われてみれば……」

永福「お前は自分のパジェロで悪路をガンガン走るか?」

安ド「走りません! クルマが壊れないようにソーッと走ります!」

永福「だろう。SUVだろうとクロカン4WDだろうと、悪路をガンガン走るのは、ラリーなど競技のときだけ。実際には優しく走る」

安ド「つまり、力強さが物足りないこのe-BOXERは、悪路に向いているってことですか?」

永福「そのとおり。悪路ではエンジンの回転をあまり上げてはイカン。タイヤが空転して路面を削り、スタックするリスクが高まる」

安ド「目からウロコです!」

永福「実を言えば私は、スバル独自のハイブリッドシステムであるe-BOXERを、まったく評価していなかった」

安ド「ガクッ!」

永福「走りも燃費も中途半端で、箸にも棒にもかからないと思っていた」

安ド「そんな……」

永福「しかし今回、久しぶりにe-BOXERに乗って、実用車としては決して悪くないレベルに進化しているのを感じたぞ」

安ド「よかった!」

永福「低速域では小さなモーターが効果的にトルクを発揮する。元気に走ろうとするとまったく物足りないが、全体にマイルドで癒される」

安ド「実用的ですよね! ただ燃費はあまり伸びないみたいです」

永福「燃費にこだわる人は、このクルマを選ぶべきではないな」

 

【GOD PARTS 神】パワーユニット

進化を感じるスバル独自のハイブリッドシステム

先代(XV)ではガソリンエンジンとハイブリッドシステム「e-BOXER(イーボクサー)」の2種類から選べましたが、新型では進化したハイブリッドのみの設定となりました。従来は少々物足りないシステムでしたが、進化して制御もスムーズになりました。

 

【GOD PARTS 1】樹脂パーツ

クワガタか! 戦国武将か!

バンパー下部にあしらわれた黒い樹脂パーツは、左右ともフォグランプを取り囲むように大胆にデザインされています。まるでノコギリクワガタの大顎か戦国武将の髭のようで、ワイルドでとても強そうに見えます。

 

【GOD PARTS 2】SI-DRIVE

小さいけど操作はしやすい

走行モードを選ぶスイッチは、かつてセンターコンソールにダイヤル式で設置されていました。しかし、先代型(XV)あたりからステアリングに配置されるようになっています。小さいですが、慣れれば操作しやすいです。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

フレームを太くしてワイルドさを強化

ヘッドライトが細くなった一方で、フレームが太くなったグリルが、ワイルドなイメージを押し出しています。グリル内中央部にはカメラも設置されていて、映像をディスプレイに表示することでドライバーの死界を減らすことができます。

 

【GOD PARTS 4】ホイール

スピード感のあるデザイン

激しく回転しそうなデザインが採用されています。こちらの上級グレードはシルバーとブラックの配色でオシャレですが、下位グレードではダークメタリック単色で塗装されているそうで、そちらもカッコ良さそうです。

 

【GOD PARTS 5】カップホルダー

あえてのななめ配置

センターコンソール上に設置されるカップホルダーは、運転席用と助手席用が斜めにオフセットされる形でデザインされています。クルマのインテリアも、ちょっとした工夫で動きが出るという好例ですね。

 

【GOD PARTS 6】アイサイト

追加された広角カメラ

先進運転支援システム「アイサイト」には、広角単眼カメラが追加されています。これによって従来の約2倍の視界を確保したカメラが、見通しの悪い交差点で自転車や歩行者を捉え、より安全な運転をサポートします。

 

【GOD PARTS 7】荷室

床下を開けると見えるのは?

先代型(XV)より少しだけ容量は減りましたが、アウトドアを楽しむためのアイテムを積むには十分なスペースが用意されています。フロアボードを外すと、床下にハイブリッド用のバッテリーを見ることができます。

 

【GOD PARTS 8】ホイールアーチ

ディテールへのこだわり

SUVではオフロード車っぽさを演出する黒いホイールアーチが採用されがちですが、クロストレックのそれは、ただタイヤの周囲を囲むだけでなく、躍動的なデザインが施されています。フロントには空気の排出口までついています。

 

【GOD PARTS 9】車名

呼び方を変えて親しみやすさアップ!

「クロストレック」は海外で使用されていたネーミングで、日本では従来「XV」と呼ばれていました。クルマとしての方向性は、インプレッサのクロスオーバーSUV仕様ということで変わっていませんが、ちょっと親しみやすい雰囲気になった気がします。

 

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ゼネラル・モーターズが「CarPlay」を廃止へ。理由は安全性の向上じゃない!?

アップルのCarPlayとグーグルのAndroid Autoは、スマートフォンをクルマのディスプレイにつなぎ、カーナビ代わりにしたり、さまざまなアプリをタップ操作できたりするようになる機能です。

↑どうなるCarPlay?(画像はBMWのディスプレイ)

 

いまや多くのドライバーたちが愛用していますが、米大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズ(GM)は段階的に廃止していき、将来のEV(電気自動車)ではグーグルと共同開発した車載システムに置き換えていくと発表。同社は、その理由としてドライバーをより安全にするためと説明しています。

 

これはGMの車載システム製品責任者が、クルマ専門メディアMotorTrendの取材で述べていることです。

 

それによれば、CarPlayとAndroid Autoには「接続不良、レスポンスの遅さ、互換性の問題、接続の切断」などの問題があるとのこと。そのためドライバーがトラブルを解決しようとスマホを手に取り、道路から目を離すと主張しています。

 

しかし、全てがクルマに内蔵されたシステムであれば、ドライバーは携帯電話を手に取る可能性が低くなり、結果として注意散漫が減り、より安全になるそう。ただしGMは、車載システムがCarPlayより安全だと証明するデータを持っていなく、テストも行っていないと認めています。

 

GMが採用する予定の車載システムは「Googleマップ」や「Googleアシスタント」など、グーグルのアプリを統合したもの。要はAndroid Autoを廃止しながらも、グーグルとの関係はより緊密となるわけです。

 

MotorTrendは、GMはCarPlayを廃止すれば、ドライバーの運転方法や行き先、運転中に使っているアプリなど、大量のデータを集められると指摘。また、車載システム上のアプリを使わせることで、自社やパートナー企業を通じて買い物をしてもらったり、サブスクリプションを提供できたりすると述べています。

 

ユーザーにとっては好きなカーナビやアプリを使いたいものの、自動車メーカーにとってはあまりメリットがありません。こうした「自社の車載システムを使ってもらう」動きが今後は広まっていくのかどうか、見守っていきたいところです。

 

Source:MotorTrend
via:MacRumors

プロが厳選、巨大なバッテリーを搭載したハイブリッドカーはキャンプと相性抜群!

エンジンをモーターがアシストするハイブリッドカーにはバッテリーが搭載されており、大きな電気を送り出している。となればクルマから給電して家電製品を使うことくらい楽勝。調理から充電、エンタメまで、e-キャンプとの相性はばっちりだ。

※こちらは「GetNavi」2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が選びました

自動車ライター 海野大介さん

 

【その①】用途を選ばず使い倒せる懐の深さが魅力のコスパ抜群のPHEV

三菱

アウトランダー PHEV

2021に年モデルチェンジした3列シート採用の人気SUV。駆動用バッテリーは先代から大きく増え20kWhに。満充電からのEV走行はグレードで異なるが80㎞以上を誇る。非常時の家庭用電源となるV2Hにも対応。

 

燃費や走りだけじゃない! いまや電源カーとしても活躍

「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズで量産ハイブリッドカーの門を開いた初代トヨタ・プリウスから20年以上が経過し、多くのハイブリッドカーが登場している。そのメリットは環境に優しく、燃費が良いという面が大きくクローズアップされるが、最新のそれはエコだけではなく、走りの良さもアピールするモデルも多い。そして実はアウトドアレジャーにも役立つのだ。

 

搭載される駆動用のリチウムイオンバッテリーが進化し、AC1000V/1500Wのコンセントを装備するクルマが増え、家電製品がごく当たり前に外で使えるようになった。ワーケーションでPCを使った作業も可能だし、車中泊やキャンプではホットプレートや電気ポットをはじめとする調理器具が使える。いまやアウトドアでもハイブリッドカーが活躍するシーンも増えているのだ。また車種によってはクルマ自体が大きな発電機となって住宅に給電可能なV2H(Vehicle to Home)対応のモデルもあり、災害時なども頼もしい存在に。これからのキャンプではハイブリッドカーの存在が普通になるに違いない。

 

↑電源ソケットはフロアコンソール背面とラゲッジルームの2か所。車内でのワーケーションからキャンプまで使い方はアイデア次第

 

↑100V電源を使うスイッチは運転席側に装備。消費電力1500W以下なら2つのコンセントを同時に使用可能。ただし「たこ足配線」は厳禁

 

↑高剛性ボディに組み合わされるストロークのあるサスペンションはアウトランダーの特徴。これにより快適な乗り心地を実現している

 

↑大人も乗車可能な3列シートは未使用時には床下に格納できる。荷室同様フラットで使いやすく、ゴルフバッグが4個搭載可能の広さを誇る

 

<3列シート仕様と広い荷室が魅力>

「このクラスでは稀有な3列シート仕様もあり、最大7人まで乗れます。3列目シートを収納すれば大きな荷室が出現するため、キャンプの荷物も余裕で積載可能。広い車内を生かして、大人2人なら車中泊もありです。」

 

【その②】e-Power搭載の使い倒せる電動SUV

日産

エクストレイル

2022年発売の、シリーズハイブリッドシステムe-POWERを搭載する電動SUV。4WDモデルは前後にモーターを搭載するツインモーターを採用。圧縮比を変化させられる発電用エンジン、VCターボも話題になった。

 

↑日産のBEVアリア譲りの4輪制御技術。前後のモーターとブレーキを瞬間的に制御し、あらゆる路面で最適なトラクションを発揮する

 

↑エンジンは発電に徹する日産自慢のe-POWER。4WDモデルのフロントモーターは150kW、リアモーターは100kWの最高出力を誇る

 

<どこでも行けそうな超絶スムーズな4WD>

「キャンプ場へのアクセスでは未舗装路を通過する場合も。そんなときに頼もしく感じるのがエクストレイルのe-4ORCE。内燃機関と違ってモーターの安定したトルクと4輪制御技術は悪路でも安心して走れます。」

 

【その③】ラージサイズのSUVにPHEVが登場!

マツダ

CX-60 PHEV

直列6気筒エンジン搭載などで話題を集めたラージサイズのSUV。そのCX-60のなかでもイメージリーダーを務めるのが4気筒エンジンにモーターを組み合わせたPHEV。自宅にも給電可能なV2H対応でマルチに活躍できる。

 

↑システム最高出力237kWを誇るPHEVシステム。EV航続距離は74㎞と日常使いならEVのみの走行でカバーできるのも魅力

 

↑PHEVモデルは4輪駆動のみの設定。走行環境に応じて4輪の駆動力配分を最適化するMi-DriveはEVを含む5つのモードがある

 

<スタイリッシュでも多くのキャンプ道具が積める!>

「洗練されたエクステリアながらも想像以上に広い荷室には一般的な4人ぶんのキャンプ道具がラクに積めます。また4WDモデルならば走行モードを選択できる「Mi-Drive」でオフロードモードもあり、悪路走行も安心です。」

 

【その④】5代目プリウスはエコとパワーを高次元で両立

トヨタ

プリウス

スタイリッシュなデザインが特徴の5代目プリウス。第5世代のハイブリッドシステムを搭載し、日常で使う低中速域での走りの良さが進化。エコとパワーを高次元で両立している。ファミリーでのキャンプは厳しいが少人数ならぴったり。

 

↑プリウス初の2ℓエンジンを搭載。PHEVはシステム最高出力164kWを発揮しながら、WLTCモードの燃費は26.0km/l〜30.1km/lという高い燃費を誇る

 

↑リア周りの傾斜が強いデザインで先代よりも荷室容量は減少したが開口部は広く使いやすい。キャリーケースならば2個積載可能

 

<スポーツカーライクのパワフルなエコカー>

「Aピラーの傾きはなんとGRスープラよりも低いほどのスポーツカー的なシルエット。パワフルな2ℓエンジンの走りも魅力で、工夫次第で車中泊可能なスペースも登場します。もちろんAC100V/1500W電源も装備しています。」

静粛かつ重厚…メルセデス・ベンツ「EQE SUV」は「ピュアEV」を感じさせない完成度!

今回は、アッパーミドル級に属する本格派のピュアEV、メルセデス・ベンツEQE SUVを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

EQシリーズSUVではこれが完成型?

メルセデス・ベンツ
EQE SUV

SPEC【ローンチエディション】●全長×全幅×全高:4880×2030×1670mm●車両重量:2630kg●パワーユニット:電気モーター×2●バッテリー総電力量:89kWh●最高出力:292PS●最大トルク:78.0㎏-m●一充電最大航続距離(WLTCモード):528km

 

高い完成度はもはやEVであることすら意識させない

EQE SUVはピュアEVのラインナップ拡大に積極的なメルセデス・ベンツの最新作。名前の通り、サイズ的にはアッパーミドル級に分類されるSUVボディの全長は4.9m弱。全幅は約2mに達する堂々たるものながら、実車の佇まいは意外にも控えめ。外観のイメージもEQAの兄貴ぶんという趣で、ピュアEVとしての自己主張はさほど強くない。

 

室内についても、基本的な仕立ては最新メルセデスの流れを汲むもの。上質であっても、特に「電気」の存在を意識させる作りではない。当然居心地はこのクラスのSUVとして申し分ないもので、前後席の空間、荷室の広さは十二分。後席に座ると、多少シートの座面とフロアの距離が近いと感じるものの、それも言われなければ気付かないレベルにすぎない。

 

前後に搭載する電気モーターの総出力は292PS、最大トルクは78.0kg-mに達するが、車重が2.6t超えとあって動力性能は必要にして十分という水準。極めて静粛、かつ重厚な乗り心地は上質なピュアEVならではの魅力で、快適性はミドル級のメルセデスに相応しい出来栄え。これに500kmを超える航続距離まで考慮に入れれば、その完成度はもはや内燃機関のメルセデスからの代替えとしても立派に通用するレベルと言って間違いない。

 

室内空間はサイズ相応の広さ

高級感あふれるレザー仕立てのシートは、前後ともにサイズもたっぷりで座り心地は良好。内燃機関のSUV比だとフロアは若干高め。

 

SUVらしい使い勝手を確保

荷室容量は通常時でも520lを確保。最大では1675lに達するなど、使い勝手はエンジンタイプのSUVと比較しても遜色はない。

 

大柄なボディでも実用性はハイレベル

大柄なボディながら、4輪操舵を装備することで取り回し性能はコンパクトカー級。メルセデス・ベンツ版のEQE SUVは現状モノグレードだが(1369万7000円)、高性能なメルセデスAMG版も用意される(1707万円)。

 

室内は最新のメルセデス流

中央の大型ディスプレイを中心としたインターフェイスは、最新メルセデスの流儀を踏襲。ピュアEVとはいえ、SUVらしくオフロードを想定した走行モードも用意される。

 

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ツラは個性派、中身はラグジュアリー。走りを極めたBMW「Mモデル」の最新作「BMW XM」をレビュー

今回は、走りを極めたBMWとしても知られるMモデルの最新作「BMW XM」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

これぞ電気と内燃機関のイイとこ取り?

BMW XM
SUV

SPEC●全長×全幅×全高:5110×2005×1755mm●車両重量:2710kg●パワーユニット:4394ccV型8気筒DOHC+ツインターボ+モーター●最高出力:489[197]PS/6000[6000]rpm●最大トルク:66.3[28.6]kg-m/1600〜5000[1000〜5000]rpm●WLTCモード燃費:8.5km/l
●[ ]内はモーターの数値

 

新時代の「M」らしい大胆な見た目と走りを実現

XMは、走りを極めたBMWとしても知られるMモデルの最新作。パワートレインには、Mモデル初のプラグインHVを採用。4.4l V8ツインターボに電気モーター、総電力量29.5kWhのリチウムイオンバッテリーの組み合わせで、100km超えのEV走行と0〜100km/h加速4.3秒(本国値)という速さを両立する。

 

その外観は、ご覧の通りかなりの個性派。特にフロントマスクは、最新BMWのなかでも押し出しの強さが際立つ仕立てだ。一方、室内は従来のMモデルとは一線を画するラグジュアリーなテイストが印象的。前後席、あるいは荷室の広さも申し分ない。

 

また、その走りは2.7t超えとなる重さを意識させない。加速感は8速ATを介した歯切れの良さを意識させる味付けで、操縦性も見た目以上に軽快。BMWいわく、XMは新時代のMモデル像を提案する1台とのことだが、実際に接するとその新鮮味は十二分と言える仕上がりだった。

 

新しさと豪華さを両立する仕立て

最新のBMWらしく、インパネ回りは電気駆動モデルらしい新しさを演出。その一方、間接照明のルーフやクラシックな風情のトリムなどでラグジュアリーな風情も十分。

 

新時代のMは後席の居心地も極上

Mラウンジと名付けられた後席回りは、上質な仕立てに加えてSUVとしての空間作りもボディサイズに相応しい広さ。前後席の居心地はすこぶる良い。

 

プラグインHVは速さとエコを両立

システムトータルのパワー&トルクは653PS&81.6kg-mに達するXMのパワートレイン。EV時の最大航続距離は103㎞と、日常的な使用環境をカバーできる。

 

細かい部分の作りもラグジュアリー

荷室も2130万円という高級車に相応しい作り。容量は527lを確保する。充電ケーブルを収める専用バックもしっかりとデザインされた上質な仕立て。

 

「M」では久々の専用モデル

Mシリーズとしては、ミッドシップスポーツのM1以来の専用モデルとなるXM。外観はSUVながら大胆な造形が目を引く。その走りは、Mモデルらしくスポーティだ。

 

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メルセデス最上級オープンモデル「SL」に乗って、お金持ちの心情について考えてみた【クルマの神は細部に宿る】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回はメルセデスの最上級オープンモデルであるSLに乗って、お金持ちの心情について考えてみた!

※こちらは「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

メルセデスAMG/SL

SPEC【SL43】●全長×全幅×全高:4700×1915×1370mm●車両重量:1780kg●パワーユニット:1991cc直列4気筒+ターボ●最高出力:381PS(280kW)/6750rpm●最大トルク:480Nm/3250〜5000rpm●WLTCモード燃費:10.8km/l

1700万〜2980万円

 

量産車史上初の電動ターボは未完成!?

安ド「殿! 今回はメルセデスSLです!」

永福「うむ。正確にはメルセデスAMGのSLだ」

安ド「今回からもれなくAMGが付いたんですか?」

永福「そうだ。もれなくAMGだ」

安ド「でも、あえて2.0l 4気筒ターボのSL43に試乗したんですね」

永福「うむ。量産車史上初の電動ターボを体感したくてな。電気モーターでタービンを回し、2.0l ながら381馬力という大パワーを発揮する」

安ド「僕は、なんだかレスポンスが良くないように感じましたが……」

永福「私もだ」

安ド「エッ、殿もですか!」

永福「アクセルを踏み込むと、ほんの一瞬出足が遅れる感覚がある。それを除けば十分以上にパワフルだが、まだ電動ターボ技術は未完成のようだ」

安ド「AMGが未完成の技術を市販するんですか!」

永福「AMGだろうとBMWだろうと、未完成なものは未完成だ」

安ド「さすが殿! ただ僕世代にとっては、SLといえば電動ハードトップでしたので、このソフトトップは新鮮でした」

永福「うむ。約20年ぶりの原点回帰だ。メタルトップのバリオルーフはもはや貧乏くさい、ということだろう」

安ド「エエッ! 貧乏くさい!?」

永福「メタルトップなら雨や盗難に強く普段使いしやすいが、お金持ちはそもそもクルマを何台も持っているのだから、スポーツカーに実用性は必要ない。それが世の流れだ」

安ド「なるほど!!」

永福「そのわりに、燃費に配慮して4気筒エンジンを用意したのは矛盾だが、環境も無視できないということだな」

安ド「板挟みですね!」

永福「そもそもSLというクルマは、ラグジュアリーなスポーツカーの代名詞だった。走り命、快適性は二の次のフェラーリやポルシェの対極として、大きな存在感を放っていた」

安ド「確かに!」

永福「しかし現在は、フェラーリもポルシェも超ラグジュアリーで快適になってしまったので、SLの立場がなくなった」

安ド「言われてみれば!」

永福「それで、どうしたらいいかわからなくなってしまったのだ」

安ド「なんと!」

永福「このSL43は1700万円だが、V8ターボで585馬力のSL63は最高約3000万円だ」

安ド「エエ〜〜〜〜ッ!」

永福「ものすごい開きがある。お金持ちも、どっちを買えば良いのか迷うだろう」

安ド「迷いますかね?」

永福「結局、スポーツカーはフェラーリかポルシェ、メルセデスAMGの速いヤツなら、GT4ドアクーペを選ぶのではないか」

安ド「お金持ちのことはサッパリわかりません!」

 

【GOD PARTS 神】ディスプレイ

細かな調整までほとんどココで完結

中央のディスプレイはとにかくデカく、設定や操作をほぼこの画面上で行うため、インパネの物理的なスイッチは少なくなっています。屋根の開閉、車内照明、シートの包まれ具合までここで操作します。なお、オープンカーらしく角度も微調整できるようになっています。

 

【GOD PARTS 1】パナメリカーナグリル

レジェンドモデルから受け継いだ縦格子形状

この縦方向にルーバーの入ったグリルは、「パナメリカーナグリル」と呼ばれています。かつてレースで活躍した名車「300SL」のグリルデザインがモチーフだそうですが、現在はハイパフォーマンス車であるAMGの象徴となっています。

 

【GOD PARTS 2】AMG

 

AMGモデルのみの潔さ

かつてジジイたちが「アーマーゲー」と呼んだメルセデスのサブブランドで、ハイパフォーマンスモデルを開発しています。ベンツ各車にAMGグレードは設定されていますが、新型SLはAMGのみの潔いスポーツカーです。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

クラシックでスポーティ

ツインスポークタイプのステアリングが採用されています。どこかクラシックなイメージもあるこのデザインですが、オリジナリティがあって素敵です。奥のメーターも中央部にひさしがない珍しい形状をしています。

 

【GOD PARTS 4】リアスポイラー

 

スピードが上がるとせり上がってくる

ラグジュアリーなスポーツモデルらしく、リアウイングは格納式です。ステアリング内のスイッチで自由に出すこともできますが、走行中は80km/hになると自動でせり上がってくるそうです。運転中に自分で見るのは難しいと思いますが、一度見てみたいです。

 

【GOD PARTS 5】ソフトトップ

 

流麗に畳まれるクラシックな幌

電動式であることは先代から引き継ぎましたが、その素材は幌製へと原点回帰しました。2+2シートなのでちょっと前後に長いのですが、幌がシート後方スペースに畳まれていく開閉動作は、メルセデスらしい精密な動きで、実に美しいです。

 

【GOD PARTS 6】アンビエントライト

雰囲気のある車内を演出

すっかりメルセデスの定番装備となった車内の間接照明です。最も小さなモデルであるAクラスにも当然のように搭載され、車内を好きなカラーで彩ることができます。単色や複数色、さらに時間で色を変化させることもできます。

 

【GOD PARTS 7】トランク

 

屋根を開けても問題なし

ソフトトップはトランク内上部に収納されますが、パーテーションで区切られているため、トランク内に荷物が入っていても干渉しません。容量はあまり大きいとは言えませんが、後席にも荷物を置けば問題ないでしょう。

 

【GOD PARTS 8】エンジン

どちらを選ぶかは貴方の財布次第

このSLは2グレード構成で、「SL63」は4.0lV8ツインターボエンジン、今回試乗させてもらった「SL43」は2.0l電動ターボエンジンが搭載されています。気筒数が2倍も違うわけですが、価格も約1.7倍になります。お財布と相談ですね。

 

【GOD PARTS 9】2+2シート

広すぎる空間の空気を循環!

リアシートの天井にはサーキュレーターが付いていて、後席まわりの広い空間にエアコンの冷気や暖気を循環させてくれます。空気清浄のプラズマクラスター付きで、「プレミアム」系のグレードに標準装備されています。

 

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官民連携で「EVの普及」を後押し。市川市とパナソニックがシェアリング充電器の普及を進める協定が締結

市川市とパナソニックは、電気自動車(EV)の充電インフラ整備促進のための連携協定を締結しました。この協定では、パナソニックが運営するEV充電器のシェアリングサービス「everiwa」を活用して、市川市内でEVに乗りやすい仕組みを整えることを目指しています。

 

EV普及に向けた大きな課題「充電インフラの不足」

社会の脱炭素化に向けて欠かせないEV。海外では普及が進んでいる国もあるなかで、日本でEVを乗っている人は少数派です。なぜ日本ではEVが増えないのか。その理由のひとつが、やはり充電インフラの不足です。

 

そんな問題を解決するために生まれたのが、パナソニックの充電器シェアリングサービス「everiwa」です。これは、店舗、あるいは自宅などに設置したEVの充電器を、一般向けにシェア可能にするシステム。ホストは自らが設置した充電器をeveriwaに登録し、発行されたQRコードを設置します。充電器の利用者は専用アプリでQRコードを読み込んで決済を行い、充電時間に応じた料金をホストに支払うという仕組みです。

↑everiwaに対応した充電器(奥)から、EVに給電する様子

 

↑充電器に備え付けられているQRコードを専用アプリから読み込んで、充電器にチェックインする様子

 

everiwaには、パナソニック製以外の充電器も登録可能です。everiwaが拡大すれば、全国にある多くの充電器がシェアリング可能になるため、EV充電インフラ不足の解決につながります。

 

市川市の公共施設に、シェアリング充電器を設置

今回、市川市とパナソニックが結んだ協定は、2つの軸からなっています。ひとつは、everiwaを活用した市川市内での充電インフラ整備。ふたつめが、EVを身近に感じてもらうためのイベントなどを通した啓発活動です。

↑協定締結式に登壇した、市川市の田中 甲市長

 

↑協定書を持つ、田中市長と、パナソニックエレクトリックワークス社の大瀧 清社長。大瀧社長は、everiwaにとって初となる自治体との協定締結に「感激している」と語りました

 

充電インフラの整備では、市川市内の公共施設にシェア可能な充電器を設置するのを皮切りに、民間企業も巻き込んで、充電器の設置を加速していきたいとしています。すでに、市川市役所第一庁舎、大洲防災公園にはeveriwaに登録した充電器を設置済みで、その2箇所を含めて8つの公共施設に充電器を設置します。

↑市川市役所第一庁舎に設置された、シェアリング充電器

 

市民への啓発活動では、11月3日に行われた「いちかわ市民まつり」でEVからの給電の体験会を実施しました。EVは緊急時のバッテリーとしても使えるため、災害時の備えにもなります。今後はEVの試乗会なども行い、活動の幅を広げていきたいとのことです。

 

everiwaには、みずほ銀行と損保ジャパンも参画しています。みずほ銀行は決済システムを開発、損保ジャパンは充電器の故障などを保障するオリジナルの保険を提供する形で、everiwaの成立に貢献していますが、両者は今回の市川市との協定にも絡んでいます。両者ともに、興味のある取引先や代理店に対してeveriwaの紹介を行うほか、みずほ銀行は自社の駐車場に充電器を設置することを検討しているとしています。

 

今回の取り組みは、パナソニックから市川市に声をかけて実現した、everiwaとして初めてとなる自治体との協定締結です。パナソニックのビジョンに共感したという市川市の田中 甲市長は「市川でEVを買えば、充電には不自由しない状態を目指したい」と語っています。この協定を皮切りにしたEV充電器シェアリング、さらにはEVの普及が全国に波及することを期待しましょう。

最大40%割引キャンペーン開催中。次世代車載器「NP1」、アプデで使い勝手も別次元に!

パイオニア「NP1」をご存知でしょうか? 本体は少し大きめのドライブレコーダーに見えますが、実はここにカーナビ機能までも備えている注目の“次世代車載器”なのです。そのNP1が10月、かつてないアップデートを果たしました。果たして中身はどう進化したのかをレポートします。

↑次世代車載器「NP1」。10月に5回目となる大幅なアップデートを実施し、Apple CarPlay/Android Autoへの対応を果たした

 

自動アップデートにより常に最新の機能が楽しめる「NP1」

NP1は音声を活用した「スマート音声ナビ」や、クラウドに撮影データを保存できる「次世代通信型ドライブレコーダー」を実現した次世代車載ユニットとして2022年春に登場しました。

 

製品の最大のポイントは、無線通信によってソフトウェアを更新できる「OTA(Over The Air)」に対応していること。これによりNP1は、購入後でもアップデートした最新機能がいつでも楽しめるというわけです。

 

発売してからすでに約1年半が経ち、NP1はこれまでにも4回の大型アップデートを重ねて来ています。2022年5月に「Amazon Alexa」に対応したのを皮切りに、声優による音声ガイドを追加した「コエ替え」、車両を遠隔で監視する「マイカーウォッチ」、10万件を超えるスポット情報の追加など、魅力的な機能を取り入れてきたのです。

 

5回目のアップデートはApple CarPlay/Android Autoとの連携

5回目となる今回の大型アップデートでは、Apple CarPlay/Android Autoとの連携を可能にしたほか、「オービス/取締り情報の通知機能」の追加や、検索機能の充実を含む大幅な機能アップを図っています。

↑Apple CarPlay/Android Autoとの連携を実現したことで、大画面のディスプレイオーディオ上でルートガイドが利用できるようになった

 

Apple CarPlay/Android Autoとの連携となれば、ディスプレイオーディオ(DA)と組み合わせることで大画面での表示が可能となります。最近はDAでも8~9インチ画面を持つことが多く、ここでの表示が実現すれば、それこそカーナビ並みのインターフェースが実現します。

 

実はNP1の専用アプリ「My NP1」を使うことで、これまでもスマートフォンでの地図表示は実現していました。しかし、スマホの画面はそれほど大きくなく、決して見やすいものではなかったのです。

 

今回、Apple CarPlay/Android Autoとの連携により、従来からのNP1のきめ細かな音声ガイドに加え、ほぼカーナビと同等のルートガイドが利用可能となったのです。さらに画面が大きくなることで、たとえば目的地検索の手入力もしやすくなりました。

↑Android AutoでMy NP1の地図を表示させたイメージ

 

↑Apple CarPlayでMy NP1の地図を表示させたイメージ

 

↑画面が大きくなることで、目的地検索の際の手入力も一段としやすくなった

 

今回のアップデートではもう一つ見逃せないポイントがあります。それがオービス/取締り情報の通知機能です。具体的には、全国359か所(2023年10月時点)に設置してある最新の固定式/半固定式のオービスの設置ポイントや、各警察署が公開している情報を元にした取締り実施地点を知らせてくれるというものです。また、データは自動的に年2回アップデートされ、ここでも通信機能を持つNP1ならではのメリットが活かされていることになります。

 

きめ細かな音声案内と大画面でのルートガイドが大きな安心感を生む

さて、今回体験した試乗車に装備されていたのは9インチの純正ナビで、ここにAndroidのスマホを有線接続。スマホにはあらかじめ専用アプリのMy NP1をインストールしてあり、これを介してカーナビ機能が利用できるようになっていました。

↑今回の取材では、Android端末とディスプレイオーディオを連携させた状態で試乗した

 

↑My NP1を介して、Android Auto上で展開しているイメージ。スマホはこの位置になくても構わない

 

地図が表示されると、その鮮明さに驚きます。これまでスマホ上でもMy NP1の地図はキレイであると感じていましたが、その数倍にもなる大きさでの表示に改めて鮮明さが際立った次第です。しかも、DAでの展開にともなって“ヨコ”表示となり、“カーナビっぽさ”をいっそう実感させてくれます。

 

さらに道路の道幅や種別が一目で判別できるようにもなり、幹線道路の路線番号や高速道路のインターチェンジ名もしっかり把握できます。特にルートガイド中にありがたいと思ったのは車線ガイドがよく見えるようになったこと。これが初めての道路でも車線を間違えることなく、スムーズな走りをもたらします。つまり、画面サイズの大型化が明らかにわかりやすいルートガイドの実現につながったというわけです。

 

【ルート表示の画像をギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

安全運転につながるオービス/取締り情報の通知機能

音声ガイドはNP1本体からテキストtoスピーチ(TTS)によって出力されるので、ドライバー席でも鮮明に聞き取れます。

 

スタートすると間もなく、周辺で実施されている公開取締り情報がNP1から伝えられました。そして、少し走ったところで本当に取締りが行なわれていたのにビックリ! また、オービスの設置場所に近づくと、「オービスのあるエリアに入りました」→「オービスが近くにあります」というふうに2段構えで案内してくれました。これなら聞き逃しはほとんどないのではないでしょうか。ただ、地図上では案内されないのでご注意を。

↑オービスがある場所に近づくと2段階の警告でその存在を知らせてくれる

 

↑交通取締りとオービスを知らせるイメージ

 

今回のアップデートでは検索能力の向上も図られています。これまで住所検索や電話番号検索をしようとしても、それはMy NP1上でしかできませんでしたが、今回のアップデートでNP1本体に直接話しかけても可能になったのです。NP1はもともと音声ですべてを完結することをウリとしていましたから、特にNP1単体で使っている人にとってはうれしい機能アップになったと言えるでしょう。

 

NP1購入で迷っていた人に朗報! お得に買えるチャンス

最後に、これからNP1の購入を考えている人にお得な情報をお伝えします。それは、公式オンラインショップにおいて、NP1をお得に買えるキャンペーンが期間限定で実施されていること。しかも、そのお得度が半端じゃありません。なにせ、通信料1年分込みのバージョンで本来の6万5780円(税込、以下同)が3万9800円に、3年分込みのバージョンでは同9万3500円だったものが6万7520円で買えるというから驚きです。

 

しかも、2023年12月15日までにアクティベートすると、もれなくLINEポイントが3000ポイントもらえるキャンペーンも実施中。このキャンペーン期間は2023年11月1日から2024年1月9日 午前10時まで。

↑パイオニア公式ページでのNP1購入キャンペーンの告知。2023年11月1日~2024年1月9日午前10時までの期間限定キャンペーンだ

 

 

お得情報はこれだけじゃありません。なんと、オートバックスでは同じ条件でNP1が提供され、工賃が無料になるキャンペーンを実施中(2023年11月1日から2024年1月8日まで) であるというのです。これはまさにNP1の購入を価格面で躊躇していた人にとって願ってもないチャンス。今回のアップデートと合わせ、NP1の魅力を体験してみてはいかがでしょうか。

↑NP1と連携して使える「NP-RDR001」が発売。実勢価格は1万円弱。専用アプリ「リアドライブレコーダーアシスト」をインストールし、スマホとはWi-Fi接続して使う

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

デザインはオラオラ、加速は気持ちよすぎ。BMWのフラッグシップSUV「XM」はゴージャスそのもの

ラグジュアリーブランドでありながら、いつの時代も「走りの愉しさ」を追求してきたBMW。その新時代のフラッグシップモデルとなる「XM」は、SUVでありながらスーパーカーのような斬新なスタイリングで、しかもPHEV(プラグインハイブリッドカー)。その全貌を清水草一がレポートする。

 

■今回紹介するクルマ

BMW XM(試乗グレード:Mモデル)

価格:2130万円

 

XMは現代のスーパーカー

メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家は、モデル数が天文学的に増えている。特にSUVは超売れ筋ゆえ、もはやクルマ好きでも観測不能というほど多くのラインアップが揃っている。

 

BMWのSUVラインアップは、従来X1からX7までの7モデルだったが、そこに今回新たにXMが加わった。これまで、1から7まで数字が大きいほど車体が大きく、奇数は実用的、偶数はスポーティという色分けだったが、X「M」はいったいどこに属するのか?

 

ズバリ「M」である。MとはBMW Mのこと。BMWのなかでも特別にスポーティなモデルを開発する部門で、これまで「M3」などの名車を送り出してきた。ただしXMは、M3やM4よりもさらに格上の存在だ。なぜなら、M専用モデルだからだ。

 

M3は3シリーズを、M4は4シリーズをベースに作られているが、XMはM専用ゆえにMしかない。1978年の「M1」以来のM専用モデルなのだ。M1と言えば、マンガ『サーキットの狼』にも登場したスーパーカー。現代のスーパーカーはSUVスタイルが妥当! ということなのだろう。

 

フラッグシップだけあって強力なオラオラ感

シルエットは、現代のスーパーSUVとしては控え目で、特別スポーティには見えない。正直、「これってX6がベース?」と思ったくらいだ。しかし実際のサイズはX7とほぼ同じで、シャシーベースになったのは新型7シリーズ。つまりXMはBMWの新しいフラッグシップモデルと言うこともできる。

↑サイズは全長5110×全幅2005×全高1755mm。また試乗モデルはケープ・ヨーク・グリーンのカラーで、ほかにもカーボン・ブラックなど、合計で9色のボディカラーを展開しています

 

さすが「M専用モデル」かつ「BMWのフラッグシップ」だけあって、デザインのディテールはもの凄い。キドニーグリルをはじめ、ボディ各所にゴールドがあしらわれ、強力なオラオラ感を醸し出している。ゴールドというとギンギラなイメージだが、XMのゴールドはシャンパン系のゴールドなので適度に上品。ギンギラギンではなく、上品に最大限オラオラしたいという富裕層にはピッタリではないだろうか。私は一目で気に入った。庶民ですけど。

↑ウィンドウを大きく囲むアクセント・バンドや、リア、ホイールなどいたるところにゴールドが

 

↑リアは横方向に伸びるスリムかつ大胆にデザインされたL字型LEDコンビネーション・ライトで力強さを表現

 

なかでもインパクト絶大なのが、新しいデザインのキドニーグリルだ。形状は以前より角ばった八角形で、サイズも最近のBMWらしくどデカいが、縁が二重になっているのが新しい。しかもこのキドニーグリル、照明機能が付いており、夜間には輪郭がくっきり浮かび上がる。バックミラーに映れば一目瞭然。今回の試乗は昼間だったが、夜見たらインパクトはさらに絶大になったことだろう。「オラオラすぎる!」という意見もあるだろうが、なにしろBMWの頂点に君臨するモデルなのだから、これくらいワクワクさせてもらったほうがうれしい。

↑キドニーグリルがヘッドライトの間に配置されたフロント。クロームで縁取ることで高級感を表現しているそうです

加速は強力無比。気持ちよすぎてついアクセルを踏みたくなる

BMWの新たなフラッグシップだけに、XMのパワートレインは強力そのもの。新開発のPHEVシステム「Mハイブリッド」を搭載している。4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに、電気モーターを組み合わせ、最大出力653PS、最大トルク800Nmを発生させる。

↑4.4L V型8気筒ツインターボエンジンと、第5世代のBMW eDriveテクノロジーを採用した電気モーターを搭載

 

駆動方式は、PHEV専用の4WDシステム「M xDrive」。0~100km/hの加速が4.3秒というから、まさにスーパーカー級だ。しかもこのクルマ、車両重量が2.7トンもある。そんな重い物体をこれほど強力に加速するのだから、恐れ入るしかない。ただし、最高速は250km/h(リミッター作動)と控え目(?)だ。エコに配慮したのだろうか。オプションの「Mドライバーズパッケージ」を装備すれば、リミッターを270km/hに引き上げることもできる。日本では関係ない話ですが。

 

実際に走らせると、XMの加速は強力無比。ガソリンエンジンの伸びと、電気モーターのトルクのいいとこどりなのである。アクセルを踏めばスーパーEVのようにグワッと前に出るが、どこか温かみがあり、ムチ打ちにはならないギリギリの線に抑えてある。もちろん加速の伸びはV8ツインターボならでは。加速が気持ちよすぎて、ついアクセルを踏みたくなる。

 

ボディやサスペンションの仕上がりがまた凄い。基本的に超絶スポーティなのだが、超絶なボディの剛性感のおかげで、これだけ巨大なサイズでありながら、引き締まって小さく感じる。全幅2mを超えているのに5ナンバーサイズみたい……と言ったらおおげさだが、とにかくいっさいブレずにゴーカートにように走ってくれるので、そのぶん小さく感じるのは確かだ。

 

ちなみに搭載されているリチウムイオンバッテリーは、容量29.5kWh(正味容量25.7kWh)。EVモードでは、最大88km(WLTPサイクル)走行できるが、ドライブモードを「スポーツ」や「スポーツ+」に切り替えると、エコなんか一切忘れて加速レスポンスに徹することになる。さすがBMWのM専用モデルだ。

 

ナイトドライブはさらにゴージャス(と想像)

インテリアも豪華そのもの。オラオラしつつも、適度に上品にまとめられているのはエクステリアと同じだ。驚かされるのは天井部の造形で、音響室のように凸凹している。これはいったい何が目的か? と訝ったが、サウンドを美しく聞かせようというわけではなく、夜、ルーフサイドにあしらわれたアンビエントライトで、凸凹を怪しく浮かび上がらせる目的らしい。

↑ヴィンテージ調のレザーを取り入れ、エレガントな印象を持たせたインテリア

 

↑天井部の造形は「イルミネーテッド・ルーフ・ライニング」と称され、デザインと間接照明の組み合わせで空間を演出します

 

今後もしXMに乗る機会があれば、ぜひナイトドライブを体験してみたい。昼間よりもさらにゴージャスに突っ走るに違いなかろうて。

SPEC【XM】●全長×全幅×全高:5110×2005×1755mm●車両重量:2710kg●パワーユニット:4394ccV型8気筒エンジン+電気モーター●システムトータル最高出力:653PS(480kW)●システムトータル最大トルク:800Nm●WLTCモード燃費:8.5km/L

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

撮影/清水草一

デザインはオラオラ、加速は気持ちよすぎ。BMWのフラッグシップSUV「XM」はゴージャスそのもの

ラグジュアリーブランドでありながら、いつの時代も「走りの愉しさ」を追求してきたBMW。その新時代のフラッグシップモデルとなる「XM」は、SUVでありながらスーパーカーのような斬新なスタイリングで、しかもPHEV(プラグインハイブリッドカー)。その全貌を清水草一がレポートする。

 

■今回紹介するクルマ

BMW XM(試乗グレード:Mモデル)

価格:2130万円

 

XMは現代のスーパーカー

メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家は、モデル数が天文学的に増えている。特にSUVは超売れ筋ゆえ、もはやクルマ好きでも観測不能というほど多くのラインアップが揃っている。

 

BMWのSUVラインアップは、従来X1からX7までの7モデルだったが、そこに今回新たにXMが加わった。これまで、1から7まで数字が大きいほど車体が大きく、奇数は実用的、偶数はスポーティという色分けだったが、X「M」はいったいどこに属するのか?

 

ズバリ「M」である。MとはBMW Mのこと。BMWのなかでも特別にスポーティなモデルを開発する部門で、これまで「M3」などの名車を送り出してきた。ただしXMは、M3やM4よりもさらに格上の存在だ。なぜなら、M専用モデルだからだ。

 

M3は3シリーズを、M4は4シリーズをベースに作られているが、XMはM専用ゆえにMしかない。1978年の「M1」以来のM専用モデルなのだ。M1と言えば、マンガ『サーキットの狼』にも登場したスーパーカー。現代のスーパーカーはSUVスタイルが妥当! ということなのだろう。

 

フラッグシップだけあって強力なオラオラ感

シルエットは、現代のスーパーSUVとしては控え目で、特別スポーティには見えない。正直、「これってX6がベース?」と思ったくらいだ。しかし実際のサイズはX7とほぼ同じで、シャシーベースになったのは新型7シリーズ。つまりXMはBMWの新しいフラッグシップモデルと言うこともできる。

↑サイズは全長5110×全幅2005×全高1755mm。また試乗モデルはケープ・ヨーク・グリーンのカラーで、ほかにもカーボン・ブラックなど、合計で9色のボディカラーを展開しています

 

さすが「M専用モデル」かつ「BMWのフラッグシップ」だけあって、デザインのディテールはもの凄い。キドニーグリルをはじめ、ボディ各所にゴールドがあしらわれ、強力なオラオラ感を醸し出している。ゴールドというとギンギラなイメージだが、XMのゴールドはシャンパン系のゴールドなので適度に上品。ギンギラギンではなく、上品に最大限オラオラしたいという富裕層にはピッタリではないだろうか。私は一目で気に入った。庶民ですけど。

↑ウィンドウを大きく囲むアクセント・バンドや、リア、ホイールなどいたるところにゴールドが

 

↑リアは横方向に伸びるスリムかつ大胆にデザインされたL字型LEDコンビネーション・ライトで力強さを表現

 

なかでもインパクト絶大なのが、新しいデザインのキドニーグリルだ。形状は以前より角ばった八角形で、サイズも最近のBMWらしくどデカいが、縁が二重になっているのが新しい。しかもこのキドニーグリル、照明機能が付いており、夜間には輪郭がくっきり浮かび上がる。バックミラーに映れば一目瞭然。今回の試乗は昼間だったが、夜見たらインパクトはさらに絶大になったことだろう。「オラオラすぎる!」という意見もあるだろうが、なにしろBMWの頂点に君臨するモデルなのだから、これくらいワクワクさせてもらったほうがうれしい。

↑キドニーグリルがヘッドライトの間に配置されたフロント。クロームで縁取ることで高級感を表現しているそうです

加速は強力無比。気持ちよすぎてついアクセルを踏みたくなる

BMWの新たなフラッグシップだけに、XMのパワートレインは強力そのもの。新開発のPHEVシステム「Mハイブリッド」を搭載している。4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに、電気モーターを組み合わせ、最大出力653PS、最大トルク800Nmを発生させる。

↑4.4L V型8気筒ツインターボエンジンと、第5世代のBMW eDriveテクノロジーを採用した電気モーターを搭載

 

駆動方式は、PHEV専用の4WDシステム「M xDrive」。0~100km/hの加速が4.3秒というから、まさにスーパーカー級だ。しかもこのクルマ、車両重量が2.7トンもある。そんな重い物体をこれほど強力に加速するのだから、恐れ入るしかない。ただし、最高速は250km/h(リミッター作動)と控え目(?)だ。エコに配慮したのだろうか。オプションの「Mドライバーズパッケージ」を装備すれば、リミッターを270km/hに引き上げることもできる。日本では関係ない話ですが。

 

実際に走らせると、XMの加速は強力無比。ガソリンエンジンの伸びと、電気モーターのトルクのいいとこどりなのである。アクセルを踏めばスーパーEVのようにグワッと前に出るが、どこか温かみがあり、ムチ打ちにはならないギリギリの線に抑えてある。もちろん加速の伸びはV8ツインターボならでは。加速が気持ちよすぎて、ついアクセルを踏みたくなる。

 

ボディやサスペンションの仕上がりがまた凄い。基本的に超絶スポーティなのだが、超絶なボディの剛性感のおかげで、これだけ巨大なサイズでありながら、引き締まって小さく感じる。全幅2mを超えているのに5ナンバーサイズみたい……と言ったらおおげさだが、とにかくいっさいブレずにゴーカートにように走ってくれるので、そのぶん小さく感じるのは確かだ。

 

ちなみに搭載されているリチウムイオンバッテリーは、容量29.5kWh(正味容量25.7kWh)。EVモードでは、最大88km(WLTPサイクル)走行できるが、ドライブモードを「スポーツ」や「スポーツ+」に切り替えると、エコなんか一切忘れて加速レスポンスに徹することになる。さすがBMWのM専用モデルだ。

 

ナイトドライブはさらにゴージャス(と想像)

インテリアも豪華そのもの。オラオラしつつも、適度に上品にまとめられているのはエクステリアと同じだ。驚かされるのは天井部の造形で、音響室のように凸凹している。これはいったい何が目的か? と訝ったが、サウンドを美しく聞かせようというわけではなく、夜、ルーフサイドにあしらわれたアンビエントライトで、凸凹を怪しく浮かび上がらせる目的らしい。

↑ヴィンテージ調のレザーを取り入れ、エレガントな印象を持たせたインテリア

 

↑天井部の造形は「イルミネーテッド・ルーフ・ライニング」と称され、デザインと間接照明の組み合わせで空間を演出します

 

今後もしXMに乗る機会があれば、ぜひナイトドライブを体験してみたい。昼間よりもさらにゴージャスに突っ走るに違いなかろうて。

SPEC【XM】●全長×全幅×全高:5110×2005×1755mm●車両重量:2710kg●パワーユニット:4394ccV型8気筒エンジン+電気モーター●システムトータル最高出力:653PS(480kW)●システムトータル最大トルク:800Nm●WLTCモード燃費:8.5km/L

 

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撮影/清水草一

新機能「斜め後方障害物警告」の実力は? ケンウッド最新ミラレコ「DRV-EM4800」を試乗でチェック

すっかりドライブの必須アイテムとなっているドライブレコーダーですが、なかでも急速に人気を集めているのが「デジタルミラー型」です。今回はその最新モデルとして9月に販売を開始したばかりのJVCケンウッド“ミラレコ”「DRV-EM4800」をご紹介します。

↑デジタルルームミラー型ドライブレコーダー「DRV-EM4800」のディスプレイ面と背面。右の2つは前後カメラ。なお、DRV-EM4800の価格はオープンプライス。市場想定価格は5万4100円前後となっています

 

前後カメラを別体型にすることで、取り付けの自由度が大幅アップ

デジタルミラー型ドライブレコーダーは、リアカメラで撮影した映像を、ドライブレコーダーだけでなく、後方を確認するためのルームミラーに映像として表示し、活用するものです。カメラをリアウインドウに装着して使うため、車内の積載状況の影響を受けずに広視野角で後方を確認できるメリットがあります。さらに最近は新車にも装備されることが増えており、それに魅力を感じるユーザーを中心に、後付けできるデジタルミラー型ドライブレコーダーへの人気が高まっているのです。

 

そして、この分野で特に高い人気を獲得しているのがJVCケンウッドの「ミラレコ」です。同社は国内メーカーとしてこの分野での先駆けで、それだけに経験が豊富。これが製品として魅力的なスペックの提供につながり、結果として同ブランドならではの大きなアドバンテージとなっているのです。

 

そうした中で登場したDRV-EM4800は、液晶ディスプレイ部に大画面の12型IPS液晶パネルを採用し、前後撮影用カメラを別体型にしたのが新たなポイントになります。これまでは前方撮影用カメラを本体と一体化していたため、フロントガラス中央にあるADAS(先進運転支援システム)用ユニットとの干渉がどうしても避けられませんでした。前方撮影用カメラを単体にしたことで、この影響を受けない場所への取り付けが可能になったのです。

↑トヨタ「ヴォクシー」に取り付けたDRV-EM4800。カメラを別体型としたことで、ADASユニットなどの影響を受けずに前方を撮影できるようになった

 

↑DRV-EM4800を車内から撮影。助手席側にカメラ部が装着されたが、サイズもコンパクトで視界を妨げない

 

その前後2カメラには、新たに明るく低ノイズで色再現性に優れる裏面照射型CMOSセンサー「PureCel Plus」が採用されました。そのうえで独自の「Hi-CLEAR TUNE(ハイクリアチューン)」を施すことで、夜間やトンネル内などの暗いシーンでは低ノイズでクリア感のある映像で撮影でき、明るいシーンでは抜けの良いスッキリとした色再現性を実現したのです。

↑独自の「Hi-CLEAR TUNE」により、夜間やトンネル内などの暗いシーンでは低ノイズでクリア感のある映像を撮影できていた

 

また、レンズは前後2カメラとも水平133度/対角162度の広視野角レンズを採用して、車両の周囲の状況をくまなく撮影。リアウインドウに施されることが多いスモークガラスへの対応を果たしていることも見逃せません。

↑リアウインドウに装着された後方撮影用カメラ。カメラとしてのスペックは前方撮影用カメラと同一だ

 

音声によるコマンド入力や表示画角調整など、便利機能を満載

JVCケンウッドの“ミラレコ”は使い勝手にも徹底してこだわっています。そのひとつがタッチ操作によるインターフェースです。デジタルミラーとして使う12型のディスプレイにはタッチパネル機能が備えられ、画面をタッチして浮かび上がるアイコンで操作することができます。タッチ反応も良好で、表示された項目に従って小気味よく設定することができました。

↑操作の基本は画面上のタッチ機能を活用する。画面のアングル変更を含め、反応は良好でとても使いやすかった

 

もうひとつが音声によるコマンド入力機能です。今までは手操作が必要だったものを、たとえば「写真撮影」と発すれば静止画撮影を、動画を記録したいなら「録画開始」と声を発すればいいのです。ほかにもこのコマンド入力は画面の表示切り替え機能も含まれます。

 

この機能のメリットは、運転中でも前方から視線を動かさずにコマンド入力ができること。安全面でもメリットがあるのは言うまでもなく、ウェイクワードを入力する必要もなく、その使い勝手の良さから一度使ったら手放せなくなるでしょう。音声の認識精度も上がったようで、入力エラーがほとんどなくなっていました。

↑停止中に音声認識機能を試す筆者。走行中でも前方から視線を移動しなくてもコマンドを発すれば認識してくれる

 

↑音声で操作できるコマンド。ドライブレコーダーとして多用される機能の大半をカバーしている

 

ルームミラーとしては、新搭載の「表示画角調整機能」によって6段階の拡大表示を実現したことも大きなポイントです。これにより、広角レンズを活用した画角の調整をすることで、後方車との距離感がつかみやすくなります。さらに、リバース検出ケーブルを車両側と接続すれば、後退時は自動的にリアカメラのアングルを下向きに切り替えてくれることも便利さを実感できました。

↑リバース検出ケーブルを車両側と接続することで、シフトをリバースに入れると自動的にリアカメラのアングルが下向きに切り替わる

 

これらはまさにデジタルミラーらしい、効果的な機能と言えるでしょう。

 

そして、DRV-EM4800では運転支援機能に新たな機能が追加されました。それが「斜め後方障害物警告」です。走行中に死角となる斜め後方に接近する車両を検出して警告する機能で、たとえば片側2~3車線ある道路を走行中に、隣の車線で近づいてくる車両を検知するのに役立ちます。

↑斜め後方障害物警告の検知イメージ

 

本来は、近接のミリ波レーダーを使うものですが、DRV-EM4800ではリアカメラに映し出された映像から車両を検知しています。JVCケンウッドによれば、「検知精度はミリ波レーダーよりも劣りますが、今まで気付かなかった斜め後方の車両の存在に気付く一助になることを目指しています」とのこと。そこで検知精度はどの程度なのか、試乗して体験してみることにしました。

 

新しい運転支援機能「斜め後方障害物警告」は予想以上の効果を発揮

試乗車は3代目となるトヨタ「ヴォクシー」。DRV-EM4800の本体を既存のルームミラーに被せて取り付け、前方カメラはADASセンサーと干渉しない助手席側に設置してありました。後方カメラの取り付け位置は一般的なリアウインドウの中央です。試乗コースは片側2車線の道幅が続く一般道で、必要に応じて車線を左右に移動して走行してチェックすることにしました。

 

斜め後方障害物警告の結果は予想以上の効果を発揮してくれました。助手席から検知状況をチェックしていると、左右の車線のどちらからクルマが近づいてきてもすべて検知し、警報音とアイコンによる警告を発したのです。アイコンは右から近づいてくる場合はディスプレイの右端に、左からの場合は左端に知らせてくれるので、わかりやすくて良いと思いました。また、警報のタイミングや出し方も車両に気付くのに十分です。

↑斜め後方障害物警告が作動すると、右側(あるいは左側)の車線上に車両が近づいてくると警報と同時にディスプレイ上にアイコンでそれを知らせる

 

もちろん、ほかのクルマが死角に入ったときにそれを認知判断するのは、ドライバーの役目です。この機能はあくまで“アシスト”ですから。しかし、人間は時としてミスを犯します。それをサポートするのがADASの役割であって、その意味でも“ミラレコ”DRV-EM4800の斜め後方障害物警告は、ドライバーの安心度を高めるのに少なからず効果をもたらしてくれたと言えるでしょう。

↑後続車が接近してきた場合も警報と共にディスプレイ上にアイコンを表示して知らせてくれる

 

これらを含めるとDRV-EM4800は、自由度を高めたカメラの取り付け位置やデジタルミラーとしての機能向上、さらに安全運転支援にも新たな魅力を加えたことで、デジタルミラー型として満足度の高い注目の一台と言えるでしょう。

↑前後カメラとGPSユニット、リバース検出のケーブルを1本に集約したことで、本体との接続は電源ケーブルを加えた2本で済むようになった

 

↑DRV-EM4800の同梱されるキット内容

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

写真/松川 忍

レヴォーグと何が違う? スバル都会派ワゴン「レヴォーグ レイバック」をクローズド試乗

スバルのスポーツワゴン「レヴォーグ」をベースに、車高と最低地上高を高めたクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック(以下レイバック)」が発表されました。このモデルはスポーツ志向が強かったレヴォーグに対し、都会志向のユーザー層をターゲットにする目的で新たなグレードとして追加されたものです。今回はそのプロトタイプの走りを、佐渡島の「大佐渡スカイライン」の一部を閉鎖したコースで体験してきました。

↑試乗コースは「大佐渡スカイライン」。アップダウンとワインディングが続くコースで力強い走りを見せた「レヴォーグ レイバック」

 

■今回紹介するクルマ

スバル/レヴォーグ レイバック

※試乗グレード:Limited EX

価格:399万3000円(税込)

 

レヴォーグのラインナップに追加された「都会派ワゴン」

車名のレイバックとは、「くつろぐ」「リラックスできる」という意味の「laid back」をベースとした造語で、「ゆとりある豊かな時間や空間を大切にする気持ち」をそのネーミングに込めたそうです。スバル車といえば大半の人がアウトドア系のクルマという印象を持っていると思いますが、レイバックはレヴォーグにラグジュアリー路線の新たな価値観を与える都会派ワゴンという位置づけで、新グレードとして新たにラインアップされました。

↑佐渡島の雄大な風景にもマッチする人気色「アステロイドグレー・パール」に身をまとったレヴォーグ レイバック Limited EX

 

それだけにデザインの印象もレヴォーグとはずいぶんと違います。前後のバンパーは丸みのあるレイバック専用とし、フロントグリル、サイドスカートなどにも専用デザインを採用することで都会的な雰囲気を持たせています。これに伴ってボディサイズは全長4770mm×全幅1820mm×全高1570mmと、レヴォーグに比べて若干サイズアップすることになりました。

 

【デザインを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

また、クロスオーバー車としての走破性を確保するために、最低地上高はベース車より55mm高い200mmとしています。これによって全高は回転式駐車場への入庫で制限が加わる1570mmとなりますが、ホイールベースは2670mmとベース車と変わりません。また、トレッド幅も少し広がっていますが、その差はわずかで普段の取り回しはレヴォーグとほとんど同じ感覚で扱えると思って差し支えないでしょう。

 

乗降性を高めたフロントシート。高い静粛性が快適性をアップ

インテリアは、センターコンソールやアームレスト、シートのサイドサポート部にスバル初となるアッシュカラーを採用したうえに、カッパーステッチを加えることでレイバックならではの落ち着いたカラーコーディネイトを実現しています。また、フロントシートは座面左右の張り出しを抑えてサポートワイヤーをなくすことで、車高が高くなって影響が出やすくなった乗降性を向上。一方で座面のクッションパッドにインサートワイヤーを加えることで適度なホールド性も確保したとのことです。

↑基本的にはレヴォーグと共通のインテリアは、アッシュカラーを採用してシルバー部にほんのりブルーを加えて都会派をイメージした

 

↑最低地上高が高くなってもスムーズな乗降を得るために、シート左右のサポート部にはワイヤーフレームに変更している

 

車内空間については、コンセプト通りの高い静粛性が大きな特徴となっています。タイヤにはオールシーズンタイヤを採用していますが、スバル専用設計として遮音材をしっかりと使って対策をしており、走行時のロードノイズはかなり押さえ込まれています。これならレイバック専用として標準装備された「Harman/Kardon」の10スピーカーサウンドシステムの能力を十分堪能できるのではないかと感じました。

↑後席は座り心地の良いゆとりのあるシートと広々とした足元スペースを確保。後席用のベンチレーションやシートヒーターなども採用

 

↑カーゴスペースはレヴォーグ GT-X EXと同等の561L(サブトランク含む)となっており、アウトバックとクロストレックの中間サイズとなる

 

11.6インチ縦型ディスプレイのインフォテイメントシステムはレヴォーグから引き継いだもので、見やすさと使いやすさを両立させているのが特徴です。

↑11.6インチ縦型ディスプレイを採用したインフォテイメントシステム。「what3words」を採用したほか、Apple CarPlayとAndroid Autoにも対応した

 

ナビゲーション機能には、簡単な3単語を使って正確な位置を調べられる「what3words」を採用。スマホにインストールされているアプリを使えるApple CarPlayとAndroid Autoにも対応したことで、普段聴いている音楽などもそのまま車内で楽しめます。また、専用アプリを用いた遠隔操作により、車外からでもエンジンの始動と空調の設定が可能となる、リモートエアコン機能を新たに用意しているのも見逃せないでしょう。

 

ワインディングでもロールを抑えながら快適な乗り心地を発揮

パワーユニットは、レヴォーグにラインナップされている2.4リッターターボの用意はなく、1.8リッター水平対向4気筒ガソリンターボエンジンのみの構成となります。試乗したクローズドコースはアップダウンのあるワインディングでしたが、それでもパワー不足を感じることは一切ありませんでした。減速した後に立ち上がるまでのラグが若干感じられましたが、通常の走りであればそれほど気になるレベルのものではありません。むしろターボによるトルクフルなパワーは頼もしさを感じます。

↑パワートレーンは水平対向4気筒DOHC 1.8Lターボエンジンで、最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生させる

 

↑アップダウンが激しい試乗コースにもかかわらず、レイバックはスムーズな走行体験ができた

 

足まわりには高い操縦安定性と快適な乗り心地を両立した専用設定のサスペンションを組み合わせています。ロールもしっかりと抑えられていて、段差のある場所を通過してもフワリとこなすあたりはレヴォーグとはひと味違った乗り心地です。ただ、レヴォーグに比べると車高が高いぶんだけステアリングフィールは若干曖昧で、その意味でシャキッとしたフィールを味わいたいならレヴォーグがオススメとなるかもしれません。

 

それでもレイバックはコーナーをややキツめに通過してもしっかりとグリップしてくれ、高い安心感を与えてくれました。聞けばそれはファルケン製オールシーズンタイヤによる効果が大きいそうで、開発者によれば「走行ノイズが少ないうえに、想像以上に高いグリップ力を獲得できる」実力がレイバックでの採用につながったとのことでした。つまり、十分な回頭性を持ちながら快適な乗り心地を発揮する、まさに都会派ワゴンに求められているスペックをレイバックは実現してくれたというわけです。

↑クロストレックにも採用されたオールシーズンタイヤ「ファルケン ZIEX ZE001 A/S」を標準装着とした

 

↑大佐渡スカイラインの展望台で撮影した「レヴォーグ レイバック」の用品装着車。こちらはアウトドア系に振った装備となっていた

 

SPEC●全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm●車両重量:非公開●パワーユニット:水平対向4気筒DOHC●エンジン最高出力:177PS/5600rpm●エンジン最大トルク:300Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:非公開

 

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撮影/松川 忍

初代「楽ナビ」展示も! 歴史がまるっとわかるパイオニア楽ナビ25周年イベントに行ってきた

パイオニアのエントリー向けカーナビといえばカロッツェリア「楽ナビ」。登場したのは1998年で、それから25年が経ち、その実績を振り返る記念イベントが、10月5~8日の間、東京・二子玉川にある「蔦谷家電」で開催されました。

↑東京・二子玉川にある「蔦谷家電」2階で開催された「楽ナビ25周年記念イベント」。会場では秋の新商品も出品された

 

↑1998年に初代が登場した楽ナビの、25年にわたる歴史が製品と共に出展された

 

「タクシーに乗ったように行き先を告げるだけで済む」ことが楽ナビの目標

楽ナビといえば登場以来、「高性能なナビ機能を誰でも簡単に」のコンセプトの下、多くの人に親しまれる、裾野の広いカーナビとして絶大な支持を集めてきました。その理由はどこにあったのでしょうか。経緯を少し振り返ってみましょう。

 

パイオニアは世界で初めてGPSカーナビを発売したメーカーとしても知られます。それまでのカーナビは、現在地を地図上に設定してからでないと使えない悩みを抱えていましたが、発売によって初めて常に正しい現在地を地図上に表示できるようになったのです。

 

これが契機となって、他メーカーからも相次いでGPSカーナビが登場。その後、目的地までのルートを自動的に探索して案内する、文字通りのカーナビも誕生し、まさに時代はカーナビによってドライブを楽しむ新たなスタイルが生まれたわけです。

 

しかし、GPSカーナビにも悩みがありました。それは肝心の目的地設定が煩わしく、設定が難しいと感じていた人が少なからず存在したことです。「これを解決しなければ真の普及にはつながらない」。そう感じたパイオニアは、誰でも使えるカーナビの開発に着手。試行錯誤の結果、誕生したのが音声認識機能を使った楽ナビだったのです。

↑1998年に初代が登場した楽ナビ。CD-ROM機ながら、音声で行き先を告げるだけで目的地が設定できた

 

ポイントは「タクシーに乗るときのように、行き先を音声で伝えるカーナビ」にありました。リモコンにある発話ボタンを押して目的地を告げる。これだけで目的地が設定できる、まったく新しいインターフェースを作り上げたのです。スマホもない時代にこれを実現したのはまさに画期的なことだったと言えるでしょう。

 

もちろん、認識精度や検索能力が現在のスマホとは比べものにならないほど低かったのは確かです。しかし、「カーナビを誰でも使えるようにする」楽ナビのコンセプトはこのときに確立し、多くの人に受け入れられて大ヒット。以来、楽ナビは当時のコンセプトを継承しながら、時代に合わせた最適なモデルへと発展しつつも、その精神は今もなお連綿と受け継がれているというわけです。

 

会場ではそんな初代楽ナビをはじめ、その後の歴史を飾った製品が年表と共に展示されました。そのほか、大画面化やフローティング化した最新の楽ナビを一堂に集め、そこでは取り付け例としてスズキ「ジムニーシエラ」や、日産「SAKURA」を出展。楽ナビならではの使い勝手の良さを実際に操作して確認することができました。

↑会場では25年の歴史を持つ楽ナビが築き上げた数々のトリビアも紹介された

 

↑デモカーにはフローティング気候を採用した9型大画面の最新「楽ナビ」を搭載した日産のEV「SAKURA」を出展

 

2023年秋のカロッツェリア最新モデルのラインナップも一堂に展示

この25周年イベントでは、楽ナビ以外にも、10月5日に発表されたばかりのカロッツェリアの最新モデルもいち早く展示されました。

↑10月5日に発表されたカロッツェリアのカーオーディオ商品群も展示された

 

【サイバーナビ】

ひとつがカロッツェリアのフラッグシップナビ「サイバーナビ」の最新モデルです。外観こそ従来モデルを踏襲していますが、注目すべきは中身。カーエンターテインメントの要とも言える高音質化をさらに強化しているのが最大のポイントになります。目指すのは“原音再生”であり、それを支える設計思想として掲げられたのが「マスターサウンド・アーキテクチャー」です。

↑カロッツェリアのフラッグシップナビ「サイバーナビ」も音質を高め、ナビ機能も向上させて新登場した

 

ハイレゾ音源が持つハイクオリティをそのまま再生するために最適かつ厳選されたパーツをセレクト。会場では高音質化の“立役者”ともなった高音質パーツを組み込んだ基板を直に見ることができました。

↑搭載するパーツを厳選することで、サイバーナビとして最高レベルの音質を実現できたという

 

また、サイバーナビが実現してきたネットワーク機能も強化され、目的地のフリーワード検索では住所や電話番号、郵便番号の音声入力に対応できるようにもなっています。

 

【「アドベンチャー」シリーズ】

2023年秋モデルではオーディオ系の新モデルも数多く投入されました。なかでも目を引いたのが、アウトドアレジャーをライフスタイルとして楽しむ人たちに向けた「アドベンチャーシリーズ」です。パワードサブウーファーやツィーター、サテライトスピーカーの3つで、いずれもアースカラーとなるライトベージュカラーを採用し、どんなクルマにもマッチしそうな雰囲気を出しています。また、荷物の積み下ろしなどでも傷つきにくいストーン調塗装を採用するといった、こだわりも見逃せません。

↑より多くの人に好まれるカラーを採用した「アドベンチャーシリーズ」。サブウーファー(中央)とミッドレンジスピーカー(右)、ツィーター(左)で構成される

 

【90系ノア/ヴォクシー/ランディ専用スピーカー】

最近、ドアスピーカーの交換が難しくなっているトヨタ車において、90系ノア/ヴォクシー/ランディ専用に開発されたのがこのダッシュボードスピーカー。スピーカー本体とツィーター部に角度を付けてフロントガラスへの反射を低減し、乗員にダイレクトに音を伝えられるように工夫したことで明瞭感のあるサウンドを楽しめるのが特徴です。また、「フレア形状グリルフレーム」を採用することで、音の回り込みを防ぎつつ、豊かな中低域再生とクリアな高域再生を実現。配線加工や特別な工具も必要なく、簡単に取り付けられるのも魅力ですね。

↑90系ノア/ヴォクシー/ランディ専用スピーカー。ユニット部に角度を付けることで乗員にダイレクトに音を伝えられるように工夫した

 

【ボックススピーカー「TS-X170」/「TS-X210」】

今も根強い支持があるというボックス型スピーカーのニューモデルです。TS-X170はコンパクトなサイズの密閉型スピーカーで、重量が軽いこともあってハッチバック車などにも後方視界を妨げることなくリアトレイに設置できます。一方のTS-X210はバスレフ機構を備えた本格派。サイズは少し大きくなりますが、より豊かな重低音再生が可能となってサウンドへの期待も持てそうです。ワンボックスカーなどへの装着にもピッタリですね。

↑ボックス型スピーカー「TS-XS170」(右)をより軽量な密閉型。「TS-X170」はバスレフ構造とすることで豊かな低音を実現した

 

新製品コーナーには、ほかにも「パイオニアグローバルシリーズ」として、海外で展開されているスピーカーもありました。

↑海外で展開していた「パイオニアグローバルシリーズ」も国内導入が決まった

 

パイオニア初のスマホ用ナビアプリ「COCCHi(コッチ)」が登場!

最後にパイオニア初となるナビアプリ「COCCHi(コッチ)」も紹介しましょう。このアプリは、パイオニアが培ってきたカーナビでの知見が活かされ、スマホ専用カーナビアプリとしてはトップクラスの高精度とドライバーアシスト機能を搭載しているのが特徴です。特にナビ機能では、同社ならではの高度なルーティング技術や走行履歴データを活用。道幅や車線数はもちろん、信号の数や交差点の曲がりやすさなどを考慮して、安全かつ最適なルート探索/案内を可能としています。

↑カロッツェリアの秋の新商品や、パイオニアから新たに発売されたスマホ用カーナビアプリ・COCCHi(左)も展示された

 

↑パイオニアとして初めて用意したスマホ用カーナビアプリ・COCCHi。左は新たにNP1との連携も可能になったディスプレイオーディオ「DMH-SF700」

 

また、アプリ内には「お助けボタン」を用意し、このボタンを押すと周辺にある駐車場やトイレ施設を検索。ほかにも渋滞情報の確認や並走道路への切り替えなどのアシスト機能が利用できるようになっています。Android版/iOS版が用意され、利用プランは月額350円の「基本プラン」と、機能を制限した「無料プラン」の2種類を用意。基本プランは最初の30日間のみ無料で使用できます。

 

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ラージ級ミニバン日本代表に相応しい完成度!トヨタ・アルファード/ヴェルファイア

今回は日本を代表するラージ級ミニバンのトヨタ・アルファード/ヴェルファイアをピックアップ。

※こちらは「GetNavi」 2023年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ラージ級ミニバン日本代表に相応しい完成度!

トヨタ
アルファード/ヴェルファイア

SPEC【ヴェルファイア Zプレミア(ガソリン・2WD)】●全長×全幅×全高:4995×1850×1945mm●車両重量:2180kg●パワーユニット:2393cc直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:279PS/6000rpm●最大トルク:43.8㎏-m/1700〜3600rpm●WLTCモード燃費:10.3km/l

 

パワーユニットは2種類

パワーユニットは、2.5lハイブリッドと2.4lターボの2種。後者はガソリンがハイオク指定なのが少し気がかりだが、長距離を走る機会が少ない人なら影響は少ないはず。

 

シートアレンジ次第で広さは十分

3列目シートを展開させるとさすがにミニマムなスペースだが、シートアレンジ次第ではボディサイズに相応しい広さも実現可能。床下にも大きな収納スペースが備わる。

 

一層ラグジュアリーな空間に変化!

インパネと前席回りは程度なタイト感を演出。プレミアムなセダンにも通じる上質感を誇る。ガラスルーフやオーバーヘッドコンソールなど、ラグジュアリーな装備も充実。

 

装備面と見た目で棲み分け!

ヴェルファイアと比較すると、アルファードの外観はフォーマルな仕立て。先代比では高級車らしい上品さも向上した。両者では装備面も差別化され、価格帯は540〜872万円となる。

 

快適性と使い勝手も申し分ナシ!

シートはたっぷりとしたサイズで座り心地も上々。左右スライドドア下には、機械式の格納式ステップが装備され乗降性を向上させるなど、使い勝手への細かな配慮も行き届く。

 

見た目に相応しい快適性

外観は、リア回りも華やかさを感じさせる仕立て。ボディサイドの造形も先代より大胆になった。その走りは2トン超えの巨体ながら十分な速さと快適性の高さが印象的だ。

 

見た目の質感はミニバンの域を超えた!

精悍な顔つきに代表される押し出しの強い佇まいは相変わらず。しかし、新型を前にして最初に気付かされるのは質感の高さに一層の磨きがかかっていること。そんな印象は、室内に入るとより鮮明になる。試乗車はヴェルファイアの一番ベーシックなガソリン仕様だったが、適度なタイト感を演出する前席回りはもはやミニバンというよりプレミアムなセダン級。3列目に至るまでゆったりとしたサイズのシートはナッパレザー仕立てで、座り心地もすこぶる良い。特にオットマン付きの2列目は、快適な空調システムやシェード付きガラスルーフの恩恵もあって、極上の居心地を実現している。

 

新型のエンジンは、2.5lガソリン+電気モーターのハイブリッドと2.4lガソリンターボの2本立て。車重は2WDでも優に2t超えとなるが、動力性能はガソリンターボでも何ら不足はなく、フル乗車の状態でもなければパワフルな感触すら実感できる。それを受け止めるシャーシは穏やかな味付けで、乗り心地は速度域を問わず快適。一方、高速域でも過不足のない安定性も兼ね備える。

 

見た目も含めて全方位的に進化した中身と同様、現状では価格まで大幅に高くなった点こそ気にはなる。だが、新型が先代と同じくラージ級ミニバンの決定版であることは間違いない。

 

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トップモデルの出来映えはまさにAMG!実用性もアップしたメルセデスAMG 「SL」

今回は新たにメルセデスAMGブランドの専用車となった伝統のSLを紹介。その出来映えはまさに鉄壁と呼べるものだった。

※こちらは「GetNavi」 2023年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

トップモデルの出来映えはまさにAMG!

メルセデスAMG
SL

SPEC【SL63 4マチック+】●全長×全幅×全高:4705×1915×1365㎜●車両重量:1940㎏●パワーユニット:3982㏄V型8気筒DOHC+ツインターボ●最高出力:585PS/5500〜6500rpm●最大トルク:81.6㎏-m/2500〜5000rpm●WLTCモード燃費:非公表

 

現行AMGでは文字通り最高峰

63のパワートレインは、4lV8ツインターボ+9速ATにSL史上初となる4WDを組み合わせる。なお、ベーシックな43は2lターボ+9速ATで駆動方式は2WD。

 

よりスポーツカーらしく!

先代比ではボディがコンパクト化。外観はスポーツカーらしい引き締まった佇まいになった。また、ルーフはメタル製リトラクタブルハードトップからソフトトップに回帰した。

 

ラグジュアリーにして実用的

インテリアは最新のメルセデスに準じた仕立てながら、ラグジュアリーな風情も満点。乗る人の身長が150㎝までに制限されるが、2人ぶんの後席も用意され乗車定員は4名に。

 

乗車定員が4名になり地味ながら実用性もアップ

SLは、その源流を辿ると1950年代の純レーシングカーに行き着く伝統あるモデル。しかし今回の新型ではメルセデス・ベンツブランドから離れ、メルセデスAMGの専用車となった。先代と比較すると、ボディはコンパクトに引き締まる一方、搭載するハードウエアはAMGを名乗るに相応しい高性能ぶり。また、オープンカーの見せ場であるルーフがリトラクタブルハードトップからソフトトップに回帰したことも目を引くが、後席が用意され乗車定員が4名となったこともトピックのひとつに挙げられるだろう。

 

今回は導入が遅れていた旗艦モデルの63に改めて試乗したのだが、SL史上初となる4WD +4lV8ツインターボの動力性能は圧巻の域。日常域では扱いやすい一方、積極的に操れば盤石の安定感を維持しつつ血の気が引くような速さを披露する。操る楽しさ、という意味ではベーシックな43も魅力的だが「AMGならやはりコレ」と思わせる出来映えだった。

 

 

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話題沸騰中!三菱デリカミニの他の軽とは“ちょっと違う”部分とは?【クルマの神は細部に宿る】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は話題沸騰中の軽自動車、三菱デリカミニの、他の軽とは“ちょっと違う”部分にフォーカスした!

※こちらは「GetNavi」 2023年11月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

 

三菱
デリカミニ

SPEC【Tプレミアム・4WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1830mm●車両重量:1060kg●パワーユニット:659㏄直列3気筒+ターボ●最高出力:64PS(47kW)/5600rpm●最大トルク:100Nm/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:17.5km/l

514万2000円〜648万8000円

 

デリカミニのオフロード感はあくまで雰囲気!?

安ド「殿、デリカミニ、良いですね!」

永福「うむ。良いな」

安ド「デリカD:5が他のミニバンとはちょっと違うように、デリカミニも、他の軽スーパーハイトワゴンとはちょっと違いますね!」

永福「うむ。ちょっと違うな」

安ド「オフロード感を打ち出していて、個性があってカッコ良いです!」

永福「同感だ。しかしSUVテイストの軽スーパーハイトワゴンなら他にもある。スズキのスペーシア ギアやダイハツのタント ファンクロスがそれだ」

安ド「そうですけど、デリカミニが一番本格的じゃないですか?」

永福「イメージ的にはそうだが、実はデリカミニにはFFモデルもある」

安ド「エッ! あるんですか」

永福「従来のekクロスに比べると、オフロード仕様ゆえにだいぶ最低地上高が高くなっているようにも見えるが、実はタイヤ径が1サイズ大きくなっただけで、車高は1cmしか変わっていない」

安ド「エッ! たったの1cmですか!?」

永福「つまりデリカミニのオフロード感は、スペーシア ギアやタントファンクロス同様、ほとんど雰囲気だけなのだ」

安ド「そう言えば、フェンダーガードっぽい黒い部分や、サイドステップガードっぽいシルバーの部分は塗装やステッカーでした」

永福「エエッ! サイドのアレはステッカーだったのか!?」

安ド「はい。触って確かめました」

永福「フロントやリアのアンダーガードっぽいシルバーの部分はどうだ?」

安ド「あれは本物でした。と言っても樹脂製ですが」

永福「ステッカーよりは良いがな」

安ド「走りも良いですね!」

永福「うむ。試乗したのは4WDターボモデルだったが、エンジンも足まわりも良かった」

安ド「軽スーパーハイトワゴンなので、あまり期待していなかったんですが、良く走ります!」

永福「良く走るな」

安ド「乗り心地がゴツゴツしているのかなって思ったら、ふんわり快適でした」

永福「うむ。ふんわり快適である」

安ド「車高の高さが良い方向に向いているのでしょうか?」

永福「三菱のエンジニアによると、従来よりタイヤ径を1サイズ大きくしたので、そのぶんサスペンションをソフトにしたそうだ」

安ド「それがプラスに働いたんでしょうか」

永福「そのようだ。首都高のカーブでも安定していたぞ。ステアリングの反応も思ったよりもダイレクトだ」

安ド「さすが三菱、オフロード車作りがうまいですね!」

永福「いや、デリカミニのオフロード感はあくまで雰囲気だ」

安ド「僕はオフロードは走らないので、雰囲気だけで良いです!」

永福「私もだ」

 

 

【GOD PARTS 神】ダイナミックシールド

ブランドの不文律に則っていなくても許せる

三菱のアイデンティティといえば「ダイナミックシールド」と呼ばれるフロントデザインがあります。カタチ的にはライトやグリルをメッキパーツで「X」型に形成したものですが、デリカミニでは「X」というより漢字の「八」です。上の部分が足りないのですが、このクルマのカッコかわいいキャラ的には合っています。

 

【GOD PARTS 1】ロールサンシェード

広いウインドウからの日差しをカット!

「プレミアム」系グレードの両側リアウインドウには、普段は巻き取られていて、使いたい時にサッと引き出せるサンシェードが搭載されています。デリカミニのようなスーパーハイトワゴンは窓面積が広すぎるのでこれは便利ですね。

 

【GOD PARTS 2】ヘッドライト

マンガのキャラのような目

まるでマンガのキャラクターのように、白目のなかに黒目があるように見えます。このデフォルメ感が親しみやすさを感じる所以かもしれません。なお、デザインの元となったデリカD:5のヘッドライトはもっとシュッとしています。

 

【GOD PARTS 3】デリ丸。

デリカミニの販売を後押しする人気者

イプサムの「イプー」など、過去にもクルマの宣伝のためにオリジナルキャラクターが作られたことはありましたが、この「デリ丸。」はかなり人気で、グッズを販売してほしいという声が殺到しているのだとか。写真は、契約者特典のぬいぐるみです。

 

 

【GOD PARTS 4】フェンダー

タイヤまわりを黒くしてオフロード車っぽく!

SUVでは、タイヤを囲っている部分に樹脂製のガードなどをつけてオフロード車っぽさを演出することがあります。デリカミニも黒いので別体の樹脂製か? と思いきや同体パーツで、色だけ変えています。ま、張り出してたら車幅オーバーしちゃいますしね。

 

【GOD PARTS 5】視界

さらに窓面積を増やして運転のしやすさを強化

サイドウインドウの前方には縦長のガラス空間があります。ここを1本の太い柱(ピラー)にしてしまうと視界が狭くなるので、2本の柱でガラスを囲んでいます。昔の三角窓のように開けられたらもっと良かったですね。

 

【GOD PARTS 6】リアシート

軽自動車最長クラスの後席スライド量

左右分割が可能で約320㎜もスライドできるので、後席スペースを広くしたり、荷室を広げたりと自由自在です。中央部分はファブリック素材のようですが、表面は撥水処理がされていて、多少の水分であれば弾いてくれます。

 

【GOD PARTS 7】アンダーガード

SUVらしさを高める前後バンパー

フロントとリアのバンパー下部は、黒とシルバーでギザギザのデザインが施されています。障害物にブツけても跳ね返しそうな、いかにもオフロード車っぽいデザインです。サイド(ドア下部)のものはステッカーです。

 

【GOD PARTS 8】ルーフレール

ギア感溢れるアクセサリー装備

オフロード車の定番装備であるルーフレールが、全グレードに標準搭載されています。スキーやスノボなどを収納するキャリアを取り付けられますが、このクルマは結構背が高いので取り付けに苦労するかもしれません。

 

【GOD PARTS 9】サーキュレーター

広すぎる空間の空気を循環!

リアシートの天井にはサーキュレーターが付いていて、後席まわりの広い空間にエアコンの冷気や暖気を循環させてくれます。空気清浄のプラズマクラスター付きで、「プレミアム」系のグレードに標準装備されています。

 

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改めてトヨタの「RAV4 PHV」に乗って考える、ほかのSUVとの差は?

長い歴史を持ち、これまで世界を席巻してきたシティSUVのトヨタ「RAV4」は今も高い人気をほこる。その理由を分析するべく、今回はトップグレードでもあるプラグインハイブリッドモデルを試乗した。ほかのSUVに勝っている部分はどこか、パワーユニットによる違いとはなんだろうか?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ RAV4 PHV(BLACK TONE)

価格:563万3000円(Zグレード)

 

世界で人気を誇るクロスオーバーSUVのプラグインハイブリッドモデル

世界中でこれだけ多くのSUVが販売されているなかで、トヨタのクロスオーバーSUV・RAV4は今も昔も世界トップクラスの人気を誇っている。1994年の初代モデルデビュー時は革命児のような存在で、当時はまだSUVが「クロカン(クロスカントリー車)」と呼ばれていた時代。街中でも映える「ライトクロカン」の先駆けとして、またたく間にヒットモデルとなった。

 

時代を経て、いつしか街の風景に似合うクロカンが、「シティSUV」や「クロスオーバーSUV」などと呼ばれるようになるのだが、グローバルモデルであったRAV4は北米でも好評で、モデルチェンジのたびに北米市場に合わせるかのようにサイズが大きくなっていった。現在では間違っても「ライトクロカン」とは呼べない、全幅1855mmの立派な「ミドルサイズSUV」である。

↑ボディサイズは全長4600×全幅1855×全高1695mm。また、現在販売されているZグレードのカラバリは7色展開となっています。写真はメーカーオプションのアティチュードブラックマイカとエモーショナルレッドを組み合わせたカラーリング

 

日本ではサイズ感が合わなくなってしまったため、実は先代型は国内販売されなかったのだが、2019年に登場した現行型は、登場するやいなや驚くほど好調なセールスを記録した。当初は、ガソリンエンジンモデルとハイブリッドモデルのみの設定で、翌20年6月に追加されたのが、今回紹介するプラグインハイブリッドモデルのRAV4 PHVである。

 

エクステリアもインテリアもこだわりの見えるデザイン

今回試乗した車両のグレード名は「BLACK TONE(ブラックトーン)」。実はこれ、2022年10月でカタログ落ちしてしまったグレードで、現在、RAV4のPHVモデルは「Z」という新グレードのみ販売されている状態なのだが、基本性能はBLACK TONEから変更されていない。

 

RAV4のラインナップのなかでも、PHVモデルはトップグレードの位置に置かれており、グリルやバンパーまわりなどフロント部に専用のメッキモールやLEDランプなどが装着され、高級感が高められている。

↑スポーティなイメージを強めたとするフロント。専用のLEDライトは先進性を強調しているそうです

 

↑新たに意匠した19インチ専用アルミホイール。都会のシーンにも合うよう、塗装と仕上げにもこだわっています

 

RAV4自体のデザインについては、直線基調でカクカクしていて、なんだか変形ロボットのようなイメージ。その世界観をうまく壊さないように上質にまとめられているが、幼少時に変形ロボットアニメを見て育った30~40代にとってはこのカクカクデザインが、懐かしくもあり、なんだか新しくもあり、支持される理由のひとつになっているようだ。

 

一方でSUVらしさ、たくましさといった力強い雰囲気はトレンドをしっかり押さえていて、常に世界のトップセールスを争っているトヨタのデザインここにありという自信が伝わってくる。

↑後ろから見てもカクカクとしたデザインが目立ちますね

 

インテリアもこのクラスのSUVのなかではデザインが凝っている。外観に合わせた力強さとモダンさを合わせたような上質な雰囲気ながら、物入れや装備もかなり充実していて、王道のSUVらしい堂々とした佇まいと、使いやすさが両立している。

 

操作部はそれぞれが使いやすい場所へ配置され、あらゆる人にしっくりくるように設計されている。また、SUVらしく着座位置が高いため運転自体はイージーだが、前述のとおり全幅がそれなりに広いため、あまり運転に慣れていない人は、狭い路地や駐車場などですこし苦労するかもしれない。

↑手元のダイヤルで「エコ」「ノーマル」「スポーツ」とドライブモードを変更できます。また、専用の「TRAIL」スイッチも装備

 

↑合成皮革シート表皮採用のスポーティシートを標準装備。横基調のキルティング意匠とレッドリボン加飾で上質さを演出しています

街乗りは超快適、スポーツモードにすれば強力な加速を楽しめる

EVモードにおける、フロントとリアのダブルモーター+CVTによる乗り味は非常にマイルドで、騒音についてもタイヤと路面が生み出すロードノイズしか感じられないほど。快適極まりない。ダイヤル式のドライブモードを「ノーマル」モードから「スポーツ」モードに変更すれば、一転ハイブリッド車となり、エンジンの力強さも加わったトルク感あふれる強力な加速を楽しむことも可能だ。また、電気容量が少なくなってくると自動でハイブリッドに切り替わり、エンジンを使って走りながらある程度充電もされるようになる。

↑RAV4 PHVは2.5L直列4気筒エンジンに加えて、フロントとリアにモーターを搭載。システム最高出力は225kW(306PS)を実現しています

 

車内も乗員の空間が広く感じられ、ロングドライブも快適。当然ながら燃費だってガソリンエンジン車より優れている。PHEVということで、今回はすっかりモーター走行を堪能させてもらったが、低速域や高速道路での走行時もパワー不足を感じることはなかった。さらにSUVでありながらコーナリング姿勢が安定しており、これは、重量物であるバッテリーを床下に搭載していることも貢献しているのだろう。

 

プラグインハイブリッドであることのマイナス面はなかなか見当たらない。荷室スペースについては、少々ガソリン車やハイブリッド車より容量が減っているものの十分使えるサイズだし、これだけ荷物が積めればアウトドアやレジャーでも不足はないだろう。また、荷室内にはAC100Vのコンセントも搭載されているので、出かけた先で家電などを使用することも可能だ。このあたりはSUVであることと、プラグインハイブリッドであることがうまくマッチングしている。

↑荷室スペースの容量は約490L。アウトドアなどで必要十分な装備は積めるでしょう

 

SUV+プラグインハイブリッド搭載モデルといえば、かつてはアウトランダー一択だったが、RAV4 PHVの登場で選択肢が広がった。ただし、ガソリンエンジン車やハイブリッド車であれば300万円くらいから買うこともできるが、このPHVは約560万円。どんなクルマを買うにしてもトップグレードを手に入れたい人や、時代の変化に敏感でEVの購入も視野に入れているような人に相応しい1台といえよう。

SPEC【BLACK TONE】●全長×全幅×全高:4600×1855×1695mm●車両重量:1920kg●パワーユニット:電気モーター+2.5L直列4気筒エンジン●エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:219Nm/3600rpm●WLTCモード燃費(ハイブリッド):22.2km/L●WLTCモード一充電走行距離:95km

 

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文・撮影/安藤修也

ホンダ新型「アコード」の魅力を解説! 先進的で斬新な機能が満載

ホンダ「アコード」が、11代目として日本でも2024年春に発売されることが明らかになりました。アコードは1976年に初代が登場したホンダのミッドサイズセダンです。以来、その活躍の場は海外にまで広がり、今やアコードは同社の世界戦略車種として揺るぎない地位を獲得するまでになりました。今回は事前撮影会でキャッチした新型アコードの魅力についてレポートします。

↑北米に続いて、2024年春、日本市場にも投入されることが決まった11代目新型アコード

 

Google ビルトインのインフォテイメントなど先進技術を満載

今回導入されることになった新型は、初代から一貫して持ち続けてきた「人と時代に調和したクルマ」の思想を踏襲。それでいて新開発の2.0L直噴アトキンソンサイクルエンジンと高出力モーターを組み合わせた新開発2モーター式ハイブリッドシステムで、スムーズで上質な走りを実現。そのうえでDセグメントにふさわしい高品質なインテリアと、最新のコネクティビティや最新の安全技術を装備した“新世代のミドルサイズセダン”としています。

 

なかでも注目すべきは、日本のホンダ車として初めてコネクテッドサービスに「Google ビルトイン」を搭載したことと、ホンダが開発を進めてきた最先端の安全技術「HondaSENSING 360」を初採用したことです。

↑日本車として初めてコネクテッドサービスに「Google ビルトイン」を搭載。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応する

 

Google ビルトインは、OSにAndroidを採用したもので、アコードのダッシュボード上に設置されたインフォテイメントシステムに組み込まれています。ディスプレイは12.3インチとホンダ車としては最大クラスのサイズ。スマホやタブレットのようにタッチ操作ができるほか、Google アシスタントの音声コマンドを活用してGoogle マップで目的地設定、残燃料や走行距離の確認やエアコンの温度調節などが可能となっています。

 

【Google ビルトインを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

この機能で見逃せないのは、スマホなどで使っているGoogle アカウントでログインできることにあります。これにより、車内で使えるGoogle アシスタントやGoogle マップ、Google Playのほか、最新のアプリなどがひとつのGoogle アカウントの下でシームレスに利用できるようになるのです。たとえば、スマホで管理していたスケジュールや住所などがアコードのインフォテイメントシステムでも反映されるようになり、過去に検索した目的地履歴も反映可能。この便利さは一度使ってみればすぐにわかります。

 

国内初採用となる先進運転支援システムのHondaSENSING 360は、約100度の有効水平画角を持つフロントセンサーカメラと、計5台のミリ波レーダーを組み合わせることで、360度の車両監視が可能になるというものです。なかでも従来のHonda SENSINGの機能に加えて、前方交差車両警報、車線変更時衝突抑制機能、車線変更支援機能もサポートすることになったのは新たなプラス。これがより安心・安全な運転環境が提供されることにつながるわけです。

 

また、ホンダは新型アコードのHondaSENSING 360において、2025年にもドライバーの異常や周辺の環境を的確に検知することで、事故リスクを低減し、さらにハンズオフでの走行が可能になる機能も追加することを予定しています。今後のHondaSENSING 360の進化にも期待したいですね。

 

ロー&ワイドなプロポーションと斬新さあふれる新機能に注目!

さて、新型アコードを前にすると、ロー&ワイドなプロポーションで構成されていることが一目でわかります。メッシュ調のフロントグリルを軸にフルLED化した薄型フロントヘッドライトと、横一文字のリアコンビネーションランプで前後共にワイドな印象を強調。加えて、リア方向の流麗で洗練されたファストバックスタイリングが走りに対する力強さをしっかりと伝えてきます。

↑ロー&ワイドなプロポーションが印象的な新型アコード。リア方向の流麗で洗練されたファストバックタイリングが力強い走りを伝えてくる

 

インテリアは、最近のホンダに多い水平基調のデザインの中に統一感のあるコーディネイトを採用したプレーンな印象。これが開放的でノイズの少ない、優れた前方視界を確保しています。手に触れる部分にはソフト素材をふんだんに採用しており、触感からして上質さをしっかりと伝えてきます。また、クラストップレベルの広さを持つ車内空間は、大人4人(定員は5名)がゆったりとくつろいで移動できる十分な広さとなっていました。

 

【インテリアを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

車内のLED照明にもこだわりを見せています。それはインパネラインやドアラインなどに施された、色の好みや室内温度などを総合的に判断して“光”で演出するマルチカラーのアンビエントライトです。7色のLEDカラーが用途に応じて自動的に変化するというもので、その光はユーザーが好みに応じて選ぶことも可能。ドア開閉やエアコンの温度調節、音声認識の発話と連動するほか、SPORTモードに切り替えたときには専用カラーへ切り替わってスポーティさを演出します。ややギミック的な印象はぬぐえませんが、使ってみればその変化に意外な楽しさを感じたのも確かです。

↑インパネラインやドアラインなどには“光”で演出するマルチカラーのアンビエントライトを採用

 

使い勝手を高める機能としては「エクスペリエンスセレクションダイヤル」の採用に注目です。車内環境のスマートな操作体験を提供するために考案されたもので、ダイヤルを回してプッシュすることで、使いたい機能をあっという間に選択できる機能です。使いたいスイッチがどこにあったか探す必要なんて一切ないため、車内には従来なら装備されていたハードスイッチ類はほとんど見当たりません。これがインテリアによりスッキリとした印象を導き出すことにもつながったと言えるでしょう。

↑使い勝手を高める「エクスペリエンスセレクションダイヤル」を採用。時計はアナログ/デジタルが選択できる

 

しかも、このダイヤルの中央には時計が表示され、アナログ/デジタル式が選択できるほか、背景には好みの動く模様を設定することも可能となっています。スマホのように、ここに家族の写真とか好みの画像に入れ替えられたらきっと喜ばれるでしょうね。ちなみに、この機能はアジア向けアコードのみに搭載される専用機能とのこと。先行で発表された北米仕様には搭載されていないそうです。

 

事実上のホンダ車のフラッグシップ。新エンジンの走りが楽しみ!

今回はあくまで事前撮影会ということで試乗はできていません。伝え聞くところでは、第4世代2モーターハイブリッドシステムによる走りのパフォーマンスは、相当に期待が持てるとのこと。洗練されたデザインと上質なインテリア、デジタル時代にふさわしいインフォテイメントシステム、最先端の運転支援システムなど、その内容はこれまでの国産セダンにありがちな地味なイメージが払拭される可能性大です。

 

価格は「600万円クラスになりそう」とのことでしたが、車両価格が高くなっている今となってはそれも仕方ないのかもしれません。いずれにしても新型アコードは、日本で販売されるホンダ車にとって事実上のフラッグシップとなります。どんな走りを見せてくれるのか、来年の春の登場が今から待ち遠しいですね。

 

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走りはどう? 日本上陸したBYDのコンパクトハッチBEV「ドルフィン」をチェック

BYDジャパンは8月末、バッテリーEV(BEV)のコンパクトハッチモデル「ドルフィン」のメディア向け試乗会を開催しました。同社は2023年1月にSUV型のBEV「ATTO3(アットスリー)」を発売しており、ドルフィンはそれに続く第2弾。9月20日に正式発表されたモデルの走りをさっそく体験してきました。

↑実車を前にすると意外に大きく存在感がある。写真はドルフィン

 

■今回紹介するクルマ

BYDジャパン/ドルフィン

価格:363万円〜407万円(税込)

 

グレードは「ドルフィン」と「ドルフィン・ロングレンジ」の2構成

ドルフィンを前にして実感するのは、思ったよりも存在感があるということでした。ボディサイズをチェックすると全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mmで、クラスとしてはBセグメントとCセグメントの中間に位置するサイズ。これはノートやフィットよりも一回り大きいサイズに相当します。

↑ボディサイズは全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mm、ホイールベースが2700mm。写真はドルフィン

 

↑全高はオリジナルよりも20mm低い1550mmとして回転式駐車場への入庫に配慮した。写真はドルフィン

 

ドルフィンで注目なのは輸入車ながら、徹底して日本市場にローカライズされていることです。たとえば全高は、グローバルでは1570mmなのですが、日本仕様だけは回転式駐車場制限に合わせて20mm低くしています。それだけじゃありません。ウインカーレバーを中国本国の左側から右側に変更したほか、急速充電についても日本で一般的なチャデモ方式を採用。そして、日本では装着が義務づけられている誤発進抑制システムや、各種機能の日本語による音声認識機能までも追加しているのです。

↑急速充電は日本で一般的なチャデモに対応(左)。右が普通充電用。写真はドルフィン

 

そのドルフィンは、スタンダードな「ドルフィン」と、より上級な装備を搭載した「ドルフィン・ロングレンジ」の2グレード構成となっています。違いで最も大きいのはバッテリー容量とモーターの出力にあります。

 

ロングレンジはバッテリー容量を58.56kWhとし、一充電での航続距離は476㎞。組み合わせるモーターも最大出力150kW(204馬力)・最大トルク310Nmというハイパワーを実現しています。一方のスタンダードはバッテリー容量が44.9kWhとなり、一充電当たりの走行距離は400km。モーター出力は最大70kW(95馬力)・最大トルク180Nmとなります。

↑ドルフィンのパワーユニットは、モーター出力が最大70kW(95馬力)・最大トルク180Nm

 

駆動方式はどちらも前輪駆動のみ。サスペンションは、フロントこそどちらもストラットですが、リアはロングレンジがマルチリンクを採用し、スタンダードはトーションビームの組み合わせとなっていました。これらの両者の違いも気になるところです。

 

外観上は、ロングレンジにはルーフとボンネットをブラックとした2トーンカラーを組み合わせましたが、スタンダードは単色のみの選択となります。

 

グレードを問わず、最高水準の先進運転支援システムを標準装備

インテリアはとても質の高いものでした。シンプルながら緩やかにラウンドするダッシュボードに、ドルフィン(イルカ)のヒレを彷彿させるドアノブなど、デザインへのこだわりが感じられます。ソフトパッドも随所に施され、コンパクトハッチにありがちなチープさはほとんど感じません。特にロングレンジにはサンルーフやスマホ用ワイヤレス充電器が追加されており、そういった面での満足度は高いと言っていいでしょう。

 

【インテリアなどをギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

加えて驚いたのが先進運転支援システムの充実ぶりです。アダプティブクルーズコントロール(ACC)をはじめ、自動緊急ブレーキ(AEB)やレーンキープアシスト(LKA)、フロントクロストラフィックアラート(FCTA)&ブレーキ(FCTB)、ブラインドスポットインフォメーション(BSI)といった多数の先進機能を装備。さらに室内に2つのミリ波レーダーを搭載し、子供やペットの置き去り検知機能も装備。これらがすべてグレードを問わず標準装備されるのです。

 

グレードによって安全装備にも差を付けていることがほとんどの国産車と違い、安全装備ではグレードに応じて差を付けない。こうした姿勢は高く評価していいと思います。

 

市街地走行に十分なパワー感を発揮する「ドルフィン」

↑スタンダードなグレードとなる「ドルフィン」。試乗は街中から高速道へ続く公道で実施した

 

さて、いよいよドルフィンで公道に出て試乗に入ります。

 

最初に試乗したのはモーター出力を抑えたスタンダードからでした。とはいえ、アクセルを踏むと、車重が1520kgもある印象はまるでなく、スムーズに発進していきます。街中は「エコモード」で走りましたが、もたつく印象は一切なく、ハンドリングは軽めながらも左右の見切りがいいので不安を感じさせません。決して速さは感じませんが、軽くアクセルを踏むだけで交通の流れに乗れるので、運転はとてもラクに感じました。

↑高速クルージングからの加速では実用上十分なトルクを感じた

 

ただ、高速に入ると加速に物足りなさを感じたのは確かです。クルーズモードに入ってからの加減速ではそれほど力不足は感じませんが、高速流入時ではすぐに加速が頭打ちとなってしまい、つい「もう少し!」と叫んでしまいそうになります。

↑高速道路本線への進入ではもう少しパワーが欲しいと感じたが、決して遅いわけではない

 

ステアリングも中間位置が曖昧で、これに慣れないでいると真っ直ぐ進むのに細かく修正を加えながら走ることになります。また、乗り心地についてもスタンダードは路面からの突き上げ感があり、後席に乗ったカメラマンからも「結構コツコツ来ますねー」との声が出たほどです。

 

圧倒的な加速力で目標速度に到達!「ドルフィン・ロングレンジ」

こうした体験の後、次はロングレンジに乗り換えてみました。街乗りからスタートするとすぐにスタンダードとの違いを実感します。路面の段差もしなやかにこなし、不快な感じはほとんどなくなったのです。ステアリングの軽さは大きく変わりませんでしたが、このしなやかさがクルマに上質感を与えてくれています。

↑ドルフィンの上級グレードとなるドルフィン・ロングレンジ。高出力モーターによる圧倒的パワーが醍醐味

 

↑タイヤは両グレードともブリヂストン「エコピア」を履いていた。サイズは205/55R16。写真はドルフィン・ロングレンジ専用デザイン

 

さらに加速の力強さが半端ない! 走行モードを「スポーツ」に切り替えてアクセルを踏み込むと、車重が1680kgもあるクルマとは思えない圧倒的な加速力で目標の速度域に到達したのです。走行モードを「エコ」に切り替えたとしても十分な加速力を実感でき、まさにモーター出力の違いを見せつけられた印象があります。

 

一方で回生ブレーキは2段階を用意していますが、ATTO3と同様、ワンペダルで走れるほど減速感は強くありません。それでもスポーツモードにするとやや減速感が強くなるので、たとえば峠道はより楽に走れるのではないかと思いました。

↑ドルフィン・ロングレンジにはスマホ用ワイヤレス充電機能が装備される

 

↑センターディスプレイはATTO3と同様、タテ表示に電動で切り替えられる

 

ドルフィンで気になるのはやはり価格でしょう。ドルフィンの価格は363万円(税込)、ドルフィン・ロングレンジは407万円で、政府のCEV補助金65万円を適用すれば、ドルフィンは298万円からとなります。正直言えばもう少し安く出てくるかとは思いましたが、昨今の円安を踏まえれば妥当な価格といったとところでしょうか。それでも、この価格は日本で販売される軽EVと真っ向から勝負できる価格。その意味でこのドルフィンは、日本におけるBYDの存在感を打ち出せるか、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

SPEC【ドルフィン】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550mm●車両重量:1520kg●パワーユニット:交流同期電動機●モーター最高出力:95ps/14000rpm●エンジン最大トルク:180Nm/3714rpm

【ドルフィン・ロングレンジ】●全長×全幅×全高:4290×1770×1550mm●車両重量:1680kg●パワーユニット:交流同期電動機●モーター最高出力:204ps/9000rpm●エンジン最大トルク:310Nm/4433rpm

 

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写真/松川 忍(ドルフィン)、 筆者(ドルフィン・ロングレンジ)

気持ちの良い「音」の秘密に衝撃! ホンダZR-Vのディテールをチェック【クルマの神は細部に宿る。】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、ホンダが北米から導入した新型SUV、 ZR-Vを取り上げる。特徴的な顔つきはカッコ良いのか悪いのか!?

※こちらは「GetNavi」 2023年10.5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

HONDA
ZR-V

SPEC【e:HEV Z AWD】●全長×全幅×全高:4570×1840×1620mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:1993cc直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:141PS(104kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:182Nm/4500rpm●WLTCモード燃費:21.5km/L

293万2600円〜410万3000円

 

エンジンがものすごく気持ち良いe:HEV

安ド「殿! 今回はホンダのSUV、ZR-Vです!」

永福「うむ。実質的なCR-Vの後継モデルだな」

安ド「えっ、そうだったんですか。CR-Vよりはコンパクトで、ちょうど良いサイズですね」

永福「CR-Vは世界で5番目くらいに売れているホンダの大ヒットモデルだが、日本ではサイズが大きすぎて売れず、消滅してしまった。そこでCR-Vより少し小さいSUVを、新たに投入したというわけだ」

安ド「クルマって、どんどんサイズが大きくなってきていますけど、海外ではもっと大きくなってるんですね!」

永福「実はこのクルマ、ホンダのメイン市場たる北米では、HR-Vの名前で売られている」

安ド「えっ! 以前日本でも販売されていた、あの小さくてオシャレだったHR-Vが、こんなに大きくなっていたんですか!」

永福「うむ。海外向けの先代HR-Vは、日本の先代ヴェゼルだったが、現行のヴェゼルは、北米では売られていない」

安ド「……何がなんだかわかりません!」

永福「私もだ。ヴェゼルのような日本で売れ筋のモデルは、北米では小さすぎて売れないので、車名が複雑なことになっているのだ」

安ド「とにかくZR-Vは、日本では新型車ですよね!」

永福「うむ。ベースはシビック。シビックのSUVバージョンと思えば良い」

安ド「今回の試乗車はe:HEVというハイブリッドシステムを搭載していますが、これもシビックと同じですね」

永福「だな。私はe:HEVが大好きなのだ。ハイブリッドだが、エンジンがものすごく気持ち良い」

安ド「スポーツモードにすると、エンジンがパワフルで音もスポーティで、たしかに良い感じでした!」

永福「実はその時、エンジンは発電しているだけで、実際にはモーターが駆動しているのだが、ものすごく気持ち良いだろう」

安ド「ええーーーーっ! あの良い音がしてる時、エンジンは発電機なんですか!?」

永福「私も聞いてビックリした。まるでF1マシンのような良い音がするのに、実際には電気だけで走っているんだからな」

安ド「衝撃です!」

永福「衝撃だな」

安ド「もうひとつ衝撃だったのは、顔のおちょぼ口です!」

永福「言われてみればおちょぼ口だな」

安ド「当初はなんだこりゃと思っていたのですが、見ているうちにだんだんマセラティみたいに思えて、好きになってきました!」

永福「言われてみれば、マセラティもおちょぼ口でカッコ良いな」

安ド「昔の価値観だと絶対カッコ悪いんですけど、不思議です!」

永福「ひょっとこのようなおちょぼ口がカッコ良く思えてくるんだから、たしかに不思議だな」

 

【GOD PARTS 神】パワーユニット

ハイブリッドでも速くて気持ち良い

ハイブリッドモデルは、2.0L直噴エンジンに2モーター内蔵電気式CVTを組み合わせた「スポーツe:HEV」を搭載。ドライブモードを「SPORTモード」にすれば、まるで自然吸気式レーシングエンジンのような力強い加速を味わえます。「ECONモード」にしても、街中であれば走りにまったく不満は感じません。1.5L VTECターボエンジン仕様もあります。

 

【GOD PARTS 1】フロントグリル

顔の中央に位置する枠なし個性派デザイン

水平に並んだヘッドライトの間にはグリルが配置されています。グリル自体には枠がなく、内部は11本の縦ラインで仕切られています。フロントまわりの中央に位置していて、なんだかひょっとこ顔ですが、インパクトはかなり強いです。

 

【GOD PARTS 2】ボディカラー

艶っぽさが感じられる上質なボディ色

取材車両のボディカラーは、新色の「プレミアムクリスタルガーネット・メタリック」でした。言葉で表現するのが難しいカラーで、赤かと思いきや紫だったり、マルーンのようにも見えたり、光の状態では茶色っぽくも見えます。ZR-Vらしい艶っぽさが感じられますね。

 

【GOD PARTS 3】ドアハンドル

ムキムキイメージを共通化

顔も個性的ですが、インテリアでも個性を発揮しています。直線的でシンプルだったヴェゼルと比べて、抑揚のある筋肉質な雰囲気です。ドア内側の握る部分も、このようにムキムキな感じで、後述するセンターコンソールと共通イメージになっています。

 

【GOD PARTS 4】車名

 

スタンダード派か個性派か?

かつてホンダのSUVといえば、1990年代にヒットした「CR-V」でした。その後、HR-Vやエレメント、MDXなど個性的SUVを経て、ヴェゼルが大人気に。このZR-VのZには「究極の」といった意味があるそうで、ホンダのSUVここに極まれりという感じでしょうか。

 

【GOD PARTS 5】ハイデッキセンターコンソール

 

上質さと使い勝手の良さを兼ね備えたインテリアはマッチョ系

筋肉質で立体的な造形となったセンターコンソールは、デッキが2層になっていて、下段のトレイには小物を入れることができます。さらに下段の両サイドには、USB端子(Type-AとType-C)を備え、スマホの充電がしやすかったです。

 

【GOD PARTS 6】ラゲッジルーム

必要にして十分な荷室スペース

ミドルクラスのシビックがベースということで、ボディサイズに合わせて荷室もかなり使えるサイズ。リアシートを畳めば床面はほぼフラットになりますし、床下アンダーボックスもあります。荷室内にスポット照明も複数設けられていて便利です。

 

【GOD PARTS 7】シフトセレクター

ホンダの新しいスタンダード?

ボタン式のシフトセレクターが採用されています。クルマのATシフトは、時代ごと、メーカーごとにさまざまに形を変えてきましたが、ホンダはこのボタン式をスタンダードにしていこうと考えているのかもしれません。

 

【GOD PARTS 8】パワーテールゲート

上級車の装備も全モデル標準搭載

荷室のトビラはボタンひとつで開閉できますが、この電動式トビラがZR-Vでは全モデル標準装備になっています。高級車やラージサイズのモデルに多いパワーテールゲートですが、ZR-Vも高ランクのクルマということですね。

 

【GOD PARTS 9】ステアリングヒーター

押しやすいところに配置されたボタン

寒い日に重宝するステアリングヒーターは、パワーテールゲート同様、高級車によく搭載される装備です。ZR-Vでは、ステアリングの手前側、目立つところに設置されていて、すぐにステアリングの持つところを温かくできます。

 

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「e-POWER」は やっぱりセレナの大本命! 最上級グレード「ルキシオン」試乗レビュー

今回は国産ミニバン三強の一角をなす日産・セレナを紹介。一層洗練された自慢のe-POWERに注目だ。

※こちらは「GetNavi」 2023年10.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

NISSAN SERENA

SPEC【e-POWERルキシオン】●全長×全幅×全高:4765×1715×1885㎜●車両重量:1850㎏●パワーユニット:1433㏄直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[163]PS/5600rpm●最大トルク:12.5[32.1]㎏-m/5600rpm●WLTCモード燃費:18.4㎞/L ●[ ]内はモーターの数値

 

“電気感”に一層の磨きがかかった!

昨年リリースされたガソリンモデルに続き、e-POWERを搭載したセレナの発売がいよいよスタートした。シリーズ式ハイブリッドとなるe-POWERは、いまや同社の顔ともいうべきシステムだが、セレナへの採用にあたっては第2世代へとアップデート。発電用ガソリンエンジンも、排気量を先代の1.2Lから1.4Lへと拡大すると同時に静粛性などを高める改良も施された。

 

e-POWER搭載モデルの最上級グレード、ルキシオンでは運転支援システムのプロパイロットが同一車線内でのハンズオフ走行を可能とする「2.0」となることもトピックのひとつ。日産車ではスカイラインで初採用されているが、ミニバンで同様の機能が搭載されたのは世界的に見てもセレナが初だとか。

 

今回の試乗車はそのルキシオン、ということでまずは2.0の効能を再確認してみたのだが、ハンズオフ走行時の自然なステアリング制御や速度管理の巧みさは相変わらず。まったく同じ条件ではないので直接比較するのは乱暴だが、以前試乗したスカイラインのそれと比較すると作動領域が拡大しているように感じられたことも印象的。元々、基本的な操作が簡単なだけに長距離走行の機会が多いユーザーは重宝しそうだ。

 

だが、それ以上に印象的だったのはe-POWERの進化ぶりだ。ルキシオンでは遮音対策が一層入念に施された効果もあってか、日常的な走行条件ではもはや発電用エンジンの存在を意識させない。もちろん、高負荷時には相応の音が車内に侵入してくるがそれも騒々しく感じる類ではない。加えて、純粋な電気モーター駆動なので滑らかな加速感やアクセル操作に対する正確な反応はピュアEVレベル。トヨタのノア/ヴォクシーやホンダのステップワゴンでも電気駆動モデル(ハイブリッド)は選べるが、e-POWERのセレナほど“電気”の存在を実感できないのが本音。長年、国産ミニバン3強として切磋琢磨している各モデルだけに実用性に関する作り込みはいずれ劣らぬもの。加えてそれぞれに独自の持ち味も存在するが、セレナでは第2世代e-POWERこそがキラーコンテンツであることは間違いない。

 

最新モデルらしいデジタル感をアピール

多彩な表示機能を持つアドバンスドドライブアシストディスプレイやコントロールディスプレイ、タッチパネルを駆使したインパネ回りは、いかにも最新モデルらしい仕立て。シフトもボタン操作になった。

 

歴代モデルの面影が残るボディは使い勝手も上々

リアゲート上部を開閉できるデュアルバックドアを先代から継承。使い勝手への配慮に怠りはない。全体の雰囲気は歴代モデルに通じるが、外観は精悍な印象も強まった。

 

クラストップの広さを実現!

室内長、幅はクラストップというだけに各席とも空間的な余裕は十分。2列目にはロングスライド機構も採用する。ルキシオンを除くe-POWER車では8人乗りも実現。

 

上々な使い勝手は歴代モデルから継承

スクエアなボディ形状だけに、荷室は3列目シート使用時でも実用的な広さ。ゴルフバッグなら9.5インチのものが4個収納できる。フロア下にも収納スペースを用意。

 

もはや存在を意識させない!

搭載される発電用の1.4L3気筒ガソリンエンジン。高い静粛性や振動の少なさも従来の1.2ℓエンジンからの進化のポイントとか。

 

走りは静けさに一層の磨きが!

ルキシオンでは、特に日常域の静粛性の高さが印象的。滑らかな加速とアクセル操作に対する正確な反応も電気駆動車ならでは。操縦性は基本的に穏やかな味付けだ。

 

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見た目はセダンとSUVのイイとこ取り! 軽快な走りが魅力な「プジョー 408」をチェック

今回はプジョーのクロスオーバーモデルとなる408を紹介。独自性にあふれた内外装に注目してみた。

※こちらは「GetNavi」 2023年10.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

PEUGEOT 408

SPEC【GT】●全長×全幅×全高:4700×1850×1500mm●車両重量:1430kg●パワーユニット:1199cc直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:130PS/5500rpm●最大トルク:23.5kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:16.7km/L

 

ベーシックな1.2L版でも動力性能の高さは特筆モノ!

これまで中国や南米をメインの市場としてきた408が3代目でガラリと変わり、日本にも上陸を果たした。ご覧の通り、その外観はリアにハッチゲートが備わるファストバックボディにSUV要素をプラス。事実上、308のセダン版だった従来型はもちろん、かつて日本でも発売されていた407とも車名的なつながりを意識させる要素はない。

 

基本的な構成要素は308と多くを共有化しているが、ボディサイズはずっと大きく全長は4.7mと308より20cm以上長い。リアピラーを大きく傾斜させ、グラスエリアをタイトに仕上げた外観は輸入車で近年流行りの4ドアクーペ風。一方、最低地上高は170mmもありハイトが高い19インチのタイヤを組み合わせるなどして、ボディ下半分はSUVらしさをアピールする。佇まいはSUV的セダン/クーペといったところで、イメージはトヨタのクラウン・クロスオーバーが一番近い。

 

そんな、一見スタイリング重視な外観ながら、実用性への配慮に怠りがないのはプジョーらしいところ。前後席の空間は、セダンとして申し分ない広さを確保。荷室に至っては後席使用時でも536L(ガソリンモデル)の容量を誇り、最大では1611L(同)と本格派のワゴンに匹敵する広さを実現している。その意味では、セダン/クーペ風の見た目でもSUVに要求される使い勝手はしっかりとクリアされているわけだ。

 

搭載するパワーユニットは、1.2Lガソリンターボと1.6Lガソリンターボに電気モーターと総電力量12・4kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせたプラグインHVの2タイプ。今回の試乗車は前者だったが、その動力性能は排気量から想像される以上の高さが自慢だ。低回転域から十分なトルクを発揮するエンジンと高効率な8速AT、そして1.5tを切る比較的軽量なボディの効果もあるのか、日常域ではサイズ以上の軽快感すら味わえる。

 

それを受け止めるシャーシも完成度は高い。“ネコ足”と評された往年のプジョーとは趣が異なるが、日常域ではフラットで快適な乗り心地、積極的に操る場面では素直な操縦性を披露する。その意味では、近年ますます選択肢が少なくなっているセダンの代替としても自信を持ってオススメしたい。

 

室内の広さはサイズ相応インパネには眺める楽しみも!

極端な小径ステアリングに代表されるプジョー独自の「iコックピット」は、凝ったグラフィックのメーター回りなどエンタテインメント性も高い。前後席はセダンとして十分な広さを誇る。

パワートレインは2タイプを用意

エンジンは、66㎞のEV走行を可能とするプラグインHV(写真)と1.2Lガソリンターボの2タイプ。組み合わせるトランスミッションは、いずれも8速ATとなる。

 

最新のプジョーらしくエッジの際立つスタイリング

タイヤはグレードを問わず55扁平の19インチを採用。足元はSUV的な力強さを演出する。外観は随所が308と共有化されているが、見た目の印象は完全に別モノ。ボディカラーは、写真のブルーの他に3色が用意される。

 

フランス車らしく荷室の広さもトップ級

実用性を重視するフランス車らしく荷室は広い。写真のプラグインHVは通常時471/454L、最大時は1545/1528Lとガソリン仕様より容量が減少するが、絶対値としてはこちらも十分。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

プジョー「408」試乗。トップクラスの質感! 走ればスポーティなハンドリングで楽しい

一目見て「カッコイイ!」そう思わせたのがフランス生まれの新しくなったプジョー「408」です。セダンとクーペ、そしてSUVを融合させたファストバックモデルで、プレスカンファレンスにはアンバサダーに起用された森山未來さんが登場してそのファッショナブルな出で立ちをアピール。近年稀に見る格好良さと存在感を実感した次第です。

 

今回はそのベーシックモデルとなるガソリン車の「408 GT」の試乗レポートをお届けします。

↑新型プジョー「408」のイメージキャラクターには俳優の森山未來さんが務めることになった

 

■今回紹介するクルマ

プジョー/408

※試乗グレード:408 GT

価格:429万円〜669万円(税込)

 

質感の高さはCセグメント中トップクラス!

408 GTのボディサイズ(全長4700×全幅1850×全高1500mm)は、基本骨格こそ308と共通ですが、ホイールベースで110mm、全長では280mm延長されています。それでいて、フロントグリル周りのプジョーらしい精悍なデザイン、205/55R19の大径タイヤを履くことによる引き締めた足元とも相まって、よりスポーティな印象を伝えてきます。

 

ボディデザインはハッチバックゲートを持ち、伸びのあるクーペスタイルと力強いフェンダーラインを特徴とした、いわばクーペ的なデザインを持つSUVとして位置付けられています。全高を1500mmに抑えることでタワーパーキングにも対応しながら、室内に入ればリヤシートの足元も広々。SUVらしくラゲッジスペースもたっぷり取っており、まさに“スタイリッシュSUV”という表現がぴったりです。

 

【ボディデザインをフォトギャラリーでチェック】(写真をタップすると閲覧できます)

 

インテリアは、ダッシュボードやシートなど基本デザインを308と共通のものとしています。ただ、驚くのはその品質レベルの高さで、レザーやスエード、ソフトパッドを場所によって巧みに使い分けており、その仕上がり感はCセグメントでもトップクラスにあるといって間違いありません。

 

小径ステアリング越しに見るメーターからセンターコンソールに至るダッシュボードは、ドライバーを囲むコックピット感が満載。スポーティさも十分に感じられ、この雰囲気作りは「さすがフランス車!」と思える仕上がりレベルです。

↑高品質感が伝わってくる前席まわり。小径・扁平のステアリングホイールでクイックな操作が可能だ

 

一方で、前席の余裕ある空間に対して、後席はヘッドまわりに若干の狭さを感じました。それでも、前方の見通しはそこそこあり、閉塞感を感じさせないあたりは巧さを感じさせますね。

↑「腰に優しく長時間運転しても安心」なシートとしてのお墨付きをもらった前席

 

↑後席に座るときはヘッドレストを引っ張り出すスタイルとなる。後席用ベンチレーターも備わる

 

ただ、インターフェースはイマイチの印象です。空調系は物理スイッチで操作感が伝わってくるものなのに、インフォテイメント系は完全なタッチパネル。それでいて押したときに何の反応もないのは要改善だと思いました。ハザードスイッチも用途を考えたら、空調スイッチと並べずに独立させるべきでしょう。

 

【インターフェースをフォトギャラリーでチェック】(写真をタップすると閲覧できます)

低回転域から発揮する高トルクが力強い走りを実現

ではいよいよ試乗開始です。パワーユニットは、ガソリンエンジン搭載車には1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンを、PHEVには1.6L 4気筒ガソリンターボエンジンを採用。今回は残念ながら、試乗するはずだったPHEVにセキュリティ系のトラブルが発生し、代わりにガソリン車の408 GTに試乗することとなりました。

↑ガソリン車には1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンを搭載。最高出力130ps(96kW)/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpm

 

↑駆動方式はFF。タイヤサイズは205/55R19とした

 

実は試乗するに際し、「ターボ付きとはいえ、1.2L エンジンでこの大きめなボディに対して、十分なパフォーマンスを発揮できるのか?」と、内心不安があったのも否定できません。そして確かにアクセルを踏み込んだ瞬間は、何となく動きににぶさを感じます。しかし、そんな不安もつかの間。走り出せばすぐに力強い走りを見せてくれたのです。

 

そのワケはこのエンジンが発揮する130ps/5500rpm、230Nm/1750rpmのスペックにありました。最大トルクはほぼ2.5リッターエンジンクラスで、しかも最大トルクは1750rpmという低回転で発生します。加えて、3気筒ならではのレスポンスの良さと、組み合わされる8ATとのマッチングも良好。これが、街中でのキビキビとした動きにつながっていたのは間違いありません。そのうえで、アクセルを踏み込めばターボらしい力強い加速で、一気に車体を高速域まで引っ張り上げてくれたのです。

↑1.2L3気筒ターボエンジンの排気量からは想像できない力強い加速を発揮した新型プジョー408 GT

 

ハンドリングも素晴しいです。交差点を通過するときも、狙ったラインを正確にトレースするので安心感が極めて高い印象。しかも、そのときのフィーリングもしっとりとして気持ちがいい。大径タイヤを履くと、どうしてもバネ下重量が気になる傾向にありますが、そんな心配も一切ありません。思わず408で峠道を楽しんでいる自分の姿を想像してしまったほどです。

 

SUVテイストを発揮しつつ十分なパフォーマンスを発揮

一方で乗り心地は多少、タイトな印象を受けました。サスペンションのストロークが十分にあるのはわかりましたが、車体の高剛性なプラットフォームが影響しているのか、一般道にありがちな段差を超えるときはショックが強めに出る傾向にあったのです。とはいえ、ショックのいなし方が巧みなので不快な印象はありません。むしろ、このハンドリングを踏まえれば、このぐらいの固さはキビキビとしたスポーティさに一役買っているように思いました。

↑路面からはややタイトさを伝えてくるが、しなやかさを伴うことで不快感はまったくない

 

人気のSUVテイストをしっかりと発揮しながら、プジョーならでは乗り味を堪能できる、十分なパフォーマンスを備えた新型プジョー408。価格が499万円(408 GT)と、このクラスのガソリン車としては高めの設定となりますが、装備そのものは輸入車の常でほぼフル装備に近い状態です。国産車は価格が高くなっているにも関わらず、オプションが多いのは相変わらず。その意味でも408 GTは満足度の高い選択となることでしょう。

↑新型プジョー408にはガソリン車の「GT」以外に、PHEVの「408 GT HYBRID」(写真)がラインナップされる

 

SPEC【408 GT】●全長×全幅×全高:4700×1850×1500mm●車両重量:1430kg●パワーユニット:ターボチャージャー付き直列3気筒DOHC●エンジン最高出力:130ps/5500rpm●エンジン最大トルク:230Nm/1750rpm●WLTCモード燃費:17.1km/L

 

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撮影/松川 忍

常識を覆す衝撃の走り……ヴェルファイアとアルファードの差別化を決定づけた2.4Lターボ

都心でクルマを運転していると、見ない日はないくらい街中を走っているのが、トヨタのアルファードと兄弟車のヴェルファイアだ。今や庶民の憧れ、到達点として、かつてのクラウンのレベルに並んでいるか、下手したら凌駕しているような状態である。そして今夏、この2車に4代目となる新型が発売された(ヴェルファイアは3代目)。頂点を極めたクルマの進化とはいったいどんなものか?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ アルファード/ヴェルファイア

価格:540万~872万円(アルファード)、655万~892万円(ヴェルファイア)

 

ルックスはアルファードの圧勝だが……

今や日本を、いやアジアを代表する高級車に上り詰めたアルファード。レクサスLSやクラウンの後席でふんぞり返っていると、周囲からなんとなく冷たい視線が注がれ、センチュリーを公用車にすると袋叩きにされたりするけれど、アルファードなら誰も文句を言わず、むしろ憧れの視線が注がれるのだから素晴らしいじゃないか。

 

従来型の国産高級車が売れなくなって久しいが、アルファードは一人勝ちで売れまくってきた。そのフルモデルチェンジともなれば、クルマ関連では今年最大級のイベントである。

 

兄弟車のヴェルファイアも、同時にフルモデルチェンジされた。アルファード人気のあおりを食って、先代モデル末期にはアルファードの3%程度しか売れなくなり、今回は消滅・統一されると思われていたが、豊田章男会長の鶴の一声で生き残りが決定したという。先代まではルックスの違いが2台の棲み分けポイントだったが、新型では走りのキャラクターで差別化を図っている。

 

まずはルックスの評価からいこう。新型アルファードのスタイリングは、大人気だった先代型のイメージを強くキープしているが、非常に洗練された印象だ。先代型は巨大な銀歯のようなオラオラ顔にばかり目が行ったが、新型のグリルはメッキ量を減らして威圧感をほどよく抑え、逆にボディフォルムはふくよかにうねらせ跳ね上げつつ、尻下がりのウエストラインでフォーマル感も出している。先代型のほうがインパクトは強かったが、新型のデザインは全体の完成度がとても高い。

↑フロント部は「突進するような力強さを生み出すべくエンブレム部分が最先端になる逆傾斜の形状」を採用

 

↑ボディのサイドにはリアからフロントにかけて流線形を取り入れている。サイズは全長4995×全幅1850×全高1935mm

 

新型ヴェルファイアは、デザイン面ではアルファードのグリル違いに徹している。スタンダード感の強い横桟グリルは、アルファードの鱗グリルに比べるとかなり平凡な印象だ。個人的には、「今回も見た目でアルファードの圧勝だな」と感じたが、ヴェルファイアのスタンダード感を好む方も少なくないらしく、新型は受注の約3割をヴェルファイアが占めているという。

↑横に伸びたグリルが印象的なヴェルファイア

 

↑ヴェルファイアのZプレミアグレードは黒色の「漆黒メッキ」を基調とした金属加飾を施し、モダンかつ上質なデザインにしたとのこと。サイズは全長4995×全幅1850×全高1945mm

 

常識を覆す走りと秀逸な操縦性のヴェルファイア

最初に乗ったのは、ヴェルファイア Zプレミアの2.4L 4気筒ターボエンジン搭載モデル(FF)。最高出力は279馬力だ。このエンジンはアルファードには用意されず、「走りのヴェルファイア」を象徴するグレードになっている。

 

走り出してすぐに衝撃を受けた。ほとんどスポーツサルーンのごとく意のままに走り、曲がり、止まってくれる。これまでのミニバンの常識を引っ繰り返す走りである。

↑走行イメージ。「運転する喜びを感じるための走行性能」を実現したという

 

従来のアルファード/ヴェルファイアは、ルックスの威圧感のわりに加速が物足りなかったが、このエンジンは、先代型の3.5L V6エンジンと比べてもパワフルでレスポンスがいい。バカッ速くはないが、意のままに加速する。燃費も思ったより良好で、燃費計の数値は10km/L弱を示していた。

↑高い加速応答性能と十分な駆動力をそなえ、ペダル操作に対して気持ちよく伸びるという2.4L直列4気筒ターボエンジンを搭載

 

操縦性がまたすばらしい。ミニバンという乗り物は基本的に重心が高く、ボディ剛性も出しにくいから、操縦性はイマイチなのがアタリマエだが、ヴェルファイア2.4ターボは違う。とにかくハンドルの反応がシャープで気持ちいい。ヴェルファイアは、19インチタイヤやスポーティなサスペンションに加えて、車体骨格の前部に補強を施してある。それがこの秀逸な操縦性を生んでいるようだ。

 

しかも、乗り心地も非常にイイのである。足まわりはやや固めだが、路面から伝わる車体の揺れが一発で収まるし、カーブでの車体の傾き(ロール)も小さめなので、結果的にこのグレードが最も快適に感じられた。

↑コックピットには12.3インチの大画面液晶のほか、カラーメーター、同時に複数の情報を見られるマルチインフォメーションディスプレイなどが搭載(画像はExecutive Loungeグレード)

 

↑プライベートジェットのような空間を設えたとする室内

 

クルマ好きが乗っても納得のアルファード

ヴェルファイア2.4ターボの走りの良さに感動しつつ、アルファードの2.5ハイブリッドE-Four「エグゼクティブラウンジ」に乗り換える。エグゼクティブラウンジは贅沢な2列目シートが売りの「動く応接間」。そこに座っていれば、まさにエグゼクティブ気分だが、アルファードの走りは、ヴェルファイアに比べるとだいぶ穏やかで当たり障りがない。ボディ剛性アップの恩恵により、先代に比べればはるかに快適性は高いが、ヴェルファイア2.4ターボの素晴らしさを知った後では、加速や操縦性だけでなく、乗り心地すら若干平凡に感じてしまった。

↑走行イメージ。新モデルは基本骨格を見直すと同時に、乗員に伝わる振動・騒音の低減に徹底している

 

↑運転席と2列目シートおよび3列目シートとの距離は従来型比でそれぞれ5mm/10mm広い前後席間距離を確保した、ゆとりのある空間を実現

 

ただし、2.5ハイブリッドのパワーユニットは先代型から大幅に進化し、システム出力は197馬力から250馬力にアップしている。先代ハイブリッドの走りはかなり眠い印象だったが、新型のハイブリッドは加速のダイレクト感があり、クルマ好きが乗っても「悪くないね」と言えるレベルになっている。

↑システム最高出力250PSの「2.5L A25A-FXSエンジン」。燃費性能も高められており、E-FourエグゼクティブラウンジはWLTCモードで16.5km/Lとなっている

 

↑コックピットは「隅々まで心づかいを施した」と自信をのぞかせる

 

アルファードには、2.5L 4気筒自然吸気エンジン搭載のベーシックなグレードも用意されている。加速はぐっと控え目になるが、「走りはそこそこでいいから、とにかくアルファードが欲しい!」というユーザーも少なくないはず。ハイブリッドより80万円安い価格は魅力的だ。

 

それでもお値段は540万円。ちなみに2.5ハイブリッドのエグゼクティブラウンジE-Four は872万円。10年前なら中古フェラーリが買えた金額なのだから、「うーむ」と唸るしかない。

 

結論として、ルックスは個人的にアルファード推しだが、走りや快適性はヴェルファイア2.4ターボFF(655万円)が抜きん出ていた。見た目を取るか走りを取るか。それ以前にお財布との相談が必要だが、すでに納車待ちは1年以上、ヘタすると2年とか。「KINTO(リース)なら半年後の納車も可能」というトヨタ側の提案を検討せざるを得ないほど、人気大爆発のアルファード/ヴェルファイアなのであった。

SPEC【ヴェルファイア/Zプレミア・ターボガソリン車・2WD】●全長×全幅×全高:4995×1850×1945mm●車両重量:2180㎏●パワーユニット:2393cc直列4気筒ターボエンジン●最高出力:279PS(205kW)/6000rpm●最大トルク:430Nm/1700-3600rpm●WLTCモード燃費:10.3㎞/L

 

一部撮影/清水草一

 

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クーペ+SUVなプジョー「408」、ベストグレードはPHEVではなく…

プジョーの中核を担うモデルでもある408が、フルモデルチェンジでスタイリングを一新した。新型モデルはSUV! 昨年、国産車ではクラウンのSUVが登場して大きな話題となったが、奇しくもプジョー408もセダンからSUVヘと変貌を遂げていた。スタイリッシュなニュースタイルとなったフレンチミドルモデルを、プジョー車オーナーでもある清水草一はどう評価するか?

 

■今回紹介するクルマ

プジョー 408

車両価格:Allure/受注生産 429万円〜、GT 499万円〜、GT HYBRID 629万円〜、408 GT HYBRID First Edition 669万円〜(今回試乗)

 

SUVだが圧倒的に低い全高

世界的なSUVブームにより、現在、全世界で販売されている乗用車の約半分はSUVになった。日本では軽やミニバン(どちらも日本独自のカテゴリー)が強いのでまだ3割程度だが、海外ではSUVが乗用車の絶対的スタンダード。SUVの枠のなかで、さまざまなボディタイプが生まれている。

 

今年日本への導入が始まったプジョー408は、SUVのスポーツクーペ、つまりクーペSUVだ。408のデザイン上の最大の特徴は、全高が1500mmしかなく、SUVとしては非常に低いこと。クーペは重心を低くするために全高が低いものだが、その文法に完璧に沿っているのである。1500mmという全高は、BMWのクーペSUVであるX4(1620mm)に比べても格段に低い。408は、SUVとしては世界で最も背の低い部類に入る。そのぶんスポーティで、古典的にカッコよく見える。

↑機械式駐車場にも入る全高1500mm

 

現在ヨーロッパでは、クーペSUVがかなりの人気を集めている。本物のスポーツクーペは室内がだいぶ窮屈だが、SUVならそれなりの広さを確保できて、実用性とカッコよさを、いい具合にバランスさせることができるからだろう。

↑408 GT HYBRID First Editionの場合、荷室容量は454L。2列目を倒した状態では1528Lになる

 

↑リアシート。リアのニースペースは188mmでゆったりと座れる空間が用意されている

 

408のベースになったのは、ハッチバックの308だが、コロンとしたフォルムの308とは、見た目の印象がまったく異なる。408はカッコを優先したシャープなスタイリングで、若い頃からスポーツクーペに憧れ続けてきた中高年世代としては、「こんなSUVを待っていた!」と言いたくなる。ちなみに全長×全幅×全高は4700mm×1850mm×1500mm、ホイールベースは2790mm。全高に比して全長が長いので、自然とフォルムはシュッとするわけだ。

↑最低地上高は170mm

 

パワートレーンは、1.2L直3ガソリンターボと1.6L直4ガソリンターボ+PHEVの2種類。前者の最高出力130psに対して、後者はシステム最高出力225psと、大きな差がある。前者は3気筒1.2Lゆえに、SUVとしては軽量(1430kg)なのに対して、後者は12.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しており、車両重量は1730kgとかなりの重量級。見た目はほとんど同じだが、中身はまるで違うのだ。

 

価格も3気筒ガソリンの「GT」が499万円なのに対して、PHEVの「GT HYBRID」は629万円。この2台は別のモデルと考えてもいいくらいだ。今回試乗したのは、高いほうの「GT HYBRID」の、さらにお高い「ファーストエディション(669万円)」である。

 

508のPHEVは期待ハズレだったが…

正直なところ、プジョーのPHEVにはあまりいい印象を抱いていなかった。508のPHEVはやたらと車体が重い印象で、加速は重ったるく、本来の軽快な操縦性も損なわれていた。

 

ところが408のPHEVはまったく違っていた。モーターだけでもスルスルと軽やかに加速するし、コーナリングもシャープでスポーティ。どうやら以前試乗した508のPHEVは、初期ロットゆえの熟成不足か、あるいは「ハズレ個体」だったらしい。

 

ちなみに私は現在、508のディーゼルモデルを所有しているが、そちらと比べても408 GT HYBRIDは動きが軽く、直進安定性も操縦安定性も高かった。エンジンがかかった状態でも、驚くほど静かで快適なのだから恐れ入る。

 

ただ、プジョーのPHEVは、ハイブリッドと言うよりもEV+エンジンに近く、バッテリーが残っている間は基本的にモーターで走行し、バッテリーをほぼ消耗し尽くしたらエンジン主体にバトンタッチする単純なシステムだ。

↑満充電までの時間は普通充電器(200V 3kW)で約5時間

 

WLTC燃費は17.1km/Lにとどまり、国産ハイブリッドカーに比べるとかなり見劣りする。スポーツモードにするとエンジンがかかりっぱなしになって、そのぶんパワフルになるが、その状態もあまり魅力的とは言えない。そこを考えると、「やっぱりハイブリッドカーは国産だな」と言わざるを得ない。

 

インテリアは308とほぼ同じだが、質感は十分高く、オシャレでステキなクルマに乗っている感がある。プジョーの定番である小径の楕円ステアリングや、ステアリングの上側から見るメーターなどのインターフェイスは、408のカッコマンなスタイリングとよくマッチしている。

インパネは削り出したような造形が特徴的。インフォテイメントは「i-Connect Advanced」搭載でコネクテッドにも対応

 

408 GT HYBRIDは、見ても乗っても非常に気持ちのいいクルマだが、価格も含めて考えると、3気筒1.2Lガソリンエンジンの「GT」がオススメだろう。プジョーの3気筒ガソリンターボは、1.2Lとは思えない低速トルクがあり、日常域のドライバビリティが素晴らしくイイ。1430kgくらいの車両重量は問題なく走らせるはずだ。そちらに試乗した同業者は、「軽々と走ったよ!」とベタホメだった。WLTC燃費は16.7km/Lなので、GT HYBRIDとほとんど変わらない。

 

ちなみにディーゼルエンジンは、408には本国でも用意されていない。ヨーロッパの乗用車は、ガソリンエンジンより先に、まずディーゼルエンジンと決別する決意を固めているのだ。ディーゼルファンとしては残念だが、今後ディーゼルモデルが追加される可能性がないと聞けば、「ならガソリンだな」と割り切りやすいかもしれない。

 

SPEC【GT HYBRID】●全長×全幅×全高:4700×1850×1500㎜●車両重量:1740㎏●パワーユニット:1598cc直列4気筒ターボエンジン+電気モーター●エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:250Nm/1750rpm●モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm●モーター最大トルク:320Nm/500-2500rpm●WLTCモード燃費:17.1㎞/L●一充電EV走行距離:65km

 

文・撮影/清水草一

ブリヂストンが「ソーラーカーサミット 2023」を開催。なぜ太陽光に力を注ぐ?

ブリヂストンは、ソーラーカーの最新技術と未来を語るイベント「Bridgestone Solar Car Summit 2023」(以下、ソーラーカーサミット)を開催しました。

このイベントには、同社のモータースポーツ部門長・堀尾直孝さんのほか、ソーラーカーについての研究を行う東海大学の木村英樹教授らが登壇。最もサステナブルなEVであるソーラーカーの近年の動向、世界最高峰のソーラーカーレースについて、トークを展開しました。この記事では、その模様をお届けします。

 

ソーラーカーレースのための“究極のカスタマイズタイヤ”

ブリヂストンは世界最高峰のソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge」(以下、BWSC)のタイトルスポンサーを務めており、サステナブルなモータースポーツを推進するなかで、技術の極限への挑戦を通じ、ソーラーカーの技術革新を後押ししています。

↑株式会社ブリヂストン モータースポーツ部門長 堀尾直孝さん

 

BWSCは、20以上の国と地域から40以上のチームが参加するソーラーカーレース。オーストラリアの北部ダーウィンから南部のアデレードまで、約3000kmにもなる道程を太陽光によって生み出された電力のみによって走破する、長く過酷なレースです。

 

堀尾さんはBWSCについて「各国の多様なエンジニアによる産学共創の場、次世代のソーラーカーを作るためのオープンプラットフォーム」だと語ります。2023年10月に開催されるBWSCでは、日本から、東海大学、工学院大学、和歌山大学、呉港高校の4チームが参加予定。ブリヂストンは参加43チーム中、35チームにタイヤを提供予定です。

 

ブリヂストンが提供するタイヤは、ソーラーカーに特化したものになっています。設計を担当した同社の木林由和さんによると「限られた電力で長距離を走り切るための転がり抵抗の軽減や軽量化と、耐パンク性能をはじめとする耐久性を両立した、究極のカスタマイズを施している」とのこと。

↑株式会社ブリヂストン モータースポーツ部門 MSタイヤ設計第1課 木林由和さん

 

このカスタマイズは、同社の誇る商品設計基盤技術「ENLITEN」により成立しました。またこのタイヤは、環境負荷の軽減にもこだわっており、再生資源・再生可能資源比率が前回大会の30%から63%に増大しています。

 

原付バイク以下の馬力で90km/hを実現

堀尾さんに続いてプレゼンテーションに登壇したのが、東海大学教授の木村英樹さんです。木村さんは、BWSCに出場する東海大学のチームの監督も務めています。木村さんは、ソーラーカーが従来からどれほどの進化を遂げているかについて語りました。

↑東海大学 木村英樹教授

 

ソーラーカーの進化は、太陽光パネル、モーター・インバーター、バッテリー、タイヤといった各種パーツの性能向上に加え、ボディの軽量化や空気抵抗の低減、それらを可能にするコンピューターシミュレーション技術の向上といった、多様な要因によって成り立っています。これらの複合的な進化の結果、近年のBWSCで走行するソーラーカーは、小型化と高速化、信頼性の向上を同時に実現したものになりました。

 

木村さんによると、ソーラーカーの走行速度は、かつては50〜60km/h程度だったそうですが、現在では90km/hにまで上昇。しかも搭載する太陽光パネルの面積を、従来の半分に減らしたうえでの速度向上だといいます。今回、東海大学が2023年のBWSCのために設計したソーラーカーの馬力は原付バイク以下でありながら、この速度を実現します。小さな力で高速を生み出すこの車は、数多の最先端技術の結晶なのです。

 

限界に挑むことで見える世界がある

ソーラーカーのボディに用いられる、炭素繊維強化プラスチック素材を開発する、東レ・カーボンマジックの奥 明栄さんもプレゼンテーションを行いました。同社は炭素繊維の分野で世界のトップランナーである東レグループのなかにあって、炭素繊維の用途拡大を目的とする技術開発を担っています。

↑東レ・カーボンマジック株式会社 奥明栄代表取締役社長

 

↑炭素繊維が使用されるジャンル

 

奥さんは「競争によって生まれるテクノロジーや、世界一を目指すことで生まれるアイデア、限界に挑むことで見える世界がある」と語ります。その考えをもとに、東レカーボンマジックは、東京都大田区の町工場から五輪を目指す「下町ボブスレー」、トラックバイク、スポーツ用の義足、車いすマラソンのホイールなどに素材を提供してきました。

↑東レ・カーボンマジックが支援しているチャレンジャーやアスリート

 

極限の環境で繰り広げられる世界最高峰のソーラーカーレース・BWSCも同様です。同社にとってBWSCは、新技術、高性能化のための手段を実践で試せる「走る実験室」となっています。「BWSCは、学生はもとより、若きエンジニアたちが創造力、判断力、実行力、協調性を身につける場」だと、奥さんは言います。

 

東レ・カーボンマジックにも、学生としてBWSCを経験してから入社した社員がいるといい、彼らは入社時から即戦力として活躍しているそうです。

 

メーカー、科学者、エンジニアから見た、BWSCという大会の意義

プレゼンテーション後には、堀尾さん、木村さん、奥さんに、工学院大学教授の濱根洋人さんを加えた、4名によるクロストークセッションが行われました。そこで各者が強調したのが、BWSCという大会の意義です。

↑クロストークセッションの様子

 

「ブリヂストンがモータースポーツの活動を始めて、60年になります。ブリヂストンとしては、モータースポーツ文化を関連企業とともに支えていくこと、サステナブルなモータースポーツを強化していくことをコンセプトにしていますが、BWSCはこれに合致したものだと思っています」(堀尾さん)

 

「BWSCは、競争であり共創の場です。スタート前はピリピリした雰囲気がありますが、走りきってみると皆笑顔で、各チームによる情報交換が活発に行われています」(木村さん)

 

「BWSCは、“極めて”という表現がぴったりなモータースポーツだと思っています。最先端の素材を、F1より先に実践で使えるんですから」(濱根さん)

 

「色々な技術を持ち寄って、世界一を競うという体験を学生のうちにできるのは、非日常的で、かけがえのないものだと思います。BWSCは、エンジニアとしての可能性を広げ、様々な力を身につける機会になります」(奥さん)

 

ブリヂストンは2020年を「第三の創業」とし、Bridgestone 3.0の初年度と位置付けました。サステナビリティを経営の中核に据え、2050年には「サステイナブルなソリューションカンパニー」を目指しています。 BWSCはブリヂストンにとって単なる大会スポンサーという立場ではなく、今後の未来を占う活動のひとつといえるでしょう。

 

世界の最先端が詰まったBWSCは、2023年10月21日〜29日にかけて開催予定。そこで生まれた出会いが、未来のイノベーションを生むかもしれません。

ベストセラーの後継に相応しい完成度! 2代目メルセデス・ベンツ「GLC」をチェック

今回はメルセデス・ベンツの世界的ヒットとなったプレミアムSUV「GLC」の2代目を紹介。

※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ベストセラーの後継に相応しい完成度!

メルセデス・ベンツ
GLC

SPEC●全長×全幅×全高:4720×1890×1640mm●車両重量:1930㎏●パワーユニット:1992cc直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:197PS/3600rpm●最大トルク:44.9㎏-m/1800〜2800rpm●WLTCモード燃費:18.1km/l

 

その走りは進化と同時に深化を実感させる出来栄え

世界的には、メルセデス・ベンツのSUVでもトップセラーを誇ったGLCが2代目へと進化。いまのところ、日本向けの選択肢はマイルドハイブリッドを組み合わせる2lディーゼルターボ仕様のみだが、その走りはすでに盤石といえる完成度だ。先代と比較して特に印象的なのは、動き出しからの滑らかさと静かさ。この点は先代も秀逸だったが、新型はより着実な進化を実感させる仕上がり。2t近い車重に対する動力性能も申し分ない。日常域では力強く、積極的に操る場面ではディーゼルであることを意識させない吹け上がりを披露する。

 

それを受け止めるシャーシも、いかにもメルセデスのSUVらしい。ステアリングの操舵感、足回りのストローク感は上質そのもので快適性の高さはトップレベル。素直な操縦性も相変わらずで、新型ではそこに正確かつ軽快なレスポンスという「深化」が加わる。また、新たに後輪操舵が追加されたことで、日常域での取り回し性能も向上。街中でも1.9m近い全幅を意識させない。

 

その見た目はヒットした先代の後継ということで、イメージを引き継いだ部分が多い新型。しかし、中身は同クラスのライバルをさらに引き離す出来栄えであることは間違いない。

 

街中での扱いやすさに大きく貢献

新型に採用された後輪操舵は、このように低速域だと後輪が大きく逆相に動く。その効果は絶大で最小回転半径はコンパクトカー並みを誇る。

 

現状パワートレインは一択

日本仕様のエンジンは、ISGと名付けられたマイルドハイブリッドを組み合わせる2ℓディーゼルターボのみ。先代より走りの質感が向上した。

 

座り心地、スペースともに上々

先代比で特別広くなったわけではないが、車内空間は十分な広さ。後席は若干硬めだが前席の座り心地は適度にソフトでサイズもたっぷり。

 

ヘビーユーザーのニーズにも対応

荷室容量は通常時で620l、後席を格納すれば1680lに達する。ミドル級としては余裕の広さで、SUVを使い倒したいというニーズにも対応できる。

 

様変わりの度合いは外観以上の室内

画像化されたメーターは「オフロードコックピット」と名付けられたグラフィックも選択できる。インテリアはメルセデスの最新モードに準じた作り。

 

ボディは先代より若干ながら大型化

全長とホイールベースが伸びる一方、全幅は先代と変わらない新型。本国ではすでにクーペ版も登場しているが、いまのところ日本仕様はSUVボディのみのモノグレード。価格は820万円。

 

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個性派RVが欲しいなら狙い目! フィアット「ドブロ」を徹底解剖

今回はフィアット久々の新作である「ドブロ」を紹介。個性派のRVが欲しいという人には狙い目の1台となるはずだ。

※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです

 

“素”の魅力が実感できる欧州産MPVの新作!

フィアット
ドブロ

SPEC●全長×全幅×全高:4405×1850×1850mm●車両重量:1560kg●パワーユニット:1498cc直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:130PS/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:18.1km/l

 

室内の広さと使い勝手はライバルと横一線!

MPV(マルチ・パーパス・ビークル)としての基本的な成り立ちは、先に上陸している兄弟車のプジョー・リフターやシトロエン・ベルランゴと変わらないドブロ。しかし、その見た目は両車よりもRV的な飾り気が少なく、良い意味での“道具感”を漂わせる仕上がり。このあたりは、あえて無塗装バンパーの仕様を用意するライバル、ルノー・カングーにも通じるキャラクター作りと言えるかもしれない。

 

商用車ベースとあって、純粋な使い勝手は申し分ない。室内はミニバン級の広さが確保され、荷室はライバルと同等の容量であると同時にスクエアな形状で、この種のクルマを使い倒すユーザーでも満足度は高いはずだ。

 

搭載する1.5lディーゼルターボの動力性能も、MPV用としては満足できる仕上がり。商用車ベースと言いつつ快適性はライバルと同じく乗用車級だけに、個性派のRVが欲しいという人には狙い目の1台となるはずだ。

 

外観同様インテリアもシンプル系

中央に8インチのタッチスクリーンが備わるインパネ回りは、基本的に兄弟車と共通でシンプル。商用車ベースながら、運転支援機能は最新の乗用車らしい充実度。絶対的な広さはもちろん申し分ないレベルだ。

 

兄弟車に対して“ツール感”を強調?

プジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴといった兄弟車と比較すると、商用車的なツール感を残す外観。価格は399万円。7人乗りのロングホイールベース版であるマキシ(429万円)も選べる。

 

容量だけでなく秀逸な形状も魅力

リアゲートはガラス部分のみ開閉できるなど使い勝手への配慮も十分。荷室容量は最大で2126ℓに達するが、スクエアな形状にも注目。

 

扱いやすさに加え快適性も上々

搭載するパワーユニットは1.5lのディーゼルターボ。8速ATとの組み合わせで、扱いやすさと乗用車レベルの快適性を両立する。

 

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クルマの神は細部に宿る。【フォルクスワーゲン/ID.4編】欧州でもっとも売れているEVの実力とは?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、2022年末から日本に導入された、VW(フォルクスワーゲン)が本命と据える新世代EVを取り上げる。

※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

Volkswagen
ID.4

SPEC【Pro】●全長×全幅×全高:4585×1850×1640mm●車両重量:2140kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:204PS(150kW)/4621〜8000rpm●最大トルク:310Nm/0〜4621rpm●一充電走行可能距離:618km

514万2000円〜648万8000円

 

ヨーロッパでもっとも売れているEV

安ド「殿! 今回はVWのEV、ID.4を取り上げます!」

永福「またEVか」

安ド「え? このコラムでEVを扱うのは久しぶりですよ」

永福「そうだったか。最近ニューモデルの試乗というと、EVばかりなのでな。ところが日本では、EVはまだ全体の4%弱しか売れていない。うち半分近くを日産のサクラと三菱のekクロス EVの軽EVが占めている。その他のEVはほとんどが不人気モデル。元気が出ないのだ」

安ド「そうなんですか!?」

永福「前述の軽EV以外でそこそこ売れているのは、日産のアリアとテスラくらい。富裕層の間では、ポルシェのタイカンなどのチョー速EVが人気だが」

安ド「ID.4は、アリアのライバルですね!」

永福「うむ。世界的に見れば、こういうコンパクトSUVタイプが、EVとして最もスタンダード。ID.4は、ヨーロッパで一番売れているEVなのだ」

安ド「EV販売数世界一のテスラより売れているんですか?」

永福「ヨーロッパではな」

安ド「確かに、すごく普通に乗れる気がしました!」

永福「これぞスタンダードだ」

安ド「でも、シフトスイッチがインパネに付いていたり、適度に個性的な部分もあって、なかなか良いと思います!」

永福「デザインもスタンダード感満点だ」

安ド「グリルが小さいのはEVっぽいですけど、それ以外はすっきりスポーティで、カッコ良いと思います!」

永福「嫌味がないな」

安ド「走りも自然でした!」

永福「まるでガソリン車のように自然、と言われているが、驚いたのは、加速が遅いことだ」

安ド「エッ、これで遅いんですか!?」

永福「EVは、アクセルを踏んだ瞬間に最大トルクが出るので、どのEVも、走り出した瞬間は『ゲッ、速い!』と思うものだが、ID.4はその感覚が一番小さい」

安ド「これでですか!」

永福「テスラのモデル3 パフォーマンスなどは、発進加速で本当にムチ打ちの症状が出た。それに比べると“ものすごく遅い”と言ってもいい」

安ド「僕は十分速いと思いましたけど……」

永福「不必要に速くないと言ったほうがいい。VWは大衆車メーカー。その良識の表れだ」

安ド「なるほど!」

永福「そのわりに、電費が特に良くはないのが残念だ。ヒーターも効率の悪いタイプなので、冬場は電気を食うぞ」

安ド「ウリはなんでしょう?」

永福「VWは、グループのアウディ、ポルシェとともに、独自の専用充電ネットワークを作る。ディーラーに行けば、待たずに90 kWの急速充電ができる確率は高い。なにしろ売れてないからな」

安ド「ガクッ!」

 

【GOD PARTS 神】床下の厚み

バッテリーを床下搭載したことで走りも安定

ドアを開けると見るからに床下が分厚いですが、これは床下のアンダーボディにリチウムイオンバッテリーが敷き詰められているためです。重量物であるバッテリーが床下にあるため、必然的に重心が低くなり、走りも安定しています。ちなみにクルマの下側を覗いてみると、バッテリーがあるためフラットになっています。

 

【GOD PARTS 1】ドライバーモニタ

広い視野を生み出す超小型ディスプレイ

運転席前のモニタは薄くて小さいです。小さいので表示される情報も必要最小限ですが、これが意外にも見やすくて、無駄を省くことは大切だと実感させられます。運転席からの広い視界を生み出すことにも役立っています。

 

【GOD PARTS 2】ウインドウオープナー

後席の窓を開けるならワンステップ必要

4ドア車なのに、窓を電動開閉するスイッチであるオープナーが左右2つしか付いていません。しかし、よく見るとその前方に「REAR」と書かれていて、そこを押すとリアウインドウの操作に切り替わります。これはメリットがよくわかりません(笑)。

 

【GOD PARTS 3】ドライブモードセレクター

珍しいところに付いているシフト操作レバー

「ドライブモード」という名が付いていますが、いわゆるシフトセレクターです。運転席モニタの右側に一体化していて、グリンと回すことでシフトを選べます。シフトとしてはいままで見たことのない形状ですが、操作感は意外とすぐ慣れてしっくりきます。

 

【GOD PARTS 4】ラゲッジルーム

広くて使える荷室がアウトドアでも大活躍

SUVスタイルでありながらワゴンのようでもあるID.4。その荷室は前後方向に長く、広くなっています。後席シートを前方へ倒せば1575Lもの大容量となります。スタイリングは都会的ですが、荷室が広いのでアウトドアレジャーにも向いています。

 

【GOD PARTS 5】センターコンソール

ドリンクも小物もいろいろ入る

フロント左右シート間にはシフトレバーがあることが多いですが、ID.4のシフトは右頁のようにメーター横に設置されています。結果、ドリンクホルダーや小物入れがたくさん設置されています。スペースの有効活用というやつですね!

 

【GOD PARTS 6】フロントデザイン

EVに大型グリルは必要なし!

エンジン車ほど吸気を必要としないため、EVに大型グリルは必要ありませんが、ID.4もやはりスッキリした顔をしています。しかし、VWの象徴たるゴルフなどは、最近大型グリルを付けてなかったので、違和感がありません。

 

【GOD PARTS 7】ボンネット下

ありそうでなかった収納

モーターを後輪近くに搭載しているため、ボンネットの下にはきっとポルシェやフェラーリのように収納があるのではと期待したのですが、空調関係の機器などが積まれていました。やはりフロントの収納はあまり使わないからでしょうか。

 

【GOD PARTS 8】アクセル&ブレーキペダル

VWらしい遊びゴコロ

よく見ると両ペダルに「再生」「停止」のマークが付いています。動画サイト隆盛の時代が生み出した遊びゴコロですね。かつてビートルには一輪挿しを付けたこともありましたが、VWはいつの時代も伊達なブランドなのです。

 

【GOD PARTS 9】パノラマガラスルーフ

いまどきっぽい操作で類まれなる開放感

Proグレードのみ標準搭載される大型ガラスルーフです。運転席の頭上あたりから後席後ろまで広がっていて、シェードを開けると車内に開放感があふれます。操作は物理スイッチではなく、タッチして指を前後に滑らせて操作するいまどきっぽい形になっています。

 

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ランボルギーニ、EVスーパーカーをチラ見せ……18日にお披露目へ

Lamborghini(ランボルギーニ)は8月18日に公開予定の完全EVスーパーカーのシルエットを、X(旧Twitter)に投稿しています。

↑ Lamborghiniより

 

スーパーカーで名高いランボルギーニですが、同ブランドは今年3月にプラグインハイブリッド(PHV)モデルの「Revuelto(レヴエルト)」を発表。また、2024年にはスポーツカー「ウラカン」も電動化(PHV)される予定です。

 

 

今回ランボルギーニが公開したシルエット画像では、フロントガラスから長く傾斜したルーフへと流れる、流線型のシルエットがわかります。現時点ではこれ以上の詳細は判明していませんが、同車両はスーパーSUV「ウルス」に続く、ランボルギーニにとって第4のモデルとなることが決まっています。

 

ランボルギーニ初の完全EVスーパーカーは、8月18日のモントレー・カー・ウィークにてコンセプトカーが公開される予定です。ただしこれはあくまでもコンセプトカーで、実際の車両は2030年までに販売される予定となっています。ランボルギーニの完全EVスーパーカーがどのような姿でデビューするのか、実に気になるところです。

 

Source: Lamborghini / X via Engadget

人気の秘密は「8人乗り」にあり。日産「セレナ」の新e-POWERモデル総合力チェック!

いまや日産の主力ミニバンとなったセレナが、6代目としてフルモデルチェンジしたのが2022年の暮れ。先代に続いてガソリン車とe-POWER車の2本立てを基本としていますが、23年4月、人気の8人乗りをe-POWER車にもラインナップ。さらに最上級の「e-POWER LUXION(ルキシオン)」を追加するなど、選択肢の幅は大きく広がりました。

 

今回の試乗ではその中から一番の売れ筋となっている「e-POWER ハイウェイスターV」を選択し、その実力に迫ってみたいと思います。

 

■今回紹介するクルマ

日産/セレナ

※試乗グレード:e-POWER ハイウェイスターV

価格:276万8700円〜479万8200円(税込)

↑2023年4月から販売を開始したセレナ「e-POWER ハイウェイスターV」。販売比率はガソリン車を上回る6割近くに達する

 

「e-POWER」車比率がアップ。秘密は8人乗りの実現にあった

日産が発表した内容によれば、新型セレナの受注台数は2023年6月26日の時点で5万4000台に達し、なかでも8人乗りのe-POWER車は全体の約6割を占めるまでになったそうです。このまま行けば「年間10万台の達成も狙えるペース」と、期待通りの売れ行きに手応えを感じている様子。では、その人気のポイントはどこにあるのでしょうか。

↑フロントグリルから伸びるブラックの2トーンカラーがサイドビューに躍動感を与えている

 

↑ e-POWER ハイウェイスターVはプラットフォームこそ先代から引き継いだが、足回りなども大幅な改良が加えられた

 

セレナといえば、2005年の3代目が登場した際に、左右分割式セカンドシートを「スマートマルチセンターシート」としたことで話題を呼びました。これは2列目を用途に応じてキャプテンシートにも、8人乗車ができるベンチシートにもなる使いやすいもの。以来、セレナならではの人気装備となってきました。

 

ところが、5代目に追加されたe-POWER車ではバッテリーを追加搭載した関係上、セカンドシートをキャプテンシートとした7人乗りに変更となってしまいました。販売店の話ではこれが影響して、泣く泣くe-POWER車をあきらめてガソリン車を選んだ人も多かったそうです。

 

そうした事情を反映して6代目ではガソリン車よりスライド量が少ないとはいえ、スマートマルチセンターシートをe-POWER車にも採用。一転、全体の6割がe-POWER車を選ぶようになったのもこの対応が功を奏したとみて間違いないでしょう。

↑セカンドシートで3人掛けを実現したことでe-Power車でも8人乗車が可能となった。シート表面は汚れにくい素材を採用

 

しかも、単に8人乗りとしただけでなく、セカンドシートにはさまざまな工夫を施しているのです。たとえば、センターのバックレストを倒せば収納庫付きのアームレストになり、必要に応じてセンター部だけを前方へ移動することも可能。さらにシートスライドは前後だけでなく左右にも動かせるので、サードシートへの移動も使い方に応じた設定ができます。

 

加えて、セカンドシートでは前席の背後に備えられた折りたたみ式テーブルが用意され、左右には充電用USB端子も装備。シートバックポケットが左右に備えられているのも何かと重宝しそうです。

↑セカンドシートの真ん中を前方にスライドさせ、シートを横に動かすことで、生まれたスペースを使ってサードシートへ乗り込むことができる

 

↑前席のシートバックには折りたたみ式テーブルやUSB端子が左右2か所に装備されている

 

たっぷりとしたシート厚で乗り心地も上々のサードシート

サードシートは広々とした印象はないものの、大人が座ってもそれほど窮屈な印象はありません。シート厚もたっぷりとしており、少し遠乗りした際に家族に座ってもらいましたが乗り心地で特に不満は感じなかったそうです。むしろサードシートにもスライドドアのスイッチやUSB Type-Cが装備されていることに便利さを感じている様子でした。

↑サードシートはクッション厚もたっぷりとしており、長時間の移動でも疲れは少ないようだ

 

↑サードシート側に装備されていたスライドドアの開閉ボタンとUSB Type-C

 

↑足を出し入れする、ハンズオフでスライドドアの開閉が可能。ただし操作に若干こつがあるのが気になった

 

惜しいと感じたのは、サードシートをたたんだときに左右に跳ね上げるタイプとなっているうえに、シート厚がたっぷりとしていることが災いして、左右の幅が狭くなってしまったことです。シートの固定方法もベルトを使う古くさい方法。ここにはもう少し工夫が欲しかったと思いました。

 

一方で荷物の出し入れでいうと、上半分だけが開閉できるデュアルバックドアは、特に狭い場所での開閉がラクで使いやすさを感じます。荷物の落下防止に役立つことも見逃せないでしょう。

↑サードシートは左右跳ね上げ式を採用。シートのクッションが厚めであることが災いして左右のスペース幅は結構狭い

 

↑バックドアは上半分だけを開閉できる「デュアルバックドア」を採用。狭い駐車スペースでも荷物の出し入れができる

 

↑最後部のフロア下には、大容量のカーゴスペースを用意。普段使わないメンテナンス用品を入れておくのにも最適だ

 

運転席に座ると視界の広さを実感でき、周囲の状況はさらに把握しやすくなっています。座ったときの収まり間も良好なうえ、センターディスプレイにぐるりと囲まれるようなインテリアもデザインと機能性を兼ね備えた使いやすさを感じさせます。一方、賛否が分かれたスイッチタイプの電動シフトは、違和感を覚えたのは最初だけ。慣れてしまえば使いやすく、むしろ操作ミスを減らすのではないかと思ったほどです。

↑運転席は視界を遮るものを減らした開放感のあるもので、これが運転のしやすさをもたらしている。高品質なインテリアも好印象

 

↑日産初となるスイッチタイプの電制シフトを採用。見た目にもスッキリとしており、慣れると使いやすく確認しやすい

 

排気量が1.4Lにアップ。スムーズな走りはまさに電動車そのもの

さて、6代目となったセレナに搭載のe-POWERは、エンジンの排気量が従来の1.2Lから1.4Lへと拡大されています。従来のe-POWER搭載車でも特に力不足を感じたことはありませんでしたが、発電効率を高めることで、もともと重いミニバンで定員乗車したときなどでも余裕ある走りにつなげているのがポイントです。

 

実際、走り出してすぐに感じるのが、先代よりも明らかに静かさと滑らかさが増していることです。アクセルへの応答性も向上して、エンジンがかかる比率もかなり少なくなったこともあり、リニアな加速はもはや電動車そのもの。それがとても気持ちいいのです。モーターによる恩恵は明らかに大きいといえます。

↑アクセルを踏み込んでもストレスなく速度を上げていく。エンジンが起動しても走行中ならほとんど気付かない

 

しかもエンジンがかかってもそのときの振動はほとんど伝わってこない見事さ。これらはエンジンを収めるケース類の剛性アップとバランスシャフトの採用など、音・振動面のリファインを徹底的に施した効果が発揮されたものです。排気量拡大にともなってエンジンもパワーアップ。発電効率向上にも寄与しており、走りの快適度は確実に向上したといえるでしょう。

↑e-POWER車は新開発となる直列3気筒DOHC 1.4リッターのe-POWER専用のHR14DDe型エンジンを搭載。最高出力は72kW(98PS)/5600rpm、最大トルクは123Nm(12.5kgfm)/5600rpmで、EM57型モーターの最高出力は120kW(163PS)、最大トルクは315Nm(32.1kgfm)

 

足回りの剛性の高さも6代目の良いポイントです。5代目の柔らかめのサスとは違い、コシのあるしっかりとしたサスペンションは、段差を乗り越えたときの収束性もよく、荒れた路面での乗り心地は同乗した家族からも好評。個人的には見事なカーブでの踏ん張りが印象的で、峠道でもミニバンとは思えない粘りを見せてくれたのが好印象でした。

↑タイヤは205/65R16 95H。スポーティなハイウェイスターVながら、乗り心地が良いのもこの扁平率が効果を発揮している可能性がある

 

ただ、高速走行時に大きめの段差で受けると、ボディ全体がやや微振動として残る傾向があります。実は6代目はモデルチェンジしたとはいえ、プラットフォームまでは刷新しておらず、そのあたりの設計の古さが災いしているのかもしれません。とはいえ、一番多く利用する一般道での違和感はほとんどなし。その意味での進化は確実に遂げているとみて間違いないでしょう。

 

実用上で使いやすい「プロパイロット」。ライン装着ドライブレコーダーも

最後にプロパイロットの使い勝手に触れておきます。最上位のルキシオンには、高速でのハンズオフ走行が可能になる「プロパイロット2.0」が装備されましたが、ハイウェイスターVには単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた、オーソドックスなACCを採用するプロパイロットが装備されます。

 

それでも先行車への追従性は極めて良好で、速度ムラもほとんど感じさせないため、追従走行でストレスを感じることはありませんでした。ただ、レーンキープはテンションが強めにかかるため、これが気になる人はいるかもしれません。

↑プロパイロットのメインスイッチはステアリング右側に装備。このスイッチを押して「SET」すれば設定完了。あとは+-で調整するだけ

 

↑プロパイロット作動時。レーンキープのテンションがやや強めだが、先行車への追従性は速度ムラも少なく安定していた

 

また、6代目では新たにドライブレコーダーがライン装着で選択できるようになりました。前後に2台のカメラが装備され、配線が一切露出しないうえに表示をインフォテイメントシステムのディスプレイ上で展開できます。これはまさにライン装着ならではのメリットです。販売店に聞くと装着率はかなり高いそうで、今後はドライブレコーダーの標準化も当たり前になっていくのかもしれません。

↑日産車としては初めて、ライン装着でドライブレコーダーを用意した(下)。映像はインフォテイメントシステムでモニターできる

SPEC【e-POWER ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm●車両重量:1810kg●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:98PS/5600rpm●エンジン最大トルク:123Nm/5600rpm●モーター最高出力:163PS●モーター最大トルク:315Nm●WLTCモード燃費:19.3km/L

 

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撮影/松川 忍

フルモデルチェンジで納車は1年先!?「5代目プリウス」人気のヒミツ【2023年上半期売れたモノSELECTION 乗り物編】

『GetNavi』が選ぶ「2023年上半期売れたものSELECTION」。今回は「乗り物編」から、トヨタ 5代目プリウスをピックアップ。フルモデルチェンジをして納車は1年先とも言われる人気のヒミツに迫ります!

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ハイブリッドカーのパイオニアは走りとスタイルが大変身!

トヨタ
プリウス
320万円〜460万円

8年ぶりにフルモデルチェンジ。歴代モデルでもっともスポーティなデザインを採用している。スポーティさはデザインだけでなく最高出力152PSの2ℓエンジンを新開発するなど、高い走行性能も魅力となった。

↑外部からの充電も可能なPHEVモデルも登場。バッテリー搭載位置などで、いまのところ2WDモデルのみだ

 

↑近未来的なインパネ。メーターは独立した7インチ、センターディスプレイはグレードによりサイズが異なる

 

↑新たに設定された2lエンジンのハイブリッドモデル。システム最高出力は従来比1.6倍の196PSを誇る

 

【ヒットのシンソウ】

<証言者>自動車ライター・海野大介さん
専門誌からフリーに転向しウェブを中心に活動。1級小型船舶操縦免許や国内A級ライセンスを持つ。

納車は1年先とも言われる人気っぷり

「日本自動車販売協会連合会の5月新規登録台数では9233台で、トヨタのヤリスに次ぐ2位に浮上。受注台数は非公開ですが、1〜5月までに月販基準台数の約1.7倍になる3万5000台以上は販売済みです」(海野さん)

売れ行き:★★★★
革新性:★★★★★
影響力:★★★★

 

元祖ハイブリッドカーはデザインと走りが激変!

今年1月にフルモデルチェンジしたプリウスは「ハイブリッド・リボーン」が基本コンセプト。それは同車の強みでもある燃費をはじめとする高い環境性能に加え、「ひと目惚れするデザイン」や「虜にさせる走り」を兼ね備えたモデルに変化させたことだ。

 

「特にボンネットからAピラーが一直線につながるあたりは、まさにスポーツカー。さらに先代よりも45mmも低くした全高は1420mmと、こちらもまさしくスポーツカー並みです」(海野さん)

 

プリウスのアイコン的デザインと言える、「モノフォルムシルエット」を引き継ぎながら低重心かつスタイリッシュなプロポーションにしているのが新型の特徴だ。

 

走りの良さも人気のポイント。第2世代となったTNGAのプラットフォームは高い剛性と低重心化を実現しており、新しく搭載された2lエンジンは従来モデルの1.6倍の最高出力を誇る。

 

「走り出せば、パワフルな加速はもちろんのことステアリングのレスポンスも俊敏です」(海野さん)

 

タイヤは19インチながらも幅を狭くして空気抵抗を減らすなど細かいところも抜かりがない。先進安全・運転支援システム「トヨタセーフティーセンス」も標準装備し、全方位的に魅力のあるクルマに仕上がっている。ヒットも納得だ。

 

元祖ハイブリッドカーの歴史をおさらい!

■初代(1997〜2003)
世界初の量産ハイブリッドカー。1.5lエンジンにモーターを組み合わせ、当時の10・15モード燃費では28km/lを実現した。

 

■2代目(2003〜2009)
5ドアハッチバックへ変化。ハイブリッドシステムも進化し、4人乗りハイブリッドカーとしては世界最高の燃費35.5km/lを実現。

 

■3代目(2009〜2015)
エンジンが1.8lへ拡大し、燃費は世界トップクラスの38.0km/lに。また大きくなったボディで室内の快適性も向上している。

 

■4代目(2015〜2023)
新プラットフォームを採用。ハイブリッドシステムの小型軽量化を図るなどの改良で、驚異的な40.8㎞/ℓの燃費を達成した。

 

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約2か月で2万台受注! 日産 セレナ e-POWERのヒミツに迫る【2023年上半期売れたモノSELECTION 乗り物編】

『GetNavi』が選ぶ「2023年上半期売れたものSELECTION」。今回は「乗り物編」から、日産 セレナ e-POWERをピックアップ。事前受注開始後、2か月も経たないうちに2万台以上のオーダーがあった人気車のヒミツに迫ります!

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです

 

代々受け継がれる広い室内と高い静粛性が自慢

日産
セレナ e-POWER
319万8800円〜479万8200円

ファミリー層から高い支持を集めるセレナが2022年にフルモデルチェンジ。現行モデルにはエコとパワーを高次元で両立させたe-POWERを2023年4月にラインナップに加え、より魅力を増した。もちろん先進の運転支援機能も充実。

↑最上位グレードには、条件付きだが同一車線でのハンズオフ運転を可能にするプロパイロット2.0が装備される

 

↑特徴でもある広い室内空間はそのままに、シートをアップグレード。車体の揺れの伝達を抑えクルマ酔いを抑制

 

↑搭載されるe-POWERは1.4lの発電用エンジンを持つ第2世代のもの。トルクフルな走りも魅力だ

 

【ヒットのシンソウ】

<証言者>自動車ライター・海野大介さん
専門誌からフリーに転向しウェブを中心に活動。1級小型船舶操縦免許や国内A級ライセンスを持つ。

 

e-POWERへの期待大!約2か月で2万台受注

「事前受注開始後、約2か月も経たないうちに2万台以上のオーダーがありました。ガソリン車は昨年12月に発売されましたが、やはり日産得意のe-POWERを待っていた人が多いことの表れです」(海野さん)

売れ行き:★★★★★
革新性:★★★★
影響力:★★★★

 

誰もが快適に乗れる装備と技術が凝縮

セレナといえば扱いやすいボディサイズで広い室内がヒットの要因。そしてその“ちょうど良さ”が人気のヒミツだ。それは現行モデルにも受け継がれ、人気グレードのハイウェイスターの3ナンバーボディは1715mmと限りなく5ナンバーに近い寸法に。それでいて室内空間は広く、歴代セレナの美点は健在である。

 

「2列目のスライド量を見直して、3列目の足元スペースは先代よりも大きくなりました」(海野さん)

 

また、先代では選択できなかったe-POWER車の8人乗りも選択可能になったことも魅力だ。一方、走りの面ではe-POWERのコア部分が1.4lエンジンを採用する第2世代に進化。

 

「エンジンは振動や騒音を抑えるバランサーを装備しています。高速巡航中の静粛性も高く、不快な振動も少ないです」(海野さん)

 

ミニバン特有のふらつきも、高剛性サスペンションや揺すられにくい新開発のシート「ゼログラビティシート」の採用も相まってうまく軽減されている。また、ハンズオフ可能なプロパイロット2.0も最上級グレードに装備されたことも特筆。e-POWER車には100VのAC電源がオプション設定され、アウトドアや災害時の非常電源として家電等が使える点も好評だ。

 

【コレもCheck!】
e-POWER車の人気はSUVでも! 一時は受注が停止になるほど

日産
エクストレイル
351万100円〜532万9500円

「タフギア」というコンセプトはそのままに、e-POWER専用車として2022年に登場したエクストレイル。モーター駆動ならではの電動4輪制御技術「e-4ORCE」搭載で、高い悪路走破性も健在だ。

↑世界で初めて量産化に成功した、圧縮比を変えられるエンジン「VCターボ」。低燃費とハイパワーを実現している

 

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“遊びの空間”が “もっと遊べる空間”へ! 3代目ルノー・カングーの進化をチェック

今回は日本で華開いた商用車ベースMPV、ルノー・カングーをピックアップ! 3代目になって一層際立った進化を紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

自慢の使い勝手にはさらなる磨きがかかった!

RENAULT
KANGOO

SPEC【クレアティフ(ディーゼル)】●全長×全幅×全高:4490×1860×1810mm●車両重量:1650kg●パワーユニット:1460cc直列4気筒SOHCディーゼル+ターボ●最高出力:116PS/3750rpm●最大トルク:27.5kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:17.3km/L

 

「遊びの空間」と銘打ち、2世代に渡るヒット作となったカングーが3代目へとスイッチ。新型では謳い文句も「もっと遊べる空間」へと変化したが、中身をチェックすると進化は確かに全方位的だ。

 

まず、ボディサイズは先代比で全長と全幅がそれぞれ210mmと30mm拡大されたが、それに伴い自慢の荷室は一層広大に。容量は後席使用時でも775L、後席をたたむと2800Lに達し、数値上はいずれも先代を100L以上上回る。また、良くも悪くも商用車然とした先代までに対し、新型の内外装は乗用車らしい質感も獲得。加えて、運転支援系の装備も最新モデルに相応しい充実ぶりだ。

 

日本仕様のエンジンは、1.3Lガソリンターボと1.5Lディーゼルターボの2種。ミッションは、いずれも7速DCTを組み合わせるが、動力性能は必要にして十分というところ。ガソリンでは日常域の快適性が、ディーゼルは充実したトルクによる扱いやすさや力強さが実感できるので、どちらを選ぶかはユーザーの好みや用途次第だろう。先代と比較すると価格まで大幅に“成長”したのは少し気になるが、新型は操縦性や乗り心地といったシャーシ性能も着実に進化。その意味では、輸入車MPVとして相変わらず狙い目の1台であることは間違いない。

 

力強さと経済性ならディーゼル優位だが……

ガソリン仕様(上)の燃費は15.3km/lとディーゼル(下)より控え目。だが24万円の価格差、快適性の違いを考慮してガソリン仕様を選ぶ意義はありそうだ。

 

運転支援系の装備は格段に充実!

室内は、相変わらずボディサイズ以上の広さ。走行時の車線維持支援など、安全性を高める運転支援関連の装備も大幅に充実している。

 

好評だったアイコン的装備は継承!

左右に開くダブルバックドアは、カングーらしい装備のひとつ。無塗装のバンパー仕様が選べるのも特徴的だが、この組み合わせは日本向けにしか存在しないとか。その走りは先代より洗練された。

 

“もっと遊べる”ことは間違いなし!

先代比では後席使用時で115L、後席をたたんだ際は132Lも容量が拡大された荷室。絶対的容量の大きさに加え、スクエアな形状も魅力的。

 

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これぞ英国流ラグジュアリーSUVの最新モード!「レンジローバー・スポーツ」レビュー

今回はラグジュアリーSUVの草分け的存在でもあるレンジローバーのスピンオフ、レンジローバー・スポーツを紹介!

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです

 

走りは2トン超えの車重を意識させない軽やかさ!

ランドローバー
レンジローバー・スポーツ

SPEC【ダイナミックHSE D300】●全長×全幅×全高:4946×2209×1820㎜●車両重量:2315kg●パワーユニット:2998cc直列6気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:300PS/4000rpm●最大トルク:66.3kg-m/1500〜2500rpm●WLTCモード燃費:11.3km/l

 

名前の通り、“本家”のレンジローバーに対してはスポーティな走りを持ち味としてきたレンジローバー・スポーツ。だが、今回の3代目で際立つのは高級なSUVに相応しい見た目の質の高さだ。シンプルな造形にしてパネル間の隙間をギリギリまで詰めたボディの「塊感」は、もはや本家に匹敵する仕立てで強い存在感を放つ。

 

そんな印象は室内でも変わらず、インパネ回りはむしろあっさりしたデザインながら、吟味した素材や作りの良さで上質感をアピール。先代より室内空間が拡大されたこともあって、実際の居心地も前後席ともに申し分ない。

 

エンジンは3Lターボのディーゼルとガソリン、ガソリン+モーターのプラグインHV、そして4.4L V8ツインターボと多彩。今回はディーゼルに試乗したが、動力性能は2トン超の車重に対しても十分。その大柄なボディを意識させないほど身のこなしも軽やかなだけに、日々の贅沢な伴侶としても自信を持ってオススメできる。

 

ボディサイズ相応の十分な広さを確保

荷室容量は後席を使用する通常時でも647L〜。後席をたためば1491L〜というSUVとして申し分ない広さを実現。

 

アニマルフリーな素材も採用

英国ブランドというと「木と革」のイメージも根強いが、新型ではアニマルフリーのサステナブルな素材も積極的に採用。室内空間が先代比で広くなるなど、実用性も向上した。

 

ボディサイズは先代よりさらに成長

3列シートまで選択できるようになった本家と比較すればコンパクトだが、新型レンジローバー・スポーツも全長は5m近くで先代より大型化した。その外観は、シンプルな造形ながら「塊感」にあふれた強い存在感が印象的。

 

パワーユニットの選択肢は多彩!

エンジンはマイルドハイブリッドを搭載する3ℓターボのディーゼルとガソリンに加えプラグインHV、4.4ℓV8ターボまで用意される。

 

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クルマの神は細部に宿る。【GRカローラ限定モデル「モリゾウエディション」編】すでに完売! 会長肝いりの限定車の実力は?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、すでに買うことができなくなった、GRカローラの限定モデル「モリゾウエディション」を取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

TOYOTA
GR COROLLA

SPEC【RZ・MORIZO Edition】●全長×全幅×全高:4410×1850×1475㎜●車両重量:1440kg●パワーユニット:1618㏄直列3気筒+ターボ●最高出力:304PS(224kW)/6500rpm●最大トルク:400Nm/3250〜4600
rpm●WLTCモード燃費:非公表

715万円(通常のGRカローラ RZは525万円)

 

豊田章男会長の肝入りの絶滅危惧種

安ド「殿! 今回のクルマは、“マシン”と呼んだほうがふさわしい気がします!」

永福「うむ。まさしくマシンだ」

安ド「ホンダのシビックタイプRもすごかったですが、コレはもっと戦闘的ですね!」

永福「新型シビックタイプRは見た目がジェントルだが、このGRカローラは、かつてのランサーエボリューションを彷彿とさせる」

安ド「リアウイングはないですが、重武装した感じが、どことなくガンダムっぽいですね!」

永福「考えてみれば、ランエボが消滅してはや8年。インプレッサWRX STIもなくなった。GRカローラは、GRヤリスとともに、いまや貴重なガンダム系マシンというわけだ」

安ド「絶滅危惧種ですね!」

永福「なかでもこのモリゾウエディションは、モリゾウことトヨタの豊田章男会長の肝入りだ」

安ド「なにしろ軽量化のために、リアシートは取り外されていて、定員2名です!」

永福「うむ。リアシートのあった部分にバーが渡されているが、あれは間違って人が座らないためなのか?」

安ド「いえ、ボディ補強バーらしいです!」

永福「確かにボディ剛性がすごかった。ポルシェかと思ったぞ」

安ド「ものすごくしっかりしてますね! 304馬力の加速も凄くて、身体がシートに押さえつけられました! でも、どこか安心感があるのは、優秀な4WDシステムや、電子制御のおかげなんでしょうか」

永福「大雨のなかで走っても、微塵も不安を感じなかった。すごいマシンだ。しかし、もうとっくに買えないらしいな」

安ド「モリゾウエディションは70台限定の抽選販売でしたが、宝くじ並みの倍率だったようです!」

永福「マニア垂涎の希少マシンというわけだ」

安ド「715万円もするのに、欲しい人がいくらでもいるのは不思議ですね!」

永福「800万円出せばレクサスIS500が買えると思うと715万円はずいぶん高いが、なにしろこんなモデル、もう二度と出ないだろうからな」

安ド「このクルマで走り屋が集まる首都高速の大黒パーキングエリアにいたら、カーマニアたちがわらわら集まってきました!」

永福「心温まる話だ」

安ド「トヨタの古いホットハッチ乗りや、インプレッサのWRX乗りの人たちだったんですが、インプレッサのグループは、『もうラリー系のスポーツモデルはこれくらいですから!』と、目を輝かせて写真を撮りまくってました」

永福「三菱やスバルは撤退したが、トヨタは世界ラリー選手権で頑張っているからな」

安ド「トヨタってすごいですね!」

永福「うむ。トヨタがコケれば日本がコケる」

安ド「コケないで欲しいです!」

 

【GOD PARTS 神】リアシートレス

スポーツ走行のために必要ないモノを撤去!

「モリゾウエディション」を開発するにあたり、ボディ剛性の強化が徹底されました。しかしそうなると車体が重くなってしまうのですが、このようにリアシートを撤去することで約30㎏も軽量化されています。利便性より走行性能、見るだけで気持ちがたかぶります。もちろんメーカーによる改造ですから、内装の内張りもしっかりしていてチープさは感じられません。

 

【GOD PARTS 1】ブレーキ

本来の性能はもちろん色と文字もスポーツ性高し!

赤いカラーが戦闘的な雰囲気を感じさせるだけでなく、そこに刻まれた「GR」の文字が国産車好きやラリークルマ好きカーマニアの目を惹きます。対向キャリパー式ということで、コントロール性が高く、安定感のある制動力を発揮してくれます。

 

【GOD PARTS 2】ハイグリップタイヤ

幅広タイプでより速く安定した走りを楽しめる

「モリゾウエディション」には、ベースのGRカローラより10㎜幅広いタイヤが装着されています。ベース車でも235㎜とスポーツ走行には十分なくらい幅広いのですが、これでコーナリング時の安定性やブレーキ性能もさらに高めてくれそうです。

 

【GOD PARTS 3】マットスティール

高級感あふれる特別なボディカラー

「モリゾウエディション」だけに特別に設定された「マットスティール」という名前からしてカッコ良いボディカラーが採用されています。このようなツヤ消しのメタリックブラックは、近年メルセデスなどの高級車でもよく見かけます。

 

【GOD PARTS 4】エンジン

特別チューンされたターボで武装

「3気筒」と聞くと非力そうですが、これはラリーベースのGRヤリスに搭載されたターボエンジンをさらに強化したもの。4WDシステム「GR-FOUR」とともにリセッティングされていて、速さと伸びの良さを実感できます。

 

【GOD PARTS 5】トランスミッション

モリゾウエディションでさらに高められた効率性

「モリゾウエディション」では、通常のGRカローラよりギア比を最適化。運動性能が向上し、素早いシフト操作がしやすくなっています。さらに、「iMT」ボタンを押せば、自動でエンジン回転数を調整してくれます。

 

【GOD PARTS 6】セミバケットシート

スポーツシートながら使いやすい仕様

バケットシートは身体を包み込む形状で、コーナリング中などに着座位置がズレるのを防いでくれます。しかしこれは「セミバケット」。リクライニングもできるし、ホールド性も若干の余裕があって日常使用でも使いやすい仕様です。

 

【GOD PARTS 7】モリゾウサイン

ウインドウガラスにサイン入り

GRカローラは当初一般販売予定でしたが、コロナ禍や半導体不足の影響により500台のみ抽選販売されました(現在追加販売を検討中)。サインが入った「モリゾウエディション」は最初の70台限定。貴重です!

 

【GOD PARTS 8】バンパー&ボンネット

戦闘的でラリーカーの装い

冷却効果や空力性能強化のために、バンパー形状はワイルドになっていて、ボンネットフードとフェンダーにはアウトレット(空気穴)が設けられています。フェンダーも拡幅され、筋肉質に仕上がっていて、ラリーカーイメージがビンビンです!

 

【GOD PARTS 9】ステアリング

滑りにくくて操作も安心

「モリゾウエディション」のみの装備として、ステアリングに「ウルトラスエード」と呼ばれる毛羽だった表皮が採用されています。これは見た目のスポーティさを向上しながら、滑りにくく、ドライビング操作を確実なものにしてくれます。

 

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【2023年上半期メガヒット】半年足らずで1万6000台超の予約受注を達成! 三菱「デリカミニ」人気の理由を探る

「デリカ」の名が付く軽スーパーハイトワゴンが出ることが明らかになるや、「欲しい!」という人が続出。5月の発売日までに想定をはるかに上回る受注数に。その人気の要因を探る。

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです

三菱
デリカミニ

180万4000円〜223万8500円

「eKクロス スペース」の実質的な後継モデルとして開発。“頼れるアクティブな軽スーパーハイトワゴン”をコンセプトに、デリカらしい力強いデザイン、日常からアウトドまで使いやすい室内空間、運転をサポートする走行性能や安全装備などを備えている。

SPEC【T Premium・4WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1830㎜●車両重量:1060㎏●パワーユニット:659cc直列3気筒インタークーラー付ターボ最高出力:64ps/5600rpm●最大トルク:10.2kgm/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:17.5km/l

 

↑内装色は精悍なブラックで統一。小物を片付けやすいよう各部に収納が設けられている。オリジナル9型ナビはぜひ付けたいところ

 

↑開口高は1080㎜もあり、地上高が低めなのでかさばる荷物の積み下ろしもラクラク。後席は分割して320㎜も前後スライドできる

 

↑飲み物をこぼしてもサッと拭き取れて水遊びのあとでも気にせず乗り込める撥水シート生地を採用。座り心地と通気性にもこだわっている

 

●ヒットのシンソウ

【証言者】モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん
軽自動車からスーパーカーまで守備範囲が広い。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

インパクト満点のルックス異彩を放つ独特の存在感

「こういうクルマが発売前に多くの注文を集めたところに意義がある。内容的にはそれほど目新しくはないものの、使い勝手に優れ、見た目にもインパクト抜群。かつてない存在感を放っているところがスゴい」(岡本さん)

 

「デリカ」のミニ版らしいデザインと利便性を兼備

1万6000台という数字がどれくらいのものかというと、例えば軽自動車界の王者として君臨しているホンダのN-BOXなら、わずか1か月でもっと多くの台数が売れることも珍しくない。それでもデリカミニのように価格帯が高めの軽自動車で、しかもまだ試乗レビューも出ていない段階の新型車が、これほどの受注を集めたことは大健闘といえる。

 

この人気の秘密は、アウトドアミニバン・デリカゆずりの力強いデザインと、軽ハイトワゴンとしての使い勝手を良い具合に兼ね備えているところにありそうだ。いまどきの軽ハイトワゴンはどれも良くできていて、使い勝手は甲乙付けがたい。その点ではライバルと大きな差はないだろう。そんななかでもデリカミニが特別なのは、やはりデザインだ。

 

最近ではSUVテイストの軽自動車もいくつか見受けられるようになってきたが、デリカミニほど上手くまとまっている例はあまり心当たりがない。特に、いかにもデリカのミニ版らしい、ちょっとヤンチャで、かわいらしさのなかにもキリッとした表情のあるフロントが目を引く。

 

また、半世紀以上の歴史と伝統のある「デリカ」が車名についていることから興味を持ったという人や、信頼を感じて注文したという人も少なくないようだ。

 

実際、デリカとしての使い勝手の良さと4WD性能への期待により、アウトドア派からも大いに注目を集めているという。

 

人気雑誌編集長が本気で考えた「私ならデリカミニでコレがしたい!!」

■「ベストカー」編集長・飯嶋 穣さん

パーツが揃ってきたら自分好みにカスタマイズ

「デリカミニは自分好みにイジるには最高の素材。今後、カスタムパーツも続々と増えるでしょう。というわけでまずはカスタム。タイヤあたりから始め、ゆくゆくはリフトアップキットで車高も上げたいですね」

 

「ベストカー」
販売部数、情報量、エンタメ濃度No.1の自動車専門誌。1977年創刊/毎月10・26日発売(講談社ビーシー/講談社)

 

■「ランドネ」編集長・安仁屋円香さん

デリカミニに合う服を着て秘湯やカフェで寛ぎたい

「お気に入りのウエアに似合うナチュラルアイボリーメタリックのデリカミニで、駅から登山口までが遠い山に出かけます。山歩きのあとは、山奥の秘湯を目指したり、カフェに立ち寄ったりして1日を過ごしたい!」

 

「ランドネ」
山歩きの旅をキーワードに、自分らしいアウトドアライフを楽しむ女性を応援する隔月刊誌。奇数月23日発売(ADDIX)

 

■「GetNavi」編集長・松村広行

カミさんと2人で日本各地を巡りたい

「デリカと言えば4WDによる走破性が魅力。多少の悪路も平気だし、運転支援機能も充実していて、ロングドライブで疲れても安心です。愛らしいルックスはカミさんも気に入ってくれそう。2人で日本各地を旅したいですね」

 

PLAYBACK![1968-2023]デリカ55年ヒストリー

1968年、トラックから始まったデリカは今年で55年を迎える。初代スターワゴンでの4WD追加が大きな転機となり、以降SUVとワンボックスを融合した唯一無二の存在となっている。

 

【1968年】デリカトラック

1.1lエンジンを積む小型トラックがまず登場。ほどなく商用バンと、9人乗りワゴンの「コーチ」が追加された。

 

【1979年】デリカスターワゴン(初代)

スクエアなスタイルに一新。のちにピックアップトラックをベースとした4WDとディーゼル車がラインアップされた。

 

【1986年】デリカスターワゴン(2代目)

ボディサイズ拡大とともにエンジンを強化。ワゴンは4WDと2WDでスタートし、世のRVブームのなか人気を博した。

 

【1994年】デリカスペースギア

2代目パジェロをベースに開発。4WDシステムは、先進的なスーパーセレクト4WDをいち早く搭載していた。

 

【2007年】デリカD:5(ビッグマイナーチェンジ後)

独自の環状骨格構造であるリブボーンフレームを採用し、強固な車体を実現。2019年より現在のデザインとなる。

予約時で異例の大ヒット、イメチェンにも成功した三菱「デリカミニ」の乗り心地はどう?

https://getnavi.jp/vehicles/877011/?gallery=gallery-2_1今年の東京オートサロンで大きな注目を浴びた三菱自動車「デリカミニ」が5月25日、いよいよ発売を開始しました。昨今のアウトドアブームが後押ししたのか、5月24日時点での予約受注はすでに1万6000台超え! しかも全体の約6割が4WDモデルなのです。これはまさに、いかに多くのユーザーが三菱自動車らしいアウトドア志向の軽自動車を待ち望んでいたか、を示すものと言えるでしょう。

 

今回はそのデリカミニにいち早く試乗することができましたので、インプレッションをお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

三菱/デリカミニ

※試乗グレード:T Premium

価格:180万4000円〜223万8500円(税込)

↑三菱自動車「デリカミニ」。試乗車はターボ付き「T Premium」の4WD車

 

ワイルド感を高めた“ヤンチャかわいい”顔つきが大きな話題に

デリカミニとはどんなクルマでしょうか。一言で表せば、高い人気を獲得している三菱のミニバン「デリカ」の世界観を、軽自動車で展開したものです。“ヤンチャかわいい”顔つきが話題のデリカミニですが、実は同社の「eKクロス スペース」をベース車としたマイナーチェンジモデル。そこにデリカならではのエッセンスを取り入れたクルマとなっているわけです。

↑ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1830mm。2WDの全高は1800mm

 

特に外観は従来のイメージを大きく変更し、フロントグリルには三菱車の共通アイコンである、“ダイナミックシールド”と呼ばれる痕跡を残したフロントフェイスを採用。半円形のLEDポジションランプ付きヘッドランプを組み合わせつつ、上位車であるデリカD:5との共通性をも持たせながら可愛らしさを演出しています。

 

しかも前後のフロントバンパーとリアガーニッシュには立体的な「DELICA」ロゴを浮かび上がらせたほか、光沢のあるブラックホイールアーチ、前後バンパー下にプロテクト感のあるスキッドプレートを組み合わせることでワイルドさを演出。このように、外観をがらりと変えたことによって今までのイメージを一新させ、人気獲得に結びついたというわけです。

↑フロントグリルには「DELICA」のロゴマーク。ヘッドライトはかわいらしい形状のLEDを採用

 

↑前後アンダー部とサイドに施したデカールによってワイルド感がいっそう増した

 

↑ワイルド感を高めるのに効果的なサイドデカール(3万3440円)はディーラーオプション

 

軽自動車はいまや日本で約半分を占める大きなマーケットです。その中でもスーパーハイト系ワゴンは最大の激戦区。ここには圧倒的強さを発揮するライバルが君臨しており、残念ながら三菱自動車はこれまでその一角に入ることができていませんでした。聞くところでは「候補の一つにも入れてもらえないことが少なくなかった」というのです。そんな中での大ヒット! 商品開発でのうれしい誤算となったことは間違いないようです。

 

オフロード走行を意識した足回りを4WD車に標準装備

用意された試乗車は、シリーズ中で最上位となるターボ仕様のデリカミニ「T Premium」の4WD車です。

 

車両本体価格は223万8500円。そこにメーカーオプションとして、オレンジのオプションカラー(8万2500円)とアダプティブLEDヘッドライト(7万7000円)を装備しています。さらにディーラーオプションとして、フロアマット(2万5960円)やサイドデカール(3万3440円)、ナビドラ+ETC2.0(36万9820円)などが加わり、総合計では282万7220円。諸経費を含めると300万円を超える見積りとなりそうです。

↑ディーラーオプションのナビドラ+ETC2.0(36万9820円)のナビゲーションは、手持ちのスマホとWi-Fi接続することで音声での目的地検索が可能になる

 

そのデリカミニを前にすると、やはりデリカ風のデザインがとってもカッコイイ! 試乗車のボディカラーがオレンジだったことも一つの理由だと思いますが、4WD車は車高が高くなったうえに、タイヤを標準グレードよりも一回り大きい165/60R15にしたこともカッコ良さを際立てているように感じました。さらに4WD車に限ってはダンパーにも手が加えられ、オフロードで快適な走行ができるように改良されているのです。

↑4WD車のタイヤには標準車よりも一回り外形サイズが大きくなる165/60R15を採用

 

一方で内装は黒を基調としており、基本的には従来のeKクロス スペースを踏襲したものです。とはいえ、デリカミニとしての独自色を上手に演出できており、運転席からの視界は比較的に高めで、周囲の見通しはかなり良いと言えるでしょう。ただ、ステアリングがチルトするのみでテレスコピックはなし。そのため、若干ハンドルを抱え込むポジションになってしまいました。それでもシートの座面にコシがあり、しっかりとしていることから疲れは感じないで済みそうです。

↑水平基調のインストルメントパネルはブラックで統一。着座位置は高めで視界はとても広い

 

↑シートは合皮とファブリックの組み合わせた通気性の良い撥水シートとなっている

 

レジャーを意識した装備も豊富です。たとえば寒い季節にありがたいステアリングヒーターは新装備されたもので、しかも全周囲を対象とする優れもの。また、天井に設けられたサーキュレーターはエアコンの効きを均一化できるほか、リアサイドウィンドウのロールサンシェードや助手席シートバックの折りたたみ式テーブル、さらにはUSB端子も装備されるなど、後席でも快適に過ごせるようさまざまな工夫が施されています。さらに、リアシートは320mmもスライドでき、出掛けた先でいろいろな活用法が見出せることでしょう。

 

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ターボパワーは必要十分! ハンドリングも穏やかで乗りやすい

↑最高出力47kW(64PS)/5600rpm、最大トルク100Nm(10.2kgfm)/2400~4000rpmを発生させる直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ+マイルドハイブリッドを搭載

 

走り出しは4WD車らしい、落ち着いたスタートを切ります。軽快さはあまり感じませんが、高速道路での流入でもそれほどパワー不足を感じることはないと思います。ただ、これがノンターボ車だと、おそらくかなり動きは鈍くなるのではないかと推察できます。その意味で、オススメはターボ付きモデルですね。

↑デリカミニに試乗中の筆者。高めの着座位置ということで運転のしやすさが印象的だった

 

ハンドリングも穏やかでスーパーハイト系ワゴンにもかかわらず腰砕けしないフィーリングは、乗りやすくコーナリングも安心して走れるという感じです。トランスミッションはパドルシフト機能付きCVTで、走行中に簡単操作でシフトを変えられるのもメリットと言えます。

↑デリカミニは、「DELICA」のロゴマークが従来の「eKクロススペース」とは異なる雰囲気を醸し出していた

 

もう一つ注目なのは、悪路での走破性です。前述したように、4WD車にはスムーズなダンピングと路面への追従性を高めたショックアブソーバーが装備され、そのうえでタイヤサイズを一回り大きくした165/60R15を組み合わせています。これにより、2WD車に比べて砂利道など悪路での走破性を高めているとのこと。この日の試乗では、悪路走行はキャンプ場内に限られたため、その効果をはっきり体感できるまでには至りませんでしたが、継続装備されたヒルディセントコントロールも含め、改めての試乗で確かめてみたいと思います。

↑砂利道など悪路での走破性を高めているとのことだったが、キャンプ場内ではその効果を十分に体感することはできなかった

 

可愛い『デリ丸。』のCM効果もあって、三菱の軽自動車としては異例の大ヒットをもたらしたデリカミニ。ここまで人気を集めればサードパーティの新たなパーツの登場も期待できそうです。かつてのパジェロミニがそうだったように、デリカミニとして新たな盛り上がりを期待したいところですね。

 

SPEC【T Premium(4WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1830mm●車両重量:1060kg●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:64PS/5600rpm●エンジン最大トルク:100Nm/2400〜4000rpm●モーター最高出力:2.7PS/1200rpm●モーター最大トルク:40Nm/100rpm●WLTCモード燃費:17.5km/L

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撮影/松川 忍

もうすぐロータリー×PHEV版出ますが…マツダ「MX-30 EVモデル」の価値はどこにある?

昨今、世界の自動車メーカーから次々とEVが発表されている。そんななか、マツダは同社初の量産型EVとして、2021年1月に「MX-30 EVモデル」の国内販売を開始した。ハイブリッドモデルとなるMX-30が先行して登場しているが、併売する意義や販売的な成功はあるのだろうか。さらに、同クラスのSUVの多くがファミリーカーとして使われているなか、MX-30 EVモデルの使い勝手はどうか。発売から2年半経過した今、考察してみたい。

 

■今回紹介するクルマ

マツダ MX-30 EVモデル

※試乗グレード:EV・Highest Set

価格:451万~501万6000円(税込)

 

 

MX-30のEVモデルは遅れてきた本命

MX-30は現在日本で売れ筋となっているコンパクトサイズのSUVだが、ベースとなっているのは、同社のコンパクトSUV、「CX-30」である。そして、マツダにはさらに小型のエントリーモデル、「CX-3」もラインナップされている。棲み分けが難しいこの小さな領域において、マツダだけで3車種も販売している状態だ。

 

では、この3台で最も後出しとなるMX-30 EVモデルの存在意義とはなんなのかと言われれば、それはEVとして企画されたモデルであることにほかならない。2020年10月にマイルドハイブリッドモデルが先行して発売されたものの、EVであることを前提に開発された車種だけに、数か月後に発売されたEVモデルが「遅れてきた本命」というわけである。

 

観音開きのドアはファミリー向けの提案

デザインについても、CX-3やCX-30とは一風違ったテイストで仕上がっている。フロントまわりはEVらしくグリルが小さく、流行りの大型グリルの威圧顔とは違ったすました表情だ。全体的には現代的な曲線基調で、尖った部分はなくスッキリしており、上質さと同時に、親しみやすさを感じるデザインにまとめられている。

↑サイズは全長4395×全幅1795×全高1565mm。試乗モデルのカラーは特別塗装色のソウルレッドクリスタルメタリックで、ほか7色のカラーを展開しています

 

デザインではないが、「フリースタイルドア」と呼ばれる観音開き式のドアもこのクルマのポイントとなっている。フロントドアは通常通りの後ろ開きだが、リアのドアが前開き。つまり真横から見たら観音開きである。マツダで観音開きといえば、RX-8を思い出す好事家もいるに違いない。

 

この観音開き、実は構造的な“珍しさ”のほかにもメリットがある。それは、前席ドアを開けなければ後席ドアが開かないというもので、小さな子どものいる家庭では重宝される機能。ファミリー向けのクルマとして、ミニバン以外の選択肢に新たな提案というわけだ。

↑フリースタイルドアは専用設計のヒンジを採用しており、ほぼ垂直に近い角度まで開きます

 

↑ラゲージスペースは366Lの容量を確保

 

インテリアも非常に特徴的なデザインが採用されている。特に印象に残るのは、シフトノブの下部にスペースが設けられていること。これは一部輸入車などでも採用されていた構造で、見た目もスッキリするし、ドライブ中でも欲しいアイテムをすぐ手に取ることができて、足元に落ちる心配も少ない。また、センターコンソールに採用されたコルク素材も、現代的でオシャレである。

↑シフトノブとコマンダーコントロールは前方に配置。またセンターアームレストを高くしているため、肘を置きながら自然な腕の角度で操作できるようにしています

 

↑空間全体で包み込まれるような心地よさを実現したというシート

 

↑回生ブレーキの強さを変えられるパドルシフトが付いたステアリング

 

さらに、2022年10月の商品改良では、MX-30 EVモデルのバッテリーから電力を供給できるAC電源が追加装備されている。これで、アウトドアなどレジャーに出かけた先でも、電化製品を気軽に使うことができるため、アクティブなライフスタイルをサポートしてくれるに違いない。

コーナーも安心の乗り心地。航続距離の短さは日常使いであれば問題なし

もうひとつ、MX-30 EVモデルならではの美点がある。それは走りがいいことだ。EVならではのストップ&ゴーの気持ちよさはもちろん、乗り心地も優れている。しなやかなサスセッティングで道路に張り付くように走れるだけでなく、ドイツ車のようにタイヤの接地感が失われるようなことが少ないので、背の高いSUVでありながら高速道路のコーナーでも安心である。

 

一充電走行距離のカタログ値は256kmとなっているが、実質的には200kmくらいになるだろう。この距離をどう捉えるかだが、買い物や通勤など短距離移動を日常的にこなす人にとっては、不足感はないはずだ。

↑運転席寄りに搭載されたe-SKYACTIVEVユニット。モーターの最高出力は107kW(145ps)/4500~11000rpmで、最大トルクは270Nm(27.5kg-m)/0~3243rpmです

 

↑充電口には普通充電ポート(左)と急速充電ポート(右)をそろえています

 

さらに今後、プラグインハイブリッドモデルが発売される。電気モーターにプラスして、発電機を回す動力源としてのエンジンを搭載した「e-SKYACTIV R-EV(イースカイアクティブ アールイーブイ)」という名称のモデルが追加販売されるという。発売日はまだアナウンスされていないが、6月22日に広島の宇品工場で量産が開始されたことが発表されている。

 

この発電用エンジンというのが、なんとロータリーエンジンである。マツダにとってロータリーエンジンは特別なもので、コスモやRX-7に搭載されてきた象徴的な技術だ。RX-8生産中止以来、約11年ぶりのロータリーエンジンは、発電用であっても特有の高回転の快音が聞こえるのだろうか。だとすればファン垂涎のモデルでもあり、このモデルの投入でMX-30が一気にスターになる可能性も秘めている。今回紹介しているEVモデルの購入を検討していた人にとっては、悩ましい存在となるのかもしれないが……。

 

「人が乗ってないクルマ」「自分らしさを表現できるクルマ」を好む人が選ぶ

さて、このMX-30 EVモデルの最大のマイナス面を挙げるなら、価格が高いところだろう。ハイブリッドモデルと比べて、約200万円も高く設定されている。ハイブリッド車を検討している人からは、この価格を知っただけで見向きもされないかもしれない。

 

しかし、そもそもMX-30 EVモデルを選ぶ人は、人が乗ってないクルマや、自分らしさを表現できるクルマを好む人である。「EVに乗る生活」により早く移行できることからも、喜びを味わえるのではないだろうか。そこに加えて、CO2排出量を抑えることに意義を感じられるような人にはぴったりである。

 

同クラスのEVのなかでも、見事な“個性”を発揮しているMX-30 EVモデル。これからマツダマニア待望のロータリーエンジン搭載プラグインハイブリッドモデルが追加されることになる。ハイブリッドかEVか、はたまたプラグインハイブリッドか、人々がどのモデルを選ぶのか、今後はその経過を追ってみたい。

 

SPEC【EV・Highest Set】●全長×全幅×全高:4395×1795×1565mm●車両重量:1650kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:145PS(107kW)/4500-11000rpm●最大トルク:270Nm/0-3243rpm●WLTCモード一充電走行距離:256km

 

文/安藤修也、撮影/茂呂幸正

 

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PorscheのCarPlayでの車両コントロール機能が進化

カーブランドのPorsche(ポルシェ)は、Apple(アップル)の車載システム「CarPlay」における新たな車両コントロール機能を発表しました。

↑Porscheより

 

今回の新機能は、「My Porsche」アプリのアップデートにより提供されます。これにより、CarPlayをとおして車両のオーディオ、空調、快適機能、照明、エンタメ機能を操作することができるのです。

 

Porscheによれば、車両のオーナーはラジオ局の変更や車内温度のコントロール、照明の調整などを行うことができます。さらに「リラックス」「ウォームアップ」「リフレッシュ」といったウェルネスモードを、CarPlayのクイックアクション機能から起動することができます。これらの機能は、音声アシスタント「Siri」の音声コマンドからも操作可能です。

 

これらの機能は、Porsche Communication Management(PCM)に表示されるQRコードをスキャンすることで、利用を開始できます。新しいMy PorscheとCar Playの機能は、まず「Cayenne(カイエン)」から利用できるようになり、その後に他のモデルにも展開される予定です。

 

また今回のニュースとは別に、AppleはCarPlayにおけるマルチスクリーンへの対応や、車両コントロール機能などの導入を予告しています。この新しいCarPlay機能を搭載した車両は、今年後半に登場する予定です。

 

Source: Porsche via MacRumors