ソニーがBluetoothワイヤレスヘッドホンの新しいフラッグシップモデル「WH-1000XM6(マーク6)」を発売しました。前機種のマーク5からは約3年ぶりのモデルチェンジとなりますが、今回は多くのユーザーから人気を集めた2020年モデル「WH-1000XM4(マーク4)」からの買い替え・買い増しを想定して製品を比較してみましょう。

多機能でありながらシンプルに使える1000Xシリーズ
1000Xシリーズといえば、ハイレゾワイヤレス対応の高音質サウンドに、静寂なリスニング環境を実現する独自のアクティブノイズキャンセリング、モバイルアプリと連携して多彩な機能が使えるなど、「ぜんぶ入り」のワイヤレスヘッドホンです。
筆者は魅力に惹かれて第4世代のマーク4を手に入れて、長らく愛用しています。たくさんの機能を搭載するワイヤレスヘッドホンですが、基本的には「いい音・いいノイキャン」をすべて自動で設定してくれるので、扱いはとてもシンプルです。搭載する機能はアップルのAirPods MaxやボーズのQuietComfortシリーズをしのぐほどに豊富ですが、すべてを使いこなせるようになる必要はありません。
最新モデルのマーク6も基本的には同じコンセプトのヘッドホンです。搭載する機能はさらに増えていますが、前世代の1000Xシリーズのユーザーであればすぐになじめるものばかり。もちろん初めて1000Xシリーズのワイヤレスヘッドホンを買い求める方でも楽しめるでしょう。

価格はオープンですが、ソニーストアでは2020年モデルのマーク4が4万7300円(税込)、新製品のマーク6は5万9400円(税込)で販売されます。1万円以上値上がりしていますが、その価値はこのあと詳しく評価します。なお、マーク4は残念ながら現存する商品在庫をもって生産を完了する模様です。
表現力が増して生演奏に近い感動。360度立体再生の機能も追加
最初にサウンドを比較してみます。1000Xシリーズはソニーが開発した高音質なBluetoothのコーデック「LDAC」に対応しています。最近はAndroidスマホの多くがLDACをサポートしているため、今回はGoogle Pixel 9aとペアリングして聴きました。
約5年の間にサウンドはやはり大きく進化していました。同じ条件で同じ楽曲を聴き比べてみると、マーク6はレスポンスが大きく向上しています。音の立ち上がり・立ち下がりが鋭いので、音像はより立体的に、音場はさらに見晴らしよく描かれます。
ボーカルや楽器の音色のリアリティ、空気感の鮮明さにも違いがありました。クラシック音楽はバイオリンの音色の艶やかさが魅力。アップテンポなロック、ポップス系の楽曲を聴くと低音の肉づきの良さも印象に残ります。マーク4のサウンドも十分に完成度が高いので不満はないのですが、マーク6はさらに生演奏の感動に近づけます。
専用アプリの「Sound Connect」には、1000Xシリーズで聴くさまざまな音源を最大96kHz/24bitのハイレゾ品質にアップコンバートするAI機能「DSEE Extreme」が搭載。同機能はマーク4でも利用可能だったため、効果が大きく変わることはありませんが、特にバッテリーを余計に消費することもないので「常時オン」で積極的に活用すべき機能です。

マーク6からの新機能は、アプリのSound Connectから選択できる「リスニングモード」の中の「360 Upmix for Cinema」。映画やドラマ、アニメなどの映像コンテンツを視聴する際に音場の立体感が自然に向上する楽しい機能です。音楽再生時にはライブ会場で聴いているような立体感が加わります。こちらもマーク6に慣れてきたらぜひ試してみることをおすすめします。
スウっと静寂に包まれるノイキャン
続いてアクティブノイズキャンセリング(ANC)の効果を比較しました。1000Xシリーズには、ソニーが独自に開発したノイズキャンセリング専用のチップセットが搭載されています。マーク4は「QN1」というチップで、新しいマーク6には最新世代の「QN3」が載っています。ほかにもノイズを集音するマイクの性能とアルゴリズム、イヤーカップの密閉度などを総合的に改善したことで、マーク6はやはりANCの効果が一段と向上していました。
ANCをオンにするとマーク4は消音効果が「グン」とかかる印象ですが、マーク6は足回りのよい高級車のように「スゥ」っと滑らかに立ち上がり、きめ細かな静寂に包まれます。人の声が含まれる中音域の消音効果も高まったと感じます。
屋外で試すと、ANCをオンにするだけで周囲の喧噪が静まり、音楽を再生すると地下鉄の車内のような騒々しい場所でも深く没入できます。周囲の環境音がかなり聞き取りにくくなるので、屋外を移動しながら使うときには必ず外音取り込み機能(アンビエントサウンドモード)に切り替えて使うべきです。

コンパクトに折り畳める本体デザインが復活
マーク6はマーク4よりも本体のサイズが少し大きくなっています。そのぶんイヤーカップもゆったりサイズになっているので、装着したときに優しく包み込まれる心地よさがとても魅力的。とはいえ頭によりタイトにフィットするようなマーク4の一体感も好きです。
どちらのヘッドホンもメガネをかけたまま装着してもテンプル(つる)とぶつかる窮屈さがないところはさすが1000Xシリーズ。ただ、ヘッドホンの装着感は個人差が大きく表れる部分なので、購入を検討する際には事前に試着してみることを強くおすすめします。
マーク4は本体をコンパクトに折り畳んで専用ケースに収納できるポータビリティの良さが魅力です。マーク5では本体の折り畳み機構が一段階簡略化(フラットにしかならない)されてしまいましたが、マーク6では再びマーク4の機構に戻っています。

さらにマーク6では専用ケースがマグネット式のバックルで素早く開閉できるようになったことが、とても魅力的に感じました。ほかにも細かなところでは電源ボタンが大きく・押しやすくなっているなど、操作性の面でも随所に改善が図られています。

すぐに買い替えは不要。でも買い増しはアリ
現在、動作に何の不具合もないマーク4を愛用している方がマーク6に乗り換える必要があるかと聞かれたら、筆者はすぐには不要と答えます。マーク4もすごく優秀なワイヤレスヘッドホンだからです。
ただ、サウンドやノイズキャンセリングについては着実に進化したことがわかるほどにWH-1000XM6は革新的です。発売後にぜひ試聴して、好みに合うようであれば「買い増し」する方向で新旧1000Xシリーズを味わい尽くしてみてください。
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