ムラのない黒のボールペン&万年筆!セーラー万年筆「CYLINT マットブラックステンレス」

セーラー万年筆は、金属筆記具「CYLINT(シリント) 万年筆・ボールペン マットブラックステンレス」を、全国のセーラー万年筆製品取扱販売店で3月22日に発売します。知的な印象を与える、スタイリッシュなデザインが特徴です。

記事のポイント

CYLINTは、金属ベースの万年筆とボールペンに表面加工を施し、普段使いしやすいデザインに仕上げた筆記具シリーズ。「CYLINDER(シリンダー)」と「Intelligent(インテリジェント)」の略である「INT」を組み合わせた造語です。今回発売するのは、ムラのない均一な黒を楽しめるマットブラックステンレス。シンプルながら存在感があります。

 

「CYLINT マットブラックステンレス」最大の特徴は、その名の通り、マットブラックに仕上げられたステンレス素材です。新たな表面加工技術により、ステンレスの重厚感とデザイン性を引き出しつつ、耐久性・耐候性にも優れているとのこと。

 

マットステンレスの黒色発色は、深みのある色調で、落ち着いた大人の雰囲気を演出。ビジネスシーンはもちろん、フォーマルな場にもマッチしそうですね。

 

万年筆のペン先には21金を使用し、ブラックIP仕上げ。字幅は細字、中字、太字から選べます。

 

セーラー万年筆
CYLINT 万年筆 マットブラックステンレス
希望小売価格:7万7000円(税込)
ペン先:21金、中型、ブラックIP仕上げ
字幅:細字、中字、太字
本体サイズ:φ17×133.3mm(クリップ部含む)
本体重量:37.2g

CYLINT ボールペン マットブラックステンレス
希望小売価格:4万4000円(税込)
方式:回転式
芯色:油性ブラック
ボール径:0.7mm
本体サイズ:φ15.5×138.2mm(クリップ部含む)
本体重量:49.2g

18金をペン先に使用した、なめらかな書き味の万年筆!ファーバーカステル「ギロシェ ローズブラッシュ」

DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンは2月27日、ドイツの筆記具ブランド・ファーバーカステルのプレミアム筆記具ブランド「ファーバーカステル伯爵コレクション」より、ギロシェの新色「ローズブラッシュ」を販売開始しました。

記事のポイント
高級感がありつつ柔らかい雰囲気で、女性にも持ちやすい色の組み合わせをうたっています。エレガントな気分に浸りたい人にオススメ。

 

ギロシェは、胴軸にヨーロッパの伝統的な装飾模様であるギロシェ(波縞模様)加工を施し、トランペットシェイプの天冠トップとスプリング式の蝶番が付いたクリップが特徴の人気シリーズ。今回発表の新色「ローズ」は、同軸の加工部分にローズカラーを採用するほか、メタルパーツにもローズゴールドをコーティング。エレガントで高級感のあるデザインが特徴です。

 

万年筆、ローラーボールペン、ボールペンの3種類を用意します。なお、万年筆のペン先には18金を使用しており、滑らかな書き味が堪能できるとのことです。

 

DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン
ギロシェ ローズ 万年筆(EF/F/M/B)
市場想定価格:10万4500円(税込)

青で魅せるボールペンと万年筆。筆記具ブランド「ファーバーカステル」より「アンビション」20周年記念モデル

DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンは、ドイツの老舗筆記具ブランド「ファーバーカステル」より、人気シリーズ「アンビション(Ambition)」の20周年記念モデルを展開しました。

 

記事のポイント

「アンビション」は、ファーバーカステルを代表するコレクションの一つ。細身の円筒形バレルが人気で、シンプルで洗練されたデザインと実用性を兼ね備えていることで知られています。今回発売するモデルはいずれもブルー系でありながら、素材や色味の差によって印象がまるで違います。

 

今回発表された20周年記念モデルでは、以下の2つのカラー、素材の組み合わせが用意されています。イタリックアイスブルーは2月26日より、ファーバーカステル東京ミッドタウン店、公式オンラインストア、全国の百貨店および筆記具専門店で発売。ブルーウッドは4月頃の発売予定です。

 

ブルーウッド

バレル部分に、ブルーに染め上げたシデの木を使用。温かみのある手触りが特徴です。ブルーラッカー仕上げのメタルパーツが、クールなコントラストを演出しています。

 

イタリックアイスブルー

エレガントなデザインが特徴。ライトブルーの高級レジンを採用したバレルに、イタリック書体を彷彿とさせる斜めラインが施されています。

 

20周年記念モデルには、それぞれのペンカラーに合わせた限定のギフトパッケージが付属します。

 

ファーバーカステル
アンビション ブルーウッド 万年筆(EF/F)
価格:3万800円(税込)

アンビション ブルーウッド ボールペン
価格:2万7500円(税込)

アンビション イタリックアイスブルー 万年筆(EF/F/M)
価格:1万9800円(税込)

アンビション イタリックアイスブルー ボールペン
価格:1万7600円(税込)

「シェーファー」最新作、”高級感”のかたまり! 「シェーファー300 エングレーブド」万年筆・ボールペン

ダイヤモンドは、アメリカの筆記具ブランド「シェーファー(SHEAFFER)」の新商品「シェーファー300 エングレーブド」を2月6日に販売開始しました。

記事のポイント

人気の「シェーファー」シリーズ最新作。特徴的な幾何学模様とゴールドの配色が高級感を演出し、物欲をくすぐります。販売店では数量限定のペンケース付きギフトボックスを提供するキャンペーンも開催するとのことなので、贈り物にいかがでしょう。

 

既存モデル「シェーファー300」をベースに、ボディ部分に特徴的なキューブパターンを彫刻した「エングレーブド」モデル。光沢のあるクロームメッキのキャップや、ゴールドカラーのPVD加工が施されたステンレススチールのペン先など、華やかさや高級感を意識した仕上がりが特徴です。

↑万年筆とボールペンをラインナップします

 

万年筆とボールペンの2種類を用意。万年筆はサイズが軸径13mm×長さ157mm、重量が約47g。ボールペンはサイズが軸径 13mm×長さ141mm、重量が約47g。

 

ダイヤモンド
シェーファー300 エングレーブド 万年筆
市場想定価格:1万6500円(税込)

シェーファー300 エングレーブド ボールペン
市場想定価格:1万4300円(税込)

見る角度を変えると色彩も変化! セーラー万年筆「CYLINT 万年筆・ボールペン カラードステンレス」

セーラー万年筆は、「CYLINT 万年筆・ボールペン カラードステンレス」を2024年10月26日に発売します。CYLINTは、金属ベースの万年筆、ボールペンに表面加飾を施し、日常使いできる筆記具シリーズです。

↑角度を変えると色調変化する特性を持つステンレス発色技術を使用

 

記事のポイント
「あたたかさ」や「やわらかさ」を感じさせる色味の、ステンレス発色が特徴です。見る角度によって、青から青紫に変わる「LAGOON」、ピンクから赤紫に変わる「LANTANA」、山吹色から緑に変化する「SCARAB」などのカラーバリエーションがあります。書いて、見て楽しめて、手元も華やかになりますね。

 

カラードステンレスの蓋胴に使われている発色技術は、メッキや塗装とは異なります。ステンレス素材の表面に極薄の酸化被膜を成長させ、光の干渉を利用して色を認識させるため、剥がれる心配がないとのこと。

 

彩色と同時に高い耐食性や抗菌抗ウイルス、抗アレルギー効果も付加するステンレス発色処理を施しています。

 

セーラー万年筆
CYLINT 万年筆 カラードステンレス
希望小売価格:7万7000 円(本体価格7万円)

CYLINT ボールペン カラードステンレス
希望小売価格:3万8500 円(本体価格3万5000 円)

 

1本19万8000円で世界500本の限定発売! 伊藤若冲「虎図」がモチーフの「長刀研ぎエボナイト万年筆 猛虎」

セーラー万年筆は、「長刀研ぎエボナイト万年筆 猛虎」を2024年10月5日より世界500本(国内250本、海外250本)限定で発売します。希望小売価格は19万8000円(本体価格18万0000円)。

 

長刀研ぎエボナイト万年筆 猛虎

超大型の21金長刀研ぎペン先を搭載し、重ねたエボナイト材にチラシ細工を施した重厚感のあるエボナイト万年筆「猛虎」は、日本画をモチーフにしたカラーエボナイト材を本体に使用したシリーズの第6弾で、伊藤若冲による「虎図」を採用。若冲による色彩の鮮やかさ、美しい黄色と黒のコントラスト、浮かび上がる虎の雰囲気を幾層にも重ね、複雑に織りなすカラーエボナイト軸にて表現しています。

 

また、シリアルナンバーを刻んだ特別仕様として、同じものが世界中に二つとない製品となっています。

 

伊藤若冲と虎図

 

色鮮やかでリアルな花や鳥などを描いた花鳥画で知られる画家、伊藤若冲。絵画と禅に傾倒し、40歳で家業を弟に譲って画業に専念しました。最初に学んだ狩野派では飽き足らず、元・明の古画と光琳派という和漢の装飾画を研究・模写するかたわら、動植物の写生に努め、特に鶏の絵を得意としました。

 

今回の「虎図」は元・明の古画である李公麟の「猛虎図」の模写をしたもの。原作は、黄土色の絵の具で虎の毛を一本ずつ丁寧に描いていますが、「虎図」は黄土色で下塗りをした上から、墨で細かい線を描き加え、黄と黒のコントラストを原作よりはっきりとさせています。また輪郭には墨を入れることで虎を浮かび上がらせています。模倣でありながらも原作にはない特徴があります。

 

長刀研ぎについて

限られた職人だけが作ることができる究極のオリジナルペン先。ペン先の先端に通常より大きいペンポイントをつけ、長刀の刃型のように長く、角度を滑らかに研ぎ出しています。

 

ペンを寝かせると太い線、立てると細い線が書けるという特徴があり、トメ、ハネ、ハライなどが多い漢字を最も美しく筆記することが可能。また、同じ字幅のスタンダードペン先と比べると太い線を書くことができ、筆圧をかけなくても滑らかな書き心地を実感できるペン先とのこと。字幅は中細(MF)、中字(M)、太字(B) の3 種をラインアップ。

 

エボナイトについて

万年筆のボディに最適な素材といわれているエボナイト材を、一本一本丁寧に削り出し、丹念に磨き上げています。しっとりとした感触の心地良さ、深みのある光沢を楽しめるとのこと。また、三色を重ねたエボナイト材にさらに一色を散りばめ、美しさを際立てているといいます。

 

セーラー万年筆「(長刀研ぎエボナイト万年筆 猛虎」(限定500本)

希望小売価格:19万8000円(本体価格18万0000円)

万年筆あるあるを解消!セーラー万年筆「TUZUアジャスト万年筆」の画期的な機構とは?

きれいな字を書くためには、筆記具の握りを正しくする必要がある。正しい握り方をすることで、ペン先に無駄な力をかけることなくコントロールもしやすくなる。つまり、正しく握ることで効率の良い筆記ができるようになる、というわけだ。

 

特に万年筆は、ペン先の表側(刻印のある側)が上を向いていないとインクが出ないので、正しく握ってペン先の向きを合わせない限り、そもそも書くことができない。初心者用の万年筆には、グリップ形状によって「特に意識することなく正しい握り方ができる」ように工夫されたものもあって、それはありがたいのだが。ただし、それは万人にとって正解ではない、というのが難しいところ。

 

であれば、ユーザーの手に合わせて握り方をカスタムできるグリップがあれば、便利なのではないだろうか?

 

万年筆は、ペン先の向きをカスタムすると握りやすくなる

一般的に万年筆のグリップは円筒形なので、どこに指を置いても握れてしまう。ただそれだと、ペン先の向きが正しくならないかもしれないので、初心者用の万年筆は三角柱や六角柱形のグリップで指の置き場所を限定し、握ることで自動的にペン先の表側が上を向くようになっている。

 

とはいえ、指の長さや曲がり癖は人それぞれで違う。指示された場所に指を置いても上手くペン先が上向きにならないケースだってあるだろう。そこに対応するため、グリップとペン先の向きを最適化できるアジャスト機構を搭載したのが、筆記具メーカーのセーラー万年筆の「TUZU アジャスト 万年筆」だ。

セーラー万年筆
TUZU アジャスト 万年筆 細字・中字・太字
各4,500円(税別)

 

グリップは円筒にフラットな2面を削り込んだような、三角柱に近い「ナチュラルフィットグリップ」。この2面に親指と人さし指の腹をそれぞれ置いて握るのが基本形で、この握り方をすると、自動的にペン先の表側が上を向くようになる。

 

ただ、冒頭でも述べた通り、全員が全員そうなるわけではない。例えば筆者の握り癖の場合、握った状態で紙面にペン先を置こうとすると親指が内側に巻き込まれ、それに合わせてペン先も15〜20度程度内転していた。つまり、このグリップに合わせて握ってしまうと、ペン先は正しく真上を向かないのである。

↑自然と指の配置が決まりやすいナチュラルフィットグリップ

 

↑筆者の握り方だと、ペン先の側面が見えてしまうぐらいに傾いている

 

そこで試してみたいのが、「TUZU アジャスト 万年筆」独自のペン先回転機構だ。

 

まず胴を外してから、銀色のリングを下に降ろす。続いてグリップを下にスライドさせてから、自分に合ったようにペン先とグリップの角度を調節する。角度が決まったら、手順を逆行(グリップを上げてリング位置を戻し、胴を装着)すればセット完了となる。

↑胴と銀リングをねじって外したら、グリップをストンと下げる

 

↑この状態でペン先を10°ずつ回転させられるので、ちょうどいいところでグリップを戻す

 

とにかく自分なりの筆記姿勢でペン先の刻印が真上を向くようにしたいので、何度か実際に握ってみて角度を確認すると良いだろう。コンバーターやインクカートリッジを装着したままでも調整は可能なので、なんなら実際に書きながら角度合わせをしても良いかもしれない。

↑右がアジャスト完了した状態。これならペン先がきちんと上を向く

 

↑多角グリップの場合、今まではわずかに手首をひねって角度を合わせていたのが、自然な握り方で気持ち良く書けるようになった。快適である

 

今回は自分の書き癖に合わせて外転方向に20度でセットしてみた。こうすると、ちょうど筆記する姿勢でペン先が上を向くことになる。実のところ、ペン先は10〜20度程度なら傾いていてもインクが出ないわけではないが、ペンポイント(ペンの先端)が紙に引っかかるような感触もあって、あまり気持ち良くはない。

 

対して真上であれば、インクの流れが安定することでなめらかに書けるし、なにより筆圧のコントロールがしやすくなるため、万年筆らしいメリハリのある線が引きやすくなる。つまり最初にきちんとアジャストしておけば、万年筆初心者でも正しく「万年筆ならではの書き味」が楽しめるようになるというわけだ。

軸を汚さずインクを吸いやすい新機構も搭載

万年筆のインク補充は、一般的に使い捨てのインクカートリッジを装着するか、コンバーターと呼ばれるインク吸入ポンプ兼タンクを装着してインク瓶からインクを吸い上げる、という2種類の方法がある。どちらか片方のみ対応という場合もあるが、ほとんどはカートリッジ/コンバーター両対応だ。

 

もちろん「TUZU アジャスト 万年筆」も両対応だが、本来なら別売りのはずのコンバーターが最初から付属されているのは嬉しいポイント。これはおそらく、新しいインク吸入機構をアピールしたいからなのだろう。

↑コンバーターとインクカートリッジ2本が付属。この価格帯でコンバーターが付いているのは珍しい

 

インクを吸入するには、「ペン先をインク瓶に浸して、コンバーター内のピストンを動かして吸い上げる」というのが一般的な流れ。ほとんどの万年筆はインクの吸入口がペン先の根元にあるため、ペン先をまるまるインクに浸けることになるが、すると必然、軸の先端(首軸)までインクで汚れてしまい、それが手にべったり付着するというのが、定番の“万年筆あるある”だ

↑本来ならペン先の根元までしっかりインクに浸す必要があったが、なんとこれでもう吸入できてる!?

 

↑吸入完了。確かにハート穴(ペン先中央の小さな穴)までしか汚れていない

 

そこで真価を発揮するのが件の新しいインク吸入機構。なんと、ペン先中央のハート穴からインクを吸うことができるのだ。つまり首軸までドブンとインク瓶に挿し込む必要はなく、ひとまずハート穴(…に擬装したインク吸入口?)さえインクに浸っていれば吸入が可能、ということ。これなら首軸、ひいては手まで汚れる心配が無いのである。

 

他社ではあるが、プラチナ万年筆「プロシオン」にも同様の吸入機構が搭載されている。これもまた、万年筆の取り扱いになれていない初心者に助かるギミックと言えるだろう。

↑嵌合式(パチンとハメ込むだけ)キャップながら、気密性の高い二重キャップでドライアップを防ぐ

 

また、キャップ内部にはバネでギュッと圧をかけてペン先を密閉する内キャップ(スライド式キャップ)が備わっており、これによってインクの乾燥を抑制してくれるという。

 

これは同社の「プロムナード」にも搭載されていたもので、ひとまずキャップさえ閉めておけば、半年〜1年ぐらいはドライアップの心配はないはずだ。初心者はうっかり万年筆にインクをいれたまま放置→書けなくなるというコンボをキメがちなので、保険的にもこういう機構があるとありがたい。

↑「TUZU ボールペン」も同時にラインアップ(グリップのアジャスト機構は非搭載)。人気の高いぺんてる「エナージェル」インクが入っている

 

セーラー万年筆
TUZU ボールペン ボール径0.5mm
2500円(税別)

 

 

ひとまず使ってみた印象としては、自分の握りにカスタムできるアジャスト機構と、手を汚さず吸わせやすいインク吸入機構は、端的に“万年筆を使いやすくする仕組み”としてとても優秀だと感じた。加えて、飾り気少なくサッパリとしたルックスも、万年筆を「高級だから…」などと気負わずに使うにはちょうどいい。

 

個人的には、ハート穴がペン先のクッションとして機能していない分だけ描線がやや硬い印象を受けたが、それも日常の筆記具としてサラサラと書くには使いやすいのかもしれない。普段使いの万年筆として、もうしばらく試してみたい。

「インク消費したい欲」を発散! 万年筆のペン先を備えるつけペン「hocoro(ホコロ)」が時間を溶かす!?

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第26回となる今回は?

 

第26話

 

 

セーラー万年筆
万年筆ペン先のつけペン hocoro(ホコロ)
1350円(細字、1.0mm)
1450円(2.0mm、筆文字)

※ペン先+ペン軸の価格(税別)

万年筆用ボトルインクを利用し、ペン先を軽く水で流すだけで色替えできるのが魅力。ペン先は細字、1.0mm、2.0mm、筆文字の4タイプで、ひとつのペン軸に付け替えて使用できる。ペン先を逆向きにも差し込め、持ち運びやすい。

 

「インク消費のためのペン」という倒錯が新たな可能性を拓きそう

買ってから使い途を考える。それは邪道ではなく、むしろ正しい。そんなペンがこの「hocoro(ホコロ)」です。

 

近年「インク沼」という言葉がSNSなどを賑わせています。万年筆用の様々なインクを愛でる趣味ですが、万年筆は一度インクを充填すると使い切るまでそれなりの量を書かねばならず、テスター感覚でちょっとずつ色んなインクを試したい人には不向きでした。そんなニーズから近年はつけペンやガラスペンに注目が集まっており、そこに目をつけたセーラー万年筆が発売したのが本品。つけペンに万年筆のペン先を取り付けたもので、細字・1mm幅・2mm幅・筆文字と4種のペン先があり、それぞれまったく異なる個性を楽しめるようになっています。これはこれで「万年筆沼」への入門編にもなっており、インクとの組み合わせを試しているだけであっという間に時間が溶けてしまいます。おそるべし、ダブル沼効果。

 

ところで、道具にはそれを中心とした様々な主従関係の糸が張り巡らされています。筆記具であれば書く人が「主」でペンが「従」ですが、時折「このペンを使いたいから手紙を書く」というような主従の逆転現象が起こります。ホコロの場合、「インク消費のためのペン」という倒錯した主従関係があらかじめ埋め込まれているところがユニーク。「インク消費したい欲」から生まれる予期せぬ使い途や、まったく新しいインクの楽しみ方に期待しています。

 

文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険」バックナンバー

【第1話~第24話】
【第25話】ようやく実用に耐えうる金属鉛筆が登場! 話題の「メタシル」の使い道とは?

しっとり質感のラバー塗装が特徴! ノック式万年筆「キュリダス」に、マットな新モデル「キュリダス デプス」登場

プラチナ万年筆は、ノック式万年筆「キュリダス」の新ラインナップ「キュリダス デプス」を、5月1日に発売します。税込価格は9900円。

↑初回限定スペシャルパッケージ(数量限定)

 

今回発売となる同製品は、不透明軸の上からラバー調の塗装を採用し、きめ細やかでしっとりとした質感に。クリップとリングには黒マットの電着塗装を施しています。軸色は、#1 ブラック、#56 ブルー、#77 レッドの3種類。

 

設計は書きやすさを追求し、ペン先の出る長さを紙面が見やすい長さにして、クリップをコンパクトにすることで、持ち手の自由度を高めています。

パイロットの定番万年筆「カスタム74」に数量限定モデル! 発売30周年を記念して登場

パイロットコーポレーションは、同社の定番万年筆「カスタム74」の発売30周年を記念して、万年筆「「カスタム74」 30周年記念モデル」を、数量限定で発売中。税別価格は2万8000円です。

 

カスタム74は1992年に発売。当時はボールペンの普及により強い筆圧が一般化し、硬いタッチの書き味へと変化した日本人の好みに合わせて開発された万年筆で、なめらかな書き味と、用途や好みに合わせて選べる豊富なペン種を特徴としています。

 

現在発売中の30周年記念モデルは、カスタムシリーズのこれまでの“歴史”と、定番としての“普遍性”をテーマに、これからも永く愛用してもらいたいいう思いから誕生。ネーミングの“カスタム(注文品)”の由来通り「使う人の様々な“書く”に応える」というシリーズコンセプトに基づき、気分やシーンに合わせてカスタマイズが可能な、3色の本体軸をセットしています。

 

軸色のアンバーは「過去」、コバルトブルーは「現在」、ターコイズグリーンは「未来」を表現しており、14金・ロジウム仕上げのペン先には、30年の歴史を表す30枚の月桂樹の葉をデザインしています。ペン種はF(細字)、FM(中細字)、M(中字)と、サインに最適なS(シグネチャー)をラインナップし、キャップのリングには「PILOT CUSTOM 74 30th ANNIVERSARY JAPAN」の文字を刻印。清々しい鮮やかな青色の限定色インキ「Anniversary Blue」が付属し、カスタムシリーズの歴史と品質へのこだわりを紹介した「CUSTOM74 30th Anniversaryブックレット」とともに、専用箱に収められています。

サインペンでもiPadでも楽しめる「カリグラフィー」の始め方と揃えるべきアイテム

手帳や手紙を飾る手段として昨今人気を集めているのが、カリグラフィー。金属製の専用ペンにインクをつけて強弱をつけながら、微細なラインの美しさを引き出す世界に、のめり込む人が多くいます。最近は、直接人に会う機会が減っている分、ギフトを大切な方に贈るときには、心を込めてしたためたメッセージを添えたいというニーズにも応えているようです。

 

モダンカリグラフィーの講師をしているMayuさんに、カリグラフィーの魅力と基本的な書き方、さらに揃えたいアイテムを教えていただきました。従来は専用の万年筆を使っていたカリグラフィーですが、昨今はデジタルツールでも、その世界観を楽しめるのだとか!

古代ローマから続く手法、「カリグラフィー」とは?

↑上:トラディショナルカリグラフィー(カッパープレート体)、下:モダンカリグラフィー

 

カリグラフィー(calligraphy)とは、ギリシャ語で「美しい書き物」という意味。もとはローマ時代の碑文に使われた「ローマンキャピタル」という大文字体で、以降、さまざまな書体へと移行しながら、欧文活字のモデルへとなっていきました。

 

「字を美しく見せる意味では書道に通じるものがあり、“西洋書道”とも言われています。歴史とともに数々の書体が受け継がれてきました。

基本の形を正確に書くことで、読みやすく整った美しさを目指すトラディショナルなカリグラフィーに対し、イギリスの産業革命とともに発展した『カッパープレート体』を踏襲しつつ、書き手がルールにとらわれず、より自由に独自のアレンジや遊び心を表現することを尊重されるのが、“モダンカリグラフィー”。自分らしい表現を楽しみたいニーズから、最近はこのモダンカリグラフィーが人気ですが、正解のある美しさを形どおりに書く方が好みなら、トラディショナルなカリグラフィーがスタートとして向いているかもしれません。

入り口がどちらであっても、レパートリーを広げるためにさまざまな書体を学ぶ人も多くいます。私は、主にモダンカリグラフィーを書いていますが、いろいろなスタイルを表現したいという思いから、また別のトラディショナルな書体も学び始めました。ご自身の好みや、文字の雰囲気を比較して、これを書いてみたい! とワクワクするものから始めてみてくださいね」(モダンカリグラフィー講師・Mayuさん、以下同)

日本で人気が高まったきっかけは? カリグラフィーで文字を彩る魅力とは

上:トラディショナルカリグラフィー(カッパープレート体)、下:モダンカリグラフィー

 

歴史のあるカリグラフィーですが、モダンカリグラフィーが日本に入ってきたのは、たった10年ほど前だとか。

 

「わたしがモダンカリグラフィーと出会ったのは、1日体験のワークショップに参加した2016年でした。『これは楽しい、もっとうまく書けるようになりたい!』と思ったものの、当時はまだモダンカリグラフィーを教えてくれる先生が見つけられなかったんです。そこで、まずはカッパープレート体を習い始めました。

そうこうしているうちに、日本におけるモダンカリグラフィーの第一人者である島野真希さんが講座をスタートされたので、習うように。当時は、ウエディングを控えた女性が、ゲスト用のネームプレートをおしゃれに書きたいという目的で習うパターンが多かったようです。最近は自分のお仕事に生かしたいという方も増えていて、例えば、アイシングクッキーの文字のデザインにしたり、アロマやお花のレッスンで取り入れたりというお声も聞きます。

モダンカリグラフィーは自分好みにどんどんアレンジしていけるので、個性が出しやすいのも、今の時代にマッチしているのかもしれません」

 

【関連記事】第一人者・島野真希さんに聞く「モダンカリグラフィー」の魅力と初心者が上達するコツ

モダンカリグラフィーを始めるときに揃えたい、基本の道具

本格的に始めたいなら、以下のような道具が必要になります。専用のペンとインクと紙。まずは、これさえ用意すればOK。

・ペンホルダーとニブ

「ペンホルダーは左側に“ニブ”をセットするオブリークタイプとストレートタイプがあります。ニブとはペン先のこと。しなやかさやサイズに、いろいろなタイプがあります。私が初心者の頃から愛用しているのは、アメリカ製の『Hunt101』。とてもしなやかで、太い線と細い線のコントラストが出しやすいんです。筆圧が強めの方には日本製の『Nikko G』もおすすめですよ」

・インク

「練習用には水性インクが使いやすいでしょう。私が愛用しているのは、アメリカ製の『Higgins Eternal Black Ink』です。ただ、海外製は手に入りにくいこともあるので、パイロット社の『証券用インク』もおすすめです」

・紙

「練習用には、表面がなめらかでインクがにじみにくいものを選びましょう。インクがにじむと、描いた文字の美しさが損なわれてしまいます。適した紙を選ぶことでモチベーションが下がるのを防げますよ。コピー用紙なら『FCドリーム』『RHODIA(ロディア)』や『マルマン レポートパッド』などもおすすめです」

・水

「ペン先のインクを洗うための水を用意しておきましょう。ニブ、つまりペン先にインクが付いた状態で長時間書いていると、ニブに付着したインクが乾燥し、インクフローが悪くなってしまいます。細いストロークが繊細に描けなくなったなと感じたら、水洗いのタイミングです」

・キッチンペーパー

「洗ったニブの水分を拭き取るために手元に置いておきましょう。ティッシュだと細かい繊維がニブにからみやすくなるので、キッチンペーパーがおすすめです」

インクとペンを使いこなそう!カリグラフィーの書き方

ここからは、具体的に書くプロセスを見ていきましょう。

1.ニブにインクを付ける

「インクを溜めておくための穴『ヴェントホール』がふさがるラインまで浸します。インクをつけすぎた場合は、ボトルの縁でインクを落とし、量を調整しましょう」

2.罫線に沿って、ラインを引いてみる

「こちらの用紙は私のレッスンで使用しているオリジナルですが、最初はこのように罫線の入っている用紙を使った方が書きやすいと思います。太い線、細い線などを何度も書いて、ペンの感覚をつかんでいきます」

3.紙を斜めにして、文字を書いてみる

「最初は習字のように、見本を参考にしながら文字を書いてみます。慣れてきたら太さや形も自由にアレンジして、オリジナルのモダンカリグラフィーを楽しんでください」

4.慣れてきたら、オリジナルの形へとアレンジする

「シンプルなメッセージだとしても、デジタルや基本フォントでは出せない、個性や魅力が引き出されます」

基本を押さえれば、サインペンでも手軽に書ける!

上で説明した基本の道具がなくても、カリグラフィーは楽しめます。例えばサインペンでも可能です。

 

「こちらは『ぺんてる 筆タッチサインペン』です。ペン先がやわらかすぎず、適度なしなりがあって筆のようなタッチで文字が書けるため、ニブと同じように筆圧で線の太さの強弱を出せます。より手軽に始めてみたい方は、文房具店でも手に入りやすい筆ペンからトライしてみてもいいかもしれません」

 

ぺんてる「筆タッチサインペン」
1本 165円、6本セット990円(ともに税込)
ロングセラーのぺんてる「サインペン」シリーズの、筆タッチ感をプラスしたアイテム。カラーバリエーションは24色で、モダンカリグラフィーやイラストに最適。

 

呉竹「水性ペン ZIG MS カリグラフィー II 12色」
2640円(税込)
3.5mm芯&2.0mm芯のツインタイプのカリグラフィー用マーカー。使いやすい12色のセット。

 

ぺんてる「筆ペンデュアルメタリックブラッシュ」
1本550円、8色セット4400円(ともに税込)
ブラック+メタリックレッド、ブルー+メタリックグリーンなど、1 色の中にラメの別色が入ることで、見る角度によって色味の変化が出るように。毛筆なので強弱のあるラインが書けます。

リボンや容器には耐水性のサインペンがおすすめ

リボンなどの布製品やガラス瓶のような容器、バルーンなどにカリグラフィーのメッセージを書きたいときは、ペン先がしなる耐水性のサインペンがおすすめ。

 

「サインペンは太さの強弱のない単一的な線になるので、ナチュラルな雰囲気になります。こちらは色味も素敵で、ゴールド、シルバー、カッパー以外にもエメラルドやアメジストなど全9色の展開があります。カリグラフィーの文字が上手に書けなくても、このペンを使って、リボンや容器にメッセージを書いてみるだけでも、魅力的なギフトになりますよ」

 

東山「漫画ライナー」
1本330円、4本セット1320円(ともに税込)
耐摩耗性に優れ、しなりがあるので超極細0.7mmから2.0mmの太線まで、自在にアレンジできます。紙以外にも、ガラス、皮革製品、プラスチック、陶器、貝殻、金属などの表面に使用可能。

 

東山「カリグラフィー燦」
4色セット1320円(税込)
線幅3.0mm芯のカリグラフィー用マーカー。ホワイト、ブラック、シルバー、カッパーと、エメラルド、サファイア、アメジスト、ルビーの4色セット2種展開です。替え芯付き。紙、レジン、皮革、陶器、ガラス、木などに使用可能。

インクとペンがセットになった“万年筆タイプ”が便利

セーラー万年筆「ハイエース ネオ クリア カリグラフィー」

1870円(税込)
ペン幅は1.0mm、1.5mm、2.0mmの3パターン。使い方や書き方を記載したガイドとインクカートリッジが入っていて、初心者から使いやすいタイプ。公式サイトには、ダウンロードして使えるペン幅別の練習用紙も用意されています。

ここまで、アナログのペンを使ったカリグラフィーを紹介してきましたが、デジタル時代のいまだからこそ、アプリを使って楽しむカリグラフィーもチェックしておきましょう!

気軽にトライできる!iPadアプリで楽しむカリグラフィー

最近はアプリでも気軽にカリグラフィーが楽しめるのだとか。

 

「iPadとタッチペンがあれば、気軽にカリグラフィーが楽しめます。デジタルの最大の魅力は、消したいところだけ簡単に消すことができ、書いたものをコピーして増やしていくこともできる点。私は、プリンターやレーザーカッターなどほかのデジタルツールと組み合わせた制作をしたいときに、iPadで使える創作アプリを活用しています」

 

Mayuさんが愛用しているのは、iPad専用のイラスト制作アプリ「Procreate(プロクリエイト)」(1220円/税込)。Apple Pencilを使って、鉛筆や水彩などのアナログ風のある絵やイラストが書けるツールです。

 

Apple Pencilを使って、ささっとモダンカリグラフィーの文字を書いてみせてくれたMayuさん。「Apple Pencilを使っても強弱をつけたラインが簡単に書けてしまうので、ある程度、カリグラフィーを習得していれば問題なく使いこなせます」

 

書いたものをコピーして柄のように配置するのも簡単。「手書きではなかなかここまでの作業をするのは大変ですよね。便利な機能です」

 

↑トレーシングペーパーに印刷して、花束やお菓子のラッピングペーパーに。

 

「モダンカリグラフィーの魅力は、自分らしい美しい文字を追求できるだけではなく、その文字をいろいろな用途でアレンジして使いこなせることだと思います。友人へのギフトやパーティシーンだけではなく、手帳を彩ったり、お部屋の収納のラベリングに活用したり。ライフスタイルの中で使いたいシーンを見つけて、自分らしく楽しめたらいいですね」

 

カリグラフィーのような美しい文字を楽しめるツールとして、ほかにもガラスペンがあります。Mayuさんはつい最近購入し、今は試用期間中なのだとか。ペーパーレスで手書きを楽しめる電子ノート「クアデルノ」で、モダンカリグラフィーのアレンジを楽しむのもいいですね。

 

紙にインクと専用ペンを使って書くこと、サインペンを使うこと、デジタルコンテンツを使うこと、いろいろな手段を使って、オリジナルのカリグラフィーを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

Mayugraphy Tokyo 代表 / Mayu

2016年、バースデーパーティやプロップスタイリングを中心に活動する中、モダンカリグラフィーに出会い魅了される。以来、自身の手書きデザインを取り入れることで洗練された世界観に手書きの温かみが加わり、見る人を一瞬で惹きつける。2021年、動画コースのオンラインスクール開校。オリジナルWorkbook発売。対面、Zoom、動画の3つのレッスンには、趣味として楽しむ人や、お仕事に活かしたい人まで、国内外のべ300名以上が受講。個人向けのレッスンの他、Webメディアへの作品提供、百貨店や結婚式場でのブランドPRの筆耕サービス、オリジナルアイテムのデザイン開発など企業とのコラボレーションも手掛ける。
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ドイツ発の「ラミー サファリ」が漢字に特化! ペン先をチューニングした話題の限定モデルの書き味は?

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第24回となる今回は?

 

第24話

ラミー
ラミー サファリ ホワイトレッドクリップ万年筆 漢字ニブ
6000円(税別)

1980年に登場した「ラミー サファリ」の漢字筆記に特化した数量限定モデル。新開発のペン先は柔軟性が高く、“トメ”“ハライ”など漢字特有の表現をサポートする。2022年5月の発売後すぐに完売し、8月以降再販予定。

 

デザイン文房具の最高峰が発売40年目にしてリブート

万年筆のペン先はアルファベット圏と漢字圏とで求める性能が異なり、ゆえに日本語を書くなら国産品がいい、と言われています。画数が多くてハネやハライのある漢字はペン先の繊細なコントロールが必要となるため、専用にチューニングされたペン先のほうが向いている、と。

 

それを踏まえて今年5月に限定発売された「ラミーサファリ ホワイトレッドクリップ万年筆 漢字ニブ」を見ると、ペン先(ニブ)は両サイドのカットによって従来品よりも柔らかく、手作業で研磨されたV字状のペンポイントのおかげで、細さ・太さを書き分けられるようになっています。これはまさに漢字に特化した仕様。実際これで漢字が上手く書けるかどうかは別問題なわけですが(拙連載・第22話参照)、間違いなくいままでのサファリ万年筆よりは明らかにふくよかな書き味となり、万年筆らしい豊かなニュアンスが楽しめるようになりました。

 

「サファリ」シリーズと言えば、ドイツ・ラミー社が誇るデザイン文房具の世界最高峰。いわば“殿堂入り”モデルとして、性能をそこまでシビアに問われる地位にはいませんでした。しかし、ペン先ひとつにチューニングを施しただけで、ペン全体が丸ごとリブートされたような進化を遂げたのです。これで本品は現代カジュアル万年筆のトップランナーに仲間入り。しかも外見は発売40年を超えてなおこのクールさですから、これはパワフルな一本の誕生です。

 

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー

【第1話~第22話】https://getnavi.jp/tag/furukawakoh-handwriting/
【第23話】ニードルチップの書き味も超優秀! 最強のSDGsボールペン「ペノン」が果たす意外な役割とは
https://getnavi.jp/stationery/764549/

神秘的な美しさを放つ特別カラー! 「プレジール カラー・オブ・ザ・イヤー」2022年は「オーラ」

プラチナ万年筆は、プレジール万年筆から「プレジール カラー・オブ・ザ・イヤー」5作品目となる「プレジール オーラ」を、7月15日に発売します。

 

同製品のために施された偏光パール塗装は、アルミボディの上に白塗装を施し、パールを重ねることで、見る角度や光の当たり方によって見え隠れする色の表情が楽しめます。

↑#57 シンフォニーブルー

 

神秘的で人を惹きつけるエネルギーを放つ「オーラ」の魅力に焦点を当てた、めくるめく移り変わる表情の特別な一本に仕上がっています。

↑#18 メリーピンク

 

軸色バリエーションは、人を包み込むエネルギーを持つといわれ、安らぎを感じさせる、陽気、楽しい、活発などを意味するピンクのオーラ「#18 メリーピンク」、物事を柔軟な方向に導くといわれ、癒し、成長、順応などを意味するグリーンのオーラ「#47 ヒーリンググリーン」、周りの人と調和を保つエネルギーを持ち、神秘的、直感、調和などを意味するブルーのオーラ「#57 シンフォニーブルー」の全3色。

↑#47 ヒーリンググリーン

 

摩耗に強い特殊合金ポイント付きペン先と、カートリッジインク交換式により、長期間使用可能。1年経ってもインクが乾かない「スリップシール機構」を搭載し、いつでもさらっと書き出すことができます。

 

税込価格は3960円。各色3000本(合計9000本)の限定販売です。

10周年を記念した特別限定モデル! インクの乾燥を防ぐ万年筆「#3776 センチュリー ディケイド」

プラチナ万年筆は、インクの乾燥を防ぐ「#3776 センチュリー」誕生から10周年を記念した特別限定モデル「#3776 センチュリー ディケイド」を、7月1日から数量限定で発売します。税込価格は4万4000円。

 

万年筆「#3776」は1978年発売。#3776という名前は、富士山の標高にちなみ、日本最高峰の万年筆を目指したことに由来します。33年後の2011年には、インクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を搭載した、#3776 センチュリーを開発・発売しています。

 

今回発売される#3776 センチュリー ディケイドは、約2年間インクの乾燥を防ぐスリップシール機構搭載のほか、新設計の14金ペン先に、記念モデル特別デザインを刻印。軸とキャップには、初代#3776の象徴であるギャザード使用を施しています。ベスト型と呼ばれるフラットに近いトップ(天飾)を採用し、10周年記念ロゴを印刷。キャップリングは陰影が特徴的な彫刻仕上げです。

 

世界3776本限定で、尾飾にはシリアルナンバーを彫刻しています。特別付属品として、10周年記念特別調色インク「富士紺」20mlも用意。

【文房具総選挙2022】ボールペンが群雄割拠状態! 付加価値がついた高品質な筆記具16点がノミネート

仕事や勉強、作業の効率をアップさせる高機能をもつ“はかどり文房具”の年間ナンバーワンを投票によって決定する、「文房具総選挙2022」がスタートしました。ここでは、【機能別部門】「書く」部門にノミネートされた筆記具16点を紹介していきます。

 

【ノミネート商品をまずは写真でチェック!】

 

<投票は4/24 23:59まで! 結果は5/24に発表>

 

【「書く」部門】

「サラサ」や「ジェットストリーム」、「ボールサイン」など、人気シリーズの新モデルが多数登場。ノミネート商品が最多の16点という、激戦部門でもあります。

 

No.01

ぺんてる
カルム 単色ボールペン/3色ボールペン/多機能ペン
165円(単色)、440円(3色)、550円(多機能)

ペン先を出し入れするときのノック音を従来製品に比べて66%低減。ノックをするときに手に感じる衝撃も和らげている。従来品の油性ボールペンに多い“ボテ”が出にくいインクを搭載。

 

No.02

ゼブラ
サラサナノ
220円

カラーボールペン「サラサ」の極細タイプ。ペン上部にスプリングを加えた「うるふわクッション」が、ペン先の紙への引っ掛かりを抑え、滑らかな書き味を叶えている。ボール径は0.3㎜。

 

No.03

三菱鉛筆
ジェットストリーム新3色ボールペン
550円

使用頻度の高い黒インクのノック部を軸のサイドではなく後端に設置し、直感的な操作を可能に。黒インクには、通常品に比べインクを70%増量した「長持ちリフィル」を使っている。

 

No.04

パイロット
ジュースアップ3/ジュースアップ4
550円(ジュースアップ3)、660円(ジュースアップ4)

滑らかに細書きできるゲルインクボールペン「ジュースアップ」の多色タイプ。先端部分に金属を使用した低重心設計とラバーグリップで、安定した筆記を実現している。ボール径は0.4㎜だ。

 

No.05

パイロット
瞬筆 二役 顔料インキ
385円

筆跡が1秒で乾く速乾筆ペンの顔料インクモデル。墨汁に近い黒色で、くっきりとした文字が書け、耐水性、耐光性にも優れる。「やわらかめ」と「かため」のペン先を備えたツインタイプだ。

 

No.06

ぺんてる
速乾ぺんてる筆
660円

発売45年を超えるロングセラー筆ペンに、速乾タイプが登場。従来品よりも5倍早く乾く顔料インクを搭載している。まとまりの良いナイロン製の穂先が、本物の筆のような書き味を実現。

 

No.07

パイロット
ドクターグリップ CL プレイバランス
770円

好みの重さと重心バランスにカスタマイズできるシャープペン。重量と素材の異なる2種類の「内グリップ」を組み替えて使う。「フレフレ機構」を搭載し、ペンを振るだけで芯を繰り出せる。

 

No.08

サンスター文具
2色線ペン twiink
198円

ひとつのペン先に、色の異なる2本のペン先チップを搭載した水性ペン。ペン軸を傾ければ単色で、紙に垂直に立てれば2色同時に線を引ける。二度書きやペンを2本持ち歩く手間が省ける。

 

No.09

ゼブラ
ビモア
1100円

筆ペンのようにペン先がしなる美文字練習に最適なボールペンと、練習帳のセット。筆運びのコツがわかるオンライン動画を見ながら練習する。プログラムは1日3分、7日で完了。

 

No.10

ゼブラ
フィラーレ ディレクション
2200円

キャップなしでも乾かない「モイストキープインク」を搭載した、高級感のあるツイスト式サインペン。伝えたいポイントを指し示したときに、指した箇所が目立つよう、先端が金色になっている。

 

No.11

サクラクレパス
ボールサイン iD プラス
385円

3色の黒インクから自分好みの黒を選び、個性を表現できるボールペン。削り出しの金属ペン先が、低重心で安定した書き心地を生んでいる。光沢感のあるシルバークリップが、上質感をプラス。

 

No.12

寺西化学工業
マジックインキ大型 キャップホルダー
440円

油性ペン「マジックインキ大型」のキャップの紛失や落下を防ぐホルダー。シリコン性で、キャップを開けるときに手が滑るのも防ぐ。目立って見つけやすい鮮やかなカラーを採用。

 

No.13

エポックケミカル
KOBARU MARU liner ツインズ
352円

ぷにぷにの感触の丸いペン先を採用した蛍光ペン。ペンの角度を気にせずにラインが引けて、力加減で線幅を変えられる。専用キャップで2本連結されており、持ち替える手間をカット。

 

No.14

セーラー万年筆
万年筆ペン先のつけペンhocoro
1485円(ペン先+ペン軸)、
2420円(ペン先2種+ペン軸1本)

万年筆のペン先を備えたつけペン。インクの種類や色を変えたいときに、洗浄やインクを入れ替える必要がなく、ペン先を軽く水で洗い流すだけ。ペン先を本体に逆向きに差し込んで持ち歩ける。

 

No.15

三菱鉛筆
ユニボール ワン F
330円

「スタビライザー機構」で、低重心で安定した書き味を叶えたゲルインクボールペン。軸に日常で目にする身近な色を採用し、「葉雫」や「霜柱」など情緒を感じる名前が付けられている。

 

No.16

パイロット
ライティブ
2200円

軽量ボディで持ち運びがしやすく、気軽に使えるカジュアルなデザインの万年筆。気密性の高い新仕様のインナーキャップがインクの乾きを防ぎ、スムーズな書き出しを実現している。

 

※価格はすべて税込で表示しています。

トレンドと機能で分類した8部門・100商品!

2013年に始まった「文房具総選挙」は今回で記念すべき10回目。ノミネートされた文房具のラインナップに、その年の世相が見える!? 2021年度のはかどり文房具をフィーチャーした「文房具総選挙2022」は最新の傾向を反映した「トレンド部門」3部門と、機能によって分類した5部門の、合計8部門。部門によってボリュームの差があるものの、およそ10数商品ずつが選出され、合計100もの商品がノミネートされました。

 

【トレンド部門】
在宅・ハイブリッドワークがはかどる文房具&環境整備アイテム 部門

在宅ワーク用ツールは、2021年度も引き続きホットなジャンル。今年は机上だけでなく、仕事環境を整備するインテリア寄りのアイテムまで選出しました。 15商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/716263/

 

【トレンド部門】
キッズの学習がはかどる文房具 部門

子ども向けの学習情報ポータルサイト「学研キッズネット」とコラボした本部門。新しい教育方針を反映し、PCやタブレットと併用できる文房具も登場し始めています。15商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/717396/

 

【トレンド部門】
SDGs文房具 部門

文房具の分野でも、脱プラや森林保全、ペーパーレスなどに貢献できる、SDGsに配慮したアイテムが続々と登場。左利きでも使えるといった多様性にも配慮するなど、企業努力が光るアイテムたちに光を当てました。13商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/717444/

 

【機能部門】
書く 部門

「サラサ」や「ジェットストリーム」、「ボールサイン」など、人気シリーズの新モデルが多数登場。ノミネート商品が最多の16点という、激戦部門でもあります。16商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/717119/

 

【機能部門】
記録する 部門

最新のクリップボードや狭いデスクでも広げやすいノート、メモ帳を中心に選出。ルーズリーフの利便性を高めるアイテムにも注目です。11商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/717178/

 

【機能部門】
収納する 部門

例年はペンケースのノミネートが目立つ部門ですが、今年はドキュメントファイルが豊富に揃いました。小物を一緒に持ち運べる書類ファイルにも注目です。12商品がノミネート。
https://getnavi.jp/stationery/717298/

 

【機能部門】
切る・貼る・綴じる 部門

開梱用カッターや瞬間接着剤など、ホームセンターに並ぶタフな文房具が多数登場。一方で、持ち運びやすいコンパクトな文房具も選出されています。10商品がノミネート。https://getnavi.jp/stationery/717325/

 

【機能部門】
印をつける・捺す 部門

ハンコ関連商品に名品が多数登場し、部門名を「分類する・印をつける」から「印をつける・捺す」に刷新。もちろん、付箋やタグにも良品が揃っています。
https://getnavi.jp/stationery/717346/

 

<投票は4/24 23:59まで! 結果は5/24に発表>

https://forms.gle/8fX4AHXHcWbvg7h66

大人にふさわしいデザインでハイコスパ!「ライティブ」はビギナー万年筆の新本命だ

文房具ライターという仕事柄、「万年筆について語ってほしい」という依頼を受けることがある。特に「初心者におすすめの万年筆を教えて」という要望が多いのだが、その場合これまでは「パイロットの『カクノ』がいいですよ」と答えてきた。

↑コスパの良さで初心者に最適な万年筆「カクノ」(パイロット)

 

なにしろ、1000円+税という低価格ながら3000円級のニブ(ペン先)を搭載し、コスパは言うことなし。軸も握りやすく、字幅もEF(極細)・F(細字)・M(中字)と使いやすいところが揃っている。

 

逆にもう「スターターとしてこれ以外になに使うの?」というレベルの優秀さなので、本当に「カクノ」が発売されて以降、ずっとオススメしてきた次第。

 

そこへ昨年末、同パイロットが新たに、初心者に良さそうな万年筆の新製品を発売してきたのだが……お値段は「カクノ」の倍=2000円+税。果たして、1000円の価格差を払ってまで「カクノじゃない万年筆で始める」価値はあるのか? 今回はそこのあたりを検討してみようと思う。

 

シン・初心者用万年筆!?「ライティブ」登場

そのウワサの新しい万年筆というのが、パイロット「ライティブ」である。正直これまで、万年筆ビギナーの皆さんは1000円の「カクノ」でだいたい満足していたはずだし、ハマッた人はここを起点に5000円オーバー、1万円オーバーの万年筆へとステップアップしていたと思う。

 

そこをあえて「2000円+税って、どうでしょ?」と問いかける意味は、どこにあるのか?

パイロット
ライティブ
F(細字)・M(中字)
各2200円(税込)

 

まずポイントとなるのは、ビジュアルだろう。「カクノ」は鉛筆モチーフの太め六角軸で握りやすさを優先したデザイン。結果、雰囲気はどうしてもチャイルディッシュ寄りになる。

 

対して「ライティブ」は、メーカーリリースで「30~40代をメインターゲットに、ビジネスパーソンが初めて手にするアイテム」と謳っているぐらいで、なるほど、大人が握っていてもまったく違和感のないビジュアルと言える。

↑きちんと“万年筆感”のある書き味で、初心者の「最初の1本」としても間違いのない性能だ

 

樹脂軸ながらメタリック塗装やマット加工のものをラインナップしており、さほどチープには感じない仕上がりだ。それでいて、重量は約12.4gと非常に軽い。見た目もあって「茶碗を陶器だと思って持ち上げたら樹脂製だった」的な、うわっと驚くような軽さを感じてしまう。

 

そもそも万年筆は筆圧を必要としない筆記具なので、単純に軸重量が軽いと手が動かしやすく、書くのがラクなのだ。逆に、金属軸のずっしりした万年筆に慣れている人は、少し違和感と書きづらさを感じるかもしれない。

 

ちなみにニブは「カクノ」と同様、3000円帯の万年筆「コクーン」用のものを搭載。鉄ペンのほどよいカリカリ感はありつつも、充分に万年筆らしい書き味は味わえる。

↑「ライティブ」(左)と「カクノ」(右)のニブ。大人が使うには、カクノの笑顔マークがやはりちょっと邪魔かなー、と思っていた

 

焦点になるのはここでもビジュアルで、「カクノ」ニブに刻印されたスマイリーな顔がカワイイと取るか、子どもっぽ過ぎて恥ずかしいと取るか、ということだろう。

 

↑インクはもちろんカートリッジ・コンバーター両用式。大容量で吸い上げがラクなCON-70コンバーターも搭載可能だ

 

そしてなにより「ライティブ」最大のポイントにして、「カクノ」にないメリットが、本体キャップの性能だ。

 

キャップ内部に新仕様のインナーキャップを採用しているのだが、メーカーリリース曰く「ネジ式キャップとほぼ同等」という気密性なのである。(おそらく、プラチナ万年筆の「スリップシール機構」に似たものではないか?)

↑キャップ内部に見える半透明のものが、新しいインナーキャップ。パッチン嵌合(かんごう)なのに高い気密性がポイントだ

 

なにしろ万年筆ビギナーにもっとも多いトラブルが、筆記せずにしばらく放置したことでインクがドライアップして書けなくなる、というもの。であれば、メンテナンスの頻度を減らしてくれる高気密性構造は、初心者にとって非常にありがたい……というより、もはや必須の機能なのだ。

 

現時点ではまだインクを入れて1か月ほどなので、この新インナーキャップの性能を実感するまでには至っていないが、それでも「カクノより乾きにくいかも……」とは感じている。

 

↑カジュアルかつスタイリッシュな雰囲気。これで税込2200円なら充分に「価値あり」かも

 

これはあくまでも筆者個人の感覚だが、高気密の新インナーキャップだけでも充分に+1000円の価値はあると思う。

 

なにより、「カクノは子どもっぽ過ぎるから、もうちょいスタイリッシュかつコスパの良い万年筆が欲しい」という要望がパイロットに寄せられていたであろうことは想像に難くないし、「ライティブ」はまさにそのものズバリの回答と言えるだろう。

 

 

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ガラスペンの書き方・手入れ、壊れた時の対処法は? インク沼に続く「ガラスペン沼」の世界と初心者向けの使い方のコツ

最近、若い女性を中心に人気が高まっているガラスペン。筆記具としてはもちろん、ガラス工房で職人の手によって一本一本つくられる“芸術品”として、その美しさに魅了される人が増えています。

 

2021年12月に日本初のガラスペンに特化した入門書として『見て、さわって、書いて、描く はじめてのガラスペン』(実務教育出版)を出版した武田健さんに話を聞きました。ガラスペンの魅力や使い方、さらにこのブームをブームで終わらせないための“ガラスペンのこれから”についても伺います。

 

インクブームから波及した、ガラスペンブーム

実は、発祥は日本と言われているガラスペン。武田さんによると、「はっきりとした時期はわかっていませんが、100年ほど前に日本のガラス工芸職人が、作品の一つとして『ガラスペン』をつくったことが始まりのようです」とのこと。ではなぜ、長らく脚光を浴びてこなかったガラスペンに、今になって注目が集まっているのでしょうか? 武田さんはその背景には、「昨今のインクブームが密接に関係しているのではないか」と言います。

 

「私がインクを好きになったのは2010年のこと。ちょうどその時期から黒や赤だけでなく、さまざまな色のインクが各メーカーから販売され始めました。気づけばここ数年でインクは大きなブームになっていて、今ではたくさん集める人も増えてきています。しかし万年筆は、一度インクを入れると使い切るまで取り換えることができません。そのため、たくさんインクを持っていても、なかなか自由に使うことができず、もったいないと感じている人が多くいました。

そこで、ペン先を洗えばすぐに別のインクを使うことができる “つけペン”が注目されるようになったのだと思います。そしてつけペンの中でも、含ませられるインクの量が多く、文字を書くのに適しているのがガラスペンです。ここ2-3年でインクファンの皆さんがこのことに気づき始め、ガラスペンの認知度が上がっていったのではないでしょうか」(武田さん、以下同)

 

↑インクアドバイザー・文具ライターの武田健さん

 

「インクを自由に変えて使えるところはもちろんですが、ガラスペンの魅力はなんといってもその美しさ。ひんやりとした感触や透明感のある見た目は、ガラスならでは、ですよね。並べたときも美しいし、書いているときもとても気分が上がります。

ガラスペンの多くは、日本各地にあるガラス工房で職人が一本一本手づくりしていて、いわばすべてが“限定品”。同じように見えても微妙に形が違ったり、書き味が違ったりするところも、ガラスペンの面白いところです。しかも、上質なものは数万円もする万年筆と比べて、ガラスペンは良いものでも1万円ほどで購入可能。手軽に所有できる芸術品として、これからもっと広がっていくのではないかと考えています」

 

意外と簡単! ガラスペンの使い方

ガラスペンを使ってみたいけど割れてしまいそうで怖い、と不安に思う人も多いはず。そこで武田さんに、ガラスペンの基本的な使い方や、使う時の注意点を教えていただきました。

 

1.ガラスペンを使う前に、まずは準備!

・ガラスペンを置くケース

「必要以上に恐れることはないですが、まずは『ガラスペンは割れ物である』という意識を常に持っておくことが大切です。ガラスペンを使うときには、机の上で転がらないようケースを用意しておきましょう。私は万年筆用のものを使っています」

 

・水と拭くもの

「そのほか、ペン先を洗う水と、ペン先を拭くためのティッシュや柔らかい布も用意してください。水はガラスペンが当たっても割れないようなプラスチックカップに入れておくのがおすすめです」

 

2.準備ができたら、インクをつけて書く

「準備ができたら、いよいよガラスペンを使っていきましょう! まずはペン先の半分くらいまでインクに浸けます。インクをペン先に付けるときは、ペン先がインク瓶の底に当たらないよう注意してください。インクは“毛細管現象”によって上へと引き上げられるため、ぽたぽたと垂れることはありませんが、余分なインクは用意したティッシュなどでそっと拭うといいと思います」

 

「書くときには、ペンを少し寝かせて、力を入れすぎないように注意。インクが自然と下に落ちるよう、くるくると回しながら書くのがコツです。書いていくうちに少しずつインクの濃淡が出てくるのも面白いところ。インクの付け方や紙にもよりますが、一回インクを付けると、だいたいはがき一枚分くらいの文字量を書くことができます。

私はガラスペンとインクの色味を揃えることが多く、その日の気分によって使い分けています。なかにはネイルと色を合わせる人もいるのだとか。色のコーディネートができるのも、ガラスペンの楽しみの一つです」

 

3.使い終わったあとの片付けも慎重に

「ガラスペンを使い終わったら、ペン先をティッシュなどで拭ったあとに水洗いをします。洗ったあとにもう一度拭けば、そのまますぐに別のインクをつけても問題ありません。インクの粘度が高く、ペン先の溝に残ってしまったときには、歯ブラシなどでこするときれいに落とすことができます」

 

↑武田さんが愛用する、上海発のステーショナリーブランド「KACO」の万年筆ケース

 

「ペンを片付けるときには、ペン先保護のためにゴムチューブをつけるのを忘れずに。ゴムチューブはガラスペンを購入したときについていることが多いですが、もしなければ、ホームセンターなどで販売しているので探してみてください。また私は、ガラスペンを収納するケースとして『KACO』の万年筆ケースを使っています。クッションがついているので、持ち運びたい方にもおすすめ。ガラスペン作家の方もよく使用されています」

 

↑自身のオンラインショップ「KEN’S NIGHT」で文具も販売している武田さん。コニーラップというラッピングペーパーでつくられたオリジナルのメモ帳は、表面がつるつるしていて裏写りもしないため、万年筆やガラスペンと相性抜群! 右下の可愛らしいイラストは、武田さんのSNSにもよく登場する似顔絵だそう

 

「私は万年筆を長文用、ガラスペンを短文用として使い分けています。ガラスペンはちょっとしたメモ書きや、新しいインクを買ってきたときの試し書きにぴったりです。中でも私がおすすめしたいガラスペンの使い方は、SNSにアップする文章をガラスペンで書くこと。私自身Twitterなどで、紙に手書きした文章に、使用したガラスペンとインクを添えて撮った写真を投稿しています。スマホで打ち込んだ文字だと皆一緒ですが、手書きの文字は一人一人まったく違って個性が出ますし、思いもより伝わるはずです。

また、インクを使って書くと濃淡が出るからか、癖がある字でも味が出るんです。私も最初は自分の字に自信がなかったのですが、万年筆やガラスペンで文字を書くようになってからは、自分の字も悪くないかもと思えるようになりました。ガラスペンは自己表現のためのツールの一つ。デジタルの時代にあえて“手書き”することの楽しさを、ぜひ皆さんに知ってもらいたいです」

 

↑武田さんのインク見本帳。手持ちのインクがどのような色かすぐわかるように、ガラスペンを使ってつくる人が増えているそう

 

武田さん愛用のガラスペン 5選

日頃からガラスペンを使用し、現在は75本ほど所有しているという武田さん。今回はその中からお気に入りを5本、紹介していただきました。

 

・紙に写る影まで美しい!「HASE硝子工房」のガラスペン

「大好きな作家さんの一人、HASE硝子工房の長谷川さんがつくったガラスペン。くるくるとしたらせん状の模様や落ち着いた色に、どこか和の雰囲気が感じられて、とても素敵ですよね。光が当たったときに紙に写る影もきれいで、使っていると気分が上がります」

 

さくらんぼづくしの愛らしい「八文字屋」×「Kokeshi」のコラボ

「こちらは山形で300年続く老舗書店・文具店『八文字屋』とガラス作家・藤田えみさんのブランド『Kokeshi』がコラボして生まれたガラスペン。山形産さくらんぼの佐藤錦をイメージした赤いトンボ玉や、軸にあしらわれたさくらんぼの刻印、ぽってりとしたフォルムがなんともかわいらしいですよね」

 

ご当地の伝統菓子がモチーフ!「八文字屋」×「GLASS STADIO しなぷす」のコラボ

「こちらも同じく八文字屋と、『GLASS STADIO しなぷす』のガラス作家・並木亮太さんとのコラボガラスペン。山形の老舗和菓子屋『乃し梅本舗 佐藤屋』が創作した伝統的な寒天菓子『空ノムコウ』をイメージしてつくられています。このようなご当地ものをモチーフにしてつくられたガラスペンは、その地域の人なら思わず欲しくなってしまうはず!」

 

繊細な美しさを随所に感じる「Shoko Yamazaki」のガラスペン

「オリジナルのインクなども手掛けているShoko Yamazakiさんがつくったガラスペン。私が持っているような小ぶりサイズのものは、小さな手の方でも使いやすいと思います。軸の中の繊細な網模様は、光を当てるとさらにきれいに見えます。また、軸の上についている小さな玉は、Shokoさんがつくるガラスペンの特徴。可愛らしいアクセントになっています」

 

・絶妙なカラーとフォルムが特徴の「OfunaGlass」のガラスペン

「大人気でなかなか買うことができない、川口剛さんが手がけるOfunaGlassのガラスペンは、絶妙なカラーグラデーションが魅力。私はターコイズが好きなのでこの色を選びましたが、販売されているものは一本一本色やデザインが異なるので、ぜひ好みのものを探してみてください!」

 

ガラスペンを選ぶ時、壊れてしまった時は?

「ガラスペンを購入するときには、まずはお店に行って、試し書きをしてみることをおすすめします。ガラスペンは一本一本書き味や太さが異なっていて、好みも人それぞれ。実際に試しながら、自分好みのものを探してみてください。作家さんによっては工房で直接販売しているところもあるので、そこで話を聞きながら購入するのも一つの方法だと思います。

また、ガラスペンは使っているうちにペン先が欠けてしまうこともありますが、工房に相談すれば、多くの作家さんが修理をしてくれます。私も過去、文字を書いている最中に、ペン先がポキッと欠けてしまったことがあったのですが、すぐに直してもらえました。このように修理しながら長く使えたり、購入後も直に作家さんとつながったりできるのもガラスペンの魅力だと考えています」

 

ブームで終わらせない! たくさんの可能性を秘めたガラスペン

ブームになっている一方で、実は作り手の数がまだまだ少ないというガラスペン。その理由は、「まだ歴史が浅いから」だと武田さんは言います。現在販売されているガラスペンの多くは、「ボロシリケイト」と呼ばれる硬質ガラスでつくられていますが、このガラスを使った工芸品の製法が体系化されたのはごく最近のこと。そのため、ガラスペン作家の“大御所”と呼ばれる人でも、つくり始めたのは2014年頃からだそう。

 

「ガラス作家さんは基本的に、ガラスペンだけを専門にしているわけではなく、アクセサリーやオブジェといったガラス工芸品をメインでつくっていることが多いんです。そのためこれからガラスペンをつくってくれる作家さんがもっと増えていったらいいなと思っていて……。いろいろな工房に足を運びながら、今まさに新しい作家さんを探しているところです」

↑武田さんがHASE硝子工房で購入したペンダント

 

「そしてガラスペンブームを一過性で終わらせないためにできることも考えていきたいと思っています。例えば、ガラス作家さんの“ものづくり”について深く知ることもその一つ。今は作品をSNSにアップしている作家さんも多くいて、直接コンタクトが取れたり、作家さんの思いを知ったりすることもできます。

私は以前、HASE硝子工房に行って作家さんの技術を目の当たりにしたことで、ガラスペンだけではなくペンダントも欲しくなって購入しました。こんなふうに、ガラスペンが好きな人はガラスのアクセサリーを身に付けてみたり、ガラスのペーパーウェイトをペンと一緒に使ったりするのもいいと思うんですよね。好きな作家さんのガラスペンを入口に、どんどん世界が広がっていくと、もっと楽しくなるはずです」

 

手軽に持てる芸術品として、毎日の暮らしを豊かにしてくれるガラスペン。まだまだいろんな可能性を秘めたこのガラスペンの魅力を、見て、触って、使って、体感してみてはいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

インクアドバイザー・文具ライター / 武田 健

3000本以上の万年筆インクを所有し、様々なショップとのコラボインクをプロデュース。オンラインショップ「KEN’S NIGHT」ではオリジナル文具の販売も行っている。著書に「美しい万年筆のインク事典」、「和の色を楽しむ 万年筆のインク事典」(グラフィック社)。21年12月には日本初のガラスペン入門書となる「見て、さわって、書いて、描く はじめてのガラスペン」(実務教育出版)を出版。

 

『見て、さわって、書いて、描く はじめてのガラスペン』(実務教育出版)

 

ジムニーや納豆の色、生姜の香り…「ご当地インク」の魅力を600色保有するマニアが語る!

ここ数年、「インク沼」という言葉をよく耳にするようになりました。万年筆のインクにハマってコレクションすることを指します。

かつて、黒やブルーブラックといったシックな定番色ばかりだった万年筆のインクが、近年はカラフルになっていることで人気が加熱。さらにブランドや店、地域とコラボレーションした限定インクや、インクをミックスして好きな色にカスタマイズできる店が登場するなど、コレクター心をくすぐる商品や仕掛けが次々と生まれ、その人気に拍車をかけています。

 

今回は、そんなインク沼にハマったひとり、FM OZEで文房具をテーマとしたラジオ番組『他故となおみのブンボーグ大作戦!』を担当しているふじいなおみさんに取材。なかでもコレクションがライフワークとなっている“ご当地インク”の魅力を教えていただきました。

 

ご当地インクとは? すでに1000種類以上も存在

万年筆のインクは、手軽に扱える「カートリッジタイプ」が定着しているため、万年筆を日常的に使わない人には、ボトルタイプのインクは縁遠い存在かもしれません。ところが今、そのボトルタイプのインクが続々と発売されているのです。さまざまなカラーのボトルインクを手軽に楽しむために、最近では“ガラスペン”も注目されるなど、万年筆のインクを取り巻く話題は尽きません。

 

元々文房具マニアだったふじいさんも、店でカラフルな万年筆用のインクを見かけて一気にのめりこんでいったと言います。とくに沼にハマったのが、「ご当地インク」というジャンル。

↑文房具プレゼンターとして活動するふじいなおみさん

 

「“ご当地インク”とは俗称で、コレと言った定義があるわけではありません。広義では各地の文具店やメーカーが製造・販売する“お店限定インク”を意味しますし、狭義としては“その土地の色を表現したインク”と解釈できると感じています。2006年、北海道にある大丸藤井セントラルさんがセーラー万年筆とともに、店舗オリジナルインクを製造・販売したことがご当地インクの起源と言われていますが、2007年に兵庫県にあるナガサワ文具センターさんで『Kobe INK物語』を売り出したことが、ブレイクのきっかけとなりました。インクの色味が個性豊かでどれも可愛いのはもちろんですが、瓶も可愛くてコレクター心をくすぐるんです。現在では、1000種類以上のご当地インクがあると言われています」(ふじいなおみさん)

↑北海道の四季からイメージした植物などをモチーフにした「セントラルオリジナルインクシリーズ」。「これがご当地インクの元祖と言われています。『四季』というシリーズで、2020年に復刻されました。この3つに加えてラベンダーがあるのですが人気で入手できず……」とふじいさん

 

↑種類も豊富な「Kobe INK物語」

 

自宅には、600種類以上のインクを保管しているふじいさん。今回は特別に“インク沼”入門編におすすめのインクを紹介していただきましょう。

 

迷ったら“地元のインク”から探してみよう

まず、どのようにお気に入りのインクを探したらいいでしょうか?

 

「直感で選んでもらってもいいですが、インクと一言に言ってもたくさんの種類があるので、個人的なおすすめは“地元のインク”から始めることです。私は北海道出身なので、『函館トワイライトブルー(北海道・石田文具)』はもう、たまらない色ですね。函館山から見た夕暮れの空をイメージしたインクなのですが、インクを使うたび思い出が蘇り、懐かしく感じられます」

↑北海道の石田文具が展開するオリジナルインク。左から「函館トワイライトブルー」「函館山」「函館がごめ」

 

↑「函館トワイライトブルー」をオーナメントニブというペン先を装着したつけペンで書いてみると……青に加えて“夕焼けの赤”もうっすらと。液体として見える色味、書きたての色味、インクが乾いてからの色味と、同じインクでも表情が変わってきます

 

「また、最近では“香り付き”のインクも出ているんです。群馬県にある文具店・三田三昭堂さんと『からっぽペン』を作っている文具メーカー・呉竹さんがコラボレーションした『墨インク 珈琲』は、高級感ある切子ガラスの瓶に入ったインクなのですが、ちゃんとコーヒーの色と香りがするんです。また、長崎県にある文具店・石丸文行堂には、岩下食品とコラボレーションした『岩下の新生姜』の香りと色が楽しめるインクもありますよ」

↑墨インクには「墨インク 珈琲」の他にも、龍脳、伽羅、檜など6種類が展開されています

 

↑「岩下の新生姜万年筆インク」。長崎にある石丸文行堂からの提案で実現したインク。製造は文具女子からの熱い信頼を集める“トノリム”ことTono & Limsが担当

 

「岩下の新生姜万年筆インク」は、通販でも購入が可能。オンラインストアでは万年筆とセットになったスターターセットも販売されているので、ここから始める! というのも楽しいかもしれません。

 

「他にも、『どうしてこれを?』と思うような面白いインクも多数あります。例えば、北海道北斗市公式のキャラクター“ずーしーほっきー”の尻尾部分をイメージして作られた『ほっきーるーじゅ』(北海道・石田文具)、COLOR TRAVELERシリーズの中でも攻めたカラーの『讃岐うどんだしゴールド』(広島・多山文具)」。また北関東を中心に展開している趣味の専門店JOYFUL2が手がけた群馬県『上州焼きまんじゅうブラウン』と茨城県の『納豆ブラウン』は、色比べをするのも楽しいカラーです」

↑北海道の石田文具が展開するオリジナルインク。左から「函館八幡坂ブルー」「渋墨」「ほっきーるーじゅ」

 

↑同じく北海道の石田文具が展開するオリジナルインク。左から「金森赤レンガ」「遺愛学院」「函館カレー」

 

↑「讃岐うどんだしゴールド」は、広島県の多山文具が手がけるCOLOR TRAVELERシリーズのひとつで、他にも「牡蠣(オイスター)シルバー」「広島ソウルフードブラウン」など、名称も個性的なカラーがたくさん

 

↑左が群馬県「上州焼きまんじゅうブラウン」、右が茨城県の「納豆ブラウン」。他にも群馬・茨城・栃木にまつわるカラーが展開されています

 

「王道ながら攻めているインクもあって、紙の上で旅する万年筆をコンセプトに作られた『京阪電車ステーションカラー万年筆用インク』(京都・文具店TAG)や、スズキのジムニーや日産のスカイラインGT-Rなど車体カラーをイメージした車好きにはたまらない『名車インクコレクションシリーズ』(神奈川・湘南garage)、『セントラルオリジナルインクシリーズ』(北海道・大丸藤井セントラル)は、北海道に由来する植物や生物をイメージしたインクも人気のご当地インクです」

↑京都の文具店TAGと京阪電車が共同開発したインクは「七条駅(うすふじ)」、「清水五条(写真左・せいじ)」「祇園四条(写真右・うこん)」「三条(うすあけ)」の4駅が販売されました

 

↑「名車インクコレクションシリーズ」は、スズキと日産がそれぞれ監修も行なった本格アイテム。オンラインショップ湘南garageで購入可能

 

通販で購入できるもの、直接店舗に行かないと買えないもの、電話で取り寄せできるもの、イベント出展で購入できるものなど入手方法はさまざま。SNSのハッシュタグ「#ご当地インク」「#インク沼」などでインク仲間と情報交換を行うのも楽しいと教えてくれました。

 

インクの可能性は無限大。楽しみ方もさまざま!

たくさんのインクを紹介していただきましたが、ふじいさんは集めたインクをどのように保管・管理しているのでしょうか? 集めた後の楽しみ方について教えていただきました。

 

「コレクションして飾っておくのもいいですが、せっかくなら“書いて”楽しみたいですよね。ガラスペンがあれば、ボトルインクに直接ペン先を入れて紙に書くことができますし、万年筆もコンバーターを装着すれば、好きな色のインクを使うことができます」

※色が混ざってしまうこともあるので、使う前にはペン先&コンバーターをしっかり水洗いしましょう。

↑取材時にもたくさんのペンを持参してくれたふじいさん。書き味やインクとの相性なども考慮していると、インク沼から万年筆沼、さらに紙沼にもハマってしまい、沼の広がりは止めど無し

 

「実は、インクには消費期限(開封から2〜3年が目安)があるんです。光による変色もあるので、なるべく箱に入れて暗所で保管するのがいいでしょう。でも、正直この期限内に使いきれない! ということもあるので、お迎えしたら(手に入れたら)まず、カード型の『インク帳』に書き溜めておくことを習慣にしています。私は、1枚目に書き味、色味、購入した日など自分で作ったフォーマットに記入し、2枚目は『ヌルリフィル』(特殊加工したユポ紙)という最高の書き心地を味わえる特殊な紙に記入、3枚目としてインクにどんな色が配合されているのかチェックできるクロマトグラフィーにまとめています」

↑ふじいさんのインク帳。眺めているだけでも個性豊かなご当地インクの楽しさを味わえます

 

「また最近では、『インク採集キット』という蝶をモチーフにしたキットも販売されています。水の入ったビーカーの上に蝶を吊るし、羽の下にインクを垂らしてしばらく浸しておくと、羽全体にきれいな模様が浮かび上がってくる“インク蝶”を作るキット。小さなお子さんでも簡単にできるので、自由研究やおうち時間のお供としても楽しく使ってもらえると思います。同じ青でも、インク蝶を使うことでインクに含まれる色の分析ができるので、化学の勉強にもなりますよ」

↑これまでふじいさんが集めてきたインク蝶たち。本物の蝶のように鮮やかです

 

↑インク蝶を『岩下の新生姜万年筆インク』で作ってみると、ピンクだけでなくうっすら黄色の色味も浮かび上がってきました。インクを垂らし、水につけてから10分ほどでインク蝶は完成

 

さらにふじいさん、この度とうとう、オリジナルインクを作ってしまったのだそう! 一体どんなインクを作ったのでしょうか?

 

「今回、トークライブに合わせて『なんでもない日の小さな思い出』という名前のインクを、セーラー万年筆さんとのコラボで制作させてもらいました。ボトルについているイラストも、このインクで万年筆画家のサトウヒロシさんに描いてもらったもの。2020年末くらいからこの企画が始まり、セピア色のインクが完成しました」

↑2021年10月16日に行われたトークライブ『ご当地インクでSHOW!』に合わせて完成したオリジナルインク「なんでもない日の小さな思い出」

 

こうしてインクを集めていくうちに、ふじいさんの暮らしも華やかに楽しくなってきたそう。インク好きの仲間との交流を通じて新しいインクを知ったり、「あの子は名古屋出身だから、名古屋のインクでお手紙を書いてみよう」とインクが縁を深めてくれたり、ふじいさんを日々刺激してくれていると話します。

↑耳元にはインクボトルインクのイヤリングが。「ご当地インクの正装で来ました」とのこと。ありがとうございます!

 

↑この日履いてきてくれたスカートまで手作り! インク柄の布からオーダーし、自作したのだとか

 

手書きの機会は減っていますが、だからこそインクを通じて書く楽しさ、知識を深め広げていく楽しさ、日本の魅力を再発見する楽しさを感じられるはず。まずは、ご当地インク沼に浸かる所から始めてみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

ラジオパーソナリティ、文房具プレゼンター/ふじいなおみさん

北海道札幌市生まれ。FM OZEで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。他故壁氏さんとユニット「たこなお文具堂」として、文房具の楽しさを伝える活動を開始。万年筆インク(中でもご当地インク)コレクターであり、2015年生まれの娘とともに学童文具の観察を行う。

 

 

取材・文/つるたちかこ 撮影/我妻慶一

 

 

【菅未里の自腹買い文房具】コワモテなのに内面はペンへの優しさに溢れたペンケース

イベントやメディアへの出演、新作文房具のプロモーションなどに引っ張りだこの文具ソムリエール・菅未里さん。仕事柄、文房具を試す機会は多く、手元には山のような文房具が……。そんな菅さんが、自腹を切ってまで手に入れた、いま本当に気に入っている文房具とは?

 

大切なコレクションを傷から徹底防御するペンケース

文房具店の伊東屋には、「ロメオ」というオリジナルブランドがあります。ボールペンが有名な高級ブランドなのですが、ペンケースもラインナップしていることをご存知でしょうか? 今回、私が個人的にお勧めしたいのはこのペンケースです。

ロメオ
クロコ型押し コレクションペンケース(6本用)
1万5000円(税別)

 

牛革にクロコの型押しを施したペンケースです。いかにも大人っぽく、高級感あふれるデザインですが、実はこの内側に、おすすめしたい特徴があるのです。

 

起毛加工がペンを傷つけない

↑内側には起毛加工が施されているため、ペンが傷つきません

 

内側が起毛になっているのがわかりますか? 収納したペンに傷をつけない作りになっているのです。このケースにふさわしいペンに、傷などつけたくないですよね。

 

ペンが傷つく原因は、おもに2つ。落としたりぶつけたりすることと、ペンケース内でベン同士がぶつかることです。前者は気を付ければいいのですが、後者は、ペンケースによっては避けられません。

 

しかし、このロメオのペンケースなら大丈夫。上記のとおり、ケースの内側がやわらかい起毛になっていることに加え、ペンを個別にベルトで固定するので、互いにぶつかることもありません。

 

しかもこのベルト、横から引っ張ると締め付けることができます。つまり、太さが異なるペンを一緒に収納することが可能だということです。

↑このベルトを引っ張ると、ペンを締めつけることができます。太さが異なるペンも収納できます

 

さらには、上下にはフラップが付いています。これも、ペンがファスナーとぶつかって傷がつかないようにするためでしょう。なんと厳重な守りなのでしょうか。

↑上下に同じ素材のフラップがつき、ペンのキャップ部分と、尻軸をカバーしてくれます

 

ペン好きな方への贈り物にも

傷から手厚くペンを守るこのペンケースは、大切なペンを安全に持ち運びたい方にお勧めです。12本入りのケースもあるのですが、私は持ち運びが現実的な6本ケースのほうをお勧めしておきます。

 

高級感があるだけではなく、ペンをしっかりと守る実用性もあります。持ち運びもしやすいですし、価格も税込1万6500円と、中に入れるペンのことを考えると高すぎるわけでもない。

 

大切なペンを収納するのはもちろん、ペン好きの方への贈り物にしても喜ばれるのではないでしょうか?

↑ケースを開くと大切なペンを一覧でき、自慢のコレクションを持ち歩く際にもぴったりです

 

 

「菅未里の自腹買い文房具」バックナンバー
https://getnavi.jp/author/misato-kan/

狙った所にピタリ! ペン先がカーブしたミドリ「MD万年筆」は入門者に優しく愛好家にも新鮮な書き味

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第7回となる今回は?

 

第7話

ミドリ(デザインフィル)
MD万年筆
2750円(税込)

「書く」ことにこだわった文房具シリーズ、「MDペーパープロダクト」の万年筆。ペン先は使い勝手の良い中字で、「MD PAPER」のロゴが刻印されている。鉛筆のように軽く、首軸に施されたグリップは指が滑るのを防ぐ。

 

高い完成度を持ち、万年筆初心者でも扱いやすい

無垢でシンプルで風合いが良く、それでいてクオリティも押し並べて高水準。しかもリーズナブルな価格で安定した人気を誇る「MDペーパープロダクト」シリーズに、初の万年筆が登場した。

 

クリーム色の胴軸にシルバーのキャップと、見た目がまず合格点。価格のわりに安っぽさがなく雑貨的なかわいさがある。そして何より特筆すべきは、先端が九官鳥のくちばしのように丸くカーブしたペン先だ。握って上から見たときに、ペン先が外側に反り返った万年筆ならたまに見かけるが、それが内側に湾曲しているのは珍しい。

 

外側に反ったペン先は、毛筆のようなトメ・ハネ・ハライを擬似的に再現するためのものだが、こちらはまさにその逆が狙いで、ペン先を寝かせても立てても一定の線が引けるようになっている。これは、「万年筆初心者でも扱いやすいように」という配慮なのだが、それに加えて、個人的には精密作業に使う先曲がりピンセットのような「狙ったところにピタリとペン先を落とせる」感覚がとても快適だった。これは万年筆上級者でも一度は試す価値あり。

 

いまや安価な万年筆シーンは、質・量ともに大変充実し、本格万年筆への入門編にとどまらない独立したジャンルになっている。そのなかでもこのMD万年筆は「安価な万年筆入門」にうってつけ。すでに高い完成度を持ち、しかも本格万年筆ですら持たない確固たる個性を備えているからだ。

 

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー

【第1話~第5話】https://getnavi.jp/tag/furukawakoh-handwriting/
【第6話】サクラクラフトラボ「005 ゲルインキボールペン」
https://getnavi.jp/stationery/575709/

知る人ぞ知る200円の傑作! パイロット「Vペン」は“無骨な書き味”が気持ちまで文字に反映する

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す放送作家の古川耕氏による、「手書き」をテーマとした連載がスタートした。デジタル時代の今だからこそ、見直される手書きツール。いったいどんな文房具の数々が披露されるだろうか。第3回となる今回は?

 

第3話

パイロット
Vペン
200円(税別)

万年筆の書き味とサインペンの手軽さを両立した、使い捨てタイプの筆記具。ペン先は細字と中字の2種類から選べ、インクはブラック、レッド、ブルーを揃える。水性染料インクを採用している。

 

心の声を書き記すのに合う”無骨さ”

見た目はいかにも廉価版の万年筆。しかしメーカーサイトには「サインペン」と分類されており、でもキャップを取ってみるとスチール製のニブがあり、書けば無愛想ながら万年筆らしいしなりがわずかにある。どっちなんだ。最近の安い万年筆にある優等生らしさは微塵もない、カリカリとつっけんどんな書き味である。

 

パイロットの「Vペン」を知ったのは、フラッシュアニメ「秘密結社 鷹の爪」の作者FROGMAN氏が“台詞を書くのにこのペンを愛用している”と本で紹介しているのを読んだときだ。あの小気味良い会話はこのペンから生まれているのかと、文房具店に行くたびに気にするようにしていたら、大抵のペンコーナーの脇にひっそりと置かれていることに気が付いた。実は固定ファンの多い、玄人受けするペンだったのである。

 

台詞、歌詞、ラジオのCM台本など、〝声〟になる言葉はいまも手で書く、というクリエイターが実は少なくない。フィジカルな表現に息を吹き込むために、よりフィジカルな道具を選ぶというのは何やら意味がありそうだ。キーボードや予測変換機能は、ときに頼りない心の声を先回りして太字に書き換えてしまう。けれど身体で鳴らす言葉はもっと未整理で、キーボードの隙間によくぽろぽろと落ちている。それを拾い上げ、紙面に並べようとするとき、“洗練”とは言いがたいこの無骨なペンは、妙に合っている気がするのだ。

 

【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】バックナンバー

【第1話】久米宏氏の美学を見た! 扱いにくくも書くのが楽しい、懐かしの“赤青鉛筆”
【第2話】“細筆”感覚の軽快なタッチが心地良い! ジェットストリーム誕生の伏線となった三菱鉛筆「ユニボール5」

 

 

文房具を知り尽くしたプロが選んだ「LAMY(ラミー)」の傑作ペンカタログ

万年筆ブームに沸く日本で、新作や限定モデルが登場するたびに話題になるなど人気を博しているのが、ドイツの筆記具メーカー「LAMY(ラミー)」。創業は1930年ですが、1966年から“装飾ではなく機能を重視したモダンデザイン様式”であるバウハウスの理念を取り入れ、以降50年以上経った現在まで変わることなく、美しいデザインのペンを数々生み出しています。

 

文房具の専門誌『趣味の文具箱』(枻出版)の編集長を務める清水茂樹さんに、ラミーが創り出した傑作の数々を紹介いただくとともに、美しさを感じるポイントや使い心地、ひいてはこの“デジタル時代における手書きの楽しみ”について、語っていただきました。

 

ラミーの根底にあるのは「バウハウス」の精神

↑バウハウスらしさが凝縮されている「LAMY aion(ラミー アイオン)」。潔いほど簡素なつくり

 

ドイツ・ハイデルベルクで誕生したラミーが、モダンデザイン様式であるバウハウスデザインを取り入れたのは1966年のこと。「LAMY 2000(ラミー 2000)」が登場した、今から50年以上前にさかのぼります。

 

「ラミー 2000は、『西暦2000年になっても古びない』というコンセプトで発表されたデザインの万年筆です。ここからラミーの新しい歴史は始まり、ラミー 2000はその名の通り、2000年を超えて20年経った今でも、変わらず愛され続けています。この美しさが50年以上も前に考えられていたことには、驚きを感じるばかりです。

 

シリーズによってデザイナーが変わったり、外部デザイナーが参加したりするのですが、著名な外部デザイナーであっても完全に委託してしまうのではなく、ラミーと外部デザイナーで共同開発しているそうです。ですから、すべての製品に間違いないラミーの理念を感じられ、筆記具の中でもラミーの人気は群を抜いていて、性別や年齢問わずに愛されています」(『趣味の文具箱』編集長・清水茂樹さん、以下同)

 

ラミーが愛される3つのポイントとは?

自身でもラミーの筆記具を数多く所有している清水さんに、ラミーの魅力を知る上で欠かせないポイントを、3つ挙げていただきました。

 

1. 考え尽くされた機能性

ラミーの製品は、すべてにおいて“装飾せず機能に徹している”そう。単にシンプルにしたりあるべきものをなくしたりするのではなく、取り出す・キャップを開ける・書く・キャップを閉める・しまう、という一連の流れがよりスムーズに行えるよう考え抜かれています。

 

「一番の魅力は、書くまでのアクセスがとても良いということ。まるで指先からインクが流れ出てくるかのように、書きたいと思ったら瞬時に書けるので、ひらめきを文字にするまでの時差がありません。雨の日や電車の中、いつでもさっと取り出して書くことができ、その身体との一体感がとても心地いいのです」

 

2. 4つの要素から突き詰められたデザイン

機能重視のデザインは、材料・色・形・テクスチャーの4つの視点から考え抜かれています。デコラティブなデザインはこれまでにひとつもなく、半世紀を過ぎてもその考えが守られ続けている、そのブランディングにも心を動かされます。

 

「万年筆のなかには、キャップ上部にロゴマークが入っていて、胸ポケットに挿してもそれが見えるようにデザインされているものも多いのですが、ラミーは、そのロゴさえも目立ちません。頑固なまでに機能重視で、あくまでも書くための目的に従って作られています。しかも、それでいてラミーらしい個性を感じられるところが、デザインの優れた点です。装飾をしないということは、言わばスッピンで勝負しているのと同じですよね。それでも、美しさと輝きを強く放っていることに魅力を感じます」

 

3. ラミーらしい個性

機能をより重視してデザインされているラミーのペン。ミサイルを思わせるなめらかなボディラインのものや、見た目にはさほどわからないのにグリップだけ素材が変えられているもの、それぞれのクリップのデザインにも、デザイナーの意志を感じます。

 

「雑誌にペンのシルエットだけを並べて掲載したことがあります。ラミーのシルエットは一番簡素なのですが、見てすぐに、どのモデルであるかわかりました。シンプルな中にもそれだけではない、ラミーならではの美しさと格好の良さがしっかり反映されています。触れてみると、重さや素材の感触など、細部にわたってこだわりを持って作られていることがよくわかりますよ」

 

“手書き”は暮らしを楽しむためのエッセンス

美しい文房具を手にしたい気持ちはあっても、デジタル機器が中心となりつつある現代の暮らしのなかで、どのように“手書き”を取り入れていくかに悩む人は多いのではないでしょうか? 続いて、手書きすることのメリットや楽しさを語っていただきました。

 

・アナログ感を楽しめる

ここ数年、デジタル機器の使用時間が伸びていく一方で、フィルムカメラやレコード、ラジカセといったアナログなものにも注目が集まっています。

 

「最近、レコードの売り上げがCDを抜いたという話題がありました。それだけCDが売れていないということでもありますが、レコードを愛している方の多さをあらためて知ったニュースでもありましたよね。我々の世代だとリバイバルになりますが、20-30代にはレコードやフィルムカメラが新しいものとして受け入れられています。手書きはアナログの最たるもの。紙やペンを扱うときの所作を楽しむことが、デジタルな道具に囲まれた日常に彩りを与えるかもしれません」

 

・保存に適している

仕事での議事録やメモはもちろん、プライベートの買い物リストやTODOリストなどをデジタルで管理している方も多いでしょう。それにはそれで便利さがありますが、手書きのよいところは、実は保存に適している点なのです。

 

「データが消えてしまったり、インターネット上のデータにアクセスできなかったりと、便利な一方でデジタルツールでの管理にはデメリットも伴います。手書きのものは、いったん書いてしまえばずっと保存しておける確実さと、アクセスの良さがあります。またラミーのような、取り出してすぐに書けるペンなら、いつでもどこでもさっと書いて見返すことができますから、“手書き=スローライフ”ではなく、日常をスムーズにするツールでもあるのです」

 

・豊かな表現ができる

効率の良さを追究する場面では、デジタル機器を使用することが多くなりますが、それだけでは「誰が書いたのかわからない文字ばかりが並ぶ日常になる」と、清水さんは話します。

 

「文字を書くことは、表現のひとつでもありますよね。その人なりの表情がある手書き文字からは、汲み取れるものが言葉以上にあります。人に伝えるときだけでなく、胸のうちにあることを書き殴ることは、精神的なバランスを取ったりストレスを解消したりすることにもつながります。
個人的には、PCのキーボードで入力している最中にも新しいメールがどんどん届く環境より、メモとペンを持って静かに考えた方が集中できるので、集中したいときこそ手書きを選択しています」

 

ラミーの魅力、そしてラミーなどペンを使って手書きする楽しさをたっぷり語っていただいたところで、次のページでは、清水さんが愛用する数々のラミーコレクションから、おすすめのモデルを紹介していただきます。

 

ラミービギナーにおすすめの万年筆

数多くのシリーズが登場しているラミーの中でも、ビギナーに向いている万年筆について、清水さんのおすすめを教えていただきました。フォルムや色の好みなどから最初の一本を決めてもかまいませんが、気をつけなくてはならないのが、“万年筆は一本一本の書き味が違うこと”。

 

「まったく同じ万年筆でも、ペン先の書き心地はわずかにそれぞれ違います。できれば店頭で試し書きをし、自分の筆圧や持ち方に合った万年筆を選んでください。また、試し書きをしに行くときは、普段使っているノートや、これから書きたいノートを用意していくといいですよ。店頭にあるものと紙質が違うだけでも、インクの乗りやペンの滑りが違うのです」

 

1. ドイツの小学生も使う基本の万年筆


LAMY safari(ラミー サファリ) / LAMY AL-star(ラミー アルスター)
4000円+税 / 5000円+税
※写真はラミー サファリ

 

1980年に登場して以来、最も多くの本数が生産されているというサファリシリーズ。ドイツの小学生が愛用するだけあって、筆圧をかけなくても美しい文字を書きやすく、安価で購入しやすいモデルです。

 

「限定カラーがあるのも、人気の理由のひとつです。写真左のミントグリーンは2019年の限定色で、同時に同じくパステル調のピンクとブルーが発売されました。重厚感がある万年筆とは違い、シャープペンやボールペンのように普段使いができます。デザインや機能がほぼ同じであるアルスターは、子ども向けに開発されたサファリの兄弟モデル。アルミ製でやや重みがあり、わずかに大きくて大人の手に馴染みやすく作られています」

 

2. 長く使ってペン先を育てていく万年筆


LAMY 2000(ラミー 2000)
3万円+税

 

50年以上前に作られたラミー 2000は、とてもシンプル。ボディにある継ぎ目は触ってもまったくわからないシームレスなデザインで、まるで一体型のように見えます。

 

「ペン先は14金製で、スチール製のサファリやアルスターとは書き心地がひと味違います。14金のペン先は、自分の書き癖や書く角度、筆圧に合わせて馴染んでいきますので、使えば使うほど書きやすくなっていきます。14金のペン先は劣化しにくく長く使い続けられるので、サファリやアルスターを使ってみて、万年筆の楽しみ方がわかってきたら2000を使ってみるとよいでしょう」

↑こちらはラミー 2000のペンシル。ほかにローラーボールペン、ボールペン、4色ボールペンなども展開

 

万年筆のほかにも傑作がいろいろ

最後に、万年筆以外のラミー製品についてご紹介いただきました。デザインのコンセプトは変わりませんが、使う人のことを考えた機能が随所に見られます。

 

1. クリップのデザインが秀逸


LAMY dialog 2(ラミー ダイアログ2)ローラーボール
2万8000円+税

 

このキャップレスの水性ボールペンは、キャップをしなくてもインク漏れやペン先による汚れがないように開発されたデザイン。

↑「ボディをひねるとペン先が出てくる仕組みですが、ペン先が出るとクリップがボディの中に収まるようにできています。つまり、ペン先が出ているときは胸ポケットに挿すことができません。このとき、ボディ中央にある2つの突起が揃うので、視覚的にも指先でも“書ける状態になっている”と確認することができます」

 

↑「筆記を終えてペン先をしまうと、クリップが現れます。ペン先で洋服を汚してしまわないよう、持つ人のことを考えて作られていることに感動する一本です。とにかくフォルムが美しい」

 

2. どんな持ち方をしても書きやすい


LAMY scribble(ラミー スクリブル)ボールペン・ペンシル
各6000円+税

 

持ってみると、そのマットな素材がきゅっと指に馴染むのが実感できる、丸みのあるボディ。それぞれクリップが着脱でき、どのような握り方をしても持ちやすく感じられます。

 

「“スクリブル”とは、走り書きや落書きを意味する言葉で、その名の通り、とにかくペン先を滑らせやすい感覚があります。ペンシルはノック式とドロップ式があるのですが、ドロップ式のボディにはグリップのような凹みがあり、指先を置きやすいデザインになっています」

↑こちらは清水さんが“毎日酷使している”という3.15mm芯を使うペンシル。硬度4Bの芯は紙面を滑るように書くことができ、メモやラフスケッチなどにも便利なのだとか。ただし、全身ブラックのこのモデルは残念ながらすでに廃盤となっています

 

3. ノックすると一瞬でペン先が出て全身が伸びる


LAMY pico(ラミー ピコ)ボールペン
各7000円+税

 

限定カラーが出るたびに買いたくなってしまうサイズ感のピコシリーズ。

 

「ミニペンのジャンルだと思われてしまいがちなのですが、手の大きい男性も十分に使えます。閉じているときは93mmしかないのですが、伸縮性がありワンノックすると124mmになります。ポケットに入れておいて、ちょっとメモしたいときや思いついたときにシュポッと出せ、即書きにとても向いているペンです」

 

4. 極細の携帯用ペン


LAMYラミー スピリット(ボールペン・シャープペン)
※販売終了

 

こちらは、すでに生産が終了したペンシル(他にボールペンもあり)。金属製のユニークな極細の形をしています。

 

「直径は6mmに満たないくらいの細さですが、実際に書くときはその細さを感じさせない製品です。手帳に沿わせて携帯するのに便利で、ペンケースに入れても場所を取りません。1枚の鉄板を巧妙に丸めて作っているため、全身フルメタルな容姿をしています。この重量感が、細軸らしからぬよい書き心地を生んでいるのです。廃盤となったラミーのペンの中で、もっとも復活してほしいモデルです」

 

ラミーや文房具のことをもっと知るための“教科書”


『ラミー パーフェクトブック』1600円+税(枻出版)

 


『趣味の文具箱』1600円+税(枻出版)

清水さんが編集長を務める月刊誌『趣味の文具箱』。2020年10月号は万年筆のインクを特集しています。万年筆を買ったらインクにもこだわりたい! という人には必見の情報を凝縮。
また、ムック『ラミー パーフェクトブック』では、歴代のラミー製品について詳しく解説されているだけでなく、工場の様子や本国・ドイツの小学生が使っている筆記具など、現地で取材したレポートも掲載されています。

 

お気に入りの文房具は、日々のモチベーションを高めてくれる大事なツール。デジタル時代のいまこそ、“指先から生まれるひらめき”は筆記具で残していきたいものですね。縁遠い存在だと思っていた万年筆も、ラミーなら普段着のように暮らしに取り入れられそうです。

 

【プロフィール】

「趣味の文具箱」編集長 / 清水茂樹

株式会社枻出版社で、文房具に関するムックや書籍を担当。2004年に「趣味の文具箱」創刊し、世界中の文具メーカーの取材を精力的に続け、最新の文具情報を発信。筆記具や文房具の魅力と、手で書くことの楽しさを伝えている。2009年からISOT「日本文具大賞」審査委員を務める。

趣味文CLUB http://shumibun.jp/

 

【菅未里の自腹買い文房具】ぺんてる「トラディオ・プラマン」はヘタ字のコンプレックスを払拭する買い溜めペン

イベントやメディアへの出演、新作文房具のプロモーションなどに引っ張りだこの文具ソムリエール・菅未里さん。仕事柄、文房具を試す機会は多く、手元には山のような文房具が……。そんな菅さんが、自腹を切ってまで手に入れた、いま本当に気に入っている文房具とは?

 

万年筆ような“味”のある字をボールペンの手軽さで書けるペン

私は、字があまり上手ではありません。ところが、請求書などを送るために宛名書きをする機会がとても多いのです。そんな私にとって、手放せないペンがあります。

 

それが、ぺんてるの「トラディオ・プラマン」です。

ぺんてる
トラディオ・プラマン
500円(税別)

 

この、万が一生産停止になったときのために私が買いだめしているこのペンは、字を綺麗にしてくれる機能(?)を持つ、優れたペンなのです。

 

とめ・はらいが綺麗に出る

「プラマン」とは、「プラスチック万年筆」の略です。その名の通り、プラスチックで作られた万年筆のようなペンで、ペン先は万年筆に似ています。

 

そのペン先が、字を綺麗に見せてくれるのです。

↑ほどよくしなるペン先

 

プラスチック製であるペン先はわずかにしなるので、「とめ」「はらい」が綺麗に出ます。すると、それだけで字が一段きれいに見えます。「とめ・はらい」は、どうやら美しい字の重要な要素のようですね。

 

また、プラスチックの芯を、やはりプラスチックのパーツで左右から挟み込んでいるペン先は左右非対称で、筆記の方向によってしなり具合が変わるので、字には味が出るでしょう。

↑ペン先は、チップをパーツで挟み込んでいる(左)。そのパーツは左右非対称で、長いパーツを上にするとしなりは弱く、短い方を上にするとしなりが強く出る。(右)

 

↑機密性を高めたキャップ。キャップ内にインナーキャップもついている

 

ボールペン感覚で書ける

万年筆や筆も、字を綺麗に見せてくれるのですが、多くの人が普段使っているボールペンとは使い勝手が大いに違います。特に筆圧の違いは大きいですね。

 

しかしその点、プラマンはボールペンとまったく同じ筆圧で書けますから、違和感もありません。

 

しかも、安い。1本500円(税別)です。字が綺麗に見える上に書き味も楽しめるペンがこの価格なのは、破格でしょう。

 

↑筆者は茶封筒の宛名書きで愛用。茶封筒の適度な筆記抵抗とペン先のしなりの相性が良い

 

ペン先のしなり具合は茶封筒と相性が良いように感じますから、宛名書きには特におすすめです。あちこちでお勧めしているこのペンですが、やはり素晴らしいものは素晴らしい。ヘタ字にお悩みの方、ぜひ試してみてください。

 

 

「菅未里の自腹買い文房具」バックナンバー
https://getnavi.jp/author/misato-kan/

 

万年筆のインクを筆ペン化! インクを充填しマイカラーのペンを作れる呉竹「からっぽペン」

墨や墨汁といった書道用品や水墨画のほか、最近ではドット芯カラーマーカー「ZIG クリーンカラードット」など、“書く”アイテムを長年開発・製造してきた呉竹から、新作が登場。お気に入りのカラーインクを自身で充填し、自分だけのペンを作れるという、「からっぽペン」です。

 

「からっぽペン」とは、文字通り中身の入っていない空っぽのペン。気に入ったインクや、瓶単位で手に入れたものの余ってしまったインクなど、手持ちの万年筆インクを自身で充填し、パーツを組み立て、オリジナルカラーのペンを作れるというものです。

 

2019年12月に開催された「文具女子博2019」で限定販売ののち、2020年3月に0.4mm芯の「ほそ芯」が正式発売、さらに今回、筆ペンタイプの「ほそふで芯」がラインナップに追加されました。

 

呉竹
からっぽペン/ほそふで芯
230円(税別)

 

同 5本セット
920円(税別)

 

ほそふで芯は、硬筆・極細の筆ペンタイプなので、筆圧の強弱で線の太さをほどよくコントロール。サインペンのような書き心地で、トメ・ハネ・ハライを表現できます。文字書きはもちろん、イラストやレタリングにも活躍しそう。

 

先行して「ほそ芯」(0.4mm・税別200円)が発売。水性カラーペンと同様の書き心地です。

 

からっぽペンの作り方を簡単に解説しましょう。

↑キットには、本体軸・綿芯・尾栓を同梱。綿芯をインクに浸し、インクを8割程度吸い上げさせます。綿芯を本体軸に入れ、尾栓をセットしたら、キャップを上部に向けた状態でゆっくりと押し込めば、完成。

 

万年筆のインクは、万年筆や目下注目されているガラスペンなど、使い道が限られているのがネック。そのインクをメモ書きや手帳の書き込みなど、もっと身近なシーンで活用できるのが「からっぽペン」のメリットでしょう。さらに、持っているインクをペンとして、誰かにプレゼントする“おすそ分け”にも便利そうです。

※メーカーによる品質保証は、呉竹製の「ink-cafe」を充填した場合に限ります

 

恐るべし「インク沼」! 透明軸万年筆で楽しみたい自分色インクの世界

【きだてたく文房具レビュー】調合で自分好みの色を作るインクと、色を外から楽しむ透明軸万年筆

昨年夏にパイロットの万年筆「カクノ」の透明軸が登場して以来、文房具ファン全体に「透明軸万年筆、いいじゃん」という声がグッと広がっている。

 

透明軸は、中に入っているインクの色が楽しめるということで、もともと古くからの万年筆ユーザーに一定の人気はあった。そこへ、カクノから万年筆を覚えた新しい人たちが「万年筆って書き味がいいよね」と加わり、そこからさらに「インクもいろいろ遊ぶと面白いよね」というステップに進んだのだろう。

 

文具好きの間ではおなじみの“インク沼にはまった”、というやつだ。

 

そこで今回は、透明軸と一緒にインク沼でちゃぷちゃぷ楽しく遊ぶのに向いたツールを、紹介したい。

↑プラチナ万年筆「ミクサブルインク ミニ」20ml 全9色 各1080円

 

2011年にプラチナ万年筆から発売された「ミクサブルインク」は、9色のラインナップからさらに自分で色を混ぜてオリジナル色が作れるというインクだ。

 

ただ、このミクサブルは大きめの60ml瓶入りということもあり、「ちょっと遊んでみたい」ぐらいの感覚では量を持て余す、という意見もあったらしい。そこで新たに発売されたのが、20mlの小瓶サイズ「ミクサブルインク ミニ」だ。

↑ミクサブルインク ミニとミクサブルインク。元のミクサブルインクは60mlで1296円とお得サイズだが、量が多すぎとの意見も

 

万年筆のインクは、例えば普通のブルーインクも「青」という単一の色素だけで作られているわけではない。複雑にいくつもの色素を重ねることで、あの発色をしている。つまり、単純にブルーとイエローのインクを混ぜてグリーンを作ろうと思っても、実際には予想外に濁った変な色になってしまうことがありえるのだ。

↑ペーパークロマトグラフィによる色素の分離。同じ緑系のインクでも、普通のインク(左)は赤などが混ざっている。対してミクサブル(右)はシンプルに青と黄だけのシンプル構造

 

対してミクサブルインクは、1色が可能な限り少ない色素で構成されているため、混色したときに比較的イメージした通りの色になってくれる、という仕組み。

 

とはいえあまり何色も混ぜると、やはり濁ったドブ色とか、単なる黒になってしまうので注意。メーカー推奨でも、最初は2色から混ぜてみましょう、ということになっている。

↑混色するときは、スポイトで何メモリ、と量りながら混ぜていくこと

 

ポイントは、最初から「こんな感じの色にしたい」というイメージを作っておくこと。ただ漠然と混ぜるのではなく、「エルメスのあのオレンジ色」「鹿島アントラーズのあの赤」「阪急電車のあの茶紫色」のように、自分の推し色を目標に据えておくとやりやすいはず。

 

別売りのインク調合キットには、スポイトや空ボトル、うすめ液が入っているので、インクと一緒に買っておくと作業がスムーズ。特にうすめ液は「ちょっと色が濃すぎるなー」という時に少し調整ができるので、あると便利だ。

 

このスポイトで1色につき1メモリずつ取って小皿(100均の紙皿でOK)で混ぜると、1:1の混色インクが出来上がり。

↑別売りのインク調合キットは1296円。インクを薄めるときは水ではなく、防腐作用のある専用の薄め液を使いたい

 

このとき、スポイトは使う度に毎回水で洗浄すること(最重要)。紙コップに水を入れておいて、こまめに中まですすがないと、残ったインクのせいで妙な混色ができてしまう。

 

あとは、使った色と比率を“レシピ”として記録しておくのも重要。レシピさえあればいつでも色が再現できるので、面倒くさがらずにきちんとメモしておくと良い。

 

できた混色インク、イメージと違う……といって、流してしまうのはちょっと気が早い。これが実際に紙に書いてみるとまったく印象が違ったり、さらには乾くとまた全然別の色に見えたりすることも、ままあるのだ。

 

ということで、混ぜたインクはまず試し書きをしてみよう。

↑コツは、まず薄い色から混ぜていくこと。濃い色は一気に入れず、1滴単位で混ぜる方が良い

 

試筆はガラスペンがあると便利なのだが、そんな洒落たモノを使わなくても、爪楊枝や割り箸で充分に代用になる。これで思ったような描線になったら、オリジナルインクの完成だ。レシピ通りの比率で量産しよう。

 

さて、インクができたら、やるべきことがふたつある。インクを保存する、と、万年筆に入れる、だ。

 

保存に関しては、調合キットの空ボトルや100均のミニボトルでも構わないが、ミクサブルインク ミニの空インク瓶も発売されている。気分的にはこちらの方が“インク作った感”が強いので、余裕があればぜひ。

↑プラチナ万年筆「プレピー クリスタル」432円+「コンバーター 銀」756円。コンバーターは金色(540円)もある。金・銀とも機能は同じ

 

万年筆に関しては、せっかく作ったインクだもの。この稿の最初で述べた通り、透明軸の万年筆に入れて使いたい。

 

いまはカクノを始め、1000円前後の低価格帯万年筆でも透明軸が出揃っているが、中でもコスパという点で最強なのは、ミクサブルインクと同じくプラチナ万年筆の透明軸「プレピー クリスタル」だ。なんと432円で充分に万年筆の書き味が楽しめるローコストっぷり。オリジナルインクを入れるコンバーター(インク吸入タンク)を足しても、1000円前後で済むのは素晴らしい。現時点では、世界で最も安く揃う透明軸万年筆なのだ。

 

さらにプレピーは、キャップをしたままなら1年放置してもインクが干上がらないスリップシール機構を搭載しているのも、ありがたい。

 

オリジナルインク作りにハマると、だいたい次々と新色を作っては万年筆に入れて並べてみたくなるもの。そういう意味でも、高コスパな透明プレピーは使いやすいだろう。

↑阪急電車の車体色を再現したオリジナルインクを、プレピーに入れて試し書き。レシピはフレイムレッド3:シルキーパープル1:アースブラウン1.2。電車好きはぜひお試しあれ

 

ぶっちゃけた話、ミクサブルインクもミニボトルとはいえ全色+調合キットを揃えて遊ぶとなると、金額的には1万円を超えてしまう。あまり“安価に楽しむ”というレベルではないかもしれない。とはいえ、インク沼にハマって次々と新しいインクを買ってしまうぐらいなら、自分の理想の色を混ぜて作ってしまう方が手早いし、安く済む可能性もある。

 

なにより、色を混ぜて遊ぶというプリミティブな楽しさは、ホビーとしてかなり魅力的なのだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

「ガールズ&パンツァー 最終章」からオリジナル万年筆が登場! アニメファンも納得するそのディーテルとは?

 

ガールズ&パンツァーとは、2012年に始まり、現在まで続く人気アニメーション。茶道や花道などとならび大和撫子の嗜みとして、戦車に乗り込み試合を行う「戦車道」が、学校授業でも取り入れられている架空世界での物語。架空とはいえ、舞台が茨城県東茨城郡大洗町に設定され、街並みの描写や人々の生活にもリアリティがあふれた作品となっています。戦車の細部や登場キャラクターのかわいらしさなどと相まり、多くのアニメファンの心を鷲掴みにしているタイトルなのです。

 

そんなガールズ&パンツァーの「最終章」、つまり完結編とも言える最新作の第1話が、12月9日に全国の映画館で封切られました。スクリーン内を所狭しと動き回り、戦車道に青春の毎日を捧げる女子高生たちの生活を垣間見ると、自身の甘酸っぱくも心地よい高校生活を思い出す諸兄も多いかも知れません。

 

アニメファンも納得!? 「戦車道」へのこだわりが溢れる万年筆

今回、同作の世界観を詰め込んだ「大洗女子学園謹呈オリジナル万年筆」が登場しました。本万年筆は、本作の中で高校生活を戦車道に捧げた女子高生たちが、大洗女子学園から貰う記念品をイメージして作られたもの。

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「学校から贈られる万年筆」のため、高校の必修科目でもある戦車道に関わるあしらいが随所にちりばめられています。そのため、大洗女子において、戦車道の隊長車として採用されているⅣ号戦車の意匠をふんだんに取り入れたデザインになっているのが特徴。なかでも万年筆の軸色がⅣ号戦車の装甲色をイメージしており、校章が刻印されたペン先は14Kで高級感溢れる仕様となっています。また、ペン先の形状は“細字”を採用しており、美しくきめ細やかな文字を書くことが可能です。

20171225_Y02↑ペン先は書き味を追求した14kを採用。大洗女子の校章も刻印します。もちろん一本一本にシリアルナンバーも刻印

 

 

20171225_Y03↑天冠部には起動輪をイメージした印刷が施されます

 

プラチナ万年筆協力のもと、万年筆ファンも納得の1本に

また天冠部は、履帯の起動輪を模した印刷があしらわれ、リング部分にも履帯痕をデザインするなど、ガルパンファンにはうれしいこだわりが満載となっています。数量を限定した製作につき、個体別にシリアルナンバーも刻印。気になる製造メーカーは、万年筆メーカーの老舗・プラチナ万年筆によるもので、アニメグッズと一括りにできない、クオリティの高い1本です。ガルパンファンやアニメファン以外の方にもぜひ使ってもらいたい万年筆といえるでしょう。

 

20171225_Y04↑軸部には履帯と車底部をイメージした意匠を印刷

 

この「ガールズ&パンツァー オリジナル万年筆」は、2018年1月末までに予約を申し込めば、まだ3月末の受け取りに間に合うとのこと。価格は税込2万5000円で、下記で予約を受付中です。

 

https://item.rakuten.co.jp/gakkensf/h23001/
「ガールズ&パンツァー 最終章」オリジナル万年筆(大洗女子学園)
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■商品概要
「オリジナル万年筆」(大洗女子学園)
●体裁:キャップ装着時 140mm×直径13mm
●価格2万3148円(税別)

(C)GIRLS und PANZER Finale Projekt