イギリスの列車の顔はなぜ黄色い? 知られざるイギリスの鉄道事情と日本との違い

日本から1万キロ近く西に位置し、ヨーロッパ本土から離れた島国、イギリス。世界初の公共鉄道であるストックトン・アンド・ダーリングトン鉄道が1825年に開業した「鉄道発祥の地」として広く知られている。そんなイギリスの現在の鉄道は果たしてどのようなものなのか。本記事では、日本の「常識」や「当たり前」から外れた意外なイギリス鉄道事情を紹介していく。

20180221_y-koba7 (1)↑日本の車両メーカーもイギリスの市場に参入している。写真は次世代都市間高速列車として導入が決まった日立レール・ヨーロッパが製造するClass 800。日本で設計されたことに敬意を表し「あずま」という愛称がつけられた。

 

1.似て非なるイギリスと日本の「鉄道民営化」

日本の鉄道は主にJRと私鉄の民営会社が運営しており、イギリスでも複数の民営会社が「National Rail (ナショナル・レール)」という総称の元で列車を運行している。JRは1987年に国鉄から分割民営化されて発足したが、イギリスも同様に1994年頃にイギリス国鉄(British Rail、ブリティッシュ・レール)が分割民営化された。

 

日本ではJRが車両、線路、駅を保有し乗務員や駅員を雇う「上下一体」の民営化がされた一方、イギリスでは「上下分離」方式が採用された。簡潔に説明すると、線路や駅などの鉄道インフラは国有機関である「Network Rail (ネットワーク・レール)」が保有し、列車の運行は鉄道運行会社が行う。

20180221_y-koba7 (1)↑イギリスの上下分離方式と日本の上下一体方式の簡単な図

 

しかし鉄道運行会社も日本のJRや私鉄のような半永続的なものではなく、イギリスの運輸省が定期的に列車の運行権の入札を行う。更に車両は鉄道運行会社が所有しているわけではなく、別の鉄道保有会社からリースして運行する形となっている。

 

鉄道運行会社も民営会社とはいえイギリス運輸省からの干渉が多く、利益が見込める路線を運行する場合はその一部を運輸省に収める義務がある。一方、地方の赤字路線を多く運行する場合は運輸省からの助成金が授与される。イギリスと日本の鉄道が同じく「民営化」されたとしてもそこには大きな違いがある。

20180221_y-koba7 (2)↑イギリスの列車運行には日本の企業も参入している。オランダ国鉄の子会社「アベリオ」と結託し、JR東日本と三井物産がロンドンとイングランド中部の路線で列車を運行する「ウェスト・ミッドランズ・トレインズ」を運営する。写真は同社所属のClass 350

 

2.現地人も把握困難なイギリスの複雑怪奇な運賃制度

日本では運賃が距離別制度となっており、JRも私鉄も基本的には何円払えば何キロ先の駅まで乗車が可能、という形式だ。しかしイギリスは運賃制度が異なり、駅間同士の運賃がそれぞれ設定されている。

 

ナショナル・レールの駅が2500駅近くあることから、その切符の総数は単純計算で300万種類を超える。傾向として移動距離が長くなるに連れて切符の値段も高くなるが、同距離間の駅の運賃を比べてみるとかなりの差が見られることも少なくない。これは路線の需要が価格設定に反映されているため、使用率の高い路線ほど高く、閑散路線ほど安い傾向にあるためだ。

20180221_y-koba7 (3)↑ナショナル・レールの切符は独特なオレンジと黄緑色の配色ですぐに判別できる。左下の矢印のマークは「ダブルアロー」と呼ばれ、イギリスでの鉄道のシンボルになっている。

 

これに加えて同じ駅間同士の切符でも運賃が複数設定されている。基本的には1日中使用できる「Anytime(エニータイム)」、ラッシュ時以外の閑散期に使用できる「Off-Peak(オフピーク)」、そして事前購入し乗車列車が指定される「Advance(アドバンス)」運賃が存在する。オフピーク運賃はエニータイムの半額近くだったり、アドバンスに至ってはエニータイムと比べて9割引になったりと、うまく駆使すれば非常にお得に列車に乗れる。

 

さらに時間制限が設けられた格安の「Super Off-Peak(スーパー・オフピーク)」運賃や、列車指定がないアドバンス運賃も存在したり、オフピークの往復と片道切符がほぼ同額だったりとイギリスの運賃制度の理解は困難を極める。

 

ほかにも日本の運賃制度と異なる点として、イギリスの豊富な割引制度が挙げられる。まず5歳以下の子どもは運賃不要で、15歳以下は子ども運賃扱いとなり半額となる。そして大きな割引要素となるのは「Railcard(レールカード)」システム。様々な条件を満たせば、年間£30(約4500円)払うだけでほとんどの運賃が1/3割引となる。

 

例えば16歳から25歳の人を対象としている「16-25 Railcard」(学生である必要はない)や、60歳以上の方を対象とした「Senior Railcard(シニア・レールカード)」、さらに家族連れ向けの「Family & Friends Railcard(ファミリー・アンド・フレンズ・レールカード)」なども存在する(この場合、子ども運賃は6割引となる)。

 

イギリスのエニータイム運賃は日本と同距離のものと比べると割高だが、このように豊富な割引制度を駆使すれば非常にお得に列車に乗ることができる。

 

また、列車遅延時の切符払い戻しの制度でもイギリスと日本に違いが出てくる。JRでは2時間以上の遅延で特急券のみの払い戻しが行われる。一方イギリスでは「Delay Repay(ディレイ・リペイ)」という払い戻し制度があり、これに加盟している列車運行会社を利用した場合、30分の遅延で片道運賃の半額、60分で全額払い戻しとなる(往復券の場合は30分で1/4、60分で半額、120分以上で全額払い戻し)。

20180221_y-koba7 (4)↑イギリスでは列車遅延時の払い戻し制度が充実している。写真は「ハル・トレインズ」の車両。ロンドンとイングランド北東の都市ハルを結ぶ列車運行会社だが、2017年度の定時率は最下位だった

 

この制度では遅延の原因の分別はなく、鉄道会社の責任の範囲外のものでも払い戻しが適用される。なお鉄道運行会社によってはディレイ・リペイに加盟していない会社もあり、15分の遅延から払い戻しが可能なところもある。一見、素晴らしい制度に思えるが、これが運賃値上げを助長している要因の1つであり鉄道利用者の間では賛否両論だ。

 

3.日本では当たり前の「列車種別」がイギリスにはない!?

日本ではJRにも私鉄にも「普通」、「快速」、「特急」や一部鉄道会社でしか見かけない珍しい列車種別が見られるが、イギリスでは列車種別の概念がほとんどない。もちろんすべての駅に止まる各駅停車タイプや主要駅にしか止まらない速達タイプの列車は存在するが、駅の発車案内板を見上げると、行先、停車駅や列車運行会社は表示されるものの種別にあたる情報はない。

20180221_y-koba7 (5)↑ロンドンのターミナル駅のロンドン・ユーストン駅の発車案内板。停車駅や発車時間は表示してあるものの、種別に相当するものは見当たらない

 

駅員の口頭での案内で「fast service(速達タイプ列車)」や「stopping service(各停タイプ列車)」などの表現はたまに使用されるものの、鉄道会社が公式に種別を案内しているのはロンドン地下鉄のメトロポリタン線の「fast(快速に相当)」と「semi-fast(区間快速に相当)」くらいだ。

20180221_y-koba7 (6)↑イギリスで数少ない種別表示があるロンドン地下鉄のメトロポリタン線の発車案内板。「All Stations(オール・ステイションズ)」は各駅停車、「semi-fast(セミ・ファスト)」は区間快速を意味する

 

列車運行会社によっては往年の伝統列車の名前を特定の列車につけることがある。例えばエディンバラ05:40発のロンドン行列車は「フライング・スコッツマン」の愛称がついているが、これも種別ではなく列車運行会社の遊び心と言える。

 

 

4.日本と異なる列車の内装とサービス――クロスシートや一等車の食事提供

日本の都市圏の通勤車両では乗客を最大限に載せるため進行方向の向きとは直角に座るロングシートが基本だ。地方のローカル列車でもロングシート車両が走る路線も少なくない。対してイギリスでは鉄道車両はごく一部を除いて進行方向と同じ向きに座るクロスシートが採用されている。しかし日本のように転換はできず固定なので進行方向によって座席の向きを変更することはできない。運悪く進行方向と逆向きの座席にしか座れなかった場合は我慢するしかない。

20180221_y-koba7 (7)↑着席率を増やすためイギリスの近郊・通勤列車で広く見られる固定式の2+3列クロスシート。長距離列車は普通車が2+2列、一等車が1+2列配置となっている

 

イギリスではラッシュ時の混雑が日本ほどひどくないのと、列車は座席を提供する交通機関という認識が強いため、座席数が確保できるようにクロスシートが採用されている。日本より狭い車幅に3+2列配置の座席を設置することもあり、かなり窮屈だが座席数を最大限に増やした仕様となっている。ナショナル・レールでは最近になってロンドン近郊の通勤車両にロングシートが登場したが、それ以外はすべてクロスシート車両だ。

 

ハード面だけでなく、ソフト面でもイギリスは日本とおおいにに異なる。特にイギリスでは一等席のサービスが充実している。内容は鉄道運行会社によって差はあるが、長距離都市間列車を運行するところだと列車乗車前に駅のファースト・クラス・ラウンジが使用できる。ここでは飲み物や軽食が提供され、一服することができる。乗車後は一等席のアテンダントからウェルカム・ドリンクと食事がなんと無料で提供される。しかし中距離列車や通勤列車の一等席では上記のようなサービスは一切ないので注意が必要だ。

20180221_y-koba7 (8)↑長距離列車が発着する一部主要駅では一等席の乗客が使用できるラウンジが開設されている。お品書きは駅によって異なるが飲み物とスナックが無料で提供される。写真はロンドン・パディントン駅のラウンジ

 

一部列車では食堂車サービスがあり、普通席の乗客でも追加料金を払えば車内で暖かい食事が食べられる。多くの長距離列車ではビュッフェがあり、カートによる車内販売も実施される。2両編成の気動車で運行される地方のローカル列車でも車内販売が行われることがあり、少々割高だが長い間乗っていても食事や飲み物に困ることはない。

20180221_y-koba7 (9)↑長距離列車の一等席では無料で食事が提供される。写真はヴァージン・トレインズの平日の軽食メニュー。ワインやビールなどのアルコール類も飲むことができる

 

ほかに大きく日本と異なるのは指定席。日本では基本的に指定席と自由席が分かれているが、イギリスではそれらが混在している。座席指定をせずに乗車した場合は座ろうとした座席がすでに予約済かどうかを確認するのが吉だ。座席指定料金は無料なので、混雑が予想される列車に乗る場合は事前に予約するのがいいだろう。しかしこのおかげで使用されない座席指定が多いのも事実だ。

20180221_y-koba7 (10)↑旧型車両では座席が予約されているかどうかはいまだに紙の予約札で示される。より新しい車両では座席上のLED表示で行われる

 

5.イギリスの列車の顔はなぜ黄色い? イギリス独特の鉄道車両の仕組みやインフラ

イギリスで頻繁に列車に乗った人はあることに気がつくかもしれない。それはほとんどの列車の顔が黄色いことだ。これは蒸気機関車が廃止され気動車やディーゼル機関車が導入された際に、蒸気機関車より静かなことから保線員と列車の接触事故が多発した。これを防ぐために接近する列車の視認性を向上させるように顔を黄色い警戒色で塗ったのが現代にも受け継がれているためだ。しかし最近になり一定の明るさのヘッドライトを装備した車両は前面の黄色い警戒色が免除されるようにルールが改訂されたため、これから登場するイギリスの新車は顔が黄色くないものも出てくるだろう。

20180221_y-koba7 (11)↑ナショナル・レールの線区で走る車両は基本的に顔が黄色い警戒色で塗られている。イギリスの鉄道車両の独特なチャームポイントでもある

 

列車の動く仕組みに関してもイギリスや日本で大きな相違点がある。例えば電車のモーターを台車の枠に取り付けて車輪を回す「吊り掛け駆動方式」を採用する電車は路面電車など一部の車両にしか見られなくなってしまったが、イギリスでは本線を時速160キロで走行する車両に採用されている。

20180221_y-koba7 (12)↑写真のClass 321は最高時速160キロで走行可能な吊り掛け駆動電車の一例だ

 

ほかにも電車を動かす電気を車輪が乗るレールに平行して設置された第三のレールから集める第三軌条方式というのがあるが、日本では主に低速の地下鉄路線などでしか使用されていない。一方イギリスではロンドン近郊とイングランド南東地方の路線で広く使用されており、最高時速160キロまで対応している。このようにイギリスは昔鉄道先進国だった故、様々な鉄道技術の試行錯誤を行った結果、独特なシステムができあがり、現在でも継承されている。

20180221_y-koba7 (13)↑ロンドン南部近郊とイングランド南東部の路線は多くが第三軌条方式で電化されており、写真のような複々線の幹線も珍しくない

 

日本ではとうの昔に廃止されたものもイギリスではいまだに現役だ。日本の現役車両はみな自動ドアだが、イギリスの一部車両では手動ドアのままの車両が多く残っている。駅に停車したら窓を開け、腕を外に出して外側のハンドルを使ってドアを開ける仕組みとなっており、初めて乗る乗客には難しい操作だ。

20180221_y-koba7 (14)↑写真のマーク3客車はイギリスでいまだに現役の手動ドアを使用する客車の1つ

 

ほかにも、日本ではもう廃止されてしまった腕木式信号機もイギリスでは現役だ。これらは20世紀の後半にイギリスの鉄道が運輸省により冷遇されて設備や車両更新の資金が足りなかった影響で現在でもしぶとく残っている。

20180221_y-koba7 (15)↑現役の腕木式信号機と新型電車が対照的な画を作る。写真はリトルハンプトン駅の出発信号機

 

しかしイギリスの列車に乗っていてまず気づくのはその速度だろう。日本のJRの在来線は基本的に最高時速130キロで、京成電鉄のスカイライナーのみが最高時速160キロで走行するが、イギリスでは在来線の最高速度が時速200キロとなっている。これはイギリスの在来線の線路幅がJRより大きく、安定して高速走行ができるおかげだ。在来線の時速200キロ運転は欧米では珍しくはないが、イギリスの特異的な面はこれの大部分がディーゼル列車で行われること。幹線の電化が他国より遅れたことにより高速ディーゼル列車が多数登場し、世界的に見ても時速200キロで営業運転を行うディーゼル列車が体験できる国はイギリスだけだ。

20180221_y-koba7 (16)↑1976年より最高時速200キロで運転しているディーゼル列車のHST。イギリス国鉄時代のフラッグシップ列車であり、現在は新型車両に置き換えられつつある

 

6.古き良き時代と鉄道旅を現代に伝える、イギリスの保存鉄道

イギリスでは昔から古い車両、特に蒸気機関車の保存活動が盛んだ。日本でも大井川鐵道や真岡鐵道、一部のJR路線で蒸気機関車が走るがイギリスではその規模が違う。ナショナル・レールとは別に廃線を転用した保存鉄道が全国各地に散らばっており、蒸気機関車や旧型客車、さらには旧型気動車やディーゼル機関車も大量に動態保存されている。主に春から秋にかけて営業し、定期的に「gala(ガーラ)」という祭典が開催され、ゲスト機関車を招待したり、運行列車を大幅に増発させたりして乗客を呼び込む。列車だけでなく駅舎や乗務員の制服なども20世紀初頭のものに統一して鉄道文化を保存している場所も多く、訪問すればまるでタイムスリップしたかのようだ。

20180221_y-koba7 (17)↑イギリス全土にある保存鉄道では春から秋にかけて毎日のように保存された車両で列車が運行される。写真はペイントン・アンド・ダートマス蒸気鉄道のSL列車

 

保存鉄道のほかにも頻繁に蒸気機関車が本線を走る臨時列車も運行される。日本では山口線や肥薩線などの地方ローカル線でしか運転されないが、イギリスでは営業列車が頻繁に行き交う大幹線で運転され、大都市のターミナル駅に蒸気機関車が入線する。12両以上の客車を牽引しながら時速120キロで走行する蒸気機関車には圧倒される。

60103 hauled the Scarborough Flyer organised by the Railway Touring Company from Scarborough (0810) to London King's Cross (1521) via Lincoln and Spalding. Seen here at London King's Cross.↑日本に限らずイギリスでも蒸気機関車は一般人の目を引く人気者。ロンドン・キングズ・クロス駅に到着した「フライング・スコッツマン」を一目見ようと人がホームに押し寄せる

 

ヨーロッパ大陸と離れ、独自の進化を遂げていったイギリス。日本の鉄道と比較すると対象的な面が多く、イギリスを訪問した際には鉄道旅でその違いを楽しんでいただきたい。

神奈川東部方面線/おおさか東線/七隈線ーー開業が近づく「鉄道新路線」3選+α

10年、20年という長い期間をかけて進む鉄道の新線計画。気の長い話ながら、工事が終了に近づいた路線もある。今回は開業を数年後に控えた新線づくりの進捗状況と、未来に向けて描かれる代表的な新線プランをチェックしていこう。そこには鉄道新線による“夢の未来図”も見えてくる。

【その1】相鉄線とJR線、東急東横線を結ぶ「神奈川東部方面線」

本サイトでも以前に新駅の開業情報をお伝えしたように、首都圏で最も完成に近づいている新線が神奈川東部方面線だ。鉄道・運輸機構が整備主体となり、西谷駅〜羽沢横浜国大駅間の2.7kmと、羽沢横浜国大駅〜日吉駅間の10.0kmの工事が進められている。

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相模鉄道(以下・相鉄と略)は横浜駅〜海老名駅間の本線と、二俣川駅〜湘南台駅間のいずみ野線の計35.9kmの路線を持つ。相鉄は大手私鉄としては珍しく、他社との乗り入れを行っていない。将来に向けて、他社と相互乗り入れを行い、自社の電車が東京の都心まで走ることは、相鉄の長年の悲願でもあった。

 

今回の神奈川東部方面線と名付けられた新路線の建設により、いよいよ相互乗り入れが可能になる。

 

工事はまず西谷駅〜横浜羽沢駅間が先行して行われ、2019年度に完成の予定。途中に羽沢横浜国大駅もつくられる。同駅の先でJRの東海道貨物線とのアクセス線が造られ、JRへの路線との相互乗り入れが可能になる。

 

アクセス線がつながるJR東海道貨物線は、横浜羽沢駅からトンネルで横浜市内を抜け、京急の生麦駅付近で地上に出る。完成後の具体的な乗り入れ案はまだ発表されていないが、東海道貨物線がその先、横須賀線とレールがつながっていることから、横須賀線・湘南新宿ラインへの乗り入れが検討されているようだ。

20180222_y-koba11 (3)↑相鉄本線の西谷駅からのトンネルはすでに完成し、羽沢横浜国大駅の地下ホームにはすでに線路が敷かれている。駅の先でJR線とのアクセス線が設けられる

 

新駅の羽沢横浜国大駅の先の東急東横線の日吉駅までの路線も進められ、2022年度に完成の予定だ。すでに東急東横線に乗り入れ用の20000系も誕生し、相鉄線内を走り始めている。ちなみにJRへの乗り入れ用には既存の相鉄10000系や11000系が使われると見られる。両車両ともJR東日本のE231系やE233系をベースに造られていて、共用しやすいからだ。

20180222_y-koba11 (4)↑相模鉄道の新型20000系。東急東横線への乗り入れ用に造られた車両で、すでに2月11日から相鉄線内を走り始めている

 

当初の予定よりも1〜2年ほど、新線の完成が遅れたものの、新横浜駅や都心へのアクセスが便利になる。横浜市近郊に変革の波がやってきそうだ。

 

【その2】新大阪駅からの直通電車でより便利になる「おおさか東線」

大阪でも新線の工事が着々と進んでいる。大阪市の東側を走るJRおおさか東線だ。このおおさか東線、すでに片町線の放出(はなてん)駅と、関西本線の久宝寺(きゅうほうじ)駅間の9.2kmは2008年に開業している。2018年度中の開業を目指しているのが新大阪駅〜放出駅間11.1kmの北新線区間だ。

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おおさか東線の北新線区間だが、実は大半の区間、すでに線路が敷かれていた。吹田貨物ターミナル駅から百済貨物ターミナル駅の間を日々、貨物列車が往復する城東貨物線という路線がすでにあるのだ。

 

第三セクター方式の大阪外環状鉄道株式会社が、この城東貨物線の施設や用地を整備、さらに駅や新大阪駅へのアクセス線の建設を行った。

20180222_y-koba11 (6)↑放出駅〜久宝寺駅間のおおさか東線の南区間はすでに2008年に開業している。大阪外環状鉄道株式会社が線路や駅などを建設、JR西日本が電車の運行を行う

 

20180222_y-koba11 (7)↑城東貨物線の淀川橋梁。こうした既存の施設が生かされた。写真の撮影時は遊歩道が併設され歩けたが、現在は新線建設のため、歩行者は通ることができなくなっている

 

すでにある貨物用の線路を利用して旅客新線に整備して誕生するおおさか東線。なかなか手堅い新線建設の方法と言えるだろう。このことで大阪市の北東にある各区、東大阪市など沿線に住む人たちは、新大阪駅へのアクセスが非常に便利になる。

 

さらに同線は将来的に、大阪駅の北側にできる北梅田駅(仮称)にも電車が乗り入れる計画がある。不便だった地域が一転、脚光を浴びるというのも新線ならではの恩恵といっていいだろう。

20180222_y-koba11 (8)↑大阪駅の北側を通る梅田貨物線。貨物列車と特急の運行本数が多く、開かずの踏切となることが多い。渋滞を改善するため地下化、北梅田駅の工事が進められている

 

20180222_y-koba11 (9)↑2013年までは大阪駅の北側には広大な梅田貨物駅が広がっていた。この跡地に2023年度を目指して、北梅田駅の開業工事が進められている

 

2023年度に開業が予定される北梅田駅(仮称)はおおさか東線の乗り入れだけでなく、今後、大阪の鉄道網に大きな変革をもたらす可能性がある「なにわ筋線」の北側の起点となる。なにわ筋線は市内を南北に通る「なにわ筋」の地下を通る新線計画。北梅田駅から中の島を通りJR難波駅まで至る出来れば非常に便利な路線だ。

 

この計画にはJR西日本だけでなく、南海電気鉄道(南海)や、阪急電鉄も参画を予定しており、新線への期待は大きい。開業は2031年春とかなり先だが、同線ができ上がったら、大阪の人の流れも大きく変わっていきそうだ。

【その3】博多駅への乗り入れを目指す「福岡市営地下鉄七隈線」

福岡市は地下鉄路線が非常に便利な町だ。福岡空港から博多や天神といった繁華街へも地下鉄1本で行けてしまう。

 

とはいえ、福岡市営地下鉄のなかでも便利な空港線、箱崎線にくらべて、やや不便でもあったのが七隈(ななくま)線。現在の東の起点は天神南駅だが、空港線の天神駅からやや歩かなければならない。

 

そんな不便さを解消しようと現在、工事が進められているのが、天神南駅〜博多駅間の約1.4km区間。当初、2020年度までには延伸の予定だったが、道路の陥没事故が起きてしまい、開通は2022年度に延びる見込みとなったのがちょっと残念だ。

20180222_y-koba11 (10)↑福岡市営地下鉄七隈線の3000系。鉄輪式リニアモーター方式の電車で通常の電車よりもやや小ぶりだ。現在の七隈線の路線は橋本駅〜天神南駅間の12km

 

◆4:その他の新線計画の可能性は――?

新線計画といえば、大規模なリニア新幹線や整備新幹線が注目されがちだが、ここでは、都市で計画され、より現実化しそうなプランに関していくつか触れておこう。

 

■羽田空港アクセス線

現在、羽田空港へのアクセスといえば、東京モノレールと、京浜急行電鉄空港線の2つのルートがある。このルートに加えて、都心や成田空港へのアクセスをよりスムーズにしようという新線が「羽田空港アクセス線」だ。

 

計画された路線は、羽田空港新駅と、空港の北側にある東京貨物ターミナル駅の間の約6kmに新線をまずは敷設。この東京貨物ターミナル駅からJR山手線の田町駅へ、またりんかい線の東京テレポート駅と、大井町駅へのアクセス線を整備する。実は、この路線、非常に現実味があると思われる。

20180222_y-koba11 (11)↑JR田町駅東口から見た新線となるだろう予定の敷地。いまは使っていない東海道貨物線の路線が新線となる予定。2016年12月には草が生い茂り、廃線という趣が強かった

 

20180222_y-koba11 (12)↑上写真と同じポイントから見た2018年2月の状況。草がきれいに刈りとられ、東海道新幹線の線路に併設された元東海道貨物線の線路も見えるように整備された

 

上の2枚の写真はJR田町駅東口から見た状況だ。東海道新幹線に沿って敷かれた線路は、以前の東海道貨物線で、古くは汐留駅(1986年に廃止)〜東京貨物ターミナル駅間の貨物列車の運行に使われていた。1998年までは浜松町駅起点で貨車に自家用車を載せ、クルマの所有者は寝台客車に乗車するカートレインという列車の運行にも使われていた。それ以降、この東海道貨物線は休線扱いになっていた。

 

それから20年あまり、雑草が生え、荒れた状況が続いたが、久しぶりに訪れると、きれいに整備された状況になっていた。工事開始という状況ではまだないようだが、新線整備を進める布石ととらえてもよいのかもしれない。

20180222_y-koba11 (13)↑JR田町駅付近からは東海道新幹線の大井車両基地へ向けて伸びる引込線にそって東海道貨物線が伸びている。写真の手前側に東京貨物ターミナル駅がある

 

20180222_y-koba11 (14)↑りんかい線の東臨運輸区。この運輸区の西側に東京貨物ターミナル駅がある。りんかい線は当初、国鉄が武蔵野線なども含め東京外環状線として計画した路線を元に生まれた

 

今回のルートに含まれる東京臨海高速鉄道りんかい線は、国鉄が東京外環状線として計画した鉄道路線で、JR京葉線や東京貨物ターミナル駅へもアクセスできるように路線プランが立てられた。実はいまも新木場駅の先で京葉線と線路がつながっている。また上の写真の東臨運輸区は東京貨物ターミナル駅に隣接しており、線路をつなげるのも難しくない。

 

あとは東京貨物ターミナル駅と羽田空港新駅と新線、ならびに田町駅と、大井町駅のアクセス線の整備ということがカギになるだろう。2024年に全線開業という情報もある羽田空港アクセス線。より便利な空港アクセス線の開設だけに期待したい。

 

■宇都宮LRT(ライトレール)

宇都宮市のLRT計画が本格化しはじめている。路面電車というと古いイメージがつきまとうが、最近、各地の路面電車で導入されるLRT(ライトレール)形路面電車は低床形が主体。乗り降りしやすく、またスムーズに走る軽量形電車というイメージが強くなっている。

 

宇都宮市が新設する路線は、優先着工区間が14.6kmで、道路上を走る併用軌道区間が76%を占め、ほかが専用軌道区間となる。既存の鉄道路線などの転用をしないで、まったくの新規のLRT路線は国内では初めて。2022年の開業と一般の鉄道に比べて工期は短く、また工賃、車両導入など、LRT導入のハードルは鉄道に比べて低い。宇都宮の例が、どのような結果となるのか注目される。

20180222_y-koba11 (15)↑まずはJR宇都宮駅東口と隣接する芳賀町にある本田技研北門間の14.6kmの路線が優先整備区間とされた。将来は西口や東武宇都宮駅前などにも延伸が計画されている

 

20180222_y-koba11 (16)↑写真の福井鉄道のF1000形FUKURAMU(ふくらむ)や、富山ライトレールの低床形車両がLRTを導入するうえで参考にされた

 

■都営大江戸線の延伸計画

都営大江戸線は現在、都内をめぐる環状区間と都庁前駅〜光が丘駅間の路線がある。この光が丘駅から先の新線プランが立てられいる。路線は、ちょうど西武池袋線と東武東上線の中間にあたる地域を走り、JR武蔵野線の東所沢駅まで至る計画。現在は、まだ都や国が優先的に進めるべき路線として位置づけされた段階だが、練馬区の大泉学園町など、鉄道の最寄り駅まで遠い地区では、延伸促進運動が高まりを見せている。

20180222_y-koba11 (17)↑都営大江戸線の終着駅・光が丘。この先、埼玉県まで至る新線の計画が立てられている

 

ディープで面白い「撮り鉄言葉」の用語集! よく見るアレは通称「はえたたき」

鉄道写真を撮りたいけれど、本格的なファンに混じって撮影となるとどうも敷居が高い……と感じている人はいないだろうか。その1つの大きなハードルとなっているのが愛好者同士で交される「撮り鉄言葉」。とてもディープな世界だが、言葉の意味を知ってみると、「は〜、なるほどね!」と思える言葉や笑えるような言葉もある。知って使えば、茶飲み話、酒の場で盛り上がること確実! そんな「撮り鉄言葉」の世界をご紹介しよう。

 

【まずはクイズ】次の言葉の意味を訳してください「今日は狙いの『カモレ』が『ウヤ』だ」

ある撮り鉄氏が言った「今日は狙い『カモレ』が『ウヤ』だ」という言葉。知らない人が聞けば何だか、ちんぷんかんぷんの言葉が並ぶが、訳せば「今日は狙っている貨物列車が運休だ」ということになる。

20180216_y-koba5 (2)↑狙いの「カモレ」と出会う。EF66形式の基本番台ともなれば、注目度も高い。現在、「貨物ちゃんねる」という専門サイトもあり「ウヤ」がチェックできるようになっている

 

ここからは、代表的な撮り鉄言葉をアイウエオ順に挙げていこう。

 

【ウヤ】運転休止(運休)のこと。もとは国鉄時代の鉄道電報用の略語だった。「この列車は、今日は“ウヤ”かな」というように使う。

 

【カブる(カブり)】目標とする列車を撮る場合、運悪く前や後ろを列車がすれ違い、遮られることがある。裏側をかぶった場合(裏カブり)は、まだ救われるが、車両の前をカブったら、撮影のために待った時間は無駄に。この喪失感は並みでない。

20180216_y-koba5 (3)↑複線や複々線の路線で起こりがちな「カブリ」。写真はかなり危なかったカブリの例。裏カブリに比べて、表をカブられると救いようがない

 

【カマ】機関車の俗称。蒸気機関車が釡に石炭をくべて走ったことから出てきた言葉で、いまでは機関車全部をカマと呼ぶことが多い。

 

【カモレ】この言葉も国鉄時代の鉄道電報用語で「貨物列車」の略語。「今日は“カモレ”狙いだ」と親しみを込めて使われることが多い。

 

三脚を「ゲバ」と呼ぶ理由――学生運動の名残がこんなところに

穏当とはやや言いにくい「撮り鉄言葉」もある。そんな言葉が続くのがカ行の「け」だ。

 

【激パ】撮影地が激しく混んで、パニック状態になることを指す。最近は、一部の人気列車に撮影者が集まりがちで激パとなりやすい。

20180216_y-koba5 (4)↑花見の季節、SLの撮影地は「激パ」エリアとなりやすい。ただ、大概が仕切り役の人が表れ、整然と撮影を楽しむ結果になることが多い

 

【ケツ撃ち】けつおい、バックショットとも言われる。列車の正面を撮る人は多いが、後ろを撮る人は少ない。昨今は寝台列車がほぼ消滅し、後ろが絵になる列車が減ってしまった。

20180216_y-koba5 (5)↑鉄道写真の世界では後ろから撮ることを「ケツ撃ち」と呼ぶ。最近は後ろが絵になる列車も極端に減っている。写真はJR東日本の寝台列車カシオペア

 

【ゲバ】三脚のこと。学生運動でゲバルト棒(ゲバ棒)を振りかざした時代、ちょうどSLが各地から消え鉄道写真のブームが激化、三脚を“武器”にして撮影場所の取り合いをした。そんな時代の名残で三脚をゲバと呼ぶようになったとされる。 事前に三脚を置いておくことを「置きゲバ」とも言い、こうしたマナー違反が撮り鉄が嫌われる1つの要因になっているとも言えるかもしれない。

20180216_y-koba5 (6)↑長年、多くのSLファンを受け入れてきた山口線の沿線。行政の対応もしっかりしていて、各所に「置きゲバ」を防ぐ立て札が立てられている

 

甲種、工臨、国鉄色――撮り鉄が熱くなりがちな「こ」絡みの言葉

非常に熱いファンが多いのが「コ」絡みの「撮り鉄言葉」だ。

 

【甲種(輸送)】正式には「甲種鉄道車両輸送」と言う。新造や改造した車両を工場から発注主までJR貨物の機関車が牽引する特別列車を指す。JRが自社の工場で製造・改造した車両を自前の機関車で運ぶ場合は「配給列車」と呼ぶ。

20180216_y-koba5 (7)↑新造された電車を牽くJR東日本のEF64形電気機関車。JR東日本管内の車両輸送は「甲種輸送」と言わず、「配給列車」と呼ぶ。この配給列車も撮り鉄に超人気の列車だ

 

【工臨】「工事臨時列車」のこと。保守作業用に必要なレールやバラストなどを運ぶ列車で、バラストを輸送する列車を「ホキ工臨」、レールを運ぶ列車を「チキ工臨」と呼ぶ。

 

【国鉄色(国鉄原色)】国鉄時代に生まれた車両の多くがJR民営化後は色変えされ使われた。一部車両が国鉄時代の塗装のまま、また国鉄色、国鉄原色に再塗装されており、それらの車両は人気も高い。

20180216_y-koba5 (8)↑いまや希少となった「国鉄色」の189系M51編成。3月以降の動向が注目されている

 

ファンが萌える「スカ色」「セノハチ」

サ行の言葉には、鉄道の世界では専門的、またファン垂涎の言葉も多い。

 

【車扱貨物】1両単位による輸送方式のこと。かつて主流な輸送方式だったが、積み降しの手間がかかるため、現在はコンテナ輸送が主流となっている。タンク車を使った石油の輸送などが車扱貨物にあたる。

 

【スカ色】東海道線を走った湘南色に対して、横須賀線を走る電車はクリーム色と青色の2色で塗られ「横須賀色」と称された。この横須賀色を略して、スカ色と呼ばれた。

20180216_y-koba5 (9)↑かつては数多く走っていた「スカ色」のJR東日本115系(写真)。いまや、しなの鉄道で復刻された1編成のみとなってしまった

 

【スジ】列車の時刻のこと。元は時刻を表すダイヤグラム(列車運行図表)に書かれた斜めの線を指した。

 

【セノハチ】山陽本線の瀬野駅〜八本松駅間のことを指す。勾配が急なことからいまでも上り貨物列車のみ、後ろに補助機関車(補機)を連結、後押しして列車の運行を助けている。

20180216_y-koba5 (10)↑山陽本線の瀬野駅〜八本松駅間を通称「セノハチ」と呼ぶ。上り貨物列車の後ろには補助機関車が連結される。坂を登る電気機関車の唸り音が鉄道ファンの心をくすぐる

 

「た」は「単機」のた~♪

「た」は撮り鉄が気になるモノや列車の運行形態が揃っている。

 

【タイガーロープ】複線区間で上り下り線の間にある黒と黄色の支柱とロープのこと。保線作業の安全確保のために付けられているが、一部の過激なファンが抜き去り問題視された。

20180216_y-koba5 (11)↑複線区間では保線作業の安全確保のために、上下線を区切る「タイガーロープ」が設けられている。必要欠くべからざるものでもあるのだ

 

【単機】後ろに貨車や客車を付けずに機関車が1両のみで走ること。機関車のみが2両で走るときは、重連単機とも呼ばれる。ディーゼルカーや電車が1両で走ることは「単行」と呼ぶ。単機や単行は、写真として形にしにくく、絵づくりに苦労することが多い。

 

【団臨】団体臨時列車の略称。団体臨時列車では、希少な車両がふだん走らない路線を走ることもあり、注目を浴びやすい。

 

【鉄っちゃんバー】三脚上の雲台に取り付けるプレートで、最低2台のカメラを装着しシャッターが切れることから重宝して使われる。

20180216_y-koba5 (12)↑「鉄っちゃんバー」と使った撮影例。三脚+バーを使えばカメラ、ビデオ機器あわせて3台一緒に撮影可能となる。バーはカメラ用具店で販売される

 

よく見かけるアレは「はえたたき」!?

続いてナ行、ハ行にいってみよう。撮り鉄言葉には、長い言い回しをせずに、一部を略した言葉がよく見受けられる。

 

【ネタガマ】一般的な機関車ではなく、希少な国鉄原色機など、その日に目指す特定の機関車を指すときに使う。例えば「今日のネタガマはEF65の2139号機だね」といった具合だ。

20180216_y-koba5 (13)↑EF65形式直流電気機関車の2139号機。最近のJR貨物の機関車は検査に合わせ、国鉄原色に戻される傾向があり、撮り鉄から「ネタガマ」として珍重されている

 

【廃回】廃車回送のこと。解体に向け工場へ自力で回送する姿には寂しさがつきまとう。

 

【はえたたき】線路脇に立っている電柱のこと。まるで「はえたたき」の形のよう、というのでこう呼ばれる。非電化路線でも、この通信回線用の電柱が立っていることがある。撮影の際には隠れるようなアングルが大切となる。

 

【歯ヌケ】貨物列車は現在、コンテナを載せたコキ車を連ねた列車が多くなっている。コンテナが一部で積まれず、歯抜け状態になった様子を歯ヌケと呼ぶ。機関車のすぐ後ろのコンテナの歯ヌケ状態は絵になりにくい。

20180216_y-koba5 (14)↑連休明け月曜日の東海道本線の様子。貨車にほとんどコンテナが載っていないことがわかる。このような日は貨物列車の撮影は避けた方が賢明だろう

 

【ひがはす】東北本線の東大宮と蓮田間の有名撮影地のことを指す。東鷲宮〜栗橋間の撮影地「わしくり」とともに、寝台特急が走る頃には多くの撮影者が訪れ賑わいを見せた。

 

いまや見る機会がほとんどなくなった「マヤ検」

最後にマ行、ラ行を見ていこう。

 

【前パン】電車や電気機関車の先頭部分のパンタグラフが上がっている状態。事前にその部分に余裕も持って構図を作っておかないと、パンタグラフが切れた状態の写真となりがち。

 

【マヤ検】マヤとは国鉄時代に生まれた軌道検測用の車両で、いまはJR北海道とJR九州で使われている。このマヤを使った検査のことを言う。全国でわずか2両となり、その検査風景に出会うこと自体、希少となっている。

20180216_y-koba5 (15)↑北海道で偶然に出会った「マヤ検」。JR北海道で新型検査車両を導入したこともあり、今後はますます出会うことが難しくなりそうな列車だ

 

【レ】「レ」とは“レレレのおじさん”の「レ」ではない。「レ」は列車の「れ」のこと。「今日は23レが遅れているのかなあ」というように使う。列車番号の後ろに「レ」を付け、客車列車では「1レ」「801レ」というように付けて列車名を呼んだ。運転士と司令室間の連絡で「1」だけだと意味がわからないので「1レ(列車)……」と言って判断した名残と言われる。ちなみに電車は列車番号後ろに「M」、気動車は「D」が付く。これらの列車ではレを後ろに付けない。

 

撮り鉄言葉は、鉄道電報用語があったり、SLが消えていったころの経緯があったりと語源はさまざまだ。今回、取り上げた言葉は、そのごく一部。訳してみると難しい言葉は少ない。代表例を知っていれば、撮り鉄の間で交わされるおよその話は理解できるだろう。恐れず、鉄道写真にチャレンジしていただけたら幸いである。

“撮り鉄”が大井川鐵道で起こした2つのトラブルから、嫌われない「撮影マナー」を考える

鉄道写真の愛好家たちは通称“撮り鉄”と呼ばれている。この言葉自体には本来、マイナスの意味合いはないはずなのだが、ここ数年、さまざまなトラブルが各地で報告されたこともあり、どうも世間から好ましくない存在だという風潮が強まっているようにも見える。実は、筆者も鉄道写真を撮るのが大好きな“撮り鉄”の1人であり、撮影していると、近くを通る人たちから冷たい視線を感じることがある。

 

“撮り鉄”という言葉に、付きまとうマイナスのイメージ。こうしたイメージのままで良いのだろうか? SL列車の運転で知られる、静岡県を走る大井川鐵道で2017年に実際に起こった2つのトラブルを例に、“撮り鉄”のマナーを考えてみた。

 

「場所取り」で同好の人たちや鉄道会社を憤慨させた例

2017年10月15日、大井川鐵道本線は、元西武鉄道のE31形電気機関車が復活、特別列車を牽引するということで、賑わいをみせていた。

20180209_y-koba7 (5)↑元西武鉄道のE31形34号機が2017年10月に復活。この電気機関車が特別な客車列車を牽くとあって鉄道ファンの注目を集めた

 

トラブルが起きたのは、島田市川根町の抜里(ぬくり)踏切。抜里駅に近く、編成写真がきれいに撮影できるスポットとしてよく知られている。

20180209_y-koba7 (6)↑抜里踏切で撮ったSLかわね路号。編成写真が良く撮れるポイントとして知られている

 

この日、多くの鉄道ファンが、少しでも良い写真を撮影しようと、場所を確保すべく早めに訪れていた。そんな道沿いにちょっと異質な“場所取り道具”が置かれていた。だいぶ前から置かれたものらしい。

20180209_y-koba7 (2)↑トラブルがあった抜里踏切。踏切の手前のやや広がっているあたりが撮影の好適地とされる。道幅はクルマ1台が通れるぐらいしかない

 

20180209_y-koba7 (3)↑問題となった“場所取り”。折り畳み式の踏み台と小さめの三脚、さらに黄色いテープを張って場所を確保していた(写真提供:大井川鐵道)

 

20180209_y-koba7 (4)↑踏み台には「場所取りをしています」との張り紙が。無断移動・無断撤去は厳禁ですという言葉とともに、「ルール(順番)を守りましょう」とある(写真提供:大井川鐵道)

 

道の端に置いてあるとはいっても、1番上の写真を見ていただくとわかるように、道は細い。踏切の前後で道をやや広げてあるものの、この場に立ってみると、クルマが通行するたびに道端にいても気をつかう。また運転している側も、立っている人や置いてあるものを引っかけないか、気をつかう。

 

ましてや置きっぱなし。場所取りのためとはいえ、通行の妨げになる。さらに踏み台にあった「場所取りをしています」の張り紙には、「最悪の場合は、ポアされることがありますのでご注意ください」と刺激的な言葉があった。

 

この場所取りのやり方に憤慨した同好の人たちが、大井川鐵道の職員に写真を送付した。その写真が上の2枚だ。この場所の取り方を問題視した大井川鐵道では、列車が走った2日後の10月17日に公式ツイッターで先の鉄道ファンから提供された写真と原稿を掲載した。

 

「抜里駅の踏切近くの路上を不法に占拠する事案がありました。(中略)違法性も高く、ファンの方同士及び沿線住民の方とのトラブルにつながるものと判断し、警察に通報済みです」。

 

この話題はネットのニュースにも取り上げられ、瞬く間に拡散された。

 

「98%の“撮り鉄”は良識ある人たちだと思っています」

想定外と思えるほど、反響を呼んだこのツイッター投稿。多くの人たちから声が寄せられたが、大井川鐵道の問題提起を支持する声が圧倒的に多かった。

 

大井川鐵道広報の山本豊福さんは次のように話す。

 

「ここまで大きな反響があるとは思ってみませんでした。私たちは撮り鉄の方を敵視する気持ちは全くありません。写真を撮られる98%の方は良識ある方だと思います。ごく一部の人が、こうした問題のある行動をする。そうした行為が撮り鉄の方々の全体のイメージを損ねることに結びついているのではないでしょうか。」

 

地元経済のために少しでも良かれと特別列車や、きかんしゃトーマス号などを走らせてきたことが、逆に地元の人たちに迷惑をかけているのはないか。大井川鐵道はそうした思いをいだき、鉄道ファンの一人一人に考えてもらおうと問題提起をしたのだった。

 

問題提起が予期せぬほどの大きな反響を呼んだが、 「私たちは単純にマナーを守ろうよ、ということを言いたいだけなのです」と山本さんは言う。

 

地元に住む人たちや、電車に乗る人に迷惑をかけずに、鉄道撮影を楽しむ。マナーを守ってごく一般的な方法で撮影を行い、また注意を払っていれば、問題は生まれないように思える。

20180209_y-koba7 (7)↑抜里踏切では三脚を立てるときも道の端ぎりぎり構え、また通行するクルマにも注意を払いながらの撮影が肝心になるだろう

 

20180209_y-koba7 (8)↑抜里踏切を越えた大井川河畔には大きな駐車スペースもあり、撮影時に利用できる。すぐ隣にはゲートボール場もある

 

写真撮影のために鉄道敷地内に入れば罪に問われる

大井川鐵道の沿線では、2017年6月17日のきかんしゃトーマス号の運転開始日に3人が無断で敷地内に入り、罪に問われている。この問題、どのような状況だったのか、振り返っておこう。

20180209_y-koba7 (11)_2↑2018年は6月から、きかんしゃトーマス号も運転の予定だ。地元・島田市と川根本町では、警察署も含め少しでも盛り上げたいと万全のサポート体制をとっている

 

罪に問われたのは東京都西東京市の男性会社員(62歳)と、川根本町の無職男性(89歳)、島田市の自営業男性(55歳)の3人である。この3人は大井川鐵道本線の福用駅と田野口駅近くの鉄道敷地内に侵入したところを、巡回中の島田警察署の署員に発見された。

20180209_y-koba7 (9)↑線路内への立ち入りが確認された田野口第3踏切。この踏切から線路内を歩き撮影地に向かったとされる

 

20180209_y-koba7 (10)↑大井川鐵道本線が走る地元の島田警察署。きかんしゃトーマス号などの人気列車が走る時は、署員が沿線の巡回を行っている

 

線路内に入る行為は鉄道営業法37条の罪に問われる。

 

第37条 停車場其ノ他 鉄道敷地内二妄二立ち入リタル者ハ 10円以下ノ科料二処ス

 

明治33(1900)年という古い法律のため、文言は難しく、罰金が低額(現状、10円ということはない)だが、要するに「鉄道敷地内にむやみに入ったら罰金ですよ」ということだ。

 

島田署の署員に鉄道敷地内に入っているところをが発見された先の3人は、その後にどのようなことが待ち受けていたのだろう。

 

まず、当日は、鉄道敷地内でカメラを構えていた人は、すぐにその場所から排除された。住所名前などを聞かれ、後日、島田警察署まで出頭させられた。3人のうち2人は沿線の住民だったが、東京都内に住む人は後日に島田警察署を訪れることになったという。その後、3人は10月20日に静岡地検へ書類送致された。

 

島田警察署の水野俊行地域課長と若林貴彦生活安全課長は次のように話す。

 

「3人の方々、皆さん、素直に鉄道敷地内に入ったことは認めています。やはり鉄道敷地内に入って撮影するというのは危険です。電車を止めてしまうということもありますので。善意のファンたちも楽しみに大井川鐵道に来られますので、足を引っ張り、迷惑をかけないようにしていただきたいですね。」

「地域の方も盛り上げていますので、万が一、けが人などが出るなどの問題が起こって、今後列車を運転しないということになったら、取り返しがつかないことになります。観光面などへの悪影響をもたらしてしまう。撮り鉄の方にはぜひともルールを守って楽しんでもらえればと思います。」

 

ちなみに、鉄道敷地内に入る行為への罪は軽微だが、もしそこで電車を止めてしまったら列車往来危険罪に問われ、逮捕という可能性もある。列車に巻き込まれたら最悪の結果につながる。鉄道敷地内に入ることは、それだけ危険性があることを胆に命じておきたい。

 

嫌われない撮り鉄になるために、やっておきたいこと

筆者は普段からいろいろな撮影スポットを訪れ、ほかの撮り鉄の人たちと交流することもある。その経験を踏まえ、自分が全国を撮影で回る上で大切にしていることをいくつかお伝えしたい。

 

■誰にでも「おはようございます」「こんにちは」の声かけ

まずは撮影地で先に構える人がいたら挨拶を心がけている。するとコミュニケーションが格段に取りやすくなる。

 

付近を散歩する人が近づいたら、やはり挨拶する。都会では無視されることも多いが、地元の人への声かけは、嫌われないための一歩のように思う。地元の人たちから撮影に向いた場所など有効な情報を得られることもある。

20180209_y-koba7 (12)↑通行する人に迷惑になる場所では三脚立てなどの行為は慎みたい。写真は高崎線のある撮影地。川の土手のため、一般の人に迷惑にならず、そのため撮り鉄の聖地になっている

 

■自分が持ち込んだゴミは持ち帰る

せっかく訪れた有名な撮影地がゴミだらけで、げっそりすることがある。もちろん撮り鉄だけでなく、一般の人が捨てる例もあるかと思う。だが、明らかにここは撮り鉄しか行かないだろう、という場所でこうした例が見られることがある。

20180209_y-koba7 (13)↑山梨県内の有名撮影地の例。同撮影スポットは線路がより低い位置にあり、気になっていても、降りてゴミを収集することができない。何年にもわたってこの状態が続く

 

逆に、撮り鉄のなかに素晴らしい行動を行う人がいたことについても伝えておきたい。

 

信州上田の有名撮影地で。彼は自分が持ち込んだゴミはもちろん、すでに落ちていたゴミや吸い殻も持参の袋に入れ始めたのである。持ち帰って適切な場所で捨てると言うのだった。海外でのサッカーの試合で日本人はスタンドのゴミを拾って持ち帰るということで称賛された例がある。撮り鉄のなかには、こうしたマナーを大事にする人もいるのだ。

 

■駐車場所には細心の注意を払う

自身にもあった失敗例は駐車場所だ。それによって地元の人に迷惑をかけ、自分もイヤな思いをした経験がある。

 

ということもあり、最近は都市部では駅からなるべく歩いて目的地へ出向き、地方ならば、時間にゆとりを持って、その場所へ行き、駐車場や、確実に迷惑がかからず不法とならない所に駐車する。駅から歩くことは健康にも良いし、何より停めたクルマに気を使わずに済むので、撮影をより楽しむこともできる。

 

マナーの問題というのは、言われた側は、ついうっとうしいな、と感じたりするもの。筆者も、面と向かって言われれば、“カチン”となってしまうときもある。感情のコントロールはなかなか聖人のようにはいかないものだ。とはいえ、どんなときも冷静になって、自らの行動を振り返ってみる必要がある思う。一人一人のそうした心掛けが、撮り鉄へのマイナスイメージ払拭につながるのではないだろうか。

鉄道界に訪れる、ちょっと悲しい春の別れ――静かに消えゆく「古豪車両」と気になる今後

冒頭の写真は、富士山に向かって走るJR東日本の189系電車。富士急行線内に週末、「ホリデー快速富士山号」として乗り入れていたときの“雄姿”である。だが、もうこの姿を見ることが出来ない。「あずさ色」の189系M50編成が1月25日のラストランを最後に引退してしまったからだ。

 

2017年から2018年にかけて、多くの新車が導入された。その一方で、“古豪たち”が舞台から去っていく。新車が増えるということは、引退する車両の増加にも結びつく。この春、静かに消えていく“古豪”に注目した。

 

1.いまや希少な国鉄形特急電車189系も残りわずか

JR東日本の189系は、高い位置に運転台がある国鉄形特急電車の姿を残す貴重な車両である。前述したように「あずさ色」のM50編成がすでに引退。残る189系は6両×3編成となった。気になる今後だが……。

20180202_y-koba5 (2)↑「あずさ色」と呼ばれた水色塗装の189系M50編成。週末は、ホリデー快速富士山号として富士急行線へ乗り入れることが多かった

 

20180202_y-koba5 (3)↑189系のM51編成は国鉄原色の塗り分け。こちらの編成の存続も危ぶまれている

 

残る189系は国鉄原色塗装のM51編成、グレードアップあずさ色のM52編成、もう1編成はあさま色のN102編成のみとなった。

 

残る3編成の気になる今後だが、JR東日本八王子支社のニュースリリースによると、「ホリデー快速富士山号」にはM51編成が3月11日まで、M52編成が3月16日まで使われる予定。3月25日にM51編成とM52編成による新宿駅〜甲府駅間の団体臨時列車が運行されることが発表されている。

 

残念ながら数少ない189系の活躍の場でもあった「ホリデー快速富士山号」には3月17日以降、E257系が使われることになった。3月25日以降の189系はどうなってしまうだろう。いまのところ発表は無い。1970年代から40年にわたり走り続けてきた強者たちの今後が気になるところだ。

 

2.誕生してから25年で消えるE351系「スーパーあずさ」

JR東日本の車両形式名の多くには頭に「E」の文字が付く。EASTという意味で付けられたこの「E」。最初に付けられた車両がE351系だった。中央本線の優等列車、特急「スーパーあずさ」として活躍してきた車両だ。E351系は1993(平成5)年に登場し、車歴は25年と、それほど長くない。ところが、このE351系も2018年3月のダイヤ改正で消えてしまう。

20180202_y-koba5 (4)↑JR東日本で唯一、制御付き自然振子装置を導入したE351系。カーブでは、やや車体を傾けつつ高速で走り抜ける姿が見られる

 

20180202_y-koba5 (5)↑2017年12月暮れから運用が始まった新型E353系。E351系の置き換え用だけでなく、今後、増備されてE257系にかわり「あずさ」や「かいじ」の運用も行われる

 

筆者は制御付き自然振子装置を取り付けたE351系「スーパーあずさ」の軽やかな走り、カーブで適度に傾斜して走る時の感覚や乗り心地が好きだった。まだ四半世紀しか走っていない車両だが、通常の車両よりも複雑な制御付き自然振子装置を備えるだけに、整備の手間や諸経費が問題となったようだ。廃車と報道されているが、車歴が浅いだけにちょっと惜しいようにも感じる。

 

3.関東ではいよいよ見納めとなるJR東日本の115系

115系は1963(昭和38)年に誕生、寒冷地用、急勾配路線用に2000両近くが造られた。いわば国鉄時代の近郊形直流電車としてはベストセラー的な車両で、多くの路線で活躍してきた。

20180202_y-koba5 (6)↑湘南色と呼ばれるオレンジと緑の塗り分け。高崎地区を走る115系もいよいよ終焉の時を迎えている

 

20180202_y-koba5 (7)↑115系に替わり高崎地区の主力電車となった211系。実はこの車両も登場は古く、国鉄時代の1985(昭和60)年に誕生、活躍は30年にわたる古参の電車だ

 

115系は上越線や信越本線などがある高崎地区でも長く活躍。なんと54年にもわたり輸送を支えてきた。そんな115系もこの3月中旬で定期運行が終了する。3月21日(祝日)に走る団体向け専用列車が最後となる予定だ。

 

関東地方周辺の115系は、今後も新潟地区や、しなの鉄道で走り続けるが、お馴染の湘南色で、半世紀にわたり走り続けてきた車両が消えてしまうことには、一抹の寂しさを覚える。

 

4.独特の形状“スラントノーズ”の特急形気動車が消える

関東地区の車両の話題が続いたが、次は北海道の車両の話題。JR北海道の特急として35年にわたり活躍してきた特急形気動車に、キハ183系という車両がある。この基本番台は運転席が高い場所にあり、ノーズの形状が独特で“スラントノーズ”と呼ばれ親しまれてきた。

20180202_y-koba5 (8)↑道内を走り続けてきたキハ183系基本番台。晩年は札幌と網走を結ぶ特急「オホーツク」として活躍した

 

20180202_y-koba5 (9)↑人気の特急「旭山動物園号」もキハ183系基本番台を使用した車両だった。写真は札幌〜富良野間を走った「フラノラベンダーエクスプレス」として走った際のもの

 

20180202_y-koba5 (10)↑JR北海道キハ183系の後期形。現在は道央と北見・網走を結ぶ特急「大雪」や「オホーツク」として活躍している。同車両も2019年度には引退する予定だ

 

すでに通常塗装のキハ183系基本番台の定期運行が終了。3月25日をもってキハ183系を使った「旭山動物園号」も運転終了となる。残るキハ183系は後期形のみ残るが、こちらは前面が平坦なタイプ。石北本線を走る特急「オホーツク」「大雪」のみでの運用となるが、こちらも2019年度での運用終了がすでにJR北海道から発表されている。

 

このキハ183系基本番台だが、クラウドファンディングによる寄付を募り、貴重な車両を保存しようという運動が行われている。1両は道央の安平町に2019年にできる「道の駅あびらD51ステーション」での保存が決定した。さらにもう1両を「安平町鉄道資料館」に保存しようという運動も高まりをみせている。

 

5.静かに消えていきそうな東急の通勤電車

特急車両のように注目を浴び、惜しまれつつ消えていく車両がある一方で、静かに消えていきそうな車両もある。たとえば東急電鉄の田園都市線を走る2000系と8590系がその一例だ。

20180202_y-koba5 (11)↑前面部分に特徴がある2000系。車体よこに赤いラインが入る。10両×3編成しか造られなかった通勤電車だ

 

20180202_y-koba5 (12)↑8590系も東急電鉄の中では希少車だ。2000系と同じで車両数が少なく10両×2編成のみが可動している

 

東急電鉄の田園都市線の主力車両といえば8500系。1975(昭和50)年に誕生した古参ながら、いまもなお多くが活躍している。この田園都市線に2018年春、2020系という新車両が登場する。

 

この新車の増備につれて引退すると見られるのが2000系や8590系だ。両車両とも8500系に比べて生まれてからの車歴は浅いものの、車両数が少ない。保安機器の関係で東武伊勢崎線への乗り入れができないこともあり、現在は、朝と夕方の混雑時間のみ田園都市線と東京メトロ半蔵門線内のみを走っている。

 

乗ったり見たりする機会が少ない車両だが、もし出会ったら注目しておきたい。

 

6.鉄道ファン注目の都営新宿線10-000形も消えていく

1978(昭和53)年の都営新宿線の開通時から走ってきた10-000形(いちまんがた)。徐々にスタイルを変えつつ1997(平成9)年まで製造された。その最終盤に造られた10-000形8次車の世代で、最後に残った10-280編成も、この1月から「さよならステッカー」を付けて走り始めている。都営地下鉄新宿線と、相互乗り入れする京王線が2月22日の同じ日にダイヤ改正を行うことから、これを機会に引退となりそうだ。

20180202_y-koba5 (13)↑京王線に乗り入れて走る都営新宿線の10-000形10-280編成。前面の黄緑ラインの下に細い青ラインが入る8次車で、残存する10-000形最後の編成となる

 

20180202_y-koba5 (14)↑10-000形の後継車両として造られた10-300形(いちまんさんびゃくがた)。3次車以降、大幅に形もかわりスタイリッシュな顔立ちに変更されている

 

都営新宿線の10-000形だが、一部の鉄道ファンからは消えるのを惜しむ声があがっている。その理由は10-000形8次車がチョッパ制御と呼ばれるシステムを使った、国内最後の新造車両だったため。チョッパ制御自体の説明は避けるが、中央線などを走ったオレンジ色の201系が採用した当時の最新技術で、その後の電車の制御方法の礎(いしずえ)となった技術でもある。

 

現在のVVVFインバータ制御が一般化する少し手前の、車両開発のいわば過渡期の電車と言っても良いかもしれない。

 

7.そのほかの今後が気になる車両を紹介

ここまでは、この春にほぼ引退が決定的、または予測される車両をあげてみた。ここからは、今後が気になる車両をあげておきたい。

 

■小田急電鉄LSE(7000形)

新ロマンスカーGSE(70000形)が3月に走り始める。ロマンスカーが増便されるために、しばらくの間はLSE(7000形)も走るとされているが、製造してからすでに30年以上を経ている車両だけに、気になるところ。現在、11両×2編成が残っている。新型GSE(70000形)の第2編成目の導入が2018年度中に予定されているので、その後に何らかの動きがあるかもしれない。

20180202_y-koba5 (15)↑前と後ろに展望席があるLSE(7000形)。LSE以降に造られたHiSE(10000形)、RSE(20000形)が先に引退。逆にLSEが長生きするということなった

 

20180202_y-koba5 (16)↑3月の運行開始を目指して新型ロマンスカーGSE(70000形)の試運転も始まっている。LSEやVSE(50000形)と同じように前後の展望席が魅力となっている

 

■JR西日本103系ほか国鉄形通勤電車

JR西日本は、ほかのJRグループ各社よりも、比較的長く車両を走らせる会社として知られている。国鉄時代に生まれた通勤電車103系や、113系、117系などがいまも京阪神を中心に走り続けている。車両の更新工事を受けているものの、JRグループが生まれてすでに30年以上。さすがに国鉄時代に生まれた車両のなかには引退する例も目立ってきた。

 

いま、気になるのが103系、昨年、大阪環状線と阪和線を走っていた103系が消え、大和路線(関西本線)を走る103系の定期運用が1月24日に終了、阪和線の支線・羽衣線の103系も春までに消える予定だ。

 

残っているのは奈良線、和田岬線など。東京や大阪など多くの路線を走った国鉄形通勤電車の姿を今も留める103系だけに、今後の動向が注目される。

20180202_y-koba5 (17)↑奈良線を走るJR西日本の103系。国鉄の通勤電車を代表するスタイルも、見納めの時期が近づいているようだ

 

静岡鉄道の「虹色」車両が美しすぎ! 導入理由もステキで堅実だった

静岡鉄道は静岡清水線を運行する鉄道会社。起点の新静岡駅から終点の新清水駅までの全線が静岡市内を走る。路線距離は11km、駅の数は15で、駅間は300m〜1.7kmと短め。朝のラッシュ時には5分間隔、日中でも6〜7分間隔と電車の本数が多く便利だ。

 

2016年3月に43年ぶりの新車A3000形を導入。翌年3月にA3000形の第2編成が、2018年3月21日には第3・第4編成(静岡鉄道社内の呼び方は第3号・4号車)が走り始める予定だ。このほど長沼車庫で、現在まで導入した4編成を揃えたお披露目イベントが開かれた。

 

新車を毎年、導入してきた静岡鉄道。小さめの私鉄ながら、まさに今、元気印の鉄道会社である。その元気の源を確かめるべく、長沼車庫を訪れた。

20180126_y-koba3 (2)↑静岡鉄道の長沼駅に隣接する長沼車庫で行われた新車のお披露目イベント。右はこれまでの主力車両1000形

 

20180126_y-koba3 (3)↑新型A3000形第1編成(写真右)から第4編成までがずらりとならぶ。当日は好天にも恵まれ、800人の来場者があった。鉄道ファンだけでなく親子づれも目立った

 

2019年度中には7色の新型車両が揃う予定。そのモチーフとは?

上の写真のように、静岡鉄道の新型A3000形はすべて色が異なる。「shizuoka rainbow trains」と名付けられ虹色7色の新車両シリーズで、すでに走る第1編成がクリアブルー、第2編成がパッションレッド。新たにお披露目されたのがナチュラルグリーンと、ブリリアントオレンジイエローだった。車庫内に新型A3000形4編成が並ぶ。水色、赤、緑、黄色というカラフルな色使いの電車は、華やかで、見ている側の心も浮き立つようだった。

 

このA3000形。今後も増やしていき2019年度までに7色が揃う。最終的には12編成が造られる予定だという(色の配分は未定)。

20180126_y-koba3 (4)↑新静岡駅の待合室に設けられた新型A3000形紹介のブース。最終的には7色の車両が揃う予定だ

 

この新型車両に使われる予定の7色のカラー、実はそれぞれが静岡県の名物・名産品にちなんだ色となっている。

 

まず第1編成のクリアブルー(水色)は、富士山のイメージ。第2編成のパッションレッドは石垣いちご、第3編成のナチュラルグリーンはお茶、第4編成のブリリアントオレンジイエローは温州みかんをイメージしている。

20180126_y-koba3 (5)↑静岡鉄道のこれまでの主力車両1000形。1973(昭和48)年に導入され40年にわたり静岡市内を走り続けてきた

 

20180126_y-koba3 (6)↑2016年3月に走り始めたA3000形第1編成。最初の車両には静岡と縁が深い富士山をイメージしたクリアブルーが採用された。すでに第2編成のパッションレッドも走っている

 

20180126_y-koba3 (7)↑2018年3月21日に走り始めるのが第3編成ナチュラルグリーンと、第4編成ブリリアントオレンジイエローのA3000形

 

20180126_y-koba3 (8)↑A3000形第1編成のクリアブルー車は、鉄道友の会が選定する2017年ローレル賞に輝いた。ローレル賞の受賞は優秀な車両であることを認められた証でもある

 

さらに今後に登場の予定のフレッシュグリーンは山葵(ワサビ)、プリティピンクは桜エビ、エレガントブルーは駿河湾をイメージしているそう。7色のレインボー電車が走るようになれば、さらに沿線が華やぐことだろう。太平洋に面した静岡の、明るく温暖なイメージによく似合う。

 

静岡鉄道が新造車こだわった理由とは?

静岡鉄道のように自社発注の新造車を作る例は、地方の私鉄の場合、非常に少ない。自治体から補助を受けている鉄道会社を除けば、大手私鉄が使っていた車両を再生して使う例が目立つ。

 

なぜ静岡鉄道でもそういった選択肢をとらなかったのだろうか。ちなみに、新車A3000形の1編成(2両)の金額は3億3100万円と高額。それが12編成となると40億円近い金額となる。

 

巨額の出資をしつつ新車導入に踏み切らせた裏には、静岡鉄道ならではの手堅い営業戦略と、静岡鉄道の路線の特異性があった。

 

当初は、大手私鉄で使われてきた車両を購入しても良いのではという声が社内にあったとのこと。ところが、技術的な制約があったのだ。静岡鉄道を走る車両は2両編成で、1両の全長が18m、幅が2.74m。電気方式は直流600Vとなっている。都市部を走る大手私鉄の電車の場合、多くが全長18~20m、幅が2.8m超で、直流1500V方式が多い。

 

大手私鉄の車両を改造して間に合わせれば、初期費用は少なくてすむ。ところが、こうした電車をそのまま走らせるとなると、ホームを削る、電圧を変えるなど余分な工事が必要になる。導入後に使用できる年数や、メンテナンス費用などを含め総合的に判断し、では独自の新型車両を導入しよう、ということになった。

20180126_y-koba3 (10)↑4色並ぶ姿は壮観。お披露目イベントでは鉄道ファン用に、撮影時間も用意された

 

2019年度に会社創立100周年を迎える静岡鉄道

静岡鉄道の創始は1919(大正8)年にさかのぼる。駿遠電気鉄道という会社が静岡市内(旧清水町)を走る鉄道路線を譲り受け、列車を走らせたことに始まる。1960年代までは静岡市内、清水市内に路面電車路線を所有するなど、総延長100km超の鉄道路線を持つ会社でもあった。

 

1960年代にはモータリゼーションの波が押し寄せる。静岡鉄道では静岡清水線を残し、1975(昭和50)年までにほかの4路線を廃止した。鉄道に固執することなく、素早くバス路線に転換させた。当時の経営陣の先見の明には感服させられる。

 

唯一残った静岡清水線では安全対策に力を注ぎ、連続50年、有責事故ゼロという記録を打ち立て、「中部運輸局優良事業者表彰」を受けている。

 

ここで、静岡清水線の営業成績を見てみよう。鉄道事業の営業収益は平成25年度・26年度が14億円、平成27年度・28年度が15億円と伸びている。とはいえ鉄道事業だけを見ると、営業経費のほうが上回り、ここ数年は1.3億円から2.3億円という赤字を計上している。

 

多くの鉄道会社と同じように、鉄道事業のみだと経営は厳しい。静岡鉄道も鉄道以外の事業に乗り出している。そのなかで不動産事業と索道事業(日本平ロープウェイを運行)が好調で、最終的には静岡鉄道は年に4.7億円~5.3億円という純利益を上げてきた。こうした数字に、同社の手堅さが見てとれるようだ。

20180126_y-koba3 (9)↑1000形車両の多くは地元企業の広告をラッピングした車両も多い。静岡鉄道はこうした地道な営業努力を重ねている会社でもある

 

新車の形式名の頭に付く「A」の意味

会社創業100周年となる2019年度までに導入される予定の新型A3000形。せっかくの新車ならば、静岡鉄道らしい独自の車両にしよう。そんな思いは7色の車体色とともに、車両形式名にも込められた。

 

これまでの主力車両1000形とは異なり、新車A3000形の形式名には「A」が付く。AはActivate(活性化する)、Amuse(楽しませる)、Axis(軸)と3つの単号の頭文字だとされる。

 

鉄道が走る静岡清水エリアを“Activate(活性化)”させ、乗ること、眺めることで“Amuse(楽しい)”気持ちになってもらい、静岡市が目指すコンパクトシティの“Axis(軸)”になるような電車、という意味が「A」には込められている。

 

堅実な経営を続けてきた静岡鉄道が思い切った新車の導入。そこに込められた気持ちは、地域のリーディングカンパニーとしての熱い思いであり、静岡の人たちへのメッセージが込められているようでもある。

20180126_y-koba3 (11)↑イベントでは車内の見学会も開かれた。工場から搬入されたばかりの真新しい第4編成の車内がお披露目された

 

20180126_y-koba3 (12)↑省エネルギーと省メンテナンス化を狙ったA3000形のLED照明。ロングシートには生地に濃淡を付け、1人分の席の区分けがさりげなく図られている

 

20180126_y-koba3 (13)↑運転台はワンハンドルマスコンを中心に配置。ワンマン運転を行う乗務員の扱いやすさを考え、シンプルな機器の配置を心がけた

 

20180126_y-koba3 (14)↑カバーがかけられていたものの、吊り革の形がユニーク。下をにぎっても上をにぎっても良い2段吊り革が導入されている。国内で初めてA3000形で使われた形状でもある

 

相鉄線、悲願の新駅と新型車を公開! 陸の孤島・羽沢駅はどれぐらい便利になる?

神奈川県内に、相鉄本線といずみ野線の2路線を走らせる相模鉄道(以下、相鉄と略)。横浜市の中心部とベッドタウンを結ぶ路線ということもあって利用者は多く、朝のラッシュ時には、相鉄本線の二俣川駅~横浜駅間では、ほぼ2分間隔で8~10両編成の電車を走らせている。

 

そんな相鉄だが、関東地方の大手私鉄のうち唯一、他社路線と相互乗り入れをしない鉄道会社でもあった。

 

相鉄にとって、神奈川県内を走る路線から、東京都心へ自社の直通電車を走らせることは、長年の悲願でもあった。そんな相鉄が2019年度下期にいよいよ相鉄・JR直通線を完成させ、他社線への乗り入れを開始する。このほど乗り入れにあわせて造られた新型車と、新線に誕生する新しい駅が公開された。

 

鉄道が通るのに駅が無い!そんな“陸の孤島”に光明が

2019年度の下期に開通予定の相鉄・JR直通線の途中に新駅が誕生する。駅の名は羽沢横浜国大駅(はざわよこはまこくだいえき)に決まった。造られるのは横浜市神奈川区羽沢という地区。この羽沢地区だが、地図を見ていただくとわかる通り、元々、JRの東海道貨物線と東海道新幹線が地区を通っている。

sotetu↑新しく誕生する羽沢横浜国大駅付近の周辺図。東海道貨物線と東海道新幹線が通る地区でありながら旅客駅は無く、最寄りの駅は、みな2km以上も離れていた

 

だが、両線とも羽沢に旅客駅が無い。JR横浜羽沢駅はコンテナの積み降しを行う貨物専用駅で、東海道貨物線を湘南ライナーなど一部の旅客列車が通るが、旅客向け施設が無いため停車しない。東海道新幹線の最寄りの新横浜駅は羽沢から4kmほど離れている。付近の住民は目の前を電車や新幹線が通るにも関わらず、まったく縁が無かったのである。

10eki9506↑JR横浜羽沢駅は、東海道本線のバイパス線として造られた東海道貨物線の中間地点に1979(昭和54)年に誕生した。広大な屋根を持つ貨物ホームが駅の中心にある

 

鉄道が走りながら利用できないというのは歯がゆいばかり。しかも、最寄りの旅客駅はいずれも2km以上と遠く、毎日歩くのはつらい。したがって羽沢地区の人たちはバスを利用して横浜駅や保土ケ谷駅へ出ざるをえない。そんな“陸の孤島”エリアでもあった羽沢に新駅が誕生するというわけだ。JR横浜羽沢駅に隣接して新駅の建物が現在、建てられつつある。進捗状況を見てみよう。

09eki6988↑JR横浜羽沢駅に隣接して新しい羽沢横浜国大駅は誕生する。写真左側は新駅の機械棟、右側が貨物専用駅のJR横浜羽沢駅の構内。貨物駅上に架かる歩道橋からの撮影

 

2019年度下期に誕生する新線は全線がほぼ地下路線。そのため新しい羽沢横浜国大駅は駅入口こそ地上にあるが、駅ホームは地下2階部分となる。現在、まだ駅の建物や、エスカレーターやエレベーターなど設置工事中で、公開時は仮の階段で地下2階のホームまで下りた。

11eki6859↑新駅・羽沢横浜国大駅の入口棟。外壁はレンガ色のタイルで落ち着いた装いになりそう

 

12eki6972↑入口棟から2階ほど下りた地下にホームが設置される。現在は、工事用に仮の階段が設置されていた

 

相鉄・JR直通線は相鉄の西谷駅(にしやえき)から分岐して、新駅の羽沢横浜国大駅までは地下トンネルで結ばれる。駅のホームはすでに形を現し、相鉄本線側からの線路も敷かれていた。現在は、内装工事と、新駅から先のJR直通線と東急直通線それぞれのトンネル工事が中心に進められている。

13eki6936↑羽沢横浜国大駅のホーム階の工事の現状。すでに上下ホームはできあがり、線路も敷かれていた。写真はホーム中央部から西谷駅側を見たところ

 

14eki6931↑駅から見た西谷駅側のトンネル入口。円形のトンネルで、すでにトンネル内部は完成、線路も敷かれ、架線工事が進められていた

 

15eki6956↑新横浜駅側の工事の進捗状況。こちら側にJR東海道貨物線との連絡線が設けられる。相鉄・東急連絡線はその先、東急綱島駅の先で東急東横線と接続の予定

 

外観も車内も工夫が満載! 濃紺色に塗られた新型20000系電車

今回、公開されたのは新型20000系電車。「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマネイビーブルー)」と名付けられた濃紺色塗装に加えて、これまでの電車とはちょっと異なるユニークな顔立ちをしている。

 

この電車、相鉄・JR連絡線とともに工事が進む相鉄・東急連絡線(2022年度開業予定)用の車両で、東急電鉄の車両の規格に合わせられ造られている。

02gaikan6384↑新型20000系の前に立つ滝澤秀之社長と相鉄のキャラクターそうにゃん。滝澤社長は「相鉄の電車に待ってでも乗りたい」と思ってもらえる車両を目指したと語る

 

2017年12月に創立100周年を迎えた相鉄。「デザインブランドアッププロジェクト」に取り組み始めた。その一貫として行われたのが、車体色の変更。従来から走る9000系の車両色をヨコハマネイビーブルーと呼ぶ濃紺色に変更し、さらに新車の20000系も同じ濃紺とした。9000系は2016年度のグッドデザイン賞を受賞するなど、デザインの世界では評価が高い車体カラーともなった。

 

滝澤秀之社長は、「20000系の顔かたちは日本古来の能面を意識しています。相模鉄道は残念ながら知名度が低いのが現状。車体色とともに、特徴のある顔かたちの車両でアピールできれば」と話す。都心まで走る車両ということで、そうした相鉄の思いが込められた車両なのだ。

 

さらに車内も、さまざまなところに新車らしい工夫が取り入れられている。写真で見ていこう。

03syanai6608↑ロングシートは汚れの目立たない生地を使用。LED照明は時間帯で光の色が変化する。乗降ドア側と座席の境に設けられた強化ガラス製の仕切り板の大きさが目立つ

 

04syanai6607↑一部の優先席にはユニーバーサルデザインシートが導入された。立ったり座ったりしやすいように座面はやや高め、背もたれが立ちぎみになっている

 

05syanai6486↑天井の中央部は高め。吊り革はつかむ輪の形が楕円になっている。2016年度のグッドデザイン賞にも輝いた形状だ。新車には空気清浄機も取り付けられる

 

06syanai6517↑貫通路のトビラはあまり力をかけずに開け閉めできる。取っ手の部分に磁石が付き、しっかりと閉まるように工夫された

 

07syanai6451↑それぞれの乗降ドアにドアスイッチが付く。空調効果を高めるため、駅に停車中、乗客自らがドアを開け閉めすることが可能となった

 

20000系電車は2018年2月11日に営業運転を開始の予定だ。いまのところ10両1編成のみだが、2009年以来の新型車ということで注目が集まりそうだ。

 

直通線が開通すれば都心が圧倒的に近くなる!

2019年度下期の開業はJR東海道貨物線との直通線のみだが、2022年度には東急東横線との直通線も開業の予定だ。相鉄・東急直通線は東急・綱島駅の北側で東急東横線の線路と接続するが、この線が開業すると、その1つ先の日吉駅で、東急目黒線との乗り入れも可能になる。

 

まだ相互乗り入れの具体的な運転計画は発表されていないが、相鉄と東急目黒線が直接、乗り入れるようになれば、二俣川駅~目黒駅間の所要時間が、現在54分かかるのに対して予想到達時間は38分と16分も短縮される。また、JRへの直通電車に乗れば、二俣川駅~新宿駅間の現行59分が、44分と15分も短縮される。

 

現在、各鉄道会社は沿線人口の減少という問題に直面しつつある。相鉄もそうした状況は同じだ。JRや東急との直通線が開業することによる所要時間の圧倒的短縮は、やはり沿線の人たちにとっては、ありがたいニュースであり、また住宅地開発をするうえでの格好の材料となるだろう。

 

将来の変化を読んで策を講じてきた相鉄の思いが花開く日が近いのかも知れない。

流行色は時代を反映!? 電車の「車体カラー」に注目すれば通勤や旅行がより楽しくなる!

ここ数年、車体色を大幅に変更する鉄道会社、また鮮やかなカラーの新車を投入する鉄道会社が増えている。鮮やか、そして明るいカラーの通勤電車に乗れば、朝のラッシュも少しは気持ちをまぎらすことができそうだ。本稿では、そんな変わりつつある電車の車体カラーについて考えたい。

 

新京成は明るいジェントルピンクに塗り替え

千葉県内を走る新京成電鉄。京成グループの一員ながら、やや地味な印象がぬぐえなかった。この新京成が2014年6月にコーポレートカラーをジェントルピンクに変更すると発表。その後、少しずつ電車の塗り替えを始めた。

 

すでに半分以上の車両の塗り替えが終わっているが、従来の車両に比べると、華やかなイメージだ。一方で、古い塗装を愛する乗客向けにリバイバル塗装車を走らせている。こうした車体カラーにこだわったサービスもなかなか楽しい。

20180112_y-koba2 (2)↑従来の新京成電鉄の車両。下地はベージュで、茶色の太めのラインが引かれていた

 

20180112_y-koba2 (3)↑ジェントルピンクと白という組み合わせの新塗装電車。色の変更で、これほど電車の印象が変わるのかと驚かされた

 

20180112_y-koba2 (4)↑8000形8512編成はあえて伝統の色のまま、リバイバルカーとして走らせている。「くぬぎ山(車両基地がある)のタヌキ」と鉄道ファンに親しまれてきた車体カラーだ

 

伊予鉄“みかん色”塗装は、オレンジすぎて

愛媛県松山市を中心に郊外電車と市内電車(路面電車)を運行する伊予鉄道(以下、伊予鉄)。会社創立は1887(明治20)年という老舗企業だ。夏目漱石が松山に赴任した時にも乗っていただろう、会社の歴史は130年にも及ぶ。

 

そんな歴史を誇る企業が2015年に発表した「IYOTETSUチャレンジプロジェクト」。チャレンジその1として “乗ってみたくなるような電車・バス” というコンセプトが掲げられた。大きな変更点が車体色だ。愛媛県の特産品、みかんにちなみ、みかん色に車両が変更されたのだ。

20180112_y-koba2 (5)↑従来の伊予鉄3000系電車。銀色の車体にオレンジラインが入る

 

20180112_y-koba2 (6)↑ここまで変貌しましたか、とすら思える3000系新塗装車。国内では非常に珍しい、電車と路面電車の線路が平面交差する大手町駅前の踏切を通過する

 

20180112_y-koba2 (7)↑郊外電車に加えて市内電車(路面電車)や伊予鉄バスも、すべてがみかん色一色に変身しつつある

変更されてみかん色一色に塗られた伊予鉄の電車。登場した当時は地元の人たちから「オレンジすぎる!」という声が上がり、否定的な声すらあった。

 

ところが、登場してからすでに3年。沿線では「華やかでいいと思うよ」という住民の声が聞かれた。最初は派手だと思われた車体カラーも、見続け、乗り続けることにより、違和感を感じる人が少なくなっているように思えた。

 

華やかさでは負けない大手私鉄の新型電車!

走る車両の塗装を全面変更して、成果を生み出した新京成や伊予鉄。関東を走る大手私鉄の新型車両にも、華やかな装いの車両が出現している。

 

まずは関東一の路線網を持つ東武鉄道から。これまで東武鉄道の電車といえば、エンジ色、ブルーのラインが車体横に入るか、もしくは前面がオレンジという車両が大半だった。そんな東武鉄道の車両カラーが変化しつつある。

 

まずは東武野田線に投入された60000系。2013年生まれでフューチャーブルーと呼ばれる明るい青色が正面や車体横の天井部に配された。東武アーバンパークラインという新しい路線の愛称が付けられたこともあり、路線のイメージアップにもつながる新車登場となった。

20180112_y-koba2 (8)↑東武アーバンパークライン(野田線)に導入された60000系。正面はフューチャーブルーという明るい青色で目立つ

 

前述の60000系からラインカラーということを意識し始めた東武鉄道だが、2017年に登場した70000系はかなりセンセーショナルな車体カラーだった。東急メトロの日比谷線乗り入れ用に新製された電車で、正面と車体横に鮮やかな赤色と細い黒のラインが入る。東武鉄道ではこの赤を“イノベーションレッド”と呼ぶ。

20180112_y-koba2 (9)↑東武鉄道としては画期的なカラーの70000系。東京メトロ日比谷線への乗り入れ用車両として登場した

 

まさにイノベーションになりそうな色使い。東武鉄道の車体カラー自体のイノベーションでもあり、今後の通勤電車の車体カラーに影響しそうな色使いだ。産業デザインの世界でも、かなり革命的と捉えられたようで、グッドデザイン賞に輝いた。

 

九州の雄も負けじと華やかな電車を走らせる

大手私鉄の中で、最も西側、福岡県内に路線網を持つ西日本鉄道(以下、西鉄)。この西鉄でも鮮やかな色使いの電車が2017年春から走り始めている。

 

これまで西鉄の電車は特急形の8000形(すでに全車が廃車)を除き、薄い緑色の車体に赤ラインの電車や薄い青ラインが入る3000形と、無難な色使いの車両が多かった。ところが9000形では普通や急行として走る車両でありながら、思い切った色使いに変更したのだ。

20180112_y-koba2 (10)↑西鉄の新型9000形。正面と車体横のラインはロイヤルレッドで塗られる。赤い色使いは、写真の印象よりも実際はもっと明るい色に感じられる

 

20180112_y-koba2 (11)↑関西圏の鉄道では、塗装カラーの変更があまり見られない。そんななかで2017年、阪神電気鉄道の5500系リニューアル車は独特の明るいブルー系カラーに塗り替えられた

 

淡い色系の新車も続々と登場!

東武鉄道の70000系と対極を行くようなカラーの新車を登場させようとする鉄道会社もある。東京急行電鉄(以下、東急)と都営地下鉄の例を見てみよう。

 

まずは東急。東急では田園都市線用に2020系、そして大井町線用に6020系をそれぞれ2018年の春に導入の予定だ。東急の電車といえば、銀色の車体に赤ライン。一部の路線に赤とオレンジ、また緑ラインといった原色に近いカラー車両を多く走らせてきた。

 

そんな東急電車のイメージを一新するのが2020系と6020系。白を基調とした外観デザインで、この白は「INCUBATION WHITE」(新しい時代へ孵化していく色)とされる。これまでの電車のように角張ったデザインでなく、やや傾斜したカーブラインが特徴の前面デザイン。ブラックとホワイトの組み合わせに、田園都市線の2020系は淡い緑色のラインを、大井町線用の6020系はオレンジ色のラインが入る。

20180112_y-koba2 (12)↑長津田検車区の奥に留置された新型の田園都市線2020系と大井町線6020系。6020系は、まだ報道陣にも公開されていない未発表の電車でもある(1月11日現在)

 

2017年から2018年にかけては鉄道車両の新車デビューラッシュが続くが、都営浅草線にも新型5500形が導入される。2017年の暮れ、馬込車両検修場で公開された車両はこれまでの浅草線の5300形とは異なり、淡いピンクライン。東急の新車と同じように、正面のやわらかなカーブラインが特徴となっている。

20180112_y-koba2 (13)↑都営浅草線の5300形と新型5500形(左)。既存の5300形は濃い赤ラインに対して、5500形は淡いピンク色のラインと変更された

 

渋めの色使いや伝統へ回帰という鉄道会社も

鮮やかな色使いの電車が登場する一方で、渋めの色で勝負しようというのが相模鉄道(以下、相鉄)だ。2017年12月に創立100周年を迎えた相鉄。「デザインブランドアッププロジェクト」に取り組み始めた。

 

その一貫として行われたのが、車体色の変更。従来から走る9000系をリニューアルするのに合わせて、外装は「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマネイビーブルー)」と名付けられた紺色塗装に変更された。横浜をイメージしたカラーだとされる。

20180112_y-koba2 (14)↑9000系の従来車は薄いグレー地に水色とオレンジのラインが入る

 

20180112_y-koba2 (15)↑ヨコハマネイビーブルーと名付けられた紺色塗装の9000系リニューアル車。紺色とはいうものの、光にあたるときらきら輝いて美しく見える

 

濃い色使いながら、高級感あふれた印象を受ける。この9000系リニューアル車は2016年度グッドデザイン賞を受賞した。近日、公開予定の新車20000系もこのヨコハマネイビーブルーで登場の予定。 数年後にはJR東海道線と東急東横線との相互乗り入れが行われる予定の相鉄。その意気込みが感じられる車体カラーだ。

 

また、京浜急行電鉄(以下、京急)のように伝統色に回帰する動きも見られる。主力の1000形は2代目から車体のステンレス地の銀色が目立つ仕様だったが、新製車は元々の京急の電車の特徴である赤に窓回りを白く塗る塗装に改められている。この赤地に白というカラーは、京急の創業以来の伝統ということで長年、親しまれてきた。

 

元々、赤という古さを感じさせない色だったということもあり、改めて原点に戻ろうという意図なのだろう。ちなみにステンレス車体は腐食に強いのが特徴。そのため塗装を省くというのが一般的な傾向で、ステンレス車の全面塗装は関東の大手私鉄としては初めてのことになる。

20180112_y-koba2 (16)↑主力車の京急1000形電車。2代めはステンレス車体の銀色部分が目立っていた

 

20180112_y-koba2 (17)↑京急1000形の増備車はステンレス車体ながら、銀色のボディに赤地と白という伝統色が施されている。今後の増備車はさらに銀色部分が伝統色の赤で覆われる予定だ

 

時代を反映する車体カラー

流行色はその時代を反映するとされる。バブル崩壊で、経済状況が悪化した1990年代にはモノトーンが流行したのは、その典型的な例だった。

 

ここ数年の華やかな色使い、淡い色使いが車体カラーに増えているのは、好景気が影響しているのかも知れない。一方でヨコハマネイビーブルーといった渋めの色使いの電車が走り始めていることも面白い。車体のラッピング塗装の技術が向上したことも、車体カラーが多彩にしている1つの要因だろう。

 

電車の車体カラーにはこれが正解というものはない。色というのは、十人十色で好みが異なるもの。とはいえ各鉄道会社が競って、このような車体カラーを生み出す傾向は歓迎すべき現象だろう。今後、どのような車体カラーの電車が登場してくるのか、楽しみにしていきたい。

大江戸線と浅草線は全然違う乗り物だった

2017年12月9日、好天のなか、「都営フェスタ2017 in 浅草線」が東京都交通局馬込車両検修場で開かれた。普段入ることができない車両基地が公開されるとあって、当日は多くの鉄道ファンや親子連れで賑わった。馬込車両検修場が一般に公開されるのは2年ぶり。発見も数多くあり見ごたえ満点だった本イベントで、特に目を引いたポイントを紹介しよう。

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2018年春から浅草線を走る新型5500形もお披露目

都営フェスタ2017で1番の注目を集めたのが新型の5500形。浅草線としては20年ぶりに導入される新車で、淡いピンク色のラインが車体に入る。新たな浅草線の“顔”となる車両だ。今回は、外観のみの公開で車内を見ることはできなかったが、座席に江戸らしい寄せ小紋の柄が採用されるなど凝った内装となっているそうだ。

20171215_y-koba5 (2)↑浅草線の現役車両5300形と並ぶ5500形。淡いピンクラインがアクセントの車体には、これまでにない機能も数多く搭載されている

 

5500形には東京を訪れる外国人向けに多言語対応の液晶モニターが設置されるなど、現代流の味付けがなされている。さらに高速運転も可能となり、現状の5300形では行われていない成田スカイアクセス線への乗り入れにも対応している。今年度は1編成8両のみだが、平成30年度には7編成が導入の予定とのことで、期待したい。

 

都営大江戸線の車両整備のために使う専用機関車に注目!

都営浅草線の西馬込駅の南側にある馬込車両検修場では、都営浅草線と都営大江戸線の車両整備を行っている。大江戸線と浅草線の線路は汐留連絡線(大江戸線汐留駅〜浅草線新橋駅間)でつながってはいるのだが、大江戸線は鉄輪式リニアモーターカーというシステムを利用しており、浅草線の電車とは仕組みが異なっている。そのため大江戸線の電車は、浅草線の路線を自走することができないのだ。それでどうしているかというと、連絡線から先はE5000形電気機関車が大江戸線の電車を牽引して、馬込車両検修場へ入場する。

20171215_y-koba5 (4)↑大江戸線の電車は浅草線を自走できない。そのため牽引用の電気機関車が必要となる。2車体連結のE5000形は、連絡線の48‰勾配をクリアし、最高時速70kmの能力をもつ

 

都営フェスタでは馬込車両検修場の留置線に、浅草線5300形と大江戸線12-000形、牽引用のE5000形電気機関車が並んだ。見比べると、鉄輪式リニアモーターカー方式を採用した大江戸線の特徴でもある車体の小ささが良くわかる。その横で長いパンタグラフを高々と持ち上げたE5000形の姿が凛々しく見えた。

20171215_y-koba5 (3)↑都営浅草線の5300形に比べて大江戸線12-000形はかなり小さい。その横にE5000形電気機関車が並ぶ

 

20171215_y-koba5 (5)↑車両基地内の一部レールには、鉄輪式リニアモーターカーに対応したリアクションプレートという装置が付けられている

 

車体の小さな大江戸線12-000形はパンタグラフもかなり小さい!

検修庫内には大江戸線の12-000形電車のパンタグラフやリニアモーターなども展示されていた。それにしても、大江戸線のパンタグラフはかなり小さい。それでいて重量は85kg(浅草線用は180kg)と、大きさに対して意外に重いようだ。

20171215_y-koba5 (6)↑検修庫内ではパンタグラフの上げ下げを試すことができた。こちらが通常の電車のパンタグラフの大きさ。目の前で見るとかなり大きい

 

20171215_y-koba5 (7)↑こちらは大江戸線のパンタグラフ。8両編成に4台のパンタグラフが装着される。小さめだが、重量は85kg(浅草線用は180kg)と重め

 

そして心臓部ともいえるリニアモーター。こちらは主要パーツということもあるのだろう、大江戸線の小さい車体に比べて大きい印象。1編成8両に16台も搭載されている。重量は1機あたり1320kgとかなり重い。

20171215_y-koba5 (8)↑大江戸線の電車の車両下に付くリニアモーター(主電動機)。レール側に付くリアクションプレートとの間に生じる反発・吸引力で電車を動かし、また制御している

 

縁の下の力持ち。この基地特有の事業用車にも興味津々

都営フェスタでは多くの事業用車も展示されていた。屋外には保線用の軌道検測車や、点検車両などが並ぶ。特に筆者の目を引いたのは、検修庫内に停まっていた大小の車両移動機。なかでも大型の車両移動機には、3タイプの連結機能が付いていて興味深い。さまざまな連結器を持つ車両を検査する馬込車両検修場独自の装備である。小さめの大江戸線の電車は、連結器もまた一段低い位置になっている。

20171215_y-koba5 (9)↑留置線から車両検修庫に車両を移動させるために使われる車両移動機。自動連結器に密着連結器、さらに大江戸線用の密着連結器まで装備されている

 

20171215_y-koba5 (10)↑こちらは検修庫内の移動用に使われる小型の車両移動機。鉄道ファンには“アント”という通称で親しまれる専門工作機メーカーのアント工業が製作している

 

20171215_y-koba5 (11)↑こちらは台車移動機。道路だけでなく線路上も走れるようにタイヤと鉄輪が付いている。フォークリフトを改良した非常に珍しい車両だ

 

車両基地は、普段は立ち入ることができない世界。公開では車両だけでなく、それぞれの車両基地で使われる特別な装備を見ることができ、それが車両基地公開の1つの魅力となっている。鉄道ファンならずとも楽しめるこうした車両基地の公開イベントが、今後も各社で続けられることを願いたい。

20171215_y-koba5 (12)↑東京都交通局以外にも鉄道各社のブースも設けられた。さまざまな関連グッズが販売され、車両展示とともに大変な賑わいを見せた

 

「意外と安く住めるな…」格安物件が揃う“東京の穴場3路線”とは?

10月24日放送の「幸せ! ボンビーガール」(日本テレビ系)では、京成線、京浜急行線、東武東上線の沿線にある物件を取材。東京の穴場とされる3路線の激安物件が視聴者の注目を集めた。

出典画像:「幸せ! ボンビーガール」公式サイトより出典画像:「幸せ! ボンビーガール」公式サイトより

 

穴場3路線の特徴とは?

まずは東京から千葉県を結ぶ“京成線”。番組に登場したSUUMOの編集長・池本洋一氏によると、京成線は東京23区の中で家賃が最も安い“足立区”“葛飾区”“江戸川区”を通る路線なんだとか。

 

例えば番組で登場した京成金町駅から徒歩9分のところにある物件は、2階の角部屋・6帖1Kに月4万3000円という格安料金で住むことが出来る。そして風呂・トイレ・キッチンが共同のお花茶屋駅にある物件に至っては、月2万1000円という驚きの価格。

 

ただし“足立区”“葛飾区”“江戸川区”の物件が安いのには、地理上のちょっとした訳がある。この3区は周りを川に囲まれており、さらに土地の標高が東京湾よりも低い海抜0m地帯。70年間大きな川の氾濫はないのだが、街の電柱には“水害”の注意を喚起する看板が張られている。

 

京浜急行線は、品川から川崎などの区間をJR京浜東北線と並走している路線。JRの駅の間を埋めるように駅があり、比較的安く住むことが出来る注目の路線だ。例えばJR蒲田駅の家賃相場は7万9000円で、JR川崎駅は6万8000円。一方で京浜急行線には京急蒲田駅と京急川崎駅の間にも駅があり、雑色駅が6万7000円、六郷土手駅が6万円と同じ地域でも若干安めの家賃相場になっている。

 

副都心線が開通して交通の便が良くなった東武東上線も、近年注目されている路線。以前は“イモ電”などと呼ばれていたのだが、2013年にみなとみらい線との直通運転を開始して、渋谷や横浜といった都市部に一本で行けるようになった。また東武東上線沿線の魅力は“食”にもあるようで、番組では“食費が都心の3分の1”と紹介している。

 

東京の穴場地域の情報に視聴者からは「東上線は度重なる“運休”に目をつぶったら本当に良路線だと思う」「東京でも意外と安く住めるな… 上京したい欲が再燃してきた!」「京成線沿いの街って下町感あってなんか好き」との声が上がった。

 

近年注目を集めている“穴場”の街

実際に世間の人々はどの街に住みたいと思っているのだろうか、SUUMOが毎年発表している「住みたい街ランキング」の2017年版をみてみよう。まず第1位は、去年のランキングで2位に転落した吉祥寺が王座を奪還。前回の王者・恵比寿は2位に下降した。しかし「吉祥寺」「恵比寿」「横浜(3位)」の3強体制は相変わらずという結果に。

 

そんな中で注目したいのが、人気が急上昇して過去最高の順位を獲得した穴場都市の数々。以前から“穴場”と知られてきた「北千住」が今年は18位に大躍進したほか、昨年29位だった立川も20位に浮上。今回の「幸せ! ボンビーガール」のように“穴場”を取り上げるメディアが多くなったことも、注目度急上昇の要因と見られている。

 

東京での暮らしを考えている人は、“穴場”が“人気の街”になる前に物件を見つけた方が良さそうだ。

“料金”で切符を選択するのは時代遅れ!? 日本の券売機の不便さを指摘したツイートが大反響

今月とあるTwitterユーザーが、日本の自動券売機の不便な点をツイートで指摘。ツイートから3日間だけでも7万7000を超えるリツイートがされ大反響になり、様々な意見が寄せられた。

test出典画像:Dick Thomas Johnson / Ticket Machine (from Flickr, CC BY 2.0)※画像はイメージです

 

日本の券売機は時代遅れ?

話題になったのは、券売機が“目的地”ではなく“料金”で切符を買わせることに疑問を呈するツイート。現在日本の券売機は以前のような“ボタン式”ではなく、液晶のタッチパネルが主流。しかし画面に表示されている情報は結局“ボタン式”からほとんど変わっておらず、ユーザーは一度アナログな路線図と照らし合わせて切符を購入しなくてはならない。

 

そんな“当たり前”と受け入れられている券売機のシステムに一石を投じる同ツイートが、SNS上でたちまち話題に。「今まで全く疑問に思わなかったけど、言われてみれば確かに不便かも…」「地元の路線に慣れた人ならまだいいけど、外国人観光客からしたらたまったものじゃないよな」「古い習慣がいつまでも残るのはこの国ではよくあること」と共感の声が続出した。

 

ではどのようなユーザーインターフェイス(以下、UI)を採用すれば、初見の人もよりスムーズに切符を購入できるようになるのだろうか。このTwitterユーザーが最初に提案したのは、路線図をそのまま液晶画面に表示させるというもの。実際にこのUIは、中国の大都市・上海の地下鉄などでも採用されている。

 

しかしこの方法には「東京の地下鉄とかで路線図を表示させるとすごいことになりそう…」「券売機のヘビーユーザーである“お年寄り”が買いにくくなっちゃうのでは?」との反論も。日本の交通網の複雑さや、世代間での利便性に対するギャップ考慮した画期的なUIが求められているようだ。

 

実は進化している日本の券売機

とはいえ日本の地下鉄も、外国人に優しくない従来の券売機をただそのままにしている訳ではない。東京都交通局は今年、東京地下鉄株式会社と共同で開発した新型の券売機を「都営地下鉄」31駅に導入した。

 

この券売機では、32インチの大型高精細ディスプレイを採用。英語や日本語だけでなく、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、フランス語、スペイン語、タイ語の8言語に対応した、外国人観光客に優しい作りになっている。

「東京都交通局」公式サイトより出典画像:「東京都交通局」公式サイトより

 

そして何より注目したいのが、運賃表を確認することなく画面操作のみで切符を購入できる新しいUI。「駅名で探す」「路線図で探す」「駅番号で探す」「観光スポットで探す」という4つの検索方法を選択できる。例えば「路線図で探す」の場合、選択すると都営地下鉄・都営メトロの全ての駅を網羅した路線図が画面に。その中から目的地をタップすると、値段だけでなく“出発駅から目的駅までの乗車経路”まで表示される。

 

2020年の東京オリンピックに向けて増加が見込まれる訪日外国人に、この次世代券売機はどのような威力を発揮するのか。今後の経過を見守っていきたい。