JTの最新加熱式タバコ「プルーム・オーラ」と新スティック「エボ」を徹底レビュー!旧モデルと機能・味を比較した結果は?

加熱式タバコは現在、「プルーム(Ploom)」「アイコス(IQOS)」「グロー(glo)」の3ブランドがしのぎを削る、三国志的な激戦市場。各社の開発競争も激しいなか、JTが同社の「プルーム」ブランドから第4世代となる新作「Ploom AURA(プルーム・オーラ)」と、15年ぶりの新タバコスティック「EVO(エボ)」を5月27日に発表しました。それぞれの新作について、特徴を解説したうえで、筆者が旧モデルと吸い比べた実体験レビューをお届けします。

JT
プルーム「Ploom AURA(プルーム・オーラ)」
各2980円 ※条件により980円~(税込)
EVO(エボ)
各550円(税込)

 

グッドデザイン賞のDNAを継承するデザインと持ちやすさ

まずはデバイスの「プルーム・オーラ」から。ひと目でわかる違いが、スマートなフォルムになったことです。ひとつ前の「プルーム・エックス・アドバンスド」は、加熱式タバコ用デバイスとして史上初の「グッドデザイン賞(2024年度受賞)」に輝くなど、美しいプロダクトが話題となりましたが、「プルーム・オーラ」もエレガントなDNAを引き継ぎながら、スリムな形状に。

↑左が「プルーム・オーラ」で、右が「プルーム・エックス・アドバンスド」。

 

細くなったことで、より携帯性も増したといえます。また「プルーム・エックス・アドバンスド」ではタバコスティック挿入口のスライドカバーが外側に出ていましたが、「プルーム・オーラ」では内側に入ったことでよりなめらかになり、統一感も高まりました。

 

↑右上がタバコスティック挿入口。左下は充電用端子で、USB Type-Cケーブルで充電する(USB Type-Cケーブルは本体パッケージに付属)。

 

カラーバリエーションと豊富なアクセサリーで自由にカスタマイズ

「プルーム・オーラ」のカラーバリエーションは、現状4種類。そのうち、ネイビーブルーとルナシルバー(後述)は一部店舗限定となりますが、別売りのアクセサリーにフロントパネルとバックカバーが各10色用意され、十分なカスタマイズ性があります。

↑左から、ローズゴールド、ネイビーブルー、ルナシルバー、ジェットブラック。

 

↑デバイスの後ろにあるのが、各10色のフロントパネル(税込各1480円)とバックカバー(税込各1980円)。

 

なお、「プルーム・エックス・アドバンスド」など旧モデルでもアクセサリーは豊富にありましたし、デバイスの限定デザインなども適宜販売されていたので、今後「プルーム・オーラ」でも多彩なデザインが展開されるであろうことが予想できます。

↑これまでも、数々の優れたデザインプロダクトを展開してきた「プルーム」ブランド。Ploom新商品発表会にて。

 

ひとつ前の「プルーム・エックス・アドバンスド」は、ブランドにおける第3世代。2021年に誕生した「プルーム・エックス」の後継機として2023年にデビューし、ルックスにこそ大きな変化はなかったものの、最高加熱温度が約295℃から約320℃にアップするなど機能面で飛躍的な進化を遂げました。

↑JTの高温加熱式タバコは2019年に誕生した「プルーム・エス」がはじまり。翌年、第2世代の「プルーム・エス 2.0」「プルーム・モデル・エス」と進化し、2021年に「プルーム・エックス」へ。

 

機能の進化点1.4つの加熱モードと使用時間の違い

では、「プルーム・エックス・アドバンスド」から「プルーム・オーラ」へのイノベーションではどういった機能が進化したのでしょうか。わかりやすいようリストにまとめてみました。

ブランド名 プルーム・オーラ プルーム・エックス・アドバンスド
発売日 2025年5月27日 2023年11月21日
世代 第4世代 第3世代
税込実売価格 2980円(条件などにより980円~) 1980円(条件などにより980円~)
サイズ/幅×奥行×高さ 24.2×29.2×109.4mm 約44×約24×約89mm
重量 75.5g 約95g
最高加熱温度 約320℃ 約320℃
加熱モードの種類 4モード 2モード
加熱待ち時間 約25秒 約25秒
連続使用可能本数 約3本 約2本
最多使用可能本数 約27本 約20本
満充電までの時間 約180分 約90分
最長喫煙時間(タバコ1本あたり) 約6分 約5分
吸える回数 無制限 無制限
自動加熱モード あり あり
Bluetooth接続 あり あり

※データの一部は筆者調べ。

 

ポイントは「加熱モードの種類」「最多使用可能本数」「最長喫煙時間」にあります。「プルーム・エックス・アドバンスド」は今年3月、「メビウス」と「キャメル」のリニューアルに合わせて「バランスドモード」と「デフォルトモード」から選択できるように進化していましたが、「プルーム・オーラ」では全4モードの仕様に。

 

↑力強い味を楽しみたい人は「ストロングモード」、おだやかな吸い心地で1本を長時間味わいたい人には「ロングモード」を。と自由度が向上。

 

ユーザビリティが向上しつつ、多様化した各モードはより機能が先鋭化。例えば「ストロングモード」はタバコスティック1本あたりの使用(喫煙)時間は約3分間ですが、その分パワフルな味わいに。一方で「ロングモード」なら強さが抑えられるぶん、1本あたり約6分間も喫煙を楽しめます。

 

↑4種の各モード特徴。プレスリリースより。

 

機能の進化点2.味の違いは?旧モデルとの吸い比べ結果

「プルーム・オーラ」では基幹システムも独自の加熱技術「スマート ヒート フロー」へとアップデート。緻密に設計された加熱温度コントロールにより、雑味や焦げ臭さを抑えつつ、タバコ葉の香味を引き出す最適な温度を長くキープすることで、味わいの一貫性が高まりました。

 

加えて、デバイスの加熱カップにミクロン単位の精度で加工する匠の技術を投入。さらに楕円状のカップ構造によりタバコスティックとの接触面積が増え、その味わいを余すことなく引き出せるようになりました。つまり定性的な側面でも、「プルーム・オーラ」は「プルーム・エックス・アドバンスド」よりもおいしく吸えるようになったのです。

↑他社製品と目隠しで比較した際のユーザーアンケートでも、「プルーム・オーラ」が最もおいしいと評価されたとか。

 

新スティック「エボ」の特徴と味の違い

「プルーム・オーラ」と同時デビューとなった「エボ」は、JTが15年ぶりに発売した新タバコスティック。既存の「メビウス」と「キャメル」はともに、この世に加熱式タバコがない時代から紙巻きタバコでも存在し続けているロングセラーであり、「エボ」は系譜がない完全な新ブランドです。

 

裏を返すと「メビウス」と「キャメル」は、紙巻きタバコから加熱式タバコへ切り替えるユーザーのためにも存在するブランドであり、一方で「エボ」にはそういった関連性がないといっていいでしょう。だからこそ大胆なブランディングができるのであり、事実として「エボ」は味わい的にも革新性に満ちています。

↑価格面からして「メビウス」「キャメル」とは異なり、「エボ」はそれぞれ税込550円。50円高額となる。

 

端的に特徴をいえば、「エボ」はプレミアムなタバコスティックです。世界30か国以上から厳選したタバコ葉のみを使い、巧みな香味技術をもつブレンダーが10万回を超えるテイスティングを実施。そうして、1000を超える試作から生み出されたのが「エボ」なのです。3銘柄それぞれを、「プルーム・オーラ」で吸ったテイスティングコメントとともに紹介しましょう。

 

「エボ・ディープ・レギュラー」の芳醇な香り

↑「エボ・ディープ・レギュラー」。ひと口目から濃厚に主張するタバコ葉のうまさと香りを楽しめ、その先にやわらかな甘さと香ばしさの緻密な余韻が広がる。

 

個人的に「エボ」の味わいで今回最も驚かされたのは、この「エボ・ディープ・レギュラー」です。レギュラータイプはメンソールのミントやフレーバー系の果実味のような個性がないので、キック(ノドへのアタック)の強さやウッド調なスモークの濃さが焦点かと想像していましたが、それ以上に印象的だったのは香りです。

 

↑モードはひとまず、初期設定の「スタンダードモード」で。これまでの加熱式タバコにはない、まさにプレミアムな味わいに驚愕。

 

例えるなら、クレームブリュレの表面を炙ったときのような、芳醇なメイラード反応(還元糖とアミノ化合物が加熱によって化学反応を起こし、メラノイジンと呼ばれる褐色物質を生み出す反応のこと)を思わせる、キャラメルやバタースコッチ的な香り。それは高級葉巻とも形容できる、きわめてセレブリティなおいしさです。

 

「エボ・コールド・メンソール」の爽快感

↑「エボ・コールド・メンソール」。突き刺さるメンソール感を、タバコ葉のうまさと香りとともにバランスよく味わえる。吸い終わった後も、爽やかな味わいの余韻が心地いい。

 

「エボ・コールド・メンソール」にも、ワンランク上の吸い心地を感じました。ファーストインプレッションは、鮮烈なミントの爽快感。そこからすぐに豊かなタバコ葉のうまみが寄り添い、それぞれが一体となって優雅なフィールに包まれます。

↑ミントのニュアンスに辛さはなく、それでいてしっかりクールな冷涼感。

 

これは、タバコ葉とミントがともに高品質かつ、優れた技術でブレンドされていることがわかるおいしさ。メンソールは力強くもトゲトゲしさは一切なく、タバコらしいまろやかな余韻も感じられます。

 

「エボ・ベリー・クリスタル」の甘味と酸味

↑「エボ・ベリー・クリスタル」。カプセルからあふれ出す甘く濃いベリーフレーバーとともに、メンソールのほどよい清涼感を心地よく味わえる。

 

フレーバー系は、電子のタバコスティックでは特に人気が高いジャンルで、レギュラーが人気の紙巻きタバコとは違うことが特徴。事実、「プルーム」の「メビウス」と「キャメル」ではフレーバー系のラインナップが最も充実しており、「エボ」でも今後優先的に拡充するのはフレーバー系だと予想できます。

↑フレーバー系のなかでも、カプセルタイプが人気。「エボ・ベリー・クリスタル」も、先端のドット下部にあるカプセルをつぶして味わう。

 

「エボ・ベリー・クリスタル」がモチーフとしている香りは、ラズベリーやカシスといったフルーツ。しっかりした甘さにフレッシュな酸味が寄り添いつつ、そこにメンソールの清々しい爽快感とタバコ葉の絶妙なコクが調和。トータルで、ジューシーかつエレガントな味わいに仕上がっていると感じました。

 

各モードやデバイスごとの味の違いなどをチェック

続いてチェックしたのは、「プルーム・オーラ」の大きな特徴である加熱モードの違い。先ほど軽く触れましたが、具体的には「ヒート セレクト システム」という機能によるもので、これはBluetooth接続でデバイスとスマホをつなぎ、アプリから設定変更できます。

↑加熱モード変更以外にも、様々な機能がある。公式サイトより抜粋。

 

加熱モードの違いは、実感値でもわかるレベル。「ストロングモード」は、レギュラーならキックやスモークの濃さが強く、メンソールでは爽快感が鮮烈に。フレーバー系では果実味をよりジューシーに感じられます。

 

そして逆に「ロングモード」では、それぞれの吸い心地がおだやかに。なお、「スタンダードモード」と「エコモード」の強さは同じですが、前者は1本当たりの喫煙時間に、後者は使用可能本数に対する優位性が高いモードです。

↑好みに応じて4つのモードから選べる点は、大きなユーザーベネフィットといえる。

 

「エボ」「メビウス」「キャメル」を新旧モデルで吸い比べ

「プルーム・オーラ」に搭載された「スマート・ヒート・フロー」によって、「プルーム・エックス・アドバンスド」より雑味のない吸い味になったことは前述しましたが、今回発売された新スティック「エボ」を新旧モデルで比較してみたらどうか、吸い比べてみました。前者は「スタンダードモード」、後者は「デフォルトモード」でチェックします。

↑ちなみに、デバイスとタバコスティックともに互換性があり、「プルーム・エックス・アドバンスド」でも「エボ」は吸える。もちろん「プルーム・オーラ」で「メビウス」「キャメル」もOK。

 

「エボ」は、飛躍的といえるほど大きな違いは感じませんでしたが、なんとなく「プルーム・オーラ」のほうが味の解像度は高い気がしました。ちなみにJTによると、特に「エボ」は「プルーム・オーラ」との組み合わせで最もポテンシャルが発揮されるよう設計されているとのこと。

 

続いて、「メビウス」と「キャメル」を「プルーム・オーラ」でテイスティング。まずは「スタンダードモード」で吸ってみると、「プルーム・エックス・アドバンスド」との差はなんとなく感じられる程度。具体的にはタバコ葉本来のうまみの伸びやかさ、メンソールや果実味のフレーバーが比較的引き出されている印象がありました。

 

より違いを感じられるのは、やはり「ストロングモード」。再び「メビウス」と「キャメル」吸ってみると、ひと口目から「おっ!」と思わされるほど、明らかにパワフルなテイストを楽しめます。

 

ふだんから「メビウス」と「キャメル」を愛用しているユーザーであれば、ポテンシャルがより引き出された味わいに、感動できるかも。いずれにせよ、「プルーム・オーラ」で新たに実装された加熱モードにより、さらに豊かなスモーキングライフを楽しめることは間違いありません。

 

「プルーム・オーラ」のお得な購入方法

タバコスティックの進化に関しても、「エボ」は「メビウス」と「キャメル」より明らかに高級感のあるおいしさであり、「プルーム・オーラ」のデビューによって、スモーカーの選択肢は確実に広まりました。コンビニなどでは7月1日から発売となりますが、公式のECや店舗ではすでに購入できます。「フリートライアル」なども用意されていますから、ぜひこの機会に試してみては?

↑条件により980円で買える「はじめて割」や、本体とタバコスティックを最大9箱もらえて、返品する場合は送料も無料(そのまま引き取れば1480円で買える)という「フリートライアル」など、購入特典の充実。

 

 

よくある質問(FAQ)

Q.「プルーム・オーラ」と旧モデルの違いは?

A.主な違いは、加熱モードの種類、サイズのスリム化、味の解像度の高さです。特に「ストロングモード」や「ロングモード」の追加により、使用感が大幅に進化しています。

 

Q.「エボ」タバコスティックの味は?

A.「エボ」には3つの味(レギュラー・メンソール・フレーバー)があり、それぞれ香りや濃さの点でプレミアムな体験ができます。

 

撮影/鈴木謙介

大阪市の“路上喫煙禁止”の実態は?万博会場・天王寺で喫煙所を現地調査してみた

2025年1月27日から「大阪市全域」で路上喫煙が禁止になったことをご存知でしょうか? 条例の施行から4か月が経過し、実際にどのような影響が出ているのか、GetNavi web編集部が現地取材を実施。万博会場(夢洲・ゆめしま)と天王寺エリアを歩き、喫煙所の数、条例の認知度、民間企業の取り組みを調査しました。現場の声から見えてきた、大阪市の喫煙事情の「今」と「課題」をレポートします。

 

【条例概要】大阪市の路上喫煙禁止ルールとは? 対象エリア・罰則まとめ

↑画像提供/大阪市ホームページ

 

2025年1月27日、大阪市は「市民等の安心、安全及び快適な生活環境を確保するとともに、国際観光都市にふさわしい環境整備やまちの美化に積極的に取り組んでいくため」(大阪市ホームページ原文ママ)大阪市内全域において路上喫煙を禁止としました。

 

これは、同じく今年4月13日に開幕した2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)を前に、国内外から多数の観光客が訪れることを見越して、大阪市全体の景観美化のために施行されたと言われています。

 

特筆すべきは、この2点です。

・大阪市が管理する「道路・広場・公園その他公共の場所」が対象となり、該当区域で路上喫煙を行った場合は1000円の過料徴収の対象となること

・従来の「火のついたたばこ(紙巻たばこ)」に加えて、「加熱式たばこ」も対象となったこと

 

大阪市は、補助金を活用した民間事業者による喫煙所の設置を進めているとのことですが、はたして喫煙者の反応や実際の街中ではどのような状況になっているのでしょうか?

 

【万博会場の喫煙所】場所・混雑状況・条例認知度を現地調査

↑平日の午前中にもかかわらず長蛇の列!賑わいを見せる大阪・関西万博会場の東ゲート。

 

まずは、今回の条例改正のきっかけとなった大阪・関西万博の会場に向かいました。喫煙所は、現状、地下鉄夢洲駅を降りてすぐの東ゲート両脇2か所に設置されています。(5月26日に万博協会より、会場内にも3か所の喫煙所を整備すると発表あり。利用開始は6月上旬の予定)

 

入場口(東ゲート)を挟んで北側の喫煙所は万博スタッフと思われる人も使用しており、ほぼ満員状態。

↑北側の喫煙所は少し奥まったところにあり、日本語と英語で書かれた手書きの案内が貼られていた。

 

一方、南側は駅から遠い側の喫煙所だからか、比較的空いている印象でした。

↑南側喫煙所。空気清浄機も完備されており、クリーンな喫煙所内。煙臭さはあまり感じない。

 

こちらで一服していた数人に話を聞いたところ、大阪市内全域が喫煙禁止になったことを知っていたのは約6割でした。

 

特に関東や四国など遠方から大阪を訪れた方の中には、条例を知らない人も。しかし、東京から観光で来たという男性いわく「知らなかったが、今のご時世、どこも吸えないものだと思っているので」と、あまり驚きはなかった様子。

 

大阪市内在住で、万博には複数回来ているという女性は「(条例は)報道で見て知っていました。吸える場所が少ないから、市内全域で禁止は困ります」とこぼしつつも、「おかげで、自然と吸う本数が減ったのは良かったかもしれません」と笑顔で語ってくれました。

 

やはり、市内在住の喫煙者は、路上喫煙禁止に関するトピックに敏感なよう。なお、喫煙所内に条例に関するポスターは貼られていませんでした。

 

【天王寺の喫煙所問題】歩きたばこが減らない理由とは? 現場の声

続いて、天王寺駅周辺へ向かいました。以前から設置されていたJR天王寺駅前の喫煙所に加えて、今回の条例改正にともない、新たに阿倍野歩道橋下、てんしば、天王寺動物園入口付近の合計3か所の喫煙所が設置されました。

↑天王寺動物園入口付近に新たに設置された喫煙所。

 

「とは言え、まだまだ足りませんね」そう語るのは、天王寺駅前商店街振興組合の理事長であり、大阪市路上喫煙対策委員会の委員でもある佐野嘉昭さんです。

↑佐野さん自身も喫煙する立場として、皆が過ごしやすい天王寺駅前商店街を目指す。

 

「条例で路上喫煙禁止が決まったからと言っても、それだけやったら路上喫煙は減りませんよ。コンビニとか弁当屋の前に置かれていた灰皿とゴミ箱は撤去されてしまって、吸える場所がほんまに少ないんです。だから、正直、裏通りで歩きたばこをしている人は結構います。喫煙所がないから道端のポイ捨ても減らへん。地域住民の方や商店街の仲間からも、吸い殻が散乱して困っているという苦情を聞きます。

 

私はよく孫と天王寺動物園に行くんですが、喫煙所がないから、吸おうと思ったら一回外に出なあかん。昔は園内にもあったんやけどね」

 

2022年11月に大阪市商店総連盟からの依頼でプランワークストレンドラボが作成したレポート「大阪市内に必要な喫煙所数と設置不足が商店街におよぼす影響」によると、大阪市内において必要な喫煙所数は367か所。当時、市が整備している喫煙所は120か所でしたが、現在では350か所以上にまで整備が進みました。しかし、依然として空白地帯が目立っています。

 

「やはり、喫煙所の数を増やすことが先決ですよね。喫煙所は作って終わりやなくて、定期的な吸い殻の撤去や清掃も必要。手間も費用もかかります。だからこそ、そもそものたばこ税の使い道を再検討せなあかんと思いますし、補助金を増やしたり、申請条件を見直したりすることも検討していただきたいですね」

↑阿倍野歩道橋下の喫煙所。同様のオープン型喫煙所を各地に増やしていくことを佐野さんは望む。

 

「そんなものすごい喫煙所じゃなくてもいいんです。空調を完備した密閉型の立派なものだと、管理も大変やし、夜間は使えないでしょう? JR駅前や歩道橋下の喫煙所みたいな、柵で囲っただけ、つい立を立てただけのものでも十分やと思います。広い公園の中の人通りが少ない場所に広めの喫煙スペースを作るとか……それやったら、もう少し喫煙所を増やすことができるんと違うかな」

 

【THE TABACCOの挑戦】大阪の喫煙所が増えないワケと民間企業の役割

次に、自治体の助成金を活用しながら喫煙所の設立・運営をしている民間企業、株式会社コソドの代表取締役CEO 山下悟郎さんに話を聞きました。

↑山下さんの元には、非喫煙者から「がんばってください!」とエールが届くこともあるのだそう。(写真提供/コソド)

 

「私たちが運営する喫煙所『THE TABACCO(ザ タバコ)』は、2020年4月に第一号を出店してから今日現在(2025年5月23日)までの約5年間で全国163か所、月間の利用者総数は約184万人となりました。

 

喫煙者が肩身の狭い思いをしないよう、快適に利用できるようにと、内装から運営までかなり細かく工夫しています。たとえば、各喫煙所にはAIカメラを搭載しており、どの時間帯にどのくらいの人流があるかがデータで可視化されます。このエリアは何曜日に利用者が多いから清掃頻度を高めよう、雨の日はこう対策をしよう、などというケアが即座にできるんです」

↑「THE TABACCO SHISAIBASHI」思わず立ち寄りたくなる、洗練された内装と行き届いた清掃が特徴的。(写真提供/コソド)

 

「多い場所では一日3回灰皿を交換したり、定期的にヤニ落としやダクトの大掃除を行ったりと、柔軟に対応できる。これらは、行政にはなかなか難しいことだと思います。

 

その甲斐あってか、おかげさまで利用者の方からは『喫煙所が少なくなってきているなかで、こんなに快適な喫煙所があるのは本当に助かる』といったポジティブな感想が多数寄せられています。

 

また、非喫煙者の方からも、『路上喫煙が減ることで、マナーの悪い喫煙者が減って自分たちの居場所が確保された』という声をいただいています。喫煙者と非喫煙者の双方が過ごしやすい場所作りに少しでも貢献できているのならば、非常にうれしいですね」

 

全国的に好評な「THE TABACCO」ですが、大阪市に注目してみると、「THE TABACCO UMEDA」(2025年1月5日オープン)では、1日の利用者数が1月は500名~900名であったのに対して、条例後の2月以降は800~1100名。「THE TABACCO SHINSAIBASHI」は1月が200~300名、2月以降は400~500名と、条例の施行前と後では利用者が約2倍にまで増加しているとのこと。いかに、喫煙所が必要とされているかがわかります。

↑大阪駅前第1ビルの一階にある「THE TABACCO UMEDA」。入れ代わり立ち代わり、次々と利用者が吸い込まれていく。

 

「大阪市は、全国的に見ても喫煙所が少ないと感じています。駅前などの繁華街の喫煙所がものすごく少ないですし、人流あたりの喫煙所の数が圧倒的に足りていない。じゃあ、もっと『THE TABACCO』を増やせばいい、という話になるのですが、これもまた容易ではありません。

 

喫煙所の設置には、周囲に保育園や小中学校がないかといった条件や、近隣住民の方々への許可取りが難しく、そうなるとお借りできる場所の候補も少なくなってしまう。そして、一番はコスト面です。不動産価格も上がっていますし、自治体からの助成金を活用してもなお、運営が厳しい場所もあります。もちろん、喫煙所内にサイネージを設置して広告スペースを設けるなど、収益化も工夫してはいるのですが、改正健康増進法などの縛りがあり、選択肢がかなり少ない点が最大の課題でしょう。

 

助成金を増やしてほしいという思いはもちろんありますが、それ以上に、現実的な運用がしやすいルールにしてもらえると出店しやすい、というのが本音です」

 

【まとめ】喫煙所は増えるべき? 共存するための課題と今後の展望

今回の取材で、大阪市の喫煙事情と課題が見えてきました。そのなかでも、それぞれの立場でできることを、積極的に進めている人たちがいます。

 

「これまでも、大阪市議会長に向けて大阪市内全域路上喫煙禁止方針に関する陳情書を提出してきましたが、今後も(1)喫煙所整備の積極的な推進と、(2)私たち民間事業者の喫煙所整備への積極的ば参画に対して、潤沢な助成制度の設立と予算拡大を訴えていきます。また、大阪市路上喫煙対策委員会でも、積極的に意見を述べていこうと思っています」(佐野さん)

 

「喫煙所の数を増やすには助成金制度が必要で、制度を有効活用してもらうためには、助成金制度の設計が大切。私たちがどのように店舗を運営していて、どうキャッシュアウトしているかは、すべてデータで蓄積しています。この情報を行政の方々にシェアすることで、助成金制度のお手伝いができると考えています。各自治体と密に連携して動いていくことが、出店以外で今一番やりたいことです」(山下さん)

 

喫煙者と非喫煙者がどちらも暮らしやすい街にするために、大阪市をはじめ各自治体がどのような対策を講じるのか、今後も注目していきます。

 

よくある質問(FAQ)

Q. 大阪市ではどこで喫煙できますか?

A. 市内全域で路上喫煙は禁止されていますが、一部の公共施設や駅前に指定喫煙所が設置されています。JTによる喫煙所検索サービスもあります。

 

Q. 大阪・関西万博会場内に喫煙所はありますか?

はい。会場東ゲート付近に2か所に設置されています。加えて、会場内にも3か所の喫煙所設置(2025年6月上旬利用開始)を予定しています。

 

Q. 喫煙所が少ないことによる影響は?

歩きたばこやポイ捨ての増加、観光客の不満、喫煙者の利用環境の悪化などが指摘されています。

 

取材・文/水谷花楓